(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】改善された安定性およびリサイクル性を有する3D印刷用の熱可塑性ポリマー粉末
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240705BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240705BHJP
C08K 5/372 20060101ALI20240705BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240705BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240705BHJP
B29C 64/357 20170101ALI20240705BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20240705BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240705BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240705BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L101/00
C08K5/372
B33Y70/00
B33Y80/00
B29C64/357
B29C64/314
B33Y10/00
B29C64/153
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580507
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 FR2022051284
(87)【国際公開番号】W WO2023275483
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ゾヴィ, オルネラ
(72)【発明者】
【氏名】デュラン, ジャン-シャルル
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
【Fターム(参考)】
4F213AA29
4F213AB06
4F213AB11
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WF51
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL25
4J002AA011
4J002CL011
4J002EV236
4J002HA09
(57)【要約】
本発明は、熱可塑性ポリマー、ならびに改善された安定性およびリサイクル性を有する特定の抗酸化剤を含み、特に焼結による3D印刷により物品を製造するためのポリマー粉末に関する。
本発明はまた、この粉末を調製するための方法、および焼結による製造方法におけるその使用、および前記粉末から製造される物品にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結による3D印刷に適したポリマー粉末であって、熱可塑性ポリマー(a)、好ましくはポリアミド、および式R-SO
3Xによる脂肪族スルホン酸塩(b)、または式R-Y-SO
3Xによる芳香族スルホン酸塩(b)
[式中、
- Rは、エステル、アミド、カルボン酸、アルコール、ニトリル、ケトン、および/またはアルデヒドから選択される、好ましくはエステル、アミド、カルボン酸、およびアルコールから選択される基を含んでいてもよい、4~30個の炭素原子を有する直鎖または分岐、飽和または不飽和の脂肪族炭素系鎖を表し、
- Yは、1つまたは複数の芳香族環を表し、
- Xは、アルカリ金属から選択される一価のイオン、好ましくはナトリウムイオンを表す]を含む、
粉末。
【請求項2】
スルホン酸塩が、
- 4~12個の炭素原子、好ましくは6~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐の飽和炭素系鎖を含む脂肪族スルホン酸塩、例えばヘキサンスルホン酸ナトリウム、ヘプタンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸ナトリウム、ノナンスルホン酸ナトリウム、デカンスルホン酸ナトリウム、ウンデカンスルホン酸ナトリウム、ドデカンスルホン酸ナトリウム;
- 4~30個の炭素原子、好ましくは12~18個の炭素原子を有する直鎖または分岐の不飽和炭素系鎖を含む脂肪族スルホン酸塩、例えば12~18個の炭素原子を有するオレフィンスルホン酸ナトリウム;ならびに/または
- エステル、アミド、酸、アルコール、ニトリル、および/またはアルデヒドから選択される、好ましくはエステル、アミド、酸、およびアルコールから選択される基を含む、4~30個の炭素原子を有する直鎖または分岐、飽和または不飽和の炭素系鎖を含む、脂肪族または芳香族スルホン酸塩
から選択される、請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
熱可塑性ポリマーが、半結晶性熱可塑性ポリマー、好ましくはポリアミドである、請求項1または2に記載の粉末。
【請求項4】
チオエーテル、フィラーもしくは補強材、および/または1つもしくは複数のさらなる添加剤をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項5】
(a)重量で30%~99.9%、好ましくは40%~95%の熱可塑性ポリマー;
(b)重量で0.1%~10%、好ましくは0.1%~5%のスルホン酸塩;
(c)重量で0%~5%、好ましくは0.1%~1%のチオエーテル;
(d)重量で0%~50%、好ましくは10%~50%、特に20%~40%のフィラーまたは補強材;および
(e)重量で0%~10%、好ましくは0.1%~7.5%、特に1%~5%のさらなる添加剤
を含み、成分(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)のそれぞれの割合が合計で100%になる、請求項1から4のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項6】
(a)重量で75%~99.9%、好ましくは85%~99%の熱可塑性ポリマー;
(b)重量で0.1%~10%、好ましくは0.1%~5%のスルホン酸塩;
(c)重量で0%~5%、好ましくは0.1%~1%のチオエーテル;
(e)重量で0%~10%、好ましくは0.1%~7.5%、特に1%~5%のさらなる添加剤
を含み、成分(a)、(b)、(c)、および(e)のそれぞれの割合が合計で100%になる、請求項1から5のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項7】
チオエーテルが、ジラウリルチオジプロピオネート(DLTDP)、ジトリデシルチオジプロピオネート(DTDTDP)、ジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)、ジミリスチルチオジプロピオネート(DMTDP)、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネートまたは3-ラウリルチオプロピオネート)、および/またはそれらの混合物から選択される、請求項4から6のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項8】
40~150μmのDv50直径を有する、請求項1に記載の粉末。
【請求項9】
(i)熱可塑性ポリマーを研削して40~150μmのDv50直径を有する粉末を得る工程と、その後または前に、
(ii)少なくとも1つのスルホン酸塩、およびまた必要に応じて1つまたは複数の成分も導入する工程と
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の粉末を調製するための方法。
