(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】建設用組成物における可塑剤としてのナフタレンスルホン酸重縮合物の使用および建設用組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20240705BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20240705BHJP
C04B 24/22 20060101ALI20240705BHJP
C08G 16/02 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B18/14 A
C04B24/22 Z
C08G16/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579064
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2022066816
(87)【国際公開番号】W WO2022268769
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503343336
【氏名又は名称】コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Albert-Frank-Strasse 32, D-83308 Trostberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】グルニハル アイカン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル シュミット
(72)【発明者】
【氏名】シュリダラ ゴーダ
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ バンディエラ
【テーマコード(参考)】
4G112
4J033
【Fターム(参考)】
4G112PA29
4G112PB25
4J033GA05
4J033GA11
4J033GA12
4J033HB00
(57)【要約】
ナフタレンスルホン酸重縮合物が、砂と少なくとも1つのセメント系結合材とを含む建設用組成物において可塑剤として使用される。ナフタレンスルホン酸重縮合物は、95:5~60:40、好ましくは95:5~75:25、より好ましくは95:5~85:15のi):ii)の重量比でのi)ナフタレンスルホン酸、ii)3~130個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物、およびiii)ホルムアルデヒドの縮合反応によって得られ、砂は少なくとも10g/kgのDIN EN 933-9によるメチレンブルー値を有する。ナフタレンスルホン酸重縮合物は、粘土の影響を殆ど受けず、その分散性は、砂の品質には依存しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂と少なくとも1つのセメント系結合材とを含む建設用組成物における可塑剤としてのナフタレンスルホン酸重縮合物の使用であって、前記ナフタレンスルホン酸重縮合物が、95:5~60:40、好ましくは95:5~75:25、より好ましくは95:5~85:15のi):ii)の重量比での
i)ナフタレンスルホン酸、
ii)3~130個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物、および
iii)ホルムアルデヒド
の縮合反応によって得られ、
前記砂が少なくとも10g/kgのDIN EN 933-9によるメチレンブルー値を有する、
使用。
【請求項2】
前記砂が10~50g/kg、好ましくは15~35g/kg、より好ましくは20~30g/kgのDIN EN 933-9によるメチレンブルー値を有する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
ポリオキシアルキレン単位が少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも85モル%、より好ましくは少なくとも95モル%のオキシエチレン単位を含む、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記ヒドロキシアリール化合物がフェノールおよびナフトールから選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
前記アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物ii)がエトキシ化フェノールまたはエトキシ化ナフトールである、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
前記セメント系結合材が、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメントおよびスルホアルミネートセメントから選択されるセメントを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
前記セメント系結合材が潜在水硬性結合材をさらに含む、請求項6記載の使用。
【請求項8】
前記潜在水硬性結合材が高炉スラグである、請求項7記載の使用。
【請求項9】
前記建設用組成物が、混合したての形態で、セメント系結合材に対して0.3~0.6、好ましくは0.35~0.4の範囲の水の比率を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
前記建設用組成物が少なくとも1つの遅延剤および/または促進剤をさらに含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
前記建設用組成物が、前記ナフタレンスルホン酸重縮合物と異なる少なくとも1つの分散剤をさらに含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
前記建設用組成物が、前記建設用組成物の総量に対して、
- 7~15体積%の量のセメント系結合材、
- 25~30体積%の量の砂、および
- 40~50体積%の量の粗骨材
を含む、請求項1から11までのいずれか1項記載の使用。
【請求項13】
前記建設用組成物が、前記セメント系結合材の重量に対して5~80重量%の量の補助セメント系材料をさらに含む、請求項12記載の使用。
【請求項14】
建設用組成物であって、
a)95:5~60:40、好ましくは95:5~75:25、より好ましくは95:5~85:15のi):ii)の重量比での
a-i)ナフタレンスルホン酸、
a-ii)3~130個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物、および
a-iii)ホルムアルデヒド
の縮合反応によって得られるナフタレンスルホン酸重縮合物と、
b)少なくとも1つのセメント系結合材と、
c)少なくとも10g/kgのDIN EN 933-9によるメチレンブルー値を有する砂と、
d)水と
を含む、建設用組成物。
【請求項15】
粗骨材をさらに含む、請求項14記載の建設用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂と少なくとも1つのセメント系結合材とを含む建設用組成物における可塑剤としての、ある特定のナフタレンスルホン酸重縮合物の使用に関する。本発明は、さらに、セメント系結合材と、砂と、前記ナフタレンスルホン酸重縮合物とを含む建設用組成物に関する。
【0002】
分散剤を水硬性結合材の水性スラリーに添加して、その施工性、すなわち展延性、ポンパビリティーまたは流動性を改善することが知られている。かかる混和材料は、固体凝集物の形成を防ぎ、また、既に存在する粒子および水和によって新たに形成される粒子を分散させることにより、施工性を改善することが可能である。粉末状結合材を混合したての加工可能な形態に変換するためには、その後の水和および硬化プロセスに必要とされるよりも実質的に多くの配合水が必要である。過剰な水によってコンクリート本体に形成された空隙は、水が続いて蒸発することで、機械的強度および抵抗の低下につながる。所定の加工粘稠度での過剰な水の割合を低減し、かつ/または所定の水/結合材比での施工性を改善するために、一般に減水剤または可塑剤と称される混和材料が使用される。高レベルの減水を可能にするものは、高範囲減水剤または超可塑剤として知られている。ポリカルボン酸エーテル系超可塑剤が一般に使用される。
