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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】捕捉リガンドとしての改変TNF
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20240705BHJP
   A61M 1/38 20060101ALI20240705BHJP
   C07K 14/525 20060101ALN20240705BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
A61M1/36 165
A61M1/38
C07K14/525 ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577682
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 US2022034099
(87)【国際公開番号】W WO2022266507
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/211,709
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521486239
【氏名又は名称】イミューニコム, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IMMUNICOM, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】マト, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフス, スティーブン エフ.
(72)【発明者】
【氏名】マーロー, アネット
【テーマコード(参考)】
4C077
4H045
【Fターム(参考)】
4C077AA30
4C077BB03
4C077EE01
4C077KK13
4C077MM04
4C077NN18
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA14
4H045EA24
(57)【要約】
体液からsTNF-R2を除去するためのカラムが開示されている。カラムは、コンパートメントと、コンパートメントに結合され、体液を受け入れるように構成された入口と、コンパートメント内に配置された基材とを有する。捕捉リガンドは基材と結合し、天然のTNF配列の一部を含む参照配列におけるアミノ酸置換での改変配列を有する。改変配列は、sTNF-R2に対する参照配列の親和性よりも大きいsTNF-R2に対する親和性を有する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液から可溶型腫瘍壊死因子受容体2(sTNF-R2)を除去するためのカラムであって、
コンパートメントと、
前記コンパートメントに結合され、前記体液を受けるように構成された入口と、
前記コンパートメント内に配置された基材と、
前記基材に結合し、天然の腫瘍壊死因子(TNF)配列の一部を含む参照配列におけるアミノ酸置換を含む改変配列を含む捕捉リガンドとを含み、
前記改変配列が、sTNF-R2に対する参照配列の親和性よりも大きいsTNF-R2に対する親和性を有する、カラム。
【請求項2】
前記改変配列が、配列1(配列番号1)の部位105、221、222、及び223からなる群から選択される部位で置換されたアミノ酸を含む、請求項1に記載のカラム。
【請求項3】
置換される前記アミノ酸が、アスパラギン酸(D)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、及びバリン(V)からなる群から選択される、請求項2に記載のカラム。
【請求項4】
前記改変配列が、前記参照配列の部位221、222、及び223のうちの1つ又は複数におけるDの置換を含む、請求項3に記載のカラム。
【請求項5】
前記改変配列が、部位221、222、及び223のうちの2つ以上におけるDの置換を含む、請求項4に記載のカラム。
【請求項6】
前記改変配列が、部位221、222、及び223の全てにおいてDの置換を含む、請求項5に記載のカラム。
【請求項7】
前記改変配列が、配列3(配列番号3)を含む、請求項6に記載のカラム。
【請求項8】
前記捕捉リガンドが、少なくとも2つの改変配列を含む、請求項1に記載のカラム。
【請求項9】
前記捕捉リガンドが、前記改変配列の三量体を含む、請求項8に記載のカラム。
【請求項10】
前記捕捉リガンドが、配列11(配列番号5)を含む、請求項9に記載のカラム。
【請求項11】
前記捕捉リガンドが、前記少なくとも2つの改変配列間のリンカーを含む、請求項8に記載のカラム。
【請求項12】
前記捕捉リガンドが、リンカーを含まない、請求項8に記載のカラム。
【請求項13】
前記捕捉リガンドが、前記参照配列を更に含む、請求項1に記載のカラム。
【請求項14】
前記捕捉リガンドが、前記改変配列の第1の三量体及び前記参照配列の第2の三量体を含み、前記第1及び第2の三量体の各々が、基材に別々に結合している、請求項13に記載のカラム。
【請求項15】
前記捕捉リガンドが、前記改変配列の少なくとも1つ及び前記参照配列の少なくとも1つを含む三量体を含む、請求項13に記載のカラム。
【請求項16】
前記改変配列が、前記参照配列と95%以上の同一性を有する、請求項1に記載のカラム。
【請求項17】
前記改変配列が、前記参照配列と98%以上の同一性を有する、請求項16に記載のカラム。
【請求項18】
前記改変配列が、前記参照配列と99.9%以下の同一性を有する、請求項16に記載のカラム。
【請求項19】
前記カラムが、毎分2カラム容量の流量で60分間連続操作した後、80%を超えるsTNF-R2の捕捉効率を有する、請求項13に記載のカラム。
【請求項20】
前記カラムが、毎分2カラム容量の流量で60分間連続操作した後、90%を超えるsTNF-R2の捕捉効率を有する、請求項19に記載のカラム。
【請求項21】
前記改変配列が、前記参照配列のKよりも少なくとも10%低いKを有する、請求項1に記載のカラム。
【請求項22】
前記改変配列が、前記参照配列のKよりも少なくとも30%低いKを有する、請求項21に記載のカラム。
【請求項23】
体液から可溶型TNF受容体2(sTNF-R2)を除去するための方法であって、
前記体液を、天然の腫瘍壊死因子(TNF)配列の一部を含む参照配列におけるアミノ酸置換を含む改変配列を含む捕捉リガンドと結合した基材を含むコンパートメントに通すステップを含み、
前記改変配列が、sTNF-R2に対する参照配列の親和性よりも大きいsTNF-R2に対する親和性を有する、方法。
【請求項24】
前記改変配列が、配列1(配列番号1)の部位105、221、222、及び223からなる群から選択される部位で置換されたアミノ酸を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
置換される前記アミノ酸が、アスパラギン酸(D)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、及びバリン(V)からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記改変配列が、前記参照配列の部位221、222、及び223のうちの1つ又は複数におけるDの置換を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記改変配列が、部位221、222、及び223のうちの2つ以上におけるDの置換を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記改変配列が、部位221、222、及び223の全てにおいてDの置換を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記改変配列が、配列3(配列番号3)を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記捕捉リガンドが、少なくとも2つの改変配列を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記捕捉リガンドが、前記改変配列の三量体を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記捕捉リガンドが、配列11(配列番号5)を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記捕捉リガンドが、前記少なくとも2つの改変配列間のリンカーを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記捕捉リガンドが、リンカーを含まない、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記捕捉リガンドが、前記参照配列を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
