IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボレアリス エージーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】変性ポリマーの再生
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20240705BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20240705BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240705BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240705BHJP
   C08L 25/06 20060101ALI20240705BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240705BHJP
   C08L 97/02 20060101ALI20240705BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240705BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L23/06
C08L23/08
C08L101/00
C08L25/06
C08K3/34
C08L97/02
C08K3/08
C08K5/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500153
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2022068655
(87)【国際公開番号】W WO2023280890
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21184319.8
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】リウ,イー
(72)【発明者】
【氏名】カーレン,スザンネ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ハーマン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AH00Z
4J002BB03X
4J002BB07Y
4J002BB12W
4J002BC03Z
4J002DA066
4J002DE236
4J002DG056
4J002DJ046
4J002EF007
4J002FD016
4J002FD207
4J002GK01
4J002GN00
(57)【要約】
本発明は、 少なくとも以下の成分:(A)ポリマー組成物の全質量に対して75~95.5質量%のポリマーブレンドであって、以下の:(a1)ポリプロピレン、及び(a2)ポリエチレンを含み、ここで、前記(a1)ポリプロピレンと前記(a2)ポリエチレンの質量比は3:7~9:1であり、かつ前記ポリマーブレンド(A)は再生材料であり、かつ、(B)前記ポリマー組成物の全質量に対して4.5~25質量%のバージンエチレンアルキル(メタ)アクリレートであって、以下の性質:-ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が0.1~15g/10分の範囲であり;及び、-前記成分(B)の全質量に対してアルキル(メタ)アクリレート含有量が5~40質量%の範囲である;を備える、を含む、ポリマー組成物であって、前記成分(A)及び(B)の合計の質量比が最大で100質量%である。
さらに、本発明は、本発明に関する当該ポリマー組成物の製造方法、ISO527-2に従って測定された破断張力及び/又は(a1)ポリプロピレン及び(a2)ポリエチレンを含む再生材料のポリマーブレンド(A)の23℃でISO 179-1eAに従って測定されたシャルピーノッチ衝撃強度;を高めるための、成分(B)の使用であって、ここで、前記(a1)ポリプロピレン対前記(a2)ポリエチレンの質量比が3:7~9:1の範囲である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の成分:
(A)ポリマー組成物の全質量に対して75~95.5質量%のポリマーブレンドであって、以下の:
(a1)ポリプロピレン
(a2)ポリエチレン
を含み、ここで、前記(a1)ポリプロピレンと前記(a2)ポリエチレンの質量比は3:7~9:1であり、かつ前記ポリマーブレンド(A)は再生材料であり、かつ、
(B)前記ポリマー組成物の全質量に対して4.5~25質量%のバージンエチレンアルキル(メタ)アクリレートであって、以下の性質:
-ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が0.1~15g/10分の範囲であり;及び
-前記成分(B)の全質量に対してアルキル(メタ)アクリレート含有量が5~40質量%の範囲である;を備える、
を含む、ポリマー組成物であって、前記成分(A)及び(B)の合計の質量比が最大で100質量%である、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記成分(A)は、以下の:
ポリプロピレン(a1)及びポリエチレン(a2)を、前記成分(A)の全質量に対して、80.0~99.9質量%、90.0~99.0質量%、又は94.0~98.0質量%で含み、並びに/あるいは、
前記(a1)と前記(a2)とは異なる熱可塑性ポリマーを、前記成分(A)の全質量に対して、5質量%未満、3質量%未満、又は0.01~2質量%で含み、好ましくは、4.0質量%未満のPA6及び5質量%未満のポリスチレンを、又は0.01~4質量%のポリスチレンを含み;並びに/あるいは
タルクを、前記成分(A)の全質量に対して、5質量%未満、4質量%未満、又は0.01~3質量%で含み、並びに/あるいは、
チョークを、前記成分(A)の全質量に対して、4質量%未満、3質量%未満、又は0.01~2質量%で含み、並びに/あるいは、
紙を、前記成分(A)の全質量に対して、1質量%未満、0.5質量%未満、又は0.01~1質量%で含む、
請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記成分(A)は、以下の:
木材を、前記成分(A)の全質量に対して、1質量%未満、0.5質量%未満、又は0.01~1質量%で含み、並びに/あるいは、
金属を、前記成分(A)の全質量に対して、1質量%未満、0.5質量%未満、又は0.01~1質量%で含み、並びに/あるいは、
リモネンを、前記成分(A)の全質量に対して、100ppm未満又は0.1~100ppmで含み、並びに/あるいは、
脂肪酸を、前記成分(A)の全質量に対して、200ppm未満又は1~200ppmで含み、並びに/あるいは、
前記成分(A)は、一般廃棄物及び/又は産業廃棄物由来の廃プラスチック材料から回収される再生材料であり、並びに/あるいは、
前記成分(A)のISO 1133に従って決定されたMFR(230℃、2.16kg)は、2~50g/10分、4~22g/10分、又は4~8g/10分の範囲である、
請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記成分(B)は、エチレンアルキルアクリレート、エチレンメチルアクリレート及び/又はエチレンブチルアクリレートである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記成分(B)は、エチレンメチルアクリレートであり、かつ、ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が、0.1~10g/10分、0.2~5g/10分、若しくは0.4~1.0g/10分の範囲で決定され;及び/又は
前記成分(B)の全質量に対して、アクリル酸メチル含有量が10~35質量%、15~30質量%、若しくは23~27質量%の範囲である、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記成分(B)は、エチレンブチルアクリレートであり、ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)は、0.1~10g/10分、0.2~8g/10分、若しくは0.6~5.0g/10分の範囲で決定され;及び/又は
前記成分(B)の全質量に対して、アクリル酸メチル含有量が10~40質量%、12~35質量%、若しくは16~28質量%の範囲である、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
ISO 1133に従って決定されたMFR(230℃、2.16kg)は、0.5~40g/10分、1.0~10g/10分、11~25g/10分、1.5~6.5g/10分若しくは12~20g/10分の範囲であり;及び/あるいは
ISO527-2に従って測定された破断張力が、10~750%;10~50%若しくは50~700%;又は、17~40%若しくは200~650%の範囲であり;及び/あるいは
