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特表2024-525519風力発電設備のためのタワー状の建造物、このような建造物を製造するための方法、ならびに風力発電設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】風力発電設備のためのタワー状の建造物、このような建造物を製造するための方法、ならびに風力発電設備
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/20 20160101AFI20240705BHJP
   E04F 17/08 20060101ALI20240705BHJP
   E04H 12/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
F03D13/20
E04F17/08 A
E04H12/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581082
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2022067914
(87)【国際公開番号】W WO2023275153
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】BE2021/5506
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524005523
【氏名又は名称】ローゼン 2 ホールディング アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】ROSEN 2 Holding AG
【住所又は居所原語表記】Obere Spichermatt 14, 6370 Stans, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー リンドナー
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA25
3H178AA43
3H178BB77
3H178CC23
3H178DD67Z
3H178DD70X
(57)【要約】
本発明は、特に洋上建造物として形成された風力発電設備のためのタワー状の建造物であって、特にモノパイルとして形成された少なくとも1つの下側の構造部分と、特にトランジションピースとして形成された上側の構造部分とを有しており、上側の構造部分は、スリップジョイントを形成するために、下側の構造部分に部分的に被せられており、上側の構造部分と下側の構造部分とは、それぞれ1つの円錐状の構造部セクションを有しており、上側および下側の構造部分はそれぞれ、スリップジョイントを共に形成する少なくとも1つの別の構造部セクションを有しており、別の構造部セクションは、建造物の中央の長手方向軸線に対して横方向で見て、円錐状の構造部セクションの上側かつ/または下側に配置されており、別の構造部セクションの面垂線は、円錐状の構造部セクションの面垂線よりも大きな角度(α)で長手方向軸線に交差している、タワー状の建造物に関する。さらに、本発明は、タワー状の建造物を製造するための方法であって、接続エレメントの少なくとも一部を、下側および/または上側の構造部分上に射出成形または流し込み成形する、タワー状の建造物を製造するための方法、ならびに風力発電設備、特に洋上風力発電設備に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に洋上建造物として形成された風力発電設備のためのタワー状の建造物であって、特にモノパイルとして形成された少なくとも1つの下側の構造部分(2)と、特にトランジションピースとして形成された上側の構造部分(4)とを有しており、前記上側の構造部分は、スリップジョイントを形成するために、前記下側の構造部分(2)に部分的に被せられており、前記上側の構造部分と前記下側の構造部分とは、それぞれ1つの円錐状の構造部セクション(24,34)を有している、タワー状の建造物において、
前記上側および下側の構造部分(2,4)はそれぞれ、スリップジョイントを共に形成する少なくとも1つの別の構造部セクション(22,32,26,36)を有しており、前記別の構造部セクションは、前記建造物の中央の長手方向軸線(28)に対して横方向で見て、前記円錐状の構造部セクション(24,34)の上側かつ/または下側に配置されており、前記別の構造部セクションの面垂線(29)は、前記円錐状の構造部セクションの面垂線(29)よりも大きな角度(α)で前記長手方向軸線(28)に交差していることを特徴とする、タワー状の建造物。
