IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サムヤン コーポレーションの特許一覧

特表2024-525535ヒドロキシフェニル末端ポリシロキサン、それを繰り返し単位として含む透明性が優れ、難燃性が向上したポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体、及びその共重合体の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ヒドロキシフェニル末端ポリシロキサン、それを繰り返し単位として含む透明性が優れ、難燃性が向上したポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体、及びその共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/18 20060101AFI20240705BHJP
   C08G 64/20 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C08G64/18
C08G64/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500097
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 KR2022009597
(87)【国際公開番号】W WO2023282559
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0088119
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515261354
【氏名又は名称】サムヤン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】31,Jongno 33-gil,Jongno-gu,Seoul,110-725 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ソン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミ ラン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ギョン ムー
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ユン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,スン ピル
(72)【発明者】
【氏名】チェ,チン シク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユ イル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン ユン
(72)【発明者】
【氏名】セオ,ソン ウー
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA09
4J029AB01
4J029AB04
4J029AC03
4J029AD02
4J029AE01
4J029BB04A
4J029BB12A
4J029BB13A
4J029BC05A
4J029BD09A
4J029BF13
4J029BF14A
4J029BH02
4J029BH04
4J029DB07
4J029DB11
4J029DB13
4J029FC46
4J029HA01
4J029HC01
4J029JE222
4J029KB15
4J029KC01
(57)【要約】
本発明は、ヒドロキシフェニル末端ポリシロキサン、これを繰り返し単位として含むポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体及びその共重合体の製造方法に関し、さらに詳しくは、任意に置換されたヒドロキシフェニル基を含む末端シラン単位を有する特定構造のポリシロキサン、及び該ポリシロキサンとポリカーボネートブロックを繰り返し単位として含み、従来のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体と比較して、同等以上の優れた透明性を示し、さらに難燃性が大幅に向上したポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体とその製造方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1-1)
【化1】

(式中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、
2は、それぞれ独立して、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、
3は、それぞれ独立して、炭素数2~8のアルキレン基を表し、
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数6~10のアリール基を表し、
a及びbは、それぞれ独立して、0~10の整数を表し、ただし、a及びbの少なくとも一方は0ではなく、cは、1~2の整数を表す。)
又は下記化学式(1-2)
【化2】

(式中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、
2は、それぞれ独立して、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、
3は、それぞれ独立して、炭素数2~8のアルキレン基を表し、
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数6~10のアリール基を表し、
a及びbは、それぞれ独立して、0~10の整数を表し、ただし、a及びbの少なくとも一方は0ではなく、cは、1~2の整数を表す。)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサン。
【請求項2】
化学式(1-1)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンが、下記化学式(3-1)
【化3】

(式中、R1、R2、a、b及びcは、請求項1の化学式(1-1)で定義したものと同義である。)で示されるポリシロキサンと下記化学式(4)
【化4】

(式中、R4は、請求項1の化学式(1-1)で定義したものと同義であり、hは、1~7の整数を表す。)で示される化合物の反応生成物である請求項1に記載のポリシロキサン。
【請求項3】
化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンが、下記化学式(3-2)
【化5】

(式中、R1、R2、a、b及びcは、請求項1の化学式(1-2)で定義したものと同義である。)で示されるポリシロキサンと下記化学式(4)
【化6】

(式中、R4は、請求項1の化学式(1-2)で定義したものと同義であり、hは、1~7の整数を表す。)で示される化合物の反応生成物である請求項1に記載のポリシロキサン。
【請求項4】
繰り返し単位として、下記化学式(1-1)
【化7】

(式中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、
2は、それぞれ独立して、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、
3は、それぞれ独立して、炭素数2~8のアルキレン基を表し、
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数6~10のアリール基を表し、
a及びbは、それぞれ独立して、0~10の整数を表し、ただし、a及びbの少なくとも一方は0ではなく、cは、1~2の整数を表す。)
又は下記化学式(1-2)
【化8】

(式中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、
2は、それぞれ独立して、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、
3は、それぞれ独立して、炭素数2~8のアルキレン基を表し、
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数6~10のアリール基を表し、
a及びbは、それぞれ独立して、0~10の整数を表し、ただし、a及びbの少なくとも一方は0ではなく、cは、1~2の整数を表す。)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサン;及び
ポリカーボネートブロック;
を含むポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体。
【請求項5】
化学式(1-1)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンが、下記化学式(3-1)
【化9】

(式中、R1、R2、a、b及びcは、請求項4の化学式(1-1)で定義したものと同義である。)で示されるポリシロキサンと下記化学式(4)
【化10】

(式中、R4は、請求項4の化学式(1-1)で定義したものと同義であり、hは、1~7の整数を表す。)で示される化合物の反応生成物である請求項4に記載のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体。
【請求項6】
化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンが、下記化学式(3-2)
【化11】

