IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特表-液圧体積を制御する方法 図1
  • 特表-液圧体積を制御する方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】液圧体積を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/48 20060101AFI20240705BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240705BHJP
   B60T 13/138 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B60T8/48
B60T8/17 B
B60T13/138 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578677
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2022056913
(87)【国際公開番号】W WO2023274589
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】102021206811.1
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】フォレルト,ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーゲル,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】キンダー,ラルフ
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB52
3D048CC54
3D048HH15
3D048HH18
3D048HH38
3D048HH53
3D048HH66
3D048HH75
3D048QQ07
3D048RR06
3D048RR11
3D246BA02
3D246CA02
3D246DA01
3D246FA03
3D246FA09
3D246GB01
3D246GB04
3D246GB37
3D246GC14
3D246HA43A
3D246HA45A
3D246JA12
3D246LA04Z
3D246LA15Z
3D246LA31Z
3D246LA33Z
3D246LA52A
3D246LA57Z
3D246LA63Z
3D246LA73A
(57)【要約】
非人力ブレーキとビークルダイナミクスコントロールとからなるシステム内の液圧体積を制御する方法であって、システムは、非人力ブレーキをビークルダイナミクスコントロールに液圧的に連結するように構成されており、ビークルダイナミクスコントロールのための第1の動的な圧力の形成のための信号を提供し、第1の制御信号をビークルダイナミクスコントロールにより生成し、液圧体積を液圧的な連結部に提供すべく、第1の制御信号を非人力ブレーキへ提供し、液圧体積を液圧的な連結部に提供すべく、第2の液圧的な圧力を非人力ブレーキにより生成し、第2の液圧的な圧力を有する液圧体積を液圧的な連結部に非人力ブレーキにより提供し、ビークルダイナミクスコントロール内の第1の液圧的な圧力を、提供された液圧体積により形成する方法を提案する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非人力ブレーキ(1000)とビークルダイナミクスコントロール(1100)とからなるシステム内の液圧体積を制御する方法であって、前記システムは、前記非人力ブレーキ(1100)を前記ビークルダイナミクスコントロール(1100)に液圧的に連結するように構成されており、
前記ビークルダイナミクスコントロールのための第1の動的な圧力の形成のための信号を提供し、
第1の制御信号を前記ビークルダイナミクスコントロール(1100)により生成し、液圧体積を液圧的な連結部に提供すべく、前記第1の制御信号を前記非人力ブレーキ(1000)へ提供し、
前記液圧体積を前記液圧的な連結部に提供すべく、第2の液圧的な圧力を前記非人力ブレーキ(1000)により生成し、
前記第2の液圧的な圧力を有する前記液圧体積を前記液圧的な連結部に前記非人力ブレーキ(1000)により提供し、前記ビークルダイナミクスコントロール(1100)内の前記第1の液圧的な圧力を、提供された前記液圧体積により形成する、
非人力ブレーキとビークルダイナミクスコントロールとからなるシステム内の液圧体積を制御する方法。
【請求項2】
前記ビークルダイナミクスコントロール(1100)のための圧力解消のための信号を提供し、