ISO 179-1eAに従って測定されたシャルピーノッチ(Charpy Notch)衝撃強度が、23℃で2.0kJ/m以上、3.0~60kJ/m、3.0~50kJ/m若しくは5~45kJ/mの範囲である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記成分(B)はエチレンメチルアクリレートであり、かつ、前記ポリマー組成物は、
ISO527-2に従って測定された破断張力が、前記成分(B)を含まない同じポリマー組成物に比べて少なくとも10%、10~600%、100~500%、若しくは300~500%高く;及び/又は
ISO 179-1eAに従って測定されたシャルピーノッチ衝撃強度が、23℃で前記成分(B)を含まない同一ポリマー組成物に比べて少なくとも2%、10~800%、20~700%、若しくは100~650%高く;
あるいは、
前記成分(B)は、エチレンブチルアクリレートであり、かつ、前記ポリマー組成物は、
ISO527-2に従って測定された破断張力が、前記成分(B)を含まない同じポリマー組成物より少なくとも10%、20~600%、30~500%、若しくは200~500%高く;及び/又は
ISO 179-1eAに従って測定されたシャルピーノッチ衝撃強度が、23℃で前記成分(B)を含まない同じポリマー組成物より少なくとも2%、10~1400%、20~1300%、若しくは100~1250%高い、
請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
ポリマー組成物中の前記成分(A)の含有量が前記ポリマー組成物の全質量に対して、76~95.1質量%、77~95質量%、若しくは80~95質量%の範囲であり;及び/又は
ポリマー組成物中の前記成分(B)の含有量が前記ポリマー組成物の全質量に対して、4.9~24質量%、5~23質量%、若しくは5~20質量%の範囲であり;及び/又は
前記成分(A)中のポリプロピレン(a1)の含有量が前記成分(A)の全質量に対して、75~98質量%、75~95質量%、76~85質量%、78~82質量%、若しくは79~81質量%であり;又は
前記成分(A)中のポリプロピレン(a1)の含有量が前記成分(A)の全質量に対して、25~85質量%、40~80質量%、50~65質量%、若しくは56~57質量%の範囲であり、さらに好ましくは前記成分(a1)はイソタクチックポリプロピレン又はイソタクチックポリプロピレンを、95質量%以上、若しくは96~99.9質量%含み、及び/又は
前記成分(A)中のポリエチレン(a2)の含有量が前記成分(A)の全質量に対して、5~25質量%、15~24質量%、18~22質量%、若しくは19~21質量%の範囲含み;又は
前記成分(A)中のポリエチレン(a2)の含有量が前記成分(A)の全質量に対して、15~75%、20~60質量%、35~50質量%、若しくは43~44質量%の範囲である、
請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
スリップ剤、UV安定剤、顔料、酸化防止剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、制酸剤、添加剤担体、核剤及びそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの添加剤を含み、好ましくは、前記少なくとも1つの添加剤は酸化防止剤であり、かつ、前記ポリマー組成物の全質量に対して、0~5質量%、0.1~4質量%、又は0.2~0.4質量%含まれる、
請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
少なくとも以下の成分:
(A)ポリマー組成物の全質量に対して75~95質量%又は80~95質量%のポリマーブレンドであって、以下の:
(a1)ポリプロピレン
(a2)ポリエチレン
を含み、ここで、前記(a1)ポリプロピレンと前記(a2)ポリエチレンの質量比は3:7~9:1又は8:1~11:1であり、かつ前記ポリマーブレンド(A)は再生材料である、かつ、
(B)前記ポリマー組成物の全質量に対して5~25質量%又は5~20質量%のバージンエチレンアルキルアクリレート、エチレンメチルアクリレート又はエチレンブチルアクリレートであって、以下の性質:
-ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が0.1~10g/10分、0.6~5g/10分又は0.4~1g/10分の範囲であり;及び
-前記成分(B)の総質量に対してアクリル酸アルキル含有量が5~40質量%、16~28%又は23~27質量%の範囲である;を備える、
を含む、ポリマー組成物であって、前記成分(A)及び(B)の合計の質量比が最大で100質量%である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
以下の工程:
(i)(a1)ポリプロピレン及び(a2)ポリエチレンを含む再生材料のポリマーブレンド(A)を提供することであって、ここで、前記ポリマー組成物の全質量に対して前記(a1)ポリプロピレン対前記(a2)ポリエチレンの合計の質量比が75.5~95.5質量%であり、かつ、前記(a1)ポリプロピレン対前記(a2)ポリエチレンの質量比が3:7~9:1の範囲であり;
(ii)バージンエチレンアルキル(メタ)アクリレート(B)を提供することであって、ここで、前記バージンエチレンアルキル(メタ)アクリレート(B)は、以下の性質:
-ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が0.1~15g/10分の範囲であり;及び
-前記成分(B)の総質量に対してアルキル(メタ)アクリレート含有量が5~40質量%の範囲である;を備え、
(iii)前記(A)及び前記成分(B)を溶融混合してポリマー組成物を得ること;かつ、
(iv)場合によっては、工程(iii)で得られた前記ポリマー組成物を冷却し、及び/又は前記ポリマー組成物をペレット化すること;
を含む、請求項1に記載のポリマー組成物の製造方法。
【請求項13】
前記成分(B)は、以下の性質:
-ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が0.1~10g/10分、0.2~5g/10分若しくは0.4~1.0g/10分の範囲であり;及び/又は
-前記成分(B)の総質量に対してアクリル酸メチル含有量が10~35質量%、15~30質量%若しくは23~27質量%の範囲である;
を備えるエチレンメチルアクリレートであるか、
あるいは、
前記成分(B)は、以下の性質:
-ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が0.1~10g/10分、0.2~8g/10分、若しくは0.6~5.0g/10分の範囲であり;及び/又は
-前記成分(B)の総質量に対してアクリル酸ブチル含有量が10~40質量%、12~35質量%、若しくは16~28質量%の範囲である;
を備えるエチレンブチルアクリレートである、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ISO527-2に従って測定された破断張力;及び/又は
(a1)前記(a1)ポリプロピレン対前記(a2)ポリエチレンを質量比で3:7~9:1の範囲で含む、再生材料のポリマーブレンド(A)の23℃でISO 179-1eAに従って測定されたシャルピーノッチ衝撃強度;
を高めるための、以下の性質:
-ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が0.1~15g/10分の範囲であり;及び/又は
-前記成分(B)の総質量に対してアルキル(メタ)アクリレート含有量が5~40質量%の範囲である;
を備えるバージンエチレンアルキル(メタ)アクリレート(B)の使用であって、
ここで、前記(A)及び(B)の総質量に対して、前記バージンエチレンアルキル(メタ)アクリレート(B)が4.5~25質量%存在する、使用。
【請求項15】
消費財、家庭用品、キャップ、クロージャ及び包装容器からなる群より選択される、請求項1に記載のポリマー組成物を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の再生ブレンドと特定のバージンエチレンアルキル(メタ)アクリレートとを含むポリマー組成物、当該ポリマー組成物の製造方法、及び特定の再生ブレンドの機械的性質を改善するためのバージンエチレンアルキル(メタ)アクリレートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリプロピレンは、食品及びその他の商品、繊維、自動車部品及び多種多様な工業製品の包装を含む幅広い用途において、ますます大量に消費されている。この理由は、良好な価格/性能比、これらの材料には高い汎用性があり、その改質は極めて広範な可能性があり、幅広い用途における最終用途特性を調整することができる。化学的改質、共重合、混合、延伸、熱処理、及びこれらの技術の組み合わせにより、一般的なグレードのポリオレフィンを望ましい特性を持つ貴重な製品に変換することができる。これにより、大量のポリオレフィン材料が消費者向けに生産されるようになった。
【0003】
過去10年間に、プラスチックを現在用いられている量で使用し続けることについて、環境的持続可能性に関する懸念が生じてきた。そのため、ポリオレフィンの廃棄、回収及び再生に関する新しい法律が設立された。さらに、多くの国では、埋め立て処分の代わりに再生プラスチック材料の比率を増やす取り組みがなされている。