【0003】
一般に、セメント系組成物においてフィラーとして使用され得る砂は、粘土鉱物を含有する場合がある。粘土は、4面体および8面体シートから構成される含水フィロケイ酸アルミニウムである。層および層間の陽イオンの正確な性質が粘土の挙動を決定する:膨張性粘土は、水和され、膨潤とも称される層間の間隔の拡大をもたらし得る交換性陽イオンを層間に含有する。対照的に非膨張性粘土、例えばイライト、マイカおよびカオリンの層は密着している。
【0004】
粘土は表面電荷を示し、典型的には2μm未満の非常に細かい粒径を有する。膨張性粘土および非膨張性粘土はどちらも、所望のコンクリートレオロジーを達成するために必要とされる水の量を増加させることにより、コンクリートの挙動に悪影響を及ぼす。非膨張性粘土の影響は、主に小さな粒径、表面電荷、および不良な粒子形状によるものである。例えば、マイカは扁平で薄片状の粒子形状を有し、例えばコンクリートの混合時に剪断により破壊され、コンクリートの施工性が非常に悪くなることがある。膨張性粘土は膨張し、コンクリート混合物からの遊離水を消費し得るため、コンクリートレオロジーに非膨張性粘土よりも大きな影響を与えると考えられている。
【0005】
加えて、膨張性粘土は、セメント粒子に吸着し、粒子を水性スラリーまたはペースト内に分散させることを目的としたポリカルボン酸エーテル系超可塑剤の性能を阻害することが観察されている。膨張性粘土は、この機能を妨げる。この場合、吸着した超可塑剤は、もはや可塑剤として作用することができず、流動性が低下した建設用組成物をもたらす。これにより、不利なことに、混合が終了して初めて認識され得るコンクリート品質の変動がもたらされる。施工性に関する問題に対処するために、コンクリートに使用する水の量を増加させることができる。しかしながら、これらの措置は、更なる問題を引き起こす恐れがある。施工性を改善するために含水量を増加させると、コンクリートの強度および耐久性が低下する傾向がある。代替的には、施工性の低下という不利点は、コンクリートにおいて所与のレベルの施工性を達成するために、例えばより多量の超可塑剤の添加によって克服することができる。
【0006】
良質の砂、すなわち粘土含有量が低いか、またはゼロの砂は、無制限の量で入手可能ではなく、高級な砂のコストは上昇している。輸送範囲が制限されるため、概して、地元の一般的な砂の供給源に頼る必要がある。したがって、質の悪い砂をも利用する必要性が増え続けている。
【0007】
工業的には、粘土への超可塑剤の吸着の問題は一般に、コンクリートに使用する砂を洗浄することにより、前記砂から粘土を少なくとも部分的に除去することで解決される。しかしながら、これにより過剰量の砂を洗浄する必要があり、コストおよび廃棄量が増加する。さらに、洗浄が不十分な場合、砂中に幾らかの粘土が常に残留し、依然としてポリカルボン酸エーテル系分散剤の挙動に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
特開平6-340459号公報には、長時間にわたりスランプロスがないため、ポンプ圧送による輸送トラブルを解消することが可能なセメント分散剤が記載されている。セメント分散剤は、ホルムアルデヒド、炭素原子数2~3のオキシアルキレン基1~100モルを導入して得られる1種以上の芳香族化合物、およびホルムアルデヒドと共縮合可能な1種以上の物質の共縮合手順によって得られる。共縮合生成物は、スルホン酸基またはスルホメチル基を含む。
【0009】
欧州特許出願公開第0780348号明細書にはモノマー(A)およびモノマー(B)を含むモノマーをホルムアルデヒドと共縮合することによって得られるポリマー、またはポリマーを中和することによって得られる塩を含むセメント分散剤が記載されている。モノマー(A)は、オキシエチレン基およびオキシプロピレン基からなる群から選択される少なくとも1つの成員を1分子当たり平均1~300モル有する芳香族化合物であり、モノマー(B)は、カルボキシル基を有する芳香族化合物である。欧州特許出願公開第0780348号明細書には、川砂を含むコンクリートにセメント分散剤が使用される実施例が開示されている。
【0010】
加えて、砂の個々のバッチが異なる粘土含有量を有することは珍しくない。したがって、砂をその品質に関して常に検査することは時間的に可能でも経済的に合理的でもないため、本発明の目的は、建設用組成物に使用される砂の品質に殆ど依存しない、建設用組成物に使用される可塑剤を提供することである。
【0011】
したがって、本発明は、砂と少なくとも1つのセメント系結合材とを含む建設用組成物における可塑剤としてのナフタレンスルホン酸重縮合物の使用であって、ナフタレンスルホン酸重縮合物が、95:5~60:40、好ましくは95:5~75:25、より好ましくは95:5~85:15のi):ii)の重量比での
i)ナフタレンスルホン酸、
ii)3~130個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物、および
iii)ホルムアルデヒド
の縮合反応によって得られ、
砂が少なくとも10g/kgのDIN EN 933-9によるメチレンブルー値を有する、
使用に関する。
【0012】
本発明によると、建設用組成物は砂を含有するが、建設用組成物が砂に加えて粗骨材を含有する実施形態にまで及ぶ。
【0013】
本発明によると、ナフタレンスルホン酸重縮合物は、砂と少なくとも1つのセメント系結合材とを含む建設用組成物において可塑剤として使用され、砂は少なくとも10g/kgのDIN EN 933-9によるメチレンブルー値を有する。
【0014】
ここで、「砂」という用語は、「細骨材」とも称され、粒子の大部分(例えば、粒子の少なくとも95%)が0~5mmの粒径を有する骨材を表す。言い換えると、「砂」は、公称開口径5mmの篩を通過する骨材を表す。「粗骨材」という用語は、粒子の大部分(例えば、粒子の少なくとも95%)が5mm超~40mm、例えば5mm超~30mmまたは10~20mmの粒径を有する骨材を表す。
【0015】
一般に、かかる骨材は、天然骨材または破砕骨材のいずれであってもよい。
【0016】
通常、天然骨材は採取場、川、湖、海底または砂漠から採掘または浚渫される。
【0017】
通常、破砕骨材は採石場の岩、巨礫、玉石または大型礫を破砕することによって製造される。破砕した高炉徐冷スラグおよび再生コンクリートの両方も骨材として使用される。
【0018】
一般に、砂は上記のような粒径を有する天然砂または砕石からなり、粗骨材は上記のような粒径を有する1つ以上の礫または砕石からなる。
【0019】
骨材は通常、採取場または工場で等級分けされ、任意に洗浄される。種類、品質、清浄度、等級、含水率および他の特性に幾らかのばらつきがあることが予想される。例えば、川砂は通常は無視できる量の粘土を含有するが、山砂ではそうとは限らない。
【0020】
砂を含む骨材の組成は、地元の供給源および条件によって異なる。天然に存在する骨材は鉱物、岩石またはそれらの混合物である。鉱物は、秩序立った内部構造および狭い範囲内に制限された化学組成を有する、天然に存在する固体物質である。岩石は、起源によって火成岩、堆積岩または変成岩に分類され、一般に幾つかの鉱物から構成される。岩石の風化および浸食によって石、礫、砂、シルトおよび粘土の粒子が生成する。
【0021】
火成岩としては、花崗岩、閃長岩、閃緑岩、斑糲岩、橄欖岩、ペグマタイト、火山ガラス、珪長岩および玄武岩が挙げられる。
【0022】
変成岩としては、大理石、変質珪岩、粘板岩、千枚岩、片岩、角閃岩、ホルンフェルス、片麻岩および蛇紋岩が挙げられる。
【0023】
堆積岩としては、礫岩、砂岩、粘土岩、シルト岩、粘土質岩、頁岩およびチャートが挙げられる。
【0024】
大陸環境および非熱帯沿岸環境における砂の最も一般的な構成要素は、通常は石英の形態のシリカである。したがって、砂は、好ましくはケイ砂等のシリカベースの砂である。
