(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】PD‐1抗体の医薬組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240705BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240705BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240705BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240705BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240705BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240705BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240705BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240705BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
A61K39/395 M
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/04
A61P35/02
A61K47/26
A61K47/12
A61K9/08
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500249
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 US2022034493
(87)【国際公開番号】W WO2023283049
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504438727
【氏名又は名称】マクロジェニクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100123858
【氏名又は名称】磯田 志郎
(72)【発明者】
【氏名】サンパスクマール,クリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】バーク,スティーブン,ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076CC27
4C076DD09Q
4C076DD41Q
4C076DD67Q
4C076EE23Q
4C076FF36
4C076FF61
4C076FF63
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE07
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA45
(57)【要約】
本開示は、保管及び投与のための、ヒトPD‐1(「hPD‐1」)抗体(「レチファンリマブ(retifanlimab)」)及び緩衝剤を含む医薬組成物を提供する。本開示は更に、上記医薬組成物を含む容器及びキットを提供する。本発明は更に、レチファンリマブを含有する上記医薬組成物、容器、及びキットの、癌の治療、及び特定の態様ではPD‐L1を発現する癌の治療における使用を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)約10mg/mL~約100mg/mLのレチファンリマブ;
b)酢酸塩;
c)スクロース;
d)ポリソルベート80(「PS80」);及び
e)水
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記酢酸塩は約5mM~約30mMの濃度で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記酢酸塩は酢酸ナトリウムを含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物は:
a)約5mM~約30mMの酢酸塩、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.02mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHは約4.0~約6.5である;
b)約7.5mM~約20mMの酢酸塩、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHは約4.0~約6.5である;
c)約9mM~約11mMの酢酸塩、約76mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.53mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHは約4.5~約5.7である;又は
d)約9mM~約11mMの酢酸塩、約80mg/mL~約100mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.15mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHは約4.5~約5.7である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記レチファンリマブは約20mg/mL~約30mg/mLの濃度で存在する、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記レチファンリマブは約25mg/mLの濃度で存在する、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記酢酸塩は、約0.05mg/mL~約0.35mg/mLの濃度の氷酢酸と約0.80mg/mL~約2.0mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記酢酸塩は、0.18mg/mLの濃度の氷酢酸と約0.95mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記スクロースは約80mg/mL~約100mg/mLの濃度で存在する、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記スクロースは約90mg/mLの濃度で存在する、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記PS80は約0.08mg/mL~約0.15mg/mLの濃度で存在する、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記PS80は約0.1mg/mLの濃度で存在する、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物のpHは約4.5~約5.7である、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物のpHは約5.1である、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物は、約25mg/mLのレチファンリマブ、約0.18mg/mLの氷酢酸、約0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHは約4.8~約5.4である、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月の貯蔵寿命を有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物は、約2℃~約8℃で約24か月の貯蔵寿命を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記組成物は、約2℃~約8℃で約36か月の貯蔵寿命を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記組成物は、約2℃~約8℃で約48か月の貯蔵寿命を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記組成物は、約2℃~約8℃で約60か月の貯蔵寿命を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記組成物の重量オスモル濃度は約200~約400mOsm/kg・H
2Oである、請求項1~20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記組成物の重量オスモル濃度は約225~約400mOsm/kg・H
2Oである、請求項1~21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記組成物の重量オスモル濃度は約250~約375mOsm/kg・H
2Oである、請求項1~21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記組成物の重量オスモル濃度は約260~約340mOsm/kg・H
2Oである、請求項1~23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記組成物は、前記レチファンリマブの単量体純度を、25℃で少なくとも約3か月にわたって維持する、請求項1~24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記組成物は、前記レチファンリマブの単量体純度を、2℃~約8℃で少なくとも約18か月にわたって維持する、請求項1~24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記組成物は、前記レチファンリマブの不均質性プロファイルを25℃で少なくとも約3か月にわたって維持する、請求項1~26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記組成物は、前記レチファンリマブの不均質性プロファイルを約2℃~約8℃で少なくとも約18か月にわたって維持する、請求項1~27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記水は、滅菌された非発熱性蒸留水である、請求項1~28のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記組成物は滅菌されている、請求項1~29のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか1項に記載の医薬組成物を含む、容器であって、
前記容器は、約10mLの体積の前記医薬組成物を含む、容器。
【請求項32】
前記約10mLの体積の前記医薬組成物は:
a)約250mgのレチファンリマブ;
b)約1.8mgの氷酢酸;
c)約9.5mgの酢酸ナトリウム三水和物;
d)約900mgのスクロース;
e)約1mgのPS80;及び
f)水
を含み、
前記組成物のpHは約4.8~約5.4である、請求項31に記載の容器。
【請求項33】
請求項1~30のいずれか1項に記載の医薬組成物を含む、容器であって、
前記容器は、約15mLの体積の前記医薬組成物を含む、容器。
【請求項34】
前記約15mLの体積の前記医薬組成物は:
a)約375mgのレチファンリマブ;
b)約2.7mgの氷酢酸;
c)約14.25mgの酢酸ナトリウム三水和物;
d)約1350mgのスクロース;
e)約1.5mgのPS80;及び
f)水
を含み、
前記組成物のpHは約4.8~約5.4である、請求項33に記載の容器。
【請求項35】
請求項1~30のいずれか1項に記載の医薬組成物を含む、容器であって、
前記容器は、約20mLの体積の前記医薬組成物を含む、容器。
【請求項36】
前記約20mLの体積の前記医薬組成物は:
a)約500mgのレチファンリマブ;
b)約3.6mgの氷酢酸;
c)約19mgの酢酸ナトリウム三水和物;
d)約1800mgのスクロース;
e)約2mgのPS80;及び
f)水
を含み、
前記組成物のpHは約4.8~約5.4である、請求項35に記載の容器。
【請求項37】
請求項1~30のいずれか1項に記載の医薬組成物、又は請求項31~36のいずれか1項に記載の容器を含み、また任意に、前記医薬組成物を必要とする被験者に前記医薬組成物を投与するための説明書を更に含む、キット。
【請求項38】
医薬組成物を含む容器であって、前記組成物は:
a)約21mg/mL~約29mg/mLのレチファンリマブ、約0.16mg/mL~約0.20mg/mLの氷酢酸、約0.86mg/mL~約1.1mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約76mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.53mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHが約4.5~約5.7である;又は
b)約22.5mg/mL~約27.5mg/mLのレチファンリマブ、約0.16mg/mL~約0.20mg/mLの氷酢酸、約0.86mg/mL~約1.1mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約76mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.53mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHが約4.5~約5.7である;又は
c)約250mgのレチファンリマブ、約1.8mgの氷酢酸、約9.5mgの酢酸ナトリウム三水和物、約900mgのスクロース、約1mgのPS80を含み、前記組成物のpHが約4.8~約5.4である;又は
d)約375mgのレチファンリマブ、約2.7mgの氷酢酸、約14.25mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1350mgのスクロース、約1.5mgのPS80を含み、前記組成物のpHが約4.8~約5.4である;又は
e)約500mgのレチファンリマブ、約3.6mgの氷酢酸、約19mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1800mgのスクロース、約2mgのPS80を含み、前記組成物のpHが約4.8~約5.4である、容器と、
任意に、前記医薬組成物を必要とする被験者に前記医薬組成物を投与するための説明書と
を含む、キット。
【請求項39】
前記組成物は、約25mg/mLのレチファンリマブ、約0.18mg/mLの氷酢酸、約0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHは約4.8~約5.4である、請求項37又は38に記載のキット。
【請求項40】
前記組成物は、約250mgのレチファンリマブ、約1.8mgの氷酢酸、約9.5mgの酢酸ナトリウム三水和物、約900mgのスクロース、約1mgのPS80を含み、前記組成物のpHは約4.8~約5.4である、請求項37又は38に記載のキット。
【請求項41】
前記組成物は、約375mgのレチファンリマブ、約2.7mgの氷酢酸、約14.25mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1350mgのスクロース、約1.5mgのPS80を含み、前記組成物のpHは約4.8~約5.4である、請求項37又は38に記載のキット。
【請求項42】
前記組成物は、約500mgのレチファンリマブ、約3.6mgの氷酢酸、約19mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1800mgのスクロース、約2mgのPS80を含み、前記組成物のpHは約4.8~約5.4である、請求項37又は38に記載のキット。
【請求項43】
請求項1~30のいずれか1項に記載の医薬組成物、又は請求項31~36のいずれか1項に記載の容器、又は請求項37~42のいずれか1項に記載のキットを含み、また任意に、前記医薬組成物を必要とする被験者に前記医薬組成物を投与するための説明書を更に含む、密封パッケージ。
【請求項44】
請求項1~30のいずれか1項に記載の医薬組成物、請求項31~36のいずれか1項に記載の容器、請求項37~42のいずれか1項に記載のキット、又は請求項43に記載の密封パッケージを用いて、癌の治療を必要とする患者にレチファンリマブを投与するステップを含む、癌を治療する方法。
【請求項45】
前記方法は:
a)前記医薬組成物を、容器内において0.9%の塩化ナトリウム中で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)前記容器を反転させて、希釈された前記溶液を混合するステップ;及び
c)前記投薬用溶液を内包した前記容器を、前記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記容器は、0.9%の塩化ナトリウムを内包したIVバッグである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記方法は:
a)前記医薬組成物を、容器内において水中の5%のデキストロース(D5W)中で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)前記容器を反転させて、希釈された前記溶液を混合するステップ;及び
c)前記投薬用溶液を内包した前記容器を、前記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記容器は、5%のD5Wを内包したIVバッグである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
癌の治療を必要とする被験者の癌の治療のための薬剤を製造するための、請求項1~30のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項50】
癌の治療を必要とする被験者の癌の治療のための、請求項1~30のいずれか1項に記載の医薬組成物、請求項31~36のいずれか1項に記載の容器、請求項37~42のいずれか1項に記載のキット、又は請求項43に記載の密封パッケージの使用。
【請求項51】
前記使用は:
a)前記医薬組成物を、容器内において0.9%の塩化ナトリウム中で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)前記容器を反転させて、希釈された前記溶液を混合するステップ;及び
c)前記投薬用溶液を内包した前記容器を、前記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む、請求項49又は50に記載の使用。
【請求項52】
前記容器は、0.9%の塩化ナトリウムを内包したIVバッグである、請求項51に記載の使用。
【請求項53】
前記使用は:
a)前記医薬組成物を、容器内においてD5W中で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)前記容器を反転させて、希釈された前記溶液を混合するステップ;及び
c)前記投薬用溶液を内包した前記容器を、前記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む、請求項49又は50に記載の使用。
【請求項54】
前記容器は、D5Wを内包したIVバッグである、請求項53に記載の使用。
【請求項55】
前記投薬用溶液は、前記レチファンリマブの単量体純度を、25℃で約6時間にわたって又は約2℃~約8℃で約24時間にわたって維持する、請求項44~48のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~54のいずれか1項に記載の使用。
【請求項56】
前記投与は、少なくとも約30分にわたるIV注入によるものである、請求項44~48若しくは55のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~55のいずれか1項に記載の使用。
【請求項57】
前記投与は、少なくとも約60分にわたるIV注入によるものである、請求項44~48若しくは55のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~56のいずれか1項に記載の使用。
【請求項58】
前記医薬組成物を希釈して約375mgの一律用量を得る、請求項44~48若しくは55~57のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~57のいずれか1項に記載の使用。
【請求項59】
前記医薬組成物を希釈して約500mgの一律用量を得る、請求項44~48若しくは55~57のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~57のいずれか1項に記載の使用。
【請求項60】
前記投薬用溶液の投与は2週間毎に1回である、請求項44~48若しくは55~59のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~59のいずれか1項に記載の使用。
【請求項61】
前記投薬用溶液の投与は3週間毎に1回である、請求項44~48若しくは55~59のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~59のいずれか1項に記載の使用。
【請求項62】
前記投薬用溶液の投与は4週間毎に1回である、請求項44~48若しくは55~59のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~59のいずれか1項に記載の使用。
【請求項63】
前記癌はPD‐L1を発現する、請求項44~48若しくは55~62のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~62のいずれか1項に記載の使用。
【請求項64】
前記癌は:副腎癌、エイズ関連癌、胞巣状軟部肉腫、肛門癌、肛門管扁平上皮癌(SCAC)、膀胱癌、骨癌、脳及び脊髄癌、乳癌、HER2
+乳癌又はトリプルネガティブ乳癌(TNBC)、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、HPV関連子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣腫、子宮内膜癌、選択されていない子宮内膜癌、MSI‐high子宮内膜癌、dMMR子宮内膜癌、DNAポリメラーゼε(POLE)エキソヌクレアーゼドメイン変異ポジティブ子宮内膜癌、ユーイング肉腫、骨格外粘液型軟骨肉腫、胆嚢又は胆管癌(bile duct cancer)、胆管癌(cholangiocarcinoma)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部(GEJ)癌、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、神経膠腫、膠芽腫、頭頸部癌、頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、血液悪性腫瘍、肝細胞癌、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、腎細胞癌(RCC)、明細胞RRC、乳頭状RCC、及び嫌色素性RCC、白血病、急性骨髄性白血病、脂肪肉腫/悪性脂肪腫性腫瘍、肝臓癌、肝細胞癌(HCC)、リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、肺癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、髄芽腫、黒色腫、ブドウ膜黒色腫、髄膜腫、中皮腫、中皮咽頭癌、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、甲状腺乳頭癌、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)、後部ブドウ膜黒色腫、腎転移癌、ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、メルケル細胞癌、小児期の小円形青色細胞腫瘍、神経芽腫、横紋筋肉腫、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌(stomach cancer)、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺癌、尿路上皮癌、並びに子宮癌からなる群から選択される、請求項44~48若しくは55~63のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~63のいずれか1項に記載の使用。
【請求項65】
前記癌は、肛門癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胃癌、GEJ癌、頭頸部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、及び尿路上皮癌である、請求項64に記載の方法、又は請求項64に記載の使用。
【請求項66】
前記癌はSCACである、請求項64若しくは65に記載の方法、又は請求項64若しくは65に記載の使用。
【請求項67】
前記肺癌はNSCLCである、請求項64若しくは65に記載の方法、又は請求項64若しくは65に記載の使用。
【請求項68】
前記子宮内膜癌はMSI‐high子宮内膜癌、dMMR子宮内膜癌、又はPOLEエキソヌクレアーゼドメイン変異ポジティブ子宮内膜癌である、請求項64若しくは65に記載の方法、又は請求項64若しくは65に記載の使用。
【請求項69】
前記皮膚癌は黒色腫又はメルケル細胞癌である、請求項64若しくは65に記載の方法、又は請求項64若しくは65に記載の使用。
【請求項70】
前記頭頸部癌はSCCHNである、請求項64若しくは65に記載の方法、又は請求項64若しくは65に記載の使用。
【請求項71】
前記前立腺癌はmCRPCである、請求項64若しくは65に記載の方法、又は請求項64若しくは65に記載の使用。
