(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】がんの予防用又は治療用の医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240705BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240705BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240705BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20240705BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240705BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20240705BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240705BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240705BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240705BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20240705BHJP
C07K 16/40 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K45/06
A61P35/02
C12Q1/68
G01N33/53 M
G01N33/574 Z
C12N15/113 130Z
C12N15/115 Z ZNA
C07K16/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581025
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 KR2022009183
(87)【国際公開番号】W WO2023277502
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0083887
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507175175
【氏名又は名称】インダストリー-アカデミック コーポレーション ファウンデーション,ヨンセイ ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】524003459
【氏名又は名称】ヴェラヴァース
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ジェ-ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェ-ウ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ソンスン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ポ ギョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョンヒ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4C084AA20
4C084AA24
4C084MA02
4C084ZB26
4C084ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、がん患者、特に上皮間葉転換(EMT)亜型のがん患者の予防、緩和、治療方法に関する。本発明は、PHGDH阻害剤、SHMT阻害剤及びMTHFD2阻害剤を、グルタミナーゼ(GLS)遺伝子又はそれをコードするタンパク質の発現量が増加しているがん患者に併用投与することで、1C代謝をより効果的に阻害し、再発、転移、抗がん剤耐性等のために治療が困難な難治性がん患者のがん細胞増殖抑制に相乗効果をもたらし、がんを極めて効果的に治療することができる方法に関する。また、GLS遺伝子又はそれにコードされるタンパク質の発現量を測定することで、患者ごとに初期段階からカスタマイズされた治療方法に関する情報を提供し、治療の成功率を高めることができる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルタミナーゼ(GLS)遺伝子の発現を阻害するための化合物又はその薬学的に許容される塩と、
ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH)遺伝子、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(SHMT)遺伝子、及びメチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ(NADP+依存性)2(MTHFD2)遺伝子及びメテニルテトラヒドロ葉酸シクロヒドラーゼ遺伝子からなる群から選択される遺伝子の発現を阻害するための薬剤又はその薬学的に許容される塩と、
を含む、がんの予防用又は治療用の薬学的組成物。
【請求項2】
薬剤が、遺伝子のmRNAに特異的に結合し、miRNA、siRNA、shRNA及びアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
さらに、抗がん剤を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
がんは、上皮間葉転換(EMT)亜型である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
がんは、胃がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、卵巣がん、大腸がん、膵臓がん、肝臓がん、乳ガン、子宮頸部がん、肺ガン、非小細胞肺がん、前立腺ガン、胆嚢ガン、胆道がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、血液がん、膀胱ガン、頭部ガン、子宮ガン、直腸ガン、脳腫瘍、ガン、食道ガン、小腸がん、内分泌腺ガン、腎臓ガン、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎ガン、腎臓細胞がん、腎盂がん、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性中枢神経系リンパ種、脊髄腫瘍、脳膠腫、及び下垂体腺腫からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
グルタミナーゼ(GLS)遺伝子によって発現されるタンパク質の機能を阻害するための化合物又はその薬学的に許容される塩と
ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH)遺伝子、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(SHMT)遺伝子、及びメチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ(NADP+依存性)2(MTHFD2)遺伝子及びメテニルテトラヒドロ葉酸シクロヒドラーゼ遺伝子からなる群から選択される遺伝子によって発現されるタンパクの機能を阻害するための薬剤又はその薬学的に許容される塩と、
を含む、がんの予防用又は治療用の薬学的組成物。
【請求項7】
薬剤に含まれる化合物が、受容体逆作動薬、拮抗薬、抗体、又はタンパク質に選択的に結合するアプタマーである、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
さらに、抗がん剤を含む、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
がんは、上皮間葉転換(EMT)亜型である、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