【0025】
一実施形態では、砂は10~50g/kg、好ましくは15~35g/kg、より好ましくは20~30g/kgのDIN EN 933-9によるメチレンブルー値を有する。
【0026】
DIN EN 933-9による「メチレンブルー試験」は、砂の粘土含有量を調査する一般的な手順である。これは滴定を用いて、粘土に吸着したメチレンブルーの量を決定するものである。メチレンブルーは、プラス部分、すなわち着色部分と、それを相殺するマイナス部分、すなわち陰イオンとからなる陽イオン性有機色素である。かかる陽イオン性有機色素を水に溶解すると、典型的には陰イオンと陽イオンとに解離し、陽イオン部分により溶液が着色される。実際に、メチレンブルーは粘土に対して非常に強い親和性を有する。このため、調査した砂が粘土を含有する場合、添加したメチレンブルーが粘土の表面に吸着する。
【0027】
DIN EN 933-9によるメチレンブルー試験は、粘土に吸着しやすいメチレンブルーの最大量を調べるために、既知量のメチレンブルーと既知量の砂とを混合することによって実施される。メチレンブルー試験は、砂の0~2mm画分に対して行われる。一般に、この試験の実施は簡単である:一定量のメチレンブルーの溶液を、既知量の砂を含有する溶液に徐々に添加する。各添加の後、得られた懸濁液のスポットを濾紙上につけ、遊離メチレンブルーの存在を検出することによってメチレンブルーの吸着を確認する。遊離メチレンブルーの存在は、中央の沈着物の周囲に約1mmの持続的な明るい青色の輪からなるハローが形成される場合に確認される。測定試料の質量と注入したメチレンブルー溶液の総量とから、メチレンブルー値を算出することができる。これは砂の0~2mm画分1kg当たりのメチレンブルーのg数として報告される。
【0028】
「粘土」という用語は、ラメラ構造を有するフィロケイ酸塩を含むケイ酸アルミニウムおよび/またはケイ酸マグネシウム、ならびに非晶質粘土等の他のタイプの粘土を指す。粘土には、スメクタイト型粘土等の2:1型、およびカオリナイト等の1:1型粘土、およびクロライト等の2:1:1型が含まれる。粘土はベントナイト、および/または主にモンモリロナイトからなるフィロケイ酸アルミニウム粘土であってもよい。
【0029】
本発明者らは驚くべきことに、本発明に従って使用されるナフタレンスルホン酸重縮合物が粘土の影響を殆ど受けず、本発明の根底にある問題を解決することを見出した。
【0030】
前記ナフタレンスルホン酸重縮合物は、β-ナフタレンスルホネート-ホルムアルデヒド(BNS)縮合物の構造をベースとする。BNSは、容易に入手可能な材料であり、コンクリート工業において超可塑剤として広く使用されている。本発明に従って使用される縮合物には、ポリオキシアルキレン側鎖が組み込まれる。これらは、粘土含有砂等の問題のある骨材、または超可塑剤を吸着することで分散能力を低下させる可能性がある、高いメチレンブルー値を有する骨材を含有する組成物における使用という点で現行の技術水準に勝る利益をもたらす。有利には、ナフタレンスルホン酸重縮合物は、通常のBNSと比較して同程度の量で使用することができ、砂の品質の影響変動が低減される一方で、建設用組成物の同等の圧縮強度が達成される。
【0031】
本発明に従って使用されるナフタレンスルホン酸重縮合物は、
i)ナフタレンスルホン酸、
ii)3~130個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物、および
iii)ホルムアルデヒド
の縮合反応によって得られる。
【0032】
ナフタレンスルホン酸化合物i)は、ナフタレン-1-スルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸およびそれらの混合物から選択することができる。ナフタレン-2-スルホン酸が好ましい。ナフタレンスルホン酸化合物i)は、色素および他の化学物質の製造における重要な中間体である。これは市販されており、ナフタレンと硫酸等の好適なスルホン化剤とのスルホン化反応によって工業規模で製造される。スルホン化反応の生成物は、未反応のナフタレンを少量含有することがあるが、これは通例、その後の反応を妨げないため、除去されない。
【0033】
アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物ii)は、3~130個、好ましくは5~100個、より好ましくは8~80個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するヒドロキシアリール化合物である。
【0034】
ここで、「アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物」という用語は、芳香族コアと、芳香族コアに直接結合した少なくとも1つのヒドロキシル基とを有する化合物を表す。アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物は、1つ以上の更なる置換基を、かかる置換基の存在がアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物ii)とホルムアルデヒドiii)との縮合反応を妨げない限りにおいて有していてもよい。一実施形態では、ヒドロキシアリール化合物は、非置換または一置換フェノール、および非置換または一置換ナフトールから選択される。好適には、フェノールおよびナフトールは、アルキル基およびカルボン酸基から選択される置換基で一置換されていてもよい。好適なナフトールは、1-ナフトールおよび2-ナフトールから選択される。好適なアルキル置換フェノールはオルトクレゾール、メタクレゾールおよびパラクレゾールから選択される。好適なカルボン酸置換フェノールは、没食子酸およびサリチル酸から選択される。
【0035】
ここで、「オキシアルキレン単位」という用語は、一般式(A-1):
【化1】
[式中、Rは少なくとも2個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレン単位を表す]の反復単位を指す。ポリオキシアルキレン鎖は、同一または異なるオキシアルキレン単位を含み得る。異なるオキシアルキレン単位がランダムまたはブロック状に配置されていてもよい。好ましくは、オキシアルキレン単位はオキシエチレン基(-CH
2-CH
2-O-)および/またはオキシプロピレン基(-CH(CH
3)-CH
2-O-および/または-CH
2-CH(CH
3)-O-)、好ましくはオキシエチレン基である。
【0036】
アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物ii)は、ヒドロキシアリール化合物とエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとの反応によって得ることができる。アルキレンオキシドは、1つ以上の二価オキシアルキレン基をヒドロキシアリール化合物、例えばフェノール分子に導入する。かかるアルキレンオキシド残基は、この場合、ヒドロキシル基の酸素原子とその水素原子との間に介在する。
【0037】
一般に、かかるアルコキシル化化合物は、単一化合物であってもよい。しかしながら、アルコキシル化化合物は通常、化合物中のオキシアルキレン基の数が分布として存在する化合物の混合物である。すなわち、ポリオキシアルキレン鎖1つ当たり3~130個のオキシアルキレン単位の数は、ポリオキシアルキレン鎖1つ当たりのオキシアルキレン単位の平均値を表す。
【0038】
一実施形態では、ポリオキシアルキレン単位は少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも85モル%、より好ましくは少なくとも95モル%のオキシエチレン単位を含む。
【0039】
一実施形態では、アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物ii)は、エトキシ化フェノールである。「エトキシ化フェノール」という用語は、100%のオキシエチレン単位からなるポリオキシアルキレン鎖を得るためにエチレンオキシドと反応させたヒドロキシアリール化合物を表す。
