IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トゥルク ユリオピストの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】放射線検知材料
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/64 20060101AFI20240705BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20240705BHJP
   C09K 11/62 20060101ALI20240705BHJP
   C09K 11/88 20060101ALI20240705BHJP
   G01T 1/04 20060101ALI20240705BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C09K11/64
C09K11/00 E
C09K11/62
C09K11/88
G01T1/04
G02B5/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579295
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 FI2022050422
(87)【国際公開番号】W WO2022269128
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】20215742
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513317138
【氏名又は名称】トゥルク ユリオピスト
【氏名又は名称原語表記】Turun yliopisto
【住所又は居所原語表記】Yliopistonmaki, Turun yliopisto, 20014 Finland
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラストゥサーリ、ミカ
(72)【発明者】
【氏名】ポンッカ、イザベラ
(72)【発明者】
【氏名】バイロン、ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】クレイヴィラ、テッポ
【テーマコード(参考)】
2G188
2H148
4H001
【Fターム(参考)】
2G188KK02
2H148AA07
4H001XA03
4H001XA04
4H001XA05
4H001XA08
4H001XA09
4H001XA11
4H001XA12
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA16
4H001XA17
4H001XA19
4H001XA20
4H001XA31
4H001XA32
4H001XA34
4H001XA35
4H001XA37
4H001XA38
4H001XA52
4H001XA53
4H001XA55
4H001XA56
4H001XA85
4H001XA87
4H001XA88
4H001XB11
4H001XB21
4H001XB32
4H001XB42
4H001XB62
4H001XB72
4H001YA38
4H001YA56
4H001YA81
4H001YA82
4H001YA83
(57)【要約】
放射線検知材料が開示される。放射線検知材料は、下記式(I)で表される:(M1’8-2aM2’)(M’’14-(4b/3)M’’’)O24(X2-dcdX’ c-):M’’’’
式(I)。さらに、装置及び式(I)によって表される放射線検知材料の使用が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
(M1’8-2aM2’)(M’’14-(4b/3)M’’’)O24(X2-dcdX’ c-):M’’’’
式(I)
(式中、
M1’は、元素のIUPAC周期表の第1族から選択されるアルカリ金属の一価の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表し、
M2’は、元素のIUPAC周期表の第2族から選択されるアルカリ土類金属の二価の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表し、
M’’は、元素のIUPAC周期表の第13族から選択される元素の三価の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表し、
M’’’は、元素のIUPAC周期表の第14族から選択される元素の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表し、
Xは、元素のIUPAC周期表の第17族のハロゲンから選択される元素のアニオン、又はそのようなアニオンの任意の組み合わせを表し、
X’は、元素のIUPAC周期表の第16族のカルコゲンから選択される1又は複数の元素のアニオン、又はそのようなアニオンの任意の組み合わせを表し、
M’’’’は、元素のIUPAC周期表の希土類金属から、若しくは元素のIUPAC周期表の遷移金属から選択される元素のドーパントカチオン、又はBa、Sr、Tl、Pb若しくはBiのドーパントカチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表し、又は、M’’’’は存在せず、
aは、0.05~4の値であり、
bは、1~10の値であり、
cは、1、2、3、又は4の値であり、
dは、0超、2以下の値であり、
nは、1、2、3、又は4の値である)
で表される放射線検知材料。
【請求項2】
M1’の電荷は、1+であり、
M2’の電荷は、2+であり、
M’’の電荷は、3+であり、
M’’’の電荷は、4+であり、
Xの電荷は、1-であり、
X’の電荷は、0.5-~3.5-である、
請求項1に記載の放射線検知材料。
【請求項3】
M1’は、Li、Na、K、Rb、Cs、又はFrの一価の単原子カチオンを表す、請求項1又は請求項2に記載の放射線検知材料。
【請求項4】
M2’は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba又はRaの二価の単原子カチオンを表す、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の放射線検知材料。
【請求項5】
M1’は、Naの一価の単原子カチオンを表し、M2’は、Caの二価の単原子カチオンを表す、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の放射線検知材料。
【請求項6】