がんは、胃がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、卵巣がん、大腸がん、膵臓がん、肝臓がん、乳ガン、子宮頸部がん、肺ガン、非小細胞肺がん、前立腺ガン、胆嚢ガン、胆道がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、血液がん、膀胱ガン、頭部ガン、子宮ガン、直腸ガン、脳腫瘍、ガン、食道ガン、小腸がん、内分泌腺ガン、腎臓ガン、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎ガン、腎臓細胞がん、腎盂がん、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性中枢神経系リンパ種、脊髄腫瘍、脳膠腫、及び下垂体腺腫からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
上皮間葉転換(EMT)亜型がある患者を治療するための情報の提供方法であって、
目的の物体から単離された生体試料中のGLS遺伝子又はそれによってコードされるタンパク質の発現レベルを測定すること、と
前記測定された遺伝子又はタンパク質の発現水準が増加する場合、前記遺伝子の発現を阻害するための組成物及び/又は前記タンパク質の機能を抑制する製剤の併用投与を決定すること、
とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[1]本発明は、がんの予防用又は治療用の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[2]がんは、人類が解決しなければならない難治性疾患の一つであり、世界中でがんを治療するための開発に莫大な資本が投資されており、韓国の場合、毎年10万人以上が診断され、60,000人以上が死亡する疾患の死因の第1位である。
[3]これらのがんの原因となる発がん物質には、喫煙、紫外線、化学物質、食品、その他の環境因子が含まれるが、様々な原因により治療法の開発が困難であり、また、その発生部位によって治療効果も異なる。現在、治療剤として使用されている物質は、毒性が高く、がん細胞を選択的に除去することができないため、がんの発生を予防し、がんが発生した後に治療するために、毒性が低く、効果的な抗がん剤の開発が切実に要求されている。過去10年間にわたるがん診断及び治療の急速な進歩にもかかわらず、がんの発生による死亡率は高いままである。
【0003】
[4]特に、胃がんは、最も一般的な悪性腫瘍の1つであり、世界中でがんによる死亡の3番目に多い原因である。胃がん患者の治療における大きな進歩にもかかわらず、頻繁な再発及び転移、並びに薬剤耐性のために、胃がん患者の治療には依然として限界がある。
【0004】
[5]がんの再発、転移、薬剤耐性に関連するメカニズムについての研究が盛んに行われており、その中でもがん幹細胞仮説が注目されている。研究は、腫瘍の攻撃性、転移、再発、及び化学療法に対する耐性に寄与する幹様細胞の存在を示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[6]本発明の目的は、がんの予防、改善又は治療のための医薬組成物を提供することである。
[7]本発明の他の目的は、上皮間葉転換(EMT)亜型がんである患者のための治療選択肢に関する情報の提供方法を提供することである。
[8]しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は、上記の課題に制限されず、課題が言及されていなくても、下記の記載から当業者に明確に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[9]本発明の一実施形態は、がんの予防又は治療のための医薬組成物を提供する。
[10]本発明の一実施形態では、医薬組成物は、GLS遺伝子の発現を阻害するための化合物又はその薬学的に許容される塩と、
ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH)遺伝子、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(SHMT)遺伝子、及びメチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ(NADP+依存性)2(MTHFD2)遺伝子及びメテニルテトラヒドロ葉酸シクロヒドラーゼ遺伝子からなる群から選択される遺伝子の発現を阻害するための薬剤又はその薬学的に許容される塩と、を有効成分として含む。
[11]本発明の他の実施形態では、医薬組成物は、GLS遺伝子遺伝子によって発現されるタンパク質の機能を阻害するための調製物又はその薬学的に許容される塩と、ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH)遺伝子、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(SHMT)遺伝子、及びメチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ(NADP+依存性)2(MTHFD2)遺伝子及びメテニルテトラヒドロ葉酸シクロヒドラーゼ遺伝子からなる群から選択される遺伝子によって発現されるタンパクの機能を阻害するための調製物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む。
【0007】
[12]本発明の「GLS遺伝子」は、グルタミンをグルタミン酸とアンモニアに加水分解する反応を触媒するk型ミトコンドリアグルタミナーゼをコードする遺伝子である。特に、がん細胞は、大量のエネルギー源及び脂肪酸合成に必要な供給源を得るためにGLS遺伝子を過剰発現し、それによってグルタミンを分解することが報告されている。本発明の目的のために、がん患者は、GLS遺伝子を過剰発現してよく、これは、GLS遺伝子の発現又はそれによってコードされるタンパク質の機能を阻害することができる薬剤による増殖又は細胞死の阻害によって特徴付けられてよいか、これらに限定されない。
[13]本発明のGLS遺伝子は、配列番号1又は配列番号2で表される塩基配列からなってよいが、これらに限定されない。
[14]本発明のGLS遺伝子によってコードされるタンパク質の機能を阻害することができる調製物は、化学式1(CAS番号1439399-58-2)又は化学式2(CAS番号314045-39-1)で標識された化合物であってよいが、これらに限定されない。
[15][化学式1]
【0008】
【0009】
【化2】
[18]
[19]本発明の「PHGDH遺伝子」は、動物細胞におけるL-セリン合成の初期段階に関与する酵素をコードする遺伝子である。
[20]本発明のPHGDH遺伝子は、配列番号3で表される塩基配列からなってよいが、これに限定されない
[21]本発明の「SHMT遺伝子」は、セリン及びテトラヒドロ葉酸をグリシン及び5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素に可逆的に変換することを触媒する遺伝子である。
[22]本発明のSHMT遺伝子は、配列番号4で表される塩基配列からなってよいが、これに限定されない。
[23]本発明の「MTHFD2遺伝子」は、メチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ活性又はメテニルテトラヒドロ葉酸シクロヒドラーゼ活性がある遺伝子である。
[24]本発明のMTHFD2遺伝子は、配列番号5で表される塩基配列からなってよいが、これに限定されない。
【0010】
[25]本発明のPHGDH遺伝子によってコードされるタンパク質の機能を阻害することができる調製物は、以下の化学式3(CAS番号1916571-90-8)によって表される化合物であってよいが、これらに限定されない。
[26][化学式3]
【0011】
【化3】
[27]
[28]本発明のMTHFD2遺伝子によりコードされるタンパク質の機能を阻害することができる調製物は、以下の化学式4(CAS番号2227149-22-4)により表される化合物であり得るが、これらに限定されない。
[29][化学式4]
【0012】
【化4】
[30]
[31]本発明のSHMT遺伝子によってコードされるタンパク質の機能を阻害することができる調製物は、以下の化学式5(CAS番号2146095-85-2)によって表される化合物であってよいが、これらに限定されない。
[32][化学式5]
【0013】
【化5】
[33]
