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特表2024-525558工具用カップリング機構及びカップリング機構を備える工具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】工具用カップリング機構及びカップリング機構を備える工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/00 20060101AFI20240705BHJP
   F16F 1/02 20060101ALI20240705BHJP
   F16F 1/06 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B25B23/00
F16F1/02 B
F16F1/06 A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024500217
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022064166
(87)【国際公開番号】W WO2023280461
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2130190-8
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】アンデション パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ホールバーグ ダニエル
【テーマコード(参考)】
3C038
3J059
【Fターム(参考)】
3C038BC02
3C038DA04
3C038EA06
3J059AB11
3J059AD04
3J059AD10
3J059BA01
(57)【要約】
工具(10)用のカップリング機構(18a、18b)であって、カップリング機構が、回転軸(24)を中心として回転可能な駆動部(20a、20b)であって、駆動プロファイル(46)を含む、駆動部(20a、20b)と、回転軸(24)を中心として回転可能な従動部(22a、22b)であって、駆動プロファイル(46)と相補的な従動プロファイル(28)を含み、従動プロファイルは、駆動部と従動部との間のトルク伝達のため結合位置(62)において駆動プロファイルと嵌合するように配置されている、従動部(22a、22b)と、駆動プロファイルが従動プロファイルと回転方向に整列していない、カップリング機構の非整列状態(56)から、駆動プロファイルが従動プロファイルと回転方向に整列しているカップリング機構の整列状態(60)に向けて、回転軸を中心とする駆動部と従動部の間の相対回転をもたらすように配置された整列機構(36a、36b)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具(10)用のカップリング機構(18a、18b)であって、
回転軸(24)を中心として回転可能な駆動部(20a、20b)であって、駆動プロファイル(46)を含む、駆動部(20a、20b)と、
前記回転軸(24)を中心として回転可能な従動部(22a、22b)であって、前記駆動プロファイル(46)と相補的な従動プロファイル(28)を含み、前記従動プロファイル(28)は、前記駆動部(20a、20b)と前記従動部(22a、22b)との間のトルク伝達のため結合位置(62)において前記駆動プロファイル(46)と嵌合するように配置されている、従動部(22a、22b)と、
前記駆動プロファイル(46)が前記従動プロファイル(28)と回転方向に整列していない、前記カップリング機構(18a、18b)の非整列状態(56)から、前記駆動プロファイル(46)が前記従動プロファイル(28)と回転方向に整列している前記カップリング機構(18a、18b)の整列状態(60)に向けて、前記回転軸(24)を中心とする前記駆動部(20a、20b)と前記従動部(22a、22b)の間の相対回転をもたらすように配置された整列機構(36a、36b)と、
を備える、カップリング機構(18a、18b)。
【請求項2】
前記整列機構(36a、36b)が、前記駆動部(20a、20b)上又は前記従動部(22a、22b)上に設けられている、請求項1に記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項3】
