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特表2024-525394ナフタレンスルホン酸重縮合物とリン酸化重縮合物およびポリカルボン酸エーテルの少なくとも一方とを含むセメント分散剤、ならびに建設用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ナフタレンスルホン酸重縮合物とリン酸化重縮合物およびポリカルボン酸エーテルの少なくとも一方とを含むセメント分散剤、ならびに建設用組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240705BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20240705BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20240705BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20240705BHJP
   C08G 16/02 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B18/14 A
C04B24/22 Z
C04B24/26 E
C08G16/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579066
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2022066819
(87)【国際公開番号】W WO2022268772
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】21180836.5
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503343336
【氏名又は名称】コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Albert-Frank-Strasse 32, D-83308 Trostberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】グルニハル アイカン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル シュミット
(72)【発明者】
【氏名】シュリダラ ゴーダ
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ バンディエラ
【テーマコード(参考)】
4G112
4J033
【Fターム(参考)】
4G112MD02
4G112MD03
4G112MD04
4G112MD05
4G112PA29
4G112PB25
4G112PB31
4J033GA05
4J033GA11
4J033GA12
4J033HA28
4J033HB00
(57)【要約】
セメント分散剤が成分i)と成分ii)およびiii)の少なくとも一方とを含む。成分i)は、95:5~60:40のi-1):i-2)の重量比でのi-1)ナフタレンスルホン酸、i-2)3~130個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物、およびi-3)ホルムアルデヒドの縮合反応によって得られるナフタレンスルホン酸重縮合物である。成分ii)は、2:98~40:60のii-1):ii-2)の重量比でのii-1)リン酸部分を有する芳香族化合物、ii-2)3~130個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物、およびii-3)ホルムアルデヒドの縮合反応によって得られるリン酸化重縮合物である。成分iii)は、アニオン性および/または陰イオン生成基を含む炭素鎖骨格と、平均3~130個のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレン側鎖とを有するポリカルボン酸エーテルである。セメント分散剤は、適合性の問題および分散剤の粘度上昇を回避する一方で、圧縮強度を損なうことなく、良好な適用効率および効果とコストとの良好なバランスを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分i)と、以下の成分ii)およびiii)の少なくとも一方と、を含む、セメント分散剤:
i)95:5~60:40、好ましくは85:15~60:40、より好ましくは75:25~60:40のi-1):i-2)の重量比での
i-1)ナフタレンスルホン酸、
i-2)3~130個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物、および
i-3)ホルムアルデヒド
の縮合反応によって得られるナフタレンスルホン酸重縮合物、
ii)2:98~40:60、好ましくは5:95~30:70、より好ましくは10:90~20:80のii-1):ii-2)の重量比での
ii-1)リン酸部分を有する芳香族化合物、
ii-2)3~130個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物、および
ii-3)ホルムアルデヒド
の縮合反応によって得られるリン酸化重縮合物、
iii)アニオン性および/または陰イオン生成基を含む炭素鎖骨格と、平均3~130個のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレン側鎖とを有するポリカルボン酸エーテル。
【請求項2】
ポリオキシアルキレン単位が少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも85モル%、より好ましくは少なくとも95モル%のオキシエチレン単位を含む、請求項1記載のセメント分散剤。
【請求項3】
前記ヒドロキシアリール化合物がフェノールおよびナフトールから選択される、請求項1または2記載のセメント分散剤。
【請求項4】
前記アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物i-2)がエトキシ化フェノールまたはエトキシ化ナフトールである、請求項1から3までのいずれか1項記載のセメント分散剤。
【請求項5】
前記成分ii)および/またはiii)が0.5~2.7meq/g、好ましくは0.7~2.5meq/gの電荷密度を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のセメント分散剤。
【請求項6】
成分i)と成分ii)およびiii)の総量との重量比が1:99~99:1、好ましくは30:70~70:30の範囲である、請求項1から5までのいずれか1項記載のセメント分散剤。
【請求項7】
10~50重量%、好ましくは20~40重量%の固形分を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載のセメント分散剤。
【請求項8】
建設用組成物であって、
a)少なくとも1つのセメント系結合材と、
b)請求項1から7までのいずれか1項記載のセメント分散剤と
を含む、建設用組成物。
【請求項9】
前記セメント系結合材が、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメントおよびスルホアルミネートセメントから選択されるセメントを含む、請求項8記載の建設用組成物。
【請求項10】
前記セメント系結合材が潜在水硬性結合材等の補助セメント系材料をさらに含む、請求項9記載の建設用組成物。
【請求項11】
前記潜在水硬性結合材が高炉スラグである、請求項10記載の建設用組成物。
【請求項12】
前記建設用組成物の総量に対して、
- 7~15体積%の量の前記セメント系結合材、
- 25~35体積%の量の砂、および
- 40~50体積%の量の粗骨材
を含む、請求項8から11までのいずれか1項記載の建設用組成物。
【請求項13】
前記セメント系結合材の重量に対して5~80重量%の量の補助セメント系材料をさらに含む、請求項12記載の建設用組成物。
【請求項14】