第2の制御信号を前記ビークルダイナミクスコントロール(1100)により生成し、前記液圧的な連結部における液圧体積を吸収すべく、前記第2の制御信号を前記非人力ブレーキ(1000)へ提供し、
前記液圧的な連結部における液圧体積を吸収すべく、第3の液圧的な圧力を前記非人力ブレーキ(1000)により生成し、
前記液圧的な連結部における前記第2の液圧的な圧力を有する前記液圧体積を前記非人力ブレーキ(1000)により吸収し、前記ビークルダイナミクスコントロール(1100)内の前記第1の液圧的な圧力を、前記非人力ブレーキ(1000)により吸収された前記液圧体積により解消する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液圧体積を前記非人力ブレーキ(1000)のプランジャ(1060)により提供する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プランジャ(1065)は、スニッファ孔を有しない、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の液圧的な圧力および/または前記第3の液圧的な圧力を前記非人力ブレーキの前記プランジャ(1060)により生成する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の制御信号および/または前記第2の制御信号を前記ビークルダイナミクスコントロール(1100)の制御装置により提供する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の制御信号および/または前記第2の制御信号を、前記非人力ブレーキ(1000)および/または前記ビークルダイナミクスコントロール(1100)の作動される切り換え弁における信号により提供する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
作動される前記切り換え弁(1111)は、前記ビークルダイナミクスコントロール(1100)の弁、特に調整可能な弁である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の制御信号および/または第2の制御信号は、バイナリ信号および/またはアナログ信号である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
高められた圧力を前記液圧的な連結部に提供すべく、前記第2の液圧的な圧力および/または前記液圧体積を、前記プランジャ(1060)のピストンの位置を初期位置から機械的に移動させることにより達成する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の液圧的な圧力を調整すべく、前記第2の液圧的な圧力を圧力センサにより測定する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ビークルダイナミクスコントロール(1100)のための前記圧力形成のための前記信号を可動型のプラットフォームの制御装置により提供する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
非人力ブレーキ(1000)とビークルダイナミクスコントロール(1100)とからなるシステム内の液圧体積を制御するシステムであって、
非人力ブレーキ(1000)と、
前記非人力ブレーキ(1100)に液圧的に連結されているビークルダイナミクスコントロール(1100)と、
前記ビークルダイナミクスコントロール(1100)用の制御装置と、
を備え、
前記非人力ブレーキ(1000)は、前記ビークルダイナミクスコントロール(1100)に信号に関して連結されており、
前記システムは、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている、
非人力ブレーキとビークルダイナミクスコントロールとからなるシステム内の液圧体積を制御するシステム。
【請求項14】
請求項13に記載の液圧体積を制御するシステムの、可動型のプラットフォームの少なくとも1つのホイールを制動するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧体積を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の車両ブレーキシステムは、例えば従来のESP/ABS機能の形態の、安定化させる機能に加え、ますます拡張された機能、例えば運転者の補助、あるいはeBKV(電気機械式のブレーキ力倍力装置)によるブレーキ作動時のブレーキペダルに対する力の印加、または運転者の能動的な関与なしに液圧的なブレーキ圧力を能動的に変調するユニット(例えばESP、eBKV、ブーストユニット等)によるアシスト機能もしくは部分アシスト機能も包含している。