M’’は、Al及びGaからなる群より選択される金属の三価の単原子カチオン、又はBの三価の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表す、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の放射線検知材料。
【請求項7】
M’’’は、Si及びGeからなる群より選択される元素の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの組み合わせを表す、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の放射線検知材料。
【請求項8】
Xは、F、Cl、Br、I、及びAtからなる群より選択される元素のアニオン、又はそのようなアニオンの任意の組み合わせを表す、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の放射線検知材料。
【請求項9】
X’は、O、S、Se、及びTeからなる群より選択される1又は複数の元素の単原子若しくは多原子アニオン、又はそのようなアニオンの任意の組み合わせを表す、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の放射線検知材料。
【請求項10】
M’’’’は、Yb、Er、Tb、及びEuからなる群より選択される元素、若しくはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、W及びZnからなる群より選択される元素のカチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表す、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の放射線検知材料。
【請求項11】
前記放射線検知材料は、紫外線、X線、ガンマ線、赤外線、近赤外線、及び/又は粒子放射線検知材料である、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の放射線検知材料。
【請求項12】
前記放射線検知材料は、放射線への曝露時にその色を白色から黄色に変化させるフォトクロミック材料である、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の放射線検知材料。
【請求項13】
前記放射線検知材料は、電磁スペクトルの近赤外領域内の放射線を吸収する材料である、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の放射線検知材料。
【請求項14】
前記放射線検知材料は、発光材料、持続性発光を示す材料、及び/又は残光を示す材料である、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の放射線検知材料。
【請求項15】
請求項1~請求項14のいずれか一項に定義される放射線検知材料を含む装置。
【請求項16】
請求項1~請求項14のいずれか一項に定義される放射線検知材料に由来する材料。
【請求項17】
紫外線、X線、ガンマ線、赤外線、近赤外線、及び/又は粒子放射線の存在及び/又は強度を示すための、請求項1~請求項14のいずれか一項に定義される放射線検知材料の使用。
【請求項18】
消費者製品;セキュリティ装置;検出;イメージング;画像取得;ディスプレイ、スクリーン、ウィンドウ、又はタッチスクリーンソリューション;医学;薬物開発;及び/又は診断における光源としての、請求項1~請求項14のいずれか一項に定義される放射線検知材料の使用。
【請求項19】
抗体又は染色実体において、バイオマーカー検査キットにおいて、スクリーニングプラットフォームにおいて、及び/又はさらなる材料と組み合わせて、疾患を検出するための、請求項1~請求項14のいずれか一項に定義される放射線検知材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線検知材料に関する。本開示はさらに、装置、材料、及び放射線検知材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミズムは、電磁放射線の吸収による2つの形態間の化学種の可逆的変換と考えられ、2つの形態は異なる吸収スペクトルを有する。すなわち、フォトクロミズムは、放射線への曝露時の色の可逆的変化として説明することができる。フォトクロミズムは、通常、電磁スペクトルの可視部分の吸収バンドが強度又は波長において劇的に変化する可逆的光化学反応を受ける化合物を表すために使用される。可逆性フォトクロミック材料は、玩具、化粧品、衣類及び工業用途などの用途に見出すことができる。これに加えて、又は材料がフォトクロミックであることと代替的に、それは発光材料であってもよい。「発光」は、加熱されることなく光を発することができる材料の特性を指す。発光材料は、例えば照明用途で使用され得る。
【発明の概要】
【0003】
放射線検知材料が開示される。放射線検知材料は、下記式(I)で表される。
(M1’8-2aM2’)(M’’14-(4b/3)M’’’)O24(X2-dcdX’ c-):M’’’’
式(I)
【0004】
式中、
M1’は、元素のIUPAC周期表の第1族から選択されるアルカリ金属の一価の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表し、
M2’は、元素のIUPAC周期表の第2族から選択されるアルカリ土類金属の二価の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表し、
M’’は、元素のIUPAC周期表の第13族から選択される元素の三価の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表し、
M’’’は、元素のIUPAC周期表の第14族から選択される元素の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表し、
Xは、元素のIUPAC周期表の第17族のハロゲンから選択される元素のアニオン、又はそのようなアニオンの任意の組み合わせを表し、
X’は、元素のIUPAC周期表の第16族のカルコゲンから選択される1又は複数の元素のアニオン、又はそのようなアニオンの任意の組み合わせを表し、
M’’’’は、元素のIUPAC周期表の希土類金属から、若しくは元素のIUPAC周期表の遷移金属から選択される元素のドーパントカチオン、又はBa、Sr、Tl、Pb若しくはBiのドーパントカチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表し、又は、M’’’’は存在せず、
aは、0.05~4の値であり、
bは、1~10の値であり、
cは、1、2、3、又は4の値であり、
