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特表2024-525475タノトランスミッションを促進するように操作された免疫細胞及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】タノトランスミッションを促進するように操作された免疫細胞及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240705BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240705BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20240705BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240705BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240705BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 35/768 20150101ALI20240705BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 31/18 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20240705BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240705BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240705BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240705BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240705BHJP
   C12N 15/10 20060101ALN20240705BHJP
   C12N 15/33 20060101ALN20240705BHJP
   C12N 15/38 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N5/0783 ZNA
C12N5/0786
A61K35/15
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61P37/04
A61P33/00
A61P31/18
A61P31/14
A61P31/20
A61P31/22
A61P31/06
A61K45/00
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K39/00 H
A61K38/19
A61K35/768
A61K39/395 U
A61K38/07
A61K31/167
A61K31/18
A61K31/4045
A61K31/192
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/11 Z
C12N15/10 200Z
C12N15/33
C12N15/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580689
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 US2022035612
(87)【国際公開番号】W WO2023278641
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/216,505
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/308,195
(32)【優先日】2022-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519263969
【氏名又は名称】フラグシップ パイオニアリング イノベーションズ ブイ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ダービー,ライ
(72)【発明者】
【氏名】ナガラジャン,ニランジャナ,アディティ
(72)【発明者】
【氏名】カイザー,ウィリアム,ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ガフ,ピーター,ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ダカル,サビン
(72)【発明者】
【氏名】ユボー,アレクシ,ブノワ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC12
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA16
4C084BA24
4C084BA32
4C084BA44
4C084DA01
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC202
4C084ZC752
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA65
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4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB32
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB37
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4C086ZC75
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4C087MA02
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4C206ZB32
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZB37
4C206ZC55
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(57)【要約】
特定の態様では、本開示は、免疫細胞によるタノトランスミッションを促進する1つ又は複数の異種ポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞に関する。免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする1つ又は複数の核酸配列も含み得る。操作された免疫細胞を使用して、タノトランスミッションを促進し、免疫応答を促進し、癌を処置する方法も開示される。
【選択図】図1A-1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)キメラ抗原受容体(CAR)をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドであって、前記CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む、ポリヌクレオチド;並びに
(b)免疫細胞によるタノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチドであって、前記免疫細胞の活性化時に前記ポリヌクレオチドの発現を誘導する異種プロモーターに作動可能に連結された、ポリヌクレオチド
を含み、前記免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、又はマクロファージである、免疫細胞。
【請求項2】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、少なくとも1つのTCR型シグナル伝達ドメインを含む、請求項1に記載の免疫細胞。
【請求項3】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む、請求項2に記載の免疫細胞。
【請求項4】
前記CARが、ヒンジドメインをさらに含む、請求項3に記載の免疫細胞。
【請求項5】
前記プロモーターが、前記抗原結合ドメインが抗原に結合すると、前記ポリヌクレオチドの発現を誘導する、請求項1に記載の免疫細胞。
【請求項6】
前記異種プロモーターが、活性化T細胞核内因子(NFAT)プロモーター、STATプロモーター、AP-1プロモーター、NF-κBプロモーター、及びIRF4プロモーターからなる群から選択される、請求項1に記載の免疫細胞。
【請求項7】
前記TCR型シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータの細胞内ドメインを含む、請求項2に記載の免疫細胞。
【請求項8】
CD3ゼータの前記細胞内ドメインが、1つ又は複数の免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)における1つ又は複数のチロシン残基の突然変異を含む、請求項7に記載の免疫細胞。
【請求項9】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、以下:
(a)CD28の共刺激シグナル伝達ドメインとCD3ゼータの細胞内ドメイン;
(b)4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメインとCD3ゼータの細胞内ドメイン;及び
(c)CD28の共刺激シグナル伝達ドメイン、4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメイン、CD27又はCD134の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ゼータの細胞内ドメイン
からなる群から選択されるドメインの組み合わせを含む、請求項1に記載の免疫細胞。
【請求項10】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD28の共刺激シグナル伝達ドメイン及びCD3ゼータの細胞内ドメインを含む、請求項1に記載の免疫細胞。
【請求項11】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメイン及びCD3ゼータの細胞内ドメインを含む、請求項1に記載の免疫細胞。
【請求項12】
前記抗原結合ドメインが、癌細胞の表面で優先的に発現されるタンパク質に結合する、請求項1に記載の免疫細胞。
【請求項13】
前記癌細胞が、固形癌である、請求項12に記載の免疫細胞。
【請求項14】
前記癌が、非固形癌である、請求項12に記載の免疫細胞。
【請求項15】
前記抗原結合ドメインが、メソテリンに結合する、請求項1に記載の免疫細胞。
【請求項16】
前記抗原結合ドメインが、CD19、CD20、CD22、CD23、カッパ軽鎖、CD5、CD30、CD70、CD38、CD138、BCMA、CD33、CD123、CD44v6、CS1及びROR1からなる群から選択されるタンパク質に結合する、請求項1に記載の免疫細胞。
【請求項17】
前記抗原結合ドメインが、CD44v6、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、癌胎児性抗原(CEA)、CD133、肝細胞増殖因子受容体(c-Met)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、III型変異体上皮増殖因子受容体(EGFRvIII)、上皮細胞接着分子(Epcam)、エリスロポエチン産生肝細胞癌A2(EphA2)、胎児アセチルコリン受容体、葉酸受容体アルファ(FRa)、ガングリオシドGD2(GD2)、グリピカン-3(GPC3)、グアニリルシクラーゼC(GUCY2C)、ヒト上皮増殖因子受容体1(HER1)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、細胞間接着分子1(ICAM-1)、インターロイキン13受容体a2(IL13Ra2)、インターロイキン11受容体a(IL11Ra)、Kirstenラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(Kras)、Kras G12D、L1細胞接着分子(L1CAM)、MAGE、MET、メソテリン、ムチン1(MUC1)、ムチン16(MUC16 ecto)、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)、NY-ESO-1、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、PSMA1、LAP3、ANXA3、マスピン、オルファクトメジン4、CD11b、インテグリンアルファ2、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Lewis-Y及びTAG72からなる群から選択されるタンパク質に結合する、請求項1に記載の免疫細胞。
【請求項18】
タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、TRIF又はその変異体をコードする、請求項1~17のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項19】
前記TRIF変異体が、表2に列挙されるTRIF変異体である、請求項18に記載の免疫細胞。
【請求項20】
前記TRIF変異体が、表2に列挙されるアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の免疫細胞。
【請求項21】
タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、デスフォールドドメインをコードする、請求項1~17のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項22】
前記デスフォールドドメインが、デスドメイン、ピリンドメイン、デスエフェクタードメイン(DED)、C末端カスパーゼ動員ドメイン(CARD)、及びそれらの変異体からなる群から選択される、請求項21に記載の免疫細胞。
【請求項23】
前記デスドメインが、デスドメインを有するFas関連タンパク質(FADD)、Fas、腫瘍壊死因子受容体1型関連デスドメイン(TRADD)、腫瘍壊死因子受容体1型(TNFR1)、及びそれらの変異体からなる群から選択されるタンパク質に由来する、請求項22に記載の免疫細胞。
【請求項24】
前記ピリンドメインが、NLRファミリーピリンドメイン含有3(NLRP3)及びアポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)からなる群から選択されるタンパク質に由来する、請求項22に記載の免疫細胞。
【請求項25】
前記デスエフェクタードメイン(DED)が、デスドメインを有するFas関連タンパク質(FADD)、カスパーゼ-8及びカスパーゼ-10からなる群から選択されるタンパク質に由来する、請求項22に記載の免疫細胞。
【請求項26】
前記CARDが、RIP関連ICH1/CED3相同タンパク質(RAIDD)、アポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)、ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質(MAVS)、カスパーゼ1、及びその変異体からなる群から選択されるタンパク質に由来する、請求項22に記載の免疫細胞。
【請求項27】
タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、Toll/インターロイキンI受容体(TIR)ドメインをコードする、請求項1~17のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項28】
前記TIRドメインが、骨髄分化一次応答タンパク質88(MyD88)、Toll/インターロイキン1受容体(TIR)ドメイン含有アダプター誘導インターフェロンβ(TRIF)、Toll様受容体3(TLR3)、Toll様受容体4(TLR4)、TIRドメイン含有アダプタータンパク質(TIRAP)、転座鎖関連膜タンパク質(TRAM)、及びそれらの変異体からなる群から選択されるタンパク質に由来する、請求項27に記載の免疫細胞。
【請求項29】
タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、TIRドメインを含むタンパク質をコードする、請求項1~17のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項30】
TIRドメインを含む前記タンパク質が、骨髄分化一次応答タンパク質88(MyD88)、Toll/インターロイキン1受容体(TIR)ドメイン含有アダプター誘導インターフェロンβ(TRIF)、Toll様受容体3(TLR3)、Toll様受容体4(TLR4)、TIRドメイン含有アダプタータンパク質(TIRAP)、転座鎖関連膜タンパク質(TRAM)、及びそれらの変異体からなる群から選択される、請求項29に記載の免疫細胞。
【請求項31】
タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、細胞性FLICE(FADD様IL-1β変換酵素)阻害タンパク質(c-FLIP)、受容体相互作用セリン/スレオニンプロテインキナーゼ1(RIPK1)、受容体相互作用セリン/スレオニンプロテインキナーゼ3(RIPK3)、Z-DNA結合タンパク質1(ZBP1)、混合系統キナーゼドメイン様シュードキナーゼ(MLKL)、TIRドメイン及びRHIMドメインのみを含むTRIFのN末端切断体、デスドメインを有するFas関連タンパク質のドミナントネガティブ変異体(FADD-DD)、myr-FADD-DD、阻害剤kBαスーパーリプレッサー(IkBα-SR)、インターロイキン1受容体関連キナーゼ1(IRAK1)、腫瘍壊死因子受容体1型関連デスドメイン(TRADD)、カスパーゼ8のドミナントネガティブ変異体、インターフェロン制御因子3(IRF3)、ガスダーミンA(GSDM-A)、ガスダーミンB(GSDM-B)、ガスダーミン-C(GSDM-C)、ガスダーミン-D(GSDM-D)、ガスダーミン-E(GSDM-E)、アポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)、グランザイムA、二量体化ドメインを有するC末端カスパーゼ動員ドメインを含むアポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC-CARD)、及びそれらの変異体からなる群から選択されるポリペプチドをコードする、請求項1~17のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項32】
TIRドメイン及びRHIMドメインのみを含むTRIFの前記N末端切断体が、ヒトTRIFのアミノ酸残基1~311の欠失を含む、請求項31に記載の免疫細胞。
【請求項33】
TIRドメイン及びRHIMドメインのみを含むTRIFの前記N末端切断体が、配列番号12を含むか、又は配列番号12からなる、請求項31に記載の免疫細胞。
【請求項34】
前記cFLIPが、ヒトcFLIPである、請求項31に記載の免疫細胞。
【請求項35】
前記cFLIPが、カスパーゼ8及びFADD様アポトーシス調節因子(cFLAR)である、請求項31に記載の免疫細胞。
【請求項36】
前記ZBP1が、受容体相互作用タンパク質ホモタイプ相互作用モチーフ(RHIM)Cの欠失、RHIM Dの欠失、及びZa1ドメインのN末端の欠失を含む、請求項31に記載の免疫細胞。
【請求項37】
前記ZBP1が、ZBP1-Za1/RHIMA切断型である、請求項31に記載の免疫細胞。
【請求項38】
タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ウイルス遺伝子を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項39】
前記ウイルス遺伝子が、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)由来のvFLIP(ORF71/K13)、伝染性軟属腫(Molluscum Contagiousum)ウイルス由来のMC159L、ウマヘルペスウイルス2由来のE8、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)又はマウスサイトメガロウイルス(MCMV)由来のvICA、牛痘ウイルス由来のCrmA、及びキンウワバ(Autographa californica)多カプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)由来のP35からなる群から選択されるポリペプチドをコードする、請求項38に記載の免疫細胞。
【請求項40】
タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドが、2つ以上の異なるタノトランスミッションポリペプチドをコードし、前記2つ以上のタノトランスミッションポリペプチドが、以下:TRADD、TRAF2、TRAF6、cIAP1、cIAP2、XIAP、NOD2、MyD88、TRAM、HOIL、HOIP、シャーピン、IKKg、IKKa、IKKb、RelA、MAVS、RIGI、MDA5、Tak1、TBK1、IKKe、IRF3、IRF7、IRF1、TRAF3、カスパーゼ、FADD、TNFR1、TRAILR1、TRAILR2、FAS、Bax、Bak、Bim、Bid、Noxa、Puma、TRIF、ZBP1、RIPK1、RIPK3、MLKL、ガスダーミンA、ガスダーミンB、ガスダーミンC、ガスダーミンD、ガスダーミンE、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFSF)タンパク質、及びそれらの変異体からなる群から選択される、請求項1~17のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項41】
タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドが、少なくとも2つのポリヌクレオチドを含み、各ポリヌクレオチドが、以下:TRADD、TRAF2、TRAF6、cIAP1、cIAP2、XIAP、NOD2、MyD88、TRAM、HOIL、HOIP、シャーピン、IKKg、IKKa、IKKb、RelA、MAVS、RIGI、MDA5、Tak1、TBK1、IKKe、IRF3、IRF7、IRF1、TRAF3、カスパーゼ、FADD、TNFR1、TRAILR1、TRAILR2、FAS、Bax、Bak、Bim、Bid、Noxa、Puma、TRIF、ZBP1、RIPK1、RIPK3、MLKL、ガスダーミンA、ガスダーミンB、ガスダーミンC、ガスダーミンD、ガスダーミンE、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFSF)タンパク質、及びそれらの変異体からなる群から選択される、異なるタノトランスミッションポリペプチドをコードする、請求項40に記載の免疫細胞。
【請求項42】
前記ポリヌクレオチドの少なくとも1つが、少なくとも2つの前記タノトランスミッションポリペプチドを含むキメラタンパク質をコードする、請求項40に記載の免疫細胞。
【請求項43】
前記ポリヌクレオチドの少なくとも1つは、前記2つ以上の異なるタノトランスミッションポリペプチドをコードする単一の転写物として転写される、請求項40に記載の免疫細胞。
【請求項44】
前記タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つが、TRIF又はその変異体を含む、請求項40~43のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項45】
前記タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つが、RIPK3又はその変異体を含む、請求項40~43のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項46】
前記タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つが、TRIF又はその変異体を含み、前記タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つが、RIPK3又はその変異体を含む、請求項40~43のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項47】
前記タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つが、MAVS又はその変異体を含み、前記タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つが、RIPK3又はその変異体を含む、請求項40~43のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項48】
前記TRIF変異体が、表2に列挙されるTRIF変異体であるか、又は表2に列挙されるアミノ酸配列を含む、請求項44に記載の免疫細胞。
【請求項49】
前記TRIF変異体が、TIRドメイン及びRHIMドメインのみを含むTRIFのN末端切断体である、請求項44に記載の免疫細胞。
【請求項50】
前記TRIF変異体が、ヒトTRIFのアミノ酸残基1~311の欠失を含む、請求項44に記載の免疫細胞。
【請求項51】
TIRドメイン及びRHIMドメインのみを含むTRIFの前記N末端切断体が、配列番号12を含むか、又は配列番号12からなる、請求項49に記載の免疫細胞。
【請求項52】
タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドが、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドをさらにコードする、請求項1~51のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項53】
カスパーゼ活性を阻害する前記ポリペプチドが、FADDドミナントネガティブ変異体(FADD-DN)、cFLIP、vICA、カスパーゼ8ドミナントネガティブ変異体(Casp8-DN)、cIAP1、cIAP2、Tak1、IKK、及びそれらの変異体からなる群から選択される、請求項52に記載の免疫細胞。
【請求項54】
カスパーゼ活性を阻害する前記ポリペプチドが、FADD-DNである、請求項52に記載の免疫細胞。
【請求項55】
カスパーゼ活性を阻害する前記ポリペプチドが、cFLIPである、請求項52に記載の免疫細胞。
【請求項56】
カスパーゼ活性を阻害する前記ポリペプチドが、vICAである、請求項52に記載の免疫細胞。
【請求項57】
タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ガスダーミン又はその変異体をコードする、請求項1~56のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項58】
タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、TRIF又はその変異体をコードし、タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、RIPK3又はその変異体をコードし、タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ガスダーミン又はその変異体をコードする、請求項1~17のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項59】
タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、MAVS又はその変異体をコードし、タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、RIPK3又はその変異体をコードし、タノトランスミッションを促進する前記1つ又は複数のポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、ガスダーミン又はその変異体をコードする、請求項1~17のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項60】
前記ガスダーミンが、ガスダーミンE又はその変異体である、請求項57~59のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項61】
前記変異体が、前記タノトランスミッションポリペプチドの機能性断片である、請求項18~60のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項62】
前記免疫細胞が、二量体化ドメインをコードする少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1~61のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項63】
前記タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つが、二量体化ドメインをさらに含む融合タンパク質内に含まれる、請求項1~62のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項64】
前記二量体化ドメインが、前記タノトランスミッションポリペプチドに対して異種である、請求項62又は63に記載の免疫細胞。
【請求項65】
対象においてタノトランスミッションを促進する方法であって、前記方法が、前記対象においてタノトランスミッションを促進するのに十分な量及び時間で、請求項1~64のいずれか1項に記載の免疫細胞を投与することを含む、方法。
【請求項66】
標的細胞によるタノトランスミッションを促進する方法であって、前記方法が、標的細胞又は前記標的細胞を含む組織を、前記標的細胞がタノトランスミッションを促進するのに十分な量及び時間で、請求項1~64のいずれか1項に記載の免疫細胞と接触させることを含む、方法。
【請求項67】
それを必要とする対象において免疫応答を促進する方法であって、前記方法が、請求項1~64のいずれか1項に記載の免疫細胞を、前記免疫細胞によるタノトランスミッションを促進するのに十分な量及び時間で前記対象に投与し、それにより前記対象の免疫応答を促進することを含む、方法。
【請求項68】
前記免疫細胞が、標的細胞におけるタノトランスミッションを促進するのに十分な量及び時間で、前記対象に投与される、請求項65~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記標的細胞が、癌細胞、免疫細胞、内皮細胞及び線維芽細胞からなる群から選択される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記対象が、感染症を有する、請求項65~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記標的細胞が、病原体に感染している、請求項66及び68~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記感染症が、ウイルス感染症である、請求項70又は71に記載の方法。
【請求項73】
前記感染症が、慢性感染症である、請求項70~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記慢性感染症が、HIV感染症、HCV感染症、HBV感染症、HPV感染症、B型肝炎感染症、C型肝炎感染症、EBV感染症、CMV感染症、TB感染症、及び寄生虫による感染症から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
それを必要とする対象において癌を処置する方法であって、前記方法が、請求項1~64のいずれか1項に記載の免疫細胞を前記対象に投与し、それにより前記対象の前記癌を処置することを含む、方法。
【請求項76】
前記免疫細胞を前記対象に投与すると、前記対象における癌細胞の増殖が低減する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記癌細胞の増殖が、前記対象に投与される癌療法から起こる癌細胞の過剰増殖である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記免疫細胞を前記対象に投与すると、前記対象における癌細胞の転移が低減する、請求項75~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記免疫細胞を前記対象に投与すると、前記対象における腫瘍の新生血管形成が低減する、請求項75~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記癌の処置が、以下:腫瘍量の減少、腫瘍サイズの減少、腫瘍増殖の阻害、処置前に進行性癌を有する対象における癌の安定化の達成、癌が進行するまでの時間の延長、及び生存期間の延長のうちのいずれか1つ又は複数を含む、請求項75~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
免疫刺激細胞ターンオーバー経路が、前記癌において誘導される、請求項75~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記癌は、前記免疫刺激細胞ターンオーバー経路が欠損している、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記免疫刺激細胞ターンオーバー経路が、ネクロトーシス、外因性アポトーシス、フェロトーシス及びパイロトーシスからなる群から選択される、請求項81又は82に記載の方法。
【請求項84】
前記癌が、免疫チェックポイント療法に応答性の癌である、請求項75~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記癌が、癌腫、肉腫、リンパ腫、黒色腫、及び白血病から選択される、請求項75~84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記癌が、転移性癌である、請求項75~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記癌が、固形腫瘍である、請求項75~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記固形腫瘍が、結腸癌、軟部組織肉腫(STS)、転移性明細胞腎細胞癌(ccRCC)、卵巣癌、胃腸癌、結腸直腸癌、肝細胞癌(HCC)、神経膠芽腫(GBM)、乳癌、黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、肉腫、悪性胸膜中皮腫(MPM)、網膜芽細胞腫、神経膠腫、髄芽腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、膵臓癌、肺癌、胃癌(gastric cancer)、胃癌(stomach cancer)、食道癌、肝臓癌、前立腺癌、婦人科系の癌、上咽頭癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、尿路上皮膀胱癌、神経芽細胞腫、及び子宮頸癌からなる群から選択される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記癌が、以下:黒色腫、子宮頸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、尿路上皮癌、膀胱癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肉腫、大腸腺癌、胃腸間質腫瘍、胃食道癌、大腸癌、膵臓癌、腎臓癌、肝細胞癌、悪性中皮腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、移行上皮癌、神経芽細胞腫、形質細胞腫、ウィルムス腫瘍、及び肝細胞癌からなる群から選択される、請求項75~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記癌が、固形腫瘍でない、請求項75~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記癌が、白血病、リンパ腫、B細胞悪性腫瘍、T細胞悪性腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄性悪性腫瘍、及び血液悪性腫瘍からなる群から選択される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記免疫細胞が、前記対象に静脈内投与される、請求項65~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記免疫細胞が、前記対象に腫瘍内投与される、請求項65~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記方法が、抗腫瘍薬を前記対象に投与することをさらに含む、請求項65~93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記抗腫瘍薬が、化学療法薬である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記抗腫瘍薬が、生物学的製剤である、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記生物学的製剤が、抗原結合タンパク質である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記生物学的製剤が、腫瘍溶解性ウイルスである、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
前記抗腫瘍薬が、免疫療法薬である、請求項94に記載の方法。
【請求項100】
前記免疫療法薬が、以下:Toll様受容体(TLR)アゴニスト、細胞ベース療法、サイトカイン、癌ワクチン、及び免疫チェックポイント分子の免疫チェックポイントモジュレーターからなる群から選択される、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記細胞ベース療法が、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記免疫チェックポイント分子が、CD27、CD28、CD40、OX40、GITR、ICOS、4-1BB、ADORA2A、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、KIR、LAG-3、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、及びVISTAから選択される、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
前記免疫チェックポイント分子が、刺激性免疫チェックポイント分子であり、前記免疫チェックポイントモジュレーターは、前記刺激性免疫チェックポイント分子のアゴニストである、請求項100に記載の方法。
【請求項104】
前記免疫チェックポイント分子が、抑制性免疫チェックポイント分子であり、前記免疫チェックポイントモジュレーターが、前記抑制性免疫チェックポイント分子のアンタゴニストである、請求項100に記載の方法。
【請求項105】
前記免疫チェックポイントモジュレーターが、小分子、抑制性RNA、アンチセンス分子、及び免疫チェックポイント分子結合タンパク質から選択される、請求項100~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
前記免疫チェックポイント分子が、PD-1であり、前記免疫チェックポイントモジュレーターが、PD-1阻害剤である、請求項100に記載の方法。
【請求項107】
前記PD-1阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ、SHR-1210、MEDI0680R01、BBg-A317、TSR-042、REGN2810及びPF-06801591から選択される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記免疫チェックポイント分子が、PD-L1であり、前記免疫チェックポイントモジュレーターが、PD-L1阻害剤である、請求項100に記載の方法。
【請求項109】
前記PD-L1阻害剤が、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、MDX-1105、AMP-224及びLY3300054から選択される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記免疫チェックポイント分子が、CTLA-4であり、前記免疫チェックポイントモジュレーターが、CTLA-4阻害剤である、請求項100に記載の方法。
【請求項111】
前記CTLA-4阻害剤が、イピリムマブ、トレメリムマブ、JMW-3B3及びAGEN1884から選択される、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記抗腫瘍薬が、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤である、請求項94に記載の方法。
【請求項113】
前記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、ヒドロキサム酸、ベンズアミド、環状テトラペプチド、デプシペプチド、求電子ケトン、又は脂肪族化合物である、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記ヒドロキサム酸が、ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット(PXD101)、LAQ824、トリコスタチンA、又はパノビンオスタット(LBH589)である、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記ベンズアミドが、エンチノスタット(MS-275)、01994、又はモセチノスタット(MGCD0103)である、請求項113に記載の方法。
【請求項116】
前記環状テトラペプチドが、トラポキシンBである、請求項113に記載の方法。
【請求項117】
前記脂肪族化合物が、フェニル酪酸又はバルプロ酸である、請求項113に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2022年2月9日に出願された米国仮特許出願第63/308,195号、及び2021年6月29日に出願された米国仮特許出願第63/216,505号に対する優先権を主張し、それぞれの全内容は、参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の提出
本出願に関連する配列表は、EFS-Webを介して電子形式で提出され、参照により明細書全体に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、129983_00820_Sequence_Listingである。テキストファイルのサイズは、72,183バイトで、テキストファイルは、2022年6月28日に作成された。
【背景技術】
【0003】
後生動物において、プログラム細胞死は、不可欠な遺伝的にプログラムされたプロセスであり、これは、組織の恒常性を維持すると共に、潜在的に有害な細胞を排除する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A-1B】図1Aは、免疫細胞における発現のための例示的なキメラ抗原受容体(CAR)構築物を示す。図1Bは、免疫細胞におけるタノトランスミッションを促進するタンパク質の発現のための例示的な構築物を示す。
図2A-2B】タノトランスミッションの誘導後のCT-26マウス大腸癌細胞の相対生存率を示す。
図3A】マクロファージにおけるIFN関連遺伝子活性化の刺激に対する、タノトランスミッションポリペプチド発現(例えば、TRIF発現単独又はRIPK3(cR3)及び/若しくはガスダーミンE(cGE)と組み合わせて)後にCT-26マウス大腸癌細胞から産生された細胞ターンオーバー因子(CTF)の誘導の影響を示す。図3Aにおいて、Tet誘導性RIPK3は「RIPK3」と称され、構成的PGKプロモーターを含むRIPK3構築物は「PGK_RIPK3」と称される。図3Bでは、各タノトランスミッションモジュールについて、処置群は、左から右に、対照(CTL)、ドキシサイクリン(Dox)、及びドキシサイクリン+B/Bホモ二量体化剤(Dox+Dimerizer)である。
図3B】マクロファージにおけるIFN関連遺伝子活性化の刺激に対する、タノトランスミッションポリペプチド発現(例えば、TRIF発現単独又はRIPK3(cR3)及び/若しくはガスダーミンE(cGE)と組み合わせて)後にCT-26マウス大腸癌細胞から産生された細胞ターンオーバー因子(CTF)の誘導の影響を示す。図3Aにおいて、Tet誘導性RIPK3は「RIPK3」と称され、構成的PGKプロモーターを含むRIPK3構築物は「PGK_RIPK3」と称される。図3Bでは、各タノトランスミッションモジュールについて、処置群は、左から右に、対照(CTL)、ドキシサイクリン(Dox)、及びドキシサイクリン+B/Bホモ二量体化剤(Dox+Dimerizer)である。
図4】骨髄由来樹状細胞(BMDC)における活性化マーカーの発現の刺激に対する、TRIF、RIPK3又はTRIF及びRIPK3発現の誘導後にCT-26マウス大腸癌細胞から産生された細胞ターンオーバー因子(CTF)の影響を示す。MFIは、平均蛍光強度である。
図5A】CT-26マウス大腸癌細胞を移植したマウスの生存に対するタノトランスミッションポリペプチド発現の影響を示す。「CT26-TF」は、TRIFだけを発現するCT-26細胞を表し、「CT26-P_R3」は、RIPK3だけを発現する細胞を表す。図4Bでは、全てのマウスを抗PD1抗体で処置した。
図5B-5C】CT-26マウス大腸癌細胞を移植したマウスの生存に対するタノトランスミッションポリペプチド発現の影響を示す。「CT26-TF」は、TRIFだけを発現するCT-26細胞を表し、「CT26-P_R3」は、RIPK3だけを発現する細胞を表す。図4Bでは、全てのマウスを抗PD1抗体で処置した。
図6A図6Aは、様々なタノトランスミッションペイロードを発現するU937白血病細胞からの細胞培養物で処置され、且つ、カスパーゼ阻害剤(Q-VD-Oph)単独、又はRIPK3阻害剤(GSK872)と組み合わせて処置したTHP-1 Dual細胞における相対NF-kB活性を示す。図6B及び6Cは、様々なタノトランスミッションペイロードを発現するU937白血病細胞由来の細胞培養物で処置され、且つ、カスパーゼ阻害剤(Q-VD-Oph)単独で、又はRIPK3阻害剤(GSK872)と組み合わせて処置されたTHP-1 Dual細胞における相対IRF活性を示す。U937細胞はまた、(タノトランスミッションポリペプチド発現を誘導するために)ドキシサイクリン単独で、又は(二量体化を誘導するために)B/Bホモ二量体化剤と組み合わせて処置された。図6A~6Cにおいて、+はドキシサイクリンで処置したU937細胞を示し、++はドキシサイクリン及びB/Bホモ二量体で処置したU937細胞を示す。
図6B-6C】図6B及び6Cは、様々なタノトランスミッションペイロードを発現するU937白血病細胞由来の細胞培養物で処置され、且つ、カスパーゼ阻害剤(Q-VD-Oph)単独で、又はRIPK3阻害剤(GSK872)と組み合わせて処置されたTHP-1 Dual細胞における相対IRF活性を示す。U937細胞はまた、(タノトランスミッションポリペプチド発現を誘導するために)ドキシサイクリン単独で、又は(二量体化を誘導するために)B/Bホモ二量体化剤と組み合わせて処置された。図6A~6Cにおいて、+はドキシサイクリンで処置したU937細胞を示し、++はドキシサイクリン及びB/Bホモ二量体で処置したU937細胞を示す。
図7A図7Aは、タノトランスミッションポリペプチドを単独で、又はカスパーゼ阻害剤と組み合わせて発現するCT-26マウス大腸癌細胞の相対生存能力を示す。
図7B図7Bは、マクロファージにおけるIFN関連遺伝子活性化の刺激に対する、単独で、又はカスパーゼ阻害剤と組み合わせて、タノトランスミッションポリペプチド発現の誘導後にCT-26マウス大腸癌細胞から産生された細胞ターンオーバー因子(CTF)の影響を示す。
図7C図7Cは、CT-26マウス大腸癌細胞を移植したマウスの生存期間に対する、TRIF+RIPK3発現単独、又はカスパーゼ阻害剤との組み合わせの効果を示す。
図8】誘導性miniTRIF構築物の発現を駆動する抗メソテリンCARの図を示す。
図9A】抗メソテリンCAR及び/又は誘導性miniTRIF構築物を含有するJurkat T細胞株の総細胞死パーセントを示す。細胞を様々な濃度のメソテリン又はCD3/CD28アクチベーターで処置し、24、48、又は72時間インキュベートした。X軸の数値は、メソテリン濃度を示す。
図9B】抗メソテリンCAR及び/又は誘導性miniTRIF構築物を含有するJurkat T細胞株の総細胞死パーセントを示す。細胞を様々な濃度のメソテリン又はCD3/CD28アクチベーターで処置し、24、48、又は72時間インキュベートした。X軸の数値は、メソテリン濃度を示す。
図9C】抗メソテリンCAR及び/又は誘導性miniTRIF構築物を含有するJurkat T細胞株の総細胞死パーセントを示す。細胞を様々な濃度のメソテリン又はCD3/CD28アクチベーターで処置し、24、48、又は72時間インキュベートした。X軸の数値は、メソテリン濃度を示す。
図10A】抗メソテリンCAR及び/又は誘導性miniTRIF構築物を含有するJurkat T細胞株におけるアポトーシス細胞死に対する壊死性細胞死の比を示す。細胞を様々な濃度のメソテリン又はCD3/CD28アクチベーターで処置し、24、48、又は72時間インキュベートした。X軸の数値は、メソテリン濃度を示す。
図10B】抗メソテリンCAR及び/又は誘導性miniTRIF構築物を含有するJurkat T細胞株におけるアポトーシス細胞死に対する壊死性細胞死の比を示す。細胞を様々な濃度のメソテリン又はCD3/CD28アクチベーターで処置し、24、48、又は72時間インキュベートした。X軸の数値は、メソテリン濃度を示す。
図10C】抗メソテリンCAR及び/又は誘導性miniTRIF構築物を含有するJurkat T細胞株におけるアポトーシス細胞死に対する壊死性細胞死の比を示す。細胞を様々な濃度のメソテリン又はCD3/CD28アクチベーターで処置し、24、48、又は72時間インキュベートした。X軸の数値は、メソテリン濃度を示す。
図11A】抗メソテリンCAR及び/又は誘導性miniTRIF構築物を含有するJurkat T細胞株から収集された細胞ターンオーバー因子(CTF)で処置されたTHP-1単球における相対IRF活性を示す。CTFの収集前に、細胞を様々な濃度のメソテリン又はCD3/CD28アクチベーターで処置し、24、48又は72時間インキュベートした。X軸の数値は、メソテリン濃度を示す。
図11B】抗メソテリンCAR及び/又は誘導性miniTRIF構築物を含有するJurkat T細胞株から収集された細胞ターンオーバー因子(CTF)で処置されたTHP-1単球における相対IRF活性を示す。CTFの収集前に、細胞を様々な濃度のメソテリン又はCD3/CD28アクチベーターで処置し、24、48又は72時間インキュベートした。X軸の数値は、メソテリン濃度を示す。
図11C】抗メソテリンCAR及び/又は誘導性miniTRIF構築物を含有するJurkat T細胞株から収集された細胞ターンオーバー因子(CTF)で処置されたTHP-1単球における相対IRF活性を示す。CTFの収集前に、細胞を様々な濃度のメソテリン又はCD3/CD28アクチベーターで処置し、24、48又は72時間インキュベートした。X軸の数値は、メソテリン濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
特定の態様では、本開示は、免疫細胞によるタノトランスミッションを促進する1つ又は複数の異種ポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞に関する。
【0006】
特定の態様では、本開示は、免疫細胞によるタノトランスミッションを促進する1つ又は複数の異種ポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0007】
一実施形態では、組成物は、標的細胞において生物学的応答を誘導するのに十分な量の免疫細胞を含む。一実施形態では、免疫細胞は、異種ターゲティングドメインを含む。一実施形態では、異種ターゲティングドメインは、抗原結合ドメインである。一実施形態では、免疫細胞は、細胞ターンオーバーを引き起こす異種シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、異種シグナル伝達ドメインは、細胞内シグナル伝達ドメインである。一実施形態では、ターゲティングドメインは、シグナル伝達ドメインに作動可能に連結される。一実施形態では、免疫細胞によるタノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、シグナル伝達ドメインの活性化時に遺伝子の発現を誘導する異種プロモーターに作動可能に連結される。一実施形態では、異種プロモーターは、活性化T細胞核内因子(NFAT)プロモーター、STATプロモーター、AP-1プロモーター、NF-κBプロモーター、及びIRF4プロモーターからなる群から選択される。一実施形態では、免疫細胞は、抗原結合ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を含む。
【0008】
特定の態様では、本開示は、以下:
(a)キメラ抗原受容体(CAR)をコードする1つ又は複数の核酸配列であって、CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む、核酸配列;並びに
(b)免疫細胞によるタノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドであって、免疫細胞の活性化時にポリヌクレオチドの発現を誘導する異種プロモーターに作動可能に連結された、ポリヌクレオチド
を含む免疫細胞に関し、ここで、免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、又はマクロファージである。
【0009】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも1つのTCR型シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む。一実施形態では、CARは、ヒンジドメインをさらに含む。一実施形態では、プロモーターは、抗原結合ドメインが抗原に結合すると、ポリヌクレオチドの発現を誘導する。一実施形態では、プロモーターは、活性化T細胞核内因子(NFAT)プロモーター、STATプロモーター、NF-κBプロモーター、AP-1プロモーター、又はIRF4プロモーターである。一実施形態では、TCR型シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータの細胞内ドメインを含む。一実施形態では、CD3ゼータの細胞内ドメインは、1つ又は複数の免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)における1つ又は複数のチロシン残基の突然変異を含む。
【0010】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、以下:(a)CD28の共刺激シグナル伝達ドメインとCD3ゼータの細胞内ドメイン;(b)4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメインとCD3ゼータの細胞内ドメイン;及び(c)CD28の共刺激シグナル伝達ドメイン、4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメイン、CD27又はCD134の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ゼータの細胞内ドメインからなる群から選択されるドメインの組み合わせを含む。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD28の共刺激シグナル伝達ドメイン及びCD3ゼータの細胞内ドメインを含む。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメイン及びCD3ゼータの細胞内ドメインを含む。
【0011】
一実施形態では、抗原結合ドメインは、癌細胞の表面で優先的に発現されるタンパク質に結合する。一実施形態では、癌細胞は、固形癌である。一実施形態では、癌は、非固形癌である。一実施形態では、抗原結合ドメインは、CD19、CD20、CD22、CD23、カッパ軽鎖、CD5、CD30、CD70、CD38、CD138、BCMA、CD33、CD123、CD44v6、CS1及びROR1からなる群から選択されるタンパク質に結合する。一実施形態では、抗原結合ドメインは、CD44v6、CAIX(炭酸脱水酵素IX)、CEA(癌胎児性抗原)、CD133、c-Met(肝細胞増殖因子受容体)、EGFR(上皮増殖因子受容体)、EGFRvIII(III型変異体上皮増殖因子受容体)、Epcam(上皮細胞接着分子)、EphA2(エリスロポエチン産生肝細胞癌A2)、胎児アセチルコリン受容体、FRa(葉酸受容体アルファ)、GD2(ガングリオシドGD2)、GPC3(グリピカン-3)、GUCY2C(グアニリルシクラーゼC)、HER1(ヒト上皮増殖因子受容体1)、HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)(ERBB2)、ICAM-1(細胞間接着分子1)、IL13Ra2(インターロイキン13受容体a2))、IL11Ra(インターロイキン11受容体a)、Kras(Kirstenラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ)、Kras G12D、L1CAM(L1細胞接着分子)、MAGE、MET、メソテリン、MUC1(ムチン1)、MUC16ecto(ムチン16)、NKG2D(ナチュラルキラーグループ2メンバーD)、NY-ESO-1、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、WT-1(ウィルムス腫瘍1)、PSMA1、LAP3、ANXA3、マスピン、オルファクトメジン4、CD11b、インテグリンアルファ2、FAP(線維芽細胞活性化タンパク質)、Lewis-Y及びTAG72からなる群から選択されるタンパク質に結合する。一実施形態では、抗原結合ドメインは、メソテリンに結合する。
