IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北京鼎材科技有限公司の特許一覧

特表2024-525500化合物及びその使用、有機電界発光素子
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】化合物及びその使用、有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/61 20060101AFI20240705BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20240705BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240705BHJP
   C07D 307/91 20060101ALI20240705BHJP
   C07D 333/76 20060101ALI20240705BHJP
   C07D 209/88 20060101ALI20240705BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240705BHJP
   H10K 50/18 20230101ALI20240705BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240705BHJP
【FI】
C07C211/61
C07F7/10 Q CSP
C09K11/06 690
C07D307/91
C07D333/76
C07D209/88
H10K85/60
H10K50/18
H10K50/15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580870
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 CN2022100563
(87)【国際公開番号】W WO2023273998
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】202110719948.2
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515084971
【氏名又は名称】北京鼎材科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】黄 金華
(72)【発明者】
【氏名】黄 ▲シン▼▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】方 仁杰
(72)【発明者】
【氏名】董 梦青
(72)【発明者】
【氏名】曾 礼昌
【テーマコード(参考)】
3K107
4H006
4H049
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC12
3K107CC14
3K107DD72
3K107DD78
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB92
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ84
4H049VR24
4H049VW02
(57)【要約】
【要約】
本出願は、化合物及びその使用、有機電界発光素子を提供し、前記化合物は式Iに示される構造を有し、より良い平面性と芳香性を有し、アモルファスの薄膜を、より形成しやすく、分子の結晶性を低下させ、素子の空間構造をより緻密にすることにより、駆動電圧を低下させ、素子の発光効率を向上させるとともに、アリールアミン構造のN、Ar及びArは、それぞれベンゼン環の隣接する位置に接続され、前記化合物のLUMO準位を浅くすることにより、励起子の正孔層への拡散をさらに阻止し、素子の性能向上により有利である。前記化合物は、有機電界発光素子に適用され、特に電子阻止層材料に適用され、素子の動作電圧を低下させ、発光効率を向上させ、OLED素子の光電性能が絶えず向上するニーズを満たす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iに示される構造を有することを特徴とする化合物。
【化1】
式中、XはO、S、CR、NR又はSiRから選択され;
Ar、Arは、それぞれ独立に、置換のフェニル基、置換もしくは無置換のC9-C30アリール基、置換もしくは無置換のC3-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種であり、且つAr
【化2】
が含まれる場合に、Zは、O、S、CR1112又はNR13から選択され、*は基の結合手を表し;
Arは、置換もしくは無置換のC6-C30アリール基、置換もしくは無置換のC3-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種であり;
、R、R、R、R、R11、R12、R13は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換のC1-C20直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換もしくは無置換のC3-C20シクロアルキル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルケニル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルキニル基、置換もしくは無置換のC6-C30アリール基、置換もしくは無置換のC3-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種であり;RとR、RとR、R11とR12は、それぞれ独立に、連結せず又は化学結合により環に連結され;
f1、Rf2、Rf3は、それぞれ独立に、ハロゲン、シアノ基、置換もしくは無置換のC1-C20直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換もしくは無置換のC3-C20シクロアルキル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルケニル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルキニル基、置換もしくは無置換のC6-C30アリール基、置換もしくは無置換のC3-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種であり;
Ar、Ar、Ar、R、R、R、R、R、R11、R12、R13、Rf1、Rf2、Rf3における前記置換の置換基は、それぞれ独立に、ハロゲン、C1-C10直鎖又は分岐鎖アルキル基、C3-C10シクロアルキル基、C2-C10ヘテロシクロアルキル基、C1-C10アルコキシ基、C1-C10アルキルチオ基、C6-C30アリールアミノ基、C3-C30ヘテロアリールアミノ基、C6-C30アリール基又はC3-C30ヘテロアリール基から選択される少なくとも1種であり;
、kは、それぞれ独立に、0~3の整数であり;kは0~4の整数である。
【請求項2】
前記XはCR、NR又はSiRであり、好ましくはCRであり;
