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特表2024-525374分散型光ファイバセンシングを用いた車両支援型埋設ケーブル位置特定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】分散型光ファイバセンシングを用いた車両支援型埋設ケーブル位置特定
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
G01D5/353 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578156
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 US2022037941
(87)【国際公開番号】W WO2023004084
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/224,532
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/224,554
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/869,763
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、 ミン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 シャオボ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 ユハン
(72)【発明者】
【氏名】サレミ、 ミラド
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ティン
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103CA07
2F103EC09
(57)【要約】
DFOSシステムから地中の光ファイバケーブル長をリアルタイムで自動的に識別し、それをGPS座標と組み合わせ、これにより、そのようなリアルタイムの距離/位置の決定を行うためのサービス要員による現場での検査/作業の必要性を有利に排除するシステムおよび方法。そのため、非効率的でエラーが発生しやすく、手間のかかる従来技術の方法は、もはや用いられない。動作上、本方法の開示は、GPSを含む車両を運転して交通パターンを生成し、配備された埋設光ファイバケーブルからの交通軌跡信号を自動的にマッピングして、埋設光ファイバケーブルの地理的位置を特定することを含む。交通パターンが自動的に認識され、光ファイバケーブルの弛みが考慮され、信号機およびその他の交通制御装置/構造物の位置を決定でき、光ファイバケーブルの方向転換も同様に決定できる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型光ファイバセンシング(DFOS)を用いた車両支援型埋設ケーブル位置特定方法であって、
一部が地中に埋設された光ファイバを準備するステップと、
DFOSシステムを準備するステップであって、前記DFOSシステムは、前記光ファイバと光通信するDFOSインタロゲータおよびアナライザを含み、前記DFOSインタロゲータは、レーザ光から光パルスを生成し、そのパルスを前記光ファイバに取り込み、前記光ファイバからレイリー反射信号を検出/受信するように構成され、前記アナライザは、前記レイリー反射信号を分析し、前記分析されたレイリー反射信号から位置/時間のウォーターフォールのプロットを生成するように構成されるステップと、
少なくとも3台の車両のセットを相互に連携して運転するステップであって、前記車両は、前記光ファイバの一部に機械的励起を与えるために、前記光ファイバの少なくとも一部に十分に近接して運転し、前記少なくとも3台の車両のセットの各車両は、全地球測位システム(GPS)を含み、該GPSは該GPSが含まれる車両のGPS座標を生成するステップと、
前記少なくとも3台の車両のセットが運転されている間に前記DFOSシステムを動作させ、それによって前記光ファイバの一部に機械的励起を与え、それによって前記光ファイバ内に振動イベントを生成し、DFOS動作中に受信したDFOS信号を記録するステップと、
前記DFOSシステムと前記車両を継続的に運転し、ウォーターフォールのプロットから振動イベントの時間/位置を特定し、前記振動イベントを前記光ファイバの前記埋設された部分のGPS位置に関連付けるステップと、を含む、方法。
【請求項2】
