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特表2024-525486極低温用途に使用するための電気的接続
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】極低温用途に使用するための電気的接続
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/06 20060101AFI20240705BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01F6/06 500
H01F6/06 110
A61B5/055 340
A61B5/055 360
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580775
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2022066687
(87)【国際公開番号】W WO2023280556
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/218,650
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パイン アレクサンダー ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】グレース ケヴィン
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB45
4C096AD08
4C096CA48
4C096CA52
(57)【要約】
極低温チャンバ内にある超電導部品と極低温チャンバ外にある電気デバイスとを電気的に接続するための装置が説明される。装置は、複数のらせんループを含み、且つ極低温チャンバ内にあるコイルと、第1の状態と第2の状態との間でコイルを圧縮及び拡張させるアクチュエータとを含む。第1の状態では、コイルは第1の電気抵抗及び第1の熱伝導度を有し、第2の状態では、コイルは第2の電気抵抗及び第2の熱伝導度を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温チャンバ内にある超電導部品と前記極低温チャンバ外にある電気デバイスとを電気的に接続するための装置であって、
複数のらせんループを含み、且つ前記極低温チャンバ内にあるコイルと、
第1の状態と第2の状態との間で前記コイルを圧縮及び拡張させるアクチュエータと、
を含み、
前記第1の状態では、前記コイルは第1の電気抵抗及び第1の熱伝導度を有し、前記第2の状態では、前記コイルは第2の電気抵抗及び第2の熱伝導度を有する、装置。
【請求項2】
前記第1の電気抵抗は、前記第2の電気抵抗よりも小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の熱伝導度は、前記第2の熱伝導度よりも大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、前記第1の状態で第1の断面積を有し、前記第2の状態で第2の断面積を有し、前記第2の断面積は前記第1の断面積よりも小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記装置が前記第1の状態にあるときに、前記らせんループは互いに対して圧縮され、前記第1の断面積はリングの面積である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記装置が前記第2の状態にあるときに、前記らせんループは互いから分離し、前記第2の断面積は長方形の面積である、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が前記第1の状態にあるときに、第1の大きさの電流が前記装置を流される、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記装置が前記第2の状態にあるときに、実質的に電流がない、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
複数のらせんループを含むコイルを含む装置を提供するステップと、
前記コイルを第1の状態に圧縮するステップであって、前記第1の状態では、前記コイルは第1の電気抵抗及び第1の熱伝導度を有する、圧縮するステップと、
前記コイルを第2の状態に拡張するステップであって、前記第2の状態では、前記コイルは第2の電気抵抗及び第2の熱伝導度を有する、拡張するステップと、
を含む、極低温チャンバ内にある超電導体部品に電流を提供する方法。
【請求項10】
前記第1の電気抵抗は、前記第2の電気抵抗よりも小さい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の熱伝導度は、前記第2の熱伝導度よりも大きい、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記装置は、前記第1の状態で第1の断面積を有し、前記第2の状態で第2の断面積を有し、前記第2の断面積は前記第1の断面積よりも小さい、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記装置が前記第1の状態にあるときに、前記らせんループは互いに対して圧縮され、前記第1の断面積はリングの面積である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記装置が前記第2の状態にあるときに、前記らせんループは互いから分離し、前記第2の断面積は長方形の面積である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
極低温チャンバ内にある超電導磁石を含む磁石システムと、
前記極低温チャンバ内の前記超電導磁石と前記極低温チャンバ外にある電気デバイスとを電気的に接続するための装置であって、複数のらせんループを含むコイルと、第1の状態と第2の状態との間で前記コイルを圧縮及び拡張させるアクチュエータとを含み、前記第1の状態では、前記コイルは第1の電気抵抗及び第1の熱伝導度を有し、前記第2の状態では、前記コイルは第2の電気抵抗及び第2の熱伝導度を有する、装置と、
を含む、磁気共鳴イメージング(MRI)システム。
