(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】光学系及び使用方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20240705BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240705BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
G01N33/483 C
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580783
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2022067374
(87)【国際公開番号】W WO2023274880
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505258715
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim Vetmedica GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】ニーマイヤー アクセル
(72)【発明者】
【氏名】グリースナー マティアス
(72)【発明者】
【氏名】オソリオ リカルド
【テーマコード(参考)】
2G045
2G059
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB01
2G045CB04
2G045CB07
2G045CB30
2G045DA36
2G045DA54
2G045FA11
2G059BB04
2G059BB08
2G059BB12
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2G059CC16
2G059CC18
2G059EE01
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2G059EE03
2G059EE07
2G059EE12
2G059GG01
2G059GG02
2G059GG03
2G059HH01
2G059HH02
2G059HH03
2G059JJ01
2G059JJ17
2G059KK04
2G059LL02
2G059MM04
2G059MM14
4B063QA01
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QX01
(57)【要約】
本発明は、光学系によって特徴付けられることになる体液又は組織又は環境サンプルの要素(E)を受け入れるためのチャンバ(26)と、チャンバ(26)を光で照明するための光源(5)と、チャンバ(26)から発生する光のスペクトルを記録するための分光計(6)とを有する光学系に関連し、光源(5)は、異なる波長範囲の少なくとも2つのスペクトル最大値を有する光を放出する2つの別々のLED(5A,5B)を含み、光源(5)は、光源(5)が起動された時に光が光源(5)からチャンバ(26)に向けられるようにチャンバ(26)に結合される。更に、本発明は、光学系を用いてパラメータを決定する方法に関連し、光学系は、光学系によって特徴付けられることになる体液又は組織又は環境サンプルの要素を受け入れるためのチャンバ(26)と、チャンバを光で照明するための光源(5)と、チャンバ(26)から発生する光のスペクトルを測定するための分光計(6)とを含み、要素の特質を表すパラメータを決定するために、異なる波長範囲の少なくとも2つのスペクトル最大値を有する光が、別々のLED(5A,5B)によって発生されて要素の上に向けられ、光の反射成分、光の散乱成分、及び/又は要素のラマン散乱及び/又は蛍光によって引き起こされた光を含むスペクトルが、分光計(6)を用いて測定され、パラメータが、スペクトルを評価することによって決定される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系(5)によって特徴付けられることになる好ましくは体液又は組織又は環境サンプルの要素(E)を受け入れるためのチャンバ(26)と、前記チャンバ(26)を光で照明するための光源(5)と、前記チャンバから発生する光のスペクトルを測定するための分光計(6)とを有する光学系(5)であって、
前記光源は、異なる波長範囲(UV,VIS,NIR)に少なくとも2つのスペクトル最大値(35,36,37)を有する光を放出する少なくとも又は厳密に2つの別々のLED(5A,5B)を含み、前記光源(5)は、前記光源(5)が起動された時に前記光が前記光源(5)から前記チャンバ(26)まで案内されるように前記チャンバ(6)に結合される、
ことを特徴とする光学系(5)。
【請求項2】
光学系(5)が、少なくとも3つの光ファイバ(28)を含み、
少なくとも2つの異なる波長範囲(UV,VIS,NIR)内の前記スペクトル最大値(33,34,35)を有する光が、前記3つの光ファイバ(28)のうちの第1及び第2のものを通じて前記チャンバ(26)まで案内され、光が、前記3つの光ファイバ(28)のうちの第3のものを通じて前記チャンバ(26)から前記分光計(6)まで案内されることを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記光源(5)は、好ましくは各々1つのLED(5A,6B)を用いて、前記UV範囲(UV)にある及び人間の目に可視の前記波長範囲(VIS)にある波長内にスペクトル最大値(33,34,35)を有する光を発生するように構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学系。
【請求項4】
前記光源(5)は、前記UV範囲(UV)にある及び前記赤外線範囲(IR)にある、特に前記近赤外線範囲(NIR)にある波長内にスペクトル最大値(33,34,35)を有する光を発生するように構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項5】
前記光源(5)は、前記赤外線波長範囲(IR)にある、特に近赤外線波長範囲(NIR)にあるスペクトル最大値(34)を有する光を発生することに加えて前記UV波長範囲(UV)にあるスペクトル最大値(35)を有する光を発生するように構成されたUV LED(5B)を有することを特徴とする請求項4に記載の光学系。
【請求項6】
前記UV LED(5B)は、前記UV範囲(UV)にある及び前記赤外線範囲(IR)にある前記最大値(34,35)を有する前記UV LED(5B)によって発生された又は生成可能な前記光が重畳されながら前記チャンバ(26)までそれを通じて案内される光ファイバ(28B)を通じて前記チャンバ(26)に結合されることを特徴とする請求項5に記載の光学系。
【請求項7】
前記分光計(6)は、前記光源(5)の明度を制御するための明度制御器(36)を含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項8】
前記明度制御器(36)は、前記明度を制御するように、特に、それを前記光源(5)及び前記分光計(6)を用いて前記分光計(6)が少なくとも実質的にオーバードライブなしで及び/又は前記異なる波長範囲(UV,VIS,NIR)にある前記最大値(33,34,35)のうちの少なくとも1つ、好ましくは、前記異なる波長範囲(UV,VIS,NIR)にある前記最大値(33,34,35)のうちの少なくとも2つでのそのダイナミックレンジの限界まで制御されるような方法で制御するように設計されることを特徴とする請求項7に記載の光学系。
【請求項9】
