(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】高いスウェル比、耐衝撃性および引張弾性率を有するブロー成形用ポリエチレン組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 10/02 20060101AFI20240705BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20240705BHJP
C08F 4/654 20060101ALI20240705BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C08F10/02
C08L23/04
C08F4/654
B65D1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500455
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-08
(86)【国際出願番号】 EP2022068547
(87)【国際公開番号】W WO2023001541
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ドイツ,ディアナ
(72)【発明者】
【氏名】マルツィンケ,ベルント ローター
(72)【発明者】
【氏名】メイエル,ゲルハルドス
(72)【発明者】
【氏名】シュエラー,ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ダム,エルケ
(72)【発明者】
【氏名】フィブラ,クラウディオ
【テーマコード(参考)】
3E033
4J002
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
3E033AA01
3E033BA15
3E033FA03
3E033GA02
4J002BB031
4J002BB051
4J002GG01
4J100AA02P
4J100AA04Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA09
4J100DA15
4J100DA19
4J100DA41
4J100DA42
4J100DA43
4J100DA47
4J100DA51
4J100DA52
4J100FA09
4J100FA22
4J100FA28
4J100FA29
4J100JA58
4J100JA59
4J128AA01
4J128AB01
4J128AC05
4J128BA02A
4J128BA02B
4J128BB01A
4J128BB02B
4J128BC15A
4J128BC15B
4J128BC16B
4J128BC36A
4J128CA16A
4J128CB22A
4J128CB43A
4J128DA02
4J128DB03A
4J128DB08A
4J128EA02
4J128EB02
4J128EC01
4J128ED01
4J128ED04
4J128ED09
4J128EF01
4J128FA09
4J128GA01
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA07
4J128GA08
4J128GA16
(57)【要約】
【解決手段】 ブロー成形中空品の製造に特に適したポリエチレン組成物であって、以下の特徴を有する。
1) 密度が0.957~0.968g/cm3であること、
2) MIF/MIP比が12~30であること、
3) MIFが41~60g/10minであること、
4) 長鎖分岐指数LCBIが0.45以上であること、
5) 比(η0.02/1000)/LCBIが45~75であること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の特徴を有する、ポリエチレン組成物。
1) ISO 1183-1:2012に従って23℃で測定された密度が0.957~0.968g/cm
3、好ましくは0.958~0.968g/cm
3、より好ましくは0.959~0.965g/cm
3であること、
2) MIF/MIP比が12~30、好ましくは15~25、特に15~23であり、ここで、MIFは荷重21.60kg、190℃でのメルトフローインデックスであり、MIPは荷重5kg、190℃でのメルトフローインデックスであり、両方ともISO 1133-12012-03に従って決定されること、
3) MIFが41~60g/10min、好ましくは43~55g/10min、より好ましくは45~55g/10minであること、
4) 長鎖分岐指数LCBIが0.45以上、好ましくは0.50以上であり、ここで、LCBIは、GPC-MALLSで測定された測定平均自乗回転半径R
gと、同一分子量の直線状PEの平均自乗回転半径との比であること、
5) 比(η
0.02/1000)/LCBI、すなわちη
0.02を1000で割った値とLCBIとの間の値が45~75、好ましくは50~70である、ポリエチレン組成物。
【請求項2】
1種以上のエチレンコポリマーからなるか、または1種以上のエチレンコポリマーを含む、請求項1に記載のポリエチレン組成物。
【請求項3】
チーグラー・ナッタ重合触媒を用いることにより得ることができる、請求項1または2のポリエチレン組成物。
【請求項4】
前記チーグラー・ナッタ重合触媒は、
a) MgCl
2上に担持されたTi化合物を含む固体触媒成分であって、任意に不活性媒体の存在下で、チタン化合物をMgCl
2または前駆体Mg化合物と接触させて中間生成物a')を得た後、a')を予備重合して電子供与体化合物と接触させることにより得られる固体触媒成分と、
b) 有機アルミニウム化合物と、
c) 任意の外部電子供与体化合物との反応の生成物を含む、請求項3に記載のポリエチレン組成物。
【請求項5】
以下の追加的な特徴の少なくとも1つを有する、請求項1に記載のポリエチレン組成物。
-η
0.02が、25,000~38,000 Pa・s、好ましくは25,000~34,000 Pa・sであり、ここで、η
0.02は、プレート-プレート回転レオメータ内で動的振動せん断を用いて190℃の温度で測定された、0.02rad/sの角周波数を有する複素せん断粘度であること、
-コモノマー含有量が、組成物の総重量に対して0.3重量%以下、特に0.05~0.3重量%であること、
-Mwが、230,000 g/mol以上、特に230,000~400,000 g/molであり、ここで、MwはGPCによって測定された重量平均分子量であること、
-Mzが、1,000,000g/mol以上、特に1,000,000g/mol~2,500,000g/molであり、ここで、MzはGPCによって測定されたz平均分子量であること、
-Mz/Mwが、5.8以上、好ましくは6.3以上、より好ましくは6.4以上、最も好ましくは6.5以上、特に5.8~9、6.3~9、6.4~9、または6.5~9であること、
-MIEが、0.8g/10min以下、特に0.8~0.1g/10minであり、ここで、MIEは、ISO 1133-12012-03に従って測定された荷重2.16kg、190℃でのメルトフローインデックスであること、
-MIPが、1~10g/10min、より好ましくは1.5~8g/10min、または2~8g/10minであること、
-ERが、1以上、好ましくは1.5以上、特に1~8または1.5~8であること、
-ETが、25以下、特に3~25、または7~25であること、
-HMWcopo指数が0.1~3、特に0.1~2であり、
ここで、HMWcopo指数は次の式に従って決定され、
HMWcopo = (η
0.02 x t
maxDSC)/(10
5)
ここで、tmaxDSCは、静止条件下、124℃の温度、等温モードで示差走査熱量計DSCにより測定された結晶化の熱流最大値(mW単位)に到達するのに必要な時間(最大結晶化速度に到達するまでの時間、t1/2結晶半減期に相当)であり、分単位であり、LCBIは、GPC-MALLSによって測定された測定平均二乗回転半径Rgと、モル重量で1,000,000グラム/モルの、同じモル分子量を有する直線状PEの平均二乗回転半径との比である。