【請求項16】
前記第1の電気抵抗は、前記第2の電気抵抗よりも小さい、請求項15に記載のMRIシステム。
【請求項17】
前記第1の熱伝導度は、前記第2の熱伝導度よりも大きい、請求項15に記載のMRIシステム。
【請求項18】
前記装置は、前記第1の状態で第1の断面積を有し、前記第2の状態で第2の断面積を有し、前記第2の断面積は前記第1の断面積よりも小さい、請求項15に記載のMRIシステム。
【請求項19】
前記装置が前記第1の状態にあるときに、前記らせんループは互いに対して圧縮され、前記第1の断面積はリングの面積である、請求項18に記載のMRIシステム。
【請求項20】
前記装置が前記第2の状態にあるときに、前記らせんループは互いから分離し、前記第2の断面積は長方形の面積である、請求項18に記載のMRIシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001] 超電導磁石をはじめとする超電導デバイスは、通常、極低圧に維持され、且つ冷却剤を含むチャンバ内に超電導磁石を入れることによって、極低温(例えば、絶対零度に近い)に維持される。これらの超電導デバイスは、あらゆる用途に使用され、一般的な用途の1つは、医療で一般的に使用されている磁気共鳴イメージング(MRI)システムである。
【0002】
[0002] これらのいわゆる極低温チャンバ内の温度を一定の低温に維持することは、超電導磁石を構成する超電導体を正常に動作させるために非常に重要である。そのため、極低温チャンバの外側からの熱が極低温チャンバの内部温度に大きな影響を与えないようにするためには、極低温チャンバの密閉を維持することが非常に重要である。しかしながら、室温の機器から超電導部品(超電導磁石など)への電気的接続は必須である。例えば、超電導部品の動作には外部電源から電流を流す必要がある。しかしながら、外部デバイスと極低温チャンバ内の超電導部品とを電気的に接続する際には、熱伝導経路が形成される可能性がある。その結果、許容できないレベルの熱が周囲から極低温チャンバに伝わり、極低温チャンバ内の超電導部品の望ましい超電導特性を損なう可能性がある。
【0003】
[0003] 典型的な超電導部品(磁石など)では、液体ヘリウム槽を使用して、極低温チャンバ内に収容された超電導コイルや付属品の極低温温度が維持される。特定の既知のシステムでは、これらのタイプの磁気コイルへの電気的接続は、圧力容器を貫通する取り外し可能な電気リードによって提供されることが多く、含まれる液体ヘリウムの絶え間ない蒸発に依存して、これらのリードに沿って伝導され、それらによって生成される熱を一時的に除去する。そのため、超電導部品のランプアップ運転中はこれらのリードが極低温チャンバに挿入され、定常状態運転が達成されると、これらのリードは、冷凍システムへの熱負荷を低減するために取り外される。具体的には、また、当業者には知られているように、磁石を全電流までランプアップさせた後、超電導スイッチを閉じてループが作成される。
【0004】
[0004] しかしながら、超電導磁石の中には、極低温チャンバの真空空間内に、超電導部品を直接冷却する密閉冷却システムを含むものもある。このような用途では、極低温チャンバの外側にある電気デバイス(電源など)から超電導部品まで電気的に接続するための電気経路が必要になる。既知の接続では、電気的接続に沿って許容できない程度の熱伝導度が発生する。そのため、既知の電気的接続を使用すると、超電導部品の性能が大幅に低下する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005] そこで必要なのは、極低温チャンバ内にある超電導部品と極低温チャンバ外にある電気デバイスとの少なくとも上記の既知の電気的接続の欠点を克服する電気的な接続である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006] 本開示の態様によれば、極低温チャンバ内にある超電導部品と極低温チャンバ外にある電気デバイスとを電気的に接続するための装置が開示される。この装置は、複数のらせんループを含むコイルと、第1の状態と第2の状態との間でコイルを圧縮及び拡張させるアクチュエータとを含む。第1の状態では、コイルは第1の電気抵抗及び第1の熱伝導度を有し、第2の状態では、コイルは第2の電気抵抗及び第2の熱伝導度を有する。
【0007】
[0007] 本開示の別の態様によれば、極低温チャンバ内にある超電導体部品に電流を提供する方法が開示されている。この方法は、複数のらせんループを含むコイルを含む装置を提供するステップと、コイルを第1の状態に圧縮するステップであって、第1の状態では、コイルは第1の電気抵抗及び第1の熱伝導度を有する、圧縮するステップと、コイルを第2の状態に拡張するステップであって、第2の状態では、コイルは第2の電気抵抗及び第2の熱伝導度を有する、拡張するステップとを含む。
【0008】
[0008] 本開示の別の態様によれば、磁気共鳴イメージング(MRI)システムは、極低温チャンバ内にある超電導磁石を含む磁石システムと、極低温チャンバ内にある超電導部品と極低温チャンバ外にある電気デバイスとを電気的に接続するための装置とを含む。この装置は、複数のらせんループを含むコイルと、第1の状態と第2の状態との間でコイルを圧縮及び拡張させるアクチュエータとを含む。第1の状態では、コイルは第1の電気抵抗及び第1の熱伝導度を有し、第2の状態では、コイルは第2の電気抵抗及び第2の熱伝導度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
[0009] 実施形態の例は、以下の詳細な説明を、添付の図面図と共に読むと、最もよく理解される。様々な特徴が、必ずしも縮尺どおりに描画されているわけではないことを強調する。実際には、考察を明確にするために、寸法は任意に増減されている。適用可能及び実用的である場合は、同様の参照符号は、同様の要素を指す。
【0010】
図1】[0001] 図1は、代表的な実施形態による磁気共鳴イメージング(MRI)システムを示す。
図2】[0010] 図2は、代表的な実施形態による極低温チャンバ内にある超電導部品と極低温チャンバ外にある電気デバイスとを電気的に接続するための装置の斜視図である。
図3】[0011] 図3は、代表的な実施形態による、第1の状態にある極低温チャンバ内にある電気的接続を行うための装置の断面図である。
