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特表2024-525573加工された甲虫類幼虫を紫外線処理によりビタミンD3で富化する改善方法及び関連する食品粉末
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  • 特表-加工された甲虫類幼虫を紫外線処理によりビタミンD3で富化する改善方法及び関連する食品粉末 図1
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  • 特表-加工された甲虫類幼虫を紫外線処理によりビタミンD3で富化する改善方法及び関連する食品粉末 図4D
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】加工された甲虫類幼虫を紫外線処理によりビタミンD3で富化する改善方法及び関連する食品粉末
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20240705BHJP
   A23L 33/155 20160101ALI20240705BHJP
   A23L 5/30 20160101ALI20240705BHJP
   A01K 67/033 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/155
A23L5/30
A01K67/033 502
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500279
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 FR2022051151
(87)【国際公開番号】W WO2023281177
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2107438
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520420274
【氏名又は名称】ヌートリ’アース
(74)【代理人】
【識別番号】100113033
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 精孝
(72)【発明者】
【氏名】デフライゼ,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ドーミニー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】デスタイルレウアー,シャルル-アントワーヌ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE03
4B018MD23
4B018MD76
4B018ME02
4B018MF01
4B018MF04
4B018MF06
4B018MF07
4B018MF14
4B035LC16
4B035LE01
4B035LG41
4B035LP01
4B035LP22
4B035LP59
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの光源が、加工された甲虫幼虫の方向にUVB型の紫外線を放射する間の光処理工程プを含む甲虫粉末の製造方法に関し、前記UVB型の紫外線が、該粉末において80μW/cm以上の放射照度を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの光源が、甲虫類幼虫の方向にUVB型の紫外線を放射する間の光処理工程を含む、甲虫類粉末の製造方法であって、
前記UVB型の紫外線が、甲虫類粉末において80μW/cm以上の放射照度を有し、かつ、前記甲虫類幼虫が、40~250℃の間の温度、好ましくは、50~150℃の間の温度で脱水され、それにより、殺虫された幼虫が、
2~15%の水分、より好ましくは3~8%の水分、及び/又は
0.7未満の水分活性(AW)
を有し、かつ、殺虫された幼虫が、前記光処理前に粉砕されていてよいことを特徴とする、甲虫類粉末の製造方法。
【請求項2】
放射されるUVB光線の放射照度が、80~1,000μW/cmであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
放射されるUVB光線の放射照度が、好ましくは150~250μW/cm、より好ましくは170~200μW/cmであることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
加工された幼虫が、1~100ミリメートルの間の厚さを有する、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
加工された幼虫が、5~15ミリメートルの間の厚さを有する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
光処理工程の間に甲虫類幼虫の方向に前記少なくとも一つの光源により放射される紫外線が、
-UVB型であり、かつ、波長が280nm~320nmの間にある電磁放射線から成る、及び/又は
-UVA型であり、かつ、波長が320nm~400nmの間にある電磁放射線から成る、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
光処理工程の間に、前記少なくとも一つの光源が、甲虫類幼虫から1~100cm、好ましくは5~20cmの間の所定の距離に配置される、請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
光処理工程の間に、前記少なくとも1つの光源が、10秒間~24時間の間の処理範囲に従って、加工された甲虫類幼虫の方向に紫外線を放射する、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記処理範囲が連続的又は累積的に達成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
光処理工程の全部又は一部の間に、加工された甲虫類幼虫が、15~35℃の間、好ましくは22~26℃の間の実質的に一定の温度を有する環境に維持される、請求項1~9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
光処理工程の全部又は一部の間に、加工された甲虫類幼虫が、20~80%の間の相対湿度の実質的に一定の湿度を有する環境に維持される、請求項1~10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
