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特表2024-525350信号処理システム、および信号処理システムを備えた電力供給装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】信号処理システム、および信号処理システムを備えた電力供給装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
H05H1/46 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577661
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2022065203
(87)【国際公開番号】W WO2022263209
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】202021103238.3
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505169226
【氏名又は名称】トゥルンプフ ヒュッティンガー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Huettinger GmbH + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Boetzinger Strasse 80,D-79111 Freiburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン マイアー
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084CC08
2G084DD55
2G084HH02
2G084HH31
2G084HH56
(57)【要約】
プラズマプロセスを記述するデータストリームを特定して供給するための信号処理システムであって、信号処理システムは、a)所定の時間間隔(n=T1・・・T8)で繰り返される、プラズマプロセス状態に依存して変化する信号推移(100,101)を検出するように構成された検出装置(10)と、b)それぞれ1つの時間間隔において検出された少なくとも2つの信号推移(100,101)に基づいてデータストリームを生成するように構成された特定装置(12,14)であって、データストリームは、プラズマプロセスに関する連続的に特定された安定性特性数を有する、特定装置(12,14)とを有する、信号処理システム。プラズマのためのパルス化された高周波電力信号を生成するための電力供給装置(1)であって、電力発生器(2)と、電力発生器に接続されたインピーダンス整合装置(6)と、このような信号処理システムとを備えた、電力供給装置(1)と、このような信号処理システムからの安定性特性数を使用するように構成されている、プラズマプロセスのためのプロセス制御装置とが開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマプロセスを記述するデータストリームを特定して供給するための信号処理システムであって、前記信号処理システムは、
a)所定の時間間隔(n=T1・・・T8)で繰り返される、プラズマプロセス状態に依存して変化する信号推移(100,101)を検出するように構成された検出装置(10)と、
b)それぞれ1つの時間間隔(n=T1・・・T8)において検出された少なくとも2つの信号推移(100,101)に基づいてデータストリームを生成するように構成された特定装置(12,14)であって、前記データストリームは、前記プラズマプロセスに関する連続的に特定された安定性特性数を有する、特定装置(12,14)と
を有する、信号処理システム。
【請求項2】
前記信号処理システムは、前記時間間隔(n=T1・・・T8)を外部から予め定めることができるように構成されている、
請求項1記載の信号処理システム。
【請求項3】
前記信号処理システムは、前記時間間隔(n=T1・・・T8)自体を、とりわけ前記検出装置(10)によって、または前記特定装置(12,14)によって特定するように構成されている、
請求項1または2記載の信号処理システム。
【請求項4】
前記信号処理システムは、前記データストリームが、相前後する時間間隔(n=T1・・・T8)の2つの信号推移(100,101)の比較に基づいて生成されるように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の信号処理システム。
【請求項5】
