(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】転位の影響を受けない光電子コンポーネント
(51)【国際特許分類】
H01S 5/34 20060101AFI20240705BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20240705BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01S5/34
H01S5/343
H01L21/205
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580955
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022068188
(87)【国際公開番号】W WO2023275320
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501455677
【氏名又は名称】サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】516344465
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ モンペリエ
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲ ジャン バティスト
(72)【発明者】
【氏名】バラノフ アレクセ
(72)【発明者】
【氏名】セルッティ ローラン
(72)【発明者】
【氏名】トゥールニー エリック
【テーマコード(参考)】
5F045
5F173
【Fターム(参考)】
5F045AA03
5F045AA04
5F045AB09
5F045AB17
5F045AB18
5F045AB19
5F045AF02
5F045AF03
5F045AF04
5F045BB16
5F045CA12
5F045DA53
5F045DA55
5F045DA59
5F045DA67
5F173AF03
5F173AF12
5F173AF13
5F173AG20
5F173AH28
5F173AH47
5F173AH48
5F173AR99
(57)【要約】
本発明は、転位の影響を受けない光電子コンポーネント(1)であって、
-レーザ放射を放出することができる半導体ヘテロ構造(2)であって、前記半導体ヘテロ構造は、バンド間放射遷移がタイプII型である利得提供活性領域(21)のカスケードを備える第1の半導体から形成される、半導体ヘテロ構造(2)と、
-第1の半導体とは異なる非ネイティブ基板(3)を備えるキャリア構造(30)であって、前記半導体ヘテロ構造(2)は、キャリア構造(30)上にエピタキシャル成長によって形成される、キャリア構造(30)と、を備え、
活性領域は、10
7cm
-2よりも高い転位密度を有する、光電子コンポーネント(1)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子コンポーネント(1)であって、
-タイプII型バンド間放射遷移を有する活性利得領域(21)のカスケードを備える第1の半導体材料から形成される、レーザ放射を放出することができる半導体ヘテロ構造(2)と、
-前記第1の半導体材料とは異なる非ネイティブ基板(3)を備える支持構造(30)であって、前記半導体ヘテロ構造(2)が前記支持構造(30)上にエピタキシャル成長によって形成される、支持構造(30)と、を備え、
前記活性領域は、10
7cm
-2よりも高い転位密度を有することを特徴とする、光電子コンポーネント(1)。
【請求項2】
前記支持構造(30)は、更に、前記非ネイティブ基板(3)上に、10
7cm
-2よりも高い転位密度を有する少なくとも1つのバッファ層(4)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項3】
前記半導体ヘテロ構造(2)は、前記非ネイティブ基板(3)上に直接作成されることを特徴とする、請求項1に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項4】
前記支持構造(30)は、更に、第1の追加遷移層(53a)と、第1の閉じ込め領域(51)と、第2の追加遷移層(53b)とを備えることを特徴とする、請求項2に記載の光電子コンポーネント。
【請求項5】
前記非ネイティブ基板(3)は、IV族材料から形成されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項6】
前記非ネイティブ基板(3)は、シリコンから形成されることを特徴とする、請求項5に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項7】
前記第1の半導体材料は、アンチモン化物を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項8】
前記活性領域(21)はそれぞれ、2つの電子量子井戸の間に挿入される正孔量子井戸からなり、前記正孔量子井戸及び前記2つの電子量子井戸が、2つのバリア層の間に位置するユニットを形成することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項9】
前記活性領域はそれぞれ、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ1nm~3.5nmの間の層243と、
-砒化インジウムInAsの、厚さ1nm~4nmの間の第2の層242aと、
-ガリウム、インジウム、及びアンチモンをベースとする三元材料の第3の層241であって、そのインジウム含有量が0%~50%の間で変化し、厚さ1.5nm~4.5nmの間である、第3の層241と、
-砒化インジウムInAsの、厚さ1nm~3.5nmの間の第4の層242bと、を備えることを特徴とする、
請求項1~8のいずれか一項に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項10】
前記活性領域はそれぞれ、電子阻止領域(23)と正孔阻止領域(22)との間に位置することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項11】
-各電子阻止領域(23)は、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.3~3nmの間の層231と、