甲虫類が、次の種、即ち、Tenebrio molitor、Alphitobius diaperinusから選ばれる、請求項1~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一つに記載の製造方法の実施により得られることができる甲虫類粉末であって、130,000IU/KgのビタミンD3を含み、かつ、PV過酸化物価とAVアニシジン値とから計算されるTOTOX酸化指数、即ち、TOTOX酸化指数=(2×PV)+AVが26以下であることを特徴とする、甲虫類粉末。
【請求項14】
人間又は動物の食品のための、請求項13記載の甲虫類粉末の使用。
【請求項15】
前記粉末が栄養補助食品として使用される、請求項14記載の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品産業の分野に関する。
【0002】
本発明の目的は、より正確には、甲虫類を含む食品粉末の製造に関する。
【0003】
本発明の目的の一つは、甲虫類幼虫に由来する粉末のビタミンD3での富化(renrichissement)を改善することにある。
【0004】
従って、本発明は、とりわけ、食品産業において、及び、とりわけ、人間の食品、爬虫類の餌、動物の餌(ペットフード/ペットケア/栄養補助食品)又は魚の養殖のために非常に多くの用途を有する。
【背景技術】
【0005】
ビタミンD3は体のために重要な特性を有する。
【0006】
ビタミンD3は、本明細書においてはコレカルシフェロールを意味する。
【0007】
人間では、このビタミンD3は、とりわけ、カルシウム、及び、腸で吸収されるリンの標準血中濃度を維持することに関係している。それは、免疫系を強化し、かつ、認知機能を改善する。
【0008】
ビタミンD3は、また、人間及びペット、例えば、犬の骨及び骨格筋の維持にも不可欠な役割を果たしている。
【0009】
ビタミンD3は、例えば、高齢者の骨粗鬆症を予防するために、カルシウムに加えて使用される。
【0010】
爬虫類においては、ビタミンD3はカルシウムの最適な同化及び骨の石灰化を可能にする。
【0011】
今日、健康な成人の50%がビタミンD3の欠乏に苦しんでいることが知られている。
【0012】
ビタミンD3の1日の必要量は、成人のために15μgであり、かつ、70歳を超える人では20μgまで上昇し得る。
【0013】
従来、ビタミンD3を含む食品源は、とりわけ、魚の油、切り身、肝臓により、実質的に魚から得られている。しかし、魚は減少しつつある資源であり、それ故、ますます高価になりつつある。
【0014】
北方地衣から抽出されたビタミンD3又はラノリンから合成されたビタミンD3は、また、サプリメントの形態で見いだされ得る。
【0015】
このように、ビタミンD3に富んだ食品の量は減少している。ビタミンD3の需要に関する限り、それは猛烈に増加しつつある。
【0016】
従って、食品産業の関係者は、持続可能かつ合理的な方法で、このビタミンD3を製造することを可能にする解決策を見出すことに多大なエネルギーを注いでいる。
【0017】
本出願人に帰属する特許文献1は、先行技術として公知である。この文献は、甲虫類を含む、ビタミンD3に富んだ食品粉末の製造を提案している。
【0018】
この文献においては、より詳細には、Tenebrio molitor又はAlphitobius diaperinus型の幼虫の成長段階の間の紫外線処理、いわゆるUV処理が提案されている。該幼虫の成長段階の間のこのようなUV処理が、ビタミンD3の有意な合成を可能とする。
【0019】
実際、特許文献1において提案された富化技術により得られた結果から、UV処理なしでは、該幼虫は、ビタミンD3を殆ど又は全く含まない(乾燥重量で0~2μg/100g)のに対して、該幼虫の成長段階の間にUV処理を伴うと、該幼虫においてビタミンD3の平均最大濃度が、乾燥重量で約50μg/100gで平均的に得られることが明らかにされている。従って、ビタミンD3に富んだこれらの生きた幼虫は、加工段階の後に、ビタミンD3に富んだ甲虫類粉末又は甲虫類幼虫を得ることを可能とする。
【0020】
しかしながら、本出願人は、産業的水準では、特許文献1で提案された解決策の実施は依然として複雑なままであると主張する。
【0021】
実際、この文献の技術的教示によれば、UV処理は、これらの幼虫の成長段階の間に生きた幼虫に対して直接実行される。
【0022】
このことは、飼育場の生産性を大きく損ない得る、かつ、UV処理方法の産業化を困難にし得るいくつかの問題を発生させる。
【0023】
本出願人は、第一に、生きた幼虫に対するUV処理は、とりわけ、光源が生きた幼虫から25cm以下の距離に配置されているとき、UV処理を伴わないときに、幼虫に観察される幼虫の死亡率よりも10倍大きい幼虫の死亡率を発生させ得ると主張する。
【0024】
実際、試験によれば、光源から25cmの距離で10日間UV処理(25Wランプ、UVBインデックス 200)を受けた12週齢の幼虫の死亡率が0.1%であるのに対し、この光処理を伴わないときの死亡率は0.01%であることを示している。
【0025】
出願人は、第二に、このタイプのUV処理を実行するために必要な表面積は相当なものであると主張する。
【0026】
幼虫の乾燥重量で50μg/100gのビタミンD3を合成するためには、25WのUVBランプ(UVBインデックス 200)を、幼虫が入れられている槽から25cmの距離に10日間置かなければならない。この槽は、56cm×38cm×17cmの容積を有する。この構成により、ビタミンD3の合成率を最大にしながら、死亡率を最小にすることができる。
【0027】
それ故、上記の条件においては、125cm×200cm×30cmの構造では、10日毎に10.5キログラムの生きた幼虫(又は3.75キログラムの粉末)しか生産できない故に、時間に関して、また表面積に関しても、非常にコスト高である。
【0028】
このように、本出願人は、ビタミンD3に富んだ甲虫類粉末食品の製造の産業化にとって、先行技術の解決策は現在まで完全には満足できるものではないと主張する。製造コストを低減しつつ、加工された甲虫類幼虫におけるビタミンD3濃度を有意に高めることを可能にする信頼性の高い産業的解決策を見出すことは、実に興味深いことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】国際公開第2019/229332号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は、上記状況を改善することを目的とする。
【0031】