【請求項2】
前記上側の構造部分(4)の前記別の構造部セクション(22,26)の前記面垂線(29)と前記下側の構造部分(2)の前記別の構造部セクション(32,36)の前記面垂線(29)とは、同じ角度(α)で前記長手方向軸線(28)に交差している、請求項1記載の建造物。
【請求項3】
前記下側および上側の構造部分(2,4)は、前記スリップジョイントを形成するそれぞれ3つの構造部セクション(22,32,26,36)を形成しており、2つの前記別の構造部セクションのうちのそれぞれ一方(26,36)は、前記円錐状の構造部セクション(24,34)の上側に形成されていて、2つの前記別の構造部セクションのうちのそれぞれ他方は、前記円錐状の構造部セクション(24,34)の下側に形成されている、請求項1または2記載の建造物。
【請求項4】
前記下側および/または上側の構造部分(2,4)の少なくとも1つの前記別の構造部セクション(22,32,26,36)は、中空円筒状に成形されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の建造物。
【請求項5】
前記下側および上側の構造部分(2,4)は、それぞれ2つの別の構造部セクション(22,32,26,36)を有しており、前記別の構造部セクション(22,32,26,36)は、中空円筒状に成形されている、請求項4記載の建造物。
【請求項6】
前記下側の構造部分(2)と前記上側の構造部分(4)との間には、特にリング状、プレート状および/または層状の、ならびに好ましくは弾性的かつ/または圧縮可能な複数の接続エレメント(18)を含む接続装置が、前記上側の構造部分(4)と前記下側の構造部分(2)との間の荷重伝送のために配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の建造物。
【請求項7】
前記長手方向軸線(28)に関して、前記下側および上側の構造部分(2,4)の、互いに上下に位置する構造部セクション(22,24,26,32,34,36)の間に配置された前記接続エレメント(18)は、互いに角度付けされた面法線(31)を有している、請求項6記載の建造物。
【請求項8】
前記長手方向軸線を中心とする周方向で互いに隣接して配置された接続エレメント(18)のうちの1つは、その隣に配置された前記接続エレメント(18)よりも大きな厚さを有している、請求項6または7記載の建造物。
【請求項9】
前記接続エレメント(18)の少なくとも一部は、少なくとも部分的に弾性的に変形可能である、請求項6から8までのいずれか1項記載の建造物。
【請求項10】
前記接続エレメント(18)の少なくとも一部は、少なくとも部分的に圧縮可能であり、特に、各前記接続エレメントの圧縮性は、表面の構造化によってかつ/または特に多層構造の前記接続エレメント(18)の少なくとも1つの層の材料によって形成される、請求項6から9までのいずれか1項記載の建造物。
【請求項11】
請求項6を含む、前記請求項のいずれか1項記載のタワー状の建造物を製造するための方法であって、接続エレメント(18)の少なくとも一部を、下側および/または上側の構造部分(2,4)上に射出成形または流し込み成形することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項記載のタワー状の建造物を製造するための方法であって、接続エレメント(18)の少なくとも一部を予め製造し、次いで、下側および/または上側の構造部分(2,4)上に取り付け、特にこの場合、前記接続エレメント(18)を固定するために、少なくとも1つの磁石式保持装置を使用することを特徴とする方法。
【請求項13】
前記上側および/または下側の構造部分(2,4)を製造後に測定し、目標形状からのずれにより生じる偏差寸法を、前記接続エレメント(18)の異なる厚さおよび/または面状の延在により考慮する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記偏差寸法を、前記接続エレメント(18)のうちの少なくとも1つの接続エレメントの後加工により考慮する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項1から10までのいずれか1項記載の建造物を特徴とする、風力発電設備、特に洋上風力発電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式の建造物、ならびにこのような建造物を製造するための方法に関する。また、本発明は、風力発電設備に関する。
