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特表2024-525354船舶の蒸発ガス再液化システム及び蒸発ガス再液化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】船舶の蒸発ガス再液化システム及び蒸発ガス再液化方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/16 20060101AFI20240705BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B63B25/16 D
F17C13/00 302A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577807
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 KR2021019889
(87)【国際公開番号】W WO2023282415
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0088328
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】ハンファ オーシャン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジュン チェ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウォン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ドン キュ
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB03
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA06
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD01
3E172EA03
3E172EA48
3E172EB02
3E172EB20
3E172HA04
3E172HA08
3E172HA14
(57)【要約】
船舶の蒸発ガス再液化システムが開示される。本発明の船舶の蒸発ガス再液化システムは、船舶に設けられて、液化ガスが貯蔵された貯蔵タンクで発生する蒸発ガスを圧縮する圧縮機と、圧縮機と貯蔵タンクとを接続し、圧縮ガスを再液化して貯蔵タンクに移送する再液化ラインと、再液化ラインに設けられて、供給された圧縮ガスを冷却する熱交換器と、熱交換器で圧縮ガスを冷却した後に排出される冷媒を圧縮する第1冷媒圧縮部と、前記第1冷媒圧縮部で圧縮された冷媒を追加圧縮する第2冷媒圧縮部と、第1及び第2冷媒圧縮部で圧縮された冷媒を膨張させて冷却する媒膨張部とを備える。第1及び第2冷媒圧縮部で圧縮された冷媒を熱交換器で予冷した後、冷媒膨張部で膨張させて冷却し、熱交換器の冷熱源として供給して、第1冷媒圧縮部及び第2冷媒圧縮部の少なくとも一方は、冷媒膨張部から伝達される冷媒の膨張エネルギーで駆動される。
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に設けられて、液化ガスが貯蔵された貯蔵タンクで発生する蒸発ガスを圧縮する圧縮機;と、
前記圧縮機と前記貯蔵タンクとを接続し、前記圧縮機で圧縮された圧縮ガスを再液化させて前記貯蔵タンクに移送する再液化ライン;と、
前記再液化ラインに設けられて、前記圧縮ガスを冷却する熱交換器;と、
前記熱交換器で前記圧縮ガスを冷却した後に前記熱交換器から排出される冷媒を圧縮する第1冷媒圧縮部;と、
前記第1冷媒圧縮部で圧縮された冷媒を追加圧縮する第2冷媒圧縮部;と、
前記第1冷媒圧縮部及び前記第2冷媒圧縮部で圧縮された後に前記熱交換器に供給される冷媒を、膨張させて冷却する冷媒膨張部:とを備え、
前記第1冷媒圧縮部及び前記第2冷媒圧縮部で圧縮された冷媒を前記熱交換器で予冷した後、前記冷媒膨張部で膨張させて冷却し、前記熱交換器に冷熱源として供給して、