【0004】
ポリオレフィンの分野における主要な傾向の1つとして、多種多様な資源由来の再生材料の使用があげられる。各種収集システムからのポリマー廃棄物の機械的再生が、当業界における現在の開発の主な目標である。再生プラスチックには、通常いくつかのタイプのポリマーがあげられる。ポリオレフィンの再生には、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の混合物が一般的にあげられ、PP/PEの含有量は原料だけでなく再生プロセスにも依存する。さらに、他の極性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などは、選別中に完全に除去されず、ポリオレフィン再生のペレット中に残留する場合がある。そのため、機械的に再生されたポリオレフィンの機械的性能は、バージンPP又はPEよりも劣っている。しかしながら、機械的性質が良好な再生物に対する強いニーズがある。以下の先行技術は、再生物の機械的性質を改善する方法が開示されている。
【0005】
特許文献1は、再生プラスチック粒子に関する。再生プラスチック粒子は、以下の成分:変性再生プラスチック、吸湿性難燃剤、硫酸バリウム、グラフェン、酸化防止剤、増白剤及び可塑剤を含む。当該再生プラスチックは、工程内相溶化剤、強化剤及び鎖延長剤によって変性される。
【0006】
特許文献2は、ポリアミド及びポリオレフィン廃棄物及び繊維強化プラスチック廃棄物の再生に関する。特に、ポリアミド及びポリオレフィン廃棄物又は共押出フィルム廃棄物及びガラス繊維強化プラスチック廃棄物を含有するポリマーブレンド及び均質ポリマー凝集体、並びに前記凝集体の調製のための一段階連続プロセスに関する。
【0007】
特許文献3は、フィルム組成物及び再生エラストマーを含む物品に関する。組成物は、1つ以上のバージンポリマーを含む。場合によっては、フィルムは、ポリマーとの相溶性を備える1つ以上の相溶化剤及びハードブロック及びソフトブロックを備えるブロック共重合体のような熱可塑性エラストマー(TPE)を含むこともできる。多層又は単層フィルムが可能である。これらのフィルムは、消費製品の包装フィルム又は部品フィルムに有用である。
【0008】
特許文献4は、廃プラスチック再生顆粒の調製方法に関する。この方法は、質量比で80~95部の廃プラスチック、2~3部の熱安定剤、4~9部の複合柔軟剤、及び1~3部の熱分散剤を含む原料を、240~340℃で溶融混合する工程を含む。そして、押出し、線引、冷却、顆粒切削を順次行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許出願第106543659号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3145995号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2015/0037557号明細書
【特許文献4】中国特許出願第107286701号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
再生材料を含む既知のポリマー組成物には、まだいくつかの欠点がある。改善された機械的性質、特に改善されたシャルピーノッチ(Charpy Notch)衝撃強度と破断張力を備える再生利用ポリマー組成物に対する大きなニーズがある。
本発明の目的は、従来技術に関するポリマー組成物の欠点の克服であり、特に、シャルピーノッチ衝撃強度及び破断張力で表される高い靭性を備えるポリマー組成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、少なくとも以下の成分:
(A)ポリマー組成物の全質量に対して75~95.5質量%のポリマーブレンドであって、以下の:
(a1)ポリプロピレン
(a2)ポリエチレン
を含み、ここで、前記(a1)ポリプロピレンと前記(a2)ポリエチレンの質量比は3:7~9:1であり、かつ前記ポリマーブレンド(A)は再生材料であり、かつ、
(B)前記ポリマー組成物の全質量に対して4.5~25質量%のバージンエチレンアルキル(メタ)アクリレートであって、以下の性質:
-ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が0.1~15g/10分の範囲であり;及び
-前記成分(B)の全質量に対してアルキル(メタ)アクリレート含有量が5~40質量%の範囲である;を備える、
を含む、ポリマー組成物であって、前記成分(A)及び(B)の合計の質量比が最大で100質量%である、出願時本願請求項1に記載のポリマー組成物によって解決された。
本発明によるポリマー組成物の有利な実施形態は、特許請求の範囲の請求項2~11に記載される。
【0012】
出願時本願請求項12は、以下の工程:
(i)(a1)ポリプロピレン及び(a2)ポリエチレンを含む再生材料のポリマーブレンド(A)を提供することであって、ここで、前記ポリマー組成物の全質量に対して前記(a1)ポリプロピレン対前記(a2)ポリエチレンの合計の質量比が75.5~95.5質量%であり、かつ、前記(a1)ポリプロピレン対前記(a2)ポリエチレンの質量比が3:7~9:1の範囲であり;
(ii)バージンエチレンアルキル(メタ)アクリレート(B)を提供することであって、ここで、前記バージンエチレンアルキル(メタ)アクリレート(B)は、以下の性質:
-ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が0.1~15g/10分の範囲であり;及び
-前記成分(B)の総質量に対してアルキル(メタ)アクリレート含有量が5~40質量%の範囲である;を備え、
(iii)前記(A)及び前記成分(B)を溶融混合してポリマー組成物を得ること;かつ、
(iv)場合によっては、工程(iii)で得られた前記ポリマー組成物を冷却し、及び/又は前記ポリマー組成物をペレット化すること;
を含む、出願時本願請求項1に記載のポリマー組成物の製造方法に関する。
請求項12及び13は、本発明によるプロセスの好ましい実施形態を特定する。
【0013】
請求項14は、ISO527-2に従って測定された破断張力;及び/又は
(a1)前記(a1)ポリプロピレン対前記(a2)ポリエチレンを質量比で3:7~9:1の範囲で含む、再生材料のポリマーブレンド(A)の23℃でISO 179-1eAに従って測定されたシャルピーノッチ衝撃強度;
を高めるための、以下の性質:
-ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が0.1~15g/10分の範囲であり;及び/又は
-前記成分(B)の総質量に対してアルキル(メタ)アクリレート含有量が5~40質量%の範囲である;
を備えるバージンエチレンアルキル(メタ)アクリレート(B)の使用であって、
ここで、前記(A)及び(B)の総質量に対して、前記バージンエチレンアルキル(メタ)アクリレート(B)が4.5~25質量%存在する、使用に関する。
請求項15は、本発明によるポリマー組成物を含む物品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
数量の表示
本発明によるポリマー組成物は、成分(A)及び成分(B)並びに場合によっては添加剤を含む。ここで適用される要件は、成分(A)及び成分(B)、並びに存在する場合は添加剤の合計が最大で100質量%である。個々の成分(A)及び成分(B)並びに場合によっては添加剤の量の表示の一定の範囲は、全ての成分(A)及び成分(B)並びに場合によっては添加剤の合計が100質量%になるように厳密な規定が満たされることを条件として、個々の成分の各々についていかなる量を特定の範囲内で選択することができることが理解されるべきである。
【0015】
本明細書及び特許請求の範囲の目的において、用語「再生」は、当該材料が消費者廃棄物及び/又は産業廃棄物から回収されることを示すために用いられる。すなわち、消費者廃棄物は、少なくとも最初の使用サイクル(又はライフサイクル)を完了した物、すなわち、既に最初の目的を果たし、消費者の手を経た物をいう。一方、産業廃棄物は、通常消費者の手に渡らない製造スクラップをいう。本発明の要旨では、「再生ポリマー」も17質量%まで、好ましくは3質量%まで、より好ましくは1質量%まで、より好ましくは0.1質量%まで含むことができる。最初の使用に由来する他の成分の再生ポリマーの総質量に基づく。これらの成分の種類と量は、再生ポリマーの物理的特性に影響を与える。以下に示す物理的特性は、再生ポリマーの主成分をいう。
【0016】
最初の使用に由来する他の通常の成分は、ポリスチレン及びPA 6、タルク、チョーク、インク、木材、紙、リモネン及び脂肪酸のような熱可塑性ポリマーである。再生ポリマー中のポリスチレン(PS)及びポリアミド6(PA 6)の含有量はフーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって測定することができ、タルク、チョーク、木材及び紙の含有量は熱質量分析(TGA)によって測定することができる。
【0017】
用語「バージン」は、最初の使用前に新しく製造され、再生されていない材料及び/又は物体を意味する。ポリマーの起源が明示的に言及されていない場合、ポリマーは「バージン」ポリマーである。