ウォーターフォールのプロットからの振動イベントの前記時間/位置は人間の介入なしに決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも3台の車両のセットは、実質的に直線で順次に運転される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも3台の車両のセットは、前記車両の少なくとも2台の間にマンホールまたは他のユーティリティホールが介在する経路に沿って運転される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記マンホールまたは他のユーティリティホール内に位置する弛んだ光ファイバの量が決定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
交通制御装置の位置が前記ウォーターフォールのデータから決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記交通制御装置が信号機であり、前記少なくとも3台の車両のセットのうちの少なくとも2台は前記信号機に応答して運転中に停止し、前記少なくとも3台の車両のセットのうちの少なくとも1台は前記信号機に応答して運転中に停止しない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記車両は、前記埋設光ケーブルに近接して位置する道路上で運転され、前記埋設光ケーブルの経路が前記道路から分岐し、当該分岐が決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
GPS座標と前記インタロゲータからの長さの両方によって前記光ファイバの位置を示す地図を生成するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも3台の車両のセットの前記運転に十分に近接していない前記光ファイバの他の部分が、既知の時間/位置を使用して人工知能アナライザによって時間/位置にマッピングされる、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、光ファイバ通信設備に関する。より具体的には、本開示は、分散型光ファイバセンシング(DFOS)を用いた車両支援型埋設ケーブル位置特定のためのシステムおよび方法について説明する。
【背景技術】
【0002】
当業者であれば容易に理解できるように、光時間領域反射率測定法(OTDR)は、現代の光ファイバ通信設備の長さと損失を決定するのに有用な技術である。ケーブルの位置決定のために、OTDRは、技術者の経験と相まって、ケーブル長に対応する光ファイバ設備の位置の経験に基づいた推測を提供した。光ファイバ通信設備の普及とそれらによる現代の通信サービスの実現を考慮すると、より簡単でより正確なファイバ設備の位置情報を提供するシステムおよび方法は、当該技術分野とって歓迎すべきものである。
【発明の概要】
【0003】
DFOSシステムから地中の光ファイバケーブル長をリアルタイムで自動的に識別し、それをGPS座標と組み合わせるシステムおよび方法を対象とする本開示の態様に従って、当技術分野の進歩がもたらされる。
【0004】
従来技術とは大きく異なり、本開示の態様によるシステムおよび方法は、そのようなリアルタイムの距離/位置決定を行うためのサービス要員による現場での検査/作業の必要性を排除する。そのため、非効率的でエラーが発生しやすく、手間のかかる従来技術の方法は、もはや用いられない。
【0005】
動作上、本発明の開示は、GPSを含む車両を運転して交通パターンを生成し、配備された埋設光ファイバケーブルからの交通軌跡信号を自動的にマッピングして、埋設光ファイバケーブルの地理的位置を特定することを含む。さらに開示するように、本発明のシステムおよび方法のいくつかの有利な側面が明らかになる。すなわち、交通パターンが自動的に認識されること、光ファイバケーブルの弛みが考慮されること、信号機およびその他の交通制御装置/構造物の位置を決定できること、光ファイバケーブルの方向転換(turns)も同様に決定できることである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示のより完全な理解は、添付図面を参照することによって実現され得る。
【0007】
図1】本開示の態様による例示的な分散型光ファイバセンシングシステムの概略図である。
【0008】
図2(A)】既存の配備された光ファイバ上に重ねられたセンサ層のシステムレイアウトを示す概略図である。
図2(B)】本開示の態様による機構の説明図を示す。
図2(C)】本開示の態様による例示的なウォーターフォールトレースを示す。
【0009】
図3】本開示の態様によるケース-1(直線)の調査中のケーブル区間を示す概略図である。
【0010】
図4(A)】本開示の態様によるケース-2(直線、間にマンホール)の調査中のケーブル区間を示す概略図である。
図4(B)】本開示の態様による例示的なDFOS動作によって収集されたウォーターフォールのデータを示す図である。
【0011】
