(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製方法及び窒素ドープ単結晶シリコン棒
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240705BHJP
C30B 29/06 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01L21/66 N
C30B29/06 502J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578114
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 CN2022122592
(87)【国際公開番号】W WO2023051694
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111165312.4
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522248559
【氏名又は名称】西安奕斯偉材料科技股▲ふん▼有限公司
【住所又は居所原語表記】Room 1-3-029, No.1888 South Xifeng Rd., Hi-Tech Zone Xi’an, Shaanxi 710100, P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】蘭 洵
(72)【発明者】
【氏名】李 揚
【テーマコード(参考)】
4G077
4M106
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB01
4G077BA04
4G077CF10
4G077GA01
4G077GA02
4G077GA07
4G077HA06
4M106AA01
4M106CB11
4M106CB19
4M106DJ28
4M106DJ38
(57)【要約】
本願の実施例には、窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製方法及び窒素ドープ単結晶シリコン棒が開示されており、前記作製方法は、基準窒素ドープ単結晶シリコン棒に基づいてサンプルシリコンウェーハに切断した後、複数の検出すべきシリコンウェーハを選択し、前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布を評価することと、前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布に基づいて、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置を確定することと、現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製過程中に、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置にて、設定された各欠陥領域に対応する目標引き上げ速度で引き上げて、前記現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒を作製することとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製方法であって、
基準窒素ドープ単結晶シリコン棒に基づいてサンプルシリコンウェーハに切断した後、複数の検出すべきシリコンウェーハを選択し、前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布を評価することと、
前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布に基づいて、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置を確定することと、
現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製過程中に、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置にて、設定された各欠陥領域に対応する目標引き上げ速度で引き上げて、前記現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒を作製することとを含み、
そのうち、前記欠陥領域には、ホールリッチ領域と、インターステシャルリッチ領域と、ホールリッチ及びインターステシャルリッチ交互分布領域とが含まれる、窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製方法。
【請求項2】
上述の基準窒素ドープ単結晶シリコン棒に基づいてサンプルシリコンウェーハに切断した後、複数の検出すべきシリコンウェーハを選択し、前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布を評価することは、
基準引き上げ速度を用いて引き上げて前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒を作製し、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒を切断して前記サンプルシリコンウェーハを得ることと、
前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒の異なる位置にある複数の前記サンプルシリコンウェーハを前記検出すべきシリコンウェーハとして選択し、前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布を評価することとを含む、請求項1に記載の作製方法。
【請求項3】
