(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】細胞療法適用において使用される遺伝子構築物由来の遺伝子産物におけるバリアントを特定するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20240705BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240705BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580764
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 US2022035585
(87)【国際公開番号】W WO2023278619
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514266932
【氏名又は名称】カイト ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kite Pharma, Inc
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドラーデ ホルヘ
(72)【発明者】
【氏名】ボロティン ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】ファルク アレクサンダー エス.
(72)【発明者】
【氏名】リャオ エドワード エイチ.
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
(57)【要約】
細胞療法において使用される遺伝子産物が、意図しないバリアントの産生による有効性又は毒性の低下のリスクを有さないことを確実にするための方法。この方法は、遺伝子構築物に対してインシリコ分析を実行して、バリアントを引き起こす可能性が高い配列を特定及び変更する工程を含む。また、この方法は、構築物に基づく産物のRNA配列からなるインビボ分析を実行する工程を含む。次いで、バリアント発現レベル、バリアント有意性を判定するために、RNA配列からのギャップリードに基づいてバリアント検出を実行し得る。本方法は、特定されたバリアントが許容できない場合、インシリコ分析を反復する工程を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る配列を検出及び置換するための方法であって、
前記望ましくないバリアントを引き起こし得る前記配列の存在を検出するために、前記遺伝子構築物のインシリコ分析を実行する工程と、
前記望ましくないバリアントを引き起こし得る前記検出された配列を代替配列で置換する工程であって、前記代替配列は、同義コドン置換を含むように誘導される、工程と、
前記遺伝子構築物によって発現される前記望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定する工程であって、前記遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を実行する工程を含む、前記遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を行う工程を含み、前記望ましくないバリアントの前記頻度パーセンテージが、少なくとも部分的に、前記RNA配列決定分析からスプライス認識アライナを使用することによって判定される、工程と、
前記インビボ分析からの前記遺伝子産物中の前記望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値よりも大きい場合、前記インシリコ分析工程及び置換工程を反復する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
ギャップ認識アライメントが、少なくとも2つの別個のアライナを使用する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インシリコ分析が、
前記遺伝子構築物内の複数の相同配列及び複数の同一配列のうちの少なくとも1つを検出する工程であって、前記複数の相同配列及び前記複数の同一配列のうちの前記少なくとも1つが、前記遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る、工程と、
同義コドン置換の工程を含む、前記検出された複数の相同配列及び複数の同一配列を置換する工程と、を更に含む、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記インシリコ分析が、前記遺伝子構築物からサブセクション組み合わせの行列を計算する工程と、前記サブセクション組み合わせの各々についてハミング距離を取得する工程と、を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記インシリコ分析が、前記遺伝子構築物中の複数のランダム同義コドンを複数の代替配列で置換して、前記複数の代替配列が前記行列全体の和を増加させる工程を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子構築物が、キメラ抗原受容体をコードする配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が、前記望ましくないバリアントが細胞表面への前記キメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼすかどうか、前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の結合ドメインの変化に関連するかどうか、及び前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できる影響を引き起こすとして以前に特徴付けられているかどうか、のうちの少なくとも1つに前記望ましくないバリアントが関連するかどうかに基づいて判定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記望ましくないバリアントが細胞表面への前記キメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼす場合、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が0.1%であり、前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の結合ドメインへの変化に関連する場合、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が0.01%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記望ましくないバリアントが、前記キメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できるほどの影響を引き起こすとして以前に特徴付けられている場合、前記インシリコ分析工程及び前記置換工程を反復する工程が実行されない、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
高頻度バリアントの亜集団を特定及び除去する工程と、低頻度バリアントの亜集団を特定する工程を更に含み、
前記インビボ分析が、前記低頻度バリアントの亜集団が置換されるべきかどうかを判定するための分析を行う工程を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
細胞療法において使用される遺伝子産物を作製するための方法であって、
望ましくないバリアントを引き起こし得る配列を特定及び変更するために、前記遺伝子産物をコードする遺伝子構築物に対してインシリコ分析を実行する工程と、
前記望ましくないバリアントを引き起こし得る前記検出された配列を代替配列で置換する工程であって、前記代替配列は、同義コドン置換を含むように誘導される、工程と、
前記遺伝子構築物によって発現される前記望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定する工程であって、前記遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を実行する工程を含む、前記遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を行う工程を含み、前記望ましくないバリアントの前記頻度パーセンテージが、少なくとも部分的に、前記RNA配列決定分析からスプライス認識アライナを使用することによって判定される、工程と、
前記インビボ分析からの前記遺伝子産物中の前記望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値よりも大きい場合、前記インシリコ分析工程及び前記置換工程を反復して、新しい遺伝子構築物を作製する工程と、
前記新しい遺伝子構築物によって発現される前記望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定する工程であって、前記新しい遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を実行する工程を含む、前記新しい遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を行う工程を含み、前記望ましくないバリアントの前記頻度パーセンテージが、少なくとも部分的に、前記RNA配列決定分析からスプライス認識アライナを使用することによって判定される、工程と、を含む、方法。
【請求項12】
ギャップ認識アライメントが、少なくとも2つの別個のアライナを使用する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記インシリコ分析が、
前記遺伝子構築物内の複数の相同配列及び複数の同一配列のうちの少なくとも1つを検出する工程であって、前記複数の相同配列及び前記複数の同一配列のうちの前記少なくとも1つが、前記遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る、工程と、
同義コドン置換の工程を含む、前記検出された複数の相同配列及び複数の同一配列を置換する工程と、を更に含む、請求項11又は12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記インシリコ分析が、前記遺伝子構築物からサブセクション組み合わせの行列を計算する工程と、前記サブセクション組み合わせの各々についてハミング距離を取得する工程と、を更に含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記インシリコ分析が、前記遺伝子構築物中の複数のランダム同義コドンを複数の代替配列で置換して、前記複数の代替配列が前記行列全体の和を増加させる工程を更に含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記遺伝子構築物が、キメラ抗原受容体をコードする配列を含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が、前記望ましくないバリアントが細胞表面への前記キメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼすかどうか、前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の結合ドメインの変化に関連するかどうか、及び前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できる影響を引き起こすとして以前に特徴付けられているかどうか、のうちの少なくとも1つに前記望ましくないバリアントが関連するかどうかに基づいて判定される、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記望ましくないバリアントが細胞表面への前記キメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼす場合、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が0.1%であり、前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の結合ドメインへの変化に関連する場合、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が0.01%である、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記望ましくないバリアントが、前記キメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できるほどの影響を引き起こすとして以前に特徴付けられている場合、前記インシリコ分析工程及び前記置換工程を反復する工程が実行されない、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
高頻度バリアントの亜集団を特定及び除去する工程と、低頻度バリアントの亜集団を特定する工程を更に含み、
前記インビボ分析が、前記低頻度バリアントの亜集団が置き換えられるべきかどうかを判定するための分析を行う工程を更に含む、請求項11~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月2日に出願された米国仮特許出願第63/217,933号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る配列を検出及び置換するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、医療技術の進歩により、様々な形態のがんを含む異なるタイプの病気及び疾患を治療するための免疫療法の使用が出現している。一般に、免疫療法は、免疫応答を刺激又は抑制することによる疾患の治療である。多くの場合、免疫応答を開始及び/又は補足するために、患者自身の免疫細胞などの生物学的物質の改変バージョンが患者に再導入される。
【0004】
例えば、操作された免疫細胞は、治療処置において、特に腫瘍学において所望の性質を有することが実証されている。操作された免疫細胞の2つの主要なタイプは、キメラ抗原受容体(「CAR」又は「CAR-T」と呼ばれる)及びT細胞受容体(「TCR」)を含有するものである。これらの操作された細胞は、標的細胞を認識及び殺傷するそれらの能力を保持又は増強しながら、それらに抗原特異性を付与するように操作される。キメラ抗原受容体は、例えば、(i)抗原特異的成分(「抗原結合分子」)、(ii)細胞外ドメイン、(iii)1つ以上の共刺激ドメイン、及び(iv)1つ以上の活性化ドメインを含み得る。各ドメインは異種であり得、すなわち、異なるタンパク質鎖に由来する(又は対応する)配列から構成され得る。
【0005】
遺伝子構築物(ウイルスベクターなど)の使用による細胞への遺伝要素の導入は、細胞療法などの適用のための細胞を産生する1つの方法である。細胞の遺伝子構築物産生及び形質導入は、産物に不均一性を導入する可能性を有する複数の生物学的工程を必要とする。ウイルスベクターに対する特定の要求により、ウイルスパッケージング、形質導入、又は導入遺伝子転写における欠損は、意図される配列とは異なる望ましくない汚染物質を導入する可能性がある。これらの「バリアント」は、予期しないタンパク質配列を発現する場合があり、それらの頻度及び性質に応じて、有効性を低下させるか、製造を損なうか、又は毒性などの副作用を増加させる場合さえある。起こり得るプログラムの失敗を防ぐために、導入遺伝子開発段階中及び細胞療法開発中のバリアント産生の可能性を低下させることが重要である。
【0006】
必要とされているのは、細胞療法用途において使用される遺伝子産物におけるバリアント及び潜在的なバリアント原因配列の検出及び特定のための体系的な方法である。また、バリアントの特徴付け及び/又は検出されたバリアントを除去するためのDNA配列修飾などのリスク除去戦略のための改善された方法が、バリアントが特定された場合に反復プロセスにおいて使用され得ることが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
簡潔かつ一般的に言えば、本開示は、細胞療法において使用される遺伝子産物を作製するためのシステム及び方法に関する。一実施形態では、本方法は、バリアントを引き起こす配列を特定及び変更するために、遺伝子構築物に対してインシリコ分析を実行することを含む。また、本方法は、バリアントの頻度パーセンテージを特定するための第1のRNA配列決定工程を含むインビボ分析を実行することと、第1のRNA配列決定工程が遺伝子構築物において5%を超える頻度のバリアントを特定する場合、インシリコ分析を反復することと、を含む。インビボ分析は、バリアントの頻度パーセンテージを特定するための第2のRNA配列決定工程と、バリアントが許容可能でない場合にインシリコ分析を反復することと、を含み得る。本方法はまた、バリアント発現レベル及びバリアント有意性を判定するために、第1及び第2のRNA配列決定のうちの少なくとも1つからのギャップリードに基づいてバリアント検出を実行することを含み得る。バリアントが許容できないと判定された場合、新しい遺伝子構築物を作製するようにインシリコ分析が反復され得る。
【0008】
開示された方法の一実施形態では、インシリコ分析は、同義コドン置換で遺伝子構築物中のバリアントを改変することを含み得る。更に、インシリコ分析は、遺伝子構築物から相同配列を特定し、除去することを含み得る。一実施形態では、インシリコ分析は、遺伝子構築物中の同一配列を特定することを含む。更に、インシリコ分析は、入力配列からサブセクション組み合わせの行列を計算することと、各組み合わせについてハミング距離を取得することと、を含み得る。一実施形態の方法は、置換が行列全体の和を増加させる場合、ランダム同義コドンを置換することを含む。
【0009】
一実施形態では、インビボ分析は、遺伝子構築物から作製された産物のRNA配列決定を含む。一実施形態では、RNA配列決定は、高頻度バリアント、次いで低頻度バリアントを特定するために複数の段階で実行される。更に、インビボ分析は、低頻度バリアントが置換されるべきかどうかを判定するための分析を行うことを含み得る。
【0010】
本方法の一実施形態では、バリアント検出は、ドナーサンプルからRNAを抽出することを含む。また、ギャップ認識アライメントを実行する場合、3つの別個のアライナが一実施形態では使用され得る。バリアント有意性についてのP値は、ウィルコックス順位和検定を用いて計算される。
【0011】