【0002】
欧州特許第3443224号明細書により、冒頭で述べた対象物が公知である。風力発電設備のためのタワー状の建造物もしくは支持構造は、ロータを支持するナセルを基礎に、特に海底に結合させている。冒頭で述べた形式の建造物では、スリップジョイントの接続領域またはオーバーラップ領域は、それぞれ下側および上側の構造部分の円錐状領域に限定されている。したがって、荷重伝達は、円錐状の接続領域を介して行われる。この領域は、かけられる曲げ荷重および支持荷重に相応に大きく形成されなければならず、これにより建造物のコストが高くなる。
【0003】
本発明の課題は、生じる負荷を想定して設けられた支持構造を、建造物の製造が全体としてより良好となるように改善することである。
【0004】
この課題は、請求項1の対象物により解決され、この対象物は、上側および下側の構造部分がそれぞれ、スリップジョイントを共に形成する少なくとも1つの別の構造部セクションを有しており、別の構造部セクションは、建造物の中央の長手方向軸線に対して横方向で見て、円錐状の構造区分の上側または下側に配置されており、別の構造部セクションの面垂線は、円錐状の構造部セクションの面垂線よりも大きな角度で長手方向軸線に交差していることを特徴とする。上側および下側の構造部分の、スリップジョイントを共に形成する2つの別の構造部セクションが設けられている場合、好ましくは、これらの2つの別の構造部セクションのうちの一方が各円錐状の構造部セクションの上側に、他方が各円錐状の構造部セクションの下側に配置されており、一方および他方の別の構造部セクションの面垂線は、円錐状の構造部セクションの面垂線よりも大きな角度で、建造物の中央の長手方向軸線に交差している。この場合、面垂線は、建造物の垂直方向の縦断面図で、すなわち、建造物が垂直に方向付けられた状態で基礎の上に垂直に延びる、建造物の中央の長手方向軸線に関して同じ円周角で観察される。各構造部セクションの面垂線は、表面から各構造部分の長手方向中心軸線の方向に垂直に延びており、すなわち、例えば、下側の構造部分の外面に対する面垂線は、下側の構造部分の表面から、この構造部分の壁を貫通して長手方向中心軸線に向かって垂直に延びている。円錐状の構造部セクションの表面は、少なくとも実質的に、特に完全に、円錐台の表面に相応しており、この場合、製造に基づく誤差、または例えば溶接シームにより必然的に存在する突起は考慮されない。
【0005】
下側の構造部分の少なくとも1つの別の構造部セクションは、上側の構造部分の少なくとも1つの別の構造部セクションと共にスリップジョイントを形成するために、長手方向中心軸線に関して所定の高さに位置している。構造部分につきそれぞれ2つの別の構造部セクションが存在している場合、両(第2の)別の構造部セクションもやはり、所定の高さで互いに隣接して位置している。好ましくは、構造部セクションのこれらの対の面垂線は、製造に基づく誤差を無視すると、長手方向軸線に同じ角度で交差しているので、これらの構造部セクションは平行に延在している。
【0006】
従来技術では、生じる荷重の移行は、この場合、相応に寸法設定すべき円錐状の構造部セクションに関してのみ計算されていた。オーバーラップ領域が大きくなるほど、負荷は小さくなり、もしくは吸収することができる曲げモーメントはより大きくなる。設備が大きくなるほど、建造物もしくは支持構造の円錐状の区分はますます大きくなり、ひいては高価になる。本発明は、今や、生じる荷重の移行を、少なくとも部分的に切り離す、または分割することもできるという認識を利用している。純粋に軸方向の負荷に関しては、円錐の角度が同じ場合、著しく短いオーバーラップ長さで十分であろう。したがって、本発明によれば、特に上側の構造部分、およびこれに取り付けられた風力発電設備部分の自重により決定される軸方向の力と、例えば風および波による曲げ荷重とが少なくとも部分的に分離される。軸方向の力は引き続き円錐によって吸収されるのに対し、曲げ荷重は今や少なくとも部分的に、付加的な構造部セクションによって少なくとも共に吸収される。軸方向の荷重と曲げ荷重とから生じる、スリップジョイント接続部に対する負荷は、この場合、様々な個所で発生し、応力重畳は少なくとも部分的に回避される。したがって、スリップジョイント接続部は、構造部分の間に場合によっては配置される接続エレメントを含み荷重伝送のために機能し互いに接触する、構造部分の領域によって形成される。
