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特表2024-525396肝障害を有する個人への化合物の投与
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】肝障害を有する個人への化合物の投与
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/80 20060101AFI20240705BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C07D209/80 CSP
A61K31/404
A61P1/04
A61P17/14
A61P17/00
A61P37/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579071
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022033471
(87)【国際公開番号】W WO2023278141
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/218,032
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500478097
【氏名又は名称】アリーナ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】キャロライン エー. リー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA89
4C086ZA92
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZC42
(57)【要約】
肝障害を有する個人を含む個人の様々な集団におけるS1P1調節型の疾患の予防または処置において有用な方法が提供される。一部の方法では、エトラシモドが、処置を必要とする個人に処方または投与され、用量は、軽度、中等度、または重度の肝障害を有する患者ごとに調整されない。
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人におけるS1P1受容体に関連する障害を処置する方法において使用するための化合物であって、前記方法が、前記化合物を前記個人に投与するステップを含み、前記個人が、肝障害なし、軽度の肝障害、中等度の肝障害、および重度の肝障害からなる群から選択される肝障害のレベルを有すると事前に判定されており、前記化合物が、(R)-2-(7-(4-シクロペンチル-3-(トリフルオロメチル)ベンジルオキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール-3-イル)酢酸(化合物1)またはその薬学的に許容できる塩である、化合物。
【請求項2】
個人が、軽度の肝障害、中等度の肝障害、および重度の肝障害からなる群から選択される肝臓の機能充足度のレベルを有するとみなされている、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
個人が、中等度の肝障害および重度の肝障害からなる群から選択される肝臓の機能充足度のレベルを有するとみなされている、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
個人が、重度の肝障害を有するとみなされている、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
個人が、中等度の肝障害を有するとみなされている、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
個人が、軽度の肝障害を有するとみなされている、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
化合物1またはその薬学的に同等な塩が、2mgから3mgの化合物1に等しい量で投与される、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
化合物1またはその薬学的に同等な塩が、2mgの化合物1に等しい量で投与される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
化合物1またはその薬学的に同等な塩が、3mgの化合物1に等しい量で投与される、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
S1P1受容体に関連する障害が、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、好酸球性食道炎、およびクローン病からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
軽度、中等度、または重度の肝障害を有する患者におけるS1P1受容体に関連する障害を処置する方法であって、1mgから5mgの化合物1に等しい化合物1またはその塩の用量を含む経口投薬形態を、軽度、中等度、または重度の肝障害を有する患者に投与するステップを含み、用量が、軽度、中等度、または重度の肝障害を有する患者ごとに調整されない、方法。
【請求項12】
患者が軽度の肝障害を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
患者が中等度の肝障害を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
患者が重度の肝障害を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
用量が、2mgの化合物1に等しい量を含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
用量が、3mgの化合物1に等しい量を含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