セメント系結合材に対する水の比率が0.25~0.5、好ましくは0.40~0.45の範囲である、混合したての形態の、請求項8から13までのいずれか1項記載の建設用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナフタレンスルホン酸重縮合物とリン酸化重縮合物およびポリカルボン酸エーテルの少なくとも一方とを含むセメント分散剤に関する。本発明は、さらに、セメント系結合材と前記セメント分散剤とを含む建設用組成物に関する。
【0002】
分散剤を水硬性結合材の水性スラリーに添加して、その施工性、すなわち展延性、ポンパビリティーまたは流動性を改善することが知られている。かかる混和材料は、固体凝集物の形成を防ぎ、また、既に存在する粒子および水和によって新たに形成される粒子を分散させることにより、施工性を改善することが可能である。粉末状結合材を混合したての加工可能な形態に変換するためには、その後の水和および硬化プロセスに必要とされるよりも実質的に多くの配合水が必要である。過剰な水によってコンクリート本体に形成された空隙は、水が続いて蒸発することで、機械的強度および抵抗の低下につながる。所定の加工粘稠度での過剰な水の割合を低減し、かつ/または所定の水/結合材比での施工性を改善するために、一般に減水剤または可塑剤と称される混和材料が使用される。高レベルの減水を可能にするものは、高範囲減水剤または超可塑剤として知られている。
【0003】
現在、超可塑剤は、化学的に明確に異なる4つのクラス:重縮合物、ポリカルボキシレート、小分子および生体高分子に分類することができる。
【0004】
重縮合物が第1のタイプの超可塑剤である。この群のうち、β-ナフタレンスルホネート-ホルムアルデヒド(BNS)が圧倒的に広く使用されているタイプである[Hattori K., Yamakawa C., Suzue S., Azuma T., Imamura T., Ejiri Y., “Flowing concrete”, Review of General Meeting, Technical Session-Cement Association of Japan, V. 30, 1976, 153-154]。重縮合物型超可塑剤の主な利点としては、一般に入手可能な原料からの比較的単純な調製、様々な組成のセメントでの安定した性能、ならびに粘土およびシルト等のセメント中に時折発生する汚染物質に対する高い耐性が挙げられる。
【0005】
1981年、ポリカルボキシレート櫛型ポリマーが新たなクラスの超可塑剤として導入された。その構造特性は、グラフト側鎖を保持する陰イオン性ポリマー骨格である。この側鎖は、水中に浮遊するセメント粒子間の立体障害効果を引き起こす。この独自の機構により、PCE超可塑剤は、重縮合物と比較して優れた分散力を示す。PCEは、その高度に調整可能な化学構造および分子構造のために、長いスランプ保持性の提供、または極めて低い水対セメント比での有効性等の多くの異なる目的に対応することができる。
【0006】
効果とコストとの良好なバランスを得るために、可塑剤の混合物がよく使用される。
【0007】
例えば、欧州特許第2473457号明細書には、ポリエーテル側鎖を有する分岐櫛型ポリマー、ナフタレンスルホネート-ホルムアルデヒド縮合物(BNS)およびメラミンスルホネート-ホルムアルデヒド縮合物(MSF)から選択される第1の成分と、少なくとも1つのポリエーテル側鎖を有する(ヘテロ)芳香族モノマー、リン酸化(ヘテロ)芳香族モノマーおよび(ヘテロ)芳香族モノマーの重縮合生成物である第2の成分とを含有する分散剤配合物が記載されている。
【0008】
国際公開第2016/081112号には、i)ペンダントまたは側鎖ポリエーテル基を有する非イオン性または実質的に非イオン性のビニルまたはアクリルブラシポリマーと、ii)1つ以上のフェノール基、または1つ以上の芳香族基と少なくとも1つの硫黄酸基との組合せを有する芳香族補因子と、iii)カルボン酸または塩基を有し、ポリエーテル側鎖を有するポリカルボン酸エーテルコポリマー減水剤とを含む、セメント混和材料組成物中の安定した添加剤濃縮物として使用される組成物が記載されている。
【0009】
しかしながら、可塑剤の混合物に関連して、米国特許出願公開第20170107153号明細書では、可塑剤間の適合性の問題が警告されている:「しかしながら、分散剤(例えばポリカルボン酸エーテル(PCE)およびリン酸化重縮合物)を含むポリエーテル側鎖を有する混合物中でのβ-ナフタレンスルホン酸縮合物(BNS)の使用は、2つのタイプの分散剤の間で適合性の問題が起こり得るため、あまり好ましくない」。
【0010】
特開平6-340459号公報には、長時間にわたりスランプロスがないため、ポンプ圧送による輸送トラブルを解消することが可能なセメント分散剤が記載されている。セメント分散剤は、ホルムアルデヒド、炭素原子数2~3のオキシアルキレン基1~100モルを導入して得られる1種以上の芳香族化合物、およびホルムアルデヒドと共縮合可能な1種以上の物質の共縮合手順によって得られる。共縮合生成物は、スルホン酸基またはスルホメチル基を含む。
【0011】
欧州特許出願公開第0780348号明細書にはモノマー(A)およびモノマー(B)を含むモノマーをホルムアルデヒドと共縮合することによって得られるポリマー、またはポリマーを中和することによって得られる塩を含むセメント分散剤が記載されている。モノマー(A)は、オキシエチレン基およびオキシプロピレン基からなる群から選択される少なくとも1つの成員を1分子当たり平均1~300モル有する芳香族化合物であり、モノマー(B)は、カルボキシル基を有する芳香族化合物である。
【0012】
本発明の目的は、適合性の問題および混和材料の粘度上昇を回避する一方で、圧縮強度を損なうことなく、良好な適用効率および効果とコストとの良好なバランスを有する可塑剤混和材料を提供することである。
【0013】
したがって、本発明は、セメント分散剤であって、
以下の成分i)と、成分ii)およびiii)の少なくとも一方と、を含む、セメント分散剤に関する:
i)95:5~60:40、好ましくは85:15~60:40、より好ましくは75:25~60:40のi-1):i-2)の重量比での
i-1)ナフタレンスルホン酸、
i-2)3~130個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物、および
i-3)ホルムアルデヒド
の縮合反応によって得られるナフタレンスルホン酸重縮合物、
ii)2:98~40:60、好ましくは5:95~30:70、より好ましくは10:90~20:80のii-1):ii-2)の重量比での
ii-1)リン酸部分を有する芳香族化合物、
ii-2)3~130個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物、および
ii-3)ホルムアルデヒド
の縮合反応によって得られるリン酸化重縮合物、
iii)アニオン性および/または陰イオン生成基を含む炭素鎖骨格と、平均3~130個のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレン側鎖とを有するポリカルボン酸エーテル。
【0014】
本発明者らは、ナフタレンスルホン酸重縮合物i)が、PCEおよびリン酸化重縮合物との配合における適合性という点で現行の技術水準に勝る利益をもたらすことを見出した。通常のBNSは、粘度の問題および限られた分散効率から広範な比率でPCEと首尾よく配合することができない。これにより、本発明の根底にある問題が解決された。
【0015】
本発明による一実施形態では、セメント分散剤は、ナフタレンスルホン酸重縮合物i)とリン酸化重縮合物ii)とを含む。
【0016】
本発明による別の実施形態では、セメント分散剤は、ナフタレンスルホン酸重縮合物i)とポリカルボン酸エーテルiii)とを含む。
【0017】
有利には、建設用組成物の同等の圧縮強度が達成される一方で、成分i)、ii)およびiii)の混合物の総量は、通常のBNSと比較して同様の範囲とすることができる。
【0018】
本発明に従って使用されるナフタレンスルホン酸重縮合物i)は、
i-1)ナフタレンスルホン酸、
i-2)3~130個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物、および
i-3)ホルムアルデヒド
の縮合反応によって得られる。
【0019】
ナフタレンスルホン酸化合物i-1)は、ナフタレン-1-スルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸およびそれらの混合物から選択することができる。ナフタレン-2-スルホン酸が好ましい。ナフタレンスルホン酸化合物i-1)は、色素および他の化学物質の製造における重要な中間体である。これは市販されており、ナフタレンと硫酸等の好適なスルホン化剤とのスルホン化反応によって工業規模で製造される。スルホン化反応の生成物は、未反応のナフタレンを少量含有することがあるが、これは通例、その後の反応を妨げないため、除去されない。
