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特表2024-525412粉末コーティングならびに結晶性ドナーおよび/またはアクセプタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】粉末コーティングならびに結晶性ドナーおよび/またはアクセプタ
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20240705BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20240705BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20240705BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240705BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240705BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C09D175/04
C08G18/67
C08G18/73
C08G18/32 003
C08G18/10
C09D5/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579300
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2022068512
(87)【国際公開番号】W WO2023280809
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21183713.3
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518326445
【氏名又は名称】オルネクス ネザーランズ ビー.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリンクフイス、リシャール ヘンドリクス ゲリット
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ペンシェン
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034BA02
4J034CA04
4J034CA17
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC08
4J034CD01
4J034CD08
4J034FA02
4J034FB01
4J034FC01
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034JA01
4J034JA32
4J034JA42
4J034QB02
4J034QB13
4J034RA07
4J038DB052
4J038DD181
4J038DD191
4J038DG132
4J038DG262
4J038FA282
4J038KA04
4J038KA06
4J038NA04
4J038NA11
4J038PA02
4J038PA19
(57)【要約】
本発明は、架橋性組成物および触媒系を含む粉末コーティング組成物であって、架橋性組成物が真マイケル付加(RMA)によって架橋可能な架橋性ドナー成分Aおよび架橋性アクセプタ成分Bによって形成され、架橋性ドナー成分Aおよび/または架橋性アクセプタ成分Bの少なくとも一部が(半)結晶性であり、実質的にヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)であるポリイソシアナートを、より好ましくはジオールである化合物(i);ならびに少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および活性化メチレンもしくはメチン中に少なくとも1つの酸性C-Hドナー基を有する少なくとも1つの官能基を含む化合物(iia)、少なくとも1つ、好ましくは(1)のイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および少なくとも1つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する少なくとも1つの官能基を含み、(半)結晶性アクセプタ成分Bを形成する化合物(iib)と反応させることにより形成されるポリウレタン骨格を含む、粉末コーティング組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性組成物と触媒系とを含む粉末コーティング組成物であって、前記架橋性組成物が、前記触媒系を介した真マイケル付加(RMA)反応によって架橋性である架橋性ドナー成分Aおよび架橋性アクセプタ成分Bによって形成され、前記触媒系が、140℃未満、好ましくは120℃未満、さらにより好ましくは110℃未満または100℃未満、好ましくは少なくとも70℃、好ましくは少なくとも80、90または100℃の硬化温度で前記RMA架橋反応を触媒することができ、
前記架橋性組成物が、
a)活性化メチレンまたはメチン中に少なくとも2つの酸性C-Hドナー基を有する架橋性ドナー成分A、および
b)真マイケル付加(RMA)によって成分Aと反応して架橋ネットワークを形成する、少なくとも2つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する架橋性アクセプタ成分B
を含み、
前記架橋性ドナー成分Aおよび/または架橋性アクセプタ成分Bの少なくとも一部が(半)結晶性であり、
実質的にヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)であるポリイソシアナートを、少なくとも2つ、好ましくは2つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシルを含み、より好ましくはジオールである化合物(i);ならびに
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および活性化メチレンもしくはメチン中に少なくとも1つの酸性C-Hドナー基を有する少なくとも1つの官能基を含み、(半)結晶性ドナー成分Aを形成する化合物(iia);または
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および少なくとも1つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する少なくとも1つの官能基を含み、前記(半)結晶性アクセプタ成分Bを形成する化合物(iib)
と反応させることにより形成されるポリウレタン骨格を含む、
粉末コーティング組成物。
【請求項2】
前記(半)結晶性ドナーAおよび/またはアクセプタBが部分的に結晶性状態にあり、140℃未満、好ましくは120℃未満、110℃未満、またはさらには100℃未満の融解温度を有する、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項3】
少なくとも2つのイソシアナート反応性基を含む化合物(i)がジオールであり、前記ジオールが、
エーテル基もしくはチオエーテル基、好ましくは-CH2-O-CH2-、-CH2-S-CH2-、-CH2-S-S-CH2-を含有する前記ヒドロキシル基の間の連結鎖を有し、前記連結鎖が前記ヒドロキシル基の間に11個の炭素原子および/もしくはヘテロ原子の最大長を有するか、または
-CH(CH3)-単位もしくは-CH(CH2CH3)-単位を含有する前記ヒドロキシル基の間に、好ましくは中心位置に連結鎖を有し、それにより、前記連結鎖が、前記ヒドロキシル基の間に6未満の奇数の炭素原子および/もしくはヘテロ原子を有する鎖長を有し、
前記ヒドロキシル基が第1級ヒドロキシル基であり、前記ジオールが芳香族ではなく、脂環式ではない、
請求項1または2に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項4】
前記ジオールが、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、3-メチル1,5-ペンタンジオール、2-メチル1,3-プロパンジオール、チオジエタノール、ジチオジエタノール、ビス(ヒドロキシエチル)メチルアミン、テトラエチレングリコール、ジ(1,3-プロパンジオール)、ジ(1,4-ブタンジオール)からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項5】
前記(半)結晶性ドナーAおよび/またはアクセプタBの数平均分子量が、300~4000g/mol、好ましくは500~3000、より好ましくは1000~2000g/molである、請求項1から4のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項6】
前記イソシアナート基に対する化合物(i)および化合物(iia)または(iib)の前記イソシアナート反応性基の比が、好ましくは1を超え、より好ましくは、イソシアナート基に対する前記イソシアナート反応性基のモル比が、1.0~1.5、より好ましくは1.01~1.2である、請求項1から5のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項7】
前記(半)結晶性アクセプタ成分Bが使用され、前記化合物(iib)がヒドロキシル官能性(メタ)アクリラートであり、好ましくはヒドロキシブチル(メタ)アクリラートおよびヒドロキシエチル(メタ)アクリラートまたはそれらの混合物からなる群から選択され、または前記化合物(iib)がヒドロキシルおよびマレアート、フマラートもしくはイタコナート官能基を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項8】
半(結晶性)ドナー成分Aが使用され、前記化合物(iia)が、ジオールとアルキルアセトアセタートまたはジアルキルマロナートとのエステル交換生成物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項9】
a.架橋性成分Aが、好ましくはマロナート、アセトアセタート、マロンアミド、アセトアセトアミドまたはシアノアセタート中の活性化メチレンまたはメチン中に少なくとも2つの酸性C-Hドナー基を含み、
b.成分Bが、好ましくはアクリロイル、メタクリロイル、イタコナート、マレアートまたはフマラート官能基に由来する少なくとも2つの活性化不飽和RMAアクセプタ基を含み、
前記ドナー成分Aおよび/またはアクセプタ成分Bの少なくとも1つが、請求項1に記載のように形成されたポリウレタン骨格を有する材料であり、
好ましくは、組成物が、0.05~6meq/grのバインダ固形分1グラム当たりのドナー基C-Hおよびアクセプタ基C=Cの総量を含み、好ましくは、アクセプタ基C=Cのドナー基C-Hに対する比が、0.1を超え10未満である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項10】
前記配合物中の前記結晶性ポリウレタン成分の量が、架橋性成分AおよびBの総量に対して2から95重量%、好ましくは2から70重量%、より好ましくは3から50重量%、最も好ましくは6から35重量%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項11】
前記(半)結晶性架橋性成分AおよびBが、
実質的にヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)であるポリイソシアナートを、少なくとも2つ、好ましくは2つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシルを含み、より好ましくはジオールである化合物(i);ならびに
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および活性化メチレンもしくはメチン中に少なくとも1つの酸性C-Hドナー基を有する少なくとも1つの官能基を含み、(半)結晶性ドナー成分Aを形成する化合物(iia);ならびに
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および少なくとも1つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する少なくとも1つの官能基を含み、前記(半)結晶性アクセプタ成分Bを形成する化合物(iib)
と反応させることにより形成される(半)結晶性ハイブリッドA/B成分である、請求項1から10のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項12】
前記触媒系が、前駆体P、活性化剤C、および場合により遅延剤Tを含み、
前記前駆体Pが、そのプロトン化形態のpKaがドナー成分A中の活性化C-H基のpKaよりも2単位超、好ましくは3単位超、より好ましくは4単位超、さらにより好ましくは少なくとも5単位低い弱塩基であり、前記活性化剤Cが硬化温度でPと反応して、AとBとの間のマイケル付加反応を触媒することができる強塩基(CP)を生成することができ、