(式中、R1、R2、a、b及びcは、請求項4の化学式(1-2)で定義したものと同義である。)で示されるポリシロキサンと下記化学式(4)
【化12】

(式中、R4は、請求項4の化学式(1-2)で定義したものと同義であり、hは、1~7の整数を表す。)で示される化合物の反応生成物である請求項4に記載のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体。
【請求項7】
ポリカーボネートブロックが、下記化学式(2)
【化13】

(式中、R5は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換又は非置換された炭素数6~30の芳香族炭化水素基を表す。)で示される構造を有するものである請求項4に記載のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体。
【請求項8】
芳香族炭化水素基が、下記化学式(5)
【化14】

(式中、Xが、官能基を有さない直線状、分岐状若しくは環状のアルキレン基;又はスルファイド基、エーテル基、スルホキシド基、スルホン基、ケトン基、ナフチル基及びイソブチルフェニル基からなる群から選択される1つ以上の官能基を含む直線状、分岐状若しくは環状のアルキレン基を表し、
6及びR7は、それぞれ独立して、ハロゲン原子;又は直線状、分岐状若しくは環状のアルキル基を表し、
p及びqは、それぞれ独立して、0~4の整数を表す。)で示される化合物に由来するものである請求項7に記載のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体。
【請求項9】
化学式(1-1)又は化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンの含量が、共重合体の全重量に対して、0.2~24重量%である請求項4に記載のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体。
【請求項10】
粘度平均分子量が、15,000~200,000である請求項4に記載のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体。
【請求項11】
ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造方法であって、
(1)下記化学式(1-1)
【化15】

(式中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、
2は、それぞれ独立して、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、
3は、それぞれ独立して、炭素数2~8のアルキレン基を表し、
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数6~10のアリール基を表し、
a及びbは、それぞれ独立して、0~10の整数を表し、ただし、a及びbの少なくとも一方は0ではなく、cは、1~2の整数を表す。)
又は下記化学式(1-2)
【化16】

(式中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、
2は、それぞれ独立して、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、
3は、それぞれ独立して、炭素数2~8のアルキレン基を表し、
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数6~10のアリール基を表し、
a及びbは、それぞれ独立して、0~10の整数を表し、ただし、a及びbの少なくとも一方は0ではなく、cは、1~2の整数を表す。)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンとオリゴマー性ポリカーボネートとを界面反応条件下で反応させて、ポリシロキサン-ポリカーボネート中間体を形成する工程;及び
(2)第1重合触媒を用いて前記中間体を重合する工程;
を含むポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造方法。
【請求項12】
ポリシロキサン-ポリカーボネート中間体を形成する工程(1)が、化学式(1-1)又は化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンとオリゴマー性ポリカーボネートを、0.2:99.8~24:76の重量比で混合する工程を含む請求項11に記載のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造方法。
【請求項13】
ポリシロキサン-ポリカーボネート中間体を形成する工程(1)が、化学式(1-1)又は化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンとオリゴマー性ポリカーボネートを含む混合物を形成する工程を含み、
前記混合物が、相間移動触媒、分子量調節剤及び第2重合触媒をさらに含む請求項11に記載のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造方法。
【請求項14】
ポリシロキサン-ポリカーボネート中間体を形成する工程(1)が、化学式(1-1)又は化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンとオリゴマー性ポリカーボネートを含む混合物を形成する工程;及び
化学式(1-1)又は化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンとオリゴマー性ポリカーボネートとの反応終了後、得られた混合物から有機相を抽出する工程;を含み、
ポリシロキサン-ポリカーボネート中間体を重合させる工程(2)が、第1重合触媒を前記抽出された有機相に供給する工程を含む請求項11に記載のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造方法。
【請求項15】
オリゴマー性ポリカーボネートの粘度平均分子量が、800~20,000である請求項11に記載のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造方法。
【請求項16】
請求項4~10のいずれか1項に記載のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を含む成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシフェニル末端ポリシロキサン、それを繰り返し単位として含むポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体及びその共重合体の製造方法に関し、さらに詳しくは、任意に置換されたヒドロキシフェニル基を含む末端シラン単位を有する特定構造のポリシロキサン、及び該ポリシロキサンとポリカーボネートブロックを繰り返し単位として含み、従来のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体と比較して、同等以上に優れた透明性を示し、さらに難燃性が大幅に向上したポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械的物性(特に、衝撃強度)及び透明性に優れているため、電気部品、機械部品及び工業用樹脂として広く使用されている。特に電気・電子分野では、ポリカーボネート樹脂をテレビ筐体、コンピュータモニタ筐体、コピー機、プリンタ、ノートパソコン用電池、リチウム電池のケース材料などに使用する場合、かなりの熱を放出するため、耐熱性や機械的物性だけでなく、良好な難燃性が求められている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂に難燃性を与える従来の方法は、ポリカーボネート樹脂と臭素系又は塩素系化合物などのハロゲン系難燃剤とを混合することである。ハロゲン系難燃剤は、火災時には十分な難燃性を発揮するが、樹脂加工時に、ハロゲン化水素ガスが発生し、鋳物の浸食や環境汚染問題を引き起こすだけでなく、燃焼時に人体に有害なダイオキシンが発生することがある。そのため、使用を規制する動きが広がっている。このような規制に対応するために、非ハロゲン系難燃剤としてアルカリ金属塩と、滴下防止剤(anti-dripping agent)としてフッ素化ポリオレフィン系樹脂とを併用した難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が開発された。しかし、ポリカーボネート樹脂の難燃性を確保するためにフッ素化エチレン系樹脂及び金属塩系難燃剤を使用すると、ポリカーボネート樹脂の長所の1つである透明性が低下した。
【0004】
このような透明性の低下を克服するために、シリコン系添加物及びシリコン系共重合体とのアロイ化が提案された。しかし、非ハロゲン系難燃剤は環境面での長所はあるものの、シリコン系添加物を使用する技術では、依然として光透明性が低く、価格が比較的高く、外装材として使用する場合、着色に限界があるなどの欠点があった。また、流動性が悪いため、射出成形による大型成形品への適用が困難であった。
【0005】
そこで、透明性を低下させずに難燃性を向上させるために、ポリシロキサンとポリカーボネートの共重合体のポリマー鎖の途中に、1つ又は2つのヒドロキシフェニル側鎖を有するシロキサン単位を組み込むことが提案された(特許文献1)。しかし、特許文献1に開示されたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、透明性と難燃性のバランス、特に、難燃性の点でさらなる改良が必要であった。
【0006】
従って、従来のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体と同等以上の優れた透明性を示し、かつ難燃性が大幅に向上したポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国 特許 第10-1841684号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するものであり、本発明の目的は、従来のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体と比較して、同等以上の優れた透明性を示し、難燃性が大幅に向上し、さらに流動性及び低温衝撃強度などの良好な特性を示すポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を提供し得るポリシロキサン、及びそれを繰り返し単位として含むポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、下記化学式(1-1)
【化1】

