(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】作動シリンダー及び当該作動シリンダーの製作方法
(51)【国際特許分類】
F16J 10/00 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
F16J10/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577670
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 DE2021000111
(87)【国際公開番号】W WO2023274432
(87)【国際公開日】2023-01-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178522
【氏名又は名称】ビューラハ エンジニアリング インターナショナル ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブエター、ジョセフ
【テーマコード(参考)】
3J044
【Fターム(参考)】
3J044AA18
3J044AA20
3J044CC03
3J044CC30
(57)【要約】
本発明は、シリンダー・チューブ3を備えるシリンダー1を有し、さらにピストン・ユニット2を有する、作動シリンダーに関連し、シリンダー1が、クロージャ・パート4a及びシリンダー・チューブ端部分5aを有する連結部分7aを有し、シリンダー・チューブ端部分5aが、ねじ切りされたシリンダー・チューブ部分5.1a、シリンダー・チューブ中間部分5.2a、及びシリンダー・チューブ端部5.3aを有し、クロージャ・パート4aが雄ねじ8aを有し、ねじ切りされたシリンダー・チューブ部分5.1aが雄ねじ8aに対応する雌ねじ9aを有し、雄ねじ8a及び雌ねじ9aが、クロージャ・パート4a及びシリンダー・チューブ3をフォーム・フィットにより連結するように設計された共通のねじ切りされた部分を形成し、シリンダー・チューブ端部5aが、円周方向リング溶接シーム10aによる一体接合によりクロージャ・パート4aに接続され、リング溶接シーム10aがレーザーによって生成されるリング溶接シームとして設計され、圧力媒体に対して密閉性を有する密閉面を形成し、荷重緩和下の動作状態において、共通のねじ切りされた部分が軸方向引張力を吸収せず、荷重下の動作状態において、リング溶接シーム10a及び共通のねじ切りされた部分が、各々、軸方向引張力を吸収する。本発明は、このようなシリンダーの製作のための方法にさらに関連する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー(1)及びピストン・ユニット(2)を備える作動シリンダーであって、
前記シリンダー(1)が、シリンダー・チューブ(3)、クロージャ・パート(4a)、及び別のクロージャ・パート(4b)を備え、
前記シリンダー・チューブ(3)が、シリンダー・チューブ端部分(5a)及び別のシリンダー・チューブ端部分(5b)を有し、前記クロージャ・パート(4a)が前記シリンダー・チューブ端部分(5a)の上に配置構成され、前記別のクロージャ・パート(4b)が前記別のシリンダー・チューブ端部分(5b)の上に配置構成され、
前記シリンダー・チューブ(3)及び前記クロージャ・パート(4a、4b)がシリンダー内部(6)を形成し、
前記ピストン・ユニット(2)が前記シリンダー内部(6)内に少なくとも1つの作動チャンバ(6.1)を形成し、
前記シリンダー(1)が、前記クロージャ・パート(4a)及び前記シリンダー・チューブ端部分(5a)を備える連結部分(7a)を有し、
前記シリンダー・チューブ端部分(5a)が、ねじ切りされたシリンダー・チューブ部分(5.1a)、中間シリンダー・チューブ部分(5.2a)、及びシリンダー・チューブ端部(5.3a)を備え、
前記クロージャ・パート(4a)が雄ねじ(8a)を有し、前記ねじ切りされたシリンダー・チューブ部分(5.1a)が前記雄ねじ(8a)に対応する雌ねじ(9a)を有し、前記雄ねじ(8a)及び前記雌ねじ(9a)が、フォーム・フィット手法で前記クロージャ・パート(4a)及び前記シリンダー・チューブ(3)を連結するように設計された共通のねじ切りされた部分を形成し、
前記シリンダー・チューブ端部(5.3a)が、物体係止手法で円周方向リング溶接シーム(10a)により前記クロージャ・パート(4a)に接続され、
前記リング溶接シーム(10a)がレーザー・リング溶接シームとして設計され、圧力媒体に対して密閉性を有する加圧密閉面を形成し、
前記作動シリンダーが、荷重軽減下の動作状態をとるように又は荷重下の動作状態をとるように設計され、
前記荷重軽減下の動作状態において、前記共通のねじ切りされた部分が軸方向引張力を一切吸収せず、
前記荷重下の動作状態において、前記リング溶接シーム(10a)及び前記共通のねじ切りされた部分が、各々、軸方向引張力を吸収する、
作動シリンダー。
【請求項2】
前記荷重軽減下の動作状態において、前記中間シリンダー・チューブ部分(5.2a)が引張予応力を有し、前記共通のねじ切りされた部分が軸方向圧縮力を吸収する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の作動シリンダー。
【請求項3】
前記荷重軽減下の動作状態において、前記中間シリンダー・チューブ部分(5.2a)が引張予応力を有し、前記共通のねじ切りされた部分が軸方向圧縮力を吸収する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の作動シリンダー。
【請求項4】
