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特表2024-525625マスサイトメトリーのための金属含有ポリマー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】マスサイトメトリーのための金属含有ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/30 20060101AFI20240705BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20240705BHJP
   G01N 15/10 20240101ALN20240705BHJP
【FI】
C08F8/30
C08F20/00
G01N15/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500546
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 CA2022051073
(87)【国際公開番号】W WO2023279211
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/219,787
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/359,182
(32)【優先日】2022-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524004847
【氏名又は名称】ザ ガバニング カウンシル オブ ザ ユニバーシティ オブ トロント
(71)【出願人】
【識別番号】524007169
【氏名又は名称】スタンダード バイオトゥールズ カナダ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ウィニク,ミッチェル エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,エドモンド チ ンガ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,イェフェン
(72)【発明者】
【氏名】マジョニス,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ペン
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL08P
4J100BA05H
4J100BA08H
4J100BA11H
4J100BA27H
4J100BA28H
4J100BA34H
4J100BB07P
4J100BC43P
4J100BC65H
4J100BC66H
4J100BD04H
4J100CA01
4J100CA31
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA19
4J100HA35
4J100HA61
4J100HA62
4J100HC13
4J100HC47
4J100HC55
4J100HC63
4J100HE14
4J100JA53
(57)【要約】
本開示は、式Iの化合物、軟質金属を含む元素タグ、ならびにマスサイトメトリーを実行するための方法およびそのためのキットに関する。式I
【化1】
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】
(式中、
Aは、ポリマー骨格であり、場合によっては、前記ポリマーは、線状ポリマー、分岐ポリマー、超分岐ポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合わせである;
各Bは、独立して、場合によっては、C1~C6 COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、ポリエーテル、もしくはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の極性官能基で置換された、窒素含有5員~7員の複素環である;ならびに
Lは、存在しないかリンカーである;
各Lは、独立して存在しないかリンカーである;
各Rは、独立して、溶解度調節剤、反応性官能基、生体分子、またはそれらの組み合わせから選択される第1の修飾基である;
Xは、エステル、エーテルおよびアミドから選択される官能基である;
各Lは、独立して存在しないかリンカーである;
各Rは、独立して、H、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C3~C8シクロアルキル、OH、C1~C10アルコキシ、C1~C10アルキルアミン、溶解度調節剤、反応性官能基、生体分子およびそれらの組み合わせである;
nは、0~7の整数である;
mは、0~4の整数である;
pは、0~3の整数である;ならびに
qは、0超の整数である)。
【請求項2】
各Bが、独立して、窒素含有5員または6員のヘテロアリールであり、場合によっては、各Bが、独立して、場合によっては、COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、ポリエーテル、もしくはそれらの組み合わせから選択される1つもしくは複数の極性官能基で置換されたピリジンまたはイミダゾールであり、そして、場合によっては、1つまたは複数のBが、軟質金属に配位されている、および/または1つもしくは複数の生体分子にコンジュゲートしている、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1つまたは複数のBが、場合によっては、Re、Pt、Pd、Nb、Tc、Hg、Ag、Au、Mo、Ru、Rh、Cd、W、Os、もしくはそれらの混合物から選択される軟質金属に配位されている、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
またはRが、生体分子であり、場合によっては、前記生体分子が、抗体などのアフィニティ試薬である、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Xが、-C(O)NR-または-NRC(O)-であり、Rが、HまたはC1~C4アルキルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Xが、-C(O)NR-であり、式Ia
【化2】
の構造を有する、またはXが、-NRC(O)-であり、式Ib
【化3】
の構造を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
Xが、-C(O)NR-であり、式Ic
【化4】
の構造を有する、またはXが、-NRC(O)-であり、式If
【化5】
の構造を有するか、式Idもしくは式Ie
【化6】
の構造を有するか、式Igもしくは式Ih
【化7】
の構造を有し、
式中、各Rが、H、C1~C5アルキル、C2~C5アルケニル、C1~C6 COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、またはポリエーテルから独立して選択される、
請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
各Rが、H、-(CH1~3COOH、-(CH1~3O(CH1~2CH、-(CH2~4OH、-(CH2~5P(O)(OCHCH、または-CHCH(OMe)から独立して選択される、および/またはnが、2、3、4、もしくは5である、mが、0、1、もしくは2である、またはpが、1もしくは2である、請求項7または8に記載の化合物。
【請求項9】
Aが、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリアミノ酸、ポリビニルアミン、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリエチレングリコール、多糖、デンドリマー、それらのコポリマー、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
各リンカーが、C3~C8アルキルアミン、C3~C8アルキレン、C3~C8シクロアルキル、C3~C8ヘテロシクロアルキル、5員もしくは6員のアリールもしくはヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルアリール、C3~C8シクロアルキルヘテロアリール、C(O)、C(O)O、アミド、アミン、チオエーテル、マレイミド-チオールコンジュゲート、ポリエチレングリコール(PEG)、またはそれらの混合物を独立して含むか、それらから独立して選択され、場合によっては、前記アミン、アルキレン、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルキルアリール、およびシクロアルキルヘテロアリールのそれぞれが、独立して、非置換であるか、C1~C6アルキル、C1~C6アルケニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8ヘテロシクロアルキル、アミド、エステル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルアリール、C3~C8シクロアルキルヘテロアリール、CN、もしくはそれらの混合物から選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
各Lおよび/またはLが、C3~C8アルキレン、C3~C8アルキルアミン、エステル、アミン、アミド、チオエーテル、マレイミド-チオールコンジュゲート、PEG、もしくはそれらの混合物を独立して含むか、それらから独立して選択され、場合によっては、前記アルキレンおよびアルキルがそれぞれ、独立して非置換であるか、C1~C6アルキル、C1~C6アルケニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8ヘテロシクロアルキル、アミド、エステル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルアリール、C3~C8シクロアルキルヘテロアリール、CN、もしくはそれらの混合物から選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
各Rの前記第1の修飾基の前記溶解度調節剤および前記第2の修飾基の前記溶解度調節剤が、それぞれ独立して、ポリエチレングリコール(PEG)、糖、オリゴ糖、またはポリ(カルボキシルベタイン)メタクリレートもしくはポリ(スルホベタイン)メタクリレート(PBSMA)などの双性イオンポリマーを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
前記反応性官能基が、1つまたは複数の生体分子への結合のためのものであり、場合によっては、前記1つまたは複数の生体分子が、小分子、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、脂質、炭水化物、アフィニティ試薬、場合によっては、抗体、もしくはそれらの混合物からそれぞれ独立して選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
【化8】
から選択されるか、
【化9】
から選択されるか、
から選択され、
式中、sが、約1~約50、約2~約40、約5~約30、約10~約30、約5~約35、または約20~約30であり、rが、約3~約200、約6~約30、または約10~約25であり、R、R、L、LおよびRが、それぞれ請求項7から8のいずれか一項で定義された通りである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
