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特表2024-525528ポリ(アリーレンスルフィド)組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ポリ(アリーレンスルフィド)組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/02 20060101AFI20240705BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C08L81/02
C08L83/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500038
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 EP2022069036
(87)【国際公開番号】W WO2023281044
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21315124.4
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】サンソー, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ブロンチャート, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】マルク, ティボー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CN011
4J002CP052
4J002EJ016
4J002EW066
4J002FD076
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、限られた量の酸化防止剤化合物とエポキシ官能性ポリオルガノシロキサンポリマーとの組み合わせを含み、改良された機械的性能及び優れた耐熱老化性を有するポリ(アリーレンスルフィド)組成物、その製造プロセス、並びに前述の組成物を含む物品、部品、又は複合材料、並びに3D物体の製造のためのこの組成物の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物[組成物(C)]であって、
-少なくとも1つのポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー[ポリマー(PAS)]と、
-エポキシ基及びアミン基から選択される少なくとも1つの官能基を有する少なくとも1つのポリオルガノシロキサンポリマー[ポリマー(POS)]と、
-ポリマー(PAS)の重量に対して0.03~0.4重量%の量で、少なくとも1つの抗酸化化合物[化合物(O)]と、を含むポリマー組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
前記ポリマー(PAS)は、次式:
[-Ar-S-] (RPAS1
(式中、
-Ar-は、
【化1】
(式中:
Rは、それぞれの場合において、C-C12アルキル基、C-C24アルキルアリール基、C-C24アラルキル基、C-C24アリーレン基、及びC-C18アリールオキシ基からなる群から独立して選択され、
Tは、結合、-CO-、-SO-、-O-、-C(CH-、-C(CF-、フェニル及び-CH-からなる群から選択され、
iは、それぞれの場合において、0~4の独立して選択される整数であり、
jは、それぞれの場合において、0~3の独立して選択される整数である)からなる式の群から選択される)によって表される繰り返し単位(RPAS1)を含む、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
式(RPAS1)において、-Ar-は、次式:
【化2】
(式中:
Rは、それぞれの場合において、C~C12アルキル基、C~C24アルキルアリール基、C~C24アラルキル基、C~C24アリーレン基、及びC~C18アリールオキシ基からなる群から独立して選択され、
iは、それぞれの場合において、0~4の独立して選択される整数であり、好ましくは、iは、0である)のいずれかによって表される、請求項2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
ポリマー(PAS)は、繰り返し単位(RPAS1)から実質的になる、請求項2又は3に記載の組成物(C)。
【請求項5】
ポリマー(PAS)は、
式(a1)(iはゼロである)の単位(RPAS1)を有する、即ち、式:
【化3】
の単位(RPAS1)を有し、
任意で、式:
【化4】
のいずれかの単位を更に含む、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)ポリマーであり、
ポリマー(PPS)が単位(RPPS-m)及び/又は(RPPS-o)を更に含むとき、前記ポリマー(PPS)中の繰り返し単位(RPPS-m)及び/又は(RPPS-o)の合計濃度は、単位(RPPS)、(RPPS-m)及び(RPPS-o)の総量に基づいて多くとも10モル%、多くとも5モル%、多くとも3モル%、多くとも1モル%であると理解される、請求項3又は4に記載の組成物(C)。
【請求項6】
ポリマー(PAS)は、多くとも700g/10分の、より好ましくは多くとも500g/10分の、更により好ましくは多くとも200g/10分の、更にいっそう好ましくは多くとも50g/10分の、更によりいっそう好ましくは多くとも35g/10分のメルトフローレート(ASTM D1238、手順Bに従って1.27kgの荷重下に315.6℃において)を有し、及び/又は少なくとも1g/10分の、より好ましくは少なくとも5g/10分の、更により好ましくは少なくとも10g/10分の、更にいっそう好ましくは少なくとも15g/10分のメルトフローレート(ASTM D1238、手順Bに従って1.27kgの荷重下に315.6℃において)を有する、請求項3、4又は5に記載の組成物(C)。
【請求項7】
化合物(O)は、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードフェノール化合物、及びホスファイトエステル、ホスホナイト及びこれらの混合物からなる群から選択されるリン化合物からなる群から選択され、前記化合物(O)は、好ましくは、ヒンダードフェノール化合物、及び式P(OR)によって表されるホスファイトエステルからなる群から選択され、式中、各Rは、同一であり得又は異なり得、C1-20アルキル、C3-22アルケニル、C6-40シクロアルキル、C7-40シクロアルキレン、アリール、アルカリール又はアリールアルキル部位からなる群から独立して選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項8】
前記化合物(O)は、
-(d1)テトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(別名、例えば、Irganox(登録商標)1010)、(d2)チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert.-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオネート](別名、例えば、Irganox(登録商標)1035)、(d3)オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert.ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(別名、例えば、Irganox(登録商標)1076)、及び(d4)
N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-tert.-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))(別名、例えば、Irganox(登録商標)1098)からなる群から選択されるヒンダードフェノール化合物、並びに