ドライバアシスタンスシステムは、今日の自動車において、様々な発展段階のものが、普及しつつある。ドライバアシスタンスシステムは、部分自動化または自動化されて駆動部、制御部(例えばステアリング)または車両のシグナリング装置に介入し、または好適なヒューマン・マシン・インタフェースにより、運転者に対して、危険な状況の直前または最中に警告する。典型的には、ブレーキシステムは、電子式のブレーキ力倍力装置(eBKV)とESPシステムとを有している。この組み合わせにおいて、ブレーキシステムの大半は、機能をESPシステムにより実現することができ、ブレーキ力倍力装置は、動的な圧力を形成すべく、外部の調節器として利用される。
この場合、ブレーキシステムは、閉じた液圧系とともに作業することができ、すなわち、ブレーキ装置の液圧液体を有するリザーバは、漏れ補償および温度補償のためだけに用いられ、ひいては、利用可能な液圧体積は、一定である。この例は、従来のブレーキ装置、例えば真空ブレーキ力倍力装置、電気機械式のブレーキ力倍力装置、例えばiBooster、またはESPシステムと組み合わされたデカップルドパワーブレーキ(DPB)である。代替的には、ブレーキシステムは、開いた液圧系とともに作業してもよい(例えばIPBシステム(IPB:インテグレーテッドパワーブレーキ))。この場合、液圧液体を有するリザーバは、通常運転中、液圧体積を中間貯蔵するために利用され得る。これにより、ブレーキ装置の利用される液圧体積は、制動中、変化することがある。それぞれのブレーキシステムは、それぞれ異なる欠点を有しており、例えば、閉じた液圧系を有するシステムは、ESPシステムの吸い込みが、運転次第で、ブレーキ装置の関連する領域内に、すなわち、主ブレーキシリンダ以下、ホイールに設けられたブレーキシリンダに至るまで、通常運転中に存在すべきであるよりも多くの液圧体積を有しているという問題を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の態様により、独立請求項の特徴による、非人力ブレーキとビークルダイナミクスコントロールとからなるシステム内の液圧体積を制御する方法、非人力ブレーキとビークルダイナミクスコントロールとからなるシステム内の液圧体積を制御するシステム、および液圧体積を制御するシステムの使用を提案する。有利な構成は、従属請求項および以下の説明の対象である。
【0004】
本発明のこのすべての説明において、本方法が容易に実施可能であるように、方法ステップのシーケンスを説明する。当業者であれば、しかし、これらの方法ステップの多くが、別の順序で遂行されてもよく、同じまたは相応の結果に至ることを認識するであろう。この意味において、方法ステップの順序は、相応に変更されてもよい。幾つかの特徴には、可読性を改善するために、または割り当てをより一義的にするために、類別詞を付したが、このことは、特定の特徴の存在を含意するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、非人力ブレーキとビークルダイナミクスコントロールとからなるシステム内の液圧体積を制御する方法であって、システムは、非人力ブレーキをビークルダイナミクスコントロールに液圧的に連結するように構成されている方法を提案する。液圧体積を制御する方法の1つのステップにおいて、ビークルダイナミクスコントロールのための第1の液圧的な圧力の形成のための信号を提供する。さらなるステップにおいて、第1の制御信号をビークルダイナミクスコントロールにより生成し、液圧体積を液圧的な連結部に提供すべく、第1の制御信号を非人力ブレーキへ提供する。さらなるステップにおいて、液圧体積を液圧的な連結部に提供すべく、第2の液圧的な圧力を非人力ブレーキにより生成する。さらなるステップにおいて、第2の液圧的な圧力を有する液圧体積を液圧的な連結部に非人力ブレーキにより提供し、ビークルダイナミクスコントロール内の第1の液圧的な圧力を、提供された液圧体積により形成する。
【0006】
非人力ブレーキの連結弁と、ビークルダイナミクスコントロールの連結弁とが、液圧的に互いに連結されるように構成されていることにより、非人力ブレーキおよび/またはビークルダイナミクスコントロールは、互いに連結されるように構成されていてもよい。すなわち、非人力ブレーキおよびビークルダイナミクスコントロールを有するシステムの液圧的な連結部は、ビークルダイナミクスコントロールの連結弁と、非人力ブレーキの連結弁との間において、非人力ブレーキとビークルダイナミクスコントロールとを液圧式に互いに連結するように構成されていることができる。
【0007】