本開示はまた、細胞療法において使用される遺伝子産物が、意図されないバリアントの産生に起因する有効性又は毒性の低下のリスクを有さないことを確実にするための方法に関する。この方法は、バリアントを引き起こす可能性が高い配列を特定及び変更するために、遺伝子構築物に対してインシリコ分析を実行することを含む。また、この方法は、構築物ベースの産物のRNA配列からなるインビボ分析を実行することを含む。次いで、バリアント発現レベル、バリアント有意性を判定するために、RNA配列からのギャップリードに基づいてバリアント検出を実行し得る。本方法は、特定されたバリアントが許容できない場合、インシリコ分析を反復することを含み得る。
【0012】
本開示の一実施形態は、遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る配列を検出及び置換するための方法に関する。そのような方法は、望ましくないバリアントを引き起こし得る配列の存在を検出するために、遺伝子構築物のインシリコ分析を実行する工程と、望ましくないバリアントを引き起こし得る検出された配列を代替配列で置換する工程であって、代替配列は、同義コドン置換を含むように誘導される、工程と、遺伝子構築物によって発現される望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定する工程であって、遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を行う工程を含む、遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を行う工程を含み、望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、少なくとも部分的に、RNA配列決定分析からスプライス認識アライナを使用することによって判定される、工程と、インビボ分析からの遺伝子産物における望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値よりも大きい場合、インシリコ分析工程と置換工程を反復する工程と、を含む。
【0013】
本開示の一実施形態は、細胞療法において使用される遺伝子産物を作製するための方法に関する。このような方法は、遺伝子産物をコードする遺伝子構築物に対してインシリコ分析を実行して、望ましくないバリアントを引き起こし得る配列を特定及び変更する工程と、望ましくないバリアントを引き起こし得る検出された配列を代替配列で置換する工程であって、代替配列は、同義コドン置換を含むように誘導される、工程と、遺伝子構築物によって発現される望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定する工程であって、遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を実行する工程を含む、遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を行う工程を含み、望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、少なくとも部分的に、RNA配列決定分析からスプライス認識アライナを使用することによって判定される、工程と、インビボ分析からの遺伝子産物における望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値よりも大きい場合、インシリコ分析工程と置換工程を反復して、新しい遺伝子構築物を作製する工程と、新しい遺伝子構築物によって発現される望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定する工程であって、新しい遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を実行する工程を含む、新しい遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を行う工程を含み、望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、少なくとも部分的に、RNA配列決定分析からスプライス認識アライナを使用する工程によって判定される、工程と、を含む。
【0014】
本技術の他の態様及び利点は、単に例として本技術の原理を示す添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本明細書で請求及び/又は説明される教示は、例示的な実施形態に関して更に説明される。これらの例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。これらの実施形態は、非限定的な例示的実施形態であり、図面のいくつかの図を通して同様の参照番号は同様の構造を表す。
【0016】
【
図1】細胞療法製造中にバリアントを作製するための1つの可能性の概要を示す。
【0017】
【
図2】バリアント予測、検出及び除去プロセスの一実施形態を示す。
【0018】
【
図3】開示されたプロセスにおいて使用され得るSequence Diverger行列の一例を示す。
【0019】
【
図4】開示されたプロセスにおいて使用され得るRepeat Removerツールの例示的なプロセスを示す。
【0020】
【
図5】開示されたプロセスにおいて使用され得るバリアントレポートテンプレートを示すスクリーンショットの一例を示す。
【0021】
【
図6】同一配列を特定するRepeat Finder及びVisualizerツールからの出力を示すスクリーンショットの一例を示す。
【0022】
【
図7A】本開示の一実施形態による、遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る配列を検出及び置換するための例示的なプロセスを示すフロー図である。
【0023】
【
図7B】本開示の一実施形態による、細胞療法で使用される遺伝子治療製品を作製するための例示的なプロセスを示すフロー図である。
【0024】
【
図8A】開示される方法を実施するために使用され得る例示的なコード部分を示す。
【
図8B-1】開示される方法を実施するために使用され得る例示的なコード部分を示す。
【
図8B-2】開示される方法を実施するために使用され得る例示的なコード部分を示す。
【
図8C】開示される方法を実施するために使用され得る例示的なコード部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示は、遺伝子構築物中のバリアントを特定し、次いで細胞療法において使用するための遺伝子構築物を選択するための改善されたシステム及び方法の必要性に対処する。以下の開示は、細胞療法用途において使用される遺伝子産物におけるバリアント及び潜在的なバリアント原因配列の検出及び特定のための体系的方法を記載する。バリアントが特定される場合、バリアントの特徴付け及び/又は検出されたバリアントを除去するためのDNA配列改変などのリスク除去戦略を反復プロセスにおいて用いることができる。
【0026】
本明細書における説明は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される技術を限定するものではないことが理解されよう。本出願において、単数形の使用は、特に明記しない限り、複数形を含む。
【0027】
特許、特許出願、記事、書籍、及び論文を含むがこれらに限定されない、本出願において引用される全ての文書又は文書の一部は、任意の目的のためにその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。本開示に従って使用される場合、以下の略語は、特に指示がない限り、以下の意味を有すると理解されるべきである。
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、特に明記されるか、又は文脈から明らかでない限り、「又は」という用語は包括的であると理解され、「又は」及び「及び」の両方を包含する。
【0030】
本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、他のものの有無にかかわらず、2つの指定された特徴又は構成要素の各々の具体的な開示として解釈されるべきである。したがって、本明細書で、「A及び/又はB」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、A及びB、A又はB;A(単独);並びにB(単独)を含むことを意図している。同様に、「A、B、及び/又はC」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、次の態様、A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)の各々を包含することを意図している。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「例えば」及び「すなわち」は、単に一例として使用され、限定を意図するものではなく、本明細書で明示的に列挙される項目のみを指すと解釈されるべきではない。
【0032】
「以上」、「少なくとも」、「超」などの用語、例えば、「少なくとも1つ」は、限定されるものではないが、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19 20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、若しくは150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、又は記載される値を超える値を包含するものと理解される。その間の任意のより大きい数又は分数も含まれる。
【0033】
逆に、「以下」という用語は、記載された値よりも小さい各値を含む。例えば、「100個以下のヌクレオチド」には、100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、79、78、77、76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、及び0個のヌクレオチドが含まれる。その間の任意のより少ない数又は分数も含まれる。
【0034】
「複数」、「少なくとも2つ」、「2つ以上」、「少なくとも第2」などの用語は、限定するものではないが、少なくとも、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19 20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、若しくは、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、又はそれ以上を含むものと理解される。その間の任意のより大きい数又は分数も含まれる。
【0035】
本明細書で使用する場合、特に明記されるか、又は文脈から明らかでない限り、用語「約」は、当業者によって決定される特定の値又は組成の許容可能な誤差範囲内にある値又は組成を指し、これは、当該値又は組成がどのように測定又は決定されるか、すなわち、測定システムの限界にある程度依存する。例えば、「約」又は「およそ」は、当技術分野における慣習に従って1標準偏差又は2標準偏差以上の範囲内であることを意味し得る。「約」又は「およそ」は、最大10%(すなわち、±10%)の範囲を意味し得る。したがって、「約」は、明示される値よりも10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、又は0.001%大きいか、又は小さいと理解され得る。例えば、約5mgは、4.5mg~5.5mgの任意の量を包含し得る。更に、特に生物学的系又はプロセスに関して、この用語は、1桁違いの値まで又は値の5倍までを意味し得る。本開示において特定の値又は組成が提示される場合、特に明記しない限り、「約」又は「およそ」の意味は、その特定の値又は組成物の許容可能な誤差の範囲内であると想定されるべきである。
【0036】
本明細書に記載されるように、任意の濃度範囲、パーセンテージ(百分率)範囲、比の範囲、又は整数の範囲は、特に明記しない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、及び適宜その分数(整数の10分の1及び100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0037】
本明細書で使用される単位、接頭辞及び記号は、Systeme International de Unites(SI)で受け入れられている形式を使用して提示される。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。
【0038】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Juo,「The Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology」,2nd ed.,(2001),CRC Press;「The Dictionary of Cell & Molecular Biology」,5th ed.,(2013),Academic Press;及び「The Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology」,Cammack et al.eds.,2nd ed,(2006),Oxford University Pressが、本開示において使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供している。
【0039】
「投与する」は、当業者に公知の種々の方法及び送達系のいずれかを使用した、対象への薬剤の物理的導入を指す。本明細書中に開示される製剤のための例示的な投与経路としては、例えば、注射又は注入による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄又は他の非経口投与経路が挙げられる。本明細書に開示される組成物の例示的な投与経路としては、例えば、注射又は注入による、静脈内投与経路、筋肉内投与経路、皮下投与経路、腹腔内投与経路、脊髄投与経路、又は他の非経口投与経路が挙げられる。本明細書で使用する場合、語句「非経口投与」は、通常、注射による、経腸投与及び局所投与以外の投与様式を意味し、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、クモ膜下腔内、リンパ腺内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内注射及び注入、並びにインビボエレクトロポレーションが挙げられる。いくつかの実施形態では、製剤は、非経静脈経路により、例えば、経口的に投与される。他の非経口でない経路としては、局所、表皮又は粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、膣内、直腸、舌下、又は局所が挙げられる。また投与は、例えば、1回、複数回、及び/又は1つ以上の長期間にわたり実行されてもよい。一実施形態では、CAR T細胞治療は、CAR T細胞を含む「注入製品」により投与される。
【0040】
「抗体」(antibody、Ab)という用語は、抗原に特異的に結合する糖タンパク質免疫グロブリンを含むが、これに限定されない。一般に、抗体は、ジスルフィド結合により相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖、又はその抗原結合分子を含み得る。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つの定常ドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメインCLを含む。VH領域及びVL領域は、「相補性決定領域」(CDR)と称される超可変領域に更に細分され得、「フレームワーク領域」(FR)と称されるより保存的な領域が間に置かれている。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4の順序で配置される3つのCDR及び4つのFRを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。Abの定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)が含まれる、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0041】
抗体として、例えば、モノクローナル抗体、組換えにより生成された抗体、単一特異性抗体、多特異性抗体(二重特異性抗体が含まれる)、ヒト抗体、改変抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、免疫グロブリン、合成抗体、2本の重鎖及び2本の軽鎖分子を含む四量体抗体、抗体軽鎖単量体、抗体重鎖単量体、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖-抗体重鎖対、細胞内抗体、抗体融合物(場合により、本明細書において「抗体コンジュゲート」と称される)、ヘテロコンジュゲート抗体、単一ドメイン抗体、一価抗体、一本鎖抗体又は単鎖Fv(single-chain Fv、scFv)、ラクダ化抗体、アフィボディ、Fab断片、F(ab’)2断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、抗-抗Id抗体が含まれる)、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(場合により、本明細書において「抗体ミメティック」と称される)、及び上記のいずれかの抗原結合断片が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ポリクローナル抗体集団を指す。
【0042】
「抗原結合分子」、「抗原結合部分」、又は「抗体断片」は、当該分子が由来する抗体の抗原結合部分(例えば、CDR)を含む任意の分子を指す。抗原結合分子は、抗原相補性決定領域(CDR)を含み得る。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvフラグメント、dAb、線状抗体、scFv抗体、及び抗原結合分子から形成された多重特異的抗体が挙げられるが、これらに限定されない。ペプチボディ(すなわち、ペプチド結合ドメインを含むFc融合分子)は、好適な抗原結合分子の別の例である。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、腫瘍細胞上の抗原に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、過剰増殖性疾患に関与する細胞上の抗原又はウイルス抗原若しくは細菌抗原に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、CD19に結合する。更なる実施形態では、抗原結合分子は、抗原に特異的に結合する抗体断片であり、その相補性決定領域(CDR)のうちの1つ以上を含む。更なる実施形態では、抗原結合分子は、一本鎖可変フラグメント(single chain variable fragment、scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、アビマーを含むか、又はアビマーからなる。
