IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴェ. マヌ フィルの特許一覧

特表2024-525587ポリ塩化ビニリデンでフィルムコーティングされた風味付きコアシェルカプセル
<>
  • 特表-ポリ塩化ビニリデンでフィルムコーティングされた風味付きコアシェルカプセル 図1
  • 特表-ポリ塩化ビニリデンでフィルムコーティングされた風味付きコアシェルカプセル 図2
  • 特表-ポリ塩化ビニリデンでフィルムコーティングされた風味付きコアシェルカプセル 図3
  • 特表-ポリ塩化ビニリデンでフィルムコーティングされた風味付きコアシェルカプセル 図4
  • 特表-ポリ塩化ビニリデンでフィルムコーティングされた風味付きコアシェルカプセル 図5
  • 特表-ポリ塩化ビニリデンでフィルムコーティングされた風味付きコアシェルカプセル 図6
  • 特表-ポリ塩化ビニリデンでフィルムコーティングされた風味付きコアシェルカプセル 図7
  • 特表-ポリ塩化ビニリデンでフィルムコーティングされた風味付きコアシェルカプセル 図8
  • 特表-ポリ塩化ビニリデンでフィルムコーティングされた風味付きコアシェルカプセル 図9
  • 特表-ポリ塩化ビニリデンでフィルムコーティングされた風味付きコアシェルカプセル 図10
  • 特表-ポリ塩化ビニリデンでフィルムコーティングされた風味付きコアシェルカプセル 図11
  • 特表-ポリ塩化ビニリデンでフィルムコーティングされた風味付きコアシェルカプセル 図12
  • 特表-ポリ塩化ビニリデンでフィルムコーティングされた風味付きコアシェルカプセル 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ポリ塩化ビニリデンでフィルムコーティングされた風味付きコアシェルカプセル
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/22 20060101AFI20240705BHJP
   A24B 13/00 20060101ALI20240705BHJP
   A24B 15/28 20060101ALI20240705BHJP
   A24D 1/20 20200101ALI20240705BHJP
   A24D 3/14 20060101ALI20240705BHJP
   A24D 3/04 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B01J13/22
A24B13/00
A24B15/28
A24D1/20
A24D3/14
A24D3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500341
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 FR2022051375
(87)【国際公開番号】W WO2023281230
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2107521
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507038674
【氏名又は名称】ヴェ. マヌ フィル
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ゴーダン ルック
【テーマコード(参考)】
4B043
4B045
4G005
【Fターム(参考)】
4B043BB02
4B043BB03
4B043BB22
4B043BC02
4B043BC28
4B043BC31
4B045AA41
4B045AB16
4B045BB03
4B045BC13
4B045BD34
4G005AA01
4G005AB12
4G005AB27
4G005BA12
4G005BB08
4G005DB01X
4G005DB06Z
4G005DB08Z
4G005DB12Z
4G005DB16Z
4G005DB17Z
4G005DB30X
4G005DC18W
4G005DC27W
4G005DD13Z
4G005EA03
4G005EA05
4G005EA09
(57)【要約】
本発明は、シェルが親水コロイドを含み、コアが香料及び親油性溶媒を含むコアシェル型シームレス破壊可能カプセルであって、シェルが、耐水性を付与するフィルムコーティング層でコーティングされ、前記フィルムコーティング層がポリ塩化ビニリデンを含む、ことを特徴とする破壊可能カプセルと、前記カプセルを含む経口使用パウチと、前記カプセルを含む消費製品と、前記消費製品を含むタバコ加熱装置と、前記カプセルを製造する方法と、香料の即時持続放出の添加剤としての前記カプセルの使用と、経口使用パウチに風味を付ける方法とに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルが親水コロイドを含み、コアが香料及び親油性溶媒を含むコアシェル型シームレス破壊可能カプセルであって、
前記シェルが、耐水性を付与するフィルムコーティング層でコーティングされ、前記フィルムコーティング層がポリ塩化ビニリデンを含む、ことを特徴とする破壊可能カプセル。
【請求項2】
60℃、6分間の浸漬試験を受けても、耐破裂性を保持する、請求項1に記載の破壊可能カプセル。
【請求項3】
37℃、20分間の水中溶出試験を受けた後の耐破裂性は、0.5~20kgfである、請求項1又は2に記載の破壊可能カプセル。
【請求項4】
ポリ塩化ビニリデンの量は、前記フィルムコーティング層の総乾燥重量に対して50重量%~100重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の破壊可能カプセル。
【請求項5】
前記フィルムコーティング層は、可塑剤を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の破壊可能カプセル。
【請求項6】
前記可塑剤は、クエン酸トリエチル、グリセロール、ソルビトール及びマルチトールなどの多価アルコール、ポリビニルアルコール、単糖、二糖、オリゴ糖、トリアセチン、ポリエチレングリコール、又はそれらの混合物から選択される、請求項5に記載の破壊可能カプセル。
【請求項7】
前記フィルムコーティング層の厚さは、1μm~200μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の破壊可能カプセル。
【請求項8】
破壊時に可聴のポンという音を発する、請求項1~7のいずれか一項に記載の破壊可能カプセル。
【請求項9】