好ましくは、前記R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のC1-C6直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換もしくは無置換のC6-C18アリール基、置換もしくは無置換のC3-C18ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種であり;
とRは、連結せず又は化学結合により環に連結され、RとRは、連結せず又は化学結合により環に連結され;
好ましくは、前記R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、メチル又はフェニル基である、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記Arは、置換のフェニル基、置換もしくは無置換のC10-C20アリール基、置換もしくは無置換のC12-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種であり;前記C12-C30ヘテロアリール基中のヘテロ原子はO、S又はNであり;
好ましくは、前記Arは、置換もしくは無置換の以下の基のうちのいずれか1種であり:
【化3】
式中、*は基の結合手を表し;
R’は、ハロゲン、C1-C10直鎖又は分岐鎖アルキル基、C3-C10シクロアルキル基、C1-C10アルコキシ基、C1-C10アルキルチオ基、C6-C30アリールアミノ基、C3-C30ヘテロアリールアミノ基、C6-C30アリール基又はC3-C30ヘテロアリール基から選択され;
はO、S、CR1112又はNR13であり;
11、R12、R13は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換のC1-C20直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換もしくは無置換のC3-C20シクロアルキル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルケニル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルキニル基、置換もしくは無置換のC6-C30アリール基、置換もしくは無置換のC3-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種であり;
11とR12は、連結せず又は化学結合により環に連結され;
nは1~5の整数である、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記Arは、置換もしくは無置換の以下の基から選択されるいずれか1種である、ことを特徴とする請求項1又は3に記載の化合物。
【化4】
式中、*は基の結合手を表す。
【請求項5】
前記Arは、置換のフェニル基、置換もしくは無置換のC10-C20アリール基、置換もしくは無置換のC12-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種であり;
好ましくは、前記Arは、置換もしくは無置換の以下の基から選択されるいずれか1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化5】
式中、*は基の結合手を表し;
R″は、ハロゲン、C1-C10直鎖又は分岐鎖アルキル基、C3-C10シクロアルキル基、C1-C10アルコキシ基、C1-C10アルキルチオ基、C6-C30アリールアミノ基、C3-C30ヘテロアリールアミノ基、C6-C30アリール基又はC3-C30ヘテロアリール基から選択され;
Lは、単結合、置換もしくは無置換のC6-C30アリーレン基、置換もしくは無置換のC3-C30ヘテロアリーレン基中的いずれか1種から選択され;
は、O、S、CR2122、NR23又はSiR2425から選択され;
21、R22、R23、R24、R25は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換のC1-C20直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換もしくは無置換のC3-C20シクロアルキル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルケニル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルキニル基、置換もしくは無置換のC6-C30アリール基、置換もしくは無置換のC3-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種であり;
21とR22は、連結せず又は化学結合により環に連結され、R24とR25は、連結せず又は化学結合により環に連結され;
mは1~5の整数である。
【請求項6】
前記Lは、単結合、置換もしくは無置換の以下の基から選択されるいずれか1種である、ことを特徴とする請求項5に記載の化合物。
【化6】
式中、*は基の結合手を表す。
【請求項7】
前記Arは、置換もしくは無置換の以下の基から選択されるいずれか1種である、ことを特徴とする請求項1、5又は6のいずれか1項に記載の化合物。
【化7】
式中、Lは、
【化8】
から選択されるいずれか1種であり;
*は基の結合手を表す。
【請求項8】
前記Arは、置換もしくは無置換の以下の基のうちのいずれか1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化9】
式中、*は基の結合手を表す。
【請求項9】
前記Rf1、Rf2、Rf3は、それぞれ独立に、ハロゲン、シアノ基、置換もしくは無置換のC1-C6直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換もしくは無置換のC3-C6シクロアルキル基、置換もしくは無置換のC6-C18アリール基、置換もしくは無置換のC3-C18ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種であり;
好ましくは、前記k、k、kはいずれも0である、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物は、以下のP1~P590に示される構造のうちのいずれか1種を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【請求項11】
前記化合物は、P2、P16、P20、P25、P28、P31、P38、P42、P44、P51、P129、P196、P221、P301、P341、P391、P441、P448、P461又はP501から選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物の、有機電界発光素子、照明デバイス、有機薄膜トランジスタ、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜太陽電池、情報ラベル、電子人工皮膚シート、シート型スキャナ又は電子ペーパーにおける使用;
好ましくは、前記化合物は、有機電界発光素子に電子阻止材料及び/又は正孔輸送材料として用いられることを特徴とする使用。
【請求項13】
有機電界発光素子であって、前記有機電界発光素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に設けられた少なくとも1つの有機層とを含み、前記有機層には、少なくとも1種の請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物が含まれ;
