(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】非加熱での蒸気含有エアロゾルミストの高効率生成
(51)【国際特許分類】
A61L 2/22 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
A61L2/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579263
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 FI2022050461
(87)【国際公開番号】W WO2022269140
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
【氏名又は名称原語表記】TEKNOLOGIAN TUTKIMUSKESKUS VTT OY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100213333
【氏名又は名称】鹿山 昌代
(72)【発明者】
【氏名】ヤニ ハカラ
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA01
4C058BB07
4C058DD11
4C058JJ16
4C058JJ21
4C058JJ22
(57)【要約】
本発明は、熱を加えずに滅菌溶液から少なくとも部分的に蒸発したエアロゾルミストを高効率で生成および放出するための装置および方法に関する。特に、この装置および方法は、過酸化水素蒸気の生成に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌溶液から少なくとも部分的に蒸発したエアロゾルミストを生成および放出するための装置であって、
前記装置は、
前記滅菌溶液を保持するためのリザーバ(1)と、
ガス流を容器の内に運ぶためのガス入口(2)と、
前記滅菌溶液からエアロゾルミストを形成するための噴霧ユニット(3)と、
前記噴霧ユニット(3)に前記滅菌溶液を供給するための任意の供給システム(4)と、
形成された蒸気を含むミストを、前記容器の外へ導くためのミスト出口(5)と、
を備える容器で形成され、
前記装置は、
エアロゾルの液滴の一部を、前記容器の表面に衝突させ、衝突させた液滴を、前記エアロゾルから分離するように配置された慣性分離ユニット(6)と、
をさらに備え、
前記慣性分離ユニット(6)は、
埋伏ターゲットの形態であり、前記噴霧ユニット(3)を通過するガス流の軌道上に、前記噴霧ユニット(3)の出口から前記出口の幅の1倍-4倍の距離に配置される、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記噴霧ユニット(3)は、
生成された前記ガス流の高速噴流と前記滅菌溶液とを混合するように配置された、あるいは、高圧でノズルを通してポンプで送られる前記滅菌溶液を受け取るように配置された1つ以上のミストノズル、
1つ以上の振動開口部、または、
1つ以上の超音波噴霧器、
を、1つ以上含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記噴霧ユニット(3)は、
幅が、0.01mm-10mm、好ましくは0.2mm-3.0mm、より好ましくは0.5mm-1.5mmの出口を有するミストノズルである、
請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記埋伏ターゲットは、
前記噴霧ユニット(3)の前記出口から前記出口の幅の1.5倍-2.5倍の距離に配置される、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、
ベンチュリ効果により、滅菌溶液を前記リザーバ(1)から液体チャネルを介して前記噴霧ユニット(3)に移送するように配置された1つ以上の真空放射器、
前記滅菌溶液を前記リザーバ(1)から液体チャネルを介して前記噴霧ユニット(3)に圧送するように配置された1つ以上の液体ポンプ、または、
前記滅菌溶液を、高い位置に置かれている前記リザーバ(1)から重力によって前記噴霧ユニット(3)に供給するように配置された液体チャネル、
からなり、
前記滅菌溶液を前記噴霧ユニット(3)に供給するための供給システム(4)を備える、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、