【化10】
から選択され、
式中、sが、約1~約50、約2~約40、約5~約30、約10~約30、約5~約35、または約20~約30であり、rが、約3~約200、約6~約30、または約10~約25であり、Rが、請求項7から8のいずれか一項で定義された通りである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
式Iの化合物が、1個または複数個の金属Mにキレート化され、式II
【化11】
の構造またはその誘導体もしくは塩を有する、
請求項1から15のいずれか一項に記載の式Iの化合物。
【請求項17】
マスサイトメトリーにおける使用のための、請求項1から15のいずれか一項で定義された通りの式Iの化合物または請求項16で定義された通りの式IIの化合物。
【請求項18】
複数のキレート基を含む線状または分岐ポリマーを含む元素タグであって、各キレート基が、軟質金属を結合することができ、前記軟質金属が、単一同位体であり、少なくとも1つのキレート基が、前記軟質金属の軟質金属原子にキレート化されている、元素タグ。
【請求項19】
キットであって、
軟質金属の単一同位体の複数の軟質金属原子を含む同位体組成物;および
2つの窒素含有5員または6員の複素環を含む複数のキレート基を含む線状または分岐ポリマーを含む元素タグ(前記元素タグの各キレート基は、前記同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を含むか、前記同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を結合することができる)
を含み;
場合によっては、放射性軟質金属をいずれも含まない、キット。
【請求項20】
前記元素タグが、生体分子を結合するように官能化されている、および/または生体分子に結合している、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記同位体組成物が、前記元素タグとは別に提供される軟質金属溶液であり、各キレート基が、前記同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を結合することができる、請求項19または20に記載のキット。
【請求項22】
さらに、生体分子、場合によっては、オリゴヌクレオチドもしくは抗体を含み、および/またはさらに、追加の同位体組成物を含み、前記追加の同位体組成物が、前記同位体組成物の前記軟質金属の前記単一同位体とは異なる軟質金属の追加の単一同位体の複数の追加の軟質金属原子を含む、請求項19から21のいずれか一項に記載のキット。
【請求項23】
各元素タグが、独立して、請求項1から15のいずれか一項で定義された通りの式Iの化合物または請求項16で定義された通りの式IIの化合物である、請求項19から22のいずれか一項に記載のキット。
【請求項24】
方法であって、
軟質金属の単一同位体の複数の軟質金属原子を含む同位体組成物を提供するステップ;
それぞれ独立して2つの窒素含有5員もしくは6員の複素環を含む複数のキレート基を含む線状または分岐ポリマーを含む元素タグ(各キレート基は、前記同位体組成物の少なくとも1個の前記軟質金属原子を結合することができる)を提供するステップ;ならびに
前記同位体組成物の前記軟質金属原子を前記元素タグの前記1つまたは複数のキレート基に結合するステップ
を含み;
前記軟質金属原子が、非放射性である、方法。
【請求項25】
前記同位体組成物が、同位体の天然混合物を含まず、場合によっては、前記方法が、追加の同位体組成物を提供するステップを含み、前記追加の同位体組成物が、前記同位体組成物の前記非放射性の軟質金属の前記単一同位体とは異なる非放射性の軟質金属の追加の単一同位体の複数の追加の軟質金属原子を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
生体試料中の検体の分析のための方法であって、
(i)元素タグ付きアフィニティ試薬を前記検体とインキュベートするステップであって、前記元素タグ付きアフィニティ試薬が、元素タグでタグ付けされたアフィニティ試薬を含み、前記元素タグが、それぞれ独立して2つの窒素含有5員もしくは6員の複素環を含む複数のキレート基を有する線状または分岐ポリマーを含み、前記元素タグがさらに、軟質金属の単一同位体の複数の軟質金属原子を含む、ステップ;
(ここで:
前記元素タグの各キレート基は、少なくとも1個の前記軟質金属原子を含むか、少なくとも1個の前記軟質金属原子を結合することができ、
前記軟質金属原子は、非放射性であり、そして
前記アフィニティ試薬は、前記検体を特異的に結合する)
(ii)未結合の元素タグ付きアフィニティ試薬を、結合した元素タグ付きアフィニティ試薬から分離するステップ;ならびに
(iii)前記検体に結合している前記アフィニティ試薬に結合した前記元素タグを、質量分析原子分光法により分析するステップ
を含む、方法。
【請求項27】
前記元素タグ付きアフィニティ試薬を前記検体とインキュベートするステップが:
2つまたはそれ以上の差別的な元素タグ付きアフィニティ試薬を2つまたはそれ以上の検体とインキュベートするステップであって、前記元素タグ付きアフィニティ試薬が、前記2つまたはそれ以上の検体と特異的に結合して2つまたはそれ以上の差別的にタグ付けされた検体を生成するステップを含み、前記アフィニティ試薬に結合した前記元素タグを分析するステップが、前記2つまたはそれ以上の検体に結合した前記差別的な元素タグを質量分析原子分光法により分析するステップを含む、
請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記元素タグ付きアフィニティ試薬が、生体試料中の検体に結合するように構成され、前記生体試料が、細胞を含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記軟質金属が、Re、Pt、Pd、Nb、Tc、Hg、Ag、Au、Mo、Ru、Rh、Cd、W、Os、またはそれらの混合物から選択される、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記元素タグが、請求項1から15のいずれか一項で定義された通りの式Iの化合物、または請求項16で定義された通りの式IIの化合物であるか、それを含む、請求項24から74のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、2021年7月8日に出願された米国特許出願番号第63/219,787号、および2022年7月7日に出願された米国特許出願番号第63/359,182号からの優先権の利益を主張し、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、マスサイトメトリーのための元素タグとしての金属含有ポリマー、特に軟質金属含有ポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
金属含有ポリマーは、20世紀に開発された重要なクラスのポリマーの1つである。1,2異なる金属ユニットを従来の有機ポリマーに組み込むことにより、新規の磁気的、光学的、電子的、触媒的および生理活性的特性を有する機能性ポリマーを得ることができ、検知、触媒、生体イメージング、薬物送達、抗癌剤および殺生物剤などの多様な分野で幅広い適用が認められている。3~7近年、マスサイトメトリーとして既知の新規の1細胞プロテオミクス技術は、スペクトルのオーバーラップによる従来のフローサイトメトリーの多重化能力の限界に対処するために開発された。この技術の特徴は、誘導結合プラズマ飛行時間型質量分析(ICP-MS)検出と組み合わせた金属タグ付き抗体の使用である。異なる重金属イオンの同位体で抗体をタグ付けすることにより、異なる質量チャンネルにおける信号を同時にモニターすることにより個々の細胞で複数のバイオマーカーの発現を調査することができる。マスサイトメトリーの開発は、金属含有ポリマーが高パラメータ1細胞解析のための元素質量タグとして使用される新たな機会を提供する。
【0004】
15年にわたり、数種類の金属キレートポリマーは、マスサイトメトリーへの適用のために、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)または1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)などのペンダントアミノカルボキシレートキレート化剤を用いて開発されている。9~13これらのキレート化剤は、ランタニド、イットリウムおよびビスマスなどの硬質金属イオンの結合に特に効果的である。これらのポリマータグを用いて、研究者らは、細胞あたり40超の異なるバイオマーカーを測定することができる。これらのキレート化剤は、PdまたはPtなどの軟質金属のイオンの結合に効果が低い。1つの研究では、マスサイトメトリー用途におけるプラチナまたはパラジウムイオンのための担体としての多種多様のアミノカルボキシレートペンダント基を有する一連の金属キレートポリマーが調査された。14金属含有ポリマーを調製することができるが、それらは標的バイオマーカーを染色することができず、細胞に関連する軟質リガンド(おそらくチオール)との相互作用を通じて重金属を失うように見えた。しかし、マスサイトメトリーにさらに新しい金属を導入する、使用することができる質量チャンネルの数を増やす、そして、このようにマスサイトメトリーの能力を拡大するといった要望は依然として大きくなっている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書で記載されているものは、Re、Hg、またはAgを含む軟質金属イオンを結合するのに適切なジピコリルアミン(DPA)およびイミダゾールなどの複素環ペンダント基を有する金属キレートポリマーである。これらのポリマーが、マスサイトメトリー用途に有効であることが示されている。本明細書の実施形態において示されるように、金属タグ付き抗体は、1細胞免疫表現型解析について正確な定量を提供し、マスサイトメトリー免疫測定法のための市販試薬と組み合わせて使用することができる。DPAキレート基を含むポリマーは、PBMCの4-plexアッセイで使用され、細胞集団を定量することができることが示された。DPAは、多数の異なる分極可能な重金属イオンにとって有効な金属キレート化剤である。したがって、これらの結果は、マスサイトメトリーに新しい質量単位を導入する。
【0006】
得られるキレートは、リガンド置換に対して非常に素晴らしい安定性およびTc(I)およびRe(I)のd低スピン電子配置による分解を示す。17,19,20安定性が、同様の電子配置の他の軟質金属で観察され得ることが理解され得る。各軟質金属元素が複数の天然に存在する同位体を有しているので、軟質金属キレートポリマーは、マスサイトメトリー用途のための新規質量チャンネルを可能にする。
【0007】
マスサイトメトリー用途で使用される金属含有ポリマーは、1つまたは複数の以下の特徴を有する可能性がある:第1に、ポリマーは、鎖長の分布が比較的狭い可能性があり、そのため、各標識抗体は、同様の数の金属イオンを保持している。第2に、金属は、用途での保存中(例えば、凍結乾燥された形態で)、および/またはマスサイトメトリー実験が行われる可能性がある時間にわたって、水溶液中での使用中にほとんどまたは全く交換されないように結合することができる。第3に、ポリマーは、抗体コンジュゲーションのための官能基を含む可能性がある。最後に、ポリマーは、バイオアッセイが水性媒体中で実行されるので、水溶性であり得る。上記の複数の特徴を同時に満たすことは、統合的課題を表している。
【0008】
一態様において、本開示は、式I
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、
