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特表2024-525622エッジローラ形状の違いを緩和する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】エッジローラ形状の違いを緩和する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/06 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
C03B17/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500523
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 US2022034873
(87)【国際公開番号】W WO2023283065
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/220,110
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】マストラゴスティーノ リチャード マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リズヴィ サイード ジーシャン
(57)【要約】
ガラス製造方法が、溶融材料からガラスリボンを形成することを含む。ガラスリボンは、第1の表面及び第2の表面を含む。方法は、第1の表面を第1のエッジローラに接触させ、第2の表面を第2のエッジローラに接触させることと、第1のエッジローラを第1の回転速度で回転させ、第2のエッジローラを第2の回転速度で回転させることと、を含む。方法は、第1のエッジローラに付与されるトルクを表す第1のトルク信号、及び第2のエッジローラに付与される第2のトルクを表す第2のトルク信号を生成することを含む。方法は、第1のトルク信号及び第2のトルク信号のトルク和信号の変動を打ち消すように第1の回転速度及び第2の回転速度を時間依存的に変調することも含む。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製造方法であって、
所定量の溶融材料から、第1の表面及び第2の表面を含むガラスリボンを形成することと、
前記第1の表面を第1のエッジローラに接触させ、前記第2の表面を第2のエッジローラに接触させることと、
前記第1のエッジローラを第1の回転速度で回転させ、前記第2のエッジローラを第2の回転速度で回転させることと、
前記第1のエッジローラに付与されるトルクを表す第1のトルク信号、及び前記第2のエッジローラに付与される第2のトルクを表す第2のトルク信号を生成することと、
前記第1のトルク信号及び前記第2のトルク信号のトルク和信号を生成することと、
前記トルク和信号の変動を打ち消すように前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度を時間依存的に変調することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度を時間依存的に変調することは、以下の方程式:
ωT=A*sin(θ1,2+Φ)+ωN
を使用して目標回転速度ωTを計算することにより、前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度を周期的に変調することを含み、
式中、Aは変調振幅であり、Θ1、2は前記第1のエッジローラ又は前記第2のエッジローラの角度位置であり、Φは変調位相であり、ωNは前記第1のエッジローラ及び前記第2のエッジローラの目標回転速度である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記角度位置を表すロール位置信号と前記トルク和信号との間の時間遅延を決定し、
前記時間遅延を位相角に変換する、
ことによって前記変調位相を決定することをさらに含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記変調位相を決定する前に、上限カットオフ周波数及び下限カットオフ周波数を有するバンドパスフィルタを使用して前記トルク和信号をフィルタ処理することをさらに含み、ωNは、前記上限カットオフ周波数と前記下限カットオフ周波数との間にある、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のエッジローラ及び前記第2のエッジローラの下流における前記ガラスリボンの厚みを感知することと、
前記ガラスリボンの厚みに基づいて前記変調振幅Aを決定することと、
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記変調振幅Aを決定することは、
前記変調振幅Aの第1の値を使用して、前記第1の角速度及び前記第2の角速度を周期的に変調することと、
前記第1の値の結果、前記ガラスリボンの厚み変動が減少したかどうかを判定することと、
前記第1の値の結果、前記ガラスリボンの厚み変動が減少した場合、前記厚み変動の減少が観察されなくなるまで前記変調振幅Aを増加させることと、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のエッジローラ及び前記第2のエッジローラは、前記第1のエッジローラ及び前記第2のエッジローラの回転と共に前記第1のエッジローラと前記第2のエッジローラとの間の分離距離が周期的に変化するような異なる断面形状を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記トルク和信号は、該トルク和信号が平均トルク値よりも大きい時に前記分離距離が平均距離よりも大きくなるように前記分離距離の代用として機能する、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記トルク和信号の変化を打ち消すように前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度を変調することは、
前記分離距離が増加している期間中に、前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度の少なくとも一方を低下させることと、
前記分離距離が減少している期間中に、前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度の少なくとも一方を上昇させることと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記トルク和信号の変化を打ち消すように前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度を変調することは、前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度が変調されない時に達成される前記ガラスリボンの移動窓厚み範囲を減少させる、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ガラス製造方法であって、
所定量の溶融材料から、第1の表面及び第2の表面を含むガラスリボンを形成するステップと、
前記第1の表面を第1のエッジローラに接触させ、前記第2の表面を第2のエッジローラに接触させるステップであって、前記第1のエッジローラ及び前記第2のエッジローラは、前記第1のエッジローラ及び前記第2のエッジローラが回転する速度に応じて前記第1のエッジローラと前記第2のエッジローラとの間の分離距離が周期的に変化するような異なる断面形状を有する、ステップと、
前記第1のエッジローラ及び前記第2のエッジローラをそれぞれ第1の回転速度及び第2の回転速度で駆動するステップと、
前記第1のエッジローラ及び前記第2のエッジローラに付与される総トルクを表すトルク和信号を生成するステップと、
前記トルク和信号と、前記第1の回転位置及び前記第2の回転位置の一方又は両方を表す電気ロール位置信号との間の時間遅延を決定するステップと、
前記時間遅延、前記第1の回転位置及び前記第2の回転位置に基づいて、前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度を更新するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記更新するステップは、前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度を時間依存的に変調することを含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記変調するステップは、以下の方程式:
ωT=A*sin(θ1,2+Φ)+ωN
を使用して目標回転速度ωTを計算することにより、前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度を周期的に変調することを含み、
式中、Aは変調振幅であり、Θ1、2は前記第1のエッジローラ又は前記第2のエッジローラの角度位置であり、Φは前記時間遅延から決定される変調位相であり、ωNは前記第1のエッジローラ及び前記第2のエッジローラの目標回転速度である、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のエッジローラ及び前記第2のエッジローラの下流におけるガラスリボンの厚みを感知することと、
前記ガラスリボンの厚みに基づいて前記変調振幅Aを決定することと、
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記変調振幅Aを決定することは、
前記変調振幅Aの第1の値を使用して、前記第1の角速度及び前記第2の角速度を周期的に変調することと、
前記第1の値の結果、前記ガラスリボンの厚み変動が減少したかどうかを判定することと、