前記捕捉リガンドが、前記改変配列の第1の三量体及び参照配列の第2の三量体を含み、前記第1及び第2の三量体の各々が、基材に別々に結合している、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記捕捉リガンドが、前記改変配列の少なくとも1つ及び前記参照配列の少なくとも1つを含む三量体を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記改変配列が、前記参照配列と95%以上の同一性を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項39】
前記改変配列が、前記参照配列と98%以上の同一性を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記改変配列が、前記参照配列と99.9%以下の同一性を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記カラムが、毎分2カラム容量の流量で60分間連続操作した後、80%を超えるsTNF-R2の捕捉効率を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記カラムが、毎分2カラム容量の流量で60分間連続操作した後、90%を超えるsTNF-R2の捕捉効率を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記改変配列が、前記参照配列のKよりも少なくとも10%低いKを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項44】
前記改変配列が、前記参照配列のKよりも少なくとも30%低いKを有する、請求項43に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、2021年6月17日に出願された米国仮出願第63/211,709号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[配列表]
[0002]本出願は配列表と共に提出される。配列表は、EFS-Webを通じてASCII形式のテキストファイルで電子的に提出される。2022年6月17日に作成された当該ASCIIコピーは、「022947-0569654_Sequence_listing_ST25.txt」と名付けられ、サイズは9.54KBであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
[背景]
[0003]アフェレーシスとは、患者の血液を、1つ又は複数の特定の成分を分離し、残りを循環系に戻す装置に通す医療技術である。したがって、体外療法である。この技術は、献血センターで血小板を採取するために一般的に使用されている。
【0004】
[0004]身体の炎症及び細胞アポトーシスの制御は複雑なプロセスであり、多数の制御タンパク質によって管理されている。腫瘍壊死因子アルファ(TNF)は強力なサイトカインであり、抗腫瘍薬として特徴付けられている。TNFの結晶学的研究は、このサイトカインがインビボでホモ三量体を形成し、TNF受容体との相互作用を促進することを示している。TNF受容体1及び2(TNF-R1及びTNF-R2)は、細胞上の膜アンカー型受容体として存在し、ここを介して、TNFの結合により細胞内へのシグナル伝達が起こる。膜貫通型のTNF受容体もまた細胞表面から切断され、TNFに結合し、このサイトカインを捕捉することによってTNFの活性を調節する可溶型のTNF受容体(sTNF-R1及びsTNF-R2)を生成する。
【0005】
[概要]
[0005]癌などの疾患においてTNFの活性を増強するために、体外療法アプローチを使用してsTNF-R1及びsTNF-R2の一方又は両方を効果的かつ同時に除去する治療アプローチが必要とされている。本開示は、血液成分からsTNF-R1及びsTNF-R2の一方又は両方を除去するためのシステム及び方法を記載する。
【0006】
[0006]体液からsTNF-R2を除去するためのカラムが開示されている。カラムは、コンパートメントと、コンパートメントに結合され、体液を受け入れるように構成された入口と、コンパートメント内に配置された基材とを有する。捕捉リガンドは基材と結合し、天然のTNF配列の一部を含む参照配列におけるアミノ酸置換での改変配列を有する。改変配列は、sTNF-R2に対する参照配列の親和性よりも大きいsTNF-R2に対する親和性を有する。
【0007】
[0007]特定の実施形態では、改変配列は、配列1(配列番号1)の部位105、221、222、及び223からなる群から選択される部位で置換されたアミノ酸を含む。特定の実施形態では、置換されるアミノ酸は、アスパラギン酸(D)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、及びバリン(V)からなる群から選択される。特定の実施形態では、改変配列は、参照配列の部位221、222、及び223のうちの1つ又は複数におけるDの置換を含む。特定の実施形態では、改変配列は、部位221、222、及び223のうちの2つ以上におけるDの置換を含む。特定の実施形態では、改変配列は、部位221、222、及び223の全てにおいてDの置換を含む。特定の実施形態では、改変配列は、配列3(配列番号3)を含む。
【0008】
[0008]特定の実施形態では、捕捉リガンドは少なくとも2つの改変配列を含む。特定の実施形態では、捕捉リガンドは改変配列の三量体を含む。特定の実施形態では、捕捉リガンドは、配列11(配列番号5)を含む。
【0009】
[0009]特定の実施形態では、捕捉リガンドは少なくとも2つの改変配列間のリンカーを含む。特定の実施形態では、捕捉リガンドはリンカーを含まない。
【0010】
[0010]特定の実施形態では、捕捉リガンドは参照配列を更に含む。特定の実施形態では、捕捉リガンドは、改変配列の第1の三量体及び参照配列の第2の三量体を含み、第1及び第2の三量体の各々は、基材に別々に結合している。特定の実施形態では、捕捉リガンドは、改変配列の少なくとも1つ及び参照配列の少なくとも1つを含む三量体を含む。
【0011】
[0011]特定の実施形態では、改変配列は、参照配列と95%以上、98%以上の同一性を有する。特定の実施形態では、改変配列は、参照配列と99.9%以下の同一性を有する。
【0012】
[0012]特定の実施形態では、カラムは、毎分2カラム容量の流量で60分間連続操作した後、80%を超える又は90%を超えるsTNF-R2の捕捉効率を有する。
【0013】
[0013]特定の実施形態では、改変配列は、参照配列のKよりも少なくとも30%低い、又は少なくとも100%低いKを有する。
【0014】
[0014]体液からsTNF-R2を除去するための方法が開示されている。本方法は、体液を、天然のTNF配列の一部を含む参照配列におけるアミノ酸置換を含む改変配列を含む捕捉リガンドと結合した基材を含有するコンパートメントに通すステップを含む。改変配列は、sTNF-R2に対する参照配列の親和性よりも大きいsTNF-R2に対する親和性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の特定の態様による、実験カラムを通過した試験溶液から除去されたsTNF-R2の捕捉効率のプロットである。
図2】本開示の特定の態様による、実験カラムを通過した試験溶液から除去されたsTNF-R1の捕捉効率のプロットである。
図3】本開示の特定の態様による、捕捉リガンドの密度を変えた場合の捕捉効率試験測定値のプロットである。
図4】本開示の特定の態様による、例示的なアフェレーシス用カラムを示す。
図5】本開示の特定の態様による、図4のアフェレーシス用カラムの例示的な部分の拡大図である。
図6】ネイティブTNF及び改変(バリアント)TNF三量体と、任意のリンカーとの組み合わせの非限定的な例示的実施形態を示す。
【0016】
[詳細な説明]
[0021]以下の説明は、血液又は血液成分から可溶型TNF受容体を除去するためのリガンド、アフェレーシスカラム、及び体外療法の方法の実施形態を開示する。特定の実施形態では、カラムはアフェレーシス装置と組み合わせて使用される。
【0017】
[0022]典型的な装置は、患者から全血を採取し、血液を血液成分、例えば赤血球、血小板、白血球、血漿に分離する。血液成分の1つ、例えば血漿をカラムに通し、標的物質を除去する。次いで、処理した血液成分及び残りの血液成分を合わせて、患者の血流に再導入する。市販されているアフェレーシス装置の例としては、Terumo BCT Spectra Optia System、並びにFresenius、Haemonetics、Baxter、Nigale、及びAsahi製の装置が挙げられる。
【0018】
[0023]本開示の文脈において、アフェレーシス装置は、患者からの血液の静脈内除去、次いで当該患者の血液の血漿画分及び細胞画分への分離(例えば、遠心力、膜フィルタ、及び/又は他の構成要素を使用する)を促進し得る。血漿画分又は他の体液は、血漿が血漿の成分を選択的に捕捉する捕捉支持体(本明細書に記載されるような捕捉リガンドを有する基材を含む)を通過する、本明細書に開示されるようなシステムを通してポンプで送られることによって処理される。次いで、血漿を患者の分離された細胞と再び組み合わせ、患者の循環系に再び導入する。
【0019】
[0024]開示されたシステムの使用は、免疫系の活性化が望まれる治療分野での適用に望ましい。例えば、TNFという分子によるシグナル伝達を誘発することで、炎症を誘発したり、細胞のアポトーシスを引き起こしたり、細胞増殖を引き起こしたり、又は他の生物学的経路を変化させたりすることができる。一般に、開示されたシステム及び方法は、癌、特に充実性腫瘍又は血液悪性腫瘍の処置、並びに感染症、代謝性疾患、過増殖性疾患、自己免疫疾患、変性疾患、及び免疫系の調節障害に関連する他の疾患の処置に有用である。
