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特表2024-525540センサ用途におけるマイクロ波吸収体としてのカーボンナノチューブを含むポリエステル組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】センサ用途におけるマイクロ波吸収体としてのカーボンナノチューブを含むポリエステル組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20240705BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20240705BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20240705BHJP
   C08L 83/10 20060101ALI20240705BHJP
   H01Q 17/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C08L67/00
C08L67/02
C08K7/06
C08L83/10
H01Q17/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500127
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 IB2022056288
(87)【国際公開番号】W WO2023281440
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21184608.4
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521198963
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィ,ノルベルト
【テーマコード(参考)】
4J002
5J020
【Fターム(参考)】
4J002BC072
4J002CD192
4J002CF061
4J002CF071
4J002CF081
4J002CF102
4J002CG022
4J002CP172
4J002DA016
4J002DH048
4J002DL007
4J002EH048
4J002EJ018
4J002FA046
4J002FA047
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD028
4J002FD038
4J002FD078
4J002FD098
4J002FD108
4J002FD138
4J002FD168
4J002FD202
4J002FD208
4J002GQ00
5J020EA01
(57)【要約】
【解決手段】 熱可塑性組成物が:ポリエステルを含む熱可塑性ポリマー成分と、0.10wt%超から約1.95wt%のカーボンナノチューブ(CNT)充填剤とを含む。この組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する。いくつかの態様では、ポリエステルは、ポリブチレンテレフタラート(PBT)を含む。さらなる態様は、マイクロ波吸収材料(吸収体)を含むモールド成形された部分を含む物品(例えば、レーダーセンサ、カメラ、電子制御ユニットなど)を含む。この物品は、センサのプリント回路基板内/上に位置する送信アンテナと受信アンテナとの間でマイクロ波放射の伝送を可能にする少なくとも二つの開口部を有し得る。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを含んでなる熱可塑性ポリマー成分と;
0.10wt%超から約1.95wt%のカーボンナノチューブ(CNT)充填剤と、
を含んでなる熱可塑性組成物であって、
前記組成物の6インチ(in)×8in×1/8inのモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルが、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタラート) (PCT)、ポリエチレンテレフタラートグリコール(PETG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタラートグリコール(PCTG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタル酸(PCTA)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリブチレンナフタラート(PBN)、それらのコポリマー、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項3】
前記組成物がポリブチレンテレフタラート(PBT)を含んでなる、請求項1または2に記載の熱可塑性組成物。
【請求項4】
前記CNT充填剤が、約5~15ナノメートル(nm)の平均直径、少なくとも100平方メートル毎グラム(m/g)の表面積、および10-3オーム.センチメートル(Ω.cm)未満の体積抵抗率を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項5】
少なくとも1.0×1011Ω.cmの体積電気抵抗率を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項6】
前記組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料が、自由空間法にしたがって75GHzから110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項7】
0.25wt%超から1wt%未満のCNT充填剤を含んでなる、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物であって、前記組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも74%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、熱可塑性組成物。
【請求項8】
ポリカルボナート-シロキサンコポリマーをさらに含んでなる、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項9】
0.25wt%超から約1.95wt%のCNT充填剤を含んでなる、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物であって、前記組成物のモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも-30dB/cmの減衰定数を有する、熱可塑性組成物。
【請求項10】
少なくとも一つの追加の添加剤をさらに含んでなる、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物であって、前記少なくとも一つの追加の添加剤が、酸掃去剤、滴下防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、脱成型剤、流動促進剤、潤滑剤、離型剤、可塑剤、焼き入れ剤、難燃剤、UV反射添加剤、耐衝撃性改良剤、発泡剤、補強剤、またはそれらの組み合わせを含んでなる、熱可塑性組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物を含む物品。
【請求項12】
内蔵または外付けのレーダーセンサ用のマイクロ波吸収体である、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
レーダーセンサ、カメラ、または電子制御ユニット用のマイクロ波吸収体である、請求項11に記載の物品。
【請求項14】
送信アンテナ、受信アンテナ、および前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間でマイクロ波放射の伝送を可能にする少なくとも二つの開口部を含んでなる、請求項11から13のいずれか一項に記載の物品。
【請求項15】
ポリエステルを含んでなる熱可塑性ポリマー成分を、0.10wt%超から約1.95wt%のカーボンナノチューブ(CNT)充填剤と組み合わせて混合物を形成することと;
前記混合物をモールド成形して熱可塑性組成物を形成することと;
を含んでなる、熱可塑性組成物を形成する方法であって、
前記熱可塑性組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサ用途におけるマイクロ波吸収体としての使用に好適な、ポリエステルとカーボンナノチューブ(CNT)充填剤とを含む熱可塑性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業では、車間距離制御装置、駐車/車線変更アシスト、後退警報器、死角検知機能、衝突回避機能、その他多くの機能を用いた運転支援を提供するために、電子レーダーセンサの使用が増加している。これらのセンサが効果的に動作するには、偽の電磁放射源から保護される必要がある。自動車用レーダーセンサは、マイクロ波放射に対してほとんど透明なレドーム型可塑性構成部品と、外部からの放射干渉からセンサを保護するために特定の周波数範囲のマイクロ波エネルギーを捕捉する吸収体型可塑性構成部品とを含む。これらの可塑性構成部品は通常、比較的高い射出圧力と溶融温度を用いて射出成形されて、最終部品になる。カーボンブラック粉末、グラファイト、または炭素繊維から作られたマイクロ波吸収材料は通常、電磁スペクトルのKバンドとWバンドで充分な遮蔽干渉を提供するために、比較的大量の炭素充填剤が必要である。
【0003】
電子レーダーセンサは、自動車産業において、車間距離制御装置、車線変更、セルフパーキング、死角検出機能などの操作を支援するために使用されている。これらのセンサは、その正常な動作を損なう可能性のある電磁干渉から保護される必要がある。金属(アルミニウム、ステンレス鋼)は、マイクロ波(MW)遮蔽用に使用される最も一般的な材料であるが、重く高価であり、最終部品に成形するには複雑な加工が必要である。
【0004】
ポリマー/炭素コンポジットが、より好まれており、それは、この材料が低密度、低コストで、成形が容易であり、モールド成形された大量の部品として製造可能であることに起因する。炭素充填剤は、筐体壁の中でMW放射を捕捉してまたは偏向させて、空洞内の電子センサを保護する。比較的高い誘電定数、電気伝導率、および大きな誘電損失と磁気損失は、マイクロ波遮蔽に使用される材料に要求される特徴の一部である。