(式中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、R2は、それぞれ独立して、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、R3は、それぞれ独立して、炭素数2~8のアルキレン基を表し、R4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数6~10のアリール基を表し、a及びbは、それぞれ独立して、0~10の整数を表し、ただし、a及びbの少なくとも一方は0ではなく、cは、1~2の整数を表す。)
【0010】
又は下記化学式(1-2)
【化2】

(式中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、R2は、それぞれ独立して、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、R3は、それぞれ独立して、炭素数2~8のアルキレン基を表し、R4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数6~10のアリール基を表し、a及びbは、それぞれ独立して、0~10の整数を表し、ただし、a及びbの少なくとも一方は0ではなく、cは、1~2の整数を表す。)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンを提供する。
【0011】
本発明の別の側面は、前記化学式(1-1)又は前記化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンとポリカーボネートブロックとを繰り返し単位として含むポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を提供する。
【0012】
本発明のさらに別の側面は、前記化学式(1-1)又は前記化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンとオリゴマー性ポリカーボネートとを界面反応条件下で反応させて、ポリシロキサン-ポリカーボネート中間体を形成する工程;及び第1重合触媒を用いて前記中間体を重合する工程;を含むポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造方法を提供する。
【0013】
本発明のさらに別の側面は、前記ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を含む成形品を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、流動性、耐衝撃性(特に、低温衝撃強度)、透明性などのポリカーボネート本来の優れた物性を十分に維持しつつ、難燃剤添加なしでも優れた難燃性を確保することができ、特に、従来のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体のレベルと比較して、同等以上の優れた透明性を示し、さらに難燃性が大幅に向上しているため、建材、自動車部品及び電気/電子部品などの各種用途に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本明細書で使用する「反応生成物」という用語は、2つ以上の反応物を反応させて生成される物質を意味する。
また、本明細書では、重合触媒の説明に「第1」、「第2」等の用語を用いるが、前記重合触媒はこれらの用語によって限定されない。例えば、第1重合触媒と第2重合触媒は、同じ種類の触媒であってもよいし、異なる種類の触媒であってもよい。
なお、本明細書に記載式において、水素、ハロゲン原子及び/又は炭化水素基などを表す英字「R」には数字の添え字が付されているが、前記「R」は添え字によって限定されるものではない。前記「R」は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン原子及び/又は炭化水素基などを表す。例えば、2以上の「R」が同じ下付き数字を有するかに関係なく、そのような「R」は同じ炭化水素基を表してもよいし、異なる炭化水素基を表してもよい。
【0016】
<ポリシロキサン>
本発明によるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンは、末端にヒドロキシフェニル基を有するシラン単位と、鎖の途中に任意にヒドロキシフェニル基を有するシロキサンとを含む化合物であり、下記化学式(1-1)
【化3】

(式中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、R2は、それぞれ独立して、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、R3は、それぞれ独立して、炭素数2~8のアルキレン基を表し、R4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数6~10のアリール基を表し、a及びbは、それぞれ独立して、0~10の整数を表し、ただし、a及びbの少なくとも一方は0ではなく、cは、1~2の整数を表す。)
【0017】
又は下記化学式(1-2)
【化4】

