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特表2024-525547フラン-2,5-ジカルボン酸の薄着色エステル化のための不均一酸化第一スズ触媒
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  • 特表-フラン-2,5-ジカルボン酸の薄着色エステル化のための不均一酸化第一スズ触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】フラン-2,5-ジカルボン酸の薄着色エステル化のための不均一酸化第一スズ触媒
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/68 20060101AFI20240705BHJP
   B01J 23/14 20060101ALI20240705BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
C07D307/68
B01J23/14 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500160
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 US2022036154
(87)【国際公開番号】W WO2023283207
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/219,127
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507303309
【氏名又は名称】アーチャー-ダニエルズ-ミッドランド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マ,チ-チェン
(72)【発明者】
【氏名】ネールコーン,エミリー
(72)【発明者】
【氏名】ステンスラッド,ケネス エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ハグバーグ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,ウィリアム シー.
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA07A
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC22A
4G169BC22B
4G169CB25
4G169CB75
4G169EA02Y
4G169EC02Y
4G169EC03Y
4G169EC29
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB30
4G169ZA01A
4G169ZD06
4G169ZF05A
4H039CA66
4H039CL25
(57)【要約】
自己触媒エステル化と比較して改良された生産性を有するが、自己触媒的に生成されるであろうFDCAジエステルモノマー生成物と比較して同等であるか又は少なくとも大きく損なわれていない色特性を有するFDCAジエステルモノマー生成物を作製するための改良されたプロセス及び触媒であって、不均一スズ(II)触媒は、特にガンマアルミナ、ゼオライト若しくはシリカなどの吸湿性担体を使用して又は炭素担体を使用して、アルコールとのFDCAのジエステルを含むエステル化生成物を作製するために用いられ、触媒は、バルク非担持形態又は担持スズ(II)触媒の形態のいずれかである、改良されたプロセス及び触媒が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラン-2,5-ジカルボン酸をエステル化するプロセスであって、反応容器中においてスズ含有不均一触媒の存在下でアルコールをフラン-2,5-ジカルボン酸と反応させて、前記エステル化のための外部触媒の非存在下であることを除いて同じ反応条件下において、同じ量の前記同じアルコールから、前記アルコールとの反応のために供給されるフラン-2,5-ジカルボン酸の1グラム当たりで生成されるであろうジエステルのその量と比較して、前記アルコールとの反応のために供給されるフラン-2,5-ジカルボン酸の1グラム当たり、少なくとも10パーセント多い、前記フラン-2,5-ジカルボン酸との前記アルコールのジエステルを生成することを含み、生成される前記ジエステルは、それにもかかわらず、前記エステル化のための外部触媒の非存在下であることを除いて同じ反応条件下において、前記フラン-2,5-ジカルボン酸を前記同じアルコールと反応させることによって生成されるであろう前記ジエステルのAPHA色より約40パーセント未満濃い回収時の前記APHA色を有する、プロセス。
【請求項2】
前記ジエステルの前記APHA色は、外部触媒の非存在下で生成される前記ジエステルの前記APHA色より約30パーセント未満濃い、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ジエステルの前記APHA色は、約20パーセント未満濃い、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ジエステルの前記APHA色は、約10パーセント未満濃い、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記スズ含有不均一触媒は、少なくとも、炭素担体上のスズを含む1つ以上の金属を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記反応が進行するにつれて水を除去することをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
水は、前記反応容器中において、前記スズ含有不均一触媒との均質混合物中で、ある量の不活性吸湿性材料を提供することにより、前記反応が進行するにつれて除去される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記不活性吸湿性材料は、アルミナ、シリカ及びゼオライトの1つ以上である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記スズ含有不均一触媒は、少なくとも、吸湿性担体上のスズを含む1つ以上の金属を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記吸湿性担体は、ガンマアルミナ、ゼオライト又はシリカである、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記反応容器中において、前記スズ含有不均一触媒との均質混合物中で、ある量の不活性吸湿性材料を提供することにより、前記反応が進行するにつれて水を除去することをさらに含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記不活性吸湿性材料は、アルミナ、シリカ及びゼオライトの1つ以上である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記スズ含有不均一触媒は、スズ(II)触媒である、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
