(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】一液型湿気硬化性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 175/08 20060101AFI20240705BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240705BHJP
B32B 37/12 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C09J175/08
B32B27/00 D
B32B37/12
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024500129
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022069663
(87)【国際公開番号】W WO2023285561
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500286643
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】アクラヒ,シャヒーン
(72)【発明者】
【氏名】ベルラーン-フーフト,ヘンドリカ ペトロネッラ マリア
【テーマコード(参考)】
4F100
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK51
4F100AK51B
4F100AK54B
4F100AL06B
4F100AP00
4F100AP00A
4F100AP00C
4F100AR00A
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB02
4F100CB02B
4F100JA07B
4F100JB12B
4F100JK06
4F100JL08B
4F100YY00B
4J040EF051
4J040EF131
4J040EF281
4J040EF321
4J040GA20
4J040JA12
4J040JB04
4J040KA16
4J040KA25
4J040MA08
4J040MB04
4J040PA33
(57)【要約】
本発明は、(a)2.00超~2.05未満の範囲内の平均公称イソシアネート官能価を有するポリイソシアネート混合物であり、(a1)メチルジフェニルジイソシアネートを含むジイソシアネート、及び(a2)3個以上のイソシアネート官能基を有するウレトンイミン変性メチルジフェニルジイソシアネートを含有するポリイソシアネート混合物と、(b)ポリオール混合物であり、(b1)2個の第一級ヒドロキシル基を有する直鎖ブチレンオキシド系ジオール、(b2)3個の第二級ヒドロキシル基を有するポリエーテルトリオール、及び(b3)アミン開始型ポリエーテルポリオール、を含有するポリオール混合物と、を反応させて得ることのできるイソシアネート官能性プレポリマーを80~100重量%含む一液型湿気硬化性接着剤組成物であって、(a)のイソシアネート基と(b)のヒドロキシル基の当量比が3.5~7.0の範囲内にあり、前記接着剤組成物中の遊離イソシアネート基の含有量が、ASTM D2572-19規格に準拠し測定して、14~17重量%の範囲内にあり、ポリイソシアネート混合物(a)は、ウレトミン変性メチルジフェニルジイソシアネート(a2)よりもジイソシアネート(a1)を過剰に含む、一液型湿気硬化性接着剤組成物に関する。本発明はさらに、このような接着剤組成物を使用して第1の材料片を第2の材料片に接合する方法、並びにこのような接着剤組成物を用いて接合された第1の材料片及び第2の材料片を含む物体、特に構造用木質製品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)平均公称イソシアネート官能価が2.00超~2.05未満の範囲内にあるポリイソシアネート混合物であり、
(a1)メチルジフェニルジイソシアネートを含むジイソシアネート、及び
(a2)3個以上のイソシアネート官能基を有するウレトンイミン変性メチルジフェニルジイソシアネート、
を含有するポリイソシアネート混合物と、
(b)ポリオール混合物であり、
(b1)2個の第一級ヒドロキシル基を有する直鎖ブチレンオキシド系ジオール、
(b2)3個の第二級ヒドロキシル基を有するポリエーテルトリオール、及び
(b3)アミン開始型ポリエーテルポリオール、
を含有するポリオール混合物と、
を反応させて得ることのできるイソシアネート官能性プレポリマーを80~100重量%含む一液型湿気硬化性接着剤組成物であって、
(a)のイソシアネート基と(b)のヒドロキシル基の当量比は、3.5~7.0の範囲内にあり、
