IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セダーズ-シナイ メディカル センターの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】治療用核酸及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240705BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240705BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240705BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240705BHJP
   C12N 5/077 20100101ALN20240705BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7088
A61K31/7125
A61K31/712
A61K31/7115
A61P29/00
A61P43/00 105
A61P17/00
A61P21/00
A61P9/10
A61P9/00
A61P31/12
A61P31/00
A61P21/04
A61P37/06
A61P1/16
A61K9/48
A61K47/34
A61K47/46
A61K9/127
A61K47/36
A61K47/42
A61P43/00 111
C12N5/10
C12N5/077
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581003
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 US2022035866
(87)【国際公開番号】W WO2023278799
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/202,970
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524002854
【氏名又は名称】セダーズ-シナイ メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルバン,エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】イブラヒム,アーメド,ジー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065BA05
4B065CA44
4C076AA19
4C076AA53
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB21
4C076CC05
4C076CC07
4C076CC09
4C076CC11
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC26
4C076CC32
4C076CC35
4C076EE23
4C076EE37
4C076EE41
4C076EE51
4C076EE56
4C076FF04
4C076FF31
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA37
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA12
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA36
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZB32
4C086ZB33
4C086ZC02
(57)【要約】
ヌクレオチド配列:CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)を含む単離された核酸が提供される。一部の実施形態では、核酸は、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。核酸及びそれを含有する組成物は、炎症及び/又は線維化に関連する状態、例えば、限定されないが、心臓状態、例えば肥大性心筋症、心筋梗塞、及び駆出率が保持された心不全;筋肉障害、例えば筋ジストロフィー;皮膚障害、例えば強皮症;及び炎症状態、例えば自己免疫状態、又はウイルス感染症に関連する炎症状態の治療において用途を見出す。
【選択図】図8A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)のヌクレオチド配列を含む単離された核酸であって、RNAであり、最大30nt長である、単離された核酸。
【請求項2】
CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を含む単離された核酸であって、RNAであり、最大30nt長である、単離された核酸。
【請求項3】
核酸が、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む、請求項1又は2に記載の単離された核酸。
【請求項4】
核酸が、1~10個の間の化学修飾ヌクレオチドを含む、請求項3に記載の単離された核酸。
【請求項5】
核酸が、ヌクレオチド配列の1~12位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチド及び/又は13~24位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む、請求項3に記載の単離された核酸。
【請求項6】
化学修飾ヌクレオチドが、骨格修飾を含む、請求項3に記載の単離された核酸。
【請求項7】
骨格修飾が、骨格糖修飾を含む、請求項6に記載の単離された核酸。
【請求項8】
核酸が、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位のうちの1つ以上において少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む、請求項3に記載の単離された核酸。
【請求項9】
化学修飾ヌクレオチドが、ロックド核酸(LNA)である、請求項6に記載の単離された核酸。
【請求項10】
ヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位においてLNAを含む、請求項9に記載の単離された核酸。
【請求項11】
核酸が、24ヌクレオチド長である、請求項3に記載の単離された核酸。
【請求項12】
CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を含む単離された核酸であって、RNAである、単離された核酸。
【請求項13】
ヌクレオチド配列が、CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)である、請求項12に記載の単離された核酸。
【請求項14】
核酸が、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む、請求項12又は13に記載の単離された核酸。
【請求項15】
核酸が、1~10個の間の化学修飾ヌクレオチドを含む、請求項14に記載の単離された核酸。
【請求項16】
核酸が、ヌクレオチド配列の1~12位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチド及び/又は13~24位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む、請求項14に記載の単離された核酸。
【請求項17】
化学修飾ヌクレオチドが、骨格修飾を含む、請求項14に記載の単離された核酸。
【請求項18】
骨格修飾が、骨格糖修飾である、請求項17に記載の単離された核酸。
【請求項19】
核酸が、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位のうちの1つ以上において少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドをさらに含む、請求項14に記載の単離された核酸。
【請求項20】
化学修飾ヌクレオチドが、ロックド核酸(LNA)である、請求項17に記載の単離された核酸。
【請求項21】
ヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位においてLNAを含む、請求項20に記載の単離された核酸。
【請求項22】
核酸が、最大30nt長である、請求項12~21のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項23】
核酸が、ヌクレオチド配列:CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)からなる又は本質的になる、請求項1又は2に記載の単離された核酸。
【請求項24】
ヌクレオチド配列:CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号2)からなる核酸であって、核酸がRNAであり、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位のそれぞれがLNAである、核酸。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載の単離された核酸、及び
薬学的に許容される賦形剤
を含む、組成物。
【請求項26】
トランスフェクション試薬をさらに含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
トランスフェクション試薬が、リポソーム、細胞外小胞(EV)、及びポリエチレングリコール(PEG)-カチオン性脂質複合体(PCLC)のうちの1つ以上を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
トランスフェクション試薬が、心筋球由来細胞(CDC)に由来するEVを含む、請求項26又は27に記載の組成物。
【請求項29】
カゼインリンタンパク質をさらに含む、請求項26~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
キトサンを含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
単離された核酸が、カゼイン-キトサン複合体中にカプセル化される、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
カゼインミセルを含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
カゼイン-キトサンミセルを含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
請求項24に記載の単離された核酸、
カチオン性脂質、
少なくとも1つのカゼインタンパク質、及び
キトサン
を含む、核酸の経口送達のための製剤。
【請求項35】
核酸が、リボ核酸(RNA)を含み、RNAが、製剤の約0.0001~0.01重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
少なくとも1つのカゼインタンパク質が、少なくともα-s1カゼインサブユニットを含み、少なくとも1つのカゼインタンパク質が、製剤の約0.5~5重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
キトサンが、製剤の約0.001~1重量/体積%の間の範囲の量で存在する、
請求項34に記載の製剤。
【請求項36】
マクロファージの抗炎症活性が、核酸なしのマクロファージと比較して増加している、請求項1~24のいずれか一項に記載の核酸を含むマクロファージ。
【請求項37】
マクロファージが、対象中にある、請求項36に記載のマクロファージ。
【請求項38】
マクロファージが、培養中である、請求項36に記載のマクロファージ。
【請求項39】
請求項1に記載の核酸、及び
トランスフェクション試薬
を含む、キット。
【請求項40】
トランスフェクション試薬が、脂質、PEG化脂質、及び細胞外小胞(EV)のうちの1つ以上を含む、請求項39に記載のキット。
【請求項41】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項39又は40に記載のキット。
【請求項42】
カゼインリンタンパク質をさらに含む、請求項39に記載のキット。
【請求項43】
キトサンをさらに含む、請求項42に記載のキット。
【請求項44】
炎症及び/又は線維化に関連する状態の治療を必要とする対象に、治療有効量の請求項1に記載の核酸を投与するステップであって、それにより炎症及び/又は線維化に関連する状態を治療する、ステップを含む、炎症及び/又は線維化に関連する状態を治療する方法。
【請求項45】
炎症及び/又は線維化に関連する状態が、心臓、骨格筋、又は皮膚の炎症及び/又は線維化を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
炎症及び/又は線維化に関連する状態が、心不全、肥大型心筋症、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、又は強皮症の症状及び/又は後遺症を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
治療有効量の核酸又は組成物が、経口投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
心臓状態又はその症状の治療を必要とする対象に、治療有効量の請求項1に記載の核酸を投与するステップであって、それにより心臓状態又はその症状を治療する、ステップを含む、心臓状態又はその症状を治療する方法。
【請求項49】
心臓状態が、心不全の症状及び/又は後遺症を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
心臓状態が、肥大型心筋症を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
心臓状態が、駆出率が保持された心不全(HFpEF)を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
心臓状態が、感染性疾患の症状又は後遺症を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
感染性疾患が、ウイルス感染症を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
対象が、心臓状態を有する、請求項48~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
対象が、心臓状態を発症するリスクがある、請求項48~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
対象が、投与前に、高血圧、E/e'比の上昇、心肥大、心筋線維化、肥満、消耗、持久力の低下、及び全身性炎症マーカーの上昇のうちの1つ以上を示す、請求項48~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
筋肉障害又はその症状の治療を必要とする対象に、治療有効量の請求項1に記載の核酸を投与するステップであって、それにより筋肉障害又はその症状を治療する、ステップを含む、筋肉障害又はその症状を治療する方法。
【請求項58】
筋肉障害が、筋ジストロフィー又は心臓状態を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
筋肉障害が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
対象が、筋肉障害を有する、請求項57~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
対象が、筋肉障害を発症するリスクがある、請求項57~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
対象が、筋肉障害を発症する遺伝的素因を有する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
対象が、投与前に、持久力の低下、及び骨格筋機能の低下のうちの1つ以上を示す、請求項57~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
炎症状態の治療を必要とする対象に、治療有効量の請求項1に記載の核酸を投与するステップであって、それにより炎症状態を治療する、ステップを含む、炎症状態を治療する方法。
【請求項65】
炎症状態が、感染性疾患の症状又は後遺症を含むか、又は免疫療法に関連している、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
感染性疾患が、ウイルス感染症を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
炎症状態が、サイトカインストームを含む、請求項64~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
炎症状態が、自己免疫障害を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
自己免疫障害が、強皮症又は全身性硬化症を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
線維性状態の治療を必要とする対象に、治療有効量の請求項1に記載の核酸を投与するステップであって、それにより線維性状態を治療する、ステップを含む、線維性状態を治療する方法。
【請求項71】
線維性状態が、感染性疾患の症状若しくは後遺症、特発性肺線維症又は肝硬変を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
核酸の治療有効量が、約0.001μg/g~約100μg/gを含む、請求項4445~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
治療有効量の核酸又は組成物を週2回以下の頻度で投与するステップを含む、請求項44~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
治療有効量の核酸又は組成物を静脈内、筋肉内、心臓内、又は経口的に投与するステップを含む、請求項44~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
治療有効量の核酸又は組成物が、経口投与される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
請求項1~24のいずれか一項に記載の核酸又は請求項25~32のいずれか一項に記載の組成物をマクロファージの集団と接触させるステップであって、それにより集団のマクロファージの抗炎症活性を促進する、ステップを含む、マクロファージの抗炎症活性を促進する方法。
【請求項77】
接触させるステップが、炎症及び/又は線維化を特徴とする状態の治療を必要とする対象に、有効量の核酸又は組成物を投与するステップであって、それにより対象におけるマクロファージの抗炎症活性を促進する、ステップを含む、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
マクロファージが、ヒトマクロファージである、請求項76又は77に記載の方法。
【請求項79】
心臓状態の治療を必要とする対象における心臓状態の治療のための、請求項1~24のいずれか一項に記載の核酸又は請求項25~33のいずれか一項に記載の組成物又は請求項34~35のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【請求項80】
心臓状態の治療を必要とする対象における心臓状態の治療のための医薬の調製のための、請求項1~24のいずれか一項に記載の核酸又は請求項25~33のいずれか一項に記載の組成物又は請求項34~35のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【請求項81】
心臓状態が、心不全、肥大型心筋症、又はHFpEFを含む、請求項79又は80に記載の核酸の使用。
【請求項82】
筋肉障害の治療を必要とする対象における筋肉障害の治療のための、請求項1~24のいずれか一項に記載の核酸又は請求項25~33のいずれか一項に記載の組成物又は請求項34~35のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【請求項83】
筋肉障害の治療を必要とする対象における筋肉障害の治療のための医薬の調製のための、請求項1~24のいずれか一項に記載の核酸又は請求項25~33のいずれか一項に記載の組成物又は請求項34~35のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【請求項84】
筋肉障害が、筋ジストロフィーを含む、請求項82又は83に記載の核酸の使用。
【請求項85】
筋肉障害が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む、請求項82~83のいずれか一項に記載の核酸の使用。
【請求項86】
炎症性疾患の治療を必要とする対象における炎症性疾患の治療のための、請求項1~24のいずれか一項に記載の核酸又は請求項25~33のいずれか一項に記載の組成物又は請求項34~35のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【請求項87】
炎症性疾患の治療を必要とする対象における炎症性疾患の治療のための医薬の調製のための、請求項1~24のいずれか一項に記載の核酸又は請求項25~33のいずれか一項に記載の組成物又は請求項34~35のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【請求項88】
炎症及び/又は線維化に関連する状態の治療を必要とする対象に、治療有効量の、転座プロモーター領域(TPR)に特異的に結合する核酸を投与するステップであって、それにより炎症及び/又は線維化に関連する状態を治療する、ステップを含む、炎症及び/又は線維化に関連する状態を治療する方法。
【請求項89】
炎症及び/又は線維化に関連する状態が、心臓、骨格筋、又は皮膚の炎症及び/又は線維化を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
炎症及び/又は線維化に関連する状態が、心不全、肥大型心筋症、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、又は強皮症の症状及び/又は後遺症を含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
TPRに特異的に結合する核酸が、TPRを阻害する、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
TPRに特異的に結合する核酸が、TPRの発現を低下させる、請求項88に記載の方法。
【請求項93】
TPRに特異的に結合する核酸が、請求項1~24のいずれか一項に記載の核酸を含む、請求項88に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月1日に出願された米国仮出願第63/202970号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する記載
本発明は、国立衛生研究所によりEduardo Marban博士に授与された助成金番号R01 HL124074の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
配列表への参照
本出願は、電子形式の配列表とともに出願されている。配列表は、2022年6月30日に作成された、35,492バイトのサイズのCSMC018WO_SEQLIST.txtと題されるファイルとして提供される。配列表の電子形式における情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
背景
技術分野
本開示は、治療用RNA、そのバリアント、及びそれらを使用した筋肉及び/又は心臓及び/又は炎症状態の治療に関する。
【背景技術】
【0005】
炎症及び組織損傷は、ある特定の心臓損傷及び他の疾患における病理の主な要因である。自然免疫において重要な役割を果たすものとして、マクロファージは、損傷後に、炎症性メディエーターを分泌し、(エフェロサイトーシスによって)細胞片を除去し、組織を再構築する。マクロファージは、心筋球由来細胞(CDC)に由来する細胞外小胞(EV)によって誘導される心筋梗塞(MI)後の心臓保護の重要なエフェクターであり、エフェロサイトーシスの増強に関与している。これと一致して、マクロファージの枯渇は、心臓保護を損なう。
【発明の概要】
【0006】
CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)のヌクレオチド配列を含む単離された核酸であって、RNAであり、最大30nt長である、単離された核酸が本明細書で提供される。CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を含む単離された核酸であって、RNAであり、最大30nt長である、単離された核酸も提供される。任意選択で、核酸は、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、1~10個の間の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の1~12位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチド及び/又は13~24位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチドは、骨格修飾を含む。一部の実施形態では、骨格修飾は、骨格糖修飾を含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位のうちの1つ以上において化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチドは、ロックド核酸(LNA)である。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位においてLNAを含む。一部の実施形態では、核酸は、24ヌクレオチド長である。
【0007】
CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を含む単離された核酸であって、RNAである、単離された核酸が本明細書で提供される。任意選択で、ヌクレオチド配列は、CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)である。一部の実施形態では、核酸は、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、1~10個の間の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の1~12位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチド及び/又は13~24位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチドは、骨格修飾を含む。一部の実施形態では、骨格修飾は、骨格糖修飾である。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位のうちの1つ以上において化学修飾ヌクレオチドをさらに含む。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチドは、ロックド核酸(LNA)である。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位においてLNAを含む。一部の実施形態では、核酸は、最大30nt長である。
【0008】
一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列:CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)からなる又は本質的になる。
【0009】
ヌクレオチド配列:CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号2)からなる核酸であって、核酸がRNAであり、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位のそれぞれがLNAである、核酸。
【0010】
本開示の単離された核酸のいずれか1つ及び薬学的に許容される賦形剤を含む、組成物も提供される。任意選択で、組成物は、トランスフェクション試薬をさらに含む。任意選択で、トランスフェクション試薬は、リポソーム、細胞外小胞(EV)、及びポリエチレングリコール(PEG)-カチオン性脂質複合体(PCLC)のうちの1つ以上を含む。一部の実施形態では、トランスフェクション試薬は、心筋球由来細胞(CDC)に由来する細胞外小胞(EV)を含む。一部の実施形態では、組成物は、カゼインリンタンパク質をさらに含む。任意選択で、組成物は、キトサンをさらに含む。任意選択で、単離された核酸は、カゼイン-キトサン複合体中にカプセル化される。一部の実施形態では、組成物は、カゼインミセルを含む。一部の実施形態では、組成物は、カゼイン-キトサンミセルを含む。
【0011】
本開示の核酸のいずれか1つを含むマクロファージであって、マクロファージの抗炎症活性が、核酸なしのマクロファージと比較して増加している、マクロファージが本明細書で提供される。本開示の核酸のいずれか1つに曝露されたか又はそれでトランスフェクトされたマクロファージであって、マクロファージの抗炎症活性が、核酸なしのマクロファージと比較して増加している、マクロファージも提供される。任意選択で、マクロファージは、対象中にある。任意選択で、マクロファージは、培養中である。
【0012】
本開示の核酸のいずれか1つ及びトランスフェクション試薬を含む、キットも提供される。任意選択で、トランスフェクション試薬は、脂質(例えば、リポソーム形成脂質)、ペグ化脂質、及び細胞外小胞(EV)のうちの1つ以上を含む。一部の実施形態では、キットは、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。一部の実施形態では、キットは、カゼインリンタンパク質をさらに含む。一部の実施形態では、キットは、キトサンをさらに含む。
【0013】
心臓状態又はその症状の治療を必要とする対象に、治療有効量の、本開示の核酸のいずれか1つ又は本開示の組成物のいずれか1つを投与するステップであって、それにより心臓状態又はその症状を治療する、ステップを含む、心臓状態又はその症状を治療する方法も提供される。任意選択で、心臓状態は、心不全の症状及び/又は後遺症を含む。一部の実施形態では、心臓状態は、肥大型心筋症を含む。一部の実施形態では、心臓状態は、駆出率が保持された心不全(HFpEF)を含む。一部の実施形態では、心臓状態は、感染性疾患の症状又は後遺症を含む。一部の実施形態では、感染性疾患は、ウイルス感染症を含む。一部の実施形態では、対象は、心臓状態を有する。一部の実施形態では、対象は、心臓状態を発症するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、投与前に、高血圧、心エコー検査によるE/e'比の上昇、心肥大、心筋線維化、肥満、消耗、持久力の低下、及び全身性炎症マーカーの上昇のうちの1つ以上を示す。
【0014】