-(e3)トリス(2,4-ジ-tert.-ブチルフェニル)ホスファイト(別名、例えば、IRGAFOS(登録商標)168)、(e5)ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)ペンタエリスリトールジホスフェート(別名、例えば、IRGAFOS(登録商標)126)、(e6)ビス(2,6-ジ-ter-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト(別名、例えば、ADK STAB PEP-36)、(e8)ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト(別名、例えば、IRGAFOS(登録商標)38)からなる群から選択されるホスファイトエステルからなる群から選択され、
前記化合物(O)は、好ましくは、
-(d4)N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-tert.-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))(別名、例えば、Irganox(登録商標)1098)、及び
-(e3)トリス(2,4-ジ-tert.-ブチルフェニル)ホスファイト(別名、例えば、IRGAFOS(登録商標)168)からなる群から選択される、請求項7に記載の組成物(C)。
【請求項9】
前記ポリマー(POS)は、前記エポキシ又はアミン官能基のうちの1つだけを含み得、或いはこれらを複数含み得、前記少なくとも1つのエポキシ又はアミン官能基は、繰り返し単位中のペンダント基としてポリマー(POS)中に含まれ得る、又は鎖末端として含まれ得る、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項10】
前記ポリマー(POS)は、式(II):
【化5】
(式中、
各Qは、同一又は互いに異なり、エポキシ基及びアミン基からなる群から選択される1つの基、好ましくはエポキシ基、又はC-C10アルキル基及びC-C10芳香族基からなる群から選択される基であり、但し、少なくとも1つのQは、エポキシ基及びアミン基からなる群から選択される1つの基であり、好ましくはエポキシ基であり、
、R、R及びRは、同一又は互いに異なり、C~C10アルキル基及びC~C10芳香族基から選択され、
nは、2~70、好ましくは2~60の間で変動し、
pは、ゼロ又は1である)に従う、請求項9に記載の組成物(C)。
【請求項11】
前記ポリマー(POS)は、式(III):
【化6】
(式中、
各Qは、同一又は互いに異なり、エポキシ基及びアミン基からなる群から選択される基、好ましくはエポキシ基、又はC-C10アルキル基及びC-C10芳香族基からなる群から選択される基であり、但し、少なくとも1つのQは、エポキシ基及びアミン基からなる群から選択される基、好ましくはエポキシ基であり、好ましくはエポキシ基であり、
nは、2~70、好ましくは2~60の間で変動する)に従う、請求項10に記載の組成物(C)。
【請求項12】
溶融状態で、
-少なくとも1つのポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー[ポリマー(PAS)]と、
-少なくとも1つのエポキシ官能基を有する少なくとも1つのポリオルガノシロキサンポリマー[ポリマー(POS)]と、
-ポリマー(PAS)の重量に対して0.03~0.4重量%の量で、少なくとも1つの抗酸化化合物[化合物(O)]と、をブレンドすることを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)を調製するプロセス。
【請求項13】
前記溶融状態での前記ブレンドは、連続装置又はバッチ装置における溶融配合によって行われ、好ましくは、前記ブレンドは、スクリュー押出機、特に二軸スクリュー押出機で行われる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記溶融状態での前記ブレンド中に、ポリマー(POS)は、ポリマー(PAS)と少なくとも部分的に反応し、ポリマー(POS)由来のブロック及びポリマー(PAS)由来のブロックを含むブロックコポリマー構造を生成する、請求項12又は13に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)を含む、又は請求項12~14のいずれか一項に記載のプロセスから得られた前記組成物(C)からの物品、部品又は複合材料であって、前記物品、部品又は複合材料は、好ましくは、ケーブル被覆、ケーブルタイ、金属パイプ被覆、成形品、押出成形品又は三次元(3D)物体である、物品、部品又は複合材料。
【請求項16】
付加製造、好ましくは、溶融堆積モデリング(FDM)、選択的レーザー焼結(SLS)、又はマルチジェットフュージョン(MJF)を使用して三次元(3D)物体を製造するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)、又は請求項12~14のいずれか一項に記載のプロセスから得られた前記組成物(C)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、Nr 21315124.4に対する欧州において2021年7月8日に出願された優先権を主張し、本出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリ(アリーレンスルフィド)組成物、その製造プロセス、及び前述の組成物を含む物品、部品又は複合材料、及び3D物体の製造のためのこの組成物の使用に関する。
【0003】
本発明は、ポリ(アリーレンスルフィド)組成物、その製造プロセス、及び前述の組成物を含む物品、部品又は複合材料、及び3D物体の製造のためのこの組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)ポリマーは、高い引張り弾性率及び高い引張り強度などの、注目に値する機械的特性、並びに熱分解及び化学反応性に対する安定性を有する半結晶性の熱可塑性ポリマーである。それらはまた、射出成形などの、優れた溶融加工を特徴とする。
【0005】
この広範囲の特性は、PASポリマーを、例えば、自動車、電気、電子、航空宇宙及び電化製品市場における、多数の用途向けに好適なものにする。
【0006】
上記の利点にもかかわらず、PASポリマーは、高度な柔軟性、弾性、靱性、又は耐衝撃性が求められる用途によっては、柔軟性が低すぎる又は硬すぎる場合がある。更に、その固有の熱安定性にもかかわらず、特定のボンネット下の用途に対する厳しい熱に関する要件により、その適用性が制限される場合がある。
【0007】
靱性及び柔軟性に対処するために、いくつかの先行技術文献には、ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーとエポキシ官能化シロキサンポリマーとの相溶性ブレンドの調製が記載されている。例えば、米国特許第5,324,796号明細書には、高分子量エポキシ官能化シロキサンポリマーとブレンドされたポリ(フェニレンスルフィド)ポリマーを含む組成物が記載されており、この場合、シロキサンポリマーとポリ(フェニレンスルフィド)ポリマーとの重量比は、0.1~25:100であり、ポリ(フェニレンスルフィド)ポリマーは、酸化雰囲気中での熱硬化によって分岐される。
【0008】
他の先行技術文献は、ポリ(アリーレンスルフィド)をポリオルガノシロキサンに化学結合させてコポリマーにすることによるPASポリマーの主鎖骨格の変性を記載している。例えば、米国特許第9,840,596号明細書は、低重量平均分子量のポリ(フェニレンスルフィド)単位とポリオルガノシロキサン単位を含むポリ(フェニレンスルフィド)ブロックコポリマーを記載している。
【0009】
一方で、PPSなどの熱可塑性材料に酸化防止剤を使用することは、特に熱老化の課題に対処する場合に一般的に行われている。従って、酸化防止剤は、国際公開第2009/105527号パンフレットのように、PPSをベースとする熱可塑性強化配合物においてすでに提案されているが、他の特定の成分と組み合わせたPPSの強化ブレンドには酸化防止剤が添加され、自動車のボンネット下に及びその他の用途に使用される被覆導体として許容できる特に適切な老化性能を有する配合物が提供されてきた。
【0010】
実際、電気自動車のボンネット下で使用される材料の温度に関する要件は、増加し続けている。従って、当技術分野では、とりわけボンネット下での用途に、特に電気自動車に使用するための、低温及び高温耐性、並びに優れた熱安定性を備えた柔軟で強靱な熱可塑性組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様では、本発明は、