図4】[0012] 図4は、代表的な実施形態による、第2の状態にある極低温チャンバ内にある電気的接続を行うための装置の断面図である。
図5】[0013] 図5は、代表的な実施形態による、第1の状態にある極低温チャンバ内の電気的接続を行うための装置の断面積を示す斜視図である。
図6】[0014] 図6は、代表的な実施形態による、第2の状態にある極低温チャンバ内の電気的接続を行うための装置の断面積を示す斜視図である。
図7】[0015] 図7は、極低温チャンバ内の電気的接続を行うための装置を第2の状態から第1の状態に圧縮するために、アクチュエータによって印加される圧縮力及び拡張力を示す概念図である。
図8】[0016] 図8は、代表的な実施形態による、極低温チャンバ内にある超電導体部品に電流を提供する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0017] 以下の詳細な説明では、限定ではなく説明を目的として、本教示による実施形態の完全な理解を提供するために、特定の詳細を開示する代表的な実施形態が記載される。代表的な実施形態の説明が不明瞭にならないように、既知のシステム、デバイス、材料、操作方法、及び製造方法の説明を省略する場合がある。しかしながら、当業者の権限範囲内にあるシステム、デバイス、材料、及び方法は、本教示の範囲内であり、また、代表的な実施形態に従って使用され得る。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としたものであり、限定であることを意図したものではないことを理解されたい。定義された用語は、本教示の技術分野で一般的に理解され、受け入れられている、定義された用語の技術的及び科学的な意味を加えるものである。
【0012】
[0018] 本明細書では、「第1の」、「第2の」、「第3の」などの用語を使用して、様々な要素又は構成要素を説明しているが、これらの要素又は構成要素は、これらの用語によって限定されないことを理解されたい。これらの用語は、1つの要素又は構成要素を別の要素又は構成要素と区別するためにのみ使用される。したがって、以下で考察される第1の要素又は構成要素は、発明概念の教示から逸脱することなく、第2の要素又は構成要素と呼ばれてもよい。
【0013】
[0019] 本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としたものであり、限定であることを意図したものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の用語は、コンテキストが明確に指示していない限り、単数形及び複数形の両方を含むことを意図している。更に、用語「含む」及び/又は同様の用語は、規定された特徴、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、要素、構成要素、及び/又はそのグループの存在又は追加を除外するものではない。本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」には、関連するリスト項目のうちの1つ以上のうちの任意のもの及び全ての組み合わせが含まれる。
【0014】
[0020] 特に明記されていない限り、要素又は構成要素が、別の要素又は構成要素に「接続される」、「結合される」、又は「隣接する」と言われた場合、その要素又は構成要素は、他の要素若しくは構成要素に直接接続若しくは結合されていても、又は、介在する要素若しくは構成要素が存在していてもよいことを理解されたい。つまり、これらの及び類似した用語は、2つの要素又は構成要素を接続するために、1つ以上の中間要素又は構成要素を使用できる場合を包含する。しかしながら、要素又は構成要素が別の要素又は構成要素に「直接接続」されていると言われた場合、これには、2つの要素又は構成要素が、中間若しくは介在要素又は構成要素なしで、相互に接続される場合のみが包含される。
【0015】
[0021] 本明細書及び添付の請求請求の範囲において使用される場合、また、それらの通常の意味に加えて、用語「実質的」又は「実質的に」は、許容可能な限界又は程度を意味する。例えば「実質的に熱的に分離されている」とは、当業者が熱的分離を許容できると考えることを意味する。
【0016】
[0022] 本明細書及び添付の請求請求の範囲において使用される場合、また、それらの通常の意味に加えて、用語「おおよそ/ほぼ/約」は、当業者には許容できる限度又は量内であることを意味する。例えば「ほぼ同じ」とは、当業者が比較対象のアイテムを同じであると考えることを意味する。
【0017】
[0023] 本開示は、その様々な態様のうちの1つ以上によって、実施形態、及び/又は特定の特徴、サブコンポーネントを説明し、したがって、以下に具体的に示す利点のうちの1つ以上をもたらすことを目的としている。限定ではなく説明のために、特定の詳細を開示する実施形態の例を記載して、本教示による実施形態の完全な理解を提供する。しかしながら、本明細書に開示された特定の詳細から逸脱した本開示に一致する他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内にとどまる。更に、実施形態の例の説明が不明瞭にならないように、よく知られている装置及び方法の説明は省略され得る。このような方法及び装置は、本開示の範囲内である。
【0018】
[0024] 本教示では、極低温チャンバからの熱損失を減少させる密封超電導磁石間の電気的接続を提供するための装置及び方法が開示される。特定の実施形態では、装置は、極低温チャンバの真空空間内にあるアクチュエータ(ソレノイド作動式電気スイッチなど)に接続して、過渡使用中の室温空間内にある電気デバイスと極低温チャンバ内にある超電導磁石との電気的接続を可能にする一方で、定常状態運転中の極低温チャンバからの著しい熱損失を実質的に熱的に防止する(つまり、超電導磁石の実質的な熱的分離を提供する)。
【0019】