前記信号処理システムは、前記データストリームが、それぞれ1つの時間間隔において検出された少なくとも2つの信号推移(100,101)の比較に基づいて生成されるように構成されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の信号処理システム。
【請求項6】
前記データストリームの出力値、すなわちこのような安定性特性数は、複数の検出された信号推移との複数のこのような比較に基づいている、
請求項4または5記載の信号処理システム。
【請求項7】
前記安定性特性数は、複数のこのような比較からの統計的な値として、すなわち例えば平均または最大値として特定される、
請求項4から6までのいずれか1項記載の信号処理システム。
【請求項8】
前記信号処理システムは、複数の異なる安定性特性数を有する複数のデータストリームが、それぞれ異なる統計的な評価に従って特定されるように構成されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載の信号処理システム。
【請求項9】
前記信号処理システムは、特定された前記安定性特性数が、単独でかつ/または他のデータと組み合わされて、AIの用途のために、かつ/または機械学習のために、テストデータおよび学習データの両方として使用されるように構成されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載の信号処理システム。
【請求項10】
前記信号処理システムは、前記データストリームを生成するために、前記安定性特性数を特定するために使用された時間窓が、少なくともデータストリーム間隔と同じ長さになるように、好ましくは前記データストリーム間隔よりも長くなるように、とりわけ少なくとも2倍の長さになるように構成されている、
請求項1から9までのいずれか1項記載の信号処理システム。
【請求項11】
前記繰り返される信号推移の前記所定の時間間隔および/または前記データストリーム間隔は、前記プラズマプロセスのプロセス変動によって予め定められている、
請求項1から10までのいずれか1項記載の信号処理システム。
【請求項12】
前記信号推移(100,101)を記録するためのメモリ装置(16)が設けられている、
請求項1から11までのいずれか1項記載の信号処理システム。
【請求項13】
前記メモリ装置(16)は、リングバッファとして構成されている、
請求項12記載の信号処理システム。
【請求項14】
前記検出装置(10)を信号推移周波数に同期させるための同期装置(18)が設けられている、
請求項1から13までのいずれか1項記載の信号処理システム。
【請求項15】
記録された信号推移(100,101)および/または記録された信号推移から特定された値を相互にまたは基準と比較するように構成された比較装置(20)が設けられている、
請求項1から14までのいずれか1項記載の信号処理システム。
【請求項16】
前記特定装置(12,14)は、複数の時間間隔にわたる平均信号推移を特定するように構成されている、
請求項1から15までのいずれか1項記載の信号処理システム。
【請求項17】
前記特定装置(12,14)は、信号推移のサンプルと平均信号推移との間の偏差を特定するように構成されている、
請求項1から16までのいずれか1項記載の信号処理システム。
【請求項18】
前記特定装置(12,14)は、複数の時間間隔の対応するサンプルの包絡線、とりわけ最小値および最大値を決定して、前記最小値および前記最大値から安定性特性数を特定するように構成されている、
請求項1から17までのいずれか1項記載の信号処理システム。
【請求項19】
プラズマのためのパルス化された高周波電力信号を生成するための電力供給装置(1)であって、電力発生器(2)と、前記電力発生器(2)に接続されたインピーダンス整合装置(6)と、請求項1から18までのいずれか1項記載の信号処理システムとを備えた、電力供給装置(1)。
【請求項20】
プラズマプロセスのためのプロセス制御装置であって、前記プラズマプロセスを制御するために、請求項1から18までのいずれか1項記載の信号処理システムからの安定性特性数を使用するように構成されている、プロセス制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、プラズマプロセスを記述するデータストリームを特定して供給するための信号処理システムに関する。さらに、本発明は、このような信号処理システムを備えた電力供給装置に関する。
【0002】
連続モードにおける安定したプラズマプロセスでは、プラズマの点火後、さほど変動しない一定の負荷インピーダンス(プラズマインピーダンス)が発生する。自動的なインピーダンス整合ネットワーク(マッチングボックス)は、このインピーダンスを補償し、プラズマを点火および動作させるための電力を生成する発生器に、自身の定格インピーダンスを提示する。しかしながら、プラズマの燃焼が不安定である場合には、不利なチャンバ幾何形状、プロセス方式、アーキング、またはこれらに類するものが原因であろうとなかろうと、種々異なる確率過程によってプラズマインピーダンス、ひいてはプラズマに投入される電力が常に変動してしまう。