前記第1の値の結果、前記ガラスリボンの厚み変動が減少した場合、前記厚み変動の減少が観察されなくなるまで前記変調振幅Aを増加させることと、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記トルク和信号は、該トルク和信号が平均トルク値よりも大きい時に前記分離距離が平均距離よりも大きくなるように前記分離距離の代用として機能する、
請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記更新するステップは、前記第1の回転速度を上昇させることを含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ガラス製造装置であって、
所定量の溶融材料からガラスリボンを形成するように構成された形成体であって、前記ガラスリボンを形成できる、前記形成体から延びる延伸経路を定める、形成体と、
前記延伸経路の両側に配置された、第1の断面形状を有する第1のエッジローラ及び第2の断面形状を有する第2のエッジローラを含むエッジローラペアを含むエッジロールアセンブリであって、前記第1の断面形状は、前記第1のエッジローラ及び前記第2のエッジローラが回転する速度に応じて変化する分離距離だけ互いに分離するように前記第2の断面形状と異なる、エッジロールアセンブリと、
前記第1のエッジローラ及び前記第2のエッジローラに機械的に結合され、前記第1のエッジローラを第1の回転軸の周囲で第1の回転速度で回転させ、前記第2のエッジローラを第2の回転軸の周囲で第2の回転速度で回転させるように構成されるとともに、前記第1のエッジローラに付与される第1のトルクを表す第1のトルク信号及び前記第2のエッジローラに付与される第2のトルクを表す第2のトルク信号を生成するようにさらに構成された1又は2以上の駆動ユニットと、
前記1又は2以上の駆動ユニットに通信可能に結合されて、
前記第1のトルク信号及び前記第2のトルク信号からトルク和信号を生成し、
前記トルク和信号を使用して、前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度が、可変の前記分離距離に反比例するように前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度を変調する、
ように動作可能なコントローラと、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項19】
前記第1のエッジローラ及び前記第2のエッジローラの下流におけるガラスリボンの厚みを感知するように構成された厚みセンサをさらに備え、前記コントローラは、前記ガラスリボンの厚みに基づいて前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度を変調するように動作可能である、
請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記コントローラは、前記トルク和信号と前記1又は2以上の駆動ユニットによって生成される電気ロール位置信号との間の時間遅延に基づいて計算される変調位相を使用して、前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度を周期的に変調するように動作可能であり、前記電気ロール位置信号は、前記第1のエッジローラ又は前記第2のエッジローラの少なくとも一方の回転位置を表す、
請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2021年7月9日に出願された米国仮特許出願シリアル番号第63/220,110号の米国特許法第119条に基づく優先権の利益を主張するものであり、この文献の内容は信頼に足るものであってその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本明細書は、一般にガラスリボン製造装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス成形装置は、LCDディスプレイなどに使用されるガラスシートなどの様々なガラス製品を形成するために一般的に使用されている。これらのガラスシートは、溶融ガラスを成形ウェッジ上に下向きに流すことによって連続ガラスリボンを形成するダウンドロー法を使用して製造することができる。ダウンドロー法では、様々なローラを使用して連続ガラスリボンに牽引力を与え、リボンに張力を加え、又はガラスリボンを案内することができる。例えば、エッジローラは、連続ガラスリボンのエッジを挟んでガラスリボンを案内することができる。このようなエッジローラは、ガラスリボンの両面に接触するようにペアで配置することができる。エッジローラが対応する形状を有していない場合には、ローラ間の分離距離が時間の関数として(例えば、エッジローラの回転と共に)変化し、ガラスシートに厚みの変動が生じることがある。このように厚みが変動すると、ガラスシートが高精細ディスプレイなどの特定の用途に適さなくなってしまうことがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の第1の態様は、ガラス製造方法であって、所定量の溶融材料から、第1の表面及び第2の表面を含むガラスリボンを形成することと、第1の表面を第1のエッジローラに接触させ、第2の表面を第2のエッジローラに接触させることと、第1のエッジローラを第1の回転速度で回転させ、第2のエッジローラを第2の回転速度で回転させることと、第1のエッジローラに付与されるトルクを表す第1のトルク信号、及び第2のエッジローラに付与される第2のトルクを表す第2のトルク信号を生成することと、第1のトルク信号及び第2のトルク信号のトルク和信号を生成することと、トルク和信号の変動を打ち消すように第1の回転速度及び第2の回転速度を時間依存的に変調することと、を含む方法を含む。
【0005】
本開示の第2の態様は、第1の回転速度及び第2の回転速度を時間依存的に変調することが、以下の方程式:ωT=A*sin(θ1,2+Φ)+ωN、を使用して目標回転速度ωTを計算することにより、第1の回転速度及び第2の回転速度を周期的に変調することを含み、式中、Aは変調振幅であり、Θ1、2は第1のエッジローラ又は第2のエッジローラの角度位置であり、Φは変調位相であり、ωNは第1のエッジローラ及び第2のエッジローラの目標回転速度である、第1の態様による方法を含む。
【0006】
本開示の第3の態様は、角度位置を表すロール位置信号とトルク和信号との間の時間遅延を決定し、時間遅延を位相角に変換することによって変調位相を決定することをさらに含む、第1又は第2の態様による方法を含む。
【0007】
本開示の第4の態様は、変調位相を決定する前に、上限カットオフ周波数及び下限カットオフ周波数を有するバンドパスフィルタを使用してトルク和信号をフィルタ処理することをさらに含み、ωNが、上限カットオフ周波数と下限カットオフ周波数との間にある、第1~第3の態様のいずれかによる方法を含む。
【0008】
本開示の第5の態様は、第1のエッジローラ及び第2のエッジローラの下流におけるガラスリボンの厚みを感知することと、ガラスリボンの厚みに基づいて変調振幅Aを決定することと、をさらに含む、第1~第4の態様のいずれかによる方法を含む。
【0009】
本開示の第6の態様は、変調振幅Aを決定することが、変調振幅Aの第1の値を使用して、第1の角速度及び第2の角速度を周期的に変調することと、第1の値の結果、ガラスリボンの厚み変動が減少したかどうかを判定することと、第1の値の結果、ガラスリボンの厚み変動が減少した場合、厚み変動の減少が観察されなくなるまで前記変調振幅Aを増加させることと、を含む、第1~第5の態様のいずれかによる方法を含む。
【0010】
本開示の第7の態様は、第1のエッジローラ及び第2のエッジローラが、第1のエッジローラ及び第2のエッジローラの回転と共に第1のエッジローラと第2のエッジローラとの間の分離距離が周期的に変化するような異なる断面形状を有する、第1~第6の態様のいずれかによる方法を含む。
【0011】
本開示の第8の態様は、トルク和信号が、平均トルク値よりも大きい時に分離距離が平均距離よりも大きくなるように分離距離の代用として機能する、第1~第7の態様のいずれかによる方法を含む。
【0012】
本開示の第9の態様は、トルク和信号の変化を打ち消すように第1の回転速度及び第2の回転速度を変調することが、分離距離が増加している期間中に、第1の回転速度及び第2の回転速度の少なくとも一方を低下させることと、分離距離が減少している期間中に、第1の回転速度及び第2の回転速度の少なくとも一方を上昇させることと、を含む、第1~第8の態様のいずれかによる方法を含む。
【0013】
本開示の第10の態様は、トルク和信号の変化を打ち消すように第1の回転速度及び第2の回転速度を変調することが、第1の回転速度及び第2の回転速度が変調されない時に達成されるガラスリボンの移動窓厚み範囲を減少させる、第1~第9の態様のいずれかによる方法を含む。
【0014】
本開示の第11の態様は、ガラス製造方法であって、所定量の溶融材料から、第1の表面及び第2の表面を含むガラスリボンを形成するステップと、第1の表面を第1のエッジローラに接触させ、第2の表面を第2のエッジローラに接触させるステップであって、第1のエッジローラ及び第2のエッジローラは、第1のエッジローラ及び第2のエッジローラが回転する速度に応じて第1のエッジローラと第2のエッジローラとの間の分離距離が周期的に変化するような異なる断面形状を有する、ステップと、第1のエッジローラ及び第2のエッジローラをそれぞれ第1の回転速度及び第2の回転速度で駆動するステップと、第1のエッジローラ及び第2のエッジローラに付与される総トルクを表すトルク和信号を生成するステップと、トルク和信号と、第1の回転位置及び第2の回転位置の一方又は両方を表す電気ロール位置信号との間の時間遅延を決定するステップと、時間遅延、第1の回転位置及び第2の回転位置に基づいて、第1の回転速度及び第2の回転速度を更新するステップと、を含む方法を含む。
【0015】