[0025] 有益に、また、以下でより詳細に説明するように、本教示の装置及び方法は、磁気システム内の磁気双安定挙動(つまり、ランプアップ運転及び定常状態運転)、オーム発熱、熱伝導、及び氷不耐性のバランスをとることの困難を実質的に克服する。以下でより詳細に説明するように、様々な代表的な実施形態に関連して説明する装置は、既知の電気的接続と比較して、より低いオーム発熱、同様の定常状態熱伝導、低い過渡状態熱伝導、及び優れた氷耐性を達成する。これらの改良点により、いくつか例を挙げると、冷凍能力、磁石システムの可用性、及び磁石システムの信頼性、並びに磁石の製造性などの分野で性能が向上する。最後に、本教示の装置及び方法の様々な代表的な実施形態は、磁気共鳴イメージング(MRI)システムに関連して説明されるが、これは単なる例示的な用途であることを強調しておく。より一般的には、本教示の装置及び方法は、極低温チャンバ内のデバイスと極低温チャンバ外にあり且つより高い温度(室温など)にある電気デバイスとの電気的な接続を必要とする他の用途での使用を想定している。
【0020】
[0026] 以下で説明される様々な例示的な実施形態の装置によって提供される超電導磁石への電気的接続は、磁場の状態を変更するために必要である。イメージングのために磁石が必要となると、第1の状態にある装置を介して超電導コイルに電流が流されてランプアップされる。完全磁場が達成されて超電導回路が完成すると、装置は第2の状態にされる。以下でより詳細に説明するように、第2の状態では、装置による電気的伝導と熱的伝導の両方が、第1の状態よりも約2桁低くなる。
【0021】
[0027] 特定の状況では、装置を第1の状態に戻して電圧をゼロにすることで、装置を介して超電導コイルから電流を除去する。装置の作動は、デバイスが第1の状態から第2の状態に、又はその逆にいつ切り替わることができるかを決定する内蔵磁石電子機器によって制御される。電子機器は、既知のアルゴリズムを使用して、多数のセンサからの入力に基づいて、装置の作動をいつ行うかを決定する。これらの電子機器は、プロセッサ112、メモリ114、及びアクチュエータ304、404、504を含み、後述するMRIシステム100の一部であり得、また後述する方法800に従って機能する。或いは、装置は手動で操作されて、ランプアップ/ランプダウンイベントのタイミング及びシーケンスに基づいて、第1の状態と第2の状態とを切り替えることもできる。
【0022】
[0028] 磁石は外部の介入なしに非常に長い期間(長年)磁場に留まることができるにもかかわらず、超電導磁石をランプダウンし、その後、動作のために再び超電導磁石をランプアップさせることには理由がある。これらの理由には、例えば、外部磁石システム部品の予防的保守管理スケジュール、イメージングスイートのクリーニング又は保守管理、安全性、電源喪失、及び他の一般的な出来事が含まれる。本教示では、超電導磁石を収容する極低温チャンバの密閉を損なうことなく、超電導磁石のこれらの所望のランプアップ及びランプダウンを実行できる。更に、比較的長い運転期間中に、様々な代表的な実施形態の装置は、極低温チャンバからの熱損失を許容可能なレベルにまで減少させる。説明を目的として、第2の状態での熱損失は、第1の状態(ランプアップ時など)での熱損失と比較して約2桁低い。
【0023】
[0029] 図1は、代表的な実施形態によるMRIシステム100の模範的な実施形態を示している。MRIシステム100は、磁石システム101、被検体又は患者20を保持する患者テーブル104、MRIシステム100が画像を生成する対象である患者20の少なくとも一部を少なくとも部分的に囲む勾配コイル103、イメージングされる被検体又は患者20の少なくとも一部に高周波信号を適用し、磁場の配列に摂動を与える高周波コイル105、並びに高周波信号及び患者20によってもたらされる磁場の変化を検出する1つ以上のセンサ10を含む。特に、磁石システム101は、極低温チャンバ107内にある主磁石106を含む。主磁石106は、極低温チャンバ107を介して適切な温度及び圧力に維持される超電導コイル108を含む。上述したように、磁石システム101は、導管109を介した電気的接続、及び超電導磁石に給電するために使用される電源(図示せず)に超電導コイル108を接続する2状態装置(図1には図示せず)を用いて密閉される。特に、MRIシステム100は単数形で説明されているが、用語「システム」は、1以上のセットのソフトウェア命令を個別に又は共同で実行するシステム又はサブシステムの集合も含むものと解釈されるものとする。
【0024】
[0030] MRIシステム100はまた、電源110、プロセッサ112、及びメモリ114を含む。メモリ114とプロセッサ112とを組み合わせてコントローラと呼ぶこともある。特定の代表的な実施形態では、メモリ114及びプロセッサ112は、システムの様々な構成要素を制御するために使用されるメインシステム(図示せず)の構成要素であってもよい。或いは、メモリ114及びプロセッサ112は、メインシステムとは別個の要素であってもよい。コントローラは、発光ダイオード(LED)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、ソリッドステートディスプレイ、又は陰極線管(CRT)などを含むが、これらに限定されないディスプレイ(図示せず)を含んでいてもよい。メモリ114及びプロセッサ112を含むコントローラは、コンピュータ又は1つ以上のコンピュータ機能を行うために、スタンドアロンコンピューティングシステム、デスクトップ若しくはタブレットなどの形式の、1つ以上のコンピューティングデバイス、ディスプレイ/モニタ、及び1つ以上の入力デバイス(キーボード、ジョイスティック、マウスなど)からなる別のアセンブリなどのワークステーション(図示せず)に収容されるか、又はリンクされていてもよい。
【0025】
[0031] 有形で非一時的であるプロセッサ112は、1つ以上のプロセッサを表している。本明細書で使用される場合、用語「非一時的」は、状態の永遠の特性ではなく、一定期間持続する状態の特性として解釈される。用語「非一時的」は、特に、搬送波又は信号やいつでもどこでも一時的にしか存在しないような他の形式の特性など、一瞬の特性を否定するものである。本教示のプロセッサ112(及び他のプロセッサ)は、製品及び/又は機械部品である。
【0026】