-少なくとも1つのポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー[ポリマー(PAS)]と、
-少なくとも1つのエポキシ官能基を有する少なくとも1つのポリオルガノシロキサンポリマー[ポリマー(POS)]と、
-ポリマー(PAS)の重量に対して0.03~0.4重量%の量で、少なくとも1つの抗酸化化合物[化合物(O)]と、を含むポリマー組成物[組成物(C)]に関する。
【0012】
第2の態様では、本発明は、前述の組成物(C)を調製するプロセスに関し、前述のプロセスは、溶融状態で、
-少なくとも1つのポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー[ポリマー(PAS)]と、
-少なくとも1つのエポキシ官能基を有する少なくとも1つのポリオルガノシロキサンポリマー[ポリマー(POS)]と、
-ポリマー(PAS)の重量に対して0.03~0.4重量%の量で、少なくとも1つの抗酸化化合物[化合物(O)]と、をブレンドすることを含む。
【0013】
第3の態様では、本発明は、上で定義した組成物(C)を含む物品、部品又は複合材料、例えば、ケーブル被覆、ケーブルタイ、金属パイプ被覆、成形品、押出品、又は三次元(3D)物体に関する。
【0014】
第4の態様では、本発明は、付加製造、好ましくは溶融堆積モデリング(FDM)、選択的レーザー焼結(SLS)又はマルチジェットフュージョン(MJF)を使用して三次元(3D)物体を製造するための、上で定義した組成物(C)の使用に関する。
【0015】
有利なことに、ポリマー(POS)と少量の化合物(O)の相乗効果により、本発明による組成物(C)は、驚くべきことに、化合物(O)を含まない又は前述の化合物(O)を多量に含むポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーと比較して、著しく改善された破断時変形を示し、ポリマー(POS)以外の改質剤を含む、強化され安定化された化合物のものよりも著しく改善された優れた老化性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】DAM試験片の機械的特性が、グラフモードで概略されている。
図2-4】150°、175°、及び200℃の温度で老化させたときの破断引張り強度の保持率も、グラフモードで概略されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を説明する目的のために、
-化合物、化学式又は式の一部を特定する記号又は数字の前後の括弧の使用は、それらの記号又は数字を本文の残りの部分からよりよく区別する目的を有するにすぎず、従って、前述の括弧は省略することも可能であり、
-「溶融温度(T)」又は「T」又は「融点」は、実施例において詳述するように、ASTM D3418に従って20℃/分で示差走査熱量測定(DSC)により測定した溶融温度を示すことが意図されており、
-「ハロゲン」という用語は、特に明記しない限り、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を含み、
-形容詞「芳香族」は、4n+2(nは1又は任意の正の整数である)に等しいπ電子数を有する任意の単核又は多核の環状基(又は部位)を意味し、芳香族基(又は部位)は、アリール及びアリーレン基(又は部位)であり得る。
【0018】
ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー[ポリマー(PAS)]
ポリ(アリーレンスルフィド)(「PAS」)ポリマーは、次式:
[-Ar-S-](RPAS1
(式中、
-Ar-は、
【化1】
(式中:
Rは、それぞれの場合において、C~C12アルキル基、C~C24アルキルアリール基、C~C24アラルキル基、C~C24アリーレン基、及びC~C18アリールオキシ基からなる群から独立して選択され、
Tは、結合、-CO-、-SO-、-O-、-C(CH-、-C(CF-、フェニル及び-CH-からなる群から選択され、
iは、それぞれの場合において、0~4の独立して選択される整数であり、
jは、それぞれの場合において、0~3の独立して選択される整数である)からなる式の群から選択される)によって表される繰り返し単位(RPAS1)を含む。
【0019】
式(a)、(b)及び(c)において、i又はjがゼロであるとき、相当するベンジル環は、非置換である。本明細書全体を通して、同様の表記法が使用される。更に、各式(a)~(c)は、2つの破線の結合を含んでおり、一方の結合は、繰り返し単位(RPAS1)の明確な硫黄原子への結合であり、もう一方の結合は、繰り返し単位(RPAS1)の外側の原子(例えば、隣接する繰り返し単位)への結合である。全体を通じて類似の表記法が使用される。
【0020】
好ましくは、-Ar-は、式(a)又は(b)のどちらかによって表され、より好ましくは式(a)によって表される。
【0021】
より好ましくは、-Ar-は、次式:
【化2】
のいずれかによって表される。
【0022】
更により好ましくは、-Ar-は、式(a-1)、(a-2)及び(a-3)(iはゼロである)のいずれかによって表される。
【0023】
式(a-1)の-Ar-を有する単位(RPAS1)は、-Ar-が式(a-2)及び/又は(a-3)のいずれかである単位と共に存在している場合、ポリマー(PAS)において-Ar-が式(a-2)及び(a-3)のいずれかである繰り返し単位(RPAS1)の合計濃度は、-Ar-が式(a-1)、(a-2)及び(a-3)のいずれかである単位(RPAS1)の総量に基づいて多くとも10モル%、多くとも5モル%、多くとも3モル%、多くとも1モル%である。
【0024】
上記のように、式(a1)(iはゼロである)の単位(RPAS1)を有する、即ち、式:
【化3】
の単位(RPAS1)を有するポリマー(PAS)は、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)ポリマーと呼ばれる。
【0025】
ポリマー(PPS)は、式:
【化4】
のいずれかの単位を更に含み得、ポリマー(PPS)が単位(RPPS-m)及び/又は(RPPS-o)を更に含むとき、ポリマー(PPS)中の繰り返し単位(RPPS-m)及び/又は(RPPS-o)の合計濃度は、単位(RPPS)、(RPPS-m)及び(RPPS-o)の総量に基づいて多くとも10モル%、多くとも5モル%、多くとも3モル%、多くとも1モル%であると理解される。
【0026】
いくつかの実施形態において、ポリマー(PAS)中の繰り返し単位(RPAS1)の合計濃度は、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%又は少なくとも99.9モル%である。
【0027】
いくつかの実施形態において、ポリマー(PAS)は、繰り返し単位(RPAS1)と異なる繰り返し単位(RPAS2)を含み得、前述の繰り返し単位(RPAS2)は、次式:
[-Ar-S-](RPAS2
(式中、
-Ar-は、次式:
【化5】
(式中、Rは、C~C10直鎖又は分岐アルキル基であり、好ましくはRは、-CHである)によって表される)によって表される。
【0028】
式(d)において、「*」を有する破線の結合は、繰り返し単位(RPAS2)の明確な硫黄原子への結合を示し、及び「*」のない破線の結合は、繰り返し単位(RPAS2)の外側の原子への結合を示す。他の面から言えば、単位(RPAS2)において、R置換基は、-S-部位に対してオルト位にある。
【0029】
当然ながら、いくつかの実施形態では、ポリマー(PAS)は、それぞれ互いに異なり、且つ繰り返し単位(RPAS1)及び(RPAS2)とは異なる、追加の繰り返し単位を有することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、ポリマー(PAS)中の繰り返し単位(RPAS1)及び(RPAS2)の合計濃度は、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%、又は少なくとも99.9モル%である。
【0031】
本明細書で使用される場合、ポリマー中の繰り返し単位のモル濃度は、別段の明示的な規定がない限り、そのポリマー中の繰り返し単位の総数に対するものである。
【0032】