前記遅延剤Tが、A中の活性化C-HのpKaよりも2ポイント超、より好ましくは3ポイント超、さらにより好ましくは4ポイントまたは5ポイント超低いpKaを有し、脱プロトン化すると、前記活性化剤Cと反応することができる弱塩基を生成し、前記架橋性組成物AとBとの間のマイケル付加反応を触媒することができる強塩基を生成する酸である、請求項1から11のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項13】
前記前駆体Pおよび/または遅延剤Tが(半)結晶性であり、好ましくはHDIと、少なくとも2つのイソシアナート反応性基を有する化合物(i)、好ましくはジオールとを反応させることによって調製されるポリウレタン骨格を有し、前記ジオール(i)が、
エーテル基もしくはチオエーテル基、好ましくは-CH2-O-CH2-、-CH2-S-CH2-、-CH2-S-S-CH2-を含有する前記ヒドロキシル基の間の連結鎖を有し、前記連結鎖が前記ヒドロキシル基の間に11個の炭素原子および/もしくはヘテロ原子の最大長を有するか、または
-CH(CH3)-単位もしくは-CH(CH2CH3)-を含有する前記ヒドロキシル基の間に、好ましくは中心位置に連結鎖を有し、それにより、前記連結鎖が、前記ヒドロキシル基の間に6未満の奇数の炭素原子および/もしくはヘテロ原子を有する鎖長を有し、
前記ヒドロキシル基が第1級ヒドロキシル基であり、前記ジオールが芳香族ではなく、脂環式ではない、請求項1から12のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項14】
前記(半)結晶性前駆体Pおよび/または遅延剤Tならびに前記(半)結晶性ドナー成分Aおよび/またはアクセプタ成分Bがそれぞれ、HDIを同じ化合物(i)と反応させることによって調製されたポリウレタン骨格を有する、請求項13に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項15】
(半)結晶性であり、
実質的にヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)であるポリイソシアナートを、少なくとも2つ、好ましくは2つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシルを含み、より好ましくはジオールである化合物(i);ならびに
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および活性化メチレンもしくはメチン中に少なくとも1つの酸性C-Hドナー基を有する少なくとも1つの官能基を含み、(半)結晶性ドナー成分Aを形成する化合物(iia);または
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および少なくとも1つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する少なくとも1つの官能基を含み、(半)結晶性アクセプタ成分Bを形成する化合物(iib)
と反応させることにより形成されるポリウレタン骨格を含む、架橋性ドナー成分Aおよび/または架橋性アクセプタ成分B。
【請求項16】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の特徴を有する、架橋性ドナー成分Aおよび/または架橋性アクセプタ成分B。
【請求項17】
基材を粉末コーティングする方法であって、
a.請求項1から14のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物を含む層を基材表面に塗布するステップであって、前記基材が、好ましくは感温性基材、好ましくはMDF、木材、プラスチック、複合材または合金のような感温性金属基材である、ステップと、
b.好ましくは赤外線加熱を使用して、75~160℃、好ましくは80~150℃、より好ましくは80~140、120、さらには100℃の硬化温度Tcurに加熱するステップであって、前記硬化温度Tcurでの融解粘度が、好ましくは60Pas未満、より好ましくは40、30、20、10またはさらには5Pas未満である、ステップと、
c.Tcurで、好ましくは40、30、20、15、10、またはさらには5分未満の硬化時間にわたって硬化させるステップと
を含む、方法。
【請求項18】
請求項1から14に記載の粉末コーティング組成物を有する粉末でコーティングされた物品であって、好ましくはMDF、木材、プラスチック、複合材または金属合金の群から選択される感温性基材を好ましくは有し、好ましくは架橋密度XLDが少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.02、0.04、0.07またはさらには0.1ミリモル/ml(DMTAによって決定される場合)であり、好ましくは3、2、1.5、1またはさらには0.7ミリモル/ml未満である、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半(結晶性)ポリウレタンドナーまたはアクセプタ成分を含む、真マイケル付加(Real Michael Addition、RMA)によって架橋性粉末コーティング組成物、粉末コーティング組成物を調製する方法、前記粉末コーティング組成物を使用して物品をコーティングする方法、コーティングされた物品および半(結晶性)ポリウレタンドナーまたはアクセプタ成分に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末コーティングは、室温で乾燥した、細かく分割された、自由流動性の固体材料であり、近年、液体コーティングよりも人気を得ている。粉末コーティングは、一般に、120℃~200℃、より典型的には140℃~180℃の高温で硬化される。膜形成を可能にし、良好なコーティング表面外観を達成するだけでなく、架橋反応についての高い反応性を達成するためにも、バインダの十分な流動を提供するために高温が必要である。より低い硬化温度では、完全な機械的特性および抵抗特性の発現を要求する場合、短い硬化時間を許容しない反応速度論に直面することがある。一方、成分の高い反応性が作り出され得る系では、コーティングは、このような低温でのこのような系の比較的高い粘度に起因して、外観が悪く、硬化反応が進行するにつれて急速にさらに増加する可能性があり、このような系の時間平均流動性(time-integrated fluidity)は、十分なレベリングを達成するには低すぎる(例えば、Progress in Organic Coatings、72巻、26~33頁(2011年)を参照されたい)。特により薄いフィルムを対象とする場合、流動および外観が制限される可能性がある。さらに、非常に高い反応性は、押出機内で粉末塗料を配合するときの早すぎる反応に起因する問題につながる可能性があり、貯蔵安定性が制限され、粉末塗料のTgを低下させると流動が改善されるが、貯蔵安定性に有害である。
【0003】
結晶性成分は、それらが硬化条件で塗料を融解および可塑化し、それによって融解粘度を低下させる場合、粉末コーティング系の流動を助けることができる。得られるネットワークの耐化学性または機械的特性に悪影響を与えることなく、それを行うことができることが重要である。このような成分については、硬化前に粉末塗料中に結晶性状態で存在することができ、この段階で既に過度の可塑化をもたらすことによる貯蔵安定性への悪影響を回避することが好ましい。また、この結晶性状態が粗すぎず、押出機内で配合物を融解混合した後に簡単に達成できることも好ましい。さらに、融解は、好ましくは意図された低い硬化温度で完了する。
【0004】
特許出願国際公開第2019/145472号パンフレットは、中密度繊維板(MDF)、木材、プラスチックおよび特定の金属合金などの感熱性基材である基材上にコーティングを提供し、低温で高い硬化速度および許容可能な短い硬化時間で硬化することができる粉末コーティング組成物を記載している。このコーティング組成物は、RMA反応を開始する触媒系を使用してRMAによって硬化可能である。
【0005】
中国特許出願公開第112457751号明細書および中国特許出願公開第112457752号明細書は、ドナー、アクセプタ、および(半)結晶性成分をビニルエーテルポリウレタン樹脂または(半)結晶性ポリエステルメタクリラート成分として含む低温RMA硬化性組成物を記載している。
【0006】
しかしながら、結晶性ビニルエーテルは、ポリマーRMAネットワークの一部にならない可塑剤として作用し、したがって架橋密度および耐化学性を低下させる。記載されるポリエステルメタクリラートは、全配合物から容易に結晶化せず、したがって、適用前に粉末塗料のTgを既に低下させる。
【0007】
したがって、良好な貯蔵安定性を有し、硬化時に良好な機械的特性、接着特性、耐化学性および流動特性をもたらす低温硬化RMA架橋性粉末コーティング組成物が、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、請求項1に記載の粉末コーティング組成物を提供することにより、上記課題の1つ以上に対処する。
【0009】
したがって、本発明の第1の態様は、架橋性組成物と触媒系とを含む粉末コーティング組成物であって、架橋性組成物が、触媒系を介した真マイケル付加(RMA)反応によって架橋性である架橋性ドナー成分Aおよび架橋性アクセプタ成分Bによって形成され、触媒系が、140℃未満、好ましくは120℃未満、さらにより好ましくは110℃未満または100℃未満、好ましくは少なくとも70℃、好ましくは少なくとも80、90または100℃の硬化温度でRMA架橋反応を触媒することができ、
架橋性組成物が、
a)活性化メチレンまたはメチン中に少なくとも2つの酸性C-Hドナー基を有する架橋性ドナー成分A、および
b)真マイケル付加(RMA)によって成分Aと反応して架橋ネットワークを形成する、少なくとも2つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する架橋性アクセプタ成分B
を含み、
少なくとも架橋性ドナー成分Aおよび/または架橋性アクセプタ成分Bが(半)結晶性であり、
実質的にヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)であるポリイソシアナートを、少なくとも2つ、好ましくは2つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシルを含み、より好ましくはジオールである化合物(i);ならびに
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および活性化メチレンもしくはメチン中に少なくとも1つの酸性C-Hドナー基を有する少なくとも1つの官能基を含み、(半)結晶性ドナー成分Aを形成する化合物(iia);または
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および少なくとも1つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する少なくとも1つの官能基を含み、(半)結晶性アクセプタ成分Bを形成する化合物(iib)
と反応させることにより形成されるポリウレタン骨格を含む、粉末コーティング組成物に関する。
【0010】
第2の態様は、(半)結晶性であり、
実質的にヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)であるポリイソシアナートを、少なくとも2つ、好ましくは2つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシルを含み、より好ましくはジオールである化合物(i);ならびに
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および活性化メチレンもしくはメチン中に少なくとも1つの酸性C-Hドナー基を有する少なくとも1つの官能基を含み、(半)結晶性ドナー成分Aを形成する化合物(iia);または
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および少なくとも1つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する少なくとも1つの官能基を含み、(半)結晶性アクセプタ成分Bを形成する化合物(iib)
と反応させることにより形成されるポリウレタン骨格を含む、架橋性ドナー成分Aおよび/または架橋性アクセプタ成分Bに関する。
【0011】
第3の態様は、基材を粉末コーティングする方法であって、
a.第1の態様による粉末コーティング組成物を含む層を基材表面に塗布するステップであって、基材が、好ましくは感温性基材、好ましくはMDF、木材、プラスチック、複合材または合金のような感温性金属基材である、ステップと、
b.好ましくは赤外線加熱を使用して、75~160℃、好ましくは80~150℃、より好ましくは80~140、130、さらには120℃、110℃、100℃の硬化温度Tcurに加熱するステップであって、硬化温度Tcurでの融解粘度が、好ましくは60Pas未満、より好ましくは40、30、20、10またはさらには5Pas未満である、ステップと、
c.Tcurで、好ましくは40、30、20、15、10、またはさらには5分未満の硬化時間にわたって硬化させるステップと
を含む、方法に関する。
【0012】