【請求項6】
A) 密度が0.960g/cm
3以上であり、MIEが65g/10min以上、好ましくは75g/10min以上、特に65~100g/10minまたは75~100g/10minであるエチレンのホモポリマーまたはコポリマー(好ましくはホモポリマー)30~70重量%、好ましくは40~60重量%と、
B) MIE値がA)のMIE値よりも低く、好ましくは0.5g/10min未満であるエチレンコポリマー30~70%重量%、好ましくは40~60重量%と、を含む、請求項1に記載のポリエチレン組成物。
【請求項7】
前記成分A)の密度値と前記組成物の密度値との差が15kg/m
3以下、特に15kg/m
3から5kg/m3である、請求項6に記載のポリエチレン組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のポリエチレン組成物を含む製造品。
【請求項9】
ブロー成形品の形態であり、好ましくは、200~5000cm
3の容量を有するブロー成形容器、特に、ブロー成形された乳製品および飲料ボトルである、請求項7に記載の製造品。
【請求項10】
全ての重合工程が、MgCl
2上に担持されたチーグラー・ナッタ重合触媒の存在下で行われる、請求項1に記載のポリエチレン組成物の製造プロセス。
【請求項11】
a) 水素の存在下で、任意に1種以上のコモノマーと共に、気相反応器内でエチレンを重合させるステップと、
b) 別の気相反応器内で、ステップa)よりも少ない量の水素の存在下で、エチレンを1種以上のコモノマーと共重合させるステップと、を任意の相互順序で含み、
前記気相反応器の少なくとも1つにおいて、成長したポリマー粒子は、高速流動化または輸送条件下で、第1重合ゾーンを通って上向きに流れ、ライザーを出て、第2重合ゾーンに入り、重力によって前記第2重合ゾーンを通って下向きに流れ、前記第2重合ゾーンを出て、前記第1重合ゾーンに再導入され、それによって、2つの重合ゾーンの間にポリマー循環が確立される、請求項10に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形による小物品、特にボトルの製造に適したポリエチレン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
前記用途に適した従来技術組成物の例は、WO2009003627、WO2014134193、WO2014206854、WO2018095700およびWO2021028159に開示されている。
【0003】
現在、組成物の分子構造およびレオロジー挙動を適切に選択することによって、特に高い値のスウェル比、耐衝撃性および引張弾性率が、最終物品の極めて滑らかな表面と組み合わされて、ゲル含有量が低減され、高いメルトフローインデックス値を有することが見出され、これが改善された加工能力を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本開示は、以下の特徴を有するポリエチレン組成物を提供する。
1) ISO 11f83-1:2012に従って23℃で測定された密度が0.957~0.968g/cm3、好ましくは0.958~0.968g/cm3、より好ましくは0.959~0.965g/cm3であること、
2) MIF/MIP比が12~30、好ましくは15~25、特に15~23であり、ここで、MIFは荷重21.60kg、190℃でのメルトフローインデックスであり、MIPは、荷重5kg、190℃でのメルトフローインデックスであり、両方ともISO 1133-12012-03に従って決定されること、
3) MIFが41~60g/10min、好ましくは43~55g/10min、より好ましくは45~55g/10minであること、
4) 長鎖分岐指数LCBIが0.45以上、好ましくは0.50以上であり、ここで、LCBIは、GPC-MALLSで測定された測定平均自乗回転半径Rgと、同一分子量の直線状PEの平均自乗回転半径との比であること、
5) 比(ηη0.02/1000)/LCBI、すなわち、η0.02を1000で割った値とLCBIとの間の値が45~75、好ましくは50~70であること。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、2つの直列に接続された気相反応器からなるプラントにて連続条件下で実行される重合プロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲、ならびに図面を参照することにより、よりよく理解される。
図面は、本明細書に開示されるポリエチレン組成物のさまざまな実施形態を製造するために、本明細書に開示されるエチレン重合プロセスのさまざまな実施形態に従って使用するのに適した2つの直列に接続された気相反応器の簡略化されたプロセスフロー図の例示的な実施形態である。
様々な実施形態は、図面に示される構成および手段に限定されないことを理解されたい。
【0007】
「ポリエチレン組成物」という表現は、代替として、単一のエチレンポリマーおよびエチレンポリマー組成物、特に、好ましくは異なる分子量を有する2種以上のエチレンポリマー成分の組成物を含むことを意図しており、このような組成物は、関連分野において「二峰性」または「多峰性」ポリマーとも呼ばれている。
【0008】
典型的には、本発明のポリエチレン組成物は、1種以上のエチレンコポリマーからなるか、またはそれを含む。
【0009】
先に定義された特徴1)~5)を含む、本明細書に定義されるすべての特性は、前記エチレンポリマーまたはエチレンポリマー組成物を指す。当技術分野で通常使用される添加剤のような他の成分の添加により、前記特性の1つ以上を改変することができる。
【0010】
MIF/MIP比は、分子量分布のレオロジー的尺度を提供する。
【0011】
分子量分布の別の尺度は、実施例で説明するように、比Mw/Mnによって提供され、ここでMwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量であり、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定される。
【0012】
本ポリエチレン組成物の好ましいMw/Mn値は、25~45、特に30~40の範囲である。
【0013】
LCBI値の好ましい範囲は次のとおりである。
【0014】
-0.45~0.65、または
【0015】
-0.45~0.60、または
【0016】
-0.50~0.65、または
【0017】
-0.50~0.60。
【0018】
さらに、本発明のポリエチレン組成物は、好ましくは、以下の追加的な特徴の少なくとも1つを有する。
-η
0.02が、25,000~38,000Pa・s、好ましくは25,000~34,000Pa・sであり、ここで、η
0.02は、プレート-プレート回転レオメータ内で動的振動せん断を用いて190℃の温度で測定された0.02rad/sの角周波数を有する複素せん断粘度であること、
-コモノマー含有量が、組成物の総重量に対して0.3重量%以下、特に0.05~0.3重量%であること、
-Mwが、230,000g/mol以上、特に230,000~400,000g/molであること、
-Mzが、1,000,000g/mol以上、特に1,000,000g/mol~2,500,000g/molであり、ここで、MzはGPCによって測定されたz平均分子量であること、
-Mz/Mwが、5.8以上、好ましくは6.3以上、より好ましくは6.4以上、最も好ましくは6.5以上、特に5.8~9、6.3~9、6.4~9、6.5~9であること、
-MIEが、0.8g/10min以下、特に0.8~0.1g/10minであり、ここで、MIEは、ISO 1133-12012-03に従って測定された、荷重2.16kg、190℃でのメルトフローインデックスであること、
-MIPが、1~10g/10min、より好ましくは1.5~8g/10min、または2~8g/10minであること、
-ERが、1以上、好ましくは1.5以上、特に1~8または1.5~8であること、
-ETが、25以下、特に3~25、または7~25であること、
-HMWcopo指数が、0.1~3、特に0.1~2であり、