フラン-2,5-ジカルボン酸をエステル化するプロセスであって、バルク非担持形態又は担体上のスズ(II)を含む1つ以上の金属を含む担持触媒の形態の不均一スズ(II)触媒の存在下でアルコールをフラン-2,5-ジカルボン酸と反応させることを含むプロセス。
【請求項15】
前記不均一スズ(II)触媒は、非担持酸化スズ(II)である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記触媒は、担体上の酸化スズ(II)である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記担体は、炭素担体である、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記担体は、ガンマアルミナ、ゼオライト及びシリカから選択される吸湿性担体である、請求項16に記載のプロセス。
【請求項19】
反応容器中において、前記スズ含有不均一触媒との均質混合物中で、ある量の不活性吸湿性材料を提供することにより、前記反応が進行するにつれて水を除去することをさらに含む、請求項14~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記不活性吸湿性材料は、アルミナ、シリカ及びゼオライトの1つ以上である、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
フラン-2,5-ジカルボン酸をエステル化するプロセスであって、
第1の部分エステル化工程において、外部触媒の使用なしで、アルコールをフラン-2,5-ジカルボン酸と反応させて、モノエステル及びジエステル誘導体の両方並びに未転化フラン-2,5-ジカルボン酸を含む第1のエステル化生成物を形成することと;
第2の精製エステル化工程において、バルク非担持形態又は担体上のスズ(II)を含む1つ以上の金属を含む担持触媒の形態の不均一スズ(II)触媒の存在下で、前記第1のエステル化生成物の一部又は全てを、第2の量の前記アルコールと接触させて、より多くのフラン-2,5-ジカルボン酸の前記ジエステル誘導体を形成することと
を含むプロセス。
【請求項22】
前記不均一スズ(II)触媒は、非担持酸化スズ(II)である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記触媒は、担体上の酸化スズ(II)である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
前記担体は、炭素担体である、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記担体は、ガンマアルミナ、ゼオライト又はシリカから選択される吸湿性担体である、請求項23に記載のプロセス。
【請求項26】
反応容器中において、前記スズ含有不均一触媒との均質混合物中で、ある量の不活性吸湿性材料を提供することにより、前記反応が進行するにつれて水を除去することをさらに含む、請求項21~25のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記不活性吸湿性材料は、アルミナ、シリカ及びゼオライトの1つ以上である、請求項26に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、概して、糖由来のフラン-2,5-ジカルボン酸(FDCA)のエステル化に関し、より具体的には、これらのエステル化で使用される触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
石油は、従来、一般的な高分子材料のための有機モノマー前駆体を作製するための原料の主要な供給源になっている。しかしながら、気候変動及び化石燃料源からの二酸化炭素の排出への懸念により、研究者は、従来、石油に由来するこれらのモノマーの有望な代替の開発のために、バイオベースの、したがって再生可能な資源に注目している。
【0003】
単に糖と呼ばれる場合もある炭水化物は、このようなバイオベースの代替物を構成し得る伸長した炭素鎖構成単位を提供する多様な種類の有機材料である。150年以上にわたり、科学者は、糖からポリマーを作製するための用途を含む様々な用途に糖の特性を適合させるための様々な化学的手段を模索してきた。脱水環化は、糖が特に高温及び触媒の存在下でフランベースの物質の生成を起こし得る一般的な変換である。例えば、一般的な糖であるフルクトースは、低いpHで容易に環化して、汎用的な前駆体である5-ヒドロキシメチル-2-フルフラール(以下ではHMF)を生成する。このプロセスは、スキームAに示される。
【0004】
スキームA。フルクトースからHMFへの接触脱水環化
【化1】

その独自の機能性により、HMFは、次に、他の興味深い分子実体、例えばフラン-2,5-ジメタノール(FDM)、2,5-ビスヒドロキシメチルテトラヒドロフラン(bHMTHF)、ジホルミルフラン(DFF)及び2,5-フランジカルボン酸(以下ではFDCA)に修飾され得る。
【0005】
FDCA及びそのエステル誘導体、特にメタノールとのそのジエステル誘導体(2,5-フランジカルボン酸、ジメチルエステル(FDME))は、それらの石油由来の類似物、すなわちポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリ(アルキレンテレフタレート)ポリマーの代替となり得るポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)ポリマーの生成のために最近高い関心を集めている。ポリ(アルキレンフランジカルボキシレート)ポリマーの顕著な例は、ポリ(エチレンフランジカルボキシレート)、すなわちPEF及びポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)、すなわちPTFであり、これらのポリエステルの様々なポリマー主鎖は、FDCA又はFDCAのエステル誘導体、例えばFDMEと、エチレングリコール及び1,3-プロパンジオールの様々なコモノマーとの反応によってそれぞれ得られる。FDCA又はFDCAエステルモノマーのための、石油系原料ではなく炭水化物における望ましい起源に加えて(また、FDCA又はFDCAエステルモノマーが反応される、完全にバイオベースのエチレングリコール(1,2-エタンジオール)が現在製造されており、部分的にバイオベースのPETを作製するために精製テレフタル酸と組み合わせて使用されていることも認識して)、バイオプラスチックPEFは、特に包装の分野において、石油由来の類似物PETと比べていくつかの点で優れた特性を提供することが分かっている。例えば、PEF及びPETのブレンドは、CO及びOに対する向上したバリア特性を提供し、純粋なPETより貯蔵寿命を延長し、酸化的分解を起こしやすいビールなどの製品に許容される容器を提供することができる。PEFの他の包装用途としては、高い機械的強度及びリサイクル性を有するパウチ、包装紙及び熱収縮材料を製造するために使用されるフィルムが挙げられる。