【0040】
好適には、かかるエトキシ化フェノールは、エチレンオキシドを用いたフェノールまたはフェノキシエタノールのエトキシ化反応によって調製される。一般に、かかるフェノキシエタノール前駆体は、エチレンオキシドを用いたフェノールのヒドロキシエチル化反応、例えばウィリアムソンエーテル合成によって製造することができる。前記フェノキシエタノール前駆体は、フェノール性ヒドロキシル基の酸素原子にヒドロキシエチル部分を有し、これに(ポリ)オキシエチレン鎖を続いて結合することができる。
【0041】
ナフタレンスルホン酸i)とアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物ii)とを95:5~60:40、好ましくは95:5~75:25、より好ましくは95:5~85:15のi):ii)の重量比で反応させる。
【0042】
好適には、ナフタレンスルホン酸重縮合物は2000~60000g/mol、好ましくは3000~40000g/mol、より好ましくは3000~12000g/molの重量平均分子量を有する。ナフタレンスルホン酸重縮合物の分子量は、ポリスチレンスルホネート標準による較正後に80体積%のNa2HPO4水溶液(0.07mol/L)および20体積%のアセトニトリルの溶離液を用いたスルホン化スチレン-ジビニルベンゼンを含有する固定相上でのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって好適に決定される。
【0043】
ナフタレンスルホン酸重縮合物の調製のために、上記のナフタレンスルホン酸i)およびアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物ii)をホルムアルデヒドiii)と反応させる。ナフタレンスルホン酸i-1)を、ナフタレンと硫酸とを反応させることによってin situで調製し、アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物i-2)およびホルムアルデヒドi-3)と反応させてもよい。好適には、ホルムアルデヒドiii)を、例えば25%~37%のホルムアルデヒド含有量を有するパラホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド水溶液の形態で添加する。ホルムアルデヒドiii)は、少なくとも化学量論量で存在し、すなわち、ホルムアルデヒドiii)は、ナフタレンスルホン酸i)とアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物ii)とのモル量の総和に等しいモル量で使用される。ホルムアルデヒドiii)は、化学量論量より過剰に使用してもよい。
【0044】
ナフタレンスルホン酸i)、アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物ii)およびホルムアルデヒドiii)の縮合反応は、それ自体が既知のプロセスに従って行うことができる。
【0045】
縮合プロセスを行うために、所定量のナフタレンスルホン酸i)およびアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物ii)を、好ましくはオートクレーブ等の密閉加圧反応器において水中で混合する。上記のように、代替的には、ナフタレンおよび硫酸を所定量のアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物ii)および水とともに混合する。好適には、水の量を調整することで、反応混合物が縮合プロセス全体にわたって撹拌可能なままであるように反応混合物の粘度を制御することができる。ナフタレンスルホン酸i)をin situで調製する場合、ナフタレンを硫酸と反応させ、混合物を冷却し、水で希釈する。次いで、アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物ii)を上記のように添加する。一般に、縮合プロセスは酸性条件下で行われる。ナフタレンスルホン酸の既存の酸性度が縮合プロセスを行うのに十分でない場合、またはナフタレンスルホン酸i-1)を硫酸からin situで調製する場合、追加の酸、例えば硫酸等を、反応混合物のpHが縮合プロセスを首尾よく行うための範囲内にあるような量で反応混合物に添加してもよい。得られた混合物に所定量のホルムアルデヒドiii)を添加するために、ホルムアルデヒド源および任意に水を100~110℃の温度で2.5~3.5時間にわたって水中のi)およびii)の混合物に撹拌しながら滴加する。滴加の終了後に、混合物を110~120℃の温度で3~5時間撹拌しながら加熱する。重縮合反応を、好ましくはオートクレーブ等の密閉加圧反応器において行う。次いで、反応混合物を約80℃に冷却し、過剰量の塩基、例えば水酸化ナトリウムを添加する。得られた反応混合物に固体沈殿物が検出されない場合、更なるワークアップは必要でない。そうでなければ、反応混合物を適切に濾過して固体沈殿物を除去する。
【0046】
縮合プロセスから結果として得られるナフタレンスルホン酸重縮合物は、そのまま建設用組成物に可塑剤として使用することができる。しかしながら、その保存および使用の観点から、上記のナフタレンスルホン酸重縮合物の中和塩が好ましい場合がある。上記のポリマーの中和塩の例としては、ナフタレンスルホン酸重縮合物の一価金属塩、例えばアルカリ金属塩、二価金属塩、例えばアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩および置換アミン塩、例えば1~3個の炭素原子を有するアルキルアミン塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩およびトリエタノールアミン塩が挙げられる。中和剤として、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸カルシウムおよび酸化カルシウムを用いることが可能である。
【0047】
水溶液はそのまま、または他の成分を適切に添加したセメント分散剤組成物として使用することができる。水溶液の固形分は、用途に応じて異なり、セメント分散剤として使用する場合、固形分は好ましくは30~45重量%である。必要に応じて、水溶液を乾燥させて粉末化し、ナフタレンスルホン酸重縮合物の粉末状水溶性塩を得て、これを粉末状セメント分散剤として使用することができる。乾燥および粉末化は噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥等によって行うことができる。
【0048】
本発明の建設用組成物は、使用直前に水を添加するドライミックスとして提供することができる。ナフタレンスルホン酸重縮合物は、乾燥粉末形態でドライミックスに含めることができる。
【0049】
代替的には、ナフタレンスルホン酸重縮合物は、配合水とともにまたは配合水の添加後に建設用組成物に組み込まれる。この場合、本特許出願の文脈においては「混合したての形態」の建設用組成物と称される。言い換えると、混合したての建設用組成物は、例えばコンクリート、モルタルまたはグラウトであってもよい。一実施形態では、混合したての形態の建設用組成物は、セメント系結合材に対して0.3~0.6、好ましくは0.35~0.4の範囲の水の比率を有する。
【0050】
建設用組成物はセメント系結合材を含む。
【0051】
一実施形態では、セメント系結合材は、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメントおよびスルホアルミネートセメントから選択されるセメントを含む。
【0052】
一実施形態では、セメント系結合材は、潜在水硬性結合材またはポゾラン結合材等の補助セメント系材料をさらに含む。
【0053】
概して、上述の潜在水硬性結合材は、工業および/または合成スラグ、特に高炉スラグ、電熱リンスラグ、製鋼スラグおよびそれらの混合物から選択することができる。「ポゾラン結合材」は概して、非晶質シリカ、好ましくは沈降シリカ、ヒュームドシリカおよびマイクロシリカ、粉砕ガラス、メタカオリン、アルミノケイ酸塩、フライアッシュ、好ましくは褐炭フライアッシュおよび無煙炭フライアッシュ、天然ポゾラン、例えば凝灰岩、トラスおよび火山灰、焼成粘土、焼成頁岩、籾殻灰、天然および合成ゼオライト、ならびにそれらの混合物から選択することができる。