【0020】
アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物i-2)は、3~130個、好ましくは5~100個、より好ましくは8~80個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するヒドロキシアリール化合物である。
【0021】
ここで、「アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物」という用語は、芳香族コアと、芳香族コアに直接結合した少なくとも1つのヒドロキシル基とを有する化合物を表す。アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物i-2)は、1つ以上の更なる置換基を、かかる置換基の存在がアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物i-2)とホルムアルデヒドi-3)との縮合反応を妨げない限りにおいて有していてもよい。一実施形態では、ヒドロキシアリール化合物i-2)は、非置換または一置換フェノール、および非置換または一置換ナフトールから選択される。好適には、フェノールおよびナフトールは、アルキル基およびカルボン酸基から選択される置換基で一置換されていてもよい。好適なナフトールは、1-ナフトールおよび2-ナフトールから選択される。好適なアルキル置換フェノールはオルトクレゾール、メタクレゾールおよびパラクレゾールから選択される。好適なカルボン酸置換フェノールは、没食子酸およびサリチル酸から選択される。
【0022】
ここで、「オキシアルキレン単位」という用語は、一般式(A-1):
【化1】
[式中、Rは少なくとも2個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレン単位を表す]の反復単位を指す。ポリオキシアルキレン鎖は、同一または異なるオキシアルキレン単位を含み得る。異なるオキシアルキレン単位がランダムまたはブロック状に配置されていてもよい。好ましくは、オキシアルキレン単位はオキシエチレン基(-CH-CH-O-)および/またはオキシプロピレン基(-CH(CH)-CH-O-および/または-CH-CH(CH)-O-)、好ましくはオキシエチレン基である。
【0023】
アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物i-2)は、ヒドロキシアリール化合物とエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとの反応によって得ることができる。アルキレンオキシドは、1つ以上の二価オキシアルキレン基をヒドロキシアリール化合物、例えばフェノール分子に導入する。かかるアルキレンオキシド残基は、この場合、ヒドロキシル基の酸素原子とその水素原子との間に介在する。
【0024】
一般に、かかるアルコキシル化化合物は、単一化合物であってもよい。しかしながら、アルコキシル化化合物は通常、化合物中のオキシアルキレン基の数が分布として存在する化合物の混合物である。すなわち、ポリオキシアルキレン鎖1つ当たり3~130個のオキシアルキレン単位の数は、ポリオキシアルキレン鎖1つ当たりのオキシアルキレン単位の平均値を表す。
【0025】
一実施形態では、ポリオキシアルキレン単位は少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも85モル%、より好ましくは少なくとも95モル%のオキシエチレン単位を含む。
【0026】
一実施形態では、アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物i-2)は、エトキシ化フェノールである。「エトキシ化フェノール」という用語は、100%のオキシエチレン単位からなるポリオキシアルキレン鎖を得るためにエチレンオキシドと反応させたヒドロキシアリール化合物を表す。
【0027】
好適には、かかるエトキシ化フェノールは、エチレンオキシドを用いたフェノールまたはフェノキシエタノールのエトキシ化反応によって調製される。一般に、かかるフェノキシエタノール前駆体は、エチレンオキシドを用いたフェノールのヒドロキシエチル化反応、例えばウィリアムソンエーテル合成によって製造することができる。前記フェノキシエタノール前駆体は、フェノール性ヒドロキシル基の酸素原子にヒドロキシエチル部分を有し、これに(ポリ)オキシエチレン鎖を続いて結合することができる。
【0028】
ナフタレンスルホン酸i-1)とアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物i-2)とを95:5~60:40、好ましくは85:15~60:40、より好ましくは75:25~60:40のi-1):i-2)の重量比で反応させる。
【0029】
ナフタレンスルホン酸重縮合物i)の調製のために、上記のナフタレンスルホン酸i-1)およびアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物i-2)をホルムアルデヒドi-3)と反応させる。ナフタレンスルホン酸i-1)を、ナフタレンと硫酸とを反応させることによってin situで調製し、アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物i-2)およびホルムアルデヒドi-3)と反応させてもよい。好適には、ホルムアルデヒドi-3)を、例えば25%~37%のホルムアルデヒド含有量を有するパラホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド水溶液の形態で添加する。ホルムアルデヒドi-3)は、少なくとも化学量論量で存在し、すなわち、ホルムアルデヒドi-3)は、ナフタレンスルホン酸i-1)とアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物i-2)とのモル量の総和に等しいモル量で使用される。ホルムアルデヒドi-3)は、化学量論量より過剰に使用してもよい。
【0030】
ナフタレンスルホン酸i-1)、アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物i-2)およびホルムアルデヒドi-3)の縮合反応は、それ自体が既知のプロセスに従って行うことができる。
【0031】
縮合プロセスを行うために、所定量のナフタレンスルホン酸i-1)およびアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物i-2)を、好ましくはオートクレーブ等の密閉加圧反応器において水中で混合する。上記のように、代替的には、ナフタレンおよび硫酸を所定量のアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物i-2)および水とともに混合する。好適には、水の量を調整することで、反応混合物が縮合プロセス全体にわたって撹拌可能なままであるように反応混合物の粘度を制御することができる。ナフタレンスルホン酸i-1)をin situで調製する場合、ナフタレンを硫酸と反応させ、混合物を冷却し、水で希釈する。次いで、アルコキシル化ヒドロキシアリール化合物i-2)を上記のように添加する。一般に、縮合プロセスは酸性条件下で行われる。ナフタレンスルホン酸i-1)の既存の酸性度が縮合プロセスを行うのに十分でない場合、またはナフタレンスルホン酸i-1)を硫酸からin situで調製する場合、追加の酸、例えば硫酸等を、反応混合物のpHが縮合プロセスを首尾よく行うための範囲内にあるような量で反応混合物に添加してもよい。得られた混合物を反応容器に供給し、撹拌する。得られた混合物に所定量のホルムアルデヒドi-3)を添加するために、ホルムアルデヒド源および任意に水を100~110℃の温度で2.5~3.5時間にわたって水中のi-1)およびi-2)の混合物に撹拌しながら滴加する。滴加の終了後に、混合物を110~120℃の温度で3~5時間撹拌しながら加熱する。重縮合反応を、好ましくはオートクレーブ等の密閉加圧反応器において行う。次いで、反応混合物を約80℃に冷却し、過剰量の塩基、例えば水酸化ナトリウムを添加する。得られた反応混合物に固体沈殿物が検出されない場合、更なるワークアップは必要でない。そうでなければ、反応混合物を適切に濾過して固体沈殿物を除去する。
