(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】グラフェン材料用の分散剤としてのポリアルキレンオキシド
(51)【国際特許分類】
C08L 71/10 20060101AFI20240705BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240705BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C08L71/10
C08K3/04
C08L101/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580880
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2022067880
(87)【国際公開番号】W WO2023275135
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カトリン レーマン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン シューマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリ ライヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレナ ブロイアース
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス ヘーニッヒ
(72)【発明者】
【氏名】レーア ムヒャヤー
(72)【発明者】
【氏名】トアステン ホーフェン
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ザイデンシュティッカー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AC031
4J002AE051
4J002CC031
4J002CC131
4J002CD001
4J002CD161
4J002CD201
4J002CF001
4J002CF211
4J002CG001
4J002CH001
4J002CH062
4J002CH072
4J002CH082
4J002CP031
4J002DA016
4J002FD016
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GJ02
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GQ01
(57)【要約】
本発明の主題は、グラフェン材料用の分散剤としての、少なくとも1つの芳香族基を有するポリアルキレンオキシドの使用;グラフェン材料の分散方法であって、前述のポリアルキレンオキシドを分散剤として使用する方法;および前述の分散剤とグラフェン材料とを含む組成物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン材料用の分散剤としての、少なくとも1つの芳香族基を有するポリアルキレンオキシドの使用。
【請求項2】
前記少なくとも1つの芳香族基が、フェニル基である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記分散剤の総重量に対する全芳香族基の重量割合が、2%~40%、有利には5%~25%、特に7%~15%である、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記ポリアルキレンオキシドが、式-O-CH
2-CHPh-または式-CH
2-CHPh-O-の少なくとも1つの単位を有し、ここで、Phはフェニル基を表す、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
前記ポリアルキレンオキシドが、一般式(B)
R
1[O(SO)
a(PO)
b(BO)
c(EO)
dR
2]
n (B)
の化合物から選択され、ここで、
R
1は、それぞれ互いに独立して、n価のC
1~C
20オルガニル基の群から選択され、
R
2は、それぞれ互いに独立して、C
1~C
8アシル基、C
1~C
8アルキル基および水素からなる群から選択され、
SO=スチレンオキシドであり、
PO=プロピレンオキシドであり、
BO=ブチレンオキシドであり、
EO=エチレンオキシドであり、
n=1~6、有利には1~4、特に1~3であり、
a=1~10、有利には1~5、特に1~3であり、
b=0~50、有利には0~20、特に0~15であり、
c=0~10、有利には0~5、特に0~3であり、
d=0~50、有利には0~20、特に0~15である、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
前記ポリアルキレンオキシドが、酸素原子および任意に窒素原子以外の他のヘテロ原子を含まない、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
前記グラフェン材料が、ISO-TS 80004-13に準拠したグラフェン材料であり、前記グラフェン材料は、有利には、単層グラフェン、2層グラフェン、3層グラフェン、数層グラフェン、多層グラフェン、1~10層グラフェン、エピタキシャルグラフェン、剥離グラフェン、グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレート、グラフェンナノプレートレット、グラフェンナノシート、グラフェンマイクロシート、グラフェンナノフレーク、グラフェン量子ドット、酸化グラフェン、酸化グラフェンナノシート、多層酸化グラフェンおよび還元型酸化グラフェン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
ポリエーテル、特にポリエーテルポリオール、ポリエステル、特にポリエステルポリオール、ポリカーボネート、特にポリカーボネートポリオール、ポリブタジエン、特にポリブタジエンポリオール、エポキシ樹脂、ポリシロキサン、植物油、鉱物油、有機合成油、シリル修飾ポリマー、シリル修飾反応性希釈剤、(メタ)アクリレート、シアノアクリレート、ジヒドロレボグルコセノン(Cyrene(登録商標))、ジメチルホルムアミド(DMF)、有機カーボネート、アセトン、グリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、アセテート、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アルコールおよび二塩基酸エステル(DBE)からなる群から選択される化合物を主成分として含む液体連続相に前記グラフェン材料を分散させる、請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
グラフェン材料の分散方法であって、ポリアルキレンオキシドを分散剤として使用し、請求項1から8までのいずれか1項記載の規定が適用されることを特徴とする、方法。
【請求項10】
以下の間接的または直接的に連続する、有利には直接的に連続するプロセスステップ:
a)連続相であって、有利には請求項8記載の規定に従う連続相を装入するプロセスステップ、
b)請求項1から6までのいずれか1項記載の規定に従う分散剤を添加するプロセスステップ、
c)グラフェン材料であって、有利には請求項7記載の規定に従うグラフェン材料を添加し、分散させるプロセスステップ
を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
以下の間接的または直接的に連続する、有利には直接的に連続するプロセスステップ:
i)請求項1から6までのいずれか1項記載の規定に従う分散剤を装入するプロセスステップ、
j)グラフェン材料であって、有利には請求項7記載の規定に従うグラフェン材料を添加し、分散させるプロセスステップ
を含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