【0054】
スラグは工業スラグ、すなわち工業プロセスからの廃棄物、あるいは合成スラグとすることができる。工業スラグは常に一貫した量および品質で入手可能とは限らないため、合成スラグが有利であり得る。
【0055】
高炉スラグ(BFS)は、ガラス炉プロセスの廃棄物である。他の材料は高炉水砕スラグ(GBFS)、および高炉水砕スラグを細かく粉砕した高炉スラグ微粉末(GGBFS)である。高炉スラグ微粉末は、起源および処理方法によって粉砕の細かさおよび粒度分布の点で異なり、ここでは粉砕の細かさが反応性に影響を与える。ブレーン値が粉砕の細かさのパラメーターとして使用され、典型的には200~1000m2 kg-1、好ましくは300~500m2 kg-1のオーダを有する。より細かい摩砕がより高い反応性をもたらす。
【0056】
「高炉スラグ」という表現は、言及した全てのレベルの処理、摩砕および品質(すなわちBFS、GBFSおよびGGBFS)から得られる材料を含むことを意図している。高炉スラグは、一般に30~45重量%のCaO、約4~17重量%のMgO、約30~45重量%のSiO2および約5~15重量%のAl2O3、典型的には約40重量%のCaO、約10重量%のMgO、約35重量%のSiO2および約12重量%のAl2O3を含む。
【0057】
電熱リンスラグは、電熱リン製造の廃棄物である。これは高炉スラグよりも反応性が低く、約45~50重量%のCaO、約0.5~3重量%のMgO、約38~43重量%のSiO2、約2~5重量%のAl2O3および約0.2~3重量%のFe2O3、さらにはフッ化物およびリン酸塩を含む。製鋼スラグは、大きく異なる組成を有する様々な鉄鋼製造プロセスの廃棄物である。
【0058】
非晶質シリカは、好ましくはX線非晶質シリカ、すなわち粉末回折法により結晶性が認められないシリカである。本発明の非晶質シリカ中のSiO2の含有量は、有利には少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%である。沈降シリカは、水ガラスから出発する沈殿プロセスによって工業規模で得られる。幾つかの製造プロセスからの沈降シリカは、シリカゲルとも呼ばれる。
【0059】
ヒュームドシリカは、水素/酸素炎中でのクロロシラン、例えば四塩化ケイ素の反応によって製造される。ヒュームドシリカは、50~600m2 g-1の比表面積を有する粒径5~50nmの非晶質SiO2粉末である。
【0060】
マイクロシリカは、シリコン製造またはフェロシリコン製造の副生成物であり、同様に主に非晶質SiO2粉末からなる。粒子は0.1μmのオーダの直径を有する。比表面積は15~30m2 g-1のオーダである。
【0061】
メタカオリンは、カオリンを脱水することで生成する。100~200℃では、カオリンは物理的に結合した水を放出するが、500~800℃では、脱ヒドロキシル化が起こり、格子構造が崩壊してメタカオリン(Al2Si2O7)が形成される。したがって、純粋なメタカオリンは、約54重量%のSiO2および約46重量%のAl2O3を含む。
【0062】
フライアッシュは、特に発電所における石炭の燃焼時に発生する。クラスCフライアッシュ(褐炭フライアッシュ)は、国際公開第08/012438号によると、約10重量%のCaOを含み、クラスFフライアッシュ(無煙炭フライアッシュ)は、8重量%未満、好ましくは4重量%未満、典型的には約2重量%のCaOを含む。
【0063】
建設用組成物が少量の水硬性結合材(例えば≦10%)を含有する場合、強度発現を促進するためにアルカリ活性化剤をさらに添加することができる。アルカリ活性化剤が、好ましくは結合材系に使用され、かかるアルカリ活性化剤は、例えばアルカリ金属フッ化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルミン酸塩またはアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液、例えば可溶性水ガラスおよびそれらの混合物である。
【0064】
一実施形態では、潜在水硬性結合材は高炉スラグである。
【0065】
一実施形態では、建設用組成物は、少なくとも1つの遅延剤および/または促進剤をさらに含む。
【0066】
建設用組成物を所望の位置に配置するまで、ポンプ圧送可能なスラリー状態に維持することが重要である。この目的で、凝結遅延剤または単に遅延剤と称されることがあるセメント遅延剤を建設用組成物に使用することができる。遅延剤は、凝結プロセスを遅延させ、セメントスラリーを配置するのに十分なポンプ圧送時間をもたらすのに役立つ。セメント組成物の凝結時間を遅延させるためにセメンティング操作に一般に使用される組成物としては、リグノスルホン酸塩、ヒドロキシカルボン酸(例えばグルコン酸、クエン酸および酒石酸)、ホスホン酸誘導体、合成ポリマー(例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(「AMPS」)のコポリマー)、ホウ酸塩およびそれらの組合せが挙げられる。従来使用されている他の遅延剤は、糖類、例えばスクロース、グルコース、フルクトース、高フルクトースコーンシロップまたはサトウキビ糖蜜、ラクトース、ラフィノースおよびデキストリンを含む炭水化物である。
【0067】
好適には、従来使用されている促進剤は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアルミニウム塩、特に炭酸リチウム、炭酸カリウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カルシウムまたは硫酸アルミニウム;アルカノールアミン、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびメチルジエタノールアミンから選択され得る。C-S-H(ケイ酸カルシウム水和物)ナノ粒子の添加が、硬化も促進するシーディング効果を有すると考えられている。
【0068】
本発明に従って使用されるナフタレンスルホン酸重縮合物の適用量は、建設用組成物の所望のレオロジー特性、例えば展延性、ポンパビリティー、流動性を達成するように調整される。さらに低い水対セメント比を達成する等の異なる目的に対応するために、更なる分散剤を含むことが望ましい場合がある。本発明に従って使用されるナフタレンスルホン酸重縮合物と他の分散剤とのかかる混合物が使用される場合、本発明に従って使用されるナフタレンスルホン酸重縮合物は、分散剤および可塑剤の総量に対して1~99重量%、好ましくは5~95重量%、より好ましくは少なくとも約40重量%の量で存在し得る。
【0069】
一実施形態では、建設用組成物は、無機結合材用のナフタレンスルホン酸重縮合物と異なる少なくとも1つの分散剤、特にコンクリートまたはモルタルのようなセメント系混合物用の分散剤をさらに含む。好適には、ナフタレンスルホン酸重縮合物と異なる分散剤は、
- ペンダントセメント固定基およびポリエーテル側鎖が結合した炭素含有骨格を有する櫛型ポリマー、
- 加水分解性基が加水分解時にセメント固定基を放出する、ペンダント加水分解性基およびポリエーテル側鎖が結合した炭素含有骨格を有する非イオン性櫛型ポリマー、
- 多価金属陽イオンが、ポリマー分散剤の陰性および陰イオン生成基の合計に基づき、陽イオン当量として算出される超化学量論量で存在する、Al3+、Fe3+またはFe2+等の多価金属陽イオンと、陰性および/または陰イオン生成基ならびにポリエーテル側鎖を含むポリマー分散剤とのコロイド分散調製物、
- スルホン化メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、
- リグノスルホン酸塩、
- スルホン化ケトン-ホルムアルデヒド縮合物、
- スルホン化ナフタレン-ホルムアルデヒド縮合物、
- ホスホン酸塩含有分散剤、
- リン酸塩含有分散剤、ならびに
- それらの混合物
から選択することができる。
【0070】