前記接着剤組成物中の遊離イソシアネート基の含有量は、ASTM D2572-19規格に準拠し測定して、14~17重量%の範囲内にあり、
ポリイソシアネート混合物(a)は、ウレトミン変性メチルジフェニルジイソシアネート(a2)よりもジイソシアネート(a1)を過剰に含む、一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項2】
ブチレンオキシド系ジオール(b1)の数平均分子量が、ISO 16014-1規格に準拠し、ポリスチレン標準を用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより測定して、500~1,500g/molの範囲内にある、請求項1に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項3】
ポリエーテルトリオール(b2)の数平均分子量が、ISO 16014-1規格に準拠し、ポリスチレン標準を用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより測定して、500~1,500g/molの範囲内にある、請求項1又は2に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリオール混合物(b)が、(b1)、(b2)及び(b3)以外には、ポリオールを実質的に含まない、請求項1から3のいずれか一項に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項5】
(a)のイソシアネート基と(b)のヒドロキシル基の当量比が、4.0~6.5の範囲内、好ましくは4.5~6.0の範囲内にある、請求項1から4のいずれか一項に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項6】
前記接着剤組成物中の遊離イソシアネート基の含有量が、ASTM D2572-19規格に準拠し測定して、15.0~16.5重量%の範囲内にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項7】
前記ジイソシアネート(a1)がメチルジフェニルジイソシアネートである、請求項1から6のいずれか一項に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項8】
ポリイソシアネート混合物(a)が、メチルジフェニルジイソシアネート及びウレトンイミン変性メチルジフェニルジイソシアネートから本質的になる、請求項7に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項9】
前記ウレトンイミン変性ジイソシアネート(a2)が、3~10個の範囲内のイソシアネート官能基、好ましくは3~6個の範囲内のイソシアネート官能基、さらにより好ましくは3個又は4個のイソシアネート官能基を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項10】
前記プレポリマーを85~99.8重量%含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項11】
硬化触媒、好ましくは2,2’-ジモルホリンジエチルエーテルをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項12】
1又はそれ以上の添加剤をさらに含み、好ましくは消泡剤及び/又は増粘剤を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項13】
第1の材料片を第2の材料片に接合する方法であって、前記第1の材料の表面を前記第2の材料の表面と接触させる工程を含み、前記接触工程の前に前記接触表面の少なくとも一方に請求項1から12のいずれか一項に記載の接着剤組成物が塗布される、方法。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の接着剤組成物を用いて接合された第1の材料片及び第2の材料片を含む物体。
【請求項15】
前記材料が木材であり、前記物体が構造用木質製品である、請求項14に記載の物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート官能性プレポリマーを含む一液型湿気硬化性接着剤組成物、このような接着剤組成物を使用して第1の材料片を第2の材料片に接合する方法、並びにこのような接着剤組成物を用いて接合された第1の材料片及び第2の材料片を含む物体、特に構造用木質製品に関する。
【背景技術】
【0002】