ここで、HMWcopo指数は次の式に従って決定され、
【数1】
ここで、tmaxDSCは、静止条件下、124℃の温度、等温モードで示差走査熱量計DSCにより測定された結晶化の熱流最大値(mW単位)に到達するのに必要な時間(最大結晶化速度に到達するまでの時間、t1/2結晶半減期に相当)であり、分単位であり、LCBIは、GPC-MALLSによって測定された測定平均二乗回転半径Rgと、モル重量で1,000,000グラム/モルの、同じモル分子量を有する直線状PEの平均二乗回転半径との比であること。
【0019】
エチレンコポリマー中に存在する1種以上のコモノマーは、一般に、分子式CH2=CHRで表されるα-オレフィンから選択され、ここで、Rは炭素数1~10の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。
【0020】
具体例としては、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、デセン-1が挙げられる。特に好ましいコモノマーはヘキセン-1である。
【0021】
特に、好ましい実施形態では、本組成物は、
A)密度が0.960g/cm3以上、MIEが65g/10min以上、好ましくは75g/10min以上、特に65~100g/10minまたは75~100g/10minであるエチレンホモポリマーまたはコポリマー(好ましくはホモポリマー)30~70重量%、好ましくは40~60重量%と、
B) MIE値がA)よりも低く、好ましくは0.5g/10min未満であるエチレンコポリマー30~70重量%、好ましくは40~60重量%と、を含む。
【0022】
上記のパーセンテージ量は、A)+B)の合計重量に対して与えられる。
【0023】
好ましくは、成分A)の密度値と組成物の密度値との差が15kg/m3以下であることが好ましく、特に15~5kg/m3であることが好ましい。
【0024】
前述したように、本発明のポリエチレン組成物は、例えば容量が200~5000cm3のブロー成形容器、特にブロー成形された乳製品および飲料ボトルのようなブロー成形品の製造に有利に使用することができる。
【0025】
実際、以下の特徴を有することが好ましい。
-スウェル比が、180%を超え、特に185%以上であり、その上限は全ての場合において220%であることが好ましい。
-AZKが、-30℃で、70kJ/m2以上、特に70~100kJ/m2である。
-ISO 527-2/1B/50に従って測定された引張弾性率(E-モジュラス)が1400MPa以上、より好ましくは1470MPa以上、特に1400~1800MPaまたは1470~1800MPaである。
-ゲル径が700mを超えるゲルの量/m2が1未満である。
-ゲル径が450mを超え2.5未満のゲル量/m2。
【0026】
テスト方法の詳細については、例を参照してください。
【0027】
ブロー成形容器の充填、密閉、および積み重ねの際の変形に耐えるためには、高い引張弾性率の値が必要である。
【0028】
ブロー成形プロセスは、一般的に、ポリエチレン組成物を、最初に押出機内にて180℃から250℃の温度範囲で可塑化し、次いで、ダイを介してブロー成形金型内に押し出し、そこで冷却することによって行われる。
【0029】
原則として、重合プロセスおよび使用される触媒の種類に必要な制限が存在することは知られていないが、本ポリエチレン組成物はチーグラー・ナッタ触媒の存在下での気相重合プロセスによって製造できることが判明した。
【0030】
チーグラー・ナッタ触媒は、元素周期表の1、2または13族の有機金属化合物と、元素周期表(新しい表記)の4~10族の遷移金属化合物との反応生成物から構成される。特に、遷移金属化合物は、Ti、V、Zr、Cr、Hfの化合物から選択されてもよく、MgCl2上に担持されていることが好ましい。
【0031】
特に好ましい触媒は、周期律表の1族、2族または13族の有機金属化合物と、MgCl2上に担持されたTi化合物からなる固体触媒成分との反応生成物である。
【0032】
好ましい有機金属化合物は、有機アルミニウム化合物である。
【0033】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のポリエチレン組成物は、チーグラー・ナッタ重合触媒、より好ましくはMgCl2上に担持されたチーグラー・ナッタ触媒、さらに好ましくは、以下の反応生成物を含むチーグラー・ナッタ触媒を用いて得ることができる。
a) MgCl2上に担持されたTi化合物と電子供与性化合物EDとを含む固体触媒成分、
b) 有機アルミニウム化合物、および任意に
c) 外部電子供与性化合物ED外。
【0034】
好ましくは、成分a)において、ED/Tiモル比は1.5~3.5の範囲であり、Mg/Tiモル比は5.5より高く、特に6~80である。
【0035】
好適なチタン化合物は、テトラハライドまたは式TiXn(または1)4-nであり、ここで、0(n(3であり、Xはハロゲン、好ましくは塩素であり、R1はC1-C10炭化水素基である。四塩化チタンが好ましい化合物である。
【0036】
ED化合物は、一般に、アルコール、ケトン、アミン、アミド、ニトリル、アルコキシシラン、脂肪族エーテルおよび脂肪族カルボン酸のエステルからなる群から選択される。
【0037】
ED化合物は、アミド、エステルおよびアルコキシシランからなる群から選択されることが好ましい。
【0038】
したがって、ED化合物として特に好ましいエステルを使用すると、優れた結果が得られる。エステルの具体例としては、C1~C20の脂肪族カルボン酸のアルキルエステル、特に、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチルなどの脂肪族モノカルボン酸のC1~C8アルキルエステルが挙げられる。さらに、脂肪族エーテル、特にテトラヒドロフラン(THF)またはジオキサンなどのC2~C20脂肪族エーテルも好ましい。
【0039】
この固体触媒成分では、MgCl2が基本担体であり、少量の追加担体を使用することが可能である。MgCl2は、このように使用してもよく、ハロゲン化化合物と反応させてMgCl2に変換することができる前駆体としてのMg化合物から得られる。特に好ましいのは、特許文献からチーグラー・ナッタ触媒の担体としてよく知られている活性型MgCl2の使用である。米国特許第4,298,718号および米国特許第4,495,338号は、チーグラー・ナッタ触媒におけるこれらの化合物の使用を最初に記載したものである。これらの特許から、オレフィン重合用触媒成分中の担体またはコ担体として使用される活性型のジハロゲン化マグネシウムは、不活性ハロゲン化物スペクトルのASTM-card参照に現れる最も強い回折線が弱められ、強度が広くなるX線スペクトルによって特徴付けられることが知られている。活性型の好ましいマグネシウムジハロゲン化物のX線スペクトルにおいて、前記最も強い線は強度が減少し、その最大強度が最も強い線に対して低角度の方に移動したハローに取って代わられる。
【0040】
本発明のポリエチレン組成物の製造に特に有用な触媒は、チタン化合物をMgCl2または前駆体Mg化合物と、任意に不活性媒体の存在下で接触させて、固体触媒成分a)を得て、MgCl2上に担持されたチタン化合物を含む中間生成物a')を製造し、次いで、この中間生成物a')を、単独またはそれを主成分とする他の化合物と混合し、任意に不活性媒体の存在下で反応混合物に添加するED化合物と接触させることによって得られるものである。
【0041】
「主成分」という用語は、接触混合物を取り扱うために使用される不活性溶媒または希釈剤を除いた他の可能な化合物に関して、前記ED化合物がモル量の点で主成分でなければならないことを意図している。ED処理された製品は、最終製品を回収するために適切な溶媒で洗浄されまる。必要に応じて、所望のED化合物による処理を1回以上繰り返すことができる。
【0042】
