(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】架橋性化合物組成物を製造する高温低スコーチ方法及びそれによって製造される組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 3/20 20060101AFI20240705BHJP
B29B 9/06 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CES
B29B9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578100
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 US2022036211
(87)【国際公開番号】W WO2023287619
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】モハメド エセギール
(72)【発明者】
【氏名】ニール ダブリュ.ダンチャス
(72)【発明者】
【氏名】コウ チエン
(72)【発明者】
【氏名】サウラブ エス.セングプタ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー エム.コーゲン
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AC37
4F070AC38
4F070AC46
4F070AC48
4F070AC50
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4F070AC66
4F070AE03
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4F070FC06
4F201AA03
4F201AB06
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC13
4F201BL08
(57)【要約】
架橋性化合物組成物を製造する高温の低スコーチ(スコーチなしを含む)方法であって、方法が、120.0℃~150.0℃の温度で一次流を溶融配合することであって、一次流が、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィン及び1つ以上の酸化防止剤を含むが、過酸化物及び架橋助剤からなる群から選択される硬化性添加剤を欠く、溶融配合することと、1つ以上の有機過酸化物及び1つ以上の架橋助剤を含む硬化性添加剤の組合せを配合された溶融物に注入し、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィン、1つ以上の酸化防止剤、1つ以上の有機過酸化物、及び1つ以上の架橋助剤を、それらを一緒に溶融配合することによって均一に混合することと、を含む方法が提供される。また、架橋された化合物組成物及び製造物品の製造方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性化合物組成物を製造する高温低スコーチ方法であって、前記方法が、
1つ以上の有機過酸化物及び1つ以上の架橋助剤を含む硬化性添加剤の組合せを、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンポリマー及び1つ以上の酸化防止剤を含むが、前記1つ以上の硬化性添加剤を含まない中間体化合物の溶融物に注入することであって、前記溶融物が、120.0℃~150.0℃の温度である、注入することと、
前記硬化性添加剤を前記溶融物中に60秒未満で迅速に混合して、前記架橋性化合物組成物を、前記1つ以上の熱可塑性ポリオレフィン、前記酸化防止剤、及び前記硬化性添加剤の均質な混合物として製造することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記架橋性化合物組成物が、
ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、最小トルク(「ML」)からの1フィートポンド-インチ(lbf-in)又は1.13デシニュートン-メートル(dN-m)の増加に140℃で必要な時間として報告される、140℃で少なくとも50分のスコーチ時間(ts1)と、
ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、182℃で最小トルク(「ML」)よりも少なくとも1.92デシニュートン-メートル(dN-m;少なくとも1.70lbf-inに等しい)高い182℃での最大トルク(MH)と、を有し、182℃におけるMHは、少なくとも2.09dN-m(1.85lbf-in)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記架橋性化合物組成物を5分未満で100℃以下の温度に冷却することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、溶融配合装置及びその下流の加工システムを含む溶融配合ラインを使用して架橋性化合物組成物を連続的に製造する高温低スコーチ方法であり、前記溶融配合装置が、調製ゾーン、注入ゾーン、及び混合ゾーンを有し、前記調製ゾーンが、中間体化合物の溶融流を連続的に調製し、前記溶融流を注入ゾーンに移動させるように構成され、前記注入ゾーンが、前記中間体化合物の前記溶融流を連続的に受けるための注入ポイントを有し、前記注入ゾーン内の前記中間体化合物の前記溶融流に添加剤を連続的に注入するための1つ以上の注入ポイントを有し、前記混合ゾーンが、前記中間体化合物の前記溶融流に前記注入された添加剤を60秒以下で迅速に均質化するために構成された1つ以上の混合要素を有し、前記混合ゾーンが、前記注入ゾーンと同じであっても、前記注入ゾーンの下流であってもよく、前記方法が、
(A)120.0℃~150.0℃の温度で、中間体化合物の溶融流を、前記供給ポイントを介して前記溶融配合装置の前記注入ゾーンに連続的に供給することであって、
前記中間体化合物の前記溶融流が、
1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンポリマーの溶融物と、
1つ以上の酸化防止剤と、の混合物を含むが、
有機過酸化物及び架橋助剤からなる群から選択される1つ以上の硬化性添加剤を含まない、連続的に供給することと、
(B)1つ以上の有機過酸化物と1つ以上の架橋助剤とを含む硬化性添加剤の組合せを、前記1つ以上の注入ポイントのうちの少なくとも1つを介して、前記溶融配合装置の前記注入ゾーン内の前記中間体化合物の前記溶融流に連続的に注入することと、
(C)前記中間体化合物の前記溶融流と前記注入された硬化性添加剤の組合せとを溶融配合することによって60秒以下で迅速に均質化して、前記架橋性化合物組成物を製造することと、
(D)前記架橋性化合物組成物の流れを前記溶融配合装置から前記加工システムに連続的に排出することであって、前記硬化性添加剤の組合せが、60秒以下の前記溶融配合装置内での滞留時間を有し、
前記架橋性化合物組成物が、
前記1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンポリマーと、
前記1つ以上の酸化防止剤と、
前記1つ以上の有機過酸化物と、
前記1つ以上の架橋助剤と、を含み、
前記架橋性化合物組成物が、
ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、最小トルク(「ML」)からの1フィートポンド-インチ(lbf-in)又は1.13デシニュートン-メートル(dN-m)の増加に140℃で必要な時間として報告される、140℃で少なくとも50分のスコーチ時間(ts1)と、
ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、182℃で最小トルク(「ML」)よりも少なくとも1.92デシニュートン-メートル(dN-m;少なくとも1.70lbf-inに等しい)高い182℃での最大トルク(MH)と、を有し、182℃におけるMHが、少なくとも2.09dN-m(1.85 lbf-in)である、連続的に排出することと、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(D)の後に、加工工程(E)(i)又は工程(E)(II)を含み、E(i)において、前記加工システムが、冷却装置及び前記冷却装置と同じであっても異なっていてもよいペレット化装置を含み、工程(E)(i)が、前記架橋性化合物組成物を冷却及びペレット化して、その固体ペレットを製造することを含む、又は(E)(ii)において、前記加工システムが、環状のコーター装置及び硬化装置を含み、工程(E)(ii)が、導体を前記架橋性化合物組成物でコーティングして、コーティングされた導体を製造することと、前記コーティングを硬化させて、前記導体と、前記導体を少なくとも部分的に取り囲む絶縁層とを含むケーブルを製造することとを含み、前記絶縁層が、それから製造された架橋化合物組成物を含み、絶縁体が、前記導体と直接接触しているか、又は1つ以上の介在層を介して間接的に接触している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記注入工程の前に、前記中間体化合物のペレットを溶融するか、又は前記1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンを含むが1つ以上の酸化防止剤のうちの少なくとも1つを含まないペレットを溶融するかのいずれかによって、前記中間体化合物の前記溶融流を調製し、前記溶融した熱可塑性ポリオレフィンを前記1つ以上の酸化防止剤のうちの少なくとも1つと混合することを含む、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記硬化性添加剤の組合せを連続的に注入する前記工程(B)の前に、前記方法が、
前記中間体化合物の前記溶融流を溶融ポンプを通してポンプ輸送して、加圧溶融流を製造することと、
次いで、前記中間体化合物の前記溶融流に前記硬化性添加剤の組合せを注入するための前記1つ以上の注入ポイントの全ての上流にある第1の溶融スクリーンを通して、前記中間体化合物の前記加圧溶融流を溶融スクリーニングすることと、を更に含み、
前記溶融ポンプ及び第1の溶融物スクリーンが、前記溶融配合装置の前記注入ゾーンの前記注入ポイントの全ての上流に位置している、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
任意の注入ポイントの上流のポイントで、第2の熱可塑性ポリオレフィンポリマーを前記中間体化合物の前記溶融流に添加することと、
前記第2の熱可塑性ポリオレフィンポリマーと前記中間体化合物とを溶融配合することと、を更に含む。好ましくは、添加される前記第2の熱可塑性ポリオレフィンポリマーの、前記中間体化合物の前記溶融流中の前記熱可塑性ポリオレフィンポリマーの重量に対する重量比が、1:1~1:4の範囲である、請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記硬化性添加剤の組合せを前記中間体化合物の前記溶融流に注入するための前記1つ以上の注入ポイントが、以下の注入ポイント(i)~(ix):
(i)前記溶融配合装置の前記混合ゾーンが分配又は混練セクションを有する場合に、前記溶融配合装置の下流端の前記分配混合セクション又は前記混練セクションにある前記1つ以上の注入ポイント、
(ii)供給工程(A)の下流の注入ゾーンの供給ポイントの下流の注入ポイントにおけるもの、
(iii)前記溶融配合装置が、第2の溶融スクリーン及び別個の溶融ポンプを順次備える場合に、前記第2の溶融スクリーンの下流かつ前記別個の溶融ポンプの上流にある1つ以上の注入ポイント、
(iv)前記溶融配合装置が、第2の溶融スクリーン、別個の溶融ポンプ、及び第2の溶融ポンプを順次備える場合に、前記別個の溶融ポンプと前記第2の溶融ポンプとの間に位置する1つ以上の注入ポイント、又は
(v)注入ポイント(i)及び(ii)の組合せ、
(vi)注入ポイント(i)及び(iii)の組合せ、
(vii)注入ポイント(i)及び(iv)の組合せ、
(viii)注入ポイント(i)~(iv)のいずれか3つの組合せ、又は
(ix)注入ポイント(i)~(iv)の各々の組合せ、のうちのいずれか1つ以上を含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
以下の制限(i)~(vii):
(i)前記1つ以上の酸化防止剤が、2つ以上の酸化防止剤、好ましくは2つ又は3つの酸化防止剤の混合物を含むか、又は、前記1つ以上の架橋助剤が、アルケニル基含有単環式オルガノシロキサンを含むか、又は前記1つ以上の酸化防止剤が、2つ以上の酸化防止剤、好ましくは2つ又は3つの酸化防止剤の混合物を含み、前記1つ以上の架橋助剤が、アルケニル基含有単環式オルガノシロキサンを含む、
(ii)前記1つ以上の架橋助剤が、式(I):
[R
1,R
2SiO
2/2]
n (I)
のアルケニル基含有単環式オルガノシロキサンを含む
[式中、下付き文字nは3以上の整数であり、各R
1は独立して、(C
2~C
4)アルケニル又はH
2C=C(R
1a)-C(=O)-O-(CH
2)
m-であり、式中、R
1aはH又はメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各R
2は独立して、H、(C
1~C
4)アルキル、フェニル、又はR
1と同じである]、
(iii)前記1つ以上の有機過酸化物が、ジクミルペルオキシド又はクミル基含有過酸化物を含む、
(iv)制限(i)及び(ii)の両方、
(v)制限(i)及び(iii)の両方、
(vi)制限(ii)及び(iii)の両方、
(vii)制限(i)~(iii)の各々、のうちのいずれか1つを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
1つの熱可塑性ポリオレフィンが存在し、前記熱可塑性ポリオレフィンが、ASTM D792に従って測定する場合に0.87g/cm
3~0.94g/cm
3の範囲の密度、及びASTM D1238に従って決定し、10分当たりに溶出したグラムで報告される場合に190℃/2.16kgで0.5g/10分~20g/10分のメルトインデックス(I
2)を有し、又は
前記1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンポリマーが、前記1つ以上の熱可塑性ポリエチレンポリマーを含み、好ましくは、前記1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンの各々が、ポリエチレンホモポリマー、エチレン/1-ブテンコポリマー、エチレン/1-ヘキセンコポリマー、及びエチレン/1-オクテンコポリマーからなる群から独立して選択され、より好ましくは、前記1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンの各々が、ASTM D792に従って測定される場合に0.87g/cm
3~0.94g/cm
3の範囲の密度、及び190℃/2.16kgでASTM D1238に従って決定される場合に0.5g/10分~20g/10分のメルトインデックス(I
2)を有する低密度ポリエチレンポリマーを含む群から独立して選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記架橋性化合物組成物が、ICEA T-28-562aに従って試験することによって、130%未満の200℃における高温クリープ伸びを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記架橋性化合物組成物をサンプリングして、その少なくとも1つの試料を得ることと、
前記の試料を用いて、ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、最小トルク(「ML」)からの1フィートポンド-インチ(lbf-in)又は1.13デシニュートン-メートル(dN-m)の増加に140℃で必要な時間として報告される、140℃で少なくとも50分のスコーチ時間(ts1)を測定することと、