-アンチモン化ガリウムGaSbの、厚さ1.5~5nmの間の層232と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.3~3nmの間の層233と、
-アンチモン化ガリウムGaSbの、厚さ2~5.5nmの間の層234と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ1~3.5nmの間の層235と、を備え、
-各正孔阻止領域(22)は、
-砒化インジウムInAsの、厚さ3~6nmの間の層221と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間の層222aと、
-ドーピング濃度5×10
17~2×10
19cm
-3の間及び厚さ2~5nmの間の砒化インジウムInAs:Siの層223と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間の層222bと、
-ドーピング濃度5×10
17~2×10
19cm
-3の間及び厚さ1.5~4nmの間の砒化インジウムInAs:Siの層224と、
-アンチモン化ガリウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間の層222cと、
-ドーピング濃度5×10
17~2×10
19cm
-3の間及び厚さ1~4nmの間の砒化インジウムInAs:Siの層225と、
-アンチモン化ガリウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間の層222dと、
-ドーピング濃度5×10
17~2×10
19cm
-3の間及び厚さ1~4nmの間の砒化インジウムInAs:Siの層226と、
-アンチモン化ガリウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間の層222eと、
-砒化インジウムInAsの、厚さ1~4nmの間の層227と、を備えることを特徴とする、
請求項10に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項12】
前記半導体ヘテロ構造は、10
6~10
9cm
-2の転位密度を有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の光電子コンポーネント(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、非ネイティブ基板上に構成される半導体をベースとする発光光電子コンポーネントに関する。
【0002】
本発明は、フォトニック集積回路内又は回路上に発光光電子コンポーネントを集積するための特に有利な用途を示す。
【背景技術】
【0003】
非ネイティブ基板、即ちコンポーネントを形成する材料とは異なる材料で形成される基板上に、レーザ又は発光ダイオード等の半導体材料をベースとする発光光電子コンポーネントを集積することにより、適用分野を拡大し、その製造コストを低減することが可能になる。
【0004】
実際、ある特定の技術分野、例えばシリコン又は砒化ガリウム基板をベースとする技術分野は、長年にわたって発展してきており、コスト優位性から恩恵を受けている。それらは、従って、マイクロエレクトロニクス産業の製造プロセス等の成熟した集積技術を用いて、フォトニックコンポーネントを作成することができる見込みを開いている。その上、シリコン上のフォトニックは、シリコンウェハスケールでフォトニック機能を電子回路と統合することを目的とする研究の極めて有望な領域である。
【0005】
非ネイティブ基板上への半導体コンポーネントの集積は、主に2つの方法、いわゆる異種方式で、即ち、非ネイティブ基板上に半導体層若しくはコンポーネントを接合することによって、又はいわゆるモノリシック方式で、即ち、非ネイティブ基板上に直接半導体層をエピタキシャル成長させることによって、のどちらか一方によって行うことができる。
【0006】
エピタキシャル材料と同じメッシュパラメータを有さない基板上でのエピタキシャル成長は、形成されるコンポーネント内部に転位の存在をもたらす。転位は、結晶構造配置における不連続性に対応する線形(即ち、非点状)欠陥である。これらは、半導体材料の電子特性に特に影響を及ぼす。
【0007】
量子井戸レーザは転位感受性を有し、非ネイティブ基板上にエピタキシャル成長される量子井戸レーザは、その結果、エピタキシャル成長によって生成される転位のためにその性能が劣化することが指摘及び認識されている。例えば、この問題を強調する、Kaziらによる論文「Realization of GaAs/AlGaAs lasers on Si substrates using epitaxial lateral overgrowth by metalorganic chemical vapor deposition」、又は、Hantschmannらによる論文「Theoretical Study on the Effects of Dislocations in Monolithic III-V Lasers on Silicon」に対して言及することができる。
【0008】
Shiらによる論文「Lasing Characteristics and Reliability of 1550nm laser monolithically grown on Si」は、シリコン基板上のエピタキシャル成長によって作成されるリン化インジウムレーザダイオードの動作制約に言及している。特に、ネイティブ基板上にエピタキシャル成長させるレーザダイオードに比べて、レーザの寿命が短くなり、閾値電流が1桁増加することが観察されている。この性能低下は、転位を介する電荷キャリアの漏れに割り当てられる。
【0009】
例えば、A.Liu et J.Bowersによる論文「Photonic Integration With Epitaxial III-V on Silicon」、又はShangらによる「Low-Threshold Epitaxially Grown 1.3-μm InAs Quantum Dot Lasers on Patterned(001)Si」に説明されている量子ボックスレーザは、非ネイティブ基板上のエピタキシャル成長によって作成されている。これらの後者は、同じ方法に従って作成される量子井戸レーザと比較してより良好な性能を有する。
【0010】