dは、0超、2以下の値であり、
nは、1、2、3、又は4の値である。
【0005】
さらに、本明細書に開示される放射線検知材料を備える装置が開示される。
【0006】
さらに、本明細書に開示される放射線検知材料に由来する材料が開示される。
【0007】
さらに、紫外線、X線、ガンマ線、赤外線、近赤外線、及び/又は粒子放射線の存在及び/又は強度を示すための、本明細書に開示される放射線検知材料の使用が開示される。
【0008】
さらに、消費者製品;セキュリティ装置;検出;イメージング;画像取得;ディスプレイ、スクリーン、ウィンドウ、又はタッチスクリーンソリューション;医学;薬物開発;及び/又は診断における光源としての本明細書に開示される放射線検知材料の使用が開示される。
【0009】
さらに、抗体又は染色実体において、バイオマーカー検査キットにおいて、スクリーニングプラットフォームにおいて、及び/又はさらなる材料と組み合わせて、疾患を検出するための本明細書に開示される放射線検知材料の使用が開示される。
【0010】
実施形態のさらなる理解を提供し、本明細書の一部を構成するために含まれる添付の図面は、実施形態を示し、説明と共に上記の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1a図1aは、粉末X線回折(XRD)測定の結果を示す。
図1b図1bは、粉末X線回折(XRD)測定の結果を示す。
図2a図2aは、反射率測定の結果を示す。
図2b図2bは、反射率測定の結果を示す。
図2c図2cは、反射率測定の結果を示す。
図3a図3aは、テネブレッセンス色発生測定の結果を示す。
図3b図3bは、テネブレッセンス色発生測定の結果を示す。
図3c図3cは、テネブレッセンス色発生測定の結果を示す。
図4a図4aは、フォトルミネッセンス測定の結果を示す。
図4b図4bは、フォトルミネッセンス測定の結果を示す。
図5a図5aは、持続発光測定の結果を示す。
図5b図5bは、持続発光測定の結果を示す。
図6図6は、熱発光測定の結果を示す。
図7図7は、黄色フォトクロミズムの写真を示す。
図8図8は、近赤外フォトクロミズムの写真を示す。
図9a図9aは、二重励起発光シミュレーション試験の結果を示す。
図9b図9bは、二重励起発光シミュレーション試験の結果を示す。
図10図10は、二重励起発光シミュレーション試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、放射線検知材料に関する。放射線検知材料は、下記式(I)で表される。
(M1’8-2aM2’)(M’’14-(4b/3)M’’’)O24(X2-dcdX’ c-):M’’’’
式(I)
【0013】
式中、
M1’は、元素のIUPAC周期表の第1族から選択されるアルカリ金属の一価の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表し、
M2’は、元素のIUPAC周期表の第2族から選択されるアルカリ土類金属の二価の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表し、
M’’は、元素のIUPAC周期表の第13族から選択される元素の三価の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表し、
M’’’は、元素のIUPAC周期表の第14族から選択される元素の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表し、
Xは、元素のIUPAC周期表の第17族のハロゲンから選択される元素のアニオン、又はそのようなアニオンの任意の組み合わせを表し、
X’は、元素のIUPAC周期表の第16族のカルコゲンから選択される1又は複数の元素のアニオン、又はそのようなアニオンの任意の組み合わせを表し、
M’’’’は、元素のIUPAC周期表の希土類金属から、若しくは元素のIUPAC周期表の遷移金属から選択される元素のドーパントカチオン、又はBa、Sr、Tl、Pb若しくはBiのドーパントカチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表し、又は、M’’’’は存在せず、
aは、0.05~4の値であり、
bは、1~10の値であり、
cは、1、2、3、又は4の値であり、
dは、0超、2以下の値であり、
nは、1、2、3、又は4の値である。
【0014】
一実施形態では、aは、0.05~4、又は0.1~4、又は0.2~4、又は0.3~4、又は0.4~3、0.5~2、又は0.6~1の値である。一実施形態では、aは、0.2~2、又は0.28~1.5、又は0.28~1、又は0.3~1、又は0.32~0.8の値である。一実施形態では、aは、1~4、又は1.3~3、又は1.5~2の値である。
【0015】
一実施形態では、bは、1~10、又は2~9、又は3~8、又は4~7、又は5~6、又は6の値である。
【0016】
一実施形態では、cは1、2、3、若しくは4、又は1、2、若しくは3、又は1若しくは2の値である。
【0017】
一実施形態では、dは、0超2以下、又は0.05~2、又は0.1~2の値である。
【0018】
一実施形態では、nは1、2、3、又は4の値である。
【0019】
一実施形態では、式(I)において、「dc」は最大2である。すなわち、「dc」の値は2を超えてはならない。
【0020】
一実施形態では、
M1’の電荷は、1+であり、
M2’の電荷は、2+であり、
M’’の電荷は、3+であり、
M’’’の電荷は、4+であり、
Xの電荷は、1-であり、
X’の電荷は、0.5-~3.5-である。
【0021】
一実施形態では、X’の電荷は、1-~3-である。一実施形態では、X’の電荷は、1-、2-、又は3-である。
【0022】
放射線検知材料は、紫外線、X線、ガンマ線、赤外線、近赤外線、及び/又は粒子放射線検知材料であってもよい。
【0023】
一実施形態では、粒子放射線は、アルファ線、ベータ線、中性子線、陽子線、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0024】