【0005】
マイクロ波放射(ほぼ1~300GHzの周波数、ほぼ300~1mmの波長)は、自動車用途向けレーダーセンサの動作に使用される最も一般的なEMエネルギー源である。金属(例えばアルミニウムおよびステンレス鋼)、ポリマー複合材料であって、金属充填剤、例えばアルミニウムフレーク、ステンレス鋼繊維、および銀コートポリアミド繊維を含有するもの、金属化コーティング、本来的に導電性ポリマー類(ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなど)、炭化ケイ素、フェライト類(Fe+Ni/Zn/Cd/Co酸化物)、ならびにカルボニル鉄は、自動車用レーダーセンサを有害なマイクロ波電磁放射から遮蔽するために使用されている材料の一部である。
【0006】
レーダ設計者がマイクロ波レーダ干渉用の材料を選択する際に考慮するいくつかの誘電特性がある。複素誘電率(実数部および虚数部)、材料によって吸収、反射、透過される放射の量、遮蔽有効度、反射損失、および減衰は、レーダーセンサ用途に向けた可塑性構成部品の製造にとって対象となる材料特性の一部に過ぎない。また、除去または最小化されないと自動車用電子センサの正常な動作に干渉する可能性のあるマイクロ波エネルギーを捕捉する場合には、入射する放射の周波数と材料の厚さもまた重要である。
【0007】
炭素(例えば、粉末、プレートレット、繊維)は、未充填の状態ではマイクロ波放射に対して実質的に透明であるポリマー類に電磁干渉特性を付与するために選択肢となる充填剤として浮上しつつある。ポリマー-炭素コンポジットは、例えば自動車のボンネットの下の筐体に使用される場合には、筐体内部に配置されたレーダーセンサを、外部または内部からの電磁放射によるそのセンサの電子性能の劣化を防止することによって保護することができる。
【0008】
これらの欠点および他の欠点が、本開示の態様によって対処される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の態様は、ポリエステルを含む熱可塑性ポリマー成分と;0.10wt%超から約1.95wt%のカーボンナノチューブ(CNT)充填剤と;を含む熱可塑性組成物に関する。この組成物の6in(インチ)×8in×1/8inのモールド成形試料は、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する。いくつかの態様では、ポリエステルは、ポリブチレンテレフタラート(PBT)を含む。さらなる態様は、マイクロ波吸収材料(吸収体)を含むモールド成形された部分を含む物品(例えば、レーダーセンサ、カメラ、電子制御ユニットなど)を含む。この物品は、センサのプリント回路基板内/上に位置する送信アンテナと受信アンテナとの間でマイクロ波放射の伝送を可能にする、少なくとも二つの開口部を有し得る。
【0010】
さらなる態様では、本開示は:ポリエステルを含む熱可塑性ポリマー成分を、0.10wt%超から約1.95wt%のカーボンナノチューブ(CNT)充填剤と組み合わせて混合物を形成することと;混合物をモールド成形して熱可塑性組成物を形成することと;を含む、熱可塑性組成物を形成する方法に関する。熱可塑性組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料は、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する。
【0011】
図面は、必ずしも縮尺通りに描かれておらず、それらにおいては、同様の数字は、異なる図における同様の構成部品を表し得る。異なる文字接尾辞を有する同様の数字は、同様の構成部品の異なる例を表し得る。図面は、本明細書で考察される様々な態様を、限定するものとしてではなく例として一般的に示している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1Aおよび1Bはそれぞれ、裏打ちされていない試料および金属で裏打ちされた試料について、自由空間法を使用して本開示の材料の誘電特性を決定するために使用される装置の概略図である。
図2図2は、75GHzと110GHzの間の周波数でWバンドにおけるマイクロ波放射を吸収するために使用される炭素系材料の散乱パラメータ(dB単位)S11(反射の場合)およびS21(透過の場合)の大きさの典型的なグラフを示す。
図3図3は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について77GHzの周波数で観測された、CNT投入量の関数としての誘電率(実数部および虚数部)を例示するグラフである。
図4図4は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について77GHzの周波数で観測された、CNT投入量の関数としての誘電正接(Df)、すなわちtanδを例示するグラフである。
図5図5は、本開示の態様による例示組成物および比較組成物について77GHzの周波数で観測された、CNT投入量の関数としての減衰定数を例示するグラフである。
図6図6は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について77GHzの周波数で観測された、CNT投入量の関数としての全遮蔽有効度を例示するグラフである。
図7図7は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について77GHzの周波数で観測された、CNT投入量の関数としての、透過モードにおけるパーセント電力を例示するグラフである。
図8図8は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、CNT投入量の関数としての、透過モードおよび金属裏打ちされた反射モードにおけるパーセント吸収電力を例示するグラフである。
図9図9は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、CNT投入量の関数としての表面抵抗率を例示するグラフである。
図10図10は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、CNT投入量の関数としての体積抵抗率を例示するグラフである。
図11図11は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、CNT投入量の関数としての表面抵抗率および体積抵抗率を例示するグラフである。
図12図12は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、体積電気抵抗率の関数としての、77GHzの周波数で観測された透過モードにおけるパーセント反射電力を例示するグラフである。
図13図13は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、体積電気抵抗率の関数としての、77GHzの周波数で観測された透過モードにおけるパーセント吸収電力を例示するグラフである。
図14図14は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、Wバンド(75~110GHz)における周波数の関数としての複素誘電率の実数部を例示するグラフである。
図15図15は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、Wバンド(75~110GHz)における周波数の関数としての複素誘電率の虚数部を例示するグラフである。
図16図16は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、Wバンド(75~110GHz)における周波数の関数としての減衰を例示するグラフである。
図17図17は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、Wバンド(75~110GHz)における周波数の関数としての全遮蔽有効度を例示するグラフである。
図18図18は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、Wバンド(75~110GHz)における周波数の関数としての、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を例示するグラフである。
図19図19は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、Wバンド(75~110GHz)における周波数の関数としての、金属裏打ちされた反射モードで測定されたパーセント吸収電力を例示するグラフである。
図20図20は、本開示の態様による実施例組成物Ex1について、Wバンド(75~110GHz)における周波数の関数としての吸収電力、反射電力、および透過電力を例示するグラフである。
図21図21は、本開示の態様による実施例組成物Ex2について、Wバンド(75~110GHz)における周波数の関数としての吸収電力、反射電力、および透過電力を例示するグラフである。
図22図22は、比較組成物CEx2について、Wバンド(75~110GHz)における周波数の関数としての吸収電力、反射電力、および透過電力を例示するグラフである。
図23図23は、比較組成物CEx3について、Wバンド(75~110GHz)における周波数の関数としての吸収電力、反射電力、および透過電力を例示するグラフである。
図24図24は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、23℃でのノッチ付きおよびノッチなしのアイゾット(Izod)衝撃強度を例示するグラフである。
図25図25は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、-30℃でのノッチ付きおよびノッチなしのアイゾット衝撃強度を例示するグラフである。
図26図26は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について77GHzの周波数で観測された、CNT投入量の関数としての誘電率(実数部および虚数部)を例示するグラフである。
図27図27は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について77GHzの周波数で観測された、CNT投入量の関数としての誘電正接(Df)、すなわちtanδを例示するグラフである。
図28図28は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について77GHzの周波数で観測された、CNT投入量の関数としての透過モードにおけるパーセント電力を例示するグラフである。
