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特表2024-525474ガス状流出物から二酸化炭素を分離するための塩基とアゾールとを含有している吸収剤水性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ガス状流出物から二酸化炭素を分離するための塩基とアゾールとを含有している吸収剤水性組成物
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240705BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240705BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240705BHJP
   C07D 233/00 20060101ALI20240705BHJP
   C07D 233/06 20060101ALI20240705BHJP
   C07D 233/34 20060101ALI20240705BHJP
   C07D 233/26 20060101ALI20240705BHJP
   C07D 249/08 20060101ALI20240705BHJP
   C07D 249/04 20060101ALI20240705BHJP
   C07D 249/14 20060101ALI20240705BHJP
   C07D 473/34 20060101ALI20240705BHJP
   C07D 233/64 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/14 220
C07D233/00
C07D233/06
C07D233/34
C07D233/26
C07D249/08
C07D249/04
C07D249/14
C07D249/08 511
C07D473/34
C07D233/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580684
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2022067622
(87)【国際公開番号】W WO2023274985
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】2107216
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ペトー ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ジレル エチエンヌ
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC05
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA20
4D002DA01
4D002DA02
4D002DA03
4D002DA04
4D002DA05
4D002DA06
4D002DA07
4D002DA12
4D002DA16
4D002DA31
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA01
4D002GB08
4D002HA08
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA02
4D020BA08
4D020BA09
4D020BA11
4D020BA16
4D020BB03
4D020BB04
4D020BC01
4D020CB40
4D020CC09
4D020DA03
4D020DB07
(57)【要約】
本発明は、ガス状流出物中に含有される二酸化炭素を吸収するための組成物であって、水性溶媒Z中の炭酸塩、炭酸水素塩または水酸化物のタイプの塩基Bまたは塩基Bの混合物の、少なくとも1種の不飽和複素環式有機化合物R(NH)(式中、基Rは、脂環式、モノまたはポリ芳香族または少なくとも1個の窒素原子を有するヘテロ環式基であり、nは1~20である)との組み合わせおよび/または水性溶媒Z中で前記塩基Bまたは塩基Bの前記混合物を前記化合物R(NH)と反応させることによって得られた生成物を含む組成物に関する。本発明は、前記組成物を用いてガス状流出物中のCOを捕捉するための方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状流出物中に含有される二酸化炭素を吸収するための吸収剤組成物であって、水性溶媒Z中の塩基Bまたは塩基Bの混合物の少なくとも1種の化合物R(NH)との組み合わせおよび/または前記水性溶媒Z中の前記塩Bまたは塩基Bの前記混合物の前記化合物R(NH)との反応によって得られた生成物を含んでいる、組成物:式中、
- Bは、一般式M(HCOまたはM’(CO)またはM’’(OH)の1種に対応する塩基または塩基の混合物であり、ここで、M、M’、M’’は、同一または異なり、区別なく、以下:
- 1価カチオン、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウム、
- 一般式Rに対応する第4級アンモニウムカチオン、式中、R、R、RおよびRは、独立して、水素原子、分枝または非分枝の、飽和または不飽和の脂肪族の、置換または無置換の、飽和または不飽和の脂環の、置換または無置換の、飽和または不飽和のヘテロ環の、置換または無置換の、モノ芳香族またはポリ芳香族の炭化水素ベースの基であって、1~20個の炭素原子を含有しているものから選ばれ、R、R、RおよびRは、共有結合により対で結合されて、5~8個の原子を有するヘテロ環を形成することが可能である、
- 2価カチオン、例えば、マグネシウム、カルシウムまたはバリウム
から選ばれ、
x、y、wは、1または2に等しい;
- R(NH)は、不飽和ヘテロ環有機化合物または不飽和ヘテロ環有機化合物の混合物であり、ここで、基Rは、脂環、モノ芳香族またはポリ芳香族、または少なくとも1個の窒素原子を有するヘテロ環の基であり、nは、1~20、好ましくは1~6であり、大いに好ましくは、nは、2または3に等しい;
- Zは、本質的に水または水を含む溶媒の混合物である。
【請求項2】
塩基Bまたは塩基Bの混合物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムおよびデシルトリメチルアンモニウムの炭酸塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムおよびデシルトリメチルアンモニウムの重炭酸塩(または炭酸水素塩)、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびルビジウム、マグネシウム、カルシウムおよびバリウムの水酸化物から、単独でまたは混合物として選ばれる、請求項1に記載の二酸化炭素を吸収するための吸収剤組成物。