前記シェルは、ジェランガム、ゼラチン、コラーゲン、アルギン酸塩、カラギーナン、寒天、キトサン及びその誘導体、ペクチン、アラビアガム、ガッティガム、プルランガム、マンナンガム、植物性タンパク質、又はそれらの混合物から選択される親水コロイドを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の破壊可能カプセル。
【請求項10】
前記親水コロイドは、単独で又はゼラチンと組み合わせて使用されるジェランガムである、請求項9に記載の破壊可能カプセル。
【請求項11】
前記親水コロイドは、カラギーナンから選択される、請求項9に記載の破壊可能カプセル。
【請求項12】
直径は、1mm~6mmである、請求項1~11のいずれか一項に記載の破壊可能カプセル。
【請求項13】
前記シェルの厚さは、10μm~300μmである、請求項1~12のいずれか一項に記載の破壊可能カプセル。
【請求項14】
香料を即時かつ持続的に放出する経口使用パウチであって、請求項1~13のいずれか一項に記載の香料を含む1つ以上のカプセルを含み、前記カプセルが前記パウチ内に配置される、ことを特徴とする経口使用パウチ。
【請求項15】
前記パウチ内に配置された葉の形又は粉砕タバコの形のタバコを更に含む、請求項14に記載の経口使用パウチ。
【請求項16】
前記パウチ内に配置されたタバコを含まない、請求項14に記載の経口使用パウチ。
【請求項17】
前記パウチ内に配置された、植物繊維、及び/又はカプセル化若しくは非カプセル化香料剤、及び/又は充填剤、及び/又は保湿剤を更に含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の経口使用パウチ。
【請求項18】
フィルターを含む部分と、タバコを含む別の部分とを含む消費製品であって、前記フィルターが請求項1~13のいずれか一項に記載の1つ以上のカプセルを含む、ことを特徴とする消費製品。
【請求項19】
使い捨てであり、タバコ加熱装置のタバコ詰め替え品として使用されることを意図する、請求項18に記載の消費製品。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の消費製品を含む、ことを特徴とするタバコ加熱装置。
【請求項21】
シェル及びコアを含むシームレス破壊可能カプセルを製造する方法であって、
前記シェルの総乾燥重量に対して4重量%~95重量%の親水コロイドを含む親水性外部液相と、前記コアの総重量に対して5重量%~70重量%の香料剤を含む親油性内部液相とを共押出するステップ(A)と、
1℃~25℃の温度の流体に浸漬することにより、ステップ(A)で得られた前記カプセルの表面を固化及び/又はゲル化するステップ(B)と、
ステップ(B)で得られた前記カプセルを乾燥させるステップ(C)と、
ポリ塩化ビニリデン及び水を含むフィルムコーティング溶液を用いたエアスプレーコーティングプロセスにより、ステップ(C)で得られた前記カプセルをフィルムコーティングするステップ(D)と、
ステップ(D)で得られた前記カプセルを回収するステップ(E)と、を含む、方法。
【請求項22】
前記フィルムコーティング溶液は、クエン酸トリエチル、グリセロール、ソルビトール及びマルチトールなどの多価アルコール、ポリビニルアルコール、単糖、二糖、オリゴ糖、トリアセチン、ポリエチレングリコール、又はそれらの混合物から選択される可塑剤を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
香料の即時持続放出の添加剤としての請求項1~13のいずれか一項に記載のカプセルの使用であって、前記カプセルは、経口使用パウチに含まれる製品、又はフィルター及びタバコを含み、具体的にはタバコ加熱装置における使用を意図した消費製品に配置される、使用。
【請求項24】
前記カプセルは、前記経口使用パウチ又は前記消費製品内で破壊したとき、可聴のポンという音を発して前記香料を放出する、請求項23に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェルが少なくとも1つの親水コロイドを含み、そのシェルが耐水性を付与する少なくとも1層のポリ塩化ビニリデンフィルムコーティングでコーティングされている、コアシェル型シームレス破壊可能カプセルに関する。カプセルは、タバコ加熱装置又は経口パウチ内の製品に組み込むことを意図したものである。
【背景技術】
【0002】
芳香族化合物は、その物理化学的特性により、敏感で不安定な分子であることが多いため、香料として直接使用するのが困難である。高分子の膜形成特性、吸収特性、及び/又は乳化特性を利用して、敏感な化合物をマイクロカプセル内に捕捉又はコーティングするカプセル化は、いくつかの期待を満たす技術として使用されることが多くなっている。実際に、カプセル化の主な目的は、物質とその周囲環境との間に障壁を確立することである。この場合、食品香料のカプセル化は、揮発性香料物質を蒸発から保護し、空気中の酸素、熱、湿度、又は他の化合物との接触によって引き起こされ得る分解から上記物質を保護するためのプロセスとしてよく知られている。カプセル構造は、主に、香料が支持材料内に分散されるマトリックスカプセルと、香料がシェル(又は膜)内に閉じ込められるコアシェルカプセルとの2つのタイプがある。近年、風味付きカプセルの応用が多数開発されており、特に紙巻きタバコ及び葉巻などの喫煙装置、タバコ加熱装置、又は経口使用パウチ(スヌースとも呼ばれる)などである。例えば、フィルター内に風味付きコアシェルカプセルを組み込んだ紙巻きタバコの形の喫煙装置が記載されている特許出願国際公開第07-010407号パンフレットを引用することができる。記載されているカプセルは、親水コロイドの添加量によって付与される硬度及び変形特性を有する。
【0003】
特許出願国際公開第2011042206号パンフレット及び国際公開第2007037962号パンフレットには、従来のマトリックス及び/又はコアシェル構造を有するカプセル及び/又はマイクロカプセルを含む経口使用パウチが記載されている。
【0004】
特許出願国際公開第2011054516号パンフレットには、メタクリル酸ポリマーをベースとする第1コーティングとパラフィンワックスをベースとする第2コーティングの2つの異なるコーティングで被覆されたカプセルを含む経口使用パウチが記載されている。
【0005】
特許出願国際公開第2017198876号パンフレット、国際公開第2017198874号パンフレット、及び国際公開第2020089120号パンフレットには、少なくとも1つの香料を封入する少なくとも1つのコアシェルカプセルを含むタバコ加熱装置が記載されている。これらの文献に記載されているカプセルは、形成されるエアロゾルの品質を改善するために、上記カプセルのコアに使用される化合物に関する特定の特徴を有する。
【0006】