前記第1冷媒圧縮部及び前記第2冷媒圧縮部の少なくとも一方は、前記冷媒膨張部から伝達される前記冷媒の膨張エネルギーで駆動されることを特徴とする、
船舶の蒸発ガス再液化システム。
【請求項2】
前記熱交換器は、前記貯蔵タンクから前記圧縮機に供給される未圧縮の蒸発ガス、前記圧縮機で圧縮された圧縮ガス、前記第1冷媒圧縮部及び前記第2冷媒圧縮部で圧縮された冷媒並びに前記冷媒膨張部で膨張させて冷却された冷媒の4つの流れを熱交換させることを特徴とする、
請求項1に記載の船舶の蒸発ガス再液化システム。
【請求項3】
前記第2冷媒圧縮部は、前記冷媒膨張部から伝達される前記冷媒の膨張エネルギーで駆動されて、前記冷媒を圧縮することを特徴とする、
請求項2に記載の船舶の蒸発ガス再液化システム。
【請求項4】
前記第1冷媒圧縮部は、前記冷媒膨張部から伝達される前記冷媒の膨張エネルギーで駆動されて、前記冷媒を圧縮することを特徴とする、
請求項2に記載の船舶の蒸発ガス再液化システム。
【請求項5】
前記第1冷媒圧縮部と第2冷媒圧縮部と冷媒膨張部とが設けられて、前記熱交換器に供給される冷媒を循環させる冷媒循環ライン;と、
前記冷媒循環ラインを循環する冷媒を供給する冷媒インベントリ部:とをさらに備えることを特徴とする、
請求項3または請求項4に記載の船舶の蒸発ガス再液化システム。
【請求項6】
前記冷媒インベントリ部と前記冷媒循環ラインの前記第1冷媒圧縮部の上流とを接続して、前記冷媒循環ラインに冷媒を補充する冷媒供給ライン;と、
前記冷媒循環ラインの前記第2冷媒圧縮部の下流と前記冷媒インベントリ部とを接続して、前記冷媒循環ラインから冷媒を排出させる冷媒排出ライン:とをさらに備えることを特徴とする、
請求項5に記載の船舶の蒸発ガス再液化システム。
【請求項7】
前記再液化ラインを介して再液化される圧縮ガスの量が増加すると、前記冷媒供給ラインを介して前記冷媒循環ラインに冷媒を補充し、再液化される圧縮ガスの量が減少すると、前記冷媒排出ラインを介して前記冷媒循環ラインから冷媒を排出させて、再液化サイクルの負荷を調節することを特徴とする、
請求項6に記載の船舶の蒸発ガス再液化システム。
【請求項8】
前記熱交換器を経由して前記貯蔵タンクと前記圧縮機とを接続する蒸発ガス供給ライン;と、
前記蒸発ガス供給ラインの前記熱交換器の上流から分岐させた後、この分岐点よりも下流の前記蒸発ガス供給ラインの前記熱交換器の上流に合流される蒸発ガスの全部または一部を加熱するプリヒータ;とをさらに備えることを特徴とする、
請求項6に記載の船舶の蒸発ガス再液化システム。
【請求項9】
前記圧縮機で圧縮された蒸発ガスは船舶のエンジンまたは発電機に燃料として供給され、燃料として供給されない蒸発ガスが前記再液化ラインを介して再液化されることを特徴とする、
請求項6に記載の船舶の蒸発ガス再液化システム。
【請求項10】
船舶の貯蔵タンクから発生する蒸発ガスを圧縮機で圧縮し、前記圧縮機で圧縮された圧縮ガスを、熱交換器で冷媒との熱交換により冷却して再液化し、
前記熱交換器で前記圧縮ガスを冷却した後、前記熱交換器から排出される冷媒は、第1冷媒圧縮部及び第2冷媒圧縮部で圧縮され、前記熱交換器で予冷された後、冷媒膨張部で膨張により冷却されて、前記熱交換器に冷熱源として供給されて循環し、
前記第1冷媒圧縮部及び前記第2冷媒圧縮部の少なくとも一方は、前記冷媒膨張部から伝達される前記冷媒の膨張エネルギーで駆動されることを特徴とする、
船舶の蒸発ガス再液化方法。
【請求項11】
前記熱交換器で、前記貯蔵タンクから前記圧縮機に供給される未圧縮の蒸発ガス、前記圧縮機で圧縮された圧縮ガス、前記第1冷媒圧縮部及び前記第2冷媒圧縮部で圧縮された冷媒並びに前記冷媒膨張部で膨張により冷却された冷媒の4つの流れが熱交換されることを特徴とする、
請求項10に記載の船舶の蒸発ガス再液化方法。
【請求項12】
再液化される前記圧縮ガスの量が増加する場合には、冷媒インベントリ部から前記第1冷媒圧縮部の上流に冷媒を補充し、再液化される前記圧縮ガスの量が減少する場合には、前記第2冷媒圧縮部の下流から前記冷媒インベントリ部に冷媒の一部を排出させて、再液化サイクルの負荷を調節することを特徴とする、