筋肉障害又はその症状の治療を必要とする対象に、治療有効量の、本開示の核酸のいずれか1つ又は本開示の組成物のいずれか1つを投与するステップであって、それにより筋肉障害又はその症状を治療する、ステップを含む、筋肉障害又はその症状を治療する方法も提供される。任意選択で、筋肉障害は、筋ジストロフィー又は心臓状態を含む。一部の実施形態では、筋肉障害は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む。一部の実施形態では、対象は、筋肉障害を有する。一部の実施形態では、対象は、筋肉障害を発症するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、筋肉障害を発症する遺伝的素因を有する。一部の実施形態では、対象は、投与前に、持久力の低下、及び骨格筋機能の低下のうちの1つ以上を示す。
【0015】
炎症状態の治療を必要とする対象に、治療有効量の、本開示の核酸のいずれか1つ又は本開示の組成物のいずれか1つを投与するステップであって、それにより炎症状態を治療する、ステップを含む、炎症状態を治療する方法も提供される。任意選択で、炎症状態は、感染性疾患の症状又は後遺症を含む。一部の実施形態では、感染性疾患は、ウイルス感染症を含む。一部の実施形態では、炎症状態は、サイトカインストームを含む。一部の実施形態では、炎症状態は、免疫療法(例えば、がんに対する)に関連している。一部の実施形態では、炎症状態は、強皮症(皮膚に影響を及ぼす自己免疫状態)である。一部の実施形態では、炎症状態は、全身性硬化症(強皮症に似ているが、皮膚だけでなく、肺及び心臓を含む内臓にも影響を及ぼす自己免疫状態)である。
【0016】
線維性状態の治療を必要とする対象に、治療有効量の、本開示の核酸のいずれか1つ又は本開示の組成物のいずれか1つを投与するステップであって、それにより線維性状態を治療する、ステップを含む、線維性状態を治療する方法も提供される。任意選択で、線維性状態は、感染性疾患の症状又は後遺症を含む。一部の実施形態では、感染性疾患は、ウイルス感染症を含む。一部の実施形態では、線維性状態は、特発性肺線維症である。一部の実施形態では、線維性状態は、肝硬変である。
【0017】
一部の実施形態では、核酸の治療有効量は、約0.001μg/g~約100μg/gを含む。一部の実施形態では、本開示の治療方法のいずれか1つは、治療有効量の核酸又は組成物を週2回以下の頻度で投与するステップを含む。一部の実施形態では、方法は、治療有効量の核酸又は組成物を静脈内、筋肉内、心臓内、又は経口的に投与するステップを含む。任意選択で、治療有効量の核酸又は組成物は、経口投与される。
【0018】
本開示の核酸のいずれか1つ又は本開示の組成物のいずれか1つをマクロファージの集団と接触させるステップであって、それにより集団のマクロファージの抗炎症活性を促進する、ステップを含む、マクロファージの抗炎症活性を促進する方法も提供される。任意選択で、接触させるステップは、炎症及び/又は線維化を特徴とする状態の治療を必要とする対象に、有効量の核酸又は組成物を投与するステップであって、それにより対象におけるマクロファージの抗炎症活性を促進する、ステップを含む。一部の実施形態では、マクロファージは、ヒトマクロファージである。
【0019】
炎症及び/又は線維化に関連する状態の治療を必要とする対象に、治療有効量の、転座プロモーター領域(TPR)に結合する核酸を投与するステップであって、それにより炎症及び/又は線維化に関連する状態を治療する、ステップを含む、炎症及び/又は線維化に関連する状態を治療する方法も提供される。任意選択で、炎症及び/又は線維化に関連する状態は、心臓、骨格筋、又は皮膚の炎症及び/又は線維化を含む。一部の実施形態では、炎症及び/又は線維化に関連する状態は、心不全、肥大型心筋症、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、又は強皮症の症状及び/又は後遺症を含む。一部の実施形態では、TPRに結合する核酸は、TPRを阻害する。一部の実施形態では、TPRに結合する核酸は、TPRの発現を低下させる。一部の実施形態では、TPRに結合する核酸は、本開示の核酸、例えばTY4を含む。
【0020】
本開示の核酸、カチオン性脂質、少なくとも1つのカゼインタンパク質、及びキトサンを含む、核酸、例えばTY4の経口送達のための製剤も提供される。いくつかの実施形態では、製剤の核酸は、本明細書で提供されるような、TY4又はその誘導体を含み、RNAは、製剤の0.0001~約0.01重量/体積%の間の範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのカゼインタンパク質は、少なくとも、製剤の約0.25~約7重量/体積%の間の範囲の量で存在するα-s1カゼインサブユニットを含み、キトサンは、製剤の約0.0001~4重量/体積%の間の範囲の量で存在する。
【0021】
いくつかの実施形態では、複数の人工脂質ミセル、複数の核酸、及び人工脂質ミセル上の被覆を含む、核酸の経口送達のための製剤であって、核酸の一部が人工脂質ミセル内にカプセル化され、被覆がカゼインタンパク質とキトサンポリマーとの混合物を含む、製剤が提供される。いくつかの実施形態では、核酸は、リボ核酸(RNA)を含み、RNAは、製剤の約0.00001~約0.05重量/体積%の間の範囲の量で存在し、カゼインタンパク質とキトサンポリマーとの混合物は、少なくとも、製剤の約0.5~約5重量/体積%の間の範囲の量で存在するα-s1カゼインサブユニットを含み、キトサンは、製剤の約0.001~約1重量/体積%の間の範囲の量で存在する。
【0022】
いくつかの実施形態では、製剤は、酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、酸は、製剤の約0.001~約1体積%の間の範囲の量で存在し、酸は、酢酸、クエン酸、リン酸及びクエン酸から選択される。一実施形態では、製剤は、酢酸をさらに含み、酢酸は、製剤の約0.01~約1重量/体積%の間の範囲の量で存在する。
【0023】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、核酸の各マイクログラムに対して約0.1~約5マイクロリットルの範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、キトサンは、低分子量キトサンである。いくつかの実施形態では、低分子量キトサンは、質量約50~約190キロダルトンの範囲である。
【0024】
いくつかの実施形態では、核酸は、本開示の核酸、例えばTY4を含み、RNAは、製剤の約0.001~約0.005重量/体積%の間の範囲の量で存在し、少なくとも1つのカゼインタンパク質は、α-s1カゼインサブユニットとα-s2カゼインサブユニットとβカゼインサブユニットとκカゼインサブユニットとの混合物を含み、カゼインサブユニットは、製剤の約1~3重量/体積%の間の範囲の量で存在し、キトサンは、製剤の約0.01~0.1重量/体積%の間の範囲の量で存在する。
【0025】
いくつかの実施形態では、核酸、例えばTY4は、製剤の約0.0015~約0.004重量/体積%の間の範囲の量で存在し、カゼインサブユニットの混合物は、製剤の約2~3重量/体積%の間の範囲の量で存在し、キトサンは、製剤の約0.05~0.1重量/体積%の間の範囲の量で存在し、カチオン性脂質は、核酸の各マイクログラムに対して約1~約3マイクロリットルの範囲の量で存在する。
【0026】
いくつかの実施形態では、核酸、例えばTY4は、製剤の約0.0015~約0.0035重量/体積%の間の範囲の量で存在し、カゼインサブユニットの混合物は、製剤の約2.2~2.8重量/体積%の間の範囲の量で存在し、キトサンは、製剤の約0.06~0.09重量/体積%の間の範囲の量で存在し、カチオン性脂質は、核酸の各マイクログラムに対して約1~約2マイクロリットルの範囲の量で存在する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1Aは、EV-YF1配列及びその仮説的な作用機序を示す概略図である。図1Bは、EV-YF1で処理された骨髄由来マクロファージ(BMDM)における遺伝子発現の変化を示すヒートマップ画像である。図1Cは、EV-YF1で処理されたBMDMにおける遺伝子の差次的発現を示すグラフである。図1Dは、EV-YF1で処理された細胞におけるヒストンアセチル化パターンの変化を示すグラフの集合である。
図2-1】図2Aは、肥大型心筋症(HCM)のモデルにおいてEV-YF1の治療効果を測定するためのプロトコールを示す概略図である。図2Bは、経時的な体重の変化を示すグラフである。図2Cは、拡張期における心エコー図画像の集合である。図2Dは、経時的な拡張期心室中隔壁径(IVSd;左パネル)及び左心室後壁径(LVPWd;右パネル)の変化を示すグラフの集合である。図2Eは、グルーミング行動を比較する画像の集合である。図2Fは、WTマウスが走った距離のパーセンテージとしてのトレッドミル運動距離を比較するグラフである。図2Gは、心臓重量(HW)-対-脛骨長(TL)の比及び相対肺重量(LW)-対-TLを比較するグラフの集合である。
図2-2】図2-1に記載の通り。
図3-1】図3A及び3Bは、EV-YF1バリアント又はビヒクル対照で処理されたマクロファージにおける選択遺伝子の発現レベルの比較を示すグラフの集合である。
図3-2】図3-1に記載の通り。
図4-1】図4Aは、TY4の構造的特徴、及びEV-YF1とのその配列アライメントを示す画像である。図4Bは、TY4で処理されたBMDMにおける遺伝子発現の変化を示すヒートマップ画像である。図4Cは、TY4で処理されたBMDMにおける遺伝子の差次的発現を示すグラフである。
図4-2】図4-1に記載の通り。
図5-1】図5A~5Eは、本開示の一部の非限定的な実施形態による、肥大型心筋症(HCM)におけるTY4投与の治療効果を示す。図5Aは、肥大型心筋症(HCM)のモデルにおいてTY4の治療効果を測定するためのプロトコールを示す概略図である。図5Bは、拡張期心室中隔壁径(IVSd)を比較するグラフである。図5Cは、左心室後壁径(LVPWd)を比較するグラフである。図5Dは、トレッドミル運動距離を比較するグラフである。図5Eは、経時的なトレッドミル運動試験における総運動距離の変化を比較するグラフである。
図5-2】図5-1に記載の通り。
図6-1】図6A~6Eは、本開示の一部の非限定的な実施形態による、肥大型心筋症(HCM)におけるTY4投与の治療効果を示す。図6Aは、収縮期血圧を比較するグラフである。図6Bは、拡張期血圧を比較するグラフである。図6Cは、TY4投与中の経時的な収縮期血圧の変化を比較するグラフである。図6Dは、経時的な拡張期血圧の変化を比較するグラフである。図6Eは、経時的な体重の変化を比較するグラフである。
図6-2】図6-1に記載の通り。
図6-3】図6-1に記載の通り。
図7-1】図7A~7Cは、本開示の一部の非限定的な実施形態による、肥大型心筋症(HCM)におけるTY4投与の治療効果を示す。図7Aは、末梢血中の脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベルを比較するグラフである。図7Bは、心臓重量(HW)-対-脛骨長(TL)の比を比較するグラフである。図7Cは、相対肺重量(LW)-対-TLを比較するグラフである。
図7-2】図7-1に記載の通り。
図8-1】図8A~8Mは、本開示の一部の非限定的な実施形態による、駆出率が保持された心不全(HFpEF)におけるTY4投与の治療効果を示す。図8Aは、HFpEFのモデルにおいてTY4の治療効果を測定するためのプロトコールを示す概略図である。図8Bは、収縮期血圧(左パネル)及び拡張期血圧(右パネル)を比較するグラフである。図8Cは、トレッドミル運動距離を比較するグラフである。図8Dは、拡張早期僧帽弁流入速度の僧帽弁輪組織速度に対する比(E/e')を比較するグラフである。図8Eは、全身脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベルを比較するグラフである。図8Fは、収縮期血圧(左パネル)及び拡張期血圧(右パネル)を比較するグラフの集合である。図8Gは、拡張早期僧帽弁流入速度の僧帽弁輪組織速度に対する比(E/e')を比較するグラフである。図8Hは、トレッドミル運動距離を比較するグラフである。図8Iは、全身BNPレベルを比較するグラフである。図8Jは、経時的に収縮期血圧を比較するグラフである。図8Kは、経時的に拡張期血圧を比較するグラフである。図8Lは、経時的にE/e'比を比較するグラフである。図8Mは、経時的にトレッドミル運動距離を比較するグラフである。
図8-2】図8-1に記載の通り。
図8-3】図8-1に記載の通り。
図8-4】図8-1に記載の通り。
図8-5】図8-1に記載の通り。
図9-1】図9A~9Gは、本開示の一部の非限定的な実施形態による、HFpEFにおけるTY4投与の治療効果を示す。図9Aは、E/e'比を比較するグラフである。図9Bは、経時的にE/e'比を比較するグラフである。図9Cは、経時的に体重を比較するグラフである。図9Dは、トレッドミル運動距離を比較するグラフである。図9Eは、経時的にトレッドミル運動距離を比較するグラフである。図9Fは、収縮期血圧(上パネル)及び経時的な収縮期血圧の相対変化(下パネル)を比較するグラフの集合である。図9Gは、拡張期血圧(上パネル)及び経時的な拡張期血圧の相対変化(下パネル)を比較するグラフの集合である。
図9-2】図9-1に記載の通り。
図9-3】図9-1に記載の通り。
図9-4】図9-1に記載の通り。
図10図10A及び10Bは、本開示の一部の非限定的な実施形態による、HFpEFにおけるTY4投与の治療効果を示す。図10Aは、末梢血中のインターロイキン(IL)-6レベルをpg/mLで比較するグラフである。図10Bは、末梢血中のBNPレベルをpg/mLで比較するグラフである。
図11図11A~11Bは、本開示の一部の非限定的な実施形態による、ヒト特異的Y-RNA配列を測定することによるCDC-EVの生体内分布の決定を示す。図11Aは、ヒト特異的Y-RNA配列及び最も近いマウス配列の配列アライメントである。図11Bは、組織中のヒトCDC-EV量の関数としての組織中のヒト特異的Y-RNA配列の検出を示すプロットである。図11Cは、CDC-EVの眼窩後注射後の様々な組織におけるヒトCDC-EVの測定量を比較するグラフである。
図12図12Aは、本開示の一部の非限定的な実施形態による、生物活性治療分子についてのヒトマクロファージスクリーニングの概略図である。図12Bは、ヒトマクロファージにおけるIL10 mRNAの発現を示すグラフである。
図13図13は、本開示の一部の非限定的な実施形態による、TY4及び/又はその誘導体の損傷修飾生物活性を試験するためのインビトロアッセイ、並びにTY4及び/又はその誘導体についての代替の製剤及び投与経路を示す概略図である。
図14図14Aは、本開示の一部の非限定的な実施形態による、化学修飾RNAがロードされたCDC-EVを生成するためのプロトコールを示す概略図及びプロットの集合である。図14Bは、化学修飾RNAがロードされたCDC-EV中の外因性RNAのサイズ分布及び量を示す概略図、プロット及びグラフの集合である。図14Cは、化学修飾RNAがロードされたCDC-EVによる新生ラット心筋細胞への外因性RNAの送達を示す概略図及び画像の集合である。
図15図15は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの確立されたモデルであるmdxマウスにおいてTY4投与の治療効果を測定するためのプロトコールを示す概略図である。
図16図16A~16Dは、本開示の一部の非限定的な実施形態による、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの確立されたモデルであるmdxマウスにおけるTY4投与のインビボ筋機能に対する治療効果を示す。図16Aは、ビヒクル対照動物における経時的なトレッドミル運動距離を示すグラフである。図16Bは、メチル化EV-YF1(Y RNAme)処置動物における経時的なトレッドミル運動距離を示すグラフである。図16Cは、TY4処置動物における経時的なトレッドミル運動距離を示すグラフである。図16Dは、ベースラインと比較したトレッドミル運動距離の経時的な変化を示すグラフである。
図17図17A~17Fは、本開示の一部の非限定的な実施形態による、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのモデルであるmdxマウスにおけるTY4投与のインビトロ筋機能に対する治療効果を示す。図17Aは、ビヒクル対照動物における経時的な骨格筋の強縮トルクを示すグラフである。図17Bは、メチル化EV-YF1(Y RNAme)処置動物における経時的な骨格筋の強縮トルクを示すグラフである。図17Cは、TY4処置動物における経時的な骨格筋の強縮トルクを示すグラフである。図17Dは、ビヒクル対照動物における経時的な骨格筋の単収縮トルクを示すグラフである。図17Eは、メチル化EV-YF1(Y RNAme)処置動物における経時的な骨格筋の単収縮トルクを示すグラフである。図17Fは、TY4処置動物における経時的な骨格筋の単収縮トルクを示すグラフである。
図18図18Aは、経時的にベースラインと比較した強縮トルクの変化を示すグラフである。図18Bは、対照と比較した、強縮トルクに対するEV-YF1(Y RNAme)及びTY4の治療効果の大きさを示すグラフである。
図19-1】図19A~19Lは、TY4が抗老化特性を有する操作されたY由来低分子RNA(YsRNA)であることを示す概略図、グラフ及び画像の集合である。図19A:TY4は、治療用心臓間質細胞(心筋球由来細胞;CDC)の細胞外小胞中に天然に豊富にある、より大きなY由来低分子RNA(EV-YF1)からバイオインスパイアされた。末端切断バージョンは、同じくCDC-EV中に豊富にあるより短いバージョンによってインスパイアされる。TY4は、5''末端における変異(GからC)を含有し、各末端に3つの交互のロックド核酸残基(LNA)を含む。図19B:TY4の予測構造(スペクトルは塩基対合の確率を表す)。図19C:ビヒクル(PBS)又はTY4に曝露された骨髄由来マクロファージ(BMDM)のヒートマップ(群あたりn=4の生物学的反復)。図19D~19H:免疫調節メディエーターの上方制御(図19D)、TGFβ線維化促進性シグナル伝達(図19E)及び肥大性シグナル伝達(図19F)、及びそれらの上流増強因子であるHippo/Yap(図19G)及びMAPKシグナル伝達(図19H)の抑制を示す配列決定データ。図19I~19L:ビヒクル、TY4で前処理され、リポ多糖に曝露されたBMDMは、ビヒクル又はTY4スクランブル配列と比較して、老化(p21;図19I)、インフラマソーム活性化(IL1b;図19J)、及び炎症(NFkB及びIL6;それぞれ図19K、19L)のマーカーの減少を示した。ヒストン修飾の分析により、TY4に曝露されたマクロファージが、ヒストン修飾に差次的変化を有したことがさらに示される(n=3の生物学的反復;図20D)。バーは群平均を表し、エラーバーはs.d.を表す。有意性は一元配置分散分析によって決定した;*、P<0.05;**、††P<0.01;***、†††P<0.001。*は群とビヒクルとの間の比較を示し、†は群と対照との間の比較を示す。
図19-2】図19-1に記載の通り。
図20-1】図20A~20Dは、TY4が抗老化特性を有することを示すグラフの集合である。図20A、20B:ビヒクルと比較した、TY4処理マクロファージにおける線維化促進性ディスインテグリン及びメタロプロテアーゼ(ADAM)及びマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)(図20A)及びコラーゲン(図20B)の抑制を示す配列決定データ。図20C:対照と比較した、TY4処理マクロファージにおけるヒストンデアセチラーゼ及びメチルトランスフェラーゼ(Smyd及びPrdm)の調節。図20D:スクランブル対照(点線で表示)と比較した、TY4で処理されたマクロファージのメチル化及びアセチル化プロファイルの変化を示す修飾ヒストンタンパク質アレイ(群あたりn=1の試料)。バーは群平均を表し、エラーバーはs.d.を表す。有意性はスチューデントのt検定によって決定した;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001。
図20-2】図20-1に記載の通り。
図21図21A~21Eは、駆出率が保持された心不全(HFpEF)のマウス2ヒットモデルにおいて、TY4投与が治療的生物活性を有することを示す概略図及びグラフの集合である。図21A:HFpEFのマウス2ヒットモデルにおけるTY4の有効性を調査するための研究概要。野生型c57BL/6マウスに、高脂肪食及び一酸化窒素合成酵素阻害剤Nω-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル(L-NAME)を5週間与え、その後、これらのマウスを、食塩水(陰性対照)又はTY4(0.15μg/g)の静脈内(眼窩後)注入を隔週、週1回、又は週2回の頻度で(合計10週間)受けるように無作為化した。図21B~21E:TY4投与により、拡張機能障害が軽減し(図21B;群あたりn=4~10匹の動物)、運動持久力が改善し(図21C;群あたりn=7~10)、循環脳性ナトリウム利尿ペプチド(図21D;群あたりn=3~4)及びIL6(図21E;群あたりn=3~4匹の動物)が減少した。バー及び散布図の線は群平均を表し、エラーバーはs.d.を表す。有意性は一元配置分散分析によって決定した;*、P<0.05;**、††P<0.01;***、†††P<0.001。*は群とビヒクルとの間の比較を示し、†は群と対照との間の比較を示す。
図22図22A~22Gは、HFpEFマウスにおけるTY4送達の効果を示すグラフの集合である。図22A:ビヒクル対照由来の組織と比較した、TY4の静脈内投与後30分における動物の肝臓、心臓、及び血漿中のTY4の相対存在量(群あたりn=3匹の動物)。図22B:HFpEFマウス群における保存された駆出率の確認(群あたりn=3)。図22C、22D:ビヒクルと比較した、TY4で処置されたHFpEF動物における収縮期血圧及び拡張期血圧(それぞれ)の低下(群あたりn=5~10匹の動物)。図22E~22G:拡張機能障害(図22E)、運動持久力(図22F)、及び循環BNPレベル(図22G)における有益な効果の喪失を含む、トランスフェクション試薬なしで(-TR)TY4を受けたHFpEF動物におけるTY4治療的生物活性の喪失(群あたりn=4~5)。バー及び線は群平均を表し、エラーバーはs.d.を表す。有意性は一元配置分散分析によって決定した;*P<0.05;**P<0.01。
図23図23A~23Eは、TY4がマウスにおけるHFpEF調節不全遺伝子のレベルを回復させることを示すグラフの集合である。構造(図23A)、発生(図23B)、カルシウムハンドリング(図23C)、カリウムチャネル(図23D)、及び溶質輸送体膜タンパク質(図23E)を含む、HFpEF調節不全遺伝子の回復(ビヒクルと比較して)を示す配列決定結果(群あたりn=5個の心臓)。
図24-1】図24A~24Jは、TY4がp21-Smyd4軸を標的にして細胞ストレス及び炎症を軽減することを示すグラフ及び画像の集合である。図24A:HFpEFマウスの心臓のヒートマップ。図24B~24E:TY4は、p21-p16老化経路(図24B)、小胞体(ER)ストレス管腔受容体(図24C)、インフラマソームシグナル伝達(図24D)、及び下流炎症マーカー(図24E)から始まる、疾患心臓における細胞ストレスシグナル伝達を(ビヒクルと比較して)抑制する(群あたりn=5匹の動物)。図24F、24G:P21は、遺伝子発現(図24F)及びタンパク質(図24G、棒グラフ及び下のウエスタンブロット画像)によって示されるように、対照と比較して、TY4処置HFpEFマウスにおいて抑制される(群あたりn=3個の心臓)。図24H~24J:p21のヒストンメチルトランスフェラーゼ増強因子であるsmyd4の遺伝子発現(図24H)及びタンパク質レベル(図24I)における上方制御(図24J)(群あたり心臓あたりn=3)。バー及び点は群平均を表し、エラーバーはs.d.を表す。有意性は一元配置分散分析によって決定した;*P<0.05;**P<0.01。
図24-2】図24-1に記載の通り。
図25-1】図25A~25Hは、TY4がHFpEFマウスの組織においてP21を抑制することを示すグラフ及び画像の集合である。図25A~25D:HFpEFマウスにおける肺(図25A)、肝臓(図25B)、脾臓(図25C)、及び腎臓(図25D)組織におけるp21のTY4抑制を実証するQPCR(ビヒクルと比較して;群あたりn=3~5匹の動物)。図25E、25F:血清(群あたりn=3~5匹の動物)及び組織(群あたりn=3匹の動物)におけるp21のタンパク質レベルの抑制。図25G:TY4処置によって抑制されたものとして2つのヒストンメチルトランスフェラーゼPrdm2及びSmyd4を同定する、HFpEF心臓からの配列決定データ。図25H:TY4処置されたHFpEF心臓におけるPrdm2のタンパク質レベルは、ビヒクルと比較して変化していない(群あたりn=4匹の動物)。バー及び箱ひげ図の中線は群平均を表し、エラーバーはs.d.を表す。有意性は一元配置分散分析によって決定した;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001。*は群とビヒクルとの間の比較を示し、†は群と対照との間の比較を示す。
図25-2】図25-1に記載の通り。
図26図26A~26Dは、心筋梗塞のモデルにおけるTY4の有効性を示す概略図、グラフ及び画像の集合である。図26A:心筋梗塞のラットモデル。静脈内TY4を受けた動物は、ビヒクル対照又はスクランブルと比較して、減少した梗塞サイズ(図26B、26C)及びより低いレベルの循環心臓トロポニン(図26D)を有した。
図27図27A及び27Bは、TY4が心筋梗塞のブタモデルにおけるアウトカムを改善することを示す概略図及びグラフの集合である。図27A:心筋梗塞のブタモデル。静脈内TY4を受けた動物は、ビヒクル対照又はスクランブルと比較して、減少した梗塞サイズ(図27B)を有した。
図28-1】図28A~28Fは、TY4がデュシェンヌ型筋ジストロフィーのマウスモデルにおけるアウトカムを改善することを示す概略図、グラフ及び画像の集合である。図28A:研究設計;Mdx動物は、週2回、8週間にわたってTY4の静脈内注入を受けた。TY4を受けた動物は、ビヒクル対照と比較して、改善された心機能(図28B)、運動持久力(図28C)、筋力出力(図28D)、並びに減少した心臓及び骨格筋線維化(それぞれ図28E、28F)を有した。
図28-2】図28-1に記載の通り。
図29図29A~29Dは、TY4がブレオマイシン誘導性強皮症のマウスモデルにおけるアウトカムを改善することを示す概略図及びグラフの集合である。図29A:ブレオマイシン誘導性強皮症のマウスモデル。ブレオマイシン誘導性組織損傷後に静脈内TY4を受けた動物は、改善された運動持久力(図29B)、より低い肺水腫(肺重量対体重比の減少によって実証される;図29C)、及び組織中のより低い線維化(図29D)を有した。
図30図30は、肥大性カスケード及び線維化促進性カスケードの両方のTY4誘導性抑制の予測される機構を示す概略図である。
図31図31A~31Dは、TY4がマクロファージにおける炎症活性化を阻害することを示すグラフの集合である。炎症促進性遺伝子発現を、Nos2(図31A)、IL6(図31B)、IL-1b(図31C)、及びIL12b(図31D)について測定した。
図32図32は、TY4がHFpEFマウスにおける拡張機能障害を逆転させるが、スクランブルバージョンはそうではないことを示すグラフの集合である。***p:<0.001。
図33図33A~33Dは、静脈内TY4が、HCMのマウスモデルにおける疾患兆候を逆転させることを示すグラフの集合である。4ヶ月齢のcTNI146Glyマウスに、TY4の週2回の静脈内注入を4週間与えたところ(図33A)、マウスは劇的に減少した心室中隔厚(図33B)、減少した血流速度(パルス波ドップラーによって測定される;図33C)、改善された運動持久力(図33D)、及び減少した循環炎症マーカー(BNP;図33E)を有した。
図34図34は、TY4のIV及び経口投与のための製剤を示す概略図である。
図35図35A~35Eは、心筋梗塞のモデルにおけるIV及び経口投与によるTY4の心臓保護活性を示すグラフ及び画像の集合である。図35A及び35Dは、梗塞サイズを示すグラフである。図35Bは、MIから48時間後の各群についての代表的なTTC染色切片を示す画像である。図35C及び35Eは、損傷から48時間後の動物における心臓トロポニンレベルの循環レベルを示すグラフである。
図36図36A~36Eは、強皮症のモデルにおける経口投与されたTY4の有効性を示すグラフの集合である。図36Aは、健康な動物(「対照」)、経口ビヒクルで処置された強皮症の動物(「PBS」)、経口スクランブルで処置された強皮症の動物、及び経口TY4で処置された強皮症の動物における運動持久力を比較するグラフである。図36Bは、様々な処置群におけるエンドポイントにおける体重を比較するグラフである。図36Cは、様々な処置群におけるエンドポイントにおける相対心臓重量を比較するグラフである。図36Dは、様々な処置群におけるエンドポイントにおける相対肺重量を比較するグラフである。図36Eは、様々な処置群におけるエンドポイントにおける肺重量を比較するグラフである。
図37図37A~37Dは、強皮症のモデルにおける経口投与されたTY4の有効性を示す画像及びグラフの集合である。図37Aは、健康な動物(「対照」)、経口ビヒクルで処置された強皮症の動物(「PBS」)、経口スクランブルで処置された強皮症の動物、及び経口TY4で処置された強皮症の動物における代表的な染色心臓組織切片を示す画像の集合である。図37Bは、様々な処置群におけるエンドポイントにおける心臓線維化の程度を比較するグラフである。図37Cは、様々な処置群における代表的な染色皮膚組織切片を示す画像の集合である。図37Dは、様々な処置群における皮膚の厚さを比較するグラフである。
図38図38は、強皮症のモデルにおける経口投与されたTY4の有効性を示すグラフの集合である。
図39図39A及び39Bは、HFpEFのモデルにおける経口投与されたTY4の有効性を示すグラフ及び画像の集合である。
図40-1】図40A~40Hは、経口送達されたTY4の治療利益を示すグラフ及び画像の集合である。図40Aは、様々な処置群における経胸壁心エコー検査によって測定された左心室駆出率(EF)を比較するグラフである。図40Bは、マッソントリクローム染色を使用して、様々な処置群における心筋線維化を比較する画像及びグラフの集合である。図40C及び40Hは、様々な処置群における前下腿筋のトルク出力を比較するグラフである。図40Dは、マッソントリクローム染色を使用して、様々な処置群における骨格筋線維化を比較する画像及びグラフの集合である。図40Eは、様々な処置群における筋線維の数を比較するグラフである。図40F及び図40Gは、(それぞれ)処置後8週間における各群内の運動持久力及び左心室駆出率の増加を示す。
図40-2】図40-1に記載の通り。
図41図41A~41Dは、TY4についてのインビトロ及びインビボ効力アッセイを示す概略図及びグラフの集合である。図41Aは、マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)を使用したTY4についてのインビトロ及びインビボ効力アッセイの概要を示す概略図である。図41Bは、LPS活性化BMDMにおけるp21発現を比較するグラフである。図41Cは、LPS活性化BMDMにおけるNFkB発現を比較するグラフである。図41Dは、LPS活性化BMDMにおけるIL-6発現を比較するグラフである。
図42図42は、HCMのモデルにおけるTY4の経口送達のための投与戦略の最適化の概要を示す概略図である。
図43図43A~43Cは、経口-TY4の生体内分布及び薬物動態の評価を示す概略図及びグラフの集合である。図43Aは、経口-TY4の生体内分布を評価するための研究設計を示す概略図である。図43Bは、経口-TY4の生体内分布を評価するための研究設計を示す概略図である。図43Cは、qPCRによる様々な組織における眼窩後投与されたTY4の存在量を示すグラフである。
図44図44は、経口TY4の安全性及び毒物学プロファイルの評価の概要を示す概略図である。
図45-1】図45A~45Eは、TY4が転座タンパク質領域(TPR、核膜孔複合体タンパク質)に結合し、そのオートファジーを媒介することを示すグラフの集合である。図45Aは、LPSによる活性化時の骨髄由来マクロファージにおけるTY4の細胞内局在を比較するグラフである。図45Bは、HUVECにおいてTY4に結合するタンパク質を示すグラフである。図45Cは、HUVECにおけるTY4によるTPRのプルダウンを示すグラフである。図45Dは、TPR転写物の配列決定を示すグラフの集合である。図45Eは、TY4に曝露されたマクロファージにおいてTPRと相互作用するタンパク質を示すグラフの集合である。