しかしながら、これらの利点にもかかわらず、シェルが生体高分子化合物で形成されている従来技術のこれら全てのコアシェルカプセルは、耐水性がなく、具体的には完全に水に浸漬されている場合に耐水性がないという主な欠点を有する。これらが防水性を有していないため、従来技術のカプセルは、タバコ加熱装置、或いは経口パウチ製品に見られる非常に高い湿度に耐えることができない。したがって、上に列挙されている風味付きカプセルの応用は、消費者を満足させるものではない。湿度によるカプセルの劣化を防止する従来の方法は、ワックス、具体的にはカルナウバロウ、キャンデリラロウ若しくは蜜蝋、セラック(アルコール溶液又は水溶液中)、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はポリビニルアルコールなどの防湿剤を使用してフィルムコーティング層を追加することである。しかしながら、それらの名前が示すように、これらの物質は、防湿層であるか、又は耐湿層と呼ばれ、これらの名称は、カプセルが一定の湿度に一定時間耐えることを可能にすることを意味する。しかしながら、しばらくすると、カプセルは、必然的に崩壊する。
【0007】
驚くことに、本出願人は、カプセルのシェルの上にポリ塩化ビニリデンをベースとする一層のフィルムコーティングを追加することにより、上記カプセルが水に耐えることができるため、防水性を有することを可能にすることを発見した。本発明に係るカプセルは、60℃、6分間の浸漬試験(タバコ加熱装置に見られる条件)に耐えるか、又はUSP、DAB、IP、及びEUR薬局方に従って実行される37℃、20分間の溶出試験に耐えることができる。どちらの場合も、ポリ塩化ビニリデンでコーティングされたカプセルは、崩壊せず、耐破裂性と、破断時に可聴のポンという音を発する能力とを保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第07-010407号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2011042206号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007037962号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2011054516号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2017198876号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2017198874号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2020089120号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この開示は、上記の状況を改善する。
【0010】
したがって、本発明は、親油性香料コアを封入するシェルを含むシームレス破壊可能カプセルに関し、上記カプセルは、タバコ加熱装置又は経口使用パウチにおける使用を意図した消費製品に組み込むのに適している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
より正確には、本発明の第1目的は、
シェルが親水コロイドを含み、コアが香料及び親油性溶媒を含むコアシェル型シームレス破壊可能カプセルであって、
前記シェルが、耐水性を付与するフィルムコーティング層でコーティングされ、前記フィルムコーティング層がポリ塩化ビニリデンを含む、ことを特徴とする破壊可能カプセルに関する。
【0012】
本発明の第2目的は、香料を即時かつ持続的に放出する経口使用パウチであって、本発明に係る香料を含む1つ以上のカプセルを含み、前記カプセルが前記パウチ内に配置される、ことを特徴とする経口使用パウチに関する。
【0013】
本願の第3目的は、フィルター及びタバコを含み、具体的にはタバコ加熱装置における使用を意図した消費製品であって、前記フィルターが本発明に係る1つ以上のカプセルを含む、ことを特徴とする消費製品に関する。
【0014】
本発明の第4目的は、本発明に係る消費製品を含む、ことを特徴とするタバコ加熱装置に関する。
【0015】
本発明の第5目的は、シェル及びコアを含むシームレス破壊可能カプセルを製造する方法であって、
前記シェルの総乾燥重量に対して4重量%~95重量%の親水コロイドを含む親水性外部液相と、前記コアの総重量に対して5重量%~70重量%の香料剤を含む親油性内部液相とを共押出するステップ(A)と、
1℃~25℃の温度の流体に浸漬することにより、ステップ(A)で得られた前記カプセルの表面を固化及び/又はゲル化するステップ(B)と、
ステップ(B)で得られた前記カプセルを乾燥させるステップ(C)と、
ポリ塩化ビニリデン及び水を含むフィルムコーティング溶液を用いたエアスプレーコーティングプロセスにより、ステップ(C)で得られた前記カプセルをフィルムコーティングするステップ(D)と、
ステップ(D)で得られた前記カプセルを回収するステップ(E)と、を含む、方法に関する。
【0016】
本発明の第6目的は、香料の即時持続放出の添加剤としての本発明に係るカプセルの使用であって、前記カプセルが、経口使用パウチ、又はフィルター及びタバコを含み、具体的にはタバコ加熱装置における使用を意図した消費製品に配置される、使用に関する。
【0017】
本発明の第7目的は、消費者が本発明に係る経口使用パウチに含まれる製品に風味を付ける方法であって、
消費者が経口使用パウチに含まれる前記製品を前記消費者の歯肉と頬又は上唇の間に、具体的には5~60分間置くステップと、
消費中のいつでも、消費者が、カプセルに含まれる香料を前記消費者の口の中に放出するために、経口使用パウチに含まれるカプセルを前記消費者の歯の間で破裂させるステップと、を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
他の特徴、詳細、及び利点は、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を分析すると明らかになるであろう。
【0019】
図1】フィルムコーティング前の本発明に係るコアシェルカプセルの異なる組成物を説明する。
図2】本発明に係るカプセルに塗布される異なるPVDC/TECフィルムコーティング溶液及び異なる乾燥堆積物を説明する。
図3】浸漬試験、溶出試験の前後のカプセルの硬度、変形、可聴のポンという音の結果を説明する。
図4】フィルムコーティング前の本発明に係るコアシェルカプセルの異なる組成物を説明する。
図5】本発明に係るカプセルに塗布されるPVDC/TECフィルムコーティング溶液の異なる配合及び異なる乾燥堆積物を説明する。
図6】浸漬試験、溶出試験の前後のカプセルの硬度、変形、可聴のポンという音の結果を説明する。
図7】カプセルに対して実施例3で行われた溶出試験の結果を説明する。