特に非人力ブレーキは、液圧体積をビークルダイナミクスコントロールに提供することができ、その結果、ビークルダイナミクスコントロールによる第1の動的な圧力の形成時、システム内の液圧体積は、一定に保たれる。換言すれば、非人力ブレーキは、付加的な液圧体積が付加的なリザーバから追加されることなく、ビークルダイナミクスコントロールに十分な液圧体積が提供されるように、この提供される液圧体積を調整することができる。すなわち、ビークルダイナミクスコントロールの第1の動的な圧力が再び解消されるとき、非人力ブレーキは、提供された液圧体積を再び、付加的なリザーバ内へ放出する必要なしに吸収するように構成されていることができる。
【0008】
特に、非人力ブレーキとビークルダイナミクスコントロールとからなるシステムは、ビークルダイナミクスコントロール、例えばブレーキ力変調システムの作動時、非人力ブレーキに信号を伝送するように構成されていることができ、その結果、非人力ブレーキは、非人力ブレーキとビークルダイナミクスコントロールとからなるシステム内の液圧体積が変化することなく、第1の液圧的な圧力を形成するのに十分な液圧体積が、ビークルダイナミクスコントロールに提供されるように、ビークルダイナミクスコントロールと液圧式に協働する。
【0009】
それゆえ、液圧体積を制御するこの方法により、ビークルダイナミクスコントロールにより吸い込まれる液圧体積が、非人力ブレーキのプランジャから提供され、液圧式のリザーバからは提供されないことが保証され得る。
【0010】
換言すれば、システムは、ビークルダイナミクスコントロールが液圧体積を吸い込もうとしているという情報が確認され、非人力ブレーキに伝送され、その後、非人力ブレーキのプランジャが能動的に、十分な、しかし、僅かな第2の圧力を形成すべく、制御されるように構成されていることができ、その結果、液圧体積は、液圧式のリザーバからは取り出されず、プランジャから取り出される。それというのも、非人力ブレーキのプランジャが生成する第2の圧力は、液圧式のリザーバからの吸い込みを回避するのに十分な高さであるからである。システムを制御するこの方法により、結果として、閉じた液圧系が、ビークルダイナミクスコントロールの第1の動的な圧力の形成時に生じる。これにより、提供され吸い込まれた液圧体積を再び液圧式のリザーバ内へ、システムの静止位置において液圧的な圧力が存在していないことを保証するために移送する手段を講じる必要はなくなる。これによりプランジャは、スニッファ孔なしにこのシステム内で使用されることができ、これにより、とりわけシステムのための構成スペース、特に幅は、削減され得る。
【0011】
有利には、結果として、システム内の液圧体積を制御するこの方法から、ブレーキの緩解後、あるいはビークルダイナミクスコントロールの運転後、ブレーキシステム内に圧力が残らず、ひいてはブレーキシステムの機能性が維持されていることが生じる。
【0012】
非人力ブレーキとビークルダイナミクスコントロールとからなるシステムは、連結解除された電気式のブレーキ力倍力装置(英:decoupled power brake;DPB)が、スタンダードビークルダイナミクスコントロール(エレクトロニックスタビリティコントロール(Electronic Stability Control(ESP))システム)と組み合わされた2ボックス型のブレーキシステムであり得る。
【0013】
第1の動的な圧力を形成すべく、ビークルダイナミクスコントロールが作動されるという情報は、通信インタフェースを介してアクチュエータ、例えば非人力ブレーキに、かつ特に連結解除された電気式のブレーキ力倍力装置に伝送されることができ、アクチュエータは、液圧式のリザーバから液圧体積が取り出されるのを回避すべく、プランジャにより、僅かな圧力(第2の液圧的な圧力)を設定する。
【0014】
特にこのようなシステムは、例えば連結解除された電気式のブレーキ力倍力装置(英:decoupled power brake;DPB)を非人力ブレーキとして包含していることができ、連結解除された電気式のブレーキ力倍力装置の場合、運転者は、通常運転中、シミュレータ内にブレーキを踏み込み、本来のブレーキ圧力は、プランジャによって発生される。2つのブレーキラインを介して、このパイロット圧は、ビークルダイナミクスコントロールに伝えられ得る。このようなブレーキシステム内では、ブレーキペダルの操作とは独立して、非人力ブレーキのプランジャまたはビークルダイナミクスコントロールのポンプにより、ブレーキ圧力が形成され得る。この場合、非人力ブレーキは、主にブレーキ圧力の必要な動的な形成を担うことができる。ビークルダイナミクスコントロールは、安定化機能と、場合によっては必要とされる非常時機能、例えばエラー時の液圧的なブレーキ圧力の形成とを提供し得る。
システムのビークルダイナミクスコントロールは、これにより非常時、必要とされるブレーキ圧力を運転者の希望に基づいて形成することができる。
代替的または付加的に、このシステムに基づくブレーキシステムは、法定の最低減速度をもはや不可能としてしまう非人力ブレーキの失陥またはシステム内の液圧的な漏れ時に、必要なブレーキ圧力をビークルダイナミクスコントロールにより形成するように設計されていることができる。
