(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】気中浮遊及び表面付着汚染物質を処置するための過酸化物強化殺菌照射
(51)【国際特許分類】
A61L 2/20 20060101AFI20240705BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20240705BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20240705BHJP
A61L 9/015 20060101ALI20240705BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20240705BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20240705BHJP
F24F 8/22 20210101ALI20240705BHJP
F24F 8/133 20210101ALI20240705BHJP
【FI】
A61L2/20 106
A61L2/10
A61L9/01 E
A61L9/015
A61L9/20
A61L9/14
F24F8/22
F24F8/133
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579281
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 US2022035156
(87)【国際公開番号】W WO2022272169
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス マーク
(72)【発明者】
【氏名】ビーシアダ エマリー
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA19
4C058BB06
4C058BB07
4C058CC02
4C058JJ16
4C058JJ21
4C058KK02
4C058KK21
4C058KK28
4C180AA07
4C180AA17
4C180CA01
4C180CA10
4C180DD03
4C180EA16X
4C180EA53X
4C180EA54X
4C180HH19
(57)【要約】
様々な気中浮遊又は表面付着汚染物質を処置するためのシステム及び方法において、UVエアロゾル技術を過酸化水素蒸気又はエアロゾルの使用と組み合わせて、有力な大気中濃度の反応性酸素含有ラジカルを作製し、該反応性酸素含有ラジカルが、気中浮遊又は表面付着汚染物質と反応して、これらの物質を不活化、消毒、酸化、転位、除去及び/又は別法で処置し、それによって屋内空気及び/又は表面の消毒を達成する、システム及び方法を本明細書中に記載する。この技術は、本明細書では、過酸化物強化殺菌照射(PEGI)と称する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質を処置するための方法であって、
過酸化水素蒸気又はエアロゾルを密閉空間中へ流すことと、
前記過酸化水素蒸気又はエアロゾルと紫外光との間の相互作用が反応性酸素含有ラジカルを生成するように前記過酸化水素蒸気又はエアロゾルに紫外光を照射することと、
密閉空間内に位置する汚染物質を前記反応性酸素含有ラジカルに晒し、それによって前記汚染物質を不活化、消毒、酸化、転位及び/又は除去することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記密閉空間が、暖房、換気、及び空調(HVAC)システムの一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記過酸化水素を流すことが、過酸化水素を1ppm未満の濃度で流すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記過酸化水素蒸気又はエアロゾルに紫外光を照射することが、前記過酸化水素蒸気又はエアロゾルに、約200nm~約280nmの波長を有する紫外光を照射することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記汚染物質が、感染性微生物、アレルギー誘発物質、微生物毒素、微生物アレルゲン、細菌、真菌胞子、及びウイルスのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応性酸素含有ラジカルがヒドロキシルラジカルである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記密閉空間内に位置する前記汚染物質が、気中浮遊汚染物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記密閉空間内に位置する前記汚染物質が、表面付着汚染物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記過酸化水素蒸気又はエアロゾルに紫外光を照射することが、前記過酸化水素蒸気又はエアロゾルに、第1の波長を有する紫外光を照射することと、前記過酸化水素蒸気又はエアロゾルに、第2の波長を有する紫外光を照射することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