前記試料を用いて、ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、182℃で最小トルク(「ML」)よりも少なくとも1.92デシニュートン-メートル(dN-m;少なくとも1.70lbf-inに等しい)高い182℃での最大トルク(MH)、
182℃におけるMHが、少なくとも2.09dN-m(1.85 lbf-in)であることを測定することと、を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記架橋性化合物組成物の溶融物を成形して成形された架橋性化合物組成物を形成すること、好ましくは前記架橋性化合物組成物の溶融物を導電性コアを被覆する絶縁層として押し出すことと、
前記成形された架橋性化合物組成物を硬化させて架橋された化合物組成物を含む製造物品を製造すること、好ましくは前記絶縁層を硬化させて前記導電性コア及び架橋された絶縁層を含む電力ケーブルを製造することと、を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
以下の制限(a)~(g):(a)前記方法において使用される前記溶融配合装置が、インターナルミキサー又はスクリュー押出機であること、(b)前記方法が、前記急速均質化工程(C)の間又はその前に、前記中間体化合物の溶融物を120℃以上の温度から120℃未満の温度に能動的に冷却する工程、又は受動的に冷却させる工程を使用しないこと、(c)前記方法が、独立して、0重量%~0.10重量%未満の化合物(i)~(vi):(i)モンモリロナイト、(ii)ヒドロペルオキシド、(iii)N-ニトロソ-ジアリールアミン、(iv)マレイミド、(v)イミン化合物、及び(vi)ヒドロキノンのいずれか1つを有する(ここで、各重量%が、前記中間体化合物及び前記硬化性添加剤の組合せの総重量に基づく)こと、(d)制限(a)及び(b)の両方、(e)制限(a)及び(c)の両方、(f)制限(b)及び(c)の両方、又は制限(a)、(b)、及び(c)の各々のうちの1つ以上を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、熱可塑性ポリオレフィン及び添加剤を含む架橋性化合物組成物を製造する方法、並びにそれによって製造される組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
熱可塑性ポリエチレン(TPE)などの熱可塑性ポリオレフィン(TPO)は、特定のTPOに応じて、本明細書では広義に110℃~190℃の温度を意味する「高温」で溶融及び流動するポリマー炭化水素である。架橋性化合物組成物は、TPOと、フリーラジカル架橋を開始するか、又はそれによって形成される架橋の濃度(架橋密度と呼ばれることもある)を増加させる化合物である、酸化防止剤、充填剤、着色剤、及び硬化剤などの添加剤と、を含む。「架橋性」であるという特徴は、架橋性化合物組成物の試料をプラークに圧縮成形し、最大トルク(MH)を測定することによって決定することができる。本発明者らは、「架橋性」化合物組成物を、ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって測定される場合に、182℃で少なくとも2.09dN-m(1.85lbf-in)、好ましくは少なくとも2.26dN-m(2.0lbf-in)の最大トルク(MH)を有するものとして定義する。
【0003】
スコーチは、架橋性化合物組成物を製造するための添加剤とのTPOの予備溶融加工中のTPOの早期架橋である。組成物のスコーチに対する感受性は、架橋性化合物組成物の試料をプラークに圧縮成形し、スコーチの開始までの時間を測定することによって検出及び測定することができる。本発明者らは、「低スコーチ」を、ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、最小トルク(「ML」)からの1単位(インチ-lb)又は1.13デシニュートン-メートル(dN-m)の増加に必要な時間として報告される、140℃で少なくとも50分、あるいは少なくとも60分、好ましくは少なくとも65分のスコーチ時間(ts1)と定義する。本発明者らは、「スコーチなし」を、140℃で150分を超えるスコーチ時間(ts1)を有するものとして定義し、ここで、140℃でのスコーチ時間(ts1)は、本明細書に記載されるように測定される。
【0004】
スコーチは産業上の問題である。それは、最終的に、製造された物品に欠陥を作り出す。欠陥としては、亀裂、ゲル、又は空隙が挙げられる場合があり、製造された物品の機械的故障につながり得る。例えば、中電圧(MV)、高電圧(HV)、又は超高電圧(EHV)電力ケーブルなどの電力ケーブル内の導電性コアを被覆する絶縁層を製造するために使用される架橋性化合物組成物が、予備溶融加工中にスコーチを受ける場合、絶縁層は、最終的に小さな亀裂、空隙、又はゲルとなる場合がある。これは、電力ケーブルの早期故障を引き起こす可能性がある。
【0005】
したがって、添加剤を有するTPOの予備溶融加工中にスコーチによって引き起こされる欠陥を防止又は最小限にするために、架橋性化合物組成物を製造するために当技術分野において使用される方法は、(a)TPOの溶融物を、硬化性添加剤ではなく、酸化防止剤、充填剤、及び着色剤などの添加剤と溶融配合して、硬化性添加剤を含まない中間溶融物を製造する工程と、(b)中間溶融物をペレット化する工程と、(c)ペレットを硬化性添加剤(例えば、有機過酸化物及び架橋助剤)に50℃~90℃の温度で1時間~24時間(すなわち、TPOの溶融温度未満及び有機過酸化物の分解温度未満)浸漬して、架橋性化合物組成物をペレットとして得る工程と、(d)架橋性化合物組成物を溶融する工程と、(e)溶融物を押出成形して製造物品に成形する工程と、(f)押出成形された成形物品を硬化させる工程と、を含む。
【0006】
電気ケーブル絶縁体を製造するための既知の方法は、ポリオレフィンベース樹脂を溶融配合して酸化防止剤などの添加剤を組み込んで配合材料を製造し、配合材料を濾過し、次いでペレット化してフリーラジカル開始剤(架橋開始剤とも呼ばれる)を含まない中間体ペレット化合物を製造し、続いて「浸漬」塔内でフリーラジカル開始剤を中間体化合物ペレットに含浸又は浸漬してフリーラジカル開始剤をその中に組み込んでケーブル絶縁体製造用化合物を製造することを含む。この方法は、少なくとも配合機及び浸漬塔を必要とし、ケーブル絶縁体製造用化合物は、下流のケーブル製造業者がケーブル自体を製造するときに架橋するペレットの形態の架橋性化合物(熱可塑性架橋性化合物とも呼ばれる)を含む。したがって、中間顆粒又はそのペレットを適切な温度(例えば、70℃程度)にし、次いでフリーラジカル開始剤を組み込むことは、それらを中間ペレットと物理的に混合するために浸漬することを含む。得られた完全に配合された顆粒又はペレットを、フリーラジカル開始剤が顆粒又はペレット中に拡散する適切な温度で、ペレットの表面が乾燥するまで数時間にわたって浸漬する。ペレット中のフリーラジカル開始剤の均一な分布を達成するために、包装容器中で追加の浸漬が必要な場合がある。浸漬塔は、非常に大規模で高価な設備を含み、それによって、ケーブル絶縁体製造用化合物を製造するための複数の配合現場又はプラントを開発する実現可能性が制限される。したがって、浸漬塔を使用することなく、又は浸漬塔を必要とすることなく、ケーブル絶縁体製造用化合物中の全ての材料の配合を可能にすること、例えば、その架橋性ペレットを製造することが依然として必要とされている。完全に配合された化合物ペレットは、それらの搬送前に冷却される必要があり、したがって、従来の方法では、加熱容器(任意)と、流動床又は冷却容器などの冷却装置(必要)とが必要である。
【0007】
ケーブル絶縁体製造用化合物のための従来のポリオレフィン配合ラインは、ベース樹脂へのフリーラジカル開始剤の組み込みを可能にしない。むしろ、フリーラジカル開始剤は、ベース樹脂を浸漬することによって、例えば、浸漬塔設備において、長期の加工及び取り扱いにおいて組み込まれ、これは高コストプロセスをもたらす。加えて、設備内の大量の材料は、外部汚染の高い危険性、並びに材料を処理するために多くのクリーンルーム及び関連するスタッフを有する必要性をもたらし得る。これは、言うまでもなく、大きな二酸化炭素排出量につながる追加処理におけるエネルギー消費となる。
【0008】
更に、従来の配合プロセスにおいてフリーラジカル開始剤をポリマー溶融物に注入することは、フリーラジカル開始剤が、ベース樹脂及び酸化防止剤(AO)添加剤を配合するのに必要な条件及び時間の下で分解及び反応するので、非常に困難なままである。適切なケーブル絶縁体製造用化合物の製造において、ポリオレフィンベース樹脂及び酸化防止剤(AO)添加剤を溶融及び混合してAO添加剤を適切に分布させ、より重要なことには許容可能な高い生産速度を達成するのに必要な比投入エネルギー(SEI)は、通常、中間体化合物の過剰な溶融温度、例えば180℃以上をもたらす。このような温度では、フリーラジカル開始剤の分解が起こり、それによって望ましくない化学架橋反応及び使用できない生成物が生じる。
【0009】
Zhangらの最近の米国特許公開第2020/0199270(A1)号は、ポリオレフィンポリマー、アルケニル官能性単環式オルガノシロキサン、及び有機過酸化物を含む組成物を開示している。組成物は、絶縁体として作用するワイヤ及びケーブルコーティングとしての用途が見出される。Zhangらは、組成物中の全ての材料を混合することを一般的に言及しているが、過酸化物を組成物中に組み込むために開示された唯一の方法は、浸漬を含む。
【発明の概要】
【0010】
本発明の実施形態によれば、本発明者らは、組成物中に架橋開始剤を組み込むための浸漬工程を必要としない、ケーブル絶縁体製造用化合物として使用するための安定な架橋性化合物組成物を提供するという問題を解決した。本発明の実施形態は、製造方法、特に、140℃で150分を超えるスコーチ時間(ts1)として本明細書で定義され、140℃でのスコーチ時間(ts1)が本明細書に記載のように測定される、高温の低スコーチ(スコーチなしを含む)の、熱可塑性ポリオレフィン及び添加剤を含む架橋性化合物組成物の製造方法に関する。また、架橋性化合物組成物から架橋組成物及び製造物品を製造する方法も含まれる。
【0011】
140℃で150分を超えるスコーチ時間(ts1)として本明細書で定義され、140℃でのスコーチ時間(ts1)が本明細書に記載されるように測定される、高温低スコーチ(スコーチなしを含む)の、架橋性化合物組成物の製造方法であって、方法が、120.0℃~150.0℃、あるいは125℃~149℃の温度で一次流を溶融配合することであって、一次流が、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィン及び1つ以上の酸化防止剤を含むが、過酸化物及び架橋助剤からなる群から選択される硬化性添加剤を欠く、溶融配合することと、1つ以上の有機過酸化物及び1つ以上の架橋助剤を含む硬化性添加剤の組合せを配合された溶融物に注入し、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィン、1つ以上の酸化防止剤、1つ以上の有機過酸化物、及び1つ以上の架橋助剤を、それらを一緒に溶融配合することによって均一に混合することと、を含む方法が提供される。また、架橋された化合物組成物及び製造物品の製造方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明による溶融配合ライン(2)の代替例を示す。
【
図3】本発明の実施例における架橋性化合物を製造するために使用される溶融配合ライン(2)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態によれば、本発明者らは、組成物中に架橋開始剤を組み込むための浸漬工程を必要としない、ケーブル絶縁体製造用化合物として使用するための安定な架橋性化合物組成物を提供するという問題を解決した。いくつかの実施形態では、本方法は、有機過酸化物などのフリーラジカル発生剤化合物などの架橋開始剤を組成物に組み込み、フリーラジカル発生剤化合物は、任意選択で不飽和架橋助剤と共に、熱可塑性ポリオレフィンの炭素ラジカルベースの架橋を開始するのに有用である。本発明の実施形態は、製造方法、特に、140℃で150分を超えるスコーチ時間(ts1)として本明細書で定義され、140℃でのスコーチ時間(ts1)が本明細書に記載のように測定される、高温低スコーチ(スコーチなしを含む)の製造方法、熱可塑性ポリオレフィン及び添加剤を含む架橋性化合物組成物の製造方法に関する。また、架橋性化合物組成物から架橋組成物及び製造物品を製造する方法も含まれる。いくつかの実施形態では、本発明の方法及び架橋性化合物組成物は、いかなる酸添加剤も欠く、すなわち、含まない。すなわち、スルホン酸などのブレンステッド酸及び/又は添加されたジアルキルスズジカルボキシレートなどのルイス酸などの酸性化合物は、本方法又は組成物の構成成分として添加されない。酸添加剤は、本明細書中で使用される他の成分の反応又は分解によってその場で生成され得る酸性副生成物又は酸性分解生成物を含まない。後述するように、必要に応じて、ヒンダードアミン安定剤(HAS)を本方法及び組成物に含めて、潜在的にその場で生成される酸性副生成物又は酸性分解生成物を中和することができる。
【0014】
140℃で150分を超えるスコーチ時間(ts1)として本明細書で定義され、140℃でのスコーチ時間(ts1)が本明細書に記載されるように測定される、高温低スコーチ(スコーチなしを含む)の、架橋性化合物組成物の製造方法であって、方法が、120.0℃~150.0℃、あるいは125℃~149℃の温度で一次流を溶融配合することであって、一次流が、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィン及び1つ以上の酸化防止剤を含むが、過酸化物及び架橋助剤からなる群から選択される硬化添加剤を欠く、溶融配合することと、1つ以上の有機過酸化物及び1つ以上の架橋助剤を含む硬化性添加剤の組合せを配合された溶融物に注入し、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィン、1つ以上の酸化防止剤、1つ以上の有機過酸化物、及び1つ以上の架橋助剤を、それらを一緒に溶融配合することによって均一に混合することと、を含む方法が提供される。また、架橋された化合物組成物及び製造物品の製造方法も提供される。
【0015】
相互参照を容易にするために、本発明のいくつかの実施形態は、番号付けされた態様として説明される。
【0016】
態様1.架橋性化合物組成物を製造する高温低スコーチ方法であって、方法が、1つ以上の有機過酸化物及び1つ以上の架橋助剤を含む硬化性添加剤の組合せを、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンポリマー及び1つ以上の酸化防止剤(AO)を含むが1つ以上の硬化性添加剤を含まない中間体化合物の溶融物に注入することであって、溶融物が120.0℃~150.0℃の温度である、注入することと、硬化性添加剤を溶融物中に60秒未満で迅速に混合して、架橋性化合物組成物を、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィン、酸化防止剤、及び硬化性添加剤の均質な混合物として製造することと、を含む、方法。
【0017】
態様2.架橋性化合物組成物が、ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、最小トルク(「ML」)からの1フィートポンド-インチ(lbf-in)又は1.13デシニュートン-メートル(dN-m)の増加に140℃で必要な時間として報告される、140℃で少なくとも50分、あるいは少なくとも60分、好ましくは少なくとも65分のスコーチ時間(ts1)と、ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、182℃で最小トルク(「ML」)よりも少なくとも1.92デシニュートン-メートル(dN-m;少なくとも1.70lbf-inに等しい)高い182℃での最大トルク(MH)と、を有し、好ましくは、MHは182℃におけるMLよりも少なくとも1.92dN-m高く(少なくとも1.70lbf-in高く)、182℃におけるMHは、少なくとも2.09dN-m(1.85lbf-in)、より好ましくは少なくとも2.26dN-m(2.0lbf-in)である、態様1に記載の方法。