いくつかの実施形態では、ポリマー(PAS)中の繰り返し単位(RPAS1)の濃度は、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも85モル%、少なくとも88モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも97モル%、少なくとも98モル%、少なくとも98.5モル%、又は少なくとも99モル%である。
【0033】
いくつかの実施形態では、ポリマー(PAS)中の繰り返し単位(RPAS2)の濃度は、少なくとも0.5モル%、少なくとも1モル%、少なくとも1.5モル%、少なくとも2モル%、又は少なくとも2.5モル%であり得る。いくつかの実施形態では、繰り返し単位(RPAS2)の濃度は、15モル%以下、12モル%以下、10モル%以下、又は8モル%以下である。
【0034】
いくつかの実施形態では、ポリマー(PAS)中の繰り返し単位(RPAS2)のモル数は、0.5モル%~15モル%、0.5モル%~12モル%、0.5モル%~10モル%、0.5モル%~8モル%、1モル%~15モル%、1モル%~12モル%、1モル%~10モル%、1モル%~8モル%、2モル%~8モル%、又は2.5モル%~8モル%であり得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、ポリマー(PAS)中の繰り返し単位(RPAS1)及び(RPAS2)の総数に対する繰り返し単位(RPAS2)の数の比は、少なくとも1モル%、少なくとも1.5モル%、少なくとも2モル%、又は少なくとも2.5モル%であり得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(RPAS1)及び(RPAS2)の総数に対する繰り返し単位(RPAS2)の数の比は、15モル%以下、12モル%以下、10モル%以下、又は8モル%以下である。
【0037】
ポリマー(PAS)は単位(RPAS2)を含むことができるが、ポリマー(PAS)が上に詳述したような単位(RPAS2)を全く含まない実施形態が好ましい。これらの実施形態によると、ポリマー(PAS)中の繰り返し単位(RPAS1)の濃度は、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%、又は少なくとも99.9モル%である。
【0038】
最も好ましくは、ポリマー(PAS)は、上に詳述したような繰り返し単位(RPAS1)から本質的になる。「本質的に~からなる」という表現は、ポリマー(PAS)の構成部位を特徴づけるために使用されるとき、少量の疑わしい単位(例えば0.1モル%未満)、不純物又は鎖末端は、これがポリマー(PAS)の有利な特質を変えずに存在し得ることを示すことを意図している。
【0039】
最も好ましくは、ポリマー(PAS)は、上記のようなポリマー(PPS)であり、上に詳述したような式(RPPS)の単位(RPAS1)から本質的になるポリマー(PPS)が最も好ましい。
【0040】
ポリマー(PAS)は、多くとも700g/10分の、より好ましくは多くとも500g/10分の、更により好ましくは多くとも200g/10分の、更にいっそう好ましくは多くとも50g/10分の、更によりいっそう好ましくは多くとも35g/10分のメルトフローレート(ASTM D1238、手順Bに従って1.27kgの荷重下に315.6℃において)を有し得る。
【0041】
好ましくは、ポリマー(PAS)は、少なくとも1g/10分の、より好ましくは少なくとも5g/10分の、更により好ましくは少なくとも10g/10分の、更にいっそう好ましくは少なくとも15g/10分のメルトフローレート(ASTM D1238、手順Bに従って1.27kgの荷重下に315.6℃において)を有する。
【0042】
ポリマー(PAS)は、アモルファス又は半結晶性であり得る。本明細書で使用される場合、アモルファスポリマーは、5ジュール/g(「J/g」)以下の融解エンタルピー(「ΔH」)を有する。当業者であれば、ポリマー(PAS)がアモルファスである場合、それが検出可能な融解温度(T)を有さないことを認識するであろう。従って、当業者であれば、ポリマー(PAS)がTを有する場合にはそれが半結晶性ポリマーを指すことを認識するであろう。好ましくは、ポリマー(PAS)は、半結晶性である。いくつかの実施形態では、ポリマー(PAS)は、少なくとも10J/g、少なくとも20J/g、少なくとも、又は少なくとも25J/gのΔHを有する。いくつかの実施形態では、ポリマー(PAS)は、90J/g以下、70J/g以下、又は60J/g以下のΔHを有する。いくつかの実施形態では、ポリマー(PAS)は、10J/g~90J/g又は20J/g~70J/gのΔHを有する。ΔHは、ASTM D3418に従って示差走査熱量計(DSC)によって測定することができる。
【0043】
好ましくは、ポリマー(PAS)は、ASTM D3418に従って示差走査熱量計(DSC)によって測定した場合、少なくとも240℃、より好ましくは少なくとも248℃、更により好ましくは少なくとも250℃の融点を有する。
【0044】
好ましくは、ポリマー(PAS)は、ASTM D3418に従って示差走査熱量計(DSC)によって測定した場合、多くとも320℃、より好ましくは多くとも300℃、更により好ましくは多くとも295℃の融点を有する。
【0045】
好ましくは、ポリマー(PAS)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される、少なくとも40,000g/モル、好ましくは45,000g/モル、より好ましくは少なくとも50,000g/モル、更により好ましくは少なくとも55,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0046】
好ましくは、ポリマー(PAS)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される、多くとも120,000g/モル、より好ましくは多くとも110,000g/モル、更により好ましくは多くとも100,000g/モル、更により好ましくは多くとも90,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0047】
好ましくは、ポリマー(PAS)は、主要な技術的特徴として、ASTM UOP714-07に従って誘導結合プラズマ固体発光分光法(ICP-OES)によって測定される既知のカルシウム含有量の標準で校正された蛍光X線(XRF)分析によって測定される、200ppm未満のカルシウム含有量を示すものである。
【0048】
例示的なポリマー(PAS)は、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からRYTON(登録商標)PPSとして市販されている。
【0049】
ポリマー(PAS)は、有利には、その鎖末端の少なくとも1つに少なくとも1つの官能基を含み得る。いくつかの実施形態によれば、ポリマー(PAS)は、その鎖の各末端に官能基を有する。本明細書で使用される場合、「鎖」という用語は、連続鎖を分子中に一緒に生み出す共有結合した原子の最長のシリーズを意味することを意図する。
【0050】
存在する場合、好ましくは、ポリマー(PAS)の官能基は、以下の式(I):
【化6】
(式中、Zは、ハロゲン原子(例えば塩素)、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、酸無水物基、イソシアネート基、アミド基、及びナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛の塩などのこれらの誘導体からなる群から選択される)
に従う。
【0051】
存在する場合、好ましくは、官能基は、ポリマー(POS)に対して反応性を示し、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、酸無水物基、イソシアネート基、アミド基、及びナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛の塩などのこれらの誘導体からなる群から選択される。
【0052】
好ましくは、官能基は、ヒドロキシル基、チオール基、ヒドロキシレイト及びチオレイトからなる群から選択される。
【0053】
好ましくは、ポリマー(PAS)は、直鎖状である。
【0054】
