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特表2024-525490流体内の少なくとも1つの粒子を空間的に操作する方法および装置、ならびにコンピュータプログラム製品およびコンピュータ可読記憶媒体
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  • 特表-流体内の少なくとも1つの粒子を空間的に操作する方法および装置、ならびにコンピュータプログラム製品およびコンピュータ可読記憶媒体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】流体内の少なくとも1つの粒子を空間的に操作する方法および装置、ならびにコンピュータプログラム製品およびコンピュータ可読記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/32 20060101AFI20240705BHJP
   G01N 15/00 20240101ALI20240705BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
G02B21/32
G01N15/00 C
G02B21/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580795
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2021071437
(87)【国際公開番号】W WO2023274566
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】EP21182612
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】301033396
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト ツール フォーデルング デル ヴィッセンシャフテン エー.ヴェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エルベン エレナ
(72)【発明者】
【氏名】マジェッリ ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】クレイシング モーリッツ
【テーマコード(参考)】
2H052
【Fターム(参考)】
2H052AA08
2H052AA09
2H052AB01
2H052AC04
2H052AC34
2H052AD03
2H052AE13
2H052AF01
2H052AF14
2H052AF19
(57)【要約】
本発明は、流体内の少なくとも1つの粒子を空間的に操作する方法に関し、流体の動的局所加熱により、流体内に生成される流体力学的な流れにより、流体内で、1または複数の粒子は空間的に操作される。本発明に係る方法は、流体内の粒子(1または複数)の少なくとも1つの目標空間的構成が定義され、a)粒子(1または複数)の実際の空間的構成を撮影することと、b)粒子(1または複数)の少なくとも1つの最近の実際の空間的構成と、粒子(1または複数)の目標構成に応じて、流体に適用される特異動的局所加熱イベントを決定することと、c)ステップc)で決定された特異動的局所加熱を流体に少なくとも一度適用することと、d)ステップa)からc)の少なくとも1つまたは全てを繰り返すことと、というさらなるステップが実施されることを特徴とする。本発明はさらに、流体力学的な流れにより流体内の少なくとも1つの粒子を空間的に操作する装置、コンピュータプログラム製品、およびコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体(12)内の少なくとも1つの粒子(p1、p2)を空間的に操作する方法であって、
前記流体(12)の動的局所加熱により、前記流体(12)内に生成される流体力学的な流れにより、前記流体(12)内で、前記1または複数の粒子(p1、p2)は空間的に操作され、
前記流体(12)内の前記粒子(1または複数)(p1、p2)の少なくとも1つの目標空間的構成(T1、T2)が定義され、
a)前記粒子(1または複数)(p1、p2)の実際の空間的構成を撮影することと、
b)前記粒子(1または複数)(p1、p2)の少なくとも1つの最近の実際の空間的構成と、前記粒子(1または複数)(p1、p2)の目標構成(T1、T2)に応じて、前記流体(12)に適用される特異動的局所加熱イベントを決定することと、
c)ステップb)で決定された前記特異動的局所加熱イベントを前記流体(12)に少なくとも一度適用することと、
d)ステップa)からc)の少なくとも1つまたは全てを繰り返すことと、
というさらなるステップが実施されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記流体は、水である、または水を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
操作される前記粒子(1または複数)(p1、p2)は、生物学的粒子、細胞、ウイルス、組織片、金属粒子、複合材料粒子、ポリマー粒子、ナノ粒子の内の少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子(1または複数)(p1、p2)を空間的に操作することは、
・前記流体(12)内の指定目標位置(T1、T2)に向けて、指定粒子(1または複数)(p1、p2)を動かすことと、
・前記流体(12)内の指定経路に沿って、指定粒子(1または複数)(p1、p2)を動かすことと、
・指定粒子(1または複数)(p1、p2)を、前記流体(12)内の指定目標位置(T1、T2)に留めることと、
・指定粒子(1または複数)(p1、p2)を、前記流体(12)内の指定目標配向(T1、T2)に留めることと、
・前記流体(12)内の指定目標配向(1または複数)(T1、T2)に向けて、指定粒子(1または複数)(p1、p2)を動かすことと、
の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記流体(12)の前記動的局所加熱は、レーザまたは赤外線レーザ、あるいは少なくとも1つの赤外線発光ダイオードにより実現されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記流体または前記試料内の経路に沿って、前記レーザの焦点ボリュームを繰り返し走査することで、前記流体(12)の前記動的局所加熱イベントが生じることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップb)において前記流体(12)に適用される前記特異動的局所加熱イベントの前記決定は、以下
・前記流体内の2次元走査経路、
・前記流体内の3次元走査経路、
・レーザ強度、
・レーザ走査速度、
・前記レーザの走査周波数、
・前記走査経路の走査回数、
の内の少なくとも1つを決定することを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
操作される前記粒子(1または複数)(p1、p2)に加熱照射が当たらないように、前記レーザが走査される前記経路が選択されることを特徴とする、請求項5から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
連続した走査間で、前記試料内の温度場が緩和され得るように、前記繰り返し走査の走査速度が選択されることを特徴とする、請求項5から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記流体(12)に適用される前記特異動的局所加熱イベントは、前記流体内の粒子(1または複数)の可動性にも応じて決定されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記撮像デバイスは顕微鏡であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記粒子(1または複数)(p1、p2)の前記実際の空間的構成を前記撮影することは、以下
・前記粒子(1または複数)(p1、p2)の1次元位置、
・前記粒子(1または複数)(p1、p2)の2次元位置、
・前記粒子(1または複数)(p1、p2)の3次元位置、
・平面内の前記粒子(1または複数)(p1、p2)の配向測定、
・空間内の前記粒子(1または複数)(p1、p2)の3次元配向測定、
の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記流体(12)内の前記粒子(1または複数)(p1、p2)の前記目標空間的構成は、