前記従動部(22a、22b)は、前記従動部(22a、22b)が前記駆動部(20a、20b)から分離される結合解除位置(26)から、前記駆動プロファイル(46)又は前記従動プロファイル(28)が前記回転軸(24)に沿って前記整列機構(36a、36b)と整列される中間整列位置(52)に、及び前記従動プロファイル(28)が前記駆動プロファイル(46)と嵌合する前記結合位置(62)に前記回転軸(24)に沿って前記駆動部(20a、20b)に対して移動可能である、請求項1~2の何れかに記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項4】
前記整列機構(36a、36b)が、前記整列位置(52)において前記駆動部(20a、20b)と前記従動部(22a、22b)との間で相対回転をもたらすように配置されている、請求項3に記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項5】
前記整列機構(36a、36b)がばね(40a、40b)を備える、請求項1~4の何れかに記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項6】
前記整列機構(36a、36b)が、1又は2以上の突出要素(42a、42b)を備え、前記各突出要素(42a、42b)が、前記非整列状態(56)において前記駆動プロファイル(46)又は前記従動プロファイル(28)にトルクを作用するように配置される、請求項1~5の何れかに記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項7】
前記ばね(40a、40b)が、前記1又は2以上の突出要素(42a、42b)を備え、前記各突出要素(42a、42b)が、前記回転軸(24)に対して半径方向で力を加えるように配置されている、請求項5及び6に記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項8】
前記各突出要素(42a、42b)が、前記駆動プロファイル(46)又は前記従動プロファイル(28)に接触するための丸い形状を含む、請求項6又は7に記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項9】
前記カップリング機構(18a、18b)が、複数の突出要素(42a、42b)を備える、請求項6~8の何れかに記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項10】
前記突出要素(42a、42b)が、前記回転軸(24)に対して横断する共通の平面内にある、請求項9の何れかに記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項11】
前記突出要素(42a、42b)が、前記回転軸(24)の周りに実質的に均等に分布している、請求項9又は10に記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項12】
前記駆動プロファイル(46)及び前記従動プロファイル(28)が各々、多角形形状を有する、請求項1~11の何れかに記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項13】
隣接する2つの前記突出要素(42a、42b)間の前記回転軸(24)に対する角度距離が、前記多角形形状の2つの縁部(32、50)間の前記回転軸(24)に対する角度距離に対応する、請求項11及び12に記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項14】
前記整列機構(36a)が、前記駆動部(20a)上に設けられ、前記各突出要素(42a)が、前記回転軸(24)に関して、前記駆動プロファイル(46)の多角形形状の固有の側部(48)と回転方向に整列している、請求項13に記載のカップリング機構(18a)。
【請求項15】
前記整列機構(36b)が、前記従動部(22b)上に設けられており、前記各突出要素(42b)が、前記回転軸(24)に対して前記従動プロファイル(28)の多角形形状の固有の側部(32)と回転方向に整列している、請求項13に記載のカップリング機構(18b)。
【請求項16】
請求項1~15の何れかに記載のカップリング機構(18a、18b)を備える工具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にカップリング機構に関する。詳細には、工具用のカップリング機構、及びこのようなカップリング機構を備える工具が提供される。
【背景技術】
【0002】
ナットランナのような産業用動力工具は、製造業、例えば車両製造業及び航空宇宙産業において広く使用されている。この種の動力工具は、典型的には、ワークピースと相互作用する工具ヘッドと、動力工具を操作する際にユーザによって保持される本体とを有する。本体は、代替的にロボットの一部を形成することができる。