好ましくは、前記有機層は電子阻止層を含み、前記電子阻止層には、少なくとも1種の請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物が含まれ;
好ましくは、前記有機層は正孔輸送層を含み、前記正孔輸送層には少なくとも1種の請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物が含まれる、ことを特徴とする有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年06月28日に中国特許庁、出願番号が202110719948.2、出願名称が「化合物及びその使用、有機電界発光素子」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容が引用により本出願に結合される。
【0002】
技術分野
本出願は、有機電界発光材料の技術分野に属し、具体的には、化合物及びその使用、有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、有機材料による光電子素子が人気になってきている。有機材料に固有の可撓性は、フレキシブル基板上で製造するために十分に適しており、要求に応じて、美観で、格好よい光電子製品を設計し、製造することができ、無機材料に対しては比べない利点を獲得する。このような有機光電子素子の例は、有機発光ダイオード(OLED)、有機電界効果トランジスタ、有機太陽電池、有機センサなどを含む。OLEDの発展は特に迅速であり、情報表示分野において商業的な成功を取得している。OLEDは、高彩度の赤、緑、青の3色を提供することができ、それを用いて製造されるフルカラー表示装置は、追加のバックライトを必要とせず、色彩が鮮やかで、軽薄で柔らかいなどの利点を有する。
【0004】
OLED素子のコアは、複数種類の有機機能材料を含む薄膜構造である。一般的な有機機能材料としては、正孔注入材料、正孔輸送材料、正孔阻止材料、電子注入材料、電子輸送材料、電子阻止材料、発光ホスト材料及び発光ゲスト(染料)などがある。通電すると、電子及び正孔がそれぞれ発光領域に注入、転送され、ここで再結合することで励起子が生成され、発光する。
【0005】
現在、多種の有機材料が開発され、種々の新規な素子構造と組み合わせることにより、キャリア移動度を向上させ、キャリアバランスを制御し、電界発光効率を突破させ、素子の減衰を遅延させることができる。量子力学的な理由から、一般的な蛍光発光体は主に電子と正孔との結合時に発生する一重項励起子によって発光し、現在、依然として様々なOLED製品に広く応用されている。一部の金属錯体(例えばイリジウム錯体)は、三重項励起子と一重項励起子を同時に利用して発光することができ、燐光発光体と呼ばれ、そのエネルギー変換効率は従来の蛍光発光体に比べて最大4倍に向上できる。熱励起遅延蛍光(TADF)技術は、三重項励起子の一重項励起子への転移を促進し、金属錯体を採用しない場合に、三重項励起子を有効に利用して高い発光効率を実現することができる。熱励起増感蛍光(TASF)技術はTADFの性質を有する材料を採用し、エネルギー移動の方式で発光体を増感し、同様に高い発光効率を実現することができる。
【0006】
OLED製品が市場に進出するにつれて、人々は、これらの製品の性能に対する要求がますます高くなっている。現在使用されているOLED材料及び素子構造は、OLED製品の効率、寿命、コストなどの各方面の問題を完全に解決することができない。
【0007】
したがって、本分野では、素子の発光効率を向上させ、駆動電圧を低下させることができる有機電界発光材料を開発することが急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術の欠点に対して、本出願の目的は、化合物及びその使用、有機電界発光素子を提供することであり、前記化合物は、有機電界発光素子に適用され、特に電子阻止層材料及び/又は正孔輸送層材料に好適であり、素子の発光効率を向上させ、駆動電圧を低下させ、素子の総合性能を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本出願は以下の技術案を採用する。
【0010】
本出願の第1の目的は、式Iに示される構造を有する化合物を提供することである。
【化1】
式Iにおいて、Xは、O、S、CR、NR又はSiRから選択される。
【0011】
式Iにおいて、Ar、Arは、それぞれ独立に、置換のフェニル基、置換もしくは無置換のC9-C30アリール基、置換もしくは無置換のC3-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種であり;且つAr
【化2】
が含まれる場合、ZはO、S、CR1112又はNR13から選択され;*は基の結合手を表す。
【0012】
式Iにおいて、Arは、置換もしくは無置換のC6-C30アリール基、置換もしくは無置換のC3-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種である。
【0013】
、R、R、R、R、R11、R12、R13は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換のC1-C20直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換もしくは無置換のC3-C20シクロアルキル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルケニル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルキニル基、置換もしくは無置換のC6-C30アリール基、置換もしくは無置換のC3-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種であり;RとR、RとR、R11とR12は、それぞれ独立に、連結せず又は化学結合により環に連結される。
【0014】
f1、Rf2、Rf3は、それぞれ独立に、ハロゲン、シアノ基、置換もしくは無置換のC1-C20直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換もしくは無置換のC3-C20シクロアルキル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルケニル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルキニル基、置換もしくは無置換のC6-C30アリール基、置換もしくは無置換のC3-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種である。
【0015】
Ar、Ar、Ar、R、R、R、R、R、R11、R12、R13、Rf1、Rf2、Rf3における前記置換の置換基は、それぞれ独立に、ハロゲン、C1-C10直鎖又は分岐鎖アルキル基、C3-C10シクロアルキル基、C2-C10ヘテロシクロアルキル基、C1-C10アルコキシ基、C1-C10アルキルチオ基、C6-C30アリールアミノ基、C3-C30ヘテロアリールアミノ基、C6-C30アリール基又はC3-C30ヘテロアリール基から選択される少なくとも1種である。
【0016】