S1P1受容体に関連する障害が、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、好酸球性食道炎、およびクローン病からなる群から選択される、請求項11から16のいずれか一項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、2021年7月2日に出願された米国仮出願第63/218,032号の利益を主張する。
【0002】
本明細書において、肝障害を有する個人を含む個人の様々な集団におけるS1P1調節型の疾患の予防または処置において有用な方法が提供される。本明細書において提供される一部の方法では、処置を必要とする個人が重度の肝障害を有していなければ、当該個人にエトラシモドが処方または投与される。
【背景技術】
【0003】
経口用の選択的なスフィンゴシン1リン酸受容体1,4,5モジュレーターであるエトラシモドは、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、好酸球性食道炎、およびクローン病のために開発中である。
【0004】
肝障害は、肝臓の正常な機能が低減している状態である。肝障害は、急速な発病を伴う急性のもの、または慢性のものであり得る。慢性肝障害または肝硬変は、過剰なアルコール消費、肝炎、自己免疫疾患、遺伝、もしくは代謝などの多くの原因から生じ得るか、または特発性であり得る。肝臓の損傷は一般的に不可逆的であり、処置は、進行の防止および症候の処置からなる。重度のケースでは、肝移植が唯一の選択肢である。肝障害は、顕著な症候を示さないことがあるか、または、血液凝固能力の低減(凝固障害)および脳障害(脳症)、腹腔内での体液貯留、感染リスクの増大、性腺機能低下症、肝臓サイズの変化、黄疸、ならびに薬物治療への感受性の増大などの症候を特徴とし得る。
【0005】
肝疾患は、薬物の体内分布および薬物動態を改変し得、肝臓または胆管のクリアランスを低減させ得る。血漿の保護結合もまた影響を受け得、これは、薬物の有効性および安全性に潜在的に影響し得る。
【0006】
出願人は、本明細書において、肝障害を有する対象における正式な薬物動態研究における、肝障害とエトラシモドの薬物動態、忍容性、および安全性との相互作用を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
肝障害を有する個人を含む、エトラシモドでの処置を必要とする個人を安全に処置する必要がある。本開示はこの必要性を満たし、関連する利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
治療有効量の(R)-2-(7-(4-シクロペンチル-3-(トリフルオロメチル)ベンジルオキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール-3-イル)酢酸(化合物1)またはその薬学的に許容できる塩を含む薬学的投薬形態を、それを必要とする個人に投与するステップを含む、肝障害を有する患者におけるS1P1受容体に関連する障害を処置する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において使用される場合、以下の語および表現は、これらの語および表現が使用されている文脈から別段のことが示されていない限り、全体として、以下に示す意味を有するものである。
【0011】
化合物1:本明細書において使用される場合、「化合物1」は、その結晶形態を含む、(R)-2-(7-(4-シクロペンチル-3-(トリフルオロメチル)ベンジルオキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール-3-イル)酢酸を意味する。
【0012】
【化1】
【0013】
参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、PCT特許出願番号PCT/US2009/004265を参照されたい。非限定的な例として、化合物1は、WO2010/011316(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)において記載されているような無水の溶媒和していない結晶形態として存在し得る。別の非限定的な例として、化合物1のL-アルギニン塩が、WO2010/011316およびWO2011/094008(その各々は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)において記載されているような無水の溶媒和していない結晶形態として存在し得る。別の非限定的な例として、化合物1のカルシウム塩が、WO2010/011316(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)において記載されているような結晶形態として存在し得る。化合物1は、文献内で、エトラシモドまたはAPD334と記載される。
【0014】
化合物1またはその薬学的に許容できる塩は、経口投与される、選択的な、合成のスフィンゴシン1リン酸(S1P)受容体1、4、5モジュレーターである。これまでに、化合物1またはその薬学的に許容できる塩は、様々な用量で処置されたおよそ281人の成人対象において、安全であり、良く忍容されることが分かっている。その安全性および忍容性は、最大5mgの単回用量および1日に1回(QD)最大4mgの反復用量での、健康な成人対象を用いた第1相研究において評価されている。UC患者での、第2相の用量決定研究において、2mg QDで12週間の処置では、プラセボと比較して、臨床的に有意義でかつ統計的に有意な内視鏡上のおよび症候上の改善がもたらされた。持続した有利な効果が、その後のオープンラベル延長研究において最大46週間観察された。化合物1の使用方法は、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2018-0263958号、PCT公開第WO2021/102357号、PCT公開第WO2021/067506号、およびPCT特許出願第PCT/US2021/012367号において開示されている。
【0015】
投与:本明細書において使用される場合、「投与」は、個人が化合物を内在化するように化合物、または他の治療、療法、もしくは処置を提供することを意味する。
【0016】