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲において用いられる用語「含む」は、それは主要又は軽微な機能的重要性を備える他の特定されていない要素を除外しない。本発明の目的のために、用語「からなる」は、当該用語「からなる」の好ましい実施形態であると考えられる。以下において、グループが少なくとも一定数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなるグループを開示することも理解される。
用語「含む」又は「備える(有する)」は常に上記で定義された「含む」と同等に用いられることを意味する。
単数名詞、例えば「a」、「an」又は「the」(原文)を参照するときに不定冠詞又は定冠詞が用いられる場合、他に何かが特に述べられていない限り、これはその名詞の複数形を含む。
【0019】
成分(A)
本発明に関するポリマー組成物は、(A)ポリマー組成物の全質量に対して75~95.5質量%のポリマーブレンドであって、(a1)ポリプロピレン及び(a2)ポリエチレンを含み、ここで、当該(a1)ポリプロピレンと当該(a2)ポリエチレンの質量比は3:7~9:1であり、かつ当該ポリマーブレンド(A)は再生材料である。
成分(A)の好ましい実施形態について、以下に説明する。
本発明による一の好ましい実施形態では、成分(A)は、ポリプロピレン(a1)及びポリエチレン(a2)を、前記成分(A)の全質量に対して、80.0~99.9質量%、好ましくは90.0~99.0質量%、より好ましくは94.0~98.0質量%を含む。
【0020】
本発明のさらに別の好ましい実施形態は、成分(A)が、前記(a1)と前記(a2)とは異なる熱可塑性ポリマーを、前記成分(A)の全質量に対して、5質量%未満、好ましくは3質量%未満、より好ましくは0.01~2質量%未満含み、好ましくは、4.0質量%未満のPA 6及び5質量%未満のポリスチレン、より好ましくは成分(A)は0.01~4質量%のポリスチレンを含む。
本発明による他の好ましい実施形態では、タルクを、前記成分(A)の全質量に対して、5質量%未満、好ましくは4質量%未満、より好ましくは0.01~3質量%未満含む。
本発明による他の好ましい実施形態では、チョークを、前記成分(A)の全質量に対して、4質量%未満、好ましくは3質量%未満、より好ましくは0.01~2質量%未満含む。
本発明による他の好ましい実施形態では、紙を、前記成分(A)の全質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.01~1質量%未満含む。
本発明による他の好ましい実施形態では、木材を、前記成分(A)の全質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.01~1質量%未満含む。
本発明による他の好ましい実施形態では、金属を、前記成分(A)の全質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.01~1質量%未満含む。
本発明による他の好ましい実施形態では、リモネンを、前記成分(A)の全質量に対して、100ppm未満、好ましくは0.1~100ppmを含む。
本発明による他の好ましい実施形態では、脂肪酸を、前記成分(A)の全質量に対して、200ppm未満、好ましくは1~200ppmを含む。
本発明による他の好ましい実施形態では、を、前記成分(A)は再生材料であり、消費後及び/又は産業後廃棄物に由来する廃プラスチック材料から回収される。
【0021】
本発明による他の好ましい実施形態では、成分(A)のISO 1133に従って決定されたMFR(230℃、2.16kg)は、2~50g/10分の範囲であり、好ましくは4~25g/10分の範囲であり、より好ましくは4~8g/10分の範囲である。
【0022】
さらに、本発明による他の好ましい実施形態では、成分(A)の含有量はポリマー組成物の全質量に対して、76~95.1質量%の範囲、好ましくは77~95質量%の範囲又は80~95質量%の範囲である。
本発明による他の好ましい実施形態では、成分(A)中のポリプロピレン(a1)の含有量は、成分(A)の全質量に対して、75~98質量%の範囲、好ましくは75~95質量%、より好ましくは76~85質量%、より好ましくは78~82質量%、最も好ましくは79~81質量%であるか、又は成分(A)中のポリプロピレン(a1)の含有量は、成分(A)の全質量に対して、25~85質量%、好ましくは40~80質量%、より好ましくは50~65質量%、最も好ましくは56~57質量%であるか、さらに好ましくは成分(a1)はイソタクチックポリプロピレンを95質量%以上、さらに好ましくは96~99.9質量%含み、かつ、最も好ましくはイソタクチックポリプロピレンからなる。
本発明による他の好ましい実施形態では、成分(A)中のポリプロピレン(a2)の含有量は成分Aの全質量に対して、5~25質量%の範囲、好ましくは15~24質量%の範囲、より好ましくは18~22質量%の範囲、最も好ましくは19~21質量%の範囲であるか、又は、成分(A)中のポリプロピレン(a2)の含有量は成分Aの全質量に対して、15~75質量%の範囲、好ましくは20~60質量%の範囲、より好ましくは35~50質量%の範囲、最も好ましくは43~44質量%の範囲である。
【0023】
さらに本発明による他の好ましい実施形態では、ポリプロピレン(a1)は以下の:
(I)アイソタクチック又は主にアイソタクチックプロピレンホモポリマー;
(II)プロピレンとエチレン及び/又はC4-C8α-オレフィンとのアイソタクチックランダム共重合体、例えば、1-ブテン又は1-オクテン、であって、総コモノマー含有量が0.05~20質量%の範囲であるか、又は前記共重合体とアイソタクチックプロピレン単独重合体又は主としてアイソタクチックプロピレン単独重合体との混合物;
(III)(I)のようなアイソタクチックプロピレン単独重合体又は(II)のようなプロピレンのランダム共重合体を含むヘテロ相共重合体、及びエチレンとプロピレン及び/又はC4-C8α-オレフィンとの共重合体、例えば1-ブテン又は1-オクテンを含む、エラストマー画分(場合によっては、ブタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、エチリデン-1-ノルボルネンなどの少量のジエンを含む)
から選択される1つ以上のポリマー材料を含む。
本発明による他の好ましい実施形態では、成分(a1)の密度が、ISO 1183に従って決定された、0.895~0.920g/cmの範囲、好ましくは0.900~0.915g/cmの範囲である。
本発明による他の好ましい実施形態では、成分(a1)のISO 1133に従って決定された(負荷230℃、2.16kg)溶融流量(MFR)は、0.5~300g/10分の範囲、好ましくは1.0~150g/10分の範囲、あるいは、1.5~50g/10分の範囲である。
本発明による他の好ましい実施形態では、成分(a1)の溶融温度は130~170℃の範囲、好ましくは140~168℃の範囲、より好ましくは142~166℃の範囲である。上記のプロピレンホモポリマー等の項目(I)のISO 11357-3に従って示差走査熱量測定(DSC)によって決定された溶融温度は、150~170℃の範囲、好ましくは155~168℃の範囲、より好ましくは160~166℃の範囲である。上記のプロピレン等の項目(II)のランダム共重合のISO 11357-3に従って示差走査熱量測定(DSC)によって決定された溶融温度は、130~162℃の範囲、好ましくは135~160℃の範囲、より好ましくは140~158℃の範囲である。
【0024】
ポリエチレン(a2)は、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、又は長鎖分枝低密度ポリエチレン(LDPE)である。成分(a2)のコモノマー含有量は、通常50質量%未満、好ましくは25質量%未満、最も好ましくは15質量%未満である。
ここで、成分(a2)として用いるのに適したHDPEのISO 1183に従って決定された密度は、0.941g/cm以上、好ましくは0.941~0.965g/cmの範囲、より好ましくは0.945~0.960g/cmの範囲である。
【0025】
本発明による他の好ましい実施形態では、HDPEはエチレンホモポリマーである。本開示における成分(a2)として用いるのに適したHDPEの成分(A)のISO 1133(負荷190℃、2.16kg)に従って決定されたMFRの範囲は、一般に、0.01g/10分~50g/10分、0.1g/30g/10分の範囲のような、好ましくは0.5g/20g/10分である。
HDPEは、共重合体であってもよく、例えば、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のような一つ以上のアルファオレフィンモノマーとエチレンとの共重合体であってもよい。
【0026】
本開示における成分(a2)として用いるのに適したLLDPEは、一般に、ISO 1183により決定された密度、0.900~0.920g/cmの範囲、又は0.905~0.918g/cmの範囲、又は0.910~0.918g/cmの範囲、かつ、ISO 1133(負荷190℃、2.16kg)に従って決定された成分(A)のMFRは、0.01~50g/分の範囲、又は0.1~30g/10分の範囲等の0.5~20g/10分の範囲である。LLDPEは共重合体であり、例えば、プロピレン、ブテン、ヘキセン等の一つ又は複数のアルファオレフィンモノマーとエチレンとの共重合体である。