しかし、非ネイティブ基板上に作成される量子ボックスレーザの性能は、転位密度によって制限されたままである。後者は、Liuらによる論文「Origin of defect tolerance in InAs/GaAs quantum dot lasers grown on Si」、又はJungらによる論文「Impact of threading dislocation on the lifetime of InAs quantum dot lasers on Si」に説明されているように、これらのレーザの適切な動作を保証するよう、106~107cm-2程度の低いままでなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これに関連して、本発明は、レーザ放射を放出することができ、非ネイティブ基板上にエピタキシャル成長によって形成される量子井戸半導体ヘテロ構造を備える、転位の影響を受けない光電子コンポーネントを提案する。言い換えれば、この光電子コンポーネントの性能は、エピタキシャル成長作成による転位によって影響されず、ネイティブ基板上のエピタキシャル成長によって得られるものと同様である。
【0012】
従って、本発明は、非ネイティブ基板上にエピタキシャル成長によって作成される半導体材料をベースとするレーザ等の光源が、ネイティブ基板上にエピタキシャル成長によって作成される光源と比較して低下した性能を有するという先に述べた偏見に反する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、従って、光電子コンポーネントであって、
-タイプII型バンド間放射遷移を有する活性利得領域のカスケードを備える第1の半導体材料から形成される、レーザ放射を放出することができる半導体ヘテロ構造と、
-第1の半導体材料とは異なる非ネイティブ基板を備える支持構造であって、前記半導体ヘテロ構造が支持構造上にエピタキシャル成長によって形成される、支持構造と、を備え、活性領域は、107cm-2よりも高いか、3×107cm-2よりも高いか、5×107cm-2よりも高いか、108cm-2よりも高いか、109cm-2よりも高いか、又は1010cm-2よりも高い転位密度を有することを特徴とする、光電子コンポーネントを提案する。
【0014】
個別に取り入れるか又は技術的に可能な全ての組み合わせに従って、本発明による光電子コンポーネントの他の非限定的且つ有利な特徴は、以下の通りである。
-支持構造は、更に、非ネイティブ基板上に、107cm-2よりも高いか、3×107cm-2よりも高いか、5×107cm-2よりも高いか、108cm-2よりも高いか、109cm-2よりも高いか、又は1010cm-2よりも高い転位密度を有する少なくとも1つのバッファ層を備え、
-支持構造は、更に、非ネイティブ基板上に、厚さ3マイクロメートル以下、2マイクロメートル以下、又は1マイクロメートル以下を有する少なくとも1つのバッファ層を備え、
-支持構造は、更に、第1の追加遷移層と、第1の閉じ込め領域と、第2の追加遷移層とを備え、
-非ネイティブ基板は、IV族材料から形成され、
-非ネイティブ基板は、シリコンから形成され、
-第1の半導体材料は、アンチモン化物を含み、
-活性領域はそれぞれ、2つの電子量子井戸の間に挿入される正孔量子井戸からなり、前記正孔量子井戸及び2つの電子量子井戸が、2つのバリア層の間に位置するユニットを形成し、
-活性領域はそれぞれ、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ1nm~3.5nmの間の第1の層と、
-砒化インジウムInAsの、厚さ1nm~4nmの間の第2の層と、
-ガリウム、インジウム、及びアンチモンをベースとする三元材料の第3の層であって、そのインジウム含有量が0%~50%の間で変化し、厚さ1.5nm~4.5nmの間である、第3の層と、
-砒化インジウムInAsの、厚さ1nm~3.5nmの間の第4の層と、を備え、
-活性領域はそれぞれ、電子阻止領域と正孔阻止領域との間に位置し、
-各電子阻止領域は、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.3~3nmの間の層と、
-アンチモン化ガリウムGaSbの、厚さ1.5~5nmの間の層と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.3~3nmの間の層と、
-アンチモン化ガリウムGaSbの、厚さ2~5.5nmの間の層と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ1~3.5nmの間の層と、を備え、
-各正孔阻止領域は、
-砒化インジウムInAsの、厚さ3~6nmの間の層と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間の層と、
-ドーピング濃度5×1017~2×1019cm-3の間及び厚さ2~5nmの間の砒化インジウムInAs:Siの層と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間の層と、
-ドーピング濃度5×1017~2×1019cm-3の間及び厚さ1.5~4nmの間の砒化インジウムInAs:Siの層と、
-アンチモン化ガリウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間の層と、
-ドーピング濃度5×1017~2×1019cm-3の間及び厚さ1~4nmの間の砒化インジウムInAs:Siの層と、
-アンチモン化ガリウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間の層と、
-ドーピング濃度5×1017~2×1019cm-3の間及び厚さ1~4nmの間の砒化インジウムInAs:Siの層と、
-アンチモン化ガリウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間の層と、
-砒化インジウムInAsnの、厚さ1~4nmの間の層と、を備え、
-半導体ヘテロ構造は、106~109cm-2の転位密度を有する。
【0015】
明らかに、本発明の異なる特徴、代替例、及び実施形態は、それらが互いに対して相容れないか又は排他的でない限り、様々な組み合わせに従って互いに関連することができる。
【0016】
非限定的な実施例として与えられる添付図面に関連する以下の説明は、本発明が何から構成されるか、及びそれをどのように実施することができるかについての良好な理解を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による光電子コンポーネントの一実施形態の略図である。