汚染物質を処置するためのシステムであって、
過酸化水素蒸気又はエアロゾルを密閉空間中へ導入するように構成された過酸化水素源と、
前記密閉空間内に位置し、前記過酸化水素蒸気を照射して前記密閉空間内で反応性酸素含有ラジカルを形成するように構成された紫外光源と
を含むシステム。
【請求項11】
前記過酸化水素源が、前記密閉空間中に導入される過酸化水素蒸気又はエアロゾルの量を制御し、したがって前記密閉空間中に導入された過酸化水素の濃度が1ppm未満になるように構成された、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムが前記密閉空間を更に含み、前記密閉空間が、暖房、換気、及び空調(HVAC)システムの一部である、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記紫外光源が、1つ以上の紫外線発光ダイオードを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記過酸化水素蒸気又はエアロゾルが、前記紫外光源を通過して流れるように構成された、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記紫外光源が、約200nm~約280nmの範囲の波長で紫外光を発光するように構成された、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記密閉空間の少なくとも一部の内壁が紫外光を反射する、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記紫外光源が、第1の波長で紫外光を発光するように構成された第1の紫外光源と、前記第1の波長とは異なる第2の波長で紫外光を発光するように構成された第2の紫外光源とを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記密閉空間内に位置する気中浮遊汚染物質を更に含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記密閉空間内に位置する表面付着汚染物質を更に含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
前記密閉空間内の前記過酸化水素を移動させるための、並びに前記過酸化水素から形成されるラジカル及び前記密閉空間内に位置する汚染物質間の相互作用を促進するための手段を更に含む、請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、全内容が参照による本明細書に組み込まれる、2021年6月25日に出願された米国仮特許出願第63/214,919号についての米国特許第119条(e)による優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、気中浮遊汚染物質及び表面付着汚染物質を含めた汚染物質を処置するための方法及びシステムに関する。より具体的には、本開示は、気中浮遊であろうと表面上に位置しようと様々なタイプの汚染物質を酸化させるようにUV照射によって活性化される過酸化水素蒸気及び/又はエアロゾル液滴を利用する方法及びシステムを記載する。
【背景技術】
【0003】
都市環境において、多くの人は、彼らの時間の90%超を、空気が必ず調節されて浮遊微生物への曝露が屋外より顕著に高い屋内で過ごしている。そのため、屋内空気の衛生が、特に高密度の公共建物及び医療の場において、公衆衛生及びインフラ上の優先順位として関心が高まっている。しかしながら、屋内空気の衛生のための既存の技術は、有効、包括的、適応可能、安全、経済的、且つ簡易化された解決をもたらすには達しない。
【0004】
一般的に言えば、消毒用のエアロゾル化学的殺生物剤又はHVAC系クレンジングの使用は、関連する環境衛生リスクのため、屋内の衛生の実用的な解決法ではなく、世界保健機関によって阻止されてきた。
【0005】
濾過及び紫外線(UV)照射が、数少ない経済的に存立できる大型構造の屋内空気処置の代替のうちに残る。しかしながら、屋内空気を消毒するために通常の殺菌性のUV波長(240nm超)を使用してきたが、該UV光の効果は、皮膚及び眼の癌を含めた人の健康上の懸念により居住者に入射又は反射され得ないその「視線」に限定される。加えて、高効率の濾過は、ほとんどの都市建築ストックにとって法外に高価なままである。更に、UVエアロゾル消毒は、環境条件(例えば、相対湿度(RH))に基づく可変効力を有し、市販のUVシステムは嵩高い水銀灯に頼り、該水銀灯の内容は毒性であり、取り扱い及び廃棄が危険である。また、UV単独は、微生物の毒素及びアレルゲンに対して有効ではない。
【0006】
HVAC消毒の最近の技術の一部は、燻蒸又は従来の紫外線殺菌照射(UVGI)を用いる。しかしながら、上述したものと同じ嵩及び潜在的に危険なUV機器に頼ることに加えて、UVGIは空中アレルゲンに影響を持たない。