図45-2】図45-1に記載の通り。
図46図46A及び46Bは、それぞれ、心筋梗塞のラットモデルで示されるように、TPRノックダウンだけが心臓保護作用を有することをまとめて示す概略図及びグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
CDC-EV中の非コードRNA(ncRNA)は、CDC-EVの疾患修飾生物活性に関与している。ncRNAの中でも、Y RNAは、CDC-EV中に豊富にある(低分子RNAの18%)ため、興味深いものである。EV-YF1は、CDC-EV中に見出されるncRNAであり、ヒトY-RNA4遺伝子によってコードされる。EV-YF1は、マクロファージによる抗炎症性サイトカインであるインターロイキン10(IL-10)の分泌を増加させ、心筋梗塞(MI)に対して心臓保護作用を有する。EV-YF1はまた、アンジオテンシンII注入によって誘導される高血圧及び肥大のモデルにおいて、抗線維化作用及び抗肥大作用を有する。EV-YF1のヌクレオチド配列は、配列番号1に提供される(図1Aを参照)。本開示は、例えば、治療剤としての安定性及び効力を改善するために、EV-YF1によってバイオインスパイアされる核酸、例えばTY4を提供する。TY4(配列番号4)は、EV-YF1の化学修飾バリアントであり、心不全、肥大型心筋症、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、又は強皮症などの、炎症及び線維化に関連するいくつかの疾患において強力な疾患修飾生物活性を有する。理論に束縛されるものではないが、TY4は、核膜孔複合体タンパク質である転座プロモーター領域(TPR)に特異的に結合して、その疾患修飾活性をもたらすと考えられる。
【0029】
CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)のヌクレオチド配列を含む単離された核酸、例えばRNA、その配列バリアント及び/又は化学修飾体、並びにそれらの使用方法が本明細書で提供される。本明細書で使用される場合、「化学修飾」は、対応する基本ヌクレオチド(例えば、アデニン、グアニン、ウラシル、チミジン、シトシン)と比較した、核酸のヌクレオチドの構造における化学的差異を指す。化学修飾は、基本ヌクレオチドの化学構造の天然修飾又は人工的修飾であってもよい。一部の実施形態では、単離された核酸は、少なくとも1つの非天然の化学修飾を含む。一般に、本核酸は、30nt長以下(例えば、16~30nt長、又は24~30nt長)である。一部の実施形態では、核酸は、TY4(配列番号2)、又はその配列バリアントである。一般に、核酸のバリアント、例えば配列バリアント又は化学修飾体は、機能的なバリアント及び化学修飾体を含む。したがって、企図される配列バリエーション及び化学修飾体は、元の分子(例えば、配列番号12又は配列番号2のヌクレオチド配列を有する)の治療効力を実質的に保持するものである。一部の実施形態では、本開示の単離された核酸は、
【0030】
本開示の核酸、例えばTY4及び/又はそのバリアントは、炎症及び/又は組織損傷が病理の主な要因である状態の治療において用途を見出す。一部の実施形態では、本開示の核酸、例えばTY4及び/又はそのバリアントは、炎症及び/又は線維化を特徴とする疾患及び状態を治療する。「線維化」は、本明細書で使用される場合、組織(例えば、結合組織、骨格筋、心筋、皮膚)の任意の再構築(例えば、病理学的再構築)、例えば、以下に限定されないが、線維性組織及び/又は脂肪組織の沈着、線維性組織及び/又は脂肪組織による筋組織の置換などを含み得る。一部の実施形態では、本開示の核酸、例えばTY4及び/又はそのバリアントによって治療される状態としては、限定されないが、炎症性疾患、筋ジストロフィー、又は心臓損傷が挙げられる。一部の実施形態では、本核酸、例えばTY4及び/又はそのバリアントは、限定されないが、心筋梗塞及び/又は心不全による心臓損傷に罹患している対象に投与された場合、心臓保護効果を有する。理論に束縛されるものではないが、TY4などの核酸は、例えばマクロファージからのインターロイキン10(IL-10)の分泌を促進することによって、マクロファージの抗炎症活性を増加させることができる。一部の実施形態では、本開示の核酸は、核酸に曝露されたマクロファージにおいて1つ以上の遺伝子産物の発現の変化及び/又はエピジェネティックな変化を誘導する。一部の実施形態では、本開示の核酸、例えばTY4及び/又はそのバリアントによって治療される状態、例えば炎症性疾患、筋ジストロフィー、又は心臓損傷は、IL-10の抗炎症効果に応答する状態である。理論に束縛されるものではないが、TY4などの核酸は、例えば損傷組織における、肥大性及び/又は線維化促進性シグナル伝達カスケードを抑制することができる。
【0031】
理論に束縛されるものではないが、上記のように、TY4は、転座プロモーター領域(TPR)に特異的に結合することによってその治療効果を示すと考えられる。したがって、本開示においてTY4が論じられる場合はどこでも、TPRに特異的に結合する任意の薬剤、例えば核酸も企図される。治療方法のいずれかにおいて、一部の実施形態では、治療方法は、TPRに対する阻害性核酸(例えば、siRNA)などのTPR結合核酸、例えばTY4を、それを必要とする対象に投与することを企図する。
【0032】
一部の実施形態では、本開示の核酸は、安定性、例えばインビボ及び/又はインビトロ安定性を増加させるために化学的に修飾される。一部の実施形態では、本開示の核酸は、免疫原性を低下させるために化学的に修飾される。一部の実施形態では、核酸の化学修飾は、核酸の治療活性を増加させる。一部の実施形態では、本開示の核酸は、内因的にコードされるRNA分子、例えば内因的にコードされるY RNA断片、例えばEV-YF1と比較して、増強された治療効力を有する。一部の実施形態における本開示の核酸は、組成物(例えば、医薬組成物)又はキットで提供することができる。
【0033】
本開示の治療用核酸は、静脈内又は経口を含むがこれらに限定されない、任意の好適な経路によって投与することができる。本開示の核酸、例えばTY4の投与のための静脈内又は経口製剤、並びに炎症及び/又は線維化に関連する状態の治療のためのその使用が本明細書で提供される。
【0034】
定義
本明細書で使用される場合、用語「核酸」又は「オリゴヌクレオチド」は、複数のヌクレオチド(例えば、リン酸基及び交換可能な有機塩基(置換ピリミジン(例えばシトシン(C)、チミジン(T)又はウラシル(U))又は置換プリン(例えばアデニン(A)又はグアニン(G))のいずれかである)に連結された糖(例えばリボース又はデオキシリボース)を含む分子)を指す。この用語は、ポリヌクレオシド(すなわち、ポリヌクレオチドからホスフェートを除いたもの)及び任意の他の有機塩基含有ポリマーを含む。プリン及びピリミジンとしては、以下に限定されないが、アデニン、シトシン、グアニン、チミジン、イノシン、5-メチルシトシン、2-アミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、2,6-ジアミノプリン、ヒポキサンチン、並びに他の天然に存在する核酸塩基及び天然に存在しない核酸塩基、置換及び非置換の芳香族部分が挙げられる。核酸は、任意の他の好適な修飾を含むことができる。したがって、核酸という用語はまた、塩基及び/又は糖におけるなど、置換又は修飾を有する核酸を包含する。
【0035】
本開示のポリペプチド又は核酸分子は、参照分子(例えば、参照ポリペプチド又は参照ポリヌクレオチド)、例えば、当技術分野で記載された分子(例えば、操作若しくは設計された分子又は野生型分子)と、ある程度の配列類似性又は同一性を共有し得る。当技術分野で知られている用語「同一性」は、配列を比較することによって決定した場合の、2つ以上のポリペプチド又はポリヌクレオチドの配列間の関係を指す。当技術分野において、同一性はまた、一続きの2つ以上のアミノ酸残基又は核酸残基の間のマッチ数によって決定した場合の、それらの間の配列関連性の程度を意味する。同一性は、特定の数学的モデル又はコンピュータプログラム(例えば、「アルゴリズム」)によって対処されるギャップアライメント(存在する場合)を用いた2つ以上の配列のうちのより小さいものの間の同一マッチのパーセントを測定する。関連ペプチドの同一性は、公知の方法によって容易に計算することができる。「同一性%」は、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列に適用される場合、最大の同一性パーセントを達成するために、配列をアラインし、必要な場合にギャップを導入した後に、第2の配列のアミノ酸配列又は核酸配列中の残基と同一である、候補アミノ酸又は核酸配列中の残基(アミノ酸残基又は核酸残基)のパーセンテージと定義される。アライメントのための任意の好適な方法及びコンピュータプログラムが使用可能である。同一性は、同一性パーセントの計算に依存するが、計算に導入されたギャップ及びペナルティにより値が異なり得ることが理解される。一般に、特定のポリヌクレオチド又はポリペプチドのバリアントは、本明細書に記載され当業者に公知の配列アライメントプログラム及びパラメータによって決定した場合、その特定の参照ポリヌクレオチド又はポリペプチドに対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%であるが100%未満の配列同一性を有する。アライメントのためのこのようなツールとしては、BLASTスイートのツールが挙げられる(Stephen F. Altschul, et al (1997), “Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs”. Nucleic Acids Res. 25:3389-3402)。別の一般的なローカルアライメント技術は、Smith-Watermanアルゴリズムに基づく(Smith, T. F. & Waterman, M. S. (1981) “Identification of common molecular subsequences.” J. Mol. Biol. 147:195-197)。動的計画法に基づく一般的なグローバルアライメント技術は、Needleman-Wunschアルゴリズムである(Needleman, S. B. & Wunsch. C. D. (1970) “A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequences of two proteins.” J. Mol. Biol. 48:443-453)。さらに最近では、Needleman-Wunschアルゴリズムを含む他の最適グローバルアライメント法よりも高速にヌクレオチド及びタンパク質配列のグローバルアライメントを生成すると考えられている、高速最適グローバル配列アライメントアルゴリズム(FOGSAA)が開発されている。他のツールは、特に以下の「同一性」の定義で、本明細書に記載される。
【0036】
用語「同一性」は、ポリマー分子間、例えばポリヌクレオチド分子(例えば、DNA分子及び/又はRNA分子)間、及び/又はポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。2つのポリ核酸配列の同一性パーセントの計算は、例えば、最適な比較の目的のために2つの配列をアラインすることによって実施することができる(例えば、最適なアライメントのために、第1及び第2の核酸配列の一方又は両方にギャップを導入することができ、比較の目的のために、同一でない配列は無視することができる)。ある特定の実施形態では、比較の目的のためにアラインされる配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%である。次いで、対応するヌクレオチド位置におけるヌクレオチドが比較される。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じヌクレオチドによって占められている場合、分子はその位置において同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアライメントのために導入される必要がある、ギャップの数及び各ギャップの長さを考慮に入れた、配列によって共有される同一位置の数の関数である。2つの配列間の配列の比較及び同一性パーセントの決定は、好適な数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。例えば、2つの核酸配列間の同一性パーセントは、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects. Smith. D. W., ed., Academic Press. New York, 1993; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994;及びSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991(これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる)に記載される方法などの方法を使用して決定することができる。例えば、2つの核酸配列間の同一性パーセントは、PAM 120重み付け残基表、ギャップ長さペナルティ12及びギャップペナルティ4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている、Meyers及びMillerのアルゴリズム(CABIOS, 1989, 4:11-17)を使用して決定することができる。あるいは、2つの核酸配列間の同一性パーセントは、NWSgapdna.CMPマトリックスを使用して、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを使用して決定することができる。配列間の同一性パーセントを決定するために一般に用いられる方法としては、以下に限定されないが、Carillo, H., and Lipman, D., SIAM J Applied Math., 48:1073 (1988)(参照により本明細書に組み込まれる)に開示される方法が挙げられる。同一性を決定するための技術は、公に利用可能なコンピュータプログラムに集成される。2つの配列間の相同性を決定するための例示的なコンピュータソフトウェアとしては、以下に限定されないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research, 12(1), 387 (1984))、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215, 403 (1990))が挙げられる。
【0037】
用語「ワトソン-クリック塩基対合」又は「塩基対合」は、ヌクレオチド塩基の特定の対(「相補的塩基対」)間の水素結合の形成を指す。例えば、アデニン(A)とウラシル(U)との間には2つの水素結合が形成し、グアニン(G)とシトシン(C)との間には3つの水素結合が形成する。2つのポリヌクレオチド間の結合の強さを評価する1つの方法は、2つのポリヌクレオチドのグアニン塩基とシトシン塩基との間に形成される結合のパーセンテージ(「GC含有量」)を定量化することによるものである。一部の実施形態では、多量体分子(例えば、多量体mRNA分子)の2つの核酸間の結合のGC含有量は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%である。一部の実施形態では、多量体分子(例えば、多量体mRNA分子)の2つの核酸間の結合のGC含有量は、10%~70%の間、約20%~約60%、又は約30%~約60%である。相補的な塩基対の結合による核酸二重鎖の形成はまた、「ハイブリダイゼーション」と呼ぶことができる。一般に、相補性領域を共有する2つの核酸は、好適な条件下で、(例えば、核酸塩基対合を介して)ハイブリダイズして二重鎖構造を形成することができる。相補性領域は、サイズが様々であり得る。一部の実施形態では、相補性領域は、長さ約2塩基対~約100塩基対の範囲である。一部の実施形態では、相補性領域は、長さ約5塩基対~約75塩基対の範囲である。一部の実施形態では、相補性領域は、長さ約10塩基対~約50塩基対の範囲である。一部の実施形態では、相補性領域は、長さ約20塩基対~約30塩基対の範囲である。
【0038】
「単離された」は、単離された生体分子、例えば核酸に関して本明細書で使用される場合、本開示を考慮して当業者にとって通常の慣習的な意味を有する。単離された生体分子、例えば単離された核酸は、一般に、非天然環境にあるか、又は生体分子若しくはその環境のヒトの介入がなければ生体分子が存在しなかったであろう環境にある。一部の実施形態では、単離された生体分子は、細胞又は生物の内部にはない。
【0039】
「細胞外小胞」又は「EV」は、本明細書で使用される場合、本開示を考慮して、当業者によって理解されるそれらの通常の慣習的な意味を有する。EVは、細胞によって生成される脂質二重層構造を含み、EVとしては、エキソソーム、微小胞、エピディディモソーム(epididimosome)、アルゴソーム(argosome)、エキソソーム様小胞、微粒子、プロミニノソーム(promininosome)、プロスタソーム(prostasome)、デキソソーム(dexosome)、テキソソーム(texosome)、デックス(dex)、テックス(tex)、アーケオソーム(archeosome)、及びオンコソーム(oncosome)が挙げられる。
【0040】
「ミセル」は、カゼインミセルに関して本明細書で使用される場合、本開示を考慮して、当業者によって理解されるその慣習的な通常の意味を有する。カゼインミセルは、1つ以上のカゼインリンタンパク質(例えば、アルファs1カゼイン、アルファs2カゼイン、ベータカゼイン、及びカッパカゼインのうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、又は4つすべて)の凝集体を含み得るコロイド粒子である。
【0041】
「対象」は、本明細書で使用される場合、哺乳動物及び非哺乳動物を含む、任意の脊椎動物を指す。対象は、霊長類、例えばヒト、及び非霊長類哺乳動物、例えばげっ歯類、家畜又は猟獣を含み得る。非霊長類哺乳動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、キツネ、オオカミ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、シカ、バッファロー、バイソンなどが挙げられる。非哺乳動物としては、鳥(例えば、ニワトリ、ダチョウ、エミュー、ハト)、爬虫類(例えば、ヘビ、トカゲ、カメ)、両生類(例えば、カエル、サンショウウオ)、魚(例えば、サケ、タラ、フグ、マグロ)などが挙げられる。用語「個体」、「患者」、及び「対象」は、本明細書では互換的に使用される。
【0042】
「投与すること」は、本明細書で使用される場合、本明細書に開示されるような治療剤又は組成物を投与する任意の好適な経路を含み得る。好適な投与経路としては、限定されないが、経口、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、肺、皮膚、注射又は局所投与が挙げられる。投与は、局所的又は全身的であってよい。
【0043】
本明細書で使用される場合、「治療する」及び「治療」は、疾患、状態及び/又はそれらの症状を治癒する、改善する、寛解させる、その重症度を低下させる、予防する、その進行を遅らせる、及び/又はその出現を遅延させることを含む。
【0044】
本明細書に記載される方法による治療後に、本明細書に記載される状態の兆候若しくは症状の1つ以上が有益な様式で変わるか、他の臨床的に許容される症状が改善されるか若しくは寛解しさえするか、又は所望の応答が誘導される場合(例えば少なくとも2%、3%、4%、5%、10%、又はそれを超えて)、治療は、本明細書で使用される場合、「有効」又は「治療的に有効」であると考えることができる。有効性は、例えば、本明細書に記載される方法に従って治療される状態のマーカー、指標、症状、及び/若しくは発生率、又は任意の他の適切な測定可能なパラメータ、例えば運動持久力を測定することによって評価することができる。有効性はまた、入院によって評価した場合に個体が悪化しないこと、又は医療介入に対する必要性(例えば、疾患の進行が停止する)によって測定することができる。治療は、個体又は動物(一部の非限定的な例としてはヒト又は動物が挙げられる)における疾患又は状態のあらゆる治療を含み、以下を含む:(1)疾患又は状態を阻害すること、例えば、症状(例えば痛み又は炎症)の悪化を予防すること;又は(2)疾患又は状態の重症度を緩和すること、例えば、症状の退行を引き起こすこと。疾患又は状態の治療についての有効量は、それを必要とする対象に投与された場合に、その疾患又は状態について、その用語が本明細書で定義されるように有効な治療をもたらすのに十分な量を意味する。薬剤の有効性は、状態又は所望の応答の身体的指標(例えば筋肉の機能、質量又は体積)を評価することによって決定することができる。当業者は、このようなパラメータのいずれか1つ、又はパラメータの任意の組み合わせを測定することによって、投与及び/又は治療の有効性をモニタリングすることができる。
【0045】
用語「有効量」又は「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、疾患又は状態の少なくとも1つ又は複数の症状を緩和するのに必要な組成物又は薬剤の量を指し、所望の効果を提供するのに十分な量の治療用組成物に関する。用語「有効量」又は「治療有効量」は、典型的な対象に投与された場合に、特定の抗炎症効果及び/又は心臓保護効果を提供するのに十分な組成物又は治療剤の量を指し得る。有効量は、本明細書で使用される場合、様々な文脈において、疾患若しくは状態の症状の発症を遅延させるか、疾患若しくは状態の症状の経過を変更する(例えば、以下に限定されないが、疾患若しくは状態の症状の進行を遅らせる)か、又は疾患若しくは状態の症状を逆転させるのに十分な量を含み得る。一部の実施形態では、治療有効量は、治療剤の1つ以上の用量で投与される。一部の実施形態では、治療有効量は、単回投与で、又は一定期間にわたって複数の用量で投与される。
【0046】
本明細書で使用される場合、句「生理学的に適合性のある」及び「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題若しくは合併症を伴わずにヒト及び動物の組織に接触して使用するのに好適な、妥当なベネフィット/リスク比で釣り合った化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために本明細書で互換的に用いられる。
【0047】
細胞生物学及び分子生物学における一般的な用語の定義は、“The Merck Manual of Diagnosis and Therapy”, 19th Edition, published by Merck Research Laboratories, 2006 (ISBN 0-91 1910-19-0); Robert S. Porter et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, published by Blackwell Science Ltd., 1994 (ISBN 0-632-02182-9); Benjamin Lewin, Genes X, published by Jones & Bartlett Publishing, 2009 (ISBN-10: 0763766321); Kendrew et al. (eds.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8)及びCurrent Protocols in Protein Sciences 2009, Wiley Intersciences, Coligan et al., edsに見出すことができる。
【0048】
単数形の用語「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別異に解される場合を除き、複数の指示対象を含む。同様に、単語「又は」は、文脈上明らかに別異に解される場合を除き、「及び」を含むことを意図している。略語「e.g.」は、非限定的な例を示すために本明細書で使用される。したがって、略語「e.g.」は、用語「例えば」と同義である。用語「約」は、例えば分子量の値及び範囲を規定するために本明細書で使用される場合、示される値及び/又は範囲限界が、±20%以内、例えば±10%以内、例えば±5%以内変動し得ることを意味する。数の前の「約」の使用は、その数自体を含む。例えば、「約5」は、「5」に対する明示的な根拠を提供する。範囲で提供される数は、重複する範囲及びその間の整数を含む;例えば、1~4及び5~7の範囲は、例えば、1~7、1~6、1~5、2~5、2~7、4~7、1、2、3、4、5、6及び7を含む。
【0049】
核酸
CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)のヌクレオチド配列を含む単離された核酸、又はそのバリアントが本明細書で提供される。一部の実施形態では、核酸は、RNAである。一部の実施形態では、核酸は、CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)と少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、98%、99%同一のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列中の最大1、2、3、4、又は5個の位置における配列バリエーションを有するCGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)のヌクレオチド配列を含む。本明細書で使用される場合、ヌクレオチド配列又は核酸内の「位置」は、ヌクレオチド配列又は核酸の5'末端に対して定義される。一部の実施形態では、核酸のヌクレオチド配列は、CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)、又はその配列バリアントである。核酸は、任意の好適な長さであってよい。一部の実施形態では、核酸は、24ヌクレオチド(nt)長である。一部の実施形態では、核酸は、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40nt長であるか、又はそれより長い。一部の実施形態では、核酸は、最大30nt長である。一部の実施形態では、核酸は、16~30nt長、又は24~30nt長である。
【0050】
本開示の核酸は、一本鎖又は二本鎖(例えば、RNA/DNAハイブリッド)であってよい。一部の実施形態では、核酸は、一本鎖である。
【0051】
一部の実施形態における本開示の単離された核酸は、1つ以上の化学修飾ヌクレオチド、例えば、修飾された骨格を有するヌクレオチドを含む。一般に、化学修飾(複数可)は、核酸の治療効力を実質的に保持又は増強するものである。核酸の任意の好適な数のヌクレオチドを、化学的に修飾することができる。一部の実施形態では、核酸は、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上、20個以上、21個以上、22個以上、23個以上、24個以上、25個以上、26個以上、27個以上、28個以上、29個以上、30個以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~15、1~20、1~25、又は1~30個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、1~10個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、8個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、6個の化学修飾ヌクレオチドを含む。
【0052】
化学修飾ヌクレオチドは、任意の好適な様式で、単離された核酸に沿って分布していてよい。一部の実施形態では、核酸は、核酸の前半、例えば核酸の5'半分内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸の後半、例えば核酸の3'半分内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸の前半、例えば核酸の5'半分内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチド、及び核酸の後半、例えば核酸の3'半分内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸の5'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれを超えるヌクレオチド内に、1つ以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸の3'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれを超えるヌクレオチド内に、1つ以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、2つの化学修飾ヌクレオチドは、核酸中で互いに隣接していない。一部の実施形態では、核酸は、核酸の5'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のヌクレオチド内に、それぞれ、1、1、2、2、3、3、4、4、5、5個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸の3'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のヌクレオチド内に、それぞれ、1、1、2、2、3、3、4、4、5、5個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸の5'半分及び3'半分に同数の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸の5'末端から5個のヌクレオチド内に3個の化学修飾ヌクレオチド、及び/又は核酸の3'末端から5個のヌクレオチド内に3個の化学修飾ヌクレオチドを含む。
【0053】
