(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】電池カソード
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240705BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20240705BHJP
H01M 4/137 20100101ALI20240705BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240705BHJP
H01M 4/60 20060101ALI20240705BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240705BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240705BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/136
H01M4/137
H01M4/38 Z
H01M4/60
H01M4/48
H01M4/66 A
H01M4/64 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580452
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 US2022035424
(87)【国際公開番号】W WO2023278506
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521552350
【氏名又は名称】コナミックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バークハート, スティーブン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017CC01
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE06
5H017EE07
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA11
5H050CA20
5H050CA26
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB12
5H050DA02
5H050FA02
5H050FA08
5H050FA09
5H050HA09
5H050HA12
5H050HA19
(57)【要約】
本願は、集電体と、変換活物質を含む少なくとも1つの第1の活物質層と、リチウムイオンインターカレーション活物質を含む少なくとも1つの第2の活物質層とを含む新規なカソードを有するリチウム電池に関する。本開示はまた、集電体と、変換活物質を含む少なくとも1つの第1の活物質層と、リチウムイオンインターカレーション活物質を含む少なくとも1つの第2の活物質層とを含むリチウム-硫黄電池の作製及び/または性能向上の方法であって、第2の活物質層が集電体と第1の活物質層との間に位置する方法を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム電池用のカソードであって、前記カソードが、
変換活物質を含む第1の活物質層の少なくとも1つ、
リチウムイオンインターカレーション活物質を含む第2の活物質層の少なくとも1つ、
を含む、前記カソード。
【請求項2】
前記カソードが、
集電体、
変換活物質を含む第1の活物質層、及び
リチウムイオンインターカレーション活物質を含む第2の活物質層、を含み、
前記第2の活物質層は、前記集電体と前記第1の活物質層との間に位置する、請求項1に記載のカソード。
【請求項3】
前記変換活物質が電気活性硫黄組成物を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項4】
前記電気活性硫黄組成物が、硫黄元素、硫化リチウム、ポリスルフィド化リチウム、ポリチオネート、硫黄含有有機分子、硫黄含有ポリマー、硫黄含有炭素組成物、及びこれらの任意の2つ以上の組み合わせから選択される、先行請求項のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項5】
前記変換活物質の放電電圧範囲と前記リチウムイオンインターカレーション活物質の放電電圧範囲とが実質的に重なる、先行請求項のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項6】
前記リチウムイオンインターカレーション活物質が、前記変換活物質よりも高い平均放電電圧を示す、先行請求項のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項7】
前記リチウムイオンインターカレーション活物質が、前記変換活物質よりも低い平均放電電圧を示す、先行請求項のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項8】
前記変換活物質及び前記リチウムイオンインターカレーション活物質の両方が、1.8~2.8Vの範囲の放電電圧を有する、先行請求項のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項9】
前記変換活物質の理論上の総計放電容量が、前記リチウムイオンインターカレーション活物質の前記放電容量の2倍~5倍の間である、先行請求項のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項10】
前記リチウムイオンインターカレーション活物質が、金属酸化物、金属硫化物、金属リン酸塩、金属セレン化物、及びこれらの任意の2つ以上の混合物から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項11】
前記リチウムイオンインターカレーション活物質が、金属硫化物を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項12】
前記金属硫化物が、硫化バナジウム、硫化モリブデン、及び硫化チタンから選択される、先行請求項のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項13】
前記金属硫化物が、VS
2、MoS
2、Mo
6S
8、及びTiS
2から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項14】
前記金属硫化物がTiS
2を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項15】
前記第1及び第2の活物質層の両方が多孔質である、先行請求項のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項16】
前記第2の活物質層は、前記第1の活物質層よりも低い多孔度を有する、先行請求項のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項17】
前記第1の活性層に多孔度勾配があり、前記第1の活性層は、前記第2の活性層との界面に向かってより低い多孔度を有する、先行請求項のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項18】
前記集電体と前記第2の活物質層との間に導電性カーボンコーティングをさらに含む、請求項1に記載のカソード。
【請求項19】
前記集電体が、金属箔、金属化ポリマーフィルム、及び炭素組成物からなる群から選択される成分を含む、請求項2~18のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項20】
リチウム電池用のカソードであって、前記カソードが3層以上の活物質層を備え、
前記活物質層は2つの異なる型のものであり、
第1の型は変換活物質を含み、
第2の型は、リチウムイオンインターカレーション活物質を含み、
前記2つの型の活物質層は、前記カソード構造内部で交互の層に配置される、
前記カソード。
【請求項21】
前記カソードが集電体をさらに含み、前記集電体に最も近い前記活物質層がリチウムイオンインターカレーション活物質を含む、請求項20に記載のカソード。