【0032】
縮合プロセスから結果として得られるナフタレンスルホン酸重縮合物i)は、そのまま本発明のセメント分散剤に使用することができる。しかしながら、その保存および使用の観点から、上記のナフタレンスルホン酸重縮合物i)の中和塩が好ましい場合がある。上記のポリマーの中和塩の例としては、ナフタレンスルホン酸重縮合物i)の一価金属塩、例えばアルカリ金属塩、二価金属塩、例えばアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩および置換アミン塩、例えば1~3個の炭素原子を有するアルキルアミン塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩およびトリエタノールアミン塩が挙げられる。中和剤として、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、および炭酸カルシウム、および酸化カルシウムを用いることが可能である。
【0033】
得られたナフタレンスルホン酸重縮合物i)の水溶液の固形分は、用途に応じて異なり、本発明のセメント分散剤として使用する場合、固形分は好ましくは30~45重量%である。必要に応じて、水溶液を乾燥させて粉末化し、ナフタレンスルホン酸重縮合物i)の粉末状水溶性塩を得て、これを粉末状でセメント分散剤に使用することができる。乾燥および粉末化は噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥等によって行うことができる。
【0034】
好適には、ナフタレンスルホン酸重縮合物i)は2000~60000g/mol、好ましくは3000~40000g/mol、より好ましくは3000~12000g/molの重量平均分子量を有する。ナフタレンスルホン酸重縮合物の分子量は、ポリスチレンスルホネート標準による較正後に80体積%のNaHPO水溶液(0.07mol/L)および20体積%のアセトニトリルの溶離液を用いたスルホン化スチレン-ジビニルベンゼンを含有する固定相上でのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって好適に決定される。
【0035】
リン酸化重縮合物ii)は、2:98~40:60、好ましくは5:95~30:70、より好ましくは10:90~20:80のii-1):ii-2)の重量比での
ii-1)リン酸部分を有する芳香族化合物、
ii-2)3~130個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物、および
ii-3)ホルムアルデヒド
の縮合反応によって得られる。
【0036】
リン酸部分を有する芳香族化合物ii-1)は、式(II):
【化2】
によって表すことができ、式(II)において、
Dは、5~10個の炭素原子を有する置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族化合物であり、
はN、NHまたはOであり、
=Nである場合にm=2、E=NHまたはOである場合にm=1であり、
31およびR32は、互いに独立して同一であるか、または異なり、分岐または直鎖C~C10アルキルラジカル、C~Cシクロアルキルラジカル、アリールラジカル、ヘテロアリールラジカルまたはHによって表され、
bは同一であるか、または異なり、0~300の整数によって表される。
【0037】
好適には、部分Dはフェニル、2-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル、2-メトキシフェニル、3-メトキシフェニル、4-メトキシフェニル、ナフチル、2-ヒドロキシナフチル、4-ヒドロキシナフチル、2-メトキシナフチル、4-メトキシナフチル、好ましくはフェニルによって表される。
【0038】
好ましくは、部分EはOによって表される。
【0039】
好適には、置換基R31およびR32は、互いに独立して選択することができ、好ましくはH、メチル、エチルまたはフェニル、より好ましくはHまたはメチル、最も好ましくはHによって表される。
【0040】
好適には、bは0~10、好ましくは1~7、より好ましくは1~5の整数である。それぞれの置換基は、長さがbによって定義され、均一なビルディングブロックからなっていてもよいが、異なるビルディングブロックの混合物も好都合であり得る。さらに、置換基はそれぞれ同じ鎖長を有していてもよく、bは数字によって表される。しかしながら、原則として、重縮合物中のモノマーまたは構造単位のラジカルがbについて異なる数値を有するように、異なる鎖長を有する混合物が各場合に存在すると好都合である。
【0041】
モノマー成分ii-2)、すなわち3~130個のオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖を有するアルコキシル化ヒドロキシアリール化合物には、成分i-2)について上述した定義および好ましい意味が同様に当てはまる。
【0042】
モノマー成分ii-3)、すなわちホルムアルデヒドには、成分i-3)について上述部した定義および好ましい意味が同様に当てはまる。
【0043】
すなわち、リン酸化重縮合物ii)の調製のために、成分ii-1)およびii-2)をホルムアルデヒドii-3)と反応させる。好適には、ホルムアルデヒドii-3)を37%ホルムアルデヒド水溶液の形態で添加する。ホルムアルデヒドii-3)は、少なくとも化学量論量で存在し、すなわち、ホルムアルデヒドii-3)は、ii-1)およびii-2)のモル量の総和に等しいモル量で使用される。ホルムアルデヒドii-3)は、化学量論量より過剰に使用してもよい。
【0044】
好適には、リン酸化重縮合物ii)は4000g/mol~150000g/mol、好ましくは20000~75000g/molの重量平均分子量を有する。
【0045】
化合物ii-1)、ii-2)およびii-3)の縮合反応は、それ自体が既知のプロセスに従って行うことができる。
【0046】
リン酸化重縮合物ii)は、35~75重量%の水および25~65重量%の溶解乾燥物質、好ましくは40~60重量%の水および40~60重量%の溶解乾燥物質、より好ましくは45~55重量%の水および45~55重量%の溶解乾燥物質を含有する水溶液として存在し得る。乾燥物質は、無水リン酸化重縮合物から本質的になる。
【0047】
ポリカルボン酸エーテルiii)は、アニオン性および/または陰イオン生成基を含む炭素鎖骨格と、平均3~130個のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレン側鎖とを有する。ポリカルボン酸エーテルiii)は、好適なα,β-エチレン性不飽和モノマーのフリーラジカル重合によって調製することができる。
【0048】
陰イオン生成基は、ポリカルボン酸エーテルiii)に存在する酸基であり、アルカリ性条件下でそれぞれのアニオン性基に変換することができる。
【0049】
好ましくは、アニオン性および陰イオン生成基はカルボキシル、カルボキシレートまたはリン酸基、リン酸水素またはリン酸二水素基である。
【0050】
ポリカルボン酸エーテルiii)は、好ましくは、アニオン性および/または陰イオン生成基を付与し得る式(Ia)、(Ib)、(Ic)および/または(Id)の構造単位を含む。式(Ia)、(Ib)、(Ic)および/または(Id)は、個々のポリマー分子内および異なるポリマー分子間の両方において同一であっても、または異なっていてもよい。
【0051】
【化3】
[式中、
はH、C~Cアルキル、CHCOOHまたはCHCO-X-R3A、好ましくはHまたはメチルであり、
XはNH-(Cn12n1)もしくはO-(Cn12n1)であり、n1=1、2、3または4であり、窒素原子もしくは酸素原子がCO基に結合し、
はOM、POもしくはO-POであるか、または
Xが化学結合であり、RがOMであり、
3AはPOまたはO-POである]
【化4】
[式中、
はHまたはC~Cアルキル、好ましくはHまたはメチルであり、
nは0、1、2、3または4であり、
はPOまたはO-POである]
【化5】
[式中、
はHまたはC~Cアルキル、好ましくはHであり、
ZはOまたはNRであり、
はH、(Cn12n1)-OH、(Cn12n1)-PO、(Cn12n1)-OPO、(C)-POまたは(C)-OPOであり、