【請求項10】
(i)熱可塑性ポリマー(a)を合成する工程と、その間またはその前に、
(ii)上記で定義されるような少なくとも1つのスルホン酸塩(b)、およびまた必要に応じて1つまたは複数の成分(c)~(e)も導入する工程と
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の粉末を調製するための方法。
【請求項11】
スルホン酸塩(b)、必要に応じて1つまたは複数の成分(c)~(e)が、乾燥混合により粉末に取り込まれる工程を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の粉末を調製するための方法。
【請求項12】
焼結による3D印刷に適したポリマー粉末の熱安定性を改善するため、特に黄変を抑えるための、請求項1または2に記載のスルホン酸塩の使用。
【請求項13】
前記粉末が請求項7に記載のチオエーテルを含む、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか一項に記載の粉末、または同じ印刷方法もしくは異なる印刷方法内の1回もしくは複数回のビルド後に回収される請求項1から8のいずれか一項に記載の前記粉末の非凝集部分を含む粉末組成物を使用した、3D印刷方法、好ましくは電磁波により引き起こされる焼結の方法。
【請求項15】
請求項14に記載の3D印刷方法により得られる製造物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマー、ならびに改善された安定性およびリサイクル性を有する特定の抗酸化剤を含み、特に焼結による3D印刷により物品を製造するためのポリマー粉末に関する。
【0002】
本発明はまた、この粉末を調製するための方法、および焼結による製造方法におけるその使用、および前記粉末から製造される物品にも関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマー粉末組成物を使用する様々な3D印刷技術がある。原理は一般に、電磁波により、例えばレーザービーム(レーザー焼結)、赤外線、UV線、または3次元物体を製造するために一層ずつ粉末を溶融することを可能にする任意の電磁波源により引き起こされる、前記層を溶融する(以下「焼結」)ことによる一層ごとの粉末の凝集に基づいている。
【0004】
選択的レーザー焼結(SLS)技術を挙げることができる。吸収剤を使用する焼結技術、例えば「高速焼結」(HSS)および「マルチジェットフュージョン」(MJF)という名称で知られる技術も挙げることができる。
【0005】
SLSまたはMJFなどの焼結の方法では、熱可塑性ポリマー粉末、例えばポリアミド粉末の使用が好まれる。
【0006】
ラン(run)としても知られる、焼結の方法における各ビルドの間、粉末の大部分が使用されない。例えば、粉末のおよそ85%がSLSのレーザーによる、あるいはMJFの赤外線による標的とならず、しがたって凝集していないおよび/または溶融していない。そのため、次のビルド(または次のラン)の間にこの粉末を再使用できる、すなわちリサイクルできることが有利である。
【0007】
しかし、例えばMJF法において、焼結の方法が空気下で行われる場合、高温での酸素の存在はポリマーの熱酸化劣化をもたらすことがあり、粉末の望ましくない黄変、および結果として印刷部材の黄変を生じさせ、このことは凝集していない粉末が再使用されるのを妨げる。
【0008】
リサイクル可能であるためには、良好な熱安定性を、より詳細には空気下での焼結のための方法において有する、熱可塑性ポリマー粉末を提供することが必要とされる。
【0009】
本発明の目的において、熱安定性は熱酸化劣化の低減を意味し;すなわち特に焼結の間に凝集しなかった粉末の抑えられた黄変を意味する。
【0010】
粉末のリサイクル性を改善するためおよび/または粉末の黄変を抑えるために、粉末配合物において抗酸化剤を採用することが知られている。
【0011】
中国特許第104910616号の文献は、ドデカン二酸、二重アミン末端ポリエチレングリコール、および重水素化トリフルオロ酢酸から合成される可撓性セグメントを含む、ポリアミド12に基づくエラストマーの粉末を記載している。粉末は、フェノール系、ホスフィット、またはチオエーテルタイプの抗酸化剤をさらに含んでもよい。
【0012】
仏国特許第3087198号の文献は、熱可塑性ポリマーをベースとし、粉末の総重量に対して少なくとも0.1重量%の少なくとも1つのチオエーテル抗酸化剤を含む、3D印刷を意図した粉末を記載している。
【0013】
しかし、上記の化合物の抗酸化効果は十分であることが必ずしも分かっていない。
【0014】
本発明の目的は、上記の問題の1つまたは複数に対する解決策を提供することである。
【0015】
より詳細には、本発明の目的は、特定の抗酸化剤を含み改善された熱安定性およびまた改善されたリサイクル性も有する、熱可塑性ポリマー粉末、好ましくはポリアミド粉末を提供することである。
【0016】
本発明の文脈において、改善された熱安定性を有する粉末とは、特定の抗酸化剤を含まない同じ粉末について同じ条件下で測定される指数よりも少なくとも30%低い、177℃でおよそ50mlの体積において72時間空気下にさらされた後に測定される黄色度指数(YI)を有する粉末を意味する。
【発明の概要】
【0017】
第1の態様によれば、本発明は、焼結による3D印刷に適したポリマー粉末であって、熱可塑性ポリマー(a)、好ましくはポリアミド、および式R-SO3Xによる脂肪族スルホン酸塩(b)、または式R-Y-SO3Xによる芳香族スルホン酸塩(b)、
[式中、
- Rは、エステル、アミド、カルボン酸、アルコール、ニトリル、ケトン、および/またはアルデヒドから選択される、好ましくはエステル、アミド、カルボン酸、およびアルコールから選択される基(特に1個の基)を含んでいてもよい、4~30個の炭素原子を有する直鎖または分岐、飽和または不飽和の脂肪族炭素系鎖を表し(特に、Rは4~30個の炭素原子を有する直鎖または分岐、飽和または不飽和の脂肪族炭素系鎖から成ることが可能である)、
- Yは、1つまたは複数の芳香族環を表し、
- Xは、アルカリ金属から選択される一価のイオン、好ましくはナトリウムイオンを表す]を含む、
粉末に関する。
【0018】
典型的には、本発明によるスルホン酸塩は、
- 4~12個の炭素原子、好ましくは6~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐の飽和炭素系鎖を含む脂肪族スルホン酸塩、例えばヘキサンスルホン酸ナトリウム、ヘプタンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸ナトリウム、ノナンスルホン酸ナトリウム、デカンスルホン酸ナトリウム、ウンデカンスルホン酸ナトリウム、ドデカンスルホン酸ナトリウム;
- 4~30個の炭素原子、好ましくは12~18個の炭素原子を有する直鎖または分岐の不飽和炭素系鎖を含む脂肪族スルホン酸塩、例えば12~18個の炭素原子を有するオレフィンスルホン酸ナトリウム;ならびに/または
- エステル、アミド、酸、アルコール、ニトリル、および/またはアルデヒドから選択される、好ましくはエステル、アミド、酸、およびアルコールから選択される基(特に1個の基)を含む、4~30個の炭素原子を有する直鎖または分岐、飽和または不飽和の炭素系鎖を含む、脂肪族または芳香族スルホン酸塩
から選択されてもよい。
【0019】
脂肪族スルホン酸塩は、例えば、エステルまたはアミド基を含む、4~30個の炭素原子を有する、好ましくは4~20個の炭素原子を有する飽和または不飽和の炭素系鎖を含んでもよい。
【0020】
例として、市販品Hostapon(登録商標)SCI 85 P、Hostapon(登録商標)TPHCを挙げることができる。
【0021】
芳香族スルホン酸塩は、例えば、ベンゼンが4~18個の炭素原子を有する少なくとも1つの直鎖または分岐、飽和または不飽和の炭素系鎖により置換されている、アルキルベンゼンスルホン酸塩、例えばドデシルベンゼンスルホン酸塩であってもよい。