【0043】
「抗原」は、免疫応答を誘発するか、又は抗体若しくは抗原結合分子により結合されることができる任意の分子を指す。免疫応答は、抗体産生若しくは特定の免疫担当細胞の活性化のいずれか、又はその両方を伴い得る。当業者は、実質的に全てのタンパク質又はペプチドが含まれる、任意の高分子が抗原として機能し得ることを容易に理解するであろう。抗原は、内因的に、すなわちゲノムDNAにより発現され得るか、又は組換えにより発現され得る。抗原は、がん細胞などのある特定の組織に特異的であり得るか、又は広く発現され得る。更に、より大きな分子の断片が抗原として作用し得る。いくつかの実施形態では、抗原は、腫瘍抗原である。
【0044】
「中和する」という用語は、リガンドに結合し、そのリガンドの生物学的作用を防止又は低減する抗原結合分子、scFv、抗体、又はそのフラグメントを指す。いくつかの実施形態では、抗原結合分子、scFv、抗体、又はそれらの断片は、リガンド上の結合部位を直接遮断するか、又はそうでなければ間接的手段(リガンド内の構造変化又はエネルギー変化など)によりリガンドの結合する能力を変化させる。いくつかの実施形態では、抗原結合分子、scFv、抗体、又はそのフラグメントは、それが結合しているタンパク質が生物学的機能を果たすのを妨げる。
【0045】
「自己」という用語は、後に再導入される同じ個体に由来する任意の材料を指す。例えば、本明細書に記載される遺伝子操作自家細胞療法(eACT(商標))の方法は、患者からのリンパ球の採取を含み、次いで、このリンパ球は、例えば、CAR構築物を発現するように操作され、次いで、同じ患者に投与される。
【0046】
用語「同種異系」は、1つの個体に由来し、次いで、同じ種の別の個体に導入される任意の材料、例えば、同種異系T細胞移植を指す。
【0047】
用語「形質導入」及び「形質導入された」は、外来DNAがウイルスベクターにより細胞に導入されるプロセスを指す(Jones et al.,「Genetics:principles and analysis,」Boston:Jones & Bartlett Publ.(1998)を参照のこと)。いくつかの実施形態では、ベクターは、レトロウイルスベクター、DNAベクター、RNAベクター、アデノウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタインバーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルス関連ベクター、レンチウイルスベクター、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0048】
「がん」は、体内の異常細胞のコントロール不能な増殖を特徴とする様々な疾患の広範な群を指す。制御されない細胞分裂及び増殖は、隣接組織に侵入し、リンパ系又は血流を介して身体の遠位部分に転移する可能性もある悪性腫瘍の形成をもたらす。「がん」又は「がん組織」は、腫瘍を包含し得る。本出願において、がんという用語は、悪性腫瘍と同義である。本明細書において開示される方法により治療され得るがんの例としては、限定されるものではないが、リンパ腫、白血病、骨髄腫、及び他の白血球悪性腫瘍が含まれる免疫系のがんが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法は、例えば、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部又は頚部のがん、皮膚又は眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がん、[他の固形腫瘍を追加する]多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、縦隔原発大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、慢性又は急性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞性ALLを含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小児期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱のがん、腎臓又は尿管のがん、腎盂がん、中枢神経系(CNS)腫瘍、中枢神経系(CNS)原発リンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹部神経膠腫、下垂体腺腫、カポシ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、アスベストにより誘発されるものが含まれる環境誘発性のがん、他のB細胞悪性腫瘍、及び上記がんの組み合わせに由来する腫瘍の腫瘍サイズを低減するために使用され得る。いくつかの実施形態では、がんは、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、がんは、NHLである。特定のがんは化学療法若しくは放射線療法に応答性であり得るか、又は特定のがんは治療抵抗性であり得る。治療抵抗性のがんは、外科的介入に適していないがんを指し、当該がんが最初から化学療法若しくは放射線療法に非応答性であるか、又は当該がんが時間の経過と共に非応答性になるかのいずれかである。
【0049】
本明細書で使用する場合、「抗腫瘍効果」は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、転移の数の減少、全生存期間又は無増悪生存期間の増加、平均余命の延長、又は腫瘍に関連する様々な生理学的症状の改善として表れ得る生物学的効果を指す。抗腫瘍効果はまた、腫瘍の発生の予防、例えば、ワクチンを指し得る。
【0050】
本明細書で使用する場合、「サイトカイン」は、特定の抗原との接触に応答してある細胞により放出される非抗体タンパク質を指し、ここで、当該サイトカインは、別の細胞と相互作用して当該別の細胞における応答を媒介する。本明細書で使用する場合、「サイトカイン」は、ある細胞集団により放出される、細胞間メディエーターとして別の細胞に作用するタンパク質を指すことを意図する。サイトカインは、細胞により内因的に発現され得、又は対象に投与され得る。サイトカインは、免疫応答を伝播するために、マクロファージ、B細胞、T細胞、及び肥満細胞などの免疫細胞によって放出され得る。サイトカインは、レシピエント細胞における様々な応答を誘発し得る。サイトカインとしては、恒常性サイトカイン、ケモカイン、炎症誘発性サイトカイン、エフェクター、及び急性期タンパク質が挙げられ得る。例えば、インターロイキン(IL)7及びIL-15が含まれる、恒常性サイトカインは、免疫細胞の生存及び増殖を促進し、炎症誘発性サイトカインは、炎症応答を促進し得る。恒常性サイトカインの例としては、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-12p70、IL-15、及びインターフェロン(IFN)ガンマが挙げられるが、これらに限定されない。炎症誘発性サイトカインの例としては、IL-1a、IL-1b、IL-6、IL-13、IL-17a、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor、TNF)-アルファ、TNF-ベータ、線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor、FGF)2、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte macrophage colony-stimulating factor、GM-CSF)、可溶性細胞間接着分子1(soluble intercellular adhesion molecule 1、sICAM-1)、可溶性血管接着分子1(soluble vascular adhesion molecule 1、sVCAM-1)、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)、VEGF-C、VEGF-D、及び胎盤増殖因子(placental growth factor、PLGF)が挙げられるが、これらに限定されない。エフェクターの例としては、グランザイムA、グランザイムB、可溶性Fasリガンド(soluble Fas ligand、sFasL)、及びパーフォリンが挙げられるが、これらに限定されない。急性期タンパク質の例としては、C反応性タンパク質(C-reactive protein、CRP)及び血清アミロイドA(serum amyloid A、SAA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
「ケモカイン」は、細胞の走化性又は方向性運動を媒介するサイトカインの一種である。ケモカインの例としては、IL-8、IL-16、エオタキシン、エオタキシン-3、マクロファージ由来ケモカイン(MDC又はCCL22)、単球走化性タンパク質1(MCP-1又はCCL2)、MCP-4、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α、MIP-1a)、MIP-1β(MIP-1b)、ガンマ誘導性タンパク質10(IP-10)、並びに胸腺及び活性化制御ケモカイン(TARC又はCCL17)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用する場合、「キメラ受容体」は、特定の分子を認識することができる、表面に発現される遺伝子操作された分子を指す。特定の腫瘍抗原と相互作用することができる結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)及び遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)は、T細胞が特定の腫瘍抗原を発現するがん細胞を標的とし、これを死滅させることを可能にする。一実施形態では、T細胞治療は、(i)抗原結合分子、(ii)共刺激ドメイン、及び(iii)活性化ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)を発現するように操作されたT細胞に基づく。共刺激ドメインは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含み得、ここで、当該細胞外ドメインは、短縮され得るヒンジドメインを含む。
【0053】
治療剤、例えば、操作されたCAR T細胞の「治療有効量」、「有効用量」、「有効量」又は「治療有効用量」は、単独で又は別の治療剤と組み合わせて使用されたときに、対象を疾患の発症から保護するか、あるいは、疾患症状の重症度の低下、疾患症状のない期間の頻度及び期間の増加、又は疾患の罹患に起因する障害若しくは能力障害の予防によって証明される疾患の退縮を促進する任意の量である。そのような用語は、互換的に使用することができる。疾患の退縮を促進する治療薬の能力は、当業者に公知の種々の方法を使用して、例えば、臨床試験中のヒト対象において、ヒトにおける有効性を予測する動物モデル系において、又はインビトロアッセイで薬剤の活性を分析することにより評価され得る。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「リンパ球」は、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、又はB細胞を包含する。NK細胞は、先天的免疫系の主要構成要素である細胞傷害性(細胞毒性)リンパ球の一種である。NK細胞は、腫瘍及びウイルスに感染した細胞を拒絶する。それは、アポトーシス又はプログラム細胞死の過程を通して作用する。それらは、細胞を死滅させるために活性化を必要としないので、「ナチュラルキラー」と呼ばれた。T細胞は、細胞媒介性免疫(抗体が関与しない)において主な役割を果たす。そのT細胞受容体(TCR)は、他のリンパ球型から分化する。免疫系の分化した器官である胸腺は、主にT細胞の成熟化を担う。6種類のT細胞、すなわち、ヘルパーT細胞(例えば、CD4+細胞)、細胞傷害性T細胞(TC、細胞傷害性Tリンパ球、CTL、Tキラー細胞、細胞溶解性T細胞、CD8+T細胞、又はキラーT細胞としても公知)、メモリーT細胞((i)ステムメモリーTSCM細胞は、ナイーブ細胞と同様に、CD45RO-、CCR7+、CD45RA+、CD62L+(L-セレクチン)、CD27+、CD28+、及びIL-7Rα+であるが、大量のCD95、IL-2Rβ、CXCR3、及びLFA-1も発現し、メモリー細胞に特有の多数の機能的特性を示す;(ii)セントラルメモリーTCM細胞は、L-セレクチン及びCCR7を発現し、IL-2を分泌するが、IFNγ又はIL-4を分泌せず、しかしながら、(iii)エフェクターメモリーTEM細胞は、L-セレクチン又はCCR7を発現しないが、IFNγ及びIL-4のようなエフェクターサイトカインを産生する)、制御性T細胞(Treg、サプレッサーT細胞、又はCD4+CD25+制御性T細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)、及びガンマデルタT細胞が存在する。一方、B細胞は、体液性免疫(抗体の関与を伴う)において主要な役割を果たす。B細胞は、抗体及び抗原を産生し、抗原提示細胞(APC)の役割を果たし、抗原相互作用による活性化後にメモリーB細胞に変わる。哺乳動物では、未成熟B細胞は骨髄で形成され、その名称はここに由来する。
【0055】
「遺伝子操作された」又は「操作された」という用語は、限定するものではないが、コード領域若しくは非コード領域又はその一部を削除すること、又はコード領域若しくはその一部を挿入することなど、細胞のゲノムを改変する方法を指す。いくつかの実施形態では、改変されている細胞は、患者又はドナーのいずれかから取得され得るリンパ球、例えば、T細胞である。細胞は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)などの外来性構築物を発現するように改変され得、外来性構築物は細胞のゲノムに組み込まれる。
【0056】
「免疫応答」は、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞及び好中球)及びこれらの細胞又は肝臓のいずれかによって産生される可溶性巨大分子(Ab、サイトカイン及び補体を含む)の作用であって、侵入している病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、がん性若しくは他の異常な細胞、又は自己免疫若しくは病理学的炎症の場合には正常なヒト細胞若しくは組織の、選択的標的化、結合、損傷、破壊、及び/又は脊椎動物の体からの排除をもたらす作用を指す。
【0057】
「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘導する、増強する、抑制する又は他の様態で改変すること、を含む、方法による、疾患に罹患しているか、又は疾患に罹患するか若しくは再発するリスクがある対象の治療を指す。免疫療法の例としては、限定されるものではないが、T細胞療法が挙げられる。T細胞療法としては、養子T細胞療法、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)免疫療法、自家細胞療法、遺伝子操作自家細胞療法(eACT(商標))、及び同種異系T細胞移植が挙げられ得る。しかしながら、当業者は、本明細書に開示される前処置方法が任意の移植T細胞療法の有効性を高めることを理解するであろう。T細胞療法の例は、米国特許出願公開第2014/0154228号及び同第2002/0006409号、米国特許第7,741,465号、米国特許第6,319,494号、米国特許第5,728,388号、並びに国際公開第2008/081035号に記載されている。いくつかの実施形態では、免疫療法は、CAR T細胞治療を含む。いくつかの実施形態では、CAR T細胞治療製品は、注入により投与される。
【0058】
免疫療法のT細胞は、当該技術分野において公知の任意の供給源に由来し得る。例えば、造血幹細胞集団からインビトロでT細胞を分化させることができ、又は対象からT細胞を得ることができる。T細胞は、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍から得ることができる。更に、T細胞は、当技術分野で利用可能な1つ以上のT細胞株に由来し得る。T細胞はまた、FICOLL(商標)分離及び/又はアフェレーシスなどの当業者に公知の様々な技術を使用して、対象から採取された血液単位から得ることができる。T細胞療法のためのT細胞を単離する更なる方法は、米国特許出願公開第2013/0287748号に開示されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0059】
養子細胞移入としても公知の用語「遺伝子操作自家細胞療法」又は「eACT(商標)」は、患者自身のT細胞が採取され、その後に、1種以上の特定の腫瘍細胞又は悪性腫瘍の細胞表面上に発現される1種以上の抗原を認識し、これを標的とするように遺伝子改変されるプロセスである。T細胞は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作され得る。CAR陽性(+)T細胞は、少なくとも1つの共刺激ドメイン及び少なくとも1つの活性化ドメインを含む細胞内シグナル伝達部分に連結された特定の腫瘍抗原に特異的な細胞外一本鎖可変フラグメント(scFv)を発現するように操作される。CAR scFvは、例えば、全ての正常B細胞が含まれるB細胞系列の細胞、並びに限定されるものではないが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)・非特異型、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、並びに濾胞性リンパ腫、NHL、CLL、及び非T細胞ALLから発生したDLBCLが含まれるB細胞悪性腫瘍により発現される膜貫通タンパク質であるCD19を標的化するように設計され得る。例示的なCAR T細胞療法及び構築物は、米国特許出願公開第2013/0287748号、同第2014/0227237号、同第2014/0099309号、及び同第2014/0050708号に記載されており、これらの参考文献は参照によりその全体が組み込まれる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「患者」は、がん(例えば、リンパ腫又は白血病)に罹患している任意のヒトを含む。「対象」及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「インビトロ細胞」は、エクスビボで培養される任意の細胞を指す。特に、インビトロ細胞は、T細胞を含み得る。用語「インビボ」は、患者内を意味する。