【0003】
一部の用途では、製造プロセスにおける異なる用途に使用できる交換可能な工具ヘッドを有することが望ましい。このため、アングルヘッドなどの工具ヘッドは、本体に取り外し可能に接続することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工具ヘッドを動力工具の本体に取り付けるには、工具ヘッド内の六角従動部が、工具本体内の対応する形状の六角駆動部と六角形の面が嵌合する前に回転方向に整列させなければならない可能性がある。このことは、ユーザにとって困難な可能性があり、ユーザが常に嵌合面を遮られずに見ることができるとは限らない。また、面が正しく嵌合しない危険性もある。
【0005】
本開示の1つの目的は、工具用のカップリング機構を提供することであり、このカップリング機構により、駆動プロファイルと従動プロファイルとの嵌合を容易にすることができる。
【0006】
本開示の更なる目的は、工具用のカップリング機構を提供することであり、このカップリング機構により、駆動プロファイルと従動プロファイルとのシームレスな嵌合が可能になる。
【0007】
本開示の更なる目的は、工具用のカップリング機構を提供することであり、このカップリング機構は、複雑でない設計を有する。
【0008】
本開示の更に別の目的は、工具用のカップリング機構を提供することであり、このカップリング機構は、コスト効率のよい設計を有する。
【0009】
本開示の更なる目的は、工具用のカップリング機構を提供することであり、このカップリング機構は、信頼性の高い動作を行う。
【0010】
本開示の更なる目的は、工具用のカップリング機構を提供することであり、このカップリング機構は、前述の目的の組み合わせの幾つか又は全てを解決する。
【0011】
本開示の更なる目的は、カップリング機構を含む工具を提供することであり、この工具は、前述の目的の1つ、幾つか又は全てを解決する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様によれば、工具用のカップリング機構が提供され、カップリング機構は、回転軸を中心として回転可能な駆動部であって、該駆動部は、駆動プロファイルを含む、駆動部と;回転軸を中心として回転可能な従動部であって、該従動部は、駆動プロファイルに相補的な従動プロファイルを含み、従動プロファイルは、駆動部と従動部との間のトルク伝達のため結合位置において駆動プロファイルと嵌合するように配置されている、従動部と;駆動プロファイルが従動プロファイルと回転方向に整列していないカップリング機構の非整列状態から、駆動プロファイルが従動プロファイルと回転方向に整列しているカップリング機構の整列状態に向けて、回転軸を中心とする駆動部と従動部の間の相対回転をもたらすように配置された整列機構と、を備える。
【0013】
整列機構が駆動部及び従動部を整列状態に向けて作用するので、駆動部及び従動部が回転軸に沿って相対的に移動する間に、駆動プロファイル及び従動プロファイルが整列するようになる。このようにして、駆動プロファイル及び従動プロファイルは、これらが嵌合する際に整列される。これにより、カップリング機構は、駆動プロファイル及び従動プロファイルのシームレスな嵌合を可能にする。その結果、カップリング機構は、駆動部に対する従動部の取り付けを極めて容易にする。カップリング機構により、動力工具の工具ヘッドの交換が容易になる。
【0014】
駆動部及び従動部の一方は、シャフト等の雄型とすることができ、駆動部及び従動部の他方は、ソケット等の雌型とすることができる。駆動部は入力部とすることができ、従動部は出力部とすることができ、又はその逆とすることができる。
【0015】
整列機構は、駆動部又は従動部上に設けることができる。整列機構は、非整列状態から整列状態に向かって回転軸を中心に駆動部及び又は従動部にトルクを作用させるように構成することができる。
【0016】
従動部は、従動部が駆動部から分離される結合解除位置から、駆動プロファイル又は従動プロファイルが回転軸に沿って整列機構と整列される中間整列位置に、及び従動プロファイルが駆動プロファイルと嵌合する結合位置に回転軸に沿って駆動部に対して相対的に移動可能とすることができる。
【0017】