紫外線は、10nm(30PHz)~400nm(750THz)の波長を有する電磁放射線である。紫外線(UVR)の電磁スペクトルは、紫外線A(UVA)、紫外線B(UVB)、紫外線C(UVC)を含む、ISO規格ISO-21348によって推奨されるいくつかの範囲に細分することができる。UVAの波長は一般に315nm~400nmであると考えられており、UVBの波長は一般に280~320であると考えられており、UVCの波長は一般に100nm~290nmであると考えられている。X線は、0.01nm~10nmの波長を有する電磁放射線である。ガンマ線は、0.000001nm~0.01nmの波長を有する電磁放射線である。赤外線は、700nm~2500nmの波長を有する電磁放射である。近赤外線は、750~2500nmの波長を有する電磁放射である。放射線検知材料は、1zm~2500nm、又は1zm~2000nm、又は1zm~5μm、又は1zm~3μm、又は1zm~8μm、又は1zm~15μm、又は1zm~1mm、又は1fm~2500nm、又は1fm~2000nm、又は1fm~5μm、又は1fm~3μm、又は1fm~8μm、又は1fm~15μm、又は1fm~1mm、又は1pm~2500nm、又は1pm~2000nm、又は1pm~5μm、又は1pm~3μm、又は1pm~8μm、又は1pm~15μm、又は1pm~1mm、又は0.01nm~2500nm、又は1nm~2000nm、又は10nm~5μm、又は100nm~3μm、又は1μm~8μm、又は2μm~15μm、又は5μm~1mmの波長を有する放射線を検知し得る。
【0025】
一実施形態では、放射線検知材料は、フォトクロミック材料である。一実施形態では、放射線検知材料は、放射線への曝露時にその色を白色から黄色に変化させるフォトクロミック材料である。
【0026】
本発明者らは、驚くべきことに、放射線に曝露されたときに白色から黄色に色を変えることができる放射線検知材料を形成することが可能であることを見出した。黄色は、電磁スペクトルのUVA-緑色領域、すなわち350~580nmからの吸収の結果と考えることができる。
【0027】
本発明者らは、驚くべきことに、かなり大量の例えばカルシウムを使用することによって調製された放射線検知材料におけるF中心の吸収が、それが期待される箇所にないことを見出した。Ca2+は、Naと同様のサイズを有し、放射線検知材料の構造において少なくとも部分的に置換しうる。したがって、かなり大量のCa2+を含有する放射線検知材料のF中心の吸収帯は、Naのみが存在する部位と同じ部位、すなわち電磁スペクトルの緑色領域にあり、その結果、材料が紫色を示すことになると予想される。しかしながら、驚くべきことに、カルシウムの存在は、スペクトルの青色領域のF中心による吸収をもたらし得、それにより、放射線に曝露されたときに材料は黄色を示す。
【0028】
本発明者らはさらに、驚くべきことに、放射線検知材料が例えば紫外線に曝露された後のNIR放射線の吸収のフォトクロミック変化に対応する、近赤外領域(NIR)に第2の吸収バンドが観察され得ることを見出した。一実施形態では、放射線検知材料は、放射線、例えば紫外線への曝露時に電磁スペクトルの近赤外領域の非吸収性から吸収性となるように色を変化させる材料である。一実施形態では、放射線検知材料は、電磁スペクトルの近赤外領域内の放射線を吸収する材料である。
【0029】
電磁スペクトルの近赤外領域(NIR)は、750nm~2500nmの範囲と考えることができる。本発明者らは、驚くべきことに、電磁スペクトルの近赤外領域内の放射線を吸収する放射線検知材料を調製できることを見出した。すなわち、放射線検知材料は、近赤外領域内に吸収帯を示す。
【0030】
一実施形態では、放射線検知材料は、発光材料、持続性発光を示す材料、及び/又は残光を示す材料である。
【0031】
一実施形態では、放射線検知材料は、合成材料である。一実施形態では、放射線検知材料は、合成的に調製される。
【0032】
本明細書では、特に明記しない限り、「単原子イオン」という表現は、単一の原子からなるイオンとして理解されるべきである。イオンが2つ以上の原子を含む場合、これらの原子が同じ元素であっても、多原子イオンとして理解されるべきである。したがって、本明細書では、特に明記しない限り、「単原子カチオン」という表現は、単一の原子からなるカチオンとして理解されるべきである。
【0033】
式(I)で表される放射線検知材料は、放射線に曝露されることによって、その色を白色から黄色に変えるという付加的な有用性を有する。
【0034】
一実施形態では、M1’は、Li、Na、K、Rb、Cs、又はFrの一価の単原子カチオンを表す。一実施形態では、M1’は、Li、Na、K、Rb、Cs、若しくはFrの一価の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表す。一実施形態では、M1’は、Na、Li、K、Rb、Cs、及びFrからなる群より選択されるアルカリ金属の一価の単原子カチオンを表す。一実施形態では、M1’は、Na、Li、K、Rb、及びCsからなる群より選択されるアルカリ金属の一価の単原子カチオンを表す。一実施形態では、M1’は、Li、K、Rb、Cs、及びFrからなる群より選択されるアルカリ金属の一価の単原子カチオンを表す。一実施形態では、M1’は、Li、K、Rb、及びCsからなる群より選択されるアルカリ金属の一価の単原子カチオンを表す。一実施形態では、M1’は、Naの一価の単原子カチオンを表す。
【0035】
一実施形態では、M1’は、Naの一価の単原子カチオン、又はLiの一価の単原子カチオン、Kの一価の単原子カチオン、Rbの一価の単原子カチオン、Csの一価の単原子カチオン、又はFrの一価の単原子カチオンを表す。一実施形態では、M1’は、Naの一価の単原子カチオンを表す。
【0036】
一実施形態では、M1’は、Naの一価の単原子カチオンと、Liの一価の単原子カチオン、Kの一価の単原子カチオン、Rbの一価の単原子カチオン、又はCsの一価の単原子カチオンとの組み合わせを表す。一実施形態では、M1’は、Naの一価の単原子カチオンとKの一価の単原子カチオンとの組み合わせを表す。
【0037】
一実施形態では、M2’は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、又はRaの二価の単原子カチオンを表す。一実施形態では、M2’は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、若しくはRaの二価の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表す。一実施形態では、M2’は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaからなる群より選択されるアルカリ土類金属の二価の単原子カチオンを表す。一実施形態では、M2’は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaからなる群より選択されるアルカリ土類金属の二価の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表す。
【0038】
一実施形態では、M2’は、Beの二価の単原子カチオン、又はMgの二価の単原子カチオン、又はCaの二価の単原子カチオン、又はSrの二価の単原子カチオン、又はBaの二価の単原子カチオン、又はRaの二価の単原子カチオンを表す。一実施形態では、M2’は、Caの二価の単原子カチオンを表す。