【0012】
一実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、デスフォールドドメインをコードする。一実施形態では、デスフォールドドメインは、デスドメイン、ピリンドメイン、デスエフェクタードメイン(DED)、C末端カスパーゼ動員ドメイン(CARD)、及びそれらの変異体からなる群から選択される。一実施形態では、デスドメインは、デスドメインを有するFas関連タンパク質(FADD)、Fas、腫瘍壊死因子受容体1型関連デスドメイン(TRADD)、腫瘍壊死因子受容体1型(TNFR1)、及びそれらの変異体からなる群から選択されるタンパク質に由来する。一実施形態では、ピリンドメインは、NLRファミリーピリンドメイン含有3(NLRP3)及びアポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)からなる群から選択されるタンパク質に由来する。一実施形態では、デスエフェクタードメイン(DED)は、デスドメインを有するFas関連タンパク質(FADD)、カスパーゼ-8及びカスパーゼ-10からなる群から選択されるタンパク質に由来する。一実施形態では、CARDは、RIP関連ICH1/CED3相同タンパク質(RAIDD)、アポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)、ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質(MAVS)、カスパーゼ1、及びその変異体からなる群から選択されるタンパク質に由来する。
【0013】
一実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、Toll/インターロイキン-1受容体(TIR)ドメインをコードする。一実施形態では、TIRドメインは、骨髄分化一次応答タンパク質88(MyD88)、Toll/インターロイキン1受容体(TIR)ドメイン含有アダプター誘導インターフェロンβ(TRIF)、Toll様受容体3(TLR3)、Toll様受容体4(TLR4)、TIRドメイン含有アダプタータンパク質(TIRAP)、転座鎖関連膜タンパク質(TRAM)、及びそれらの変異体からなる群から選択されるタンパク質に由来する。一実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、TIRドメインを含むタンパク質をコードする。一実施形態では、TIRドメインを含むタンパク質は、骨髄分化一次応答タンパク質88(MyD88)、Toll/インターロイキン1受容体(TIR)ドメイン含有アダプター誘導インターフェロンβ(TRIF)、Toll様受容体3(TLR3)、Toll様受容体4(TLR4)、TIRドメイン含有アダプタータンパク質(TIRAP)、転座鎖関連膜タンパク質(TRAM)、及びそれらの変異体からなる群から選択される。
【0014】
一実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、TRIF又はTRIF変異体をコードする。一実施形態では、TRIF変異体は、表2に列挙されるTRIF変異体である。一実施形態では、TRIF変異体は、表2に列挙されるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、細胞性FLICE(FADD様IL-1β変換酵素)阻害タンパク質(c-FLIP)、受容体相互作用セリン/スレオニンプロテインキナーゼ1(RIPK1)、受容体相互作用セリン/スレオニンプロテインキナーゼ3(RIPK3)、Z-DNA結合タンパク質1(ZBP1)、混合系統キナーゼドメイン様シュードキナーゼ(MLKL)、TIRドメイン及びRHIMドメインのみを含むTRIFのN末端切断体、デスドメインを有するFas関連タンパク質のドミナントネガティブ変異体(FADD-DD)、myr-FADD-DD、阻害剤kBαスーパーリプレッサー(IkBα-SR)、インターロイキン1受容体関連キナーゼ1(IRAK1)、腫瘍壊死因子受容体1型関連デスドメイン(TRADD)、カスパーゼ8のドミナントネガティブ変異体、インターフェロン制御因子3(IRF3)、ガスダーミンA(GSDM-A)、ガスダーミンB(GSDM-B)、ガスダーミン-C(GSDM-C)、ガスダーミン-D(GSDM-D)、ガスダーミン-E(GSDM-E)、アポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)、グランザイムA、二量体化ドメインを有するC末端カスパーゼ動員ドメインを含むアポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC-CARD)、及びそれらの変異体からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、TIRドメイン及びRHIMドメインのみを含むTRIFのN末端切断体は、ヒトTRIFのアミノ酸残基1~311の欠失を含む。一部の実施形態では、TIRドメイン及びRHIMドメインのみを含むTRIFのN末端切断体は、配列番号12を含むか、又は配列番号12からなる。
【0015】
一実施形態では、cFLIPは、ヒトcFLIPである。一実施形態では、cFLIPは、カスパーゼ8及びFADD様アポトーシス調節因子(cFLAR)である。一実施形態では、ZBP1は、受容体相互作用タンパク質ホモタイプ相互作用モチーフ(RHIM)Cの欠失、RHIM Dの欠失、及びZa1ドメインのN末端の欠失を含む。一実施形態では、ZBP1は、ZBP1-Za1/RHIMA切断型である。
【0016】
一実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、ウイルス遺伝子である。一実施形態では、ウイルス遺伝子は、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)由来のvFLIP(ORF71/K13)、伝染性軟属腫(Molluscum Contagiousum)ウイルス由来のMC159L、ウマヘルペスウイルス2由来のE8、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)又はマウスサイトメガロウイルス(MCMV)由来のvICA、牛痘ウイルス由来のCrmA、及びキンウワバ(Autographa californica)多カプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)由来のP35からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。
【0017】
一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチドは、2つ以上の異なるタノトランスミッションポリペプチドをコードし、ここで、2つ以上のタノトランスミッションポリペプチドは、以下:TRADD、TRAF2、TRAF6、cIAP1、cIAP2、XIAP、NOD2、MyD88、TRAM、HOIL、HOIP、シャーピン、IKKg、IKKa、IKKb、RelA、MAVS、RIGI、MDA5、Tak1、TBK1、IKKe、IRF3、IRF7、IRF1、TRAF3、カスパーゼ、FADD、TNFR1、TRAILR1、TRAILR2、FAS、Bax、Bak、Bim、Bid、Noxa、Puma、TRIF、ZBP1、RIPK1、RIPK3、MLKL、ガスダーミンA、ガスダーミンB、ガスダーミンC、ガスダーミンD、ガスダーミンE、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFSF)タンパク質、及びそれらの変異体からなる群から選択される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドの少なくとも1つは、少なくとも2つのタノトランスミッションポリペプチドを含むキメラタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドの少なくとも1つは、2つ以上の異なるタノトランスミッションポリペプチドをコードする単一の転写物として転写される。
【0018】
一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドのうち少なくとも2つは、NF-κBを活性化する。一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドのうち少なくとも2つは、IRF3及び/又はIRF7を活性化する。一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドのうち少なくとも2つは、外因性アポトーシスを促進する。一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドのうち少なくとも2つは、プログラム壊死を促進する。一部の実施形態では、1つ又は複数のタノトランスミッションポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、NF-κBを活性化し、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、IRF3及び/又はIRF7を活性化する。一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、NF-κBを活性化し、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、外因性アポトーシスを促進する。一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、NF-κBを活性化し、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、プログラム壊死を促進する。
【0019】
一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、IRF3及び/又はIRF7を活性化し、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、外因性アポトーシスを促進する。一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、IRF3及び/又はIRF7を活性化し、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、プログラム壊死を促進する。一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、アポトーシスを促進し、1つ又は複数のタノトランスミッションポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、プログラム壊死を促進する。一部の実施形態では、プログラム壊死は、ネクロトーシスを含む。一部の実施形態では、プログラム壊死は、パイロトーシスを含む。
【0020】
一部の実施形態では、NF-kBを活性化するタノトランスミッションポリペプチドは、TRIF、TRADD、TRAF2、TRAF6、cIAP1、cIAP2、XIAP、NOD2、MyD88、TRAM、HOIL、HOIP、シャーピン、IKKg、IKKa、IKKb、RelA、MAVS、RIGI、MDA5、Tak1、TNFSFタンパク質、及びそれらの変異体からなる群から選択される。一部の実施形態では、IRF3及び/又はIRF7を活性化するタノトランスミッションポリペプチドは、TRIF、MyD88、MAVS、TBK1、IKKe、IRF3、IRF7、IRF1、TRAF3及びそれらの変異体からなる群から選択される。一部の実施形態では、外因性アポトーシスを促進するタノトランスミッションポリペプチドは、TRIF、RIPK1、カスパーゼ、FADD、TRADD、TNFR1、TRAILR1、TRAILR2、FAS、Bax、Bak、Bim、Bid、Noxa、Puma、及びそれらの変異体からなる群から選択される。一部の実施形態では、プログラム壊死を促進するタノトランスミッションポリペプチドは、ZBP1、RIPK1、RIPK3、MLKL、ガスダーミン、及びそれらの変異体からなる群から選択される。
【0021】
一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、TRIF又はその変異体を含む。一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、RIPK3又はその変異体を含む。一部の実施形態では、1つ又は複数のタノトランスミッションポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、TRIF又はその変異体を含み、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、RIPK3又はその変異体を含む。一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、MAVS又はその変異体を含み、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、RIPK3又はその変異体を含む。
【0022】
一部の実施形態では、TRIF変異体は、表2に列挙されるTRIF変異体である。一部の実施形態では、TRIF変異体は、表2に列挙されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TRIF変異体は、TIRドメイン及びRHIMドメインのみを含むTRIFのN末端切断体である。一部の実施形態では、TRIF変異体は、ヒトTRIFのアミノ酸残基1~311の欠失を含む。一部の実施形態では、TIRドメイン及びRHIMドメインのみを含むTRIFのN末端切断体は、配列番号12を含むか、又は配列番号12からなる。一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドは、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドをさらにコードする。一部の実施形態では、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドは、FADDドミナントネガティブ変異体(FADD-DN)、cFLIP、vICA、カスパーゼ8ドミナントネガティブ変異体(Casp8-DN)、cIAP1、cIAP2、Tak1、IKK、及びそれらの変異体からなる群から選択される。一部の実施形態では、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドは、FADD-DNである。一部の実施形態では、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドは、cFLIPである。一部の実施形態では、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドは、vICAである。
【0023】
一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドは、少なくとも1つのガスダーミン又はその変異体をコードする。一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、TRIF又はその変異体を含み、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、RIPK3又はその変異体を含み、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、ガスダーミン又はその変異体を含む。一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、MAVS又はその変異体を含み、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、RIPK3又はその変異体を含み、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、ガスダーミン又はその変異体を含む。一部の実施形態では、ガスダーミンは、ガスダーミンE又はその変異体である。一部の実施形態では、変異体は、タノトランスミッションポリペプチドの機能性断片である。
【0024】
一部の実施形態では、細胞は、二量体化ドメインをコードする少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドをさらに含む。一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、二量体化ドメインをさらに含む融合タンパク質内に含まれる。一部の実施形態では、二量体化ドメインは、タノトランスミッションポリペプチドに対して異種である。
【0025】
特定の態様では、本開示は、対象においてタノトランスミッションを促進する方法に関し、この方法は、対象においてタノトランスミッションを促進するのに十分な量及び時間で、本明細書に記載の免疫細胞を投与することを含む。
【0026】
特定の態様では、本開示は、標的細胞によるタノトランスミッションを促進する方法に関し、この方法は、標的細胞又は標的細胞を含む組織を、標的細胞によるタノトランスミッションを促進するのに十分な量及び時間で、本明細書に記載の免疫細胞と接触させることを含む。
【0027】
特定の態様では、本開示は、それを必要とする対象において免疫応答を促進する方法に関し、この方法は、本明細書に記載の免疫細胞を、免疫細胞によるタノトランスミッションを促進するのに十分な量及び時間で対象に投与し、それにより対象の免疫応答を促進することを含む。
【0028】
一実施形態では、免疫細胞は、標的細胞におけるタノトランスミッションを促進するのに十分な量及び時間で、対象に投与される。一実施形態では、標的細胞は、癌細胞、免疫細胞、内皮細胞及び線維芽細胞からなる群から選択される。一実施形態では、対象は感染症に罹患している。一実施形態では、標的細胞は、病原体に感染している。一実施形態では、感染症は、ウイルス感染症である。一実施形態では、感染症は慢性感染症である。一実施形態では、慢性感染症は、HIV感染症、HCV感染症、HBV感染症、HPV感染症、B型肝炎感染症、C型肝炎感染症、EBV感染症、CMV感染症、TB感染症、及び寄生虫による感染症から選択される。
【0029】
特定の態様では、本開示は、それを必要とする対象において癌を処置する方法に関し、この方法は、本明細書に記載の免疫細胞を対象に投与し、それにより対象の癌を処置することを含む。一実施形態では、免疫細胞を対象に投与すると、対象における癌細胞の増殖が低減する。一実施形態では、癌細胞の増殖は、対象に投与された癌治療から生じる癌細胞の過増殖である。一実施形態では、免疫細胞を対象に投与すると、対象における癌細胞の転移が低減する。一実施形態では、免疫細胞を対象に投与すると、対象における腫瘍の新生血管形成が低減する。
【0030】
一実施形態では、癌の処置は、腫瘍量の減少、腫瘍サイズの縮小、腫瘍増殖の阻害、処置前の進行癌を有する対象における安定な癌の達成、癌の進行までの時間の増加、及び生存期間の増加のうちのいずれか1つ又は複数を含む。一実施形態では、免疫刺激細胞ターンオーバー経路は、癌において誘導される。一実施形態では、癌は、免疫刺激細胞ターンオーバー経路が欠損している。一実施形態では、免疫刺激細胞ターンオーバー経路は、ネクロトーシス、外因性アポトーシス、フェロトーシス及びパイロトーシスからなる群から選択される。一実施形態では、癌は、免疫チェックポイント療法に応答性の癌である。一実施形態では、癌は、癌腫、肉腫、リンパ腫、黒色腫、及び白血病から選択される。一実施形態では、癌は転移性癌である。一実施形態では、癌は、固形腫瘍である。
【0031】
一実施形態では、固形腫瘍は、結腸癌、軟部組織肉腫(STS)、転移性明細胞腎細胞癌(ccRCC)、卵巣癌、胃腸癌、結腸直腸癌、肝細胞癌(HCC)、神経膠芽腫(GBM)、乳癌、黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、肉腫、悪性胸膜中皮腫(MPM)、網膜芽細胞腫、神経膠腫、髄芽腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、膵臓癌、肺癌、胃癌(gastric cancer)、胃癌(stomach cancer)、食道癌、肝臓癌、前立腺癌、婦人科系の癌、上咽頭癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、尿路上皮膀胱癌、神経芽細胞腫、及び子宮頸癌からなる群から選択される。
【0032】
一実施形態では、癌は、以下:黒色腫、子宮頸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、尿路上皮癌、膀胱癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肉腫、大腸腺癌、胃腸間質腫瘍、胃食道癌、大腸癌、膵臓癌、腎臓癌、肝細胞癌、悪性中皮腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、移行上皮癌、神経芽細胞腫、形質細胞腫、ウィルムス腫瘍、及び肝細胞癌からなる群から選択される。一実施形態では、癌は、固形腫瘍ではない。一実施形態では、癌は、白血病、リンパ腫、B細胞悪性腫瘍、T細胞悪性腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄性悪性腫瘍、及び血液悪性腫瘍からなる群から選択される。
【0033】
一実施形態では、免疫細胞は、対象に静脈内投与される。一実施形態では、免疫細胞は、対象に腫瘍内投与される。
【0034】
一実施形態では、本方法は、抗腫瘍薬を対象に投与することをさらに含む。一実施形態では、抗腫瘍薬は、化学療法薬である。一実施形態では、抗腫瘍薬は、生物学的製剤である。一実施形態では、生物学的製剤は、抗原結合タンパク質である。一実施形態では、生物学的製剤は、腫瘍溶解性ウイルスである。
【0035】
一実施形態では、抗腫瘍薬は、免疫療法薬である。一実施形態では、免疫療法薬は、以下:Toll様受容体(TLR)アゴニスト、細胞ベース療法、サイトカイン、癌ワクチン、及び免疫チェックポイント分子の免疫チェックポイントモジュレーターからなる群から選択される。一実施形態では、TLRアゴニストは、コーリー毒素及びカルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette-Guerin)(BCG)から選択される。一実施形態では、細胞ベース療法は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法である。
【0036】
一実施形態では、免疫チェックポイント分子は、CD27、CD28、CD40、OX40、GITR、ICOS、4-1BB、ADORA2A、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、KIR、LAG-3、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、及びVISTAから選択される。一実施形態では、免疫チェックポイント分子は、刺激性免疫チェックポイント分子であり、免疫チェックポイントモジュレーターは、刺激性免疫チェックポイント分子のアゴニストである。一実施形態では、免疫チェックポイント分子は、阻害性免疫チェックポイント分子であり、免疫チェックポイントモジュレーターは、阻害性免疫チェックポイント分子のアンタゴニストである。一実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、小分子、阻害性RNA、アンチセンス分子、及び免疫チェックポイント分子結合タンパク質から選択される。
【0037】
一実施形態では、免疫チェックポイント分子は、PD-1であり、免疫チェックポイントモジュレーターは、PD-1阻害剤である。一実施形態では、PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ、SHR-1210、MEDI0680R01、BBg-A317、TSR-042、REGN2810及びPF-06801591から選択される。一実施形態では、免疫チェックポイント分子は、PD-L1であり、免疫チェックポイントモジュレーターは、PD-L1阻害剤である。一実施形態では、PD-L1阻害剤は、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、MDX-1105、AMP-224及びLY3300054から選択される。一実施形態では、免疫チェックポイント分子は、CTLA-4であり、免疫チェックポイントモジュレーターは、CTLA-4阻害剤である。一実施形態では、CTLA-4阻害剤は、イピリムマブ、トレメリムマブ、JMW-3B3及びAGEN1884から選択される。一実施形態では、抗腫瘍薬は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤である。一実施形態では、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、ヒドロキサム酸、ベンズアミド、環状テトラペプチド、デプシペプチド、求電子ケトン、又は脂肪族化合物である。一実施形態では、ヒドロキサム酸は、ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット(PXD101)、LAQ824、トリコスタチンA、又はパノビンオスタット(LBH589)である。
【0038】
一実施形態では、ベンズアミドは、エンチノスタット(MS-275)、01994、又はモセチノスタット(MGCD0103)である。一実施形態では、環状テトラペプチドは、トラポキシンBである。一実施形態では、脂肪族酸は、フェニル酪酸又はバルプロ酸である。
【0039】
本発明は、免疫細胞によるタノトランスミッションを促進する1つ又は複数の異種ポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞に関する。タノトランスミッションは、細胞間、例えば、シグナル伝達細胞(例えば、本明細書に記載の操作された免疫細胞)と応答細胞との間の連絡のプロセスであり、これは、シグナル伝達細胞における細胞ターンオーバー経路の活性化、例えば、プログラム細胞死の結果起こり、応答細胞にシグナル伝達して、生物学的応答を受けるようにする。タノトランスミッションは、細胞ターンオーバー経路遺伝子、例えば、プログラム細胞死経路遺伝子の発現によって、シグナル伝達細胞において誘導され得る。細胞ターンオーバー経路が活性化されたシグナル伝達細胞は、シグナル伝達細胞によって能動的に放出される因子を介して、又はシグナル伝達細胞のターンオーバー(例えば、細胞死)中に応答細胞に曝露されるようになるシグナル伝達細胞の細胞内因子を介して、応答細胞にシグナル伝達することができる。本発明の様々な実施形態では、操作された免疫細胞によって発現される1つ又は複数のポリヌクレオチドは、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリペプチドの発現又は活性を増加させることによって、且つ/又は免疫細胞におけるタノトランスミッションを抑制する1つ又は複数のポリペプチドの発現若しくは活性を低下させることによって、免疫細胞によるタノトランスミッションを促進する。従って、特定の態様では、本発明は、対象においてタノトランスミッションを促進する方法に関し、この方法は、本明細書に記載の操作された免疫細胞を投与することを含む。
【0040】
一部の実施形態では、シグナル伝達細胞(例えば、本明細書に記載の操作された免疫細胞)は、標的細胞との接触又は近接を介して標的細胞(例えば、癌細胞)によるタノトランスミッションを促進することによって、対象におけるタノトランスミッションをさらに促進し得る。例えば、細胞ターンオーバー中に操作された免疫細胞によって放出される因子は、標的細胞においても同様に細胞ターンオーバー、例えばプログラム細胞死を開始し、それにより、標的細胞によるタノトランスミッションを促進し得る。従って、本発明はまた、標的細胞によるタノトランスミッションを促進する方法に関し、この方法は、標的細胞又は標的細胞を含む組織を、本明細書に記載の操作された免疫細胞と接触させることを含む。
【0041】
一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、細胞ターンオーバー、例えばプログラム細胞死を引き起こす、異種シグナル伝達ドメインをさらに含む。シグナル伝達ドメインは、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)細胞内シグナル伝達ドメインであってもよい。一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、シグナル伝達ドメインの活性化時にポリヌクレオチドの発現を誘導するプロモーターの転写制御下にある。
【0042】
I.定義
本明細書で使用される「投与する」、「投与すること」又は「投与」という用語は、医薬組成物又は薬剤を対象の系に、又は対象の内部若しくは外部の特定の領域に送達するあらゆる方法を含む。
【0043】
本明細書で使用される「併用投与」、「同時投与」、若しくは「併用療法」は、個別の製剤若しくは単一の医薬製剤を用いた2種以上の活性剤の投与、又は両方(若しくは全て)の活性剤がそれらの生物学的活性を発揮する期間が重なるような任意の順序での連続投与として理解される。本明細書では、1つの活性剤(例えば、細胞ターンオーバー又はプログラム細胞死を受けタノトランスミッションを開始するように操作された免疫細胞)が、第2の治療薬(例えば、免疫療法薬)の活性を改善することができる、例えば、標的細胞、例えば癌細胞を第2の治療薬の活性に感作させることができる、又は第2の治療薬と相乗効果を有し得ることが企図される。「併用投与」は、薬剤が同時に、同じ頻度で、又は同じ投与経路によって投与される必要はない。本明細書で使用される「併用投与」、「同時投与」、又は「併用療法」には、1又は複数種の追加の治療薬、例えば、免疫療法薬(例えば、免疫チェックポイントモジュレーター)と共に、細胞ターンオーバーを受けタノトランスミッションを開始するように操作された免疫細胞の投与が含まれる。免疫療法薬の例は、本明細書に提供される。
【0044】
本明細書で使用される「抗原結合ドメイン」という用語は、標的細胞又は標的病原体(例えば、真菌、細菌又はウイルス)の表面上の別のタンパク質に結合するタンパク質を指す。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む、免疫グロブリン鎖又はその断片である。「抗原結合ドメイン」という用語は、抗体及び抗体断片を包含するが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書で使用される「抗体断片」という用語は、抗原のエピトープと特異的に相互作用する能力(例えば、結合、立体障害、安定化/不安定化、空間分布によって)を保持する抗体の少なくとも一部分を指す。抗体断片の例として、限定はされないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、scFv抗体断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VH及びCH1ドメインからなるFd断片、直鎖抗体、sdAb(VL又はVH)などの単一ドメイン抗体、ラクダ科動物のVHHドメイン、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片などの抗体断片から形成された多重特異性抗体、及び単離されたCDR又は抗体の他のエピトープ結合断片が挙げられる。抗原結合断片はまた、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、及びbis-scFvに組み込むことができる(例えば、Hollinger and Hudson,Nature Biotechnology 23:1126-1136,2005を参照)。抗原結合断片は、フィブロネクチンIII型(Fn3)などのポリペプチドに基づく足場にグラフトすることもできる(フィブロネクチンポリペプチドミニボディが記載される米国特許第6,703,199号明細書を参照)。
【0046】
「scFv」という用語は、軽鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片と、重鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片とを含む、融合タンパク質を指し、ここで、軽鎖及び重鎖の可変領域は、例えば、合成リンカー、例えば短い柔軟なポリペプチドリンカーを介して連続的に連結されており、単鎖ポリペプチドとして発現することができ、scFvは、それが由来する無傷の抗体の特異性を保持する。特に指定しない限り、本明細書で使用される場合、scFvは、VL可変領域及びVH可変領域をいずれの順序で有してもよく、例えば、ポリペプチドのN末端及びC末端に関して、scFvは、VL-リンカー-VHを含んでもよく、又はVH-リンカー-VLを含んでもよい。
【0047】
本明細書で使用される「キメラ抗原受容体」又は「CAR」という用語は、免疫細胞内で発現されると、標的細胞(例えば、癌細胞)に対する特異性及び細胞内シグナル生成を細胞に提供するポリペプチドのセットを指す。一部の実施形態では、CARは、少なくとも細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む。細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも1つの免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む。一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも1つのTCR型シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、以下に定義するように、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、CARを構成するポリペプチドのセットは、同じポリペプチド鎖内にある(例えば、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む、キメラ融合タンパク質である)。一部の実施形態では、CARを構成するポリペプチドのセットは互いに隣接しておらず、例えば、異なるポリペプチド鎖内にある。一部の実施形態では、CARを構成するポリペプチドのセットは、二量体化分子の存在時、ポリペプチドを互いに結合させることができる、例えば、抗原結合ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインに結合させることができる、二量体化スイッチを含む。一実施形態では、CARのTCR型シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体複合体に関連するCD3ゼータ鎖である。
【0048】
本明細書で使用される「T細胞受容体(TCR)型シグナル伝達ドメイン」又は「TCR型シグナル伝達ドメイン」という用語は、T細胞受容体(TCR)を介して抗原依存性の一次活性化を開始するCARの細胞内シグナル伝達ドメインの成分を指す。
【0049】
本明細書で使用される「共刺激シグナル伝達ドメイン」という用語は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それにより、限定はされないが増殖などの、T細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーからのドメインを指す。共刺激シグナル伝達ドメインは、効率的な免疫応答に必要な抗原受容体又はそのリガンド以外の細胞表面分子に由来し得る。例えば、共刺激シグナル伝達ドメインは、限定はされないが、MHCクラスI分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、Tollリガンド受容体、OX40、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、4-1BB(CD137)、B7-H3、CDS、ICAM-1、ICOS(CD278)、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、NKG2C、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、及びCD83と特異的に結合するリガンドを含む、タンパク質に由来し得る。
【0050】
本明細書で使用される「シグナル伝達ドメイン」という用語は、二次メッセンジャーを生成することによって、又はそのようなメッセンジャーに応答することによりエフェクターとして機能することによって、定義されたシグナル伝達経路を介して細胞内で情報を伝達して細胞活性を調節することによって作用する、タンパク質の機能性部分を指す。
【0051】
ポリペプチドに関して本明細書で使用される「変異体」という用語は、対応する野生型ポリペプチドから少なくとも1つのアミノ酸残基だけ異なるポリペプチドを指す。一部の実施形態では、変異体ポリペプチドは、対応する天然に存在するポリペプチドとは異なる少なくとも1つの活性を有する。ポリヌクレオチドに関して本明細書で使用される用語「変異体」は、対応する野生型ポリヌクレオチドから少なくとも1ヌクレオチドだけ異なるポリヌクレオチドを指す。一部の実施形態では、変異体ポリペプチド又は変異体ポリヌクレオチドは、対応する野生型ポリペプチド又はポリヌクレオチドに対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、変異体は、ポリペプチドの機能性断片である。
【0052】
ポリペプチドに関して本明細書で使用される「機能性断片」という用語は、ポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性、例えば、タノトランスミッションを促進する能力を保持するポリペプチドの一部を指す。一部の実施形態では、機能性断片は、ポリペプチドのドメイン、例えば、RHIMドメイン、デスフォールドドメイン、又はTIRドメインである。一部の実施形態では、ポリペプチドの機能性断片は、ドメインの少なくとも1つの生物学的活性を保持するドメインの一部である。
【0053】
本明細書で使用される「デスフォールドドメイン」という用語は、アポトーシス、炎症、及び他の細胞シグナル伝達プロセスに関与するタンパク質上に見られる、6~7個の密なコイル状のα-ヘリックスを特徴とする構造的に定義されたモチーフを指す。デスフォールドドメインは、ホモタイプタンパク質間相互作用を介して互いに結合し、細胞ターンオーバー及び他の細胞シグナル伝達経路の開始に関与する大きな機能性複合体の形成をもたらす。デスフォールドドメインの例には、デスドメイン(DD)、デスエフェクタードメイン(DED)、カスパーゼ動員ドメイン(CARD)、ピリンドメイン(PYD)、デスドメインを有するFas関連タンパク質(FADD)、Fasデスドメイン、腫瘍壊死因子受容体1型関連デスドメイン(TRADD)、及び腫瘍壊死因子受容体1型(TNFR1)が含まれる。その全内容が参照により本明細書に組み込まれるLahm et al.,2003,Cell Death&Differentiation 10:10-12を参照。
【0054】
本明細書で使用される「リンカー」という用語は、2つのポリペプチド配列を連結するために単独で又は組み合わせて使用されるグリシン及び/又はセリン残基などのアミノ酸からなる柔軟なペプチドを指す。一実施形態では、リンカーは、Gly/Serリンカーであり、アミノ酸配列(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)を含み、nは1以上の正の整数である。例えば、n=1、n=2、n=3、n=4、n=5、n=6、n=7、n=8、n=9、n=10、n=11、n=12、n=13、n=14、又はn=15。一部の実施形態では、リンカーとして、限定はされないが、(GlySer)又は(GlySer)が挙げられる。別の実施形態では、リンカーは、(GlySer)、(GlySer)、又は(GlySer)の複数の反復を含む。また、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012/138475号パンフレットに記載されているリンカーも含まれる。一部の実施形態では、リンカーは、Whitlow et al,Protein Eng.(1993)6(8):989-895に記載されるGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号26)である。一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50個のアミノ酸残基を含む。一部の実施形態では、リンカーは、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50個未満のアミノ酸残基を含む。リンカーは、薬物の結合又は固体支持体への結合などのさらなる機能のために修飾することもできる。本明細書で使用される「上昇する」及び「低下する」という用語はそれぞれ、参照と比較してパラメータの量、機能、又は活性をより上昇させる又はより低下させる調節を指す。例えば、本明細書に記載の組成物の投与に続いて、パラメータ(例えば、IRFの活性化、NF-kBの活性化、マクロファージの活性化、腫瘍のサイズ又は増殖)は、投与前のパラメータ量に対して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は98%以上対象で上昇又は低下し得る。一般に、測定基準は、投与に続いて、投与の効果が現れた時点、例えば、治療計画が開始されてから少なくとも1日後、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後に測定される。同様に、前臨床パラメータ(インビトロでの細胞のNF-kB又はIRFの活性化、及び/又は本明細書に記載の組成物による試験哺乳動物の腫瘍負荷の低下など)は、投与前のパラメータの量と比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は98%以上上昇又は低下し得る。
【0055】
本明細書で使用される「抗腫瘍剤」は、癌の処置に使用される薬物を指す。抗腫瘍剤には、化学療法剤(例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、コルチコステロイド、及び酵素)、生物学的抗癌剤、及び免疫チェックポイント調節剤が含まれる。
【0056】
「癌治療計画」又は「抗腫瘍療法」は、特定のスケジュールで対象への特定の量の1つ又は複数の抗腫瘍剤の投与を含む、癌の処置のための臨床的に認められた投薬プロトコルである。
【0057】
本明細書で使用される「異種」という用語は、組み合わせて自然に存在しない要素の組合せを指す。例えば、免疫細胞に対して異種であるポリヌクレオチドとは、免疫細胞において天然に存在しないポリヌクレオチド、又は免疫細胞において自然界に存在する位置とは異なる位置に存在するポリヌクレオチドを指す。例えば、異種ポリヌクレオチドの5’及び3’末端は、本来は結合していない核酸配列に結合し得る。免疫細胞に対して異種であるポリペプチドとは、免疫細胞内に天然には存在しないポリペプチドを指す。
【0058】
本明細書で使用される「免疫チェックポイント」又は「免疫チェックポイント分子」は、シグナルを調節する免疫系の分子である。免疫チェックポイント分子は、刺激性チェックポイント分子である、即ちシグナルを上昇させるか、又は抑制性チェックポイント分子である、即ちシグナルを低下させることができる。本明細書で使用される「刺激性チェックポイント分子」は、シグナルを上昇させる又は共刺激性である免疫系の分子である。本明細書で使用される「抑制性チェックポイント分子」は、シグナルを低下させる又は共抑制性である免疫系の分子である。
【0059】
本明細書で使用される「免疫チェックポイントモジュレーター」は、対象における免疫チェックポイントの活性を変化させることができる薬剤である。特定の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、限定されるものではないが、CD27、CD28、CD40、OX40、GITR、ICOS、4-1BB、ADORA2A、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、KIR、LAG-3、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、及びVISTAを含む、1つ又は複数の免疫チェックポイント分子の機能を変化させる。免疫チェックポイントモジュレーターは、免疫チェックポイントのアゴニスト又はアンタゴニストであり得る。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、免疫チェックポイント結合タンパク質(例えば、抗体、抗体Fab断片、二価抗体、抗体薬物コンジュゲート、scFv、融合タンパク質、二価抗体、又は四価抗体)である。他の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは小分子である。特定の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA-4結合タンパク質、例えば、抗体又は抗体断片である。
【0060】
本明細書で使用される「免疫療法剤」は、免疫応答を誘導又は増強する、薬学的に許容される化合物、組成物、又は療法剤を指す。免疫療法剤には、限定されるものではないが、免疫チェックポイントモジュレーター、Toll様受容体(TLR)アゴニスト、細胞ベースの治療法、サイトカイン、及び癌ワクチンが含まれる。
【0061】
本明細書で使用される「腫瘍性障害」又は「癌」又は「新生物」は、限定されるものではないが:白血病、リンパ腫、黒色腫、癌腫、及び肉腫を含む、ヒトに見られるすべての種類の癌又は新生物を指す。本明細書で使用される「腫瘍性障害」、「癌」、及び「新生物」という用語は、互換的に、そして単数形又は複数形のいずれかで使用され、宿主生物にとって細胞を異常にする悪性形質転換を受けた細胞を指す。原発性癌細胞(即ち、悪性形質転換部位の近くから得られた細胞)は、十分に確立された技術、特に組織学的検査によって非癌性細胞と容易に区別することができる。本明細書で使用される癌細胞の定義には、原発性癌細胞だけでなく、癌幹細胞、並びに、癌前駆細胞又は癌細胞の祖先に由来する任意の細胞が含まれる。これには、転移した癌細胞、並びに癌細胞に由来するインビトロ培養物及び細胞株が含まれる。
【0062】
癌のステージ分類の特定の基準は、腫瘍サイズ、組織学的特徴、腫瘍マーカー、及び当業者に公知の他の基準に基づく特定の癌の種類に依存する。一般に、癌のステージは次のように説明することができる:(i)ステージ0、上皮内癌;(ii)ステージI、ステージII、及びステージIII(数値が大きいほど、腫瘍のサイズ、並びに/又は癌がリンパ節及び/若しくは組織の近くで最初に発生した臓器若しくは原発腫瘍の位置に隣接する臓器を超えた癌の転移を含む、より広範な疾患を示す);並びに(iii)ステージIV(癌が遠隔の組織又は臓器に転移している)。
【0063】
「固形腫瘍」は、例えばCATスキャン、MRイメージング、X線、超音波、又は触診などの方法によって腫瘍量に基づいて検出可能であり、且つ/又は患者から入手可能なサンプル中の1つ又は複数の癌特異的抗原の発現のために検出可能である腫瘍である。腫瘍は、測定可能な寸法である必要はない。
【0064】
本発明の方法によって処置される「対象」は、ヒト又は非ヒト動物のいずれか、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを意味し得る。特定の実施形態において、対象は、本発明の方法を用いる処置の開始前に、検出可能な癌又は診断された癌を有する。特定の実施形態では、対象は、本発明の方法を用いる処置の開始前に、検出可能な感染症又は診断された感染症、例えば、慢性感染症を有する。
【0065】
本明細書で使用される「自殺遺伝子」とは、薬物の非毒性前駆体を細胞傷害性化合物に変換するタンパク質(例えば、酵素)をコードする遺伝子を指す。
【0066】
本明細書で使用される「細胞ターンオーバー」は、細胞内の物質を再構成して拡散させ、最終的に細胞死をもたらし得る動的プロセスを指す。細胞ターンオーバーは、細胞ターンオーバー因子の産生及び細胞からの放出を含む。
【0067】
本明細書で使用される「細胞ターンオーバー因子」は、細胞ターンオーバーを受けている細胞によって産生される分子及び細胞断片であり、最終的に細胞から放出され、他の細胞の生物学的活性に影響を及ぼす。細胞ターンオーバー因子は、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、核酸、小分子、及び細胞断片(例えば、小胞及び細胞膜断片)を含み得る。
【0068】
本明細書で使用される「細胞ターンオーバー経路遺伝子」は、細胞ターンオーバー経路を促進、誘導、又はそうでなければそれに寄与するポリペプチドをコードする遺伝子を指す。
【0069】
本明細書で使用される「プログラム細胞死」は、多細胞生物の細胞の重要な最終経路を指し、形態形成、組織恒常性の維持、及び有害な細胞の除去を含む、様々な生物学的事象に関与する。
【0070】
本明細書で使用される「プログラム細胞死遺伝子」は、プログラム細胞死経路を促進、誘導、又はそうでなければそれに寄与するポリペプチドをコードする遺伝子を指す。
【0071】
本明細書で使用される「タノトランスミッション」は、細胞間の連絡のプロセスであり、これは、シグナル伝達細胞(例えば、本明細書に記載の操作された免疫細胞)における細胞ターンオーバー経路の活性化、例えば、プログラム細胞死の結果起こり、応答標的細胞にシグナル伝達して、生物学的応答を受けるようにする。タノトランスミッションは、例えば、そのような経路を促進する異種遺伝子の発現を介して、上記細胞における細胞ターンオーバー経路遺伝子の調節によりシグナル伝達細胞に誘導され得る。表1~6は、様々な細胞ターンオーバー経路を促進することができる例示的な遺伝子及びポリペプチドを記載する。細胞ターンオーバー経路がこのように活性化されたシグナル伝達細胞は、シグナル伝達細胞によって能動的に放出される因子を介して、又はシグナル伝達細胞の細胞ターンオーバー(例えば、細胞死)中に応答標的細胞に曝露されるようになるシグナル伝達細胞の細胞内因子を介して、応答標的細胞にシグナル伝達することができる。特定の実施形態では、活性化シグナル伝達細胞は、応答標的細胞(例えば、免疫細胞)における免疫刺激応答(例えば、炎症誘発性応答)を促進する。
【0072】
本明細書で使用される「タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチド」は、シグナル伝達細胞(例えば、本明細書に記載の操作された免疫細胞)におけるその発現が、シグナル伝達細胞によるタノトランスミッションの増加をもたらすポリヌクレオチドを指す。一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、タノトランスミッションを促進するポリペプチド、即ち、標的細胞におけるその発現が、シグナル伝達細胞によるタノトランスミッションを増大するポリペプチドをコードする。他の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、タノトランスミッションを抑制するポリペプチドのシグナル伝達細胞における発現及び/又は活性を低下させる。例えば、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、タノトランスミッションを抑制するポリペプチドのシグナル伝達細胞における発現及び/又は活性を低下させるRNA分子をコードし得る。
【0073】
「治療有効量」とは、疾患を処置するために患者に投与されると、その疾患のそのような処置を有効にするのに十分な化合物又は組成物の量を意味する。疾患を予防するために投与される場合、その量は、疾患の発症を回避又は遅らせるのに十分である。「治療有効量」は、化合物又は組成物、疾患及びその重症度、並びに処置される患者の年齢、体重などによって異なる。治療有効量は治癒的である必要はない。治療有効量は、疾患又は状態の発生を防ぐ必要はない。代わりに治療有効量は、疾患又は状態の発症、重症度、又は進行を少なくとも遅延又は軽減する量である。
【0074】
本明細書で使用される場合、「処置(treatment)」、「処置(treating)」、及びその同源語は、疾患、病的状態、又は障害を改善する、和らげる、安定化させる、予防する、又は治癒することを目的とした対象の医学的管理を指す。この用語には、積極的処置(疾患、病的状態、又は障害を改善することを目的とした処置)、原因処置(関連する疾患、病的状態、又は障害の原因を対象とした処置)、緩和処置(症状を軽減するように設計された処置)、予防的処置(関連する疾患、病的状態、又は障害の発症を最小限に抑えるか、又は部分的若しくは完全に阻害することを目的とした処置);及び支援処置(別の療法を補完するために使用される処置)が含まれる。
【0075】
II.細胞ターンオーバー経路
本明細書に記載の免疫細胞は、免疫細胞における細胞ターンオーバー経路を調節するように操作され、それにより免疫細胞によるタノトランスミッションを開始し得る。一部の実施形態では、免疫細胞は、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチドの発現を介して免疫細胞における免疫刺激細胞ターンオーバー経路を誘導するように操作される。
【0076】
免疫刺激細胞ターンオーバー経路は、細胞内で活性化されると、別の免疫細胞などの応答細胞において免疫刺激応答を促進する細胞ターンオーバー経路である。免疫刺激細胞ターンオーバー経路としては、限定はされないが、プログラム壊死(例えば、ネクロトーシス、パイロトーシス)、アポトーシス、例えば、外因性及び/又は内因性アポトーシス、オートファジー、フェロトーシス、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
プログラム壊死
本明細書で使用される「プログラム壊死」は、遺伝的に制御された細胞死を指し、これは、アポトーシス中に起こる膜の完全性の保持とは対照的に、細胞腫脹(腫瘍症)、膜破裂、及び細胞内容物の放出などの形態学的特徴を伴う。一部の実施形態では、プログラム壊死はパイロトーシスである。一部の実施形態では、プログラム壊死は、ネクロトーシスである。
【0078】
パイロトーシス
本明細書で使用される「パイロトーシス」は、カスパーゼ1-、カスパーゼ4-、又はカスパーゼ5-依存性プログラム細胞死に固有の炎症過程を指す。パイロトーシスの最も特徴的な生化学的特徴は、カスパーゼ-1の早期誘導媒介性媒介活性化である。カスパーゼ-1、4、又は5のパイロトーシス活性化は、カスパーゼ-1活性化を促進するアダプタータンパク質ASCを動員するNOD様受容体(NLR)、又はメラノーマ2には存在しない(AIM2)細胞質DNAセンサーなどの他のセンサーを含む、インフラマソームとして知られる多重タンパク質プラットフォームの状況下で発生し得る。カスパーゼ-4/5は、LPSによって直接活性化され得る。どちらの場合も、活性カスパーゼ-1は、タンパク質分解性成熟並びに発熱性インターロイキン-1β(IL-1β)及びIL-18の放出を触媒する。さらに、一部の(しかし、すべてではない)事例では、カスパーゼ活性化は、GSDM-Dを標的として、膜破裂及び細胞死を駆動する。Galluzzi et al.,2018,Cell Death Differ.Mar;25(3):486-541を参照されたい。
【0079】
本開示の方法において、パイロトーシスは、免疫細胞にパイロトーシスを誘導するポリペプチドをコードする1つ若しくは複数の異種ポリヌクレオチドの発現を介して免疫細胞に誘導され得る。免疫細胞においてパイロトーシスを誘導し得るポリペプチドとしては、限定するものではないが、NLR、ASC、GSDM-D、AIM2、及びBIRC1が挙げられる。
【0080】
いくつかの方法が当技術分野で知られており、それらを使用して、パイロトーシスを受けている細胞を同定すると共に、特定のマーカーの検出による他のタイプの細胞分解及び/又は細胞死から区別することができる。パイロトーシスは、カスパーゼ-1、カスパーゼ-4、又はカスパーゼ-5活性を必要とし、通常、プロ-IL-1b及び/又はプロIL-18のプロセシング、これらの成熟サイトカインの放出、並びにGSDM-Dのカスパーゼ-1/4/5切断断片による膜透過処置を伴う。GSDM-BやGSDM-Eを含む他のガスダーミンもパイロトーシスに関与しており、パイロトーシスのマーカーとして使用され得る。
【0081】
ネクロトーシス
ネクロトーシスは、プログラム細胞死経路の主要な種類である。ネクロトーシスには、細胞の膨張、細胞小器官の機能不全及び細胞の溶解が含まれる(Wu W,et al.,(2012)Crit.Rev.Oncol.Hematol.82,249-258)。偶然又は無制御で通常発生する壊死とは異なり、ネクロトーシスは、細胞の代謝及び遺伝毒性ストレス、又は様々な抗癌剤によって誘発することができる、制御されたプロセスである。ネクロトーシスは、正常な発達において不可欠な役割を果たす。さらに、これは、癌を含む様々なヒト疾患の発症に関与しているとされている(Fulda S,(2013),Cancer Biol Ther.14(11):999-1004)。一部の実施形態では、ネクロトーシスは、受容体相互作用プロテインキナーゼ3(RIP1-及び/又はRIPK3)/混合系統キナーゼ様(MLKL)依存性壊死を指す。アルキル化DNA損傷、興奮性毒素及び細胞死受容体のライゲーションを含め、いくつかのトリガーが、ネクロトーシスを引き起こし得る。例えば、カスパーゼ(特に、カスパーゼ-8又はカスパーゼ-10)が遺伝子操作(例えば、遺伝子ノックアウト若しくはRNA干渉、RNAi)によって阻害されるか、又は薬理学的物質(例えば、化学的カスパーゼ阻害剤)によって遮断されると、RIPK3は、MLKLをリン酸化し、MLKLを膜孔にアセンブリングし、それが、最終的に壊死性細胞死の実行を活性化する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Galluzzi et al.,2018,Cell Death Differ.Mar;25(3):486-541を参照されたい。
【0082】
本開示の方法において、ネクロトーシスは、免疫細胞においてネクロトーシスを誘導するポリペプチドをコードする1つ又は複数の異種ポリヌクレオチドの発現を介して免疫細胞に誘導され得る。免疫細胞にネクロトーシスを誘発し得るポリペプチドとしては、限定はされないが、以下のものが挙げられる:Toll様受容体3(TLR3)、TLR4、TIRドメイン含有アダプタータンパク質(TIRAP)、Toll/インターロイキン-1受容体(TIR)ドメイン含有アダプター誘導インターフェロンβ(TRIF)、Z-DNA結合タンパク質1(ZBP1)、受容体相互作用セリン/トレオニン-タンパク質キナーゼ1(RIPK1)、受容体相互作用セリン/トレオニン-タンパク質キナーゼ3(RIPK3)、混合系統キナーゼドメイン様プソイドキナーゼ(MLKL)、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)、FS-7関連表面抗原(FAS)、TNF関連アポトーシス誘導リガンド受容体(TRAILR)及び腫瘍壊死因子受容体1型関連死ドメインタンパク質(TRADD)。