、kは、それぞれ独立に、0~3の整数であり、例えば、0、1、2又は3であり、kは、0~4の整数であり、例えば、0、1、2、3又は4であってもよい。
【0017】
本出願で提供される化合物は、式Iに示される構造を有し、前記化合物は、より良い平面性と芳香性を有し、アモルファスの薄膜を、より形成しやすく、分子の結晶性を低下させ、素子の空間構造をより緻密にすることにより、駆動電圧を低下させ、素子の発光効率を向上させるとともに、アリールアミン構造のN、Ar及びArは、それぞれベンゼン環の隣接する位置に接続され、前記化合物のLUMO準位を浅くすることにより、励起子の正孔層への拡散をさらに阻止し、素子の性能向上により有利である。
【0018】
なお、本出願では、説明の便宜上、各基/特徴の可能の作用についてそれぞれ説明したが、これらの基/特徴が孤立して機能することを示すものではない。実際には、良好な性能が得られる理由は、本質的に、分子全体の最適の組合せであり、各基同士が相乗的に作用した結果であり、単一の基の効果ではない。
【0019】
本出願において、前記ハロゲンは、いずれもフッ素、塩素、臭素又はヨウ素であってもよい。以下は同じ記述に関するものは、すべて同じ意味を有する。
【0020】
本出願において、前記「置換又は非置換」の基は、1つの置換基に置換されていてもよく、複数の置換基が置換されていてもよく、置換基が複数(少なくとも2つ)である場合、同一又は異なる置換基であってもよく、以下は同じ記述に関するものは、すべて同じ意味を有し、且つ置換基の選択範囲はいずれも上に示されており、ここでは繰り返さない。
【0021】
本出願において、化学元素に対する表記は、特に断らない限り、化学的性質が同じである同位体の概念を含み、例えば、水素(H)は、H(軽水素)、H(重水素、D)、H(三重水素、T)などを含み、炭素(C)は、12C、13Cなどを含む。
【0022】
本出願において、特に断らない限り、ヘテロアリール基のヘテロ原子は、N、O、S、P、B、Si又はSeから選択される。
【0023】
本出願において、「-」で交差された環構造の表現は、連結部位が該環構造における任意に結合可能な位置であることを表す。
【0024】
本出願において、Ca~Cbの表現方式は、当該基が有する炭素原子数がa~bであることを表し、特に断らない限り、一般的に当該炭素原子数は置換基の炭素原子数を含まない。
【0025】
本明細書において、「それぞれ独立に」とは、その主語が複数ある場合、互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。
【0026】
本出願において、前記C9-C30アリール基は、いずれもC9、C10、C12、C14、C16、C18、C20、C22、C24、C26又はC28などであってもよい。
【0027】
前記C3-C30は、いずれもC3、C4、C5、C6、C9、C10、C12、C14、C16、C18、C20、C22、C24、C26又はC28などであってもよい。
【0028】
前記C6-C30は、いずれもC6、C9、C10、C12、C14、C16、C18、C20、C22、C24、C26又はC28などであってもよい。
【0029】
前記C1-C20は、いずれもC2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18又はC19などであってもよい。
【0030】
前記C3-C20は、いずれもC4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18又はC19などであってもよい。
【0031】
前記C2-C12は、いずれもC3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11などであってもよい。
【0032】
前記C1-C10は、いずれもC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9又はC10であってもよい。
【0033】
前記C3-C10は、いずれもC3、C4、C5、C6、C7、C8、C9又はC10であってもよい。
【0034】
前記C2-C10は、いずれもC2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9又はC10であってもよい。
【0035】
本出願において、前記C6-C30アリール基、好ましくはC6-C20アリール基は、単環アリール基及び縮合環アリール基を含み;前記単環アリール基とは、基中に少なくとも1つのフェニル基を含むことを指し、少なくとも2つのフェニル基を含む場合に、フェニル基同士は単結合によって連結され、例示的には、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などを含むが、これらに限定されない。前記縮合環アリール基とは、基中に少なくとも2つの芳香環を含み、且つ芳香環同士では2つの隣接する炭素原子が互いに縮合した基を共有することを指し、例示的には、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、フルオレニル基及びその誘導体(9,9-ジメチルフルオレニル基、9,9-ジエチルフルオレニル基、9,9-ジプロピルフルオレニル基、9,9-ジブチルフルオレニル基、9,9-ジペンチルフルオレニル基、9,9-ジヘキシルフルオレニル基、9,9-ジフェニルフルオレニル基、9,9-ジナフチルフルオレニル基、スピロビフルオレニル基、ベンゾフルオレン基など)、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基又はテトラセン基などを含むが、これらに限定されない。
【0036】
前記C3-C30ヘテロアリール基は、単環ヘテロアリール基と縮合環ヘテロアリール基を含む。前記単環ヘテロアリール基とは、分子中に少なくとも1つのヘテロアリール基を含むことを指し、分子中に1つのヘテロアリール基と他の基(例えば、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基など)が含まれる場合に、ヘテロアリール基と他の基との間は単結合によって連結され、例示的には、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基などを含むが、これらに限定されない。前記縮合環ヘテロアリール基とは、分子中に少なくとも1つの芳香族複素環と1つの芳香族性環(芳香族複素環又は芳香環)を含み、且つ2つの隣接する原子が互いに縮合した基を共有していることを指し、例示的には、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、イソベンゾフラニル基、イソベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基及びその誘導体(N-フェニルカルバゾリル基、N-ナフチルカルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、インドリルカルバゾリル基、アザカルバゾリル基など)、アクリジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、ヒドロアクリジニル基などを含むが、これらに限定されない。
【0037】
本出願で後述する前記アリーレン基の具体例としては、上記アリール基の例から水素原子を1個除いた2価の基が挙げられ;前記ヘテロアリーレン基の具体例としては、上記ヘテロアリール基の例から水素原子を1個除いた2価の基が挙げられる。