整列機構は、整列位置において駆動部及び従動部間の相対回転をもたらすように配置することができる。従動部を駆動部に取り付けるために、従って、従動部は、結合解除位置から、整列機構によって駆動部及び従動部が強制的に整列状態にされる整列位置、及び結合位置まで単一の連続的な軸方向移動で移動させることができる。駆動部及び従動部が、回転軸に沿って整列位置を通り互いに向かって移動されるとき、整列機構は、回転軸に沿った整列距離に沿って整列トルクを作用する。整列距離は、例えば、回転軸に沿った駆動プロファイルの長さ及び回転軸に沿った従動プロファイルの長さのうち最も短いものの長さの少なくとも30%とすることができる。整列距離により、ユーザは、駆動部及び従動部を互いに向かって連続的に移動させることができ、必ずしも駆動部及び従動部を整列状態にするために整列機構を有する必要はない。
【0018】
整列機構は、ばねを備えることができる。ばねは、例えば、圧縮コイルばねのような板ばね又はコイルばねとすることができる。
【0019】
整列機構は、1又は2以上の突出要素を備えることができ、各突出要素は、非整列状態において駆動プロファイル又は従動プロファイルにトルクを作用するように配置される。トルクは、回転軸を中心とする駆動部分と従動部分との間の比較的大きな回転変位に対しては比較的大きく、回転軸を中心とする駆動部分と従動部分との間の比較的小さな回転変位に対しては比較的小さくすることができる。
【0020】
ばねは、1又は2以上の突出要素を回転軸に対して半径方向に力を作用するように配置することができる。従って、突出要素は、ばねの変形に抗して移動するように配置することができる。或いは、突出要素は弾性とすることができる。
【0021】
カップリング機構は、回転軸に沿った駆動部及び従動部間の相対移動、例えば結合解除位置から整列位置への相対移動により、ばねの変形に抗して1又は2以上の突出要素に力を加えるように配置された面取り縁部を更に備えることができる。整列機構が駆動部上に設けられ、駆動部が雌型である場合、従動部は、少なくとも駆動部と従動部とが回転方向に整列していないときに、回転軸に沿った駆動部と従動部との間の相対移動中に、1又は2以上の突出要素を半径方向外側に押し出すように配置された面取り縁部を含むことができる。逆に、整列機構が従動部上に設けられ、駆動部が雌である場合、駆動部は、少なくとも駆動部と従動部とが回転方向に整列していないときに、回転軸に沿って駆動部と従動部との間の相対移動中に1又は2以上の突出要素を半径方向内側に押し出すように配置された面取り縁部を含むことができる。
【0022】
各突出要素は、駆動プロファイル又は従動プロファイルに接触するための丸みのある形状を含むことができる。1又は2以上の突出要素は、例えばボール又はシリンダとすることができる。
【0023】
カップリング機構は、2、4又は6つの突出要素のような複数の突出要素を備えることができる。この場合、突出要素は、回転軸を横切る共通の平面内にあることができる。代替的に又はこれに加えて、突出要素は、回転軸の周りに実質的に均等に分布することができる。カップリング機構は、(回転軸に対して)対向配置された突出要素の少なくとも1つのペアを備えることができる。
【0024】
駆動プロファイル及び従動プロファイルは各々、多角形の形状を有することができる。多角形の形状は、例えば、三角形、四角形、五角形又は六角形とすることができる。
【0025】
2つの隣接する突出要素間の回転軸に対する角度距離は、多角形形状の2つの縁部間の回転軸に対する角度距離に対応することができる。
【0026】
整列機構は、駆動部上に設けることができる。この場合、各突出要素は、回転軸に対して、駆動プロファイルの多角形形状の固有の駆動側と回転方向に対して整列させることができる。
【0027】
或いは、整列機構を従動部上に設けることもできる。この場合、各突出要素は、回転軸に対して、従動プロファイルの多角形形状の固有の従動辺と回転方向に整列させることができる。
【0028】
第2の態様によれば、本開示によるカップリング機構を含む工具が提供される。工具は、動力工具、空気圧工具又は油圧工具等の動力工具とすることができる。動力工具は、例えば、締め付け工具とすることができる。
【0029】
工具は、本体と、本体に着脱可能に取り付け可能なエンドエフェクタとを備えることができる。エンドエフェクタは、例えば、工具ヘッド又はギアアタッチメントとすることができる。駆動部は本体に設けられ、従動部はエンドエフェクタに設けることができる。
【0030】
本開示の更なる詳細、利点及び態様は、図面を参照しながら以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】カップリング機構を備えた工具の側面図を概略的に示す。
図2a】カップリング機構が結合解除位置にある第1の斜視側面図を概略的に示す。
図2b】結合解除位置にあるカップリング機構の第2斜視側面図を概略的に示す。
図3】結合解除位置にあるカップリング機構の側断面図を概略的に示す。
図4a】カップリング機構の駆動部の正面図を概略的に示す。