【0083】
いくつかの方法が当技術分野で知られており、それらを使用して、ネクロトーシスを受けている細胞を同定すると共に、特定のマーカーの検出による他のタイプの細胞分解及び/又は細胞死から区別することができる。これらには、これらの翻訳後修飾を検出する抗体によるRIPK1、RIPK3、及びMLKLのリン酸化が含まれ、典型的には、細胞のイムノブロット又は免疫染色によって行う。ネクロトーシスは、カスパーゼ活性化の非存在、急速な膜透過化、膜へのMLKL再局在化、界面活性剤不溶性画分へのRIPK3及びMLKLの蓄積、RIPK3/MLKL複合体形成、及びMLKLオリゴマー化によって、アポトーシス及びパイロトーシスから区別することができる。ネクロトーシスは、RIPK3とMLKLの両方の要件、並びにそれらの活性化によって遺伝的及び薬理学的に定義することができる。
【0084】
アポトーシス
本明細書で使用されるアポトーシスは、細胞の収縮、核の凝縮と断片化、動的な膜の小疱形成、及び近隣又は細胞外マトリックスとの接着の喪失を含む、死んでいる細胞の特定の形態学的及び生化学的変化を特徴とする一種のプログラム細胞死を指す(Nishida K,et al.,(2008)Circ.Res.103,343-351)。2つの基本的なアポトーシスシグナル伝達経路:外因性経路及び内因性経路が存在する(Verbrugge I,et al.,(2010)Cell.143:1192-2)。内因性アポトーシス経路は、DNA損傷、増殖因子の欠乏、酸化ストレスを含む、様々な細胞内刺激によって活性化される。アポトーシスの外因性経路は、細胞死リガンドが細胞死受容体に結合することによって開始され、続いて細胞死誘導シグナル伝達複合体が構築され、これが下流のエフェクターカスパーゼを活性化して細胞死を直接誘導するか、又はミトコンドリア媒介性内因性アポトーシス経路を活性化する(Verbrugge I,et al.,(2010)Cell.143:1192-2)。
【0085】
外因性アポトーシス
本明細書において使用される用語「外因性アポトーシス」は、特定の膜貫通受容体によって感知及び伝播される細胞外ストレスシグナルによって誘導されるアポトーシス細胞死の例を指す。外因性アポトーシスは、FAS/CD95リガンド(FASL/CD95L)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、及びTNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー10(TNFSF10、TNF関連アポトーシス誘導リガンド、TRAILとして最もよく知られている)などのリガンドが、様々な細胞死受容体(即ち、それぞれ、FAS/CD95、TNFα受容体1(TNFR1)、及びTRAIL受容体(TRAILR)1-2)との結合によって開始され得る。或いは、外因性アポトーシス促進シグナルは、ネトリン受容体(例えば、ans-Dであり、大腸癌で欠失している、DCC)を含むいわゆる「依存性受容体」によって送達され得るが、それらは、それらの特異的リガンドの濃度が臨界閾値レベルを下回った場合にのみ致死的機能を発揮する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Galluzzi et al.,2018,Cell Death Differ.Mar;25(3):486-541を参照されたい。
【0086】
本開示の方法において、外因性アポトーシスは、標的細胞において外因性アポトーシスを誘導するポリペプチドをコードする1つ又は複数の異種ポリヌクレオチドの発現を介して免疫細胞に誘導され得る。標的細胞に外因性アポトーシスを誘導し得るポリペプチドとして、限定はされないが、TNF、Fasリガンド(FasL)、TRAIL(及びその同族受容体)、TRADD、細胞死ドメインを有するFas関連タンパク質(FADD)、トランスフォーミング増殖因子β活性化キナーゼ1(Tak1)、カスパーゼ-8、XIAP、BID、カスパーゼ-9、APAF-1、CytoC、カスパーゼ-3及びカスパーゼ-7が挙げられる。標的細胞において外因性アポトーシスを阻害し得るポリペプチドとしては、アポトーシスタンパク質1の細胞阻害剤(cIAP1)、cIAP2、Ikka及びIkkbが挙げられる。いくつかの方法が当技術分野で知られており、これらを使用して、アポトーシスを受けている細胞を同定すると共に、特定のマーカーの検出により他のタイプの細胞分解及び/又は細胞死と区別することができる。アポトーシスは、カスパーゼ活性化を必要とするため、カスパーゼ活性化の阻害剤及び/又はカスパーゼ-8若しくはカスパーゼ-9などのカスパーゼの非存在による細胞死の阻止によって抑制することができる。カスパーゼ活性化は、PARP及びDFF45などの特定の基質、並びに600を超える追加タンパク質の切断によって細胞を体系的に分解する。アポトーシス細胞膜は、最初はホスホチジル-セリンの外在化及び付随する膜ブレビングに際して無傷のままである。ミトコンドリアの外膜は、典型的には破壊されて、CytoC及びHTRA2などの細胞質ゾルタンパク質中に放出される。核DNAは、離散断片に切断され、これらは、当技術分野で公知のアッセイによって検出され得る。
【0087】
オートファジー
本明細書で使用される「オートファジー」という用語は、細胞質高分子及び細胞小器官を取り囲む二重膜結合構造であり、再循環する運命にあるオートファゴソームの形成で始まる、進化的に保存された異化プロセスを指す(Liu JJ,et al.,(2011)Cancer Lett.300,105-114)。オートファジーは、生理学的に、ストレス条件下で生存するための細胞の戦略及びメカニズムである。特定の状況下で過剰に活性化されると、過剰なオートファジーは細胞死を引き起こす(Boya P,et al.,(2013)Nat Cell Biol.15(7):713-20)。
【0088】
本開示の方法において、オートファジーは、免疫細胞においてオートファジーを誘導するポリペプチドをコードする1つ又は複数の異種ポリヌクレオチドの発現を介して免疫細胞に誘導され得る。
【0089】
フェロトーシス
本明細書で使用される「フェロトーシス」という用語は、鉄依存性であって、活性酸素種の産生を伴う調節された細胞死のプロセスを指す。一部の実施形態では、フェロトーシスは、致死レベルまでの脂質ヒドロペルオキシドの鉄依存性蓄積を伴う。フェロトーシスに対する感受性は、アミノ酸、鉄、及び多不飽和脂肪酸の代謝を含む多くの生物学的プロセス、並びにグルタチオン、リン脂質、NADPH、及びコエンザイムQ10の生合成に密接に関連している。フェロトーシスは、ミトコンドリアとは無関係であるが、いくつかの細胞環境においてNADPHオキシダーゼに依存する、細胞質及び脂質のROSの両方の産生をもたらす代謝機能障害を伴う(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるDixon et al.,2012,Cell 149(5):1060-72を参照)。
【0090】
本開示の方法において、フェロトーシスは、免疫細胞において発現されると、フェロトーシスを阻害する免疫細胞にとって内因性のタンパク質の発現又は活性を低下させる、1つ又は複数の異種ポリヌクレオチドの発現を介して免疫細胞に誘導され得る。フェロトーシスを阻害するタンパク質として、限定はされないが、FSP1、GPX4、及びSystem XCが挙げられる。
【0091】
いくつかの方法が当技術分野で知られており、それらを使用して、フェロトーシスを受けている細胞を同定すると共に、特定のマーカーの検出による他の種類の細胞分解及び/又は細胞死から区別することができる。(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Stockwell et al.,2017,Cell 171:273-285を参照)。例えば、フェロトーシスは致死的な過酸化脂質に起因し得るため、過酸化脂質の測定は、鉄依存性細胞分解を受けている細胞を特定する1つの方法を提供する。C11-BODIPY及びLiperfluoは、脂質ROSを検出するための迅速で間接的な手段を提供する親油性ROSセンサーである(Dixon et al.,2012,Cell 149:1060-1072)。液体クロマトグラフィー(LC)/タンデム質量分析(MS)分析を使用して、特定の酸化脂質を直接検出することもできる(Friedmann Angeli et al.,2014,Nat.Cell Biol.16:1180-1191;Kagan et al.,2017,Nat.Chem.Biol.13:81-90)。イソプロスタン及びマロンジアルデヒド(MDA)を使用して、過酸化脂質を測定することもできる(Milne et al.,2007,Nat.Protoc.2:221-226;Wang et al.,2017,Hepatology 66(2):449-465)。MDAを測定するためのキットが市販されている(Beyotime,Haimen,China)。
【0092】
フェロトーシスを研究するための他の有用なアッセイには、鉄存在量及びGPX4活性の測定が含まれる。鉄の存在量は、誘導結合プラズマMS又はカルセインAM消光、及びその他の特定の鉄プローブを使用して測定でき(Hirayama and Nagasawa,2017,J.Clin.Biochem.Nutr.60:39-48;Spangler et al.,2016,Nat.Chem.Biol.12:680-685)、GPX4活性は、LC-MSを使用した細胞溶解物中のホスファチジルコリンヒドロペルオキシドの還元を用いて検出することができる(Yang et al.,2014,Cell 156:317-331)。さらに、フェロトーシスは、グルタチオン(GSH)含有量を測定することによって評価され得る。GSHは、例えば、市販のGSH-Gloグルタチオンアッセイ(Promega,Madison,WI)を使用することによって測定することができる。
【0093】
フェロトーシスは、1つ又は複数のマーカータンパク質の発現を測定することによっても評価され得る。適切なマーカータンパク質には、限定されるものではないが、グルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)、プロスタグランジン-エンドペルオキシドシンターゼ2(PTGS2)、及びシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)が含まれる。マーカータンパク質又はマーカータンパク質をコードする核酸の発現レベルは、限定されるものではないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応、逆転写酵素PCR分析、定量的リアルタイムPCR、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二重鎖分析、ノーザンブロット分析、インサイチューハイブリダイゼーション、アレイ分析、デオキシリボ核酸配列決定、制限断片長多型分析、及びそれらの組み合わせ又は部分的な組み合わせを含む当技術分野で公知の適切な技術を用いて決定することができる。
【0094】
IV.本発明の操作された免疫細胞
本発明の免疫細胞は、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むように操作されている。一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、免疫細胞によるタノトランスミッションを促進するポリペプチドをコードする少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドを含む。他の実施形態では、操作された免疫細胞は、標的細胞内でのタノトランスミッションを促進するポリペプチドをコードする少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドを含む。
【0095】
一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、免疫細胞の活性化時にポリヌクレオチドの発現を誘導する、異種プロモーターの転写制御下にあり得る(例えば、異種プロモーターに作動可能に連結されている)。一部の実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞に含まれるシグナル伝達ドメインの活性化及び/又は標的抗原への結合時に活性化される。好適なプロモーターとして、限定はされないが、活性化T細胞核内因子(NFAT)プロモーター、STATプロモーター、AP-1プロモーター、NF-κBプロモーター、及びIRF4プロモーターが挙げられる。
【0096】
免疫細胞におけるタノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現は、免疫細胞における細胞ターンオーバー経路を変化させ得る。例えば、免疫細胞における1つ又は複数のポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現は、免疫細胞の正常な細胞ターンオーバー経路を、例えばネクロトーシス、アポトーシス、オートファジー、フェロトーシス又はパイロトーシスなどの、タノトランスミッションを促進する細胞ターンオーバー経路に変化させ得る。
【0097】
一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、タノトランスミッションを促進するポリペプチドをそれぞれコードする、少なくとも2、3、4又は5個のポリヌクレオチドを含む。タノトランスミッションを促進する例示的なポリペプチドを以下の表1に記載する。一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、野生型タンパク質をコードする。一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、野生型タンパク質の生物学的に活性な断片、例えば、野生型タンパク質のN末端又はC末端切断体をコードする。一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、1つ又は複数の突然変異を含むタンパク質をコードする。一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、ヒトタンパク質、例えば、ヒト野生型タンパク質をコードする。
【0098】
【表1-1】
【0099】
【表1-2】
【0100】
一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチドは、受容体相互作用セリン/スレオニンプロテインキナーゼ3(RIPK3)、Z-DNA結合タンパク質1(ZBP1)、混合系統キナーゼドメイン様シュードキナーゼ(MLKL)、Toll/インターロイキン1受容体(TIR)ドメイン含有アダプター誘導インターフェロンβ(TRIF)、TIRドメイン及びRHIMドメインのみを含むTRIFのN末端切断体、インターフェロン制御因子3(IRF3)、デスドメインを有する切断型Fas関連タンパク質(FADD)、及び細胞性FLICE(FADD様IL-1β変換酵素)阻害タンパク質(c-FLIP)のいずれか1つ又は複数をコードする。一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチドは、ガスダーミンA(GSDM-A)、ガスダーミンB(GSDM-B)、ガスダーミン-C(GSDM-C)、ガスダーミン-D(GSDM-D)、ガスダーミン-E(GSDM-E)、二量体化ドメインを有するC末端カスパーゼ動員ドメインを含むアポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC-CARD)、及びそれらの変異体からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、TIRドメイン及びRHIMドメインのみを含むTRIFのN末端切断は、ヒトTRIF(例えば、miniTRIF)のアミノ酸残基1~311の欠失を含む。
【0101】
一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチドは、TRIFの変異体、例えば、野生型ヒトTRIFタンパク質の変異体をコードする。例示的なヒトTRIF変異体を以下の表2に記載する。
【0102】
【表2】
【0103】
一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチドは、cIAP1、cIAP2、IKKa、IKKb、XIAP及びNemoから選択されるポリペプチドをコードする。これらのポリペプチドは細胞死を抑制し得るが、例えばNF-kB活性化を促進することによって、タノトランスミッションを促進し得る。従って、一部の実施形態では、免疫細胞におけるcIAP1、cIAP2、IKKα、IKKβ、XIAP及び/又はNemoの発現の増加は、免疫細胞によるタノトランスミッションを促進する。他の実施形態では、免疫細胞におけるcIAP1、cIAP2、IKKα、IKKβ、XIAP及び/又はNemoの発現の減少は、例えば、これらのタンパク質による細胞死の抑制を弱めることによって、免疫細胞によるタノトランスミッションを促進し、それにより細胞ターンオーバーを促進する。
【0104】
一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、デスフォールドドメインをコードする。デスフォールドドメインの例として、限定はされないが、デスフォールドドメインは、デスドメイン、ピリンドメイン、デスエフェクタードメイン(DED)、C末端カスパーゼ動員ドメイン(CARD)、及びそれらの変異体が挙げられる。
【0105】
一部の実施形態では、デスドメインは、デスドメインを有するFas関連タンパク質のデスドメイン(FADD)、Fas受容体のデスドメイン、腫瘍壊死因子受容体1型関連デスドメインタンパク質のデスドメイン(TRADD)、腫瘍壊死因子受容体1型(TNFR1)のデスドメイン、及びその変異体から選択される。FADDは23kDaのタンパク質であり、208個のアミノ酸から構成されている。これは、2つの主要ドメイン:C末端デスドメイン(DD)及びN末端デスエフェクタードメイン(DED)を含む ドメインは構造的に互いに類似しており、それぞれが6つのα-ヘリックスで構成されている。FADDのDDは、そのDDを介して細胞膜のFas受容体などの受容体に結合する。FADDのDEDは、プロカスパーゼ8などの細胞内分子のDEDに結合する。一部の実施形態では、FADD-DDは、FADD-DDのドミナントネガティブ変異体、又はミリストイル化(myristolated)FADD-DD(myr-FADD-DD)である。
【0106】
一部の実施形態では、ピリンドメインは、NLRファミリーピリンドメイン含有3(NLRP3)及びアポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)から選択されるタンパク質に由来する。
【0107】
一部の実施形態では、デスエフェクタードメイン(DED)は、デスドメインを有するFas関連タンパク質(FADD)、カスパーゼ-8及びカスパーゼ-10から選択されるタンパク質に由来する。
【0108】
一部の実施形態では、CARDは、RIP関連ICH1/CED3相同タンパク質(RAIDD)、アポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)、ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質(MAVS)、カスパーゼ1、及びその変異体から選択されるタンパク質に由来する。
【0109】
一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、TIRドメインを含むタンパク質をコードする。TIRドメインは、限定はされないが、骨髄分化一次応答タンパク質88(MyD88)、Toll/インターロイキン1受容体(TIR)ドメイン含有アダプター誘導インターフェロンβ(TRIF)、Toll様受容体3(TLR3)、Toll様受容体4(TLR4)、TIRドメイン含有アダプタータンパク質(TIRAP)及び転座鎖関連膜タンパク質(TRAM)を含むタンパク質に由来し得る。
【0110】
一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、細胞性FLICE(FADD様IL-1β変換酵素)阻害タンパク質(c-FLIP)、受容体相互作用セリン/スレオニンプロテインキナーゼ1(RIPK1)、受容体相互作用セリン/スレオニンプロテインキナーゼ3(RIPK3)、Z-DNA結合タンパク質1(ZBP1)、混合系統キナーゼドメイン様シュードキナーゼ(MLKL)、TIRドメイン及びRHIMドメインのみを含むTRIFのN末端切断体、FADD、阻害剤kBαスーパーリプレッサー(IkBα-SR)、インターロイキン1受容体関連キナーゼ1(IRAK1)、腫瘍壊死因子受容体1型関連デスドメイン(TRADD)、カスパーゼ8のドミナントネガティブ変異体、インターフェロン制御因子3(IRF3)、ガスダーミンA(GSDM-A)及びその変異体、ガスダーミンB(GSDM-B)及びその変異体、ガスダーミン-C(GSDM-C)及びその変異体、ガスダーミン-D(GSDM-D)及びその変異体、ガスダーミン-E(GSDM-E)及びその変異体、アポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)、グランザイムA、及び二量体化ドメインを有するC末端カスパーゼ動員ドメインを含むアポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC-CARD)及びその変異体からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。
【0111】
一部の実施形態では、cFLIPは、ヒトcFLIPである。一部の実施形態では、cFLIPは、カスパーゼ8及びFADD様アポトーシス調節因子(cFLAR)である。
【0112】
一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、ウイルス遺伝子である。一部の実施形態では、ウイルス遺伝子は、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)由来のvFLIP(ORF71/K13)、伝染性軟属腫(Molluscum Contagiousum)ウイルス由来のMC159L、ウマヘルペスウイルス2由来のE8、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)又はマウスサイトメガロウイルス(MCMV)由来のvICA、牛痘ウイルス由来のCrmA、及びキンウワバ(Autographa californica)多カプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)由来のP35から選択されるポリペプチドをコードする。
【0113】
本明細書に記載される免疫細胞によるタノトランスミッションを促進するポリペプチドはいずれも、変異してタノトランスミッションを促進する能力をさらに強化し得ることが理解されよう。例えば、一部の実施形態では、ZBP1をコードするポリヌクレオチドは、受容体相互作用タンパク質ホモタイプ相互作用モチーフ(RHIM)Cの欠失、RHIM Dの欠失、RHIM Bの欠失、及びZα1ドメインのN末端をコードする領域の欠失のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含む。一部の実施形態では、ZBP1は、ZBP1-Za1/RHIMA切断型である。
【0114】
一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチドは、受容体相互作用セリン/スレオニンプロテインキナーゼ1(RIPK1)の発現又は活性を阻害する。RIPK1は、TNF及びFasなどの細胞死受容体の下流でネクロトーシスを駆動することにより、タノトランスミッションを促進し得る。しかし、RIPK1のRHIMドメインは、異常なRHIMオリゴマー化を防ぐことによりTRIF及びZBP1媒介性ネクロトーシスも阻害する可能性があり、その結果、ネクロトーシスはRIPK1の非存在下でも強化され得る。従って、一部の実施形態では、RIPK1は、TRIF及びZBP1媒介性ネクロトーシスを阻害することによって、タノトランスミッションを阻害し得る。
【0115】
タノトランスミッションを促進する融合タンパク質
一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、融合タンパク質をコードし得る。融合タンパク質は、以下の表3に列挙されるドメインのうちの2つ以上、例えば、表3に列挙されるドメインの2、3、4又は5つを含み得る。例えば、一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、TRIF TIRドメイン、TRIF RHIMドメイン、及びASC-CARDを含む融合タンパク質をコードする。この融合タンパク質は、カスパーゼ-1を動員し、パイロトーシスを活性化する。一部の実施形態では、融合タンパク質は、ZBP1 Za2ドメイン及びASC-CARDを含む。この融合タンパク質は、パイロトーシスを活性化する。一部の実施形態では、融合タンパク質は、RIPK3 RHIMドメイン及びカスパーゼ大サブユニット/小サブユニット(L/S)ドメインを含む。この融合タンパク質は、カスパーゼの構成的活性化を駆動し、表3に示すように、選択されたカスパーゼL/Sドメインに応じて異なる種類の細胞死を引き起こす。一部の実施形態では、融合タンパク質は、TRIF TIRドメイン、TRIF RHIMドメイン及びFADDデスドメイン(FADD-DD)を含む。この融合タンパク質は、アポトーシスを阻止するが、ネクロトーシスを誘発する。一部の実施形態では、融合タンパク質は、阻害剤kBαスーパーリプレッサー(IkBαSR)及びカスパーゼ8DEDドメインを含む。この融合タンパク質は、NF-kBを阻害し、アポトーシスを誘導する。
【0116】
【表3】
【0117】
一部の実施形態では、免疫細胞は、タノトランスミッションを促進する1つのみのポリヌクレオチドを含むように操作される。一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するこの単一のポリヌクレオチドは、1つのみのタノトランスミッションポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、この単一のポリヌクレオチドは、2つ以上のタノトランスミッションポリペプチド、例えば、TRADD、TRAF2、TRAF6、cIAP1、cIAP2、XIAP、NOD2、MyD88、TRAM、HOIL、HOIP、シャーピン、IKKg、IKKa、IKKb、RelA、MAVS、RIGI、MDA5、Tak1、TBK1、IKKe、IRF3、IRF7、IRF1、TRAF3、カスパーゼ、FADD、TNFR1、TRAILR1、TRAILR2、FAS、Bax、Bak、Bim、Bid、Noxa、Puma、TRIF、ZBP1、RIPK1、RIPK3、MLKL、ガスダーミンA、ガスダーミンB、ガスダーミンC、ガスダーミンD、ガスダーミンE、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFSF)タンパク質、それらの変異体、及びそれらの機能性断片からなる群から選択される、2つ以上のタノトランスミッションポリペプチドをコードする。
【0118】
他の実施形態では、免疫細胞は、タノトランスミッションを促進する2つ以上のポリヌクレオチドを含むように操作され、ここで、各ポリヌクレオチドは、異なるタノトランスミッションポリペプチドをコードし、例えば、異なるタノトランスミッションポリペプチドは、TRADD、TRAF2、TRAF6、cIAP1、cIAP2、XIAP、NOD2、MyD88、TRAM、HOIL、HOIP、シャーピン、IKKg、IKKa、IKKb、RelA、MAVS、RIGI、MDA5、Tak1、TBK1、IKKe、IRF3、IRF7、IRF1、TRAF3、カスパーゼ、FADD、TNFR1、TRAILR1、TRAILR2、FAS、Bax、Bak、Bim、Bid、Noxa、Puma、TRIF、ZBP1、RIPK1、RIPK3、MLKL、ガスダーミンA、ガスダーミンB、ガスダーミンC、ガスダーミンD、ガスダーミンE、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFSF)タンパク質、それらの変異体、及びそれらの機能性断片からなる群から選択される。
【0119】
好適なカスパーゼとしては、カスパーゼ-1、カスパーゼ-2、カスパーゼ-2、カスパーゼ-3、カスパーゼ-4、カスパーゼ-5、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、カスパーゼ-8、カスパーゼ-9、カスパーゼ-10、カスパーゼ-11及びカスパーゼ-12が挙げられる。
【0120】
例示的なTNFSFタンパク質を以下の表4に記載する。
【0121】
【表4】
【0122】
タノトランスミッションポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を以下の表5に記載する。表5のタノトランスミッションポリペプチドをコードする(又はそれと少なくとも85%、87%、90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一のポリペプチドをコードする)任意の他のポリヌクレオチド配列も、本明細書に記載の方法及び組成物で使用することができる。
【0123】
【表5-1】
【0124】
【表5-2】
【0125】
2つ以上のタノトランスミッションポリペプチドは、個別のポリペプチドとして発現されてもよいし、又はキメラタンパク質内に含まれていてもよい。一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドの少なくとも1つは、2つ以上のタノトランスミッションポリペプチドをコードする単一の転写物として転写される。
【0126】
本明細書に記載のタノトランスミッションポリペプチドは、限定はされないが、NF-κBの活性化、IRF3及び/又はIRF7の活性化、アポトーシスの促進、並びにプログラム壊死(例えば、ネクロトーシス若しくはパイロトーシス)の促進を含め、様々な機構を介してタノトランスミッションを促進し得る。2つ以上のタノトランスミッションポリペプチドの組み合わせが使用される場合、2つ以上のタノトランスミッションポリペプチドの各々は、類似の機構を介し、又は異なる機構を介してタノトランスミッションを促進し得る。例えば、一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドのうち少なくとも2つは、NF-κBを活性化する。一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドのうち少なくとも2つは、IRF3及び/又はIRF7を活性化する。一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドのうち少なくとも2つは、アポトーシスを促進する。一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドのうち少なくとも2つは、プログラム壊死(例えば、ネクロトーシス又はパイロトーシス)を促進する。
【0127】
2つ以上のタノトランスミッションポリペプチドが異なる機構を介してタノトランスミッションを促進する場合、様々な組み合わせの機構を使用することができる。例えば、一部の実施形態では、1つ又は複数のタノトランスミッションポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、NF-κBを活性化し、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、IRF3及び/又はIRF7を活性化する。一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、NF-κBを活性化し、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、アポトーシスを促進する。一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、NF-κBを活性化し、1つ若しくは複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、プログラム壊死(例えば、ネクロトーシス又はパイロトーシス)を促進する。一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、IRF3及び/又はIRF7を活性化し、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、アポトーシスを促進する。一部の実施形態では、1つ又は複数のタノトランスミッションポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、IRF3及び/又はIRF7を活性化し、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、プログラム壊死(例えば、ネクロトーシス又はパイロトーシス)を促進する。一部の実施形態では、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、アポトーシスを促進し、1つ又は複数のタノトランスミッションポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、プログラム壊死(例えば、ネクロトーシス又はパイロトーシス)を促進する。
【0128】
一部の実施形態では、NF-kBを活性化するタノトランスミッションポリペプチドは、TRIF、TRADD、TRAF2、TRAF6、cIAP1、cIAP2、XIAP、NOD2、MyD88、TRAM、HOIL、HOIP、シャーピン、IKKg、IKKa、IKKb、RelA、MAVS、RIGI、MDA5、Tak1、TNFSFタンパク質、並びにそれらの機能性断片及び変異体からなる群から選択される。一部の実施形態では、IRF3及び/又はIRF7を活性化するタノトランスミッションポリペプチドは、TRIF、MyD88、MAVS、TBK1、IKKe、IRF3、IRF7、IRF1、TRAF3、並びにそれらの機能性断片及び変異体からなる群から選択される。一部の実施形態では、アポトーシスを促進するタノトランスミッションポリペプチドは、TRIF、RIPK1、カスパーゼ、FADD、TRADD、TNFR1、TRAILR1、TRAILR2、FAS、Bax、Bak、Bim、Bid、Noxa、Puma、並びにそれらの機能性断片及び変異体からなる群から選択される。一部の実施形態では、プログラムされた壊死(例えば、ネクロトーシス又はパイロトーシス)を促進するタノトランスミッションポリペプチドは、ZBP1、RIPK1、RIPK3、MLKL、ガスダーミン、並びにそれらの機能性断片及び変異体からなる群から選択される。
【0129】
一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの組み合わせは、以下から選択される:TRADDとTRAF2、TRADDとTRAF6、TRADDとcIAP1、TRADDとcIAP2、TRADDとXIAP、TRADDとNOD2、TRADDとMyD88、TRADDとTRAM、TRADDとHOIL、TRADDとHOIP、TRADDとシャーピン、TRADDとIKKg、TRADDとIKKa、TRADDとIKKb、TRADDとRelA、TRADDとMAVS、TRADDとRIGI、TRADDとMDA5、TRADDとTak1、TRADDとTBK1、TRADDとIKKe、TRADDとIRF3、TRADDとIRF7、TRADDとIRF1、TRADDとTRAF3、TRADDとカスパーゼ、TRADDとFADD、TRADDとTNFR1、TRADDとTRAILR1、TRADDとTRAILR2、TRADDとFAS、TRADDとBax、TRADDとBak、TRADDとBim、TRADDとBid、TRADDとNoxa、TRADDとPuma、TRADDとTRIF、TRADDとZBP1、TRADDとRIPK1、TRADDとRIPK3、TRADDとMLKL、TRADDとガスダーミンA、TRADDとガスダーミンB、TRADDとガスダーミンC、TRADDとガスダーミンD、TRADDとガスダーミンE、TRAF2とTRAF6、TRAF2とcIAP1、TRAF2とcIAP2、TRAF2とXIAP、TRAF2とNOD2、TRAF2とMyD88、TRAF2とTRAM、TRAF2とHOIL、TRAF2とHOIP、TRAF2とシャーピン、TRAF2とIKKg、TRAF2とIKKa、TRAF2とIKKb、TRAF2とRelA、TRAF2とMAVS、TRAF2とRIGI、TRAF2とMDA5、TRAF2とTak1、TRAF2とTBK1、TRAF2とIKKe、TRAF2とIRF3、TRAF2とIRF7、TRAF2とIRF1、TRAF2とTRAF3、TRAF2とカスパーゼ、TRAF2とFADD、TRAF2とTNFR1、TRAF2とTRAILR1、TRAF2とTRAILR2、TRAF2とFAS、TRAF2とBax、TRAF2とBak、TRAF2とBim、TRAF2とBid、TRAF2とNoxa、TRAF2とPuma、TRAF2とTRIF、TRAF2とZBP1、TRAF2とRIPK1、TRAF2とRIPK3、TRAF2とMLKL、TRAF2とガスダーミンA、TRAF2とガスダーミンB、TRAF2とガスダーミンC、TRAF2とガスダーミンD、TRAF2とガスダーミンE、TRAF6とcIAP1、TRAF6とcIAP2、TRAF6とXIAP、TRAF6とNOD2、TRAF6とMyD88、TRAF6とTRAM、TRAF6とHOIL、TRAF6とHOIP、TRAF6とシャーピン、TRAF6とIKKg、TRAF6とIKKa、TRAF6とIKKb、TRAF6とRelA、TRAF6とMAVS、TRAF6とRIGI、TRAF6とMDA5、TRAF6とTak1、TRAF6とTBK1、TRAF6とIKKe、TRAF6とIRF3、TRAF6とIRF7、TRAF6とIRF1、TRAF6とTRAF3、TRAF6とカスパーゼ、TRAF6とFADD、TRAF6とTNFR1、TRAF6とTRAILR1、TRAF6とTRAILR2、TRAF6とFAS、TRAF6とBax、TRAF6とBak、TRAF6とBim、TRAF6とBid、TRAF6とNoxa、TRAF6とPuma、TRAF6とTRIF、TRAF6とZBP1、TRAF6とRIPK1、TRAF6とRIPK3、TRAF6とMLKL、TRAF6とガスダーミンA、TRAF6とガスダーミンB、TRAF6とガスダーミンC、TRAF6とガスダーミンD、TRAF6とガスダーミンE、cIAP1とcIAP2、cIAP1とXIAP、cIAP1とNOD2、cIAP1とMyD88、cIAP1とTRAM、cIAP1とHOIL、cIAP1とHOIP、cIAP1とシャーピン、cIAP1とIKKg、cIAP1とIKKa、cIAP1とIKKb、cIAP1とRelA、cIAP1とMAVS、cIAP1とRIGI、cIAP1とMDA5、cIAP1とTak1、cIAP1とTBK1、cIAP1とIKKe、cIAP1とIRF3、cIAP1とIRF7、cIAP1とIRF1、cIAP1とTRAF3、cIAP1とカスパーゼ、cIAP1とFADD、cIAP1とTNFR1、cIAP1とTRAILR1、cIAP1とTRAILR2、cIAP1とFAS、cIAP1とBax、cIAP1とBak、cIAP1とBim、cIAP1とBid、cIAP1とNoxa、cIAP1とPuma、cIAP1とTRIF、cIAP1とZBP1、cIAP1とRIPK1、cIAP1とRIPK3、cIAP1とMLKL、cIAP1とガスダーミンA、cIAP1とガスダーミンB、cIAP1とガスダーミンC、cIAP1とガスダーミンD、cIAP1とガスダーミンE、cIAP2とXIAP、cIAP2とNOD2、cIAP2とMyD88、cIAP2とTRAM、cIAP2とHOIL、cIAP2とHOIP、cIAP2とシャーピン、cIAP2とIKKg、cIAP2とIKKa、cIAP2とIKKb、cIAP2とRelA、cIAP2とMAVS、cIAP2とRIGI、cIAP2とMDA5、cIAP2とTak1、cIAP2とTBK1、cIAP2とIKKe、cIAP2とIRF3、cIAP2とIRF7、cIAP2とIRF1、cIAP2とTRAF3、cIAP2とカスパーゼ、cIAP2とFADD、cIAP2とTNFR1、cIAP2とTRAILR1、cIAP2とTRAILR2、cIAP2とFAS、cIAP2とBax、cIAP2とBak、cIAP2とBim、cIAP2とBid、cIAP2とNoxa、cIAP2とPuma、cIAP2とTRIF、cIAP2とZBP1、cIAP2とRIPK1、cIAP2とRIPK3、cIAP2とMLKL、cIAP2とガスダーミンA、cIAP2とガスダーミンB、cIAP2とガスダーミンC、cIAP2とガスダーミンD、cIAP2とガスダーミンE、XIAPとNOD2、XIAPとMyD88、XIAPとTRAM、XIAPとHOIL、XIAPとHOIP、XIAPとシャーピン、XIAPとIKKg、XIAPとIKKa、XIAPとIKKb、XIAPとRelA、XIAPとMAVS、XIAPとRIGI、XIAPとMDA5、XIAPとTak1、XIAPとTBK1、XIAPとIKKe、XIAPとIRF3、XIAPとIRF7、XIAPとIRF1、XIAPとTRAF3、XIAPとカスパーゼ、XIAPとFADD、XIAPとTNFR1、XIAPとTRAILR1、XIAPとTRAILR2、XIAPとFAS、XIAPとBax、XIAPとBak、XIAPとBim、XIAPとBid、XIAPとNoxa、XIAPとPuma、XIAPとTRIF、XIAPとZBP1、XIAPとRIPK1、XIAPとRIPK3、XIAPとMLKL、XIAPとガスダーミンA、XIAPとガスダーミンB、XIAPとガスダーミンC、XIAPとガスダーミンD、XIAPとガスダーミンE、NOD2とMyD88、NOD2とTRAM、NOD2とHOIL、NOD2とHOIP、NOD2とシャーピン、NOD2とIKKg、NOD2とIKKa、NOD2とIKKb、NOD2とRelA、NOD2とMAVS、NOD2とRIGI、NOD2とMDA5、NOD2とTak1、NOD2とTBK1、NOD2とIKKe、NOD2とIRF3、NOD2とIRF7、NOD2とIRF1、NOD2とTRAF3、NOD2とカスパーゼ、NOD2とFADD、NOD2とTNFR1、NOD2とTRAILR1、NOD2とTRAILR2、NOD2とFAS、NOD2とBax、NOD2とBak、NOD2とBim、NOD2とBid、NOD2とNoxa、NOD2とPuma、NOD2とTRIF、NOD2とZBP1、NOD2とRIPK1、NOD2とRIPK3、NOD2とMLKL、NOD2とガスダーミンA、NOD2とガスダーミンB、NOD2とガスダーミンC、NOD2とガスダーミンD、NOD2とガスダーミンE、MyD88とTRAM、MyD88とHOIL、MyD88とHOIP、MyD88とシャーピン、MyD88とIKKg、MyD88とIKKa、MyD88とIKKb、MyD88とRelA、MyD88とMAVS、MyD88とRIGI、MyD88とMDA5、MyD88とTak1、MyD88とTBK1、MyD88とIKKe、MyD88とIRF3、MyD88とIRF7、MyD88とIRF1、MyD88とTRAF3、MyD88とカスパーゼ、MyD88とFADD、MyD88とTNFR1、MyD88とTRAILR1、MyD88とTRAILR2、MyD88とFAS、MyD88とBax、MyD88とBak、MyD88とBim、MyD88とBid、MyD88とNoxa、MyD88とPuma、MyD88とTRIF、MyD88とZBP1、MyD88とRIPK1、MyD88とRIPK3、MyD88とMLKL、MyD88とガスダーミンA、MyD88とガスダーミンB、MyD88とガスダーミンC、MyD88とガスダーミンD、MyD88とガスダーミンE、TRAMとHOIL、TRAMとHOIP、TRAMとシャーピン、TRAMとIKKg、TRAMとIKKa、TRAMとIKKb、TRAMとRelA、TRAMとMAVS、TRAMとRIGI、TRAMとMDA5、TRAMとTak1、TRAMとTBK1、TRAMとIKKe、TRAMとIRF3、TRAMとIRF7、TRAMとIRF1、TRAMとTRAF3、TRAMとカスパーゼ、TRAMとFADD、TRAMとTNFR1、TRAMとTRAILR1、TRAMとTRAILR2、TRAMとFAS、TRAMとBax、TRAMとBak、TRAMとBim、TRAMとBid、TRAMとNoxa、TRAMとPuma、TRAMとTRIF、TRAMとZBP1、TRAMとRIPK1、TRAMとRIPK3、TRAMとMLKL、TRAMとガスダーミンA、TRAMとガスダーミンB、TRAMとガスダーミンC、TRAMとガスダーミンD、TRAMとガスダーミンE、HOILとHOIP、HOILとシャーピン、HOILとIKKg、HOILとIKKa、HOILとIKKb、HOILとRelA、HOILとMAVS、HOILとRIGI、HOILとMDA5、HOILとTak1、HOILとTBK1、HOILとIKKe、HOILとIRF3、HOILとIRF7、HOILとIRF1、HOILとTRAF3、HOILとカスパーゼ、HOILとFADD、HOILとTNFR1、HOILとTRAILR1、HOILとTRAILR2、HOILとFAS、HOILとBax、HOILとBak、HOILとBim、HOILとBid、HOILとNoxa、HOILとPuma、HOILとTRIF、HOILとZBP1、HOILとRIPK1、HOILとRIPK3、HOILとMLKL、HOILとガスダーミンA、HOILとガスダーミンB、HOILとガスダーミンC、HOILとガスダーミンD、HOILとガスダーミンE、
HOIPとシャーピン、HOIPとIKKg、HOIPとIKKa、HOIPとIKKb、HOIPとRelA、HOIPとMAVS、HOIPとRIGI、HOIPとMDA5、HOIPとTak1、HOIPとTBK1、HOIPとIKKe、HOIPとIRF3、HOIPとIRF7、HOIPとIRF1、HOIPとTRAF3、HOIPとカスパーゼ、HOIPとFADD、HOIPとTNFR1、HOIPとTRAILR1、HOIPとTRAILR2、HOIPとFAS、HOIPとBax、HOIPとBak、HOIPとBim、HOIPとBid、HOIPとNoxa、HOIPとPuma、HOIPとTRIF、HOIPとZBP1、HOIPとRIPK1、HOIPとRIPK3、HOIPとMLKL、HOIPとガスダーミンA、HOIPとガスダーミンB、HOIPとガスダーミンC、HOIPとガスダーミンD、HOIPとガスダーミンE、シャーピンとIKKg、シャーピンとIKKa、シャーピンとIKKb、シャーピンとRelA、シャーピンとMAVS、シャーピンとRIGI、シャーピンとMDA5、シャーピンとTak1、シャーピンとTBK1、シャーピンとIKKe、シャーピンとIRF3、シャーピンとIRF7、シャーピンとIRF1、シャーピンとTRAF3、シャーピンとカスパーゼ、シャーピンとFADD、シャーピンとTNFR1、シャーピンとTRAILR1、シャーピンとTRAILR2、シャーピンとFAS、シャーピンとBax、シャーピンとBak、シャーピンとBim、シャーピンとBid、シャーピンとNoxa、シャーピンとPuma、シャーピンとTRIF、シャーピンとZBP1、シャーピンとRIPK1、シャーピンとRIPK3、シャーピンとMLKL、シャーピンとガスダーミンA、シャーピンとガスダーミンB、シャーピンとガスダーミンC、シャーピンとガスダーミンD、シャーピンとガスダーミンE、IKKgとIKKa、IKKgとIKKb、IKKgとRelA、IKKgとMAVS、IKKgとRIGI、IKKgとMDA5、IKKgとTak1、IKKgとTBK1、IKKgとIKKe、IKKgとIRF3、IKKgとIRF7、IKKgとIRF1、IKKgとTRAF3、IKKgとカスパーゼ、IKKgとFADD、IKKgとTNFR1、IKKgとTRAILR1、IKKgとTRAILR2、IKKgとFAS、IKKgとBax、IKKgとBak、IKKgとBim、IKKgとBid、IKKgとNoxa、IKKgとPuma、IKKgとTRIF、IKKgとZBP1、IKKgとRIPK1、IKKgとRIPK3、IKKgとMLKL、IKKgとガスダーミンA、IKKgとガスダーミンB、IKKgとガスダーミンC、IKKgとガスダーミンD、IKKgとガスダーミンE、IKKaとIKKb、IKKaとRelA、IKKaとMAVS、IKKaとRIGI、IKKaとMDA5、IKKaとTak1、IKKaとTBK1、IKKaとIKKe、IKKaとIRF3、IKKaとIRF7、IKKaとIRF1、IKKaとTRAF3、IKKaとカスパーゼ、IKKaとFADD、IKKaとTNFR1、IKKaとTRAILR1、IKKaとTRAILR2、IKKaとFAS、IKKaとBax、IKKaとBak、IKKaとBim、IKKaとBid、IKKaとNoxa、IKKaとPuma、IKKaとTRIF、IKKaとZBP1、IKKaとRIPK1、IKKaとRIPK3、IKKaとMLKL、IKKaとガスダーミンA、IKKaとガスダーミンB、IKKaとガスダーミンC、IKKaとガスダーミンD、IKKaとガスダーミンE、IKKbとRelA、IKKbとMAVS、IKKbとRIGI、IKKbとMDA5、IKKbとTak1、IKKbとTBK1、IKKbとIKKe、IKKbとIRF3、IKKbとIRF7、IKKbとIRF1、IKKbとTRAF3、IKKbとカスパーゼ、IKKbとFADD、IKKbとTNFR1、IKKbとTRAILR1、IKKbとTRAILR2、IKKbとFAS、IKKbとBax、IKKbとBak、IKKbとBim、IKKbとBid、IKKbとNoxa、IKKbとPuma、IKKbとTRIF、IKKbとZBP1、IKKbとRIPK1、IKKbとRIPK3、IKKbとMLKL、IKKbとガスダーミンA、IKKbとガスダーミンB、IKKbとガスダーミンC、IKKbとガスダーミンD、IKKbとガスダーミンE、IKKbとRelA、IKKbとMAVS、IKKbとRIGI、IKKbとMDA5、IKKbとTak1、IKKbとTBK1、IKKbとIKKe、IKKbとIRF3、IKKbとIRF7、IKKbとIRF1、IKKbとTRAF3、IKKbとカスパーゼ、IKKbとFADD、IKKbとTNFR1、IKKbとTRAILR1、IKKbとTRAILR2、IKKbとFAS、IKKbとBax、IKKbとBak、IKKbとBim、IKKbとBid、IKKbとNoxa、IKKbとPuma、IKKbとTRIF、IKKbとZBP1、IKKbとRIPK1、IKKbとRIPK3、IKKbとMLKL、IKKbとガスダーミンA、IKKbとガスダーミンB、IKKbとガスダーミンC、IKKbとガスダーミンD、IKKbとガスダーミンE、RelAとMAVS、RelAとRIGI、RelAとMDA5、RelAとTak1、RelAとTBK1、RelAとIKKe、RelAとIRF3、RelAとIRF7、RelAとIRF1、RelAとTRAF3、RelAとカスパーゼ、RelAとFADD、RelAとTNFR1、RelAとTRAILR1、RelAとTRAILR2、RelAとFAS、RelAとBax、RelAとBak、RelAとBim、RelAとBid、RelAとNoxa、RelAとPuma、RelAとTRIF、RelAとZBP1、RelAとRIPK1、RelAとRIPK3、RelAとMLKL、RelAとガスダーミンA、RelAとガスダーミンB、RelAとガスダーミンC、RelAとガスダーミンD、RelAとガスダーミンE、MAVSとRIGI、MAVSとMDA5、MAVSとTak1、MAVSとTBK1、MAVSとIKKe、MAVSとIRF3、MAVSとIRF7、MAVSとIRF1、MAVSとTRAF3、MAVSとカスパーゼ、MAVSとFADD、MAVSとTNFR1、MAVSとTRAILR1、MAVSとTRAILR2、MAVSとFAS、MAVSとBax、MAVとBak、MAVとBim、MAVSとBid、MAVSとNoxa、MAVSとPuma、MAVSとTRIF、MAVSとZBP1、MAVSとRIPK1、MAVSとRIPK3、MAVSとMLKL、MAVSとガスダーミンA、MAVSとガスダーミンB、MAVSとガスダーミンC、MAVSとガスダーミンD、MAVSとガスダーミンE、RIGIとMDA5、RIGIとTak1、RIGIとTBK1、RIGIとIKKe、RIGIとIRF3、RIGIとIRF7、RIGIとIRF1、RIGIとTRAF3、RIGIとカスパーゼ、RIGIとFADD、RIGIとTNFR1、RIGIとTRAILR1、RIGIとTRAILR2、RIGIとFAS、RIGIとBax、RIGIとBak、RIGIとBim、RIGIとBid、RIGIとNoxa、RIGIとPuma、RIGIとTRIF、RIGIとZBP1、RIGIとRIPK1、RIGIとRIPK3、RIGIとMLKL、RIGIとガスダーミンA、RIGIとガスダーミンB、RIGIとガスダーミンC、RIGIとガスダーミンD、RIGIとガスダーミンE、MDA5とTak1、MDA5とTBK1、MDA5とIKKe、MDA5とIRF3、MDA5とIRF7、MDA5とIRF1、MDA5とTRAF3、MDA5とカスパーゼ、MDA5とFADD、MDA5とTNFR1、MDA5とTRAILR1、MDA5とTRAILR2、MDA5とFAS、MDA5とBax、MDA5とBak、MDA5とBim、MDA5とBid、MDA5とNoxa、MDA5とPuma、MDA5とTRIF、MDA5とZBP1、MDA5とRIPK1、MDA5とRIPK3、MDA5とMLKL、MDA5とガスダーミンA、MDA5とガスダーミンB、MDA5とガスダーミンC、MDA5とガスダーミンD、MDA5とガスダーミンE、Tak1とTBK1、Tak1とIKKe、Tak1とIRF3、Tak1とIRF7、Tak1とIRF1、Tak1とTRAF3、Tak1とカスパーゼ、Tak1とFADD、Tak1とTNFR1、Tak1とTRAILR1、Tak1とTRAILR2、Tak1とFAS、Tak1とBax、Tak1とBak、Tak1とBim、Tak1とBid、Tak1とNoxa、Tak1とPuma、Tak1とTRIF、Tak1とZBP1、Tak1とRIPK1、Tak1とRIPK3、Tak1とMLKL、Tak1とガスダーミンA、Tak1とガスダーミンB、Tak1とガスダーミンC、Tak1とガスダーミンD、Tak1とガスダーミンE、TBK1とIKKe、TBK1とIRF3、TBK1とIRF7、TBK1とIRF1、TBK1とTRAF3、TBK1とカスパーゼ、TBK1とFADD、TBK1とTNFR1、TBK1とTRAILR1、TBK1とTRAILR2、TBK1とFAS、TBK1とBax、TBK1とBak、TBK1とBim、TBK1とBid、TBK1とNoxa、TBK1とPuma、TBK1とTRIF、TBK1とZBP1、TBK1とRIPK1、TBK1とRIPK3、TBK1とMLKL、TBK1とガスダーミンA、TBK1とガスダーミンB、TBK1とガスダーミンC、TBK1とガスダーミンD、TBK1とガスダーミンE、IKKeとIRF3、IKKeとIRF7、IKKeとIRF1、IKKeとTRAF3、IKKeとカスパーゼ、IKKeとFADD、IKKeとTNFR1、IKKeとTRAILR1、IKKeとTRAILR2、IKKeとFAS、IKKeとBax、IKKeとBak、IKKeとBim、IKKeとBid、IKKeとNoxa、IKKeとPuma、IKKeとTRIF、IKKeとZBP1、IKKeとRIPK1、IKKeとRIPK3、IKKeとMLKL、IKKeとガスダーミンA、IKKeとガスダーミンB、IKKeとガスダーミンC、IKKeとガスダーミンD、IKKeとガスダーミンE、IRF3とIRF7、IRF3とIRF1、IRF3とTRAF3、IRF3とカスパーゼ、IRF3とFADD、IRF3とTNFR1、IRF3とTRAILR1、IRF3とTRAILR2、IRF3とFAS、IRF3とBax、IRF3とBak、IRF3とBim、IRF3とBid、IRF3とNoxa、IRF3とPuma、IRF3とTRIF、IRF3とZBP1、IRF3とRIPK1、IRF3とRIPK3、IRF3とMLKL、IRF3とガスダーミンA、IRF3とガスダーミンB、IRF3とガスダーミンC、IRF3とガスダーミンD、IRF3とガスダーミンE、IRF7とIRF1、IRF7とTRAF3、IRF7とカスパーゼ、IRF7とFADD、IRF7とTNFR1、IRF7とTRAILR1、IRF7とTRAILR2、IRF7とFAS、IRF7とBax、IRF7とBak、IRF7とBim、IRF7とBid、IRF7とNoxa、IRF7とPuma、IRF7とTRIF、IRF7とZBP1、IRF7とRIPK1、IRF7とRIPK3、IRF7とMLKL、IRF7とガスダーミンA、IRF7とガスダーミンB、IRF7とガスダーミンC、IRF7とガスダーミンD、IRF7とガスダーミンE、