Aは、ポリマー骨格であり、場合によっては、ポリマーは、線状ポリマー、分岐ポリマー、超分岐ポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合わせである;
各Bは、独立して、場合によっては、C1~C6 COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、ポリエーテル、もしくはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の極性官能基で置換されている窒素含有5員~7員の複素環である;
Lは、存在しないかリンカーである;
各Lは、独立して存在しないかリンカーである;
各Rは、独立して、溶解度調節剤、反応性官能基、生体分子、またはそれらの組み合わせから選択される第1の修飾基である;
Xは、エステル、エーテルおよびアミドから選択される官能基である;
各Lは、独立して存在しないかリンカーである;
各Rは、独立して、H、C1~C8アルキル、C3~C8シクロアルキル、OH、C1~C10アルコキシ、C1~C10アルキルアミン、溶解度調節剤、反応性官能基、生体分子およびそれらの組み合わせである;
nは、0~50の整数である;
mは、0~40の整数である;
pは、0~30の整数である;ならびに
qは、0超の整数である)
の化合物を含む。
【0011】
別の態様において、本開示は、式Iの化合物を含み、式Iの化合物は、1個または複数個の金属Mにキレート化され、化合物は、式II
【0012】
【化2】
【0013】
の構造またはその誘導体もしくは塩を有する。
【0014】
別の態様において、本開示は、1つまたは複数の式Iの化合物および1個または複数個の金属Mを含む組成物を含む。
【0015】
別の態様において、本開示は、マスサイトメトリーで使用するための式Iまたは式IIの化合物を含む。
【0016】
別の態様において、本開示は、複数のキレート基を含む線状または分岐ポリマーを含む元素タグを含み、少なくとも1つのキレート基は、軟質金属の軟質金属原子にキレート化され、軟質金属は、単一同位体である。
【0017】
別の態様において、本開示は
軟質金属の単一同位体の複数の軟質金属原子を含む同位体組成物;および
2つの窒素含有5員もしくは6員の複素環を含む複数のキレート基を含む線状または分岐ポリマーを含む元素タグ(各キレート基は、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を含むか、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を結合することができる)
を含むキットを含み;
キットは、放射性軟質金属をいずれも含まない。
【0018】
別の態様において、本開示は:
軟質金属の単一同位体の複数の軟質金属原子を含む同位体組成物を提供するステップ;
それぞれ独立して2つの窒素含有5員または6員の複素環を含む複数のキレート基を含む線状または分岐ポリマーを含む元素タグ(各キレート基は、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を結合することができる)を提供するステップ;ならびに
同位体組成物の軟質金属原子を元素タグの1つまたは複数のキレート基に結合するステップ
を含む方法を含み;
軟質金属原子は、非放射性である。
【0019】
別の態様において、本開示は、生体試料中の検体の分析のための方法を含み、その方法は:
(i)元素タグ付きアフィニティ試薬を検体とインキュベートするステップであって、元素タグ付きアフィニティ試薬が、元素タグでタグ付けされたアフィニティ試薬を含み、元素タグが、それぞれ独立して2つの窒素含有5員もしくは6員の複素環を含む複数のキレート基を有する線状または分岐ポリマーを含み、元素タグがさらに、軟質金属の単一同位体の複数の軟質金属原子を含む、ステップ;
(ここで:
元素タグの各キレート基は、少なくとも1個の軟質金属原子を含むか、少なくとも1個の軟質金属原子を結合することができ、
軟質金属原子は、非放射性であり、そして
アフィニティ試薬は、検体を特異的に結合する)
(ii)未結合の元素タグ付きアフィニティ試薬を、結合した元素タグ付きアフィニティ試薬から分離するステップ;ならびに
(iii)検体に結合しているアフィニティ試薬に結合した元素タグを、質量分析原子分光法により分析するステップ
を含む。
【0020】
本開示の例証的実施形態を、図面に関連してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、化合物I-1のH-NMR(600MHz)スペクトルである。
図2図2(a)は、Re担持ポリマーの芳香族領域のH-NMR(600MHz)スペクトルである。図2(b)は、Re塩、化合物I-1、およびRe担持化合物II-1のFTIRスペクトルである。
図3図3(a)~図3(e)は、異なる力価でのヒトPBMC内の170Er-CD3対187Re-CD20の二軸散布図である。図3(f)は、最適力価でのヒトPMBC内の170Er-CD3対147Sm-CD20の二軸散布図である。
図4図4(a)は、RAFT反応混合物のH-NMR(600MHz)スペクトルであり、図4(b)は、PFPAモノマーのRAFT重合により合成されたポリ(PFPA)のGPCトレースである。
図5図5は、ポリ(PFPA)のH-NMR(600MHz)スペクトルおよびポリ(PFPA)の19F-NMR(564MHz)スペクトルである。
図6図6は、化合物1-2(上)、化合物1-3(中央)、および化合物1-4(下)のH-NMR(600MHz)スペクトルである。
図7図7は、リジンベースのレニウムキレート化剤を用いるポリPFPAのアミノ分解を表す一連の19F-NMR(564MHz)スペクトルである。
図8図8は、ポリマー2-2のH-NMR(600MHz)スペクトルおよびポリマー2-2の19F-NMR(564MHz)スペクトルである。
図9図9は、ポリマー2-2およびDDMAT CTAのUV-可視スペクトルである。
図10図10は、ポリマー2-2のPEG化によるポリマー2-3のH-NMR(600MHz)スペクトルである。
図11図11(a)は、ビス-Mal-PEGH-NMR(600MHz)スペクトルである。図11(b)は、ビス-Mal-PEGおよびレニウム塩混合物のH-NMR(600MHz)スペクトルである。
図12図12は、凍結乾燥されたレニウム担持ポリマー化合物II-1の画像である。
図13図13(a)は、PBS中のRe担持ポリマー化合物II-1のUV-可視スペクトルである。図13(b)は、純CD20抗体のFPLCクロマトグラムである。図13(c)は、抗体-ポリマーコンジュゲートのFPLCクロマトグラムである。
図14A図14(a)は、ポリマー3-2/I-5のH-NMR(600MHz)スペクトルであり、図14(b)は、化合物I-1のH-NMR(600MHz)スペクトルである。
図14B図14(a)は、ポリマー3-2/I-5のH-NMR(600MHz)スペクトルであり、図14(b)は、化合物I-1のH-NMR(600MHz)スペクトルである。
図15図15は、ポリマー3-2/I-5のFTIRスペクトルである。
図16図16は、Pt担持ポリマー4-1/II-2のH-NMR(600MHz)スペクトルである。
図17図17は、異なる力価でのヒトPBMC内での170Er-CD3対195Pt-CD20ならびにTリンパ球およびBリンパ球内での170Er-CD3対147Sm-CD20の一連の二軸散布図である。
図18図18は、ポリマー2-3のH-NMR(600MHz)スペクトルである。
図19図19は、Hg担持ポリマー5-1/II-3のH-NMR(600MHz)スペクトルである。
図20図20は、Ag担持ポリマー6-1/II-4のH-NMR(600MHz)スペクトルである。
図21図21は、(a)Pt担持ポリマー14-3/II-6(矢印は、Ptでの金属化後のピリジルプロトンの化学シフト変化を示す)、および(b)Hg担持ポリマー14-2/II-5(矢印は、Hgでの金属化後のピリジルプロトンの化学シフト変化を示す)のH-NMR(600MHz)スペクトルである。
図22図22は、化合物11-4のH-NMR(600MHz)スペクトルである。
図23図23は、化合物I-11のH-NMR(600MHz)スペクトルである。
図24図24は、化合物I-12のH-NMR(600MHz)スペクトルである。
図25図25は、種々の濃度のポリマーコンジュゲートでCD20抗体にコンジュゲートした本開示のポリマーを含むレニウムタグ付き双性イオン性溶解度調節剤によるPBMCからのCD20+B細胞の同定のマスサイトメトリー免疫測定結果である。Maxpar(商標)147Sm-CD20コンジュゲートを陽性対照として使用した。
図26図26は、種々の濃度のポリマーコンジュゲートで、CD8a抗体にコンジュゲートした本開示のポリマーを含むレニウムタグ付き双性イオン性溶解度調節剤によるPBMCからのCD8+T細胞の同定のマスサイトメトリー免疫測定結果である。Maxpar(商標)146Nd-CD8aコンジュゲートを陽性対照として使用した。
図27図27は、種々の濃度のポリマーコンジュゲートで、CD20抗体にコンジュゲートした本開示のポリマーを含むレニウムタグ付き双性イオン性溶解度調節剤を用いてPBMC内で非T/B細胞(CD3-CD20-)から得られた187Reシグナルおよび147Smシグナルのシグナル分配ヒストグラムを示すグラフである。Maxpar(商標)147Sm-CD20コンジュゲートを対照として使用した。
図28図28は、種々の濃度のポリマーコンジュゲートで、CD8a抗体にコンジュゲートした本開示のポリマーを含むレニウムタグ付き双性イオン性溶解度調節剤を用いてPBMC内でB細胞(CD3-CD20+)から得られた187Reシグナルおよび146Ndシグナルのシグナル分配ヒストグラムを示すグラフである。Maxpar(商標)146Nd-CD8aコンジュゲートを対照として使用した。
図29図29は、PEG修飾レニウムポリマー(グループA、1ug/mL、2ug/mLおよび5ug/mLのポリマー濃度)および双性イオン修飾レニウムポリマー(グループB、1ug/mL、2ug/mLおよび5ug/mLのポリマー濃度)の両方の非特異的結合テストからの結果を示すグラフである。
図30図30は、化合物16-3のH-NMR(600MHz)スペクトルである。
図31図31は、本開示のグルタチオン修飾ポリマー対本開示の非グルタチオン修飾ポリマーの非特異的結合テストからの結果を示す一連のグラフである。Maxpar(商標)を陽性対照として使用した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
I.定義
特に指示がない限り、本段落および他の段落に記載の定義および実施形態は、当業者に理解されるように、それらが適している、本明細書に記載の本開示のすべての実施形態および態様に適用されることが意図される。
【0023】
本明細書で使用される用語「本開示の化合物(compound of the disclosure)」または「本開示の化合物(compound of the present disclosure)」などは、式Iまたは式IIの化合物、それらの塩、溶媒和物および/または誘導体を指す。
【0024】
本明細書で使用される用語「および/または(and/or)」は、列記された項目が個々にまたは組み合わせて存在するか、使用されることを意味する。事実上、この用語は、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」列記された項目が使用されるか存在することを意味する。その薬学的に許容される塩および/または溶媒和物に関する用語「および/または(and/or)」は、本開示の化合物が、個々の塩および水和物として存在し、同様に、例えば本開示の化合物の塩の溶媒和物と組み合わせて存在することを意味する。
【0025】