本開示の第12の態様は、更新するステップが、第1の回転速度及び第2の回転速度を時間依存的に変調することを含む、第11の態様による方法を含む。
【0016】
本開示の第13の態様は、変調するステップが、以下の方程式:ωT=A*sin(θ1,2+Φ)+ωN、を使用して目標回転速度ωTを計算することにより、第1の回転速度及び第2の回転速度を周期的に変調することを含み、式中、Aは変調振幅であり、Θ1、2は第1のエッジローラ又は第2のエッジローラの角度位置であり、Φは時間遅延から決定される変調位相であり、ωNは第1のエッジローラ及び第2のエッジローラの目標回転速度である、第11~第13の態様のいずれかによる方法を含む。
【0017】
本開示の第14の態様は、第1のエッジローラ及び第2のエッジローラの下流におけるガラスリボンの厚みを感知することと、ガラスリボンの厚みに基づいて変調振幅Aを決定することと、をさらに含む、第11~第13の態様のいずれかによる方法を含む。
【0018】
本開示の第15の態様は、変調振幅Aを決定することが、変調振幅Aの第1の値を使用して、第1の角速度及び第2の角速度を周期的に変調することと、第1の値の結果、ガラスリボンの厚み変動が減少したかどうかを判定することと、第1の値の結果、ガラスリボンの厚み変動が減少した場合、厚み変動の減少が観察されなくなるまで変調振幅Aを増加させることと、を含む、第11~第14の態様のいずれかによる方法を含む。
【0019】
本開示の第16の態様は、トルク和信号が、平均トルク値よりも大きい時に分離距離が平均距離よりも大きくなるように分離距離の代用として機能する、第11~第15の態様のいずれかによる方法を含む。
【0020】
本開示の第17の態様は、更新するステップが、第1の回転速度を上昇させることを含む、第11~第16の態様のいずれかによる方法を含む。
【0021】
本開示の第18の態様は、ガラス製造装置であって、所定量の溶融材料からガラスリボンを形成するように構成された形成体であって、ガラスリボンを形成できる、形成体から延びる延伸経路を定める、形成体と、延伸経路の両側に配置された、第1の断面形状を有する第1のエッジローラ及び第2の断面形状を有する第2のエッジローラを含むエッジローラペアを含むエッジロールアセンブリであって、第1の断面形状は、第1のエッジローラ及び第2のエッジローラが回転する速度に応じて変化する分離距離だけ互いに分離するように第2の断面形状と異なる、エッジロールアセンブリと、第1のエッジローラ及び第2のエッジローラに機械的に結合され、第1のエッジローラを第1の回転軸の周囲で第1の回転速度で回転させ、第2のエッジローラを第2の回転軸の周囲で第2の回転速度で回転させるように構成されるとともに、第1のエッジローラに付与される第1のトルクを表す第1のトルク信号及び第2のエッジローラに付与される第2のトルクを表す第2のトルク信号を生成するようにさらに構成された1又は2以上の駆動ユニットと、1又は2以上の駆動ユニットに通信可能に結合されて、第1のトルク信号及び第2のトルク信号からトルク和信号を生成し、トルク和信号を使用して、第1の回転速度及び第2の回転速度が、可変の分離距離に反比例するように第1の回転速度及び第2の回転速度を変調する、ように動作可能なコントローラと、を備える装置を含む。
【0022】
本開示の第19の態様は、第1のエッジローラ及び第2のエッジローラの下流におけるガラスリボンの厚みを感知するように構成された厚みセンサをさらに備え、コントローラが、ガラスリボンの厚みに基づいて第1の回転速度及び第2の回転速度を変調するように動作可能である、第18の態様による装置を含む。
【0023】
本開示の第20の態様は、コントローラが、トルク和信号と1又は2以上の駆動ユニットによって生成される電気ロール位置信号との間の時間遅延に基づいて計算される変調位相を使用して、第1の回転速度及び第2の回転速度を周期的に変調するように動作可能であり、電気ロール位置信号が、第1のエッジローラ又は第2のエッジローラの少なくとも一方の回転位置を表す、第18又は第19の態様による装置を含む。
【0024】
以下の詳細な説明には、ガラスリボン製造装置及び方法、並びにこのような装置及び方法において使用される交換可能な加熱カートリッジのさらなる特徴及び利点を示しており、当業者には、この説明からその一部が容易に明らかになり、或いは特許請求の範囲に従う詳細な説明及び添付図面を含む、本明細書で説明する実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0025】
上述した一般的説明及び以下の詳細な説明では様々な実施形態を説明しており、これらは特許請求する主題の性質及び特性を理解するための概要又は枠組みを提供するように意図するものであると理解されたい。添付図面は、様々な実施形態のさらなる理解をもたらすように含められ、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。これら図面は、本明細書で説明する様々な実施形態を示し、特許請求する主題の原理及び動作を説明する役割を本明細書と共に果たす。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本明細書で図示し説明する1又は2以上の実施形態によるガラス製造装置の概略図である。
図2】本明細書で説明する1又は2以上の実施形態によるガラス製造装置の、図1の線2-2を通じた概略的断面図である。
図3A】本明細書で説明する1又は2以上の実施形態によるガラス製造装置の、図2の線3-3を通じた概略的断面図である。
図3B】本明細書で説明する1又は2以上の実施形態による、図1図3Aに示すガラス製造装置のエッジローラペアのエッジローラ間の分離距離のプロットの概略図である。
図4A】本明細書で説明する1又は2以上の実施形態による、ガラス製造装置のエッジローラペアのエッジローラに供給されるトルクのトルク和信号のプロットを示す図である。
図4B】本明細書で説明する1又は2以上の実施形態による、図4Aに示すトルク和信号のプロットの周期領域変換を示す図である。
図5A】本明細書で説明する1又は2以上の実施形態による、トルク和信号をフィルタ処理するために使用されるバンドパスフィルタのローパスフィルタ部分の周波数領域プロットを示す図である。
図5B】本明細書で説明する1又は2以上の実施形態による、トルク和信号をフィルタ処理するために使用されるバンドパスフィルタのハイパスフィルタ部分の周波数領域プロットを示す図である。
図6A】本明細書で説明する1又は2以上の実施形態による、ガラス製造装置のエッジローラペアのエッジローラに供給されるトルクのフィルタ処理されていないトルク和信号のプロットである。
図6B】本明細書で説明する1又は2以上の実施形態による、図4A及び図4Bに示すバンドパスフィルタを使用して図6Aのトルク和信号をフィルタ処理することによって生成されるフィルタ処理後のトルク和信号のプロットを示す図である。
図7】本明細書で説明する1又は2以上の実施形態による、電気ローラ位置信号にオーバーレイ表示したトルク和信号を含むプロットを示す図である。
図8】本明細書で説明する1又は2以上の実施形態による、ガラス製造装置のエッジローラの回転速度を変調する方法のフロー図である。
図9】本明細書で説明する1又は2以上の実施形態による、図8の方法中に回転速度を変調するために使用できる変調位相及び変調振幅を決定する方法のフロー図である。
図10】本明細書で説明する1又は2以上の実施形態による、エッジローラの回転速度を変調するために複数の変調振幅を使用して生成されるガラスリボンの厚みフラッピング傾向のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、エッジローラペアに関連するトルク和信号(torque summation signal)の変化を打ち消すようにエッジローラの回転速度を時間依存的に変調するガラスリボン製造装置及び方法の実施形態を詳細に参照する。可能な限り、図面全体を通じて同一又は同様の部品の参照には同じ参照数字を使用する。本開示のガラスリボン製造装置は、所定量の溶融材料からガラスリボンを形成するガラス成形体(glass forming body)と、ガラス成形体から下流に配置された複数のエッジローラとを含むことができる。複数のエッジローラは、ガラスリボンの両面に接触するように配置された第1のエッジローラ及び第2のエッジローラを含むエッジローラペアを含むことができる。1又は2以上の駆動ユニットが第1及び第2のエッジローラを第1及び第2の回転速度で回転させ、第1及び第2のエッジローラに付与されるトルクを表すトルク信号を生成することができる。第1のエッジローラは第2のエッジローラと断面形状が異なることにより、第1のエッジローラと第2のエッジローラとの間の分離距離が時間の関数として変化することができ、このためトルク信号も時間の関数として変化するようになる。コントローラがトルク信号を受信してトルク和信号を生成することができる。コントローラは、トルク和信号の変動を打ち消すように、1又は2以上の駆動ユニットが第1及び第2のエッジローラを回転させる回転速度を変調することができる。このような時間依存的変調は、第1及び第2のエッジローラ間の分離距離の変動を低減してガラスリボンの厚み変動を抑えることができる。この結果、本明細書で説明する装置を介して製造されるガラスシートは、時間依存的ローラ速度変調を伴わずに製造されるガラスシートよりも均一な壁厚を有することができる。
【0028】
本明細書で使用する「厚みフラッピング(thickness flapping)」という用語は、ダウンドロー法(例えば、フュージョンドロー法、スロットドロー法)を使用してガラスリボンが形成されている間にガラスリボンのエッジ付近に延伸方向に生じる周期的厚み変動を意味する。
【0029】