【0007】
既存の固体表面の消毒法が、高価、非効率であり得、且つ/又は健康及び環境リスクをもたらす可能性があるという点で、同様の問題が固体表面の消毒に関して存在する。
【0008】
これに応じて、改善された衛生システム及び方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0009】
この発明の概要は、以下の発明を実施するための形態で更に記載する簡易化された形態の選集された概念を導入するために提供される。この発明の概要及び前述の背景技術は、特許請求の範囲の主題の重要な側面又は必須の側面を特定することを意図しない。その上、この発明の概要は、特許請求の範囲の主題の範囲の決定に役立つものとして使用することを意図しない。
【0010】
一部の実施形態において、汚染物質を処置するための方法であって、過酸化水素蒸気又はエアロゾルを密閉空間中へ流すステップと、過酸化水素蒸気又はエアロゾルと紫外光との間の相互作用が反応性酸素含有ラジカルを生成するように過酸化水素蒸気又はエアロゾルに紫外光を照射するステップと、密閉空間内に位置する汚染物質を反応性酸素含有ラジカルに晒し、それによって汚染物質を不活化、消毒、及び/又は除去するステップとを一般に含む方法を記載する。
【0011】
一部の実施形態において、汚染物質を処置するためのシステムであって、過酸化水素蒸気又はエアロゾルを密閉空間中へ導入するように構成された過酸化水素源と、密閉空間内に位置し、過酸化水素蒸気を照射して密閉空間内で反応性酸素含有ラジカルを形成するように構成された紫外光源とを一般に含むシステムを記載する。
【0012】
本明細書に記載のこれらの態様及び他の態様は、本明細書中の発明を実施するための形態及び図面を検討した後に明らかになるであろう。しかしながら、特許請求の範囲の主題の範囲は、発行された請求項によって決定されるものであり、所与の主題が、背景技術に注記される任意の若しくは全ての問題に対処するか、又は発明の概要に列挙される任意の特徴若しくは態様を含むかによって決定されるものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本明細書に記載の様々な実施形態による汚染物質の処置方法を示すフローチャートである。
【
図2】本明細書に記載の様々な実施形態による汚染物質の処置方法の反応及び機構の簡易図である。
【
図3】本明細書に記載の様々な実施形態による汚染物質の処置において使用するシステムの概略図である。
【
図4A】気中浮遊汚染物質に対するUVGI不活化応答の結果を示すグラフである。
【
図4B】気中浮遊汚染物質に対する低い相対湿度でのPEGI及びUVGI不活化応答の結果を示すグラフである。
【
図4C】気中浮遊汚染物質に対する高い相対湿度でのPEGI及びUVGI不活化応答の結果を示すグラフである。
【
図5】気中浮遊汚染物質に対する様々な濃度でのPEGI不活化応答の結果を示すグラフである。
【
図6A】UV波長222nm、密閉空間体積1m
3、及び相対湿度25%での気中浮遊汚染物質のPEGI及びUVGI不活化の結果を示すグラフである。
【
図6B】UV波長254nm、密閉空間体積9m
3、及び相対湿度60%での気中浮遊汚染物質のPEGI及びUVGI不活化の結果を示すグラフである。
【
図7A】人工皮革上の表面付着汚染物質のPEGI及びUVGI不活化の結果を示すグラフである。
【
図7B】ポリカーボネート上の表面付着汚染物質のPEGI及びUVGI不活化の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
様々な汚染物質を処置するためのシステム及び方法において、UVエアロゾル技術を過酸化水素蒸気又はエアロゾルの使用と組み合わせて、有力な大気中濃度のヒドロキシルラジカル及び/又は他の酸化性ラジカルを作製し、該ラジカルが、気中浮遊であろうと表面付着であろうと、汚染物質と反応し、これらの物質を不活化、消毒、酸化(一部又は完全)、転位、及び/又は除去し、それによって、例えば屋内空気及び様々な物質の表面の消毒及び/又は浄化を達成する、システム及び方法を本明細書中に記載する。この技術は、本明細書では、過酸化物強化殺菌照射(PEGI)と称する。PEGIは、これらに限定されないが、気中浮遊過酸化水素を活性化して、含まれる環境内で反応性酸素含有種(限定されないがヒドロキシルラジカルを含む)を形成する全UV波長(>200nm)の使用を含み得る。本明細書に記載の方法及びシステムは、一般に、非バルク液体環境に関し、そのようなものとして、例えば、飲料水又は廃水を処置するための方法及びシステムと混同すべきではない。
【0015】
図1を参照して、本明細書に記載の一部の実施形態による汚染物質を処置するための方法100は、過酸化水素蒸気又はエアロゾルを密閉空間に通す又は密閉空間中へ流すステップ110と、過酸化水素蒸気と紫外光との間の相互作用が反応性酸素含有種(例えば、ヒドロキシルラジカル)を生成するように過酸化水素蒸気に紫外光を照射するステップ120と、汚染物質を反応性種に晒すことによって汚染物質を不活化、消毒、酸化、転位、及び/又は除去するステップ130とを含んでもよい。
