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特表2024-525615流動接触分解反応器及び再生器を含むプロセスの熱統合
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  • 特表-流動接触分解反応器及び再生器を含むプロセスの熱統合 図1
  • 特表-流動接触分解反応器及び再生器を含むプロセスの熱統合 図2
  • 特表-流動接触分解反応器及び再生器を含むプロセスの熱統合 図3
  • 特表-流動接触分解反応器及び再生器を含むプロセスの熱統合 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】流動接触分解反応器及び再生器を含むプロセスの熱統合
(51)【国際特許分類】
   C10G 11/18 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
C10G11/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500505
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2022068946
(87)【国際公開番号】W WO2023280995
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/219,926
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ,ロバート・アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA08
4H129DA04
4H129GA03
4H129KA02
4H129NA43
4H129NA45
(57)【要約】
本発明は、2つ以上の工業プロセスにわたる熱統合プロセスを提供する。当該熱統合プロセスは、第1のプロセスにおいて、炭化水素供給材料が反応器ライザーの上流部分で再生触媒と接触させられる流動触媒反応器内で、炭化水素供給材料及び炭化水素供給材料と混合された触媒を、反応器を通過させることによって炭化水素供給材料を転化し、炭素質堆積物の堆積によって触媒を失活させることと、転化した炭化水素供給材料から失活した触媒を分離することと、失活した触媒を再生容器に送り、再生容器に導入された再生媒体による発熱プロセス条件下で、失活した触媒から堆積物を除去することによって触媒を再生及び加熱し、再生された高温の触媒を反応器の上流部分に送ることと、を含み、第2のプロセスのための化学原料は、当該化学原料及び第2のプロセスに熱を提供するために、再生容器と直接接触する熱交換システムを通過させられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の工業プロセスにわたる熱統合プロセスであって、
第1のプロセスにおいて、炭化水素供給材料が反応器の上流部分で再生触媒と接触させられる流動触媒反応器内で、炭化水素供給材料及び前記炭化水素供給材料と混合された前記触媒を、前記反応器を通過させることによって前記炭化水素供給材料を転化し、炭素質堆積物の堆積によって前記触媒を失活することと、
前記転化した炭化水素供給材料から前記失活した触媒を分離することと、
前記失活した触媒を再生容器に送り、前記再生容器に導入された再生媒体による発熱プロセス条件下で、前記失活した触媒から堆積物を除去することによって前記触媒を再生及び加熱し、前記再生された高温の触媒を前記反応器の前記上流部分に送ることと、を含み、
第2のプロセスのための化学原料は、前記化学原料及び前記第2のプロセスに熱を提供するために、前記再生容器と直接接触する熱交換システムを通過させられる、熱統合プロセス。
【請求項2】
前記第1のプロセスは流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking、FCC)プロセスを含む、請求項1に記載の熱統合プロセス。
【請求項3】
前記第1のプロセスはプロパン脱水素及びイソブタン脱水素から選択されるプロセスを含む、請求項1に記載の熱統合プロセス。
【請求項4】
前記熱交換システムは前記再生容器内を通過する管状熱交換器を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱統合プロセス。
【請求項5】
前記熱交換システムは前記再生容器の外側と直接接触しており、好ましくは、前記熱交換システムは触媒冷却器システムの一部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱統合プロセス。
【請求項6】