組成物であって、以下:
(a)連続相であって、有利には請求項8記載の規定に従う連続相と、
(b)請求項1から6までのいずれか1項記載の規定に従う分散剤と、
(c)グラフェン材料であって、有利には請求項7記載の規定に従うグラフェン材料と
を含むかまたはそれらからなり、有利には請求項10記載の方法により得ることができる、組成物。
【請求項13】
組成物であって、以下:
(i)請求項1から6までのいずれか1項記載の規定に従う分散剤と、
(j)グラフェン材料であって、有利には請求項7記載の規定に従うグラフェン材料と
を含むかまたはそれらからなり、有利には請求項11記載の方法により得ることができる、組成物。
【請求項14】
前記組成物の重量に対する前記成分(c)あるいは(j)の重量割合が、0.1%~90%、有利には5%~60%、特に25%~40%である、請求項12または13記載の組成物。
【請求項15】
前記成分(c)あるいは(j)の重量に対する前記成分(b)あるいは(i)の重量割合が、0.01%~200%、有利には30%~150%、特に50%~100%である、請求項12または13記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン材料用の分散剤としてのポリアルキレンオキシドに関する。
【0002】
グラフェン材料は、多くの技術分野で使用されている。グラフェンおよびその製造、特性および用途については、技術文献で詳細に論じられている(Roempp online, https://roempp.thieme.de/lexicon/RD-07-02758; Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 7714-7718; Mater. Today 2012, 15(3) 86-97参照)。
【0003】
グラフェン材料は粉末として市販されており、嵩密度が非常に低く、例えば2~400g/lの範囲であることが多い。嵩密度が低いだけでなく、グラフェン材料は流動性に乏しいか、あるいは重力流で搬送する際に高度の粉塵分を発生させる。その結果、取扱い性が悪くなり、秤量や計量供給の際に問題が生じ、環境保護や労働安全性の観点からもクリティカルであると見なされなければならない。ここで、固形物を投入するための閉鎖系も同様に限られた効果しかなく、なぜならば、その結果確かに労働安全性の問題には対処できるものの、分散容器、ニーダーまたは押出ラインにおけるグラフェン材料の連続的または半連続的な計量供給時のいわゆるブリッジングの問題が解決されないためである。ブリッジングとは、固体の不均一な計量供給を意味すると理解され、それにより、フィーダーが閉塞し、その結果、フィーダーを開放して機械的に解放する必要が生じる可能性があるが、これは望ましくない。その結果、容量計量供給がしばしばまったく実施できなくなり、重量計量供給は損なわれる。
【0004】
取扱い性の悪さは、例えば、いわゆる熱界面材料やシーラント、接着剤の溶媒やモノマー樹脂(モノマーレジン)に粉末状グラフェン材料を組み込む場合にも顕れる。グラフェン材料を液体系に組み込むことは、一般的に困難である。例えば、十分に充填されたシーラントや接着剤の製造では、通常は、適切なタイミングで、適切な時間にわたって、粉末状のフィラーを組み込むことが重要である。混合プロセス時に作用するせん断力は、フィラーの凝集物を砕き、分散に寄与する。したがって、達成可能な最大充填レベルは、それに作用するせん断力によって実質的に決定される。溶媒や樹脂は、それ自体では、生成したばかりの表面や官能基への付着や安定化が不十分であり、その結果、分離や沈降が生じる。その結果、配合物においてさらに加工する際に、使用可能な安定した分散液が得られないことがある。さらに、粘度を容易に制御できるシーラントや接着剤では、使用時に良好な界面接触、ひいては強力な接着性、またはさらには熱伝導性や電気伝導性を達成するには、正確で信頼性の高い計量供給性が重要である。接着剤やシーラントの品質や、例えば熱伝導性や電気伝導性の向上などの達成すべき効果の強さは、フィラーの分散性とその配合物全体の特性(例えば粘度)への影響に強く依存する。上記の考察は、他の液体系にも当てはまる。
【0005】
しかし、グラフェン材料の安定した分散液の製造には問題がある。グラフェン材料には凝集傾向がある。この凝集物は、望ましくない沈降を招く。
【0006】
固体系および液体系におけるグラフェン材料の分散性を向上させるために、先行技術では分散剤の使用が提案されている。
【0007】
国際公開第2012/059489号には、例えば、電気伝導性の炭素基材、例えばカーボンブラック、炭素繊維、グラファイト、グラフェンおよび/またはCNT(カーボンナノチューブ)、ならびに非金属カチオンを有する塩、またはそのような塩と金属塩との相乗的混合物を含む、特に熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂用のポリマー組成物が開示されており、その際、特定の分散剤との組み合わせが必須である。これらの特定の分散剤は、エステルまたはアミドをベースとする分散剤である。ここでは、分散剤が以下のものから選択されることが好ましい:
c1)重合により得られるポリアクリル酸アルキルエステル(そのアルキル基は1~3個の炭素原子を有する)と、以下:
a)4~50個の炭素原子を有する飽和脂肪族アルコールおよび/または
b)4~50個の炭素原子を有する不飽和脂肪族アルコール
とのエステル交換により製造可能なポリアクリル酸エステルであって、ここで、a)およびb)は、エステル基の30~100%がエステル交換されるような量で使用されるものとする、ポリアクリル酸エステル、
および/または
c2)以下:
A)少なくとも4個のアミノ基を有する1種以上のアミノ官能性ポリマーと、
B)一般式(I)/(Ia)
T-C(O)-[O-A-C(O)]x-OH (I)
T-O-[C(O)-A-O-]y-Z (Ia)
の1種以上のポリエステルと、
C)一般式(II)/(IIa)
T-C(O)-B-Z (II)
T-O-B-Z (IIa)
の1種以上のポリエーテルと
の部分的または完全な反応により得られるポリエステル-ポリアミン縮合生成物であって、ここで、
Tは、水素基および/または1~24個の炭素原子を有する任意に置換された、直鎖状もしくは分岐状のアリール、アリールアルキル、アルキルもしくはアルケニル基であり、
Aは、直鎖状、分岐状、環状および芳香族炭化水素の群から選択される少なくとも1つの2価の基であり、
Zは、スルホン酸、硫酸、ホスホン酸、リン酸、カルボン酸、イソシアネート、エポキシド、特にリン酸および(メタ)アクリル酸の群から選択される少なくとも1つの基であり、
Bは、一般式(III)
-(ClH2lO)a-(CmH2mO)b-(CnH2nO)c-(SO)d (III)
の基であり、
SO=-CH2-CH(Ph)-O-であり、ここで、Ph=フェニル基であり、
a,b,cは、互いに独立して、0~100の値であるが、
ただし、a+b+cの合計≧0、有利には5~35、特に10~20であり、a+b+c+dの合計>0であり、
d≧0、有利には1~5であり、
l,m,nは、互いに独立して、≧2、有利には2~4であり、
x,yは、互いに独立して、≧2であるものとする、ポリエステル-ポリアミン縮合生成物。
【0008】
分散剤c1)の例として、市販品TEGOMER(登録商標)DA 100 N(Evonik)、TEGOMER(登録商標)DA 102(Evonik)およびTEGOMER(登録商標)P121(Evonik)が記載されている。分散剤c2)の例としても、市販品のTEGOMER(登録商標)DA 626(Evonik)が挙げられている。このように、多数の異なる分散剤が開示されており、これらも多数の異なる炭素基材の分散に適している。グラフェン材料と、少なくとも1つの芳香族基を有するポリアルキレンオキシドとの組み合わせについては開示されていない。
【0009】