【請求項3】
化合物R(NH)は、不飽和ヘテロ環有機化合物であって、5個以上の原子の環中に少なくとも2、3または4個の窒素原子を含んでおり、当該環は、それぞれ、少なくとも3、2または1個の炭素原子を含んでいる、不飽和ヘテロ環有機化合物であり、好ましくは、前記化合物R(NH)は、5個の原子を含有している不飽和ヘテロ環であって、4個の炭素原子当たり少なくとも1個の窒素原子を有しているものを含む有機化合物である、請求項1または2に記載の二酸化炭素を吸収するための吸収剤組成物。
【請求項4】
前記基Rは、官能基、例えば、アルコール、エーテル、チオエーテル、ニトリル、ケトン、スルホン、スルホキシド、アミドまたはアミンによって存在する1個または複数個のヘテロ原子を含有している、請求項1~3のいずれか1つに記載の二酸化炭素を吸収するための吸収剤組成物。
【請求項5】
化合物R(NH)は、アゾール、例えば、イミダゾール、1,2,4-トリアゾール、2-メチルイミダゾール、1,2,3-トリアゾール、4(5)-メチルイミダゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-イミダゾリドン、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、L-ヒスチジン、アデニン、バルビツール酸、メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキシラート、2-エチルイミダゾール、4-メチル-5-イミダゾールカルボキシアルデヒド、2,4-ジメチルイミダゾールから選ばれ、大いに好ましくは、イミダゾール、1,2,4-トリアゾール、2-メチルイミダゾール、1,2,3-トリアゾール、4(5)-メチルイミダゾールおよび3-アミノ-1,2,4-トリアゾールから選ばれる、請求項1~4のいずれか1つに記載の二酸化炭素を吸収するための吸収剤組成物。
【請求項6】
化合物R(NH)は、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、4(5)-メチルイミダゾール、1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾールから選ばれる、請求項5に記載の二酸化炭素を吸収するための吸収剤組成物。
【請求項7】
溶媒Zは、本質的に水である、請求項1~6のいずれか1つに記載の二酸化炭素を吸収するための吸収剤組成物。
【請求項8】
溶媒Zは、水に水と混和性のある別の溶媒または溶媒の混合物を組み合わせたものである、請求項1~6のいずれか1つに記載の二酸化炭素を吸収するための吸収剤組成物。
【請求項9】
水は、溶媒Zの全量に相対して最低30重量%、好ましくは最低50重量%、大いに好ましくは最低60重量%を占める、請求項8に記載の二酸化炭素を吸収するための吸収剤組成物。
【請求項10】
前記他の溶媒は、グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコールのコポリマー、グリコールエーテル、チオグリコール、チオアルコール、スルホン、スルホキシド、アルコール、尿素、ラクタム、N-アルキルピロリドン、N-アルキルピペリドン、シクロテトラメチレンスルホン、N-アルキルホルムアミド、N-アルキルアセトアミド、エーテル-ケトン、リン酸アルキル、炭酸アルキレン、炭酸ジアルキルおよびそれらの誘導体から選ばれる、請求項8または9に記載の二酸化炭素を吸収するための吸収剤組成物。
【請求項11】
前記他の溶媒は、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エタノール、ポリエチレングリコール-200/400/600、N-メチルピロリドン、1,3-ジオキサン-2-オン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、アセトアミド、2-メトキシ-2-メチル-3-ブタノン、2-メトキシ-2-メチル-4-ペンタノン、テトラヒドロピリミドン、チオジプロピオン酸ジメチル、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホンまたはリン酸トリブチルから選ばれる、請求項10に記載の二酸化炭素を吸収するための吸収剤組成物。
【請求項12】
αモルのR(NH)が、各モルのBと結合されてよく、αは、式R(NH)中のNに結合した少なくとも1個の水素原子が、Bによって提供される塩基性基と結合されなければならないという条件を満たすように定義される正の数である、請求項1~11のいずれか1つに記載の二酸化炭素を吸収するための吸収剤組成物。
【請求項13】
二酸化炭素を捕捉するための方法であって、処理されるべきCO含有ガス状流出物を請求項1~12のいずれか1つに記載の吸収剤組成物と接触させて、ガス状流出物のCOを枯渇させ、かつ吸収剤組成物をCOで富ませるようにする工程と、前記吸収剤組成物を再生し、COに非常に富むガスを生じさせる工程とを含む、方法。
【請求項14】
COに富む吸収剤組成物の再生を、蒸気相中に二酸化炭素を同伴するガスによるスチーム同伴または加熱または膨張もしくは蒸気相中に二酸化炭素を同伴するガスによるスチーム同伴、膨張および/または加熱から選ばれる工程の組み合わせによって行うことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス状流出物の脱炭酸に関し、より詳細には、本発明は、ガス状流出物中に含有されるCOを捕捉するための吸収剤水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は、種々の人間活動によって広く生じる温室効果ガスの1つであり、大気汚染に直接的な影響を与える。
【0003】
大気中に排出される二酸化炭素の量を削減するために、ガス状流出物中に含有されるCOを捕捉することが可能である。
【0004】
ガス状流出物、例えば、天然ガス、合成ガス、燃焼排ガス、製油所ガス、クラウス法からのテールガス、バイオマス発酵ガス、セメントプラントガスおよび高炉ガス等の脱炭酸は、一般に吸収剤溶液によるスクラブ洗浄により行われる。用いられる溶液の物理化学的特徴は、処理されるべきガスの性質と密接に関係する:不純物の選択的除去、処理されたガスに求められる仕様、処理されるべきガス中に存在する種々の化合物に対する溶媒の熱的および化学的安定性。
【0005】