本開示で使用されるように、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(その)」は、文脈上明確にそうでないことが指示されていない限り、複数の参照を含む。例えば、「化合物(a compound)」を含む一実施形態は、1つの化合物、または2つもしくはそれ以上の追加の化合物を有する、ある特定の態様を提示すると理解されるべきである。
【0026】
追加のまたは第2の化合物などの「追加の」または「第2の」構成要素を含む実施形態において、本明細書で使用される第2の構成要素は、他の構成要素または第1の構成要素とは化学的に異なる。例えば、第2の構成要素および第1の構成要素が、同じキレート化剤を有する可能性がある場合、第2の構成要素にキレート化される金属は、第1の構成要素にキレート化される金属とは異なる可能性がある。「第3の」構成要素は、他の、第1の、および第2の構成要素とは異なり、さらに、列挙されたまたは「追加の」構成要素は、同様に異なる。
【0027】
本開示および特許請求の範囲で使用されるように、単語「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などのあらゆる形態の含む(comprising))、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などのあらゆる形態の有する(having))、「含む(including)」(ならびに「含む(include)」および「含む(includes)」などのあらゆる形態の含む(including))または「含む(containing)」(ならびに「含む(contain)」および「含む(contains)」などのあらゆる形態の含む(containing))は、包括的であるか制限がなく、追加の、列挙されていない要素または工程段階を排除しない。
【0028】
本明細書で使用される用語「からなる(consisting)」およびその派生語は、述べられた特徴、要素、構成要素、基、整数、および/またはステップの存在を明示する閉じた用語であることが意図され、また、他の述べられていない特徴、要素、構成要素、基、整数および/またはステップの存在を排除する。
【0029】
本明細書で使用される用語「本質的にそれからなる(consisting essentially of)」は、述べられた特徴、要素、構成要素、基、整数、および/またはステップの存在ならびにこれらの特徴、要素、構成要素、基、整数、および/またはステップの基本的および新規の特徴に実質的に影響しないものを明示することを意図している。
【0030】
本明細書で使用される用語「適切な」は、特定の化合物または条件の選択が、実行される特定の合成操作、変換される分子の同定および/または化合物の特定の使用に依存しているが、その選択が、当技術分野において訓練を受けた技能の範囲内であることを意味する。
【0031】
本開示の実施形態において、本明細書に記載の化合物は、少なくとも1つの不斉中心を有する場合がある。化合物が1つ以上の不斉中心を保持する場合、それらは、ジアステレオマーとして存在する場合がある。すべてのそのような異性体および任意の割合でのそれらの混合物が、本開示の範囲内に包含されることが理解されるべきである。化合物の立体化学が、本明細書に列記された任意の所与の化合物で示されるようなものである可能性がある一方で、そのような化合物が、ある特定の量(例えば、20%未満、適切には10%未満、より適切には5%未満)の代替の立体化学を有する本開示の化合物を含む場合もあることがさらに理解されるべきである。分離、精製もしくは部分精製の光学異性体またはそれらのラセミ混合物としてのあらゆる光学異性体が、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0032】
本開示の化合物はまた、異なる互変異性型で存在する場合があり、化合物を形成するあらゆる互変異性型、およびそれらの混合物が、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0033】
この説明は、当業者により使用される多数の化学用語および略語を指す。それにも関わらず、選択された用語の定義は、明確さおよび一貫性のために提供される。
【0034】
本明細書で使用される用語「約(about)」、「実質的に(substantially)」および「およそ(approximately)」は、最終の結果が大きく変化しないような修飾された用語の合理的な偏差の量を意味する。これらの程度の用語は、この偏差がそれを修飾する単語の意味を否定しない場合、または文脈上特にそうでないことが当業者に示唆されていない限り、修飾された用語の少なくともまたは最大±5%の偏差を含むものとして解釈されるべきである。
【0035】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、単独で使用される場合でも、別の基の一部として使用される場合でも、直鎖または分岐鎖の飽和アルキル基を意味する。当該アルキル基において可能である炭素原子の数は、接頭語「Cn1~n2」により指示される。例えば、用語C1~10アルキルは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
【0036】
用語「アルキレン」は、単独で使用される場合でも、別の基の一部として使用される場合でも、直鎖または分岐鎖の飽和アルキレン基、すなわち、その両末端に置換基を含む飽和の炭素鎖を意味する。当該アルキレン基で可能である炭素原子の数は、接頭語「Cn1~n2」により指示される。例えば、用語C2~6アルキレンは、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有するアルキレン基を意味する。
【0037】
「利用可能な水素原子」または「利用可能な原子」におけるような用語「利用可能な」は、置換基により置き換えることができることが当業者に既知である原子を指す。
【0038】
本明細書で使用される用語「アミン」または「アミノ」は、単独で使用される場合でも、別の基の一部として使用される場合でも、一般式NR’R’’(式中、R’およびR’’は、水素またはC1~6アルキルからそれぞれ独立して選択される)の基を指す。
【0039】
本明細書で使用される用語「シクロアルキル」は、単独で使用される場合でも、別の基の一部として使用される場合でも、1つまたは複数の環を含む飽和の炭素環式基を意味する。当該シクロアルキル基で可能である炭素原子の数は、数的接頭語「Cn1~n2」により指示される。例えば、用語C3~10シクロアルキルは、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する。
【0040】
本明細書で使用される用語「アリール」は、単独で使用される場合でも、別の基の一部として使用される場合でも、少なくとも1つの芳香族環を含む炭素環式基を指す。本開示の一実施形態において、フェニル、インダニルまたはナフチルなどのアリール基は、6個、9個または10個の炭素原子を含む。
【0041】
本明細書で使用される用語「複素環」、「複素環の」などは、単独で使用される場合でも、別の基の一部として使用される場合でも、1個または複数個の原子が、O、SおよびNから選択されるヘテロ原子である少なくとも1つの芳香族環または非芳香族環を含む環状基を指す。複素環基は、飽和または不飽和のいずれかである(すなわち、1つまたは複数の二重結合を含む)。複素環基が、接頭語Cn1~n2を含む場合、この接頭語は、1個または複数個、適切には1~5個の環原子が上で定義した通りのヘテロ原子で置き換えられている、対応する炭素環式基における炭素原子の数を指示する。
【0042】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリール」、「ヘテロ芳香族の」などは、単独で使用される場合でも、別の基の一部として使用される場合でも、1個または複数個の元素がO、SおよびNから選択されるヘテロ原子である少なくとも1つのヘテロ芳香環を含む環状基を指す。ヘテロアリール基が、接頭語Cn1~n2を含む場合、この接頭語は、1個または複数個、適切には1~5個の環原子が上で定義した通りのヘテロ原子で置き換えられている、対応する炭素環式基における炭素原子の数を指示する。
【0043】
アリールおよびシクロ基を含むすべての環状基は、1つまたは1つ以上の環を含む(すなわち、多環式である)。環状基が1つ以上の環を含む場合、環は、縮合しているか、架橋しているか、スピロ縮合しているか、1つの結合により結合されている可能性がある。
【0044】
第2の環と「縮合」している第1の環は、第1の環と第2の環とが、その間の2個の隣接する原子を共有していることを意味する。
【0045】
第2の環と「架橋」している第1の環は、第1の環と第2の環とが、その間の2個の隣接していない原子を共有することを意味する。
【0046】
第2の環と「スピロ縮合」している第1の環は、第1の環と第2の環とが、その間の1個の原子を共有していることを意味する。
【0047】
本明細書で使用される用語「ハロ」は、ハロゲン原子を指し、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含む。
【0048】
用語「場合によっては置換された」は、非置換であるか、1つまたは複数の置換基で置換されている基、構造、または分子を指す。
【0049】
本明細書で使用される用語「atm」は、周囲環境を指す。
【0050】
本明細書で使用される用語「MS」は、質量分析法を指す。
【0051】
本明細書で使用される用語「aq.」は、水性を指す。
【0052】
本明細書で使用される用語「保護基」または「PG」などは、分子の異なる部分を操作するか反応させている間、分子のそれらの反応性部分における副反応を防ぐために分子の反応性部分を保護するまたはマスクする化学部分を指す。操作または反応が完了した後、保護基は、分子の残りの部分を劣化または分解しない条件下で除去される。適切な保護基の選択は、当業者により行うことができる。多くの従来の保護基は、当技術分野において既知であり、例えば、「Protective Groups in Organic Chemistry」McOmie,J.F.W.Ed.,Plenum Press,1973、Greene,T.W.およびWuts,P.G.M.,「Protective Groups in Organic Synthesis」,John Wiley&Sons,第3版,1999ならびにKocienski,P.Protecting Groups,第3版,2003,Georg Thieme Verlag(Americas)に説明されている。
【0053】
本明細書で使用される用語「不活性有機溶媒」は、一般に、所望の合成変換を干渉したり阻害したりしないので、所与の反応において一緒に組み合わせられる化合物に存在する官能基と非反応性であると考えられている溶媒を指す。有機溶媒は、典型的に非極性であり、水溶液中で不溶性である化合物を溶解する。
【0054】
本明細書で使用される用語「細胞」は、1つの細胞または複数の細胞を指し、細胞培養または場合によっては対象のいずれかにある細胞を含む。
【0055】
本明細書で使用される用語「溶媒和物」は、適切な溶媒の分子が、結晶格子に組み込まれている化合物、または化合物の塩もしくは誘導体を意味する。適切な溶媒の例には、エタノール、水などが含まれ得る。水が溶媒である場合、分子は、「水和物」と呼ばれる。
【0056】
本明細書で使用される用語「抗体」は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ならびにそれらのキメラ抗体および結合フラグメントを含む、いずれかおよびすべての抗体ならびにそのフラグメントを含むことが意図される。抗体は、組換え源由来のものおよび/または遺伝子導入動物で産生されたものである可能性がある。抗体は、従来の技術を使用して断片化され得る。例えば、F(ab’)2フラグメントは、抗体をペプシンで処理することにより生成され得る。得られるF(ab’)2フラグメントは、Fab’フラグメントを生成するためにジスルフィド結合を還元するように処理され得る。パパイン消化は、Fabフラグメントの形成をもたらすことができる。Fab、Fab’およびF(ab’)2、scFv、dsFv、ds-scFv、二量体、ミニボディ、ダイアボディ、二重特異性抗体フラグメントおよび他のフラグメントもまた、組換え技術により合成することができる。本明細書で使用される抗体フラグメントは、結合フラグメントを意味する。