他の市販のポリエステル-ポリアミン縮合生成物も先行技術から知られており、例えばSolsperse(登録商標)39000(Lubrizol)がある。Solsperse(登録商標)39000は、芳香族基を有していない。
【0010】
欧州特許出願公開第1078946号明細書には、アルコキシル化によって得られるスチレンオキシド含有ポリアルキレンオキシドブロックコポリマー、ならびに水性の、任意に補助溶媒を含有する顔料ペースト、水性および低溶媒ラッカーおよび印刷インキにおける低発泡性顔料湿潤剤としてのその使用が記載されている。顔料として、多数の無機および有機顔料が挙げられている。特に好ましいとされているのは、水性(ガス)カーボンブラックペーストを製造するための分散添加剤である。具体的には、前述のポリアルキレンオキシドに加えてカーボンブラック(Raven(登録商標)1170)をも含む黒色ペーストが記載されている。しかし、グラフェン材料は開示されていない。
【0011】
したがって、先行技術に対して少なくとも1つの利点を有するグラフェン材料用の分散剤がなおも求められていた。特に、こうした分散剤は、グラフェン材料の高充填レベルを可能にしつつ、低粘度の安定した分散を可能にするものが望ましい。さらに、分散剤は、極性および非極性の連続相、有利には液相におけるグラフェン材料の分散を可能にするものが望ましく、その際、連続相、有利には液相は、特に溶媒組成物、モノマー組成物、オリゴマー組成物またはポリマー組成物であることが望ましい。
【0012】
今般、驚くべきことに、少なくとも1つの芳香族基を有するポリアルキレンオキシドをグラフェン材料用の分散剤として使用することによってこの課題が解決されることが見出された。
【0013】
したがって、本発明の第1の主題は、グラフェン材料用の分散剤としての、少なくとも1つの芳香族基を有するポリアルキレンオキシドの使用である。
【0014】
本発明のさらなる主題は、グラフェン材料の分散方法であって、本発明により使用されるポリアルキレンオキシドを分散剤として使用することを特徴とする方法である。
【0015】
本発明のもう1つの主題は、以下:
(a)連続相と、
(b)本発明による使用に対応する分散剤と、
(c)グラフェン材料と
を含むかまたはそれらからなる組成物である。
【0016】
本発明のさらにもう1つの主題は、以下:
(i)本発明による使用に対応する分散剤と、
(j)グラフェン材料と
を含むかまたはそれらからなる組成物である。
【0017】
本発明の主題の有利な構成は、特許請求の範囲、実施例および発明の詳細な説明から得ることができる。さらに、本発明の主題に関する開示には、本発明の詳細な説明および特許請求の範囲の個々の特徴のすべての組み合わせが含まれることが明示的に指摘される。特に、本発明によるある1つの主題の実施形態は、本発明による他の主題の実施形態にも準用される。
【0018】
本発明者らは、少なくとも1つの芳香族基を有するポリアルキレンオキシドをグラフェン材料用の分散剤として使用することが、多くの利点を有することを確認した。
【0019】
本発明の1つの利点は、特に溶媒組成物、モノマー組成物、オリゴマー組成物およびポリマー組成物からなる群から選択される極性および非極性の連続相、有利には液相におけるグラフェン材料の分散性が向上することである。これとは対照的に、先行技術から知られているグラフェン材料用の分散剤は、非常に少数の連続相にしか適合せず、非常に高い分散剤濃度であっても、偏析を生じるかまたは分散が非効率的になる傾向にある。
【0020】
本発明のもう1つの利点は、高い充填レベルのグラフェン材料を有する分散液を得ることができることである。高い充填レベルにより、分散液における電気伝導性および熱伝導性の達成または向上が可能となる。
【0021】
本発明のさらなる利点は、特にグラフェン粉末と比較して、配合物における取扱い性および計量供給性が向上することである。
【0022】
特に粉末状グラフェン材料と比較して取扱い時の安全性が向上することも同様に、本発明の1つの利点である。
【0023】
本発明のさらにもう1つの利点は、グラフェン材料を含む組成物の粘度を狙いどおりに調整できることである。なぜならば、通常はグラフェン材料を分散導入する際に粘度が著しく上昇するため、組成物が固化に至り、その結果、組成物が使用できなくなる可能性があるためである。一方、非常に低い粘度では、分散時に狙いどおりにせん断効果を発生させることができない。このため、分散プロセスが非効率的になり、グラフェン材料の十分な分散が得られなくなる。対照的に、本発明により使用されるポリアルキレンオキシドは、粘度調整剤として作用し、粘度を狙いどおりに調整することを可能にするため、低粘度でも高粘度でも効果的な分散を可能にし、グラフェン材料の安定で高負荷の分散液を得ることができる。
【0024】
本発明のさらなる利点は、本発明により使用されるポリアルキレンオキシドがグラフェン材料の固有の特性に悪影響を及ぼさないことである。接着剤やシーラントの熱可塑性、熱硬化性またはエラストマーポリマー系への分散液の組み込みは、著しく容易になり、またはさらには可能にさえなる。
【0025】
本発明による主題およびその好ましい実施形態につき、以下に例示的に記載するが、本発明がこれらの例示的実施形態に限定されることを意図するものではない。範囲、一般式または化合物クラスが以下で指定される場合、これらは、明示的に言及される対応する範囲または化合物群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物を選択して得ることができるすべての部分範囲および部分化合物群も含むことが意図される。範囲/部分範囲および/または群/部分群の組み合わせによって得ることができるいずれの実施形態も、完全に本発明の開示内容に該当し、明示的、直接的かつ一義的に開示されていると見なされる。
【0026】
以下に平均値が記載されている場合、特に断りのない限り、これらは数値平均である。以下に測定値または材料特性が記載されている場合、特に断りのない限り、これらは25℃で、有利には101325Pa(常圧)の圧力で測定された測定値または材料特性である。室温(RT)とは、25℃の温度を意味する。
【0027】
以下に「XからYまで」または「X~Y」という形式の数値範囲が記載されている場合、XおよびYは、数値範囲の限界を表し、これは、特に断りのない限り、「少なくともXからYまで(Yを含む)」という記載と同義である。したがって、範囲のデータには、特に断りのない限り、範囲限界XおよびYが含まれる。
【0028】
分子あるいは分子断片が1つ以上の立体中心を有する場合、または対称性を理由に異性体に区別できる場合、または他の効果、例えば制限された回転を理由に異性体に区別できる場合、可能ないずれの異性体も本発明に含まれる。
【0029】
「ポリ」という語句は、少なくとも2つのモノマー単位から構成される化合物を含む。
【0030】
化合物または基に関する「Cx~Cy」という語句は、x~y個の炭素原子を有する化合物または基を表す。「C1~C20オルガニル基」という名称は、1~20個の炭素原子を有するオルガニル基、すなわち有機基を表す。同様に、「C1~C8アシル基」という名称は、1~8個の炭素原子を有するアシル基を表す。同様に、「C1~C8アルキル基」という名称は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基を表す。同様に、「C6~C13炭化水素基」という名称は、6~13個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。
【0031】