図29図29は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、Wバンド(75~110GHz)における周波数の関数としての複素誘電率の実数部を例示するグラフである。
図30図30は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、Wバンド(75~110GHz)における周波数の関数としての複素誘電率の虚数部を例示するグラフである。
図31図31は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、Wバンド(75~110GHz)における周波数の関数としての減衰を例示するグラフである。
図32図32は、本開示の態様による実施例組成物および比較組成物について、Wバンド(75~110GHz)における周波数の関数としての、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、自動車用レーダーセンサなどのセンサ用のマイクロ波吸収体の製造に使用することができる、そして従来のモールド成形工程を使用して射出成形することができる、比較的低レベルの多層カーボンナノチューブを含むプラスチック可塑性材料を記載する。
【0014】
カーボンナノチューブは、比較的低投入量で充分なマイクロ波干渉性能を与えるので、炭素粉末、グラファイト、または炭素繊維よりも好ましい。例えば、炭素の投入量が下がると、高せん断速度条件下でのこうした材料の延性、衝撃強度、表面の美観、および流動性が改善される。
【0015】
本開示の別の態様は、ポリマーと、マイクロ波吸収充填剤としてのカーボンナノチューブとを含む材料からモールド成形される、自動車用レーダーセンサの構成部品(プレート、筐体、カバーなど)であって、モールド成形された部分が、特定の設計、平均厚さ、マイクロ波吸収効率、吸収帯域幅、遮蔽有効度、減衰、および電気表面抵抗率と電気体積抵抗率の特性を有するものである。
【0016】
本開示のさらなる態様は、マイクロ波吸収材料(吸収体)を含むモールド成形された部分を含む物品(例えば、レーダーセンサ、カメラ、電子制御ユニットなど)を含む。この物品は、センサのプリント回路基板内/上に位置する送信アンテナと受信アンテナとの間でマイクロ波放射の伝送を可能にする、少なくとも二つの開口部を有し得る。
【0017】
本開示は、以下の、本開示の詳細な記載、およびそこに含まれる実施例を参照することにより、さらに容易に理解することができる。様々な態様において、本開示は、ポリエステルを含む熱可塑性ポリマー成分と;0.10wt%超から約1.95wt%のカーボンナノチューブ(CNT)充填剤と;を含む熱可塑性組成物に関する。この組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料は、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する。
【0018】
本化合物、組成物、物品、システム、装置、および/または方法が開示され記載されるのに先立って、それらが、別途指定のない限り特定の合成方法に、また別途指定のない限り詳細な試薬に限定されず、よって当然ながら異なり得ることは、理解されよう。また、本明細書で使用される用語が、詳細な態様を記載する目的のためだけのものであって、限定することを意図されないことも理解されよう。
【0019】
本開示の構成要素の様々な組み合わせ、例えば、同一の独立請求項に従属する従属請求項からの構成要素の組み合わせが、本開示に包含される。
【0020】
さらに、別途明示のない限り、本明細書に記載されるいかなる方法も、そのステップが具体的な順序で実行されるよう要求していると解釈されるようなことは、決して意図されないことが理解されよう。したがって、方法の請求項が、そのステップが従うことになる順序を実際に記載していない場合には、またはそのステップが具体的な順序に限定されることが請求項または明細書において別途具体的に示されていない場合には、いかなる点においても、順序が推察されるようなことは、決して意図されない。このことは、ステップの並びまたは操作の流れに関する論理的な事項;文法的な構成や句読点から導かれる平易な意味;および本明細書に記載される態様の数またはタイプを含め、解釈上の非明示的ないかなる可能な根拠についても当てはまる。
【0021】
本明細書で言及されるあらゆる公開文献は、引用された公開文献に関連する方法および/または材料を開示し記載するために、参照により本書に組み込まれる。
定義
【0022】
また、本明細書で使用される用語が、詳細な態様を記載する目的のためだけのものであって、限定することを意図されないことも理解されよう。本明細書、および特許請求の範囲で使用されるとおり、用語「含んでなる(comprising)」は、「からなる(consisting of)、および「から本質的になる(consisting essentially of)」態様を含むことができる。別途定義されているのでない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書では、そして添付の特許請求の範囲では、本明細書で定義されるものとされる複数の用語が参照されることになる。
【0023】
本明細書で、そして添付の特許請求の範囲で使用されるとおり、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈から明らかにそうでないと指示されているのでない限り、複数の指示対照を含む。よって、例えば、「ポリエチレン・ポリマー(polyethylene polymer)」への言及があれば、二つ以上のポリエチレン・ポリマー類(polyethylene polymers)の混合物を含む。
【0024】
本明細書において使用されるとおり、用語「組み合わせ」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物、および同類のものを含む。
【0025】
範囲は、本明細書では、一つの値(第1の値)から別の値(第2の値)までとして表現することができる。そのような範囲が表現される場合には、その範囲は、いくつかの態様では、第1の値および第2の値のうちの一つまたは両方を含む。同様に、値が近似値として表現される場合には、先行詞「約」の使用により、その詳細な値が別の態様をなすことは理解されよう。さらに、各範囲の端点は、もう一方の端点と関係している場合、およびもう一方の端点と無関係である場合の両方において有効値であることが理解されよう。また、本明細書で開示される複数の値が存在すること、そして各値が、その詳細な値そのものに加えて、「約」その値としても本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合には、「約10」もまた開示される。また、二つの詳細な単位の間の各単位も開示されることも理解される。例えば、10と15が開示される場合には、11、12、13、14もまた開示される。
【0026】
本明細書で使用されるとおり、「約」および「のところまたはその近傍」という用語は、問題の量または値が、指定値、近似的に指定値、または指定値とほぼ同じとすることができることを意味する。本明細書で使用されるとおり、別途指示または推論されているのでない限り、その値は、表示された公称値±10%の変動であるとおおむね理解される。この用語は、特許請求の範囲に記載された均等な結果または効果がそうした類似の値によって促されることを伝えるよう意図されている。すなわち、量、サイズ、配合、パラメータ、およびその他の量および特性は、正確ではなく、正確である必要もないが、公差、換算係数、丸め、測定誤差、および同類のもの、ならびに当業者に公知のその他の要因を反映して、所望に応じて近似的であり得る、および/または大きくもしくは小さくなり得ることは理解される。概して、量、サイズ、配合、パラメータ、または他の量もしくは特性は、そのように明示的に定められているかどうかにかかわらず、「約」または「近似値」である。定量的な値の前に「約」が使用される場合には、パラメータもまた、別途具体的に定められているのでない限りその具体的で定量的な値自体をも含むと理解される。
【0027】
開示されるのは、本開示の組成物を準備するために使用される成分のみならず、本明細書に開示される方法の範囲内で使用される組成物自体である。これらの材料および他の材料は本明細書に開示されており、これらの材料の組み合わせ、部分集合、相互作用、群などを開示する場合に、これらの化合物のそれぞれ様々な個々のそして集合的な組み合わせと並び替えを具体的に言及されたものを明示的に開示することはできないものの、本明細書においてそれぞれが具体的に企図され記載されるということは、理解される。例えば、特定の化合物が開示、考察され、化合物を含む複数の分子に対して行うことができる複数の修正形態が考察される場合には、具体的に企図されるのは、別途反対のことが具体的に指示されているのでない限り可能な、化合物および修正形態のそれぞれのそしてすべての組み合わせと並び替えである。よって、分子A、B、およびCの類のみならず、分子D、E、およびFの類が開示され、組み合わせ分子の例であるA-Dが開示されている場合には、それぞれが個別に言及されていなくても、それぞれが個別に、そして集合的に企図され、組み合わせ、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fが開示されているとみなされることを意味する。同様に、これらのいずれの部分集合または組み合わせも開示される。よって、例えば、A-E、B-F、およびC-Eという部分群が、開示されるとみなされる可能性がある。この概念は、本開示の組成物を作るおよび使用する方法におけるステップを含むがこれらに限定されない、本出願のすべての態様に適用される。よって、実行できる様々な追加のステップがある場合には、これらの追加のステップのそれぞれが、本開示の方法のいずれの具体的な態様または態様の組み合わせを用いても実行できることが理解される。
【0028】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、組成物または物品中の詳細な構成要素または成分の重量部が参照されていれば、それは、その構成要素または成分と、組成物または物品中の他の構成要素または成分との間の、重量部で表現される重量関係を示すものである。よって、2重量部の成分Xと5重量部の成分Yを含有する化合物では、XとYは2:5の重量比で存在し、化合物中に追加の成分が含有されているかどうかにかかわらず、そのような比率で存在する。