n1は1、2、3または4である]
【化6】
[式中、
はHまたはC~Cアルキル、好ましくはHであり、
QはNRまたはOであり、
はH、(Cn12n1)-OH、(Cn12n1)-PO、(Cn12n1)-OPO、(C)-POまたは(C)-OPOであり、
n1は1、2、3または4である]
ここで、各Mは独立してHまたは陽イオン相当物である。
【0052】
好ましくは、ポリカルボン酸エーテルiii)は、RがHもしくはメチルである式(Ia)の構造単位、および/またはRがHもしくはメチルである式(Ib)の少なくとも1つの構造単位、および/またはRがHもしくはメチルであり、ZがOである式(Ic)の少なくとも1つの構造単位、および/またはRがHであり、QがOである式(Id)の少なくとも1つの構造単位を含む。
【0053】
好ましくは、ポリカルボン酸エーテルiii)は、RがHまたはメチルであり、XRがOMであるか、またはXがO(C2n)であり、n1=1、2、3または4、より詳細には2であり、RがO-POである式(Ia)の構造単位を含む。
【0054】
特に好ましくは、式(Ia)の構造単位は、メタクリル酸またはアクリル酸単位であり、式(Ic)の構造単位は、無水マレイン酸単位であり、式(Id)の構造単位は、マレイン酸またはマレイン酸モノエステル単位である。
【0055】
モノマー(I)がリン酸エステルまたはホスホン酸エステルである場合、対応するジエステルおよびトリエステル、さらには二リン酸のモノエステルが含まれていてもよい。概して、これらのエステルは、有機アルコールとリン酸、ポリリン酸、酸化リン、ハロゲン化リンもしくはオキシハロゲン化リン、および/または対応するホスホン酸化合物とのエステル化の際に、モノエステルとともに、例えば5~30モル%のジエステルおよび1~15モル%のトリエステル、さらには2~20モル%の二リン酸のモノエステルのように異なる割合で生じる。
【0056】
ポリカルボン酸エーテルiii)は、ポリエーテル側鎖を付与する式(IIa)、(IIb)、(IIc)および/または(IId)の構造単位を含み得る。式(IIa)、(IIb)、(IIc)および/または(IId)は、個々のポリマー分子内だけでなく、異なるポリマー分子間においても同一であるか、または異なり得る。以下に定義する全ての構造単位Aは、個々のポリエーテル側鎖内および異なるポリエーテル側鎖間の両方において同一であるか、または異なり得る。
【0057】
【化7】
[式中、
10、R11およびR12は、互いに独立してHまたはC~Cアルキル、好ましくはHまたはメチルであり、
はOまたはSであり、
EはC~Cアルキレン、シクロヘキシレン、CH-C10、1,2-フェニレン、1,3-フェニレンもしくは1,4-フェニレンであり、
GはO、NHもしくはCO-NHであるか、または
EおよびGが一緒に化学結合であり、
AはC~CアルキレンまたはCHCH(C)、好ましくはC~Cアルキレンであり、
n2は0、1、2、3、4または5であり、
aは3~130の整数であり、
13はH、非分岐もしくは分岐C~Cアルキル基、CO-NHまたはCOCHである]
好ましくは、式(IIa)の構造単位はアルコキシル化イソプレニル単位、アルコキシル化ヒドロキシブチルビニルエーテル単位、アルコキシル化(メタ)アリルアルコール単位、またはビニル化メチルポリアルキレングリコール単位であり、いずれの場合も、好ましくは算術平均3~130個のオキシアルキレン基を有する。
【0058】
【化8】
[式中、
16、R17およびR18は、互いに独立してHまたはC~Cアルキル、好ましくはHであり、
はC~Cアルキレン、シクロヘキシレン、CH-C10、1,2-フェニレン、1,3-フェニレンもしくは1,4-フェニレンであるか、または化学結合であり、
AはC~CアルキレンまたはCHCH(C)、好ましくはC~Cアルキレンであり、
n2は0、1、2、3、4または5であり、
LはC~CアルキレンまたはCHCH(C)、好ましくはC~Cアルキレンであり、
aは3~130の整数であり、
dは3~130の整数であり、
19はHまたはC~Cアルキルであり、
20はHまたはC~Cアルキルである]
【化9】
[式中、
21、R22およびR23は、独立してHまたはC~Cアルキル、好ましくはHであり、
WはO、NR25であるか、またはNであり、
Vは、W=OまたはNR25の場合は1、W=Nの場合は2であり、
AはC~CアルキレンまたはCHCH(C)、好ましくはC~Cアルキレンであり、
aは3~130の整数であり、
24はHまたはC~Cアルキルであり、
25はHまたはC~Cアルキルである]
【化10】
[式中、
はHまたはC~Cアルキル、好ましくはHであり、
QはNR10、NまたはOであり、
Vは、Q=OまたはNR10の場合は1、Q=Nの場合は2であり、
10はHまたはC~Cアルキルであり、
24はHまたはC~Cアルキルであり、
AはC~CアルキレンまたはCHCH(C)、好ましくはC~Cアルキレンであり、
aは3~130の整数である]
ここで、各Mは独立してHまたは陽イオン相当物である。
【0059】
式(I)および(II)の構造単位に加えて、ポリカルボン酸エーテルiii)は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(C~C)アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、酢酸ビニル、アクロレイン、N-ビニルホルムアミド、ビニルピロリドン、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール、1-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アミノプロピルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルモノビニルエーテル、(メタ)アクロレイン、クロトンアルデヒド、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル等のラジカル重合性モノマーから誘導される更なる構造単位を含んでいてもよい。
【0060】
構造単位(I)および(II)を含むポリカルボン酸エーテルiii)は、例えば欧州特許出願公開第0894811号明細書、欧州特許出願公開第1851256号明細書、欧州特許出願公開第2463314号明細書および欧州特許出願公開第0753488号明細書に記載されているような従来の方法、例えばフリーラジカル重合または制御ラジカル重合によって調製することができる。
【0061】
好適には、かかるポリカルボン酸エーテルiii)は、5000~200000g/mol、好ましくは10000~80000g/mol、より好ましくは20000~70000g/molの重量平均分子量を有する。
【0062】
好ましくは、ポリカルボン酸エーテルiii)は、
(a)R10およびR12がHであり、R11がHもしくはメチルであり、EおよびGが一緒に化学結合であり、AがC~Cアルキレンであり、aが3~130であり、R13がH、もしくは非分岐もしくは分岐C~Cアルキル基である式(IIa)の少なくとも1つの構造単位、および/または
(b)R16およびR18がHであり、R17がHもしくはメチルであり、Eが非分岐もしくは分岐C~Cアルキレン基であり、AがC~Cアルキレンであり、LがC~Cアルキレンであり、aが3~130の整数であり、dが3~130の整数であり、R19がH、もしくは非分岐もしくは分岐C~Cアルキル基であり、R20がH、もしくは非分岐もしくは分岐C~Cアルキル基である式(IIb)の少なくとも1つの構造単位、および/または
(c)R21およびR23がHであり、R22がHもしくはメチルであり、AがC~Cアルキレンであり、aが3~130の整数であり、R24がH、もしくは非分岐もしくは分岐C~Cアルキル基である式(IIc)の少なくとも1つの構造単位、および/または
(d)RがHであり、QがOであり、AがC~Cアルキレンであり、aが3~130の整数である式(IId)の少なくとも1つの構造単位
を含む。
【0063】
ポリカルボン酸エーテルiii)は、式(IIa)および/または(IIc)の少なくとも1つの構造単位を含むことができる。
【0064】
ポリカルボン酸エーテルiii)は式(I)および(II)、例えば式(Ia)および(IIa)、または式(Ia)および(IIc)、または式(Ic)および(IIa)、または式(Ia)、(Ic)および(IIa)の構造単位を含むことができる。
【0065】