処方:本明細書において使用される場合、「処方」は、薬物、または他の治療、療法、もしくは処置の使用を指示する、許可する、または推奨することを意味する。一部の実施形態では、医療専門家は、化合物、投薬レジメン、または他の処置の使用を個人に口頭でアドバイスする、推奨する、または許可することができる。このケースにおいて、医療専門家は、化合物、投薬レジメン、または処置についての処方を提供してもしなくてもよい。さらに、医療専門家は、推奨された化合物または処置を提供してもしなくてもよい。例えば、医療専門家は、化合物を提供せずに、当該化合物を入手するための場所を個人にアドバイスすることができる。一部の実施形態では、医療専門家は、化合物、投薬レジメン、または処置の処方を個人に提供することができる。例えば、医療専門家は、文書のまたは口頭の処方を個人に提供することができる。処方は、紙、またはコンピュータファイルなどの電子媒体、例えばハンドヘルドコンピュータデバイス上の文書であり得る。例えば、医療専門家は、化合物、投薬レジメン、または処置についての処方を有する紙片または電子媒体を変換することができる。加えて、処方は、薬局または調剤所に電話で伝えられても(口頭)、ファックスで伝えられても(文書)、またはインターネットを介して電子的に提出されてもよい。一部の実施形態では、化合物または処置のサンプルが個人に提供され得る。本明細書において使用される場合、化合物のサンプルの提供は、化合物の暗黙の処方となる。世界中の様々な医療システムが、化合物または処置を処方および/または投与するための種々の方法を使用しており、これらの方法は本開示に包含される。
【0017】
処方には、例えば、個人の氏名、および/または誕生日などの身元情報が含まれていてもよい。加えて、例えば、処方には、薬物治療の名称、薬物治療の力価、用量、投与頻度、投与経路、調合する数または量、リフィルの数、医師の氏名、医師のサイン、およびこれらに類するものが含まれていてもよい。さらに、例えば、処方には、DEAの番号および/または状態番号が含まれていてもよい。
【0018】
医療専門家としては、例えば、医師、看護師、ナース・プラクティショナー、または、本明細書において記載される状態の処置のために化合物(薬物)を処方または投与することができる、他の関連する医療従事者が含まれ得る。加えて、医療専門家としては、例えば保険会社を含む、化合物もしくは薬物を個人に推奨することができる、処方することができる、投与することができる、または化合物もしくは薬物の個人への投与を防止することができる、あらゆる人が含まれ得る。
【0019】
防止する、防止すること、または防止:本明細書において使用される場合、用語「防止する」、「防止すること」、または「防止」、例えば、特定の障害または特定の障害に伴う1つもしくは複数の症候の発生もしくは発病の防止は、障害の完全な防止を必ずしも意味するわけではない。例えば、用語「防止する」、「防止すること」、および「防止」は、疾患または状態の少なくとも1つの症候を最終的には示し得るがまだ示していない個人への、予防または防止を基礎とした治療の投与を意味する。このような個人は、疾患のその後の発生と相関することが分かっているリスク因子に基づいて同定することができる。あるいは、防止療法は、予防の尺度としてリスク因子を事前に同定することなく、投与することができる。少なくとも1つの症候の発病の遅延もまた、防止または予防とみなすことができる。
【0020】
処置する、処置すること、または処置:本明細書において使用される場合、用語「処置する」、「処置すること」、または「処置」は、疾患もしくは状態の少なくとも1つの症候を既に示している、または疾患もしくは状態の少なくとも1つの症候をこれまでに示したことのある個人への治療の投与を意味する。例えば、「処置」には、疾患もしくは状態の症候の排除、軽減、もしくは改善、さらなる症候の防止、症候の根底にある代謝的原因の改善、疾患もしくは状態の阻害、例えば疾患もしくは状態の発症の阻止、疾患もしくは状態の緩和、疾患もしくは状態の退縮の促進、疾患もしくは状態によって生じる状態の緩和、または疾患もしくは状態の症候の停止が含まれ得る。例えば、障害について言及した用語「処置」は、特定の障害に関連する1つまたは複数の症候の重症度の低減を意味する。したがって、障害の処置は、障害に伴う全ての症候の重症度の低減を必ずしも意味しておらず、また、障害に伴う1つまたは複数の症候の重症度の完全な低減も必ずしも意味していない。
【0021】
忍容:本明細書において使用される場合、個人へのある用量の投与が、許容できない有害事象または有害事象の許容できない組み合わせを生じさせない場合、当該個人は、化合物の当該用量を「忍容する」と言われる。当業者には、忍容性が自覚的な尺度であり、1人の個人に対して忍容性であり得るものが異なる個人に対して忍容性ではないかもしれないことは理解されよう。例えば、1人の個人は頭痛を忍容できないかもしれず、一方、2人目の個人は、頭痛は忍容できるが嘔吐は忍容できないかもしれず、一方、3人目の個人は頭痛のみまたは嘔吐のみは忍容できるが、頭痛および嘔吐の組み合わせは、それぞれの重症度が単独で存在している場合より低いとしても、忍容できない。
【0022】
不耐性:本明細書において使用される場合、「不耐性」は、薬物治療の用量の低減または中止をもたらす、顕著な毒性および/または忍容性の問題を意味する。「不耐性」は、本明細書において、「忍容できない」という用語で置き換えることができる。
【0023】
有害事象:本明細書において使用される場合、「有害事象」は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩での処置に伴う不都合な医学的事象(untoward medical occurrence)である。一実施形態では、有害事象は、白血球減少症、便秘、下痢、吐き気、腹痛、好中球減少症、嘔吐、背中の痛み、および月経不順から選択される。一実施形態では、有害事象は、心ブロック、例えば1度房室ブロックである。一実施形態では、有害事象は、急性の心拍減少である。一実施形態では、有害事象は、肺機能検査での異常な所見、例えば、80%を下回るFEV1、FVCである。一実施形態では、有害事象は黄斑浮腫である。
【0024】