第4の第3の態様は、第1の態様による粉末コーティング組成物を有する粉末でコーティングされた物品であって、好ましくはMDF、木材、プラスチック、複合材または金属合金の群から選択される感温性基材を好ましくは有し、好ましくは架橋密度XLDが少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.02、0.04、0.07またはさらには0.1ミリモル/ml(DMTAによって決定される場合)であり、好ましくは3、2、1.5、1またはさらには0.7ミリモル/ml未満である物品に関する。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明者らは、驚くべきことに、(半)結晶性であり、実質的にHDIであるイソシアナートおよび好ましくはジオールである少なくとも2つのイソシアナート反応性基を有する化合物で調製されたポリウレタン骨格を有するドナーAおよび/またはアクセプタBを含む本発明による粉末コーティング組成物が、押出配合後に良好に再結晶して、良好なTgおよび貯蔵安定性を有する粉末塗料をもたらし、良好な機械抵抗性、改善された接着性および機械的特性、ならびに改善された流動性を有する最終コーティングをもたらし、結晶性成分が低い硬化温度に適合する塗料中の融解温度を有する、本発明による粉末コーティング組成物を提供することを見出した。
【0014】
本発明の文脈において、「(半)結晶性化合物」という用語は、それを超えると化合物が液体である融解温度Tmを有する化合物である。本発明の文脈において、(半)結晶性化合物の「融解温度」は、以下の説明において化合物自体の融解温度として特に指定されない限り、本発明に記載の少なくとも架橋可能な系および触媒系を含む組成物中に化合物が存在するときに化合物が完全に融解する温度である。本明細書で報告される融解温度は、10℃/分の加熱速度を使用して示差走査熱量測定(DSC)から決定される。
【0015】
本発明の文脈において、「(メタ)アクリラート」という用語は、アクリラート成分とメタクリラート成分の両方を包含することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】シクロヘキシルビニルエーテルのH NMRスペクトル。
図2】硬化前の速度論的試験混合物のH NMRスペクトル。
図3】110℃で30分間硬化した後の速度論的試験混合物のH NMRスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0017】
架橋性成分
本発明において、架橋性組成物は、
a)活性化メチレンまたはメチン中に少なくとも2つの酸性C-Hドナー基を有する架橋性ドナー成分A、および
b)少なくとも2つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有し、真マイケル付加(RMA)によって成分Aと反応して架橋ネットワークを形成する、架橋性アクセプタ成分B
を含み、
架橋性ドナー成分Aおよび/または架橋性アクセプタ成分Bの少なくとも一部が(半)結晶性であり、
実質的にヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)であるポリイソシアナートを、少なくとも2つ、好ましくは2つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシルを含み、より好ましくはジオールである化合物(i);ならびに
少なくとも1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および活性化メチレンもしくはメチン中に少なくとも1つの酸性C-Hドナー基を有する少なくとも1つ、好ましくは1つの官能基を含み、(半)結晶性ドナー成分Aを形成する化合物(iia);または
少なくとも1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および少なくとも1つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する少なくとも1つ、好ましくは1つの官能基を含み、(半)結晶性アクセプタ成分Bを形成する化合物(iib)
と反応させることにより形成されるポリウレタン骨格を含む。
【0018】
驚くべきことに、(半)結晶性ドナーAおよび/またはアクセプタBが、選択されたジオールおよび目標とする分子量を有するヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)からのウレタン骨格を有し、適切な融解温度を有し、押出後に再結晶化し、非晶質ドナー/アクセプタ系と比較して融解粘度が低下し、非晶質ドナー/アクセプタ系と比較してより良好な接着性および可撓性を有するコーティングを提供する粉末コーティング組成物を提供することが見出された。
【0019】
好ましくは、化合物(i)は、成分AまたはBに意図された硬化温度より低い融解温度を提供するように選択される。好ましい一実施形態では、(半)結晶性ドナーAおよび/またはアクセプタB成分は、140℃未満、好ましくは120℃、110℃、105未満、またはさらには100℃未満の融解温度を有する。
【0020】
別の実施形態では、(半)結晶性ドナーおよび/またはアクセプタ成分は、145℃、130℃未満、好ましくは120℃、110°未満、またはさらには100℃未満、例えば80~130℃、好ましくは80~120℃である、化合物自体の、すなわちコーティング組成物中に存在しない場合の融解温度を有する。(半)結晶性ドナーおよび/またはアクセプタ自体の融解温度は、塗料中に配合された場合、したがってコーティング組成物中に存在する場合の融解温度よりわずかに高くすることができる。
【0021】
好ましい実施形態では、少なくとも2つのイソシアナート反応性基を含む化合物(i)はジオールであり、ジオールは、
エーテル基もしくはチオエーテル基、好ましくは-CH2-O-CH2-、-CH2-S-CH2-、-CH2-S-S-CH2-を含有するヒドロキシル基の間の連結鎖を有し、連結鎖はヒドロキシル基の間に11個の炭素原子および/もしくはヘテロ原子の最大長を有するか、または
-CH(CH3)-単位もしくは-CH(CH2CH3)-単位を含有するヒドロキシル基の間に、好ましくは中心位置に連結鎖を有し、それにより、連結鎖は、ヒドロキシル基の間に6未満の奇数の炭素原子および/もしくはヘテロ原子を有する鎖長を有し、
ヒドロキシル基は第1級ヒドロキシル基であり、ジオールは芳香族ではなく、脂環式ではない。
【0022】
さらに別の実施形態では、少なくとも2つのイソシアナート反応性基を含む化合物(i)はジオールであり、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、3-メチル1,5-ペンタンジオール、2-メチル1,3-プロパンジオール、チオジエタノール、ジチオジエタノール、ビス(ヒドロキシエチル)メチルアミン、テトラエチレングリコール、ジ(1,3-プロパンジオール)、ジ(1,4-ブタンジオール)からなる群から選択される。
【0023】
一実施形態では、(半)結晶性ドナーAおよび/またはアクセプタBの数平均分子量は、300~4000g/mol、好ましくは500~3000、より好ましくは1000~2000g/molである。
【0024】
さらに別の実施形態では、イソシアナート基に対する化合物(i)および化合物(iia)または(iib)のイソシアナート反応性基の比は、好ましくは1を超え、より好ましくは、イソシアナート基に対するイソシアナート反応性基のモル比は、1.0~1.5、より好ましくは1.01~1.2である。
【0025】
別の好ましい実施形態では、(半結晶性)アクセプタ成分Bが使用され、化合物(iib)はヒドロキシル官能性(メタ)アクリラートであり、好ましくはヒドロキシブチル(メタ)アクリラートおよびヒドロキシエチル(メタ)アクリラートまたはそれらの混合物からなる群から選択され、または化合物(iib)はヒドロキシルおよびマレアート、フマラートもしくはイタコナート官能基を有する。
【0026】
ビニルエーテル中のC=Cは、本発明による活性化された不飽和アクセプタ基ではないことを理解されたい。そのため、少なくとも1つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する少なくとも1つの官能基を含む化合物(iib)は、ビニルエーテル基ではない。
【0027】
さらに別の好ましい実施形態では、(半結晶性)ドナー成分Aが使用され、化合物(iia)は、ジオールとアルキルアセトアセタートとのエステル交換生成物におけるようなヒドロキシル官能性アセトアセタート、またはジオールとジアルキルマロナートとの部分エステル交換から生じるモノ-ヒドロキシル官能性成分である。ジオールとジアルキルマロナートとのエステル交換生成物を使用する場合、マロナートの二重反応からいくつかのビス-ヒドロキシルマロナート成分が形成され得、それらをジオール化合物(i)に組み込むことができる。
【0028】
ウレタン骨格を調製するために化合物(i)を使用しない(半)結晶性ドナーAおよび/またはアクセプタB成分も開示される。
【0029】
別の実施形態において、粉末コーティング組成物は、以下を含む。
a.架橋性成分Aは、構造Z1(-C(-H)(-R)-)Z2の活性化メチレンまたはメチン中に少なくとも2つの酸性C-Hドナー基を含み、式中、Rは水素、炭化水素、オリゴマーまたはポリマーであり、Z1およびZ2は同じまたは異なる電子吸引基であり、好ましくはケト、エステルまたはシアノまたはアリール基から選択され、好ましくは式1
【化1】

式1
(式中、Rは水素もしくは任意に置換されたアルキルもしくはアリールであり、YおよびY’は同じまたは異なる置換基、好ましくはアルキル、アラルキルもしくはアリール、またはアルコキシであり、または式1中、-C(=O)-Yおよび/または-C(=O)-Y’はCNもしくはアリールで置換されており、1つ以下のアリールであり、またはYもしくはY’はNRR’(RおよびR’はHまたは場合により置換されたアルキルである)であってもよいが、好ましくは両方ともではなく、R、YまたはY’はオリゴマーまたはポリマーへの接続を場合により提供する)による構造を有する活性化C-H誘導体を含み、前記成分Aは好ましくはマロナート、アセトアセタート、マロンアミド、アセトアセトアミドまたはシアノアセタート基であり、好ましくは架橋性成分A中のC-H酸性基の合計の少なくとも50、好ましくは60、70、またはさらには80%を提供し、
b.成分Bは、少なくとも2つの活性化不飽和RMAアクセプタ基を含み、好ましくはアクリロイル、メタクリロイル、イタコナート、マレアートまたはフマラート官能基に由来し、
ドナー成分Aおよび/またはアクセプタ成分Bの少なくとも1つが、上記のポリウレタン骨格を有する(半)結晶性成分であり、
好ましくは、組成物は、0.05~6meq/grバインダ固形分のバインダ固形分1グラム当たりのドナー基C-Hおよびアクセプタ基C=Cの総量を含み、好ましくは、アクセプタ基C=Cのドナー基C-Hに対する比は、0.1を超え10未満である。
【0030】
さらに別の実施形態では、配合物中の結晶性ポリウレタン成分の量は、架橋性成分AおよびBの総量に対して2から95重量%、好ましくは2から70重量%、より好ましくは3から50重量%、最も好ましくは6から35重量%である。
【0031】
さらに別の実施形態では、(半)結晶性架橋性成分AおよびBは、
実質的にヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)であるポリイソシアナートを、少なくとも2つ、好ましくは2つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシルを含み、より好ましくはジオールである化合物(i);ならびに
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および活性化メチレンもしくはメチン中に少なくとも1つの酸性C-Hドナー基を有する少なくとも1つの官能基を含み、(半)結晶性ドナー成分Aを形成する化合物(iia);ならびに
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および少なくとも1つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する少なくとも1つの官能基を含み、(半)結晶性アクセプタ成分Bを形成する化合物(iib)
と反応させることにより形成される、(半)結晶性ハイブリッドA/B成分である。
【0032】
架橋性成分AおよびBを含む真マイケル付加(RMA)架橋性コーティング組成物は、一般に、欧州特許第2556108号明細書、欧州特許第0808860号明細書または欧州特許第1593727号明細書に溶媒由来系(solvent borne system)で使用するために記載されており、架橋性成分AおよびBの具体的な説明は、本明細書に包含されていると見なされる。
【0033】
成分AおよびBはそれぞれ、硬化時に反応してコーティング中に架橋ネットワークを形成するRMA反応性ドナーおよびアクセプタ部分を含む。成分AおよびBは、別々の分子上に存在することができるが、1つの分子上に存在することもでき、ハイブリッドA/B成分またはそれらの組合せと呼ばれる。
【0034】
好ましくは、成分AおよびBは別々の分子であり、それぞれ独立してポリマー、オリゴマー、二量体またはモノマーの形態である。コーティング用途では、成分AまたはBの少なくとも1つが好ましくはオリゴマーまたはポリマーであることが好ましい。活性化メチレン基CH2は、2つのC-H酸性基を含むことに留意されたい。たとえ第1のC-H酸性基の反応後、第2のC-H酸性基の反応がより困難であっても、例えばメタクリラートとの反応では、アクリラートと比較して、そのような活性化メチレン基の官能価は2としてカウントされる。反応性成分AおよびBは、1つのA/Bハイブリッド分子に組み合わせることもできる。粉末コーティング組成物のこの実施形態では、C-HおよびC=C反応性基の両方が1つのA-B分子に存在する。