【0016】
ステップ110では、過酸化水素蒸気又はエアロゾルを密閉空間中に流す。一部の実施形態において、用語「密閉空間」は、本明細書では、任意の密閉区域、屋内の部屋、又は通路等を示すために用いられる。一部の実施形態において、密閉空間は、構造体全体又はその一部にわたる空気の通行及び/又は循環に用いられる。非限定的な一例において、密閉空間は、暖房、換気、及び空調(HVAC)システムの一部又は全部、例えばHVACシステムのダクト又は一連のダクトである。
【0017】
密閉空間は、表面を含んでもよく、且つ/又はその中に含まれていた表面上に位置する汚染物質を有し得る。例えば、密閉空間は、一連の壁によって画定されていてもよく、該壁上に汚染物質が配置され得る。密閉空間がHVACシステムのダクトを含む非限定的だが特定の一例において、ダクトの壁の内面上に汚染物質が配置され得る。他の実施形態において、密閉空間部分を構成しない表面が密閉空間内に位置することがあり、その表面上に汚染物質が位置し得る。例えば、様々な異なる物体のいずれかが、密閉空間内に位置することがあり、これらの物体の1つ以上の表面(例えば、外面)上に汚染物質が配置し得る。非限定的な一例では、テーブル、椅子(車椅子を含む)、カウンタートップ又は任意の他の建築付属品が密閉空間内に配置され得、その表面上に汚染物質が配置され得る。
【0018】
過酸化水素蒸気又はエアロゾルを、任意の好適な技術を使用し、且つ任意の好適な機器を使用して、密閉空間中に流すか、又は別法で導入することができる。一部の実施形態において、過酸化水素蒸気又はエアロゾル源は、密閉空間に隣接して設けられ、過酸化水素蒸気又はエアロゾルを過酸化水素源から密閉空間へ通す手段、例えば過酸化水素源から密閉空間に達することができるポンプ及び管類を使用する手段を含む。密閉空間は、ポート、バルブ、又は過酸化水素蒸気又はエアロゾルを密閉空間の内部中へ導入する上での使用に適した他のタイプの開口部を含んでもよい。他の実施形態において、1つ以上のファンを使用して過酸化水素蒸気又はエアロゾルを密閉空間中へ推進させてもよい。
【0019】
一部の実施形態において、流量制御機器を設けることによって、密閉空間中に導入される過酸化水素蒸気又はエアロゾルの量を正確に制御することができる。一部の実施形態において、密閉空間中に導入される過酸化水素の濃度は、流量制御機器によって制御される。例えば、流量制御機器は、密閉空間中に導入される過酸化水素の濃度が、地方、州、及び/又は連邦機関によって設定された保健規則を超えないことを確実にするために使用することができる。一部の実施形態において、密閉空間中に導入される過酸化水素の量は、使用される過酸化水素の量がOSHA規格に準拠するように、1ppmv未満に制御される。一部の実施形態において、過酸化水素は、350ppb未満、35ppb未満、又は3ppb未満の量で導入されるが、他の任意の規制に準拠した量も使用され得る。
【0020】
保健規則、人の安全などが適応できない一部の実施形態において、過酸化水素の濃度は1ppm超であり得る。例えば、未占有空間中、使用される過酸化水素の濃度は1ppm超であってもよく、場合によっては、実質的に1ppmより高くてもよい。本明細書に記載のシステム及び方法が、例えば、過酸化水素のみ又はUV光のみと比較して、迅速に汚染除去を促進するため、例えば燻蒸シナリオにおける1ppm超の濃度の使用は、未占有空間の好都合の汚染除去をもたらすことができる。本明細書に記載の方法及びシステムにおいて使用されるUV強度についても同様である。UV光強度は、占有空間の処置における保健規制によって制限され得るが、そのようなUV光強度の制限は、未占有空間中で緩和され得る又は完全に除去され得る。
【0021】
上述したように、過酸化水素は、蒸気若しくはエアロゾル液滴又は両方の形態で密閉空間中に導入される。そのようなものとして、過酸化水素を密閉空間中に導入する手段は、蒸気の形態及び/又はエアロゾルの形態の過酸化水素を生成する手段を含み得る。例えば、密閉空間に隣接して位置する過酸化水素源が液体の形態の過酸化水素を貯蔵する場合、過酸化水素を該源から密閉空間へ通過させる手段は、液体の過酸化水素を蒸気及び/又はエアロゾル液滴の形態に蒸発、噴霧又は別法で変換する装置を含んでもよい。過酸化水素は、一部の実施形態では、他の成分と混合してもよい。非限定的な一例において、過酸化水素は、過酸化水素を安定化する又はそうでなければその反応性に影響を与えるのに役立つ他の化学物質と混合される。
【0022】
密閉空間中に導入されると、過酸化水素蒸気又はエアロゾルは、密閉空間の周囲を流れることができ、密閉空間内の気流の方向が既に存在していれば密封空間を通ることもある。例えば、過酸化水素蒸気又はエアロゾルをHVACシステム中に導入する場合、過酸化水素は、HVACシステムを通る気流の方向で流れ始め得る。また、過酸化水素は、HVACシステムを通って流れる空気及び空気中の他の任意の構成成分(例えば、汚染物質)と混合及び/又は散在する。過酸化水素はまた、密閉空間内に位置する任意の表面(密閉空間を画定する壁の内面を含む)とも接触する。
【0023】