【0038】
前記C1-C20直鎖又は分岐鎖アルキル基は、例示的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ヘプチル基、n-ノニル基、n-デシル基などが例示されるが、これらに限定されない。
【0039】
前記C3-C20シクロアルキル基は、例示的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などが例示されるが、これらに限定されない。
【0040】
好ましくは、前記XはCR、NR又はSiRであり、さらに好ましくはCRである。
【0041】
好ましくは、前記R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のC1-C6直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換もしくは無置換のC6-C18アリール基、置換もしくは無置換のC3-C18ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種であり;RとRは、連結せず又は化学結合により環に連結され、RとRは、連結せず又は化学結合により環に連結される。
【0042】
好ましくは、前記R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、メチル又はフェニル基である。
【0043】
例示的には、前記XはCRであり、前記RとRは化学結合によりフルオレン環構造になる様に連結される。
【0044】
好ましくは、前記Arは、置換のフェニル基、置換もしくは無置換のC10-C20アリール基、置換もしくは無置換のC12-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種であり;前記C12-C30ヘテロアリール基中のヘテロ原子はO、S又はNである。
【0045】
好ましくは、前記Arは、置換もしくは無置換の以下の基のうちのいずれか1種であり:
【化3】
式中、*は基の結合手を表し;
R’は、ハロゲン、C1-C10直鎖又は分岐鎖アルキル基、C3-C10シクロアルキル基、C1-C10アルコキシ基、C1-C10アルキルチオ基、C6-C30アリールアミノ基、C3-C30ヘテロアリールアミノ基、C6-C30アリール基又はC3-C30ヘテロアリール基から選択される。
【0046】
は、O、S、CR1112又はNR13から選択される。
【0047】
11、R12、R13は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換のC1-C20直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換もしくは無置換のC3-C20シクロアルキル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルケニル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルキニル基、置換もしくは無置換のC6-C30アリール基、置換もしくは無置換のC3-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種である。
【0048】
11とR12は、連結せず又は化学結合により環に連結される。
【0049】
nは1~5の整数であり、例えば1、2、3、4又は5であってもよい。
【0050】
好ましくは、前記Arは、置換もしくは無置換の以下の基から選択されるいずれか1種であり:
【化4】
式中、*は基の結合手を表す。
【0051】
好ましくは、前記Arは、置換のフェニル基、置換もしくは無置換のC10-C20アリール基、置換もしくは無置換のC12-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種である。
【0052】
好ましくは、前記Arは、置換もしくは無置換の以下の基から選択されるいずれか1種であり:
【化5】
式中、*は基の結合手を表し;
R″は、ハロゲン、C1-C10直鎖又は分岐鎖アルキル基、C3-C10シクロアルキル基、C1-C10アルコキシ基、C1-C10アルキルチオ基、C6-C30アリールアミノ基、C3-C30ヘテロアリールアミノ基、C6-C30アリール基又はC3-C30ヘテロアリール基から選択され;
Lは、単結合、置換もしくは無置換のC6-C30アリーレン基、置換もしくは無置換のC3-C30ヘテロアリーレン基から選択されるいずれか1種であり;
は、O、S、CR2122、NR23又はSiR2425から選択され;
21、R22、R23、R24、R25は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換のC1-C20直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換もしくは無置換のC3-C20シクロアルキル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルケニル基、置換もしくは無置換のC2-C12アルキニル基、置換もしくは無置換のC6-C30アリール基、置換もしくは無置換のC3-C30ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種であり;
21とR22は、連結せず又は化学結合により環に連結され、R24とR25は、連結せず又は化学結合により環に連結され;
mは1~5の整数であり、例えば1、2、3、4又は5であってもよい。
【0053】
好ましくは、前記Lは単結合、置換もしくは無置換の如下基から選択されるいずれか1種である。
【化6】
式中、*は基の結合手を表す。
【0054】
好ましくは、前記Arは、置換もしくは無置換の以下の基から選択されるいずれか1種であり:
【化7】
式中、Lは、
【化8】
のうちのいずれか1種であり;
*は基の結合手を表す。
【0055】
好ましくは、前記Arは、置換もしくは無置換の以下の基から選択されるいずれか1種であり:
【化9】
式中、*は基の結合手を表す。
【0056】
好ましくは、前記Rf1、Rf2、Rf3は、それぞれ独立に、ハロゲン、シアノ基、置換もしくは無置換のC1-C6直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換もしくは無置換のC3-C6シクロアルキル基、置換もしくは無置換のC6-C18アリール基、置換もしくは無置換のC3-C18ヘテロアリール基から選択されるいずれか1種である。
【0057】
好ましくは、前記k、k、kは、いずれも0である。
【0058】
本出願に前述した「置換又は非置換」に置換基が存在する場合に、前記置換基は、それぞれ独立に、ハロゲン、C1-C10直鎖又は分岐鎖アルキル基、C3-C10シクロアルキル基、C2-C10ヘテロシクロアルキル基、C1-C10アルコキシ基、C1-C10アルキルチオ基、C6-C30アリールアミノ基、C3-C30ヘテロアリールアミノ基、C6-C30アリール基又はC3-C30ヘテロアリール基から選択される少なくとも1種である。
【0059】
好ましくは、前記置換基は、それぞれ独立に、ハロゲン、C1-C10直鎖又は分岐鎖アルキル基、C3-C10シクロアルキル基、C2-C10ヘテロシクロアルキル基、C6-C30アリール基又はC3-C30ヘテロアリール基から選択される少なくとも1種である。
