(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】電池から金属を抽出するためのバイオベースのプロセス
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20240705BHJP
C22B 3/18 20060101ALI20240705BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B3/18
H01M10/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581016
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2022068312
(87)【国際公開番号】W WO2023275375
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513056330
【氏名又は名称】ブレイン バイオテック アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100206140
【氏名又は名称】大釜 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100221589
【氏名又は名称】中谷 俊博
(72)【発明者】
【氏名】クイッパース,ギーナ
(72)【発明者】
【氏名】ガボール,エスター
(72)【発明者】
【氏名】ガウエルト,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ランガー,マルティン
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001BA22
4K001DB12
4K001HA02
4K001HA04
4K001HA10
4K001HA12
5H031RR02
(57)【要約】
以下の工程を含み、又は以下の工程からなる、電池から金属を回収する方法:
(a)使用済み電池から調製した黒い塊を提供する工程;
(b)有機酸、錯化剤または還元剤の増殖および生成を補助するために適切な炭素源を使用することによって得られる微生物培養物を提供する工程;
(c)前記黒い塊を、前記微生物培養物、または前記微生物培養物の無細胞上清と接触させる工程;
(d)バイオリーチングによって前記黒い塊に含まれる金属を枯渇させる工程;
(e)前記枯渇された黒い塊を、溶解された金属を含む液体から分離して、妊娠浸出液を得る工程;および
(f)前記妊娠浸出液から抽出された金属を回収する工程、
ここで、前記黒い塊はリチウムイオン電池から調製される、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含み、又は以下の工程からなる、電池から金属を回収する方法:
(a)使用済み電池から調製した黒い塊を提供する工程;
(b)有機酸、錯化剤または還元剤の増殖および生成を補助するために適切な炭素源を使用することによって得られる微生物培養物を提供する工程;
(c)前記黒い塊を、前記微生物培養物、または前記微生物培養物の無細胞上清と接触させる工程;
(d)バイオリーチングによって前記黒い塊に含まれる金属を枯渇させる工程;
(e)前記枯渇された黒い塊を、溶解された金属を含む液体から分離して、妊娠浸出液を得る工程;および
(f)前記妊娠浸出液から抽出された金属を回収する工程、
ここで、前記黒い塊はリチウムイオン電池から調製される、方法。
【請求項2】
高温処理を伴った電池の機械的分解および機械的処理によって、または高温処理を伴わない電池の機械的分解および機械的処理によって、前記黒い塊が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記黒い塊は、電池の機械的分解および機械的処理によって得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記黒い塊を、前記微生物培養物、または前記微生物培養物の無細胞上清と接触させる前に、溶媒に添加してスラリーを形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記スラリーは、前記スラリーの総重量に基づいて計算して、約0.1~約80%w/wの固形分含有量を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記枯渇させる工程(d)が、約1~約10のpH範囲内で実行される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記枯渇させる工程(d)中に還元剤が添加され、該還元剤は、過酸化水素、鉄、Na
2S
2O
5、スクロース、グルコース、シュウ酸、アスコルビン酸、グルタル酸、SO
2、銅、褐炭、茶葉などの一部の有機物質、FeSO
4、又は鉄くずからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記回収する工程(f)は生体吸着によって実行される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記微生物は、有機酸および/または錯化剤を生成する微生物から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記微生物が、U.トリスフォラ CBS 131473、P.オキザリカム、A.ウッディ、A.ニガー、A.オリゼ、T.リーゼイ、M.ギリエモンディ、およびK.マルシアヌスの群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記微生物は、P.オキザリカム、A.ウッディ、A.オリゼ、およびT.リーゼイの群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記微生物は、A.ニガー、M.ギリエモンディおよびK.マルシアヌスの群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
以下の工程をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法:
(g)工程(d)からの前記枯渇された黒い塊を有機酸と接触させて、残りの金属をさらに溶解する工程、
(h)その後得られた混合物を、微生物によって生成されたバイオ沈殿剤と接触させてバイオ沈殿剤-金属錯体を得る工程、
(i)その後得られた混合物から前記バイオ沈殿剤-金属錯体を分離する工程、および
(j)前記バイオ沈殿剤-金属錯体から金属を回収する工程、
ここで、工程(f)は任意である、方法
【請求項14】
前記バイオ沈殿剤は、P.フルオレッセンス ATCC 13525、B.マレイ、B.グルマエ、A.ニガー、P.インボルトゥス、S.スクレロティオルム、T.パルストリス、C.バーシカラー、P.オストレアトゥス、P.クリソスポリウム、S.ロルフシー、F.アンノサスおよびT.パルストリスの群から選択される微生物によって生成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
以下の部分を備える、請求項1に記載の方法を実施するためのシステム:
(i)微生物の増殖と黒い塊のバイオリーチングを維持可能な反応器、好ましくは撹拌通気容器;
(ii)液相から枯渇された固体残留物を分離可能な分離ユニット、および