前記滅菌溶液を含む前記リザーバ(1)の内に浸漬された噴霧ユニット(3)を備え、これにより別個の供給システム(4)が必要とされない、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
耐久性のある材料で作られ、
好ましい材料は、プラスチック、ガラス、または金属であり、
より好ましい材料は、プラスチックまたはガラスである、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ガス入口(2)は、ガス分配器(7)と流体連通しており、
好ましくは、ガス加圧器、ファン、または送風機の形態であり、
より好ましくは、ガスポンプ、コンプレッサ、または加圧ガスを保持する容器の形態であり、
最も適切には、圧縮ガスボトルの形態である、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
周囲温度で滅菌溶液から少なくとも部分的に蒸発したエアロゾルミストを生成および放出する方法であって、
滅菌溶液が入っている容器にガス流を送り込むステップと、
前記容器を通る前記ガス流を噴霧ユニット(3)へ導くステップと、
前記噴霧ユニット(3)に滅菌溶液を提供するステップと、
前記噴霧ユニット(3)の内に前記滅菌溶液を噴霧し、これにより少なくとも部分的に蒸発した液滴を含むエアロゾルミストを形成するステップと、
前記ガス流とともに、形成されたエアロゾルミストを、ミスト出口(5)を介して前記容器の外へ導くステップと、
を含み、
前記噴霧ユニット(3)を通過する前記ガス流の軌道上に、前記噴霧ユニット(3)の出口から前記出口の幅の1倍-4倍離れた距離に配置された埋伏ターゲットとの衝突により、滅菌溶液の液滴の一部を前記ガス流から分離し、これにより、衝突させた液滴を前記ミスト出口(5)に運ばれる前記ガス流から分離する、
ことを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記エアロゾルミストは、前記溶液を噴霧することによって形成され、
好ましくは、
1つ以上のミストノズルを通して前記溶液を駆動させ、生成された前記ガス流の高速噴流と前記溶液とを混合することにより、
1つ以上のミストノズルを通して前記溶液を高圧でポンプで送り込むことにより、
1つ以上の振動開口部を通して前記溶液を駆動させることにより、または、
別個の超音波噴霧器を使用すること、もしくは、これらの代替器を2つ以上同時に使用することにより、
形成される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ガスは、
窒素、酸素、二酸化炭素、アルゴン、または空気である、
請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ガスは、添加剤として、
オゾン、エチレンオキシド、アンモニア、塩素、二酸化塩素、または二酸化窒素を含む、
請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記滅菌溶液は、
ベンチュリ効果によって滅菌溶液を移送する1つ以上の真空放射器を使用すること、
1つ以上の液体ポンプを使用して前記滅菌溶液を汲み上げること、または、
重力を利用して前記滅菌溶液を供給すること、
により、別個の供給ステップで前記噴霧ユニット(3)に供給される、
請求項9から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
滅菌溶液の液滴の一部は、
前記液滴の一部を表面に、好ましくは、前記容器の表面または埋伏ターゲットの前記表面のいずれかに、衝突させることによって前記ガス流から分離され、
衝突させた液滴は前記溶液の最大液滴であり、これにより、これらの衝突した液滴の霧化または前記容器の内への前記溶液の戻りのいずれかを引き起こす、
請求項9から請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
形成されたエアロゾルミスト中の前記液滴の直径は、
ミストの最大液滴を含む前記液滴の一部の分離によって、液滴直径<10μm、好ましくは、液滴直径<5μmに限定される、
請求項9から請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記滅菌溶液は、好ましくは1体積%-100体積%の濃度、より好ましくは30体積%-75体積%の濃度、さらにより好ましくは30体積%-65体積%の濃度、最も適切には35体積%-50体積%の濃度で、過酸化水素を水中に含む溶液であり、この方法により過酸化水素蒸気が形成される、