前記化学原料はエチレンクラッカー用の原料である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱統合プロセス。
【請求項7】
前記化学原料はプロパン脱水素プロセス又はブタン脱水素プロセスから選択される脱水素プロセスのための原料である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱統合プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素を転化するための2つ以上の工業プロセスにわたる熱統合のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
精油所の生産量は、その製品に対する市場需要に応じて常に変動してきた。輸送燃料と同様に、主要な汎用化学製品は、長い間、精油所の製品計画の一部を形成してきた。例えば、オレフィン及び芳香族生成物は、例えば、米国特許出願公開第2019/0256786号及び米国特許出願公開第2020/0318021号に記載されているように、直接的に、又は精油所供給原料に関連する下流処理ユニットにおいて商業的に製造されてきた。
【0003】
エネルギー需要の変動に伴い化学薬品の生産をより柔軟に精油所内に組み込む能力によって、精油所の所有者は高められた価値を享受する。広沸点の原料から炭化水素留分を気化又は加熱する技術が、この価値を実現する方法として研究されてきた。そのような技術の例は、米国特許出願公開第2016/348963号、米国特許出願公開第2015/197695号、米国特許出願公開第2010/236982号、米国特許第4450311号、英国特許出願第8625970号、及び米国特許第4356082号に記載されている。しかしながら、化学生産ユニットのための原料を生産するために必要とされる高い入熱を、多くの場合、段階的な方式で提供することが課題である。
【0004】
流動床触媒ユニットは多くのシステムで知られている。精油所システム内で、流動床接触分解(FCC)ユニットは、一般に、ライザー反応容器及び再生容器を含む。ライザー反応容器において、炭化水素供給材料は触媒と混合されて、プロセス温度で分解される。次いで、炭素質沈着物を含有する使用済み触媒は、再生容器に送られ、そこで、使用済み触媒を空気などの再生媒体と接触しながら、当該炭素質沈着物が発熱反応で除去される。
【0005】
FCCユニットにおいて生産された熱エネルギーを再利用するための多くの方法が、当該技術分野において記載されている。例えば、国際公開第2015/001214号は、FCCシステムからのプロセス流体を用いて熱交換システムにおいて水を加熱するプロセスを開示している。触媒再生器との熱交換によって蒸気を生産するための同様の方法は、米国特許出願公開第2015/197695号及び国際公開第2010/107541号にも記載されている。電力を発生させるための再生器燃焼排ガスの燃焼も、当該技術分野において、例えば、米国特許出願公開第2009/035193号に記載されている。
【発明の概要】
【0006】
蒸気及び電力は工業プロセスにおける貴重な副産物であるが、熱エネルギーを保存するためのより効率的なシステムが開発されることが望ましい。更に、蒸気は、それが使用可能な温度範囲に制限されるので、化学生産ユニットのための原料を生産するために必要とされる高い熱入力には適していない。エネルギー効率の良い方法でより柔軟な製品計画を提供するための精製プロセス及び化学プロセスの更なる開発及び統合は、非常に望ましい目標であり続けている。
【0007】
本発明は、2つ以上の工業プロセスにわたる熱統合プロセスを提供し、当該熱統合プロセスは、
第1のプロセスにおいて、炭化水素供給材料が反応器の上流部分で再生触媒と接触させられる流動触媒反応器内で、炭化水素供給材料及び炭化水素供給材料と混合された触媒を、反応器の下流部分を通過させることによって炭化水素供給材料を転化し、炭素質堆積物の堆積によって触媒を失活させ、転化した炭化水素供給材料から失活した触媒を分離することと、
失活した触媒を再生容器に送り、再生容器に導入された再生媒体による発熱プロセス条件下で、失活した触媒から堆積物を除去することによって触媒を再生及び加熱し、再生された高温の触媒を反応器の上流部分に送ることと、を含み、
第2のプロセスのための化学原料は、当該化学原料及び第2のプロセスに熱を提供するために、当該再生容器と直接接触する熱交換システムを通過させられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1のプロセスとして好適なFCCプロセスの概略図である。
図2】本発明の第1のプロセスとして好適な脱水素プロセスの概略図である。