前述したように、出発必須Mg化合物としては、MgCl2の前駆体を用いることができる。これは、例えば、式MgR'2で表されるMg化合物から選択されてもよく、ここで、R'基は独立して任意に置換されたC1~C20炭化水素基、OR基、OCOR基、塩素であってもよく、ここでRは任意に置換されたC1-C20炭化水素基であり、R'基が塩素であることは明らかな付随条件である。また、MgCl2と好適なルイス塩基とのルイス付加物も前駆体として好適である。特定の好ましいクラスは、R''基がC1~C20炭化水素基、好ましくはC1~C10アルキル基であり、mが0.1~6、好ましくは0.5~3であるMgCl2(R''OH)m付加物によって構成される。より好ましくは0.5~2である。このタイプの付加物は一般に、付加物と混和しない不活性炭化水素の存在下、付加物の溶融温度(100~130℃)で撹拌条件下で操作し、アルコールとMgCl2を混合することによって得ることができる。次に、エマルションは急速に急冷され、それによって付加物の固化が球状粒子の形で引き起こされる。これらの球状付加物の代表的な製造方法は、例えば米国特許第4,469,648号、米国特許第4,399,054号、および国際公開第98/44009号に報告されている。球状化に使用可能な別の方法は、例えば米国特許第5,100,849号および第4,829,034号に記載されている噴霧冷却である。
【0043】
特に興味深いのは、より高いアルコール含有量を有する付加物を、アルコール含有量が上記の値に減少するまで窒素流中、50~150℃の温度で行われる熱的脱アルコールプロセスに供することによって得られる、mが0.15~1.7であるMgCl2・(EtOH)m付加物である。このタイプのプロセスは欧州特許第395083号に記載されている。
【0044】
脱アルコール化は、付加物をアルコール基と反応できる化合物と接触させることによって化学的に行うこともできる。
【0045】
一般に、これらの脱アルコール付加物は、0.15~2.5cm3/g、好ましくは0.25~1.5cm3/gの範囲の半径0.1(mまでの細孔による多孔度(水銀法で測定)も特徴とする。
【0046】
これらの付加物は、好ましくは四塩化チタンである上記のTiXn(OR1)4-n化合物(または場合によってはそれらの混合物)と反応する。Ti化合物との反応は、付加物をTiCl4(通常は低温)中に懸濁して行うことができる。混合物を80~130℃の温度範囲に加熱し、この温度で0.5~2時間保持する。チタン化合物を用いた処理は1回以上行ってもよい。これを2回繰り返すことが好ましい。上記のような電子供与体化合物の存在下でも行うことができる。プロセスの最後に、従来の方法(液体の沈降と除去、濾過、遠心分離など)による懸濁液の分離によって固体が回収され、溶媒で洗浄することができる。洗浄は通常、不活性炭化水素液体で行われるが、ハロゲン化炭化水素のように、より極性の高い(例えば、より高い誘電率を有する)溶媒を使用することもできる。
【0047】
上記したように、次いで中間生成物を、固体上に有効量の供与体を固定できる条件下でED化合物と接触させる。この方法は汎用性が高いため、使用する供与体の量は大きく異なる。一例として、中間生成物中のTi含有量に対して0.5~20、好ましくは1~10の範囲のモル比で使用することができる。厳密に必要というわけではないが、接触は通常、液体炭化水素などの液体媒体中で行われる。接触が起こる温度は、試薬の性質によって異なる。一般に-10~150℃の範囲、好ましくは0~120℃の範囲に含まれる。温度が一般的に適切な範囲内であっても、特定の試薬が分解または分解するような温度は避けるべきである。また、処理時間は、試薬の性状、温度、濃度等の他の条件に応じて変化させることができる。一般的な指示として、この接触ステップは、10min~10時間、より頻繁には0.5~5時間続くことができる。所望であれば、最終的な供与体含有量をさらに増加させるために、このステップを1回以上繰り返すことができる。このステップの最後に、従来の方法(液体の沈降と除去、濾過、遠心分離など)による懸濁液の分離によって固体が回収され、溶媒で洗浄することができる。洗浄は通常、不活性炭化水素液体で行われるが、ハロゲン化炭化水素または酸素含有炭化水素のような、より極性の高い溶媒(例えば、より高い誘電率を有する)を使用することもできる。
【0048】
前述したように、固体触媒成分を周期律表の第1族、第2族または第13族の有機金属化合物、特にアルミノアルキル化合物と反応させてオレフィン重合用触媒に転化する方法が知られている。
【0049】
アルキルアルミニウム化合物は、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリn-ヘキシルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム化合物から選択されることが好ましい。また、トリアルキルアルミニウム化合物に、AlEt2Cl、A12Et3Cl3などのアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、アルキルセスキ塩化アルミニウムを混合して使用してもよい。
【0050】
チーグラー・ナッタ触媒を製造するために任意に使用される外部電子供与性化合物ED外は、固体触媒成分a)に使用されるEDと同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、エーテル、エステル、アミン、ケトン、ニトリル、シランおよびこれらの混合物からなる群から選択される。特に、炭素数2~C20の脂肪族エーテル、特にテトラヒドロフラン、ジオキサン等の炭素数3~5の環状エーテルが好ましい。
【0051】
触媒は、公知の技術に従って、少量のポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンまたはポリエチレンを製造することによって予備重合することができる。予備重合は、電子供与性化合物EDを添加する前に行うことができるので、中間生成物a')を予備重合することにより行うことができる。固体触媒成分a)を予備重合してもよい。
【0052】
製造されるプレポリマーの量は、中間生成物a')または成分a)1g当たり500gまでであってもよい。中間生成物a')1g当たり0.5~20gが好ましい。
【0053】
予備重合は、上記のように外部電子供与体化合物と組み合わせて使用することもできる有機アルミニウム化合物などの適切な共触媒を使用して行われる。
【0054】
それは、0~80℃、好ましくは5~70℃の温度で、液相または気相中で行うことができる。
【0055】
中間生成物a')が上記のように予備重合に供される触媒が特に好ましい。
【0056】
上記の重合触媒を使用することにより、本発明のポリエチレン組成物は、相互に任意の順序で以下のステップを含むプロセスで製造できることが見出された。
a) 水素の存在下、気相反応器内で1種以上のコモノマーと共にエチレンを重合させるステップ、
b) 別の気相反応器内で、ステップa)よりも少ない量の水素の存在下、エチレンと1種以上のコモノマーとを共重合させるステップ。
ここで、気相反応器の少なくとも1つにおいて、成長したポリマー粒子は、急速流動または輸送条件下で、第1重合ゾーン(ライザー)を上向きに流れ、ライザーを出て、第2重合ゾーン(ライザー)に入り、重力によって第2重合ゾーンを下向きに流れ、ライザーを出て、ライザーに再導入されて、2つの重合ゾーン間のポリマー循環が確立される。
【0057】
第1重合ゾーン(ライザー)では、1種以上のα-オレフィン(エチレンおよびコモノマー)を含むガス混合物をポリマー粒子の輸送速度よりも速い速度で供給することにより、急速流動化条件が確立される。混合ガスの速度は、好ましくは0.5~15m/secの間であり、より好ましくは0.8~5m/secの間である。「輸送速度」および「高速流動化条件」という用語は当技術分野でよく知られている。その定義については、例えば、「D.Geldart、Gas Fluidisation Technology、155ページ以降、J.Wiley & Sons Ltd.、1986」を参照されたい。
【0058】
第2重合ゾーン(ダウンカマー)では、ポリマー粒子が重力により緻密に流動し、ポリマーの嵩密度に近い高い固体密度(反応器体積当たりのポリマー質量)が得られる。
【0059】
言い換えれば、ポリマーはプラグフロー(パックフローモード)でダウンカマーを通って垂直に下に流れるため、ポリマー粒子間には少量のガスのみが取り込まれる。