請求項9から請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
対象容積内の空気および表面を、消毒または除染する、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の装置、または請求項9から請求項15のいずれか一項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲温度で滅菌溶液から生成される蒸気含有エアロゾルミストを生成および放出するための装置および方法に関する。特に、この装置および方法は、過酸化水素蒸気の生成に適している。
【背景技術】
【0002】
病院または食品飲料業界など、高純度が必要なエリアを洗浄および消毒する場合、通常は目に見える表面に重点が置かれる。しかしながら、多くの病原体は、空中を浮遊し、最終的に、到達しにくい表面および空気ダクト内に達する可能性がある。したがって、目に見える表面を消毒剤で拭くだけでは十分ではない。そこで、滅菌または消毒用の蒸気またはスプレーが開発されている。例えば、米国特許出願公開第2004/005240号明細書には、滅菌溶液が液滴の形で放出される滅菌ミストの生成について記載されている。
【0003】
一般に、蒸気は液体よりもゆるやかであり、特に、酸化剤は液相で腐食または漂白を引き起こす可能性がある。また、蒸気は移動性も高く、液滴よりも効率的に下面に到達する。
【0004】
中国特許出願公開第111658803号明細書には、物体上に直接放出される急速に蒸発する過酸化水素スプレーを使用して、その中に置かれた物体を滅菌するためのキャビティが記載されている。ただし、小さな液滴は蒸発し易いが、大きな液滴は蒸発し難い。また、それらは蒸気が再凝縮するための種液滴としても機能する可能性があり、それによって、蒸気の発生がそれほど効率的ではなくなり、発生器から出ている大きな液滴は表面に堆積して腐食または漂白の危険を引き起こす可能性がある。
【0005】
蒸気の発生では、ほとんどの技術が、加熱により滅菌剤の溶液を蒸発させる。しかしながら、加熱すると滅菌剤が分解する可能性がある。これは、例えば、過酸化水素を使うことで起こることが知られている。
【0006】
消毒を目的としたこのような熱を誘発する蒸気の発生については、例えば、ドイツ特許出願公開第102008050947号明細書に説明されている。過酸化水素の液滴は、ポンプを使用して容器の上部から加熱された容器内に供給され、液滴に吹き付けられている予熱された空気の流れによって気化され、その熱は液滴のサイズスペクトル全体の蒸発を引き起こす。
【0007】
したがって、滅菌溶液から蒸気を発生させ、滅菌、消毒、または汚染除去されている空間に、前記した蒸気を放出するための新しい技術が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許出願公開第111658803号明細書
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第102008050947号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/005240号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。いくつかの特定の実施形態は、従属請求項で定義される。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、滅菌溶液から少なくとも部分的に蒸発したエアロゾルミストを生成および放出するための装置および方法が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、周囲温度で蒸気含有ミストを生成および放出するための装置および方法が提供される。
【0012】
滅菌溶液の効率的な蒸発を達成するために、装置は、形成されたミストから滅菌溶液の大きな液滴を分離するための手段を含み、これにより、小さな液滴を含む細かいミストのみが装置から出続けることが可能になる。
【0013】
同様に、本発明は、前記したミストからの滅菌溶液の最大液滴の分離を含み、そのような蒸気を生成し、且つ、放出するための方法に関する。
【0014】