・前記流体(12)内の前記粒子(1または複数)(p1、p2)の指定目標位置(1または複数)(T1、T2)、
・前記流体(12)内の前記粒子(1または複数)(p1、p2)の1または複数の指定目標速度(T1、T2)、
・前記流体(12)内の前記粒子(1または複数)(p1、p2)の指定目標配向(1または複数)(T1、T2)、
・前記流体(12)内の前記粒子(1または複数)(p1、p2)の指定目標回転速度(1または複数)(T1、T2)、
の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記流体(12)内の前記粒子(1または複数)(p1、p2)の前記目標空間的構成は、
・前記粒子(1または複数)(p1、p2)の1次元位置測定、
・前記粒子(1または複数)(p1、p2)の2次元位置測定、または
・前記粒子(1または複数)(p1、p2)の3次元位置測定
であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記目標構成は、以下の要件
・指定粒子(1または複数)が指定位置にないこと、
・指定粒子(1または複数)が、指定位置(1または複数)から可能な限り離間すること、
・指定粒子(1または複数)が、指定位置(1または複数)から少なくとも指定距離(1または複数)にあること、
・指定粒子が互いに可能な限り近くにあること、
・指定粒子(p1、p2)が互いに接してはならないこと、
・異なる種類の粒子は扱いが異なること、
の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記粒子(p1、p2)の最近の実際の空間的構成と、前記粒子(p1、p2)の目標構成(T1、T2)とに基づいて、費用関数が計算される(S05、S12)ことを特徴とする、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも2つの粒子が同時に空間的に操作されることを特徴とする、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
空間的に操作される前記複数の粒子は、等価または同一の粒子の少なくとも1つのサブセットを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも2つの粒子が操作される構成において、いずれの場合も、次のステップで操作される粒子は、各粒子に対応付けられる目標位置および目標配向の少なくとも一方から最も離れた粒子であることを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
ステップb)において決定される前記特異動的局所加熱イベントは、前記費用関数に応じて決定されることを特徴とする、請求項16、ならびに請求項1から15および17から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ステップc)における前記特異動的局所加熱イベントの適用、または各適用後、前記実際の構成が撮影され、その後、新たな構成用に前記費用関数が計算され、前記費用関数が直近の値から減少している場合、同じ特異動的局所加熱イベントでステップc)が繰り返され、前記費用関数が直近の値から増加している場合、ステップb)が実行されることを特徴とする、請求項16、ならびに請求項1から15および17から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記費用関数は、等価または同一の粒子の交換に関して不変であることを特徴とする、請求項16および18、ならびに請求項1から15および17から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記費用関数は、以下の引数
・特定の粒子の当該粒子の特定の目標位置への距離、
・特定の粒子の指定位置に対する往復距離、
・指定種類の粒子の、各種類の粒子の特定の目標位置への距離、
・指定種類の粒子の、各種類の粒子に指定された指定位置に対する往復距離、
・各粒子、または各種類の粒子の、実際の粒子配向と、目標配向との間の角度、
・各粒子、または各種類の粒子の、実際の粒子速度と、目標速度との間の差、
の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項16、ならびに請求項1から15および17から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ステップa)とb)の間に、次のさらなるステップ(S03、S09)である、
操作される前記粒子(1または複数)が、目標位置および目標配向の少なくとも一方に対応付けられる
が実行されることを特徴とする、請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記粒子(1または複数)の追跡(S03、S09)が、直近の実際の構成における粒子を含む撮影された新たな実際の構成に存在する粒子を特定することで実行されることを特徴とする、請求項1から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記粒子の追跡(S09)後、目標構成が再評価され、前記目標構成が新たな目標構成に変更された場合、その後、いずれの場合も、新たな目標位置および新たな目標配向の少なくとも一方に、前記粒子が対応付けられることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
データベース内に、以下のデータ
・前記粒子(1または複数)(p1、p2)の前の実際の空間的構成、
・少なくとも各実際の空間的構成および目標構成(T1、T2)に基づいて決定された、前記流体(12)に適用された、前の動的局所加熱イベント、
・前記流体(12)に適用された各動的局所加熱イベントにより生じた、前記粒子(1または複数)(p1、p2)の前記実際の空間的構成の変化、
が記憶され、
前記流体(12)に適用される未来の動的局所加熱イベントは、前記データベースに記憶された前記データの少なくとも一部を使用して計算されることを特徴とする、請求項1から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記流体(12)に適用される未来の動的局所加熱イベントは、機械学習を使用して計算されることを特徴とする、請求項1から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つの粒子(p1、p2)の完全性は、前記空間的操作の前、中、または後に変更されることを特徴とする、請求項1から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記完全性の変更は、
生物学的粒子からの破片が、例えば、レーザカッティングにより切り落とされること
の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
流体力学的な流れにより流体(12)内の少なくとも1つの粒子(p1、p2)を空間的に操作する装置であって、
前記流体(12)および操作される前記粒子(1または複数)(p1、p2)を収容する容器(10)と、
前記流体(12)の動的局所加熱により、前記流体(12)内に流体力学的な流れを生成する加熱デバイス(20)であって、前記動的局所加熱は、流体力学的な流れにより、前記容器(10)内で前記粒子(p1、p2)の空間的操作を生じるように設計される、加熱デバイス(20)と、
前記容器(10)の少なくとも一部を撮像する撮像デバイス(40)と、
前記加熱デバイス(20)および前記撮像デバイス(40)を制御し、前記撮像デバイス(40)からの画像データ(52)を評価する制御部(60)と、を備え、
前記制御部(60)は、
A)前記容器(10)内の前記粒子(1または複数)(p1、p2)の実際の空間的構成を撮影するために、前記撮像デバイス(40)を作動し、
B)前記粒子(1または複数)(p1、p2)の少なくとも1つの最近の空間的構成と、前記粒子(1または複数)(p1、p2)の事前に定義された目標構成(T1、T2)に応じて、前記流体(12)に適用される特異動的局所加熱イベントに適した前記加熱デバイス(20)に対する、制御信号を決定し、
C)ステップB)で決定された前記特異動的局所加熱イベントを前記流体(12)に少なくとも一度適用するために、前記加熱デバイス(20)を作動し、
D)ステップA)からC)の少なくとも1つまたは全てを繰り返す
ように設計されることを特徴とする、装置。
【請求項32】