【0029】
成分の重量パーセントは、具体的に反対の記載があるのでない限り、その成分が含まれる配合物または組成物の総重量を基準にする。
【0030】
ポリマー類の成分に関して使用される用語「残基」および「構造単位」は、本明細書を通して同義である。
【0031】
本明細書で使用されるとおり、用語「重量パーセント」、「wt%」、および「wt.%」は、互換的に使用することができ、別途指定されているのでない限り、組成物の総重量を基準にした所与の成分の重量パーセントを示す。すなわち、別途指定されているのでない限り、すべてのwt%値は、組成物の総重量を基準にする。開示された組成物または配合物中の全成分のwt%値の総和は100に等しいと理解されるのが望ましい。
【0032】
本明細書で反対のことが別途言明されているのでない限り、すべての試験基準は、本願出願時点で有効な最新の基準である。
【0033】
本明細書に開示される材料のそれぞれは、市販されている、および/またはその製造方法が当業者に公知であるものである。
【0034】
本明細書に開示される組成物は、特定の機能を有することが理解される。本明細書に開示されるのは、開示される機能を実行する特定の構造要件であり、開示される構造に関連する同一の機能を実行することができる様々な構造が存在すること、およびこれらの構造が典型的には同一の結果を実現することは理解される。
熱可塑性組成物
【0035】
いくつかの態様では、一定投入量の多層カーボンナノチューブ(CNT)を含むポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタラート(PBT))マスターバッチを新品の未充填ポリエステル樹脂と組み合わせて元のマスターバッチを希釈することで、ナノチューブの濃度を変えたブレンドを形成している。カーボンナノチューブは、電気伝導率とマイクロ波吸収特性を組成物に付与する。本開示の態様において使用するのに好適なマスターバッチ組成物の一つは、PLASTICYL(商標) PBT1501(ナノシル社(NANOCYL)から入手可能)であり、これは、15重量パーセントのナノチューブを含有する多層カーボンナノチューブ(MWCNT)PBTマスターバッチである。NANOCYL(登録商標)ナノチューブは、触媒的化学気相成長法(CCVD法)によって製造される、細い多層カーボンナノチューブである。カーボンナノチューブは、ナノメートルサイズの直径を有する、炭素原子のみから構成された管状の材料である。グラファイト層は、連続した切れ目のない六角形の網目と、六角形の頂点のところに炭素原子を有する、巻かれた金網のようなものとして視覚化することができる。ファンデルワールス力の作用から、カーボンナノチューブは集合して、束または弱集合体になる傾向がある。その結果、カーボンナノチューブは黒い粉末のように見える。しかし、ナノスケールでは、これはスパゲッティ状の構造を有している。
【0036】
カーボンナノチューブの一つの利点は、カーボンナノチューブを含む組成物が、カーボンブラックまたはグラファイトなどの他の導電性充填剤と比較して改善した機械的特性を有することであり、これは、カーボンナノチューブの高いアスペクト比の結果、特定の電気伝導率に達するのに必要なナノチューブの量が比較的低いことに起因する。ナノチューブは典型的には、投入量が等しければカーボンブラックよりも粘度を増加させるが、ほとんどの場合に、加工に必要なナノチューブの量は大幅に少ない。CNTのその他の利点には、高い電気伝導率、良好な加工性、機械的特性の保持、熱可塑性物質における高いリサイクル性、および良好な放熱特性(特に)などが挙げられる。ナノシル社のNC7000(商標)CNTの具体的な特性は以下のとおりである:
【0037】
【表1】
ナノシル社のNC7000(商標)技術データシートから。
【0038】
特定の態様では、本開示は、ポリエステルを含む熱可塑性ポリマー成分と;0.10wt%超から約1.95wt%のカーボンナノチューブ(CNT)充填剤と;を含む熱可塑性組成物に関する。この組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料は、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する。本明細書で使用される「モールド成形試料」は、組成物の6インチ×8インチ×1/8インチ射出成形試料を指す。
【0039】
本開示の組成物の誘電特性を測定するために使用される自由空間法は、ベクトルネットワークアナライザと、互いに対向する二つのアンテナと、それらアンテナの間に等距離に配置された試料ホルダとを含む。自由空間法によって生成される基本的な実験的量は、いわゆる散乱パラメータ、すなわちSパラメータであり、これらは、電気的ネットワークの異なるポート間の入出力関係を、振幅および位相対周波数の観点から記述するのに使用される。Sパラメータは通常、二つの数字の添え字で特定され、添え字の第1の数字は応答ポートを指す一方、第2の数字は入射ポートを指す。よって、S21は、ポート1での信号に起因するポート2での応答を意味する。散乱パラメータは、実数部と虚数部を有する複素数であり、試料から反射されるか試料を透過するかのいずれかであるマイクロ波放射の量を記述する。例えば、反射に関する散乱パラメータS11は、アンテナ1に由来する、そして試料に衝突して反射された後に戻って同一アンテナのところで受信される信号を表す。同様に、透過に関する散乱パラメータS21は、アンテナ1に由来する、そして試験下の材料を透過した後にアンテナ2で受信される信号を表す。アンテナ2に由来する信号を表す、反射および透過に関する散乱パラメータである、反射に関するS22および透過に関するS12もまた、定義することができる。先に定義した四つのSパラメータ、S11、S22、S21、S12を2ポートネットワークに関して特定でき、Sパラメータ行列を使用して、このネットワークの両側からの反射係数と透過利得を決定することができる。次いで、ソフトウェアを使用して、ネットワーク・アナライザの散乱パラメータ出力を誘電特性に変換する。自由空間測定技術により、試験下の磁気誘電材料の誘電率と透磁率を決定する方法が得られる。これらの方法は非接触であり、これはすなわち、測定下の材料が、測定に関与する装置のいかなる起動している構成部品とも直接接触しないということである。
【0040】
自由空間法を用いて本開示の材料の誘電特性を測定するために使用される装置の概略図を、裏打ちされていない試料および金属裏打ちされた試料について、それぞれ図1Aおよび図1Bに示す。これらの自由空間誘電率測定には、6インチ×8インチ×1/8インチ寸法の射出成形された板状体を使用する。
【0041】
自由空間法を用いた誘電測定は、透過モードと、金属裏打ちされた反射モードという、二つの異なるモードで実行することができる。測定の透過モードでは、3種類の放射、すなわち試料への吸収、試料からの反射、および試料を通る透過を測定することが可能になる。他方で、測定の金属裏打ちされた反射モードでは、試験下の材料と受信アンテナとの間に金属性プレート(ステンレス鋼、アルミニウムなど)が置かれるので、試料を通る透過はほぼ完全に抑制され、材料へのマイクロ波の吸収と材料からのマイクロ波の反射のみを評価することができる。透過モードでの二つのアンテナの組み合わせでは、反射に関する散乱パラメータS11と透過に関する散乱パラメータS21しか測定できないので、試験下の材料に吸収された放射の量(パーセントで)は、試料に入射した全エネルギー(すなわち100%)と、試料を透過した放射(S21から測定され、受信アンテナに到達)および試料から反射された放射(S11から測定され、放射アンテナに戻る)の量(パーセントで)の総和との差として計算される。多くの用途では、透過モードを用いて測定される場合に、パーセント吸収電力を最大にしてパーセント反射電力とパーセント透過電力を最小にすることが望ましい。レーダ設計者がマイクロ波レーダ干渉用途向けに材料を選択する場合に考慮するいくつかの誘電特性がある。複素誘電率(実数部および虚数部)、材料によって吸収、反射、または透過される放射の量、遮蔽有効度、反射損失、および減衰は、レーダーセンサ用途向けの可塑性構成部品の製造にとって対象となる材料特性の一部に過ぎない。また、除去または最小化されないと自動車用電子センサの正常な動作に干渉する可能性のあるマイクロ波エネルギーを捕捉する場合には、入射する放射の周波数と材料の厚さもまた重要である。
【0042】
図2は、75GHzと110GHzの間の周波数でWバンドにおけるマイクロ波放射を吸収するために使用される炭素系材料の散乱パラメータ(dB単位)S11(反射の場合)およびS21(透過の場合)の大きさの典型的なグラフを示している。このグラフにおいて、S11がゼロdBに等しいということは、その材料が反射損失を示さない(100%反射する)ことを表しており、アルミニウムまたはステンレス鋼でできた金属プレートの場合がそうである。同様に、S21がゼロdBに等しいということは、その材料が透過損失を受けない(100%透過)ことを表し、空気の場合がそうである。この文脈では、0dBより大きいS11を有する材料であれば、100%未満の反射である(反射において何らかの損失を受ける)ことになり、0dBより大きいS21を有する材料であれば、100%未満の透過である(透過において何らかの損失を受ける)ことになる。Sパラメータの値における負の符号は、エネルギーが失われたことを表し、大きい負の数ほど大きい損失を表している。周波数77GHzの場合にグラフが示しているとおり、S11が約-2.5dBに等しければ31.6%のパーセント反射電力を表し、S21が約-15dBに等しければ0.1%のパーセント透過電力に対応し、100%の差であればパーセント吸収電力は約68.3%に等しい。
【0043】
最も一般的な定義では、材料の遮蔽有効度(SE)は、導電性成分および/または磁性成分から作られたバリアまたはシールドで場を遮断することによってその材料の周囲の電磁放射を低減する能力を記述する。こうした場合では、遮蔽は、保護されることになる材料に入射する電磁放射の一部または全部の吸収または反射のいずれかによって行うことができる。この有害な放射を遮断する遮蔽材料の能力は通常、入射する放射の周波数(または波長)、保護層の厚さに依存し、材料の電気伝導率および/または誘電特性とともに変化することが予想される。材料の全遮蔽有効度は、反射、吸収、内部反射損失の結果であり、次の式:
SE (dB) = SE + SE + SE
で表される。
【0044】
全遮蔽効率が10dBより大きい場合には、多重反射SEに起因する遮蔽有効度は通常無視できる。したがって、全遮蔽有効度は:
SE(dB)=SE+SE
と簡単になり、ここで
【0045】
