(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】粉末コーティングおよび結晶前駆体触媒
(51)【国際特許分類】
C09D 201/02 20060101AFI20240705BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20240705BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20240705BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20240705BHJP
C09D 5/03 20060101ALI20240705BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C09D201/02
C08G18/67
C08G18/73
C08G18/32 003
C09D5/03
C09D175/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579302
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2022068538
(87)【国際公開番号】W WO2023280823
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518326445
【氏名又は名称】オルネクス ネザーランズ ビー.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリンクフイス、リシャール ヘンドリクス ゲリット
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ペンシェン
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034CA04
4J034CC03
4J034CC08
4J034CD08
4J034FA02
4J034FB01
4J034FC01
4J034FC03
4J034FD01
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KE02
4J034RA07
4J038DB052
4J038DD181
4J038DD191
4J038DG132
4J038DG262
4J038HA216
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038PA02
4J038PA19
(57)【要約】
本発明は、架橋性組成物と触媒系とを含む粉末コーティング組成物であって、架橋性組成物が、触媒系を介した真マイケル付加(RMA)反応によって架橋性である架橋性ドナー成分Aおよび架橋性アクセプタ成分Bによって形成され、触媒系が140℃未満の硬化温度でRMA架橋反応を触媒することができ、触媒系が、(半)結晶性前駆体Pと、活性化剤Cと、任意に遅延剤Tとを含む、粉末コーティング組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性組成物および触媒系を含む粉末コーティング組成物であって、前記架橋性組成物が、前記触媒系を介した真マイケル付加(RMA)反応によって架橋可能な架橋性ドナー成分Aおよび架橋性アクセプタ成分Bによって形成され、前記触媒系が、140℃未満、好ましくは120℃未満、さらにより好ましくは110℃未満または100℃未満、好ましくは少なくとも70℃、好ましくは少なくとも80、90または100℃の硬化温度で前記RMA架橋反応を触媒することができ、
前記架橋性組成物が、
a)活性化メチレンまたはメチン中に少なくとも2つの酸性C-Hドナー基を有する前記架橋性ドナー成分Aと
b)真マイケル付加(RMA)によって成分Aと反応して架橋ネットワークを形成する少なくとも2つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する前記架橋性アクセプタ成分Bと
を含み、
前記触媒系が、(半)結晶性前駆体Pと、活性化剤Cと、任意に遅延剤Tとを含み、
前記(半)結晶性前駆体Pが、そのプロトン化形態のpKaが前記ドナー成分A中の活性化C-H基のpKaよりも2単位超、好ましくは3単位超、より好ましくは4単位超、さらにより好ましくは少なくとも5単位低い弱塩基であり、前記活性化剤Cが硬化温度でPと反応して、AとBとの間の前記マイケル付加反応を触媒することができる強塩基(CP)を生成することができ、
前記遅延剤Tが、好ましくは(半)結晶性遅延剤であり、前記遅延剤Tが、前記A中の活性化C-HのpKaよりも2ポイント超、より好ましくは3ポイント超、さらにより好ましくは4ポイントまたは5ポイント超低いpKaを有し、脱プロトン化すると、前記活性化剤Cと反応することができる弱塩基を生成し、前記架橋性組成物AとBとの間の前記マイケル付加反応を触媒することができる強塩基を生成する酸である、
粉末コーティング組成物。
【請求項2】
前記(半)結晶性前駆体および/または(半)結晶性遅延剤が部分的に結晶性状態にあり、140、130℃未満、好ましくは120℃、110°未満、またはさらには100℃未満の融解温度を有し、前記前駆体および/または遅延剤がウレタン骨格を含む、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項3】
前記(半)結晶性前駆体Pおよび/または(半)結晶性遅延剤Tが、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)と、少なくとも、少なくとも2つ、好ましくは2つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシルを含み、より好ましくはジオールである化合物(i)とを反応させることによって調製されるウレタン骨格を有する、請求項1または2に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項4】
前記(半)結晶性遅延剤Tおよび/または前駆体Pが、ウレタン骨格を含み、
(ia)HDIと、ジオールである化合物(i)ならびにヒドロキシルおよびカルボン酸官能基を含む化合物(ii)とを反応させて、カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを得ることと、
(ib)前記カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを中和して、(半)結晶性前駆体Pを得ること、または
(iia)HDIと、ジオールである化学量論的過剰の化合物(i)とを反応させて、ヒドロキシル末端ウレタン中間体を得ることと、
(iib)前記ヒドロキシルウレタン中間体と環状無水物とを反応させて、カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを得ることと、
(iic)前記カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを中和して、(半)結晶性前駆体Pを得ること、または
(iiia)HDIと、ジオールである化合物(i)ならびにヒドロキシルおよびカルボン酸エステル官能基を有する化合物(iii)とを反応させて、(半)結晶性ウレタンエステルを得ることと、
(iiib)前記(半)結晶性ウレタンエステルのエステル基を水酸化物で加水分解して、(半)結晶性前駆体Pを得ることと、
(iiic)任意に、(iiib)の前記(半)結晶性前駆体を酸性化して、結晶性遅延剤Tを得ることと、
(iva)HDIと、ジオールである化合物(i)ならびにヒドロキシルおよび第3級アミン官能基を含む化合物(iv)とを反応させて、第3級アミン系(半)結晶性前駆体Pを得ることと、
(ivb)前記第3級アミン系(半)結晶性前駆体Pをプロトン化して、(半)結晶性遅延剤Tを得ること、または
(va)HDIと、ジオールである化合物(i)ならびにヒドロキシルおよびアクリラート官能基を含む化合物(v)とを反応させて、アクリラート官能性(半)結晶性中間体を得ることと、
(vb)前記アクリラート官能性(半)結晶性中間体のアクリラート基と第2級アミンとを反応させて、第3級アミン官能性半結晶性前駆体Pを得ることと、
(vc)前記第3級アミン系(半)結晶性前駆体Pをプロトン化して、(半)結晶性遅延剤Tを得ることと
により調製される、請求項1から3のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項5】
前記(半)結晶性前駆体Pが請求項4に従って調製され、前記加水分解および/または中和が、
・酸性でないカチオン、好ましくは式Y(R’)4(式中、YはNもしくはPを表し、各R’は、ポリマーに結合し得る同じもしくは異なるアルキル、アリールもしくはアラルキルであることができる)によるカチオン、好ましくは第4級アンモニウムもしくはホスホニウムカチオン、好ましくはテトラブチルアンモニウムカチオンもしくはテトラエチルアンモニウムカチオンの水酸化物塩;または
・好ましくはアミジンの群から選択される非常に強い塩基性アミン;好ましくは1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン(DBU)またはグアニジン;好ましくは任意にいくらかの水の存在下での1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)
で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項6】
前記ジオール(i)が、
エーテル基もしくはチオエーテル基、好ましくは-CH2-O-CH2-、-CH2-S-CH2-、-CH2-S-S-CH2-を含有する前記ヒドロキシル基の間の連結鎖を有し、前記連結鎖が前記ヒドロキシル基の間に11個の炭素原子および/もしくはヘテロ原子の最大長を有するか、または
-CH(CH3)-単位もしくは-CH(CH2CH3)-を含有する前記ヒドロキシル基の間に、好ましくは中心位置に連結鎖を有し、それにより、前記連結鎖が、前記ヒドロキシル基の間に6未満の炭素原子および/もしくはヘテロ原子の不均一な数を有する鎖長を有し、
前記ヒドロキシル基が第1級ヒドロキシル基であり、前記ジオールが芳香族ではなく、脂環式ではない、
請求項1から5のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項7】
少なくとも2つのイソシアナート反応性基を含む化合物(i)が、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、3-メチル1,5-ペンタンジオール、2-メチル1,3-プロパンジオール、2,2’-チオジエタノール、2,2’-ジチオジエタノール、テトラエチレングリコール、ジ1,3-プロパンジオール、ジ(1,4-ブタンジオール)からなる群から選択されるジオールである、請求項3から6のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項8】
前記イソシアナート基に対する化合物(i)および存在する場合化合物(ii)、(iii)、(iv)または(v)の前記イソシアナート反応性基の比が、好ましくは1を超え、より好ましくは、イソシアナート基に対する前記イソシアナート反応性基のモル比が、1.0~1.5、より好ましくは1.01~1.2である、請求項3から7のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項9】
前記(半)結晶性遅延剤の数平均分子量が、300~4000、好ましくは500~3000、より好ましくは1000~2000g/molである、請求項1から8のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項10】
前記触媒系が、前記(半)結晶性前駆体Pと活性化剤Cとがマクロ物理的に分離されている分離触媒系である、請求項1から9のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項11】
・前記活性化剤Cが、エポキシド、カルボジイミド、オキセタン、オキサゾリンまたはアジリジン官能性成分、好ましくはエポキシドまたはカルボジイミドからなる群から選択され、
・前記(半)結晶性前駆体Pが、カルボキシラートまたは第3級アミンであり、
・前記遅延剤Tが、好ましくはプロトン化前駆体Pである、
請求項1から10のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項12】
・バインダ成分AおよびBならびに触媒系の総重量に対して1~600μeq/gr、好ましくは10~400、より好ましくは20~200μeq/grの量の活性化剤Cと、
・バインダ成分AおよびBならびに触媒系の総重量に対して1~300μeq/gr、好ましくは10~200、より好ましくは20~100μeq/grの量の(半)結晶性前駆体Pと、