【0006】
一般に、FDCA及びFDMEなどのそのエステルの両方は、プラスチック、繊維、コーティング、接着剤、パーソナルケア製品及び潤滑剤のような多様な用途を有するポリアミド、ポリウレタン及びポリエステルの製造でテレフタル酸及びそのジエステルのそれぞれの有望な代替としてかなりの有望性を示す。
【0007】
これらの用途の多くのための商業的に許容される再生可能資源ベースのポリマーを実現する際の1つの重要な考慮事項は、ポリマーの色性能である。色又はより適切には色がないことは、食品包装、特に飲料用ボトル製造などの用途(プラスチックにおける透明性の不足又は起こり得る黄変は、認識されやすく、低品質の製品に等しくなり得る)において、対応する再生不能な類似物ではなく、FDCA及び/又はFDCAのエステルから作製されるポリマーの重要な特性である。
【0008】
米国特許第9,567,431号は、これらの糖由来の材料から好適に薄着色のポリエステルを提供するための1つの手法を規定しており、この手法は、2工程プロセスに関連し、最初にポリマー主鎖内に2,5-フランジカルボキシレート部分を有するプレポリマーが作製される。この中間生成物は、好ましくは、2つのジオールモノマー及び1つの二酸モノマーから構成されるエステルとして記載され、二酸モノマーの少なくとも一部は、2,5-FDCAを含む。次に、この第1の予備重合工程後、好適な重合条件下でプレポリマーの溶融重合が行われる。
【0009】
US’431参考文献は、第1の工程が「好ましくは約150~約220℃の範囲内、より好ましくは約180~約200℃の範囲内の温度で特定のエステル交換触媒によって触媒され、開始エステル含量が約3モル%~約1モル%の範囲に達するまで減少されるまで行われる」エステル交換工程であることが「必須」であることを示している。次に、この特定のエステル交換触媒は、重縮合の第2の工程での相互作用を回避するために除去され得るが、典型的には、予備重合工程からの生成物の精製なしでは第2の工程に含まれることが示されている。特に、スズ(IV)系触媒、好ましくは有機スズ(IV)系触媒、より好ましくはモノアルキルスズ(IV)塩、ジアルキル及びトリアルキルスズ(IV)塩並びにそれらの混合物を含むアルキルスズ(IV)塩が示され、オクチル酸スズ(II)などのスズ(II)系触媒より優れていると記載されている。好ましいエステル交換触媒は、ブチルスズ(IV)トリス(オクトエート)、ジブチルスズ(IV)ジ(オクトエート)、二酢酸ジブチルスズ(IV)、ラウリン酸ジブチルスズ(IV)、ビス(ジブチルクロロスズ(IV))オキシド、二塩化ジブチルスズ、安息香酸トリブチルスズ(IV)及び酸化ジブチルスズの1つ以上から選択される。
【0010】
第2の重縮合工程について、US’431参考文献は、この第2の工程が「特定の重縮合触媒によって触媒され、反応が穏やかな溶融条件で行われる」ことが「必須」であることを示しており、「特定の重縮合」触媒の例は、酸化スズ(II)、ジオクチル酸スズ(II)、オクチル酸ブチルスズ(II)又はシュウ酸スズ(II)などのスズ(II)塩を含む。US’431参考文献に係る好ましい触媒は、還元化合物、例えば3価リンの有機リン化合物、特にモノアルキル又はジアルキルホスフィン酸塩、亜ホスホン酸塩又は亜リン酸塩による、エステル交換触媒として使用されるスズ(IV)触媒、例えばアルキルスズ(IV)、ジアルキルスズ(IV)又はトリアルキルスズ(IV)塩の還元によって得られるスズ(II)塩である。
【0011】
しかしながら、一般に、FDCA及びFDCAエステルベースのポリマーが、テレフタル酸及びテレフタル酸エステルをベースとするものの許容される代替物としての商業的受容性のレベルを獲得するには、FDCA及び/又はFDCAエステル自体の使用に関連する望ましくない色形成により根本的に対処する必要性が依然としてある。
【0012】
テレフタル酸の再生可能な代替物としてのFDCAの商品化は、その合成及びこのような有望な用途におけるその後の使用の両方の点において、テレフタル酸と比較したFDCAのより厄介な物理的特性(例えば、多くの一般的な有機溶媒へのその限られた可溶度及びその極めて高い融点(>300℃))によっても妨げられてきた。FDCAの高い融点は、例えば、従来の溶融重合処理方法でFDCAを用いるのに困難をもたらす。エステル化などの単純な化学修飾は、所望の生成物の物理的特性に起因する障壁を克服するために、他の同様に厄介な材料に関して長い間使用されてきた。その結果、例えばそのメチルエステルを作製するため、特にそのジメチルエステル(ジメチル2,5-フランジカルボキシレート(以下ではFDME))を作製するための、メタノールによるFDCAのエステル化は、はるかに低下した融点(112℃)及び沸点(140~145℃(10トル))を有し、いくつかの一般的に使用される有機溶媒への、FDCAと比較して改善された溶解度をさらに有する、かなりより管理しやすく及び使いやすい有望なモノマーを提供するであろうと考えられている。
【0013】
残念ながら、FDCAのエステル化は、問題がないわけではない。長年にわたり、自己触媒作用によるエステル化は、多くの刊行物で実証されてきた。しかしながら、このプロセスの固有の非効率性は、好ましい対応するFDCAジエステル生成物の所望の収率を達成するために高温及び長い持続的な反応時間(並びにまた典型的には高いモル過剰のアルコール)を使用する必要性から生じる。これらの要因は、工業又は商業規模におけるFDCAのジエステルの製造の予測されるコストに大きく寄与するであろう。ブレンステッド酸触媒反応は、FDCA変換及びエステル収率を大幅に改善するが、アルコール縮合も引き起こしやすく、望ましくない低分子量エーテルをもたらす。副生成物の生成は、収率低下を表し、下流の処理を複雑にする。ルイス酸触媒が同様に提案されているが、水性マトリックス中にあるとき、望ましくないブレンステッド酸を生成する傾向から活性が限られることが多い(不安定性)。
【0014】