【0015】
有利には、非人力ブレーキとビークルダイナミクスコントロールとからなるシステム、および液圧体積を制御する方法により、システム内の液圧体積が、ビークルダイナミクスコントロールの運転時、一定に保たれ得る。このようなブレーキシステムを有する車両の運転者がこの方法に気付くことはない。それというのも、非人力ブレーキにおいて、運転者のためのペダルを有する主シリンダは、ブレーキ圧力を形成するように構成されているプランジャから連結解除されているからである。
【0016】
ビークルダイナミクスコントロールは、ポンプにより、第1の制御信号による要求に基づき、この要求された圧力を、非人力ブレーキにより提供される液圧体積が、このために使用されることによって、形成し得る。換言すれば、液圧体積は、ビークルダイナミクスコントロールにより非人力ブレーキから吸い込まれ得る。
【0017】
非人力ブレーキとビークルダイナミクスコントロールとからなるシステムは、例えばブレーキシステムとして閉じているので、インタフェースが設けられていることができ、インタフェースは、ビークルダイナミクスコントロールに、液圧体積、例えばブレーキ液体の吸い込みを非人力ブレーキに伝えることを可能にする。この場合、非人力ブレーキは、所望の付加的な液圧体積が、システム、例えばブレーキ回路内に到達しないことを防止するように構成されていることができる。
【0018】
このために非人力ブレーキは、プランジャを有し、プランジャをいわゆる吸い込み補助に際して、負圧がシステム内あるいは特に非人力ブレーキ内に生じないように調整することができる。それというのも、非人力ブレーキは、非人力ブレーキ内の負圧が十分に高いとき、安全弁、例えばBSV弁により液圧体積を貯蔵タンクから吸い込むように構成されていることがあるからである。貯蔵タンクから液圧体積、例えばブレーキ液体を吸い込むこの可能性は、特殊な状況のために設けられていることができ、通常の運転中は、システムの申し分のない機能を保証するために回避されていてよい。
【0019】
第1の液圧的な圧力が成功裏にビークルダイナミクスコントロール内に形成されると、所望の液圧的な圧力は、例えばそれぞれのホイールのブレーキシリンダにかかっており、あるいはビークルダイナミクスコントロールのそれぞれの液圧式の高圧回路内にかかっている。その際、第2の液圧的な圧力は、非人力ブレーキの液圧的な連結部において、例えばプランジャにより、システム内の液圧体積が一定に保たれるように制御あるいは調整される。換言すれば、ビークルダイナミクス内の圧力形成のために必要とされる液圧体積は、このために相応に移動させられるピストンを有するプランジャからの液圧体積により提供される。換言すれば、ビークルダイナミクスコントロール内の圧力形成のために必要とされる液圧体積は、非人力ブレーキから、特にプランジャの液圧体積により、例えば、プランジャのピストンが、前方の位置へ移動されることにより、提供される。
【0020】
非人力ブレーキのプランジャと、ビークルダイナミクスコントロールの連結弁SCCとの間の領域内を支配する第2の液圧的な圧力は、この場合、僅かな高さに、例えば、液圧的な圧力を測定するためにこの領域内に配置されている非人力ブレーキの圧力センサにより、調整され得る。
【0021】
一態様によれば、非人力ブレーキが、連結解除された電気式のブレーキ力倍力装置(英:decoupled power brake;DPB)であり、かつ/またはビークルダイナミクスコントロールが、ESPシステム(Electronic Stability Controlシステム)であることを提案する。
【0022】
一態様によれば、ビークルダイナミクスコントロールに提供される圧力解消のための信号にしたがって液圧体積を制御する方法が、
第2の制御信号をビークルダイナミクスコントロールにより生成し、非人力ブレーキが液圧的な連結部における液圧体積を吸収するように、第2の制御信号を非人力ブレーキに提供することを提案する。さらなるステップにおいて、液圧的な連結部における液圧体積を吸収すべく、非人力ブレーキにより第3の液圧的な圧力を生成する。さらなるステップにおいて、液圧的な連結部における第2の液圧的な圧力を有する液圧体積を非人力ブレーキにより吸収し、ビークルダイナミクスコントロール内の圧力を、非人力ブレーキにより吸収された液圧体積により解消する。
換言すれば、プランジャは、第1の動的な圧力を形成するためにビークルダイナミクスコントロールにより必要とされた液圧体積を、圧力形成が終了した後、再び吸収することができる。
【0023】
一態様によれば、液圧体積を非人力ブレーキのプランジャにより提供することを提案する。
【0024】
一態様によれば、プランジャが、スニッファ孔を有しないことを提案する。
これに伴い、有利には、プランジャは、より小さく構成され得る。
【0025】