SEおよびSEは、ベクトルネットワークアナライザを使用したSパラメータ測定から以下の:
【0046】
【数1】
のとおり直接計算される。
【0047】
上式において、S11は反射に関する散乱パラメータであり、S21は透過に関する散乱パラメータである。上記のSEとSEの式でSEの式を置き換えると、全遮蔽有効度はSE=-10 log(|S21)と書くことができ、これは透過損失または挿入損失の式に類似している。同様の式を使用して、減衰、反射、および挿入損失、吸収電力、その他多くの誘電特性を、散乱パラメータの点から計算することができる。本開示の材料の特性を計算するために使用される公式を以下に与える。
【0048】
反射係数および透過係数:
反射係数の式:
【0049】
【数2】
【0050】
上式において、
【0051】
【数3】
であり、
【0052】
【数4】
の拘束条件を用いて符号が選択される。
透過係数の式:
【0053】
【数5】
ここで、γは伝搬定数を表し、dは板状体の厚さである。
【0054】
複素相対誘電率:
【0055】
【数6】
ここで、σは材料の伝導率、ωは角周波数、εは自由空間の誘電率
【0056】
【数7】
である。
【0057】
損失正接:
【0058】
【数8】
【0059】
伝搬定数:γ=α+jβ、
ここで、γは、抽出された複素誘電率および複素透磁率を用いて次のように計算される:
【0060】
【数9】
ここで、cは自由空間の光速(c=3×10m/s)を表す。
【0061】
減衰定数αは、伝送路に沿って信号振幅を減少させ、α=Real(γ)(Np/m、またはネーパ/m)として計算され、次の:
α(dB/cm)=-0.086859 α(Np/m)
を用いてdB/cm単位でプロットされる。
【0062】
帰還損失(RL)および挿入損失(IL):
【0063】
【数10】
【0064】
計算されたS11およびS21パラメータ[60]:反射係数および透過係数は、抽出された誘電率と透磁率を用いて次のように計算される:
【0065】
【数11】
ここで、ωは角周波数、cは自由空間における光速、dは板状体の厚さを表し、S11およびS21のパラメータは次式で計算される:
【0066】
【数12】
【0067】
パーセント電力:マイクロ波吸収は、直接測定することができず、反射(S11から)と透過(S21から)のみであるので、パーセント吸収電力は、以下から計算することができる:
【0068】
【数13】
【0069】
金属裏打ちされた反射モードでの反射に関する散乱パラメータ:S11は伝送線モデルを用いて計算される:
【0070】
【数14】
反射損失(dB)=20 log(|S11|)、
ここで
【0071】
【数15】
であり、
【0072】
【数16】
は、複素相対誘電率
【0073】
【数17】
であり、
【0074】
【数18】
は、透磁率(=1、非磁性材料の場合)であり、この式は、金属裏打ちされた単層マイクロ波吸収体の反射損失の式に類似している:
【0075】
【数19】
【0076】
好適なポリエステルには、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタラート) (PCT)、ポリエチレンテレフタラートグリコール(PETG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタラートグリコール(PCTG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタル酸(PCTA)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリブチレンナフタラート(PBN)、それらのコポリマー類、またはそれらの組み合わせなどが挙げられるが、これらには限定されない。好適なポリエステル成分には、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタラート) (PCT)、ポリエチレンテレフタラートグリコール(PETG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタラートグリコール(PCTG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタル酸(PCTA)、それらのコポリマー類、またはそれらの組み合わせなどが挙げられるが、これらには限定されない。PCTは、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)と、ジメチルテレフタラート(DMT)またはテレフタル酸(TPA)とから形成される結晶性ポリエステルである。PETGとPCTGは、重合反応においてエチレングリコール(EG)を含むことによって形成されるコポリエステルである。PETGは、コポリエステル中のジオール含有量の50%未満がCHDMである場合に形成され、PCTGは、コポリエステル中のジオール含有量の50%以上がCHDMである場合に形成される。PCTAは、イソフタル酸(IPA)などの追加の二酸を含むことによって形成される。詳細な態様では、ポリエステル成分はPBTを含む。
【0077】
CNT充填剤は、いくつかの態様では、約5~15ナノメートル(nm)の平均直径、少なくとも100平方メートル毎グラム(m/g)の表面積、および/または10-3オーム.センチメートル(Ω.cm)未満の体積抵抗率を有し得る。例示的なCNTは、ナノシル社から入手可能である(例えば、NC7000(商標))。具体的な態様では、CNT充填剤はマスターバッチの形態である。詳細な態様では、CNT充填剤はCNT粉末を含まない。
【0078】
CNT充填剤は、組成物中に約0.01wt%から約1.95wt%の量で存在し得る。いくつかの態様では、組成物は、0.10wt%から約1.95wt%、または0.10wt%超から約1.95wt%、または0.25wt%から約1.95wt%、または0.25wt%から約1.95wt%、または0.25wt%超から約1.0wt%、または0.25wt%超から1.0wt%未満のCNT充填剤を含む。
【0079】
特定の態様では、組成物は、ポリカルボナート-シロキサンコポリマーを含む。ポリカルボナート-シロキサンコポリマーは、いくつかの態様では、約5wt%から約45wt%、または約5wt%から約25wt%、または約15wt%から約25wt%、または約20wt%の量で存在し得る。詳細な態様では、ポリカルボナート-シロキサンコポリマーは、約20wt%のシロキサン含有量を有する。本開示の態様において使用するのに好適な例示的ポリカルボナート-シロキサンコポリマー類は、SABICから入手可能なEXLコポリマー類であり、6wt%または20wt%の例示的なシロキサン含有量を有する。
【0080】
組成物は、いくつかの態様では、少なくとも一つの追加の添加剤を含む。少なくとも一つの追加の添加剤には、酸掃去剤、滴下防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、脱成型剤、流動促進剤、潤滑剤、離型剤、可塑剤、焼き入れ剤、難燃剤、UV反射添加剤、耐衝撃性改良剤、発泡剤、補強剤、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。少なくとも一つの追加の添加剤は、組成物の所望の特性に著しく悪影響を及ぼさないようないずれの量で熱可塑性組成物中に含まれていてもよい。特定の態様では、少なくとも一つの追加の添加剤は鎖延長剤を含まない。さらなる態様では、少なくとも一つの追加の添加剤は分散剤を含まない。またさらなる態様では、少なくとも一つの追加の添加剤は硬化剤を含まない。
【0081】
特定の態様では、組成物は少なくとも1011Ω.cmの体積電気抵抗率を有する。体積電気抵抗率は、ASTM D257に準拠して決定され得る。さらなる態様では、組成物は、少なくとも1012Ω.cm、または少なくとも1013Ω.cm、または少なくとも1014Ω.cm、または1011Ω.cmから1015Ω.cmの体積電気抵抗率を有する。
【0082】
いくつかの態様では、組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料は、自由空間法にしたがって75GHzから110GHzの周波数で観測される場合に、透過モードで測定された、少なくとも60%のパーセント吸収電力を有する。他の態様では、組成物のモールド成形試料は、自由空間法にしたがって75GHzから110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも61%、または少なくとも62%、または少なくとも63%、または少なくとも64%、または少なくとも65%、または少なくとも66%、または少なくとも67%、または少なくとも68%、または少なくとも69%、または少なくとも70%、または少なくとも71%、または少なくとも72%、または少なくとも73%、または少なくとも74%、または少なくとも75%、または60~85%、または65~85%、または70~85%、または74~85%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する。
【0083】
特定の態様では、組成物は0.25wt%超から1wt%未満のCNT充填剤を含み、組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料は、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも74%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する。
製造方法
【0084】
本明細書に記載される一つまたはいずれか先の成分は、最初に互いにドライブレンドするか、または先の成分のいずれかの組み合わせとドライブレンドしてもよく、次いで、シングルまたはマルチフィーダから押出機に供給するか、またはシングルまたはマルチフィーダから押出機に別個に供給してもよい。本開示で使用される充填剤はまた、最初にマスターバッチに加工し、次いで、押出機に供給してもよい。成分は、スロートホッパ(throat hopper)、またはいずれかのサイドフィーダ(side feeder)から押出機に供給してもよい。
【0085】
本開示で使用される押出機は、単軸スクリュ、複数軸スクリュ、噛み合型同方向回転または逆方向回転スクリュ、非噛み合い型同方向回転または逆方向回転スクリュ、往復動スクリュ、ピン付きスクリュ、スクリーン付きスクリュ、ピン付きバレル、ロール、ラム(ram)、ヘリカルロータ(helical rotor)、コニーダ(co-kneader)、ディスクパック・プロセッサ(disc-pack processor)、種々の他のタイプの押出装置、または前述の少なくとも一つを含む組み合わせを有してもよい。