【0003】
マッチングボックスは、これを相殺することができず、したがって、発生器の出力部/マッチングボックスの入力部において不整合が生じる。RF発生器およびマッチングボックスの産業用途では、多くの場合、発生器とマッチングボックスとプラズマとからなるこのシステムを、反射電力がほぼゼロになるように調整することができた場合にのみプラズマが安定する、ということが仮定される。したがって、産業界では、ゼロでない反射電力と、不安定なプラズマとを同一視することが一般的となっている。
【0004】
これに対して、特定の繰り返し周波数で変化するプラズマ用途の場合、例えば、変調されたまたはパルス化されたプラズマ用途の場合には、原則的に、例えばそれぞれのパルスの開始時および終了時に過渡過程および減衰過程ならびに点火過程に起因して反射電力が生じる。この反射電力は、多くの場合、マッチングボックスによって補償することができない。なぜなら、この反射電力に対するプラズマでの変化が高速すぎるからである。パルス周波数が大きい場合、またはデューティ比が小さい場合には、この反射電力が顕著になる。それでもなお、それぞれのパルスが入射電力Piおよび反射電力Prに関して、または電圧および電流に関して同一の曲線推移を有している場合には、プロセスが安定していることを仮定することができる。したがって、反射電力は、ここではプラズマの安定性に関する尺度として機能しない。しかしながら、プラズマが不安定である場合には、例えば個々のパルスが点火しないか、またはパルスが相互に異なってしまう。
【0005】
換言すれば、プラズマシステムでは、多くの場合、平均反射電力の量が、自動的なマッチングボックスの整合過程の品質に関する指標として使用され、それと同時にプラズマに関する安定性基準として使用される。(高速)パルス化された用途では、それぞれのパルスの開始時および終了時に過渡過程および減衰過程が生じ、この過渡過程および減衰過程は、プロセスが安定しているにもかかわらず、また整合が最良であるにもかかわらず、反射電力をもたらす。
【0006】
発明の課題
本発明の課題は、プラズマの安定性をより確実に記述する特性数を特定するための装置を提供することである。
【0007】
発明の説明
上記の課題は、本発明によれば、プラズマプロセスを記述するデータストリームを特定して供給するための信号処理システムであって、信号処理システムは、
a)所定の時間間隔で繰り返される、プラズマプロセス状態に依存して変化する信号推移を検出するように構成された検出装置と、
b)それぞれ1つの時間間隔において検出された少なくとも2つの信号推移に基づいてデータストリームを生成するように構成された特定装置であって、データストリームは、プラズマプロセスに関する連続的に特定された安定性特性数を有する、特定装置と
を有する、信号処理システムによって解決される。
【0008】
信号推移とは、MF信号またはRF信号の包絡線、有効値曲線、二乗平均平方根(RMS)曲線、または極値曲線に比例した信号の推移を意味するか、または連続的に変化する可能性のあるDC信号の推移を意味する。安定性特性数は、一方では反射電力に依存することができるが、それに加えてさらなるパラメータに依存することもでき、すなわち、安定性特性数は、反射電力のみに依存していなくてもよい。さらに、安定性特性数は、反射電力に依存していなくてもよく、とりわけ、たとえ反射電力がゼロでなくてもその最大値に到達することができる。本発明によって特定された安定性特性数を用いることにより、プラズマの安定性に関して高い説得力を提供することができる。
【0009】
データストリームは、常に更新されたデータ、とりわけ安定性特性数を連続的に供給することを表す。
【0010】
この場合、安定性特性数の更新されたデータが、常に所定のデータストリーム間隔に従って出力されるように、データストリームを構成することができる。データストリーム間隔は、繰り返される信号推移の所定の時間間隔とは無関係であってよい。データストリーム間隔は、とりわけ繰り返される信号推移の時間間隔よりも長くてよい。データストリーム間隔は、約1ミリ秒~約1秒であってよい。データストリーム間隔は、上位のプラズマプロセスコントロールユニットに供給されてよい。上位のプラズマプロセスコントロールユニットは、この安定性特性数を自身のプロセス改善制御に取り入れて、この安定性特性数がより有利な値を有するように、例えばガス供給、ガス混合物、圧力、電気的なパラメータ、例えば周波数、電力、電圧、電流、変調、またはパルス周波数などを調整するように構成されていてよい。