本開示における成分(a2)として用いるのに適したLDPEは、一般に、ISO 1183により決定された密度が0.915~0.935g/cmの範囲であり、成分(A)のISO 1133(190℃、2.16kg)に従って決定されたMFRは、0.01~20g/分の範囲である。LDPEはエチレンホモポリマーである。
本発明による他の好ましい実施形態では、成分(a2)の溶融温度は100℃~135℃の範囲であり、好ましくは105℃~132℃の範囲である。
【0027】
このような消費後及び/又は産業後廃棄物は、とりわけ、廃棄物電気電子機器(WEEE)又は中古自動車(ELV)、又は、ドイツのDSDシステム、オーストリアのARAシステム及びオーストリアのASZシステム(特にプルポレン材料の場合)又はイタリアの「Raccolta Differenziata」システムのような差別化された廃棄物収集スキームから得られてよい。
再生材料は、例えば、コルペラ(包装プラスチック廃棄物の収集、回収、再生のためのイタリアのコンソーシアム)、リソース・プラスチックス社(ブランプトン、オン)、クルシッツGmbH、プラスチック及び再生(AT)、エコプラスト(AT)、Vogt PlastikgmbH(DE)、mtmプラスチックGmbH(DE)等から市販されている。
好ましい再生ポリマー混合物は、ドイツ、ニーダーゲブラのmtmプラスチックGmbHから得られたポリエチレン及びポリプロピレンを含む再生ポリマー混合物であるプルポレンPPである。別の好ましい再生ポリマー混合物は、ドイツ、ニーダーゲブラのmtmプラスチックGmbHから得られたポリエチレン及びポリプロピレンを含む再生ポリマー混合物であるジポレンである。
【0028】
成分(B)
本発明に関するポリマー組成物は、以下の:
成分(A)のISO 1133に従って決定されたMFR(230℃、2.16kg)が0.1~15g/分であり;かつ、
成分(B)の全質量に対してアルキル(メタ)アクリレート含有量が5~40質量%の範囲である;
特性を備えるバージンエチレンアルキル(メタ)アクリレートがポリマー組成物の全質量に対して4.5~25質量%である成分(B)を含む。
【0029】
成分(B)の好ましい実施形態について、以下に説明する。
本発明による一の好ましい実施形態では、成分(B)は、エチレンアルキルアクリレート、好ましくはエチレンメチルアクリレート及び/又はエチレンブチルアクリレートである。
本発明による他の好ましい実施形態では、成分(B)のISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)は、0.1~10g/10分の範囲、好ましくは0.2~5g/10分の範囲、より好ましくは0.4~1.0g/10分の範囲であるエチレンメチルアクリレートであり;及び/又は成分(B)の総質量に基づくアクリル酸メチル含有量は10~35質量%の範囲、好ましくは15~30質量%の範囲、より好ましくは23~27質量%の範囲である。
本発明による他の好ましい実施形態では、本発明の成分(B)は、ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が、0.1~10g/10分の範囲、好ましくは0.2~8g/10分の範囲、より好ましくは0.6~5.0g/10分の範囲であるエチレンブチルアクリレートであるか;及び/又は成分(B)の総質量に基づくアクリル酸ブチル含有量が10~40質量%の範囲、好ましくは12~35質量%の範囲、より好ましくは16~28質量%の範囲である。
好ましいエチレンメチルアクリレートは、商標名Elvaloy AC1125としてDow/DuPontから市販されている。
好ましいエチレンブチルアクリレートは、商標名Ebantix E1704又はEbantix E2770としてRepsolから市販されている。
【0030】
添加物
本発明のポリマー組成物は、添加物を含んでよい。
好ましくは、これらの添加物は、スリップ剤、UV安定剤、顔料、抗酸剤、酸化防止剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、添加剤担体、核形成剤及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、少なくとも1つの添加物は酸化防止剤で、ポリマー組成物の全質量に対して、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0.1~4質量%、最も好ましくは0.2~0.4質量%である。
【0031】
用いられうる酸化防止剤の例は、立体障害フェノール(CAS番号6683-19-8等、BASF~Irganox 1010 FF(商標)としても販売されている)、リン系酸化防止剤(CAS番号31570-04-4(Clariant社からHostanox PAR 24(FF)(商標)として販売されているもの、又はBASF社からIrgafos 168(FF)(商標)として販売されているものなど))、硫黄系酸化防止剤(BASF~Irganox PS-802 FL(商標)として販売されているCAS番号693-36-7など)、窒素系酸化防止剤(例えば、4,4’-ビス(1,1’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン)、又は酸化防止剤ブレンドである。
【0032】
本発明によるポリマー組成物に用いられうる酸化防止剤の例は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛、合成ハイドロタルサイト(例:SHT、CAS番号11097-59-9)、乳酸及び乳酸塩、並びにステアリン酸カルシウム(CAS番号1592-23-0)及びステアリン酸亜鉛(CAS番号557-05-1)である。
【0033】
本発明によるポリマー組成物に用いられうる遮断防止剤は、珪藻土(CAS番号60676-86-0(SuperFloss(商標))、CAS番号60676-86-0(SuperFloss(商標))、CAS番号60676-86-0(Celite 499(商標))等)、合成シリカ(CAS番号7631-86-9、CAS番号7631-86-9、CAS番号7631-86-9、CAS番号7631-86-9、CAS番号7631-86-9、CAS番号7631-86-9、CAS番号112926-00-8、CAS番号7631-86-9、CAS番号7631-86-9)、ケイ酸塩(ケイ酸アルミニウム(カオリン)CAS番号1318-74-7、ケイ酸アルミニウムナトリウムCAS番号1344-00-9、か焼カオリンCAS番号92704-41-1、ケイ酸アルミニウムCAS番号1327-36-2、ケイ酸カルシウムCAS番号1344-95-2など)、合成ゼオライト(アルミノシリケートナトリウム水和物CAS番号1344-01-0、CAS番号1344-01-0、アルミノシリケートナトリウム水和物CAS番号1344-01-0等)等の天然シリカである。
【0034】
本発明によるポリマー組成物に使用され得るUV安定剤は、例えば、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-セバケート(CAS番号52829-07-9、Tinuvin 770)である。2-ヒドロキシ-4-n-℃toxy-ベンゾフェノン(CAS番号1843-05-6、Chimasorb 81)である。
本発明によるポリマー組成物に用いることができる核剤は、例えば安息香酸ナトリウム(CAS番号532-32-1)又は1,3:2,4-ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール(CAS番号135861-56-2、Millad 3988)である。
適切な帯電防止剤は、例えばグリセロールエステル(CAS番号97593-29-8)又はエトキシル化アミン(CAS番号71786-60-2又は61791-31-9)又はエトキシル化アミド(CAS番号204-393-1)である。
【0035】
ポリマー組成物
以下、本発明によるポリマー組成物の好ましい実施形態について説明する。
本発明による他の好ましい実施形態では、本発明による一つの好ましい実施形態では、ポリマー組成物は、ISO 1133に従って決定されたMFR(230℃、2.16kg)は、0.5~40g/10分の範囲、好ましくは1.0~10g/10分又は11~25g/10分の範囲、より好ましくは1.5~6.5g/10分又は12~20g/10分の範囲である。
本発明による他の好ましい実施形態では、ポリマー組成物のISO527-2に従って測定された破断張力は、10~750%の範囲、好ましくは10~50%又は50~700%の範囲、より好ましくは17~40%又は200~650%の範囲である。
本発明による他の好ましい実施形態では、ポリマー組成物のISO 179-1eAに従って測定されたシャルピーノッチ衝撃強度は、23℃で2.0kJ/m以上、好ましくは3.0~60kJ/mの範囲、より好ましくは3.0~50kJ/m又は5~45kJ/mの範囲である。
本発明による他の好ましい実施形態では、ポリマー組成物中の成分(A)の含有量はポリマー組成物の全質量に対して、76~95.1質量%の範囲、好ましくは77~95質量%の範囲又は80~95質量%の範囲である。