IRF1とTRAF3、IRF1とカスパーゼ、IRF1とFADD、IRF1とTNFR1、IRF1とTRAILR1、IRF1とTRAILR2、IRF1とFAS、IRF1とBax、IRF1とBak、IRF1とBim、IRF1とBid、IRF1とNoxa、IRF1とPuma、IRF1とTRIF、IRF1とZBP1、IRF1とRIPK1、IRF1とRIPK3、IRF1とMLKL、IRF1とガスダーミンA、IRF1とガスダーミンB、IRF1とガスダーミンC、IRF1とガスダーミンD、IRF1とガスダーミンE、TRAF3とカスパーゼ、TRAF3とFADD、TRAF3とTNFR1、TRAF3とTRAILR1、TRAF3とTRAILR2、TRAF3とFAS、TRAF3とBax、TRAF3とBak、TRAF3とBim、TRAF3とBid、TRAF3とNoxa、TRAF3とPuma、TRAF3とTRIF、TRAF3とZBP1、TRAF3とRIPK1、TRAF3とRIPK3、TRAF3とMLKL、TRAF3とガスダーミンA、TRAF3とガスダーミンB、TRAF3とガスダーミンC、TRAF3とガスダーミンD、TRAF3とガスダーミンE、カスパーゼとFADD、カスパーゼとTNFR1、カスパーゼとTRAILR1、カスパーゼとTRAILR2、カスパーゼとFAS、カスパーゼとBax、カスパーゼとBak、カスパーゼとBim、カスパーゼとBid、カスパーゼとNoxa、カスパーゼとPuma、カスパーゼとTRIF、カスパーゼとZBP1、カスパーゼとRIPK1、カスパーゼとRIPK3、カスパーゼとMLKL、カスパーゼとガスダーミンA、カスパーゼとガスダーミンB、カスパーゼとガスダーミンC、カスパーゼとガスダーミンD、カスパーゼとガスダーミンE、FADDとTNFR1、FADDとTRAILR1、FADDとTRAILR2、FADDとFAS、FADDとBax、FADDとBak、FADDとBim、FADDとbid、FADDとNoxa、FADDとPuma、FADDとTRIF、FADDとZBP1、FADDとRIPK1、FADDとRIPK3、FADDとMLKL、FADDとガスダーミンA、FADDとガスダーミンB、FADDとガスダーミンC、FADDとガスダーミンD、FADDとガスダーミンE、TNFR1とTRAILR1、TNFR1とTRAILR2、TNFR1とFAS、TNFR1とBax、TNFR1とBak、TNFR1とBim、TNFR1とBid、TNFR1とNoxa、TNFR1とPuma、TNFR1とTRIF、TNFR1とZBP1、TNFR1とRIPK1、TNFR1とRIPK3、TNFR1とMLKL、TNFR1とガスダーミンA、TNFR1とガスダーミンB、TNFR1とガスダーミンC、TNFR1とガスダーミンD、TNFR1とガスダーミンE、TRAILR1とTRAILR2、TRAILR1とFAS、TRAILR1とBax、TRAILR1とBak、TRAILR1とBim、TRAILR1とBid、TRAILR1とNoxa、TRAILR1とPuma、TRAILR1とTRIF、TRAILR1とZBP1、TRAILR1とRIPK1、TRAILR1とRIPK3、TRAILR1とMLKL、TRAILR1とガスダーミンA、TRAILR1とガスダーミンB、TRAILR1とガスダーミンC、TRAILR1とガスダーミンD、TRAILR1とガスダーミンE、TRAILR2とFAS、TRAILR2とBax、TRAILR2とBak、TRAILR2とBim、TRAILR2とBid、TRAILR2とNoxa、TRAILR2とPuma、TRAILR2とTRIF、TRAILR2とZBP1、TRAILR2とRIPK1、TRAILR2とRIPK3、TRAILR2とMLKL、TRAILR2とガスダーミンA、TRAILR2とガスダーミンB、TRAILR2とガスダーミンC、TRAILR2とガスダーミンD、TRAILR2とガスダーミンE、FASとBax、FASとBak、FASとBim、FASとBid、FASとNoxa、FASとPuma、FASとTRIF、FASとZBP1、FASとRIPK1、FASとRIPK3、FASとMLKL、FASとガスダーミンA、FASとガスダーミンB、FASとガスダーミンC、FASとガスダーミンD、FASとガスダーミンE、BaxとBak、BaxとBim、BaxとBid、BaxとNoxa、BaxとPuma、BaxとTRIF、BaxとZBP1、BaxとRIPK1、BaxとRIPK3、BaxとMLKL、BaxとガスダーミンA、BaxとガスダーミンB、BaxとガスダーミンC、BaxとガスダーミンD、BaxとガスダーミンE、BakとBim、BakとBid、BakとNoxa、BakとPuma、BakとTRIF、BakとZBP1、BakとRIPK1、BakとRIPK3、BakとMLKL、BakとガスダーミンA、BakとガスダーミンB、BakとガスダーミンC、BakとガスダーミンD、BakとガスダーミンE、BimとBid、BimとNoxa、BimとPuma、BimとTRIF、BimとZBP1、BimとRIPK1、BimとRIPK3、BimとMLKL、BimとガスダーミンA、BimとガスダーミンB、BimとガスダーミンC、BimとガスダーミンD、BimとガスダーミンE、BidとNoxa、BidとPuma、BidとTRIF、BidとZBP1、BidとRIPK1、BidとRIPK3、BidとMLKL、BidとガスダーミンA、BidとガスダーミンB、BidとガスダーミンC、BidとガスダーミンD、BidとガスダーミンE、NoxaとPuma、NoxaとTRIF、NoxaとZBP1、NoxaとRIPK1、NoxaとRIPK3、NoxaとMLKL、NoxaとガスダーミンA、NoxaとガスダーミンB、NoxaとガスダーミンC、NoxaとガスダーミンD、NoxaとガスダーミンE、PumaとTRIF、PumaとZBP1、PumaとRIPK1、PumaとRIPK3、PumaとMLKL、PumaとガスダーミンA、PumaとガスダーミンB、PumaとガスダーミンC、PumaとガスダーミンD、PumaとガスダーミンE、TRIFとZBP1、TRIFとRIPK1、TRIFとRIPK3、TRIFとMLKL、TRIFとガスダーミンA、TRIFとガスダーミンB、TRIFとガスダーミンC、TRIFとガスダーミンD、TRIFとガスダーミンE、ZBP1とRIPK1、ZBP1とRIPK3、ZBP1とMLKL、ZBP1とガスダーミンA、ZBP1とガスダーミンB、ZBP1とガスダーミンC、ZBP1とガスダーミンD、ZBP1とガスダーミンE、RIPK1とRIPK3、RIPK1とMLKL、RIPK1とガスダーミンA、RIPK1とガスダーミンB、RIPK1とガスダーミンC、RIPK1とガスダーミンD、RIPK1とガスダーミンE、RIPK3とMLKL、RIPK3とガスダーミンA、RIPK3とガスダーミンB、RIPK3とガスダーミンC、RIPK3とガスダーミンD、RIPK3とガスダーミンE、MLKLとガスダーミンA、MLKLとガスダーミンB、MLKLとガスダーミンC、MLKLとガスダーミンD、MLKLとガスダーミンE、ガスダーミンAとガスダーミンB、ガスダーミンAとガスダーミンC、ガスダーミンAとガスダーミンD、ガスダーミンAとガスダーミンE、ガスダーミンBとガスダーミンC、ガスダーミンBとガスダーミンD、ガスダーミンBとガスダーミンE、ガスダーミンCとガスダーミンD、ガスダーミンCとガスダーミンE、ガスダーミンDとガスダーミンE、TNFSFタンパク質とTRADD、TNFSFタンパク質とTRAF2、TNFSFタンパク質とTRAF6、TNFSFタンパク質とcIAP1、TNFSFタンパク質とcIAP2、TNFSFタンパク質とXIAP、TNFSFタンパク質とNOD2、TNFSFタンパク質とMyD88、TNFSFタンパク質とTRAM、TNFSFタンパク質とHOIL、TNFSFタンパク質とHOIP、TNFSFタンパクとシャーピン、TNFSFタンパクとIKKg、TNFSFタンパクとIKKa、TNFSFタンパクとIKKb、TNFSFタンパクとRelA、TNFSFタンパクとMAVS、TNFSFタンパクとRIGI、TNFSFタンパクとMDA5、TNFSFタンパクとTak1、TNFSFタンパクとTBK1、TNFSFタンパクとIKKe、TNFSFタンパクとIRF3、TNFSFタンパクとIRF7、TNFSFタンパクとIRF1、TNFSFタンパク質とTRAF3、TNFSFタンパク質とカスパーゼ、TNFSFタンパク質とFADD、TNFSFタンパク質とTNFR1、TNFSFタンパク質とTRAILR1、TNFSFタンパク質とTRAILR2、TNFSFタンパク質とFAS、TNFSFタンパク質とBax、TNFSFタンパク質とBak、TNFSFタンパク質とBim、TNFSFタンパク質とBid、TNFSFタンパク質とNoxa、TNFSFタンパク質とPuma、TNFSFタンパク質とTRIF、TNFSFタンパク質とZBP1、TNFSFタンパク質とRIPK1、TNFSFタンパク質とRIPK3、TNFSFタンパク質とMLKL、TNFSFタンパク質とガスダーミンA、TNFSFタンパク質とガスダーミンB、TNFSFタンパク質とガスダーミンC、TNFSFタンパク質とガスダーミンD、TNFSFタンパク質とガスダーミンE、並びにそれらの変異体及びそれらの機能性断片。
【0130】
特定の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、TRIF又はその機能性断片若しくは変異体である。
【0131】
特定の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、RIPK3又はその機能性断片若しくは変異体である。
【0132】
特定の実施形態では、1つ又は複数のタノトランスミッションポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、TRIF又はその機能性断片を含み、1つ又は複数のポリヌクレオチドによってコードされるタノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、RIPK3又はその機能性断片を含む。
【0133】
特定の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、MAVS又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、RIPK3又はその機能性断片若しくは変異体である。
【0134】
特定の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、MAVS又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、MLKL又はその機能性断片若しくは変異体である。
【0135】
一部の実施形態では、Bidの機能性断片は、短縮型Bid(tBID)である。TNFR1/Fasの関与により、細胞質ゾルBidの切断が起こり、短縮型のtBIDが形成され、これは、ミトコンドリアに転位する。tBIDポリペプチドは、膜標的細胞死リガンドとして機能する。Bak欠損ミトコンドリア及び遮断抗体により、tBIDがそのミトコンドリアパートナーBAKに結合して、シトクロムcを放出することが明らかにされる。活性化されたtBIDは、BAKのアロステリック活性化をもたらし、その膜内オリゴマー化をシトクロムc放出のために提示された細孔に誘導し、細胞死受容体から細胞死までの経路を統合する。Wei et al.,2000,Genes & Dev.14:2060-2071を参照。
【0136】
特定の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、MAVS又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、tBID又はその機能性断片若しくは変異体である。
【0137】
一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むように操作されたウイルスは、TRIFをコードするポリヌクレオチドを含まない。
【0138】
操作されたウイルスに含まれるさらなるポリヌクレオチドを以下に記載する。
【0139】
カスパーゼ阻害剤
操作されたウイルスは、標的細胞におけるカスパーゼ活性を阻害する1つ又は複数のポリヌクレオチドをさらに含み得る。一部の実施形態では、標的細胞においてカスパーゼ活性を阻害するポリヌクレオチドは、標的細胞に内因性である1つ又は複数のカスパーゼの発現又は活性を低減する。カスパーゼの発現を低減するポリヌクレオチドとして、限定するものではないが、アンチセンスDNA分子、アンチセンスRNA分子、二本鎖RNA、siRNA、又はクラスター化され、規則的に間隔をあけて配置された短い回文配列の反復(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムガイドRNAを含み得る。
【0140】
一部の実施形態では、標的細胞においてカスパーゼ活性を阻害するポリヌクレオチドは、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドは、ウイルスタンパク質又はその変異体若しくは機能性断片である。例示的なウイルスタンパク質カスパーゼ阻害剤は、以下の表6に提供される。一部の実施形態では、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドは、ヒトタンパク質又はその変異体若しくは機能性断片である。一部の実施形態では、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドは、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ3、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9及びカスパーゼ10からなる群から選択される1つ又は複数のカスパーゼを阻害する。特定の実施形態では、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドは、カスパーゼ8を阻害する。特定の実施形態では、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドは、カスパーゼ10を阻害する。特定の実施形態では、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドは、カスパーゼ8及びカスパーゼ10を阻害する。
【0141】
【表6】
【0142】
一部の実施形態では、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドは、以下:Fas関連死ドメインタンパク質(FADD)ドミナントネガティブ変異体(FADD-DN)、カスパーゼ8活性化のウイルス阻害剤(vICA)、細胞FLICE(FADD様IL-1β変換酵素)-阻害性タンパク質(cFLIP)、カスパーゼ8ドミナントネガティブ変異体(Casp8-DN)、アポトーシスタンパク質-1の細胞阻害剤(cIAP1)、アポトーシスタンパク質-1の細胞阻害剤(cIAP2)、アポトーシスのX連鎖阻害剤(XIAP)、TGFβ活性化キナーゼ1(Tak1)、IκBキナーゼ(IKK)、及びそれらの機能性断片からなる群から選択される。
【0143】
特定の実施形態では、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドは、FADD-DNである。細胞死誘導シグナル伝達複合体(DISC)は、FADDなどのアダプタータンパク質とカスパーゼ8などの誘導型カスパーゼを動員する。Morgan et al.,2001,Cell Death & Differentiation volume 8,page 696-705を参照されたい。DISCへのカスパーゼ8の凝集は、カスパーゼカスケード及びアポトーシスの活性化をもたらす。FADDは、デスドメインとデスエフェクタードメインの2つのタンパク質相互作用ドメインから構成される。FADDは、DISCの必須成分であるため、細胞死ドメインを含むが、細胞死エフェクタードメインを含まないドミナントネガティブ変異体(FADD-DN)は、細胞死受容体誘発アポトーシスの研究で広く使用されている。FADD-DNは、受容体に結合するが、カスパーゼ8を動員することができないため、ドミナントネガティブ阻害剤として機能する。
【0144】
特定の実施形態では、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドは、vICAである。vICAタンパク質は、UL36遺伝子によってコードされるヒトサイトメガロウイルス(cytomegalovirus)(CMV)タンパク質である。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Skaletskaya et al.,PNAS July 3,2001 98(14)7829-7834を参照されたい。vICAタンパク質は、カスパーゼ-8のプロドメインに結合して、その活性化を妨げることにより、Fas媒介性アポトーシスを阻害する。
【0145】
特定の実施形態において、カスパーゼ活性を阻害するポリペプチドは、cFLIPである。cFLIPタンパク質は、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、Fas-L、及びTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)誘発アポトーシスを抑制するマスター抗アポトーシス調節因子及び耐性因子である。参照により本明細書に全体が組み込まれる、Safa,2012,Exp Oncol Oct;34(3):176-84を参照されたい。cFLIPタンパク質は、ヒト細胞において長鎖(cFLIP(L))、短鎖(cFLIP(S))、及びcFLIP(R)スプライス変異体として発現される。cFLIPタンパク質は、リガンド依存性及び非依存性様式で、FADD及び/又はカスパーゼ-8若しくは10及びTRAIL受容体5(DR5)に結合し、アポトーシス阻害性複合体(AIC)を形成する。この相互作用は、次に、細胞死誘導グナル伝達複合体(DISC)の形成と、それに続くカスパーゼカスケードの活性化を阻止する。c-FLIP(L)及びc-FLIP(S)は、様々なシグナル伝達経路で多機能な役割を果たすことも知られている。特定の実施形態では、cFLIPは、cFLIP(L)である。特定の実施形態では、cFLIPは、cFLIP(S)である。
【0146】
一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、TRIF又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、RIPK3又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、FADD-DN又はその機能性断片若しくは変異体である。
【0147】
一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、TRIF又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、RIPK3又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、vICA又はその機能性断片若しくは変異体である。
【0148】
一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、TRIF又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、RIPK3又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、cFLIP又はその機能性断片若しくは変異体である。
【0149】
一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、MAVS又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、RIPK3又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、FADD-DN又はその機能性断片若しくは変異体である。
【0150】
ガスダーミン
ガスダーミンは、膜透過及びパイロトーシスを引き起こす孔形成エフェクタータンパク質のファミリーである。ガスダーミンタンパク質には、ガスダーミンA、ガスダーミンB、ガスダーミンC、ガスダーミンD及びガスダーミンEが含まれる。ガスダーミンは、柔軟なリンカーによって連結された細胞傷害性N末端ドメインとC末端リプレッサードメインを含む。これら2つのドメイン間のタンパク質分解的切断は、細胞傷害性ドメインに対する分子内阻害を解除し、それを細胞膜内に挿入して、大きなオリゴマー孔の形成を可能にするが、これにより、イオン恒常性が崩壊して、細胞死が誘導される。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Broz et al.,2020,Nature Review Immunology 20:143-157を参照されたい。例えば、ガスダーミンE(GSDME、別名:DFNA5)は、カスパーゼ3によって切断され得るが、それにより、GSDME発現細胞において非炎症性アポトーシスがパイロトーシスに変換される。同様に、カスパーゼ1、4及び5は、ガスダーミンDを切断して活性化する。
【0151】
2つ以上のタノトランスミッションポリペプチドをコードする核酸分子、又はベクター(例えば、ウイルス、プラスミド若しくはトランスポゾン)、細胞又は医薬組成物は、ガスダーミン又はその機能性断片若しくは変異体をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド(例えば、機能性断片)を含んでもよい。一部の実施形態では、ガスダーミンの機能性断片は、ガスダーミンA、ガスダーミンB、ガスダーミンC、ガスダーミンD又はガスダーミンEのN末端ドメインである。
【0152】
一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、TRIF又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、RIPK3又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、ガスダーミン又はその機能性断片若しくは変異体である。
【0153】
一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、TRIF又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、RIPK3又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、ガスダーミンE又はその機能性断片若しくは変異体である。
【0154】
一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、MAVS又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、ガスダーミンD N末端ドメイン又はその機能性断片若しくは変異体である。
【0155】
一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、MAVS又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、ガスダーミンE N末端ドメイン又はその機能性断片若しくは変異体である。
【0156】
一部の実施形態では、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、MAVS又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、tBID又はその機能性断片若しくは変異体であり、タノトランスミッションポリペプチドの少なくとも1つは、ガスダーミンE又はその機能性断片若しくは変異体である。
【0157】
操作された免疫細胞で発現する追加のタンパク質
上記の表5に記載されるものなどのタノトランスミッションを促進するポリペプチドをコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドに加えて、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、免疫刺激タンパク質をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドをさらに含み得る。一実施形態では、免疫刺激タンパク質は、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)のアンタゴニスト、コロニー刺激因子、サイトカイン、免疫チェックポイントモジュレーター、flt3リガンド、又はflt3の抗体アゴニストである。
【0158】
コロニー刺激因子は、顆粒球-マクロファージコロニー-刺激因子(GM-CSF)であってもよい。一実施形態では、GM-CSFをコードするポリヌクレオチドは、ICP34.5遺伝子座に挿入される。
【0159】
サイトカインは、インターロイキンであってもよい。一部の実施形態では、インターロイキンは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IL-24、IL-33、IL-36α、IL-36β及びIL-36γからなる群から選択される。さらに別の好適なサイトカインとしては、I型インターフェロン、インターフェロンγ、III型インターフェロン及びTNFαが挙げられる。
【0160】
一部の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、阻害性免疫チェックポイントタンパク質のアンタゴニストである。阻害性免疫チェックポイントタンパク質の例として、限定するものではないが、ADORA2A、B7-H3、B7-H4、KIR、VISTA、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG3、Tim3、BTLA及びCTLA4が挙げられる。一部の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、刺激性免疫チェックポイントタンパク質のアゴニストである。刺激性免疫チェックポイントタンパク質の例として、限定するものではないが、CD27、CD28、CD40、OX40、GITR、ICOS及び4-1BBが挙げられる。一部の実施形態では、刺激性免疫チェックポイントタンパク質のアゴニストは、CD40リガンド(CD40L)、ICOSリガンド、GITRリガンド、4-1-BBリガンド、0X40リガンド及びそれらのいずれかの修飾形態から選択される。一部の実施形態では、刺激性免疫チェックポイントタンパク質のアゴニストは、CD40、ICOS、GITR、4-1-BB及び0X40から選択されるタンパク質の抗体アゴニストである。
【0161】
上記の表5に記載されるものなどのタノトランスミッションを促進するポリペプチドをコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドに加えて、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、自殺遺伝子をさらに含み得る。用語「自殺遺伝子」とは、薬物の非毒性前駆体を細胞傷害性化合物に変換するタンパク質(例えば、酵素)をコードする遺伝子を指す。一部の実施形態では、自殺遺伝子は、FK506結合タンパク質(FKBP)-FAS、FKBP-カスパーゼ-8、FKBP-カスパーゼ-9、シトシンデアミナーゼ(CDase)活性を有するポリペプチド、チミジンキナーゼ活性を有するポリペプチド、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRTase)活性を有するポリペプチド、及びプリンヌクレオシドホスホリラーゼ活性を有するポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドをコードする。
【0162】
一部の実施形態では、CDase活性を有するポリペプチドは、FCY1、FCA1又はCodAである。
【0163】
一部の実施形態では、UPRTase活性を有するポリペプチドは、FUR1又はその変異体、例えば、FUR1Δ105である。FUR1Δ105は、コード領域の5’領域の最初の105ヌクレオチドを欠失したFUR1遺伝子であり、これは、N末端で最初の35アミノ酸残基が欠失したUPRTaseの合成を可能にする。FUR1Δ105は、天然タンパク質の36位のメチオニンから開始する。
【0164】
自殺遺伝子は、融合タンパク質、例えば、CDase及びUPRTase活性を有する融合タンパク質をコードし得る。一部の実施形態では、融合タンパク質は、以下:codA::upp、FCY1::FUR1、FCYl::FUR1Δ105(FCU1)及びFCU1-8ポリペプチドから選択される。
【0165】
タノトランスミッションを阻害するポリペプチド
一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、タノトランスミッションを阻害する免疫細胞に対し内因性であるポリペプチドの免疫細胞における発現又は活性を低下させるポリヌクレオチド(例えば、siRNAをコードするポリヌクレオチド)である。免疫細胞に内因性であり、タノトランスミッションを阻害し得る例示的なポリペプチドを以下の表7に記載する。
【0166】
【表7】
【0167】
タノトランスミッションを阻害する遺伝子の発現を低減するポリヌクレオチドとして、限定するものではないが、アンチセンスDNA分子、アンチセンスRNA分子、二本鎖RNA、siRNA、又はクラスター化され、規則的に間隔をあけて配置された短い回文配列の反復(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムガイドRNAを含み得る。
【0168】
IV.シグナル伝達ドメイン及びターゲティングドメイン
本発明の操作された免疫細胞は、細胞ターンオーバーを引き起こす異種シグナル伝達ドメイン(例えば、細胞内シグナル伝達ドメイン)及び/又は操作された免疫細胞を標的細胞に導く異種ターゲティングドメイン(例えば、抗原結合ドメイン)を含み得る。シグナル伝達ドメインとターゲティングドメインが作動可能に連結していることは必ずしも必要ではない。例えば、一部の実施形態では、シグナル伝達ドメイン及びターゲティングドメインは、ヘテロ二量体化小分子の存在下でのみ構築され、その結果、標的抗原が関与し、小分子がシグナル伝達ドメインとターゲティングドメインを結合する場合にのみ、操作された免疫細胞が活性化される。Wu et al.,2015,Science Oct 16;350(6258):aab4077を参照。
【0169】
一部の実施形態では、異種シグナル伝達ドメインは、本明細書に記載の細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、ITAMを含むシグナル伝達ドメインを含む。しかし、本明細書に記載の細胞内シグナル伝達ドメイン以外の他の種類の異種シグナル伝達ドメインも、操作された免疫細胞における使用に好適である。例えば、一部の実施形態では、異種シグナル伝達ドメインは、合成Notch(synNotch)受容体シグナル伝達系を含む。SynNotch受容体シグナル伝達系は、細胞間シグナル伝達受容体Notchからのコア制御性ドメインを含有するが、合成抗原結合ドメイン(例えば、一本鎖抗体)及び合成細胞内転写ドメインを有する(Gordon et al.,2015;Morsut et al.,2016)。synNotch受容体が同族抗原に結合すると、synNotch受容体は天然のNotch活性化と同様の誘導性膜貫通切断を受け、それにより細胞内転写ドメインが放出されて核に入り、同族の上流シス活性化プロモーターによって調節される標的遺伝子の発現が活性化される。従って、synNotchシグナル伝達システムを使用して、カスタマイズされた抗原認識イベントが異種ポリヌクレオチド、例えばタノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドの発現を駆動できる、操作された免疫細胞を生成することができる。SynNotchシグナル伝達系は、例えば、米国特許第9,670,281号明細書;Roybal et al.,2016,Cell 167:419-432;及びMorsut et al.,2016,Cell 164(4):780-91に記載されている。
【0170】
一部の実施形態では、異種ターゲティングドメインは、抗原結合ドメインである。しかし、抗原結合ドメイン以外の他の種類の異種ターゲティングドメインも、操作された免疫細胞での使用に好適である。例えば、一部の実施形態では、異種ターゲティングドメインは、HIF1αの酸素感受性サブドメインである。この酸素感受性のサブドメインは、特定の腫瘍の特徴である低酸素環境に反応する。Juillerat et al.,2017,Sci.Rep.7:39833を参照。
【0171】
一部の実施形態では、ターゲティングドメイン(例えば、抗原結合ドメイン)は、シグナル伝達ドメイン(例えば、細胞内シグナル伝達ドメイン)に作動可能に連結される。一部の実施形態では、ターゲティングドメイン及びシグナル伝達ドメインは、キメラ抗原受容体(CAR)内に含まれる。
【0172】
キメラ抗原受容体(CAR)
本発明の操作された免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする異種ポリヌクレオチドをさらに含み得る。キメラ抗原受容体(CAR)は、所望の抗原(腫瘍抗原など)に対する抗体に基づく特異性と、T細胞受容体を活性化する細胞内ドメインを組み合わせて、特異的な免疫活性を示すキメラタンパク質を生成する分子である。
【0173】
一部の実施形態では、CARは、シグナル伝達ドメイン(例えば、細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む。一部の実施形態では、CARは、操作された免疫細胞を標的細胞に導くターゲティングドメイン(例えば、抗原結合ドメイン)を含む。一部の実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及びシグナル伝達ドメインを含む。CARは、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインの間にヒンジドメインをさらに含み得る。
【0174】
一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドは、例えばCARの抗原結合ドメインの標的抗原への結合時、及び/又はシグナル伝達ドメイン、例えばCARの細胞内シグナル伝達ドメインの活性化時に、免疫細胞の活性化時にポリヌクレオチドの発現を誘導する、異種プロモーターの転写制御下にあり得る(例えば、異種プロモーターに作動可能に連結されている)。
【0175】
免疫細胞におけるタノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現は、免疫細胞における細胞ターンオーバー経路を変化させ得る。例えば、免疫細胞における1つ又は複数のポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現は、免疫細胞の正常な細胞ターンオーバー経路を、例えばネクロトーシス、アポトーシス、オートファジー、フェロトーシス又はパイロトーシスなどの、タノトランスミッションを促進する細胞ターンオーバー経路に変化させ得る。
【0176】
A.抗原結合ドメイン及びその標的
抗原結合ドメインは、標的細胞又は病原体(例えば、癌細胞、真菌細胞、細菌細胞、又はウイルス)上の表面マーカーを認識する、操作された免疫細胞の表面上の標的特異的結合要素である。CARの抗原結合ドメインの選択は、標的細胞又は病原体の表面に見られる標的タンパク質の種類に依存する。例えば、一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、癌細胞(例えば、固形腫瘍細胞又は非固形癌細胞)の表面上の標的タンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、真菌細胞、例えば、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)の表面上の標的タンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、細菌細胞の表面上の標的タンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、ウイルス、例えばHIV、HBV、HCV又はCMVの、表面上の標的タンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、病原体に感染した宿主細胞の表面上の標的タンパク質に特異的に結合する。
【0177】
標的細胞が腫瘍細胞である場合、抗原結合ドメイン標的タンパク質は腫瘍特異的抗原(TSA)又は腫瘍関連抗原(TAA)であり得る。TSAは、腫瘍細胞に固有であり、体内の他の細胞では発生しない。TAAは腫瘍細胞に固有のものではなく、抗原に対する免疫寛容状態を誘導できない条件下では正常(例えば、非癌)細胞でも発現する。TAAは、免疫系が未熟で応答できない胎児の発育中に正常細胞に発現する抗原であり得、又は通常、正常細胞には極めて低いレベルで存在するが、腫瘍細胞でははるかに高いレベルで発現される抗原であり得る。
【0178】
抗原結合ドメイン及び癌細胞上の対応する標的タンパク質の選択は、処置される癌の特定の種類に依存する。一部の実施形態では、癌細胞は、固形腫瘍細胞である。固形腫瘍細胞の表面に見られるタンパク質は当技術分野で公知であり、例えば、Martinez et al.,2019,Front Immunol.Feb 5;10:128;及びFesnak et al.,2016,Nat Rev Cancer.2016 Aug 23;16(9):566-81に記載されている。抗原結合ドメインによって標的とされ得る固形腫瘍細胞の表面上の非限定的な例示的タンパク質を以下の表8に記載する。特定の実施形態では、抗原結合ドメインは、メソテリンに結合する。
【0179】
【表8-1】
【0180】
【表8-2】
【0181】
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【0182】
一部の実施形態では、標的細胞は、非固形腫瘍細胞、即ち、非固形癌細胞である。非固形腫瘍細胞の表面に見られるタンパク質は当技術分野で公知であり、例えば、Fesnak et al.,2016,Nat Rev Cancer.2016 Aug 23;16(9):566-81に記載されている。抗原結合ドメインによって標的とされ得る非固形腫瘍細胞の表面上の非限定的な例示的タンパク質を以下の表9に記載する。
【0183】
【表9】
【0184】
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【0185】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、病原体、例えば、細菌細胞、真菌細胞又はウイルス上の、標的タンパク質に結合する。抗原結合ドメインによって標的とされ得る病原体の表面上のタンパク質は当技術分野で公知であり、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるSeif et al.,2019,Front Immunol.10:2711に記載されている。抗原結合ドメインによって標的とされ得る病原体の表面上の非限定的な例示的タンパク質を以下の表10に記載する。
【0186】
【表10】
【0187】
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【0188】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、例えばgp120上の、標的タンパク質に結合する。特定の実施形態では、抗原結合ドメインは、共受容体結合に関与するgp120上の高度に保存されたCD4誘導性エピトープを認識する17bヒトモノクローナル抗体の単鎖可変断片にCD4セグメントが連結されている二重特異性分子を含むか、又はそれからなる。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Liu et al.,2015,J Virol 89(13):6685-6694を参照されたい。さらに特定の実施形態では、抗原結合ドメインは、ヒトC型レクチンの炭水化物認識ドメインに連結されたヒトCD4のセグメントを含む二重特異性分子を含むか、又はそれからなる。これらの抗原結合ドメインは、臨床的に重要なウイルス変異体上に保存されていると考えられるHIV-1 gp120上の2つの独立した領域(即ち、一次受容体結合部位及び高密度オリゴマンノースパッチ)を標的とする。Ghanem et al.,2018,Cytotherapy 2018;20(3):407-419を参照。
【0189】
一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、それぞれが異なるタンパク質を標的とする2つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、2、3、4又は5つの抗原結合ドメイン)を含む。例えば、一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、TCR型シグナル伝達ドメインに作動可能に連結された第1の抗原結合ドメイン、及び共刺激シグナル伝達ドメインに作動可能に連結された第2の抗原結合ドメインを含む。
【0190】
B.ヒンジドメイン
CARの細胞外領域、即ちCARの抗原結合ドメインは、ヒンジドメイン、例えば、ヒトタンパク質由来のヒンジを介して、膜貫通ドメインに結合していてもよい。例えば、一部の実施形態では、ヒンジは、ヒトIg(免疫グロブリン)ヒンジ、例えば、IgG4ヒンジ、又はCD8aヒンジであり得る。一部の実施形態では、ヒンジドメインは、IgDヒンジを含むか、又はIgDヒンジからなる。一部の実施形態では、ヒンジドメインは、抑制性キラー細胞Ig様受容体(KIR)2DS2ヒンジを含む。好適なヒンジドメインのアミノ酸配列及びヒンジドメインをコードする核酸配列は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第8,911,993号及び米国特許第10,273,300号に記載されており、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0191】
C.膜貫通ドメイン
CARは、任意選択によりヒンジドメインを介して、CARの抗原結合ドメインに融合した膜貫通ドメインを含み得る。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、CAR内の他のドメインの1つと天然に関連しており、例えば、CARの他のドメインの1つと同じタンパク質に由来する。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、同じ又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへの膜貫通ドメインの結合を回避して、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限とするために、アミノ酸置換によって選択又は修飾される。膜貫通ドメインは、天然に存在するタンパク質に由来するものであってもよく、又は操作されたものであってもよい。供給源が天然である場合、膜貫通ドメインは任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来し得る。特に興味深い膜貫通領域は、T細胞受容体、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154のアルファ鎖、ベータ鎖、又はゼータ鎖に由来し得る(例えば、少なくともその膜貫通領域を含む)。
【0192】
或いは、膜貫通ドメインを操作してもよく、その場合、ロイシン及びバリンなどの疎水性残基を主に含むことになる。一部の実施形態では、操作された膜貫通は、膜貫通ドメインの各末端にフェニルアラニン、トリプトファン及びバリンのトリプレットを含む。任意選択により、短いポリペプチドリンカー、例えば、2~10アミノ酸長のポリペプチドリンカーは、CARの膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインの間に結合を形成してもよい。グリシン-セリンダブレットは、好適なリンカーの一例である。特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインである。
【0193】
D.細胞内シグナル伝達ドメイン
CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが発現する免疫細胞のエフェクター機能の少なくとも1つの活性化の原因となる。「エフェクター機能」という用語は、細胞の特殊な機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性又はヘルパー活性であり得る。タンパク質の細胞内シグナル伝達ドメイン全体を使用できるが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が使用される範囲で、エフェクター機能シグナルを伝達する限り、そのような切断部分は無傷の鎖の代わりに使用され得る。従って、細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを形質導入するのに十分なタンパク質の細胞内シグナル伝達ドメインの切断された部分を含むことを意味する。
【0194】
CARにおける使用に好適な様々な細胞内シグナル伝達ドメインが当技術分野で公知であり、例えば、Fesnak et al.,2016,Nat Rev Cancer.2016 Aug 23;16(9):566-81;及びTokarew et al.,2019,Br J Cancer.Jan;120(1):26-37に記載されている。CARにおける使用のための細胞内シグナル伝達ドメインの成分の例として、抗原受容体結合後に協調して作用してシグナル伝達を開始するT細胞受容体(TCR)の細胞質配列及び共受容体、並びにこれらの配列の任意の誘導体又は変異体、及び同じ機能的能力を有する任意の合成配列が挙げられる。TCRのみを介して生成されるシグナルだけではT細胞を完全に活性化するには不十分であり、二次又は共刺激シグナルも必要であることが知られている。従って、T細胞の活性化は、2つの異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列:TCR(即ち、TCR型シグナル伝達ドメイン)を介して抗原依存性の一次活性化を開始するもの、及び抗原非依存的に作用して二次又は共刺激シグナルを提供するもの(即ち、共刺激シグナル伝達ドメイン)によって媒介されているといえる。
【0195】
TCR型シグナル伝達ドメインは、TCR複合体の一次活性化を刺激的又は抑制的に調節する。刺激的に作用するTCR型シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ又はITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含有し得る。一次細胞質含有するシグナル伝達配列をITAMの例には、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dに由来するものが含まれる。
【0196】
特定の実施形態では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータからの細胞質シグナル伝達配列を含む。ヒトCD3ゼータタンパク質アミノ酸配列は、例えば、Uniprotアクセッション番号P20963に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。CD3ゼータの細胞質シグナル伝達配列は、CD3ゼータタンパク質のアミノ酸残基52~164から構成される。CD3ゼータの細胞質シグナル伝達配列は、CD3ゼータタンパク質のアミノ酸残基61~89、100~128、及び131~159にある3つのITAMを含む。一部の実施形態では、1つ又は複数のCD3ゼータITAM中の1つ又は複数のチロシン残基が変異している。3つのCD3ゼータITAMを全て組み込んだCARにおけるシグナル伝達の冗長性が、逆効果であるT細胞の分化及び枯渇を助長し得ると考えられている。従って、1つ又は複数のCD3ゼータITAMの1つ又は複数のチロシン残基を変異させると、そのリン酸化及び下流のシグナル伝達が妨げられ、その結果、治療プロファイルが強化されたCARが生じ得る。その全内容が参照により本明細書に組み込まれるFeucht et al.,2019,Nature Medicine Jan;25(1):82-88を参照。一部の実施形態では、チロシン残基は、別のアミノ酸、例えば、フェニルアラニンによる置換によって変異する。
【0197】
細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子からの1つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要な、抗原受容体又はそのリガンド以外の、細胞表面分子である。このような分子の例には、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及びCD83と特異的に結合するリガンドが含まれる。例えば、特定の実施形態では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ鎖部分及び1つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。一部の実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、免疫刺激分子に由来し、例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、及びCD83と特異的に結合するリガンドのうち1つ又は複数に由来する。一部の実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、抑制性免疫チェックポイントタンパク質、例えば、PD-1又はB7-H3に由来する。
【0198】
CARの細胞内シグナル伝達ドメイン内のTCR型シグナル伝達ドメイン及び共刺激シグナル伝達ドメインは、ランダム又は特定の順序で相互に連結され得る。任意選択により、例えば2~10アミノ酸長の短いポリペプチドリンカーが結合を形成してもよい。グリシン-セリンダブレットは、好適なリンカーの一例である。
【0199】
一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータの細胞内ドメインを含む。シグナル伝達ドメインの様々な組み合わせも使用され得る。例えば、CAR細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも2、3、4、又は5つの異なるタンパク質からのシグナル伝達ドメインを含み得る。例えば、一部の実施形態では、CAR細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータの細胞内ドメイン及びCD28のシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、CAR細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータの細胞内ドメイン及び4-1BBのシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、CAR細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータの細胞内ドメイン並びにCD28及び4-1BBのシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、CAR細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータの細胞内ドメイン、CD28及び4-1BBのシグナル伝達ドメイン、並びにCD27又はCD134のシグナル伝達ドメインを含む。CAR細胞内シグナル伝達ドメインにおける使用に好適な様々なシグナル伝達ドメインのアミノ酸配列、及びそれらをコードする核酸配列は当技術分野で公知であり、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,911,993号に記載されている。
【0200】
例えば、一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、以下:(a)CD28の共刺激シグナル伝達ドメインとCD3ゼータの細胞内ドメイン;(b)4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメインとCD3ゼータの細胞内ドメイン;及び(c)CD28の共刺激シグナル伝達ドメイン、4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメイン、CD27又はCD134の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ゼータの細胞内ドメインの組み合わせから選択されるシグナル伝達ドメインの組み合わせを含む。
【0201】
操作された免疫細胞は、CAR活性化時に構成的又は誘導的に発現されるサイトカイン(例えば、インターロイキン12(IL-12))などのタンパク質をさらに含み得る。これらのCARで形質導入されたT細胞は、普遍的なサイトカイン媒介性殺傷のためにリダイレクトされたT細胞(TRUCK)と呼ばれる。これらのCARの活性化は、エキソサイトーシス(パーフォリン、グランザイム)又はデスリガンド-細胞死受容体(Fas-FasL、TRAIL)系などのいくつかの相乗機構を介して、所望のサイトカインの産生及び分泌を促進し、腫瘍の死滅を促進する。Tokarew et al.,2019,Br J Cancer.Jan;120(1):26-37を参照。
【0202】
一部の実施形態では、CAR細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12の活性化又は転写を駆動するドメインを含み得る。例えば、CAR細胞内シグナル伝達ドメインは、STAT3/5結合モチーフを有するIL-2Rβ切断型細胞内インターロイキン2β鎖受容体などの、IL-12活性化又はIL-12転写を駆動するドメインをさらに含み得る。この受容体の抗原特異的活性化は、TCR(例えば、CD3ζドメインを介して)、共刺激(例えば、CD28ドメイン)、及びサイトカイン(JAK-STAT3/5)シグナル伝達を同時に引き起こし、これは、完全なT細胞の活性化及び増殖を駆動するために生理学的に必要な3つ全ての相乗シグナルを効果的に提供する。Tokarew et al.,2019,Br J Cancer.Jan;120(1):26-37を参照。
【0203】
CAR細胞内シグナル伝達ドメインに存在し得るシグナル伝達ドメインの非限定的な例示的組み合わせを以下の表11に記載する。
【0204】
【表11】
【0205】
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【0206】
CARをコードするベクター
操作された免疫細胞における発現のためのCARは、CARのドメインをコードする核酸配列、例えば、抗原結合ドメインをコードする核酸配列、膜貫通ドメインをコードする核酸配列、及び細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含む、DNA構築物によってコードされ得、その全てが作動可能に連結されている。CARをコードするDNA構築物は、ヒンジドメインをコードする核酸配列をさらに含み得る。これらのドメインをコードする核酸配列は、標準的な技術を使用して、例えば、遺伝子を発現する細胞からライブラリーをスクリーニングすることによって、遺伝子を含むことが知られているベクターから遺伝子を誘導することによって、又は遺伝子を含有する細胞及び組織から直接単離することによってなどの、当技術分野で公知の組換え方法を使用して得てもよい。或いは、目的の遺伝子をクローニングするのではなく、合成的に産生することができる。
【0207】
CARをコードするDNA構築物は、免疫細胞への導入のためにベクターに挿入される。レンチウイルスなどのレトロウイルス由来のベクターは、導入遺伝子の長期の安定な組込み及び娘細胞におけるその増殖を可能にすることから、長期遺伝子導入を達成するために好適なツールである。レンチウイルスベクターは、肝細胞などの非増殖細胞に形質導入できるという点で、マウス白血病ウイルスなどのオンコレトロウイルス由来のベクターに対してさらなる利点を有する。また、免疫原性が低いという追加の利点も有する。
【0208】
CARをコードする天然又は合成核酸の発現は、典型的にはCARポリペプチド又はその部分をコードする核酸をプロモーターに作動可能に連結し、構築物を発現ベクターに組み込むことにより達成される。ベクターは、真核生物における複製及び組み込みに適し得る。典型的なクローニングベクターは、所望される核酸配列の発現の調節にとって有用な転写及び翻訳ターミネーター、開始配列、並びにプロモーターを有する。遺伝子送達の方法は当技術分野で公知である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,399,346号、第5,580,859号、第5,589,466号を参照。一部の実施形態では、ベクターは遺伝子療法ベクターである。核酸配列は、多数の種類のベクター、例えば、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、及びコスミドにクローニングできる。特に興味深いベクターには、発現ベクター及び複製ベクターが含まれる。発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供されてもよい。ウイルスベクター技術は当技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)、並びに他のウイルス学及び分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用であるウイルスとして、限定はされないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられる。
【0209】
一般に、好適なベクターは、少なくとも1つの生物において機能的な複製起点、プロモーター配列、便宜的な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1以上の選択可能マーカーを有する(例えば、国際公開第01/96584号パンフレット;国際公開第01/29058号パンフレット;及び米国特許第6,326,193号明細書)。哺乳動物細胞への遺伝子導入のために、多数のウイルスベースのシステムが開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達系に好都合なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、当技術分野で公知の技術を使用してベクターに挿入し、レトロウイルス粒子にパッケージングすることができる。
【0210】
次いで、組換えウイルスを単離し、インビボ又はエクスビボで対象の細胞に送達することができる。多くのレトロウイルス系が当技術分野で公知である。一部の実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。多くのアデノウイルスベクターが当技術分野で公知である。一実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。追加のプロモーター要素、例えばエンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。好適なプロモーターの一例が、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の発現を高レベルで駆動する能力がある強力な構成的プロモーター配列である。好適なプロモーターの他の例には、伸長増殖因子Iα(EF-1α)、ホスホグリセリン酸キナーゼ1(PGK)、又は遺伝子発現を駆動する能力を保持するそれらの断片が含まれる。しかし、他の構成的プロモーター配列、例えば限定はされないが、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端リピート(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バー・ウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、並びにヒト遺伝子プロモーター、例えば限定はされないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、及びクレアチンキナーゼプロモーターも使用されてもよい。誘導性プロモーターを使用することもできる。誘導性プロモーターの使用により、それが作動可能に連結される対象のポリヌクレオチド配列の発現を、その発現が所望されるときに活性化するか、又は発現が所望されないときにその発現を不活性化する能力がある分子スイッチが提供される。誘導性プロモーターの例として、限定はされないが、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及びテトラサイクリンプロモーターが挙げられる。