【0011】
データストリームは、それぞれ1つの時間間隔において検出された少なくとも2つの信号推移の比較によって生成されてよい。この比較は、例えば相関または減算であってよい。
【0012】
データストリームの出力値、すなわちこのような安定性特性数は、複数の検出された信号推移との複数のこのような比較に基づくことができる。
【0013】
安定性特性数は、複数のこのような比較からの統計的な値として、すなわち例えば平均または最大値として特定されてよい。
【0014】
複数の異なる安定性特性数を有する複数のデータストリームは、それぞれ異なる統計的な評価に従って特定されてよい。
【0015】
例えば最大値が高くて平均値が低い場合には、非常に顕著ではあるが稀であるイベントであると認識することができる。
【0016】
特定された安定性特性数は、単独でかつ/または他のデータと組み合わされて、AI(人工知能)の用途のために、かつ/または機械学習のために、テストデータおよび学習データの両方として使用可能であり、このようにしてプロセスをさらに安定させることができる。データストリームを生成することは、安定性特性数を特定するために使用された時間窓が、少なくともデータストリーム間隔と同じ長さになるように、好ましくはデータストリーム間隔よりも長くなるように、とりわけ少なくとも2倍の長さになるように構成されていてよい。これにより、情報の損失が防止される。
【0017】
安定性特性数は、例えば不安定な負荷または周囲条件に起因して基本的な不安定性を有するプラズマプロセスにおいて、このプラズマプロセスを制御するために非常に有利に使用可能である。したがって、1つまたは複数の安定性特性数に基づいて基本的な不安定性を特定することができ、そして、プロセスをこの基本的な不安定性に保ち、このプロセスが、基本的な不安定性から偏差している変化した不安定性にいつ陥ったのかを、安定性特性数によって認識し、この変化した不安定性が望ましくないものである場合には、基本的な不安定性に復帰させるための措置を講じることが試みられる。
【0018】
検出装置は、アナログ/デジタル変換器(ADC)を有し、データをメモリに格納することができる。この場合、1つの時間間隔の全てのデータを第1のメモリ区分(アレイ)に格納することができ、後続の1つの時間間隔のデータをさらなる1つのメモリ区分に格納することができる。3つ以上のこのようなメモリ区分を設けることができる。最後に設けられているメモリ区分が書き込まれている場合には、次のメモリ区分として再び第1のメモリ区分が書き込まれ、そこに存在していたデータを上書きすることができる。
【0019】
これらの全てを、検出装置によって処理することができる。検出装置は、固定配線されたまたはプログラミング可能な論理コンポーネント、とりわけFPGAを有することができる。このことは、高速なデータ処理が可能になるという利点を有する。常に同じルーチンが実行されてよい。さらなる利点は、FPGAのコンフィギュレーション可能性である。
【0020】
特定装置は、メモリ区分に読み取りアクセスするように、とりわけ常に、検出装置によって書き込まれている最中ではないメモリ区分に読み取りアクセスするように構成されていてよい。特定装置は、マイクロプロセッサとして構成されていてもよいし、またはマイクロプロセッサを有してもよい。マイクロプロセッサは、制御装置のさらなるタスクを実行するように構成されていてよい。
【0021】
好ましくは、プラズマプロセスは、RF電力信号によって励起される。信号推移は、繰り返されてよい。信号推移は、とりわけ信号推移周波数で周期的に繰り返されてよい。信号推移は、通常動作における時間間隔の周期持続時間で繰り返されてよく、すなわち、例えば周期的に変調された信号、または周期的にパルス化された信号、またはこれらの組み合わせを、繰り返される信号推移とすることができる。
【0022】
RF電力信号は、信号推移周波数よりも格段により高い周波数を有することができ、典型的には4倍、10倍、50倍、100倍以上の周波数を有することができる。RF電力信号は、4MHz以上の周波数、とりわけ80MHz以下の周波数、とりわけ10~50MHzの周波数範囲内の周波数、とりわけ好ましくは13.56MHzの周波数であってよい。
【0023】
繰り返される信号推移の周波数(=信号推移周波数)は、10kHz以上の周波数であってよい。繰り返される信号推移の周波数(=信号推移周波数)は、500kHz以下の周波数であってよい。繰り返される信号推移の周波数(=信号推移周波数)は、RF電力信号の変調されたまたはパルス化された動作によって引き起こされていてよい。繰り返される信号推移の周波数(=信号推移周波数)は、同じくプラズマプロセスに接続されている他の電力供給部の、例えばバイアス電力供給部の、変調されたまたはパルス化された動作によって引き起こされていてよい。繰り返される信号推移の周波数(=信号推移周波数)は、インピーダンス整合装置の周期的な変化によって引き起こされていてよい。繰り返される信号推移の周波数(=信号推移周波数)は、プラズマプロセスにおける周期的な変化によって引き起こされていてよい。この周期的な変化は、プラズマプロセスにおける基板の動き、例えば基板の送り出し、または回転盤上での複数の基板の動きであってよい。