密閉空間の内部の、周囲の、及び/又は密閉空間を通る過酸化水素蒸気又はエアロゾルの移動を促進するために、1つ以上のファン又は過酸化水素を推進/移動させる他の手段を設けてもよい。また、1つ以上のファン又は過酸化水素を推進/移動させる他の手段を使用して、過酸化水素(又は以下で詳述する過酸化水素から形成されるラジカル)と密閉空間内に位置する任意の表面との接触を促進することもできる。
【0024】
一部の実施形態において、密閉空間中に導入される過酸化水素蒸気又はエアロゾルを一時的に密閉空間内に存在させた後、以下で詳述するステップ120の通りに過酸化水素にUV光を照射する。過酸化水素を密閉空間中に導入した後から過酸化水素にUV光を照射する前までの時間の間、過酸化水素は、密閉空間内に位置する汚染物質(気中浮遊であろうと表面付着であろうと)と接触し得る。UV光の照射前に過酸化水素が密閉空間中に維持される具体的な時間は、概して限定されない。一部の実施形態において、この時間は、ものの数分又は数時間(例えば、5分、15分、30分、1時間、2時間、3時間など)であり得るが、他の実施形態では、この時間は、より長時間、例えば、ほぼ半日、一日、又は数日程度のこともある。
【0025】
ステップ120において、密閉空間中に導入される過酸化水素蒸気又はエアロゾルに紫外光を照射し、それによって過酸化水素から反応性酸素含有ラジカルを生成する。任意の好適な装置を使用して紫外光照射を適用する任意の好適な方法を用いて、ステップ120を実施することができる。一部の実施形態において、密閉空間中に導入される過酸化水素がUV光によって照射され得るように、UV光源を密閉空間内に設ける。
【0026】
一部の実施形態において、密閉空間内にUV光源を位置することによってUV光を提供する。UV光源は限定されず、一部の実施形態では、例えば、狭帯域又は広帯域のいずれかのUV光波長を発光できる1つ以上のUVランプ又は1つ以上のUV発光ダイオードであってもよい。他のUV光源、例えば、Hg灯、KrCl源及び他のエキシマ又は固体式UV光源も使用できる。空気が密閉空間を通る方向に流れる一部の実施形態において、UV光源は、過酸化水素が密閉空間中に導入される位置の下流に位置され得る。このようにして、全ての過酸化水素蒸気又はエアロゾルが下流を流れ、密閉空間中に導入される大部分の又は全ての過酸化水素が反応性酸素含有ラジカルに変換されるようにUV光源を通過する可能性が高くなる。
【0027】
ステップ120で使用したUV光の特定波長は、概して限定されない。一部の実施形態において、波長は、約200nmから約280nmの範囲である。一部の実施形態において、2つ以上のUV光源を設けてもよく、各UV光源は異なるUV光波長を提供する。例えば、一部の実施形態において、波長260nmのUV光を発光する第1のUV発光ダイオード(又は一連のUV LED)に後続して、約280nmの波長のUV光を発光する第2のUV LED(又は一連のUV LED)が設置される。密閉空間を通ってUV光源を通過して流れる過酸化水素は、先ず260nmのUV光で照射され、次いで280nmのUV光で照射される。任意の組合せのUV波長を生成するUV光源を任意の順序でいくらでも使用することができる。
【0028】
密閉空間内のUV光源の特定の位置は、概して限定されない。一部の実施形態において、UV光源は、UV光が密閉空間の側面から密閉空間中に投射されるように、密閉空間の壁の内面上に配置される。他の実施形態において、UV光源は、例えば密閉空間の壁から密閉空間の内部空間へ延伸するスタンド又はポールを使用して、スタンド又はポールの終端にUV光源を位置させ、密閉空間の中心に配置される。そのような実施形態において、UV光は、UV光源からの全ての又はほぼ全ての方向に投射され得る。本明細書に記載の方法及びシステムにおいて使用されるUV光源はまた、本明細書に記載の方法の前、その間、又はその後のいずれかで、UV光源の位置を手動で又は自動的に変更又は調節できるように、移動式UV光源であってもよい。そのような移動式UV光源は、医療の場の表面を処置するために採用される構成に特によく適し得る。
【0029】
より静的な環境では、密閉空間を通ってUV光を過ぎる過酸化水素の移動を促進するため且つ(以下で詳述する通りに)形成されるラジカルと汚染物質(気中浮遊又は表面付着に関わらず)との間の相互作用を促進するために、追加のステップ及び/又は装置を用いることがある。例えば、ファン及びインペラ等を使用して、密閉空間内の流れ及び混合を促進することができる。
【0030】
ステップ130において、ステップ120で生成されたラジカルは、密閉空間内のいずれかに位置する汚染物質(気中浮遊及び表面付着汚染物質の両方を含む)と相互作用する。これらの相互作用は、汚染物質の不活化、消毒、除去、及び/又は別法の処置につながる。
図2は、微量程度(即ち、ppb)の過酸化水素210をUV光220に晒し、それによってヒドロキシルラジカル230を形成し、後続してヒドロキシルラジカル230が汚染物質240(例えば、細菌、真菌胞子、ウイルス等)と相互作用して汚染物質240を不活化、消毒、転位、酸化及び/又は除去する、このプロセス図を提供する。不活化、消毒、転位、酸化及び/又は除去されたら、汚染物質240は、処置された汚染物質240aになり、もはや人の健康に脅威を与える又は人の健康に与える脅威を低減する特性を保持しない。そのようなものとして、用語「処置された」は一般に、汚染物質が人の健康に脅威を与える又は人の健康に与える脅威を低減する特性をもはや保持しないような、汚染物質の不活化、消毒、転位、酸化、除去の又は汚染物質を変質される他の任意の手段を全て包含するために使用され得る。