【0060】
好ましくは、前記化合物は、以下のP1~P590に示される構造のいずれか1種を有する:
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【0061】
本出願のいくつかの実施例において、上記有機化合物は、上記P2、P16、P20、P25、P28、P31、P38、P42、P44、P51、P129、P196、P221、P301、P341、P391、P441、P448、P461又はP501のうちのいずれか1種又は複種の混合物から選択される場合に、電子阻止層材料及び/又は正孔輸送層材料として有機電界発光素子に適用され、素子の発光効率をより効果的に向上させ、駆動電圧をより効果的に低下させることができる。
【0062】
本出願の第2の目的は、第1の目的に記載の化合物の、有機電界発光素子に適用される使用を提供することである。
【0063】
好ましくは、前記化合物は、有機電界発光素子に電子阻止材料及び/又は正孔輸送材料として用いられる。
【0064】
本出願の化合物は、有機電界発光素子に加えて、照明デバイス、有機薄膜トランジスタ、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜太陽電池、情報ラベル、電子人工皮膚シート、シート型スキャナ又は電子ペーパーにも適用できる。
【0065】
本出願の第3の目的は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に設けられた少なくとも1つの有機層とを含み、前記有機層には、少なくとも1種の第1の目的に記載の化合物が含まれる有機電界発光素子を提供することである。
【0066】
好ましくは、前記有機層は電子阻止層を含み、前記電子阻止層には、少なくとも1種の第1の目的に記載の化合物が含まれる。
【0067】
本出願で提供される化合物は、電子阻止層材料として有機電界発光素子に適用される場合、素子の駆動電圧を著しく低下させ、電流効率が向上し、全面的に有機電界発光素子の発光性能を向上させる。
【0068】
好ましくは、前記有機層は正孔輸送層を含み、前記正孔輸送層には、少なくとも1種の第1の目的に記載の化合物が含まれる。
【0069】
具体的な一技術方案において、前記有機電界発光素子(OLED)は、第1電極と、第2電極と、第1電極と第2電極との間に位置する有機層とを含む。前記有機層は、さらに複数の領域に分けられてもよく、例えば、正孔輸送領域、発光層、電子輸送領域を含む。
【0070】
具体的な実施形態において、第1電極の下方又は第2電極の上方に基板を使用することができる。基板は、いずれも機械的強度、熱安定性、防水性、透明度に優れたガラス又はポリマー材料である。なお、ディスプレイ用の基板には、薄膜トランジスタ(TFT)が付いていてもよい。
【0071】
第1電極は、基板上に第1電極として機能する材料をスパッタリング又は堆積することにより形成することができる。第1電極を陽極とする場合、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、二酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などの酸化物透明導電材料とそれらの任意の組み合せを採用することができる。第1電極を陰極とする場合、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、イッテルビウム(Yb)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)などの金属又は合金及びこれらの任意の組み合せを採用することができる。
【0072】
有機層は、真空熱蒸着、スピンコーティング、プリントなどの方法により電極の上に形成することができる。有機層として用いる化合物は、有機小分子、有機高分子又は重合体、及びこれらの組み合せであってもよい。
【0073】
正孔輸送領域は、陽極と発光層との間に位置する。正孔輸送領域は、単層構造の正孔輸送層(HTL)であってもよく、1種の化合物のみを含有する単層の正孔輸送層と、複数の化合物を含有する単層の正孔輸送層とを含む。正孔輸送領域は、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子阻止層(EBL)中の少なくとも1層を含む多層構造であってもよく、HILは、陽極とHTLとの間に位置し、EBLは、HTLと発光層との間に位置し、HTL又はEBLには、式Iの構造を有する少なくとも1種の化合物が含まれる。
【0074】
正孔輸送領域の材料は、さらに、CuPcなどのフタロシアニン誘導体、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Pani/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Pani/CSA)、ポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホネート)(Pani/PSS)などの導電性ポリマー又は導電性ドーパント含有ポリマー、下記のHT-1からHT-51で示される化合物を含む芳香族アミン誘導体であってもよく、又はそれらの任意の組み合せを含むが、これらに限定されない。
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【0075】
正孔注入層は、陽極と正孔輸送層との間に位置する。正孔注入層は、単一の化合物材料であってもよく、複数の化合物の組み合せであってもよい。例えば、正孔注入層は、上記HT-1からHT-51の1種又は複種の化合物、或いは下記のHI-1~HI-3中の1種又は複種の化合物を採用してもよく、HT-1からHT-51の1種又は複種の化合物を採用して下記のHI-1からHI-3中の1種又は複種の化合物をドープしてもよい。
【化53】
【0076】
発光層は、異なる波長スペクトルを発することができる発光染料(即ちドーパント、dopant)を含み、ホスト材料(Host)をさらに含んでもよい。発光層は、赤、緑、青などの単一色を発光する単色発光層であってもよい。複数の異なる色の単色発光層は、画素パターンに従って平面配列されてもよく、積み重ねられてカラー発光層を形成してもよい。異なる色の発光層が積み重ねられている場合には、互いに離間していてもよいし、互いに繋がっていてもよい。発光層は、赤、緑、青などの異なる色を同時に発光可能な単一のカラー発光層であってもよい。
【0077】
異なる技術によれば、発光層材料は、蛍光電界発光材料、燐光電界発光材料、熱活性化遅延蛍光発光材料などの異なる材料を採用することができる。1つのOLED素子において、単一の発光技術を採用してもよく、複数の異なる発光技術の組み合せを採用してもよい。これらの技術的に分類された異なる発光材料は、同種の色の光を発光してもよいし、異なる色の光を発光してもよい。
【0078】
本出願の一態様において、発光層は、蛍光電界発光の技術を採用する。その発光層蛍光ホスト材料は、以下に挙げるBFH-1からBFH-17の1種又は複種の組み合わせから選択されるが、これらに限定されない。
【化54】
【0079】
本出願の一態様において、発光層は、蛍光電界発光の技術を採用する。その発光層蛍光ドーパントは、以下に挙げるBFD-1からBFD-24の1種又は複種の組み合わせから選択されるが、これらに限定されない。
【化55】
【化56】
【0080】