[34]本発明の目的のために、PHGDH、SHMT及びMTHFD2遺伝子並びにそれらによってコードされるタンパク質は、GLS遺伝子及びそれらによってコードされるタンパク質とともにがん患者において発現が増加しており、その結果、GLS遺伝子の発現又はそれらによってコードされるタンパク質の機能を阻害することができる薬物と組み合わせて投与される場合、がん患者におけるがん細胞の増殖阻害及び死滅に対して顕著な相乗効果を発揮することができる。
【0014】
[35]本発明の「薬学的に許容される塩」は、当業者によって医学的適用に適していると一般に考えられる塩(例えば、そのような塩は、その塩で処置することができる対象に有害ではないため)、又はそれぞれの処置内で許容される副作用を起こす塩である。一般に、上記の薬学的に許容される塩は、米国食品医薬品局、欧州医薬品庁(EMA)、又は厚生省の医薬品医療機器総合機構(PMDA)等の規制当局によって許容されると考えられる。
[36]本発明の医薬組成物は、いずれの場合も、当業者であれば、本発明による特定の化合物又はその生理学的に機能的な誘導体が塩を形成することができるかどうか、すなわち、本発明の阻害剤又はその生理学的に機能的な誘導体に対応する物質が、例えば、アミノ基、カルボン酸基等の電荷があるかどうかを容易に決定することができる。
【0015】
[37]本発明の阻害可能な化学製剤が化合物である場合、化合物の例示的な塩としては、酸付加塩又は塩基との塩、特に、医薬において一般的に用いられる薬学的に許容される無機及び有機酸付加塩及び塩基との塩があげられ、これは、水不溶性又は特に水溶性の酸付加物である。化合物の置換基に応じて、塩基との塩もまた好適であり得る。酸付加塩は、例えば、本発明の化合物の溶液を、塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、炭酸又はリン酸等の薬学的に許容される酸の溶液と混合することによって形成され得る。同様に、薬学的に許容される塩基付加塩は、アルカリ塩(例えば、ナトリウム又はカリウム塩);アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム又はマグネシウム塩);及び適当な有機リガンドと形成される塩(例えば、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、アルキルスルホン酸塩、及びアリールスルホン酸塩等の反対のアニオンを用いて形成されるアンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンカチオン)である。薬学的に許容される塩の例示としては、酢酸塩、アジフェート、アルギン酸塩、アルギニン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、バイオトレート(biotrate)、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、エデト酸カルシウム、カンポート酸塩、カンホスルホン酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、二塩酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩(edysylate)、エタンスルホン酸、ホルム酸塩、フマル酸塩、ガラクト酸塩、ガラクツロン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキシルソリン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソ酪酸塩、イソチオネート、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、メチル硫酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、フタル酸塩、ピクリン酸塩、ピバレート(pibalate)、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、スベリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等であるが、これに限定されない。
【0016】
[38]本発明の遺伝子の発現を阻害することができる調製物は、化合物であり、当該遺伝子のmRNAに特異的に結合するmiRNA、siRNA、shRNA及びアンチセンスオリゴヌクレオチドの群から選択されるいずれか一つであってよいが、これらに限定されない。
[39]本発明のタンパク質の機能を阻害することができる化学製剤は、化合物、受容体逆作動薬、拮抗薬、及びタンパク質に特異的に結合することができる抗体又はアプタマーからなる群から選択されるいずれか1つであってよい。
【0017】
[40]本発明の「受容体逆作動薬」又は「拮抗薬」は、受容体の生物学的活性を直接的又は間接的に低減することができる分子を意味し、限定されないが、受容体のリガンドと併用さられる場合、リガンドの作用を低減し得る分子が挙げられる。
【0018】
[41]本発明における「抗体」とは、タンパク質又はペプチド分子の抗原部位に特異的に結合し得るタンパク質様分子を意味し、このような抗体は、各遺伝子を常法に従って発現ベクターにクローニングし、マーカー遺伝子にコードされるタンパク質を取得し、得られたタンパク質から常法に従って調製することができる。
【0019】
[42]本発明における「アプタマー」とは、所定の標的分子に対して結合活性がある核酸分子を意味する。前記アプタマーは、RNA、DNA、修飾された核酸、又はこれらの混合物であってよく、直鎖又はループ形態であってよく、一般的に、アプタマーを構成するヌクレオチドの配列が短いほど、化学合成及び大量生産が容易であり、費用面で有利であり、化学式がきれいであり、生体内での安定性が良く、毒性が低いことが知られている。
【0020】
[43]本発明の前記がんは、胃がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、卵巣がん、大腸がん、膵臓がん、肝臓がん、乳がん、子宮頸部がん、肺がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、胆嚢がん、胆道がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、血液がん、膀胱がん、腎臓がん、黒色腫、結腸がん、骨肉腫、皮膚がん、頭部がん、子宮がん、直腸がん、脳腫瘍、がん、卵管がん、子宮内膜がん、膣がん、陰嚢がん、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、副腎がん、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、尿管がん、腎臓細胞がん、腎盂がん、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹膠腫及び下垂体腺腫からなる群より選択されるいずれか一つであってよく、例えば、胃がんであってよいが、これに限定されない。
[44]本発明のがんは、転移、再発、及び薬剤耐性がんである不治のがんでありうるが、これらに限定されない。
[45]本発明におけるがんは、上皮間葉転換(EMT)亜型であってよいが、これに限定されない。
[46]本発明の「EMT分子亜型」は、上皮細胞が間葉系細胞に形質転換する過程がある亜型であり、上皮細胞がその外観を失い、間葉系細胞の特徴がある突然変異過程であり、個体形成の発生において重要な過程であることが知られており、がん細胞の成長、薬剤耐性、浸潤及び転移が起こり得る分子亜型をいう。
【0021】
[47]本発明の組成物は、さらに抗がん剤を含んでいてもよい。