【
図2】本発明による活性領域の一実施形態の略図である。
【
図4】転位を有するタイプII型量子井戸の略図である。
【
図6】本発明による正孔阻止領域及び電子阻止領域の一実施形態の略図である。
【
図7】
図6の活性領域、正孔阻止領域、及び電子阻止領域によって形成されるユニットの実施形態のバンド図を示す。
【
図8】
図1、2、及び6の実施形態の組み合わせに従って作成される光電子コンポーネントによって放出されるレーザ放射のファセット当たりの出力の展開を、電力供給電流の関数として示す。
【
図9】
図1、2、及び6の実施形態の組み合わせに従う光電子コンポーネントによって放出されるレーザ放射のスペクトルの展開を、電力供給電流の関数として示す。
【
図10】
図1、2、及び6の実施形態の組み合わせに従う光電子コンポーネントによって放出されるレーザ放射のスペクトルの展開を、温度の関数として示す。
【
図11】
図1、2、及び6の実施形態の組み合わせに従う光電子コンポーネントの寿命測定を示す。
【
図12】
図1、2、及び6の実施形態の組み合わせと同様の構造であるが、ネイティブ基板上にエピタキシャル成長によって作成される光電子コンポーネントによって放出されるレーザ放射のファセット当たりの出力の展開を示す。
【
図13】
図1、2、及び6の実施形態の組み合わせと同様の構造であるが、ネイティブ基板上にエピタキシャル成長によって作成される光電子コンポーネントによって放出されるレーザ放射のスペクトルの展開を、温度の関数として示す。
【
図14】
図1の実施形態と同様であるが、ネイティブ基板上にエピタキシャル成長によって作成される光電子コンポーネントによって放出されるレーザ放射のファセット当たりの出力の展開を、電力供給電流の関数として示す。
【
図15】
図1の実施形態と同様の光電子コンポーネントによって放出されるレーザ放射のファセット当たりの出力の展開を、電力供給電流の関数として示す。
【
図16】
図1の実施形態と同様であるが、ネイティブ基板上にエピタキシャル成長によって作成される光電子コンポーネントによって放出されるレーザ放射のファセット当たりの出力の展開を、電力供給電流の関数として示す。
【
図17】
図1の実施形態と同様の光電子コンポーネントによって放出されるレーザ放射のファセット当たりの出力の展開を、電力供給電流の関数として示す。
【
図18】本発明による光電子コンポーネントの他の実施形態の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、全体として参照符号1によって示す、本発明による光電子コンポーネントの一実施形態を略図で示している。
【0019】
光電子コンポーネント1は、レーザ放射を放出することができる半導体ヘテロ構造2をエピタキシャル成長によって形成する支持構造30を備える。
【0020】
支持構造30は、少なくとも非ネイティブ基板、即ち「ウェハ」3を備える。本明細書中で用いるように、「非ネイティブ基板」とは、半導体ヘテロ構造2を形成する材料とは異なる材料から形成される基板を意味する。図示の実施例によれば、非ネイティブ基板3は、シリコンSi(001)から作成される基板であり、基板は、ゲルマニウム、砒化ガリウム、リン化ガリウム、又はリン化インジウムから作成することもできることを理解されたい。
【0021】
この場合、支持構造30は、更に、非ネイティブ基板3上でエピタキシャル成長によって互いに連続的に堆積される幾つかの半導体層の積層を備える。エピタキシーの種類は、分子ジェットエピタキシー、化学ジェットエピタキシー、又は有機金属気相エピタキシーから選択することができる。
【0022】
従って、支持構造30は、基板3から順に、バッファ層4と、第1の追加遷移層53aと、第1の閉じ込め領域51(「クラッド」層でもある)と、第2の追加遷移層53bとを備える。バッファ層及び遷移層の役割は、1つの層から次の層への伝導帯エネルギー最小値の変化を適合させることである。
【0023】
代替として、以下に説明するように、特定の下部コンタクト層を形成するために、バッファ層4において、層を追加してもよい。
【0024】
ここで、バッファ層4は、アンチモン化ガリウムGaSb:Teからできており、100nm~3μmの間の厚さを有する。図示の実施例によれば、バッファ層は1500nmの厚さを有する。
【0025】
この場合、第1の閉じ込め領域51は、1nm~4nmの間の厚さのアンチモン化アルミニウムAlSbの層と、1nm~4nmの間の厚さの砒化インジウムInAs:Siの層との重ね合わせの相当数の繰り返しから形成される。図示の実施例によれば、アンチモン化アルミニウムAlSbの層は2.3nmの厚さを有する一方で、砒化インジウムInAs:Siの層は2.4nmの厚さを有し、その繰り返しが685回行われる。
【0026】
第1の追加遷移層53a及び第2の追加遷移層53bは、それぞれ1.5nm~3.5nmの間の厚さを有するアンチモン化アルミニウム及び砒化インジウムAlSb/InAs合金からできている。
【0027】
支持構造30は、上述の技術から選択されるエピタキシャル成長技術によって作成される。
【0028】
レーザ放射を放出することができる半導体ヘテロ構造2が、次いで、支持構造30上にエピタキシャル成長によって連続層において堆積される。半導体ヘテロ構造2は、半導体材料領域及び層の積層から形成される。
【0029】
図示の実施例によれば、半導体ヘテロ構造は、支持構造30の最後の層(即ち、基板3から最も遠い層)から、第1の閉じ込めヘテロ構造を形成する領域22を備える。この場合、領域22は、アンチモン化ガリウムGaSb:Teからできており、100nm~1.2μmの間で、例えば400nmの厚さを有する。
【0030】
半導体ヘテロ構造2は、領域22から順に、第1の遷移層21aと、以下でより詳細に説明する発光領域20と、第2の遷移層21bと、第2の閉じ込めヘテロ構造を形成する領域23とを備える。
【0031】
図示の実施例によれば、第1の遷移層21a及び第2の遷移層21bは、それぞれの厚さが0.3nm~3.5nmの間のアンチモン化アルミニウム及び砒化インジウムのAlSb/InAs合金からできている。領域23は、領域22と同様に、400nmの厚さを有するアンチモン化ガリウムGaSb:Teからできている。
【0032】
本発明による光電子コンポーネント1を完成させる追加層も、連続層において、半導体ヘテロ構造2上にエピタキシャル成長によって堆積される。
【0033】
従って、半導体ヘテロ構造2の閉じ込め領域23上に、第3の追加遷移層53cが位置する。例えば、この第3の追加遷移層53cは、アンチモン化アルミニウム及び砒化インジウムのAlSb/InAs合金からできている。