(iii)前記液相から溶解された金属錯体を回収するのに適した回収ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、バイオリーチング(又は生物浸出:bioleaching)の分野に関連し、特定の微生物を使用して活性電池部品(「黒い塊(black mass)」)から金属を回収するためのCO2効率の良いプロセスと、そのプロセスを実施するのに適したセットアップ(又は手順又は設定:setup)を開示する。
【0002】
(先行技術)
電池(又はバッテリー:batteries)、特にリチウムイオン電池(LIB)のリサイクルは、資源効率および持続可能性の観点から大きな関心を集めている。LIBの使用は過去20年間で急激に増加しており、2030年には生産量が1000万トンを超えると予想される。LIBは多くの用途、特にカメラ、携帯電話、ラップトップなどのポータブルデバイスにおいて、および電気自動車(EV)のエネルギー源として、使用される。専門家らは、今後10年間でEVが使用済みLIBの主要なリサイクル源になると予想している。電池の生産は、EVの製造に消費される総エネルギーの20%を占め、EVがその全体寿命で放出するCO2の約40%を占める[WARBURGら、ADEME, Angersのレポート、(フランス)、25(2013));オンラインで入手可能:https://www.ademe.fr/elaboration-selon-principes-acv-bilans-energetiquesemissions-gaz-a-effet-serre-autres-impacts-environnementaux(2021年3月15日にアクセス)]。LIBのリサイクルは、特に持続可能なリサイクル方法が使用されている場合、EVの二酸化炭素排出量を50%超削減し得る。
【0003】
特に価値があり、ライフサイクルに影響を与えるのは、リチウムおよびコバルトだけでなく、ニッケル、銅、マンガン、アルミニウム、鉄などの重要な金属を含む、一般に LIB と呼ばれる充電式電池の電極材料である。現在、カソード材料の5つの主要なカテゴリが市販されている:リチウム-コバルト酸化物(LCO)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト(NMC)、リチウム-マンガン酸化物(LMO)、リチウム-ニッケル-アルミニウム酸化物(NCA)、およびリン酸鉄リチウム(LFP)。現在、市場で最も重要な材料は、NMC、LCOおよびLFPである。最も重要なアノード材料はグラファイトであり、チタン酸リチウム(LTO)は特定の用途に使用され、金属リチウムは今後10 年間でその市場性が拡大すると予想されている。カソードとアノードはどちらも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの有機バインダーによるインターカレーション(intercalation)によって結合した化合物のペーストで構成され、電子導体上にコーティングされる。典型的には、Al箔とCu箔が、それぞれ好ましいカソードとアノードの集電体である。
【0004】
電池の電極材料 (いわゆる活物質) は、放電後の機械的手段、直接乾式冶金プロセス(direct pyrometallurgical processes)、又はそれらの組合せによって、ハウジング材料および絶縁体箔から分離される。得られた混合物は「黒い塊」と呼ばれる。商業的には、プロセスの単純さとロバスト(robustness)、コストと使用の柔軟性により、乾式冶金処理(pyrometallurgical treatment)が主に使用されている。しかし、このアプローチによる環境への影響は大きく、リチウムなどの一部の金属は回収できず、黒い塊から金属を分離するにはさらに湿式冶金処理工程(hydrometallurgical treatment steps)が必要である。
【0005】
湿式冶金LIBリサイクルでは、黒い塊が機械的手段によって生成され、場合によっては高温での処理工程(か焼/焙焼または精錬)と組合せて生成される。次に、黒い塊は、主に酸、場合によってはアルカリ溶液を使用する化学抽出によってさらに処理され、目的の金属が抽出される。湿式冶金プロセスでは、さまざまな元素(Co、Li、Ni、Mn、Cu)を単一元素化合物または混合物として分離および回収できる。
【0006】
1998年に公開された湿式冶金LIBリサイクルに関する初期の科学論文[ZHANGら, Hydrometallurgy, 47:259 (1998)]では、著者らは硫酸などの他の鉱酸と比較して、塩酸によるリチウムとコバルトの抽出効率が最も高いと記載されている。硝酸を浸出試薬として使用するプロセスについても記載されている。HNO3は、還元剤が添加されない場合、特にLiの選択的抽出に使用できる[GUANら, ACS Sustain. Chem. Eng., 5:1026 (2017)]。還元剤、通常はH2O2を使用すると、Co、Mn、Niの抽出効率が向上する。硫酸および塩酸浸出もLFPカソード材料に使用され得るが、硝酸は適切ではないようである。
【0007】
最も一般的に研究されている浸出方法は硫酸に基づくものである。それは、現在商業規模で使用されている唯一のものでもある[LAROUCHEら, Materials, 13:801 (2020)]。 この分野では多くの特許が発行されている。例えばTedjar 著 [TEDJAR, F. WO 2003021708 A2 (2003)]。 これらのプロセスでは、浸出速度を加速するために還元剤の存在が重要である。最も多くの場合、効率が高いためH2O2が使用され、次にグルコースと亜硫酸塩が続く。
【0008】
Mishraら [MISHRAら、Waste Management 28, 333 (2008)]は、CoとLiの溶解を媒介する硫酸と第二鉄を生成するアシディチオバチルス・フェロオキシダンスによる使用済みLIBのバイオリーチングを開示した。同様のアプローチがHanらによって説明された[HANら、CN102560114B (2012)]。彼らは、振盪培養(shaking cultures)で化学分解性好酸性微生物(chemolithotrophic, acidophilic microorganism)と活性物質を接触させ、最大65%のコバルトと約10%のリチウムを抽出した。しかし、適用できるパルプ密度は限られており、主に抽出された金属の毒性効果により、浸出速度は純粋な硫酸の使用に比べて非常に遅かった(最大抽出に達するまでに最大15日)。
【0009】
いくつかの有機酸は、無機酸と比較して、選択性が高く、生分解性があり、材料の腐食が弱いという利点を有する [LAROUCHEら, Materials, 13:801 (2020)]。クエン酸とH2O2の組合せは、LIB金属の抽出において無機酸と同様に効率的である[LIら, Waste Manag. 71:362 (2018)]。ギ酸とH2O2は、60℃において、わずか20分でLiとCoの定量的抽出を可能にする[ZHENGら, RSC Adv. 8:8990 (2018)]。また、還元剤と酢酸の組合せは、酢酸リチウムの溶解度が高いため、NMC溶解用の浸出剤として有望である。LIBリサイクルに適したさらなる有機酸には、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アスコルビン酸、酒石酸、グリシン、およびグルコン酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0010】