図1に、ガラスリボン12などのガラスを製造する装置10の実施形態を概略的に示す。装置10は、一般に貯蔵ビン(storage bin)18からバッチ材料16を受け取るように構成された溶融容器(melting vessel)15を含む。バッチ材料16は、モータ22によって駆動されるバッチ送出装置(batch delivery device)20によって溶融容器15に導入することができる。モータ22を作動させるために任意のコントローラ24を設けることができ、溶融ガラスレベルプローブ(molten glass level probe)28を使用してスタンドパイプ(standpipe)30内のガラス溶融レベルを測定し、測定された情報をコントローラ24に伝えることができる。
【0030】
装置10は、溶融容器15の下流に配置されて第1の接続管36を介して溶融容器15に結合された清澄管(fining tube)などの清澄容器(fining vessel)38を含むこともできる。清澄容器38から下流には、混合容器42を配置することもできる。混合容器42の下流には、送出容器46を配置することができる。図示のように、第2の接続管40が清澄容器38を混合容器42に接続し、第3の接続管44が混合容器42を送出容器46に接続する。さらに図示のように、送出容器46から成形容器60の入口50にガラス溶融物を送出する下降管(downcomer)48が配置される。図1に概略的に示す実施形態では、溶融容器15、清澄容器38、混合容器42、送出容器46及び成形容器60が、装置10に沿って直列に配置できる様々なガラス処理ステーションの例である。
【0031】
溶融容器15は、典型的には耐火性(例えば、セラミック)レンガなどの耐火性材料から形成される。装置10は、典型的には白金、又は白金-ロジウム、白金-イリジウム及びこれらの組み合わせなどの白金含有金属から形成されるコンポーネントをさらに含むことができるが、これらのコンポーネントは、モリブデン、パラジウム、レニウム、タンタル、チタン、タングステン、ルテニウム、オスミウム、ジルコニウム、並びにこれらの合金及び/又は二酸化ジルコニウムなどの耐火性金属を含むこともできる。白金含有コンポーネントは、第1の接続管36、清澄容器38、第2の接続管40、スタンドパイプ30、混合容器42、第3の接続管44、送出容器46、下降管48及び入口50のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。成形容器60も耐火性材料から形成することができ、ガラス溶融物をガラスリボン12に成形するように設計される。
【0032】
図2は、図1の線2-2に沿った装置10の断面斜視図である。図示のように、成形容器60は成形ウェッジ(forming wedge)62を含み、成形ウェッジ62は、その両端64a、64b間に延びる一対の下向きに傾斜した成形面部分66a、66bを含む。下向きに傾斜した成形面部分66a、66bは、延伸方向68に沿って収束して、以下では根底部(root)70と呼ぶ底縁部を形成する。溶融ガラス17は、両端64a、64b間に延びる谷間(trough)を満たし、下向きに傾斜した成形面部分66a、66b上を下向きに延び、根底部70において収束してガラスリボン12を形成することができる。根底部70には延伸面72が貫通する。ガラスリボン12は、延伸面72に沿って延伸方向68に引き出すことができる。延伸面72は、根底部70を垂直に貫通して成形容器60を二分する。しかしながら、別の構成では延伸面72が根底部70を垂直に貫通しないこともできると理解されたい。図1及び図2には、ガラス成形装置及び成形容器の1つの実施形態を大まかに示しているが、本開示の態様は他の様々な成形容器構成と共に使用することもできると理解されたい。
【0033】
次に図1図2を参照すると、装置10は、成形容器60の根底部70からガラスリボンを引き出すための少なくとも1つのエッジローラアセンブリ(edge roller assembly)も含む。例えば、図示の装置10は、第1及び第2のエッジローラアセンブリ130a、130bを含む(図1を参照)。第1のエッジローラアセンブリ130aは、成形ウェッジ62の根底部70からガラスリボン12が引き出される時にガラスリボン12の第1のエッジに係合するように構成された第1のエッジローラペア132を含む。第2のエッジローラアセンブリ130bは、成形ウェッジ62の根底部70からガラスリボン12が引き出される時にガラスリボン12の別の第2のエッジに係合するように構成された第2のエッジローラペア134を含む。第1及び第2のエッジローラアセンブリ130a、130bは、成形ウェッジ62の根底部70からのガラスリボン12の引き出しを支援する。例えば、第1及び第2のエッジローラアセンブリ130a、130bは、下向きに傾斜した成形面部分66a、66bの両面から引き出される溶融ガラス17のエッジ部分の所望のエッジ特性及び正しい融合をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2のエッジローラアセンブリ130a、130bを、根底部70から引き出されるガラスの粘性領域内の様々な位置に配置することができる。例えば、いくつかの実施形態では、第1及び第2のエッジローラアセンブリ130a、130bを根底部70の直下に配置することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2のエッジローラアセンブリ130a、130bが、ガラスリボン60の組成及び製造工程の他の要因(例えば、延伸速度、ガラスリボンの厚みなど)に依存し得る距離だけ根底部70の下方に配置される。
【0034】
図2及び図3Aに、第1のエッジローラアセンブリ130aの1つの実施形態を示す。第2のエッジローラアセンブリ130b(図1を参照)は、いくつかの実施形態では第1のエッジローラアセンブリ130aと実質的に同一の構造であることができる。図2に示すように、第1のエッジローラアセンブリ130aは第1のエッジローラペア132を含む。第1のエッジローラペア132は、第1のエッジローラ132a及び第2のエッジローラ132bを含む。第1及び第2のエッジローラ132a、132bは、成形ウェッジ62の根底部70からガラスリボン12が引き出される時に、それぞれガラスリボン12の第1の主要面110a及び第2の主要面110bに同時に係合するように構成される。第1のエッジローラアセンブリ130aは、第1のエッジローラ132aに機械的に結合された第1のシャフト136と、第2のエッジローラ132bに機械的に結合された第2のシャフト138とを含む。図2には、第1及び第2のシャフト136、138を、実質的に円筒形であって第1及び第2のエッジローラ132a、132b間を延伸方向68に垂直な方向(例えば、図2に示す座標軸のx方向)に線形的に延びるように示す。実施形態では、第1及び第2のシャフト136、138が、ガラスリボン12を収容するハウジング(図示せず)を貫通することができる。ハウジングは、装置10のコンポーネント(例えば、1又は2以上の駆動ユニット137、図1に示すコントローラ150)を遮蔽し、ガラスリボンの周囲に制御された環境を維持するのに役立つことができる。第1及び第2のシャフト136、138の別の形態も想定され、本開示の範囲内である。例えば、実施形態では、第1及び第2のシャフト136、138が少なくとも部分的に延伸方向68に(例えば、図2に示すx軸に対して斜めに)延びることができる。
【0035】
実施形態では、第1及び第2のシャフト136、138が1又は2以上の駆動ユニット137によって回転駆動される。1又は2以上の駆動ユニット137は、第1及び第2のエッジローラ132a、132bに機械的に結合されて、第1のエッジローラ132aを第1の回転軸140aの周囲で第1の回転速度ω1で回転させ、第2のエッジローラ132bを第2の回転軸140bの周囲で第2の回転速度ω2で回転させることができる。実施形態では、第1及び第2の回転速度ω1、ω2が互いに等しくかつ逆向きである(例えば、第1のエッジローラアセンブリ130aがガラスリボン12を延伸方向68に案内するように、第1のエッジローラ132aが時計回り方向に回転して第2のエッジローラ132bが反時計回り方向に回転することができる)。実施形態では、第1及び第2の回転速度ω1、ω2が、ガラスリボンの所望の延伸速度に対応するように選択される。
【0036】
実施形態では、1又は2以上の駆動ユニット137が、第1及び第2のエッジローラ132a、132bを第1及び第2の回転軸140a、140bの周囲で回転させるように構成された好適な駆動機構(例えば、電気モータ又は油圧モータなどの好適なモータ、又はその他の好適なアクチュエータ)を含む。なお、1又は2以上の駆動ユニット137は様々な形態を取ることができると理解されたい。例えば、実施形態では、第1及び第2のシャフト136、138が機械的にリンクされて、単一の駆動ユニットが第1及び第2のシャフト136、138の両方を回転駆動シャフトなどの単一の機械的出力で回転させる。実施形態では、1又は2以上の駆動ユニット137の機械的出力をトランスミッションなどが第1及び第2のシャフト136、138に機械的に接続して、第1及び第2のシャフト136、138を所望の一連の方向に回転させることができる。1又は2以上の駆動ユニット137は、第1のシャフト136に機械的に結合された第1の駆動ユニットと、第2のシャフト138に機械的に結合された第2の駆動ユニットとを含むことができる。このような実施形態では、各駆動ユニットが第1及び第2のエッジローラ132a、132bの一方を個別に回転させることができる。
【0037】
実施形態では、装置10が、第1及び第2のエッジローラアセンブリ130a、130bに加えて1又は2以上のプルローラアセンブリ(pull roller assemblies)(図示せず)を含む。1又は2以上のプルローラアセンブリは、ガラスリボン12の厚み166を決定するために、ガラスリボン12の第1及び第2の主要面110a、110bに接触してガラスに張力を付与することができる。第1及び第2のエッジローラアセンブリ130a、130bは、プルローラアセンブリによって付与される張力に起因するガラスリボン12の幅(例えば、図1の座標軸に示す±X方向)の変動を打ち消すことができる。第1及び第2のエッジローラアセンブリ130a、130bは、根底部70の下方でのガラスリボン12の横方向の収縮を抑えるのに役立つようにガラスリボン12のエッジを冷却するために、ガラスリボン12の温度を下回る温度に冷却することができる。第1及び第2のエッジローラアセンブリ130a、130bは、傾斜した成形面部分66a、66b上を移動する溶融ガラス17の異なる流れを融合させるのに役立つこともできる。実施形態では、第1及び第2のエッジローラアセンブリ130a、130bの1又は2以上のエッジローラが、ガラスリボン12の滑りを防ぐとともにさらなる冷却をもたらすこともできる、ローレット加工された表面(knurled surfac)を含む。