現在一般的に用いられている溶媒は、特に第1級、第2級または第3級のアルカノールアミン水溶液と、任意選択に有機共溶媒、例えばメタノールとを含む。具体的には、吸収されたCOは、溶液中に存在するアルカノールアミンと、当業者に周知である可逆的な発熱反応に従って反応し、カルバミン酸塩、炭酸水素塩または炭酸塩の形成に至る。これらの平衡反応は、図1に示されるスキームにより書かれ得る:
第1級アルカノールアミン、例えば、モノエタノールアミンの場合、行われる反応は、カルバマートイオン、炭酸水素イオンおよび炭酸イオンを含む図1からの(上段にある)反応である。
【0006】
第2級アルカノールアミン、例えば、ジエタノールアミンの場合、それは、図1(中段)により書かれる。
【0007】
また、第3級アルカノールアミン、例えば、メチルジエタノールアミン等の場合、図1(下段)による。
【0008】
アルカノールアミン水溶液に対する1つの代替は、アルカリ金属炭酸塩の高温溶液の使用である。原理は、無機炭酸水素塩に至る反応に従う無機炭酸塩による水溶液中のCOの吸収と、無機炭酸水素塩を無機炭酸塩に変換する可逆反応による再生に基づいている。
【0009】
吸収剤溶液、例えば、ポリエチレングリコールまたは冷却メタノールを用いたスクラブ洗浄による脱炭酸の所定の方法は、COの物理的な吸収に基づいている。
【0010】
特許文献1および2には、二酸化炭素を吸収するための吸収剤組成物の使用が記載されており、アミジンおよびグアニジンから、またはホスファゼンからそれぞれ選ばれる特定の塩基を、少なくとも1個のチオールまたはアルコールの官能基を含んでいる化合物、および任意選択に非水溶媒と組み合わせる。
【0011】
特許文献3には、ガス状流出物中に含有される二酸化炭素を捕捉するための方法において用いられる、二酸化炭素を吸収するための吸収剤組成物が記載されており、水性媒体中に、炭酸塩および/または炭酸水素塩から選ばれる特定の塩基の、チオールから選ばれる化合物との組み合わせを含んでいる。
【0012】
ガスまたは煙道ガスの溶媒処理のための操作の必須の側面は、依然として、分離剤の再生である。吸収のタイプ(物理的および/または化学的)に応じて、膨張、蒸留および/または「ストリッピングガス」として知られる気化ガスの同伴による再生が一般的に想定されている。
【0013】
一般的に、上記の全ての吸収剤溶液の使用には、分離剤の再生に大きなエネルギー消費を必要とする。例えば、煙道ガス中のCOを捕捉するために用いられるエタノールアミンの水溶液の再生は、捕捉されたCOの重量(トン)当たり約4GJに相当する。このようなエネルギー消費は、CO捕捉方法にとってかなりの操作コストに相当する。
【0014】
本出願人は、水性媒体中に、炭酸塩および/または炭酸水素塩および/または水酸化物から選ばれる塩基の、アゾール化合物との組合せを含んでいる、特定の吸収剤組成物の使用により、ガス状流出物中に含有されるCOを捕捉するために有利な性能レベルを得ることが可能となったことを発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2909010号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第2909011号明細書
【特許文献3】仏国特許出願公開2934175号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の概要)
本発明は、ガス状流出物中に含有される二酸化炭素を吸収するための吸収剤組成物であって、水性溶媒Z中の塩基Bまたは塩基Bの混合物の少なくとも1種の化合物R(NH)との組み合わせおよび/または前記水性溶媒Z中の前記塩Bまたは塩基Bの前記混合物の前記化合物R(NH)との反応によって得られた生成物を含んでいる、組成物に関し、式中、
- Bは、一般式M(HCOまたはM’(CO)またはM’’(OH)の1種に対応する塩基または塩基の混合物であり、ここで、M、M’、M’’は、同一または異なり、区別なく、以下:
- 1価カチオン、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウム、
- 一般式Rに対応する第4級アンモニウムカチオン、式中、R、R、RおよびRは、独立して、水素原子、分枝または非分枝の、飽和または不飽和の脂肪族の、置換または無置換の、飽和または不飽和の脂環の、置換または無置換の、飽和または不飽和のヘテロ環の、置換または無置換のモノ芳香族またはポリ芳香族の炭化水素ベースの基であって、1~20個の炭素原子を含有しているものから選ばれ、R、R、RおよびRは、共有結合により対で結合されて、5~8個の原子を有するヘテロ環を形成することが可能である、
- 2価カチオン、例えば、マグネシウム、カルシウムまたはバリウム
から選ばれ、
x、y、wは、1または2に等しい;
- R(NH)は、不飽和ヘテロ環有機化合物または不飽和ヘテロ環有機化合物の混合物であり、ここで、基Rは、脂環、モノ芳香族またはポリ芳香族、または少なくとも1個の窒素原子を有するヘテロ環の基であり、nは、1~20、好ましくは1~6であり、大いに好ましくは、nは、2または3に等しい;
- Zは、本質的に水または水を含む溶媒の混合物である。
【0017】
塩基Bまたは塩基Bの混合物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムおよびデシルトリメチルアンモニウムの炭酸塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムおよびデシルトリメチルアンモニウムの重炭酸塩(または炭酸水素塩)、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびルビジウム、マグネシウム、カルシウムおよびバリウムの水酸化物から、単独でまたは混合物として選ばれる。
【0018】
前記化合物R(NH)は、不飽和ヘテロ環有機化合物であって、5個以上の原子の環中に少なくとも2、3または4個の窒素原子を含んでおり、当該環は、それぞれ、少なくとも3、2または1個の炭素原子を含んでいる、不飽和ヘテロ環有機化合物であってよく、好ましくは、前記化合物R(NH)は、5個の原子を含有している不飽和ヘテロ環であって、4個の炭素原子当たり少なくとも1個の窒素原子を有しているものを含む有機化合物である。
【0019】
前記基Rは、官能基、例えば、アルコール、エーテル、チオエーテル、ニトリル、ケトン、スルホン、スルホキシド、アミドまたはアミンによって存在する1個または複数個のヘテロ原子を含有してよい。
【0020】