【0007】
これは特に、円錐状の構造部セクションの他に、上方および下方の付加的な構造部セクションが存在していて、この場合、接続領域は、中央の円錐状の領域の上側にも下側にも続いている、本発明の態様に該当する。この場合、曲げ荷重は、少なくとも実質的に、好ましくは少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、この付加的な構造部セクションにおいて伝達される。
【0008】
好ましくは、上側および下側の構造部分の別の構造部セクションの面垂線が、長手方向軸線に同じ角度で交差するように形成されている。したがって、特に3つの部分から成る接続領域の構造部分の延在は、少なくとも、構造部セクションの間の移行部の外側の領域では平行である。下側および上側の構造部分は、スリップジョイントを形成するそれぞれ3つの構造部セクションを形成しており、この場合、それぞれ、2つの別の構造部セクションの一方は、円錐状の構造部セクションの上側に、2つの別の構造部セクションのうちの他方は、円錐状の構造部セクションの下側に形成されている。
【0009】
好ましくは、別の構造部セクションの面垂線が、中央の長手方向軸線に交差する角度は、円錐状の構造部セクションが中央の長手方向軸線に交差する角度とは少なくとも2°異なっている。
【0010】
好ましくは、下側および/または上側の構造部分の少なくとも1つの別の構造部セクションは中空円筒状に成形されていて、特にまっすぐな管セグメントによって形成されている。別の構造部セクションの面垂線は、この場合、特に、中央の長手方向軸線に対して垂直に延在している。少なくとも1つの中空円筒状の構造部セクションに続いている、(別の構造部セクションが2つ設けられている場合には)特に真ん中の円錐状の部分は、著しく小さく、したがってより安価に構成することができる。寸法および荷重がますます大きくなる場合には特に、本発明による建造物ならびに相応の風力発電設備の製造に関して、真ん中の円錐状の構造部セクションをより小さく寸法設計することにより、コスト的利点が大きくなる。
【0011】
稼働中の荷重伝達のために特に有利な本発明の態様は、それぞれ1つの円錐状の構造部セクションを有していて、別の構造部セクションが中空円筒状に形成されている下側および上側の構造部分によって得られる。これらの別の構造部セクションのうち、好ましくは一方は(構造部分の稼働位置で、中央の長手方向軸線に関して)上に向かって、一方は下に向かって、円錐状の構造部セクションに接続している。
【0012】
好ましくは、下側の構造部分と上側の構造部分との間には、特にリング状、プレート状および/または層状の、ならびに好ましくは弾性的な、特に粘弾性的なかつ/または圧縮可能な複数の接続エレメントを含む接続装置が、上側の構造部分と下側の構造部分との間の荷重伝送のために配置されている。この接続装置は、スリップジョイントの接続領域の2つまたは3つの区分のうちの少なくとも1つにおいて、中央の長手方向軸線を中心とする周方向で全周にわたって、かつこれによりシール平面を形成するように配置されていてもよい。しかしながら、接続エレメントは、互いに間隔を置いて配置された接続エレメントであってもよく、これらの接続エレメントは、中央の長手方向軸線に沿って建造物の高さにわたって、かつ/または周方向で互いに離隔されている。特に、例えば中空円筒状の管区分もしくは構造部セクションと、円錐状の構造部セクションとの間の移行領域には、接続エレメントは配置されておらず、これにより各接続エレメントの配置および嵌合精度は向上させられる。好ましくは、少なくとも長手方向に関して、構造部セクションにつき複数の接続エレメントが、長手方向軸線を中心として周方向で均一に分配されている。
【0013】
特に、接続装置は、建造物の円錐状の真ん中の構造部セクションにおいて周方向のシールを形成している。この領域におけるシール配置は、実質的な曲げ荷重が、下方および上方の構造部セクションによって吸収されるならば、曲げ荷重の発生により場合によっては生じる、下側の構造部分と上側の構造部分との相対運動が、この構造部セクションにおいて僅かにしか作用しないので、特に有利である。
【0014】
特に、接続エレメントは、少なくとも大部分がポリウレタンから形成されている。例えば、接続エレメントは、表面に、スライドラッカの層またはその他の減摩性のコーティングが設けられているポリウレタンプレートであって、これにより下側および上側の構造部分の設置がより容易に行われる。