【0038】
図1及び図2を参照すると、実施形態では、装置10が、ガラスリボン12の厚み166を感知するように配向された厚みセンサ160を含むことができる。厚みセンサ160は、(例えば、第1及び第2のエッジローラアセンブリ130a、130b間に存在する)ガラスリボン12の中心部分と整列するように示しているが、厚みセンサ160は、ガラスリボン12内のいずれかの位置で厚み166を測定するように配置することができる。例えば、厚みセンサ160は、下向きの延伸方向(例えば、図に示す座標軸の-Z方向)における第1のエッジローラアセンブリ130aの下方の位置で厚み166を測定するように配置することもできる。厚みセンサ160は、ガラスリボン12の様々な位置で厚み166を測定するように移動可能であることができる。
【0039】
厚みセンサ160は、実装に応じて様々な形態を取ることができる。例えば、厚みセンサ160は、第1及び第2の主要面110a、110bに接触して厚み166を測定する固体プローブ(solid probes)を含むことができる。他の例では、厚みセンサが流体(例えば、気体)を採用して、第1及び第2の主要面110a、110bに衝突する流体流からのフィードバック(例えば、圧力フィードバック)に基づいてガラスリボン12の厚み166を感知することができる。さらに他の例では、厚みセンサ160が音響センサを含むことができる。図示の実施形態では、厚みセンサ160が、測定位置170においてガラスリボン12に入射するレーザービームを放出するレーザーセンサである。レーザービームの第1の部分が第1の主要面110aから反射され、レーザービームの第2の部分がガラスリボンを透過して第2の主要面110bから反射される。反射された光が厚みセンサによって検出され、第1及び第2の主要面110a、110bから反射された信号間の差分を使用して厚み166を測定することができる。図1図2には単一の厚みセンサ160を示しているが、装置10のいくつかの実施形態は、様々な位置で同時に厚み166を測定できるように複数の厚みセンサを含むこともできる。
【0040】
実施形態では、厚みセンサ160が、装置10のコントローラ150に通信可能に結合される。本明細書で説明するように、厚みの測定値を使用して、コントローラ150が第1及び第2のエッジローラ132a、132bの第1及び第2の回転速度ω1、ω2を変調するために使用する変調振幅Aを決定することができる。例えば、厚みセンサ160による測定値を使用して、厚み166の変動が特定の変調振幅Aによって所定の測定期間(例えば、10分、30分、60分)にわたって減少するかどうかを判定し、変調振幅Aを調整すべきかどうかを判定することができる。
【0041】
図1図3A及び図3Bを参照すると、第1及び第2のエッジローラ132a、132bは、断面形状が互いに異なることができる。図3Aに示す例では、説明を目的として、第1のエッジローラ132aを、実質的に楕円形である第1の断面形状142aを含むように示しているのに対し、第2のエッジローラ132bを、実質的に円形である第2の断面形状142bを含むように示している。このような異なる断面は、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの摩耗、及び/又は機械加工誤差に起因することができる。この結果、第1及び第2のエッジローラ132a、132bは、第1及び第2のエッジローラ132a、132bが回転するにつれて可変の分離距離144だけ互いに(延伸方向68に垂直な方向に)分離する可能性がある。可変の分離距離144は、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの各々の回転位置に依存して変化することができる。例えば、第1及び第2のエッジローラ132a、132bが第1及び第2の回転軸140a、140b(図2を参照)の周囲で回転すると、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの各々の回転位置が、第1及び第2の回転速度ω1、ω2に依存して時間の関数として変化する。第1及び第2のエッジローラ132a、132bが回転すると、延伸方向68に垂直な方向(例えば、図3に示す±y方向)に互いに最も近接する第1及び第2のエッジローラ132a、132bの部分が変化することがある。例えば、第1及び第2の回転速度ω1、ω2が同じ大きさである場合、可変の分離距離144は、第1及び第2の回転速度ω1、ω2の関数として周期的に変化することができる。第1及び第2のエッジローラ132a、132bの示す断面形状は一例にすぎない。第1及び第2のエッジローラ132a、132bの機械的摩耗の結果、ローラの表面プロファイルは、回転位置の関数として可変の分離距離144が図3Bに示すものとは異なる形で変化するような複雑なものになる場合がある。
【0042】
図3Bに、第1及び第2のエッジローラ132a、132bが同じ回転速度で回転する例における可変の分離距離144のプロット300を示す。図3Bのx軸は正規化した時間(例えば、回転周期との比率)であり、y軸は正規化した可変の分離距離の大きさを示す。図示のように、可変の分離距離144は、(例えば、1又は2以上の駆動ユニット137によって決定される)第1及び第2のエッジローラ132a、132bの回転速度に対応する周期を有する正弦波に従って変化する。ある例では、第1及び第2のエッジローラ132a、132bが複数の周波数成分を有する関数に従って同じ速度で回転するにつれて可変の分離距離144が変化することができ、これらの周波数成分は、(例えば、第1及び第2のエッジローラ132a、132bが1又は2以上の駆動ユニット137による作動前に最初にどのように位置合わせされているかに関連する)第1及び第2のエッジローラ132a、132b上の対応する角度位置における第1及び第2のエッジローラ132a、132b間の半径方向寸法の差分に従って変化する。
【0043】
可変の分離距離144に起因して、第1のエッジローラペア132を横切る単位時間当たりのガラスリボン12内の溶融ガラスの体積が可変の分離距離144の大きさの関数として変化することができる。例えば、(例えば、図3Bに示す時間間隔304内などの)第1及び第2のエッジローラ132a、132bが互いに比較的近づいている時間間隔中には、(例えば、図3Bに示す時間間隔302内などの)第1及び第2のエッジローラ132a、132bが比較的離れている時よりも第1及び第2のエッジローラ132a、132b間の溶融ガラス17の流れが大きく阻害される可能性がある。第1のエッジローラペア132を通る溶融ガラス17の流れがこのように一定でなければ、ガラスリボン12の厚みが変動してしまう恐れがある。本明細書で図3A図3Bに関して説明する例では、第1のエッジローラペア132が係合するエッジに近いガラスリボン12の厚みが、図3Bに示す正弦波に従って周期的に変動する可能性がある。これらの厚み変動(厚みフラッピング)により、ガラスリボン12から切断されたガラスシートが、高精細ディスプレイにおける使用などのいくつかの用途に適さなくなってしまう恐れがある。装置10内のエッジローラの真円度(out-of-roundness)は、最終的にガラスリボンの厚みフラッピングを招く恐れがある。
【0044】
上記に照らして、装置10は、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの回転を制御する、1又は2以上の駆動ユニット137に通信可能に結合されたコントローラ150を含む。コントローラ150は、メモリ152に記憶されてプロセッサ154により実行されるコンピュータ可読命令を含むことができる。プロセッサ154は、本明細書で説明する方法に従って第1及び第2のエッジローラアセンブリ130a、130bの動作を制御するアドレス指定スキームに従ってこれらの命令にアクセスすることができる。メモリ152は、1又は2以上の駆動ユニット137によって生成されたトルク信号を利用するフィードバック制御スキームを使用して第1及び第2のエッジローラアセンブリ130a、130bを動作させるように構成された1又は2以上の制御モジュールを含むことができる。例えば、1又は2以上の駆動ユニット137が、第1及び第2のシャフト136、138の両方を回転させるように構成された単一の駆動ユニットを含む実施形態では、単一の駆動ユニットが、生成されて第1及び第2のエッジローラ132a、132bに伝達される総トルクを表すトルク信号を生成することができる。1又は2以上の駆動ユニット137が駆動ユニットのペアを含み、各駆動ユニットが第1及び第2のシャフト136、138の一方を個別に回転させるように構成される実施形態では、各駆動ユニットが、生成されて第1及び第2のエッジローラ132a、132bの各々に伝達されるトルクを表すトルク信号を個別に生成することができる。メモリ152に記憶された制御モジュールは、1又は2以上の駆動ユニット137を介して生成されたトルク信号を解析し、このトルク信号を使用して第1及び第2の角速度ω1、ω2を制御することをプロセッサ154に行わせることができる。
【0045】