【0020】
[0025]可溶型受容体であるsTNF-R1及びsTNF-R2は、免疫細胞の異なるサブセットによって産生され、受容体の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインから細胞外ドメインを分離するタンパク質分解処理によって細胞表面から切断される。健康なヒト患者では、血漿中のsTNF-R2濃度は一般にsTNF-R1濃度より高い。特定の状況では、処置として、様々な量のsTNF-R1及びsTNF-R2を除去することが望ましい。
【0021】
[0026]以下に記載する詳細な説明は、主題技術の様々な構成の説明を意図したものであり、主題技術が実施され得る唯一の構成を表すことを意図したものではない。添付図面は本明細書に組み込まれ、詳細な説明の一部を構成する。詳細な説明には、主題技術の完全な理解を提供することを目的とした具体的な詳細が含まれる。当業者には、特定の詳細がなくても主題技術を実施することができることは明らかであろう。場合によっては、主題技術の概念が不明瞭になるのを避けるため、よく知られた構造及び構成要素をブロック図の形で示す。同様の、或いは実質的に類似した構成要素には、理解を容易にするために同一の要素番号を付している。
【0022】
[0027]本開示で使用する場合、「患者」という用語は、循環系を有するあらゆる生物を意味する。患者はヒトであってもよい。患者はまた、イヌ若しくはネコなどの動物、又は他の哺乳類であってもよい。
【0023】
[0028]本開示で使用する場合、「体液」及び「血液成分」という語句は、例えば遠心分離によって血液が分離され得る体液の1つを意味するために互換的に使用される。例えば、血液は、主に赤血球である第1の血液成分と、主に血小板及び白血球である第2の血液成分と、主に血漿である体液とに分離することができる。
【0024】
[0029]本開示で使用する場合、「カラム」という用語と「アフェレーシスカラム」という語句は互換的に使用され、患者からの体液が通過する装置を意味する。カラムは、体液と相互作用する捕捉リガンドが固定化された基材を含む捕捉支持体を含む内部コンパートメントを有する。カラムは、サイズ及び形状が様々で、1つ又は複数の基材又はリガンドから構成されてもよい。
【0025】
[0030]本開示で使用する場合、「基材」及び「支持体」という用語は、基材に近接する材料と必ずしも相互作用しない一方で構造を提供する物体を意味するために互換的に使用される。基材又は基材の表面は、多糖類などの1つ又は複数の有機材料を含むことができ、また金属、プラスチック、セラミック、又は水などの1つ又は複数の無機材料を含むことができる。基材は、物質、処理、及び/又は環境にさらされることによって、例えば酸化物などの異なる形態に変換された部分を含むことができる。基材は、例えばコーティング又はメッキなど、1つ又は複数の層を含むことができる。
【0026】
[0031]本開示で使用する場合、「ビーズ」という用語は、他の幾何学的形状又は構造を排除することなく、基材の例示的な構造実施形態を説明するために使用される。ビーズは、固体球などの固体形状であってもよいか、又は中空要素若しくはオープンセルフォームなどの構造を有していてもよい。ビーズは、例えば球又は棒などの単純な幾何学的形状を含むことができ、又はより複雑な形状を含むことができる。ビーズは、ボール、プレート、又は膜を含むことができる。内部構造を有する実施形態、例えば単一のインスタンスが容積を満たすオープンセルフォームでは、直径はフォームを貫通する経路の平均幅とすることができる。複雑な構造を有する実施形態、例えば多アームスターでは、直径は、構造のインスタンスを互いに重ねたときの平均的な中心間距離とすることができる。
【0027】
[0032]特定の実施形態では、ビーズは、約1~600μmの範囲の平均(mean)直径、平均(average)直径、又は絶対直径を有する近似球を含む。特定の実施形態では、ビーズは、約45~165μm又は約60~200μmの範囲の平均(mean)直径、平均(average)直径、又は絶対直径を有する。ビーズは多孔性であってもよいし、又は非多孔性であってもよい。いくつかの実施形態では、ビーズは多孔性であり、約10nm~100nmの範囲の平均(mean)直径、平均(average)直径、又は絶対直径を有する細孔を含む。特定の実施形態では、ビーズは、セルロース(例えば、アガロース)、キシラン、デキストラン、プルラン、デンプンなど、又はそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、ビーズはセファロース(Sepharose)(商標)粒子である。特定の実施形態では、リガンドを付着させる前の基材の表面は、反応性炭素を含む。特定の実施形態では、基材表面は、多糖、架橋多糖、酸化多糖、中性若しくは荷電多糖、反応性炭素、又はアルデヒド部分を含む。
【0028】
[0033]特定の実施形態では、基材表面は、リガンド分子と相互作用して安定な化学結合を形成することができる化学的に活性な連結基を含むように改変されている。この例としては、当該基材表面をメタ過ヨウ素酸ナトリウムにさらすことによる表面活性化があり、その結果、アミンを含むリガンドとの還元的アミノ化過程に関与することができるホルミル基が形成される。
【0029】
[0034]本開示で使用する場合、「標的」という用語及び「標的成分」という語句は、例えばリガンドの標的への結合によって、捕捉リガンドが相互作用することが意図される化学物質、化合物、及び/又は有機構造を意味する。特に、標的成分は、体液から除去することが望まれる有機構造、例えばタンパク質である。
【0030】
[0035]本開示で使用する場合、「リガンド」という用語は、標的成分に対する結合親和性を有する1つ又は複数の要素を含む物質を意味する。いくつかの実施形態では、リガンドは、標的成分の特定の部位にのみ実質的に結合する結合部位を含む。
【0031】
[0036]本開示で使用する場合、「モノマー」という用語は、オリゴマータンパク質内に存在する最小のタンパク質単位又はポリペプチド単位として理解される。モノマーへの言及は、開示されたアミノ酸配列全体及び/又は標的に対する活性結合部位を含む配列の一部からなる組成物を含む。
【0032】
[0037]本開示で使用する場合、「断片」又は「機能的断片」は、モノマーの断片及び/又はポリペプチド若しくはタンパク質の断片の両方を指すと理解されたい。これらはモノマー、タンパク質、又はポリペプチドのアミノ酸配列を短縮したものであってもよい。
【0033】
[0038]本開示で使用する場合、「改変体」及び「バリアント」という用語は、天然の生理学的配列に対してアミノ酸配列の相違を含むタンパク質、ペプチド、モノマー、ポリペプチド、又はこれらの実体の1つの断片を互換的に指し、本明細書では「天然」及び「ネイティブ」とも互換的に呼ばれる。配列の相違は、1つ又は複数の挿入、欠失又は置換を含むことができる。
【0034】
[0039]本開示で使用する場合、「三量体」という用語は、相互作用、例えば、疎水性相互作用、水素結合、共有結合、及び/又はモノマーの会合をもたらす構造モチーフの包含によって互いに会合する3つのタンパク質単位、ポリペプチド又はモノマーを指す。本開示では、連結したTNFモノマーを含む一本鎖を「ポリペプチド」と呼ぶことができる。
【0035】
[0040]本開示で使用する場合、「TNF」、「TNFa」、「TNFα」、「TNF-α」、「TNF分子」という用語及びそれらの変形例は、互換的に使用され、天然TNF又は改変TNFのTNF配列全体及び部分TNF配列を含む腫瘍壊死因子分子を意味し、特に明示しない限り、天然TNF及び改変TNFの一方又は両方の1つ又は複数の全体又は部分配列を含むポリペプチドを含む。
【0036】
[0041]本開示で使用する場合、「一本鎖TNF」、「scTNF」という語句及びその変形例は、ネイティブTNF配列又はバリアントTNF配列であってもよい、安定に共有結合している少なくとも2つのTNF分子を含むTNFポリペプチドを指す。
【0037】
[0042]本開示で使用する場合、「ホモ三量体」という用語は、同一のアミノ酸配列を有する3つのモノマーを含むタンパク質又は分子を指す。
【0038】
[0043]本開示で使用する場合、「ヘテロ三量体」という用語は、3単位のモノマーを含むタンパク質又は分子を指し、ここで、3つのモノマーの少なくとも1つは、他のモノマーの配列とアミノ酸配列において相違を示す。
【0039】
[0044]本開示で使用する場合、「機能的等価物」という語句は、開示された分子と構造的に改変又は変化しているにもかかわらず、開示された分子と同等の記載された機能性を提供する分子を指す。特定の実施形態では、「機能的等価物」とは、標的成分への分子の付着に影響を与えない分子への改変を指す。
【0040】
[0045]本開示で使用する場合、「リンカー」又は「連結要素」という語句は、2つの異なる構造間(例えば、リガンドと基材(例えば、表面又はビーズ)間、又はリガンド内の2つ以上のモノマー間)を結合する化合物又は構造を意味する。リンカーは化学結合、アミノ酸、又は直鎖状炭素鎖であってもよい。好ましい実施形態では、リンカーはペプチドを含む。特定の実施形態では、ペプチドリンカーは2~30個のアミノ酸、好ましくは4~20個のアミノ酸からなる。特定の実施形態では、開示されたペプチドリンカーは、グリシンに富む(すなわち、ペプチドリンカーは、グリシンを含むアミノ酸の割合が高く、好ましくはアミノ酸の少なくとも50%がグリシンであり、より好ましくはアミノ酸の少なくとも80%がグリシンである)。特定の実施形態では、ペプチドリンカーはグリシン及びセリン構造を含む。特定の実施形態では、リンカーはポリペプチド鎖のモノマーを安定化するために使用される。特定の実施形態では、三量体ポリペプチドの形成は、1つ又は複数のペプチドリンカーによって増強される。