【0015】
下側および上側の構造部分の接続すべき構造部セクションの向きに応じて、長手方向軸線に関して、互いに上下に位置する構造部セクションの間に配置された接続エレメントには、互いに角度付けされた面法線が設けられている。これも、中央の長手方向軸線を通る垂直の縦断面図の観察に該当する。有利には、円錐状の構造部セクションの間に配置された少なくとも1つの接続エレメントには、長手方向軸線に対して横方向で見てその隣に位置する接続エレメントとは異なる厚さが設けられている。これにより、通常、そこに生じる荷重が考慮されている。また、接続エレメントには、特にその面状の延在の方向で変化する厚さが設けられていてもよい。
【0016】
本発明による建造物のさらなる実施例によれば、長手方向軸線を中心とする周方向で互いに隣接して配置された接続エレメントのうちの少なくとも1つにも、その隣に配置された、または長手方向軸線に関してその上方に配置された接続エレメントよりも大きな厚さが設けられていてもよい。これにより、構造部分で生じた誤差を補償することができる。例えば、接続エレメントは、下側の構造部分の上に上側の構造部分の被せることにより建造物を設置する間に、相互の確実な上下の滑動を可能にするために、斜めに面取りされた縁部を有することもできる。これは特に、上方および下方の中空円筒状に形成された構造部セクション間に配置された接続エレメントに該当する。
【0017】
接続エレメントの少なくとも一部は、有利には、少なくとも部分的に弾性的に、特に粘弾性的に変形可能である。このことは、下側および上側の構造部分の、例えば溶接シームの形態の不正確性および非平坦性に、目的に応じて接続エレメントを適合させるために役立つことができ、これにより、このような溶接シームが、例えばシール平面で良好に取り囲まれ、または接続エレメントの不正確な配置により生じる間隔が閉じられる。さらに、減衰性を高めることができ、これにより設備の長期安定性を高めることもできる。接続エレメントの一部が、すなわち少なくとも1つの接続エレメントが、それ自体変化する厚さを備えていて、これにより例えば構造部分の誤差または溶接シームの隆起部が補償されるならば、これも構造部分に対する適合のために役立つことができる。すなわち、構造部分側に場合によっては存在する、例えば溶接シームの形態の、目標寸法からの偏差を考慮することができるように、個々の接続エレメント自体が変化する厚さを有することができる。また、接続エレメントは、例えば設置を改善する目的で、傾斜面を有していてもよく、または少なくとも部分的に断面が楔状に形成されていてもよい。
【0018】
接続装置の接続エレメントは、好ましくは、少なくとも大部分が、場合によっては存在するコーティングまたは外側の接着層を除いて好ましくは完全に、場合によっては凹部が設けられている高密度なポリウレタンから製造されている。本発明の範囲では、高密度なポリウレタンまたは固体のポリウレタンとは、気体の含有物を実質的に含まない固体の物体であると理解されたい。この場合、「気体含有物を実質的に含まない」とは、ポリウレタンが、好ましくは20体積%未満、特に好適には10体積%未満、特に5体積%未満、極めて特に2体積%未満の気体含有物を有していることを意味する。
【0019】
各面状の延在に対して横方向で見てその厚さが特に2~10cmであり得る、少なくとも部分的に弾性的な荷重伝達性の接続エレメントの使用に加えて補足的に、接続エレメントの少なくとも一部を、少なくとも部分的に圧縮可能に形成することができ、各接続エレメントの圧縮性は、特に、表面の構造化によって、材料における凹部によって、かつ/または特に多層構造の接続エレメントの少なくとも1つの層の材料によって形成される。例えばこれは、プレート状の接続エレメントを形成する発泡性のポリウレタン化合物であってもよい。
【0020】
圧縮可能なかつ/または少なくとも部分的に弾性的な接続エレメントの形成により、タワー状の建造物の下側の構造部分と上側の構造部分との間の荷重伝送の他に、発生する力の減衰も行われ、これにより、建造物の完全性は、モルタルまたはピンによるこれまでに公知の接続と比較して改善される。
【0021】