一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチドは、CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)のヌクレオチド配列、又はその配列バリアント内にある。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の前半、例えばヌクレオチド配列の5'半分内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の1~12位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の後半、例えばヌクレオチド配列の3'半分内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の13~24位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の1~12位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチド、及びヌクレオチド配列の13~24位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の5'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれを超えるヌクレオチド内に、1つ以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の3'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれを超えるヌクレオチド内に、1つ以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、2つの化学修飾ヌクレオチドは、ヌクレオチド配列中で互いに隣接していない。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の5'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のヌクレオチド内に、それぞれ、1、1、2、2、3、3、4、4、5、5個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の3'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のヌクレオチド内に、それぞれ、1、1、2、2、3、3、4、4、5、5個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の5'半分及び3'半分に同数の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の5'末端から5個のヌクレオチド内に3個の化学修飾ヌクレオチド、及び/又はヌクレオチド配列の3'末端から5個のヌクレオチド内に3個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の5'半分及び3'半分に異なる数の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の5'半分よりも、3'半分により大きな数の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の5'末端から5個のヌクレオチド内に3個の化学修飾ヌクレオチド、及び/又はヌクレオチド配列の3'末端から5個のヌクレオチド内に3、4、又は5個の化学修飾ヌクレオチドを含む。
【0054】
一部の実施形態では、単離された核酸は、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位のうちの1つ以上において化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、単離された核酸は、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位において化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、単離された核酸は、ヌクレオチド配列CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)、又はその配列バリアントを有し、1、3、5、20、22、及び24位のうちの1つ以上は、化学的に修飾される。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチド(複数可)は、核酸のインビトロ及び/又はインビボ安定性を増加させる。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチド(複数可)は、例えば、炎症状態、心臓損傷、又は筋ジストロフィーを治療するための、核酸の治療効力を増加させる。
【0055】
一部の実施形態における単離された核酸は、1種類、又は2つ以上の異なる種類の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチドは、立体構造をロックするためにヌクレオチド糖環の2'-O原子と4'-C原子とを接続するメチレン架橋を有する(ロックド核酸(LNA))。一部の実施形態では、単離された核酸は、ヌクレオチド配列CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)、又はその配列バリアントを含み、1、3、5、20、22、及び24位のうちの1つ以上はLNAである。一部の実施形態では、単離された核酸は、ヌクレオチド配列CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)、又はその配列バリアントを有し、1、3、5、20、22、及び24位のうちの1つ以上はLNAである。一部の実施形態では、単離された核酸は、ヌクレオチド配列CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号2)、又はその配列バリアントを含み、1、3、5、20、22、及び24位はLNAである。一部の実施形態では、単離された核酸は、ヌクレオチド配列CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号2)を有し、1、3、5、20、22、及び24位はLNAである。
【0056】
単離された核酸は、一部の実施形態では、任意の好適な化学修飾を含み得る。一部の実施形態では、化学修飾は、骨格修飾、例えば、糖/リン酸骨格の修飾である。一部の実施形態では、化学修飾は、骨格糖修飾である。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチドは、LNAを含む。一部の実施形態では、化学修飾は、ヌクレオチド間のリンカーとしてのホスホロチオエート基の導入を含む。化学修飾ヌクレオチドの好適な骨格修飾としては、限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、短鎖アルキル若しくはシクロアルキル糖間結合、又は短鎖ヘテロ原子若しくはヘテロ環糖間結合が挙げられる。一部の実施形態では、化学修飾は、塩基修飾である。
【0057】
本開示の核酸は、任意の好適な選択肢を使用して調製することができる。好適な選択肢としては、限定されないが、化学合成、酵素的生成及び/又は生物学的生成が挙げられる。一部の実施形態では、核酸は、化学合成を使用して調製される。核酸の化学合成のための任意の好適な選択肢が使用可能である。好適な選択肢としては、限定されないが、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、ホスホロアミダイト、ホスファイト-トリエステル、及び固相合成アプローチが挙げられる。一部の実施形態では、核酸を調製することは、インビトロ転写を含む。一部の実施形態では、核酸は、組換えDNA技術を使用して調製される。一部の実施形態では、核酸は、目的のヌクレオチド配列を有する未修飾核酸を化学的に修飾することによって調製される。
【0058】
組成物
本開示の核酸を含む組成物も本明細書で提供される。一部の実施形態では、組成物は、医薬組成物である。一部の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む。一部の実施形態では、組成物は、細胞を含まない組成物であり、例えば、組成物は、CDCなどの細胞を実質的に含まない。一部の実施形態では、組成物は、細胞外小胞を含まない組成物であり、例えば、組成物は、エキソソームなどの細胞外小胞を実質的に含まない。
【0059】
薬学的に許容される賦形剤として機能し得る材料の一部の非限定的な例としては、以下が挙げられる:(1)糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びバレイショデンプン;(3)セルロース、及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース及び酢酸セルロース;(4)粉末状トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルク;(8)カカオバター及び坐剤ワックス;(9)油、例えば落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及びダイズ油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール(PEG);(12)エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ無水物;(22)増量剤、例えばポリペプチド及びアミノ酸、(23)血清成分、例えば血清アルブミン、HDL及びLDL;(22)C2~C12アルコール、例えばエタノール;及び(23)医薬製剤に用いられる他の非毒性の適合性物質。
【0060】
一部の実施形態では、組成物は、例えば標的細胞標的(インビトロ又はインビボ)への核酸の送達を促進するために、トランスフェクション試薬を含む。任意の好適なトランスフェクション試薬が、組成物に含まれてよい。好適なトランスフェクション試薬としては、限定されないが、リポソーム、細胞外小胞(EV)、及びポリエチレングリコール(PEG)-カチオン性脂質複合体(PCLC)が挙げられる。一部の実施形態では、トランスフェクション試薬は、脂質(例えば、リポソーム形成脂質)、又はPEG化脂質を含む。一部の実施形態では、脂質は、本明細書で提供されるような、カチオン性脂質である。一部の実施形態では、トランスフェクション試薬は、DharmaFECT(登録商標)又はLipofectamine(登録商標)を含む。一部の実施形態では、本開示の核酸は、核酸の細胞取り込み及び/又は薬物動態を促進するために、組成物中にトランスフェクション試薬とともに製剤化される。
【0061】
リポソームは、人工的に調製された小胞であり、主に脂質二重層から構成されていてよく、医薬製剤の投与のための送達ビヒクルとして使用することができる。リポソームは、様々なサイズであってよく、例えば以下に限定されないが、多層小胞(MLV)(直径が数百ナノメートルである場合があり、狭い水性区画によって分離された一連の同心二重層を含有し得る)、小型単一セル小胞(SUV)(直径が50nmより小さい場合がある)、及び大型単層小胞(LUV)(直径が50~500nmの間である場合がある)がある。リポソームの設計は、限定されないが、標的組織/細胞へのリポソームの付着を改善するための、又は限定されないがエンドサイトーシスなどの事象を活性化するための、オプソニン又はリガンドを含み得る。リポソームは、カーゴ、例えば本開示の核酸の送達を改善するために、低いpHを含んでも又は高いpHを含んでもよい。
【0062】
一部の実施形態では、組成物は、限定されないが、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)リポソーム、Marina Biotech(Bothell、Wash.)からのDiLa2リポソーム、1,2-ジリノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、及びMC3から形成されるものなどのリポソーム、並びに限定されないがJanssen Biotech, Inc.(Horsham、Pa.)からのDOXIL(登録商標)などのリポソームを含む。
【0063】
一部の実施形態では、組成物は、カチオン性脂質を含む。任意の好適なカチオン性脂質が、本組成物に使用可能である。好適なカチオン性脂質としては、限定されないが、DLin-DMA、DLin-D-DMA、DLin-MC3-DMA、DLin-KC2-DMA、DODMA及びアミノアルコール脂質が挙げられる。一部の実施形態では、組成物は、カチオン性脂質複合体、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)-カチオン性脂質複合体(PCLC)を含む。一部の実施形態では、カチオン性脂質は、PEG化される(例えば、2kDa PEG)(「PEG2000」)。任意の好適な選択肢が、カチオン性脂質をPEG化するために使用可能である。一部の実施形態では、PCLCは、PEGとカチオン性脂質との混合物を、1回以上の凍結/解凍サイクル、例えば、1、2、3、4、5回又はそれを超える凍結/解凍サイクルに曝露することによって形成される。一部の実施形態では、凍結/解凍サイクルは、混合物を液体窒素(例えば、約-190℃)で約5分間凍結し、約60℃で約5分間解凍することを含む。本開示の核酸は、PCLCと混合して、核酸とPCLCとの複合体を生成することができる。
【0064】
一部の実施形態では、組成物は、細胞外小胞(EV)、例えばエキソソームを含む。細胞外小胞(EV)は、任意の好適な供給源に由来するもの、例えば、心筋球由来細胞(CDC)又は線維芽細胞に由来するEVであり得る。CDC由来のEVなどの好適なEVは、例えば、米国出願公開第20080267921号、同第20160158291号及び同第20160160181号; Smith et al., Circulation. 2007. 115:896-908; Aminzadeh, M. A. et al. Stem Cell Reports 10, 942-955 (2018);及びIbrahim et al., Stem Cell Reports. 2014 May 8;2(5):606-19、Ibrahim, A. G. et al. Nanomedicine 33, 102347 (2020)(これらのそれぞれは、その全体が参照により組み込まれる)に提供される。一部の実施形態では、EVは、培養中のヒトCDCによって馴化された無血清培地から単離されたものである。一部の実施形態では、組成物は、トランスフェクション試薬としてEV及びリポソーム及び/又はPCLCを含む。一部の実施形態では、組成物は、CDC由来のEVを実質的に含まない。
【0065】
本明細書に開示されるEV、例えばエキソソームは、実施形態に応じてサイズが様々であり得る。実施形態に応じて、EVのサイズは、直径約15nm~約95nm、例えば約15nm~約20nm、約20nm~約30nm、約30nm~約40nm、約40nm~約50nm、約50nm~約60nm、約60nm~約70nm、約70nm~約80nm、約80nm~約90nm、約90nm~約95nm、及びそれらの重複範囲の直径の範囲である。いくつかの実施形態では、EVはより大きい(例えば、約140~約210nm、例えば約140nm~約150nm、約150nm~約160nm、約160nm~約170nm、約170nm~約180nm、約180nm~約190nm、190nm~約200nm、約200nm~約210nm、及びそれらの重複範囲の範囲のもの)。一部の実施形態では、EV直径は、直径約15nm~約200nm、例えば約15nm~約20nm、約20nm~約30nm、約30nm~約40nm、約40nm~約50nm、約50nm~約60nm、約60nm~約70nm、約70nm~約80nm、約80nm~約90nm、約90nm~約100nm、約100nm~約110nm、約110nm~約120nm、約120nm~約130nm、約130nm~約140nm、約140nm~約150nm、約150nm~約160nm、約160nm~約170nm、約170nm~約180nm、約180nm~約190nm、約190nm~約200nm、及びそれらの重複範囲の範囲である。一部の実施形態では、元の細胞体から生成されるEVは、元の細胞体よりも、少なくとも1つの寸法(例えば、直径)において100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、2,000、5,000、又は10,000倍小さい。
【0066】
本開示のEV及び核酸を含有する組成物は、任意の好適な選択肢を使用して調製することができる。一部の実施形態では、核酸をEVにロードすることは、核酸を、例えば上で提供されるような、リポソーム及び/又はPCLCとともに製剤化して、核酸-リポソーム混合物を生成すること;核酸-リポソーム混合物をEVと組み合わせること;及びエキソソームマーカーに関連するEVについて濃縮して、核酸について濃縮されたEVの集団を生成することを含む。核酸-リポソーム混合物をEVと組み合わせることは、任意の好適な選択肢を使用して行うことができる。一部の実施形態では、核酸-リポソーム混合物は、約30分間以上振盪しながら37℃でEVと組み合わされる。核酸について濃縮されたEVの集団を生成するために濃縮することは、任意の好適な選択肢を使用して行うことができる。一部の実施形態では、エキソソームマーカーに関連するEVについて濃縮することは、エキソソームマーカーに特異的な抗体を使用して、エキソソームマーカーに関連するEVを免疫沈降することを含む。一部の実施形態では、エキソソームマーカーは、CD9、CD63及びCD81のうちの1つ以上である。一部の実施形態では、エキソソームマーカーに関連するEVについて濃縮することは、すべてのエキソソームマーカー、CD9、CD63及びCD81に関連するEVを免疫沈降することを含む。一部の実施形態では、核酸について濃縮されたEVの集団のサイズ分布は、実質的に単峰性である。一部の実施形態では、集団の少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%は、サイズ分布において単一ピーク下の直径を有する。一部の実施形態では、核酸について濃縮されたEVの集団は、約50~180nm、例えば、60~170nm、70~160nm、80~150nm、90~140nm、100~130nm、又は約110~130nmの平均直径を有する。
【0067】
一部の実施形態では、組成物は、カゼイン、例えばカゼインミセルを含む。一部の実施形態では、組成物は、キトサンを含む。一部の実施形態では、組成物は、カゼイン及びキトサン、例えばカゼイン-キトサンミセルを含む。一部の実施形態では、組成物は、カゼイン-キトサン複合体を含む。一部の実施形態では、組成物中の単離された核酸は、カゼイン-キトサン複合体中にカプセル化される。一部の実施形態では、組成物は、リンタンパク質:アルファs1カゼイン、アルファs2カゼイン、ベータカゼイン、及びカッパカゼインのうちの1つ以上を含む。一部の実施形態では、組成物は、2つ以上、3つ以上、又は4つすべてのリンタンパク質:アルファs1カゼイン、アルファs2カゼイン、ベータカゼイン、及びカッパカゼインを含む。リンタンパク質は、任意の好適な濃度(互いに対して、及び組成物の総体積に対して)で組成物中に存在してもよく、一部の実施形態では、カゼインミセルを形成するのに好適な量で存在する。一部の実施形態では、カゼインリンタンパク質は、組成物中に合わせて約5~10%(重量/体積)で存在する。一部の実施形態では、カゼインリンタンパク質は、組成物中に合わせて約8%(重量/体積)で存在する。一部の実施形態では、カゼインリンタンパク質は、組成物中に合わせて約5%(重量/体積)で存在する。カゼインリンタンパク質は、任意の好適な動物、例えば哺乳動物、例えば以下に限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ラクダ、ヤギ、及びヒツジに由来するものであり得る。一部の実施形態では、カゼインリンタンパク質は、ウシのアルファs1カゼイン、アルファs2カゼイン、ベータカゼイン、及びカッパカゼインである。EVを有する好適なカゼイン製剤は、例えば、Aminzadeh et al., J Extracell Vesicles. 2021 Jan;10(3):e12045(その全体は参照により本明細書に組み込まれる)に提供される。一部の実施形態では、本明細書で提供されるような、カゼインとともに製剤化された本開示の組成物、例えば医薬組成物は、対象への経口投与に好適である。理論に束縛されるものではないが、組成物中のカゼインリンタンパク質は、経口投与されたEV及び/又はリポソーム及びそれらのカーゴ、例えば本開示の核酸のバイオアベイラビリティを増加させると考えられる。
【0068】
いくつかの実施形態では、本開示の治療用核酸の経口バイオアベイラビリティを増強するための組成物は、アルファs1カゼイン、アルファs2カゼイン、ベータカゼイン、及びカッパカゼインから選択される少なくとも2つのリンタンパク質を含み、リンタンパク質は、生理学的に適合性のある賦形剤中に、組成物の約5%~約10%(重量/体積)の間の量で存在する。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物中のリンタンパク質質量の約0%~約50%の間(例えば、約10%~約45%、約20%~約40%、約25%~約40%、例えば約30%~約40%)(重量で)の量のアルファs1カゼイン、約0%~約20%の間(例えば、約5%~約15%、約7%~約12%、例えば約8%~約12%)(重量で)の量のアルファS2カゼイン、約0%~約50%の間(例えば、約10%~約45%、約20%~約40%、約25%~約40%、例えば約30%~約40%)(重量で)の量のベータカゼイン、及び約0%~約20%の間(例えば、約5%~約18%、約8%~約18%、例えば約10%~約15%)(重量で)の量のカッパカゼインを含む。本組成物は、TY4などの治療用核酸の経口バイオアベイラビリティの増強を提供することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される製剤は、脂質結合小胞、例えば、ミセル又はリポソームの形態であり、したがって、任意の好適な数の粒子を含み得る。一部の実施形態では、ミセル(例えば、カゼイン-キトサンで被覆されたミセル)の量は、約106~約1010個の粒子、例えば約2×106~約1010個の粒子、約5×106~約1010個の粒子、約107~約5×109個の粒子、約2×107~約5×109個の粒子、約5×107~約5×109個の粒子、例えば約1×108~約2×109個の粒子の範囲である。一部の実施形態では、集団中のミセル(例えば、カゼイン-キチンで被覆されたミセル)の量は、約106個、約2×106個、約5×106個、約107個、約2×107個、約5×107個、約108個、約2×108個、約5×108個、約109個、約2×109個、約5×109個、若しくは約1010個の粒子、又は前述の値のいずれか2つの間の量である。
【0070】
いくつかの実施形態では、組成物は、カゼイン-キトサンで被覆された脂質ミセルを含み、カゼインリンタンパク質は、組成物中に好適な量(例えば、組成物中のリンタンパク質質量の好適な総量、互いに対するリンタンパク質の好適な割合)で存在する。一部の実施形態では、組成物は、アルファs1カゼイン、アルファs2カゼイン、ベータカゼイン、及びカッパカゼインから選択される2つ、3つ、又は4つすべてのリンタンパク質を含む。一部の実施形態では、組成物中のリンタンパク質の量は、組成物中に存在する1つ以上の他のリンタンパク質の量に依存する。
【0071】
一部の実施形態では、アルファs1カゼインは、遺伝子名CSN1S1に関連するリンタンパク質である。アルファs1カゼインは、任意の好適な哺乳動物に由来するCSN1S1リンタンパク質であり得る。一部の実施形態では、アルファs1カゼインは、ウシ(遺伝子ID:282208)、ブタ(遺伝子ID:445514)、ウマ(遺伝子ID:100033982)、ヒツジ(遺伝子ID:443382)、ヤギ(遺伝子ID:100750242)、ラクダ(遺伝子ID:105090954)、又はヒト(遺伝子ID:1446)である。一部の実施形態では、アルファs1カゼインは、非ヒトアルファs1カゼインである。一部の実施形態では、アルファs1カゼインは、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は約100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0072】
一部の実施形態では、組成物は、任意の好適な量のアルファs1カゼインを含む。一部の実施形態では、組成物は、組成物中のリンタンパク質質量の約0%~約50%の間、例えば、約5%~約50%の間、約10%~約50%の間、約15%~約45%の間、約20%~約45%の間、例えば約25%~約40%の間の量(重量で)のアルファs1カゼインを含む。一部の実施形態では、組成物は、約0%、5%、10%、15%、20%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%の量(重量で)、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲内の量のアルファs1カゼインを含む。
【0073】
一部の実施形態では、アルファs2カゼインは、遺伝子名CSN1S2に関連するリンタンパク質である。アルファs2カゼインは、任意の好適な哺乳動物に由来するCSN1S2リンタンパク質であり得る。一部の実施形態では、アルファs2カゼインは、ウシ(遺伝子ID:282209)、ブタ(遺伝子ID:445515)、ウマ(遺伝子ID:100327035)、ヒツジ(遺伝子ID:443383)、ヤギ(遺伝子ID:100861229)、又はラクダ(遺伝子ID:105090951)である。一部の実施形態では、アルファs2カゼインは、配列番号18に示される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は約100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0074】
組成物は、任意の好適な量のアルファs2カゼインを含み得る。一部の実施形態では、組成物は、組成物中のリンタンパク質質量の約0%~約20%の間、例えば、約2%~約18%の間、約3%~約18%の間、約4%~約17%の間、約5%~約16%の間、例えば約5%~約15%の間の量(重量で)のアルファs2カゼインを含む。一部の実施形態では、組成物は、約0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、18%、20%の量(重量で)、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲内の量のアルファs2カゼインを含む。
【0075】
一部の実施形態では、ベータカゼインは、遺伝子名CSN2に関連するリンタンパク質である。ベータカゼインは、任意の好適な哺乳動物に由来するCSN2リンタンパク質であり得る。一部の実施形態では、ベータカゼインは、ウシ(遺伝子ID:281099)、ブタ(遺伝子ID:404088)、ウマ(遺伝子ID:100033903)、ヒツジ(遺伝子ID:443391)、ヤギ(遺伝子ID:100860784)、ラクダ(遺伝子ID:105080412)、又はヒト(遺伝子ID:1447)である。一部の実施形態では、ベータカゼインは、非ヒトベータカゼインである。一部の実施形態では、ベータカゼインは、配列番号19又は20に示される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は約100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0076】
組成物は、任意の好適な量のベータカゼインを含み得る。一部の実施形態では、組成物は、組成物中のリンタンパク質質量の約0%~約50%の間、例えば、約5%~約50%の間、約10%~約50%の間、約15%~約45%の間、約20%~約45%の間、例えば約25%~約40%の間の量(重量で)のベータカゼインを含む。一部の実施形態では、組成物は、約0%、5%、10%、15%、20%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%の量(重量で)、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲内の量のベータカゼインを含む。
【0077】
一部の実施形態では、カッパカゼインは、遺伝子名CSN3に関連するリンタンパク質である。ベータカゼインは、任意の好適な哺乳動物に由来するCSN3リンタンパク質であり得る。一部の実施形態では、カッパカゼインは、ウシ(遺伝子ID:281728)、ブタ(遺伝子ID:445511)、ウマ(遺伝子ID:100033983)、ヒツジ(遺伝子ID:443394)、ヤギ(遺伝子ID:100861231)、ラクダ(遺伝子ID:105080408又は105090949)、又はヒト(遺伝子ID:1448)である。一部の実施形態では、カッパカゼインは、非ヒトカッパカゼインである。一部の実施形態では、カッパカゼインは、配列番号21に示される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は約100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0078】
組成物は、任意の好適な量のカッパカゼインを含み得る。一部の実施形態では、組成物は、組成物中のリンタンパク質質量の約0%~約20%の間、例えば、約2%~約18%の間、約3%~約18%の間、約4%~約17%の間、約5%~約16%の間、例えば約5%~約15%の間の量(重量で)のカッパカゼインを含む。一部の実施形態では、組成物は、約0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、18%、20%の量(重量で)、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲内の量のカッパカゼインを含む。
【0079】
一部の実施形態では、異なる種に由来するカゼインの組み合わせが使用される。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上のヒトカゼインは、1つ以上のウシカゼインと組み合わせて使用される。一部の実施形態では、カゼインの比、例えば、アルファS1カゼイン:アルファS2カゼイン:ベータカゼイン:カッパカゼインの3:1:3:1の比が使用される。一部の実施形態では、異なる比、例えば、4:1:4:1、2:1:2:1、又は1:1:1:1が使用可能である。組成物中の任意の2つの所与のカゼインの間で、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、1:5、1:4、1:3、1:2などの範囲の比も使用可能である。
【0080】
任意の好適な総量のリンタンパク質が組成物中に存在し得る。一部の実施形態では、リンタンパク質は、組成物の5%~約10%、例えば、約6%~約10%、約6%~約9%、例えば約6%~約8%(重量/体積)の間の量で存在する。一部の実施形態では、リンタンパク質は、組成物の約5%、6%、7%、8%、9%、10%の量、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲内の量(重量/体積)で存在する。
【0081】
一部の実施形態では、カゼインリンタンパク質の1つ以上は、非ヒトカゼインリンタンパク質である。一部の実施形態では、エキソソームと、カゼインリンタンパク質の少なくとも1つとは、異なる種に由来する。一部の実施形態では、エキソソームはヒトエキソソームであり、カゼインリンタンパク質の1つ以上は非ヒトカゼインリンタンパク質である。一部の実施形態では、エキソソームはヒトエキソソームであり、カゼインリンタンパク質の1つ以上はウシ(又はヒツジ、ブタ、ヤギ、ラクダ、又はウマ)カゼインリンタンパク質である。
【0082】
一部の実施形態では、組成物は、カゼインリンタンパク質の少なくとも一部によって形成されるミセル構造を含む。一部の実施形態では、カゼインミセルは、実質的に球状である。一部の実施形態では、組成物中のカゼインミセルは、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、約100nm、約110nm、約120nm、約130nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm、約500nm若しくはそれを超える平均直径(ミセルごとに測定した場合)、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲内の平均直径を有する。一部の実施形態では、組成物中のカゼインミセルは、約40nm~約500nm、例えば、約40nm~約400nm、約50nm~約300nm、約60nm~約250nm、約70nm~約250nm、約80nm~約200nm、例えば約90nm~約150nmの範囲の平均直径(ミセルごとに測定した場合)を有する。本組成物のカゼインミセルは、全体的に沈殿していない又はゲル状ではない。
【0083】
一部の実施形態では、組成物は、1つ以上のコロイド状ミネラル(例えば、懸濁液中のミネラル)を含む。いくつかの実施形態では、複合(例えば、2つ以上の)ミネラルが、コロイド状ミネラル複合体として使用される。コロイド状ミネラル複合体は、任意の好適なミネラル化合物及び/又はそれらの塩を含み得る。一部の実施形態では、コロイド状ミネラル複合体としては、限定されないが、カルシウム、マグネシウム、無機リン酸塩、クエン酸塩、ナトリウム、カリウム、及び塩化物、又はそれらのそれぞれの塩のうちの1つ以上が挙げられる。一部の実施形態では、コロイド状ミネラル複合体は、組成物中のリンタンパク質質量の約2%~約15%の間、例えば、約2%~約12%、約5%~約10%、約5%~約9%、例えば約6%~約9%(重量で)の量で存在する。一部の実施形態では、コロイド状ミネラル複合体は、約2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%の量、又は前述のパーセンテージのいずれか2つによって規定される範囲内の量で存在する。