【0041】
[0046]本開示で使用する場合、「特異的に結合する(specifically binds)」及び「特異的に結合する(binds specifically)」という語句は、例えば、適切なインビトロアッセイ(例えば、Elisa、イムノブロット、及びフローサイトメトリー)によって決定されるように、他の分子又は他のペプチドに結合するよりも優先して標的成分に結合するリガンドを指す。特異的結合は、非特異的結合よりも約2倍以上、約10倍以上、約100倍以上、1000倍以上、10,000倍以上、100,000倍以上、又は1,000,000倍以上識別する。
【0042】
[0047]本開示で使用する場合、「捕捉効率」という語句は、カラムを通過する流体の1回の通過中に流体から除去される標的成分の割合又は量を指す。本開示の文脈において、カラムの捕捉効率は、式(1-x/y)×100によって決定され、ここで、yは、カラムに入る流体中の標的の濃度(例えば、pg/ml)であり、xは、カラムから出る流体中の標的の濃度であり、捕捉効率はパーセンテージで表される。特定の実施形態では、x及びyの単位はモル濃度である。
【0043】
[0048]本開示で使用する場合、「溶出」という用語は、流体がカラムを通過している間に、基材からリガンド又はその一部が損失又は分離(例えば、解離)することを意味する。本開示で使用する場合、溶出速度とは、ある期間にわたって基材から解離するリガンドの量を意味する。
【0044】
[0049]本開示で使用する場合、「カラム容量」という用語は、カラムを通過する流体の体積であり、カラム自体の容量とほぼ等しい容量を指す。例えば、15mlのビーズ床を含むカラムの場合、流体の1カラム容量は約15mlに相当する。
【0045】
[0050]本開示で使用する場合、「患者の血漿体積」という用語は、平均的な健康な患者の血液総量にほぼ相当する流体の体積を指す。
【0046】
[0051]本開示で使用する場合、「毒性」という用語は、カラムの出口を通過する流体が、患者に許容できないリスクをもたらすと考えられる量の物質を含むことを意味する。
【0047】
[0052]本開示で使用する場合、「同一性」という用語は、2つの配列において同一であるアミノ酸残基の量を意味し、通常はパーセンテージで表される。
【0048】
天然TNF
[0053]TNFシグナル伝達は2つの受容体TNF-R1及びTNF-R2を介して生じる。TNFは膜貫通型(mTNF)及び可溶型(sTNF)として血中に存在する。TNF-R1はほとんどの組織で発現しており、sTNF及びmTNFの両方に結合することができる。TNF-R2は通常、免疫系の細胞に見られ、mTNFに反応する。sTNF又はmTNFのいずれかに結合する可溶型TNF受容体は、そのTNF分子のシグナル伝達をブロックし、TNFを効果的に不活性化する。sTNF-R1及び/又はsTNF-R2の量が上昇することは、患者に癌が存在することに関連して観察されており、免疫系の活性化を抑えるために癌によって誘導されると考えられている。
【0049】
[0054]膜結合型TNF受容体に影響を与えることなく、患者に存在する可溶型TNF受容体を選択的に除去するためのシステム及び方法が開示されている。本明細書に開示されたシステム及び方法は、腫瘍細胞及び/又は腫瘍血管系の破壊を誘発するサイトカインであるTNFの活性及び/又はバイオアベイラビリティを増加させることにより、患者の免疫応答を改善するのに有用である。
【0050】
[0055]タンパク質の構造は、ここではアミノ酸の配列として説明する。アミノ酸の1文字コードを表1に示す。
【0051】
【表1】

[0056]表2(配列1)は、www.uniprot.org/uniprot/P01375からの天然TNFの第1の参照配列である。
【0052】
【表2】

[0057]表3(配列2(配列番号2))は、部分的天然TNFの例示的な第2の参照配列である。
【0053】
【表3】
【0054】
改変TNF
[0058]特定の実施形態では、タンパク質、ペプチド、モノマー、又はポリペプチドは、保存的アミノ酸置換によって改変することができる。特定の実施形態では、保存的アミノ酸置換は、特定のタイプの側鎖を有するアミノ酸を同じクラスのアミノ酸と交換することを含む。例えば、極性側鎖を有するアミノ酸は、極性側鎖を有する別のアミノ酸で置換される。別の例では、疎水性側鎖を有する第1のアミノ酸が、疎水性側鎖を有する第2のアミノ酸で置換される。特定の実施形態では、改変配列と天然配列との同一性は、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、又は最も好ましくは少なくとも98%である。
【0055】
[0059]本明細書で開示されるようなTNF分子の改変は、天然TNF分子よりもsTNF-R1又はsTNF-R2のいずれかに対する結合親和性を向上させるために行うことができる。特定の実施形態では、天然TNFはTNF-R2に対する親和性を高めるように改変されている。表4は、TNF分子の例示的な配列バリアントのリストである。
【0056】
【表4】
【0057】
[0060]表5は、例示的な改変配列である配列3と天然TNFの参照配列(配列1)を比較したものである。
【0058】
【表5】
【0059】
[0061]ポリペプチドは、直接又は中間リンカーを介して結合する少なくとも2つのモノマーから形成することができる。ポリペプチドが3つのモノマーからなる場合、中間リンカーの有無にかかわらず、三量体と呼ばれる。モノマーが同一配列の場合、ホモ三量体である。モノマーの少なくとも1つが別のモノマーと異なる場合、すなわち2つのモノマー間の同一性が100%未満の場合、ヘテロ三量体である。三量体は、例えばビオチンなどの他の配列が、3つの連結したモノマーの一方の末端又は両方の末端に結合していてもよい。特定の実施形態では、三量体は、一方の末端に結合した基材に結合するように選択された結合基を有する。特定の実施形態では、結合基はアミンの存在下で基材とシッフ塩基結合を形成するように選択される。
【0060】
[0062]表6は、改変TNFホモ三量体である例示的な配列11(配列番号5)を示す。特定の実施形態では、改変配列は、改変配列の2つ以上のコピーを含む。特定の実施形態では、三量体改変配列は、改変TNFのコピーの間に、例えば、文字列「GGGS」(配列番号4)又はその倍数のリンカーを含んでいる。この例では、3コピーの配列3がリンカーによって一本鎖三量体に結合されており、各リンカーは下線で示した4コピーの「GGGS」(配列番号4)である。斜体文字「**xxxx」で示すように、三量体の両端に追加の配列を加えることができる。
【0061】
【表6】
【0062】
[0063]配列11のタンパク質を大腸菌(E coli)で発現させ、固定化金属キレートアフィニティクロマトグラフィ(IMAC)カラムにより80%の純度で精製した。配列11のタンパク質を、アガロースビーズにビーズ容量あたり1mg/ml及び2mg/mlのリガンド濃度で結合させた。TNF-R1及びTNF-R2を含むヒト血漿をそれぞれのカラムに通し、受容体の残存量を測定し、血漿中の元の量と比較した。
【0063】
[0064]図1は、本開示の特定の態様による、様々なカラムのsTNF-R2の捕捉効率のプロットである。3種類の捕捉リガンドを用いてフルサイズカラム(15ml)を調製した:
天然TNF三量体
TNFバリアント三量体(配列11)
天然TNF三量体とTNFバリアント三量体配列11との組み合わせ
【0064】
[0065]天然TNF及びTNFバリアントカラムでは、ビーズ1mlあたり約1mgの捕捉リガンドを用いてビーズをコーティングした(密度1mg/ml)。混合カラムのビーズには、各捕捉リガンド(天然及びバリアント)を1mgずつコーティングした。バリアントTNFと天然TNFとの比率は、カラムを通過した血液成分から除去されるsTNF-R1及びsTNF-R2の相対量を決定するために調整することができる。特定の実施形態では、比率は、天然TNF捕捉リガンド単独で除去されるよりも多くのsTNF-R2を除去するように選択される。特定の実施形態では、比率は、sTNF-R1よりもsTNF-R2を多く除去するように調整される。特定の実施形態では、比率は、ほぼ同量のsTNF-R2及びsTNF-R1を除去するように調整される。特定の実施形態では、比率はsTNF-R1よりもsTNF-R2を少なく除去するように調整される。
【0065】
[0066]0.025%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を使用して試験液を調製した。TNF-R1は10mg/mlになるように添加し、TNF-R2は40ng/mlになるように添加する。この溶液のpHは7.4である。実験は30ml/分で60分間行われ、1800mlの廃液が生じた。各試料中のsTNF-R2量を測定し、原液中のsTNF-R2量との比較により捕捉効率を決定した。曲線120は、天然TNF捕捉リガンドの捕捉効率が低下し、60分で約76%まで低下することを示している。対照的に、バリアント配列11の曲線110は60分後でも約94%である。天然TNF及びバリアントTNFの混合物の曲線130は、曲線110と比較してわずかな低下を示したが、60分後には依然として90%以上であった。