【請求項22】
前記カソードが、3~12の間、3~6の間、4~8の間、または6~12の間の活物質層を含む、請求項20または21に記載のカソード。
【請求項23】
前記変換活物質が電気活性硫黄組成物を含む、請求項20~22のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項24】
前記電気活性硫黄組成物が、硫黄元素、硫化リチウム、ポリスルフィド化リチウム、ポリチオネート、硫黄含有有機分子、硫黄含有ポリマー、硫黄含有炭素組成物、及びこれらの任意の2つ以上の組み合わせから選択される、請求項20~23のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項25】
前記変換活物質の放電電圧範囲と前記リチウムイオンインターカレーション活物質の放電電圧範囲とが実質的に重なる、請求項20~24のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項26】
前記リチウムイオンインターカレーション活物質が、前記変換活物質よりも高い平均放電電圧を示す、請求項20~25のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項27】
前記リチウムイオンインターカレーション活物質が、前記変換活物質よりも低い平均放電電圧を示す、請求項20~26のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項28】
前記変換活物質及び前記リチウムイオンインターカレーション活物質の両方が、1.8~2.8Vの範囲の放電電圧を有する、請求項20~27のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項29】
前記変換活物質の理論上の総計放電容量が、前記リチウムイオンインターカレーション活物質の前記放電容量の2倍~5倍の間である、請求項20~28のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項30】
前記リチウムイオンインターカレーション活物質が、金属酸化物、金属硫化物、金属リン酸塩、金属セレン化物、及びこれらの任意の2つ以上の混合物から選択される、請求項20~29のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項31】
前記リチウムイオンインターカレーション活物質が、金属硫化物を含む、請求項20~30のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項32】
前記金属硫化物が、硫化バナジウム、硫化モリブデン、及び硫化チタンから選択される、請求項20~31のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項33】
前記金属硫化物が、VS
2、MoS
2、Mo
6S
8、及びTiS
2から選択される、請求項20~32のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項34】
前記金属硫化物がTiS
2を含む、請求項20~33のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項35】
前記2つの型の活物質層の両方が多孔質である、請求項20~34のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項36】
前記第2の型の活物質層は、前記第1の型の活物質層よりも低い多孔度を有する、請求項20~35のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項37】
前記第1の型の活物質層に多孔度勾配があり、前記第1の型の活物質層は、前記第2の型の活物質層との界面に向かってより低い多孔度を有する、請求項20~36のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項38】
前記集電体と前記第2の型の活物質層との間に導電性カーボンコーティングをさらに含む、請求項20に記載のカソード。
【請求項39】
前記集電体が、金属箔、金属化ポリマーフィルム、及び炭素組成物からなる群から選択される成分を含む、請求項21~38のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項40】
先行請求項のいずれか1項に記載のカソードを含むリチウム電池。
【請求項41】
先行請求項のいずれか1項に記載のカソードを含むリチウム電池を作製する方法。
【請求項42】
先行請求項のいずれか1項に記載のカソードを使用するリチウム電池の性能を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年6月30日に出願された米国特許仮出願第63/217,169号の利益を主張するものであり、その開示は、全体において参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本願は、二次電池または他のエネルギー貯蔵デバイスに使用するためのカソード、及びそれを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
次世代の再充電可能な電池の商業的開発における主な目的は、従来技術のリチウムイオン電池の状態よりも高いエネルギー密度及び低いコストの電池を提供することである。この目標に対する最も有望なアプローチの1つは、リチウム金属アノードと結合した硫黄カソードを使用することである。硫黄は、安価で、豊富で、かつ現在のリチウムイオンセルで使用されている従来の金属酸化物ベースのインターカレーションカソードより1桁高い理論的なエネルギー容量をもたらす。同様に、金属リチウムベースのアノードは、現在のリチウムイオンセルで使用されているリチウムグラファイトアノードより実質的に高いエネルギー密度を有する。しかしながら、実際的なリチウム-硫黄電池の製造は、実現困難な目標であった。硫黄カソードを台無しにする多くの難題の中でも、より深刻なものの1つは、動作中に電池内部の硫黄を再分布させることであり、可溶性多硫化物がアノードに向かって、またそれから移動するようにさせる多硫化物シャトル、さらには、電気化学的にアクセスできなくなるまたは他の問題が生じる場所で、硫黄、Li2S、及びLi2S2などの不溶性種が、不適当に沈殿すること、という周知の現象が存在している。
【0004】
高い重量エネルギー密度を示し、同時に、電気自動車などの重要な用途で機能するのに充分である放電速度及びサイクル寿命容量を供給することができる実用的な硫黄電池の製造を可能にするために、これらの問題に対処する必要性が残っている。本開示は、これらの課題、及び関連する難題に対処する。
【発明の概要】
【0005】
特に、本開示は、少なくとも1つの層が変換活物質を含み、少なくとも1つの層がリチウムイオンインターカレーション活物質を含む少なくとも2つの活物質層を含むリチウム電池のカソードを提供する。一部の実施形態では、提供されるカソードは、リチウム-硫黄電池のためのものであり、集電体と、変換活物質を含む少なくとも1つの第1の活物質層と、リチウムイオンインターカレーション活物質を含む少なくとも1つの第2の活物質層とを含み、第2の活物質層は、集電体と第1の活物質層との間に位置する。一部の実施形態では、提供されるカソードは、リチウムイオンインターカレーション活物質のインターカレーション/デインターカレーション電位(または放電電圧)が変換活物質の電位と重なることを特徴とする。一部の実施形態では、変換活物質は、電気活性硫黄を含む。特定の実施形態では、提供されるカソードを使用するリチウム-硫黄電池は、改善された性能(例えば、サイクル寿命、エネルギー密度、または活物質の利用)を有する。
【0006】
本開示はまた、集電体と、変換活物質を含む少なくとも1つの第1の活物質層と、リチウムイオンインターカレーション活物質を含む少なくとも1つの第2の活物質層とを含むリチウム-硫黄電池の作製及び/または性能向上の方法であって、第2の活物質層が集電体と第1の活物質層との間に位置する方法を対象とする。
【0007】
定義
本開示をより容易に理解するべく、特定の用語を最初に以下に定義する。以下の用語及び他の用語の追加の定義は、本明細書全体に記載される。