[48]本発明の抗がん剤は、ナイトロジェンマスタード、イマチニブ、オキサリプラチン、リツキシマブ、エルロチニブ、ネラチニブ、ラパチニブ、ゼフィチニブ、バンダンタニブ、ニロチニブ、セマサニブ、ボスチニブ、アクシチニブ、セジラニブ、レスタウルチニブ、トラスツズマブ、ゲフィチニブ、ボルテゾミブ、スニチニブ、カルボプラチン、ソラフェニブ、ベバシズマブ、シスプラチン、セツキシマブ、ビスクマルバム、アスパラギナーゼ、トレチノイン、ヒドロキシカルバミド、ダサチニブ、エストラモスチン、ゲムツズマポゾガマイシン、イブリツモマブ・ツセタン、ヘプタプラチン、メチルアミノレブリン酸、アムサクリン、アレムツズマブ、プロカルバジン、アルプロスタジル、硝酸ホルミウムキトサン、ゲムシタビン、ドキシフルリジン、ペメトレキセド、テガプール、カペシタビン、ジメラシン、オテラシル、アザシチジン、メトトレキサート、ウラシル、シタラビン、フルオロウラシル、フルダゴビン、エノシタビン、フルタミド、ケペシタビン、デシタビン、メルカプトプリン、チオグアニン、クラドリビン、カルモファー、ラリトレキセド、ドセタキセル、パクリタキセル、イリノテカン、ベロテカン、トポテカン、ビノレルビン、エトポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、テニホシド、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、マイトマイシン、ブレロマイシン、ダウノセシンルビシン、ダクチノマイシン、ピラルビシン、アクラルビシン、ペプロマイシン、テムシロリムス、テモゾロミド、ブスルファン、イホスファミド、シクロホスファミド、メルパラン、アルトレタミン、ダカルバジン、チオテパ、ニムスチン、クロラムブシル、ミトラクトール、ロイコボリン、トレトニン、エクメスタン、アミノグルテシミド、アナグレリド、オラパリブ、ナベルビン、パドラゾール、タモキシフェン、トレミフェン、テストステロン、アナストロゾール、レトロゾール、ボロゾールからなる群から選択されるからなる群から選択される1種以上を用いてよい。
【0022】
[49]本発明における上記「予防」とは、疾患又は病態の発症を阻害又は遅延させるいかなる行為を意味する。本発明の目的のために、組成物は、がん、特にEMT分子亜型がんの発症を遅延させるか、又はその発症を阻害することを意味する。
[50]本発明の「治癒」は、疾患又は疾病の進行を遅延、停止、又は逆転させるいかなる行為を意味し、本発明の目的のために、組成物は、がん、特にEMT分子亜型がんの進行を停止、低減、緩和、排除、又は逆転させることを意味する。
【0023】
[51]本発明の医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、注射剤、軟膏剤、散剤、又は飲料の形態であることを特徴とすることができ、医薬組成物は、ヒト対象によって特徴付けられ得る。
[52]本発明の医薬組成物は、これらに限定されないが、常法に従って、それぞれ製剤化し、経口剤、外用剤、坐剤、酸等の無菌注射液、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤等の形態で使用することができる。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含んでよい。前記薬学的に許容可能な担体は、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散化剤、安定化剤、懸濁剤、着色剤、香料を用いることができ、注射剤の場合、緩衝剤、防腐剤、非崩壊剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤等を、局所適用の場合、基剤、賦形剤、潤滑剤、防腐剤等を用いてよい。
[53]本発明の医薬組成物の化学製剤は、上記のような薬学的に許容される担体と混合することによって、様々な方法で調製することができる。例えば、経口投与の場合、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハース剤等の形態で調製することができ、注射剤の場合、単位用量のアンプル剤又は多用量の形態で調製することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル剤、徐放性化学製剤等に化学的に製剤化することができる。
[54]本発明の化学製剤に適した担体、賦形剤、及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アラビアゴム、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、又は鉱油があげられる。さらに、充填剤、凝集防止剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、保存剤等をさらに含有してよい。
[55]本発明の医薬組成物の投与経路としては、これらに限定されないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、経鼻、経腸、局所、舌下又は直腸があげられる。経口又は非経口投与が好ましい。本発明において、「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、病巣内、及び頭蓋内注射又は注射技術があげられる。さらに、医薬組成物は、直腸投与用の坐剤の形態で投与することができる。
【0024】
[56]本発明の医薬組成物は、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、化学製剤、投与時間、投与経路、放出速度、薬物の化学製剤、及び予防又は治療される特定の疾患の重症度を含むいくつかの要因に応じて変化してよく、医薬組成物の投与量は、患者の状態、体重、疾患の程度、薬物形態、投与経路及び期間に依存するが、当業者によって適当に選択され得る。それは、1日当たり0.0001~50mg/kg又は0.001~50mg/kgで投与され得る。1日1回又は数回に分けて投与することができる。上記の投与量は、本発明の範囲を決して限定しない。本発明による医薬組成物は、錠剤、ドラジェ、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤として化学的に製剤化することができる。
【0025】
[57]本発明の他の実施形態では、投与が必要な実体において、薬学的に有効な用量の、グルタミナーゼ(GLS)遺伝子の発現を阻害することができる化学製剤、又はその薬学的に許容される塩と、ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH)遺伝子、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(SHMT)遺伝子、及びメチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ(NADP+依存性)2(MTHFD2)遺伝子及びメテニルテトラヒドロ葉酸シクロヒドラーゼ遺伝子からなる群から選択されるいずれか1つの遺伝子の発現を阻害するための薬剤又はその薬学的に許容される塩と、を含有する薬物に関する。
[58]本発明のがんの予防又は治療方法において、前記GLS、PHGDH、SHMT又はMTHFD2遺伝子、前記遺伝子の発現を阻害することができる製剤、薬学的に許容される塩及びがんは、前記がんの予防、改善又は治療用組成物で説明したものと同様であり、本明細書の過度な複雑性を避けるために省略する。
[59]本発明において、「投薬/投与」とは、本発明の所定の組成物をいかなる適当な方法で対象に提供することを意味する。
[60]本発明において、上記の投与を必要とする「対象」は、哺乳類及び非哺乳類の動物を含んでよい。ここで、前記哺乳動物の例としては、ヒト、非ヒト霊長類、例えばチンパンジー、他の類人猿又はサル種;家畜動物、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ;愛玩動物、例えばウサギ、イヌ又はネコ;実験動物、例えば齧歯類、例えばラット、マウス又はモルモットが挙げられるが、これらに限定されない。また、本発明において、前記非哺乳類動物の例としては、鳥類又は魚類を挙げられるが、これらに限定されない。
[61]本発明において上記のように投与される化学製剤は、特に限定されず、固体形態、液体形態、又は吸引用のエアロゾル化学製剤として投与されてよく、使用直前に液状製剤に変換して経口又は非経口投与することを目的とした、固体形態の化学製剤、例えば、酸剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液の経口化学製剤、外用剤、坐剤、無菌注射液等として投与されてよく、これらに限定されない。
【0026】