好ましくは、ポリカルボン酸エーテルiii)は、以下の表の実施形態1~実施形態3による(I)および(II)の単位を含むことができる:
【表1】
【0066】
より好ましくは、ポリカルボン酸エーテルiii)は、以下の表の実施形態4~実施形態13による(I)および(II)の単位を含むことができる:
【表2】
【0067】
好適には、構造単位(I)と構造単位(II)とのモル比は1:3~約10:1、好ましくは1:1~10:1、より好ましくは3:1~6:1で変化する。
【0068】
ポリカルボン酸エーテルは溶液、エマルションもしくは分散液の形態の水性生成物であっても、または乾燥工程後の、例えば粉末のような固体形態であってもよい。後者の場合、含水量は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満である。好適には、水の一部、例えば少なくとも10重量%を有機溶媒、例えば異性体を含むエタノール、(イソ)プロパノールおよび1-ブタノール等のアルコール、またはアセトン等のケトンに置き換えてもよい。有機溶媒の使用により、ポリカルボン酸エーテルの溶解性、ひいては結晶化挙動に影響を与えることが可能である。
【0069】
一実施形態では、成分ii)および/またはiii)は0.5~2.7meq/g、好ましくは0.7~2.5meq/gのポリマーの電荷密度を有する。ミリ当量数は、全てのカルボキシル基が中和されていない形態であると仮定して、カルボキシル基またはこれらの成分に含まれる陰イオン生成基から放出され得るカルボキシル基を指す。
【0070】
一実施形態では、成分i)と成分ii)およびiii)の総量との重量比は、1:99~99:1、好ましくは30:70~70:30の範囲である。
【0071】
本発明のセメント分散剤の水溶液の固形分は、用途に応じて異なる。一実施形態では、セメント分散剤は10~50重量%、好ましくは20~40重量%の固形分を有する。
【0072】
本発明は、建設用組成物であって、
a)少なくとも1つのセメント系結合材と、
b)上記のようなセメント分散剤と
を含む、建設用組成物にさらに関する。
【0073】
通例、セメント分散剤は、配合水とともにまたは配合水の添加後に建設用組成物に組み込まれる。この場合、本特許出願の文脈においては「混合したての形態」の建設用組成物と称される。言い換えると、混合したての建設用組成物は、例えばコンクリート、モルタルまたはグラウトであってもよい。一実施形態では、混合したての形態の建設用組成物は、0.25~0.5、好ましくは0.40~0.45の範囲の水対セメント系結合材の比率を有する。
【0074】
「モルタル」または「グラウト」という用語は細骨材、すなわち直径が150μm~5mmの骨材(例えば砂)および任意に極細骨材を添加したセメントペーストを表す。グラウトは、空隙または間隙を充填するのに十分に低い粘度の混合物である。モルタルの粘度は、モルタル自身の重量だけでなく、その上に配置された組積造の重量も支持するのに十分に高い。「コンクリート」という用語は、粗骨材を添加したモルタルを表す。本特許出願の文脈において、「粗骨材」という用語は、直径5~20mmの骨材を表す。
【0075】
建設用組成物はセメント系結合材を含む。
【0076】
一実施形態では、セメント系結合材は、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメントおよびスルホアルミネートセメントから選択されるセメントを含む。
【0077】
一実施形態では、セメント系結合材は、潜在水硬性結合材またはポゾラン結合材等の補助セメント系材料をさらに含む。
【0078】
概して、上述の潜在水硬性結合材は、工業および/または合成スラグ、特に高炉スラグ、電熱リンスラグ、製鋼スラグおよびそれらの混合物から選択することができる。「ポゾラン結合材」は概して、非晶質シリカ、好ましくは沈降シリカ、ヒュームドシリカおよびマイクロシリカ、粉砕ガラス、メタカオリン、アルミノケイ酸塩、フライアッシュ、好ましくは褐炭フライアッシュおよび無煙炭フライアッシュ、天然ポゾラン、例えば凝灰岩、トラスおよび火山灰、焼成粘土、焼成頁岩、籾殻灰、天然および合成ゼオライト、ならびにそれらの混合物から選択することができる。
【0079】
スラグは工業スラグ、すなわち工業プロセスからの廃棄物、あるいは合成スラグとすることができる。工業スラグは常に一貫した量および品質で入手可能とは限らないため、合成スラグが有利であり得る。
【0080】
高炉スラグ(BFS)は、ガラス炉プロセスの廃棄物である。他の材料は高炉水砕スラグ(GBFS)、および高炉水砕スラグを細かく粉砕した高炉スラグ微粉末(GGBFS)である。高炉スラグ微粉末は、起源および処理方法によって粉砕の細かさおよび粒度分布の点で異なり、ここでは粉砕の細かさが反応性に影響を与える。ブレーン値が粉砕の細かさのパラメーターとして使用され、典型的には200~1000m kg-1、好ましくは300~500m kg-1のオーダを有する。より細かい摩砕がより高い反応性をもたらす。
【0081】
ここで、「高炉スラグ」という表現は、言及した全てのレベルの処理、摩砕および品質(すなわちBFS、GBFSおよびGGBFS)から得られる材料を含むことを意図している。高炉スラグは、一般に30~45重量%のCaO、約4~17重量%のMgO、約30~45重量%のSiOおよび約5~15重量%のAl、典型的には約40重量%のCaO、約10重量%のMgO、約35重量%のSiOおよび約12重量%のAlを含む。
【0082】
電熱リンスラグは、電熱リン製造の廃棄物である。これは高炉スラグよりも反応性が低く、約45~50重量%のCaO、約0.5~3重量%のMgO、約38~43重量%のSiO、約2~5重量%のAlおよび約0.2~3重量%のFe、さらにはフッ化物およびリン酸塩を含む。製鋼スラグは、大きく異なる組成を有する様々な鉄鋼製造プロセスの廃棄物である。
【0083】
非晶質シリカは、好ましくはX線非晶質シリカ、すなわち粉末回折法により結晶性が認められないシリカである。非晶質シリカ中のSiOの含有量は、有利には少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%である。沈降シリカは、水ガラスから出発する沈殿プロセスによって工業規模で得られる。幾つかの製造プロセスからの沈降シリカは、シリカゲルとも呼ばれる。
【0084】
ヒュームドシリカは、水素/酸素炎中でのクロロシラン、例えば四塩化ケイ素の反応によって製造される。ヒュームドシリカは、50~600m-1の比表面積を有する粒径5~50nmの非晶質SiO粉末である。
【0085】
マイクロシリカは、シリコン製造またはフェロシリコン製造の副生成物であり、同様に主に非晶質SiO粉末からなる。粒子は0.1μmのオーダの直径を有する。比表面積は15~30m-1のオーダである。
【0086】
メタカオリンは、カオリンを脱水することで生成する。100~200℃では、カオリンは物理的に結合した水を放出するが、500~800℃では、脱ヒドロキシル化が起こり、格子構造が崩壊してメタカオリン(AlSi)が形成される。したがって、純粋なメタカオリンは、約54重量%のSiOおよび約46重量%のAlを含む。
【0087】
フライアッシュは、特に発電所における石炭の燃焼時に発生する。クラスCフライアッシュ(褐炭フライアッシュ)は、国際公開第08/012438号によると、約10重量%のCaOを含み、クラスFフライアッシュ(無煙炭フライアッシュ)は、8重量%未満、好ましくは4重量%未満、典型的には約2重量%のCaOを含む。
【0088】
建設用組成物が少量の水硬性結合材(例えば≦10%)を含有する場合、強度発現を促進するためにアルカリ活性化剤をさらに添加することができる。アルカリ活性化剤が、好ましくは結合材系に使用され、かかるアルカリ活性化剤は、例えばアルカリ金属フッ化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルミン酸塩またはアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液、例えば可溶性水ガラスおよびそれらの混合物である。
【0089】
一実施形態では、潜在水硬性結合材は高炉スラグである。
【0090】
建設用組成物は、フィラー材料をさらに含んでいてもよい。本特許出願の文脈において、「フィラー材料」は、例えばシリカ、石英、砂、破砕大理石、ガラス球、花崗岩、玄武岩、石灰石、砂岩、カルサイト、大理石、蛇紋石、トラバーチン、ドロマイト、長石、片麻岩、沖積砂、任意の他の耐久性骨材およびそれらの混合物を表す。特に、フィラーは結合材として機能しない。