【0008】
本願において、文脈から他であると明らかでない限り、「1つの(a)」という用語は、「少なくとも1つ」を意味すると理解され得る。本願で使用される場合、「または」という用語は、「及び/または」を意味すると理解され得る。本願において、「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語は、それ自体によって提示されるか、または1つ以上の追加の構成要素またはステップと一緒に提示されるかに関わらず、項目別の構成要素またはステップを包含すると理解され得る。本願で使用される場合、「含む(comprise)」という用語及び「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」などの用語の変形は、他の添加剤、成分、整数またはステップを除外することを意図してはいない。
【0009】
約、およそ:本願で使用される場合、「約」及び「およそ」という用語は、等価のものとして使用される。別段の記載がない限り、「約」及び「およそ」という用語は、当業者によって理解されるように、標準的なばらつきを許容することを理解することができる。数字の範囲が提供されている場合、端点が含まれる。およそ/約を伴ってまたは伴わずに本願で用いられているいずれかの数字は、当業者であれば理解する任意の正常なばらつきを包含することが意図されている。一部の実施形態では、用語「およそ」または「約」は、特に明記しない限りまたは文脈から特に明らかでない限り、提示した基準値の両方向(よりも大きいかまたはよりも小さい)において、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下に含まれる値の範囲を指す(このような数が、可能な値の100%を超える場合を除く)。
【0010】
電気活性硫黄:本明細書で使用される場合、「電気活性硫黄」という用語は、電気化学反応の電荷移動ステップにおいて、その酸化状態を変化させることができる1つ以上の硫黄原子を含む硫黄含有組成物を指す。
【0011】
ポリマー:本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、一般に、プラスチックや樹脂として用いられる合成有機材料など、共に結合した繰り返されるサブユニットから主にまたは全体になる分子構造を有する物質を示す。
【0012】
実質的に:本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、目的の特徴または特性の完全または完全に近い程度または度合いを呈示する定量的状態を指す。
【0013】
図面において、同様の参照符号は、異なる図面に亘り同じ部分を一般的に指す。また、図面は必ずしも原寸に比例しておらず、むしろ一般に、開示されている組成物及び方法の原理を説明することが強調され、限定するものとして意図されてはいない。明確にするために、あらゆる構成要素があらゆる図面でラベル付けされているとは限らない。以下の説明では、以下の図面を参照しながら様々な実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の1つ以上の実施形態による電気化学セルの断面を絵で表したものである。
【0015】
【
図2】本開示の1つ以上の実施形態による電気化学セルの断面を絵で表したものである。
【0016】
【
図3】本開示の概念を具体化する円筒形電池を絵で表したものである。
【0017】
【
図4】本開示の1つ以上の実施形態によるコインセル組立体を絵で表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一部の実施形態では、本開示は、リチウム-硫黄電池に使用するための新規なカソード、及びそのようなデバイスを製造し、使用するための関連する方法を対象とする。一部の実施形態では、本開示は、そのようなリチウム-硫黄電池を提供し、カソードは、少なくとも1つの変換活物質と少なくとも1つのリチウムイオンインターカレーション活物質との活物質層を含む。このような活物質層は、より高い電流密度及び改善されたサイクル寿命において、改善された電気化学サイクル特性をもたらす。
【0019】
本開示は、リチウム-硫黄電池のカソードにおける望ましくない硫黄析出物の蓄積が、「カソード・シャットダウン」、すなわち、セルの抵抗の増加、セルの電圧の低下及び/またはセルの速度能力に対する限界をもたらし得るという認識を包含する。そのような析出物は、例えば、カソードの細孔構造内及び/またはカソードの表面で生じ得る。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、出願人は、カソード/セパレータ界面における高濃度の硫化物のために、カソード・シャットダウンが起こる可能性を提唱する。このような高濃度の硫化物は、例えば、可溶性の硫化物がカソードに向かって移動すること、及び/または充電時の往復間にセルのアノード側から戻る際にカソード/セパレータ界面で急速に酸化される多硫化物に起因し得る。したがって、本発明は、一部の実施形態において、先行して未知であった問題の原因の識別を提供する。
【0020】
リチウム-電池セルにおいて、硫化物は、移動と拡散の両方に起因して移動する。電界が生成され、それによって、アノードで高濃度のリチウムイオンが、カソードで高濃度の硫化物が同時に生成され得るので、移動が起こり得る。高濃度の可溶性硫化物がカソードで生成され、濃度勾配を作り出すため、拡散が起こり得る。本開示は、より最適な動力学及びサイクル寿命のためにカソードホストにおいて均一な濃度の多硫化物を有することが所望され得るという認識を包含する。
【0021】
本開示によって提供されるカソードは、カソード集電体に近接する高濃度の陽イオンに起因して、硫化物がカソード集電体に向かって戻るように移動し得る条件を促進する。これは、一部の実施形態において、集電体をリチウムイオンインターカレーション化合物(例えば、リチウムイオンインターカレーション活物質)でコーティングすることによって達成され得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、リチウムイオンインターカレーション活物質は、電池の充電の際に、デインターカレーションし、リチウムイオンをカソードに放出することができ、その結果、局所的な濃度の陽イオンが生じ、その後、陰イオン(例えば、硫化物)が集電体に向かって移動して戻る。本願人は、追加の充電により、硫化物を硫黄に再度酸化することができ、セルのリチウム濃度を再度平衡化することができることを提唱する。本開示によって記載されているように、カソードに追加のリチウム陽イオンの供給源を設けることは、リチウムの濃度を平衡化し、したがって、電池セル内部の陰イオンの濃度勾配の発生を相殺する。したがって、この新規なアプローチは、カソード内部に多硫化物を保持し、シャットダウンが生じ得るカソード表面における制御されない硫黄析出物の蓄積を回避または最小化するように設計される。
【0022】
特定の実施形態において、適切なリチウムイオン活物質は、変換活物質の放電電圧範囲と重複するインターカレーション/デインターカレーション電位(または放電電圧)を示す。例えば、硫黄が変換材料である場合、インターカレーション/デインターカレーション材料の電圧窓は、硫黄-リチウム硫化物の相互変換が起こる電位と重なる。一部の実施形態では、リチウムイオンインターカレーション化合物の混合物は、リチウムイオンインターカレーション化合物の混合物のインターカレーション電位(複数可)(または放電電圧(複数可))と、変換活物質のインターカレーション電位との重なりを最大化するのに有用であり得る。
【0023】
図1は、本開示の例示的な実施形態による電気化学セル800の断面を例示する。電気化学セル800は、負電極802、正電極804、負電極802と正電極804との間に介在するセパレータ806、容器810、及び負電極802と正電極804と接触する流体電解質812をそれぞれ含む。そのようなセルは、任意選択で、追加の電極及びセパレータ層802a、802b、804a、804b、806a及び806bを含む。
図2は、負電極802、正電極804、及び負電極802と正電極804との間に挿入されたセパレータ806を示す代表的なセルスタックを通る断面の別の図を示し、