【0024】
信号推移は、実質的に一定の値であってよい。例えば電力発生器から、1回転の回転速度が10秒である上述した回転盤を用いたプラズマプロセスへの、一定のRF電力信号が存在することがある。その場合、RF電力信号は、実質的に一定になるだろうが、プロセス事業者は、10秒の時間間隔で繰り返される影響力のある量が存在することを把握している。この時間間隔は、予め定められていてよい。
【0025】
繰り返される信号推移の所定の時間間隔および/またはデータストリーム間隔は、プラズマプロセスのプロセス変動によって予め定められていてよい。このようなプロセス変動は、例えば連続コーティング設備における、または回転するターゲットもしくは回転する基板を用いた設備における、複数の基板間の1つまたは複数の中間空間によって、これらの装置の非平坦性または不規則性によって引き起こされる可能性がある。このような形式の設備と、このようなプロセス変動の原因とについては、例えば、“Verfahren zur Kompensation von Prozessschwankungen eines Plasmaprozesses und Regler fuer einen Leistungsgenerator zur Versorgung eines Plasmaprozesses(プラズマプロセスのプロセス変動を補償するための方法、およびプラズマプロセスに給電するための電力発生器のためのコントローラ)”という表題の国際公開第2020/152097号において説明されている。
【0026】
信号処理システムは、時間間隔を外部から、例えば電力発生器から、インピーダンス整合装置から、または例えばプラズマプロセスに接続された、低周波数の変調されたまたはパルス化されたさらなる電流供給部、とりわけバイアス電流供給部のような、プラズマプロセスに影響を与える他のユニットから、予め定めることができるように構成されていてよい。時間間隔は、プラズマまたはプラズマチャンバにおける基板の送り出しまたは回転速度によって予め定められてもよい。
【0027】
信号処理システムは、時間間隔自体を、とりわけ検出装置によって、または特定装置によって特定するように構成されていてよい。このことを、例えば自己相関によって実施することができ、すなわち、例えば信号推移と、より早期の時点での信号推移自体との相関によって実施することができる。これに代えて、時間間隔を周波数分析によって決定してもよく、すなわち、例えば、とりわけプラズマプロセスの励起周波数とは等しくない周波数、とりわけプラズマプロセスの励起周波数よりも低い周波数の探索によって決定してもよい。
【0028】
信号処理システムは、データストリームが、相前後する時間間隔の2つの信号推移の比較に基づいて生成されるように構成されていてよい。この場合、相前後する時間間隔は、必ずしも直接的に相前後する時間間隔でなくてもよい。複数の第1の時間間隔の複数の第1の信号推移を、後続の時間間隔の信号推移と比較して、データストリームを生成するために使用することもできる。したがって、複数の第1の時間間隔の複数の第1の信号推移から、例えば平均値推移または最大値推移を形成して、これを比較のために使用することができる。
【0029】
信号処理システムは、信号推移を記録するためのメモリ装置を有することができる。これにより、信号推移および/または信号推移から特定された値を相互に比較することが可能になる。さらに、平均値形成も可能である。包絡線の生成も可能である。それぞれの時間間隔ごとに、信号推移の極値を特定して保存することができる。メモリ装置は、リングバッファとして構成されていてよい。
【0030】
検出装置を信号推移周波数に同期させるための同期装置を設けることができる。これにより、全体的な信号推移、パルス、またはパルス開始を記録して比較することが可能になる。これに代えて、複数のプロセス開始および点火過程を記録してもよい。このことは、プロセスが点火しない傾向にある場合、または開始時に「悪い」状態に陥る傾向がある場合に、とりわけ有利である。
【0031】
記録された信号推移および/または記録された信号推移から特定された値を相互にまたは基準と比較するように構成された比較装置を設けることができる。
【0032】