本発明は、より詳細には、産業コストを制限しつつ、甲虫類粉末中のビタミンD3濃度を有意に増加させるための、産業レベルでの実施が容易な効率的な解決策を提案することによって、上記の種々の欠点を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の目的は、第1の態様によれば、少なくとも1つの光源が、加工された甲虫類幼虫の方向にUVB型の紫外線を放射する間の光処理工程を含む、ビタミンD3により富化された甲虫類粉末を製造する方法に関する。
【0033】
本発明によれば、UVB型の紫外線は、前記粉末において80μW/cm以上の放射照度を有する。
【0034】
このような80μW/cm以上の放射照度を持つUVB光線を放射することにより、UV処理の期間を著しく短縮しでき、かつ、ビタミンD3濃度の驚くべき増加を得ることができることが観察された。
【0035】
このように照射時間を短縮することにより、該方法を最適化して、そのコストを低減し、かつ、その産業化を促進することを可能とする。
【0036】
好ましくは、放射されるUVB光線の放射照度は80~1,000μW/cmの間である。好ましくは、放射されるUVB光線の放射照度は、150~250μW/cmの間である。好ましくは、放射されるUVB光線の放射照度は170~200μW/cmの間である。
【0037】
UV前処理工程(加工):
ここで、加工された幼虫とは、少なくとも殺虫処置を受けた甲虫類幼虫を意味する。
【0038】
有利には、本発明に従う方法は、光処理工程の前に、前記幼虫の殺虫を含む甲虫類幼虫を加工する工程を含む。好ましくは、該加工工程は、幼虫期の甲虫類に実行される。
【0039】
第1の選択肢によれば、この殺虫は、冷温処理によって実行される。冷温処理とは、例えば、甲虫類幼虫を4℃未満の温度に10分間を超える時間にて暴露することを意味する。
【0040】
第2の選択肢によれば、この加工工程は、高温処理によって実施される。高温処理とは、例えば、甲虫類幼虫を水中で15秒間を超える時間にて40℃を超える温度に暴露すること(湯通し)、又は、加熱空気で30分間を超える時間にて暴露することを意味する。
【0041】
特定の実施態様においては、殺虫工程の間に、幼虫を50~120℃の間の温度、好ましくは、85~110℃の間の温度、更により好ましくは、90~100℃の間の温度を有する水中に置くことができる。これは、また、湯通しとも呼ばれる。
【0042】
このような湯通しによる殺虫技術は効率的であることが分かり、かつ、甲虫類の栄養特性を保持し、かつ、幼虫の細菌負荷を低減できる。
【0043】
好ましくは、この湯通しは、30秒~10分の間、好ましくは、1~5分の間の湯通し時間にて実行される。
【0044】
第3の選択肢によれば、殺虫工程は、また、甲虫類幼虫をマイクロ波に、例えば、少なくとも10秒間曝露することによっても実行されることができる。
【0045】
有利には、加工工程は、殺虫後に、0.7未満の該粉末の水分活性を得ることを目的とする脱水(又は調理)工程を含む。
【0046】
この脱水のために、マイクロ波処理を提供することができる。マイクロ波処理とは、甲虫類幼虫をマイクロ波に、例えば、少なくとも10秒間暴露することを意味する。
【0047】
この脱水のために、あるいは又は加えて、殺虫された幼虫の熱処理を施すこともまた可能である。
【0048】
この脱水のための幼虫の熱処理の間に、殺虫された幼虫は、従って、40~250℃、好ましくは50~150℃の環境に、好ましくは1時間~24時間の処理時間で配置され、それにより、殺虫された幼虫は、
-2~15%の水分、より好ましくは3~8%の水分、及び/又は
-0.7未満の水分活性(AW)
を有する。
【0049】
好ましくは、熱処理の間、加工された幼虫は、1~100ミリメートル、好ましくは5~15ミリメートルの間の厚さに配置される。
【0050】
任意的に、加工された幼虫は、粉砕及び/又は圧搾を受けることができる。
【0051】
好ましくは、加工工程は、殺虫後、甲虫類粉末を得るために幼虫を粉砕することを含む。
【0052】
ここで、脱水後の幼虫の粉砕により、UV処理後のビタミンD3の合成性能を改善することができることに留意されたい。しかしながら、脱水後のこの工程は任意のままである。
【0053】
脱水及び粉砕後、甲虫類粉末が得られる。
【0054】
甲虫類粉末とは、例えば、
-乾燥熱加工及び粉砕を受けたTenebrio molitorの全幼虫;
-又は、乾燥熱加工及び粉砕を受けたAlphitobius diaperinusの全幼虫;
-又は、乾燥熱加工及び粉砕を受けたこれら2種の幼虫の混合物;
-又は、予め圧搾加工を受け、次いで、乾燥熱加工及び粉砕を受けたTenebrio molitorの全幼虫の画分;
-又は、予め圧搾加工を受け、次いで、乾燥熱加工及び粉砕を受けたAlphitobius diaperinusの全幼虫の画分;
-又は、予め圧搾加工を受け、次いで、乾燥熱加工及び粉砕を受けたこれら2種の幼虫の画分の混合物;
のいずれかから成る乾燥粉末(AW<0.7)を意味する。
【0055】
特定の実施態様において、該加工工程は、排泄物又は可能性のある食物残渣のような残留物を除去するための幼虫の第一のふるい分けを含む。しかし、このようなふるい分けは任意である。これは、殺虫前に幼虫を浄化するという単純な目的を有する。
【0056】
好ましくは、加工工程は24~48時間の絶食を含む。このような絶食により、新たな排泄物の出現を回避する。従って、このような絶食は、本発明の文脈において実施することは任意である。
【0057】
任意的に、該絶食工程の後に第2のふるい分けが続けられる。
【0058】
有利には、加工工程は、殺虫の前に、-18℃~+4℃の間の低温での気絶処理を含む。
【0059】
好ましくは、低温での気絶処理工程は、1~5分間の気絶処理時間で実施される。殺虫は気絶処理なしで実行され得る。このような気絶処理は、従って、本発明の文脈において実施は任意である。
【0060】
UV処理工程(ビタミンD3の合成):
有利には、光処理工程の間に少なくとも1つの光源により、加工された甲虫類幼虫の方向に放射される紫外線は:
-UVB型であり、かつ、波長が280nm~320nmの間にある電磁放射線から成る、及び/又は
-UVA型であり、かつ、波長が320nm~400nmの間にある電磁放射線から成る。
【0061】
好ましくは、光処理工程の間、少なくとも1つの光源が、甲虫類幼虫から約1~100cmの間、好ましくは約5~20cmの間の所定の距離に配置されることが意図される。
【0062】
UV光源の強度は、光源から遠ざかるにつれて減少する。合成されるビタミンD3の量は、単位時間当たりに受けたUVBの量に依存する。有利には、少なくとも1つの光源は、13~125ワットの間、好ましくは20~50ワットの間の放射電力を有する。
【0063】