【0086】
また成分を一緒に混合し、次いで、溶融ブレンドして熱可塑性組成物を形成させてもよい。成分を溶融ブレンドすることには、せん断力、伸長力、圧縮力、超音波エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー、または前述の力もしくはエネルギーの形態の少なくとも一つを含む組み合わせの使用が関与する。
【0087】
コンパウンディング時の押出機上のバレル温度は、樹脂が半結晶性有機ポリマーであれば約融点以上に、または樹脂が非晶性樹脂であれば約流動点(例えばガラス転移温度)以上の温度に、ポリマーの少なくとも一部が到達するような温度に設定することができる。
【0088】
前述の成分を含む混合物は、必要に応じて複数のブレンディング・ステップおよび形成ステップに通してもよい。例えば、まず熱可塑性組成物を押出成形して、ペレットに形成してもよい。次いで、ペレットをモールド成形機に供給し、そこでいずれかの所望の形状または製造物に成形してもよい。あるいは、単一の溶融ブレンダーから吐出される熱可塑性組成物を、シートまたはストランドに形成し、アニーリング、一軸または二軸延伸などの押出後工程に通してもよい。
【0089】
本工程における溶融物の温度は、いくつかの態様では、成分の過度の熱劣化を避けるために、可能な限り低く維持される場合がある。特定の態様では、溶融温度は約230℃と約350°Cの間に維持されるが、ただし処理装置内での樹脂の滞留時間が比較的短く維持されるという条件で、さらに高い温度を使用することもできる。いくつかの態様では、溶融処理された組成物は、押出機などの処理装置からダイの小さな出口孔を通って出る。得られた溶融樹脂のストランドは、水槽に通すことによって冷却してもよい。冷却されたストランドは、包装およびさらなる取り扱いのためにペレットに切り分けることができる。
【0090】
いくつかの態様では、熱可塑性組成物を形成する方法は:ポリエステルを含む熱可塑性ポリマー成分を0.10wt%超から約1.95wt%のカーボンナノチューブ(CNT)充填剤と組み合わせて混合物を形成することと;混合物をモールド成形して熱可塑性組成物を形成することとを含む。熱可塑性組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料は、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する。さらなる態様では、混合物をモールド成形するステップは、混合物を押出成形、射出成形、回転成形、ブロー成形または熱成形の少なくとも一つを行って熱可塑性組成物を形成することを含む。
製造品
【0091】
特定の態様では、本開示は、熱可塑性組成物を含む成形された、形成された、またはモールド成形された物品に関係する。熱可塑性組成物は、例えば、エネルギー・ストレージ・バッテリ、バッテリ電極、熱交換器用のプレート、個人または商業用電子装置であって、携帯電話、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ノートブック、およびポータブルコンピュータ、および他のそのような機器、医療用途、RFID用途、自動車用途、および同類のものなどが挙げられるがこれらには限定されない電子装置の、物品および構造的構成部品を形成する、射出成形、押出成形、回転成形、ブロー成形、および熱成形などの様々な手段によって、有用な形状の物品にモールド成形することができる。さらなる態様では、物品は押出成形される。さらに別の態様では、物品は射出成形される。特定の態様では、物品は内蔵または外付けのレーダーセンサ用のマイクロ波吸収体である。さらなる態様では、物品はレーダーセンサ、カメラ、または電子制御ユニット用のマイクロ波吸収体である。特定の態様では、物品は、送信アンテナ、受信アンテナ、および送信アンテナと受信アンテナとの間でマイクロ波放射の伝送を可能にする少なくとも二つの開口部を含む。
【0092】
本開示の構成要素の様々な組み合わせ、例えば、同一の独立請求項に従属する従属請求項からの構成要素の組み合わせが、本開示に包含される。
本開示の態様
【0093】
様々な態様では、本開示は、少なくとも以下の態様に関連しており、これらを含む。
【0094】
態様1. ポリエステルを含んでなる熱可塑性ポリマー成分と;
0.01wt%超から約1.95wt%のカーボンナノチューブ(CNT)充填剤と、
を含んでなる、これらからなる、またはこれらから本質的になる、熱可塑性組成物であって、
組成物のモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する組成物。
【0095】
態様2. ポリエステルが、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタラート) (PCT)、ポリエチレンテレフタラートグリコール(PETG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタラートグリコール(PCTG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタル酸(PCTA)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリブチレンナフタラート(PBN)、それらのコポリマー類、またはそれらの組み合わせを含んでなる、態様1に記載の熱可塑性組成物。
【0096】
態様3. 組成物がポリブチレンテレフタラート(PBT)を含んでなる、態様1または2に記載の熱可塑性組成物。
【0097】
態様4. CNT充填剤が、約5~15ナノメートル(nm)の平均直径、少なくとも100平方メートル毎グラム(m/g)の表面積、および10-3オーム.センチメートル(Ω.cm)未満の体積抵抗率を有する、態様1から3のいずれか一つに記載の熱可塑性組成物。
【0098】
態様5. 少なくとも1.0×1011Ω.cmの体積電気抵抗率を有する、態様1から4のいずれか一つに記載の熱可塑性組成物。
【0099】
態様6. 組成物のモールド成形試料が、自由空間法にしたがって75GHzから110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも65%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、態様1から5のいずれか一つに記載の熱可塑性組成物。
【0100】
態様7. 約0.01wt%から約1wt%未満のCNT充填剤を含んでなる、態様1から6のいずれか一つに記載の熱可塑性組成物であって、組成物のモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも75%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、熱可塑性組成物。
【0101】
態様8. 少なくとも一つの追加の添加剤をさらに含んでなる、態様1から7のいずれか一つに記載の熱可塑性組成物。
【0102】
態様9. 少なくとも一つの追加の添加剤が、酸掃去剤、滴下防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、鎖延長剤、着色剤、脱成型剤、流動促進剤、潤滑剤、離型剤、可塑剤、焼き入れ剤、難燃剤、UV反射添加剤、耐衝撃性改良剤、発泡剤、補強剤、またはそれらの組み合わせを含んでなる、態様8に記載の熱可塑性組成物。
【0103】
態様10. 前記熱可塑性組成物を含む物品。
【0104】
態様11. 内蔵または外付けのレーダーセンサ用のマイクロ波吸収体である、態様10に記載の物品。
【0105】
態様12. レーダーセンサ、カメラ、または電子制御ユニット用のマイクロ波吸収体である、態様10または11に記載の物品。
【0106】
態様13. 送信アンテナ、受信アンテナ、および送信アンテナと受信アンテナとの間でマイクロ波放射の伝送を可能にする少なくとも二つの開口部を含んでなる、態様10から12のいずれか一つに記載の物品。
【0107】
態様14. ポリエステルを含んでなる熱可塑性ポリマー成分を、約0.01wt%から約1.95wt%のカーボンナノチューブ(CNT)充填剤と組み合わせて混合物を形成することと;
混合物をモールド成形して熱可塑性組成物を形成することと、
を含んでなる、これらからなる、これらから本質的になる、熱可塑性組成物を形成する方法であって:
熱可塑性組成物のモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、方法。
【0108】
態様15. 混合物をモールド成形することが、混合物を押出成形すること、射出成形すること、回転成形すること、ブロー成形すること、または熱成形することの少なくとも一つを行って熱可塑性組成物を形成することを含んでなる、態様14に記載の方法。
【0109】
態様16. ポリエステルを含んでなる熱可塑性ポリマー成分と;
0.10wt%超から約1.95wt%のカーボンナノチューブ(CNT)充填剤と、
を含んでなる、これらからなる、またはこれらから本質的になる熱可塑性組成物であって、
組成物の6インチ(in)×8in×1/8inのモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、熱可塑性組成物。
【0110】
態様17. ポリエステルが、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタラート) (PCT)、ポリエチレンテレフタラートグリコール(PETG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタラートグリコール(PCTG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタル酸(PCTA)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリブチレンナフタラート(PBN)、それらのコポリマー類、またはそれらの組み合わせを含んでなる、態様16に記載の熱可塑性組成物。
【0111】
態様18. 組成物がポリブチレンテレフタラート(PBT)を含んでなる、態様16または17に記載の熱可塑性組成物。
【0112】
態様19. CNT充填剤が、約5~15ナノメートル(nm)の平均直径、少なくとも100平方メートル毎グラム(m/g)の表面積、および10-3オーム.センチメートル(Ω.cm)未満の体積抵抗率を有する、態様16から18のいずれか一つに記載の熱可塑性組成物。
【0113】