【0060】
このようなプロセスにより、ステップa)から、ステップb)から得られるエチレンコポリマーよりも低い分子量を有するエチレンポリマーを得ることが可能になる。
【0061】
好ましくは、エチレンを共重合して相対的に高分子量のエチレンコポリマーを製造する(ステップb)よりも上流でエチレンを共重合して相対的に低分子量のエチレンコポリマーを製造する(ステップa)。このため、ステップa)では、エチレン、水素、コモノマーおよび不活性ガスを含む混合ガスを、第1気相反応器、好ましくは気相流動層反応器に供給する。重合は、前述のチーグラー・ナッタ触媒の存在下で行われる。
【0062】
水素は、使用する特定の触媒に応じた量で供給され、いずれの場合でも、ステップa)で65g/10min以上のメルトフローインデックスMIEを有するエチレンポリマーを得るのに適した量で供給される。上記MIEの範囲を得るために、ステップa)において、水素/エチレンモル比が1~5であることを指示し、重合反応器内に存在するガスの全体積に対してエチレンモノマーの量が2~20体積%、好ましくは5~15体積%であることを特徴とする。供給混合物の残りの部分は、不活性ガスおよび1種以上のコモノマー(もしあれば)によって表される。重合反応で発生した熱を放散するのに必要な不活性ガスは、窒素または飽和炭化水素、最も好ましくはプロパンから選択することが容易である。
【0063】
ステップa)の反応器内の運転温度を50~120℃、好ましくは65~100℃とし、運転圧力を0.5~10MPa、好ましくは2.0~3.5MPaとする。
【0064】
好ましい実施形態では、ステップa)で得られるエチレンポリマーは、例えば直列接続された第1反応器および第2反応器において、プロセスに亘って生成される全エチレンポリマー重量の30~70%であることが好ましい。
【0065】
次に、ステップa)からのエチレンポリマーおよび同伴ガスは、固体/ガス分離工程を通過し、第1重合反応器からの混合ガスがステップb)の反応器(第2気相重合反応器)に流入するのを防止する。ガス混合物は、第1重合反応器に再循環することができ、分離されたエチレンポリマーは、ステップb)の反応器に供給される。ポリマーを第2反応器に供給するのに適した点は、固体濃度が特に低いダウンカマーとライザーとの間の接続部にあり、流動条件に悪影響を及ぼさない。
【0066】
ステップb)の動作温度は65~95℃の範囲であり、圧力は1.5~4.0MPaの範囲である。第2気相反応器は、エチレンを1種以上のコモノマーと共重合させることにより、比較的高分子量のエチレンコポリマーを製造することを意図している。また、最終的なエチレンポリマーの分子量分布を広げるために、ステップb)の反応器は、ライザー内とダウンカマー内でモノマーと水素の濃度条件を異ならせることで、容易に操作することができる。
【0067】
この目的のために、ステップb)において、ポリマー粒子を同伴してライザーから来るガス混合物がダウンカマーに入るのを部分的または完全に防止して、2つの異なるガス組成ゾーンを得ることができる。これは、ダウンカマーの適切な点、好ましくはその上部に配置されたラインを通してダウンカマーにガスおよび/または液体混合物を供給することによって達成できる。前記ガスおよび/または液体混合物は、ライザー内に存在するガス混合物とは異なる適切な組成を有していなければならない。ガスおよび/または液体混合物の流れは、ポリマー粒子の流れに逆流する上向きのガス流、特にその頂部が、ライザーからのポリマー粒子に同伴されたガス混合物の障壁となるように調整することができる。特に、低い水素含有量を有する混合物を供給して、ダウンカマー内でより高分子量のポリマー部分を生成することが有利である。1種以上のコモノマーは、必要に応じて、エチレン、プロパン、または他の不活性ガスと共に、ステップb)のダウンカマーに供給されてもよい。
【0068】
ステップb)のダウンカマー内の水素/エチレンモル比は、ダウンカマー内に存在するガスの全体積を基準として、エチレン濃度が0.5~15%、好ましくは0.5~10%、コモノマー濃度が0.01~0.5%の範囲内である0.01~0.2の範囲内であることを示す広い範囲で選択することができる。残りはプロパンまたは同様の不活性ガスである。非常に低いモル濃度の水素がダウンカマー中に存在するので、本発明のプロセスを実施することによって、比較的多量のコモノマーを高分子量ポリエチレン画分に結合させることが可能である。
【0069】
ダウンカマーから来るポリマー粒子は、ステップb)のライザーに再導入される。
【0070】
ポリマー粒子は反応し続け、それ以上コモノマーはライザーに供給されないため、前記コモノマーの濃度は、前記ライザー内に存在するガスの総体積に基づいて、0.005~0.3体積%の範囲に低下する。実際には、最終ポリエチレンの所望の密度を得るために、コモノマー含有量が制御される。ステップb)のライザーにおいて、水素/エチレンのモル比は0.05~1の範囲であり、エチレン濃度は、前記ライザー内に存在するガスの総体積に基づいて5~20体積%に含まれる。残りはプロパンまたはその他の不活性ガスである。
【0071】
上記の重合プロセスに関するさらなる詳細は、WO2005019280に記載されている。
実施例
【0072】
本明細書で提供される様々な実施形態、組成物および方法の実施例および利点は、以下の実施形態で開示される。これらの例は単に例示的なものであり、いかなる方法であっても、添付の特許請求の範囲を限定することを意図しているものではない。
【0073】
以下の分析方法を用いてポリマー組成物を特徴付ける。
【0074】
密度
【0075】
ISO 1183-1:2012に従って23℃で測定された。
【0076】
複素せん断粘度η0.02(eta(0.02))ERおよびET
0.02rad/sec、190℃の角度周波数で測定すると、以下のようになる。
サンプルを200℃、200バールで4分間溶融プレスし、厚さ1mmのプレートを作製した。直径25mmのディスク試料を打ち抜いてレオメータに挿入し、レオメータを190℃で予熱した。測定は、市販されている任意の回転レオメータを使用して行うことができる。ここでは、プレート-プレート形状のアントンパール社MCR301が使用されている。T=190℃で、5%一定の歪振幅で、いわゆる周波数走査(測定温度でサンプルを4分間アニールした後)を行い、628~0.02rad/sの励起周波数ωの範囲で材料の応力応答を測定し、解析した。レオロジー特性、すなわち貯蔵弾性率G'、損失弾性率G'、位相遅れδ(=arctan(G'/G'))および複素粘度η*を、印加周波数の関数として、η*(ω)=[G'(ω)2+G'(ω)2]1/2/ωとして、標準化されたベーシックソフトウェアを用いて計算した。後者は0.02rad/sの印加周波数ωでη0.02となる。
【0077】
ERは、R.ShroffおよびH.Mavridisの方法「ポリマー溶融物のレオロジーデータからの多分散性の新たな測定」、J.Applied Polymer Science 57(1995)1605(米国特許第5,534,472号の第10欄、20~30行目も参照)により決定される。計算方法は次のとおりである。
G''=5,000dyn/cm
2の値では、
【数2】
【0078】
当業者が認識するように、最低G''値が5,000dyn/cm2より大きい場合、ERの決定は外挿を伴う。次に計算されるER値は、対数G'対数G'プロットにおける非線形性の度合いに依存する。温度、プレート直径および周波数範囲は、レオメータの分解能内で、最低G''値が5000dyne/cm2に近いかまたはそれ未満となるように選択される。
【0079】
ETは、R.ShroffおよびH.Mavridisの方法「ポリマー溶融物のレオロジーデータからの多分散性の新たな測定」、J.Applied Polymer Science 57(1995)1605-1626によっても決定される。ETは、ポリマーの非常に高分子量の末端における多分散性を記述する、および/または非常に広い分子量分布を記述するための高感度定数である。ETが高くなるほど、ポリマー樹脂のレオロジーの幅が広がる。
【0080】
【0081】
HMWcopo指数
【0082】