国際公開第2018/093413号は、FDCAから特にそのジメチルエステル、FDMEへの直接エステル化のための均一触媒としてのスズ(II)及びスズ(IV)塩の相対的性能を比較することに着目し、異なるエステル交換/予備重合に関連してUS’431参考文献と共通して、均一なスズ(IV)塩が均一なスズ(II)塩より好ましいことを見出した。FDMEの非常に良好な収率は、比較的短い反応時間後及び比較的穏やかな条件下で得られた一方、エステル化触媒としての均一なスズ塩の使用は、スズの回収のための有効な手段を必要とし、また自己触媒作用によって生成されるものより高度に着色されたFDME生成物を生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、FDCAのエステル化におけるさらなる改良も依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の概要
本発明は、ある観点から、特にガンマアルミナ、ゼオライト若しくはシリカなどの吸湿性担体を用いて又は炭素担体を用いて、アルコールとのFDCAのジエステルを含むエステル化生成物を作製するための、FDCAのエステル化で予想外によく機能する不均一スズ(II)触媒であって、バルク非担持形態又は担持スズ(II)触媒の形態のいずれかである不均一スズ(II)触媒を提供することにより、薄着色FDCAジエステルモノマー生成物に対する必要性に対処する。
【0017】
別の観点から、本発明は、反応器内の混合物中において、不均一スズ(II)触媒を含む第1の領域と、水除去若しくは水分離機能を有する少なくとも1つの材料を含む第2の下流の領域とを有する区画分けされた配置、又は不均一スズ(II)触媒を含む第1の反応器及び水除去若しくは水分離機能を有する少なくとも1つの材料を含む、第1の反応器の下流の第2の反応器中のいずれかでの、このような不均一スズ(II)触媒と、水除去又は水分離機能を有する少なくとも1つの材料との組合せ(吸湿性担体を用いた不均一スズ(II)触媒の実施形態と異なる)に関し、水除去又は水分離機能を有する少なくとも1つの材料の添加は、同じ条件下及び本発明の不均一スズ(II)触媒の存在下であるが、水分離又は水分離機能を有する少なくとも1つの材料の非存在下においてFDCAがアルコールと反応される場合と比較して、FDCAから、より高い割合のジエステル、特に2,5-ジエステルを含む、アルコールとのFDCAのエステル化生成物へのより多い転化(FDCA及びアルコールから形成されるモノエステルと比べて)に寄与する。
【0018】
さらに別の観点から、本発明は、FDCAの1つ以上のエステルを形成する方法に広く関し、FDCA含有原料は、スズ含有不均一触媒の存在下でアルコールと反応され、それにより、同じ温度において及び同じ期間にわたって自己触媒的に生成されるであろうものより、アルコールとのFDCAの対応する2,5-ジエステルの生成される量の大幅な改善が実現される一方、ASTM D1209下で決定される形成されるAPHA色が、(同様に同じ温度において及び同じ期間にわたって)自己触媒的に生成される同じ2,5-FDCAジエステル生成物のAPHA色と同等であるか又は少なくともそれを大きく超えない2,5-FDCAジエステル生成物を同時に提供し、特に好ましい実施形態では、さらなる精製又は色改善手段を必要とすることなく、改善されたAPHA色値を有する2,5-FDCAジエステル生成物を提供する。
【0019】
この方法の特定の実施形態では、本方法に使用されるスズ含有不均一触媒は、本発明に係る不均一スズ(II)触媒である。
【0020】
本方法の特定の実施形態では、本方法は、上記で要約されるような水除去又は水分離機能を有する少なくとも1つの材料と組み合わせて本発明の不均一スズ(II)触媒を使用することを含む。
【0021】
本方法の特定の実施形態では、FDCA含有原料は、固定床反応器の固定床におけるスズ含有不均一触媒の存在下でのアルコールとの反応に好適な完全液体FDCA含有原料混合物の形態であり、完全液体FDCA含有原料混合物は、FDCAの供給を外部エステル化触媒の非存在下でアルコールと最初に反応させて、アルコールとのFDCAのモノエステル及びジエステルの両方及び過剰なアルコールも含む(FDCAに加えて)完全液体FDCA含有原料混合物を提供することによって調製される。
【0022】
特定の実施形態では、FDCAの供給は、FDCAが反応されるアルコールを含む液体媒体中のFDCA固体のスラリーの形態である。
【0023】
特定の実施形態では、液体媒体は、FDCAのためのさらなる溶媒をさらに含む。
【0024】
特定の実施形態では、さらなる溶媒は、エステル化で形成されるFDCAのモノエステル又はジエステルのリサイクル部分を含む。
【0025】
特定の実施形態では、液体媒体は、FDCAが反応されるアルコールと、FDCAの生成物ジエステルのリサイクル部分との組合せから本質的になる。
【0026】
固定床反応器の固定床におけるスズ含有不均一触媒の存在下でのアルコールとの反応に好適な完全液体FDCA含有原料混合物を用いる方法の特定の他の実施形態では、完全液体FDCA含有原料混合物は、FDCAの供給をFDCAのための1つ以上の溶媒と組み合わせて、1つ以上の溶媒中のFDCAの溶液を形成することによって調製され、次に、この溶液は、アルコールとともに完全液体FDCA含有原料混合物として、固定床中のスズ含有不均一触媒を含む固定床反応器に供給され、それにより、完全液体FDCA含有原料混合物中のFDCAは、スズ含有不均一触媒の存在下でアルコールと反応されて、所定の薄着色の性質の、アルコールとのFDCAの少なくとも2,5-ジエステルを含むエステル化生成物を、同じ材料を自己触媒的に生成するのと比較して生産性の所定の向上を伴って生成する。
【0027】
完全液体FDCA含有原料(しかしながら、例えば1つ以上の選択された溶媒へのFDCAの供給の溶解によるか、又はFDCAの供給を最初にアルコールと外部エステル化触媒の非存在下で反応させることによって生成されて、(FDCAに加えて)アルコールとのFDCAのモノエステル及びジエステルの両方も含み、過剰なアルコールをさらに含む完全液体FDCA含有原料を提供する)が、スズ含有不均一触媒を含む固定床反応器にアルコールとともに供給され、次に原料中のFDCAが固定床反応器中のスズ含有不均一触媒の存在下でアルコールと反応されて、所定の薄着色の性質の、アルコールとのFDCAの少なくとも2,5-ジエステルを含むエステル化生成物を生成する特定の実施形態では、複数のこのような固定床反応器が用いられ、それにより、少なくとも1つのこのような固定床反応器(本明細書における「複数の固定床反応器」は、単一の反応容器内に複数の固定床又は活性触媒領域を含むことが理解されるであろう)を再生しながら、エステル化生成物が連続して生成され得る。
【0028】
特定の実施形態では、エステル化反応が行われる固定床反応器又は複数の反応器の前に少なくとも1つの保護床があり、それを介して、FDCA含有原料は、固定床反応器又は複数の反応器中に入る前に処理され、FDCA含有原料中に存在するフミン及び何らかの他の望ましくない有機不純物は、FDCA含有原料の残りから、溶解されたCo+2及びMn+2とともに封鎖され、その後、次に残りがアルコールと反応し、アルコールとのFDCAの少なくとも2,5-ジエステルを含むエステル化生成物を形成するために固定床反応器又は複数の反応器に供給される。フミン及び他の有機不純物は、保護床を再生するために燃焼され、溶解されたCo+2及びMn+2は、洗浄によってリサイクル及び再利用のために回収され得る。