以下の式は、繰返し単位、例えば繰返し断片、繰返しブロックまたは繰返しモノマー単位から構成されていてよく、かつモル質量分布を有することができる化合物または構造単位を表す。これらの繰返し単位の頻度は、添え字で示されている。対応する添え字は、特に断りのない限り、すべての繰返し単位の数値平均(数平均)である。したがって、式で使用されているこれらの単位の添え字は、特に断りのない限り、統計的平均値(数値平均)と見なされるべきである。したがって、使用される添え字の値および記載される添え字の値の範囲は、特に断りのない限り、実際に存在する構造および/またはそれらの混合物の可能な統計的分布の平均値であると理解される。以下の式中の繰返し単位は、任意の分布を有することができる。繰返し単位から構成される構造は、任意の数のブロックおよび任意の配列を伴ってブロック状に構成されていてもよいし、ランダム化分布に従うこともでき、また、交互に構成されていてもよいし、鎖が存在する場合には鎖に沿って勾配を形成することもでき、特に、任意に異なる分布を有する群が互いに続き得るあらゆる混合形態を形成することもできる。特定の実施形態では、実施形態により統計的分布が制限されることがある。制限の影響を受けないすべての範囲について、統計的分布は変化しない。
【0032】
本発明の第1の主題は、グラフェン材料用の分散剤としての、少なくとも1つの芳香族基を有するポリアルキレンオキシドの使用である。
【0033】
ここで、複数形の「ポリアルキレンオキシド」は、1種または複数種の、有利には複数種のポリアルキレンオキシドを表す。
【0034】
単数形の「グラフェン材料」は、1種または複数種の、有利には1種のグラフェン材料を示す。
【0035】
したがって、「グラフェン材料用の分散剤としての、少なくとも1つの芳香族基を有するポリアルキレンオキシドの使用」とは、「1種以上のグラフェン材料用の分散剤としての、少なくとも1つの芳香族基を有する1種以上のポリアルキレンオキシドの使用」と同義である。
【0036】
したがって、「グラフェン材料用の分散剤としての、少なくとも1つの芳香族基を有するポリアルキレンオキシドの使用」とは、「少なくとも1種のグラフェン材料用の分散剤としての、少なくとも1つの芳香族基を有する少なくとも1種のポリアルキレンオキシドの使用」とも同義である。
【0037】
したがって、以下では、ポリアルキレンオキシドを分散剤とも呼ぶ。したがって、分散剤は、本発明により使用可能なポリアルキレンオキシドからなる。
【0038】
本発明の課題を解決するためには、本発明により使用可能なポリアルキレンオキシドは、少なくとも1つの芳香族基を有していなければならない。特定の理論に束縛されるものではないが、芳香族基が、ポリアルキレンオキシドとグラフェン材料との相互作用を改善することが想定される。
【0039】
少なくとも1つの芳香族基がフェニル基であることが好ましい。
【0040】
最適な効果を達成するためには、分散剤の総重量に対する全芳香族基の重量割合が、2%~40%、有利には5%~25%、特に7%~15%であることがさらに好ましい。
【0041】
ポリアルキレンオキシドは、式(A)
【化1】
の単位を含み、ここで、基R
A、R
B、R
CおよびR
Dは、それぞれ互いに独立して、有機基または水素(H)である。ここで、有機基は、それぞれ互いに独立して、直鎖状または分岐状または環状、飽和または不飽和、脂肪族または芳香族、置換または非置換、あるいは可能な場合にはそれらの組み合わせ(例えば脂環式)であってよい。ただし、ここで、基R
A、R
B、R
CおよびR
Dの少なくとも1つが芳香族基である単位が少なくとも1つ含まれているものとする。有機基は、好ましくは、ヘテロ原子を含まない炭化水素基、特にヘテロ原子を含まないC
1~C
8炭化水素基である。ポリアルキレンオキシドが、4つの基R
A、R
B、R
CおよびR
Dのうちのちょうど1つがフェニル基であり、他の3つの基が水素(H)である単位を含むことが好ましい。したがって、ポリアルキレンオキシドが、式-O-CH
2-CHPh-または式-CH
2-CHPh-O-の少なくとも1つの単位を有することが好ましく、ここで、Phはフェニル基を表す。
【0042】
ポリアルキレンオキシドが、一般式(B)
R1[O(SO)a(PO)b(BO)c(EO)dR2]n (B)
の化合物から選択されることがさらに好ましく、ここで、
R1は、それぞれ互いに独立して、n価のC1~C20オルガニル基の群から選択され、
R2は、それぞれ互いに独立して、C1~C8アシル基、C1~C8アルキル基および水素からなる群から選択され、
SO=スチレンオキシドであり、
PO=プロピレンオキシドであり、
BO=ブチレンオキシドであり、
EO=エチレンオキシドであり、
n=1~6、有利には1~4、特に1~3であり、
a=1~10、有利には1~5、特に1~3であり、
b=0~50、有利には0~20、特に0~15であり、
c=0~10、有利には0~5、特に0~3であり、
d=0~50、有利には0~20、特に0~15である。
【0043】
式(B)において、a+b+c+d≧3であることが好ましい。
【0044】
例えば、ポリアルキレンオキシドが、一般式(C)
R1O(SO)a(PO)b(BO)c(EO)dR2 (C)
の化合物から選択されることが好ましく、ここで、
R1は、それぞれ互いに独立して、一価のC6~C13炭化水素基の群から選択され、
R2は、それぞれ互いに独立して、C1~C8アシル基、C1~C8アルキル基および水素からなる群から選択され、
SO=スチレンオキシドであり、
PO=プロピレンオキシドであり、
BO=ブチレンオキシドであり、
EO=エチレンオキシドであり、
a=1~1.9であり、
b=0~3であり、
c=0~3であり、
d=3~50であるが、
ただし、d≧a+b+cである。
【0045】
式(C)において、a+b+c+d≧3であることが好ましい。
【0046】
ポリアルキレンオキシドが、一般式(D)
R1[O(SO)a(PO)b(BO)c(EO)dR2]n (D)
の化合物から選択されることがさらに好ましく、ここで、
R1は、それぞれ互いに独立して、n価のC1~C20オルガニル基の群から選択され、
R2は、それぞれ互いに独立して、C1~C8アシル基、C1~C8アルキル基および水素からなる群から選択され、
SO=スチレンオキシドであり、
PO=プロピレンオキシドであり、
BO=ブチレンオキシドであり、
EO=エチレンオキシドであり、
n=1~6、有利には1~4、特に1~3であり、
a=1~10、有利には1~5、特に1~3であり、
b=0~50、有利には3~20、特に3~15であり、
c=0であり、
d=0である。
【0047】
式(B)あるいは(C)あるいは(D)において、a+b+c+d≧3、有利には≧4、特に≧5であることが好ましい。
【0048】
式(B)あるいは(C)あるいは(D)において、SO(スチレンオキシド)は、4つの基RA、RB、RCおよびRDのうちのちょうど1つがフェニル基であり、他の3つの基が水素(H)である式(A)の単位を示す。
【0049】
式(B)あるいは(C)あるいは(D)において、EO(エチレンオキシド)は、4つの基RA、RB、RCおよびRDがすべて水素(H)である式(A)の単位を示す。
【0050】
式(B)あるいは(C)あるいは(D)において、PO(プロピレンオキシド)は、4つの基RA、RB、RCおよびRDのうちのちょうど1つがメチル基であり、他の3つの基が水素(H)である式(A)の単位を示す。
【0051】
式(B)あるいは(C)あるいは(D)において、BO(ブチレンオキシド)は、4つの基RA、RB、RCおよびRDのうちのちょうど1つがエチル基であり、他の3つの基が水素(H)であるか、または4つの基RA、RB、RCおよびRDのうちのちょうど2つがメチル基であり、他の2つの基が水素(H)である式(A)の単位を示す。
【0052】
式(B)あるいは(C)あるいは(D)の化合物が、通常は混合物として存在することは、当業者には知られている。ポリマー全体に対する各種アルキレンオキシドモノマーおよびその割合により、疎水性/親水性のバランスを制御することができ、特に、分散剤をグラフェン材料および連続相に狙いどおりに適合させることができる。ここで、EO単位は親水作用を示し、PO、BOおよびSO単位は、疎水作用を示す。
【0053】