ポリマーの結晶化および加工性の可能性を定量化するために、HMWcopo(高分子量コポリマー)インデックスが使用される。これは次の式で定義される。
【数4】
【0083】
加工が容易(溶融粘度が低い)およびポリマーの結晶化が速い可能性が高まるにつれて、この値は減少している。また、上記したように測定された0.02rad/sの周波数における溶融複合体せん断粘度η0.02に関連する高分子量部分の量、および定常結晶化の熱流最大時間tmaxDSCによって定量化されたように、結晶化を遅らせた混合コモノマーの量を記述し定量化することもできる。
【0084】
tmaxDSCは、示差走査熱量計TA InstrumentsQ2000を用いて、124℃の恒温等温条件下で測定した。サンプルを5~6mg秤量し、アルミ製DSCディスクに入れた。サンプルを200℃まで20K/minで加熱し、試験温度まで20K/minで冷却して熱履歴を除去した。その後、すぐに等温試験を開始し、結晶化が発生するまでの時間を記録した。ベンダーソフトウェア(TA Instruments)を使用して、結晶化の熱流最大値(ピーク値)までの時間間隔tmaxDSCを決定した。測定を3回繰り返し、平均値を分単位で計算した。これらの条件で120minを超えて結晶化が観察されない場合には、tmaxDSC=120minという値を用いてHMWcopo指数をさらに計算した。
【0085】
溶融粘度η0.02値にtmaxDSC値を乗算し、その積をファクタ100000(105)に正規化した。
【0086】
分子量分布測定
【0087】
モル質量分布およびそこから導き出される平均Mn、Mw、MzおよびMw/Mnの決定は、ISO 16014-1、-2、-4、2003年発行に記載された方法を使用する高温ゲル浸透クロマトグラフィーによって実行された。上記のISO規格に基づく具体的な条件は、次のとおりである。溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)、装置および溶液の温度:135℃、濃度検出器:TCBで使用可能なPolymerChar(Valencia, Paterna 46980, Spain)IR-4赤外線検出器。以下に直列に接続したプレカラムSHODEX UT-Gと分離カラムSHODEX UT 806M(3x)とSHODEX UT 807(昭和電工ヨーロッパGmbH、Konrad-Zuse-Platz 4、81829 ミュンヘン、ドイツ)を装着したWATERS Alliance 2000を用いた。
【0088】
溶媒を窒素下で真空蒸留し、0.025重量%の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールで安定化した。使用する流速は1ml/min、注射液は500L、ポリマー濃度は0.01%<濃度<0.05%w/w未満の範囲である。分子量の校正は、Polymer Laboratories(現在はAgilent Technologies、Herrenberger Str.130、71034 Boeblingen、Germany)の単分散ポリスチレン(PS)標準を580g/molから最大11,600,000g/molの範囲で使用し、さらにヘキサデカンを使用することによって確立された。
【0089】
次に、ユニバーサル校正法(Benoit H.,Rempp P. and Grubisic Z., & in J.Polymer Sci.,Phys.Ed.,5,753(1967)).により、ポリエチレン(PE)に校正曲線を適用した。ここで用いるMark-Houwingパラメータは、PS:kPS=0.000121dl/g、αPS=0.706、PE:kPE=0.000406dl/g、αPE=0.725に適用され、135℃のTCBで有効である。NTGPC_Control_V6.02.03とNTGPC_V6.4.24(hsGmbH,Hauptstra 36,D-55437 Ober-Hilbersheim,Germany)をそれぞれ使用してデータ記録、校正、計算を行った。
【0090】
メルトフローインデックス
【0091】
ISO 1133-12012-03に従って、190℃、所定の負荷で測定した。
【0092】
長鎖分岐指数
【0093】
LCB指数は、分子量が106g/molのときに測定された分岐因子g'に対応する。多角度レーザー散乱(MALLS)と組み合わせたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、高分子量での長鎖分岐の決定を可能にする分岐因子g'を測定した。MALLS(検出器Wyatt Dawn EOS,Wyatt Technology,Santa Barbara,CA)を用いて様々な角度の光散乱を分析することにより、GPCから溶出した各画分の回転半径を測定した(前述の通り流速は0.6ml/min、カラムには30M粒子が充填されている)。波長658nmの120mWレーザー源を用いた。比屈折率は0.104ml/gである。データ評価には、Wyatt ASTRA 4.7.3およびCORONA 1.4ソフトウェアを用いた。LCB指数は以下のように決定された。
【0094】
パラメータg'は、測定平均二乗回転半径と、同じ分子量を有する線状ポリマーの平均二乗回転半径との比である。線状分子はg'が1であることを示し、1未満の値はLCBの存在を示す。g'の値は、モルの関数である。重量Mは、次の式に従って計算される。
【数5】
<Rg
2>では、Mはモル重量Mによる回転半径の二乗平均平方根である。。
【0095】
異なる角度での光散乱を分析することにより、GPCから溶出した各画分の回転半径を測定した(前述したが、流量は0.6ml/min、カラムには30mの粒子が充填されている)。そのため、このMALLSセットアップからモル重量Mおよび<Rg2>サンプル,Mを測定し、測定されたM=106g/molでg'を定義することができる。<Rg2>線形参照,Mは、溶液中の線状ポリマーの回転半径と分子量との関係を確立して計算し(ジムおよびストークマイヤーWH1949)、上記と同じ装置および方法で線状PE基準を測定することにより確認した。
【0096】
同じプロトコルについては、次のドキュメントを参照する。
Zimm BH、Stockmayer WH (1949)分岐と環を含む鎖分子の寸法J 化学物理学17Rubinstein M.,Colby RH.(2003)、ポリマー物理学、オックスフォード大学出版社
【0097】
コモノマー含有量
【0098】
コモノマー含有量は、PE中のブテンまたはヘキセンのエチルまたはブチル側鎖を個別に測定するために化学量論モデルで校正されたBrukerのFT-IR分光器Tensor 27を用いて、ASTMD624898に従ってIRにより測定された。この結果は、重合プロセスの質量バランスから得られたコモノマーの推定含有量と比較した結果、一致していることがわかった。
【0099】
スウェル比
【0100】
市販の30/2/2/20ダイ(全長30mm、有効長さ=2mm、直径=2mm、L/D=2/2、および20°進入角)と、押出ストランドの厚さを測定する光学装置(GOTTFERT社のレーザーダイオード)を備えたキャピラリレオメータGOTTFERT Rheotester2000およびRheograph25を用いて、T=190℃で対象ポリマーのスウェル比を測定した。サンプルは、キャピラリバレル内にて190℃で6分間溶融され、1440s-1のダイせん断速度に相当するピストン速度で押し出された。
【0101】
ピストンがダイ入口から96mmの位置に達したとき、ダイ出口から150mmの距離で押出物を切断した(GOTTFERT社の自動切断装置により)。時間の関数として、ダイ出口から78mmの距離でレーザダイオードを用いて押出物径を測定した。最大値はD
押出物に対応する。スウェル比は、次の計算式に従って決定された。
【数6】
【0102】
ここで、Dダイは、レーザダイオードで測定されたダイ出口の対応する直径である。
【0103】
ノッチ付き引張衝撃試験AZK
【0104】