【請求項72】
前記腎臓癌はRCC又は明細胞RCCである、請求項64若しくは65に記載の方法、又は請求項64若しくは65に記載の使用。
【請求項73】
前記癌は尿路上皮癌である、請求項64若しくは65に記載の方法、又は請求項64若しくは65に記載の使用。
【請求項74】
前記被験者はヒト被験者である、請求項44~48若しくは55~73のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~73のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許出願第63/220006号(2021年7月9日出願;係属中)に対する優先権を主張するものであり、上記出願は参照によりその全体が本出願に援用される。
【0002】
配列表の参照
本出願は、連邦規則法典第37巻第1.821節以下による1つ以上の配列表を含み、これらの配列表は本明細書で開示される。
【0003】
本開示は、保管及び投与のための、抗ヒトPD‐1(「hPD‐1」)抗体(「レチファンリマブ(retifanlimab)」)及び緩衝剤を含む医薬組成物を提供する。本開示は更に、上記医薬組成物を含む容器及びキットを提供する。本発明は更に、レチファンリマブを含有する上記医薬組成物、容器、及びキットの、癌の治療、及び特定の態様ではPD‐L1を発現する癌の治療のための使用を提供する。
【背景技術】
【0004】
プログラム細胞死‐1(「PD‐1」、「CD279」としても公知)は、活性化されたT細胞、B細胞及び単球の表面で発現される免疫チェックポイントタンパク質である。PD‐1は、膜貫通タンパク質リガンド:プログラム細胞死‐リガンド1(「PD‐L1」、「B7‐H1」としても公知)及びプログラム細胞死‐リガンド2(「PD‐L2」、「B7‐DC」としても公知)に結合することによって、その免疫系の阻害を仲介する。通常の状況では、免疫チェックポイントタンパク質は、T細胞の過剰活性化を阻害するための作用標的として機能し、従って自己免疫損傷を防止する役割を果たす。しかしながら、そのリガンドが腫瘍細胞によって発現される場合、そのリガンドへの結合は、免疫系細胞が腫瘍に接近するのを防止するよう機能し、従って免疫系の、腫瘍細胞を認識して破壊する能力を弱める。従って、腫瘍細胞でのPD‐L1の過剰発現は多くの場合、不良な予後と関連付けられる。PD‐1リガンドの相互作用の、T細胞の活性化及び増殖を阻害する役割は、これらの生体分子が炎症及び癌の治療のための治療標的として機能し得ることを示唆している。よって、感染症及び腫瘍を治療するため、並びに適応免疫応答を上方制御するための、PD‐1及びそのリガンド、特にPD‐L1に対する抗体の使用が提案されている。PD‐1及びPD‐L1に特異的に結合できる抗体が報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、低レベルのPD‐L1を発現する腫瘍を有する患者又は他のPD‐1治療に失敗した患者を含む、PD‐L1を発現する腫瘍を有する患者のための、抗体組成物の開発のためには、満たされていない需要が残っている。本開示は、以下に説明されているように、この需要及び他の需要に直接的に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、本開示は、保管及び投与のための、抗ヒトPD‐1(hPD‐1)」)抗体(「レチファンリマブ」)及び緩衝剤を含む医薬組成物を提供する。本開示は更に、上記医薬組成物を含む容器及びキットを提供する。本開示は更に、レチファンリマブを含有する上記医薬組成物、容器、及びキットの、例えば治療有効量又は予防有効量のレチファンリマブによる癌の治療、及び特定の実施形態ではPD‐L1を発現する癌の治療のための使用を提供する。
【0007】
一実施形態では、本開示は、レチファンリマブ、酢酸塩、スクロース、ポリソルベート80(「PS80」)、及び水を含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、本開示は、上記酢酸塩が約5mM~約30mMの濃度で存在する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、上記酢酸塩が酢酸ナトリウムを含む、又は上記酢酸塩が氷酢酸及び酢酸ナトリウムを含む、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0008】
本開示は更に、上記組成物が:
a)約5mM~約30mMの酢酸塩、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.02mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.0~約6.5である;又は
b)約7.5mM~約20mMの酢酸塩、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.0~約6.5である;又は
c)約9mM~約11mMの酢酸塩、約76mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.53mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.5~約5.7である;又は
d)約9mM~約11mMの酢酸塩、約80mg/mL~約100mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.15mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.5~約5.7である、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0009】
本開示は、レチファンリマブが約10mg/mL~約100mg/mLの濃度で存在する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、レチファンリマブが約20mg/mL~約30mg/mLの濃度で存在する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、レチファンリマブが約25mg/mLの濃度で存在する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0010】
本開示は、上記酢酸塩が約0.05mg/mL~約0.35mg/mLの濃度の氷酢酸と約0.80mg/mL~約2.0mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、上記酢酸塩が約0.18mg/mLの濃度の氷酢酸と約0.95mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0011】
本開示は、上記スクロースが約80mg/mL~約100mg/mLの濃度で存在する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、上記スクロースが約90mg/mLの濃度で存在する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0012】
本開示は、上記PS80が約0.08mg/mL~約0.15mg/mLの濃度で存在する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、上記PS80の上記濃度が約0.1mg/mLである、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0013】
本開示は、上記組成物のpHが約4.5~約5.7である、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、上記組成物のpHが約5.1である、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0014】
本開示は、上記組成物が、約25mg/mLのレチファンリマブ、約0.18mg/mLの氷酢酸、約0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.8~約5.4である、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0015】
本開示は、上記組成物が約2℃~約8℃で少なくとも約18か月の貯蔵寿命を有する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、上記組成物が約2℃~約8℃で約24か月の貯蔵寿命を有する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、上記組成物が約2℃~約8℃で約36か月の貯蔵寿命を有する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、上記組成物が約2℃~約8℃で約48か月の貯蔵寿命を有する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、上記組成物が約2℃~約8℃で約60か月の貯蔵寿命を有する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0016】
本開示は、上記組成物の重量オスモル濃度が約200~約400mOsm/kg・H2Oである、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、上記組成物の重量オスモル濃度が約225~約400mOsm/kg・H2Oである、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、上記組成物の重量オスモル濃度が約250~約375mOsm/kg・H2Oである、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、上記組成物の重量オスモル濃度が約260~約340mOsm/kg・H2Oである、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0017】
本開示は、上記組成物が上記レチファンリマブの単量体純度を約25℃で少なくとも約3か月にわたって維持する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、上記組成物が上記レチファンリマブの単量体純度を約2℃~約8℃で少なくとも約18か月にわたって維持する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0018】
本開示は、上記組成物が上記レチファンリマブの不均質性プロファイルを25℃で少なくとも約3か月にわたって維持する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本開示は更に、上記組成物が上記レチファンリマブの不均質性プロファイルを約2℃~約8℃で少なくとも約18か月にわたって維持する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0019】
本開示は更に、上記水が滅菌された非発熱性蒸留水である、本明細書で開示されている医薬組成物のいずれかの実施形態を提供する。
【0020】
本開示は更に、上記医薬組成物が滅菌されている、本明細書で開示されている医薬組成物のいずれかの実施形態を提供する。
【0021】
本開示は更に、本明細書で開示される医薬組成物のいずれかを含む容器を提供し、ここで、上記容器は約10mLの体積、約15mLの体積、又は約20mLの体積の上記医薬組成物を含む。
【0022】
本開示は更に、上記医薬組成物が抗酸化剤を含まない、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0023】
本開示は、上記約10mLの体積の上記医薬組成物が:(a)約250mgのレチファンリマブ;(b)約1.8mgの氷酢酸;(c)約9.5mgの酢酸ナトリウム三水和物;(d)約900mgのスクロース;(e)約1mgのPS80;及び(f)水を含み;上記組成物のpHが約4.8~約5.4である、上記容器の実施形態を提供する。
【0024】
本開示は更に、上記約15mLの体積の上記医薬組成物が:(a)約375mgのレチファンリマブ;(b)約2.7mgの氷酢酸;(c)約14.25mgの酢酸ナトリウム三水和物;(d)約1350mgのスクロース;(e)約1.5mgのPS80;及び(f)水を含み;上記組成物のpHが約4.8~約5.4である、上記容器の実施形態を提供する。
【0025】
本開示更には、上記約20mLの体積の上記医薬組成物が:(a)約500mgのレチファンリマブ;(b)約3.6mgの氷酢酸;(c)約19mgの酢酸ナトリウム三水和物;(d)約1800mgのスクロース;(e)約2mgのPS80;及び(f)水を含み;上記組成物のpHが約4.8~約5.4である、上記容器の実施形態を提供する。
【0026】
本開示は更に、本明細書で開示される医薬組成物のいずれか、又は本明細書で開示される容器のいずれかを含み、また任意に、必要とする被験者に上記医薬組成物を投与するための説明書を含む、キットを提供する。
【0027】
本開示は更に、医薬組成物を含む容器であって、上記組成物は:
a)約21mg/mL~約29mg/mLのレチファンリマブ、約0.16mg/mL~約0.20mg/mLの氷酢酸、約0.86mg/mL~約1.1mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約76mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.53mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.5~約5.7である;又は
b)約22.5mg/mL~約27.5mg/mLのレチファンリマブ、約0.16mg/mL~約0.20mg/mLの氷酢酸、約0.86mg/mL~約1.1mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約76mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.53mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.5~約5.7である;又は
c)約250mgのレチファンリマブ、約1.8mgの氷酢酸、約9.5mgの酢酸ナトリウム三水和物、約900mgのスクロース、約1mgのPS80を含み、上記組成物のpHが約4.8~約5.4である;又は
d)約375mgのレチファンリマブ、約2.7mgの氷酢酸、約14.25mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1350mgのスクロース、約1.5mgのPS80を含み、上記組成物のpHが約4.8~約5.4である;又は
e)約500mgのレチファンリマブ、約3.6mgの氷酢酸、約19mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1800mgのスクロース、約2mgのPS80を含み、上記組成物のpHが約4.8~約5.4である、容器と、
任意に、必要とする被験者に上記医薬組成物を投与するための説明書と
を含む、キットを提供する。
【0028】
本開示は、上記組成物が、約25mg/mLのレチファンリマブ、約0.18mg/mLの氷酢酸、約0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.8~約5.4である、上述のキットの実施形態を提供する。
【0029】
本開示は、上記組成物が、約250mgのレチファンリマブ、約1.8mgの氷酢酸、約9.5mgの酢酸ナトリウム三水和物、約900mgのスクロース、約1mgのPS80を含み、上記組成物のpHが4.8~5.4である、上述のキットの実施形態を提供する。本開示は更に、上記組成物が、約375mgのレチファンリマブ、約2.7mgの氷酢酸、約14.25mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1350mgのスクロース、約1.5mgのPS80を含み、上記組成物のpHが約4.8~約5.4である、上述のキットの実施形態を提供する。
【0030】
本開示は、上記組成物が、約500mgのレチファンリマブ、約3.6mgの氷酢酸、約19mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1800mgのスクロース、約2mgのPS80を含み、上記組成物のpHが約4.8~約5.4である、上述のキットの実施形態を提供する。
【0031】
本開示は更に、本明細書で開示される医薬組成物のいずれか、本明細書で開示される容器のいずれか、又は本明細書で開示されるキットのいずれかを含み、また任意に、それを必要とする被験者に上記医薬組成物を投与するための説明書を更に含む、密封パッケージを提供する。
【0032】
本開示は更に、本明細書で開示される医薬組成物のいずれか、本明細書で開示される容器のいずれか、本明細書で開示されるキットのいずれか、又は本明細書で開示される密封パッケージのいずれかを用いて、それを必要とする被験者にレチファンリマブを投与するステップを含む、癌を治療する方法を提供する。
【0033】
本開示は更に、本明細書で開示される医薬組成物のいずれか、本明細書で開示される容器のいずれか、本明細書で開示される密封パッケージのいずれか、又は本明細書で開示されるキットのいずれかを用いて、それを必要とする被験者にレチファンリマブを投与するステップを含む、癌を治療する方法を提供し、上記方法は:
a)上記医薬組成物を、容器内において0.9%の塩化ナトリウム中で又は水中の5%のデキストロース(D5W)中で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)上記容器を反転させて、希釈された上記溶液を混合するステップ;及び
c)上記投薬用溶液を内包した上記容器を、上記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む。
【0034】
本開示はまた、それを必要とする被験者の癌の治療のための、本明細書で開示される医薬組成物のいずれか、本明細書で開示される容器のいずれか、本明細書で開示される密封パッケージのいずれか、又は本明細書で開示されるキットのいずれかの使用を提供する。
【0035】
本開示は更に、それを必要とする被験者の癌の治療のための、本明細書で開示される医薬組成物のいずれか、本明細書で開示される容器のいずれか、本明細書で開示される密封パッケージのいずれか、又は本明細書で開示されるキットのいずれかの使用を提供し、上記使用は:
a)上記医薬組成物を、容器内において0.9%の塩化ナトリウム中で又は水中の5%のデキストロース(D5W)中で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)上記容器を反転させて、希釈された上記溶液を混合するステップ;及び
c)上記投薬用溶液を内包した上記容器を、上記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む。
【0036】
本開示は更に、上記容器が、0.9%の塩化ナトリウムを内包したIVバッグである、上記方法又は使用の実施形態を提供する。本開示は更に、上記容器が、D5Wを内包したIVバッグである、上記使用の実施形態を提供する。
【0037】
本開示は、上記投薬用溶液が上記レチファンリマブの単量体純度を25℃で約6時間にわたって又は約2℃~約8℃で約24時間にわたって維持する、本明細書で開示される方法のいずれか又は本明細書で開示される使用のいずれかの実施形態を提供する。
【0038】
本開示は、上記投与が少なくとも30分にわたるIV注入によるものである、本明細書で開示される方法のいずれか又は本明細書で開示される使用のいずれかの実施形態を提供する。本開示は更に、上記投与が少なくとも60分にわたるIV注入によるものである、本明細書で開示される方法のいずれか又は本明細書で開示される使用のいずれかの実施形態を提供する。
【0039】
本開示は、上記医薬組成物を希釈して約375mgの一律用量を得る、本明細書で開示される方法のいずれか又は本明細書で開示される使用のいずれかの実施形態を提供する。本開示は更に、上記医薬組成物を希釈して約500mgの一律用量を得る、本明細書で開示される方法のいずれか又は本明細書で開示される使用のいずれかの実施形態を提供する。
【0040】
本開示は、上記投薬用溶液の前記投与が2週間毎に1回、3週間毎に1回、又は4週間毎に1回である、本明細書で開示される方法のいずれか又は本明細書で開示される使用のいずれかの実施形態を提供する。
【0041】
本開示は、上記癌がPD‐L1を発現する、本明細書で開示される方法のいずれか又は本明細書で開示される使用のいずれかの実施形態を提供する。
【0042】
本開示は、上記癌が:副腎癌、エイズ関連癌、胞巣状軟部肉腫、肛門癌、肛門管扁平上皮癌(SCAC)、膀胱癌、骨癌、脳及び脊髄癌、乳癌、HER2+乳癌又はトリプルネガティブ乳癌(TNBC)、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、HPV関連子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣腫、子宮内膜癌、選択されていない子宮内膜癌、MSI‐high子宮内膜癌、dMMR子宮内膜癌、DNAポリメラーゼε(POLE)エキソヌクレアーゼドメイン変異ポジティブ子宮内膜癌、ユーイング肉腫、骨格外粘液型軟骨肉腫、胆嚢又は胆管癌(bile duct cancer)、胆管癌(cholangiocarcinoma)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部(GEJ)癌、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、神経膠腫、膠芽腫、頭頸部癌、頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、血液悪性腫瘍、肝細胞癌、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、腎細胞癌(RCC)、明細胞RRC、乳頭状RCC、及び嫌色素性RCC、白血病、急性骨髄性白血病、脂肪肉腫/悪性脂肪腫性腫瘍、肝臓癌、肝細胞癌(HCC)、リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、肺癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、髄芽腫、黒色腫、ブドウ膜黒色腫、髄膜腫、中皮腫、中皮咽頭癌、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、甲状腺乳頭癌、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)、後部ブドウ膜黒色腫、腎転移癌、ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、メルケル細胞癌、小児期の小円形青色細胞腫瘍、神経芽腫、横紋筋肉腫、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌(stomach cancer)、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺癌、尿路上皮癌、並びに子宮癌からなる群から選択される、本明細書で開示される方法のいずれか又は本明細書で開示される使用のいずれかの実施形態を提供する。
【0043】
本開示は、上記癌が、肛門癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胃癌(gastric cancer)、GEJ癌、頭頸部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、及び尿路上皮癌である、本明細書で開示される方法のいずれか又は本明細書で開示される使用のいずれかの実施形態を提供する。本開示は更に、上記癌が、SCAC、NSCLC、MSI‐high子宮内膜癌、dMMR子宮内膜癌、POLEエキソヌクレアーゼドメイン変異ポジティブ子宮内膜癌、黒色腫、メルケル細胞癌、SCCHN、mCRPC、RCC、明細胞RCC、又は尿路上皮癌である、本明細書で開示される方法のいずれか又は本明細書で開示される使用のいずれかの実施形態を提供する。
【0044】
本開示は更に、上記被験者がヒト被験者である、本明細書で開示される方法のいずれか又は本明細書で開示される使用のいずれかの実施形態を提供する。
【0045】
以上の発明の概要、並びに以下の図面の説明及び発明を実施するための形態は、例示及び説明のためのものである。これらは本開示の更なる詳細を提供することを意図しており、限定として解釈してはならない。他の目的、利点、及び新規の特徴は、当業者には、本開示の以下の発明を実施するための形態から容易に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、5±3℃で6ヶ月間(2~8℃ 6M)保管された製剤に関する予測プロファイラを示す。高分子量種(high molecular weight species:HMWS)、単量体、酸性バリアント(acidic variant:AV)、主電荷ピーク(main charge peak:MP)、塩基性バリアント(basic variant:BV)、目に見えない粒子(≧10μm及び≧25μm)(行)が、スクロース濃度、pH、PS‐80濃度、レチファンリマブ濃度、及びイオン強度(列)の変化に対してプロットされている。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本開示は、保管及び投与のための、ヒトPD‐1(hPD‐1)」)抗体(「レチファンリマブ」)及び緩衝剤を含む医薬組成物を提供する。本開示は更に、上記医薬組成物を含む容器及びキットを提供する。本開示は更に、レチファンリマブを含有する上記医薬組成物、容器、及びキットの、例えば治療有効量又は予防有効量のレチファンリマブによる癌の治療、及び特定の態様ではPD‐L1を発現する癌の治療のための使用を提供する。
【0048】