上述の前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布を評価することは、
前記複数の検出すべきシリコンウェーハの表面の少数キャリアライフタイムデータを取得し、前記複数の検出すべきシリコンウェーハの表面の少数キャリアライフタイムデータに従って少数キャリアライフタイムマップを描画することと、
前記少数キャリアライフタイムマップに基づいて、前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布を評価することとを含む、請求項2に記載の作製方法。
【請求項4】
上述の前記少数キャリアライフタイムマップに基づいて、前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布を評価することは、
前記少数キャリアライフタイムマップが円形状でライフタイムの高いマップの場合、前記円形状でライフタイムの高いマップに対応する検出すべきシリコンウェーハが、ホールリッチ領域のみを含む第一検出すべきシリコンウェーハであると確定することと、
前記少数キャリアライフタイムマップが環状でライフタイムの低いマップの場合、環状でライフタイムの低いマップに対応する検出すべきシリコンウェーハが、ホールリッチ領域を取り囲むインターステシャルリッチ領域を含む第二検出すべきシリコンウェーハであると確定することと、
前記少数キャリアライフタイムマップが環状でライフタイムの高いマップの場合、環状でライフタイムの高いマップに対応する検出すべきシリコンウェーハが、インターステシャルリッチ領域を取り囲むホールリッチ領域を含む第三検出すべきシリコンウェーハであると確定することと、
前記少数キャリアライフタイムマップが円形状でライフタイムの低いマップの場合、前記円形状でライフタイムの低いマップに対応する検出すべきシリコンウェーハが、インターステシャルリッチ領域のみを含む第四検出すべきシリコンウェーハであると確定することとを含む、請求項3に記載の作製方法。
【請求項5】
上述の前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布に基づいて、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置を確定することは、
前記ホールリッチ領域のみを含む第一検出すべきシリコンウェーハに基づいて、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるホールリッチ領域の分布の位置Iを確定することと、
前記ホールリッチ領域を取り囲むインターステシャルリッチ領域を含む第二検出すべきシリコンウェーハに基づいて、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるホールリッチ領域を取り囲むインターステシャルリッチ領域の分布の位置IIを確定することと、
前記インターステシャルリッチ領域を取り囲むホールリッチ領域を含む第三検出すべきシリコンウェーハに基づいて、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるインターステシャルリッチ領域を取り囲むホールリッチ領域の分布の位置IIIを確定することと、
前記インターステシャルリッチ領域のみを含む第四検出すべきシリコンウェーハに基づいて、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるインターステシャルリッチ領域の分布の位置IVを確定することとを含む、請求項4に記載の作製方法。
【請求項6】
上述の現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製過程中に、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置にて、設定された各欠陥領域に対応する目標引き上げ速度で引き上げて、前記現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒を作製することは、
前記現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒のホットゾーン構造が前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒のホットゾーン構造と一致する場合、前記現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製過程中に、
前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるホールリッチ領域の分布の位置Iに基づいて、基準結晶引上げ速度を用いて引き抜くことと、
前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるホールリッチ領域を取り囲むインターステシャルリッチ領域の分布の位置IIに基づいて、第一目標結晶引上げ速度V
1を用いて引き抜くことと、
前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるインターステシャルリッチ領域を取り囲むホールリッチ領域の分布の位置IIIに基づいて、第二目標結晶引上げ速度V
2を用いて引き抜くことと、
前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるインターステシャルリッチ領域の分布の位置IVに基づいて、第三目標結晶引上げ速度V
3を用いて引き抜くこととを含む、請求項5に記載の作製方法。
【請求項7】
前記第一目標結晶引上げ速度V
1は、基準結晶引上げ速度V
0±0.001~0.002mm/minであり、
前記第二目標結晶引上げ速度V
2は、基準結晶引上げ速度V
0±0.002mm/min~0.003mm/minであり、