図5】本開示の態様によるケース-3(信号機(右側の信号により全台停止))の調査中のケーブル区間を示す概略図である。
【0012】
図6】本開示の態様によるケース-4(信号機(右側の信号により1台通過、2台停止))の調査中のケーブル区間を示す概略図である。
【0013】
図7】本開示の態様によるケース-4(ケーブル方向転換)の調査中のケーブル区間を示す概略ブロック図である。
【0014】
図8】本開示の態様による例示的な全体プロセスの概略フロー図である。
【0015】
図9】本開示の態様による、ファイバケーブルの地理的位置を自動的にマッピングするためのアーキテクチャを示す概略図である。
【0016】
図10】本開示の態様による、車両の軌道を有する例示的なウォーターフォールトレースを示す。
【0017】
図11】本開示の態様によるウォーターフォールトレースからの車両の軌道を示す概略プロットである。
【0018】
図12】本開示の態様による、ウォーターフォールトレース上に地理的軌跡を構築することを示す概略プロットである。
【0019】
図13】本開示の態様による、ウォーターフォールトレース上の地理的軌跡の移動を示す概略プロットである。
【0020】
図14】本開示の態様による、ウォーターフォールトレース上の水平区間を見つけることを示す概略プロットである。
【0021】
図15】本開示の態様による適合経路を示す概略プロットである。
【0022】
図16】本開示の態様によるウォーターフォールトレース上の最適な経路を示す概略プロットである。
【0023】
図17】本開示の態様による、統合されたウォーターフォール強度の水平オフセットへの依存性を示すプロットである。
【0024】
図18】本開示の態様による、DFOS(DAS/DVS)による自動ケーブルマッピングを示す概略図である。
【0025】
図19】本開示の態様による、DFOSによる自動ケーブルマッピングの全体的なプロセスを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
例示的な実施形態は、図面および詳細な説明によってより完全に説明される。しかしながら、本開示による実施形態は様々な形態で実施することができ、図面および詳細な説明に記載された特定のまたは例示的な実施形態に限定されない。
【0027】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者は本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。
【0028】
さらに、本明細書に記載されているすべての実施例および条件付き用語は、本開示の原理および技術を促進するために発明者によって寄与された概念を読者が理解するのを助けるための教育目的のためだけのものであることを意図しており、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0029】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態を記載する本明細書のすべての記述、ならびにその具体例は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物と、将来開発される等価物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行する開発された要素との両方を含むことが意図されている。
【0030】
したがって、たとえば、本明細書の任意のブロック図が、本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表すことは、当業者には理解されるであろう。
【0031】
本明細書で特に明記しない限り、図面を構成する図は、縮尺通りに描かれていない。
【0032】
いくつかの追加の背景として、分散型光ファイバセンシングシステムは、光電子インテグレータを光ファイバ(またはケーブル)に相互接続し、ファイバをファイバの長さに沿って分散されたセンサの配列に変換することに留意する。実際には、ファイバはセンサになり、インタロゲータはファイバ内にレーザ光エネルギーを生成/注入し、ファイバ長に沿った事象を感知/検出する。
【0033】
当業者が理解し、認識するように、DFOS技術は、車両の動き、人間の往来、掘削活動、地震活動、温度、構造的完全性、液体および気体の漏れ、ならびにその他多くの条件および活動を連続的に監視するために展開することができる。これは、発電所、通信ネットワーク、鉄道、道路、橋、国境、重要なインフラ、地上および海底の電力およびパイプライン、ならびに、石油、ガスおよび強化された地熱発電におけるダウンホール用途を監視するために世界中で使用されている。有利には、分散型光ファイバセンシングは、見通し線(line of sight)または遠隔電力アクセスによって制約されることがなく、システム構成によっては、30マイルを超える連続的な長さで展開することができ、その長さに沿ったすべてのポイントで感知/検出が可能である。したがって、長距離にわたるセンシングポイント当たりのコストは、通常、競合する技術とは比較にならない。