前記明度制御器(36)は、前記異なる波長範囲(UV,VIS,NIR)のうちの少なくとも2つのものにある前記最大値(33,34,35)の前記明度を、前記異なる波長範囲(UV,VIS,NIR)、好ましくは前記異なる波長範囲(UV,VIS,NIR)のうちの両方の2つの前記最大値(33,34,35)のうちの少なくとも1つでの前記分光計(6)が少なくとも実質的にオーバードライブなしで及び/又はそのダイナミックレンジの限界まで駆動される方法で、個々に制御するように設計されることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の光学系。
【請求項10】
前記明度制御器(36)は、少なくとも1つの制御ループ(37,38)を形成し、
前記明度制御器(36)は、前記分光計(5)によって受け入れられた前記光の明度を測定するために前記分光計(6)に結合(36)され、
前記明度制御器(36)は、前記光源(5)の明度が前記分光計(6)の前記ダイナミックレンジを表す基準変数(39)との前記分光計(6)を用いて測定された前記明度の比較に基づいて前記明度制御器(36)を用いて制御可能であり、好ましくは、前記分光計(6)が前記波長範囲(UV,VIS,NIR)のうちの少なくとも1つで過負荷なしで及び/又は前記波長範囲(UV,VIS,NIR)で少なくとも実質的にそのダイナミックレンジの限界まで少なくとも実質的に駆動されるような方法で前記光源(5)の前記明度を制御するために前記光源(5)に結合される、
ことを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項11】
前記UV範囲(UV)にある波長を有する前記光の及び人間の目に可視の前記波長範囲(VIS)にある波長を有する前記光の前記明度は、特にフィードバック制御ループ(37,38)によって別々に制御可能であり、好ましくは、前記分光計(6)は、前記波長範囲(UV,VIS)のうちの少なくとも1つで少なくとも実質的にオーバードライブなしで及び/又はそのダイナミックレンジの限界まで駆動されることを特徴とする請求項7から請求項10の1項に記載の光学系。
【請求項12】
光学系(1)によって特徴付けられることになる好ましくは体液又は組織又は環境サンプルの要素(E)を受け入れるためのチャンバ(26)と、前記チャンバ(26)を光で照明するための光源(5)と、前記チャンバ(26)から発生する光のスペクトル(40)を測定するための分光計(6)とを含む光学系(1)を用いてパラメータ(P)を決定する方法であって、
前記要素(E)の特質を表すパラメータ(P)を決定するために、異なる波長範囲(UV,VIS,NIR)にある少なくとも2つのスペクトル最大値(33,34,35)を有する光が、別々のLED(5A,5B)によって発生されて前記要素(E)の上に向けられ、前記光の反射成分、前記光の散乱成分、及び/又は前記要素(E)のラマン散乱及び/又は蛍光によって引き起こされた光を含むスペクトル(40)が、前記分光計(6)を用いて測定され、前記パラメータ(P)は、前記スペクトル(40)を評価することによって決定される、
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
異なる波長範囲(UV,VIS,NIR)にある前記少なくとも2つのスペクトル最大値(33,34,35)は、一方で前記UV波長範囲(UV)にあり、他方で人間の目に可視の前記波長範囲(VIS)にあることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記光源(5)の前記明度は、前記光源(5)の前記明度がフィードバック制御された又は低減された明度を提供するように制御され、前記分光計(6)を用いて要素(E)の前記スペクトルを測定しながら、明度が、前記光源(5)の公称明度と比較して低減され、及び/又は明度が、前記光源(5)の明度と比較して低減されることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記要素は、
a.鳥の血液、好ましくは、EDTA-及び/又はヘパリン-抗凝固処理された鳥の血液である又はそれを含み、以下に関する1又は2以上の特質を特徴付ける前記パラメータが決定され:
-ヘマトクリット
-ヘモグロビン
-赤血球
-赤血球指数(MCH,MCHC,MCV)
-血小板
-分化を含む白血球(好中球、好塩基球、及び好酸球、リンパ球、単球)
b.及び/又はブタの血清、肉汁、又は唾液である又はそれを含み、以下に関する1又は2以上の特質を特徴付ける前記パラメータが決定され:
-アンドロステノン
-スカトール
c.及び/又はブタの口腔液、唾液、又は肉汁である又はそれを含み、以下に関する1又は2以上の特質を特徴付ける前記パラメータが決定され:
-コルチゾール
-ハプトグロビン
-C反応性タンパク質
d.及び/又は動物の唾液、糞便、又は血清である又はそれを含み、以下に関する1又は2以上の特質を特徴付ける前記パラメータが決定される:
-プロゲステロン
-17-OH-プロゲステロン
-エストラジオール
ことを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルスケアに適用される生体光機器の分野に関連し、特に、それは、特に生体内(例えば、皮膚接触による)の組織(例えば、血液、脂肪組織)サンプル、好ましくは、細菌、ウイルス、原生動物、寄生虫、真菌、植物、物質、又は特にマイコトキシンのようなそれらに由来する代謝生成物などのうちの1又は2以上の含む環境サンプルの診断関連性のあるパラメータの診療現場でのリアルタイム非侵襲的決定のための生体光デバイスに関する。
【0002】
特に、本発明は、請求項1の前文による光学系又は請求項14の前文による方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在の生体光システムは、診療現場でのリアルタイム全体的ヘルスシステムとしての使用に関して一連の技術的限界を呈している。本発明の1つの目標は、そのようなシステムを改善することである。
【0004】
本明細書に引用によってその全体が組み込まれているWO 2014/118745 A1は、体液又は体組織の要素のパラメータ特徴付けのための光学系に関連し、それは、この要素からの光のスペクトルを記録するための分光計と、要素の上に光を放出するための光源を含む光デバイスとを含む。本発明による光学系は、WO 2014/118745 A1に開示されるような光学系の一部又は全ての特徴に類似する又はそれを有する可能性があり、すなわち、その改善バージョンとすることができるが、同じく異なる状況でも実現されて好ましい可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、性能が改善された方法及び光学系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の光学系又は請求項12に記載の方法によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項に依存する。
【0008】
本発明の一態様は、光学系によって特徴付けられることになる体液又は体組織又は環境サンプルの要素を受け入れるためのチャンバと、チャンバを光で照明するための光源と、チャンバから発生する光のスペクトルを記録するための分光計とを有する光学系に関する。
【0009】
この態様により、光源は、異なる波長の/異なる波長範囲での少なくとも2つのスペクトル最大値を有する光を放出する少なくとも又は厳密に2つの別々のLEDを含み、光源は、光源が起動された時に光が光源からチャンバまで案内される及び/又は向けられるようにチャンバに結合される。
【0010】
上述の態様と組み合わせる又は同じく独立に実現することができる本発明の一態様は、光学系を用いて体液又は組織又は環境サンプルの要素の特質を表すパラメータを決定する方法に関連し、光学系は、光学系によって特徴付けられることになる体液又は組織又は環境サンプルの要素を受け入れるためのチャンバと、チャンバを光で照明するための光源と、チャンバから発生する光のスペクトルを測定するための分光計とを含む。
【0011】