【0062】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有し、タンパク質又はペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数に制限は設けられていない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いに結合した2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書で使用される場合、この用語は、例えば、当該技術分野で一般にペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとも称される短鎖と、当該技術分野で概してタンパク質と称される長鎖の両方を指し、そのうち多くの種類がある。「ポリペプチド」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、改変ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「刺激」は、刺激分子とその同族リガンドとの結合により誘発される一次応答を指し、ここで、当該結合はシグナル伝達事象を媒介する。「刺激分子」は、T細胞上の分子、例えば、抗原提示細胞上に存在する同族刺激リガンドと特異的に結合するT細胞受容体(TCR)/CD3複合体である。「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、APC、樹状細胞、B細胞など)上に存在する場合、T細胞上の刺激分子と特異的に結合し、これにより、限定されるものではないが、活性化、免疫応答の開始、増殖などが含まれる、T細胞による一次応答を媒介し得るリガンドである。刺激リガンドとしては、限定されるものではないが、抗CD3抗体、ペプチドが負荷されたMHCクラスI分子、スーパーアゴニスト抗CD2抗体、及びスーパーアゴニスト抗CD28抗体が挙げられる。
【0064】
本明細書で使用する場合、「共刺激シグナル」は、TCR/CD3ライゲーションなどの一次シグナルと組み合わせて、T細胞応答、例えば、限定されるものではないが、増殖及び/又は主要な分子の上方調節若しくは下方調節を引き起こすシグナルを指す。
【0065】
本明細書で使用する場合、「共刺激リガンド」は、T細胞上の同族共刺激分子に特異的に結合する抗原提示細胞上の分子を包含する。共刺激リガンドの結合は、限定するものではないが、増殖、活性化、分化などのT細胞応答を媒介するシグナルを提供する。共刺激リガンドは、刺激分子によって提供される一次シグナルに加えて、例えば、T細胞受容体(TCR)/CD3複合体と、ペプチドを負荷した主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex、MHC)分子との結合によって、シグナルを誘導する。共刺激リガンドとしては、限定されるものではないが、3/TR6、4-1BBリガンド、Tollリガンド受容体に結合するアゴニスト又は抗体、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、CD30リガンド、CD40、CD7、CD70、CD83、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、ILT4、免疫グロブリン様転写物(ILT)3、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、B7-H3と特異的に結合するリガンド、リンホトキシンβ受容体、MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)、MHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)、OX40リガンド、PD-L2、又はプログラム細胞死(PD)L1が挙げられ得る。ある特定の実施形態では、共刺激リガンドとしては、限定されるものではないが、T細胞に存在する共刺激分子、例えば、限定されるものではないが、4-1BB、B7-H3、CD2、CD27、CD28、CD30、CD40、CD7、ICOS、CD83に特異的に結合するリガンド、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、ナチュラルキラー細胞受容体C(NKG2C)、OX40、PD-1、又は腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14又はLIGHT)と特異的に結合する抗体が挙げられる。
【0066】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それによってT細胞による共刺激応答、例えば、限定するものではないが、増殖を媒介するT細胞上の同族結合パートナーである。共刺激分子としては、限定されるものではないが、4-1BB/CD137、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD33、CD45、CD100(SEMA4D)、CD103、CD134、CD137、CD154、CD16、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD22、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3(アルファ;ベータ、デルタ、イプシロン、ガンマ、ゼータ)、CD30、CD37、CD4、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD5、CD64、CD69、CD7、CD80、CD83リガンド、CD84、CD86、CD8α、CD8β、CD9、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcγ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICOS、Igα(CD79a)、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、インテグリン、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGBl、KIRDS2、LAT、LFA-1、LIGHT(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14;TNFSF14)、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1(CD11a/CD18)、MHCクラスI分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX40、PAG/Cbp、PD-1、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子、SLAM(SLAMF1;CD150;IPO-3)、SLAMF4(CD244;2B4)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNF、TNFr、TNFR2、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、若しくはVLA-6、又はそれらの断片、切断型、若しくは組み合わせが挙げられる。
【0067】
用語「低減する」及び「減少させる」は、本明細書において互換的に使用され、元のもの未満になる任意の変化を意味する。「低減する」及び「減少させる」は相対的な語句であり、前後の測定値間の比較を必要とする。「低減する」及び「減少させる」は、完全な枯渇を包含する。同様に、用語「増加させる」は、元の値より高くなる任意の変化を意味する。「増加させる」、「より高い」、「より低い」は相対的な語句であり、前後の測定値間の比較及び/又は参照標準間の比較を必要とする。いくつかの実施形態では、基準値は、患者の一般集団であり得る一般集団から取得される。いくつかの実施形態では、基準値は、一般患者集団の四分位分析から出される。
【0068】
対象の「治療」又は「治療する」は、症状、合併症、若しくは状態、又は疾患に関連する生化学的兆候の発症、進行、進展、重症度、又は再発を後退させるか、軽減するか、改善するか、阻害するか、遅延するか、又は予防することを目的として、対象に対して実行される任意の種類の介入若しくはプロセス、又は対象への活性薬剤の投与を指す。いくつかの実施形態では、「治療」又は「治療する」は、部分寛解を包含する。別の実施形態では、「治療」又は「治療すること」は、完全寛解を含む。
【0069】
本明細書で使用される場合、「多機能性T細胞」という用語は、産生される各タンパク質の量(すなわち、分泌されたタンパク質の数とその強度の組み合わせ)と組み合わせて、細胞ごとに予め指定されたパネルから少なくとも2つのタンパク質を共分泌する細胞を指す。いくつかの実施形態では、単一細胞機能プロファイルは、操作されたT細胞の評価可能な各集団について決定される。プロファイルは、エフェクター(グランザイムB、IFN-γ、MIP-1α、パーフォリン、TNF-α、TNF-β)、刺激性(GM-CSF、IL-2、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12、IL-15、IL-21)、調節性(IL-4、IL-10、IL-13、IL-22、TGF-ベータ1、sCD137、sCD40L)、化学誘引性(CCL-11、IP-10、MIP-1β、RANTES)、及び炎症性(IL-1b、IL-6、IL-17 A、IL-17 F、MCP-1、MCP-4)群に分類することができる。いくつかの実施形態では、各細胞の機能プロファイルは、細胞多官能性(すなわち、非分泌細胞又は単官能性細胞と比較して、どのパーセンテージの細胞が複数のサイトカインを分泌しているか)による各サンプルの分解、及び官能基(すなわち、どの単官能基及び多官能基が試料中の細胞によって分泌されているか、及びそれらの頻度)によるサンプルの分解を含む他のメトリックの計算を可能にする。
【0070】
本明細書で使用される場合、「四分位」又は「象限」という用語は、データの値及びそれらが観測のセット全体とどのように比較するかに基づいて、4つの定義された間隔への観測の分割を説明する統計的用語である。
【0071】
本明細書で使用する場合、用語「試験0日目」は、対象が最初にCAR T細胞注入を受けた日と定義される。試験0日目の前日は、試験-1日目となる。登録後かつ試験-1日目より前のいずれの日も連続的であり、負整数値である。
【0072】
本明細書で使用する場合、用語「客観的奏効」は、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、又は無効を指す。基準は、悪性リンパ腫のための改訂されたIWG応答基準に基づく。
【0073】
本明細書で使用する場合、用語「完全奏効」は、放射性イメージング及び臨床検査値評価により検出不可能になる疾患の完全な回復を指す。所与の時点でがんの兆候がない。
【0074】
本明細書で使用する場合、用語「部分奏効」は、完全な回復を伴わない腫瘍の30%超の減少を指す。基準は、悪性リンパ腫のための改訂されたIWG応答基準に基づいており、PRは、「最大で6つの主節又は結節性腫瘤の直径の積(SPD)の和の少なくとも50%の減少」として定義される。これらのノード又は質量は、以下の全てに従って選択されるべきであり、それらは、少なくとも2つの垂直寸法で明確に測定可能であるべきである。可能であれば、それらは身体の異なる領域からのものであるべきである;これらの部位が関与するときはいつでも、縦隔及び後腹膜の疾患領域を含むべきである。
【0075】
本明細書で使用される場合、「非奏効」という用語は、CAR T細胞注入後にCR又はPRを経験したことがない対象を指す。
【0076】
本明細書で使用される場合、「持続的奏効」という用語は、CAR T細胞注入後少なくとも1年間の追跡調査までに継続奏効にあった対象を指し、このコホートにはもはやf/uが利用できないため、6ヶ月f/uはZ1、C3にのみ利用される。それにもかかわらず、結論は同じままである。
【0077】
本明細書で使用する場合、用語「再発」は、完全奏効(CR)又は部分奏効(PR)を達成し、その後に疾患の進行を経験した対象を指す。
【0078】
本明細書で使用する場合、末梢血中CAR T細胞の増殖及び持続性は、CARのscFv部分(例えば、CD19結合ドメインの重鎖)及びそのヒンジ/CD28膜貫通ドメインに対するCAR特異的プライマーを使用してqPCR分析によりモニタリングされ得る。あるいは、これは、CAR細胞/血液単位容量を計数することにより測定され得る。
【0079】
本明細書で使用する場合、CAR T細胞のための採血のスケジュールは、CAR T細胞注入前、7日目、2週目(14日目)、4週目(28日目)、3ヶ月目(90日目)、6ヶ月目(180日目)、12ヶ月目(360日目)、及び24ヶ月目(720日目)であり得る。
【0080】
本明細書で使用する場合、「CAR T細胞のピーク」は、0日目後に達成された血清中のCAR+PBMC/μLの最大絶対数と定義される。
【0081】
本明細書で使用する場合、「CAR T細胞のピーク到達時間」は、0日目からCAR T細胞のピークが達成される日までの日数と定義される。
【0082】
本明細書で使用する場合、「0日目から28日目までのCAR T細胞のレベルの曲線下面積(Area Under Curve、AUC)」は、0日目から28日目までの予定来院に対するCAR T細胞のレベルのプロットにおける曲線下面積と定義される。このAUCは、長期間の間のCAR T細胞の総レベルである。
【0083】
本明細書で使用する場合、サイトカインのための採血のスケジュールは、コンディショニング化学療法(-5日目)の前日又はその日、0日目、1日目、3日目、5日目、7日目、入院するのであれば入院中の1日おき、2週目(14日目)、及び4週目(28日目)である。
【0084】
本明細書で使用する場合、サイトカインの「ベースライン」は、コンディショニング化学療法前に測定される最後の値と定義される。
【0085】
本明細書で使用する場合、X日目でのベースラインからの倍率変化は、
【数1】
として定義される。
【0086】
本明細書で使用する場合、「ベースライン後のサイトカインのピーク」は、ベースライン(-5日目)後から28日目までに達成される血清中サイトカインの最大レベルと定義される。
【0087】
本明細書で使用する場合、CAR T細胞注入後の「サイトカインのピーク到達時間」は、0日目からサイトカインのピークが達成される日までの日数と定義される。
【0088】
本明細書で使用する場合、-5日目から28日目までの「サイトカインレベルの曲線下面積(AUC)」は、-5日目から28日目までの予定来院に対するサイトカインレベルのプロットにおける曲線下面積として定義される。このAUCは、長期間の間のサイトカインの総レベルである。サイトカイン及びCAR+T細胞がある特定の別個の時点で測定されると仮定して、台形公式がAUCを推定するために使用され得る。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「無視できるほどの影響」並びにその境界及び限界は、当業者によって容易に理解されるであろう。非限定的な例として、当業者は、無視できるほどの影響が、キメラ抗原受容体の発現に対する統計的に有意でない影響、キメラ抗原受容体の治療有効性に対する統計的に有意でない影響、患者に対するキメラ抗原受容体の毒性に対する統計的に有意でない影響、キメラ抗原受容体に対する発現及び/又は有効性及び/又は毒性の所定の閾値を超えないキメラ抗原受容体の発現及び/又は有効性及び/又は毒性に対する影響のうちの1つ以上を意味し得ることを理解するであろう。
【0090】
キメラ抗原受容体(CAR又はCAR-T)は遺伝子操作された受容体であり、T細胞受容体(TCR)は遺伝子操作された受容体であってもよいことが理解されるであろう。これらの操作された受容体は、当技術分野で公知の技術に従って、T細胞などの免疫細胞に容易に挿入され、免疫細胞によって発現され得る。CARにより、単一の受容体は、特異的抗原を認識すること、及びその抗原に結合した場合に、その抗原を有する細胞を攻撃し、破壊するように免疫細胞を活性化することの両方を行うようにプログラム化され得る。これらの抗原が腫瘍細胞上に存在する場合、CARを発現する免疫細胞は、腫瘍細胞を標的化して死滅させ得る。
【0091】
CARは、その標的化抗原と相互作用する抗原結合分子を組み込むことにより(細胞表面抗原などの)抗原に結合し得る。本明細書で使用される「抗原結合分子」は、特定の標的分子に結合する任意のタンパク質を意味する。抗原結合分子には、抗体及び免疫学的に機能的な断片などのその結合部分が含まれるが、これらに限定されない。ペプチボディ(すなわち、ペプチド結合ドメインを含むFc融合分子)は、好適な抗原結合分子の別の例である。
【0092】