図4A図4Bに、本明細書で図1図3Bに関して説明した装置10のコントローラ150によって受信されるトルク和信号のプロットを示す。図4Aには、(例えば、1又は2以上の駆動ユニット137を介して第1及び第2のシャフト136、138に付与されるトルクの総和を表す)トルク和信号の時間領域プロット400を示す。図4Bには、図4Aに示すトルク和信号の周期領域(秒単位)変換プロット402を示す。図4Bに示すように、トルク和信号は、12.5秒(s)の周期を有する支配的周期成分404を含む。この例では、トルク和信号の主要周期成分404が、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの回転周期と一致する。理論に束縛されることを望むわけではないが、トルク和信号の周期性は可変の分離距離144(図3Aを参照)によって生じると考えられる。可変の分離距離144が減少している(或いは平均値又は中央値よりも小さい)時には、ガラスリボン12との摩擦に起因して、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの回転をプログラムされた速度に維持するために、1又は2以上の駆動ユニット137によって(例えば、可変の分離距離144が最小値である時と比べて)相対的に高いトルクが第1及び第2のエッジローラ132a、132bに付与されていると考えられる。可変の分離距離144が増加している時(或いは中央値又は平均値よりも大きい時)には、可変の分離距離144が減少している時よりも(例えば、可変の分離距離144が最大値である時と比べて)低いトルクが第1及び第2のエッジローラ132a、132bに付与されていると考えられる。分離距離が大きくなればなるほど溶融ガラス17との摩擦が減少し、公称回転速度を維持するために必要なトルクが低くて済む。
【0046】
このように、1又は2以上の駆動ユニット137によって生成されるトルク信号は、可変の分離距離144の大きさの代用となるフィードバック信号を供給する。この点を踏まえて図1を参照すると、コントローラ150は、トルク信号を受信し、(例えば、1又は2以上の駆動ユニット137によって各エッジローラに関連する個別のトルク信号が生成される場合には)トルク信号からトルク和信号を生成し、第1及び第2の回転速度ω1、ω2をトルク和信号の変化を打ち消すように時間依存的に変調することができる。例えば、コントローラ150は、第1及び第2のシャフト136、138を可変の速度で回転させて、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの間で引っ張られるガラス全体の変動性を低減するように1又は2以上の駆動ユニット137の動作を制御することにより、ガラスリボン12の厚みフラッピングを抑えることができる。
【0047】
実施形態では、コントローラ150が、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの第1及び第2の回転速度ω1、ω2を周期的に変調する。実施形態では、コントローラ150が、第1の回転速度ω1及び第2の回転速度ω2を以下に従って周期的に変調し、
ωT=A*sin(θ1,2+Φ)+ωN (1)
ここで、ωTは、第1の回転速度ω1及び第2の回転速度ω2に関連する目標速度であり、Aは変調振幅であり、θ1、2は、第1のエッジローラ132a又は第2のエッジローラ132bの角度位置であり、Φは変調位相であり、ωNは、(例えば、ガラスリボン12の延伸速度に関連する)第1のエッジローラ132a及び第2のエッジローラ132bの公称回転速度である。
【0048】
実施形態では、コントローラ150が、方程式1の値θ1,2を示すロール位置信号(roll position signals)を受信するように構成される。例えば、実施形態では、1又は2以上の駆動ユニット137が、基準位置に対する第1及び第2のシャフト136、138の(例えば、0°~360°弱の範囲の)回転位置に比例して変化する電気ロール位置信号(例えば、電圧、電流)を出力するエンコーダを含む。1又は2以上の駆動ユニット137のエンコーダによって生成される電気ロール位置信号は、第1及び第2の回転速度ω1、ω2の関数として周期的に変化することができる。実施形態では、第1及び第2の回転速度ω1、ω2が(例えば、変調前の)公称回転速度ωNに対応する。公称回転速度ωNは、ガラスリボン12の所望の延伸速度に関連する所定の入力としてコントローラ150に入力することができる。
【0049】
第1のエッジローラ132a及び第2のエッジローラ132bの各々の角度位置θ1,2は、可変の分離距離144の大きさを決定することができる。すなわち、角度位置θ1,2は、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの断面形状に応じて可変の分離距離144の大きさを決定することができる。しかしながら、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの断面形状に関する正確な幾何学的情報が利用できない場合もある(例えば、第1及び第2のエッジローラ132a、132bは、装置10の長期動作にわたって形状が変化することがある)。従って、1又は2以上の駆動ユニット137を介して生成される電気ロール位置信号は、可変の分離距離144の変動を打ち消すωNの変調度合いを決定するために、可変の分離距離144が時間と共に変化している度合いを決定するのに十分でない場合がある。
【0050】
本明細書で図1図3A図3B図4A及び図4Bを参照して説明したように、1又は2以上の駆動ユニット137を介して生成されるトルク和信号の周期的変動は可変の分離距離144の代用として機能することができる。可変の分離距離144の大きさは、トルク和信号の平均値又は中央値に関するトルク和信号の変動によって推定することができる。従って、トルク和信号を使用して、方程式1におけるωNの変調度合いを決定することができる。
【0051】
方程式1における変調位相Φは、コントローラ150が第1及び第2の角速度ω1、ω2を特定の度合いに変調するタイミングを決定することができる。可変の分離距離144の大きさが、上述したようにトルク和信号の大きさに関連する第1及び第2のエッジローラ132a、132bの回転位置θ1,2に依存することを考慮すると、変調位相Φは、基準電子ロール位置信号とトルク和信号との間の遅延時間に基づいて決定することができる。例えば、トルク和信号及び電子ロール位置信号の各々の対応する周期の開始点間の時間遅延を使用して、方程式1における変調位相Φを決定することができる。本明細書では、このような時間遅延を決定する例を図7に関して説明する。
【0052】
図4A及び図4Bに示すように、1又は2以上の駆動ユニット137を介して第1及び第2のエッジローラ132a、132bに付与されるトルクを表すトルク和信号は、第1及び第2の回転速度ω1、ω2に関連する周期における支配的周期成分404に加えて複数の周波数(又は周期)成分を含む。図示のように、トルク和信号は、複数の低周期(又は高周波数)成分406及び複数の高周期(又は低周波数)成分408も含む。
【0053】
実施形態では、電気ロール位置信号が第1及び第2のエッジローラ132a、132bの正確な幾何学的形状と無関係である(そして、ローラ間の機械的相互作用に由来する成分を含まない)こともあるので、1又は2以上の駆動ユニット137のエンコーダによって生成される電気ロール位置信号にトルク和信号の低周期成分406及び高周期成分408が存在しない場合もある。低周期成分406及び高周期成分408は、エッジローラ形状の半径方向変動に起因するものではない場合もある。実施形態では、低周期成分406及び高周期成分408が機械的及び/又は電気的ノイズに起因する。従って、トルク和信号と電気ロール位置信号との間で測定される位相差は、連続する回転期間の間で変動することがあるため、低周期成分406及び高周期成分408は、本明細書で説明する変調位相Φの推定を不正確になものする恐れがある。従って、装置10のコントローラ150(図1を参照)は、1又は2以上の駆動ユニット137によって生成されたトルク和信号をフィルタ処理するフィルタ処理ロジックを含むことができる。フィルタ処理ロジックは、(例えば、方程式1の公称回転速度ωNに対応する)第1及び第2の回転速度ω1、ω2のターゲットを含む成分404付近の関心スペクトル帯を通過させるバンドパスフィルタを実装することができる。
【0054】
図5A及び図5Bに、ある実施形態例による、トルク和信号のフィルタ処理に使用されるバンドパスフィルタのローパスフィルタ部分500及びこのバンドパスフィルタのハイパスフィルタ部分504の周波数領域プロットを示す。ローパスフィルタ部分500及びハイパスフィルタ部分504は、図4A図4Bに示すトルク和信号の複数の低周期成分406及び高周期成分408をフィルタ除去するために使用することができる。この例では、支配的周期成分404(図4Bを参照)が、0.08Hzの周波数に対応する12.5sの周期を含む。図5Aに示すように、ローパスフィルタ部分500は、約0.09Hzのカットオフ周波数502を上回る周波数を有する信号成分をフィルタ除去する。図5Bに示すように、ハイパスフィルタ部分504は、約0.02Hzのカットオフ周波数506未満の周波数を有する信号成分をフィルタ除去する。従って、支配的周期成分404(図4Bを参照)に関連する周波数は、図5A図5Bに示すバンドパスフィルタのカットオフ周波数502及び506間に存在する。
【0055】
図5A図5Bに示す例では、ハイパスフィルタ部分504のカットオフ周波数506(例えば、この例ではカットオフ周波数506と支配的周期成分404の周波数との間の差分は0.06Hzである)よりも、ローパスフィルタ部分500に関連するカットオフ周波数502の方が支配的周期成分404に近い(例えば、この例ではカットオフ周波数502と支配的周期成分404の周波数との間の差分は0.01Hzである)。すなわち、バンドパスフィルタは、支配的周期成分404に関連する周波数を0.01Hzよりも上回る周波数を有する高周波成分をフィルタ除去するように構成される。このような構成が有益と考えられる理由は、これより高い周波数成分は支配的周波数成分404に近いとともに、本明細書で説明する変調位相Φの精度をこれより低い周波数成分よりも大きく低下させる傾向にあるからである。カットオフ周波数502、506は構成可能なパラメータであり、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの所望の速度に基づいて選択することができる。実施形態では、カットオフ周波数502、506が、フィルタ処理後のトルク和信号を分析して、本明細書で説明する変調位相Φを決定するための一貫した結果を生成するカットオフ周波数502、506の値を決定することによって決定される。使用される特定のカットオフ周波数502、506は異なることもでき、支配的周期成分404との関係が図5A図5Bに示すものとは異なることもできる。