請求項1から30のいずれか1項に記載の方法を実行するように設計される、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記容器(10)は、前記流体(12)の温度を制御する手段を有することを特徴とする、請求項31または32に記載の装置。
【請求項34】
前記加熱デバイスは、前記動的局所加熱用のエネルギーを提供するレーザと、前記流体内の可変である位置に加熱レーザ照射を中継する、スキャナを含む光学的手段と、を有することを特徴とする請求項31から33のいずれか1項に記載の装置。
【請求項35】
前記撮像デバイス(40)は顕微鏡であることを特徴とする、請求項31から34のいずれか1項に記載の装置。
【請求項36】
前記顕微鏡は、以下の技術、すなわち、蛍光顕微鏡検査、多光子蛍光顕微鏡検査、広視野顕微鏡検査、走査型顕微鏡検査、暗視野顕微鏡検査、共焦点顕微鏡検査、ライトシート顕微鏡検査、局在化顕微鏡検査、構造化照明顕微鏡検査、光活性局在化顕微鏡検査(FPALM)、確率的光学再構成顕微鏡検査(STORM)、誘導放出抑制顕微鏡検査(STED)、基底状態除去顕微鏡検査(GSD)、飽和パターン励起顕微鏡検査、飽和構造照明顕微鏡検査(SSIM)、ライトフィールド顕微鏡検査(LFM)、フーリエライトフィールド顕微鏡検査(FLFM)、斜平面顕微鏡検査(OPM)の内の少なくとも1つを実施するように設計されたことを特徴とする、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記粒子(1または複数)の完全性を変更する少なくとも1つのデバイスが存在することを特徴とする、請求項31から36のいずれか1項に記載の装置。
【請求項38】
前記粒子(1または複数)の完全性を変更する前記デバイスは、少なくとも1つのレーザを含むことを特徴とする、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
指示を含むコンピュータプログラム製品であって、
前記指示は、前記プログラムが前記制御部(60)により実行されると、前記制御部(60)に、
A)前記容器(10)内の前記粒子(p1、p2)の実際の空間的構成を撮影するために、前記撮像デバイス(40)を作動するステップと、
B)前記粒子(1または複数)(p1、p2)の少なくとも1つの最近の空間的構成と、前記粒子(1または複数)(p1、p2)の事前に定義された目標構成(T1、T2)に応じて、前記流体(12)に適用される特異動的局所加熱イベントに適した前記加熱デバイス(20)に対する、制御信号を決定するステップと、
C)ステップB)で決定された前記特異動的局所加熱イベントを前記流体(12)に少なくとも一度適用するために、前記加熱デバイス(20)を作動するステップと、
D)ステップA)からC)の少なくとも1つまたは全てを繰り返すステップと、
を含む方法、特に請求項1から30のいずれか1項に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム製品。
【請求項40】
指示を含むコンピュータ可読記憶媒体であって、前記指示は、前記制御部(60)により実行されると、前記制御部(60)に、
A)前記容器(10)内の前記粒子(p1、p2)の実際の空間的構成を撮影するために、前記撮像デバイス(40)を作動するステップと、
B)前記粒子(p1、p2)の少なくとも1つの最近の空間的構成と、前記粒子(p1、p2)の事前に定義された目標構成(T1、T2)に応じて、前記流体(12)に適用される特異動的局所加熱イベントに適した前記加熱デバイス(20)に対する、制御信号を決定するステップと、
C)ステップB)で決定された前記特異動的局所加熱イベントを前記流体(12)に少なくとも一度適用するために、前記加熱デバイス(20)を作動するステップと、
D)ステップA)からC)の少なくとも1つまたは全てを繰り返すステップと、
を含む方法、特に請求項1から30のいずれか1項に記載の方法を実行させる、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の第1の態様は、請求項1のプレアンブルに係る、流体内の少なくとも1つの粒子を空間的に操作する方法に関する。本発明の第2の態様は、請求項31のプレアンブルに係る、流体内の少なくとも1つの粒子を空間的に操作する装置に関する。本発明のさらなる態様は、コンピュータプログラム製品およびコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロサイズの粒子の操作、特にその高精度配置は、生命科学、工学、および製造の用途における、活発な研究テーマであり続けている。適用に成功した技術の例としては、光学、磁気、動電、音響、および熱泳動トラップ、および自走式ヤヌス粒子の配置が挙げられる。しかし、これら技術の一部は、粒子の特定の材料特性、またはそれらが適用可能な環境についての要件により制限される。この制限を解消するため、流体力学的トラップが成功裏に運用されている。特に生命科学、およびラボオンチップ環境において好ましい。
【0003】
流体力学的トラップの方法としては、接触式方法(非特許文献1、2)と、非接触方法に区別できる。前者では、溶解した粒子が、流体の流れにより、壁、井戸、柱、またはその他障害物に対して固定される。後者では、粒子を、よどみ点流(非特許文献3、4)、微小渦流(非特許文献5)または微小渦(非特許文献6)内に閉じ込めることができる。入口が複数あるチャンバ内の流れに対する動的フィードバック制御により、よどみ点流の位置が制御されることが実証されている。したがって、ユーザは粒子位置を操作して、拡散による粒子の位置ずれに対処可能となる(非特許文献3、4)。この方法によると、78nmの精度で、単一コロイド粒子の位置を制御可能である(非特許文献4)。流体力学的トラップ方法は、トラップされた粒子の材料特性の制限を低減する(非特許文献7)が、粒子の高精度操作には、極めて精度と安定性の高いマイクロ流体ポンプを使用する必要がある。さらに、一般的に、流体力学的トラップは特殊なチャンバを要し、細胞などの閉鎖系で流れを生成するのには使用できない。さらに、生成される流れは、典型的には、ポンプと出口までにわたるような、全体的なものである。したがって、技術の空間的解像度が極めて限定されてしまう。
【0004】
高精度で粒子を配置する別の方法として、熱粘性流を利用することが挙げられる。これは、移動温度場に応じた、水性媒体の方向付けられた運動であると説明されており(非特許文献8)、不均一な粘度場における流体の熱膨張によって引き起こされる突発的な物理現象である(図1b比較)。具体的に、熱粘性流は、光学的に定義された経路に沿ってトレーサ粒子または分子によって視覚化された水溶液を運ぶのに使用されている(非特許文献8、9)。近年、上述の流れは細胞や発育中の胚でも生成され得、細胞質に浸ったコロイドの配置を制御する能力は限られているものの、細胞質の流れを引き起こすことが示された(非特許文献10~12)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008/077630A1
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】D.D.Carlo,L.Y.Wu and L.P.Lee,Lab Chip,2006,6,1445-1449.
【非特許文献2】Q.Luan,C.Macaraniag,J.Zhou and I.Papautsky,Biomicrofluidics,2020,14,031502.
【非特許文献3】M.Tanyeri,E.M.Johnson-Chavarria and C.M.Schroeder,Appl.Phys.Lett.,2010,96,224101.
【非特許文献4】A.Shenoy,C.V.Rao and C.M.Schroeder,Proc Natl Acad Sci USA,2016,113,3976-3981.
【非特許文献5】C.M.Lin,Y.S.Lai,H.P.Liu,C.Y.Chen,and A.M.Wo,Anal.Chem.,2008,80,8937-8945.
【非特許文献6】B.R.Lutz,J.Chen,and D.T.Schwartz,Anal.Chem.,2006,78,5429-5435.
【非特許文献7】D.Kumar,A.Shenoy,J.Deutsch and C.M.Schroeder,Current Opinion in Chemical Engineering,2020,29,1-8.
【非特許文献8】F.M.Weinert,J.A.Kraus,T.Franosch and D.Braun,Phys.Rev.Lett.,2008,100,164501.
【非特許文献9】F.M.Weinert and D.Braun,Journal of Applied Physics,2008,104,104701.