(式中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、R2は、それぞれ独立して、炭素数1~13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、R3は、それぞれ独立して、炭素数2~8のアルキレン基を表し、R4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数6~10のアリール基を表し、a及びbは、それぞれ独立して、0~10の整数を表し、ただし、a及びbの少なくとも一方は0ではなく、cは、1~2の整数を表す。)であってもよい。
【0018】
より具体的に、前記炭素数1~13の炭化水素基としては、炭素数1~13のアルキル基又はアルコキシ基、炭素数2~13のアルケニル基又はアルケニルオキシ基、炭素数3~6のシクロアルキル基又はシクロアルコキシ基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数7~13のアラルキル基又はアラルコキシ基、又は炭素数7~13のアルカリル基又はアルカリルオキシ基であってもよい。
【0019】
例えば、前記アルキル基はメチル、エチル又はプロピルであってもよく;前記アルキレン基は、エチレン又はプロピレンであってもよく;前記ハロゲン原子は、Cl又はBrであってもよく;前記アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ又はプロポキシであってもよく;前記アリール基は、フェニル、クロロフェニル又はトリル(好ましくは、フェニル)であってもよい。
【0020】
前記化学式(1-1)及び(1-2)において、「a」は、より具体的には0~8の整数、さらに具体的には1~8の整数、さらに具体的には1~7の整数を表すことができ、「b」は、より具体的には1~10の整数、さらに具体的には1~5の整数、さらに具体的には1~3の整数を表すことができるが、a及びbの少なくとも一方は0ではない。
【0021】
一実施形態において、前記化学式(1-1)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンが、下記化学式(3-1)
【化5】

(式中、R1、R2、a、b及びcは、前記化学式(1-1)で定義したものと同義である。)で示されるポリシロキサンと下記化学式(4)
【化6】

(式中、R4は、前記化学式(1-1)で定義したものと同義であり、hは、1~7の整数を表す。)で示される化合物の反応生成物であってもよい。
【0022】
化学式(1-1)のヒドロキシフェニル末端ポリシロキサン製造のために使用される化学式(3-1)の化合物と化学式(4)の化合物とのモル比は、1:4~1:1の範囲に維持することが好ましく、1:3~1:2の範囲に維持することがより好ましい。化学式(3-1)の化合物と化学式(4)の化合物とのモル比が前記範囲を外れると、ポリシロキサンとポリカーボネートの重合度に影響し、難燃性及び透明性を低下させる要因となる場合がある。
【0023】
一実施形態において、前記化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンが、下記化学式(3-2)
【化7】

(式中、R1、R2、a、b及びcは、前記の化学式(1-2)で定義したものと同義である。)で示されるポリシロキサンと前記化学式(4)で示される化合物の反応生成物であってもよい。
【0024】
化学式(1-2)のヒドロキシフェニル末端ポリシロキサン製造のために使用される化学式(3-2)の化合物と化学式(4)の化合物とのモル比は、1:4~1:1の範囲に維持することが好ましく、1:3~1:2の範囲に維持することがより好ましい。化学式(3-2)の化合物と化学式(4)の化合物とのモル比が、前記範囲を外れると、ポリシロキサンとポリカーボネートの重合度に影響し、難燃性及び透明性を低下させる要因となる場合がある。
【0025】
<ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体>
本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、繰り返し単位として、前記化学式(1-1)又は前記化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサン(すなわち、末端にヒドロキシフェニル基を有するシラン単位と、任意に鎖の途中にヒドロキシフェニル基を有するシロキサンとからなるポリシロキサンブロック)とポリカーボネートブロックとを含む共重合体である。
【0026】
一実施形態において、前記ポリカーボネートブロックは、ポリカーボネートブロックが、下記化学式(2)
【化8】

[式中、R5は、アルキル基(例えば、炭素数1~20、炭素数1~13のアルキル基)、シクロアルキル基(例えば、炭素数3~6のシクロアルキル基)、アルケニル基(例えば、炭素数2~20、または炭素数2~13のアルケニル基)、アルコキシ基(例えば、炭素数1~20、または炭素数1~13のアルコキシ基)、ハロゲン原子(Cl、Brなど)及びニトロ基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換又は非置換された炭素数6~30の芳香族炭化水素基を表す。]で示される構造を有することができる。前記において、前記芳香族炭化水素基は、例えば、下記化学式(5)
【0027】
【化9】