特定装置は、複数の時間間隔にわたる平均信号推移を特定するように構成されていてよい。これにより、平均信号推移を特定することができる。それぞれの新しい信号推移は、相応に重み付けされて、平均信号推移に含め入れられる。特定装置は、とりわけ同時に、新しい信号推移が平均信号推移からどのくらい偏差するかを特定するために、信号推移のサンプルと平均信号推移との間の偏差を特定するように構成されていてよい。この場合には、(不)安定性に関する尺度として、この偏差の最大値またはその平均値を使用することができる。この値は、N個の時間間隔にわたって記録され、その最大値または平均値が出力される。記録が行われない場合には、N個の時間間隔の後にゼロに到達するまで、それぞれの新しい時間間隔ごとに減少する極値を使用することもできる。
【0033】
特定装置は、複数の時間間隔の対応するサンプルの包絡線、とりわけ最小値および最大値を決定して、この最小値および最大値から安定性特性数を特定するように構成されていてよい。例えば、N個のパルスを記録することができる。N+1番目のパルスが検出されると、最も古いパルスが再び上書きされる(リングバッファ)。リングバッファ内の全てのこれらのパルスによって、それぞれのサンプルごとに最大値および最小値が特定される。最大値および最小値からなる包絡線が得られる。最大値と最小値との平均間隔を形成することによっても、不安定性に関する尺度を決定することができる。
【0034】
リソースを節約するため、1つの時間間隔における全ての信号推移を記録する必要はない。特定中に個々の時間間隔を省略することもできる。
【0035】
一態様では、本発明は、プラズマのための高周波電力信号(RF電力信号)を生成するための電力供給装置であって、電力発生器と、電力発生器に接続されたインピーダンス整合装置と、本発明による信号処理システムとを備えた、電力供給装置に関する。
【0036】
信号処理システムは、電力供給装置内に配置されていてよい。これに代えて、信号処理システムは、インピーダンス整合装置内に配置されていてよい。さらに、信号処理システムを外部に配置すること、すなわち電力供給装置内にもインピーダンス整合装置内にも配置しないことが考えられる。
【0037】
本発明のさらなる利点は、明細書および図面から明らかである。同様に、上記で挙げた特徴および下記で説明する特徴は、本発明によれば、それぞれ個別に使用されてもよいし、または複数の任意の組み合わせで使用されてもよい。図示および説明した実施形態は、限定する列挙として理解されるべきではなく、本発明を説明するためにむしろ例示としての性格を有している。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】電力供給装置の概略図である。
図2】安定性特性数を有するデータストリームを特定するための第1の手法を説明するための線図である。
図3】安定性特性数を有するデータストリームを特定するための第2の手法を説明するための線図である。
【0039】
図1は、プラズマチャンバ4においてプラズマを生成するための、とりわけパルス化された高周波電力信号を生成するための電力供給装置1を示す。電力供給装置1は、電力発生器2と、電力発生器2に接続されたインピーダンス整合装置6とを含み、インピーダンス整合装置6を介して電力発生器2がプラズマチャンバ4に接続されている。
【0040】
検出装置10は、所定の時間間隔で繰り返される、プラズマプロセス状態に依存して変化する信号推移を検出するように構成されている。検出装置10は、電力発生器2とインピーダンス整合装置6との間に配置されている。検出装置10は、例えば、電流および/または電圧を測定するための測定装置として構成されていてもよいし、または電力を検出するために方向性結合器として構成されていてもよい。
【0041】
電力発生器2またはインピーダンス整合装置6には、特定装置12,14を配置することができる(2つの特定装置12,14が示されているが、1つで充分である)。特定装置12,14を、他の場所に配置することも考えられる。特定装置12,14は、1つの時間間隔において検出された少なくとも1つの信号推移に基づいてデータストリームを生成するように構成されており、データストリームは、プラズマプロセスに関する連続的に特定された安定性特性数を有する。
【0042】
検出装置10によって検出された信号推移を、メモリ装置16に保存して、メモリ装置16から特定装置12,14に供給することができる。メモリ装置16は、リングバッファとして構成されていてよい。
【0043】
記録された信号推移および/または記録された信号推移から特定された値を、比較装置20によって相互にまたは基準値と比較することができる。この比較に基づいて、安定性特性数を有するデータストリームを生成して出力することができ、とりわけユーザに表示することができる。
【0044】