請求項10または11に記載の船舶の蒸発ガス再液化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の貯蔵タンクに貯蔵した液化ガスから発生する蒸発ガス(Boil-Off Gas;BOG、ボイルオフガス)を再液化して貯蔵タンクに回収する、蒸発ガスの再液化システム及び蒸発ガス再液化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス(natural gas)は、メタン(methane)が主成分で、燃焼時に環境汚染物質を殆ど排出しないため、環境に優れた燃料として注目されている。液化天然ガス(LNG;Liquefied Natural Gas)は、天然ガスを大気圧で約-163℃まで冷却して液化させて得られるものであり、ガス状態の天然ガスと比べて、その体積が約1/600まで減少するため、海上を通じた遠距離輸送に非常に適している。したがって、天然ガスは、主に貯蔵及び移送が容易な液化天然ガス状態で貯蔵及び移送される。
【0003】
天然ガスの液化点は大気圧で約-163℃の極低温であるため、LNG貯蔵タンクにLNGの液体状態を維持するための断熱処理を施すことが一般的である。しかし、LNG貯蔵タンクに断熱処理を施しても、外部熱を遮断するのには限界があり、外部熱がLNG貯蔵タンクに持続的に伝達されることで、LNG輸送の過程でLNGがLNG貯蔵タンク内で持続的に自然気化して蒸発ガス(BOG;Boil-Off Gas、ボイルオフガス)が発生する。
【0004】
LNG貯蔵タンクで蒸発ガスが持続的に生成されると、LNG貯蔵タンクの内圧を上昇させる原因となる。貯蔵タンクの内圧が設定した安全圧力以上になると、タンク破損(rupture)などの緊急事態を起こす虞があるため、安全バルブを利用して蒸発ガスを貯蔵タンクの外部に排出させる必要がある。しかし、蒸発ガスはLNG損失の1つとしてLNGの輸送効率及び燃料効率において重要な問題であるため、貯蔵タンクで発生する蒸発ガスを処理する様々な方法が用いられている。
【0005】
近年、蒸発ガスを船舶のエンジンなどの燃料需要先で使用する方法、蒸発ガスを再液化させて貯蔵タンクに回収する方法、またはこれら2つの方法を組合せて使用する方法などが開発され、適用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
船舶で蒸発ガスを再液化するために再液化サイクルを適用する場合、代表的な液化方法としては、例えばSMRサイクルやC3MRサイクルを用いた工程がある。C3MRサイクル(Propane-precooled Mixed Refrigerant Cycle)は、天然ガスをプロパンの単一冷媒を用いて冷却した後、混合冷媒を用いて液化及び過冷却する工程である。SMRサイクル(Single Mixed Refrigerant Cycle)は、複数の成分で構成される混合冷媒を用いて天然ガスを液化する工程である。
【0007】
これらのSMRサイクルやC3MRサイクルは混合冷媒を用いる工程があり、液化工程の進行に伴って冷媒の漏出が発生し、混合冷媒の組成比が変化することで液化効率が低下する。このため、混合冷媒の組成比を連続的に計測しながら、不足した冷媒成分を充填することで、冷媒の組成を維持する必要がある。
【0008】
蒸発ガスを再液化する再液化サイクルの他の方法としては、窒素冷媒を用いたシングルサイクル液化工程がある。
【0009】
窒素冷媒は、混合冷媒を用いたサイクルと比較して冷却効率は低いが、冷媒が不活性の物質であるため安全性が高く、また冷媒の相変化がないことから、船舶に適用し易いという利点がある。
【0010】