前記中間シリンダー・チューブ部分(5.2a)が、前記荷重軽減下の動作状態が前記荷重下の動作状態へと変わるときに、軸方向ひずみをその弾性限界の範囲内にするように設計される、
ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の作動シリンダー。
【請求項5】
前記リング溶接シーム(11a)が、シリンダー・チューブ壁厚に対して1.1から2.5の比を有するリング溶接シーム深さを有する、ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の作動シリンダー。
【請求項6】
前記リング溶接シーム(11a)が、前記シリンダー・チューブの主長手方向軸に対して20度から70度のリング溶接シーム傾斜角度アルファを有するリング溶接シーム中心軸を有する、
ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の作動シリンダー。
【請求項7】
前記ピストン・ユニット(2)が前記シリンダー内部(6)内に別の作動チャンバ(6.2)を形成し、
前記シリンダー(1)が、前記別のクロージャ・パート(4b)及び前記別のシリンダー・チューブ端部分(5b)を有する別の連結部分(7b)を有し、
前記別のシリンダー・チューブ端部分(5b)が、別のねじ切りされたシリンダー・チューブ部分(5.1b)、別の中間シリンダー・チューブ部分(5.2b)、及び別のシリンダー・チューブ端部(5.3b)を備え、
前記別のクロージャ・パート(4b)が別の雄ねじ(8b)を有し、前記別のねじ切りされたシリンダー・チューブ端部分(5.1b)が前記別の雄ねじ(8b)に対応する別の雌ねじ(9b)を有し、前記別の雄ねじ(8b)及び前記別の雌ねじ(9b)が、前記別のクロージャ・パート(4b)及び前記シリンダー・チューブ(3)をフォーム・フィット手法で連結するように設計された別の共通のねじ切りされた部分を形成し、
前記別のシリンダー・チューブ端部(5.3b)が、別の円周方向リング溶接シーム(10b)による物体係止手法で前記別のクロージャ・パート(4b)に接続され、
前記別の円周方向リング溶接シーム(10b)がレーザー・リング溶接シームとして設計され、圧力媒体に対して密閉性を有する密閉面を形成する、
前記荷重軽減下の動作状態において、前記別の共通のねじ切りされた端部分が軸方向引張力を一切吸収せず、
前記荷重下の動作状態において、前記別の円周方向リング溶接シーム(10b)及び前記別の共通のねじ切りされた部分が、各々、軸方向引張力を吸収する、
ことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の作動シリンダー。
【請求項8】
作動シリンダーを製造する方法であって、
前記作動シリンダーが請求項1から5までのいずれか一項に従って設計され、
以下のプロセス・ステップ:
a)シリンダー・チューブ(3)のシリンダー・チューブ端部分(5a)を用いて前記シリンダー・チューブ(3)をクロージャ・パート(4a)の上にねじ込んで、ねじ切りされたシリンダー・チューブ部分の雌ねじ(10a)と前記クロージャ・パート(4a)の雄ねじ(9a)と間での係合を成立させ、共通のねじ切りされた部分を作り出す、ステップと、
b)シリンダー・チューブ端部(5.3a)と前記クロージャ・パート(4a)との間の軸方向リング接触面(11a)での圧接を確立するステップと、
c)締め付けトルクを加えて、軸方向圧縮力を発生させて、中間シリンダー・チューブ部分(5.2a)の軸方向圧縮を成立させる、ステップと、
d)前記軸方向リング接触面(11a)において前記シリンダー・チューブ端部(5.3a)及び前記クロージャ・パート(4a)のレーザー溶接を実行するステップであって、前記軸方向リング接触面(11a)に近い領域において前記シリンダー・チューブ端部(5.3a)及び前記クロージャ・パート(4a)が熱軟化して変形し、前記中間シリンダー・チューブ部分(5.2a)が熱膨張して同時にその軸方向圧縮が緩和される、レーザー溶接を実行するステップと、
e)前記軸方向リング接触面(11a)に近くの領域において前記シリンダー・チューブ端部(5.3a)及び前記クロージャ・パート(4a)の固化を伴う冷却を行って、前記中間シリンダー・チューブ部分(5.2a)の前記リング溶接シーム(10a)及び軸方向熱収縮を成立させる、ステップと、
を含む、方法。
【請求項9】
プロセス・ステップe)がプロセス・ステップe1)として実行されること、及び、プロセス・ステップe1)において、前記中間シリンダー・チューブ部分(5.2a)内で軸方向引張予応力が発生されるまで軸方向熱収縮が継続されること
を特徴とする、請求項7に記載の作動シリンダーを製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作動シリンダーに関し、詳細には、液圧作動シリンダーに関する。さらに、本発明は、このような作動シリンダーを製作するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような作動シリンダーは従来技術から知られている。通常、このような作動シリンダーは、シリンダー・チューブ、シリンダー・チューブに連結されたクロージャ・パート、及びピストン・ユニットを有する。
【0003】
従来技術では、例えばクロージャ・パートをシリンダー・チューブにねじ込むことによりこのような作動シリンダーを製作することが知られている。したがって、このような作動シリンダーはねじタイプのシリンダー(screw-type cylinder)としても知られる。
【0004】
先行技術で知られている別の解決策は、シリンダー・チューブ及びクロージャ・パートを一体に溶接することである。