官能基が存在する場合、好ましくは、ポリマー(PAS)は直鎖状であり、少なくとも1つの鎖末端に少なくとも1つの反応性官能基を含む。一実施形態では、ポリマー(PAS)は、直鎖状であり、その鎖の各末端に少なくとも1つの反応性官能基を含む。
【0055】
少なくとも1つのエポキシ官能基を有するポリオルガノシロキサン(POS)ポリマー[ポリマー(POS)]
ポリマー(POS)は、ポリオルガノシロキサンポリマーであり、「ポリオルガノシロキサン」という表現は、本明細書ではその通常の意味に従って使用され、即ち、一連の繰り返し単位を含むポリマーを指すが、前述の繰り返し単位は、カテナリー酸素原子に結合した有機置換カテナリーケイ素原子を含む。
【0056】
前述のポリマー(POS)は、少なくとも1つのエポキシ又はアミン官能基を含む:それは、前述のエポキシ又はアミン官能基のうちの1つだけを含み得、或いはこれらを複数含み得る。更に、前述の少なくとも1つのエポキシ又はアミン官能基は、繰り返し単位中のペンダント基として(例えば、カテナリーケイ素原子に結合した有機基における置換基として)ポリマー(POS)中に含まれ得る、或いは鎖末端として含まれ得る。
【0057】
本発明の文脈内で、「アミン官能基」という表現は、ポリマー(POS)と関連して使用される場合、式-NRam1am2の基を包含することが意図され、Ram1及びRam2は、それぞれH又は炭化水素基であり、好ましくは、Ram1及びRam2の少なくとも1つは、Hであり、最も好ましくは、Ram1とRam2の両方は、Hである、即ち、アミン基は、式-NHである。
【0058】
同様に、「エポキシ官能基」という表現は、本明細書ではその通常の意味に従って使用され、即ち、隣接する2つの炭素原子に単結合で結合し、これにより3員エポキシド環を形成する酸素原子を含む官能基を指し、特に、エポキシ官能基は、特に次の式の基を包含する:
【化7】
(式中、Rは、H又はCHである)。
【0059】
ポリマー(POS)は、一般に式(II):
【化8】
(式中:
各Qは、同一又は互いに異なり、エポキシ基及びアミン基からなる群から選択される1つの基、好ましくはエポキシ基、又はC-C10アルキル基及びC-C10芳香族基から選択される基であり、但し、少なくとも1つのQは、エポキシ基及びアミン基からなる群から選択される1つの基であり、好ましくはエポキシ基であり、
、R、R及びRは、同一又は互いに異なり、C~C10アルキル基及びC~C10芳香族基から選択され、
nは、2~70、好ましくは2~60の間で変動し、
pは、ゼロ又は1である)に従う。
【0060】
好ましくは、R及びRは、同一又は互いに異なり、メチル、エチル、又はプロピルなどのアルキル基、或いはフェニル又はナフチルなどの芳香族基を表す。好ましくは、R及びRは、メチレン、エチレン、又はプロピレンなどのアルキレン基、或いはフェニレンなどの芳香族基である。
【0061】
特定の好ましい実施形態によれば、ポリマー(POS)は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)ポリマーであり、R及びRは、メチル基であり、Rは、プロピレン基であり、pは、1であり、Rは、メチレン基である。
【0062】
これらの実施形態によれば、ポリマー(POS)は、一般に、式(III):
【化9】
(式中:
各Qは、同一又は互いに異なり、エポキシ基及びアミン基からなる群から選択される基、好ましくはエポキシ基、又はC-C10アルキル基及びC-C10芳香族基から選択される基であり、但し、少なくとも1つのQは、エポキシ基及びアミン基からなる群から選択される基、好ましくはエポキシ基であり、好ましくはエポキシ基であり、
nは、2~70、好ましくは2~60の間で変動する)に従う。
【0063】
好ましい実施形態によれば、ポリマー(POS)において、上記の両方の式によれば、各Qは、エポキシ基である、即ち、前述のポリマー(POS)において、各鎖末端は、エポキシ基である。
【0064】
好ましい実施形態によれば、ポリマー(POS)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される、多くとも5,000g/モル、多くとも4,800g/モル、多くとも4,500g/モル、多くとも4,000g/モル、多くとも3,000g/モル、多くとも2,000g/モル、多くとも1,200g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0065】
異なる実施形態によれば、ポリマー(POS)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される、少なくとも200g/モル、少なくとも300g/モル、少なくとも400g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0066】
化合物(O)
組成物(C)は、本明細書では「化合物(O)」と呼ばれる、1つ以上の有機酸化防止剤を含む。
【0067】
化合物(O)は、組成物(C)に使用される場合、一般に、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードフェノール化合物、及びリン化合物からなる群から選択される。
【0068】
「ヒンダードアミン化合物」という表現は、この技術分野のその慣用的な意味に従って使用され、一般に、当技術分野で公知の2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの誘導体を意味することが意図される(例えば:Plastics Additives Handbook,5th ed.,Hanser,2001を参照)。本発明による組成物のヒンダードアミン化合物は、低分子量又は高分子量のものであり得る。
【0069】
一般に、本発明で使用されるヒンダードアミン化合物は、アミン基に対してアルファ位にアルキル置換基を有する少なくとも1つのピペリジン部位を含み、一般に、この化合物は、少なくとも1つのテトラアルキルピペリジン、好ましくはテトラメチルピペリジン基を含む。
【0070】
低分子量のヒンダードアミン化合物は典型的には、多くとも900、好ましくは多くとも800、より好ましくは多くとも700、更により好ましくは多くとも600、最も好ましくは多くとも500g/モルの分子量を有する。
【0071】
低分子量ヒンダードアミン化合物の例は、以下の表1に記載される。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
それらの低分子量化合物の中で、ヒンダードアミンは好ましくは、式(ha1)、(ha2)、(ha11)及び(ha12)に相当するものからなる群から選択される。より好ましくは、ヒンダードアミンは、式(ha1)、(ha2)、及び(ha12)に相当するものからなる群から選択される。更により好ましくは、ヒンダードアミンは、式(ha2)に相当するものである。
【0076】
高分子量のヒンダードアミン化合物は典型的には、ポリマーであり、典型的には少なくとも1000、好ましくは少なくとも1100、より好ましくは少なくとも1200、更により好ましくは少なくとも1300、最も好ましくは少なくとも1400g/モルの分子量を有する。
【0077】
高分子量ヒンダードアミン化合物の例は、以下の表2に記載される。
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
表2の式(hb1)~(hb6)中の「n」は、ポリマー中の繰り返し単位の数を示し、通常、4以上の整数である。
【0081】
それらの高分子量化合物の中で、ヒンダードアミンは好ましくは、式(hb2)及び(hb5)に相当するものからなる群から選択される。より好ましくは、高分子量ヒンダードアミンは、式(hb2)に相当するものである。
【0082】
「ヒンダードフェノール化合物」という表現は、この分野におけるその通例の意味に従って使用され、一般に、オルト置換フェノールの任意の誘導体、特に(これに限定されないが)当技術分野でよく知られているジ-tert-ブチル-フェノール誘導体を指すことを意図している。
【0083】
ヒンダードフェノール化合物の例は、以下の表3に記載される:
【0084】
【表6】
【0085】
【表7】
【0086】
【表8】
【0087】
組成物(C)において特に効果的であることが判明したヒンダードフェノール化合物は、上で特定した式(d1)のテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)である。
【0088】