【0091】
建設用組成物は、少なくとも1つの遅延剤および/または促進剤をさらに含んでいてもよい。
【0092】
建設用組成物を所望の位置に配置するまで、ポンプ圧送可能なスラリー状態に維持することが重要である。この目的で、凝結遅延剤または単に遅延剤と称されることがあるセメント遅延剤を建設用組成物に使用することができる。遅延剤は、凝結プロセスを遅延させ、セメントスラリーを配置するのに十分なポンプ圧送時間をもたらすのに役立つ。セメント組成物の凝結時間を遅延させるためにセメンティング操作に一般に使用される組成物としては、リグノスルホン酸塩、ヒドロキシカルボン酸(例えばグルコン酸、クエン酸および酒石酸)、ホスホン酸誘導体、合成ポリマー(例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(「AMPS」)のコポリマー)、ホウ酸塩およびそれらの組合せが挙げられる。従来使用されている他の遅延剤は、糖類、例えばスクロース、グルコース、フルクトース、高フルクトースコーンシロップまたはサトウキビ糖蜜、ラクトース、ラフィノースおよびデキストリンを含む炭水化物である。
【0093】
好適には、従来使用されている促進剤は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアルミニウム塩、特に炭酸リチウム、炭酸カリウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カルシウムまたは硫酸アルミニウム;アルカノールアミン、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびメチルジエタノールアミンから選択され得る。C-S-H(ケイ酸カルシウム水和物)ナノ粒子の添加が、硬化も促進するシーディング効果を有すると考えられている。
【0094】
建設用組成物は、さらに低い水対セメント比を達成する等の異なる目的に対応するために、無機結合材用のナフタレンスルホン酸重縮合物i)、リン酸化重縮合物ii)およびポリカルボン酸エーテルiii)と異なる分散剤、特にコンクリートまたはモルタルのようなセメント系混合物用の分散剤をさらに含んでいてもよい。他の分散剤とのかかる混合物が使用される場合、本発明のセメント分散剤は、分散剤の総量に対して1~99重量%、好ましくは5~95重量%、より好ましくは少なくとも約30重量%の量で存在し得る。
【0095】
好適には、ナフタレンスルホン酸重縮合物i)、リン酸化重縮合物ii)およびポリカルボン酸エーテルiii)と異なる分散剤は、
- 多価金属陽イオンが、ポリマー分散剤のアニオン性および陰イオン生成基の合計に基づき、陽イオン当量として算出される超化学量論量で存在する、Al3+、Fe3+またはFe2+等の多価金属陽イオンと、アニオン性および/または陰イオン生成基ならびにポリエーテル側鎖を含むポリマー分散剤とのコロイド分散調製物、
- スルホン化メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、
- リグノスルホン酸塩、
- スルホン化ケトン-ホルムアルデヒド縮合物、
- スルホン化ナフタレン-ホルムアルデヒド縮合物、
- ホスホン酸塩含有分散剤、
- それらの混合物
から選択することができる。
【0096】
一実施形態では、任意の分散剤は、Al3+、Fe3+またはFe2+等の多価金属陽イオンと、アニオン性および/または陰イオン生成基ならびにポリエーテル側鎖を含むポリマー分散剤とのコロイド分散調製物から選択される。多価金属陽イオンは、ポリマー分散剤のアニオン性および陰イオン生成基の合計に基づき、陽イオン当量として算出される超化学量論量で存在する。かかる分散剤は、参照により本明細書に援用される国際公開第2014/013077号にさらに詳細に記載されている。
【0097】
好適なスルホン化メラミン-ホルムアルデヒド縮合物は、水硬性結合材用の可塑剤としてよく使用される種類のものである(MFS樹脂とも称される)。スルホン化メラミン-ホルムアルデヒド縮合物およびそれらの調製は、例えばカナダ国特許出願公開第2172004号明細書、独国特許出願公開第4411797号明細書、米国特許第4,430,469号明細書、米国特許第6,555,683号明細書およびスイス国特許発明第686186号明細書、さらにはUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Ed., vol. A2, page 131およびConcrete Admixtures Handbook - Properties, Science and Technology, 2. Ed., pages 411, 412に記載されている。好ましいスルホン化メラミン-ホルムアルデヒド縮合物は、(大幅に簡略化および理想化された)式(VI)
【化11】
[式中、n4は概して10~300を表す]の単位を包含する。分子量は、好ましくは2500~80000g/molの範囲内にある。さらに、スルホン化メラミン単位に、縮合によって他のモノマーを組み込むことが可能である。尿素が特に好適である。加えて、没食子酸、アミノベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、フェノールスルホン酸、アニリン、アンモニオ安息香酸(ammoniobenzoic acid)、ジアルコキシベンゼンスルホン酸、ジアルコキシ安息香酸、ピリジン、ピリジンモノスルホン酸、ピリジンジスルホン酸、ピリジンカルボン酸およびピリジンジカルボン酸等の更なる芳香族単位を縮合によって組み込んでもよい。メラミンスルホネート-ホルムアルデヒド縮合物の一例は、Master Builders Solutions Deutschland GmbHによって販売されるMelment(登録商標)製品である。
【0098】
好適なリグノスルホン酸塩は、製紙業において副生成物として得られる生成物である。これらは、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Ed., vol. A8, pages 586, 587に記載されている。リグノスルホン酸塩には、高度に簡略化および理想化された式(VII)
【化12】
の単位が含まれる。リグノスルホン酸塩は、2000~100000g/molの分子量を有する。一般に、リグノスルホン酸塩は、そのナトリウム、カルシウムおよび/またはマグネシウム塩の形態で存在する。好適なリグノスルホン酸塩の例は、ノルウェーのBorregaard LignoTechによって販売されるBorresperse製品である。
【0099】
好適なスルホン化ケトン-ホルムアルデヒド縮合物は、ケトン成分としてモノケトンまたはジケトン、好ましくはアセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノンまたはシクロヘキサノンを組み込んだ生成物である。この種の縮合物は既知であり、例えば国際公開第2009/103579号に記載されている。スルホン化アセトン-ホルムアルデヒド縮合物が好ましい。これらは一般に、式(VIII)(J. Plank et al., J. Appl. Poly. Sci. 2009, 2018-2024による):
【化13】
[式中、m2およびn5は概して、各々10~250であり、Mは、Na等のアルカリ金属イオンであり、比率m2:n5は概して、約3:1~約1:3、より詳細には約1.2:1~1:1.2の範囲である]の単位を含む。さらに、没食子酸、アミノベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、フェノールスルホン酸、アニリン、アンモニオ安息香酸、ジアルコキシベンゼンスルホン酸、ジアルコキシ安息香酸、ピリジン、ピリジンモノスルホン酸、ピリジンジスルホン酸、ピリジンカルボン酸およびピリジンジカルボン酸等の他の芳香族単位を縮合によって組み込むことも可能である。好適なスルホン化アセトン-ホルムアルデヒド縮合物の例は、Master Builders Solutions Deutschland GmbHによって販売されるMelcret K1L製品である。
【0100】
好適なスルホン化ナフタレン-ホルムアルデヒド縮合物は、ナフタレンのスルホン化およびその後のホルムアルデヒドとの重縮合によって得られる生成物である。これらは、Concrete Admixtures Handbook - Properties, Science and Technology, 2. Ed., pages 411-413を含む参考文献およびUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Ed., vol. A8, pages 587, 588に記載されている。スルホン化ナフタレン-ホルムアルデヒド縮合物には、式(IX)