【0034】
第3の追加遷移層53c上には、順に、第1に、第2の閉じ込め領域52、第2に、上部コンタクト層54が位置する。この場合、第2の閉じ込め領域52は、第1の閉じ込め領域51と同様に、1nm~4nmの間の厚さのアンチモン化アルミニウムAlSbの層と、1nm~4nmの間の厚さの砒化インジウムInAs:Siの層との重ね合わせの相当数の繰り返しから形成される。図示の実施例によれば、AlSbの層は2.3nmの厚さを有する一方で、InAs:Siの層は2.4nmの厚さを有する。その上、上部コンタクト層54は、5nm~50nmの間、例えば20nmの厚さの砒化インジウムInAs:Siの層である。
【0035】
半導体ヘテロ構造2の発光領域20は、活性領域24のカスケードから形成される。
【0036】
半導体レーザ源において、活性領域は、レーザ放射放出が生じる空間領域である。活性領域は、電子及び正孔型の電荷キャリアのための閉じ込め領域である。正孔は、半導体材料の価電子帯において電子が存在しない状態として定義される。活性領域は、半導体材料の1つ又は幾つかの層からなることができる。光子放出は、電子型電荷キャリアと正孔型電荷キャリアとの再結合後に生じる。
【0037】
図1の実施形態において、各活性領域24は、
図2に示すような構造を有する。この構造は、層243、242a、241、及び242bの積層から構成される。この場合、これらの層は、以下の特徴を有する:層241は、ガリウム、インジウム、及びアンチモンをベースとする三元材料Ga
0.65In
0.35Sbからできており、1.5nm~4.5nmの間、例えば3nmの厚さを有する;層242a及び242bは、砒化インジウムInAsからできており、それぞれ1nm~4nmの間、例えば1.6nm及び1.4nmの厚さを有する;層243は、アンチモン化アルミニウムAlSbからできており、1nm~3.5nmの間、この場合2.5nmの厚さを有する。層241のガリウム、インジウム、及びアンチモンをベースとする三元材料の組成は、0%のインジウムから50%のインジウムまで変化してもよい。層243、242a、241、及び242bの積層から構成される構造は、「Wバンド」構造と呼ばれる。層211は正孔量子井戸であり、それぞれが電子量子井戸を形成する層212a及び212bによって囲まれている。
【0038】
従って、
図1の実施形態において、各活性領域24は、タイプII型量子井戸をベースとするバンド間遷移を有する活性領域であり、即ち、量子井戸を構成する材料の伝導帯及び価電子帯の極値は、空間的に離間している。
【0039】
図3は、タイプII型量子井戸を略図で示している。伝導帯の限界は曲線BCによってそこで具体化され、価電子帯の限界は曲線BVによって具体化される。点線は、電子(黒丸)及び正孔(丸の内側に「プラス」符号)の可能なエネルギー準位を略図で表している。電子と正孔との間の再結合は、太い垂直矢印によって具体化され、光子放出は、波状矢印によって具体化される。伝導帯の最小値及び価電子帯の最小値は、第1の材料に位置し、伝導帯の最大値及び価電子帯の最大値は、別の材料に位置することを観察することができる。電荷キャリア(電子及び正孔)がタイプII型量子井戸に注入される場合、それらは空間的に離間されるが、それにも関わらず、それらは減少した確率で共に再結合することができる。
【0040】
序文において述べたように、本発明による光電子コンポーネント1の作成の場合のように、エピタキシャル材料と同じメッシュパラメータを有さない基板上でのエピタキシャル成長は、形成されるコンポーネント内部に極めて高い転位密度、即ち107cm-2より高い転位密度を生成する。ここでは例えば、光電子コンポーネント、特にその活性領域24は、5×108cm-2の転位密度を有する。
【0041】
半導体材料において、転位は、禁制エネルギー帯(「ギャップ」)、即ち伝導帯と価電子帯との間のエネルギー帯に位置するエネルギー準位によってモデル化することができる。
【0042】
図4は、転位を有するタイプII型量子井戸を略図で示している。線BCは伝導帯BCの境界を示し、線BVは価電子帯BVの境界を示し、これらの2つの線の間にエネルギーギャップBIが位置する。転位に関連するエネルギー準位は、点線によって表されている。
【0043】
これらのエネルギー準位は、放射再結合が起こる中央から構造的に離間することが観察できる。放射再結合の一例は、実線矢印によって表されている。転位をモデル化するエネルギー準位は、実線矢印を遮ることができないことが観察できる。言い換えれば、タイプII型の放射遷移を有する活性領域内の転位を介して、電荷キャリアが放射的に再結合することは不可能である。
【0044】
このようにして、本発明者らは、タイプII型の放射遷移を有する活性領域を用いることにより、転位における非放射再結合を排除することが可能になることを実証することができた。活性領域における発光効率に影響を及ぼすこれらの非放射再結合は、従って、本発明による光電子コンポーネント1において発生しない。
【0045】
その上、発光領域20において、活性領域はカスケード状に配置されている。
図5に示すカスケード配置の原理は、活性領域から次の活性領域へのキャリアのリサイクルを可能にする。
図5は、第2の活性領域ZA2に並置される第1の活性領域ZA1を略図で示している。第1の活性領域ZA1及び第2の活性領域ZA2は、同じ物理的構造を有している。例えば、それらはそれぞれ、半導体層の同じ積層からなる。第1の活性領域ZA1及び第2の活性領域ZA2は、従って、同じバンド構造を有する。
【0046】
電界(図示せず)の影響下で、電子を
図5の左から右に移動させると、電子は、例えば、第1の活性領域ZA1において正孔と放射的に再結合することができ、従って光子を放出する。電界印加は、第1の活性領域のバンド構造に対して第2の活性領域ZA2のバンド構造を垂直方向に並進させる効果を有する。電界は、第2の活性領域ZA2のバンド構造を低下させるよう、即ち、第2の活性領域ZA2の全てのエネルギー準位を低減するよう構成されると考えられる。その結果、カスケード内を左から右に移動し続ける電子は、第2の活性領域ZA2の伝導帯に到達することができる。電子は、次いで、第2の活性領域ZA2において正孔と再結合し、そこで別の光子を放出することができる。
【0047】
従って、活性領域のカスケード配置は、より高い利得を得ることを可能にし、従って、より多くの光パワーを提供することを可能にする。
【0048】