【0018】
態様3.架橋性化合物組成物を5分未満で100℃以下、好ましくは80℃以下の温度に冷却し、好ましくは6時間未満で30℃以下の温度に更に冷却することを含む、態様1又は態様2に記載の方法。
【0019】
態様4.方法が、溶融配合装置及びその下流の加工システムを含む溶融配合ラインを使用して架橋性化合物組成物を連続的に製造する高温低スコーチ方法であり、溶融配合装置が、調製ゾーン、注入ゾーン、及び混合ゾーンを有し、調製ゾーンが、中間体化合物の溶融流を連続的に調製し、溶融流を注入ゾーンに移動させるように構成され、注入ゾーンが、中間体化合物の溶融流を連続的に受けるための注入ポイントを有し、注入ゾーン内の中間体化合物の溶融流に添加剤を連続的に注入するための1つ以上の注入ポイントを有し、混合ゾーンが、中間体化合物の溶融流に注入された添加剤を迅速に(60秒以下で)均質化するために構成された1つ以上の混合要素(例えば、1つ以上のロータブレード又はスクリュー、及び任意選択的にバッフル)を有し、混合ゾーンが、注入ゾーンと同じであっても、注入ゾーンの下流であってもよく、方法が、(A)120.0℃~150.0℃、あるいは125℃~149℃の温度で、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンポリマーの溶融物と、1つ以上の酸化防止剤(AO)との混合物を含むが、有機過酸化物及び架橋助剤からなる群から選択される1つ以上の硬化性添加剤を含まない中間体化合物の溶融流を、供給ポイントを介して溶融配合装置の注入ゾーンに連続的に供給することであって、好ましくは、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンの各々が、ポリエチレンホモポリマー、エチレン/1-ブテンコポリマー、エチレン/1-ヘキセンコポリマー、及びエチレン/1-オクテンコポリマーからなる群から独立して選択され、より好ましくは、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンの各々が、ASTM D792に従って測定される場合に、0.87g/cm3~0.94g/cm3の範囲の密度、及び190℃/2.16kgでASTM D1238に従って決定される場合に、0.5g/10分~20g/10分のメルトインデックス(I2)を有する低密度ポリエチレンポリマーを含む群から独立して選択される、連続的に供給することと、(B)1つ以上の有機過酸化物と1つ以上の架橋助剤とを含む硬化性添加剤の組合せを、1つ以上の注入ポイントのうちの少なくとも1つを介して、溶融配合装置の注入ゾーン内の中間体化合物の溶融流に連続的に注入することと、(C)中間体化合物の溶融流と注入された硬化性添加剤の組合せとを溶融配合することによって迅速に均質化して、架橋性化合物組成物を製造することと、(D)架橋性化合物組成物の流れを溶融配合装置から加工システムに連続的に排出することであって、硬化性添加剤の組合せが、溶融配合装置内で60秒以下の滞留時間を有し、架橋性化合物組成物が、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンポリマーと、1つ以上の酸化防止剤と、1つ以上の有機過酸化物と、1つ以上の架橋助剤と、を含み、架橋性化合物組成物が、ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、最小トルク(「ML」)からの1フィートポンド-インチ(lbf-in)又は1.13デシニュートン-メートル(dN-m)の増加に140℃で必要な時間として報告される、140℃で少なくとも50分、あるいは少なくとも60分、好ましくは少なくとも65分のスコーチ時間(ts1)と、ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、182℃で最小トルク(「ML」)よりも少なくとも1.92デシニュートン-メートル(dN-m;少なくとも1.70lbf-inに等しい)高い182℃での最大トルク(MH)と、を有し、182℃におけるMHが、少なくとも2.09dN-m(1.85 lbf-in)、より好ましくは少なくとも2.26dN-m(2.0lbf-in)である、連続的に排出することと、を含む、態様1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0020】
態様5.工程(D)の後に、加工工程(E)(i)又は工程(E)(II)を含み、(E)(i)において、加工システムが、冷却装置及びペレット化装置(冷却装置と同じであっても異なっていてもよい)を含み、工程(E)(i)が、架橋性化合物組成物を冷却及びペレット化して、その固体ペレットを製造することを含む、又は(E)(ii)において、加工システムが、環状のコーター装置及び硬化装置を含み、工程(E)(ii)が、導体、好ましくはワイヤ又は光ファイバー(optical fiber)(光ファイバー(fiber optic))を架橋性化合物組成物でコーティングして、コーティングされた導体を製造することと、コーティングを硬化させて、導体と、導体を少なくとも部分的に取り囲む絶縁層とを含むケーブルを製造することとを含み、絶縁層が、それから製造された架橋化合物組成物を含み、絶縁体が、導体と直接接触しているか、又は1つ以上の介在層(例えば、半導体層)を介して間接的に接触している、態様4に記載の方法。
【0021】
態様6.注入工程の前に、中間体化合物のペレットを溶融するか、又は1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンを含むが1つ以上の酸化防止剤のうちの少なくとも1つを含まないペレットを溶融するかのいずれかによって中間体化合物の溶融流を調製し、溶融した熱可塑性ポリオレフィンを1つ以上の酸化防止剤のうちの少なくとも1つと混合することを含む、態様4又は態様5に記載の方法。
【0022】
態様7.硬化性添加剤の組合せを連続的に注入する工程(B)の前に、方法が、中間体化合物の溶融流を溶融ポンプを通してポンプ輸送して加圧溶融流を製造することと、次いで、中間体化合物の溶融流に硬化性添加剤の組合せを注入するための1つ以上の注入ポイントの全ての上流にある第1の溶融スクリーンを通して中間体化合物の加圧溶融流を溶融スクリーニングすることと、を更に含み、溶融ポンプ及び第1の溶融物スクリーンが、溶融配合装置の注入ゾーンの注入ポイントの全ての上流に位置している、態様4~6のいずれか1つに記載の方法。
【0023】
態様8.任意の注入ポイントの上流のポイントで、第2の熱可塑性ポリオレフィンポリマーを中間体化合物の溶融流に添加することと、第2の熱可塑性ポリオレフィンポリマーと中間体化合物とを溶融配合することと、を更に含む、態様4~7のいずれか1つに記載の方法。好ましくは、添加される第2の熱可塑性ポリオレフィンポリマーの、中間体化合物の溶融流中の熱可塑性ポリオレフィンポリマーの重量に対する重量比は、1:1~1:4の範囲である。
【0024】
態様9.硬化性添加剤の組合せを中間体化合物の溶融流に注入するための1つ以上の注入ポイントが、以下の注入ポイント(i)~(ix):(i)溶融配合装置の混合ゾーンが分配又は混練セクションを有する場合に、溶融配合装置の下流端の分配混合又は混練セクションにある1つ以上の注入ポイント、(ii)供給工程(A)の下流の注入ゾーンの供給ポイントの下流の注入ポイントにおけるもの、(iii)溶融配合装置が、第2の溶融スクリーン及び別個の溶融ポンプを順次備える場合に、第2の溶融スクリーンの下流かつ別個の溶融ポンプの上流にある1つ以上の注入ポイント、(iv)溶融配合装置が、第2の溶融スクリーン、別個の溶融ポンプ、及び第2の溶融ポンプを順次備える場合に、別個の溶融ポンプと第2の溶融ポンプとの間に位置する1つ以上の注入ポイント、又は、(v)注入ポイント(i)及び(ii)の組合せ、(vi)注入ポイント(i)及び(iii)の組合せ、(vii)注入ポイント(i)及び(iv)の組合せ、(viii)注入ポイント(i)~(iv)のいずれか3つの組合せ、又は(ix)注入ポイント(i)~(iv)の各々の組合せ、のうちのいずれか1つ以上を含む、態様4~8のいずれか1つに記載の方法。
【0025】
態様10.制限(i)~(vii):(i)1つ以上の酸化防止剤が、2つ以上の酸化防止剤、好ましくは2つ又は3つの酸化防止剤の混合物を含むか、又は、1つ以上の架橋助剤が、アルケニル基含有単環式オルガノシロキサンを含むか、又は1つ以上の酸化防止剤が、2つ以上の酸化防止剤、好ましくは2つ又は3つの酸化防止剤の混合物を含み、1つ以上の架橋助剤が、アルケニル基含有単環式オルガノシロキサンを含む、(ii)1つ以上の架橋助剤が、式(I):[R1,R2SiO2/2]n(I)のアルケニル基含有単環式オルガノシロキサンを含む[式中、下付き文字nは3以上の整数であり、各R1は独立して、(C2~C4)アルケニル又はH2C=C(R1a)-C(=O)-O-(CH2)m-であり、式中、R1aはH又はメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各R2は独立して、H、(C1~C4)アルキル、フェニル、又はR1と同じである]、(iii)1つ以上の有機過酸化物が、ジクミルペルオキシド又はクミル基含有過酸化物を含む、(iv)制限(i)及び(ii)の両方、(v)制限(i)及び(iii)の両方、(vi)制限(ii)及び(iii)の両方、(vii)制限(i)~(iii)の各々、のうちのいずれか1つを有する、態様1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0026】
態様11.1つの熱可塑性ポリオレフィンが存在し、熱可塑性ポリオレフィンが、ASTM D792に従って測定する場合に0.87g/cm3~0.94g/cm3の範囲の密度、及びASTM D1238に従って決定し、10分当たりに溶出したグラムで報告される場合に190℃/2.16kgで0.5g/10分~20g/10分のメルトインデックス(I2)を有し、又は1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンポリマーが、1つ以上の熱可塑性ポリエチレンポリマーを含み、好ましくは、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンの各々が、ポリエチレンホモポリマー、エチレン/1-ブテンコポリマー、エチレン/1-ヘキセンコポリマー、及びエチレン/1-オクテンコポリマーからなる群から独立して選択され、より好ましくは、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンの各々が、ASTM D792に従って測定される場合に、0.87g/cm3~0.94g/cm3の範囲の密度、及び190℃/2.16kgでASTM D1238に従って決定される場合に、0.5g/10分~20g/10分のメルトインデックス(I2)を有する低密度ポリエチレンポリマーを含む群から独立して選択される、態様1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0027】
態様12.架橋性化合物組成物が、ICEA T-28-562aに従って試験することによって、130%未満、好ましくは100%未満の200℃における高温クリープ伸びを有する、態様1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0028】
態様13.架橋性化合物組成物をサンプリングして、その少なくとも1つの試料を得ることと、その試料を用いて、ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、最小トルク(「ML」)からの1フィートポンド-インチ(lbf-in)又は1.13デシニュートン-メートル(dN-m)の増加に140℃で必要な時間として報告される、140℃で少なくとも50分、あるいは少なくとも60分、好ましくは少なくとも65分のスコーチ時間(ts1)を測定することと、その試料を用いて、ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、182℃で最小トルク(「ML」)よりも少なくとも1.92デシニュートン-メートル(dN-m;少なくとも1.70lbf-inに等しい)高い182℃での最大トルク(MH)、182℃におけるMHが、少なくとも2.09dN-m(1.85lbf-in)、より好ましくは少なくとも2.26dN-m(2.0lbf-in)であることを測定することと、を含む、態様1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0029】
態様14.架橋性化合物組成物の溶融物を成形して成形された架橋性化合物組成物を形成すること、好ましくは架橋性化合物組成物の溶融物を導電性コアを被覆する絶縁層として押し出すことと、成形された架橋性化合物組成物を硬化させて架橋された化合物組成物を含む製造物品を製造すること、好ましくは絶縁層を硬化させて導電性コア及び架橋された絶縁層を含む電力ケーブルを製造することと、を含む、態様1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0030】
態様15.以下の制限(a)~(g):(a)本方法において使用される溶融配合装置が、インターナルミキサー又はスクリュー押出機であること、(b)本方法が、急速均質化工程(C)の間又はその前に、中間体化合物の溶融物を、120℃以上の温度から120℃未満の温度に、あるいは141℃以上の温度から141℃未満の温度に能動的に冷却する工程(例えば、熱交換器装置又は押出機装置中の冷却ゾーンを介して)又は受動的に冷却させる工程を使用しないこと、(c)本方法が、独立して、0重量%~0.10重量%未満の化合物(i)~(vi):(i)モンモリロナイト、(ii)ヒドロペルオキシド、(iii)N-ニトロソ-ジアリールアミン、(iv)マレイミド、(v)イミン化合物、及び(vi)ヒドロキノンのいずれか1つを有するか、あるいはそれらを含まない(すなわち、欠く、すなわち、0重量%)(ここで、各重量%は、中間体化合物及び硬化性添加剤の組合せの総重量に基づく)こと、(d)制限(a)及び(b)の両方、(e)制限(a)及び(c)の両方、(f)制限(b)及び(c)の両方、又は制限(a)、(b)、及び(c)の各々のうちの1つ以上を有する、態様1~14のいずれか1つに記載の方法。制限(b)に関して、冷却は、中間体化合物の溶融流の温度が120℃未満、あるいは125℃未満に下がらない限り許容される。本発明のいくつかのそのような実施形態は、化合物(i)及び(ii)の両方を含まないか、あるいは、化合物(i)及び(vi)の両方、あるいは、化合物(ii)及び(vi)の両方、あるいは、化合物(i)、(ii)及び(vi)の各々、あるいは、化合物(i)、(ii)、(v)及び(vi)の各々、あるいは化合物(i)~(vi)のうちのいずれか5つ、あるいは、化合物(i)~(vi)の全てを含まない。化合物(i)~(vi)のいずれかが、見出されても見出されなくてもよいが、スコーチ防止効果を有することが見出される場合、本発明の方法において有効なスコーチ防止を示すために必要とされるこのような化合物の最小量は、少なくとも0.10重量%であると予想され、おそらくそれより高い。
【0031】