有利には、光処理工程の間に、少なくとも1つの光源が、10秒間~24時間の間、好ましくは、1~7分間、より好ましくは、2~5分間の処理範囲によって、加工された甲虫類幼虫の方向に紫外線を放射することが意図される。有利には、この処理範囲は連続的又は累積的に達成される。
【0064】
ここで、3分間のUV処理は、例えば、3分間に亘って連続的に、又は、例えば、数分間の停止期間によって間隔を隔てた、各1分間の継続的な3つの期間によって実施され得ることが理解される。有利には、光処理工程の全部又は一部の間、加工された甲虫類幼虫は、15~35℃の間、好ましくは22~26℃の間の実質的に一定の温度を有する環境に維持されることが意図される。
【0065】
ビタミンD3の合成は、20℃を超える温度の存在下で最適化される。
【0066】
本発明の目的は、第二の態様によれば、上記の製造方法を実施することによって得られる甲虫類粉末に関する。
【0067】
本発明の目的は、第三の態様によれば、上記の甲虫類粉末の人間又は動物の食品への使用に関する。好ましくは、該粉末は原料又は栄養補助食品として使用される。他の有利な用途は、例えば、爬虫類用又は魚類用の餌として可能である。
【0068】
図面
本発明の他の特徴及び利点は、何ら限定性のない、その例示的な実施態様を示す添付された図1から図4A-4Dを参照し、下記の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1図1は、照射時間8時間のUV光処理を受けた甲虫類幼虫のいくつかの試料のビタミンD3濃度を示すグラフである。
図2図2は、UV光処理を受けた甲虫類幼虫のいくつかの試料のビタミンD3濃度の変化を時間の関数として示すグラフである。
図3図3は、特定のUVB放射照度を有するUV光源を照射した甲虫類粉末のいくつかの異なる試料のビタミンD3濃度の経時変化を示すグラフである。
図4A図4Aは、UVB処理時間及びUVB放射照度レベルの関数としての甲虫類粉末の酸化指標の変化の第1の例示的実施態様を示すグラフを含む。
図4B図4Bは、UVB処理時間及びUVB照射レベルの関数としての甲虫類粉末の酸化指標の変化の第2の例示的実施態様を示すグラフを含む。
図4C図4Cは、UVB処理時間及びUVB照射レベルの関数としての甲虫類粉末の酸化指標の変化の第3の例示的実施態様を示すグラフを含む。
図4D図4Dは、UVB処理の持続時間及びUVB照射レベルの関数としての甲虫類粉末の酸化指標の変化の第4の例示的実施態様を示すグラフを含む。
【発明を実施するための形態】
【0070】
次に、ビタミンD3に富む甲虫類粉末の製造の例示的な実施態様を、図1から図4A-4Dを併せて参照して以下に説明する。
【0071】
念のため、ここで説明する粉末製造は、甲虫類、そしてとりわけ、Tenebrio molitor及び/又はAlphitobius diaperinus型の甲虫類を含む粉末中のビタミンD3の濃度を有意に増加させる技術を開発することを目的としている。特許文献1で提案されているような、生きた甲虫類(例えば、新鮮な甲虫類幼虫)にUV処理を施す技術とは反対に、本発明の基本概念の1つは、80μW/cm以上の放射照度を有するUVB光線を加工された幼虫に放射することから成るUV処理を実行することである。
【0072】
ここで、加工された幼虫とは、少なくとも殺虫を受けた甲虫類幼虫を意味する。
【0073】
ここに記載され、かつ、種々の実験で使用された実施例においては、次の種、即ち、Tenebrio molitor及び/又はAlphitobius diaperinusから選ばれた幼虫が使用される。
【0074】
ここに記載されていない他の実験では、他の種を用いて実行され、かつ、同等の結果を示すことを理解されたい。
【0075】
本発明はUV処理(及び付随的に加工段階)に関するものであり、養殖以前の段階は本発明の一部ではない故に、幼虫の成長段階は、本明細書には記載されていないことに留意されたい。
【0076】
加工段階:
本発明の特定の実施態様において、加工段階は以下の手法で実行される。
【0077】
成長6週目から14週目の間、より好ましくは、成長10週目から13週目の間に、幼虫がふるい掛けされて排泄物が除去される。次いで、ふるい掛けされた幼虫は、プラスチック槽に入れられて、24~48時間絶食させられる。絶食後、該幼虫は再びふるい掛けされて、排泄物が除去される。該幼虫は85℃~100℃の間の水中に入れられ、1~4分間殺虫される。これを高温殺虫と呼ぶ。この加工の間、殺虫の直前に-18℃~+4℃の間の低温で数分間、気絶処理する工程が更に行われる。殺虫後、該幼虫は、50~150℃の間の温度で、使用された温度に従って1時間~24時間の時間で熱処理を受ける。
【0078】
得られた幼虫は、2~15%の間の水分、より好ましくは3~8%の間の水分、及び、0.9未満、より好ましくは0.7未満の水分活性を備える。
【0079】
粉砕段階が実行され得る。術語粉末は、ここでは、幼虫期又は蛹期において、予め熱処理を受けた昆虫全体、又は、これらの昆虫の形態的部分のみを3ミリメートル未満の要素に縮小したものを含む。ここで、これはこの加工段階の特定の実施態様の説明であることを理解されたい。
【0080】
このような実施形態により、良好な性能を伴う結果を得ることができる。しかしながら、当業者であれば、甲虫類幼虫を加工するための他の実施態様を想定できることを理解されたい。
【0081】
また、粉末製造業者は、必ずしも、この殺虫段階を実施するわけではなく、かつ、既に加工された(即ち、殺虫された)甲虫類幼虫を彼らに納入する供給業者、甲虫類農家から購入することができることにもここで留意されたい。この場合、粉末製造業者は、粉末にビタミンD3を富化する富化(即ち、UV処理)段階を直接実行することになる。
【0082】
これらの理由のために、上記加工の実施例は純粋に例示であり、かつ、本発明の不可欠な部分ではないことを理解されたい。
【0083】
-第1シリーズの試験:
UV処理段階:
【0084】
この実施例においては、加工された幼虫が利用できる。この実施例では、これらの加工された幼虫は、粉末に粉砕された脱水された幼虫全体、又は、粉砕されていない脱水された幼虫全体の形態である。この実施例においては、これらの加工された幼虫に、本発明の特徴であるUV処理を施すことが意図されている。
【0085】
この実施例においては、このUV処理工程は、特定の部屋で実行される。本発明の例示的な実施態様において、この部屋は、
15~35℃、好ましくは22~26℃の間の実質的に一定の温度;及び
20~80%、好ましくは30~40%の相対湿度の実質的に一定の湿度
を有する環境に、加工された甲虫類を維持することを可能にする環境条件に維持されている。
【0086】
該環境パラメーター(温度及び湿度)を制御管理することにより、ビタミンD3の合成においてより良好な収率を得ることができる。