[0032] プロセッサ112は、メモリ114に保存されているソフトウェア命令を実行して、本明細書における様々な実施形態に説明されている装置を使用して超電導磁石のランプアップ及びランプダウンを含む様々な機能を行う。プロセッサ112は、汎用プロセッサであっても、特定用途向け集積回路(ASIC)の一部であってもよい。プロセッサ112はまた、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサチップ、コントローラ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、ステートマシン、又はプログラマブルロジックデバイスであってもよい(又はこれらを含んでいてもよい)。プロセッサ112はまた、FPGAなどのプログラマブルゲートアレイ(PGA)や、ディスクリートゲート及び/又はトランジスタロジックを含む別のタイプの回路などのロジック回路であってもよい(又はこれらを含んでいてもよい)。プロセッサ112は、中央処理装置(CPU)、グラフィックス処理装置(GPU)、又はその両方であってもよい(又はこれらを含んでいてもよい)。更に、プロセッサ112は、複数のプロセッサ、パラレルプロセッサ、又はその両方を含んでいてもよい。単一のデバイス又は複数のデバイスに、複数のプロセッサが含まれていても、結合されていてもよい。
【0027】
[0033] メモリ114は、メインメモリ、スタティックメモリ、又はその両方を含んでいてもよく、メモリはバス(図示せず)を介して相互に通信し得る。本明細書で説明したメモリ114は、データ及び実行可能命令を保存可能な有形記憶媒体であり、命令がそこに保存されている間は非一時的である。本明細書で使用される場合、用語「非一時的」は、状態の永遠の特性ではなく、一定期間持続する状態の特性として解釈される。用語「非一時的」は、特に、搬送波又は信号やいつでもどこでも一時的にしか存在しないような他の形式の特性など、一瞬の特性を否定するものである。
【0028】
[0034] 本教示のメモリ114は、製品及び/又は機械部品である。メモリ114には、1つ以上のコンピュータ可読媒体が含まれ、そこからプロセッサ112がデータと実行可能命令(例えば、ランプアップ運転及び定常状態運転に関連して説明されたプロセスを実行するために)を読み取ることができる。本明細書で説明されるメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、電気的にプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM(登録商標))、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、テープ、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、フロッピー(登録商標)ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク、又は当業者に知られている任意の他の形式の記憶媒体であり得る。本教示のメモリは、揮発性若しくは不揮発性メモリ、セキュア及び/若しくは暗号化されたメモリ、非セキュア及び/若しくは非暗号化のメモリであってもよい。モニタ及びインターフェース(図示せず)、プロセッサ112及びメモリ114は、コンピュータ、又は、スタンドアロンコンピューティングシステム、デスクトップ若しくはタブレットなどの形式の、1つ以上のコンピューティングデバイス、ディスプレイ/モニタ、及び1つ以上の入力デバイス(キーボード、ジョイスティック、マウスなど)からなる別のアセンブリなどのワークステーション(図示せず)に収容されるか、又はリンクされていてもよい。
【0029】
[0035] 説明を目的として、主磁石は、コーニンクレッカフィリップス社から市販されている1.5T(又はそれ以上)の密閉型MRI磁石である。後述の装置は、300Kの外部電源を40Kに維持した超電導磁石に電気的に接続することができ、既知の接続と比較して電気的特性及び熱的特性が向上される。ただし、この装置はMRIデバイスやシステムでの使用に限定されるものではなく、特定の所望の電気的及び熱的挙動を必要とする比較的大きな温度勾配にわたって電気的接続が必要な多くの用途のうちの1つに実装され得ることを強調しておく。そのため、本教示の様々な実施形態の装置は、比較的低温の環境(極低温チャンバなど)と比較的高温の環境(室温など)との界面を渡る電気的接続を可能にする。
【0030】
[0036] 図2は、代表的な実施形態による、極低温チャンバ(図2には図示せず)内にある超電導部品(図2には図示せず)と、極低温チャンバ外にある電気デバイス(図2には図示せず)とを電気的に接続するための装置200の斜視図である。装置200は、第1の端部202、第2の端部204、及び第1の端部202と第2の端部204との間の複数のらせんループ206を有している。本説明が進むにつれて理解されるように、この装置は、超電導部品と電気デバイスとの間に電気経路及び熱経路を提供する。図2では、装置は圧縮状態(第1の状態と呼ぶこともある)で示されている。これは、断面積の増加をもたらし、結果として、拡張状態(第2の状態と呼ぶこともある)に伸張した装置200と比較して、電気抵抗が減少し、熱伝導度が増加する。
【0031】
[0037] 装置200は、全体的に、図2の座標系の-x方向に圧縮するか、図2の座標系の+x方向に伸張する継ぎ目208ができるように切断された可撓性の導電性材料で作られている。理解を助けるために、導電性材料は銅又はアルミニウムを含み、圧縮状態の装置200は、約4インチ(1インチ=2.54cm)の軸方向(図2の座標系のx方向)に沿った長さを有する。
【0032】
[0038] 以下でより詳細に説明するように、圧縮されたときは、隣接するらせんループ206間の継ぎ目208は、隣接するらせんループ206が互いに物理的に接触しているため、有益に実質的に間隙がない。対照的に、伸張したときは、隣接するらせんループ間の継ぎ目208は比較的大きくなり、通常、1つのらせんループ206が隣接するらせんループ206と物理的に接触しないようにされる。単なる説明として、圧縮されていない状態では、継ぎ目208は約0.050インチ~0.100インチの間隙を形成する。特に、間隙は、通常、装置を第2の状態に拡張するために必要な動きの距離と必要な力とに左右される。したがって、装置200は、以下で説明するように、第1の状態に圧縮可能で且つ第2の状態に伸張可能で、その有効断面積を変化させ、電気伝導率及び熱伝導率の両方を変化させることができる連続構造物である。
【0033】
[0039] 図3は、代表的な実施形態による、第1の状態にある極低温チャンバ302内にある電気的接続を行うための装置300の断面図である。装置300の様々な態様及び詳細は、図1及び図2の代表的実施形態に関連して説明されたものと類似又は同一であり、本代表的実施形態の説明を不明瞭にしないために繰り返さない。
【0034】