・任意に、バインダ成分AおよびBならびに触媒系の総重量に対して、1~500、好ましくは10~400、より好ましくは20~300μeq/gr、最も好ましくは30~200μeq/grの量の遅延剤Tとを含み、
・好ましくは、Cの当量が、
(i)存在する場合、Tの量よりも、好ましくは1~300μeq/gr、好ましくは10~200、より好ましくは20から100μeq/grの量だけ多く、
(ii)好ましくはPの量よりも多く、
(iii)より好ましくは、PおよびTの量の合計よりも多い、
請求項1から11のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項13】
a.前記(半)結晶性前駆体Pがそれぞれ、PとTの合計の10~100当量%を表し、
b.好ましくは、遅延剤Tの量が、Pの量の20~400当量%、好ましくは30~300当量%であり、
c.好ましくは、PおよびTの量の合計に対するCの当量の比が、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.8、より好ましくは少なくとも1、好ましくは最大3、より好ましくは最大2であり、
d.Tに対するCの比が、好ましくは少なくとも1、好ましくは少なくとも1.5、最も好ましくは少なくとも2である、
請求項1から12のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項14】
前記架橋性ドナー成分Aおよび/または前記アクセプタ成分Bが、好ましくはウレタン骨格を有する(半)結晶性化合物であり、前記ウレタン骨格が、好ましくはヘキサメチレンジイソシアナートと、少なくとも2つのイソシアナート反応性基、好ましくはアルコールを含み、より好ましくはジオールである化合物とを反応させることによって調製される、請求項1から13のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項15】
前記(半)結晶性ドナー成分Aおよび/または前記(半)結晶性アクセプタBならびに前記(半)結晶性前駆体(P)の前記ウレタン骨格が、HDIと、少なくとも、前記(半)結晶性前駆体(P)ならびに前記(半)結晶性ドナー成分Aおよび/または前記(半)結晶性アクセプタBと同じ少なくとも2つのイソシアナート反応性基を有する化合物(i)とを反応させることによって調製されるウレタン骨格を有し、
前記化合物(i)が好ましくはジオールであり、前記ジオールが、
エーテル基もしくはチオエーテル基、好ましくは-CH2-O-CH2-、-CH2-S-CH2-、-CH2-S-S-CH2-を含有する前記ヒドロキシル基の間の連結鎖を有し、前記連結鎖が前記ヒドロキシル基の間に11個の炭素原子および/もしくはヘテロ原子の最大長を有するか、または
-CH(CH3)-単位もしくは-CH(CH2CH3)-を含有する前記ヒドロキシル基の間に、好ましくは中心位置に連結鎖を有し、それにより、前記連結鎖が、前記ヒドロキシル基の間に6未満の奇数の炭素原子および/もしくはヘテロ原子を有する鎖長を有し、
前記ヒドロキシル基が第1級ヒドロキシル基であり、前記ジオールが芳香族ではなく、脂環式ではない、
請求項14に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項16】
a.架橋性成分Aが、構造Z1(-C(-H)(-R)-)Z2中の活性化メチレンまたはメチン中に少なくとも2つの酸性C-Hドナー基を含み、式中、Rは水素、炭化水素、オリゴマーまたはポリマーであり、Z1およびZ2は同じまたは異なる電子吸引基であり、好ましくはケト、エステルまたはシアノまたはアリール基から選択され、好ましくは式1
【化1】
(式中、Rは水素もしくは任意に置換されたアルキルもしくはアリールであり、YおよびY’は同じもしくは異なる置換基、好ましくはアルキル、アラルキルもしくはアリール、もしくはアルコキシであり、または式1中、-C(=O)-Yおよび/または-C(=O)-Y’はCNもしくはアリール、1つ以下のアリールで置換されており、またはYもしくはY’はNRR’(RおよびR’はHまたは任意に置換されたアルキルである)であってもよいが、好ましくは両方ともではなく、R、YまたはY’はオリゴマーまたはポリマーへの結合を任意に提供する)による構造を有する活性化C-H誘導体を含み、前記成分Aが好ましくはマロナート、アセトアセタート、マロンアミド、アセトアセトアミドまたはシアノアセタート基であり、好ましくは架橋性成分A中のC-H酸性基の合計の少なくとも50、好ましくは60、70、またはさらには80%を提供し、
b.成分Bが、好ましくはアクリロイル、メタクリロイル、イタコナート、マレアートまたはフマラート官能基に由来する前記少なくとも2つの活性化不飽和RMAアクセプタ基を含み、
好ましくは成分AまたはBの少なくとも1つ、より好ましくは両方がポリマーであり、
好ましくは、前記組成物が、0.05~6meq/grのバインダ固形分のバインダ固形分1グラム当たりのドナー基C-Hおよびアクセプタ基C=Cの総量を含み、好ましくは、アクセプタ基C=Cのドナー基C-Hに対する比が、0.1を超え10未満である、請求項1から15のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項17】
少なくとも1つの架橋性成分AもしくはBまたはハイブリッドA/Bが、好ましくはアクリル、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリエステル-ウレタンポリマーの群から選択されるポリマーであり、前記ポリマーが、
・GPCで測定して、少なくとも450gr/モル、好ましくは少なくとも1000、より好ましくは少なくとも1500、最も好ましくは少なくとも2000gr/モルの数平均分子量Mnを有し、
・GPCで測定して、最大20000gr/モル、好ましくは最大15000、より好ましくは最大10000、最も好ましくは最大7500gr/モルの重量平均分子量Mwを有し、
・好ましくは4未満、より好ましくは3未満の多分散性Mw/Mnを有し、
・C-HもしくはC=Cにおける当量EQWが少なくとも150、250、350、450もしくは550gr/モル、好ましくは最大で2500、2000、1500、1250もしくは1000gr/モルであり、反応性基C-HもしくはC=Cの数平均官能価が分子当たり1~25、より好ましくは1.5~15、さらにより好ましくは2~15、最も好ましくは2.5~10のC-H基であり、
・好ましくは、100~140℃の範囲の温度で60Pas未満、より好ましくは40、30、20、10もしくはさらには5Pas未満の融解粘度を有し、
・好ましくは、アミド、尿素もしくはウレタン結合を含み、および/もしくは高Tgモノマー、好ましくは脂環式もしくは芳香族モノマー、特に1,4-ジメチロールシクロヘキサン(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール(TCDジオール)、イソソルビド、ペンタ-スピログリコールもしくは水素化ビスフェノールAおよびテトラメチル-シクロブタンジオールの群から選択されるポリエステルモノマーを含み、ならびに/または
・10℃/分の加熱速度でのDSCによって決定された中間値として、25℃を超える、好ましくは35℃を超える、より好ましくは40、50もしくはさらには60℃を超えるTgを有するか、または40℃~150、好ましくは130℃、好ましくは少なくとも50もしくはさらに70℃、好ましくは120℃未満の融解温度(10℃/分の加熱速度でのDSCによって決定される)を有する(半)結晶性ポリマーである、
請求項1から16のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項18】
前記アクセプタ成分Bが、ポリエステル(メタ)アクリラート、ポリエステルウレタン(メタ)アクリラート、エポキシ(メタ)アクリラートもしくはウレタン(メタ)アクリラートであるか、またはフマラート、マレアートもしくはイタコナート単位、好ましくはフマラートを含むポリエステルであるか、またはイソシアナートもしくはエポキシ官能性活性化不飽和基でエンドキャップされたポリエステルである、請求項1から17のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物を得るために、真マイケル付加(RMA)反応を介して架橋性組成物を架橋するための触媒系での使用に適した(半)結晶性触媒遅延剤Tまたは前駆体Pであって、前記触媒遅延剤Tおよび/または前駆体Pが、
(ia)HDIと、ジオールである化合物(i)およびヒドロキシルカルボン酸基を含む化合物(ii)とを反応させて、カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを得ることと、
(ib)前記カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを中和して、(半)結晶性前駆体Pを得ること、または
(iia)HDIとジオールである化合物(i)とを反応させて、ヒドロキシル末端ウレタン中間体を得ることと、
(iib)前記ヒドロキシルウレタン中間体と環状無水物とを反応させて、カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを得ることと、
(iic)前記カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを中和して、(半)結晶性前駆体Pを得ること、または
(iiia)HDIと、ジオールである化合物(i)およびヒドロキシルカルボン酸エステル基を有する化合物(iii)とを反応させて、(半)結晶性ウレタンエステルを得ることと、
(iiib)前記(半)結晶性ウレタンエステルのエステル基を水酸化物で加水分解して、(半)結晶性前駆体Pを得ることと、
(iiic)任意に、(iiib)の前記(半)結晶性前駆体を酸性化して、結晶性遅延剤Tを得ることと、
(iva)HDIとジオール成分(i)ならびにヒドロキシルおよび第3級アミン官能基を含む化合物(iv)とを反応させて、第3級アミン系(半)結晶性前駆体Pを得ることと、
(ivb)前記第3級アミン系(半)結晶性前駆体Pをプロトン化して、(半)結晶性遅延剤Tを得ること、または
(va)HDIとジオール成分(i)ならびにヒドロキシルおよびアクリラート官能基を含む化合物(v)とを反応させて、アクリラート官能性(半)結晶性中間体を得ることと、
(vb)前記アクリラート官能性(半)結晶性中間体のアクリラート基と第2級アミンとを反応させて、第3級アミン官能性半結晶性前駆体Pを得ることと、
(vc)前記第3級アミン系(半)結晶性前駆体Pをプロトン化して、(半)結晶性遅延剤Tを得ることと
により調製される、(半)結晶性触媒遅延剤Tまたは前駆体P。
【請求項20】
前記(半)結晶性前駆体および/または(半)結晶性遅延剤が、145℃未満、130℃未満、好ましくは120℃、110°未満、または100℃未満、例えば80~130℃、好ましくは80~120℃である前記化合物自体の融解温度を有する、請求項19に記載の(半)結晶性触媒遅延剤Tまたは前駆体P。
【請求項21】
請求項1から18のいずれか一項に記載の特徴を有する、請求項19または20に記載の(半)結晶性触媒遅延剤Tまたは(半)結晶性前駆体P。
【請求項22】
基材を粉末コーティングする方法であって、
a.請求項1から18のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物を含む層を基材表面に塗布することであって、前記基材が、好ましくは感温性基材、好ましくはMDF、木材、プラスチック、複合材または合金のような感温性金属基材である、塗布することと、
b.好ましくは赤外線加熱を使用して、75~140℃、より好ましくは80~130、120、110、さらには100℃の硬化温度Tcurに加熱することであって、前記硬化温度Tcurでの前記融解粘度が、好ましくは60Pas未満、より好ましくは40、30、20、10またはさらには5Pas未満である、加熱することと、
c.Tcurで、好ましくは40、30、20、15、10、またはさらには5分未満の硬化時間にわたって硬化させることと
を含む、方法。
【請求項23】
請求項1から18に記載の粉末コーティング組成物を有する粉末でコーティングされた物品であって、好ましくは、好ましくはMDF、木材、プラスチック、複合材または金属合金の群から選択される感温性基材を有し、好ましくは架橋密度XLDが少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.02、0.04、0.07またはさらには0.1ミリモル/ml(DMTAによって決定される場合)であり、好ましくは3、2、1.5、1またはさらには0.7ミリモル/ml未満である、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真マイケル付加(Real Michael Addition、RMA)によって架橋可能な架橋性組成物と、前駆体Pおよび活性化剤C、ならびに任意に遅延剤Tを有する触媒系とを含む粉末コーティング組成物、粉末コーティング組成物を調製する方法、当該粉末コーティング組成物を使用して物品をコーティングする方法、コーティングされた物品、ならびに触媒系で使用するための遅延剤Tおよび前駆体Pに関する。