前記第三目標結晶引上げ速度V
3は、基準結晶引上げ速度V
0±0.003mm/min~0.006mm/minである、請求項6に記載の作製方法。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の作製方法で作製された、窒素ドープ単結晶シリコン棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年9月30日に中国で出願された中国特許出願第202111165312.4号の優先権を主張し、その内容の全ては、参照により本願に組み込まれる。
本願の実施例は、半導体の技術分野に関し、特に、窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製方法及び窒素ドープ単結晶シリコン棒に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の基板に使用されるシリコンウェーハは、主にチョクラルスキー(Czochralski)法で引き抜かれた単結晶シリコン棒をスライスして製造される。Czochralski法は、石英製の坩堝内のポリシリコン原料を溶かしてシリコン溶融物を得ることと、シードである種結晶をシリコン溶融物内に浸すことと、種結晶を連続的に持ち上げてシリコン溶融物の表面から離れるように移動させることで、移動過程中に相界面で単結晶シリコン棒が成長されるようにすることとを含む。
【0003】
上記生産過程において、正面からバルク中に延在する無結晶欠陥領域(Denuded Zone、DZ)と、DZに隣接してバルク中に更に延在し、バルク微小欠陥(Bulk Micro Defect、BMD)を含む領域とを有するシリコンウェーハが提供されることは、非常に有利であり、ここでの正面とは、電子部品が形成される必要のあるシリコンウェーハの表面を指す。上記のDZは、重要であり、その理由は、シリコンウェーハ上に電子部品を形成するために、電子部品の形成領域内に結晶欠陥がないことを求められ、さもなければ、回路の断線等の不具合の発生の原因となるところ、電子部品がDZに形成されることで結晶欠陥の影響を回避できるからであり、上記のBMDの役割は、金属不純物に対してイントリンシックゲッタ(Intrinsic Getter、IG)効果を持ち、シリコンウェーハ内の金属不純物をDZから遠ざけることにより、金属不純物によるリーク電流の増加や、ゲート酸化膜の膜質の劣化等の悪影響を回避できることにある。
【0004】
しかしながら、上記のBMD領域を有するシリコンウェーハの生産過程中には、シリコンウェーハに窒素がドープされていることは、非常に有利である。例を挙げると、シリコンウェーハに窒素がドープされている場合、窒素を核とするBMDの形成を促進できるため、BMDが一定の密度に達され、BMDが金属ゲッタリング源として効果的に機能するだけでなく、BMDの密度分布に有利な影響を与えることもでき、例えばシリコンウェーハの径方向におけるBMDの密度分布をより均一にすることや、BMDの密度をDZ近傍領域で高くし、シリコンウェーハのバルク中に向かって徐々に減少させること等ができる。
【0005】
しかし、従来の窒素ドープ単結晶シリコン棒の成長プロセスでは、シリコン溶融物に窒素元素をドープすることに加え、窒素ドープ単結晶シリコン棒で作製されたシリコンウェーハに対しては、シリコンウェーハの内部にBMDが生じられてシリコンウェーハの表面の不純物がBMD付近に吸着されることを促進され、更にシリコンウェーハの表面清浄度が高められるように、熱処理プロセスを行う必要もある。その一方、現在、一本のドープ単結晶シリコン棒全体の生産時には、引き上げ速度/引き上げ軸方向の結晶内温度の比(V/G)が変化しないままであるため、生産された一本のドープ単結晶シリコン棒全体には、様々なグローンイン欠陥が含まれることになり、その結果、一本のドープ単結晶シリコン棒全体におけるBMDの含有量及び密度が不均一となり、一本のドープ単結晶シリコン棒全体に占める表面清浄度の高いシリコンウェーハの割合が低く、ドープ単結晶シリコン棒の無駄に繋がってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに鑑みて、本願の実施例は、ホールリッチ領域のみを有する窒素ドープ単結晶シリコン棒を作製し、更に、表面清浄度の高いシリコンウェーハをより多くの割合で得ることができる窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製方法及び窒素ドープ単結晶シリコン棒を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の実施例に係る技術案は、次のように実現されている。
【0008】
第一局面において、本願の実施例には、窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製方法であって、
基準窒素ドープ単結晶シリコン棒に基づいてサンプルシリコンウェーハに切断した後、複数の検出すべきシリコンウェーハを選択し、前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布を評価することと、
前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布に基づいて、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置を確定することと、
現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製過程中に、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置にて、設定された各欠陥領域に対応する目標引き上げ速度で引き上げて、前記現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒を作製することとを含み、