パラメータを決定するために、異なる波長の/異なる波長範囲での少なくとも2つのスペクトル最大値を有する光が、別々のLEDによって発生されて要素の上に向けられ、光の反射成分、光の散乱成分、及び/又は要素のラマン散乱又は蛍光によって引き起こされた光を含むスペクトルが、分光計を用いて測定され、パラメータは、スペクトルを評価することによって決定される。
【0012】
驚くことに、少なくとも又は厳密に2つのLEDの使用は、体液又は組織又は環境サンプルの要素を検査する時に正確な相関に関して特に効率的であることが判明している。特に、少なくとも又は厳密に2つのLEDの使用は、以前のLEDベースの技術によって識別することができなかった特定の物質の分析を可能にする。
【0013】
本発明によるチャンバは、好ましくは、要素の上に光を放出するための光源を含む光学系によって特徴付けられることになる要素、特に体液又は組織のサンプル又は環境サンプルを受け入れるためのホルダである。
【0014】
チャンバは、使い捨てカプセルに備えることができる。チャンバは、化学的又は生体マーカーを含むか又は含まないことができる。チャンバは、好ましくは、光源からの光を反射し、特徴付けられることになる要素に通して分光計に送出するための1又は2以上のミラー、特に1又は複数のチャンバ蓋に取り付けられたミラーを含む。チャンバ内の1つのミラーは、少なくとも光源及び分光計を含む光デバイスの遠位に配置されて光を反射して光デバイスに戻すことができ、かつ光デバイスに結合された1つのミラーを含み、このミラーは、光を反射して特徴付けられることになる要素に戻すように配置される。
【0015】
チャンバは、好ましくは磁石により又は機械的圧力又は機械的ファスナにより、要素の特徴付けのために光デバイスに取り付け可能とすることができる。チャンバは、好ましくは、特に1又は2以上の蓋を用いて封入することによって液密であり、使い捨てとすることができるこのエンクロージャは液密である。しかし、異なるソリューションを可能とすることができる。
【0016】
本発明による要素は、好ましくは、生体内要素であり、特に、光学系は、光デバイスを用いて身体要素のパラメータ特徴付けに対して構成される。それは、体液、特に血液、血清、唾液、汗、尿、又は涙のサンプル、又は体組織、特に脂肪組織のサンプルとすることができる。
【0017】
本発明による体液又は組織は、好ましくは、ヒト又は動物の身体から採取された物質又はサンプルであり、好ましくは、ヒト又は動物の身体から採取された、特に処理された、より具体的には押し潰された、物質又はサンプルを含む処理流体を網羅する。
【0018】
これに代えて又はこれに加えて、要素は、環境サンプルである又はそれを含むことができる。そのような環境サンプルは、好ましくは、細菌、ウイルス、原生動物、寄生生物、菌類、植物、又は物質、特にマイコトキシンのようなそれらに由来するか又はそれらから生成された代謝生成物のうちの1又は2以上を含む。環境サンプルは、好ましくは、環境から採取することができる物質の抽出、濾過によって取得することができる。環境サンプルは、特に飼料サンプルである。
【0019】
本発明による光源は、好ましくは、チャンバに特にその中に光を放出するように構成される。光源は、好ましくは、1つ、2つ、又は複数のLEDであるか又はそれらを含む。しかし、光源は、これに代えて又はこれに加えて、電球、レーザダイオード、又は例えばこの要素及び/又はチャンバによって放出された光の透過、反射、散乱、ラマン散乱、又は蛍光によってIR及びUVを含む光範囲内の電磁放射を発生させるための異なるデバイスであるか又はそれらを含むことができる。
【0020】
光源は、これに代えて又はこれに加えて、異なるスペクトル又は少なくとも2つの最大値を1つはUV範囲に及び1つはIR及び/又はVIS範囲に(各々)含むスペクトルを放出するために1又は2以上の光エミッタ及び/又は1又は2以上の光フィルタを含むことができる。
【0021】
一実施形態では、光源は、放出光の1又は複数の波長最大値を選択又は変更するように構成することができる。例えば、これは、複数の光源のうちの特定のものだけの及び/又はフィルタリングの選択的起動によって達成することができる。
【0022】
本発明による照明するとは、好ましくは、光がチャンバに及び/又は特に少なくとも1つのミラーを含むチャンバ内面の部品に受光された場合に要素の上に落ちることができるようなチャンバの中への光の放出を意味する。この放出光は、少なくとも部分的に分光計に提供することができる。
【0023】
光源は、好ましくは、少なくとも1つのLED、すなわち、発光ダイオードを含む。LEDは、電流がそれを通って流れる時に光を放出する半導体光源である。典型的には、LEDは、厳密に1つのパワー最大値を生成する。しかし、LEDは、これに代えて又はこれに加えて、最高パワーを有する1つの主最大値と、主最大値よりも低いパワーを有する2次最大値とを生成する場合があると考えられる。特に、人間の目に可視の範囲に最大値を生成するためのLEDは、典型的には、それらが生成する色に1つの最大値を有する。UV LEDは、しかし、(N)IR光の増倍によってUV波長範囲に光を生成する場合があると考えられる。そのような場合に、2次最大値は、(N)IR波長範囲にある場合があると考えられる。そのようなLEDの使用は、驚くことにこれが全体性能に正の相乗効果を有することが判明しているので本発明に好ましい。
【0024】
本発明の意味では、用語「LED」は、半導体レーザ、レーザLED、又は光を放出するためにLEDが使用する原理に基づいて光を放出する異なる光源を網羅する。
【0025】
発光最大値とも呼ばれる(スペクトル)最大値は、好ましくは、光のスペクトルパワー(mW単位)の最大値である。本発明の意味では、最大値は、典型的には、肩部などを有する場合があると考えられるピークであるが、本質的には、ベル形状及び/又は幅狭帯域とすることができるスペクトル線である。スペクトル最大値は、好ましくは、10kT未満、好ましくは6kT未満、特に約1.8kTの線幅(ΔE又はFWHM、すなわち、半値全幅)、及び/又は10kT*λ2/(hc)未満、好ましくは6kT*λ2/(hc)未満、特に約1.8kT*λ2/(hc)のΔλを有する。すなわち、本発明の意味での可視範囲、UV範囲、又は(N)IR範囲で発光するLEDの線幅は、それぞれ、可視スペクトル全体、UVスペクトル、又は(N)IRスペクトルの範囲と比較して相対的に狭い。
【0026】
スペクトルは、好ましくは、UV-VIS-NIR波長、特に200~2500nmの波長、更に特に200~400nmの波長内に含有することができる。実施形態では、分光計は、CCDセンサを含む。
【0027】
特に、UV波長範囲は、100nmから380nm波長であり、及び/又はVIS波長範囲は、380nmから780nmであり、及び/又はIR波長範囲は、780nmから1mmであり、及び/又はNIR波長範囲は、780nmから1400nmである。
【0028】
本発明の意味での波長範囲は、好ましくは、電磁波/光のスペクトル範囲又は周波数範囲とも呼ばれる。
【0029】
本発明による明度は、好ましくは、光源によって提供される光の量である又はそれを表す。特に、明度は、光源から放出される光又はチャンバの中に放射される光の光度(単位立体角当たりの光束の測光的尺度)、又は光束(単位時間当たりの発光エネルギの測光的尺度)、又は輝度(単位面積当たりの光度の測光的尺度)である又はそれらに対応する。明度から、チャンバ及び/又はチャンバに含有される要素を通過する光、それらによって散乱される光、又はそれらから反射される光の量が決まる。光源の明度のいずれの変化も、好ましくは、分光計、すなわち、スペクトルを測定するセンサの上に落ちる光の量の変化、特にほぼ比例した変化をもたらす。
【0030】
本発明による照明するとは、好ましくは、光がチャンバに及び/又は特に少なくとも1つのミラーを含むチャンバ内面の部品に受光された場合に要素の上に落ちることができるようなチャンバの中への光の放出を意味する。この放出光は、少なくとも部分的に分光計に提供することができる。
【0031】