【非特許文献10】M.Mittasch,P.Gross,M.Nestler,A.W.Fritsch,C.Iserman,M.Kar,M.Munder,A.Voigt,S.Alberti,S.W.Grill and M.Kreysing,Nat Cell Biol,2018,20,344-351.
【非特許文献11】M.Mittasch,V.M.Tran,M.U.Rios,A.W.Fritsch,S.J.Enos,B.Ferreira Gomes,A.Bond,M.Kreysing and J.B.Woodruff,Journal of Cell Biology,,DOI:10.1083/jcb.201912036.
【非特許文献12】N.T.Chartier,A.Mukherjee,J.Pfanzelter,S.Furthauer,B.T.Larson,A.W.Fritsch,M.Kreysing,F.Julicher and S.W.Grill,bioRxiv,2020,2020.05.30.125864.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、特許文献1で公知の、流体内の少なくとも1つの粒子を空間的に操作する汎用方法において、流体の動的局所加熱により流体内で生成された、流体力学的な流れにより、流体内で、粒子が空間的に操作される。
【0008】
例えばまた、特許文献1で公知の、流体力学的な流れにより流体内の少なくとも1つの粒子を空間的に操作する汎用装置は、流体および操作される粒子(1または複数)を収容する容器と、流体の動的局所加熱により、流体内に流体力学的な流れを生成する加熱デバイスとを有する。動的局所加熱は、流体力学的な流れにより、容器内で粒子の空間的操作を生じるように設計される。汎用装置はさらに、容器の少なくとも一部を撮像する撮像デバイスと、加熱デバイスおよび撮像デバイスを制御し、撮像デバイスからの画像データを評価する制御部と、を有する。
【0009】
適用範囲の広い、上述の種類の方法および装置を提供することが、本発明の目的と捉えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
目的は、請求項1の特徴を有する方法と、請求項31の特徴を有する装置と、それぞれ請求項39、40の特徴を有するコンピュータプログラム製品およびコンピュータ可読記憶媒体とにより実現される。
【0011】
本発明によると、上述の流体内の少なくとも1つの粒子を空間的に操作する方法は、流体内の粒子(1または複数)の少なくとも1つの目標空間的構成の定義とともに、次のさらなるステップを含む。
a)粒子(1または複数)の実際の空間的構成を撮影する。
b)粒子(1または複数)の少なくとも1つの最近の実際の空間的構成と、粒子(1または複数)の目標構成に応じて、流体に適用される特異動的局所加熱イベントを決定する。
c)ステップb)で決定された特異動的局所加熱を流体に少なくとも一度適用する。
d)ステップa)からc)の少なくとも1つまたは全てを繰り返す。
【0012】
本発明によると、上述の汎用装置はさらに、次の特徴を有する。制御部が、以下のとおり設計される。
A)容器内の粒子(1または複数)の実際の空間的構成を撮影するために、撮像デバイスを作動し、
B)粒子(1または複数)の少なくとも1つの最近の空間的構成と、粒子(1または複数)の事前に定義された目標構成に応じて、流体に適用される特異動的局所加熱イベントに適した加熱デバイスに対する、制御信号を決定し、
C)ステップB)で決定された特異動的局所加熱イベントを流体に少なくとも一度適用するために、加熱デバイスを作動し、
D)ステップA)からC)の少なくとも1つまたは全てを繰り返す。
【0013】
本発明によると、指示を含むコンピュータプログラム製品またはコンピュータ可読記憶媒体であって、指示は、プログラムが制御部により実行されると、制御部に、以下のステップを含む方法を実行させる。
A)容器内の粒子の実際の空間的構成を撮影するために、撮像デバイスを作動するステップと、
B)粒子の少なくとも1つの最近の空間的構成と、粒子の事前に定義された目標構成に応じて、流体に適用される特異動的局所加熱イベントに適した加熱デバイスに対する、制御信号を決定するステップと、
C)ステップB)で決定された特異動的局所加熱イベントを流体に少なくとも一度適用するために、加熱デバイスを作動するステップと、
D)ステップA)からC)の少なくとも1つまたは全てを繰り返すステップ。
【0014】
本発明に係る方法の有利な変形例と、本発明に係る装置の好ましい実施形態を以下に具体的に、従属請求項と、添付の図面に関して説明する。
【0015】
コンピュータプログラム製品および/またはコンピュータ可読記憶媒体の指示は具体的に、請求項1から30のいずれか1項に記載の方法を実行するように、制御部を作動する目的に供することができる。
【0016】
本発明の基本概念は、流体内の粒子を空間的に操作するために、特異動的局所加熱イベントを使用することと、これら特異動的局所加熱イベントを、いずれの場合も、粒子の目標構成と、最近撮影された、流体内の粒子の実際の構成に応じて決定することである。特異動的局所加熱イベントは、流体内で、流体力学的な流れのシーケンスを生成する目的に供される。粒子の空間的操作は、閉鎖系制御内で実行できる。その場合、実際の撮影された粒子構成は、次に適用される特異動的局所加熱イベントの決定に対するフィードバックとなる。
【0017】
本発明の極めて重要な利点は、粒子または複数の粒子の高精度操作、特に配置が実現可能であり、この操作は原則として自動化可能であることである。
【0018】
本発明に係る装置は、本発明に係る方法を実行するように設計可能である。
【0019】
流体内の粒子の空間的操作という用語は概して、例えば容器が固定された参照フレームと比べ、粒子が一点から他点に、および/または一配向から別配向へと移動するように、容器内の粒子/流体系が影響されることを意味する。ただし、空間的操作とは、粒子が、その他の挙動、例えば、粒子に掛かる外力に対して、特定の位置に留められることも意味し得る。
【0020】
本発明に係る方法の好ましい実施形態において、粒子(1または複数)を空間的に操作することは以下の少なくとも1つを含み得る。
・流体内の指定目標位置に向けて、指定粒子(1または複数)を動かす。
・流体内の指定経路に沿って、指定粒子(1または複数)を動かす。
・指定粒子(1または複数)を、流体内の指定目標位置に留める。
・指定粒子(1または複数)を、流体内の指定目標配向に留める。
・流体内の指定目標配向(1または複数)に向けて、指定粒子(1または複数)を動かす。
【0021】
概して、本発明に係る方法および装置は、流体内で少なくとも部分的に自由に移動可能な、流体内の任意の懸濁粒子を操作するのに使用可能である。本発明に係る方法の好ましい変形例において、操作される粒子(1または複数)は、生物学的粒子、細胞、ウイルス、組織片、金属粒子、複合材料粒子、ポリマー粒子、ミクロ粒子、ナノ粒子の内の少なくとも1つである。
【0022】
概して、本発明に係る方法および装置は、流体の動的局所加熱により流体力学的な流れが生成可能な、任意の種類の流体に対して使用され得る。本発明に係る方法の好ましい実施形態において、流体は液体であり、具体的には、水を含むか、水である。
【0023】
本発明によると、流体の動的局所加熱により、流体内で、流体力学的な流れが生成され、生成された流体力学的な流れにより粒子が運ばれることで、粒子の操作が実現される。
【0024】
原則としてさらに、負の符号の特異動的局所加熱イベントでも流体力学的な流れが生成可能となる。すなわち、流体の動的局所冷却により流体内に流体力学的な流れが導入されるイベントである。ここでも、生成された流体力学的な流れにより粒子が運ばれることで、粒子の操作が実現される。
【0025】
粒子の特定の種類、およびこれら粒子を囲う特定の液体に強く依存する熱泳動運動という現象に対して、本発明が基づくメカニズムの全体的概念は、粒子の特定の性質に依存しない。熱泳動運動の場合、一般的に、異なる粒子は異なる移動をする。例えば、速度が異なり、方向が異なることもある。本発明で利用される流体力学的な流れの場合、粒子は根本的に、流体力学という物理的性質に応じて移動する。本発明のメカニズムは根本的に、例えば水である、利用される流体の光学的、熱力学的特性のみに基づく。流体の動的局所加熱により生成される流体力学的な流れは、熱粘性流とも称する。
【0026】
原則として、流体の動的局所加熱は、所望の熱粘性流を生じる、流体内での任意のエネルギー蓄積により実現され得る。例えば、熱伝導接続を介して容器に取り付けられ、選択的に加熱される、特定の加熱デバイスにより、動的局所加熱が導入され得る。本発明に係る方法の好ましい実施形態において、流体の動的局所加熱は、レーザまたは赤外線レーザにより実現される。