【背景技術】
【0002】
粉末コーティングは、室温で乾燥した、細かく分割された、自由流動性の固体材料であり、近年、液体コーティングよりも人気を得ている。粉末コーティングは、一般に、120℃~200℃、より典型的には140℃~180℃の高温で硬化される。膜形成を可能にし、良好なコーティング表面外観を達成するだけでなく、架橋反応についての高い反応性を達成するためにも、バインダの十分な流動を提供するために高温が必要である。より低い硬化温度では、完全な機械的特性および抵抗特性の発現を要求する場合、短い硬化時間を許容しない反応速度論に直面することがある。一方、成分の高い反応性が作り出され得る系では、コーティングは、硬化反応が進行するにつれて急速にさらに増加する、このような低温でのこのような系の比較的高い粘度に起因して、外観が悪い可能性があり、このような系の時間平均流動性(time-integrated fluidity)は、十分なレベリングを達成するには低すぎる(例えば、Progress in Organic Coatings、72巻、26~33頁(2011年)を参照されたい)。特により薄い膜を対象とする場合、外観が制限される可能性がある。さらに、非常に高い反応性は、押出機内で粉末塗料を配合する際の早すぎる反応に起因する問題につながる可能性がある。さらに、反応性の高い製剤は、限られた貯蔵安定性を有し得る。
【0003】
特許出願国際公開第2019/145472号パンフレットは、中密度繊維板(MDF)、木材、プラスチックおよび特定の金属合金などの感熱性基材である基材上にコーティングを提供し、低温で硬化することができる粉末コーティング組成物を記載している。このコーティング組成物は、非晶質化合物のみを有する触媒系を使用してRMAによって硬化可能である。
【0004】
しかしながら、先行技術に記載された粉末組成物は、可撓性、金属などへの接着性および貯蔵安定性に関して改善の余地があるコーティングを提供する。
【0005】
したがって、良好な機械的特性を有し、低温で高い硬化速度で硬化することができ、金属などの基材への優れた接着性を提供し、長期保存安定性を提供する粉末コーティング組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、請求項1に記載の粉末コーティング組成物を提供することにより、上記課題の1つ以上に対処する。
【0007】
したがって、本発明の第1の態様は、粉末コーティング組成物、架橋性組成物および触媒系であって、架橋性組成物が、触媒系を介した真マイケル付加(RMA)反応によって架橋可能な架橋性ドナー成分Aおよび架橋性アクセプタ成分Bによって形成され、触媒系が、140℃、130未満、またはさらには120℃、110℃もしくは100℃未満、好ましくは少なくとも70℃、好ましくは少なくとも80、90または100℃の硬化温度でRMA架橋反応を触媒することができ、
架橋性組成物が、
a)活性化メチレンまたはメチン中に少なくとも2つの酸性C-Hドナー基を有する架橋性ドナー成分Aと、
b)真マイケル付加(RMA)によって成分Aと反応して架橋ネットワークを形成する少なくとも2つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する架橋性アクセプタ成分Bと
を含み、
触媒系が、(半)結晶性前駆体Pと、活性化剤Cと、任意に遅延剤Tとを含み、
(半)結晶性前駆体Pが、そのプロトン化形態のpKaがドナー成分A中の活性化C-H基のpKaよりも2単位超、好ましくは3単位超、より好ましくは4単位超、さらにより好ましくは少なくとも5単位低い弱塩基であり、活性化剤Cは硬化温度でPと反応して、AとBとの間のマイケル付加反応を触媒することができる強塩基(CP)を生成することができ、
遅延剤Tが、好ましくは(半)結晶性遅延剤であり、遅延剤Tが、A中の活性化C-HのpKaよりも2ポイント超、より好ましくは3ポイント超、さらにより好ましくは4ポイントまたは5ポイント超低いpKaを有し、脱プロトン化すると、活性化剤Cと反応することができる弱塩基を生成し、架橋性組成物AとBとの間のマイケル付加反応を触媒することができる強塩基を生成する酸である、
粉末コーティング組成物、架橋性組成物および触媒系に関する。
【0008】
第2の態様では、本発明は、請求項1から18のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物を得るために真マイケル付加(RMA)反応を介して架橋性組成物を架橋するための触媒系に使用するための(半)結晶性触媒遅延剤Tまたは前駆体Pであって、触媒遅延剤Tおよび/または前駆体Pが、
(ia)HDIと、ジオールである化合物(i)およびヒドロキシルカルボン酸基を含む化合物(ii)とを反応させて、カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを得ることと、
(ib)カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを中和して、(半)結晶性前駆体Pを得ること、または
(iia)HDIと、ジオールである化学量論的過剰の化合物(i)とを反応させて、ヒドロキシル末端ウレタン中間体を得ることと、
(iib)ヒドロキシルウレタン中間体と環状無水物とを反応させて、カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを得ることと、
(iic)カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを中和して、(半)結晶性前駆体Pを得ること、または
(iiia)HDIと、ジオールを含む化合物(i)ならびにヒドロキシルおよびカルボン酸エステル官能基を有する化合物(iii)とを反応させて、(半)結晶性ウレタンエステルを得ることと、
(iiib)(半)結晶性ウレタンエステルのエステル基を水酸化物で加水分解して、(半)結晶性前駆体Pを得ることと、
(iiic)任意に、この(半)結晶性前駆体を酸性化して、結晶性遅延剤Tを得ることと、
(iva)HDIと、ジオールを含む化合物(i)ならびにヒドロキシルおよび第3級アミン官能基を含む化合物(ii)とを反応させて、第3級アミン系(半)結晶性前駆体Pを得ることと、
(ivb)第3級アミン系(半)結晶性前駆体Pをプロトン化して、(半)結晶性遅延剤Tを得ること、または
(va)HDIと、ジオールを含む化合物(i)ならびにヒドロキシルおよびアクリラート官能基を含む化合物(ii)とを反応させて、アクリラート官能性(半)結晶性中間体を得ることと、
(vb)アクリラート官能性(半)結晶性中間体のアクリラート基と第2級アミンとを反応させて、第3級アミン官能性半結晶性前駆体Pを得ることと、
(vc)第3級アミン系(半)結晶性前駆体Pをプロトン化して、(半)結晶性遅延剤Tを得ること
により調製される、(半)結晶性触媒遅延剤Tまたは前駆体Pに関する。
【0009】
第3の態様では、本発明は、基材を粉末コーティングする方法であって、
a.第1の態様の実施形態による粉末コーティング組成物を含む層を基材表面に塗布することであって、基材が、好ましくは感温性基材、好ましくはMDF、木材、プラスチック、複合材または合金のような感温性金属基材である、塗布することと、
b.好ましくは赤外線加熱を使用して、75~200℃、好ましくは80~180℃、より好ましくは80~160、150、140、130、さらには120℃の硬化温度Tcurに加熱することであって、硬化温度Tcurでの融解粘度が、好ましくは60Pas未満、より好ましくは40、30、20、10またはさらには5Pas未満である、加熱することと、
c.Tcurで、好ましくは40、30、20、15、10、またはさらには5分未満の硬化時間にわたって硬化させることと
を含む、方法に関する。
【0010】
第4の態様では、本発明は、第1の態様の実施形態による粉末コーティング組成物を含む粉末でコーティングされた物品であって、好ましくはMDF、木材、プラスチックまたは金属合金の群から選択される感温性基材を好ましくは有し、好ましくは架橋密度XLDが少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.02、0.04、0.07またはさらには0.1mmol/ml(DMTAによって決定される場合)であり、好ましくは3、2、1.5、1またはさらには0.7mmol未満である物品に関する。
【0011】
発明の詳細な説明
本発明者らは、驚くべきことに、触媒系の前駆体が(半)結晶性である本発明による粉末コーティング組成物が、金属基材上などに非常に良好な接着特性を有する粉末コーティングを提供することを見出した。さらに、粉末コーティングは、塗布すると硬化中に低い融解粘度を提供し、これはより良好な流動挙動をもたらし、より良好な外観を有するコーティングを提供する。本発明による粉末コーティング組成物はまた、押出後に結晶化をもたらし、これは粉末塗料の貯蔵安定性にプラスの効果を有する。理論に束縛されるものではないが、硬化膜における可塑化効果(Tgの低減)は、例えば金属に対する可撓性および接着性のような機械的特性の改善に寄与する。
【0012】
本発明の文脈において、「(半)結晶性化合物」という用語は、それを超えると化合物が液体である融解温度Tmを有する化合物である。本発明の文脈において、(半)結晶性化合物の「融解温度」は、以下の説明において化合物自体の融解温度として特に指定されない限り、本発明に記載の少なくとも架橋可能な系および触媒系を含む組成物中に化合物が存在するときに化合物が完全に融解する温度である。本明細書で報告される融解温度は、10℃/分の加熱速度を使用して示差走査熱量測定(DSC)から決定される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】10℃/分の速度で-30~210℃の間の、PW2についてのDSC温度スキャンのプロットである。
【
図2】10℃/分の速度で-30~210℃の間の、PW5についてのDSC温度スキャンのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
触媒系
第1の態様の実施形態では、触媒系は、真マイケル付加(RMA)によって架橋性ドナー成分Aおよび架橋性アクセプタ成分Bを含む架橋性組成物を架橋することができ、それにより、触媒系は、(半)結晶性前駆体Pおよび活性化剤Cを含む。
【0015】
前駆体Pは、そのプロトン化形態のpKaが、ドナー成分A中の活性化C-H基のpKaよりも2単位超、好ましくは3単位超、より好ましくは4単位超、さらにより好ましくは少なくとも5単位低い弱塩基である。活性化剤Cは、硬化温度で前駆体Pと反応して、AとBとの間のマイケル付加反応を触媒することができる強塩基(CP)を生成することができる。
【0016】
触媒系は、任意に、遅延剤Tをさらに含んでいてもよく、遅延剤Tは、好ましくは(半)結晶性であり、A中の活性化C-HのpKaよりも2ポイント超、より好ましくは3ポイント超、さらにより好ましくは4ポイントまたは5ポイント超低いpKaを有し、脱プロトン化時に活性化剤Cと反応することができる弱塩基を生成し、架橋性組成物AとBとの間のマイケル付加反応を触媒することができる強塩基を生成する酸である。
【0017】
一実施形態では、(半)結晶性前駆体および/または遅延剤は、部分的に結晶状態にあり、140℃未満、好ましくは130℃未満、または120℃、110°または100℃未満、例えば80~10℃、好ましくは80~120℃の融解温度を有する。
【0018】
別の実施形態では、(半)結晶性前駆体および/または遅延剤は、145℃、130℃未満、好ましくは120℃、110°未満、またはさらには100℃未満、例えば80~130℃、好ましくは80~120℃である、化合物自体の、すなわちコーティング組成物中に存在しない場合の融解温度を有する。(半)結晶性前駆体および/または遅延剤自体の融解温度は、塗料中に配合された場合、したがってコーティング組成物中に存在する場合の融解温度よりわずかに高くすることができる。
【0019】
別の実施形態では、(半)結晶性前駆体Pおよび任意に(半)結晶性遅延剤Tは、ウレタン骨格を含む。ウレタン骨格は、イソシアナート、好ましくはジイソシアナートと、少なくとも、少なくとも2つのイソシアナート反応性基、例えばヒドロキシルを有し、好ましくはジオールである化合物(i)とを反応させることによって作製される。
【0020】
驚くべきことに、(半)結晶性前駆体および任意に遅延剤が、ウレタン骨格、特にヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)から調製された、選択されたジオールおよび目標分子量を有するウレタン骨格を有する場合、押出後に再結晶する適切な融解温度を有し、非晶質前駆体/遅延剤系と比較して融解粘度が低下し、非晶質前駆体/遅延剤系と比較してより良好な接着性および可撓性を有するコーティングを提供する粉末コーティング組成物を提供することが見出された。