【0035】
好ましくは、成分Aは、官能基として成分Aおよび場合により1つ以上の成分B、または触媒系Cからの成分を有するポリマー、好ましくはポリエステル、ポリウレタン、アクリル、エポキシまたはポリカーボネートである。また、これらのポリマータイプの混合物またはハイブリッドも可能である。適切には、成分Aは、アクリル、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリエステル-ウレタンポリマーの群から選択されるポリマーである。
【0036】
マロナートまたはアセトアセタートは、成分Aにおいて好ましいドナータイプである。架橋性組成物の最も好ましい実施形態における高い反応性および耐久性を考慮して、成分AはマロナートC-H含有化合物である。粉末コーティング組成物において、活性化C-H基の大部分がマロナート由来である、すなわち、粉末コーティング組成物中の全ての活性化C-H基の50%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超、最も好ましくは80%超がマロナート由来であることが好ましい。
【0037】
オリゴマーおよび/またはポリマーマロナート基含有成分、例えば、主鎖、ペンダントまたはその両方にマロナート型基を含有するポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリラート、エポキシ樹脂、ポリアミドおよびポリビニル樹脂またはそれらのハイブリッドが好ましい。
【0038】
バインダ固形分1グラム当たりのドナー基C-Hおよびアクセプタ基C=Cの総量は、それらが様々な架橋性成分にわたってどのように分布するかに関係なく、好ましくは0.05~6meq/gr、より典型的には0.10~4meq/gr、さらにより好ましくは0.25~3meq/grのバインダ固形分、最も好ましくは0.5~2meq/grである。好ましくは、成分AとBとの間の化学量論は、反応性C=C基対反応性C-H基の比が0.1超、好ましくは0.2超、より好ましくは0.3超、最も好ましくは0.4超であり、アクリラート官能基Bの場合、好ましくは0.5超、最も好ましくは0.75超であり、比は好ましくは10未満、好ましくは5未満、より好ましくは3、2または1.5未満であるように選択される。
【0039】
マロナート基含有ポリエステルは、好ましくは、マロン酸のメチルまたはエチルジエステルと、ポリマーまたはオリゴマーの性質であり得るが、他の成分とのマイケル付加反応によって組み込むこともできる多官能性アルコールとのエステル交換によって得ることができる。本発明で使用するのに特に好ましいマロナート基含有成分は、マロナート基含有オリゴマーまたはポリマーエステル、エーテル、ウレタンおよびエポキシエステルならびにそれらのハイブリッド、例えば1分子当たり1~50個、より好ましくは2~10個のマロナート基を含有するポリエステル-ウレタンである。ポリマー成分Aはまた、公知の方法で、例えば、活性化C-H酸(ドナー)基、好ましくはアセトアセタートまたはマロナート基、特に2-(メタクリロイルオキシ)エチルアセトアセタートまたは-マロナートを含む部分で官能化されたモノマー、例えば(メタ)アクリラートを含むエチレン性不飽和モノマーのラジカル重合によって製造することもできる。実際には、ポリエステル、ポリアミドおよびポリウレタン(およびこれらのハイブリッド)が好ましい。このようなマロナート基含有成分は、約100~約10000、好ましくは500~5000、最も好ましくは1000~4000の範囲の数平均分子量(Mn)、および20000未満、好ましくは10000未満、最も好ましくは6000未満のMw(GPCポリスチレン当量で表される)を有することも好ましい。
【0040】
適切な架橋性成分Bは、一般に、炭素-炭素二重結合が電子吸引基、例えばα位のカルボニル基によって活性化されるエチレン性不飽和成分であり得る。そのような成分の代表例は、米国特許第2759913号明細書(6列35行目~7列45行目)、独国特許(DE-PS)第835809号明細書(3列、16行~41行)、米国特許第4871822号明細書(2列14行目~4列14行目)、米国特許第4602061号明細書(3列14行20~4列14行)、米国特許第4408018号明細書(2列19~68行目)および米国特許第4217396号明細書(1列60行目~2列64行目)に開示されている。
【0041】
アクリラート、メタクリラート、イタコナート、フマラートおよびマレアートが好ましい。イタコナート、フマラートおよびマレアートは、ポリエステルまたはポリエステル-ウレタンの骨格に組み込むことができる。活性化不飽和基を含有するポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、アクリルおよびエポキシ樹脂(またはそれらのハイブリッド)ポリエーテルおよび/またはアルキド樹脂などの好ましい例示的な樹脂を挙げることができる。これらには、例えば、ポリイソシアナートとヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル、例えば(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとの反応によって得られるウレタン(メタ)アクリラート、またはポリ-ヒドロキシル成分と化学量論量未満の量の(メタ)アクリル酸とのエステル化によって調製される成分;ヒドロキシル基含有ポリエーテルと(メタ)アクリル酸とのエステル化により得られるポリエーテル(メタ)アクリラート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートとポリカルボン酸および/またはポリアミノ樹脂との反応によって得られる多官能性(メタ)アクリラート;(メタ)アクリル酸とエポキシ樹脂との反応によって得られるポリ(メタ)アクリラート、ならびにモノアルキルマレアートエステルとエポキシ樹脂および/またはヒドロキシ官能性オリゴマーまたはポリマーとの反応によって得られるポリアルキルマレアートが含まれる。また、グリシジルメタクリラートでエンドキャップされたポリエステルが好ましい例である。アクセプタ成分は、複数のタイプのアクセプタ官能基を含有することが可能である。
【0042】
最も好ましい活性化不飽和基含有成分Bは、不飽和アクリロイル、メタクリロイルおよびフマラート官能性成分である。好ましくは、1分子当たりの活性化C=C基の数平均官能価は、2~20、より好ましくは2~10、最も好ましくは3~6である。当量(EQW:反応性官能基あたりの平均分子量)は100~5000、より好ましくは200~2000であり、数平均分子量は好ましくはMn200~10000、より好ましくは300~5000、最も好ましくは400~3500g/モル、さらにより好ましくは1000~3000g/モルである。
【0043】
粉末系での使用を考慮して、成分BのTgは、粉末安定性の必要性のために、好ましくは25、30、35を超え、より好ましくは少なくとも40、45、最も好ましくは少なくとも50℃、さらには少なくとも60℃である。Tgは、DSC、中間点、加熱速度10℃/分で測定したものとして定義される。成分のうちの1つが50℃より実質的に高いTgを有する場合、他の配合物成分のTgは、当業者によって理解されるように低くなり得る。
【0044】
適切な成分Bは、ヒドロキシ-および(メタ)アクリラート官能性化合物をイソシアナートと反応させてウレタン結合を形成することによって調製されたウレタン(メタ)アクリラートであり、イソシアナートは、好ましくは少なくとも部分的にジ-またはトリ-イソシアナート、好ましくはイソホロンジイソシアナート(IPDI)である。ウレタン結合はそれ自体で剛性を導入するが、好ましくは高Tgイソシアナートが脂環式または芳香族イソシアナート、好ましくは脂環式のように使用される。このようなイソシアナートの使用量は、好ましくは、前記(メタ)アクリラート官能性ポリマーTgが40℃超、好ましくは45または50℃超に上昇するように選択される。
【0045】
粉末コーティング組成物は、好ましくは、硬化後に架橋密度(DMTAを使用)を少なくとも0.025ミリモル/cc、より好ましくは少なくとも0.05ミリモル/cc、最も好ましくは少なくとも0.08ミリモル/cc、典型的には3、2、1または0.7ミリモル/cc未満であると決定することができるように設計される。
【0046】
粉末コーティング組成物は、周囲条件で自由流動性粉末を保持すべきであり、したがって、10℃/分の加熱速度でのDSCによって決定された中間値として、好ましくは25℃を超える、好ましくは30℃を超える、より好ましくは35、40、50℃を超えるTgを有する。
【0047】
上記のように、好ましい成分Aはマロナート官能性成分である。しかしながら、マロナート部分の組み込みはTgを低下させる傾向があり、十分に高いTgを有する主要成分Aとしてマロナートに基づく粉末コーティング組成物を提供することは課題であった。
【0048】
高Tgを達成する観点から、粉末コーティング組成物は、好ましくは、ハイブリッド成分A/Bの形態であり得る架橋性ドナー成分Aおよび/もしくは架橋性アクセプタ成分Bが、アミド、尿素もしくはウレタン結合を含み、ならびに/またはそれによって、高Tgモノマー、好ましくは脂環式もしくは芳香族モノマーを含み、もしくはポリエステルの場合、1,4-ジメチロールシクロヘキサン(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール(TCDジオール)、イソソルビド、ペンタ-スピログリコール、水素化ビスフェノールAおよびテトラ-メチル-シクロブタンジオールの群から選択される1つ以上のモノマーを含む、架橋性組成物を含む。
【0049】
さらに、高Tgを達成する観点から、粉末コーティング組成物は、ポリエステル(メタ)アクリラート、ポリエステルウレタン(メタ)アクリラート、エポキシ(メタ)アクリラートもしくはウレタン(メタ)アクリラートである成分Bまたはハイブリッド成分A/Bを含むか、またはフマラート、マレアートもしくはイタコナート単位、好ましくはフマラートを含むポリエステルであるか、またはイソシアナートもしくはエポキシ官能性活性化不飽和基でエンドキャップされたポリエステルである。
【0050】
さらに別の実施形態では、架橋性成分AもしくはBまたはハイブリッドA/Bは、好ましくはアクリル、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリエステル-ウレタンポリマーの群から選択されるポリマーであり、このポリマーは、
・GPCで測定して、少なくとも450gr/モル、好ましくは少なくとも1000、より好ましくは少なくとも1500、最も好ましくは少なくとも2000gr/モルの数平均分子量Mnを有し、
・GPCで測定して、最大20000gr/モル、好ましくは最大15000、より好ましくは最大10000、最も好ましくは最大7500gr/モルの重量平均分子量Mwを有し、
・好ましくは4未満、より好ましくは3未満の多分散性Mw/Mnを有し、
・C-HもしくはC=Cにおける当量EQWが少なくとも150、250、350、450もしくは550gr/モル、好ましくは最大で2500、2000、1500、1250もしくは1000gr/モルであり、反応性基C-HもしくはC=Cの数平均官能価が分子当たり1~25、より好ましくは1.5~15、さらにより好ましくは2~15、最も好ましくは2.5~10のC-H基であり、
・好ましくは、100~140℃の範囲の温度で60Pas未満、より好ましくは40、30、20、10もしくはさらには5Pas未満の融解粘度を有し、
・好ましくは、アミド、尿素もしくはウレタン結合を含み、および/もしくは高Tgモノマー、好ましくは脂環式もしくは芳香族モノマー、特に1,4-ジメチロールシクロヘキサン(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール(TCDジオール)、イソソルビド、ペンタ-スピログリコールもしくは水素化ビスフェノールAおよびテトラメチル-シクロブタンジオールの群から選択されるポリエステルモノマーを含み、ならびに/または
・10℃/分の加熱速度でのDSCによって決定された中間値として、25℃を超える、好ましくは35℃を超える、より好ましくは40、50もしくはさらには60℃を超えるTgを有する。
【0051】
ポリマー特性Mn、MwおよびMw/Mnは、一方では所望の粉末安定性、他方では所望の低融解粘度だけでなく、想定されるコーティング特性も考慮して選択される。高Mnは、末端基のTg低下効果を最小限に抑えるために好ましく、他方では、低Mwは、融解粘度がMwに非常に大きく関連し、低粘度が望ましいために好ましい。したがって、低いMw/Mnが好ましい。
【0052】
高Tgを達成する観点から、RMA架橋性ポリマーは、好ましくはアミド、尿素もしくはウレタン結合を含み、ならびに/または高Tgモノマー、好ましくは脂環式もしくは芳香族モノマーを含み、もしくはポリエステルの場合、1,4-ジメチロールシクロヘキサン(CHDM)、TCDジオール、イソソルビド、ペンタ-スピログリコールもしくは水素化ビスフェノールAおよびテトラメチル-シクロブタンジオールの群から選択されるモノマーを含む。
【0053】