【0084】
一部の実施形態では、組成物は、非経口剤形である。一部の実施形態では、非経口剤形は、滅菌されているか、又は患者に投与する前に滅菌することができる。非経口剤形の例としては、以下に限定されないが、すぐに注射できる溶液、注射用の薬学的に許容されるビヒクルにすぐに溶解又は懸濁できる乾燥製品、すぐに注射できる懸濁液、及びエマルションが挙げられる。さらに、対象への投与のために、制御放出非経口剤形が調製可能である。核酸の非経口剤形を提供するために使用することができる好適な賦形剤としては、限定されないが、以下が挙げられる:滅菌水;注射用水USP;食塩溶液;グルコース溶液;水性ビヒクル、例えば以下に限定されないが塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、並びに乳酸リンゲル注射液;水混和性ビヒクル、例えば以下に限定されないがエチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコール;及び非水性ビヒクル、例えば以下に限定されないがコーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジル。
【0085】
本開示の核酸を含むマクロファージも本明細書で提供される。一部の実施形態では、マクロファージは、CD68+マクロファージである。一部の実施形態では、マクロファージは、ヒトマクロファージである。一部の実施形態では、核酸に曝露されたマクロファージは、好適な対照、例えば、核酸に曝露されていないマクロファージ、又は対照核酸に曝露されたマクロファージと比較して、抗炎症活性を増加させる。一部の実施形態では、マクロファージは、骨髄由来マクロファージ(BMDM)である。一部の実施形態では、マクロファージは、IL-10、IRF-7、NOS-2、及びARG-1のうちの1つ以上の増加した発現を有する。一部の実施形態では、マクロファージは、好適な対照、例えば核酸と接触していないマクロファージと比較して、IL-10、IRF-7、NOS-2、及びARG-1のうちの1つ以上の増加したmRNA発現を有する。一部の実施形態では、マクロファージは、好適な対照、例えば核酸と接触していないマクロファージと比較して、IL-10、IRF-7、NOS-2、及びARG-1のうちの1つ以上の増加したmRNA発現を有する。一部の実施形態では、核酸を有するマクロファージにおけるIL-10、IRF-7、NOS-2、及びARG-1のうちの1つ以上のmRNA発現は、好適な対照、例えば核酸と接触していないマクロファージと比較して、それぞれ独立して、少なくとも1.5倍、2倍、4倍、6倍、8倍、10倍、15倍、20倍、30倍、50倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、1,000倍、若しくはそれを超えて、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲の倍量、増加する。一部の実施形態では、マクロファージは、好適な対照、例えば核酸と接触していないマクロファージと比較して、IL-10、IRF-7、NOS-2、及びARG-1のうちの1つ以上の増加したタンパク質発現を有する。一部の実施形態では、核酸を有するマクロファージにおけるIL-10、IRF-7、NOS-2、及びARG-1のうちの1つ以上のタンパク質発現は、好適な対照、例えば核酸と接触していないマクロファージと比較して、それぞれ独立して、少なくとも1.5倍、2倍、4倍、6倍、8倍、10倍、15倍、20倍、30倍、50倍、100倍、200倍、若しくはそれを超えて、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲の倍量、増加する。一部の実施形態では、マクロファージは、好適な対照、例えば核酸と接触していないマクロファージと比較して、IL-10の増加した分泌を有する。一部の実施形態では、核酸を有するマクロファージにおけるIL-10の分泌は、好適な対照、例えば核酸と接触していないマクロファージと比較して、それぞれ独立して、少なくとも約1.2倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、10倍、15倍、20倍、50倍、若しくはそれを超えて、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲の倍量、増加する。一部の実施形態では、マクロファージは、培養中である。一部の実施形態では、マクロファージは、対象中、例えば末梢血、骨髄中、及び/又は組織損傷の部位にある。
【0086】
方法
本開示の核酸を使用して、治療を必要とする対象を治療する方法(本明細書では「治療方法」とも呼ばれる)が本明細書で提供される。治療方法によって治療可能な状態としては、限定されないが、心臓状態及び炎症状態が挙げられる。一部の実施形態では、状態としては、限定されないが、筋肉障害、心筋梗塞、心臓障害、心筋変化、筋ジストロフィー、線維性疾患、炎症性疾患、ウイルス感染症、敗血症又は創傷治癒が挙げられる。一部の実施形態では、治療方法によって治療される状態としては、限定されないが、炎症及び/又は線維化に関連する状態が挙げられる。一部の実施形態では、本明細書の治療方法に従って、本開示の核酸を投与することによって治療される対象は、炎症及び/又は線維化に関連する状態の治療を必要としている。炎症及び/又は線維化に関連する状態は、限定されないが、心臓、骨格筋、又は皮膚の炎症及び/又は線維化を含み得る。一部の実施形態では、炎症及び/又は線維化に関連する状態は、老化を含む。一部の実施形態では、老化に関連する炎症及び/又は線維化の1つ以上の症状は、本明細書の治療方法に従って本開示の核酸を投与することによって治療される又は逆転する。一部の実施形態では、老化の促進(例えば、早老症)に罹患している対象は、本明細書の治療方法に従って本開示の核酸を投与することによって治療される。一部の実施形態では、本治療方法によって治療される状態は、感染症の症状及び/又は後遺症である。一部の実施形態では、感染症は、ウイルス感染症、例えば、COVID-19などの呼吸器ウイルス感染症、他のコロナウイルス又は他のウイルス病原体(例えば、インフルエンザ、H1N1、C型肝炎、HIVなど)による感染症である。
【0087】
一部の実施形態では、治療方法は、筋肉障害(又は筋肉状態)又はその症状を治療する方法を含み、この方法は、筋肉障害又はその症状の治療を必要とする対象に、治療有効量の本開示の核酸(又は核酸を含有する組成物)を投与するステップを含む。筋肉障害は、限定されないが、骨格筋障害又は心筋障害であってもよい。一部の実施形態では、筋肉障害は、筋ジストロフィー、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む。一部の実施形態では、対象は、筋ジストロフィーを有するか、又は筋ジストロフィーを発症するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、筋ジストロフィー、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィーを発症する遺伝的素因を有する。一部の実施形態では、対象は、対象が筋ジストロフィー、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィーを発症しやすくさせるジストロフィン遺伝子における1つ以上の変異を有する。
【0088】
一部の実施形態では、治療方法は、皮膚状態、例えば、皮膚の炎症及び/又は線維化(例えば限定されないが強皮症)を治療する方法を含む。一部の実施形態では、方法は、皮膚の炎症及び/又は線維化の治療を必要とする対象に、治療有効量の本開示の核酸(又は核酸を含有する組成物)を投与するステップを含む。一部の実施形態では、皮膚の炎症及び/又は線維化は、強皮症である。
【0089】
一部の実施形態では、治療方法は、心臓状態又はその症状を治療する方法を含み、この方法は、心臓状態又はその症状の治療を必要とする対象に、治療有効量の本開示の核酸(又は核酸を含有する組成物)を投与するステップを含む。一部の実施形態では、対象は、ヒト対象である。一部の実施形態では、対象は、非ヒト対象、例えば非ヒト哺乳動物である。
【0090】
様々な心臓状態が、本方法によって治療可能である。一部の実施形態では、心臓状態は、心不全又は心筋梗塞の症状及び/又は後遺症を含む。一部の実施形態では、心臓状態は、肥大型心筋症を含む。一部の実施形態では、心臓状態は、駆出率が保持された心不全(HFpEF)を含む。
【0091】
一部の実施形態では、対象は、心臓状態を発症するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、対象の家族歴、遺伝的素因、生活様式、及び病歴のうちの1つ以上に基づいて、心臓状態を発症するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、対象が肥大型心筋症(HCM)を発症しやすくさせる心臓トロポニンIにおける変異を有する。一部の実施形態では、対象は、心臓状態に対する1つ以上の併存疾患を有する。一部の実施形態では、1つ以上の併存疾患は、肥満及び高血圧を含む。一部の実施形態では、対象は、心臓状態を有するか、又は心臓状態と診断される。
【0092】
一部の実施形態では、対象は、高血圧、E/e'比の上昇、心肥大、心筋線維化、肥満、消耗、持久力の低下、及び全身性炎症マーカーの上昇のうちの1つ以上を示す。一部の実施形態では、対象は、高血圧を有し、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することにより、対象の血圧が低下する。一部の実施形態では、高血圧を有する対象は、130/90mmHgを超える安静時血圧を有する。一部の実施形態では、高血圧を有する対象は、140/90mmHgを超える安静時血圧を有する。一部の実施形態では、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することにより、対象の収縮期血圧又は拡張期血圧が低下する。一部の実施形態では、対象の血圧(収縮期血圧又は拡張期血圧)は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、少なくとも約5%、7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、25%、30%若しくはそれを超えて、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージ、低下する。一部の実施形態では、対象の血圧(収縮期血圧又は拡張期血圧)は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、少なくとも、もはや高血圧ではないとみなされるレベルまで低下する。
【0093】
一部の実施形態では、対象は、上昇したE/e'比を有し、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することにより、E/e'比が低下する。一部の実施形態では、対象のE/e'比は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、少なくとも約5%、7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%若しくはそれを超えて、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージ、低下する。一部の実施形態では、対象のE/e'比は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、少なくとも、もはや臨床的に関連性がないとみなされるレベルまで低下する。
【0094】
一部の実施形態では、対象は、心肥大を有し、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することにより、心肥大が軽減する。心肥大は、任意の好適な選択肢を使用して測定することができる。一部の実施形態では、心肥大は、心エコー検査を使用して測定される。一部の実施形態では、心肥大を有する対象は、心エコー検査によって測定した場合、増加した拡張期心室中隔壁径(IVSd)及び/又は左心室後壁径(LVPWd)を有し、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することにより、IVSd及び/又はLVPWdが減少する。一部の実施形態では、対象のIVSd又はLVPWdは、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、少なくとも約5%、7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、25%、30%若しくはそれを超えて、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージ、減少する。一部の実施形態では、対象のIVSd又はLVPWdは、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、少なくとも、もはや肥大性でないとみなされるレベルまで減少する。
【0095】
一部の実施形態では、対象は、心筋線維化を有し、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することにより、心臓線維化が軽減する。「線維化」は、本明細書で使用される場合、組織(例えば、心筋)の任意の再構築(例えば、病理学的再構築)、例えば、以下に限定されないが、線維性組織及び/又は脂肪組織の沈着、線維性組織及び/又は脂肪組織による筋組織の置換などを含み得る。心臓線維化は、生検、超音波検査又はMRIなどの任意の好適な手段を使用してモニタリングされる。一部の実施形態では、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することにより、心筋線維化が除去されるか、又は心筋線維化の発症が遅延する。
【0096】
一部の実施形態では、対象は、自己免疫状態に関連する炎症及び/又は線維化を有する。一部の実施形態では、対象は、強皮症又は全身性硬化症を有する。
【0097】
一部の実施形態では、対象は、消耗又は体重減少を示し、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することにより、消耗が遅延するか、又は予防される。一部の実施形態では、対象は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、最大で約20%、15%、10%、5%、3%若しくはそれを下回る、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージの体重減少を示す。一部の実施形態では、対象の体重は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、実質的に治療前レベルに回復するか、又は実質的に治療前レベルで維持される。
【0098】
一部の実施形態では、対象は、低下した持久力、例えば運動持久力を示し、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することにより、持久力の低下が遅延するか、又は予防される。一部の実施形態では、対象は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、最大で約20%、15%、10%、5%、3%若しくはそれを下回る、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージの持久力の低下を示す。一部の実施形態では、対象の運動持久力は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、実質的に治療前レベルに回復するか、又は実質的に治療前レベルで維持される。一部の実施形態では、対象は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%若しくはそれを超える、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージの持久力の改善を示す。一部の実施形態では、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後の持久力の改善は、治療期間にわたって維持される。一部の実施形態では、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後の持久力の改善は、複数用量の投与にわたって維持される。
【0099】
一部の実施形態では、対象は、例えば末梢血中の、全身性炎症マーカーのレベルの上昇を示す。一部の実施形態では、全身性炎症マーカーは、IL-6及び脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)のうちの1つ以上を含む。一部の実施形態では、全身性炎症マーカーのレベルは、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、少なくとも約5%、7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%若しくはそれを超えて、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージ、低下する。一部の実施形態では、対象の全身性炎症マーカーは、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、少なくとも、もはや上昇していないとみなされるレベルまで低下する。
【0100】
一部の実施形態では、対象が肥満である場合、核酸を投与することの治療効果は、対象の肥満とは無関係である。一部の実施形態では、核酸(又はその組成物)を投与することは、対象の体重に影響を及ぼさない。
【0101】
一部の実施形態では、対象は、低下した骨格筋機能、例えば、骨格筋群によって発揮される力又はトルクの量を示す。一部の実施形態では、対象は、低下した骨格筋機能を示し、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することにより、骨格筋機能の低下の発症が遅延するか、骨格筋機能の悪化が予防されるか、又は骨格筋機能が増強される。一部の実施形態では、対象の骨格筋機能は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、実質的に治療前レベルに回復するか、又は実質的に治療前レベルで維持される。一部の実施形態では、対象は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%若しくはそれを超える、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージの骨格筋機能の改善を示す。
【0102】
一部の実施形態では、本明細書の治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することの治療効果のいずれかは、治療期間にわたって維持される。複数用量の投与にわたって維持される 複数用量の投与にわたって維持される。一部の実施形態では、本明細書の治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することの治療効果のいずれかは、治療期間にわたって一過性ではない。
【0103】
一部の実施形態では、本開示の治療方法は、様々な炎症状態のいずれか1つ以上を治療する。一部の実施形態では、炎症状態は、慢性状態である。一部の実施形態では、炎症状態は、IL-10の抗炎症効果に応答する状態である。一部の実施形態では、炎症状態は、自己免疫疾患、移植片対宿主病(GVHD)、又は臓器移植に対する免疫応答を含む。一部の実施形態では、炎症状態は、ウイルス感染症、敗血症、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎)、多発性硬化症、天疱瘡、及び1型糖尿病(インスリン依存性糖尿病(IDDM)とも呼ばれる)を含む。一部の実施形態では、炎症状態は、ベーチェット病、多発性筋炎/皮膚筋炎、自己免疫性血球減少症、自己免疫性心筋炎、原発性肝硬変、グッドパスチャー症候群、自己免疫性髄膜炎、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、アジソン病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性ムンプス、クローン病、インスリン依存性糖尿病、栄養障害性表皮水疱症、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、硬腫、脊椎関節症、甲状腺炎、血管炎、白斑、粘液水腫、悪性貧血及び潰瘍性大腸炎を含む。一部の実施形態では、炎症は、骨髄移植に関連している。一部の実施形態では、炎症は、組織移植後の同種移植片拒絶に関連している。一部の実施形態では、自己免疫疾患は、心臓自己免疫疾患、例えば自己免疫性心筋炎である。一部の実施形態では、自己免疫疾患は、強皮症又は全身性硬化症である。
【0104】
一部の実施形態では、本開示の治療方法は、様々な感染性疾患のうちのいずれか1つ以上の症状及び/又は後遺症を治療する。一部の実施形態では、本開示の核酸によって治療される心臓状態又は炎症状態は、感染性疾患の症状及び/又は後遺症を含む。一部の実施形態では、感染性疾患は、心筋損傷に関連している。一部の実施形態では、心臓状態は、感染性疾患に関連する急性心筋炎を含む。一部の実施形態では、炎症状態は、感染性疾患に関連するサイトカインストーム又は過剰炎症を含む。一部の実施形態では、炎症状態は、急性肺損傷又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む。
【0105】
一部の実施形態では、感染性疾患は、限定されないが、以下の病原体のうちの1つ以上による感染症である:ウイルス(例えば以下に限定されないが、コロナウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、肝炎ウイルス、コクサッキーウイルス、帯状疱疹ウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、風疹、狂犬病ウイルス、ウイルス性出血熱、H1N1など)、プリオン、寄生生物、真菌、カビ、酵母及び細菌(グラム陽性及びグラム陰性の両方)。一部の実施形態では、病原体としては、限定されないが、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、大腸菌(Escherichia coli)(E. coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(P. aeruginosa)、及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(S. aureus)、A群連鎖球菌(Group A streptococci)、S.ニューモニエ(S. pneumoniae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、及び様々な薬物耐性細菌が挙げられる。
【0106】
一部の実施形態では、炎症は、ウイルス、例えばDNAウイルス又はRNAウイルスによる感染症に続いて又はそれと同時に起こる。一部の実施形態では、ウイルスは、RNAウイルス、例えば一本鎖又は二本鎖ウイルスである。一部の実施形態では、RNAウイルスは、ポジティブセンスの一本鎖RNAウイルスである。一部の実施形態では、ウイルスは、ニドウイルス目(Nidovirales order)に属する。一部の実施形態では、ウイルスは、コロナウイルス科(Coronaviridae family)に属する。一部の実施形態では、ウイルスは、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、ガンマコロナウイルス又はデルタコロナウイルス属に属する。一部の実施形態では、アルファコロナウイルスは、限定されないが、ヒトコロナウイルス229E、ヒトコロナウイルスNL63又は伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)である。一部の実施形態では、ベータコロナウイルスは、限定されないが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、SARS-CoV-2(COVID-19)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、ヒトコロナウイルスHKU1、又はヒトコロナウイルスOC43である。一部の実施形態では、ガンマコロナウイルスは、感染性気管支炎ウイルス(IBV)である。
【0107】
核酸は、任意の好適な量で対象に投与することができる。一部の実施形態では、核酸の治療有効量は、約0.01μg、0.02μg、0.05μg、0.1μg、0.2μg、0.5μg、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、40μg、50μg、75μg、100μg、125μg、150μg、175μg、200μg、250μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、10mg、15mg、20mg、30mg、40mg、50mg、75mg、100mg若しくはそれを超える、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲の量(例えば、0.01μg~0.1μg、0.1μg~1μg、1μg~10μg、10μg~100μg、100μg~1mg、1mg~10mg、10mg~100mg)を含む。一部の実施形態では、核酸の治療有効量は、約0.001μg/g、0.002μg/g、0.005μg/g、0.01μg/g、0.02μg/g、0.05μg/g、0.1μg/g、0.15μg/g、0.2μg/g、0.5μg/g、1μg/g、2μg/g、3μg/g、4μg/g、5μg/g、6μg/g、7μg/g、8μg/g、9μg/g、10μg/g、15μg/g、20μg/g、25μg/g、30μg/g、35μg/g、40μg/g、45μg/g、50μg/g、60μg/g、70μg/g、80μg/g、90μg/g、100μg/g体重、若しくはそれを超える、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲の量(例えば、0.001μg/g~0.01μg/g、0.01μg/g~0.1μg/g、0.1μg/g~1μg/g、1μg/g~10μg/g、10μg/g~100μg/g)を含む。一部の実施形態では、核酸の治療有効量は、約0.001μg/g、0.002μg/g、0.005μg/g、0.01μg/g、0.02μg/g、0.05μg/g、0.1μg/g、0.2μg/g、0.5μg/g、若しくは約1μg/g体重、若しくはそれを超える、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲の量(例えば、0.001μg/g~0.01μg/g、0.01μg/g~0.05μg/g、0.05μg/g~0.1μg/g、0.1μg/g~0.2μg/g、0.2μg/g~0.5μg/g、又は0.5μg/g~1μg/g)である。
【0108】
核酸又は組成物は、任意の好適な投与スケジュールで対象に投与することができる。一部の実施形態では、治療有効量の核酸又は組成物は、対象に、週2回、週1回、2週間に1回、月1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月以上に1回以下の頻度で、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲の頻度で投与される。一部の実施形態では、核酸は、対象に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30回又はそれを超える回数投与される。一部の実施形態では、核酸は、対象に一定間隔で投与される。
【0109】
核酸又は組成物は、任意の好適な経路を使用して投与することができる。投与は、局所的又は全身的であってよい。一部の実施形態では、投与は、非経口的である。投与のための好適な選択肢としては、限定されないが、静脈内、筋肉内、皮下、動脈内、腹腔内、又は経口投与が挙げられる。一部の実施形態では、核酸又は組成物は、静脈内投与される。一部の実施形態では、核酸又は組成物は、注入によって投与される。
【0110】
マクロファージの抗炎症活性を促進する方法(本明細書ではマクロファージ調節方法とも呼ばれる)も本明細書で提供される。この方法は、一般に、本開示の核酸又は組成物をマクロファージの集団と接触させるステップを含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸に曝露されたマクロファージにおいて遺伝子発現の変化及び/又はエピジェネティックな変化を誘導する。一部の実施形態では、核酸(又は組成物)を接触させることにより、IL-10、IRF-7、NOS-2、及びARG-1のうちの1つ以上の発現が増加する。一部の実施形態では、核酸(又は組成物)を接触させることにより、IL-10、IRF-7、NOS-2、及びARG-1のうちの1つ以上の転写又は翻訳が増加する。一部の実施形態では、核酸(又は組成物)を接触させることにより、IL-10、IRF-7、NOS-2、及びARG-1のうちの1つ以上の転写が、好適な対照、例えば核酸と接触していないマクロファージと比較して、それぞれ独立して、少なくとも約1.5倍、2倍、4倍、6倍、8倍、10倍、15倍、20倍、30倍、50倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、1,000倍、若しくはそれを超えて、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲の倍量、増加する。
【0111】
一部の実施形態では、核酸(又は組成物)を接触させることにより、マクロファージにおけるインターロイキン10(IL-10)の分泌が増加する。一部の実施形態では、核酸(又は組成物)を接触させることにより、マクロファージからのIL-10の分泌が、好適な対照、例えば核酸と接触していないマクロファージと比較して、少なくとも約1.2倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、10倍、15倍、20倍、50倍、若しくはそれを超えて、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲の倍量、増加する。
【0112】
マクロファージの集団は、任意の好適な時間の間、核酸又は組成物と接触させることができる。一部の実施形態では、接触させることは、24時間以上、36時間以上、48時間以上、60時間以上、72時間以上、又は前述の値のいずれか2つの間の範囲の時間にわたるものである。
【0113】
一部の実施形態では、接触させることは、インビトロで行われる。一部の実施形態では、接触させることは、インビボで行われる。一部の実施形態では、接触させることは、炎症の治療を必要とする対象に、有効量の核酸又は組成物を投与することを含む。一部の実施形態では、マクロファージは、ヒトマクロファージである。一部の実施形態では、対象は、ヒト対象である。一部の実施形態では、対象は、非ヒト対象、例えば非ヒト哺乳動物である。
【0114】
任意の好適な量の核酸を、マクロファージの集団と接触させて、マクロファージの抗炎症活性を促進することができる。一部の実施形態では、有効量は、接触がインビボで行われるか又はインビトロで行われるかに依存する。
【0115】