[式中、Xが、官能基を有さない直線状、分岐状若しくは環状のアルキレン基;又はスルファイド基、エーテル基、スルホキシド基、スルホン基、ケトン基、ナフチル基及びイソブチルフェニル基からなる群から選択される1つ以上の官能基を含む直線状、分岐状若しくは環状のアルキレン基(例えば、炭素数1~10の直鎖状アルキレン基、又は炭素数3~10の分岐状若しくは環状のアルキレン基)を表し、
6及びR7は、それぞれ独立して、ハロゲン原子(例えば、Cl、Br);又は直線状、分岐状若しくは環状のアルキル基(例えば、炭素数1~10の直鎖、又は炭素数3~10の分岐状若しくは環状のアルキル基)を表し、
p及びqは、それぞれ独立して、0~4の整数を表す。]で示される化合物に由来するものであってもよい。
【0028】
前記化学式(5)の化合物は、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-(4-イソブチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1-エチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1-ナフチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、2-メチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4-メチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、ジフェニル-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、レゾルシノール(Resorcinol)、ヒドロキノン(Hydroquinone)、4,4’-ジヒドロキシフェニルエーテル[ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル]、4,4’-ジヒドロキシ-2,5-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジクロロジフェニルエーテル、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、1,4-ジヒドロキシ-2,5-ジクロロベンゼン、1,4-ジヒドロキシ-3-メチルベンゼン、4,4’-ジヒドロキシジフェノール[p,p’-ジヒドロキシフェニル]、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジヒドロキシフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-ブタン、4,4’-チオジフェノール[ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン]、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5'-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、メチルヒドロキノン、1,5-ジヒドロキシナフタレン又は2,6-ジヒドロキシナフタレンから選ぶことができるが、これに限定されるものではない。中でも代表的なものは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)である。他の官能基性二価フェノール類(dihydric phenol)については、米国特許US2,999,835号、US3,028,365号、US3,153,008号及びUS3,334,154号などを参照することができる。前記二価フェノール類は、単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0029】
前記ポリカーボネートブロックの別のモノマーとして、カーボネート前駆体、例えば、塩化カルボニル(ホスゲン)、臭化カルボニル、ビスハロホルメート、ジフェニルカーボネート又はジメチルカーボネートなどを使用することができる。
【0030】
一実施形態において、本発明のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体中の化学式(1-1)又は前記化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンの含量は、共重合体の全重量に対して、0.2~24重量%、具体的には0.5~20重量%、より具体的には1~15重量%、さらに具体的には2~10重量%であってもよく、ポリカーボネートの含量は、共重合体の全重量に対して、76~99.8重量%、具体的には80~99.5重量%、より具体的には85~99重量%、さらに具体的には90~98重量%であってもよい。本発明のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体中の前記化学式(1-1)又は前記化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンの含量が0.2重量%未満であると、難燃性が低下する場合があり、その含量が24重量%を超えると、透明性が低下し、さらに難燃性が低下する場合がある。
【0031】
一実施形態において、本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の粘度平均分子量(Mv)は、15,000~200,000、より具体的には15,000~100,000、より具体的には20,000~80,000であってもよい。ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の粘度平均分子量が15,000未満であると、機械物性の低下が著しくなる場合があり、粘度平均分子量が200,000を超えると、溶融粘度の上昇により樹脂の加工に問題が生じる場合がある。
【0032】
本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、
(1)前記化学式(1-1)又は前記化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンとオリゴマー性ポリカーボネートとを界面反応条件下で反応させて、ポリシロキサン-ポリカーボネート中間体を形成する工程;及び
(2)第1重合触媒を用いて前記中間体を重合する工程;
を含むポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造方法によって製造することができる。
【0033】
好ましい一実施形態において、ポリシロキサン-ポリカーボネート中間体を形成する工程(1)は、前記化学式(1-1)又は前記化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンとオリゴマー性ポリカーボネートを0.2:99.8~24:76(好ましくは0.5:99.5~20:80、より好ましくは1:99~15:85、最も好ましくは2:98~10:90)の重量比で混合させる工程を含むことができる。前記化学式(1-1)又は前記化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンの混合重量比が0.2未満であると、難燃性が低下する場合があり、混合重量比が24を超えると、透明性が低下し、さらに難燃性が低下する場合がある。
【0034】
本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造に使用されるオリゴマー性ポリカーボネートは、粘度平均分子量が800~20,000(より好ましくは、1,000~15,000)のオリゴマー性ポリカーボネートであってもよい。ポリカーボネートの粘度平均分子量が800未満であると分子量分布が広くなり物性が低下する場合があり、粘度平均分子量が20,000を超えると反応性が低下する場合がある。
【0035】
一実施形態において、前記オリゴマー性ポリカーボネートは、前述した二価フェノール類化合物をアルカリ水溶液に添加してフェノール塩の状態にし、次に、フェノール塩の状態のフェノール化合物を、注入されたホスゲンガスを含むジクロロメタンに添加して反応させることにより製造することができる。オリゴマーを製造には、ホスゲンと二価フェノール類化合物(例えば、ビスフェノールA)とのモル比を約1:1~1.5:1、より好ましくは約1:1~1.2:1の範囲に維持することが好ましい。二価フェノール類化合物(例えば、ビスフェノールA)に対するホスゲンのモル比が1未満であると、反応性が低下する場合があり、二価フェノール類化合物(例えば、ビスフェノールA)に対するホスゲンのモル比が1.5を超えると、分子量が過度に大きくなるため、加工性に問題が生じる場合がある。
【0036】
前記オリゴマー性ポリカーボネート形成反応は、通常、約15~60℃程度の温度で行うことができ、反応混合物のpHを調節するために、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)を使用することができる。
【0037】
一実施形態において、ポリシロキサン-ポリカーボネート中間体を形成する工程(1)は、化学式(1-1)又は化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンとオリゴマー性ポリカーボネートを含む混合物を形成する工程を含み、前記混合物が、相間移動触媒、分子量調節剤及び第2重合触媒をさらに含むものであってもよい。また、ポリシロキサン-ポリカーボネート中間体を形成する工程(1)は、前記化学式(1-1)又は前記化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンとオリゴマー性ポリカーボネートを含む混合物を形成する工程;及び化学式(1-1)又は化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンとオリゴマー性ポリカーボネートとの反応終了後、得られた混合物から有機相を抽出する工程(2);を含み、ここで、ポリシロキサン-ポリカーボネート中間体を重合させる工程(2)が、第1重合触媒を前記抽出された有機相に供給する工程を含むことができる。
【0038】
具体的には、本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、オリゴマー性ポリカーボネートを含有する有機相-水相混合物に、前記化学式(1-1)又は前記化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンを添加し、続いて、分子量調節剤及び触媒を投入することにより製造することができる。
【0039】
前記分子量調節剤としては、ポリカーボネートの製造に使用されるモノマーと同様の単官能化合物(monofunctional compound)を使用することができる。単官能化合物は、例えば、p-イソプロピルフェノール、p-tert-ブチルフェノール(PTBP)、p-クミル(cumyl)フェノール、p-イソオクチルフェノール、及びp-イソノニルフェノールなどのフェノール系誘導体;又は脂肪族アルコール類であってもよい。好ましくは、p-tert-ブチルフェノール(PTBP)を使用することができる。
【0040】
前記触媒としては、重合触媒及び/又は相間移動触媒を使用することができる。重合触媒は、例えばトリエチルアミン(TEA)であり、相間移動触媒は、例えば、下記化学式(6)
【化10】