本発明による分光計は、好ましくは、分光計によって受け入れられた光、すなわち、センサの上に落ちる光のスペクトルを測定するためのセンサである又はそれを含む。分光計は、スペクトルを表す取り込みデータを出力する又はそれを提供する。本発明により、スペクトル又はそのスペクトルを表すデータは、互いに適合し、すなわち、交換可能に使用される。スペクトルは、複数の波長又は対応する周波数に関する値を有する。
【0032】
分光計は、好ましくは、チャンバからの光のスペクトルを記録するように構成され、チャンバからのこの光は、上述の要素及び/又はチャンバによって放出された光の透過、反射、散乱、ラマン散乱、又は蛍光のものである。
【0033】
本発明による光ファイバは、好ましくは、光を案内するための手段である。特に、それは、好ましくはケーブル(光ファイバケーブル)の形状を有する異なる光透過性材料からのグラスファイバ又は光ファイバである。すなわち、複数の光ファイバは、特に、それぞれ、光を案内するための複数のファイバケーブルである。
【0034】
スペクトルは、好ましくは、UV-VIS-NIR波長、特に200~2500nm波長、更に特に200~400nm波長内に含有することができる。実施形態では、分光計は、CCDセンサを含む。
【0035】
本発明による光源の制御又はそれを制御することは、好ましくは、その明度に関連する、すなわち、好ましくはチャンバの中に放射された光のその光度又は光源の輝度に関連する光源のフィードフォワード、又はフィードバック制御、又はフィードフォワード及びフィードバック制御の組合せのいずれかである。
【0036】
本発明の意味での光源を制御することは、従って、好ましくは、光源の特定の明度を維持又は変更するための光源のフィードフォワード又はフィードバック制御又はフィードフォワード及びフィードバック制御の組合せを意味する。特に、光源の制御は、特定の広がりの付近に明度を低減するための又は特定の明度を取得するためのフィードフォワード又はフィードバック制御又はフィードフォワード及びフィードバック制御の組合せを意味する。
【0037】
フィードバック制御は、好ましくは、本発明の意味では、光源/LED又はチャンバから発生する光の又はそれに関連するパワー、光度、又は輝度が、分光計の最大出力又は分光計のダイナミックレンジ最大値のようなターゲット/事前設定値と比較されることを意味する。その目的に対して、それは、分光計又は異なるセンサで測定することができる。その比較結果に基づいて、光源/LEDを制御し、好ましくは、測定値とターゲット/事前設定値の間の差が低減又は解消されるようにする。光源/LEDの明度を制御することで測定値に及び同じく明度制御にも影響を与えるので、これを制御ループと呼ぶ。
【0038】
ダイナミックレンジを超えなければ、センサ及び特に分光計は、オーバードライブから解放される。ダイナミックレンジを超えた場合に、最大値を超えているか否かに関わらず、センサは、この値を出力する。更に、センサは、影響を受ける場合がある。すなわち、ダイナミックレンジを超えることは回避されることが好ましい。しかし、全体ダイナミックレンジの小部分だけの使用により、分解能が失われる可能性がある。すなわち、本質的にはダイナミックレンジ全体を使用することが好ましい。これは、本発明の分野では、特に較正中には珍しいことであった。
【0039】
本発明は、方法段階を含むことができ、又は本発明の光学系は、以下の段階を実行するように構成されたデータ処理モジュールを含むことができる:
・記録されたスペクトルを補正変数、特に変換行列によって標準化スペクトルに変換する段階であって、この補正変数又は変換行列が、光学系のスペクトル応答(空のチャンバによる)をスペクトル基準に対して較正(比較)することによって取得される上記変換する段階、
・変換されたスペクトルを前処理する段階、及び
・パラメータの定量化のために変換されて前処理されたスペクトルを各パラメータに関して事前取得されたスペクトル帯域と相関させる段階。
【0040】
本発明による較正は、好ましくは、少なくともある程度の誤差又は不確実性を補償する方法である。較正は、基準分光計で予め測定されたスペクトル基準に対して実行することができる。各パラメータに関して事前取得されるスペクトル帯域は、基準分光計で予め測定することができる。基準分光計は、光デバイス分光計と比較して光学分解能、ノイズ除去、又は光感度が改善されているか又は同等である。
【0041】
元の光源、すなわち、後の測定に使用される光源を(ミラーを通じた)較正にも使用することが好ましい。従って、光学系の同じエンティティ又は異なるエンティティにわたって異なるハードウエア基準(ブランク)を利用することを回避することができる。
【0042】
例えば、1つの特定サンプル及び/又は様々なサンプルに関する異なる露光量の複数のコピーを相互に比較することができる。それに基づいて、露光量の品質を決定することができる。この品質に応じて、すなわち、露光量の最小閾値又は最適ダイナミックレンジに達した場合、好ましくは、ダイナミックレンジを超えずに達した場合に、それに基づいて較正(の推奨)が決定又はトリガされる。
【0043】
サンプルが暗いほど、光源が提供する光の強度をより高く選択することが好ましく、特に、少なくとも本質的に同じ露光時間及び/又は光強度(センサに対する)が達成されるようにする。その幾何学的配置は、露光時間(センサに対する)が光源の強度制御によって最小に設定される方法で、特にガラス及びミラーのような光デバイスとのインタフェースが好ましくは互いに離れているようにする。
【0044】
露光時間の短縮により、センサ信号のノイズレベル及び/又は結果を取得するまでの時間が好ましくは短縮される。
【0045】
センサは、好ましくは、光子の計数値を測定し、より好ましくは、特定の波長(範囲)毎に測定する。明度を低減すると、その計数値は減少して好ましくはセンサが扱える最大計数値になるが、それを超えないようにされる。すなわち、上述のように、センサのダイナミックレンジに適合する強度まで明度が低減される。
【0046】
特に、サンプル/センサの露光時間は、センサが扱える最小値に設定される一方、光強度は、少なくとも本質的にセンサのダイナミックレンジに適合される。
【0047】
本発明の更に別の態様は、特許請求の範囲及び以下の好ましい実施形態の説明から集めることができる。以下の図は、説明を例証するのに好ましい実施形態を提供するものであり、本発明の開示の範囲を限定すると見なすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1a】本発明の開示を任意的に実施するためにどのように組み立てられて接続されるのかを示す全ての構成要素を有する手持ち式光子的システムの3D図である。
【
図1b】本発明の開示を任意的に実施するためにどのように組み立てられて接続されるのかを示す全ての構成要素を有する卓上式光子的システムの3D図である。
【
図2】チャンバ及び対応する付属プローブに対する任意的な差込み式システムを示し、
図2aが透過プローブを示し、
図2bがマイクロニードルプローブを示し、
図2cが透過プローブを示す図である。
【
図3a】UV-VIS-NIR電球又はLEDダイオード及びレーザダイオードを使用する差込み式システムを可能にする内部光学系を示す図である。
【
図3b】UV-VIS-NIR電球又はLEDダイオード及びレーザダイオードを使用する差込み式システムを可能にする内部光学系を示す図である。
【
図4】カプセルがサンプルを受け入れるためのチャンバを含むプローブの実施形態の概略図である。
【
図6】光源の明度が変化するスペクトルを示す図である。
【
図7】2つのLEDのスペクトルと測定されたスペクトルとに関する簡略化した概略図である(明度を低減しない場合)。
【
図8】2つのLEDのスペクトルと測定されたスペクトルとに関する簡略化した概略図である(明度を低減した場合)。
【
図11】測定スペクトル及び基準スペクトルを含有する図解及びそれらの差を示す図解を示す図である。
【
図12】測定スペクトルの図解と補正スペクトルの図解とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下では、繰返して説明しない場合でも同じか又は類似の特性を有することができる及び/又は同じか又は類似の効果を提供することができる同じか又は類似の要素に対して同じ参照番号を使用する。