【0021】
好ましい実施形態では、(半)結晶性前駆体および/または遅延剤のウレタン骨格は、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)と、少なくとも2つ、好ましくは2つのイソシアナート反応性基、好ましくはアルコール、より好ましくはジオールを含む化合物(i)とを反応させることによって調製される。
【0022】
別の好ましい実施形態では、ジオールは、エーテル基もしくはチオエーテル基(CH2-O-CH2、CH2-S-CH2、CH2-S-S-CH2)を含有するヒドロキシル基の間の連結鎖を有し、連結鎖はヒドロキシル基の間に11個の炭素原子および/もしくはヘテロ原子の最大長を有するか、または
-CH(CH3)-単位もしくは-CH(CH2CH3)-を含有するヒドロキシル基の間に、好ましくは中心位置に連結鎖を有し、それにより、連結鎖は、ヒドロキシル基の間に6未満の奇数の炭素原子および/もしくはヘテロ原子を有する鎖長を有し、
ヒドロキシル基は第1級ヒドロキシル基であり、ジオールは芳香族ではなく、脂環式ではない。
【0023】
そのようなタイプのジオールは、所望の融解温度および結晶化傾向を有する(半)結晶性前駆体/遅延剤のウレタン骨格を提供し得ることが見出された。
【0024】
好ましくは、化合物(i)は、ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;3-メチル1,5-ペンタンジオール、2-メチル1,3-プロパンジオール;チオジエタノール;2,2’-ジチオジエタノール;;テトラエチレングリコール;ジ(1,3-プロパンジオール);ジ(1.4-ビウタンジオール(biutanediol))からなる群から選択されるジオールである。
【0025】
別の実施形態では、(半)結晶性遅延剤および/または前駆体は、ウレタン骨格を含み、
(ia)HDIと、ジオールである化合物(i)およびヒドロキシルカルボン酸基を含む化合物(ii)とを反応させて、カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを得ることと、
(ib)カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを中和して、(半)結晶性前駆体Pを得ること、または
(iia)HDIと、ジオールである化合物(i)とを反応させて、ヒドロキシル末端ウレタン中間体を得ることと、
(iib)ヒドロキシルウレタン中間体と環状無水物とを反応させて、カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを得ることと、
(iic)カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを中和して、(半)結晶性前駆体Pを得ること、または
(iiia)HDIと、ジオールである化合物(i)およびヒドロキシルカルボン酸エステル基を有する化合物(iii)とを反応させて、(半)結晶性ウレタンエステルを得ることと、
(iiib)(半)結晶性ウレタンエステルのエステル基を水酸化物で加水分解して、(半)結晶性前駆体Pを得ることと、
(iiic)任意に、(iiib)の(半)結晶性前駆体を酸性化して、結晶性遅延剤Tを得ることと、
(iva)HDIと、ジオールを含む化合物(i)ならびにヒドロキシルおよび第3級アミン官能基を含む化合物(iv)とを反応させて、第3級アミン系(半)結晶性前駆体Pを得ることと、
(ivb)第3級アミン系(半)結晶性前駆体Pをプロトン化して、(半)結晶性遅延剤Tを得ること、または
(va)HDIと、ジオール成分(i)ならびにヒドロキシルおよびアクリラート官能基を含む化合物(v)とを反応させて、アクリラート官能性(半)結晶性中間体を得ることと、
(vb)アクリラート官能性(半)結晶性中間体のアクリラート基と第2級アミンとを反応させて、第3級アミン官能性半結晶性前駆体Pを得ることと、
(vc)第3級アミン系(半)結晶性前駆体Pをプロトン化して、(半)結晶性遅延剤Tを得ること
により調製される。
【0026】
iibに使用される環状無水物は、好ましくは無水コハク酸または無水マレイン酸であり、
化合物(ii)は、ヒドロキシル基およびカルボン酸基の両方を含み、例えば、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシピバル酸、ヒドロキシ酪酸であり得る。
【0027】
化合物(iii)は、ヒドロキシルおよびカルボン酸エステル基を含み、例えば乳酸エチル、または一般に化合物(ii)について記載されるヒドロキシ酸のアルキルエステルであり得る。
【0028】
当業者は、加水分解された(半)結晶性前駆体Pを酸性化して結晶性遅延剤Tを得ることができることを理解するであろう。
【0029】
ヒドロキシルおよび第3級アミン官能基を含む化合物(iv)は、例えばジメチルエタノールアミンであり得る。
【0030】
さらに別の実施形態では、(半)結晶性前駆体は、上記の工程により調製され、
加水分解および/または中和は、
・酸性でないカチオン、好ましくは式Y(R’)4(式中、YはNもしくはPを表し、各R’は、ポリマーに結合し得る同じもしくは異なるアルキル、アリールもしくはアラルキルであることができる)によるカチオン、好ましくは第4級アンモニウムもしくはホスホニウムカチオン、好ましくはテトラブチルアンモニウムカチオンもしくはテトラエチルアンモニウムカチオンの水酸化物塩;または
・好ましくはアミジンの群から選択される非常に強い塩基性アミン;好ましくは1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン(DBU)またはグアニジン;好ましくは任意にいくらかの水の存在下での1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)
で行われる。
【0031】
一実施形態では、(半)結晶性前駆体の数平均分子量は、300~4000、好ましくは500~3000g/mol、より好ましくは1000~2000g/molである。好ましくは、イソシアナート基よりも過剰のイソシアナート反応性基が使用される。したがって、好ましくは、イソシアナート基に対する化合物(i)および存在する場合には化合物(ii)、(iii)、(iv)または(v)のイソシアナート反応性基の比は、好ましくは1を超える。より好ましくは、イソシアナート基に対するイソシアナート反応性基のモル比は、1.0~1.5、より好ましくは1.01~1.2である。
【0032】
ウレタン骨格を調製するために化合物(i)を使用しない(半)結晶性前駆体Pまたは遅延剤Tも開示される。
【0033】
一実施形態では、触媒系が、(半)結晶性前駆体Pと活性化剤Cとがマクロ物理的に分離されている分離触媒系である、先行する請求項のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【0034】
本発明によれば、「マクロ物理的に分離された」という用語は、反応可能な化合物PおよびCが、硬化温度未満の粉末コーティング組成物中で化学反応を本質的に利用できないことを意味する。これは、粉末コーティング組成物を調製する際に、半(結晶性)前駆体PとアクセプタCとが一緒に融解混合(押出とも呼ばれる)されないためである。これは、より長い貯蔵時間を有する粉末コーティング組成物を提供するのに役立ち、艶消し外観を有するコーティングを提供する。
【0035】
一実施形態では、(半)結晶性前駆体Pは、酸性ではないアニオンおよびカチオンによって形成される塩であり得る。酸性でないとは、架橋性ドナー成分Aと塩基について競合する水素を有さず、したがって意図された硬化温度での架橋反応を阻害しないことを意味する。好ましくは、カチオンは、架橋性組成物中の任意の成分に対して実質的に非反応性である。カチオンは、例えば、アルカリ金属、第4級アンモニウムまたはホスホニウムであり得るが、架橋性組成物中の成分A、BまたはCのいずれに対しても反応しないプロトン化「超強塩基」でもあり得る。適切な超強塩基は当技術分野で公知である。
【0036】
さらに別の実施形態では、触媒系は、
・バインダ成分AおよびBならびに触媒系の総重量に対して1~600μeq/gr、好ましくは10~400、より好ましくは20~200μeq/grの量の活性化剤Cと、
・バインダ成分AおよびBならびに触媒系の総重量に対して1~300μeq/gr、好ましくは10~200、より好ましくは20~100μeq/grの量の(半)結晶性前駆体Pと、
・任意に、バインダ成分AおよびBならびに触媒系の総重量に対して、1~500、好ましくは10~400、より好ましくは20~300μeq/gr、最も好ましくは30~200μeq/grの量の遅延剤Tとを含み、
・好ましくは、Cの当量は、
(i)存在する場合、Tの量よりも、好ましくは1~300μeq/gr、好ましくは10~200、より好ましくは20から100μeq/grの量だけ多く、
(ii)好ましくはPの量よりも多く、
(iii)より好ましくは、PおよびTの量の合計よりも多い。
【0037】
さらに別の実施形態では、粉末コーティング組成物の触媒系は、触媒系を含み、
a.(半)結晶性前駆体はPとTの合計の10~100当量%を表し、
b.好ましくは、遅延剤Tの量は、Pの量の20~400当量%、好ましくは30~300当量%であり、
c.好ましくは、PおよびTの量の合計に対するCの当量の比は、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.8、より好ましくは少なくとも1、好ましくは最大3、より好ましくは最大2であり、
d.Tに対するCの比は、好ましくは少なくとも1、好ましくは少なくとも1.5、最も好ましくは少なくとも2である。
【0038】
一実施形態では、触媒系は、好ましくはエポキシド、カルボジイミド、オキセタン、オキサゾリンまたはアジリジン官能性成分、好ましくはエポキシドまたはカルボジイミドの群から選択される活性化剤C1を含む触媒活性化剤組成物(C)を含む。
【0039】
最も好ましい触媒活性化剤C1は、エポキシ基を含む。好ましい活性化剤C1としてのエポキシドの適切な選択肢は、脂環式エポキシド、エポキシ化油およびグリシジル型エポキシドである。適切な成分C1には、例えば米国特許第4749728号明細書、3列21~56行目に記載されており、複数のエポキシ官能基を含むエポキシド官能基を有するC10~18アルキレンオキシドおよびオリゴマーおよび/またはポリマーが含まれる。特に好適なモノエポキシドには、tert-ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアセタート、ベルサチックエステル(versatic ester)のグリシジルエステル、グリシジルメタクリラート(GMA)およびグリシジルベンゾアートが含まれる。有用な多官能性エポキシドには、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ならびにそのようなBPAエポキシ樹脂の高級同族体、Eponex 1510(Hexion)、ST-4000D(Kukdo)などの水素化BPAのグリシジルエーテル、エポキシ化大豆油などの脂肪族オキシラン、アジピン酸ジグリシジル、1,4-ジグリシジルブチルエーテル、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル、Araldite PT910およびPT912(Huntsman)などの二酸のグリシジルエステル、TGICおよび他の市販のエポキシ樹脂が含まれる。ビスフェノールAジグリシジルエーテルならびにその固体高分子量同族体が好ましいエポキシドである。グリシジルメタクリラートに由来するエポキシド官能価を有するアクリル(コ)ポリマーも有用である。好ましい実施形態では、エポキシ成分は、少なくとも400(750、1000、1500)のMnを有するオリゴマーまたはポリマー成分である。他のエポキシド化合物には、2-メチル-1,2-ヘキセンオキシド、2-フェニル-1,2-プロペンオキシド(α-メチルスチレンオキシド)、2-フェノキシメチル-1,2-プロペンオキシド、エポキシ化不飽和油または脂肪エステル、および1-フェニルプロペンオキシドが含まれる。有用かつ好ましいエポキシドはカルボン酸のグリシジルエステルであり、これはカルボン酸官能性ポリマー上、または好ましくはCardura E10P(Versatic(商標)Acid 10のグリシジルエステル)のような高度に分岐した疎水性カルボン酸上に存在し得る。最も好ましいのは、典型的な粉末架橋剤エポキシ成分:トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)、Araldite PT910およびPT912、ならびに周囲温度で天然に固体であるフェノールグリシジルエーテル、またはグリシジルメタクリラートのアクリル(コ)ポリマーである。
【0040】