[62]また、本発明においては、上記投与の際に、本発明の化学製剤とともに、薬学的に許容される担体をさらに投与してよい。ここで、薬学的に許容される担体としては、経口投与の場合には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁剤、着色剤、香料等を用いることができ、注射投与の場合には、緩衝剤、保存剤、非単量化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤等を混合して用いることができ、局所投与の場合には、基剤、賦形剤、滑沢剤、保存剤等を用いることができる。本発明の化合物の化学製剤は、上記のように薬学的に許容される担体と混合することにより、種々の方法で調製することができる。例えば、経口投与の場合には、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハース剤等の形態で調製することができ、注射剤の場合には、単位用量アンプル剤、マルチドーズ剤等の形態で調製することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル剤、徐放性製剤などとして化学的に製剤化され得る。
[63]一方、化学製剤に好適な担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アラビアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル
ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱油があげられる。さらに、充填剤、凝集防止剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、保存剤などを含有してもよい。
【0027】
[64]本発明による製剤の投与経路は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、硬膜内、心筋内、経皮、皮下、腹腔内、経鼻、経腸、局所、舌下又は直腸であるが、これらに限定されるものではない。経口又は非経口投与が好ましい。
[65]本発明において、「非経口的」とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、および頭蓋内注射または注入技術を含む。本発明の医薬組成物はまた、直腸投与用の坐剤の形態で投与することもできる。
[66]本発明において、「薬学的に有効な量」とは、所望の生物学的結果を提供するのに十分な作動薬の量をいう。その結果は、疾患の徴候、症状または原因の軽減および/または緩和、または生物学的世界における他の望ましい変化であってもよい。例えば、治療的使用のための「有効量」は、疾患の臨床的に有意な軽減を提供するために必要な、本発明で開示される化学製剤の量である。個々の場合における「有効な」の適当な量は、日常的な実験を用いて当業者が決定することができる。したがって、「有効量」という表現は、通常、活性物質が治療効果を有する量を意味する。本実施例において、活性物質は、がん細胞の増殖抑制剤であり、がんの予防、改善または治癒剤である。
【0028】
[67]本発明の化学製剤は、活動性、年齢、体重、一般的健康状態、性別、化学製剤、投与時間、投与経路、排出率、薬物化学製剤、および予防または治療すべき特定の疾患の重症度を含むいくつかの要因によって変化してよく、製剤の投与量は、患者の状態、体重、疾患の程度、薬物の形態、経路および期間によって変化するが、当業者によって適当に選択され得、1日あたり0.0001~100mg/kg又は0.001~100mg/kgで投与することができる。1日1回投与することもできるし、数回に分けて投与することもできる。上記の投与量は、本発明の範囲を何ら限定するものではない。本発明による化合物は、錠剤、ドラジェ、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤として化学的に製剤化することができる。
[68]本発明の製剤は、単独で、又は手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法、及び生体反応調節剤等の方法と組み合わせて使用することができる。
[69]また、本発明の化学製剤は、他の抗がん剤と併用することができ、このとき、抗がん剤としては、ナイトロジェンマスタード、イマチニブ、オキサリプラチン、リツキシマブ、パニツムマブ、エルロチニブ、ネラチニブ、ラパチニブ、ゼフィチニブ、バンダンタニブ、ニロチニブ、セマサニブ、ボスチニブ、アクシチニブ、セジラニブ、レスタウルチニブ、トラスツズマブ、ゲフィチニブ、ボルテゾミブ、ススットリカニブニチニブ、カルボプラチン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ベバシズマブ、シスプラチン、セツキシマブ、アプリベルセプト、レゴラフェニブ、ビスクマルバム、アスパラギナーゼ、トレチノイン、ヒドロキシカルバミド、ダサチニブ、エストラモスチン、ゲムツズマブ・オゾガマイシン、イブリツモマブ・ツセタン、ヘプタプラチン、メチルアミノレブリン酸、アムサクリン、アレムツズマブ、プロカルバジン、アルプロスタジル、硝酸ホルミウムキトサン、ゲムシタビン、ドキシフルリジン、ペメトレキセド、テガプール、カペシタビン、ギメラシン、オテラシル
アザシチジン、メトトレキサート、ウラシル、シタラビン、フルオロウラシル、フルダガビン、エノシタビン、フルタミド、デシタビン、メルカプトプリン、チオグアニン、クラドリビン、カルモファー、ラルティトレキセド、インターフェロンアルファファ-2a、ドセタキセル、パクリタキセル、イリノテカン、ベロテカン、トポテカン、ビノレルビン、エトポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、テニホシド
ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、マイトキサントロン、マイトマイシン、ブレロマイシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ピラルビシン、アクラビビシン、ペプロマイシン、テムシロリムス、テモゾロミド、5-フルオロウラシル、アドスルファン、イホスファミド、シクロホスファミド、メルパラン、アルトレタミン、ダカルバジン、チオテパ、ニムスチン、クロラムブシル、ミトラクトール、ロイコボリン、トレトニン、エクメスタン、アミノグルテシミド、アナグレリド、ナベルビン、パドラゾール、タモキシフェン、トレミフェン、テストステロン、アナストロゾール、レトロゾール、ボロゾール、ビカルタミド、ロムスチン、カルムスチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
[70]本発明の他の実施形態は、EMT分子亜型がんがある患者をどのように治療するかについての情報の提供方法を提供する。
[71]本発明の方法は、目的の物体から単離された生体試料中のGLS遺伝子又はそれによってコードされるタンパク質の発現レベルを測定し、上記で測定された遺伝子又はタンパク質の発現レベルが増加した場合、前記測定された遺伝子又はタンパク質の発現水準が増加する場合、前記遺伝子の発現を阻害するための組成物及び/又は前記タンパク質の機能を抑制する製剤の併用投与を決定することであって、当該遺伝子とは以下の:
[72]PHGDH(ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ)遺伝子
[73]SHMT(セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)遺伝子、及び
[74]MTHFD2(メチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ(NADP+依存性)2、メテニルテトラヒドロ葉酸シクロヒドラーゼ)遺伝子
である。
【0030】
[75]本発明において、「目的の対象」とは、GLS遺伝子発現を阻害することができる化学製剤;又はそれによってコードされるタンパク質の機能を阻害することができる薬物のために治療に対する応答が不確かであり、がんを発症したか、又はがんを発症する確率が高い個体を意味する。
[76]本発明の「生体試料」は、個体から得られるか又は個体に由来するいかなる物質、生物学的体液、組織、又は細胞を意味し、例えば、全血、白血球、末梢血単核細胞、白血球バフィーコート、血漿、及び血清、血液、痰、涙、粘液、鼻洗浄液、鼻汁、呼気、尿、精液、唾液、腹膜洗浄液、骨盤液、嚢胞液、髄膜液、羊水、腺液、膵液、リンパ液、胸膜液、乳頭吸引液、気管支吸引液、滑液、関節吸引液、関節吸引液、臓器分泌液、細胞、細胞抽出液、脳脊髄液などが挙げられるが、これらに限定されない。