本発明は、別途の冷媒を利用する再液化サイクルにおいて、再液化する蒸発ガスが低流量から高流量に変化しても、制約なく装置を構成することができ、再液化システムの負荷を円滑に調節できるシステムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、船舶に設けられて、液化ガスが貯蔵された貯蔵タンクで発生する蒸発ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機と前記貯蔵タンクとを接続し、前記圧縮機で圧縮された圧縮ガスを再液化させて前記貯蔵タンクに移送する再液化ラインと、前記再液化ラインに設けられて、供給された前記圧縮ガスを冷却する熱交換器と、前記熱交換器で前記圧縮ガスを冷却した後に前記熱交換器から排出される冷媒を圧縮する第1冷媒圧縮部と、前記第1冷媒圧縮部で圧縮された冷媒を追加圧縮する第2冷媒圧縮部と、前記第1冷媒圧縮部及び前記第2冷媒圧縮部で圧縮された後に前記熱交換器に供給される冷媒を、膨張させて冷却する冷媒膨張部とを備え、前記第1冷媒圧縮部及び前記第2冷媒圧縮部で圧縮された冷媒を前記熱交換器で予冷した後、前記冷媒膨張部で膨張させて冷却し、前記熱交換器に冷熱源として供給して、前記第1冷媒圧縮部及び前記第2冷媒圧縮部の少なくとも一方は、前記冷媒膨張部から伝達される前記冷媒の膨張エネルギーで駆動されることを特徴とする、船舶の蒸発ガス再液化システムが提供される。
【0012】
また、前記熱交換器は、前記貯蔵タンクから前記圧縮機に供給される未圧縮の蒸発ガス、前記圧縮機で圧縮された圧縮ガス、前記第1冷媒圧縮部及び前記第2冷媒圧縮部で圧縮された冷媒並びに前記冷媒膨張部で膨張させて冷却された冷媒の4つの流れを熱交換させることが好ましい。
【0013】
また、前記第2冷媒圧縮部は、前記冷媒膨張部から伝達される前記冷媒の膨張エネルギーで駆動されて、前記冷媒を圧縮することが好ましい。
【0014】
また、前記第1冷媒圧縮部は、前記冷媒膨張部から伝達される前記冷媒の膨張エネルギーで駆動されて、前記冷媒を圧縮することが好ましい。
【0015】
また、前記第1冷媒圧縮部と第2冷媒圧縮部と冷媒膨張部とが設けられて、前記熱交換器に供給される冷媒を循環させる冷媒循環ラインと、前記冷媒循環ラインを循環する冷媒を供給する冷媒インベントリ部:とをさらに備えることが好ましい。
【0016】
また、前記冷媒インベントリ部と前記冷媒循環ラインの前記第1冷媒圧縮部の上流とを接続して、前記冷媒循環ラインに冷媒を補充する冷媒供給ラインと、前記冷媒循環ラインの前記第2冷媒圧縮部の下流と前記冷媒インベントリ部とを接続して、前記冷媒循環ラインから冷媒を排出させる冷媒排出ラインとをさらに備えることが好ましい。
【0017】
また、前記再液化ラインを介して再液化される圧縮ガスの量が増加すると、前記冷媒供給ラインを介して前記冷媒循環ラインに冷媒を補充し、再液化される圧縮ガスの量が減少すると、前記冷媒排出ラインを介して前記冷媒循環ラインから冷媒を排出させて、再液化サイクルの負荷を調節することが好ましい。
【0018】
また、前記熱交換器を経由して前記貯蔵タンクと前記圧縮機とを接続する蒸発ガス供給ライン;と、前記蒸発ガス供給ラインの前記熱交換器の上流から分岐させた後、この分岐点よりも下流の前記蒸発ガス供給ラインの前記熱交換器の上流に合流される蒸発ガスの全部または一部を加熱するプリヒータ;とをさらに備えることが好ましい。
【0019】
また、前記圧縮機で圧縮された蒸発ガスは船舶のエンジンまたは発電機に燃料として供給され、燃料として供給されない蒸発ガスが前記再液化ラインを介して再液化されることが好ましい。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明は、船舶の貯蔵タンクから発生する蒸発ガスを圧縮機で圧縮し、前記圧縮機で圧縮された圧縮ガスを、熱交換器で冷媒との熱交換により冷却して再液化し、前記熱交換器で前記圧縮ガスを冷却した後、前記熱交換器から排出される冷媒は、第1冷媒圧縮部及び第2冷媒圧縮部で圧縮され、前記熱交換器で予冷された後、冷媒膨張部で膨張により冷却されて、前記熱交換器に冷熱源として供給されて循環し、前記第1冷媒圧縮部及び前記第2冷媒圧縮部の少なくとも一方は、前記冷媒膨張部から伝達される前記冷媒の膨張エネルギーで駆動されることを特徴とする、船舶の蒸発ガス再液化方法が提供される。
【0021】