場合により、いくつかの好ましい実施形態では、触媒系は、架橋性ドナー成分A中の活性化C-HのpKaよりも2、好ましくは3、より好ましくは4、最も好ましくは5ポイント低いpKaを有し、脱プロトン化時にP1前駆体として作用することができる弱塩基を生成し、活性化剤C1と反応して、AとBとの間のマイケル付加反応を触媒することができる強塩基を生成することができる酸である遅延剤Tをさらに含む。遅延剤Tは、好ましくはプロトン化前駆体P1である。遅延剤Tは、触媒前駆体組成物または触媒活性化剤組成物の一部であり得る。触媒前駆体組成物および触媒活性化剤組成物の両方の一部であってもよい。好ましくは、遅延剤Tおよびプロトン化前駆体P1は、少なくとも120℃、好ましくは130℃、150、175、200またはさらには250℃の沸点を有する。好ましくは、遅延剤Tはカルボン酸である。遅延剤Tの使用は、移動度の制限が顕著になる前に、硬化中に成分のより多くの相互拡散を可能にするために架橋反応を遅らせることにおいて有益な効果を有することができる。
【0041】
遅延剤は、最も好ましくは、上記のように(半)結晶性である。
【0042】
本特許出願で言及されるpKa値は、周囲条件(21℃)での水性pKa値である。それらは、文献に容易に見出すことができ、必要に応じて、当業者に公知の手順によって水溶液中で決定することができる。
【0043】
硬化条件下で架橋反応の有用な遅延を提供することができるように、遅延剤Tおよびその脱プロトン化バージョンP1と活性化剤C1との反応は、適切な速度で行われるべきである。
【0044】
好ましい触媒系は、触媒活性化剤C1としてエポキシを含み、触媒前駆体P1としてC1のエポキシド基と反応して強塩基性付加物C1を形成する弱塩基求核性アニオン基を含み、最も好ましくは遅延剤Tも含む。適切な触媒系では、P1はカルボキシレート塩であり、C1はエポキシド、カルボジイミド、オキセタンまたはオキサゾリンであり、より好ましくはエポキシドまたはカルボジイミドであり、Tはカルボン酸である。あるいは、P1は第3級アミンであり、C1はエポキシであり、Tはカルボン酸である。
【0045】
理論に束縛されることを望まないが、求核性アニオンP1は活性化剤エポキシドC1と反応して強塩基を生じるが、この強塩基は遅延剤Tによって直ちにプロトン化されて、架橋反応を直接強く触媒しない塩(P1と機能的に類似)を生成すると考えられる。反応スキームは、遅延剤Tが実質的に完全に枯渇するまで行われ、これは、架橋性成分AおよびBの反応を有意に触媒するための有意な量の強塩基がその時間中に存在しないので、開時間を提供する。遅延剤Tが枯渇すると、強塩基が形成され、残存して迅速なRMA架橋反応を効果的に触媒する。
【0046】
本発明の特徴および利点は、以下の例示的な反応スキームを参照すると理解されるであろう。
【化1】
【0047】
具体的には、P1、C1およびT種としてのカルボキシラート、エポキシドおよびカルボン酸の場合、これは:**図に取って代わるように描くことができる**
【化2】
【0048】
場合によっては、活性化剤C1と前駆体P1との反応の詳細な機構が知られていないか、議論の対象となっていない可能性があり、実際に反応に関与するP1のプロトン化体が関与する反応機構が示唆され得る。そのような反応シーケンスの正味の効果は、P1の脱プロトン化形態を介したその進行に基づいて記載されたシーケンスと同様であり得る。反応がプロトン化P1経路に沿って進行すると主張され得る系が本発明に含まれる。この場合、遅延剤Tが枯渇した後、C1は、マイケルドナー種Aとの酸-塩基平衡から生成されたプロトン化P1と反応し、その反応は、この酸-塩基平衡が脱プロトン化マイケルドナー側に引き込まれることに起因して架橋を活性化する。
【0049】
活性化剤がP1Hのプロトン化形態を介して反応する場合の反応スキームは、次のスキームによって示されるであろう:
【化3】
【0050】
一実施形態では、遅延剤Tは、プロトン化アニオン基P1、好ましくはカルボン酸TおよびカルボキシラートP1であり、これは、例えば、酸官能性成分、好ましくは遅延剤Tとして酸基を含むポリマーを部分的に中和してP1上のアニオン基に部分的に変換することによって形成することができ、部分中和は、好ましくは水酸化カチオンまたは(ビ)カルボナート、好ましくはテトラアルキルアンモニウムまたはテトラアルキルホスホニウムカチオンによって行われる。別の実施形態では、ポリマー結合成分P1は、ポリエステル中のエステル基を前述の水酸化物で加水分解することによって作製することができる。
【0051】
架橋性成分
粉末コーティング組成物は、
a)活性化メチレンまたはメチン中に少なくとも2つの酸性C-Hドナー基を有する架橋性ドナー成分Aと、
b)真マイケル付加(RMA)によって成分Aと反応して架橋ネットワークを形成する少なくとも2つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する架橋性アクセプタ成分Bと
を含む架橋性組成物をさらに含む。
【0052】
特定の一実施形態では、架橋性ドナー成分Aおよび/または架橋性アクセプタBは、好ましくはウレタン骨格を有する(半)結晶性化合物であり、ウレタン骨格は、好ましくはヘキサメチレンジイソシアナートと、少なくとも2つのイソシアナート反応性基、好ましくはアルコール、より好ましくはジオールを含む化合物とを反応させることによって調製される。
【0053】
好ましくは、ジオールは、
エーテル基もしくはチオエーテル基、好ましくは-CH2-O-CH2-、-CH2-S-CH2-、-CH2-S-S-CH2-を含有するヒドロキシル基の間の連結鎖を有し、連結鎖はヒドロキシル基の間に11個の炭素原子および/もしくはヘテロ原子の最大長を有するか、または
-CH(CH3)-単位もしくは-CH(CH2CH3)-を含有するヒドロキシル基の間に、好ましくは中心位置に連結鎖を有し、それにより、連結鎖は、ヒドロキシル基の間に6未満の奇数の炭素原子および/もしくはヘテロ原子を有する鎖長を有し、
ヒドロキシル基は第1級ヒドロキシル基であり、ジオールは芳香族ではなく、脂環式ではない。
【0054】
ジオールは、好ましくは、ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;3-メチル1,5-ペンタンジオール、2-メチル1,3-プロパンジオール;チオジエタノール;ジチオジエタノール;テトラエチレングリコール;ジ(1.3-プロパンジオール)ジ(1.4-ブタンジオール)からなる群から選択される。
【0055】
理論に束縛されるものではないが、ドナー成分Aおよび/または架橋性アクセプタBの骨格が結晶性前駆体Bからのものと類似または同じである場合、低濃度であっても、より良好な(共)結晶化が達成されると想定される。
【0056】
そのため、別の好ましい実施形態では、(半)結晶性ドナー成分Aおよび/または(半)結晶性アクセプタBのウレタン骨格および(半)結晶性前駆体(P)は、同じ成分によって調製されたウレタン骨格を有し、好ましくは、ウレタン骨格は、HDIと、上記のような少なくとも2つのイソシアナート反応性基、好ましくはジオールを有する同じ化合物(i)とを反応させることによって調製される。
【0057】
この実施形態では、好ましくは、少なくとも架橋性ドナー成分Aおよび/または少なくとも架橋性アクセプタ成分Bは(半)結晶性であり、
実質的にヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)であるポリイソシアナートを、少なくとも2つ、好ましくは2つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシルを含み、より好ましくはジオールである化合物(i)と、
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシルと、活性化メチレンもしくはメチン中に少なくとも1つの酸性C-Hドナー基を有する少なくとも1つの官能基とを含み、(半)結晶性ドナー成分Aを形成する化合物(iia)、または
少なくとも1つ、好ましくは1つのイソシアナート反応性基、好ましくはヒドロキシルと、少なくとも1つの活性化不飽和アクセプタ基C=Cを有する少なくとも1つの官能基とを含み、(半)結晶性アクセプタ成分Bを形成する化合物(iib)と反応させること
により形成されるポリウレタン骨格を含む。
【0058】
本発明によれば、「実質的に」とは、使用されるポリイソシアナートの少なくとも95%がHDIであることを意味する。
【0059】
一実施形態では、架橋性成分Aは、構造Z1(-C(-H)(-R)-)Z2中の活性化メチレンまたはメチン中に少なくとも2つの酸性C-Hドナー基を含み、式中、Rは水素、炭化水素、オリゴマーまたはポリマーであり、Z1およびZ2は同じまたは異なる電子吸引基であり、好ましくはケト、エステルまたはシアノまたはアリール基から選択され、好ましくは式1
【化4】
(式中、Rは水素もしくは任意に置換されたアルキルもしくはアリールであり、YおよびY’は同じもしくは異なる置換基、好ましくはアルキル、アラルキルもしくはアリール、もしくはアルコキシであり、または式1中、-C(=O)-Yおよび/または-C(=O)-Y’はCNもしくはアリール、1つ以下のアリールで置換されており、またはYもしくはY’はNRR’(RおよびR’はHまたは任意に置換されたアルキルである)であってもよいが、好ましくは両方ともではなく、R、YまたはY’はオリゴマーまたはポリマーへの結合を任意に提供する)による構造を有する活性化C-H誘導体を含み、当該成分Aは好ましくはマロナート、アセトアセタート、マロンアミド、アセトアセトアミドまたはシアノアセタート基であり、好ましくは架橋性成分A中のC-H酸性基の合計の少なくとも50、好ましくは60、70、またはさらには80%を提供し、
b.成分Bは、好ましくはアクリロイル、メタクリロイル、イタコナート、マレアートまたはフマラート官能基に由来する少なくとも2つの活性化不飽和RMAアクセプタ基を含み、
好ましくは成分AまたはBの少なくとも1つ、より好ましくは両方がポリマーであり、
好ましくは、組成物は、0.05~6meq/grのバインダ固形分のバインダ固形分1グラム当たりのドナー基C-Hおよびアクセプタ基C=Cの総量を含み、好ましくは、アクセプタ基C=Cのドナー基C-Hに対する比は、0.1を超え10未満である。
好ましくは、成分AまたはBの少なくとも1つ、より好ましくは両方はポリマーである。
【0060】
好ましくは、架橋性組成物は、0.05~6meq/grのバインダ固形分のバインダ固形分1グラム当たりのドナー基C-Hおよびアクセプタ基C=Cの総量を含み、好ましくはアクセプタ基C=Cのドナー基C-Hに対する比は、0.1を超え10未満である。
【0061】
架橋性成分AおよびBを含む真マイケル付加(RMA)架橋性コーティング組成物は、一般に、欧州特許第2556108号明細書、欧州特許第0808860号明細書または欧州特許第1593727号明細書に溶媒由来系(solvent borne system)で使用するために記載されており、架橋性成分AおよびBの具体的な説明は、本明細書に包含されていると見なされる。
【0062】
成分AおよびBはそれぞれ、硬化時に反応してコーティング中に架橋ネットワークを形成するRMA反応性ドナーおよびアクセプタ部分を含む。成分AおよびBは、別々の分子上に存在することができるが、1つの分子上に存在することもでき、ハイブリッドA/B成分またはそれらの組合せと呼ばれる。
【0063】
好ましくは、成分AおよびBは別々の分子であり、それぞれ独立してポリマー、オリゴマー、二量体またはモノマーの形態である。コーティング用途では、成分AまたはBの少なくとも1つが好ましくはオリゴマーまたはポリマーであることが好ましい。活性化メチレン基CH2は、2つのC-H酸性基を含むことに留意されたい。たとえ第1のC-H酸性基の反応後、第2のC-H酸性基の反応がより困難であっても、例えばメタクリラートとの反応では、アクリラートと比較して、そのような活性化メチレン基の官能価は2としてカウントされる。反応性成分AおよびBは、1つのA/Bハイブリッド分子に組み合わせることもできる。粉末コーティング組成物のこの実施形態では、C-HおよびC=C反応性基の両方が1つのA-B分子に存在する。
【0064】
好ましくは、成分Aは、官能基として成分Aおよび場合により1つ以上の成分B、または触媒系Cからの成分を有するポリマー、好ましくはポリエステル、ポリウレタン、アクリル、エポキシまたはポリカーボネートである。また、これらのポリマータイプの混合物またはハイブリッドも可能である。適切には、成分Aは、アクリル、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリエステル-ウレタンポリマーの群から選択されるポリマーである。
【0065】
マロナートまたはアセトアセタートは、成分Aにおいて好ましいドナータイプである。架橋性組成物の最も好ましい実施形態における高い反応性および耐久性を考慮して、成分AはマロナートC-H含有化合物である。粉末コーティング組成物において、活性化C-H基の大部分がマロナート由来である、すなわち、粉末コーティング組成物中の全ての活性化C-H基の50%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超、最も好ましくは80%超がマロナート由来であることが好ましい。