化合物R(NH)は、アゾール、例えば、イミダゾール、1,2,4-トリアゾール、2-メチルイミダゾール、1,2,3-トリアゾール、4(5)-メチルイミダゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-イミダゾリドン、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、L-ヒスチジン、アデニン、バルビツール酸、メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキシラート、2-エチルイミダゾール、4-メチル-5-イミダゾールカルボキシアルデヒド、2,4-ジメチルイミダゾールから選ばれてよく、大いに好ましくは、イミダゾール、1,2,4-トリアゾール、2-メチルイミダゾール、1,2,3-トリアゾール、4(5)-メチルイミダゾールおよび3-アミノ-1,2,4-トリアゾールから選ばれてよい。
【0021】
好ましくは、化合物R(NH)は、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、4(5)-メチルイミダゾール、1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾールから選ばれる。
【0022】
1つの実施形態において、溶媒Zは本質的に水である。
【0023】
別の実施形態において、溶媒Zは、水に水と混和性のある別の溶媒または溶媒の混合物を組み合わせたものである。
【0024】
この場合、水は、溶媒Zの全量に相対して最低30重量%、好ましくは最低50重量%、大いに好ましくは最低60重量%を占める。
【0025】
前記他の溶媒は、グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコールのコポリマー、グリコールエーテル、チオグリコール、チオアルコール、スルホン、スルホキシド、アルコール、尿素、ラクタム、N-アルキルピロリドン、N-アルキルピペリドン、シクロテトラメチレンスルホン、N-アルキルホルムアミド、N-アルキルアセトアミド、エーテルケトン、リン酸アルキル、炭酸アルキレン、炭酸ジアルキルおよびそれらの誘導体から選ばれてよい。
【0026】
前記他の溶媒は、とりわけ、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エタノール、ポリエチレングリコール-200/400/600、N-メチルピロリドン、1,3-ジオキサン-2-オン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、アセトアミド、2-メトキシ-2-メチル-3-ブタノン、2-メトキシ-2-メチル-4-ペンタノン、テトラヒドロピリミドン、チオジプロピオン酸ジメチル、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホンまたはリン酸トリブチルから選ばれてよい。
【0027】
本発明による吸収剤組成物において、αモルのR(NH)が、各モルのBと結合されてよく、αは、式R(NH)中のNに結合した少なくとも1個の水素原子が、Bによって提供される塩基性基と結合されなければならないという条件を満たすために定義される正の数である。
【0028】
本発明は、二酸化炭素を捕捉するための方法であって、処理されるべきCO含有ガス状流出物を前記載の変形のいずれか1つによる吸収剤組成物と接触させて、ガス状流出物のCOを枯渇させ、かつ吸収剤組成物をCOで富ませるようにする工程と、前記吸収剤組成物を再生し、COに非常に富むガスを生じさせる工程とを含む、方法にも関する。
【0029】
COに富む吸収剤組成物の再生は、蒸気相中の二酸化炭素を同伴するガスによるスチーム同伴、加熱または膨張、もしくは蒸気相中の二酸化炭素を同伴するガスによるスチーム同伴、膨張および/または加熱から選ばれる工程の組み合わせによって行われてよい。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(図面のリスト)
図1は、第1級(1a)、第2級(1b)および第3級(1c)のアルカノールアミンについて、吸収されたCOが吸収剤溶液中に存在するアルカノールアミンと可逆的な発熱反応により反応し、カルバミン酸塩、炭酸水素塩または炭酸塩に形成に至る発熱反応を示す。
【0031】
図2は、本発明による吸収剤組成物を用いた吸収および再生によるCO捕捉方法の図を示す。
【0032】
図3は、測定温度における系の平衡圧力に応じた本発明による吸収剤組成物(1)(イミダゾールおよびKOH)中で利用可能な捕捉剤の量の単位当たりの捕捉されたCOの量を表す(順に、×印は40℃、三重十字は60℃、+印は70℃、ダッシュは80℃、および黒四角は90℃を示す)。
【0033】
図4は、本発明による吸収剤組成物(2)(1,2,4-トリアゾールおよびKOH)中で利用可能な捕捉剤の量の単位当たりの捕捉されたCOの量を表し、達成された平衡圧力、したがって捕捉されたCOの量に対する温度(上記の順に:40℃、60℃、70℃、80℃および90℃)の役割を示す。
【0034】
図5は、測定温度(上記の順に:40℃、60℃、70℃、80℃および90℃)における系の平衡圧力に応じた、先行技術(モノエタノールアミン)の基準として考慮される比較吸収剤組成物(3)中で利用可能な捕捉剤の量の単位当たりの捕捉されたCOの量を表す。
【0035】
図6は、比較吸収剤組成物(4)(KOH単独)中で利用可能な捕捉剤の量の単位当たりの捕捉されたCOの量(吸着等温線、上記の順に:40℃、60℃、70℃、80℃および90℃)を、実験のCO平衡圧力の範囲にわたって表す。
【0036】
図7は、本発明による吸収剤組成物(5)(2-メチルイミダゾールおよびKOH)中で利用可能な捕捉剤の量の単位当たりの捕捉されたCOの量を表し、かつ、達成された平衡圧力、したがって捕捉されたCOの量に対する温度(上記の順に:40℃、60℃、70℃、80℃および90℃)の役割を示す。
【0037】
図8は、測定温度(上記の順に;40℃、60℃、70℃、80℃および90℃)における系の平衡圧力に応じた、本発明による吸収剤組成物(6)(4(5)-メチルイミダゾールおよびKOH)中で利用可能な捕捉剤の量の単位当たりの捕捉されたCOの量を表す。
【0038】
図9は、本発明による吸収剤組成物(7)(3-アミノトリアゾールおよびKOH)中で利用可能な捕捉剤の量の単位当たりの捕捉されたCOの量を表し、かつ、達成された平衡圧力、したがって捕捉されたCOの量に対する温度(上記の順に:40℃、60℃、70℃、80℃および90℃)の役割を示す。
【0039】
(実施形態の説明)
本発明は、ガス状流出物中に含有される二酸化炭素を捕捉するための方法において用いられる、二酸化炭素を抽出するための媒体、より具体的には吸収剤組成物について記載し、当該方法は、水性媒体中に、炭酸塩および/または炭酸水素塩および/または水酸化物から選ばれる特定の塩基のアゾールタイプの化合物から選ばれる化合物との組合せを含む。