そのうち、前記欠陥領域には、ホールリッチ領域と、インターステシャルリッチ領域と、ホールリッチ及びインターステシャルリッチ交互分布領域とが含まれる、窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製方法が提供されている。
【0009】
第二局面において、本願の実施例には、第一局面に記載の作製方法で作製された、窒素ドープ単結晶シリコン棒が提供されている。
【発明の効果】
【0010】
本願の実施例は、窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製方法及び窒素ドープ単結晶シリコン棒を提供しており、当該作製方法は、複数の検出すべきシリコンウェーハ欠陥領域の分布の状況に基づいて、基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置を確定することができるため、現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製過程中に、基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置まで引き上げると、設定された各欠陥領域に対応する目標引き上げ速度で引き上げられることで、現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒が作製され、当該作製方法によれば、現在の単結晶シリコン棒の目標引き上げ速度を段階的に調整して、ホールリッチ領域のみを有する窒素ドープ単結晶シリコン棒を得ることができ、更に、表面清浄度の高いシリコンウェーハをより多く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本願の実施例による従来の窒素アンドープ単結晶シリコン棒に存在する様々な欠陥の領域の分布模式図である。
【
図2】本願の実施例によるホールリッチ領域及びインターステシャルリッチ領域の交互分布の一形態である。
【
図3】本願の実施例によるホールリッチ領域及びインターステシャルリッチ領域の交互分布の別の形態である。
【
図4】本願の実施例による窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製方法の流れ模式図である。
【
図5】本願の実施例による基準窒素ドープ単結晶シリコン棒を用いて検出すべきシリコンウェーハを作製するプロセスの流れ模式図である。
【
図6】本願の実施例による基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における異なる欠陥領域に対応する位置の模式図である。
【
図7】本願の実施例による現在の単結晶シリコン棒における異なる位置で異なる目標引き上げ速度を用いる模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願の実施例における添付図面を参照して、本願の実施例における技術案を明確かつ完全に説明する。
【0013】
図1を参照して、同図には、従来の窒素アンドープ単結晶シリコン棒S
0に存在する様々な欠陥の領域の分布模式図が示されており、本願の実施例において、具体的には、様々な欠陥の領域の分布を示すために径方向の横断面が使用されている。
図1に示すように、主にホール欠陥領域(図中において左斜線塗りつぶし領域で示す)、ホールリッチ領域(図中において菱形塗りつぶし領域で示す)、インターステシャルリッチ領域(図中において右斜線塗りつぶし領域で示す)、及び、インターステシャル欠陥領域(図中において空白塗りつぶし領域で示す)が含まれている。そのうち、ホール欠陥領域には、例えば窒素ドープ単結晶シリコン棒内の格子グローンイン点欠陥(Crystal Originated Particle、COP)やフローパターン欠陥(Flow Pattern Defect、FPD)等の大きな寸法のホール欠陥が含まれ、このタイプの欠陥は、ベイカンシイ点欠陥が冷却過程中に拡散・凝集して形成された欠陥であり、インターステシャル欠陥領域には、例えば転位欠陥やスリップライン等の大きな寸法のインターステシャル型欠陥が含まれ、このタイプの欠陥は、インターステシャル型点欠陥が冷却過程中に拡散・凝集して形成された欠陥である。ホールリッチ領域は、酸素析出が発生する酸素析出促進領域であり、インターステシャルリッチ領域は、ホールリッチ領域とインターステシャル欠陥領域との間に位置し、酸素析出が発生しない酸素析出抑制領域であり、ホールリッチ領域及びインターステシャルリッチ領域の両方には、ナノメートルスケールの欠陥オーダーとなる非常に小さな寸法の欠陥が含まれるため、これらの両領域は、グローンイン欠陥の極めて少ない無欠陥領域と見なされる。
【0014】
現在市販されている無欠陥の窒素ドープ単結晶シリコン棒の多くは、主にホールリッチ領域及びインターステシャルリッチ領域が交互に分布したものである。説明すべきなのは、ホールリッチ領域及びインターステシャルリッチ領域の交互分布は、具体的に
図2及び
図3に示すように、主に2つの形態に分けられる。
【0015】
一方、BMDは、不純物酸素がホール欠陥に堆積して形成されたものであり、実際の生産では、BMDは、ホール欠陥領域及びホールリッチ領域に堆積されるようになり、もし単結晶シリコン棒にホール欠陥領域が含まれれば、当該単結晶シリコン棒で作製されたシリコンウェーハのゲート酸化膜の完全性に影響を与えてしまう。インターステシャルリッチ領域については、不純物酸素が堆積できないため、BMDを形成できない。以上を纏めて、ホールリッチ領域の窒素ドープ単結晶シリコン棒においてのみ、高密度のBMDを生じさせ、更に、表面清浄度の高いシリコンウェーハを得ることができる。しかし、現在市販されている無欠陥の窒素ドープ単結晶シリコン棒には、ホールリッチ領域と、インターステシャルリッチ領域と、ホールリッチ領域及びインターステシャルリッチ領域が交互に分布した欠陥領域とが同時に存在し、このような状況により、一本の窒素ドープ単結晶シリコン棒全体から提供可能な表面清浄度の高いシリコンウェーハの割合が減少される。