【0066】
オリゴマーおよび/またはポリマーマロナート基含有成分、例えば、主鎖、ペンダントまたはその両方にマロナート型基を含有するポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリラート、エポキシ樹脂、ポリアミドおよびポリビニル樹脂またはそれらのハイブリッドが好ましい。
【0067】
バインダ固形分1グラム当たりのドナー基C-Hおよびアクセプタ基C=Cの総量は、それらが様々な架橋性成分にわたってどのように分布するかに関係なく、好ましくは0.05~6meq/gr、より典型的には0.10~4meq/gr、さらにより好ましくは0.25~3meq/grのバインダ固形分、最も好ましくは0.5~2meq/grである。好ましくは、成分AとBとの間の化学量論は、反応性C=C基対反応性C-H基の比が0.1超、好ましくは0.2超、より好ましくは0.3超、最も好ましくは0.4超であり、アクリラート官能基Bの場合、好ましくは0.5超、最も好ましくは0.75超であり、比は好ましくは10未満、好ましくは5未満、より好ましくは3、2または1.5未満であるように選択される。
【0068】
マロナート基含有ポリエステルは、好ましくは、マロン酸のメチルまたはエチルジエステルと、ポリマーまたはオリゴマーの性質であり得るが、他の成分とのマイケル付加反応によって組み込むこともできる多官能性アルコールとのエステル交換によって得ることができる。本発明で使用するのに特に好ましいマロナート基含有成分は、マロナート基含有オリゴマーまたはポリマーエステル、エーテル、ウレタンおよびエポキシエステルならびにそれらのハイブリッド、例えば1分子当たり1~50個、より好ましくは2~10個のマロナート基を含有するポリエステル-ウレタンである。ポリマー成分Aはまた、公知の方法で、例えば、活性化C-H酸(ドナー)基、好ましくはアセトアセタートまたはマロナート基、特に2-(メタクリロイルオキシ)エチルアセトアセタートまたは-マロナートを含む部分で官能化されたモノマー、例えば(メタ)アクリラートを含むエチレン性不飽和モノマーのラジカル重合によって製造することもできる。実際には、ポリエステル、ポリアミドおよびポリウレタン(およびこれらのハイブリッド)が好ましい。このようなマロナート基含有成分は、約100~約10000、好ましくは500~5000、最も好ましくは1000~4000の範囲の数平均分子量(Mn)、および20000未満、好ましくは10000未満、最も好ましくは6000未満のMw(GPCポリスチレン当量で表される)を有することも好ましい。
【0069】
適切な架橋性成分Bは、一般に、炭素-炭素二重結合が電子吸引基、例えばα位のカルボニル基によって活性化されるエチレン性不飽和成分であり得る。そのような成分の代表例は、米国特許第2759913号明細書(6列35行目~7列45行目)、独国特許(DE-PS)第835809号明細書(3列、16行~41行)、米国特許第4871822号明細書(2列14行目~4列14行目)、米国特許第4602061号明細書(3列14行20~4列14行)、米国特許第4408018号明細書(2列19~68行目)および米国特許第4217396号明細書(1列60行目~2列64行目)に開示されている。
【0070】
アクリラート、メタクリラート、イタコナート、フマラートおよびマレアートが好ましい。イタコナート、フマラートおよびマレアートは、ポリエステルまたはポリエステル-ウレタンの骨格に組み込むことができる。活性化不飽和基を含有するポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、アクリルおよびエポキシ樹脂(またはそれらのハイブリッド)ポリエーテルおよび/またはアルキド樹脂などの好ましい例示的な樹脂を挙げることができる。これらには、例えば、ポリイソシアナートとヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル、例えば(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとの反応によって得られるウレタン(メタ)アクリラート、またはポリ-ヒドロキシル成分と化学量論量未満の量の(メタ)アクリル酸とのエステル化によって調製される成分;ヒドロキシル基含有ポリエーテルと(メタ)アクリル酸とのエステル化により得られるポリエーテル(メタ)アクリラート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートとポリカルボン酸および/またはポリアミノ樹脂との反応によって得られる多官能性(メタ)アクリラート;(メタ)アクリル酸とエポキシ樹脂との反応によって得られるポリ(メタ)アクリラート、ならびにモノアルキルマレアートエステルとエポキシ樹脂および/またはヒドロキシ官能性オリゴマーまたはポリマーとの反応によって得られるポリアルキルマレアートが含まれる。また、グリシジルメタクリラートでエンドキャップされたポリエステルが好ましい例である。アクセプタ成分は、複数のタイプのアクセプタ官能基を含有することが可能である。
【0071】
最も好ましい活性化不飽和基含有成分Bは、不飽和アクリロイル、メタクリロイルおよびフマラート官能性成分である。好ましくは、1分子当たりの活性化C=C基の数平均官能価は、2~20、より好ましくは2~10、最も好ましくは3~6である。当量(EQW:反応性官能基あたりの平均分子量)は100~5000、より好ましくは200~2000であり、数平均分子量は好ましくはMn200~10000、より好ましくは300~5000、最も好ましくは400~3500g/モル、さらにより好ましくは1000~3000g/モルである。
【0072】
粉末系での使用を考慮して、成分BのTgは、粉末安定性の必要性のために、好ましくは25、30、35を超え、より好ましくは少なくとも40、45、最も好ましくは少なくとも50℃、さらには少なくとも60℃である。Tgは、DSC、中間点、加熱速度10℃/分で測定したものとして定義される。成分のうちの1つが50℃より実質的に高いTgを有する場合、他の配合物成分のTgは、当業者によって理解されるように低くなり得る。
【0073】
適切な成分Bは、ヒドロキシ-および(メタ)アクリラート官能性化合物をイソシアナートと反応させてウレタン結合を形成することによって調製されたウレタン(メタ)アクリラートであり、イソシアナートは、好ましくは少なくとも部分的にジ-またはトリ-イソシアナート、好ましくはイソホロンジイソシアナート(IPDI)である。ウレタン結合はそれ自体で剛性を導入するが、好ましくは高Tgイソシアナートが脂環式または芳香族イソシアナート、好ましくは脂環式のように使用される。このようなイソシアナートの使用量は、好ましくは、前記(メタ)アクリラート官能性ポリマーTgが40℃超、好ましくは45または50℃超に上昇するように選択される。
【0074】
粉末コーティング組成物は、好ましくは、硬化後に架橋密度(DMTAを使用)を少なくとも0.025ミリモル/cc、より好ましくは少なくとも0.05ミリモル/cc、最も好ましくは少なくとも0.08ミリモル/cc、典型的には3、2、1または0.7ミリモル/cc未満であると決定することができるように設計される。
【0075】
粉末コーティング組成物は、周囲条件で自由流動性粉末を保持すべきであり、したがって、10℃/分の加熱速度でのDSCによって決定された中間値として、好ましくは25℃を超える、好ましくは30℃を超える、より好ましくは35、40、50℃を超えるTgを有する。
【0076】
上記のように、好ましい成分Aはマロナート官能性成分である。しかしながら、マロナート部分の組み込みはTgを低下させる傾向があり、十分に高いTgを有する主要成分Aとしてマロナートに基づく粉末コーティング組成物を提供することは課題であった。
【0077】
高Tgを達成する観点から、粉末コーティング組成物は、好ましくは、ハイブリッド成分A/Bの形態であり得る架橋性ドナー成分Aおよび/もしくは架橋性アクセプタ成分Bが、アミド、尿素もしくはウレタン結合を含み、ならびに/またはそれによって、高Tgモノマー、好ましくは脂環式もしくは芳香族モノマーを含み、もしくはポリエステルの場合、1,4-ジメチロールシクロヘキサン(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール(TCDジオール)、イソソルビド、ペンタ-スピログリコール、水素化ビスフェノールAおよびテトラ-メチル-シクロブタンジオールの群から選択される1つ以上のモノマーを含む、架橋性組成物を含む。
【0078】
さらに、高Tgを達成する観点から、粉末コーティング組成物は、ポリエステル(メタ)アクリラート、ポリエステルウレタン(メタ)アクリラート、エポキシ(メタ)アクリラートもしくはウレタン(メタ)アクリラートである成分Bまたはハイブリッド成分A/Bを含むか、またはフマラート、マレアートもしくはイタコナート単位、好ましくはフマラートを含むポリエステルであるか、またはイソシアナートもしくはエポキシ官能性活性化不飽和基でエンドキャップされたポリエステルである。
【0079】
最も好ましくは、粉末コーティング組成物は、RMA架橋性粉末コーティング組成物における使用に適合した特徴を有するRMA架橋性組成物を含む。特に、良好な流動およびレベリング特性、ならびに良好な化学的および機械的耐性を達成することを考慮して、好ましくは、粉末コーティング組成物において、架橋性成分AまたはBまたはハイブリッドA/Bの少なくとも1つは、好ましくはアクリル、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリエステル-ウレタンポリマーの群から選択されるポリマーであり、このポリマーは、
・GPCで測定して、少なくとも450gr/モル、好ましくは少なくとも1000、より好ましくは少なくとも1500、最も好ましくは少なくとも2000gr/モルの数平均分子量Mnを有し、
・GPCで測定して、最大20000gr/モル、好ましくは最大15000、より好ましくは最大10000、最も好ましくは最大7500gr/モルの重量平均分子量Mwを有し、
・好ましくは4未満、より好ましくは3未満の多分散性Mw/Mnを有し、
・C-HもしくはC=Cにおける当量EQWが少なくとも150、250、350、450もしくは550gr/モル、好ましくは最大で2500、2000、1500、1250もしくは1000gr/モルであり、反応性基C-HもしくはC=Cの数平均官能価が1~25、より好ましくは1.5~15、さらにより好ましくは2~15、最も好ましくは2.5~10のC-H基/分子であり、
・好ましくは、100~140℃の範囲の温度で60Pas未満、より好ましくは40、30、20、10もしくはさらには5Pas未満の融解粘度を有し、
・好ましくは、アミド、尿素もしくはウレタン結合を含み、および/もしくは高Tgモノマー、好ましくは脂環式もしくは芳香族モノマー、特に1,4-ジメチロールシクロヘキサン(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール(TCDジオール)、イソソルビド、ペンタ-スピログリコールもしくは水素化ビスフェノールAおよびテトラメチル-シクロブタンジオールの群から選択されるポリエステルモノマーを含み、ならびに/または
・10℃/分の加熱速度でのDSCによって決定された中間値として、25℃を超える、好ましくは35℃を超える、より好ましくは40、50もしくはさらには60℃を超えるTgを有するか、もしくは40℃~150、好ましくは130℃、好ましくは少なくとも50もしくはさらに70℃、好ましくは120℃未満の融解温度(10℃/分の加熱速度でのDSCによって決定される)を有する結晶性ポリマーであることが見出された。
【0080】
ポリマー特性Mn、MwおよびMw/Mnは、一方では所望の粉末安定性、他方では所望の低融解粘度だけでなく、想定されるコーティング特性も考慮して選択される。高Mnは、末端基のTg低下効果を最小限に抑えるために好ましく、他方では、低Mwは、融解粘度がMwに非常に大きく関連し、低粘度が望ましいために好ましい。したがって、低いMw/Mnが好ましい。
【0081】
高Tgを達成する観点から、RMA架橋性ポリマーは、好ましくはアミド、尿素もしくはウレタン結合を含み、ならびに/または高Tgモノマー、好ましくは脂環式もしくは芳香族モノマーを含み、もしくはポリエステルの場合、1,4-ジメチロールシクロヘキサン(CHDM)、TCDジオール、イソソルビド、ペンタ-スピログリコールもしくは水素化ビスフェノールAおよびテトラメチル-シクロブタンジオールの群から選択されるモノマーを含む。
【0082】