【0050】
モジュール式診療現場光子的システムの実施形態を
図1に示している。この図は、手持ち式システムと、より具体的には滅菌プローブを直接取り付けることができる差込み式磁気システムとを示している。そのようなシステムで本発明を有利に達成することができるが、そうする必要はなく、特にいくつかの特徴は達成する必要はない。
【0051】
このシステムは、以下から構成される:小型パーソナルコンピュータ1(RAMメモリ、フラッシュディスク、無線通信、USB接続、CPU);マイクロUSBハブ2;USB3(再充電及び接続);LCDディスプレイ及び制御器4;光源5(LED、電球又はレーザダイオード);分光計6;磁気差込み式システム7;光学ベンチ8(光ファイバを接続する);リチウムイオン電池9;モジュール式プローブ(反射、ミニニードル、及び透過)のための迅速磁気又は圧力取り付け部10。
【0052】
迅速磁気取り付けシステムは、プローブ又は圧力先端を引きつけて可能な限り完全な接続を確実に行うための正しい極性を含む。取りわけ、回転して係止する機構、クリップで留めて係止する機構、摺動して係止する機構のようなあらゆるタイプの機械式ファスナ又は機械式結合具を使用することができる。
【0053】
全てのプローブ及び取り付けシステムは、外科等級の鋼又は代わりに使い捨てキットのためのプラスチックで作られることが好ましい。
【0054】
図2は、透過プローブの実施形態を示している。このプローブは、光が窓12に入り、ガラス/カプセル壁13を通過し、要素E/サンプルを通過するように設計されている。窓12、16内の入力ファイバ及び出力ファイバに関する任意的な不整合は、チャンバ26の内部で光を多数回反射させ、光路が大幅に増加し、その結果、信号感度も高まることを意図している。更に、吸収された光は全方向に再放出されるので、その大部分は上部の出口孔から漏れ出て受光ファイバのスリットに入らず、放出光と受光器に戻ったサンプルスペクトルの間の差、すなわち感度が大幅に増大する。
【0055】
要素E、例えば、液状サンプルは、特に孔11からチャンバ26の内部に入れることができる。迅速な取り付けは、好ましくは、磁石、Oリング、又は圧力プラグ17によって行われ、セクション14と15を取り付ける。例えば、より良い滅菌と細胞又はカルシウム付着物の回避とのために、ミラー18もチャンバ26の主要部品から取り外し可能とすることができる。更に、取り付けシステムの軸線19と方向20とを示している。チャンバの容積は通常1ml未満である。
【0056】
チャンバ26を有するプローブの光デバイスへの取り付けは、これに代えて、上述のように機械的圧力又は機械式ファスナによって実行することができる。
【0057】
図3aは、マイクロニードルを有する実施形態、拡散反射プローブの実施形態、及び光学ベンチを示している。マイクロニードルプローブは、好ましくは、以下のうちの1又は2以上で構成される:光ファイバ28を含む又は光ファイバ28で形成することができる光学ベンチ21;鋼製カプセル又は他の適切な材料22、特に使い捨てプラスチック;マイクロチャネル23;穿刺先端24;ミラー25、特に主システムから遠位にある1つのミラー;(内部)チャンバ26(及び開口部)及び迅速差込み式システム27、特に透過プローブに対して上述したもののいずれかに等しいもの。
【0058】
皮膚に穿刺した後に、小滴の血液が測定チャンバ26に案内され、そこで測定が行われる。特に、プローブの針又は穿刺部24は、遠位ミラー25の開口部を通して(内部)チャンバ26に接続される。
【0059】
図3bの透過プローブの実施形態は、以下のもので構成される:光ファイバ28;照明及び中心捕捉のための光ファイバ29;フォーカスレンズ30;迅速差込み式システム31、好ましくは透過プローブに対して上述したもののいずれかに等しいもの。このプローブ3bは、任意的にチャンバ26(図示せず)内に取り込むことができる組織又は他の要素E内部の特定のフォーカス点から反射された光を測定する。異なるレンズは、ポインティングする(例えば、離れたところから、典型的にシステムの感度で限定される小さい距離から)ことによる特に表面(ほとんどの場合に皮膚であるが、他の表面、つまり異なる粘膜も考えられる)に触れることによる身体への侵襲を伴うことなく、サンプル又は身体部位の予め決められた深さでのスペクトル測定に関して異なるフォーカス反射距離を提供することができる。フォーカス機構により、異なる距離で自動走査特性評価を行う機能を提供する。
【0060】
図3cは、光学系1の基本構成要素である光源5、カプセル22/チャンバ26を結合する任意的な差込み式システム(代替例では異なるように結合することができる)、分光計6、及びそれらを光学的に接続する光ファイバ28(
図5に関して更に詳しく説明する)を示している。
【0061】
本発明の開示の態様は、光学系1と共に使用されるプローブである。
図4はプローブの更に別の実施形態を示しており、カプセル22は、要素E(サンプル)を受け入れるためのチャンバ26を含む。
【0062】
図4aの実施形態では、光学ベンチ21(発光器-分光計6に向う光ファイバ28、及び受光器-光源5からの光ファイバ)が、本発明のシステムの光学ベンチ21部品に強固に結合されたミラー18a内の窓12を通して送光/受光する。カプセル22は、光学ベンチ21の近位部分に透明な窓/カプセル壁/ガラス13を含み、それにより、放出された光はチャンバ26を通過して受光器に戻ることができる。第2のミラー18bは、光学作業ベンチ21から遠位のカプセル22内に設けられる。このようにして、放出された光は、反射されて受光器に戻る前にミラー18の間で複数回反射し、従って受光された信号を増幅することができる。好ましくは、発光器、受光器、及び/又はミラー18は、反射回数が最大になるように光が発光器と受光器の間を進むように位置合わせされる。カプセル22内にある第2のミラー18bは、光がこの第2のミラー18bで反射される時にカプセル壁を通過しないという利点を有し、それによって信号品質が改善する。
【0063】
図4bの実施形態では、作業ベンチ21に最も近い第1のミラー18aが、これに代えて、カプセル22内で光学ベンチ21に対して近位の部品に位置付けられる。これは、前の実施形態と比較して第1のミラー18aで反射した光がカプセル壁/窓13を何回も通過せず、信号品質が改善するという利点を有する。光が封入材料を複数回通過すると、封入材料によって信号が歪む可能性がある(これは、ソフトウエアで補正することができない可能性がある)。これは、構造が前の実施形態ほど単純ではなく、カプセルのコストが高くなるという欠点があり、カプセル22が使い捨て(再使用不能)の場合に問題になる。
【0064】
図4cの実施形態では、近位ミラー18a、遠位ミラー18bの両方が光学作業ベンチ21に結合されて設けられ、カプセル22はあらゆるミラーを含まず、当該ミラー18a、18bに隣接して単に透明な壁を含むだけであり、光が発光器から受光器に複数回反射してサンプルを通過するようになっている。これは、上述の実施形態と比較して構造がより簡単であり、カプセル22のコストが低いという利点を有し、カプセル22が使い捨て(再使用不能)の場合に重要な利点になる。これは、光が封入材料を複数回(実施形態「a」の2倍)通過し、封入材料によって信号が歪む可能性があるという欠点がある(一部の場合に、ソフトウエアで部分的に補正することができる可能性があるとしても)。
【0065】
図4dの実施形態では、カプセル22は、光路の反射に対して側面ミラー18cを設けることができる。これは、再放出光(全ての可能な方向)が対象になるラマン作動モードで有利になる。
【0066】
透過作動モードの場合に、側面ミラーは通常不利であり、それは、この場合に再放出光が注目されないからであり、側方反射の欠如又は低減は、この実施形態が再放出光の反射(全方向)を超える透過光の反射(側面に垂直な方向)を容易にするという点で注目される。
【0067】