アルキレンオキシド単位の配置は、例えば、統計的またはブロック状に行うことができる。特に好ましくは、アルキレンオキシド単位は、ブロック状に配置されている。したがって、ポリアルキレンオキシドは、有利にはブロックコポリマーである。したがって、ポリアルキレンオキシドは、有利にはポリアルキレンオキシドブロックコポリマーである。したがって、ポリアルキレンオキシドが、スチレンオキシドベースのポリアルキレンオキシドブロックコポリマーであることが好ましい。ここで、SO、POまたはBOのような疎水性単位と親水性EO単位とが別々のブロックを形成することが好ましい。親水性EO単位が、R2に結合して存在しているブロックを形成することが好ましい。ここで、R2は、有利には水素(H)である。疎水性単位SO、POおよびBOは、有利には、EOブロックとR1との間に存在する。したがって、基R1、SO、POおよびBO単位、ならびにR1をアルキレンオキシド単位に結合する酸素原子が、ポリアルキレンオキシドにおいて連続部分を形成し、これにR2で終端するEO単位が結合していることが好ましい。したがって、ある1つの事例では、式(B)あるいは(C)あるいは(D)においてd≧a+b+cであることが好ましく、他の事例では、式(B)あるいは(C)あるいは(D)においてd<a+b+cであることが好ましい場合がある。第1の事例では、ポリアルキレンオキシドはより疎水性であり、第2の事例では、それらはより親水性である。
【0054】
R1は、炭素原子および水素原子以外に、例えばNおよびO、特にNから選択されるヘテロ原子をさらに含むことができる。しかし、R1がSO単位、PO単位、BO単位およびEO単位を含まないことが好ましい。好ましくは、R1は、ヘテロ原子を含まない。有利には、R1は、それぞれ互いに独立して、一価のC6~C13炭化水素基の群から選択される。有利には、R1は、それぞれ互いに独立して、直鎖状(すなわち非分岐状)、もしくは分岐状もしくは環状、飽和もしくは不飽和、脂肪族もしくは芳香族、または可能な場合にはそれらの組み合わせである。より好ましくは、R1は、それぞれ互いに独立して、直鎖状または分岐状の飽和脂肪族基である。さらにより好ましくは、R1は、6~13個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状または脂環式基である。さらにより好ましくは、R1は、特にn-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシルおよびn-ドデシルからなる群から選択される直鎖状脂肪族基である。式(B)あるいは(C)あるいは(D)の好適な化合物およびその合成は、欧州特許出願公開第1078946号明細書に記載されており、例えばTEGOMER(登録商標)DA 646の名称で市販されている。
【0055】
基R1は、対応するヒドロキシ官能性化合物R1(OH)nから誘導され、ここで、nは、式(B)あるいは(D)で定義されるとおりである。好適なヒドロキシ官能性化合物R1(OH)nの例は、実施例に示されている(表1参照)。さらに好適なヒドロキシ官能性化合物R1(OH)nは、糖および糖アルコール、例えばグルコース、グロースおよびソルビトールの群から選択することができる。さらに、ヒドロキシ官能性化合物R1(OH)nとしてポリグリセリンを使用することも可能である。
【0056】
R2が、SO単位、PO単位、BO単位およびEO単位を含まないことが好ましい。R2は、有利には水素(H)である。
【0057】
ポリアルキレンオキシドの数平均分子量(Mn)が、400g/mol~4000g/mol、有利には500g/mol~2500g/mol、特に600g/mol~1500g/molであることが好ましい。ここで、数平均分子量(Mn)は、有利にはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。
【0058】
ポリアルキレンオキシドは、酸素原子以外に、例えば窒素原子のようなさらに他のヘテロ原子を含むことができる。しかしここで、ポリアルキレンオキシドがリン原子を含まないことが好ましい。ここで、ポリアルキレンオキシドが硫黄原子を含まないことがさらに好ましい。したがって、ポリアルキレンオキシドが、酸素原子および任意に窒素原子以外の他のヘテロ原子を含まないことも好ましい。したがって、好ましくは、ポリアルキレンオキシドは、炭素原子、水素原子、酸素原子および任意に窒素原子のみから構成されている。したがって、好ましくは、ポリアルキレンオキシドは、炭素原子、水素原子、酸素原子および任意に窒素原子からなる。ポリアルキレンオキシドが、酸素原子以外の他のヘテロ原子を含まないことが特に好ましい。したがって、特に好ましくは、ポリアルキレンオキシドは、炭素原子、水素原子および酸素原子のみから構成されている。したがって、特に好ましくは、ポリアルキレンオキシドは、炭素原子、水素原子および酸素原子からなる。
【0059】
グラフェン材料が、ISO-TS 80004-13に準拠したグラフェン材料であることがさらに好ましく、該グラフェン材料は、有利には、単層グラフェン、2層グラフェン、3層グラフェン、数層グラフェン、多層グラフェン、1~10層グラフェン、エピタキシャルグラフェン、剥離グラフェン、グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレート、グラフェンナノプレートレット、グラフェンナノシート、グラフェンマイクロシート、グラフェンナノフレーク、グラフェン量子ドット、酸化グラフェン、酸化グラフェンナノシート、多層酸化グラフェンおよび還元型酸化グラフェン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択され、特に1~10のグラフェン層を有するグラフェン材料が好ましい。
【0060】
グラフェン材料が、少なくとも80%、有利には少なくとも90%、特に少なくとも95%の炭素割合(グラフェン材料の総重量に対する炭素の重量割合)を有することが好ましい。
【0061】
グラフェン材料は、有利には単層または多層グラフェン材料であり、すなわち、1つ以上のグラフェン層を含むグラフェン材料である。多層グラフェン材料としては、有利には2~10のグラフェン層を有するグラフェン材料が使用される。
【0062】
グラフェン材料が、10nm未満、有利には5nm未満、特に3nm未満の厚さを有することが好ましい。
【0063】
グラフェン材料が、0.01g/cm3~0.10g/cm3、有利には0.01g/cm3~0.08g/cm3、特に0.01g/cm3~0.05g/cm3の嵩密度を有することが好ましい。
【0064】
有利には、グラフェン材料は、顆粒、フレーク、粉末、フィルム、シート、プレートレット、ナノリボンおよび/または繊維として存在する。
【0065】
グラフェン材料、その製造、特性および用途に関するさらなる詳細は、技術文献にも記載されている(Roempp online, https://roempp.thieme.de/lexicon/RD-07-02758; Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 7714-7718; Mater. Today 2012, 15(3), 86-97参照)。
【0066】
上記のポリアルキレンオキシドにより、グラフェン材料を液体連続相に分散させることができる。ポリエーテル、特にポリエーテルポリオール、ポリエステル、特にポリエステルポリオール、ポリカーボネート、特にポリカーボネートポリオール、ポリブタジエン、特にポリブタジエンポリオール、エポキシ樹脂、ポリシロキサン、シリコーン油、植物油、鉱物油、有機合成油、シリル修飾ポリマー、シリル修飾反応性希釈剤、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、シアノアクリレート、ジヒドロレボグルコセノン(Cyrene(登録商標))、ジメチルホルムアミド(DMF)、有機カーボネート、アセトン、グリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、アセテート、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アルコールおよび二塩基酸エステル(DBE)からなる群から選択される化合物を主成分として含む液体連続相にグラフェン材料を分散させることが好ましい。
【0067】