レチファンリマブ(MGA012及びINCMGA00012としても公知;CAS登録番号2079108‐44‐2)は、T及びBリンパ球が発現するヒトPD‐1を認識してこれに結合する、ヒト化ヒンジ安定化IgG4κモノクローナル抗体である。レチファンリマブは、ヒンジ鎖間ジスルフィドの不安定性を低減又は除去するために、ヒンジ領域にセリンからプロリンへの変異(S228P)を含有する、ヒトIgG4 Fc領域を含有し、ここでIgG重鎖の残基の番号付与は、Kabat(Kabat, Sequences Of Proteins Of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1987 and 1991))におけるEUインデックスの番号付与であり、ヒトIgG4 EU抗体の番号付与を指す。レチファンリマブの重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を以下に提示する(WHO Drug Information 2019, Proposed INN: List 121, 33(2)): 326-327)。Kabatによって定義されるCDRには下線が付されている。
【0049】
レチファンリマブの重鎖のアミノ酸配列は(配列番号1)である(CDR
H残基は太字下線付きで示されており、定常領域は二重下線を付して示されており、S228P変異は太字二重下線付きで示されている):
【0050】
レチファンリマブの軽鎖のアミノ酸配列は(配列番号2)である(CDR
L残基は太字下線付きで示されており、定常領域は二重下線を付して示されている):
【0051】
本開示の医薬組成物はレチファンリマブ、緩衝剤、及び安定剤を含み、本明細書中で「レチファンリマブ組成物」とも呼ばれる。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「約(about)」は当業者によって理解されるものであり、この語句が使用される文脈に応じてある程度変動する。当業者にとって明らかでなく、また本明細書中で別途定義されてもいない、この語句の使用がある場合、この語句が使用される文脈を考慮して、「約」は特定の用語のプラス又はマイナス10%までを意味する。
【0053】
本明細書中で使用される場合、単数形「ある(a、an)」及び「上記(the)」は、文脈上明らかな別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。従って例えば、「ある」成分への言及は、文脈上明らかな別段の指示がない限り、2つ以上のそのような成分を有する実施形態を含む。また、単語「又は(or)」が先行する「…のいずれか(either)」(又は「or」が明確に排他的なものであることを示す同様の表現、例えば「x又はyのうちの一方のみ(only one of x or y)」等)を伴わずに使用されている場合、この単語は包括的なものであるものと解釈されるものとする(例えば「x又はy(x or y)」はx又はyのうちの一方又は両方を意味する)。
【0054】
用語「及び/又は(and/or)」もまた、包括的なものであるものと解釈されるものとする(例えば「x及び/又はy(x and/or y)」はx又はyのうちの一方又は両方を意味する)。「及び/又は」又は「又は」が3つ以上の項目のグループに対して接続詞として使用されている場合、該グループは、1つの項目のみ、全ての項目、又は項目のいずれの組み合わせ若しくはいずれの個数の項目を含むものと解釈されるものとする。更に、本明細書及び特許請求の範囲で使用される、「…を有する(have、having)」、「…を含む(include、including)」といった用語は、用語「…を含む/備える(comprise、comprising)と同義であるものと解釈されるものとする。「及び/又は」の節によって具体的に特定された要素以外に、上記具体的に特定された要素と関連した又は関連しない要素が任意に存在してもよい。非限定的な例として、「X及び/又はY」への言及は、ある実施形態ではXのみ(任意にY以外の要素も含む)を指すことができ;いくつかの実施形態ではYのみ(任意にX以外の要素も含む)を指すことができ;更なるいくつかの実施形態ではX及びYの両方(任意に他の要素も含む)を指すことができる。
【0055】
本明細書中で使用される場合、「酢酸塩(acetate)」は、医薬組成物の酢酸塩成分を指す。例えば酢酸塩成分は、酢酸、酢酸塩、及び/又は酢酸緩衝液から構成され得る。
【0056】
本明細書中で使用される場合、用語「水性(aqueous)」は、水を含有する溶液を指す。
【0057】
本明細書中で使用される場合、用語「安定している(stable)」は、レチファンリマブが保管時にその物理的安定性、化学的安定性、薬学的活性、及び/又はその生物学的活性を実質的に保持していることを指す。
【0058】
用語「貯蔵寿命(shelf-life)」は、物理的安定性、化学的安定性、薬学的活性、及び/又は生物学的活性が実質的に保持された状態で医薬組成物を保存できる期間を指す。
【0059】
当業者には理解されるように、特に書面による説明を提供するという観点からのあらゆる目的のために、本明細書で開示される全ての範囲は、端点を含むそのあらゆる可能な部分範囲及び部分範囲の組み合わせも包含する。従って、開示される全ての範囲は、あらゆる部分範囲、又は各範囲が包摂するあらゆる個々の値を包含し、またこれらが記載された特許請求の範囲に対するサポートを提供するものと理解されるものとする。例えば、1~10という範囲が記載されている場合、これは、最小値1と最大値10との間の、及び/又は最小値1と最大値10とを含む、あらゆる部分範囲又は個々の値;即ち1以上の最小値で始まり10以下の最大値で終わる全ての部分範囲(例えば5.5~10、2.34~3.56等)、又は1~10のいずれの値(例えば3、5.8、9.9994等)を含み、またこれらが記載された特許請求の範囲に対するサポートを提供するものとみなされるものとする。
【0060】
列挙されるいずれの範囲は、該範囲が少なくとも2個、3個、4個、5個、10個等に等しく分割されることを十分に説明し、またそれを可能にするものと容易に認識できる。非限定的な例として、本明細書中で議論される各範囲は、下位の1/3、中間の1/3、上位の1/3等に容易に分割できる。これもまた当業者には理解されるように、「最大…/…まで(up to)」、「少なくとも(at least)」、「…超/…より大きい(greater than)」、「…未満(less than)」といった全ての表現は、記載されている数を含み、本明細書中で議論されるように後で部分範囲に分割できるような範囲を指す。更に、当業者には理解されるように、ある範囲は個々の数を含む。従って例えば、1~3個の層を有するグループは、1、2、又は3個の層を有するグループを指す。同様に、1~5個の層を有するグループは、1、2、3、4、又は5個の層を有するグループを指す。
【0061】
本明細書中で例示的なものとして開示される実施形態は、本明細書中で具体的に開示されていないいずれの1つ以上の要素、1つ以上の制限が存在しない状態で、適切に実施できる。従って、例えば用語「…を含む/備える(comprising)」、「…を含む(including)」、「…を含有する/包含する(containing)」等は、開放的かつ非制限的な意味で理解されるものとする。更に、本明細書中で採用される用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、これらの用語及び表現の使用には、図示及び説明されている特徴のいかなる均等物又はその一部分を除外する意図はなく、請求対象の技術の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。更に、句「…本質的にからなる(consisting essentially of)」は、具体的に記載されている要素と、請求対象の技術の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の要素とを含むものとして理解される。句「…からなる(consisting of)」は、明記されていないいかなる要素も除外する。
【0062】
参照により援用されるテキストに内包される定義は、本開示中の定義と矛盾する限りにおいて、除外される。
【0063】
本開示は、保管時に、レチファンリマブの物理的及び化学的安定性、並びにその薬学的活性及び/又は生物学的活性を実質的に保持する、医薬組成物を提供する。一実施形態では、本開示の医薬組成物の保管中に、レチファンリマブの物理的安定性、化学的安定性、薬学的活性及び/又は生物学的活性の約90%以上、約80%以上、約70%以上、又は約60%以上が保持される。一実施形態では、貯蔵寿命の期間中に、レチファンリマブの物理的安定性、化学的安定性、薬学的活性及び/又は生物学的活性の約90%以上、約85%以上、約80%以上、約75%以上、約70%以上、約65%以上、又は約60%以上が保持される。医薬組成物の貯蔵寿命は一般に、上記組成物中で分子が安定している期間に基づいて選択される。
【0064】
一実施形態では、本開示の医薬組成物の貯蔵寿命は、約25℃で少なくとも約1か月、約25℃で少なくとも約2か月、約25℃で少なくとも約3か月、約25℃で少なくとも約4か月、約25℃で少なくとも約6か月、又は約25℃で少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、若しくは少なくとも約12か月である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物の貯蔵寿命は、全て約2℃~約8℃において、少なくとも約6か月、少なくとも約12か月、少なくとも約18か月、少なくとも約24か月、少なくとも約30か月、少なくとも約36か月、少なくとも約48か月、、又は少なくとも約60か月である。一実施形態では、本開示の医薬組成物の貯蔵寿命は、約25℃で少なくとも約6か月である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物の貯蔵寿命は、約2℃~約8℃で少なくとも約24か月である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物の貯蔵寿命は、約2℃~約8℃で少なくとも約36か月である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物の貯蔵寿命は、約2℃~約8℃で少なくとも約48か月である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物の貯蔵寿命は、約2℃~約8℃で少なくとも約60か月である。
【0065】
物理的及び化学的安定性の1つの尺度は、本開示の医薬組成物中の、又は本開示の投薬用溶液中の、レチファンリマブの単量体純度である。レチファンリマブの単量体純度は、このような組成物若しくは溶液中の、予想される分子量を有するタンパク質(単量体レチファンリマブ)、単量体より高い分子量を有する種(HMW)、及び/又は単量体より低い分子量を有する種(LMW)の量を、いずれの好適な方法で評価することによって決定できる。従って、単量体純度の損失は、指示された期間の後の、予想される分子量を有するタンパク質(単量体)の損失、並びに/又はHMW及び/若しくはLMW種の蓄積を決定することによって測定できる。特定の実施形態では、各種(単量体、HMW、及びLMW)の百分率(%)は、総タンパク質の百分率(%)として計算される。一実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、指示された期間にわたって、約15%以下、又は約10%以下、又は約5%以下、又は約4%以下、又は約3%以下、又は約2%以下、又は約1%以下である。一実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、指示された期間にわたって、約5%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、指示された期間にわたって、約4%未満である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、指示された期間にわたって、約3%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、指示された期間にわたって、約2%以下である。特定の実施形態では、本開示の組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブの単量体、HMW及び/又はLMW種の量は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィ(size exclusion high performance liquid chromatography:SE‐HPLC)によって測定される。このような実施形態では、各種の百分率(%)は、SE‐HPLC種ピーク(即ち単量体、HMW、LMW)の面積を全てのピークの合計、即ち総タンパク質の百分率(%)で除算したものとして計算される。
【0066】
他の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度は、約25℃で少なくとも約1か月、約25℃で少なくとも約2か月、約25℃で少なくとも約3か月、約25℃で少なくとも約4か月、約25℃で少なくとも約6か月、約2℃~約8℃で少なくとも約6か月、約2℃~約8℃で少なくとも約12か月、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月、約2℃~約8℃で少なくとも約24か月、約2℃~約8℃で少なくとも約30か月、約2℃~約8℃で少なくとも約36か月、少なくとも約48か月、少なくとも約60か月、又は約2℃~約8℃で約60か月超にわたって維持される。一実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度は、約25℃で少なくとも約6か月にわたって維持される。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度は、約2℃~約8℃で約36か月以上にわたって維持される。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度は、約2℃~約8℃で約48か月にわたって維持される。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度は、約2℃~約8℃で約60か月にわたって維持される。
【0067】
安定性の別の尺度は、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブの電荷不均質性プロファイルの安定性である。タンパク質組成物は、等電点(pI)が異なる様々なバリアントを含み得る。このようなバリアントは、チャージバリアントと呼ばれる。従って、上記不均質性プロファイルは、主電荷ピーク(main charge peak:MCP)、酸性バリアント(acidic variant:AV)、及び塩基性バリアント(basic variant:BV)をいずれの好適な方法で測定することによって決定できる。例えば、本開示のレチファンリマブ組成物はMCP、AV、及びBV成分を含むことができ、不均質性プロファイルの変化は、指示された時間後の、MCPの損失、並びに/又はAV及び/若しくはBVの蓄積を決定することによって測定できる。一実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブのMCPの減少は、指示された期間にわたって、約15%以下、又は約10%以下、又は約5%以下、又は約4%以下、又は約3%以下、又は約2%以下、又は約1%以下である。一実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブのAVの増加は、指示された期間にわたって、約15%以下、又は約10%以下、又は約5%以下、又は約4%以下、又は約3%以下、又は約2%以下、又は約1%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブのBVの増加は、指示された期間にわたって、約15%以下、又は約10%以下、又は約5%以下、又は約4%以下、又は約3%以下、又は約2%以下、又は約1%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブのMCPの減少は、指示された期間にわたって、約7%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブのMCPの減少は、指示された期間にわたって、約6%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブのMCPの減少は、指示された期間にわたって、約5%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブのAVの増加は、指示された期間にわたって、約7%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブのAVの増加は、指示された期間にわたって、約6%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブのAVの増加は、指示された期間にわたって、約5%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブのBVの増加は、指示された期間にわたって、約4%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブのBVの増加は、指示された期間にわたって、約3%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブのBVの増加は、指示された期間にわたって、約2%以下である。特定の実施形態では、本開示の医薬組成物又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブのMCP、AV、及びBVは、キャピラリ等電点電気泳動(capillary isoelectric focusing:cIEF)によって測定される。
【0068】
他の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの不均質性プロファイルは、約25℃で少なくとも約1か月、約25℃で少なくとも約2か月、約25℃で少なくとも約3か月、約25℃で少なくとも約4か月、約25℃で少なくとも約6か月、約2℃~約8℃で少なくとも約6か月、約2℃~約8℃で少なくとも約12か月、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月、約2℃~約8℃で少なくとも約24か月、約2℃~約8℃で少なくとも約30か月、約2~約8℃で少なくとも約36か月、少なくとも約48か月、少なくとも約60か月、又は約2℃~約8℃で約60か月超にわたって維持される。一実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの不均質性プロファイルは、約25℃で少なくとも約6か月にわたって維持される。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの不均質性プロファイルは、約2℃~約8℃で約36か月以上にわたって維持される。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの不均質性プロファイルは、約2℃~約8℃で約48か月にわたって維持される。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの不均質性プロファイルは、約2℃~約8℃で約60か月にわたって維持される。
【0069】
本開示の医薬組成物(即ちレチファンリマブ組成物)の成分は、例えば活性剤活性作用剤の量を示すバイアル、アンプル、又はサシェ等の気密容器中の液体組成物として、単位剤形に混合した状態で供給できる。一実施形態では、本開示の医薬組成物は液体状の溶液として供給される。このような液体状の溶液は、投与の準備ができるまで、元の容器内で約2℃~約8℃で保管できるが、このような液体状の溶液は、投与前の短期間、室温(約25℃)で保管することもできる。
【0070】
本開示のレチファンリマブ組成物を注入によって投与する特定の実施形態では、上記組成物を、例えば滅菌された0.9%の塩化ナトリウム(例えば生理食塩水)を内包する容器、バッグ、又は注入ボトルを用いて吐出できる。本開示のレチファンリマブ組成物を注射によって投与する特定の実施形態では、本明細書中で詳述されるように投与前に成分を混合できるよう、0.9%の塩化ナトリウムを提供できる。このようなレチファンリマブ組成物は、予防有効量又は治療有効量のレチファンリマブを含むことができる。
【0071】
本開示のレチファンリマブ組成物を注入によって投与する特定の実施形態では、上記組成物を、滅菌された水中の5%のデキストロース(「D5W」)を内包する容器、バッグ、又は注入ボトルを用いて吐出できる。本開示のレチファンリマブ組成物を注射によって投与する特定の実施形態では、本明細書中で詳述されるように投与前に成分を混合できるよう、D5Wを提供できる。このようなレチファンリマブ組成物は、予防有効量又は治療有効量のレチファンリマブを含むことができる。
【0072】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、レチファンリマブ、酢酸塩、スクロース、PS80、及び水を含む。特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は抗酸化剤を含まない。
【0073】
酢酸塩成分は、酢酸及び酢酸塩から構成できる。許容可能な酢酸塩としては、限定するものではないが:酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、及び酢酸亜鉛が挙げられる。一実施形態では、上記酢酸塩は、氷酢酸及び酢酸ナトリウムを含む。
【0074】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約10mg/mL~約100mg/mLの濃度のレチファンリマブを含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度のレチファンリマブを含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約22.5mg/mL~約27.5mg/mLの濃度のレチファンリマブを含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約25mg/mLの濃度のレチファンリマブを含む。これらの値のうちのいずれかの間、例えば約15mg/mL、約18mg/mL、約30mg/mL、約40mg/mL、約50mg/mL、約80mg/mL等の濃度も考えられる。
【0075】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は約5mM~約30mMの酢酸塩を含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は約5mM~約25mMの酢酸塩を含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は約7.5mM~約20mMの酢酸塩を含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は約7.5mM~約15mMの酢酸塩を含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は約9mM~約11mMの酢酸塩を含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は約10mMの酢酸塩を含む。これらの値のうちのいずれかの間、例えば約8mM、約14mM、約18mM等の濃度も考えられる。一実施形態では、本開示の組成物中の酢酸塩は、氷酢酸並びに酢酸ナトリウム(例えば無水酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム一水和物、及び/又は酢酸ナトリウム三水和物)を含む。酢酸ナトリウム一水和物及び/又は無水酢酸ナトリウム及び/又は酢酸ナトリウム三水和物を氷酢酸と併用することによって、所望の酢酸塩濃度を得ることができることが理解されるだろう。本明細書中で提供されているように、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、及び酢酸亜鉛を含むがこれらに限定されない別の形態の酢酸塩を、酢酸ナトリウムの代わりに酢酸緩衝液中で使用できる。
【0076】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.05mg/mL~約0.35mg/mLの濃度の氷酢酸を含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.1mg/mL~約0.3mg/mLの濃度の氷酢酸を含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.16mg/mL~約0.20mg/mLの濃度の氷酢酸を含む。更に別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.18mg/mLの濃度の氷酢酸を含む。これらの値のうちのいずれかの間、例えば約0.08mg/mL、0.15mg/mL、0.25mg/mL等の濃度も考えられる。
【0077】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.8mg/mL~約2.0mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物を含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.8mg/mL~約1.3mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物を含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.86mg/mL~約1.1mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物を含む。更に別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.95mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物を含む。これらの値のうちのいずれかの間、例えば約0.9mg/mL、約1.2mg/mL、約1.7mg/mL等の濃度も考えられる。