図4eの実施形態では、カプセル22には、要素E/流体(例えば、血液)サンプルをチャンバ26内に取得するための穿刺先端24が設けられる。これに代えて、穿刺先端24の代わりに開口部を設けることができ、任意的に蓋で閉じることができる。これに代えて、カプセル22の壁の一部分は、要素E(流体サンプル)を受け入れるために、例えば、シリンジで穿刺可能とすることができる。これに代えて、遠位ミラー18bを含むカプセル22の壁は、要素E(流体サンプル)を受け入れるために取り外し可能とすることができる。これらのオプションを自由に組み合わせてユーザに複数のオプションを提供することができる。
【0068】
図4fの実施形態では、穿刺先端24は、遠位ミラー18bを含むカプセル22の壁に位置付けられ、この壁は要素E(流体サンプル)を受け入れるために取り外し可能である。このようにして、穿刺先端24を含むカプセル22の部品は使い捨てにすることができ、一方、残余は再使用することができる。これに代えて、別の実施形態Eでは、穿刺先端24は、遠位ミラー18bを含まないカプセル22の壁に位置付けられ、遠位ミラー18bの当該壁も、要素E(流体サンプル)を受け入れるために取り外し可能である。本方法では、使い捨て部品にミラーが含まれていないので再使用コストを下げることができる。
【0069】
カプセル22のチャンバ26は、化学的又は生体マーカー、例えば、遺伝子マーカーを予め準備して、流体サンプルがこのマーカーと混合するようにすることができる。マーカーは、一般的に、何らかの化学的又は生体パラメータのインジケータとして使用可能な測定される特性を指す。すなわち、サンプルから受け入れたスペクトルからは取得することができない特定のパラメータも、記録されたスペクトルでマーカーが当該パラメータを顕在化させる限り、この時点で検出可能になる。例えば、本明細書に使用する光周波数に対して典型的に透明である要素の存在下で著しいスペクトル変化をもたらすことができる特定の着色マーカーを設けることが有利である。
【0070】
内部光学ベンチ8は、実施形態では、少なくとも2つの内部光ファイバ28がそれぞれ接続された迅速差込み式システム32で構成され、光ファイバ28A、28Bは、光源5からの光を伝導し、光ファイバ28Cは、光を分光計6に伝導する。
【0071】
図5は、光学系Sによって特徴付けられることになる体液又は組織又は環境サンプルの要素Eを受け入れるためのチャンバ26を含む光学系Sを示している。更に、光学系Sは、チャンバ26を光で照明するための少なくとも1つの光源5を含む。更に、光学系Sは、チャンバ26から発生する光のスペクトルを測定するための分光計6を含む。
【0072】
スペクトル40を測定するために、光源5は、紫外(UV)範囲のスペクトル最大値35、及び人間の目で見えるスペクトル範囲(VIS)の更に少なくとも1つのスペクトル最大値33、及び/又は、更に(近)赤外線(IR)範囲の少なくとも1つのスペクトル最大値34を放出することが好ましい。
【0073】
すなわち、光源5は、異なる波長範囲UV、VIS、NIRのうちの少なくとも2つのスペクトル最大値33、34、35を有する光を放出するように構成される。光源5は、光源5が起動されると光が光源5からチャンバ26に向けられるようにチャンバ26に結合される。
【0074】
光学系Sは、好ましくは少なくとも3つの光ファイバ28を含み、少なくとも2つの異なる波長範囲UV、VIS、NIRのスペクトル最大値33、34、35を有する光が第1の光ファイバ28A及び第2の光ファイバ28Bを通してチャンバ26に案内される一方、3つの光ファイバ28のうちの第3の光ファイバ28Cを通して光がチャンバ26から分光計6に案内される。
【0075】
光源5は、波長のスペクトル最大値33、34、35を有する光、好ましくは、UV範囲(紫外スペクトル範囲)内のスペクトル最大値35及びVIS範囲(人間の目に可視のスペクトル範囲)内のスペクトル最大値33を有する光を生成するように構成される。
【0076】
特に好ましくは、UV範囲のスペクトル最大値35とVIS範囲のスペクトル最大値33の各々は、(異なる)LED5A、5Bを用いて放出され、
図5の実施形態では、これをそれぞれの記号と周波数fにわたるパワーPの概略的な例示図とで模式的に描いて放出スペクトルを示している。
【0077】
光源5は、特にLED5Bを使用する場合に、IR範囲(赤外線スペクトル範囲)、特にNIR範囲(近赤外線)のスペクトル最大値33を有する光を発生することに加えて、UV範囲のスペクトル最大値35を有する光を発生及び/又は放出するように構成することができる。
【0078】
UV LED5Bは、光ファイバ28Bを通してチャンバ26に結合されることが好ましく、この光ファイバを通して、UV範囲のスペクトル最大値35と、更にIR範囲のスペクトル最大値33とを有するUV LED5Bによって生成されるか又は生成可能な光は、重畳されながらチャンバ26に案内される。
【0079】
特に、UVスペクトル範囲は、100nmから380nmの波長であり、VISスペクトル範囲は、380nmから780nmの波長であり、IRスペクトル範囲は、780nmから1mmの波長であり、NIRスペクトル範囲は、780nmから1400nmの波長である。
【0080】
驚くことに、特に体液又は組織又は環境サンプルの要素Eを分析する場合に、一方でUV範囲のスペクトル最大値35と、他方でVIS範囲のスペクトルスペクトル最大値33を有する少なくとも2つのLEDを利用しながら、LEDを使用することが小型でエネルギ節約型の構造に対して有利であり、較正及び/又は測定に対して特に意味のある測定可能なスペクトル40をもたらすことが判明している。
【0081】
分光計6は、光源5の明度を制御するための明度制御器36を含むことが好ましい。
【0082】
明度制御器36は、分光計6が少なくとも実質的にオーバードライブなしで及び/又は好ましくは波長範囲UV、VIS、NIRのうちの少なくとも1つ、好ましくは波長範囲UV、VIS、NIR又はそれらの最大値33、34、35のうちの少なくとも2つでそのダイナミックレンジの限界まで作動する方法で明度を制御するように、特に、光源5及び分光計6を用いて明度を制御するように設計されることが好ましい。
【0083】
特に、明度制御器36は、波長範囲UV、VIS、NIRのうちの少なくとも1つ、好ましくは波長範囲UV、VIS、NIRのうちの少なくとも2つで分光計6が少なくとも実質的にオーバードライブなしで及び/又はそのダイナミックレンジの限界まで駆動される方法で波長範囲UV、VIS、NIR又はそれらの最大値33、34、35のうちの異なる少なくとも2つの明度を個々に制御するように設計される。
【0084】
光源5、特にLED5A、5Bのうちの1又は2以上の明度を制御するための明度制御器36は、少なくとも1つの制御ループ37、38を形成することが好ましい。明度制御器36を分光計6に接続して分光計6で測定された光の明度を検出することができ、明度制御器36を光源5に接続し、好ましくは実質的にそのダイナミックレンジ限界まで駆動しながら、光の明度が分光計6をオーバードライブしないように光源5を制御することができる。
【0085】
特に、明度制御器36は、分光計6(又は異なる明度センサ)で測定された明度と、分光計6のダイナミックレンジを表す基準変数39との比較に基づいて、好ましくは分光計6が過負荷なしで、UV、VIS、NIRの波長範囲のうちの少なくとも1つで及び/又は少なくとも実質的にそのダイナミックレンジの限界まで少なくとも実質的に駆動されるように光源5を制御する。
【0086】
UV及び/又はVIS波長範囲内の波長を有する光の明度、すなわち、UV範囲のスペクトル最大値35のパワーとVIS範囲のスペクトル最大値33のパワーとは、別々に制御可能であることが好ましい。
【0087】
特に、明度制御器36は、分光計6が、波長範囲UV、VIS、NIR又は最大値33、34、35のうちの少なくとも2つ又は全てで実質的にオーバーシュートなく及び/又はそのダイナミックレンジの限界まで駆動されるように、少なくとも2つのフィードバック制御ループ37、38を含む。