ペンダントセメント固定基およびポリエーテル側鎖が結合した炭素含有骨格を有する櫛型ポリマーが特に好ましい。セメント固定基は、カルボン酸基、ホスホン酸もしくはリン酸基、またはそれらの陰イオン等の陰性および/または陰イオン生成基である。陰イオン生成基は、ポリマー分散剤に存在する酸基であり、アルカリ性条件下でそれぞれの陰性基に変換することができる。
【0071】
櫛型ポリマーは、粘土含有砂において限られた効率を有し得るが、本発明によるナフタレンスルホン酸重縮合物を使用することで、この影響はある程度軽減される。
【0072】
好ましくは、櫛型ポリマーは、陰性および/または陰イオン生成基を付与する一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)および/または(Id):
【化2】
[式中、
R
1はH、C
1~C
4アルキル、CH
2COOHまたはCH
2CO-X-R
3A、好ましくはHまたはメチルであり、
XはNH-(C
n1H
2n1)もしくはO-(C
n1H
2n1)であり、n1=1、2、3または4であり、窒素原子もしくは酸素原子がCO基に結合し、
R
2はOM、PO
3M
2もしくはO-PO
3M
2であるか、または
Xが化学結合であり、R
2がOMであり、
R
3AはPO
3M
2またはO-PO
3M
2である];
【化3】
[式中、
R
3はHまたはC
1~C
4アルキル、好ましくはHまたはメチルであり、
nは0、1、2、3または4であり、
R
4はPO
3M
2またはO-PO
3M
2である];
【化4】
[式中、
R
5はHまたはC
1~C
4アルキル、好ましくはHであり、
ZはOまたはNR
7であり、
R
7はH、(C
n1H
2n1)-OH、(C
n1H
2n1)-PO
3M
2、(C
n1H
2n1)-OPO
3M
2、(C
6H
4)-PO
3M
2または(C
6H
4)-OPO
3M
2であり、
n1は1、2、3または4である];
【化5】
[式中、
R
6はHまたはC
1~C
4アルキル、好ましくはHであり、
QはNR
7またはOであり、
R
7はH、(C
n1H
2n1)-OH、(C
n1H
2n1)-PO
3M
2、(C
n1H
2n1)-OPO
3M
2、(C
6H
4)-PO
3M
2または(C
6H
4)-OPO
3M
2であり、
n1は1、2、3または4である]
の少なくとも1つから選択される構造単位を含み、ここで、各Mは独立してHまたは陽イオン相当物である。
【0073】
好ましくは、櫛型ポリマーは、ポリエーテル側鎖を付与する一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)および/または(IId):
【化6】
[式中、
R
10、R
11およびR
12は、互いに独立してHまたはC
1~C
4アルキル、好ましくはHまたはメチルであり、
Z
2はOまたはSであり、
EはC
2~C
6アルキレン、シクロヘキシレン、CH
2-C
6H
10、1,2-フェニレン、1,3-フェニレンもしくは1,4-フェニレンであり、
GはO、NHもしくはCO-NHであるか、または
EおよびGが一緒に化学結合であり、
AはC
2~C
5アルキレンまたはCH
2CH(C
6H
5)、好ましくはC
2~C
3アルキレンであり、
n2は0、1、2、3、4または5であり、
aは2~350、好ましくは10~150、より好ましくは20~100の整数であり、
R
13はH、非分岐もしくは分岐C
1~C
4アルキル基、CO-NH
2またはCOCH
3である];
【化7】
[式中、
R
16、R
17およびR
18は、互いに独立してHまたはC
1~C
4アルキル、好ましくはHであり、
E
2はC
2~C
6アルキレン、シクロヘキシレン、CH
2-C
6H
10、1,2-フェニレン、1,3-フェニレンもしくは1,4-フェニレンであるか、または化学結合であり、
AはC
2~C
5アルキレンまたはCH
2CH(C
6H
5)、好ましくはC
2~C
3アルキレンであり、
n2は0、1、2、3、4または5であり、
LはC
2~C
5アルキレンまたはCH
2CH(C
6H
5)、好ましくはC
2~C
3アルキレンであり、
aは2~350、好ましくは10~150、より好ましくは20~100の整数であり、
dは1~350、好ましくは10~150、より好ましくは20~100の整数であり、
R
19はHまたはC
1~C
4アルキルであり、
R
20はHまたはC
1~C
4アルキルである];
【化8】
[式中、
R
21、R
22およびR
23は、独立してHまたはC
1~C
4アルキル、好ましくはHであり、
WはO、NR
25であるか、またはNであり、
Vは、W=OまたはNR
25の場合は1、W=Nの場合は2であり、
AはC
2~C
5アルキレンまたはCH
2CH(C
6H
5)、好ましくはC
2~C
3アルキレンであり、
aは2~350、好ましくは10~150、より好ましくは20~100の整数であり、
R
24はHまたはC
1~C
4アルキルであり、
R
25はHまたはC
1~C
4アルキルである];
【化9】
[式中、
R
6はHまたはC
1~C
4アルキル、好ましくはHであり、
QはNR
10、NまたはOであり、
Vは、Q=OまたはNR
10の場合は1、Q=Nの場合は2であり、
R
10はHまたはC
1~C
4アルキルであり、
R
24はHまたはC
1~C
4アルキルであり、
AはC
2~C
5アルキレンまたはCH
2CH(C
6H
5)、好ましくはC
2~C
3アルキレンであり、
aは2~350、好ましくは10~150、より好ましくは20~100の整数である]
の少なくとも1つから選択される構造単位を含み、ここで、各Mは独立してHまたは陽イオン相当物である。
【0074】
構造単位(I)と構造単位(II)とのモル比は、1:3~約10:1、好ましくは1:1~10:1、より好ましくは3:1~6:1で変化する。構造単位(I)および(II)を含むポリマー分散剤は、従来の方法、例えばフリーラジカル重合または制御ラジカル重合によって調製することができる。分散剤の調製は、例えば欧州特許出願公開第0894811号明細書、欧州特許出願公開第1851256号明細書、欧州特許出願公開第2463314号明細書および欧州特許出願公開第0753488号明細書に記載されている。
【0075】
多くの有用な分散剤は、カルボキシル基、その塩、または加水分解時にカルボキシル基を放出する加水分解性基を含む。好ましくは、これらの分散剤に含まれるカルボキシル基(または分散剤に含まれる加水分解性基の加水分解時に放出され得るカルボキシル基)のミリ当量数は、全てのカルボキシル基が中和されていない形態であると仮定して、3.0meq/g未満である。
【0076】
より好ましくは、分散剤はポリカルボン酸エーテル(PCE)の群から選択される。PCEにおいて、陰性基はカルボン酸基および/またはカルボキシレート基である。PCEは、好ましくはポリエーテルマクロモノマーと、陰性および/または陰イオン生成基を含むモノマーとのラジカル共重合によって得られる。好ましくは、コポリマーを構成する全構造単位の少なくとも45モル%、好ましくは少なくとも80モル%が、ポリエーテルマクロモノマー、または陰性および/もしくは陰イオン生成基を含むモノマーの構造単位である。
【0077】
ペンダントセメント固定基およびポリエーテル側鎖が結合した炭素含有骨格を有する好適な櫛型ポリマーの更なるクラスは、構造単位(III)および(IV):
【化10】
[式中、
Tはフェニル、ナフチル、または5~10個の環原子を有し、そのうち1もしくは2個の原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子であるヘテロアリールであり、
n3は1または2であり、
BはN、NHまたはOであるが、ただし、BがNである場合にn3は2であり、BがNHまたはOである場合にn3は1であり、
AはC
2~C
5アルキレンまたはCH
2CH(C
6H
5)、好ましくはC
2~C
3アルキレンであり、
a2は1~300の整数であり、
R
26はH、C
1~C
10アルキル、C
5~C
8シクロアルキル、アリール、または5~10個の環原子を有し、そのうち1もしくは2個の原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子であるヘテロアリールである]