本方法の実施形態は連続的である。これは、これらの実施形態の供給工程、注入工程、混合工程、及び排出工程、並びに任意の加工工程が、少なくとも50分間、あるいは少なくとも60分間、あるいは少なくとも6時間、あるいは少なくとも12時間、あるいは少なくとも24時間、中断なく(停止及び再開せずに)動作することを意味する。十分な量の成分(例えば、熱可塑性ポリオレフィン、酸化防止剤、硬化性添加剤)が利用可能であり、停電(例えば、電力の損失)がない場合、連続的な方法の実施形態は、溶融配合ラインの1つ以上の装置が洗浄又は修理のために稼働停止される必要があるまで、無期限に中断なく動作し得る。典型的な製造操作において、連続的である方法の実施形態は、7日間、4週間、又は6ヶ月間、又はそれ以上の間、中断なく容易に動作することができる。
【0032】
架橋性化合物組成物は、140℃で150分を超えるスコーチ時間(ts1)として本明細書で定義される、高温低スコーチ(スコーチなしを含む)によって製造され、140℃でのスコーチ時間(ts1)は、本明細書に記載されるように測定され、方法は、「有機過酸化物含有均一混合架橋性化合物組成物」として記載され得る。架橋性化合物組成物の「有機過酸化物含有」の特徴は、組成物が、後に架橋性化合物組成物を硬化させて架橋化合物組成物を製造する方法の間にフリーラジカル発生剤として働くのに十分な架橋有効量の未分解有機過酸化物を有することを意味する。「架橋有効量」とは、182℃での最大トルク(MH)を意味する。この組成物により、後述する制限が満たされる。架橋性化合物組成物の「均質に混合された」特徴の「均質な」という態様は、架橋性化合物組成物が、その断面全体にわたって成分の均一な分布を有することを意味する。「均一に混合された」特徴の「混合された」という態様は、有機過酸化物及び架橋助剤を含む硬化性添加剤が、浸漬、吸収、粉砕(例えば、2本ロール粉砕)、カレンダー加工、又は音響撹拌を含まない方法によって、中間体化合物組成物の溶融流に機械的に混合されたことを意味する。
【0033】
制限(a)~(g)のいずれか1つを有するその上述のいくつかの実施形態を含む、態様1~15のいくつかの実施形態において、硬化性添加剤の組合せは、1つの有機過酸化物及び2つの架橋助剤を含む。いくつかの実施形態では、有機過酸化物は、ジクミルペルオキシドである。いくつかのそのような実施形態では、2つの架橋助剤のうちの少なくとも1つは、トリアリルイソシアヌレート(「TAIC」)又は2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニル-シクロテトラシロキサン(「ビニル-D4」)である。いくつかのそのような実施形態では、有機過酸化物はジクミルペルオキシドであり、2つの架橋助剤はTAIC及びビニル-D4である。
【0034】
本発明はまた、態様1~15のいずれか1つの方法によって製造される架橋性化合物組成物を特許請求する。本発明の架橋性化合物組成物は、少なくとも1つの特性又は構成要素において比較化合物組成物とは異なる。比較化合物組成物は、本発明の架橋性化合物組成物と同じ成分の全てを含むものであるが、比較化合物組成物は、1つ以上の有機過酸化物の組み込みに関して異なる方法によって製造される。比較化合物組成物は、1つ以上の有機過酸化物を除く全ての同じ成分を溶融配合して最後から2番目の混合物を製造することと、最後から2番目の混合物をペレット化してそのペレットを製造することと、同じ1つ以上の有機過酸化物を最後から2番目の混合物のペレットに浸漬してペレット形態の比較化合物組成物を製造することと、を含む比較方法によって調製される。本発明の架橋性化合物組成物の熱履歴は、それを製造する異なる方法によって、比較化合物組成物の熱履歴と異なる。したがって、異なる熱履歴の結果として、本発明の架橋性化合物組成物は、以下からなる群から選択される少なくとも1つの態様において比較化合物組成物と異なり得る:成分の割合、成分の濃度、溶融レオロジー特性、及び機械的特性。有益なことに、本発明の方法は、1つ以上の有機過酸化物の浸漬を含む比較方法よりも、より効率的、より迅速(すなわち、より高い生産性を有する)、及び/又はより費用効果があり得る。本発明の方法の改善された効率は、比較方法よりも少ない単位操作又は少ないエネルギーを使用することを含み得る。
【0035】
理論に束縛されるものではないが、本発明の方法は、150分を超える140℃でのスコーチ時間(ts1)として本明細書で定義される、低スコーチ(スコーチなしを含む)の証拠である、140℃で少なくとも50分、あるいは少なくとも60分、好ましくは少なくとも65分のts1を本質的に有する架橋性化合物組成物を製造し、140℃でのスコーチ時間(ts1)が、本発明の方法の本明細書に記載されるように測定され、182℃で最大トルク(MH)を本質的に有することが、182℃でのMLより少なくとも1.92dN-m高く(少なくとも1.70lbf-in高く)、好ましくは182℃でのMHが少なくとも2.09dN-m(1.85lbf-in)、より好ましくは少なくとも2.26 dN-m(2.0lbf-in)であると考えられる。この文脈において、1つ以上の架橋助剤のうちの少なくとも1つは、140℃で少なくとも50分、あるいは少なくとも60分、好ましくは少なくとも65分のts1を達成するためのスコーチ防止添加剤(SRA)として独立して作用するか、又は182℃での最大トルク(MH)が182℃でのMLよりも少なくとも1.92dN-m高く(少なくとも1.70lbf-in高く)、好ましくは182℃でのMHが少なくとも2.09dN-m(1.85lbf-in)、より好ましくは少なくとも2.26dN-m(2.0lbf-in)であることを達成するために、1つ以上の架橋助剤のうちの少なくとも1つが独立して架橋ブースター添加剤(CBA)として作用するか、又はこれらの組合せであると考えられる。1つ以上の架橋助剤は、SRA及びCBAの両方として作用する1つの架橋助剤を含むか、又はそれからなってもよい。又は2つの架橋助剤であり、一方はSRAとして作用し、他方はCBAとして作用するものを含むか、又はそれからなってもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の架橋助剤は、スコーチ防止添加剤(SRA)として作用する架橋助剤である。いくつかの実施形態において、182℃での最大トルク(MH)は、182℃でのMLよりも少なくとも1.92dN-m高い(少なくとも1.70lbf-in高い)か、あるいは182℃でのMHは、少なくとも2.26dN-m(2.0lbf-in)であるか、あるいは2.37dN-m(2.10lbf-in)~2.98dN-m(2.64lbf-in)であるか、あるいは2.61dN-m(2.31lbf-in)~2.96dN-m(2.62lbf-in)である。いくつかの実施形態では、1つ以上の架橋助剤は、スコーチ防止添加剤(SRA)として作用する架橋助剤であり、140℃でのts1が少なくとも50分、あるいは少なくとも60分、好ましくは少なくとも65分であり、182℃での最大トルク(MH)が少なくとも2.26dN-m(2.0lbf-in)であるか、あるいは2.37dN-m(2.10lbf-in)~2.98dN-m(2.64lbf-in)であるか、あるいは2.61dN-m(2.31lbf-in)~2.96dN-m(2.62lbf-in)である。
【0036】
理論に束縛されるものではないが、120.0℃~150.0℃、あるいは125℃~149℃の溶融配合温度は、有機過酸化物と共に使用するために異常に高く、140℃での少なくとも50分、あるいは少なくとも60分、好ましくは少なくとも65分のts1は、150分を超える140℃でのスコーチ時間(ts1)として本明細書で定義される、低スコーチ(スコーチなしを含む)の証拠であり、140℃でのスコーチ時間(ts1)が、本発明の方法の本明細書に記載されるように測定され、182℃での最大トルク(MH)が、182℃でのMLより少なくとも1.92dN-m高く(少なくとも1.70lbf-in高く)、あるいは182℃でのMHが、少なくとも2.09dN-m(1.85lbf-in)であり、好ましくは少なくとも2.26dN-m(2.0lbf-in)は、本発明の方法によって製造される架橋性化合物組成物の架橋性の証拠であると考えられる。
【0037】
後述する本発明の実施例に示すように、182℃での最小トルクMLは、典型的には0.16dN-m又は0.17dN-m(0.14lbf-in又は0.15lbf-in)であり、ASTM手順D5289に従って182℃で試験するムービングダイレオメーター(MDR)を使用すると、特定の本発明の実施例に応じて、トルクは2.44dN-mから2.95dN-mまで(2.16lbf-inから2.61lbf-inまで)増加する。したがって、182℃でのMDR試験の過程中に、トルクは、ML値からMH値まで上昇し、このMH値は、トルク値がプラトーになるか、又はもはや増加しないところである。本発明の例によって示されるように、いくつかの実施形態では、182℃における最大トルク(MH)は、182℃におけるMLよりも少なくとも2.7dN-m高い(少なくとも2.4lbf-in高い)。
【0038】
1つ以上の酸化防止剤及び1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンを1つ以上の供給ポイントを介して溶融配合装置に供給して、1つ以上の酸化防止剤及び1つ以上の熱可塑性ポリオレフィン(まとめて一次流の成分)を含むが、有機過酸化物及び架橋助剤からなる群から選択される1つ以上の硬化性添加剤を欠く一次流を製造することは、以下の方法のいずれか1つによって達成され得る。実施形態では、1つ以上の酸化防止剤のうちの少なくとも1つは、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンのうちの少なくとも1つとは別個に溶融配合装置に供給されてもよい。別の実施形態では、1つ以上の酸化防止剤のうちの少なくとも1つと1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンのうちの少なくとも1つとを一緒に予備混合して、それらの組合せを製造してもよく、この組合せを溶融配合装置に供給してもよい。少なくとも2つの酸化防止剤又は少なくとも2つの熱可塑性ポリオレフィン又はそれらの組合せが存在する場合に適用可能な別の実施形態では、少なくとも1つの酸化防止剤及び/又は少なくとも1つの熱可塑性ポリオレフィンが溶融配合装置に別個に供給され、少なくとも1つの酸化防止剤と少なくとも1つの熱可塑性ポリオレフィンとの組合せが溶融配合装置に別個に供給される。
【0039】
本実施形態によれば、硬化性添加剤の組合せを中間体化合物の溶融流に注入することは、以下の注入ポイント:(i)溶融配合装置の下流端における分配混合又は混練セクション、(ii)溶融配合装置自体における溶融形成の下流の注入ポイント、(iii)溶融配合装置の下流であるが別個の溶融ポンプの上流に位置する溶融スクリーンの下流、好ましくは、(iv)別個の溶融ポンプ及び(iii)における溶融スクリーンの両方の下流であるポイントに位置する第2の溶融ポンプの上流、又は(v)それらの任意の組合せのいずれか1つ以上、又は全てにおいてそれらを注入することを含む。
【0040】
好ましくは、中間体化合物の全体的な溶融温度を制御するために、本発明による方法は、中間体化合物の溶融流に第2の供給物として固体熱可塑性ポリオレフィンを、例えば全ての注入ポイントの上流又は隣接する任意のポイントで添加し、第2の供給物を溶融配合することを更に含む。一次流中の熱可塑性ポリオレフィンの重量に対する第2の供給物中の熱可塑性ポリオレフィンの重量比は、1:1~1:4、又は1:1.5~1:4、又はより好ましくは1:2~1:4の範囲であってよい。
【0041】
好ましくは、本発明の方法における熱可塑性ポリオレフィンは、ASTM D792に従って測定して0.87g/cm3~0.94g/cm3の範囲の密度を有し、ASTM D1238に従って190℃/2.16kgで測定して0.5g/10分~20g/10分のメルトインデックス(I2)を有し、10分当たりに溶出したグラムで報告される。
【0042】
好ましくは、本発明の方法における1つ以上の架橋助剤は、式(I):
[R1,R2SiO2/2]n(I)の単環式オルガノシロキサンを含み[式中、下付き文字nは、3以上の整数であり、各R1は独立して、(C2~C4)アルケニル又はH2C=C(R1a)-C(=O)-O-(CH2)m-であり、式中、R1aはH又はメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各R2は独立して、H、(C1~C4)アルキル、フェニル、又はR1と同じである]、例えば、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニル-シクロテトラシロキサンなどのテトラメチル-テトラビニル-シクロテトラシロキサンである。
【0043】
本発明による別の態様では、均質な熱可塑性ポリオレフィン架橋性化合物組成物は、熱可塑性ポリオレフィンポリマーであって、例えば、ASTM D792に従って測定する場合に0.87g/cm3~0.94g/cm3の範囲の密度、及びASTM D1238に従って190℃/2.16kgで測定する場合に0.5g/10分~20g/10分、又は好ましくは0.5g/10分~10g/10分のメルトインデックス(I2)を有し、10分当たりに溶出したグラムで報告される低密度ポリエチレンポリマーと、1つ以上の酸化防止剤(AO)、例えばヒンダードフェノール若しくはヒンダードアミン又はそれらの混合物と、1つ以上の架橋助剤、例えば、式(I):
[R1,R2SiO2/2]nのアルケニル基含有単環式オルガノシロキサン[式中、下付き文字nは3以上の整数であり、各R1は独立して、(C2~C4)アルケニル又はH2C=C(R1a)-C(=O)-O-(CH2)m-であり、式中、R1aはH又はメチルであり、下付き文字mが1~4の整数であり、各R2は独立して、H、(C1~C4)アルキル、フェニル、又はR1と同じである]、好ましくは、テトラメチル-テトラビニル-シクロテトラシロキサンと、架橋開始剤としての、1つ以上の有機過酸化物、例えば、ジクミルペルオキシド又はクミル基含有ペルオキシドと、を含む。組成物は、架橋助剤、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)のようなジアリル又はトリアリル架橋助剤を更に含んでもよい。1つ以上の酸化防止剤の総量は、架橋性化合物組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~1.5重量%、又は好ましくは0.1重量%~1重量%の範囲であり得る。1つ以上の有機過酸化物の総量は、架橋性化合物組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~2重量%、又は好ましくは0.3重量%~1.4重量%の範囲であり得る。1つ以上の架橋助剤の総量は、0.1重量%~5重量%、又は好ましくは0.3重量%~4重量%、又はより好ましくは0.5重量%~2重量%の範囲であってもよく、全ての重量パーセントは架橋性化合物組成物の総重量に基づく。ヒンダードフェノールは、2,6-ジ(第三級アルキル)フェノールであってもよく、ヒンダードアミンは、式-C(アルキル)2-N(H)-C(アルキル)2-のジラジカル第二級アミノ基又は式-C(アルキル)2-N(アルキル)-C(アルキル)2-のジラジカル第三級アミノ基を含んでもよい。
【0044】
好ましくは、本発明による架橋性化合物組成物は、溶融配合が完了した後1時間以内に、(i)ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、最小トルク(「ML」)から1単位(インチ-lbf)又は1.13デシニュートン-メートル(dN-m)の増加に必要な時間として報告される、少なくとも51分、又は好ましくは少なくとも55分、又はより好ましくは少なくとも65分の140℃でのスコーチ時間(ts1)、(ii)ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、182℃で少なくとも2.26dN-m(2.0lbf-in)の最大トルク(MH)、又は(iii)ICEA T-28-562に従って200℃で決定される場合に、100%未満の高温クリープ伸び、のうちの1つ以上を有する。
【0045】