【0027】
本発明に係る方法の別の好ましい実施形態において、流体の動的局所加熱は、発光ダイオード、例えば、赤外線発光ダイオードにより実現される。
【0028】
したがって、本発明に係る装置の好ましい実施形態において、加熱デバイスは、動的局所加熱用のエネルギーを提供するレーザと、スキャナ、ガルバノスキャナ、準静的スキャナ、空間光変調器、音響光学スキャナなどの光学的手段、または流体の可変である、制御された位置に加熱レーザ照射を中継し、試料にわたって加熱レーザビームの動的走査を可能とするその他任意の適切なデバイスとを有する。
【0029】
特許文献1に記載されたような、光学的アセンブリが、流体の動的局所加熱に使用され得る。このため、本開示は、特許文献1の各内容を包含する。
【0030】
本発明に係る方法の好ましい実施形態において、試料内の特別に選択された経路または軌道に沿って、レーザの焦点ボリュームを繰り返し走査することで、流体の動的局所加熱イベントが生じる。
【0031】
より具体的に、請求項1のステップb)において流体に対して決定される、特異動的局所加熱イベントの決定は、以下の少なくとも1つを決定することを含み得る。
・流体内の2次元走査経路、
・流体内の3次元走査経路、
・レーザ強度、
・レーザ波長(変更可能な場合)、
・レーザ走査速度、
・レーザの走査周波数、
・走査経路の走査回数。
【0032】
特異動的局所加熱イベントは、レーザ走査経路の一度のみの走査、または同一レーザ走査経路の多数の、例えば100回の走査を含み得る。
【0033】
決定された特異動的局所加熱の適用は、決定された動的加熱パターンが流体に適用されることを意味する。これは一度のみ、または順次複数回実行され得る。この場合、制御部はこれに合わせて、本発明に係る装置の加熱デバイスを作動する。
【0034】
概して、走査経路は容器内の任意の箇所にあればよく、必ずしも連続していなくてもよい、1または複数の直線または任意の形状、任意の長さのセグメントから成り得る。走査経路は、粒子の目的地と実際の位置との間の接続ベクトルに平行であり得る。走査経路は、粒子を中心としてもよく、その直前で途切れてもよく、またはその直後から始まってもよい。レーザ走査は、例えば典型的には1から3kHzという走査速度で経路に沿って適用され得る。これは、連続した走査期間の間で、温度場が緩和可能となるのに十分なほど低速である。走査経路に沿って、走査速度は可変であり得る。
【0035】
特定の操作タスクに対して、請求項1のステップa)からc)の少なくとも一部または全てを含むループの、繰り返し回数または繰り返し率を変化させる、および/または適用することも可能である。
【0036】
本発明に係る方法のさらなる好ましい実施形態において、操作される粒子(1または複数)に加熱照射が当たらないように、レーザが走査される経路が選択され得る。すなわち、粒子(1または複数)は、実質的に加熱レーザ照射により接触されることなく、空間的に操作される。したがって、そのような粒子、または容器、例えば加熱照射により影響されるまたは危害を受ける生体細胞または胚の危険性は、最低限に抑えられる。
【0037】
本発明に係る方法のさらなる好ましい実施形態において、連続した走査間で、試料内の温度場が緩和され得るように、繰り返し走査の走査速度が選択される。したがって、試料の全体的加熱が避けられ得る。
【0038】
流体に適用される特異動的局所加熱イベントは、さらに、流体内の粒子(1または複数)の可動性にも応じて決定されることで、さらに個別化され得る。これにより、操作、特に配置の精度がさらに向上し得る。操作される粒子の可動性は、観測データから導出され得る。
【0039】
流体と操作される粒子を収容する容器については、当該技術で公知のコンポーネントが使用され得る。容器が流体に特異動的局所加熱を導入可能とすることが重要である。例えば、特許文献1に記載の容器を、本発明の実施に利用可能である。このため、本開示は、特許文献1の各内容を包含する。
【0040】
本発明に係る好ましい実施形態において、容器は、流体の基本温度を制御する手段を有する。
【0041】
加熱デバイスおよび撮像デバイスを制御し、撮像デバイスからの画像データを評価する制御部は、典型的には、当該技術で公知の周辺部品を有する、PCまたは同等のデバイスであり得る。
【0042】
撮像デバイスは、流体内の、操作される粒子の実際の構成を撮影する目的に供される。操作される粒子を含む容器の少なくとも一部が、撮影または撮像可能な、任意の、特に光学的デバイスであり得る。本発明の好ましい実施形態において、撮像デバイスは顕微鏡である。顕微鏡は、コンピュータ制御式顕微鏡であり得、試料の視覚的観察を可能としなくてもよい。好ましくは、画像取得は少なくとも部分的に自動化され、撮影された粒子の構成の評価に画像アルゴリズムが利用される。
【0043】
例えば、顕微鏡は以下の技術の内の少なくとも1つを実施するように設計され得る。蛍光顕微鏡検査、多光子蛍光顕微鏡検査、広視野顕微鏡検査、走査型顕微鏡検査、暗視野顕微鏡検査、共焦点顕微鏡検査、ライトシート顕微鏡検査、局在化顕微鏡検査、構造化照明顕微鏡検査、光活性局在化顕微鏡検査(FPALM)、確率的光学再構成顕微鏡検査(STORM)、誘導放出抑制顕微鏡検査(STED)、基底状態除去顕微鏡検査(GSD)、飽和パターン励起顕微鏡検査、飽和構造照明顕微鏡検査(SSIM)、ライトフィールド顕微鏡検査(LFM)、フーリエライトフィールド顕微鏡検査(FLFM)、斜平面顕微鏡検査(OPM)。
【0044】
顕微鏡は、試料上および試料内へと、例えば蛍光照射である撮像照射を中継し得、試料内に加熱照射を導入するのにも使用されたのと同じ顕微鏡対物レンズを介して、撮像照射に応じて試料から放射された逆照射を中継し得る。
【0045】
粒子(1または複数)の実際の空間的構成を撮影することは、以下の内の少なくとも1つを含み得る。
・粒子(1または複数)の1次元位置、
・粒子(1または複数)の2次元位置、
・粒子(1または複数)の3次元位置、
・平面内の粒子(1または複数)の配向測定、
・空間内の粒子(1または複数)の3次元配向測定。
【0046】
目標空間的構成の定義は、1または複数の粒子が内部で操作される所定の構成が定義されることを意味する。これは、例えば、粒子の測定された実際の構成または実際の画像に基づいて、コンピュータ画面上で、ユーザにより実行され得る。目標構成の定義は、例えば、測定された画像データにおける所定の構造を認識する、画像評価ソフトウェアにより支援され得る。流体内の粒子(1または複数)の目標空間的構成は、以下の内の少なくとも1つを含み得る。
・流体内の粒子(1または複数)の指定目標位置(1または複数)、
・流体内の粒子(1または複数)の1または複数の指定目標速度、
・流体内の粒子(1または複数)の指定目標配向(1または複数)、
・流体内の粒子(1または複数)の指定目標回転速度(1または複数)。
【0047】
流体内の粒子(1または複数)の目標空間的構成はさらに、粒子(1または複数)の1次元位置測定、粒子(1または複数)の2次元位置測定、または粒子(1または複数)の3次元位置測定であり得る。
【0048】
それに加えて、またはそれに代えて、目標構成は、以下の要件の内の少なくとも1つをさらに含む。
・指定粒子(1または複数)が指定位置にないこと、
・指定粒子(1または複数)が、指定位置(1または複数)から可能な限り離間すること、
・指定粒子(1または複数)が、指定位置(1または複数)から少なくとも指定距離(1または複数)にあること、
・指定粒子が互いに可能な限り近くにあること、
・指定粒子が互いに接してはならないこと、
・異なる種類の粒子は扱いが異なること。
【0049】
本発明の主要な特徴は、ステップb)において、粒子(1または複数)の少なくとも1つの最近の実際の空間的構成と、粒子(1または複数)の目標構成に応じて、流体に適用される特異動的局所加熱イベントを決定することに関する。これに関して、粒子の最近の、特に直近の、実際の空間的構成と、粒子の目標構成とに基づいて、費用関数が計算され得る。したがって、特異動的局所加熱イベントは、費用関数に応じて決定され得る。費用関数は、粒子(1または複数)の少なくとも1つの最近の実際の空間的構成と、粒子(1または複数)の目標構成のスカラー関数、および/または所望の目標構成の説明であり得る。目標構成の説明とは、例えば、効果的なソートを可能とするために、第1種類の粒子の全てが左に動かされるべきであり、第2種類の粒子の全てが右に動かされるべきであることであり得る。
【0050】
例えば、ステップc)における特異動的局所加熱イベントの適用、または各適用後、実際の構成が撮影され得、その後、新たな構成用に費用関数が計算され得、費用関数が直近の値から減少している場合、同じ特異動的局所加熱イベントでステップc)が繰り返され得、または費用関数が直近の値から増加している場合、ステップb)が新たに実行され得る。