[77]本発明におけるタンパクの発現量を測定する方法は、プロテインチップ解析、免疫測定法、リガンド結合測定法、MALDI-TOF(マトリックス支援レーザーイオン化飛行時間型質量分析)解析、SELDI-TOF(表面増強レーザーイオン化飛行時間型質量分析)解析、放射線免疫拡散、放射線免疫拡散、オロチン酸免疫拡散方法、ロケット免疫電気泳動、組織免疫染色、補体固定分析、二次元電気泳動解析、液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)、LC-MS/MS(液体クロマトグラフィ/質量分析)、ウエスタンブロット法、及びELISA(酵素結合免疫吸着測定法)からなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
[78]本発明のタンパク質の発現レベルは、タンパク質の発現レベルを測定することができる化学製剤を用いて測定することができる。前記タンパク質の発現水準を測定することができる化学製剤としては、前記タンパク質に特異的に結合する抗体、オリゴペプチド、リガンド、ペプチド核酸(PNA)及びアプタマーからなる群から選択された1種以上であってよい。
[79]本発明の「抗体」とは、抗原に特異的に結合し、抗原抗体反応を生じる物質をいう。本発明の目的のために、抗体は、タンパク質に特異的に結合する抗体を意味する。本発明の抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体の両方が含まれる。抗体は、当業界で広く知られている技術を用いて容易に調製することができる。例えば、ポリクローナル抗体は、タンパク質の抗原を動物に注射し、その動物から血液を採取して抗体を含む血清を得る工程を含む、当業界で広く知られた方法により作製することができる。これらのポリクローナル抗体は、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、サル、ウマ、ブタ、ウシ、イヌ等のいかなる動物から製造することができる。さらに、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(Kohler and Milstein(1976)European Journal of Immunology 6:511-519)、又はファージ抗体ライブラリー技術(Clackson et al.,Nature,352:624-628,1991;Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:58,1-597,1991)として産業界で広く知られている。本発明の方法により調製された抗体は、ゲル電気泳動、透析、塩沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の方法を用いて単離精製することができる。また、本発明の抗体は、2つの全長軽鎖及び2つの全長重鎖がある完全な形態だけでなく、抗体の機能的断片を含む。
[80]本発明の抗体の機能的断片は、少なくとも抗原結合機能がある断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvを含む。
[81]DNA又はRNAに類似した人工的に合成されたポリマーを指す「ペプチド核酸(PNA)」は、1991年にNielsen、Egholm、Berg及びBuchardt(University of Copenhagen、Denmark)によって最初に導入された。DNAはリン酸-リボース糖骨格があるが、PNAはペプチド結合によって連結された反復N-(2-アミノエチル)-グリシン骨格を有し、これはDNA又はRNAに対するその結合強度及び安定性を大きく増加させ、分子生物学、診断アッセイ、及びアンチセンス療法において用いられる。
[82]本発明の「アプタマー」は、オリゴ核酸又はペプチド分子を意味する。
[83]本発明のタンパク質を含むアミノ酸配列に基づいて、タンパク質に特異的に結合する抗体、PNA、及びアプタマーに対応する化学製剤は、通常の技術者によって容易に製造することができる。
[84]本発明の遺伝子の発現レベルを測定する方法は、逆転写ポリメラーゼ反応(RT-PCR)、競合的逆転写ポリメラ-ゼ反応(競合的RT-PCR)、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ反応(リアルタイムRT-PCR)、RNase保護アッセイ(RPA;RNase保護アッセイ)、ノーザンブロッティング、及びDNAチップの群から選択される少なくとも1つを行うことである。
[85]本発明の遺伝子の発現レベルは、遺伝子の発現レベルを測定することができる化学製剤を用いて測定することができる。前記遺伝子の発現水準を測定することができる化学製剤は、前記遺伝子に相補的に結合するプライマー、プローブ及びアンチセンスヌクレオチドからなる群から選択された1つ以上であってよい。
[86]本発明の「プライマー」は、標的遺伝子配列を認識する断片であり、正方向プライマー対及び逆方向プライマー対を含むが、好ましくは特異性及び感度のアッセイ結果を提供するプライマー対を含む。高い特異性は、プライマーの核酸配列が試料中に存在する非標的配列と一致しない場合に与えられ、その結果、プライマーは、相補的プライマー結合部位を含む標的遺伝子配列のみを増幅し、非特異的増幅を誘導しない。
[87]本発明における「プローブ」とは、試料中の検出対象の標的物質と相補的に結合し得る物質を意味し、該結合を介して試料中の標的物質の存在を特異的に確認し得る物質を意味する。前記プローブの種類は、当業界で通常用いられる物質であって、これに限定されるものではないが、好ましくは、PNA(peptide nucleic acid)、LNA(locked nucleic acid)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、RNA、又はDNAであってよく、最も好ましくは、PNAであってよい。より具体的には、プローブは、生体に由来するか、若しくは類似するか、又はインビトロで製造される生物学的材料、例えば、酵素、タンパク質、抗体、微生物、動物及び植物細胞及び器官、ニューロン、DNA、並びにRNAを含む生体材料であり、DNAは、cDNA、ゲノムDNA、オリゴヌクレオチドを含み、RNAは、ゲノムRNA、mRNA、オリゴヌクレオチドを含む。
[88]本発明の「ロックされた核酸」(LNA)は、2’-O、4’-Cメチレン架橋を含む核酸類似体を意味する[J Weiler,J Hunziker and J Hall Gene Therapy(2006)13,496.502]。LNAヌクレオシドは、DNA及びRNAからの共通の核酸塩基を含み、ワトソンクリック塩基対ルールに従って塩基対を形成することができる。しかしながら、メチレン架橋によって引き起こされる分子の「ロッキング」のために、LNAはワトソンクリック結合において理想的な形状を形成することができない。LNAがDNA又はRNAオリゴヌクレオチドに含まれる場合、それは相補的ヌクレオチド鎖とより迅速に対合し、二重らせんの安定性を増加させることができる。
[89]本発明の「アンチセンスヌクレオチド」は、ヌクレオチド配列及びユニット間骨格があるオリゴマーを意味し、ここで、アンチセンスオリゴマーは、ワトソンクリック塩基対形成によってRNA中の標的配列とハイブリダイズされ、典型的には標的配列内でmRNA及びRNA:オリゴマーヘテロ二量体の形成を可能にする。オリゴマーは、標的配列に対して正確な配列相補性又はほぼ相補性を有し得る。
[90]本発明の遺伝子の配列に基づいて、本発明の遺伝子の配列に基づいて従来の技術者によって遺伝子に相補的に結合するプライマー、プローブなどに対応する化学製剤を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0031】
[91]本発明は、がん患者、特にEMT(epithelial mesenchymal transition)亜型のがん患者の予防、改善又は治療方法に関し、GLS(グルタミナーゼ)遺伝子又はそれがコードするタンパク質の発現量が増加したがん患者において、PHGDH、SHMT及びMTHFD2阻害剤と併用投与した場合に、1C代謝がより効果的に阻害され、再発、転移及び抗がん剤耐性のために治療が困難な不治のがん患者におけるがん細胞増殖の阻害に対して相乗効果がある。
[92]さらに、GLS遺伝子又はそれによってコードされるタンパクの発現レベルを測定することによって、早期から各患者への個別化された治療選択肢についての情報の提供により、治療成功率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】[93]本発明の一実施形態による高齢コホートの胃がん患者における胃トランスクリプトーム解析の結果を示す図である。