図4b】駆動部の正面斜視図を概略的に示す。
図5】中間整列位置にあるカップリング機構の側断面図を概略的に示す。
図6】非整列状態にあるカップリング機構の正面断面図を概略的に示す。
図7】整列状態にあるカップリング機構の正面断面図を概略的に示す。
図8】結合位置にあるカップリング機構の側断面図を概略的に示す。
図9a】結合解除位置にあるカップリング機構の別の実施例の第1の斜視側面図を概略的に示す。
図9b】結合解除位置にある図9aのカップリング機構の第2の斜視側面図を概略的に示す。
図10】結合解除位置にある図9a及び図9bのカップリング機構の側断面図を概略的に示す。
図11a図9a及び図9bのカップリング機構の従動部分の正面図を概略的に示す。
図11b図9a及び図9bのカップリング機構の従動部分の正面斜視図を概略的に示す。
図12】中間整列位置にある図9a及び図9bのカップリング機構の側断面図を概略的に示す。
図13】結合位置にある図9a及び図9bのカップリング機構の側断面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、工具用のカップリング機構、及びこのようなカップリング機構を備える工具について記載される。同一又は類似の参照数字は、同一又は類似の構造的特徴を示すために使用される。
【0033】
図1は、動力工具10の側面図を概略的に示している。動力工具10は、例えばナットランナとすることができる。動力工具10は、ハンドル14を有する本体12を備える。動力工具10は更に、本体12に着脱自在に接続された工具ヘッド16を備える。この例の工具ヘッド16はアングルヘッドである。工具ヘッド16は、代替的に、ストレートヘッドであってもよい。
【0034】
動力工具10は、カップリング機構18aを更に備える。カップリング機構18aは、駆動部20a及び従動部22aを備える。この例では、駆動部20aは本体12に設けられ、従動部22aは工具ヘッド16に設けられる。図1において、駆動部20aは、回転軸24を中心とする共通の回転のために従動部22aに接続されている。駆動部20aは、本体12の内部又は外部の動力源によって回転駆動することができる。動力源は、電気、空気圧又は油圧とすることができる。
【0035】
図2aは、カップリング機構18aの第1の斜視側面図を概略的に示し、図2bは、カップリング機構18aの第2の斜視側面図を概略的に示す。図2a及び図2bを全体的に参照すると、カップリング機構18aは、ここでは結合解除位置26にある。結合解除位置26では、駆動部20a及び従動部22aは完全に分離されている。
【0036】
この実施例では、駆動部20aはソケットであり、及び従動部22aはシャフトである。図2A及び図2Bは、従動部22a上の雄型の従動プロファイル28を示す。従動プロファイル28は、ここでは六角形プロファイルとして例示されている。すなわち、従動プロファイル28は、回転軸24に対して横方向に六角形の断面形状を有する。従動プロファイル28は、6つの従動側部30及び6つの中間従動縁部32を備える。
【0037】
この実施例の従動部22aは更に、面取り縁部34aを備える。面取り縁部34aは、従動部22aの端部(図2aにおける右端部)に配置されている。
【0038】
カップリング機構18aは、整列機構36aを更に備える。整列機構36aは、ここでは、駆動部20a上の整列セクション38aに設けられている。整列機構36aは、ばね40aと、及び複数のボール42a、ここでは回転軸24に対して対向配置された2つのボール42aを備える。ばね40aは、ここでは、駆動部20aの円筒体44を取り囲む板ばねである。ボール42aは、円筒体44の開口部に受けられる。ばね40aは、ボール42aを、円筒体44の外側から半径方向内向きにボール42aが円筒体44の内部に突出する突出位置まで押し付ける。ボール42aは、本開示による突出要素の一例である。
【0039】
図3は、結合解除位置26にあるカップリング機構18aの側断面図を概略的に示している。図3において、駆動部20aが雌型駆動プロファイル46を備えることが分かる。駆動プロファイル46は、従動プロファイル28と相補的である。従って、この実施例でも駆動プロファイル46は六角形である。駆動プロファイル46は、6つの駆動側部48と6つの中間駆動縁部50とを備える。
【0040】
図3は更に、回転軸24に沿った整列セクション38aの長さが、回転軸24に沿った駆動プロファイル46の長さにほぼ等しいことを示している。回転軸24に沿った整列セクション38aの長さは、例えば、回転軸24に沿った駆動プロファイル46の長さの少なくとも30%及び/又は150%未満とすることができる。図3は更に、ボール42aが回転軸24を横切る共通の平面内にあることを示している。