【0034】
光ファイバセンシングは、センシングファイバが振動、歪み、または温度変化の事象に遭遇したときに、光センシングファイバで発生する光の「後方散乱」の変化を測定する。上述のように、センシングファイバは全長にわたってセンサとして機能し、物理的/環境的な周囲の状況、およびファイバの保全/セキュリティに関するリアルタイム情報を提供する。さらに、分散型光ファイバセンシングデータは、センシングファイバまたはその近傍で発生する事象および状態の正確な位置を特定する。
【0035】
図1には、人工知能分析およびクラウドストレージ/サービスを含む分散型光ファイバセンシングシステムの一般化された構成および動作を示す概略図が示されている。図1を参照すると、インタロゲータに接続された光センシングファイバを観察することができる。知られているように、現代のインタロゲータは、ファイバへの入力信号を生成し、反射/散乱された後に受信された信号を検出/分析するシステムである。信号が分析され、ファイバに沿って遭遇する環境条件を示す出力が生成される。このように受信された信号は、ラマン後方散乱、レイリー後方散乱、およびブリリオン後方散乱などのファイバ内の反射から生じ得る。また、複数のモードの速度差を利用した順方向の信号であってもよい。一般性を失うことなく、以下の説明では、反射信号を想定しているが、同じアプローチを転送信号にも適用することができる。
【0036】
理解されるように、現代のDFOSシステムは、周期的に光パルス(または任意の符号化信号)を生成し、それらを光ファイバに注入するインタロゲータを含む。注入された光パルス信号は、光ファイバに沿って伝送される。
【0037】
ファイバに沿った位置では、信号のごく一部が散乱/反射され、インタロゲータに戻される。散乱/反射信号は、インタロゲータが検出するために使用する情報、例えば、機械的な振動を示す電力レベルの変化を伝送する。
【0038】
反射信号は、電気領域に変換され、インタロゲータの内部で処理される。パルス注入時間と信号が検出された時間とに基づいて、インタロゲータは信号がファイバに沿ったどの位置から来ているかを決定し、したがって、ファイバに沿った各位置の活動を感知することができる。
【0039】
分散型音響センシング(DAS)/分散型振動センシング(DVS)システムは、振動を検出し、光センシングファイバに沿って音響エネルギーを捕捉する。有利には、既存の、トラフィックを運ぶ光ファイバネットワークを利用して、分散型音響センサに変換し、実時間データを捕捉することができる。さらに、分類アルゴリズムを使用して、漏洩、ケーブル障害、侵入活動、または音響および/または振動の両方を含む他の異常な事象などの事象を検出および位置特定することができる。
【0040】
現在、様々なDAS/DVS技術が使用されており、最も一般的なものはコヒーレント光時間領域反射率測定(C-OTDR)に基づくものである。C-OTDRは、レイリー後方散乱を利用し、音響周波数信号を長距離にわたって検出することができる。インタロゲータは、光センサファイバ(ケーブル)に沿ってコヒーレントレーザパルスを送信する。ファイバ内の散乱サイトにより、ファイバはパルス長と同じゲージ長(例えば、10メートル)を有する分散型干渉計として機能する。センサファイバに作用する音響/機械的擾乱(Acoustic/Mechanical Disturbance)は、ファイバの微視的な伸び又は圧縮(微小歪み)を発生させ、その結果、ファイバ内を通る光パルスの位相関係及び/又は振幅の変化を引き起こす。
【0041】
次のレーザパルスが送信される前に、前のパルスがセンシングファイバの全長を移動し、その散乱/反射が戻る時間がなければならない。よって、最大パルスレートはファイバの長さによって決定される。したがって、通常はパルスレートの半分であるナイキスト周波数までの周波数で変化する音響信号を測定することができる。より高い周波数は非常に速く減衰するため、事象の検出と分類に関連する周波数のほとんどは、2kHzの範囲の低い範囲にある。
【0042】
これから示し、説明するように、また、すでに述べたように、本発明のシステムおよび方法は、配備された光ファイバセンサケーブルを用いてDFOS動作から生じる振動信号を自動的に検出/解釈して、例えば、配備された光ファイバセンサケーブルに十分近接して走行する車両によって引き起こされるケーブルの振動を検出/位置特定する。
【0043】