処置を必要とするおよびそれを必要とする:本明細書において使用される場合、「処置を必要とする」および処置に言及している場合の「それを必要とする」は、介護者(例えば、医師、看護師、ナース・プラクティショナーなど)によって行われる、個人に処置が必要であるまたは個人が処置の利益を受けるという判断を意味するために、区別せずに使用される。この判断は、介護者の専門知識の範囲内の様々な要素に基づいて行われるが、当該要素には、本発明の化合物によって処置可能な疾患、状態、または障害の結果として個人が病気であるまたは病気となる、ということの認識が含まれる。したがって、本発明の化合物は、防御的もしくは防止的様式で使用することができるか、または、本発明の化合物は、疾患、状態、もしくは障害を軽減する、阻害する、もしくは改善するために使用することができる。
【0025】
個人:本明細書において使用される場合、「個人」は、あらゆるヒトを意味する。一部の実施形態では、ヒト個人は、「対象」または「患者」と記載される。
【0026】
急性の心拍減少:本明細書において使用される場合、「急性の心拍減少」は、薬物投与の後の数時間以内、例えば1~3時間以内の、正常洞調律から例えば10回またはそれを超える数の拍/分(bpm)、例えば最大で約5bpm未満、例えば約4bpm未満または約3bpm未満または2bpm未満の心拍減少を意味し、その後、心拍は、投与前の値に戻る。
【0027】
正常洞調律:本明細書において使用される場合、「正常洞調律」は、処置を受けていない場合の個人の洞調律を意味する。正常洞調律の評価は、医師の能力の範囲内である。正常洞調律は一般に、60~100bpmの範囲の心拍を生じさせる。
【0028】
用量:本明細書において使用される場合、「用量」は、疾患または障害を処置または防止するために特定の1回で個人に投与される、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の量を意味する。
【0029】
治療有効量:本明細書において使用される場合、薬剤、化合物、薬物、組成物、または組み合わせの「治療有効量」は、対象または患者(例えば、ヒト対象またはヒト患者)に投与すると、無毒であり、ある程度の所望の治療効果をもたらすために有効な量である。対象に対する正確な治療有効量は、例えば、対象のサイズおよび健康、状態の性質および程度、投与に選択された治療法または治療法の組み合わせ、ならびに当業者に公知の他の変数に応じ得る。所与の状況に対する有効量は通常の実験によって決定され、臨床医の判断の範囲内である。一部の実施形態では、治療有効量は、標準用量である。
【0030】
医薬組成物:本明細書において使用される場合、「医薬組成物」は、限定はしないが化合物1の塩を含む、化合物1などの少なくとも1つの活性成分を含む、組成物を意味し、これを含むことによって、組成物は、特定の有効なアウトカムについての調査に適切となる。当業者には、活性成分が技術者の要求に基づく所望の有効なアウトカムを有するかどうかの決定に適した技術が分かり、理解されよう。
【0031】
肝障害:肝障害は、いくつかの方法によって測定することができる。例えば、肝障害は、チャイルドピュー(CP)スコアに基づいて測定することができる。軽度の肝障害は、CPスコア5~6と定義される。中等度の肝障害は、CPスコア7~9と定義される。重度の肝障害は、CPスコア10~14と定義される。チャイルドピュースコアは当業者に公知であり、総ビリルビン、血清アルブミン、PT INR、腹水、および肝性脳症のレベルを含む、肝障害の5つの臨床的尺度に基づいたスコアである。各尺度には1、2、または3のランクが付与されており、5つのランクの合計がチャイルドピュースコアである。
【0032】
本発明に従った化合物は、無機酸および有機酸を含む薬学的に許容できる無毒の酸から調製される薬学的に許容できる酸付加塩を含む、薬学的に許容できる塩として存在していてもよい。代表的な酸としては、限定はしないが、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、ジクロロ酢酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、シュウ酸、p-トルエンスルホン酸、およびこれらに類するもの、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、Bergeら、Journal of Pharmaceutical Sciences、66:1~19(1977)によって列挙されている薬学的に許容できる塩が含まれる。
【0033】
酸付加塩は、化合物合成の直接的な生成物として得ることができる。別の方法では、遊離塩基を、適切な酸を含有する適切な溶媒に溶解してもよく、そして溶媒を蒸発させることによって、または他の方法で塩と溶媒とを分離することによって、塩が単離される。本発明の化合物は、当業者に公知の方法を使用して、標準的な低分子量の溶媒と溶媒和物を形成することができる。
【0034】
化合物1を参照する場合に、「薬学的に許容できる塩、溶媒和物、および水和物」という表現または「薬学的に許容できる塩、溶媒和物、もしくは水和物」という表現が使用される場合、この表現は、化合物1の薬学的に許容できる溶媒和物および/または水和物、化合物1の薬学的に許容できる塩、ならびに化合物1の薬学的に許容できる塩の薬学的に許容できる溶媒和物および/または水和物を包含することが理解される。また、塩である化合物1を参照する場合に、「薬学的に許容できる溶媒和物および水和物」という表現または「薬学的に許容できる溶媒和物もしくは水和物」という表現が使用される場合、この表現は、このような塩の薬学的に許容できる溶媒和物および/または水和物を包含することが理解される。当業者には、本明細書において記載される投薬形態が、活性成分として化合物1もしくは薬学的に許容できる塩のいずれかを、またはその溶媒和物もしくは水和物として含み得ることが明らかとなろう。さらに、化合物1の様々な水和物および溶媒和物ならびにこれらの塩は、医薬組成物の製造の中間体として利用される。本明細書において記載されるもの以外の適切な水和物および溶媒和物を作製および同定するための典型的な手順は、当業者に周知である。例えば、Polymorphism in Pharmaceutical Solids、Harry G. Britain編、第95巻、Marcel Dekker, Inc.、New York、1999年の、K.J. Guillory、「Generation of Polymorphs, Hydrates, Solvates, and Amorphous Solids」の202~209頁を参照されたい。したがって、本開示の一態様は、当技術分野において公知の方法、例えば、熱重量分析(TGA)、TGA-質量分光法、TGA-赤外線分光法、粉末X線回折(XRPD)、カール・フィッシャー滴定、高解像度X線回折、およびこれらに類するものによって単離および特徴付けされ得る、化合物1の水和物および溶媒和物ならびに/またはその薬学的に許容できる塩を、処方および/または投与する方法に関する。溶媒和物および水和物を日常的に同定するための迅速かつ効率的なサービスを提供するいくつかの営利団体が存在する。これらのサービスを提供している例となる企業としては、Wilmington PharmaTech(ウィルミントン、DE)、Avantium Technologies(アムステルダム)、およびAptuit(グリニッジ、CT)が含まれる。