【0087】
しかし、当業者であれば、他の同様の環境条件を想定することができる。
【0088】
この実施例においては、UV処理は、2分~72時間の間で連続的手法において続けられる。この処理期間を更に短縮することが可能であることに留意されたい。
【0089】
ここに記載された実施例においては、このように、UV処理によって、加工された甲虫類幼虫をビタミンD3で富化することが求められている。
【0090】
このようなUV処理は、加工された甲虫類幼虫の方向に紫外線を放射する紫外線源タイプ(即ち、UV光源)の少なくとも1つの光源を与える。好ましくは、該UV光源は、甲虫類粉末又は甲虫類全体の鉛直上方の位置に維持される。
【0091】
この実施例においては、UV光源によって甲虫類幼虫の方向に放射される紫外線は、
-UVB型であり、かつ、波長が280nm~320nmの間にある電磁放射から成る、及び/又は
-UVA型であり、かつ、波長が320nm~400nmの間にある電磁放射から成る。
【0092】
ここで、可視域の光の放射は、ビタミンD3の合成に影響を及ぼさないことに留意されたい。
【0093】
ここに記載された実施例においては、UV光源は、光処理段階の間に、甲虫類幼虫から約2cm~100cmの間、好ましくは10cm~30cmの間の所定の距離に配置される。
【0094】
この実施例においては、UV光源は13~125ワットの間、好ましくは20~50ワットの間の放射電力を有する。
【0095】
この第一の実施例においては、UV光源により放射されるUVB光線は、約75μW/cmに等しい放射照度を有する。
【0096】
任意的に、このUV段階の後、40~200℃の間、好ましくは60~100℃の間で1時間~24時間の第2の熱処理が実行されることができる。
【0097】
結果
実行された種々の研究及び試験の情況の中で得られた初期の結果は、特に興味深いものである。
【0098】
【表1】
1 生きた幼虫及び加工された幼虫は、光源から25cmに配置され、かつ、57cm×38cm×17cmの寸法を有する槽に入れられる。生きた幼虫及び加工された幼虫の厚さは最大1cmである。
【0099】
これらの結果は、本明細書の残りの部分に詳細に記載されている他のシリーズの試験により確認されかつ詳細に述べられている。これらの追加の試験及びビタミンD3濃度に関する分析(図1及び2)は、この第1シリーズの試験が、特許文献1に記載された方法に対して、ビタミンD3の合成を10倍まで増加させ得ることを示している。
【0100】
単位表面積当たり2.5倍の製造量増加
本発明はまた、単位表面積当たりの、加工された幼虫の製造量を増加させることを可能にする。
【0101】
念のため、特許文献1においては、生きている幼虫へのUV処理のための光源は、好ましくは、とりわけ、過度の熱に関係する余りに大きい死亡率を回避するために、幼虫が入れられている槽の上方に25~35cmの最適な距離で配置される。
【0102】
本発明により、死亡率への何らの影響を与えることなく、光源が10~15cmの間に配置され得る。
【0103】
特許文献1においては、光源及び生きた幼虫が入れられている槽を5日間に亘って収容する125cm×200cm×30cmの寸法を有する構造により、乾燥重量で24μg/100gのビタミンD3を含む10.5kgの生きた幼虫又は3.75kgの幼虫粉末を製造することを可能にする。本発明では、同等の期間に亘って同一の構造により、照射時間に従って、乾燥重量で50~500μg/100gのビタミンD3を含有する9.5kg、即ち、2.5倍超の幼虫粉末を製造することを可能にする。これは、光源と加工された幼虫との間の距離を縮めることで可能になったが、予め熱処理を受けた加工された幼虫に直接作用させることができるためでもある。調理又は脱水を受けなければならず、かつ、水の蒸発によって全質量の65%が失われる生きた幼虫とは対照的に、この幼虫はもはや重量を失わない。
【0104】
光処理時間の1/100の短縮
特許文献1で提案されている技術によれば、幼虫の乾燥重量で50μg/100gのビタミンに達するためには、10日間の光処理が必要であった。
【0105】
この第1シリーズの試験後、1~2時間のUV処理で、乾燥重量で50μg/100gの濃度が得られる。
【0106】
これらの結果は、下記で詳細に述べられる第2シリーズの試験で強調される。
【0107】
ビタミンD3の定量分析は、コフラック(Cofrac)認定の独立研究所により実行された。定量は、セミ分取HPLCに続いて、UV/DAD検出器(265nm)を備えた逆相HPLCによって実行された。
【0108】
他の試験もまた、幼虫の後加工UV処理の有利な効果を強調しかつ最適化するために実行された。
【0109】
-第2シリーズの試験:
この第2シリーズの試験の間では、Tenebrio molitor型の幼虫のいくつかの試料S1、S2、S3及びS4が利用可能である。各試料には相違がある(新鮮な幼虫、生きている幼虫、その他)。これらの分析は、EN 12821: 2009-08規格に従って、コフラック認定の独立研究所により実行された。
【0110】
これらの試験の間、UV処理が、これらの試料S1、S2、S3及びS4の夫々に施され、かつ、これら試料のビタミンD3濃度が測定される。
【0111】
試料S1~S4のこれらの試験の結果及び分析は、図1に示されている。この図1は、より詳細には、8時間の照射後の夫々の試料S1、S2、S3及びS4のビタミンD3濃度を示している。
【0112】
第1の試験(試料S1)は、Tenebrio molitorの生きた幼虫へのUV処理に関する。
【0113】
この第1の試験においては、特許文献1で提案されているような、これらの生きた幼虫へのUV処理が施される。唯一の相違は、ここでは、ビタミンD3の濃度は、予め冷凍された新鮮な幼虫において直接定量されることである。
【0114】
この第1の実施例においては、生きた幼虫の上方のUVランプの距離は20cmであり、以下の電球の特性、即ち、25W;10%UVB、Exo Terra;平均放射照度:74.1μW/cm;平均温度:31.8℃を備える。
【0115】
図1によれば、この濃度は、新鮮な重量で3,600IU/kgであり、即ち、乾燥重量で約10,260IU/kgである。乾燥幼虫の濃度への換算は、新鮮な幼虫の濃度に2.85を乗じて得られた(Tenebrio molitorの幼虫は平均65%の水分を含む)。ここで、IUは国際単位、即ち、1IU=0.025μgのビタミンD3である。
【0116】
第2の試験(試料S2)はまた、生きた幼虫へのUV処理に関する。この第2の試験においては、このように、これらの幼虫へのUV処理が施される。
【0117】