図8】カプセルに対して実施例3で行われた浸漬試験の結果を説明する。
図9】カプセルサイズによるフィルムコーティングの厚さへの影響を説明する。
図10】カプセルサイズによるフィルムコーティングの厚さへの影響を説明する。
図11】カプセルサイズによるフィルムコーティングの厚さへの影響を説明する。
図12】走査型電子顕微鏡によって撮影された、フィルムコーティング層がシェルから分離されている実施例1に係るカプセルの断面の写真を示す。
図13】走査型電子顕微鏡によって撮影された、フィルムの層がシェルから分離されていない実施例1に係るカプセルの断面の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明では、カプセルは、シェルが親水コロイドを含み、コアが香料及び親油性溶媒を含むコアシェル型シームレス破壊可能カプセルであり、
前記シェルが、耐水性を付与するフィルムコーティング層でコーティングされ、前記フィルムコーティング層がポリ塩化ビニリデンを含む、ことを特徴とする。
【0021】
本発明では、「カプセル」という用語は、組成物の膜カプセル化システムを指し、前記カプセルは、コアシェル構造を有し、カプセル化された組成物は、コーティング材料で作られたシェル(又はエンベロープ)内に封入される「コア」を構成する。
【0022】
本発明に係るカプセルは、組成物が材料の連続マトリックスに分散されており、一般に「微小球(ミクロスフェア)」という用語で呼ばれるマトリックスシステムとは異なる。
【0023】
カプセルがシームレスであることにより、「ソフトジェル」カプセルと呼ばれるものの場合のような、カプセルを形成する2つのハーフシェルの間のシールに位置する破壊点の存在を回避することができる。したがって、シームレスカプセルは、継ぎ目の破断に関連した漏れを回避できるという利点を有する。
【0024】
「破壊可能カプセル」という用語は、カプセルが指間又は歯間に捕らえられたときにその外面に印加された圧力によってシェルを破壊することができる、上記で定義されたカプセルを指す。
【0025】
本発明に係るカプセルは、耐水性或いは防水性であるという利点を有する。本明細書で使用される用語は、耐湿性ではなく耐水性であり、これら2つの特性の区別は、明らかである。実際に、エチルセルロース、蜜蝋、又は他のそのような材料などの添加剤を使用してコーティングされた従来のカプセルは、耐湿性を有し、これは、従来技術のこれらのカプセルが、一定の環境レベルの湿度に一定の時間耐えることを意味する。しかしながら、規定の時間が経過すると、これらの従来技術のカプセルは、崩壊するようになる。いかなる状況においても、これらのカプセルを温水(37℃又は60℃でそれぞれ20分間又は6分間)に浸漬してそれらの形状と耐破裂性を保持することはできない。
【0026】
ポリ塩化ビニリデンは、PVDCとも呼ばれ、ビニルポリマーである。該ポリ塩化ビニリデンは、ビニルフリーラジカル重合によりモノマー塩化ビニリデンから作られる。ポリ塩化ビニリデンコポリマーは、優れた耐薬品性と、水蒸気、ガス、油及びグリースに対する高い不透過性を特徴とする。これらの理由によって、PVDCは、食品を保護するストレッチフィルムで通常に使用されている。しかしながら、出願人の知る限りでは、現在まで、PVDCが特にカプセル化の特定の場合に、フィルムコーティング剤として使用されることはなかった。PVDCがフィルムコーティング剤として使用されると、本発明に係るカプセルが特定の条件にさらされた場合に耐水性を有することが可能になる。
【0027】
本発明に係るカプセルは、0.5kgf~20kgf(1キログラム重が9.81ニュートンに相当する)の耐破裂性(硬度又は破裂強度とも呼ばれる)を有する。
【0028】
耐破裂性は、カプセルを破壊するのに必要な破砕力で測定される。より好ましくは、カプセルは、1kgf~8kgfの耐破裂性を有し、或いは、より好ましくは1kgf~4kgfの耐破裂性を有する。カプセルの耐破裂性は、20個のカプセルについてP0.5ピストンを使用してTA.XT+テクスチャーアナライザーによって0.50mm/sの速度で測定される。
【0029】
カプセルが破砕された場合、変形現象が発生する。カプセルが可聴のポンという音を発生させながら破裂するようにするために、カプセルが一定の限界まで変形しなければならず、この限界を超えると、カプセルは破裂しない(カプセル自体が崩壊する)。このために、本発明に係るカプセルは、66%未満の変形百分率を有さなければならない。この百分率は、カプセルの初期直径に対する破壊限界まで押されたときのカプセルの最終直径の比率に100を乗じた値に相当する。
【0030】
特に、本発明に係るカプセルは、500rpmで撹拌しながら60℃の脱塩水で6分間行われた浸漬試験を受けても、耐破裂性を保持する。「耐破裂性を保持する」とは、カプセルの耐破裂性が浸漬試験前の耐破裂性の値と比較して±15%以上変化しないということを意味すると理解される。
【0031】
したがって、本発明に係るカプセルは、耐水性が必要とされる場合には、非常に広い分野に応用されることを可能にする。
【0032】
更に、本発明に係るカプセルは、37℃、20分間の水中溶出試験を受けても、耐破裂性を保持する。本明細書では、「耐破裂性を保持する」とは、カプセルの耐破裂性が溶出試験前の耐破裂性の値と比較して±15%以上変化しないということを意味すると理解される。実際に、驚くことに、出願人は、本発明に係るカプセルが、USP、DAB、IP、及びEUR薬局方に従って溶出試験を受けた場合、耐破裂性の品質を保持することも発見した。実際に、当該カプセルは、37℃、20分間の上記試験を受けた後に溶解せず、その球形を保持し、その耐破裂性及び破裂時に可聴のポンという音を発する能力を保持する。
【0033】
したがって、そのような条件(60℃、6分間の水中浸漬試験及び37℃、20分間の水中溶出試験)下でこれらの特定の耐破裂性値を得るために、カプセルを、ポリ塩化ビニリデンを含む層でコーティングする。好ましくは、ポリ塩化ビニリデンの量は、フィルムコーティング層の総乾燥重量に対して、50重量%~100重量%であり、具体的には60%~99%、具体的には70%~98%、より具体的には80%~97%、更により具体的には90%~96%である。ポリ塩化ビニリデンは、溶媒としての水の中で希釈されたポリ塩化ビニリデンを含む溶液をカプセルにエアスプレー(「空気圧スプレー」とも呼ばれる)することによってフィルムコーティングするプロセスによって塗布される。
【0034】
第1実施形態では、ポリ塩化ビニリデンを単独で使用する。
【0035】
第2実施形態では、PVDCが条件によっては脆くなる可能性があるということを補うために、少なくとも1つの可塑剤との混合物でポリ塩化ビニリデンを使用する。可塑剤は、クエン酸トリエチル(TEC)、グリセロール、ソルビトール及びマルチトールなどの糖アルコール、ポリビニルアルコール、単糖、二糖、オリゴ糖、トリアセチン、ポリエチレングリコール、又はそれらの混合物から選択することができる。有利には、クエン酸トリエチルを、ポリ塩化ビニリデンと混合される可塑剤として使用する。