【0035】
本明細書において開示されている方法において整数が使用されている場合、「約」という用語が整数の前に挿入され得る。
【0036】
本明細書全体を通して、文脈から別段のことが必要とされない限り、「含む(comprise)」という語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising」)などの変型は、言及されたステップもしくは要素もしくは整数、またはステップもしくは要素もしくは整数の群を含めるが、いかなる他のステップも要素も整数も、または要素もしくは整数の群も排除しないことを意味することが理解される。
【0037】
本明細書全体を通して、別段のことが具体的に言及されていない限り、または文脈から別段のことが必要とされない限り、1つのステップ、組成物、ステップの群、または組成物の群への言及は、1つおよび複数の(すなわち、1つまたはそれを超える)これらのステップ、組成物、ステップの群、または組成物の群を包含すると解釈される。
【0038】
本明細書において記載される各実施形態は、別段のことが具体的に言及されていない限り、各々のおよび全ての他の実施形態に必要な変更を加えて適用される。
【0039】
当業者には、本明細書において記載される発明が、具体的に記載されているもの以外の変型および変更を受けやすいことが理解されよう。本発明は全てのこのような変型および変更を含むことが理解される。本発明はまた、別段のことが具体的に言及されていない限り、本明細書において記載されているかまたは示されている全てのステップ、特徴、組成物、および化合物を、個別にまたは集合的に含み、また、前記ステップまたは特徴のあらゆるおよび全ての組み合わせまたはいずれか2つ以上を含む。
【0040】
本発明は、本明細書において記載される具体的な実施形態に範囲を限定されず、当該具体的な実施形態は、例示のみを目的としたものである。機能的に同等な生成物、組成物、および方法は、本明細書において記載されるように、明らかに本発明の範囲内である。
【0041】
明瞭さのために個別の実施形態の文脈で記載されている、本発明のある特定の特徴はまた、1つの実施形態に組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔性のために1つの実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴はまた、個別に、または任意の適切な下位の組み合わせで提供され得る。例えば、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の処方および/または投与について記載している方法は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の処方について記載している1つの方法、および化合物1またはその薬学的に許容できる塩の投与について記載している他の方法という、2つの方法に分けることができる。加えて、例えば、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の処方について記載している方法と、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の投与について記載している本発明の別の方法とは、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の処方および/または投与について記載している1つの方法に組み合わせることができる。
【0042】
一部の実施形態では、個人には、約0.5から約5.0mgに等しい量の化合物1が投与される。一部の実施形態では、個人には、2mgに等しい量の化合物1が投与される。一部の実施形態では、個人には、2.25mgに等しい量の化合物1が投与される。一部の実施形態では、個人には、2.5mgに等しい量の化合物1が投与される。一部の実施形態では、個人には、2.75mgに等しい量の化合物1が投与される。一部の実施形態では、個人には、3mgの化合物1に等しい量が投与される。一部の実施形態では、個人には、1mgの化合物1に等しい量が投与される。
【0043】
一部の実施形態では、個人には、化合物1またはその薬学的に許容できる塩が少なくとも1カ月間、例えば、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間など投与される。一部の実施形態では、個人には、化合物1またはその薬学的に許容できる塩が少なくとも1週間、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間など投与される。一部の実施形態では、第2の期間は無期限であり、例えば長期投与である。
【0044】
一部の実施形態では、個人には、2mgに等しい量の化合物1が第1の期間にわたり投与され、その後、3mgに等しい量の化合物1が第2の期間にわたり投与される。一部の実施形態では、第1の期間は、少なくとも1カ月間、例えば、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間などである。一部の実施形態では、第1の期間は、少なくとも1週間、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間などである。一部の実施形態では、第2の期間は、少なくとも1カ月間、例えば、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間などである。一部の実施形態では、第2の期間は、少なくとも1週間、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間などである。一部の実施形態では、第2の期間は無期限であり、例えば長期投与である。一部の実施形態では、第1の期間の投薬量は、第1の期間の間には調整されない。一部の実施形態では、第2の期間の投薬量は、第2の期間の間には調整されない。