【0005】
さらに、先行技術から組み合わせの解決策も知られており、ここでは、MAG溶接によりベース・クロージャ・パートがシリンダー・チューブに接続され、ガイド・クロージャ・パートのみがねじ込まれる。
【0006】
シリンダー・チューブ及びクロージャ・パートのねじ部は、通常、機械加工プロセスで作り出される。
【0007】
ねじタイプのシリンダー、及び、1つのクロージャ・パートのみをねじ込んで他のクロージャ・パートをMAG溶接するシリンダーは、先行技術によると、高品質で提供され、優れた高品質の製品となることが分かっている。
【0008】
1つの製作関連の不利益に、シリンダー・チューブが特には、引き算的プロセスでねじ部を機械加工するためには、大きい材料厚さつまり大きいチューブ壁厚を必要とするということがある。その理由は、ねじ部が必然的にシリンダー・チューブを弱くするからである。しかし、これによりチューブ壁厚が、動作中に力(特には、流体の動作圧力によって加えられる力)を吸収するためとしては大幅に過大となる。これにより、不都合なことに、材料消費が増大し、作動シリンダーの最終重量が増大する。ねじタイプの作動シリンダーの別の不利益として、流体の動作圧力からの及びねじ込み中の予応力からの大きい軸方向の力を吸収するのを可能にすることを目的として特別なねじ部の長さを提供しなければならない、ということがある。ねじ部の長さが最小となることにより長さ寸法も増大するが、これは、設置状況によっては、材料消費の増大とは別の不利益を加える得ることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、材料を節約してコスト効率を上げる手法で製作され得る、高い信頼性を有する作動シリンダーを提供することである。さらに、本発明の課題は、このような作動シリンダーを製作するための方法を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題が、請求項1に記載される特徴による作動シリンダーに関連して及び請求項8に記載される特徴によるこのような作動シリンダーを製作するための方法に関連して解決される。好適な実施例が対応する従属請求項から得られる。
【0011】
本発明による作動シリンダーは基本要素としてシリンダー及びピストン・ユニットを有し、少なくとも1つのクロージャ・パートの特別な連結具により特定の手法でシリンダー・チューブに接続される。
【0012】
本発明によると、シリンダーが、シリンダー・チューブ、クロージャ・パート、及び別のクロージャ・パートを有する。
【0013】
慣例により、シリンダー・チューブが、シリンダー・チューブ端部及び別のシリンダー・チューブ端部を有し、したがって2つの対向するシリンダー・チューブ端部を有する。クロージャ・パートがシリンダー・チューブ端部のところに配置構成され、つまり、クロージャ・パートがシリンダー・チューブ端部のところに配置構成され、別のクロージャ・パートが別のシリンダー・チューブ端部にところに配置構成される。シリンダー・チューブ端部及び別のシリンダー・チューブ端部は以降はシリンダー・チューブ端部と総称され、クロージャ・パート及び別のクロージャ・パートは以降はクロージャ・パートと総称される。シリンダー・チューブ及びシリンダー・チューブに付けられるように配置構成されたクロージャ・パートがシリンダー内部を形成する。
【0014】
別の基本要素として、ピストン・ユニットがシリンダー内部に少なくとも1つの作動チャンバを形成する。好適には、ピストン・ユニットはピストン及びピストン棒の組立体として設計され、ここでは、ピストン棒がクロージャ・パートのうちの1つのクロージャ・パートを摺動可能に通過し、それによりガイド・クロージャ・パートを表す。しかし、ピストン・ユニットは、例えば、プランジャ・シリンダーのプランジャ・ピストンの形態でも、又は、連続するピストン棒及びひいては拡張及び後退のための2つの等しい大きい有効表面を有するシリンダーのピストン・ユニットの形態でも存在することができる。
【0015】
特には、本発明による作動シリンダーは、シリンダー・チューブとクロージャ・パートとの間にある特別に設計された連結具によって特徴付けられる。シリンダー・チューブ及びクロージャ・パートは連結パートナーとも総称される。
【0016】
このデザインのために、シリンダーが連結部分を有する。連結部分が、クロージャ・パート及びシリンダー・チューブ端部分によって形成される。
【0017】
シリンダー・チューブ端部分が、ねじ切りされたシリンダー・チューブ部分、中間シリンダー・チューブ部分、及びシリンダー・チューブ端部を有する。
【0018】
クロージャ・パートが雄ねじを有し、ねじ切りされたシリンダー・チューブ部分が雄ねじに対応する雌ねじを有し、ここでは、雄ねじ及び雌ねじが共通のねじ切りされた部分を一体に形成する。雄ねじ及び雌ねじはこの共通のねじ切りされた部分内で互いに係合される。
【0019】
ねじ切りされた部分はフォーム・フィット手法でクロージャ・パート及びシリンダー・チューブを連結するように、したがって、特には、本発明による作動シリンダーが意図される通りに使用されるときに圧力媒体の動作圧力から得られる軸方向の力を吸収するように、設計される。
【0020】
加えて、シリンダー・チューブ端部が、円周方向リング溶接シームによるシリンダー・チューブ側の適合ボディ端部のところでの物体係止手法(一体接合)でクロージャ・パートに接続される。リング溶接シームがレーザー・リング溶接シームとして設計される。リング溶接シームが、圧力媒体に対して密閉性を有する密閉面を形成する。圧力媒体に対して密閉性を有する密閉面が作動チャンバを環境から分離し、圧力媒体が漏洩するのを防止する。
【0021】