図2は、電極804を含む層も示す。具体的には、層は、集電体804-1、リチウムインターカレーション活物質を含むカソード層804-2、及び変換活物質を含むカソード層804-3を含む。図示のように、リチウムインターカレーション活物質804-2は、集電体804-1とカソード層804-3との間に挿入される。
【0024】
負電極802(本明細書では時としてアノードとも呼ぶ)は、陽イオンを受容することができる負電極活物質を含む。リチウムベースの電気化学セル用の負電極活物質の非限定的な例としては、Li金属、Si、Sn、Bi、In、及び/またはAl合金などのLi合金、Li4Ti5O12、硬質炭素、黒鉛状炭素、金属カルコゲニド、及び/または非晶質炭素が挙げられる。本開示の一部の実施形態によれば、アノード活物質のうちのほとんど(例えば、90重量%超)は、電気化学セル800が最初に作製されたとき、当初は放電された正電極804(本明細書では、時としてカソードとも呼ばれる)に含まれ得、これにより電極活物質は、電気化学セル800の最初の充電の間に第1の電極802の一部を形成する。
【0025】
電気活物質を負電極802の一部分に堆積させるための技法は、米国特許出願公開第2016/0172660号、及び同様に米国特許出願公開第2016/0172661号に記載され、これらの各々の内容は、こうした内容が本開示と矛盾しない範囲で、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
負電極802及び正電極804は、本明細書に、1つ以上の導電性添加物をさらに含むことができる。本開示の一部の実施形態によると、負電極802及び/または正電極804は、後述のように、1つ以上のポリマー結合剤をさらに含む。
【0027】
図3は、後述する種々の実施形態による電池の例を示す。円筒形電池が、例示の目的でここに示されているが、角形電池またはポーチ(ラミネートタイプ)電池を含む他のタイプの配置も、所望により使用されてもよい。Li電池901の例は、負のアノード902、正のカソード904、アノード902とカソード904との間に挿入されたセパレータ906、セパレータ906を含浸させた電解質(図示せず)、電池ケース905、及び電池ケース905を封止する封止部材908を含む。当然のことながら、例示的な電池901は、様々な設計において、本開示の複数の態様を同時に具現化してもよい。
【0028】
一部の実施形態では、本開示のリチウム-硫黄電池は、リチウムアノード、硫黄ベースのカソード、及びアノードとカソードとの間のイオン輸送を可能にする電解質を含む。本明細書に記載される特定の実施形態では、電池のアノード部分は、アノードと、それが接触する電解質の一部とを含む。同様に、本明細書に記載される特定の実施形態では、電池のカソード部分は、カソードと、それが接触する電解質の一部とを含む。特定の実施形態では、電池は、アノード部分とカソード部分との間の境界を画定するリチウムイオン浸透性セパレータを含む。特定の実施形態では、電池は、アノード部分カソード部分の両方を封入するケースを備える。特定の実施形態では、電池ケースは、アノードと電気的に連通する導電性アノード端部カバーと、カソードと電気的に連通する導電性カソード端部カバーとを備え、外部回路を介した充電及び放電を容易にする。
【0029】
A.カソード
本明細書に記載のカソードは、多層構造を有し、少なくとも1つの第1の活物質層と、少なくとも1つの第2の活物質層とを含む。特定の実施形態では、第1の活物質層は、変換活物質を含む。特定の実施形態では、第2の活物質層は、リチウムイオンインターカレーション活物質を含む。一部の実施形態では、提供されるカソードは、変換活物質を含む第1の活物質層の少なくとも1つと、リチウムイオンインターカレーション活物質を含む第2の活物質層の少なくとも1つとを含む。
【0030】
特定の実施形態において、提供されるカソードは、集電体を含む。一部の実施形態では、提供されるカソードは、集電体、変換活物質を含む少なくとも1つの第1の活物質層、及びリチウムイオンインターカレーション活物質を含む少なくとも1つの第2の活物質層を含む。特定の実施形態では、リチウムイオンインターカレーション活物質を含む第2の活物質層は、集電体と、変換活物質を含む第1の活物質層との間に配置される。
【0031】
特定の実施形態において、集電体は、金属箔、金属化ポリマーフィルム、及び炭素組成物から選択される成分を含む。一部の実施形態では、集電体は、アルミ箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ジルコニウム箔、モリブデン箔、ニッケル発泡体、銅発泡体、カーボン紙もしくは繊維シート、導電性金属でコーティングされたポリマー基材、及び/またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、集電体は、金属箔を含む。特定の実施形態では、集電体は、金属化ポリマーフィルムを含む。特定の実施形態では、集電体は、炭素組成物を含む。特定の実施形態では、カソードは、集電体と、リチウムイオンインターカレーション活物質を含む第2の活性層との間に、導電性カーボンコーティングを含む。
【0032】
特定の実施形態では、変換活物質を含む第1の活物質層及びリチウムイオンインターカレーション活物質を含む第2の活物質層の両方が多孔質である。特定の実施形態では、変換活物質を含む第1の活物質層は、多孔質である。特定の実施形態では、リチウムイオンインターカレーション活物質を含む第2の活物質層は、多孔質である。特定の実施形態において、リチウムイオンインターカレーション活物質を含む第2の活物質層は、変換活物質を含む第1の活物質層よりも低い多孔度を示す。特定の実施形態において、リチウムイオンインターカレーション活物質を含む第2の活物質層は、変換活物質を含む第1の活物質層と同じ多孔度を示す。特定の実施形態において、リチウムイオンインターカレーション活物質を含む第2の活物質層は、変換活物質を含む第1の活物質層よりも高い多孔度を示す。
【0033】
特定の実施形態では、変換活物質を含む第1の活物質層は、多孔度勾配を含む。特定の実施形態において、変換活物質を含む第1の活性層は、変換活物質を含む第1の活物質層とリチウムイオンインターカレーション活物質を含む第2の活物質層との界面に向かってより低い多孔度を含む。
【0034】
特定の実施形態において、変換活物質の放電電圧範囲とリチウムイオンインターカレーション活物質の放電電圧範囲とは、実質的に重なる。特定の実施形態において、リチウムイオンインターカレーション活物質の放電電圧範囲は、変換活物質の放電電圧範囲よりも高い。特定の実施形態において、リチウムイオンインターカレーション活物質の放電電圧範囲は、変換活物質の放電電圧範囲に等しい。特定の実施形態において、リチウムイオンインターカレーション活物質の放電電圧範囲は、変換活物質の放電電圧範囲よりも低い。
【0035】
特定の実施形態では、リチウムイオンインターカレーション活物質は、約1~約3ボルトの放電電圧(または電位)範囲を含む。特定の実施形態では、リチウムイオンインターカレーション活物質は、約1.5~約2.8ボルトの放電電圧範囲を含む。特定の実施形態では、リチウムイオンインターカレーション活物質は、約1.8~約2.8ボルトの放電電圧範囲を含む。特定の実施形態では、リチウムイオンインターカレーション活物質は、約2~約2.5ボルトの放電電圧範囲を含む。特定の実施形態では、リチウムイオンインターカレーション活物質は、約2~約2.2ボルトの放電電圧範囲を含む。特定の実施形態では、リチウムイオンインターカレーション活物質は、約2、2.1、または2.2ボルトの放電電圧を含む。
【0036】
特定の実施形態では、変換活物質は、約1~約3ボルトの放電電圧(または電位)範囲を含む。特定の実施形態では、変換活物質は、約1.5~約2.8ボルトの放電電圧範囲を含む。特定の実施形態では、変換活物質は、約1.8~約2.8ボルトの放電電圧範囲を含む。特定の実施形態では、変換活物質は、約2~約2.5ボルトの放電電圧範囲を含む。特定の実施形態では、変換活物質は、約2~約2.2ボルトの放電電圧範囲を含む。特定の実施形態では、変換活物質は、約2、2.1、及び2.2ボルトの放電電圧を含む。
【0037】