方法aに従って、ISO 8256:2004を用いてタイプ1ダブルノッチ試料で引張衝撃強度を測定した。ISO 1872-2要件(平均冷却速度15K/min、冷却段階での高圧)に従って作成された圧縮成形シートから試験片(4×10×80mm)を切断した。試験片は両側に45°V字状の切り込みで溝を入れた。深さは2±0.1mmであり、ノッチ傾斜角の曲率半径は1.0±0.05mmである。
【0105】
グリップ間の自由長は30±2mmである。測定前に、全ての試験片を-30℃の一定温度で2~3時間処理した。方法Aに従ったエネルギー補正を含む引張衝撃強さの測定手順はISO 8256に記載されている。
【0106】
ESCRベル試験
【0107】
環境応力亀裂耐性(ESCRベル試験)は、ASTM D1693:2013(方法B)およびDIN EN ISO 22088-3:2006に従って測定された。ISO 1872-2要件(平均冷却速度15K/min、冷却段階中の高圧)に従って準備された圧縮成形シートから10個の長方形の試験片(38x13x2mm)を切り出した。これらは、幅の広い面の1つの中心に、長手方向の軸に平行に深さ0.4mmまでかみそりで切り込みが入れられた。その後、特殊な曲げ加工装置で切り欠き面を上にしてU字状に曲げ加工する。曲げ後10min以内にU字状試料をガラス管に入れ、10%を充填した。4-ノニルフェニル-ポリエチレングリコール(ArkopalN100)の50℃水溶液をゴム栓で密封した。試料にひび割れがないかどうかは、初日に1時間ごとに目視検査され、その後、毎日、7日後には週1回(168時間ごと)検査された。得られた最終値は、ガラス管内10試験片の50%故障点(F50)である。
【0108】
フルノッチクリープ試験(FNCT)による耐環境応力亀裂性
【0109】
ポリマーサンプルの耐環境応力亀裂性は、国際規格ISO 16770:2004 (FNCT)に従って界面活性剤水溶液中で測定された。ポリマーサンプルから、圧縮成形された厚さ10mmのシートを作製した。正方形の断面を有するバー(10×10×100mm)に、応力方向に対して垂直にカミソリの刃を使用して4つの側面に切り込みを入れた。深さ1.6mmの鋭いノッチには、M.Fleissner著、Kunststoffe 77(1987)、pp.45に記載されているノッチング装置が使用された。
【0110】
適用される荷重は、張力を最初の靭帯面積で割って計算された。靭帯面積は、残りの面積=試料の総断面積からノッチ面積を差し引いたものである。FNCT試料の場合:10×10mm2-台形ノッチ面積の4倍=46.24mm2(破壊プロセス/亀裂伝播のための残りの断面)。試験片は、非イオン性界面活性剤ARKOPAL N100の2%(重量)水溶液中で、ISO 16770によって提案されている標準条件で、80℃で4MPaまたは50℃で6MPaの定荷重で負荷された。試験片が破壊されるまでの時間を検出した。
【0111】
シャルピーaCN
【0112】
破壊靱性の測定は、厚さ10mmの圧縮成形シートから切り出した10×10×80mmの試験棒を使用して内部法により測定した。これらのテストバーのうち6つには、FNCT用に前述したノッチング装置でカミソリの刃を使用して中央にノッチが付けられた。ノッチの深さは1.6mmであった。測定は実質的にISO 179-1に準拠したシャルピー測定法に従って、変更された試験片と変更された衝撃形状(サポート間の距離)を使用して実行された。
【0113】
すべての試験片は、2~3時間かけて測定温度-30℃に調整された。試験片は、ISO 179-1に従って、遅滞なく振り子衝撃試験機の支持体上に置かれた。サポート間の距離は60mmであった。2Jハンマーの落下がトリガーされ、落下角度は160°、振り子の長さは225mm、衝撃速度は2.93m/sに設定された。破壊靭性値はkJ/m2で表され、消費衝撃エネルギーとノッチ部の初期断面積aCNとの商で与えられる。ここで共通の意味の基礎として使用できるのは、完全破壊とヒンジ破壊の値のみである(ISO 179-1による提案を参照)。
【0114】
流延膜測定
【0115】
ゲルのフィルム測定は、スクリュー直径20mm、スクリュー長さ25D、スリットダイ幅150mmのOCS押出機タイプME202008-V3で実施した。キャストラインにはチルロールとワインダー(モデルOCS CR-9)が装備されている。光学機器には、OSCフィルムサーフェスアナライザカメラ、モデルFTA-100(フラッシュカメラシステム)、解像度26m×26mを搭載している。まず樹脂を1時間パージして押出条件を安定させた後、30min間検査と数値記録を行った。樹脂は220℃で約100秒の引取速度で押し出される。2.7m/minで厚さ50μmのフィルムを生成した。冷間圧延温度は70℃であった。
【0116】
表1に示すように、表面分析カメラを用いて上記の検査を行った結果、合計ゲルの含有量と直径700mを超えるゲルの含有量が得られた。
【0117】
E-モジュラス
【0118】
引張試験はISO 527-1:20 19/-2:20 12方法Bに従って通常の気候(相対湿度50%、23℃)で実施した。ISO 293:2004およびISO 17855-2:2016の要件に従って作成された圧縮成形シートからISO 20753:2018 タイプA2(=1B ISO タイプ527-2)試験片(h=4mm、b1=10mm、b2=20mm、l3≧150mm、L0=50mm)をISO 2818:2018に従って切断した(加圧および冷却段階での平均冷却速度は15K/minおよび10MPa)。切り出されたタイプ1B 試験片は、ISO 291:2008 に従って標準気候条件下で16時間以上コンディショニングされ、その後、ISO 527-2の指示に従ってZwick Allround Z010 Linieで測定された。E-モジュラスは、1mm/分の測定速度で測定された。
【0119】
-プロセス設定
【0120】
重合プロセスは、
図1に示すように、2つの直列に接続された気相反応器からなるプラントにて連続条件下で実行された。
【0121】
重合触媒は以下のように調製された。
【0122】
触媒成分の調製手順
【0123】
約3モルのアルコールを含む塩化マグネシウムとアルコール付加物を、米国特許第4,399,054号の実施例2に記載の方法に従って調製したが、10000RPMではなく2000RPMで作業した。この付加物は、アルコールの重量含有量が25%に達するまで、窒素流下で50~150℃の温度範囲にわたって熱処理を受けた。
【0124】
窒素でパージした2Lの四つ口丸底フラスコに、1LのTiCl4を0℃で導入した。次に、このようにして調製されたエタノール25%含有球状MgCl2/EtOH付加物70gを、同温度で撹拌しながら添加した。2時間以内に140℃まで温度を上げ、120min間保持した。その後、撹拌を停止し、固形物を沈殿させ、上澄み液をサイフォンで吸引した。その後、固形残留物を80℃でヘプタンを用いて1回洗浄し、25℃でヘキサンを用いて5回洗浄し、30℃で真空乾燥した。
【0125】
撹拌機を備えた260cm3ガラス反応器に、20℃で351.5cm3ヘキサンを導入すると同時に、20℃で7gの触媒成分を撹拌した。内部温度を一定に保ち、5.6cm3ヘキサン中のトリnオクチルアルミニウム(TNOA)(約370g/l)と一定量のシクロヘキシルメチル-ジメトキシシラン(CMMS)(例えば、TNOA/CMMSに対して50,aのモル比)を反応器にゆっくりと導入し、温度を10℃に下げた。10min間撹拌した後、4時間かけて、同じ温度で10gのプロピレンを慎重に反応器に導入した。反応器内でのプロピレン消費量をモニターし、1gポリマー/g触媒の理論転化率に達したと判断した時点で重合を停止した。その後、全内容物をろ過し、30℃(50g/l)で3回ヘキサン洗浄した。乾燥後、得られた予備重合触媒(A)を分析したところ、初期触媒1g当たりポリプロピレン1.05g、Ti 2.7%、Mg 8.94%、Al 0.1%を含有していた。
【0126】
予備重合触媒上の内部電子供与体担持
【0127】
このようにして調製した約42gの固体予備重合触媒を窒素ガスでパージしたガラス反応器に入れ、50℃で0.8Lのヘキサンでスラリー化した。
【0128】
次に、Mg予備重合触媒と有機ルイス塩基とのモル比が1.7になるように、酢酸エチルを慎重に(10min以内に)滴下した。
【0129】
内部温度を50℃に保ちながら、スラリーを2時間撹拌し続けた。