信号推移の検出を、同期された状態で実施することができる。信号推移の検出を同期させるために同期装置18が設けられており、同期装置18は、検出装置10および制御装置22の両方に接続されていてよい。制御装置22は、電力発生器2および同期装置18の両方を制御することができる。
【0045】
図2は、電力発生器2から供給される、パルス化された高周波電力に対応する第1の信号推移100と、反射電力に対応する第2の信号推移101とを示す。信号推移100,101は、時間間隔n=T1・・・T8において検出されて、メモリ装置16に保存される。それぞれの時間間隔n=T1・・・T8において、信号推移100,101からm=1・・・8個のサンプルが抽出される。
【0046】
図2は、パルス化されたRF信号、パルス化されたDCバイアス信号、またはこれらに類する信号を示す。ここでは、パルス信号の包絡線が見て取れる。この包絡線は、例えば10kHz~500kHzの周波数であってよい。このパルス形状でパルス化されているRF信号は、格段により高い周波数、例えば10MHz以上の周波数を有する。これについては、図2には示されていない。
【0047】
時間間隔T1~T4においては、信号推移100,101は、正常である。時間間隔T5において、パルスの失弧または不所望なイベントの形態の不連続性が存在する。時間間隔T6~T8は、回復フェーズに相当する。
【0048】
時間間隔T1・・・T8が、RF電力信号のパルスの立ち上がりエッジと同期されていることが見て取れ、すなわち、信号推移100,101の検出は、同期装置18によって、RF電力信号のパルスを引き起こすパルス信号と同期された状態で実施される。
【0049】
特定装置12,14によって、例えばn個の時間間隔にわたる信号推移100の移動平均値が形成され、これにより平均信号推移が得られる。それぞれの新しい時間間隔は、相応に重み付けされて、平均信号推移に含め入れられる。さらに、新しい時間間隔のそれぞれのサンプルが、平均信号推移からどのくらい偏差しているかが決定される。次いで、この偏差の最大値または平均値を、プラズマプロセスの安定性に関する尺度として使用することができる。これに代えて、新しい時間間隔と形成された平均値との間の交差相関を使用してもよい。この安定性特性数をn個の時間間隔にわたって記録することができ、その最大値または平均値を出力することができる。これが、上述したデータストリームである。これに代えて、例えば減算によって、2つの時間間隔の時間的に対応するサンプリング点(サンプル)だけを比較して、最大値を保存してもよい。この最大値は、N個の時間間隔の後にゼロに到達するまで不連続性が現れない限り、それぞれの新しい時間間隔ごとに減少する。
【0050】
したがって、時間間隔T1~T4では、サンプルが平均信号推移からさほど偏差していないので、高安定性に対応付けられる安定性特性数が特定されて出力され、その一方で、時間間隔T5~T8では、低安定性に対応付けられる安定性特性数が特定されて、場合によっては出力される。
【0051】
図3による実施形態では、信号推移101が改めて示されている。信号推移101は、時間間隔n=T11・・・T14において検出されて、メモリ装置16に保存されたものである。それぞれの時間間隔n=T11・・・T14において、信号推移から複数のサンプルが抽出される。
【0052】
時間間隔n=T11・・・T14が、RF電力信号のパルスの立ち上がりエッジと同期されていることが見て取れ、すなわち、信号推移101の検出は、同期装置18によって、RF電力信号のパルスを引き起こすパルス信号と同期された状態で実施される。
【0053】
それぞれのサンプルごとに、所定の時間間隔にわたる最大値および最小値が形成され、これにより包絡線103を生成することができる。例えば、時間間隔の対応するサンプルの平均値から、すなわち最大値および最小値から、安定性特性数を特定することができる。したがって、間隔T11-T13でのように包絡線103が信号推移101に密接して位置する場合には、高安定性が存在している。したがって、時間間隔T11-T13では、高安定性に対応付けられる安定性特性数が特定されて出力される。間隔T14でのように包絡線が信号推移101まで大きな距離を有する場合には、低安定性が存在している。したがって、時間間隔T14では、より低安定性に対応付けられる安定性特性数が特定されて出力される。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマプロセスを記述するデータストリームを特定して供給するための信号処理システムであって、前記信号処理システムは、
a)所定の時間間隔(n=T1・・・T8)で繰り返される、プラズマプロセス状態に依存して変化する信号推移(100,101)を検出するように構成された検出装置(10)と、