【0016】
上記の説明に基づいて、一本の窒素ドープ単結晶シリコン棒全体で均一なBMD含有量を達成可能にして、表面清浄度の高いシリコンウェーハが占める割合を高めるためには、本願の実施例は、パラメータV/Gを制御及び調整することで、ホールリッチ領域のみを有する窒素ドープ単結晶シリコン棒を作製し、更に、表面清浄度の高いシリコンウェーハをより多くの割合で得ることができるようにしようとしている。ただし、固定のホットゾーン構造の場合、G値が一定であるため、本願の実施例では、引き上げ速度Vだけを調整して成長速度を得ることで、ホールリッチ領域のみを有する窒素ドープ単結晶シリコン棒が得られるようにしようとしている。そこで、
図4を参照して、本願の実施例は、窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製方法を提供しており、前記作製方法は、
基準窒素ドープ単結晶シリコン棒に基づいてサンプルシリコンウェーハに切断した後、複数の検出すべきシリコンウェーハを選択し、前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布を評価するステップであって、そのうち、前記欠陥領域には、ホールリッチ領域と、インターステシャルリッチ領域と、ホールリッチ及びインターステシャルリッチ交互分布領域とが含まれるステップS401と、
前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布に基づいて、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置を確定するステップS402と、
現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製過程中に、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置にて、設定された各欠陥領域に対応する目標引き上げ速度で引き上げて、前記現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒を作製するステップS403とを含む。
【0017】
図4に示す技術案は、複数の検出すべきシリコンウェーハ欠陥領域の分布の状況に基づいて、基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置を確定することができるため、現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製過程中に、基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置まで引き上げると、設定された各欠陥領域に対応する目標引き上げ速度で引き上げられることで、現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒が作製される。当該作製方法によれば、現在の単結晶シリコン棒の目標引き上げ速度を段階的に調整して、ホールリッチ領域のみを有する窒素ドープ単結晶シリコン棒を得ることができ、更に、表面清浄度の高いシリコンウェーハをより多く得ることができる。
【0018】
図4に示す技術案について、いくつかの例では、上述の基準窒素ドープ単結晶シリコン棒に基づいてサンプルシリコンウェーハに切断した後、複数の検出すべきシリコンウェーハを選択し、前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布を評価することは、
基準引き上げ速度を用いて引き上げて前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒を作製し、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒を切断して前記サンプルシリコンウェーハを得ることと、
前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒の異なる位置にある複数の前記サンプルシリコンウェーハを前記検出すべきシリコンウェーハとして選択し、前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布を評価することとを含む。
【0019】
理解できることに、
図5に示すように、基準引き上げ速度V
0を用いて引き上げて基準窒素ドープ単結晶シリコン棒S
1を作製した後、基準窒素ドープ単結晶シリコン棒S
1に存在する欠陥領域の分布の状況を確定するためには、本願の実施例において、基準窒素ドープ単結晶シリコン棒S
1をスライスして複数のサンプルシリコンウェーハWを得て、複数のサンプルシリコンウェーハWから一部のサンプルシリコンウェーハWを欠陥領域の分布の評価用の検出すべきシリコンウェーハWとして選択する。
【0020】
説明すべきなのは、選択される検出すべきシリコンウェーハWの数は、具体的な実際の状況に準じる。
【0021】
一方、基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各位置での欠陥領域の分布の状況を十分に得るためには、本願の実施例において、検出すべきシリコンウェーハWは、具体的に
図5に示すように、それぞれ基準窒素ドープ単結晶シリコン棒S
1の頭部、中部、及び尾部の各位置にあるサンプルシリコンウェーハWから選択される。ただし、説明すべきなのは、本願の実施例における検出すべきシリコンウェーハWの選択方法は、上記及び
図5による選択方法に限定されず、具体的に実際の状況に応じて調整可能である。
【0022】