特定の実施形態では、変換活物質は、リチウムイオンインターカレーション材料の放電容量よりも約2~約5倍大きい理論上の総計放電容量を含む。特定の実施形態において、変換活物質は、リチウムイオンインターカレーション活物質の放電容量よりも約2~約4倍大きい理論上の総計放電容量を含む。特定の実施形態において、変換活物質は、リチウムイオンインターカレーション活物質の放電容量よりも約3~約4倍大きい理論上の総計放電容量を含む。特定の実施形態において、変換活物質は、リチウムイオンインターカレーション活物質の放電容量よりも約2、3、4、及び5倍大きい理論上の総計放電容量を含む。
【0038】
特定の実施形態では、リチウムイオンインターカレーション活物質は、金属酸化物、金属硫化物、金属リン酸塩、金属セレン化物、混合物、及び/またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の成分を含む。特定の実施形態では、リチウムイオンインターカレーション活物質は、1つ以上の金属硫化物を含む。特定の実施形態では、リチウムイオンインターカレーション活物質は、金属硫化物を含む。特定の実施形態において、金属硫化物は、硫化バナジウム(例えば、VS2)、硫化モリブデン(例えば、MoS2及び/またはMo6S8)、及び硫化チタン(例えば、TiS2)からなる群から選択される。特定の実施形態では、金属硫化物は、VS2、MoS2、Mo6S8、及びTiS2からなる群から選択される。特定の実施形態において、金属硫化物は、TiS2である。特定の実施形態において、金属硫化物は、Mo6S8である。
【0039】
特定の実施形態において、提供されるカソードは、3つ以上の活物質層を含み、各活物質層は、変換活物質及びリチウムイオンインターカレーション活物質から選択される。特定の実施形態において、提供されるカソードは、3~12の活物質層を含む。特定の実施形態において、提供されるカソードは、4~12の活物質層を含む。特定の実施形態において、提供されるカソードは、4~8の活物質層を含む。特定の実施形態において、提供されるカソードは、4~6の活物質層を含む。特定の実施形態において、提供されるカソードは、3~6の活物質層を含む。特定の実施形態において、提供されるカソードは、6~12の活物質層を含む。特定の実施形態では、提供されるカソードは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の活物質層を含む。特定の実施形態において、提供されるカソードは、変換活物質とリチウムイオンインターカレーション活物質が交互にある層を含む。特定の実施形態では、集電体に最も近い活物質層は、リチウムインターカレーション活物質を含む。特定の実施形態では、リチウムイオンインターカレーション活物質は、集電体として機能することができ、例えば、2層の変換活物質の間に位置するリチウムイオンインターカレーション活物質を有する3層カソードであり、カソードタブが、カソードの側面に沿って溶接される。
【0040】
特定の実施形態において、リチウム-硫黄電池は、硫黄ベースのカソードを含む。特定の実施形態では、リチウム-硫黄電池のカソードは、正極活物質と導電性材料とを含む。特定の実施形態において、リチウム-硫黄電池のカソードは、正極活物質、導電性材料、及び結合剤を含む。特定の実施形態において、正極活物質は、電気活性硫黄である。特定の実施形態において、電気活性硫黄は、硫黄元素(S8)、硫黄系化合物、硫黄含有ポリマー、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態において、硫黄系化合物は、Li2Sn(n≧1)、有機-硫黄化合物、及び炭素-硫黄ポリマー((C2Sx)n、式中x=2.5~50及びn≧2)からなる群から選択される。特定の実施形態において、リチウム-硫黄電池における電気活性硫黄は、硫黄元素を含む。特定の実施形態において、リチウム-硫黄電池における電気活性硫黄は、硫黄含有ポリマーを含む。
【0041】
特定の実施形態では、導電性材料は、カソード内部の電子の移動を促進する導電性材料を含む。例えば、特定の実施形態では、導電性材料は、炭素系材料、黒鉛系材料、導電性ポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、導電性材料は、炭素系材料を含む。特定の実施形態では、導電性材料は、炭素系材料の材料を含む。例えば、特定の実施形態では、導電性材料が、導電性炭素粉末、例えばカーボンブラック、Super P(登録商標)、C-NERGY(商標)SuperC65、Ensaco(登録商標)ブラック、Ketjenblack(登録商標)、アセチレンブラック、合成グラファイト、例えばTimrex(登録商標)SFG-6、Timrex(登録商標)SFG-15、Timrex(登録商標)SFG-44、Timrex(登録商標)KS-6、Timrex(登録商標)KS-15、Timrex(登録商標)KS-44、天然鱗片状黒鉛、グラフェン、グラフェンオキシド、カーボンナノチューブ、フラーレン、ハードカーボン、メソカーボンマイクロビーズなどからなる群から選択される。特定の実施形態では、導電性材料は、1つ以上の導電性ポリマーを含む。例えば、特定の実施形態において、導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールなどからなる群から選択される。特定の実施形態では、導電性材料が単独で使用される。他の実施形態では、導電性材料が、上述の2つ以上の導電性材料の混合物として使用される。
【0042】
特定の実施形態において、結合剤は、集電体の正極活物質に付着される。典型的な結合剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロペン)(PVDF/HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、Kynar Flex(登録商標)2801、Kynar(登録商標)Powerflex LBG、Kynar(登録商標)HSV 900、Teflon(登録商標)、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエチルアクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロリド、ポリアクリロニトリル、ポリカプロラクタム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエン、ポリイソプレンまたはポリアクリル酸、あるいはこれらのいずれかの誘導体、混合物、またはコポリマーが挙げられる。一部の実施形態では、結合剤は、アルギン酸ナトリウムまたはカルボキシメチルセルロースなどの水溶性結合剤である。一般に、結合剤は活物質を一緒に保持し、また集電体(例えば、アルミ箔または銅箔)と接触させる。特定の実施形態では、結合剤は、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アルキル化ポリエチレンオキシド、架橋ポリエチレンオキシド、ポリビニルエーテル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンとポリフッ化ビニリデンとのコポリマー、ポリエチルアクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、ポリスチレン、及びこれらの誘導体、混合物、及びコポリマーからなる群から選択される。
【0043】
特定の実施形態において、カソードは、コーティング層をさらに含む。例えば、特定の実施形態では、コーティング層は、ポリマー、無機材料、またはそれらの混合物を含む。特定のそのような実施形態では、ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルブチラール-co-ビニルアルコール-co-酢酸ビニル)、ポリ(メチルメタクリレート-co-エチルアクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル-co-酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリビニルエーテル、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンスチレン、スルホン化スチレン/エチレン-ブチレン/スチレントリブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド、及びこれらの誘導体、混合物及びコポリマーからなる群から選択される。特定のそのような実施形態において、無機材料は、例えば、コロイダルシリカ、非晶質シリカ、表面処理シリカ、コロイダルアルミナ、非晶質アルミナ、酸化スズ、酸化チタン、硫化チタン(TiS2)、酸化バナジウム、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化鉄、硫化鉄(FeS)、チタン酸鉄(FeTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、及びこれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、有機材料は、導電性炭素を含む。特定の実施形態では、有機材料は、グラフェン、グラフェン酸化物を含む。