また、前記熱交換器で、前記貯蔵タンクから前記圧縮機に供給される未圧縮の蒸発ガス、前記圧縮機で圧縮された圧縮ガス、前記第1冷媒圧縮部及び前記第2冷媒圧縮部で圧縮された冷媒並びに前記冷媒膨張部で膨張により冷却された冷媒の4つの流れが熱交換されることが好ましい。
【0022】
また、再液化される前記圧縮ガスの量が増加する場合には、冷媒インベントリ部から前記第1冷媒圧縮部の上流に冷媒を補充し、再液化される前記圧縮ガスの量が減少する場合には、前記第2冷媒圧縮部の下流から前記冷媒インベントリ部に冷媒の一部を排出させて、再液化サイクルの負荷を調節することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、別途の冷媒を利用する再液化サイクルにおいて、再液化する蒸発ガスが低流量から高流量または交流量から定流量に変化する場合でも、制約なく装置を構成することができ、低容量の設計が可能であり、大容量の冷媒サイクルが必要な場合には、各装置をサイズが大きいものと夫々交換するかまたは並列に構成することで、容量を増加させることができる。船舶で要求される冗長性(redundancy、二重設計)を装置ごとに選択的に考慮することができるため、費用を低減することができる。また、冷媒膨張部の冷媒膨張エネルギーを冷媒の圧縮に利用することで、冷媒の圧縮に必要な電力消費を低減させることができる。
【0024】
さらに、再液化システムの冷熱必要量に応じて冷媒を補充または排出させながら、再液化サイクルの負荷を円滑に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態の船舶の蒸発ガス再液化システムを概略的に示す。
図2】本発明の第2実施形態の船舶の蒸発ガス再液化システムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の動作上の利点及び本発明の実施形態によって達成される目的を説明するため、本発明の実施形態を添付図面と添付図面に記載の内容を参照する。
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について、その構成と作用とを詳細に説明する。ここで、各図面の構成要素の参照符号は、同一の構成要素については、他の図面上に表示されるものも可能な限り同一の符号で表記したことに留意されたい。
【0028】
後述する本発明の実施形態の船舶には、液化ガスを貯蔵する貯蔵タンクが設けられる全種類の船舶が含まれる。代表的には、LNG運搬船(LNG Carrier)、LNG燃料船(LNG Bunkering vessel)、液体水素運搬船、LNG再ガス化船(LNG Regasification Vessel)などの自走能力を備えた船舶をはじめ、LNG FPSO(Floating Production Storage Offloading)、LNG FSRU(Floating Storage Regasification Unit)などの推進能力を有しない海上浮遊式の海上構造物も含まれる。
【0029】
また、本実施形態は、ガスを低温に液化して輸送することができ、貯蔵状態で蒸発ガスが発生する全種類の液化ガスの再液化サイクルに適用することができる。前記液化ガスには、例えば、LNG(Liquefied Natural Gas)、LEG(Liquefied Ethane Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、液化エチレンガス(Liquefied Ethylene Gas)、液化プロピレンガス(Liquefied Propylene Gas)などの液化石油化学ガスがある。ただし、後述する実施形態では代表的な液化ガスの1つであるLNGの適用を例に説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態の船舶の蒸発ガス再液化システムを概略的に示す。図2は、本発明の第2実施形態の船舶の蒸発ガス再液化システムを概略的に示す。
【0031】