【0036】
可塑剤は、フィルムコーティング層の総乾燥重量に対して0重量%~20重量%の量で使用することができる。
【0037】
有利には、フィルムコーティング層の厚さは、1μm~200μm、好ましくは3μm~100μm、更により好ましくは3μm~50μmである。
【0038】
本発明に係るカプセルの1つの利点は、カプセルが破壊時に可聴のポンという音を発することである。これにより、消費者は、必要に応じてカプセルの実際の破裂を「知る」ことができる。
【0039】
有利には、本発明に係るカプセルのシェルは、親水コロイドを含む。好ましくは、本発明に係る親水コロイドは、生物由来ポリマーである。生物由来ポリマーは、バイオマス由来の誘導体から部分的に(一般に>20%)又は全体的に得られる合成ポリマーを意味すると理解される。ポリマーの生物由来の性質は、ASTM D6866規格に従って、具体的にはポリマーのC14含有量から決定できる。
【0040】
カプセルのシェル中の親水コロイドは、ジェランガム、ゼラチン(動物由来又は生物工学由来)、コラーゲン、アルギン酸塩(alginates)、カラギーナン、寒天、キトサン及びその誘導体、ペクチン、アラビアガム、ガッティガム、プルランガム、マンナンガム、植物性タンパク質、又はそれらの混合物から選択される。シェル中に存在する上記親水コロイド(複数種の場合も含む)の量は、シェルの総乾燥重量に対して、4重量%~95重量%、好ましくは4重量%~75重量%、更により好ましくは20重量%~50重量%である。好ましい実施形態では、選択された親水コロイドは、単独で又はゼラチンと組み合わせて使用されるジェランガムである。別の好ましい実施形態では、親水コロイドは、カラギーナンから選択される。
【0041】
増量剤もシェルの組成物に含まれてもよく、増量剤は、外部液相中の乾燥物質、ひいては、得られたカプセルのシェルへの共押出後の乾燥物質の百分率を増加させることができる任意の適切な材料を意味すると理解される。カプセルのシェル内の乾燥物質の量を増加させると、上記シェルが固化され、物理的に耐性がより高くなる。好ましくは、増量剤は、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン(アルファ、ベータ、若しくはガンマ)などのデンプン誘導体、ヒドロキシプロピルデンプン誘導体、若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリオール、又はそれらの混合物を含む群から選択される。デキストリンは、好ましい増量剤である。シェル中の増量剤の量は、シェルの総乾燥重量に対して、最大98.5重量%、好ましくは25重量%~95重量%、より好ましくは40重量%~80重量%、更により好ましくは50重量%~60重量%である。
【0042】
有利には、シェルは、香料組成物を含むカプセルをより魅力的にすることができる着色剤を含んでもよい。着色剤は、好ましくは、食品由来の色素及び顔料から選択される。着色は、シェルの本体内にあってもよく、追加のコーティングプロセスによって塗布されてもよい。
【0043】
一実施形態では、シェルの乾燥重量は、カプセルの総乾燥重量に対して、5重量%~70重量%、好ましくは8重量%~50重量%、より好ましくは8重量%~20重量%である。
【0044】
好ましくは、当該カプセルは、1mm~6mmの直径を有する。より好ましくは、カプセルは、2.5mm~5mmの直径を有する。
【0045】
有利には、カプセル(フィルムコーティングなし)のシェルの厚さは、10μm~300μm、好ましくは20μm~200μm、更により好ましくは30μm~150μmである。
【0046】
フィルムコート層の厚さ、カプセルの直径、及びフィルムコーティングされたカプセルの耐破裂性の間には関連性がある。実際に、出願人は、フィルムコーティング層の厚さとカプセルの直径との特定の比率により、フィルムコーティングされたカプセルが必要な耐破裂性を有することを確保できることを実証した。
【0047】
比率(R)=(フィルムコート層の厚さ×2)/カプセルの直径。
【0048】
有利には、上記比率は、0.18以上、有利には、0.2以上、より有利には、0.3以上、更により好ましくは0.4以上である。
【0049】
カプセルのコアは、食品産業で通常に使用されている1つ以上の親油性溶媒を含む。
【0050】
好ましい実施形態では、これらの親油性溶媒は、トリグリセリド、具体的には中鎖トリグリセリド(triglycerides a chaine moyenne、medium-chain triglycerides、MCT)、具体的にはカプリル酸及びカプリン酸トリグリセリド、若しくは植物油、オリーブ油、ヒマワリ油、コーン油、ピーナッツ油、グレープシード油、小麦胚芽油、鉱油及びシリコーン油などのトリグリセリドの混合物、又はそれらの混合物であってもよい。
【0051】
本発明に係るカプセルのコア中の親油性溶媒の量は、カプセルの総重量の約0.01%~90%、好ましくは25%~75%である。
【0052】
コアは、香料組成物の配合で通常に使用されているような1つ以上の香料分子を含む香料も含んでもよい。このような香料物質は、例えば、「Common Fragrance and Flavor Materials」、Wiley-VCH、ヴァインハイム(Weinheim)、2006に記載されている。
【0053】
香料物質としては、具体的には、芳香族、テルペン及び/又はセスキテルペン炭化水素、より具体的には、精油、アルコール、アルデヒド、フェノール、様々な形態のカルボン酸、芳香族アセタール若しくはエーテル、芳香族若しくは非芳香族であり得る窒素複素環、ケトン、スルフィド、ジスルフィド、及びメルカプタンを挙げることができる。
【0054】
コアは、香料エマルションに使用されるような1つ以上の充填剤も含んでもよい。例としては、ダンマルガム、エステルガムタイプの木材樹脂、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)、又は臭素化植物油が挙げられる。これらの充填剤の機能は、液体コアの密度を調整することである。
【0055】
コアは、また、エタノール溶液又はエタノール懸濁液の形であり得る1つ以上の甘味料を含んでもよい。適切な甘味料の例としては、アスパルテーム、サッカリン、NHDC、スクラロース、アセスルファム、ネオテーム、ステビア及びその誘導体などが挙げられてもよいが、これらに限定されない。コアは、口内の冷感効果又は温感効果のいずれかを与える1つ以上の「感覚」香料剤も含んでもよい。適切な冷感剤は、コハク酸メンチル及びその誘導体、具体的にはPhyscool(登録商標)であってもよいが、これらに限定されない。適切な温感剤は、バニリルエチルエーテル又はゴールドルート(イワベンケイ、gold root)であってもよいが、これらに限定されない。