図3】本発明の実施形態の概略図である。
図4】本発明の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、化学生産プロセスで使用するための供給原料を直接加熱するために触媒再生容器内で発生した熱を使用すれば、2つ以上の工業プロセスの組み合わせにわたって高い効率を得ることができると判断した。このプロセスは、熱から蒸気を経て再び熱に戻る変換に関連するエネルギー損失を回避するという利点を有する。それはまた、蒸気生産で許容されるよりも高い温度での熱伝送を可能にする。複数プロセスの統合及びプロセス間の熱交換は、エネルギー消費を低減しながら、製品計画の柔軟性を高める。
【0010】
本発明は、第1のプロセスが、流動床ライザー反応器における炭化水素供給材料の触媒転化に続いて触媒再生反応器における発熱反応中に触媒回収することを含み、第2のプロセスが高温の化学原料を必要とする2つ以上の工業プロセスの、任意の組み合わせにおいて適用されてもよい。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、当該第1のプロセスは流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking、FCC)プロセスを含む。したがって、この実施形態では、本方法は、炭化水素供給材料を反応器の上流ライザー部分で再生触媒と接触させる流動触媒床反応器において、炭化水素供給材料及び炭化水素供給材料と混合された触媒を、反応器の下流部分を通過させることによって炭化水素供給材料を分解し、炭素質堆積物の堆積によって触媒を不活性化することを含む。
【0012】
FCCプロセスは、比較的高沸点の炭化水素を、暖房用オイル又はガソリン(又はより軽質)の範囲で沸騰する、より軽質の炭化水素に転化するために用いられる。本方法では、炭化水素供給材料を、炭化水素の転化に好適な条件下で、流動触媒床中において粒状分解触媒と接触させる。ライザー反応器内では、反応器を通じて、ガス状流動媒体が微細に分割された触媒粒子を輸送し、そこで炭化水素供給材料が反応器に注入される際に触媒粒子は炭化水素供給材料と接触する。次に、炭化水素供給材料と接触させた流動触媒粒子流は注入ゾーンの下流を通り、炭化水素供給材料は触媒粒子の存在下で分解生成物に転化する。
【0013】
反応器の下流端で、触媒粒子は分解生成物から分離される。分離された分解生成物は下流の分留システムに送られる。使用済み触媒粒子は典型的には炭素質コークス堆積物を含有する。使用済み触媒は、剥離部を通過し、その後再生器に送られ、そこで、分解反応中に使用済み触媒上に堆積したコークスが酸素含有ガスとの反応によって燃焼除去され、使用済み触媒が再生される。次いで、得られた再生触媒を反応器中で再使用する。
【0014】
酸素含有ガスは1つ以上の酸化剤を含む。本明細書で使用される場合、「酸化剤」は、触媒の表面上のコークスを酸化するのに好適である任意の化合物又は要素を指すことができる。そのような酸化剤としては、酸素富化空気(酸素濃度が21体積%よりも高い空気)、酸素、酸素不足空気(酸素濃度が21体積%よりも低いを空気)、又はそれらの任意の組み合わせ若しくは混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
本発明の他の実施形態では、当該第1のプロセスは、反応器及び再生器システムにおいて行われる炭化水素を転化するための異なるプロセスを含んでもよい。このようなプロセスとしては、プロパン脱水素及びイソブタン脱水素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
再生器における第1のプロセスの触媒再生部分は発熱性であり、過剰な熱を生産する。本発明は、この熱を効率的に直接使用して、第2のプロセスで使用される化学原料に必要な熱を提供する。化学原料は再生容器と直接接触する熱交換システムを通過する。当該熱交換システムは、好適には、再生容器の内側又は外側を通るように構成可能な管状熱交換器を備える。
【0017】
一実施形態において、熱交換システムは再生容器内を通過する管状熱交換器を備える。熱交換システムは当技術分野で公知であり、任意の適切なシステムを本明細書で使用してもよい。再生器内部の流動触媒粒子床を通って延びる冷却コイル又は管を利用する熱交換器は、米国特許第4009121号、米国特許第4220622号、米国特許第4388218号、及び米国特許第4343634号に例示的に示されている。このようなシステムは、再生器内を通過する原料との効果的な熱接触を可能にする。しかしながら、内部熱交換器は改装及び保守が困難である。
【0018】