【0040】
より詳細には、本発明によるCOを吸収するための吸収剤組成物は、ガス状流出物中に含有される二酸化炭素を捕捉するための方法において用いられ、水性溶媒Z中の炭酸(水素)塩または水酸化物タイプの塩基Bまたは塩基Bの混合物の、少なくとも1種の化合物R(NH)との組み合わせ、および/または水性溶媒Z中の前記塩基Bまたは塩基Bの前記混合物の前記化合物R(NH)との反応によって得られた生成物を含む。
【0041】
さらに、本発明は、二酸化炭素捕捉方法に関し、以下の工程を行うことからなる:a)処理されるべきCO含有ガスを前記吸収剤組成物と接触させて、COが枯渇したガスとCOに富む吸収剤組成物とを得る工程と、b)COに豊富な吸収剤組成物を再生して、再度用いられ得る吸収剤組成物を得、かつCOに非常に豊富なガスを生じさせる工程。
【0042】
本発明による吸収剤組成物により、ガス状流出物中に含有される二酸化炭素を捕捉することが可能となる。一旦二酸化炭素を負荷したところで、吸収媒体は、従来技術からの吸収剤溶液よりも容易な条件下にさらに再生され得る。
【0043】
本発明によるCOを吸収するための吸収剤組成物は、水性溶媒Z中の炭酸(水素)塩または水酸化物タイプの一般式M(HCOまたはM’(CO)またはM’’(Oh)Wの1つに対応する塩基Bまたは塩基Bの混合物の化合物R(NH)との組み合わせおよび/または水性溶媒Z中の前記塩基Bまたは塩基Bの前記混合物の前記化合物R(NH)との反応によって得られた生成物を含み、ここで、
- Bは、炭酸(水素)塩タイプの一般式M(HCOまたはM’(CO)の1つに対応する塩基または塩基の混合物であってよく、ここで、MおよびM’は、同一または異なり、区別なく、以下:
- 1価カチオン、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウム、
- 一般式Rに対応する第4級アンモニウムカチオン;R、R、RおよびRは、独立して、水素原子、分枝または非分枝の、飽和または不飽和の脂肪族、置換または無置換の飽和または不飽和の脂環、置換または無置換の、飽和または不飽和のヘテロ環、または置換または無置換のモノ芳香族またはポリ芳香族の炭化水素ベースの基であって、1~20個の炭素原子を含有しているものから選ばれ、R、R、RおよびRは、共有結合により対で結合されて、5~8個の原子を有するヘテロ環を形成することが可能である、
- 2価カチオン、例えば、マグネシウム、カルシウムまたはバリウム
から選ばれ、
xおよびyは、1または2に等しい;
および/または、Bは、水酸化物タイプの一般式M’’(OH)に対応する塩基Bまたは塩基Bの混合物であってよく、ここで、M’’は、MまたはM’と同様に定義され、wは、1または2に等しく、
- R(NH)は、不飽和ヘテロ環有機化合物または不飽和ヘテロ環有機化合物の混合物であり、ここで、基Rは、脂環基、モノ芳香族またはポリ芳香族の基、または窒素含有(すなわち、少なくとも1個の窒素原子を含む)ヘテロ環基であり、nは1~20であり、
- 水溶液Zは、本質的に水または主として水を含む溶媒の混合物である。
【0044】
基Rは、有機化学の規則に従い、n個の-NHユニットに結合されている。
【0045】
好ましくは、-NHユニットの数(n)は、1~6であり、大いに好ましくは、nは、2または3に等しい。
【0046】
基Rは、官能基、例えば、アルコール、エーテル、チオエーテル、ニトリル、ケトン、スルホン、スルホキシド、アミドまたはアミンによって存在する1個または複数個のヘテロ原子を含有してよい。
【0047】
(NH)が環中に存在する場合、これは、アルキルおよび/またはさらなる官能基を含んでよい。
【0048】
1つの実施形態において、R(NH)は、ヘテロ環有機化合物またはヘテロ環有機化合物の混合物であって、5個以上の原子の環中に少なくとも2、3または4個の窒素原子を含み、当該環は、それぞれ少なくとも3、2または1個の炭素原子を含むものである。
【0049】
好ましくは、化合物R(NH)は、5個の原子を含有している不飽和ヘテロ環を有する有機化合物であり、当該ヘテロ環は、4個の炭素原子当たり少なくとも1個の窒素原子を有する。
【0050】
Rは、大いに好ましくは、3、2または1個の炭素原子を含んでいる環を表す。
【0051】
有利には、前記環は、少なくとも2個のナイトステイ原子、さらには少なくとも3個または少なくとも4個の窒素原子を含む。
【0052】
有利には、本発明による吸収剤組成物は、容易に入手可能で使用しやすい成分を含む。
【0053】
水性媒体中で有効な吸収剤組成物を得るという事実には、いくつかの利点がある。具体的には、水は無毒で、安価で、容易に入手可能な溶媒である。
【0054】
さらに、水により、例えば溶媒が有機化合物、例えば、メタノールである場合に非常に頻繁に必要となるガス精製操作を省くことが可能である。具体的には、二酸化炭素の分離の後のガス中に少量の溶媒が不可避的に同伴され、高価なさらなる精製工程が必要となる。
【0055】
水は、一般的に溶媒として用いられる有機分子とは異なり、劣化しないという利点も有している。
【0056】
水は、さらに、COに富む吸収剤組成物を再生する工程において現場内(in situ)で気化させることができるという利点を有している。こうして生じたスチームにより、吸収剤組成物を加熱すること、および/またはCOのストリッピング(スチーム同伴)を行うことが可能となる。
【0057】
炭酸(水素)塩または水酸化物タイプの塩基Bまたは塩基Bの混合物は一般式M(HCOまたはM’(CO)またはM’’(OH)の1つに対応しており、ここで、M、M’、M’’は、同一または異なり、区別なく、以下:
- 一価カチオン、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウム、
- 一般式Rに対応する第4級アンモニウムカチオン;R、R、RおよびRは、独立して、水素原子、分枝または非分枝の、飽和または不飽和の脂肪族、置換または無置換の、飽和または不飽和の脂環、置換または無置換の、飽和または不飽和のヘテロ環、または置換または無置換のモノ芳香族またはポリ芳香族の炭化水素ベースの基であって、1~20個の炭素原子を含有しているものから選ばれ、R、R、RおよびRは、共有結合により対で結合されて、5~8個の原子を有するヘテロ環を形成することが可能である、
- 2価カチオン、例えば、マグネシウム、カルシウムまたはバリウム
から選ばれ、
x、y、wは、独立して、1または2に等しい。
【0058】