【0211】
CARポリペプチド又はその一部の発現を評価するために、免疫細胞に導入されるべき発現ベクターはまた、ウイルスベクターを介してトランスフェクト又は感染されることが探求された細胞の集団から細胞を発現する同定及び選択を促進するため、選択可能マーカー遺伝子若しくはレポーター遺伝子のいずれか又は双方を有し得る。他の態様では、選択可能マーカーは、DNAの分離片に対して実施され、同時トランスフェクション法において使用されてもよい。宿主細胞内での発現を可能にするため、選択可能マーカーとレポーター遺伝子の双方は、適切な制御性配列と隣接していてもよい。有用な選択可能マーカーは、例えば、neoなどの抗生物質耐性遺伝子を含む。リポータ遺伝子は、トランスフェクトされた可能性がある免疫細胞を同定する、及び制御性配列の機能性を評価するために使用される。好適なリポータ遺伝子としては、ルシフェラーゼ、βガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼをコード化する遺伝子、又は緑色蛍光タンパク質遺伝子を挙げることができる(例えば、Ui-Tei et al.,2000 FEBS Letters 479:79-82)。
【0212】
操作された免疫細胞は、安全スイッチとしてセツキシマブエピトープ又はリツキシマブエピトープをさらに含んでもよく、必要に応じてセツキシマブ又はリツキシマブの投与を介して操作された免疫細胞を死滅させることができる。Wang et al.,2011,Blood 118:1255-63;and Sommer et al.,2019,Mol Ther.27(6):1126-1138を参照。
【0213】
ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を産生する方法は、当技術分野で周知である。例えば、Sambrook et al.を参照(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)。
【0214】
III.操作される免疫細胞の種類
タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチド、並びに/又は細胞ターンオーバーを引き起こすシグナル伝達ドメイン(例えば、細胞内シグナル伝達ドメイン)と操作された免疫細胞を標的細胞に導くターゲティングドメイン(例えば、抗原結合ドメイン)とを含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むように操作され得る免疫細胞は、限定はされないが、Tリンパ球(T細胞)、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞及び樹状細胞を含む。
【0215】
Tリンパ球(T細胞)
一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、Tリンパ球(T細胞)である。T細胞は、B細胞が抗体産生細胞に成長するのを助ける能力、単球/マクロファージの殺菌作用を高める能力、特定の種類の免疫応答の阻害、標的細胞の直接的な死滅、及び炎症反応の動員を含む、幅広い免疫機能を仲介する。(Paul,W.E.,“Chapter 1:The immune system:an introduction”,Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。T細胞は、それらが発現する細胞表面受容体に基づいて2つの異なるクラスに細分される。T細胞の大部分は、α鎖とβ鎖からなるT細胞受容体(TCR)を発現する。T細胞の小群は、γ鎖とδ鎖からなる受容体を発現する。α/β T細胞には、2つの亜系統:補助受容体分子CD4を発現するT細胞(CD4 T細胞);及びCD8を発現するT細胞(CD8 T細胞)が存在する。これらの細胞は、抗原を認識する方法と、エフェクター及び制御性機能が異なる。一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進する1つ若しくは複数の異種ポリヌクレオチドを含むように操作されたT細胞は、α/β T細胞である。一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進する1つ若しくは複数の異種ポリヌクレオチドを含むように操作されたT細胞は、γ/δ T細胞である。
【0216】
CD4 T細胞は、免疫系の主要な制御性細胞である。それらの制御機能は、T細胞が活性化されると発現が誘導されるCD40リガンドなどのそれらの細胞表面分子の発現、及び活性化されると分泌する様々なサイトカインの発現の両方に依存する。T細胞はまた、重要なエフェクター機能を媒介し、そのいくつかは、それらが分泌するサイトカインのパターンによって決定される。サイトカインは、標的細胞に対して直接的に毒性であり得、強力な炎症メカニズムを動員し得る。加えて、T細胞、特にCD8 T細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって認識される抗原を発現する標的細胞を効率的に溶解できるCTLに成長し得る(Paul,W.E.,“Chapter 1:The immune system:an introduction,”Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。T細胞はまた、機能に基づいてヘルパーT細胞;細胞性免疫の誘導に関与するT細胞;制御性T(Treg)細胞;及び細胞傷害性T細胞として分類することができる。
【0217】
T細胞は、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織、腫瘍を含む、多くの供給源から入手できる。T細胞は、Ficoll(商標)分離などの当業者に公知の任意の数の技術を使用して、対象から採取された血液の単位から得ることができる。T細胞はまた、個体から全血を取り出し、選択成分に分離し、残りを循環に戻すプロセスである、アフェレーシスによって収集してもよい。アフェレーシス産物は、典型的にはリンパ球を含有し、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、その他の有核白血球、赤血球、及び血小板を含む。一態様では、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して血漿画分を除去し、任意選択により、その後のプロセシングステップのために細胞を適切な緩衝液又は培地に入れてもよい。一実施形態では、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。血液サンプルからT細胞を単離する方法は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第8,911,993号及び第10,273,300号明細書に記載されており、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、当技術分野で利用可能な任意の数のT細胞株を使用され得る。T細胞の遺伝子改変(例えば、望ましいCAR及び/又はタノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドを発現させるため)の前又は後に、T細胞は一般的に、例えば、米国特許第6,352,694号;第6,534,055号;第6,905,680号;第6,692、964号;第5,858,358号;第6,887,466号;第6,905,681号;第7,144,575号;第7,067,318号;第7,172,869号;第7,232,566号;第7,175,843号;第5,883,223号;第6,905,874号;第6,797,514号;第6,867,041号明細書;及び米国特許出願公開第20060121005号明細書に記載の方法を使用して、活性化及び増殖させることができる。本開示の方法の一部の実施形態では、T細胞は、処置される対象に対して自家性である。一部の実施形態では、T細胞は、処置される対象に対して同族異系である。
【0218】
キメラ抗原受容体(CAR)を発現するようにT細胞を操作する方法は、本明細書及び当該技術分野において記載され、例えば、米国特許第8,911,993号及び米国特許第10,273,300号に記載されており、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0219】
マクロファージ
一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、マクロファージである。マクロファージは、食作用と呼ばれるプロセスで、細胞残屑、異物、微生物、癌細胞などの物質を飲み込んで消化する。食作用に加えて、マクロファージは、非特異的防御(自然免疫)において重要な役割を果たし、リンパ球などの他の免疫細胞を動員することによって特定の防御機構(適応免疫)を開始するのにも役立つ。例えば、マクロファージは、T細胞への抗原プレゼンター(antigen presenter)として重要である。
【0220】
本明細書に記載の組成物及び方法における使用のためのマクロファージは、例えば、増殖性で条件付き発生が停止された一次マクロファージ前駆体から調製され得る。非形質転換自己再生前駆細胞は、GM-CSF又はFlt3Lを補充した培地中で、骨髄前駆細胞における転写因子Hoxb8の過剰発現によって確立される。Hoxb8活性は、前駆細胞の分化の遮断につながる。これにより、急速に増殖するクローニング可能な細胞が生じる。Hoxb8活性を除去すると、前駆細胞が分化を再開し、分化したマクロファージを産生できるようになる。Lee et al.,2016,J Control Release.2016 Oct 28;240:527-540を参照。本開示の方法の一部の実施形態では、マクロファージは、処置される対象に対して自家性である。一部の実施形態では、マクロファージは、処置される対象に対して同族異系である。
【0221】
キメラ抗原受容体(CAR)を発現するようにマクロファージを操作する方法は、本明細書及び当該技術分野において記載され、例えば、Klichinsky et al.,2020,Nat Biotechnolに記載されている。例えば、ヒト臍帯血由来のCD34造血幹/前駆細胞(HS/PC)に形質導入し、クローン原性アッセイで増殖させてもよい。タノトランスミッションを促進する異種ポリヌクレオチドは、hTIE2プロモーターの制御下で発現され得る。TIE2プロモーターは、腫瘍部位でのマクロファージの分化時に発現する。Escobar et al.,2014,Sci Transl Med 6,217ra3を参照。TIE2は、2つの免疫グロブリン様ドメイン、3つの上皮増殖因子(EGF)様ドメイン、及び3つのフィブロネクチンIII型リピートを含有する固有の細胞外領域を有する。これはヒト腫瘍で広く発現しており、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)及びサイトカインの分泌を刺激することにより、多くの癌の進行において中心的な役割を果たしている。
【0222】
一部の実施形態では、操作されたマクロファージは、CD147分子の細胞内ドメインを含む、キメラ抗原受容体を発現する。CD147はヒトの免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、ヒト腫瘍で広く発現しており、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)及びサイトカインの分泌を刺激することにより、多くの癌の進行において中心的な役割を果たしている。CD147は、細胞外マトリックス(ECM)の分解の原因となるMMPの発現を介したECMのリモデリングに必須である。ECMの分解により、標的細胞、例えば、腫瘍細胞へのアクセスが改善する。例えば、ECMの分解により、免疫細胞による腫瘍浸潤が改善し得る。Caruana et al.,2015,Nature Medicine May;21(5):524-529を参照。タノトランスミッションを促進する異種ポリヌクレオチドは、CD147によって活性化されるプロモーターの制御下で発現され得る。CD147によって活性化されるプロモーターの例として、限定はされないが、NF-κBプロモーター、AP1結合及び環状AMP応答エレメント結合タンパク質プロモーター、及び活性化転写因子2プロモーターが挙げられる。Xiong et al.,2014,Int J Mol Sci.Oct;15(10):17411-17441を参照。一部の実施形態では、操作されたマクロファージは、腫瘍抗原HER2の認識後に活性化されてCD147の内部シグナル伝達を誘発し、MMPの発現を増加させる、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する。例えば、一部の実施形態では、CARは、ヒトHER2を標的とする単鎖抗体断片を含む。特定の実施形態では、CARは、ヒトHER2を標的とする単鎖抗体断片、マウスIghG1のヒンジ領域、並びにCD147(例えば、マウスCD147分子)の膜貫通領域及び細胞内領域を含む。See Zhang et al.,2019,British Journal of Cancer volume 121,pages 837-845を参照。
【0223】
ナチュラルキラー(NK)細胞
一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。NK細胞は、一切の事前の刺激も免疫化もなしに特定の腫瘍及びウイルス感染細胞を溶解する細胞傷害性リンパ球である。NK細胞は、末梢血から単離してもよく、臍帯血、骨髄、ヒト胚性幹細胞、及び人工多能性幹細胞からインビトロで生成することもできる。例えば、NK-92、NKL、及びYTSなどのNK細胞株を安定にトランスフェクトして、本明細書に記載のキメラ抗原受容体構築物のいずれかを発現させ得る。一部の実施形態では、NK細胞は、異種シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、異種シグナル伝達ドメインは、DAP10の細胞質ドメインからのYINMドメイン、及び/又はCD244の細胞質ドメインからのチロシンベースモチーフTIYXX(V/I)を含む。Lanier,2008,Nat Immunol.9(5):495-502を参照。一部の実施形態では、NK細胞は、異種ターゲティングドメイン、例えば、抗原結合ドメインを含む。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、ジシアロガングリオシドGD2を認識する。例えば、一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、抗GD2 ch14.18単鎖Fv抗体融合タンパク質からなるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、NK細胞は、キメラ抗原受容体を発現し得る。一部の実施形態では、キメラ抗原受容体は、ジシアロガングリオシドGD2を認識する抗原結合ドメイン、例えば、抗GD2ch14.18一本鎖Fv抗体融合タンパク質を含むか、又はそれからなる、抗原結合ドメインを含む。キメラ抗原受容体は、シグナル伝達部分としてCD3鎖をさらに含み得る。Esser et al.,2012,J.Cell.Mol.Med.16:569-581を参照。
【0224】
キメラ抗原受容体(CAR)を発現するようにNK細胞を操作する方法は、本明細書及び当該技術分野において記載され、例えば、米国特許第10,273,300号に記載されている。本開示の方法の一部の実施形態では、NK細胞は、処置される対象に対して自家性である。一部の実施形態では、NK細胞は、処置される対象に対して同族異系である。
【0225】
樹状細胞
一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、樹状細胞である。樹状細胞(DC)は、病原体に対する免疫応答を刺激し、無害な抗原に対する免疫恒常性を維持する上で重要な役割を果たす。DCは、免疫応答の誘導及び調節に不可欠な、特殊な抗原感知細胞及び抗原提示細胞(APC)の異種群を表す。末梢血では、ヒトDCは、T細胞(CD3、CD4、CD8)、B細胞(CD19、CD20)、及び単球マーカー(CD14、CD16)を欠いているが、HLA-DR及び他のDC系統マーカー(例えば、CD1a、CD1c)を高度に発現する細胞として特徴づけられる。Murphy et al.,Janeway’s Immunobiology.8th ed.Garland Science;New York,NY,USA:2012.868pを参照されたい。樹状細胞を調製及び操作するための方法は当技術分野で公知であり、例えば、Osada et al.,2015,J Immunotherapy May;38(4):155-64に記載されている。
【0226】
VI.操作された免疫細胞の標的細胞
タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチド、並びに/又は細胞ターンオーバーを引き起こすシグナル伝達ドメイン(例えば、細胞内シグナル伝達ドメイン)と操作された免疫細胞を標的細胞に導くターゲティングドメイン(例えば、抗原結合ドメイン)とを含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含む本発明の操作された免疫細胞は、様々な異なる標的細胞において生物学的応答を誘導し得る。
【0227】
標的細胞の種類としては、癌細胞、免疫細胞、内皮細胞、及び線維芽細胞が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、操作された免疫細胞によるタノトランスミッションは、対象における内因性免疫細胞の免疫活性を誘導又は増加させ、それにより対象における免疫刺激応答を促進する。例えば、一部の実施形態では、操作された免疫細胞によるタノトランスミッションは、腫瘍関連マクロファージなどの内因性免疫細胞の表現型を変化させ、炎症性を高め得る。操作された免疫細胞によって標的細胞内で調節され得る他の生物学的応答には、例えば、癌細胞の増殖及び血管新生の促進が含まれる。例えば、一部の実施形態では、操作された免疫細胞によるタノトランスミッションは、内因性の癌関連線維芽細胞の表現型を癌促進表現型から変化させ得る。一部の実施形態では、操作された免疫細胞によるタノトランスミッションは、内因性内皮細胞による血管新生を阻害し得る。
【0228】
操作された免疫細胞によって標的細胞において誘導される生物学的応答は、標的細胞によるタノトランスミッションの促進でもあり得る。例えば、操作された免疫細胞による細胞ターンオーバー因子の産生は、今度は標的細胞における細胞ターンオーバーを誘導し、それにより標的細胞によるタノトランスミッションを促進し得る。操作された免疫細胞は、2つ以上の種類の標的細胞を有し得る。例えば、一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、内因性免疫細胞の免疫活性を増加させ、癌細胞などの別の種類の標的細胞によるタノトランスミッションも促進する。癌細胞によるタノトランスミッションの促進は、内因性免疫細胞の免疫活性を増加させる癌細胞によるさらなる細胞ターンオーバー因子の産生を誘導し、それにより対象における免疫刺激応答をさらに増幅させることができる。標的細胞によるタノトランスミッションを促進し得る細胞ターンオーバー因子として、限定はされないが、サイトカイン(例えば、IL6及びIL1などの炎症性サイトカイン)、免疫調節タンパク質(例えば、IFN)、増殖因子(例えば、FGF VEGF)、ケモカイン、ATP、ヒストン、核酸(例えば、DNA、RNA)、ホスファチジルセリン、熱ショックタンパク質(HSP)、高移動度グループボックス1タンパク質(HMGB1)及びカルレティキュリンが挙げられる。
【0229】
操作された免疫細胞は、標的細胞が受ける細胞ターンオーバーの種類を変化させることによって、標的細胞(例えば、癌細胞)におけるタノトランスミッションを促進させ得る。例えば、一部の実施形態では、操作された免疫細胞による細胞ターンオーバー因子の産生により、標的細胞における細胞ターンオーバー経路が、非免疫刺激細胞ターンオーバー経路から免疫刺激胞ターンオーバー経路、例えば、ネクロトーシス、外因性アポトーシス、フェロトーシス、パイロトーシス及びそれらの組み合わせに変化し得る。
【0230】
操作された免疫細胞によって産生される様々な異なる細胞ターンオーバー因子は、標的細胞によって、例えば標的細胞内で免疫刺激細胞ターンオーバー経路を誘導することによって、タノトランスミッションを促進し得る。例えば、一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、標的細胞におけるタノトランスミッションを促進するグランザイム(例えば、グランザイムA)を産生し得る。グランザイムは、パーフォリン媒介性細孔を介して標的細胞に送達され得るセリンプロテアーゼのファミリーである。細胞傷害性リンパ球からのグランザイムAがGSDM-Bを切断して、標的癌細胞においてパイロトーシスを引き起こすことが示されている。Zhou et al.,2020,Science 368(6494)を参照。従って、操作された免疫細胞によって産生されたグランザイムAの標的癌細胞への送達は、癌細胞におけるパイロトーシスの誘導を通じて癌細胞によるタノトランスミッションを促進し得る。一部の実施形態では、操作された免疫細胞によって産生される細胞ターンオーバー因子は、標的細胞において免疫刺激細胞ターンオーバー経路を誘導し、それにより標的細胞によるタノトランスミッションを促進する、サイトカインである。他の細胞ターンオーバー因子には、癌細胞上のパートナーと結合し、癌細胞の細胞ターンオーバーを誘導し、それによりタノトランスミッションを促進する、FasL又は他のTNFファミリーメンバーが含まれる。
【0231】
本明細書に記載される癌のいずれかの細胞は、操作された免疫細胞の標的細胞として好適であり得る。一部の実施形態では、標的細胞は、転移性癌細胞である。一部の実施形態では、標的細胞は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、癌関連線維芽細胞(CAF)、又は腫瘍関連内皮細胞などの、腫瘍微小環境(TME)内の細胞である。
【0232】
一部の実施形態では、標的細胞は、肥満細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、リンパ球(例えば、B細胞及びT細胞)並びに本明細書に記載の他の免疫細胞のいずれかから選択される免疫細胞である。
【0233】
標的細胞は、操作された免疫細胞によって産生される細胞ターンオーバー因子と接触するのに十分なほど操作された免疫細胞に近接している。
【0234】
VII.タノトランスミッションを促進する方法
本発明の操作された免疫細胞は、対象におけるタノトランスミッションを促進するために使用され得る。例えば、特定の態様では、本発明は、対象においてタノトランスミッションを促進する方法に関し、この方法は、対象においてタノトランスミッションを促進するのに十分な量及び時間で、本明細書に記載の操作された免疫細胞を投与することを含む。操作された免疫細胞におけるタノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドの発現は、操作された免疫細胞が、免疫細胞によって能動的に放出されるか、又は免疫細胞のターンオーバー(例えば、死)中に露出される、細胞ターンオーバー因子を産生するように誘導する。これらの因子は、応答細胞(例えば、免疫細胞)に生物学的応答(例えば、免疫活性の増大)を受けるようにシグナル伝達する。
【0235】
一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、標的細胞、例えば、癌細胞によるタノトランスミッションをさらに促進し得る。例えば、操作された免疫細胞によって産生される細胞ターンオーバー因子に標的細胞が曝露されると、今度は標的細胞内でも細胞ターンオーバー因子の産生が開始され、それにより標的細胞によるタノトランスミッションも促進され得る。従って、特定の態様では、本開示は、標的細胞によるタノトランスミッションを促進する方法に関し、この方法は、標的細胞又は標的細胞を含む組織を、標的細胞がタノトランスミッションを促進するのに十分な量及び時間で、本明細書に記載の操作された免疫細胞と接触させることを含む。
【0236】
免疫活性を高める方法
一態様では、本発明の操作された免疫細胞を用いて、対象、例えば、免疫活性の増大から利益を被り得る対象の免疫活性を増大することができる。特定の態様では、本開示は、それを必要とする対象において免疫応答を促進する方法に関し、この方法は、本明細書に記載の操作された免疫細胞を、免疫細胞によるタノトランスミッションを促進するのに十分な量及び時間で対象に投与し、それにより対象の免疫応答を促進することを含む。例えば、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチドの発現時に、操作された免疫細胞によって産生される因子は、応答細胞(例えば、免疫細胞)に免疫刺激応答(例えば、炎症誘発性応答)を誘導し得る。一実施形態では、免疫応答は抗癌応答である。
【0237】
本開示の方法によれば、免疫活性は、操作された免疫細胞と対象に内因性である多種多様な免疫細胞との相互作用によって調節され得るが、こうした免疫細胞は、例えば、肥満細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好塩基球、好中球、単球、マクロファージ、樹状細胞、好酸球、リンパ球(Bリンパ球(B細胞))、及びTリンパ球(T細胞))のいずれか1つ又は複数を含む。
【0238】
免疫細胞のタイプ
肥満細胞は、ヒスタミンと抗凝固剤であるヘパリンが豊富な顆粒を含む顆粒球の一種である。活性化されると、肥満細胞は、炎症性化合物を顆粒から局所微小環境に放出する。肥満細胞は、アレルギー、アナフィラキシー、創傷治癒、血管新生、免疫寛容、病原体に対する防御、及び血液脳関門機能において役割を果たす。
【0239】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、一切の事前の刺激も免疫化もなしに特定の腫瘍及びウイルス感染細胞を溶解する細胞傷害性リンパ球である。NK細胞はまた、様々なサイトカイン、例えば、IFN-ガンマ(IFNγ)、TNF-アルファ(TNFα)、GM-CSF、及びIL-3の強力な産生細胞である。従って、NK細胞は、免疫系の制御性細胞としても機能し、他の細胞及び反応に影響を与えるとも考えられている。ヒトでは、NK細胞は、CD56+CD3-リンパ球として広く定義されている。NK細胞の細胞毒性は、細胞表面の受容体からの活性化シグナルと抑制性シグナルのバランスによって厳密に制御されている。NK細胞の活性化を阻害する主な受容体群は、抑制性キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)である。標的細胞上の自己MHCクラスI分子を認識すると、これらの受容体は、シグナル伝達カスケードの活性化を停止する阻害シグナルを伝達し、正常なMHCクラスI発現を示す細胞をNK細胞溶解から保護する。活性化受容体には、標的細胞表面上の様々なリガンドとの結合を介して細胞溶解作用に向けてバランスを押し上げる天然の細胞毒性受容体(NCR)及びNKG2Dが含まれる。従って、標的細胞のNK細胞の認識は、複数の活性化及び抑制性受容体から送達されるシグナルの統合を含むプロセスによって厳密に制御される。
【0240】
単球は、組織に動員されるまで数時間/数日の間血中を循環する骨髄由来単核食細胞である。Wacleche et al.,2018,Viruses(10)2:65を参照されたい。単球の表面での様々なケモカイン受容体及び細胞接着分子の発現により、これらが、骨髄を出て血中に入り、その後、血液から組織内に動員されるのが可能となる。単球は、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、又は寄生虫感染に対する応答を提供する免疫系の生得的な武器(innate arm)に属する。それらの機能には、食作用による病原体の死滅、活性酸素種(ROS)、一酸化窒素(NO)、ミエロペルオキシダーゼ、及び炎症性サイトカインの産生が含まれる。特定の条件下では、単球は、癌並びに感染症及び自己免疫疾患の際にT細胞応答を刺激又は阻害し得る。単球はまた、組織の修復及び血管新生に関与する。
【0241】
マクロファージは、食作用と呼ばれるプロセスで、細胞残屑、異物、微生物、癌細胞などの物質を飲み込んで消化する。食作用に加えて、マクロファージは、非特異的防御(自然免疫)において重要な役割を果たし、リンパ球などの他の免疫細胞を動員することによって特定の防御機構(適応免疫)を開始するのにも役立つ。例えば、マクロファージは、T細胞への抗原プレゼンター(antigen presenter)として重要である。マクロファージは、炎症を増加させ、免疫系を刺激するだけでなく、重要な抗炎症の役割も果たし、サイトカインの放出を介して免疫反応を低下させ得る。炎症を促進するマクロファージは、M1マクロファージと呼ばれ、炎症を軽減して組織の修復を促進するマクロファージは、M2マクロファージと呼ばれる。一部の実施形態では、マクロファージは、腫瘍関連マクロファージである。
【0242】
樹状細胞(DC)は、病原体に対する免疫応答を刺激し、無害な抗原に対する免疫恒常性を維持する上で重要な役割を果たす。DCは、免疫応答の誘導及び調節に不可欠な、特殊な抗原感知細胞及び抗原提示細胞(APC)の異種群を表す。末梢血では、ヒトDCは、T細胞(CD3、CD4、CD8)、B細胞(CD19、CD20)、及び単球マーカー(CD14、CD16)を欠いているが、HLA-DR及び他のDC系統マーカー(例えば、CD1a、CD1c)を高度に発現する細胞として特徴づけられる。Murphy et al.,Janeway’s Immunobiology.8th ed.Garland Science;New York,NY,USA:2012.868pを参照されたい。一部の実施形態では、樹状細胞は、CD103樹状細胞である。
【0243】
「リンパ球」という用語は、体全体のリンパ組織及び正常な成人で形成される小さな白血球を指し、疾患から体を防御するのに大きな役割を果たす、循環血液中の白血球の総数の約22~28%を占める。個々のリンパ球は、(例えば、T細胞受容体とB細胞受容体を形成するために)それらの遺伝物質の組換えを介して、構造的に関連する抗原の限られたセットに応答することにコミットしているという点で特殊化されている。免疫系が所与の抗原と最初に接触する前に存在するこのコミットメントは、リンパ球の表面膜における抗原上の決定基(エピトープ)に特異的な受容体の存在によって表される。各リンパ球は、受容体のユニークな集団を有しており、そのすべてが同一の結合部位を有する。リンパ球の1つのセット又はクローンは、その受容体の結合領域の構造が別のクローンとは異なるため、認識できるエピトープが異なる。リンパ球は、それらの受容体の特異性だけでなく、それらの機能も互いに異なる(Paul,W.E.,“Chapter 1:The immune system:an introduction,”Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999),at p.102)。
【0244】
リンパ球には、抗体分泌細胞の前駆細胞であるBリンパ球(B細胞)、及びTリンパ球(T細胞)が含まれる。
【0245】
Bリンパ球(B細胞)
Bリンパ球は、骨髄の造血細胞に由来する。成熟したB細胞は、その細胞表面によって認識されるエピトープを発現する抗原で活性化することができる。活性化プロセスは、抗原による膜Ig分子の架橋に依存し、直接的である(架橋依存性B細胞活性化)、又は同族支援(cognate help)と呼ばれるプロセスにおけるヘルパーT細胞との相互作用を介し、間接的であり得る。多くの生理学的状況では、受容体架橋刺激及び同族支援は、相乗作用を助けてより活発なB細胞応答を引き起こす(Paul,W.E.,“Chapter 1:The immune system:an introduction,”Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0246】
各B細胞は、同一の可変領域を有するIg分子を発現するため、架橋依存性B細胞活性化には、抗原が細胞表面受容体の結合部位に相補的なエピトープの複数のコピーを発現する必要がある。このような要件は、微生物の莢膜多糖又はウイルスエンベロープタンパク質などの、反復エピトープを有する他の抗原によって満たされる。架橋依存性B細胞活性化は、これらの微生物に対して開始される主要な防御免疫応答である(Paul,W.E.,“Chapter 1:The immune system:an introduction”,Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0247】
同族支援により、B細胞は、受容体を架橋できない抗原に対する応答を開始することができ、同時に、弱い架橋事象によって刺激されたときにB細胞を不活化から救う共刺激シグナルを提供する。同族支援は、B細胞の膜免疫グロブリン(Ig)による抗原の結合、抗原のエンドサイトーシス、及び細胞のエンドソーム/リソソーム区画内のペプチドへのその断片化に依存する。得られたペプチドのいくつかは、クラスII主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子として知られている特殊な一連の細胞表面タンパク質の溝にロードされる。得られたクラスII/ペプチド複合体は、細胞表面で発現され、CD4 T細胞と呼ばれる一連のT細胞の抗原特異的受容体のリガンドとして機能する。CD4 T細胞は、B細胞クラスII/ペプチド複合体に特異的な受容体をその表面に有する。B細胞活性化は、T細胞受容体(TCR)を介したT細胞の結合に依存するだけでなく、この相互作用により、T細胞上の活性化リガンド(CD40リガンド)が、B細胞活性化をシグナル伝達するB細胞(CD40)上の受容体に結合することも可能になる。加えて、Tヘルパー細胞は、B細胞上のサイトカイン受容体に結合することによって、刺激されたB細胞の成長及び分化を調節するいくつかのサイトカインを分泌する(Paul,W.E.,“Chapter 1:The immune system:an introduction,“Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0248】
抗体産生の同族支援の間に、CD40リガンドは、活性化されたCD4 Tヘルパー細胞で一過性に発現され、抗原特異的B細胞上のCD40に結合し、それにより第2の共刺激シグナルを変換する。後者のシグナルは、抗原に遭遇した胚中心B細胞のアポトーシスを防止することによるB細胞の増殖及び分化並びにメモリーB細胞の生成に不可欠である。B細胞及びT細胞の両方でのCD40リガンドの過剰発現は、ヒトSLE患者の病原性自己抗体産生に関係している(Desai-Mehta,A.et al.,J.Clin.Invest.Vol.97(9),2063-2073,(1996))。
【0249】
Tリンパ球(T細胞)
造血組織の前駆体に由来するTリンパ球は、胸腺で分化し、末梢リンパ組織及びリンパ球の再循環プールに撒かれる。Tリンパ球又はT細胞は、幅広い免疫機能を仲介する。免疫機能には、B細胞が抗体産生細胞に成長するのを助ける能力、単球/マクロファージの殺菌作用を高める能力、特定のタイプの免疫応答の阻害、標的細胞の直接的な死滅、及び炎症反応の動員が含まれる。これらの効果は、特定の細胞表面分子のT細胞発現及びサイトカインの分泌に依存する(Paul,W.E.,“Chapter 1:The immune system:an introduction”,Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0250】
T細胞は、B細胞とは抗原認識のメカニズムが異なる。B細胞の受容体である免疫グロブリンは、可溶性分子又は粒子表面の個々のエピトープに結合する。B細胞受容体は、天然分子の表面に発現するエピトープを認識する。抗体及びB細胞受容体は、細胞外液中の微生物に結合して防御するように進化したが、T細胞は、他の細胞の表面にある抗原を認識し、これらの抗原提示細胞(APC)と相互作用してその挙動を変化させることによってそれらの機能を仲介する。T細胞を活性化できる末梢リンパ器官には、主要な3種類のAPC:樹状細胞、マクロファージ、及びB細胞が存在する。これらの中で樹状細胞が最も強力であり、その唯一の機能は外来抗原をT細胞に提示することである。未熟な樹状細胞は、皮膚、腸、気道を含む体全体の組織に存在する。未熟な樹状細胞は、これらの部位で侵入微生物に遭遇すると、病原体及びその産物を取り込み、リンパを介して局所リンパ節又は腸関連リンパ器官に輸送する。病原体との遭遇により、樹状細胞が、抗原捕捉細胞からT細胞を活性化できるAPCに成熟するように誘導される。APCは、T細胞を活性化してエフェクター細胞にする際に役割を果たす3種類のタンパク質分子:(1)T細胞受容体に外来抗原を提示するMHCタンパク質;(2)T細胞表面の相補的受容体に結合する共刺激タンパク質;及び(3)活性化するまで十分に長くT細胞をAPCに結合することを可能にする細胞間接着分子を表面に提示する(“Chapter 24:The adaptive immune system,”Molecular Biology of the Cell,Alberts,B.et al.,Garland Science,NY,(2002))。
【0251】
T細胞は、それらが発現する細胞表面受容体に基づいて2つの異なるクラスに細分される。T細胞の大部分は、α鎖とβ鎖からなるT細胞受容体(TCR)を発現する。T細胞の小群は、γ鎖とδ鎖からなる受容体を発現する。α/β T細胞には、2つの亜系統:補助受容体分子CD4を発現するT細胞(CD4 T細胞);及びCD8を発現するT細胞(CD8 T細胞)が存在する。これらの細胞は、抗原を認識する方法と、エフェクター及び調節機能が異なる。CD4T細胞は、T細胞抗原受容体を使用して、エンドソーム又はファゴソームで生成され、主要組織適合性複合体分子に結合して宿主細胞表面に提示されるペプチドを認識する、適応免疫系の重要な細胞である。それらの制御機能は、T細胞が活性化されると発現が誘導されるCD40リガンドなどのそれらの細胞表面分子の発現、及び活性化されると分泌する様々なサイトカインの発現の両方に依存する。
【0252】
T細胞はまた、重要なエフェクター機能を媒介し、そのいくつかは、それらが分泌するサイトカインのパターンによって決定される。サイトカインは、標的細胞に対して直接的に毒性であり得、強力な炎症メカニズムを動員し得る。
【0253】
加えて、T細胞、特にCD8 T細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって認識される抗原を発現する標的細胞を効率的に溶解できるCTLに成長し得る(Paul,W.E.,“Chapter 1:The immune system:an introduction,”Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0254】
T細胞受容体(TCR)は、クラスII又はクラスI MHCタンパク質の特殊な溝に結合した抗原のタンパク質分解によって得られるペプチドからなる複合体を認識する。CD4 T細胞は、ペプチド/クラスII複合体のみを認識し、CD8 T細胞は、ペプチド/クラスI複合体を認識する(Paul,W.E.,“Chapter 1:The immune system:an introduction,”Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0255】
TCRのリガンド(即ち、ペプチド/MHCタンパク質複合体)はAPC内で生成される。一般に、クラスII MHC分子は、エンドサイトーシスプロセスを介してAPCに取り込まれたタンパク質に由来するペプチドに結合する。次に、これらのペプチドがロードされたクラスII分子が細胞の表面に発現され、これらは、発現した細胞表面複合体を認識できるTCRを有するCD4 T細胞によって結合され得る。従って、CD4 T細胞は、細胞外供給源に由来する抗原と反応するように特殊化されている(Paul,W.E.,“Chapter 1:The immune system:an introduction,”Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0256】
対照的に、クラスI MHC分子には、ウイルスタンパク質などの内部合成タンパク質に由来するペプチドが主にロードされている。これらのペプチドは、プロテオソームによるタンパク質分解によって細胞質タンパク質から生成され、粗面小胞体に移動する。このようなペプチドは、一般に、9アミノ酸長から構成されており、クラスI MHC分子に結合して細胞表面に運ばれ、適切な受容体を発現するCD8 T細胞によって認識され得る。これにより、T細胞系、特にCD8 T細胞に、生物の残りの細胞のタンパク質(例えば、ウイルス抗原)又は変異抗原(活性腫瘍遺伝子産物など)とは異なるタンパク質、又はこれらよりもはるかに大量に産生されるタンパク質を発現する細胞を、これらのタンパク質が無傷の形で細胞表面に発現も分泌もされなくても、検出する能力が付与される(Paul,W.E.,“Chapter 1:The immune system:an introduction,”Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0257】
T細胞はまた、機能に基づいてヘルパーT細胞;細胞性免疫の誘導に関与するT細胞;サプレッサーT細胞;及び細胞傷害性T細胞として分類することができる。
【0258】
ヘルパーT細胞
ヘルパーT細胞は、B細胞を刺激してタンパク質及びその他のT細胞依存性抗原に対する抗体反応を引き起こすT細胞である。T細胞依存性抗原は、個々のエピトープが1回のみ又は限られた回数しか出現しないため、B細胞の膜免疫グロブリン(Ig)を架橋できないか、非効率的にしか架橋できない免疫原である。B細胞は、それらの膜Igを介して抗原に結合し、この複合体は、エンドサイトーシスを受ける。エンドソーム及びリソソーム区画内で、抗原は、タンパク質分解酵素によってペプチドに断片化され、生成されたペプチドの1つ又は複数がクラスII MHC分子にロードされ、この小胞区画を通過する。次に、得られたペプチド/クラスII MHC複合体は、B細胞表面膜に輸送される。ペプチド/クラスII分子複合体に特異的な受容体を有するT細胞は、B細胞表面でこの複合体を認識する(Paul,W.E.,“Chapter 1:The immune system:an introduction,”Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia(1999))。
【0259】
B細胞の活性化は、そのTCRを介したT細胞の結合、及びT細胞CD40リガンド(CD40L)とB細胞上のCD40との相互作用の両方に依存する。T細胞は、CD40Lを構成的に発現しない。むしろ、CD40Lの発現は、T細胞のTCRによって認識される同族抗原及びCD80又はCD86の両方を発現するAPCとの相互作用の結果として誘導される。CD80/CD86は、一般に、B細胞の休止状態ではなく活性化によって発現されるため、活性化B細胞及びT細胞を伴うヘルパーの相互作用が、効率的な抗体産生をもたらし得る。しかしながら、多くの場合、T細胞上のCD40Lの最初の誘導は、樹状細胞などのCD80/86を構成的に発現するAPCの表面での抗原の認識に依存する。次に、このような活性化ヘルパーT細胞は、B細胞と効率的に相互作用して支援することができる。B細胞上の膜Igの架橋は、たとえ非効率的であっても、CD40L/CD40相互作用と相乗作用して、活発なB細胞の活性化をもたらし得る。増殖、Igの分泌、及び発現しているIgクラスのクラスの切り替えを含む、B細胞応答におけるその後の事象は、T細胞由来サイトカインの作用に依存するか、又はその作用によって増強される(Paul,W.E.,“Chapter 1:The immune system:an introduction,”Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0260】
CD4 T細胞は、主にサイトカインIL-4、IL-5、IL-6、及びIL-10を分泌する細胞(T2細胞)、又は主にIL-2、IFN-γ、及びリンホトキシンを産生する細胞(T1細胞)に分化する傾向がある。T2細胞は、B細胞が抗体産生細胞に成長するのを助けるのに非常に効果的であり、T1細胞は、単球及びマクロファージの殺菌活性の増強に関与し、結果として細胞内の小胞区画の微生物の溶解効率を向上させる、細胞免疫応答の効果的な誘導因子である。T2細胞の表現型(即ち、IL-4、IL-5、IL-6、及びIL-10)を有するCD4 T細胞は効率的なヘルパー細胞であるが、T1細胞はヘルパーになる能力も有する(Paul,W.E.,“Chapter 1:The immune system:an introduction,“Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0261】
細胞性免疫誘導へのT細胞の関与
T細胞はまた、単球及びマクロファージの能力を増強して、細胞内微生物を破壊するように作用し得る。特に、ヘルパーT細胞によって産生されるインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)は、単核食細胞が、一酸化窒素の生成及び腫瘍壊死因子(TNF)産生の誘導を含む、細胞内細菌及び寄生虫を破壊するいくつかのメカニズムを促進する。TH1細胞は、IFN-γを産生するため、殺菌作用を高めるのに効果的である。対照的に、TH2細胞によって産生される2つの主要なサイトカインであるIL-4及びIL-10は、これらの活性をブロックする(Paul,W.E.,“Chapter 1:The immune system:an introduction,”Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0262】
制御性T(Treg)細胞
免疫恒常性は、免疫応答の開始とダウンレギュレーションとの間の制御されたバランスによって維持される。アポトーシス及びT細胞アネルギーの両方のメカニズム(抗原との遭遇後にT細胞が本質的に機能的に不活性化される耐性メカニズム(Schwartz,R.H.,“T cell anergy”,Annu.Rev.Immunol.,Vol.21:305-334(2003))は、免疫応答のダウンレギュレーションに寄与する。第3のメカニズムは、サプレッサー又は制御性CD4 T(Treg)細胞による活性化T細胞の能動的抑制によって提供される(Reviewed in Kronenberg,M.et al.,Nature,Vol.435:598-604(2005))。IL-2受容体アルファ(IL-2Rα)鎖を構成的に発現するCD4 Treg(CD4CD25)は、アネルギー性及び抑制性である天然に存在するT細胞のサブセットである(Taams,L.S.et al.,Eur.J.Immunol.Vol.31:1122-1131(2001))。ヒトCD4CD25 Tregは、マウスの対応物と同様に胸腺で生成され、細胞間接触依存性メカニズムを介してレスポンダーT細胞の増殖を抑制する能力、IL-2を産生できないこと、及びインビトロでのアネルギー表現型によって特徴づけられる。ヒトCD4CD25 T細胞は、CD25の発現レベルに応じて抑制性(CD25high)細胞及び非抑制性(CD25low)細胞に分割することができる。転写因子のフォークヘッドファミリーのメンバーであるFOXP3は、マウス及びヒトCD4CD25 Tregで発現することが示され、CD4CD25 Tregの発生を制御するマスター遺伝子であると考えられる(Battaglia,M.et al.,J.Immunol.,Vol.177:8338-8347,(2006))。従って、いくつかの実施形態では、免疫応答の上昇は、制御性T細胞の活性化又は増殖の欠如に関連し得る。
【0263】
細胞傷害性Tリンパ球
標的細胞内で産生されたタンパク質からペプチドを認識するCD8 T細胞は、標的細胞の溶解を引き起こすという点で細胞傷害性を有する。CTL誘導性溶解のメカニズムには、標的細胞の膜に挿入してその細胞の溶解を促進できる分子であるパーフォリンのCTLによる産生が含まれる。パーフォリンを介した溶解は、活性化されたCTLによって産生される一連の酵素であるグランザイムによって促進される。多くの活性CTLはまた、それらの表面に大量のfasリガンドを発現する。CTLの表面のfasリガンドと標的細胞の表面のfasとの相互作用は、標的細胞のアポトーシスを開始し、これらの細胞の死をもたらす。CTLを介した溶解は、ウイルスに感染した細胞を破壊するための主要なメカニズムであると考えられる。
【0264】
リンパ球の活性化
「活性化」又は「リンパ球の活性化」という用語は、RNA、タンパク質、及びDNAの合成及びリンホカインの産生をもたらし;その後、様々なエフェクター細胞及びメモリー細胞の増殖及び分化が生じる、特定の抗原、非特異的マイトジェン、又は同族異系細胞によるリンパ球の刺激を指す。T細胞の活性化は、TCR/CD3複合体と、クラスI又はクラスII MHC分子の溝に結合したペプチドであるその同族リガンドとの相互作用に依存する。受容体の結合によって引き起こされる分子事象は複雑である。初期のステップでは、チロシンキナーゼの活性化が、いくつかのシグナル伝達経路を制御する一連の基質のチロシンリン酸化をもたらすと考えられる。これらには、TCRをras経路に連結する一連のアダプタータンパク質、ホスホリパーゼCγ1が含まれ、そのチロシンリン酸化は、その触媒活性を高め、イノシトールリン脂質代謝経路に関与し、細胞内遊離カルシウム濃度の上昇、並びにプロテインキナーゼCと、細胞の成長及び分化を制御する他の一連の酵素の活性化をもたらす。T細胞の完全な応答性には、受容体の関与に加えて、アクセサリー細胞が提供する共刺激活性、例えば、APC上のCD80及び/又はCD86によるT細胞上のCD28の関与が必要である。
【0265】
Tメモリー細胞
適応免疫応答による病原体の認識と根絶に続いて、T細胞の大部分(90~95%)が、残りの細胞と共にアポトーシスを受け、メモリーT細胞、指定セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)、及び常在メモリーT細胞(TRM)のプールが形成される(Clark,R.A.,“Resident memory T cells in human health and disease”,Sci.Transl.Med.,7,269rv1,(2015))。
【0266】
標準的なT細胞と比較して、これらのメモリーT細胞は、特定の表面マーカーの発現、様々なサイトカインプロファイルの迅速な産生、直接エフェクター細胞機能の能力、独自のホーミング分布パターンなどの異なる表現型で長寿命である。メモリーT細胞は、オフェンダー(offender)の再感染を排除し、それにより免疫系のバランスを迅速に回復するために、それぞれの抗原に再曝露されると迅速な応答を示す。自己免疫メモリーT細胞が自己免疫疾患の処置又は治癒のほとんどの試みを妨げることを実証する証拠が増えている(Clark,R.A.,“Resident memory T cells in human health and disease”,Sci.Transl.Med.,Vol.7,269rv1,(2015))。
【0267】
免疫活性の増加
本明細書に記載のタノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチド、及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含む、操作された免疫細胞は、本明細書に記載される免疫細胞、例えば、組織又は対象におけるマクロファージ、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、及びCD4+、CD8+又はCD3+細胞(例えばCD4+、CD8+若しくはCD3+T細胞)のいずれか1つ若しくは複数のレベル若しくは活性を増大することによって、組織又は対象の免疫活性を増加させることができる。例えば、一実施形態では、操作された免疫細胞は、以下:マクロファージのレベル若しくは活性、単球のレベル若しくは活性、樹状細胞のレベル若しくは活性、T細胞のレベル若しくは活性、B細胞のレベル若しくは活性、及びCD4+、CD8+又はCD3+細胞(例えば、CD4+、CD8+若しくはCD3+T細胞)のレベル若しくは活性の1つ若しくは複数を組織又は対象において増加させるのに十分な量で投与される。
【0268】
いくつかの態様では、本開示は、組織又は対象におけるマクロファージ、単球、B細胞、T細胞及び/又は樹状細胞のレベル若しくは活性を増加させる方法に関し、これは、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞を、組織又は対象に投与することを含み、ここで、免疫細胞は、操作された免疫細胞で処置されていない組織又は対象と比較して、マクロファージ、単球、B細胞、T細胞及び/又は樹状細胞のレベル又は活性を上昇させるのに十分な量で投与される。一実施形態では、対象は、マクロファージ、単球、樹状細胞、B細胞、及び/又はT細胞のレベル若しくは活性の増加を必要としている。一実施形態では、マクロファージ、単球、B細胞、T細胞又は樹状細胞のレベル若しくは活性は、操作された免疫細胞で処置されていない組織又は対象と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%若しくは100%、又は少なくとも2倍、4倍、6倍、8倍、若しくは10倍増加する。
【0269】
いくつかの態様では、本開示は、組織又は対象のCD4+、CD8+、又はCD3+細胞のレベル又は活性を高める方法に関し、この方法は、操作された免疫細胞で処置されていない組織又は対象に対して、CD4+、CD8+、又はCD3+細胞のレベル又は活性を高めるのに十分な量の、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞を対象に投与することを含む。一態様では、対象は、CD4+、CD8+、又はCD3+細胞のレベル若しくは活性の増加を必要としている。一実施形態では、CD4+、CD8+、又はCD3+細胞のレベル若しくは活性は、操作された免疫細胞で処置されていない組織又は対象と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%若しくは100%、又は少なくとも2倍、4倍、6倍、8倍、若しくは10倍増加する。
【0270】
本発明の操作された免疫細胞はまた、免疫細胞によって産生される免疫促進性サイトカインのレベル又は活性を増加させることによって、細胞、組織又は対象の免疫活性を増加させ得る。例えば、一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、細胞、組織、又は対象において、免疫細胞で産生された免疫促進性サイトカインのレベル又は活性を上昇させるのに十分な量で投与される。一実施形態では、免疫促進性サイトカインは、IFN-α、IL-1、IL-12、IL-18、IL-2、IL-15、IL-4、IL-6、TNF-α、IL-17及びGMCSFから選択される。
【0271】
いくつかの態様では、本開示は、組織又は対象対して内因性の免疫細胞において炎症誘発性転写反応を誘導する、例えば、組織又は対象の免疫細胞においてNFkB経路、インターフェロンIRFシグナル伝達、及び/又はSTATシグナル伝達を誘導する方法に関し、これは、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞、並びに/又は形質導入ドメイン及び/若しくはターゲティングドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を、内因性免疫細胞のNFkB経路、インターフェロンIRFシグナル伝達、及び/又はSTATシグナル伝達における炎症誘発性転写反応を誘導するのに十分な量で、組織又は対象に投与することを含む。
【0272】
本発明の操作された免疫細胞はまた、核酸の細胞内センサー、例えば、インターフェロン遺伝子の刺激物質(STING)を介したシグナル伝達の調節によって、細胞、組織又は対象の免疫活性を増加させることができる。従って、いくつかの態様では、本開示は、核酸の細胞内センサー、例えば、インターフェロン遺伝子の刺激物質(STING)を介したシグナル伝達の調節によって、細胞、組織又は対象の免疫活性を増加させるのに十分な量で、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞を、細胞、組織又は対象に投与することを含む、核酸の細胞内センサー、例えば、インターフェロン遺伝子の刺激物質(STING)を介したシグナル伝達の調節によって、細胞、組織又は対象の免疫活性を増加させる方法に関する。
【0273】
本発明の操作された免疫細胞はまた、抗体応答の誘導又は調節によって組織又は対象の免疫活性を増加させることもできる。例えば、一部の実施形態では、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞は、組織又は対象における抗体応答を調節するのに十分な量で投与される。
【0274】
従って、いくつかの態様では、本開示は、組織又は対象の免疫細胞における抗体応答の誘導又は調節によって組織又は対象における免疫活性を増加させる方法に関し、これは、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞を、組織又は対象に投与することを含み、ここで、免疫細胞は、操作された免疫細胞で処置されていない組織又は対象と比較して、組織又は対象の免疫活性を上昇させるのに十分な量で投与される。
【0275】
いくつかの態様では、本開示は、細胞、組織又は対象における免疫促進性サイトカインのレベル若しくは活性を増加させる方法に関し、これは、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数のポリヌクレオチド、及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞を、組織又は対象に投与することを含み、ここで、免疫細胞は、操作された免疫細胞で処置されていない細胞、組織又は対象と比較して、炎症促進性サイトカインのレベル又は活性を上昇させるのに十分な量で投与される。一実施形態では、免疫促進性サイトカインは、IFN-α、IL-1、IL-12、IL-18、IL-2、IL-15、IL-4、IL-6、TNF-α、IL-17及びGMCSFから選択される。一実施形態では、対象は、免疫促進性サイトカインのレベル又は活性の増加を必要としている。一実施形態では、免疫促進性サイトカインのレベル若しくは活性は、操作された免疫細胞で処置されていない細胞、組織又は対象と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%若しくは100%、又は少なくとも2倍、4倍、6倍、8倍、若しくは10倍増加する。
【0276】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法は、操作された免疫細胞を投与する前に、以下:マクロファージのレベル又は活性;単球のレベル又は活性;樹状細胞のレベル又は活性;CD4+細胞、CD8+細胞、若しくはCD3+細胞のレベル又は活性;T細胞のレベル又は活性;B細胞のレベル又は活性、及び免疫促進性サイトカインのレベル又は活性の1つ若しくは複数について、細胞、組織又は対象を評価するステップをさらに含む。