【0039】
一実施形態では、M1’はNaの一価の単原子カチオンを表し、M2’はCaの二価の単原子カチオンを表す。一実施形態では、M1’は、Naの一価の単原子カチオンとKの一価の単原子カチオンとの組み合わせを表し、M2’は、Caの二価の単原子カチオンを表す。
【0040】
一実施形態では、放射線検知材料は、16~31mol%、又は24~29mol%のM1’を含む。
【0041】
一実施形態では、放射線検知材料は、0.7~14mol%、又は2~7mol%のM2’を含む。
【0042】
一実施形態では、(M1’8-2aM2’)は、0~99.4重量%、又は1~98mol%、又は5~97mol%、又は10~96mol%、又は20~95mol%、又は30~90mol%、又は40~85mol%、又は50~80mol%、又は60~70mol%のNaの単原子カチオンを含む。一実施形態では、(M1’8-2aM2’)は、75~99mol%、又は78~98mol%、又は80~97.5mol%、又は83~97mol%、又は85~96mol%、又は87~94mol%のNaの単原子カチオンを含む。
【0043】
一実施形態では、M’’は、Al及びGaからなる群より選択される金属の三価の単原子カチオン、又はBの三価の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表す。一実施形態では、M’’は、Al及びGaからなる群より選択される金属の三価の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの組み合わせを表す。一実施形態では、M’’は、Bの三価の単原子カチオンを表す。
【0044】
一実施形態では、M’’’は、Si及びGeからなる群より選択される元素の単原子カチオン、又はそのようなカチオンの組み合わせを表す。
【0045】
一実施形態では、Xは、F、Cl、Br、I、及びAtからなる群より選択される元素のアニオン、又はそのようなアニオンの任意の組み合わせを表す。一実施形態では、Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択される元素のアニオン、又はそのようなアニオンの任意の組み合わせを表す。一実施形態では、Xは存在しない。
【0046】
一実施形態では、X’は、O、S、Se、及びTeからなる群より選択される元素のアニオン、又はそのようなアニオンの任意の組み合わせを表す。一実施形態では、X’は、O、S、Se、及びTeからなる群より選択される1又は複数の元素のアニオン、又はそのようなアニオンの任意の組み合わせを表す。一実施形態では、X’は、O、S、Se、及びTeからなる群より選択される1又は複数の元素の単原子若しくは多原子アニオン、又はそのようなアニオンの任意の組み合わせを表す。一実施形態では、X’は、Sのアニオンを表す。一実施形態では、X’は、(SO2-である。一実施形態では、X’は存在しない。
【0047】
一実施形態では、X若しくはX’のいずれかが存在するか、又はXとX’の両方が存在する。一実施形態では、少なくともX’が存在する。
【0048】
一実施形態では、放射線検知材料は、少なくとも1つの遷移金属イオンでドープされる。一実施形態では、放射線検知材料は式(I)によって表され、式中、M’’’’は、元素のIUPAC周期表の遷移金属から選択される元素のカチオン、又はBa、Sr、Tl、Pb、若しくはBiのカチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表す。一実施形態では、M’’’’は、Yb、Er、Tb、及びEuからなる群より選択される元素のカチオン、若しくはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、W、及びZnからなる群より選択される元素のカチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表す。一実施形態では、M’’’’は、元素のIUPAC周期表のfブロックの遷移金属から選択される元素のカチオンを表す。一実施形態では、M’’’’は、元素のIUPAC周期表のdブロックの遷移金属から選択される元素のカチオンを表す。一実施形態では、M’’’’は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、W、及びZnからなる群より選択される元素のカチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表す。一実施形態では、M’’’’は、Tiのカチオンを表す。一実施形態では、M’’’’は、元素のIUPAC周期表の希土類金属から選択される元素のドーパントカチオンを表す。一実施形態では、M’’’’は、Yb、Er、Tb、及びEuからなる群より選択される元素のカチオン、又はそのようなカチオンの任意の組み合わせを表す。一実施形態では、M’’’’は、2つ以上のドーパントカチオンの組み合わせを表す。
【0049】
一実施形態では、放射線検知材料は、式(I)によって表され、ここで、M’’’’は存在しない。この実施形態では、放射線検知材料は、ドープされていない。
【0050】
一実施形態では、式(I)によって表される放射線検知材料は、放射線検知材料の総量に基づいて0.001~10mol%、又は0.001~5mol%、又は0.1~5mol%の量のM’’’’を含む。
【0051】
放射線検知材料は、Norrbo et al (Norrbo,I.; Gluchowski,P.; Paturi,P.; Sinkkonen,J.; Lastusaari,M., Persistent Luminescence of Tenebrescent Na8Al6Si6O24(Cl,S)2: Multifunctional Optical Markers. Inorg. Chem. 2015, 54, 7717-7724)に示された教示に従う反応によって合成することができ、その参照は、Armstrong及びWeller (Armstrong,J.A.; Weller,J.A. Structural Observation of Photochromism. Chem. Commun. 2006, 1094-1096)に基づくが、使用される出発材料の量を変える。例として、3Å又は4Åモレキュラーシーブ又はゼオライトA;NaSO及び/又はNaSeOなどの硫酸塩;CaCl、LiCl、NaCl、KCl、CsCl、及び/又はRbClなどの塩を出発材料として使用することができる。使用され得る塩の他の例は、NaBr、NaI、CaBr、CaI、LiBr、LiI、KBr、KI、RbBr、RbI、CsBr及びCsIである。単なる例として、出発材料は、52.1mol%の3Å又は4Åモレキュラーシーブ、0.0~41.2mol%のNaCl、2.2~43.4mol%のCaCl・6HO、及び4.5mol%のNaSOを含み得る。少なくとも1つのドーパントは、酸化物、例えばTiO、塩化物、硫化物、臭化物、リン酸塩、又は硝酸塩として添加されてもよい。材料は以下のように調製することができる:3Å又は4Åモレキュラーシーブ又はゼオライトAを最初に500℃で1時間乾燥させることができる。次いで、初期混合物を空気中850℃で例えば2時間、5時間、12時間、24時間、36時間、48時間又は72時間加熱してもよい。次いで、生成物を室温まで自由に冷却し、粉砕することができる。最後に、生成物を流動する12%のH及び88%のN雰囲気下、850℃で2時間再加熱することができる。必要に応じて、調製された材料を水で洗浄して、過剰な不純物を除去することができる。純度は、粉末X線回折測定により確認することができる。