ここで、幼虫の試料S2の上方のランプの距離は20cmであり、以下の電球の特性、即ち、25W;10%UVB、Exo Terra;平均放射照度:75μW/cm;平均温度:29.44℃を備える。
【0118】
これらの新鮮な幼虫は、次いで、特許文献1において提案されている技術に従って加工されて、幼虫期の間のUV処理によりビタミンD3で富化された乾燥幼虫の粉末を得る。ここで、ビタミンD3の濃度は、脱水された乾燥幼虫について測定される。
【0119】
図1によれば、この試料S2のビタミンD3濃度は、乾燥重量で7,200IU/kgである。
【0120】
別の試験(試料S3)は、加工された(死んだ)幼虫、そしてより詳細には、未粉砕の乾燥幼虫へのUV処理に関する。
【0121】
この試験においては、幼虫は予め殺虫されており、そして、次いで、本発明に従って提案されたUV処理が施されることが理解される。従って、この試験は、本発明の特定の例示的な実施態様に相当する。
【0122】
この実施例においては、殺虫は、2分間100℃の水浴に浸漬することにより実行されることに留意されたい。しかしながら、当業者であれば他の手法も可能である。
【0123】
この実施例においては、加工された幼虫は、65℃で14時間脱水された。次いで、加工された(しかし未粉砕の)幼虫が、該未粉砕の乾燥幼虫の上方20cmの距離に配置されたランプの下に配置される。使用されたランプは、以下の電球の特性、即ち、25W;10%UVB、Exo Terra;平均放射照度:75μW/cm;平均温度: 30℃を備える。
【0124】
図1によれば、この試料S3についてのビタミンD3濃度は、このとき乾燥重量で36,000IU/kgに達し、即ち、ここでは、生きた幼虫(試料S2及びS1)についてのビタミンD3濃度より5倍大きい。
【0125】
第4の試験(試料S4)に関する限りでは、これは、加工された幼虫、そしてより詳細には、粉砕された乾燥幼虫の試料へのUV処理に関する。
【0126】
この実施例においては、Tenebrio molitorの幼虫が、試料S3の幼虫と同一の殺虫操作を経たことを理解されたい。殺虫後、これらは更に粉砕された。
【0127】
この実施例においては、本発明が提案するようなUV処理が、殺虫後のこの試料S4に適用される。
【0128】
ここでは、上記と同一の装置、即ち、粉砕された乾燥幼虫の上方20cmの距離に配置された、次の電球の特性、即ち、25W;10%UVB、Exo Terra を持つUVランプが使用された。平均放射照度は75μW/cmであり、平均温度は 30℃である。
【0129】
図1によれば、この試料S4についてビタミンD3の濃度は、このとき乾燥重量で72,000IU/kgに達し、即ち、ここでは、生きた幼虫(試料S1及びS2)についてのビタミンD3の濃度より10倍高く、かつ、試料S3についてのビタミンD3の濃度より2倍高い。
【0130】
この第2シリーズの試験は、特許文献1で提案されている生きた幼虫(試料S1及びS2)ではなく、加工された幼虫(殺虫後)(試料S3及びS4)へのUV処理の利点を強調している。
【0131】
本出願人は、ここで、UVB照射に直面した際、加工された甲虫類幼虫は、せいぜい生きた幼虫と同程度のビタミンD3の合成能力を維持するであろうことを、本発明及び上記試験の前には考えることができたと主張する。
【0132】
幼虫が受けた該加工のために、ビタミンD3を合成するその能力が衰えることすら予想され得た。
【0133】
しかしながら、非常に驚くべきかつ予想外の手法において、得られた結果は、その逆を示し、かつ、加工された幼虫へのUVBの照射が、同様の照射時間及び照射条件の下で生きた幼虫へのUVB照射後に得られる濃度より5~6倍高いビタミンD3濃度を伴って、ビタミンD3のより強力な合成をもたらすことを明らかにしている。
【0134】
予想外のこれらの結果は、単位表面積あたりの可能な収量に強い影響を与え、そして従って、加工された幼虫でこの方法を産業化することの妥当性に強い影響を与える。このシリーズの試験は、ビタミンD3の濃度を更に2倍に増加させる、UV処理の前に加工された幼虫を粉砕することの利点をまた強調している。
【0135】
- 第3シリーズの試験:
第3シリーズの試験は、UV-B照射時間の関数として、ビタミンD3濃度の変化を明らかにするために実行された。
【0136】
これらの試験の間に、ここではS1’、S2’、S3’、S4’、S5’及びS6’として示される、Tenebrio molitor型の幼虫のいくつかの試料が利用可能である。これらの試料は種々の試験に供される。
【0137】
これらの試料についての種々の試験の結果及び分析が図2に示されている。該分析は、EN 12821:2009-08規格に従って、コフラック認定の独立研究所により実行された。
【0138】
この第2シリーズの試験においては、脱脂された甲虫類粉末に相当する試料S1’が利用可能である。
【0139】
ここでは、Tenebrio molitorの脱脂された粉末を入手出来て、幼虫S1’の上方20cmの距離に配置されたUVランプによりUV処理が施された。UVランプは、以下の電球の特性、即ち、25W;10%UVB、Exo Terra;平均放射照度:75μW/cm;平均温度:30℃を備える。
【0140】
この実施例においては、幼虫の油性画分の抽出は、まず、100℃での2分間の湯通し(blanchiment)、次いで、65℃での12時間の脱水を予め受けた乾燥幼虫の圧搾により実行される。
【0141】
図2によれば、10時間の紫外線照射後、試料S1’のビタミンD3濃度は、5,000~10,000IU/kgの間のビタミンD3である。
【0142】
この第2シリーズの試験の間、試料S2’は、ここでは生きた幼虫を含む。次いで、成長中の生きた幼虫にランプによりUV処理が施される。ランプの電球は以下の特性、即ち、25W;10%UVB、Exo Terra;平均放射照度:74.1μW/cm;平均温度:31.8℃を備える。 図1の試料S1と同様に、ビタミンD3の濃度分析は冷凍された幼虫に対して実行される。
【0143】
図2によれば、試料S2’のビタミンD3濃度は、60時間の照射後、15,000~20,000IU/kgの間である。
【0144】
試料S3’は、成長期の間に、UV処理が施される生きた幼虫のグループに相当する。照射条件はS1’及びS2’の条件と同一である。等しい照射時間で、図2によれば、試料S2’で得られた結果と実質的に同一の結果が得られる。図1の試料S2と同様に、ビタミンD3の濃度分析は、粉末に縮小された脱水された幼虫に対して実行される。
【0145】
試料S1’、S2’及びS3’において実行された試験は、特許文献1の例示的な実施態様、即ち、生きた幼虫におけるUV処理に対応する。
【0146】
試料S4’は、乾燥された(殺虫された)幼虫全体に相当する。UV処理の前に、これらの幼虫は、殺虫により加工(100℃で2分間の湯通し)され、次いで、脱水された。しかし、これらの幼虫は未粉砕のままである。