上記の例について、いくつかの具体的な実現形態では、上述の前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布を評価することは、
前記複数の検出すべきシリコンウェーハの表面の少数キャリアライフタイムデータを取得し、前記複数の検出すべきシリコンウェーハの表面の少数キャリアライフタイムデータに従って少数キャリアライフタイムマップを描画することと、
前記少数キャリアライフタイムマップに基づいて、前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布を評価することとを含む。
【0023】
上記の例について、いくつかの具体的な実施形態では、上述の前記少数キャリアライフタイムマップに基づいて、前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布を評価することは、
前記少数キャリアライフタイムマップが円形状でライフタイムの高いマップの場合、前記円形状でライフタイムの高いマップに対応する検出すべきシリコンウェーハが、ホールリッチ領域のみを含む第一検出すべきシリコンウェーハであると確定することと、
前記少数キャリアライフタイムマップが環状でライフタイムの低いマップの場合、環状でライフタイムの低いマップに対応する検出すべきシリコンウェーハが、ホールリッチ領域を取り囲むインターステシャルリッチ領域を含む第二検出すべきシリコンウェーハであると確定することと、
前記少数キャリアライフタイムマップが環状でライフタイムの高いマップの場合、環状でライフタイムの高いマップに対応する検出すべきシリコンウェーハが、インターステシャルリッチ領域を取り囲むホールリッチ領域を含む第三検出すべきシリコンウェーハであると確定することと、
前記少数キャリアライフタイムマップが円形状でライフタイムの低いマップの場合、前記円形状でライフタイムの低いマップに対応する検出すべきシリコンウェーハが、インターステシャルリッチ領域のみを含む第四検出すべきシリコンウェーハであると確定することとを含む。
【0024】
説明すべきなのは、検出すべきシリコンウェーハWの表面の少数キャリアライフタイムデータは、マイクロ波光導電減衰法により取得可能であるが、本願において、その具体的な方法については詳述しない。
【0025】
理解できることに、本願の実施例において、検出すべきシリコンウェーハの少数キャリアライフタイムとは、半導体の禁制帯幅よりも大きいエネルギー(1.12eV)で励起された場合に、励起されたホール-電子対内の少数キャリアが再結合する平均時間を指す。本願の実施例において、ホールは多数キャリアとなり、電子は少数キャリアとなる。ホールリッチ欠陥の形成の原因は、結晶引上げ過程中に酸素析出が促進されることで、円形状のホールリッチ領域が生じたことにあるため、この領域では、少数キャリアが再結合する平均時間が長い。そのため、ホールリッチ領域のみを含む少数キャリアライフタイムマップは、円形状でライフタイムの高いマップとなり、結果として、検出すべきシリコンウェーハの表面全体の少数キャリアライフタイムマップをスキャンすれば、円形状でライフタイムの高いマップに対応する検出すべきシリコンウェーハが、ホールリッチ領域のみを含む第一検出すべきシリコンウェーハであると確定できる。
【0026】
類似したように、インターステシャルリッチ欠陥の形成の原因は、結晶引上げ過程中に酸素析出が抑制されることで、円形状のインターステシャルリッチ領域が生じたことにあるため、この領域では、少数キャリアが再結合する平均時間が短い。そのため、インターステシャルリッチ領域のみを含む少数キャリアライフタイムマップは、円形状でライフタイムの低いマップとなり、結果として、検出すべきシリコンウェーハの表面全体の少数キャリアライフタイムマップをスキャンすれば、円形状でライフタイムの低いマップに対応する検出すべきシリコンウェーハが、インターステシャルリッチ領域のみを含む第四検出すべきシリコンウェーハであると確定できる。したがって、少数キャリアライフタイムマップを分析することで、ホールリッチ領域とインターステシャルリッチ領域とを区別できる。
【0027】
同時に、ホールリッチ領域を取り囲むインターステシャルリッチ領域を含む第二検出すべきシリコンウェーハについては、ホールリッチ領域の少数キャリアのライフタイムがインターステシャルリッチ領域の少数キャリアのライフタイムよりも高いため、
図2に示すようなホールリッチ領域を取り囲むように分布したインターステシャルリッチ領域を含む図形の場合、少数キャリアライフタイムマップとして、円形状でライフタイムの低いマップが得られるのに対して、インターステシャルリッチ領域を取り囲むホールリッチ領域を含む第三検出すべきシリコンウェーハについては、ホールリッチ領域の少数キャリアのライフタイムがインターステシャルリッチ領域の少数キャリアのライフタイムよりも高いため、
図3に示すようなインターステシャルリッチ領域を取り囲むように分布したホールリッチ領域を含む図形の場合、少数キャリアライフタイムマップとして、円形状でライフタイムの高いマップが得られる。
【0028】
図4に示す技術案について、いくつかの例では、上述の前記複数の検出すべきシリコンウェーハの欠陥領域の分布に基づいて、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置を確定することは、
前記ホールリッチ領域のみを含む第一検出すべきシリコンウェーハに基づいて、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるホールリッチ領域の分布の位置Iを確定することと、
前記ホールリッチ領域を取り囲むインターステシャルリッチ領域を含む第二検出すべきシリコンウェーハに基づいて、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるホールリッチ領域を取り囲むインターステシャルリッチ領域の分布の位置IIを確定することと、