【0029】
特定の他の実施形態では、固定床反応器又は複数の固定床反応器の前に1つ以上の保護床がなく、フミン及び他の有機不純物は、溶解されたCo+2及びMn+2と一緒に、その中に配置された不均一スズ含有触媒の再生の一環として固定床反応器又は複数の反応器から除去される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図面の簡単な説明
図1】1つの例示的な実施形態における本発明のプロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
特定の例示的な実施形態の詳細な説明
本明細書に引用される全ての特許及び非特許文献の開示は、その全体が本明細書に援用される。
【0032】
本出願で使用される際、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈上特に明示されない限り、複数形の言及を含む。「含む」という用語及びその派生語は、本明細書で使用される際、記載される特徴、要素、構成要素、群、整数及び/又は工程の存在を規定するが、他の記載されていない特徴、要素、構成要素、群、整数及び/又は工程の存在を除外しないオープンエンドの用語であることが同様に意図される。この理解は、「包含する」、「有する」という用語及びそれらの派生語など、同様の意味を有する用語にも適用される。「からなる」という用語及びその派生語は、本明細書で使用される際、記載される特徴、要素、構成要素、群、整数及び/又は工程の存在を規定するが、他の記載されていない特徴、要素、構成要素、群、整数及び/又は工程の存在を除外するクローズドな用語であることが意図される。「から本質的になる」という用語は、本明細書で使用される際、記載される特徴、要素、構成要素、群、整数及び/又は工程並びに記載される特徴、要素、構成要素、群、整数及び/又は工程の基本的及び新規な特徴に実質的に影響を与えないものの存在を規定することが意図される。本明細書で使用される際の「実質的に」、「約」及び「およそ」などの程度を表す用語は、最終的な結果が実質的に変化しないように、修飾される用語の妥当な量の逸脱(量が表される精度(有効数字)によって理解される逸脱度を超える)を意味する。これらの程度を表す用語は、逸脱が、修飾される用語の意味を否定しないであろう限り、記載される値からの少なくとも±5パーセントの逸脱を含むものと解釈されるべきである。
【0033】
特定の数値が、程度を表す用語を伴うことなく、本発明に関連する特定のパラメータを定量するために使用される場合及び特定の数値が明確に数値範囲の一部でない場合、本明細書で提供されるそれぞれのこのような特定の数値は、該当するパラメータについての広い、中間の及び狭い範囲の値についての文字通りの裏付けを提供するものと解釈されるべきであることが理解されるであろう。広い範囲は、有効数字2桁に丸められた数値±数値の60パーセントであるものとする。中間の範囲は、有効数字2桁に丸められた数値±数値の30パーセントであるものとする一方、狭い範囲は、同様に有効数字2桁までの数値±数値の15パーセントであるものとする。さらに、これらの広い、中間の及び狭い数値範囲は、特定の値だけでなく、これらの特定の値間の差にも適用されるべきである。したがって、本明細書が第1の流れについて110psiaの第1の圧力及び第2の流れについて48psia(62psiaの差)の第2の圧力を記載する場合、これらの2つの流れ間の圧力差についての広い、中間の及び狭い範囲は、それぞれ25~99psia、43~81psia及び53~71psiaであろう。
【0034】
本明細書が、本発明に関連する特定のパラメータを定量するために数値範囲を使用する場合、これらの範囲は、範囲の下限値のみを記載する請求項の限定及び範囲の上限値のみを記載する請求項の限定についての文字通りの裏付けを提供するものと解釈されるべきであることが同様に理解されるであろう。
【0035】
特に示されない限り、この節又は他の節に記載される任意の定義又は実施形態は、当業者の理解に従って好適であろう、本明細書に記載される主題の全ての実施形態及び態様に適用可能であることが意図される。
【0036】
上記に示されるように、ある観点からの本発明は、フラン-2,5-ジカルボン酸をエステル化するための改良されたプロセスに関し、このプロセスは、フラン-2,5-ジカルボン酸をスズ含有不均一触媒の存在下で1つ以上のアルコールと反応させることを含み、同じ温度において及び同じ期間にわたって自己触媒的に生成されるものより、生成され得るFDMEの量の大幅な改善を提供する一方、ASTM D1209下で決定される回収時の初期のAPHA色が、(同様に同じ温度において及び同じ期間にわたって)自己触媒的に生成されるであろうFDME生成物のAPHA色と同等であるか又は少なくともそれを大きく超えないFDME生成物を同時に提供し、特に好ましい実施形態では、APHA色は、自己触媒的に実現されるFDMEと比較して改善されたFDMEも提供する。
【0037】
特定の実施形態では、プロセス生産性の「大幅な改善」は、同じ装置中において、同じ温度で同じ時間(バッチ式若しくはセミバッチ操作モードで同じバッチ時間又は完全に連続した反応器における同じ滞留時間)にわたって同じ1つ以上のアルコールを用いて自己触媒的に生成されるものと比較した際の、反応のために供給されるFDCAの1グラム当たりで生成されるFDMEの量の少なくとも10パーセントの改善を意味するが、好ましくは少なくとも20パーセントの改善、より好ましくは反応のために供給されるFDCAの1グラム当たりで生成されるFDMEの量の少なくとも30パーセントの改善、さらにより好ましくは少なくとも40パーセントの改善を提供する。
【0038】
同様に、特定の実施形態では、得られた不均一触媒によるFDMEのAPHA色は、APHA色が、自己触媒的に形成されるFDMEのAPHA色より約40パーセント未満、好ましくは約30パーセント未満、より好ましくは約20パーセント未満、さらにより好ましくは約10パーセント未満濃い場合、自己触媒エステル化によって形成されるFDMEのAPHA色「を大きく超えない」。
【0039】
最も好ましい実施形態では、プロセス生産性及びAPHA色の両方が改善され、それにより、生成される不均一触媒によるFDMEは、エステル化触媒としての外因性の酸なしで(すなわち自己触媒的に)同じ条件下において生成されるFDMEのもの未満である、ASTM D1209によって決定されるAPHA色を有し、さらに反応のために供給されるFDCAの1グラム当たりで生成されるFDMEの量の少なくとも10パーセントの改善が実現される。
【0040】