本発明による作動シリンダーは、荷重軽減下の動作状態をとるように又は荷重下の動作状態をとるように設計される。
【0022】
荷重軽減下の動作状態は、圧力媒体の動作圧力が加えられないか又は圧力媒体の小さい動作圧力しか加えられない動作状態であるとして理解される。本発明によると、連結部分は、荷重軽減下の動作状態において軸方向引張力が共通のねじ切りされた部分によって吸収されないように、設計される。軸方向引張力は、クロージャ・パートから遠位側の軸方向に方向付けられたつまりシリンダーの中心から離れる方に方向付けられた力であるとして理解される。
【0023】
前提事実として、雄ねじ及び雌ねじは互いに対するわずかな軸方向の移動を呈し、作動シリンダーの事例において、これはブリージング(breathing)としても知られる。このわずかな軸方向の相対移動は以降は軸方向クリアランスと称される。引張力が存在する場合、クロージャ・パートの雄ねじが遠位側クリアランス端部位置にあり、圧縮力つまりシリンダー中心の方向に作用する力が存在する場合は、クロージャ・パートの雄ねじが近位側クリアランス端部位置にある。これらの位置の間に中間クリアランス位置が存在する。荷重軽減下の動作状態においては、見込まれる軸方向引張力はリング溶接シームのみによって吸収される。定義によると、荷重軽減下の動作状態においては、軸方向引張力は共通のねじ切りされた部分によって吸収されず、ここでは、いずれの軸方向の力も共通のねじ切りされた部分によって吸収されず、クロージャ・パートが中間クリアランス位置に位置するか、又は、逆に、軸方向圧縮力が吸収され得る。
【0024】
荷重下の動作状態は、圧力媒体の完全な動作圧力又は大きい動作圧力が加えられる動作状態であるとして理解される。連結部分は、荷重下の動作状態においてリング溶接シーム及び共通のねじ切りされた部分の各々により軸方向引張力を吸収することになるように、設計される。これは、圧力媒体の動作圧力によりクロージャ・パートに作用する大きい軸方向引張力の一部がリング溶接シームによって吸収され、別の一部が共通のねじ切りされた部分によって吸収される、ことを意味する。本発明によると、この力分布は、荷重軽減下の動作状態から荷重下の動作状態への移行中に、軸方向引張力の増大を伴い、ねじ切りされたシリンダー・チューブ部分とシリンダー・チューブ端部との間に位置する中間シリンダー・チューブ部分の弾性ひずみによって達成される。弾性限界の範囲内でのこの長さの変化により、共通のねじ切りされた部分が遠位側クリアランス端部位置まで誘導され、この状態以降は軸方向引張力を吸収する。この状態以降は中間シリンダー・チューブ部分は弾性的に歪まず、物体係止連結具(substance-locking coupling)としてのリング溶接シーム及びフォーム・フィット連結具としての共通のねじ切りされた部分が、一体に、軸方向引張力を吸収することに関与する。
【0025】
本発明によると、荷重軽減下の動作状態及び荷重下の動作状態の境界設定は、共通のねじ切りされた部分が軸方向引張力の一部を吸収し始めるくらいに圧力媒体の動作圧力が大きい状態であると理解される。
【0026】
本発明による解決策は、特には、以下で説明される利点を有する。
【0027】
第1の具体的な利点は、意図される使用中に圧力媒体の動作圧力の結果として共通のねじ切りされた部分によって吸収されることを必要とする軸方向引張力が、本発明による2つの効果により有意に低減される、ことである。
【0028】
第一に、先行技術のねじタイプの作動シリンダーの場合と同様に、シリンダー・チューブ及びクロージャ・パートのリング接触面を押圧することによりねじ接続部を締め付けることによって生じる軸方向予応力が有利には取り除かれる。この軸方向予応力は、動作圧力からの力に加えて、吸収される必要があり、動作圧力からの力を低減する(動作圧力からの力は、先行技術によるねじタイプのシリンダーでは最大限に吸収され得る)。したがって、本発明によると、動作圧力から生じる軸方向引張力のみが共通のねじ切りされた部分によって吸収されることを必要とする。
【0029】
第二に、動作圧力から生じる軸方向引張力は、加えて、リング溶接シームによって吸収される一部分の力によって低減される。
【0030】
これは、別の具体的な利点として、動作圧力が大きいときの軸方向引張荷重の力の吸収が一方でリング溶接シームに割り振られ得て他方で共通のねじ切りされた部分に割り振られ得る、という事実に基づく。
【0031】
この力分布により、共通のねじ切りされた部分は、先行技術によるねじタイプのシリンダーによりも応力を受けない。これには、共通のねじ切りされた部分がより短く設計され得るか又はシリンダー・チューブがより薄い壁を有するように設計され得るという利点がある。これらの選択肢により高価なシリンダー・チューブ材料を節約することができ、ねじ部を機械加工するのに必要となる時間を短縮することができ、さらには、ストロークを同じにして作動シリンダーのサイズを小さくすることができる。
【0032】
この力分布には、従来技術の溶接シリンダーと比較してリング溶接シームの受ける応力が低減されるという追加の効果がある。これにより、有利には、より薄壁のシリンダー・チューブを使用することが可能となり、したがって材料が節約され得、作動シリンダーの重量が低減され得る。
【0033】
ここでは、リング溶接シームにかかる最大の軸方向の力が、中間シリンダー・チューブ部分のジオメトリによって設定され得るということが特に有利である。特には、長さと壁厚の比が、弾性限界を高い信頼性で維持してリング溶接シームにかかる最大の軸方向の力を制限するという有利な手法で、選定され得る。
【0034】
ねじタイプのシリンダーと比較して、ねじ外れ防止(unscrewing protection)の必要性も有利に排除され、これはリング溶接シームの機能的一体化によって引き継がれる。