本出願の一態様において、発光層は、燐光電界発光の技術を採用する。その発光層ホスト材料は、PH-1からPH-85の1種又は複種の組み合わせから選択されるが、これらに限定されない。
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【0081】
本出願の一態様において、発光層は、燐光電界発光の技術を採用する。その発光層燐光ドーパントは、以下に挙げるGPD-1からGPD-47の1種又は複種の組み合わせから選択されるが、これらに限定されない。
【化61】
【化62】
【0082】
本出願の一態様において、発光層は、燐光電界発光の技術を採用する。その発光層燐光ドーパントは、以下に挙げるRPD-1からRPD-28の1種又は複種の組み合わせから選択されるが、これらに限定されない。
【化63】
【0083】
本出願の一態様において、発光層は、燐光電界発光の技術を採用する。その発光層燐光ドーパントは、以下に挙げるYPD-1からYPD-11の1種又は複種の組み合わせから選択されるが、これらに限定されない。
【化64】
【0084】
OLED有機層は、発光層と陰極との間の電子輸送領域をさらに含んでもよい。電子輸送領域は、単層構造の電子輸送層(ETL)であってもよく、1種の化合物のみを含有する単層電子輸送層と、複種の化合物を含有する単層電子輸送層とを含む。電子輸送領域は、電子注入層(EIL)、電子輸送層(ETL)、正孔阻止層(HBL)の少なくとも一層を含む多層構造であってもよい。
【0085】
本出願の一態様において、電子輸送層材料は、以下に挙げるET-1からET-73のうちの1種又は複種の組み合せから選択されるが、これらに限定されない。
【化65】
【化66】
【化67】
【化68】
本出願の一態様において、正孔阻止層(HBL)は、電子輸送層と発光層との間に位置する。正孔阻止層は、上記ET-1からET-73のうちの1種又は複種の化合物、又はPH-1からPH-46のうちの1種又は複種の化合物を採用することができるが、それらに限定されなく;ET-1からET-73のうちの1種又は複種の化合物と、PH-1からPH-46のうちの1種又は複種の化合物との混合物を採用することができるが、これらに限定されない。
【0086】
素子は、電子輸送層と陰極との間に位置する電子注入層をさらに含んでもよく、電子注入層材料は、LiQ、LiF、NaCl、CsF、LiO、CsCO、BaO、Na、Li、Ca、Mg又はYbからの1種又は複種の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0087】
前記正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層及び電子注入層の厚さはいずれも制限されない。発光素子の発光効率をさらに向上させ、駆動電圧をさらに低下させるために、正孔注入層の厚さは8~12nmであることが好ましく、正孔輸送層の厚さは55~65nmであることが好ましく、電子阻止層の厚さは30~40nmであることが好ましく、発光層の厚さは35~45nmであることが好ましく、正孔阻止層の厚さは3~8nmであることが好ましく、電子輸送層の厚さは20~30nmであることが好ましく、電子注入層の厚さは0.8~1.2nmであることが好ましい。特に、正孔注入層の厚さが10nmであり、正孔輸送層の厚さが60nmであり、電子阻止層の厚さが35nmであり、発光層の厚さが40nmであり、正孔阻止層の厚さが5nmであり、電子輸送層の厚さが25nmであり、電子注入層の厚さが1nmである場合に、得られた電界発光素子は、より優れた発光効率とより低い駆動電圧を有する。
【発明の効果】
【0088】
従来技術に対して、本出願は以下の有益な効果を有する。
【0089】
本出願により提供される化合物は、式Iに示される構造を有し、前記化合物は、より良い平面性と芳香性を有し、アモルファスの薄膜を、より形成しやすく、分子の結晶性を低下させ、素子の空間構造をより緻密にすることにより、駆動電圧を低下させ、素子の発光効率を向上させるとともに、アリールアミン構造のN、Ar及びArは、それぞれベンゼン環の隣接する位置に接続され、前記化合物のLUMO準位を浅くすることにより、励起子の正孔層への拡散をさらに阻止し、素子の性能向上により有利である。前記化合物は、有機電界発光素子に応用され、特に電子阻止層材料に適用され、素子の動作電圧を低下させ、発光効率を向上させるのにより有利で、OLED素子の光電性能が絶えず向上するニーズを満たす。
【発明を実施するための形態】
【0090】
以下、具体的な実施形態により本出願の技術方案をさらに説明する。当業者であれば、前記の実施例は本出願を理解するためのものに過ぎず、本出願の具体的な制限と見なされるべきではない。
【0091】
本出願において、式Iに示される構造を有する化合物の代表的な合成経路は以下の通りである。
【化69】
式中、Ar、Ar、Ar、X、Rf1、Rf2、Rf3、k、k、kは、式Iにおけるものと同じ意味を有し、Pd(PPhは、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを表し、Pd(dba)は、トリス(ジベンジルアセトン)ジパラジウム(0)を表し、Sphosは、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニルを表し、IPr.HClは、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリウムクロライドを表し、NaOBu-tは、ナトリウム-tert-ブトキシドを表し、(t-Bu)Pは、トリ-tert-ブチルホスフィンを表す。
【0092】
本出願の式I化合物の調製は上記の方法を含むが、上記の方法に限定されず、当業者が他の方法で合成して得られた式I化合物も本発明の保護範囲に属する。
【0093】
より具体的には、本出願は、以下の合成例において例示的に前記化合物の具体的な合成方法を提供し、以下の合成例において用いられる溶媒及び試薬は、いずれも化学製品市場から購入又はカスタマイズすることができる。また、当業者は、他の公知の方法により合成してもよい。
【0094】
以下の合成例における質量分析特性データは、英国Micromass社製のZAB-HS型質量分析装置により測定した。
【0095】
合成例1:化合物P2
【化70】
【0096】
1000mLの一口フラスコに、20.0gのM1、20.7gの2-ビフェニルボロン酸、1.2gのテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムPd(PPh、28.9gの炭酸カリウム、300mLの1,4-ジオキサン及び100mLの水を加え、真空引きして窒素で3回置換し、反応を100℃に昇温して5h反応させた。反応が終了し、反応を停止した。室温まで冷却し、反応液を分液し、有機相を2回シリカゲルカラムで精製し、有機相を濃縮し、メタノールを加えて1h還流撹拌し、吸引ろ過して淡黄色粉末M1-1を得た後、酢酸エチルで再結晶して純品22.9gを得た。
M1-1:m/z理論値:309;m/z実測値:310。
【0097】
1000mLの一口フラスコに、22.9gのM1-1、13.5gフェニルボロン酸、0.7gのトリス(ジベンジルアセトン)ジパラジウム(0)Pd(dba)、0.6gの2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(Sphos)、31.4gの無水リン酸カリウム、400mLの1,4-ジオキサン及び40mLの水を加え、真空引きして窒素で3回置換し、反応を100℃に昇温して5h反応させた。反応が終了し、反応を停止した。室温まで冷却し、反応液を分液し、有機相を2回シリカゲルカラムで精製し、有機相を濃縮し、メタノールを加えて1h還流撹拌し、吸引ろ過して淡黄色粉末M1-2を得た後、酢酸エチルで再結晶して純品16.9gを得た。