【0022】
好ましくは、スルホン酸塩は、300℃未満、好ましくは250℃未満、より優先的には200℃未満の融点、特にポリマー粉末の融点よりも低い融点を有する。
【0023】
本発明にしたがって使用される熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、および/またはそれらの混合物、好ましくはポリアミド、ポリアリールエーテルケトン、および/またはそれらの混合物から選択されてもよい。
【0024】
好ましくは、本発明による熱可塑性ポリマーは半結晶性熱可塑性ポリマーである。
【0025】
一実施形態によれば、ポリマー粉末は、チオエーテル、フィラーもしくは補強材、および/または1つもしくは複数のさらなる添加剤をさらに含む。
【0026】
本発明の文脈において、熱可塑性ポリマー粉末、好ましくはポリアミド粉末における、上記で定義されるようなスルホン酸塩の使用は、連続するビルドの間に許容可能な機械的特性を維持しながら、前記粉末の熱安定性を改善することを可能にすることが観察された。
【0027】
より詳細には、スルホン酸塩の添加は、連続するビルドにわたって粉末の黄変を非常に有利に抑えることを可能にする。
【0028】
非常に有利なことに、熱安定化のこの改善は粉末においてだけでなく印刷部材においても観察された。
【0029】
さらに、スルホン酸塩の存在は非凝集粉末のインヘレント粘度の大きすぎる増加を防ぐことを可能とし、したがって焼結の方法における粉末のリサイクル性を高めることを可能とし、最終的に有効な機械的特性を有する3D部材を得ることを可能にすることが観察された。
【0030】
本発明はしたがって、焼結の方法が過酷な条件下、典型的には高温(すなわち融点よりも数十度低い)での空気下で、および/または長時間のビルド時間にわたって行われる場合であっても優れたリサイクル性を有する粉末を提案する。
【0031】
一実施形態によれば、本発明によるポリマー粉末は、熱可塑性ポリマー(a)、スルホン酸塩(b)、ならびに場合によりチオエーテル(c)、フィラーもしくは補強材(d)、および/または1つもしくは複数のさらなる添加剤(e)を含む。
【0032】
一態様によれば、本発明は上記で定義されるような粉末を調製するための方法を対象とする。
【0033】
本発明の別の主題は、焼結による3D印刷に適した熱可塑性ポリマー粉末の熱安定性を改善するため、好ましくは黄変を抑えるための、スルホン酸塩の使用である。
【0034】
一実施形態によれば、ポリマー粉末はチオエーテルをさらに含む。
【0035】
本発明はまた、上記で定義されるような粉末、または同じ印刷方法もしくは異なる印刷方法内の1回もしくは複数回のビルド後に回収される前記粉末の非凝集部分を含む粉末を使用した、3D印刷方法、好ましくは電磁波により引き起こされる焼結の方法にも関する。
【0036】
電磁波は好ましくは、レーザービーム、赤外線、またはUV線から選択され、吸収剤を使用するまたは使用しない。
【0037】
本発明はまた、上記で定義されるような3D印刷方法により得られる物品にも関する。
【0038】
物品は、特に自動車、船舶、航空、航空宇宙、医療(人工補綴物、聴覚系、細胞組織など)、織物、衣料、ファッション、装飾物、設計、電子機器筐体、電話技術、コンピューティング、照明、スポーツ、および工具の分野における、試作品、模型、および部材から選択されてもよい。
【0039】
好ましくは、印刷部材の溶液におけるインヘレント粘度(「インヘレント粘度」とも呼ばれる)は、物品が許容可能な機械的特性を有するように、0.8を超える。より好ましくは、印刷部材のインヘレント粘度は1.0を超える。一般に、印刷部材のインヘレント粘度は4.0未満、好ましくは3.0未満である。
【0040】
ここで本発明を以下の説明において詳細かつ非限定的に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
定義
下記の実施例を含めた、本発明の説明において、
本明細書において「体積中位径」とも呼ばれるDv50は、試験される粒子の集団をちょうど2つに分ける粒径の値に相当する。Dv50は規格ISO 13320-1にしたがって測定される。本発明の説明では、粉末の粒径分布を得てそのDv50を推測するのに、RTSizerソフトウェアを有するMalvern Insitec粒度分析計を使用する。
【0042】
溶液におけるインヘレント粘度(特にポリアミド、ポリアミド粉末、または前記ポリアミドもしくはポリアミド粉末から焼結により製造される部材)は、以下の工程にしたがって測定される:
- 0.07~0.10g、好ましくは最大で0.15gのポリマーの試料を取る工程と、
- 0.5g/lの濃度(C)を得るために秤量により十分量のm-クレゾール溶媒を加える工程と、
- ポリマーが完全に溶解するまで、100℃±5℃で調節されたホットプレート上で撹拌しながら混合物を加熱する工程と、
- 好ましくは少なくとも30分かけて溶液を室温まで冷却する工程と、
- 20℃±0.05℃で調節されたサーモスタット制御浴中のmicro-Ubbelohdeチューブ粘度計を使用して、純粋な溶媒のフロー時間t0および溶液のフロー時間tを測定する工程と、
- 式1/C×Ln(t/t0)にしたがって粘度を計算する工程(式中、Cは濃度を表し、Lnは自然対数を表す)。
【0043】
各試料について、異なる溶液で3回の測定を行い、次いで平均を計算する。
【0044】
規格ISO 11357-3「Plastics-Differential Scanning Calorimetry (DSC) Part 3: Determination of temperature and enthalpy of melting and crystallization(プラスチック-示差走査熱量測定(DSC)第3部:溶融および結晶化の温度およびエンタルピーの決定)」に準拠してポリアミドの熱特性をDSCにより分析する。より具体的に本明細書において本発明に関連する温度は、第1の加熱の融点(Mp1)、結晶化温度(Tc)、および溶融のエンタルピーである。
【0045】
「半結晶性熱可塑性ポリマー」とは、
- DSC(示差走査熱量測定法)において20K/分の速度での冷却の工程の間に、規格 ISO 11357-3:2013に準拠して決定される結晶化温度(Tc)と;
- DSCにおいて20K/分の速度での加熱の工程の間に、規格 ISO 11357-3:2013に準拠して決定される融点(Mp)と;
- DSCにおいて20K/分の速度での加熱の工程の間に、規格 ISO 11357-3:2013に準拠して決定される、5J/gを超え、好ましくは10J/gを超え、例えば20J/gを超え、一般に200J/g未満、好ましくは150J/g未満、例えば100J/g未満、または50J/g未満である、溶融のエンタルピー(ΔHf)と
を有する熱可塑性ポリマーを意味する。
【0046】
黄変は、規格ASTM E313-96(D65)に準拠して、特に正反射光込み(SCI)方式において10°の光源D65を有するKonica Minolta分光比色計を使用して測定される、黄色度指数(YI)によって定量化される。
【0047】
機械的特性、特に引張弾性率および破断伸びは、規格ISO 527-1B:2012に準拠して測定される。
【0048】
本発明の説明において、範囲に言及する場合、「...~...」というタイプの表現はその範囲の限界値を含むことに注意する。
【0049】
別途指示のない限り、表されるパーセンテージは重量パーセントである。別途指示のない限り、言及されるパラメーターは大気圧および室温(23℃)で測定される。
【0050】
ポリアミドを示すのに使用される命名は規格ISO 1874-1:2011にしたがう。ポリアミドの本発明の説明における「モノマー」という用語は、「繰り返し単位」を意味すると解釈されるべきである。特に、ジアミンとジカルボン酸との縮合から生じるポリアミドを示すPA「XY」という表記において、Xはジアミンの炭素原子の数を表し、Yはジカルボン酸の炭素原子の数を表す。PA「Z」という表記において、Zはアミノ酸またはラクタムの縮合から生じるポリアミド単位の炭素原子の数を表す。PA X/Y、PA X/Y/Zなどの表記(本発明の文脈においてPA「X/Y」とも呼ばれる)は、X、Y、Zなどが本発明において述べられるホモポリアミド単位X、Y、Zを表すようなコポリアミドに関連する。