【0130】
その後、撹拌を停止し、固体を沈降させた。最終触媒を回収して乾燥する前に、室温でヘキサン洗浄を1回行った。
【0131】
実施例1
【0132】
重合
【0133】
このように調製した固体触媒11g/hを液体プロパン1kg/hを用いて第1撹拌予備接触容器に添加し、電子供与体/Tiのモル供給比を8とし、さらにトリイソブチルアルミニウム(TIBA)とジエチルアルミニウム塩化物(DEAC)を添加した。トリブチルアルミニウムと塩化ジエチルアルミニウムとの重量比は7:1である。アルキルアルミニウム(TIBA+DEAC)と固体触媒の比率は5:1である。最初の予備接触容器は50℃に保持され、平均滞在時間は30minであった。第1予備接触容器の触媒懸濁液は、平均滞留時間30minで運転され、50℃に保持された第2撹拌予備接触容器に連続的に移送された。その後、触媒懸濁液は、ライン(10)を介して流動層反応器(FBR)(1)に連続的に移送された。
【0134】
第1反応器では、分子量調整剤としてH2を用い、不活性希釈剤としてプロパンの存在下でエチレンを重合する。第1反応器にはライン9を介してエチレン49kg/hr、水素210g/hrが供給される。第1反応器にはコモノマーは供給されない。
【0135】
重合は温度80℃、圧力2.9MPaで行った。第1反応器で得られたポリマーは、ライン11を介して不連続に排出され、ガスから気固分離器12に分離され、ライン14を介して第2気相反応器に再導入された。
【0136】
第1反応器で製造されたポリマーは、メルトインデックスMIEが約87g/10minであり、密度が0.969kg/dm3である。
【0137】
第2反応器は約89℃の重合条件と2.5MPaの圧力で操作した。ライザーの内径は200mm、長さは19mであった。ダウンカマーの全長は18mで、上半分は5mに分割され内径は300mm、下半分は13mに分割され内径は150mmとなっている。最終的なエチレンポリマーの分子量分布を広げるために、ライザー32とライザー33内で異なるモノマーおよび水素濃度条件を設定して第2反応器を運転した。これは、ライン52を介して、330kg/hの液体流(液体バリア)をダウンカマー33の上部に供給することによって達成された。前記液体流は、ライザー内に存在するガス混合物の組成とは異なる組成を有する。ライザー内のモノマーおよび水素の異なる濃度、第2の反応器のダウンカマー、および液体バリアの組成を表1に示す。ライン52の液体流は、52℃、2.5MPaの運転条件で凝縮器49内の凝縮工程からのものであり、その一部は冷却され、部分的に凝縮された。図示のように、凝縮器49の下流側に分離容器、ポンプが順次配置されている。ダウンカマーへのモノマーは3つの位置で供給された(ライン46)。バリアの直下に位置する投入点1では、12kg/hのエチレンと0.10kg/hの1-ヘキセンが導入された。投入点2.3m下に位置する投入点2では、2kg/hのエチレンが導入された。投入点4m下に位置する投入点3では、2kg/hのエチレンが導入された。3つの投入点のそれぞれに、流れ52から採取した液体をエチレンと1:1の比でさらに供給した。プロパン5kg/h、エチレン30kg/h、水素35g/hをライン45を介して再循環系に供給した。
【0138】
最終ポリマーはライン54を介して不連続的に排出された。
【0139】
重合条件のその他の詳細を表1に示す。
【0140】
第2反応器での重合プロセスは、比較的高分子量のポリエチレン画分を生成した。
【0141】
表2に、最終製品の特性を示す。最終製品のメルトインデックスは、第1反応器で製造されたエチレン樹脂に比べて低下していることがわかり、第2反応器では高分子量分が形成されていることがわかった。
【0142】
第1反応器は、第1および第2反応器によって製造された最終ポリエチレン樹脂の総量の約52重量%(分割重量%)を製造した。
【0143】
コモノマー(ヘキセン-1)の量は約0.1重量%である。
【0144】
比較例1
【0145】
重合
【0146】
第1撹拌予備接触容器に、上記した固体触媒10g/hを液体プロパン1kg/hを用いて添加し、電子供与体/Tiのモル供給比を8とし、さらにトリイソブチルアルミニウム(TIBA)とジエチルアルミニウム塩化物(DEAC)を添加した。トリブチルアルミニウムと塩化ジエチルアルミニウムとの重量比は7:1である。アルキルアルミニウム(TIBA+DEAC)と固体触媒の比率は5:1である。最初の予備接触容器は50℃に保持され、平均滞在時間は30minであった。第1予備接触容器の触媒懸濁液は、平均滞留時間30minで運転され、50℃に保持された第2撹拌予備接触容器に連続的に移送された。その後、触媒懸濁液は、ライン(10)を介して流動層反応器(FBR)(1)に連続的に移送された。
【0147】
第1反応器では、分子量調整剤としてH2を用い、不活性希釈剤としてプロパンの存在下でエチレンを重合する。第1反応器にはライン9を介して50kg/hのエチレンと215g/hの水素ガスが供給される。第1反応器にはコモノマーは供給されない。
【0148】
重合は温度80℃、圧力2.9MPaで行った。第1反応器で得られたポリマーは、ライン11を介して不連続的に排出され、ガスから気固分離器12に分離され、ライン14を介して第2気相反応器に再導入された。
【0149】
第1反応器で製造されたポリマーは、メルトインデックスMIEが約71g/10minであり、密度が0.967kg/dm3である。
【0150】
第2反応器は約85℃の重合条件と2.5MPaの圧力で操作された。ライザーの内径は200mm、長さは19mであった。ダウンカマーの全長は18mで、上半分は5mに分割され内径は300mm、下半分は13mに分割され内径は150mmとなっている。最終的なエチレンポリマーの分子量分布を広げるために、ライザー32とライザー33内で異なるモノマーおよび水素濃度条件を設定して第2反応器を運転した。これは、ライン52を介して、330kg/hの液体流(液体バリア)をダウンカマー33の上部に供給することによって達成された。前記液体流は、ライザー内に存在するガス混合物の組成とは異なる組成を有する。ライザー内のモノマーおよび水素の異なる濃度、第2の反応器のダウンカマー、および液体バリアの組成を表1に示す。ライン52の液体流は、51℃および2.5MPaの作動条件での凝縮器49内の凝縮工程から得られ、そこで再循環流の一部が冷却され、部分的に凝縮される。図示のように、凝縮器49の下流側に分離容器、ポンプが順次配置されている。ダウンカマーへのモノマーは3つの位置で供給された(ライン46)。バリアの直下に位置する投入点1では、10kg/hのエチレンと0.45kg/hの1-ヘキセンが導入された。投入点2.3m下に位置する投入点2では、4kg/hのエチレンが導入された。投入点の4m下にある投入点3では、4kg/hのエチレンが導入された。3つの投入点のそれぞれに、流れ52から採取した液体をエチレンと1:1の比でさらに供給した。プロパン5kg/h、エチレン32kg/h、水素35g/hをライン45を介して再循環系に供給した。
【0151】
最終ポリマーはライン54を介して不連続的に排出された。
【0152】
重合条件のその他の詳細を表1に示す。
【0153】
第2反応器での重合プロセスにより、比較的高分子量のポリエチレン画分が生成された。
【0154】
表2に、最終製品の特性を示す。最終製品のメルトインデックスは、第1反応器で製造されたエチレン樹脂に比べて低下していることがわかり、第2反応器では高分子量分が形成されていることがわかった。
【0155】
第1反応器は、第1および第2反応器で製造された最終ポリエチレン樹脂の総量の約49重量%(分割重量%)を製造した。
【0156】
コモノマー(ヘキセン-1)の量は約0.4重量%である。
【0157】
比較例2
【0158】
本比較例のポリマーは、ジグラー触媒の存在下、ブテン-1をコモノマーとしてスラリー法で製造されたポリエチレン組成物であり、Dowが販売しているもので、商標は35060E XG21081404である。
【表1】
【表2】
メモ:C
2H
4=エチレン;C
6H
12=ヘキセン;C
4H
8=ブテン;*2% Arkopal N100水溶液
【国際調査報告】