【0078】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.05mg/mL~約0.35mg/mLの濃度の氷酢酸と、約0.5mg/mL~約2.0mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.1mg/mL~約0.3mg/mLの濃度の氷酢酸と、約0.8mg/mL~約1.3mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.16mg/mL~約0.20mg/mLの濃度の氷酢酸と、約0.86mg/mL~約1.1mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む。更に別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.18mg/mLの濃度の氷酢酸と、約0.95mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む。
【0079】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約50mg/mL~約130mg/mLの濃度のスクロースを含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約76mg/mL~約104mg/mLの濃度のスクロースを含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約80mg/mL~約100mg/mLの濃度のスクロースを含む。更に別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約90mg/mLの濃度のスクロースを含む。これらの値のうちのいずれかの間、例えば約85mg/mL、約87mg/mL、約92mg/mL等の濃度も考えられる。
【0080】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.02mg/mL~約0.6mg/mLの濃度のPS80を含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLの濃度のPS80を含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.08mg/mL~約0.53mg/mLの濃度のPS80を含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.08mg/mL~約0.15mg/mLの濃度のPS80を含む。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約0.1mg/mLの濃度のPS80を含む。これらの値のうちのいずれかの間、例えば約0.09mg/mL、約0.11mg/mL、約0.13mg/mL等の濃度も考えられる。
【0081】
一実施形態では、本開示の医薬組成物のpHは約4.0~約6.5である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物のpHは約4.5~約5.7である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物のpHは約4.8~約5.4(即ち約5.1±0.3)である。これらの値のうちのいずれかの間のpH量、例えば約4.7、約4.9、約5.3、又は約5.5のpH等も考えられる。
【0082】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約10mg/mL~約100mg/mLのレチファンリマブ、約5mM~約30mMの酢酸塩、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.02mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.0~約6.5である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約10mg/mL~約100mg/mLのレチファンリマブ、約7.5mM~約20mMの酢酸塩、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.0~約6.5である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約20mg/mL~約30mg/mLのレチファンリマブ、約9mM~約11mMの酢酸塩、約76mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.53mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.7である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約22.5mg/mL~約27.5mg/mLのレチファンリマブ、約9mM~約11mMの酢酸塩、約80mg/mL~約100mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.15mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.7である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約25mg/mLのレチファンリマブ、約10mMの酢酸塩、90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約25mg/mLのレチファンリマブ、約10mMの酢酸塩、90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.8~約5.4である。
【0083】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約10mg/mL~約100mg/mLのレチファンリマブ、約0.05mg/mL~約0.35mg/mLの氷酢酸、約0.80mg/mL~約2.0mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.02mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.0~約6.5である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約10mg/mL~約100mg/mLのレチファンリマブ、約0.1mg/mL~約0.3mg/mLの氷酢酸、約0.80mg/mL~約2.0mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.0~約6.5である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約20mg/mL~約30mg/mLのレチファンリマブ、約0.16mg/mL~約0.20mg/mLの氷酢酸、約0.86mg/mL~約1.1mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約76mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.53mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.7である。一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約22.5mg/mL~約27.5mg/mLのレチファンリマブ、約0.16mg/mL~約0.20mg/mLの氷酢酸、約0.86mg/mL~約1.1mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、76mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.53mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.7である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約22.5mg/mL~約27.5mg/mLのレチファンリマブ、約0.16mg/mL~約0.20mg/mLの氷酢酸、約0.86mg/mL~約1.1mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約80mg/mL~約100mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.15mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.7である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約25mg/mLのレチファンリマブ、約0.18mg/mLの氷酢酸、約0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約25mg/mLのレチファンリマブ、約10mMの酢酸塩、90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.8~約5.4である。
【0084】
一実施形態では、約10mLの本開示の医薬組成物は、約250mgのレチファンリマブ、約1.8mgの氷酢酸、約9.5mgの酢酸ナトリウム三水和物、約900mgのスクロース、約1mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、約10mLの本開示の医薬組成物は、約250mgのレチファンリマブ、約1.8mgの氷酢酸、約9.5mgの酢酸ナトリウム三水和物、約900mgのスクロース、約1mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.8~約5.4である。
【0085】
別の実施形態では、約15mLの本開示の医薬組成物は、約375mgのレチファンリマブ、約2.7mgの氷酢酸、約14.25mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1350mgのスクロース、約1.5mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、約15mLの本開示の医薬組成物は、約375mgのレチファンリマブ、約2.7mgの氷酢酸、約14.25mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1350mgのスクロース、約1.5mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.8~約5.4である。
【0086】
別の実施形態では、約20mLの本開示の医薬組成物は、約500mgのレチファンリマブ、約3.6mgの氷酢酸、約19mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1800mgのスクロース、約2mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、約20mLの本開示の医薬組成物は、約500mgのレチファンリマブ、約3.6mgの氷酢酸、約19mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1800mgのスクロース、約2mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.8~約5.4である。
【0087】
一実施形態では、本開示の医薬組成物の重量オスモル濃度は約200~約400mOsm/kg・H2Oである。別の実施形態では、本開示の医薬組成物の重量オスモル濃度は約225~約400mOsm/kg・H2Oである。別の実施形態では、本開示の医薬組成物の重量オスモル濃度は約250~約375mOsm/kg・H2Oである。別の実施形態では、本開示の医薬組成物の重量オスモル濃度は約250~約355mOsm/kg・H2Oである。別の実施形態では、本開示の医薬組成物の重量オスモル濃度は約260~約340mOsm/kg・H2Oである。
【0088】
特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は滅菌されている。一実施形態では、本開示の医薬組成物は非発熱性である。本開示は更に、上記水が滅菌された非発熱性の蒸留水である、上記医薬組成物、密封パッケージ、又はキットの実施形態を提供する。別の実施形態では、本開示の密封パッケージ、キット、又は医薬組成物中の上記水は、注射用水(Water for Injection)、USP、又はこれらと同等のものである。
【0089】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約25℃で少なくとも約3か月にわたって安定している。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、レチファンリマブの単量体純度を、約25℃で少なくとも約3か月にわたって維持する。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約25℃において、約3か月で約5%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約25℃において、約3か月で約3%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、レチファンリマブの電荷不均質性プロファイルを、約25℃で少なくとも約3か月にわたって維持する。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの主電荷ピーク(MCP)の減少は、約25℃において、約3か月で約20%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約25℃において、約3か月で約20%以下である。
【0090】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約25℃で少なくとも約6か月にわたって安定している。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、レチファンリマブの単量体純度を、約25℃で少なくとも約6か月にわたって維持する。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約25℃において、約6か月で約5%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約25℃において、約6か月で約3%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、レチファンリマブの電荷不均質性プロファイルを、約25℃で少なくとも約6か月にわたって維持する。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのMCPの減少は、約25℃において、約6か月で約20%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約25℃において、約6か月で約20%以下である。
【0091】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月にわたって安定している。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、レチファンリマブの単量体純度を、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月にわたって維持する。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約18か月で約5%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約18か月で約4%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約18か月で約3%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、レチファンリマブの電荷不均質性プロファイルを、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月にわたって維持する。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約18か月で約7%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約18か月で約6%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中又は本開示の投薬用溶液中のレチファンリマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約18か月で約5%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約18か月で約7%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約18か月で約6%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約18か月で約5%以下である。
【0092】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約2℃~約8℃で約24か月にわたって安定している。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、レチファンリマブの単量体純度を、約2℃~約8℃で約24か月にわたって維持する。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約24か月で約5%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約24か月で約4%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約24か月で約3%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、レチファンリマブの電荷不均質性プロファイルを、約2℃~約8℃で少なくとも約24か月にわたって維持する。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約24か月で約7%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約24か月で約6%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約24か月で約5%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約24か月で約7%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約24か月で約6%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約24か月で約5%以下である。
【0093】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約2℃~約8℃で約36か月にわたって安定している。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、レチファンリマブの単量体純度を、約2℃~約8℃で約36か月にわたって維持する。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約36か月で約5%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約36か月で約4%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約36か月で約3%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、レチファンリマブの電荷不均質性プロファイルを、約2℃~約8℃で少なくとも約36か月にわたって維持する。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約36か月で約7%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約36か月で約6%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約36か月で約5%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約36か月で約7%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約36か月で約6%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約36か月で約5%以下である。
【0094】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約2℃~約8℃で約48か月にわたって安定している。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、レチファンリマブの単量体純度を、約2℃~約8℃で約48か月にわたって維持する。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約48か月で約5%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約48か月で約4%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約48か月で約3%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約48か月で約7%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約48か月で約6%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約48か月で約5%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約48か月で約7%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約48か月で約6%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約48か月で約5%以下である。
【0095】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約2℃~約8℃で約60か月にわたって安定している。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、レチファンリマブの単量体純度を、約2℃~約8℃で約60か月にわたって維持する。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約60か月で約5%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約60か月で約4%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約60か月で約3%以下である。別の実施形態では、別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約60か月で約7%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約60か月で約6%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約60か月で約5%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約60か月で約7%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約60か月で約6%以下である。別の実施形態では、本開示の医薬組成物中のレチファンリマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約60か月で約5%以下である。
【0096】
本開示は、本開示の医薬組成物を含む容器も提供する。本開示は更に、本開示の医薬組成物を内包した1つ以上の容器を含む、医薬パック又はキットを提供する。一実施形態では、上記容器はバイアル(例えば単回用量バイアル)である。一実施形態では、本開示の上記医薬パック又はキットは、バイアル(例えば単回用量バイアル)を内包する。別の実施形態では、本開示の上記医薬パック又はキットは、2個以上のバイアルを内包する。別の実施形態では、上記バイアルは、レチファンリマブの濃度がバイアル1個あたり約25mg/mLとなるように、約250mgのレチファンリマブを含む約10mLの本開示の医薬組成物を内包する。別の実施形態では、上記バイアルは、レチファンリマブの濃度がバイアル1個あたり約25mg/mLとなるように、約375mgのレチファンリマブを含む約15mLの本開示の医薬組成物を内包する。別の実施形態では、上記バイアルは、レチファンリマブの濃度がバイアル1個あたり約25mg/mLとなるように、約500mgのレチファンリマブを含む約20mLの本開示の医薬組成物を内包する。上記バイアルは、用量の送達のため、10mL(250mg)、15mL(375mg)、及び20mL(500mg)のレチファンリマブを取り出すために十分な体積を保証するために、過剰体積の本開示の上記医薬組成物を含んでもよいことが理解されるだろう。