【0051】
熱可塑性ポリマー
好ましくは、熱可塑性ポリマーは半結晶性熱可塑性ポリマー、好ましくはポリアミドである。
【0052】
ポリアミドは、ホモポリアミド(すなわちPA「XY」およびPA「Z」)、コポリアミド(すなわちPA「X/Y」)、またはそれらの混合物であってもよい。
【0053】
「Z」-タイプのポリアミドは、1種もしくは複数のα,ω-アミノカルボン酸および/または1種もしくは複数のラクタムの縮合から生じる。
【0054】
α,ω-アミノカルボン酸の例として、α,ω-アミノ酸、例えばアミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、n-ヘプチル-11-アミノウンデカン酸、および12-アミノドデカン酸などを挙げることができる。
【0055】
ラクタムの例として、主な環上に3~12個の炭素原子を有し置換されていてもよいものを挙げることができる。例えば、β,β-ジメチルプロピオラクタム、α,α-ジメチルプロピオラクタム、アミロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、2-ピロリドン、およびラウリルラクタムを挙げることができる。
【0056】
このタイプの好ましいポリアミドの例として、PA 6、PA 11、およびPA 12を挙げることができる。
【0057】
「XY」-タイプのポリアミドは、ジカルボン酸と脂肪族、脂環式、または芳香族ジアミンとの縮合から生じる。
【0058】
ジアミンの例として、6~12個の原子を有する脂肪族ジアミンを挙げることができ、ジアミンXがアリールおよび/または飽和環状であることも可能である。例として、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,5-ジアミノヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、ポリオールジアミン、イソホロンジアミン(IPD)、メチルペンタメチレンジアミン(MPDM)、ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、メタキシリレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミンを挙げることができる。
【0059】
ジカルボン酸の例として、4~18個の炭素原子、好ましくは9~12個の炭素原子を有する酸を挙げることができる。例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、イソフタル酸、ブタン二酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、スルホイソフタル酸のナトリウムまたはリチウム塩、二量体化脂肪酸(特に少なくとも98%の二量体含量を有するおよび/または好ましくは水素化されているもの)、および1,2-ドデカン二酸HOOC-(CH2)10-COOHを挙げることができる。
【0060】
このタイプの好ましいポリアミドの例は、ヘキサメチレンジアミンおよび1,12-ドデカン二酸の縮合から生じるPA 612;ヘキサメチレンジアミンおよびブラシル酸の縮合から生じるPA 613;1,9-ノナンジアミンおよび1,12-ドデカン二酸の縮合から生じるPA 912;1,10-デカンジアミンおよびセバシン酸の縮合から生じるPA 1010;1,10-デカンジアミンおよび1,12-ドデカン二酸の縮合から生じるPA 1012である。
【0061】
ポリアミドはまた、
- 少なくとも2種の異なるモノマーの縮合、例えば少なくとも2種の異なるα,ω-アミノカルボン酸の縮合、または
- 異なる2種のラクタムの縮合、または
- ラクタムおよび様々な炭素数を有するα,ω-アミノカルボン酸の縮合、または
- 少なくとも1種のα,ω-アミノカルボン酸(またはラクタム)、少なくとも1種のジアミン、および少なくとも1種のジカルボン酸の縮合、または
- 脂肪族ジアミンと、脂肪族ジカルボン酸、ならびに前述のもの以外の脂肪族ジアミンおよび前述のもの以外の脂肪族二塩基酸から選択される少なくとも1種の他のモノマーとの縮合
から生じるコポリアミドであってもよい。
【0062】
ポリアミドの混合物も利用することができ、これは脂肪族ポリアミドおよび半芳香族ポリアミドの混合物、脂肪族ポリアミドおよび脂環式ポリアミドの混合物であってもよい。
【0063】
本発明のポリアミドはまた、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを有するコポリマー(PEBA)、またはポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを有するコポリマーと上記のポリアミドのうちの少なくとも1つとの混合物であってもよい。
【0064】
PEBAコポリマーは、反応性末端を有するポリアミドブロックと反応性末端を有するポリエーテルブロックとの共重縮合から、例えばとりわけ
1)ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックとジカルボン酸鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックとの共重縮合;
2)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックとジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックとの共重縮合;
3)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックとポリエーテルジオールとの共重縮合(この特定の事例では得られる生成物がポリエーテルエステルアミドである)
などから生じてもよい。
【0065】
ポリアミドブロックは、ホモポリアミドおよびコポリアミドについて上記で述べられるようなホモポリアミドまたはコポリアミドであってもよい。
【0066】
ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックは、例えばジカルボン酸タイプの鎖制限剤の存在下におけるポリアミド前駆体の縮合から生じる。ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは、例えばジアミンタイプの鎖制限剤の存在下におけるポリアミド前駆体の縮合から生じる。
【0067】
PEBAのポリエーテルブロックは、アルキレングリコールから生じてもよく、例えばPEG(ポリエチレングリコール)、PPG(ポリプロピレングリコール)、PO3G(ポリトリメチレングリコール)、またはPTMG(ポリテトラメチレングリコール)など、好ましくはPTMGから生じてもよい。
【0068】
ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを有するポリマーは、ランダムに分布した単位を含んでもよい。これらのポリマーは、ポリエーテルおよびポリアミドブロックの前駆体の同時の反応により調製することができる。
【0069】
ポリエーテルジオールブロックは、未修飾の形態で使用されカルボン酸末端基を有するポリアミドブロックと共重縮合されるか、またはそれらはアミノ化されてポリエーテルジアミンへ転化され、カルボン酸末端基を有するポリアミドブロックと縮合される。ランダムに分布した単位を有するポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを有するポリマーを作るために、ポリエーテルジオールブロックはポリアミド前駆体および鎖制限剤と混合することもできる。
【0070】