本発明によれば、過酸化物と、スコーチ防止添加剤(SRA)として作用する1つ以上の架橋助剤とを、低密度ポリエチレンポリマーなどの熱可塑性ポリオレフィンポリマーの溶融流に注入する方法は、加工から冷却される前であっても、均質な熱可塑性ポリオレフィン架橋性化合物を直ちに提供する。溶融配合装置、ミキサー、押出機若しくは混練機又はそれらの分配混合要素などへの溶融配合中の注入は、ケーブル絶縁体製造化合物として後で使用するのに適したペレット又は他の原料などの架橋性化合物を製造するための溶融冷却工程又は開始剤による後処理を必要としない。本発明の溶融配合方法は、溶融冷却工程又はポリオレフィン化合物を架橋開始剤に浸漬することなく、完全に配合された製品を一貫して提供する。本発明による均質な熱可塑性ポリオレフィン架橋性化合物は、溶融加工時にのみ完全に組み込まれた架橋開始剤を含む。本発明の架橋性化合物材料は、溶融配合直後の均質な熱可塑性ポリオレフィン化合物を含む。本発明による組成物又は製品は、高いスコーチ時間を有する架橋可能な均質中間体化合物を含む。したがって、本発明の方法は、含浸(浸漬)設備の必要性を回避する。ペレットなどの本発明の完全に配合された生成物又は均質な熱可塑性ポリオレフィン架橋性化合物は、貯蔵安定性であり、後の段階での別個のインライン物品製造、すなわちケーブル絶縁体などの製造物品への別個の押出及び成形を可能にする。本発明の均質な熱可塑性ポリオレフィン架橋性化合物とは対照的に、浸漬によって製造された熱可塑性ポリオレフィン架橋性化合物は、完全に配合されておらず、均質ではなく、バッチ安定性ではなく、又は更には溶融配合後に架橋性ではない。実際、本発明におけるような架橋性化合物組成物のムービングダイレオメーター(MDR)試験は、化合物が浸漬プロセスによって製造される場合、ジクミルペルオキシド(DCP)などの開始剤は、ペレットの表面で開始剤を除去するための追加の熱処理(例えば、70℃~80℃で最低2時間)なしでは熱可塑性ポリオレフィンのマトリックス中に拡散せず、熱処理を用いても、開始剤はポリオレフィンマトリックス中に完全に拡散するのに時間がかかることを示す。しかしながら、本発明によれば、DCPは、溶融流の再配向(混合)及び拡散の両方によって、溶融配合直後にポリオレフィンマトリックス中にDCPの均一な分布が形成される。したがって、本発明は、溶融配合が完了した後1時間以内に、(i)ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、最小トルク(「ML」)からの1単位(インチ-lb)又は1.13デシニュートン-メートル(dN-m)の増加に必要な時間として報告される、少なくとも51分、又は好ましくは少なくとも55分の140℃でのスコーチ時間(ts1)、及び/又は(ii)ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、少なくとも2.26dN-m(2.2lbf-in)の182℃での最大トルク(MH)のうちの1つ以上を有する架橋性化合物を提供する。
【0046】
引用された全ての範囲は包括的でありかつ組合せ可能である。例えば、架橋性化合物組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~2重量%、又は好ましくは0.3重量%~1.4重量%、又は好ましくは0.4重量%~1.2重量%、又は好ましくは0.5重量%~1重量%未満の範囲の有機過酸化物の開示量は、0.1重量%~2重量%、又は0.1重量%~1.4重量%、又は0.1重量%~1.2重量%、又は0.1重量%~1重量%、又は0.3重量%~2重量%、又は好ましくは0.3重量%~1.4重量%、又は好ましくは0.3重量%~1.2重量%、又は好ましくは0.3重量%~1重量%、又は好ましくは0.4重量%~1.4重量%、又は好ましくは0.4重量%~1.2重量%、又は好ましくは0.4重量%~1重量%、又は好ましくは0.5重量%未満~1.4重量%、又は好ましくは0.5重量%未満~1.2重量%、又は好ましくは0.5重量%未満~1重量%、又は好ましくは0.3重量%~0.4重量%、又は好ましくは0.3~0.5重量%未満、又は好ましくは0.4重量%~0.5重量%未満、又は0.3重量%~2重量%、又は0.4重量%~2重量%、又は0.5重量%未満~2重量%を含むであろう。
【0047】
別段の指示がない限り、温度及び圧力の条件は、室温(23℃)及び標準圧力(101.3kPa)であり、「周囲条件」とも称される。加えて、特に明記しない限り、全ての条件には50%の相対湿度(relative humidity、RH)が含まれる。
【0048】
特に指定のない限り、括弧を含むあらゆる用語は、代替的に、括弧が存在するかのような用語全体、及び括弧内を有しない用語、並びに各代替物の組合せを指す。したがって、本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」などの用語は、アクリレート、メタクリレート、及びそれらの混合物を含むよう意図される。
【0049】
本明細書で使用される場合。「ASTM」という用語は、ASTM International,Conshohocken,Pennsylvania,USAの刊行物を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「ICEA」という用語は、Insulated Cable Engineers Association,Miamitown,Ohio,USAの刊行物を指す。
【0051】
本明細書で使用するとき、用語「メルトインデックス」又は「I2」は、ASTM D1238に従って、190℃/2.16kgで測定され、10分当たりに溶出したグラムで報告される結果を指す。
【0052】
本明細書で使用する「有機過酸化物」は、R1-O-O-R2、又はR1-O-O-R-O-O-R2の構造を有する過酸化物を示し、式中、R1及びR2の各々はヒドロカルビル部分であり、Rはヒドロカルビレン部分である。本明細書中で使用される場合、用語「ヒドロカルビル」は、炭化水素から水素原子を除去することによって製造される一価の基(例えば、エチル、フェニル)を示す。本明細書で使用される場合、用語「ヒドロカルビレン」は、炭化水素から2個の水素原子を除くことによって作られる二価の基を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「ポリマー」は、同じ又は異なるタイプのモノマーを反応(すなわち、重合)することにより調製される高分子化合物を意味し、ホモポリマー及びコポリマーを含む。用語「コポリマー」は、反応物として少なくとも2つの異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味し、2つの異なるモノマーから調製されるコポリマー、並びに2つより多くの異なるモノマーから調製されるポリマー、例えば、ターポリマー、テトラポリマー(4つの異なるモノマー)などを含む。本明細書で使用される場合、「ホモポリマー」は、単一のモノマーに由来する反復単位を含むポリマーを示すが、連鎖移動剤などのホモポリマーの調製に使用される他の成分の残留量を除外しない。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「固体」とは、中程度の応力下で知覚可能に流動せず、それを変形させる傾向がある力に抵抗するための明確な能力を有し、そして通常の条件下で明確なサイズ及び形状を保持する、結晶性物質又は非晶質物質をいう。
【0055】
本明細書で使用される場合、「重量%」という語句は、重量パーセントを表す。
【0056】
提案された発明は、例えば、ポリマーの分解温度までの温度で従来の溶融配合装置を使用する単一溶融混合法によって均質な中間体化合物を提供する。本発明の溶融混合方法において、温度は、150℃未満、又は好ましくは140℃未満であり、かつ熱可塑性ポリオレフィンポリマーの融点より高いままである。
【0057】
圧力は、スクリーニング工程においてスクリーンを通して、又はペレット化工程においてダイを通して溶融物を押すために必要とされる。本方法において使用され得るいくつかの溶融配合装置は、スクリーニング又はペレット化を行うのに十分な圧力を発生させる(すなわち、それらは「十分な圧力発生」である)。本方法において使用され得る他の溶融配合デバイスは、スクリーニング及び/又はペレット化のために十分な圧力を生成せず(すなわち、それらは不十分な圧力を生成し)、その態様において、溶融ポンプ又は一軸スクリュー押出機もまた、十分な圧力を発生するために使用され得る。したがって、溶融配合装置は、溶融スクリーニング又はペレット化のために十分な圧力を発生させてもよいが、発生させる必要はない。スクリーニング又はペレット化のために十分な圧力を生成する溶融配合装置の例は、一軸スクリュー押出機及びいくつかの二軸スクリュー押出機である。スクリーニング又はペレット化のために十分な圧力を発生させない溶融配合装置の例は、いくつかの二軸押出機、内部バッチミキサー(例えば、Farrel-Pomini Banbury及びKobelco Stewart Bollingミキサー)、溶融スクリーニング又はペレット化のために十分な圧力発生のために構成されていない同方向回転噛合二軸押出機、及び逆回転非噛合二軸押出機(例えば、Farrel FCM及びLCM、Kobe Steel LCM、Japan Steel Works(JSW)Continuous Intensive Mixer(CIM)又はCIMP)である。
【0058】
適切な溶融配合又は溶融混合装置は、溶融流れの上流から下流に移動して、少なくとも1つの溶融配合装置を含み、更に、(i)ギアミキサー又はギア混合要素などの溶融配合装置内に、又は(ii)溶融配合装置の下流に位置する溶融ポンプとして、又は(iii)その両方の分配混合要素を含み、更に、溶融スクリーニングユニットを含む。溶融混合装置は、ペレタイザー又はペレット化ダイを更に含んでもよい。好ましくは、溶融混合装置は、2つの溶融ポンプを含み、一方は溶融スクリーンの上流に位置し、他方は溶融スクリーンの下流に位置する。
【0059】
本発明の均質な中間体化合物を製造するために、熱可塑性ポリオレフィンポリマーの一次供給物及び1つ以上の酸化防止剤を溶融配合装置中で溶融配合又は混合して、中間体化合物の溶融流を製造する。本発明の均質な架橋性化合物を製造するために、次いで、硬化性添加剤を注入し、溶融配合装置の下流端又は下流で中間体化合物の溶融流を溶融配合し続けることによって均質に混合する。均質な溶融化合物を製造するための好適な装置は、下流の混合要素と連結された場合、歯付き混合要素(TME、ZMEなど)及び混練ブロック(順方向、中立又は逆方向ポンプ輸送)、ギアミキサー、溶融ポンプ、ギアポンプ又はブリスター要素などの混練ブロックなどの、押出機内の分配混合装置又はセグメントを含む。
【0060】
硬化性添加剤の組合せを中間体化合物の溶融流に注入することは、(i)溶融配合装置の下流端にある分配混合又は混練セクション、(ii)溶融物形成のインライン下流(このポイントは溶融配合装置自体中にあり得る)、又は(iii)別個の溶融ポンプ若しくは他の短い混合装置の上流のいずれかの注入ポイントにそれらを注入することを含む。注入ポイントは、好ましくは、溶融ポンプの下流に位置する溶融スクリーンの下流に位置することが好ましい。好ましくは、溶融配合装置は、第2の下流溶融物ポンプと、溶融ポンプと第2の下流溶融ポンプとの間に位置する溶融スクリーニング装置とを更に含むツイン溶融ポンプ装置を含み、2つの溶融物ポンプが溶融物スクリーンをまたいでいる。ツイン溶融ポンプバージョンでは、硬化性添加剤の組合せを注入することは、中間体化合物の溶融流を溶融ポンプ輸送して加圧溶融流を製造することと、中間体化合物の加圧溶融流を溶融スクリーニングすることと、溶融スクリーンの下流の注入ポイントで硬化性添加剤の組合せを溶融流に注入することとを含み、この注入ポイントは、第2の下流溶融ポンプ内又はそのすぐ上流にあり得る。
【0061】
硬化性添加剤の組合せに適した注入ポイントは、(i)溶融配合装置の下流端における分配混合又は混練セクションと、(ii)溶融配合装置自体における溶融物形成の下流の注入ポイントとの両方;(i)溶融配合装置の下流端における分配混合又は混練セクションと、(iii)溶融配合装置の下流であるが別個の溶融ポンプの上流に位置する溶融スクリーンの下流との両方;(i)溶融配合装置の下流端における分配混合又は混練セクションと、(iv)(iii)における別個の溶融ポンプ及び溶融スクリーンの両方の下流にあるポイントに位置する第2の溶融ポンプの上流と;(ii)溶融配合装置自体における溶融形成の下流の注入ポイントと、(iii)溶融配合装置の下流であるが別個の溶融ポンプの上流に位置する溶融スクリーンの下流の両方;(ii)溶融配合装置自体における溶融物形成の下流の注入ポイントと、(iv)(iii)における別個の溶融ポンプ及び溶融物スクリーンの両方の下流のポイントに位置する第2の溶融物ポンプの上流との両方;又は、(iii)溶融配合装置の下流であるが別個の溶融ポンプの上流に位置する溶融スクリーンの下流と、(iv)(iii)における別個の溶融ポンプ及び溶融スクリーンの両方の下流であるポイントに位置する第2の溶融ポンプの上流の両方を含んでもよい。
【0062】
更に、硬化性添加剤の組合せに適した注入ポイントは、(i)溶融配合装置の下流端における分配混合又は混練セクション、(ii)溶融配合装置自体における溶融物形成の下流の注入ポイント、及び(iii)溶融配合装置の下流であるが別個の溶融ポンプの上流に位置する溶融スクリーンの下流、の3つ全て;(ii)溶融配合装置自体における溶融形成の下流の注入ポイント、(iii)溶融配合装置の下流であるが別個の溶融ポンプの上流に配置された溶融スクリーンの下流、及び(iv)(iii)における別個の溶融ポンプ及び溶融スクリーンの両方の下流のポイントに位置する第2の溶融ポンプの上流、の3つ全て;(i)溶融配合装置の下流端にある分配混合又は混練セクション、(iii)溶融配合装置の下流であるが別個の溶融ポンプの上流に位置する溶融スクリーンの下流、及び(iv)(iii)における別個の溶融ポンプ及び溶融スクリーンの両方の下流にあるポイントに位置する第2の溶融ポンプの上流、の3つ全て;(i)溶融配合装置の下流端における分配混合又は混練セクション、(ii)溶融配合装置自体における溶融形成の下流の注入ポイント、及び(iv)(iii)における別個の溶融ポンプ及び溶融スクリーンの両方の下流のポイントに位置する第2の溶融ポンプの上流、の3つ全て;又は(ii)溶融配合装置自体における溶融形成の下流の注入ポイント、(iii)溶融配合装置の下流であるが別個の溶融ポンプの上流に配置された溶融スクリーンの下流、及び(iv)(iii)における別個の溶融ポンプ及び(iii)における溶融スクリーンの両方の下流のポイントに位置する第2の溶融ポンプの上流、の3つ全てを含んでもよい。
【0063】
好ましくは、中間体化合物の溶融流の全体的な溶融温度を制御するために、本発明の方法は、熱可塑性ポリオレフィンポリマーの第2の固体供給物を、熱可塑性ポリオレフィンポリマーの第1の固体供給物の下流に、例えば、全ての注入ポイントの上流の任意のポイントで、又は最も上流の注入ポイントに隣接して添加し、第2の供給物を溶融配合することを更に含む。1:1~1:4、又は好ましくは1:2~1:4の第2のポリマー供給物対初期ポリマー供給物の重量比などで第2のポリマー供給物を導入することによって、中間体化合物及び得られる架橋性化合物の溶融流の全体的な溶融温度を著しく低下させることができる。初期熱可塑性ポリオレフィンポリマー溶融流からのエンタルピーは、第2のポリマー供給物を溶融し、溶融物に対する改善された温度制御、すなわち、低下した溶融温度を達成する。
【0064】
本発明に従って使用するのに好適な溶融配合装置としては、例えば、同方向回転噛み合い二軸スクリュー押出機、バッチミキサー、逆回転非噛み合い二軸ローターミキサー(例えば、Farrel、FCM)、又は単軸スクリュー押出機を挙げることができる。本発明の方法が、中間体化合物の溶融流を溶融ポンプに送達し、任意の注入ポイント、すなわち硬化性添加剤の組合せを溶融流に注入するための場所の上流で加圧溶融流を溶融スクリーニングすることを含む場合、より広い選択の配合装置を使用することができる。そのような場合、溶融配合装置は、上に列挙した配合機、同方向回転噛み合い二軸スクリュー押出機、内部バッチミキサー、又は逆回転非噛み合い二軸スクリュー配合ミキサーのいずれかを含むことができる。記載された手段による十分に迅速かつ完全な硬化剤の溶融物への組み込みなしに、得られた組成物は、有機過酸化物の激しいスコーチ又は分解を示した。例えば、125℃の溶融温度で排出し、硬化性添加剤の組合せを下流で添加する比較のバンバリーミキサーでの実験は、激しいスコーチをもたらし、化合物を使用不能にした。