【
図2】[94]本発明の一実施形態に係る腸亜型細胞株(NCIN87、SNU601)及び幹様亜型細胞株(MKN1、HS746T)におけるGLS(グルタミナーゼ)遺伝子がコードするタンパク質の発現量をウエスタンブロット分析により確認した結果を示す写真である。
【
図3】[95]本発明の一実施形態による腸亜型オルガノイド(GA326)及び幹様亜型オルガノイド(GA077)に対して行ったゲノム解析の結果を示す図である。
【
図4】[96]本発明の一実施形態に係るグルタミンの存在又は非存在を確認した結果を示すグラフである。
【
図5】[96]本発明の一実施形態に係るグルタミンの類似体であるDONの濃度に応じた細胞株の増殖レベルを確認した結果を示すグラフである。
【
図6】[96]本発明の一実施形態に係るGLS阻害剤CB839の濃度に応じた細胞株の増殖レベルを確認した結果を示すグラフである。
【
図7】[96]本発明の一実施形態に係るBPTESの濃度に応じた細胞株の増殖レベルを確認した結果を示すグラフである。
【
図8】[97]本発明の一実施形態に係るGLS阻害剤CB839の単独処理による幹様亜型オルガノイドのサイズ変化を確認した結果を示す写真である。
【
図9】[98]グルタミンの存在又は非存在、及び本発明の一実施形態によるPHGD阻害剤による併用で幹様亜型細胞株の増殖レベルをチェックした結果を示すグラフである。
【
図10】[98]グルタミンの存在又は非存在、及び本発明の一実施形態によるSHMT(
図10)阻害剤による組合せ処理を用いて幹様亜型細胞株の増殖レベルをチェックした結果を示すグラフである。
【
図11】[98]グルタミンの存在又は非存在、及び本発明の一実施形態によるMTFHD2阻害剤による組合せ処理を用いて幹様亜型細胞株の増殖レベルをチェックした結果を示すグラフである。
【
図12】[99]本発明の一実施形態に係るGLS阻害剤(CB839)とNCT504との併用処理による幹様亜型オルガノイドのサイズ変化を確認した結果を示す写真とグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[100]本発明の一実施形態は、グルタミナーゼ(GLS)遺伝子の発現を阻害することができる化学製剤又はその薬学的に許容される塩と、ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH)遺伝子、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(SHMT)遺伝子、及びメチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ(NADP+依存性)2(MTHFD2)遺伝子及びメテニルテトラヒドロ葉酸シクロヒドラーゼ遺伝子からなる群から選択される遺伝子の発現を阻害するための薬剤又はその薬学的に許容される塩と、を含む、がんの予防用又は治療用の薬学的組成物があげられる。
[101]本発明の他の実施形態では、投与が必要な実体におけるグルタミナーゼ(GLS)遺伝子の発現を阻害することができる化学製剤、又はその薬学的に許容される塩;並びにPHGDH(ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ)、SHMT(セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)遺伝子、及びMTHFD2(メチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ(NADP+依存性)2)遺伝子の群から選択されるいずれか1つの遺伝子の発現を阻害することができる薬物、メテニルテトラヒドロ葉酸シクロヒドラーゼ、又はその薬学的に許容される塩を活性成分として含有する組成物を薬学的有効量で投与することを含む、がんの予防、改善又は治療方法に関する。
[102]本発明の他の実施形態は、対象の物体から単離された生体試料中のGLS遺伝子又はそれによってコードされるタンパク質の発現レベルを測定すること;及び上記で測定された遺伝子又はタンパク質の発現レベルが増加した場合、以下の遺伝子の発現を阻害することができる化学製剤;又は以下の遺伝子によってコードされるタンパク質の機能を阻害することができる調製物の同時投与によって判断することを含む。がんの亜型を含むEMT分子は、治療の選択肢についての情報をどのように提供するかに関連する。
[103]以下、本発明を以下の実施形態によって詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明の例示に過ぎず、本発明の内容が以下の実施形態によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
[107]胃トランスクリプトーム分析
[108]延世大学がんセンターで根治的胃切除術を受けた胃がん患者から新鮮な凍結腫瘍組織を得て、臨床データをマッチングするプロセスを通して胃トランスクリプトーム解析データを得た。この研究は、延世大学校医科大学評価体(Institutional Review Board;IRB)によって行われ、上記の試料は、患者の書面による同意の後に収集された。臨床で検証された分類系に従って、胃がん患者を5つの亜型(胃、炎症、腸、混合、及び幹様分子亜型)に分け、解糖系及びグルタミノリシスに関連する遺伝子を、通常の方法に従ってヒートマップによって分析し、結果を
図1に示した。
【0035】
[109]
図1に示すように、延世大学コホートの胃の患者におけるトランスクリプトーム解析により、ヒートマップに示すように、胃がん亜型の中で幹様亜型(EMT分子亜型)として分類された患者におけるGLS(グルタミナーゼ)遺伝子の発現レベルの増加が確認された。
【実施例2】
【0036】
[111]胃がん細胞株におけるGLS遺伝子及びタンパク質発現レベルの確認
[112]GLS遺伝子及びタンパク質発現レベルを決定するために、NCIN87、SNU601、MKN1、及びHS746T細胞株を韓国細胞株バンクから購入した。ここで、NCIN87及びSNU601細胞株の場合は腸亜型を代表する細胞株であり、MKN1及びHS746T細胞株の場合は幹様亜型を代表する細胞株に該当する。これらの購入した細胞株について、RPMI1640(10%ウシ胎仔血清(FBS)、2mM L-グルタミン、100U/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンを含む)又はDMEM(10%FBS、2mM L-グルタミン、100U/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシン)を、37℃、5%CO
2インキュベーター中で培養した。この時、上記の細胞株については、すべて微小血漿が混入していないかどうかを検査し、マイコプラズマが混入していないことを確認した後、実験に用いた。プロテアーゼ阻害剤混合物(genedepot)を含有するEBC200(200mM NaCl、50mM Tris-HCl(pH8.0)、0.5%NP-40)を、各培養細胞株に入れる。細胞を溶解する工程を行った。次に、溶解した細胞からタンパク質を分離した後、BCA分析法(Pierce)を用いてタンパク質の量を定量し、同量のタンパク質をSDS-PAGEにロードして電気泳動を行い、PVDF膜(Biorad)に転写した。転写終了後、5%スキムミルク(BD difco)をメンブレンに入れて室温で1時間ブロッキングした後、1:2000で希釈したGLSタンパク質と1:5000で希釈したβアクチンに特異的に結合する抗体(abcam)を入れて4℃で1日間インキュベーションした。その後、5%スキムミルクで希釈した二次抗体を添加し、1時間インキュベートした後、LAS 4000 mini(富士フイルム)を用いてタンパク質の発現レベルを確認する。結果を
図2に示す。
[113]
図2に示すように、腸亜型に対応するNCIN87及びSNU601細胞株、幹様亜型に対応するMKN1及びHS746T細胞株と比較して、GLS遺伝子によってコードされるタンパク質の発現レベルが有意に増加したことが見出された。
[114]上記の結果から、GLS遺伝子によってコードされるタンパク質の発現レベルは、特に、胃がんの他の亜型と比較して幹様亜型において増加することが分かる。
【実施例3】