有利には、植物油は、アマニ油、大豆油、菜種油、ヒマシ油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、エポキシ化菜種油およびエポキシ化ヒマシ油からなる群から選択される。
【0068】
シリル修飾ポリマーは、有利にはトリエトキシシリル基および/またはトリメトキシシリル基を有する。ポリマー骨格がポリシロキサン骨格(シリコーン骨格)、ポリブタジエン骨格またはポリエーテル骨格であることが好ましい。
【0069】
「(メタ)アクリル酸」という名称は、メタクリル酸および/またはアクリル酸を表す。「(メタ)アクリレート」という名称は、メタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステルを表す。(メタ)アクリレートは、有利には、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ビニルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびビニルアクリレートからなる群から選択される。
【0070】
有機カーボネートは、有利には、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、アリルエチルカーボネート、ビニレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートおよびクロロエチレンカーボネートからなる群から選択される。
【0071】
グリコールは、有利には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびテトラプロピレングリコールからなる群から選択される。
【0072】
アセテートは、有利には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピルおよび酢酸n-ブチルからなる群から選択される。
【0073】
アルコールは、有利には、エタノール、メタノール、プロパノール、イソアミルアルコール、1-ブタノール、イソプロパノール、フェノキシエタノールおよび2-(2-フェノキシエトキシ)エタノールからなる群から選択される。
【0074】
二塩基酸エステル(DBE)は、有利には、コハク酸ジメチル(DBE-4)、グルタル酸ジメチル(DBE-5)およびアジピン酸ジメチル(DBE-6)からなる群から選択される。ここで、通常は混合物が使用され、例えばDBE-4とDBE-5との混合物であるDBE-9が使用される。
【0075】
連続相が、フタレート、シトレートおよびアジペートからなる群から選択される可塑剤を主成分として含むことがさらに好ましい。
【0076】
連続相が、焼付塗料、例えばシリコーン系焼付塗料を主成分として含むことがさらに好ましい。
【0077】
連続相が、不飽和ポリエステル樹脂(UPES)またはビニルエステル樹脂を主成分として含むことがさらに好ましい。
【0078】
連続相が、フェノール樹脂(UF、MUF)またはアミノ樹脂を主成分として含むことがさらに好ましい。
【0079】
連続相の主成分とは、その重量割合に関する連続相の主要な成分を意味すると理解される。主成分の重量割合が、連続相の総重量に対して少なくとも50%、有利には少なくとも90%、特に100%であることが好ましく、その際、上限は100%である。
【0080】
本発明のさらなる主題は、グラフェン材料の分散方法であって、本発明により使用されるポリアルキレンオキシドを分散剤として使用することを特徴とする方法である。
【0081】
本方法が、以下の間接的または直接的に連続する、有利には直接的に連続するプロセスステップ:
a)連続相を装入するプロセスステップ、
b)本発明による使用に対応する分散剤を添加するプロセスステップ、
c)グラフェン材料を添加し、分散させるプロセスステップ
を含むことが好ましい。
【0082】
また、本方法が、以下の間接的または直接的に連続する、有利には直接的に連続するプロセスステップ:
i)本発明による使用に対応する分散剤を装入するプロセスステップ、
j)グラフェン材料を添加し、分散させるプロセスステップ
を含むことが好ましい。
【0083】
ここで、「分散剤」という用語は、上記のポリアルキレンオキシドを意味すると理解される。したがって、分散剤は、本発明により使用可能な1種以上のポリアルキレンオキシドからなる。
【0084】
ここで、分散は、有利にはせん断作用下で行われる。これにより、高度のエネルギー投入が達成される。これにより、凝集物の破砕および剥離が生じ、新たな不飽和表面が形成される。これらの攻撃点、すなわちヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、ケト基、エポキシ基およびアミノ基などの官能基や共役系は、各種分散剤や安定剤の結合に適している。このようなイン・サイチュ添加によって分散が非常に効果的となり、その結果、より高い充填レベルやより安定した分散が達成される。より高い充填レベルにより、接着剤やシーラント、また熱界面材料などの最終用途に向けた配合において、より広いクリアランスが可能となる。
【0085】
本発明による方法において、特にステップc)あるいはj)において、種々の分散技術や装置、例えばビーズミル、ディゾルバー(例えば、DISPERMAT(登録商標)ディゾルバー)、3本ロールミル、Ultra-Turrax、ウェットジェットミル、Conchier装置、高せん断ミキサー、好ましくはハイスピードミキサー、高速ミキサーおよびサーモミキサーからなる群から選択される装置を使用することができる。分散は、超音波処理によっても行うことができる。特に好ましくは、分散は、ディゾルバー(例えば、DISPERMAT(登録商標)ディゾルバー)またはビーズミルを用いて行われる。
【0086】
ここで、電力あるいはエネルギーが0.1分~99時間、好ましくは0.1分~2時間、特に好ましくは1分~15分にわたって導入あるいは適用されることが好ましい。
【0087】
本発明による方法は、非常に容易に実施可能であり、したがってグラフェン材料の重量割合が高い組成物を製造できるという利点を有する。
【0088】
本発明のさらにもう1つの主題は、以下:
(a)連続相と、
(b)本発明による使用に対応する分散剤と、
(c)グラフェン材料と
を含むかまたはそれらからなる組成物である。
【0089】
ここで、分散剤とは、この場合にも上記の少なくとも1種のポリアルキレンオキシドを意味すると理解される。したがって、分散剤は、本発明により使用可能な1種以上のポリアルキレンオキシドからなる。
【0090】
組成物の重量に対する成分(c)の重量割合が、0.1%~90%、有利には5%~60%、特に25%~40%であることが好ましい。したがって、成分(c)の重量を組成物の重量で除した値は、0.1%~90%、有利には5%~60%、特に25%~40%である。
【0091】
成分(c)の重量に対する成分(b)の重量割合が、0.01%~200%、有利には30%~150%、特に50%~100%であることが好ましい。したがって、成分(b)の重量を成分(c)の重量で除した値は、0.01%~200%、有利には30%~150%、特に50%~100%である。
【0092】
本発明のさらにもう1つの主題は、以下:
(i)本発明による使用に対応する分散剤と、
(j)グラフェン材料と
を含むかまたはそれらからなる組成物である。
【0093】
ここで、分散剤とは、この場合にも上記の少なくとも1種のポリアルキレンオキシドを意味すると理解される。したがって、分散剤は、本発明により使用可能な1種以上のポリアルキレンオキシドからなる。
【0094】
組成物の重量に対する成分(j)の重量割合が、0.1%~90%、有利には5%~60%、特に25%~40%であることが好ましい。したがって、成分(j)の重量を組成物の重量で除した値は、0.1%~90%、有利には5%~60%、特に25%~40%である。
【0095】
成分(j)の重量に対する成分(i)の重量割合が、0.01%~200%、有利には30%~150%、特に50%~100%であることが好ましい。したがって、成分(i)の重量を成分(j)の重量で除した値は、0.01%~200%、有利には30%~150%、特に50%~100%である。