【0065】
本発明に従って使用するのに好適な溶融物スクリーニング装置としては、例えば、連続プレート、回転スクリーンチェンジャー、スライドプレートスクリーンチェンジャー、デュアルボルト若しくはチャンバスクリーンチェンジャーなどの連続スクリーニング若しくは濾過技術、又は例えばポリマーゲルなどの25μm~500μmのサイズ範囲の粒子を阻止することができる織布若しくは不織布濾材を有する任意のキャンドル、プリーツキャンドル、ディスク、シリンダ、若しくは平板濾過要素を挙げることができる。
【0066】
本発明に従って使用するのに適した溶融ポンプとしては、当技術分野において既知である任意のもの、例えば、MAAG、Farrel-Pomini、ギアミキサー、又は混合を促進するように適切に修正されたツインギア圧力発生溶融ポンプを挙げることができる。
【0067】
本発明は更に、熱可塑性ポリオレフィン、1つ以上の酸化防止剤(AO)、1つ以上の架橋助剤、及び1つ以上のフリーラジカル開始剤を含む均質な熱可塑性ポリオレフィン架橋性化合物を提供する。組成物は、1つ以上の架橋助剤を更に含み得る。
【0068】
本発明によれば、溶融配合が完了した後1時間以内に、架橋性化合物は、ASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、最小トルク(「ML」)からの1単位(インチ-lb)又は1.13デシニュートン-メートル(dN-m)の増加に必要な時間として報告される、少なくとも51分、又は好ましくは少なくとも55分の140℃でのスコーチ時間(ts1)、及び/又はASTM手順D5289に従ってムービングダイレオメーター(MDR)試験によって決定される場合に、少なくとも2.26dN-m(2.2lbf-in)、又は好ましくは2.36dN-m(2.3lbf-in)の182℃での最大トルク(MH)を有する。
【0069】
「熱可塑性ポリオレフィン」及び「TPO」という用語は、本明細書において、単一の不飽和炭化水素モノマーを重合することによって製造されるホモポリマー、及び2つ以上の異なる不飽和炭化水素モノマーを重合することによって製造されるコポリマーを指すために使用され、各不飽和炭化水素モノマーは、炭素原子及び水素原子からなる。不飽和炭化水素モノマーの例は、エチレン、プロピレン、(C4~C20)アルファ-オレフィン、及び1,3-ブタジエンである。いくつかの実施形態では、TPOは、ポリエチレンホモポリマー又はエチレン/(C4~C20)アルファ-オレフィンコポリマーである。(C4~C20)アルファ-オレフィンは、式H2C=C(H)-(CH2)qCH3の化合物であり、式中、下付き文字qは、1~17の整数である。いくつかの実施形態では、(C4-C20)アルファ-オレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセン、又は1-オクテンであるか、あるいは、1-ブテン又は1-ヘキセンであるか、あるいは、1-オクテンであるか、あるいは、1-ヘキセンであるか、あるいは、1-ブテンである。
【0070】
好適な熱可塑性ポリオレフィンは、主な(すなわち、50重量%を超える)モノマー成分としてエチレンモノマーから調製されるポリマーを含んでもよいが、他のコモノマーも用いてもよい。エチレンポリマーは、コポリマーを製造するために使用されるモノマーの全重量に基づいて、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、又は少なくとも25重量%のα-オレフィンコモノマー含有量を有するエチレンホモポリマー、又はエチレン/アルファ-オレフィン(「α-オレフィン」)コポリマーであり得る。そのようなコポリマーは、コポリマーの重量を基準として、50重量%未満、45重量%未満、40重量%未満、又は35重量%未満のα-オレフィン含量を有し得る。好適なα-オレフィンは、C3~20の(すなわち、3個~20個の炭素原子を有するもの)、又はC4~20の(すなわち、4個~20個の炭素原子を有するもの)、直鎖、分岐又は環状α-オレフィンであり得る。C3~20α-オレフィンの例としては、例えば、プロペン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、及び1-オクタデセンが挙げられる。α-オレフィンは、シクロヘキサン又はシクロペンタンなどの環状構造も有し、3-シクロヘキシル-1-プロペン(アリルシクロヘキサン)及びビニルシクロヘキサンなどのα-オレフィンをもたらし得る。例示的なエチレン/α-オレフィンインターポリマーには、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1-ヘキセン、エチレン/1-オクテン、エチレン/スチレン、エチレン/プロピレン/1-オクテン、エチレン/プロピレン/ブテン、エチレン/ブテン/1-オクテン、及びエチレン/ブテン/スチレンが挙げられる。更に、エチレンポリマーは、単独で、又は1つ以上の他の種類のエチレンポリマー(例えば、モノマー組成物及び含有量、触媒調製方法などによって互いに異なる2つ以上のエチレンポリマーのブレンド)と組み合わせて使用することができる。エチレンポリマーのブレンドが使用される場合、ポリマーは、任意の反応器内プロセス又は反応器後プロセスによってブレンドされ得る。
【0071】
エチレンポリマーは、低密度ポリエチレン(「LDPE」)、直鎖状低密度ポリエチレン(「LLDPE」)、極低密度ポリエチレン(「VLDPE」)、及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択され得る。LDPEは、一般に、高度に分岐状のエチレンホモポリマーであり、高圧プロセスを介して調製され得る(すなわち、HP-LDPE)。本明細書における使用に好適なLDPEは、0.91g/cm3~0.94g/cm3の範囲、又は例えば、少なくとも0.915g/cm3であるが、0.94未満、又は0.93g/cm3未満の密度を有することができる。本明細書に提供される密度は、ASTM法D792に従って決定される。本明細書での使用に好適なLDPEは、20g/10分未満、又は0.1g/10分~10g/10分、0.5g/10分~5g/10分、1g/10分~3g/10分の範囲のメルトインデックス(I2)、又は2g/10分のI2を有することができる。本明細書で提供されるメルトインデックスは、ASTM法D1238に従って決定される。別段記述されない限り、メルトインデックスは、190℃及び2.16kgで決定される(I2としても知られる)。一般に、LDPEは、広範な分子量分布(「MWD」)を有し、高い多分散性指数(「PDI」、又は重量平均分子量の数平均分子量に対する比率」)をもたらす。エチレンポリマーは、コモノマー(例えば、α-オレフィンモノマー)の不均一な分布を有し、短鎖分岐を特徴とするポリマーなどのLLDPEであり得る。例えば、LLDPEは、0.916g/cm3~0.925g/cm3の範囲の密度を有する、エチレンとα-オレフィンモノマーとのコポリマーであり得る。本明細書での使用に好適なLLDPEは、1g/10分~20g/10分、又は3g/10分~8g/10分の範囲のメルトインデックス(I2)を有することができる。エチレンポリマーは、VLDPE又は超低密度ポリエチレン、又はULDPEであってよい。VLDPEは、概して、コモノマー(例えば、α-オレフィンモノマー)の不均一分布を有するエチレンポリマーであり、短鎖分岐を特徴とする。例えば、VLDPEは、エチレンモノマー及びα-オレフィンモノマーのコポリマー、例えば、上述のそれらのα-オレフィンモノマーのうちの1つ以上であり得る。本明細書での使用に好適なVLDPEは、0.87g/cm3~0.915g/cm3の範囲の密度を有し得る。本明細書での使用に好適なVLDPEは、0.1g/10分~20g/10分、又は0.3g/10分~5g/10分の範囲のメルトインデックス(I2)を有することができる。なお更に、本発明によるエチレンポリマーは、上述のエチレンポリマーの任意の2つ以上の組合せを含むことができる。
【0072】
本発明の熱可塑性ポリオレフィンポリマーは、幅広く多様な、当該技術分野において知られている方法によって製造される。本開示のポリオレフィンポリマーを調製するために、ポリオレフィンポリマーを生産するための従来の又は今後発見される任意の生産プロセスが使用され得る。一般に、重合は、チーグラー-ナッタ又はカミンスキー-シン重合反応のための当技術分野で既知の条件、すなわち、0°~250℃、又は30°若しくは200℃の温度、及び100気圧~10,000気圧(1,013メガパスカル(「MPa」))、好ましくは500気圧~10,000気圧の圧力で達成することができる。大部分の重合反応では、モノマーに対する重合触媒のモル比は、10-12:1~10-1:1、又は10-9:1~10-5:1の範囲である。
【0073】
いくつかの実施形態では、1つ以上の酸化防止剤及び1つ以上の熱可塑性ポリオレフィン(まとめて、主流の成分)を含むが、有機過酸化物及び架橋助剤からなる群から選択される1つ以上の硬化性添加剤を含まない主流、並びにそれから製造される中間体化合物(中間体化合物は、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンポリマー及び1つ以上の酸化防止剤(AO)の混合物を含むが、1つ以上の硬化性添加剤を欠いている)の溶融流は、いかなる他のポリマーも含まない。そのような実施形態では、一次流のポリマー成分及びそれから製造される中間体化合物は、熱可塑性ポリオレフィンのうちの1つ以上からなる。そのような実施形態では、本発明の方法によって製造される架橋性化合物組成物のポリマー成分は、熱可塑性ポリオレフィンのうちの1つ以上からなり、架橋性化合物組成物を硬化させることによって製造される架橋化合物組成物のポリマー成分は、独立して、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィン及び/又はそれを硬化させることによって製造される架橋ポリオレフィンからなる。
【0074】
いくつかの実施形態では、1つ以上の酸化防止剤及び1つ以上の熱可塑性ポリオレフィン(まとめて、一次流の成分)を含むが、有機過酸化物及び架橋助剤からなる群から選択される1つ以上の硬化性添加剤を含まない一次流、並びにそれから製造される中間体化合物(中間体化合物は、1つ以上の熱可塑性ポリオレフィンポリマー及び1つ以上の酸化防止剤(AO)の混合物を含むが、1つ以上の硬化性添加剤を欠いている)の溶融流はまた、熱可塑性ポリオレフィンではないポリマーを含有する。熱可塑性ポリオレフィンではなく、これらの実施形態に含有され得るポリマーの例は、エチレン/不飽和カルボン酸エステルコポリマーである。使用され得るエチレン/不飽和カルボン酸エステルコポリマーの例は、エチレン/アルキルアクリレート(EAA)コポリマー、エチレン/アルキルメタクリレート(EAMA)コポリマー、及びエチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマーである。エチレン/アルキルアクリレートコポリマーの例は、エチレン/メチルアクリレート(EMA)コポリマー、エチレン/エチルアクリレート(EEA)コポリマー、及びエチレン/ブチルアクリレート(EBA)コポリマーである。エチレン/アルキルメタクリレートコポリマーの例は、エチレン/メチルメタクリレート(EMMA)コポリマー、エチレン/エチルメタクリレート(EEMA)コポリマー、及びエチレン/ブチルメタクリレート(EBMA)コポリマーである。そのような実施形態では、一次流のポリマー成分及びそれから製造される中間体化合物は、熱可塑性ポリオレフィンうちの1つ以上及び1つ以上のエチレン/不飽和カルボン酸エステルコポリマーからなる。一次流のそのような実施形態において使用される1つ以上のエチレン/不飽和カルボン酸エステルコポリマーの割合は、一次流の総重量に基づいて、0.05重量%~20重量%、あるいは0.10重量%~15重量%、あるいは0.10重量%~5重量%であってもよく、中間体化合物のそのような実施形態において使用される1つ以上のエチレン/不飽和カルボン酸エステルコポリマーの割合は、独立して、中間体化合物の総重量に基づいて、0.05重量%~20重量%、あるいは0.10重量%~15重量%、あるいは0.10重量%~5重量%であってもよい。本発明の方法に従ってそれから製造される架橋性化合物組成物の実施形態はまた、1つ以上のエチレン/不飽和カルボン酸エステルコポリマーを含有し、そのような実施形態を硬化させることによって製造される架橋化合物組成物は、その架橋生成物を含有する。
【0075】
好適な酸化防止剤(AO)は、第三級アミン、第二級若しくは第三級チオール、第二級若しくは第三級フェノール、ビスフェノール、トリスフェノール及びテトラフェノール、又は好ましくは、これらの2つ以上の組合せを含んでもよい。好適な酸化防止剤の例としては、例えば、(4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル)アミン(例えば、NAUGARD 445,Addivant USA,Danbury,CT)、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)(例えば、VANOX MBPC、Vanderbilt Chemicals,New York,NY)、2,2’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチル)フェノール(CAS番号90-66-4)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)としても知られている4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)、CAS番号96-69-5、LOWINOX TBM 6酸化防止剤、Addivant)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)(CAS番号90-66-4、市販のLOWINOX TBP-6)、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン)(例えば、CYANOX 1790酸化防止剤、Solvay Chemicals,Syracuse,NY)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、IRGANOX 1010酸化防止剤、CAS番号6683-19-8)、3,5-ビス(1,1ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸2,2’-チオジエタンジイルエステル(例えば、IRGANOX1035酸化防止剤、CAS番号41484-35-9、BASF,Ludwigshafen,DE)、ジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)、ジラウリルチオジプロピオネート(例えば、IRGANOX PS800酸化防止剤)、ステアリル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、IRGANOX1076)、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール(IRGANOX1726酸化防止剤)、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(例えば、IRGANOX1520酸化防止剤)、及び2,3-ビス[[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド(IRGANOX1024酸化防止剤)である。好ましくは、1つ以上の酸化防止剤は、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)(4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)としても知られている)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、ジステアリルチオジプロピオネート若しくはジラウリルチオジプロピオネート;又はこれらの任意の2つ以上の組合せを挙げることができる。より好ましくは、酸化防止剤は、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンとジステアリルチオジプロピオネートとの組合せであってもよい。