有機酸浸出は、一般に硫酸に比べてコストが高いため、工業規模ではまだ確立されていない。従って、本発明の目的は、費用効果が高く、特に持続可能な方法でLIBリサイクル用の有機酸を供給する方法を提供することである。我々が提供する解決策は、一般に化石資源から生産され、コスト及びエネルギーがかかる強力な精製を必要とする純粋な酸を使用する代わりに、容易に入手可能で再生可能な炭素源から単一の有機酸または異なる有機酸の混合物、錯化剤または還元剤を生成する微生物を使用することで構成される。再生可能な炭素源は、農業生産に由来し得るか、または好ましくは、バイオエタノール生産からの原料(又は、生の:raw)グリセリン、糖蜜、食品および農業廃棄物、炭素リッチな廃水、などの工業生産プロセスからの廃棄物を構成するだけでなく、セメント生産及び焼却工場などの工業プロセスで生成される二酸化炭素を構成し得る。
【0011】
これに関連して、Kimらが参照される。彼らは、使用済みのZn-MnまたはNi-Cd電池のバイオリーチングに菌類を使用した [KIMら, Waste Management 51, 168 (2016)]。 この研究では、アスペルギルス種を適切な増殖培地(又は成長培地:growth media)で培養し、電極材料から金属を抽出するために使用した。しかし、アルカリ電池の化学はLIBの化学とは大きく異なり、有機酸、錯化剤、または還元剤を生成する微生物によるバイオリーチングはこれまでのところ開示されていない。
【0012】
バイオリーチングは、微生物細胞とLIB材料を直接接触させて(1ステップのバイオリーチング)、または2ステップのバイオリーチングプロセスで実行でき、このプロセスでは、微生物による活性化合物の生成がLIB浸出から時間的及び/又は空間的に分離される。
【0013】
有機基質(又は基材:substrates)または二酸化炭素上で有機酸、錯化剤または還元剤を生成できる微生物は文献で知られており、細菌、酵母、菌類、藻類および古細菌などの多くの異なる微生物群の種が含まれる。本発明は、このプロセスに特によく適した細菌群および真菌群を開示する。
【0014】
微生物による有機酸の生産において、培養上清(culture supernatants)からのこれらの化合物の回収及び濃縮は、最もエネルギーとコストがかかる工程であり、全体の生産コストの30~60%を占める [STRAATHOF, Comprehensive Biotechnology, Second Edition. Elsevier Inc., pp. 811-814 (2011); LIら, J. Microbiol. Biotechnol., 26:1 (2016); MURALIら, Fermentation, 3:22 (2017)]。従って、本発明の目的は、周囲温度(80℃未満)および低圧(3バール未満)で動作し、純粋な有機酸を使用する代わりに、培養上清または培養ブロスを直接または適度に濃縮して使用することを可能にする方法を提供することである。
【0015】
さらに、できるだけ多くの標的金属、特に標的金属含有量の少なくとも50%を抽出できる解決策を提供することが望ましい。さらなる要件(prerequisite)は、短時間内に標的金属を高収率で回収することであるため、独立栄養性バイオリーチングプロセス(autotrophic bioleaching processes)と比較したとき、はるかに有利な浸出速度が必要となる。
【0016】
本発明の別の要件は、高濃度の金属、特にCo、Li、Ni、Cu、Al、Fe、およびMnに耐える微生物を使用するプロセスを提供することである。
【0017】
最後に、将来的には、リスクがクラス2以上に属する微生物を含む技術的プロセスは政府の保健およびリスク当局の承認を通過しなくなるため、安全上の理由から、プロセスに関与するすべての微生物はリスクがクラス1に属する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】容器R1内の第1の微生物による、微生物のCO
2固定と酢酸生成の概略図;酸生成のための第2の微生物を有する容器R2への酢酸塩の移送;酸を容器R2から濾過工程を介して枯渇工程(又は除去工程:depletion step)のための浸出容器に移送;浸出液を濾過して妊娠浸出液(pregnant leach solution)(PLS)を生成;既知の技術(すなわち、吸着、pHシフト)によるPLSからの金属分離と、容器R2への使用済み培地(spent medium)のリサイクル。
【0019】
【
図2】1ステッププロセスの概略図。1ステップ浸出用の1つのリアクターR1内の微生物、中間体および黒い塊;続いて、浸出液を濾過して妊娠浸出液(PLS)を生成し、既知の技術(すなわち、吸着、pHシフト)によるPLSからの金属分離と、容器R1への使用済み培地のリサイクル。
【0020】
【
図3】2ステッププロセスの概略図。容器R1内での微生物酸の生成、続いて除去工程(浸出)のためにフィルターを介して浸出容器に移送;既知の技術(すなわち、吸着、pHシフト)による金属回収のために、濾過工程を介して妊娠浸出液(PLS)を金属分離ユニットに移し、容器R1用に使用済み培地をリサイクルする。
【0021】
【
図4】黒い塊(5%w/v)の浸出における、アセトバクテリウム・ウッディ(Acetobacterium woodii)によって微生物生成された上清と、無機酸および有機酸との比較。酸のモル濃度:622mM。(*)1.1%(v/v)のH
2SO
4が含有。
【0022】
【
図5】黒い塊材料(10%)の20時間浸出における、ウスチラゴ・トリコフォラ(Ustilago trichophora)によって微生物生成された上清と純リンゴ酸との比較。
【0023】
【
図6】黒い塊を浸出させるために、茶葉(細断、1%w/v)とH
2O
2(1%v/v)をさまざまな有機酸と組合せて使用した。
【0024】
【
図7】流加(fed-batch)発酵および灌流(perfusion)発酵における、ウスチラゴ・トリコフォラによる粗グリセロール(crude glycerol)からのリンゴ酸の生成、7A:500ml振盪フラスコ培養;7B:1リットル発酵。
【0025】
【
図8】流加発酵および灌流発酵における、ウスチラゴ・トリコフォラによるテンサイシロップからのリンゴ酸の生成。8A:500ml振盪フラスコ培養;8B:1リットル発酵。
【0026】
【
図9】流加発酵プロセスにおける、ウスチラゴ・トリコフォラによる酢酸塩からのリンゴ酸とコハク酸の生成。
【0027】
【
図10】いくつかの微生物によって生成される選択的バイオリーチング剤の生成、および無機酸を使用した浸出と比較したLi、またはLiとCuの選択的浸出。
【0028】
【
図11】本発明によるバイオ沈殿剤(又はバイオ析出剤:bioprecipitating)の生成および微生物による沈殿(又は析出:precipitation)。残りの金属を溶解するために、図に示すように、枯渇した黒い塊を有機酸と接触させる(A)。本発明に係る微生物を用いて、妊娠溶液(Pregnant solution)をバイオ沈殿させ、それによりMn、CoおよびNiを選択的に分離する(B)。
【0029】
(発明の詳細な説明)
本発明の目的は、電池、特にリチウムイオン電池(LIB)から金属を回収するバイオベースの方法であって、以下の工程を含む、または以下の工程からなる方法を対象とする:
(a)使用済み電池から調整した(又は用意した:prepared)黒い塊を提供する工程;
(b)有機酸、錯化剤または還元剤の増殖(又は成長:growth)および生成を補助する(又は持続させる:support)ために適切な炭素源を使用することによって得られる微生物培養物(culture of microorganisms)を提供する工程;