化合物(O)は、ホスファイトエステル、ホスホナイト及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの有機リン化合物であり得る。
【0089】
ホスファイトエステルは、式P(OR)によって表されることができ、一方、ホスホナイトは、式P(OR)Rによって表されることができ、式中、各Rは、同一であり得又は異なり得、典型的には、C1~20アルキル、C3~22アルケニル、C6~40シクロアルキル、C7~40シクロアルキレン、アリール、アルカリール又はアリールアルキル部位からなる群から独立して選択される。
【0090】
ホスファイトエステルの例は、以下の表4に記載される:
【0091】
【表9】
【0092】
【表10】
【0093】
【表11】
【0094】
好ましいホスファイトエステルは、化合物(e3)である。
【0095】
ホスホナイトの例は、以下の表5に記載される。
【0096】
【表12】
【0097】
前述のように、化合物(O)は、一般に、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードフェノール化合物、及びホスファイトエステル、ホスホナイト及びこれらの混合物からなる群から選択されるリン化合物からなる群から選択される。
【0098】
好ましくは、化合物(O)は、ヒンダードフェノール化合物、及び式P(OR)によって表されるホスファイトエステルからなる群から選択され、式中、各Rは、同一であり得又は異なり得、C1-20アルキル、C3-22アルケニル、C6-40シクロアルキル、C7-40シクロアルキレン、アリール、アルカリール又はアリールアルキル部位からなる群から独立して選択される。
【0099】
より好ましくは、化合物(O)は、
-(d1)テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル-プロピオネート)]メタン(別名、例えば、Irganox(登録商標)1010)、(d2)チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert.-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオネート](別名、例えば、Irganox(登録商標)1035)、(d3)オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert.ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(別名、例えば、Irganox(登録商標)1076)、及び(d4)
N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-tert.-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))(別名、例えば、Irganox(登録商標)1098)からなる群から選択されるヒンダードフェノール化合物、並びに
-(e3)トリス(2,4-ジ-tert.-ブチルフェニル)ホスファイト(別名、例えば、IRGAFOS(登録商標)168)、(e5)ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)ペンタエリスリトールジホスフェート(別名、例えば、IRGAFOS(登録商標)126)、(e6)ビス(2,6-ジ-ter-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト(別名、例えば、ADK STAB PEP-36)、(e8)ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト(別名、例えば、IRGAFOS(登録商標)38)からなる群から選択されるホスファイトエステルからなる群から選択される。
【0100】
より好ましくは、化合物(O)は、
-(d4)N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-tert.-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))(別名、例えば、Irganox(登録商標)1098)、及び
-(e3)トリス(2,4-ジ-tert.-ブチルフェニル)ホスファイト(別名、例えば、IRGAFOS(登録商標)168)からなる群から選択される。
【0101】
組成物(C)及びその製造方法
すでに述べたように、本発明はまた、上記の通り、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)と、ポリマー(POS)と、化合物(O)とを含む組成物(C)に関する。
【0102】
ポリマー(POS)は、一般に、ポリマー(PAS)の重量に対して、少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも0.8重量%、より好ましくは少なくとも1.0重量%の量で組成物(C)中に含まれる。更に、ポリマー(POS)は、一般に、ポリマー(PAS)の重量に対して、多くとも5.0重量%、好ましくは多くとも4.0重量%、より好ましくは多くとも3.0重量%の量で組成物(C)中に含まれる。
【0103】
特に良好な結果は、ポリマー(PAS)の重量に対して、1.0~2.5重量%のポリマー(POS)を含む組成物(C)で得られた。
【0104】
前述のように、組成物(C)は、ポリマー(PAS)の重量に対して0.03~0.4重量%の量で少なくとも1つの抗酸化化合物[化合物(O)]を含む。
【0105】
化合物(O)は、一般に、ポリマー(PAS)の重量に対して、少なくとも0.04重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%の量で組成物(C)中に含まれる。更に、化合物(O)は、ポリマー(PAS)の重量に対して、一般に、多くとも0.40重量%、好ましくは多くとも0.35重量%、より好ましくは多くとも0.30重量%の量で組成物(C)中に含まれる。
【0106】
説明したように、耐老化性と組み合わせた優れた靱性の有利な相乗効果を得るために組成物(C)中のポリマー(POS)と組み合わせる場合、化合物(O)の量は重要である。
【0107】
組成物(C)は一般に、主要なポリマー成分としてポリマー(PAS)を含む。組成物中のポリマー(PAS)の総量は、充填剤などの追加の成分の存在に特に応じて変動し得るが、それにもかかわらず、ポリマー(PAS)が、ポリマー(PAS)、ポリマー(POS)及び化合物(O)の合計重量に対して、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%を占めるであろうことが理解される。上限量は、ポリマー(POS)及び化合物(C)の必須の存在によってのみ制限されるため、一般に、ポリマー(PAS)、ポリマー(POS)及び化合物(O)の合計重量に対して99重量%を超えることはない。
【0108】
前述の組成物(C)は、任意に、組成物(C)の総重量に基づいて60重量%までの量の少なくとも1つの充填剤を含み得る。
【0109】
組成物はまた、例えば、10重量%未満の量での、少なくとも1つの更なる添加剤を含み得、前述の添加剤は、着色剤、染料、顔料、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核形成剤、加工助剤、融着剤、電磁波吸収剤及びこれらの組合せからなる群から選択され、この場合、重量%は、組成物(C)の総重量に基づく。
【0110】
本発明の様々な実施形態によれば、前述の少なくとも1つの充填剤は、組成物(C)の総重量に基づいて、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%の量で組成物(C)中に存在する。
【0111】
本発明の様々な実施形態によれば、前述の少なくとも1つの充填剤は、組成物(C)の総重量に基づいて、多くとも60重量%、多くとも55重量%、多くとも50重量%、多くとも45重量%の量で組成物(C)中に存在する。
【0112】
本発明の様々な実施形態によれば、前述の少なくとも1つの追加の添加剤は、組成物(C)の総重量に基づいて、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満の量で組成物(C)中に存在し得る。
【0113】