【0097】
更に、疾患の治療に有用な1つ以上の他の予防剤又は治療剤も、本開示の医薬パック又はキットに含めることができる。任意に、このような1つ以上の容器は、医薬製品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の通知と関連するものとすることができ、上記通知は、ヒトへの投与のための製造、使用又は販売の機関による承認を反映したものである。任意に、レチファンリマブ組成物を含む投薬用溶液の調製及び投与のための1つ以上の指示及び/又は使用説明が記載された製品ラベルが、1つ以上の上記容器に関連付けられる。
【0098】
本開示は、本開示の方法で使用できる、本開示の医薬組成物を含むキットを提供する。上記キットでは、本開示の医薬組成物は一般に、例えばアンプル、バイアル、サシェ、又は他の好適な容器といったの気密容器中に包装され、上記容器は、その中に内包された1つ以上の成分の量を示すことができる。上記容器は、ガラス、樹脂、プラスチック、又は他の好適な材料といった、薬学的に許容可能ないずれの材料で形成できる。一実施形態では、上記容器はボロシリケートガラス製バイアルである。別の実施形態では、上記容器は単回用量10mL USPタイプIボロシリケートガラス製バイアルである。別の実施形態では、この10mL容器は、10mLの体積中に約250mgのレチファンリマブを含有する。別の実施形態では、上記容器は単回用量20mL USPタイプIボロシリケートガラス製バイアルである。別の実施形態では、この20mL容器は、15mLの体積中に約375mgのレチファンリマブを含有する。別の実施形態では、この20mL容器は、20mLの体積中に約500mgのレチファンリマブを含有する。一実施形態では、上記容器は無菌的に充填される。一実施形態では、上記キットを構成する本開示の医薬組成物は、液体状の溶液として供給される。このような液体状の溶液は、投与の準備ができるまで、元の容器内で約2℃~約8℃で保管できる。しかしながら、このような溶液は、短期間にわたって室温(約25℃)で保管することもできる。一実施形態では、上記医薬組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月の貯蔵寿命を有する。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約24か月の貯蔵寿命を有する。一実施形態では、上記医薬組成物は、約2℃~約8℃で約36か月の貯蔵寿命を有する。一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約48か月の貯蔵寿命を有する。一実施形態では、本開示の医薬組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約60か月の貯蔵寿命を有する。他の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約25℃で少なくとも約3か月の貯蔵寿命を有する。他の実施形態では、本開示の医薬組成物は、約25℃で少なくとも約6か月の貯蔵寿命を有する。上記キットは更に、1つ以上の容器内に、癌の治療に使用できる1つ以上の他の予防及び/若しくは治療剤を含むことができ;並びに/又は上記キットは更に、癌に関連する1つ以上の癌抗原に結合する1つ以上の抗体、例えば細胞傷害性抗体を含むことができる。特定の実施形態では、上記他の予防又は治療剤は化学療法剤である。他の実施形態では、上記予防又は治療剤は生物療法剤又はホルモン療法剤である。
【0099】
一実施形態では、本開示のキットは:
a)医薬組成物を含む容器であって、上記組成物は、約10mg/mL~約100mg/mLのレチファンリマブ、約5mM~約30mMの酢酸塩、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.02mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.0~約6.5である、容器;並びに任意に
b)それを必要とする被験者に上記医薬組成物を投与するための説明書
を含む。
【0100】
一実施形態では、本開示のキットは:
a)医薬組成物を含む容器であって、上記組成物は、約10mg/mL~約100mg/mLのレチファンリマブ、約7.5mM~約20mMの酢酸塩、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.0~約6.5である、容器;並びに任意に
b)それを必要とする被験者に上記医薬組成物を投与するための説明書
を含む。
【0101】
一実施形態では、本開示のキットは:
a)医薬組成物を含む容器であって、上記組成物は、約20mg/mL~約30mg/mLのレチファンリマブ、約9mM~約11mMの酢酸塩、76mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.53mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.7である、容器;並びに任意に
b)それを必要とする被験者に上記医薬組成物を投与するための説明書
を含む。
【0102】
一実施形態では、上記容器は、約25mg/mLのレチファンリマブ、約10mMの酢酸塩、90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、上記容器は、約25mg/mLのレチファンリマブ、約10mMの酢酸塩、90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは4.8~5.4である。
【0103】
一実施形態では、本開示のキットは:
a)医薬組成物を含む容器であって、上記組成物は、約10mg/mL~約100mg/mLのレチファンリマブ、約0.05mg/mL~約0.35mg/mLの氷酢酸、約0.80mg/mL~約2.0mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.02mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.0~約6.5である、容器;並びに任意に
b)それを必要とする被験者に上記医薬組成物を投与するための説明書
を含む。
【0104】
一実施形態では、本開示のキットは:
a)医薬組成物を含む容器であって、上記組成物は、約10mg/mL~約100mg/mLのレチファンリマブ、約0.1mg/mL~約0.3mg/mLの氷酢酸、約0.80mg/mL~約2.0mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.0~約6.5である、容器;並びに任意に
b)それを必要とする被験者に上記医薬組成物を投与するための説明書
を含む。
【0105】
一実施形態では、本開示のキットは:
a)医薬組成物を含む容器であって、上記組成物は、約20mg/mL~約30mg/mLのレチファンリマブ、約0.16mg/mL~約0.20mg/mLの氷酢酸、約0.86mg/mL~約1.1mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約76mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.53mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.7である、容器;並びに任意に
b)それを必要とする被験者に上記医薬組成物を投与するための説明書
を含む。
【0106】
一実施形態では、本開示のキットは:
a)医薬組成物を含む容器であって、上記組成物は、約22.5mg/mL~約27.5mg/mLのレチファンリマブ、約0.16mg/mL~約0.20mg/mLの氷酢酸、約0.86mg/mL~約1.1mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、76mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.53mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.7である、容器;並びに任意に
b)それを必要とする被験者に上記医薬組成物を投与するための説明書
を含む。
【0107】
一実施形態では、上記容器は、約25mg/mLのレチファンリマブ、約0.18mg/mLの氷酢酸、約0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、上記容器は、約25mg/mLのレチファンリマブ、約0.18mg/mLの氷酢酸、約0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは4.8~5.4である。
【0108】
本開示の上記組成物、容器、及びキット中の水は、滅菌された非発熱性の蒸留水とすることができ、注射用水、USP、又はこれらと同等のものとすることができる。
【0109】
一実施形態では、本開示の医薬キットは、説明資料を含むことができる。本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、提供される医薬組成物を、同一の医薬キット内に又は別個の医薬キット内に提供できる追加の作用剤と組み合わせて投与するように指示する場合がある。上記説明資料は、提供される医薬組成物を、約2週間に1回、約3週間に1回、約4週間に1回、又はそれより高い若しくは低い頻度で、規則的な又は不規則な間隔で投与するように指示する場合がある。上記説明資料は、提供される医薬組成物の1つの容器が、約25mg/mL(例えば250mg/10mL;375mg/15mL;又は500mg/20mL)のレチファンリマブを含むように指示する場合がある。上記説明資料は、提供される医薬組成物を、約3mg/kg~約10mg/kg、約3mg/kg、若しくは約10mg/kgの体重ベース治療用量で、又は約375mg、約500mg、若しくは約750mgの一律用量で、投与するように指示する場合がある。上記説明資料は、提供される医薬組成物を、投与前に(例えば0.9%の塩化ナトリウム又はD5W中で)希釈するように指示できる。本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、このような情報のいずれのセットを組み合わせてよい(例えば上記説明資料は、レチファンリマブ医薬組成物を0.9%の塩化ナトリウム又はD5W中で希釈して、約3mg/kg若しくは約10mg/kgの体重ベース治療用量で、又は約375mg、約500mg、若しくは約750mgの一律用量で投与するように、及び上記用量を、約2週間に1回、約3週間に1回、約4週間に1回、又はそれより高い若しくは低い頻度で、規則的な又は不規則な間隔で投与するように、指示する場合がある)。上記説明資料は、提供される医薬組成物の投与の様式に関して、例えば上記医薬組成物を静脈内(IV)注入によって投与するように指示する場合がある。本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記投与の持続時間又はタイミングに関して、例えば提供される医薬組成物を、約30分にわたる、又は約60分にわたる、又はそれより長い若しくは短い持続時間にわたる静脈内(IV)注入によって投与するように指示する場合がある。
【0110】
一実施形態では、本開示の医薬キットの説明資料は、提供される医薬組成物を0.9%の塩化ナトリウム中で希釈して投薬用溶液を得るように指示する。別の実施形態では、本開示の医薬キットの説明資料は、提供される上記医薬組成物をD5W中で希釈して投薬用溶液を得るように指示する。
【0111】
一実施形態では、本開示の医薬キットの説明資料は、本開示の医薬組成物を、それを必要とする被験者に投与する方法を提供し、上記方法は:
a)上記医薬組成物を、容器内において、0.9%の塩化ナトリウム中で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)上記容器を反転させて、希釈された上記溶液を混合するステップ;及び
c)上記投薬用溶液を内包した上記容器を、上記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む。
【0112】
一実施形態では、本開示の密封パッケージの説明資料は、本開示の医薬組成物を、それを必要とする被験者に投与する方法を提供し、上記方法は:
a)上記医薬組成物を、容器内においてD5W中で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)上記容器を反転させて、希釈された上記溶液を混合するステップ;及び
c)上記投薬用溶液を内包した上記容器を、上記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む。
【0113】
一実施形態では、上記容器は、0.9%の塩化ナトリウムを内包したIVバッグである。別の実施形態では、上記容器は、D5Wを内包したIVバッグである。
【0114】
一実施形態では、上記投薬用溶液の投与は、約30分~約120分、約30分又は約60分の期間にわたる静脈内(IV)注入によるものである。
【0115】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、投薬用溶液中のレチファンリマブの、約3mg/kgの体重ベース治療用量が得られるように希釈される。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、投薬用溶液中のレチファンリマブの、約10mg/kgの体重ベース治療用量が得られるように希釈される。
【0116】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、投薬用溶液中のレチファンリマブの、約375mgの一律用量が得られるように希釈される。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、投薬用溶液中のレチファンリマブの、約500mgの一律用量が得られるように希釈される。別の実施形態では、本開示の医薬組成物は、投薬用溶液中のレチファンリマブの、約750mgの一律用量が得られるように希釈される。
【0117】
本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、含まれる医薬組成物の適切な又は望ましい用途に関して、例えば提供される医薬組成物を癌の治療のために、例えば予防有効量又は治療有効量で投与するように、指示できる。上記癌は:副腎癌、エイズ関連癌、胞巣状軟部肉腫、肛門癌(肛門管扁平上皮癌(SCAC)を含む)、膀胱癌、骨癌、脳及び脊髄癌、乳癌(HER2+乳癌又はトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を含む)、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、HPV関連子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣腫、子宮内膜癌(選択されていない子宮内膜癌、MSI‐high子宮内膜癌、dMMR子宮内膜癌、及び/又はDNAポリメラーゼε(POLE)エキソヌクレアーゼドメイン変異ポジティブ子宮内膜癌を含む)、ユーイング肉腫、骨格外粘液型軟骨肉腫、胆嚢又は胆管癌(bile duct cancer)(胆管癌(cholangiocarcinoma)を含む)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部(GEJ)癌、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、神経膠腫、膠芽腫、頭頸部癌(頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)を含む)、血液悪性腫瘍、肝細胞癌、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎細胞癌(RCC)、明細胞RRC、乳頭状RCC、及び嫌色素性RCCを含む)、白血病(急性骨髄性白血病を含む)、脂肪肉腫/悪性脂肪腫性腫瘍、肝臓癌(肝細胞癌(HCC)を含む)、リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む)、肺癌(小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)を含む)、髄芽腫、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、髄膜腫、中皮腫(中皮咽頭癌を含む)、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、甲状腺乳頭癌、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌(転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)を含む)、後部ブドウ膜黒色腫、腎転移癌、ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌(メルケル細胞癌を含む)、小児期の小円形青色細胞腫瘍(神経芽腫、及び横紋筋肉腫を含む)、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌(stomach cancer)、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺癌、尿路上皮癌、並びに子宮癌からなる群から選択される。
【0118】
本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を:肛門癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胃癌(gastric cancer)、GEJ癌、神経膠腫、頭頸部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、多発性骨髄腫、転移性腎臓癌、卵巣癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、皮膚癌、尿路上皮癌、及び子宮癌からなる群から選択される癌に対して投与するよう指示できる。
【0119】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を肛門癌の治療のために投与するよう指示する。別の実施形態では、上記肛門癌はSCACである。
【0120】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を肺癌の治療のために投与するよう指示する。別の実施形態では、上記肺癌はNSCLCである。
【0121】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を子宮内膜癌の治療のために投与するよう指示する。別の実施形態では、上記子宮内膜癌はMSI‐high子宮内膜癌、dMMR子宮内膜癌、及び/又はPOLEエキソヌクレアーゼドメイン変異ポジティブ子宮内膜癌である。
【0122】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を皮膚癌の治療のために投与するよう指示する。別の実施形態では、上記皮膚癌はメルケル細胞癌である。
【0123】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を頭頸部癌の治療のために投与するよう指示する。別の実施形態では、上記頭頸部癌はSCCHNである。
【0124】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を前立腺癌の治療のために投与するよう指示する。別の実施形態では、上記前立腺癌はmCRPCである。
【0125】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を腎臓癌の治療のために投与するよう指示する。別の実施形態では、上記腎臓癌はRCCである。別の実施形態では、上記腎臓癌は明細胞RCCである。
【0126】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を黒色腫の治療のために投与するよう指示する。
【0127】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を尿路上皮癌の治療のために投与するよう指示する。
【0128】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を扁平上皮癌の治療のために投与するよう指示する。
【0129】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を神経膠腫の治療のために投与するよう指示する。
【0130】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を子宮頸癌の治療のために投与するよう指示する。
【0131】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を腎臓癌の治療のために投与するよう指示する。
【0132】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を嫌色素性腎細胞癌の治療のために投与するよう指示する。
【0133】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を転移性腎臓癌の治療のために投与するよう指示する。
【0134】
一実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を子宮癌の治療のために投与するよう指示する。
【0135】
以上の実施形態のいずれかにおいて、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を上述のような癌の治療のために投与するよう指示でき、上記癌は転移性癌である。いくつかの実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を上述のような癌の治療のために投与するよう指示でき、上記癌は原発性癌である。
【0136】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を上述のような癌の治療のために、上記癌の別の治療の前、間、又は後に投与するように指示できる。このような実施形態のうちの特定のものにおいて、上記説明資料は、上記医薬組成物を、上述のような癌の治療のための術前補助療法として投与するように指示できる。このような実施形態のうちの他のものにおいて、上記説明資料は、上記医薬組成物を、上述のような癌の治療のための補助療法として投与するように指示できる。このような実施形態のうちの他のものにおいて、上記説明資料は、上記医薬組成物を、上述のような癌の治療のための併用療法の構成要素として投与するように指示できる。
【0137】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を、PD‐L1を発現する上述のような癌の治療のために投与するように指示できる。説明資料は更に、特定のPD‐L1発現測定及びスコア、例えば1%以上の腫瘍比率スコア(Tumor Proportion Score:TPS)又は1以上の複合陽性スコア(Combined Positive Score:CPS)を指定できる。説明資料は更に、このようなPD‐L1発現スコアを、規制当局によって使用が承認された(例えばFDAによって承認された)試験によって決定するよう、指定できる。このような試験は既に文書化されており、例えばFDAによって承認された試験がFDAのウェブサイト:fda.gov/CompanionDiagnosticsに列挙されており、これには例えばPD‐L1 IHC 22C3 pharmDxが含まれ、また更なる試験がCheung et al., (2019), “Fit-For-Purpose PD-L1 Biomarker Testing For Patient Selection in Immuno-Oncology: Guidelines For Clinical Laboratories From the Canadian Association of Pathologists-Association Canadienne Des Pathologistes (CAP-ACP).” Appl Immunohistochem Mol Morphol 27 (10):699-714に記載されている。
【0138】
本開示の医薬組成物は、治療有効量又は予防有効量のレチファンリマブを、被験者に投与することによる、疾患、障害又は感染症に関連する1つ以上の症状の治療、予防及び改善のために提供できる。一実施形態では、上記医薬組成物は、いずれの好適な方法によって決定されるように、実質的に精製される(即ち上記組成物の効果を制限する、又は望ましくない副作用を生成する物質を実質的に含まない)。別の実施形態では、被験者は、非霊長類(例えばウシ属、ウマ科、ネコ科、イヌ科、げっ歯類等)又は霊長類(例えばカニクイザル等のサル、ヒト等)といった哺乳類を含む動物である。一実施形態では、被験者はヒトである。用語「被験者(subject)」と「患者(patient)」とは、本明細書中では相互交換可能なものとして使用される。
【0139】