[式中、R8は、炭素数1~10のアルキル基を表し、Qは、窒素又はリンを表し、Xはハロゲン原子又は-OR9(ここで、R9は、水素原子、炭素数1~18のアルキル基又は炭素数6~18のアリール基を表す)を表す。]で示される化合物であってもよい。
【0041】
具体的には、相間移動触媒は、例えば、[CH3(CH234NX、[CH3(CH234PX、[CH3(CH254NX、[CH3(CH264NX、[CH3(CH244NX、CH3[CH3(CH233NX又はCH3[CH3(CH223NXであってもよい。前記化学式において、Xは、Cl、Br又は-OR9を表し、ここで、R9は、水素原子、炭素数1~18のアルキル基又は炭素数6~18のアリール基を表す。
【0042】
相間移動触媒の含量は、前記化学式(1-1)又は前記化学式(1-2)で示されるヒドロキシフェニル末端ポリシロキサンとオリゴマー性ポリカーボネートの混合物の全重量に対して、約0.01~10重量%であることが好ましい。その含量が0.01重量%未満であると反応性が低下する場合があり、その含量が10重量%を超えると相間移動触媒が析出したり、透明性が低下したりする場合がある。
【0043】
一実施形態において、ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を製造した後、塩化メチレンに分散した有機相はアルカリ洗浄され、分離される。続いて、前記有機相は0.1N塩酸溶液で洗浄され、次いで蒸留水で2又は3回濯がれる。洗浄終了後、塩化メチレンに分散した前記有機相の濃度を一定に調整し、70~80℃の温度で一定量の純水を用いて造粒が行われる。純水の温度が70℃より低いと造粒速度が遅く、造粒時間が長くなりすぎる場合がある。純水の温度が80℃より高いと、均一な大きさの形態のポリカーボネートを得ることが困難になる場合がある。造粒化終了後、まず100~110℃で5~10時間乾燥し、次いで110~120℃で5~10時間乾燥することが好ましい。
【0044】
本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、耐衝撃性(特に、低温衝撃強度)、透明性などのポリカーボネート本来の優れた物性を健全に維持しつつ、難燃剤添加なくとも優れた難燃性を確保することができるため、建材、自動車部品及び電気/電子部品など各種用途に適用することができる。
【0045】
従って、本発明のさらに別の側面によれば、本発明のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を含む成形品を提供することができる。
本発明のポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を成形して成形品を製造する方法としては、特に制限はなく、一般にプラスチック成形に用いられる方法(例えば、押出成形、射出成形など)をそのまま、又は適宜変更して成形品を製造することができる。
以下の実施例を通して本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲がこれによって何ら限定されるものではない。
【実施例
【0046】
<ポリシロキサンの製造>
実施例A1:化学式(E1)のポリシロキサンの製造
コンデンサ付き500mLの3口フラスコに、窒素雰囲気下、前記化学式(3-1)に対応するポリシロキサン(味元商社(Miwon Commercial.co., Ltd)製のAPSP318、粘度5cPの無色透明液体)72.64g(0.1モルを)をトルエン100mLに溶解し、そこに白金(Pt)触媒(UMICORE社製のPt-CS-1.8CS)0.007g(100ppm)を加えた。得られた溶液を加熱した状態で、2-アリルフェノール26.80g(0.2モルを)を1時間かけてゆっくり加え、5時間還流した。反応完了後、反応溶液からトルエン溶媒を除去し、真空オーブンで24時間乾燥して、下記化学式(E1)のポリシロキサンを製造した。
【化11】
【0047】
実施例A2:化学式(E2)のポリシロキサンの製造
コンデンサ付き500mLの3口フラスコに、窒素雰囲気下、前記化学式(3-1)に対応するポリシロキサン(味元商社(Miwon Commercial.co., Ltd)製のAPSP319、粘度5cPの無色透明液体)71.18g(0.1モルを)をトルエン100mLに溶解し、そこに白金(Pt)触媒(UMICORE社製のPt-CS-1.8CS)0.007g(100ppm)を加えた。得られた溶液を加熱した状態で、2-アリルフェノール40.30g(0.3モルを)を1時間かけてゆっくり加え、5時間還流した。反応完了後、反応溶液からトルエン溶媒を除去し、真空オーブンで24時間乾燥して、下記化学式(E2)のポリシロキサンを製造した。
【化12】
【0048】
比較例A1:化学式(C1)のポリシロキサンの製造
コンデンサ付き500mLの3口フラスコに、窒素雰囲気下、ポリシロキサン(Dami Polychem社製のF5032、粘度5cPの無色透明液体)49.04g(0.1モルを)をトルエン50mLに溶解し、そこに白金(Pt)触媒(Dami Polychem社製のCP101)0.008g(100ppm)を加えた。得られた溶液を加熱した状態で、2-アリルフェノール40.2g(0.3モルを)を1時間かけてゆっくり加え、5時間還流した。反応完了後、反応溶液からトルエン溶媒を除去し、真空オーブンで24時間乾燥して、下記化学式(C1)のポリシロキサンを製造した。
【化13】
【0049】
<ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造>
実施例B1:実施例A1のポリシロキサン(含量:2重量%)を用いたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造