【0057】
本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド」は、天然に存在する、および天然には存在しない塩基、糖、および糖間(intersugar)(骨格)結合からなるヌクレオチドまたはヌクレオシドモノマーの配列を含む核酸を指し、一本鎖および二本鎖の分子、RNAおよびDNAを含む。オリゴヌクレオチドは、天然には存在しないモノマーを含む、長い(例えば、1000超のモノマーおよび最大10Kのモノマー)か、中程度のサイズ(例えば、両端値を含む200~1000のヌクレオチド)か、短い、例えば200未満のモノマー、100のモノマー、50のモノマーのものである可能性がある。用語「オリゴヌクレオチド」には、例えば、一本鎖DNA(ssDNA)、ゲノムDNA(gDNA)、相補的DNA(cDNA、RNAから逆転写された)、メッセンジャーRNA(mRNA)、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」および「miRNA」ならびに「モルホリノオリゴヌクレオチド」、「ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド」などのオリゴヌクレオチド類縁体、または当業者に既知の任意のオリゴヌクレオチドもしくはその類縁体が含まれる。
【0058】
本明細書で使用される用語「元素タグ」、「タグ」などは、支持分子構造に結合した1つまたは多くの同位体(軟質金属など)を有するか、前記元素もしくは同位体を結合することができる、1つの元素または多数の元素を含む化学部分を指す。元素タグはまた、元素タグを目的の分子または標的分子(例えば、検体などの生体分子)に結合させる手段を含むことができる。異なる元素タグは、タグの元素組成に基づいて識別される可能性がある。元素タグは、所与の同位体の多くのコピーを含むことができ、各タグにおける各同位体の再生可能なコピー数を有することができる。その元素組成または同位体組成が他のタグのものとは異なるので、元素タグは、同じ試料中の多数の他の元素タグから機能的に識別可能である。
【0059】
本明細書で使用される用語「ICP-MS」は、誘導結合プラズマ質量分析計-高感度質量分析法ベースの元素分析装置を指す。異なるICP-MS構成は、使用される質量選択技術により主に識別され、例えば、四重極または飛行時間型(ICP-TOF)または磁場セクター型(高分解能ICP-MS)であり得る。広範囲の構成、能力および修飾を有する多くの市販のICP-MSモデルがある。
【0060】
本明細書で使用される用語「ポリマー」は、1個または数個の構成単位の追加または削除により著しく変化しない一連の特性を提供するのに十分な量で互いに結合した1つまたは複数の原子の種または原子団(構成単位)の複数の繰り返しにより特徴づけられた分子で構成される物質を指す。(IUPAC定義、E.S.White,J.Chem.Inf.Comput.Sci.1997,37,171-192を参照されたい)。ポリマー分子は、その骨格、分子の長さにわたる原子の接続された結合、および各構成単位の骨格部分に結合したペンダント基の観点から考えることができる。ペンダント基は、多くの場合、主鎖とは化学的および機能的に異なる。金属イオンに高親和性を有するペンダント基は、それらのイオンのキレート基またはリガンドとして機能することができる。いくらかの場合、ポリマーは、約10~約300単位を有することができる。
【0061】
本明細書で使用される用語「コポリマー」は、2つまたはそれ以上の化学的に異なる構成単位からなるポリマーを指す。「線状ポリマー」は、構成単位の線状の配列により特徴づけられるポリマーである。「ブロックコポリマー」は、異なるタイプの構成単位の配列に結合している共通のタイプの構成単位の配列を有する線状ポリマーである。「分岐ポリマー」は、ポリマーの骨格から追加のポリマー鎖(分岐)が出ているポリマーである。一般的には、「主鎖」として最も長い線状の配列を指す。分岐鎖の構成単位の化学組成が、主鎖のものとは異なる分岐ポリマーは、「グラフトコポリマー」と呼ばれる。
【0062】
本明細書で使用される用語「スターポリマー」は、共通の構成単位またはコアから出ている複数の線状ポリマー鎖を有するポリマーを指す。本明細書で使用される用語「超分岐ポリマー」は、骨格原子が木の形状で配置されている複数の分岐ポリマーを指す。これらのポリマーは、「デンドリマー」に関連しており、3つの識別される建築的特徴:イニシエータコア(initiator core)、イニシエータコア(initiator core)に半径方向に結合した繰り返し単位で構成される内部層(ジェネレーション)、および最外ジェネレーションに結合した末端官能性の外面を有する。「デンドリマー」は、それらの異常な対称性、高分岐、および最大化された(テレケリック)末端官能性により超分岐ポリマーと異なる。
【0063】
本明細書で使用される用語「金属タグ付きポリマー」(また、「ポリマー性金属タグ担体」、または「金属-ポリマーコンジュゲート」、または「キレート誘導体化ポリマー」)などは、それらに結合した金属原子を有する少なくとも1つのペンダントキレート基を保持するポリマー骨格からなる多種多様の元素タグを指す。これらの金属タグ付きポリマーは、線状、スター、分岐、もしくは超分岐ホモポリマーまたはコポリマーおよびブロックもしくはグラフトコポリマーであり得るがこれらに限定されない。
【0064】
本明細書で使用される用語「金属結合ペンダント基」は、金属または金属の同位体を結合することができるポリマー上のペンダント基である。それはまた、キレート化剤と呼ばれる可能性がある。
【0065】
本明細書で使用される用語「キレート化」は、リガンド、キレート剤(chelant)、キレート化剤またはキレート剤(chelating agent)を金属イオンに結合して、金属錯体、キレートを形成するプロセスを指す。HOまたはNHなどの単一の単座配位子とは対照的に、多座のキレート化剤は、金属イオンとの複数の結合を形成する。
【0066】
本明細書で使用される用語「金属」は、以下の原子番号、3、4、11~13、19~33、37~52、55~84、87~102の1つを有する元素を指す。
【0067】
本明細書で使用される用語「軟質金属」は、ピアソンの硬いおよび軟らかいルイス酸および塩基の理論にしたがって軟質と考えられる金属を指す。
【0068】
単一同位体に言及する場合、実質的に金属の単一同位体を指すと想定される。例えば、単一同位体は、微量の金属の他の同位体および/または微量の別の金属を含むことができる。例えば、実質的に単一同位体は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、もしくは少なくとも99.9%のいずれか1つの同位体の純度を有する、または100%の純度の同位体を有する同位体を意味することができる。例えば、単一同位体は、約95%または95%超の同位体および約5%または5%未満の他の同位体を含むことができる。いくらかの実施形態において、単一同位体は、約97%または97%超の同位体および約3%または3%未満の他の同位体を含むことができる。いくらかの実施形態において、単一同位体は、約98%または98%超の同位体および約2%または2%未満の他の同位体を含むことができる。いくらかの実施形態において、単一同位体は、約99%または99%超の同位体および約1%または1%未満の他の同位体を含むことができる。いくらかの実施形態において、単一同位体は、約99.5%または99.5%超の同位体および約0.5%または0.5%未満の他の同位体を含むことができる。いくらかの実施形態において、単一同位体は、約99.9%または99.9%超の同位体および約0.1%または0.1%未満の他の同位体を含むことができる。いくらかの実施形態において、単一同位体は、100%の同位体を含む。
【0069】
用語Mn、MwおよびPDI(多分散性指数):Mw/Mnは、それぞれ、数および平均分子量を示すために使用され、多分散性指数は、分子量分布を説明する。
【0070】
本明細書でのエンドポイントによる数値範囲の記述には、その範囲内に包含されるすべての数および端数が含まれる(例えば、1~5には、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、および5が含まれる)。また、すべての数字およびその端数は、用語「約(about)」により修飾されると仮定されることが理解されるべきである。
【0071】
さらに、特定のセクションに記載の定義および実施形態は、当業者に理解されるように適切であると説明された、本明細書の他の実施形態に適用可能であることが意図される。例えば、以下の節では、本開示の異なる態様は、より詳細に定義されている。そのように定義された各態様は、明示的に反対であることが示されない限り、任意の他の態様または複数の態様と組み合わされる場合がある。特に、好ましいまたは都合のよいものと示されたいずれかの特徴は、好ましいまたは都合のよいものと示された任意の他の特徴または複数の特徴と組み合わされる場合がある。
【0072】
本明細書に記載の範囲について、部分範囲もまた、例えば、それらの間の0.1刻みで想定されている。例えば、範囲が0ppm~約5ppmである場合、0.1ppm~約5ppm、0ppm~約4.9ppm、0.1ppm~約4.9ppmなども想定されている。
【0073】
II.化合物、組成物およびキット
一態様において、本開示は、式I
【0074】
【化3】
【0075】
(式中、
Aは、ポリマー骨格であり、場合によっては、ポリマーは、線状ポリマー、分岐ポリマー、超分岐ポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合わせである;
各Bは、独立して、場合によっては、C1~C6 COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、ポリエーテル、もしくはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の極性官能基で置換されている窒素含有5員~7員の複素環である;
Lは、存在しないかリンカーである;
各Lは、独立して存在しないかリンカーである;
各Rは、独立して、溶解度調節剤、反応性官能基、生体分子、またはそれらの組み合わせから選択される第1の修飾基である;
Xは、エステル、エーテルおよびアミドから選択される官能基である;
各Lは、独立して存在しないかリンカーである;
各Rは、独立して、H、C1~C8アルキル、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C3~C8シクロアルキル、OH、C1~C10アルコキシ、C1~C10アルキルアミン、溶解度調節剤、反応性官能基、生体分子およびそれらの組み合わせである;
nは、0~50の整数である;
mは、0~40の整数である;
pは、0~30の整数である;ならびに
qは、0超の整数である)
の化合物を含む。
【0076】
別の態様において、本開示は、式Iの化合物を含み、式Iの化合物は、1個または複数個の金属Mにキレート化され、化合物は、式II
【0077】
【化4】
【0078】
の構造またはその誘導体もしくは塩を有する。
【0079】
別の態様において、本開示は、1つもしくは複数の式Iの化合物または1つもしくは複数の式IIの化合物、および溶媒を含む組成物を含む。
【0080】
別の態様において、本開示は、マスサイトメトリーで使用するための式Iまたは式IIの化合物を含む。