本開示の医薬組成物(即ちレチファンリマブ組成物)を投与する方法としては、限定するものではないが、非経口投与(例えば静脈内)が挙げられる。一実施形態では、本開示の医薬組成物(即ちレチファンリマブ組成物)は、静脈内投与される。本開示の医薬組成物は:代謝拮抗化学療法剤(ペメトレキセドを含む)、白金ベースの化学療法剤(例えばシスプラチン及びカルボプラチンを含む)、並びにタキサンベースの化学療法剤(例えばパクリタキセル及びナブパクリタキセルを含む)を含むがこれらに限定されない化学療法剤;癌抗原に結合するものを含む抗体及び抗体様分子を含むがこれらに限定されない生物製剤といった、他の薬学的活性剤と共に投与され得る。このような癌抗原としては、限定するものではないが、5T4、B7‐H3、CD19、CD20、CD51、CD123、DR5、EGFR、EpCam、GD2、gpA33、HER2、ROR‐1、TAG‐72、及び/又はVEGFR2が挙げられる。上述のような癌抗原に結合する多数の抗体及び抗体様分子は既に記述されており、限定するものではないが、ベバシズマブ、セツキシマブ、エノブリツズマブ、フロテツズマブ、マルゲツキシマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ等が挙げられる。
【0140】
一実施形態では、本開示の医薬組成物(即ちレチファンリマブ組成物)の量は、レチファンリマブの体重ベース用量を用いて決定される。用語「体重ベース用量(weight-based dose)」は、本明細書中で使用される場合、患者の単位体重あたりの、投与されるレチファンリマブの個別量、例えば被験者の体重1キログラムあたりのレチファンリマブのミリグラム数(mg/kg体重;本明細書では「mg/kg」と略される)を指す。計算された用量は、ベースライン時の被験者の体重に基づいて投与される。典型的には、ベースライン又は確立されたプラトー体重からの、体重の有意な(例えば少なくともプラス又はマイナス約10%以上の)変化により、用量の再計算が促されることになる。単一又は複数の用量が投与され得る。
【0141】
特定の実施形態では、レチファンリマブは、それを必要とする被験者に、約3mg/kg~約10mg/kgの体重ベース用量で投与される。特定の実施形態では、レチファンリマブは、それを必要とする被験者に、約3mg/kg又は約10mg/kgの用量で投与される。体重ベース用量に関して、用語「約」は、記載されている用量の±10%の範囲を指すことが意図されているため、例えば約10mg/kgの用量は、9mg/kg~11mg/kgとなる。
【0142】
一実施形態では、本開示の医薬組成物(即ちレチファンリマブ組成物)の量は、レチファンリマブの一律用量を用いて決定される。本明細書中で使用される場合、用語「一律用量(flat dose)」は、患者の体重に依存しない用量を指し、治療対象の被験者に対する1回の用量として好適な、レチファンリマブの物理的に個別の単位を含み、例えば各単位は、薬学的キャリアと関連付けられた、また任意に更なる作用剤と関連付けられた、(例えば所望の治療効果を生むように計算された)所定量のレチファンリマブを含有する。単一又は複数の一律用量が投与され得る。
【0143】
レチファンリマブは、体重ベース用量(例えばmg/患者の体重(kg)の用量)として、又は一律用量(例えば375mgの用量)として、投与できる。一般に、レチファンリマブ(及び任意に更なる薬学的作用剤)を複数用量使用することにより、レチファンリマブを治療有効量又は予防有効量で被験者に提供できる。本明細書中で使用される場合、用語「用量(dose)」は1回に投与される薬剤の指定された量を指す。用語「投薬(dosage)」は、指定された期間にわたる、特定の量及び頻度での複数用量の投与を指し、従って用語「投薬」は、周期性等の時系列的特徴を含む。
【0144】
本明細書中で使用される場合、癌の治療に使用する際の本開示の医薬組成物のレチファンリマブの「治療有効量(therapeutically effective amount)」は、癌の進行を遅らせることができる;体液(例えば血液、末梢細胞若しくはリンパ液)、組織、又は器官中の癌細胞の個数を削減できる(細胞傷害性);癌細胞の個数を比較的一定に維持できる(細胞増殖抑制性);腫瘍サイズを低下させる、転移を阻害する、腫瘍の成長を阻害する、及び/又は癌の症状のうちの1つ以上を緩和することができる、量である。本開示の医薬組成物の配合に使用するためのレチファンリマブの治療有効量は、本明細書中で提供されており、並びに/又は例えば医療専門家によって、治療対象の癌の種類、送達経路、年齢、体重、被験者の症状の重症度、及び被験者の応答パターンを考慮して決定できる。本明細書中で使用される場合、癌の予防に使用する際の本開示の医薬組成物のレチファンリマブの「予防有効量(prophylactically effective amount)」は、癌の発生若しくは再発を防止できる、又は癌の発生若しくは再発のリスクを低減できる量である。本明細書中で使用される場合、本開示の医薬組成物、容器、キット、又は方法による癌の治療は、例えば、治療有効量又は予防有効量のレチファンリマブを、それを必要とする被験者に投与するステップを含むことができる。
【0145】
特定の実施形態では、レチファンリマブは、それを必要とする被験者に、約375mgの一律用量で投与される。特定の実施形態では、レチファンリマブは、それを必要とする被験者に、約500mgの一律用量で投与される。特定の実施形態では、レチファンリマブは、それを必要とする被験者に、約750mgの一律用量で投与される。一律用量に関して、用語「約」は、記載されている用量の±10%の範囲を指すことを意図しており、従って、約500mg/kgの用量は450mg~550mgとなる。
【0146】
1用量の本開示の医薬組成物(即ち1用量のレチファンリマブ組成物)は、少なくとも2用量、少なくとも4用量、少なくとも6用量、少なくとも12用量、又は少なくとも24用量、又は24用量より多い用量を包含するために十分な期間(治療経過)にわたって、周期的な間隔で投与できる。このような、ある期間にわたる周期的な間隔での本開示の医薬組成物の投与は、1回の「治療経過(course of treatment)」とみなすことができる。例えばある投薬量を、2週間に1回(「Q2W」)、3週間に1回(「Q3W」)、4週間に1回(「Q4W」)、又はそれより短い若しくは長い期間にわたって、投与できる。このような周期的な投与を、ある期間にわたって、例えば約1~52週間、又は約52週間超にわたって継続してよい。このような治療経過は、より短い様々な間隔、例えば2~8週間の、本明細書ではそれぞれ「サイクル(cycle)」と呼ばれる複数の増分に分割でき、その間に、設定された数の用量が投与される。投与の用量及び/又は頻度は、各サイクル中において同一であっても異なっていてもよい。被験者の効果的な治療に必要な投薬及びタイミングに影響し得る因子としては、例えば被験者の疾患若しくは障害の重篤度、処方、送達経路、過去の治療、総合的な健康状態、及び/又は年齢、並びに被験者の体内の他の疾患の存在が挙げられる。更に、治療有効量の化合物を用いた被験者の治療は、単一の治療、又は一連の複数の治療を含むことができる。
【0147】
「投薬レジメン(dosing regimen)」は、患者に1つ以上の所定の周期性で、所定の頻度(又は複数のこのような頻度のセット)で、所定の用量(又は複数のこのような用量のセット)が投与される、投薬量の投与である。本開示のある投薬レジメンは、約1mg/kgの用量でQ2Wでの、本開示のレチファンリマブ組成物の投与を含む。本開示の別の投薬レジメンは、約3mg/kgの用量でQ2W又はQ4Wでの、本開示のレチファンリマブ組成物の投与を含む。本開示の別の投薬レジメンは、約10mg/kgの用量でQ2W又はQ4Wでの、本開示のレチファンリマブ組成物の投与を含む。本開示の別の投薬レジメンは、約375mgの一律用量でQ3Wでの、本開示のレチファンリマブ組成物の投与を含む。本開示の別の投薬レジメンは、約500mgの一律用量でQ4Wでの、本開示のレチファンリマブ組成物の投与を含む。本開示の別の投薬レジメンは、約750mgの一律用量でQ4Wでの、本開示のレチファンリマブ組成物の投与を含む。
【0148】
本開示の特定の実施形態では、上記医薬組成物の投与が、所定の頻度若しくは周期性で又はこのような予定された間隔の約1~3日以内に行われることが、具体的に企図され、従って投与は、予定投薬日の1~3日前、1~3日後、又は予定投薬日に、例えば3週間(±3日)に1回、行われる。このような実施形態では、本開示のレチファンリマブ組成物はIV注入によって投与できる。特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は、連続静脈内注入であっても不連続な静脈内注入であってもよいIV注入によって、投与される。特定の実施形態では、上記レチファンリマブ組成物は、少なくとも約1か月以上、少なくとも約3か月以上、少なくとも約4か月、少なくとも約6か月以上、又は少なくとも約12か月、又は約12か月超の持続時間にわたって、本開示の投薬レジメンのうちのいずれかに従って、IV注入によって投与される。少なくとも約6か月以上の、又は少なくとも約12か月若しくは約12か月超にわたる、又は疾患、安定性疾患若しくは管理が不可能な毒性の軽減若しくは寛解までの、治療期間が観察される。特定の実施形態では、治療は、疾患又は安定性疾患の軽減又は寛解が観察された後、ある期間にわたって継続される。特定の実施形態では、治療は、病気、有害事象等によって中断される場合があり、このような病気、有害事象等の解決、軽減、又は改善時に再開される。
【0149】
本開示の方法の特定の実施形態では、上記医薬組成物(即ちレチファンリマブ組成物)は、IV注入による投与のために、好適な希釈剤、例えば0.9%の塩化ナトリウム又はD5Wを含む注入バッグ内で希釈される。注入反応又はアレルギー反応が発生する可能性があるため、このような注入反応の予防のための前投薬を利用でき、また抗体の投与中にアナフィラキシーに対する予防措置を講じることができる。一実施形態では、IV注入は、約30分~約120分、約30分~約90分、約30分~約60分、約30分、約60分、又は約120分にわたって、被験者に投与される。特定の実施形態では、IV注入は、約30分又は約60分にわたって、被験者に投与される。他の実施形態では、IV注入は、約30分にわたって、被験者に投与される。
【0150】
医薬組成物(本開示のレチファンリマブ組成物等)を含む投薬用溶液は、例えば重力による、又は静的注入ポンプを用いた、静脈内投与に好適である。本開示のレチファンリマブ組成物を0.9%の塩化ナトリウム又はD5Wと組み合わせることによって、レチファンリマブ投薬用溶液を得ることができる。特定の実施形態では、治療用投薬量の投与は、少なくとも30分又は少なくとも60分にわたる。
【0151】
いくつかの実施形態では、約3mg/kg~約10mg/kgの体重ベース用量が患者又は被験者に投与される。一実施形態では、約3mg/kgの体重ベース用量が患者又は被験者に投与される。別の実施形態では、約10mg/kgの体重ベース用量が患者又は被験者に投与される。別の特定の実施形態では、約3mg/kg~約10mg/kgの体重ベース用量がQ2Wで患者又は被験者に投与される。他の実施形態では、約3mg/kgの体重ベース用量がQ2Wで投与される。他の実施形態では、約10mg/kgの体重ベース用量がQ2Wで投与される。他の実施形態では、約3mg/kg~約10mg/kgの体重ベース用量がQ3Wで投与される。他の実施形態では、約3mg/kgの体重ベース用量がQ3Wで投与される。他の実施形態では、約10mg/kgの体重ベース用量がQ3Wで投与される。他の実施形態では、約3mg/kg~約10mg/kgの体重ベース用量がQ4Wで投与される。他の実施形態では、約10mg/kgの体重ベース用量がQ4Wで投与される。
【0152】
一実施形態では、約375mgの一律用量が患者又は被験者に投与される。一実施形態では、約500mgの一律用量が患者又は被験者に投与される。一実施形態では、約750mgの一律用量が患者又は被験者に投与される。他の実施形態では、約375mgの一律用量がQ2Wで投与される。他の実施形態では、約500mgの一律用量がQ2Wで投与される。他の実施形態では、約750mgの一律用量がQ2Wで投与される。他の実施形態では、約375mgの一律用量がQ3Wで投与される。他の実施形態では、約500mgの一律用量がQ3Wで投与される。他の実施形態では、約750mgの一律用量がQ3Wで投与される。他の実施形態では、約375mgの一律用量がQ4Wで投与される。他の実施形態では、約500mgの一律用量がQ4Wで投与される。他の実施形態では、約750mgの一律用量がQ4Wで投与される。
【0153】
一実施形態では、上述のような用量の投与は、少なくとも約30分にわたる、又は少なくとも約120分にわたるものである。別の実施形態では、上述のような用量の投与は、少なくとも約30分にわたる、又は少なくとも約90分にわたるものである。別の実施形態では、上述のような用量の投与は、少なくとも約30分にわたる、又は少なくとも約60分にわたるものである。別の実施形態では、レチファンリマブ投薬用溶液の投与は、少なくとも約30分にわたる連続注入によるものである。別の実施形態では、レチファンリマブ投薬用溶液の投与は、少なくとも約60分にわたる連続注入によるものである。
【0154】
投薬用溶液を形成するために、医薬組成物(即ち本開示のレチファンリマブ組成物)を、例えば0.9%の塩化ナトリウム又はD5Wを内包したIVバッグ(公称容積100mL又は250mL)等の容器に加えることができる。一実施形態では、本開示の医薬組成物を、0.9%の塩化ナトリウム又はD5Wを内包した容器に加える前に、優しくかき混ぜる。一実施形態では、上記容器はIVバッグである。一実施形態では、上記IVバッグは、ポリ塩化ビニル(PVC)製バッグ、ポリオレフィンコポリマー(ポリプロピレン及びポリエチレン)製バッグ、フタル酸ジ‐2‐エチルヘキシル(DEHP)含有PVC製バッグ、ポリアミドコーティングされたポリオレフィン製バッグ、又はエチレン酢酸ビニル(EVA)製バッグである。一実施形態では、投与中にインラインフィルタを使用する。一実施形態では、上記フィルタの細孔径は0.2μm、5μm、又は15μmである。別の実施形態では、細孔径0.2μmのインラインフィルタが使用される。別の実施形態では、上記フィルタは、ポリフッ化ビニリデン又は酢酸セルロース製フィルタである。別の実施形態では、上記フィルタはポリエーテルスルホン(PES)製フィルタである。いくつかの実施形態では、所望の体積の本開示の医薬組成物を上記IVバッグに加え、例えば優しく反転させて、投薬用溶液を混合できる。
【0155】
一実施形態では、調製された上記投薬用溶液はすぐに使用される。別の実施形態では、調製された上記投薬用溶液は、約25℃で約6時間にわたって、又は約2~8℃で最大約24時間にわたって保管される。別の実施形態では、約2~8℃で最大約24時間にわたって保管された、調製された上記投薬用溶液は、投与前に、4時間の平衡期間にわたって室温で保管される。
【0156】
本開示の医薬組成物、容器、及びキットは、癌の治療のための、及び特定の実施形態ではPD‐L1を発現する癌の治療のための方法において、例えば治療有効量又は予防有効量で使用できる。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、癌の治療のために、それを必要とする被験者に本開示の医薬組成物を、例えば治療有効量又は予防有効量で投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物、容器、及びキットを用いて治療される癌は:副腎癌、エイズ関連癌、胞巣状軟部肉腫、肛門癌(肛門管扁平上皮癌(SCAC)を含む)、膀胱癌、骨癌、脳及び脊髄癌、乳癌(HER2+乳癌又はトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を含む)、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、HPV関連子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣腫、子宮内膜癌(選択されていない子宮内膜癌、MSI‐high子宮内膜癌、dMMR子宮内膜癌、及び/又はDNAポリメラーゼε(POLE)エキソヌクレアーゼドメイン変異ポジティブ子宮内膜癌を含む)、ユーイング肉腫、骨格外粘液型軟骨肉腫、胆嚢又は胆管癌(bile duct cancer)(胆管癌(cholangiocarcinoma)を含む)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部(GEJ)癌、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、神経膠腫、膠芽腫、頭頸部癌(頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)を含む)、血液悪性腫瘍、肝細胞癌、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌(腎細胞癌(RCC)、明細胞RRC、乳頭状RCC、及び嫌色素性RCCを含む)、白血病(急性骨髄性白血病を含む)、脂肪肉腫/悪性脂肪腫性腫瘍、肝臓癌(肝細胞癌(HCC)を含む)、リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む)、肺癌(小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)を含む)、髄芽腫、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、髄膜腫、中皮腫(中皮咽頭癌を含む)、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、甲状腺乳頭癌、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌(転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)を含む)、後部ブドウ膜黒色腫、腎転移癌、ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌(メルケル細胞癌を含む)、小児期の小円形青色細胞腫瘍(神経芽腫、及び横紋筋肉腫を含む)、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌(stomach cancer)、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺癌、尿路上皮癌、並びに子宮癌からなる群から選択される。
【0157】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は:肛門癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胃癌(gastric cancer)、GEJ癌、神経膠腫、頭頸部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、転移性腎臓癌、皮膚癌、尿路上皮癌、及び子宮癌からなる群から選択される癌の治療のために使用できる。
【0158】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は肛門癌の治療のために使用される。別の実施形態では、上記肛門癌はSCACである。
【0159】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は肺癌の治療のために使用される。別の実施形態では、上記肺癌はNSCLCである。
【0160】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は子宮内膜癌の治療のために使用される。別の実施形態では、上記子宮内膜癌はMSI‐high子宮内膜癌、dMMR子宮内膜癌、及び/又はPOLEエキソヌクレアーゼドメイン変異ポジティブ子宮内膜癌である。
【0161】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は皮膚癌の治療のために使用される。別の実施形態では、上記皮膚癌はメルケル細胞癌である。
【0162】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は頭頸部癌の治療のために使用される。別の実施形態では、上記頭頸部癌はSCCHNである。
【0163】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は前立腺癌の治療のために使用される。別の実施形態では、上記前立腺癌はmCRPCである。
【0164】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は腎臓癌の治療のために使用される。別の実施形態では、上記腎臓癌はRCCである。別の実施形態では、上記腎臓癌は明細胞RCCである。
【0165】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は黒色腫の治療のために使用される。
【0166】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は尿路上皮癌の治療のために使用される。
【0167】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は扁平上皮癌の治療のために使用される。
【0168】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は神経膠腫の治療のために使用される。
【0169】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は子宮頸癌の治療のために使用される。
【0170】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は腎臓癌の治療のために使用される。
【0171】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は嫌色素性腎細胞癌の治療のために使用される。
【0172】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は転移性腎臓癌の治療のために使用される。
【0173】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は子宮癌の治療のために使用される。
【0174】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は上述のような癌の治療のために使用され、上記癌は転移性癌である。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は上述のような癌の治療のために使用され、上記癌は転移性癌である。
【0175】
このような実施形態のうちの特定のものにおいて、本開示の医薬組成物は、上述のような癌の治療のための術前補助療法として使用される。このような実施形態のうちの特定のものにおいて、本開示の医薬組成物は、上述のような癌の治療のための補助療法として使用される。このような実施形態のうちの他のものにおいて、本開示の医薬組成物は、上述のような癌の治療のための併用療法の構成要素として使用される。
【0176】
特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は上述のような癌の治療のために使用され、上記癌はPD‐L1を発現する。PD‐L1を発現する癌を識別するための、規制当局によって承認された方法及び試験は、既に文書化されており(例えばFDAのウェブサイト:fda.gov/CompanionDiagnosticsを参照)、これには例えばPD‐L1 IHC 22C3 pharmDxが含まれ、また更なる試験がCheung et al., (2019), “Fit-For-Purpose PD-L1 Biomarker Testing For Patient Selection in Immuno-Oncology: Guidelines For Clinical Laboratories From the Canadian Association of Pathologists-Association Canadienne Des Pathologistes (CAP-ACP).” Appl Immunohistochem Mol Morphol 27 (10):699-714に記載されている。
【実施例】
【0177】
これまで本開示を概説してきたが、本開示は、以下の実施例を参照することによって更に容易に理解されるだろう。これらの実施例は例示として提供されており、本開示を限定することを意図したものではない。
【0178】
実施例1
レチファンリマブを含有する医薬組成物の開発
レチファンリマブを含んだ安定した抗酸化剤非含有医薬組成物(「レチファンリマブ製剤(drug product:DP)組成物」)を、バイアル内の液体組成物として調製した。本明細書中で開示されているように、レチファンリマブは、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む、PD‐1結合ドメインを含む。上記軽鎖は、レチファンリマブのCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を含む可変ドメイン(VLPD-1)を含み、上記重鎖は、レチファンリマブのCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を含む可変ドメイン(VHPD-1)を含む。
【0179】
1.1.例示的なレチファンリマブDP組成物の目標製品プロファイル
250mg、375mg、及び500mgバイアルのための例示的なレチファンリマブDP組成物の目標製品プロファイルを以下の表1に示す。
【0180】
【0181】
1.2.例示的なレチファンリマブ製剤(DP)組成物の開発の概要
まず、pH、賦形剤、及び界面活性剤の影響を決定するために、10mg/mLのタンパク質濃度を選択した。レチファンリマブ製品の安定性を、異なる複数の保管温度、室温での撹拌応力、及び凍結解凍条件下で評価した。最適な製剤用緩衝液を選択した後、25mg/mLでのレチファンリマブ製品の安定性を、異なる複数の保管温度、室温での撹拌応力、及び凍結解凍条件下で評価した。
【0182】