【0035】
第1の有利な別の発展形態によると、本発明による作動シリンダーは、荷重軽減下の動作状態において、中間シリンダー・チューブ部分が引張予応力を有し、共通のねじ切りされた部分が軸方向圧縮力を吸収する、ということを特徴とする。この別の発展形態によると、共通のねじ切りされた部分は、荷重軽減下の動作状態において、近位側クリアランス端部位置にある。したがって、この別の発展形態は、中間シリンダー・チューブ部分の弾性ひずみの経路が可能な限り長くなるように実現されるという解決策を提供する。こうすることにより、軸方向引張力の大部分がリング溶接シームを介して伝達され得る。
【0036】
別の有利な発展形態では、作動シリンダーは、荷重軽減下の動作状態が荷重下の動作状態へと変わるときに中間シリンダー・チューブ部分が軸方向ひずみをその弾性限界の範囲内にするように設計される、ことを特徴とする。
【0037】
中間シリンダー・チューブ部分は、例えば、ウォール・テーパ(wall taper)を有するようにも設計され得る。
【0038】
さらに、中間シリンダー・チューブ部分は、ねじ切りされたシリンダー・チューブ部分に完全に又は部分的に一体化されるようにも設計され得る。この場合、シリンダー・チューブ部分の雌ねじが、好適には、無応力状態においてはわずかに逓減するピッチであって弾性ひずみ状態においては線形ピッチであるねじピッチを遠位方向において有することができる。この別の発展形態によると、ねじのすべてのターンのフランク面が荷重下の動作状態のみにおいて完全に接触する。これにより、有利には、シリンダー・チューブ端部分の長さを構造的にさらに短縮することが達成される。別法として又は加えて、クロージャ・パートの雄ねじもこのデザインを有することができる。
【0039】
別の有利な発展形態によると、作動シリンダーは、中間シリンダー・チューブ部分がウォール・テーパを有することを特徴とする。
【0040】
ウォール・テーパは、中間シリンダー・チューブ部分の領域におけるシリンダー・チューブの壁厚の縮小を意味するものとして理解される。有利には、中間シリンダー・チューブ部分の壁厚は残りの部分のシリンダー・チューブの壁厚の60%未満、特に好適には40%未満である。好適には、さらに、ウォール・テーパの領域における中間シリンダー・チューブ部分の長さは、ウォール・テーパの領域におけるシリンダー・チューブの壁厚の少なくとも3倍、特に好適なデザインでは少なくとも5倍である。ウォール・テーパは、リング溶接シームにかかる荷重を低減するための驚くほどに単純であるが高い信頼性の解決策を提供する。これは、荷重下の動作状態において中間シリンダー・チューブ部分が軸方向に弾性的に歪んでリング溶接シームに引張力を伝達する、という事実に基づく。より小さい壁厚が選定されると、等しい弾性ひずみ状態において伝達される力が低減される。
【0041】
別の有利な発展形態によると、作動シリンダーは、リング溶接シームがシリンダー・チューブ壁厚に対して1.1から2.5の比を有するリング溶接シーム深さを有する、ことを特徴とする。
【0042】
この別の発展形態では、リング溶接シームは、主長手方向軸と直交する横断面に対する傾斜度を有する。これにより、シリンダー・チューブ壁厚を超えるリング溶接シームの深さが得られ、これは、傾斜度の角度に応じて、シリンダー・チューブ壁厚の1.1倍から2.5倍である。こうすることで、特に有利な手法で、そのシリンダー・チューブ端部におけるシリンダー・チューブに対するクロージャ・パートの物体係止接続の接続面積が大きくなり、強度が向上する。
【0043】
別の有利なさらなる発展形態によると、作動シリンダーは、リング溶接シームが、シリンダー・チューブの主長手方向軸に対して20度から70度のリング溶接シーム傾斜角度アルファを有するリング溶接シーム中心軸を有する、ことを特徴とする。
【0044】
その断面においてV形状であるリング溶接シームの中心軸は横断面に対して傾斜しており、横断面に対して20度から70度のリング溶接シーム傾斜角度アルファを有する。一方で、傾斜度により引張応力及び座屈応力により溶接シームにかかる多軸荷重の成分が有利な分布となることを理由としてこの領域内の傾斜度により強度の追加的な向上が達成されること、及び、他方で、意図される力分布に応じて、溶接中に中間シリンダー・チューブ部分の望ましくない過度な加熱を回避するのに十分に低い単位長さ当たりのエネルギーが達成されることが分かっている。
【0045】
別のさらなる発展形態によると、作動シリンダーが、本発明による連結部分と同様に設計された別の連結部分をその別のシリンダー・チューブ端部分ところに有する。したがって、本発明による連結部分の説明の内容及びその利点の内容はこの別の連結部分にも適用される。
【0046】
別の態様によると、本発明は、本発明による作動シリンダーを製作するための方法に関連する。
【0047】
この方法によって製作される作動シリンダーは上述の特徴を有する。したがって、本発明による作動シリンダーに関連する説明セクションは、その都度補足しながら、本発明による方法にも適用される。
【0048】
発明による方法は以下のプロセス・ステップを含む。
a)シリンダー・チューブのシリンダー・チューブ端部分を用いてシリンダー・チューブをクロージャ・パートの上にねじ込んで、ねじ切りされたシリンダー・チューブ部分の雌ねじとクロージャ・パートの雄ねじと間での係合を成立させ、共通のねじ切りされた部分を作り出す、ステップ、
b)シリンダー・チューブ端部とクロージャ・パートとの間の軸方向リング接触面での圧接を確立するステップ、
c)締め付けトルクを加えて、軸方向圧縮力を発生させて、中間シリンダー・チューブ部分の軸方向圧縮を成立させる、ステップ、