本発明による吸収剤組成物に用いられる炭酸塩または炭酸水素塩タイプの塩基Bまたは塩基Bの混合物の中で、挙げられてよいのは、例えば、網羅的ではなく、以下の通りであり、単独でまたは混合物として用いられる:リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびルビジウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムおよびデシルトリメチルアンモニウムの炭酸塩およびリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびルビジウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムおよびデシルトリメチルアンモニウムの重炭酸塩(または炭酸水素塩)。
【0059】
この場合、大いに好ましくは、塩基Bは、カリウムまたはナトリウムの炭酸塩から選ばれる。
【0060】
本発明による吸収剤組成物に用いられる水酸化物タイプの塩基Bまたは塩基Bの混合物の中で、挙げられてよいのは、例えば、網羅的でなく、以下の通りであり、単独でまたは混合物として用いられる:リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびルビジウム、マグネシウム、カルシウムおよびバリウムの水酸化物。好ましくは、塩基Bは、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物であり、大いに好ましくは、塩基Bは、水酸化カリウムである。
【0061】
式R(NH)の化合物は、例えば、網羅的でなく、アゾール、例えば、イミダゾール、1,2,4-トリアゾール、2-メチルイミダゾール、1,2,3-トリアゾール、4(5)-メチルイミダゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-イミダゾリドン、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、L-ヒスチジン、アデニン、バルビツール酸、メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキシラート、2-エチルイミダゾール、4-メチル-5-イミダゾールカルボキシアルデヒドおよび2,4-ジメチルイミダゾールから選ばれてよい。
【0062】
好ましくは、化合物R(NH)は、イミダゾール、1,2,4-トリアゾール、2-メチルイミダゾール、1,2,3-トリアゾール、4(5)-メチルイミダゾールおよび3-アミノ-1,2,4-トリアゾールから選ばれてよい。
【0063】
大いに好ましくは、化合物R(NH)は、イミダゾールまたは1,2,4-トリアゾールまたは2-メチルイミダゾールまたは4(5)-メチルイミダゾールまたは3-アミノ-1,2,4-トリアゾールである。これらの化合物は、充填率と吸収のエンタルピーとの間で良好な妥協を可能にするからである。
【0064】
さらにより好ましくは、化合物R(NH)は、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、4(5)-メチルイミダゾールから選ばれてよい。
【0065】
溶媒Zは、本質的に水であってよい。用語「本質的に」は、本発明の目的のために、この場合、溶媒が水のみからなることを意味すると理解されるが、しかし、水に含まれ得る所定の固有の不純物を有する可能性も本発明から排除するものではない。
【0066】
溶媒Zは、水を含む溶媒の混合物であってもよい。
【0067】
好ましくは、溶媒Zが溶媒の混合物からなる場合、水は、依然として、主成分である。優先的には、溶媒Zの構成成分の数にもよるが、水は、そのため、溶媒の全量に相対して最低30重量%の含有率で存在してよい。大いに好ましくは、溶媒の混合物は、最低50重量%の水、あらに大いに優先的には最低60重量%の水を含んでよい。
【0068】
この場合、溶媒は、水に水と混和する別の溶媒または溶媒の混合物を組み合わされたものである。これらの溶媒は、グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコールコポリマー、グリコールエーテル、チオグリコール、チオアルコール、スルホン、スルホキシド、アルコール、尿素、ラクタム、N-アルキルピロリドン、N-アルキルピペリドン、シクロテトラメチレンスルホン、N-アルキルホルムアミド、N-アルキルアセトアミド、エーテル-ケトン、リン酸アルキル、炭酸アルキレン、炭酸ジアルキルおよびそれらの誘導体から選ばれる。
【0069】
例として、非限定的に、挙げられてよいのは、網羅的でなく、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エタノール、ポリエチレングリコール-200/400/600、N-メチルピロリドン、1,3-ジオキサン-2-オン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、アセトアミド、2-メトキシ-2-メチル-3-ブタノン、2-メトキシ-2-メチル-4-ペンタノン、テトラヒドロピリミドン、チオジプロピオン酸ジメチル、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホンまたはリン酸トリブチルである。
【0070】
一般に、吸収剤組成物は、1重量%~90重量%の水、好ましくは20重量%~80重量%の水、より好ましくは最低50重量%の水を含有してよい。
【0071】
水性媒体中で[B+αR(NH)aqと表記される、[B+αR(NH)]の形態にある2種の、それらの性質およびそれらの割合による、賢明な組み合わせは、二酸化炭素に対して有利な吸収剤組成物を構成することが発見された。各モルのBとαモルのR(NH)が結合し、このようにして形成された化学種は、次の一般的なスキームに従って水性媒体中でCOと反応するという特性を有する。
【0072】
【化1】
【0073】
式中、γは、吸収剤組成物[B+αR(NH)aq中に含有される反応性種と化学的に結合したCOのモル数を表す。
【0074】
係数αの値は、関与する2つの化学種の性質に依存する。αは、正の数である。好ましくは、αは、式R(NH)中のNに結合している少なくとも1つの水素原子が、Bによって提供される塩基性基と結合していなければならないという条件を満たさなければならない。例えば、モノ塩基B=M’’OHと化合物RNHとが結合している場合、αは、好ましくは、1以上である。
【0075】
このようにして、処理されるべきCO含有ガスは、吸収剤組成物との接触の
後に、COが枯渇することになる。
【0076】
二酸化炭素は、[B+αR(NH)aqに相対して過剰であっても不足であってもよく、これは、COを捕捉した後に、吸収剤組成物が、CO捕捉生成物[B,αR(NH),γ(CO)]aqに加えて、過剰量のCOまたは過剰量の[B+αR(NH)aqを含有してよいことを意味する。