治療方法のいずれかにおいて、方法は、転座プロモーター領域(TPR)に特異的に結合する核酸を投与するステップを含むことができる。治療方法のいずれかにおいて、一部の実施形態では、方法は、TPRに特異的に結合する核酸を投与するステップを含むことができる。一部の実施形態では、TPRは、ヒトTPR(遺伝子ID7175)である。一部の実施形態では、TPRは、以下に示されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%同一のアミノ酸配列を有する:
【0116】
【0117】
一部の実施形態では、TPR結合核酸は、10-5M~10-12M、例えば10-6M~10-11Mの結合親和性でTPRに結合する。一部の実施形態では、TPRに特異的に結合する核酸は、TPRの機能及び/又は発現を阻害する又は低下させる。一部の実施形態では、TPRに特異的に結合する核酸は、RNAである。一部の実施形態では、TPRに特異的に結合する核酸は、非コードRNAである。一部の実施形態では、TPRに特異的に結合する核酸は、Y RNA、又はその誘導体、例えば、その合成誘導体である。一部の実施形態では、TPRに特異的に結合する核酸は、EV-YF1に由来する本開示の核酸のいずれか1つ、例えばTY4である。
【0118】
キット
本開示の核酸又は組成物を含むキットも本明細書で提供される。一部の実施形態における本キットは、本明細書で提供されるような、筋肉障害、心臓状態又は炎症状態(例えば、ウイルス感染症に関連する)の治療において用途を見出す。キットは、本開示の核酸及びトランスフェクション試薬を含み得る。トランスフェクション試薬は、本明細書で提供されるような、任意の好適なトランスフェクション試薬であってよい。一部の実施形態では、トランスフェクション試薬は、脂質(例えば、リポソーム形成脂質)、PEG化脂質、及び細胞外小胞のうちの1つ以上を含む。一部の実施形態では、キットは、本明細書で提供されるような、薬学的に許容される賦形剤を含む。一部の実施形態では、キットは、カゼイン及び/又はキトサンを含む。キットは、キットの1つ以上の構成要素を保持するための1つ以上の容器(例えば、バイアル、アンプル、試験管、フラスコ又はボトル)を含み得る。キットは、状態(例えば、HCM、HFpEF、筋ジストロフィー、強皮症、ウイルス感染症に関連する炎症状態)を治療するためにキットを使用するための説明書をさらに含んでもよい。情報及び説明書は、言葉、絵、又はその両方などの形式であってもよい。
【0119】
本出願の全体にわたって引用されるすべての特許及び他の刊行物;例えば文献参照、発行された特許、公開された特許出願、及び同時係属中の特許出願は、例えば、本明細書に記載される技術に関連して使用される可能性があるこのような刊行物に記載される方法を記載及び開示する目的で、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示についてのみ提供される。この点に関して、何も、発明者らが事前の発明又は任意の他の理由によりこのような開示に先行する権利を有していないことを認めるものと解釈されるべきではない。これらの文書の日付又は内容に関する表示に関するすべての記載は、本出願人が入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確性に関して認めるものではない。
【0120】
本開示の実施形態の記載は、網羅的であること、又は本開示を開示された正確な形態に限定することを意図したものではない。本開示の具体的な実施形態及び実施例は、例示を目的として本明細書に記載されるが、当業者が認識するように、本開示の範囲内で様々な等価な改変が可能である。例えば、方法のステップ又は機能は所与の順序で提示されるが、代替実施形態は異なる順序で機能を実施してもよく、又は機能は実質的に同時に実施してもよい。本明細書で提供される本開示の教示は、適宜、他の手順又は方法に適用することができる。本明細書に記載される様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本開示の態様は、必要な場合、上記の参考文献及び出願の構成、機能及び概念を用いて改変して、本開示のさらなる実施形態を提供することができる。さらに、生物学的機能等価性の考慮により、種類又は量において生物学的又は化学的作用に影響を及ぼすことなく、タンパク質構造にいくらかの変更を加えることができる。詳細な説明を考慮して、本開示にこれら及び他の変更を加えることができる。このような改変はすべて、添付の特許請求の範囲内に含まれることを意図している。
【0121】
前述の実施形態のいずれかの特定の要素は、他の実施形態における要素と組み合わせるか、又はそれを置換することができる。さらに、本開示のある特定の実施形態に関連する利点がこれらの実施形態の文脈で記載されているが、他の実施形態もそのような利点を示す可能性があり、本開示の範囲内に入るために必ずしもすべての実施形態がそのような利点を示す必要はない。
【0122】
本明細書に記載される技術は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらの実施例は、さらに限定するものと決して解釈されるべきではない。
【実施例
【0123】
実施例1
この非限定的な実施例は、CDC由来の細胞外小胞(CDC-EV)に由来する非コードRNA(ncRNA)の生物活性についての潜在的な作用機序を示す。
【0124】
EV-YF1(配列番号1;図1A)は、CDC-EV中に見出される56ヌクレオチド(nt)のncRNAであり、ヒトY-RNA4遺伝子によってコードされる。EV-YF1は、マクロファージによるIL-10(抗炎症性サイトカイン)の分泌を増加させ、心筋梗塞(MI)に対して心臓保護作用を有する。EV-YF1は、アンジオテンシンII注入によって誘導される高血圧及び肥大のモデルにおいて、CDc-EVのものと同等の抗線維化利益及び抗肥大利益を発揮する。EV-YF1及びその誘導体はまた、HFpEFのモデルにおいて強い生物活性を示す。
【0125】
EVの疾患関連標的としてのマクロファージ。自然免疫において重要な役割を果たすものとして、マクロファージは、損傷後に、炎症性メディエーターを分泌し、(エフェロサイトーシスによって)細胞片を除去し、組織を再構築する。マクロファージは、CDC-EVによって誘導されるMI後の心臓保護の重要なエフェクターとして同定され、この機構におけるエフェロサイトーシスの増強に関与していた。心不全(HF)におけるマクロファージの中心的役割のさらなる検証は、マクロファージの枯渇が心臓保護を損なうだけでなく、マウスのHFpEF及びmdx心筋症を悪化させるという所見からもたらされる。新たな概念は、マクロファージが、EVによって調節される「第一応答因子」であるだけでなく、EV生物活性の頑強な疾患関連インビトロレポーターでもあるということである。ラット骨髄由来マクロファージ(BMDM)を使用して、トランスクリプトーム及びエピゲノムに対するEV-YF1及びCDC-EVの影響をそれぞれ研究することができる。マクロファージは、心不全(HF)の重要な調節因子である可能性があり、CDC-EVは、マクロファージ表現型を劇的に変化させる。
【0126】
実施例2
この非限定的な実施例は、標的細胞トランスクリプトームに対するEV-YF1の影響、及び肥大型心筋症(HCM)のモデルにおけるEV-YF1の治療効果を示す。
【0127】
Y-RNAは、遺伝子発現及びエピゲノミクスに影響を与える。図1Aは、Y-RNA誘導体が、標的細胞における遺伝子発現を変化させるエピジェネティック修飾を誘導するという作業仮説を描写する。エピジェネティック調節は、長期にわたる遺伝子発現パターンを確立するクロマチン適応又はDNAメチル化を指す。実際、EV-YF1は、ラット骨髄由来マクロファージ(BMDM)において重大なトランスクリプトーム変化を誘導し(図1B)、これはIL10発現の増強を含む(図1C)。CDC-EVの影響(及びおそらくEV-YF1の影響)の特異な特徴の1つは、その持続性であり、これはエピジェネティック調節によって説明可能である。図1Dは、IL10座位におけるH3K27acマーク(ヒストンH3のエピジェネティック修飾)を示し、これらのうちの3つはCDc-EVへの曝露によって誘導される。H3K27acは、転写を選択的に増加させる活性エンハンサーを規定する。
【0128】
図1A、EV-YF1配列及び仮説的な作用機序。図1B、ラットBMDMトランスクリプトミクスに対するEV-YF1の影響。図1C、最も差次的に発現した遺伝子の中にIRF7、IL10があった。図1D、CDC-EV曝露後のChIP-seqによるIL10遺伝子上のH3K27アセチル化マーク。1、3、及び4と標識されたピークは、CDC-EV処理されたラットBMDMに特有である。
【0129】
HCMマウスにおけるEV-YF1の治療利益。肥大型心筋症(HCM)(又は肥大型閉塞性心筋症(HOCM))は、HFpEFを引き起こし得る遺伝性疾患である。HCM/HOCMの症状としては、限定されないが、筋細胞線維の乱れ、間質性線維化、心臓の過収縮、肥大、拡張機能障害、体重減少、早死及び/又は突然死が挙げられる。
【0130】
アンジオテンシン誘導性肥大の軽減におけるその有効性を考慮して、EV-YF1(本明細書ではYF-1と呼ぶ)を、トランスジェニックcTnI146Glyマウス(特に致死的なヒトHCM変異をモデル化する)で試験した。生後4ヶ月において、cTnI146Glyマウスは、ビヒクル又はYF1のいずれかを、週2回、4週間にわたって(眼窩後[r.o.]注射を介して)静脈内に受けた(図2A)。成長は影響を受けなかった(図2B)が、心エコー検査(図2C)により、拡張期心室中隔壁径(IVSd;図2D、左パネル)及び左心室後壁径(LVPWd;図2D、右パネル)の顕著な減少が明らかになった。より良好な自己グルーミング(図2E)及び増加した運動耐性(図2F)から明らかなように、全体的なウェル・ビーイングが改善した。エンドポイントでは、心臓重量(HW)-対-脛骨長(TL)の比が、ビヒクル群で大幅に増加したが、YF-1では減少した;相対肺重量(LW)-対-TLは、すべての群で同等であった(すなわち、肺うっ血を伴う明らかなHFにあるものはなかった;図2G)。予備的な組織学所見はまた、YF1による間質性心臓線維化の軽減を示した。したがって、EV-YF1は、HCMマウスにおいて非常に治療効果があり、EV-YF1及びその誘導体についての潜在的な適応症としてのHFpEFに対するさらなる根拠を与える。
【0131】
図2A~2G:HCMマウスにおけるEV-YF1。図2A、プロトコールの概略図。図2B、経時的な体重(BW)。図2C、拡張期におけるエコー画像。図2D、経時的なIVSd及びLVPWd。図2E、グルーミング行動を示す画像。図2F、WTマウスが走った距離のパーセンテージとしてのトレッドミル運動距離。図2G、エンドポイントにおけるHW/TL及びLW/TL。
【0132】
実施例3
この非限定的な実施例は、骨髄由来マクロファージ(MBDM)における、TY4を含むEV-F1バリアントの生物活性を示す。
【0133】
リード候補としてのEV-FY1の修飾された末端切断型変異体。図2A~2Gは、EV-FY1自体がいくつかの疾患モデルにおいて生物活性を有することを実証するが、それは合成RNA薬(ほとんどは18~30ntである)としては比較的長く、化学的に修飾されていないため、潜在的に不安定であり、免疫原性である。これらの制限を回避するために、いくつかのEV-YF1からインスパイアされた分子を合成し、BMDMでスクリーニングした。試験した候補分子を以下の表に列挙する。LNA残基を太字で示す。
【0134】
【表1】
【0135】
EV-YF1バリアントのスクリーニングにより、インビトロアッセイにおいてマクロファージで増加した生物活性を示す2つが同定された(図3A、3B)。BMDMにおける「2from5_54U to A」及び「TY4 1G to C LNA_Mixmer」のトランスフェクションにより、IL-10、Nos-2、及びArg-1の発現増加が誘導され、マクロファージに対するEV-YF1の影響を再現した。「TY4 1G to C LNA_Mixmer」は、別段の指示がない限り、本明細書では「TY4」とも呼ばれる。「TY4」は、上記の表1並びに図3A及び3Bにおけるように、「天然」と表示される「TY4」とは区別されるべきである。「対照」は、ビヒクルで処理されたBMDMを示す。
【0136】
図4A~4Cはさらに、EV-YF1の24nt修飾RNA(ロックド核酸置換を有する)変異誘導体であるTY4(図4A)が、EV-YF1自体のパターンと同様のパターンでBMDMにおける遺伝子発現に影響を及ぼすことを示す(両方を全体的に[図4B]、並びにIRF7及びIL10に関して[図4C])。
【0137】
図4A~4C:EV-YF1に由来するTY4。図4A、親EV-YF1とアラインされたTY4。下線は、化学修飾ヌクレオチドを示す。図4B、ラットBMDMにおけるRNAヒートマップ。図4C、TY4は、IRF7及びIL10に対するEV-YF1の影響を再現する。
【0138】
一部の実施形態では、EV-YF1の末端切断され且つ/又は化学修飾されたバリアント、例えばTY4、又は配列番号2、11~14のいずれか1つの配列を有する単離されたRNAは、マクロファージにおいて転写変化を誘導する。一部の実施形態では、EV-YF1の末端切断され且つ/又は化学修飾されたバリアント、例えばTY4、又は配列番号2、11~14のいずれか1つの配列を有する単離されたRNAは、マクロファージにおいてIL10及び/又はIRF7の上方制御を誘導する。一部の実施形態では、EV-YF1の末端切断され且つ/又は化学修飾されたバリアント、例えばTY4、又は配列番号2、11~14のいずれか1つの配列を有する単離されたRNAは、マクロファージに対するEV-YF1の影響を再現する。一部の実施形態では、末端切断されたEV-YF1バリアントは、ヌクレオチド配列:CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)を有する。一部の実施形態では、末端切断され、化学修飾されたEV-YF1バリアントは、ヌクレオチド配列:CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号2)(1、3、5、20、22及び24位はロックド核酸(LNA)である)を有する。
【0139】
実施例4
この非限定的な実施例は、HCMのモデルにおけるTY4の治療効果を示す。
【0140】
HCMにおけるTY4の治療利益。TY4は、上記の実施例2に記載されるような、HCMの動物モデルにおけるEV-YF1の治療効果を再現した。生後4ヶ月において、cTnI146Glyマウスは、ビヒクル、EV-YF1、又はTY4を、週2回、4週間にわたって、眼窩後[r.o.]注射を介して静脈内に受けた(0.15μg/g体重)(図5A)。投与開始から3週間後、TY4が投与された動物は、EV-YF1投与の効果と同様に、顕著に減少した拡張期心室中隔壁径(IVSd;図5B)及び左心室後壁径(LVPWd;図5C)を示した。したがって、心室中隔壁及び後壁の再構築は、TY4及びEV-YF1処置によって弱まった。TY4処置cTnI146Gly動物では運動持久力も改善し、この動物は、食塩水を受けたcTnI146Gly動物よりも大きな運動距離を示し(図5D)、野生型動物と同様の経時的な持久力の増加を示した(図5E)。運動持久力に対するTY4の治療効果は、EV-YF1処置動物で観察された効果よりも大きかった(図5D、5E)。
【0141】
4週間において、TY4投与により、HCM動物における拡張期弛緩障害が緩和された(図6A~6D)。TY4処置cTnI146Gly動物は、YF1処置cTnI146Gly動物よりも低い拡張期血圧を有した(図6B)。さらに、4週間において、TY4処置cTnI146Gly動物の体重は、野生型対照動物と同等であったのに対し、食塩水が投与されたcTnI146Gly動物は、減少した体重を有した(図6E)。EV-YF1処置動物も、食塩水が投与されたcTnI146Gly動物と同等の減少した体重を有した。したがって、TY4は、HCMのマウスモデルにおいて、EV-YF1と比較して増強された治療的生物活性を発揮する。
【0142】
7週間において、TY4が投与された動物は、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベルによって測定した場合、大きく低下した全身性炎症を示した(図7A)。この低下したレベルは、EV-YF1で処置された動物のレベルと同等であった。TY4投与により、7週間での体重減少/消耗も軽減した(脛骨長に対する心臓重量、又は脛骨長に対する肺重量の比によって測定した場合)(図7B、7C)。
【0143】
これらの結果は、TY4が、肥大型心筋症のモデルにおいて、EV-YF1の治療効果を完全に再現することを示す。
【0144】
一部の実施形態では、肥大型心筋症(HCM)を有する対象に治療有効量のTY4を静脈内投与することにより、HCMが治療される。一部の実施形態では、肥大型心筋症(HCM)を有する対象に治療有効量のTY4を静脈内に反復投与することにより、HCMが治療される。一部の実施形態では、HCMを有する対象に治療有効量のTY4を静脈内投与することにより、HCMの1つ以上の症状が軽減又は緩和する。一部の実施形態では、HCMを有する対象に治療有効量のTY4を静脈内投与することにより、HCMに起因する、IVSdの増加、LVPWdの増加、運動持久力の障害、血圧の上昇、全身性炎症、及び体重減少のうちの1つ以上が軽減又は緩和する。
【0145】
実施例5
この非限定的な実施例は、駆出率が保持された心不全(HFpEF)のモデルにおけるTY4の治療効果を示す。
【0146】
HFpEFにおけるTY4の治療利益。肥大のモデルにおけるEV-YF1の生物活性(実施例2)及び同じモデルにおけるTY4の同様の治療効力(実施例4)を考慮して、本発明者らは、HFpEFを有するマウスにおいてTY4を試験した。この「2ヒット」モデルは、ヒトHFpEFに一般的に関連する2つの併存疾患(肥満及び高血圧)を組み込み、HFpEF患者の心臓組織に見られる一酸化窒素シグナル伝達異常を再現する。図8Aは、実験プロトコールを描写する。マウスを介入なしで観察した(WT)か、又はマウスに高脂肪食(HFD)及びL-NAMEを補充した水を与えた。5週間以内に、HFD/L-NAMEマウスは、肥満及び高血圧になり、拡張機能障害を有したが、EFは正常であった(ベースラインエコーによる)。次いで、HFpEFマウスを、ビヒクル又はTY4の週2回のr.o.注射(「IV Inj.」)又は経口用量(「経口」)を受けるように無作為に割り当てた。TY4を、注射又は経口投与あたり0.15μg/gで投与した。経口投与の場合、TY4を最初にリポソームと組み合わせてTY4-リポソーム複合体を形成させ、次いで、これをカゼイン-キトサン複合体中にカプセル化した。注入前/経口投与前及びその後の様々な時点で、マウスは、血圧測定、トレッドミル試験、心エコー検査、及び/又は循環バイオマーカーのための採血を受けた。ベースラインでの群間の唯一の違いは、疾患に関連するものであった(WTに対してHFpEFにおける、高血圧、低い運動耐性、上昇したE/e'比)。
【0147】
10週間後、以下の違いが明らかであった:TY4動物(IV注射)では、ビヒクルが投与されたHFpEF動物と比較して、血圧がより低く(図8B)、運動耐性がより高く(図8C)、E/e'比がより低く(図8D)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベルがより低かった(図8E)。これらの健康指標は、WTレベル(非HFpEF動物)と同等であった。この効果は食事嫌悪によるものではなかった:TY4マウスは肥満のままであった。これらの所見は、TY4の顕著な疾患修飾生物活性を明らかにし、HFpEFの難治性の性質を考慮すると、とりわけ注目に値するものである。
【0148】
図8A~8C:静脈内投与されたTY4により、HFpEFマウスにおける疾患進行が逆転する。図8A:研究設計の概略図。研究のエンドポイントにおいて、TY4を静脈内に受けた動物は、より低い収縮期血圧(SBP)及び拡張期血圧(DBP)(図8B)、改善された運動耐性(図8C)及び拡張機能(E/e'、図8D)、及び心不全の血清バイオマーカーの低下したレベル(BNP;図8E)を有した。
【0149】
同様の治療効果、及び場合によっては優れた治療結果が、TY4で経口的に処置された動物で観察された。TY4の経口投与により、ビヒクルが投与されたHFpEF動物と比較して、血圧が低下し(図8F)、E/e'比が低下し(図8G)、運動耐性が増加し(図8H)、BNPレベルが低下した(図8I)。血圧、運動耐性及びE/e'比は、TY4で経口的に処置された動物においてWTレベル(非HFpEF動物)と同等であった。
【0150】
図8F~8I:経口投与されたTY4により、HFpEFマウスにおける疾患進行が逆転する。実験プロトコールを図8Aに示す。研究のエンドポイントにおいて、TY4を経口的に受けた動物は、より低い収縮期血圧(SBP)及び拡張期血圧(DBP)(図8F)、改善された拡張機能(E/e'、図8G)及び運動耐性(図8H)、及び心不全の血清バイオマーカーの低下したレベル(BNP;図8I)を有した。
【0151】
TY4の治療効果は、静脈内投与された動物及び経口投与された動物の両方において、処置期間中一貫して観察された。低下した収縮期血圧は、早くも9週目に観察され(図8J)、一方、低下した拡張期血圧は、7週目以降に観察された(図8K)。改善されたE/e'比は、9週目から少なくとも14週目まで観察された(図8L)。改善された運動耐性は、経口的に処置された動物においてより一貫して見られ、TY4で処置されたすべての動物は、少なくとも11週目までにより高い運動耐性を示した(図8M)。
【0152】
HFpEFにおけるTY4の治療効果に対する投与頻度の影響を試験するために、図8Aにおけるような実験プロトコールを実施したが、但し、HFD/L-NAME動物に週2回、週1回又は2週間に1回の頻度で静脈内投与したことを除く。14週間において、TY4で静脈内に処置された動物では、低下したE/e'比がすべての頻度で観察され、これは拡張機能障害の軽減を示した(図9A、9B)。体重増加は3つすべての投与頻度で変化しなかったため、前と同様に、治療効果は食事嫌悪によるものではなかった(図9C)。週1回又は2回の投与頻度では一貫した改善が見られ、一方、2週間に1回投与した場合ほとんど改善がなかったため、運動持久力は、投与頻度に依存して改善した(図9D、9E)。TY4は、高血圧を軽減した(図9F、9G)。特に、週2回及び週1回の投与頻度では、8週間以降の期間で収縮期血圧が低下し、一方、2週間に1回のTY4の投与では、同じ期間に収縮期血圧は同じままであった(図9F、下パネル)。TY4は、16週間におけるIL-6及びBNPレベルによって測定した場合、すべての投与頻度で全身性炎症を軽減した(図10A、10B)。
【0153】
一部の実施形態では、HFpEFを有する対象に治療有効量のTY4を静脈内又は経口投与することにより、HFpEF(又はその1つ以上の症状)が治療される。一部の実施形態では、HFpEFを有する対象に治療有効量のTY4を(静脈内又は経口)反復投与することにより、HFpEF(又はその1つ以上の症状)が治療される。一部の実施形態では、HFpEFを有する対象に治療有効量のTY4を静脈内又は経口投与することにより、HFpEFの1つ以上の症状が軽減又は緩和する。一部の実施形態では、HFpEFを有する対象に治療有効量のTY4を静脈内又は経口投与することにより、HFpEFに起因する、運動持久力の障害、血圧の上昇、E/e'比の上昇、及び全身性炎症のうちの1つ以上が軽減又は緩和する。
【0154】
実施例6
この非限定的な実施例は、ヒト特異的Y-RNA配列を測定することによってCDC-EVの生体内分布を決定することを示す。
【0155】
生体内分布を評価するために、EV-YF1がCDC-EV中に豊富にあることから、EV-YF1の配列の一部を増幅するように定量的PCR(qPCR)プライマーを設計した。図11Aは、選択された領域(本明細書ではNT4と表示する)が、最も近いマウス配列(RNA Y1)と高い相同性を持たないことを示す。ホモジナイズされたマウス肝組織に添加されたヒトCDC-EVは、104個EV/20mgで分析することができ(図11B)、r.o.注射から1時間後に生体内分布の定量化が可能になる(図11C)。
【0156】
図11A~11C:CDc-EVの生体内分布。図11A:ヒト及びマウスの配列、並びにフォワードPCRプライマー。図11B:103~104個EV/20mg組織での分析の限界。図11C:2×109個CDC-EVのr.o.注射から1時間後の組織1gあたりのCDc-EV。
【0157】
一部の実施形態では、CDC-EV及び/又はそのカーゴ内容物の生体内分布は、動物へのCDC-EVの投与後の組織において、CDC-EV、例えばヒトCDC-EV中にあることが知られているヒト特異的Y-RNA配列を検出することによって、非ヒト動物において評価することができる。
【0158】
実施例7
この非限定的な実施例は、候補治療分子、例えばTY4及び/又はそのバリアントの生物活性をインビトロ及びインビボで試験するための実験設計を示す。
【0159】
候補治療薬を、ヒトマクロファージ(HM)における遺伝子発現の選択された変化について試験する。トランスクリプトームパターン(公知の有益なバリアントによって誘導されるものを少なくとも部分的に模倣する)を有するものを、インビボで試験する。インビボ試験に進むこれらの候補を、HFpEFの2つの補完的な十分に確立されたモデルで特徴付ける。
【0160】
マクロファージスクリーニング。全体的な方法を図12Aに描写する。実施例2及び3においてラットマクロファージで行ったのと同様に、ヒト骨髄単核細胞を取得し、IMDM(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、及びヒトM-CSF[R&D Systems]を補充した)中で分化させて、6~7日間にわたってHMを作出する。図12Bのデータは、HMが培養可能であること、及びそれらがIL10 mRNA上方制御に関してEV-YF1に同様に応答することを検証する。TY4及び誘導体を合成し、5μlの低分子RNAトランスフェクション試薬(DharmaFECT、GE)と混合して、無血清培地中で最終体積100μlとする。撹拌及びインキュベーション(リポソーム-RNA複合体を形成するため)の後、調製物をHM培養培地に最終濃度80nMまで添加する。同じプロセスを、TY4の新しい化学的バリアントのそれぞれ及び不活性なスクランブル配列を用いて繰り返す。24時間後にRNAを抽出し、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)による分析に供して、抗炎症性サイトカインIL10、誘導性一酸化窒素合成酵素(NOS2)、及び内因性対照として使用されるハウスキーピング酵素であるHPRT1の転写物レベルを決定する。IL10は、正の効力マーカーとして機能し、誘導性一酸化窒素合成酵素(NOS2)は、負の効力マーカーとして機能し得る。このスクリーニングを通過し、インビボ試験に進むために、任意の所与のバリアントは、NOS2 mRNAレベルを増加させずに、IL10 mRNAレベルを少なくとも3倍増加させる(両方ともHPRT1 mRNAレベルによって正規化され、スクランブル配列で形質導入されたHMにおけるmRNAレベルと比較して)。
【0161】
げっ歯類モデル。HFpEFのマウスモデル(モデル1)は、予備的データがTY4による疾患修飾生物活性を示すものである(図8A~8M)。野生型マウスに、高脂肪食、及びL-NAMEを補充した水(又は健康な対照として通常の食餌及び水)を合計15週間与える。(肥満及び拡張機能障害がすでに明らかである)5週間において、動物を、候補分子又はビヒクル対照を受けるように無作為に割り当てる。動物は、r.o.注射又は経口により、0.15μg/g体重の開始用量で、ncRNA又はプラセボの週2回の注入を受ける。用量及び/又は投与間隔を、体系的な用量確認研究の一部として調整する。有益な結果を達成するために、用量漸増研究を実行することができる。投与レジメンが確立されたら、血圧、心エコー検査、運動持久力、及び血清BNP(心機能のバイオマーカー)を2週間ごとに評価する。研究のエンドポイント(15週間の高脂肪食+L-NAME、及び介入開始から10週間後)において、最終的な表現型決定を実施し、組織学のために麻酔下で心臓を取り出す。心筋組織を切片化し、線維化(マッソントリクローム)、炎症(ヘマトキシリン及びエオシン、並びにCD45[全白血球について]及びCD68[マクロファージについて]に対する免疫組織化学)について染色する。
【0162】
数ヶ月の確立された疾患にわたり無視できるほどの死亡率を有する2ヒットマウスモデルと、高血圧、インスリン抵抗性、及び高脂血症の併存疾患を有するDahl塩感受性(DS)ラットとを使用する。2ヒットモデルとは異なり、高塩分食を摂取したDSラットは、重篤な、急速に進行する疾患を発症し、高い死亡率を有し、生存率をエンドポイントとして使用することが可能になる。DSラットを、午前6時から午後6時までの12時間の明暗サイクルで維持し、DSラットは食料及び水に無制限にアクセスできる。7週齢のDSラットを、低塩食(0.3%塩;対照)又は高塩食(8%塩)に割り当てる。6~7週間後、動物を、心エコー検査によって表現型決定して、拡張機能障害(E/A及びE/e'比)を確認及び定量化し、収縮機能障害又はLV拡張を調べる(高塩食が与えられた本発明者らのDSラットの約10%はHFrEFを発症し、これらは除外することができる)。ベースラインの表現型決定後、ラットを、上記の投与レジメン(必要に応じて調整される)を使用して、プラセボ又は各ncRNAで処置する。介入後、動物を、死亡又は4週間(いずれか早く来る方)まで追跡する(その時点でのプラセボラットにおけるその時の死亡率は約50%である)。生存動物を、4週間において再び心エコー検査を使用して徹底的に表現型決定し、その後、ラットを安楽死させ、組織学のために心臓を取り出す。
【0163】
実施例8
この非限定的な実施例は、マクロファージとの共培養におけるヒト同種異系CDC(臨床的に関連性のある前駆細胞集団)を使用するインビトロアッセイにおいて損傷修飾生物活性を評価するための実験設計を示す(図13)。
【0164】
臨床使用に適格な、バンクに預けられた2つの株のそれぞれからのヒトCDCを、アポトーシスを誘導するために、無血清条件及び酸化ストレスにさらす(H2O2、75μmol/Lで20分間)。その後、ストレスを受けたCDCを、本開示の治療用化合物(例えば、TY4又はその誘導体)に又はトランスフェクション試薬単独に曝露されたヒトマクロファージ(HM)と24時間共培養する。6時間の共培養後、CDCアポトーシスを、TUNELアッセイによって定量化する(TUNEL+CD105+細胞/総CD105+細胞[%])。
【0165】
本開示の治療用化合物(例えば、TY4又はその誘導体)の直接的な効果を試験するために、化合物(又はトランスフェクション試薬単独)をCDCに直接曝露させ、介在HMなしで、アポトーシスの差を定量化する。
【0166】
一部の実施形態では、ヒトマクロファージ(HM)をTY4及び/又はその誘導体で処理することにより、ストレスを受けたCDCにおけるアポトーシスを減少させる又は抑制するHMの能力が誘導又は促進される。一部の実施形態では、ストレスを受けたCDCをTY4及び/又はその誘導体で処理することにより、アポトーシスが減少する又は抑制される。
【0167】
実施例9
この非限定的な実施例は、TY4及び/又はその誘導体のインビボ送達のための様々な製剤を試験するための研究設計を示す(図13)。
【0168】
PEGシールディング。PEG-カチオン性脂質複合体(PCLC)を、2kDaポリエチレングリコール(PEG2000;30%v/v)とDharmafectとの混合物を使用して形成させる。複合体を、以前の調製物から適合された5回の凍結/解凍サイクル(液体窒素/60℃)を使用して形成させる。単一の凍結-解凍サイクルは、混合物を-190℃(液体窒素)で5分間凍結し、その後60℃で5分間解凍することを含む。TY4(及び/又はその誘導体)のPCLCとの複合体を、適切な濃度のTY4(及び/又はその誘導体)を5μlのPCLCと混合し、最終体積100μlとすることによって作製する。調製物を、撹拌しながら室温で5分間インキュベートする。
【0169】
一部の実施形態では、TY4(及び/又はその誘導体)は、PCLCとの複合体として製剤化される。一部の実施形態では、TY4(及び/又はその誘導体)の医薬組成物は、TY4(及び/又はその誘導体)及びPCLCを含む。
【0170】
実施例10
この非限定的な実施例は、エキソソームにパッケージ化された化学修飾RNAの細胞取り込みを示す。
【0171】