【0147】
UV処理が、次いで、この試験の間、この試料S4’にランプにより施され、該ランプの電球は以下の特性、即ち、25W;10%UVB、Exo Terra;平均放射照度:75μW/cm;平均温度:29.44℃を備える。
【0148】
殺虫された幼虫は粉砕されていないという事実にもかかわらず、図2によれば、ビタミンD3の濃度は高く、かつ、24時間のUV-B照射後に60,000IU/kgを超えるビタミンD3であることが分かる。
【0149】
最後に、この第2シリーズの試験においては、粉砕された乾燥幼虫を含む試料S5’及びS6’が利用可能である。
【0150】
試料S5’は、-18℃で低温により殺虫された後、100℃で2分間湯通しされ、次いで、65℃で14時間脱水され、最後に粉砕された幼虫に相当する。
【0151】
試料S6’は、100℃で2分間湯通しすることにより殺虫され、次いで、65℃で14時間脱水され、そして、最後に粉砕された幼虫に相当する。試料S6’の各点は、2つの別個の分析を含む(N=2;平均±標準偏差)。
【0152】
これらの試料S5’及びS6’については、UVランプは、生きた幼虫の上方20cmの距離に配置される。S4’と同様に、このUVランプは、以下の電球特性、即ち、25W;10%UVB、Exo Terra;平均放射照度:75μW/cm;平均温度:29.44℃を有する。
【0153】
図2によれば、試料S5’の濃度は、24時間照射後に90,000~100,000IU/kgの間のビタミンD3である。
【0154】
更に、図2によれば、試料S6’の濃度は、24時間の照射後に80,000~90,000IU/kgの間のビタミンD3である。この濃度は、次いで、72時間の照射後に90,000IU/kgを超えるビタミンD3である。
【0155】
ビタミンD3の濃度におけるこの第3シリーズの試験は、本発明が、所定の照射時間に亘って、特許文献1に記載された方法に対して、ビタミンD3の合成を4~10倍増加させることを可能にすることを示している。
【0156】
この第3シリーズの試験は、また、粉砕によりビタミンD3の合成を最大化できることを示しているが、反対に粉砕なしで得られた結果は高く評価されたままであることも示している。
【0157】
- 第4シリーズの試験:
上記の実施例(図1及び2)では、放射されるUVB光線の平均放射照度は75μW/cmである。
【0158】
この第4シリーズの試験の文脈において引き続く実験は、UVB光線の放射照度を変化させて、ビタミンD3の合成性能におけるこの放射照度の影響を強調することを目的とする。
【0159】
図3は、夫々、S1’’、S2’’、S3’’及びS4’’と記した4つの甲虫類粉末試料中のビタミンD3濃度の経時変化を示し、それぞれ異なる放射照度を有する光源によるUV処理が施されている。
【0160】
この実施例において、試料S1’’(黒丸;各時間についてN=2;平均±sd)は、粉末において60μW/cmのUVB強度(放射照度)を有するUV光源によりUV処理を受けたTenebrio molitorの粉末に相当する。
【0161】
この実施例において、試料S2’’(黒三角;N=2;平均±sd)は、60μW/cmのUVB強度(放射照度)を有するUV光源により45分間、該電力でUV処理を施したAlphitobius diaperinusの粉末に相当する。
【0162】
試料S3’’(白丸;各時間についてN=2;平均±sd)は、粉末に対して190μW/cmのUVB強度(放射照度)を有するUV光源によるUV処理を受けたTenebrio molitorの粉末に相当する。
【0163】
第4の試料S4’’(白三角;N=2;平均±sd)に関する限りでは、それは、190μW/cmのUVB強度(放射照度)を有するUV光源によるUV処理を45分間、該強度で施されたAlphitobius diaperinusの粉末に相当する。
【0164】
試料S5’’(灰色の矩形;各時間についてN=2;平均±sd)は、120μW/cmのUVB強度(放射照度)を有するUV処理を45分間施されたTenebrio molitorの粉末に相当する。
【0165】
この実施例においては、各試料S1’’、S2’’、S3’’及びS4’’の処理条件は同一である。即ち、
各UV光源は、粉末試料の上方25cmに設置されている。
UV処理室の平均温度は25℃±1、相対湿度は45%±5である。
ここで、IUは国際単位、即ち、1IU=0.025μgのビタミンD3である。
試料におけるUVB強度(放射照度)の測定は、UVBメーターを用いて測定される。
これらの試料S1’’、S2’’、S3’’、S4’’及びS5’’のビタミンD3の分析は、基準とする方法EN12822:2014に従って、規格EN12821:2009-08に従ってコフラック認定の独立研究所により実施された。
【0166】
図3において、8時間のUV処理以降、UV光源への照射時間を増やしても、第1のS1’’試料でも第3のS3’’試料でも、甲虫類粉末中のビタミンD3濃度の有意な増加にもたらされないことが観察される。
【0167】
実際、この図3において、ビタミンD3濃度の安定状態が、8時間の暴露から観察される。
【0168】
本出願人により実行された第1の実験の間に、第1の試料で観察された安定状態は、最大の達成可能な水準に相当するように見えた。
【0169】
この安定状態は、UV光線に照射されたマトリックスに含まれる7-デヒドロコレステロールの全てが、コレカルシフェロールに加工されたことに対応していると思われた。
【0170】
従って、当業者であれば、その通常の知識に従って、ビタミンD3の濃度の増加は光強度の増加に比例し、そしてそれ故、UVB光線の光源の強度を増加させれば、ビタミンD3の濃度がより迅速に安定状態に達し得ると考えることができる。
【0171】
しかし、それは真実ではなく、予想外の結果であった。
【0172】
実際、この同じ図3によれば、放射照度を3倍増加させることによって、
-得られる最大濃度は、所定の照射時間で5倍増加されること(例えば、UV処理に対する8時間の同一の照射時間に関して、Tenebrio molitorの第3の試料S3’’のための352,400IU/kgのビタミンD3濃度に対して、Tenebrio molitorの第1の試料S1’’ための70,000IU/kgの濃度)、及び
-20,000IU/kgの濃度に到達するために必要な時間が10倍を超えて短縮される。例えば、20,000IU/kgのビタミンD3の濃度に到達するためにTenebrio molitorの第3の試料S3’’では3.5分間の照射時間を要するのに対し、第1の試料S1’’のためには45分間の照射時間を要すること、
が観察される。
【0173】