本実施形態の再液化システムは、船舶の貯蔵タンクTに貯蔵された液化ガスから発生する蒸発ガスが圧縮及び冷却されて再液化され、貯蔵タンクに戻される。再液化システムは、蒸発ガスを圧縮する圧縮機100、圧縮機100で圧縮された蒸発ガスを冷却する熱交換器200を備える。なお、図示してないが、熱交換器200で冷却された蒸発ガスを減圧する減圧装置(図示せず)や、減圧装置で減圧された蒸発ガスを気液分離する気液分離器(図示せず)などをさらに備える。
【0032】
圧縮機100は、蒸発ガス供給ラインGLを介して貯蔵タンクTから排出された蒸発ガスを圧縮する。圧縮機100は、船舶のエンジンまたは発電機(図示せず)などの燃料供給圧力まで蒸発ガスを圧縮する。例えば、DFエンジンが設けられる場合には5.5barg、X-DFエンジンが設けられる場合には15barg、ME-GIエンジンが設けられる場合には300bargの圧力まで蒸発ガスを圧縮する。圧縮された蒸発ガスは、船舶のエンジンまたは発電機(図示せず)の燃料として供給される。また、燃料として供給されない蒸発ガスは、再液化ラインRLを介して熱交換器200へ供給され冷却されて再液化される。
【0033】
熱交換器200で冷却された蒸発ガスは、減圧装置(図示せず)で減圧により断熱膨張または等エントロピー膨張して、さらに冷却された後、気液分離器(図示せず)で気液分離されて貯蔵タンクに回収される。
【0034】
停止していた再液化システムを稼動したばかりの始動初期の常温状態である熱交換器200や、十分なクールダウン(cool-down)が行われる前の熱交換器200に、貯蔵タンクTから-130℃~-100℃程の極低温の蒸発ガスをそのまま供給すると、相当の熱応力(thermal stress)が加わり、熱交換器200の装置損傷を引き起こす虞がある。本実施形態では、これを防止するため、蒸発ガス供給ラインGLの熱交換器200の上流で蒸発ガスの全部または一部を分岐させて、これを加熱した後、蒸発ガス供給ラインGLの熱交換器の上流に供給する分岐ラインを設けると共に、前記分岐ラインに蒸発ガスを加熱するプリヒータ(preheater)300を設けた。これにより、熱交換器200に加わる熱応力を最小限に抑え、装置損傷を防止する。
【0035】
再液化システムの正常稼働時であっても、貯蔵タンクTの状態が変化して蒸発ガスの温度が変化することで、熱交換器200に熱応力が発生する虞がある場合には、必要に応じて、貯蔵タンクTから圧縮機100に供給される蒸発ガスの全部または一部をプリヒータ300で加熱した後、熱交換器200に供給してもよい。
【0036】
冷媒サイクルは、このように熱交換器200で蒸発ガスを冷却する冷媒が循環する構成である。本実施形態の熱交換器200は、冷媒サイクルを循環する各冷媒CLa,CLbと、貯蔵タンクTから圧縮機100に供給される未圧縮の蒸発ガスGLを冷熱源として、圧縮蒸発ガスRLを冷却する。
【0037】
各冷媒循環ラインCLa,CLbを循環して熱交換器200に供給される冷媒としては、例えば、窒素(N)がある。
【0038】
冷媒サイクルは、冷媒が循環する各冷媒循環ラインCLa,CLbと、各冷媒循環ラインCLa,CLbに夫々設けられて、熱交換器200で蒸発ガスを冷却した後、熱交換器200から排出される冷媒を圧縮する第1冷媒圧縮部400a,400b及び追加圧縮する第2冷媒圧縮部450a,450bと、これら第1及び第2冷媒圧縮部で圧縮された後、熱交換器200で冷却された冷媒を、膨張により冷却させて熱交換器200の冷熱源として供給する冷媒膨張部500a,500bとを備える。第1冷媒圧縮部400a,400b及び第2冷媒圧縮部450a,450bで圧縮された冷媒は、熱交換器200で予冷された後、冷媒膨張部500a,500bで膨張により冷却されて熱交換器200の冷媒として循環される。このため、熱交換器200では、圧縮機100で圧縮された圧縮ガス、圧縮機100に供給される未圧縮の蒸発ガス、冷媒膨張部500a,500bで膨張により冷却された冷媒及び、第1冷媒圧縮部400a,400b及び第2冷媒圧縮部450a,450bで圧縮された冷媒の4つの流れが熱交換される。
【0039】
本実施形態では、第1冷媒圧縮部400a,400b及び第2冷媒圧縮部450a,450bの少なくとも一方と冷媒膨張部500a,500bとが軸接続されて、冷媒の膨張エネルギーを冷媒の圧縮に利用することができる。