GFPをコードするLNA修飾mRNAを、CDc-EVにロードした。最初に、修飾mRNAを含有する標準配合リポソームを作出した。修飾mRNA-リポソーム製剤を、CDc-EV(培養中のヒトCDCによって馴化された無血清培地から単離された)と37℃にてシェーカー中で30分間混合した。動的光散乱(NanoSight NS300)によって測定した、リポソーム-エキソソーム複合体のサイズ分布は、複数のピークを明らかにし(図14A)、これは不均一な集団を示した。エキソソームを選抜するために、抗CD9、抗CD63、及び抗CD81抗体(これらすべてはエキソソーム特異的表面タンパク質を標的とする)による免疫沈降を使用した。図14Bに示すように、免疫沈降体は、エキソソームの特徴である単一ピーク(直径約120nm)を示した。qPCRによって、GFP mRNAレベルは、対照エキソソーム中よりも顕著により高かった。培養中の新生ラット心筋細胞に免疫沈降したエキソソームを添加することにより、24時間後に落射蛍光により観察した場合、GFP発現が誘導され(図14C)、エキソソームにロードされた修飾GFP mRNAからの機能的導入遺伝子発現の能力が確認された。
【0172】
一部の実施形態では、本開示の治療用化合物、例えばTY4及び/又はその誘導体は、エキソソームにロードされる(図13)。一部の実施形態では、本開示の治療用化合物(例えば、TY4又はその誘導体)はCDC-EVにロードされ、CDC-EVを選抜するために免疫沈降が使用される。
【0173】
実施例11
この非限定的な実施例は、TY4及び/又はその誘導体のインビボ送達のための様々な投与経路を試験するための研究設計を示す(図13)。
【0174】
インビボ研究。実施例9及び10に示すものを含む3つの製剤(デフォルト、PEG、エキソソーム)を、マウスHFpEFモデルにおいて疾患修飾生物活性について比較する。表現型決定及び最終解析を、実施例7に示すように実施する。同様に、初回用量の選択、並びに用量及び投与間隔の変更を、実施例7に示すように行う。好ましい投与レジメン及び製剤を選択したら、実施例6におけるアプローチを使用して、生体内分布を評価する。
【0175】
好ましい製剤を選択する際に考慮されるべき基準は、心機能、及び血清バイオマーカー、運動耐性に対する治療利益、及び組織学的利益(線維化及び炎症に対する)の大きさを含み得る。
【0176】
一部の実施形態では、従来のトランスフェクション試薬と混合されたTY4(及び/又はその誘導体)のリポソームは、静脈内又は経口投与によって対象への治療有効量のTY4(及び/又はその誘導体)のインビボ送達を提供する。一部の実施形態では、TY4(及び/又はその誘導体)のPEGシールディングは、静脈内送達後のリポソームの取り込み、及び/又はペイロード送達、及び/又はTY4(及び/又はその誘導体)の薬物動態を改善する。一部の実施形態では、TY4(及び/又はその誘導体)のPEGシールディングは、TY4(及び/又はその誘導体)の経口取り込みを促進する。一部の実施形態では、TY4(及び/又はその誘導体)のPEGシールディングは、静脈内送達後のリポソームの取り込み、及び/又はペイロード送達、及び/又はTY4(及び/又はその誘導体)の薬物動態を改善する。一部の実施形態では、TY4(及び/又はその誘導体)のPEGシールディングは、TY4(及び/又はその誘導体)の経口取り込みを促進する。
【0177】
実施例12
この非限定的な実施例は、経口投与のためのカゼインを有するCDC-EVの製剤を示す。
【0178】
経口的に与えられた場合、変化していないCDc-EVは取り込まれ得る。母乳中の主要なタンパク質であるカゼインは、摂取されたCDc-EVの取り込み及び生物活性を増強し、血球において遺伝子発現を変化させ、mdxマウスにおいて筋機能を増強することができる。
【0179】
経口取り込みの定量化。リポソーム又はEVを、実施例11において上記のように計数する(NanoSight)。107個の粒子の開始「用量」を選択する。本開示の治療用化合物(例えば、TY4及び/又はその誘導体)を、そのまま投与するか、又はリン酸緩衝食塩水(PBS)中の8%カゼイン溶液と混合する。各治療用化合物製剤、又はカゼイン溶液と各治療用化合物製剤との混合物を、18時間の食料のみの絶食後にHFpEFマウスに強制経口投与し、18時間の食料のみの絶食後にPBS単独又は8%カゼイン溶液単独を与えた場合と比較する。各試験品の経口投与から1時間後、RNA抽出のために下大静脈から血液を収集する。血液への取り込みを、RNA単離法を使用して、qPCRにより全血中の治療用化合物レベルを測定することによって定量化する。実施例6におけるアプローチに従って、測定されたPCRサイクルを、既知レベルのTY4をマウス血液に添加することによって作出された標準に対して比較する。TY4は、ヒト特異的配列に由来するため、マウスにおけるバックグラウンドレベルは、信頼できるPCR検出の限界を下回る。さらなる特徴付けのための選択は、血液中のTY4の測定されたレベルに基づく。qPCRによって対照の2増幅サイクル[Ct]又はそれより早くTY4が検出された場合、製剤(カゼインの有無にかかわらず)は、経口送達をもたらすと考えることができる。一部の実施形態では、製剤は、qPCRにより最も近い競合物より>3低いCtにおいて検出を提供する。製剤は、インビボ生物活性についてさらに試験してもよい。
【0180】
インビボ生物活性。疾患修飾生物活性を評価するために、マウスHFpEFモデルを使用する。高脂肪食+L-NAMEの開始から5週間後に開始して、HFpEFマウスに、1日置きに、ビヒクル(PBS)、及び進歩した製剤のそれぞれ(カゼインあり又はなし)を与える。表現型決定及び最終解析は、実施例7で説明したものに従う。好ましい投与レジメン及び製剤を選択したら、実施例6におけるアプローチを使用して、生体内分布を評価する。
【0181】
一部の実施形態では、TY4(及び/又はその誘導体)(リポソーム又はCDC-EV中)は、カゼインとともに製剤化される。一部の実施形態では、TY4(及び/又はその誘導体)の医薬組成物は、リポソーム又はCDC-EV中のTY4(及び/又はその誘導体)、及びカゼインを含む。一部の実施形態では、TY4(及び/又はその誘導体)の医薬組成物は、リポソーム又はCDC-EV中のTY4(及び/又はその誘導体)、及び8%カゼインを含む。一部の実施形態では、TY4(及び/又はその誘導体)(リポソーム又はCDC-EV中)及びカゼイン、例えば8%カゼインの製剤は、TY4(及び/又はその誘導体)の経口取り込みを促進する。
【0182】
実施例13
この非限定的な実施例は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのモデルにおけるTY4の治療効果を示す。
【0183】
10ヶ月齢の雌性mdxマウスに、メチル化EV-YF1(Y RNAme)、TY4、又はビヒクル対照を週1回投与した(図15)。心臓及び筋肉の機能を、2週間ごとに測定した。
【0184】
運動耐性は、EV-YF1及びTY4で処置されたmdx動物において、ビヒクル対照と比較して増加した(図16A~16D)。EV-YF1処置動物における運動耐性の増加は一過性であり、2週目及び4週目あたりでピークに達したが(図16B及び16D)、TY4で処置された動物は、2週目から8週目まで運動耐性の持続的な増加を示した(図16C及び16D)。
【0185】
強縮トルク及び単収縮トルクによって測定した場合の筋機能は、EV-YF1及びTY4で処置されたmdx動物の骨格筋において、ビヒクル対照と比較して改善した(図17A~17F、18A)。対照動物では、筋機能は、実験の過程で徐々に低下した(図17A、17B、18A)。対照的に、EV-YF1及びTY4処置は、mdx動物における筋機能の悪化を予防した(図17B、17C、17E、17F、18A)。EV-YF1処置動物では、強縮トルクは経時的に比較的一定のままであったが(図17B、18A)、TY4で処置された動物は、経時的に強縮トルクの増加を示した(図17C、18A)。したがって、TY4は、mdx動物における筋機能の改善に関して、EV-YF1よりも大きな治療効果を示した(図18A、18B;*p<0.05、**p<0.01)。
【0186】
一部の実施形態では、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)を有する対象へのTY4の投与により、筋ジストロフィー、又はその1つ以上の症状が治療される。一部の実施形態では、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)を有する対象へのTY4の投与により、運動耐性が改善する。一部の実施形態では、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)を有する対象へのTY4の投与により、持続期間にわたり運動耐性が改善する。一部の実施形態では、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)を有する対象へのTY4の投与により、投与期間にわたり運動耐性が改善する。一部の実施形態では、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)を有する対象へのTY4の投与により、骨格筋機能が改善する。一部の実施形態では、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)を有する対象へのTY4の投与により、骨格筋機能の悪化が予防される。一部の実施形態では、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)を有する対象に投与されるTY4の治療効果は、期間及び/又は効果において、EV-YF1の治療効果よりも大きい。一部の実施形態では、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)を有する対象に投与されるTY4の治療効果は、EV-YF1の治療効果よりも持続する。
【0187】
実施例14
以下の材料及び方法を、実施例15~22に使用した。
【0188】
実験動物
すべての研究は、施設内動物実験委員会ガイドラインに従ってCedars-Sinai Medical Centerで実施した。
【0189】
駆出率が保持された心不全のマウス2ヒットモデル。
8~10週齢の雄性C57BL/6マウスを、Charles River laboratoriesから入手した。マウスを12:12時間の明暗サイクルで制御された状態に収容し、マウスは食料(対照群の場合は2916、Teklad、及び高脂肪食群の場合はD12492、Research Diet)及び水に無制限にアクセスできた。pHを7.4に調整した後、L-NAME(Nω-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル塩酸塩、N5751、Millipore sigma 0.5g/l)を飲料水に添加した。
【0190】
血圧分析:収縮期血圧及び拡張期血圧を、BP-2000(Visitech System)を使用して、意識のあるマウスで非侵襲的に測定した。マウスを、37度の温度下で個別の保持器に入れた。血圧を、セッションあたり少なくとも20回記録した。
【0191】
心エコー検査:心臓の機能及び形態を、全身麻酔下で、Vevo 3100(VisualSonics)を使用した経胸壁心エコー検査によって評価した。心尖部四腔像を、僧帽弁レベルでのパルス波及び組織ドップラーイメージングを使用して、拡張機能測定のために実施した。心エコー検査中、マウスの体温を制御し、イソフルランを1.0%未満に減少させ、心拍数を420~470bpmの範囲に維持するように調整した。
【0192】
ラット虚血/再灌流モデル:I/Rモデル、心室内及び眼窩後注射。すべてのラットを、14時間/10時間の明暗サイクルの、病原体のない施設(ケージ床材:Sani-Chips、PJ Murphy)に収容し、食料(PicoLab Rodent Diet 20[no. 5053]、Lab Diet)及び水を自由に供給した。インビボで、実験プロトコールを、7~10週齢の雌性Wistar-Kyoto(Charles River Labs、Wilmington、MA)に対して実施した。虚血性傷害を誘導するために、ラットに全身麻酔を行い、次いで、第四肋間腔で開胸術を実施して、心臓及び左前下行枝(LAD)を露出させた。次いで、7-0絹縫合糸を使用して、左前下行枝を結紮し、続いてこれを45分後に除去して20分間再灌流させた。DharmaFECTトランスフェクション試薬(Horizon Discovery)とともに製剤化したビヒクル(PBSのみ)、TY4(0.15μg/g)、TY4スクランブル(0.15μg/g)を、球後腔に注射した。
【0193】
ラット梗塞サイズの測定:I/R傷害から2日後、心臓を拡張期に停止させるために、10%KCLをLVに注射した。次いで、心臓を採取し、PBSで洗浄し、次いで梗塞域上、心尖部から基部まで1mmの切片に切断した。切片を1%溶液2,3,5-トリフェニル-2H-テトラゾリウムクロリド(TTC、Sigma-Aldrich)とともに37℃、暗所で30分間インキュベートし、PBSで洗浄した。次いで、切片を画像化し、重量測定した。梗塞域(白)を、生存組織(赤)から明示し、分析した(ImageJソフトウェア)。梗塞質量を、次の式に従って組織切片で計算した:(梗塞面積/総面積)/重量(mg)。
【0194】
心臓トロポニンIのELISA:血液を、動物から24時間において(尾静脈から)、又は研究エンドポイントにおいて(心臓から)EDTAチューブ中に収集した。4℃で30分間静置した後、4000rpmで15分間遠心分離した後に血漿を得た。心臓トロポニンIを、RAT cardiac troponin-I elisa kit(Life Diagnostics)を使用して、製造業者のプロトコールに従って定量化した。
【0195】
ブタ虚血/再灌流モデル:心筋梗塞を、雌性成体Yucatanミニブタにおいて誘導した。同様のサイズ(30~35kg)の年齢を一致させた動物を登録した。標準的なバルーン血管形成術用カテーテル(TREK)を、左前下行枝(LAD)の近位3分の1にある第一対角枝の遠位側に進めた。バルーンを90分間膨張させ、その後、48時間の再灌流が続いた。再灌流から30分後に、動物は、0.15μg/gのTY4、スクランブル、又はビヒクル(食塩水)対照のいずれかを受けた。再灌流後48時間において心臓MRIを実施した。梗塞サイズを、ゲンチアナバイオレット、チオフラビンT、及びトリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)染色を使用して決定した。この研究は、Cedars-Sinai Medical Centerにおける施設内動物実験委員会によって承認されたプロトコールに基づいて実施した。
【0196】
デュシェンヌ型筋ジストロフィーのMdxマウスモデル:8週齢のMdx動物(及び健康な野生型、年齢を一致させた対照)に、TY4又はビヒクル(0.15μg/g、週2回)の経口注入を8週間与えた。
【0197】
マウス強皮症モデル:野生型マウスは、ブレオマイシン硫酸塩の皮下注入を3週間受け、その後、TY4、スクランブル又はビヒクル(0.15μg/g、週2回)の週2回の経口投与が4週間続いた。
【0198】
運動持久力試験
マウスを、5度の仰角でExer-6げっ歯類トレッドミル(Columbus Instruments)内に置いた。最初に、速度を、5m/分ずつ2分間増加させ、速度は5分間、10m/分のままとした。次いで、マウスが疲れ果てるまで、速度を2m/2分ずつ増加させた。疲労は、マウスが10秒間でショックグリッドから戻れないことと定義した。
【0199】
ウエスタンブロット
マウス組織からのタンパク質抽出物を、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤(78442、Thermo Scientific)を含有するRIPA緩衝液(89900、Thermo Scientific)中での溶解によって調製した。タンパク質試料(10~30μgの間の正規化値)を、ゲル電気泳動(NUPAGE4%~12%Bis-Trisゲル、NP0336 Thermo Fisher Scientific)に対して分離し、Trans-Blot Turbo Transfer System、Bio-Radを使用してニトロセルロースメンブレンに転写した。タンパク質を、以下の一次抗体:p21(ab109199、abcam)及びGAPDH(3683S、Cell Signaling technology)で検出した。
【0200】
RNA単離及びqPCR
全RNAを、RNeasy plus kit(74136、QIAGEN)及びMaxtract High density(129056、QIAGEN)を使用して、マウス組織から抽出した。cDNAを、High capacity cDNA reverse transcription kit(4368813、Applied Biosystems)を使用して、製造業者のプロトコールに従って、RNAから合成した。リアルタイムPCR(QuantStudio 12K Flex Real-Time PCR system; Thermo Fisher Scientific)を、以下のTaqMan Gene Expression Assayプローブ;IL-6(Mm00446190_m1)、IL1-b(Mm00434228_m1)、p21(Mm00432448_m1)を使用して三連で実施し、ddCt法によって分析した。
【0201】
RNA配列決定
細胞及び組織RNA試料を、以前記載されたように18、Cedars-Sinai Genomics Coreで配列決定した。全RNAを、Illumina NextSeq 500プラットフォームを使用して分析した。
【0202】
骨髄細胞の単離、マクロファージの分化、及び活性化
大腿骨を、7~10週齢のWistar Kyotoラットから単離した。PBS(1%FBS、2mM EDTAを含有する)で洗い流し、次いで70μmメッシュを通して濾過することによって、骨髄を単離した。赤血球を、ACK緩衝液(A1049201、Invitrogen)で溶解し、次いで、プレーティングのために10ng/mlのM-CSF(RP8643、Fisher Scientific)を含有するIMDM(Gibco)に再懸濁した。培地を、7日目まで2~3日ごとに交換し、7日目の時点で骨髄由来マクロファージ(BMDM)を取得した。DharmaFect1を使用して、BMDMに、YRNA(80nM)をトランスフェクトした。LPS曝露について、マクロファージを、ビヒクル、TY4(80nM)、TY4スクランブル対照(80nM)で3時間前処理し、その後、リポ多糖(10ng/ml;Cayman Chemical)への曝露が続いた。
【0203】
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)
IL-6及びBNP血漿レベルを、以下のELISAキット:Mouse IL-6 Quantikine ELISA Kit(M6000B、R&D systems)、Mouse BNP EIA(EIAM-BNP-1、RayBiotech)を使用して、製造業者の説明書に従って分析した。
【0204】
一晩インキュベートした後、細胞を洗浄し、RNeasy plus kitを使用したRNA抽出のために収集した。
【0205】
qPCRによるTY4の生体内分布
TY4を、両方の眼窩後注射によって投与し、投与から30分後に血液及び組織を収集した。収集した血液を、室温で2時間凝固させ、その後、2000×gで20分間遠心分離した。
【0206】
統計分析
試料数(n)、記述統計学(平均及び標準偏差)、及び有意性を含む統計パラメータを、図及び図の説明に報告する。群間の差を、スチューデントのt検定又は分散分析を使用して、統計的有意性について調べた。p値<0.05を有する差は、有意とみなした。
【0207】
参考文献
【0208】
実施例15
上記の実施例3で論じたように、TY4はEV-YF1に由来しており、TY4は、その5'末端における点変異(GからC)、及び下線を引いた残基における6個のロックド核酸(LNA)修飾を含有する(図19A)。対照として、無作為な順序であるがTY4と同じヌクレオチドを含有し、同じ位置に6個のLNAを含有するスクランブルバージョン(下の行)を作出した。TY4構造のインシリコ予測12は、断続的なステムループ構造と、3'及び5'末端によって形成された外部ループとを実証した(図19B)。図4Bに示す骨髄由来マクロファージにおいてTY4によって誘導される重大なトランスクリプトーム変化を、図19Cにおいて異なる形式でも表す。図4Cに見られるように、IL10発現の上昇に加えて、炎症(図19D)、線維化(図19E;図20A、20B)、及び肥大(図19F)に関連性のある経路における遺伝子の発現における注目に値する変化も観察された。潜在的な上流調節因子の分析により、Hippo/Yap経路(図19G)及びErk/Mapキナーゼ経路(図19H)のTY4誘導性抑制が同定された。これらの広範な変化は、デアセチラーゼ及びメチルトランスフェラーゼを含むヒストン修飾遺伝子発現の変化によってさらに明らかになり(図20C)、その結果は修飾ヒストンELISAアレイで明らかであった(図20D)。これらの所見により、炎症、肥大、及び線維化を制御する主要調節因子及び下流シグナルに対する影響が明らかになった。根本的影響のさらなる証拠として、TY4に曝露されたマクロファージは、ビヒクル又はスクランブルと比較して、細胞周期阻害剤p21(図19I)、インフラマソームシグナル伝達(IL-1b;図19J)、及び炎症(NFkB及びIL6;それぞれ図19K図19L)の抑制を示した。
【0209】
実施例16
この非限定的な実施例は、実施例5に記載されるような、駆出率が保持された心不全(HFpEF)のモデルにおけるTY4の治療効果を示し、結果のさらなる分析を提供する。
【0210】
駆出率が保持された心不全(HFpEF)は、全身性疾患であり13、従来の療法に対して難治性であり、心肥大14、線維化15、及び炎症16を特徴とする。TY4がこれらすべてのプロセスを阻害すると思われることを考慮して、高脂肪食及びL-NAME17によって誘導されるHFpEFのマウスモデルにおけるTY4を研究した。5週間後、HFpEFの兆候が明らかである場合、TY4を、様々な投与頻度(隔週、週1回、及び週2回;投与あたり0.15μgのTY4/g体重)で静脈内(IV)投与し、結果をIVビヒクルと比較した(図21A)。単回IV投与から30分後、TY4は、肝臓及び心臓においてバックグラウンドを超えて検出可能であった(図22A)。TY4は、拡張機能障害(心エコー検査パラメータE/e'が高いほど、心機能が悪化している;図21B)、運動持久力(図21C)、及び循環BNP(心不全のマーカー;図21D)及びIL6(炎症性サイトカイン;図21E)を含む、HFpEFの様々な主要な兆候に対して有益な効果を有した。10週間の投与後、HFpEFにおいて予想されたように、すべての群は、正常な駆出率を有した(対照、ビヒクル及びTY4処置群からの代表的な試料によって示される)(図22B)。TY4を受けた群はまた、より低い血圧を有した(拡張期血圧よりも収縮期血圧においてより一貫した低下があった;図22C及び22D)。すべての投与レジメンは拡張機能及び血清バイオマーカーに対して有効であったが、運動持久力は、週1回又は2回のTY4でのみ改善した(図21C)。トランスフェクション試薬なしでTY4を投与すると、その生物活性が消失した(拡張機能[図22E]、運動持久力[図22F]、又は循環BNPレベル[図22F]に変化はなかった)。したがって、TY4は、HFpEFの全身兆候及び心臓兆候を逆転させる。
【0211】
自然免疫応答の非特異的誘導は、心機能を適度に改善し得る。TY4の注射は自然免疫を活性化し得るため、本発明者らは、TY4をビヒクルではなく、同じヌクレオチド含有量を有するTY4のスクランブルバージョンと比較した(図19Aを参照)。図32、左パネルは、EFが、試験したすべての群で同様であり正常であったことを示す。図32、右パネルは、TY4を受けたマウスとは異なり、Scrを受けたマウスが、ビヒクルを受けたマウスと同様の拡張機能障害を発症したことを示す(図8Dと比較)。したがって、スクランブル(Scr)は、HFpEFマウスにおける拡張機能障害を治療できず、一方TY4は治療できた。
【0212】
実施例17
HFpEFマウスにおけるTY4の利益の根底にある、心臓組織のRNA配列決定は、TY4が遺伝子発現を広範にリセットすることを示し(ヒートマップ、図24A)、これは構造(図23A)、古典的Wntシグナル伝達(図23B)、カルシウムハンドリング(図23C)、電気的再分極(図23D)、及び溶質輸送体ファミリーの膜輸送タンパク質(図23E)に関連性のある遺伝子ファミリーの正常化を含んだ。p21/Mapキナーゼ経路(図24B)を含む上流調節因子の正常化は、管腔内ERストレスセンサー(図24C)、インフラマソーム(図24D)及び炎症性メディエーター(図24E)を含む主要な細胞ストレス経路の低下と関連していた。マクロファージで以前に同定されたp21遺伝子発現のTY4誘導性低下(図19I)は、HFpEF心臓ではさらにより重大であり(図24F)、タンパク質レベルで確認された(図24G)。p21は、TY4処置動物の心臓だけでなく、肺、肝臓、脾臓、腎臓、及び血清でも抑制された(転写物、図25A~25D;タンパク質、図25E、25F)。TY4処理マクロファージにおいて抑制されたクロマチン修飾遺伝子の中には(図20C)、p21媒介性ストレスの増強因子であるSmyd4があった。一貫して、Smyd4、及びp21シグナル伝達に関連する別のヒストンメチルトランスフェラーゼ(Prdm2)の転写物が、TY4処置HFpEF心臓において抑制されることが見出された(図25G)。しかし、その2つのうち、Smyd4のみがタンパク質レベルで抑制された(図24I;Prdm2、図25Hを参照)。TY4のサイズがマイクロRNA及びsiRNAのサイズと同等であるため、本発明者らは、TY4が3'非翻訳領域(UTR)に結合してこれらの遺伝子を同様に転写調節するかどうかを確かめるために試験した。HEK293細胞におけるルシフェラーゼ3'UTRアッセイからの結果は、TY4が、p21又はSmyd4の転写抑制を媒介しないことを示すため、別の機構が作用しているに違いない(図24J)。
【0213】
実施例18
実施例18~21は、TY4が、心筋梗塞、筋ジストロフィー及び強皮症のモデルにおいて有効であることを示す非限定的な実施例である。
【0214】
慢性疾患であるHFpEFにおけるTY4の劇的な疾患修飾効果を考慮して、TY4が急性心臓保護効果を発揮できるかどうかを調査した。心筋梗塞のラットモデル(図26A)において、再灌流から20分後のTY4(0.15μg/g)の単回IV投与により、ビヒクル又はスクランブル対照と比較して、循環心臓トロポニンレベル(図26B)及び瘢痕サイズ(図26C、26D)が減少した。
【0215】
実施例19
臨床的関連性を拡張するために、心筋梗塞のブタモデルを研究した(図27A)。ラットにおけるように、再灌流後のTY4の単回IV注入は、ビヒクル又はスクランブル群と比較して、心筋梗塞から48時間後に、保持された全体的機能(駆出率、図27B)及び減少した瘢痕サイズをもたらした。
【0216】
実施例20
この非限定的な実施例は、実施例13に記載されるような、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのモデルにおけるTY4の治療効果を示し、結果のさらなる分析を提供する。
【0217】
DMDは、心臓及び骨格筋における筋肉の喪失、炎症及び線維化を誘導する遺伝性疾患である。DMDのmdxマウスモデルにおいて、TY4の週2回のIV注入(図28A)により、対照又はスクランブルと比較して、駆出率が改善し(図28B)、運動持久力が増加した(図28C;図16A及び16Cを参照)。ヒラメ筋の分析により、線維化の軽減(図28E、28F)及び強縮力発生の増加(図28D;図17A及び17Cを参照)が実証された。
【0218】
実施例21
強皮症は、進行性の皮膚肥厚、並びに皮膚、心臓及び肺の線維化を特徴とする自己免疫障害である。強皮症をモデル化するために、動物にブレオマイシンを3週間にわたって皮内注射し、その後、4週間のTY4、スクランブル、又はビヒクルが続いた(図29A)。TY4は、ヒドロキシプロリン含有量によって測定した場合、皮膚肥厚及び皮膚線維化を軽減し(図29D)、運動持久力を改善し(図29B)、肺重量対体重比を正常化し(図29C)、体重減少を軽減した。
【0219】
したがって、実施例18~21は、TY4が、虚血、筋変性、及び自己免疫という多様な病理学的プロセスに対して非常に有効であることを実証する。さらに、これらの実施例は、TY4が肥大性カスケード及び線維化促進性カスケードの両方を抑制するモデルと一致している(図30)。
【0220】
実施例22
この非限定的な実施例は、TY4活性を評価するためのインビトロアッセイを示し、TY4による骨髄由来マクロファージの前処理が、炎症促進性遺伝子発現によって示されるように、LPS媒介性炎症促進活性化を弱めることを実証する。
【0221】
TY4活性を、初代BMDM活性化アッセイを使用して評価した。炎症応答を刺激するために、BMDMをリポ多糖(LPS)に曝露した。単核細胞を、野生型マウスの大腿骨から単離した。BMDMを、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)への5日間の曝露によって生成し、次いで、80nM TY4、ビヒクル(食塩水;陰性対照)、又はJSH23(NFkBの小分子阻害剤;陽性対照)と3時間共培養した。次いで、BMDMをLPSに曝露し、遺伝子発現分析のために12時間後にRNAを単離した。LPSで刺激されたBMDMのTY4への曝露は、ビヒクル群と比較して、IL10の分泌を促進し、炎症マーカーNOS2(図31A)、IL6(図31B)、IL1b(図31C)、及びIL2b(図31D)を弱めた。
【0222】
実施例23
この非限定的な実施例は、実施例4に記載されるような、HCMのモデルにおけるTY4の治療効果を示し、結果のさらなる分析を提供する。この非限定的な実施例は、静脈内TY4が、肥大型心筋症のマウスモデルにおいて、運動持久力を改善しながら、心肥大及び全身性炎症を軽減することを示す。
【0223】
標的適応症であるHCMにおけるTY4の疾患修飾生物活性を評価するために、実施例4に記載されるように、特に致死的なヒトHCM変異をモデル化するトランスジェニックcTnI146Glyマウスを使用した。心エコー検査により、心室中隔(IVS)厚の顕著な減少(図33A)、パルス波ドップラーで測定した場合の流出速度の減少(PW、図33B)、運動耐性の増加(距離、図33C)、及び心不全(HF)の循環バイオマーカーのレベルの低下(BNP;図33D)が明らかになった。これらのパラメータはすべて疾患に関連性がある:肥大の直接的な測定値としてのIVS厚、心室が血液をどれだけうまく排出できるかの指標としてのPW、全体的な身体能力の統合的尺度としての距離、及びHFのバイオマーカーとしてのBNP。したがって、TY4は、HCMのモデルにおいて非常に治療効果がある。
【0224】
実施例24
この非限定的な実施例は、TY4のIV及び経口製剤を示す。
【0225】
研究グレードのTY4は、Integrated DNA Technologies(IDT, Inc.)により商業的に合成した。トランスフェクション及び静脈内(IV)製剤のために、RNAオリゴを、低分子RNAのトランスフェクション用のカチオン性脂質であるDharmafect(Perkin Elmer)と混合した。TY4を、Dharmafect1μLあたり20ngのRNAの比で、Dharmafectと混合し、最終体積100μLの無血清培地まで充填した。溶液を、15秒間ボルテックスし(合計3回の撹拌)、RNA-トランスフェクション複合体が形成するように、室温で5分間放置した(図34、IV-TY4)。これは、TY4のインビトロ製剤及びIV製剤を構成した。
【0226】
経口製剤の場合、TY4-Dharmafect複合体を、カゼイン-キトサンミセルにさらに入れた。これは、最初に5%ウシカゼイン溶液をTY4-Dharmafect溶液に体積比1:10で添加し、室温で15分間インキュベートすることによって達成した。カゼインを沈殿させ、TY4-Dharmafectをカプセル化するキトサン-カゼインミセルを形成するために、等体積の0.1%酢酸溶液/0.2%キトサン溶液を添加した。混合物を室温で1時間インキュベートし、この混合物は経口製剤を表した(図34、経口-TY4)。
【0227】
実施例25
この非限定的な実施例は、MIのモデルにおける経口投与されたTY4の治療効果を示す。
【0228】