M1-2:m/z理論値:351;m/z実測値:352。
【0098】
1000mLの一口フラスコに、16.9gのM1-2、2mlのヒドラジン水和物、0.5gのパラジウム炭素(Pd/C)及び300mLのエタノールを加え、真空引きして窒素で3回置換し、反応を90℃に昇温して5h反応させた。反応が終了し、反応を停止した。室温まで冷却し、反応液を分液し、有機相を2回シリカゲルカラムで精製し、有機相を濃縮し、メタノールを加えて1h還流撹拌し、吸引ろ過して白色粉末M1-3を得た後、酢酸エチルで再結晶して純品14.5gを得た。
M1-3:m/z理論値:321;m/z実測値:322。
【0099】
1000mLの一口フラスコに、14.5gのM1-3、12.3gの2-ブロモ-9,9-ジメチルフルオレン、0.4gのPd(dba)、0.4gの1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリウムクロライド(IPr.HCl)、13.0gのナトリウム-tert-ブトキシドNaOBu-t、300mLのトルエンを加え、真空引きして窒素で3回置換し、反応を90℃に昇温して5h反応させた。反応が終了し、反応を停止した。室温まで冷却し、反応液を分液し、有機相を2回シリカゲルカラムで精製し、有機相を濃縮し、メタノールを加えて1h還流撹拌し、吸引ろ過して淡黄色粉末M1-4を得た後、酢酸エチルで再結晶して純品17.1gを得た。
M1-4:m/z理論値:513;m/z実測値:514。
【0100】
1000mLの一口フラスコに、17.1gのM1-4、7.7gの4-ブロモビフェニル、0.3gのPd(dba)、0.4mLのトリ-tert-ブチルホスフィン(t-Bu)P、9.6gのナトリウム-tert-ブトキシド、300mLのトルエンを加え、真空引きして窒素で3回置換し、反応を110℃に昇温して5h反応させた。反応が終了し、反応を停止した。室温まで冷却し、反応液を分液し、有機相を2回シリカゲルカラムで精製し、有機相を濃縮し、メタノールを加えて1h還流撹拌し、吸引ろ過して淡黄色粉末P2を得た後、酢酸エチルで3回再結晶して純品8.5gを得た。
化合物P2:m/z理論値:665;m/z実測値:666。
【0101】
合成例2~20、比較化合物CCP-3
合成例2~20のプロセス経路は合成例1と同じであり、相違点は原料が異なり、原料、目標生成物及び結果特徴付けデータは表1に示すとおりである。
【0102】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0103】
実施例1
順に設けられた陽極(ITO)と、正孔注入層と、正孔輸送層と、電子阻止層と、発光層と、正孔阻止層と、電子輸送層と、電子注入層と、陰極(Al)とを含む有機電界発光素子。
【0104】
前記有機電界発光素子の製造方法は、以下の通りである。ITO透明導電層が塗布されたガラス板を商用洗浄剤中で超音波処理し、脱イオン水で洗浄し、アセトン/エタノールの混合溶媒中で超音波で油を除去し、水分を完全に除去するまでクリーン環境下でベーキングし、紫外光とオゾンで洗浄し、低エネルギー陽イオンビームで表面を衝突させ、上記陽極付きガラス基板を真空チャンバー内に置き、<1×10-5Paまで真空引きし、上記陽極層フィルム上に、正孔注入層として10nmの化合物HT-4:HI-3(97/3、w/w)混合物、正孔輸送層として60nmの化合物HT-4、電子阻止層として35nmの本出願で提供される化合物P2、発光層として40nmの化合物PH-61:PH-3:GPD-12(100:100:20、w/w)三元混合物、正孔阻止層として5nmのET-23、電子輸送層として25nmの化合物ET-69:ET-57(50/50、w/w)混合物を、電子注入層として1nmのLiF、陰極として150nmの金属アルミニウム、を順に真空熱蒸着し、全ての有機層とLiFの蒸着総速度を0.1nm/sに制御し、金属電極の蒸着レートを1nm/sに制御した。
【0105】
実施例2~20、比較例1~5
電子阻止層材料化合物P2を表2の化合物に置き換えたことのみが実施例1と異なる有機電界発光素子。
【0106】
比較例1~5の電子阻止層材料の構造は以下の通りである。
【化71】
【0107】
上記化合物CCP-1の由来は従来技術CN109485577Aを参考でき、CCP-2の由来は従来技術KR1020180104911Aを参考でき、CCP-3の製造方法は表1に示される如きで、CCP-4の由来は従来技術CN107017348Aを参考でき、CCP-5の由来は従来技術CN110903276Aを参考できる。
【0108】
上記実施例1~20及び比較例1~5に係る有機電界発光素子について、下記の性能テストを行った:即ち、同じ輝度で、デジタルソースメーター及び輝度計を用いて有機電界発光素子の駆動電圧及び電流効率を測定した。具体的には、毎秒0.1Vの速度で電圧を上昇させ、有機電界発光素子の輝度が10000cd/mに達した時の電圧である駆動電圧を測定するとともに、この時の電流密度を測定し、輝度と電流密度との比が電流効率であり、テスト結果を表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
表2のデータを参照すると、本出願により提供される化合物は、有機電界発光素子に用いられ、点灯電圧の低下、電流効率の向上により有利で、素子の駆動電圧が3.9~4.3Vと低く、電流効率が64.9~69.4cd/Aとなり、性能が良好な緑色光電子阻止層材料である。
【0111】
比較例1のCCP-1と実施例11の化合物P129との相違点は、Nに連結された基Arがフェニル基であるため、CCP-1の平面性及び芳香性が悪く、分子の結晶性及び空間構造の緻密性に影響を与え、比較例1の素子の駆動電圧が高く、電流効率が低いことを引き招く。比較例2の化合物CCP-2と実施例10の化合物P51との相違点は、ベンゼン環におけるアリールアミンNのオルト位の基Arがフェニル基であるため、CCP-2の結晶性を高くさせ、空間構造の緻密性を悪くさせ、比較例2の素子の性能が劣っていることを引き招く。CCP-3の分子構造において、アリールアミンNとフルオレン基(ジベンゾペンタセン構造)との間にベンゼン環があるため、移動度が低下し、且つ分子の堆積緻密性が悪いことを引き招き、比較例3の素子の性能が悪いことを引き招き、CCP-4において、アリールアミンNのオルト位に置換基が連結されないため、分子のLUMO準位を深くさせ、素子の発光性能が低下し、比較例5の電子阻止層材料がCCP-5であり、そのベンゼン環におけるアリールアミンNのオルト位の基Arがシリコンヘテロアリール基であるため、CCP-5の移動度が低く、分子の結晶性が悪いことを引き招き、有機電界発光素子の駆動電圧を高くさせ、発光効率を低下させた。
【0112】
出願人は、本出願の上記実施例により本出願の化合物及びその使用、有機電界発光素子を説明したが、本出願は上記実施例に限定されず、即ち、本出願が上記実施例に依存しなければ実施できないことを意味しない。当業者であれば、本出願に対する任意の改良、本出願の製品の各原料に対する等価置換及び補助成分の添加、具体的な方式の選択などは、いずれも本出願の保護範囲及び開示範囲内に含まれることを理解すべきである。
【国際調査報告】