【0066】
[0067]図2は、本開示の特定の態様による、様々なカラムのsTNF-R1の捕捉効率のプロット200である。天然TNF三量体の曲線210は依然として高く、60分後でも約98%である。しかしながら、曲線220は、バリアントTNF捕捉リガンドの捕捉効率がすぐに低下し、20分以内に70%を下回ることを示している。天然TNF及びバリアントTNFの混合物の曲線230は、曲線210と比較してわずかな低下を示したが、60分後には依然として95%以上であった。
【0067】
[0068]図3は、本開示の特定の態様による、TNFバリアント捕捉リガンドの密度を変えた場合の捕捉効率試験測定値のプロット300である。リガンド濃度1mg/ml及び2mg/mlの試験カラム(容量1ml)を調製した。sTNF-R1及びsTNF-R2をスパイクした試験液を、横軸に示すように様々な速度でカラムに通した(順次4、2、1、2、及び4ml/分)。1mg/mlカラムのデータは左側に、2mg/mlカラムのデータは右側に示している。試料を各流量で1分間採取し、分析した。ストライプ状のバー310は捕捉されたsTNF-R1の量を示し、実線のバーは捕捉されたsTNF-R2の量を示す。この試験の期間中、sTNF-R2の捕捉効率を98~99%に維持するには1mg/mlの濃度で十分であり、2mg/mlに濃度を上げても有意な改善は見られないことを見出すことができる。sTNF-R1の捕捉効率は、5試料目には90%に低下するものの、当初は78~91%の範囲から97%まで大幅に改善された。平均捕捉効率を表7にまとめた。
【0068】
【表7】
【0069】
結合親和性
[0069]リガンド及びその標的の結合強度は、「平衡解離定数」、すなわち「K」として特徴付けられ、これは平衡状態での滴定測定で得られる値であり、すなわち解離速度定数(koff)を会合速度定数(kon)で割った値である。会合及び解離速度定数を決定する方法は、当技術分野で知られている。Kはリガンドの受容体に対する親和性の逆数を表し、したがって、K値が小さいほどリガンドと受容体の結合親和性が高いことを示している。
【0070】
[0070]特定の実施形態では、これらの方法は、標的に対する様々なリガンドの結合親和性を比較するために使用することができる。一実施形態では、可溶型TNF受容体に対するTNFモノマーリガンドの親和性を測定する。特定の実施形態では、可溶型TNF受容体に結合するためのネイティブTNF分子の親和性を、可溶型TNF受容体に結合するための改変TNF分子の親和性と比較する。
【0071】
[0071]ネイティブTNF及び改変TNF吸着剤の親和性動態を実験的に測定し、結果を表8に示した。リガンド親和性は、ナノモル(nM)単位で測定される解離定数(K)として直接測定することができ、Kが低いほど結合親和性が高い。ネイティブTNFはsTNF-R1に対する親和性が改変型より10倍以上高い。対照的に、改変TNFはネイティブTNFと比較してsTNF-R2に対してより高い親和性を示す。
【0072】
【表8】
【0073】
[0072]本開示の文脈において、リガンドの「増加した」親和性とは、別のリガンドと比較した場合、又は異なる可溶型TNF受容体に対する親和性を比較した場合に、可溶型TNF受容体との相互作用における親和性の相対的な改善(すなわち、測定されたKの低下)を指す。
【0074】
[0073]特定の実施形態では、改変TNFリガンドは、sTNF-R2への結合に対するKが天然TNFリガンドのKより小さい。特定の実施形態では、改変TNFリガンドは、sTNF-R2への結合に対するKが、天然TNFリガンドのKよりも少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、又は少なくとも200%小さい。
【0075】
溶出
[0074]吸着剤の溶出は、アフェレーシスカラムの特徴として知られており、一般的に望ましくない。捕捉リガンドは、血液成分がカラムを流れるにつれて、一定時間かけて基材から解離する。溶出速度は、カラムの流出液から検出されるリガンドの量によって決定されることが多い。初期溶出速度とは、所定の初期時間(例えば、1~10分)、所定の流量(例えば、10ml/分)でリガンドを血液製剤と最初に接触させた後に測定される溶出速度である。特定の実施形態では、初期溶出速度は、残りの処置期間の溶出速度よりも高く、カラムの溶出速度は、初期期間が経過した後の所定の流量における測定された溶出速度によって特徴付けられる。
【0076】
[0075]表8は、プロセスの様々な段階で測定された結果を示している。採取した全量を分子カットフィルタに通し、濾液の体積を測定した。次いで、濾液試料中のTNF濃度を測定し、総体積1800mlにスケールアップして、総体積中のTNFの総量を決定した(そして、pgからngに変換した)。試験は1時間行われたので、溶出速度(単位:ng/分)は、廃液中のTNFの総量を60分で割った値で求められる。
【0077】
【表9】
【0078】
[0076]ネイティブTNFの最大耐量(MTD)は300μg/mと推定されている。体表面積(BSA)の平均が女性で1.6m、男性で1.9mであることから、推定総MTDは4.8~5.7μgの範囲となる。処置期間中にアフェレーシスカラムから放出されるTNFの総量は、このMTDより少なく、望ましくははるかに少ないことが望ましい。特定の改変TNF分子は天然TNFよりも毒性が低いことが報告されている。
【0079】
[0077]2時間のアフェレーシス処置の例では、2.1ng/分の溶出速度(表8の改変TNFの欄)で、約252ngの改変TNFが患者に導入される。これは、この処置による総用量が約0.25μgに相当し、上記の推定MTDより約20倍低い。
【0080】
[0078]特定の実施形態では、50ng/分以下、10ng/分以下、5ng/分以下、3ng/分以下、2ng/分以下、又は1ng/分以下の溶出速度を有するカラムが開示される。
【0081】
アフェレーシスカラム
[0079]図4は、本開示の特定の態様による、例示的なアフェレーシス用カラム400を示す。カラム400は、入口430及び出口434を有するコンパートメント420を含む本体410を含む。図2の例では、コンパートメント420は、一般に、直円柱であり、入口430及び出口434は共に平面円板である。特定の実施形態では、コンパートメント420の断面形状は、楕円形、長方形、又は他の規則的若しくは不規則な、又は非平面幾何学的形状であってもよい。特定の実施形態では、入口430及び出口434の一方又は両方のサイズ及び形状は、コンパートメント420の公称断面のサイズ及び形状と異なっていてもよい。特定の実施形態では、流体は入口ポート432に入り、入口430に運ばれる。同様に、特定の実施形態では、出口434から出る流体は、出口ポート436に運ばれる。使用中、カラムは、逆さまを含め、図4における重力方向がどの方向であってもよいように、どの方向に向いてもよい。
【0082】
[0080]特定の実施形態では、入口430及び出口434の一方又は両方は、ポリエチレンビーズを一緒に溶融することによって作製される、一般に「フリット」と呼ばれる多孔性薄片を含む。ビーズの直径及び圧縮の程度は、平均的な孔径が得られるように選択される。特定の実施形態では、平均孔径は20ミクロンである。特定の実施形態では、フリットは金属又はセラミックを含むビーズを焼結することによって形成され、同様の効果が得られる。一般に、流入流体中に存在する最大の要素が入口430及び出口434を通過できるようなフリットの平均孔径を選択することが望ましく、それによりカラム400の目詰まりを回避することができる。図5のビーズ450などの基材をコンパートメント420内に保持するために、平均孔径を選択することが更に望ましい。
【0083】
[0081]図5は、本開示の特定の態様による、図4のアフェレーシス用カラム400の例示的な部分「A」の拡大図を示す。特定の実施形態では、コンパートメント420は、例えば図5に示されるような複数のビーズ450などの基材で少なくとも部分的に充填される。特定の実施形態では、ビーズ450は、10~10000ミクロン、20~1000ミクロン、30~500ミクロン、40~250ミクロン、45~165ミクロン、75~125ミクロンの範囲の直径、又は他の範囲の直径を有する球状である。特定の実施形態では、ビーズ750は、25、50、75、100、125、若しくは150ミクロンの共通の公称直径、又は他の公称直径を有する。特定の実施形態では、ビーズ450は複数の公称直径を含む。
【0084】
[0082]図6は、ネイティブTNF及び改変(バリアント)TNF三量体と、任意のリンカーとの組み合わせの非限定的な例示的実施形態を示す。特定の実施形態では、捕捉リガンドは、図6のA~Hの群から選択される複数の三量体を含む。特定の実施形態では、複数の三量体は基材に別々に結合される。特定の実施形態では、捕捉リガンドは、天然TNFモノマー又は改変TNFモノマーのいずれかのホモ三量体である。特定の実施形態では、捕捉リガンドは、天然及び改変TNFモノマーの両方を有するヘテロ三量体である。特定の実施形態では、三量体は、モノマーの少なくとも一対の間にリンカーを含む。特定の実施形態では、三量体はモノマー間のリンカーを含まない。
【0085】
処置方法