治療用核酸の経口送達の有効性を評価するために、左前下行枝の45分間の開胸閉塞と、その後の再灌流により、マウスにおいて心筋梗塞をモデル化した。次いで、胸部を閉じた。再灌流から20分後、本明細書で提供されるように、ビヒクル、又は脂質でカプセル化された治療用RNAで構成されるIV組成物、又は脂質ミセル中にカプセル化されカゼイン-キトサンで被覆された治療用RNAを含む経口組成物のいずれかを、マウスに与えた。本明細書における核酸ペイロード使用の非限定的な例は、TY4であった。MIから48時間後に心臓を切除し、梗塞サイズ(IS)を組織学的に定量化した。
【0229】
図35Aは、梗塞サイズに関するプールされたデータを示す。示されるように、IV組成物及び経口組成物の両方が、梗塞サイズの減少をもたらした。特に、TY4の経口送達は、梗塞サイズの減少の増強を示す。各群についての代表的な左心室切片を図35Bに示し、経口処置群は著しく少ない梗塞瘢痕化を示す。心臓損傷のマーカーとして、図35Cは、経口投与されたTY4が、対照と比較して有意な減少をもたらしたことを示す。まとめると、組織学及びトロポニンIについてのデータは、経口送達されたTY4の心臓保護効力を示す上で互いに補強し合っている。
【0230】
これらの所見にさらに基づいて、追加の比較分析を図35D及び35Eに示す。図35Dは、本明細書に開示される実施形態による組成物(例えば、カゼイン-キトサンで被覆されたミセル)に収容されたTY4(又はそのスクランブルバージョン)のIV注射又は経口投与されたTY4を示す。本明細書における追加群は、カゼイン単独(キトサンなし)で被覆されたミセル中にカプセル化された経口TY4を含む。図35Dのデータは、治療用RNAの経口送達に関して上で論じた所見を補強するが、好ましい実施形態により、脂質ミセルがカゼイン及びキトサンの両方で被覆されることも実証する。図35Dの右側の試験群は、カゼインのみで被覆されたRNAカプセル化ミセルである。その群の梗塞サイズは顕著に増加しており、これはTY4のバイオアベイラビリティの低下を示しており、胃の低酸環境において組成物に対する頑強な保護が弱くなったためであると考えられた。図35Eは、心臓トロポニンIの測定に関して、有効性の低下がより小さいことを示すが、カゼインのみの製剤は、少なくとも濃度上昇傾向にある(治療効果がより小さい)ようである。まとめると、これらのデータは、本明細書にいくつかの実施形態で提供されるような、カゼイン-キトサン被覆を使用した経口送達TY4の心臓保護効力を裏付ける。
【0231】
実施例26
この非限定的な実施例は、脂質ミセル中にカプセル化され、カゼイン-キトサン複合体で被覆されたTY4の経口製剤が、強皮症の症状を改善することを示す。
【0232】
実施例21に記載される強皮症のモデルを使用して、本明細書で提供されるような、TY4の経口送達用に構成された組成物で動物を処置した。TY4を、カゼイン-キトサンで被覆された脂質ミセル中にカプセル化し、経口送達した。スクランブルRNA配列の経口送達(同じ送達組成物における)を対照として使用した。
【0233】
図36Aは、トレッドミルでの持久力試験に関するデータを示す。示されるように、治療用RNAの経口送達により、持久力が非処置対照マウスの持久力まで完全に戻り、PBS対照及びスクランブルRNA配列対照はそれぞれ持久力の有意な低下を示した。図36Bは、治療用RNAの経口送達により、マウスが、対照と有意に異ならないように体重を維持できたことを示す。図3Cは、各群におけるマウスの心臓重量を体重に関連付ける心臓指数(HI)を示す。非治療群での体重減少から予想されるように、これらの群はHIの上昇を示した。心臓重量の増加(例えば、線維化による)も、HIの増加の一側面を説明する可能性がある。同様に、肺重量を体重の関数として指標化する肺指数(PI)を測定した場合、経口送達された治療用RNAは、非治療群と比較して有意に低下したPIをもたらす(PIは依然として対照より上昇していたが)。図36Eは、肺重量データだけを示し、これはPIデータに対応する。
【0234】
特に心臓測定に目を向けて、図37Aは、線維化に関する組織学データを示す。上の行は、代表的な組織染色を示し、破線のボックスは、2番目の行に提供する拡大図に対応する。経口送達された治療用RNAは、組織の線維化の大幅な軽減を示す。図37Bは、各群についての線維化の定量化を示し、治療用RNAの経口送達が、有意に軽減した心臓線維化をもたらすことを示す。皮膚に影響を与える強皮症の症状に目を向けて、図37C及び37Dは、皮膚の線維化に関する。図37Cは、皮膚に関する組織学データを示し、左上は対照皮膚を示し、右上はビヒクル対照を示し、左下はスクランブルRNAを示し、右下は経口送達されたTY4 RNAを示す。治療用RNAの非限定的な例として、経口送達されたTY4 RNAは、非処置群と比較して、目に見えて少ない皮膚の肥厚/線維化をもたらした。図37Dは、各群についての皮膚の厚さのグラフによりこれを確認し、経口送達された治療用RNAは、対照と有意に異ならない皮膚の厚さをもたらす。
【0235】
様々な炎症性サイトカインの発現レベルに関して、追加の調査を行った。図38A~38Fは、IL1-B(図38A)、IL-6(図38B)、TGFベータ(図38C)、NLRP3(図38D)、p21(38E)、及びIL-4(図38F)の定量化に関するqPCRデータを示す。経口送達されるTY4 RNAを投与した場合、これらのサイトカインのそれぞれは同等であるか、又は発現のわずかな増加のみを示した。したがって、これらのデータは、強皮症に続発する又は強皮症の症状を示すものなどの、線維化及び/又は炎症状態を軽減するためのTY4 RNAの経口送達の有効性を裏付ける。
【0236】
実施例27
この非限定的な実施例は、駆出率が保持された心不全(HFpEF)のモデルにおける、TY4、特に経口投与されたTY4の治療効果を示す。
【0237】
実施例5に記載されるHFpEFのモデルにおける経口投与されたTY4の治療効果をさらに研究した。動物を、循環血中グルコース濃度について評価した。図39Aに示すように、ビヒクル単独による処置は、対照と比較して血中グルコース濃度の上昇をもたらす。本明細書に開示される実施形態によるTY4の経口投与は、HFpEFに関連する肥満に関連し得る、循環血中グルコースレベルの有意な低下をもたらす。図39Bは、ビヒクル処置マウスにおける脂肪蓄積を示す。TY4の経口投与を受けた右端のマウスで示すように、脂肪蓄積の低下がある。
【0238】
実施例5と組み合わせたこれらのデータは、経口送達組成物TY4が効果的にHFpEFを治療できることをさらに補強する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物及び方法は、経口投与された場合、疾患の結果又は症状である炎症及び/又は線維化を効果的に軽減することができる。
【0239】
実施例28
この非限定的な実施例は、脂質ミセル中にカプセル化され、カゼイン-キトサン複合体で被覆されたTY4の経口製剤が、筋ジストロフィーの症状を改善することを示す。
【0240】
経口送達されたTY4の効果を決定するために、12~14ヶ月齢の雌性mdxマウスに、TY4(0.15μg/g体重)又はビヒクルを週2回、8週間与えた。心臓及び骨格筋の機能を、与える前(すなわち、ベースライン)及び8週の研究エンドポイントにおいて測定した。心臓及び前脛骨筋(TA)を解剖し、マッソントリクローム染色用に処理して、間質性線維化を定量化した。
【0241】
図40Aに示すように、軽く麻酔したmdxマウスに経胸壁心エコー検査を実施して、左心室駆出率(EF)を測定した。ベースラインでは、群間で差は検出されなかった。8週間後、経口投与される、治療用RNAの例であるTY4を受けたmdxは、ビヒクル対照と比較してより高いEFを有したが、これは研究期間中に低下した。図40Bに示すように、マッソントリクローム顕微鏡写真及びプールされたデータ(右サブパネル)は、経口投与されるTY4を受けたmdxマウスが、ビヒクル対照マウスよりも少ない心筋線維化を有したことを示す。前下腿筋のインビボ筋機能に目を向けると、その前脛骨筋(TA)はこの筋肉群のトルク出力の約85%を生成し、これは、mdxマウスの足を(力変換器のサーボモーターに取り付けられた)アルミニウムの靴に取り付け、左総腓骨神経を刺激することによって記録した。強縮トルクは、200Hzで記録した。ベースラインでは、群間で差は検出されなかった(図40Cを参照)。8週間後、経口投与されるTY4を受けたmdxマウスは、ビヒクル対照マウスよりも大きなトルクを生成した。図40Dは、筋線維化に関するものであり、マッソントリクローム顕微鏡写真及びプールされたデータ(右サブパネル)を示す。これらのデータは、経口投与されるTY4を受けたmdxマウスが、ビヒクル対照マウスよりも少ない筋線維化を有したことを示す。図40Eは、より多くの筋線維数(1mm2あたり)があることを実証する、収集された生理学的データをまとめて示す。
【0242】
収集された機能的データは、治療用RNAをカプセル化し、カゼイン-キトサン複合体で被覆された脂質ミセルを使用した送達によって経口投与されたTY4の有効性をさらに裏付ける。図40Eは、間質性線維化の減少(図40C、40D)に加えて、TY4をカプセル化する脂質ミセルを使用した送達によって経口投与されたTY4が、TA中の筋線維の数を増加させたことを示す。この生理学的効果は、治療用RNAをカプセル化する脂質ミセルを使用した送達によるTY4の経口投与を受けた動物において、それぞれ、運動能力、心機能及び筋機能の増強を示す機能的アッセイ(図40F~40H)で確認された。二元配置分散分析又は独立したt検定を使用して、群間の統計的有意性を決定した。*P<0.05、**P<0.01。データを平均±SEMとして表す。
【0243】
これらのデータは、TY4をカプセル化し、カゼイン-キトサン複合体で被覆された脂質ミセルを使用した送達によって経口投与されたTY4の有効性をさらに裏付ける。いくつかの実施形態では、経口投与を介してTY4を送達するためのこのような組成物は、RNAのバイオアベイラビリティの増加をもたらし、これは、次に、筋ジストロフィーなどの炎症及び/又は線維化を特徴とする疾患に対する治療アウトカムの向上をもたらす。
【0244】
実施例29
この非限定的な実施例は、マウス骨髄由来マクロファージにおけるTY4についてのインビトロ効力アッセイを示す(図41A)。
【0245】
実験設計
機構的調査に基づいて、TY4は、p21を含む線維化促進経路を標的とすることによって少なくとも部分的にその治療効果を発揮する(図24F、24G)。これは、TY4がSmyd4(その活性がp21を上方制御することが知られているHMT)を抑制した直接の結果として生じる。さらに、p21、NFkB、及びIL6の抑制によって示されるように、p21抑制は、TY4の免疫調節効果を再現する。したがって、様々なTY4バッチ及び製剤の生物活性を確認するために、インビトロ及びエクスビボ効力アッセイを開発する。前臨床研究により、TY4は、注射された動物の血漿においてp21の下方制御をもたらすことが明らかになった(図25E)。これらの所見を考慮して、効力アッセイは、マウス初代BMDMにおけるp21に焦点を当てる。
【0246】
方法
BMDMを、成体FVBマウスの骨髄から取得する(M-CSF分化法を使用して)。細胞を、トランスフェクション試薬Dharmafect中の20nM、40nM、80nM、及び160nM TY4、同じ濃度におけるスクランブル対照配列(無作為配列であるが、TY4と同じヌクレオチド含有量及び修飾を有する)、ビヒクル対照(Dharmafectのみ)、及び食塩水のみの対照に曝露する。3時間後、細胞を、10ng/mlのLPSで18時間チャレンジし、次いで、RNA及びタンパク質をqPCR及びELISA用に単離して、それぞれp21メッセージ及びタンパク質を定量化する。
【0247】
結果及び代替アプローチ
炎症性BMDMのTY4への曝露は、p21 mRNA及びタンパク質レベルの下方制御をもたらす(損傷組織(図24F、24G)及びLPS活性化BMDMに見られる変化を反映する;図31A~31D)。LPS活性化BMDMにおける追加のデータは、TY4による(又は細胞透過性p21阻害剤であるuc2288による)p21の抑制を示したが、スクランブルによるp21の抑制は示さなかった(図41B~41D)。TY4又はp21阻害剤(uc2288)に事前曝露されたBMDMは、LPS曝露後にp21(図41B)並びに炎症マーカーNFkB(図41C)及びIL6の抑制を示した(図41D;群あたりn=4の生物学的反復)(多重比較のためのテューキーの事後検定を用いた一元配置分散分析による分析)。したがって、p21抑制は、TY4治療的生物活性の基礎となる。
【0248】
任意選択で、サイトカインカクテル曝露を使用して、(最初にp21下方制御が観察された)HFpEF組織の慢性炎症環境をより厳密に模倣する。BMDMを活性化し、それらの基礎p21レベルを増加させるために、マクロファージを、インターロイキン6(IL6)、腫瘍壊死因子(TNF)、及びインターロイキン1b(IL1b)中で条件付ける。
【0249】
実施例30
この非限定的な実施例は、経口TY4の効力を評価するためのエクスビボモデルを示す(図41A)。
【0250】
実験設計
エクスビボアッセイは、インビトロ効力アッセイを補完して、生きているモデルにおけるTY4の生物活性を確認し、経口薬物製剤の有効性を確実にすることができる。エクスビボアッセイは、健康なマウスにおける経口-TY4投与に続く、p21下方制御を確認するためのBMDMの単離を含む。
【0251】
方法
野生型FVBの7~10週齢の健康なマウスの雄性及び雌性マウスを、強制投与により経口-TY4、経口-スクランブル、ビヒクル(経口製剤のみ)、又は食塩水を受けるように無作為化する。経口-TY4又はスクランブルの用量は、0.15μg/gの前臨床で特定された用量である。強制経口投与後12時間及び24時間において動物を屠殺する。BMDMを、インビトロモデルについて実施例に記載される方法を使用して骨髄から単離する;RNA及びタンパク質をマウスBMDMから単離して、p21の下方制御が成功したことを確認する。
【0252】
結果及び代替アプローチ
任意選択で、TY4摂取から3時間後にp21を上方制御するために、マウスをインビボでLPSに曝露する。26ゲージ針を使用して、200μLの滅菌食塩水中の致死用量未満のLPSをマウスに腹腔内注射する。任意選択で、動物は、TY4の直接IV(r.o.注射による)注入を受ける。
【0253】
本発明者らが、LPSチャレンジ後でもTY4に応答したp21の変化を見出すことができない場合、本発明者らは、薬物製品の送達を確実にするために動物がTY4の直接IV(r.o.注射による)注入を受ける研究のアームを追加することによって、薬物送達に関するチャレンジを除外する。任意選択で、HCM疾患モデル(モデル2、FVB-cTnIGly146)を使用する(実施例4、23を参照)。
【0254】
実施例31
この非限定的な実施例は、HCMにおける経口製剤化TY4のバイオアベイラビリティの確認を含む、HCMマウスへのTY4の経口送達のための投与戦略の最適化を示す(図42)。
【0255】
HCMのマウスモデルにおける経口投与されたTY4の有効性を、他のモデル(HFpEF:実施例5、27、MI:実施例25、DMD:実施例28)で使用される同じ投与パラダイム及び製剤を使用して確認する。
【0256】
実験設計及び方法
雄性及び雌性の4週齢のcTnI146Glyマウスを、病理の発症を確認するために、0日目に心エコー検査によりIVS厚(IVSd)について評価する。動物を、経口-TY4(0.15μg/g)、経口-スクランブル配列(0.15μg/g)、IV TY4(0.15μg/g;陽性対照として)、及びIV食塩水対照のいずれかの週2回の投与を受けるように無作為化する。処置から1ヶ月後(合計8回の投与)、動物を、パルス波ドップラーを使用してIVSd及び血流速度の変化について評価する。治療効果をより広範に確認するために、血清HFバイオマーカーBNP、運動持久力、及び心臓重量対体重比を評価する。剖検では、組織学による線維化の定量化のために、LV組織を切片化し、マッソントリクロームで染色する。
【0257】
ヒトHCMは、実質的にすべてのサルコメア遺伝子に影響を及ぼす多種多様な変異によって引き起こされる可能性がある。理論に束縛されるものではないが、TY4の作用機序は、根底にあるHCM変異にかかわらず、その生物活性が一般化可能であり得ることを示す。治療原理の一般化可能性を検証するために、生物活性の重要な側面を、α-トロポミオシンにおける疾患変異を模倣する、完全に別個の、十分に特徴付けられたマウスモデル(TpmE180G、別名TM180)で確認する。TM180マウスは、HCMに関連するE180G変異を組み込むように改変された心臓特異的Tpm1(α-トロポミオシン)遺伝子を発現する。ヘミ接合性マウスはHCMを示し、マウスの70%が5ヶ月までに死亡する。TM180マウスは、Jackson Labs(JAX:035611)から購入し、ヘミ接合性になるまで飼育し、心エコー検査、運動持久力、バイオマーカー、及び剖検によって上記のように表現型決定する。
【0258】
結果及び代替アプローチ
経口及びIV TY4の同様の大きさの効果が、様々なエンドポイントで観察される。任意選択で、IV投与と同等の治療効果に到達するために、経口用量を増加させる。
【0259】
実施例32
この非限定的な実施例は、最大有効用量及び最小投与頻度の特定の確認を含む、HCMマウスへのTY4の経口送達のための投与戦略の最適化を示す(図42)。
【0260】
実験設計
HCMの表現型の特徴は、心筋の肥大である。したがって、IVSdを治療効果の尺度として使用して、HCMマウスにおける経口-TY4の最大有効用量を特定する。
【0261】
方法
雄性及び雌性の4週齢のcTnI146Glyマウスを、0日目に心エコー検査によってIVSdについて評価し、次いで、TY4、スクランブル対照又はビヒクルの週2回の投与を受けるように無作為化する。用量は、0.01、0.05、0.15、0.3、及び0.6μg/g(又は経口スクランブル)の範囲である。ビヒクル対照(製剤のみ)も含まれる。処置から4週間後(合計8回の経口投与)、動物を、パルス波ドップラーを使用してIVSd及び血流速度の変化について評価する。より広範な治療効果を確認するために、血清HFバイオマーカーBNP、運動持久力、及び心臓重量対体重比、並びに組織学による線維化を評価する。IVSdの最大変化をもたらす最低用量濃度は、最大有効用量であり、投与頻度研究に使用される。用量は、処置開始から4~8週間後(少なくとも3回の投与を可能にする)に表現型決定(IVSd、上記)によって評価した場合、有効性が(>15%)低下するまで、2倍の間隔(週2回から週1回、2週間ごとまで)で系統的に変更する。任意選択で、投与間の間隔を1週間ずつ延長する。有効なままである最長の間隔を、最適なものとして選択する。
【0262】
結果及び代替アプローチ
予備的な研究は、経口TY4が、IV投与を使用して0.15μg/gで治療的生物活性を有することを示唆する。HFpEF、MI、及びDMDモデルにおける本発明者らの観察から、経口製剤は、同じ用量でちょうど同じくらい有効である。より低い用量(すなわち、0.01及び0.05μg/g)で同じ効果が見られた場合、本発明者らは、潜在的な毒性又はオフターゲット効果を最小限に抑えるために、より低い用量を使用する。現在の用量よりも高い応答の改善が見られた場合、本発明者らは、投与頻度研究にこの用量を選択する。本発明者らが用量反応に関して読み出し間に不一致を観察する可能性がある。この場合、本発明者らは、最大有効用量を決定するために、IVSdの変化に頼る。
【0263】
実施例33
この非限定的な実施例は、経口-TY4の生体内分布及び薬物動態の評価を示し(図43A)、これは、組織抽出物に添加されたTY4を用いてコピー数曲線を確立すること;TY4が経口的に与えられたHCMマウスの血液及び組織中のTY4を検出及び定量化すること;及び組織中のTY4の半減期及び尿クリアランスを決定することを含む。
【0264】
実験設計
インビボでの経口-TY4の生体内分布を評価するために、qPCRベースのアッセイを使用する。TY4配列は、マウス組織で検出できるほど十分に特有である。したがって、いくつかの重要な組織におけるTY4の保持を、規定の時点で評価して、臓器による相対的な取り込み及び薬物製品の半減期を測定する。
【0265】
方法
健康な7~10週齢の雄性及び雌性野生型FVBマウスに、経口-TY4又はビヒクル(経口製剤のみ)を与える。15分、30分、2時間、及び4時間において、動物を屠殺し、RNA単離のために、血液、肝臓、腎臓、心臓、及び脾臓を含む組織を単離する。TY4の存在量を調べるために、QPCRを実施する(r.o.注射後に組織レベルを容易に定量化できた、概念実証の図43B及び43Cで概要を示す)。図43Bは、r.o.注射後のインビボでのTY4の生体内分布を決定するためのステップの概要を示す。図43Cは、TY4の眼窩後注射から30分後にマウスから単離された組織が、血液、肝臓、及び心臓組織におけるTY4の追跡可能な保持を明らかにしたことを示す。
【0266】
組織1ミリグラムあたりのTY4のコピー数を評価するために、20mgの組織中の既知量のTY4コピーについての添加を使用して、コピー数曲線を生成する。組織特異的な結果のために、各臓器及び血液について曲線を生成する。
【0267】
結果及び代替アプローチ
経口-TY4は、強制投与後、数時間以内に、血液及び組織から除去され得る。任意選択で、半減期決定のために複数の時点で追跡可能な量のTY4を検出するために、時間増分を減少させる。
【0268】
実施例34
この非限定的な実施例は、経口TY4の安全性及び毒物学プロファイルの評価を示し(図44)、これは、慢性的にTY4が与えられた野生型FVBマウス及び免疫不全マウスにおいて、生存率、全血球数及び基礎代謝パネルを特徴付けること;慢性的にTY4が与えられた野生型FVBマウス及び免疫不全マウスにおいて、剖検時の肉眼検査、及び多様な組織の組織学的分析を実施すること;並びに生存及び急性毒性に関して、野生型FVBマウスにおいてTY4の治療量を超える単回用量(最大有効量の3倍~10倍)に対する応答を評価することを含む。
【0269】
実験設計
経口-TY4の安全性及び毒物学プロファイルを評価するために:
・長期(3ヶ月)の処置研究を、最大有効用量で慢性的にTY4(又はビヒクル)が与えられた野生型FVBマウスにおいて、以下のエンドポイントを用いて実施する:生存;全血球数;基礎代謝パネル;剖検時の肉眼検査;多様な組織の組織学的分析。
・長期(3ヶ月)の処置研究を、最大有効用量で慢性的にTY4が与えられたSCID/Beigeマウスにおいて、以下のエンドポイントを用いて実施する:生存;全血球数;基礎代謝パネル;剖検時の肉眼検査;多様な組織の組織学的分析。
・TY4の過剰な単回用量(最大有効用量の3倍、10倍、及び30倍)を野生型FVBマウスに急性投与し、48時間において以下のエンドポイントを用いる:生存;全血球数;基礎代謝パネル;基礎代謝パネルの異常によって導かれる組織学。
【0270】
方法
慢性研究:野生型FVBマウス(基礎的な安全性/毒物学のため)又はSCID/Beigeマウス(腫瘍形成を追加的にアッセイするため48、49)を使用する。生後7~10週で開始して、マウスの各セットを2つの群に分ける:実施例32で決定されるべきレジメン及び用量に従って経口的に与えられるTY4、又は同じ投与間隔でのビヒクル(製剤のみ)。エンドポイントは生存である(死亡した場合は迅速な剖検及び組織学によって調査される)。3ヶ月(典型的なマウスの寿命の>15%)において事前に規定されたエンドポイントで、マウスを安楽死させ、全血球数及び基礎代謝パネル(肝機能[アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニントランスアミナーゼ、及びビリルビン]及び腎機能[BUN、クレアチニン]の検査を含む)のために血液をサンプリングし、臓器の肉眼検査のために剖検を実施する。後者は、任意の腫瘍の組織学(ヘマトキシリン及びエオシン)のための採取及び切片化、さらに脳、肝臓、脾臓、腎臓、肺、及び心臓の無作為な組織学を含む。任意の不都合な炎症、線維化又は腫瘍を検出することに重点が置かれている。
【0271】
急性研究:毒物学を評価するために、野生型FVBマウスは、TY4の過剰な単回用量(実施例32で確立されるべき最大有効用量の3倍、10倍、及び30倍)を受け、生存についてモニタリングする。予期せぬ死亡は、上記のように剖検を受ける。48時間後、生存しているマウスを安楽死させ、全血球数及び基礎代謝パネル(肝機能[アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニントランスアミナーゼ、及びビリルビン]及び腎機能[BUN、クレアチニン]の検査を含む)のために血液をサンプリングし、臓器の肉眼検査のために剖検を実施し、脳、肝臓、脾臓、腎臓、肺及び心臓の組織学(ヘマトキシリン及びエオシン)のために採取及び切片化を行う。起こり得る炎症を評価する。腫瘍が2日以内に形成する可能性は低い。
【0272】
結果及び代替アプローチ
現在までの前臨床モデルの良好なアウトカムを考慮すると、慢性的な炎症又は線維化事象は観察されない。
【0273】
実施例35
この非限定的な実施例は、TY4が、転座タンパク質領域に結合し、そのオートファジーを媒介することを示す。
【0274】
LPS活性化時のマクロファージにおけるTY4の作用機序を理解するために、TY4の局在をマクロファージにおいて観察した。LPSで活性化すると、TY4は、骨髄由来マクロファージ中の核に移動した(図45A;n=3の生物学的反復/群)。サイトゾルと核との間を移動するTY4の能力と一致して、HUVECにおけるTY4に結合するタンパク質のプルダウンにより、転座プロモーター領域(TPR)を含むいくつかのヌクレオポリン関連タンパク質が同定された(図45B、n=2の生物学的反復/群)。TPRのTY4への結合を、ELISAによって検証した(図45C;n=3/群)。
【0275】
TY4とTPRとの間の相互作用の重要性を理解するために、TY4が治療効果を発揮した疾患モデルからの組織中のTPRの発現を測定した(図45D)。心臓組織をHFpEFについて使用し(実施例5を参照)、mdxマウスからの前脛骨筋組織をDMDについて使用し(実施例13を参照)、非造血幹細胞(非HSC)を強皮症について使用した(実施例21を参照)。mRNA配列決定により、TPRレベルの抑制が示された(図45D;n=4~5/群)。さらに、LPS及びTY4(又はスクランブル)に曝露されたマクロファージから単離されたTPRは、TY4に曝露されたマクロファージにおけるTPR周囲のオートファジーメディエーターの蓄積を実証した(図45E)。これらの結果は、LPS活性化時に、TY4がマクロファージ中の核に移動し、TPRに結合し、オートファジーメディエーターをTPRに動員することを示す。
【0276】
実施例36
この非限定的な実施例は、MIのモデルにおけるTPRノックダウンの心臓保護効果を示す。
【0277】
実施例14に記載されるように、虚血性傷害をラットにおいて誘導した(図46A)。再灌流後、TPRを標的とするsiRNA(「siTPR」)又はスクランブルsiRNA(「siScr」)を、動物に心臓内投与した。I/R傷害から2日後、実施例14に記載されるように、心臓を採取し、梗塞質量を測定した。TPRに対するsiRNAで処置された動物は、スクランブルsiRNAで処置された動物と比較して、有意により小さい梗塞質量を有した(図46B)。これらの結果は、TPRノックダウンだけが、心筋梗塞のラットモデルにおいて心臓保護作用を有することを示す。
【0278】
上記は、明確化及び理解を目的として、例証及び実施例によって幾分詳細に記載されているが、本開示の精神から逸脱することなく改変を行うことができることは当業者により理解される。したがって、本明細書に開示される形態は、例示するのみであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではなく、本開示の実施形態の真の範囲及び精神に伴うすべての改変及び代替も包含するものであることが理解されるべきである。
【0279】
上に開示される実施形態の特定の特徴及び態様の様々な組み合わせ又は部分組み合わせを行うことができることが企図される。さらに、実施形態に関連する任意の特定の特質、態様、方法、特性、特徴、品質、属性、要素などの本明細書での開示は、本明細書に記載される他のすべての実施形態で使用することができる。したがって、開示される実施形態の様々な特質及び態様は、開示される主題の様々なモードを形成するために、互いに組み合わせること又は互いに置換することができることが理解されるべきである。したがって、本開示の範囲は、上記の特定の開示される実施形態によって限定されるべきではないことが意図される。さらに、開示される主題は様々な改変及び代替形態を受けることができるが、その特定の例が図面に示されており、本明細書に詳細に記載される。しかし、本開示は、開示される特定の形態又は方法に限定されるものではなく、記載される様々な実施形態及び添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内にあるすべての改変、均等物、及び代替物を包含することが理解されるべきである。
【0280】
本明細書に開示されるいずれの方法も、列挙される順序で実施される必要はない。本明細書に開示される方法は、開業医によって行われるある特定の行為を含むが、明示的又は暗黙的に、これらの行為の任意の第三者の指示を含むこともできる。例えば、「心臓状態又はその症状の治療を必要とする対象に治療有効量の核酸を投与する」などの行為は、「対象に有効量の核酸の投与を指示する」ことを含む。さらに、本開示の特質又は態様がマーカッシュ群に関して記載される場合、本開示がまた、それによって、マーカッシュ群の任意の個別のメンバー、又はマーカッシュ群のメンバーのサブグループに関して記載されていることを、当業者は認識する。
【0281】
本明細書に開示される範囲はまた、あらゆる重複、部分範囲、及びそれらの組み合わせを包含する。「最大でも」、「少なくとも」、「~より大きい」、「~より小さい」、「~の間」などの言語は、列挙される数を含む。「約」又は「およそ」などの用語が前にある数は、列挙される数を含む。例えば、「約90%」は「90%」を含む。一部の実施形態では、少なくとも95%の相同は、参照配列と96%、97%、98%、99%、及び100%の相同を含む。さらに、配列がヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を「含む」と開示される場合、このような言及はまた、別段の指示がない限り、配列が、列挙される配列を「含む」、列挙される配列「からなる」、又は列挙される配列「から本質的になる」ことを含むものとする。
【0282】
本出願で使用される用語及び句、並びにそれらの変形、特に添付の特許請求の範囲におけるものは、別段明示的な記載がない限り、限定するものではなくオープンエンドと解釈されるべきである。前述の例として、用語「含む」は、「含むが限定されない」、「含むが以下に限定されない」などを意味すると解釈されるべきである。
【0283】
本出願の全体にわたって引用されるすべての特許及び他の刊行物;例えば文献参照、発行された特許、公開された特許出願、及び同時係属中の特許出願は、例えば、本明細書に記載される技術に関連して使用される可能性のあるこのような刊行物に記載される方法を記載及び開示する目的で、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示についてのみ提供される。この点に関して、何も、発明者らが事前の発明又は任意の他の理由によりこのような開示に先行する権利を有していないことを認めるものと解釈されるべきではない。これらの文書の日付又は内容に関する表示に関するすべての記載は、出願人が入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確性に関して認めるものではない。
図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図8-5】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19-1】
図19-2】
図20-1】
図20-2】
図21
図22
図23
図24-1】
図24-2】
図25-1】
図25-2】
図26
図27
図28-1】
図28-2】
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40-1】
図40-2】
図41
図42
図43
図44
図45-1】
図45-2】
図46
【配列表】
2024525512000001.app
【国際調査報告】