【0081】
いくらかの実施形態において、ポリマー骨格Aは、10~300のモノマー単位を含むことができる。
【0082】
いくらかの実施形態において、nは、0~20、1~10、または0~7の整数である。いくらかの実施形態において、mは、0~30、0~20、0~10、または0~4の整数である。いくらかの実施形態において、pは、0~20、0~10、0~5または0~3の整数である。いくらかの実施形態において、qは、0超の整数である。例えば、qは、2~300、2~200、2~150、2~100、4~80、4~60、4~20、4~12、または10~60の整数である。例えば、qは、少なくとも2、少なくとも4、または少なくとも10である整数である。例えば、qは、最大300、最大250、最大200、最大150、最大100、最大80、最大60、最大20、最大12、または最大10である整数である。いくらかの実施形態において、qは、マスサイトメトリーをイメージングするために組織を染色するため、またはサスペンションマスサイトメトリーにおける細胞内標的を標識するために使用される場合など、立体障害を回避するためおよび/またはバックグラウンドを低減するために、1以上であるが20未満である可能性がある。いくらかの実施形態において、nは、0~7の整数である;mは、0~4の整数である;pは、0~3の整数である;およびqは、0超の整数である。例えば、nは、2、3、4、または5である。いくらかの実施形態において、mは、0、1、または2である。いくらかの実施形態において、pは、1または2である。
【0083】
本明細書で使用されるように、第1の修飾基または第2の修飾基などの用語「修飾基」は、化学物質もしくはポリマーなどの化学構造に結合する場合、化学物質もしくはポリマーなどの化学構造の官能性および/または特性を修飾する、変化させる、調節する、または変更する、基、部分、構造、および/または置換基を指す。例えば、修飾基は、化学物質の溶解性、反応性、および/もしくは疎水性、または別の化学物質への化学物質の親和性を修飾する、変化させる、調節するまたは変更することができる。いくらかの実施形態において、修飾基は、溶解度調節剤、および/または反応性官能基であり得る。
【0084】
本明細書で使用されるように、「溶解度調節剤」は、化学物質またはオリゴマーもしくはポリマーなどの化学構造に結合する場合、水中での化学物質もしくは化学構造の溶解性を修飾する、変化させる、調節する、または変更する基、部分、構造および/または置換基を指す。例えば、溶解度調節剤には、ポリエチレングリコール(PEG)、双性イオンポリマー、または電荷ポリマーなどの水溶性ポリマーが含まれ得る。双性イオンポリマーには、ポリ(スルホベタインメタクリレート)(PSBMA)およびポリ(カルボキシベタインメタクリレート)(PCBMA)が含まれ得る。いくらかの実施形態において、各Rの第1の修飾基の溶解度調節剤および第2の修飾基の溶解度調節剤は、それぞれ独立して、ポリエチルグリコール(polyethylglycol)(PEG)、糖、オリゴ糖、またはポリ(カルボキシルベタイン)メタクリレートもしくはポリ(スルホベタイン)メタクリレート(PBSMA)などの双性イオンポリマーを含む。溶解度調節剤は、溶解度調節剤がなかった場合と比べて、溶液(例えば、水溶液、6~8またはその間でのpHで緩衝された溶液など)中にあり得るポリマーの量において2倍の増加など、ポリマー(例えば、本明細書に記載の金属が担持されたポリマー)の溶解度を高める可能性がある。ある特定の態様において、溶解度調節剤は、溶解度調節剤がなかった場合と比べて、ポリマー(例えば、本明細書に記載の金属が担持されたポリマー)の溶解度を高める可能性がある。いくらかの実施形態において、オリゴマーは、最大10のモノマー単位を有することができる。いくらかの実施形態において、溶解度調節剤は、約10~約5000単位を有するポリマーを含むことができる。例えば、溶解度調節剤は、PEG基であり得る。例えば、PEG基は、約10~約350単位、約10~約300単位、約10~約250単位、約10~200単位、約10~150単位、または約110単位のエチレングリコールを有することができる。例えば、PEG基は、少なくとも10、少なくとも20、または少なくとも30単位のエチレングリコールを有することができる。例えば、PEG基は、最大300、最大250、最大200、最大150、最大100、または最大50単位のエチレングリコールを有することができる。例えば、PEG基は、約5000g/mol~約10000g/molのMnを有することができる。
【0085】
ある特定の態様において、溶解度調節剤はまた、本開示の化合物の試料中の標的への非特異的結合を低減することができる。いくらかの実施形態において、ある特定の溶解度調節剤が、非特異的結合を低減するのにより効果的であることが示されている。例えば、双性イオン性溶解度調節剤が、PEG溶解度調節剤よりも小さい非特異的結合を示すことが示されている。
【0086】
いくらかの実施形態において、金属Mの少なくとも一部分またはすべては、1つまたは複数の溶解度調節剤に配位され得る。例えば、溶解度調節剤は、金属Mのリガンドであり得る。いくらかの実施形態において、溶解度調節剤は、チオール小分子を含むことができる。例えば、チオール小分子は、グルタチオン、システイン、チオグリコール酸、メルカプトコハク酸、チオグリコール酸メチル、ジメルカプロール、ジメルカプトコハク酸、2,3-ジメルカプト-1-プロパンスルホネート、およびそれらの組み合わせから選択され得る。いくらかの実施形態において、溶解度調節剤は、グルタチオンである。溶解度調節剤が、リガンド交換反応により金属Mに配位され得ることが理解され得る。
【0087】
本明細書で使用されるように、「反応性官能基」は、別の原子団または単一の原子と相互作用または反応して2個の原子団の間または2個の原子の間の化学的相互作用を形成する原子団または単一の原子を指す。例えば、1つまたは複数の反応性官能基を化学物質また
はポリマーなどの化学構造の上に結合させると、化学物質またはポリマーなどの化学構造の反応性を修飾するまたは変化させ、化学物質または化学構造が、別の化学物質または生体分子などの化学構造の上で原子団と相互作用または反応することを可能にする。いくらかの場合、所与の反応性官能基が、特定の官能基と相互作用または反応して、化学的相互作用を形成することができることが理解され得る。例えば、アジドがクリックケミストリーに適しており、マレイミドがチオールと反応することができることが知られている。いくらかの実施形態において、化学的相互作用は、共有結合性またはイオン性である。例えば、化学的相互作用は、共有結合性である。いくらかの実施形態において、反応性官能基は、1つまたは複数の生体分子への結合のためのものである。いくらかの実施形態において、各Rの第1の修飾基の反応性官能基および第2の修飾基の反応性官能基は、それぞれ独立して、カルボン酸、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、テトラフルオロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、マレイミド、チオール、アジド、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)、トランス-シクロオクテン(TCO)、テトラジン、フラン、ヒドラジド、またはアルデヒドから選択される。
【0088】
反応性官能基が、さらなる反応に必要になるまで、反応性官能基が、適切な保護基で可逆的に保護またはキャップされ得ることが理解され得る。例えば、チオールは、マレイミドまたは当技術分野で既知の他の基などのチオールキャップ基でキャップされ得る。例えば、チオール含有ポリマーは、ジスルフィド二量体として一時的に保護することができるか、一時的に存在することができ、既知の方法(例えばDTT還元)を使用して還元し、必要に応じてチオール基を曝露することができる。したがって、本明細書に記載の反応性官能基がまた、反応性官能基の保護されたバージョンも含むと考えられる。
【0089】
本明細書で使用されるように、金属が非放射性である場合、金属が、本質的に非放射性であることを意味する。例えば、放射性金属は、放射線検出アッセイでの使用に適している減衰率を有することができるが、非放射性金属は、放射線検出アッセイに適していないか、放射標識の分野で使用される一般的な放射線検出アッセイの検出限界未満の減衰率を有することができる。いくらかの実施形態において、非放射性金属は、約150,000年を超える、200,000年を超える、または約210,000年を超える半減期を有することができる。例えば、99Tc同位体が210,000年の半減期を有しており、したがって本開示の目的のために非放射性であるとみなされることが知られている。
【0090】
いくらかの実施形態において、各Bは、独立して5員または6員の複素環である。例えば、各Bは、独立して置換または非置換のテトラヒドロピロールであり得る。いくらかの実施形態において、各Bは、独立して、窒素含有5員または6員のヘテロアリールであり、場合によっては、COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、ポリエーテル、もしくはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の極性官能基で置換されており、そして、場合によっては、1つまたは複数のBは、軟質金属に配位されている、および/または1つもしくは複数の生体分子にコンジュゲートしている。
【0091】
例えば、各Bは、独立してピリジンまたはイミダゾールであり、場合によっては、C1~C5アルキル、C2~C5アルケニル、COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、ポリエーテル、またはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の極性官能基で置換されており、そして、場合によっては、1つまたは複数のBは、軟質金属に配位されている、および/または1つもしくは複数の生体分子にコンジュゲートしている。
【0092】
同じ窒素に結合した2つのBは、本質的に同じキレート基ではないと考えられる。それにも関わらず、合成の容易さから外れて、同じ窒素に結合した2つのBは、同じであり得る。
【0093】
いくらかの実施形態において、1つまたは複数のBは、軟質金属に配位されている。式Iの化合物のBのすべてが、金属に配位されている必要はないと考えられる。例えば、いくらかの実施形態において、約30%~約95%、約40%~約90%、約50%~約85%のBは、金属に配位されている。いくらかの実施形態において、少なくとももしくは約50%、少なくとももしくは約55%、少なくとももしくは約60%、少なくとももしくは約65%、少なくとももしくは約70%、少なくとももしくは約75%、少なくとももしくは約80%、または少なくとももしくは約85%のBは、金属に配位されている。いくらかの実施形態において、最大95%、最大90%、最大85%、最大80%、最大75%、最大70%、または最大65%のBは、金属に配位されている。いくらかの実施形態において、約75%~約80%のBは、金属に配位されている。いくらかの実施形態において、Bはすべて、金属に配位されている。理論に縛られることを望むことなく、同じ窒素原子に結合した2つのBが、二座の様式で、同じ金属原子にキレート化することができることが理解され得る。
【0094】
いくらかの実施形態において、Bは、場合によっては置換されたピリジンである。
【0095】
いくらかの実施形態において、Bは、置換または非置換のイミダゾールである。場合によっては、Bは、2置換または4置換のイミダゾールである。適切なイミダゾールベースのキレート化剤には、Maresca et al.,Bioconjugate Chem.,2010,21,1032(その内容は、その全体が参照により組み込まれている)に記載のものが含まれる。