更なる実施形態において、熱交換システムは再生容器の外側と直接接触している。例えば、熱交換システムは、再生容器の一部である触媒冷却器システムの一部を形成してもよい。
【0019】
触媒冷却器は、例えば、米国特許出願公開第2016/0169506号及び米国特許第5209287号に記載されている。触媒冷却器は、典型的には、再生容器の壁から延びるシェルアンドチューブ型熱交換器を含む。触媒は、再生容器から流れ、触媒冷却器内の熱交換システムによって冷却され、再生容器に戻される。典型的には、触媒冷却器はまた、触媒粒子を輸送するための流動化ガス源を含む。
【0020】
本発明のこの実施形態では、化学原料は再生容器の触媒冷却器部分の熱交換システムを通過する。この実施形態は、既存の原子炉システムへの改装が容易であるという更なる利点を有する。
【0021】
熱交換システムを通過する化学原料は、工業プロセスにおける汎用化学物質又は特殊化学物質を生産するための任意の適切な原料である。当該汎用化学物質又は特殊化学物質としては、エチレン、プロピレン及びブチレンなどのオレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
化学原料は、精油所設備内で容易に入手可能な原料であることが好ましい。例えば、化学原料は、原油、原油留分、天然ガス由来の生成物、及び精製プロセスからの生成物を含んでもよい。
【0023】
1つの好ましい実施形態において、化学原料はエチレンクラッカーのための原料である。したがって、化学原料は、エタン、プロパン、及びより高分子量のアルカンなどのアルカン、並びにガソリンの軽質留分を含む。そのような原料は、エチレンクラッカーのための化学原料の熱要件が非常に高く、段階的な様式で適切に提供されるので、本発明の熱統合プロセスに特に適切である。
【0024】
別の好ましい実施形態では、化学原料はプロパン脱水素プロセス又はブタン脱水素プロセスなどの脱水素プロセスのための原料である。
【0025】
化学原料に熱を提供するために、当該化学原料は再生容器と直接接触する熱交換システムを通過した後、第2のプロセス、すなわち化学変換が起こるように、更なる反応器に直接送られる。
【0026】
これらの実施形態は、例示的であるが非限定的な図を参照して以下で更に説明される。
図面の詳細な説明
【0027】
図1は、反応器1及び再生器2を含む流動接触分解反応器/再生器システムの概略図である。
【0028】
炭化水素供給材料3は、反応器の上流部分、この場合はライザー反応器4に注入され、そこで供給システムを介して供給される再生触媒と接触する。混合された触媒及び炭化水素供給材料は、ライザー反応器を通過し、炭化水素を分解し、触媒を不活性化する。
【0029】
反応器1の下流部分6において、失活した触媒及び分解生成物が分離される。使用済み触媒は、反応器の剥離部8を通過し、次いで、更なる供給システム9を通過して再生容器2に送られる。酸素含有ガス10はガス分配システム11を介して供給される。分解反応中に使用済み触媒上に堆積したコークスは燃焼除去され、再生された触媒は再生容器2の底部から再使用のために供給システム5を介して送られる。
【0030】
図2は、脱水素反応で使用するための同様の反応器システムを示す。
【0031】
脱水素化炭水素供給材料12は分配システム14を介して脱水素反応器13の上流部分に供給される。触媒は供給システム15を介して反応器13に供給される。脱水素化炭水素供給材料12は触媒と接触して転化すると、同時に触媒を失活させる。失活した触媒及び炭化水素生成物は脱水素反応器16の下流部分で分離される。失活した触媒はセクション供給システム17を通って再生容器2に送られる。酸素含有ガス10はガス分配システム11を介して供給される。脱水素反応中に使用済み触媒上に堆積したコークスは燃焼除去され、再生された触媒は再生容器2の底部から供給システム15を介して再使用のために送られる。
【0032】
図1及び図2に示される実施形態の両方において、熱は再生容器2内で生産される。本発明において、当該熱は、化学原料に熱を提供するために、当該化学原料が再生容器と直接接触する熱交換システムを通過する熱統合プロセスにおいて使用される。
【0033】
図3は、本発明の一実施形態の概略図である。図3は、反応器1と、再生器2と、2つの容器間の触媒流を可能にする供給システム5、9と、を含む簡略化された反応器システムを示す。化学原料18は、再生容器内を通過する管状熱交換器を含む熱交換システム19に供給される。
【0034】
図4は、化学原料18が再生容器の外側と直接接触している熱交換システムに提供される実施形態を示す。この実施形態では、熱交換システムは再生容器の一部である触媒冷却器システム20の一部を形成する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】