冒頭で述べた課題は、上述したようにまたは後述するように形成されるタワー状の建造物を製造するための方法であって、接続エレメントの少なくとも一部を、下側および/または上側の構造部分上に射出成形または流し込み成形する方法によっても解決される。有利には、接続エレメントは、製造形式にかかわらず、トランジションピース上に配置される。例えばポリウレタンの形態の流し込み材料の塗布は、付着促進剤または下地剤によって改善することができ、プレート状の接続エレメントの取付けは接着剤によって改善される。
【0022】
特に、例えば接着剤の硬化により確実に固定されるまで接続エレメントを位置保持する1つ以上の磁石式保持装置を使用することができる。
【0023】
有利には、接続エレメントの少なくとも一部を予め製造し、次いで、下側および/または上側の構造部分上に取り付ける。好ましくは、すべての接続エレメントを予め、例えばプレートの形態に流し込み成形し、次いで特に上側の構造部分上に取り付ける。接続エレメントを固定するための、取扱いが容易であるために有利なオプションは、接続エレメントが少なくとも十分に固定されるまで、上側および下側の構造部分の所望の位置に接続エレメントを保持する磁石式保持装置の使用にある。
【0024】
製造誤差によりまたは例えば溶接シームにより場合によっては存在する、所定の形状からの構造部分の偏差のためには、上側および/または下側の構造部分を製造後に測定し、これにより、場合によっては存在する目標形状からのずれにより生じる偏差寸法が生じ、この偏差寸法を接続エレメントの異なる厚さおよび/または面状の延在により考慮することができる。このような偏差は、接続エレメントの製造中に既に考慮することができる。しかしながら、好ましくは、偏差寸法は、少なくとも1つの接続エレメントの後加工により考慮され、このような後加工は、例えば、フライス加工による材料の除去により後からさらに行うことができる。
【0025】
冒頭で述べた課題は、上述したまたは後述する建造物を有する風力発電設備、特に洋上風力発電設備によっても解決される。
【0026】
本発明のさらなる利点および詳細は、以下の図面の説明により明らかである。図は概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による対象物を示す図である。
図2】本発明による対象物を示す断面図である。
図3図2に示した本発明による対象物の詳細図である。
図4】さらなる本発明による対象物を示す図である。
図5図4に示した本発明による対象物の部分図である。
図6図4に示した対象物の(部分的な)垂直方向断面図である。
図7】さらなる本発明による対象物を示す垂直方向縦断面図である。
図8】さらなる本発明による対象物を示す垂直方向縦断面図である。
図9】さらなる本発明による対象物を示す垂直方向縦断面図である。
図10】さらなる本発明による対象物を示す垂直方向縦断面図である。
図11】さらなる本発明による対象物を示す垂直方向縦断面図である。
【0028】
以下に説明する実施例の個々の技術的特徴は、各請求項の特徴、独立請求項のうちの少なくとも1つの請求項の特徴との組み合わせにおいても、本発明によるさらなる構成を形成することができる。有意である限り、機能的に同一の作用を有する部材には、同一の符号を付してある。
【0029】
本発明による風力発電設備は、好ましくは、洋上風力発電設備として形成されていて、下側の構造部分2を有しており、下側の構造部分の上には上側の構造部分4が被せられている。この下側の構造部分2は、この場合(図1)、モノパイルとして形成されている。上側の構造部分4は、トランジションピースとして、ロータブレード6を備えたナセル8への移行部を形成している。
【0030】
したがって風力発電設備は、下側および上側の構造部分2,4ならびに場合によってはこれらの間に配置される接続装置を含む、同じく本発明による建造物を含んでいる。下側の構造部分4は、海底もしくは基礎10上に垂直に配置されていて、水面12から突出している。下側の構造部分と上側の構造部分との接続部に作用する荷重は、一方では、トランジションピースおよびその上に配置されたナセル8の、基礎10に対して垂直に向けられた重量荷重により生じる。基礎に対して水平に延在する付加的な荷重は、風および波によって生じ、この荷重もトランジションピースに作用し、ひいては接続部を介してモノパイルから伝達されなければならない。場合によってはモノパイルに作用する振動または衝撃も、場合によっては付加的に、トランジションピースの方向に伝送される。
【0031】