【0052】
モレキュラーシーブは、均一なサイズの孔(pores)又は小さな穴(small holes)を有する材料である。これらの孔径は小分子とサイズが類似しているため、大きな分子は進入又は吸着することができないが、小さな分子は吸着することができる。モレキュラーシーブの直径は、オングストローム(Å)又はナノメートル(nm)で測定される。3Åモレキュラーシーブは、((KO)2/3(NaO)1/3)・Al・2SiO・9/2HOの近似化学式を有すると考えられ得る。4Åモレキュラーシーブは、NaO・Al・2SiO・9/2HOの化学式を有すると考えられ得る。
【0053】
本開示はさらに、本明細書で定義される放射線検知材料を備える装置に関する。装置は、センサ、検出器、又はインジケータであってもよい。
【0054】
センサは、アクティブセンサ又はパッシブセンサであってもよい。アクティブセンサは、動作するために外部電源を必要とする検知装置である。アクティブセンサは、物理的環境からの何らかの種類の入力を検出して応答するパッシブセンサとは対照的である。パッシブセンサは、動作するために外部電源を必要としない。
【0055】
検出器は画像検出器であってもよい。画像検出器は、例えば、放射線ベースのイメージング技術における検出器として使用することができる。検出器は、業界で行われるイメージング、非破壊試験、及び/又は溶接画像化に使用することができる。検出器は、例えば、ポイントオブケア分析又はポイントオブケア検査でさらに使用されてもよい。ベッドサイド検査とも呼ばれるポイントオブケア検査(POCT)は、ポイントオブケア又はその付近、すなわち患者ケアの時間及び場所での医療診断検査として定義され得る。これは、検査が完全に又はほとんどが医療検査室に限定される状況とは対照的であり、医療検査室では、検体をポイントオブケアから離れた場所に送り、次いで結果を知るために例えば何時間又は何日間も待つことを伴う。
【0056】
インジケータは、例えばスキンクリーム又は日焼け止めのボトルのラベルに適用することができ、色の変化は、使用者に日焼け止めの適用を警告する。材料は、例えば、窓の外側で使用されて、紫外線強度について外出する前に居住者に警告してもよい。放射線検知材料はまた、プラスチックボトル、ステッカー、ガラス、及び例えばUVインジケータを備えて提供される同様の製品の製造に使用される原料中に粉末として混合してもよい。放射線検知材料はまた、衣服、例えば水着に使用されてもよく、その色変化によって、紫外線が多すぎることを示して、使用者に陰となるもの(shade)を求めるよう警告してもよい。放射線検知材料を含む製品は、宝飾品と考えてもよい。放射線検知材料は、陰(shade)に応じて校正されたメータの表示部として用いることができる。
【0057】
センサ、検出器、又はインジケータは、再使用可能であってもよい。放射線検知材料は、可視光又は加熱によってその色を無色(白色)に戻す、すなわち消色することができ、したがって再使用を可能にするという追加の有用性を有する。すなわち、放射線検知材料が再使用可能である結果として、同じセンサ、検出器、又はインジケータを1回又は数回再使用することができる。
【0058】
本開示はさらに、消費者製品;セキュリティ装置;検出;イメージング;画像取得;ディスプレイ、スクリーン、ウィンドウ、又はタッチスクリーンソリューション;医学;薬物開発;及び/又は診断における光源としての本明細書に定義される放射線検知材料の使用に関する。
【0059】
さらに、抗体又は染色実体において、バイオマーカー検査キットにおいて、スクリーニングプラットフォームにおいて、及び/又はさらなる材料と組み合わせて、疾患を検出するための本明細書に開示される放射線検知材料の使用が開示される。
【0060】
光源は、例えばアルファベットや数値、及びグラフィック情報を提示するためのディスプレイ、スクリーン、バックライトユニット、フロントライトユニット、照明要素、装飾要素、空間アプリケーション、及び蛍光灯からなる群より選択することができる。宇宙の紫外線、X線、又はガンマ線を光源として使用して、青色及び赤色又はそれらの組み合わせの発光を生成してもよく、これにより、例えば、ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、スクリーン、又はウィンドウに色及び光を実装してもよい。
【0061】
セキュリティ装置は、インク、糸、紙、箔、ホログラム、及び粉末からなる群より選択することができる。粉末は、例えば塗料、ポリマー、液体などと混合されてもよい。一実施形態では、セキュリティ装置は、紙幣、パスポート文書又は身分証明書で使用される。
【0062】
セキュリティ装置は、市販品に用いられてもよい。セキュリティ装置は、芸術作品又は歴史的人工物で使用することができる。
【0063】
放射線検知材料は、人体又は動物の体から受け取ったサンプルを診断する、又は人体又は動物の体を直接診断するのに使用することができる。サンプルは、体液、歯、骨、及び組織からなる群より選択され得る。サンプルは、血液、皮膚、組織及び/又は細胞を含み得る。放射線検知材料は、インビボイメージング又はインビボ診断に使用することができる。イメージングは医用イメージングであってもよい。
【0064】
放射線検知材料は、誘導放出枯渇(STED)イメージング、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)イメージング、又は動的イメージングなどのイメージングにさらに使用することができる。
【0065】
本開示はさらに、紫外線、X線、ガンマ線、赤外線、近赤外線、及び/又は粒子放射線の存在及び/又は強度を示すための、本明細書に定義される放射線検知材料の使用に関する。
【0066】
本明細書に記載される放射線検知材料は、放射線エネルギーを保持する能力を有し、すなわち、放射線検知材料は、曝露する放射線をその中に捕捉することができる。保持された放射線は、後に所定の時点で放射線検知材料から放出されうる。放射線検知材料は、変化、例えばその温度の上昇又は下降の結果として、及び/又は光刺激の結果として、可視光を放出してもよい。