【0051】
本発明の全体的概念は、1つの粒子のみが空間的に操作されるものとして実現される。ただし、本発明に係る方法の特に好ましい実施形態では、少なくとも2つの粒子が同時に空間的に操作される。これは、複数の粒子の実際の構成が撮影されることを意味する。したがって、両方の(またはそれ以上の)粒子が移動または操作され、実質的には一度に1つの粒子のみが操作または移動されるように、特異動的局所加熱イベントが決定され得る。
【0052】
例えば、少なくとも2つの粒子が操作される構成において、いずれの場合も、次のステップで主に操作される粒子は、各粒子に対応付けられる目標位置および目標配向の少なくとも一方から最も離れた粒子であり得る。
【0053】
原則として、操作される各粒子は、個別に検討され得る。例えば、各粒子は、所定の位置または所定の配向に個別に移動され得る。ただし、所定の用途に関して、所定の種類の粒子を検討することが有用である。すなわち、空間的に操作される複数の粒子は、等価で同一の粒子の少なくとも1つのサブセットを含み得る。したがって、費用関数は、等価または同一の粒子の交換に関して不変であり得る。この場合、根本的な数学的タスクの複雑さが低減され得る。
【0054】
さらに具体的には、費用関数は、以下の引数の内の少なくとも1つを含み得る。
・特定の粒子の当該粒子の特定の目標位置への距離、
・特定の粒子の指定位置に対する往復距離、
・指定種類の粒子の、各種類の粒子の特定の目標位置への距離、
・指定種類の粒子の、各種類の粒子に指定された指定位置に対する往復距離、
・各粒子、または各種類の粒子の、実際の粒子配向と、目標配向との間の角度、
・各粒子、または各種類の粒子の、実際の粒子速度と、目標速度との間の差。
【0055】
本発明に係る方法のさらなる好ましい実施形態において、データベース内に、以下のデータの少なくとも一部が記憶され得る。
・粒子(1または複数)の前の実際の空間的構成、
・少なくとも各実際の空間的構成および目標構成に基づいて決定された、流体に適用された、前の動的局所加熱イベント、
・流体に適用された各動的局所加熱イベントにより生じた、粒子(1または複数)の実際の空間的構成の変化。
【0056】
流体に適用される未来の動的局所加熱イベントは、データベースに記憶されたデータの少なくとも一部を使用して計算され得る。特に、機械学習/人工知能が利用される。
【0057】
本発明に係る方法のさらなる好ましい実施形態において、ステップa)とb)の間に、次のさらなるステップが実行され得る。すなわち、操作される粒子(1または複数)が、目標位置および目標配向の少なくとも一方に対応付けられる。粒子が特定の目標位置に対応付けられることは、各粒子に、目標位置が結び付けられることを意味する。
【0058】
本発明に係る方法のさらなる好ましい実施形態において、粒子(1または複数)の追跡が、直近の実際の構成における粒子を含む撮影された新たな実際の構成に存在する粒子を特定することで実行され得る。したがって、個別粒子の軌道は、実際の構成のシーケンスから導出され得る。
【0059】
本発明に係る方法のさらなる好ましい実施形態において、粒子の追跡後、目標構成が再評価され得、目標構成が新たな目標構成に変更された場合、その後、いずれの場合も、新たな目標位置および新たな目標配向の少なくとも一方に、粒子が対応付けられ得る。したがって、システムは、目標構成の変化に動的に反応でき、早急に、粒子の特定の目標構成への結び付きを変えることができる。
【0060】
本発明に係る方法のさらなる好ましい実施形態において、少なくとも1つの粒子の完全性は、空間的操作の前、中、または後に変更され得る。例えば、生物学的粒子からの破片が、レーザカッティングにより切り落とされ得る。したがって、本発明に係る装置は、例えば、1つのレーザのような、粒子(1または複数)の完全性を変更する少なくとも1つのデバイスを有し得る。本発明に係る装置はさらに、例えば光ピンセットのような、少なくとも1つの粒子の配向を変更するデバイスを有し得る。
【0061】
粒子の実際の位置を、その予期された位置と比較することは、粒子に掛かる力を予想するのに有用であり得る。流れによる力が典型的には弱いことから、そのような力の検知は、特に繊細なものとなり得る。一部の用途において、手振りにより、粒子をインタラクティブに制御することが可能であることが有用であり得る。これについては、複合現実デバイスが、好ましく、かつ互換性のあり得る手段を提供する。力フィードバックインタフェースにより、触覚的にインタラクティブな操作が可能となり得る。
【0062】
本発明に係る方法の好ましい実施形態において、操作される少なくとも1つの粒子の実際の位置の変位は、当該粒子の予期される位置と比較され、この変位に応じて、粒子に掛かる力が決定される。
【0063】
これに関して、逆方向に流れる、流体力学的な流れを少なくとも2つ中心に向け、2つの逆方向の流れがぶつかる中心で、粒子を撮影することが有用であり得る。このような逆方向の流れにより、撮影された粒子について、有効ポテンシャルが生成される。
【0064】
測定された力の較正のため、例えば既知の大きさの静電気または磁力のような外力を、粒子を含む流体に掛けることが有用であり得る。その後、外力の大きさに応じて、有効ポテンシャルの平衡位置からの粒子の位置のずれが測定され得る。したがって、流体力学的な流れを通じて粒子に掛かる力の大きさが決定できる。
【0065】
それに加えて、またはそれに代えて、熱移動、特に有効ポテンシャルの粒子の平衡位置からの平均距離を観測することで、測定された力の較正も実現され得る。各自由度のエネルギーの平均量が、kT(k=ボルツマン定数、T=温度)であるものと仮定して、粒子に掛かる力が決定できる。
【0066】
本発明のさらなる特徴および利点が、以下の添付の図面を参照して、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】本発明に係る装置の概略図である。
図2】本発明に係る方法の全体的原理を示す概略図である。
図3】本発明に係る方法の例を示すフローチャートである。
図4】2つの粒子を操作する単純例を示す図である。
図5】6つの粒子を操作するさらなる例を示す図である。
図6】3つの粒子の目標構成を実現する、2つの異なる可能性を示す図である。
図7】3つの粒子の目標構成を実現する、さらなる例を示す図である。
図8】例示的費用関数の、モチベーションを示す図である。
図9】3つの粒子、対応する目標位置、および視覚化された流体の流体力学的な流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1を参照して、本発明に係る装置100の実施形態を以下に説明する。同じおよび同等のコンポーネントは、図において基本的に同じ数字が付される。図1に示す装置100は、本発明に係る方法を実施するように設計される。
【0069】
主要コンポーネントとして、図1に示す装置100は、流体12および操作される粒子p1、p2を収容する容器10と、流体12の動的局所加熱により流体12内に流体力学的な流れを生成する加熱デバイス20と、容器10の少なくとも一部を撮像する撮像デバイス40と、加熱デバイス20および撮像デバイス40を制御し、撮像デバイス40からの画像データ52を評価する制御部60とを有する。本発明によると、動的局所加熱は、流体力学的な流れにより、容器10内の粒子p1、p2の空間的操作を実現するように設計される。流体12と、その内部に含まれる粒子p1、p2とは、試料とも称する。
【0070】
より具体的に、図1に示す例において、加熱デバイス20は、加熱照射24を提供するための、例えば、赤外線レーザのようなレーザ22を有する。加熱照射24は、操作される試料、すなわち流体12および粒子p1、p2を含む容器10内へと、光経路を通じて誘導される。図1に示す例において、光経路は、スキャナ26、ビームシャッター28、ビームスプリッタ30、および顕微鏡対物レンズ48を含む。スキャナ26により、加熱照射24は容器10内の異なる位置に誘導され得る。ビームシャッター28は、容器10に加熱照射24が到達することを防止する目的に供される。ビームスプリッタ30は、例えば、加熱照射を顕微鏡対物レンズ48の方向に向ける、ダイクロイックミラーであり得る。図1に示す例において、スキャナ26およびビームシャッター28は、制御部にステータス情報を送り返し得、制御部60により制御され得る。
【0071】