【0044】
特定の実施形態では、提供される混合物は、結合剤なしで配合することができ、電極の製造中に追加することができる(例えば、提供される混合物からスラリーを形成するために使用される溶媒に溶解される)。結合剤が提供される混合物に含まれる実施形態では、電極を製造するためにスラリーにされたときに結合剤を活性化することができる。
【0045】
カソード混合物での使用に適した材料は、2016年6月1日に出版されたCathode Materials for Lithium Sulfur Batteries: Design, Synthesis, and Electrochemical Performance, Lianfeng, et al., Interchopen.com、及びThe Strategies of Advanced Cathode Composites for Lithium-Sulfur Batteries, Zhou et al., SCIENCE CHINA Technological Sciences,Volume 60, Issue 2: 175-185(2017)に開示されているものを含み、これらの各々の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
B.アノード
特定の実施形態では、リチウム電池(例えば、リチウム-硫黄電池)は、リチウムアノードを含む。リチウム-硫黄電池における使用に適した任意のリチウムアノードを使用することができる。特定の実施形態において、リチウム-硫黄電池のアノードは、リチウムインターカレーションが可逆的に起こる材料、リチウムイオンと反応してリチウム含有化合物を形成する材料、金属リチウム、リチウム合金、及びこれらの組み合わせから選択される負電極活物質を含む。特定の実施形態では、アノードは、金属リチウムを含む。特定の実施形態では、リチウム含有アノード組成物は、炭素系化合物を含む。特定の実施形態では、炭素系化合物は、結晶性炭素、非晶質炭素グラファイト、及びこれらの混合物からなる群から選択される。特定の実施形態では、リチウムイオンと反応してリチウム含有化合物を形成する材料は、酸化スズ(SnO2)、硝酸チタン、及びケイ素からなる群から選択される。特定の実施形態では、リチウム合金は、リチウムと別のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウム)との合金を含む。特定の実施形態では、リチウム合金は、リチウムと遷移金属との合金を含む。特定の実施形態では、リチウム合金は、リチウムと、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Al、Sn、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属との合金を含む。特定の実施形態では、リチウム合金は、リチウムとインジウムとの合金を含む。特定の実施形態では、アノードは、リチウム-ケイ素合金を含む。好適なリチウム-シリコン合金の例は、Li15Si4、Li12Si7、Li7Si3、Li13Si4、及びLi21Si5/Li22Si5を含む。特定の実施形態では、リチウム金属またはリチウム合金は、別の材料との複合材料として存在する。特定の実施形態では、こうした複合材料は、グラファイト、グラフェン、金属硫化物または酸化物、または導電性ポリマーなどの材料を含む。
【0047】
アノードは、当技術分野で報告された任意の方法によって、例えば、化学的パッシベーションまたは重合によってアノードの表面上に保護層を生成することによって、酸化還元シャトリング反応及び有害なランアウェイ反応から保護され得る。例えば、特定の実施形態において、アノードは、リチウム金属の表面に、無機保護層、有機保護層、またはそれらの混合物を含む。特定の実施形態において、無機保護層は、Mg、Al、B、Sn、Pb、Cd、Si、In、Ga、ケイ酸リチウム、ホウ酸リチウム、リン酸リチウム、リン酸窒化リチウム、ケイ酸硫化リチウム、ホウ硫化リチウム、アルミノ硫化リチウム、リン硫化リチウム、フッ化リチウム、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、有機保護層は、ポリ(p-フェニレン)、ポリアセチレン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(2,5-エチレンビニレン)、アセチレン、ポリ(ペリナフタレン)、ポリアセン、及びポリ(ナフタレン-2,6-ジ-イル)、またはこれらの組み合わせから選択される導電性モノマー、オリゴマー、またはポリマーを含む。
【0048】
さらに、特定の実施形態において、リチウム-硫黄電池の充電及び放電中に、カソードの電気活性硫黄材料から生成される不活性硫黄材料は、アノード表面に付着する。本明細書で使用される場合、「不活性硫黄」という用語は、繰り返される電気化学反応及び化学反応に対して活性を有さない硫黄を指し、それはカソードの電気化学反応に関与することができない。特定の実施形態において、アノード表面の不活性硫黄は、そのような電極の保護層として作用する。特定の実施形態において、不活性硫黄は、硫化リチウムである。
【0049】
さらに、本開示は、ナトリウム-硫黄電池における使用に適合され得ることが企図される。そのようなナトリウム-硫黄電池は、ナトリウムベースのアノードを含み、本開示の範囲内に含まれる。
【0050】
C.電極の調製
リチウム電池(例えば、リチウム-硫黄電池)に使用するための電極を製造するための種々の方法がある。「湿式プロセス」のような1つのプロセスは、液体に正極活物質、結合剤及び導電性材料(すなわち、カソード混合物)を添加してスラリー組成物を調製することを含む。これらのスラリーは、典型的には、下流コーティング操作を促進するように配合された粘性液体の形態である。スラリーの徹底的な混合はコーティング及び乾燥の操作にとって重要であり得、それは電極の性能及び質に影響を及ぼす。適切な混合デバイスは、ボールミル、磁気攪拌器、超音波処理、遊星混合器、高速混合器、ホモジナイザー、万能型混合器、及び静的混合器を含む。スラリーを作製するために使用される液体は、正極活物質、結合剤、導電材料及び任意の添加剤を均一に分散し、容易に蒸発するものであり得る。適切なスラリー液体としては、例えば、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、水、イソプロピルアルコール、ジメチルピロリドンなどが挙げられる。
【0051】
一部の実施形態では、調製された組成物を集電体にコーティングし、乾燥させて電極を形成する。具体的には、スラリーを使用して、導電体をコーティングし、導体にスラリーを均一に広げることによって電極を形成し、次いで、特定の実施形態では、ロールプレス(例えば、カレンダー加工)し、当技術分野で公知のように加熱する。一般に、正極活物質と導電性材料のマトリックスは、結合剤によって導体に一緒に保持される。特定の実施形態では、マトリックスは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロペン)(PVDF/HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、Kynar Flex(登録商標)2801、Kynar(登録商標)Powerflex LBG、Kynar(登録商標)HSV 900、Teflon(登録商標)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリエチレンオキシド(PEO)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのリチウム伝導性ポリマー結合剤を含む。特定の実施形態において、追加の炭素粒子、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブは、導電性を改善するためにマトリックスに分散される。代替的にまたは追加的に、特定の実施形態では、リチウムイオンは、リチウム導電性を改善するためにマトリックスに分散される。