b)それぞれ1つの時間間隔(n=T1・・・T8)において検出された少なくとも2つの信号推移(100,101)に基づいてデータストリームを生成するように構成された特定装置(12,14)であって、前記データストリームは、前記プラズマプロセスに関する連続的に特定された安定性特性数を有する、特定装置(12,14)と
を有する、信号処理システム。
【請求項2】
前記信号処理システムは、前記時間間隔(n=T1・・・T8)を外部から予め定めることができるように構成されている、
請求項1記載の信号処理システム。
【請求項3】
前記信号処理システムは、前記時間間隔(n=T1・・・T8)自体を、とりわけ前記検出装置(10)によって、または前記特定装置(12,14)によって特定するように構成されている、
請求項1または2記載の信号処理システム。
【請求項4】
前記信号処理システムは、前記データストリームが、相前後する時間間隔(n=T1・・・T8)の2つの信号推移(100,101)の比較に基づいて生成されるように構成されている、
請求項1または2記載の信号処理システム。
【請求項5】
前記信号処理システムは、前記データストリームが、それぞれ1つの時間間隔において検出された少なくとも2つの信号推移(100,101)の比較に基づいて生成されるように構成されている、
請求項1または2記載の信号処理システム。
【請求項6】
前記データストリームの出力値、すなわちこのような安定性特性数は、複数の検出された信号推移との複数のこのような比較に基づいている、
請求項記載の信号処理システム。
【請求項7】
前記安定性特性数は、複数のこのような比較からの統計的な値として、すなわち例えば平均または最大値として特定される、
請求項記載の信号処理システム。
【請求項8】
前記信号処理システムは、複数の異なる安定性特性数を有する複数のデータストリームが、それぞれ異なる統計的な評価に従って特定されるように構成されている、
請求項1または2記載の信号処理システム。
【請求項9】
前記信号処理システムは、特定された前記安定性特性数が、単独でかつ/または他のデータと組み合わされて、AIの用途のために、かつ/または機械学習のために、テストデータおよび学習データの両方として使用されるように構成されている、
請求項1または2記載の信号処理システム。
【請求項10】
前記信号処理システムは、前記データストリームを生成するために、前記安定性特性数を特定するために使用された時間窓が、少なくともデータストリーム間隔と同じ長さになるように、好ましくは前記データストリーム間隔よりも長くなるように、とりわけ少なくとも2倍の長さになるように構成されている、
請求項1または2記載の信号処理システム。
【請求項11】
前記繰り返される信号推移の前記所定の時間間隔および/または前記データストリーム間隔は、前記プラズマプロセスのプロセス変動によって予め定められている、
請求項1または2記載の信号処理システム。
【請求項12】
前記信号推移(100,101)を記録するためのメモリ装置(16)が設けられている、
請求項1または2記載の信号処理システム。
【請求項13】
前記メモリ装置(16)は、リングバッファとして構成されている、
請求項12記載の信号処理システム。
【請求項14】
前記検出装置(10)を信号推移周波数に同期させるための同期装置(18)が設けられている、
請求項1または2記載の信号処理システム。
【請求項15】
記録された信号推移(100,101)および/または記録された信号推移から特定された値を相互にまたは基準と比較するように構成された比較装置(20)が設けられている、
請求項1または2記載の信号処理システム。
【請求項16】
前記特定装置(12,14)は、複数の時間間隔にわたる平均信号推移を特定するように構成されている、
請求項1または2記載の信号処理システム。
【請求項17】
前記特定装置(12,14)は、信号推移のサンプルと平均信号推移との間の偏差を特定するように構成されている、
請求項1または2記載の信号処理システム。
【請求項18】
前記特定装置(12,14)は、複数の時間間隔の対応するサンプルの包絡線、とりわけ最小値および最大値を決定して、前記最小値および前記最大値から安定性特性数を特定するように構成されている、
請求項1または2記載の信号処理システム。
【請求項19】
プラズマのためのパルス化された高周波電力信号を生成するための電力供給装置(1)であって、電力発生器(2)と、前記電力発生器(2)に接続されたインピーダンス整合装置(6)と、請求項1または2記載の信号処理システムとを備えた、電力供給装置(1)。
【請求項20】
プラズマプロセスのためのプロセス制御装置であって、前記プラズマプロセスを制御するために、請求項1または2記載の信号処理システムからの安定性特性数を使用するように構成されている、プロセス制御装置。
【国際調査報告】