【0045】
一部の実施形態では、個人には、3mgの化合物1に等しい量が第1の期間にわたり投与され、その後、2mgの化合物1に等しい量が第2の期間にわたり投与される。一部の実施形態では、第1の期間は、少なくとも1カ月間、例えば、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間などである。一部の実施形態では、第1の期間は、少なくとも1週間、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間などである。一部の実施形態では、第2の期間は、少なくとも1カ月間、例えば、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間などである。一部の実施形態では、第2の期間は、少なくとも1週間、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間などである。一部の実施形態では、第2の期間は無期限であり、例えば長期投与である。一部の実施形態では、第1の期間の投薬量は、第1の期間の間には調整されない。一部の実施形態では、第2の期間の投薬量は、第2の期間の間には調整されない。
【0046】
一部の実施形態では、標準用量は、滴定を行わずに投与される。一部の実施形態では、標準用量は、滴定を行わずに投与され、個人は、重度の関連する有害事象を経験しない。一部の実施形態では、標準用量は、他のS1P受容体モジュレーターで見られる初回投与効果を避けるための滴定を要することなく投与される。
【0047】
一部の実施形態では、投薬形態は、絶食した状態下で投与される。一部の実施形態では、投薬形態は、食後の状態下で投与される。
【0048】
一部の実施形態では、本方法は、性別特異的ではない。
【0049】
一部の実施形態では、化合物1またはその薬学的に許容できる塩は、第2の治療剤または治療と組み合わせて投与され、第2の治療剤または治療は、IL-1ベータ阻害剤、IL-5阻害剤、IL-9阻害剤、IL-13阻害剤、IL-17阻害剤、IL-25阻害剤、TNFα阻害剤、エオタキシン-3阻害剤、IgE阻害剤、プロスタグランジンD2阻害剤、免疫抑制剤、グルココルチコイド、プロトンポンプ阻害剤、NSAID、アレルゲン除去、および食餌管理から選択される。
【0050】
一部の実施形態では、化合物1またはその薬学的に許容できる塩は、以前に投与された少なくとも1つの治療剤または治療であり、当該治療剤または治療は、IL-1ベータ阻害剤、IL-5阻害剤、IL-9阻害剤、IL-13阻害剤、IL-17阻害剤、IL-25阻害剤、TNFα阻害剤、エオタキシン-3阻害剤、IgE阻害剤、プロスタグランジンD2阻害剤、免疫抑制剤、グルココルチコイド、プロトンポンプ阻害剤、NSAID、アレルゲン除去、および食餌管理から選択される。
【0051】
一部の実施形態では、個人は、IL-1ベータ阻害剤で処置されているかまたは処置されていた。一部の実施形態では、IL-1ベータ阻害剤は、アナキンラ、リロナセプト、またはカナキヌマブである。
【0052】
一部の実施形態では、個人は、IL-5阻害剤で処置されているかまたは処置されていた。一部の実施形態では、IL-5阻害剤は、ベンラリズマブ、メポリズマブ、またはレスリズマブである。
【0053】
一部の実施形態では、個人は、IL-9阻害剤で処置されている。
【0054】
一部の実施形態では、個人は、IL-13阻害剤で処置されているかまたは処置されていた。一部の実施形態では、IL-13阻害剤は、レブリキズマブ、RPC4046、またはトラロキヌマブである。
【0055】
一部の実施形態では、個人は、IL-17阻害剤で処置されているかまたは処置されていた。一部の実施形態では、IL-17阻害剤は、イキセキズマブまたはブロダルマブである。
【0056】
一部の実施形態では、個人は、IL-25阻害剤で処置されているかまたは処置されていた。
【0057】
一部の実施形態では、個人は、TNFα阻害剤で処置されているかまたは処置されていた。一部の実施形態では、TNFα阻害剤は、SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)、REMICADE(登録商標)(インフリキシマブ)、HUMIRA(登録商標)(アダリムマブ)、またはCIMZIA(登録商標)(セルトリズマブペゴル)である。
【0058】
一部の実施形態では、個人は、エオタキシン-3阻害剤で処置されているかまたは処置されていた。
【0059】
一部の実施形態では、個人は、IgE阻害剤で処置されているかまたは処置されていた。一部の実施形態では、IgE阻害剤はオマリズマブである。
【0060】
一部の実施形態では、個人は、プロスタグランジンD2阻害剤で処置されているかまたは処置されていた。
【0061】
一部の実施形態では、個人は、免疫抑制剤で処置されているかまたは処置されていた。一部の実施形態では、免疫抑制剤は、AZASAN(登録商標)(アザチオプリン)、IMURAN(登録商標)(アザチオプリン)、GENGRAF(登録商標)(シクロスポリン)、NEORAL(登録商標)(シクロスポリン)、またはSANDIMMUNE(登録商標)(シクロスポリン)である。免疫抑制剤(Immunosuppressants)はまた、immunosuppressivesまたはimmunosuppressive agentsとも記載され得る。
【0062】
一部の実施形態では、個人は、プロトンポンプ阻害剤で処置されるかまたは処置されている。一部の実施形態では、プロトンポンプ阻害剤は、オメプラゾール、パントプラゾール、エソメプラゾール、またはデクスランソプラゾールである。
【0063】
一部の実施形態では、個人は、グルココルチコイドで処置されるかまたは処置されている。一部の実施形態では、グルココルチコイドは、UCERIS(登録商標)(ブデソニド)、DELTASONE(登録商標)(プレドニゾン)、MEDROL(登録商標)(メチルプレドニゾロン)、またはヒドロコルチゾンである。糖質コルチコステロイドはまた、グルココルチコイドまたはコルチコステロイドとも呼ばれ得る。