【0056】
図1を参照すると、実施形態では、本明細書で図5A図5Bに関して説明したバンドパスフィルタなどのバンドパスフィルタを使用して、1又は2以上の駆動ユニット137によって生成されたトルク信号をフィルタ処理すると、トルク和信号に位相シフトが導入される可能性がある。このようなフィルタ誘導型位相シフト(filter-induced phase shift)は、本明細書で説明する方法を使用して生成される変調位相Φの精度を低下させる恐れがある。従って、実施形態では、メモリ152が、フィルタ処理後のトルク和信号を、バンドパスフィルタに関連するフィルタ誘導型位相シフトを補償するのに必要な量だけ位相シフトするように構成されたフィルタ補償ロジックを含むことができる。実施形態では、バンドパスフィルタを使用して、複数の異なる主要周波数成分(例えば、異なる周波数)を含む複数のトルク和信号をフィルタ処理し、確立されたフィルタ処理理論代数式(filtering theory algebraic expressions)を使用して、トルク和信号の各々の位相シフトを決定する。支配的周期成分404(図4Bを参照)に関連する周波数に基づいてこのような関係を使用して、フィルタ処理されたトルク信号を処理するために使用される位相シフトを計算することができる。
【0057】
図6Aに、1又は2以上の駆動ユニット137(図1Aを参照)によって生成された未加工トルク和信号の時系列プロット602を示す。図6Bには、図6Aに示す未加工トルク和信号を本明細書で図5A及び図5Bに関して説明したバンドパスフィルタによってフィルタ処理した後に、フィルタ誘導型位相シフトを補償するように位相シフトしたものを表す、フィルタ処理後のトルク和信号の時系列プロット604を示す。図示のように、フィルタ処理後のトルク和信号は、支配的周期成分404(図4Bを参照)に関連する周期を有する概ね滑らかな周期信号である。図6Bに示すように、フィルタ処理後の信号の振幅は、支配的周期成分404に関連する周波数よりも低い周波数で周期的に変化する。理論に束縛されることを望むわけではないが、このような振幅の周期的変動は、第1及び第2のエッジローラ132a、132b間の機械的相互作用の結果であると考えられる。図6Bに示すフィルタ処理後のトルク和信号は、1又は2以上の駆動ユニット137を介して生成される電気ロール位置信号との間の時間遅延を確立するためのベースラインを提供する。
【0058】
図7に、1又は2以上の駆動ユニット137によって生成された未加工トルク和信号700、フィルタ処理後のトルク和信号702、1又は2以上の駆動ユニット137を介して生成された電気ロール位置信号704、並びにフィルタ処理後のトルク和信号702及び電気ロール位置信号704の対応する部分に関連する時間遅延706のオーバーレイを含む時系列プロット680を示す。図7に示すように、電気ロール位置信号704は、1又は2以上の駆動ユニット137の回転位置が0°である時の最小値から1又は2以上の駆動ユニット137の回転位置が360°弱である時の最大値まで信号の振幅が変化する鋸歯関数(saw tooth function)を含む。(電気ロール位置信号704に縦線として示す)最大値と最小値との間の遷移は、第1及び第2のエッジローラ132a、132b(図1を参照)の一方が回転を完了した時点を表す。
【0059】
図1及び図7を参照すると、未加工トルク和信号700は、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの回転中に1又は2以上の駆動ユニット137によって生成されたトルク信号の総和を表すことができる。例えば、未加工トルク和信号700は、第1の駆動ユニットが第1の回転軸140aの周囲で第1のエッジローラ132aを回転させることによって生成された第1のトルク信号と、第2の駆動ユニットが第2の回転軸140bの周囲で第2のエッジローラ132bを回転させることによって生成された第2のトルク信号との和を表すことができる。フィルタ処理後のトルク和信号702は、本明細書で図5A及び図5Bに関して説明したバンドパスフィルタなどのバンドパスフィルタを使用して未加工トルク和信号700を処理することによって生成することができる。未加工トルク和信号700及びフィルタ処理後のトルク和信号702は、基準値に対して正規化されている。
【0060】
図7に示すように、フィルタ処理後のトルク和信号702と電気ロール位置信号704との間の時間遅延706は、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの一方が回転(又は回転期間)を完了する第1の時点と、フィルタ処理後のトルク和信号702が変動期間を開始する第2の時点との間の差分を計算することによって決定することができる。実施形態では、フィルタ処理後のトルク和信号702が、フィルタ処理後のトルク和信号702の振幅の周期的振動の平均値を含む時に変動期間を開始する。実施形態では、時間遅延706の値に図4Bに成分404によって示すような支配的関心周波数を乗算することにより、時間遅延706の値を本明細書で説明する変調位相Φに変換することができる。
【0061】
実施形態では、電気ロール位置信号704及びフィルタ処理後のトルク和信号702の各々の複数の連続する期間について時間遅延706の値を計算し、これらの値の平均を使用して、本明細書で説明する変調位相Φを計算する。時間遅延706の複数の値を複数のサイクルにわたって平均化すると、より正確な時間遅延の推定値、従って単一の時間遅延706の計算に依存して変調位相Φを計算する実施形態よりも大きく厚みフラッピングを低減する変調位相Φの計算が得られるという恩恵が受けられる。実施形態では、コントローラ150が、(例えば、フィルタ処理後のトルク和信号702が平均値又は中央値を含む時、及び電気ロール位置信号704が最大値又は最小値を含む時の)特定の値を有するフィルタ処理後のトルク和信号702及び電気ロール位置信号704に関連する測定時間に基づいて自動的に時間遅延706の値を計算する。
【0062】
図8は、トルク和信号を使用してガラス成形装置のエッジローラの回転速度を変調する方法800のフロー図である。方法800は、本明細書で図1図3に関して説明した装置10のコントローラ150によって実行することができる。従って、方法800の説明に役立つように、図1図3に示す様々なコンポーネントを参照する。方法800を実行した結果、ガラスリボン12は、第1及び第2のエッジローラアセンブリ130a、130bを一定の回転速度で動作させた場合よりも均一な厚み166を有することができるようになる。ここでは第1のエッジローラアセンブリ130aを参照するが、方法800は、第2のエッジローラアセンブリ130b又は装置10内の他のエッジローラアセンブリのエッジローラの回転を制御するために実行することもできる。
【0063】
ブロック802において、コントローラ150が、ガラスリボン12の両側に配置されたエッジローラに関連するトルク信号を受信する。例えば、コントローラ150は、本明細書で説明した第1のエッジローラアセンブリ130aの第1及び第2のエッジローラ132a、132bを回転させるために使用される1又は2以上の駆動ユニット137によって生成されたトルク信号を受信することができる。実施形態では、コントローラ150が、特定のエッジローラペアに関連する単一のトルク信号を受信することができる。例えば、実施形態では、コントローラ150によって(トルク和信号を表す)単一のトルク信号が受信されるように、単一の駆動ユニットを使用して第1のエッジローラ132a及び第2のエッジローラ132bの両方を回転させることができる。このような実施形態では、コントローラが、単一の駆動ユニットからのトルク信号を受信することによってトルク和信号を生成することができる。
【0064】
ブロック804において、コントローラ150が、ブロック802で受信したトルク信号をトルク和信号に合成する。例えば、第1及び第2のエッジローラ132a、132bを回転させるために個別の駆動ユニット(例えば、個別のモータ)を使用する実施形態では、各駆動ユニットがトルク信号を生成することができる。コントローラ150は、各個別のトルク信号を受信してトルク和信号に合成することができる。トルク和信号は、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの目標回転速度(例えば、目標回転速度は、ガラスリボン12の所望の延伸速度に基づくことができる)に関連する所定の周波数範囲外の周波数成分を除去するために、本明細書で図5A図5Bに関して説明したようなバンドパスフィルタを使用してフィルタ処理を行うことができる。フィルタ処理後には、バンドパスフィルタに関連する所定のフィルタ誘導型位相シフトに基づいてフィルタ処理後のトルク和信号を位相シフトすることができる。その後、本明細書で説明したように、このフィルタ処理されて位相シフトされたトルク和信号を使用して変調位相Φを決定することができる。
【0065】