前述の充填剤は、繊維状強化充填剤、粒子状強化充填剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される強化剤であり得る。繊維状強化充填剤は、本明細書では、平均長さが幅及び厚さの両方よりも著しく大きい、長さ、幅及び厚さを有する材料であると考えられる。一般に、繊維状強化充填剤は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20又は少なくとも50の、長さと最大の幅及び厚さとの間の平均比と定義される、アスペクト比を有する。
【0114】
繊維状強化充填剤には、ガラス繊維、炭素又はグラファイト繊維、及び炭化ケイ素、アルミナ、チタニア、ホウ素等から形成される繊維が含まれ、2つ以上のこのような繊維を含む混合物が含まれ得る。非繊維状強化充填剤には、とりわけ、タルク、マイカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、シリカ、カオリン、チョーク、アルミナ、鉱物充填剤等が含まれる。
【0115】
好ましくは、前述の少なくとも1つの充填剤は、繊維状強化充填剤である。繊維状強化充填剤の中で、ガラス繊維及び炭素繊維が好ましい。本発明の好ましい実施形態によれば、前述の組成物(C)は、組成物(C)の総重量に基づいて、60重量%以下、例えば30~40重量%のガラス繊維及び/又は炭素繊維を含む。
【0116】
組成物(C)の生成プロセス
第2の態様では、本発明は、上記の通り、組成物(C)を調製するプロセスに関し、前述のプロセスは、溶融状態で、
-少なくとも1つのポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー[ポリマー(PAS)]と、
-少なくとも1つのエポキシ官能基を有する少なくとも1つのポリオルガノシロキサンポリマー[ポリマー(POS)]と、
-ポリマー(PAS)の重量に対して0.03~0.4重量%の量で、少なくとも1つの抗酸化化合物[化合物(O)]と、をブレンドすることを含む。
【0117】
組成物(C)に関連する上述した全ての実施形態は、必要な変更を加えて本明細書で適用できる。
【0118】
溶融状態での前述のブレンドは、特に連続装置又はバッチ装置での溶融配合によって行うことができる。このようなデバイスは、当業者に周知である。
【0119】
組成物(C)を溶融配合するための適切な連続デバイスの例は、スクリュー押出機である。好ましくは、溶融配合は、二軸スクリュー押出機で実施される。
【0120】
組成物(C)が、長い物理的形状を有する繊維状強化充填剤(例えば、長いガラス繊維)を含む場合、延伸押出成形が強化組成物を調製するために用いられ得る。
【0121】
溶融状態での前述のブレンド中に、ポリマー(POS)がポリマー(PAS)と少なくとも部分的に反応することができ、ポリマー(POS)由来のブロック及びポリマー(PAS)由来のブロックを含むブロックコポリマー構造を生成する可能性があることも認められる。このような反応性は、ポリマー(PAS)が、反応性末端基を含む場合に増強されることができる。
【0122】
ポリマー(PAS)とポリマー(POS)との間の化学結合の形成は、なおも本発明の範囲に包含される。
【0123】
物品及び用途
本発明はまた、上記の組成物(C)を含む物品、部品又は複合材料に関する。本発明の物品、部品又は複合材料は、自動車用途、電気及び電子用途、並びに消費者商品でいくつかの利用がある。
【0124】
好ましい実施形態によれば、本発明の物品、部品又は複合材料は、本発明による組成物(C)から、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、及び射出圧縮成形、好ましくは射出成形及び押出成形などの様々な成形法によって成形される。
【0125】
更に、本発明の物品、部品、又は複合材料は、組成物(C)の柔軟性、極めて高い引張り破断伸び及び高い耐熱老化性のおかげで、比較的高い成形温度及び長い溶融滞留時間を必要とする押出成形プロセスによって成形されることができる。
【0126】
押出成形によって製造される物品の例としては、丸棒、角棒、シート、フィルム、チューブ、及びパイプが挙げられる。用途には、給湯器モーター、エアコンモーター、及び駆動モーターなどのモーター用の電気絶縁材料、フィルムコンデンサー、スピーカーダイアフラム、記録磁気テープ、プリント基板材料、プリント基板周辺機器、半導体パッケージ、半導体搬送用のトレイ、加工/剥離フィルム、保護フィルム、自動車用のフィルムセンサー、ワイヤケーブル用の絶縁テープ、リチウムイオン電池における絶縁ワッシャー、温水、冷却水、及び化学物質用のチューブ、自動車用の燃料チューブ、温水用のパイプ、化学プラントにおける化学物質用のパイプ、超純水及び超純粋溶媒用のパイプ、自動車用のパイプ、クロロフルオロカーボン及び超臨界二酸化炭素冷媒用のパイプ、並びに研磨装置用のワークピース支持リングが含まれる。他の例には、ハイブリッド車、電気自動車、鉄道、及び発電所におけるモーターコイルワイヤを被覆するための成形品、並びに家電製品、ワイヤ・ハーネス及び制御線用の耐熱性電線及び電気ケーブル、例えば自動車での配線のために使用されるフラットケーブル、並びに信号変成器と、連絡、通信、高周波数、オーディオ、及び測定用の車載変成器との巻線などを被覆するための成形品が含まれる。
【0127】
射出成形によって得られる成形品の用途には、電気装置構成要素、例えば、発電機、電動機、計器用変圧器、変流器、電圧レギュレーター、整流器、インバーター、リレー、電力接点、スイッチ、ブレーカー、ナイフスイッチ、マルチプルロッド、及び電気構成要素キャビネットなど、電子構成要素、例えば、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、レジスター、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、可変コンデンサーケース、光ピックアップ、ラジエーター、様々な端子盤、変圧器、プラグ、プリント回路基板、チューナー、スピーカー、マイクロホン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、電力モジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャシー、モーターブラシホルダー、パラボラアンテナ、及びコンピューター関連構成要素など、家庭用及びオフィス用電気製品構成要素、例えば、VTR構成要素、TV構成要素、アイロン、ヘアドライヤー、炊飯器構成要素、電子レンジ構成要素、アコースティック構成要素、オーディオ用のオーディオ装置構成要素、レーザーディスク(登録商標)、及びコンパクトディスク、照明構成要素、冷蔵庫構成要素、エアコン構成要素、タイプライター構成要素、並びにワードプロセッサー構成要素など、機械関連構成要素、例えば、オフィスコンピューター関連構成要素、電話セット関連構成要素、ファクシミリ関連構成要素、コピー機関連構成要素、クリーニングジグ、モーター構成要素、ライター、及びタイプライター:光学機器及び精密機器の構成要素、例えば、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、及び時計など、自動車及び車両関連構成要素、例えば、オルタネータターミナル、オルタネータコネクタ、ICレギュレーター、調光器用の分圧器ベース、排ガスバルブなどの様々なバルブ、燃料、排気システム、及び吸気システム用の様々なパイプ、ダクト、ターボダクト、吸気ノズルシュノーケル、吸気マニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却液ジョイント、キャブレーター本体、キャブレータースペーサー、排ガスセンサー、冷却液センサー、油温センサー、ブレーキパッド摩耗センサー、スロットル位置センサー、クランクシャフト位置センサー、空気流量計、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用のサーモスタットベース、加温ホットエア流量制御バルブ、ラジエーターモーター用のブラシホルダー、送水ポンプ羽根車、タービン翼、フロントガラスワイパーモ-ター関連構成要素、分配器、スタータースイッチ、スターターリレイ、変速機ワイヤ・ハーネス、窓ワッシャーノズル、エアコンパネル配電盤、燃料電磁弁用のコイル、ヒューズコネクター、ホーンターミナル、電気部品絶縁体、工程モーター回転子、ランプソケット、ランプ反射体、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、及びイグニッションケースなど、並びに一次電池並びに携帯電話、ノートブックコンピューター、ビデオカメラ、ハイブリッド車、及び電気自動車における二次電池用のガスケットが含まれる。