d)軸方向リング接触面においてシリンダー・チューブ端部及びクロージャ・パートのレーザー溶接を実行するステップであって、ここでは、軸方向リング接触面に近い領域においてシリンダー・チューブ端部及びクロージャ・パートが熱軟化して変形し、中間シリンダー・チューブ部分が熱膨張して同時にその軸方向圧縮が緩和される、レーザー溶接を実行するステップ、
e)軸方向リング接触面に近くの領域においてシリンダー・チューブ端部及びクロージャ・パートの固化を伴う冷却を行って、中間シリンダー・チューブ部分のリング溶接シーム及び軸方向熱収縮を成立させる、ステップ。
【0049】
これらのプロセス・ステップを以下でより詳細に説明する。
【0050】
a)シリンダー・チューブのシリンダー・チューブ端部分を用いてシリンダー・チューブをクロージャ・パートの上にねじ込んで、ねじ切りされたシリンダー・チューブ部分の雌ねじとクロージャ・パートの雄ねじとの間での係合を成立させ、共通のねじ切りされた部分を作り出す、ステップ。
【0051】
プロセス・ステップa)では、クロージャ・パートの雄ねじ及びねじ切りされたシリンダー・チューブ部分の雌ねじが互いに係合させられる。次いで、ねじ込みが実施され、その結果、共通のねじ切りされた部分が作り出される。ねじ込みは、シリンダー・チューブ端部分のシリンダー・チューブ端部がクロージャ・パートに接触するまで、継続される。
【0052】
b)シリンダー・チューブ端部とクロージャ・パートとの間の軸方向リング接触面での圧接を確立するステップ。
【0053】
シリンダー・チューブ端部が遠位側に方向付けられた軸方向シリンダー・チューブ・リング表面を有し、クロージャ・パートが近位側に方向付けられた軸方向クロージャ・パート・リング表面を有し、これらは対向しており、プロセス・ステップb)で互いに圧接させられる。このようにして、両方のリング表面が共通のリング接触面を形成する。
【0054】
c)締め付けトルクを加えて、軸方向圧縮力を発生させて、中間シリンダー・チューブ部分の軸方向圧縮を成立させる、ステップ。
【0055】
プロセス・ステップc)では、締め付けトルクが加えられる。これが、同時に、リング接触面にかかる軸方向圧縮力を発生させ、その結果、そこでの表面圧力を大きくすることが達成される。ねじ部が遠位側クリアランス端部位置にある。ねじ接続部を継続して締め付けることにより、中間シリンダー・チューブ部分が軸方向に圧縮され、ここでは、この圧縮が好適には専ら弾性範囲内にある。このプロセス・ステップの後、作動シリンダーが軸方向予応力の状態にある。圧縮の程度が、リング溶接シームと共通のねじ切りされた部分との間の軸方向引張力のその後の分布に影響を与えるのに利用され得る。圧縮が増大すると、完成した作動シリンダー内でリング溶接シームを介して伝達される軸方向引張力の部分が増大する。
【0056】
d)軸方向リング接触面においてシリンダー・チューブ端部及びクロージャ・パートのレーザー溶接を実行するステップであって、ここでは、軸方向リング接触面に近い領域においてシリンダー・チューブ端部及びクロージャ・パートが熱軟化して変形し、中間シリンダー・チューブ部分が熱膨張して同時にその軸方向圧縮が緩和される、レーザー溶接を実行するステップ。
【0057】
プロセス・ステップd)では、溶接レーザーが軸方向リング接触面の領域に適用される。レーザー・ビームによって導入される溶接エネルギーが、軸方向リング接触面に近い領域においてシリンダー・チューブ端部及びクロージャ・パートの材料の加熱及びひいては熱軟化を引き起こす。この軟化が材料を降伏させ、中間シリンダー・チューブ部分の弾性圧縮が緩和される。さらに、シリンダー・チューブ端部に近い領域からの熱伝導により熱が中間シリンダー・チューブ部分に加えられ、これが熱膨張の効果を有する。この熱膨張による長さの変化は、レーザー溶接ゾーン内でのつまり軸方向リング接触面に近い領域内での材料の軟化の妨害を受けず、その結果、無軸方向張力状態が達成され得る。リング溶接シーム及び共通のねじ切りされた部分によって吸収されることになる軸方向引張力のその後の分布は、特には、中間シリンダー・チューブ部分に加えられる熱の程度の影響を受け得る。加熱が強化されると、完成した作動シリンダー内でリング溶接シームを介して伝達される軸方向引張力の部分が増大する。さらに、加えて、中間シリンダー・チューブが、いずれにせよ、レーザー溶接によって発生する入熱によって加熱され得る。プロセス・ステップc)においてリング接触面上の材料を押圧することにより、プロセス・ステップd)における溶接中に有利には特に高い信頼性の物体係止接続も達成され、不都合な空気含有が回避される。これにより高いロバスト性のリング溶接シームが得られる。
【0058】
e)軸方向リング接触面に近い領域においてシリンダー・チューブ端部及びクロージャ・パートの固化を伴う冷却を行って、中間シリンダー・チューブ部分のリング溶接シーム及び軸方向熱収縮を成立させる、ステップ。
【0059】
プロセス・ステップe)では、熱が消散し、その結果、軟化材料が固化し、リング溶接シームが軸方向リング接触面の領域においてレーザー溶接シームとして形成され、それによりクロージャ・パートとシリンダー・チューブとの間での物体係止接続を形成する。リング溶接シームが形成された後の継続的な冷却中でも、シリンダー・チューブ端部分及び特にはその中間シリンダー・チューブ部分が収縮する。この熱収縮の軸方向部分により、共通のねじ切りされた部分が遠位側クリアランス端部位置の状態からクリアランス中間位置状態になるか、又は、熱収縮の長さによっては、近位側クリアランス端部位置状態になる。このようにして、共通のねじ切りされた部分が高い信頼性で軸方向引張予応力を有さないようになる。