【0076】
1つ以上の酸化防止剤の総量は、架橋性化合物組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~1.5重量%、又は0.05重量%~1.2重量%、又は0.1重量%~1重量%であり得る。
【0077】
本発明によれば、エチレンポリマーは、架橋開始剤としての1つ以上の有機過酸化物と組み合わされる。好適なフリーラジカル開始剤は、エチレンポリマーの融点と少なくとも同程度に高い分解を有し、同一又は異なるアルキル、アリール、アルカリール、又はアラルキル部分を有する任意のジアルキル、ジアリール、ジアルカリール、又はジアラルキル(ジ)ペルオキシドを含んでもよい。構造:R1-O-O-R2、又はR1-O-O-R-O-O-R2を有する式において、式中、R1及びR2の各々は、独立してヒドロカルビル部分であり、Rはヒドロカルビレン部分であり、R1及びR2の各々は、独立してC1~C20又はC1~C12アルキル、アリール、アルカリール、又はアラルキル部分であり、Rは、C1~C20又はC1~C12アルキレン、アリーレン、アルカリーレン、又はアラルキレン部分であることができ、R、R1、及びR2は、同一又は異なる数の炭素原子を有することができるか、又はR、R1、及びR2のうちのいずれか2つは同数の炭素原子を有することができるが、3つ目は、異なる数の炭素原子を有する。本明細書での使用に適切な有機過酸化物には、単官能性過酸化物及び二官能性過酸化物が含まれる。本明細書で使用する「単官能性過酸化物」は、一対の共有結合した酸素原子を有する過酸化物(例えば、構造R-O-O-Rを有する)を示す。本明細書で使用する「二官能性過酸化物」は、二対の共有結合した酸素原子(例えば、R-O-O-R-O-O-R構造を有する)を有する過酸化物を示す。二官能性又はより高い官能性の過酸化物は、共架橋剤と呼ばれ得る。
【0078】
例示的な有機過酸化物としては、ジクミルペルオキシド(「DCP」)、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド(「DTAP」)、イソプロピルクミルt-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、イソプロピルクミルクミルペルオキシド、ジ(イソシアネート)ペルオキシド、及びこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。好適な二官能性過酸化物としては、ビス(t-ブチル-パーオキシイソプロピル)ベンゼン(「BIPB」)、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン-3、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン及びそれらの2つ以上の混合物を挙げることができる。多くの場合、単一の種類の有機過酸化物のみが用いられる。好ましくは、有機過酸化物は、ジクミルペルオキサイド又はクミル基含有過酸化物である。
【0079】
本発明による架橋性化合物組成物は、1つ以上の有機過酸化物を、架橋性化合物組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~2重量%、又は好ましくは0.3重量%~1.4重量%、又は好ましくは0.4重量%~1.2重量%、又は好ましくは0.5未満~1重量%の範囲の量で含むことができる。
【0080】
好適な架橋助剤は、例えば、式(I):[R1,R2SiO2/2]n(I)の任意の単環式オルガノシロキサンを含んでもよく、式中、下付き文字nは、3以上の整数であり、各R1は独立して、(C2~C4)アルケニル又はH2C=C(R1a)-C(=O)-O-(CH2)m-であり、式中、R1aはH又はメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各R2は独立して、H、(C1~C4)アルキル、フェニル、又はR1と同じである。
【0081】
本発明における使用のための架橋助剤の適切な例としては、例えば、上記の式(I)のいずれかを挙げることができ、ここでは、(i)各R1は、独立して(C2~C3)アルケニル基であり、各R2は、独立してH、(C1~C2)アルキル基、又は(C2~C3)アルケニル基である、(ii)各R1は、ビニルであり、各R2は、独立して(C1~C2)アルキル基である、(iii)各R1はビニルであり、各R2がメチルである、(iv)各R1はアリルであり、各R2は独立して、(C1~C2)アルキル基である、(v)各R1はアリルであり、各R2はメチルである、(vi)各R1は独立して、H2C=C(R1a)-C(=O)-O-(CH2)m-であり、式中、R1aはH又はメチルであり、下付き文字mは1~4の整数であり、各R2は独立して、H、(C1~C2)アルキル基、又は(C2~C3)アルケニル基である、(vii)各R1は独立して、H2C=C(R1a)-C(=O)-O-(CH2)m-であり、式中、R1aはHであり、下付き文字mは3であり、各R2は独立して、(C1~C2)アルキル基である、(viii)各R1は独立して、H2C=C(R1a)-C(=O)-O-(CH2)m-であり、式中、R1aはメチルであり、下付き文字mは3であり、各R2が独立して、(C1~C2)アルキルである。2つ以上の架橋助剤を使用することができる。好適な架橋助剤としては、例えば、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニル-シクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニル-シクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチル-2,4,6,8,10-ペンタビニル-シクロペンタシロキサン若しくはテトラメチル-テトラビニル-シクロテトラシロキサン、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0082】
架橋性化合物組成物中の1つ以上の架橋助剤の量は、0.1重量%~5重量%、又は好ましくは0.3重量%~4重量%、又は好ましくは0.3重量%~3.5重量%、例えば、好ましくは0.5重量%~2重量%であってもよく、全ての重量は、架橋性化合物組成物の総重量に基づく。
【0083】
本発明で使用するのに好適な架橋助剤は、エチレンポリマーと共重合することができる二官能性及びより高官能性のモノマーを含むことができる。架橋助剤は、ポリアリル又はポリビニル架橋助剤を含むことができる。本明細書で使用される場合、「ポリアリル」は、少なくとも2つのペンダントアリル官能基を有する化合物、例えば、トリアリルイソシアヌレート(「TAIC」)、トリアリルシアヌレート(「TAC」)、トリアリルトリメリテート(「TATM」)、及びこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択されるトリアリル化合物を意味する。好適な架橋助剤の例としては、ポリアリル架橋助剤、例えば、トリアリルイソシアヌレート(「TAIC」)、トリアリルシアヌレート(「TAC」)、トリアリルトリメリテート(「TATM」)、トリアリルオルトホルメート、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、トリアリルシトレート、及びトリアリルアコニテート;ビニル又はアクリル架橋助剤、例えば、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート(「TMPTA」)、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート(「TMPTMA」)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、及びプロポキシル化グリセリルトリアクリレート;ビニル含有架橋助剤、例えばα-メチルスチレンダイマー(「AMSD」);高い1,2-ビニル含量を有するポリブタジエン、及びトリビニルシクロヘキサン(「TVCH」);並びに米国特許第5,346,961号及び同第4,018,852号に記載されているような他の架橋助剤が挙げられる。更に他の架橋助剤は、Caiらの米国特許第10,941,278(B2)号に開示されるような、少なくとも1つのN,N-ジアリルアミド官能基を有してもよい。好ましくは、架橋助剤はTAICである。架橋助剤の更なる例は、米国特許第6,277,925号(例えば、アリル2-アリル-フェニルエーテルなど)及び米国特許第6143822号(例えば、非置換であっても置換されていてもよい1,1-ジフェニルエチレン)に記載されている。
【0084】
本発明による架橋性化合物組成物は、1つ以上の架橋助剤を、架橋性化合物組成物の総重量に基づいて、0.5重量%~5重量%、又は0.7重量%~3.5重量%、又は1.0重量%~3重量%、又は1重量%~2.5重量%の範囲の量で含むことができる。
【0085】
架橋助剤は、架橋性化合物組成物中に存在する硬化性添加剤の組合せの総重量に基づいて、少なくとも1重量%、少なくとも10重量%、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、又は最大50重量%、又は最大35重量%を構成することができる。
【0086】
架橋性化合物組成物はまた、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)と呼ばれることもあるヒンダードアミン安定剤(HAS)を含んでもよい。HASは、立体障害のあるアミノ官能基を有し、酸化による劣化を阻害する化合物である。いくつかの実施形態では、HASはまた、酸触媒分解を低減することができ、これらの実施形態は、酸性副産物が方法中にその場で生成されるものである。酸性副生成物は、酸化防止剤と酸素との反応によってその場で生成することができる。好適なHASの例は、ブタン二酸ジメチルエステル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-エタノールを有するポリマー(CAS番号65447-77-0、市販のLOWILITE62)である。HASの他の例としては、(i)1,6-ヘキサンジアミン、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンを有するN,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ポリマー、N-ブチル-1-ブタンアミン及びN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンとの反応生成物、(ii)ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]])、及び(iii)1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル)-4-ピペリジニル)-、2,4-ジクロロ-6-(4-モルホリニル)-1,3,5-トリアジンとのポリマーが挙げられる。HAS(iii)の代替記述は、ポリ[(6-モルホリノ-s-トリアジン-2,4-ジイル)[2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニルイミノ]-ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]である。HAS化合物の他の例は、J.Pospisil 及び P.P.KlemchukによるOxidation Inhibition in Organic Materials第II巻の2頁~8頁に見出すことができる。HASは単独で使用されてもよく、2つ以上の組合せで使用されてもよい。いくつかの実施形態では、HASは、N,N’-1,6-ヘキサンジイルビス(N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ホルムアミドであり、BASFからUvinul 4050として入手可能である。
【0087】
「モンモリロナイト」という用語は、無機モンモリロナイト及びオルガノモンモリロナイト(oranomontmorillonite)などの天然又は人工のフィロケイ酸塩を含む。用語「ヒドロペルオキシド」は、式-OOHの少なくとも1つの一価官能基を有する任意の化合物を意味する。N-ニトロソ-ジアリールアミンという用語は、式ON-N-Ar2の化合物を意味し、式中、各Arは独立してアリール基である。用語「マレイミド」(「マレインイミド(maleinimide)」とも呼ばれる)は、N-置換1H-ピロール-2,5-ジオンを意味する。「イミン化合物」という用語は、別個の炭素-窒素二重結合を有する化合物を意味する。用語「ヒドロキノン」は、1,4-ベンゼンジオール及び置換1,4-ベンゼンジオールを意味し、ここで、1,4-ベンゼンジオールの6個の水素原子の少なくとも1個は、ハロゲン原子などの異なる原子によって、又はヒドロカルビル基、オルガノヘテリル基、ヒドロキシル、アミノ、チオールなどの官能基によって置き換えられている。
【0088】
本発明による溶融混合装置の様々な変形例が
図1、2、3及び4に示されている。
【0089】
図1は、導体又はケーブル絶縁組成物を製造するための本発明による方法及び装置を表示する。溶融配合ライン(2)は、上流から下流に向かって左から右に移動して、溶融配合装置(4)、この場合は二軸スクリュー押出機、溶融ポンプ(6)、溶融スクリーン(8)及びペレット化ダイ(10)を含む。溶融配合装置(4)は、任意の酸化防止添加剤を含み、任意選択で硬化性添加剤の組合せを含むベース熱可塑性ポリオレフィン(エチレンポリマー)供給物(12)を溶融及び混合する。溶融ポンプ(6)は、溶融スクリーン(8)の上流に圧力を構築するのを助け、それ自体が硬化性添加剤の分布を促進し、架橋性化合物生成物の清浄度を改善する。ペレット化ダイ(10)は、製剤をすぐに使用できる形態にペレット化する。溶融配合装置(4)は、二軸スクリュー押出機、バッチミキサー(バンバリーミキサー)、逆回転ツインローターミキサー(例えば、Farrel、FCM)、又は一軸スクリュー押出機であり得る。溶融配合ライン(2)に沿って、硬化性添加剤は、i)分配混合セクション(図示せず)又はその上の溶融配合装置(4)に、ii)溶融配合装置(4)と溶融ポンプ(6)との間の移行部に、又はiii)直接溶融ポンプ(6)に、又はそれらの組合せを含む任意の注入サイト(14)で注入することができる。それぞれが硬化性添加剤の組合せの一部を含む複数の注射部位(14)を使用して、所望の総量の硬化性添加剤を注射することができる。
【0090】
図2は、導体又はケーブル絶縁組成物を製造するための本発明による他の方法及び装置を表示する。溶融配合ライン(2)は、上流から下流に向かって左から右に移動して、溶融配合装置(4)、この場合は二軸スクリュー押出機、2つの溶融ポンプ(6)、溶融スクリーン(8)及びペレット化ダイ(10)をまたぐ2つの溶融ポンプ(6)を含む。溶融配合装置(4)は、酸化防止添加剤を含み、任意選択で硬化性添加剤の組合せも含むベース熱可塑性ポリオレフィン(エチレンポリマー)供給物(12)を溶融及び混合する。上流の(左側の)溶融ポンプ(6)は、溶融スクリーン(8)の上流に圧力を構築するのを助け、それ自体が架橋性化合物生成物の清浄度を改善する。下流(右側)の溶融ポンプ(6)は、硬化性添加剤を中間体化合物中に分散させる。ペレット化ダイ(10)は、製剤をすぐに使用できる形態にペレット化する。溶融配合装置(4)は、同方向噛み合い型二軸スクリュー押出機、内部バッチミキサー(バンバリーミキサー)、逆回転二軸スクリュー配合ミキサー(例えば、Farrel、FCM)、又は一軸スクリュー押出機であり得る。硬化性添加剤は、i)溶融スクリーン(8)と下流溶融ポンプ(6)との間の移行ライン、又はii)下流溶融ポンプ(6)への直接注入を含む、1つ以上の注入部位(14)に注入することができる。両方の注入部位(14)は、複数の注入器(図示せず)が、合計して所望の量の硬化性添加剤になる量を注入し得るように使用されてもよい。