【0077】
この反応は、可逆的である。逆反応は、下記の一般的なスキームによって表され得る。
【0078】
【化2】
【0079】
それ故に、吸収剤組成物に対して、[B+αR(NH)aqとCOを回復させることを目的とした操作が行われる。この操作により、COに非常に豊富なガスを発生させ、吸収剤組成物を再生することが可能になる。
【0080】
吸収剤組成物を再生するための操作は、ほとんどエネルギーを必要とせず、とりわけ、当業者に知られており(図1)、かつ、COを捕捉するために従来から用いられているような先に提示された平衡反応に従ってカルバミン酸塩、炭酸水素塩または炭酸塩をもたらす1種または複数種の第1級、第2級または第3級のアミンまたはそれらの組成物を用いてCOが抽出される場合に同量のCOを再生するために必要となるだろう操作より少ないエネルギーで済む条件下に行われてよい。
【0081】
同様に、吸収剤組成物の再生を通じて行うこの操作は、ほとんどエネルギーを必要としない、とりわけ、水性媒体中、R(NH)の非存在中で単独で用いられる塩基Bを用いてCOが抽出される場合に同一量のCOを再生するために必要となるだろう操作よりも少ないエネルギーで済む条件下に行われてよい。
【0082】
水性媒体中でR(NH)だけを用いても、混合物[B+αR(NH)aqほどには、ガス中に存在するCOを捕捉することができないことが観察された。しかしながら、賢明なチョイスに従い、かつ、好ましくは最適化されている割合での水性媒体中の塩基Bまたは塩基Bの混合物と化合物R(NH)との組み合わせにより、本発明によるCOの抽出および吸収剤組成物の再生の工程を行うことが可能になる。
【0083】
本発明によるCOを捕捉するためのシステムは、COを含有しているガスを処理するための方法において用いられてよい。
【0084】
二酸化炭素を捕捉する方法は、概略的に、以下の工程を含む:a)処理されるべきCO含有ガスを吸収剤組成物と接触させ、COに枯渇したガスとCOに豊富な吸収剤組成物とを得る工程、b)COに豊富な吸収剤組成物を再生し、再度用いられ得る再生済み吸収剤組成物を得るようにし、COに非常に豊富なガスを生じさせる工程。
【0085】
より具体的には、図2に描かれているように、二酸化炭素を捕捉するための方法において、処理されるべきガス(1)は、気体-液体接触器(A)に導入され、そこでそれは再生済み液体吸収剤組成物(10)と接触させられる。この結果、COが枯渇した処理ガス(2)と、COに豊富な分離媒体(11)とが得られる。COに豊富な吸収剤組成物は、熱交換デバイス(E)に導入され、COに豊富な加熱済み吸収剤組成物(12)を生じされる。熱は、COが希薄な高温の吸収剤組成物(13)の冷却によって供給される。これは、COが希薄な冷却済み吸収剤組成物の流れ(10)ももたらす。外部の高温および冷温の供給源(図示しない)が、流れ(10)および(12)の温度を、それぞれに構成要素(A)および(C)の操作条件に適合させるために用いられてよい。COに豊富な加熱済み吸収剤組成物(12)は、気体-液体分離設備(C)に導入され、そこで分離媒体が再生される。この分離の原動力は、熱交換デバイス(D)によって熱源(20)から供給される熱である。この結果、冷却された熱源(21)が得られる。あるいは、この熱源は、完全にまたは部分的に、図示しないストリッピングガスによって補給され得る。分離媒体の再生により、COの希薄な高温の分離媒体(13)と、COに豊富なガス流れ(3)とが生じる。選ばれた再生方法に応じて、流れ(3)のCOは、ストリッピングガスと混合されてよい。あるいは、流れ(3)は、COに豊富な分離媒体の膨張を生じさせ、これにより完全にまたは部分的に再生の原動力を構成することを目的としたデバイスに接続されてよい。COの希薄な高温の分離流れ(13)は、その熱を上記のデバイス(E)に伝達し、(A)の操作条件に適した温度でCOの希薄な冷却済み分離媒体(10)をデバイス(A)に提供するようにする。
【0086】
工程(A)の間の温度は、有利には20℃~80℃、好ましくは30℃~70℃であってよい。
【0087】
本発明によると、
【0088】
【化3】
【0089】
の反応に従う吸収剤組成物の再生は、以下のいずれかによって行われる:
- 再生されるべき溶媒中に含有される二酸化炭素を蒸気相で同伴するガスによるスチーム同伴(またはストリッピング)。ストリッピングガスは、例えば、吸収剤組成物中に存在する1種または複数種の化合物の気化によって現場内形成されてよい:それは、本発明に従って定義された化合物の1種であってよいが、それは、COとともに吸収された可能性のある処理されるべきガスに由来する化合物、例えば煙道ガスの場合には、水であってもよい。ストリッピングガスは、再生工程に添加されてもよい:それは、例えば、窒素、スチームあるいは吸収工程から得られた処理ガスの一部であってよい;または
- 加熱;または
- 膨張、または
- 3つの挙げられた再生方法の種々の組み合わせ。
【0090】
(実施例)
以下に提示される実施例は、本発明の技術的利点を例証するが、本発明の範囲を限定するものではない。それらは、実施例の実施の条件下における、種々の吸収媒体のCO吸収能力および種々の吸収剤組成物の対象となる化学種の吸収エネルギーを特に提示する。
【0091】
種々の吸収剤組成物におけるCOの吸収のテストを、以下の手順に従って行う。
【0092】
吸収剤組成物は、化合物の混合物から形成される。混合物を、まず、コントロールされた撹拌およびコントロールされた温度で、真空下に脱気して、COを含む残留ガスを脱気させる。既知質量の混合物を、次いで、不活性雰囲気下に、密閉反応器に注入して、周囲のCOによるあらゆる混入を避ける。次いで、目的の温度における混合物の飽和蒸気圧に達するまで、反応器内を減圧にする。
【0093】
次に、40℃、60℃、70℃、80℃および90℃で、大量の高純度COを反応器に、較正されたバラスト吐出によって注入し、オートマトンによって定義された0~3barの種々の圧力設定値を達成するようにする。COの注入の後に反応器において各圧力設定値に達したところで、40分間の状態維持を実行して、液体-蒸気の平衡を得るようにする。このようにして、反応器内の圧力を時間の関数としてモニターすることによって、各温度について、反応器に注入されたCOの量に対応している一連のポイントを得る。真空反応器の容積および挿入された混合物の容積が分かれば、気相の容積を計算することができ、したがって、気相中のCOのモル数と捕捉されたCOのモル数をそこから推測することができる。CO吸収工程が終了した時に、充填率を決定する。充填率を、当業者によって、捕捉されたCOのモル数を、吸収剤組成物中に存在する塩基性化合物(塩基または塩基の混合物)Bのモル数で除算した数であるとして定義する。