水溶液中のビスフェノールAとホスゲンガスとの界面反応を塩化メチレン存在下で行い、粘度平均分子量約1,000のオリゴマー性ポリカーボネート混合物を製造した。得られたオリゴマー性ポリカーボネート混合物から有機相を抽出し、そこに水酸化ナトリウム水溶液、前記実施例A1で得られた化学式(E1)のポリシロキサン(共重合体の全重量に対して、2重量%の量)、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBACl、共重合体の全重量に対して、0.1重量%の量)、塩化メチレン及びp-tert-ブチルフェノール(PTBP、共重合体の全重量に対して、0.4重量%の量)を混合し、2時間反応させた。相分離後、有機相のみを採取し、そこに水酸化ナトリウム水溶液、塩化メチレン、トリエチルアミン(TEA、共重合体の全重量に対して、0.015重量%の量)を加え、3時間反応した。前記反応した有機相にトリエチルアミン(TEA、共重合体の全重量に対して、0.02重量%の量)を再度加え、2時間さらに反応した。相分離後、粘度の上昇した有機相を回収し、そこに蒸溜水及び塩化メチレンを加え、有機相をアルカリで洗浄し、再度分離した。次に、前記有機相を0.1N塩酸水溶液で洗浄した後、蒸溜水で2~3回洗浄した。洗浄終了後、一定量の純水を用いて前記有機相を76℃で造粒した。造粒終了後、まず110℃で8時間、次いで120℃で10時間乾燥して、ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を製造した。前記製造されたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の物性を測定し、下記表1に示した。
【0050】
実施例B2:実施例A2のポリシロキサン(含量:2重量%)を用いたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造
前記実施例A1で得られた化学式(E1)のポリシロキサンの代わりに、前記実施例A2で得られた化学式(E2)のポリシロキサン(共重合体の全重量に対し2重量%の量)を使用したこと以外は、実施例B1と同様の方法でポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を製造した。前記製造されたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の物性を測定し、下記表1に記載した。
【0051】
実施例B3:実施例A1のポリシロキサン(含量:5重量%)を用いたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造
前記実施例A1で得られた化学式(E1)のポリシロキサンの含量を共重合体の全重量に対して、5重量%を使用したことを除いては、実施例B1と同様の方法でポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を製造した。製造されたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の物性を測定し、下記表1に示した。
【0052】
実施例B4:実施例A1のポリシロキサン(含量:7重量%)を用いたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造
前記実施例A1で得られた化学式(E1)のポリシロキサン含量を共重合体の全重量に対して、7重量%を使用したことを除いては、実施例B1と同様の方法でポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を製造した。製造されたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の物性を測定し、下記表1に示した。
【0053】
実施例B5:実施例A1のポリシロキサン(含量:10重量%)を用いたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造
前記実施例A1で得られた化学式(E1)のポリシロキサン含量を共重合体の全重量に対して、10重量%を使用したことを除いては、実施例B1と同様の方法でポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を製造した。製造されたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の物性を測定し、下記表1に示した。
【0054】
実施例B6:実施例A2のポリシロキサン(含量:7重量%)を用いたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造
前記実施例A1で得られた化学式(E1)のポリシロキサンの代わりに、前記実施例A2で得られた化学式(E2)のポリシロキサン(共重合体の全重量に対して、7重量%の量)を使用したこと以外は、実施例B1と同様の方法でポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を製造した。製造されたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の物性を測定し、下記表1に示した。
【0055】
実施例B7:実施例A1のポリシロキサン(含量:5重量%)を用いたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造
前記実施例A1で得られた化学式(E1)のポリシロキサン含量を共重合体の全重量に対して、5重量%に変更し、p-tert-ブチルフェノールの含量を共重合体の全重量に対して、0.2重量%を使用したことを除いては、実施例B1と同様の方法で粘度平均分子量が70,500g/molのポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を製造した。製造されたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の物性を測定し、下記表1に示した。