接着集成材(glued laminated timber)は、集成材梁(laminated timber beam)、接着積層梁(glue-laminated beam)又はグルーラム(glulam)とも称され、寸法決めした木材の層同士を複数枚貼り合わせて構成した構造用木材製品である。比較的小さな木片を複数枚積層することにより、例えば、湾曲形状やアーチ形状であることの多い、棟木、ガレージの鴨居、床梁、垂直支柱又は水平梁として使用するための、大きくて丈夫な単一の構造用部材を比較的小さな材木から製造することができる。接着集成梁は、建築構造において広範囲の用途で使用されている。もう一つの接着集成材製品は、直交集成板(CLT)であり、これは、無垢挽板(solid-sawn lumber)の層を貼り合わせて製造した木質パネル製品である。ボードの各層は、隣接する層に直交するように配向され、各ボードの広い面に、外層が同じ配向を有するように通常は対称的に接着される。普通の材木は異方性材料であり、このことは力の印加方向によって機械的特性が変化することを意味する。木材の層を直角に交差するように接着することにより、パネルは、両方向においてより良好な構造的剛性を達成することができる。CLTは、すべてのラミナが一律に配向された製品である接着集成材とは区別される。
【0003】
建築材料、例えば、接着集成材製品及び他の(エンジニアードウッド製品としても公知の)構造化木質製品に使用される接着剤組成物は、屋内及び屋外条件下での接着強度に関する厳格な要件を満たしている必要がある。湿気や熱応力に曝露されることにより、木材には膨潤及び収縮を原因とする張力が生じるが、そのような条件下においても優れた接合強度を付与できる接着剤が必要とされている。
【0004】
一液型湿気硬化性ポリウレタン接着剤は、構造用木質製品、例えば接着集成材製品を形成するための木片を接合することで公知である。このような接着剤組成物は、湿分と反応すると硬化するイソシアネート官能性プレポリマーを含んでいる。プレポリマー中のイソシアネート基は水と反応してアミン基を形成し、このアミン基はさらなるイソシアネート基と反応して尿素結合を形成する。構造用集成材製品の製造用に使用される場合、接着剤組成物は、木片、例えば木材(timber)片又は材木(lumber)片の表面に通常塗布され、その後、異なる木片同士を圧締して接着剤組成物を硬化させ、構造用木質製品を形成する。
【0005】
そのようなポリウレタン接着剤は、例えば、国際公開第99/19141号、米国特許出願公開第2005/032972号明細書及び国際公開第2021/022470号に記載されている。
【0006】
国際公開第99/19141号には、リグノセルロース系構造用積層板の製造(合板製造)に使用するためのポリイソシアネート接着剤が記載されている。この接着剤には、平均公称官能価が2~4かつ平均当量が500~3000のポリオール混合物を化学量論的過剰のメチルジフェニルジイソシアネートと反応させることによって得られる、イソシアネート含有量が5~25%のイソシアネート含有プレポリマーが含まれている。特に好ましいポリオール混合物として挙示されるのは、別種のポリオールを5%以下含有するポリプロピレンーポリエチレンーオキシドポリオールである。
【0007】
米国特許出願公開第2005/032972号明細書には、ポリイソシアネートプレポリマー及び1種以上のアミノエーテルポリオールを含有し、アミノポリエーテルポリオール中のアミノ窒素に対するエーテル基のモル比が7~30である一液型速硬化性ポリウレタン接着剤が記載されている。ポリウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとイソシアネート反応性官能基を有する化合物との反応によって生成される。
【0008】
国際公開第2021/022470号には、防水コーティング用途のための一液型ポリウレタンプレポリマー組成物が記載されている。この組成物には、1種以上のポリイソシアネートと、ポリオールブレンドであって、重量平均分子量が3,000~9,000g/molの二官能性ポリエーテルポリオール、及び10~28重量%のエチレンオキシドで末端封止され、重量平均分子量が5,000~8,000g/molの三官能性ポリエーテルポリオールを含有するポリオールブレンドと、の反応生成物が含まれる。
【0009】
最長堆積時間(AT)と最短圧締時間(PT)との間のバランスは、一液型湿気硬化性ポリウレタン接着剤組成物にとって非常に重要である。最長堆積時間とは、材料片に接着剤組成物を塗布してから圧締するまでの堆積可能時間である。塗布された接着剤組成物は、材料片同士を圧締する時にはまだ硬化可能である必要がある。最短圧締時間とは、構造用製品のさらなる加工を可能にするために、圧締した材料片に十分な接合を付与するのに要する圧締の際の時間である。AT対PTの比は、1:1~1:2.5であることが多くの場合許容される。AT/PT比は、1.1に近いのが理想的であり、好ましくは1:1~1:2、より好ましくは1:1~1:2である。AT/PT比が非常に良好な接着剤組成物は、機械的特性、例えば湿潤接着強度及び乾燥接着強度が、AT/PT比があまり好ましくない製品よりも劣るのが通例である。したがって、機械的特性、例えば長手方向の引張強度を改善するために、一液型湿気硬化性ポリウレタン接着剤組成物に繊維が添加される場合が多い。