本発明を使用すると、いくつかの利点が達成される。とりわけ、滅菌溶液の最大液滴が分離されるため、熱を加えずに蒸気を発生させることができる。
【0015】
残っている小さな液滴のみのミストを提供することは、蒸発がより効率的になり、再凝縮を引き起こす種液滴が存在しないことを意味する。本発明のさらなる利点は、従来の技術と比較して、滅菌剤の分解の危険を伴うことなく、より穏やかな方法で蒸気を発生させることができることである。加熱がなく、大掛かりな蒸発制御が無いため、装置は、大型の市販ユニットより簡単に維持されることも可能である。
【0016】
過酸化水素ベースの滅菌溶液を使用する場合、有害な化学残留物を残さない滅菌ミストを使用できるという追加の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る装置の構造を示す図であり、点線の矢印は、ガス、溶液、またはミストの流れを表している。
【0018】
【
図2A】本発明のいくつかの好ましい実施形態に係る異なる噴霧器を備えた装置の構造を示す図である。
【
図2B】本発明のいくつかの好ましい実施形態に係る異なる噴霧器を備えた装置の構造を示す図である。
【0019】
【
図3】本発明の他の実施形態に係る好ましい溶液の供給システムを備えた装置の構造を示す図である。
【0020】
【
図4A】本発明のいくつかのさらなる実施形態に係る代替の液滴分離ユニットを備えた装置の構造を示す図である。
【
図4B】本発明のいくつかのさらなる実施形態に係る代替の液滴分離ユニットを備えた装置の構造を示す図である。
【
図4C】本発明のいくつかのさらなる実施形態に係る代替の液滴分離ユニットを備えた装置の構造を示す図である。
【0021】
【
図5】任意のガス分配器を表す装置の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[定義]
本文脈において、「エアロゾル」という用語は、ガス中の微細な液滴の懸濁液を包含することを意図している。流動ガス中に浮遊している間、例えば、除染対象エリア中に、噴霧されることが可能なミストを形成する。さらに、ミストの微細な液滴のサイズが小さいため、液滴の少なくとも一部が蒸発することが可能になる。
ミストの「微細な液滴」という用語は、ガス流の方向が変わった場合でも、ガス流の軌道に沿って運ばれることが可能な、十分に小さな慣性を有する液滴を定義することを目的としている。通常、このような小さなミストの液滴の直径は、10μm未満、好ましくは5μm未満であり、蒸発を促進する鋭い表面曲率を与える。
【0023】
したがって、本発明は、滅菌溶液から少なくとも部分的に蒸発したエアロゾルミストを生成および放出するための装置(
図1参照)であって、典型的には周囲温度で動作する装置に関し、この装置は、以下を備える容器で形成される。
滅菌溶液を保持するためのリザーバ1と、
ガス流を容器の内に運ぶためのガス入口2と、
滅菌溶液からエアロゾルミストを形成するための噴霧ユニット3と、
噴霧ユニット3に滅菌溶液を供給するための任意の供給システム4と、
形成された蒸気を含むミストを、容器の外へ導くためのミスト出口5と、
を備える。
【0024】
図2Aおよび
図2Bに示すように、噴霧ユニット3は、通常、以下の1つ以上を備える。
生成されたガス流の高速噴流と滅菌溶液とを混合するように配置された、あるいは、高圧でノズルを通してポンプで送られる滅菌溶液を受け取るように配置された1つ以上のミストノズル(
図2A参照)、
1つ以上の振動開口部、または、
1つ以上の超音波噴霧器(
図2B参照)、もしくは、これらの噴霧器の1つ以上
を備える。
【0025】
本発明の一実施形態において、噴霧ユニット3は、幅が、0.01mm-10mm、好ましくは0.2mm-3.0mm、より好ましくは0.5mm-1.5mmの出口を有するミストノズルである。
【0026】
上述したように、装置は、リザーバ1から噴霧ユニット3に滅菌溶液を供給するための供給システム4を任意に備えていてもよい。
この供給システム4は、
ベンチュリ効果により、滅菌溶液をリザーバ1から液体チャネルを介して噴霧ユニット3に移送するように配置された1つ以上の真空放射器(
図3参照)、
滅菌溶液をリザーバ1から液体チャネルを介して噴霧ユニット3に圧送するように配置された1つ以上の液体ポンプ、または、
滅菌溶液を、高い位置に配置されたリザーバ1から重力によって噴霧ユニット3に供給するように配置された液体チャネル
からなる形態であってよい。
【0027】