【0277】
一部の実施形態では、本発明の方法は、さらに、操作された免疫細胞の投与後に、以下:NFkB、IRF若しくはSTINGのレベル又は活性;マクロファージのレベル又は活性;単球のレベル又は活性;樹状細胞のレベル又は活性;CD4+細胞、CD8+細胞若しくはCD3+細胞のレベル又は活性;T細胞のレベル又は活性;免疫促進性サイトカインのレベル又は活性の1つ若しくは複数について、細胞、組織又は対象を評価するステップをさらに含む。
【0278】
NFkB、IRF、又はSTINGのレベル又は活性;マクロファージのレベル又は活性;単球のレベル又は活性;樹状細胞のレベル又は活性;CD4+細胞、CD8+細胞、又はCD3+細胞のレベル又は活性;T細胞のレベル又は活性;及び免疫促進性サイトカインのレベル又は活性を測定する方法は当技術分野で公知である。
【0279】
例えば、NFkB、IRF、又はSTINGのタンパク質のレベル又は活性は、ELISA、ウェスタンブロット又はインサイチューハイブリダイゼーションを含む当技術分野で公知の適切な技術によって測定することができる。NFkB、IRF、又はSTINGをコードする核酸(例えば、mRNA)のレベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応、逆転写酵素PCR分析、定量的リアルタイムPCR、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二重鎖分析、ノーザンブロット分析、インサイチューハイブリダイゼーション、アレイ分析、デオキシリボ核酸配列決定、制限断片長多型分析、及びそれらの組み合わせ又は部分的な組み合わせを含む当技術分野で公知の適切な技術を用いて測定することができる。
【0280】
マクロファージのレベル及び活性を測定するための方法は、例えば、Chitu et al.,2011,Curr Protoc Immunol 14:1-33に記載されている。単球のレベル及び活性は、例えば、Henning et al.,2015,Journal of Immunological Methods 423:78-84に記載されているようにフローサイトメトリーによって測定することができる。樹状細胞のレベル及び活性は、例えば、Dixon et al.,2001,Infect Immun.69(7):4351-4357に記載されているようにフローサイトメトリーによって測定することができる。これらの参考文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0281】
T細胞のレベル又は活性は、ヒトCD4+ T細胞ベースの増殖アッセイを使用して評価することができる。例えば、細胞は、蛍光色素5,6-カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識されている。増殖するこれらの細胞は、フローサイトメトリーによって直接測定されるCFSE蛍光強度の低下を示す。別法では、放射性チミジンの取り込みを使用して、T細胞の増殖速度を評価することができる。
【0282】
いくつかの実施形態では、免疫応答の上昇は、制御性T細胞(Treg)の活性化の低下に関連し得る。機能的活性Tregは、インビトロでのTreg抑制アッセイを使用して評価することができる。そのようなアッセイは、Collinson and Vignaliに記載されている(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Methods Mol Biol.2011;707:21-37)。
【0283】
免疫促進性サイトカインのレベル又は活性は、例えば、CD8+ T細胞で定量することができる。実施形態では、免疫促進性サイトカインは、インターフェロンアルファ(IFN-α)、インターロイキン-1(IL-1)、IL-12、IL-18、IL-2、IL-15、IL-4、IL-6、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、IL-17、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)から選択される。定量は、抗原刺激に応答して所与のサイトカイン(例えば、IFN-α)を分泌するT細胞を検出するELISPOT(酵素結合免疫スポット)技術を使用して行うことができる。T細胞は、例えば抗IFN-α抗体でコーティングされたウェル内で抗原提示細胞と共に培養される。分泌されたIFN-αは、コーティングされた抗体によって捕捉され、発色基質に結合した二次抗体で明らかになる。従って、局所的に分泌されたサイトカイン分子はスポットを形成し、各スポットは1つのIFN-α分泌細胞に対応する。スポットの数により、分析されたサンプル中の所与の抗原に特異的なIFN-α分泌細胞の頻度を決定することができる。ELISPOTアッセイは、TNF-α、インターロイキン-4(IL-4)、IL-6、IL-12、及びGMCSFの検出についても説明されている。
【0284】
VIII.障害を処置する方法
タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチド、及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含む、本発明の操作された免疫細胞は、細胞又は対象における免疫活性を高めるために使用され得る。従って、本発明の操作された免疫細胞は、癌並びに感染性疾患及び障害などの、免疫活性の増大から利益を被り得る障害の処置において使用され得る。
【0285】
A.癌
本明細書に提供されるように、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数の異種ポリヌクレオチド、及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞は、内因性免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞など)の免疫活性を促進又は誘導することができ、そのため、例えば、癌の処置のための免疫療法に関与するものなどの免疫細胞機能を強化することができる。従って、特定の態様では、本開示は、それを必要とする対象において癌を処置する方法に関し、この方法は、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数の異種ポリヌクレオチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞を対象に投与し、それにより対象の癌を処置することを含む。
【0286】
免疫系が自己と非自己を区別するのを防止する、様々な複雑で重複するメカニズムを利用する癌細胞の能力は、免疫監視を回避するための癌の基本的なメカニズムを表している。メカニズムには、抗原提示の阻害、T細胞の活性化又は阻害を制御する調節経路の破壊(免疫チェックポイント調節)、免疫抑制に寄与する細胞(Treg、MDSC)の動員、又は免疫活性に影響を与える因子(IDO、PGE2)の放出が含まれる(それぞれの内容がその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Harris et al.,2013,J Immunotherapy Cancer 1:12;Chen et al.,2013,Immunity 39:1;Pardoll,et al.,2012,Nature Reviews:Cancer 12:252;and Sharma et al.,2015,Cell 161:205を参照)。
【0287】
本明細書に記載の方法を用いた処置の対象となる癌は、例えば、哺乳動物に見出されるあらゆる種類の癌又は新生物又は悪性腫瘍を含み、限定はされないが、肉腫、黒色腫、癌腫、白血病、及びリンパ腫を含む。
【0288】
「肉腫」という用語は、一般に胚性結合組織のような物質から成り、且つ、概して線維状又は均質な物質に埋め込まれた密集した細胞から構成される腫瘍を指す。本発明の方法で処置することができる肉腫の例としては、例えば、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、アベメシ肉腫(Abemethy’s sarcoma)、脂肪性肉腫、脂肪肉腫、肺巣状軟部肉腫、エナメル上皮線維肉腫、ブドウ状肉腫、緑色肉腫(chloroma sarcoma)、絨毛膜癌、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血性肉腫、B細胞の免疫芽球性肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球性肉腫、イエンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉腫、傍骨性肉腫、細網肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢肉腫(serocystic sarcoma)、滑膜肉腫、子宮肉腫、粘液性脂肪肉腫、平滑筋肉腫、紡錘細胞肉腫、線維形成性肉腫(desmoplastic sarcoma)、及び毛細血管拡張性肉腫が挙げられる。
【0289】
「黒色腫」という用語は、皮膚及び他の器官のメラニン細胞系から生じる腫瘍を意味すると解釈される。本発明の方法で処置することができる黒色腫には、例えば、末端黒子型黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、ハーディング-パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、結節性黒色腫、爪下黒色腫、及び表在拡大型黒色腫が含まれる。
【0290】
「癌腫」という用語は、周囲の組織に浸潤して転移を引き起こす傾向がある上皮細胞からなる悪性の悪性新生物を指す。本明細書に記載されるように本発明の方法で処置することができる癌腫として、例えば、以下のものが挙げられる:腺房癌、腺房細胞癌、腺嚢胞癌、腺様嚢胞癌、腺腫様癌(carcinoma adenomatosum)、副腎皮質癌、肺胞上皮癌、肺胞細胞癌、基底細胞癌(basal cell carcinoma)、基底細胞癌(carcinoma basocellulare)、肺類基底細胞癌(basaloid carcinoma)、基底扁平上皮癌(basosquamous cell carcinoma)、気管支肺胞上皮癌(bronchioalveolar carcinoma)、気管支癌、気管支原性癌、大脳様癌、胆管細胞癌、絨毛膜癌、コロイド癌、結腸の結腸腺癌、面疱癌、子宮体癌(corpus carcinoma)、篩状癌(cribriform carcinoma)、鎧状癌(carcinoma en cuirasse)、皮膚癌、円柱状癌(cylindrical carcinoma)、円柱状細胞癌(cylindrical cell carcinoma)、腺管癌、硬膜癌(carcinoma durum)、胎児性癌(embryonal carcinoma)、脳様癌(encephaloid carcinoma)、類表皮癌(epiermoid carcinoma)、上皮性腺様癌(carcinoma epitheliale adenoides)、外向発育癌(exophytic carcinoma)、潰瘍癌、線維性癌(carcinoma fibrosum)、膠様癌、膠様腺癌(gelatinous carcinoma)、巨細胞癌(giant cell carcinoma)、巨大細胞癌(carcinoma gigantocellulare)、腺癌、顆粒膜細胞癌、毛母癌、血様癌(hematoid carcinoma)、肝細胞癌、ヒュルトレ細胞癌、硝子質癌(hyaline carcinoma)、副腎様癌(hypemephroid carcinoma)、小児胎児性癌(infantile embryonal carcinoma)、上皮内癌(carcinoma in situ)、表皮内癌、上皮内癌(intraepithelial carcinoma)、クロムペッヘル癌(Krompecher’s carcinoma)、クルキツキー細胞癌(Kulchitzky-cell carcinoma)、大細胞癌、レンズ状癌(lenticular carcinoma)、レンズ状癌(carcinoma lenticulare)、脂肪腫性癌(lipomatous carcinoma)、リンパ上皮癌、髄様癌(carcinoma medullare)、髄質癌(medullary carcinoma)、黒色癌、軟性癌(carcinoma molle)、メルケル細胞癌、粘液性癌(mucinous carcinoma)、粘液分泌癌(carcinoma muciparum)、粘液細胞癌(carcinoma mucocellulare)、粘膜表皮癌、粘液性癌(carcinoma mucosum)、粘膜癌、粘液腫様癌(carcinoma myxomatodes)、鼻咽腔癌、燕麦細胞癌、骨化性癌、類骨癌、乳頭癌、門脈周囲性癌種(periportal carcinoma)、前浸潤癌、棘細胞癌、粥状癌種(pultaceous carcinoma)、腎臓の腎細胞癌、貯蔵細胞癌、肉腫性癌(carcinoma sarcomatodes)、シュナイダー癌、硬性癌、陰嚢癌、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、ソラノイド癌、球状細胞精巣癌、紡錘細胞癌、海綿様癌、扁平上皮癌(squamous carcinoma)、扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)、紐様癌(string carcinoma)、毛細血管拡張性癌(carcinoma telangiectaticum)、毛細血管拡張性癌(carcinoma telangiectodes)、移行上皮癌、結節癌(carcinoma tuberosum)、結節癌(tuberous carcinoma)、疣贅性癌(verrucous carcinoma)、子宮頸部扁平上皮癌、扁桃扁平上皮細胞癌(tonsil squamous cell carcinoma)、及び絨毛癌。特定の実施形態では、癌は腎細胞癌である。
【0291】
「白血病」という用語は、「芽球」と呼ばれる未熟白血球の異常な増加を特徴とする血液又は骨髄の癌の一種を指す。白血病は、様々な疾患を網羅する広義の用語である。次に、白血病は、血液、骨髄、及びリンパ系に影響を与えるさらに広範な疾患群の一部であり、これらはすべて血液学的腫瘍として知られている。白血病は、急性リンパ性(又はリンパ芽球性)白血病(ALL)、急性骨髄性(又は骨髄性又は非リンパ性)白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、及び慢性骨髄性白血病(CML)の4つの主要な区分に分類することができる。白血病のさらなる種類には、有毛細胞白血病(HCL)、T細胞前リンパ球性白血病(T-PLL)、大顆粒リンパ球性白血病、及び成人T細胞白血病が含まれる。特定の実施形態では、白血病は急性白血病を含む。特定の実施形態では、白血病は慢性白血病を含む。
【0292】
「リンパ腫」という用語は、リンパ細胞に由来する血球腫瘍群を指す。リンパ腫の2つの主要な種類は、ホジキンリンパ腫(HL)と非ホジキンリンパ腫(NHL)である。リンパ腫には、リンパ組織のあらゆる腫瘍が含まれる。主なクラスは、リンパ液及び血液の両方に属し、両方に広がる白血球の一種であるリンパ球の癌である。
【0293】
一部の実施形態では、本開示の操作された免疫細胞、及び操作された免疫細胞を含む組成物は、様々な種類の固形腫瘍、例えば、乳癌(例えば、三重陰性乳癌)、膀胱癌、泌尿生殖器癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓(腎細胞)癌、膵臓癌、前立腺癌、甲状腺癌(例えば、甲状腺乳頭癌)、皮膚癌、骨癌、脳腫瘍、子宮頸癌、肝臓癌、胃癌、口腔癌(mouth and oral cancer)、食道癌、腺様嚢胞癌、神経芽細胞腫、精巣癌、子宮癌、甲状腺癌、頭頸部癌、腎臓癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌)、中皮腫、卵巣癌、肉腫、胃癌、子宮癌、子宮頸癌、髄芽細胞腫、及び外陰癌の処置に使用される。特定の実施形態では、皮膚癌には、黒色腫、扁平上皮癌、及び皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)が含まれる。
【0294】
一部の実施形態では、固形腫瘍は、結腸癌、軟部組織肉腫(STS)、転移性明細胞腎細胞癌(ccRCC)、卵巣癌、胃腸癌、結腸直腸癌、肝細胞癌(HCC)、神経膠芽腫(GBM)、乳癌、黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、肉腫、悪性胸膜中皮腫(MPM)、網膜芽細胞腫、神経膠腫、髄芽腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、膵臓癌、肺癌、胃癌(gastric cancer)、胃癌(stomach cancer)、食道癌、肝臓癌、前立腺癌、婦人科系の癌、上咽頭癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、尿路上皮膀胱癌、神経芽細胞腫、及び子宮頸癌からなる群から選択される。これらの固形腫瘍を標的とするための例示的な抗原結合ドメイン標的タンパク質を表8に記載する。
【0295】
特定の実施形態では、癌は、「免疫学的に冷たい」癌、例えば、浸潤T細胞をほとんど含まない腫瘍、又は認識されず、免疫系による強い応答を引き起こさず、そのため、既存の免疫療法での治療が困難な癌であってもよい。例えば、一実施形態では、癌は、以下:黒色腫、子宮頸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、尿路上皮癌、膀胱癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肉腫、結腸直腸腺癌、消化管間質腫瘍、胃食道癌、大腸癌、膵臓癌、腎臓癌、悪性中皮腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、移行細胞癌、神経芽細胞腫、形質細胞腫、ウィルムス腫瘍、及び肝細胞癌(例えば、肝細胞癌)からなる群から選択される。
【0296】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療法は、別の抗腫瘍(例えば免疫療法)療法による癌の治療に以前失敗した対象に施すことができる。「抗腫瘍療法に失敗した対象」とは、RECIST 1.1基準に基づく抗腫瘍療法による処置に応答しない、若しくは応答しなくなった、即ち、標的病変における完全寛解、部分寛解、若しくは安定した疾患を達成しないか;又は、抗腫瘍療法の最中又は完了後のいずれかで、単独で又は外科手術及び/又は放射線療法と組み合わせて、非標的病変の完全寛解又は非CR/非PDを達成しない癌対象であり、この外科手術及び/又は放射線療法は、可能であれば、多くの場合、抗腫瘍療法と組み合わせて臨床的に必要である。RECIST 1.1基準は、例えば、Eisenhauer et al.,2009,Eur.J.Cancer 45:228-24(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、以下でより詳細に論じられる。失敗した抗腫瘍療法は、例えば、腫瘍の増殖、腫瘍量の増加、及び/又は腫瘍の転移をもたらす。本明細書で使用される失敗した抗腫瘍療法には、用量制限毒性、例えば、抗腫瘍剤による処置の継続若しくは再開を可能にするために解決できないグレードIII若しくはグレードIV毒性のために終了した治療計画、又は毒性を引き起こした療法が含まれる。一実施形態では、対象は、1つ又は複数の抗血管新生剤の投与を含む抗腫瘍療法による処置に失敗している。
【0297】
失敗した抗腫瘍療法には、長期間、例えば、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、又は臨床的に定義される治癒よりも短い任意の期間にわたって、すべての標的及び非標的病変に対して少なくとも疾患の安定が得られない治療計画が含まれる。失敗した抗腫瘍療法には、抗腫瘍剤による処置中に少なくとも1つの標的病変の進行性疾患が生じる治療計画、又は治療計画の終了から2週間未満、1ヶ月未満、2ヶ月未満、3ヶ月未満、4ヶ月未満、5ヶ月未満、6ヶ月未満、12ヶ月未満、若しくは18ヶ月未満で、又は臨床的に定義される治癒よりも短い任意の期間未満で進行性疾患が生じる治療計画が含まれる。
【0298】
失敗した抗腫瘍療法には、癌の処置を受けた対象が臨床的に定義される治癒、例えば治療計画の終了から5年間で完全寛解を達成し、その後、対象が、例えば、治療計画の終了から5年超、6年超、7年超、8年超、9年超、10年超、11年超、12年超、13年超、14年超、又は15年超してから異なる癌と診断される治療計画は含まれない。
【0299】
RECIST基準は、臨床的に認められた評価基準であり、固形腫瘍測定への標準的なアプローチを提供するため、及び臨床試験で使用するための腫瘍サイズの変化の客観的評価の定義を提供するために使用される。このような基準は、固形腫瘍の処置を受けている個人の寛解を監視するためにも使用することができる。RECIST 1.1基準については、参照により本明細書に組み込まれる、Eisenhauer et al.,2009,Eur.J.Cancer 45:228-24で詳細に議論されている。標的病変の寛解基準は次の通りである。
【0300】
完全寛解(CR):すべての標的病変の消失。あらゆる病理学的リンパ節(標的又は非標的)が、短軸において10mm未満まで縮小しなければならない。
【0301】
部分寛解(PR):ベースラインの合計直径を基準として、標的病変の直径の合計が少なくとも30%減少する。
【0302】
進行性疾患(PD):試験における最小合計を基準として、標的病変の直径の合計が少なくとも20%増加する(これには、試験における最小の場合、ベースライン合計が含まれる)。20%の相対的な増加に加えて、合計は少なくとも5mmの絶対的な増加も示さなければならない(注:1つ又は複数の新しい病変の出現も進行と見なされる)。
【0303】
安定した疾患(SD):試験中の最小の合計直径を基準として、PRを満たす十分な収縮もPDを満たす十分な増加もない。
【0304】
RECIST 1.1基準では、測定可能であり得るが、測定する必要がなく、所望の時点でのみ定性的に評価する必要がある病変として定義される非標的病変も考慮される。非標的病変の寛解基準は次の通りである。
【0305】
完全寛解(CR):すべての非標的病変の消失と腫瘍マーカーレベルの正常化。すべてのリンパ節は、そのサイズが非病理学的でなければならない(短軸で10mm未満)。
【0306】
非CR/非PD:1つ又は複数の非標的病変の持続及び/又は正常限界を超える腫瘍マーカーレベルの維持。
【0307】
進行性疾患(PD):既存の非標的病変の明確な進行。1つ又は複数の新しい病変の出現も進行と見なされる。非標的疾患に基づく「明確な進行」を達成するには、たとえ標的疾患にSD又はPRが存在したとしても、治療法の中止に値するのに十分に全腫瘍量が増加するように、非標的疾患の全体的なレベルが大幅に悪化する必要がある。1つ又は複数の非標的病変のサイズの中程度の「増加」は、通常は明確な進行状態を満たすのに十分ではない。従って、標的疾患におけるSD又はPRにもかかわらず、非標的疾患の変化のみに基づく全体的な進行の決定は非常にまれである。
【0308】
一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物及び併用療法は、難治性癌を有する対象に投与することができる。「難治性癌」とは、外科手術が効果的ではない悪性腫瘍であり、最初から化学療法若しくは放射線療法に反応しないか、又は時間の経過と共に化学療法若しくは放射線療法に反応しなくなるかのいずれかである。
【0309】
本開示はさらに、腫瘍細胞増殖が阻害されるように、本明細書に記載の操作された免疫細胞を投与することを含む、対象における腫瘍細胞増殖を阻害する方法を提供する。特定の実施形態では、癌の処置は、対照、例えば、操作された免疫細胞で処置されていない対象と比較して、生存期間を延長するか、又は腫瘍進行までの時間を延長することを含む。特定の実施形態では、対象は、ヒト対象である。一部の実施形態では、対象は、操作された免疫細胞の初回用量の投与前に、癌(例えば、腫瘍)を有すると特定される。特定の実施形態では、対象は、操作された免疫細胞の初回投与時に、癌(例えば、腫瘍)を有する。
【0310】
一実施形態では、操作された免疫細胞の投与は、以下:癌細胞の増殖の抑制、癌細胞の転移の抑制、腫瘍の新生血管形成の抑制、腫瘍量の減少、腫瘍サイズ、重量若しくは体積の減少、腫瘍成長の阻害、癌の進行までの時間の増加、及び/又は腫瘍性障害を有する対象の生存期間の延長のうちの1つ若しくは複数をもたらす。特定の実施形態では、操作された免疫細胞の投与は、核酸分子、ベクター、細胞又は医薬組成物を投与されていない対応する対照対象と比較して、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%若しくは500%、癌細胞の増殖を抑制し、癌細胞の転移を抑制し、腫瘍の新生血管形成を抑制し、腫瘍量を減少させ、腫瘍のサイズ、重量若しくは体積を減少させ、進行までの時間を増加させ、腫瘍増殖を阻害し、且つ/又は対象の生存期間を延長する。特定の実施形態では、操作された免疫細胞の投与は、核酸分子、ベクター、細胞又は医薬組成物を投与されていない腫瘍性障害に罹患した対照対象の対応する集団と比較して、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%若しくは500%、癌細胞の増殖を抑制し、癌細胞の転移を抑制し、腫瘍の新生血管形成を抑制し、腫瘍量を減少させ、腫瘍のサイズ、重量若しくは体積を減少させ、進行までの時間を増加させ、腫瘍増殖を阻害し、且つ/又は腫瘍性障害に罹患した対象の集団の生存期間を延長する。一部の実施形態では、癌細胞の増殖は、対象に施された癌療法から起こる癌細胞の過剰増殖である。一部の実施形態では、操作された免疫細胞の投与は、処置前に進行性の腫瘍性障害を有する対象における腫瘍性障害を安定化させる。
【0311】
本発明の操作された免疫細胞と1つ又は複数の追加の治療薬との併用療法
「組み合わせて投与すること」、「併用療法」、「共投与すること」又は「共投与」という用語は、1つ又は複数の追加の治療薬と組み合わせた、本発明の操作された免疫細胞、即ち、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数の異種ポリヌクレオチド、及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むように操作された、免疫細胞の投与を指し得る。1又は複数種の追加の治療薬は、本発明の操作された免疫細胞の投与の前、それと同時若しくは実質的に同時、その後、又は間を置いて投与され得る。特定の実施形態では、1つ又は複数の追加の治療薬は、操作された免疫細胞の投与前に投与される。特定の実施形態では、1つ又は複数の追加の治療薬は、操作された免疫細胞と同時に投与される。特定の実施形態では、1つ又は複数の追加の治療薬は、操作された免疫細胞の投与後に投与される。
【0312】
1つ又は複数の追加の治療薬及び本発明の操作された免疫細胞は、相加的又は相乗的に作用する。一実施形態では、1つ又は複数の追加の治療薬及び操作された免疫細胞は相乗的に作用する。一部の実施形態では、相乗効果は、腫瘍性障害又は感染症の処置に際して生じる。例えば、一実施形態では、1又は複数種の追加の治療薬と、操作された免疫細胞との組み合わせは、癌に対する免疫応答の持続性を向上させ、即ち、その持続時間を延長する。一部の実施形態では、1つ又は複数の追加の治療薬及び操作された免疫細胞は、相加的に作用する。
【0313】
1.免疫チェックポイントモジュレーター
一部の実施形態では、本発明の操作された免疫細胞と組み合わせて投与される追加の治療薬は、免疫チェックポイント分子の免疫チェックポイントモジュレーターである。免疫チェックポイント分子の例を以下に挙げる:LAG-3(Triebel et al.,1990,J.Exp.Med.171:1393-1405)、TIM-3(Sakuishi et al.,2010,J.Exp.Med.207:2187-2194)、VISTA(Wang et al.,2011,J.Exp.Med.208:577-592)、ICOS(Fan et al.,2014,J.Exp.Med.211:715-725)、OX40(Curti et al.,2013,Cancer Res.73:7189-7198)及び4-1BB(Melero et al.,1997,Nat.Med.3:682-685)。
【0314】
免疫チェックポイントは、刺激性免疫チェックポイント(即ち、免疫応答を刺激する分子)又は抑制性免疫チェックポイント(即ち、免疫応答を抑制する分子)であり得る。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、抑制性免疫チェックポイントのアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、刺激性免疫チェックポイントのアゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、免疫チェックポイント結合タンパク質(例えば、抗体、抗体Fab断片、二価抗体、抗体薬物コンジュゲート、scFv、融合タンパク質、二価抗体、又は四価抗体)である。特定の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、2つ以上の免疫チェックポイントに結合するか、又はその活性を調節することができる。刺激性及び抑制性免疫チェックポイントの例、並びに本発明の方法で使用できるこれらの免疫チェックポイントを調節する分子の例が以下に示される。
【0315】
i.刺激性免疫チェックポイント分子
CD27は、ナイーブT細胞の抗原特異的増殖を支援し、T細胞記憶の生成に不可欠である(例えば、Hendriks et al.(2000)Nat.Immunol.171(5):433-40を参照)。CD27は、B細胞の記憶マーカーでもある(例えば、Agematsu et al.(2000)Histol.Histopathol.15(2):573-6を参照)。CD27活性は、リンパ球及び樹状細胞上のそのリガンドであるCD70の一時的な有効性によって支配される(例えば、Borst et al.(2005)Curr.Opin.Immunol.17(3):275-81を参照)。CD27に特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、CD27の活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、CD27に結合する薬剤(例えば、抗CD27抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはCD27アゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはCD27アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターはCD27結合タンパク質(例えば、抗体)である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、バリルマブ(varlilumab)(Celldex Therapeutics)である。追加のCD27結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,248,183号明細書、同第9,102,737号明細書、同第9,169,325号明細書、同第9,023,999号明細書、同第8,481,029号明細書;米国特許出願公開第2016/0185870号明細書、同第2015/0337047号明細書、同第2015/0299330号明細書、同第2014/0112942号明細書、同第2013/0336976号明細書、同第2013/0243795号明細書、同第2013/0183316号明細書、同第2012/0213771号明細書、同第2012/0093805号明細書、同第2011/0274685号明細書、同第2010/0173324号明細書;並びに国際公開第2015/016718号パンフレット、同第2014/140374号パンフレット、同第2013/138586号パンフレット、同第2012/004367号パンフレット、同第2011/130434号パンフレット、同第2010/001908号パンフレット、及び同第2008/051424号パンフレットに開示されている。
【0316】
CD28.分化抗原群28(CD28)は、T細胞の活性化及び生存に必要な共刺激シグナルを提供するT細胞で発現するタンパク質の1つである。T細胞受容体(TCR)に加えてCD28を介したT細胞刺激は、様々なインターロイキン(特にIL-6)の産生のための強力なシグナルを提供することができる。樹状細胞で発現するその2つのリガンドであるCD80及びCD86との結合は、T細胞の増殖を促進する(例えば、Prasad et al.(1994)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 91(7):2834-8を参照)。CD28に特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、CD28の活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、CD28に結合する薬剤(例えば、抗CD28抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはCD28アゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはCD28アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、D28結合タンパク質(例えば、抗体)である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、TAB08(TheraMab LLC)、ルリズマブ(lulizumab)(BMS-931699(Bristol-Myers Squibb)としても知られている)、及びFR104(OSE Immunotherapeutics)からなる群から選択される。追加のCD28結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,119,840号明細書、同第8,709,414号明細書、同第9,085,629号明細書、同第8,034,585号明細書、同第7,939,638号明細書、同第8,389,016号明細書、同第7,585,960号明細書、同第8,454,959号明細書、同第8,168,759号明細書、同第8,785,604号明細書、同第7,723,482号明細書;米国特許出願公開第2016/0017039号明細書、同第2015/0299321号明細書、同第2015/0150968号明細書、同第2015/0071916号明細書、同第2015/0376278号明細書、同第2013/0078257号明細書、同第2013/0230540号明細書、同第2013/0078236号明細書、同第2013/0109846号明細書、同第2013/0266577号明細書、同第2012/0201814号明細書、同第2012/0082683号明細書、同第2012/0219553号明細書、同第2011/0189735号明細書、同第2011/0097339号明細書、同第2010/0266605号明細書、同第2010/0168400号明細書、同第2009/0246204号明細書、同第2008/0038273号明細書;並びに国際公開第2015198147号パンフレット、同第2016/05421号パンフレット、同第2014/1209168号パンフレット、同第2011/101791号パンフレット、同第2010/007376号パンフレット、同第2010/009391号パンフレット、同第2004/004768号パンフレット、同第2002/030459号パンフレット、同第2002/051871号パンフレット、及び同第2002/047721号パンフレットに開示されている。
【0317】
CD40.分化抗原群40(CD40、TNFRSF5としても知られている)は、抗原提示細胞を含む様々な免疫系細胞に見られる。別名CD154として知られているCD40Lは、CD40のリガンドであり、活性化されたCD4 T細胞の表面に一過性に発現する。CD40シグナル伝達は、樹状細胞を「許可(license)して」成熟させ、それによりT細胞の活性化及び分化を引き起こすことが知られている(例えば、O’Sullivan et al.(2003)Crit.Rev.Immunol.23(1):83-107を参照)。CD40に特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、CD40の活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターはCD40に結合する薬剤(例えば、抗CD40抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはCD40アゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはCD40アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、ダセツズマブ(Genentech/Seattle Genetics)、CP-870、893(Pfizer)、ブレセルマブ(Astellas Pharma)、ルカツムマブ(Novartis)、CFZ533(Novartis;例えば、Cordoba et al.(2015)Am.J.Transplant.15(11):2825-36を参照)、RG7876(Genentech Inc.)、FFP104(PanGenetics,B.V.)、APX005(Apexigen)、BI655064(Boehringer Ingelheim)、Chi Lob 7/4(Cancer Research UK;例えば、Johnson et al.(2015)Clin.Cancer Res.21(6):1321-8を参照)、ADC-1013(BioInvent International)、SEA-CD40(Seattle Genetics)、XmAb 5485(Xencor)、PG120(PanGenetics B.V.)、テネリキシマブ(Bristol-Myers Squibb;例えば、Thompson et al.(2011)Am.J.Transplant.11(5):947-57を参照)、及びAKH3(Biogen;例えば、国際公開第2016/028810号パンフレットを参照)からなる群から選択されるCD40結合タンパク質である。追加のCD40結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,234,044号明細書、同第9,266,956号明細書、同第9,109,011号明細書、同第9,090,696号明細書、同第9,023,360号明細書、同第9,023,361号明細書、同第9,221,913号明細書、同第8,945,564号明細書、同第8,926,979号明細書、同第8,828,396号明細書、同第8,637,032号明細書、同第8,277,810号明細書、同第8,088,383号明細書、同第7,820,170号明細書、同第7,790,166号明細書、同第7,445,780号明細書、同第7,361,345号明細書、同第8,961,991号明細書、同第8,669,352号明細書、同第8,957,193号明細書、同第8,778,345号明細書、同第8,591,900号明細書、同第8,551,485号明細書、同第8,492,531号明細書、同第8,362,210号明細書、同第8,388,971号明細書;米国特許出願公開第2016/0045597号明細書、同第2016/0152713号明細書、同第2016/0075792号明細書、同第2015/0299329号明細書、同第2015/0057437号明細書、同第2015/0315282号明細書、同第2015/0307616号明細書、同第2014/0099317号明細書、同第2014/0179907号明細書、同第2014/0349395号明細書、同第2014/0234344号明細書、同第2014/0348836号明細書、同第2014/0193405号明細書、同第2014/0120103号明細書、同第2014/0105907号明細書、同第2014/0248266号明細書、同第2014/0093497号明細書、同第2014/0010812号明細書、同第2013/0024956号明細書、同第2013/0023047号明細書、同第2013/0315900号明細書、同第2012/0087927号明細書、同第2012/0263732号明細書、同第2012/0301488号明細書、同第2011/0027276号明細書、同第2011/0104182号明細書、同第2010/0234578号明細書、同第2009/0304687号明細書、同第2009/0181015号明細書、同第2009/0130715号明細書、同第2009/0311254号明細書、同第2008/0199471号明細書、同第2008/0085531号明細書、同第2016/0152721号明細書、同第2015/0110783号明細書、同第2015/0086991号明細書、同第2015/0086559号明細書、同第2014/0341898号明細書、同第2014/0205602号明細書、同第2014/0004131号明細書、同第2013/0011405号明細書、同第2012/0121585号明細書、同第2011/0033456号明細書、同第2011/0002934号明細書、同第2010/0172912号明細書、同第2009/0081242号明細書、同第2009/0130095号明細書、同第2008/0254026号明細書、同第2008/0075727号明細書、同第2009/0304706号明細書、同第2009/0202531号明細書、同第2009/0117111号明細書、同第2009/0041773号明細書、同第2008/0274118号明細書、同第2008/0057070号明細書、同第2007/0098717号明細書、同第2007/0218060号明細書、同第2007/0098718号明細書、同第2007/0110754号明細書;並びに国際公開第2016/069919号パンフレット、同第2016/023960号パンフレット、同第2016/023875号パンフレット、同第2016/028810号パンフレット、同第2015/134988号パンフレット、同第2015/091853号パンフレット、同第2015/091655号パンフレット、同第2014/065403号パンフレット、同第2014/070934号パンフレット、同第2014/065402号パンフレット、同第2014/207064号パンフレット、同第2013/034904号パンフレット、同第2012/125569号パンフレット、同第2012/149356号パンフレット、同第2012/111762号パンフレット、同第2012/145673号パンフレット、同第2011/123489号パンフレット、同第2010/123012号パンフレット、同第2010/104761号パンフレット、同第2009/094391号パンフレット、同第2008/091954号パンフレット、同第2007/129895号パンフレット、同第2006/128103号パンフレット、同第2005/063289号パンフレット、同第2005/063981号パンフレット、同第2003/040170号パンフレット、同第2002/011763号パンフレット、同第2000/075348号パンフレット、同第2013/164789号パンフレット、同第2012/075111号パンフレット、同第2012/065950号パンフレット、同第2009/062054号パンフレット、同第2007/124299号パンフレット、同第2007/053661号パンフレット、同第2007/053767号パンフレット、同第2005/044294号パンフレット、同第2005/044304号パンフレット、同第2005/044306号パンフレット、同第2005/044855号パンフレット、同第2005/044854号パンフレット、同第2005/044305号パンフレット、同第2003/045978号パンフレット、同第2003/029296号パンフレット、同第2002/028481号パンフレット、同第2002/028480号パンフレット、同第2002/028904号パンフレット、同第2002/028905号パンフレット、同第2002/088186号パンフレット、及び同第2001/024823号パンフレットに開示されている。
【0318】
OX40.OX40受容体(CD134としても知られている)は、エフェクター及びメモリーT細胞の増殖を促進する。OX40はまた、T制御性細胞の分化及び活性を抑制し、サイトカインの産生を調節する(例えば、Croft et al.(2009)Immunol.Rev.229(1):173-91を参照)。OX40に特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、OX40の活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターはOX40に結合する薬剤(例えば、抗OX40抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはOX40アゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはOX40アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、MEDI6469(AgonOx/Medimmune)、ポガリズマブ(pogalizumab)(MOXR0916及びRG7888としても知られている;Genentech,Inc.)、タボリキシズマブ(tavolixizumab)(MEDI0562としても知られている;Medimmune)、及びGSK3174998(GlaxoSmithKline)からなる群から選択されるOX40結合タンパク質(例えば、抗体)である。追加のOX-40結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,163,085号明細書、同第9,040,048号明細書、同第9,006,396号明細書、同第8,748,585号明細書、同第8,614,295号明細書、同第8,551,477号明細書、同第8,283,450号明細書、同第7,550,140号明細書;米国特許出願公開第2016/0068604号明細書、同第2016/0031974号明細書、同第2015/0315281号明細書、同第2015/0132288号明細書、同第2014/0308276号明細書、同第2014/0377284号明細書、同第2014/0044703号明細書、同第2014/0294824号明細書、同第2013/0330344号明細書、同第2013/0280275号明細書、同第2013/0243772号明細書、同第2013/0183315号明細書、同第2012/0269825号明細書、同第2012/0244076号明細書、同第2011/0008368号明細書、同第2011/0123552号明細書、同第2010/0254978号明細書、同第2010/0196359号明細書、同第2006/0281072号明細書;並びに国際公開第2014/148895号パンフレット、同第2013/068563号パンフレット、同第2013/038191号パンフレット、同第2013/028231号パンフレット、同第2010/096418号パンフレット、同第2007/062245号パンフレット、及び同第2003/106498号パンフレットに開示されている。
【0319】
GITR.糖質コルチコイド誘発性TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)は、Treg、CD4、及びCD8 T細胞で構成的又は条件付きで発現する腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーである。GITRは、TCRのライゲーション及び活性化に続いて、エフェクターT細胞で急速にアップレギュレートされる。ヒトGITRリガンド(GITRL)は、二次リンパ器官及び一部の非リンパ組織のAPCで構成的に発現する。GITR:GITRLの相互作用の下流効果は、Treg活性の減弱を誘発し、CD4 T細胞の活性を増強し、結果としてTregを介した免疫抑制が逆転し、免疫刺激が増加する。GITRに特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、GITRの活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、GITRに結合する薬剤(例えば、抗GITR抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはGITRアゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはGITRアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、TRX518(Leap Therapeutics)、MK-4166(Merck&Co.)、MEDI-1873(MedImmune)、INCAGN1876(Agenus/Incyte)、及びFPA154(Five Prime Therapeutics)からなる群から選択されるGITR結合タンパク質(例えば、抗体)である。追加のGITR結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,309,321号明細書、同第9,255,152号明細書、同第9,255,151号明細書、同第9,228,016号明細書、同第9,028,823号明細書、同第8,709,424号明細書、同第8,388,967号明細書;米国特許出願公開第2016/0145342号明細書、同第2015/0353637号明細書、同第2015/0064204号明細書、同第2014/0348841号明細書、同第2014/0065152号明細書、同第2014/0072566号明細書、同第2014/0072565号明細書、同第2013/0183321号明細書、同第2013/0108641号明細書、同第2012/0189639号明細書;並びに国際公開第2016/054638号パンフレット、同第2016/057841号パンフレット、同第2016/057846号パンフレット、同第2015/187835号パンフレット、同第2015/184099号パンフレット、同第2015/031667号パンフレット、同第2011/028683号パンフレット、及び同第2004/107618号パンフレットに開示されている。
【0320】
ICOS.誘導性T細胞共刺激因子(ICOS、CD278としても知られている)は、活性化されたT細胞で発現される。そのリガンドはICOSLであり、主にB細胞及び樹状細胞で発現される。ICOSは、T細胞エフェクター機能において重要である。ICOSの発現は、T細胞の活性化時にアップレギュレートされる(例えば、Fan et al.(2014)J.Exp.Med.211(4):715-25を参照)。ICOSに特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、ICOSの活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、ICOSに結合する薬剤(例えば、抗ICOS抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはICOSアゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはICOSアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、MEDI-570(JMab-136としても知られている、Medimmune)、GSK3359609(GlaxoSmithKline/INSERM)、及びJTX-2011(Jounce Therapeutics)からなる群から選択されるICOS結合タンパク質(例えば、抗体)である。追加のICOS結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,376,493号明細書、同第7,998,478号明細書、同第7,465,445号明細書、同第7,465,444号明細書;米国特許出願公開第2015/0239978号明細書、同第2012/0039874号明細書、同第2008/0199466号明細書、同第2008/0279851号明細書;並びに国際公開第2001/087981号パンフレットに開示されている。
【0321】
4-1BB.4-1BB(CD137としても知られている)は、腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーのメンバーである。4-1BB(CD137)は、プライミングされたCD4及びCD8 T細胞、活性化NK細胞、DC、及び好中球で誘導的に発現されるII型膜貫通糖タンパク質であり、活性化マクロファージ、B細胞、及びDCに見られる4-1BBリガンド(4-1BBL)に結合するとT細胞共刺激分子として機能する。4-1BB受容体のライゲーションは、NF-κB、c-Jun、及びp38シグナル伝達経路の活性化をもたらし、特に、抗アポトーシス遺伝子BcL-x(L)及びBfl-1の発現をアップレギュレートすることによってCD8 T細胞の生存を促進することが示されている。このように、4-1BBは、最適以下の免疫応答を促進する、又は救済さえもするように機能する。4-1BBに特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、4-1BBの活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、4-1BBに結合する薬剤(例えば、抗4-1BB抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターは4-1BBアゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターは4-1BBアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、ウレルマブ(BMS-663513としても知られている;Bristol-Myers Squibb)又はウトミルマブ(utomilumab)(Pfizer)である4-1BB結合タンパク質である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、4-1BB結合タンパク質(例えば、抗体)である。4-1BB結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,382,328号明細書、同第8,716,452号明細書、同第8,475,790号明細書、同第8,137,667号明細書、同第7,829,088号明細書、同第7,659,384号明細書;米国特許出願公開第2016/0083474号明細書、同第2016/0152722号明細書、同第2014/0193422号明細書、同第2014/0178368号明細書、同第2013/0149301号明細書、同第2012/0237498号明細書、同第2012/0141494号明細書、同第2012/0076722号明細書、同第2011/0177104号明細書、同第2011/0189189号明細書、同第2010/0183621号明細書、同第2009/0068192号明細書、同第2009/0041763号明細書、同第2008/0305113号明細書、同第2008/0008716号明細書;及び国際公開第2016/029073号パンフレット、同第2015/188047号パンフレット、同第2015/179236号パンフレット、同第2015/119923号パンフレット、同第2012/032433号パンフレット、同第2012/145183号パンフレット、同第2011/031063号パンフレット、同第2010/132389号パンフレット、同第2010/042433号パンフレット、同第2006/126835号パンフレット、同第2005/035584号パンフレット、同第2004/010947号パンフレット;並びにMartinez-Forero et al.(2013)J.Immunol.190(12):6694-706,and Dubrot et al.(2010)Cancer Immunol.Immunother.59(8):1223-33に開示されている。
【0322】
ii.抑制性免疫チェックポイント分子
ADORA2A.アデノシンA2A受容体(A2A4)は、7回膜貫通型アルファヘリックスを有するGタンパク質共役型受容体(GPCR)ファミリーのメンバーであり、癌の治療法における重要なチェックポイントと見なされている。A2A受容体は、過剰反応性免疫細胞を負に調節することができる(例えば、Ohta et al.(2001)Nature 414(6866):916-20を参照)。ADORA2Aに特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、ADORA2Aの活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、ADORA2Aに結合する薬剤(例えば、抗ADORA2A抗体)である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、ADORA2A結合タンパク質(例えば、抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはADORA2Aアゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターは、ADORA2Aアンタゴニストである。ADORA2A結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0322236号明細書に開示されている。
【0323】