【0056】
適切な複合香料の例としては、バニラ、コーヒー、チョコレート、シナモン、ミントなどが挙げられる。
【0057】
カプセルのコアがいくつかの香料を含む場合、香料混合物の総量は、カプセルのコアの総重量に対して、5重量%~60重量%である。
【0058】
本発明の第2目的は、香料を即時かつ持続的に放出する経口使用パウチであって、上記で定義された上記香料を含む1つ以上のカプセルを含み、上記カプセルが経口使用パウチ内に配置される、ことを特徴とする経口使用パウチに関する。本発明に係るカプセルの応用の1つは、多孔質でタバコを含むか又は含まない経口パウチ(スヌースとも呼ばれる)に風味を付ける使用である。これらのスヌース製品にカプセルを使用する主な利点は、「破裂」の形で香料を即時かつ持続的に放出することにより香料を提供することである。別の利点は、消費者がパウチに含まれる風味付きカプセルを破裂させて香料剤を放出できる正確な瞬間を選択できることである。実際に、スヌースの消費者は、上記パウチを口中に最長1時間保持することに慣れている。したがって、消費者が、可聴のポンという音と、上記カプセルを歯間で破裂させる感覚との両方を体験することによって、本発明のカプセルを破裂できることは、重要である。その結果として、カプセルは、十分な硬度と変形特性を維持しながら、唾液によって形成される温湿度環境(37℃、pH6.8~7.5)での長時間(平均1時間)放置に耐えなければならない。
【0059】
第1実施形態では、本発明に係るパウチは、葉の形又は粉末タバコの形のタバコを含む。経口使用パウチに含まれるこのタイプの製品は、タバコを含むという意味で従来のスヌースに対応する。パウチ内に存在するタバコは、湿度レベルが非常に高いため、カプセルの耐水性が重要になる。実際に、約40%のタバコ湿度と、パウチが口中に配置されたときに唾液による湿度と、口内の温度とを考慮すると、全体の湿度レベルは、95%に達することができる。
【0060】
第2実施形態では、本発明に係る経口使用パウチは、タバコを含まない。この実施形態では、タバコは、ニコチンを含むか又は含まずに、酢酸セルロース繊維、大量の保湿剤、及びpH調整剤を含む混合物に置き換えられる。この新しいタイプの製品は、近年、タバコを含むスヌースを禁止する規制を回避するために開発されている。しかしながら、従来のスヌースの効果を再現するこれらの製品は、パウチ内に存在する保湿剤により湿度レベルが高いという意味で、従来のタバコを含むスヌースと同じ欠点を有する。また、パウチは、タバコを含むか否かにかかわらず、消費前の製品の品質を確保する必要があるため、湿度が非常に高い小箱に包装されている。
【0061】
本発明に係るパウチは、1つ以上のカプセルを含む。
【0062】
一実施形態では、本発明に係るパウチは、パウチ内に配置された、植物繊維、及び/又はカプセル化若しくは非カプセル化香料剤、及び/又は充填剤、及び/又は保湿剤を更に含む。
【0063】
上記経口使用パウチは、様々な形態、具体的にはカプセル化又は非カプセル化の形で存在する他の香料剤も含んでもよい。
【0064】
本発明の第3目的は、フィルターを含む部分と、タバコを含む別の部分とを含む消費製品であって、フィルターが本発明に係る1つ以上のカプセルを含む、ことを特徴とする消費製品に関する。
【0065】
紙巻きタバコの販売の減少に直面して、タバコ産業は、「害を低減した」製品として知られる新製品を開発している。これらの「害を低減した」製品は、エアロゾルを放出するために「ミニ紙巻きタバコ」又は「カプセル」中のタバコを180°~350°(可燃性紙巻きタバコの場合は600°~900°)に電気的に加熱できるタバコ加熱装置を含む。タバコを燃やさずに加熱するこれらの装置は、エアロゾル化するだけで燃焼も煙も発生させずにニコチンを拡散する。
【0066】
本発明に係るカプセルの1つの応用は、タバコ加熱装置で使用されるときに形成されるエアロゾル(又は「煙」)に風味を付ける使用である。タバコ加熱装置が使用される場合、形成されるエアロゾルは、水分含有量が高く、温度が50℃~70℃に達することができる。このカプセルは、耐破裂性を維持しながら、60℃、6分間の(装置の消費時間に対応する)水中浸漬試験に耐えることにより、本願の理想的な対象となる。
【0067】
本発明に係るカプセルは、フィルター(従来の紙巻きタバコと同様に酢酸セルロースで作られる)を含む部分と、タバコを含む別の部分とを含む消費製品に組み込むことができる。このように、フィルター内に配置された本発明に係るカプセルは、硬度と変形の必要な特性を保持しながら、消費者によりいつでも破裂することができるため、上記消費者は、いつ上記カプセルを破裂させて香料内容物をフィルターに放出するかを正確に知ることができる。
【0068】
当該消費製品は、1つ以上の本発明に係るカプセルを含む。
【0069】
有利には、本発明に係る消費製品は、使い捨てであり、タバコ加熱装置のタバコ詰め替え品として使用されることを意図する。
【0070】
本発明の第4目的は、本発明に係る消費製品を含む、ことを特徴とするタバコ加熱装置に関する。タバコ加熱装置は、その名前が示すように、タバコを30℃~300℃の温度に加熱し、タバコを燃やして700℃~800℃の温度に達する従来の紙巻きタバコとは異なる。このタイプの装置では、加熱されたタバコは、具体的には本発明に係るカプセルにより風味を付けることができるエアロゾルの形成を引き起こす。本発明に係る消費製品は、喫煙用装置に挿入される。消費者が上記装置をオンにすると、タバコが上記装置によって加熱される。消費者は、消費製品のフィルター内に位置する本発明のカプセルをいつでも破砕させることができるため、タバコを加熱することによって形成されるエアロゾルに風味を付けることができる。
【0071】
本発明の第5目的は、シェル及びコアを含むシームレス破壊可能カプセルを製造する方法であって、
前記シェルの総乾燥重量に対して4重量%~95重量%の親水コロイドを含む親水性外部液相と、前記コアの総重量に対して5重量%~70重量%の香料剤を含む親油性内部液相とを共押出するステップ(A)と、
1℃~25℃の温度の流体に浸漬することにより、ステップ(A)で得られた前記カプセルの表面を固化及び/又はゲル化するステップ(B)と、
ステップ(B)で得られた前記カプセルを乾燥させるステップ(C)と、
ポリ塩化ビニリデン及び水を含むフィルムコーティング溶液を用いたエアスプレーコーティングプロセスにより、ステップ(C)で得られた前記カプセルをフィルムコーティングするステップ(D)と、
ステップ(D)で得られた前記カプセルを回収するステップ(E)と、を含む、方法に関する。
【0072】