ポリアミドの量に対する、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを有するコポリマーの量の比は、有利には重量で1/99~15/85である。
【0071】
ポリアミドおよび少なくとも1種の他のポリマーの混合物に関しては、ポリアミドマトリックスを有する混合物の形態で提供され、他のポリマー(複数可)は分散相を形成する。この他のポリマーの例として、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、PPO(ポリフェニレンオキシドの略称)、PPS(ポリフェニレンスルフィドの略称)、またはエラストマーを挙げることができる。
【0072】
好ましくは、粉末組成物は、以下のXYまたはZモノマー:46、4T、54、59、510、512、513、514、516、518、536、6、64、66、69、610、612、613、614、616、618、636、6T、9、104、109、1010、1012、1013、1014、1016、1018、1036、10T、11、12、124、129、1210、1212、1213、1214、1216、1218、1236、12T、MXD6、MXD10、MXD12、MXD14、およびそれらの混合物のうち少なくとも1つを含む、ポリアミド、コポリアミド、および/またはPEBAコポリマーから選択される;特にPA 6、PA 11、PA 12、PA 612、PA 613、PA 912、PA 1010、PA1012 6、PA 6/12、PA 11/1010、およびそれらの混合物から選択される、少なくとも1つのポリアミドを含む。
【0073】
チオエーテル
本発明の粉末は有利にはチオエーテルを含んでもよい。
【0074】
チオエーテルは好ましくは、ジラウリルチオジプロピオネート(DLTDP)、ジトリデシルチオジプロピオネート(DTDTDP)、ジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)、ジミリスチルチオジプロピオネート(DMTDP)、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネートまたは3-ラウリルチオプロピオネート)、3,3’-チオジプロピオネート、(C12~14)アルキルチオプロピオネート、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3-チオジプロピオネート、テトラキス[メチレン3-(ドデシルチオ)プロピオネート]メタン、チオビス(2-tert-ブチル-5-メチル-4,1-フェニレン)ビス(3-(ドデシルチオ)プロピオネート)、2,2’-チオジエチレンビス(3-アミノブテノエート)、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2,2’-チオジエチレンビス3-(3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-チオビス(4-メチル6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(4,6-tert-ブチル-1-イル-2-)スルフィド、トリデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルチオアセテート、1,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-フェノール、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール、ジステアリルジスルフィド、ビス(メチル-4-3-n-(C12/C14)アルキルチオプロピオニルオキシ5-tert-ブチルフェニル)スルフィド、および/またはそれらの混合物から選択される。
【0075】
より好ましくは、本発明によるチオエーテルは、ジラウリルチオジプロピオネート(DLTDP)、ジトリデシルチオジプロピオネート(DTDTDP)、ジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)、ジミリスチルチオジプロピオネート(DMTDP)、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネートまたは3-ラウリルチオプロピオネート)、および/またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0076】
さらにより好ましくは、チオエーテルはDLTDPである。
【0077】
さらにより好ましくは、チオエーテルはペンタエリスリチルテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)である。そのような化合物は特に、Songnox社より、またはADK STAB AO-412Sの商品名でAdeka社より販売されている。
【0078】
好ましくは、チオエーテルは、180℃以下、好ましくは160℃以下、優先的には140℃以下、さらにより優先的には130℃以下、または100℃以下の融点を有する。
【0079】
ポリマー粉末
一実施形態によれば、本発明によるポリマー粉末は、熱可塑性ポリマー(a)、スルホン酸塩(b)、および場合によりチオエーテル(c)、フィラーもしくは補強材(d)、および/または1つまたは複数のさらなる添加剤(e)を含む。
【0080】
一実施形態によれば、本発明による粉末は、
(a)重量で30%~99.9%、好ましくは40%~95%の上記で定義されるような熱可塑性ポリマー;
(b)重量で0.1%~10%、好ましくは0.1%~5%の上記で定義されるようなスルホン酸塩;
(c)重量で0%~5%、好ましくは0.1%~1%の上記で定義されるようなチオエーテル;
(d)重量で0%~50%、好ましくは10%~50%、特に20%~40%のフィラーまたは補強材;および
(e)重量で0%~10%、好ましくは0.1%~7.5%、特に1%~5%のさらなる添加剤
を含み、成分(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)のそれぞれの割合が合計で100%になる。
【0081】
一実施形態によれば、本発明による粉末は、
(a)重量で75%~99.9%、好ましくは85%~99%の上記で定義されるような熱可塑性ポリマー;
(b)重量で0.1%~10%、好ましくは0.1%~5%の上記で定義されるようなスルホン酸塩;
(c)重量で0%~5%、好ましくは0.1%~1%の上記で定義されるようなチオエーテル;
(e)重量で0%~10%、好ましくは0.1%~7.5%、特に1%~5%のさらなる添加剤
を含み、成分(a)、(b)、(c)、および(e)のそれぞれの割合が合計で100%になる。
【0082】
成分(e)はこれらの添加剤のうち1つまたは複数を含んでもよい。
【0083】
一実施形態によれば、スルホン酸塩は、ポリマー粉末の総重量に対して重量で0.1%~3%、または3%~5%、または5%~10%、または10%~15%、または15%~20%に相当する。特に、スルホン酸塩は、ポリマー粉末の総重量に対して0.5%~10重量%、または0.5%~5重量%に相当し得る。
【0084】
好ましくは、チオエーテルは、ポリマー粉末の総重量に対して重量で少なくとも0.1%、好ましくは0.1%~5%、好ましくは0.1%~3%、好ましくは0.1%~2%、好ましくは0.1%~1%に相当する。
【0085】
典型的には、チオエーテルは、ポリマー粉末の総重量に対して重量で少なくとも0.2%、例えば少なくとも0.3%、典型的には少なくとも0.4%、および典型的には5%未満、例えば4%未満、好ましくは3%未満に相当する。
【0086】
好ましくは、ポリマー粉末は、80~220℃、好ましくは100~200℃の第1の加熱の融点(Mp1)を有する。
【0087】
粉末は、40~250℃、好ましくは45~200℃、例えば45~150℃の結晶化温度(Tc)を有してもよい。
【0088】
ポリマー(a)の混合物を考える場合、混合物中の最低のMpがMpとみなされ、混合物中の最高のTcがTcとみなされる。