図1が概略図であることは明らかであり、実際、光ビーム経路は、図1に不図示の複数のさらなるコンポーネントを有し得る。より具体的に、光学的構成は、特許文献1に記載のとおりであり得る。図1の光学的アセンブリは倒立顕微鏡の光学的構成である。当然、他の形状も可能である。この倒立顕微鏡の倒立構成と、レーザを利用した加熱のために、容器10は、加熱照射および撮像照射44を試料に入射可能にする窓を有する必要があることは明らかである。より一般的には、そのような窓を要さない、局所ヒータ付きの装置または容器、および/または正立顕微鏡も可能である。図1の容器10は、例えばシャーレであり得る。容器10は、流体12の温度を制御する手段を有し得るが、これも図1では不図示である。特許文献1には、流体の温度を制御する当該手段も記載されており、これに関して、同文献が参照される。
【0072】
図1の例における撮像手段40は、例えば、広視野蛍光顕微鏡のような顕微鏡により実現される。上述のように、その他多くの撮像および顕微鏡技術が可能である。同様にあくまで概略的に示される顕微鏡は、光源42と、ビームスプリッタ46と、顕微鏡対物レンズ48とを備える。例えば、レーザのような光源42が提供する撮像照射44は、例えば、ダイクロイックビームスプリッタのようなビームスプリッタ46により、顕微鏡対物レンズ48の方向に導かれる。撮像照射は、ビームスプリッタ30を通過し、顕微鏡対物レンズ48に入射し、顕微鏡対物レンズにより、試料内、すなわち、操作される粒子p1、p2を含む流体12内へと集光される。
【0073】
例えば操作される粒子が作成される、例えば染料である試料から反射する蛍光照射、または、自発蛍光が、顕微鏡対物レンズ48、ビームスプリッタ30、およびビームスプリッタ46を通じて戻り、光検出器50に到達して、そこで検出される。光検出器50は、光ビーム経路により伝搬する、視野の画像を記録可能なカメラであり得る。すなわち、カメラは、容器10内の粒子p1、p2の実際の空間的構成を撮影可能である。光源42と、光検出器50との両方が、制御部60により制御され、いずれの場合も、制御部60にステータスデータを送り返すことができる。
【0074】
図1の容器10内に、目標位置T1、T2が概略的に示される。目標位置T1、T2は、粒子p1およびp2がそれぞれ空間的に操作される目標となる位置を表す。すなわち、この例での空間的操作タスクは、粒子p1を位置T1に動かすことと、粒子p2をT2に動かすこととから成る。
【0075】
本発明によると、制御部60は、以下のとおり設計される。
A)容器10内の粒子p1、p2の実際の空間的構成を撮影するために、撮像デバイス40を作動する。
B)粒子p1、p2の少なくとも1つの最近の空間的構成と、粒子p1、p2の事前に定義された目標構成T1、T2に応じて、流体12に適用される特異動的局所加熱イベントに適した加熱デバイス20に対する、制御信号を決定する。
C)ステップB)で決定された特異動的局所加熱イベントを流体12に少なくとも一度適用するために、加熱デバイス20を作動する。
D)ステップA)からC)の少なくとも一部を繰り返す。
【0076】
例えば、さらなるレーザのような、具体的には空間的に操作される粒子p1、p2である試料を操作するさらなるデバイスが、図1の装置100内に存在し得る。
【0077】
制御部60は、当該技術で公知の周辺部品を有する、PCまたは同等のコンピューティングデバイスであり得る。制御部60は、本発明に係るコンピュータプログラム製品およびコンピュータ可読記憶媒体の両方を有し得る。
【0078】
流体12内の粒子p1、p2を空間的に操作する方法の主要な特徴を、以下に説明する。まずは図2に関して全体的に説明し、次に図3を参照してより詳細に説明する。
【0079】
図2の上部は、図1のように、空間的に操作される、すなわちそれぞれ実際の位置から目標位置T1およびT2に動かされる粒子p1、p2を収容する容器10の3つの概略図a1、a2、およびa3を示す。図a1は、粒子p1およびp2が、その移動先である目標位置T1およびT2から大きく離間した初期構成を示す。図a2は、点線矢印で示される、流体12内に生成される、流体力学的な流れまたは熱粘性流を概略的に示す。図a3は、特異動的局所加熱イベント適用後の状態を示す。図a3に示すように、粒子p1を、対応する目標位置T1に動かせており、粒子p2と、その目標位置T2との距離は、図a1の初期状態と比較して、少なくとも低減されている。
【0080】
図2の下部は、本発明に係る、流体12内の粒子p1、p2を空間的に操作する方法の主要なステップを示す。
【0081】
まず(図b1)、粒子p1、p2の実際の空間的構成が撮影される(ステップa))。例えば、画像は、図1の顕微鏡40のカメラ50で記録される。
【0082】
次に、図2示す例において、操作される粒子の位置が特定される。すなわち、各粒子p1、p2の座標が特定される(図b2)。
【0083】
粒子p1、p2の目標空間的構成の定義後、すなわち図2の例において、目標位置T1、T2の定義後、粒子p1とp2の両方が、それぞれの目標位置T1、T2に到達するための経路が計算される(図b3)。
【0084】
本発明に係る方法のステップb)によると、その後、流体12に適用される特異動的局所加熱イベントが、粒子p1、p2の少なくとも1つの最近の実際の空間的構成、例えば少なくともステップa)(図b1)で記録された画像と、粒子p1、p2の目標位置T1、T2とに応じて決定される。
【0085】
本発明に係る方法のステップc)によると、ステップb)で決定された特異動的局所加熱イベントが、少なくとも一度、流体12に適用される。図2に示す例では、例えば図1のスキャナ26で、試料を通じて加熱照射24を適切に走査することで、流体12に特異動的局所加熱イベントが適用される(図b4)。
【0086】
したがって、本発明に係る方法によると、流体12の動的局所加熱により、流体12内で生成された流体力学的な流れにより、流体12内で粒子p1、p2が空間的に操作される。
【0087】
本発明に係る方法のステップd)によると、ステップa)からc)の少なくとも1つまたは全てが繰り返される。図2に示す例では、ステップa)からc)のサイクルが、例えば30Hzで繰り返される。
【0088】
図3を参照して、本発明に係る方法のより詳しい例を説明する。ステップS01「目標初期化」において、流体内で操作される粒子(1または複数)の少なくとも1つの目標空間的構成が定義される。次に、ステップS02において、試料の画像が取得される。これは、操作される粒子(1または複数)の実際の空間的構成を撮影するステップa)に対応する。これは例えば、顕微鏡画像を取得することで実現され得る。図1の記載を参照されたい。図3の例において、その後粒子はステップS03で追跡される。すなわち、ステップS02で撮影された実際の構成に存在する粒子が、直近の実際の構成における粒子で特定される。ステップS04において、いずれの場合も、操作される粒子が、目標位置と対応付けられる。ステップS05「誤差計算」において、例えばステップS02で取得された画像のような、粒子p1、p2の最近の実際の空間的構成と、例えばステップS01で定義された目標構成または位置のような、粒子p1、p2の目標構成T1、T2とに応じて、費用関数が計算される。
【0089】
本発明に係る方法のステップb)によると、その後、例えば、ステップS05で計算された費用関数に応じて、ステップS06「新FLUCSベクトル計算」で、流体12に適用される特異動的局所加熱イベントが決定される。したがって、特異動的局所加熱イベントは、粒子の少なくとも1つの最近の実際の空間的構成と、粒子の目標構成に応じる。ただし、流体12に適用される特異動的局所加熱イベントを、費用関数値とは無関係に決定することも可能である。その場合、例えば、最も遠い粒子を選択し、それを目標に向けて押すことで実現される。
【0090】
ステップS07「FLUCSベクトル適用」において、ステップS06で決定された特異動的局所加熱イベントが試料、すなわち操作される粒子を含む流体に適用される。これは、本発明に係る方法のステップc)に対応する。
【0091】
本発明に係る方法のステップd)によると、ステップa)からc)の少なくとも一部が繰り返される。図3に示すフローチャートでは、ステップS08で新しい画像が取得される。すなわち、本発明に係る方法のステップa)が繰り返される。その後、ステップS09において粒子がさらに追跡される。すなわち、ステップS08で撮影された実際の構成内に存在する粒子で、ステップS08で撮影された実際の構成内に存在する粒子が特定される。すなわち、各粒子の経路が得られる。
【0092】
ステップS10で、目標構成が更新されるか問い合わせられる。好ましい実施形態において、ソフトウェアが、目標構成が更新されるか判定する。
【0093】
目標構成を変えないままの場合、問い合わせS10の次にステップS11が実行され、ここでは、ステップS04のように、いずれの場合も、操作される粒子が目標位置に対応付けられる。ステップS10の問い合わせに応じて、目標構成が更新される場合、新しい目標構成、例えば新しい目標位置がステップS14「新目標定義」で定義され、プログラムはステップS11に続く。