共押出プロセスは、親水性外部液相と親油性内部液相の2つの液体の同時押出である。共押出プロセスは、液滴形成、シェル固化、カプセル収集の3つの主な段階を含む。本発明のカプセルは、任意の適切な共押出プロセスによって製造されてもよい。好ましくは、カプセルは、欧州特許出願公開第513603号明細書に記載されている装置及び方法によって製造される。
【0073】
本発明の一実施形態では、共押出ステップの後、シェルの良好なゲル化を確保するために、例えばカプセルを低温流体と接触させることによってカプセルを低温に保持しながら、固化ステップを行う。低温流体は、好ましくは、低温油である。本発明の意義の範囲内で、低温は、1℃~25℃、好ましくは2℃~10℃、より好ましくは4℃~6℃の温度を意味すると理解される。次に、カプセルを遠心分離して余分な油を除去し、場合によっては有機溶媒で洗浄して、同じく余分な油を除去し、乾燥させる。本発明の一実施形態では、共押出ステップの後、場合によっては固化ステップの後、カプセルを遠心分離する。
【0074】
本発明の別の実施形態では、カプセルを共押出し、遠心分離し、場合によってはカプセルのシェルを硬化できる添加剤又はキレート剤を含む溶液又はエマルションに浸漬する。
【0075】
キレート剤は、0℃~25℃、より具体的には10℃~20℃の温度で維持されたエタノール又は任意の他の無水有機溶媒であってもよい。
【0076】
キレート剤は、pHが5~8のカルシウムイオン浴、例えば塩化カルシウム、リン酸二カルシウム、又は硫酸カルシウムの浴であってもよい。カルシウムイオン浴の温度は、好ましくは0℃~25℃、好ましくは10℃~20℃である。
【0077】
浸漬ステップ(B)の後、カプセルを、例えば制御された温度及び湿度の気流中で乾燥させる(ステップ(C))。乾燥用空気は、相対湿度が20%~60%、好ましくは30~50%であり、温度が15℃~60℃、好ましくは35℃~50℃である。必要に応じて、シリカなどの吸着剤、又は乾燥中に添加されるデンプン(0.1~5%、好ましくは0.1~2%)を使用して表面油を除去することができる。
【0078】
ステップ(D)は、カプセルをフィルムコーティングする重要なステップであり、当該ステップの間にポリ塩化ビニリデン外層をカプセルに付与する。「フィルムコーティング」とは、フィルムコーティング剤薄層を支持体上に堆積させることができるプロセスを意味すると理解される。この場合、フィルムコーティングプロセスは、生成された微液滴を支持体(本発明ではカプセル)上に搬送するために、フィルムコーティング剤(本発明ではポリ塩化ビニリデン)の溶液をエアスプレーするプロセスによって行われる。これらの理由によって、フィルムコーティングプロセスは、キャリア流体を使用せずに(ひいては空気を使用せずに)スプレー以外のプロセスによって支持体を厚い層で被覆することを可能にするコーティングプロセスと明確に区別される。
【0079】
フィルムコーティングステップは、少なくともポリ塩化ビニリデン及び水を含む溶液を用いたエアスプレープロセスによって行われる。第1実施形態では、ポリ塩化ビニリデンは、水中で希釈された8重量%~50重量%の溶液として使用される。
【0080】
好ましくは、フィルムコーティング溶液は、ポリ塩化ビニリデンと、水と、クエン酸トリエチル、グリセロール、ソルビトール及びマルチトールなどの多価アルコール、ポリビニルアルコール、単糖、二糖、オリゴ糖、トリアセチン並びにポリエチレングリコールから選択される少なくとも1つの可塑剤と、を含む。
【0081】
本発明の方法で製造されたカプセルは、本質的に又は完全に球形であり、サイズが均一である。
【0082】
本発明の第6目的は、香料の即時持続放出の添加剤としての本発明に係るカプセルの使用であって、前記カプセルが、経口使用パウチ、又はフィルター及びタバコを含み、具体的にはタバコ加熱装置での使用を意図した消費製品に配置される、使用に関する。この実施形態では、カプセルは、経口使用パウチ又は消費製品内で破壊したとき、可聴のポンという音を発して破裂し、それに含まれる香料を放出する。
【0083】
本発明の第7目的は、消費者が本発明に係る経口使用パウチに含まれる製品に風味を付ける方法であって、
消費者が経口使用パウチをその消費者の歯肉と頬又は上唇の間に、具体的には5~60分間置くステップと、
消費者が、カプセルに含まれる香料をその消費者の口の中に放出するために、経口使用パウチに含まれるカプセルを消費者の歯の間で破裂させるステップと、を含む方法に関する。
【0084】
以下、本発明を以下の実施例により説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではなく、図面を参照して読まれるべきである。
【実施例
【0085】
実施例1
1. フィルムコーティング前のカプセルの組成物(表1)
%は重量で表される。
【表1】
F=カプセル香料に含まれる成分
S=カプセルのシェルに含まれる成分
【0086】
カプセルフィルムの調製:
水、クエン酸ナトリウム、グリセリン及びソルビトールをビーカーに秤量し、混合物を撹拌して85℃に加熱し、
ジェランガムを秤量してビーカーに組み込み、
ゼラチン、デキストリン、デンプン及び着色剤を秤量してビーカーに組み込み、
成分を溶解させるまで混合物を撹拌してから、脱気する。
【0087】
共押出の手順:
上記フィルム溶液を85℃で同心ノズルにポンピングし、
MCT中のメントール、ミントエッセンシャルオイル、及び芳香分子からなる風味付き液体ベース溶液を室温で上記同心ノズルに別途にポンピングし、
同軸ノズルを通して2つの溶液を低温(約10℃)のMCT中へ同時に押し出し、共押出により、コア及びシェルと呼ばれる2つの液滴が、一方が他方の内部にあるように、約90/10の比率で瞬時に形成され、
温度の低下により、外部シェルの溶液を香料コアの周囲でゲル化し、
ゲル化された湿ったカプセルを低温MCTに収集し、4℃で1時間固化させ、
遠心分離によりMCTを除去し、
混合してから、温風(約45℃)及び乾燥助剤(シリカ)を使用して乾燥機でカプセルを乾燥させ、
乾燥されたカプセルを収集して篩にかける。
【0088】
2. フィルムコーティング溶液の調製(表2)
%は重量で表される。
【表2】
【0089】
手順:
ビーカーに水を秤量し、
ポリマー(PVDC)と可塑剤(TEC)を秤量し、
撹拌しながらポリマー溶液及び可塑剤を投入し、室温で15分間放置し、
撹拌を制御して泡の形成を回避し、
フィルムコーティングプロセス中に穏やかに撹拌し続ける。
【0090】
下記表3は、フィルムコーティング溶液の特徴を示す。
【表3】
【0091】
3. フィルムコーティングプロセス:
共押出後に得られたカプセルをフィルムコーティングタービンに導入し、
フィルムコーティング溶液を天秤で秤量し、
フィルムコーティングタービン内に、フィルムコーティング剤を事前に充填してパージした所望のスプレーノズルを取り付け、