前記インターステシャルリッチ領域を取り囲むホールリッチ領域を含む第三検出すべきシリコンウェーハに基づいて、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるインターステシャルリッチ領域を取り囲むホールリッチ領域の分布の位置IIIを確定することと、
前記インターステシャルリッチ領域のみを含む第四検出すべきシリコンウェーハに基づいて、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるインターステシャルリッチ領域の分布の位置IVを確定することとを含む。
【0029】
理解できることに、
図6に示すように、複数の検出すべきシリコンウェーハWの欠陥評価を行って各々の検出すべきシリコンウェーハ内の欠陥分布の状況が確定されると、各々の検出すべきシリコンウェーハに対応する基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における異なる位置に含まれる欠陥のタイプ及びその欠陥領域の位置を確定可能となる。
【0030】
図4に示す技術案について、いくつかの例では、上述の現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製過程中に、前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒における各欠陥領域の分布の位置にて、設定された各欠陥領域に対応する目標引き上げ速度で引き上げて、前記現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒を作製することは、
前記現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒のホットゾーン構造が前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒のホットゾーン構造と一致する場合、前記現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒の作製過程中に、
前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるホールリッチ領域の分布の位置Iに基づいて、基準結晶引上げ速度を用いて引き抜くことと、
前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるホールリッチ領域を取り囲むインターステシャルリッチ領域の分布の位置IIに基づいて、第一目標結晶引上げ速度V
1を用いて引き抜くことと、
前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるインターステシャルリッチ領域を取り囲むホールリッチ領域の分布の位置IIIに基づいて、第二目標結晶引上げ速度V
2を用いて引き抜くことと、
前記基準窒素ドープ単結晶シリコン棒におけるインターステシャルリッチ領域の分布の位置IVに基づいて、第三目標結晶引上げ速度V
3を用いて引き抜くこととを含む。
【0031】
上記の例について、いくつかの具体的な実施形態では、前記第一目標結晶引上げ速度V1は、基準結晶引上げ速度V0±0.001mm/min~0.002mm/minであり、
前記第二目標結晶引上げ速度V2は、基準結晶引上げ速度V0±0.002mm/min~0.003mm/minであり、
前記第三目標結晶引上げ速度V3は、基準結晶引上げ速度V0±0.003mm/min~0.006mm/minである。
【0032】
理解できることに、
図7に示すように、ホールリッチ領域のみを有する現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒S
2を得るためには、異なる欠陥領域について異なる目標引き上げ速度を用いるようになり、このような目標引き上げ速度を段階的に設定する方法を用いれば、ホールリッチ領域のみを有する現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒S
2を作製し、表面清浄度の高いシリコンウェーハをより多くの割合で得ることができる。
【0033】
なお、理解できることに、現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒と基準窒素ドープ単結晶とを比較すると、両者の作製プロセスは、対応する結晶引上げ速度が異なる点を除いて、残りの作製プロセスパラメータが全て同じであり、具体的に、例えば坩堝の回転速度、窒素ドーパントのドーピング方式、ホットゾーン構造及び保護雰囲気は、全て同じである。したがって、基準窒素ドープ単結晶シリコン棒の欠陥領域を研究することにより、現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒の欠陥領域の分布を改良する方法を得ることができる。
【0034】
説明すべきなのは、本願の実施例において、従来の技術案における引き上げスピードの調整方法を通じて、現在の窒素ドープ単結晶シリコン棒S2の目標引き上げ速度を上記範囲内に制御することができる。
【0035】
図7を参照して、本願の実施例は、前述した技術案に記載の作製方法で作製された窒素ドープ単結晶シリコン棒を更に提供している。
【0036】
説明すべきなのは、本願の実施例に記載の各技術案は、矛盾しない限り、任意に組み合わせ可能である。
【0037】
上記は、本願の具体的な実施形態に過ぎず、本願の保護範囲は、これに限定されず、当業者であれば、本願に開示された技術範囲内で、変化や代替を容易に想到可能であり、これらの変化や代替は、何れも本願の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本願の保護範囲は、添付の特許請求の範囲の保護範囲に準じるべきである。
【国際調査報告】