RMA架橋性ポリマーがA/Bハイブリッドポリマーである場合、ポリマーは、アクリラートまたはメタクリラート、フマラート、マレアートおよびイタコナート、好ましくは(メタ)アクリラートまたはフマラートの群から選択される1つ以上の成分B基も含むことがさらに好ましい。
【0054】
好ましい実施形態では、脂環式または芳香族イソシアナート、好ましくは脂環式イソシアナート由来の尿素、ウレタンまたはアミド結合を含むポリエステル、ポリエステルアミド、ポリエステル-ウレタンまたはウレタン-アクリラートを含むRMA架橋性ポリマーであって、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも45または50℃、最大120℃のTgおよび450~10000、好ましくは1000~3500gr/モルの数平均分子量Mn、好ましくは20000、10000または6000gr/モルの最大Mnを有し、ポリマーにRMA架橋性成分AもしくはBまたはその両方が提供される、RMA架橋性ポリマー。ポリマーは、例えば、前記RMA架橋性基を含む前駆体ポリマーをある量の脂環式または芳香族イソシアナートと反応させてTgを上昇させることによって得ることができる。添加されるそのようなイソシアナート、または形成される尿素/ウレタン結合の量は、Tgが少なくとも40℃、好ましくは少なくとも45または50℃に上昇するように選択される。
【0055】
好ましくは、RMA架橋性ポリマーは、主要成分Aとしてマロナートを含み、1分子当たり1~25個、より好ましくは1.5~15個、さらにより好ましくは2~15個、最も好ましくは2.5~10個のマロナート基の数平均マロナート官能価を含み、500~20000、好ましくは1000~10000、最も好ましくは2000~6000gr/モルのGPC重量平均分子量を有し、ヒドロキシ-およびマロナート官能性ポリマーをイソシアナートと反応させてウレタン結合を形成することによって調製された、ポリエステルまたはポリエステル-ウレタンである。
【0056】
触媒系
好ましい触媒系は、前駆体P、活性化剤C、および場合により遅延剤Tを含み、
前駆体Pは、そのプロトン化形態のpKaがドナー成分A中の活性化C-H基のpKaよりも2単位超、好ましくは3単位超、より好ましくは4単位超、さらにより好ましくは少なくとも5単位低い弱塩基であり、活性化剤Cは硬化温度でPと反応して、AとBとの間のマイケル付加反応を触媒することができる強塩基(CP)を生成することができ、
遅延剤Tは、A中の活性化C-HのpKaよりも2ポイント超、より好ましくは3ポイント超、さらにより好ましくは4ポイントまたは5ポイント超低いpKaを有し、脱プロトン化すると、活性化剤Cと反応することができる弱塩基を生成し、架橋性組成物AとBとの間のマイケル付加反応を触媒することができる強塩基を生成する酸である。
【0057】
一実施形態では、活性化剤Cは、エポキシド、カルボジイミド、オキセタン、オキサゾリンまたはアジリジン官能性成分、好ましくはエポキシドまたはカルボジイミドの群から選択され、
触媒前駆体Pは、カルボキシレート、ホスホネート、スルホネート、ハロゲニドもしくはフェノレートアニオンの群から選択される弱塩基求核性アニオンまたは非イオン性求核剤、好ましくは第3級アミンもしくはホスフィンであり、より好ましくは、カルボキシレート、ハロゲニドもしくはフェノレートアニオンまたは1,4-ジアザビシクロ-[2.2.2]-オクタン(DABCO)またはN-アルキルイミダゾールの群から選択される弱塩基求核性アニオン、最も好ましくはカルボキシレートであり、および/または
好ましくはプロトン化前駆体Pである遅延剤T。
【0058】
別の実施形態では、活性化剤Cは、Pと反応性の活性化不飽和基C=Cを含むマイケルアクセプタ、好ましくはアクリラート、メタクリラート、フマラート、イタコナートもしくはマレアートであり、触媒前駆体Pは、ホスフィン、N-アルキルイミダゾールおよびフッ化物の群から選択される弱塩基であるか、もしくはXがN、P、O、SもしくはCである酸性X-H基含有化合物からの、活性化剤Cと反応性のマイケル付加ドナーである弱塩基求核性アニオンXであり、ならびに/または好ましくはプロトン化前駆体P1である遅延剤T。
【0059】
最も好ましい触媒活性化剤C1は、エポキシ基を含む。好ましい活性化剤C1としてのエポキシドの適切な選択肢は、脂環式エポキシド、エポキシ化油およびグリシジル型エポキシドである。適切な成分C1には、例えば米国特許第4749728号明細書、3列21~56行目に記載されており、複数のエポキシ官能基を含むエポキシド官能基を有するC10~18アルキレンオキシドおよびオリゴマーおよび/またはポリマーが含まれる。特に好適なモノエポキシドには、tert-ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアセタート、ベルサチックエステル(versatic ester)のグリシジルエステル、グリシジルメタクリラート(GMA)およびグリシジルベンゾエートが含まれる。有用な多官能性エポキシドには、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ならびにそのようなBPAエポキシ樹脂の高級同族体、Eponex 1510(Hexion)、ST-4000D(Kukdo)などの水素化BPAのグリシジルエーテル、13ystem13zed大豆油などの脂肪族オキシラン、アジピン酸ジグリシジル、1,4-ジグリシジルブチルエーテル、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル、Araldite PT910およびPT912(Huntsman)などの二酸のグリシジルエステル、TGICおよび他の市販のエポキシ樹脂が含まれる。ビスフェノールAジグリシジルエーテルならびにその固体高分子量同族体が好ましいエポキシドである。グリシジルメタクリラートに由来するエポキシド官能価を有するアクリル(コ)ポリマーも有用である。好ましい実施形態では、エポキシ成分は、少なくとも400(750、1000、1500)のMnを有するオリゴマーまたはポリマー成分である。他のエポキシド化合物には、2-メチル-1,2-ヘキセンオキシド、2-フェニル-1,2-プロペンオキシド(α-メチルスチレンオキシド)、2-フェノキシメチル-1,2-プロペンオキシド、エポキシ化不飽和油または脂肪エステル、および1-フェニルプロペンオキシドが含まれる。有用かつ好ましいエポキシドはカルボン酸のグリシジルエステルであり、これはカルボン酸官能性ポリマー上、または好ましくはCardura E10P(Versatic(商標)Acid 10のグリシジルエステル)のような高度に分岐した疎水性カルボン酸上に存在し得る。最も好ましいのは、典型的な粉末架橋剤エポキシ成分:トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)、Araldite PT910およびPT912、ならびに周囲温度で天然に固体であるフェノールグリシジルエーテル、またはグリシジルメタクリラートのアクリル(コ)ポリマーである。
【0060】
触媒前駆体P1の適切な例は、カルボキシレート、ホスホネート、スルホネート、ハロゲニドもしくはフェノレートアニオンもしくはそれらの塩の群から選択される弱塩基求核性アニオンまたは非イオン性求核剤、好ましくは第3級アミンもしくはホスフィンである。より好ましくは、弱塩基P1は、カルボキシレート、ハロゲニドもしくはフェノレート塩、最も好ましくはカルボキシレート塩の群から選択される弱塩基求核性アニオンであるか、または1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)もしくはN-アルキルイミダゾールである。触媒前駆体P1は、好ましくはエポキシである触媒活性化剤C1と反応して、架橋性成分AおよびBの反応を開始することができる強塩基性アニオン性付加物を生成することができる。
【0061】
触媒前駆体P1の別の適切な例は、XがN、P、O、SまたはCである酸性X-H基含有化合物からの弱塩基アニオンX-であって、マイケルアクセプタ活性化剤C1と反応可能なマイケル付加ドナーであり、8未満、好ましくは7未満、より好ましくは6未満の対応する共役酸X-HのpKaを特徴とする、アニオンX-の群から選択される弱塩基求核性アニオンであり、ここでpKaは水性環境における値として定義され、C1がメタクリラート、フマラート、イタコナートまたはマレアートである場合、P1は10.5未満、好ましくは9未満、より好ましくは8未満の共役酸のpKaを有する。
【0062】
弱塩基P1である触媒前駆体は、好ましくは、硬化プロセスの時間スケールで150℃未満、好ましくは140,130、120、好ましくは少なくとも70、好ましくは少なくとも80または90℃の温度で触媒活性化剤C1と反応する。硬化温度での弱塩基P1と活性化剤C1との反応速度は、有用な開時間(open time)を提供するのに十分に低く、意図した時間窓で十分な硬化を可能にするのに十分に高い。
【0063】
触媒前駆体P1がアニオンである場合、酸性でないカチオンを含む塩として添加することが好ましい。酸性でないとは、架橋性ドナー成分Aと塩基について競合する水素を有さず、したがって意図された硬化温度での架橋反応を阻害しないことを意味する。好ましくは、カチオンは、架橋性組成物中の任意の成分に対して実質的に非反応性である。カチオンは、例えば、アルカリ金属、第4級アンモニウムまたはホスホニウムであり得るが、架橋性組成物中の成分A、BまたはCのいずれに対しても反応しないプロトン化「超強塩基」でもあり得る。適切な超強塩基は当技術分野で公知である。
【0064】
好ましくは、触媒前駆体Pは、酸性ではないカチオン、好ましくは式Y(R’)(式中、YはNもしくはPを表し、各R’は、ポリマーに連結されている可能性がある同じもしくは異なるアルキル、アリールまたはアラルキル基であってもよい)によるカチオンを含む塩として添加され、またはカチオンはプロトン化された非常に強い塩基性アミンであり、非常に強い塩基性アミンは、好ましくはアミジンの群から選択され、好ましくは1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン(DBU)もしくはグアニジン、好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)である。R’は、当業者に公知であるように、RMA架橋化学に干渉しないまたは実質的に干渉しない置換基で置換することができる。最も好ましくは、R’は、1から12個、最も好ましくは1から4個の炭素原子を有するアルキルである。
【0065】
場合により、いくつかの好ましい実施形態では、触媒系は、架橋性ドナー成分A中の活性化C-HのpKaよりも2、好ましくは3、より好ましくは4、最も好ましくは5ポイント低いpKaを有し、脱プロトン化時にP1前駆体として作用することができる弱塩基を生成し、活性化剤C1と反応して、AとBとの間のマイケル付加反応を触媒することができる強塩基を生成することができる酸である遅延剤Tをさらに含む。遅延剤Tは、好ましくはプロトン化前駆体P1である。遅延剤Tは、触媒前駆体組成物または触媒活性化剤組成物の一部であり得る。触媒前駆体組成物および触媒活性化剤組成物の両方の一部であってもよい。好ましくは、遅延剤Tおよびプロトン化前駆体P1は、少なくとも120℃、好ましくは130℃、150、175、200またはさらには250℃の沸点を有する。好ましくは、遅延剤Tはカルボン酸である。遅延剤Tの使用は、移動度の制限が顕著になる前に、硬化中に成分のより多くの相互拡散を可能にするために架橋反応を遅らせることにおいて有益な効果を有することができる。
【0066】
具体的な一実施形態では、触媒活性化剤C1はアクリラートアクセプタ基であり、成分P1およびTは、(酸形態で)8未満、より好ましくは7、6またはさらには5.5未満のpKaを有するX/X-H成分、好ましくはカルボキシレート/カルボン酸化合物である。アクリラートアクセプタ含有粉末塗料組成物のための有用なX-H成分の例としては、1,3-シクロヘキサンジオン(pKa 5.26)およびジメドン(5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン、pKa 5.15)としての環状1,3-ジオン、エチルトリフルオロアセトアセタート(7.6)、メルドラム酸(4.97)が挙げられる。好ましくは、少なくとも175℃、より好ましくは少なくとも200℃の沸点を有するX-H成分が使用される。
【0067】
別の実施形態では、触媒活性化剤C1は、メタクリラート、フマラート、マレアートまたはイタコナートアクセプタ基、好ましくはメタクリラート、イタコナートまたはフマラート基であり、成分P1およびTは、10.5未満、より好ましくは9.5、8未満、またはさらには7未満の酸pKaを有するX/X-H成分である。
【0068】
本特許出願で言及されるpKa値は、周囲条件(21℃)での水性pKa値である。それらは、文献に容易に見出すことができ、必要に応じて、当業者に公知の手順によって水溶液中で決定することができる。
【0069】
硬化条件下で架橋反応の有用な遅延を提供することができるように、遅延剤Tおよびその脱プロトン化バージョンP1と活性化剤C1との反応は、適切な速度で行われるべきである。
【0070】
好ましい触媒系は、触媒活性化剤C1としてエポキシを含み、触媒前駆体P1としてC1のエポキシド基と反応して強塩基性付加物C1を形成する弱塩基求核性アニオン基を含み、最も好ましくは遅延剤Tも含む。適切な触媒系では、P1はカルボキシレート塩であり、C1はエポキシド、カルボジイミド、オキセタンまたはオキサゾリンであり、より好ましくはエポキシドまたはカルボジイミドであり、Tはカルボン酸である。あるいは、P1はDABCOであり、C1はエポキシであり、Tはカルボン酸である。