【0096】
本発明による組成物は、なおもさらなる添加剤を含むことができ、例えば、有利にはポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリアニリン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、炭素繊維、金属粒子、金属繊維、銀ナノワイヤー、グラファイト(例えば、膨張黒鉛)および酸化マンガンからなる群から選択される、電気伝導性を向上させるためのフィラー;有利にはhBN、AlN、Al2O3、SiO2、ZnO、MgO、SiC、ナノダイヤモンドからなる群から選択される、熱伝導性を向上させるためのフィラー;難燃剤;耐衝撃性改良剤;着色顔料;UV安定剤;粘度調節剤;流動助剤;消泡剤;イオン液体;湿潤剤;および/または傷防止剤を含むことができる。
【0097】
成分(a)、(b)および(c)の組み合わせは、(c)の充填レベルが高い状態であっても、安定した、有利には低粘度の分散液をもたらす。
【0098】
同様に、成分(i)および(j)の組み合わせも、(j)の充填レベルが高い状態で、安定した、有利には低粘度の分散液をもたらす。
【0099】
特にペーストの形態の本発明による組成物は、汎用的に使用可能であり、例えば、自動車分野、熱交換器、エレクトロニクス用途、熱管理、帯電防止、半導体産業、ハウジング、封止、3D印刷、射出成形部品、チューブシステム、膜、燃料電池、ケーブルシステム、電磁シールド(EMV)、バッテリーシステムの熱管理、接着剤およびシーラント、ならびにポッティングコンパウンドで使用することができる。
【0100】
特にペーストの形態の本発明による組成物は、さらに、以下の材料の添加剤として好適である:エラストマー、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー。
【0101】
特にペーストの形態の本発明による組成物は、以下の材料/用途の添加剤として特に好適である:
- エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、シラン修飾ポリマー(シリル修飾ポリマー、SMP)、アクリレート、反応性ホットメルトを含む、接着剤およびシーラント(特に、電気伝導性および/または熱伝導性)、
- シリコーン(RTV、HTV、LSR、HCR)、
- アクリレート、
- ポリウレタン、例えば熱可塑性ポリウレタン、
- ゴム、有利にはSBR、BR、天然ゴム、ポリブタジエン、官能化ポリブタジエン、
- 熱硬化性樹脂、有利にはポリウレタン、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、シリコーン樹脂、
- 熱界面材料:ギャップフィラー、テープ、グリース、相変化材料、ポッティング、パッケージング、アンダーフィル、キャスト、コーティング、保護コーティング、
- 標準的な熱可塑性樹脂、有利にはPE、PP、PS、PVC、α-オレフィン、ブタジエン誘導体、Vestenamer(登録商標)(Evonik)から選択される熱可塑性樹脂、
- 工業用熱可塑性樹脂において、有利にはPET、PMMA、PC、POM、PA、PBT、PEBA、TPU、PU、TPE、高性能熱可塑性樹脂において、有利にはPPS、PEEK、PES、PI、PEI、コポリマーにおいて、
- 半製品、
- 自動車分野において:電気駆動装置、バッテリーシステムの熱管理、車内および車外充電インフラ、エレクトロニクスおよびパワーエレクトロニクス、燃料電池、センサー、ディスプレイ、コックピット、インタラクティブ・サーフェス、EMVシールド(電磁シールド)、
- エレクトロニクスおよびパワーエレクトロニクス(接続)、
- マイクロチップ、電子部品、ディスプレイ、インジケーターの接続および放熱、
- LEDヘッドライト/スポットライト、LED、表面照明の接続および放熱、
- 通信システムの接続および放熱、
- 帯電防止性および気密性が要求される水素技術およびガスシステム(シール、燃料電池、タンク、コネクター、プラグ、チューブ/ケーブル)、
- 電気伝導性用、熱伝導性用および摺動摩擦低減用の鉱油、シリコーン油、プロセス油、植物油、改質植物油、モーター油、油圧油、駆動系油、グリース、ゲル、相変化材料。
【0102】
上記の用途/材料において、組成物は、有利には、以下の効果の少なくとも1つをもたらす:
- 電気伝導性(の向上)、
- 熱伝導性(の向上)、
- 摩擦の低減、
- 力学の向上、
- 耐傷性の向上、
- 着色/顔料、
- 放射線(紫外線)の吸収、
- 抗菌/抗ウイルス効果、
- 難燃性の向上、
- ガス透過性の低減。
【0103】
実施例
以下に実施例を示すが、これらは単に当業者に本発明の実施態様を説明するためのものである。これらは、特許請求される主題を何ら限定するものではない。
【0104】
分散剤(分散添加剤、略して「添加剤」)
表1に示す化学量論に対応する以下のポリアルキレンオキシドを、本発明による分散剤として製造する。ここで、数値は、出発アルコールに対するアルキレンオキシド(SO、PO、BO、EO)のモル比を示す。したがって、添加剤4は、それぞれ1molのヘキサン-1-オールに対して1molのSO、2molのBO、8molのPOおよび0molのEOをベースとする。出発アルコールおよび対応するアルキレンオキシドの合成は、欧州特許出願公開第1078946号明細書に記載のとおりに行う。表1の添加剤の基R1は、それぞれ使用した出発アルコールに由来する(例えば、ヘキサン-1-オールにより、R1=ヘキシルとなる)。以下は、表1のすべての添加剤に適用される:R2=H。
【0105】
【0106】
ここで、本発明により使用可能な分散剤は、添加剤1~16である。これらは、芳香族基を有する。本発明により使用不可能な分散剤は、添加剤17および18、ならびにSolsperse(登録商標)39000(Lubrizol)およびTEGOMER(登録商標)DA 100 N(Evonik)である。これらは、芳香族基を有していない。
【0107】
フィラー
グラフェン:
グラフェン材料として、以下の特性を有するグラフェンを使用した:Dv50=20μm(レーザー回折法で測定)、表面抵抗≦10Ω/sq.(フィルター膜からの25μmのフィルム上の4点の試料)、タップ密度3=0.251gcm-3(ASTM D7481による)。
【0108】
カーボンブラック:
本発明により使用不可能なフィラーとしてカーボンブラックを使用し、これは電気伝導性の向上のために使用することができる。このカーボンブラックは、ASTM D2414に準拠して決定される119ml/100gのDBP吸収量(DBP=フタル酸ジブチル)、ASTM D1513に準拠して決定される300g/dm3の嵩密度、325メッシュの篩における250ppm未満の篩残留物、およびASTM D3765の方法に準拠して決定される135m2/gのCTAB表面積(CTAB=臭化セチルトリメチルアンモニウム)を特徴とする。
【0109】
DISPERMAT(登録商標)ディゾルバーを用いたペーストの製造
基本的に、適切な分散ユニットであるディゾルバー(DISPERMAT(登録商標)ディゾルバーCV4-Plus、VMA-GETZMANN)を用いて非連続的に(バッチ式で)ペーストを製造する。ペーストを、直径40mmのディゾルバーディスクを用いて250mLのステンレス製容器で製造する。ここで、250mLのステンレス製容器について、100gペーストのバッチサイズを選択する。ステンレス製容器に、実験に応じて、規定量の連続相(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、メチルメタクリレート、ポリブタジエンジオールなど)を装入する。分散添加剤を使用する場合、フィラーの使用量に対する添加剤の規定量(顔料に対する添加剤=AoP[%])を連続相に添加する。「顔料」あるいは「フィラー」とは、グラフェン材料あるいはカーボンブラックを意味すると理解される。連続相の重量m
konti.Phase、組成物の総重量m