本発明による他の好ましい実施形態では、ポリマー組成物中の成分(B)の含有量がポリマー組成物の全質量に対して、4.9~24質量%の範囲、好ましくは5~23質量%の範囲、好ましくは5~20質量%の範囲である。
【0036】
本発明による他の好ましい実施形態では、成分(A)中のポリプロピレン(a1)の含有量は成分(A)の全質量に対して、75~98質量%の範囲、好ましくは75~95質、より好ましくは76~85質量%、より好ましくは78~82質量%、最も好ましくは79~81質量であるか、又は成分(A)中のポリプロピレン(a1)の含有量は成分(A)の全質量に対して、25~85質量%、好ましくは40~80質量%、より好ましくは50~65質量%、最も好ましくは56~57質量%であり、さらに好ましくは成分(a1)は95質量%以上、さらに好ましくは96~99.9質量%のイソタクチックポリプロピレンを含み、かつ、最も好ましくはイソタクチックポリプロピレンからなる。
【0037】
本発明による他の好ましい実施形態では、成分(A)中のポリプロピレンa2)の含有量は成分Aの全質量に対して、5~25質量%の範囲、好ましくは15~24質量%の範囲、より好ましくは18~22質量%の範囲、最も好ましくは19~21質量%の範囲であるか、又は成分(A)中のポリプロピレンa2)の含有量は成分Aの全質量に対して、15~75質量%の範囲、好ましくは20~60質量%の範囲、より好ましくは35~50質量%の範囲、最も好ましくは43~44質量%の範囲である。
【0038】
本発明による他の好ましい実施形態では、成分(B)がエチレンメチルアクリレートであり、ポリマー組成物のISO527-2に従って測定された破断張力が、成分(B)を含まない同じポリマー組成物の場合より少なくとも10%高く、好ましくは10~600%高く、より好ましくは100~500%高く、最も好ましくは300~500%高い。
本発明のさらに好ましい実施形態は、成分(B)がエチレンメチルアクリレートであり、ポリマー組成物のISO 179-1eAに従って測定されたシャルピーノッチ衝撃強度が、23℃で、成分(B)を含まない同じポリマー組成物の場合より少なくとも2%高く、好ましくは10~800%高く、より好ましくは20~700%高く、最も好ましくは100~650%高い。
本発明による他の好ましい実施形態では、成分(B)がエチレンブチルアクリレートであり、ポリマー組成物のISO527-2に従って測定された破断張力が、成分(B)を含まない同じポリマー組成物に対してより少なくとも10%高く、好ましくは20~600%高く、より好ましくは30~500%高く、最も好ましくは200~500%高い。
本発明による他の好ましい実施形態では、成分(B)がエチレンブチルアクリレートであり、ポリマー組成物ISO 179-1eAに従って測定されたシャルピーノッチ衝撃強度が、23℃で、成分(B)を含まない同じポリマー組成物に対してより少なくとも2%高く、好ましくは10~1400%高く、より好ましくは20~1300%高く、最も好ましくは100~1250%高い。
【0039】
本発明による好ましいポリマー組成物は、少なくとも以下の成分を含み、かつ、好ましくはこれらの成分からなる:
(A)ポリマー組成物の全質量に対して75~95%、好ましくは80~95質量%のポリマーブレンドであって、以下の:
(a1)ポリプロピレン
(a2)ポリエチレン
を含み、ここで、前記(a1)ポリプロピレンと前記(a2)ポリエチレンの質量比は3:7~9:1、好ましくは8:1~11:1であり、かつ前記ポリマーブレンド(A)は再生材料である、かつ、
(B)前記ポリマー組成物の全質量に対して5~25質量%、好ましくは5~20質量%のバージンエチレンアルキルアクリレート、好ましくはエチレンメチルアクリレート又はエチレンブチルアクリレートであって、以下の性質:
-ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が0.1~10g/10分、好ましくは0.6~5g/10分の範囲又は0.4~1g/10分であり;及び
-前記成分(B)の総質量に対してくアクリル酸アルキル含有量が5~40質量%、好ましくは16~28質量%又は23~27質量%の範囲である;を備える、
を含む、ポリマー組成物であって、前記成分(A)及び(B)の合計の質量比が最大で100質量%である。
【0040】
プロセス
本発明に関するポリマー組成物の製造方法は、以下の工程:
(i)(a1)ポリプロピレン及び(a2)ポリエチレンを含む再生材料のポリマーブレンド(A)を提供することであって、ここで、前記ポリマー組成物の全質量に対して75.5~95.5質量%における、前記(a1)ポリプロピレン対前記(a2)ポリエチレンの質量比が3:7~9:1の範囲であり;
(ii)バージンエチレンアルキル(メタ)アクリレート(B)を提供することであって、ここで、前記バージンエチレンアルキル(メタ)アクリレート(B)は、以下の性質:
-ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が0.1~15g/10分の範囲の範囲であり;及び
-前記成分(B)の総質量に対してアルキル(メタ)アクリレート含有量が5~40質量%の範囲である;を備え、
(iii)前記(A)及び前記成分(B)を溶融混合してポリマー組成物を得ること;かつ、
(iv)場合によっては、工程(iii)で得られた前記ポリマー組成物を冷却し、及び/又は前記ポリマー組成物をペレット化すること;
を含む。
【0041】
本発明による好ましい実施形態では、成分(B)は、ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が0.1~10g/10分の範囲、好ましくは0.2~5g/10分の範囲、より好ましくは0.4~1.0g/10分の範囲であるエチレンメチルアクリレートである。
本発明による他の好ましい実施形態では、成分(B)が、前記成分(B)の総質量に対して10~35質量%の範囲、好ましくは15~30質量%、より好ましくは23~27質量%の範囲でメチルアクリレート含有量を備える。
本発明による他の好ましい実施形態では、本発明の成分(B)は、ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が、0.1~10g/10分の範囲、好ましくは0.2~8g/10分の範囲、より好ましくは0.6~5.0g/10分の範囲であるエチレンブチルアクリレートである。
本発明による他の好ましい実施形態では、成分(B)が、前記成分(B)の総質量に対して10~40質量%の範囲、好ましくは12~35質量%、より好ましくは16~28質量%の範囲であるアクリル酸ブチル含有量を備える。
上記のすべての好ましい態様及び実施形態は、本発明によるプロセスにも当てはまる。
【0042】
使用
本発明はまた、以下の性質:
-ISO 1133に従って決定されたMFR(190℃、2.16kg)が0.1~15g/10分の範囲であり;及び、前記成分(B)の総質量に対してアルキル(メタ)アクリレート含有量が5~40質量%の範囲である;を備えるバージンエチレンアルキルアクリレート(B)の使用であって、
ISO527-2に従って測定された破断張力;及び/又は(a1)ポリプロピレン及び(a2)ポリエチレンを含む再生材料のポリマーブレンド(A)の23℃でISO 179-1eAに従って測定されたシャルピーノッチ衝撃強度;を高めるために用いられ、ここで、前記ポリマー組成物の全質量に対して前記(a1)ポリプロピレン対前記(a2)ポリエチレンの質量比が3:7~9:1の範囲であり;ここで、前記(A)及び(B)の総質量に対して、前記バージンエチレンアルキル(メタ)アクリレート(B)が4.5~25質量%存在する。
上記のすべての好ましい態様及び実施形態は、本発明による使用にも当てはまる。
【0043】
物品
本発明はまた、本発明に関するポリマー組成物を含む物品に関し、好ましくは、当該物品は、消費財又は家庭用品、好ましくはキャップ、クロージャ及び包装容器からなる群から選択される。
次に、本発明を以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例
【0044】
実験部
A.測定方法
以下の用語及び測定方法の定義は、別段の定めがない限り、上記の発明の一般的な説明及び以下の実施例に適用される。
溶融流量(MFR)
ポリプロピレンのISO 1133に従って決定されたMFRを、230℃,2.16kgの負荷(MFR)で測定し、ポリエチレンのISO 1133に従って決定されたMFRを、は190℃,2.16kgの負荷(MFR)で測定した。ポリプロピレンとポリエチレンの両方の混合物を含む化合物のMFRは、230℃,2.16kgの負荷(MFR),及び190℃,2.16kgの負荷(MFR)の両方で測定した。
【0045】
溶融温度Tm、結晶化温度Tc及び溶融エンタルピーHm
5~7mg試料の溶融温度を、TA計器Q2000示差走査熱量測定(DSC)により測定した。DSCはISO 11357/パート3/方法C2に従って-30~+225℃の温度範囲で10℃/分の走査速度で加熱/冷却/加熱サイクルで実行した。結晶化温度(Tc)は冷却段階から決定し、溶融温度(Tm)と溶融エンタルピー(Hm)は第二加熱段階から決定した。溶融エンタルピーの計算には50℃を積分下限として用いた。融解温度と結晶化温度を吸熱と発熱のピークとした。
【0046】
破断時の引張弾性率と破断張力
測定は試験片の96時間コンディショニング時間後(相対湿度50%で23℃)に行った。