(c)前記黒い塊を前記微生物培養物または前記微生物培養物の無細胞上清(cell-free supernatant)と接触させる工程;
(d)バイオリーチングによって前記黒い塊に含まれる金属を枯渇させる(又は除去する:depleting)工程;
(e)前記枯渇された黒い塊を、溶解された金属を含む液体から分離して、妊娠浸出液(PLS)を得る工程;
(f)前記妊娠浸出液から抽出された金属を回収する工程。
【0030】
工程(a)から(f)を適応することにより、前のセクションで説明したすべてのニーズを満たすプロセスが提供されることが発見された:本発明に係るプロセスにより、経済的に実行可能でありながら安全かつ持続可能な方法で使用済み電池から金属を選択的に抽出することが可能になる。
【0031】
この方法は、連続プロセスセットアップまたはバッチプロセスセットアップにおいて使用できる。
【0032】
炭素を含む廃棄物の流れ上で増殖させたとき、異なる有機酸の混合物の生成における性能の点で、ウスチラゴ・トリコフォラと呼ばれる真菌微生物が特に有用であることが見出された。テンサイシロップ、バイオディーゼル生産からの粗グリセロール、酢酸ナトリウムまたは野菜/果物加工からのポマース(又は搾りかす:pomace)を使用したとき、さまざまな有機酸の形成、特にリンゴ酸とコハク酸の比率が影響を受け得る。NBRC 100155、NBRC 100156、NBRC 100157、NBRC 100158、NBRC 100159、NBRC 100160 または CBS 131473 として寄託されたウスチラゴ・トリコフォラを増殖させる(proliferate)ためにさまざまな炭素源を使用することで、特定のプロセス要件に従って選択された標的金属をバイオリーチングするように有機酸混合物を調整できる。この微生物は十分に高濃度の有機酸を生成するため、上流での濃縮工程無しで黒い塊から金属を直接抽出できる。また、ウスチラゴ・トリコフォラはバイオセーフティレベル1に属しており、生産環境における安全性の点で扱いやすい生物である。
【0033】
別の特に有用な微生物は、DSM 1030として寄託されているアセトバクテリウム・ウッディである。この微生物は、二酸化炭素上で増殖させたとき、上流の濃縮工程無しで黒い塊から金属を直接抽出できるように、十分に高濃度の有機酸、特に酢酸塩を生成する。 あるいは、A.ウッディによって生成される酢酸塩は、他の有機酸または有機酸混合物を生成するための第2の微生物の基質として使用できる。例えば、ウスチラゴ・トリコフォラでは、炭素源の酢酸塩を使用して、ほぼ同じ割合のリンゴ酸とコハク酸の形成が実証された。このようにして、二酸化炭素の黒い塊への効果的なバイオ変換により、有機酸の生成とその結果としてのLIBリサイクルに関連するCO
2フットプリント(又は排出量:footprint)が特に有利になる(
図1)。また、アセトバクテリウム・ウッディはバイオセーフティレベル1に属しており、生産環境における安全性の点で扱いやすい生物である。
【0034】
本発明の特定の実施形態では、黒い塊から他の金属を浸出させずに、特定の金属を選択的にバイオリーチングさせることが望ましい。これに関連して、驚くべきことに、本発明に係る特定の微生物が特定の金属のバイオリーチングに特に有用であることが発見された。 この文脈における「選択的」という用語は、主として所望の金属が使用する微生物によって浸出する一方、他の金属は浸出しない、または少量しか浸出しないことを意味する。 好ましい実施形態において、選択的とは、所望の金属が、黒い塊中に存在する全所望の金属の約15~約100重量%が本発明に係る微生物によってバイオリーチングされる一方、望ましくない金属は約0重量%~約25重量%がバイオリーチングされることを意味する。さらにより好ましい実施形態では、所望の金属は約50~100重量%がバイオリーチングされる一方、望ましくない金属は約0~約10重量%がバイオリーチングされる。最も好ましい実施形態では、所望の金属は約50~100重量%がバイオリーチングされる一方、望ましくない金属は約0~約5重量%がバイオリーチングされる。
【0035】
Liを選択的にバイオリーチングできる微生物は、本発明に係る微生物のリストから選択される。本発明に係る、Liを選択的にバイオリーチングするのに特に有用であることが見出された微生物は、A.ニガー、M.ギリエモンディおよびK.マルシアヌスの群から選択されるが、これらに限定されない。したがって、好ましい実施形態において、本発明に係る、選択的にLiをバイオリーチングすることができる微生物は、A.ニガー、M.ギリエモンディ、およびK.マルシアヌスの群から選択される。
【0036】
本発明に係るLiおよびCuを選択的にバイオリーチング可能な微生物は、本発明に係る微生物の群から選択される。P.オキザリカム、A.ウッディ、A.オリゼ、およびT.リーゼイは、本発明によればLiおよびCuを選択的にバイオリーチングするのに特に有用であることが判明した。したがって、好ましい実施形態では、前記微生物は、P.オキザリカム、A.ウッディ、A.オリゼ、およびT.リーゼイのリストから選択されるが、これらに限定されない。
【0037】
驚くべきことに、枯渇工程中の還元剤の添加は、バイオリーチングには必ずしも必要ではないが、鉱酸または有機酸を使用する場合の金属抽出では一般に必須であることが発見されている。この発見により、バイオリーチングプロセスの複雑さが軽減され、コストが削減される。したがって、本発明に係るいくつかの実施形態では、枯渇工程中の還元剤の添加はバイオリーチングには必要ない。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明に関連する別の驚くべき効果は、純粋な有機酸に基づく化学的抽出プロセスと比較したとき、本発明のプロセスにより、電池から金属を枯渇させるのに必要な有機酸の量を削減できるという発見である。これは、一方では、現在のバイオリーチングプロセスが化学浸出とは異なるメカニズムに従っていることを示す。その一方で、プロセスのコスト効率が高くなる。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態では、純粋な有機酸に基づく化学的抽出プロセスと比較したとき、電池から金属を枯渇させるのに必要な同じ量またはそれ以上の量の有機酸を利用することが有用であり得ることに留意されたい。
【0039】
(黒い塊)
【0040】
本発明に係るプロセスは主にあらゆる種類の電池の浸出に有用であるが、特にリチウム、コバルト、マンガン、ニッケル、銅、アルミニウムおよび鉄を含むリチウムイオン電池に焦点が当てられる。特に興味深いのは、重要な元素であるリチウムとコバルトの選択的抽出である。
【0041】
プロセスの実行に適した黒い塊は、さまざまな方法で生成できる。黒い塊を生成する最も重要な2つの方法は、(a)電池の乾式冶金処理、および(b)電池の機械的分解および機械的処理である。(a)で調製された黒い塊には、熱処理中にリチウム元素が失われるため、通常は少量のリチウムしか含まれていない。この理由から、(b)によって得られる黒い塊は、本発明のプロセスの好ましい実施形態において使用される。
【0042】
本発明に係る好ましい実施形態では、高温処理を伴った電池の機械的分解および機械的処理によって、または高温処理を伴わない電池の機械的分解および機械的処理によって(又は高温処理の有無にかかわらず電池の機械的分解および機械的処理によって:by mechanical disassembly and mechanical treatment of batteries with and without high temperature treatment)、黒い塊が得られる。本発明に係るより好ましい実施形態では、黒い塊は、電池の機械的分解および機械的処理によって得られる。