【0037】
[116]患者由来オルガノイドのゲノム解析結果
[117]患者由来オルガノイドを得るために、延世大学校医科大学評価体(治験審査委員会)IRB)を用いた。患者由来オルガノイドを用いて、腸亜型に対応するGA326オルガノイドと、幹様亜型に対応するGA077オルガノイドとを作製した。
[118]具体的には、臨床的に検証された分類システムに従って腸亜型又は幹様亜型として分類された患者オルガノイドを得、次いで、40%の高度DMEM/F12(gibco)、50%のWnt3A細胞培養培地(馴化培地)、10%のR-spond1細胞培養培地(馴化培地)、1%のHEPES(gibco)、及び1%のGlutaMax(gibco)を得た。オルガノイドは、マトリゲルを用いて3D構造を形成するために、0.2%プリモシン(invivogen)、2%B-27(invitrogen)、10mMニコチンアミド(sigma)、1mM N-アセチルシステイン(sigma)、2μM A8301、50ng/ml mEGF(invitrogen)、100ng/ml mNoggin(peprotech)、1nMガストリン(sigma)、200ng/ml hFGF10(peprotech)、及び12.5μM Y-27632(Enzo)を含有する培地を用いて、マトリゲルを用いて作製した。
[119]オルガノイド各々のトランスクリプトーム解析を進めるために、得られたゲノム解析データをTPMに対して正規化し、GLS遺伝子並びに一炭素代謝に関連する遺伝子、MTR、SHMT1、SHMT2、MTHFD1及びMTHFD2についてのトランスクリプトーム発現値を同定し、
図3に示した。
[120]
図3に示すように、腸亜型に対応するGA326オルガノイドと比較して、GLS遺伝子の発現レベルが幹様亜型に対応するGA077オルガノイドにおいて有意に増加したことが確認された。
[121]上記の結果から、GLS遺伝子の発現レベルは、高い患者らしさを有するオルガノイド並びに細胞株において、他の胃がん亜型と比較して幹様亜型において特に増加していることが分かる。
【実施例4】
【0038】
[123]GLS阻害剤による幹様亜型細胞株の細胞増殖の確認
[124]腸亜型細胞株であるNCIN87、及び幹様亜型細胞株であるHS746Tを、それぞれ5000個の細胞を含む96ウェルプレート(黒色)に分注し、翌日、グルタミン欠乏培養培地(Gibco)と交換した。その後、DON(1μM、50μM、150μM;selleckchem、cat no.S8620)、CB839(1μM、5μM、25μM;cayman、cat no.S7655)又はBPTES(5μM、10μM、25μM;MCE、cat no.HY-12683)を処理し、処理時間を0時間とすると、24、28、72時間に細胞培地を捨て、-80℃の超低温冷凍庫に保管した。このように保管された細胞株を室温で培養した後、細胞培養キット(CyQUANT cell proliferation assay、Invitrogen)に含まれているGR dyeを含む細胞溶解液を200μlずつ各ウェルに入れて室温で5分間培養した後、蛍光光度計(Fluorescence photometer、thermo、varioskan flash 3001)を用いて480nm及び520nm励起で蛍光強度を測定し、0時間の細胞数に標準化して%で定量し、その値を
図4~
図7に示した。
[125]
図4に示すように、腸亜型細胞株NCIN87において、グルタミンを含まない培養培地(Gln-)中では、グルタミン含有培養培地(Gln+)と比較して細胞増殖が有意に低下したが、幹亜型細胞株HS746Tでは、グルタミンを含めても細胞増殖は低下しなかった。
[126]
図5~7に示すように、腸亜型細胞株NCIN87において、細胞増殖はグルタミン類似体(DON)及びGLS活性阻害剤(CB839及びBPTES)によって阻害されたが、幹様細胞株HS746Tの場合、細胞増殖は薬物によって低減されなかった。
[127]上記の結果から、幹様亜型、すなわち難治性がんの場合、細胞増殖はグルタミン欠乏又はGLS活性阻害剤によって阻害されないことが分かる。
【実施例5】
【0039】
[129]GLS阻害剤によるオルガノイドにおける増殖の低減の確認
[130]実施例3で作製したGA077オルガノイドのそれぞれを5μMのCB839(cayman、カタログ番号S7655)で処理し、処理の時点をD0とし、1日目(D1)、2日目(D2)、3日目(D3)、及び4日目(D4)に光学顕微鏡(Olympus)で撮影し、中心を通る最長及び最短の直径を画像Jを用いて測定し、オルガノイドの直径を2つの値を平均することによって測定した。対照群(VEH);DMSO処置群は実験を5回繰り返し、CB839処置群は実験を6回繰り返した。このように測定されたオルガノイド直径を顕微鏡サイズバーによりμmに換算し、0日目の直径を基準に平均して数値で表し、
図8に示した。
[131]
図8に示すように、幹様亜型GA077オルガノイドは、GLS活性阻害剤に相当するCB839によってサイズが減少しなかった。
[132]上記の結果から、幹様亜型、すなわち難治性がんの場合、細胞増殖はGLS活性阻害剤によって阻害されないことが分かる。
【実施例6】
【0040】
[134]併用療法による幹様亜型細胞株における増殖の低減の確認
[135]実施例4に記載されるように、幹様亜型細胞株HS746Tを分注してインキュベートし、それをグルタミン欠乏培養培地と交換し、PHGDH阻害剤(25μM)、SHMT阻害剤(1μM)又はMTHFD2阻害剤(0.5μM)を投与し、細胞生存率アッセイキットを使用した後、細胞生存率アッセイキットを用いて測定された生存率を
図9~11に示した。
[136]
図9~11に示すように、グルタミン欠乏単独(Gln(-)/Veh)及び各阻害剤単独(Gln(+)/PHGDHi、Gln(+)/SHMTi、Gln(+)/MTHFD2i)と比較して、PHGDH、SHMT、又はMTHFD2阻害剤単独で処理したグルタミン欠乏(Gln(-)/PHGDHi、Gln(-)/SHMTi、Gln(-)/MTHFD2i)は、幹様亜型細胞系HS746Tの生存に対して有意な相乗効果を見出した。
[137]上記の結果に基づいて、グルタミン欠乏症及びGLS阻害剤に耐性である幹様亜型、すなわち、難治性がんの場合、PHGDH、SHMT、及びMTHFD2阻害剤の組合せは、細胞生存を効果的に阻害することができる。
【実施例7】
【0041】
[139]併用療法による幹様亜型オルガノイドにおける増殖の低減の確認
[140]実施例5に記載されるように、幹様亜型オルガノイドであるGA077を、GLS阻害剤(CB839、5μM)、PHGDH阻害剤(NCT503、50μM)、又はそれらの組合せでそれぞれ処理し、オルガノイド直径の平均値を
図12に示した。
[141]
図12に示すように、オルガノイド直径の平均値は、幹様亜型オルガノイドGA077をGLS阻害剤(CB839)又はPHGDH阻害剤(NCT503)のいずれか単独で処理した場合、それらの組合せ(combi)と比較して有意に減少した。
[142]結果は、グルタミン欠乏及びGLS阻害剤に耐性である幹様亜型の場合、PHGDH、SHMT、及びMTHFD2阻害剤の組み合わせが、腫瘍サイズを非常に効果的に低減し得ることを示唆する。
【0042】
[144]上記は、本発明の特定の部分について詳細に説明されており、本産業の通常の知識がある者にとって、この特定の説明は、望ましい実施形態に過ぎず、したがって、本発明の範囲は限定されないことは明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項及びその均等物によって定義される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
[145]本発明による組成物は、がん細胞の増殖を阻害することができるだけでなく、再発、転移、及び抗がん剤に対する耐性の存在のために治療が困難である不治のがんがある患者におけるがん細胞の増殖の阻害に対して相乗効果を有し、その結果、がんを非常に効果的に治療することができる。
[配列表テキスト]
[146]配列番号1.GLS
[147]
【0044】
【化6】
[148]配列番号2.GLS
[149]
【0045】
【化7】
[150]配列番号3.PHGDH
[151]
【0046】
【化8】
[152]配列番号4.SHMT2
[153]
【0047】
【化9】
[154]配列番号5.MTHFD2
[155]
【0048】
【配列表】
【国際調査報告】