【0071】
理論に束縛されることを望まないが、求核性アニオンP1は活性化剤エポキシドC1と反応して強塩基を生じるが、この強塩基は遅延剤Tによって直ちにプロトン化されて、架橋反応を直接強く触媒しない塩(P1と機能的に類似)を生成すると考えられる。反応スキームは、遅延剤Tが実質的に完全に枯渇するまで行われ、これは、架橋性成分AおよびBの反応を有意に触媒するための有意な量の強塩基がその時間中に存在しないので、開時間を提供する。遅延剤Tが枯渇すると、強塩基が形成され、残存して迅速なRMA架橋反応を効果的に触媒する。
【0072】
本発明の特徴および利点は、以下の例示的な反応スキームを参照すると理解されるであろう。
【化2】
【0073】
具体的には、P1、C1およびT種としてのカルボキシレート、エポキシドおよびカルボン酸の場合、これは:**図に取って代わるように描くことができる**
【化3】
【0074】
場合によっては、活性化剤C1と前駆体P1との反応の詳細な機構が知られていないか、議論の対象となっていない可能性があり、実際に反応に関与するP1のプロトン化体が関与する反応機構が示唆され得る。そのような反応シーケンスの正味の効果は、P1の脱プロトン化形態を介したその進行に基づいて記載されたシーケンスと同様であり得る。反応がプロトン化P1経路に沿って進行すると主張され得る系が本発明に含まれる。この場合、遅延剤Tが枯渇した後、C1は、マイケルドナー種Aとの酸-塩基平衡から生成されたプロトン化P1と反応し、その反応は、この酸-塩基平衡が脱プロトン化マイケルドナー側に引き込まれることに起因して架橋を活性化する。
【0075】
活性化剤がP1Hのプロトン化形態を介して反応する場合の反応スキームは、次のスキームによって示されるであろう:
【化4】
【0076】
一実施形態では、遅延剤Tは、プロトン化アニオン基P1、好ましくはカルボン酸TおよびカルボキシレートP1であり、これは、例えば、酸官能性成分、好ましくは遅延剤Tとして酸基を含むポリマーを部分的に中和してP1上のアニオン基に部分的に変換することによって形成することができ、部分中和は、好ましくは水酸化カチオンまたは(ビ)カーボネート、好ましくはテトラアルキルアンモニウムまたはテトラアルキルホスホニウムカチオンによって行われる。別の実施形態では、ポリマー結合成分P1は、ポリエステル中のエステル基を前述の水酸化物で加水分解することによって作製することができる。
【0077】
成分TおよびP1の共役酸の沸点は、硬化条件中にこれらの触媒系成分の蒸発が制御不良となることを防ぐために、粉末コーティング組成物の想定される硬化温度を超えることが好ましい。ギ酸および酢酸は、硬化中に蒸発する可能性があるため、あまり好ましくない遅延剤Tである。好ましくは、遅延剤TおよびP1の共役酸は、120℃より高い沸点を有する。
【0078】
あまり好ましくないが、触媒系の成分P1、C1またはTの少なくとも1つは、架橋性成分AまたはBの一方または両方の基であることが可能である。その場合、P1およびC1が粉末コーティング組成物中でマクロ物理的に存在することを確実にしなければならない。P1、C1およびTの1つ以上であるが全てではない基が、RMA架橋性成分AもしくはBまたはその両方にあることが可能である。好都合な実施形態において、P1およびTは両方ともRMA架橋性成分Aおよび/またはB上にあり、P1は好ましくは、Tの酸基を含む酸性官能性ポリマーを上記のようにカチオンを含む塩基で部分的に中和して、T上の酸基をP1上のアニオン基に部分的に変換することによって形成される。別の実施形態は、ポリエステル、例えば成分Aのポリエステルの加水分解によって形成された成分P1を有し、ポリマー種として存在する。
【0079】
さらに別の実施形態では、触媒系は、
・結合剤成分AおよびBならびに触媒系の総重量に対して1~600μeq/gr、好ましくは10~400、より好ましくは20~200μeq/grの量の活性化剤Cと、
・バインダ成分AおよびBならびに触媒系の総重量に対して1~300μeq/gr、好ましくは10~200、より好ましくは20~100μeq/grの量の前駆体Pと、
・場合により、バインダ成分AおよびBならびに触媒系の総重量に対して、1~500、好ましくは10~400、より好ましくは20~300μeq/gr、最も好ましくは30~200μeq/grの量の遅延剤Tとを含み、
・好ましくは、当量のC1は、
i.存在する場合、Tの量よりも、好ましくは1~300μeq/gr、好ましくは10~200、より好ましくは20から100μeq/grの量だけ多く、
ii.好ましくはP1の量よりも多く、
iii.より好ましくは、P1およびTの量の合計よりも多い。
【0080】
しかしながら、活性化剤C1がP1と反応性の活性化不飽和基C=Cを含むマイケルアクセプタである場合、この場合にはC1も成分Bであり得るため、濃度の妥当な上限はない。
【0081】
触媒系は、C1の量がP1の量よりも少ない状態で機能することも可能である。しかしながら、これは、未反応のP1を残すのであまり好ましくない。C1、特にエポキシドの量がP1の量よりも多い場合、それはP1およびTまたは他の求核性残留物と反応する可能性があるが、反応後になお塩基性を維持するか、またはネットワークに残る可能性があり、あまり大きな問題はないので、欠点は限定される。それにもかかわらず、C1が過剰であると、エポキシ以外のC1のコストの観点から不利になり得る。
【0082】
さらに別の実施形態では、触媒系は、前駆体Pおよび遅延剤Tならびに活性化剤Cを含み、
・弱塩基Pはそれぞれ、PとTの合計の10~100当量%を表し、
・好ましくは、遅延剤Tの量は、Pの量の20~400当量%、好ましくは30~300当量%であり、
・好ましくは、PおよびTの量の合計に対するCの当量の比は、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.8、より好ましくは少なくとも1、好ましくは最大3、より好ましくは最大2であり、
・Tに対するCの比は、好ましくは少なくとも1、好ましくは少なくとも1.5、最も好ましくは少なくとも2である。
【0083】
好ましい実施形態では、粉末コーティング組成物はまた、前駆体Pおよび/または遅延剤Tを含み、前駆体Pおよび/または遅延剤Tは(半)結晶性であり、好ましくはHDIと、少なくとも2つのイソシアナート反応性基を有する化合物(i)、好ましくはジオールとを反応させることによって調製されるポリウレタン骨格を有し、ジオール(i)は、
エーテル基もしくはチオエーテル基、好ましくは-CH2-O-CH2-、-CH2-S-CH2-、-CH2-S-S-CH2-を含有するヒドロキシル基の間の連結鎖を有し、連結鎖はヒドロキシル基の間に11個の炭素原子および/もしくはヘテロ原子の最大長を有するか、または
-CH(CH3)-単位もしくは-CH(CH2CH3)-を含有するヒドロキシル基の間に、好ましくは中心位置に連結鎖を有し、それにより、連結鎖は、ヒドロキシル基の間に6未満の奇数の炭素原子および/もしくはヘテロ原子を有する鎖長を有し、
ヒドロキシル基は第1級ヒドロキシル基であり、ジオールは芳香族ではなく、脂環式ではない。
【0084】
好ましくは、(半)結晶性前駆体Pおよび/または遅延剤Tならびに(半)結晶性ドナー成分Aおよび/またはアクセプタ成分Bはそれぞれ、HDIを同じ化合物(i)と反応させることによって調製されたポリウレタン骨格を有する。
【0085】
(半)結晶性ドナー成分Aおよびアクセプタ成分B
第2の態様では、本発明は、(半)結晶性であり、
実質的にヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)であるポリイソシアナートを、少なくとも2つ、好ましくは2つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシルを含み、より好ましくはジオールである化合物(i);ならびに
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および活性化メチレンもしくはメチン中に少なくとも1つの酸性C-Hドナー基を有する少なくとも1つの官能基を含み、(半)結晶性ドナー成分Aを形成する化合物(iia);または
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシル、および少なくとも1つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する少なくとも1つの官能基を含み、(半)結晶性アクセプタ成分Bを形成する化合物(iib)
と反応させることにより形成されるポリウレタン骨格を含む、架橋性ドナー成分Aおよび/または架橋性アクセプタ成分Bに関する。
【0086】
本発明の第1の態様における(半)結晶性ドナー成分Aおよび/またはアクセプタ成分Bについて上述した実施形態および好ましい例は、本発明の第2の態様にも適用される。
【0087】
基材およびコーティング
本発明はまた、基材を粉末塗装する方法であって、
a.本発明による粉末コーティング組成物を提供するステップと、
b.粉末の層を基材表面に塗布するステップと、
c.75℃~140℃、好ましくは80℃~130,120、110℃、さらには100℃の硬化温度Tcurまで、好ましくは赤外線加熱を用いて加熱するステップと、
d.Tcurで、好ましくは40、30、20、15、10またはさらには5分未満の硬化時間にわたって硬化させるステップと
を含む、方法に関する。
【0088】
Tcurでの粉末コーティング組成物は、好ましくは60Pas未満、より好ましくは40、30、20、10またはさらには5Pas未満の硬化温度での融解粘度を有する。融解粘度は、反応のまさに開始時に、または触媒系のC2なしで測定される。
【0089】
本方法の好ましい実施形態では、硬化温度は75℃~140℃、好ましくは80℃~120℃であり、触媒系Cは、感温性基材、好ましくはMDF、木材、プラスチック、複合材、または合金のような感温性金属基材の粉末コーティングを可能にする上記の潜在触媒系である。
【0090】
したがって、本発明はまた、好ましくはMDF、木材、プラスチックまたは金属合金のような感温性基材を有し、好ましくはコーティングの架橋密度XLDが少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.02、0.04、0.07またはさらには0.1ミリモル/cc(DMTAによって決定される)であり、好ましくは3、2、1.5、1またはさらには0.7ミリモル/cc未満である、本発明の粉末コーティング組成物でコーティングされた物品に関する。
【0091】
粉末コーティング組成物は、顔料、染料、分散剤、脱ガス助剤、レベリング添加剤、艶消し添加剤、難燃性添加剤、膜形成特性を改善するための添加剤、コーティングの光学的外観のための添加剤、機械的特性、接着性を改善するための添加剤、または色およびUV安定性のような安定性特性のための添加剤の群から選択される添加剤などの添加剤をさらに含んでもよい。これらの添加剤は、粉末コーティング組成物の成分の1種以上と融解混合することができる。
【0092】
粉末塗料はまた、従来の粉末コーティング系と同様の手段を使用して、添加剤に依存するか、または粉末ブレンド系もしくは異なる反応性のポリマーのブレンドに基づく系のいずれかを使用した意図的な不均一架橋によって、艶消しコーティングを製造するように設計することができる。
【0093】
典型的には押出物を冷却バンド上に強制的に広げることによって押出機を出た直後に押出物を固化させることを伴う、標準的な粉末コーティング処理を使用することができる。押し出された塗料は、冷却バンドに沿って移動する際に固化したシートの形態をとることができる。次いで、バンドの端部で、シートは、好ましくはペグブレーカを介して小片に分割されて粒状物になる。この時点で、統計的最大サイズが好ましいが、粒状物には大幅な形状制御は適用されない。次いで、塗料粒状物を分級マイクロナイザ(classifying microniser)に移し、ここで塗料を非常に正確な粒径分布に粉砕する。そして、この生成物は完成した粉末コーティング塗料となる。
【0094】
本発明を、以下の非限定的な例によって説明する。
【0095】

OH価
調製したブランクおよび試料フラスコの手動滴定によってOHVを決定した。指示薬溶液は、0.80gのチモールブルーおよび0.25gのクレゾールレッドを1Lのメタノールに溶解することによって構成される。10滴の指示薬溶液をフラスコに添加し、次いで、標準化された0.5Nメタノール性水酸化カリウム溶液で滴定する。色が黄色から灰色から青色に変化し、10秒間維持される青色の着色が生じると、終点に達する。次いで、以下に従ってヒドロキシ価を計算する。
ヒドロキシ価=(B-S)×N×56.1/M+AV
式中、
B=ブランク滴定に使用したKOHのml
S=試料滴定に使用したKOHのml
N=水酸化カリウム溶液の規定度
M=試料の重量(ベース樹脂)
AV=ベース樹脂の酸価
正味ヒドロキシ価は、以下のように定義される:正味OHV=(B-S)×N×56.1/M
【0096】
アミン価
3:1キシレン:エタノールプロパノールの新たに調製した溶媒ブレンドを調製する。ある量の樹脂を250mlの三角フラスコに正確に秤量する。次いで、50~60mlの3:1キシレン:エタノールを添加する。樹脂が完全に溶解するまで溶液を穏やかに加熱し、溶液が沸騰しないようにする。次いで、溶液を室温に冷却し、当量点の後まで0.1Mの塩酸を用いて電位差滴定を行った。
【0097】
GPC分子量