【0064】
一部の実施形態では、個人は、NSAIDで処置されているかまたは処置されていた。一部の実施形態では、NSAIDは、アスピリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダク、またはトルメチンである。
【0065】
一部の実施形態では、個人は、従来の治療法に不適切に応答しているか、応答しなくなっているか、または不耐性である。一部の実施形態では、個人は、従来の治療法に不適切に応答している。一部の実施形態では、個人は、従来の治療法に応答しなくなっている。一部の実施形態では、個人は、従来の治療法に不耐性である。一部の実施形態では、従来の治療法は、IL-1ベータ阻害剤、IL-5阻害剤、IL-9阻害剤、IL-13阻害剤、IL-17阻害剤、IL-25阻害剤、TNFα阻害剤、エオタキシン-3阻害剤、IgE阻害剤、プロスタグランジンD2阻害剤、免疫抑制剤、グルココルチコイド、プロトンポンプ阻害剤、NSAID、アレルゲン除去、および食餌管理から選択される。一部の実施形態では、事前の従来の治療法は、前処置と記載される。
【0066】
一部の実施形態では、個人は、少なくとも1つの治療剤または治療法に不適切に応答しているか、応答しなくなっているか、または不耐性である。一部の実施形態では、個人は、少なくとも1つの治療剤または治療法への不適切な応答、応答の喪失、または不耐性を示している。一部の実施形態では、個人は、少なくとも1つの治療剤または治療法への不適切な応答、応答の喪失、または不耐性を、直前の3カ月間にわたり示している。一部の実施形態では、個人は、少なくとも1つの治療剤または治療法への不適切な応答、応答の喪失、または不耐性を、直前の6カ月間にわたり示している。一部の実施形態では、個人は、少なくとも1つの治療剤または治療法への不適切な応答、応答の喪失、または不耐性を、直前の9カ月間にわたり示している。一部の実施形態では、個人は、少なくとも1つの治療剤または治療法への不適切な応答、応答の喪失、または不耐性を、直前の1年間にわたり示している。一部の実施形態では、個人は、少なくとも1つの治療剤または治療法への不適切な応答、応答の喪失、または不耐性を、直前の2年間にわたり示している。一部の実施形態では、個人は、少なくとも1つの治療剤または治療法への不適切な応答、応答の喪失、または不耐性を、直前の3年間にわたり示している。一部の実施形態では、個人は、少なくとも1つの治療剤または治療法への不適切な応答、応答の喪失、または不耐性を、直前の4年間にわたり示している。一部の実施形態では、個人は、少なくとも1つの治療剤または治療法への不適切な応答、応答の喪失、または不耐性を、直前の5年間にわたり示している。
【0067】
一部の実施形態では、処置の前に、個人は、プロトンポンプ阻害剤療法を投与されている。一部の実施形態では、処置の前に、個人は、プロトンポンプ阻害剤療法に不適切に応答しているか、応答しなくなっているか、または不耐性である。一部の実施形態では、個人は、プロトンポンプ阻害剤療法を少なくとも2カ月間にわたり継続して投与されている。
【0068】
一部の実施形態では、処置の前に、個人は、重度の狭窄を有していない。
【0069】
一部の実施形態では、本方法は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の投与の間の有害事象についてモニタリングするステップ、および場合により、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の投与を中断または終了するステップをさらに含む。
【0070】
一部の実施形態では、処置は、投与の間の心拍のモニタリング、投与の間の肺機能のモニタリング、または投与の間の肝機能のモニタリングをさらに含む。
【0071】
一部の実施形態では、処置は、投与の間の心拍のモニタリングをさらに含む。
【0072】
一部の実施形態では、処置は、投与の間の肺機能のモニタリングをさらに含む。
【0073】
一部の実施形態では、処置は、投与の間の肝機能のモニタリングをさらに含む。
【0074】
一部の実施形態では、本方法は、本明細書において記載される状態の処置の結果生じる有害事象の発生および重症度を低減させる。
【0075】
一部の実施形態では、有害事象は、重篤な有害事象である。
【0076】
一部の実施形態では、重篤な有害事象は、白血球減少症、便秘、下痢、吐き気、腹痛、好中球減少症、嘔吐、背中の痛み、および月経不順から選択される。
【0077】
一部の実施形態では、本方法は、重篤な有害事象を生じさせない。
【0078】
一部の実施形態では、標準用量は、個人において急性の心拍減少または心ブロックをほとんど誘発することなく投与される。
【0079】
一部の実施形態では、化合物1またはその薬学的に許容できる塩は、6bpmを超える心拍の減少を生じさせることなく投与される。
【0080】
一部の実施形態では、化合物1またはその薬学的に許容できる塩は、他のS1P受容体モジュレーターで見られるような心拍に対する初回用量効果を伴わずに投与される。一部の実施形態では、化合物1またはその薬学的に許容できる塩は、他のS1P受容体モジュレーターで見られるようなAV伝導に対する初回用量効果を伴わずに投与される。
【0081】
一部の実施形態では、個人におけるS1P1受容体に関連する障害を処置する方法は、治療有効量の化合物1またはその薬学的に許容できる塩を、肝障害なし、軽度の肝障害、中等度の肝障害、および重度の肝障害からなる群から選択される肝障害のレベルを有すると事前に判定されている前記個人に投与するステップを含む。一部の実施形態では、個人は、軽度の肝障害を有すると診断されている。一部の実施形態では、個人は、中等度の肝障害を有すると診断されている。一部の実施形態では、個人は、重度の肝障害を有すると診断されている。
【0082】