一態様によれば、第2の液圧的な圧力および/または第3の液圧的な圧力を非人力ブレーキのプランジャにより生成することを提案する。
【0026】
特に、第2の液圧的な圧力および/または第3の液圧的な圧力を調整するために、調整器が機能する最低圧力が達成されるような高さに、第2の液圧的な圧力および/または第3の液圧的な圧力を決定してもよい。
【0027】
一態様によれば、第1の制御信号および/または第2の制御信号をビークルダイナミクスコントロールの制御装置により提供することを提案する。
【0028】
一態様によれば、第1の制御信号および/または第2の制御信号を、非人力ブレーキおよび/またはビークルダイナミクスコントロールの作動される切り換え弁における信号により提供することを提案する。
代替的または付加的に、つまり、第1の制御信号および/または第2の制御信号を、作動される切り換え弁、例えばビークルダイナミクスコントロールの連結弁SCCに直接加え、かつ非人力ブレーキに提供してもよい。
【0029】
一態様によれば、作動される切り換え弁が、ビークルダイナミクスコントロールの調整可能な弁であることを提案する。
特に、このような作動される切り換え弁は、例えばビークルダイナミクスコントロールの連結弁SCCであり得る。
【0030】
一態様によれば、第1の制御信号および/または第2の制御信号が、バイナリ信号および/またはアナログ信号であることを提案する。
換言すれば、ビークルダイナミクスコントロールと非人力ブレーキとは、第1の制御信号を送信するかつ/または第2の制御信号を送信する制御ラインおよび/またはバスシステムにより信号に関して連結されていることができる。この場合、第1の制御信号および/または第2の制御信号は、バイナリ値を取ることができ、かつ/または連続的な値を表すことができ、値は、液圧体積の吸い込みプロセスのダイナミクスに依存している。
【0031】
一態様によれば、高められた圧力を液圧的な連結部に提供すべく、第2の液圧的な圧力および/または液圧体積を、プランジャのピストンの位置を初期位置から機械的に移動させることにより達成することを提案する。
これに伴い、プランジャの出口には、液圧体積が提供され得る。
【0032】
一態様によれば、本方法が、マニュアル操作される主ブレーキシリンダでも機能することを提案する。
【0033】
一態様によれば、第2の液圧的な圧力を調整すべく、第2の液圧的な圧力を圧力センサにより測定することを提案する。
【0034】
一態様によれば、ビークルダイナミクスコントロールのための圧力形成のための信号を可動型のプラットフォームの制御装置により提供することを提案する。
【0035】
非人力ブレーキとビークルダイナミクスコントロールとからなるシステム内の液圧体積を制御するシステムであって、非人力ブレーキと、非人力ブレーキに液圧的に連結されているビークルダイナミクスコントロールとを備えるシステムを提案する。さらにシステムは、ビークルダイナミクスコントロール用の制御装置を含み、非人力ブレーキは、ビークルダイナミクスコントロールに信号に関して連結されており、システムは、液圧体積を制御する上述の方法の1つを実施するように構成されている。
【0036】
液圧体積を制御するシステムの、上述のような、可動型のプラットフォームの少なくとも1つのホイールを制動するための使用を提案する。
【0037】
液圧体積を制御する上述のシステムを有する可動型のプラットフォームおよび特に少なくとも部分自動化された車両を提案する。有利には、このような可動型のプラットフォームは、液圧体積を制御する方法のすべての利点を実現し得る。
【0038】
可動型のプラットフォームとは、可動であって、少なくとも部分的に自動化されたシステムおよび/または車両のドライバアシスタンスシステムと解し得る。一例は、少なくとも部分的に自動化された車両あるいはドライバアシスタンスシステムを有する車両であり得る。すなわち、この関連において、少なくとも部分的に自動化されたシステムは、可動型のプラットフォームを、少なくとも部分的に自動化された機能性に関して包含するが、可動型のプラットフォームは、ドライバアシスタンスシステムを含む車両およびその他の可動型の機械も包含する。可動型のプラットフォームの別の例は、複数のセンサを有するドライバアシスタンスシステム、可動型のマルチセンサロボット、例えばロボット掃除機または芝刈り機、マルチセンサ監視システム、製造機械、パーソナルアシスタントまたはアクセスコントロールシステムであり得る。これらのシステムの各々は、完全にまたは部分的に自動化されたシステムであり得る。
【0039】
本発明の実施例を図1ないし2に関して示し、以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】静止状態の非人力ブレーキとビークルダイナミクスコントロールとからなるシステムを示す図である。