従って、本出願人は、ビタミンD3の非常に高い濃度が、10分未満のUVB照射時間でさえ、迅速に達成されることを観察する。例えば、190μW/cmのUVB放射照度を有するUV光源を用いた、5分間の照射後に26,000IU/kgが達成される。
【0174】
第1のS1’’試料と第3のS3’’試料との間(又は第2のS2’’試料と第4のS4’’試料との間)のビタミンD3濃度における経時変化を比較すると、照射時間とUVB光線の放射照度との間に上記の予期された比例関係に遭遇しないことを示している。
【0175】
結果として、第1の試料S1’’において観察されたビタミンD3の濃度の安定状態は、それ故、上記の仮説で提唱されたような、ステロールのコレカルシフェロールへの完全な加工処理により引き起こされるものではない。
【0176】
従って、本実験の間に得られた結果は、UVB光線の放射照度を増加させることにより、ビタミンD3の濃度を増加させることが、期待された結果よりもはるかに大きい、予期せぬ性能を達成することを示している。即ち、加工された甲虫類幼虫に対するUVB放射照度を3倍増加させることにより、得られる最大濃度は5倍増加され、かつ、所定の濃度に達するのに必要な照射時間は10分の1に短縮される。
【0177】
- 第5シリーズの試験:
紫外線(とりわけ、UVB)は、食品の酸化反応を増幅することで知られている。換言すれば、甲虫類粉末においてUVB放射照度を有意に増加させることは(短時間の照射であっても)、それが潜在的に消費に適さなくなるまで、その脂肪酸の酸化の水準を有意に増幅することをもたらすに違いない。
【0178】
それ故、食品分野においては、甲虫類粉末の劣化を避けるために、あまり高過ぎる強度で粉末を照射してはならない。
【0179】
それにもかかわらず、本出願人は、これらの方法の性能を改善させる目的で、本件における試験を実行した。
【0180】
このシリーズの試験において、出願人は、従って、甲虫類粉末の酸化に対するUVB放射照度及び照射時間の有意な増加の影響力を試験した。
【0181】
これらの試験の間、以下のようないくつかの酸化指標が測定された。即ち、
-過酸化物価(PV)。この値により、脂肪の不飽和脂肪酸の酸化の程度を評価することができる。この値は酸化の開始を示す指標である。過酸化物は、酸化反応の開始段階で生じるフリーラジカルから形成される。
-アニシジン値(AV)。この値は脂肪の二次酸化生成物の測定に相当する。この値はアルデヒド(主にα、β-不飽和アルデヒド)の量を測定する。
-TOTOX 値[全酸化(TOTal OXidation)]。これは、過酸化物価及びアニシジン値に基づいた油の酸化の指標である。TOTOX値=(2×PV)+AV。TOTOX値が26より大きいなら、製品は有害とみなされる。
【0182】
放射照度と照射時間を変化させることにより、これらの試験の最後に、図4Aから図4Dにおいて読み取ることができる以下の結果が得られる。
【0183】
図4Aは、60μW/cm又は190μW/cmのUVB放射照度でUV照射を3つの異なる時間、即ち、10分間、45分間又は480分間受けたTenebrio molitorの粉末の過酸化物価を示す(各時間についてN=2、平均±sd)。
【0184】
過酸化物の濃度は、UV照射時間と共に増加することが観察される。
【0185】
しかしながら、所定の照射時間及び本発明の試験条件においては、放射照度の水準は過酸化物の濃度に影響を及ぼさない。
【0186】
UVB放射照度の水準を3倍に増加することにより、過酸化物の濃度は、所定の時間において同様のままである。これはむしろ予想外の結果を構成する。
【0187】
図4Bは60μW/cm又は190μW/cmのUVB放射照度でUV照射を3つの異なる時間、即ち、10分間、45分間又は480分間受けたTenebrio molitorの粉末のアニシジン値を示す(各時間についてN=2、平均±sd)。
【0188】
これらの試験の中、照射時間と放射照度の水準は、いずれも、この酸化指標に影響を及ぼさないことが観察される。
【0189】
図4Cは、60μW/cm又は190μW/cmのUVB放射照度でUV照射を3つの異なる時間、即ち、10分間、45分間又は480分間受けたTenebrio molitorの粉末のTOTOX値を示す(各時間についてN=2、平均±sd)。
【0190】
UVB照射8時間まで、TOTOX値は食品産業において通常使用される閾値(該図中の点線;TOTOX=26)以下であることが観察されている。
【0191】
図4Dは、8時間以上の照射時間における甲虫類粉末(Tenebrio molitor)の過酸化物価の変化を示す(各期間についてN=2、平均±sd)。
【0192】
24時間から過酸化物価が臨界に達し始めることが観察された。48時間の照射において、UVB放射照度の水準(60又は190μW/cm)にかかわりなく、あまりに多くの酸化のために、甲虫類粉末はもはや食用に適していない。
【0193】
これらの実施例においては、UVB光源は粉末試料の25cm上方に設置されていることに留意されたい。UV処理室内の平均温度は25℃±1、相対湿度は45%±5である。
【0194】
過酸化物価の分析は、コフラック認定の独立研究所により滴定法で実行された。アニシジン値の分析は、コフラック認定の独立研究所により分光光度法で実行された。
【0195】
実行された種々の実験の間に得られた結果の全ては、予想外の意外なものであり、かつ、生産性の非常に高い向上を認識することを可能にする。
【0196】
実際、本発明は以下の両者、即ち、
-短い照射時間(10分間未満);
-ビタミンD3の濃度の非常に高い値(190μW/cmの放射照度による10分間での130,000IU/kgの粉末);
- 規制要件に準拠した酸化水準
を達成することを可能にする。
【0197】
この性能の全ては、本発明の加工された甲虫類幼虫へのUV処理方法の信頼性のある、かつ、有益な産業化を、確信を持って認識することを可能とする。
【0198】
この詳細な説明は、本発明の特定の例示的な実施態様に関するものであるが、いかなる場合にも、この説明は、本発明の目的を限定する何らの性質を有するものではなく、実際、それどころか、その目的は、可能性のある不正確さ、又は、後に続く特許請求の範囲の何らかの誤った解釈を排除することを確認しなければならない。
【0199】
また、後に続く特許請求の範囲において括弧の間に配置された参照符号は、いかなる場合にも限定的な性質を有していないことを確認しなければならない。これらの符号の唯一の目的は、後に続く特許請求の範囲の分かりやすさ及び理解しやすさ、並びに、求める保護の範囲を改善することにある。

図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
【国際調査報告】