[0040] 装置300は、極低温チャンバ302内にあり、アクチュエータ304を含む。理解を助けるために、アクチュエータ304は電気的なソレノイド作動式デバイスである。より一般的には、アクチュエータ304は、装置300を拡張/圧縮するのに適した力を提供する多くのデバイスのうちの1つである。これらには、既知のリニアモータや、カム、ピストン、又はロッドなどの並進機構が含まれるが、これらに限定されない。以下でより詳細に説明するように、アクチュエータ304は、電源(図示せず)からの電力を超電導部品に供給するための接続が必要なときに、装置300を(図示の座標系の-z方向に)圧縮する。上記のように、圧縮により装置は第1の状態となり、装置は電気的(及び熱的)に伝導する管を形成する。対照的に、また、以下でより詳細に説明するように、超電導部品が定常状態モードで機能しているときは、アクチュエータは力を加えて装置300を拡張して、装置300を第2の状態にする。第2の状態では、装置300を構成しているらせんループ間の継ぎ目が比較的大きくなり、通常、1つのらせんループが隣接するらせんループと物理的に接触しないようにされる。上記のように、第2の状態では、電気抵抗が比較的高く、熱伝導度が比較的低くなる。装置300は、導管306を使用して極低温チャンバ302に接続される。理解を助けるために、導管306は、セラミックピース(リングなど)であり、これを介して、アクチュエータ304及び装置300への電気的接続308が形成される。導管306は、有益に熱をあまり伝導しないため、周囲から極低温チャンバ302への熱伝達を低減して、極低温チャンバ内にある超電導部品の性能に大きな影響を与えないようにする。したがって、導管306は、通常、周囲又は極低温容器の外部からの実質的な電気的分離及び熱的分離を、実質的に漏れのない密閉と共に提供するセラミック材料を含む。導管306の直径は、一般に約2インチ~約3インチであり、厚さ(図3の座標系のx方向)は、約0.5インチである。
【0035】
[0041] 第1の状態では、装置300は、外部の電気デバイスと極低温チャンバ内の超電導部品との間に電気抵抗が比較的低い経路を提供する。上述したように、また、以下でより詳細に説明するように、圧縮状態(第1の状態)では、装置は、図示のようにリング状の断面を有する実質的に中実の管を提供する。このリング状の断面は、装置300が圧縮されていないときの分離したらせんループと比較して、電気的(及び熱的)伝導度の高い断面を提供する。そのため、この第1の状態では、電気抵抗は、以下でより詳細に説明するように、第2の状態での電気抵抗と比較して有益に低い。
【0036】
[0042] 例えば、超電導部品がランプアップを必要とするとき、アクチュエータ304が装置300を圧縮し、外部電子デバイス(電源など)から(外部)電気接続308を経由して、超電導部品に電気的に接続されている内部電気接続310への電気経路を提供する。理解されるように、装置300は、300Kの外部電気デバイス(電源など)と40Kに維持される超電導部品(MRIデバイス又はシステムの磁石など)との電気的接続を可能にし、既知の接続と比較して電気的特性及び熱的特性を向上させる。
【0037】
[0043] 図4は、代表的な実施形態による、第2の状態にある極低温チャンバ内にある電気的接続を行うための装置400の断面図である。装置400の様々な態様及び詳細は、図1図3の代表的実施形態に関連して説明されたものと類似又は同一であり、本代表的実施形態の説明を不明瞭にしないために繰り返さない。
【0038】
[0044] 装置400は、極低温チャンバ402内にあり、アクチュエータ404を含む。理解を助けるために、アクチュエータ404は、ソレノイド作動式デバイスである。以下でより詳細に説明するように、アクチュエータ404は、超電導部品が、超電導部品に実質的に電力が供給されていない定常状態で動作しているときに、装置400を(図の座標系の+z方向に)拡張する。上記のように、装置400の拡張により、装置は、装置400を構成しているらせんループ間の継ぎ目が比較的大きくなり、通常、1つのらせんループが隣接するらせんループと物理的に接触しないようにする第2の状態になる。上記のように、第2の状態では、電気抵抗が比較的高く、熱伝導度が比較的低くなる。
【0039】
[0045] 装置400は、導管406を使用して極低温チャンバ402に接続される。理解を助けるために、導管406は、上記の導管306と実質的に同じで、セラミックピース(リングなど)であり、これを介して、アクチュエータ404及び装置400への電気的接続408が形成される。導管406は、有益に熱をあまり伝導しないため、周囲から極低温チャンバ402への熱伝達を低減して、極低温チャンバ内にある超電導部品の性能に大きな影響を与えないようにする。
【0040】
[0046] 第2の状態では、装置400は、外部の電気デバイスと極低温チャンバ402内の超電導部品との間に電気抵抗が比較的高い経路を提供する。上述したように、また、以下でより詳細に説明するように、拡張状態(第2の状態)では、装置は、図示のように実質的に長方形の断面を提供する。この長方形の断面は、装置400が圧縮されているときのリング状の断面ループと比較して、電気的(及び熱的)伝導度が小さい断面を提供する。そのため、この第2の状態では、熱抵抗は、以下でより詳細に説明するように、第1の状態での装置400の熱抵抗と比較して有益に高い。
【0041】
[0047] 例えば、超電導部品が定常状態動作を必要とするときは、アクチュエータ404は装置400を拡張する。装置400の導電性断面が比較的小さいため、外部電子デバイス(電源など)から(外部)電気接続408を経由して、超電導部品に電気的に接続されている内部電気接続410への電気経路の電気抵抗及び熱抵抗は比較的大きい。そのため、定常状態動作中の第2の状態では、電流伝導及び熱伝導は許容値にまで低減される。理解を助けるために、定常状態動作中の第2の状態では、電流伝導及び熱伝導は許容レベルにまで低減される。理解を助けるために、定常状態動作中の第2の状態では、電流伝導及び熱伝導は、上記の装置300の電流伝導及び熱伝導よりも2桁低い。有益に、これにより、極低温チャンバ402からの熱損失が減少される。理解されるように、装置400は、300Kの外部電気デバイス(電源など)と40Kに維持される超電導部品(MRIデバイス又はシステムの磁石など)との電気的接続を可能にし、既知の接続と比較して電気的特性及び熱的特性を向上させる。
【0042】