【0089】
粉末のTcとMpとの差は好ましくは20℃以上、またはより好ましくはさらに30℃以上である。
【0090】
一実施形態によれば、粉末の溶液におけるインヘレント粘度は、焼結の方法での使用前で、典型的には3未満、好ましくは2未満である。
【0091】
好ましくは、焼結の方法における第1のビルド後の、電磁波により影響を受けていない粉末のインヘレント粘度は、0.8~3、好ましくは1~2である。
【0092】
典型的には、本発明によるポリマー粉末は、40~150μm、好ましくは40~100μmのDv50直径を有する。例えば、ポリマー粉末のDv50直径は、40~45μm;または45~50μm;または50~55μm;または55~60μm;または60~65μm;または65~70μm;または70~75μm;または75~80μm;または80~85μm;または85~90μm;または90~95μm;または95~100μm;または100~105μm;または105~110μm;または110~115μm;または115~120μm;または120~125μm;または125~130μm;または130~135μm;または135~140μm;または140~145μm;または145~150μmであってもよい。
【0093】
フィラーおよび補強材
本発明によるポリマー粉末は、特に印刷物品が特に弾性率に関して十分な機械的特性を有することを確実にするために、場合によりフィラーまたは補強材をさらに含んでもよい。これらのフィラーは特に炭酸塩鉱物、特に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト石灰岩、方解石、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ドロマイト鉱物、アルミナ水和物、珪灰石、モンモリロナイト、ゼオライト、パーライト、またはナノフィラー(ナノメートルのオーダーの寸法を有するフィラー)、例えばナノクレイなど、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、例えばタルカンなど、マイカ、カオリン、アタパルジャイト、およびそれらの混合物であってもよい。補強材として、カーボンナノチューブ、ガラス粉末、ガラスファイバーおよび炭素繊維、ならびにまた場合によりシランでコーティングされた固体または中空ガラスビーズも特に挙げることができる。成分(c)は1つまたは複数のフィラーおよび/または補強材を含んでもよい。有利には、フィラーおよび補強材は、顔料組成物のための下記で定義されるような顔料を含まない。
【0094】
より具体的には、本発明の粉末は、0%~60%、または5%~50%、または10%~40%、または10%~30重量%の成分(c)を含んでもよい。一実施形態によれば、ポリマー粉末はフィラーおよび補強材を含まない。
【0095】
さらなる添加剤
ポリマー粉末は、必要に応じて、焼結による3D印刷で使用されるポリマー粉末において慣例的であるさらなる添加剤を含んでもよい。
【0096】
これらは特に、粉末形態であるかどうかにかかわらず、焼結による3D印刷における粉末の挙動を改善することに寄与する添加剤、ならびに印刷物品の特性、特に機械的強度、耐熱性、耐火性、特に破断伸びおよび衝撃強度を改善することを可能にする添加剤であってもよい。
【0097】
これらの慣例的な添加剤は特に、流動剤、鎖制限剤、防火剤、難燃剤、UV安定化剤、抗酸化剤、耐摩耗剤、光安定剤、耐衝撃性改良剤、静電防止剤、顔料、およびワックスから選択されてもよい。
【0098】
流動剤
例として、流動剤は例えばシリカ、特に疎水性ヒュームドシリカから選択されてもよく;例えば、Cabot CorporationによりCab-o-Sil(登録商標)TS610の名称で販売される製品、沈降シリカ、含水シリカ、石英ガラス、焼成シリカ、ガラス質酸化物、特にガラス質リン酸塩、ガラス質ホウ酸塩、アルミナ、例えばアモルファスアルミナなど、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0099】
抗酸化剤
例えば、本発明の粉末は、フェノール系抗酸化剤、例えば3,3’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-N,N’-ヘキサメチレンジピロピオンアミド、特にPalmarole社よりPalmarole AO.OH.98の名称で販売されるもの、(4,4’-ブチリデンビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)、特にAddivant社よりLowinox(登録商標)44B25の名称で販売されるもの、ペンタエリスリチルテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、特にBASF社よりIrganox(登録商標)1010の名称で販売されるもの、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))、特にBASF社よりIrganox(登録商標)1098の名称で販売されるもの、3,3’,3’,5,5’,5’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、特にBASF社よりIrganox(登録商標)1330の名称で販売されるもの、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート)、特にBASF社よりIrganox(登録商標)245の名称で販売されるもの、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、特にBASF社よりIrganox(登録商標)3114の名称で販売されるもの、N’N’-(2-エチル-2’-エトキシフェニル)オキサニリド、特に特にBASF社よりTinuvin(登録商標)312の名称で販売されるもの、[(4,4’,4’’-トリメチル-1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(メチレン)]トリス2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェノール、特に3V社によりAlvinox(登録商標)1330、Clariant社によりHostanox(登録商標)245FF、Hostanox(登録商標)245 Pwdの名称で販売されるもの、ペンタエリスリチルテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、特にEverspring Chemical Company LimitedによりEvernox(登録商標)10およびEvernox(登録商標)10GFの名称で販売されるもの、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、特にEverspring Chemical Company LimitedよりEvernox(登録商標)76およびEvernox(登録商標)76GFの名称で販売されるもの、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、特にMayzo社よりBNX(登録商標)1010の名称で販売されるもの、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、特にMayzo社よりBNX(登録商標)1035の名称で販売されるもの、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、特にMayzo社よりBNX(登録商標)2086の名称で販売されるもの、ならびに1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、特にMayzo社よりBNX(登録商標)3114の名称で販売されるものなどを含んでもよい。
【0100】