【0052】
特定の実施形態では、集電体は、アルミ箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ジルコニウム箔、モリブデン箔、ニッケル発泡体、銅発泡体、カーボン紙もしくは繊維シート、導電性金属でコーティングされたポリマー基材、及び/またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0053】
その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開番号WO2015/003184、WO2014/074150、及びWO2013/040067は、電極及び電気化学セルを製造する様々な方法を記載する。
【0054】
D.セパレータ
特定の実施形態では、リチウム-硫黄電池は、アノードとカソードを分割するセパレータを含む。特定の実施形態では、セパレータは、電解質に対して実質的にまたは完全に不浸透性のである、不浸透性材料である。特定の実施形態では、セパレータは、電解質に溶解した多硫化物イオンに対して不浸透性である。特定の実施形態では、セパレータは、全体として電解質に対して不浸透性であり、その結果、電解質可溶性硫化物の通過が阻止される。一部の実施形態では、セパレータ全体にわたるイオン伝導度が、例えば、そのようなセパレータの開口を介して設けられる。特定のそのような実施形態において、セパレータは、全体として、その不浸透性の結果として、電池のアノード部分とカソード部分との間の電解質可溶性硫化物の通過を抑制または制限する。特定の実施形態では、不浸透性材料のセパレータは、セルの充電及び放電中に、電池のアノードとカソードとの間のリチウムイオン輸送を可能にするように構成される。いくつかのそのような実施形態では、セパレータは、アノード及びカソードを互いに完全には分離しない。電池のアノード部分とカソード部分との間に十分なリチウムイオンの流れを可能にするために、セパレータの不浸透性面を迂回するか、または開口を貫通する1つ以上の電解質浸透性チャネルを設けなければならない。一部の実施形態では、セパレータ自体が完全に不浸透性である場合、セパレータの周囲と電池ケースの壁との間の環状部を通してチャネルが設けられる。
【0055】
セパレータの最適な寸法は、競合する要請、つまり十分なリチウムイオンフラックスを有効にしながら多硫化物の移動に対し最大インピーダンスにすること、のバランスをとらなければならないことは、当業者によって理解されるであろう。このことを考慮すること以外に、セパレータの形状及び配向は特に限定されず、電池の構成に一部依存する。例えば、セパレータは、コイン型セルでは実質的に円形で、パウチ型セルでは実質的に矩形であり得る。本明細書に記載されるように、セパレータの表面は、開口を欠いていることがあり、そのため、リチウムイオンフラックスは、不浸透性シートの縁部の周りで排他的に生じる。しかしながら、必要なリチウムイオンフラックスの一部または全部がセパレータの開口を通してもたらされる特定の実施形態も企図されている。一部の実施形態では、セパレータは、実質的に平坦である。しかしながら、湾曲した、または他の平面ではない構成が使用され得ることは除外されない。
【0056】
セパレータは、任意の適切な厚さであり得る。電池のエネルギー密度を最大化するために、セパレータは可能な限り薄く軽量であることが一般に好ましい。しかしながら、セパレータは、十分な機械的ロバスト性を備え、適切な不浸透性を確保するのに十分に厚くするべきである。特定の実施形態において、セパレータは、約1ミクロン~約200ミクロン、好ましくは約5ミクロン~約100ミクロン、より好ましくは約10ミクロン~約30ミクロンの厚さを有する。
【0057】
E.電解質
特定の実施形態では、リチウム-硫黄電池は、電解質塩を含む電解質を含む。電解質塩の例は、例えば、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド、リチウムトリフレート、過塩素酸リチウム、LiPF6、LiBF4、テトラアルキルアンモニウム塩(例えば、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、TBABF4)、室温での液体状態の塩(例えば、イミダゾリウム塩、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス-(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、EMIBeti)などが挙げられる。
【0058】
特定の実施形態において、電解質は、1種以上のアルカリ金属塩を含む。特定の実施形態では、そのような塩は、LiCF3SO3、LiClO4、LiNO3、LiPF6、及びLiTFSI、またはそれらの組み合わせなどのリチウム塩を含む。特定の実施形態では、電解質は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム-TFSI、N-ブチル-N-メチル-ピペリジニウム-TFSI、N-メチル-n-ブチルピロリジニウム-TFSI、及びN-メチル-N-プロピルピペリジニウムTFSIなどのイオン液体、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、電解質は、硫化物、酸化物、及びリン酸塩、例えば、五硫化リン、またはそれらの組み合わせなどの超イオン伝導体を含む。
【0059】
特定の実施形態では、電解質は液体である。例えば、特定の実施形態において、電解質は、有機溶媒を含む。特定の実施形態では、電解質は、1つの有機溶媒のみを含む。一部の実施形態では、電解質は、2つ以上の有機溶媒の混合物を含む。特定の実施形態において、有機溶媒の混合物は、弱極性溶媒基、強極性溶媒基、及びリチウム保護溶媒から選択される、少なくとも2つの基からの有機溶媒を含む。
【0060】
本明細書で使用される場合、「弱極性溶媒」という用語は、硫黄元素を溶解することができ、15未満の誘電係数を有する溶媒として定義される。一部の実施形態では、弱極性溶媒は、アリール化合物、二環式エーテル、及び非環式カーボネート化合物から選択される。弱極性溶媒の非限定的な例としては、キシレン、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、トルエン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジグライム、テトラグライムなどが挙げられる。本明細書で使用される場合、「強極性溶媒」という用語は、多硫化リチウムを溶解することができ、15を超える誘電係数を有する溶媒として定義される。一部の実施形態において、強極性溶媒は、二環式炭酸塩化合物、スルホキシド化合物、ラクトン化合物、ケトン化合物、エステル化合物、硫酸塩化合物、及び亜硫酸塩化合物から選択される。強極性溶媒の非限定的な例としては、ヘキサメチルリン酸トリアミド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、N-メチルピロリドン、3-メチル-2-オキサゾリドン、ジメチルホルムアミド、スルホラン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、硫酸ジメチル、エチレングリコールジアセテート、ジメチル亜硫酸、エチレングリコール亜硫酸などが挙げられる。本明細書で使用される場合、「リチウム保護溶媒」という用語は、リチウム表面に良好な保護層、すなわち安定的な固体電解質界面(SEI)層を形成し、少なくとも50%の循環効率を示す溶媒として定義される。一部の実施形態では、リチウム保護溶媒は、飽和エーテル化合物、不飽和エーテル化合物、及び、N、O、及び/またはSからなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含む複素環式化合物から選択される。リチウム保護溶媒の非限定的な例は、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、3,5-ジメチルイソキサゾール、2,5-ジメチルフラン、フラン、2-メチルフラン、1,4-オキサン、4-メチルジオキソランなどを含む。