【0010】
繊維を用いずとも良好な機械的特性と好ましいAT/PT比とを兼ね備えた一液型湿気硬化性ポリウレタン接着剤組成物が当分野では必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第99/19141号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/032972号明細書
【特許文献3】国際公開第2021/022470号
【発明の概要】
【0012】
メチルジフェニルジイソシアネート及びウレトンイミン変性メチルジフェニルジイソシアネートを含む過剰のポリイソシアネートを特定のポリオール混合物と反応させることによってプレポリマーを調製し、かつ接着剤組成物中の遊離イソシアネート基の含有量が14~17重量%の範囲内にある場合、イソシアネート官能性プレポリマーを含む一液型湿気硬化性接着剤組成物は、良好な接着性を付与し、好ましいAT/PT比を有することが今や見出された。
【0013】
したがって、本発明は、第1の態様において、
(a)平均公称イソシアネート官能価が2.00超~2.05未満の範囲内のポリイソシアネート混合物であり、
(a1)メチルジフェニルジイソシアネートを含有するジイソシアネート、及び
(a2)3個以上のイソシアネート官能基を有するウレトンイミン変性メチルジフェニルジイソシアネート
を含有するポリイソシアネート混合物と、
(b)ポリオール混合物であり、
(b1)2個の第一級ヒドロキシル基を有する直鎖ブチレンオキシド系ジオール、
(b2)3個の第二級ヒドロキシル基を有するポリエーテルトリオール、及び
(b3)アミン開始型ポリエーテルポリオール、
を含有するポリオール混合物と、
を反応させて得られるイソシアネート官能性プレポリマーを含む一液型湿気硬化性ポリウレタン接着剤組成物であって、
(a)のイソシアネート基と(b)のヒドロキシル基の当量比は3.5~7.0の範囲内にあり、
前記接着剤組成物中の遊離イソシアネート基の含有量は14~17重量%の範囲内にある、一液型湿気硬化性ポリウレタン接着剤組成物を提供する。
【0014】
第1の態様による一液型湿気硬化性ポリウレタン接着剤組成物は、その優れた接着特性及びその好ましいAT/PT比のために、構造用木質製品を形成するために、材料片、特に木材片又は材木片などの木片を接合するのに特に適している。
【0015】
したがって、本発明は、第2の態様では、第1の材料片を第2の材料片に接合するための方法であって、前記第1の材料の表面を前記第2の材料の表面と接触させる工程を含み、前記接触工程前に、前記接触表面の少なくとも一方に本発明の第1の態様による接着剤組成物が塗布される、方法を提供する。
【0016】
本発明は、最終的な態様では、本発明の第2の態様による接着剤組成物を用いて接合された第1の材料片及び第2の材料片を含む物体、特に構造用木質製品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による接着剤組成物は、一液型湿気硬化性組成物である。この組成物は、イソシアネート官能性プレポリマーを好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、さらにより好ましくは90重量%以上の量含む。接着剤組成物は、イソシアネート官能性プレポリマーを100重量%以下、好ましくは99.8重量%以下の量含んでもよい。
【0018】
イソシアネート官能性プレポリマーは、
(a)2.00超~2.05未満の範囲内の平均公称イソシアネート官能価を有するポリイソシアネート混合物であって、
(a1)メチルジフェニルジイソシアネートを含むジイソシアネート、及び
(a2)3個以上のイソシアネート官能基を含むウレトンイミン変性メチルジフェニルジイソシアネート
を含有するポリイソシアネート混合物と、
(b)ポリオール混合物であって、
(b1)2個の第一級ヒドロキシル基を有する直鎖ブチレンオキシド系ジオール、
(b2)3個の第二級ヒドロキシル基を有するポリエーテルトリオール、及び
(b3)アミン開始型ポリオール
を含有するポリオール混合物と、
を反応させて得ることができ、
(a)のイソシアネート基と(b)のヒドロキシル基の当量比は3.5~7.0の範囲内にある。
【0019】