ポリマーのモル質量分布を、Perkin-Elmer HPLCシリーズ200装置で、屈折率(RI)検出器およびPlgelカラムを使用し、溶離液としてTHFを使用し、ポリスチレン標準による較正を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定した。実験分子量はポリスチレン当量として表す。
【0098】
DSC Tg
本明細書で報告される樹脂および塗料ガラス転移温度は、10℃/分の加熱速度を使用して示差走査熱量測定(DSC)から決定された中間点Tgのものである。
【0099】
材料のレオロジー特性
粉末塗料の流動および硬化特性は、電気加熱装置および対応する加熱/冷却フード(ETD400 PおよびH)を取り付けたAnton-Paarの応力制御MCR302レオメーターを使用して特徴付けた。実験は、使い捨て部品を備えた25mmの平行プレート構成で行った。試料材料を80℃の開始温度で数分間適用した後、プレート間に0.5から0.6mmの間隙を適用した。15N未満の垂直力レベルで、次に約47K分-1の速度で120℃まで加熱を開始し、ここで試料を、適切な場合、試料の完全な架橋を達成するのに十分な長さで45分間等温条件に置いた。複素粘度は、1Hzの周波数で2%の振幅を有する小歪み振動剪断条件で決定した。
【0100】
耐衝撃性
衝撃試験は、ASTM D 2794に従って、粉末コーティングパネルでコーティングおよび裏面の両方で実施した。コーティングがひび割れない最大の衝撃をインチポンド(in.lb)で記録する。
【0101】
耐溶剤性
硬化膜の耐溶剤性は、メチルエチルケトン(MEK)で飽和させた小さな綿球を用いて、二回の摩擦により測定する。以下のように評価システム(0~5、最良~最悪)を用いて判定する。
0.知覚可能な変化なし。指の爪でかき傷をつけることができない
1.光沢のわずかな損失
2.光沢のいくらかの損失
3.コーティングは非常に鈍く、指の爪でかき傷をつける可能性がある
4.コーティングは非常に鈍く、非常に柔らかい
5.コーティングが割れている
【0102】
略語
【表1】

【表1-2】
【0103】
非晶質材料の調製
マロナートドナー樹脂M-1の調製
4つ口蓋、金属アンカー撹拌機、Pt-100、上部温度計を備えた充填カラム、凝縮器、留出物収集容器、熱電対およびN2入口を備えた5リットルの丸底反応器に、1300gのイソソルビド(80%)、950gのNPGおよび1983gのTPAを投入した。反応器の温度を穏やかに約100℃まで上げ、4.5gのKen-React(登録商標)KR46B触媒を添加した。反応温度をさらに徐々に230℃まで上げ、反応混合物が透明になり、酸価が2mg KOH/g未満になるまで連続的に撹拌しながら窒素下で重合を進行させた。反応の最後の部分の間、真空を適用して反応を完了させた。温度を120℃に下げ、660gのジエチルマロナートを添加した。次いで、反応器の温度を190℃に上げ、エタノールがそれ以上形成されなくなるまで維持した。再び、真空を適用して反応を完了させた。エステル交換反応完了後、ポリエステルのヒドロキシル価を測定した。最終OHVは27mg KOH/gであり、GPCのMnは1763およびMwは5038、Tg(DSC)は63℃であった。
【0104】
ウレタンアクリラートアクセプタ樹脂UA-1の調製
IPDI、ヒドロキシプロピルアクリラート、グリセロールに基づくウレタン-アクリラートを、例えば欧州特許第0585742号明細書に記載されているように、適切な重合防止剤を添加して調製する。温度計、攪拌機、投入漏斗およびガスバブリング入口を備えた5リットル反応器に、1020部のIPDI、1.30部のジ-ブチル-スズ-ジラウレート(DBTL)および4.00部のヒドロキノンを仕込む。次いで、温度が50℃を超えるまで上昇するのを避けて、585部のヒドロキシプロピルアクリラートを投入する。添加が完了したら、154部のグリセリンを添加する。発熱反応が収まってから15分後、反応生成物を金属トレイ上にキャストする。得られたウレタンアクリラートは、GPCの744のMnおよび1467のMw、51℃のTg(DSC)、0.1%未満の残留イソシアナート含有量、ならびに392g/molの理論的不飽和EQWを特徴とする。
【0105】
カルボキシレート末端遅延剤樹脂T-1の調製
4つ口蓋、金属アンカー撹拌機、Pt-100、上部温度計を備えた充填カラム、凝縮器、留出物収集容器、熱電対およびN2入口を備えた5リットルの丸底反応器に、1180gのNPGおよび2000gのIPAを投入した。反応器の温度を230℃まで上げ、反応混合物が透明になるまで連続的に撹拌しながら窒素下で重合を進行させた。得られた最終生成物は、48mg KOH/gのAVおよび55℃のTg(DSC)を有する。
【0106】
触媒前駆体P-1の調製
触媒前駆体を調製するために、カルボキシレート末端ポリエステル樹脂(AV 48)を融解し、Leistritz ZSE 18二軸スクリュー押出機を使用して重炭酸テトラエチルアンモニウムTEAHCO(41%)の水溶液と混合した。押出機は、入口から出口まで以下の温度プロファイル、30-50-80-120-120-120-120-100-100(℃単位)を維持するように設定された9つの連続する加熱ゾーンを収容するバレルを含んだ。固体ポリエステル樹脂を第1のゾーンを通して2kg/時間の速度で添加し、液体TEAHCOを第2のゾーンを通して0.60kg/時間で注入した。混合をゾーン4~7の間で行い、スクリューを200rpmで回転するように設定した。酸塩基中和から発生した揮発性物質および水を、ゾーン7で真空を用いて除去した。ダイを放置した後、押し出されたストランドを直ちに冷却し、回収した。得られた最終生成物は、11mg KOH/gのAV、33KOH/gのアミン価および48℃のTg(DSC)を有する。
【0107】
(半)結晶性成分の調製
(半)結晶性酸遅延剤および対応する触媒前駆体の調製
CT-1&CP-1
379.3gのDEGおよび1gのDBTLを2リットルの丸底反応器に投入し、50℃に加熱した。次いで、497.9のHDIを反応器に滴下して窒素保護下で反応を開始させ、処理温度を120℃未満に維持した。その後、122.8gの無水コハク酸を反応器に投入した。所望の酸価が達成されるまで、反応を120℃で進める。得られた最終生成物CT-1は、69mg KOH/gのAV、-5℃のTg(DSC)、それぞれ115℃および125℃の最大および終了DSC融解温度を有する。
【0108】
対応する触媒前駆体CP-1を調製するために、1790gのCR-1を反応器に投入し、125℃まで加熱することによって融解させた。次いで、842.5gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)水溶液(35%)を反応器にゆっくりと添加し、撹拌を続けながら融解結晶性酸樹脂と混合した。酸塩基中和から発生した揮発性物質および水を、真空を用いて除去した。得られた最終生成物CP-1は、36mg KOH/gのAV、44mg KOH/gのアミン価、-5℃のTg(DSC)、それぞれ110℃および120℃の最大および終了DSC融解温度を有する。
【0109】
本発明による(半)結晶性アセトアセタートドナー樹脂CU-Acetの調製
(半)結晶性アセト酢酸樹脂CU-Acetを調製するために、2ステップの合成経路を行った。第1のステップでは、トリエチレングリコール(TEG)をエチルアセトアセタートでエステル交換した。簡潔には、反応容器を211gのトリエチレングリコールおよび50gのトルエンで満たした。混合物を加熱して、トルエンおよびTEG中に存在し得る水を留去した。次いで、73.0gのエチルアセトアセタートを別の50gのトルエンと共に反応混合物に添加した。125℃の温度で、トルエン/エタノール混合物の蒸留を続け、時折トルエンを再供給した。3.5時間の全蒸留後、50gの乾燥モルシーブ4Åを添加し、混合物を一晩ゆっくり冷却した。モルシーブを濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで揮発分を除去して最後のトルエンを除去した。NMRおよびTLCの特徴付けは、エチルアセトアセタートのエステル交換がほぼ完了したことを示した。第2のステップでは、反応容器に0.01gのDBTL、およびエステル交換反応後に得られた29.3gの生成物を充填した。温度を60℃に上げ、その時点で21.2gのHDIの供給を開始した。45分間にわたって供給しながら、反応混合物を95℃まで加熱した。供給の完了後、温度をこの温度でさらに1時間維持し、次いで反応器から取り出し、冷却した。得られた(半)結晶性アセトアセタートドナー樹脂CU-Acetは、それぞれ73℃および82℃の最大および終了DSC融解温度を有する。理論上のアセトアセタートEQWは800g/モルである。
【0110】
比較用(半)結晶性ウレタンアクリラート樹脂CUA-1の調製
特許出願国際公開第2019/145472号パンフレットに記載されている。温度計、攪拌機、投入漏斗およびガスバブリング入口を備えた5リットル反応器に、833部のIPDI、913部のHDI、4.20部のDBTLおよび5.00部のBHTを仕込む。次いで、395部のヒドロキシプロピルアクリラートを、温度が35℃を超えるまで上昇することを避けて、60分間にわたって投入する。添加が完了したら、896部の1,6-ヘキサンジオールおよび5部のBHTを添加する。発熱反応が収まってから15分後、反応生成物を金属トレイ上にキャストする。得られた(半)結晶性ウレタンアクリラートCUA-1は、それぞれ120℃および140℃の最大および終了DSC融解温度を有する。17.7℃のTg(DSC)および1004g/molの理論的不飽和EQW。
【0111】
本発明による(半)結晶性ウレタンアクリラート樹脂CUA-2の調製
504.6gのHDI、0.1gのDBTLおよび5gのBHTを2リットルの丸底反応器に投入し、乾燥空気下で50℃に加熱した。次いで、288.3gのヒドロキシブチルアシラートおよび212.2gのDEGの混合物を反応器に滴下して反応を開始させ、処理温度を120℃未満に維持した。得られた(半)結晶性ウレタンアクリラートCUA-2は、それぞれ106℃および115℃の最大および終了DSC融解温度を有する。理論値Mn=1005および不飽和EQW=503g/mol。
【0112】
本発明による(半)結晶性ウレタンアクリラート樹脂CUA-3の調製
同様に、562.7gのHDI、0.1gのDBTLおよび5gのBHTを2リットルの丸底反応器に投入し、乾燥空気下で50℃に加熱した。次いで、222gのヒドロキシエチルアシラートおよび282.4gの3-メチル-1,5-ペンタンジオールの混合物を反応器に滴下して反応を開始させ、処理温度を120℃未満に維持した。得られた(半)結晶性ウレタンアクリラートCUA-3は、それぞれ95℃および102℃の最大および終了DSC融解温度を有する。理論値Mn=1067および不飽和EQW=558g/mol。
【0113】
(半)結晶性ウレタンアクリラート樹脂CUA-4の調製
同様に、243.3gのHDI、0.05gのDBTLおよび0.3gのBHTを丸底反応器に投入し、乾燥空気下で50℃に加熱した。次いで、112.0gのヒドロキシエチルアシラートおよび144.8gのトリエチレングリコールの混合物を反応器に滴下して反応を開始させ、処理温度を120℃未満に維持した。得られた(半)結晶性ウレタンアクリラートCUA-4は、それぞれ82℃および92℃の最大および終了DSC融解温度を有する。理論値Mn=1037および不飽和EQW=519g/mol。
【0114】
本発明による(半)結晶性ウレタンアクリラート樹脂CUA-5の調製
同様に、158.8gのHDI、0.04gのDBTLおよび0.2gのBHTを丸底反応器に投入し、乾燥空気下で50℃に加熱した。次いで、144.2gのヒドロキシブチルアシラートおよび47.1gのDEGの混合物を反応器に滴下して反応を開始させ、処理温度を110℃未満に維持した。得られた(半)結晶性ウレタンアクリラートCUA-5は、それぞれ101℃および108℃の最大および終了DSC融解温度を有する。理論値Mn=700および不飽和EQW=350g/mol。
【0115】
本発明による(半)結晶性ウレタンアクリラート樹脂CUA-6の調製
同様に、187.9gのHDI、0.04gのDBTLおよび0.2gのBHTを丸底反応器に投入し、乾燥空気下で50℃に加熱した。次いで、68.8gのヒドロキシブチルアシラートおよび93.3gのDEGの混合物を反応器に滴下して反応を開始させ、処理温度を135℃未満に維持した。得られた(半)結晶性ウレタンアクリラートCUA-6は、それぞれ119℃および134℃の最大および終了DSC融解温度を有する。理論値Mn=1468および不飽和EQW=734g/mol。
【0116】
本発明による(半)結晶性ウレタンアクリラート樹脂CUA-7の調製
同様に、121.5gのHDI、0.03gのDBTLおよび0.2gのBHTを丸底反応器に投入し、乾燥空気下で50℃に加熱した。次いで、69.9gのヒドロキシブチルアシラートおよび58.7gのチオジエタノールの混合物を反応器に滴下して反応を開始させ、処理温度を135℃未満に維持した。得られた(半)結晶性ウレタンアクリラートCUA-7は、それぞれ132℃および138℃の最大および終了DSC融解温度を有する。理論値Mn=1032および不飽和EQW=516g/mol。
【0117】
本発明による(半)結晶性ウレタンアクリラート樹脂CUA-8の調製