好ましくは、標的分子は、血液由来がん関連抗原を含み得るが、これに限定されない。血液由来がん関連抗原の非限定的な例としては、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、若年性骨髄単球性白血病、非定型慢性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病(APL)、急性単芽球性白血病、急性赤血球性白血病、急性巨核芽球性白血病、リンパ芽球性白血病、B系列急性リンパ芽球性白血病、B細胞慢性リンパ球性白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性障害、骨髄性腫瘍、顆粒球肉腫、及び芽細胞性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)からなる群から選択される1つ以上のがんに関連する抗原が挙げられる。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗原は、腫瘍関連表面抗原、例えば、5T4、アルファフェトプロテイン(AFP)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、BCMA、B-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、CA-125、がん胎児性抗原(CEA)、がん胎児性抗原(CEA)、CD123、CD133、CD138、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD25、CD30、CD33、CD34、CD4、CD40、CD44、CD56、CD8、CLL-1、c-Met、CMV特異的抗原、CSPG4、CTLA-4、ジシアロガングリオシドGD2、管上皮ムチン、EBV特異的抗原、EGFRバリアントIII(EGFRvIII)、ELF2M、エンドグリン、エフリンB2、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮腫瘍抗原、ErbB2(HER2/neu)、線維芽細胞関連タンパク質(fap)、FLT3、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、神経膠腫関連抗原、スフィンゴ糖脂質、gp36、HBV特異的抗原、HCV特異的抗原、HER1-HER2、HER2-HER3の組み合わせ、HERV-K、高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、HPV特異的抗原、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、IGFI受容体、IGF-II、IL-11Rα、IL-13R-a2、インフルエンザウイルス特異的抗原;CD38、インスリン増殖因子-1(IGF1)、腸管カルボキシルエステラーゼ、κ鎖、LAGA-1a、λ鎖、ラッサウイルス特異的抗原、レクチン反応性AFP、系列特異的抗原又は組織特異抗原、例えば、CD3、MAGE、MAGE-A1、主要組織適合複合体(MHC)分子、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示する主要組織適合複合体(MHC)分子、M-CSF、黒色腫関連抗原、メソテリン、MN-CA IX、MUC-1、変異型hsp72、変異型p53、変異型p53、変異型ras、好中球エラスターゼ、NKG2D、Nkp30、NY-ESO-1、p53、PAP、プロスターゼ(prostase)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺がん腫瘍抗原-1(PCTA-1)、前立腺特異抗原タンパク質、PSMA、RAGE-1、ROR1、RU1、RU2(AS)、表面接着分子、サバイビン及びテロメラーゼ、TAG-72、フィブロネクチンのエクストラドメインA(EDA)及びエクストラドメインB(EDB)並びにテネイシンCのA1ドメイン(TnC A1)、チログロブリン、腫瘍間質抗原、血管内皮増殖因子受容体-2(VEGFR2)、ウイルス特異的表面抗原、例えば、HIV特異的抗原(例えば、HIV gp120)、並びにこれらの表面抗原の任意の誘導体又はバリアントから選択される。
【0094】
いくつかの実施形態では、標的分子は、ウイルス感染関連抗原を含み得る。本開示のウイルス感染は、例えば、HIVを含む任意のウイルスによって引き起こされ得る。可能な標的分子のこのリストは、排他的であることを意図しない。
【0095】
本開示のTCRは、例えば、腫瘍関連抗原に結合し得る。本明細書中で使用される場合、「腫瘍関連抗原」とは、副腎皮質腫瘍、肛門がん、膀胱がん、骨がん、脳がん、乳がん、カルチノイドがん、がん腫、頚部がん、結腸がん、子宮内膜がん、食道がん、肝外胆管がん、頭蓋外胚細胞がん、眼がん、胆のうがん、胃がん、胚細胞性腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、頭部がん及び頚部がん、下咽頭がん、島細胞がん、腎臓がん、大腸がん、喉頭がん、白血病、唇及び口腔がん、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、悪性中皮腫、メルケル細胞がん、菌状息肉症、脊髄形成異常性症候群、脊髄増殖性障害、上咽頭がん、神経芽腫、口腔がん、中咽頭がん、骨肉種、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞がん、膵臓がん、副鼻腔及び鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、下垂体がん、形質細胞腫、前立腺がん、横紋筋肉腫、直腸がん、腎細胞がん、腎盂及び尿管の移行上皮がん、唾液腺がん、セザリー症候群、皮膚がん、小腸がん、軟部組織肉腫、胃がん、精巣がん、上皮小体がん、甲状腺がん、尿道がん、子宮がん、膣がん、外陰がん、及びウィルムス腫瘍からなる群から選択される1つ以上のがんに関連する任意の抗原を指す。
【0096】
特定の実施形態では、本開示は、血液がんに対する標的分子に適し得る。いくつかの実施形態では、がんは、白血球のがんである。他の実施形態では、がんは、形質細胞のがんである。いくつかの実施形態では、がんは、白血病、リンパ腫、又は骨髄腫である。ある特定の実施形態では、がんは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、急性リンパ性白血病(ALL)及び血球貪食性リンパ組織球症(HLH))、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、芽球形質細胞様樹状細胞新生物、バーキットリンパ腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性又は急性肉芽腫性疾患、慢性又は急性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、ヘアリー細胞白血病、血球貪食症候群(マクロファージ活性化症候群(MAS)、ホジキン病、大細胞肉芽腫、白血球接着不全、悪性リンパ増殖状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁リンパ腫、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、多発性骨髄腫、骨髄異形成及び骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病を含むがこれに限定されない骨髄性疾患(AML)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、形質細胞増殖性疾患(例えば、孤立性骨髄腫、孤立性形質細胞腫、髄外形質細胞腫、及び多発性骨髄腫)、POEMS症候群(Crow-Fukase症候群、高月病、PEP症候群)、縦隔原発大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBCL)、小細胞型若しくは大細胞型濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、T細胞性急性リンパ性白血病(TALL)、T-細胞リンパ腫、形質転換濾胞性リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、又はそれらの組み合わせである。
【0097】
本開示のTCRはまた、ウイルス感染関連抗原に結合し得る。ウイルス感染関連抗原は、例えば、HIVによって引き起こされるウイルス感染を含む、任意のウイルス感染に関連する抗原を含む。
【0098】
本出願の様々な実施形態は、以下のサブセクションで更に詳細に説明する。
バリアント作製
【0099】
自己、同種異系、ネオ抗原、及び他のタイプの産物を含む細胞療法産物は、所望の又はトランスフェクトされた遺伝子(複数可)以外のRNA及びタンパク質配列を発現する可能性を有する。これらの非標準配列(バリアントと呼ばれる)の発現は、少なくとも2つの異なる機構によって起こる可能性がある。
【0100】
第1の機構であるRNAスプライシングは、産物がRNA産物に転写され、次いでスプライシングされるため、目的の遺伝子配列でトランスフェクトされた場合であっても、バリアントを発現する産物をもたらすことができる。RNAは、DNAに逆転写される前にスプライシングされ得、次いでDNAが細胞にトランスフェクトされるため、RNAスプライシングはまた、産物製造プロセスが逆転写を含む場合、産物をバリアント配列で(DNAレベルで)トランスフェクトさせることができる。
【0101】
第2の機構である相同組換えは、逆転写が製造プロセスの一部である場合に起こる。この現象において、活発に転写する逆転写酵素は、RNAテンプレートの2つの非常に類似した(又は同一の)配列間を「ジャンプ」し、したがって、介在配列をスキップし、そして後に産物にトランスフェクトされ得る非標準DNA転写物を作製する。この機構は、鋳型中の非常に類似した配列に依存するため、2つのCARが同一であるいくつかのドメイン(例えば、共刺激ドメイン)を有し得るバイシストロン性CAR産物にとって特にリスクである。
【0102】
これらの機構の両方を考慮し、レンチウイルスベクターを使用する従来のCAR-T細胞製造手順を見ると、本発明者らは、バリアントが作製され得るいくつかの点を見出す。第1に、
図1の例に示すように、HEK293細胞に産物及びレンチウイルスをコードするプラスミドをトランスフェクトして、レンチウイルスベクターを産生し得る。HEK293細胞によって産生されたRNAは、これらのベクターへのパッケージングの前にスプライシングされ得る。第2に、レンチウイルスベクターを使用してT細胞をトランスフェクトする。これは、T細胞ゲノムへの組込みの前に、産物配列の逆転写を含み、その間に相同組換えが起こり得る。第3に、トランスフェクトされたT細胞(ここではCAR-T細胞)は、CAR(複数可)を発現し、発現されたCAR mRNAを、そのタンパク質への翻訳の前にスプライシングし得る。
【0103】
起源にかかわらず、バリアントは望ましくない。細胞療法製品中のバリアントは、ほとんど又は全く有効性を有さない場合がある。また、バリアントは、細胞療法製品に異なる抗原を認識させ、したがってオフターゲット毒性を引き起こす可能性がある。以下は、これらの結果が発生する工程を防止するためのバリアントの予測、検出、及び排除のための一般的なパイプライン又はプロセスについての異なる実施形態の説明である。
【0104】
本開示の一実施形態は、遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る配列を検出及び置換するための方法に関する。そのような方法は、望ましくないバリアントを引き起こし得る配列の存在を検出するために、遺伝子構築物のインシリコ分析を実行することと、望ましくないバリアントを引き起こし得る検出された配列を代替配列で置換することであって、代替配列は、同義コドン置換を含むように誘導される、ことと、遺伝子構築物によって発現される望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定することであって、遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を行うことを含む、遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を行うことを含み、望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、少なくとも部分的に、RNA配列決定分析からスプライス認識アライナを使用することによって判定される、ことと、インビボ分析からの遺伝子産物における望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値よりも大きい場合、インシリコ分析工程と置換工程を反復することと、を含む。
【0105】
本開示の一実施形態は、ギャップ認識アライメントが、少なくとも2つの別個のアライナを使用することを含む、上記の方法に関する。
【0106】
本開示の一実施形態は、インシリコ分析が、遺伝子構築物内の複数の相同配列及び複数の同一配列のうちの少なくとも1つを検出することであって、複数の相同配列及び複数の同一配列のうちの少なくとも1つが、遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る、ことと、同義コドン置換の工程を含む、そのような検出された複数の相同配列及び複数の同一配列を置換することとを更に含む、上記の方法のいずれかに関する。
【0107】
本開示の一実施形態は、インシリコ分析が、遺伝子構築物からサブセクション組み合わせの行列を計算することと、サブセクション組み合わせの各々についてハミング距離を取得することとを更に含む、上記の方法のいずれかに関する。
【0108】
本開示の一実施形態は、インシリコ分析が、遺伝子構築物中の複数のランダム同義コドンを複数の代替配列で置換して、複数の代替配列が行列全体の和を増加させることを更に含む、上記の方法のいずれかに関する。
【0109】
本開示の一実施形態は、遺伝子構築物がキメラ抗原受容体をコードする配列を含む、上記の方法のいずれかに関する。
【0110】
本開示の一実施形態は、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値が、望ましくないバリアントが細胞表面へのキメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼすかどうか、望ましくないバリアントがキメラ抗原受容体の結合ドメインの変化に関連するかどうか、及び望ましくないバリアントがキメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できる影響を引き起こすとして以前に特徴付けられているかどうか、のうちの少なくとも1つに望ましくないバリアントが関連するかどうかに基づいて判定される、上記の方法のいずれかに関する。
【0111】
本開示の一実施形態は、望ましくないバリアントが細胞表面へのキメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼす場合、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値が0.1%であり、望ましくないバリアントがキメラ抗原受容体の結合ドメインへの変化に関連する場合、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値が0.01%である、上記の方法のいずれかに関する。
【0112】
本開示の一実施形態は、望ましくないバリアントが、キメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できるほどの影響を引き起こすとして以前に特徴付けられている場合、インシリコ分析工程及び置換工程を反復する工程が実行されない、上記の方法のいずれかに関する。
【0113】
本開示の一実施形態は、高頻度バリアントの亜集団を特定及び除去する工程と、低頻度バリアントの亜集団を特定する工程と、を更に含み、インビボ分析が、低頻度バリアントの亜集団が置換されるべきかどうかを判定するための分析を行う工程を更に含む、上記方法のいずれかに関する。
【0114】
本開示の一実施形態は、望ましくないバリアントが検出され、上述の条件又は要件のいずれも満たさない場合、望ましくないバリアントを排除しようと試みるためにインシリコ分析工程及び配列除去工程が反復される、及び/又は望ましくないバリアントが潜在的患者に対するリスクを評価するために追加の試験において更に特徴付けられる、上記の方法のいずれかに関する。
【0115】
本開示の一実施形態は、細胞療法において使用される遺伝子産物を作製するための方法に関する。このような方法は、望ましくないバリアントを引き起こし得る配列を特定及び変更するために、遺伝子産物をコードする遺伝子構築物に対してインシリコ分析を実行する工程と、望ましくないバリアントを引き起こし得る検出された配列を代替配列で置換する工程であって、代替配列は、同義コドン置換を含むように誘導される、工程と、遺伝子構築物によって発現される望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定する工程であって、遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を実行する工程を含む、遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を行う工程を含み、望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、少なくとも部分的に、RNA配列決定分析からスプライス認識アライナを使用することによって判定される、工程と、インビボ分析からの遺伝子産物における望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値よりも大きい場合、インシリコ分析工程と置換工程を反復して、新しい遺伝子構築物を作製する工程と、新しい遺伝子構築物によって発現される望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定する工程であって、新しい遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を実行する工程を含む、新しい遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を行う工程を含み、望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、少なくとも部分的に、RNA配列決定分析からスプライス認識アライナを使用する工程によって判定される、工程と、を含む。
【0116】
本開示の一実施形態は、ギャップ認識アライメントが、少なくとも2つの別個のアライナを使用する工程を含む、上記の方法に関する。
【0117】
本開示の一実施形態は、インシリコ分析が、遺伝子構築物内の複数の相同配列及び複数の同一配列のうちの少なくとも1つを検出する工程であって、複数の相同配列及び複数の同一配列のうちの少なくとも1つが、遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る、工程と、同義コドン置換の工程を含む、そのような検出された複数の相同配列及び複数の同一配列を置換する工程とを更に含む、上記の方法のいずれかに関する。
【0118】
本開示の一実施形態は、インシリコ分析が、遺伝子構築物からサブセクション組み合わせの行列を計算する工程と、サブセクション組み合わせの各々についてハミング距離を取得する工程と、を更に含む、上記の方法のいずれかに関する。
【0119】
本開示の一実施形態は、インシリコ分析が、遺伝子構築物中の複数のランダム同義コドンを複数の代替配列で置換して、複数の代替配列が行列全体の和を増加させる工程を更に含む、上記の方法のいずれかに関する。
【0120】
本開示の一実施形態は、遺伝子構築物がキメラ抗原受容体をコードする配列を含む、上記の方法のいずれかに関する。
【0121】
本開示の一実施形態は、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値が、望ましくないバリアントが細胞表面へのキメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼすかどうか、望ましくないバリアントがキメラ抗原受容体の結合ドメインの変化に関連するかどうか、及び望ましくないバリアントがキメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できる影響を引き起こすとして以前に特徴付けられているかどうか、のうちの少なくとも1つに望ましくないバリアントが関連するかどうかに基づいて判定される、上記の方法のいずれかに関する。
【0122】