これらの研究では、抗酸化剤(例えばヒスチジン、メチオニン)を用いずにレチファンリマブを製剤した。レチファンリマブの安定性を、スクロース、塩化ナトリウム、及びポリソルベート80(PS80)の存在下で、pH5(10mMの酢酸ナトリウム緩衝液)と、pH6(10mMのリン酸緩衝液)との間で比較した。以下に記載されているように、レチファンリマブは安定剤の存在下であっても、pH6のリン酸ナトリウム緩衝液中で沈殿し、目に見える粒子を形成した。レチファンリマブは、異なる複数の応力条件に対して、pH5の酢酸緩衝液中で更に安定していることが観察され、またスクロースの存在によってタンパク質は更に安定化された。従ってこの実施例では、pH5の10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(3mM氷酢酸、7mMの酢酸ナトリウム)が、更なる開発のための製剤緩衝液として選択された。
【0183】
静脈内(i.v.)投与に好適な有効浸透圧を達成するために、非イオン性オスモライトであるスクロースを、単独で、及びイオン性オスモライトである塩化ナトリウムと組み合わせて、この例示的な医薬製剤中のレチファンリマブに対する影響について評価した。界面活性剤であるPS80の添加についても、安定性が向上するかどうかを決定するために評価した。研究の結果に基づき、pH5の10mM酢酸ナトリウム(本明細書中では10mM酢酸塩とも呼ばれる)中の9%のスクロース及び0.01%のポリソルベート80を、この実施例における更なる評価のための製剤用緩衝液として選択した。研究及び結果について、以下で更に詳述する。
【0184】
1.3.10mg/mLのタンパク質濃度の安定性の評価
1.3.1.凍結解凍研究
スクリーニングされた4つの例示的な製剤のレチファンリマブの安定性に対する、5サイクルにわたる80℃での凍結及び25℃での解凍の影響を評価するために、凍結/解凍研究を実施した。試料を、最初に、並びに1サイクル及び5サイクル後に、外観について、そして高精度液中粒子計数(high accuracy liquid particle counting:「HIAC」)、サイズ排除高速液体クロマトグラフィ(「SE‐HPLC」)、並びに還元型及び非還元型のドデシル硫酸ナトリウムキャピラリ電気泳動(capillary electrophoresis‐sodium dodecyl sulfate:「CE‐SDS」)によって目に見えない粒子について、分析した。溶液の外観は全ての条件において、目に見える粒子を伴わない無色透明の溶液であった。これらの更なる分析結果を表2にまとめる。
【0185】
【0186】
得られた結果は、複数回の凍結解凍後にPS80が存在しないスクロース単独の条件下で有意に多くの目に見えない粒子が形成され、PS80の存在によって目に見えない粒子が有意に減少したことを示している。しかしながら、50mMの塩化ナトリウムの存在下では、PS80の有無にかかわらず、より多くの目に見えない粒子が、最初の状態でも5回の凍結解凍サイクルの後にも観察された。上記4つの製剤のいずれについても、5回の凍結/解凍サイクルの後で、HMW種の有意な変化、又は還元型及び非還元型CE‐SDSによる純度の変化は観察されなかった。凍結/解凍研究から、9%スクロース、0.01%PS80、10mM酢酸塩、pH5が、レチファンリマブに関して、例示的な製剤の中で最も安定していた。
【0187】
1.3.2撹拌の研究
スクリーニング中における4個全ての例示的な製剤中での安定性を評価するために、25℃で5日間にわたる250rpmでの撹拌の研究を実施した。試料を、T=0(撹拌なし)、1、3、及び5日目に、HIAC、SE‐HPLC、還元型及び非還元型CE‐SDSに関して分析した。結果を表3にまとめる。
【0188】
【0189】
目に見えない粒子の含有量は、最初の時点では、スクロース+PS80の条件に比べて(PS80を伴わない)スクロース単独の条件の方が高かった。目に見えない粒子の含有量は、塩化ナトリウムの存在下かつPS80の不在下において、有意に上昇した。塩条件におけるPS80の存在は、目に見えない粒子を減少させ、レベルは最初及び5日間の振盪後と同等であった。上記4つの製剤のいずれについても、5日間の振盪の後で、HMW種の有意な変化、又は還元型及び非還元型CE‐SDSによる純度の変化は観察されなかった。
【0190】
1.3.3.加速及びストレス下熱研究
上記4つの例示的な10mg/mL酢酸塩組成物中のレチファンリマブを、25℃の加速条件及び40℃のストレス下条件で3週間にわたって保管した。試料を、最初、1、2、及び3週間時点で、外観及びSE‐HPLCに関して分析し、安定性を決定した。外観の分析により、全ての試料が全ての時点で、目に見える粒子を含まない無色透明の溶液であったことが示された。加速及びストレス下条件に関するSE‐HPLCの結果を表4に示す。
【0191】
【0192】
これらの結果は、4つの酢酸塩組成物が全て25℃で3週間にわたって安定していたことを示すが、レチファンリマブのHMW種は、塩化ナトリウムが不在の製剤と比較して、塩化ナトリウムの存在下で40℃で保管した場合に、より急速に形成された。これらの結果は、ストレス下条件での良好な安定性プロファイルを実証しており、これは、pH5の10mMの酢酸塩中の9%のスクロース、0.01%のPS80が、レチファンリマブのための好適な製剤用緩衝液であることの更なるエビデンスである。
【0193】
10mMの酢酸塩、9%のスクロース及び0.01%のPS80中のレチファンリマブを、好適なDP組成物として評価し、加速(25℃)条件安定性研究から保存された試料を評価して、1か月の保管後に電荷不均質性に何らかの変化が観察されるかどうかを決定した。表5に示されているcIEFは、許容可能な電荷バリアント安定性プロファイルを確実なものとするものである。
【0194】
【0195】
1.4.選択されたタンパク質濃度(25mg/mL)での安定性の評価
初期臨床研究中の用量漸増及び拡張研究のために計画された臨床投薬に基づいて、また、比較的高いタンパク質濃度を有する比較的少ない体積を扱うことの利便性、及び所与の強度あたりのバイアルのサイズが比較的小さくなることの便宜に基づいて、タンパク質濃度を25mg/mLとなるように選択した。このようにして、例示的なDP組成物(10mMの酢酸塩、pH5、9%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、pH5.1)の安定性を、10mg/mLでの研究と同様の様式で、25mg/mLにおいて評価した。実施した研究には、凍結/解凍研究(-80℃での凍結及び25℃での解凍を5サイクル;表6)、撹拌研究(250rpm、25℃で5日間;表7)、及び加速保管研究(25℃加速保管条件、1か月;表8)が含まれていた。
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
表6~8に示されているように、HIAC光遮蔽分析により、製剤には目に見えない粒子の有意な増加がないことが実証された。更に、SE‐HPLCにより、HMW種の有意な変化は観察されず、非還元型及び還元型CE‐SDSにより、断片の有意な変化は観察されず、またcIEFにより、電荷不均質性の有意な変化は観察されなかった。これらの結果は、製剤中の25mg/mLのレチファンリマブの許容可能な安定性を実証するものである。
【0200】
レチファンリマブDP組成物を、10mMの酢酸ナトリウム(0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、0.18mg/mLの氷酢酸)、90mg/mLのスクロース、及び0.1mg/mLのポリソルベート80中にレチファンリマブ25mg/mLで、pH5.1で製剤した。選択されたレチファンリマブDP組成物の成分を以下の表9に示す。レチファンリマブDP組成物を、表9に示すように10mL又は20mLのタイプ1ボロシリケートバイアルに入れて提供した:250mg/10mL(10mLバイアル)、375mg/15mL(20mLバイアル)、又は500mg/20mL(20mLバイアル)。
【0201】
【0202】
1.5.実験計画法を用いた、レチファンリマブ組成物の特性決定及びロバスト性の研究
次に、使用のための例示的なレチファンリマブDP組成物のロバスト性を検証し、レチファンリマブDP組成物製造プロセスの制御戦略を開発するために、実験計画法(Design of Experiments:DoE)による研究を実施した。DoE研究は、目標組成を超える組成パラメータの範囲にわたる、例示的なレチファンリマブDP組成物のロバスト性を実証するために使用され、レチファンリマブDP組成物は、2~8℃という推奨保管温度で24か月間、及び25℃という加速温度条件で6か月間、評価された。
【0203】
表10及び表11に示されているような5つの組成パラメータの範囲を調査した。DoE研究の設計のために設計された全ての製剤(F1~F16)に加えて、中心点となる製剤(F9及びF16)と、低タンパク質濃度(21mg/mL)製剤(F1、F4、F6、F7、F12、及びF15)並びに高タンパク質濃度(29mg/mL)製剤(F2、F3、F5、F8、F13、及びF14)とを評価した。この研究で評価した全ての製剤パラメータは、製造中のそれぞれの濃度の上限及び下限を超えることを意図したものであった。例えばPS80の範囲は、0.02mg/mLから0.53mg/mLまで変動する。この特定のケースでは、試験される値は製造中の望ましい範囲より大幅に広かった。DoE研究では、pHはpH4.5~pH5.7の範囲内で評価された。評価したタンパク質濃度の範囲は、目標±15%であった。
【0204】
【0205】
【0206】
指定された製剤をタンジェンシャルフローろ過によって調製した後、製品安定性を、所期の長期保管条件(2~8℃)で最長48か月、及び加速条件(25℃)で6か月にわたって、評価した(実施例3を参照)。
【0207】
各時点において、薬剤製品に対する製剤の変数の影響を、以下のアッセイを用いて評価した:外観、サイズ排除高速クロマトグラフィ(SE‐HPLC)、キャピラリ等電点電気泳動(cIEF)、タンパク質濃度(Abs280)、目に見えない粒子の数(HIAC)、pH、及びPD‐1結合ELISA。
【0208】
製品の品質に対する各製剤変数の統計的有意性を、多変量解析(multivariate analysis:MVA)の実施によって評価した。個々の製剤パラメータと製品品質と間の関係、及び各製剤要因の重要性を理解するために、予測プロファイラを生成した。
【0209】
1.5.1.実験計画法を用いた製剤ロバスト性・安定性研究から得られた結果
上記実験計画及び上記統計的分析は、製品の品質の属性と、選択された製剤パラメータ及び保管条件との関係の理解を提供する。5±3℃及び25℃で6か月間保管された製剤試料に関する予測プロファイラを
図1に示す。異なる複数の製品の品質の属性に関して製剤ロバスト性・安定性研究から得られた結果について、以下の複数の節で議論する。
【0210】
1.5.1.1.SE‐HPLCで監視した%単量体、%HMW、及び%LMW種の結果
SE‐HPLC研究は、%単量体(M)及び%HMWの両方に関して、2~8℃で保管された製剤済みの試料が6か月にわたって安定しており、データの傾向が安定性の大きな変化を示さないことを実証するものであった。単量体含有量について、0.3%を超える減少は、2~8℃で6か月の保管後、pHレベルにかかわらず検出されなかった。25℃の加速保管条件下では、単量体純度が6か月で0.1~2.6%降下した。これに対応して、16個の製剤全てにおいて、%HMWは6か月で0.1~2.2%上昇した。
【0211】
これらの安定性データは、レチファンリマブ製剤のpH、賦形剤条件、及び緩衝液条件の変動が、評価した範囲内において、2~8℃の推奨保管温度における保管時間の関数としての、%単量体、%HMW、及び%LMW種の大きな変化をもたらさないことを実証するものである。
【0212】
1.5.1.2.cIEFで監視した電荷不均質性の変化
全ての例示的な製剤の電荷不均質性を、cIEFによって酸性バリアント(「AV」)、主電荷ピーク(「MCP」)、及び塩基性バリアント(「BV」)を測定することにより監視した。
【0213】
試験した賦形剤及びpH条件の範囲内では、所期の温度(2~8℃)における保管は、電荷不均質性のわずかな変化しかもたらさず、また、2~8℃で保管された製剤の電荷バリアントに対する、製剤パラメータのいずれかによる統計的に有意な影響は、全く見られなかった。25℃で6か月の保管の後では、より顕著な変化が観察された。pH及びPS80は、25℃において、例示的な製剤の電荷不均質性に対して統計的に有意な影響を有する。
【0214】
2~8℃では、6か月後にAVの増加はわずかしか検出されず、この増加は1.2%以下であった。25℃で6か月の保管後、AVレベルは、pH5.7及びpH4.5の製剤について、それぞれ平均13.2%及び14.4%だけ増加した。更に、pH5.1の目標製剤について、AVの12.8%の増加が観察された。
【0215】
これに対応して、長期保管条件(2~8℃)で6ヶ月間保管した後、16個の製剤全てでcIEF MCPの結果のわずかな変動が観察された。MCPレベルの降下は0.6%以下であった。しかしながら、25℃の加速条件下では、MCPレベルは最大で14.5%低下した。
【0216】
2~8℃では、BVのわずかな降下が検出され、この低下は0.9%以下であった。25℃で最長6ヶ月間保管された試料では、BVレベルは更に顕著に変化し、低下は4.9%以下であった。
【0217】
この安定性試験の結果により、pH5.1±0.3が、2~8℃の推奨保管条件において分解が最小となるpH範囲であることが示された。これらの製剤ロバスト性・安定性研究は、レチファンリマブ製剤の賦形剤のpH及び緩衝液条件が、2~8℃の推奨保管温度における保管中に、評価した範囲内では、電荷不均質性プロファイルの変化をわずかしか引き起こさないことを実証するものである。これらの電荷不均質性バリアントのわずかな変化は、レチファンリマブの相対的な効力の大きな変化にはつながらなかった。
【0218】
1.5.1.3.外観及び目に見えない粒子
透明さ及び目に見える粒子に関する、全ての製剤の外観を決定した。特に製剤F13では、他の製剤と比較して、特に2~8℃で保管された試料について、沈殿を伴う強い乳白色が観察された。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、このような物理的不安定性は、個々の製剤パラメータがそれぞれ最悪の限界条件にあること、即ちPS80の含有量が最低であり、スクロースの含有量が最低であり、pHが最高であることと、タンパク質の沈殿を引き起こす最高のタンパク質濃度との組み合わせによる影響に起因する。外観に関する結果及び目に見えない粒子のデータに基づくと、評価したPS80レベルは、レチファンリマブDP組成物を粒子の形成に対して安定化させるにあたって効果的であった。
【0219】
1.6.製剤の開発の概要
以上の製剤開発研究に基づくと、例示的な抗酸化剤非含有DP組成物(25mg/mLのレチファンリマブ、10mMの酢酸塩、9%のスクロース、及び0.01%のPS80、pH5.1)は、良好な安定性を提供し、濃度25mg/mLのレチファンリマブの最適な組成物をもたらすものであった。また、より高いレチファンリマブ濃度も企図されており、これらの研究によって裏付けられている。これに続くステップとして、製剤ロバスト性研究は、一連の製剤パラメータを変化させることによって、例示的なレチファンリマブDP組成物のロバスト性を確立することを目的とするものであった。レチファンリマブDPの安定性プロファイル履歴と一致して、温度を上昇させた(25℃)加速保管条件下では、長期保管条件(2~8℃)に比べてより顕著な化学分解効果が観察された。2~8℃では、製品の安定性に対する統計的に有意な影響を有する製剤パラメータはpHのみであるが、観察された変化は実用上重要なものではない。というのは、実際の値が、製品の属性の仕様の範囲内、及び場合によってはアッセイのばらつきの範囲内に十分収まっているためである。
【0220】
加速保管条件(25℃)下では、様々なpH及びPS80レベルが、経時的な凝集物形成(SE‐HPLC)及び電荷不均質性(cIEF)に影響を及ぼした。イオン強度及びタンパク質濃度がそれぞれ塩基性バリアント及びHMW%に影響を及ぼすことも観察された。しかしながら、これらの品質属性全ての実際の値は依然として仕様の範囲内に十分収まっている。
【0221】
要約すると、この製剤ロバスト性研究から収集されたデータは、DP組成物のpH、PS80、スクロース、及び緩衝塩の濃度の仕様をサポートするものである。記載されている他の抗体組成物とは対照的に、上記DP組成物は、抗酸化剤の添加を必要とすることなく、レチファンリマブの安定した組成物を提供する。
【0222】
1.7.レチファンリマブ組成物をバイアルで供給する方法
レチファンリマブDP組成物を、滅菌された緩衝水溶液として提供し、20mmのFluroTec(登録商標)及びB2‐40でコーティング済みのブチルゴム栓で蓋をされた、USP及びPh.Eur.に適合するType Iボロシリケート10mL(250mg/バイアル)又は20mL(375mg/バイアル及び500mg/バイアル)ガラスバイアルに入れる。レチファンリマブDP組成物の成分は、表9で提供されている。各レチファンリマブDP組成物バイアルの公称内容量は、10mL、15mL、又は20mLであった。各バイアルに、0.6mLだけ過剰な量の液体を充填した。過剰な充填は、用量の送達のための10mL(250mg)、15mL(375mg)、及び20mL(500mg)のレチファンリマブを引き出すために十分な体積を確保するために、含めたものである。目標充填体積、送達可能な体積、及びバイアル/シリンジのホールドアップ体積を、抽出可能体積の試験によって決定した。レチファンリマブDP組成物は、無色から淡黄色の、透明からわずかに乳白色の溶液であり、目に見える粒子を実質的に含まない。この節で説明したように供給されたレチファンリマブDP組成物を、以下で説明される投与適合性研究、並びに長期安定性及び加速安定性研究で使用した。
【0223】
実施例2
レチファンリマブのIV投与適合性研究
レチファンリマブDP組成物は、単回用量バイアルで利用可能であり(実施例1.7を参照)、生理食塩水(0.9%の塩化ナトリウム注射剤、USP)又はD5W(水中の5%のデキストロース、USP)中で希釈した後で静脈内(IV)注入として投与される。希釈は、投与したい量、例えば375mgの一律用量に基づいて計算される(体重ベース用量の場合、上記量の計算には患者の体重及び用量を用いることが理解されるだろう)。注入を準備するために、レチファンリマブの溶液の希釈を、生理食塩水又はD5Wを内包した市販のIV投与バッグ内で実施する。注入溶液は、市販のIVポンプ及びIV投与配管セットを用いて、用量について準備された0.9%塩化ナトリウムIVバッグ又はD5W IVバッグから、患者に投与される。以下で更に詳述されるように、安定性及び適合性研究は、用量について準備されたレチファンリマブの希釈並びに25℃(最長6時間)及び2~8℃で最長24時間の保管、並びに30分及び60分のIV注入期間にわたる、ろ過されていない及びろ過されたIV注入セットを用いたレチファンリマブのIV投与によって実施した。
【0224】
最初の適合性研究では、レチファンリマブDP組成物を、臨床で一般的に使用されるものと同じ組成、即ちポリオレフィンコポリマー(ポリプロピレン及びポリエチレン)、DEHP含有PVC、ポリアミドコーティングされたポリオレフィン、及びEVAのIVバッグ内で希釈し、これらを25℃に保持した。試験IVバッグの希釈スキームはブラケットアプローチに従うものであり複数の薬物濃度(1.4mg/mL、4.5mg/mL、及び10mg/mL)を、各IVバッグタイプで試験し、これらは高用量及び低用量濃度を表すものである。サイズ排除クロマトグラフィ(SE‐HPLC)、及びタンパク質濃度回収によって評価されたように、レチファンリマブの構造的完全性は、あらゆる条件及び時点で維持された。これらの研究は、本開示の医薬組成物をPVC、ポリオレフィン、及びポリオレフィンコポリマーIVバッグ内の0.9%の塩化ナトリウム又はD5W中で希釈した場合の、レチファンリマブの安定性及びその臨床投与への適合性をサポートするものである。
【0225】
2.1.レチファンリマブを用いた使用時適合性研究の概要
希釈剤として生理食塩水を用いて、レチファンリマブの1回の適合性研究を実施した。希釈剤としてD5Wを用いて、レチファンリマブの第2の適合性研究を実施した。目に見えないタンパク質性粒子を削減するためにろ過された延長セットを実装するために、第3の適合性試験を実施した。これらの研究は、例示的なレチファンリマブDP組成物の、細孔径が0.2μm、5μm、又は15μmのフィルタを備えたIV注入セットとの適合性及び安定性を実証するために実施された。臨床薬局からそれに従属する投与のための場所への、準備済みのIVバッグの輸送をシミュレートするための、例示的なレチファンリマブ投薬用溶液調製物の短期安定性に関するIV溶液の温度サイクル及び振盪研究を評価するために、第4の研究を実施した。
【0226】
試験したIVバッグ、注入セット、及びフィルタのタイプを表12~14にまとめる。
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
2.2.0.9%生理食塩水とのレチファンリマブの使用時適合性の評価
生理食塩水を用いた例示的なレチファンリマブDP組成物中のレチファンリマブ(濃度1.4mg/mL、4.5mg/mL、及び10mg/mL)の、異なるタイプの材料で構成された異なるサイズのIVバッグ(100mL及び250mL)(表12)、異なる投与セット(表13)、並びにインライン0.2μm PESメンブレン滅菌フィルタとの適合性を評価した。
【0231】
2.2.1.研究の設計
例示的なレチファンリマブDP組成物中のレチファンリマブを、生理食塩水を内包する100mL又は250mLのIVバッグ内で、生理食塩水を用いて1.4mg/mL、4.5mg/mL、及び10mg/mLの濃度に希釈した(表12)。濃度が1.4mg/mLのレチファンリマブIV溶液調製物には250mLのIVバッグを使用し、濃度が4.5mg/mL及び10mg/mLの場合には100mLのバッグを使用した。そしてIVバッグを室温で6時間、及び2~8℃で24時間にわたって保管した。2~8℃で保管されたバッグには、その後必ず、4時間の室温平衡期間を設けた。用量の準備完了時(T=0)、及びインキュベーション期間の完了後(注入前試料)に、試料を各バッグから回収した。
【0232】
インキュベーション期間の完了後、バッグを、インラインフィルタ(低タンパク質結合性0.2μm PESメンブレンフィルタ)を備えた対応するIV投与セットに接続した。バッグの全内容物を、(目標注入時間30分の「最悪のシナリオ(worst-case scenario)」を見越して)25分かけて注入し、「注入後(post-infusion)」試料を回収して試験した。
【0233】
2.2.2.結果
これらの研究の結果は、試験された全てのグループに関してタンパク質濃度、pH、外観、及びサイズ分布(SE‐HPLC)、電荷分布(cIEF)、及びELISAによる効力の有意な変化が観察されなかったことを実証している。IVバッグを:室温で6時間のインキュベーション、及び冷蔵温度で24時間という2つの条件下で保管してから30分かけて注入した後の、全ての濃度のレチファンリマブの%タンパク質回収は、各条件について、T=0におけるタンパク質濃度に対して有意な変化を示さなかった。
【0234】
生理食塩水中の注入溶液では、注入前時点において、目に見えない粒子が増加していた。しかしながら、注入後の目に見えない粒子に関する結果によって示されているように、インラインフィルタ注入セットによって目に見えない粒子を削減できた。低用量(1.4mg/mL;表15)及び高用量(10mg/mL;表16)のレチファンリマブに関する、PVC+DEHP IVバッグ及びPE注入セットを用いた、投与用混合物としての生理食塩水との使用時適合性研究の代表的な結果を、以下に示す。
【0235】
【0236】
【0237】
2.3.D5Wとのレチファンリマブの使用時適合性の評価
D5Wを用いた例示的なレチファンリマブDP組成物中のレチファンリマブ(濃度1.4mg/mL、4.5mg/mL、及び10mg/mL)の、異なるタイプの材料で構成された異なるサイズのIVバッグ(100mL及び250mL)(表12)、異なる投与セット(表13)、及びインライン0.2μm PESメンブレン滅菌フィルタとの適合性を評価した。
【0238】
2.3.1.研究の設計
レチファンリマブを、D5Wを内包する100mL又は250mLのIVバッグ内で、D5Wを用いて1.4mg/mL、4.5mg/mL、及び10mg/mLの濃度に希釈した(表12)。濃度が1.4mg/mLのレチファンリマブIV溶液調製物には250mLのIVバッグを使用し、濃度が4.5mg/mL及び10mg/mLの場合には100mLのバッグを使用した。そしてIVバッグを室温で6時間、及び2~8℃で24時間にわたって保管した。2~8℃で保管されたバッグには、その後必ず、4時間の室温平衡期間を設けた。用量の準備完了時(T=0)、及びインキュベーション期間の完了後(注入前試料)に、試料を各バッグから回収した。
【0239】
インキュベーション期間の完了後、バッグを、インラインフィルタ(低タンパク質結合性0.2μm PESメンブレンフィルタ)を備えた対応するIV投与セットに接続した。バッグの全内容物を、(目標注入時間30分の「最悪のシナリオ(worst-case scenario)」を見越して)25分かけて注入し、「注入後(post-infusion)」試料を回収して試験した。
【0240】
2.3.2.結果
これらの研究の結果は、試験された全てのグループに関してタンパク質濃度、pH、外観、及びサイズ分布(SE‐HPLC)、電荷分布(cIEF)、及びELISAによる効力の有意な変化が観察されなかったことを実証している。IVバッグを:室温で6時間のインキュベーション、及び冷蔵温度で24時間という2つの条件下で保管してから30分かけて注入した後の、全ての濃度のレチファンリマブの%タンパク質回収は、各条件について、T=0におけるタンパク質濃度に対して有意な変化を示さなかった。
【0241】
D5Wを含む注入溶液では、注入前時点において、混和剤として生理食塩水を用いた場合よりも目に見えない粒子の形成が少なかった。更に、注入後の目に見えない粒子に関する結果によって示されているように、インラインフィルタ注入セットによって目に見えない粒子を削減できた。低用量(1.4mg/mL;表17)及び高用量(10mg/mL;表18)のレチファンリマブに関する、PVC+DEHP IVバッグ及びPE注入セットを用いた、投与用混合物としてのD5Wとの使用時適合性研究の代表的な結果を、以下に示す。
【0242】
【0243】
【0244】
2.4.異なる複数のタイプのフィルタ膜及び細孔径との、レチファンリマブDP組成物の使用時適合性の評価