本発明者らは、これらの目的、すなわち所与の量のFDCAからより多くのFDMEを生成する取り組みによって色が許容できないほど増加していないFDME生成物を同時に提供しながら、FDCAを所望のFDME生成物に転化する際のより高い効率が、バルク非担持形態における或いは担体上、特にガンマアルミナ、ゼオライト若しくはシリカなどの吸湿性担体上又は炭素担体上における不均一スズ(II)触媒を使用する特定の好ましい実施形態で達成され得ることを見出した。US’431参考文献及び国際公開第2018/093413号の公報を考慮して、意外にも、不均一酸化スズ(II)触媒は、本発明者らが評価した不均一スズ(IV)触媒よりかなり性能が優れていた。同様に意外にも、スズ(II)触媒の均一な性質と比べて不均一な性質は、特に生成されたFDMEの色に関してかなりの(プラスの)影響を与えることが観察された。
【0041】
これらの所望の結果を提供することが可能であることを本発明者らが見出した不均一スズ(II)触媒は、バルク非担持触媒、例えばバルク酸化スズ(II)触媒であり得、これは、典型的には、反応器に供給されるFDCAの重量を基準として0.1~10重量パーセントの充填量で用いられ、ある実施形態ではFDCAの0.5~5重量パーセントで用いられ、他の実施形態ではエステル化のために供給されるFDCAの1~2重量パーセントにおいて、典型的には少なくとも1:1~20:1以下、特に1.5:1~10:1、特定の実施形態では2:1~5:1のアルコール:FDCAモル比で典型的には140℃~220℃、他の実施形態では160℃~200℃、さらに他の実施形態では180℃~190℃の温度において用いられる。
【0042】
他の実施形態では、不均一スズ(II)触媒は、任意選択的に吸湿性の性質の担体で担持され得、例えばアルミナ、ゼオライト材料及びシリカから選択されるか又は他の実施形態では炭素担体である吸湿性担体上の酸化スズ(II)である。典型的には、担持酸化スズ(II)触媒は、担体上の0.5~10重量パーセントの酸化スズ(II)、好ましくは1~5重量パーセントを含み、より好ましくは担体上の2~3重量パーセントの酸化スズ(II)を含むであろう。
【0043】
さらに他の実施形態では、本明細書に記載されるタイプのバルク酸化スズ(II)触媒又は不均一スズ(II)触媒は、吸湿性又は非吸湿性担体のいずれの上にあるかにかかわらず、1つ以上の水除去材料(吸湿性担体上の担持スズ(II)触媒の特定の例では、好適な水除去材料は、同じ吸湿性担体であり得るが、スズ(II)触媒成分の存在がない)と組み合わせて、例えば1つ以上の水除去材料を用いる、固定床配置又は区画分けされた配置での混合物中で使用されて、FDCAの所望のジエステルを含む液相エステル化生成物混合物からエステル化で形成された水を除去し、それにより完全なエステル化、及びモノエステル又は他の可能な生成物と比較して所望のジエステルのより多い生成を促進し得る。
【0044】
ここで、図1を参照すると、本明細書に記載され、以下に例示されるバルク酸化スズ(II)触媒又は不均一スズ(II)触媒を用いて、特に所望の薄着色のFDCAの2,5-ジエステル(例えば、FDME)を作製するプロセスが、連続操作モードに適合された1つの可能な配置で概略的に示されている。
【0045】
FDCA含有原料などの供給源12からの、メタノール中の最大で30重量パーセントのFDCA、又はエステル化プロセス10の後端から回収及びリサイクルされたメタノールとのFDCAの1つ以上のモノエステル若しくはジエステル(2,5-フランジカルボン酸、ジメチルエステル(FDME)など)とメタノールとの組合せのスラリーが連続的に供給され、連続した撹拌槽反応器又は他の好適な反応容器16中の供給源14からのメタノールと組み合わされ、FDCAは、外部エステル化触媒の非存在下(すなわち、反応は、自己触媒される)において高温で及び一定時間にわたり、FDCA、FDCAのモノメチル及びジメチルエステル並びに過剰なメタノールを含む完全液体FDCA含有原料混合物18を得るのに十分な程度にメタノールと反応される。
【0046】
典型的には、容器16中の自己触媒エステル化は、約10:1~約5:1のメタノール:FDCAの全体モル比で約160℃~約200℃の温度において約60分間~約180分間の範囲の期間にわたって行われる。200℃で30分間の滞留時間及び10:1~5:1のメタノール:FDCAモル比は、99パーセント超のFDCAが、例えば、いくらかの未転化FDCA、約3:1の比率のそのジメチル及びモノメチルエステルの組合せ並びにメタノールを含む完全液体FDCA含有原料混合物18に転化されることを可能にすると予想される。
【0047】
反応器16中でメタノールの酸触媒脱水によって形成される揮発性ジメチルエーテル20が塔頂で放出され、スクラバー22によって除去される一方、不活性窒素スイープガス26を用いて、及びプロセス10から水を分離し、メタノールのリサイクル部分30を提供する分縮器28により、メタノール及び水を含む流れ24中において、水は、塔頂で望ましくは連続的に除去される。
【0048】
完全液体FDCA含有原料混合物18が、メタノール源又は供給32からのさらなるメタノールと必要に応じて組み合わされ(バルク酸化スズ(II)触媒又は本発明の不均一スズ(II)触媒とともに使用されるメタノール:FDCAモル濃度原料比は、10:1~1:1、特定の実施形態では7:1~2:1、他の実施形態では3:1~6:1、さらに他の実施形態では4:1~5:1の範囲であると想定される)、並列の配列で少なくとも複数の保護床を含む保護床領域34(プロセス10の特定の実施形態では任意選択的に省略される)に送られ、それにより1つ以上のこのような保護床がオンラインになり、使用される一方、1つ以上の他のこのような床がオフラインで再生されており、それぞれ1つ以上の安価な又は容易に再生可能な材料を用いており、その上又はその中では、フミン及び他の望ましくない有機不純物は、FDCAが生成された先行するミッドセンチュリー型酸化から引き継がれたCo+2及びMn+2と一緒に原料混合物18から捕捉され得る。これらの目的のために保護床で使用するのに好適であると予想される材料は、分子篩、アルミナ、ゼオライト材料、シリカ、炭素、ジルコニア及びチタニアを含むであろう。
【0049】
次に、FDCA含有原料36は、示される非限定的な実施形態では、例えば、バルク酸化スズ(II)触媒若しくは本発明の不均一スズ(II)触媒との混合物中において、又は固定床反応器38及び40内のバルク酸化スズ(II)触媒若しくは本発明の不均一スズ(II)触媒を含む区画分けされた配置において、固定床中にバルク酸化スズ(II)触媒又は本発明の不均一スズ(II)触媒を含み、好ましくは1つ以上の水除去材料(吸湿性担体上の担持スズ(II)触媒の特定の例では、好適な水除去材料は、同じ吸湿性担体であり得るが、スズ(II)触媒成分の存在がない)をさらに含む固定床反応器38(同じ性質の第2のオフライン固定床反応器40と並列)に供給される。ジメチルエーテルスクラバー42は、窒素乾燥及びスイープガスの供給源46からのスイープガス44によって促進される、反応器38又は40の操作中のメタノールの脱水によって生成される揮発性DMEを受け取り、それを除去するために同様に用いられる。