【0060】
有利な別の発展形態によると、本プロセスは、プロセス・ステップe)がプロセス・ステップe1)として実行されること、及び、プロセス・ステップe1)において、中間シリンダー・チューブ部分内で軸方向引張予応力が発生するまで軸方向熱収縮が継続されることを特徴とする。
【0061】
この別の発展形態によると、共通のねじ切りされた部分が近位側クリアランス端部位置にある。この具体的な別の発展形態は、動作圧力の結果として軸方向の力が加えられるときに最初は引張力がリング溶接シームによって完全に吸収され、共通のねじ切りされた部分が引張力から解放された状態を維持する、という利点を有する。軸方向引張力の増大を伴って中間シリンダー・チューブ部分の弾性ひずみが維持されると、共通のねじ切りされた部分が最初にクリアランス端部位置に到達し、然る後に遠位側クリアランス端部位置に到達する。力がさらに増大する場合にのみ、共通のねじ切りされた部分を介する力の伝達が開始されることになる。この時点で、力の伝達がリング溶接シームと共通のねじ切りされた部分との間で分けられ始める。リング溶接シームを介する力の伝達はこの時点から有意に増大しないのに対して、軸方向引張力のさらなる増大は共通のねじ切りされた部分を介して伝達される。
【0062】
以下の図により本発明を例示の実施例としてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】プロセス・ステップa)からc)の後の作動シリンダーの連結部分を示す概略断面図である。
【
図2】プロセス・ステップd)の後の作動シリンダーの連結部分を示す概略断面図である。
【
図3】プロセス・ステップe)の後の作動シリンダーの連結部分を示す概略断面図である。
【
図4】荷重軽減下の動作状態から荷重下の動作状態へ移行する作動シリンダーの連結部分を示す概略断面図である。
【
図5】荷重下の動作状態にある作動シリンダーの連結部分を示す概略断面図である。
【
図6】荷重下の動作状態にある作動シリンダーの別の連結部分を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
種々の図の同じ参照符号は同じ特徴又は構成要素を示す。参照符号は関連図に含まれない場合でも本記述で使用される。
【0065】
これらの図は、作動シリンダーの例示の実施例、及び、種々のプロセス・ステップにおける本方法の例示の実施例を示す。
【0066】
図1は、プロセス・ステップa)からc)が実行されたときの状態におけるシリンダー・チューブ端部分5a及びクロージャ・パート4aの領域内の作動シリンダーを示す。シリンダー・チューブ3のシリンダー・チューブ端部分5aは、遠位側へと、順番に、ねじ切りされたシリンダー・チューブ部分5.1a、中間シリンダー・チューブ部分5.2a、及びシリンダー・チューブ端部5.3aへと分けられる。ねじ切りされたシリンダー・チューブ部分5.1aの雌ねじ9a及びクロージャ・パート4aの雄ねじ8aがプロセス・ステップa)で係合させられ、この時点でこれらが共通のねじ切りされた部分を形成する。さらに、プロセス・ステップb)で、シリンダー・チューブ端部5.3aとクロージャ・パート4aとの間の圧接が、継続的なねじ込みにより、軸方向リング接触面11aのところで確立される。プロセス・ステップc)で、二重の矢印によって示されるように、締め付けトルクを加えることにより軸方向圧縮力が発生する。共通のねじ切りされた部分が遠位側クリアランス端部位置状態にされ、中間シリンダー・チューブ部分5.2aがねじ切りされたシリンダー・チューブ・部分5.1aと軸方向リング接触面11aとの間で引張力を加えられ、それにより中間シリンダー・チューブ部分5.2aの軸方向圧縮をその弾性変形として成立させる。雌ねじ9a及び雄ねじ8aのペアのジオメトリは、クリアランス位置をより良く可視化するためにすべての図で大幅に誇張されて概略的に示される。本発明の例示の実施例では、クロージャ・パート4aは、シリンダー・チューブ3と共にシリンダー内部6の作動チャンバ6.1(この事例では、ピストン・チャンバ)を形成するベース・クロージャ・パートとして設計される。
【0067】
図2は、プロセス・ステップd)が実行されたときの、且つプロセス・ステップe)の開始時の、作動シリンダーを示す。軸方向リング接触面11aの領域におけるレーザーに対する露出が、クロージャ・パート4a及びシリンダー・チューブ端部5.3aのところのシリンダー・チューブ3の材料を軟化させ、ここではシリンダー・チューブ端部5.3aが圧縮応力の結果として変形しており、軸方向の弾性再変形下で中間シリンダー・チューブ部分5.2aの軸方向の伸長を可能にしている。ここでは、以前の軸方向リング接触面11aの領域でリング溶接シーム10aが作り出される。中間シリンダー・チューブ部分5.2aはここでは無応力であり、共通のねじ切りされた部分はその初期の軸方向熱収縮のためにクリアランス中間位置にある。
【0068】
図3は、すべてのプロセス・ステップa)からe)が完了した後の中間シリンダー・チューブ部分5.2aの引張予応力が変化した作動シリンダーを示す。プロセス・ステップe)での継続的な冷却の後の中間シリンダー・チューブ部分5.2aの継続的な軸方向熱収縮の後で、共通のねじ切りされた部分が近位側クリアランス端部位置にある。リング溶接シーム10aに作用する引張力がリング溶接シーム10aの上の矢印によって示される。ねじフランク面のところの3つの反対の短い矢印が、共通のねじ切りされた部分を介する軸方向圧縮力の伝達を表す。
【0069】
したがって、荷重軽減下の動作状態において、小さい軸方向の力がリング溶接シーム10aのみを介して伝達される。
【0070】
【0071】
図4及び