[0048] 有益に、第2の状態の比較的低い電気伝導度は、ある種の自己洗浄を促進する。具体的には、磁石が定常状態で動作しているときの表面の氷形成は珍しい問題ではない。これは、環境中の窒素から氷が形成される可能性があるため、実質的に水分がない場合でも発生する。既知のデバイスでは、電気接続部の接点パッドに氷が形成することがある。そのため、装置400の明確な利点はらせんコイル設計にある。このために、装置400が定常状態動作中に第2の状態にあるときに、隣接するらせんコイル(例えば、後述する代表的な実施形態の隣接するらせんループ506の継ぎ目508)間の隣接する巻回間に氷が形成される場合、装置を第1の状態に圧縮するための作動によってらせんループが圧縮され、以下で説明するように、氷が形成した位置での導電性断面が減少するが、コイルの巻回が(ある程度の間隙が維持されて)分離され、電気的には、この巻回の断面は第2の状態の断面に相当することになる(後述)。これにより、電気抵抗が比較的高くなり、オーム加熱が比較的大きくなる。装置400が第1の状態に圧縮されると、伝導中に発生する熱によって、温度が上昇して氷が溶け、隣接するらせんコイル間の間隙は再び実質的にゼロになる(つまり、互いに接触する)。有益に、本教示では、この洗浄ステップは極低温チャンバの外側にあるコントローラによって行われ、したがって、極低温チャンバの密閉を損なうことなく行われる。
【0043】
[0049] 図5は、代表的な実施形態による、第1の状態にある極低温チャンバ内の電気的接続を行うための装置500の断面積を示す斜視図である。装置500の様々な態様及び詳細は、図1図4の代表的実施形態に関連して説明されたものと類似又は同一であり、本代表的実施形態の説明を不明瞭にしないために繰り返さない。
【0044】
[0050] 装置500は複数のらせんループ506を含む。装置500は、超電導部品と電気デバイスとの間に電気経路及び熱経路を提供する。上記の装置と同様に、装置500は、全体的に、図5の座標系の-z方向に圧縮するか、又は、以下で説明するように、図5の座標系の+z方向に伸張して拡張状態になる継ぎ目508ができるように切断された可撓性の導電性材料で作られている。上記のように、圧縮されると、隣接するらせんループ506間の継ぎ目508は比較的小さくなる。したがって、圧縮されると、隣接するらせんループ506は密接に接触し、その結果、装置500はリング状の導電性断面を示す。具体的には、装置500の断面積はπ(r -r )であり、ここで、rはらせんループ506の外径であり、rはらせんループ506の内径である。上記のように、この第1の状態では、装置が第2の状態にあるとき(隣接するらせんリングが物理的に分離しているとき)と比較して、装置によって提供される電気抵抗は低くなる。特に、装置500の電気抵抗及び熱抵抗は許容レベルにまで低減される。理解を助けるために、装置500の電気抵抗及び熱抵抗は、らせんループ506が分離した第2の状態での装置の電気抵抗及び熱伝導度よりも2桁低い。
【0045】
[0051] 第1の状態では、装置500の一方の端からもう一方の端まで連続的な電気経路が提供され、表面汚染の影響が最小限に抑えられる。具体的には、隣接するらせんループ506の合わせ面が圧縮されると、圧縮された構造(巻回)は汚染されることがなく、電気は大きい圧縮された断面を通って、且つ短い圧縮された長さに沿って伝導する。拡張した装置に比べて断面積が大きい装置500によって提供される短い構造は、わずかな熱抵抗性を示す。更に、隣接するらせんループ506間の合わせ面が氷で汚染されている場合、伝導性の断面が減少するため、これらの領域で熱が局所的に発生する。装置500のこの領域は電流の流れによって加熱されるため、汚染物は(特に真空中で)蒸発し、所望どおりに、きれいな導電面が残る。
【0046】
[0052] 更に、閉じた断面に似た導電をもたらす隣接するらせんループ506間の巻回間の圧力は、閉じた断面に似た熱伝導をもたらす巻回間の圧力よりもはるかに低くなる。これは、圧縮された装置500の断面がほぼ電気的に中断されないが、らせんループ506が分離している拡張状態での装置と比較して、断面が熱的にはるかに小さいことを意味する。
【0047】
[0053] 図6は、代表的な実施形態による、第1の状態にある極低温チャンバ内の電気的接続を行うための装置600の断面積を示す斜視図である。装置600の様々な態様及び詳細は、図1図5の代表的実施形態に関連して説明されたものと類似又は同一であり、本代表的実施形態の説明を不明瞭にしないために繰り返さない。
【0048】
[0054] 装置600は複数のらせんループ606を含む。装置500は、超電導部品と電気デバイスとの間に電気経路及び熱経路を提供する。上記の装置と同様に、装置600は、全体的に、図6の座標系の+z方向に伸長又は拡張するか、又は、上述したように、図6の座標系の-z方向に圧縮して圧縮状態になる継ぎ目508ができるように切断された可撓性の導電性材料で作られている。上記のように、伸長されると、隣接するらせんループ606間の継ぎ目608は比較的大きくなる。したがって、伸張又は拡張されると、隣接するらせんループ606は伸張され、装置600は、面積H×Wを持つ長方形の導電性の断面を示す。ここで、Hはらせんループ606の高さであり、Wはらせんループ606の幅である。特に、H=Wの場合、装置は正方形の導電性の断面を示す。上記のように、この第2の状態では、装置が第1の状態にあるとき(隣接するらせんリングが物理的に分離しているとき)と比較して、装置によって提供される電気抵抗は高くなる。特に、装置600の電気抵抗及び熱抵抗は、装置500に比べて増加する。理解を助けるために、装置600の電気抵抗及び熱抵抗は、らせんコイルが分離した第1の状態での装置500の電気抵抗及び熱伝導度よりも2桁大きい。
【0049】
[0055] 特に、装置600に電流を通す必要がない期間には、装置600は圧縮されず、隣接するらせんループ606は分離している(つまり、継ぎ目608は、図6の座標系の+z方向により大きい)。この第2の状態では、装置600の一方の端からもう一方の端への熱伝導は、圧縮された装置500と比較して、比較的小さなH×W断面を通り、大きい非圧縮の長さに沿って行われる必要がある。断面積が小さいこのような比較的長い構造は、圧縮された装置500と比較して熱伝導が小さい。
【0050】