図1に示した建造物もしくは風力発電設備のためのスリップジョイント形式の本発明による構成および接続部は、図2に開示されている。接続領域14は、1つの接続エレメント18の下端部16から、別の1つの接続エレメント18の上端部20まで及ぶ。全体として、下側の構造部分2および上側の構造部分4につき、スリップジョイント接続を形成するそれぞれ3つの構造部セクションが存在している。第1の構造部セクション22は、上側の構造部分2の、接続領域に位置する下方の中空円筒状の部分によって画定されている。この区分は、円錐状の構造部セクション24の下側に位置しており、この円錐状の構造部セクションは、以下では、トランジションピースの真ん中の構造部セクションとも称される。上側には、同じく再び中空円筒状に形成された構造部セクション26が続いており、この構造部セクションは、下方の構造部セクション22よりも小さい外径を有している。下方、真ん中、および上方とは、基礎10に対して垂直に、建造物の真ん中を通って延在する中央の長手方向軸線28に関する相対位置として理解される。下側の構造部分2の外表面に対するかつ上側の構造部分4の内表面に対する面垂線29は、上方から見て建造物の中心で延在する中央の長手方向軸線に、構造部セクションに対する配属関係に応じて異なる角度αで交差しており、すなわち、真ん中の円錐状の構造部セクション24および34に共に続いている上方および下方の構造部セクション22および32もしくは26および36は、真ん中の円錐状の構造部セクションに対して角度をなして延在している。円錐状の構造部セクション24および34では、面垂線29は、長手方向軸線28に、約85°の角度で交差しているのに対して、これに続く上方および下方の構造部セクションでは、面垂線は、長手方向軸線に対して垂直、すなわち90°の角度で延在している。
【0032】
下側の構造部分もしくはモノパイルの側では、構造部セクションを、トランジションピースの構造部セクション22,24および26と同様に定義することができる。下側の構造部分2の下方の中空円筒状の部分32は、下方の構造部セクションである。この下方の構造部セクションは、上方に向かって、下側の構造部分2の円錐状の領域によって形成される真ん中の円錐状の構造部セクション34に移行しており、この真ん中の円錐状の構造部セクションには上方に向かって再び中空円筒状の構造部セクション36が続いており、この中空円筒状の構造部セクションの外径および内径は、同様に中空円筒状のさらに下方に位置する構造部セクション32の外径および内径よりも小さい。すべての構造部セクション22,24,26,32,34,36は、中央の長手方向軸線28を包囲するように形成されている。図面では、簡略にするために、矢印によってではなく、中括弧によって、構造部セクション22,24,26,32,34,36が部分的に示されている。
【0033】
図2による実施例では、接続エレメント18は、中空円筒状の構造部セクション26と36との間もしくは22と32との間にのみ配置されていて、生じる曲げモーメントの伝送のために機能している。重量による垂直荷重は実質的に一定であり、したがって減衰は殆ど不要であるので、円錐状の構造部セクション24と34とは互いに重なり合っており、したがってそこでは円錐状のエレメント間で直接的な荷重伝送が行われる。相対的に著しく大きな差異を伴って生じる曲げ荷重は、実質的に構造部セクション22,32および26,36において、かつ部分的に、円錐状の接続区分の傾斜面によって伝送される。これは、特に、上方および下方の構造部セクションの長さとそれらの互いの間隔とにより生じる。
【0034】
図3による詳細図では、接続エレメント18が、各上方の構造部セクション26および36から、円錐状の領域内には延在していないことが判る。これにより、接続エレメントの形成と配置とが容易になる。
【0035】
下側および上側の構造部分の構造部セクションは、接続領域14の全部で3つの接続区分を形成する。第1の接続区分は、下方の構造部セクション22および32を含む。真ん中の接続区分は、下側および上側の構造部分2,4の円錐状の構造部セクションを含む接続区分である。第3の接続区分は、上方の中空円筒状の構造部セクション26および36の領域を含む。これらの接続区分のそれぞれは、接続装置の1つ以上の部分を有していてもよい。
【0036】
図4による実施例では、1つの接続区分につき、周方向で互いに隣接して配置された接続エレメント18の2つの列が、互いに間隔を置いてトランジションピースに予め固定されて設けられている。円錐状の接続区分に位置している接続エレメント18は、均一な厚さを有しているのに対して、中空円筒状の構造部セクションのそれぞれ下側の列に配置された接続エレメント18は、長手方向軸線18の方向で、変化する厚さを有しており、これにより、組付け中の両構造部分の相互の滑動が著しく容易になる(図5および図6)。建造物の組付けをさらに改善するために、同様に、付加的な列も、すなわち中空円筒状の構造部セクションの第2の上側の列も、下端部の厚さが上端部の厚さよりも小さい接続エレメントを有している。