【0096】
いくらかの実施形態において、Rは、生体分子である。例えば、Rは、抗体であり得る。いくらかの実施形態において、Rは、アフィニティ試薬である。
【0097】
いくらかの実施形態において、Rは、生体分子である。例えば、Rは、抗体であり得る。いくらかの実施形態において、Rは、アフィニティ試薬である。
【0098】
いくらかの実施形態において、Xは、アミドである。例えば、Xは、-C(O)NR-または-NRC(O)-(式中、Rは、HまたはC1~C4アルキルである)である。
【0099】
いくらかの実施形態において、Xは、-C(O)NR-であり、化合物は、式Ia
【0100】
【化5】
【0101】
の構造を有する。
【0102】
いくらかの実施形態において、Xは、-NRC(O)-であり、化合物は、式Ib
【0103】
【化6】
【0104】
の構造を有する。
【0105】
いくらかの実施形態において、Xは、-C(O)NR-であり、化合物は、式Ic
【0106】
【化7】
【0107】
(式中、各Rは、H、C1~C5アルキル、C2~C5アルケニル、C1~C6 COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、またはポリエーテルから独立して選択される)
の構造を有する。
【0108】
いくらかの実施形態において、Xは、-C(O)NR-であり、化合物は、式Idまたは式Ie
【0109】
【化8】
【0110】
の構造を有する。
【0111】
いくらかの実施形態において、Xは、-NRC(O)-であり、化合物は、式If
【0112】
【化9】
【0113】
(式中、各Rは、H、C1~C5アルキル、C2~C5アルケニル、C1~C6 COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、またはポリエーテルから独立して選択される)
の構造を有する。
【0114】
いくらかの実施形態において、Xは、-NRC(O)-であり、化合物は、式Igまたは式Ih
【0115】
【化10】
【0116】
の構造を有する。
【0117】
いくらかの実施形態において、Rは、Hである。いくらかの実施形態において、Rは、C1~C3アルキルである。
【0118】
いくらかの実施形態において、式Iの化合物は、式Ii
【0119】
【化11】
【0120】
(式中、Aは、Aのモノマーであり、rは、約3~約300、約3~約250、約3~約200、約3~約150、約3~約100、約3~約50、約6~約30、または約10~約25である)の構造を有する。いくらかの実施形態において、rは、最大300、最大250、最大200、最大150、最大100、最大50、最大30、または最大25である。いくらかの実施形態において、rは、少なくとも3、少なくとも6、または少なくとも10である。場合によっては、ポリマー骨格Aは、線状ポリマーまたはコポリマーである。
【0121】
いくらかの実施形態において、式Iの化合物は、式Ij
【0122】
【化12】
【0123】
(式中、AおよびAは、それぞれ、Aのモノマーであり、rは、約3~約300、約3~約250、約3~約200、約3~約150、約3~約100、約3~約50、約6~約30、または約10~約25であり、ポリマー骨格Aは、線状のコポリマーである)の構造を有する。いくらかの実施形態において、rは、最大300、最大250、最大200、最大150、最大100、最大50、最大30、または最大25である。いくらかの実施形態において、rは、少なくとも3、少なくとも6、または少なくとも10である。
【0124】
いくらかの実施形態において、各Rは、H、-(CH1~3COOH、-(CH1~3O(CH1~2CH、-(CH2~4OH、-(CH2~5P(O)(OCHCH、または-CHCH(OMe)から独立して選択される。
【0125】
いくらかの実施形態において、Aは、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリアミノ酸、ポリビニルアミン、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリエチレングリコール、多糖、デンドリマー、それらのコポリマー、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0126】
例えば、Aは、ポリアミノ酸であり得る。例えば、ポリアミノ酸は、場合によっては置換されたポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリリジン、ポリ(2,4-ジメチルアミノ酪酸)(ポリDab)、ポリ(2,4-ジアミノピメリン酸)(ポリDap)、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0127】
本開示の化合物のポリマー骨格Aは、コポリマーであり得ると考えられる。例えば、それは、PEGを含むコポリマーであり得る。
【0128】
いくらかの実施形態において、ポリマー骨格は、線状ポリマーである。例えば、式Iの化合物は、以下に示す構造を有することができる。
【0129】
【化13】
【0130】
いくらかの実施形態において、ポリマー骨格は、超分岐ポリマー、またはグラフトポリマーなどの分岐ポリマーである。代表的な式Iの化合物の表現には以下に示す構造が含まれる。
【0131】
【化14】
【0132】
各a(例えばa、a、…、a)は、ポリマー骨格のモノマー単位である。式Iの化合物のポリマー骨格は、ホモポリマーまたはコポリマーであり得る。コポリマーには、グラフトコポリマーまたはブロックコポリマーが含まれ得る。各モノマー単位(例えば、a、a、a、…、a)は、例えばホモポリマーにおいて同じである可能性があるか、例えばコポリマーにおいて異なる可能性があることが理解され得る。例えば、aは、aと同じモノマーである可能性があるか、異なるモノマーである可能性がある。同様に、aは、aおよび/またはaと同じモノマーである可能性があるか、異なるモノマーである可能性がある。
【0133】
少なくとも1つのモノマー単位aが、構造
【0134】
【化15】
【0135】
に結合していると考えられ、後者は、軟質金属などの金属にキレート化することができる。いくらかの実施形態において、ポリマー骨格の各モノマー単位は、
【0136】
【化16】
【0137】
に結合している。いくらかの他の実施形態において、すべてではないが、ポリマー骨格のモノマー単位のいくらかは、
【0138】
【化17】
【0139】
に結合している。
【0140】
いくらかの実施形態において、第1の修飾基Rは、ポリマー骨格の末端に存在することができる。例えば、ポリマー骨格の両端は、任意のリンカーLを介して第1の修飾基Rで官能化され得、各第1の修飾基Rおよび各リンカーLは、本明細書において独立して定義される。いくらかの実施形態において、ポリマー骨格の末端のいくらかは、すべてではないが、任意のリンカーLを介して第1の修飾基Rで官能化され得、各第1の修飾基Rおよび各リンカーLは、本明細書において独立して定義される。
【0141】
いくらかの実施形態において、ポリマー骨格は、異なるペンダント基を含むモノマーのコポリマーであり得る。例えば、ポリアクリルアミド骨格において、アクリルアミドモノマーが、溶解度修飾基または反応性官能基などのキレート化剤のペンダント基または修飾基に結合している可能性があると想定される。コポリマー骨格を有する本開示の代表的なポリマー化合物を以下に示す。
【0142】
【化18】
【0143】
いくらかの実施形態において、重合の度合い(DP)は、およそ1~1000(1~2000の骨格原子)であり得る。より大きなポリマーも同じ官能性で本発明の範囲内であり、当業者に理解されるように可能である。典型的に、重合の度合いは、10~250である。ポリマーは、比較的狭い多分散性をもたらす経路により合成に適している可能性がある。ポリマーは、1.1~1.2の範囲内のMw/Mnの値になるはずの、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合または開環重合により合成される可能性がある。代替の戦略は、およそ1.02~1.05のMw/Mnを有するポリマーが得られるアニオン重合を含む。したがって、ポリマーは、1.02~1.5、例えば1.02~1.2、1.02~1.05、または1.2~1.5の多分散性指数を有する可能性がある。これらの方法は、開始剤または停止剤の選択を通じて末端基の制御を可能にする。これにより、リンカーを結合させることができるポリマーを合成することが可能になる。後のステップでリガンド結合遷移金属単位(例えば、軟質金属単位)を結合することができる繰り返し単位に、官能性ペンダント基を含むポリマーを調製する戦略を採用することができる。この実施形態には、いくらかの利点がある。それは、リガンド含有モノマーの重合を実行する際に生じる可能性がある複雑さを回避する。さらに、ポリマー骨格は、軟質金属含有ポリマーのすべてではないにしてもほとんどに適用することができる既知のものである。したがって、ポリマーは、一般的な平均鎖長および鎖長分布を有する可能性がある。
【0144】
いくらかの実施形態において、各リンカーは、C3~C8アルキルアミン、C3~C8アルキレン、C3~C8シクロアルキル、C3~C8ヘテロシクロアルキル、5員もしくは6員のアリールまたはヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルアリール、C3~C8シクロアルキルヘテロアリール、C(O)、C(O)O、アミド、アミン、チオエーテル、マレイミド-チオールコンジュゲート、ポリエチレングリコール(PEG)、またはそれらの混合物を独立して含むか、それらから独立して選択され、場合によっては、アミン、アルキレン、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルキルアリール、およびシクロアルキルヘテロアリールのそれぞれは、独立して非置換であるか、C1~C6アルキル、C1~C6アルケニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8ヘテロシクロアルキル、アミド、エステル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルアリール、C3~C8シクロアルキルヘテロアリール、CN、またはそれらの混合物から選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている。
【0145】
いくらかの実施形態において、各Lは、C3~C8アルキレン、C3~C8アルキルアミン、エステル、アミン、アミド、チオエーテル、マレイミド-チオールコンジュゲート、PEG、またはそれらの混合物を独立して含むか、それらから独立して選択され、場合によっては、アルキレンおよびアルキルはそれぞれ、独立して非置換であるか、C1~C6アルキル、C1~C6アルケニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8ヘテロシクロアルキル、アミド、エステル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルアリール、C3~C8シクロアルキルヘテロアリール、CN、またはそれらの混合物から選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている。
【0146】
いくらかの実施形態において、各Lは、C3~C8アルキレン、C3~C8アルキルアミン、エステル、アミン、アミド、チオエーテル、マレイミド-チオールコンジュゲート、PEG、またはそれらの混合物を独立して含むか、それらから独立して選択され、場合によっては、アルキレンおよびアルキルはそれぞれ、独立して非置換であるか、C1~C6アルキル、C1~C6アルケニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8ヘテロシクロアルキル、アミド、エステル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルアリール、C3~C8シクロアルキルヘテロアリール、CN、またはそれらの混合物から選択される1つもしくは複数の置換基で置換されている。