粉末はまた、抗酸化剤、例えば芳香族または脂肪族ホスホニットを含む化合物、(Clariant社より販売される製品Hostanox(登録商標)P-EPQ(登録商標)など)、フェニルホスホン酸または次亜リン酸のアルカリ金属塩、ホスフィット官能基を含む化合物、例えばトリアルキルホスフィットおよびトリアルキルアリールホスフィットなど、ならびにペンタエリトリトールに由来する環状ジホスフィットなども含んでもよい。BASF社により販売されるIrgafos(登録商標)168を挙げることができる。トリアルキルおよびトリアルキルアリールホスフィットの例として、トリノニルホスフィット、トリ(ノニルフェニル)ホスフィット、およびトリ[(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチル)フェニル]ホスフィットを挙げることができる。ペンタエリトリトールに由来する環状ジホスフィットの例としては、ジステアリルペンタエリトリトールジホスフィットを挙げることができる。
【0101】
顔料
顔料は、規格ASTM E1790に準拠して測定される、1000nmの波長を有する光の吸光度が40%未満である顔料、例えば金属酸化物および遷移金属酸化物、ならびにまたそれらの対応する混合物、混合酸化物、およびドープ酸化物から選択されるものなどであってもよい。例えば、酸化物は、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化クロム、酸化チタン、もしくは酸化ケイ素、またはそれらの対応する混合物、混合酸化物、もしくはドープ酸化物から選択される。
【0102】
ワックス
ワックスは、ポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ケトン、酸、部分エステル化した酸、酸無水物、エステル、アルデヒド、アミドのワックス、それらの誘導体および混合物を含んでもよい。ワックスは特に、Arkema社によりCrayvallac(登録商標)WN1135、WN1495、もしくはWN1265の名称で販売される製品、またはClariant社によりCeridust(登録商標)9615A、もしくは8020の名称で販売される製品を含んでもよい。
【0103】
一実施形態によれば、ワックスは、ポリマー粉末を少なくとも部分的に被覆するコーティングの形態で組成物中に存在する。
【0104】
鎖制限剤
本発明の粉末は、各々が直鎖または環状であってもよい、ジカルボン酸、モノカルボン酸、ジアミンおよびモノアミンから選択される鎖制限剤を含んでもよい。
【0105】
好ましくは、鎖制限剤は180℃未満の融点を有する。
【0106】
モノカルボン酸は好ましくは2~20個の炭素原子を有する。モノカルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、およびステアリン酸、ラウリン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ヘキサデカン酸、オクトデカン酸、およびテトラデカン酸を挙げることができる。
【0107】
ジカルボン酸は、好ましくは2~20個の炭素原子、より好ましくは6~10個の炭素原子を有する。ジカルボン酸の例としては、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、ドデカンジカルボン酸、ブタン二酸、およびオルソフタル酸を挙げることができる。
【0108】
モノアミンは特に、2~18個の炭素原子を有する第1級アミンであってもよい。モノアミンの例としては、1-アミノペンタン、1-アミノヘキサン、1-アミノヘプタン、1-アミノオクタン、1-アミノノナン、1-アミノデカン、1-アミノウンデカン、1-アミノドデカン、ベンジルアミン、およびオレイルアミンを挙げることができる。
【0109】
ジアミンは特に、4~20個の炭素原子を含む第1級ジアミンであってもよい。ジアミンの例としては、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、および2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)の異性体、ならびにパラ-アミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)、およびピペラジンを挙げることができる。
【0110】
一実施形態によれば、鎖制限剤は、熱可塑性ポリマーの総重量に対して、または熱可塑性ポリマーがポリアミドである場合はポリアミドの総重量に対して、0.01%~10%、好ましくは0.01%~5%、好ましくは0.01%~4%、好ましくは0.01%~3%、好ましくは0.01%~2%、好ましくは0.01%~1重量%に相当する。
【0111】
鎖制限剤は、熱可塑性ポリマーの総重量に対して、または熱可塑性ポリマーがポリアミドである場合はポリアミドの総重量に対して、0.01%~2重量%に相当し得る。
【0112】
好ましくは、鎖制限剤は、熱可塑性ポリマーの総重量に対して、または熱可塑性ポリマーがポリアミドである場合はポリアミドの総重量に対して、0.01%~0.5%、0.01%~0.4%、0.01%~0.3%、0.01%~0.2重量%に相当する。
【0113】
ポリマー粉末を調製するための方法
ポリマー粉末は通常の方法にしたがって製造することができる。
【0114】
特に顆粒、フレーク、または粉末の形態である、市販の熱可塑性ポリマー(成分(a))を使用してもよい。必要に応じて、成分(a)は既知の方法により、特に研削により、粉末へ転換することができる。
【0115】
研削は室温での研削であってもよい。
【0116】
あるいは、研削は極低温研削であってもよい。この方法では、材料をより脆くさせ結果として研削を容易にするために、研削しようとする材料を例えば液体窒素、液体二酸化炭素、または液体ヘリウムによりする冷却する。
【0117】
研削は、例えばピンミル、ハンマーミル、またはワールミルで行うことができる。
【0118】
この場合、本発明による粉末を調製するための方法は、
(i)熱可塑性ポリマー(a)を研削して40~150μmのDv50直径を有する粉末を得る工程と、その後または前に、
(ii)上記で定義されるような少なくとも1つのスルホン酸塩(b)、およびまた必要に応じて1つまたは複数の成分(c)~(e)も導入する工程と
を含む。
【0119】
当業者に既知の方法にしたがって、研削の前に成分を熱可塑性ポリマー(成分(a))へ添加してもよい。
【0120】
例として、添加は、溶融状態で、例えば押出機(コンパウンディング)で、または湿潤含浸により(例えば欧州特許第3325535B1号に記載される方法を参照してもよい)行うことができる。
【0121】
成分が研削後に、例えば乾式混合により添加される場合、成分が3D印刷に適したDvを有する粉状の形態であることが好ましい。
【0122】
別法として、スルホン酸塩(成分(b))、および必要に応じて1つまたは複数の成分(c)~(e)は、熱可塑性ポリマーの合成中に熱可塑性ポリマーへ添加されてもよい。
【0123】
この場合、本発明による粉末を調製するための方法は、
(i)熱可塑性ポリマー(a)を合成する工程と、その間またはその前に、
(ii)上記で定義されるような少なくとも1つのスルホン酸塩(b)、およびまた必要に応じて1つまたは複数の成分(c)~(e)も導入する工程と
を含む。
【0124】
例えば、添加剤成分(複数可)の存在下でポリマーを溶液から共析出させることにより(溶解/析出)、成分を混合することが可能である。条件は当業者により容易に適合させることができる。例えば欧州特許第0863174B1号の文献を参照してもよい。
【0125】
米国特許第9738756号に記載される方法におけるプレポリマーの合成の間もしくはその後に、その成分を成分(a)のプレポリマーと混合する、または欧州特許第2247646B1号に記載されるように、その成分を溶融相中でプレポリマーと混合する(コンパウンディング)ことも可能である。
【0126】
別法としてまたは追加として、スルホン酸塩(成分(b))、および必要に応じて1つまたは複数の成分を、熱可塑性ポリマー(a)との乾式混合により添加してもよい。