【0043】
(微生物)。
【0044】
適切な微生物の選択は、公知および独自の微生物株コレクションからの約2000種に基づいて行われる。本発明によって開示される微生物は、高力価(high titers)の適切な有機酸及び/又は他の錯化剤を生成する能力、及び/又は例外的な金属耐性を有する能力に関して、他のバイオリーチング生物と比較して優れている。
【0045】
本発明のために選択される微生物は以下の種を含む:アクチノバチルス・サクシノゲネス、マンヘイミア・スクシニシプロデュセンス、ルミノコッカス・フラベファシエンス、アナエロビオスピリラム・スクシニシプロデュセンス、プロピオニバクテリウム属、ペクチナトゥス属、エシェリヒア・コリ(又は大腸菌:Escherichia coli)、バクテロイデス属、バクテロイデス・アミロフィラス、プレボテラ・ルミニコラ、サクシニモナス・アミロリティカ、サクシニビブリオデクス・トリニソルベンス(Succinivibriodex trinisolvens)、ウォリネラ・サクシノゲネス、サイトファーガ・サクシニカンス、アスペルギルス・フミガタス、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・アキュレアトゥス、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・フェティダス、アスペルギルス・カーボナリウス、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ゴイ、ペニシリウム・エクスパンサム、ペニシリウム・ヴィニフェルム、ペニシリウム・ジャンティネラム、ペニシリウム・ルテウム、ソクラミス・ニベア、レンティヌス・デジェネ、パエシロミセス バリオティ、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミコプシス・リポリティカ、ウスチラゴ・トリコフォラ、サーモビフィダ・フスカ、オーレオバシジウム・プルランス、カンジダ・グラブラタ、カンジダ・オレオフィラ、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・ギリエモンディ、カンジダ・パラプシロシス、カンジダ・シトロフォルマンス、バチルス・サブティリス(又は枯草菌:Bacillus subtilis)、Bアシラス・プミルス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・メガテリウム、 アルスロバクター・パラフィン、アルスロバクター属、ブラビバクテリウム属、クレブシエラ属、コリネバクテリウム属、ロドコッカス属、アルカリゲネス・レボタルタリクス、アシネトバクター・タルタリクス、シュードモナス・アグロバクテリウム、シュードモナス・ストリアタ、シュードモナス・フルオレッセンス、ノカルディア・タルタリカンス、アグロバクテリウム属、リゾビウム属、クレブシエラ属、クリプトコッカス属、アクロモバクター属、フラボバクテリウム属、ハンセヌラ属、フザリウム属、ムコール属、グリオクラジウム属、アセトバクター属、ウスチラゴ属、ザイモモナス・モビリス、ケトグロニシゲニウム・ブルガレ、ザントモナス・カンペストリス、グルコノバクター・オキシダンス、ザイゴサッカロミセス バイリー、ザイモモナス・モビリス、バークホルデリア・マレイ、バークホルデリア・グルマエ、パキシルス・インボルトゥス、スクレロチニア・スクレロティオルム、チロミセス・パルストリス、コリオラス・バーシカラー、ファネロヘテ・クリソスポリウム、スクレロチウム・ロルフシー、フォメス・アノサス、チロミセス・パルストリス、クロストリジウム属、モーレラ・サーモアセチカ、ピキア属、特にウスチラゴ・トリコフォラ CBS 131473、およびアセトバクテリウム・ウッディ DSM1030、ラクトバチルス属、カルノバクテリウム属、ロイコノストック属、ワイセラ属、コリネバクテリウム属、ラクトコッカス属、バゴコッカス属、エーロコッカス属、テトラジェノコッカス属、オエノコッカス属、マリニラクティバシラス属、アルカリバクテリウム属、ミクロバクテリウム属、エクシグオバクテリウム属、オセアノバチルス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ペディオコッカス属、スポロラクトバチルス属、ハロラクチバチルス属、バチルス・コアギュランス、エンテロバクター・エアロゲネス、リゾプス属、カンジダ・ソノレンシス 、クルイベロミセス・マルシアヌス、シゾサッカロミセス・ポンベ。
【0046】
上述したように、これらの微生物は、精製された非生物性有機酸調製物よりも低濃度で枯渇工程を実行できるため、黒い塊からの金属抽出において驚くべき挙動を示す。
【0047】
さらに、二酸化炭素の固定に基づいて有機酸を生成できる生物は、プロセスの正味の(net)CO2フットプリントを積極的に削減し、それによって発明された電池リサイクルアプローチの持続可能性を増大させる。
【0048】
既知の湿式冶金技術以外に、微生物バイオリーチングを使用して、標的金属を選択的に浸出させることができる。
【0049】
本発明に係る好ましい実施形態では、微生物は、有機酸及び/又は錯化剤を生成する微生物から選択される。
【0050】
本発明に係るより好ましい実施形態では、微生物は、U.トリコフォラ CBS 131473、P.オキザリカム、A.ウッディ、A.ニガー、A.オリゼ、T.リーゼイ、M.ギリエモンディ、およびK.マルシアヌスからなる群から選択される。
【0051】
本発明によるより好ましい実施形態では、微生物は、ウスチラゴ・トリコフォラ CBS 131473またはアセトバクテリウム・ウッディ DSM1030からなる群から選択される。
【0052】
上述したように、特定の微生物は、Li、またはLi及びCuなどの特定の金属の選択的バイオリーチングに有益である。従って、本発明に係るより好ましい実施形態では、微生物は、P.オキザリカム、A.ウッディ、A.オリゼ、およびT.リーゼイからなる群から選択される。別の実施形態では、微生物は、A.ニガー、M.ギリエモンディ、およびK.マルシアヌスからなる群から選択される。
【0053】
(培養条件(CULTIVATION CONDITIONS)と培地(又は媒体:MEDIUM))
【0054】
本発明には、次の2つの代替案が含まれる:(i)(直接的)1ステップバイオリーチングまたは(ii)(間接的)2ステップのバイオリーチング。
【0055】
1ステップバイオリーチングとは、黒い塊のスラリーを微生物と接触させることを意味する。この目的に最も適した溶媒は水道水である。微生物はすでに栄養溶液中に分散されているか、栄養成分または栄養溶液が個別に添加される。前記1ステップバイオリーチングプロセスの特徴は、微生物がバイオリーチングプロセス中に有機酸、錯化剤、または還元剤を生成および放出することである(
図2)。
【0056】
代替発明である2ステップバイオリーチングとは、最初に微生物を栄養溶液中で培養して有機酸、錯化剤または還元剤を生成および放出し、その溶液を、直接または微生物の除去後に、残りの栄養分および有機酸または他の錯化剤とともに黒い塊と接触させる(
図3)。このセットアップでは、前記溶液は、黒い塊に添加される前に、当該技術分野で公知の方法によってまず濃縮されてもよい。
【0057】