しかしながら、装置が、超音波噴霧器などの滅菌溶液を含むリザーバ1に浸漬される噴霧ユニット3を備える場合、別個の供給システム4は必要とされない。
【0028】
上記に加えて、装置は、容器(
図4A参照)の壁の表面などの表面に対して、エアロゾルの液滴の一部を衝突させ、これにより衝突した液滴をエアロゾルから分離するように配置された慣性分離ユニット6(
図4A-
図4B参照)を備える。
【0029】
ミストから分離される液滴の一部は、通常、最大液滴であり、表面に面したときに方向を変えるには重すぎるため、容易に蒸発する小さな液滴のみがミスト内に残る。
【0030】
本発明の一実施形態では、慣性分離ユニット6は、埋伏ターゲットを備えた衝突器(
図4Bを参照)、または、サイクロン分離器(
図4Cを参照)などの衝突器の形態であり、好ましくは、噴霧ユニット3を通過するガス流の軌道上に位置する埋伏ターゲットの形態であり、これにより、前記したターゲットに対する溶液の大きな液滴の衝突を引き起こし、それらの霧化またはリザーバ1への戻りを引き起こす。
【0031】
特に、慣性分離ユニット6は、埋伏ターゲットの形態であり、噴霧ユニット3の出口から出口の幅の0.1倍-10倍の距離、好ましくは、出口の幅の1倍-4倍の距離、より好ましくは、出口の幅の1.5倍-2.5倍の距離に配置される。
【0032】
液滴の分離を促進するため、噴霧ユニット3は、さらに、ミスト出口5から比較的大きな液滴が排出されるのを防ぐために、垂直方向においてミスト出口5のレベルに、または好ましくはその下に配置されてよい。
【0033】
さらに、本発明の好ましい実施形態では、ガス流に混合されたミストが容器内で方向を変えるように、ガス入口2とミスト出口5とが、互いに角度を付けて配置されてよい。したがって、大きな液滴は、容器の表面に衝突し、一方で、小さな液滴は、その方向を変え、ガスの流れとともに、ミスト出口5まで運ばれる。
したがって、
第1の方向を有するガス入口2を通るガス流の軌道を作成するようにガス入口2を配置し、
第2の方向を有するミスト出口5を通るガス流の軌道を作成するようにミスト出口5を配置し、
第2の方向に対する第1の方向の間の角度を60°-120°の間の角度に限定する、
ことが好ましく、それゆえ、比較的大きな液滴が容器の壁に向かって導かれ、ミスト出口5から排出されるのではなく、リザーバ1に戻されることが好ましい。
【0034】
図5に示すように、ガス入口2は、さらに、ガス分配器7と流体連通するように配置されることが可能であり、好ましくは、ガス加圧器、ファン、または送風機の形態であり、より好ましくは、ガスポンプ、コンプレッサ、または加圧ガスを保持する容器の形態であり、最も適切には、圧縮または液化ガスシリンダの形態である。
【0035】
加圧ガスを供給するための好ましい手段は、液滴の蒸発に高速ガス流が使用される場合に有用である。
【0036】
代替の実施形態では、加圧ガスを使用する場合、フラッシングガス用の別個の入口も装置に含めることができる。この別個のフラッシングガスは、容器内へのさらなるガス流を生成し、それによって生成されたミストの排出を促進し、ミスト出口5から排出されるガス流中の液滴の拡散および蒸発を促進する。
【0037】
多くの滅菌溶液は、強力な酸化剤などの反応性の高い薬剤で構成されているため、装置は、通常、滅菌溶液の影響を及ぼさない耐久性のある材料で作られている。好ましい材料は、プラスチック、ガラス、または金属であり、より好ましい材料は、プラスチックまたはガラスである。例えば、過酸化水素を含む滅菌溶液を使用する場合には、金属を避けることが好ましい。
【0038】
本発明の装置は、例えば、本発明の方法に使用することができ、周囲温度で滅菌溶液から少なくとも部分的に蒸発したエアロゾルミストを生成および放出することも目的としている。前記した方法は、以下のステップを含む。
滅菌溶液が入っている容器にガス流を送り込むステップと、
容器を通るガス流を噴霧ユニット3へ導くステップと、
場合により、噴霧ユニット3に滅菌溶液を供給する別個のステップを使用して、噴霧ユニット3に滅菌溶液を提供するステップと、
噴霧ユニット3の内に滅菌溶液を噴霧し、これにより少なくとも部分的に蒸発した溶液の液滴を含むエアロゾルミストを形成するステップと、
ガス流とともに、形成されたエアロゾルミストを、ミスト出口5を介して容器の外へ導き、そこで残留する可能性のある細かいミスト液滴が高速で蒸発プロセスを継続するステップと、
を含む。
【0039】