【0088】
図6~8を参照すると、光源5の明度は、分光計6の較正のためにスペクトル40を測定する間に、低減された明度及び/又は(フィードバック)制御された明度になるように制御されることが好ましく、明度は、光源5の公称明度に対して低減される及び/又は要素Eのスペクトル40を測定する時の光源5の明度に対して低減される。
【0089】
図9を参照すると、較正は、空のチャンバ26を用いて実行されることが好ましい。スペクトル40が測定されている間に空のチャンバ26を光源5で照明することができる。空のチャンバ26の反射挙動は、要素Eを収容するチャンバ26とは大きく異なり、その目的に対して、空のチャンバで較正する場合に、明度の低下には特に有利な効果がある。
【0090】
較正の第1の段階では、光源5が起動される。特に、LED5A、5Bの両方が起動され、
図7では、一方でVIS範囲の最大値33を有するスペクトルと、少なくともUV範囲の最大値35及び好ましくはこれに加えてIR/NIR範囲の最大値34を有するスペクトルとによって表されている。
【0091】
ノイズ低減及び再現性のある測定条件(作動点)に関して、分光計65をクールダウンすることができるように、光源5は、起動する前に例えば少なくとも1秒、10秒、又は1分の時間にわたって停止状態にすることができる。
【0092】
チャンバ26に案内された光源5からの光は、少なくとも部分的に反射、散乱、ラマン散乱され、又は蛍光が発せられ、チャンバ26から発生して分光計6に至る光がスペクトル40として測定されることになる。
【0093】
図11を参照すると、較正に関して、測定スペクトル40(好ましくは空のチャンバによる)は、(較正)基準スペクトル41と比較することができ、測定スペクトル40と(較正)基準スペクトル41の間の差に基づいて変換行列のような補正変数42を決定し、チャンバ26内に含まれる体液又は組織又は環境サンプルの要素Eを用いて、測定されたスペクトル40を補正することができる。
【0094】
この補正は、好ましくは、測定スペクトル40を基準分光計で測定した時の特性を有する補正スペクトル40に変換し、この基準分光計を用いて基準プローブが特徴付けられる又は特徴付けられたものであるが、補正された測定スペクトル40と、対応する求めるパラメータPを割り当てた基準スペクトル41Aとの相関によってパラメータPを見出すのに使用される基準スペクトル41A-パラメータP-ペアを形成する。
【0095】
相関を最大にするために、任意的に、光の特定のスペクトル帯域のフィルタリング(デジタル式又は光学式)を設ける及び/又は使用することができる。
【0096】
本発明では2種類の基準スペクトル41、41Aが使用される。一方の基準スペクトル41は、好ましくは空のチャンバ26を用いて測定されたスペクトル40と予想される基準スペクトル41、例えば、基準分光計の基準スペクトル41との比較によって補正変数42を見出すための較正プロセスに使用される。他方の基準スペクトル41Aは、対応するパラメータPを割り当てた基準分光計を用いて測定されたものであり、測定スペクトル40とこの基準スペクトル41Aとの相関によって特定のパラメータPを見出すことができる。すなわち、異なる基準スペクトル41、41Aは、一方が較正中に使用され、他方がパラメータPを求める時に使用される。
【0097】
スペクトル40の測定前又は測定中に、光源5の明度は、低減される及び/又はフィードバック制御することができる。
【0098】
図7を参照すると、図示の実施形態では、VIS範囲の最大値33がクリッピングされる。すなわち、最大値は分光計6のダイナミックレンジを超えるパワーを有し、分光計6の出力スペクトル40が最大出力値で飽和範囲を有することになる。クリッピングの検査中にそのようなクリッピング挙動が検出された場合に、図示の例では、LED5AがVIS範囲の最大値33でクリッピングを引き起こしているが、明度制御器36は、好ましくはクリッピングの原因になるLED5A、5Bだけの明度を下げる(再び、
図9参照)。
【0099】
クリッピング検査及び明度低減は、
図5に基づいて既に説明した通りに、分光計6が少なくとも実質的にオーバードライブなしで及び/又は分光計6のダイナミックレンジの限界まで駆動されるように明度低減が行われる程度にピークパワーの低減を可能にするフィードバック制御ループ38を形成することができる。これは、LED5A、5Bの一方又は両方に対して行うことができる。すなわち、LED5A、5Bをフィードバック制御するための別々のフィードバックループ37、38が存在し、分光計6が少なくとも実質的にオーバードライブなしで及び/又はVIS範囲の最大値33及びUV範囲の最大値35の少なくとも一方、特に両方で分光計6のダイナミックレンジの限界まで駆動される方法でVIS範囲の最大値33とUV範囲の最大値35との両方が低減される及び/又は制御されるようにすることができる。
【0100】
図8は、そのようなフィードバック制御の結果を示しており、ここで、1つのLED5Aによって放出されるVIS範囲の最大値33と、別のLED5Bによって放出されるUV範囲の最大値35とがそれぞれに制御され、結果として分光計6によって測定されるスペクトル40が本質的に分光計6のダイナミックレンジ全体を利用するようになっている。
【0101】
結論として、再び
図9を参照すると、較正中に、光源5の明度、特にLED5A、5Bの少なくとも一方又は両方の明度は、(a)フィードバック制御された明度、又は(b)公称明度と比較して低減された明度、及び/又は(c)要素E及び/又はチャンバ26から発生する光のスペクトル40が分光計6で測定される間の明度と比較して低減された明度である。
【0102】
より好ましくは、異なる波長範囲UV、VIS、NIRの光を発生するLED5A、5Bの両方は、明度を下げて又はLEDの公称明度及び/又は要素E及び/又はチャンバ26から発生する光のスペクトル40を分光計6で測定する間に要素Eを測定する時のLED5A、5Bの明度と比較して明度を下げて作動される。
【0103】
一般的に、明度は、低減された明度であるか、分光計6が少なくとも実質的に過変調(クリッピング)なしに及び/又はそのダイナミックレンジの限界まで駆動される程度まで低減されることが好ましい。
【0104】
任意的に、
図9に示すような較正プロセスでは、スペクトル40の妥当性を検査することができ、及び/又は今後のスペクトル測定値の補正のためにスペクトル40に基づいて変換行列のような補正変数を導出することができる。
【0105】
分光計6の較正は、引き続き分光計6を用いて要素EのパラメータPを決定する間に実行することができる。
【0106】
要素Eは、
図10に示す手順に基づいて測定されることが好ましい。
【0107】
任意的に、スペクトル40を測定する前に、作動点のドリフト及びノイズのような熱的な問題を回避するために数秒のような時間にわたって光源5をオフにすることができる。
【0108】
チャンバ26内に受け入れた要素Eを光源5で照明することにより、要素Eから発生する光のスペクトル40が分光計6で測定される。
【0109】
測定スペクトル40を補正変数42で補正することにより、測定スペクトル40は、補正スペクトル40に変換することができる。補正変数42は、較正を用いて、特に変換行列として決定されていることが好ましい。
【0110】
補正スペクトル40を1又は2以上の(パラメータ)基準スペクトルと相関させ、要素Eの特質を表すパラメータPを決定することができる。
【0111】
本発明の更に別の態様では、光学系Sの分光計6は、その測定挙動の変化に関してモニタされ、分光計6の測定挙動の変化が検出された状態で、好ましくは
図9に関して説明したような較正が要求される又は実行される。特に、分光計の機能をモニタするために先行する測定のスペクトル40を互いに比較して測定挙動の変化を検出するようにする。
【0112】