引張弾性率は、EN ISO 1873-2(犬の骨形状、厚さ4mm)に記載された射出成形試料を用いてISO 527-2(クロスヘッド速度=1mm/分;23℃)に従って測定した。
破断張力は、EN ISO 1873-2(犬の骨形状、厚さ4mm)に記載された射出成形試料を用いてISO 527-2(クロスヘッド速度=50mm/分;23℃)に従って測定した。
【0047】
シャルピーノッチ衝撃強度
シャルピーノッチ衝撃強度は、EN ISO 1873-2に沿って成形した80×10×4mmテストバー射出を用いて、23℃でISO 179 1eA(23℃、50%相対湿度での96時間のコンディショニング後)に従って測定した。
密度
材料の密度はISO 1183-1に従って測定した。
【0048】
EBA及びEMAにおけるアクリル酸ブチル及びアクリル酸メチル含有量の測定
以下に、アクリル酸エチレンブチル及びアクリル酸エチレンメチルの極性コモノマー含有量の測定例を示す。質量%は計算によりmol%に変換でき、文献によく記載されている。
(1)アクリル酸ブチルを含有するエチレン共重合体
ポリマーのフィルム試料をFTIR測定のために調製した:アクリル酸エチレンブチルがアクリル酸ブチル含有量の6質量%より高い場合は0.5~0.7mm厚を用い、かつ、アクリル酸エチレンブチルがアクリル酸ブチル含有量の6質量%より低い場合は0.05~0.12mm厚を用いた。
FT-IR分析後、アクリル酸ブチルが6質量%より高い場合の3450cm-1におけるピークの最大吸光から3510cm-1でのベースラインの吸光度値を減算した(Aアクリル酸ブチル-A3510)。次に、2020cm-1でのポリエチレンピークの最大吸光度ピークから、2120cm-1でのベースラインの吸光度値を減算した(A2020-A2120)。次に、(Aアクリル酸ブチル-A3510)と(A2020-A2120)の間の比を、文献によく記載されている通常の方法で計算した。
コモノマーのブチルアクリレートが6質量%より低い場合の1165cm-1におけるピークに対する最大吸光度から1865cm-1におけるベースラインの吸光度値を減算した(Aアクリル酸ブチル-A1865)。次に、2660cm-1におけるポリエチレンピークに対する最大吸光度から1865cm-1におけるベースライン(A2660-A1865)の吸光度値を減算した。次に、(Aアクリル酸ブチル-A1865)と(A2660-A1865)の間の比を計算した。
(2)アクリル酸メチルを含むエチレン共重合体
ポリマーのフィルム試料をFTIR測定のために調製した:。アクリル酸メチル含有量に対してアクリル酸エチレンメチルが8質量%より高い場合に0.1mm厚を用い、かつ、。アクリル酸メチル含有量に対してアクリル酸エチレンメチルが8質量%より低い場合に0.05mm厚を用いた。
分析後、アクリル酸メチルが8質量%より高い場合の3455cm-1におけるピークに対する最大吸光度から3510cm-1におけるベースラインの吸光度値を減算した(Aアクリル酸メチル-A3510)。次に、2675cm-1におけるポリエチレンピークに対する最大吸光度から2450cm-1におけるベースラインの吸光度値を減算した(A2675-A2450)。次に、(Aアクリル酸メチル-A3510)と(A2675-A2450)の間の比を、文献によく記載されている従来の方法で計算した。
コモノマーのアクリル酸メチルが8質量%より高い場合の1164cm-1におけるピークに対する最大吸光度から1850cm-1におけるベースラインの吸光度値を減算した(Aアクリル酸メチル-A1850)。2665cm-1でのポリエチレンピークの最大吸光度ピークから1850cm-1でのベースラインの吸収値を減算した(A2665-A1850)。次に(Aアクリル酸メチル-A1850)と(A2665-A1850)の間の比を計算した。
【0049】
成分A中のイソタクチックポリプロピレン(iPP)、ポリスチレン(PS)、エチレン、PVC及びポリアミド-6の含有量の定量
試料調製
すべての較正試料及び分析する試料は、溶融プレス板上で同様に調製した。分析する化合物の約2~3gを190℃で溶融した後、油圧加熱プレスで20秒間60~80barを加圧した。次に、同圧力下のコールドプレスで40秒間室温まで試料を冷却して化合物の形態を制御した。プレートの厚さは、2.5cm×2.5cm,厚さ100~200μm(試料のMFRに依存)の金属較正フレームプレートによって制御した。二つのプレートを同一瞬間に同一条件で平行に作製した。各プレートの厚さをFTIR測定前に測定した。すべてのプレートの厚さは100~200μmであった。
プレート表面を制御し、測定中の干渉を避けるために、すべてのプレートを両面シリコーン剥離紙の間で押した。
粉末試料又は不均一化合物の場合は、上記と同じ条件で試料を加圧して切断することにより均一性を高めるために加圧プロセスを3回繰り返した。
分光器:
Bruker Vertex 70 FTIRスペクトロメータのような標準透過FTIRスペクトロメータを以下の設定で用いた:
4000~400cm-1のスペクトル範囲
口径6mm
スペクトル分解能2cm-1
16のバックグラウンドスキャン、16のスペクトルスキャン
32のインターフェログラム0充填係数
ノートンビールの強力なアポディゼーション
Bruker Opusソフトウェアでスペクトルを記録し分析した。
【0050】
校正試料
FTIRは二次的な方法であるため、目的とする分析範囲をカバーするために、いくつかの校正標準が複合化されており、一般的には以下のものが用いられる。
0.2~2.5質量%。-PA:
0.1~5質量%。-PS:
0.2~2.5質量%-PET用
0.1~4質量%-PVC:
化合物には、iPPとしてBorealis HC600TF,HDPEとしてBorealis FB3450,及びPET用RAMAPET N1S(Indorama Polymer)、ポリアミド6用Ultramid(登録商標)B36LN(BASF)、高衝撃ポリスチレン(HIPS)用Styrolution PS 486N(Ineos)、及びPVC Inovyn PVC 263B(粉末状)のような標的ポリマー用の市販材料を用いた。
すべての化合物は、分解を避けるために、265℃以下の温度で10分以内のHaakeニーダーで小規模に製造した。分解を最小限にするために、イルガフォス168(3000ppm)のような追加の酸化防止剤を添加した。
【0051】
較正
FTIR校正の原理は全ての成分で同じであり、板厚で割った特定のFTIRバンドの強度は同じ板上のH又は13C溶液状態NMRで決定した成分量と相関した。
各特定のFTIR吸収バンドは、その強度が成分濃度の量と共に増加し、かつ、校正標準及び実試料の組成にかかわらず、ピークの残渣からの分離のために選択した。
この方法論は、Signoret et al.“Alterations of plastic spectrum in MIR and the potential impact on identification to recycling”,Resources,conservation and Recycling journal,2020,volume161,article 104980に記載されている。
各キャリブレーションバンドの波長は、以下のとおり:
PAは3300cm-1
PSは1601cm-1
PETは1410cm-1
PVCは615cm-1
iPPは1167cm-1
各ポリマー成分iについて、線形較正(Beer-Lambert則の線形性に基づく)を構築した。このような較正に用いられる通常の線形相関を以下に示す:
【0052】
【数1】
ここで、xiは、ポリマー成分iの画分量(質量%)である。
Eiは、ポリマー成分iに関連する特定のバンドの吸光度強度(a.u.吸光度単位)である。これらの特定のバンドは、PAで3300cm-1、PSで1601cm-1、PETで1410cm-1、PVCで615cm-1、iPPで1167cm-1である。
dは試料プレートの厚さである。
AiとBiは検量線ごとに決定される2つの相関係数である。
C2リッチフラクションについては特定の孤立バンドを見つけることができず、その結果、C2リッチフラクションは間接的に推定される。
【0053】
【数2】
EVA、チョーク及びタルクの含有量は「半定量的」に推定される。したがって、これはC2リッチ含有量を「半定量的」にする。
各較正標準について、利用可能な場合には、各成分の量は、H又は13C溶液状態NMRのいずれかを主要な方法として決定する(PAを除く)。NMR測定は、FTIR較正曲線の構築に用いたのと全く同じFTIRプレート上で実施した。
較正標準は、較正曲線を作成するためにiPPとHDPEを混合することによって作成した。較正標準の膜の厚さは300μmであった。試料中のiPP,PS及びPA 6含有量の定量的IRスペクトルをBruker Vertex 70 FTIRスペクトロメータを用いて固体中に記録した。190℃,4~6mPaで圧縮成形して作製した50~100μm厚の25×25mm角フィルム上にスペクトルを記録した。標準透過FTIR分光法を、4000~400cm-1のスペクトル範囲、6mmの開口、2cm-1のスペクトル分解能、16のバックグラウンドスキャン、16のスペクトルスキャン、32のインターフェログラムゼロ充填係数及びNorton Beer強アポダイゼーションを用いて採用した。
iPPにおける1167cm-1でのバンドの吸収を測定し、iPP含有量を検量線(吸収/厚さ(cm)対iPP含有量(質量%)に従って定量した。