【化14】
の単位が含まれる。
【0101】
典型的には、1000~50000g/molの分子量(MW)が得られる。さらに、没食子酸、アミノベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、フェノールスルホン酸、アニリン、アンモニオ安息香酸、ジアルコキシベンゼンスルホン酸、ジアルコキシ安息香酸、ピリジン、ピリジンモノスルホン酸、ピリジンジスルホン酸、ピリジンカルボン酸およびピリジンジカルボン酸等の他の芳香族単位を縮合によって組み込むことも可能である。好適なスルホン化β-ナフタレン-ホルムアルデヒド縮合物の例は、Master Builders Solutions Deutschland GmbHによって販売されるMelcret 500 L製品である。
【0102】
一般に、ホスホン酸塩含有分散剤には、ホスホン酸基およびポリエーテル側基が組み込まれる。
【0103】
好適なホスホン酸塩含有分散剤は、以下の式(X)
【化15】
[式中、
RはHまたは炭化水素残基、好ましくはC~C15アルキルラジカルであり、
は独立してC~C18アルキレン、好ましくはエチレンおよび/またはプロピレン、最も好ましくはエチレンであり、
n6は5~500、好ましくは10~200、最も好ましくは10~100の整数であり、
はH、アルカリ金属、1/2アルカリ土類金属および/またはアミンである]
によるものである。
【0104】
一実施形態では、建設用組成物は、建設用組成物の総量に対して、
- 7~15体積%、好ましくは12~14体積%の量のセメント系結合材(セメントクリンカーとして算出)、
- 25~30体積%、好ましくは28~30体積%の量の砂、および
- 40~50体積%、好ましくは40~45体積%の量の粗骨材
を含む。
【0105】
建設用組成物は、1つ以上の補助セメント系材料をさらに含んでいてもよい。好適な補助セメント系材料としては、上述のものが挙げられる。建設用組成物は、セメント系結合材の重量に対して5~80重量%、例えば15~70重量%の量で補助セメント系材料を含むことができる。
【0106】
建設用組成物は、典型的には、建設用組成物の総量に対して8~15体積%、好ましくは10~12体積%の量の水を含む。
【0107】
混合したての建設用組成物を調製する際に、建設用組成物に空気を混入させてもよい。好ましくは、混入させる空気の量は、所望の特性に応じて制御され、すなわち、凍結融解抵抗性が必要とされる場合にはより多くの空気を、最大圧縮強度が必要とされる場合にはより少ない空気を混入させる。ナフタレンスルホン酸重縮合物は、有用な適用量では、許容できないほど高い空気混入量をもたらすことはない。建設用組成物は、典型的には、建設用組成物の総量に対して1~6体積%の量の空気を含む。より具体的には、空気混入建設用組成物は、一般に5~6体積%の空気を含み、非空気混入建設用組成物は、一般に1~2体積%の空気を含む。
【実施例
【0108】
ここで、以下の実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0109】
方法
ここで、重量平均分子量値は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。固定相として、40℃でコンディショニングした一連の3本のカラムPSS MCX、5μm、1000Å、ID 8.0mm×300mm(PSSから入手可能)を使用した。移動相として、80体積%のNaHPO水溶液(0.07mol/L)および20体積%のアセトニトリルの溶離液を使用した。注入量は、1.0mL/分の流量で100μLとした。RI検出器用のポリスチレンスルホネート標準(PSS Polymer Standards Serviceから入手可能な標準)を用いて分子量較正を行った。
【0110】
材料
実施例1~実施例12によるナフタレンスルホン酸重縮合物i)を調製した。表1および2を参照されたい。以下の手順には、実施例5のナフタレンスルホン酸重縮合物i)の製造を説明する。実施例1~実施例4および実施例6~実施例12は同様に行った。
【0111】
小規模実験室手順では、194.2gのβ-ナフタレンスルホン酸(ABCRから入手可能、水分約10重量%)、18.0gの濃HSOおよび16.2gの水を開放型反応器に投入し、110℃に加熱して混合物を溶融させ、撹拌した。所望の内部温度で、33.8gのPluriol(登録商標) A 750 PH(BASF SEから入手可能)を混合物に添加した。得られた混合物に27.1gのホルムアルデヒドを添加するために、ホルムアルデヒドの37%溶液を混合物に110℃で1時間かけて滴加した。滴加の終了後に混合物を7時間加熱還流した。6時間後に20.0gの水を添加し、7時間後にさらに20.0gの水を添加した。反応混合物を最後に80℃に冷却し、251.0gのNaOH水溶液(20%)を添加することで中和した。
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
表3および表4の実施例13~実施例36による建設用組成物は、以下の仕様で調製した(1mのコンクリート湿潤体積当たりの材料):
- 562kg/mの通常のポルトランドセメント
- 表3に示す可塑剤
- 296kg/mのケイ砂(0.1~0.3mm)
- 1154kg/mの砂(0~4mm)
- 291kg/mの砕石(2~5mm)
- 水対セメント系結合材の比率=0.405
【0115】
比較を可能にするために、混合後の全てのミックスのスランプが約12cmとなるように可塑剤の適用量を調整した。スランプの決定に用いた方法は、DIN EN 12350-2に類似しているが、ミニスランプコーン(高さ:15cm、下部幅:10cm、上部幅:5cm)を従来のエイブラムスコーンの代わりに使用する変更を加えた。2Lの水性建設用組成物をミニスランプコーンに充填した。コーンは混合の直後に完全に充填された。その後、コーンを平坦な面に置いて持ち上げ、ミックスのスランプを測定した。
【0116】
調整したモルタルミックスをそれぞれモルタル鋼製角柱(16/4/4cm)に充填した。23±2℃の温度および65%の相対湿度で3時間後に、硬化したモルタル角柱が得られた。硬化したモルタル角柱を離型し、DIN EN 196-1に従って圧縮強度を測定した。
【0117】
建設用組成物に含まれる成分をホバートミキサー内で混合し、建設用組成物を、すなわち混合したての形態で調製した。砕石(2~5mm)を70℃の炉内で50時間乾燥させた。砂(0~4mm)を140℃で68時間乾燥させた。その後、砕石および砂を65%の相対湿度にて20℃で少なくとも2日間保管した。砕石、砂およびセメントを80%の量の水とともに5Lホバートミキサーに加えた。混合物をレベル1(107rpm)で2分間撹拌した。次いで、可塑剤を残りの20%の水とともに添加した。混合物をレベル2(198rpm)でさらに2分間撹拌し、混合したての水性建設用組成物を得た。
【0118】
建設用組成物の流動性を評価するために、建設用組成物のスランプ値を混合の4分、15分、30分、60分および90分後に上記の方法に従って決定した。
【0119】
表1の5番のナフタレンスルホン酸重縮合物i)を更なる検討に選択した。これを以下で「PEG-BNS」と称する。
【0120】
表3の結果から、Na-BNSとリン酸化重縮合物またはPCEとの混合物(比較例19、比較例21、比較例23、比較例25)が粘度の上昇を示すことが示される。PEG-BNSとリン酸化重縮合物またはPCEとの本発明の混合物は、有利な低い粘度を保持する(発明例20、発明例22、発明例24、発明例26)。実施例19と実施例20、実施例21と実施例22、実施例23と実施例24、実施例25と実施例26の比較から、本発明の混合物がより高い適用効率、60分および90分後のスランプ値によって示される十分なオープンタイムを有し、より高い圧縮強度が得られることが分かる。
【0121】
表4の結果から、PEG-BNSとPCEとの本発明の混合物(発明例28~発明例36)が有利に低い粘度を示すのに対し、Na-BNSとPCEとの混合物(比較例27)がより高い粘度を示すことが示される。
【0122】
【表5-1】
【表5-2】
【0123】
【表6】
【国際調査報告】