【0091】
図3は、実施例のいくつかにおいて使用される実験的溶融配合ライン(2)を示し、上流から下流に向かって左から右に移動して、押出機(20)、ポリマー供給部位(12)、硬化性添加剤の組合せのための注入場所(14)、溶融スクリーン(8)及びペレット化ダイ(10)を含む。
【0092】
押出機の好ましい例において、単軸スクリュー押出機又は二軸スクリュー押出機は、フィーダー、溶融スクリューセクション、及び混練ブロック又はギアミキサーなどの下流混合セクションを有する。LDPE及び酸化防止剤からなる熱可塑性ポリオレフィンポリマー供給物は、押出機バレルの上流端のフィーダーを介して供給することができ、硬化性添加剤は、下流混合セクションの上流の様々な注入部位のいずれかで注入することができる。
【実施例】
【0093】
以下の実施例により、本発明を例示する。別段の指示がない限り、全ての部及び百分率は重量によるものであり、全ての温度は摂氏度(℃)であり、全ての調製及び試験手順は、室温(23℃)及び圧力(1atm)の周囲条件で実施される。以下の実施例並びに表1、表2、表3及び表4において、以下の略語を使用した:DCP:ジクミルペルオキシド、LDPE:低密度ポリエチレン、MDR:ムービングダイレオメーター。
【0094】
以下の材料を以下の実施例で使用した(別途記載のない限り、全ての成分は受け取ったままの状態で使用した)。
【0095】
酸化防止剤ブレンドA:61.6重量%のジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)、37.5重量%のトリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6トリオン(Solvay ChemicalsからCYANOX 1790酸化防止剤として入手可能)、及び0.9重量%のN,N’-1,6-ヘキサンジイルビス(N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ホルムアミド(BASFからUvinul 4050として入手可能)の混合物。
【0096】
酸化防止剤ブレンドB:50重量%の3,5-ビス(1,1ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロピオン酸2,2’-チオジエタンジイルエステル(Irganox 1035)及び50重量%のDSTDP。
【0097】
酸化防止剤ブレンドC:50重量%の4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)(Lowinox TBM-6)及び50重量%の3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2 H-1-ベンゾピラン-6-オール。(Irganox E-201)。
【0098】
酸化防止剤ブレンドD:50重量%のペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Irganox 1010)及び50重量%のDSTDP。
【0099】
酸化防止剤1:トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン)(CYANOX1790)。
【0100】
ヒンダードアミン光安定剤1:ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジイル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ)}(Chimassorb 944)。
【0101】
低密度ポリエチレンポリマー1(LDPE1):低密度ポリエチレン(LDPE)を、実験室で化合物を製造する際のベース樹脂として使用した。それは、0.92g/ccの密度及び1.9dg/分のメルトインデックス(MI)(190℃で2.16kgの荷重で測定)を有する。
【0102】
ジクミルペルオキシド:DI-CUP(商標)(DCP)開始剤(Arkema,Paris,FR、白色から淡黄色の粒状固体(融点38℃、25℃で比重1.02g/cm3)。
【0103】
架橋助剤1:トリアリルイソシアヌレート(TAIC)。
【0104】
架橋助剤2:化学名2,4,6,8-テトラメチル2,4,6,8-テトラビニル-シクロテトラシロキサン(「[ViD]4」)を有する単環式テトラ(アルケニルオルガノシロキサン)。
【0105】
架橋助剤3:アリル2-アリル-フェニルエーテル。
【0106】
架橋助剤4:トリアリルシアヌレート(TAC)。
【0107】
架橋助剤5:アルファ-メチルスチレンダイマー(AMSD)。
【0108】
本発明の実施例1~4(IE1~IE4):硬化性添加剤は、1つの有機過酸化物及び2つの架橋助剤を含む。以下の本発明の実施例1~4における配合物は、LDPE1及び酸化防止剤ブレンドを示された量でバンバリーミキサー中で混合することによって製造し、ペレット化して(Galaペレット化システム、MAAG Group、Oberglatt、CH)、ペレットの形態の中間体化合物を製造した。本発明の実施例1~4では、次に、中間体化合物のペレットを、
図3に示す構成を有する二軸スクリュー押出機及び配合ラインにおいて、以下の表2に示す条件(例えば、145℃)下で溶融配合して、中間体化合物の溶融流を得て、次いで、有機過酸化物DCPと架橋助剤1(TAIC)及び架橋助剤2([
ViD]
4)の組合せを、表2に示す条件(例えば、145℃)下で二軸スクリュー押出機中の中間体化合物の溶融流に注入して、本発明の実施例1~4(IE1~IE4)の本発明の架橋性化合物組成物を製造した。配合ラインにおいて、溶融スクリーンはスクリーンパック(20/150/60/20)を含んでいた。
【0109】
以下の表3に示される実施例は、以下の表1に列挙されるものと同じ組成を使用する。以下の本発明の実施例1において、各製剤について示されたパラメータは、配合された製品が製造された直後に開始して、示された時間間隔で測定された。
【0110】
浸漬:本発明の方法とは対照的に、有機過酸化物及び架橋助剤を熱可塑性ポリオレフィンに添加する広く使用されている比較方法は、液体形態の有機過酸化物及び液体形態の架橋助剤を熱可塑性ポリオレフィンの加温ペレットに浸漬することを含む。4つの本発明でない実験において、中間体化合物ペレットを70℃のオーブン中で少なくとも4時間加熱し、次いで1000mLの広口ガラスジャーに入れた。DCPと、架橋助剤1(TAIC)又は架橋助剤2(ビニル-D4)のいずれかとを含むもの、両方の助剤を含まないもの(両方の助剤を使用したIE1~IE4とは対照的に)を、比例的に予備混合し、次いでシリンジを使用してガラスジャーに移した。ジャーを十分に振盪し、次いで陶磁器タンブラー上に置き、これを30回転/分(rpm)で10分間運転した。得られた混合物を70℃のオーブンに一晩入れて浸漬し、4つの本発明でない化合物組成物を製造した。本発明でない化合物組成物を、本発明の実施例1~4を評価したのと同じ方法で評価した。4つの本発明でない化合物組成物の評価からのデータは、要求に応じて利用可能である。
【0111】
【0112】
【0113】
試験方法:以下の試験方法を以下の様々な実施例で使用した。以下の表3及び4は、試験方法の結果を提供する。
【0114】
安定性試験:以下の表3の本発明の実施例1において、本発明の実施例1-1、1-2、1-3、及び1-4(IE1-1~IE1-4)のそれぞれは、経時的にサンプリングされた1つの同じ配合物を含む。各配合物の試料を、同じ加工条件下で収集し、本発明による中間体化合物の溶融流への硬化性添加剤の注入を開始した後、異なる時間間隔で収集し、試験して、長い連続溶融配合運転にわたって生成された生成物特性の一貫性によって示されるような生成物及びプロセス安定性を実証した。長い連続溶融配合運転は、2時間~4時間、典型的には2時間~3時間続く。試料収集時間間隔は以下の通りであった:本発明の実施例1-1については、硬化性添加剤の注入を開始してから約15分後に採取した試料を、示された速度で添加した。本発明の実施例1-2については、1時間目の終わりに試料を採取した。本発明の実施例1-3については、2時間目の終わりに試料を採取し、本発明の実施例1-4については、3時間目の終わりに試料を採取した。
【0115】
以下の実施例において試験するための架橋性化合物のプラークを以下の方法で製造した。
【0116】
硬化プラークの調製:示されるような様々な本発明の実施例において、急冷能力を有するWABASH(商標)GENESIS(商標)Steam Pressを使用して、ペレットをプレス及び硬化させた。(比較化合物組成物については、浸漬後のペレットを、急冷能力を有するWABASH(商標)GENESIS(商標)Steam Press(Wabash MPI,Wabash,IN)を使用して加圧下でプレスし、硬化させた。次いで、プラークを示された試験に供した。高温クリープ試験のための硬化は、圧縮金型WABASH(商標)GENESIS(商標)Steam Pressにおいて120℃でペレットを溶融することを含んでいた。金型の寸法は、203mm×203mm(8インチ×8インチ)×1.3mm(50ミル)であり、3.5MPa(500psi)の低圧下で3分間、その後、同じ温度で17MPa(2500psi)の高圧下で更に3分間圧縮する。鋳型を開き、プラークを鋳型から取り出し、それを4つの同様のサイズの小片に切断する。試験では、次に4つのピースを再配置し、金型に戻し、120℃で3.5MPa(500psi)の低圧下で3分間溶融し、同じ温度で17MPa(2500psi)の高圧下で更に3分間圧縮した。次いで、プレスの温度を182℃に上昇させ、12分間保持して、高圧下で試料を硬化させた。硬化後、金型を高圧下で15℃/分で室温まで冷却した。
【0117】
未硬化プラークの調製:浸漬後のペレットを、急冷能力を有するWabash(商標)GENESIS(商標)Steam Pressを使用してプレスした。MDR試験については、ペレットを最初に120℃で3.5MPa(500psi)の低圧下で3分間溶融し、同じ温度で17MPa(2500psi)の高圧下で更に3分間圧縮した。金型を高圧下で15℃/分で室温まで冷却して、未硬化プラークを形成した。
【0118】
高温クリープ:高温クリープは、架橋性化合物の硬化性能又は架橋度を測定し、これは、化合物がまだ架橋されていない程度を示すこともできる。高温クリープは、所与の架橋性化合物の硬化試験片の荷重下での伸び変形を指し、ICEA T-28-562に従って測定される。高温クリープ試験は、ASTM D412タイプDに従ってダイカッターを用いて硬化プラークから切断された1.3 mm(50ミル)のドッグボーン試料の下端に20N/cm2の重りを取り付け、2つのベンチマークラインで印を付けて200℃で実施され、各ラインは試料の中央で25.4mmの距離にある。試料を200℃に予熱したオーブンに入れ、20N/cm2の力に等しい重りを各試料の底部に取り付けた。15分後、伸び(基準ライン間の距離)を測定し、高温クリープを計算するために使用した。重りを試料から取り除いた。オーブン中で5分経った後、試料を取り出し、室温で24時間放置した。伸び(基準ライン間の距離)を再び測定し、この値を用いて熱間硬化を計算した。3つの試料を試験し、高温クリープの平均を報告した。許容可能な高温クリープ結果は100%以下である。高温クリープについては、%伸びが低いほど、材料はより多く架橋される。
【0119】
ムービングダイレオメーター(MDR):ムービングダイレオメーター(MDR)は、架橋性化合物の硬化特性の測定を可能にする。機器は、変形下の材料のトルク応答を測定する。材料が架橋を受けるにつれて、トルク応答は増加し、過酸化物が時間及び温度の試験条件で反応した後、最終的に最大トルク(「MH」)に達する。MH値は、所与の化合物の架橋レベルを示し、架橋可能な化合物を生成するのに十分に高くなければならない。MDR試験は、ASTM手順D5289「Standard Test 20 Method for Rubber-Property Vulcanization Using Rotorless Cure Meters」に従って、Alpha Technologies Rheometer、MDRモデル2000ユニット(Alpha Technologies(Hudson,OH))を使用して、せん断下で測定して行った。試験のために、直径2.56cm(1インチ)の円を1.905mm(75ミル)(厚さ)の未硬化プラークから切断し、1.905mm(75ミル)の円のうちの2つを一緒に積み重ねた。積み重ねられた2つの1.905mm(75ミル)の円を182℃で12分間試験してMHを得て、140℃(典型的な押出溶融温度)で様々な長さの時間試験してts1を得た。両方の試験は、0.5度のアーク振動で行った。MHは、曲線がプラトーに達するときのトルク値として報告される。望ましくは、MHは、加工直後に2.26 dN-mより高いか、又は<2 lbf-inであり、経時的に変化しない。スコーチ時間又はts1は、早期架橋(スコーチ)に対する耐性を評価するのに有用な硬化反応速度の指標を指す。スコーチ時間測定について、報告された値は、最小トルク(「ML」)から1単位(インチ-lbf)又は1.13デシニュートン-メートル(dN-m)の増加に必要な時間である。140℃における許容可能なts1は、少なくとも51分以上であるべきである。ts1は長ければ長いほど良い。同等の定義に従って、ts0.5、ts2、ts5などの他のスコーチ測定基準を使用することができる。
【0120】
【0121】
上記の表3に示されるように、本発明の実施例1の本発明の架橋性化合物組成物は、はるかに長い労働集約的浸漬プロセスを介して生成された成功した架橋性化合物にぴったりと一致し、本発明の実施例1-4を本発明の実施例1-1、1-2、及び1-3と比較すると、架橋性化合物組成物は、溶融配合運転の期間にわたって一貫したままである。I10メルトインデックス情報、最大トルクと最小トルクとの間のデルタ、及び長いスコーチ時間を含むこれらのデータは全て、本発明の方法が、長い連続溶融配合運転の間に一貫して同じ生成物を製造することができること、及び本発明の架橋性化合物組成物が依然として架橋性であることを示す。
【0122】
【0123】
上記表3及び4に示されるように、本発明の実施例1~4の本発明の架橋性化合物組成物は、良好な製品一致性及び架橋性を有する耐スコーチ性架橋性化合物組成物を提供する。上記の表3及び表4のスコーチ時間(ts1)試験に示されるように、本発明の架橋性化合物組成物の全てが、良好なスコーチ時間及び高温クリープ結果を示す。
【0124】
本発明の予言的実施例5~12(IE5~IE12):以下の変更を除いて、IE1~IE4に使用した手順を繰り返す:配合は以下の表6に記載されている通りであり(硬化性添加剤は1つの有機過酸化物及び1つの架橋助剤を含む)、加工条件は以下の表5に記載されている。表6の処理条件は、手持ち式熱電対溶融温度が125℃であることを除いて、上記表2の処理条件と同じである。次に、IE5~IE12の架橋性化合物組成物をMDRで試験し、予測結果も表6に示す。
【0125】
【0126】
【0127】
表6は、予測結果を要約している。ML、MH、及びTS1は、本特許出願の他の箇所で定義される通りである。0.3N-m未満のML値は、配合後の低粘度を示し、材料が配合並びに助剤及び過酸化物の注入及び混合の間に架橋されないことを明確に示す。これらの予測された結果は、硬化剤の直接注入が、検出可能な量の架橋を受けなかったと予想される架橋性化合物組成物の実施形態をもたらし、本発明のプロセスにおいて使用するための架橋性化合物組成物の適合性を予測している。
【国際調査報告】