知られているように、電気通信事業者およびネットワークプロバイダは、数百万マイルもの配備された光ファイバを所有し、運用している。当業者であれば、ファイバケーブルに障害(例えば、ファイバ切断)が発生した場合に、通信事業者にとって、ファイバケーブルの地理的位置を特定することが重要であることを理解し、認識するであろう。多くの場合、メンテナンス作業は、ケーブルの位置と方向に関する事前の情報と知識に依存しており、これらの情報は、配備サイトの建設地図や、ファイバケーブルの建設/配備中に作成/記録されるメモや写真から取得できる場合がある。このような事前知識がない、または利用できない場合、電気通信事業者およびその作業者にとって、検査または修理が必要なファイバケーブルの正確なセグメントまたは位置を特定して正確に示すことは困難である。したがって、光ケーブルのこのような部分を位置特定することは、通信事業者が設備を効率的に維持するために非常に重要である。
【0044】
現在、広く使用されているケーブル位置特定方法は、一般に、光時間領域反射率測定(OTDR)技術を使用して、ファイバの長さと損失を測定する。OTDRは、技術者の経験と相まって、ファイバ長に対応付けることで、対象の地理的位置を推測/決定するために使用される。残念ながら、現代のOTDR測定システムおよび方法は、地理的な地図上に対象の場所を提供しておらず、また、部分的に、特定のケーブル経路に沿って弛んだケーブルが存在することもあって、対象の場所を正確に特定することができない。
【0045】
既に、機械式バイブレータを使用して外部から信号を励起することによってケーブルの位置を認識するために、分散型光ファイバセンシング(DFOS)技術およびAIアルゴリズムを使用する機構について説明した。しかし、そのような方法は、依然として現場で機械式バイブレータを手動で操作する人間/技術者に依存している。これらの手順は、依然として非効率的で、エラーが発生しやすく、手間がかかる。大規模な現場配置の場合、ファイバケーブル経路全体から目標となる振動信号を検出し、さまざまなシナリオでそれを区別するための自己決定方法が必要である。したがって、前述したように、本開示の一態様は、DFOSシステムによってウォーターフォールデータから地中ケーブル長をリアルタイムで自動的に特定し、それを現場車両に関連付けられたGPS座標と組み合わせる発明のシステムおよび方法を説明することである。有利なことに、本開示によるシステムおよび方法は、従来技術/現在の技術の場合のように、ファイバケーブルの位置を決定するための現場配備を排除することができる。
【0046】
図2(A)は、既存の配備された光ファイバ上に重ねられたセンサ層のシステムレイアウトを示す概略図である。図2(B)は、本開示の態様による機構の説明図を示す。図2(C)は、本開示の態様による例示的なウォーターフォールトレースを示す。
【0047】
図2(A)を参照すると、既存の配備されたファイバネットワーク上に重ねられたセンシング層を含む構成が示されている。分散型音響センシング(DAS)技術および/または分散型振動センシング(DVS)技術を使用することができる分散型光ファイバセンシングシステム(DFOS)(101)は、ケーブルルート全体の遠隔監視のための制御局(CO)/中央局(100)に設置されていることが示されている。理解できるように、DFOSシステムは、フィールド光ファイバに接続され、センシング機能を提供する。有利には、ファイバは、ダークファイバまたは1つまたは複数のサービスプロバイダーからのライブ交通を伝送する運用ファイバとすることができる。
【0048】
認識可能な交通パターンを作成するために、3台のトラック(201)が調査に参加し、ケーブル経路に沿って一緒に走行している様子が示されている。図2(B)に示すように、後続の3台のトラックの交通パターンは、人工知能(AI)システム、方法、およびアルゴリズムを使用することによって識別することができる通常の道路交通とは異なる。GPS装置(202)は、すべてのトラック(201)に搭載されており、各トラックのGPS座標およびタイムスタンプを中央局(CO)にあるペアリングシステム(102)に送信する。GPS装置とDFOSシステムのタイムスタンプを照合することにより、目標位置の地理的位置を、ウォーターフォールデータからのファイバ距離およびAIプラットフォーム(103)のGPS座標と組み合わせることができる。
【0049】
図2(C)は、1つの追跡された車両軌道を有する例示的なDFOSシステムによって収集されたウォーターフォールデータの例を示す。追跡された1台の車両については、交通パターンが他の道路交通と区別できる。3台のトラックが一体となって走行すれば、さらに差別化を図ることができる。
【0050】