【0067】
放射線検知材料は、所定の期間にわたってそれに曝露する放射線を保持するように構成されてもよい。放射線検知材料は、熱処理及び/又は光刺激を受けた場合に、保持された放射線を可視光として放出するように構成されてもよい。照射された放射線は、所定の期間にわたって放射線検知材料内に保持されてもよい。所定の期間は、少なくとも1分、又は少なくとも2分、又は少なくとも5分、又は少なくとも10分、又は少なくとも15分、又は少なくとも0.5時間、又は少なくとも1時間、又は少なくとも2時間、又は少なくとも5時間、又は少なくとも6時間、又は少なくとも8時間、又は少なくとも12時間、又は少なくとも18時間、又は少なくとも24時間、又は少なくとも1週間、又は少なくとも1カ月であり得る。所定の期間は、3カ月以下、又は1カ月以下、又は1週間以下、又は24時間以下であってもよい。所定の期間は、1分~3カ月、又は10分~1カ月、又は0.5時間~1週間であり得る。一実施形態では、所定の期間は、0.5時間~3カ月である。
【0068】
次いで、放射線検知材料は、例えば、加熱及び/又は光刺激を受けて、保持された放射線を放射線検知材料から放出してもよい。放射線検知材料の光刺激は、放射線検知材料を310nm~1400nmの波長を有する電磁放射線に供することを含んでもよい。一実施形態では、放射線検知材料の光刺激は、放射線検知材料を可視光、紫外線、及び/又は近赤外線に供することを含む。放射線検知材料の光刺激は、レーザ、発光ダイオード(LED)、マイクロLED、有機発光ダイオード(OLED)、アクティブマトリクス有機発光ダイオード(AMOLED)、白熱灯、ハロゲンランプ、任意の他の光刺激発光光源、又はそれらの任意の組み合わせを使用することによって実行され得る。
【0069】
放射線検知材料は、熱発光線量計又は光学的に刺激された発光線量計で使用することができる。したがって、放射線検知材料を備える装置は、熱発光線量計又は光学的に刺激された発光線量計であってもよい。
【0070】
センサ材料によって放出される可視光の量は、光学イメージングによって、写真撮影によって、熱刺激発光によって、及び/又は光学刺激発光によって決定することができる。センサ材料によって放出される可視光の量は、視覚的に決定することができる。
【0071】
放射線検知材料は、放射線に供された結果として、曝露された放射線の線量に比例する色強度を示すという付加的な有用性を有する。
【0072】
放射線検知材料は、存在する放射線の強度を決定するために使用することができる。例えば、放射線検知材料は、太陽によって放出される紫外線の強度を示すために使用されてもよい。放射線の強度は、例えば、以下を含む方法によって決定することができる:
a)本明細書に開示される放射線検知材料を提供することと、
b)工程a)で提供された放射線検知材料を放射線に供することと、
c)放射線に供された結果としての材料の色の変化を決定することと、
d)材料の色を、放射線の強度と放射線検知材料の色との相関を示す基準と比較すること。
【0073】
工程c)は、材料の色の変化を視覚的に決定することによって実施され得る。前記基準は、例えば、放射線の強度と放射線検知材料の色の強度との間の相関を示すカードなどであってもよい。放射線検知材料の色の強度は、例えばUV指数の値を示すために使用してもよい。
【0074】
したがって、本開示はさらに、環境内に存在する放射線の量又は強度を示すための、本明細書に開示される式(I)によって表される放射線検知材料の使用に関する。放射線検知材料は、放射線への曝露下で色を変化させることができるという追加の有用性を有する。色の強度は、放射線検知材料に到達する紫外線などの放射線の量に依存する。放射線検知材料の色の変化は、フォトクロミズムに基づいていてもよい。放射線は、放射線検知材料に色中心を誘発し得る。材料に当たる放射線が多いほど、より多くの色中心が形成され、したがってより深い色が得られる。一実施形態では、放射線検知材料は、フォトクロミック材料である。
【0075】
使用時に、放射線検知材料は、0.01秒~24時間、又は0.05秒~1時間、又は0.1秒~20分、又は1秒~10分、又は5秒~5分、又は30秒~1分などの所定の期間、放射線に曝露されてもよい。放射線検知材料を放射線に曝露することができる時間は、放射線検知材料が使用される用途に依存し得、したがって放射線検知材料が曝露される放射線の量に依存し得る。
【0076】
本開示はさらに、本明細書に開示される放射線検知材料に由来する材料に関する。すなわち、本明細書に開示される放射線検知材料を使用して、さらなる材料を導出又は生成することができる。
【0077】
放射線検知材料は、紫外線、X線、ガンマ線、赤外線、近赤外線、及び/又は粒子放射線などの放射線の存在を検出することを可能にする追加の有用性を有する。さらに、放射線検知材料は、それに照射された放射線の強度を示すという付加的な有用性を有する。
【0078】
放射線検知材料は、様々な用途において様々な装置で使用される低コスト材料であるという付加的な有用性を有する。
【実施例
【0079】
ここで、様々な実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。
以下の説明は、当業者が本開示に基づく実施形態を利用することができるような詳細ないくつかの実施形態を開示する。工程又は特徴の多くは、本明細書に基づいて当業者には明らかであろうため、実施形態のすべての工程又は特徴が詳細に説明されているわけではない。
【0080】
実施例1-材料の調製
この実施例では、式Na8-x-yCa(AlSi)24(Cl,S)(式中、x=0~6であり、yは変化してもよく0.28~1であり得、この例では0.36であった)によって表される放射線検知材料を以下の方法で調製した:0.7gの乾燥3Åモレキュラーシーブ(ゼオケム(Zeochem)製のPurmol(登録商標)3ST)、0.06gの乾燥NaSO、0.197gの乾燥NaCl、及び0.162gのCaCl・6HOを測定し、混合し、粉砕した。混合物を酸化アルミニウムボートに入れ、空気中850℃で5時間加熱した。次いで、混合物を再粉砕し、還元のために酸化アルミニウムボートに戻した。還元は、H/N雰囲気の流動下、850℃で2時間行った。次いで、生成物を再度粉砕した。
【0081】
同様に、式Na8-2yCa(AlSi)24(Cl,S)(式中、y=0.28~1)によって表される放射線検知材料を、3Åモレキュラーシーブの代わりに4Åモレキュラーシーブ(ゼオケム(Zeochem)製のPurmol(登録商標)4ST)を使用して調製した。
【0082】