この方法で使用されるガスは、任意のガスであってよく、好ましくは不活性ガス、より好ましくは窒素、二酸化炭素、酸素、アルゴン、または空気から選択されるガスであってよい。
【0040】
ガス流の助けを借りてミスト出口5に運ばれるエアロゾルミストは、溶液を微細な液滴に噴霧することによって形成され、好ましくは、
1つ以上のミストノズルを通して液体溶液を駆動させ、そこで生成されたガス流の高速噴流と液体溶液とを混合することにより、
1つ以上のミストノズルを通して液体溶液を高圧でポンプで送り込むことにより、
1つ以上の振動開口部を通して液体溶液を駆動させることにより、または、
1つ以上の超音波噴霧器を使用すること、もしくは、これらの代替器を2つ以上同時に使用することにより、
形成される。
【0041】
上述したように、噴霧ユニット3を滅菌溶液に浸漬するときに、この供給を省略することができるが、滅菌溶液は、任意に別個の供給ステップで噴霧ユニット3に供給されてよい。もし、使用する場合、滅菌溶液の別個の供給が、以下のステップにより行われることが可能である。
ベンチュリ効果によって生じた負圧により滅菌溶液を移送する1つ以上の真空放射器を使用すること、
1つ以上の液体ポンプを使用して滅菌溶液を汲み上げること、または、
重力を利用して滅菌溶液を供給すること、
により行われることが可能である。
【0042】
本発明の方法は、衝突によって、好ましくは、容器の壁の表面のように、容器の表面に液滴を衝突させることによって、あるいは、埋伏ターゲットの表面に液滴を衝突させることによって、ガス流から滅菌溶液の液滴の一部を分離することを特徴とし、これにより、衝突した液滴が、ガス流から分離される。
【0043】
一般に、最大液滴は、表面に衝突し、ガス流から分離されるか、より小さな液滴に噴霧されるため、ガス流とともにミスト出口5に運ばれるエアロゾルミストには、比較的小さな液滴のみが含まれ、そして、それらは、周囲温度で容易に蒸発する。
【0044】
ガス流から分離された最大液滴からの液体は、容器内の溶液に戻されることが好ましい。
【0045】
好ましい実施形態では、液滴の分離は、慣性分離を使用して、より好ましくはインパクタまたはサイクロンセパレータを使用して、最も適切には高速ガス流の軌道内に配置された埋伏ターゲットを使用して行われる。通常、ガス流によって捕捉された溶液の大きな液滴は、ターゲットに衝突し、より小さな液滴に霧化される、あるいは、溶液が再利用されることが可能な溶液リザーバ1に戻されるように配置される。
【0046】
液滴の一部の分離は、容器内でガス流の方向を強制的に変え、ミストを含む流れから大きな液滴を慣性分離させる位置で、容器内にミスト出口5を配置することによっても促進することができる。
【0047】
例えば、ガス入口2とミスト出口5とを、互いにある角度で配置することによって、大きな液滴をミストから分離することができる。これにより、ガス入口2からミスト出口5に向かって流れるガス流の軌道は、強制的に曲げられる。適切な角度は、60度から120度である。これにより、比較的大きな液滴が、ミスト出口5から放出されるのではなく、容器の壁に向かって誘導される。
【0048】
これらの技術の1つ以上を使用して、ガス流から液滴の一部を分離し、形成されたエアロゾルミスト内の液滴の直径は、ミストの最大液滴を含む液滴の一部の分離によって、通常、液滴直径<10μm、好ましくは、液滴直径<5μmに限定される。
【0049】
ミスト中に残る液滴のサイズが小さいため、蒸発は、自然発生し、その結果、蒸気を含むミストが生成される。このような小さな液滴の鋭い表面曲率によって蒸発が促進される。
【0050】
上述したように、この方法で使用されるガスは、任意の適切なガスとすることが可能である。特に、ガスは、窒素、二酸化炭素、酸素、アルゴンもしくは空気、または別の適切なガス、好ましくは空気から選択されることが可能である。
【0051】
高速ガス流を必要とするこれらの実施形態では、ガスは、好ましくは1バールを超える圧力、より好ましくは2バール-10バールの圧力などの高圧で供給される。1つの代替方法は、形成されたミストを容器から運び出すことを容易にするために、別個のフラッシングガスを使用することでもある。ガスは、上記のガスのリストから選択されることが可能である。
【0052】
滅菌溶液は、周囲温度で小さな液滴から蒸発するのに十分な揮発性を有する、1つ以上の滅菌剤を含む任意の溶液から選択されることが可能である。選択された滅菌剤に応じて、滅菌剤の100%溶液として使用されることも可能であるし、あるいは、水または他の溶媒で希釈されることも可能である。好ましい滅菌剤は、過酸化水素の水溶液であり、アンモニアまたは酢酸などの添加剤と混合されてよい。