【0094】
40℃~90℃の一連の等温線を介して、混合物中のCOの反応のエンタルピーを充填率αの関数として決定することが可能であり、これは、混合物の温度、COの分圧および反応のエンタルピーの間の関係としての当業者に知られているギブス-ヘルムホルツの式を適用することにより行われる。
【0095】
さらに、排出プラントの出口のところで見られる典型的な割合の分圧(例えば、石炭火力発電所でPCO2=10kPa)で測定される充填率を記録して、混合物によって達成され得る充填率を観察するようにしてよい。
【0096】
以下の混合物を評価した。
【0097】
吸収剤組成物(1)(本発明に合致する)を、0.14molのKOHを、0.14molのイミダゾールおよび70gの水と混合することによって得る。
【0098】
吸収剤組成物(2)(本発明に合致する)を、0.14molのKOHを、0.14molの1,2,4-トリアゾールおよび70gの水と混合することによって得る。
【0099】
吸収剤組成物(3)(比較例)を、30g(0.49mol)のモノエタノールアミン(MEA)を水40gと混合することによって得る。この吸収剤組成物は、エタノールアミン(MEA)の30重量%水溶液に相当し、これは、煙道ガス中のCOを捕捉するための当業者に周知の基準溶媒である。
【0100】
吸収剤組成物(4)(比較例)を、0.14molのKOHと70gの水を混合することによって得る。この吸収剤組成物は、水酸化物塩基を含むが、化合物R(NH)を含有しない。
【0101】
吸収剤組成物(5)(本発明に合致する)を、0.14molのKOHを、0.14molの2-メチルイミダゾールおよび70gの水と混合することによって得る。
【0102】
吸収剤組成物(6)(本発明に合致する)を、0.14molのKOHを、0.14molの4(5)-メチルイミダゾールおよび70gの水と混合することによって得る。
【0103】
吸収剤組成物(7)(本発明に合致する)を、0.14molのKOHを、0.14molの3-アミノ-1,2,4-トリアゾールおよび70gの水と混合することによって得る。
【0104】
図3、4、5、6、7、8および9は、混合物(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)および(7)のCOの40、60、70、80および90℃における吸収等温線を提示する。
【0105】
図3、4および8に見られるように、図5との比較において、低い分圧、例えば、5kPa(40℃)におけるCOの平衡により達成された容量は、抽出媒体(3)の吸収剤組成物中の従来技術からの化合物のものよりも大きいか、または少なくとも等しく、ここで、[α:媒体(1):5kPa]=0.48molCO/molB、[α:媒体(2):5kPa]=0.58molCO/molBおよびα:媒体(7):5kPa]=0.56molCO/molBに対し、[α:媒体(3):5kPa]=0.48molCO/molB。CO10kPaおよび熱力学的平衡について、達成された容量はすべて、従来技術を代表する混合物(3)によって達成された容量よりも大きい(表1参照)。
【0106】
特別の注意がなされてよいのは、抽出媒体(5)および(6)の吸収剤組成物により得られたさらに優れた性能に対してであり、ここでは、5kPa(40℃)の低圧の平衡時のCOの分圧について、達成される容量は、さらに大きい:[α:媒体(5):5kPa]=0.67molCO/molB、[α:媒体(6):5kPa]=0.65molCO/molBおよび[α:媒体(7):5kPa]=0.56molCO/molBに対し、[α:媒体(3):5kPa]=0.48molCO/molB。
【0107】
以下の表1は、種々の吸収剤組成物について、40℃で10kPaの条件下での吸収後のCOの充填率による吸収エンタルピーと、比較のための同じ充填率による吸収エンタルピーとを提示する。
【0108】
【表1】
【0109】
これらの実施例は、本発明による吸収剤組成物(1)および(2)、ならびに(5)、(6)および(7)が、COの吸収のより低いエンタルピーに起因して、従来技術による吸収剤組成物(3)より多くのCOを捕捉し、より容易に再生されることを示している。再生は、化合物R(NH)を含まない混合物(4)に相対して特に容易である。
【0110】
さらに、吸収剤組成物(4)の本発明による吸収剤組成物(1)、(2)、(5)、(6)および(7)との結果の比較は、吸収されたCOの等量についての吸収剤組成物のより容易な再生を可能にするのは、本発明による水性媒体中の化合物R(NH)の化合物Bとの組み合わせであり、水中溶液中で単独で用いられた化合物Bではないことを明らかに示している。
【図面の簡単な説明】
【0111】
図1】第1級(1a)、第2級(1b)および第3級(1c)のアルカノールアミンについて、吸収されたCOが吸収剤溶液中に存在するアルカノールアミンと可逆的な発熱反応により反応し、カルバミン酸塩、炭酸水素塩または炭酸塩に形成に至る発熱反応を示す。
図2】本発明による吸収剤組成物を用いた吸収および再生によるCO捕捉方法の図を示す。
図3】測定温度における系の平衡圧力に応じた本発明による吸収剤組成物(1)(イミダゾールおよびKOH)中で利用可能な捕捉剤の量の単位当たりの捕捉されたCOの量を表す(順に、×印は40℃、三重十字は60℃、+印は70℃、ダッシュは80℃、および黒四角は90℃を示す)。
図4】本発明による吸収剤組成物(2)(1,2,4-トリアゾールおよびKOH)中で利用可能な捕捉剤の量の単位当たりの捕捉されたCOの量を表す。
図5】測定温度(上記の順に:40℃、60℃、70℃、80℃および90℃)における系の平衡圧力に応じた、先行技術(モノエタノールアミン)の基準として考慮される比較吸収剤組成物(3)中で利用可能な捕捉剤の量の単位当たりの捕捉されたCOの量を表す。
図6】比較吸収剤組成物(4)(KOH単独)中で利用可能な捕捉剤の量の単位当たりの捕捉されたCOの量(吸着等温線、上記の順に:40℃、60℃、70℃、80℃および90℃)を、実験のCO平衡圧力の範囲にわたって表す。
図7】本発明による吸収剤組成物(5)(2-メチルイミダゾールおよびKOH)中で利用可能な捕捉剤の量の単位当たりの捕捉されたCOの量を表す。
図8】測定温度(上記の順に;40℃、60℃、70℃、80℃および90℃)における系の平衡圧力に応じた、本発明による吸収剤組成物(6)(4(5)-メチルイミダゾールおよびKOH)中で利用可能な捕捉剤の量の単位当たりの捕捉されたCOの量を表す。
図9】本発明による吸収剤組成物(7)(3-アミノトリアゾールおよびKOH)中で利用可能な捕捉剤の量の単位当たりの捕捉されたCOの量を表す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】