態様20. 少なくとも1.0×1011Ω.cmの体積電気抵抗率を有する、態様16から19のいずれか一つに記載の熱可塑性組成物。
【0114】
態様21. 組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料が、自由空間法にしたがって75GHzから110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、態様16から20のいずれか一つに記載の熱可塑性組成物。
【0115】
態様22. 0.25wt%超から1wt%未満のCNT充填剤を含んでなる、態様16から21のいずれか一つに記載の熱可塑性組成物であって、組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも74%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、熱可塑性組成物。
【0116】
態様23. ポリカルボナート-シロキサンコポリマーをさらに含んでなる、態様16から22のいずれか一つに記載の熱可塑性組成物。
【0117】
態様24. 0.25wt%超から約1.95wt%のCNT充填剤を含んでなる、態様16から21のいずれか一つに記載の熱可塑性組成物であって、組成物のモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも-30dB/cmの減衰定数を有する、熱可塑性組成物。
【0118】
態様25. 少なくとも一つの追加の添加剤をさらに含んでなる、態様16から24のいずれか一つに記載の熱可塑性組成物であって、少なくとも一つの追加の添加剤が、酸掃去剤、滴下防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、脱成型剤、流動促進剤、潤滑剤、離型剤、可塑剤、焼き入れ剤、難燃剤、UV反射添加剤、耐衝撃性改良剤、発泡剤、補強剤、またはそれらの組み合わせを含んでなる、熱可塑性組成物。
【0119】
態様26. 態様16から25のいずれか一つに記載の熱可塑性組成物を含む物品。
【0120】
態様27. 内蔵または外付けのレーダーセンサ用のマイクロ波吸収体である、態様26に記載の物品。
【0121】
態様28. レーダーセンサ、カメラ、または電子制御ユニット用のマイクロ波吸収体である、態様26に記載の物品。
【0122】
態様29. 送信アンテナ、受信アンテナ、および送信アンテナと受信アンテナとの間でマイクロ波放射の伝送を可能にする少なくとも二つの開口部を含んでなる、態様26から28のいずれか一つに記載の物品。
【0123】
態様30. ポリエステルを含んでなる熱可塑性ポリマー成分を、0.10wt%超から約1.95wt%のカーボンナノチューブ(CNT)充填剤と組み合わせて混合物を形成することと;
混合物をモールド成形して熱可塑性組成物を形成することと;
を含んでなる、これらからなる、これらから本質的になる、熱可塑性組成物を形成する方法であって、
熱可塑性組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、方法。
【0124】
態様31. 混合物をモールド成形することが、混合物を押出成形すること、射出成形すること、回転成形すること、ブロー成形すること、または熱成形することの少なくとも一つを行って熱可塑性組成物を形成することを含んでなる、態様30に記載の方法。
【実施例
【0125】
以下の実施例は、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、装置、および/または方法がどのように作られ評価されるかの完全な開示および記載を当業者に提供するために提示されるものであり、純粋に例示的であることが意図され、開示を制限することは意図されないものである。数(例えば、量、温度など)に関して正確性を保証するよう努力がなされているが、幾分かの誤差および偏差を考慮に入れることが望ましい。別途指示されているのでない限り、部は重量部であり、温度は℃であるか、または周囲温度であり、圧力は大気圧であるか、または大気圧に近い。別途指示されているのでない限り、組成を指すパーセンテージはwt%の単位である。
【0126】
反応条件、例えば、成分濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、および他の反応範囲、ならびに記載される工程から得られる製造物の純度および収率を最適化するのに使用できる条件の多数の変形形態および組み合わせが存在する。そのような工程条件を最適化するには、妥当で定型的な実験しか必要でないであろう。
【0127】
本明細書に記載される組成物に使用したPBT-MWCNTマスターバッチを、薄肉のプロファイルおよびパイプの製造に使用するのに好適な中粘度PBTグレードである異なる量の新品の未充填Ultradur(登録商標) B4500(BASF)で希釈した。このグレードは、射出成形用途の工業用機能部分の製造にも好適である。組成物中のマスターバッチの量は、20重量パーセントから5重量パーセントまで変化させ、新品のPBT樹脂の量は、80重量パーセントから95重量パーセントまで変えた。これらのポリマー/マスターバッチ比から、最終配合物中に約3重量%から約0.75重量%のカーボンナノチューブを含有する材料を製造した。実施例組成物および比較組成物を準備し、表1に記載されるとおりの種々の特性を測定した:
【0128】
【表2】


CEx1のPBTはValox 325であった
【0129】
上記のデータのグラフを図3~23に例示する。
【0130】
図3は、複素誘電率の実数部および虚数部の両方が、配合物中のCNT投入量とともに増加することを示している。図4は、これらの配合物において観測された誘電正接(ε”/ε’)すなわちtanδについて同一傾向を示している。図5は、減衰定数が約-35dB/cmから約-160dB/cmに増加したことを示しており、図6は、配合物中のCNT投入量が増加すると、全遮蔽有効度が約12dBから約60dBに増加したことを示している。図7は、透過モードで測定されたパーセント反射電力がCNT投入量とともに増加する一方、透過モードで測定されたパーセント透過電力およびパーセント吸収電力の両方が、CNT投入量が増加するとともに減少することを示している。周波数77GHzの場合にこれらの結果が示すとおり、透過モードで測定されたパーセント反射電力は、0.75wt%のナノチューブでの約19%から、3wt%のナノチューブでの約46%まで増加した。同様に、透過モードで測定されたパーセント透過電力は、0.75wt%のナノチューブでの約4%%から、3wt%のナノチューブの濃度での実質的な測定不能にまで減少した。透過モードで測定されたパーセント吸収電力は、0.75wt%のナノチューブでの約77%から、3wt%のナノチューブでの約54%まで単調減少した。これらの結果は、これらの材料について観測された電気抵抗率の観点から説明され得るが、それは、導電性充填剤の量が増加すると、これらの材料はより導電性が高くなることによって、金属様の誘電性挙動を示すようになり、ポリマー系材料と比較して、マイクロ波放射の吸収、透過が少なく、反射が多くなるからである。
【0131】
図8は、透過モードと金属裏打ちされた反射モードの両方で測定された77GHzでのパーセント吸収電力が、調べられたすべてのCNT投入量について同様であることを示している。この結果は、これらの組成物において観測された低いマイクロ波透過の観点から説明できる可能性があり、これらの組成物は、試験下の材料を、試料と受信アンテナとの間に位置する金属プレートとしてほぼ挙動させる可能性があるものである。図9および10は、表面電気抵抗率と体積電気抵抗率が、配合物に添加されたCNT充填剤の量に伴って、それぞれどのように低下したかを示している。また、比較的少量のCNT導電性充填剤によって、これらの組成物が77GHzのマイクロ波放射に対して実質的に不透明(非透過)になる一方で、基本のポリマーの電気抵抗率はわずかな影響しか受けないことにも言及する価値がある。図11は、本開示の組成物の表面電気抵抗率と体積電気抵抗率を、CNT投入量の観点から背中合わせに比較したものを示している。両電気抵抗率について観測された同様の結果は、これらの材料を準備するコンパウンディングのステップにおいて、ポリマーマトリクス中の導電性フィブリルの比較的均一な分布が得られたことを示唆している。図12および13は、CNT投入量が増加してこれらの組成物がより導電性(より低い体積抵抗率)になるにつれて、透過モードでのパーセント反射電力が増加し、透過モードでのパーセント吸収電力が減少することを示している。
【0132】
図14および15は、Wバンドにおける全周波数範囲(75~110GHz)についての複素誘電率の実数部および虚数部をそれぞれ示している。両グラフが示すとおり、本開示の組成物の複素誘電率は、調べられた周波数範囲において周波数に実質的に依存しない。図16および17は、調べられた周波数の全範囲(75~110GHz)について減衰定数および全遮蔽有効度をそれぞれ示している。図18および19は、調べられた周波数の全範囲(75~110GHz)について透過モードおよび金属裏打ちされた反射モードでのパーセント吸収電力をそれぞれ示している。図20、21、22、および23は、本開示に記載のEx1、Ex2、CEx2、およびCEx3のWバンド(75~110GHz)の全周波数について、透過モードで測定されたパーセント吸収、反射、および透過電力をそれぞれ示している。
【0133】
充填剤を含まない純粋なVALOX/PBTの3.132mm厚の板状体の67GHzで観測されたε’とε”の測定結果から、67GHzでの純粋な樹脂の計算されたパーセント透過電力、パーセント反射電力、およびパーセント吸収電力は、それぞれ72%、27.5%、および0.4%であった。これらの結果から、本開示の実施例組成物の透過モードで測定された最高のパーセント吸収電力は、0.75wt%以下のカーボンナノチューブで生じることになると推測することができる。最も好適な組成物は、60%以上、さらに好適には65%以上の77GHzマイクロ波放射を吸収する。
【0134】
表2Aおよび2Bに示すとおり、追加の比較組成物および実施例組成物を準備し試験した:
【0135】
【表3-1】


【0136】
【表3-2】


【0137】
【表4-1】


【0138】
【表4-2】


【0139】
表2Aおよび表2Bの組成物を試験して、77GHzで最高のマイクロ波吸収を生じる可能性のあるCNT含有量を評価した。表1の組成物は、77GHzでの最高のマイクロ波吸収が0.75wt%以下のCNTで生じ得ることを実証している。表2Aは、0.5wt%のCNTのみを含有する組成物Ex2.4が、78.46%の77GHzでのMW吸収を有していたことを示している。