当業者であれば、3台の車両を使用することで、以下のような多くの利点が得られることを理解するであろう。第1に、通常の道路交通信号よりも、ウォーターフォールトレースから目標とする交通軌跡を区別することが容易である。第2に、埋設ケーブルの場所はトラックを運転することで見つけることができる。たとえファイバケーブルが道路から数メートル離れていても、大型トラックが発生する振動はDFOSシステムから検出できる。第3に、一部の場所にアクセスできない場合、AI分析プラットフォームは、前後の2点に基づく適合アルゴリズムを備える。第4に、車両の進行方向は、2つのGPS位置によって決定できる。最後に、マンホールの位置やファイバの弛み量、信号機(調査トラックが赤信号で停止したとき)、およびケーブルの方向転換の位置など、特定の施設を検出できる。この上記の利点のリストは省略したものであり、本発明の方法、システム、および技術のさらなる利益および利点は、以下の説明でより明らかになることに留意されたい。
【0051】
図3は、本開示の態様によるケース-1(直線)の調査中のケーブル区間を示す概略図である。この図を参照すると、異なるタイムスタンプ(T1、T2)で、調査トラックが2つの場所(L1、L1')を通過することが分かる。T1において、ペアリングシステムは、GPS1座標およびケーブル長L1をGISシステム上にマッピングすることができ、一方、GPS1'座標は、T2のタイムスタンプでL1'とペアリングされる。直線ケーブルであるため、GPS(GPS1’~GPS1)からの距離は、DFOSからのケーブル長(L1’~L1)と同じになる。また、2台目と3台目のトラックは、交通軌道の生成だけでなく、GPS2’-GPS2=L2’-L2およびGPS3’-GPS3=L3’-L3の距離などのシステム検証も行う。
【0052】
図4(A)は、本開示の態様によるケース-2(直線、間にマンホール)の調査中のケーブル区間を示す概略図である。図4(B)は、本開示の態様による例示的なDFOS動作によって収集されたウォーターフォールデータを示す図である。見て分かるように、この図は光ファイバケーブル経路に沿ったマンホールを示している。車両が道路を走行する際の交通軌道には勾配がある。ただし、内側に弛んだファイバが入ったマンホールを通過するときは、勾配は平坦になる。それは、図1(DFOSから収集されたフィールドデータを含む)から分かる。この例では、ケーブル長(L1’-L1)がGPS距離(GPS1’-GPS1)よりも長くなる。その差は、マンホール内の弛んだファイバ(x)によるものである(x=(L1’-L1)-(GPS1’-GPS1))。また、マンホールの情報(座標とケーブル長)は、対応するGPS1とL1を用いてT1(平坦な勾配の始点)で決定することができる。
【0053】
図5は、本開示の態様によるケース-3(信号機(右側の信号により全台停止))の調査中のケーブル区間を示す概略図である。見て分かるように、この図は調査トラックが信号で停止している例を示している。ウォーターフォールデータから、交通軌道が途切れている。T1で、調査トラックが赤信号で停止すると、交通パターンも削除される。パターンは、青信号とT2の後に継続される。したがって、信号機の情報は、対応するGPS1とL1を用いてT1で検出することができる。赤信号期間は、T2~T1として知ることができる。信号機は、調査交通が赤信号または他の同様の交通制御装置によって停止されている場合にのみ検出することができることに留意されたい。
【0054】
図6は、本開示の態様によるケース-4(信号機(右側の信号により1台通過、2台停止))の調査中のケーブル区間を示す概略図である。見て分かるように、この図は、信号で停止している調査トラックの例を示しているが、すべてのトラックが停止しているわけではない。例で示すように、車両1(V1)は信号機を通過するが、V2とV3は停止している。このシナリオは、ペアリングデータが一致しない場合、例えば、2つの時間窓でGPS1’-GPS1>GPS2’-GPS2の場合、GPS2’-GPS2=0の場合に検出できる。ウォーターフォールトレースから、1つの交通軌道が継続するが、2つの交通軌道は中断される。Tlでは、2台の調査トラックが赤信号で停止しており、交通パターンは停止している。パターンは、青信号とT2の後に継続される。したがって、信号機の情報は、対応するGPS2およびL2を用いてT1で検出することができる。赤信号の期間は、T2-T1として知ることができる。また、車両距離(D)は、GPS1’-GPS2’で決定することができ、V1とV2の間にいくつかの車両が存在する場合でも、その軌跡を特定し、調査のために新しい交通パターンを使用することができる。この場合、AIアルゴリズムは、目標となるパターンをパターンA(等間隔の3つの軌道)からパターンB(1つは大きな間隔、2つは等間隔の3つの軌道)に変更する。
【0055】
図7は、本開示の態様によるケース-4(ケーブル方向転換)の調査中のケーブル区間を示す概略ブロック図である。見て分かるように、この図は、調査中の光ファイバケーブルが曲がっている場合のシナリオ例を示す。これは、都市部では一般的なケースであり、T2でGPS1’とペアリングできない(L1’がない)場合に認識できる。この場合、AIプラットフォームは、トラック運転手にメッセージを送信し、間違ったルートを進んでいることを知らせることができる。ケーブルの方向転換の地点は、対応するGPS1とL1を使用してT1で知ることができる。したがって、調査トラックは、ケーブルの方向転換位置に戻り、調査中のケーブルを辿るように曲がることができる。