図5の説明図は、本発明の例示の実施例の作動シリンダーが、通常通りに、ピストン棒及びベース・クロージャ・パート(図示せず)の両方の上に固定モジュールを装備するという事実に基づく。固定モジュールは、作動シリンダーから付与デバイス(application device)の構成要素まで力を伝達するための構成要素であると理解される。一般的なデザインでは、固定モジュールは、しばしば目と称される穿孔を有し、この穿孔の中にボルトなどの係止要素が挿入され得る。係止要素がピストン棒側の固定モジュールを付与デバイスの構成要素にフォーム・フィット手法で接続し、動作中の力の伝達を保証する。特には、このような固定モジュールは球面軸受として設計され得る。
図4及び
図5は、圧力媒体がピストン棒チャンバ内では加圧されてピストン・チャンバ内では緩和される事例を示す。したがって、後退移動を実施するためには作動シリンダーが固定モジュールの間に引張力を発生させる。別のクロージャ・パート4b(この事例では、ガイド・クロージャ・パート)の内側リング表面に作用する圧力が遠位側の軸方向の力を生じさせ、この遠位側の軸方向の力がシリンダー・チューブ3に伝達され、シリンダー・チューブ3から連結部分7aに伝達される。ここでは、クロージャ・パート4aの固定モジュールにより付与デバイスに伝達された引張力は、反対の引張力としてクロージャ・パート4aに加えられる。
【0072】
図4は、荷重軽減下の動作状態から荷重下の動作状態への移行状態にある作動シリンダーを示す。シリンダー・チューブ3を介して伝達される引張力はシリンダー・チューブ3の上にある矢印によって示され、固定モジュールを介してクロージャ・パート4aに作用する引張力は、反対方向を指す矢印によって示される。中間シリンダー・チューブ部分5.2aが弾性変形とし軸方向に歪む。しかし、圧力媒体の圧力は、中間シリンダー・チューブ部分5.2aの最大限の軸方向の伸長に達するくらいの及び共通のねじ切りされた部分をクリアランス中間位置にするくらいの大きさではない。圧力媒体の圧力からの力は依然としてリング溶接シーム10aのみによって吸収される。
【0073】
図5は、荷重下の動作状態にある作動シリンダーを示す。二重の矢印によって示される大きい軸方向の力により、中間シリンダー・チューブ部分が、共通のねじ切りされた部分を遠位側クリアランス端部位置にする程度まで、ピストン棒チャンバ内の圧力媒体の大きい動作圧力又は完全な動作圧力で弾性的に伸長させられる。ここでは、雄ねじ8aと雌ねじ9aとの間で追加の力が伝達される。ねじフランク面の上の3つの短い矢印が、共通のねじ切りされた部分を介する軸方向引張力の伝達を示す。共通のねじ切りされた部分を介する力の伝達により、中間シリンダー・チューブ部分5.2aはそれ以上伸びることができず、それによりリング溶接シーム10aに過度の荷重が加えられるのを防止する。ここでは、伝達された総引張力が、リング溶接シームを介して伝達される力と、共通のねじ切りされた部分を介して伝達される力とに分けられる。
【0074】
図6は、別の連結部分7bを有する作動シリンダーの例示の実施例を示し、ここでは荷重下の動作状態も示される。
【0075】
図6に示される実例では、別のクロージャ・パート4bがガイド・クロージャ・パートであり、ピストン・ユニット2のピストン棒がこのガイド・クロージャ・パートを通過する。したがって、別の作動チャンバ6.2はピストン棒チャンバである。別のシリンダー・チューブ端部分5bはシリンダー端部分5aと同様に設計され、別のねじ切りされたシリンダー・チューブ部分5.1bと、別の中間シリンダー・チューブ部分5.2bと、別のシリンダー・チューブ端部5.3bと、を有する。別の雄ねじ8b及び別の雌ねじ9bが係合され、別の共通のねじ切りされた部分を形成する。同時に、シリンダー・チューブ3及び別のクロージャ・パート4bが別の円周方向リング溶接シーム10bを介してフォーム・フィット手法で接続される。別の作動チャンバ6.2内の圧力媒体が、荷重下の動作状態における別のクロージャ・パート4bの内側リング表面に作用する大きい動作圧力により、別のクロージャ・パート4bにかかる軸方向遠位側の力をもたらす(2つの平行な矢印によって示される)。第一に、この力が別のリング溶接シーム10bを介してシリンダー・チューブ3に伝達される(別の中間シリンダー・チューブ部分5.2b内の長い矢印によって示される)。これが別の中間シリンダー・チューブ部分5.2bの領域内に引張力を発生させ、その結果、この部分が弾性的に歪む。第二に、別の雌ねじ9bと別の雄ねじ8bとの間で得られた軸方向変位により、別の共通のねじ切りされた部分を介してシリンダー・チューブ3にも力が伝達される(ねじフランク面のところの3つの短い矢印によって示される)。したがって、さらに、
図1から
図5に示される連結部分7aの構造及び機能の説明も、
図6に示される別の連結部分7bに適用される。
【符号の説明】
【0076】
1 シリンダー
2 ピストン・ユニット
3 シリンダー・チューブ
4a クロージャ・パート
4b 別のクロージャ・パート
5a シリンダー・チューブ端部分
5.1a ねじ切りされたシリンダー・チューブ部分
5.2a 中間シリンダー・チューブ部分
5.3a シリンダー・チューブ端部
5b 別のシリンダー・チューブ端部分
5.1b 別のねじ切りされたシリンダー・チューブ部分
5.2b 別の中間シリンダー・チューブ部分
5.3b 別のシリンダー・チューブ端部
6 シリンダー内部
6.1 作動チャンバ
6.2 別の作動チャンバ
7a 連結部分
7b 別の連結部分
8a 雄ねじ
8b 別の雄ねじ
9a 雌ねじ
9b 別の雌ねじ
10a リング溶接シーム
10b 別のリング溶接シーム
11a 軸方向リング接触面
12 リング溶接シームの中心軸
【国際調査報告】