[0083]本明細書に開示された方法は、癌患者、又は自己免疫疾患及び炎症性疾患を含むがこれらに限定されない別の疾患状態の患者に対する免疫調節に有用である。特定の実施形態では、免疫吸着手段を使用した患者の血液又は血液成分からの可溶型TNF受容体の体外除去が、疾患又は状態の処置のために提供される。特定の実施形態では、開示された方法は、例えば、本明細書に開示された方法を使用した免疫細胞のアポトーシスの誘導を介して、増殖亢進性障害の処置に使用される。特定の実施形態では、開示された方法は、感染症、例えば、細菌、ウイルス、又は原虫感染の処置に使用される。特定の実施形態では、開示された方法は、例えば、充実性腫瘍又は血液悪性腫瘍を有する患者において、癌の処置のために実施される。
【0086】
[0084]開示された方法は、可溶型TNF受容体が何らかの疾患の際に高レベルで放出されるという知識に基づいている。様々な疾患及び医学的状態は、健康な人に見られる可溶型TNF受容体のレベルと比較して、血液検体(例えば、血清又は血漿中)中の可溶型TNF受容体レベルの上昇と関連している。血清又は血漿中のsTNF-R1及びsTNF-R2の濃度は、当該分野で公知の方法、例えば、Meso Scale Discovery(MSD)アッセイ又はELISAを使用して測定することができる。
【0087】
[0085]特定の実施形態では、可溶型TNF受容体の体外操作、枯渇及び/又は除去が行われ、可溶型TNF受容体が部分的に枯渇した処理済み血液又は血液分画が患者に戻される。このような手順を行うには、末梢血液を患者から取り出し、抗凝固剤を任意選択で血液に添加し、血液を主要成分に分離する、例えば、液体成分、例えば血漿から血球を分離することは、アフェレーシス装置を使用して行うことができる。次いで、可溶型TNF受容体を除去するために、本明細書に開示されているようなカラムを含む二次回路で液体成分を処理することが好ましい。特定の実施形態では、カラムは、アフェレーシス装置チューブセット、静脈内チューブ延長セット、流体チューブアダプタ、フィルタ、二方コック、及び/又は閉ループ患者流体ラインアセンブリで一般的に使用される他の要素に流体的に結合するように構成される。特定の実施形態では、カラムは、液体成分が約10ml/分~約100ml/分の流量でシステムを流れるように構成される。特定の実施形態では、流量は約20ml/分~約60ml/分である。特定の実施形態では、流量は約25ml/分~約50ml/分である。特定の実施形態では、流量は約30ml/分~約45ml/分である。特定の実施形態では、流量は、sTNF-R1及び/又はsTNF-R2に対するカラムの決定されたレベルの捕捉効率を維持するように選択される。
【0088】
[0086]特定の実施形態では、流体成分中のsTNF-R1及びsTNF-R2の一部が、カラム中の固定化捕捉リガンドに決定された最小レベルで結合することができるのに十分な時間、流体成分をリガンドと接触させる。特定の実施形態では、カラムは流体成分中のsTNF-R1及びsTNF-R2の両方の一部を除去する。
【0089】
[0087]特定の実施形態では、患者は、血液検体中に存在する可溶型TNF受容体の量又は濃度(例えば、本明細書に開示された方法の開始前に当該患者から得られた血清又は血漿中で測定される)に基づいて、本明細書に開示された方法又はシステムを使用する治療のために選択される。特定の実施形態では、患者は、血液検体で測定された少なくとも500pg/ml、少なくとも750pg/ml、少なくとも1,000pg/ml、少なくとも1,500pg/ml、又は少なくとも2,000pg/mlの閾値sTNF-R1レベルに基づいて、本明細書に開示された方法を使用する治療のために選択される。
【0090】
[0088]特定の実施形態では、患者は、血液検体で測定された少なくとも500pg/ml、少なくとも750pg/ml、少なくとも1,000pg/ml、少なくとも1,500pg/ml、少なくとも2,000pg/ml、少なくとも5,000pg/ml、又は少なくとも10,000pg/mlの閾値sTNF-R2レベルに基づいて、本明細書に開示された方法又はシステムを使用する治療のために選択される。特定の実施形態では、本明細書に開示された方法又はシステムを使用する治療は、sTNF-R2に対して高い捕捉効率を達成する固定化リガンドを含むカラムを使用して行われる。特定の実施形態では、sTNF-R2に対して高い捕捉効率を達成するリガンドは、配列3~配列10から選択される。
【0091】
[0089]特定の実施形態では、患者は、血液検体で定量されるTNF濃度に基づいて、本明細書に開示された方法又はシステムを使用する治療のために選択される。特定の実施形態では、血液検体中の閾値TNF濃度は、0.5ng/ml~5.0ng/ml、0.5ng/ml~2.5ng/ml、又は2.5ng/ml~5ng/mlのTNFである。血液検体中のTNF濃度は、当該技術分野で公知の方法を使用して測定することができる。特定の実施形態では、血液成分中にTNFの閾値濃度、例えば、少なくとも0.5ng/ml、少なくとも0.5ng/ml、少なくとも1.0ng/ml、少なくとも1.5ng/ml、少なくとも2.0ng/ml、少なくとも2.5ng/ml、又は少なくとも5.0ng/mlのレベルが存在するかどうかを定義するために、本明細書に開示された方法を実施する前に、内因性TNFレベルを測定する。特定の実施形態では、患者において測定されたTNFの濃度は、当該患者の血漿又は血清中に存在するTNFの内因性レベルを反映する。特定の実施形態では、TNFの濃度の定量は、可溶型TNF受容体(例えば、sTNF-R1、sTNF-R2、又はその両方)の除去が、TNFの活性を改善すること、又は患者の病状を処置することに影響を与える可能性を決定するために使用することができる。
【0092】
[0090]特定の実施形態では、体外療法で患者を処置する開示された方法は、手順を実行するために利用されるカラムの捕捉効率に基づいて評価される。特定の実施形態では、本明細書に開示されたカラムの臨床性能測定値には、例えば、末梢血をサンプリングすることによって測定される、患者の全血液プールからのsTNF-R1及びsTNF-R2の減少が含まれる。特定の実施形態では、臨床性能は、アフェレーシス処置の間の特定の時点における、治療される体液中のsTNF-R1及びsTNF-R2の流入濃度並びにsTNF-R1及びsTNF-R2の流出濃度をサンプリングすることによって測定される、カラムの捕捉効率の決定によって定義される。
【0093】
[0091]本明細書に開示された方法の特定の実施形態では、全血試料は、ベースライン(時間=0分)、30分、60分、90分、及び治療終了時(例えば、システムを通して循環される2血漿量の完了時)に、患者の単一の治療中に患者の中心線カテーテルから採取される。特定の実施形態では、処置中に試料採取のための他の時間間隔が使用される。特定の実施形態では、血漿試料は、当該カラムの捕捉効率を測定するために、カラムの入口及びカラムの出口でほぼ同時に採取される。特定の実施形態では、全血及び血漿試料は、アフェレーシス処置の停止後、時間間隔、例えば、治療後30分、60分、12時間、24時間、36時間、及び48時間に採取される。採取した血液又は血液成分の試料のsTNF-R1及び/又はsTNF-R2の濃度を、定量アッセイを使用して測定する。カラムの入口と出口における特定の可溶型TNF受容体濃度の差は、血液成分から可溶型TNF受容体を捕捉するカラムの有効性の指標となる。
【0094】
[0092]特定の実施形態では、sTNF-R1及びsTNF-R2の一方又は両方に対する捕捉効率は少なくとも30%である。特定の実施形態では、sTNF-R1及びsTNF-R2の一方又は両方に対する捕捉効率は、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又はそれ以上である。
【0095】
[0093]特定の実施形態では、改変TNFは、可溶型TNF受容体に対して、同じ受容体に対する天然TNFの親和性よりも高い親和性を有する。特定の実施形態では、sTNF-R1及びsTNF-R2に対するカラムの相対的捕捉効率は、カラム中の捕捉リガンドとして使用される天然TNF及び改変TNFの相対量によって決定される。特定の実施形態では、改変TNFの三量体を含む捕捉リガンドのTNF受容体に対する捕捉効率は、天然TNFの三量体を含む捕捉リガンドの同じTNF受容体に対する捕捉効率よりも大きい。
【0096】
[0094]特定の実施形態では、カラムの捕捉効率は、アフェレーシス処置の経過中、例えば、治療の5分、10分、15分、30分、45分、60分、90分、120分、又は180分後に経時的に変化する。例えば、血液試料中の可溶型TNF受容体の少なくとも70%は、約30分以内にカラム内でリガンドと結合することができる。特定の実施形態では、流れる生体試料中の可溶型TNF受容体の少なくとも80%は、約30分以内にカラム内で捕捉リガンドに結合する。特定の実施形態では、流れる生体試料中の可溶型TNF受容体の少なくとも90%は、約30分以内にカラム内で捕捉リガンドに結合する。特定の実施形態では、開示されたカラムは、30分、45分、60分、120分、又は180分の処置時間にわたって決定された捕捉効率を維持する。
【0097】