【0056】
図8は、本開示の態様による例示的な光ファイバ調査プロセス全体の概略フロー図である。この図を参照すると、本発明のシステムおよび方法は、管理(中央)局に配置されたDFOSシステムを調査で使用されるフィールドファイバに接続することを含むことが分かる。それぞれ全地球測位装置(GPS)を備えた3台のトラック(車両)を運転して交通パターンを生成し、それによって現地調査を行う。好ましい運転では、3台のトラックは一緒に運転され、通常、可能な限り1列で互いに追従することに留意されたい。これらの車両が運転されると、DFOSシステムによって収集/分析される振動信号には、周囲の雑音、通常の道路交通、道路工事、光ファイバケーブル経路に沿ったその他の交通パターンが含まれる。
【0057】
信号収集/分析中、およびその後に、固有の交通パターンが人工知能システムおよびアルゴリズムによって認識/決定され、とりわけ、調査車両の運転によって生成され、それら車両の既知のGPS座標に関連付けられた振動のケーブル距離が特定される。このような振動/GPS位置が決定されると、他の地図関連データとともにこのような情報を含む調査地図を生成することができる。
【0058】
当業者であれば容易に理解できるように、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、さらに多くの情報を提供するためにさらに改良することができる。
【0059】
既に述べたように、本開示の一態様は、信号源としてGPSを備えた車両を使用するシステムおよび方法を対象とする。車両が調査対象の光ファイバケーブルに近接して、その長さに沿って運転されている間、GPSは即座に地理的位置を決定/記録し、DFOSシステムは車両のウォーターフォールトレースを記録する。
【0060】
前述したように、調査中の光ファイバケーブルを励起する振動信号を生成する他の交通またはイベントから車両の軌道を正確に特定するためには、マッピングシステムには、GPS座標とその地点から中央局までのケーブルの直線距離とが他の方法でマッピングされた少なくとも1つの基準点が必要である。前述したように、通信技術者は、ジャックハンマーなどのモバイル電動工具を使用して認識可能な信号を生成することができ、ファイバセンシングシステムは、機械学習ベースのアルゴリズムを使用して振動源の直線距離を特定し、同時に作業員のGPS座標をマッピングできる。本開示に従って開示されたような自動化システムの開発に関連して多くの問題があることに留意されたい。具体的には、以下が挙げられる。
【0061】
交通パターン
【0062】
現場調査には、他の交通から調査車両の軌道を認識するため、走行速度の遅いトラックが推奨される。大型の調査トラックは、DFOSに対してより強い信号を生成することができ、通常の交通と比較して速度がわずかに遅いため、軌道を識別しやすくなる。
【0063】
基準点
【0064】
直線ケーブル区間上の少なくとも1つの基準点のGPSとファイバ長を決定する必要がある。基準点は、通常、ケーブルの直線部分の端点としてピックアップされる。
【0065】
マッピング
【0066】
GPSとDFOSのタイムスタンプをマッピングして、実際のウォーターフォールトレースと一致する仮想軌道を抽出する。
【0067】
図9は、本開示の態様による、ファイバケーブルの地理的位置を自動的にマッピングするためのアーキテクチャを示す概略図である。この図から分かるように、分散型音響センシング(DAS)および/または分散型振動センシング(DVS)とすることができる分散型光ファイバセンシングシステム(DFOS)(101)は、ケーブル経路全体を遠隔で監視するための制御局(CO)/中央局(100)内にある。DFOSシステムは、フィールド光ファイバに接続され、センシング機能を提供する。ファイバは、ダークファイバでも、サービスプロバイダーの運用ファイバでもよい。認識可能な交通パターンを作成するために、トラック(201)が調査に関与し、ケーブルと並行してケーブルの近くを走行する。GPS装置(202)は、トラック(201)によって運ばれ、GPS座標とタイムスタンプをCOのペアリングシステム(102)に送信する。GPS装置とDFOSシステムのタイムスタンプを照合することにより、目標となる場所の地理的位置を、AIプラットフォーム(103)にて、ウォーターフォールデータからのファイバ距離およびGPS座標と組み合わせることができる。他の交通から使用中の車両の軌道を決定するために、経路上の1つ以上の基準点(302)が必要である。基準点は、通常、ケーブルの直線部分の端点としてピックアップされる。
【0068】