ポリイソシアネート混合物(a)は、メチルジフェニルジイソシアネートを含むジイソシアネート(a1)と、3個以上のイソシアネート官能基を含むウレトミン変性メチルジフェニルジイソシアネート(a2)とを含む。ポリイソシアネート混合物(a)は、ウレトミン変性メチルジフェニルジイソシアネート(a2)よりもジイソシアネート(a1)を過剰に含む。ポリイソシアネート混合物(a)の平均公称イソシアネート官能価は、2.00超~2.05未満の範囲内、好ましくは2.00超~2.04の範囲内、より好ましくは2.00超~2.03未満の範囲内にある。一般的に、ポリイソシアネート混合物(a)の平均公称イソシアネート官能価は、2.001超、好ましくは2.002超、より好ましくは2.003超、さらに好ましくは2.004超、最も好ましくは2.005超である。本明細書における平均公称イソシアネート官能価への言及は、1分子当たりのイソシアネート基の数平均を指す。
【0020】
ジイソシアネート(a1)は、メチルジフェニルジイソシアネート(MDI)を含む。メチルジフェニルジイソシアネートは、4,4’-メチルジフェニルジイソシアネート、2,4’-メチルジフェニルジイソシアネート、2,2’-メチルジフェニルジイソシアネート、又はこれらの2種以上の混合物であってもよい。好ましくは、ジイソシアネート(a1)は、メチルジフェニルジイソシアネートからなり、より好ましくは、4,4’-メチルジフェニルジイソシアネートからなり、若しくは、4,4’-メチルジフェニルジイソシアネートと2,4’-メチルジフェニルジイソシアネートとの混合物からなり、及び/又は、2,2’-メチルジフェニルジイソシアネートからなる。好ましくは、ポリイソシアネート混合物(a)のうちの4,4’-メチルジフェニルジイソシアネート含有量は、50~100重量%の範囲内にある。このような混合物は、例えば、スプラセック 2004、スプラセック 6004(例えば、ハンツマン・コーポレーション社製)、Lupranate MX 119/1(例えば、BASF社製)、Cosmonate JGー50K、Cosmonate PI(例えば、錦湖三井化学株式会社社製)、又はOngronat CO4050(例えば、万華化学社製)として市販されている。
【0021】
本明細書の目的のために、メチルジフェニルジイソシアネートという用語は、メチルジフェニルジイソシアネートそれ自体を指し、ポリメリックメチルジフェニルジイソシアネート、オリゴメリックメチルジフェニルジイソシアネート又は変性メチルジフェニルジイソシアネート、例えばカルボジイミド変性メチルジフェニルジイソシアネート、ウレトンイミン変性メチルジフェニルジイソシアネート若しくはイソシアヌレート変性メチルジフェニルジイソシアネートを含まない。
【0022】
ウレトンイミン変性メチルジフェニルジイソシアネート(a2)は、3個以上のイソシアネート官能基、好ましくは3~10個の範囲内のイソシアネート官能基、より好ましくは3~6個の範囲内のイソシアネート官能基、さらにより好ましくは3個又は4個のイソシアネート官能基を含む。
【0023】
ポリイソシアネート混合物(a)は、メチルジフェニルジイソシアネート又はウレトンイミン変性メチルジフェニルジイソシアネート以外にも、ポリイソシアネートを、好ましくはポリイソシアネート(a)の総重量の25重量%以下、より好ましくは10重量%以下の量含んでもよい。特に好ましい実施形態では、ポリイソシアネート混合物(a)は、メチルジフェニルジイソシアネート及びウレトンイミン変性メチルジフェニルジイソシアネートからなり、それ以外の他のポリイソシアネートを含まない。
【0024】
ポリオール混合物(b)は、第一級ヒドロキシル基を2個有する直鎖ブチレンオキシド系ジオール(b1)、第二級ヒドロキシル基を3個有するポリエーテルトリオール(b2)及びアミン開始型ポリオール(b3)を含む。
【0025】
ブチレンオキシド系ジオール(b1)は、直鎖状であり、第一級ヒドロキシル基を2個有する。前記2個の第一級ヒドロキシル基は末端ヒドロキシル基である。そのようなジオールは、テトラヒドロフランとしても公知のブチレンオキシドを重合することによって得ることができ、ポリ(テトラヒドロフラン)、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)又はポリ(1,4-ブタンジオール)としても公知である。ジオール(b1)は、好ましくは500~2,500g/molの範囲内、より好ましくは500~1,500g/molの範囲内の数平均分子量を有する。このようなジオール(b1)は、例えば、PolyTHF 650、PolyTHF 1000、PolyTHF 1400(例えば、BASF社製)として市販されている。
【0026】