有利には、各活性領域24は、一方の側が正孔阻止領域22によって囲まれ、他方の側が電子阻止領域23によって囲まれる。
【0049】
本明細書中で用いるように、「囲まれる」とは、電子型電荷キャリアが活性領域24のカスケードからなる発光領域20に注入された場合、発光領域20内を移動する電子型電荷キャリアが、正孔阻止領域22、次いで活性領域24、次いで電子阻止領域23に遭遇することを意味する。
【0050】
逆に、電子の移動方向に対して正孔の移動方向が反対であるため、正孔型電荷キャリアは、それらの発光領域20内の移動中、電子阻止領域23、次いで活性領域21、次いで正孔阻止領域22に遭遇する。
【0051】
各電子阻止領域23は、一方向、より正確には、活性領域24から電子阻止領域23への電子の移動を妨げる機能を有する。言い換えれば、活性領域21に到達する電子は、活性領域21を越えて移動しない。
【0052】
各正孔阻止領域22は、一方向、より正確には、活性領域24から正孔阻止領域22への正孔の移動を妨げる機能を有する。言い換えれば、正孔は活性領域24を越えて移動しない。
【0053】
従って、電子及び正孔が活性領域24に到達すると、活性領域24内で電子及び正孔が阻止されるため、電子及び正孔は、活性領域24の周囲、即ち、電子阻止領域23内又は正孔阻止領域22内に位置する転位において非放射再結合を生じることができない。
【0054】
結論として、本発明による光電子コンポーネント1において、タイプII型バンド間遷移を有する活性領域と、各活性領域24の周囲に位置する正孔阻止領域及び電子阻止領域とを用いることによって、非放射再結合が排除される。
【0055】
図2に示す活性領域24の実施形態において、正孔阻止領域は層243の下に位置し、電子阻止領域は層242b上に位置する。
【0056】
図6は、正孔阻止領域22及び電子阻止領域23によって囲まれる活性領域24から形成されるユニットの一実施例を示している。
【0057】
図6において、正孔阻止領域22は、11層の積層から構成される。より一般的には、正孔阻止領域22は、8~18層の積層により作成することができる。この場合、正孔阻止領域22は以下のように構成される。
-砒化インジウムInAsの、厚さ3nm~6nmの間、例えば、ここでは4.2nmの層221と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間、ここでは1.2nmの層222aと、
-砒化インジウムInAs:Siの、ドーピング濃度4.5×10
18cm
-3、又はより一般的には5×10
17~2×10
19cm
-3の間、厚さ2nm~5nmの間、この場合は3.2nmの層223と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.6nm~3nmの間、例えば、ここでは1.2nmの層222bと、
-砒化インジウムInAs:Siの、ドーピング濃度4.5×10
18cm
-3、又はより一般的には5×10
17~2×10
19cm
-3の間、厚さ1.5nm~4nmの間、この場合は2.5nmの層224と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間、ここでは1.2nmの層222cと、
-砒化インジウムInAs:Siの、ドーピング濃度4.5×10
18cm
-3、又はより一般的には5×10
17~2×10
19cm
-3の間、厚さ1nm~4nmの間、例えば2nmの層225と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間、ここでは1.2nmの層222dと、
-砒化インジウムInAs:Siの、ドーピング濃度4.5×10
18cm
-3、又はより一般的には5×10
17~2×10
19cm
-3の間、厚さ1nm~4nmの間、この場合は1.7nmの層226と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ1~4nmの間、ここでは1.2nmの層222eと、
-砒化インジウムInAsの、厚さ1nm~4nmの間、例えば1.5nmの層227。
【0058】
図6において、電子阻止領域23は、5層の積層から構成される。この場合、電子阻止領域23は以下のように構成される。
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.3nm~3nmの間、例えば1nmの層231と、
-アンチモン化ガリウムGaSbの、厚さ1.5nm~5nmの間、ここでは3.5nmの層232と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.3nm~5nmの間、この場合は1nmの層233と、
-アンチモン化ガリウム材料の、厚さ2nm~5.5nmの間、ここでは4.5nmの層234と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ1nm~3.5nmの間、例えば2.5nmの層235。
【0059】
図7は、活性領域24、正孔阻止領域22、及び電子阻止領域23から形成される、
図6に示すユニットのバンド図を示している。矢印Dは、光電子コンポーネント1への電界印加の影響下での電子型電荷キャリアの移動方向を示している。この場合、電界印加の影響下での正孔型電荷キャリアの移動方向は、矢印Dと反対方向である。
【0060】
正孔阻止領域22を通過した後、電子型電荷キャリアは、活性領域24に到達し、活性領域24に隣接する電子阻止領域23の存在により、そこで阻止される。しかし、電子型電荷キャリアは、正孔型電荷キャリアとの放射再結合後にリサイクルされる。実際、放射再結合後、電子は価電子帯において正孔に取って代わり、価電子帯から伝導帯に向かって直接遷移し、次の活性領域21に向かって移動してもよい。
【0061】
図1、2、及び6に示す構造の組み合わせを備える光電子コンポーネントは、上述したように、以下のように動作する。
【0062】
電圧が上部コンタクト層54と下部コンタクト層との間に印加される。下部コンタクト層は、基板3とすることができる。代替として、下部コンタクト層は、活性領域2の下に位置する層のうちの1つ、即ち、例えば、バッファ層4、第1の追加遷移層53a、第1の閉じ込め領域51、又は第2の追加遷移層53bとすることができる。優先的に、下部コンタクト層は、層4又は層51のうちの1つである。この電圧は、発光領域20のバンド図を
図9に示すものと同様の一連のバンド図にパターン化する電界を生成するよう構成される。電界は、上部コンタクト層54と下部コンタクト層との間に含まれる層を通る電荷キャリアの循環をトリガする。