【0041】
図4aは、駆動部20aの正面図を概略的に示し、及び図4bは、駆動部20aの正面斜視図を概略的に示す。図4a及び図4bを集合的に参照すると、ボール42aは、回転軸24に対して、駆動プロファイル46の2つの反対側の駆動側48と回転方向に整列していることが分かる。図示された突出位置では、各ボール42aは、回転軸24に対して、駆動側面48と半径方向に整列している。しかしながら、ボール42aは、駆動側面48の半径方向内側に僅かに突出することができる。
【0042】
図5は、中間整列位置52におけるカップリング機構18aの側断面図を概略的に示している。整列位置52において、従動部22aは、従動プロファイル28が駆動部20aの円筒体44の整列セクション38aに入るように、回転軸24に沿って駆動部20aに向かって移動されている。従動プロファイル28は、ここで回転軸24に沿って整列機構36aと整列している。従動部22aは、整列位置52において、整列距離54aに沿って回転軸24に沿って移動する。整列距離54aの間中、従動プロファイル28は、回転軸24に沿ってボール42a及び駆動プロファイル46の間に配置される。従動部22aが整列距離54aを通って移動する間、従動プロファイル28は、本明細書で説明するように、駆動プロファイル46と回転方向に整列するようになる(まだ整列していない場合)。これにより、従動プロファイル28及び駆動プロファイル46の簡単でシームレスな嵌合が可能になる。
【0043】
図6は、非整列状態56におけるカップリング機構18aの正面断面図を概略的に示している。図6に示すように、従動プロファイル28は、駆動プロファイル46に対して回転軸24を中心に30度回転している。駆動部20aに対する従動部22aのこの回転位置では、従動プロファイル28は駆動プロファイル46に進入し嵌合することができない。
【0044】
従動プロファイル28が整列セクション38aに挿入されると、従動プロファイル28が駆動プロファイル46と回転方向に整列されていない場合、面取り縁部34aはボール42aを半径方向外向きに押し出す。直線縁部(回転軸24に対して横方向)ではなく面取り縁部34aでボール42aを押し出すことにより、非整列状態56においてボール42aの後退を確実にすることができる。これは、カップリング機構18aのより信頼性の高い動作に寄与する。
【0045】
非整列状態56では、従動プロファイル28は、整列セクション38a内のボール42aを妨げるだけである。図6に示すように、従動プロファイル28は、ばね40aの変形に抗してボール42aを半径方向外向きに押し出す。ボール42aは、従動プロファイル28との小さな接触面を提供する。このことは、駆動部20aと従動部22aとの間の、軸方向及び回転軸24に対する回転方向の相対移動の低摩擦化に寄与する。
【0046】
ばね40aは、ボール42aに復元力及び半径方向内向きの力を及ぼす。この復元力は、回転軸24(図6では時計回り)の周りで整列状態に向けて従動プロファイル28に整列トルク58を生じさせる。
【0047】
図7は、整列状態60におけるカップリング機構18aの正面断面図を概略的に示している。整列状態60において、駆動プロファイル46及び従動プロファイル28は、嵌合のために回転軸24に対して回転方向に整列される。ばね40aの動作下で、ボール42aは、従動部分22aの最小断面寸法に向けて、ここでは従動側面30の中心に向かって付勢される。ボール42aは、従動プロファイル28が駆動プロファイル46と回転方向に整列しているときに最も突出する。このようにして、整列機構36aは、非整列状態56から整列状態60に向けて、回転軸24を中心とする駆動部分20a及び従動部分22aの間の相対回転をもたらす。
【0048】
図8は、結合位置62におけるカップリング機構18aの側断面図を概略的に示している。結合位置62では、従動プロファイル28は駆動プロファイル46と嵌合している。トルクは、駆動部20aと従動部22aとの間で伝達することができる。
【0049】
図9aは、カップリング機構18bの更なる実施例の第1の斜視側面図を概略的に示し、図9bは、図9aのカップリング機構18bの第2の斜視側面図を概略的に示す。カップリング機構18bは、図1の動力工具10のカップリング機構18aを置き換えることができる。以下では、カップリング配置18aに対するカップリング配置18bの相違点を主に説明する。
【0050】
図9A及び図9Bを全体的に参照すると、カップリング機構18bは結合解除位置26にある。カップリング機構18bは、駆動部20b、従動部22b及び整列機構36bを備える。整列機構36bは、ここでは従動部22b上に設けられている。従動部22bは、従動プロファイル28の前方に位置合わせセクション38bを備える。整列機構36bは、整列セクション38bに設けられている。