【0050】
不均一スズ(II)触媒は、同様に、バルク非担持触媒、例えばバルク酸化スズ(II)触媒であり得、これは、典型的には、反応器に供給されるFDCAの重量を基準として0.1~10重量パーセントの充填量で用いられ、ある実施形態ではFDCAの0.5~7重量パーセント、他の実施形態ではエステル化のために供給されるFDCAの1~5重量パーセントで用いられる。
【0051】
他の実施形態では、不均一スズ(II)触媒は、任意選択的に吸湿性の性質の担体で担持され得、例えばアルミナ、ゼオライト材料及びシリカから選択されるか又は他の実施形態では炭素担体である吸湿性担体上の酸化スズ(II)である。典型的には、担持酸化スズ(II)触媒は、担体上の0.1~10重量パーセントの酸化スズ(II)、好ましくは0.5~5重量パーセントを含み、より好ましくは担体上の2~4重量パーセントの酸化スズ(II)を含むであろう。
【0052】
連続プロセスの固定触媒床に関連して、当業者は、より小さい微粒子形態のバルク非担持酸化スズ(II)触媒が、例えば、不活性結合剤の使用により、それに関連して使用するのに望ましい機械的特性を有するより大きい粒子に集合又は凝集され得、特定の実施形態では、示されるような固定床プロセスで使用するのに特に適合された押し出し物に望ましくは成形され得ることを理解し;その結果、本明細書で使用される際の「不均一バルク非担持スズ(II)触媒」などが、バルク酸化スズ(II)微粒子を特定のプロセス形態、例えば固定触媒床で使用するためにより良好に適合させるようにバルク酸化スズ(II)微粒子及び不活性結合剤が組み合わされた組成物及び得られた集合、凝集、押し出し又は他に形成された構築物を含むべきであることが理解されるであろう。同様に、本明細書で使用される際の「担持酸化スズ(II)触媒」は、凝集体、集合体、押し出し物及び他の形成された構築物を包含するものと理解されるべきであり、特に、本明細書で担体として想定される吸湿性材料は、例えば、凝集体、集合体、押し出し物又は他の形成された構築物を提供するために不活性結合剤及び任意選択的に他の担体材料と組み合わされている。
【0053】
以下の実施例によって示されるように、反応器38及び40において、原料36中のFDCAは、そのモノエステル酸及びジエステル誘導体に実質的に定量的に転化され得、約200℃以下の妥当な温度及び約180分以下の妥当な平均滞留時間で少なくとも約60パーセント転化され、より好ましくは少なくとも約80パーセント転化され、さらにより好ましくは少なくとも約90パーセント転化され、さらにより好ましくは少なくとも99パーセント転化される。
【0054】
並列のオフライン反応器への切り替えは、典型的には、反応器(又は複数の反応器)からの水の破過時に起こり、その後、反応器中の材料の水除去機能の再生によりオンラインになり、その後、オンラインになる。
【0055】
次に、生成物混合物48は、減圧下に維持された生成物槽50に搬送され、メタノール、水、2-フロ酸メチル及びいくらかのFDMEを含む気相留分52は、生成物槽50から塔頂で引き抜かれ、その後、軽質分カラム54で蒸留されて、好ましくはFDMEボトム流れ56及び気相留分52に含まれる他の全てを含む塔頂流れ58が得られ、FDME及び何らかの残留した重質のより高い分子量の材料を含む液相留分60が生成物槽50から重質分蒸留塔62に送られ、次に凝縮性気相FDME生成物流れ64及び好ましくは液相留分60に含まれる他の全て(例えば、残留フミン)を含む重質分残渣流れ66が得られる。
【0056】
上述される特徴及び特徴の組合せの以下の非限定的な例は、本発明をまとめてさらに例示する。
【実施例
【0057】
実施例
実施例1及び2並びに比較例1
押し出し活性炭担体(Norit(登録商標)活性炭、Boston, MA)に担持された1%の酸化第一スズ(スズ(II))のペレットを最初に以下の所定のプロトコルに従って調製した。
【0058】
0.508グラムのシュウ酸スズを約15mlの2.8モル濃度の塩酸に溶解させた。溶液を、Sonaer噴霧器ノズル(Sonaer, Inc., Farmingdale, NY)及びシリンジポンプを用いて回転させながら炭素上に噴霧した。残留金属溶液を噴霧するために、噴霧デバイスを5mlの水ですすぎ、総噴霧体積を20mlにした。炭素を約30分間にわたって空気流下で回転させた。次に、材料を乾燥及び焼成のために管状炉に入れた。炉を窒素下で100℃に昇温し、20分間保持した。次に、それを350℃に昇温し、100分間保持した。次に、触媒を流動窒素下で一晩冷却させた。
【0059】
次に、ガラスに封入されたマグネチックスターラーを備えた75ccのHasteloyオートクレーブに2回の実施のそれぞれについて6グラムのFDCA及び24グラムのメタノールを充填した。第1の例では、次に1グラムの炭素担持酸化スズ(II)触媒(0.010グラムの酸化第一スズ、0.17重量パーセントのFDCA供給を提供する)を加え、第2の例では、2.5グラムの触媒を加えた(0.025グラムの酸化第一スズ、0.42重量パーセントのFDCA供給が得られる)。次に、オートクレーブを、熱電対及び圧力変換器を含む圧力ヘッドで密閉し、次に加熱ウェルに入れた。1000rpmで撹拌しながら、オートクレーブを各実施で1時間の期間にわたって200℃に加熱した(35分の昇温時間を用いる)。この時間後、容器を氷浴中でフラッシュ冷却し、温度が15℃に達したときに内容物を取り出した。
【0060】
各実施から生成された残留湿潤ケーキをアセトニトリルに溶解させ、不均一炭素担持酸化第一スズ触媒をCeliteパッドに通して真空ろ過し、回収した。次に、各ろ液を減圧下で乾燥させ、いずれの場合にもオフホワイトの粉末を得た。
【0061】
1グラムの触媒実施例についてのUPLC-PDAによる分析は、98.4%のFDCAが転化され、22.9重量%のFDMME(モノメチルエステル)、75.5重量%のFDME及び未転化FDCAを含む他の生成物の残り(1.6重量%)を含有するエステル化生成物混合物を生成することを示した。
【0062】
2.5グラムの触媒実施例についてのUPLC-PDAによる分析は、98.8%のFDCAが転化され、12.6重量%のFDMME(モノメチルエステル)、86.2重量%のFDME及び未転化FDCAを含む他の生成物の残り(1.2重量%)を含有するエステル化生成物混合物を生成することを示した。
【0063】
比較のために、同じ活性炭担体のみを用いるが、同じ条件下で酸化第一スズの存在を有さず、同じ反応プロトコルを用いる実施は、FDCAのかなり多い転化(96.4%転化された)を示したが、はるかに多いモノエステル(33.9重量%のFDMME)及びはるかに少ない所望のジエステル(62.5重量%のFDME)を、未転化FDCAを含む残り(合計で3.6重量%)とともに生成した。