本開示の一実施形態は、望ましくないバリアントが細胞表面へのキメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼす場合、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値が0.1%であり、望ましくないバリアントがキメラ抗原受容体の結合ドメインへの変化に関連する場合、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値が0.01%である、上記の方法のいずれかに関する。
【0123】
本開示の一実施形態は、望ましくないバリアントが、キメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できるほどの影響を引き起こすとして以前に特徴付けられている場合、インシリコ分析工程及び置換工程を反復する工程が実行されない、上記の方法のいずれかに関する。
【0124】
本開示の一実施形態は、高頻度バリアントの亜集団を特定及び除去する工程と、低頻度バリアントの亜集団を特定する工程と、を更に含み、インビボ分析が、低頻度バリアントの亜集団が置換されるべきかどうかを判定するための分析を行う工程を更に含む、上記方法のいずれかに関する。
【0125】
本開示の一実施形態は、望ましくないバリアントが検出され、上述の条件又は要件のいずれも満たさない場合、望ましくないバリアントを排除しようと試みるためにインシリコ分析工程及び配列除去工程が反復される、及び/又は望ましくないバリアントが潜在的患者に対するリスクを評価するために追加の試験において更に特徴付けられる、上記の方法のいずれかに関する。
【0126】
本開示の一実施形態は、細胞療法において使用される遺伝子産物が、望ましくないバリアントの産生に起因する有効性又は毒性の低下のリスクを有する際のリスクを低下させるための方法に関する。そのような方法は、望ましくないバリアントを引き起こし得る配列の存在を検出するために、遺伝子産物をコードする遺伝子構築物のインシリコ分析を行う工程と、望ましくないバリアントを引き起こし得る検出された配列を代替配列で置換する工程であって、代替配列は、同義コドン置換を含むように誘導される、工程と、遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を行うことを含む遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を行うことを含む、遺伝子構築物によって発現される望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定する工程であって、望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、少なくとも部分的に、RNA配列決定分析からスプライス認識アライナを使用することによって判定される、工程と、インビボ分析からの遺伝子産物における望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値よりも大きい場合、インシリコ分析工程及び置換工程を反復する工程、を含む。
【0127】
バリアントの予測、検出、及び排除
一実施形態は、バリアントを処理するための汎用パイプラインを開示する。このパイプラインは、配列を引き起こす潜在的なバリアントを特定及び除去するためのアルゴリズム、並びにバリアントの存在について試験するための配列決定及びアライメント方法の両方に依存する。このパイプラインのアルゴリズム及び配列決定ベースの部分は、後続のセクションで更に詳細に説明する。
【0128】
パイプラインの一実施形態の概要を
図2に示す。このパイプラインは、ループロジックを使用して、インシリコで配列を引き起こすバリアントを特定及び除去するための努力がなされ、続いて、バリアントが見出される場合に物理的試験及び更にインシリコ作業がなされる。バリアント検出は複数の配列決定工程で行われるので、バリアントを産生するものとして容易に特定することができる構築物配列には多大な努力が払われない。
【0129】
本実施形態では、パイプラインは柔軟性を有するように構成されている。
図2に示される頻度カットオフは例であり、バリアントが対処される必要があるかどうかを判定する代替的な方法(配列決定のセクションにおいて考察される)を使用することができる。同様に、配列決定工程中のドナーの数を増加/減少させるか、又は追加の配列決定工程(例えば、レントウィルスの配列決定)を追加/除去して、効率を最大化するか、又はバリアントを更により深く調べることが可能である。
【0130】
図2を参照すると、一実施形態では、任意の物理的作業の前に、計画された構築物配列は、スプライス部位及び極めて相同な配列(相同組換えを引き起こし得る)を特定するように設計されたアルゴリズムに供される。これらのいずれかが特定される場合、他のアルゴリズムを使用して、同義コドン置換を介してこれらを除去する(構築物タンパク質配列は変化しない)。いったんこの最初のインシリコスクリーニング及び改変が完了すると、単一のドナーを使用する産物の小さな試験バッチが作製され、このバッチのRNA配列は、任意の高頻度(例えば、約5%超)バリアントを特定するために使用される。高頻度バリアントが見出される場合、小バッチ作製及びRNA配列を再度試みる前に、インシリコスクリーニング及び改変プロセスが、特定されたバリアントの知識によって導かれて反復される。高頻度バリアントが見出されない場合、5~10人のドナーを使用する、より大きな試験産物のバッチが作製されて、このバッチのRNA配列を使用して、任意の低頻度(5%未満)バリアントを特定する。これらのバリアントのいずれかが見出される場合、配列及び発現レベルをインシリコで分析して、バリアントが安全性/有効性リスクを呈するかどうかを判定することができる。この評価の一例として、産物のわずか1%で生じ、スプライシングされた共刺激ドメインを有するCARをもたらすバリアントは、おそらくは有効性の非常に小さい減少をもたらすにすぎないため、問題となる可能性は低い。対照的に、CARのScFvドメインにおけるスプライシングは、低いパーセンテージであっても、オフターゲット結合、したがって毒性をもたらし得る。安全性/有効性リスクを排除することができない場合、これらの特定のバリアントを発現する産物を作製し、物理的に試験することができる。これらの試験が安全性/有効性に関する問題を示唆するか、又は実施できない場合、構築物配列をインシリコで再設計し、プロセス全体を再開することができる。そうでなければ、低頻度バリアントが見出されないか、又は安全性/有効性に対するリスクを呈しないことが確認される場合、構築物配列は、更なる開発のためにクリアすることができる。
【0131】
スプライス部位予測及び除去アルゴリズム
このパイプラインのインシリコ工程の間、SpliceAI-Jaganathanら、Cell 2019(https://github.com/Illumina/SpliceAI)及びMaxEntScan-Yeo and Burge,J Comput Biol 2003(http://hollywood.mit.edu/burgelab/maxent/Xmaxentscan_scoreseq.html)アルゴリズムを使用して、一実施形態では潜在的なドナー及び受容体スプライス部位を特定し得る。他の実施形態では、他のアルゴリズムが使用され得る。
【0132】
一実施形態では、構築物中の部位がこれらのアルゴリズムのいずれかによって特定される場合、この部位は、バリアントがもはや検出されなくなるまで、又はその予測されるスプライシングの可能性が大幅に減少するまで、同義コドン置換を使用して改変され得る。この工程は、構築物タンパク質配列を不変のままにする。同様に、配列決定が既に行われ、バリアントが検出されている場合、これらのアルゴリズムを使用して、バリアントがスプライシングに起因する可能性があるかどうかを判定し、同義コドン置換を使用してバリアントが発生する可能性を低減することができる。
【0133】
相同性の特定及び除去アルゴリズム
相同組換えは、構築物中の非常に類似した配列によって駆動されるため、本開示は、これらの配列のスポット及び除去を助けるためのアルゴリズム及びツールを記載する。スプライス部位除去アルゴリズムと同様に、これらのアルゴリズムは、最初のインシリコ工程において実行され、配列決定が相同組換えを示す場合、配列決定工程後に再実行することができる。
【0134】
相同組換えを引き起こす可能性が高い配列を特定するために、一実施形態は、Repeat Finderツールを含む。このツールは、構築物配列を分析及び表示し、所与の(ユーザ設定)長よりも長い同一配列の全ての対を接続するアーチを描く。代替的に、このツールは、ユーザ設定のレーベンシュタイン距離によって判断されるように、所与のサイズ及び所与のレベルの類似性を有する配列対を接続することができる。Repeat Finderツールからの出力表示を示すスクリーンショットの一例が
図6に示されている。アーチの太さは、それが連結する同一配列の長さに依存する。一緒にクラスタ化されたアーチ又は太いアーチのグループを探すことによって、ユーザは、それらが同一でない場合であっても、高度に類似した配列を容易に識別することができる。
【0135】
所与の構築物の全てのサブセクション間の類似性を低減するために、一実施形態は、Sequence Divergerツールを含む。このツールは、長さn(塩基対)及びユーザ選択サブセクションサイズk(これも塩基対)の構築物配列を取る。次に、ツールは、両方の次元においてn-k+1である行列を作成する。この行列中の各位置(x,y)は、構築物配列の塩基x及びyで始まる一対のサブセクションに対応する。この位置の値は、これらの2つのサブセクション間のハミング距離である。行列の一例を
図3に示す。この設計により、行列の和は、構築物配列のそれ自体に対する類似性を効果的に記述する。多くの非常に類似したサブセクションを有する構築物配列は、ほとんどのサブセクションが互いに異なるものよりも小さい和を有する。これは、構築物の全てのサブセクション間の類似性、したがって相同組換え事象の可能性を減少させることが、この行列の和を増加させる問題であることを意味する。Sequence Divergerは、構築物配列全体にわたってランダムな同義コドン置換を行い、行列の和を増加させるもののみを保持することによってこれを達成する。アルゴリズムが終了し、修正されたシーケンスが返される前に、ユーザ指定の数の置換が行われる。ユーザは、試みられた置換の数に関して行列の和を追跡することができ、したがって、いくつの工程が必要とされるかを感覚的につかむことができる。
【0136】
図3の例に示されるように、所与の配列(AACGAACG)及び所与のサブセクションサイズ(4)について、ハミング距離(HD)が、全ての可能なサブセクション対について計算される。行列の和は、配列の異なるサブセクションが互いにどの程度類似しているかを記述し、したがって、この和を最大化すると、相同組換えの可能性が減少するはずである。
【0137】
別の実施形態では、Repeat Removerツールを使用して、構築物配列が相同組換えを引き起こし得る同一のサブセクションを含むのを防止することを助けることができる。このツールは、構築物配列及びユーザが選択したサブセクションサイズk(塩基対)を取る。一実施形態では、次に、Repeat Removerツールは、構築物位置1から始まるサイズkの各サブセクションが構築物中の他の全てのサブセクションと比較されるプロセスを経る。同一のサブセクションが見出される場合、そのサブセクションにおけるランダム同義コドン置換が、類似性を排除するために使用される。このプロセスは、全く同一のサブセクションが見出されることなく構築物全体がスキャンされるまで、又は使用者が規定したサイクル数に達するまで、サイクルで繰り返される。この一例が
図4に示されている。同義コドン置換は、一対の同一配列を排除して別の対を導入するために行われることが可能であるため、複数サイクル反復が必要であり得る。
【0138】
図4に示すように、Repeat Removerツールは、ユーザが選択したサイズ(例えば、6~10塩基対)の全てのサブセクションを互いに比較して、それらが同一であるかどうかを調べる。同一の対が見出される場合、同義コドン置換を使用してそれを除去する。本実施形態では、これは、全ての同一の対が除去されるまで、又はユーザ定義のサイクル数に達するまで継続する。
【0139】
Sequence Diverger及びRepeat Removerツールは、相同組換えを引き起こし得る高度に類似した配列を除去するという同じ目的を有するが、異なるアプローチ及び潜在的に異なる結果を有する。Repeat Removerは、同一配列を排除することに焦点を当てており、非常に類似した(しかし同一ではない)配列を作成することを犠牲にして排除を行い得る。対照的に、Sequence Divergerは、配列類似性を全体的に減少させることに焦点を当てており、少数の同一配列を適所に残すという犠牲を払ってこれを行い得る。一実施形態のインシリコ工程は、開発される特定の構築物に対して何が最良に機能するかに応じて、いずれかの順序で両方のツールを用いて、又は一方のみを用いて行うことができる。他の実施形態では、いずれのツールもプロセスにおいて使用されなくてもよく、代わりに、Repeat Remover(又はRepeat Visualizer)を介して特定された非常に類似した配列の手動除去が使用されてもよい。
【0140】
これらの実施形態は、上述のツールを個別に又は互いに組み合わせて使用することができ、追加のツール又は特徴を追加することができるという点で柔軟である。例えば、3つのツール全てを、互いに所与の距離内にある非常に類似した/同一の配列を無視するように設定することができる。このことは、相同組換え事象が、非常に類似した配列間の最小距離の発生を必要とするといういくつかの指摘があるために適切である。構築物の特定の領域がコドン使用頻度に対して非常に高感度であることが分かっている場合には、これらの領域が変化しないように、Sequence Diverger及びRepeat Removerツールを設定することも可能である。最後に、行列和を増加させるもののみを受け入れるのではなく、シミュレートされたアニーリングロジックに基づいて同義コドン置換を受け入れるか又は拒絶するようにSequence Divergerツールを改変することが可能である。これは、ツールが全域的最大値をより適切に見出すのを助けることができる。
【0141】
特定の実施形態では、Repeat Finder、Sequence Diverger、及びRepeat Removerツールは、個々のコンピュータモジュールであり得る。他の実施形態では、これらの3つのツールは、単一のモジュール又はコンピュータにプログラムされ得る。
【0142】
配列決定に基づくバリアント検出
バリアントを特定するためのRNA配列決定をどのように行うことができるかに関しては、いくらかの柔軟性がある。配列決定は、バリアントを見ることを可能にするのに十分な質及び深さであることが望ましい。一例として、一実施形態では、HiSeq 2500配列決定レーン、サンプル当たり約3億リードの深さ、及び150bp長のペアエンドリードを有するCAR-T産物を配列決定することができる。
【0143】
配列決定に続いて、リードは、1つ以上のスプライス認識アライナを使用して構築物に整列されるべきである。この工程は、正確なアライメントパラメータ及びどのアライナが使用されるかに基づく柔軟性がある。この実施形態は、3つの異なるアライナ(STAR、HISAT2、及びTopHat2)を同時に使用して良好な結果を見出したが、これは、任意の1つのアライナの誤りを識別し、無視するのに役立つためである(後述)。
【0144】
一実施形態におけるアライメントの後、ギャップアライメントを有する全てのリード(これらはバリアントを示すものであるため)が抽出され、それらがもたらす産物タンパク質配列が翻訳される。サンプル中の各バリアント(意図された配列と異なるタンパク質配列)のパーセンテージは、以下の式を用いて計算される。
【数2】
式中、xはパーセンテージであり、Rはバリアントを支持するリードの数であり、nはオープンリーディングフレーム(ORF)中の塩基の数であり、dはORF中の各位置におけるリード深度(全リード)である。
【0145】
各バリアントへのリード及びサンプルのパーセンテージの割り当てに続いて、この実施形態の最終工程は、どのバリアントが更なる調査を必要とするかを決定することである。この工程は柔軟性を可能にし、これが高度に発現されたバリアントを特定するための最初の小さなスクリーニングであるか、又は全てのバリアントを特定するための大きなスクリーニングであるかを考慮すべきである(
図2参照)。
【0146】
1つの選択肢は、リードの数に基づいてカットオフを確立することである。例えば、サンプルは、そのバリアントを支持する5つ以上のリードを有する場合、バリアントについて陽性であるとみなされ得る。別の選択肢は、(
図2に示されるような)バリアントを支持するサンプルのパーセンテージが特定のカットオフを上回るかどうかを考慮することであろう。両方の場合において、複数のドナー由来のサンプルが使用される場合、複数のドナーに基づく第2のカットオフが確立され得る。例えば、所与の数又はパーセンテージのドナーからのサンプルにおいて陽性であるバリアントのみが考慮される。別の実施形態では、各ドナーサンプルが独立した実験とみなされるウィルコックス順位和検定などの統計的検定を使用して、所与のバリアントについて陽性のドナーの割合が0と有意に異なるかどうかを判定することが可能である。最後に、複数のアライナが使用される場合、それらに基づくカットオフを使用して、任意の1つのパイプラインにおける不正確さに対処することができる。例えば、サンプルは、3つのアライナのうちの少なくとも2つにおいてそのバリアントを支持する5つ以上のリードを有する場合にのみ、バリアントに対して陽性であるとみなされ得る。あるいは、バリアントは、少なくとも2つのパイプラインを有する複数のドナーにわたって陽性ウィルコックス順位和検定を返す場合にのみ考慮され得る。
【0147】
バリアントの統計解析後、Integrated Genomics Viewer(IGV)などのプログラムにおけるバリアント支持リード及び正常リードの目視検査が実施され得る。いくつかの明らかなバリアントは、目視検査で見つけることができるアライメント誤差の結果であり得る。プロセスの特定の実施形態では、直前に記載した試験を行うことに加えて、プロセスは、特定のバリアントを支持するサンプル中の全てのリードを単離し、それらを容易に検査することができる単一のBAMファイルに配置することを含み得る。
【0148】
RNA-seqプロファイリング及びバイオインフォマティクス分析
別の実施形態では、RNA配列プロファイリング及びバイオインフォマティクス分析は、FastQC(バージョン0.11.7)などを使用する品質管理チェックを含む。FastQCのデフォルトパラメータを使用すると、遺伝子構築物は品質管理に合格するはずである。プロファイリング及び分析はまた、アライメント工程を含み得る。スプライシング事象検出を最大化するために、3つの異なるスプライス認識アライナ:STAR(バージョン2.7.3a)(PMID:23104886)、HISAT2(バージョン2.1.0)(PMID:31375807)、及びTopHat2(バージョン2.1.0)(PMID:23618408)を使用して、リードを構築物配列に整列させる。構築物配列に対応するカスタムアライメントインデックスは、各ツールについて生成され得る。一実施形態では、アライメントは、Seven Bridgesプラットフォーム上で実行されてもよいが、他のコンピューティングプラットフォーム上で実行されてもよい。