【0063】
図8、9、10、及び11は、上述した光電子コンポーネント1の性能を示している。このように形成された光電子コンポーネント1は、幅8マイクロメートル及びキャビティ長2mmを有し、連続電力供給モードにおいて45℃の温度まで動作する。上で説明した実施例による光電子コンポーネント1は、5×10
8cm
2の転位密度を有する。
【0064】
図8は、半導体ヘテロ構造2によって放出されるレーザ放射の出力、並びに、第1の閉じ込め領域51と上部コンタクト層54との間の電圧の、光電子コンポーネント1の電力供給電流の関数としての展開を示している。異なる曲線は、15℃~47.5℃の範囲の温度に対するこれらの展開を表している。温度20℃における放出閾値は48mAであり、ファセット当たり18mW程度の最大出力がこの温度において得られることが観察できる。
【0065】
図9は、温度20℃において得られる、光電子コンポーネント1によって放出されるレーザ放射の波長スペクトルの展開を示している。放出波長は3.4マイクロメートル~3.5マイクロメートルの間であることが観察できる。
【0066】
図10は、異なる温度に対して120mAの連続電流が供給される光電子コンポーネント1によって放出されるレーザ放射の波長スペクトルの展開を示している。大きな波長に向かうこのスペクトルの僅かな移動を観察することができ、最大正規化強度値は45℃まで維持される。
【0067】
図11は、温度40℃において120mAの連続電流を受ける光電子コンポーネント1の寿命測定を示している。ファセット当たりの出力(ファセット当たり約4.3mW)及び閾値電流(約77mA)は、経時的に低下しないことが観察できる。
【0068】
図11に示す結果は、5×10
8cm
-2の転位密度を有する量子箱レーザの寿命、即ち、閾電流I
thが2倍になる期間と比較することができ、これは約1,000時間である。実際、本発明による光電子コンポーネントの閾電流I
thは、少なくとも1800時間の期間にわたって安定したままであることが観察できる。その上、従来技術の量子井戸レーザの寿命を測定することは不可能である。
【0069】
図12及び13は、上記で特徴付けられる光電子コンポーネント1の構造と略同一であるが、アンチモン化ガリウムGaSbからできているネイティブ基板上のエピタキシャル成長によって得られる構造の光電子コンポーネントの性能を示している。このコンポーネントはまた、幅8マイクロメートル及びキャビティ長2mmを有し、40℃までの連続電力供給モードにおいて動作する。
【0070】
図12は、電力供給電流の関数として、このコンポーネントによって放出されるレーザ放射の出力の展開を示している。異なる曲線は、15℃~45℃の範囲の温度に対するこれらの展開を表している。温度20℃における放出閾値は52mAであり、ファセット当たり18mW程度の最大出力がこの温度において得られることが観察できる。
【0071】
図14~17は、本発明による光電子コンポーネント(
図15及び17)及びネイティブ基板上に作成される光電子コンポーネント(
図14及び16)によって放出されるレーザ放射の展開を示している。
【0072】
ここで、非ネイティブ基板上に作成される光電子コンポーネントにおいて、
-バッファ層4は、GaSbからできており、厚さ500ナノメートルを有し、
-第1及び第2の閉じ込め領域51及び52は、厚さ2.8マイクロメートルを有するAlGaAsSbの層であり、
-第1及び第2のヘテロ構造22及び23は、テルルでドープされるGaSb(GaSb:Te)の層であり、
-上部コンタクト層54は、厚さ20ナノメートルの砒化インジウムの層であり、
-発光領域20は、7つのバンド間カスケードを含む。
【0073】
この構造は、GaSbネイティブ基板及びバッファ層が存在しないことを除いて、ネイティブ基板上に作成される光電子コンポーネントにおいて同様である。
【0074】
図14及び15によって示す結果は、キャビティ長2ミリメートルを有する光電子コンポーネントに対応する。異なる曲線は、15℃~47.5℃の範囲の温度に対するこれらの展開を表す。
【0075】
閾電流密度に関する性能は、20℃における2つのコンポーネントについて極めて類似していることが観察でき、非ネイティブ基板上のコンポーネントについては105A/cm-2であり、ネイティブ基板上のコンポーネントについては130A.cm-2である。従って、非ネイティブ基板上に作成されるコンポーネントにおける転位の存在による性能の低下はない。
【0076】
図16及び17によって示す結果は、キャビティ長3ミリメートルを有する光電子コンポーネントに対応する。異なる曲線は、15℃~47.5℃の範囲の温度に対するこれらの展開を表す。
【0077】
閾電流密度に関する性能は、20℃における2つのコンポーネントについて極めて類似していることが観察でき、非ネイティブ基板上のコンポーネントについては110A.cm-2であり、ネイティブ基板上のコンポーネントについては120A.cm-2である。従って、非ネイティブ基板上に作成されるコンポーネントにおける転位の存在による性能低下はない。
【0078】
従って、文献が教示するものに反して、驚くべきことに、本発明による光電子コンポーネント1における高い転位密度は、略同様の構造を有するが、アンチモン化ガリウムGaSbからできているネイティブ基板上のエピタキシャル成長によって得られる光電子コンポーネントと比較して、出力、最大動作温度、閾電流、及び寿命の点でその性能を低下させないことが観察できる。
【0079】
本発明は、
図1~117に関連して上述した実施形態に対して何ら限定されるものではなく、当業者は、添付の特許請求の範囲の適用範囲において任意の可能な変更を行うことができるであろう。
【0080】
従って、第1の閉じ込め領域及び第2の閉じ込め領域は、上述したものとは別の材料、特に、アルミニウム、ガリウム、砒素、及びアンチモンをベースとする四元材料AlGaAsSbから形成することができる。
【0081】
例えば、正孔阻止領域は、それぞれ、アルミニウム、ガリウム、インジウム、砒素、及びアンチモン、並びにインジウム、アルミニウム、ガリウム、アンチモン、及び砒素Al(GaInAs)Sb/In(AlGaSb)Asをベースとする五元(pentanary)/五元(quinary)材料からできている層の対から形成され、これらの層の全て又は一部に存在するIn(AlGaSb)Asによる層のドーピングにより、数が6~16の間の層の積層とすることができる。
【0082】