【0031】
本明細書で考察するように、ステップ120で生成されたラジカルは、汚染物質を不活化、消毒、除去及び/又は別法で処置するために使用される。本明細書で使用される汚染物質という用語は、広い範囲を有することが意図され、(これらに限定されないが)人間の活動によって発生するバイオエアロゾル、感染性微生物、アレルギー誘発物質、微生物の毒素、微生物アレルゲン、細菌、真菌胞子、ウイルス、これらの構成部分及び他の任意の殺菌剤を挙げることができる。汚染物質は、生物由来及び/又は非生物由来物質を含み得る。表面付着汚染物質に関しては、これに、(これらに限定されないが)恒久的に又は一時的に表面に付着され得る前述のタイプの汚染物質が含まれ得る。本明細書に記載のシステム及び方法は、媒介物及びバイオフィルムとしての表面上のエアロゾル及び粒状物質に適応可能であり、これらが該表面上に存在してきた時間若しくは該表面上に存在することになる時間、又はこれらの生物起源、生体高分子含有量及び無機物含有量は関係ない。特定であるが非限定的な一実施形態では、汚染物質はCoVID-19を含む。
【0032】
過酸化水素のUV照射によって生成されるラジカルは、過酸化水素とUV光との相互作用によって発生される又は発生され得る任意の反応性酸素含有ラジカルであってもよい。形成されるラジカルは、一般的に言えば、酸化性ラジカルである。非限定的な一例において、ラジカルはヒドロキシルラジカルである。しかしながら、ラジカルは、ヒドロキシルラジカル以外の他のタイプでもよい。使用可能な他のラジカルの非限定的な例としては、過酸化物、HO2-、HO2・-、及びO2・-が挙げられる。一般的に言えば、語句「反応性酸素含有ラジカル」及びその型は、過酸化水素にUV光を照射することによって発生され得る全ての下流の反応性酸素含有ラジカルを含むと解釈すべきである。
【0033】
方法100を、過酸化水素を密閉空間中に連続的に供給し、後続して過酸化水素にUV光を照射する方法として例示及び説明してきたが、ステップの順序は変更することができ且つ/又は連続的に実施できることを理解すべきである。例えば、過酸化水素は、過酸化水素にUV光を照射するのと同時に密閉空間中に導入してもよい。また、過酸化水素を密閉空間中に導入する前に、過酸化水素にUV光を照射することも可能であり得る。そのような実施形態において、密閉空間中に導入される材料は、過酸化水素と既に形成された反応性酸素含有ラジカルとの組合せであってもよい。
【0034】
図3は、本明細書に記載の方法の実施形態を実施する上で使用するのに適したシステム300の概略図を提供する。システム300は一般に、密閉空間310と共に導入又は使用され、
図3中、これは、円筒形通路によって表され、該円筒形通路を通じて空気が(
図3に示すように左から右へ)流れることができ、一部の実施形態では、HVAC通路、運搬用車両、地上若しくは地下のトンネル、又は他の任意の屋内建物フィーチャ若しくは付属品であってもよい。
図3はエンドウ系の形状を有する密閉空間310を示すが、密閉空間310の特定の形状及び寸法は限定されないことを理解すべきである。
【0035】
一部の実施形態において、密閉空間310の少なくとも一部の内面は反射性である。例えば、全内面が反射性であってもよく、又はUV光源330に隣接した一部の内面が反射性であってもよい。少なくとも一部の内面に反射性の特性を持たせることによって、UV光源330から発光されたUV光が、UV光と過酸化水素との間で前後に反射し、それによってUV光と過酸化水素との間の相互作用の機会を増やして所望のラジカルを生成するのを確実にすることを助けることができる。反射性コーティングの適用又は天然に反射性の材料の使用を含めた、反射性内面を設ける任意の方法を用いることができる。反射性表面を設けるために使用される特定の材料又はコーティングも限定されないが、一部の実施形態では、反射性材料又はコーティングがUV光に対して反射性であることが好ましい。
【0036】
システム300は、過酸化水素を密閉空間310中に供給するための過酸化水素源320を更に含む。上記で詳述したように、過酸化水素源320に使用された特定の機器は限定されないが、但し過酸化水素源320は、密閉空間310中に、制御可能な量の過酸化水素蒸気又はエアロゾル液滴を供給できるものとする。過酸化水素源320の一部とすることができる例示的な機器は、これらに限定されないが、圧電式分配器、ポンプ、輸送管類、蒸気又はエアロゾル液滴の形態で過酸化水素を供給する手段(例えば、噴霧器)等を含む。また、
図3で示し、前述したように、密閉空間310は、ポート、バルブ、又は他のタイプの入口を含んでもよく、それによって、過酸化水素源320によって供給される過酸化水素を密閉空間310中に導入することができる。
【0037】