図2】ビークルダイナミクスコントロール内の圧力形成時の非人力ブレーキとビークルダイナミクスコントロールとからなるシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、概略的に非人力ブレーキ1000とビークルダイナミクスコントロール1100とからなるシステムを静止状態における弁位置でもって示しており、このシステムは、非人力ブレーキ1000をビークルダイナミクスコントロール1100に、非人力ブレーキの第1および第2の連結弁PSV1,2 1021あるいは1022と、ビークルダイナミクスコントロールの第1および第2の連結弁SCC 1111および1112とにより液圧的に連結し、ひいては液圧的な連結部(ハイドロリックカップリング)を形成するように構成されている。
この場合、非人力ブレーキ1000も、ビークルダイナミクスコントロール1100も、2回路に設計されている。
主シリンダ1050は、この主シリンダに機械的に結合されているペダルによりマニュアル操作可能であり、これにより、液圧式に第1あるいは第2の回路カット弁CSV1,2 1011あるいは1012により、ビークルダイナミクスコントロール1100のそれぞれ割り当てられた回路によって、ブレーキシリンダ1101,1102あるいは1103および1104に作用し、これにより、非常制動作用を達成することができる。この場合、主ブレーキシリンダ1050は、液圧液体用のリザーバ1030に、2つのスニッファ孔により液圧的に接続されている。
通常運転中、ブレーキシリンダ1101,1102あるいは1103および1104における制動作用は、プランジャ1060により、このプランジャ1060が、液圧体積を非人力ブレーキの連結弁PSV1,2 1021あるいは1022を介してビークルダイナミクスコントロールの2つの回路内へ移動させることによって、引き起こされ得る。プランジャ1060は、弁POV 1061を介して液圧式のリザーバRSV1,2 1030に液圧的に連結され得る。プランジャ1060は、電気モータに連結されており、これにより、ピストンにより液圧体積を放出したり、吸収したりすることが可能である。電気モータは、電気モータ位置を測定するセンサシステムRPS 1062に連結されている制御部により調整され得る。主シリンダ1050の圧力は、圧力センサ1053により測定され得る。
2回路に設計される主シリンダ1050は、弁SSV 1051を介してブレーキシミュレータPFS 1052に液圧的に連結されることができ、これにより、ブレーキペダルを操作する運転者に対して、液圧的な圧力形成をシミュレートすることができる。この場合、液圧体積は、通常運転中、プランジャ1060によりビークルダイナミクスコントロール1100のために提供され、これにより、ビークルダイナミクスコントロール1100に液圧的に連結されているブレーキシリンダ1101,1102あるいは1103および1104において制動作用を達成することができる。ブレーキペダルの機械的な位置は、ブレーキペダルに機械的に連結されているストロークトランスデューサs/Uにより測定可能であり、これにより、プランジャ1060を制御することができる。
プランジャ1060により生成される第2の液圧的な圧力は、プランジャ圧力センサ1065により測定され得る。第1のチェック弁BSV1,2 1041あるいは1042により、非人力ブレーキ1000とビークルダイナミクスコントロール1100とからなる液圧式のシステムに液圧液体が補給され得る。
【0042】
ビークルダイナミクスコントロール1100の両回路は、互いにほぼ一致しているので、一方の回路について説明すれば、事足りる。
ビークルダイナミクスコントロール1100の2つの回路のうちの少なくとも一方の回路において、液圧的な連結部における圧力は、圧力センサ1190により測定され得る。
非人力ブレーキ1000は、非人力ブレーキの連結弁PSV1,2 1021あるいは1022によりビークルダイナミクスコントロールの連結弁SCC 1111あるいは1112に液圧的に連結されており、これにより、液圧的な連結部を非人力ブレーキ1000とビークルダイナミクスコントロール1100との間に形成する。
【0043】
図2は、ビークルダイナミクスコントロール1100による第1の動的な圧力の形成のための弁位置を示している。
ビークルダイナミクスコントロール1100は、それぞれのポンプ1131あるいは1132により第1の動的な圧力をビークルダイナミクスコントロール1100のために提供するように構成されている。
【0044】
ビークルダイナミクスコントロール1100に、第1の動的な圧力の形成のための信号が、例えば可動型のプラットフォームの制御部により提供されると、ビークルダイナミクスコントロール1100は、第1の制御信号を生成し、この第1の制御信号を非人力ブレーキ1000に、この非人力ブレーキ1000が、液圧体積を液圧的な連結部に提供するように、提供する。
【0045】