別の実施例として、活性領域がタイプII型バンド間放射遷移を有する活性利得領域であるという条件で、正孔井戸と電子井戸とを交互に配置することによって形成される、活性領域21のための他の量子井戸構造が考えられる。
【0083】
最後に、本発明による光電子コンポーネントは転位の影響を受けないことが実証された。従って、基板3とヘテロ構造22との間の中間層を不要にすることが可能である。従って、ある特定の実施形態、特に
図18に示す実施形態において、ヘテロ構造2は、基板3上に直接作成される。従って、それは、先に説明した実施形態の場合のように、バッファ層4も閉じ込め領域21も有していない。かかる実施形態において、基板3は閉じ込め領域の役割を果たし、閉じ込めヘテロ構造22はバッファ層の役割を果たす。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子コンポーネント(1)であって、
-タイプII型バンド間放射遷移を有する活性利得領域(21)のカスケードを備える第1の半導体材料から形成される、レーザ放射を放出することができる半導体ヘテロ構造(2)と、
-前記第1の半導体材料とは異なる非ネイティブ基板(3)を備える支持構造(30)であって、前記半導体ヘテロ構造(2)が前記支持構造(30)上にエピタキシャル成長によって形成される、支持構造(30)と、を備え、
前記活性領域は、10
7cm
-2よりも高い転位密度を有することを特徴とする、光電子コンポーネント(1)。
【請求項2】
前記支持構造(30)は、更に、前記非ネイティブ基板(3)上に、10
7cm
-2よりも高い転位密度を有する少なくとも1つのバッファ層(4)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項3】
前記半導体ヘテロ構造(2)は、前記非ネイティブ基板(3)上に直接作成されることを特徴とする、請求項1に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項4】
前記支持構造(30)は、更に、第1の追加遷移層(53a)と、第1の閉じ込め領域(51)と、第2の追加遷移層(53b)とを備えることを特徴とする、請求項2に記載の光電子コンポーネント。
【請求項5】
前記非ネイティブ基板(3)は、IV族材料から形成されることを特徴とする、請求項
1に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項6】
前記非ネイティブ基板(3)は、シリコンから形成されることを特徴とする、請求項5に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項7】
前記第1の半導体材料は、アンチモン化物を含むことを特徴とする、請求項
1に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項8】
前記活性領域(21)はそれぞれ、2つの電子量子井戸の間に挿入される正孔量子井戸からなり、前記正孔量子井戸及び前記2つの電子量子井戸が、2つのバリア層の間に位置するユニットを形成することを特徴とする、請求項
1に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項9】
前記活性領域はそれぞれ、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ1nm~3.5nmの間の層243と、
-砒化インジウムInAsの、厚さ1nm~4nmの間の第2の層242aと、
-ガリウム、インジウム、及びアンチモンをベースとする三元材料の第3の層241であって、そのインジウム含有量が0%~50%の間で変化し、厚さ1.5nm~4.5nmの間である、第3の層241と、
-砒化インジウムInAsの、厚さ1nm~3.5nmの間の第4の層242bと、を備えることを特徴とする、
請求項
1に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項10】
前記活性領域はそれぞれ、電子阻止領域(23)と正孔阻止領域(22)との間に位置することを特徴とする、請求項
1に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項11】
-各電子阻止領域(23)は、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.3~3nmの間の層(231)と、
-アンチモン化ガリウムGaSbの、厚さ1.5~5nmの間の層(232)と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.3~3nmの間の層(233)と、
-アンチモン化ガリウムGaSbの、厚さ2~5.5nmの間の層(234)と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ1~3.5nmの間の層(235)と、を備え、
-各正孔阻止領域(22)は、
-砒化インジウムInAsの、厚さ3~6nmの間の層(221)と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間の層(222a)と、
-ドーピング濃度5×10
17~2×10
19cm
-3の間及び厚さ2~5nmの間の砒化インジウムInAs:Siの層(223)と、
-アンチモン化アルミニウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間の層(222b)と、
-ドーピング濃度5×10
17~2×10
19cm
-3の間及び厚さ1.5~4nmの間の砒化インジウムInAs:Siの層(224)と、
-アンチモン化ガリウムAlSbの、厚さ0.6~3nmの間の層(222c)と、
-ドーピング濃度5×10
17~2×10
19cm
-3の間及び厚さ1~4nmの間の砒化インジウムInAs:Siの層(225)と、
-アンチモン化ガリウム
GaSbの、厚さ0.6~3nmの間の層(222d)と、
-ドーピング濃度5×10
17~2×10
19cm
-3の間及び厚さ1~4nmの間の砒化インジウムInAs:Siの層(226)と、
-アンチモン化ガリウム
GaSbの、厚さ0.6~3nmの間の層(222e)と、
-砒化インジウムInAsの、厚さ1~4nmの間の層(227)と、を備えることを特徴とする、
請求項10に記載の光電子コンポーネント(1)。
【請求項12】
前記半導体ヘテロ構造は、10
6~10
9cm
-2の転位密度を有することを特徴とする、請求項
1に記載の光電子コンポーネント(1)。
【国際調査報告】