システム300は、UV光源330を更に含む。前述したように、UV光源330に使用した特定の機器は限定されず、例えば、1つ以上のUVランプ、1つ以上のUV LED、1つ以上のエキシマ源、1つ以上の固体式源、又はUV光を発光する他の任意の機器を含んでもよい。
図3に示す例示的な実施形態において、UV光源330は、2つのUV光源を含み、それぞれ異なる波長のUV光を発光する。UV LED配列であり得る第1のUV光源は、例えば260nmのUV光を発光でき、一方でUV LED配列である第2のUV光源は、例えば280nmのUV光を発光できる。前述したように、任意の組合せのUV光源タイプ、波長、UV光源の数などを使用することができる。同様に、
図3は、密閉空間310の上部に位置するUV光源330を例示しているが、UV光源330の正確な位置、配向などは限定されないことを理解すべきである。
【0038】
図3に示すように、システム300は、空気が密閉空間310を通って左から右へ流れ、過酸化水素源320が密閉空間の上流終端に位置し、UV光源330が過酸化水素源320入口の下流に位置するように設計されている。この構成は、密閉空間310中に導入される全ての過酸化水素がUV光源330を通過して流れることを確実にするのを助け、ひいては密閉空間310中に導入される全ての過酸化水素がラジカル(特に、
図3に示すようにヒドロキシルラジカル)に変換されることを確実にするのを助ける。しかしながら、他の構成、例えばUV光源320とほぼ同じ位置の密閉空間310中に過酸化水素が導入される構成も使用できることを理解すべきである。気流が、密閉空間310を通る過酸化水素の流れの方向への影響ほどの効果がない、より静的な環境では、過酸化水素源320入口及びUV光源330の互いに対する特定の位置は、更に重要でなくなる可能性があり、より多くの設計の選択肢が可能になる。
【0039】
図3に示さないが、本明細書で開示する技術の特定の用途のために必要に応じて、システム300の一部として追加の機器を設けてもよい。例えば、過酸化水素の流れを促進し且つ過酸化水素と処置される空気とを混合するためのファン又はインペラ等及び/又はUV光源をシステム300内の様々な位置に設置することができる。
【実施例】
【0040】
本明細書に記載のPEGI技術の模擬HVAC環境におけるバイオエアロゾル不活化効果を決定するために実験を実施し、対照設定及び標準紫外線殺菌照射(UVGI)(即ち、過酸化水素を導入せずにUV照射のみを行う)と比較した。システムのセットアップは、
図3に示したものと類似しており、制御システムはUV又は過酸化水素の処置をせず、UVGIはUV光処置(様々な波長で試験され、種々の組合せのUV光源を使用する)のみを使用し、PEGIは過酸化水素及びUV光処置の両方(様々な波長で試験され、種々の組合せのUV光源を使用し、また、過酸化水素濃度が可変である)を使用する。空中浮遊細菌(枯草菌(B. subtilis))をモデルシステムに導入した。相対湿度の変化量も試験して、バイオエアロゾル不活化に及ぼす影響を決定した。
【0041】
PEGIモデルを分析するために設計されたある試験では、システム中に導入された過酸化水素は、350ppbv、35ppbv、及び3ppbvの濃度で試験された。
【0042】
図4Aは、UVGI不活化応答に実施された試験結果を示すグラフを提供する。UVGIを低湿度(<20%)及び高湿度(80~90%)で、且つ260nm、280nm、260+280nmの各波長で試験した。
図4Aに示すように、260nmのUVGIの「Z値」(フルエンスによって正規化された不活化)が最悪に機能した(即ち、結果の10%が280nmで達成した)。
【0043】
図4Bは、PEGI法において350ppb
vの濃度の過酸化水素を使用し、低い相対湿度で空中消毒するためのUVGIと比較したPEGIの性能を示すグラフを提供する。
図4Bに示すように、PEGIは、試験した全ての波長及び波長の組合せでより良好に機能した。
【0044】
図4Cは、PEGI法において350ppb
vの濃度の過酸化水素を使用し、高い相対湿度で空中消毒するためのUVGIと比較したPEGIの性能を示すグラフを提供する。
図4Cに示すように、PEGIは、260+280nmの波長でより良好に機能した(PEGIは、高い相対湿度で、260nmで個別に又は280nmで個別に試験しない)。
【0045】
図4Dは、
図4A~
図4Cの結果をまとめて試験の総合比較を提供する。260nmで、低RHでのPEGIは、低RH又は高RHでのUVGIより良好に機能し、280nmで、低RHでのPEGIは、低RH又は高RHでのUVGIより良好に機能し、260+280nmで、低RHでのPEGIは最良に機能した一方で、低RH又は高RHでのPEGIは、低RH又は高RHでのUVGIより良好に機能した。
【0046】
図5では、PEGIは、260+280nmを使用して、様々な濃度で分析される。結果は、350ppbでのPEGIで最良の性能を示すが、3ppb程度に低い濃度でもUVのみを超えてPEGIの顕著な改善が更にみられる。
【0047】
図6Aは、222nmのUV波長及び25%の相対湿度を使用した1m