1601cm-1(PS)及び3300cm-1(PA6)でのバンドの吸収を測定し、PS及びPA6含有量を検量線(吸収/厚さ(cm)対PS及びPA含有量(質量%)に従って定量した。エチレン含有量は、100~iPP,PS及びPA6含有量を引くことによって得た。分析は二重決定として行った。
【0054】
タルク及びチョークの量
タルク及びチョークの量は熱質量分析(TGA)により測定した。実験はPerkin Elmer TGA 8000を用いて行った。約10~20mgの材料を白金鍋に入れた。温度を50℃で10分間平衡させ、その後、窒素下で20℃/分の加熱速度で950℃まで上げた。ca間の質量損失。CaCO3~発生するCO2には550℃と700℃(WCO2)が割り当てられ、したがってチョーク含有量を以下の通り:
チョーク含有量=100/44×WCO2
評価した。
その後、20℃/分の冷却速度で300℃まで温度を下げた。その後、ガスを酸素に切り替え、再び900℃まで温度を上げた。この段階での質量減少をカーボンブラック(Wcb)とした。カーボンブラックとチョークの含有量を知った上で、チョークとカーボンブラックを除いた灰含有量を以下の通り:
チョーク含有量=(チョーク残渣)-56/44×WCO2-Wcb
計算した。
ここで、チョーク残渣は質量%は、窒素下で実施した第一段階において900℃で測定した。チョーク含有量は、調査した再生品のタルク含有量と同じと推定される。
【0055】
紙、木材の量
紙及び木材は、フライス加工、浮選、顕微鏡及び熱質量分析(TGA)を含む従来の実験室法によって測定される。
【0056】
金属量
金属量は蛍光X線(XRF)により測定する。
【0057】
リモネンの秤取量
リモネンの量は固相微量抽出(HS-SPME-GC-MS)により定量する。
【0058】
総脂肪酸量
総脂肪酸量は固相微量抽出法(HS-SPME-GC-MS)により測定する。
【0059】
使用材料
成分(A)
パーポレンPP
パーポレンPPは、ドイツ、ニーダーゲブラのmtmプラスチックGmbH~得られるポリエチレンとポリプロピレンを含む再生ポリマー混合物である。以下の表1は、実施例で用いられるバッチの組成を示す。
表1:実施例で用いられるパーポレンPPの組成
【0060】
【表1】
パーポレンPP中の成分(a1)及び(a2)の含有量は、PS(0.1質量%)、タルク(0.7質量%)、チョークPA 6(0.2質量%)及びその他の物質を合わせて100質量%(用いたパーポレンPPのMFR(230℃)は20.9g/10分であった)。
【0061】
ジポレンS
ジポレンSは、ドイツ、ニーダーゲブラのmtmプラスチックGmbH~得たポリエチレンとポリプロピレンを含む再生ポリマー混合物である。下表2は、実施例で用いたバッチの組成を示す。
表2:実施例で用いたジポレンSの組成。
【0062】
【表2】
成分(a1)及び(a2)の含有量は、微量のPS(3.3質量%)、PA 6(0.8質量%)、タルク(0.5質量%)、チョーク(0.5質量%)及びその他の物質を加えて100質量%とする。(用いたジポレンSのMFR(190℃)は3.2g/10分、MFR(230℃)は5.3g/10分であった)。
【0063】
成分(B)
EMAはエチレンメチルアクリレート(MFR 190℃=0.5g/10分、ポリマーの総質量に基づくMA含有量=25質量%)であり、商標名Elvaloy AC1125としてDow/DuPontより市販されている。
EBA1はエチレンブチルアクリレート(MFR 190℃=0.85g/10分、ポリマーの総質量に基づくBA含有量=17質量%)であり、以下のように製造される。
新鮮なエチレンと再生されたエチレンとアクリル酸ブチルのコモノマーを二つの平行な流れで初期反応器圧力2500バールに達するように圧縮し、分割供給2ゾーン反応器の前面と側面に約17300~30400の間で変化するL/Dを供給した。コモノマーは最終ポリマー中17質量%に達する量で添加された。最終ポリマーのMFRは0.85g/10分を維持した。圧縮後、前面流は反応器の前面ゾーンに入る前に予熱セクションで151℃に加熱され、側面流は冷却され反応器の側面に入った。本質的に不活性な炭化水素溶媒に溶解した市販の過酸化物ラジカル開始剤の混合物を予熱セクションの後、反応器に沿ったもう一つの位置に、発熱重合反応がそれぞれ275℃と260℃のピーク温度に達するのに十分な量を注入し、その間を170℃に冷却した。反応混合物を圧力制御弁で減圧し、冷却し、ポリマーを未反応ガスから分離した。
EBA2は以下のようにして製造されたエチレンブチルアクリレート(EBA,MFR 190℃=4.5g/10分、BA含有量=ポリマーの総質量に対して27質量%)である。
新鮮なエチレンと再生エチレンとアクリル酸ブチルのコモノマーを二つの平行流で初期反応器圧力2500バールに達するように圧縮し、約17300~30400の間で変化するL/Dで分割供給2ゾーン反応器の前面と側面を供給した。コモノマーを、最終ポリマー中27質量%に達するまで添加した。最終ポリマーのMFRは4.5g/10分を維持した。圧縮後、前面流は反応器の前面ゾーンに入る前に予熱セクションで160℃に加熱し、側面流は冷却して反応器の側面に入れた。本質的に不活性な炭化水素溶媒に溶解した市販の過酸化物ラジカル開始剤の混合物を、予熱セクションの後、反応器に沿ったもう一つの位置に、発熱重合反応が各々275℃と275℃のピーク温度に達するのに十分な量を注入し、その間を165℃に冷却した。反応混合物を圧力制御弁で減圧し、冷却し、ポリマーを未反応ガスから分離した。
AOは、BASF(CH)から市販されているイルガノックスB 225(FF)を主に含有する市販の酸化防止剤のブレンドである。
【0064】
C.実験結果
本発明の実施例(IE1~IE15)及び比較例(CE1~CE4)によるポリマー組成物をコペリオンZSK24,L/D比40で調製した。混合中に配合温度を190~235℃にして、溶融ストランドを水浴中で凝固させ、その後ストランドをペレット化した。本発明の実施例及び比較例によるポリマー組成物中の異なる成分の量及びポリマー組成物の特性は、以下の表3~6から解析することができる。
表3:EMAを含むポリマー組成物及びその特性
【0065】
【表3】
上記の表3に示すポリマー組成物は、すべて同じ種類の再生物(パーポレンPP)を含む。CE1によるポリマー組成物は、この再生物と酸化防止剤混合物からなる。IE1はさらに5質量%のEMAを含み、IE2とIE3ではEMAの含有量がそれぞれ10質量%と20質量%に増する。表3からわかるように、EMAの含有量が増加するにつれて、ポリマー組成物の23℃でのシャルピーノッチ衝撃強度及び破断時の破断張力で表される靭性が高まる。5質量%のEMAの添加後すでに、シャルピーノッチ衝撃強度のわずかな増加と破断張力の有意な増加が観察されており、をより高含有量で用いるとシャルピーノッチ衝撃強度と破断時の破断張力が有意に高い再生系ポリマー組成物を得ることができる。
表4:EMAを含むポリマー組成物とその特性
【0066】
【表4】
表4に示すポリマー組成物は、いずれも同じ種類の再生物(ジポレンS)を含む。CE2によるポリマー組成物は、この再生物と酸化防止剤混合物からなる。IE1はさらに5質量%のEMAを含み、IE2とIE3ではEMAの含有量がそれぞれ10質量%と20質量%に増加する。表4からわかるように、EMAの含有量が増加するにつれて、ポリマー組成物の23℃におけるシャルピーノッチ衝撃強度及び破断張力で表される靭性が高まる。5質量%のEMAの添加後すでに、シャルピーノッチ衝撃強度のわずかな増加と破断張力の有意な増加が観察されており、より高含有量で用いると、シャルピーノッチ衝撃強度と破断時の破断張力に優れた再生系ポリマー組成物を得ることができる。
表5:EBAを含むポリマー組成物とその特性
【0067】
【表5】
上記の表5に示すポリマー組成物は、すべて同じ種類の再生物(パーポレンPP)を含む。CE3によるポリマー組成物は、この再生物と酸化防止剤混合物からなる。IE7はさらに5質量%のEBAを含有し、IE8とIE9ではそれぞれEBA含有量が10質量%と20質量%に増加されている。表5からわかるように、EBAの含有量が高まるにつれて、ポリマー組成物の23℃におけるシャルピーノッチ衝撃強度及び破断張力で表される靭性が高まる。5質量%の添加後すでにシャルピーノッチ衝撃強度のわずかな増加及び破断時の破断張力の有意な増加が観察されており、EBAをより高含有量で用いると、シャルピーノッチ衝撃強度と破断時の破断張力が有意に高い再生系ポリマー組成物を得ることができる。
表6:EBAを含むポリマー組成物及びその特性
【0068】
【表6】
上記の表6に示すポリマー組成物は、すべて同じタイプの再生物(ジポレンS)を含む。CE4によるポリマー組成物は、この再生物と酸化防止剤混合物からなる。IE10及びIE13にはさらに5質量%のEBAが含まれ、IE8及びIE9ではそれぞれEBAの含有量を10質量%と20質量%に増やした。IE11、IE12、IE14及びIE15についてはそれぞれ表6から得られるように、EBAの含有量が高まると、23℃での破断時のシャルピーノッチ衝撃強度及び破断張力によって表されるポリマー組成物の靭性が高まる。5質量%の添加後すでにシャルピーノッチ衝撃強度と引張強さの有意な増加が観察されており、EBAをより高含有量で用いると、シャルピーノッチ衝撃強度と破断時の破断張力に優れた再生系ポリマー組成物を得ることができる。
【国際調査報告】