【0056】
実施例B8:実施例A1のポリシロキサン(含量:0.5重量%)を用いたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造
前記実施例A1で得られた化学式(E1)のポリシロキサン含量を共重合体の全重量に対して、0.5重量%に変更し、p-tert-ブチルフェノールの含量を共重合体の全重量に対して、0.2重量%を使用したことを除いては、実施例B1と同様の方法でポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を製造した。製造されたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の物性を測定し、下記表1に示した。
【0057】
実施例B9:実施例A1のポリシロキサン(含量:20重量%)を用いたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造
前記実施例A1で得られた化学式(E1)のポリシロキサン含量を共重合体の全重量に対して、20重量%を使用したことを除いては、実施例B1と同様の方法でポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を製造した。製造されたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の物性を測定し、下記表1に示した。
【0058】
比較例B1:粘度平均分子量21,200g/molの直鎖状ポリカーボネート樹脂
粘度平均分子量21,200g/molの直鎖状ポリカーボネート(TRIREX3022IR、サムヤン社製)樹脂の物性を測定し、下記表1に示した。
【0059】
比較例B2:粘度平均分子量70,900g/molの直鎖状ポリカーボネート樹脂
前記実施例A1で得られた化学式(E1)のポリシロキサンを使用したこと以外は、実施例B1と同様の方法で粘度平均分子量70,900g/molの直鎖状ポリカーボネート樹脂を製造した。製造されたポリカーボネート樹脂の物性を測定し、下記表1に示した。
【0060】
比較例B3:化学式(C2)のヒドロキシ末端ポリシロキサン(含量:9重量%)を用いたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造
前記実施例A1で得られた化学式(E1)のポリシロキサンの代わりに、下記化学式(C2)のヒドロキシ末端ポリシロキサン(共重合体の全重量に対して、9重量%の量)を使用したこと以外は、実施例B1と同様の方法でポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を製造した。製造されたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の物性を測定し、下記表1に示した。
【化14】
【0061】
比較例B4:比較例A1のポリシロキサン(含量:7重量%)を用いたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の製造
前記実施例A1で得られた式(E1)のポリシロキサンの代わりに、前記比較例A1で得られた式(C1)のポリシロキサン(共重合体の全重量に対して、7重量%の量)を使用したこと以外は、実施例B1と同様の方法でポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体を製造した。製造されたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体の物性を測定し、下記表1に示した。
【0062】
<物性測定方法>
(1)H-NMR(核磁気共鳴分光法)
測定は、Avance DRX 300(Bruker社製)を使用した。H-NMR分析により、ジメチルシロキサンのメチル基のピークが0.2ppm、ポリシロキサン-ポリカーボネート結合部のメチレン基のピークが2.6ppm、ポリシロキサン-ポリカーボネート結合部のメトキシ基のピークが3.9ppmに観測され、共重合体が確認された。
【0063】
(2)粘度平均分子量(Mv:g/mol)
塩化メチレン溶液の粘度は、ウベローデ粘度計を使用して20℃で測定し、下記式により極限粘度[η]を算出した。
[η]=1.23×10-5Mv0.83
【0064】
(3)透過率(%)
透過率は、ヘイズメーター(HAZE-GARDPLUS、BYK GARDNER社製)を使用して測定した。
【0065】
(4)難燃性
難燃性は、UL-94難燃性試験方法(UL:Underwriter’s Laboratory Inc., US)に従って測定した。前記試験は、ある大きさの試験片を垂直に固定し、10秒間燃焼した後の燃焼時間又は粒子の滴下から難燃性を評価する方法である。燃焼時間は、試験片が火源からは離れた後も、燃焼し続けた時間である。綿層の発火は、試験片からの発火粒子の落下による試験片の下約300mmに設置した綿層の発火によって判定した。難燃性の評価は以下に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
前記表1に示されるように、比較例B1及びB2で製造された直鎖状ポリカーボネート樹脂及び比較例B3及びB4で製造されたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体と比較して、本発明による実施例B1~B9で製造されたポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、著しく優れた難燃性(5試験片の総燃焼時間が比較的短い)を示すと同時に、優れた透過率を示すことがわかる。
【国際調査報告】