適切な栄養組成物は従来技術から周知であり、微生物の培養および増殖に必要なミネラル、微量元素、および二酸化炭素または炭水化物などの炭素源を含む。栄養ブロス(nutrient broth)中に酸素又は硝酸塩などの外部電子受容体が存在しないことは有利である。
【0058】
本発明に係る好ましい実施形態では、前記微生物培養物または前記微生物培養物の無細胞上清と接触させる前に、黒い塊を溶媒に添加してスラリーを形成する。
【0059】
(濃縮:CONCENTRATION)
【0060】
2ステップバイオリーチングでは、枯渇工程を媒介するために使用される溶液は、栄養溶液中で微生物を培養することによって調製される。バイオリーチングに適用する前に、前記溶液から微生物を枯渇させてもよく、及び/又はその後の枯渇工程をより効果的にするために、当該技術分野で公知の方法によって前記溶液を濃縮してもよい。前記濃縮工程は、例えば、逆浸透、蒸発、遠心分離、ダイアフィルトレーション、膜電気分解、反応性液-液抽出、電気化学的pHスイング抽出または沈殿、沈降に依存し得る。
【0061】
(枯渇工程)
典型的には、枯渇工程または浸出工程は撹拌容器内で行われる。黒い塊を水または他の適切な溶媒に加えてスラリーを形成し、反応器内にポンプで送り込む。通常、スラリーは、約0.1~約80%(w/v)、好ましくは約1~約70%(w/v)、より好ましくは約2.5~約50%(w/v)の固形分含量を示す。
【0062】
約1から約10のpH範囲内で枯渇を行うことも望ましい。好ましい実施形態では、枯渇工程(工程(d))は、約2から約9のpH範囲内で、好ましくは約3から約8のpH範囲内で実行される。
【0063】
さらに好ましい実施形態では、プロセスは、微生物の増殖を促進させるために約7のpHで開始され、その後、収量を増加させるためにより低い値に向かって段階的にシフトされる。pH調整の目的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の有機酸又は鉱酸を使用できる。
【0064】
1ステップバイオリーチングでは、微生物を乾燥バイオマスとして、または懸濁液もしくはパルプとして添加できる。また、栄養素を個別に、またはバイオマスと一緒にプレミックス(又は予混合物:premix)として添加することもできる。典型的には、浸出には、0.01~約10重量%、好ましくは約0.1~約5%(w/v)、特に約0.5~約5%(w/v)の範囲の微生物の量(細胞乾燥重量、cdw)が必要であり、それらは、その金属から枯渇する必要がある黒い塊の量に基づいて計算される。
【0065】
2ステップバイオリーチングでは、栄養溶液中で微生物を培養して調製した溶液を添加できる。前記溶液は、培養及び/又は濃縮工程後の微生物の除去によって得られたものであってもよい。
【0066】
バイオリーチングは、微生物の性質にわずかに依存する温度、典型的には約20~約80℃の範囲内、好ましくは微生物の活動する(又は機能する:working)最適条件に従って25~35℃の温度で行われる。典型的には、バイオリーチングは、例えば撹拌することにより、混合下で起こり、任意で反応器は通気される。十分な枯渇程度を達成するために、バイオリーチングは典型的には、約0.5~約48時間、好ましくは約1~約12時間の反応時間を必要とする。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態では、枯渇工程中に還元剤、例えば、過酸化水素、鉄、Na2S2O5、スクロース、グルコース、シュウ酸、アスコルビン酸、グルタル酸、SO2、銅、亜炭、茶葉などの一部の有機物材料、FeSO4または鉄くずを添加することによってバイオリーチングを促進(又は増進:enhanced)してもよい。
【0068】
(分離)
【0069】
バイオリーチングが完了すると、混合物を分離ユニットに移すことができる。最も簡単な実施形態では、分離は重力によってタンク内で行われる。より効率的なのは濾過ユニット、特にフィルタープレスであり、フィルタープレスは、埋め込み型、手動または自動のフィルタープレスなど、さまざまな形式で利用できる。代わりに、遠心分離機/プレートセパレーターまたはサイクロンセパレーターを使用することもできる。
【0070】
プロセスが連続的に行われる場合、よりコストはかかるが、加圧濾過も有利でありうる。例えば、ダイアフィルトレーションは、セラミック、鋼、またはポリマーで作られた膜を用いてスラリーを液相から分離する、適切な代替手段である。
【0071】
分離を促進するために、レドックス調節剤(例えば、過酸化水素)、またはポリアクリレート、アルギネート、デンプン、糖などの凝集剤、などのさらなる添加剤を添加することも可能である。
【0072】
(回収)
【0073】
バイオリーチングによって黒い塊から枯渇された金属を回収するために、液相を回収ユニットに移すことができる。次いで、液相からの金属の回収を既知の方法で行うことができる。湿式冶金電池のリサイクルでは、沈殿、溶媒抽出、イオン交換樹脂、または電解採取/電解抽出などによって、PLSから単一元素化合物が回収される。選択的に浸出された金属の単一元素化合物または混合物は、LIB製造以外の用途に使用したり(「再利用/ダウングレード」)、新しいLIBを製造するための高純度前駆体または活性材料としても使用できる(「真のリサイクル」)。
【0074】
回収は、pHを徐々によりアルカリ性のpH14まで変化させることによって、すなわちNa2CO3またはNaOHを添加することによって実行することもできる。これにより、好ましくはコバルト、マンガン、ニッケル、リチウム、またはそれらの組合せを含む個々の金属を不溶性の炭酸塩または水酸化物として順次沈殿させる。
【0075】
本発明の好ましい実施形態では、枯渇された金属の回収は生体吸着によって行われる。生体吸着とは、微生物細胞が細胞表面への吸着または活性細胞内蓄積を介して、溶解した金属、金属錯体、またはナノ粒子を回収するプロセスを指す。このプロセスに適した微生物は、好ましくはリチウム、コバルト、ニッケル、銅またはマンガンの群から1つ以上の元素を含む、純粋な金属化合物またはその混合物を選択的に回収することができる。
【0076】
(バイオ沈殿)
【0077】
本発明による特定の実施形態では、この方法は、次の工程(本発明による方法の工程fに続く)をさらに含む:
(g)工程(d)からの前記枯渇された黒い塊を有機酸と接触させて、残りの金属をさらに溶解する工程、
(h)その後(又はこうして:thus)得られた混合物を、微生物によって生成されたバイオ沈殿剤と接触させてバイオ沈殿剤-金属錯体を得る工程、
(i)その後得られた混合物から前記バイオ沈殿剤-金属錯体を分離する工程、および
(j)前記バイオ沈殿剤-金属錯体から金属を回収する工程、
ここで、工程(f)は任意である。
【0078】
一般的なプロセス(a)から(f)のために選択された微生物に応じて、一般的なプロセス(a)から(f)の間の黒い塊の枯渇は、1つ以上の所望の金属に対して選択的であり得る。しかしながら、そのような枯渇された黒い塊を最大限に利用して、他の所望の金属をさらに回収することが求められている。これに関連して、本発明はさらに、任意の工程(g)~(j)に関する。このプロセスでは、工程(a)から(f)で目的の金属が枯渇された黒い塊をさらに処理して、さらに金属を抽出する。
【0079】
第1の工程(g)では、工程(e)の前記枯渇及び分離された黒い塊を有機酸と接触させて、残りの金属をさらに溶解する。本発明のいくつかの実施形態では、前記枯渇及び分離された黒い塊をバイオ溶媒(biosolvent)及び/又は有機酸と接触させる。本発明によるバイオ溶媒は、限定はされないが、微生物によって生成される溶媒などの生化学的プロセスによって生成される任意の溶媒である。溶解プロセスは、工程(a)~(d)と同様に実行できる。工程(g)に有用な有機酸は、イタコン酸、クエン酸、酢酸、乳酸もしくはリンゴ酸、あるいはそれらの組合せであるか、または本発明に係る微生物により生成されるが、これらに限定されない。