RMA架橋性ポリマーがA/Bハイブリッドポリマーである場合、ポリマーは、アクリラートまたはメタクリラート、フマラート、マレアートおよびイタコナート、好ましくは(メタ)アクリラートまたはフマラートの群から選択される1つ以上の成分B基も含むことがさらに好ましい。さらに、結晶性材料として使用される場合、RMA架橋性ポリマーは、40℃~130℃、好ましくは少なくとも50℃またはさらには70℃、好ましくは150、130℃未満またはさらには120℃の融解温度(10℃/分の加熱速度でのDSCによって決定される)を有する結晶化度を有することが好ましい。これは、(純粋な)ポリマー自体の融解温度であり、組成物中のポリマーの融解温度ではないことに留意されたい。
【0083】
好ましい実施形態では、脂環式または芳香族イソシアナート、好ましくは脂環式イソシアナート由来の尿素、ウレタンまたはアミド結合を含むポリエステル、ポリエステルアミド、ポリエステル-ウレタンまたはウレタン-アクリラートを含むRMA架橋性ポリマーであって、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも45または50℃、最大120℃のTgおよび450~10000、好ましくは1000~3500gr/モルの数平均分子量Mn、好ましくは20000、10000または6000gr/モルの最大Mnを有し、ポリマーにRMA架橋性成分AもしくはBまたはその両方が提供される、RMA架橋性ポリマー。ポリマーは、例えば、前記RMA架橋性基を含む前駆体ポリマーをある量の脂環式または芳香族イソシアナートと反応させてTgを上昇させることによって得ることができる。添加されるそのようなイソシアナート、または形成される尿素/ウレタン結合の量は、Tgが少なくとも40℃、好ましくは少なくとも45または50℃に上昇するように選択される。
【0084】
好ましくは、RMA架橋性ポリマーは、主要成分Aとしてマロナートを含み、1分子当たり1~25個、より好ましくは1.5~15個、さらにより好ましくは2~15個、最も好ましくは2.5~10個のマロナート基の数平均マロナート官能価を含み、500~20000、好ましくは1000~10000、最も好ましくは2000~6000gr/モルのGPC重量平均分子量を有し、ヒドロキシ-およびマロナート官能性ポリマーをイソシアナートと反応させてウレタン結合を形成することによって調製された、ポリエステルまたはポリエステル-ウレタンである。
【0085】
さらに、ポリマーは、非晶質もしくは(半)結晶性ポリマーまたはそれらの混合物であり得る。半結晶性とは、部分的に結晶性であり、部分的に非晶質であることを意味する。(半)結晶化度は、DSC融解吸熱によって定義されるものであり、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも60℃、好ましくは最大130、120、110または100℃のDSCピーク融解温度Tmを有するものとして定義される目標結晶化度である。完全に非晶質の状態のこのような成分のDSC Tgは、好ましくは40℃未満、より好ましくは30、20またはさらには10℃未満である。
【0086】
(半)結晶性遅延剤および前駆体
第2の態様では、本発明は、請求項1から18のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物を得るために真マイケル付加(RMA)反応を介して架橋性組成物を架橋するための触媒系に使用するための(半)結晶性触媒遅延剤Tまたは前駆体Pであって、触媒遅延剤T前駆体が、
(ia)HDIと、ジオールである化合物(i)ならびにヒドロキシルおよびカルボン酸基を含む化合物(ii)とを反応させて、カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを得ることと、
(ib)カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを中和して、(半)結晶性前駆体Pを得ること、または
(iia)HDIと、ジオールである過剰の化合物(i)とを反応させて、ヒドロキシル末端ウレタン中間体を得ることと、
(iib)ヒドロキシルウレタン中間体と環状無水物とを反応させて、カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを得ることと、
(iic)カルボン酸系(半)結晶性遅延剤Tを中和して、(半)結晶性前駆体Pを得ること、または
(iiia)HDIと、ジオールを含む化合物(i)ならびにヒドロキシルおよびカルボン酸エステル基を有する化合物(iii)とを反応させて、(半)結晶性ウレタンエステルを得ることと、
(iiib)(半)結晶性ウレタンエステルのエステル基を水酸化物で加水分解して、(半)結晶性前駆体Pを得ることと、
(iiic)任意に、この(半)結晶性前駆体を酸性化して、結晶性遅延剤Tを得ることと、
(iva)HDIと、ジオール成分(i)ならびにヒドロキシルおよび第3級アミン官能基を含む化合物(ii)とを反応させて、第3級アミン系(半)結晶性前駆体Pを得ることと、
(ivb)第3級アミン系(半)結晶性前駆体Pをプロトン化して、(半)結晶性遅延剤Tを得ること、または
(va)HDIと、ジオール成分(i)ならびにヒドロキシルおよびアクリラート官能基を含む化合物(ii)とを反応させて、アクリラート官能性(半)結晶性中間体を得ることと、
(vb)アクリラート官能性(半)結晶性中間体のアクリラート基と第2級アミンとを反応させて、第3級アミン官能性半結晶性前駆体Pを得ることと、
(vc)第3級アミン系(半)結晶性前駆体Pをプロトン化して、(半)結晶性遅延剤Tを得ること
により調製される、(半)結晶性触媒遅延剤Tまたは前駆体Pに関する。
【0087】
本発明の第1の態様における(半)結晶性前駆体および遅延剤について記載した実施形態および好ましい例は、本発明の第2の態様にも適用される。
【0088】
基材およびコーティング
本発明はまた、基材を粉末塗装する方法であって、
a.本発明による粉末コーティング組成物を提供するステップと、
b.粉末の層を基材表面に塗布するステップと、
c.75℃~140℃、好ましくは80℃~130,120、110℃、さらには100℃の硬化温度Tcurまで、好ましくは赤外線加熱を用いて加熱するステップと、
d.Tcurで、好ましくは40、30、20、15、10またはさらには5分未満の硬化時間にわたって硬化させるステップと
を含む、方法に関する。
【0089】
Tcurでの粉末コーティング組成物は、好ましくは60Pas未満、より好ましくは40、30、20、10またはさらには5Pas未満の硬化温度での融解粘度を有する。融解粘度は、反応のまさに開始時に、または触媒系のC2なしで測定される。
【0090】
本方法の好ましい実施形態では、硬化温度は75℃~140℃、好ましくは80℃~120℃であり、触媒系Cは、感温性基材、好ましくはMDF、木材、プラスチック、複合材、または合金のような感温性金属基材の粉末コーティングを可能にする上記の潜在触媒系である。
【0091】
したがって、本発明はまた、好ましくはMDF、木材、プラスチックまたは金属合金のような感温性基材を有し、好ましくはコーティングの架橋密度XLDが少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.02、0.04、0.07またはさらには0.1ミリモル/cc(DMTAによって決定される)であり、好ましくは3、2、1.5、1またはさらには0.7ミリモル/cc未満である、本発明の粉末コーティング組成物でコーティングされた物品に関する。
【0092】
粉末コーティング組成物は、顔料、染料、分散剤、脱ガス助剤、レベリング添加剤、艶消し添加剤、難燃性添加剤、膜形成特性を改善するための添加剤、コーティングの光学的外観のための添加剤、機械的特性、接着性を改善するための添加剤、または色およびUV安定性のような安定性特性のための添加剤の群から選択される添加剤などの添加剤をさらに含んでもよい。これらの添加剤は、粉末コーティング組成物の成分の1種以上と融解混合することができる。
【0093】
粉末塗料はまた、従来の粉末コーティング系と同様の手段を使用して、添加剤に依存するか、または粉末ブレンド系もしくは異なる反応性のポリマーのブレンドに基づく系のいずれかを使用した意図的な不均一架橋によって、艶消しコーティングを製造するように設計することができる。
【0094】
典型的には押出物を冷却バンド上に強制的に広げることによって押出機を出た直後に押出物を固化させることを伴う、標準的な粉末コーティング処理を使用することができる。押し出された塗料は、冷却バンドに沿って移動する際に固化したシートの形態をとることができる。次いで、バンドの端部で、シートは、好ましくはペグブレーカを介して小片に分割されて粒状物になる。この時点で、統計的最大サイズが好ましいが、粒状物には大幅な形状制御は適用されない。次いで、塗料粒状物を分級マイクロナイザ(classifying microniser)に移し、ここで塗料を非常に正確な粒径分布に粉砕する。そして、この生成物は完成した粉末コーティング塗料となる。
【0095】
本発明を、以下の非限定的な例によって説明する。
【0096】
例
OH価
調製したブランクおよび試料フラスコの手動滴定によってOHVを決定した。指示薬溶液は、0.80gのチモールブルーおよび0.25gのクレゾールレッドを1Lのメタノールに溶解することによって構成される。10滴の指示薬溶液をフラスコに添加し、次いで、標準化された0.5Nメタノール性水酸化カリウム溶液で滴定する。色が黄色から灰色から青色に変化し、10秒間維持される青色の着色が生じると、終点に達する。次いで、以下に従ってヒドロキシ価を計算する。
ヒドロキシ価=(B-S)×N×56.1/M+AV
式中、
B=ブランク滴定に使用したKOHのml
S=試料滴定に使用したKOHのml
N=水酸化カリウム溶液の規定度
M=試料の重量(ベース樹脂)
AV=ベース樹脂の酸価
正味ヒドロキシ価は、以下のように定義される:正味OHV=(B-S)×N×56.1/M
【0097】
アミン価
3:1キシレン:エタノールプロパノールの新たに調製した溶媒ブレンドを調製する。ある量の樹脂を250mlの三角フラスコに正確に秤量する。次いで、50~60mlの3:1 キシレン:エタノールを添加する。樹脂が完全に溶解するまで溶液を穏やかに加熱し、溶液が沸騰しないようにする。次いで、溶液を室温に冷却し、当量点の後まで0.1Mの塩酸を用いて電位差滴定を行った。
【0098】
GPC分子量
ポリマーのモル質量分布を、Perkin-Elmer HPLCシリーズ200装置で、屈折率(RI)検出器およびPLgelカラムを使用し、溶離液としてTHFを使用し、ポリスチレン標準による較正を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定した。実験分子量はポリスチレン当量として表す。
【0099】
DSC Tg
本明細書で報告される樹脂および塗料ガラス転移温度は、10℃/分の加熱速度を使用して示差走査熱量測定(DSC)から決定された中間点Tgのものである。
【0100】
耐衝撃性
衝撃試験は、ASTM D 2794に従って、粉末コーティングパネルでコーティングおよび裏面の両方で実施した。コーティングがひび割れない最大の衝撃をインチポンド(in.lb)で記録する。
【0101】
耐溶剤性
硬化膜の耐溶剤性は、メチルエチルケトン(MEK)で飽和させた小さな綿球を用いて、二回の摩擦により測定する。以下のように評価システム(0~5、最良~最悪)を用いて判定する。
0.知覚可能な変化なし。指の爪でかき傷をつけることができない
1.光沢のわずかな損失
2.光沢のいくらかの損失
3.コーティングは非常に鈍く、指の爪でかき傷をつける可能性がある
4.コーティングは非常に鈍く、非常に柔らかい
5.コーティングが割れている
【0102】
【0103】
非晶質材料の調製
マロナートドナー樹脂M-1の調製
4つ口蓋、金属アンカー撹拌機、Pt-100、上部温度計を備えた充填カラム、凝縮器、留出物収集容器、熱電対およびN2入口を備えた5リットルの丸底反応器に、1300gのイソソルビド(80%)、950gのNPGおよび1983gのTPAを投入した。反応器の温度を穏やかに約100℃まで上げ、4.5gのKen-React(登録商標)KR46B触媒を添加した。反応温度をさらに徐々に230℃まで上げ、反応混合物が透明になり、酸価が2mg KOH/g未満になるまで連続的に撹拌しながら窒素下で重合を進行させた。反応の最後の部分の間、真空を適用して反応を完了させた。温度を120℃に下げ、660gのジエチルマロナートを添加した。次いで、反応器の温度を190℃に上げ、エタノールがそれ以上形成されなくなるまで維持した。再び、真空を適用して反応を完了させた。エステル交換反応完了後、ポリエステルのヒドロキシル価を測定した。最終OHVは27mg KOH/gであり、GPCのMnは1763およびMwは5038、Tg(DSC)は63℃であった。
【0104】
ウレタンアクリラートアクセプタ樹脂UA-1の調製