【0149】
一実施形態では、プロファイリング及び分析は、STARアライメントを含み得る。STARアライメントのための参照インデックスは、genomeSAindexNbasesパラメータが5に設定され、他の全てのパラメータがデフォルト値に設定されたgenomeGenerateコマンドを使用して作成され得る。一実施形態では、STARにおけるアライメントは、全てのデフォルトパラメータを使用して行われ得る。一実施形態では、以下のコマンドを使用して、インデックスを作成し、STARツールとのアライメントを実行し得る。
STARインデックスコマンド:
STAR--runMode genomeGenerate--genomeDir./genomeDir--runThreadN 32--genomeSAindexNbases 5-genomeFastaFiles construct_name.fa--limitGenomeGenerateRAM 60000000000
STARアライメントコマンド:
STAR--runThreadN 32--readFilesCommand zcat--genomeDir./genomeDir--limitBAMsortRAM 0--outSAMtype BAM Unsorted--readFilesIn R1.fastq.gz R2.fastq.gz
【0150】
インデックスを作成し、アライメントを実行するために他のコマンドが使用され得ることを理解されたい。
【0151】
更に、プロファイリング及び分析は、HISAT2アライメントを含み得る。一実施形態では、HISAT2アライメントのための参照インデックスは、HISAT2バージョン2.0.1のhisat2-buildコマンドを使用して作成される。HISAT2アライメントは、-no-softclip-no-unalオプションを使用可能にし、-pen-cansplice及び-pen-noncanspliceパラメータを0に設定して実行され得る。全ての他のパラメータは、それらのデフォルトに設定され得、リードは、その後、Sambamba(バージョン0.6.6)(PMID:25697820)を使用してソートされる。一実施形態では、以下のコマンドを使用して、インデックスを作成し、HISAT2ツールとのアライメントを実行し得る。
HISAT2インデックスコマンド:
hisat2-build-p1 construct_name.fa index/construct_name_HISAT2-2.0.1
HISAT2アライメントコマンド:
hisat2-met-file metrics.txt--no-softclip--no-unal-p 20--pen-cansplice 0--pen-noncansplice 0-x./index_files_path-1 R1_001.fastq.gz-2 R2_001.fastq.gz-S/dev/stdout
【0152】
インデックスを作成し、HISAT2ツールとの位置合わせを実行するために、他のコマンドが使用され得ることを理解されたい。
【0153】
一実施形態では、プロファイリング及び分析工程は、TopHat2アライメントを含み得る。TopHat2アライメントのための参照インデックスは、BowTie2-buildコマンド(バージョン2.2.6)(PMID:21154709)などを使用して作成され得る。TopHat2アライメントは、一実施形態では、全てのデフォルトパラメータを用いて行われ得る。以下のコマンドを使用して、インデックスを作成し、TopHat2ツールとのアライメントを実行し得る。
BowTie2-構築コマンド:
bowtie2-build-f construct.fa./construct_name
TopHat2アライメント:
tophat2-num-threads 1-output-dir./tophat_out-no-coverage-search./construct_name.
R1_001.fastq.gz R2_001.fastq.gz
【0154】
一実施形態では、分析工程は、リードを処理することを含む。この実施形態では、各アライメント方法からのアライメントされたリードは、Seven Bridgesプラットフォーム上で更に処理され得る。まず、SAMtools(バージョン1.6)(PMID:19505943)、ビュー関数などを使用して、全ての非ギャップリードを除去し得る。その後、SAMtools(バージョン1.9)を使用して、BAMファイルフォーマットの残りのギャップリードをSAMフォーマットに変換し得る。次に、R(バージョン3.6.2)(https://www.R-project.org/)スクリプト(translate_and_group.R)などを使用して、各ギャップリードからのヌクレオチド配列を対応するアミノ酸配列に翻訳し得る。このスクリプトは、各固有のギャップ事象を支持するリードの数を計算するためにも使用され得る。一実施形態では、10塩基対未満のオーバーハングを有するギャップリードが除去され得る。一実施形態では、このスクリプトは、Seqinr(バージョン3.6.1)(ISBN:978-3-540-35305-8、https://cran.r-project.org/web/packages/seqinr/index.html)ライブラリパッケージを使用して、ギャップDNA配列をアミノ酸配列に翻訳した。
非ギャップリードを除去するためのSAMtoolsコマンド:
samtools view-h/path/to/input_bam.ext|awk’{if($0~/^@/ || $6~/N/){print$0}}’ |samtools view-Sb->input_bam_gapped.bam
BAMをSAMファイルフォーマットに変換するためのSAMtoolsコマンド:
samtools view--output-fmt SAM-o hits_gapped.sam hits_gapped.bam
【0155】
一実施形態では、バイオインフォマティクス分析の最後の工程は、R(バージョン3.6.2)スクリプト(app.R)を実行するEC2インスタンスを使用して、Amazon Web Services(AWS)Virtual Private Cloud(VPC)上で実行され得る。このスクリプトは、アライメントからのBAM出力ファイルと共に、sスクリプトから得られた出力ファイル(translate_and_group.R)をインポートして、各ギャップ事象の出現率を計算した。この計算に使用される式は次の通りである。
【数3】
式中、xはパーセンテージカバレッジであり、Rはギャップを支持するリードの数であり、nはオープンリーディングフレーム(ORF)中の塩基の数であり、dはORF中の各位置におけるリード深度である。
【0156】
一実施形態では、app.Rスクリプトは、SAMtools(バージョン1.10)深度関数に依拠して、構築物のカバレッジを計算し、視覚化目的のために、あらゆる固有のギャップ事象からのリードを有するBAMファイルを(SAMtoolsビュー関数への呼び出しを用いて)生成する。この分析に続いて、ギャップ事象は、事象が以下のフィルタリング基準を通過した場合、バリアントとみなされ得る。p-値(ノンパラメトリック1サンプルウィルコクソン順位和検定)は、3つの方法のうちの2つにおいて0.01未満であり、この交差検証を使用して、方法特異的アーチファクトを最小化した。
【0157】
帰無仮説及び対立仮説は以下の通りである。
H0:μ=0
Ha:μ≠0
【0158】
一実施形態では、p値<0.01の保存的閾値を選択して、単一ドナーにおける5個未満のリードによって支持される多数の偽推定バリアント及びおそらく配列決定アーチファクトの結果による偽陽性率を最小限に抑え得る。
【0159】
レポート生成
一実施形態では、バリアント検出方法は、
図5に示される以下の情報を含む各バリアントについての報告を生成及び表示し得る:1)予想されるタンパク質産物の配列、2)バリアントID又は番号、3)タンパク質産物(すなわち、CAR)の特徴に対する変化を注釈付けする図又は概略図、4)使用される各アライナ(例えば、Tophat、HISAT、STAR)についてのアライメントの頻度、5)検出の統計的有意性のP値(利用可能な場合)、及び6)構築物に整列するリードの可視化。
【0160】
当業者は、主題が、その精神又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得ることを理解するであろう。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載される主題を限定するものではなく、全ての点で例示的であると考慮されるべきである。
【実施例】
【0161】
以下の実施例は、開示されるプロセスにおいて使用され得る例示的なソフトウェアコード部分と共に、RNA配列決定プロファイリング及びバイオインフォマティクス分析において使用され得る潜在的なソフトウェアパッケージの例示的な表を開示する。
【実施例1】
【0162】
本実施例は、遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る配列の置換を検出するための方法101の一例を提供する。
図7Aに見られるように、方法101は、少なくとも以下の工程を含む。方法101は、遺伝子構築物のインシリコ分析を実行して、望ましくないバリアントを引き起こし得る配列の存在を検出する工程103を含む。方法101はまた、望ましくないバリアントを引き起こし得る検出された配列を代替配列で置換する工程105を含む。工程105では、代替配列は、同義コドン置換の使用を介して誘導される。方法101は、遺伝子構築物によって発現される望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定する工程107を含む。工程107は、遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を行うことによって、遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を行うことを含み、望ましくないバリアントの頻度パーセンテージは、少なくとも部分的に、RNA配列決定分析からのスプライス認識アライナを使用することによって判定される。方法101はまた、インビボ分析107からの遺伝子産物中の望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値よりも大きい場合、インシリコ分析工程103と置換工程105を反復することを含む。
【0163】
方法101において、工程107は、少なくとも2つの別個のアライナを使用することを必要とする。また、方法101は、好ましくは、キメラ抗原受容体をコードする遺伝子構築物に使用される。
【0164】
方法101では、望ましくないバリアントが細胞表面へのキメラ抗原受容体の輸送に悪影響を与える場合、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値は0.1%であり、望ましくないバリアントがキメラ抗原受容体の結合ドメインに対する変化に関連する場合、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値は0.01%である。
【0165】
方法101では、望ましくないバリアントがキメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できるほどの影響を引き起こすとして以前に特徴付けられている場合、インシリコ分析工程103及び置換工程105を反復する工程は実行されない。
【実施例2】
【0166】
この実施例は、細胞療法において使用される遺伝子産物を作製するための方法201の一例を提供する。
図7Bに見られるように、方法201は、少なくとも以下の工程を含む。方法201は、遺伝子産物をコードする遺伝子構築物に対してインシリコ分析を実行して、望ましくないバリアント203を引き起こし得る配列を特定及び変更する工程を含む。方法201はまた、望ましくないバリアントを引き起こし得る検出された配列を代替配列で置換する工程205を含む。工程205では、同義コドン置換を使用することによって代替配列が誘導される。方法201は、遺伝子構築物によって発現される望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定する工程207を含む。工程207は、遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を行うことによって、遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を実行することを含む。工程207では、望ましくないバリアントの頻度パーセンテージは、少なくとも部分的に、RNA配列決定分析からのスプライス認識アライナを使用することによって判定される。方法201は、インビボ分析からの遺伝子産物中の望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値よりも大きい場合、インシリコ工程203及び置換工程205を反復して、新しい遺伝子構築物を作製すことを含む。方法201はまた、新しい遺伝子構築物によって発現される望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定する工程209を含む。工程209は、新しい遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を行うことによって、新しい遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を行うことを含み、望ましくないバリアントの頻度パーセンテージは、少なくとも部分的に、RNA配列決定分析からのスプライス認識アライナを使用することによって判定される。
【0167】
方法201において、工程207は、少なくとも2つの別個のアライナを使用することを必要とする。また、方法201は、好ましくは、キメラ抗原受容体をコードする遺伝子構築物に使用される。
【0168】
方法201では、望ましくないバリアントが細胞表面へのキメラ抗原受容体の輸送に悪影響を与える場合、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値は0.1%であり、望ましくないバリアントがキメラ抗原受容体の結合ドメインに対する変化に関連する場合、望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値は0.01%である。
【0169】
方法201では、望ましくないバリアントがキメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できるほどの影響を引き起こすとして以前に特徴付けられている場合、インシリコ分析工程203及び置換工程205を反復する工程は実行されない。
【実施例3】
【0170】
【実施例4】
【0171】
この実施例は、開示された方法を実施するために使用され得る例示的なコード部分を提供する。
図8Aに示される例示的なコード部分では、xはパーセンテージカバレッジであり、Rはギャップを支持するリードの数であり、nはオープンリーディングフレーム(ORF)中の塩基の数であり、dはORF中の各位置におけるリード深度である(app.Rスクリプトの25~45行を参照されたい)。
【実施例5】
【0172】
この実施例は、開示された方法を実施するために使用され得る例示的なコード部分を提供する。
図8Bに示される例示的なコード部分では、app.Rスクリプトは、SAMtools(バージョン1.10)深度関数に依拠して、構築物のカバレッジを計算し、視覚化目的のために、あらゆる固有のギャップ事象からのリードを有するBAMファイルを(SAMtoolsビュー関数への呼び出しを用いて)生成する(app.Rの48~82を参照されたい)。
【実施例6】
【0173】
この実施例は、開示された方法を実施するために使用され得る例示的なコード部分を提供する。
図8Cに示される例示的なコード部分では、p値<0.01の0A保存的閾値を選択して、単一ドナーにおける5個未満のリードによって支持される多数の偽推定バリアント及びおそらく配列決定アーチファクトの結果による偽陽性率を最小限に抑えた。(app.Rスクリプト131~136行を参照されたい)。
【0174】
本出願で引用されている全ての刊行物、特許、特許出願、及び他の文書は、各個々の刊行物、特許、特許出願、又は他の文書が全ての目的のために参照により組み込まれることが個別に示されている場合と同じ程度に、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0175】
様々な特定の実施形態/態様が例示及び説明されてきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることが理解されよう。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る配列を検出及び置換するための方法であって:、
前記望ましくないバリアントを引き起こし得る前記配列の存在を検出するために、前記遺伝子構築物のインシリコ分析を実行する工程
;
前記望ましくないバリアントを引き起こし得
る検出された配列を代替配列で置換する工程であって、前記代替配列は、同義コドン置換を含むように誘導される、工程
;及び
前記遺伝子
構築物中の前記望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値よりも大きい場
合、インシリコ分析工程及び置換工程を反復する工程
ここで、前記遺伝子構築物によって発現される前記望ましくないバリアントの頻度パーセンテージは、前記遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を含む、前記遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析によって測定されるものであり、前記望ましくないバリアントの前記頻度パーセンテージは、少なくとも部分的に、前記RNA配列決定分析からスプライス認識アライナを使用することによって判定されるものである;
を含む、方法。
【請求項2】
ギャップ認識アライメントが、少なくとも2つの別個のアライナを使用する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インシリコ分析が、
前記遺伝子構築物内の複数の相同配列及び複数の同一配列のうちの少なくとも1つを検出する工程であって、前記複数の相同配列及び前記複数の同一配列のうちの前記少なくとも1つが、前記遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る、工程と、