【0053】
また、ガスは、オゾン、エチレンオキシド、アンモニア、塩素、二酸化塩素、二酸化窒素などの添加剤と混合されることが可能であり、滅菌プロセスをさらに強化し、相乗効果をもたらすことも可能である。
【0054】
好ましい実施形態では、滅菌溶液は、水中に過酸化水素を含む溶液であり、好ましくは、過酸化水素の濃度は、1vоl-%-100vоl-%であり、より好ましくは、過酸化水素の濃度は、30vоl-%-75vоl-%であり、さらに好ましくは、過酸化水素の濃度は、30vоl-%-65vоl-%であり、最も適切には、過酸化水素の濃度は、35vоl-%-50vоl-%であり、このような方法で、過酸化水素蒸気が生成される。
【0055】
1つの代替法は、また、酢酸を好ましい過酸化水素溶液に添加することであり、特に、10質量%以下の濃度で、好ましくは、7質量%以下の濃度で、そして最も適切には、約5質量%の濃度で、添加することである。
【0056】
上述の装置および方法は、例えば、対象容積内の空気および表面を、消毒または除染する場合、好ましくは、部屋またはエアダクトなどの密閉された空間での用途に適している。このような用途では、本発明のミストは、低濃度で十分であり、例えば、濃度150ppm-1000ppmで、ミストを5分より長く、好ましくは、1時間より長く、反応させる。
【0057】
開示される本発明の実施形態は、本明細書に開示される特定の構造、プロセスステップ、または材料に限定されず、関連技術の当業者によって認識されるように、その等価物にまで拡張されることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみに使用されており、限定されることを意図していないことも理解されるべきである。
【0058】
本明細書全体にわたる一実施形態への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所に現れる「一実施形態において」または「実施形態において」という語句は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。例えば、約または実質的などの用語を使用して数値に言及する場合、正確な数値も開示される。
【0059】
本明細書で使用される場合、複数の品目、構造要素、構成要素、および/または材料は、便宜上、共通のリストで提示される場合がある。ただし、これらのリストは、リストの各要素が別個の一意の要素として個別に識別されるように解釈されるべきである。さらに、本発明のさまざまな実施形態および例が、そのさまざまな構成要素の代替案とともに本明細書で参照されてよい。このような実施形態、実施例、および代替案は、互いに事実上の等価物として解釈されるべきではなく、本発明の別個の自律的な表現として考慮されるべきであることが理解される。
【0060】
さらに、記載された特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。この説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が提供される。しかしながら、当業者は、本発明が1つ以上の特定の詳細がなくても実施できることを認識するであろう。
【0061】
前述の例は、1つ以上の特定の用途における本発明の原理を説明するものであるが、発明能力を行使することなく、また、本発明の原理および概念から逸脱することなく、形態、使用法、および実施の詳細における多くの修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、以下に記載の特許請求の範囲による場合を除き、本発明が限定されることは意図されていない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の装置および方法は、熱を加えない高効率な蒸気の発生に使用されることが可能であり、一般に、様々な滅菌溶液の蒸気を含むミストを生成および放出するための従来の装置の代替として使用されることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 リザーバ
2 ガス入口
3 噴霧ユニット
4 任意の供給システム
5 ミスト出口
6 慣性分離ユニット
7 ガス分配器
【国際調査報告】