【0080】
次の工程(h)では、工程(g)で得られた混合物を、本発明に係るバイオ沈殿剤生成微生物(bioprecipitant-producing microorganisms)によって生成されたバイオ沈殿剤と接触させる。本発明に係るバイオ沈殿剤は、微生物培養上清、または本発明に係る微生物を使用して上記のように微生物培養上清に基づいて調製された調製物であり、金属含有溶液を前記培養上清または調整物と接触させることによって金属化合物を沈殿させるために使用することができる。バイオ沈殿剤は、固体、液体又は気体であり得るか、あるいは固体、液体及び/又は気体の混合物から構成され得る。好ましい実施形態では、本発明に係るバイオ沈殿剤は、微生物培養上清、または微生物培養上清に基づいて調製された調製物である。本発明に係る微生物によって生成されたバイオ沈殿剤を、有機酸によって溶解された金属と接触させることによって、バイオ沈殿剤-金属の錯体(又は複合体:complexes)が形成される。前記錯体は溶液に不溶である。
【0081】
バイオ沈殿剤生成微生物は、上で定義した本発明に係る微生物のリストから選択される。 本明細書で提供される追加のデータは、特定の微生物が工程(h)に記載のバイオ沈殿剤の生成に特に有用であることを示している。P.フルオレッセンスATCC 13525、B.マレイ、B.グルマエ、A.ニガー、P.インボリュータス、S.スクレロティオラム、T.パルストリス、C.バーシカラー、P.オストレアトゥス、P.クリソスポリウム、S.ロルフシー、F.アンノサス、T.パルストリスの群から選択される微生物によって生成されるバイオ沈殿剤は、工程(g)で得られた溶液からMn、CoおよびNiを効率的に沈殿させることができた。したがって、好ましい実施形態では、前記バイオ沈殿剤は、P.フルオレッセンスATCC 13525、B.マレイ、B.グルマエ、A.ニガー、P.インボリュータス、S.スクレロティオラム、T.パルストリス、C.バーシカラー、P.オストレアトゥス、P.クリソスポリウム、S.ロルフシー、F.アンノサス、T.パルストリスから選択される。
【0082】
続く工程(i)では、工程(h)で得られた前記バイオ沈殿剤-金属の錯体を、上記の本発明または当技術分野で知られている他の手段に従って分離することができる。
【0083】
最終工程(j)では、本発明に従って及び上記のように、工程(i)で得られた生物沈殿剤-金属の錯体から金属が回収される。
【0084】
工程(a)~(j)を連続して実行することは可能であるが、特に、得るべき所望の金属が工程(a)~(f)によって得られない場合には、工程(f)を実行する必要はない。
【0085】
(システム)
【0086】
本発明のさらなる実施形態は、以下の部分を含む、またはそれらからなる、電池から金属を回収するためのシステムに関する:
(i) 微生物の増殖と黒い塊のバイオリーチングを維持可能な反応器、好ましくは撹拌通気容器(stirred, aerated vessel)、
(ii) 液相から枯渇された固体残留物を分離可能な分離ユニット、
(iii) 溶解された金属錯体を液相から回収するのに適した回収ユニット。
【0087】
本発明に係る好ましい実施形態では、上述のシステムは、リチウムイオン電池の1ステップバイオリーチングに使用される。
【0088】
好ましくは、システムは、黒い塊のバイオリーチングに適した、好ましくは撹拌される第2の反応器をさらに含む。好ましくは、システムは、微生物培養物または無細胞培養上清を濃縮できる濃縮ユニットをさらに含む。
【0089】
本発明のさらにより好ましい実施形態は、以下の部分を含む、またはそれらから構成されるシステムを指す:
(i) 微生物の増殖と有機酸、錯化剤または還元剤の生成を維持できる、第1の反応器、好ましくは撹拌され通気された容器、
(ii) 任意で: 微生物の培養物または無細胞培養上清を濃縮できる濃縮ユニット、
(iii) 黒い塊のバイオリーチングに適した、好ましくは撹拌される第2反応器、
(iv) 液相から枯渇された固体残留物を分離できる分離ユニット、
(v) 溶解された金属錯体を液相から回収するのに適した回収ユニット。
【0090】
本発明に係る好ましい実施形態では、上述のシステムは、リチウムイオン電池の2ステップバイオリーチングに使用される。
【0091】
1ステップバイオリーチングに使用される反応器は、細胞増殖段階においてバッチモードまたは流加モード(fed-batch mode)のいずれかで使用することができる。 バイオリーチング段階では、灌流システム(perfusion system)が微生物細胞及び他の粒子を反応器内に確実に保持しながら、常に新鮮な栄養素を反応器に供給し、培養上清またはバイオリーチング溶液をそれぞれ抜き取る(withdrawing)。
【0092】
2ステップバイオリーチングでは、細胞増殖は、この目的のために特別に開発された条件下の第ステップで起こる。この場合も、バッチモードまたは流加モードでの発酵が可能である。細胞増殖から時間的および空間的に分離されたバイオリーチングは、この第2ステップのために最適化された条件下で起こる。灌流反応器のセットアップでは、所望の細胞密度に達した後、栄養溶液の連続供給が、バイオリーチング溶液の形成のために最適化された栄養溶液の供給に切り替えられる。連続的に生産および回収される無細胞培養ブロスは安定化され、バイオリーチングの第2ステップで使用される。培養上清を連続的に交換することにより、生成物の阻害による細胞増殖の妨害が回避され、生成するバイオマスの長期使用が確保される。
【実施例】
【0093】
実施例1:アセトバクテリウム・ウッディから微生物により生成された上清と無機酸および有機酸による浸出の比較
アセトバクテリウム・ウッディによって生成された622mMの酢酸塩を含む上清を使用して、黒い塊材料を浸出させた。これらの浸出結果を、同じモル濃度の純粋な酸(濃度>95%)での浸出速度と比較した(
図4)。培養上清による浸出の場合、遠心分離(8000rpm、11335g)および滅菌濾過によって採取(harvesting)を行った。上清を1.1%(v/v)H
2SO
4でpH4に酸性化し、次いで絶えず撹拌しながら5%の黒い塊と3時間接触させた。最高の浸出率は、元素MnおよびLiの培養上清で達成された(
図4)。
【0094】
実施例2:リンゴ酸による浸出とウスチラゴ・トリコフォラから微生物によって生成された上清による浸出の比較
リンゴ酸を含む上清は、ウスチラゴ・トリコフォラの増殖によって生成された。滅菌後、上清を黒い塊材料(10%)と20時間接触させ、純リンゴ酸と比較した(
図5)。採取後の上清(pH=6.5)による浸出は、Liの回収に選択的であるが、pH=3に酸性化すると、他の金属の浸出が促進された。
【0095】
実施例3:還元剤
黒い塊材料の浸出は、還元剤が添加されると増加し得る。[0047]を参照。実施例では、茶葉とH
2O
2をさまざまな有機酸と組合せて黒い塊を浸出させるために使用した(
図6)。これにより、還元剤を添加しなかった場合(
図4)と比較して浸出が大幅に促進された。
【0096】
実施例4:ウスチラゴ・トリコフォラの培養