【0040】
図1に示す第1実施形態では、第1冷媒圧縮部400aで圧縮された冷媒を追加圧縮する第2冷媒圧縮部450aが、冷媒膨張部500aから冷媒の膨張エネルギーが伝達されて駆動される。第1冷媒圧縮部400aは、外部からのエネルギー、すなわち電力が供給されて駆動される。また、第1冷媒圧縮部400aは、必要に応じて、複数の圧縮機410a,420aを備えてもよい。
【0041】
このように外部の電力で駆動される第1冷媒圧縮部400aと、冷媒膨張部の冷媒膨張エネルギーで駆動される第2冷媒圧縮部450aとを分離して構成することで、低容量の設計が可能であり、大容量の冷媒サイクルが必要な場合には、各装置をサイズが大きいものと夫々交換するかまたは並列に構成することで、容量を増加させることができる。船舶で要求される冗長性(redundancy、二重設計)を装置ごとに選択的に考慮することができるため、費用を低減することができる。また、冷媒膨張部500aの冷媒膨張エネルギーを冷媒の圧縮に利用することで、冷媒の圧縮に必要な電力消費を低減させることができる。
【0042】
図2に示す第2実施形態では、冷媒膨張部500bで膨張により冷却され、熱交換器200の冷熱源として使用された後に熱交換器200から排出される冷媒は、冷媒膨張部500bから冷媒膨張エネルギーが伝達されて駆動される第1冷媒圧縮部400bに供給されて圧縮された後、外部エネルギーで駆動される第2冷媒圧縮部450bで追加圧縮され、熱交換器200に供給されて予冷される。予冷された冷媒は、冷媒膨張部500bで膨張により冷却され、再び熱交換器200の冷熱源として供給されて循環する。冷媒膨張部500bが第1冷媒圧縮部400bに冷媒の膨張エネルギーを伝達する点で第1実施形態のシステムと相違する。第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、低容量設計が可能であり、大容量の冷媒サイクルが必要な場合には、各装置のサイズを夫々大きくしたものと交換するかまたは並列に構成することで、容量を増加させることができる。
【0043】
また、本実施形態は、冷媒循環ラインCLa,CLbを循環する冷媒が供給される冷媒インベントリ部RSを備えている。また、冷媒インベントリ部RSと冷媒循環ラインの第1冷媒圧縮部400a,400bの上流とを接続して、冷媒循環ラインCLa,CLbに冷媒を補充する冷媒供給ラインSLa,SLbと、冷媒循環ラインCLa,CLbの第2冷媒圧縮部450a,450bの下流と冷媒インベントリ部RSとを接続して、冷媒循環ラインCLa,CLbの冷媒を排出させる冷媒排出ラインELa,ELbとが設けられている。
【0044】
冷媒インベントリ部RSから冷媒を補充し、または冷媒の一部を冷媒インベントリ部RSに排出させて、冷媒の質量流量を変化させることで、冷媒循環ラインCLa,CLbの冷熱量を調節し、再液化サイクルの負荷を調節することができる。
【0045】
より具体的には、再液化ラインRLを介して再液化される圧縮ガスの量が増加することで、再液化サイクルの冷熱必要量が増加する場合に、冷媒供給ラインSLa,SLbを介して第1冷媒圧縮部400a,400bの上流(低圧部)に冷媒循環ラインCLa,CLbの冷媒を補充することで、冷媒循環ラインCLa,CLbを循環する冷媒の質量流量を増やすことができる。逆に、再液化される圧縮ガスの量が減少することで、再液化サイクルの冷熱必要量が減少する場合に、冷媒排出ラインELa,ELbを介して第2冷媒圧縮部450a,450bの下流(高圧部)から冷媒循環ラインCLa,CLbの冷媒の一部を冷媒インベントリ部RSに排出させることで、冷媒循環ラインCLa,CLbを循環する冷媒の質量流量を減らすことができる。このような方法により、再液化サイクルの負荷(load)が調節される。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の技術的要旨を超えない範囲内で様々な変更または変形ができることは、本発明が属する技術分野の当業者にとって自明である。
図1
図2
【国際調査報告】