IPDI、ヒドロキシプロピルアクリラート、グリセロールに基づくウレタン-アクリラートを、例えば欧州特許第0585742号明細書に記載されているように、適切な重合防止剤を添加して調製する。温度計、攪拌機、投入漏斗およびガスバブリング入口を備えた5リットル反応器に、1020部のIPDI、1.30部のDBTLおよび4.00部のヒドロキノンを仕込む。次いで、温度が50℃を超えるまで上昇するのを避けて、585部のヒドロキシプロピルアクリラートを投入する。添加が完了したら、154部のグリセリンを添加する。発熱反応が収まってから15分後、反応生成物を金属トレイ上にキャストする。得られたウレタンアクリラートは、GPCの744のMnおよび1467のMw、51℃のTg(DSC)、0.1%未満の残留イソシアナート含有量、ならびに392g/molの理論的不飽和EQWを特徴とする。
【0105】
カルボキシレート末端遅延剤樹脂T-1の調製
4つ口蓋、金属アンカー撹拌機、Pt-100、上部温度計を備えた充填カラム、凝縮器、留出物収集容器、熱電対およびN2入口を備えた5リットルの丸底反応器に、1180gのNPGおよび2000gのIPAを投入した。反応器の温度を230℃まで上げ、反応混合物が透明になるまで連続的に撹拌しながら窒素下で重合を進行させた。得られた最終生成物は、48mg KOH/gのAVおよび55℃のTg(DSC)を有する。
【0106】
触媒前駆体P-1の調製
触媒前駆体を調製するために、カルボキシレート末端ポリエステル樹脂(AV 48)を融解し、Leistritz ZSE 18二軸スクリュー押出機を使用して重炭酸テトラエチルアンモニウムTEAHCO3(41%)の水溶液と混合した。押出機は、入口から出口まで以下の温度プロファイル、30-50-80-120-120-120-120-100-100(℃単位)を維持するように設定された9つの連続する加熱ゾーンを収容するバレルを含んだ。固体ポリエステル樹脂を第1のゾーンを通して2kg/時間の速度で添加し、液体TEAHCO3を第2のゾーンを通して0.60kg/時間で注入した。混合をゾーン4~7の間で行い、スクリューを200rpmで回転するように設定した。酸塩基中和から発生した揮発性物質および水を、ゾーン7で真空を用いて除去した。ダイを放置した後、押し出されたストランドを直ちに冷却し、回収した。得られた最終生成物は、11mg KOH/gのAV、33KOH/gのアミン価および48℃のTg(DSC)を有する。
【0107】
(半)結晶性材料の調製
(半)結晶性ウレタンアクリラート樹脂CUA-1の調製
504.6gのHDI、1gのDBTLおよび5gのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を2リットルの丸底反応器に投入し、乾燥空気下で50℃に加熱した。次いで、288.3gのヒドロキシブチルアシラートおよび212.2gのDEGの混合物を反応器に滴下して反応を開始させ、処理温度を120℃未満に維持した。得られた(半)結晶性ウレタンアクリラート生成物は、それぞれ106℃および113℃の最大および終了DSC融解温度を有する。理論的不飽和EQW=506g/mol。
【0108】
本発明による(半)結晶性酸遅延剤および対応する触媒前駆体の調製
CT-1&CP-1
379.3gのDEGおよび1gのDBTLを2リットルの丸底反応器に投入し、50℃に加熱した。次いで、497.9のHDIを反応器に滴下して窒素保護下で反応を開始させ、処理温度を120℃未満に維持した。その後、122.8gの無水コハク酸を反応器に投入した。所望の酸価が達成されるまで、反応を120℃で進める。得られた最終生成物CT-1は、69mg KOH/gのAV、-5℃のTg(DSC)、それぞれ115℃および125℃の最大および終了DSC融解温度を有する。
【0109】
対応する触媒前駆体CP-1を調製するために、1790gのCR-1を反応器に投入し、125℃まで加熱することによって融解させた。次いで、842.5gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)水溶液(35%)を反応器にゆっくりと添加し、撹拌を続けながら融解結晶性酸樹脂と混合した。酸塩基中和から発生した揮発性物質および水を、真空を用いて除去した。得られた最終生成物CP-1は、36mg KOH/gのAV、44mg KOH/gのアミン価、-5℃のTg(DSC)、それぞれ110℃および120℃の最大および終了DSC融解温度を有する。
【0110】
CT-2&CP-2
324.3gのDEGおよび1gのDBTLを2リットルの丸底反応器に投入し、50℃に加熱した。次いで、401.2のヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)を反応器に滴下して窒素保護下で反応を開始させ、処理温度を120℃未満に維持した。その後、136.8gのヒドロキシピバル酸を反応器に投入し、完全な均質化が達成されるまで反応を120℃で進行させた。最後に、別の部分の166.3gのHDIを反応器に30分間にわたってゆっくり投入した。得られた最終生成物CT-2は、64mgKOH/gのAV、10℃のTg(DSC)、それぞれ120℃および128℃の最大および終了DSC融解温度を有する。
【0111】
対応する触媒前駆体CP-2を調製するために、700gのCR-1をレクター(rector)に投入し、125℃に加熱することによって融解させた。次いで、169.7gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)水溶液(35%)を反応器にゆっくりと添加し、撹拌を続けながら融解結晶性酸樹脂と混合した。酸塩基中和から発生した揮発性物質および水を、真空を用いて除去した。得られた最終生成物CP-2は、23mgKOH/gのAV、29mgKOH/gのアミン価、10℃のTg(DSC)、それぞれ121℃および128℃の最大および終了DSC融解温度を有する。
【0112】
CT-3
41.68gのヒドロキシビパル酸および100.5gの3-メチル-1,5-ペンタンジオールを2リットルの丸底反応器に投入した。混合物を混合し、60℃に加熱した。次いで、172.8gのHDIを反応器に滴下して窒素保護下で反応を開始させた。全てのイソシアナート基が反応するまで、反応を約110℃で進行させた。得られた最終生成物CT-3は、63mgKOH/gのAV、9℃のTg(DSC)、それぞれ88℃および99℃の最大および終了DSC融解温度を有する。
【0113】
CT-4
324.3gのDEG、136.8gのヒドロキシピバル酸および1gのDBTLを2リットルの丸底反応器に投入し、50℃に加熱した。次いで、401.2のヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)を反応器に滴下して窒素保護下で反応を開始させ、全てのイソシアナート基が反応するまで、処理温度を120℃未満に維持した。得られた最終生成物CT-4は、64mgの理論的AV、それぞれ116℃および122℃の最大および終了DSC融解温度を有する。
【0114】
CP-5
(半)結晶性触媒前駆体CP-5を2段階経路によって調製した。第1の工程において、0.029gのDBTL、32.3gの乳酸エチル、および75.5gのDEGを反応容器に投入した。HDIの供給を開始したとき、反応混合物を60℃にした。総量142.2gのHDIを滴下で供給し、温度を1時間かけて110℃までゆっくりと上昇させた。反応の終了に向けて、いくらかの結晶化が目視可能となったとき、追加の熱を加えて温度を120℃に上昇させた。次いで、HDIの添加が完了した後、反応を120℃で20分間進行させた。この生成物の理論的Mnは1800であり、エステルのEQWは900g/molであると予想される。DSC分析は、それぞれ133℃および140℃の最大および最終の融解温度を示した。第2の工程では、第1の工程で得られた127.9gの生成物を、撹拌機、温度計、滴下漏斗および蒸留装置を備えた反応器に投入した。結晶性ポリウレタンを135℃の温度まで慎重に融解した。次いで、44gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)水溶液(35%)を反応器にゆっくりと添加し、撹拌を続けながら融解結晶性酸樹脂と混合した。反応塊に対するいくらかのN2流で補助しながら、揮発性物質(水およびエタノール)を除去した。供給および蒸留工程は約1時間かかり、その間、温度を125~135℃に維持した。得られた最終生成物CP-5は、24mgKOH/gのアミン価、それぞれ109℃および123℃の最大および終了DSC融解温度を有する。
【0115】
CP-6
反応容器に、6mgのDBTL、14.3gのDEGおよび6.87gのジメチルエタノールアミンの混合物を充填し、60℃に加熱した。この時点で、HDI(全量29.1g)を供給して開始した。反応塊を、供給の過程にわたって、50分間にわたって105℃までゆっくりと温度を上昇させた。供給工程の終了時に、結晶化現象が目視可能となったとき、追加の熱を加えて温度を120℃に上昇させた。供給が完了した後、さらに20分間加熱を続けた。得られた最終生成物CP-6は、1300のt理論的(ttheoretical)予想Mn、650g/molのアミンEQW、それぞれ110℃および117℃の最大および終了DSC融解温度を有する。
【0116】
粉末コーティング組成物の調製
粉末コーティング組成物を調製するために、最初に、原料を高速Thermoprism Pilot Mixer 3プレミキサー内で1500rpmで20秒間予備混合して、その後Baker Perkins(以前はAPV)MP19 25:1 L D二軸押出機で押し出した。押出機速度は250rpmであり、4つの押出機バレルゾーン温度は、非晶質樹脂を押し出すために15、25、100および100℃、または(半)結晶性樹脂を押し出すために15、25、120および100℃に設定した。押出後、Retsch GRINDOMIX GM 200ナイフミルを使用して押出物を粉砕した。粉砕した押出物を、Russel Finex 100ミクロンメッシュDemi Finex実験室振動ふるいを使用して100μm未満にふるい分けした。
【0117】
結果
PW1(比較)およびPW2-PW5(本発明)は、表2に列挙されるように、1.5:1の反応性アクリロイル/C-H2比、50meqの触媒前駆体、50meqの酸遅延剤および200meqの活性化剤を有するように化学量論で配合された粉末コーティングの例である。全ての塗料を、アルミニウムおよびスチールパネルに80~100μmの膜厚で噴霧し、120℃で22分間硬化させた。塗料の分析および塗布結果を表3に要約する。
【0118】
【0119】
PW1は、非晶質成分のみで調製された比較用基準塗料である。塗料は56℃のTgを有し、良好な耐溶剤性によって証明されるように、120℃で22分後に十分に硬化することができる。しかしながら、これは、アルミニウムおよび鋼基材の両方に対する接着性および耐衝撃性が全くない。
【0120】
非晶質触媒前駆体P-1を(半)結晶性のCP-1に置換してPW2を調製した。塗料Tgに対する(半)結晶性材料の影響は無視でき、1℃についての塗料Tgの減少をDSC分析によって決定した。これは、大半の(半)結晶性触媒前駆体が押出後に塗料中で再結晶化したという強力な証拠である。PW2塗料のDSCスキャン(
図1)は、CP-1と同じ融解範囲で融解ピークを示す(融解によるデルタH=0.24J/g)。これはまた、大半の(半)結晶性触媒前駆体が塗料の非晶質マトリックス内に結晶の形態であることを示唆している。硬化速度は、良好な耐溶剤性を達成することができるため、非晶質触媒に匹敵する。(半)結晶性前駆体CP-1は、金属基材上のコーティングの接着性を有意に改善し、完全な接着性が得られた。加えて、膜の機械的特性は、耐衝撃性の点で若干改善している。これはおそらく、硬化膜Tgが2℃低下した証拠として、CP-1が硬化膜を可塑化したためである。
【0121】
PW3を、(半)結晶性酸遅延剤CT-1および前駆体CP-1の両方と共に配合した。押出後に塗料中で再結晶化したと考えられる大半の(半)結晶性成分として、塗料は依然として比較的高いTgを有する。これは、デルタHが0.31J/gに増加することによって証明される。塗布結果は、良好な耐溶剤性を示す。PW1と比較して、接着性および耐衝撃性も改善されている。
【表3】
【0122】
代替的な(半)結晶性触媒前駆体CP-2を用いてPW4を調製した。CP-2はCP-1と同じ骨格を有するが、末端カルボキシラートはヒドロキシル酸とイソシアナート基とを反応させることによって調製した。塗料は、配合物中の(半)結晶性の量が多いため、Tgがわずかに低い。大半のCP-2は押出後に塗料中で再結晶化し、デルタHは0.46J/gに増加したと依然として考えられている。完全な非晶質配合物PW1と比較して、塗布結果はまた、接着性および耐衝撃性に対する利点を示した。
【0123】
PW5は、(半)結晶性ウレタンアクリラートアクセプタCUA-1およびCP-2を用いて調製した。PW4と比較して、(半)結晶性アクセプタをさらに添加しても塗料のTgは低下しなかった。CUA-1およびCP-2は、類似の骨格構造を有するため、塗料中で一緒に再結晶することができると考えられる。PW5のDSCスキャン(
図2)は、塗料の非晶質マトリックス中の結晶の存在を明確に実証しており、融解ピークはCUA-1およびCP-2の融解範囲とよく一致している。
【国際調査報告】