ウスチラゴ・トリコフォラ(CBS No.131473から入手可能)を、バッフルなしの500mLフラスコ内の50mLの前培養培地中で前培養として増殖させる。前培養培地の組成:46.6mL/Lの粗グリセロール(93%(w/v))、1.6g/LのNH4Cl、500mg/LのKH2PO4、197mg/LのMgSO4・7H2O、19.5g/LのMES、13mg/LのFeSO4・7H2O、0.05mg/Lのビオチン、1 mg/Lのカルシウム-D(+)-パントテン酸、1mg/Lのニコチン酸、25mg/Lのミオイノシトール、1mg/LのチアミンHCl、1mg/LのピリドキシンHCl、0.2mg/Lの4-アミノ安息香酸、15mg/LのEDTA、4.5mg/LのZnSO4・7H2O、1.03mg/LのMnCl2・4H2O、0.3mg/LのCoCl2・6H2O、0.3mg/LのCuSO4・5H2O、0.4mg/LのNa2MoO4・2H2O、4.5mg/LのCaCl2・2H2O、1mg/LのH3BO3、0.1mg/LのKI;pH6.5。
接種(inoculation)のために、1.1mLの凍結保存液を前培養培地に無菌的に移す。50mLの前培養物の接種後に600nmで測定した光学密度(OD)は0.018である。培養は、バッフルなしの振盪フラスコ中、30℃、2.5cm偏向、250rpmでおよそ22時間、およそ2~3のODまで行われる。凍結保存物は上記の条件下で培養したものであり、OD600が2に達したときに分割される(portioned)。これを行うには、各600μLの培養物を600μLの30%グリセロールと混合し、-80℃で保存する。
【0097】
実施例5:流加プロセスまたはセラミック膜モジュールを用いた1リットル発酵規模での連続灌流プロセスにおける、基質粗グリセロールを使用したウスチラゴ・トリコフォラによるリンゴ酸の生成
前培養培地の組成:実施例4を参照。
流加および灌流プロセスの発酵培地の組成:161.3g/Lの粗グリセロール、8g/LのNH4Cl、1g/LのKH
2PO
4、394mg/LのMgSO
4・7H
2O、0.1mg/Lのビオチン、2mg/Lのカルシウム-D(+)-パントテン酸、2mg/Lのニコチン酸、50mg/Lのミオイノシトール、2mg/LのチアミンHCl、2mg/LのピリドキシンHCl、0.4mg/Lの4-アミノ安息香酸、30mg/LのEDTA、9mg/LのZnSO
4・7H
2O、2.06mg/LのMnCl
2・4H
2O、0.6mg/LのCoCl
2・6H
2O、0.6mg/LのCuSO
4・5H
2O、0.8mg/LのNa
2MoO
4・2H
2O、9mg/LのCaCl
2・2H
2O、6mg/LのFeSO
4・7H
2O、2mg/LのH
3BO
3、0.2mg/LのKI、20mg/Lの・7H
2O。
フィード(又は飼料:Feed) Iの組成:水中964g/Lの粗グリセロール
フィードIIの組成:水中118g/Lの粗グリセロール
発酵:1L発酵容器(例:Biostat Qplus Sartorius)を発酵槽の操作説明書に従って準備する。潅流モードの場合、潅流モジュールが組み込まれる外部回路を確立する必要がある。単純な流加発酵では、フィードIは接種後10 時間で4g/hの一定流量で開始する。灌流モードとは対照的に、フィードIは6.6g/hの一定流量で添加される。灌流モードは、発酵の開始から73時間後、またはリンゴ酸の濃度が45~50g/Lのときに活性化される。リンゴ酸濃度が50~60g/Lを超えると、生成物の阻害が観察される。灌流濾過が開始されると、フィードIがオフになり、フィードIIに置換される。流量は、フィードIIについては26mL/h、濾液については28mL/hである。細胞周期の流量は130mL/minである。
これらの条件下で、流加モードではリンゴ酸0.9g/L/h、灌流モードでは1.5g/L/hの生成物形成速度が達成された。この流加モードでは、総量129gのリンゴ酸塩が188時間で生成された(灌流モードでは352時間で513g のリンゴ酸;
図7Aおよび
図7B)。
【0098】
実施例6:流加発酵及び灌流発酵における基質テンサイシロップを使用したウスチラゴ・トリコフォラによるリンゴ酸の生成
発酵培地組成は実施例5に記載のとおりである。粗グリセロールの代わりに100%テンサイシロップを使用して、スクロースの初期濃度150g/Lを達成する。流加モードでは、供給速度は1L発酵スケールで3.3g/hであった。灌流モードの場合、フィードIの速度は約5g/h、フィードIIの速度は約3.5g/hである。これらの条件下で、流加モードではリンゴ酸塩1.7g/L/h、灌流モードでは2.6g/L/hの生成物形成速度が達成された。このようにして、流加モードでは150時間で総量228gのリンゴ酸塩が形成された(灌流モードでは341時間で607gのリンゴ酸が形成された;
図8Aおよび
図8B)。
【0099】
実施例7:流加法における基質酢酸塩を使用したウスチラゴ・トリコフォラによるリンゴ酸の生成
発酵培地組成は実施例5に記載した通りである。粗グリセロールの代わりに15g/L酢酸ナトリウム三水和物を使用する。供給速度は、1L発酵スケールで105mg/hである。これらの条件下で、リンゴ酸塩0.3g/L/hおよびコハク酸塩0.3g/L/hの生成物形成速度が達成された(
図9)。
【0100】
実施例8: 選択的バイオリーチング剤の製造とLiとCuの選択的浸出
いくつかの実施形態では、LiおよびCuなどの選択的な金属、またはLiのみを浸出させることが好ましい。Li、またはLiおよびCuの選択的なバイオリーチングは、微生物によって生成された有機酸を使用して達成できるが、無機酸の比較例では、Li、またはLiおよびCuの選択的なリーチングは生じない(
図10)。バイオリーチング剤は、有機炭素源、つまり砂糖又はテンサイシロップを含む培地を入れた振盪フラスコ内で微生物によって生成される。バイオリーチング剤が生成されると(典型的には1~3日後)、微生物は固液分離手段、つまり遠心分離によってバイオリーチング剤から分離され、バイオリーチング剤は、それぞれLi、またはLiとCuを選択的に浸出するために、周囲条件下で黒い塊と接触される。提供されたデータは、Li、又はLiとCuのバイオリーチングに対するさまざまな微生物の有用性を示す。特に、P.オキザリカム、A.ウッディ、A.オリゼ、およびT.リーゼイは、LiとCuの溶解に特に有用であったが、A.ニガー、M.ギリエモンディ、およびK.マルシアヌスは選択的にLiを溶解した。したがって、さまざまな微生物を使用することは、黒い塊から目的の金属を抽出するのに特に有用であり、それによって回収プロセスを完全に制御でき、最大の効率が得られる。
【0101】
実施例9:バイオ沈殿剤の製造および沈殿
バイオ沈殿剤は、典型的には、有機炭素供給源、または理想的には有機炭素廃棄物流(つまり、テンサイシロップまたはグリセロール)を使用して、振盪条件および20~30℃で増殖する真菌または細菌微生物によって生成される。黒い塊または残留した黒い塊(例えば実施例8に記載のLiおよびCuの抽出後)からの金属をさらに処理して、前の工程で分離されなかった金属を抽出することができる。このプロセスでは、残りの金属が有機酸によって浸出され、溶解金属(Fe、Al、Mn、Co、Ni)を含む浸出溶液が固液分離で分離される(
図11A)。この工程の後、選択的バイオ沈殿剤が妊娠浸出溶液に適用され、Mn、Co、およびNiが選択的に沈殿する(
図11B)。無機酸(硫酸、H
2SO
4)の比較例では、選択的な沈殿は生じない。再度、これらのデータは、本発明に係る方法の主な利点を示している。追加の工程により、他の微生物が最初の工程で浸出できなかった金属のバイオリーチングが可能になり、それによって、事前に枯渇した黒い塊から所望の金属をさらに抽出するための代替工程が提供される。
【国際調査報告】