【0094】
ステップS11の次のステップS12において、ステップS05のように、ステップS08で撮影された粒子の新しい実際の構成に対して、また該当する場合は、ステップS14で定義された新しい目標構成に対して、費用関数が新たに計算される。
【0095】
ステップS13において、誤差、すなわち、費用関数が、ステップS05で決定された値と比べて減少しているか判定される。
【0096】
実際、ステップS05で決定された値から費用関数が減少している場合、ステップS07による、図3の例において実現されるステップc)が、ステップS06で決定されたのと同じ特異動的局所加熱イベントで繰り返される。
【0097】
一方、ステップS05で決定された値から費用関数が増加している場合、本発明に係る方法のステップb)が新たに実行される。すなわち、ステップS06「新FLUCSベクトル計算」において、ステップS12で計算された費用関数に応じて、流体12に適用される新たな特異動的局所加熱イベントが決定される。
【0098】
したがって、閉フィードバックループ制御、および流体内の粒子の自動空間的操作が実現される。
【0099】
図4の概略図1から3に、熱粘性流を利用して、2つの粒子p1およびp2が互いに接近させられる様子を示す。図1は初期状態を示す。粒子p2を中心の近くに移動させる、第1特異動的局所加熱イベントが決定および適用される。次に、図2に示すように、粒子p1を中心の近く、および粒子p2に隣接した位置に動かす、第2特異動的局所加熱イベントが決定および適用される。図3は、粒子p1およびp2の最終構成を示す。
【0100】
操作される粒子の、特定の目標位置に対する対応付けが再評価され、必要に応じて、特異動的局所加熱イベントの適用後に変更されるアルゴリズムの例を、図5を参照して説明する。
【0101】
図5の上図は、同一の粒子p1からp6と、目標位置T1からT3の状態を示す。いずれの場合も点線矢印で示すように、粒子p5が目標位置T1に対応付けられ、粒子p3が目標位置T2に対応付けられ、粒子p6が目標位置T3に対応付けられる。これら対応付けの原理として、いずれの場合も、各目標位置に対して、各位置に最も近い粒子が選択される。好ましい実施形態において、いわゆるMunkresアルゴリズムが使用され得る。
【0102】
これら対応付けと、図5の上図における粒子p1からp6の初期構成に基づいて、費用関数、およびその後に特異動的局所加熱イベントが決定および適用される。この加熱イベントは、実線矢印「FLUCS」により、図5の上図に概略的に示される。
【0103】
図5の下図は、加熱イベント適用後の状態を示す。加熱イベントの適用により、粒子p3が所望のとおりに位置T2に移動したが、目標位置T1およびT3にそれぞれ対応付けられた粒子p5およびp6の位置も変わり、粒子p6は位置T3に最も近い粒子ではなくなっている。目標位置に対する対応付けの新たな評価により、粒子p6ではなく、粒子p4が目標位置T3に対応付けられることとなった。また、この新たな評価において、目標位置T3に最も近い粒子となる粒子p3は検討されないことにも注目されたい。これは、粒子p3がその目的地T2にすでに到達しているためである。この新たな対応付けに基づき、費用関数と、それに応じて次に適用される特異動的局所加熱イベントが決定される。
【0104】
ただし場合によっては、新たな評価において、目的地に到達した粒子をも含むことが有利となる。このような状態を、図6を参照して説明する。図6の左図は、3つの同一の粒子p1、p2、p3を有する構成を示す。粒子p1およびp3はそれぞれその目標位置T1およびT3に到達している。すなわち、粒子p2のみが未だ対応付けられた目標位置T2に配置されていない。図6の右図は、いずれの場合も、最も近い粒子を目標位置に対応付けるアルゴリズムを示す。これは、対応付けの修正につながる。それにより、粒子p1はすでに目的地T1に到達しているが、目標位置T2に再度割り当てられ、粒子p2が目標位置T1に対応付けられる。それに応じて、費用関数および特異動的局所加熱イベントが決定される。図6の右図の手法の場合、粒子p1とp3の間で粒子p2を誘導する必要が避けられる。
【0105】
複数の同一の粒子が、それぞれの目標位置へと空間的に操作される、本発明に係る方法のさらなる例を、図7を参照して説明する。図7に示す例では、3つの粒子p1、p2、およびp3が、それぞれ対応付けられた目標位置T1、T2、およびT3に移動される。いずれの場合も、次に適用される特異動的局所加熱イベントは、それぞれの対応付けられた目標位置から最も離れた粒子に着目する。図7図1は、粒子p1が、その対応付けられた目標位置T1から最も離れた初期状態を示す。特異動的局所加熱イベントを決定および適用することで、図2に示す状態となる。ここで、粒子p1はその目標位置T1にかなり近づいている。ここで最も目標位置から離れた目標は、粒子p2となっている。その後、対応する特異動的局所加熱イベントを決定および適用することで、図3に示す状態となる。ここで、再度粒子p1が目標位置T2から最も離れている。本原理に係るさらなる手順として、複数の操作される粒子を有する構成において、いずれの場合も、次のステップで操作される粒子が、各粒子に対応付けられた目標位置から最も離れた粒子であることを、図4から6に示す。図4において、粒子p3がその目標位置T3から最も離れているため、粒子p3が動かされる。図5において、粒子p2がその目標位置T2から最も離れているため、操作される。図6に示す状態において、粒子p2およびp3がその目標位置T2およびT3に到達しており、粒子p1のみが未だその目標位置T1に移動していない。
【0106】
図8を参照して、費用関数の例が、提供および説明される。図8の上図は、2つの粒子サブセットAおよびBを含む、複数の粒子のある状態を示す。
【0107】
この例における空間的操作の目的は、粒子Aが中心において互いに近接して配置され、粒子Bが粒子Aの群から可能な限り離れるように移動することである。
【0108】
これら要件を反映する適切な費用関数Sは以下のとおりである。
【数1】
式中rおよびrは、タイプAおよびタイプBの粒子それぞれの、中心からの距離である。NおよびMは、タイプAおよびタイプBの粒子それぞれの数である。
【0109】
図9は、粒子p1、p2、p3がそれぞれ目標位置T1、T2、およびT3に動かされる状態における、例示的2次元流動場を視覚化したものを示す。図示の2次元流動場は、3つの異なる走査経路を持つ特異動的局所加熱イベントの流体への同時適用により、またはいずれの場合も1つの走査経路を有する3つの異なる特異動的局所加熱イベントの順次適用により生成されるものと考えられ得る。厳密には、後者の記載は、3つの走査経路が早急に、すなわち、流体内の熱緩和より早く適用された場合にのみ適切である。図示のように、各粒子について、流体力学的な流れは、対応付けられた目標位置の方向に各粒子が運ばれるように配向される。
【0110】
本発明は、熱粘性流を利用することで、事前に指定された物体(1または複数)または粒子(1または複数)が正確に配置でき、さらに配置が自動化もできることを示す。
【0111】
さらに、本発明は、完全に光学的に、粒子の高精度流体力学的配置が実現できることを示す。これは、レーザによる流れを、時間依存および確率論的粒子位置を考慮した閉フィードバックループと組み合わせることで実現される。発明者らは、この粒子位置を制御する新規方法の物理的特性を分析した。光学的による改善により、24nmまでの精度が実現された。これは、従前の流体力学的トラップでも実現できなかったものである。光ピンセットと異なり、本発明に係る方法は、特定の材料も、粒子のレーザビームへの曝露も要さない。フィードバック制御された熱粘性流は、従前の流体力学的トラップ技術に対する好ましい代替手段であり、広範の新規用途に機会を拓くものである。
【符号の説明】
【0112】
10 容器、試料チャンバ、12 流体、例えば水、20 加熱デバイス、22 照射源、例えば、赤外線レーザ、24 加熱照射、26 スキャナ、28 ビームシャッター、30 光ビームの結合手段、例えば、ダイクロイックミラー、40 顕微鏡、例えば、蛍光顕微鏡、42 撮像光源、44 撮像照射、46 例えば、励起、ダイクロイック、吸収フィルターから成るフィルターキューブ、48 対物レンズ、50 撮像照射用検出器、例えば、カメラ、52 画像データ、60 制御部、例えば、PC、100 本発明に係る装置、A,B,p1からp6 操作および/または配置される粒子、T1からT3 目標位置、FLUCS 集束光による細胞質流動。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】