液圧体積を液圧的な連結部に提供すべく、第2の液圧的な圧力が、非人力ブレーキ1000によりプランジャ1060によって生成され、プランジャ圧力センサ1065により管理され、かつ液圧的な連結部に非人力ブレーキ1000によりビークルダイナミクスコントロール1100の液圧的な連結部に、このビークルダイナミクスコントロール1100が、第1の液圧的な圧力をこの提供される液圧体積により形成することができるように、提供される。
【0046】
このために、それぞれの連結弁SCC 1111あるいは1112は、閉弁され、かつ高圧弁HSR 1121あるいは1122は、開弁され、これにより、ビークルダイナミクスコントロールのそれぞれのポンプ1131あるいは1132を液圧的な連結部に液圧的に連結することができる。このとき、プランジャ1060により生成される第2の液圧的な圧力は、必要とされる液圧体積が、リザーバ1030から取り出されるのではなく、プランジャ1060により、ビークルダイナミクスコントロール1100による第1の動的な圧力の圧力形成のために提供されるように用いられる。それというのも、この第2の動的な圧力は、それぞれのチェック弁BSV1,2 1041あるいは1042が開弁されてしまうのを防止するからである。
ビークルダイナミクスコントロール1100のこうして生成された第1の液圧的な圧力は、開いたそれぞれの弁ICF 1141,1171あるいは1142,1172を介して、ブレーキシリンダ1101,1102あるいは1103,1104に提供され、これにより、制動作用を達成することができる。
【0047】
ビークルダイナミクスコントロール1100に圧力解消のための信号が提供されると、ビークルダイナミクスコントロール1100は、第2の制御信号を生成し、この第2の制御信号を非人力ブレーキ1000に、この非人力ブレーキ1000が、プランジャ1060により液圧的な連結部における液圧体積を吸収するように、提供する。このために、非人力ブレーキ1000は、プランジャ1060により第3の液圧的な圧力を形成することができ、この第3の液圧的な圧力は、プランジャ圧力センサ1065により測定されることができ、これにより、液圧体積を、ブレーキシリンダ1101,1102あるいは1103,1104から、出口弁OS 1151,1161あるいは1152,1162により、かつ場合によっては連結されるバッファ容積ACC 1183あるいは1184により、かつチェック弁1181あるいは1182を通して、ビークルダイナミクスコントロールのそれぞれのポンプ1131あるいは1132により、それぞれの開弁された連結弁SCC 1111あるいは1112と、非人力ブレーキの開弁された連結弁PSV1,2 1021あるいは1022とを介して、プランジャのピストンの移動により設定され得るプランジャ1060の容積により吸収することができ、これにより、ビークルダイナミクスコントロール1100内の第1の圧力は、非人力ブレーキ1000によって吸収された液圧体積により解消される。
このとき、第3の液圧的な圧力は、第2の液圧的な圧力に相当し得る。
すなわち、非人力ブレーキ1000は、液圧体積をビークルダイナミクスコントロール1100に提供することができ、その結果、ビークルダイナミクスコントロール1100による第1の動的な圧力の形成時、システム内の液圧体積は、一定に保たれる。これにより、非人力ブレーキ1000は、付加的な液圧体積が、付加的なリザーバ1030から追加されることなく、第1の圧力を生成するのに十分な液圧体積が、ビークルダイナミクスコントロール1100に提供されるように、この提供される液圧体積を調整するように構成されている。
ビークルダイナミクスコントロール1100の第1の動的な圧力が再び解消されるときは、非人力ブレーキ1000は、提供された液圧体積を再び、付加的なリザーバ1030内へ放出する必要なしに吸収するように構成されていることができる。
【符号の説明】
【0048】
1000 非人力ブレーキ
1011,1012 回路カット弁CSV1,2
1021,1022 連結弁PSV1,2
1030 リザーバ
1041,1042 チェック弁BSV1,2
1050 主シリンダ
1051 弁SSV
1052 ブレーキシミュレータPFS
1053 圧力センサ
1060 プランジャ
1061 弁POV
1062 センサシステムRPS
1065 プランジャ圧力センサ
1100 ビークルダイナミクスコントロール
1101,1102,1103,1104 ブレーキシリンダ
1111,1112 連結弁SCC、切り換え弁
1121,1122 高圧弁HSR
1131,1132 ポンプ
1141,1171,1142,1172 弁ICF
1151,1161,1152,1162 出口弁OS
1181,1182 チェック弁
1183,1184 バッファ容積ACC
1190 圧力センサ
s/U ストロークトランスデューサ
図1
図2
【国際調査報告】