【0051】
また、この実施例の整列機構36bは、2つのボール42bを備える。各ボール42bは、固有の従動縁部32と回転方向に整列している。ボール42b(中立状態)及び従動縁部32は共に、同じ半径方向延長部を有する。
【0052】
図10は、結合解除位置26にあるカップリング機構18bの側断面図を概略的に示している。図10において、整列機構36bが、ばね40bを更に備え、ここでは圧縮コイルばねとして例示されていることが分かる。ばね40bは、ここでは整列セクション38bの軸受64内に配置されている。ばね40bは、ボール42bを半径方向外向きに押し出す。
【0053】
本実施例の駆動部20bは、面取り縁部34bを備える。面取り縁部34bは、ここでは円筒体44の端部(図10では左端)に配置されている。
【0054】
図11aは、従動部22bの正面図を概略的に示し、図11bは、従動部22bの正面斜視図を示す。図11a及び図11bを全体的に参照すると、本実施例の駆動プロファイル46が駆動部20b全体を通って延びていることが分かる。従って、この実施例の駆動部20bは、整列セクションを備えていない。
【0055】
図12は、整列位置52にあるカップリング機構18bの側断面図を概略的に示している。駆動プロファイル46は、回転軸24に沿って整列機構36bと整列している。
【0056】
整列セクション38bが駆動プロファイル46に入ると、駆動部20bが従動部22bと回転方向に整列していない場合、面取り縁部34bは、ばね40bの変形に抗してボール42bを半径方向内向きに押し出す。従動部22bは、整列位置52において、整列距離54bに沿って回転軸24に沿って移動する。整列距離54bの間中、駆動プロファイル46はボール42b上に配置されるが、従動プロファイル28上には配置されない。従動部22bが整列距離54bを通って移動する間に、従動プロファイル28は、駆動プロファイル46と回転方向に整列するようになる(まだ整列していない場合)。
【0057】
整列位置52において、従動プロファイル28が駆動プロファイル46と整列していない場合、ボール42bは駆動側面48によって半径方向内向きに押し出される。このようにして、整列機構36bは、非整列状態56から整列状態60に向けて、回転軸24を中心とする駆動部20b及び従動部22bの間の相対回転をもたらす。
【0058】
図13は、結合位置62にあるカップリング機構18bの側断面図を概略的に示している。駆動部20bは今や従動部22bと回転方向に整列しており、駆動プロファイル46は駆動部20bと従動部22bとの間のトルク伝達のために従動プロファイル28と嵌合している。
【0059】
本開示は例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、本発明は上述したものに限定されないことが理解されよう。例えば、部品の寸法は必要に応じて変えてもよいことが理解されよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定され得ることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
18a、18b カップリング機構
20a、20b 駆動部
22a、22b 従動部
24 回転軸
28 従動プロファイル
36a、36b 整列機構
46 駆動プロファイル
56 非整列状態
60 整列状態
62 結合位置
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
図11a
図11b
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具(10)用のカップリング機構(18a、18b)であって、
回転軸(24)を中心として回転可能な駆動部(20a、20b)であって、前記駆動部(20a、20b)は駆動プロファイル(46)を含む、駆動部(20a、20b)と、
前記回転軸(24)を中心として回転可能な従動部(22a、22b)であって、前記従動部(22a、22b)は前記駆動プロファイル(46)と相補的な従動プロファイル(28)を含み、前記従動プロファイル(28)は、前記駆動部(20a、20b)と前記従動部(22a、22b)との間のトルク伝達のため結合位置(62)において前記駆動プロファイル(46)と嵌合するように配置されている、従動部(22a、22b)と、