タービンを所望の回転速度で回転させ、
流入空気を所望の流量で40℃に予熱し、
コーティングされるカプセルの温度(約26℃)に達すると、ポリマー溶液のスプレーを開始し、
所望の乾燥堆積物の百分率に達すると(すなわち、塗布されるフィルムコーティング溶液の所望の重量に達すると)、スプレーを停止し、
流入空気の温度を下げて安定化ステップを実行する(約20分)。
【0092】
4. フィルムコーティング前後、浸漬試験及び溶出試験の後のカプセルの分析(表4)
フィルムコーティングされたカプセルに対して、以下のプロトコルに従って60℃、6分間の水中浸漬試験を行う。
調製:
試験に使用される水を予熱し、
計数プレートを使用して200個のカプセルを数え、
残油又はその他の微量不純物を除去するために、室温で(250RPM)撹拌しながらカプセルを200mlの脱塩水に20秒間浸漬し、
篩を使用してカプセルを収集し、脱脂綿上で軽く乾燥させる。
【0093】
浸漬試験:
水浴を開始し、ビーカーの内部温度が60℃±1℃になるように温度を60℃に設定し、
200gの脱塩水をビーカーに秤量し、
ビーカーを水浴に置き、磁気バーを挿入し、500rpmで撹拌を開始し、
カプセルをビーカーに投入し、
時間を6分間とし、
6分間後、水の色を記録し、破裂したカプセル又は表面に浮き上がったカプセルの数を数え、また、香気(香料に相当)が存在するならば、それも記録し、
カプセルを篩に収集し、脱脂綿上に広げて乾燥させ、
カプセルの外観を観察し、分析を実行する。
【0094】
フィルムコーティングされたカプセルに対して、以下のプロトコルに従って37℃、20分間の水中溶出試験を行う。
水浴の水タンクを39℃に加熱し、
逆浸透によって濾過された水を試験ビーカーに導入し、
水が37℃に達したら、pHを測定し、pHを6.8~7.5とする必要があり、
21個のカプセルをウェルに導入し、
タイマーを20分間に設定する。
【0095】
以下の手順を開始する。
ウェルを毎分30ストロークの速度で55mm下降させ、
カプセルを37℃で、水中に完全に浸漬したままにし、
20分間後、カプセルを取り出し、脱脂綿で軽く拭き取り、分析を実行する。
【0096】
フィルムコーティング前後、浸漬試験及び溶出試験の後のカプセルの分析結果(表4)
【表4】
【0097】
フィルムコーティング前後、浸漬試験及び溶出試験の後のカプセルの分析(表4)
【0098】
実施例1から分かるように、本発明に係るフィルムコーティングされたカプセルは、
浸漬試験及び溶出試験の前に測定されたものと同等の耐破裂性(硬度)と、
浸漬試験及び溶出試験の前に測定されたものと同等の可聴のポンという音(80db以上)を発する能力との両方を保持する。
【0099】
実施例2
「乾燥堆積物」による影響:
乾燥堆積物は、フィルムコーティング層の厚さを反映する要素である。これは、比率((最終カプセル重量-初期カプセル重量)/初期カプセル重量)を求めることによって計算される。
【0100】
実施例2では、乾燥堆積物によるカプセルの特性への影響を評価するために、乾燥堆積物が変化可能で直径(約3.5mm)が同等のカプセルを製造した。
【0101】
図1の表は、フィルムコーティング前のコア/シェルカプセルの異なる組成物を説明する。
【0102】
図2の表は、図1の表のカプセルに塗布される異なるPVDC/TECフィルムコーティング溶液及び異なる乾燥堆積物を説明する。
【0103】
図3の表は、浸漬試験、溶出試験の前後のカプセルの硬度、変形、及び可聴のポンという音の結果を説明する。
【0104】
これらの試験から分かるように、1%未満の乾燥堆積物を有する直径3.5mmのカプセル(参照カプセル16030/AK3 1%)が、60℃、6分間の水中浸漬試験、又は37℃、20分間の水中溶出試験に耐えない。
【0105】
実施例3
カプセルは、実施例1に従って製造される。図4の表は、コアシェルカプセルの異なる配合を説明する。
【0106】
第2ステップでは、実施例1に従ってカプセルをフィルムコーティングする。図5の表は、異なるフィルムコーティング剤を使用し、異なる乾燥堆積物の値を有するフィルムコーティング溶液の異なる配合を説明する。
【0107】
フィルムコーティングされたカプセルに対して、実施例1に記載のプロトコルに従って、60℃、6分間の水中浸漬試験、及び37℃、20分間の水中溶出試験を行う。フィルムコーティング前、浸漬試験及び溶出試験の後のカプセルの分析を、実施例1に記載のように行う。結果を以下の表5、表6及び図6にまとめる。
【0108】
図7及び8は、表5及び表6に記載の結果のグラフ表示であり、使用されたフィルムコーティング剤に応じた、浸漬試験及び溶出試験の後の全ての硬度の結果を説明する。
【表5】
G=ゼラチン
V=カラギーナン又はジェランガム
【0109】
【表6】
G=ゼラチン
V=カラギーナン又はジェランガム
【0110】
なお、PVDC以外のポリマーでコーティングされた全てのカプセルは、60℃、6分間の水中浸漬試験に耐えない。
【0111】
なお、エチルセルロース(EC)の場合、カプセル(参照番号10042/F1)は、浸漬試験に耐えたが、カプセル破壊時に発した音は、80dbよりはるかに低い(49db)。この相対的耐性は、エチルセルロースがこの特性を提供することによるものではなく、エチルセルロースが大量(15%の乾燥堆積物、図5の表を参照)に使用されることによるものである。
【0112】
PVDC(本発明ではTECとの混合物で使用される)は、カプセルが浸漬試験及び溶出試験に耐えるようにする唯一のフィルムコーティング剤である。
【0113】
実施例4
G=ゼラチン
カプセルサイズによるフィルムの厚さへの影響。フィルムコーティングの厚さ、乾燥堆積物、及び比率((フィルムコーティング層の厚さ)×2/カプセル直径)の決定の間の関係。
【0114】
実施例4では、実施例1に従って、異なる直径のカプセルをPVDC又はエチルセルロースでフィルムコーティングする。
【0115】
図9~11の表は、フィルムコーティングの特徴をまとめたものである。
【0116】
同一の乾燥堆積物の値では、フィルムコーティング層の厚さは、カプセルのサイズに応じて異なる。乾燥堆積物が増加すると、フィルムコーティング層の厚さは、カプセルのサイズとともに増加する。
【0117】
例えば、直径3.5mmのカプセルの3%の乾燥堆積物と、直径5mmのカプセルの3%の乾燥堆積物とは、フィルムコーティング層の厚さへの影響が異なる。厚さは、それぞれ10.059μmと14.364μmである。
【0118】
比率((フィルムコーティング層の厚さ)×2/カプセルの直径)は、カプセルのサイズにかかわらず、同一のままであり、上記の実施例の文脈では、R=0.575である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】