[0056] 更に、隣接するらせんループ606間の継ぎ目608の開放空間を介して放射される熱は、圧縮された装置500と比較して低減する。これにより、装置500と比較して、隣接するらせんループ606間の温度差は小さくなる。更に、装置600を真空中で使用されると、継ぎ目608を横切る対流熱伝達はない。したがって、この第2の状態では、装置600による熱損失は、らせんループ506が圧縮されて互いに接触している装置500と比較して低くなる。
【0051】
[0057] 図7は、極低温チャンバ内の電気的接続を行うための装置700を第2の状態から第1の状態に圧縮及び伸長又は拡張するために、アクチュエータによって印加される圧縮力及び拡張力(F)を示す概念図である。装置700の様々な態様及び詳細は、図1図6の代表的実施形態に関連して説明されたものと類似又は同一であり、本代表的実施形態の説明を不明瞭にしないために繰り返さない。
【0052】
[0058] 図7に示すように、アクチュエータ(アクチュエータ304、404など)は、装置700を圧縮し(つまり、図7に示す座標系に従って-z方向における力)、装置700を拡張又は伸張する力(つまり、図7に示す座標系に従って+z方向の力)を印加する。上述したように、アクチュエータによって圧縮されると、装置700は、装置700が伸張されたときと比較して、電気抵抗が低く、熱伝導度が高い第1の状態になる。同様に、アクチュエータによって伸長されると、装置700は、第2の状態になり、装置700が圧縮されたときと比較して、電気抵抗が高く、熱伝導度が低くなる。上記のように、第1の状態の装置700の電気抵抗及び熱伝導度は、第2の状態の装置700の電気抵抗及び熱伝導度よりも2桁低い。
【0053】
[0059] 図8は、代表的な実施形態による、極低温チャンバ内にある超電導体部品に電流を提供する方法のフローチャートである。方法800の様々な態様及び詳細は、図1図7の代表的実施形態に関連して説明されたものと類似又は同一であり、本代表的実施形態の説明を不明瞭にしないために繰り返さない。
【0054】
[0060] 方法は、ステップ801で、複数のらせんループを含むコイルを含む装置を提供する。
【0055】
[0061] 方法は、ステップ802で、コイルを第1の状態に圧縮する。第1の状態では、装置は第1の電気抵抗及び第1の熱伝導度を有する。
【0056】
[0062] 方法は、ステップ803で、装置を第2の状態に拡張する。第2の状態では、装置は第2の電気抵抗及び第2の熱伝導度を有する。
【0057】
[0063] 熱損失を減少させて、比較的低温の環境(極低温チャンバなど)と比較的高温の環境(室温など)との界面を渡って電力を供給する方法、システム、及び構成要素を、いくつかの模範的な実施形態を参照して説明したが、使用した用語は、限定の用語ではなく、説明や例示の用語であると理解される。介入手順の最適化の範囲及び趣旨から逸脱することなく、現在提示されている及び補正されている添付の特許請求の範囲内で、その態様において、変更を行ってもよい。適応可能な予測分析の開発について、特定の手段、材料、及び実施形態を参照して説明したが、適応可能な予測分析の開発は、開示された詳細に限定されることを意図したものではない。むしろ、適応可能な予測分析の開発は、添付の特許請求の範囲にあるような全ての機能的に同等の構造、方法、及び使用にまで及ぶ。
【0058】
[0064] 本明細書で説明する実施形態の説明図は、様々な実施形態の構造の一般的な理解を提供することを目的としている。説明図は、本明細書で説明する開示の全ての要素及び特徴を完全に説明するものではない。他の多くの実施形態は、本開示を検討した際に、当業者には明らかであろう。本開示の範囲から逸脱することなく、構造的及び論理的な置換や変更を行うことができるなど、他の実施形態を本開示から利用し、派生させることができる。更に、説明図は、代表的に過ぎず、縮尺どおりではない場合がある。説明図中の特定の割合は誇張されている場合があり、他の割合は最小化されている場合がある。したがって、本開示及び図は、制限的ではなく、例示的なものとみなされるべきである。
【0059】
[0065] 本明細書には、特定の実施形態が例示及び説明されているが、同じ又は類似の目的を達成するように設計された後続の配置を、示されている特定の実施形態と置き換えることができることを理解すべきである。本開示は、様々な実施形態の任意のかつあらゆるその後の適応又は変化を対象とすることを意図している。上記の実施形態と、本明細書には具体的には説明されていない他の実施形態との組み合わせは、説明を検討した際に、当業者には明らかであろう。
【0060】
[0066] 本開示の要約書は、37C.F.R§1.72(b)に準拠するために提供されており、また、特許請求の範囲又は意味を解釈又は限定するために使用されないという理解の下に提出されている。また、上記の「発明を実施するための形態」では、本開示の合理化を目的として、様々な特徴を単一の実施形態にまとめたり、説明している可能性がある。本開示は、請求項に係る実施形態が各請求項で明示的に記載されているものよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映しているとして解釈されるものではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が示すように、発明の主題は、開示された実施形態のいずれかの全ての特徴よりも少ないものを対象とする可能性がある。したがって、以下の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」に組み込まれ、各請求項は、請求項に係る個別の主題を定義するものとして自立している。
【0061】
[0067] 開示された実施形態の前述の説明は、当業者であれば誰でも、本開示で説明する概念を実践できるようにするために提供されている。したがって、上記の開示された主題は、制限的ではなく、例示的とみなされる。また、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨及び範囲に該当する、全てのそのような修正、増強、及び他の実施を対象とすることを目的としている。したがって、法律で認められる最大限の範囲において、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその同等物の許容される最も広範な解釈によって決定されるものとし、前述の詳細な説明によって制限又は限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】