異なる基準要素Eの特質を表すパラメータPは、基準方法によって事前に決定することができ、各要素Eの(パラメータ)基準スペクトル41Aは、基準分光計を用いて測定されることが好ましい。その場合に、チャンバ26内に保持された要素EのパラメータPは、補正スペクトル40を基準スペクトル41Aと相関させることによって決定される。これは、特に機械学習、ニューラルネットワーク、及び/又は人工知能を使用する自己学習法を用いて達成又は改善することができる。
【0113】
このモニタは、
図10に示すように、記録されたスペクトル40の妥当性検査で達成することができる。これに代えて又はこれに加えて、分光計6の適正機能は、スペクトル40と分光計6を用いてそれまでに決定されたスペクトル40とを比較することによってモニタされる。妥当性検査は、そのような比較に基づいて達成することができる。
【0114】
妥当性検査が失敗した場合に、すなわち、記録されたスペクトル40が特定の期待値に適合しないか又は以前に記録されたスペクトル40から予期しない形で変化した場合に、再較正、すなわち、再度較正を始める段階を開始することができる。
【0115】
再較正により、(新たな)補正変数42(変換行列又は異なる補正尺度)を記録されたスペクトル40から、特に1又は2以上の基準スペクトル41との比較によって導出することができる。この較正のための基準スペクトル41は、同じ条件下で基準分光計から予想されるスペクトルに従うことが好ましい。それにより、特にスペクトル40を測定する実際のセンサが有する可能性がある寄生効果を補償するために、要素Eから測定されたスペクトル40を後で補正することが可能になる。
【0116】
品質インジケータ43は、
図5に示すように決定及び/又は出力することができる。品質インジケータ43は、測定スペクトル40又はこのスペクトル40を用いて決定されたパラメータPと共に出力されることが好ましい。
【0117】
品質インジケータは、測定値/測定スペクトル40に、スペクトル40に基づいて決定されたパラメータPに、又はスペクトル40から差し引いた更に別の結果に割り当てることができる。
【0118】
品質インジケータ43は、スペクトル40の妥当性検査により、及び/又は分光計6を用いて事前に決定されたスペクトル40との比較によって決定することができ、それによって妥当性検査を達成することができ、又は妥当性検査はこれを含むことができる。
【0119】
較正及び/又は測定のためにスペクトル40を測定する時に、1又は2以上のノイズ低減対策を実行することが好ましい。スペクトル40内のノイズを低減により、より良いSN比がもたらされ、従って、より信頼性が高くかつ正確なスペクトル40は、測定スペクトル40に基づく、より信頼性が高くかつ正確なパラメータPの決定を可能にする。
【0120】
好ましくは測定を開始する直前に一時的に停止させることによって分光計6の電力損失を低減することが好ましい。これは、センサの温度を下げ、従って熱ノイズを低減する助けになる。
【0121】
これに代えて又はこれに加えて、分光計6による同じ要素Eの複数回測定から取得されたスペクトル40が組み合わされ、特に平均化される。それにより、ランダム効果の補償が可能になる。
【0122】
これに代えて又はこれに加えて、光学系1は、好ましくはSN比が増大するように較正される。
【0123】
特に、これに代えて又はこれに加えて、光学系1は、少なくとも実質的に過負荷なくそのダイナミックレンジの限界まで分光計6を駆動してSN比が最適化されるように較正される。
【0124】
これに代えて又はこれに加えて、分光計6の温度、分光計6の温度上昇及び/又は温度ドリフトが低減又は制限される。これは、較正の開始前、測定の開始前、及び/又は較正開始と測定開始の間に光源5を好ましくは停止する待機時間を設定することによって達成することができる。
【0125】
光学系1によって特徴付けられることになる体液又は組織又は環境サンプルの要素Eを受け入れるためのチャンバ26と、チャンバ26を光で照明するための光源5と、チャンバ26から発生する光のスペクトル40を測定するための分光計6とを含む光学系1は、較正及び/又はノイズ低減に関する上述の態様による方法を実行するようになっていることが好ましい。この態様は、これまで及びこれから説明する更に別の態様と組み合わせることができる。
【0126】
特に、光学系1は、異なる光色/波長範囲/スペクトル範囲UV、VIS、NIRの少なくとも2つのLED5A、5Bを含む光源5と、少なくとも3つの光ファイバ28とを含むことが好ましく、2つのLED5A、5Bからの光は、3つの光ファイバ28のうちの2つを通してチャンバ26に案内され、チャンバ26からの光は、3つの光ファイバ28のうちの3番目を通して分光計6に案内される。少なくとも2つのLED5A、5Bによって励起される少なくとも2つの異なる波長(範囲)の最大値33、34、35を使用することは、較正及び/又はノイズ低減をサポートする高いSN比/分解能でスペクトル40を測定することができるようにするのに特に有利であることが判明している。
【0127】
要素Eの特質を表すパラメータPを決定するために、異なる波長範囲UV、VIS、NIRの少なくとも2つのスペクトル最大値33、34、35を有する光が要素Eに向けられ、光の反射成分、光の散乱成分、及び/又は要素Eのラマン散乱及び/又は蛍光によって引き起こされた光を含むスペクトルが分光計6で測定され、スペクトル40を評価することによってパラメータPが決定される。
【0128】
特定の要素Eは、本発明の技術分野で公知のシステムでは決定することが困難であり、かつ不正確であると判明している。しかし、本発明によるシステム1及び方法は、そのような測定及びパラメータPの決定をシナジー方式で行うことができる。本発明によるシステム1及び方法の使用は、要素Eが以下である場合に特に有利であると判明している:
a.鳥の血液、好ましくはEDTA-及び/又はヘパリン-抗凝固処理された鳥の血液であるか又はそれを含む場合。ここで、以下に関する1又は2以上の特質を特徴付けるパラメータが決定される:
-ヘマトクリット
-ヘモグロビン
-赤血球
-赤血球指数(MCH,MCHC,MCV)
-血小板
-分化を含む白血球(好中球、好塩基球及び好酸球、リンパ球、単球)
b.ブタの血清、肉汁、又は唾液であるか又はそれを含む場合。ここで、以下に関する1又は2以上の特質を特徴付けるパラメータが決定される:
-アンドロステノン
-スカトール
c.ブタの口腔液、唾液、又は肉汁であるか又はそれを含む場合。ここで、以下に関する1又は2以上の特質を特徴付けるパラメータが決定される:
-コルチゾール
-ハプトグロビン
-C反応性タンパク質
d.動物の唾液、糞便、又は血清であるか又はそれを含む場合。ここで、以下に関する1又は2以上の特質を特徴付けるパラメータが決定される:
-プロゲステロン
-17-OH-プロゲステロン
-エストラジオール。
【0129】
本発明の異なる態様は、組み合わせることができ、そのような組合せは、そのような組合せ及び/又は効果が明示的に言及されない場合であっても相乗的に有利な効果をもたらすことができる。
【0130】
参照符号のリスト
1 コンピュータ
2 ハブ
3 USB
4 LCDディスプレイ及び制御器
5 光源
6 分光計
7 差込み式システム
8 光学ベンチ
9 リチウムイオン電池
10 モジュール式プローブのための取り付け部
11 孔
12 窓
13 ガラス
14 取り付けセクション
15 取り付けセクション
16 窓
17 圧力プラグ
18a ミラー
18b ミラー
18c ミラー
19 取り付け部の軸線
20 方向
21 光学ベンチ
22 カプセル
23 マイクロチャネル
24 穿刺先端
25 ミラー(単数/複数)
26 チャンバ
27 迅速差込み式システム
28 光ファイバ
29 照明及び中心捕捉光ファイバ
30 フォーカスレンズ
31 迅速差込み式システム
32 迅速差込み式システム
33 第1の最大値
34 第2の最大値
35 第3の最大値
36 明度制御器
37 制御ループ
38 制御ループ
39 基準変数
40 スペクトル
40A:補正スペクトル
41 基準スペクトル(較正)
41A 基準スペクトル(補正)
42 補正変数
43 品質インジケータ
E 要素
S システム
P パラメータ
【国際調査報告】