【0037】
接続エレメント18の厚さは、好ましくは厚さの少なくとも30%超が、さらに好ましくは厚さの少なくとも80%超かつ厚さの90%までが変化し、この場合、接続エレメント18を上側の構造部分4に取り付ける場合には、接続エレメント18の横断面で見て薄い方の端部が下方になる。接続エレメント18がモノパイルもしくは下側の構造部分2の側に取り付けられる場合には、両構造部分を互いに内外に差し込む前に、接続エレメント18の薄い方の端部を上方に配置する。
【0038】
2列の接続エレメント18ではなく、接続区分ごとに、1つだけの接続エレメント18を設けることもでき、この場合、図6による実施例と同様に、中空円筒状の構造部セクションの間に配置されるこれらの接続エレメント18もまた、変化する厚さを有している(図7)。
【0039】
図8による実施例では、接続エレメント18の厚さは変化しない。互いに上下に配置された接続エレメントの面法線31は、中央の長手方向軸線および長手方向中心軸線28に異なる角度βで交差しており、したがって互いに角度をなしている。これらの接続エレメントは、この場合、接続領域14の3つすべての接続区分で均一な厚さを有している。厚さは、共通して、接続エレメントの面状の延在に対して横方向に観察される。ただし、接続エレメントの厚さの測定のために、接続エレメントは、建造物の構造部分によって荷重をかけられるものとは見なされない。厚さは特に、2~10cmであり、好ましくは接続エレメント18の幅および/または長さの少なくとも1/5であり、さらに好適には1/10である。地面の上に平坦に位置する接続エレメントの厚さは、基礎に対して垂直方向で測定される。接続エレメントが、建造物の中空円筒状の部分に配置されている場合は、厚さは、長手方向軸線に対して垂直に規定される。接続エレメントが、円錐状の接続区分に配置されている場合には、接続エレメント18の厚さは、下側の構造部分および上側の構造部分の表面に対して垂直方向で測定される。この場合、面状の延在は、それぞれ、厚さが測定される方向に対して垂直に観察される。
【0040】
プレート状の接続エレメントに対して代替的に、接続装置は、丸み付けられた接続エレメントを有していてもよい。これらの接続エレメントは、長手方向軸線を中心として全周にわたって延びていてもよく、ひいてはシールを形成することができる。接続エレメントは、代替的に、単に支持目的で設けられてもよく、例えば、間隔を置いて、特にトランジションピース上に固定されて、次いでモノパイルの上に押し込まれてもよい。
【0041】
概して、下側の構造部分は、モノパイルである必要はない。タワー状の建造物が、複数のスリップジョイント接続を有していて、例えば三脚(トリポッド)として形成されており、これにより風力発電設備の3つの脚が、それぞれスリップジョイント接続によって形成されることも考えられる。
【0042】
好ましくは、接続エレメント18の寸法設定は、各領域に生じる荷重に応じて行われる。
【0043】
図9では、下方の構造部セクション22と32との間ならびに上方の構造部セクション26と36との間に配置された接続エレメント18は、図示した垂直方向の縦断面図では、比較的小さな面積を占めているのに対し、円錐状の接続区分に配置された接続エレメント18は、著しく大きく形成されている。
【0044】
図10および図11では、タワー状の建造物の簡略化された別の実施態様が開示されており、これらの態様では、円錐状の構造部セクション22もしくは24に、上に向かって1つだけの中空円筒状の構造部セクション26もしくは36(図10)が、または下に向かって1つだけの中空円筒状の構造部セクション22もしくは32が続いている。この場合、各区分に配置された接続エレメントは、組付け中の上側の構造部分4の下方の構造部セクション22(図11)もしくは上側の構造部分4の構造部セクション26の有利なガイドに相応に面取りされるように形成される。好ましくは、円錐状の領域における接続エレメント18の面取りは、概して行われない。それにもかかわらず、この領域でも、接続エレメントの厚さを、場合によっては生じる目標寸法からの偏差に適合させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】