3の密閉空間体積に対するUVGIと比較したPEGIの性能を示すグラフを提供する。密閉空間中で供給された気中浮遊汚染物質は、バクテリオファージMS2ウイルスだった。
図6Aに示すように、MS2の濃度の低減は、UVGI又は対照のいずれかと比較してPEGIでは実質的により迅速だった。
【0048】
図6Bは、254nmのUV波長及び60%の相対湿度を使用した9m
3の密閉空間体積に対するUVGIと比較したPEGIの性能を示すグラフを提供する。密閉空間中で供給された気中浮遊汚染物質は、バクテリオファージMS2ウイルスだった。
図6Bに示すように、MS2の濃度の低減は、UVGI、過酸化水素のみ、又は対照と比較してPEGIでは実質的により迅速だった。
【0049】
図7Aは、密閉空間体積内部の表面付着汚染物質を不活化するためのUVGIと比較したPEGIの性能を示すグラフを提供する。表面付着汚染物質は、5m
3の密閉空間内に位置する人工皮革のクーポン上に配置された胞子形成バチルス胞子(Sporulated Bacillus spores)だった。UV波長は254nmであり、直接UV曝露及び遮蔽UV曝露の両方を試験した。
図7Aに示すように、PEGIは、直接及び遮蔽UV曝露の両方で、UVGI及び過酸化水素のみより優れていた。
【0050】
図7Bは、密閉空間体積内部の表面付着汚染物質を不活化するためのUVGIと比較したPEGIの性能を示すグラフを提供する。表面付着汚染物質は、5m
3の密閉空間内に位置するポリカーボネートのクーポン上に配置された胞子形成バチルス胞子だった。UV波長は254nmであり、異なる過酸化水素濃度(0.3%及び3.0%)を試験した。
図7Bに示すように、PEGIは、両方のH
2O
2濃度でUVGI及び過酸化水素のみより優れていた。
【0051】
実験要約:容量-応答パラダイムにおいて、UV-LEDによって誘導される気中浮遊及び表面付着汚染物質の消毒は、湿度レベルにかかわらず微量の過酸化水素によって顕著に強化された。UV-LEDが約102CFU/m3の汚染物質培養効率損失を誘導した場合、H2O2への共曝露は90ppbvと同程度に低いレベルであり、>105CFU/m3にわたって不活化応答が増加した。これらのレベルで、H2O2蒸気のみは、いずれの測定可能な消毒応答も誘導できなかった。これらの結果は、UV-LEDによって可能になる促進酸化プロセスが、構築環境の新しいエアロゾル消毒代替を提供する。
【0052】
ここで、環境的に制御された室内で、260nmの光の存在下、微量の過酸化水素でチャレンジしたとき、繰り返し可能な汚染物質消毒応答が気中浮遊枯草菌細胞(Bacillus subtilis cells)から観察できる。低い相対湿度(20% RH)で、PEGIは、UVGIエアロゾル消毒のみより少なくとも103倍有効であり、高い相対湿度(80%)で、PEGIは、UVGIのみより少なくとも1015倍有効だった。相乗的消毒応答は、UV LEDが模造HVACダクト中で0.5ppm未満のH2O2蒸気を活性化した室温で、5秒未満のPEGIで観察された。
【0053】
前述から、本発明の特定の実施形態は、例示目的で本明細書中に記載したが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更が可能であることを理解されたい。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって限定されない。
【0054】
技術を、特定の構造及び材料に特有の用語で説明してきたが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明は、必ずしも記載の特定の構造及び材料に限定される訳ではないことを理解されたい。むしろ、特定の態様は、請求される発明を実施するものとして記載される。本発明の多くの実施形態は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく実践できるため、本発明は、以下に添付する特許請求の範囲に属する。
【0055】
別段の指定がない限り、全ての数又は表現、例えば本明細書中(特許請求の範囲以外)で用いられる寸法、物理的特性等を表すものは、いかなる場合も用語「およそ」によって修飾されることを理解されたい。最低限でも、また特許請求の範囲への均等物の原則の適用を限定する試行としてではなく、用語「およそ」によって修飾される、本明細書又は特許請求の範囲に列挙される各数値パラメータは少なくとも、列挙された有効数字の数を考慮して、また概算方法を適用することによって解釈されるべきである。その上、本明細書で開示される全ての範囲は、任意の及び全ての部分は又はそれらの中に含まれる任意の及び全ての個々の値を列挙する特許請求の範囲を包含し且つ支持すると理解されるべきである。例えば、1~10の指定された範囲は、任意の及び全ての部分範囲又は最小値1及び最大値10の間の並びに/又はそれらを含む個々の値、即ち、最小値1又はそれ以上で開始し、最大値10又はそれ以下で終わる全ての部分範囲(例えば、5.5~10、2.34~3.56等)又は1~10の任意の値(例えば、3、5.8、9.9994等)を列挙する特許請求の範囲を含み且つ支持すると考えられるものとする。
【国際調査報告】