一部の実施形態では、個人におけるS1P1受容体に関連する障害を処置する方法は、治療有効量の化合物1またはその薬学的に許容できる塩を、肝障害なし、軽度の肝障害、中等度の肝障害、および重度の肝障害からなる群から選択される肝障害のレベルを有すると事前に判定されている前記個人に投与するステップを含む。一部の実施形態では、個人は、軽度の肝障害を有すると診断されている。一部の実施形態では、個人は、中等度の肝障害を有すると診断されている。一部の実施形態では、個人は、重度の肝障害を有すると診断されている。一部の実施形態では、S1P1受容体に関連する障害は、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、好酸球性食道炎、およびクローン病からなる群から選択される。ある特定の実施形態に従うと、患者は、開始用量の化合物1またはその薬学的塩を投与されるが、当該用量は調整されない。ある特定の実施形態に従うと、肝障害を有さない患者と比較して、肝障害を有する個人では用量の調整は不要である。
【0083】
一部の実施形態では、個人におけるS1P1受容体に関連する障害を処置する方法は、治療有効量の化合物1またはその薬学的に許容できる塩を、5~14の範囲のチャイルドピュースコアを有すると事前に判定されている前記個人に投与するステップを含む。一部の実施形態では、個人は、5~6のチャイルドピュースコアを有すると判定されている。一部の実施形態では、個人は、7~9のチャイルドピュースコアを有すると判定されている。一部の実施形態では、個人は、10~14のチャイルドピュースコアを有すると判定されている。一部の実施形態では、個人は、14以上の高いチャイルドピュースコアを有すると判定されている。一部の実施形態では、S1P1受容体に関連する障害は、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、好酸球性食道炎、およびクローン病からなる群から選択される。ある特定の実施形態に従うと、患者は、開始用量の化合物1またはその薬学的塩を投与されるが、当該用量は調整されない。ある特定の実施形態に従うと、肝障害を有さない患者と比較して、肝障害を有する個人では用量の調整は不要である。
【実施例
【0084】
研究によって、エトラシモドのPK、安全性、および忍容性に対する肝障害の影響を評価した。
【0085】
オープンラベルの並行群研究に、スクリーニングでのチャイルドピュースコア(軽度=5~6[n=8]、中等度=7~9[n=8]、重度=10~14[n=6])に基づく肝障害を有する36人の患者(18~80歳、ボディ・マス・インデックス≧18)、および人口統計学的に適合する肝機能が正常なコントロール患者(全部でn=14)を含めた。重度の肝障害を有する最初の患者を、軽度の肝障害を有する2人以上の患者および中等度の肝障害を有する2人以上の患者を登録した後に登録し、顕著な安全性シグナルが見られないことを確実にするために、投与後48時間以上にわたって追跡した。1日目に、患者に、10時間以上の絶食の後、2mgのエトラシモドを1回経口投与した。PKおよび安全性のデータを21日間にわたり収集した。安全性を、有害事象のモニタリング、バイタルサイン、身体的および神経学的検査、12誘導心電図(ECG)、ならびに臨床実験評価によって評価した。図1を参照されたい。エトラシモドの血漿中濃度を、全エトラシモド(結合および未結合)および未結合のエトラシモドについてそれぞれ0.25から100.0ng/mLの間および0.1から120.4ng/mLの間のマトリクスマッチングされた検量線から、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)を介して決定した。分析物のLC-MS/MS定量試薬は、ACE C18カラム、20mMの酢酸アンモニウム/アセトニトリル移動相、株式会社島津製作所のLCポンプおよびオートサンプラー、ならびにネガティブ多重反応モニタリングにおけるエレクトロスプレープローブを有するSciex API6500+MSを含んでいた。血漿タンパク質を含有しない上清を、223000gで4時間の超遠心分離を介して回収した。未結合エトラシモドの濃度は投与の4時間後にのみ測定し、結果は、他のPK収集時間にも適用されると仮定する。タンパク質沈殿では、アセトニトリルを、血漿:上清を1:1で混合したマトリクスに適用した。ポジティブコントロールはワルファリンであった。血漿中濃度およびPKパラメータを、記述統計学を使用して肝機能によって要約した。未結合エトラシモドのPKパラメータは、未結合のパーセントによって調整された全エトラシモドのPKパラメータに基づくものであった。平均血漿中濃度-時間のプロファイルを、グラフで表した。Phoenix WinNonlin(CertaraUSA,Inc.)をPK分析に使用した。
【0086】
36人の患者を登録し、これら患者に投与した。35人の患者が研究を完了した。エトラシモドの平均血漿中濃度-時間のプロファイルは、正常肝機能群と軽度肝障害群との間で重複し、中等度肝障害群および重度肝障害群でわずかに高かった。全ての群を通して、エトラシモドは、4から8時間の範囲の中央値t最大で吸収された。図2~4を参照されたい。それらのそれぞれの人口統計学的に適合する正常コントロール群と比較すると、単回用量エトラシモドのピーク曝露(C最大)は全ての肝障害群で同程度であり、一方、エトラシモドの総曝露(AUC)の尺度は、軽度、中等度、および重度の肝障害群で徐々に高くなった(12.9%から57.3%高い)。未結合エトラシモドのC最大値は軽度、中等度、および重度の肝障害群で徐々に低下し(最大42.0%低い)、一方、未結合エトラシモドのAUC値は、それらのそれぞれの人口統計学的に適合する正常コントロール群と比較すると、全ての肝障害群で典型的には同程度であった。図5を参照されたい。エトラシモドのt1/2は、肝機能が低下するにつれて中程度に増大したのみであり、平均値は、人口統計学的に適合する正常コントロール群では43.9から59.5時間の範囲であるのに対し、軽度、中等度、および重度の肝障害群ではそれぞれ55.7、69.7、および76.5時間であった。エトラシモドの単回経口投与は良く忍容された。エトラシモドを肝機能が正常な患者、または軽度、中等度、もしくは重度の肝障害を有する患者に投与した場合、臨床的に重要な安全性の所見はなかった。
【0087】
2mgのエトラシモドの単回経口投与は良く忍容され、軽度、中等度、または重度の肝障害を有する患者で、エトラシモド曝露の比較的中程度の変化が見られた。これらの結果は、肝障害を有する患者においてエトラシモド用量の調整は必要ないことを示唆している。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】