[0095]いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、本明細書に記載された捕捉効率値は、本明細書に記載された改変TNF分子、及びその二量体、及びその三量体、特にsTNF-R2に対して極めて高い標的親和性を有するものの使用によるものである。特定の実施形態では、sTNF-R2用カラムの捕捉効率は、ネイティブ配列である配列1の部位105、221、222、及び223の群から選択される部位でのアミノ酸置換を含む少なくとも1つの改変TNFモノマーを適用することによって改善される。特定の実施形態では、捕捉効率は、配列3~配列10から選択される少なくとも1つの改変TNFモノマーの適用によって達成される。特定の実施形態では、改変TNFを含むリガンドは、アフェレーシス処置の約30分後、約45分後、約60分後、約120分後、又は約180分後に、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、又は少なくとも98%以上の捕捉効率をもたらす。
【0098】
[0096]特定の実施形態では、本明細書に記載された改変TNFモノマー、二量体、又は三量体を含む捕捉リガンドは、約1患者の体液の血漿量、約1.5患者の体液の血漿量、又は約2患者の体液の血漿量を処理した後に、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、又は少なくとも98%以上の捕捉効率をもたらす。
【0099】
[0097]特定の実施形態では、本明細書に開示された方法を使用して処置される血液成分の総量、総処置時間、及び処置を行う頻度は、各患者に対して個別に設定されるパラメータである。特定の実施形態では、処置される血漿の総量は、1患者血漿量である。特定の実施形態では、処置される血漿の総量は、2患者血漿量である。
【0100】
[0098]総血漿量V(ml)の計算式は以下の通りである:
=0.065×W×(1-HCT)
[0099]式中、Wは患者の体重(kg)であり、HCTはヘマトクリット(%)である。
【0101】
[0100]処置する血漿量に基づいて患者の処置時間T(分)を計算する式は以下の通りである:
T=(V×V)÷Q
[0101]式中、Vは患者の血漿量であり、Vは処置する患者の血漿量の数、Qはカラムを通る体液の流量(ml/分)である。特定の実施形態では、患者の処置時間は1~4時間である。特定の実施形態では、患者の処置時間は2~3時間である。
【0102】
[0102]特定の実施形態では、アフェレーシス処置中のsTNF-R1若しくはsTNF-R2又はその両方の特定の目標濃度減少の達成に基づいて処置時間を決定するための方法が開示される。特定の実施形態では、第1の捕捉効率を有するカラムを用いるアフェレーシス処置は、患者の血漿からのsTNF-R1、sTNF-R2、又はその両方の総量又は濃度の特定の目標濃度減少を達成するために、2患者の血漿量をカラムを通して循環させることを必要とする。特定の実施形態では、第1の捕捉効率の2倍である第2の捕捉効率を有するカラムを用いるアフェレーシス処置は、sTNF-R1、sTNF-R2又はその両方の総量又は濃度の同等の減少を達成するために、1患者の血漿量をカラムを通して循環させることを必要とする。
【0103】
[0103]いくつかの実施形態では、本明細書に開示されたカラムは、少なくとも200マイクログラムの可溶型TNF受容体(すなわち、sTNF-R1及び/又はsTNF-R2)を除去するように構成される。特定の実施形態では、カラムは改変TNFリガンドを含む。好ましい実施形態では、改変TNFリガンドは三量体を含む。特定の実施形態では、本明細書に開示されたカラムは、50マイクログラム~250マイクログラムの可溶型TNF受容体を除去するように構成される。説明のために、例示的な患者は、血漿中の可溶型TNF受容体(sTNF-R1とsTNF-R2との組み合わせ)の濃度が3~10ng/mlの範囲であり、体重が70kgであり、患者の血漿量Vは体重(W)1kgあたり約50mlである。患者中の可溶型TNF受容体の総量R(ng)は次式で与えられる:
R=(V×C)=([50×W]×C)=([50×70]×[3-10])
R=10500-35000ng=10.5-35マイクログラム
【0104】
[0104]また、患者の血液成分から検出される可溶型TNF受容体の量に影響を及ぼす、疾患に関連した変数を含む他の基礎的要因が存在し得る。例えば、sTNF-R1の総量は、ある患者の血漿中1~10マイクログラムの範囲にあってもよく、sTNF-R2の総量は、ある患者の血漿中5~50マイクログラムの範囲にあってもよい。特定の実施形態では、可溶型TNF受容体の量は、本明細書に開示された体外療法の実施前及び/又は本明細書に開示された体外療法の実施後に、患者において推定される。
【0105】
[0105]可溶型TNF受容体を効果的に除去するためには、可溶型TNF受容体の一部が結合して除去されるのに十分な時間、血漿をリガンドと接触させる。続いて、分離された血液成分と血漿を再び組み合わせ、患者に戻す。いくつかの実施形態では、血液成分からのsTNF-R1及びsTNF-R2の一部が結合して除去されるのに十分な時間、血漿をリガンドと接触させる。
【0106】
態様
[0106]血液成分中のsTNF-R2の濃度又は量を減少させる方法が開示されており、この方法は、
(a)患者からのsTNF-R2を含む血液又は血漿を、当該sTNF-R2に結合する改変TNFホモ三量体を含む体外カラムに導入するステップ、
(b)sTNF-R2が当該改変TNFホモ三量体に結合するのに十分な時間、患者からの血液又は血漿を体外カラム中で改変TNFリガンドと接触させるステップ、
(c)(b)の後に得られた血液又は血漿を当該患者に再導入するステップであって、(b)の後に得られた血液又は血漿は、(b)の前の当該患者の血液又は血漿と比較して、sTNF-R2の濃度又は量が減少しているステップ、並びに
(d)任意選択で、(a)の前、(b)の後、又はその両方において、血漿又は血清試料などの当該患者からの試料中のsTNF-R2を検出若しくは同定するステップ、及び/又は任意選択で、sTNF-R2の濃度若しくは量を減少させる療法を受ける患者を選択若しくは同定するステップのうちの1つ又は複数のステップを含む。
【0107】
[0107]血液成分中のsTNF-R1及びsTNF-R2の濃度又は量を減少させる方法が開示されており、この方法は、
(a)患者からのsTNF-R1及びsTNF-R2を含む血液又は血漿を、第1のリガンド及び第2のリガンドを含む体外カラムに導入するステップであって、第1のリガンドがネイティブ配列のTNFホモ三量体を含み、第2のリガンドが改変TNFホモ三量体を含むステップ、
(b)患者からの血液又は血漿を第1のリガンドと接触させるステップであって、sTNF-R1の捕捉効率が少なくとも80%であるステップ、
(c)患者からの血液又は血漿を第2のリガンドと接触させるステップであって、sTNF-R2の捕捉効率が少なくとも80%であるステップ、
(d)(b)及び(c)の後に得られた血液又は血漿を当該患者に再導入するステップであって、(b)及び(c)の後に得られた血液又は血漿は、(b)及び(c)の前の当該患者の血液又は血漿と比較して、sTNF-R1及びsTNF-R2の濃度又は量が減少しているステップのうちの1つ又は複数のステップを含む。
【0108】
[0108]患者の癌を処置又は抑制する方法が開示されており、この方法は、
(a)任意選択で、血液から血液画分を分離するステップ、
(b)基材に結合した第1のリガンドを使用して、可溶型TNF受容体を発現する血液又は血液画分の一部を除去するステップであって、第1のリガンドが改変TNFモノマー又はその機能的断片を含むステップ、
(c)可溶型TNF受容体を発現する血液又は血液画分の一部を、基材に結合した第2のリガンドに除去するステップであって、第2のリガンドがネイティブTNFモノマー又はその機能的断片を含むステップ、
(d)(b)及び(c)の後の血液又は血液画分を当該患者に再導入するステップであって、(b)及び(c)の後に得られた血液又は血液画分は、(b)及び(c)の前の当該患者の血液又は血液画分と比較して、可溶型TNF受容体の量が減少しているステップ、並びに
(e)任意選択で、(b)及び(c)の前、又は(b)及び(c)の後、又はその両方において、当該患者からの試料中の可溶型TNF受容体のレベル又は量を測定するステップのうちの1つ又は複数のステップを含む。
【0109】
[0109]以下からなる群から選択される1つ又は複数の性能仕様を有するカラムが開示されている:
(a)生物学的安全性:循環血液に長時間曝露をサポートする体外装置としての使用が生物学的に安全であることが実証されていること、
(b)標的:sTNF-R1及びsTNF-R2、
(c)捕捉効率:10~100、20~60、25~50、又は30~45ml/分の流量で30分間処置した後、sTNF-R1及びsTNF-R2について80%超、
(d)捕捉能力:200μg超のsTNF-R(sTNF-R1とsTNF-R2)、
(e)カラム通過流量:60ml/分以上、
(f)処置時間:約2時間、
(g)処置量:2患者血漿容量、
(h)捕捉リガンドの溶出速度:50ng/分超。
【0110】
[0110]患者の癌を処置又は抑制する方法が開示されており、この方法は、
(a)任意選択で、血液から血液画分を分離するステップ、
(b)基材に結合した第1のリガンドを使用して、可溶型TNF受容体を発現する血液又は血液画分の一部を除去するステップであって、第1のリガンドが改変TNFモノマー又はその機能的断片を含むステップ、
(c)可溶型TNF受容体を発現する血液又は血液画分の一部を、基材に結合した第2のリガンドに除去するステップであって、第2のリガンドがネイティブTNFモノマー又はその機能的断片を含むステップ、