を含み、ここで、構造単位(IV)は、構造単位(IVa)および(IVb):
【化11】
[式中、
Dはフェニル、ナフチル、または5~10個の環原子を有し、そのうち1もしくは2個の原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子であるヘテロアリールであり、
E
3はN、NHまたはOであるが、ただし、E
3がNである場合にmは2であり、E
3がNHまたはOである場合にmは1であり、
AはC
2~C
5アルキレンまたはCH
2CH(C
6H
5)、好ましくはC
2~C
3アルキレンであり、
bは0~300の整数であり、
Mは独立してHまたは陽イオン相当物である];
【化12】
[式中、
V
2はフェニルまたはナフチルであり、R
8、OH、OR
8、(CO)R
8、COOM、COOR
8、SO
3R
8およびNO
2から選択される1または2個のラジカルによって任意に置換され、
R
7AはCOOM、OCH
2COOM、SO
3MまたはOPO
3M
2であり、
MはHまたは陽イオン相当物であり、
R
8はC
1~C
4アルキル、フェニル、ナフチル、フェニル-C
1~C
4アルキルまたはC
1~C
4アルキルフェニルである]
から選択される。
【0078】
構造単位(III)および(IV)を含むポリマーは、芳香族またはヘテロ芳香族コアに結合したポリオキシアルキレン基を有する芳香族またはヘテロ芳香族化合物、カルボン酸、スルホン酸またはリン酸部分を有する芳香族化合物、およびホルムアルデヒド等のアルデヒド化合物の重縮合によって得られる。
【0079】
一実施形態では、分散剤は、加水分解性基が加水分解時にセメント固定基を放出する、ペンダント加水分解性基およびポリエーテル側鎖が結合した炭素含有骨格を有する非イオン性櫛型ポリマーである。好都合には、ポリエーテル側鎖を含む構造単位は、上で論考した一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)および/または(IId)のうちの1つである。ペンダント加水分解性基を有する構造単位は、好ましくはアクリル酸エステルモノマー、より好ましくはヒドロキシアルキルアクリルモノエステルおよび/またはヒドロキシアルキルジエステル、最も好ましくはヒドロキシプロピルアクリレートおよび/またはヒドロキシエチルアクリレートから誘導される。エステル官能基は、好ましくはセメント系結合材と水とを混合することによってもたらされるアルカリ性pHで水に曝露されて、(脱プロトン化)酸基へと加水分解し、その後、得られる酸官能基がセメント成分と複合体を形成する。
【0080】
一実施形態では、分散剤は、Al3+、Fe3+またはFe2+等の多価金属陽イオンと、陰性および/または陰イオン生成基ならびにポリエーテル側鎖を含むポリマー分散剤とのコロイド分散調製物から選択される。多価金属陽イオンは、ポリマー分散剤の陰性および陰イオン生成基の合計に基づき、陽イオン当量として算出される超化学量論量で存在する。かかる分散剤は、参照により本明細書に援用される国際公開第2014/013077号にさらに詳細に記載されている。
【0081】
好適なスルホン化メラミン-ホルムアルデヒド縮合物は、水硬性結合材用の可塑剤としてよく使用される種類のものである(MFS樹脂とも称される)。スルホン化メラミン-ホルムアルデヒド縮合物およびそれらの調製は、例えばカナダ国特許出願公開第2172004号明細書、独国特許出願公開第4411797号明細書、米国特許第4,430,469号明細書、米国特許第6,555,683号明細書およびスイス国特許発明第686186号明細書、さらにはUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Ed., vol. A2, page 131およびConcrete Admixtures Handbook - Properties, Science and Technology, 2. Ed., pages 411, 412に記載されている。好ましいスルホン化メラミン-ホルムアルデヒド縮合物は、(大幅に簡略化および理想化された)式
【化13】
[式中、n4は概して10~300を表す]の単位を包含する。分子量は、好ましくは2500~80000g/molの範囲内にある。さらに、スルホン化メラミン単位に、縮合によって他のモノマーを組み込むことが可能である。尿素が特に好適である。加えて、没食子酸、アミノベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、フェノールスルホン酸、アニリン、アンモニオ安息香酸(ammoniobenzoic acid)、ジアルコキシベンゼンスルホン酸、ジアルコキシ安息香酸、ピリジン、ピリジンモノスルホン酸、ピリジンジスルホン酸、ピリジンカルボン酸およびピリジンジカルボン酸等の更なる芳香族単位を縮合によって組み込んでもよい。メラミンスルホネート-ホルムアルデヒド縮合物の一例は、Master Builders Solutions Deutschland GmbHによって販売されるMelment(登録商標)製品である。
【0082】
好適なリグノスルホン酸塩は、製紙業において副生成物として得られる生成物である。これらは、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Ed., vol. A8, pages 586, 587に記載されている。リグノスルホン酸塩には、高度に簡略化および理想化された式
【化14】
の単位が含まれる。リグノスルホン酸塩は、2000~100000g/molの分子量を有する。一般に、リグノスルホン酸塩は、そのナトリウム、カルシウムおよび/またはマグネシウム塩の形態で存在する。好適なリグノスルホン酸塩の例は、ノルウェーのBorregaard LignoTechによって販売されるBorresperse製品である。
【0083】
好適なスルホン化ケトン-ホルムアルデヒド縮合物は、ケトン成分としてモノケトンまたはジケトン、好ましくはアセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノンまたはシクロヘキサノンを組み込んだ生成物である。この種の縮合物は既知であり、例えば国際公開第2009/103579号に記載されている。スルホン化アセトン-ホルムアルデヒド縮合物が好ましい。これらは一般に、式(J. Plank et al., J. Appl. Poly. Sci. 2009, 2018-2024による):
【化15】
[式中、m2およびn5は概して、各々10~250であり、M
2は、Na
+等のアルカリ金属イオンであり、比率m2:n5は概して、約3:1~約1:3、より詳細には約1.2:1~1:1.2の範囲である]の単位を含む。さらに、没食子酸、アミノベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、フェノールスルホン酸、アニリン、アンモニオ安息香酸、ジアルコキシベンゼンスルホン酸、ジアルコキシ安息香酸、ピリジン、ピリジンモノスルホン酸、ピリジンジスルホン酸、ピリジンカルボン酸およびピリジンジカルボン酸等の他の芳香族単位を縮合によって組み込むことも可能である。好適なスルホン化アセトン-ホルムアルデヒド縮合物の例は、Master Builders Solutions Deutschland GmbHによって販売されるMelcret K1L製品である。
【0084】
好適なスルホン化ナフタレン-ホルムアルデヒド縮合物は、ナフタレンのスルホン化およびその後のホルムアルデヒドとの重縮合によって得られる生成物である。これらは、Concrete Admixtures Handbook - Properties, Science and Technology, 2. Ed., pages 411-413を含む参考文献およびUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Ed., vol. A8, pages 587, 588に記載されている。スルホン化ナフタレン-ホルムアルデヒド縮合物には、式
【化16】
の単位が含まれる。
【0085】