【0061】
特定の実施形態では、電解質は液体(例えば、有機溶媒)である。一部の実施形態では、液体は、有機カーボネート、エーテル、スルホン、水、アルコール、フルオロカーボン、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態において、電解質は、エーテル系溶剤を含む。
【0062】
特定の実施形態において、有機溶媒は、エーテルを含む。特定の実施形態において、有機溶媒は、1,3-ジオキソラン、ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態において、有機溶媒は、1,3-ジオキソランとジメトキシエタンとの混合物を含む。特定の実施形態において、有機溶媒は、1,3-ジオキソランとジメトキシエタンとの1:1v/vの混合物を含む。特定の実施形態において、有機溶媒は、ジグライム、トリグライム、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、電解質は、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、またはメチルエチルスルホンを含む。一部の実施形態では、電解質は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、またはメチルエチルカーボネートを含む。
【0063】
特定の実施形態では、電解質は液体(例えば、有機溶媒)を含む。一部の実施形態では、液体は、有機カーボネート、エーテル、スルホン、水、アルコール、フルオロカーボン、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態において、電解質は、エーテル系溶剤を含む。特定の実施形態では、電解質は、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、及びメチルエチルスルホンからなる群から選択される液体を含む。特定の実施形態では、電解質は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びメチルエチルカーボネートからなる群から選択される液体を含む。
【0064】
特定の実施形態では、電解質は固体である。特定の実施形態では、固体の電解質はポリマーを含む。特定の実施形態では、固体の電解質は、ガラス、セラミック、無機複合体、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、固体の電解質は、ガラス、セラミック、無機複合体、またはそれらの組み合わせを含むポリマー複合体を含む。特定の実施形態では、このような固体の電解質は、可塑剤として、または「ゲル電解質」を形成するための1つ以上の液体成分を含む。
【0065】
F.リチウム-硫黄電池
一態様において、本発明は、上述のカソード組成物を含む硫黄二次電池を提供する。特定の実施形態では、そのような電池は、リチウム伝導性電解質によってもたらされるカソード組成物に結合される、リチウム含有アノード組成物を含む。一部の実施形態では、そのような電池はまた、アノードとカソードとの間のセパレータ、アノード及びカソード集電体、セルを外部負荷に結合することができる端子、及び可撓性パウチまたは剛性金属容器などのパッケージなどの追加の構成要素も含む。一部の実施形態では、本開示は、硫黄含有カソードと、リチウム含有アノードと、アノードとカソードとをイオン結合する電解質とを含むリチウム-硫黄電池を対象とする。硫黄二次電池に関する本開示は、ナトリウム-硫黄電池における使用に適合され得、そのような電池はまた、本開示の特定の実施形態の範囲にあると考えられることを、さらに企図する。
【実施例】
【0066】
G.実施例
以下の実施例は、本開示の特定の組成物及び方法を具現化し、本明細書の特定の実施形態によるリチウム-硫黄電池の製造を実証する。さらに、以下の実施例は、開示される組成物及び方法の原理を実証するために含められ、限定するものとして意図されない。
【0067】
実施例1:TiS2層及び炭素-硫黄複合層を含む2層カソードを有する電池の構築
実施例1は、本発明の特定の実施形態によるカソードを記載し、それにおいて、TiS2(すなわち、リチウムイオンインターカレーション活物質)の層が、アルミニウム集電体と炭素硫黄複合材料(すなわち、変換活物質)の層との間に挿入される。
【0068】
カソードの調製。TiS2粉末(350g)、導電性炭素(SuperC65(商標)100mg)、及びポリマー結合剤としてのPVDF(50mg)を、十分なNMPと組み合わせてキャスタブルスラリー組成物を得ることにより、スラリーを作製した。このスラリーを0.2~0.4mmの厚さでドクターブレードを用いてアルミニウム集電体に適用し、真空下、65℃で乾燥させた。第2のスラリーは、多孔質炭素ホストの中に拡散された硫黄溶融物を含む硫黄-炭素複合体(7:3のS:C比)を、ポリアクリル酸(部分ナトリウム塩)及び導電性炭素(superC65(商標))と、77:9:14の重量比で、十分なエタノールと混合して、キャスタブルスラリーを形成することによって調製した。このスラリーをTiS2-コーティングの集電体の上に0.2~0.4mmの厚さで塗布し、カソードを再び65℃で乾燥させた。得られたカソードは、合計175~185マイクロメートルの厚さと、4.0~4.5mgのS及び2.4mgTiS2/cm2の面積負荷を有した。
【0069】
コインセル構成。不活性雰囲気のグローブボックスで作業し、調製した二重層カソードフィルムから得られた直径12.7mmのパンチをCR2032コインセルベース内側に配置し、電解質(LiTFSI及びLiNO3を含むDME/DOL混合物)で湿潤させ、ポリマーセパレータ(Celgard(商標))を湿潤カソードの上に配置し、追加の電解質で湿潤させ、直径14.3mmのリチウムホイルディスクをセパレータの頂部に配置した。この組立体は、スペーサ、バネ、及び蓋を頂部の上に置き、セルを圧着して閉じることにより完成した。各コインセルは、合計26~28μLの電解質を含み、約5:1のE/S比をもたらした。
【0070】
比較例2:TiS2と炭素-硫黄複合体との均質な混合物を含む単層カソードを有する比較電池の構築
【0071】
スラリーは、ポリマー結合剤として、TiS2粉末(40mg)、80%硫黄/炭素複合体(360mg)、導電性炭素(55mg)、及びポリアクリル酸(部分ナトリウム塩)(45mg)を適量のエタノールと混合してキャスタブルスラリーを形成することにより、作製した。このスラリーを、ドクターブレードを用いてアルミニウム集電体に適用し、65℃で12~24時間乾燥させた。得られたカソードは、110~135マイクロメートルの合計の厚さと、3.1~3.5mgのS及び0.4mgのTiS2/cm2の面積負荷を有した。実施例1及で上述した通り、このカソードからのパンチを用いてコインセルを構築した。
【0072】
実施例3:実施例1~2の電池の性能評価。
実施例1及び2の手順に従って構築された5つのセルのセットを、以下のガルバノスタティックサイクルプロトコル、つまり最初のC/10放電、続いてC/5充電、C/10放電、C/5充電及び放電、2つのC/3サイクル、C/5充電及びC/10放電を含む5.5形成サイクルを使用して評価した。形成に続くのは、少なくとも100の総サイクルまで繰り返される、C/5充電及びC/10放電が続く、19のC/3サイクルのループである。1Cは、サイクルプロトコルに対して4.5mΑに固定され、各電荷パルスは2.8Vに、各放電パルスは1.8Vに、各ガルバノスタティックパルス間に10分の休止ステップがある。
【0073】
実施例1及び2に従って構築されたコインセルの平均サイクル6の容積を表1にまとめる。
【表1】
表1のデータは、均質な混合物において、TiS
2含有量を8%から12%に増加させると、容積の減少につながることを示す(199.2->138.3mAh/cc)。対照的に、二重層構造では、さらにより高いTiS
2含有量は、予想外に、有意に改善された容積(223.1mAh/cc)を示す。
【国際調査報告】