gesamt、フィラーの重量m
Fuellstoff、添加剤の重量m
Additiv、最大充填レベルFuellgrad
max、およびフィラー量の重量に対する添加剤の重量AoP(顔料に対する添加剤)の間には、以下の関係が成り立つ:
【数1】
【0110】
連続相および分散添加剤を入れた容器をDISPERMAT(登録商標)ディゾルバー装置にクランプ留めし、撹拌器具を下ろして、ディゾルバーディスクが連続相中に存在するが、カップの底には触れないようにする。分散添加剤がステンレス製容器の底に沈降するのを防ぐため、分散添加剤を750rpm(rpm=毎分回転数)で1分間撹拌により連続相に導入する。これに、非常にゆっくりと少量ずつフィラーを添加する。その際、スターラーを粉塵の発生に応じて750rpm~1000rpmに設定する。少量ずつの添加を、約5分かけて行う。添加の終了後に、DISPERMAT(登録商標)ディゾルバーのスターラーの回転数を2000rpm~2500rpmに上げ、理想的な分散が行えるようにする。この状態を、グラフェンをベースとするペーストが完全に分散されるまでさらに5分間維持する。
【0111】
ペーストの貯蔵安定性の目視評価
底部直径2.5cmのガラス製試験容器に40gのペーストを充填し、室温で12時間および72時間貯蔵した後に検査する。さらなる試料を50℃で72時間貯蔵した後に検査する。検査には、シネレシスおよびペーストの外観に関する、肉眼での2名による目視検査が含まれる。また、金属スパチュラ上のペーストの流出も検査する。以下の評価基準「不安定」または「安定」を用いる:
不安定(安定性:「なし」):
ペーストは、表面に少なくとも2mmの澄明な漿液を形成する。ペーストは、粒状に見える。ペーストは、スパチュラから均一には流れ出ない。
安定(安定性:「あり」):
ペーストが形成する澄明な漿液は、2mm未満である。ペーストは、均質でクリーム状に見える。ペーストは、スパチュラから均一に流れ出る。
【0112】
粘度 - ペーストのレオロジー試験
レオメーター(Physica MCR 301/Anton Paar)を使用して、ペーストの粘度を測定する。試験には、25mmの使い捨て測定プレート(D-PP25/AL/S07 D:25mmの使い捨て測定プレート/Anton Paar)に接続された、トランスポンダなしの測定シャフトD-CP/PP7(Anton Paar)を使用する。測定を開始する前に、ゼロギャップ(ここでは0.5mm)を設定する。このギャップ幅で、後続のペーストを測定する。これでレオメーターの測定準備は完了である。規定量のペーストをレオメータープレートに付与し、予め設定した測定ギャップ0.5mmを調整する。その後、端の余分なペーストを取り除く(「試料のトリミング」)。これで初めて測定が開始される。せん断速度0.1s
-1~1000s
-1で線形ランプを実行する。ここで、以下の条件/パラメーターを用いる:
【化2】
【0113】
グラフによる評価のために、粘度をせん断速度に対してプロットする。その後、例えば、添加剤を添加したペーストの曲線の推移と、添加剤を添加していないペーストの曲線の推移とを比較する。せん断速度1s-1および10s-1での値のみを比較することも一般的である。
【0114】
【0115】
ヘグマン・グラインドメーターを、液体連続相中の粒子または凝集物の分散性の測定に利用する。実際の粒子径や粒度分布を測定するものではない。
【0116】
グラインドメーターは、平坦なスチール製ブロックであり、その表面には、浅いくさび形の溝が2つ刻まれている。これらの溝は、グラインドメーターの一方の端部にある最大深さから、スチール製ブロックのもう一方の端部にあるゼロ点まで一定に続いている。くさびの深さを、側方に刻まれたスケールから読み取ることができる。ヘグマン・スケールは、0~8の範囲で、ヘグマン数(ヘグマン値)が大きいほど粒子が小さいことを示す。ここで、以下のヘグマン数およびμmの割り当てが適用される:
0ヘグマン=100μm
4ヘグマン=50μm
8ヘグマン=0μm
【0117】
洗浄および乾燥させたグラインドメーターを、水平で滑りにくい面に置く。グラインドメーターの溝の最も深い位置に、試験ペーストを充填する。ここで、ペーストは、溝の縁部をわずかに越えて流れなければならない。スクレーパーを溝の最も深い位置でグラインドメーターの短辺と平行に置き、グラインドメーターの溝の浅い端部に向かって素早く垂直に引く。試料を平らにした直後に、グラインドメーターを長辺に対して直角に、表面に対して20°から30°の角度で観察し、その際、溝内のペーストの表面構造が見えるように光にかざす。比較的多数の粒子または粒子のスクラッチマークが溝内で初めて見える位置を調べ、それに関するスケール値(ヘグマンスケール)を読み取る。
【0118】
早い段階に溝内で支障が生じる(ヘグマン数が大きい)ことは、ペーストに例えば残留凝集物が含まれること、または連続相へのフィラー(すなわちグラフェン材料またはカーボンブラック)の分散がより劣悪であることを意味し、したがって、ペーストの不安定性がより大きいことや、最終用途においてグラフェンの分散が不完全であるという上記の別の欠点も予想できる。
【0119】
グラインドメーター試験は、さらに次のように評価される:
【表3】
【0120】
グラフェンペーストの製造
以下の実施例によるグラフェンペーストの製造を、以下のように実施する:
1. 250mlの金属製カップに連続相を装入する。
2. 分散添加剤(100%AoP)を加える。添加剤が底に沈降しないように、スパチュラで短時間撹拌する。
3. DISPERMAT(登録商標)ディゾルバーを用いて、添加剤を40mmの分散ディスクで750rpmにて約1分間撹拌により連続相に導入する。
4. 750~1000rpmで約5分間かけて、フィラーを少量ずつゆっくりと添加する。
5. フィラー添加の終了後に、フィラーが完全に分散されるまで2000~2500rpmで5分間さらに撹拌する。
【0121】
実施例1:ポリエーテルポリオールをベースとするペースト
ポリエーテルポリオールをベースとするペーストの製造には、Desmophen(登録商標)1110 BD(Covestro)を連続相として使用する(表2および表3参照):
【表4】
【0122】
【0123】
実施例2:ポリエステルポリオールをベースとするペースト
ポリエステルポリオールをベースとするペーストの製造には、Dynacoll(登録商標)7250(Evonik)を連続相として使用する(表4および表5参照):
【表6】
【0124】
【0125】
実施例3:ポリブタジエンジオールをベースとするペースト
ポリブタジエンジオールをベースとするペーストの製造には、Polyvest(登録商標)HT(Evonik)を連続相として使用する(表6および表7参照):
【表8】
【0126】
【0127】
実施例4:エポキシドをベースとするペースト
エポキシドをベースとするペーストの製造には、Epikote(登録商標)Resin 828(Hexion)を連続相として使用する(表8および表9参照):
【表10】
【0128】
【0129】
実施例5:メチルメタクリレートをベースとするペースト
メチルメタクリレートをベースとするペーストの製造には、MERACRYL(登録商標)MMA(Roehm)を連続相として使用する(表10および表11参照):
【表12】
【0130】
【0131】
実施例6:植物油をベースとするペースト
植物油をベースとするペーストの製造には、ヒマシ油を連続相として使用する(表12および表13参照):
【表14】
【0132】
【0133】
実施例7:シリル修飾ポリマー(SMP)をベースとするペースト
シリル修飾ポリマー(SMP)をベースとするペーストの製造には、TEGOPAC(登録商標)RDS 1を連続相として使用する(表14および表15参照):
【表16】
【0134】
【0135】
本発明により使用可能なポリアルキレンオキシドとグラフェン材料との組み合わせによってのみ(連続相に関係なく)、高い安定性、低い粘度、およびヘグマン・グラインドメーター試験での良好な結果を有する組成物が得られる。
【国際調査報告】