例示的なレチファンリマブDP組成物の初期の使用時適合性研究では:25℃で6時間、及び2~8℃で24時間という2つの保管条件でのインキュベーション後の目視検査のみによって、ある程度の目に見える微粒子及び目に見えない微粒子が生理食塩水で観察された。ラマン分光法による目に見える微粒子の特性決定により、上記粒子のタンパク質性の性質を確認した。0.2μm低タンパク質結合性インラインフィルタを備えたIV注入セットは、注入後試料中の目に見える微粒子を除去でき、また目に見えない微粒子を削減できた。タンパク質性の目に見えない粒子及び目に見える粒子を除去するための、異なる複数の膜材料(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルスルホン(PES)、及び酢酸セルロース(CA))並びにサイズ(0.2μm、5μm、及び15μm))のフィルタの適合性及び性能を評価するために、より包括的な研究を実施した。
【0245】
2.4.1.研究の設計
生理食塩水で希釈された3つの濃度(1.4mg/mL、4.5mg/mL、及び10mg/mL)のレチファンリマブ用量を、例示的なレチファンリマブDP組成物から調製した。目に見える粒子の形成は、混和剤として生理食塩水を用いた場合にD5Wよりも多く観察されたため、生理食塩水のみをIV溶液の調製に使用した。用量の調製の完了後、IVバッグを2~8℃で一晩保管し、翌日に室温で4時間の平衡期間を設けた。これは粒子の生成に関する「最悪のシナリオ」を表している。試料を、用量調製時点で(T=0)、2~8℃でT=24時間とそれに続く室温で4時間の平衡期間の後で(保持後(post-hold))、及びシミュレートされた注入の後の最終的な分注プールから(「注入後」)、採取して試験した。
【0246】
2.4.2.結果
全てのサイズの全ての増設型フィルタが、目に見えない粒子を削減できた。全体として、インライン又は増設型フィルタを、室温で6時間の保管及び2~8℃で24時間の保管後に使用した場合、試験された全ての材料で、注入後試料に対して製品の品質に関する影響はない。生理食塩水中の低用量(1.4mg/mL;表19)及び高用量(10mg/mL;表20)レチファンリマブに関する、0.2μmポリフッ化ビニリデン(PVDF)及び酢酸セルロース(CA)フィルタとの使用時適合性研究の代表的な結果を以下に示す。
【0247】
【0248】
【0249】
2.5.IV投与バッグ調製物の温度サイクル及び振盪研究
臨床薬局からそれに従属する投与のための場所への、準備済みのIVバッグの輸送をシミュレートするために、IV投与用溶液の温度サイクル及び振盪研究により、例示的なレチファンリマブ投薬用溶液調製物の短期安定性を評価した。IVバッグ内で希釈された後のレチファンリマブの濃度範囲の両端を取るために、1.4mg/mL(低用量)及び10mg/mL(高用量)の2つの濃度レベルを評価した。この研究のための希釈剤としては、生理食塩水を選択した。高濃度及び低濃度の両方のレチファンリマブIV調製物を希釈剤中で調製し、室温で6時間保持した後、2~8℃で一晩保持し、室温で更に6時間保持した。これは使用時適合性の、可能性のある「最悪の」保持時間シナリオを表す。この温度サイクルの後、投与場所へのIVバッグの輸送中に発生し得る振盪をシミュレートするために、試料を振盪した。
【0250】
2.5.1.研究の設計
例示的な375mgのレチファンリマブDP組成物を250mL生理食塩水IVバッグ内で使用し(低用量)、また例示的な1,000mgのレチファンリマブDP組成物を100mL生理食塩水IVバッグ内で使用する(高用量)ことにより、IV投与用溶液の濃度を準備した。この範囲は、レチファンリマブの有効用量である、Q4Wでの500mgをカバーするものである。IVバッグは、レチファンリマブDP組成物を加える前に、(1.4mg/mLの低濃度について)15mL又は(10mg/mLの高濃度について)50mLの生理食塩水をバッグから取り除くことによって準備した。詳細な用量の調製及び最終的なIVバッグ内でのレチファンリマブ濃度を、以下の表21に記載する。
【0251】
【0252】
用量の調製の完了時に、15mLの試料を、バッグから30mLのグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(「PETG」)ボトルに回収した(T=0)。試料の回収後、バッグを室温で6時間保管してから、2~8℃で一晩保持し、続いて室温で6時間にわたる第2の平衡期間を設けた。
【0253】
温度サイクルの後、第2の15mLの試料をバッグから回収し、続いてバッグを、100RPMで60分間の振盪を実施するようにプログラムされたオービタルシェーカーに載せた。この軌道振盪は、臨床薬局からそれに従属する投与のための場所への、準備済みのIVバッグの輸送をシミュレートするために適用された。
【0254】
振盪の完了後、分析試験のために試料をバッグから直接取り出した。続いて、0.2μmインラインフィルタを内包した投与セットを通した注入後に試料採取した。研究の設計は表22に記載されている。表23は、この研究の異なる複数のステージで実施される分析試験方法を列挙する。
【0255】
【0256】
【0257】
2.5.2.結果
IVバッグの温度サイクル及び振盪研究の結果を表24に示す。要約すると、溶液のpH及び濃度は予想された通り、両方の用量に関して、温度サイクル及び振盪後に変化しなかった。注入後試料の濃度は、両方の用量に関して変化せず一貫したままであった。外観に関する結果により、振盪後試料中に目に見える粒子が存在することが確認された。これらの観察は、温度サイクル後及び振盪後の両方における目に見えない粒子の有意な増加を示すHIACの結果によって確認された。0.2μmインラインフィルタを内包した投与セットを通したIVバッグの注入により、目に見えない粒子の個数は良好に削減された。逆浸透脱イオン(Reverse Osmosis Deionized:「RODI」)水ブランクは、HIACにおいて有意な個数の2μm以上の粒子を示したため、報告された試料に関する結果は、RODIブランクにおける計数を差し引くように調整されている。SE‐HPLCの結果は、両方の用量に関して、単量体ピーク及び%HMW種のパーセンテージの変化を示さなかった。cIEFの結果は、両方の用量に関して、複数の試料で同様の電荷プロファイルを示し、許容基準内に留まった。更に、T=0及び振盪後の試料の効力に関する結果は一貫しており、両方の用量について、許容基準内に留まった。
【0258】
【0259】
2.6.微生物チャレンジ試験
臨床使用時の取り扱いの際に偶発的に汚染された場合の患者の安全を確保するために、希釈済みの例示的なレチファンリマブ溶液の調製中に、微生物チャレンジ試験を実施した。この研究では、IVバッグ内での希釈後のレチファンリマブの濃度範囲の両端を取るために、例示的なレチファンリマブDP組成物を生理食塩水又はD5W中で1.4mg/mL及び10mg/mLの2つの濃度レベルに希釈した。微生物チャレンジ試験は、およそ10~100CFU/mLの以下の5種の微生物、及び典型的な皮膚汚染物質を、希釈済みレチファンリマブ調製物に接種することによって、二重に実施された(表25)。
【0260】
【0261】
レチファンリマブ及び微生物と組み合わせる微生物計数方法(膜ろ過法)の適切さを、微生物チャレンジ試験の実施前に実証した。微生物の成長の不在は、T0における値と比較した場合のCFU/mLの0.5 log10以下の上昇として定義した。
【0262】
微生物の成長は、それぞれ希釈済みレチファンリマブ調製物の別個のセットを用いた、2つの異なる保管条件下で評価した。第1の条件は、希釈済みのレチファンリマブを内包したIVバッグを、2~8℃で48時間保管した後即座に室温(20~25℃)で12時間保管し、合計保管時間を60時間としたものであった。他方の条件は、準備済みのIVバッグを室温(20~25℃)で16時間保管するものであった。各時点において、希釈済みレチファンリマブ調製物を、静菌性/静真菌性、及び微生物の増殖に対する相対的な耐性に関して評価した。2~8℃で保管された後で室温でインキュベートされた試料について、生理食塩水中で1.4mg/mL(表26及び表27)並びに10mg/mL(表28及び表29)で希釈されたレチファンリマブ溶液に関する試験結果が以下に示されている。D5W中で希釈されたレチファンリマブDP組成物について、試験結果は、表30及び表31(1.4mg/mL)並びに表32及び表33(10mg/mL)にまとめられている。
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
【0271】
室温(20~25℃)で実施された研究について、生理食塩水中で希釈されたレチファンリマブ溶液に関する試験結果が、表34(1.4mg/mL)及び表35(10mg/mL)にまとめられている。D5W中で希釈されたレチファンリマブ組成物について、試験結果は、表36(1.4mg/mL)及び表37(10mg/mL)にまとめられている。
【0272】
【0273】
【0274】
【0275】
【0276】
上記2つの濃度で0.9%生理食塩水中で希釈されたレチファンリマブDP組成物に関して、微生物数の増加(即ちT=0における値と比較して0.5log10以下のCFU/mLの上昇)は、試験した6種の生物のいずれについても、試験した期間内に両方の温度条件で観察されなかった。D5W中で希釈されたレチファンリマブDP組成物に関して、試験した微生物はいずれも、両方の濃度レベル及び両方の保管条件のいずれの試験試料において、経時的な成長を示さなかった。レチファンリマブ希釈物の一部では、特定の微生物の微生物数は時間と共に減少を示した。このような現象は、2つのグラム陽性菌、即ち黄色ブドウ球菌及び表皮ブドウ球菌を接種した試料について、より顕著であった。要約すると、0.9%生理食塩水及びD5Wのいずれにおいても、希釈済みレチファンリマブ溶液のいずれの組み合わせも、微生物数の経時的な増加を示さなかった。
【0277】
2.7.レチファンリマブの投与の適合性の研究の結論
本開示のレチファンリマブ医薬組成物は、構成材料が異なる複数のIVバッグ内の生理食塩水及びD5W溶液と、1.4mg/mL、4.5mg/mL、及び10mg/mLの濃度で、適合性を有し、また使用された様々な投与セット全てとも適合性を有することが示された。これらの結果は、30分のレチファンリマブIV溶液投与時間、並びに室温で最長6時間、及び2~8℃で24時間にわたるIVバッグ調製物の保管をサポートするものである。更に、材料及び細孔径が異なる、試験された全てのインライン又は増設型フィルタは、レチファンリマブとの適合性を有していた。
【0278】
温度サイクル及び振盪研究の結果は、1.4mg/mL及び10mg/mLの両方の濃度での、「最悪の」保管及び振盪シミュレーション条件下において、製品の品質に対する他の影響はないものの、目に見える粒子及び目に見えない粒子(≧10及び25μm)の増加が観察されたことを示す。しかしながら、インラインフィルタを通した注入後には、目に見える粒子は残留せず、目に見えない粒子は大幅に削減された。
【0279】
使用時の取り扱いの際に患者の安全を確保するために、レチファンリマブIV注入用溶液の調製中に、微生物チャレンジ試験を実施した。冷蔵庫内での及び室温でのIV調製物の臨床保管の可能性を反映するために、生理食塩水及び5%デキストロース溶液中で希釈されたレチファンリマブIV調製物を、以下の2つの異なる条件で保管した:2~8℃で48時間の保管、及びそれに続く室温で更に12時間の保管;並びに室温で12時間の保管。また、微生物チャレンジ研究の結果は、室温で最長6時間、及び2~8℃で24時間という、レチファンリマブIVバッグに関して提案される保管を裏付けるものである。
【0280】
実施例3
長期安定性及び加速安定性研究
栓をした10mL又は20mLガラスバイアル内での、例示的なレチファンリマブDP組成物の長期安定性及び加速安定性研究を実施した。2~8℃という推奨条件で最長60か月保管されたレチファンリマブDP組成物、及び25℃という加速条件で最長6か月保管されたレチファンリマブDP組成物に関して、安定性を評価した。
【0281】
3.1.実験計画
使用された試験の概要、並びに2~8℃及び25℃の保管条件で一般的に評価した間隔を、それぞれ表38A及び38Bに提示する。これらの研究は、例示的なレチファンリマブDP組成物の12個の異なるロットに対して実施された。研究の大半は倒立させたバイアルを用いて実施され、少なくとも1回は直立させたバイアルを用いて実施された。
【0282】
【0283】
【0284】
3.2.結果
2~8℃で60か月、及び25℃で6か月保管された代表的なロットに関する全ての試験の結果を、それぞれ表39A~39B、及び表40に示す。アッセイの効力、純度、並びにタンパク質安定性(単量体並びに酸性及び塩基性バリアント)に関する更なる詳細を、以下の概要において提示する。
【0285】
【0286】
【0287】
【0288】
調査した全てのDPロットに関する安定性データは、意図した2~8℃の長期保管条件で60か月にわたって、許容限界以内である。純度に関する方法であるSE‐HPLC、還元型CE‐LDS、及び非還元型CE‐LDSによって、純度のわずかな低下が観察された。cIEFによる不均質性も、主ピークのわずかな低下と、これに対応する酸性バリアントの増加を有していた。監視された他のパラメータについては、分析手順の変動性を超えた更なる変化は観察されなかった。
【0289】
25±2℃の加速保管条件では、純度に関する方法であるSE‐HPLC(≦1%)、還元型CE‐LDS(≦1%)、及び非還元型CE‐LDS(≦2.5%)によって、純度のわずかな低下が観察された。加速条件下における純度のこれらの変化は、タンパク質に関して予測されていないものではなく、これらの結果は十分に許容限界内であった。cIEFによる不均質性は、酸性バリアントの中程度の増加(17.5%以下の増加)を示した。酸性バリアントは主に脱アミド産物を含有する。監視された他のいずれのパラメータについては、分析手順の変動性を超えた変化は観察されず、これにより、レチファンリマブDPの堅牢な安定性が実証された。
【0290】
3.3.安定性に関する結論
複数のロットの安定性を示すための方法から得られた定量的データの以上の分析は、本開示のレチファンリマブ医薬組成物の、2~8℃の推奨保管条件における少なくとも24か月の貯蔵寿命をサポートするものである。表39A~39B及び表40に示されている代表的な安定性データは、定性的及び半定量的又は非定量的な他のあらゆる試験も、少なくとも24か月にわたって許容限界以内に留まったことを示しており、少なくとも約36~少なくとも約60か月を上限とする少なくとも約24か月の貯蔵寿命をサポートするものである。
【0291】
実施例4
材料及び方法
4.1.A280によるタンパク質濃度
レチファンリマブのタンパク質濃度は、SoloVPEシステム(C Technologies, Inc.製のSoloVPE可変光路長UVシステム)によって決定された。SoloVPEシステムは、ランベルト・ベールの法則と、複数の光路長で実施された280nmでの吸光度測定の線形回帰から得られる傾きとに基づく、傾斜分光法(Slope Spectroscopy method)を採用している。タンパク質濃度は、以下のスロープ分光法の式を用いて計算した:
タンパク質濃度(mg/mL)=c=M/α
ここでcは濃度であり、Mは回帰直線の傾きであり、αはレチファンリマブのアミノ酸配列に基づいて計算された吸光係数[1.43(mg/mL)-1cm-1]である。
【0292】
4.2.HIAC液中粒子計数による、目に見えない微粒子
USP<788>及びPh.Eur.2.9.19に記載されている方法を用いて、製剤中の目に見えない微粒子状物質を検出、サイズ決定、及び計数した。光遮蔽センサを用いた電子液中粒子計数システムを採用した。粒子は、光遮蔽センサ(HIAC)を用いた電子液中粒子計数システムを用いて、2μm以上(特性決定情報のみ)、10μm以上、及び25μm以上の3つのサイズ範囲で計数される。製剤の10個のバイアル(10mL/バイアル)を分析用にプールする。
【0293】
4.3.外観
外観は、Ph.Eur.2.2.1及び2.2.2に従って、最小強度要件を満たす可視光の下で、白色及び黒色の両方の背景の前で、目視で評価した。試料のアリコートを透明なガラスバイアル内で評価した。検査された属性としては、溶液の色、及び溶液の透明さが挙げられる。着色の程度は、Ph.Eur.で認定された色標準を用いて決定した。透明さの程度は、Ph.Eur.で認定された参照懸濁液標準を用いて決定した。
【0294】
4.1.pH試験
溶液のpHは、公定法[USP<791>、Ph.Eur.2.2.3]に従って、較正されたpHメータを用いて電位差測定によって測定した。試料を試験する前に、認定されたpH標準を用いてpHメータを3点較正し、この3点較正は、pH7の緩衝液標準から始まり、次にpH4緩衝液標準、そしてpH10緩衝液標準へと進むものであった。較正に続いて、pH5及びpH8の2つの認定されたpH緩衝液を用いて、システムの好適性をチェックした。
【0295】
4.4.サイズ排除高速液体クロマトグラフィ(SE‐HPLC)による単量体純度
製品の純度の尺度として、及び不純物、特に産物凝集物を測定するために、サイズ排除高速液体クロマトグラフィ(SE‐HPLC)を使用した。アッセイは、単量体ピークの同一性及びシステムの好適性に関する対照試料として、レチファンリマブ参照標準を含む。試料をサイズ排除HPLCカラムに注入し、リン酸ナトリウム/硫酸ナトリウム緩衝液を用いて均一濃度で溶出させる。溶出したタンパク質は、280nmの紫外(UV)吸光度を用いて検出した。報告可能な結果は、(全てのピークから賦形剤のピークを除いたものと比較した)製品の単量体ピークの面積パーセントとして計算される、製品純度であった。また、単量体よりも見かけの分子量が大きい全ての種(高分子量種、又はHMWと呼ばれる)の合計パーセント、二量体(HMW種の潜在的な一成分)のパーセント、及び単量体よりも見かけの分子量が小さい全ての種(低分子量種、又はLMWと呼ばれる)の合計パーセントも報告された。
【0296】
4.5.cIEFによる電荷不均質性及び同一性
レチファンリマブの電荷不均質性及び同一性を、キャピラリ等電点電気泳動(cIEF)によって評価した。cIEFは、Alcott 720NVオートサンプラーを備えたiCE3システム(ProteinSimple)を用いて実施される。両性担体及びpIマーカーを含有するレチファンリマブ参照標準及び試験物品試料を調製し、分析のためにキャピラリカートリッジに装入した。キャピラリの各端部の電解質タンクには、陽極液及び陰極液を充填した。電圧を印加し、試料を試料のpIに集中させた。カメラは、30秒ごとにキャピラリカラム全体のUV光吸収画像を撮影し、これにより上述の集中ステップのリアルタイムでの監視が可能となった。その結果としての分離パターン画像をキャプチャし、クロマトグラフィデータシステム・ソフトウェアで分析した。試験物品の電気泳動プロファイルを、参照標準の電気泳動プロファイルと比較した。このアッセイの報告可能な結果は、二重の調製物の、平均主電荷ピーク%面積、平均酸性バリアント%面積、及び平均塩基性バリアント%面積であった。
【0297】
必要に応じて同一性を確認するために、所与の試料セット内で、試験物品の主ピークのpIは、レチファンリマブ参照標準の主ピークのpIの0.5pI単位以内である必要があり、また試験物品のプロファイルは参照標準のものに定性的に匹敵するものである必要がある。
【0298】
4.6.還元型CE‐LDSによる純度
ドデシル硫酸リチウムキャピラリ電気泳動(CE‐LDS)によって、製品の純度に関する定量的情報、並びに不純物、付加物、製品断片、及び共有結合種の性質に関する定性的情報を提供した。試料を、還元剤である2‐メルカプトエタノール(βME)を含有するLDS試料緩衝液中で加熱することによって変性させ、還元した。続いて試料を、Sciex(ABSciex、Beckman)PA800/PA800 Plus機器を用いて電気泳動させた。試験物品及び参照標準試料をキャピラリカートリッジに装入し、製品純度をUV検出によって決定する。電気泳動が完了した後、電気泳動ソフトウェアを用いてデータを分析した。試験物品に関する報告可能な結果は、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)に対応するピークの百分率の合計として定義される、%純度であり、これは最も近い0.1%まで記録された。
【0299】
4.7.非還元型CE‐LDSによる純度
非還元型ドデシル硫酸リチウムキャピラリ電気泳動(CE‐LDS)によって、製品の純度に関する定量的情報、並びに不純物、付加物、製品断片、及び共有結合種の性質に関する定性的情報を提供した。試料を、(還元剤を含有しない)LDS試料緩衝液と混合し、加熱した。続いて試料を、Sciex(ABSciex、Beckman)PA800/PA800 Plus機器を用いて電気泳動させた。試験物品及び参照標準試料をキャピラリカートリッジに装入し、製品純度をUV検出器によって決定した。電気泳動が完了した後、電気泳動ソフトウェアを用いてデータを分析した。試験物品に関する報告可能な結果は、%純度(=検出された全てのピークに対する無傷のレチファンリマブの%)であり、これは最も近い0.1%まで記録された。
【0300】
4.8.PD‐1結合ELISAによる効力
PD‐1に対するレチファンリマブの結合活性を定量する間接的な酵素結合免疫吸着検定法(enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)を用いて、効力を評価した。組み換えヒトPD‐1で固相(96ウェルアッセイプレート)をコーティングした。レチファンリマブ試料を、固定化したPD‐1に結合させた。試験物品及びレチファンリマブ参照標準の希釈系列をこの方法で試験して、用量応答曲線を生成した。固定化したPD‐1に結合したレチファンリマブの検出を、レチファンリマブに結合するアルカリホスファターゼ(AP)結合抗ヒトκ抗体(aHuk‐AP)を用いて達成した。結合したプローブ抗体aHuk‐APの定量を、比色AP基質の添加によって達成した。結合したAPによる、添加したAP基質の酸化により、着色された産物が得られ、これを分光測定で測定した。検出される吸光度応答は、存在するレチファンリマブの量に比例する。データを制約付き4パラメータロジスティックモデルに当てはめて、吸光度をレチファンリマブ濃度の関数として評価した。報告可能な結果、即ちレチファンリマブ参照標準に対する試験物品のPD‐1効力を、以下の式を用いて計算した:
相対効力=100%×EC50INCMGA00012参照標準/EC50試験物品
【0301】
4.9.PD‐1遮断ELISAによる効力及び同一性
PD‐1受容体結合及びシグナル伝達バイオアッセイを用いて、レチファンリマブ試料の同一性及び効力を評価した。PD‐1遮断バイオアッセイを用いて、(Jurkat細胞上で提示される)PD‐1受容体が(U2OS細胞上で提示される)PD‐L1リガンドに結合するのを遮断する能力によって、レチファンリマブ抗体の効力を決定した。この相互作用の遮断により、PD‐1抗体の不在下で開始されてJurkat操作細胞内で化学発光シグナルを生成するSHP1動員経路が妨げられる。PD‐1/PD‐L1複合体の、従ってSHP1の動員の途絶は、活性ガラクトシダーゼ酵素の形成を妨げるものであり、下流の化学発光シグナルの阻害によって直接定量でき、また発光リーダーで測定できる。データを制約付き4パラメータロジスティックモデルに当てはめて、発光をレチファンリマブの対数濃度の関数として評価した。報告可能な結果、即ちレチファンリマブ参照標準に対する試験物品のPD‐1効力を、以下の式を用いて計算した:
相対効力=100%×EC50レチファンリマブ参照標準/EC50試験物品
【0302】
4.10.微生物チャレンジ試験
IVバッグ内での希釈後のレチファンリマブの濃度範囲の両端を取るために、レチファンリマブを0.9%の生理食塩水又は5%の水中のデキストロースで10mg/mL及び1.4mg/mLの2つの濃度レベルに希釈した。微生物チャレンジ試験は、およそ10~100CFU/mLの5種のUSP<51>に記載の微生物、及び典型的な皮膚汚染物質を、希釈済みレチファンリマブ調製物に接種することによって、二重に実施された。
【0303】
レチファンリマブDP及び微生物と組み合わせる微生物計数方法(膜ろ過法)の適切さを、微生物チャレンジ試験の実施前に実証した。微生物の成長の不在は、USP<51>に従い、T0における値と比較した場合のCFU/mLの0.5 log10以下の上昇として定義した。
【0304】
この研究は、推奨保管温度で、推奨保管期間の2倍にわたって実施された。従って、希釈済みレチファンリマブ調製物を、まず2~8℃で48時間保管した後、即座に室温(20~25℃)で12時間保管し、合計保管時間を60時間とした。各時点において、希釈済みレチファンリマブ調製物を、静菌性/静真菌性、及び微生物の増殖に対する相対的な耐性に関して評価した。
【0305】
4.11.重量オスモル濃度
重量オスモル濃度を、総覧[USP<785>、Ph.Eur.2.2.35]で定義されている方法を用いて、凝固点降下浸透圧計で測定した。各測定の較正には、NISTトレーサブル標準を使用した。NISTトレーサブル標準を測定することにより、試験物品の測定前にシステムの好適性を判断した。
【0306】
本明細書において言及されている全ての公刊物及び特許は、個々の公刊物又は特許出願それぞれの全体が参照により本明細書に援用されていることが具体的かつ独立に指示されている場合と同程度に、参照により本明細書に援用されている。
【0307】
本開示は、本出願で説明された特定の実施形態に関して限定されるものではない。当業者には明らかなように、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の修正及び変形を行うことができる。本開示中に列挙されているものに加えて、本開示の範囲内で機能的に同等の方法及び組成物が、以上の説明から当業者には明らかになるだろう。このような修正及び変形は、本開示の範囲及び/又は添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。本開示は特定の方法、化合物、又は組成物に限定される、当然ながら変化し得ることを理解されたい。また、本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定を意図したものではないことも理解されたい。
【配列表】
【国際調査報告】