【0127】
この場合、本発明による粉末を調製するための方法は、スルホン酸塩(b)、および必要に応じて1つまたは複数の成分(c)~(e)が乾式混合により粉末中に取り込まれる工程を含む。
【0128】
添加剤に応じて、ポリマー組成物への添加剤の導入においてこれらの方法のいくつかを使用することも可能である。
【0129】
所望の粒径プロファイルを得るために、このようにして得られた粉末はその後ふるい分けされるかまたは選別工程が行われてよい。
【0130】
ポリマー粉末を焼結による3D印刷により適したものにするために、使用前に、ポリマー粉末にその後必要に応じて様々な処理、特に熱処理または水圧処理を行ってもよい。
【0131】
調製方法に応じて、成分は任意の適切な形態で使用することができる。
【0132】
一実施形態によれば、1つまたは複数の成分は粉末形態で使用される。粉末を形成する粒子の形状およびサイズは、焼結による3D印刷の用途によること以外は特に限定されない。粒子は一般に球状の形状を有する。しかし、他の形状でのそれらの使用、例えば棒状または層状の形態などは除外されない。
【0133】
成分が乾式混合ポリマーへ添加される場合、それらは有利には、共に混合される粉末の体積中位径とほぼ同等またはそれ未満の体積中位径Dv50を有する。より具体的には、成分の体積中位径Dv50は好ましくは0.01~50μm、好ましくは0.05~30μm、より好ましくは0.1~20μm、特に0.2~10μm、最も具体的には0.5~5μmである。
【0134】
以下の実施例を用いて、本発明を非限定的にさらに説明することにする。
【実施例】
【0135】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく本発明を例証する。実施例において、別段の指定がない限り、すべてのパーセンテージおよび部は重量で表される。
【0136】
試験はポリアミド11をベースとした粉末組成物を取り上げているが、本発明による組成物はこの実施形態に限定はされず、任意のタイプのポリマー、特にポリアミドを単独でまたは混合物として含んでもよいことが理解される。
【0137】
実施例I
使用されるベース粉末1は、ベース粉末1の総重量に対して、99.2重量%のポリアミド11;0.6重量%の抗酸化剤であるN,N’-1,6-ヘキサンジイルビス[3-(3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニルプロパンアミド)];および0.2重量%の流動剤(疎水性ヒュームドシリカ)を含有する粉末である。
【0138】
欧州特許第2247646B1号に記載される方法にしたがってポリアミド11を調製し、ここでは抗酸化剤がコンパウンディングによりポリアミドプレポリマー中に取り込まれた。
【0139】
流動剤をその後乾式混合により以下の通りに添加した。
【0140】
混合しようとする化合物を上記に示される割合でHenschel IAM 6L ミキサーへ導入し、撹拌を室温にて900rpmで100秒間行う。
【0141】
測定される粉末のDv50は50μmである。
【0142】
実施例2~3では、スルホン酸塩を以下の通りに乾式混合によりポリマー粉末へ添加する。
【0143】
ポリアミド粉末をスルホン酸塩と共に下記の表1に示される割合でHenschel IAM 6L ミキサーへ導入し、撹拌を室温にて900rpmで100秒間行う。
【0144】
Hostapon(登録商標)TPHCは、Clariant社より販売される製品、ナトリウム2-(メチルオレオイルアミノ)エタン-1-スルホネートである。
【0145】
Hostapon(登録商標)SCI 85は、Clariant社より販売される製品、2-ブタノイルオキシエタンスルホネート(ナトリウムココイルイセチオネートとも呼ばれる)である。
【0146】
粉末のエージング試験および黄色度指数(YI)の測定
a)固体状態
試験は、実施例の粉末を換気オーブンに置かれたガラス瓶中で72時間、177℃で曝露することで構成される。結果を表2に示す。
【0147】
この試験は粉末が3Dプリンターにおいてさらされ得る曝露条件をシミュレートしている。黄色度指数(YI)の測定は、規格ASTM(E313-96)(D65)に準拠して、正反射光込み(SCI)方式において10°の光源D65を有するKonica Minolta分光比色計で行われる。
【0148】
b)溶融状態
試験は、実施例の粉末を換気オーブンに置かれたアルミニウムるつぼ中で2時間、220℃で曝露することで構成される(およそ2mm厚さの粉末層)。
【0149】
溶融フィルムをその後取り外し、Leneta form 2A不透明度チャートの白色部分の前にそれを置くことにより測定を行う。
【0150】
この試験は、部材が構築される際に部材が3Dプリンターにおいてさらされ得る曝露条件をシミュレートしている。
【0151】
黄色度指数(YI)の測定は、規格ASTM(E313-96)(D65)に準拠して、SCIモードにおいて10°の光源D65を有するKonica Minolta分光比色計で行われる。結果を表2に示す。
【0152】
固体状態および溶融状態におけるエージング試験の間、スルホン酸塩を含まない粉末(実施例1)と比較して、スルホン酸塩を含む粉末(実施例2および3)についての黄色度指数値がより低いことが観察された。したがって、ポリアミド粉末におけるスルホン酸塩の使用は、粉末の色安定性、およびまた印刷部材の色安定性も改善することを可能にする。
【0153】
実施例II
使用されるベース粉末2および3は、ベース粉末の総重量に対して、98.9重量%のポリアミド11;0.4重量%の抗酸化剤であるトリエチレングリコールビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート;0.2重量%の流動剤(疎水性ヒュームドシリカ)、および0.5重量%のチオエーテルを含む。
【0154】
測定される粉末のDv50は50μmである。
【0155】
ベース粉末2において使用されるチオエーテルは、Adeka社より販売されるペンタエリスリチルテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)である。
【0156】
ベース粉末3において使用されるチオエーテルは、Songnox社により販売されるジラウリルチオジプロピオネート(DLTDP)である。
【0157】
欧州特許第2247646B1号に記載される方法にしたがってベース粉末2および3を調製し、ここでは抗酸化剤およびチオエーテルをコンパウンディングによりポリマーへ添加した。実施例Iに記載される方法にしたがって流動剤をその後乾燥混合により粉末へ添加した。
【0158】
実施例6~9では、実施例Iに記載される方法にしたがって、さらなるスルホン酸塩を乾燥混合によりベース粉末に添加する。
【0159】
粉末のエージング試験および黄色度指数(YI)の測定
固体状態および溶融状態におけるエージング試験を実施例Iに記載されるプロトコルにしたがって行った。
【0160】
固体状態および溶融状態におけるエージング試験の間、スルホン酸塩を含まない粉末(実施例4~5)と比較して、スルホン酸塩(実施例6~9)を含む粉末についての黄色度指数値がより低いことが観察された。したがって、チオエーテルを含有するポリアミド粉末におけるスルホン酸塩の使用は、非常に有利なことに粉末の色安定性、およびまた印刷部材の色安定性を改善することを可能にする。
【0161】
粉末のインヘレント粘度
規格ISO 307:2007に準拠して、メタクレゾール中、0.5質量%の溶液において、インヘレント粘度を20℃で測定する。
【0162】
表5の実施例9(スルホン酸塩を含む)は、実施例4および5(スルホン酸塩を含まない)のインヘレント粘度よりもインヘレント粘度の増加が少ないことを示す。これは、粉末へのスルホン酸塩の添加が前記粉末のインヘレント粘度を安定化させ、また前記粉末をより良好にリサイクルすることも可能にすることを示し、なぜならこれは反応性がより低いためである。
【国際調査報告】