B7-H3.B7-H3(CD276としても知られている)は、T細胞応答を共刺激又は下方調節する分子群であるB7スーパーファミリーに属している。B7-H3は、ヒトT細胞応答を強力且つ一貫して下方調節する(例えば、Leitner et al.(2009)Eur.J.Immunol.39(7):1754-64を参照)。B7-H3に特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、B7-H3の活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、B7-H3に結合する薬剤(例えば、抗B7-H3抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはB7-H3アゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはB7-H3アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、DS-5573(Daiichi Sankyo,Inc.)、エノブリツズマブ(enoblituzumab)(MacroGenics,Inc.)、及び8H9(Sloan Kettering Institute for Cancer Research;see,e.g.,Ahmed et al.(2015)J.Biol.Chem.290(50):30018-29)からなる群から選択される抗B7-H3結合タンパク質である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、B7-H3結合タンパク質(例えば、抗体)である。B7-H3結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,371,395号明細書、同第9,150,656号明細書、同第9,062,110号明細書、同第8,802,091号明細書、同第8,501,471号明細書、同第8,414,892号明細書;米国特許出願公開第2015/0352224号明細書、同第2015/0297748号明細書、同第2015/0259434号明細書、同第2015/0274838号明細書、同第2014/032875号明細書、同第2014/0161814号明細書、同第2013/0287798号明細書、同第2013/0078234号明細書、同第2013/0149236号明細書、同第2012/02947960号明細書、同第2010/0143245号明細書、同第2002/0102264号明細書;国際公開第2016/106004号パンフレット、同第2016/033225号パンフレット、同第2015/181267号パンフレット、同第2014/057687号パンフレット、同第2012/147713号パンフレット、同第2011/109400号パンフレット、同第2008/116219号パンフレット、同第2003/075846号パンフレット、同第2002/032375号パンフレット;並びにShi et al.(2016)Mol.Med.Rep.14(1):943-8に開示されている。
【0324】
B7-H4.B7-H4(O8E、OV064、及びVセットドメインを含むT細胞活性化阻害剤(VTCN1)としても知られている)は、B7スーパーファミリーに属している。細胞周期を停止させることにより、T細胞のB7-H4ライゲーションは、増殖、サイトカインの分泌、及び細胞毒性の発生に対して顕著な抑制効果を有する。マウスへのB7-H4Igの投与は、抗原特異的T細胞応答を阻害するが、特定のモノクローナル抗体による内因性B7-H4の阻害は、T細胞応答を促進する(例えば、Sica et al.(2003)Immunity 18(6):849-61を参照)。B7-H4に特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、B7-H4の活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、B7-H4に結合する薬剤(例えば、抗B7-H4抗体)である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、B7-H4結合タンパク質(例えば、抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはB7-H4アゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはB7-H4アンタゴニストである。B7-H4結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,296,822号明細書、同第8,609,816号明細書、同第8,759,490号明細書、同第8,323,645号明細書;米国特許出願公開第2016/0159910号明細書、同第2016/0017040号明細書、同第2016/0168249号明細書、同第2015/0315275号明細書、同第2014/0134180号明細書、同第2014/0322129号明細書、同第2014/0356364号明細書、同第2014/0328751号明細書、同第2014/0294861号明細書、同第2014/0308259号明細書、同第2013/0058864号明細書、同第2011/0085970号明細書、同第2009/0074660号明細書、同第2009/0208489号明細書;並びに国際公開第2016/040724号パンフレット、同第2016/070001号パンフレット、同第2014/159835号パンフレット、同第2014/100483号パンフレット、同第2014/100439号パンフレット、同第2013/067492号パンフレット、同第2013/025779号パンフレット、同第2009/073533号パンフレット、同第2007/067991号パンフレット、及び同第2006/104677号パンフレットに開示されている。
【0325】
BTLA.CD272としても知られているB及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)は、そのリガンドとしてHVEM(Herpesvirus Entry Mediator)を有する。BTLAの表面発現は、ヒトCD8 T細胞がナイーブ細胞からエフェクター細胞の表現型に分化する際に徐々にダウンレギュレートされるが、腫瘍特異的なヒトCD8 T細胞は高レベルのBTLAを発現する(例えば、Derre et al.(2010)J.Clin.Invest.120(1):157-67を参照)。BTLAに特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、BTLAの活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、BTLAに結合する薬剤(例えば、抗BTLA抗体)である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、BTLA結合タンパク質(例えば、抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはBTLAアゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはBTLAアンタゴニストである。BTLA結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,346,882号明細書、同第8,580,259号明細書、同第8,563,694号明細書、同第8,247,537号明細書;米国特許出願公開第2014/0017255号明細書、同第2012/0288500号明細書、同第2012/0183565号明細書、同第2010/0172900号明細書;並びに国際公開第2011/014438号パンフレット及び同第2008/076560号パンフレットに開示されている。
【0326】
CTLA-4.細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)は、免疫調節性CD28-B7免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、ナイーブ及び休止Tリンパ球に作用して、B7依存性経路及びB7非依存性経路の両方を介して免疫抑制を促進する(例えば、Kim et al.(2016)J.Immunol.Res.,14を参照)。CTLA-4は、CD152とも呼ばれることが知られている。CTLA-4は、T細胞活性化の閾値を調節する。例えば、Gajewski et al.(2001)J.Immunol.166(6):3900-7を参照されたい。CTLA-4に特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、CTLA-4の活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、CTLA-4に結合する薬剤(例えば、抗CTLA-4抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはCTLA-4アゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはCTLA-4アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、イピリムマブ(Yervoy;Medarex/Bristol-Myers Squibb)、トレメリムマブ(以前はチシリムマブ;Pfizer/AstraZeneca)、JMW-3B3(University of Aberdeen)、及びAGEN1884(Agenus)からなる群から選択されるCTLA-4結合タンパク質(例えば、抗体)である。追加のCTLA-4結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,697,845号明細書;米国特許出願公開第2014/0105914号明細書、同第2013/0267688号明細書、同第2012/0107320号明細書、同第2009/0123477号明細書;並びに国際公開第2014/207064号パンフレット、同第2012/120125号パンフレット、同第2016/015675号パンフレット、同第2010/097597号パンフレット、同第2006/066568号パンフレット、及び同第2001/054732号パンフレットに開示されている。
【0327】
KIR.キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)は、ナチュラルキラー(NK)細胞の機能を負に調節して、NKを介した細胞溶解から細胞を保護するMHCI結合分子の多様なレパートリーを含む。KIRは、一般的にはNK細胞で発現されるが、腫瘍特異的CTLでも検出されている。KIRに特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、KIRの活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、KIRに結合する薬剤(例えば、抗KIR抗体)である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、KIR結合タンパク質(例えば、抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはKIRアゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはKIRアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、リリルマブ(BMS-986015としても知られている;Bristol-Myers Squibb)である。追加のKIR結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,981,065号明細書、同第9,018,366号明細書、同第9,067,997号明細書、同第8,709,411号明細書、同第8,637,258号明細書、同第8,614,307号明細書、同第8,551,483号明細書、同第8,388,970号明細書、同第8,119,775号明細書;米国特許出願公開第2015/0344576号明細書、同第2015/0376275号明細書、同第2016/0046712号明細書、同第2015/0191547号明細書、同第2015/0290316号明細書、同第2015/0283234号明細書、同第2015/0197569号明細書、同第2014/0193430号明細書、同第2013/0143269号明細書、同第2013/0287770号明細書、同第2012/0208237号明細書、同第2011/0293627号明細書、同第2009/0081240号明細書、同第2010/0189723号明細書;並びに国際公開第2016/069589号パンフレット、同第2015/069785号パンフレット、同第2014/066532号パンフレット、同第2014/055648号パンフレット、同第2012/160448号パンフレット、同第2012/071411号パンフレット、同第2010/065939号パンフレット、同第2008/084106号パンフレット、同第2006/072625号パンフレット、同第2006/072626号パンフレット、及び同第2006/003179号パンフレットに開示されている。
【0328】
LAG-3.リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3、CD223としても知られている)は、MHCIIに競合的に結合して、T細胞活性化の共阻害チェックポイントとして機能するCD4関連膜貫通タンパク質である(例えば、Goldberg and Drake(2011)Curr.Top.Microbiol.Immunol.344:269-78を参照)。LAG-3に特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、LAG-3の活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、LAG-3に結合する薬剤(例えば、抗PD-1抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはLAG-3アゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはLAG-3アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、ペンブロリズマブ(Keytruda;以前はランブロリズマブ;Merck&Co.,Inc.)、ニボルマブ(Opdivo;Bristol-Myers Squibb)、ピジリズマブ(CT-011、CureTech)、SHR-1210(Incyte/Jiangsu Hengrui Medicine Co.,Ltd.)、MEDI0680(AMP-514としても知られている;Amplimmune Inc./Medimmune)、PDR001(Novartis)、BGB-A317(BeiGene Ltd.)、TSR-042(ANB011としても知られている;AnaptysBio/Tesaro,Inc.)、REGN2810(Regeneron Pharmaceuticals,Inc./Sanofi-Aventis)、及びPF-06801591(Pfizer)からなる群から選択されるLAG-3結合タンパク質(例えば、抗体)である。追加のPD-1結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,181,342号明細書、同第8,927,697号明細書、同第7,488,802号明細書、同第7,029,674号明細書;米国特許出願公開第2015/0152180号明細書、同第2011/0171215号明細書、同第2011/0171220号明細書;並びに国際公開第2004/056875号パンフレット、同第2015/036394号パンフレット、同第2010/029435号パンフレット、同第2010/029434号パンフレット、同第2014/194302号パンフレットに開示されている。
【0329】
PD-1.プログラム細胞死タンパク質1(PD-1、CD279及びPDCD1としても知られている)は、免疫系を負に調節する抑制性受容体である。主にナイーブT細胞に影響を与えるCTLA-4とは対照的に、PD-1は、免疫細胞でより広く発現され、末梢組織及び腫瘍微小環境で成熟T細胞活性を調節する。PD-1は、T細胞受容体シグナル伝達を妨げることによってT細胞応答を阻害する。PD-1は、PD-L1及びPD-L2の2つのリガンドを有する。PD-1に特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、PD-1の活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、PD-1に結合する薬剤(例えば、抗PD-1抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはPD-1アゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはPD-1アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、ペンブロリズマブ(Keytruda;以前はランブロリズマブ;Merck&Co.,Inc.)、ニボルマブ(Opdivo;Bristol-Myers Squibb)、ピジリズマブ(CT-011,CureTech)、SHR-1210(Incyte/Jiangsu Hengrui Medicine Co.,Ltd.)、MEDI0680(AMP-514としても知られている;Amplimmune Inc./Medimmune)、PDR001(Novartis)、BGB-A317(BeiGene Ltd.)、TSR-042(ANB011としても知られている;AnaptysBio/Tesaro,Inc.)、REGN2810(Regeneron Pharmaceuticals,Inc./Sanofi-Aventis)、及びPF-06801591(Pfizer)からなる群から選択されるPD-1結合タンパク質(例えば、抗体)である。追加のPD-1結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,181,342号明細書、同第8,927,697号明細書、同第7,488,802号明細書、同第7,029,674号明細書;米国特許出願公開第2015/0152180号明細書、同第2011/0171215号明細書、同第2011/0171220号明細書;並びに国際公開第2004/056875号パンフレット、同第2015/036394号パンフレット、同第2010/029435号パンフレット、同第2010/029434号パンフレット、同第2014/194302号パンフレットに開示されている。
【0330】
PD-L1/PD-L2.PDリガンド1(PD-L1、B7-H1としても知られている)及びPDリガンド2(PD-L2、PDCD1LG2、CD273、及びB7-DCとしても知られている)はPD-1受容体に結合する。両方のリガンドは、CD28及びCTLA-4と相互作用するB7-1及びB7-2タンパク質と同じB7ファミリーに属している。PD-L1は、例えば、上皮細胞、内皮細胞、免疫細胞を含む多くの細胞型で発現し得る。PDL-1のライゲーションは、IFNγ、TNFα、及びIL-2の産生を減少させ、T細胞の反応性及び増殖の低下並びに抗原特異的T細胞アネルギーに関連する抗炎症性サイトカインであるIL10の産生を刺激する。PDL-2は、主に抗原提示細胞(APC)で発現される。PDL2ライゲーションもまたT細胞の抑制をもたらすが、PDL-1-PD-1相互作用がG1/G2期での細胞周期停止を介して増殖を阻害する場合、PDL2-PD-1結合は、低い抗原濃度でB7:CD28シグナルをブロックして、高い抗原濃度でサイトカインの産生を減少させることによって、TCRを介したシグナル伝達を阻害することが示されている。PD-L1及びPD-L2に特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。
【0331】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、PD-L1の活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、PD-L1に結合する薬剤(例えば、抗PD-L1抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはPD-L1アゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはPD-L1アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、デュルバルマブ(MEDI-4736としても知られている;AstraZeneca/Celgene Corp./Medimmune)、アテゾリズマブ(Tecentriq;MPDL3280A及びRG7446としても知られている;Genetech Inc.)、アベルマブ(MSB0010718Cとしても知られている;Merck Serono/AstraZeneca);MDX-1105(Medarex/Bristol-Meyers Squibb)、AMP-224(Amplimmune,GlaxoSmithKline)、LY3300054(Eli Lilly and Co.)からなる群から選択されるPD-L1結合タンパク質(例えば、抗体又はFc融合タンパク質)である。追加のPD-L1結合タンパク質は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0084839号明細書、同第2015/0355184号明細書、同第2016/0175397号明細書、及び国際公開第2014/100079号パンフレット、同第2016/030350号パンフレット、同第2013181634号パンフレットに開示されている。
【0332】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、PD-L2の活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、PD-L2に結合する薬剤(例えば、抗PD-L2抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはPD-L2アゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはPD-L2アンタゴニストである。PD-L2結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,255,147号明細書、同第8,188,238号明細書;米国特許出願公開第2016/0122431号明細書、同第2013/0243752号明細書、同第2010/0278816号明細書、同第2016/0137731号明細書、同第2015/0197571号明細書、同第2013/0291136号明細書、同第2011/0271358号明細書;並びに国際公開第2014/022758号パンフレット、及び同第2010/036959号パンフレットに開示されている。
【0333】
TIM-3.T細胞免疫グロブリンムチン3(TIM-3、A型肝炎ウイルス細胞受容体(HAVCR2)としても知られている)は、S型レクチンガレクチン-9(Gal-9)に結合するI型糖タンパク質受容体である。TIM-3は、リンパ球、肝臓、小腸、胸腺、腎臓、脾臓、肺、筋肉、網状赤血球、及び脳組織に広く発現されるリガンドである。Tim-3は当初、IFN-γを分泌するTh1及びTc1細胞で選択的に発現されるとして同定された(Monney et al.(2002)Nature 415:536-41)。TIM-3受容体によるGal-9の結合は、下流のシグナル伝達を引き起こしてT細胞の生存及び機能を負に調節する。TIM-3に特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、TIM-3の活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、TIM-3に結合する薬剤である(例えば、抗TIM-3抗体)。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはTIM-3アゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはTIM-3アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、TSR-022(AnaptysBio/Tesaro,Inc.)及びMGB453(Novartis)からなる群から選択される抗TIM-3抗体である。追加のTIM-3結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,103,832号明細書、同第8,552,156号明細書、同第8,647,623号明細書、同第8,841,418号明細書;米国特許出願公開第2016/0200815号明細書、同第2015/0284468号明細書、同第2014/0134639号明細書、同第2014/0044728号明細書、同第2012/0189617号明細書、同第2015/0086574号明細書、同第2013/0022623号明細書;並びに国際公開第2016/068802号パンフレット、同第2016/068803号パンフレット、同第2016/071448号パンフレット、同第2011/155607号パンフレット、及び同第2013/006490号パンフレットに開示されている。
【0334】
VISTA.T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA、血小板受容体Gi24としても知られている)は、T細胞応答を負に調節するIgスーパーファミリーリガンドである。例えば、Wang et al.,2011,J.Exp.Med.208:577-92を参照されたい。APCで発現したVISTAはCD4及びCD8 T細胞の増殖及びサイトカインの産生を直接抑制する(Wang et al.(2010)J Exp Med.208(3):577-92)。VISTAに特異的な複数の免疫チェックポイントモジュレーターが開発されており、本明細書に開示されているように使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、VISTAの活性及び/又は発現を調節する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、VISTAに結合する薬剤(例えば、抗VISTA抗体)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはVISTAアゴニストである。いくつかの実施形態では、チェックポイントモジュレーターはVISTAアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、TSR-022(AnaptysBio/Tesaro,Inc.)及びMGB453(Novartis)からなる群から選択されるVISTA結合タンパク質(例えば、抗体)である。VISTA結合タンパク質(例えば、抗体)は当技術分野で公知であり、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0096891号明細書、同第2016/0096891号明細書;並びに国際公開第2014/190356号パンフレット、同第2014/197849号パンフレット、同第2014/190356号パンフレット、及び同第2016/094837号パンフレットに開示されている。
【0335】
腫瘍性障害を処置するための方法は、本発明の操作された免疫細胞を少なくとも1つの免疫チェックポイントモジュレーターと組み合わせて対象に投与することによって提供される。特定の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、対象の免疫応答を刺激する。例えば、いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、刺激性免疫チェックポイント(例えば、CD27、CD28、CD40、OX40、GITR、ICOS、又は4-1BB)の発現若しくは活性を刺激又は増加させる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、抑制性免疫チェックポイント(例えば、A2A4、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、KIR、LAG3、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、又はVISTA)の発現若しくは活性を阻害又は減少させる。
【0336】
特定の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、CD27、CD28、CD40、OX40、GITR、ICOS、4-1BB、A2A4、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、KIR、LAG3、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、及びVISTAからなる群から選択される免疫チェックポイント分子を標的とする。特定の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、CD27、CD28、CD40、OX40、GITR、ICOS、4-1BB、A2A4、B7-H3、B7-H4、BTLA、KIR、LAG3、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、及びVISTAからなる群から選択される免疫チェックポイント分子を標的とする。特定の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、CTLA-4、PD-L1、及びPD-1からなる群から選択される免疫チェックポイント分子を標的とする。さらに特定の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、PD-L1及びPD-1から選択される免疫チェックポイント分子を標的とする。
【0337】
いくつかの実施形態では、2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上)の免疫チェックポイントモジュレーターが対象に投与される。2つ以上の免疫チェックポイントモジュレーターが投与される場合、モジュレーターは、それぞれが刺激性免疫チェックポイント分子を標的とするか、又はそれぞれが抑制性免疫チェックポイント分子を標的とすることができる。他の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターには、刺激性免疫チェックポイントを標的とする少なくとも1つのモジュレーター、及び抑制性免疫チェックポイント分子を標的とする少なくとも1つの免疫チェックポイントモジュレーターが含まれる。特定の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、結合タンパク質、例えば抗体である。本明細書で使用される「結合タンパク質」という用語は、標的分子、例えば免疫チェックポイント分子に特異的に結合することができるタンパク質又はポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、抗体又はその抗原結合部分であり、標的分子は、免疫チェックポイント分子である。いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、標的分子(例えば、免疫チェックポイント分子)に特異的に結合するタンパク質又はポリペプチドである。いくつかの実施形態では、結合タンパク質はリガンドである。いくつかの実施形態では、結合タンパク質は融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、結合タンパク質は受容体である。本発明の方法で使用され得る結合タンパク質の例としては、限定されるものではないが、ヒト化抗体、抗体Fab断片、二価抗体、抗体薬物コンジュゲート、scFv、融合タンパク質、二価抗体、及び四価抗体が挙げられる。
【0338】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖から構成される任意の免疫グロブリン(Ig)分子、又は任意の機能的断片、突然変異体、変異体、若しくはそれらの誘導体を指す。そのような突然変異体、変異体、又は誘導体の抗体型は当技術分野で公知である。完全長抗体では、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2、及びCH3の3つのドメインから構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略される)及び軽鎖定常領域から構成されている。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成されている。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する。各VH及びVLは、3つのCDRと4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置されている。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスであり得る。いくつかの実施形態では、抗体は完全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はマウス抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はヒト抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はヒト化抗体である。他の実施形態では、抗体はキメラ抗体である。キメラ及びヒト化抗体は、CDRグラフト化アプローチ(例えば、米国特許第5,843,708号明細書;同第6,180,370号明細書;同第5,693,762号明細書;同第5,585,089号明細書;及び同第5,530,101号明細書を参照)、チェーンシャッフリング戦略(例えば、米国特許第5,565,332号明細書;Rader et al.(1998)PROC.NAT’L.ACAD.SCI.USA 95:8910-8915を参照)、及び分子モデリング戦略(米国特許第5,639,641号明細書)などを含む当業者に周知の方法によって調製することができる。
【0339】
本明細書で使用される抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ又は複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。そのような抗体の実施形態はまた、二重特異性(bispecific)、二重特異性(dual specific)、又は多重特異性の形態であり得;2つ以上の異なる抗原に特異的に結合する。抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合断片の例としては、(i)Fab断片、VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価断片;(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)単一可変ドメインを含むdAb断片(その内容が参照により本明細書に組み込まれる、Ward et al.(1989)NATURE 341:544-546;及び国際公開第90/05144 A1号パンフレット);並びに(vi)分離した相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLとVHは、別々の遺伝子によってコードされているが、VL及びVH領域が対になって一価分子を形成する単一のタンパク質鎖としてこれらを作製できる合成リンカーによって、組換え法を使用して結合することができる(一本鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.(1988)SCIENCE 242:423-426;and Huston et al.(1988)PROC.NAT’L.ACAD.SCI.USA 85:5879-5883を参照)。このような一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれることを意図している。ダイアボディなどの他の形態の一本鎖抗体も含まれる。抗原結合部分はまた、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、及びbis-scFvに組み込むことができる(例えば、Hollinger and Hudson,Nature Biotechnology 23:1126-1136,2005を参照)。
【0340】
本明細書で使用される「CDR」という用語は、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。重鎖及び軽鎖の各可変領域には3つのCDRがあり、これらは、可変領域ごとにCDR1、CDR2、及びCDR3と呼ばれる。本明細書で使用される「CDRセット」という用語は、抗原に結合することができる単一可変領域に存在する3つのCDR群を指す。これらのCDRの正確な境界は、方式によって定義が異なっている。Kabat(Kabat et al.,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987)and(1991))によって記述された方式は、抗体の任意の可変領域に適用可能な明確な残基付番方式を提供するだけではなく、3つのCDRを定義する正確な残基境界も提供する。これらのCDRは、Kabat CDRと呼ばれることもある。Chothia及び同僚らは、アミノ酸配列のレベルで大きな多様性があるにもかかわらず、Kabat CDR内の特定の小部分がほぼ同一のペプチド骨格構造を採用していることを見出した(Chothia et al.(1987)J.MOL.BIOL.196:901-917、及びChothia et al.(1989)NATURE 342:877-883)。これらの小部分は、L1、L2、及びL3又はH1、H2、及びH3として指定され、「L」及び「H」はそれぞれ、軽鎖領域及び重鎖領域を示す。これらの領域は、Chothia CDRと呼ばれることがあり、Kabat CDRと重複する境界を有する。Kabat CDRと重複するCDRを定義する他の境界は、Padlan et al.(1995)FASEB J.9:133-139、及びMacCallum et al.(1996)J.MOL.BIOL.262(5):732-45に記載されている。さらに他のCDR境界定義は、上記の方式の1つに厳密には従わない場合もあるが、それでもKabat CDRと重複する。ただし、Kabat CDRは、特定の残基又は残基群、又はCDR全体でさえも抗原結合に大きな影響を与えないという予測又は実験結果に照らして短縮又は延長することができる。本明細書で使用される方法は、これらの方式のいずれかに従って定義されるCDRを利用できるが、好ましい実施形態は、Kabat又はChothia方式で定義されたCDRを使用する。
【0341】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はそれらの断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又は他の抗体の抗原結合サブ配列など)である非ヒト(例えば、マウス)抗体を指す。ほとんどの場合、ヒト化抗体及びその抗体断片は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体又は抗体断片)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体/抗体断片は、レシピエント抗体にも、移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。これらの変更により、抗体又は抗体断片の性能をさらに改善して最適化することができる。一般に、ヒト化抗体又はその抗体断片は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、CDR領域のすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンの領域に対応し、FR領域のすべて又は大部分は、ヒト免疫グロブリン配列の領域である。ヒト化抗体又は抗体断片はまた、免疫グロブリンの定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部を含み得る。さらなる詳細については、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Jones et al.(1986)NATURE 321:522-525;Reichmann et al.(1988)NATURE 332:323-329;and Presta(1992)CURR.OP.STRUCT.BIOL.2:593-596を参照されたい。
【0342】
本明細書で使用される「免疫コンジュゲート」又は「抗体薬物コンジュゲート」という用語は、抗体又はその抗原結合断片と、化学療法剤、毒素、免疫療法剤、及びイメージングプローブなどの別の薬剤との結合を指す。結合は、共有結合、又は静電力などによる非共有相互作用であり得る。免疫コンジュゲートを形成するために、当技術分野で知られている様々なリンカーを使用することができる。加えて、免疫コンジュゲートは、免疫コンジュゲートをコードするポリヌクレオチドから発現され得る融合タンパク質の形態で提供することができる。
【0343】
本明細書で使用される「融合タンパク質」は、元々は別個のタンパク質(ペプチド及びポリペプチドを含む)をコードする2つ以上の遺伝子又は遺伝子断片の結合によって作製されたタンパク質を指す。融合遺伝子の翻訳により、元のタンパク質のそれぞれに由来する機能特性を備えた単一のタンパク質が生じる。
【0344】
「二価抗体」は、2つの抗原結合部位を含む抗体又はその抗原結合断片を指す。2つの抗原結合部位は、同じ抗原に結合するか、又はそれぞれが異なる抗原に結合することができ、その場合、抗体又は抗原結合断片は、「二重特異性」として特徴づけられる。「四価抗体」は、4つの抗原結合部位を含む抗体又はその抗原結合断片を指す。特定の実施形態では、四価抗体は二重特異性である。特定の実施形態では、四価抗体は、多重特異性、即ち、3つ以上の異なる抗原に結合する。
【0345】
Fab(抗原結合断片)抗体断片は、重鎖可変領域(V)及び重鎖定常領域1(CH1)部分からなるポリペプチドと、軽鎖可変(V)及び軽鎖定数(C)部分かなるポリペプチドとから構成される抗体の一価抗原結合ドメインを含む免疫反応性ポリペプチドであり、C及びCH1部分は、好ましくはCys残基間のジスルフィド結合によって1つに結合される。
【0346】
免疫チェックポイントモジュレーター抗体には、限定されるものではないが、少なくとも4つの主要な種類:(i)T細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞における阻害経路を直接ブロックする抗体(例えば、ニボルマブ及びペンブロリズマブなどのPD-1標的抗体、TIM-3を標的とする抗体、並びにLAG-3、2B4、CD160、A2aR、BTLA、CGEN-15049、及びKIRを標的とする抗体)、(ii)T細胞又はNK細胞における直接刺激経路を活性化する抗体(例えば、OX40、GITR、及び4-1BBを標的とする抗体)、(iii)免疫細胞における抑制経路をブロックする抗体、又は抗体依存性細胞毒性に依存して免疫細胞の抑制集団を枯渇させる抗体(例えば、イピリムマブなどのCTLA-4標的抗体、VISTAを標的とする抗体、及びPD-L2、Gr1、及びLy6Gを標的とする抗体)、並びに(iv)癌細胞における抑制経路を直接ブロックする抗体、又は抗体依存性細胞毒性に依存して癌細胞に対する細胞毒性を強める抗体(例えば、リツキシマブ、PD-L1を標的とする抗体、並びにB7-H3、B7-H4、Gal-9、及びMUC1を標的とする抗体)が含まれる。チェックポイント阻害剤の例としては、例えば、イピリムマブ又はトレメリムマブなどのCTLA-4の阻害剤;抗PD-1、抗PD-L1、又は抗PD-L2抗体などのPD-1経路の阻害剤が挙げられる。例示的な抗PD-1抗体は、国際公開第2006/121168号パンフレット、同第2008/156712号パンフレット、同第2012/145493号パンフレット、同第2009/014708号パンフレット、及び同第2009/114335号パンフレットに記載されている。例示的な抗PD-L1抗体は、国際公開第2007/005874号パンフレット、同第2010/077634号パンフレット、及び同第2011/066389号パンフレットに記載されており、例示的な抗PD-L2抗体は、国際公開第2004/007679号パンフレットに記載されている。
【0347】
特定の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、融合タンパク質、例えば、免疫チェックポイントモジュレーターの活性を調節する融合タンパク質である。
【0348】
一実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、治療用核酸分子、例えば、免疫チェックポイントタンパク質又はmRNAの発現を調節する核酸である。核酸治療薬は当技術分野で周知である。核酸治療薬には、細胞内の標的配列に相補的な一本鎖及び二本鎖(即ち、少なくとも15ヌクレオチド長の相補的領域を有する核酸治療薬)核酸の両方が含まれる。特定の実施形態では、核酸治療薬は、免疫チェックポイントタンパク質をコードする核酸配列を標的とする。
【0349】
アンチセンス核酸治療薬は、典型的には約16~30ヌクレオチド長の一本鎖核酸治療薬であり、培養物内又は生物内のいずれかの標的細胞の標的核酸配列に相補的である。
【0350】
別の態様では、薬剤は、一本鎖アンチセンスRNA分子である。アンチセンスRNA分子は、標的mRNA内の配列に相補的である。アンチセンスRNAは、mRNAと塩基対を形成し、翻訳機構を物理的に妨害することによって化学量論的に翻訳を阻害することができる。Dias,N.et al.,(2002)Mol Cancer Ther 1:347-355を参照されたい。アンチセンスRNA分子は、標的mRNAに相補的な約15~30ヌクレオチドを有し得る。アンチセンス核酸、化学修飾、及び治療用途に関する特許には、例えば:化学修飾されたRNA含有治療化合物に関する米国特許第5,898,031号明細書;これらの化合物を治療薬としての使用方法に関する米国特許第6,107,094号明細書;一本鎖の化学的に修飾されたRNA様化合物を投与することによって患者を処置する方法に関する米国特許第7,432,250号明細書;及び一本鎖の化学的に修飾されたRNA様化合物を含む医薬組成物に関する米国特許第7,432,249号明細書が含まれる。米国特許第7,629,321号明細書は、複数のRNAヌクレオシド及び少なくとも1つの化学修飾を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを用いて標的mRNAを切断する方法に関する。この段落に記載されている各特許の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0351】
本発明の方法で使用するための核酸治療薬には、二本鎖核酸治療薬も含まれる。本明細書で互換的に使用される「dsRNA剤」、「dsRNA」、「siRNA」、「iRNA剤」とも呼ばれる「RNAi剤」、「二本鎖RNAi剤」、二本鎖RNA(dsRNA)分子は、以下に定義されるように2つの逆平行の実質的に相補的な核酸鎖を含む二本鎖構造を有するリボ核酸分子の複合体を指す。本明細書で使用されるRNAi剤はまた、dsiRNAを含み得る(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20070104688号明細書を参照されたい)。一般に、各鎖のヌクレオチドの大部分はリボヌクレオチドであるが、本明細書に記載されるように、各鎖又は両鎖はまた、1つ又は複数の非リボヌクレオチド、例えばデオキシリボヌクレオチド及び/又は修飾ヌクレオチドを含み得る。加えて、本明細書で使用されるように、「RNAi剤」は、化学修飾を有するリボヌクレオチドを含み得;RNAi剤は、複数のヌクレオチドに実質的な修飾を含み得る。そのような修飾は、本明細書に開示される又は当技術分野で公知のあらゆるタイプの修飾を含み得る。siRNA型の分子で使用されるいずれの修飾も、本明細書及び特許請求の範囲のために「RNAi剤」に含まれる。本発明の方法で使用されるRNAi剤は、例えば、それぞれその全内容が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第/2012/037254号パンフレット及び同第2009/073809号パンフレットに開示されるような化学修飾を有する薬剤を含む。
【0352】
免疫チェックポイントモジュレーターは、例えば標準投与量を使用することによって、腫瘍性障害を処置するために適切な投与量で投与することができる。当業者は、日常的な実験によって、腫瘍性障害を処置する目的で、免疫チェックポイントモジュレーターの効果的で非毒性の量がどの程度であるかを決定することができるであろう。免疫チェックポイントモジュレーターの標準投与量は、当業者に公知であり、例えば、免疫チェックポイントモジュレーターの製造業者によって提供される製品の説明書から得ることができる。免疫チェックポイントモジュレーターの標準投与量の例が以下の表12に示される。他の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターは、特定の腫瘍性障害の処置のための標準治療の下で腫瘍性障害を処置するために使用される免疫チェックポイントモジュレーターの標準投与量とは異なる(例えば、より低い)投与量で投与される。
【0353】
【表12】
【0354】
特定の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターの投与量は、特定の腫瘍性障害に対する免疫チェックポイントモジュレーターの標準投与量よりも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%低い。特定の実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターの投与量は、特定の腫瘍性障害に対する免疫チェックポイントモジュレーターの標準投与量の95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、又は5%である。免疫チェックポイントモジュレーターの組み合わせが投与される一実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターの少なくとも1つは、特定の腫瘍性障害に対する免疫チェックポイントモジュレーターの標準用量よりも低い用量で投与される。免疫チェックポイントモジュレーターの組み合わせが投与される一実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターの少なくとも2つは、特定の腫瘍性障害に対する免疫チェックポイントモジュレーターの標準用量よりも低い用量で投与される。免疫チェックポイントモジュレーターの組み合わせが投与される一実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターの少なくとも3つは、特定の腫瘍性障害に対する免疫チェックポイントモジュレーターの標準用量よりも低い用量で投与される。免疫チェックポイントモジュレーターの組み合わせが投与される一実施形態では、免疫チェックポイントモジュレーターのすべては、特定の腫瘍性障害に対する免疫チェックポイントモジュレーターの標準用量よりも低い用量で投与される。
【0355】
本発明の操作された免疫細胞と組み合わせて投与することができる追加の免疫療法として、限定はされないが、Toll様受容体(TLR)アゴニスト、細胞ベースの治療法、サイトカイン及び癌ワクチンが挙げられる。
【0356】
2.TLRアゴニスト
TLRは、微生物に由来する構造的に保存された分子を認識する単回膜貫通非触媒受容体である。TLRは、インターロイキン1受容体と共に、「インターロイキン1受容体/Toll様受容体スーパーファミリー」として知られている受容体スーパーファミリーを形成する。このファミリーのメンバーは、細胞外ロイシンリッチリピート(LRR)ドメイン、膜近傍システイン残基の保存されたパターン、並びにMyD88、TIRドメイン含有アダプター(TRAP)、及びIFNβを誘導するTIRドメイン含有アダプター(TRIF)を含むTIRドメイン含有アダプターを動員することによって下流シグナル伝達のプラットフォームを形成する細胞質内シグナル伝達ドメインによって構造的に特徴付けられる(O’Neill et al.,2007,Nat Rev Immunol 7,353)。
【0357】
TLRには、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、及びTLR10が含まれる。TLR2は、ペプチドグリカン、細菌性リポペプチド、リポテイコ酸、マイコバクテリアリポアラビノマンナン、及び酵母の細胞壁成分を含む多数の微生物産物に対する細胞応答を仲介する。TLR4は、パターン認識受容体(PRR)ファミリーに属する膜貫通タンパク質である。その活性化は、細胞内シグナル伝達経路NF-κB、及び自然免疫系の活性化に関与する炎症性サイトカインの産生をもたらす。TLR5は、移動性細菌の侵入から細菌フラジェリンを認識することが知られており、炎症性腸疾患を含む多くの疾患の発症に関与していることが示されている。
【0358】
TLRアゴニストは当技術分野で公知であり、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0030294号明細書に記載されている。例示的なTLR2アゴニストには、マイコバクテリア細胞壁糖脂質、リポアラビノマンナン(LAM)及びマンノシル化ホスファチジルイノシトール(PIIM)、MALP-2、及びPam3Cys、及びそれらの合成変異体が含まれる。例示的なTLR4アゴニストには、リポ多糖又はその合成変異体(例えば、MPL及びRC529)及びリピドA又はその合成変異体(例えば、アミノアルキルグルコサミニド4-ホスフェート)が含まれる。例えば、Cluff et al.,2005,Infection and Immunity,p.3044-3052:73;Lembo et al.,2008,The Journal of Immunology 180,7574-7581;及びEvans et al.,2003,Expert Rev Vaccines 2:219-29を参照されたい。例示的なTLR5アゴニストには、フラジェリン又はその合成変異体(例えば、TLR5活性化に必須ではないフラジェリンの部分を除去することによって作製された、免疫原性が低下した薬理学的に最適化されたTLR5アゴニスト(CBLB502など))が含まれる。
【0359】
追加のTLRアゴニストには、コーリーの毒(Coley’s toxin)及びカルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette-Guerin)(BCG)が含まれる。コーリーの毒は、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)種及びセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)種の死滅菌からなる混合物である。Taniguchi et al.,2006,Anticancer Res.26(6A):3997-4002を参照のこと。BCGは、弱毒化された生きたウシ結核菌(Mycobacterium bovis)の菌株から調製される。Venkataswamy et al.,2012,Vaccine.30(6):1038-1049を参照のこと。
【0360】
3.細胞ベースの治療法
癌処置のための細胞ベースの治療法には、対象への免疫細胞(例えば、T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、ナチュラルキラー細胞、及び樹状細胞)の投与が含まれる。自家細胞ベースの治療法では、免疫細胞は、それらが投与される同じ対象に由来する。同族異系細胞ベースの治療法では、免疫細胞は、ある対象に由来し、別の対象に投与される。免疫細胞は、対象に投与する前に、例えばサイトカインでの処置によって活性化してもよい。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞免疫療法でのように、対象への投与の前に遺伝子組換えされている。
【0361】
いくつかの実施形態では、細胞ベースの治療法は、養子細胞移植(ACT)を含む。ACTは、典型的には3つの部分:リンパ球枯渇、細胞投与、及び高用量のIL-2による治療法から構成される。ACTで投与することができる細胞の種類には、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、T細胞受容体(TCR)導入T細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞が含まれる。
【0362】
腫瘍浸潤リンパ球は、乳癌を含む多くの固形腫瘍に観察されている免疫細胞である。腫瘍浸潤リンパ球は、細胞傷害性T細胞とヘルパーT細胞の混合物、並びにB細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、及び樹状細胞を含む細胞の集団である。自家TIL治療法の一般的な手順は次の通りである:(1)切除された腫瘍を消化して断片にする;(2)各断片をIL-2で増殖させ、リンパ球の増殖によって腫瘍を破壊する;(3)リンパ球の純粋な集団の存在の確認後、これらのリンパ球を増殖させる;及び(4)1011個の細胞まで増殖させた後、リンパ球を患者に注入する。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Rosenberg et al.,2015,Science 348(6230):62-68を参照されたい。
【0363】
TCRが形質導入されたT細胞は、腫瘍特異的TCRの遺伝子誘導を介して作製される。これは、多くの場合、特定の抗原特異的TCRをレトロウイルス骨格にクローニングすることによって行われる。血液を患者から採取し、末梢血単核細胞(PBMC)を抽出する。IL-2の存在下、PBMCをCD3で刺激し、抗原特異的TCRをコードするレトロウイルスで形質導入する。これらの形質導入PBMCをインビトロでさらに増殖させた後、患者に注入する。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Robbins et al.,2015,Clinical Cancer Research 21(5):1019-1027を参照されたい。
【0364】
キメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質シグナル伝達ドメイン(CD3ζ、CD28、及び4-1BBなど)を含む組換え受容体である。CARは、抗原結合機能及びT細胞活性化機能の両方を備える。従って、CAR発現T細胞は、糖脂質、炭水化物、及びタンパク質を含む多様な細胞表面抗原を認識し、細胞質共刺激の活性化を介してこれらの抗原を発現する悪性細胞を攻撃することができる。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Pang et al.,2018,Mol Cancer 17:91を参照されたい。
【0365】