【0140】
表2の組成物の衝撃特性のグラフを図24および25に例示する。23℃では、130J/mのNIIを有していた比較組成物C2.3とは対照的に、組成物Ex2.3~Ex2.7はすべて、少なくとも146J/mのNIIを有していた。したがって、本開示の態様による組成物は、130J/mより大きい、または少なくとも135J/mより大きい、または少なくとも140J/mより大きい、または少なくとも145J/mより大きい、または130J/m超から180J/m、または135J/mから180J/m、または140J/mから180J/m、または145J/mから180J/mの、ASTM D256およびASTM D4812にしたがって試験された23℃でのNIIを有する。
【0141】
同様に、本開示の態様による組成物Ex2.3~Ex2.7は、比較組成物C2.3と比較して、改善された低温(-30℃)衝撃特性を有していた。よって、本開示の態様による組成物は、少なくとも90J/m、または少なくとも92J/m、または少なくとも95J/m、または少なくとも100J/m、または少なくとも102J/m、または90J/mから150J/m、または92J/mから150J/m、または95J/mから150J/m、または100J/mから150J/m、または102J/mから150J/mの、ASTM D256およびASTM D4812にしたがって試験された-30℃でのNIIを有し得る。
【0142】
77GHzでの表2の組成物の誘電特性のグラフを図26~28に示す。図26は、組成物中のカーボンナノチューブ濃度が0.05wt%から3wt%に増加すると、複素誘電率の実数部および虚数部がともに増加することを示した。組成物中のカーボンナノチューブ濃度が増加すると、複素誘電率の虚数部が複素誘電率の実数部よりも急速に増加するので、組成物中のカーボンナノチューブ濃度が増加すると、誘電正接(Df)、すなわち、虚数誘電率と実数誘電率の比(e”/e’)も増加した(図27)。C2.1、C2.2、Ex2.3~Ex2.7、およびC2.8組成物からモールド成形した6in×8in×1/8inの板状体の平均厚は、それぞれ2.983mm、3.10mm、3.092mm、3.086mm、3.054mm、3.051mm、3.126mm、および3.065mmであった。
【0143】
同様に、組成物中のカーボンナノチューブの濃度が0.05wt%から3%まで増加すると、透過モードで測定されたパーセント反射電力は約9%から約42%まで増加し、透過モードで測定されたパーセント透過電力は約64%から実質的に透過なしまで連続的に減少した。透過モードで測定されたパーセント吸収電力は、驚くべき挙動を示した:すなわち、0.05wt%のCNTで約27.5%から、0.5wt%のCNTで約78.5%まで連続的に増加し、その後、配合物中の3wt%のCNTで約58%まで連続的に減少した。これらの結果は、組成物中のカーボンナノチューブの濃度が約0.5wt%の場合に、77GHzでの最高のマイクロ波吸収が生じることを示唆している(図28)。
【0144】
Wバンド(75~110GHz)における周波数での表2の組成物の誘電特性のグラフを図29~32に示す。図29は、組成物中のカーボンナノチューブ濃度が0.05wt%から3wt%まで増加すると、調べられたすべての周波数(75~110GHz)について、複素誘電率の実数部が増加することを示した。Wバンドで測定した場合には、すべての濃度の場合で複素誘電率の虚数部について同様の挙動が観測された(図30)。図31は、調べられたWバンドのすべての周波数について、組成物中のカーボンナノチューブ濃度が0.05wt%から3wt%まで増加すると、減衰定数(dB/cm単位)がさらに負(さらに高い減衰)になることを示した。透過モードで測定されたパーセント吸収電力は、ある投入量まではカーボンナノチューブの濃度とともに増加し、その後、調べられたWバンド周波数範囲の少なくとも一部の範囲で減少した(図32)。
【0145】
上記は、例示的なものであること、そして制限するものではないことが意図される。例えば、上記の実施例(またはそれらの一つもしくは複数の態様)は、互いに組み合わせて使用してもよい。他の態様は、例えば、当業者が上記を検討した時点で使用することができる。要約書は、米国特許法施行規則第1.72条(b)項に従って、読者が技術開示の性質を速やかに把握できるようにするために提供されるものである。それは、特許請求の範囲または意味を解釈または制限するためには使用されないとする理解と併せて提出される。また、上の、発明を実施するための形態において、様々な特徴が、本開示を能率的にするためにグループ化される場合がある。そうであっても、特許請求されていない開示された特徴がいずれの請求項にとっても本質的であるということを意図するわけではないと解釈されるのが望ましい。むしろ、発明の主題が、特定の開示された態様のあらゆる特徴よりも少ない特徴のなかにある場合がある。よって、添付の特許請求の範囲は、実施例または態様として、発明を実施するための形態に組み込まれ、各請求項は別個の態様としてそれ自体独立しており、そのような態様は、様々な組み合わせまたは並び替えで互いに組み合わせることができることが企図される。本開示の範囲は、そのような請求項が権利を有する均等物の最大限の範囲と共に、添付の特許請求の範囲を参照しつつ定められるのが望ましい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図31
図32
【手続補正書】
【提出日】2024-02-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを含んでなる熱可塑性ポリマー成分と;
0.10wt%超から約1.95wt%のカーボンナノチューブ(CNT)充填剤と、
を含んでなる熱可塑性組成物であって、
前記組成物の6インチ(in)×8in×1/8inのモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルが、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタラート) (PCT)、ポリエチレンテレフタラートグリコール(PETG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタラートグリコール(PCTG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタル酸(PCTA)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリブチレンナフタラート(PBN)、それらのコポリマー、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項3】
前記組成物がポリブチレンテレフタラート(PBT)を含んでなる、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項4】
前記CNT充填剤が、約5~15ナノメートル(nm)の平均直径、少なくとも100平方メートル毎グラム(m/g)の表面積、および10-3オーム.センチメートル(Ω.cm)未満の体積抵抗率を有する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項5】
少なくとも1.0×1011Ω.cmの体積電気抵抗率を有する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項6】
前記組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料が、自由空間法にしたがって75GHzから110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項7】
0.25wt%超から1wt%未満のCNT充填剤を含んでなる、請求項1に記載の熱可塑性組成物であって、前記組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも74%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、熱可塑性組成物。
【請求項8】
ポリカルボナート-シロキサンコポリマーをさらに含んでなる、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項9】
0.25wt%超から約1.95wt%のCNT充填剤を含んでなる、請求項1に記載の熱可塑性組成物であって、前記組成物のモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも-30dB/cmの減衰定数を有する、熱可塑性組成物。
【請求項10】
少なくとも一つの追加の添加剤をさらに含んでなる、請求項1に記載の熱可塑性組成物であって、前記少なくとも一つの追加の添加剤が、酸掃去剤、滴下防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、脱成型剤、流動促進剤、潤滑剤、離型剤、可塑剤、焼き入れ剤、難燃剤、UV反射添加剤、耐衝撃性改良剤、発泡剤、補強剤、またはそれらの組み合わせを含んでなる、熱可塑性組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物を含む物品。
【請求項12】
内蔵または外付けのレーダーセンサ用のマイクロ波吸収体である、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
レーダーセンサ、カメラ、または電子制御ユニット用のマイクロ波吸収体である、請求項11に記載の物品。
【請求項14】
送信アンテナ、受信アンテナ、および前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間でマイクロ波放射の伝送を可能にする少なくとも二つの開口部を含んでなる、請求項11に記載の物品。
【請求項15】
ポリエステルを含んでなる熱可塑性ポリマー成分を、0.10wt%超から約1.95wt%のカーボンナノチューブ(CNT)充填剤と組み合わせて混合物を形成することと;
前記混合物をモールド成形して熱可塑性組成物を形成することと;
を含んでなる、熱可塑性組成物を形成する方法であって、
前記熱可塑性組成物の6in×8in×1/8inのモールド成形試料が、自由空間法にしたがって77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも60%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を有する、方法。
【国際調査報告】