ポリエーテルトリオール(b2)は、第二級ヒドロキシル基を3個有する。ポリエーテルトリオール(b2)は、好ましくはポリエチレンエーテル、ポリプロピレンエーテル、ポリブチレンエーテル又はそれらのハイブリッドであり、より好ましくはポリエチレンエーテル、ポリプロピレンエーテル又はそれらのハイブリッドである。ポリエーテルトリオール(b2)は、好ましくは500~2,500g/molの範囲内、より好ましくは500~1,500g/molの範囲内の数平均分子量を有する。特に適切なポリエーテルトリオール(b2)の例は、数平均分子量が1,000g/molのポリプロピレンエーテルトリオールであるボラノール CP1050(ダウ社から市販されている)である。
【0027】
アミン開始型ポリエーテルポリオール(b3)は、アミン、好ましくは脂肪族アミンを開始剤分子として使用することによって調製されるポリオールである。適切なアミン開始剤分子として、エチレンジアミンヘキサメチレンジアミン、メチルアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、Nーメチルジエタノールアミン、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン又はそれらの混合物が挙示される。アミン開始剤は、好ましくは炭素原子を1~18個、より好ましくは炭素原子を1~6個含有する。アミン開始型ポリエーテルポリオール(b3)は、ポリエーテル、好ましくはポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)又はそれらのハイブリッドである。アミン開始型ポリエーテルポリオール(b3)は、好ましくはヒドロキシル基を2~6個、より好ましくはヒドロキシル基を2~4個、さらにより好ましくはヒドロキシル基を3個又は4個含有する。アミン開始型ポリエーテルポリオール(b3)の数平均分子量は、好ましくは1,000~1万g/molの範囲内、より好ましくは1,000~6,000g/molの範囲内、さらにより好ましくは1,500~5,000g/molの範囲内にある。好ましくは、ヒドロキシル基の少なくとも一部は第一級ヒドロキシル基である。第一級ヒドロキシル基は、ポリエーテル鎖をエチレンオキシドで末端封止することによって得ることができる。このようなアミン開始型ポリエーテルポリオールは市販されており、例えば、ルプラノール 1002/1(例えば、BASF社製)である。
【0028】
一般的には、ポリオール混合物(b)中のブチレンオキシド系ジオール(b1)の量は、ブチレンオキシド系ジオール(b1)由来のヒドロキシル基がポリオール混合物(b)中のヒドロキシル基の45~85%の範囲内、好ましくは50~80%の範囲内、より好ましくは55~75%の範囲内、最も好ましくは60~70%の範囲内にあるような量である。ポリオール混合物(b)中のブチレンオキシド系ジオール(b1)由来のヒドロキシル基の含有量が55~75%の範囲内にある場合、含有量がより低い場合よりもAT/PT比が改善されることが見出された。
【0029】
一般的には、ポリオール混合物(b)中のポリエーテルトリオール(b2)の量は、ポリエーテルトリオール(b2)由来のヒドロキシル基がポリオール混合物(b)中のヒドロキシル基の20~70%の範囲内、好ましくは30~60%の範囲内、より好ましくは35~55%の範囲内にあるような量である。
【0030】
ポリオール混合物(b)は、ブチレンオキシド系ジオール(b1)及びポリエーテルトリオール(b2)以外にも、ポリオールを、好ましくはポリオール混合物(b)の50重量%未満、より好ましくは30重量%未満、さらにより好ましくは10重量%未満の量含んでもよい。特に好ましい実施形態では、ポリオール混合物(b)は、(b1)及び(b2)以外のポリオールを実質的に含まない。本明細書における「(b1)及び(b2)以外のポリオールを実質的に含まない」という言い回しは、ポリオール混合物が(b1)及び(b2)以外のポリオールを1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下含み、さらにより好ましくは、ポリオール混合物が、(b1)及び(b2)以外には、ポリオールを含まないことを指す。
【0031】
好ましくは、ポリオール混合物(b)中のアミン開始型ポリエーテルポリオール(b3)の量は、アミン開始型ポリエーテルポリオール(b3)由来のヒドロキシル基の個数がポリオール混合物(b)中のヒドロキシル基の総数の50%以下、好ましくは40%以下、さらにより好ましくは20%以下、さらにいっそう好ましくは15%以下であるような量である。ポリオール混合物(b)中のブチレンオキシド系ジオール(b1)の量は、好ましくは、ブチレンオキシド系ジオール(b1)由来のヒドロキシル基の個数がポリオール混合物(b)中のヒドロキシル基の総数の40%以上であるような量である。
【0032】