ブロック806において、コントローラ150が、トルク和信号の変化を打ち消すように、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの第1及び第2の回転速度ω1、ω2を時間依存的に変調する。本明細書で説明したように、時間と共にトルク和信号が増加する時間間隔は可変の分離距離144(図3Aを参照)が減少していることを示すことができる。このような時間間隔中、コントローラ150は、ガラスが第1のエッジローラアセンブリ130aを通過する速度を維持するように第1及び第2のエッジローラ132a、132bの回転速度を上昇(例えば、第1及び第2の回転速度ω1、ω2を上昇)させることができる。時間と共にトルク和信号が減少する時間間隔は、可変の分離距離(図3Bを参照)が増加していることを示すことができる。このような時間間隔中、コントローラ150は、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの回転速度を低下させる(例えば、第1及び第2の回転速度ω1、ω2を低下させる)ことができる。実施形態では、コントローラ150が、トルク和信号の傾向に基づいて、第1及び第2の回転速度ω1、ω2を(例えば、ルックアップテーブルに記憶されている)所定の量だけ上昇又は低下させる制御信号を供給することができる。例えば、トルク和信号が所定の期間(例えば、第1及び第2のエッジローラ132a、132bの回転周期の約1/4)にわたって閾値振幅だけ増加する場合、コントローラ150は、トルク和信号の振幅の減少が検出されるまで第1及び第2の回転速度ω1、ω2を上昇させることができる。第1及び第2の回転速度ω1、ω2の変調度合いは、トルク和信号の増加又は減少度合いに比例して変化することができる。第1及び第2の回転速度ω1、ω2を変調すると、可変の分離距離144(図3Aを参照)が第1及び第2のエッジローラ132a、132bの回転期間にわたってガラスリボンの厚みに与える影響を小さくすることができる。この変調は、第1及び第2のエッジローラ132a、132bが完全な円形ではないことによる影響を低下させる。
【0066】
実施形態では、コントローラ150が、第1及び第2の回転速度ω1、ω2を周期的に変調する。このような実施形態では、ブロック802においてコントローラ150が最初にトルク信号を受信した時に、第1及び第2のエッジローラ132a、132bは公称目標角速度(nominal target angular velocity)ωNで回転していることができる。第1及び第2の回転速度ω1、ω2を周期的に変調すると、第1及び第2のエッジローラ132a、132bは、(例えば、本明細書で説明した1又は2以上の駆動ユニット137によって生成される電気ロール位置信号によって測定される)その角度位置に依存する速度で回転できるようになる。例えば、実施形態では、コントローラ150が、1又は2以上の駆動ユニット137を第1及び第2のエッジローラ132a、132bの角度位置の関数として変化する角速度で回転させる。トルク和信号が平均値よりも増加及び減少している第1及び第2のエッジローラ132a、132bの角度位置を識別し、特定の角度位置においてトルク和信号が平均値と異なる度合いに応じて、第1及び第2の回転速度ω1、ω2を公称目標角速度ωNよりも上又は下に上昇又は低下させることができる。
【0067】
実施形態では、コントローラ150が、本明細書の方程式1に従って第1及び第2の回転速度ω1、ω2を周期的に変調する。このような実施形態では、コントローラ150が、図9に示す方法900を実行して、本明細書で説明した変調振幅A及び変調位相Φパラメータ値を生成することができる。ブロック902において、コントローラ150が、電気ロール位置信号とトルク和信号との間の時間遅延に基づいて方程式1の変調位相Φを決定することができる。例えば、コントローラ150は、図7に関して上述したものと同様の手順を使用して(例えば、電気ロール位置信号が回転期間の開始を示す時点と、トルク和信号が平均値又は中央値である時点との間の時間差を決定することによって)、フィルタ処理され位相シフトされたトルク和信号と、1又は2以上の駆動ユニット137に関連するエンコーダを介して生成された電気ロール位置信号とを使用して時間遅延を計算することができる。実施形態では、コントローラ150が、本明細書で説明したように計算された変調位相Φを検証する検証ロジックを含むことができる。例えば、コントローラは、推定される変調位相Φを使用して、推定される変調位相Φを使用して以前に測定されたトルク和信号を位相シフトすることができる。コントローラ150は、位相シフトされたトルク和信号を電気ロール位置信号と比較して、推定される変調位相Φが許容差を満たすかどうかを判定することができる。許容差を満たさない場合、トルク和信号及び電気ロール位置信号のさらなるサイクルを測定することによって変調位相Φを再推定することができる。
【0068】
ブロック904において、コントローラ150が、方程式1の変調振幅Aを決定することができる。変調振幅Aは、変調振幅Aを漸増させる試行錯誤法を使用して決定することができる。変調振幅Aが一定に保持されている期間中、コントローラ150は、(例えば、厚みセンサ160からの測定値を使用して)厚み166をモニタすることができる。例えば、コントローラ150は、厚み166を継続的にモニタし、所定の測定期間(例えば、5秒、10秒、30秒、1分、3分、5分、10分、30分、1時間、2時間)にわたるガラスリボン12の厚み範囲を決定することができる。この測定された厚み範囲を、以前の変調振幅Aに関連する以前に測定された値と比較することができる。厚み範囲の減少が測定された場合、コントローラ150は、変調振幅Aを所定の増分(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4)だけ増加させ、変調振幅Aの増加によって厚み範囲がさらに減少するかどうかを判定することができる。特定の変調振幅Aの値によって厚み範囲の増加が観察された場合、コントローラ150は、変調振幅Aを以前の値(例えば、厚み範囲の減少が観察された変調振幅Aの最後の値)まで減少させることができる。コントローラ150は、厚み変動(又は範囲)の減少がもはや観察されなくなるまで、固定又は可変の増分を使用して変調振幅Aを漸増させることができる。変調振幅Aを更新するためにコントローラ150によって使用される増分は、観察された厚み変動の減少度合いに応じて変化することができる。
【実施例
【0069】
本明細書で説明した実施形態は、以下の実施例によってさらに明確になる。図10に、本明細書の方程式1を使用してエッジローラの回転速度を変調する実験結果のプロット1000を示す。この実験結果は、Corning Lotus(登録商標)NXTガラスの製造中に達成されたものである。変調位相Φは、本明細書で図7に関して説明した方法を使用して決定した。プロット1000内の線1002は、測定されたガラスリボンの厚みの移動窓範囲(moving window range)を表す。縦線1006、1008、1010、1012、1014、1016、1018及び1020は、本明細書で図9に関して説明した方法900に従って変調振幅Aが増加した時点を表す。
【0070】
縦線1006の左側の期間中には、エッジローラの回転速度を変調しなかった。図示のように、この期間の実質的に全体にわたり、厚みの移動窓範囲は4マイクロメートル(μm)以上であった。縦線1006及び1008間では、変調振幅Aを0.3に設定した。この結果、この時間窓内では厚みの移動窓範囲が4μm未満であった。従って、縦線1008において変調振幅Aを0.5に増加させたところ、厚みの移動窓範囲はさらに減少した。このような厚みの移動窓範囲の減少は、縦線1012後に変調振幅を0.9に設定するまで観察され続けた。縦線0.9及び1.1間では、厚みの移動窓範囲が3.0μm未満として測定され、未変調の場合よりも大幅に改善された。縦線1014において変調振幅Aを1.1に増加させると、厚みの移動窓範囲は、変調振幅Aが0.9であった時の厚みの移動窓範囲よりも増加した。さらに縦線1016において変調振幅Aを1.3に増加させると、厚みの移動窓範囲はさらに増加した。従って、縦線1018において変調振幅Aを1.1に減少させると、変調振幅Aが1.3であった時と比べて再び厚みの移動窓範囲の減少が観察された。従って、変調振幅Aをさらに0.9まで減少させると、厚みの初期最小移動窓範囲が観察された。この実施例は、変調振幅Aをどのように決定すればガラスリボンの厚み変動を大幅に低減できるかを示す。
【0071】
以上、ガラス製造装置のエッジローラの駆動ユニットの動作方法を図示し説明した。トルク和信号において観察される変動を打ち消すようにエッジローラの回転速度を時間依存的に変調すると、異なる断面形状を有するエッジローラによって生じる厚みフラッピングが実質的に減少することが示された。トルク和信号は、エッジローラの異なる断面形状に起因するエッジローラ間の可変の分離距離の代用として有益に機能し、エッジローラを通るガラスの流れを維持するようにエッジローラの回転速度を公称目標速度よりも上昇又は低下させることによってガラスリボンの厚みの変動を低下させてより均一な厚みのガラスシートをもたらすことができる期間を示す。
【0072】
当業者には、特許請求する主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書で説明した実施形態に様々な修正及び変形を行えることが明らかであろう。従って、本明細書は、このような修正及び変形が添付の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内に入ることを条件に、本明細書で説明した様々な実施形態の修正及び変形も対象とするように意図される。
【符号の説明】
【0073】
12 ガラスリボン
17 溶融ガラス
60 成形容器
62 成形ウェッジ
64a 成形ウェッジの端部
66a、66b 成形ウェッジの成形面部分
70 根底部
72 延伸面
110b ガラスリボンの第2の主要面
130a 第1のエッジローラアセンブリ
132 第1のエッジローラペア
132a 第1のエッジローラ
132b 第2のエッジローラ
136 第1のシャフト
137 駆動ユニット
138 第2のシャフト
140a 第1の回転軸
140b 第2の回転軸
160 厚みセンサ
166 ガラスリボンの厚み
170 測定位置
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】