前記回転軸に沿った前記駆動部と前記従動部との相対移動中に、前記駆動プロファイル(46)が前記従動プロファイル(28)と回転方向に整列していない、前記カップリング機構(18a、18b)の非整列状態(56)から、前記駆動プロファイル(46)が前記従動プロファイル(28)と回転方向に整列している前記カップリング機構(18a、18b)の整列状態(60)に向けて、前記回転軸(24)を中心とする前記駆動部(20a、20b)と前記従動部(22a、22b)の間の相対回転をもたらすように配置された整列機構(36a、36b)と、を備え、
前記整列機構(36a、36b)が、1又は2以上の突出要素(42a、42b)を備え、前記各突出要素(42a、42b)が、前記非整列状態(56)において前記駆動プロファイル(46)又は前記従動プロファイル(28)にトルクを作用するように配置される、
前記整列機構(36a、36b)がばね(40a、40b)を備え、前記突出要素は前記ばねの変形に抗して移動するように配置され、前記ばね(40a、40b)が、前記1又は2以上の突出要素(42a、42b)を前記回転軸(24)に対して半径方向で力を加えるように配置されている、カップリング機構(18a、18b)。
【請求項2】
前記整列機構(36a、36b)が、前記駆動部(20a、20b)上又は前記従動部(22a、22b)上に設けられている、請求項1に記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項3】
前記従動部(22a、22b)は、
前記従動部(22a、22b)が前記駆動部(20a、20b)から分離される結合解除位置(26)から、
前記駆動プロファイル(46)又は前記従動プロファイル(28)が前記回転軸(24)に沿って前記整列機構(36a、36b)と整列される中間整列位置(52)、及び、前記従動プロファイル(28)が前記駆動プロファイル(46)と嵌合する前記結合位置(62)に、
前記回転軸(24)に沿って前記駆動部(20a、20b)に対して移動可能である、請求項1に記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項4】
前記整列機構(36a、36b)が、前記整列位置(52)において前記駆動部(20a、20b)と前記従動部(22a、22b)との間で相対回転をもたらすように配置されている、請求項3に記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項5】
前記各突出要素(42a、42b)が、前記駆動プロファイル(46)又は前記従動プロファイル(28)に接触するための丸い形状を含む、請求項1に記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項6】
前記カップリング機構(18a、18b)が、複数の突出要素(42a、42b)を備える、請求項1に記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項7】
前記突出要素(42a、42b)が、前記回転軸(24)に対して横断する共通の平面内にある、請求項6の何れかに記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項8】
前記突出要素(42a、42b)が、前記回転軸(24)の周りに実質的に均等に分布している、請求項6又は7に記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項9】
前記駆動プロファイル(46)及び前記従動プロファイル(28)が各々、多角形形状を有する、請求項1に記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項10】
隣接する2つの前記突出要素(42a、42b)間の前記回転軸(24)に対する角度距離が、前記多角形形状の2つの縁部(32、50)間の前記回転軸(24)に対する角度距離に対応する、請求項8を引用する請求項9に記載のカップリング機構(18a、18b)。
【請求項11】
前記整列機構(36a)が、前記駆動部(20a)上に設けられ、前記各突出要素(42a)が、前記回転軸(24)に関して、前記駆動プロファイル(46)の多角形形状の固有の側部(48)と回転方向に整列している、請求項10に記載のカップリング機構(18a)。
【請求項12】
前記整列機構(36b)が、前記従動部(22b)上に設けられており、前記各突出要素(42b)が、前記回転軸(24)に対して前記従動プロファイル(28)の多角形形状の固有の側部(32)と回転方向に整列している、請求項10に記載のカップリング機構(18b)。
【請求項13】
請求項1~12の何れかに記載のカップリング機構(18a、18b)を備える工具(10)。
【国際調査報告】