イソシアネート官能性プレポリマーは、過剰のポリイソシアネートをポリオールと反応させることによって得ることができる。ポリイソシアネート混合物(a)中のイソシアネート基とポリオール混合物(b)中のヒドロキシル基の当量比は、3.5~7.0の範囲内、好ましくは4.0~6.5の範囲内、より好ましくは4.5~6.0の範囲内にある。ポリイソシアネートの量をさらに過剰にすると、得られるプレポリマーの分子量が小さくなり、このことが接合強度及びAT/PT比に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0033】
イソシアネート官能性プレポリマーの重量平均分子量は、好ましくは1,500g/mol以上、より好ましくは2,000g/mol以上である。2,000~5,000g/molの範囲内にある重量平均分子量が特に好ましい。
【0034】
ポリイソシアネート及びポリオールからイソシアネート官能性プレポリマーを調製するための反応条件は、当分野で周知である。いずれの適切な反応条件を使用してもよい。
【0035】
本明細書における数平均分子量又は重量平均分子量への言及は、ポリスチレン標準を使用したサイズ排除クロマトグラフィーにより測定される数平均分子量又は重量平均分子量を指す。適切な測定方法は、ISO 16014-1規格である。
【0036】
接着剤組成物は、イソシアネート官能性プレポリマー以外の成分、例えば有機溶媒、反応性希釈剤、硬化触媒、顔料、充填剤及び1又はそれ以上の添加剤、例えば消泡剤及び増粘剤等を含み得る。
【0037】
接着剤組成物は、有機溶媒を、好ましくは接着剤組成物の総重量の10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらにより好ましくは2重量%以下の量含み得る。有機溶媒が存在する場合、有機溶媒は、好ましくは、極性有機溶媒、例えばケトン、エステル又はエーテル等である。
【0038】
接着剤組成物は、湿気硬化反応物を硬化するための硬化触媒を、一般的には0~0.4重量%の範囲内の量含み得る。適切な硬化触媒は当分野で公知である。第三級アミン、有機金属化合物及び強塩基は、硬化触媒として好適であることが公知である。特に好ましい硬化触媒は、2,2’-ジモルホリンジエチルエーテル(DMDEE)である。
【0039】
接着剤組成物は、接着組成物に一般的に使用される任意の適切な添加剤、例えば消泡剤、増粘剤及び/又は湿潤剤を含んでもよい。好ましくは、接着剤組成物は、消泡剤及び/又は増粘剤を含む。
【0040】
接着剤組成物が有する遊離イソシアネート基の含有量は、接着剤組成物の総重量に基づいて、14~17重量%の範囲内にある。遊離イソシアネート基は、プレポリマー及びいずれかの未反応ポリイソシアネートモノマー中の遊離イソシアネート基である。さらなるポリイソシアネート、好ましくはジイソシアネート、より好ましくはメチルジフェニルジイソシアネートをプレポリマーに添加して、接着剤組成物中の遊離イソシアネート基の含有量が14~17重量%の範囲内に到達するようにしてもよい。
【0041】
より好ましくは、接着剤組成物が有する遊離イソシアネート基の含有量は、15.0~16.5重量%の範囲内にある。
【0042】
遊離イソシアネート基の含有量は、ASTM D2572-19規格に準拠して決定される。
【0043】
接着剤組成物は、好ましくは、水を含まないか、又はごく微量の水を含む。好ましくは、接着剤組成物は、接着剤組成物の総重量に基づいて、1.0重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満、さらにより好ましくは0.01重量%未満の水を含有する。水は、例えばコーティング組成物の粘度を調整するために明確かつ正確に添加するのではなく、存在する場合でも、一般的な接着剤添加剤の一部として微量で存在するにすぎない。
【0044】
接着剤組成物は、好ましくは繊維を含まない。
【0045】
好ましい実施形態では、接着剤組成物は、イソシアネート官能性プレポリマー、追加のポリイソシアネート、硬化触媒及び添加剤以外の化合物を含まない。
【0046】
一液型湿気硬化性接着剤組成物は、木片又は他の材料片を接合して構造用製品を形成するのに特に適している。
【0047】
したがって、本発明は、第1の材料片を第2の材料片に接合する方法であって、前記第1の材料の表面を前記第2の材料の表面と接触させる工程を含み、前記接触工程前に、前記接触表面の少なくとも一方に本発明の第1の態様による接着剤組成物が塗布される、方法を提供する。
【0048】
第3の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による接着剤組成物を用いて接合された第1の材料片及び第2の材料片を含む物体を提供する。
【0049】