同様に、式Na8-2yCa(AlSi)24(Cl,S)(式中、y=0.28~1)によって表される放射線検知材料を、3Åモレキュラーシーブの代わりにゼオライトA(シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、CAS # 1318-02-1)を使用して調製した。
【0083】
実施例2-異なる材料の調製
実施例1に提示された一般的な説明に従って、以下の出発材料を使用することによって以下の材料を調製した。
【0084】
【表1】
【0085】
実施例3-異なる材料の調製
この実施例では、式Na7.32Ca0.34(AlSi)24(Cl,S)によって表される放射線検知材料を以下の方法で調製した:0.4gの乾燥NaAlO、0.3gのSiO、0.06gの乾燥NaSO、0.199gの乾燥NaCl及び0.153gのCaCl 6HOを一緒に粉砕し、約20mlの蒸留水と共にオートクレーブに入れた。オートクレーブを180℃のオーブンに48時間入れた。オートクレーブを室温に冷却し、その後、サンプルをオートクレーブから取り出し、100℃で15分間乾燥させた。乾燥粉末を粉砕し、還元のためにアルミナボートに入れた。還元は、流動する12%のH及び88%のN雰囲気下、850℃で2時間行った。冷却後、生成物を回収した。
【0086】
実施例4-異なる材料の調製
実施例3に提示された一般的な説明に従って、以下の出発材料を使用することによって以下の材料を調製した。
【0087】
【表2】
【0088】
実施例5-調製された材料のサンプルの試験
調製した材料のサンプルを以下によって試験した:
Huber G670検出器及び銅Kα1放射線(λ=1.54060Å)を用いて測定された粉末X線回折(XRD)。図1a及び図1bを参照されたい。XRDパターンは、カルシウムの量を増加させると、構造がソーダライト型ではなくなる傾向があることを示している。
【0089】
調製した材料の元素組成を、内部オムニアン較正及びNa 1時間測定プログラムを備えたPANalytical Epsilon 1装置を使用した蛍光X線(XRF)測定で決定した。
【0090】
材料のフォトクロミズムは、光ファイバに接続されたAvantes SensLine AvaSpec-HS-TEC分光計を使用して反射率測定で調査した。材料の参照スペクトルは、照射前に測定した。材料は254nmのUVランプで5分間照射し、照射後の最終反射率スペクトルを測定した。図2a、図2b、及び図2cを参照されたい。426nmのF中心は黄色の色変化を引き起こす。
【0091】
光ファイバ及びLOT-QuantumDesignモノクロメーターに接続されたAvantes SensLine AvaSpec-HS-TEC分光計を使用して、テネブレッセンス色発生曲線を測定した。サンプルに254nmのUVランプを照射し、反射率の値を4秒ごとに10分間測定した。同じ構成を使用して、テネブレッセンス励起スペクトルを測定した。反射率は、20nmごとに200nmから300nmまで、及び25nmごとに300nmから450nmまで測定した。図3a、図3b、及び図3cを参照されたい。グラフは、色の変化が紫外線の線量に依存することを示している。
【0092】
サンプルの発光特性(図4a及び図4bを参照)及び持続発光(図5a及び図5bを参照)特性は、Hamamatsu R928光電子増倍管及び150Wキセノンランプを備えるVarian Cary Eclipse蛍光分光光度計で測定した。持続性発光ペクトルについては、材料を254nm UVランプで5分間励起し、照射後30秒の遅延でスペクトルを測定した。
【0093】
材料の光学エネルギー貯蔵特性は、MikroLab Thermoluminescent Materials Laboratory Reader RA’04を使用した熱発光測定で調査した。図6を参照されたい。
【0094】
図7に、材料の黄色フォトクロミズムの写真を示す。左側に、着色後(上)及び着色前(下)のNa7.28Ca0.36(AlSiO(Cl,S)の全く同じサンプルを示す。右側には、着色後の2つの追加のサンプルが示されている。番号32は、Na6.72-xCa0.64(AlSiO(Cl,S)のサンプルを表し、番号35は、Na6.6-xCa0.7(AlSiO(Cl,S)のサンプルを表す。
【0095】
図8に、材料の近赤外フォトクロミズムの写真を示す。各写真の破線より上の領域は、254nmのUVへの約15分の曝露によって着色された。線より下の領域は着色されていなかった。写真は、カメラで8秒の露光時間を使用して900nmの光の下で撮影された。画像のコントラストを強調して、着色領域と非着色領域との差を示した。サンプルaは、Na6.72-xCa0.64(AlSiO(Cl,S)であり、サンプルbは、Na6.6-xCa0.7(AlSiO(Cl,S)であった。
【0096】
図9a及び図9b並びに図10に、以下の二重励起発光シミュレーションの結果を示す:Na7.4-xCa0.3(AlSiO(Cl,S)(3Åモレキュラーシーブを使用して調製)のサンプルを302nmのUVランプで励起し、その発光スペクトルを記録した。同じ材料を365nm UVランプで励起し、その発光スペクトルを記録した。302nm及び365nmのUVランプの二重励起設定をシミュレートするために、使用した各UVランプのパーセンテージで重み付けした平均スペクトルを計算した。計算されたスペクトルをプロットし、Osram Color Calculatorソフトウェアを使用してCIEのx,y色座標をシリーズについて計算した。結果は、二重励起により、発光の色を、青色及び赤色、並びにそれらの間のすべての陰影及び組み合わせにコントロールできることを示している。
【0097】
技術の進歩に伴い、基本的な考え方が様々な方法で実現され得ることは当業者には明らかである。したがって、実施形態は上記の例に限定されない。代わりに、それらは特許請求の範囲内で変化し得る。
【0098】
上述した実施形態は、互いに任意の組み合わせで使用することができる。いくつかの実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を形成してもよい。本明細書に開示される放射線検知材料、装置、又は使用は、前述の実施形態のうちの少なくとも1つを含むことができる。上記の利点及び利点は、1つの実施形態に関連してもよく、又はいくつかの実施形態に関連してもよいことが理解されよう。実施形態は、記載された問題のいずれか又はすべてを解決するもの、又は記載された恩恵及び利点のいずれか又はすべてを有するものに限定されない。「1つの(an)」項目への言及は、それらの項目のうちの1又は複数を指すことがさらに理解されよう。「含む(comprising)」という用語は、本明細書では、1又は複数の追加の特徴又は動作の存在を除外することなく、その後に続く特徴又は動作を含むことを意味するために使用される。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
【国際調査報告】