同義コドン置換の工程を含
む、検出された複数の相同配列及び複数の同一配列を置換する工程と、を更に含む、請求項1又は
2に記載の方法。
【請求項4】
前記インシリコ分析が、前記遺伝子構築物からサブセクション組み合わせの行列を計算する工程と、前記サブセクション組み合わせの各々についてハミング距離を取得する工程と、を更に含む、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記インシリコ分析が、前記遺伝子構築物中の複数のランダム同義コドンを複数の代替配列で置換して、前記複数の代替配列
が行列全体の和を増加させる工程を更に含む、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子構築物が、キメラ抗原受容体をコードする配列を含む、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項7】
望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が、前記望ましくないバリアントが細胞表面への前記キメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼすかどうか、前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の結合ドメインの変化に関連するかどうか、及び前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できる影響を引き起こすとして以前に特徴付けられているかどうか、のうちの少なくとも1つに前記望ましくないバリアントが関連するかどうかに基づいて判定される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記望ましくないバリアントが細胞表面への前記キメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼす場合、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が0.1%であり、前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の結合ドメインへの変化に関連する場合、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が0.01%である、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
前記望ましくないバリアントが、前記キメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できるほどの影響を引き起こすとして以前に特徴付けられている場合、前記インシリコ分析工程及び前記置換工程を反復する工程が実行されない、請求項
6に記載の方法。
【請求項10】
高頻度バリアントの亜集団を特定及び除去する工程と、低頻度バリアントの亜集団を特定する工程を更に含み、
前記インビボ分析が、前記低頻度バリアントの亜集団が置換されるべきかどうかを判定するための分析
を含む、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項11】
細胞療法において使用される遺伝子産物を作製するための方法であって、
望ましくないバリアントを引き起こし得る配列を特定及び変更するために、前記遺伝子産物をコードする遺伝子構築物に対してインシリコ分析を実行する工程
;
前記望ましくないバリアントを引き起こし得
る検出された配列を代替配列で置換する工程であって、前記代替配列は、同義コドン置換を含むように誘導される、工程
;及び
前記遺伝子
構築物中の前記望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値よりも大きい場
合、インシリコ分析工程及
び置換工程を反復して、新しい遺伝子構築物を作製する工程
ここで、前記遺伝子構築物によって発現される前記望ましくないバリアントの頻度パーセンテージは、前記遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を実行する工程を含む、前記遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析によって測定されるものであり、前記望ましくないバリアントの前記頻度パーセンテージは、少なくとも部分的に、前記RNA配列決定分析からスプライス認識アライナを使用することによって判定されるものである;
を含む、方法。
【請求項12】
ギャップ認識アライメントが、少なくとも2つの別個のアライナを使用する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記インシリコ分析が、
前記遺伝子構築物内の複数の相同配列及び複数の同一配列のうちの少なくとも1つを検出する工程であって、前記複数の相同配列及び前記複数の同一配列のうちの前記少なくとも1つが、前記遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る、工程と、
同義コドン置換の工程を含
む、検出された複数の相同配列及び複数の同一配列を置換する工程と、を更に含む、請求項11又は1
2に記載の方法。
【請求項14】
前記インシリコ分析が、前記遺伝子構築物からサブセクション組み合わせの行列を計算する工程と、前記サブセクション組み合わせの各々についてハミング距離を取得する工程と、を更に含む、請求項
11又は12に記載の方法。
【請求項15】
前記インシリコ分析が、前記遺伝子構築物中の複数のランダム同義コドンを複数の代替配列で置換して、前記複数の代替配列
が行列全体の和を増加させる工程を更に含む、請求項
11又は12に記載の方法。
【請求項16】
前記遺伝子構築物が、キメラ抗原受容体をコードする配列を含む、請求項
11又は12に記載の方法。
【請求項17】
望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が、前記望ましくないバリアントが細胞表面への前記キメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼすかどうか、前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の結合ドメインの変化に関連するかどうか、及び前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できる影響を引き起こすとして以前に特徴付けられているかどうか、のうちの少なくとも1つに前記望ましくないバリアントが関連するかどうかに基づいて判定される、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記望ましくないバリアントが細胞表面への前記キメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼす場合、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が0.1%であり、前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の結合ドメインへの変化に関連する場合、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が0.01%である、請求項
16に記載の方法。
【請求項19】
前記望ましくないバリアントが、前記キメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できるほどの影響を引き起こすとして以前に特徴付けられている場合、前記インシリコ分析工程及び前記置換工程を反復する工程が実行されない、請求項
16に記載の方法。
【請求項20】
高頻度バリアントの亜集団を特定及び除去する工程と、低頻度バリアントの亜集団を特定する工程を更に含み、
前記インビボ分析が、前記低頻度バリアントの亜集団が置き換えられるべきかどうかを判定するための分析
を含む、請求項
11又は12に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0160
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0160】
当業者は、主題が、その精神又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得ることを理解するであろう。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載される主題を限定するものではなく、全ての点で例示的であると考慮されるべきである。
[項1]
遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る配列を検出及び置換するための方法であって、
前記望ましくないバリアントを引き起こし得る前記配列の存在を検出するために、前記遺伝子構築物のインシリコ分析を実行する工程と、
前記望ましくないバリアントを引き起こし得る前記検出された配列を代替配列で置換する工程であって、前記代替配列は、同義コドン置換を含むように誘導される、工程と、
前記遺伝子構築物によって発現される前記望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定する工程であって、前記遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を実行する工程を含む、前記遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を行う工程を含み、前記望ましくないバリアントの前記頻度パーセンテージが、少なくとも部分的に、前記RNA配列決定分析からスプライス認識アライナを使用することによって判定される、工程と、
前記インビボ分析からの前記遺伝子産物中の前記望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値よりも大きい場合、前記インシリコ分析工程及び置換工程を反復する工程と、を含む、方法。
[項2]
ギャップ認識アライメントが、少なくとも2つの別個のアライナを使用する工程を含む、項1に記載の方法。
[項3]
前記インシリコ分析が、
前記遺伝子構築物内の複数の相同配列及び複数の同一配列のうちの少なくとも1つを検出する工程であって、前記複数の相同配列及び前記複数の同一配列のうちの前記少なくとも1つが、前記遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る、工程と、
同義コドン置換の工程を含む、前記検出された複数の相同配列及び複数の同一配列を置換する工程と、を更に含む、項1又は2のいずれかに記載の方法。
[項4]
前記インシリコ分析が、前記遺伝子構築物からサブセクション組み合わせの行列を計算する工程と、前記サブセクション組み合わせの各々についてハミング距離を取得する工程と、を更に含む、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
[項5]
前記インシリコ分析が、前記遺伝子構築物中の複数のランダム同義コドンを複数の代替配列で置換して、前記複数の代替配列が前記行列全体の和を増加させる工程を更に含む、項1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項6]
前記遺伝子構築物が、キメラ抗原受容体をコードする配列を含む、項1~5のいずれか一項に記載の方法。
[項7]
望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が、前記望ましくないバリアントが細胞表面への前記キメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼすかどうか、前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の結合ドメインの変化に関連するかどうか、及び前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できる影響を引き起こすとして以前に特徴付けられているかどうか、のうちの少なくとも1つに前記望ましくないバリアントが関連するかどうかに基づいて判定される、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
[項8]
前記望ましくないバリアントが細胞表面への前記キメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼす場合、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が0.1%であり、前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の結合ドメインへの変化に関連する場合、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が0.01%である、項1~7のいずれか一項に記載の方法。
[項9]
前記望ましくないバリアントが、前記キメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できるほどの影響を引き起こすとして以前に特徴付けられている場合、前記インシリコ分析工程及び前記置換工程を反復する工程が実行されない、項1~7のいずれか一項に記載の方法。
[項10]
高頻度バリアントの亜集団を特定及び除去する工程と、低頻度バリアントの亜集団を特定する工程を更に含み、
前記インビボ分析が、前記低頻度バリアントの亜集団が置換されるべきかどうかを判定するための分析を行う工程を更に含む、項1~9のいずれか一項に記載の方法。
[項11]
細胞療法において使用される遺伝子産物を作製するための方法であって、
望ましくないバリアントを引き起こし得る配列を特定及び変更するために、前記遺伝子産物をコードする遺伝子構築物に対してインシリコ分析を実行する工程と、
前記望ましくないバリアントを引き起こし得る前記検出された配列を代替配列で置換する工程であって、前記代替配列は、同義コドン置換を含むように誘導される、工程と、
前記遺伝子構築物によって発現される前記望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定する工程であって、前記遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を実行する工程を含む、前記遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を行う工程を含み、前記望ましくないバリアントの前記頻度パーセンテージが、少なくとも部分的に、前記RNA配列決定分析からスプライス認識アライナを使用することによって判定される、工程と、
前記インビボ分析からの前記遺伝子産物中の前記望ましくないバリアントの頻度パーセンテージが、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの所定値よりも大きい場合、前記インシリコ分析工程及び前記置換工程を反復して、新しい遺伝子構築物を作製する工程と、
前記新しい遺伝子構築物によって発現される前記望ましくないバリアントの頻度パーセンテージを測定する工程であって、前記新しい遺伝子構築物から転写されたRNA産物のRNA配列決定分析を実行する工程を含む、前記新しい遺伝子構築物によって発現される1つ以上の遺伝子のインビボ分析を行う工程を含み、前記望ましくないバリアントの前記頻度パーセンテージが、少なくとも部分的に、前記RNA配列決定分析からスプライス認識アライナを使用することによって判定される、工程と、を含む、方法。
[項12]
ギャップ認識アライメントが、少なくとも2つの別個のアライナを使用する工程を含む、項11に記載の方法。
[項13]
前記インシリコ分析が、
前記遺伝子構築物内の複数の相同配列及び複数の同一配列のうちの少なくとも1つを検出する工程であって、前記複数の相同配列及び前記複数の同一配列のうちの前記少なくとも1つが、前記遺伝子構築物において望ましくないバリアントを引き起こし得る、工程と、
同義コドン置換の工程を含む、前記検出された複数の相同配列及び複数の同一配列を置換する工程と、を更に含む、項11又は12のいずれかに記載の方法。
[項14]
前記インシリコ分析が、前記遺伝子構築物からサブセクション組み合わせの行列を計算する工程と、前記サブセクション組み合わせの各々についてハミング距離を取得する工程と、を更に含む、項11~13のいずれか一項に記載の方法。
[項15]
前記インシリコ分析が、前記遺伝子構築物中の複数のランダム同義コドンを複数の代替配列で置換して、前記複数の代替配列が前記行列全体の和を増加させる工程を更に含む、項11~14のいずれか一項に記載の方法。
[項16]
前記遺伝子構築物が、キメラ抗原受容体をコードする配列を含む、項11~15のいずれか一項に記載の方法。
[項17]
望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が、前記望ましくないバリアントが細胞表面への前記キメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼすかどうか、前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の結合ドメインの変化に関連するかどうか、及び前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できる影響を引き起こすとして以前に特徴付けられているかどうか、のうちの少なくとも1つに前記望ましくないバリアントが関連するかどうかに基づいて判定される、項11~16のいずれか一項に記載の方法。
[項18]
前記望ましくないバリアントが細胞表面への前記キメラ抗原受容体の輸送に悪影響を及ぼす場合、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が0.1%であり、前記望ましくないバリアントが前記キメラ抗原受容体の結合ドメインへの変化に関連する場合、前記望ましくないバリアントの許容可能な頻度パーセンテージの前記所定値が0.01%である、項11~17のいずれか一項に記載の方法。
[項19]
前記望ましくないバリアントが、前記キメラ抗原受容体の発現又は機能に対して無視できるほどの影響を引き起こすとして以前に特徴付けられている場合、前記インシリコ分析工程及び前記置換工程を反復する工程が実行されない、項11~17のいずれか一項に記載の方法。
[項20]
高頻度バリアントの亜集団を特定及び除去する工程と、低頻度バリアントの亜集団を特定する工程を更に含み、
前記インビボ分析が、前記低頻度バリアントの亜集団が置き換えられるべきかどうかを判定するための分析を行う工程を更に含む、項11~19のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】