材料は、任意の適切な材料、例えば木材、金属、プラスチック、紙、ガラス、コンクリート、石膏又は他の鉱物材料、例えば石若しくはレンガであってもよい。第1の材料片と第2の材料片は、異種の材料であってもよい。好ましくは、材料片は木片である。
【0050】
物体は、任意の適切な物体であり得る。好ましくは、材料は木材であり、物体は構造用木質製品である。
【0051】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0052】
実施例で使用したポリイソシアネート及びポリオールを表1に示す。
【0053】
【0054】
イソシアネート官能性プレポリマーの調製
ポリイソシアネート及びポリオールを、窒素ブランケット下で、メカニカルスターラー及び冷却器を備えた三つ口反応器に加えた。量及び種類は表2に示した通りである。反応器の内容物を混合し、(さらなる温度上昇がなく)発熱反応が完結したら、反応器を温度50℃に加熱し、ポリオールがすべて反応するまで(ASTM D2572-19規格に準拠し測定した遊離イソシアネートの含有量が理論的に達成可能なイソシアネート含有量に等しくなるまで)この温度に維持した。これは通常1.5~2時間後であった。次いで、反応器を室温に冷却し、得られたプレポリマーを反応器から採取した。このようにして調製したプレポリマーの分子量及び遊離イソシアネート含有量を決定した。
【0055】
接着剤組成物の調製
プレポリマーに0.2重量%の硬化触媒(Jeffcat DMDEE)、0.05重量%の消泡剤(フォーマスター MO 2115)及び0.8重量%の増粘剤(Carbosil TS 720)を加えて、接着剤組成物を調製した。メチルジフェニルジイソシアネート(スプラセック 2004)を、遊離イソシアネート基の含有量が接着剤組成物の総重量に基づいて14.5~16.5重量%に達するまで加えた。
【0056】
試験方法
【0057】
縦方向の引張せん断強度
各接着剤組成物を用いて、EN302-1:2013規格に準拠し、厚い接着層(ギャップジョイント0.5mm)を有するブナ材パネルの堆積体(assembly)を調製した。接着剤組成物の塗布量は過剰とした(両面塗布)。接着剤塗付と試験との間の期間は(相対湿度65%及び20℃で)13日間とした。
堆積時間(assembly time)は約4分、圧締時間(pressing time)は16時間、印加圧力は8.0kg/cm2とした。
厚い接着層を有する接合堆積体の縦方向の引張せん断強度を、EN302-1:2013:A4記載のA4処理(沸騰水に6時間浸漬後、冷水(20℃)に2時間浸漬)を施した後に測定した。サンプルは湿潤状態で試験した。
【0058】
閉鎖堆積時間(AT)
接着剤組成物の閉鎖堆積時間(closed assembly time)をEN14080:2013規格に準拠し、決定した。
各接着剤組成物を用いて、285×145×30mmの寸法を有するトウヒ材のラメラ5枚を貼り合わせることによって堆積体(assembly)を調製した。接着剤組成物の塗布量は120g/m2とした。接着剤組成物の塗布直後に、ラメラを堆積して積層体(stack)にした。様々な時間間隔(堆積時間)の後、堆積体を16時間圧締した。印加圧力は8.0kg/cm2とした。
20℃及び相対湿度65%において5日後、EN14080:2013規格の付属書Cに準拠し、方法Bを用いて接着層の層間剥離を測定した。
閉鎖堆積時間は、EN14080:2013規格の表9の層間剥離値を超えない適用可能な最長堆積時間である。
【0059】
最短圧締時間(PT)
接着剤組成物の最短圧締時間をEN14080:2013規格に準拠し、決定した。
各接着剤組成物を用いて、285×145×30mmの寸法を有するトウヒ材のラメラ5枚を貼り合わせることによって堆積体(assembly)を調製した。接着剤組成物の塗布量は120g/m2とした。2分間の堆積時間の後、堆積体を8kg/cm2の圧力で圧締した。圧締時間は様々に変えた。
20℃及び相対湿度65%において5日後、EN14080:2013規格の付属書Cに準拠し、方法Bを用いて接着層の層間剥離を測定した。
最短圧締時間は、EN14080:2013規格の表9の層間剥離値を超えない必要最短圧締時間である。
【0060】
縦方向の引張せん断強度、AT及びPTを表2に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
実施例が示しているように、ポリ(テトラヒドロフラン)、第二級ヒドロキシル基を有するトリオール及びアミン開始型ポリエーテルジオールを含むポリオール混合物と、ウレトンイミン変性MDIを含むポリイソシアネートと、を反応させることによって調製したプレポリマーを有する接着剤組成物は、非常に良好なAT/PT比(1:1~1:2)を有し、非常に良好なせん断強度を有する接合を可能にする。
【国際調査報告】