(d)(b)及び(c)の後の血液又は血液画分を当該患者に再導入するステップであって、(b)及び(c)の後に得られた血液又は血液画分は、(b)及び(c)の前の当該患者の血液又は血液画分と比較して、可溶型TNF受容体の量が減少しているステップ、
(e)任意選択で、(b)及び(c)の前並びに/又は(b)及び(c)の後に、患者からの試料中の可溶型TNF受容体のレベル又は量を測定するステップのうちの1つ又は複数のステップを含む。
【0111】
[0111]特定の実施形態では、第1のリガンドはsTNF-R1又はsTNF-R2のいずれかに対してより高い捕捉効率を有する。特定の実施形態では、第2のリガンドは、sTNF-R1又はsTNF-Rのいずれかに対してより高い捕捉効率を有する。特定の実施形態では、可溶型TNF受容体に対する第1のリガンドの捕捉効率は、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%である。特定の実施形態では、可溶型TNF受容体に対する第2のリガンドの捕捉効率は、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%である。
【0112】
[0112]要約すると、改変TNFは天然TNFと比較して、sTNF-R2に対して高い親和性を示す。更に、天然NTF及び改変TNFの両方をカラムに含めると、sTNF-R1及びsTNF-R2の両方に対して効果的な除去レベルを示した。
【0113】
[0113]見出し及び小見出しがある場合は、便宜上のみ使用され、本発明を限定するものではない。
【0114】
[0114]本明細書で引用した全ての出願、刊行物、特許、その他の文献、GenBankの引用及びATCCの引用は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾がある場合は、定義を含む本明細書が優先される。
【0115】
[0115]本明細書に開示された特徴は全て、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に開示されている各特徴は、同一、同等、又は類似の目的を果たす代替的な特徴で置き換えることができる。したがって、明示的に別段の記載がない限り、開示された特徴(例えば、リガンド(例えば、ネイティブ又は改変TNF)、カラム、基材、コンパートメント)は、同等又は類似の特徴の属の一例である。
【0116】
[0116]本明細書で使用される場合、全ての数値又は数値範囲は、文脈上明確にそうでないことが示されない限り、その範囲内の整数、及び数値又は数値範囲内の整数の端数を含む。したがって、例示すると、約1×10-6~1×10-9、1×10-6~1×10-8、1×10-6~1×10-7、1×10-7~1×10-9、1×10-7~1×10-8、又は1×10-8~1×10-9M(mol/リットル)の範囲のKへの言及は、2×10-6~1×10-9、2×10-6~1×10-8、2×10-6~1×10-7、2×10-7~1×10-9、2×10-7~1×10-8、2×10-8~1×10-9M(mol/リットル)の範囲を含み、3×10-6~1×10-9、3×10-6~1×10-8、3×10-6~1×10-7、3×10-7~1×10-9、3×10-7~1×10-8、3×10-8~1×10-9M(mol/リットル)の範囲を含み、4×10-6~1×10-9、4×10-6~1×10-8、4×10-6~1×10-7、4×10-7~1×10-9、4×10-7~1×10-8、4×10-8~1×10-9M(mol/リットル)の範囲を含み、5×10-6~1×10-9、5×10-6~1×10-8、5×10-6~1×10-7、5×10-7~1×10-9、5×10-7~1×10-8、5×10-8~1×10-9M(mol/リットル)の範囲を含み、6×10-6~1×10-9、6×10-6~1×10-8、6×10-6~1×10-7、6×10-7~1×10-9、6×10-7~1×10-8、6×10-8~1×10-9M(mol/リットル)等の範囲を含む。
【0117】
[0117]より多い(より大きい、少なくとも)又はより少ない整数への言及は、それぞれ参照番号より大きい又は小さい数を含む。したがって、例えば、100未満への言及は、99、98、97等を数字の1まで全て含み、10未満への言及は、9、8、7、6、5、4等を数字の1まで全て含む。
【0118】
[0118]本明細書で使用される場合、全ての数値又は範囲は、文脈上明確にそうでないことが示されない限り、そのような範囲内の整数並びに範囲内の値の分数又は整数の端数を含む。したがって、例示すると、1×10-6~1×10-9、1×10-6~1×10-8、1×10-6~1×10-7、1×10-7~1×10-9、1×10-7~1×10-8、及び1×10-8~1×10-9M(mol/リットル)などの数値範囲への言及は、1.1×10-6~1×10-9、1.1×10-6~1×10-8、1.1×10-6~1×10-7、1.1×10-7~1×10-9、1.1×10-7~1×10-8、1.1×10-8~1×10-9M(mol/リットル)の範囲を含み、1×10-6~0.9×10-9、1×10-6~0.9×10-8、1×10-6~0.9×10-7、1×10-7~0.9×10-9、1×10-7~0.9×10-8、及び1×10-8~0.9×10-9M(mol/リットル)等の範囲を含む。
【0119】
[0119]一連の範囲への言及は、その範囲内の異なる範囲の境界の値を組み合わせた範囲も含む。したがって、例示すると、例えば70%~80%、70%~85%、80%~90%、90%~95%及び95%~98%という一連の範囲への言及は、例えば70%~90%、70%~95%、80%~85%、80%~95%、85%~90%、85%~95%及び90%~98%を含む。
【0120】
[0120]単数形の要素への言及は、特に明記されていない限り、「1つのみ」を意味することは意図せず、「1つ又は複数」を意味することを意図する。冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」の使用は、「少なくとも1つ」という語句と同等に解釈される。特に明記されていない限り、「一組」及び「いくつか」という用語は、1つ又は複数を指す。
【0121】
[0121]本開示で使用される「頂部」、「底部」、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」などの用語は、通常の重力基準系ではなく、任意の基準系を指すものとして理解されるべきである。したがって、頂部面、底部面、前面、及び後面は、重力基準系において、上方、下方、斜め、又は水平に延びてもよい。
【0122】
[0122]更に、本明細書で開示されるものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているか否かにかかわらず、一般に公開されることを意図したものではない。「態様」などの語句は、そのような態様が主題技術にとって不可欠であることや、そのような態様が主題技術の全ての構成に適用されることを意味するものではない。ある態様に関する開示は、全ての構成に適用されてもよく、又は1つ又は複数の構成に適用されてもよい。態様などの語句は、1つ又は複数の態様を指すことができ、その逆もできる。「実施形態」などの語句は、そのような実施形態が主題技術にとって不可欠であることや、そのような実施形態が主題技術の全ての構成に適用されることを意味するものではない。ある実施形態に関する開示は、全ての実施形態に適用されてもよく、又は1つ又は複数の実施形態に適用されてもよい。実施形態などの語句は、1つ又は複数の実施形態を指すことができ、その逆もできる。
【0123】
[0123]本明細書において「例示的」という単語は、「例又は説明として機能する」という意味で使用される。本明細書において「例示的」として記載されている態様又は設計は、必ずしも他の態様又は設計よりも好ましい又は有利であると解釈されるものではない。
【0124】
[0124]当業者に公知であるか、又は後に公知となる、本開示を通じて記載される様々な態様の要素に対する構造的及び機能的等価物は全て、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、特許請求の範囲に包含されることが意図される。特許請求の範囲のいかなる要素も、その要素が「の手段」という語句を使用して明示的に記載されていない限り、又は方法請求項の場合は、その要素が「のステップ」という語句を使用して記載されていない限り、米国特許法第112条(f)の規定に基づいて解釈されない。更に、本明細書又は特許請求の範囲において、「含む(include)」、「有する(have)」などの用語が使用されている場合、そのような用語は、特許請求の範囲において経過的な単語として使用される場合に解釈される「含む(comprise)」と同様に、「含む(comprise)」という用語と同様の方法で包括的であることを意図している。
【0125】
[0125]本開示の実施形態が詳細に説明され、図示されてきたが、同様のことは図示及び例示のみの方法によるものであり、限定によってとらえられるものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の条件によってのみ限定されることを明確に理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2024525352000001.app
【国際調査報告】