【0128】
特に、本発明による組成物(C)は、ケーブル被覆、ケーブルタイ及び金属パイプ被覆の製造に適している。より具体的には、本発明による組成物(C)は、ハイブリッド自動車、電気自動車、鉄道、及び発電所におけるモーターコイル線を被覆するための成形品、並びに高温環境に曝される、自動車の燃料、排気系、並びに吸気系及びダクト、特にターボダクトなどの様々なパイプの製造に適している。
【0129】
一実施形態によれば、本発明の物品は、例えば、フィラメントの形態である材料の押出工程を含むプロセスによって、又はこの場合に粉末の形態である材料をレーザー焼結する工程を含むプロセスによって、本発明の組成物(C)から3D印刷される。
【0130】
従って、組成物(C)は、例えば、溶融堆積モデリング(FDM)としても知られている、溶融フィラメント製造、又は連続繊維印刷(CF)などの、3D印刷のプロセスで使用される糸又はフィラメントの形態で、或いは、例えば、選択的レーザー焼結(SLS)及びマルチジェットフュージョン(MJF)などの、3D印刷のプロセスで使用される粉末の形態であることができる。印刷される部品材料は、3D印刷に特有である、追加の成分、例えば、連続炭素繊維付加製造用の繊維トウ、又は例えば、SLSタイプ印刷プロセス用のフロー剤を含み得る。
【0131】
従って、本発明の組成物(C)は、3D印刷用途に有利に使用することができる。
【0132】
本発明はまた、3次元(3D)物品、部品又は複合材料の製造プロセスに関し、このプロセスは、
a)本明細書に記載の組成物(C)を含む部品材料(M)の連続層を堆積する工程と、
b)後続の層の堆積前に層を印刷する工程と、を含む。
【0133】
組成物(C)が粉末の形態である場合、3D物体の製造プロセスは、粉末の電磁放射による選択的焼結を含むことができる。
【0134】
組成物(C)がフィラメントの形態である場合、3D物体の製造プロセスは、フィラメントの押出成形を含むことができる。
【0135】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、ある用語を不明確とし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0136】
本発明は、これから以下の実施例に関連して説明されるが、その目的は、例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0137】
実験の部
材料
Ryton(登録商標)QA200N PPSは、Solvay Specialty Polymers USA,LLC(以下、PPS)から市販されているポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)である。
【0138】
KF105は、次の式の両末端型/エポキシ変性反応性シリコーン流体である:
【化10】
一方、有機グループは、
【化11】
であり、
式中、R=H又はCHであり、一方、nは、25℃での粘度が15であり、当量重量が490g/モルであるものであり、Shin-Etsuから市販されている(以下、KF105)。
【0139】
IRGANOX(登録商標)1010は、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル-プロピオネート)]メタンであり、BASFから市販されている(以下、1010)
【0140】
IRGAFOS(登録商標)168は、トリス(2,4-ジ-tert.-ブチルフェニル)ホスファイトであり、BASFから市販されている(以下、168)。
【0141】
方法
DSC/融解熱
DSC分析は、ISO 11357に従ってTA Q2000示差走査熱量計で実行され、データは、2加熱1冷却法で収集された。用いられたプロトコルは、以下である:10.00℃/分で-10.00℃から320.00℃までの第1の加熱サイクル、5分間等温、10.00℃/分で320.00℃から-10.00℃までの第1の冷却サイクル、10.00℃/分で-10.00℃から320.00℃までの第2の加熱サイクル。溶融温度(T)は、第2の加熱サイクル中に記録され、溶融結晶化温度(Tmc)は、冷却サイクル中に記録される。
【0142】
機械的特性
引張り特性は、ISO 527-2に従って、室温(23℃)で、引張り弾性率については1mm/分の速度で、残りの実験(ISO527-1A試験片)については5mm/分の速度で、及び衝撃特性についてはISO 179/1eAに従って測定された。
【0143】
老化試験
試料は、設定温度(150、175、又は200℃)に設定された再循環空気オーブン(Thermo Scientific Heratherm OMH60)内で加熱老化された。様々な加熱老化時間(48時間、96時間、240時間、504時間、及び1008時間)で、試料をオーブンから取り出し、室温まで冷却し、試験の準備ができるまで、密封されたアルミニウムで裏打ちされた袋に入れた。機械的特性を老化前と同じ手順に従って測定した。
【0144】
組成物を生成するための一般的手順
これらの実験を行うために、まず乾燥したブレンドを作成し、各配合物について、目標質量比の成分を振動シェーカーにて2~3分間混合して均一性を確保した。次いで、バケットの内容物を重量フィーダーに置き、押出機(AlpharettaのCoperion ZSK 26及びLyonのClextral D32)に供給し、溶融し、均一な溶融組成物を得るように設計されたスクリューで混合した。押出中の温度は、320℃以下に制御される。
【0145】
溶融ストリーム(melt stream)を冷却し、ペレタイザーに供給した。ペレットを収集し、射出成形のために使用するまで密封されたプラスチックバケツに保持した。射出成形から得られた試験片の機械的特性をそのままで(「DAM」:成形のまま乾燥)、及び老化後に、以下の表に記載される条件で試験した。
【0146】
組成物中の成分及びそれらの相互量並びに空気炉老化の前と後の試料の機械的特性を以下の表に記載する。
【0147】
【表13】
【0148】
【表14】
【0149】
上で要約したDAM試験片の機械的特性も、図1のグラフモードで概略されており、このグラフは、ポリマー(POS)と組み合わせる場合、少量の化合物(O)を添加すると、機械的強度(引張り弾性率によって表される)、又は靱性(シャルピー衝撃によって表される)に大きな悪影響を与えずに、破断歪み値によって表される柔軟性を大幅に向上させるのに驚くほど効果があることをよく実証している。
【0150】
150℃、175℃、及び200℃の温度で老化する前と後の試験片の機械的特性を以下の表に要約する。
【0151】
【表15】
【0152】
【表16】
【0153】
150°、175°、及び200℃の温度で老化させたときの破断引張り強度の保持率も、図2、3、及び4にグラフモードで概略されている。これらの写真から、化合物(O)の使用は、たとえ高濃度(1重量%)であっても、ポリマー(POS)の非存在下ではPPSの機械的特性の保持を達成するのに効果的ではないことが明確に示されている。ポリマー(POS)が存在する場合、少量の化合物(O)を使用すると、最適化された性能と共に、相乗効果が達成され(実施例4を参照)、これはまったく予想外である。
【0154】
【表17】
【0155】
【表18】
【0156】
DAM試験片の機械的特性では、上で要約した通り、図1からすでに示されているように、ポリマー(POS)と組み合わせると、少量の化合物(O)を添加すると、破断歪み値で表されるように、柔軟性を大幅に向上させるのに驚くほど効果的であることが確認されているが、機械的強度(引張り弾性率によって表される)には大きな悪影響を与えず、同じ化合物(O)の量が多くなると、ポリマー(POS)の添加によって得られる柔軟性/靱性の効果に悪影響を及ぼすようになる。
【0157】
【表19】
【0158】
上記のデータは、ポリマー(POS)と組み合わせて大量の化合物(O)を添加することは、熱安定性を達成するのに効果的ではないが、少量の化合物(O)が効果的であることが証明されていることを示している。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】