図10は、本開示の態様による、車両の軌道を有する例示的なウォーターフォールトレースを示す。図に示すように、トレースはDFOSシステムから3分間の窓で収集される。車両軌道は、埋設ケーブルだけでなく、吊り下げられた空中ケーブルからも抽出できる。したがって、この例示的なアーキテクチャは、車両がアクセスできないケーブル区間および/または水中に埋設されたケーブル区間を除いて、ケーブル経路マッピング全体に使用できる。パスマッチアルゴリズムは、図面/図において以下のように概略的に記述されている。
【0069】
図11は、本開示の態様によるウォーターフォールトレースからの車両の軌道を示す概略プロットである。この図は、目標となる車両、その他の道路交通、および2つの基準点を含むウォーターフォールトレースからの車両軌道の概略グラフを示す。2つの基準点は、直線ケーブル区間の始点と終点で選択される。ケーブルが曲がったり、道路を別の側に横切ったりする場合は、さらに多くの基準点が必要になる場合がある。
【0070】
図12は、本開示の態様による、ウォーターフォールトレース上に地理的軌跡を構築することを示す概略プロットである。このシナリオでは、車両は第1の基準点から第2の基準点まで移動し、その時点のGPSが記録される。車両の仮想軌道は、インスタントGPSリストによって作成される。DFOSおよびGPS装置からのタイムスタンプと基準点の位置を照合することにより、地理的軌跡をウォーターフォールトレース上に構築し、目標となる車両の対応する車両軌道を検出することができる。
【0071】
地理的軌道と目標車両軌道とが一致しない区間があることに留意されたい。区間Aは、地理的位置とケーブル長からの差異を表す。通常、ケーブル長は、地理的位置よりも20%長く、これは、現地の弛んだファイバ(ファイバコイル)に起因する。さらに、マンホール内のファイバコイルはセクションBから知ることができる。
【0072】
図13は、本開示の態様による、ウォーターフォールトレース上の地理的軌跡の移動を示す概略プロットである。水平オフセットを検索することにより、地理的経路をウォーターフォールの軌道に一致させることができる。さらに、仮想軌道に沿った信号強度は統合され、オフセットのために運転方向に沿ってシフトする。統合強度対オフセットのプロットが作成される。ピーク位置は、実際のウォーターフォール軌道の仮想軌道の重複部分に対応する。2つのピーク位置間の距離は、弛んだファイバコイルを示す。
【0073】
図14は、本開示の態様による、ウォーターフォールトレース上の水平区間を見つけることを示す概略プロットである。地理的位置とケーブル長を一致させるために、ウォーターフォールトレースから弛んだファイバ長を見つける必要がある。ファイバコイルは、水平(平坦、勾配=0)区間に基づいて検出できる。したがって、垂直移動窓を使用してファイバコイルを見つけ、軌跡に沿ってウォーターフォールの強度を統合することができる。DFOSのウォーターフォールトレースや地理的軌跡と一致する位置では、総強度をピーク値として示すことができる。これは、次のように実施することができる。すなわち、統合強度のピークでのオフセットに対応する仮想軌道のリストを作成し、連続する2つの仮想軌道上で最大統合強度を探索することにより、水平経路区間を決定する。
【0074】
図15は、本開示の態様による適合された経路を示す概略プロットである。
【0075】
図16は、本開示の態様によるウォーターフォールトレース上の最適な経路を示す概略プロットである。GPSからの光路とDFOSから検出された車両軌道の例が示されており、本発明の方法は、現場の車両軌道に非常によく適合することができる。
【0076】
図17は、統合されたウォーターフォール強度の水平への依存性を示すプロットである。ピークは、地理的軌跡とウォーターフォールの軌道の一致を示す。2つのピークの間の距離は、本開示の態様によれる、空中ケーブル上および/またはマンホール内にあり得るファイバコイルの長さとオフセットである。
【0077】
この時点で、統合された信号強度に基づいて水平区間の最適な位置を探索した結果を示すプロットが生成される可能性があることに留意されたい。ピークは、目標とされる位置を示す。
【0078】
図18は、本開示の態様による、DFOS(DAS/DVS)による自動ケーブルマッピングを示す概略図である。
【0079】
図19は、本開示の態様による、DFOSによる自動ケーブルマッピングの全体的なプロセスを示すフロー図である。
【0080】
この時点で、いくつかの特定の例を使用して本開示を提示したが、当業者であれば、本発明の教示がそれに限定されないことを認識するであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2(A)】
図2(B)】
図2(C)】
図3
図4(A)】
図4(B)】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】