典型的には、1000~50000g/molの分子量(MW)が得られる。さらに、没食子酸、アミノベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、フェノールスルホン酸、アニリン、アンモニオ安息香酸、ジアルコキシベンゼンスルホン酸、ジアルコキシ安息香酸、ピリジン、ピリジンモノスルホン酸、ピリジンジスルホン酸、ピリジンカルボン酸およびピリジンジカルボン酸等の他の芳香族単位を縮合によって組み込むことも可能である。好適なスルホン化β-ナフタレン-ホルムアルデヒド縮合物の例は、Master Builders Solutions Deutschland GmbHによって販売されるMelcret 500 L製品である。
【0086】
一般に、ホスホン酸塩含有分散剤には、ホスホン酸基およびポリエーテル側基が組み込まれる。
【0087】
好適なホスホン酸塩含有分散剤は、以下の式
【化17】
[式中、
RはHまたは炭化水素残基、好ましくはC
1~C
15アルキルラジカルであり、
A
2は独立してC
2~C
18アルキレン、好ましくはエチレンおよび/またはプロピレン、最も好ましくはエチレンであり、
n6は5~500、好ましくは10~200、最も好ましくは10~100の整数であり、
M
3はH、アルカリ金属、1/2アルカリ土類金属および/またはアミンである]
によるものである。
【0088】
一実施形態では、建設用組成物は、建設用組成物の総量に対して、
- 7~15体積%、好ましくは12~14体積%の量のセメント系結合材、
- 25~30体積%、好ましくは28~30体積%の量の砂、および
- 40~50体積%、好ましくは40~45体積%の量の粗骨材
を含む。
【0089】
建設用組成物は、セメント系結合材の重量に対して5~80重量%、例えば15~70重量%の量の補助セメント系材料をさらに含んでいてもよい。
【0090】
混合したての建設用組成物は、建設用組成物の総量に対して8~15体積%、好ましくは10~12体積%の量の水を含む。
【0091】
混合したての建設用組成物を調製する際に、建設用組成物に空気を混入させてもよい。好ましくは、混入させる空気の量は、所望の特性に応じて制御され、すなわち、凍結融解抵抗性が必要とされる場合にはより多くの空気を、最大圧縮強度が必要とされる場合にはより少ない空気を混入させる。ナフタレンスルホン酸重縮合物は、有用な適用量では、許容できないほど高い空気混入量をもたらすことはない。建設用組成物は、典型的には、建設用組成物の総量に対して1~6体積%の量の空気を含む。より具体的には、空気混入建設用組成物は、一般に5~6体積%の空気を含み、非空気混入建設用組成物は、一般に1~2体積%の空気を含む。
【0092】
本発明は、建設用組成物であって、
a)95:5~60:40、好ましくは95:5~75:25、より好ましくは95:5~85:15のi):ii)の重量比での
a-i)ナフタレンスルホン酸、
a-ii)3~130個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物、および
a-iii)ホルムアルデヒド
の縮合反応によって得られるナフタレンスルホン酸重縮合物と、
b)少なくとも1つのセメント系結合材と、
c)少なくとも10g/kgのDIN EN 933-9によるメチレンブルー値を有する砂と、
d)水と
を含む、建設用組成物にさらに関する。
【実施例】
【0093】
ここで、以下の実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0094】
方法
ここで、重量平均分子量値は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。固定相として、40℃でコンディショニングした一連の3本のカラムPSS MCX、5μm、1000Å、ID 8.0mm×300mm(PSSから入手可能)を使用した。移動相として、80体積%のNa2HPO4水溶液(0.07mol/L)および20体積%のアセトニトリルの溶離液を使用した。注入量は、1.0mL/分の流量で100μLとした。RI検出器用のポリスチレンスルホネート標準(PSS Polymer Standards Serviceから入手可能な標準)を用いて分子量較正を行った。
【0095】
材料
実施例1~実施例12によるナフタレンスルホン酸重縮合物i)を調製した。表1および2を参照されたい。以下の手順には、実施例5のナフタレンスルホン酸重縮合物i)の製造を説明する。実施例1~実施例4および実施例6~実施例12は同様に行った。
【0096】
小規模実験室手順では、194.2gのβ-ナフタレンスルホン酸(ABCRから入手可能、水分約10重量%)、18.0gの濃H2SO4および16.2gの水を開放型反応器に投入し、110℃に加熱して混合物を溶融させ、撹拌した。所望の内部温度で、33.8gのPluriol(登録商標) A 750 PH(BASF SEから入手可能)を混合物に添加した。得られた混合物に27.1gのホルムアルデヒドを添加するために、ホルムアルデヒドの37%溶液を混合物に110℃で1時間かけて滴加した。滴加の終了後に混合物を7時間加熱還流した。6時間後に20.0gの水を添加し、7時間後にさらに20.0gの水を添加した。反応混合物を最後に80℃に冷却し、251.0gのNaOH水溶液(20%)を添加することで中和した。
【0097】
【0098】
【0099】
表3の実施例13~実施例18による建設用組成物は、以下の仕様で調製した:
- 13体積%の通常のポルトランドセメント
- 表3に示す可塑剤
- 表3に示す砂
- 40体積%の粗骨材
- 17体積%の水(0.47の水対セメント系結合材の比率に等しい)
- 1体積%の空気。
【0100】
2つの異なるグレードの砂を検査した。第1のグレードの砂は、8g/kgのメチレンブルー値を有するアラブ首長国連邦起源の砂漠砂であった。この砂に3.0重量%のベントナイトを添加し、30g/kgのメチレンブルー値を有する比較用の砂を得た。
【0101】
比較を可能にするために、混合後の全てのミックスのスランプが約12cmとなるように可塑剤の適用量を調整した。スランプの決定に用いた方法は、DIN EN 12350-2に類似しているが、ミニスランプコーン(高さ:15cm、下部幅:10cm、上部幅:5cm)を従来のエイブラムスコーンの代わりに使用する変更を加えた。2Lの水性建設用組成物をミニスランプコーンに充填した。コーンは混合の直後に完全に充填された。その後、コーンを平坦な面に置いて持ち上げ、ミックスのスランプを測定した。
【0102】
調整したモルタルミックスをそれぞれモルタル鋼製角柱(16/4/4cm)に充填した。23±2℃の温度および65%の相対湿度で3時間後に、硬化したモルタル角柱が得られた。硬化したモルタル角柱を離型し、DIN EN 196-1に従って圧縮強度を測定した。
【0103】
建設用組成物を、すなわち混合したての形態で調製するために、セメント、砂および粗骨材をホバートミキサーの混合パンにおいて混合した。ホバートミキサーを起動し、90%の配合水を添加し、30秒間混合を続けた。その後、可塑剤および残りの10%の配合水を添加し、4分間混合を続けた。次いで、ミキサーを停止し、混合したての建設用組成物を得た。
【0104】
建設用組成物の流動性を評価するために、建設用組成物のスランプ値を混合の5分および30分後に上記の方法に従って決定した。
【0105】
表1の5番のナフタレンスルホン酸重縮合物i)を更なる検討に選択した。これを以下で「PEG-BNS」と称する。
【0106】
【0107】
表3の結果から、ナフタレンスルホン酸重縮合物が、BNSまたはPCE等の標準的な可塑剤と比較して砂の品質のばらつきの影響を受けにくいことが示される。実施例14と実施例13、実施例16と実施例15をそれぞれ比較することで、高いメチレンブルー値、すなわち高い粘土含有量の砂を使用する場合に、従来の可塑剤BNSおよびPCEのスランプ保持性が悪化することが分かる。実施例13から、高いメチレンブルー値の砂を含む組成のPCEで初期スランプが低く、すなわち、PCEの初期分散性が悪化していることも示される。一方、実施例18と実施例17の比較から、ナフタレンスルホン酸重縮合物が、粘土含有量にかかわらず高いスランプ保持性を可能とすることが示される。
【国際調査報告】