いくつかの実施形態では、細胞ベースの治療法は、ナチュラルキラー(NK)細胞ベースの治療法である。NK細胞は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の発現の事前のいかなる感作又は制限なしに、腫瘍細胞を殺傷する能力を有する大顆粒リンパ球である。Uppendahl et al.,2017,Frontiers in Immunology 8:1825を参照されたい。高用量IL-2治療法による自家リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞の養子移入は、ヒトの臨床試験で評価されている。LAK免疫療法と同様に、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞は、抗CD3 mAb、IFN-γ、及びIL-2の刺激による末梢血単核細胞培養から生じる。CIK細胞は、混合T-NK表現型(CD3+CD56+)を特徴とし、卵巣癌及び子宮頸癌に対してLAK細胞と比較して細胞毒性の増強を示す。一次腫瘍減量手術及び補助カルボプラチン/パクリタキセル化学療法後の自家CIK細胞の養子移入を調べるヒト臨床試験も行われている。Liu et al.,2014,J Immunother 37(2):116-122を参照されたい。
【0366】
いくつかの実施形態では、細胞ベースの治療法は、樹状細胞ベースの免疫療法である。腫瘍溶解物で処置された樹状細胞(DC)を用いたワクチン接種は、インビトロ及びインビボの両方で治療的抗腫瘍免疫応答を高めることが証明されている。Jung et al.,2018,Translational Oncology 11(3):686-690を参照されたい。DCは、抗原を捕捉して処理し、リンパ器官に移動し、リンパ球共刺激分子を発現し、免疫応答を開始するサイトカインを分泌する。DCはまた、腫瘍関連抗原に特異的な受容体を発現する免疫エフェクター細胞(T細胞)を刺激し、CD4+CD25+Foxp3+制御性T(Treg)細胞などの免疫抑制因子の数を減少させる。例えば、腫瘍細胞溶解物-DCハイブリッドに基づく腎細胞癌(RCC)のDCワクチン接種戦略は、前臨床及び臨床試験において治療可能性を示した。Lim et al.,2007,Cancer Immunol Immunother 56:1817-1829を参照されたい。
【0367】
4.サイトカイン
IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、及びIL-21を含むいくつかのサイトカインは、NK細胞及びT細胞などの免疫細胞の活性化のための癌の処置に使用されてきた。IL-2は、抗腫瘍免疫を誘導することを期待して、臨床的に使用された最初のサイトカインの1つであった。高用量の単剤として、IL-2は、腎細胞癌(RCC)及び転移性黒色腫を有する一部の患者に寛解をもたらす。低用量のIL-2も調べられ、生物学的活性を維持しながら毒性を低減するように、IL-2αβγ受容体(IL-2Rαβγ)を選択的に連結することが目標とされた。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Romee et al.,2014,Scientifica,Volume 2014,Article ID 205796,18 pagesを参照されたい。
【0368】
インターロイキン-15(IL-15)は、インターロイキン-2(IL-2)と構造的に類似したサイトカインである。IL-2と同様に、IL-15は、IL-2/IL-15受容体ベータ鎖(CD122)及び共通のガンマ鎖(ガンマ-C、CD132)から構成される複合体に結合し、この複合体を介してシグナルを伝達する。組換えIL-15は、固形腫瘍(例えば、黒色腫、腎細胞癌)の処置のために、並びに癌患者の養子移入後のNK細胞を支持するために、評価されている。上で引用したRomee et al.を参照されたい。
【0369】
IL-12は、p35及びp40サブユニット(IL-12α及びβ鎖)から構成されるヘテロ二量体サイトカインであり、NK細胞の細胞毒性を増強する能力に基づいて、最初は「NK細胞刺激因子(NKSF)」として同定された。病原体に接触すると、IL-12は、活性化樹状細胞及びマクロファージによって放出され、主に活性化T細胞及びNK細胞で発現するその同族受容体に結合する。多くの前臨床試験により、IL-12は抗腫瘍候補であることが示唆されている。上で引用したRomee et al.を参照されたい。
【0370】
IL-18は、炎症性IL-1ファミリーのメンバーであり、IL-12と同様に、活性化食細胞から分泌される。IL-18は、前臨床動物モデルで有意な抗腫瘍活性を示し、ヒトの臨床試験で評価されている。Robertson et al.,2006,Clinical Cancer Research 12:4265-4273を参照されたい。
【0371】
IL-21は、NK細胞及びCD8+T細胞を刺激する能力があるため、抗腫瘍免疫療法に使用されてきた。エクスビボでのNK細胞の増殖では、膜結合型IL-21がK562刺激細胞で発現され、効果的な結果が得られている。Denman et al.,2012,PLoS One 7(1)e30264を参照されたい。組換えヒトIL-21は、可溶性CD25を増加させ、CD8+細胞上でのパーフォリン及びグランザイムBの発現を誘導することも示された。IL-21は、固形腫瘍の処置に関するいくつかの臨床試験で評価されている。上で引用したRomee et al.を参照されたい。
【0372】
5.癌ワクチン
治療用癌ワクチンは、適切なアジュバントの助けを借りて、癌に対する患者自身の免疫応答、特にCD8+T細胞媒介応答を強化することによって癌細胞を除去する。癌ワクチンの治療効果は、正常細胞に対する腫瘍細胞による腫瘍関連抗原(TAA)の差次的発現に依存している。TAAは、細胞タンパク質に由来し、免疫寛容又は自己免疫効果のいずれかを回避するために、主に又は選択的に癌細胞に発現させる必要がある。Circelli et al.,2015,Vaccines 3(3):544-555を参照されたい。癌ワクチンには、例えば、樹状細胞(DC)ベースのワクチン、ペプチド/タンパク質ワクチン、遺伝子ワクチン、及び腫瘍細胞ワクチンが含まれる。Ye et al.,2018,J Cancer 9(2):263-268を参照されたい。
【0373】
本発明の併用療法は、腫瘍性障害の処置に利用され得る。一部の実施形態では、本発明の操作された免疫細胞と追加の治療薬との併用療法は、腫瘍細胞の増殖を阻害する。従って、本発明はさらに、腫瘍細胞の増殖が阻害されるように、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数の異種ポリヌクレオチド、及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞、並びに少なくとも1つの追加の治療薬を対象に投与することを含む、対象における腫瘍細胞増殖を阻害する方法を提供する。特定の実施形態では、癌を処置することは、対照と比較して生存期間を延長するか、又は腫瘍進行までの時間を延長することを含む。一部の実施形態では、対照は、追加の治療薬で処置されるが、操作された免疫細胞で処置されない対象である。一部の実施形態では、対照は、操作された免疫細胞で処置されるが、追加の治療薬で処置されない対象である。一部の実施形態では、対照は、追加の治療薬又は操作された免疫細胞で処置されていない対象である。特定の実施形態では、対象は、ヒト対象である。一部の実施形態では、対象は、操作された免疫細胞の初回用量又は追加の治療薬の初回用量の投与前に、腫瘍を有すると特定される。特定の実施形態では、対象は、操作された免疫細胞の初回投与時、又は追加の治療薬の初回投与時に、腫瘍を有する。
【0374】
特定の実施形態では、本発明の操作された免疫細胞と1つ又は複数の追加の治療薬とを含む、少なくとも1、2、3、4、又は5サイクルの併用療法を対象に投与する。対象は、各サイクルの終わりに寛解基準について評価される。対象はまた、治療計画が十分に認容されていることを確認するために、有害事象(例えば、凝固、貧血、肝臓及び腎臓機能など)についてサイクル毎に終始モニターされる。
【0375】
2種以上の追加の治療薬、例えば、2、3、4、5、又はそれ以上の追加の治療薬を、本発明の操作された免疫細胞と組み合わせて投与してもよいことに留意すべきである。
【0376】
一実施形態では、本発明の操作された免疫細胞と、本明細書に記載の追加の治療薬の投与は、以下:腫瘍のサイズ、重量若しくは体積の減少、進行までの時間の増加、腫瘍成長の阻害、及び/又は腫瘍性障害を有する対象の生存期間の延長のうちの1つ若しくは複数をもたらす。特定の実施形態では、操作された免疫細胞及び追加の治療薬の投与は、核酸分子、ベクター、細胞又は医薬組成物を投与されているが追加の治療薬を投与されていない対応する対照対象と比較して、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%若しくは500%、腫瘍のサイズ、重量若しくは体積を減少させ、進行までの時間を増加させ、腫瘍増殖を阻害し、且つ/又は対象の生存期間を延長する。特定の実施形態では、操作された免疫細胞及び追加の治療薬の投与は、核酸分子、ベクター、細胞又は医薬組成物を投与されているが追加の治療薬を投与されていない腫瘍性障害に罹患した対照対象の対応する集団と比較して、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%若しくは500%、腫瘍のサイズ、重量若しくは体積を減少させ、進行までの時間を増加させ、腫瘍増殖を阻害し、且つ/又は腫瘍性障害に罹患した対象の集団の生存期間を延長する。他の実施形態では、操作された免疫細胞及び追加の治療薬の投与は、処置前に進行性の腫瘍性障害を有する対象における腫瘍性障害を安定化させる。
【0377】
特定の実施形態では、本発明の操作された免疫細胞と、追加の治療薬(例えば、免疫治療薬)による処置は、例えば、1つ又は複数の抗腫瘍(例えば化学療法薬)剤の標準用量を投与することによって、処置しようとする具体的な癌の処置のための標準治療などのさらに別の抗腫瘍剤と組み合わせる。特定の癌の種類の標準治療は、例えば、癌の種類及び重症度、対象の年齢、体重、性別、及び/若しくは病歴、並びに以前の処置の成功又は失敗に基づいて、当業者によって決定することができる。本発明の特定の実施形態では、標準治療は、外科手術、放射線、ホルモン療法、抗体療法、成長因子による治療法、サイトカイン、及び化学療法のいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、追加の抗腫瘍剤は、鉄依存性細胞分解を誘導する薬剤及び/又は免疫チェックポイントモジュレーターでもない。
【0378】
本明細書に開示される方法での使用に適した追加の抗腫瘍剤には、限定されるものではないが、化学療法剤(例えば、アルトレタミン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ロムスチン、メルファラン、オキサリプラチン、テモゾロミド、チオテパなどのアルキル化剤;5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)などの代謝拮抗剤;カペシタビン(Xeloda(登録商標))、シタラビン(Ara-C(登録商標))、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、ペメトレキセド(Alimta(登録商標));アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標))、エピルビシン、イダルビシン)、アクチノマイシン-D、ブレオマイシン、マイトマイシン-C、ミトキサントロン(トポイソメラーゼII阻害剤としても機能する)などの抗腫瘍抗生物質;トポテカン、イリノテカン(CPT-11)、エトポシド(VP-16)、テニポシド、ミトキサントロン(抗腫瘍抗生物質としても機能する)などのトポイソメラーゼ阻害剤;ドセタキセル、エストラムスチン、イクサベピロン、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビンなどの有糸分裂阻害剤;プレドニゾン、メチルプレドニゾロン(Solumedrol(登録商標))、デキサメタゾン(Decadron(登録商標))などのコルチコステロイド;L-アスパラギナーゼ及びボルテゾミブ(Velcade(登録商標))などの酵素が含まれる。抗腫瘍剤にはまた、生物学的抗癌剤、例えば、抗TNF抗体、例えば、アダリムマブ又はインフリキシマブ;リツキシマブなどの抗CD20抗体、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体;トラスツズマブなどの抗HER2抗体;パリビズマブなどの抗RSVが含まれる。
【0379】
B.感染病
本明細書に提供されるように、タノトランスミッションを促進するポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞は、対象に対して内因性である免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞など)における免疫活性を誘導又は増加させることができ、従って、細菌及び/又はウイルス感染の阻害、及び/又は感染を処置するための免疫監視及び免疫記憶機能の回復などの、免疫細胞機能を強化することができる。従って、一部の実施形態では、本発明の操作された免疫細胞は、対象における感染症又は感染性疾患、例えば慢性感染症を処置するために使用される。
【0380】
本明細書で使用される「感染」という用語は、生物(即ち、対象)の細胞又は組織が感染因子に感染している(例えば、対象が細胞内病原体感染、例えば慢性細胞内病原体感染を有する)あらゆる状態を指す。本明細書で使用される「感染因子」という用語は、感染した生物の少なくとも1つの細胞内の外来の生物学的実体(即ち、病原体)を指す。例えば、感染因子には、限定されるものではないが、細菌、ウイルス、原生動物、及び真菌が含まれる。細胞内病原体は特に興味深いものである。感染病は、感染因子によって引き起こされる障害である。一部の感染因子は、特定の条件下では認識できる症状も疾患も引き起こさないが、変化した条件下では症状又は疾患を引き起こし得る。主題の方法は、限定されるものではないが、ウイルス感染症、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、又はヒトパピローマウイルス;細胞内細菌感染症、例えば、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、クラミドフィラ(Chlamydophila)、エールリヒア(Ehrlichia)、リケッチア(Rickettsia)、ブルセラ(Brucella)、レジオネラ(Legionella)、フランシセラ(Francisella)、リステリア(Listeria)、コクシエラ(Coxiella)、ナイセリア(Neisseria)、サルモネラ(Salmonella)、イェルシニア属(Yersinia sp)、又はヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori);及び細胞内原生動物病原体、例えば、プラスモディウム属(Plasmodium sp)、トリパノソーマ属(Trypanosoma sp.)、ジアルジア属(Giardia sp.)、トキソプラズマ属(Toxoplasma sp.)、又はリーシュマニア属(Leishmania sp.)を含む慢性病原体感染症の処置に使用することができる。
【0381】
本明細書に記載の組成物を使用して処置できる感染病には、限定されるものではないが:HIV、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア(Giardia)、マラリア、リーシュマニア(Leishmania)、ウイルス性肝炎(A型、B型、又はC型)による病原性感染、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-I、HAV-6、HSV-II、及びCMV、エプスタイン・バー・ウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス(flaviviruses)、エコー・ウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、及びアルボウイルス脳炎ウイルス(arboviral encephalitis virus)、細菌であるクラミジア(chlamydia)、リケッチア細菌(rikettsial bacteria)、マイコバクテリウム(mycobacteria)、ブドウ球菌(staphylococci)、連鎖球菌(streptococci)、肺炎球菌(pneumonococci)、髄膜炎菌(meningococci)、及びコノコッキ(conococci)、クレブシエラ(klebsiella)、プロテウス(proteus)、セラチア(serratia)、シュードモナス(pseudomonas)、大腸菌(E.coli)、レジオネラ(legionella)、ジフテリア(diphtheria)、サルモネラ(salmonella)、バチルス(bacilli)、コレラ(cholera)、破傷風(tetanus)、ボツリヌス(botulism)、炭疽菌(anthrax)、ペスト(plague)、レプトスピラ(leptospirosis)、及びライム病細菌による病原性感染、真菌であるカンジダ(Candida)(アルビカンス(albicans)、クルセイ(krusei)、グラブラタ(glabrata)、トロピカリス(tropicalis)など)、クリプトコッカス・ネフォルアマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス(Aspergillus)(フミガーツス(fumigatus)、ニゲル(niger)など)、ケカビ属(Genus Mucorales)(ムコール(mucor)、アブシジア(absidia)、リゾプス(rhizophus))、スポロトリクス・シェンキイ(Sporothrix schenkii)、ブラストミセス・デルマティティジス(Blastomyces dermatitidis)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、及びヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)による病原性感染、並びに寄生虫である赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、ネグレリアフォーレリ(Naegleriafowleri)、アカントアメーバ属(Acanthamoeba sp.)、ジアルジア(Giardia lambia)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium sp.)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、バベシア・ミクロチ(Babesia microti)、ブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、ドノバン・リーシュマニア(Leishmania donovani)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondi)、及び/又はニッポストランジラス・ブラジリエンシス(Nippostrongylus brasiliensis)による病原性感染が含まれる。
【0382】
「慢性感染症」という用語は、約1ヶ月以上、例えば、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、又は6ヶ月続く感染症を指す。一部の実施形態では、慢性感染症は、感染領域内及び/又はその周辺での抗炎症性ケモカインの産生の増加に関連している。慢性感染症として、限定はされないが、HIV感染症、HCV感染症、HBV感染症、HPV感染症、B型肝炎感染症、C型肝炎感染症、EBV感染症、CMV感染症、TB感染症、及び細胞内細菌又は寄生虫による感染症が挙げられる。一部の実施形態では、慢性感染症は細菌感染症である。一部の実施形態では、慢性感染症はウイルス感染症である。
【0383】
IX.医薬組成物及び投与方法
特定の態様では、本開示は、タノトランスミッションを促進する1つ又は複数の異種ポリヌクレオチド、及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むように操作された免疫細胞を含む医薬組成物に関する。一部の実施形態では、組成物は、標的細胞において生物学的応答を誘導するのに十分な量の免疫細胞を含む。本明細書に記載の医薬組成物は、任意の好適な製剤で対象に投与することができる。好ましい形態は、意図される投与様式及び治療用途に応じて変わる。
【0384】
特定の実施形態において、医薬組成物は経口投与に適している。特定の実施形態では、医薬組成物は、静脈内、腹腔内、筋肉内、及び皮下注射を含む非経口投与に適している。特定の実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与に適している。さらに別の特定の実施形態では、医薬組成物は、腫瘍内投与に適している。
【0385】
非経口投与用の医薬組成物には、水溶性形態の活性化合物の水溶液が含まれる。静脈内投与の場合、製剤は水溶液であり得る。水溶液には、ハンクス液、リンゲル液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、生理食塩水緩衝液、又は非経口的に送達される製剤の適切なpH及び浸透圧を達成する他の適切な塩又は組み合わせが含まれ得る。水溶液を使用して、投与用の製剤を所望の濃度に希釈することができる。水溶液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどの、溶液の粘度を増加させる物質を含み得る。いくつかの実施形態では、製剤は、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、及び注射用水を含むリン酸緩衝生理食塩水を含む。
【0386】
当業者には容易に明らかであるように、投与される有用なインビボ投与量及び特定の投与方式は、年齢、体重、苦痛の重症度、及び処置される哺乳動物種、利用される特定の化合物、及びこれらの化合物が利用される特定の用途に応じて異なる。有効な投与量レベル、即ち、所望の結果を達成するために必要な投与量レベルの決定は、例えば、ヒト臨床試験、動物モデル、及びインビトロ試験などの日常的な方法を使用して当業者が行うことができる。
【0387】
特定の実施形態では、組成物は非経口的に投与される。特定の実施形態では、組成物は、注射又は注入によって送達される。一実施形態では、本明細書で提供される組成物は、腫瘍に直接注射することによって投与することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内注射又は静脈内注入によって投与することができる。特定の実施形態では、投与は全身性である。特定の実施形態では、投与は局所的である。
【実施例
【0388】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これらを限定するものとして解釈すべきではない。本出願全体を通して引用されたすべての参考文献、GenBankアクセッション番号及び遺伝子番号、並びに公開特許及び特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。当業者は、本発明が、開示される構造、材料、組成物及び方法に対する変形と共に実施され得ることを認識され、また、そのような変形は本発明の範囲内とみなされる。
【0389】
実施例1.CAR細胞内シグナル伝達ドメインが共刺激ドメイン及びCD3ゼータの細胞内シグナル伝達ドメインを含む、タノトランスミッションを促進するポリペプチドと別途CARとを含む操作されたT細胞の調製
ベクターの生成
CAR構築物をコードする遺伝子が合成され、レンチウイルス発現ベクター(CARベクター)にクローニングされる。CARは、標的抗原に対するscFv、ヒトCD8a由来のヒンジ及び膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン(例えば、CD28又は4-1BB)、並びにヒトCD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインから構成される。CARに加えて、構築物は、リボソームスキッピング部位の後に蛍光選択マーカー(ZSグリーンなど)を含有する(P2A、図1Aに概要を示す構築物)。以下の実施例5~10に記載されるものなどのタノトランスミッションを促進する遺伝子モジュールを合成し、活性化誘導性T細胞プロモーター、例えば、NF-AT(タノベクター(Thano vector))の下流にある別のレンチウイルスベクターにクローニングする。タノトランスミッションモジュールに加えて、構築物は、リボソームスキッピング部位の後に蛍光選択マーカー(DT-Tomatoなど)を含んでいる(F2A、図1Bに概要を示す構築物)。
【0390】
レンチウイルスストックの生成
トランスフェクションの前日に、293個のT細胞をプレーティングする。CARの生成用のレンチウイルスストックは、レンチウイルスパッケージングミックスと共にCARベクターDNAを293T細胞にトランスフェクトすることによって産生される。タノベクター用の個別のレンチウイルスストックは、レンチウイルスパッケージングミックスと共にタノベクターDNAを293T細胞にトランスフェクトすることによって作成される。ウイルスストックをトランスフェクションの24時間後及び48時間後に採取し、0.22μMフィルターを通して濾過してレンチウイルスストックを作製する。
【0391】
CAR T細胞の生成
Pan T細胞は、健康なヒトのドナーからのPBMCから単離される。単離されたT細胞は、活性化ビーズで2~3日間活性化され、ビーズが除去される。レンチウイルスストックを活性化されたT細胞に加えて、T細胞に形質導入する。T細胞にCARベクター又はタノベクターのいずれか、或いはその両方を形質導入して、それぞれ対照CAR T細胞、対照タノT細胞、タノCAR T細胞を作製する。形質導入の1~3日後、形質導入されたT細胞は、増殖を支持するサイトカイン(例えば、ヒトIL-2)の存在下で大規模増殖培養物に移される。実験のために、細胞を8日目と12日目の間に採取する。一部の実験では、増殖前又は増殖後の蛍光マーカー又は選択マーカーの発現に基づいて細胞が精製される。
【0392】
実施例2.インビトロでの操作されたT細胞機能の評価。
CAR T細胞の表現型
実施例1で上記のように生成されたCAR T細胞の表現型を、T細胞の老化、消耗、及び機能のマーカー、例えば、CD4、CD8、CD25、4-1BB、CD27、KLRG1、CD57について、フローサイトメトリーによって評価する。CAR T細胞の代謝適応度も、例えばミトコンドリア機能と酸化還元状態のアッセイを使用して、評価される。CAR T細胞の表現型は、標的抗原の存在下又は非存在下で評価される。
【0393】
CAR T細胞の機能及びタノトランスミッション
ルシフェラーゼ標識ヒト腫瘍細胞(例えば、BXPC-1、Capan-2、HT-1080、HT-29)を平底96ウェルプレートに5000~10000細胞/ウェルの密度でプレーティングする。CAR T細胞は、10:1~0.1:1の範囲のT細胞:標的比で添加される。24時間後、これらの共培養物からの上清を回収し、報告された細胞株とインキュベートして、NF-Kb及びIRF活性に対する効果を測定する。上清中のサイトカイン(例えば、IL-2、IFNγ)のレベルも測定される。標的殺傷の程度は、残りのルシフェラーゼ活性のレベルを測定することによって決定される。他の実験では、標的細胞及びT細胞を様々な比率で含有するプレートの連続的生細胞イメージングによって、標的のT細胞殺傷の動態が決定される。
【0394】
実施例3.癌の免疫不全マウスモデルにおけるCAR T細胞機能の評価。
異なるレベルの抗原標的(例えば、BXPC-1、Capan-2、ASC-1)を発現するヒト腫瘍細胞を、免疫不全NSGマウスの側腹部に皮下移植する。腫瘍が定着したら、マウス1匹あたり1×10~1×10個の範囲の異なる用量のCAR Tでマウスを1回処置する。腫瘍増殖動態がモニタリングされ、腫瘍増殖に対する異なるCAR T細胞の影響が評価される。いくつかの実験では、抗腫瘍CAR T細胞応答の持続性を評価するために、マウスは、反対側腹部に新しい腫瘍を再投与される。
【0395】
実施例4.癌の免疫担当マウスモデルにおけるマウス化CAR T細胞の評価。
無傷の免疫系に対するCAR T細胞活性の影響を評価する研究では、図1A及び1Bに記載のCAR構築物をマウス化する。この構築物は、ヒト抗原を標的とするVH及びVLドメインと、ヒトの代わりにマウスCD28及びマウスCD3ゼータシグナル伝達ドメインとを備えたレトロウイルス骨格(SFGなど)にクローニングされるため、マウスT細胞が刺激される。これらの構築物は、以前に記載されているように、安定したパッケージング細胞株を生成し、初代マウスT細胞を遺伝子改変するために使用される(Lee et al.,Cancer Res 2011,71(8):2871)。マウスCAR T細胞は、マウス腫瘍細胞(例えば、ヒト抗原標的(例えば、メソテリン)を発現するように修飾されたB16又はCT26)と共に培養される。
【0396】
同族抗原を発現するB16又はCT26腫瘍をWTマウスの皮下に移植する。腫瘍が触知できるようになれば、マウスをマウス化CAR Tで処置し、腫瘍増殖動態をモニタリングする。さらに、CAR Tの存在下での腫瘍に対する宿主免疫応答がモニタリングされる。一部の実験では、チェックポイント阻害抗体(例えば、抗マウスPD-1)及びCAR T細胞も投与され、腫瘍増殖及び宿主免疫応答に対する効果が評価される。
【0397】
実施例5.1つ又は複数のタノトランスミッションポリペプチドを発現するCT-26マウス大腸癌細胞における細胞死の誘導。
CT-26マウス大腸癌細胞(ATCC;CRL-2638)を、pLVX-Tet3Gベクター(Takara;631358)由来のレンチウイルスで形質導入し、ヒトPGKプロモーターによる安定したTet-Onトランスアクチベーター発現を達成した。Tet-On系では、遺伝子発現は、ドキシサイクリンによって誘導可能である。すべてのレンチウイルス形質導入は、293T細胞(ATCC;CRL-3216)及びレンチウイルスパッケージングミックス(Lentivirus Packaging Mix)(Biosettia;pLV-PACK)を使用する標準的な生成プロトコルを用いて実施した。次に、CT-26-Tet3G細胞を、pLVX-TRE3G(Takara;631193)においてヒトTRIF ORF(アクセッション番号:NM_182919)を発現するレンチウイルスで形質導入した。これに代わり、又は加えて、CT-26-Tet3G細胞は、マウスRIPK3 ORF(アクセッション番号:NM_019955.2)を発現するベクターを用いて形質導入した;RIPK3発現は、pLV-EF1a-MCS-IRES-Hyg(Biosettia;cDNA-pLV02)の構成性PGKプロモーター誘導体によって駆動した。両方のORFは、B-Bリガンド(Takara;635059)に結合すると、オリゴマー化する2つのタンデムDmrBドメインの付加により修飾して、B/Bホモ二量体化剤(1μM)を用いたタンパク質活性化によってオリゴマー化を促進することができるようにした。最初の検査の後、B/Bを用いた二量体化は、TRIF構築物の活性に実質的な影響を及ぼさなかったが、RIPK3発現構築物の活性を促進した。従って、その後のすべての実験において、B/B誘導による二量体化は、TRIFを含むどの構築物を活性化するためにも使用せず、RIPK3を発現する単一構築物を活性化するためだけに使用した。このように、実験条件がすべての群で同等であることを確実にするために、B/B二量体化剤を実験セットアップに含めたが、これは、TRIF誘導による活性に影響を及ぼさなかった。例えば、図3Bに示され、且つ実施例6に記載されるように、二量体化剤の添加は、前述した操作CT-26細胞からの細胞培養物で処置したマクロファージのIRF活性にほとんど影響を及ぼさなかった。
【0398】
表示されるタノトランスミッションモジュールを発現するCT26マウス大腸癌細胞を播種し、その後、ドキシサイクリン(1mg/mL;Sigma Aldrich、0219895525)及びB/Bホモ二量体化剤(1μM)で24h処置することにより、オリゴマー化を介して発現及びタンパク質活性化を促進した。相対細胞生存率は、製造業者の指示に従い、RealTime-Glo MT Cell Viability Assay kit(Promega、カタログ番号G9712)を用いて、処置後24h時点で決定し、相対発光単位(RLU)により測定された相対生存率を示すグラフを作成した。
【0399】
図2Aに示すように、TRIF、RIPK3、又はTRIF+RIPK3の誘導された発現及びオリゴマー化は、CT-26-Tet3G(Tet3G)親細胞株と比較して細胞生存率の低下を誘導した。これらの結果は、癌細胞における1つ又は複数のタノトランスミッションポリペプチドの発現が癌細胞の生存率を低下させることを実証している。
【0400】
別の実験では、TRIF、RIPK3、又はTRIF及びRIPK3を発現する癌細胞におけるガスダーミンE(GSDME)の発現の影響を調べた。CT-26-Tet3G細胞を、pLV-EF1a-MCS-IRES-Puroベクター(Biosettia)にクローニングしたヒトGSDME(NM_004403.3)で形質導入した。また、前述したCT-26-Tet3G-TRIF及びCT26-Tet3G-TRIF-RIPK3細胞にもGSDMEを形質導入した。これらの細胞を播種した後、ドキシサイクリン(1mg/mL;Sigma Aldrich、0219895525)で24h処置することにより、発現を促進した。相対細胞生存率は、製造業者の指示に従い、RealTime-Glo MT Cell Viability Assay kit(Promega、カタログ番号G9712)を用いて、処置後24h時点で決定し、相対発光単位(RLU)により測定された相対生存率を示すグラフを作成した。これらの実験には、B/B二量体化剤を使用しなかった。
【0401】
図2Bに示されるように、TRIF、及びTRIF+RIPK3の発現は、CT-26-Tet3G親細胞株と比較して細胞生存率を低下させ、図2Aに提示される結果が確認された。さらに、GSDME発現細胞におけるTRIF又はTRIF+RIPK3タンパク質発現の誘導も、CT-26-Tet3G親細胞と比較して細胞生存率を低下させた。まとめると、これらの結果は、癌細胞におけるTRIF、RIPK3及びGSDMEなどの1つ又は複数のタノトランスミッションポリペプチドの発現が、癌細胞の生存率を低下させることを実証している。
【0402】
実施例6.1つ又は複数のタノトランスミッションポリペプチドを発現するCT-26マウス大腸癌細胞由来の細胞ターンオーバー因子(CTF)がマクロファージのインターフェロン刺激遺伝子(ISG)レポーターに及ぼす影響
J774-Dual(商標)細胞(Invivogen,J774-NFIS)を96ウェル培養プレートに100,000細胞/ウェルで播種した。J774-Dual(商標)細胞は、2つの誘導性レポーター構築物の安定な組込みにより、マウスJ774.1マクロファージ様細胞株から誘導した。これらの細胞は、5コピーのNF-κB転写応答エレメントと3コピーのc-Rel結合部位に融合したIFN-β最小プロモーターの制御下で分泌された胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子を発現する。J774-Dual(商標)細胞はまた、5つのインターフェロン刺激応答エレメント(ISRE)と一緒にISG54最小プロモーターの制御下で、分泌されたルシフェラーゼをコードするルシア(Lucia)ルシフェラーゼ遺伝子も発現する。その結果、J774-Dual(商標)細胞は、SEAPの活性を評価することによりNF-κB経路と、ルシア・ルシフェラーゼの活性をモニターすることによりインターフェロン制御因子(IRF)経路の同時研究を可能にする。
【0403】
細胞ターンオーバー因子(CTF)を含む培養培地は、上記の実施例5に記載したようにCT-26マウス大腸癌細胞から作製した。実施例5に記載したタノトランスミッションモジュールに加えて、完全Tet誘導性プロモーターを含む追加のRIPK3構築物も評価した。このTet誘導性RIPK3は、図3Aで「RIPK3」と称され、PGKプロモーターを含むRIPK3構築物(実施例5に記載)は、図3Aで「PGK_RIPK3」と称される。
【0404】
また、免疫刺激性タノトランスミッションなしで、細胞死を誘導すると予測される対照も加えた。これらの対照構築物は、i)ヒトBidのC末端カスパーゼ切断(NM_197966.3)、ii)ヒトGSDMDのN末端カスパーゼ切断(NM_001166237.1)、iii)合成により二量体化可能な形態のヒトカスパーゼ-8(DmrB-カスパーゼ-8)、又はiv)DmrB-カスパーゼ-8及びヒトGSDMEの両方(NM_004403.3)を発現する。次に、J774-Dual(商標)細胞を、表示されるCTFで24h刺激した。細胞培地を収集し、QUANTI-Luc(Invivogen;rep-qlc1)アッセイを用いて、ルシフェラーゼ活性を測定した。インターフェロン刺激応答エレメント(ISRE)プロモーター活性化を、対照細胞株CT-26-Tet3Gと比較してグラフ化した。
【0405】
図3Aに示すように、調べたCT-26細胞株のうち、TRIFを発現する細胞から収集した培地(単独で、又はRIPK3と組み合わせて)のみが、J774-Dual(商標)細胞においてISRE/IRFレポーター遺伝子活性化を誘導した。
【0406】
別の実験では、ガスダーミンE(GSDME)とTRIF又はTRIF+RIPK3との組み合わせ発現の効果を調べた。CTFを含む培地は、実施例5に記載したように、TRIF又はTRIF+RIPK3を発現するCT-26細胞から、さらにはTRIF+ガスダーミンE又はTRIF+RIPK3+ガスダーミンEを発現するCT-26細胞から作製した。図3Bに示すように、TRIF(iTRIF)、TRIF+RIPK3(iTRIF_cR3)、TRIF+ガスダーミンE(iTRIF_cGE)、又はTRIF+RIPK3+ガスダーミンE(iTRIF_cR3_cGE)を発現するCT-26細胞の培地は各々、J774-Dual(商標)細胞においてISRE/IRFレポーター遺伝子活性化を誘導した。実施例5で論じたように、二量体化剤の添加は、ISRE/IRFレポーター遺伝子活性化にほとんど影響を及ぼさなかった。
【0407】
まとめると、これらの結果は、1つ又は複数のタノトランスミッションポリペプチドを発現する癌細胞から産生されるCTFが、免疫細胞における免疫刺激経路(即ち、IRF経路)を活性化することを示している。
【0408】
実施例7.1つ又は複数のタノトランスミッションポリペプチドを発現するCT-26マウス大腸癌細胞由来の細胞ターンオーバー因子(CTF)が、骨髄由来樹状細胞(BMDC)に及ぼす影響
骨髄細胞は、GM-CSFが十分なRPMI培地を用いて、8日にわたり樹状細胞に分化させた。2mL当たり400,000細胞を6ウェルプレートに播種した。8日目に、骨髄由来樹状細胞(BMDC)を採取し、100,000細胞/ウェルを96ウェルプレートに播種した。次いで、BMDCを、実施例5に記載した操作CT-26細胞由来のCTFを含む培地で刺激した。24時間時点で、刺激した細胞を採取し、細胞表面マーカーCD86、CD40及びPD-L1の発現をフローサイトメトリーによって測定し、平均蛍光強度(MFI)をTet3G対照と比較してグラフ化した。抗体の供給源は以下の通りであった:CD86(Biolegend、カタログ番号105042);CD40(Biolegend、カタログ番号102910);PD-L1(Biolegend、カタログ番号124312)。細胞表面マーカーCD86、CD40及びPD-L1の発現は、樹状細胞の成熟を示す。
【0409】
図4に示すように、調べたCT-26細胞株のうち、TRIF(単独又はRIPK3と組み合わせたいずれでも)を発現するように操作された細胞から採取した培養培地のみが、CD86、CD40、又はPD-L1の細胞表面発現を増大した。これらの結果は、TRIF又はTRIFとRIPK3の両方を発現するように操作されたCT-26細胞からのCTFが、樹状細胞の成熟を誘導したことを示している。樹状細胞におけるCD86及びCD40の上方制御は、T細胞を活性化する能力の増加を示している。従って、結果は、TRIF又はTRIF及びRIPK3を発現するように操作された癌細胞からのCTFが樹状細胞の成熟を誘導し、T細胞を活性化する能力を高めることを示すものである。
【0410】
実施例8.タノトランスミッションポリペプチド発現が単独で又は抗PD1抗体との組み合わせで、大腸癌のマウスモデルにおける腫瘍増殖及び生存率に及ぼす影響。
実施例5に記載したTRIF又はTRIF+RIPK3タノトランスミッションモジュールを担持するCT-26マウス大腸癌細胞をトリプシン処置し、1×10細胞/mLの無血清培地に再懸濁した。細胞をBALB/cマウスの右側皮下脇腹に注射(100mL)した。CT-26細胞注入後11日目から18日目まで、通常の飲料水にドキシサイクリン(Sigma Aldrich、カタログ番号D9891)を2mg/mlで補給して、タノトランスミッションポリペプチド発現を誘導し、11日目から18日目まで、B/Bホモ二量体化剤(Takara、カタログ番号632622)2mg/kgを毎日のIP注射により投与した。抗PD1抗体(BioXcell、カタログ番号BP0273)及びアイソタイプ対照を14日目、17日目及び21日目に投与した。IACUCガイドラインに従って腫瘍が2000mmに達したとき、又は実験終了時にマウスを安楽死させた。
【0411】
図5Aに示すように、TRIF単独(CT26-TF)の発現は、CT-26-Tet3G対照(Tet3G-アイソタイプ対照)及びCT26-RIPK3細胞(CT26-P_R3)と比較して生存率を増加させ、TRIFとRIPK3(Trif_RIPK3-アイソタイプ対照)の組み合わせでさらに大きな利益が観察された。図5Bに示すように、TRIFを有するCT-26細胞(CT26-TF)又はTRIF+RIPK3(TRIF_RIPK3)を有するCT-26細胞を注射したマウスの生存率は、抗PD-1抗体による処置によって増強され、これらの処置群はいずれも100%の生存率を示した(線が重なっている)。
【0412】
別の実験では、実施例6に記載したTRIF+GSDME及びTRIF+RIPK3+GSDMEタノトランスミッションモジュールを有するCT-26マウス大腸癌細胞をトリプシン処置し、1×10細胞/mLの無血清培地に再懸濁した。この実験にB/Bホモ二量体化剤は使用しなかった。細胞をBALB/cマウスの右側皮下脇腹に注射(100mL)した。CT-26細胞注射後15日目から21日目まで、マウスに625mg/kgのドキシサイクリン塩酸塩(Envigo TD.01306)を補充したTeklad標準飼料を給餌した。IACUCガイドラインに従って腫瘍が2000mmに達したとき、又は実験終了時にマウスを安楽死させた。
【0413】
図5Cに示すように、TRIF又はTRIF+RIPK3と組み合わせたGSDMEの発現は、TRIF又はTRIF-RIPK3をそれぞれ単独で発現する腫瘍を移植したマウスに比べて生存率をさらに高めた。
【0414】
実施例9.化学カスパーゼ阻害剤が、タノトランスミッションポリペプチドを発現するU937ヒト骨髄性白血病細胞に及ぼす影響
U937ヒト骨髄性白血病細胞及びTHP1-Dual細胞は、それぞれATCC及びInvivogenから取得した。U937は骨髄性白血病細胞株である。ヒトタノトランスミッションポリペプチド(tBid、Caspase 8、RIPK3又はTRIF)を発現するU937細胞を、実施例5及び6に記載の方法、並びに実施例5に記載のドキシサイクリン誘導性発現系を用いて作製した。
【0415】
THP1-Dual細胞は、NF-kB又はIRF経路いずれかの活性化時にレポータータンパク質を誘導するヒト単球細胞株である。これは、5コピーのNF-κBコンセンサス転写応答エレメントと3コピーのc-Rel結合部位に融合したIFN-β最小プロモーターによって駆動される分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子を発現する。THP1-Dual細胞はまた、5つのIFN刺激応答エレメントと一緒に、ISG54最小プロモーターの制御下にあるLucia遺伝子、即ち、分泌型ルシフェラーゼレポーター遺伝子を特徴とする。その結果として、THP1-Dual細胞は、SEAPの活性のモニタリングによるNF-kB経路、並びに分泌型ルシフェラーゼ(Lucia)の活性の評価によるIRF経路の同時研究を可能にする。
【0416】
馴化培地を作製するために、500万個のU937-tet3G、U937-tBid、U937-カスパーゼ8、U937-RIPK3又はU937-TRIF細胞を10cmディッシュ内のRPMI中に播種し、その後ドキシサイクリン(1μg/mL)で24h処置して発現を誘導した。U937-カスパーゼ8、U937-RIPK3、及びU937-TRIF細胞培養物にB/Bホモ二量体化剤(100nM)を添加し、オリゴマー化による発現及びタンパク質活性化を促進した。さらには、4μM Q-VD-Oph(汎カスパーゼ阻害剤)、10μM GSK872(RIPK3阻害剤)、又は両方の組み合わせで、U937-TRIF細胞をさらに処置した。細胞を24時間インキュベートした後、馴化培地を回収し、滅菌濾過した。
【0417】
NF-kB又はIRFレポーター発現に対するタノトランスミッションポリペプチドの効果を測定するために、100,000個のTHP1-Dual細胞/ウェルを100μl容積の96ウェル平底プレートに播種した。タノトランスミッションモジュールを発現するU937細胞から作製した100μlの馴化培地を各ウェルに添加した。24時間のインキュベーション期間の後、20μlのTHP1-Dual細胞培養上清を平底96ウェル白色(不透明)アッセイプレートに移し、プレートリーダーで発光を読み取る直前に、50μlのQUANTI-Lucアッセイ溶液を各ウェルに添加した。NF-kB活性を測定するために、20μlのTHP1-Dual培養上清を平底96ウェル透明アッセイプレートに移し、180μlの再懸濁QUANTI-Blue溶液を各ウェルに添加した。プレートを37℃で1時間インキュベートし、プレートリーダーを用いて655nmでSEAPレベルを測定した。
【0418】
図6A及び6Bに示すように、カスパーゼ阻害剤(Q-VD-Oph)単独で、又はRIPK3阻害剤(Q-VD-Oph+GSK872)と組み合わせて処置したU937-TRIF細胞からの細胞培養物によるTHP-1 Dual細胞の処置は、NF-kB活性化及びIRF活性を大幅に増加させた。(図6A~6Cにおいて、+はドキシサイクリンで処置したU937細胞を示し、++はドキシサイクリン及びB/Bホモ二量体で処置したU937細胞を示す)。RIPK3阻害剤単独で処置したU937-TRIF細胞の細胞培地は、THP-1 Dual細胞のNF-kB活性化にほとんど影響を及ぼさなかったため、NF-kB活性化の増加が、カスパーゼ阻害によるものであることを示している。図6B及び6Cに示されるように、カスパーゼ阻害剤で処置しなかったU937-TRIF細胞からの細胞培養培地によるTHP-1 Dual細胞の処置もまた、カスパーゼ阻害剤で処置したU937-TRIF細胞よりも程度は低いものの、IRF活性を増加した。
【0419】
総合すると、これらの結果は、TRIFを発現するヒト癌細胞から産生されるCTFが、免疫細胞の免疫刺激経路(即ち、NF-kB経路及びIRF経路)を活性化すること、並びにカスパーゼ阻害がこの効果を高めることを実証するものである。
【0420】
実施例10.カスパーゼ阻害剤タンパク質を含む組み合わせタノトランスミッションポリペプチドを発現させることによるCT-26マウス大腸癌細胞におけるタノトランスミッションの調節。
この実施例に記載される実験では、カスパーゼ阻害剤タンパク質の発現が、TRIF及びRIPK3を発現する癌細胞におけるタノトランスミッションに及ぼす影響を調べた。
【0421】
実施例5に記載されるように、タノトランスミッションポリペプチドTRIF及びRIPK3を発現するCT26マウス大腸癌細胞を、以下のものをコードする遺伝子で形質導入した:(i)デスドメインを有するヒトFas関連タンパク質のドミナントネガティブバージョン(FADD;アクセッション番号NM_003824);(ii)ヒト細胞FLICE様阻害性タンパク質(cFLIP;アクセッション番号NM_001127184.4);又は(iii)カスパーゼ活性を阻害することによりタノトランスミッションを調節することを目的とするカスパーゼのウイルス阻害剤(vICA、HCMV遺伝子UL36;アクセッション番号NC_006273.2)。FADD-DN、cFLIPs及びvICAを各々pLV-EF1a-MCS-IRES-Puroベクター(Biosettia)にクローニングし、これを使用して、CT26-TRIF-RIPK3発現細胞を形質導入した。
【0422】
これらの細胞を播種した後、発現を促進するために、ドキシサイクリン(1mg/mL;Sigma Aldrich、0219895525)で24h処置した。B/Bホモ二量体化剤は本実験では使用しなかった。相対細胞生存率は、製造業者の指示に従い、RealTime-Glo MT Cell Viability Assay kit(Promega、カタログ番号G9712)を用いて、処置後24h時点で決定し、相対発光単位(RLU)により測定された相対生存率を示すグラフを作成した。
【0423】
図7Aに示すように、CT26-TRIF+RIPK3細胞におけるFADD-DN、cFLIPs又はvICAのいずれの発現も、TRIF+RIPK3発現によって誘導される癌細胞の生存率の低下を減弱させた。しかし、CT26細胞におけるcFLIPs+TRIF+RIPK3又はvICA+TRIF+RIPK3の発現は、親株CT26-Tet3G細胞株と比較して、TRIF-RIPK3単独よりもわずかに低い程度で、依然として癌細胞の生存率を低下させた。図7Aを参照されたい。
【0424】
次に、上に記載したように、CT-26マウス大腸癌細胞からCTFを含む培地を作製した。続いて、J774-Dual(商標)細胞を、表示されるCTFで24h刺激した。細胞培地を収集し、QUANTI-Luc(Invivogen;rep-qlc1)アッセイを用いて、ルシフェラーゼ活性を測定した。インターフェロン刺激応答エレメント(ISRE)プロモーター活性化を、対照細胞株Tet3Gと比較してグラフ化した。図7Bに示すように、TRIF又はTRIF+RIPK3を発現するCT26細胞株から回収した培地は、J774-Dual細胞においてIRFレポーター発現を誘導した。さらに、TRIF+RIPK3に加えてFADD-DN、cFLIPs又はvICAを発現するCT26細胞由来の培地も、J774-Dual細胞でIRFレポーター活性化を誘導した。
【0425】
上記のFADD-DN、cFLIPs又はvICAタノトランスミッションモジュールを有するCT-26-TRIF+RIPK3マウス大腸癌細胞をトリプシン処置し、1×10細胞/mLの無血清培地に再懸濁した。この実験では、B/Bホモ二量体化剤を使用しなかった。免疫正常BALB/cマウスの右側皮下脇腹に細胞(100μL)を注射した。CT-26細胞注射後15日目から21日目まで、マウスに625mg/kgのドキシサイクリン塩酸塩(Envigo TD.01306)を補充したTeklad標準飼料を給餌した。IACUCガイドラインに従って腫瘍が2000mmに達したとき、又は実験終了時にマウスを安楽死させた。
【0426】
図7Cに示すように、タノトランスミッションモジュール(即ち、TRIF+RIPK3、TRIF+RIPK3+FADD-DN、TRIF+RIPK3+cFLIPS、又はTRIF+RIPK3+vICA)を発現するすべての腫瘍の増殖は、対照CT26-Tet3G細胞と比較して低減した。特に、TRIF+RIPK3と組み合わせたFADD-DN又はvICAの発現は、親CT26-TRIF+RIPK3細胞と比較して、腫瘍増殖をさらに低減した。興味深いことに、TRIF+RIPK3に加えてFADD-DN又はvICAを含むタノトランスミッションモジュールは、インビボでの腫瘍増殖の抑制に最も効果的であったが、FADD-DN+TRIF+RIPK3は、TRIF+RIPK3細胞と比較してインビトロでのCT26癌細胞の生存率にほとんど影響を与えなかったのに対し、vICA+TRIF+RIPK3共発現は、TRIF+RIPK3と比較してインビトロでの細胞殺傷を増強した。これらの結果は、タノトランスミッションモジュールによる癌細胞殺傷の規模に加えて、これらのモジュールの発現により癌細胞によって産生される明確な細胞ターンオーバー因子(CTF)プロファイルも、インビボでの腫瘍細胞に対する免疫応答に寄与し得ることを示唆している。
【0427】
実施例11.抗メソテリンCAR及び/又は誘導性miniTRIFを発現するJurkat T細胞における細胞死経路及び細胞ターンオーバー因子活性の評価
この実験の目的は、細胞死の様式に対する誘導性miniTRIF発現の効果、及びminiTRIFが発現された細胞によって産生される細胞ターンオーバー因子の免疫刺激活性を決定することであった。
【0428】
抗メソテリンCAR及び/又はminiTRIFを含む誘導性ペイロードを含有する、Jurkat T細胞を、レンチウイルス形質導入アプローチを使用して調製した。CARには、抗メソテリンscFv(SS1)、CD3z細胞内シグナル伝達ドメイン、及びCD28又は4-1BBを含む共刺激ドメインが含まれていた。miniTRIFは、T細胞活性化誘導プロモーターNF-ATの転写制御下にあった。CAR及びminiTRIF構築物の図を図8に記載する。全てのレンチウイルスは、実施例5に記載したように作製した。製造業者の指示に従い、TransDux Max(System Biosciences;LV680A-1)を使用して、NF-AT/miniTRIF、4-1BB共刺激ドメインを含む抗メソテリンCAR、又はCD28共刺激ドメインを含む抗メソテリンCARのいずれかを発現するレンチウイルスをJurkat T細胞に形質導入した。NF-AT/miniTRIFレンチウイルスで形質導入された細胞をピューロマイシンで選択し、安定したTSminiTRIFJurkat細胞を生成した。CARメソテリン-bbz+TSminiTRIFJurkat細胞及びCARメソテリン-28z+TSminiTRIFJurkat細胞を生成するために、安定したTSminiTRIFJurkat細胞株に、4-1BBを含む抗メソテリンCAR又はCD28を含む抗メソテリンCARを発現するレンチウイルスを形質導入した。
【0429】
以下の細胞株を評価した。
【0430】
【表13】
【0431】
細胞を、96ウェル平底細胞培養プレートに100,000細胞/ウェルで播種した。組換えヒトメソテリン-Fcキメラタンパク質(0、30、62、125、250、500ng/ml、Biolegend Cat#593202)又はヒトCD3/CD28アクチベーター(25ul/ml、Stemcell Technologies Cat#10971)を各ウェルに添加し、細胞を37℃、5%COで24、48、又は72時間インキュベートした。CD3/CD28アクチベーターは内因性T細胞受容体(TCR)を活性化するために使用され、一方、組換えメソテリンはCARを活性化するために使用された。各時点で、CTFを含有する培地をTHP1デュアルアッセイ用の細胞培養物から収集し、細胞を採取し、細胞生存率を評価するため、Fixable Viability Dye eFluor(商標)780(1:2000、Invitrogen Cat#65-0865-14)及びAnnexin V(Invitrogen Cat#88-8005-74)で染色した。Fixable Viability Dye eFluor(商標)780は、死細胞を標識する。従って、eFluor(商標)780標識細胞のパーセンテージは、培養物中の総細胞死のパーセンテージを反映する。アネキシンV染色は、アポトーシス細胞死を示す。
【0432】
細胞死の様式に対するCAR及びminiTRIFの影響を調べるために、アポトーシス細胞集団に対する壊死細胞集団の比率を、Fixable Viability Dye eFluor(商標)780と組み合わせたアネキシンV染色で分析した。壊死細胞集団は、アネキシンV及びViability dye eFluor780である細胞として定義され、アポトーシス細胞集団は、アネキシンV及びViability dye eFluor780である細胞として定義される。
【0433】
様々なCAR Jurkat細胞から収集したCTFサンプルをTHP1デュアルアッセイで使用して、CTFの免疫原性を調べた。THP1デュアルレポーター細胞を96ウェル平底プレートに100,000細胞/ウェルで播種した。CTFサンプルをTHP1デュアルレポーター細胞に1:1の比率で添加し、37℃、5%COで24時間インキュベートした。次に、細胞培養培地を収集し、QUANTI-Lucアッセイ(Invivogen)を使用してIRFレポーター発現(ルシフェラーゼ活性)を測定した。
【0434】
結果
図9A~9Cに示すように、CAR発現細胞は標的結合時に用量依存的に死滅し、細胞におけるminiTRIFペイロードの発現は細胞死の全体量を変化させなかった。
【0435】
図10A~10Cに示すように、CARメソテリン-bbz+TSminiTRIFJurkat細胞では、miniTRIF構築物を含有しない対応する細胞(CARメソテリン-bbzJurkat)と比較して、アポトーシス細胞に対する壊死細胞の比率が用量依存的に増加した。これは、miniTRIFの誘導性発現がアポトーシスからネクローシスへの細胞死の様式の変化を促進することを示している。さらに、CARメソテリン-28z+TSminiTRIFJurkat細胞では、48時間及び72時間の時点で、miniTRIF構築物を含有しない対応する細胞(CARメソテリン-28zJurkat)と比較して、同様であるがより小幅な壊死性細胞死の増加が観察された。これらの結果は、miniTRIF発現がアポトーシス細胞死から壊死性細胞死への変化を促進したことをさらに示す。
【0436】
図11A~11Cに示すように、miniTRIFペイロードを発現するCAR Jurkat T細胞からのCTFは、THP1デュアル細胞におけるIRFレポーター発現を活性化したが、miniTRIF構築物を含有しないJurkat T細胞からのCTFは、バックグラウンドレベルのみのIRFレポーター発現しか生じなかった。これらの結果は、Jurkat T細胞におけるminiTRIFの発現により、これらの細胞によって産生されるCTFの免疫刺激活性が増加したことを示す。さらに、IRF活性に対する効果は、72時間の時点で採取されたCTFで処置されたTHP1細胞の方が高く、免疫刺激CTFのレベルが経時的に増加したことを示唆している。
【0437】
結論
miniTRIFの誘導性発現は、アポトーシスから壊死への細胞死様式の変化を促進し、これらの細胞によって産生されるCTFの免疫刺激活性を増加させた。
【0438】
【表14-1】
【0439】
【表14-2】
図1A-1B】
図2A-2B】
図3A
図3B
図4
図5A
図5B-5C】
図6A
図6B-6C】
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
【配列表】
2024525475000001.app
【国際調査報告】