【0064】
実施例3
この実施例について、押し出し活性炭担体(Norit(登録商標)活性炭、Boston, MA)に担持された1%の酸化第一スズ(スズ(II))のペレットを、以下の所定のプロトコルに従い、より長い乾燥時間以外には同様に調製した。
【0065】
0.405グラムのシュウ酸スズを約16mlの3モル濃度の塩酸に溶解させた。溶液を、Sonaer噴霧器ノズル(Sonaer, Inc., Farmingdale, NY)及びシリンジポンプを用いて回転させながら炭素上に噴霧した。残留金属溶液を噴霧するために、噴霧デバイスを5mlの水ですすぎ、総噴霧体積を20mlにした。炭素を約30分間にわたって空気流下で回転させた。次に、材料を乾燥及び焼成のために管状炉に入れた。炉を窒素下で100℃に昇温し、実施例1及び2のように20分間ではなく120分間保持した。次に、それを350℃に昇温し、さらに120分間保持した。次に、触媒を流動窒素下で一晩冷却させた。
【0066】
2.5重量パーセントの触媒実施(実施例2)について使用されるのと同じ装置及びプロトコルを使用することにより、-UPLC-PDA分析によれば-0.98重量%の未転化FDCA、13.5重量パーセントのFDMME、85.5重量パーセントのFDME及び0.02重量%のフロ酸が得られた。
【0067】
実施例4
この実施例について、5%の充填量の酸化第一スズ触媒を調製し、前の実施例と同じ押し出し活性炭並びに同じ実験装置及びプロトコルを用いて評価した。2.083グラムのシュウ酸スズを約15mlの3モル濃度の塩酸に溶解させることにより、5%の触媒を調製した。次に、6mlの12モル濃度の塩酸を加えて、酸化スズを完全に溶解させた。溶液を、同じSonaer噴霧器ノズル及びシリンジポンプを用いて回転させながら炭素上に噴霧した。残留金属溶液を噴霧するために、噴霧デバイスを水ですすいだ。炭素を約30分間にわたって空気流下で回転させた。次に、材料を乾燥及び焼成のために管状炉に入れた。炉を窒素下で100℃に昇温し、120分間保持した。次に、それを350℃に昇温し、120分間保持した。次に、触媒を流動窒素下で一晩冷却させた。
【0068】
1グラムのこのように調製された触媒(0.050グラムの酸化第一スズ又は0.83重量パーセントのFDCA供給を提供する)を前の実施例と同様にFDCAのエステル化で評価した。エステル化生成物混合物は、9.1重量%のFDMME、約90.2重量%のFDME、0.02重量%のフロ酸、微量(約30ppm)の2-ホルミル-フラン-5-カルボン酸(FFCA)及び残量の未転化FDCAを含むと決定された。
【0069】
実施例5~8
これらの実施例について、黒色粉末の形態の商用グレードのバルク非担持酸化スズ(II)(Keeling & Walker Ltd., Stoke-On-Trent, United Kingdomから入手された)を、メタノールとともにエステル化されるように供給されるFDCAの量と比べていくつかの充填量で評価した。
【0070】
ガラスに封入された磁気撹拌子を備えた75ccのParrオートクレーブに対して、6gのFDCA(20重量%)、6グラムのFDCAに対して指示される充填量のバルク酸化スズ(II)及び24gのメタノールを充填した。容器を密閉し、次に875rpmで磁気撹拌しながら、ブロック中で1時間にわたって200℃に加熱した(200度の温度になるまでの30分の昇温を含む)。この後、容器を氷浴中でフラッシュ冷却し、25℃に達したら内容物を秤量し、取り出した。残留するペーストをテトラヒドロフランに完全に溶解させ、次に減圧下で乾燥させた。次に、乾燥したエステル化生成物の組成分析を、UV検出を備えたUPLCで行った一方、比色分析(ASTM D1209によるAPHA)を、等しい体積部のイソプロパノール/アセトニトリル中6重量%の乾燥した生成物混合物の溶液を用いて行った。試験結果は、外部エステル化触媒を使用しないこと以外には同一に行われる自己触媒実施と比べて表1に示される。
【0071】
【表1】
【0072】
比較例2及び3
同じ供給業者(Keeling & Walker Ltd.)から入手されたバルク酸化スズ(IV)の2つの試料を、エステル化されるように供給されるFDCAへの5%の充填量で同じ方法において評価した。これらは、スズ酸又はメタスズ酸の形態、スズ酸化(IV)の水和形態であり、1グラム当たり35平方メートルを超える範囲の比較的大きい表面積(BET表面積)を有していた。これらの材料を用いて生成される生成物についての試験の結果が比較のために表2に示される。
【0073】
【表2】
【0074】
実施例9及び10
1つは、1グラム当たり101平方メートルのBET表面積を特徴とし(以下の表3中の触媒Aに対応する)、2つ目は、1グラム当たり161平方メートルのBET表面積を特徴とする(表3中の触媒Bに対応する)、2つの異なるガンマアルミナに担持された1%の酸化第一スズ(スズ(II))のペレットを最初に以下の所定のプロトコルに従って調製した。
【0075】
0.508グラムのシュウ酸スズを約15mlの2.8モル濃度の塩酸に溶解させた。溶液を、Sonaer噴霧器ノズル(Sonaer, Inc., Farmingdale, NY)及びシリンジポンプを用いて回転させながら、該当するアルミナ上に噴霧した。残留金属溶液を噴霧するために、噴霧デバイスを5mlの水ですすぎ、総噴霧体積を20mlにした。湿潤したアルミナを約30分間にわたって空気流下で回転させた。次に、材料を乾燥及び焼成のために管状炉に入れた。炉を窒素下で100℃に昇温し、20分間保持した。次に、それを350℃に昇温し、100分間保持した。次に、触媒を流動窒素下で一晩冷却させた。
【0076】
次に、ガラスに封入された磁気撹拌子を備えた75ccのHasteloyオートクレーブに2回の実施のそれぞれについて6グラムのFDCA及び24グラムのメタノールを充填した。いずれの場合にも、次に2.5グラムのそれぞれのアルミナ担持酸化スズ(II)触媒(0.025グラムの酸化第一スズ、0.42重量パーセントのFDCA供給を提供する)を加えた。次に、オートクレーブを、熱電対及び圧力変換器を含む圧力ヘッドで密閉し、次に加熱ウェルに入れた。1000rpmで撹拌しながら、オートクレーブを各実施で1時間の期間にわたって200℃に加熱した(35分の昇温時間を用いる)。この時間後、容器を氷浴中でフラッシュ冷却し、温度が15℃に達したときに内容物を取り出した。
【0077】
各実施から生成された残留湿潤ケーキをアセトニトリルに溶解させ、不均一炭素担持酸化第一スズ触媒をCeliteパッドに通して真空ろ過し、回収した。次に、各ろ液を減圧下で乾燥させ、いずれの場合にもオフホワイトの粉末を得た。
【0078】
UPLC-PDAによる分析により、表3中の以下の結果が得られた。
【0079】
【表3】
図1
【国際調査報告】