同様に、113.3gのHDI、0.04gのDBTLおよび0.2gのBHTを丸底反応器に投入し、乾燥空気下で50℃に加熱した。次いで、71.1gのヒドロキシブチルアシラートおよび65.7gの2-ヒドロキシエチルジスルフィドの混合物を反応器に滴下して反応を開始させ、処理温度を135℃未満に維持した。得られた(半)結晶性ウレタンアクリラートCUA-8は、それぞれ130℃および140℃の最大および終了DSC融解温度を有する。理論値Mn=1014および不飽和EQW=507g/mol。
【0118】
本発明による(半)結晶性ウレタンアクリラート樹脂CUA-9の調製
同様に、139.7gのHDI、0.04gのDBTLおよび0.2gのBHTを丸底反応器に投入し、乾燥空気下で50℃に加熱した。次いで、58.1gのヒドロキシエチルアシラートおよび52.3gのメチルプロパンジオールの混合物を反応器に滴下して反応を開始させ、処理温度を150℃未満に維持した。得られた(半)結晶性ウレタンアクリラートCUA-9は、それぞれ132℃および142℃の最大および終了DSC融解温度を有する。理論値Mn=1000および不飽和EQW=500g/mol。
【0119】
本発明による(半)結晶性ウレタンアクリラート樹脂CUA-10の調製
同様に、237.6gのHDI、0.05gのDBTLおよび0.3gのBHTを丸底反応器に投入し、乾燥空気下で50℃に加熱した。次いで、116.1gのヒドロキシエチルアシラートおよび146.3gの2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールの混合物を反応器に滴下して反応を開始させ、処理温度を100℃未満に維持した。得られた(半)結晶性ウレタンアクリラートCUA-10は、それぞれ37℃および63℃の最大および終了DSC融解温度を有する。理論値Mn=1000および不飽和EQW=500g/mol。
【0120】
本発明による(半)結晶性ウレタンアクリラート樹脂CUA-11の調製
同様に、121.7gのHDI、0.05gのDBTLおよび0.3gのBHTを丸底反応器に投入し、乾燥空気下で50℃に加熱した。次いで、80.0gのヒドロキシブチルアシラートおよび56.5gのN-メチルジエタノールアミンの混合物を反応器に滴下して反応を開始させ、処理温度を100℃未満に維持した。得られた(半)結晶性ウレタンアクリラートCUA-11は、それぞれ56℃および67℃の最大および終了DSC融解温度を有する。理論値Mn=1002および不飽和EQW=501g/mol。
【0121】
本発明による(半)結晶性ウレタンメタクリラート樹脂CUMA-1の調製
504.6gのHDI、1gのDBTLおよび5gのBHTを2リットルの丸底反応器に投入し、乾燥空気下で50℃に加熱した。次いで、260.3gのヒドロキシエチルメタクリラートおよび212.2gのDEGの混合物を反応器に滴下して反応を開始させ、処理温度を120℃未満に維持した。得られた(半)結晶性ウレタンメタクリラートCUMA-1は、それぞれ110℃および115℃の最大および終了DSC融解温度を有する。理論値Mn=977および不飽和EQW=489g/mol。
【0122】
比較用(半)結晶性ビニルエーテルウレタン樹脂CVE-1の調製
中国特許出願公開第112457751号明細書に記載されている。1gの4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、0.02gのDBTLおよび0.6gのBHTを、温度計、撹拌機および蒸留装置を備えた四つ口反応器に投入した。混合物を窒素の保護下で撹拌し、40℃に加熱した。次いで、42.06gのHDIを反応器にゆっくり滴下して反応を開始させ、処理温度を110℃未満に維持した。全てのHDIを投入した後、反応を110℃で30分間進行させた。最後に、真空を適用して低分子揮発物を除去した。得られた(半)結晶性ビニルエーテルCVE-1は、それぞれ98℃および107℃の最大および終了DSC融解温度を有する。理論的不飽和EQW=200g/mol。
【0123】
比較用(半)結晶性ビニルエーテルウレタン樹脂CVE-2の調製
中国特許出願公開第112457751号明細書に記載されている。44.7gの4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、8.7gのDEG、0.02gのDBTLおよび0.6gのBHTを、温度計、撹拌機および蒸留装置を備えた四つ口反応器に投入した。混合物を窒素の保護下で撹拌し、40℃に加熱した。次いで、42.3gのHDIを反応器にゆっくり滴下して反応を開始させ、処理温度を95℃未満に維持した。全てのHDIを投入した後、反応を95℃で30分間進行させた。最後に、真空を適用して低分子揮発物を除去した。得られた(半)結晶性ビニルエーテルCVE-2は、それぞれ87℃および104℃の最大および終了DSC融解温度を有する。理論的不飽和EQW=260g/mol。
【0124】
粉末コーティング組成物の調製
粉末コーティング組成物を調製するために、最初に、原料を高速Thermoprism Pilot Mixer 3プレミキサー内で1500rpmで20秒間予備混合して、その後Baker Perkins(以前はAPV)MP19 25:1 L D二軸押出機で押し出した。押出機速度は250rpmであり、4つの押出機バレルゾーン温度は、非晶質樹脂を押し出すために15、25、100および100℃、または(半)結晶性樹脂を押し出すために15、25、120および100℃に設定した。押出後、Retsch GRINDOMIX GM 200ナイフミルを使用して押出物を粉砕した。粉砕した押出物を、Russel Finex 100ミクロンメッシュDemi Finex実験室振動ふるいを使用して100μm未満にふるい分けした。
【0125】
結果
ビニルエーテルウレタンおよびウレタンアクリラートの硬化速度論。
【表2】
【0126】
ビニルエーテルウレタンを使用して、真マイケル付加(RMA)反応を介して硬化する粉末コーティングの架橋反応に関与すると記載されている中国特許出願公開第112457751号明細書。この特許では、マロナートドナー樹脂、ウレタンアクリラートおよびビニルエーテルウレタンを使用して調製された粉末コーティング例が与えられた。塗料は、1.25/2.54/1のビニル/アクリラート/C-Hおよび48meqの第3級アミン触媒濃度を有するように化学量論で配合された。このような塗料は100℃で硬化することができ、良好な耐溶剤性を提供することが実証された。我々は、ビニルエーテルウレタンがRMA反応におけるアクセプタ樹脂として適しておらず、架橋反応に関与できないと考えている。この問題を考慮して、RMA中のアクリラートおよびビニルエーテルの反応性を検証するためにモデル試験を行った。マロン酸ジエチル、ブチルアクリラート、シクロヘキシルビニルエーテルおよび1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を、マロナートドナー、アクリラートアクセプタ、ビニルエーテルおよび第3級アミン触媒のモデル化合物として選択した。EPIKOTE(商標)828を活性化剤として選択した。より具体的には、4.01gのマロン酸ジエチル、8.14gのアクリル酸ブチル、3.95gのシクロヘキシルビニルエーテル、0.09gのDABCOおよび0.15gのEPIKOTE(商標)828を小さな丸底フラック中で一緒に混合して、1.25/2.54/1のビニル/アクリラート/C-H2の化学量論比および48meqの触媒濃度を達成した。混合物を110℃に加熱し、H NMRを使用する速度論的試験のために10分間隔で試料を採取した。エーテル基の隣のCHに割り当てられた3.68~3.78ppmのシグナルを内部標準として使用して、6.25~6.35ppmのビニルCHおよび5.75~5.85pmのアクリラートCHと比較する。シクロヘキシルビニルエーテル、硬化前および110℃で30分間硬化した後の混合物の積分H NMRスペクトルを図1~3に示し、結果を表2に要約する。
【0127】
この試験から、アクリラートの濃度が110℃で30分間の硬化後に3.47mmol/gから0.83mmol/gに減少したため、ウレタンアクリラートが消費され、おそらくRMAを介するものであったことが明らかである。対照的に、シクロヘキシルビニルエーテルの濃度は一定のままであった。したがって、シクロヘキシルビニルエーテルは反応せず、同じ硬化サイクル後に架橋ネットワークの一部にはならなかった。
【0128】
RMA粉末コーティング中のアクセプタ樹脂としてのビニルエーテルウレタンをさらに試験するために、中国特許出願公開第112457751号明細書に従って2つの結晶性ビニルエーテルウレタン樹脂CVE-1およびCVE-2を調製した。比較例PW1~PW2では、粉末塗料を、表3に列挙されるように、1.5:1のビニル/C-H比、50meqの触媒前駆体、50meqの酸遅延剤および200meqの活性化剤を有するように、これら2つの樹脂をアクセプタ樹脂として化学量論で配合した。全ての塗料を、アルミニウムおよびスチールパネルに80~100μmの膜厚で噴霧し、120℃で22分間硬化させた。塗料の分析および適用結果を表4に要約する。モデル試験によって予測されるように、ビニルエーテルウレタンはドナー樹脂と反応して架橋膜を形成していないので、PW1およびPW2の両方は非常に不良な耐溶剤性を有する。これは、小さな反応エンタルピー(デルタH)のみが得られた120℃でのDSC等温分析によっても裏付けられる。
【0129】
【表3】
【0130】
例PW3~PW4(比較例)およびPW5~PW7(本発明)では、粉末塗料を、1.5:1のアクリラート/C-H比(PW5と同量の半結晶性アクセプタ樹脂を有するように配合されたPW4、アクリラート/C-H=0.75を除く)、50meqの触媒前駆体、75meqの酸遅延剤および225meqの活性化剤を有するように化学量論で、アクセプタ樹脂としてウレタンアクリラートと共に配合した。全ての塗料を、アルミニウムおよびスチールパネルに80~100μmの膜厚で噴霧し、120℃で22分間硬化させた。塗料の分析および適用結果を表6に要約する。
【0131】
PW3は、非晶質成分のみで調製された比較用塗料である。塗料は52℃のTgを有し、良好な耐溶剤性によって証明されるように、120℃で22分後に十分に硬化することができる。しかしながら、アルミニウムおよび鋼基材の両方に対する接着性が不良であり、耐衝撃性が全くない。
【表4】
【0132】
PW4は、アクセプタ樹脂として(半)結晶性ウレタンアクリラートCUA-1を配合した比較例である。CUA-1は、先行技術特許出願国際公開第2019/145472号パンフレットに従って調製した。CUA-1は、押出後に塗料中で再結晶する可能性が低く、DSCは、塗料中に存在する非常に少量の結晶(融解による低デルタH)を示した。これは、30℃のかなり低い塗料Tgをもたらし、貯蔵不安定性を引き起こす可能性がある。さらに、120℃でのPW4のレオロジー分析は、PW5およびPW6と比較してより高い融解粘度を示した(表6参照)。これは、CUA-1のTgが比較的高く、完全に融解した後の可塑化が少なくなるためである。PW4の耐溶剤性も、CUA-1の高いEQWのためにかなり不良である。
【0133】
PW5およびPW6は、アクセプタ樹脂として(半)結晶性ウレタンアクリラートCUA-2を配合した粉末例である。PW5では、非晶質ウレタンアクリラートと(半)結晶性ウレタンアクリラートとを1/1の比率で混合したものを使用した。PW3と比較して、(半)結晶性ウレタンアクリラートを導入すると、金属基材上の接着性および耐衝撃性が著しく改善される(表5参照)。ほとんどのCUA-2は、押出後に塗料中で再結晶化したと考えられており、塗料Tgに対するその影響はCUA-1よりもはるかに低い。その結果、これら2つの塗料について、結晶の存在に起因する融解によるはるかに高いデルタHが測定された。CUA-2はまた、より強い可塑化を提供し、より低い融解粘度をもたらすというCUA-1を超える利点を有する。より低い融解粘度を有する塗料は、より高い流動ポテンシャルを有し、より良好な外観を達成する可能性が高い。両方の塗料について良好な耐溶剤性が達成された。
【0134】
【表5】
【0135】
【表6】
【0136】
PW7は、非晶質ウレタンアクリラート樹脂と(半)結晶性ウレタンアクリラートCUA-3とを1/1の比率で混合して配合した粉末の例である。PW3と比較して、(半)結晶性ウレタンアクリラートを導入すると、金属基材上の接着性および耐衝撃性が著しく改善される(表5参照)。耐溶剤性は良好なままである。ほとんどのCUA-3は、押出後に塗料中で再結晶化したと考えられており、塗料Tgに対する影響は比較的低い。これは、DSC分析によって得られた融解による大きなデルタHによって証明される。CUA-3は、100℃未満の融解温度を有するという利点を有し、したがって、100~120℃で硬化される塗料を調製するのにより適している。
【0137】
ポリウレタン骨格に基づくいくつかの(半)結晶性樹脂が調製されている。異なる種類のジオール、例えばDEG、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、トリエチレングリコール、チオジエタノール、2-ヒドロキシエチルジスルフィド、N-メチルジエタノールアミンおよび2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールを使用することにより、ジオールの選択が、得られた(半)結晶性樹脂の融解温度に影響を及ぼすことを実証した。また、(半)結晶性樹脂の分子量も融解温度に影響を与える。例えば、CUA-2、CUA-5およびCUA-6は全てDEGを使用して調製されたが、理論値Mnはそれぞれ1005、700および1468であった。得られた融解温度は、それぞれ115、108および134℃である。
図1
図2
図3
【国際調査報告】