【0147】
いくらかの実施形態において、Lは、存在しないかC3~C8アルキルアミンである。
【0148】
いくらかの実施形態において、リンカーが、そのリンカーを化合物の残りに結合する官能基を含むことができることが理解される。
【0149】
生体分子は、タンパク質、オリゴヌクレオチド、脂質、炭水化物、もしくは小分子またはそれらの組み合わせとして分類される可能性がある。代わりにまたはさらに、生体分子は、その官能性により分類される可能性がある。生体分子は、特に限定されず、生体分子を本開示の化合物にコンジュゲートするために異なる官能基化を使用することができる。例えば、オリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA分子である可能性があり、場合によっては、ストリンジェントな条件下で標的核酸検体(例えば、試料核酸生体分子)またはオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするcDNAは、アプタマーであり得る。例えば、生体分子は、試料に内在する標的mRNAなどの標的オリゴヌクレオチドを特異的にハイブリダイズする(例えば、試料オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする)オリゴヌクレオチドであり得る。ハイブリダイゼーションは、8超、10超、15超、または20超のヌクレオチドである配列のものである可能性がある。
【0150】
ある特定の態様において、生体分子は、その官能性により分類される可能性がある。例えば、生体分子は、アフィニティ試薬、抗原(例えば、アフィニティ試薬により特異的に結合された検体)、または酵素基質である可能性がある。アフィニティ試薬は、抗体(例えば、またはそのフラグメント)、アプタマー、受容体(例えば、またはその一部)、または標的(例えば、ビオチンを特異的に結合するストレプトアビジンなどのアビジン)を特異的に結合する任意の他の生体分子である可能性がある。例えば、元素タグは、抗体と関連している可能性があり、試料中のその標的抗原の存在、例えばサイトカイン、ウイルスタンパク質、癌バイオマーカーなどの存在を検出および/または分析するために使用される可能性がある。ある特定の方法およびキットにおいて、元素タグは、(例えば、本開示の化合物を多数の異なるアッセイのいずれかに適合させることを可能にするために)ビオチンで官能化された別の生体分子の結合のためにアビジンで官能化される可能性がある。抗原は、抗体などのアフィニティ試薬により特異的に結合されるエピトープを含むタンパク質(またはそのペプチド配列)である可能性がある。例えば、本開示の化合物は、ウイルス抗原(例えば、ウイルスタンパク質配列)に結合する可能性があり、本明細書でさらに説明されるように、ウイルス抗原を特異的に結合する、試料中の抗体の存在を検出するために使用される可能性がある。酵素基質は、特異的酵素により、例えば酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、異性化酵素またはリガーゼにより作用される任意の基質である可能性がある。例えば、基質は、プロテアーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、メチルトランスフェラーゼ、脱メチル化酵素などの酵素用の基質であるタンパク質(例えば、またはそのペプチド配列)であり得る。非タンパク質基質には、例えば、制限酵素により開裂可能な制限配列もしくはDNA修復のための部位(ニックなど)を含む二本鎖のオリゴヌクレオチド、DNAメチルトランスフェラーゼにより標的化された配列を含むオリゴヌクレオチド配列、または当業者に既知の任意の非タンパク質基質が含まれる。例えば、本開示の化合物は、基質に結合され、基質を修飾する酵素を含む試料に曝露される可能性があり、基質の修飾(またはその欠乏)は、(例えば、本明細書でさらに説明されるように)検出される可能性がある。
【0151】
いくらかの実施形態において、1つまたは複数の生体分子は、小分子、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、脂質、炭水化物、またはそれらの混合物からそれぞれ独立して選択される。
【0152】
いくらかの実施形態において、1つまたは複数の生体分子は、それぞれ独立して、アフィニティ試薬であり、場合によっては、アフィニティ試薬は、抗体である。
【0153】
いくらかの実施形態において、アフィニティ試薬は、抗体またはその結合フラグメントであるかそれを含む。抗体は、例えば、ビオチン化抗体または結合フラグメントであり得、本開示の化合物に直接的にまたは間接的に付加され得る。
【0154】
いくらかの実施形態において、式Iの化合物は、
【0155】
【化19】
【0156】
(式中、rは、約3~約300、約3~約250、約3~約200、約3~約150、約3~約100、約3~約50、約6~約30、または約10~約25であり、R、R、L、LおよびRはそれぞれ、本明細書で定義された通りである)から選択される。いくらかの実施形態において、rは、最大300、最大250、最大200、最大150、最大100、最大50、最大30、または最大25である。いくらかの実施形態において、rは、少なくとも3、少なくとも6、または少なくとも10である。
【0157】
いくらかの実施形態において、式Iの化合物は、
【0158】
【化20】
【0159】
(式中、sは、約1~約50、約2~約40、約5~約30、約10~約30、約5~約35、または約20~約30であり、rは、約3~約300、約3~約250、約3~約200、約3~約150、約3~約100、約3~約50、約6~約30、または約10~約25であり、R、R、L、LおよびRはそれぞれ、本明細書で定義される通りである)から選択される。いくらかの実施形態において、rは、最大300、最大250、最大200、最大150、最大100、最大50、最大30、または最大25である。いくらかの実施形態において、rは、少なくとも3、少なくとも6、または少なくとも10である。
【0160】
いくらかの実施形態において、式Iの化合物は、
【0161】
【化21】
【0162】
(式中、sは、約1~約50、約2~約40、約5~約30、約10~約30、約5~約35、または約20~約30であり、rは、約3~約300、約3~約250、約3~約200、約3~約150、約3~約100、約3~約50、約6~約30、または約10~約25であり、R、R、L、LおよびRは、それぞれ本明細書で定義される通りである)から選択される。いくらかの実施形態において、rは、最大300、最大250、最大200、最大150、最大100、最大50、最大30、または最大25である。いくらかの実施形態において、rは、少なくとも3、少なくとも6、または少なくとも10である。
【0163】
いくらかの実施形態において、式Iの化合物は、
【0164】
【化22】
【0165】
(式中、sは、約1~約50、約2~約40、約5~約30、約10~約30、約5~約35、または約20~約30であり、rは、約3~約300、約3~約250、約3~約200、約3~約150、約3~約100、約3~約50、約6~約30、または約10~約25であり、Rは、本明細書で定義されている通りである)から選択される。いくらかの実施形態において、rは、最大300、最大250、最大200、最大150、最大100、最大50、最大30、または最大25である。いくらかの実施形態において、rは、少なくとも3、少なくとも6、または少なくとも10である。
【0166】
いくらかの実施形態において、式Iの化合物は、
【0167】
【化23】
【0168】
から選択される。
【0169】
いくらかの実施形態において、式IIの化合物は、
【0170】
【化24】
【0171】
(式中、Rは、H、
【0172】
【化20】
【0173】
、または当技術分野で既知の他の適切なチオールキャップ基から選択される)である。いくらかの実施形態において、Rは、ジスルフィド結合を介して二量体を形成する第2の式IIの化合物を意味する。
【0174】
DPA、ビス((1-メチル-イミダゾール-4-イル-)メチル)アミン、ビス((1-メチル-イミダゾール-2-イル-)メチル)アミン、ビス((1H-イミダゾール-4-イル-)メチル)アミンおよびビス((1H-イミダゾール-2-イル-)メチル)アミンなどのビス-複素環式キレート化剤が、金属、特に軟質金属を安定してキレート化することができることが理解され得る。DPA、ビス((1-メチル-イミダゾール-4-イル-)メチル)アミン、ビス((1-メチル-イミダゾール-2-イル-)メチル)アミン、ビス((1H-イミダゾール-4-イル-)メチル)アミンおよびビス((1H-イミダゾール-2-イル-)メチル)アミンなどのビス-複素環式キレート化剤を含む、1つまたは複数のペンダント基を含む本開示のポリマー化合物は、軟質金属を含む金属をキレート化することができる。金属にキレート化される場合、本開示の化合物は、新規質量チャンネルを、金属の安定同位体により表されるマスサイトメトリーなどの用途に導入する。
【0175】
本明細書の実施例は、Re、Pt、Hg、およびAgを含む金属を有する本開示のポリマー化合物を使用して形成された代表的なキレートを示す。DPAなどのキレート化剤が、非ポリマー環境で他の軟質金属を用いて安定なキレートを形成することができることが知られている。したがって、DPA、ビス((1-メチル-イミダゾール-4-イル-)メチル)アミン、ビス((1-メチル-イミダゾール-2-イル-)メチル)アミン、ビス((1H-イミダゾール-4-イル-)メチル)アミン、およびビス((1H-イミダゾール-2-イル-)メチル)アミンなどのキレート化剤を保持する本開示のポリマー化合物は、同様に他の軟質金属にキレート化することができる。
【0176】
例えば、Seubertら[「Chimeric GNA/DNA metal-mediated base pairs」,Chem.Commun.,2011,47,11041-11043]は、DPAにキレート化されたAu(III)のコンピュータ分析を報告した。Messoriら[J.Med.Chem.2000,43,3541-3548]は、ジアミンおよびトリアミンを有する一連のAu(III)錯体を報告した。
【0177】
DPAとのモリブデン錯体[Mo(dipic)(CO)]は、van Staveren et al,Labelling of [Leu5]-enkephalin with organometallic Mo complexes by solid-phase synthesis,Chem.Commun.,2002,1406-1407により報告されている。
【0178】
Minardら[In situ generation of water-stable and -soluble ruthenium complexes of pyridine-based chelate-ligands and their use for the hydrodeoxygenation of biomass-related substrates in aqueous acidic medium,Journal of Molecular Catalysis A:Chemical 422(2016)175-187]は、[RuIII(DMF)](OTf)が、水溶液中、ジピコリルアミンと反応することができ、これにより Ru(III)をRu(II)に還元したことを報告した。[Ru(2,2’-ジピコリルアミン)(OH](OTf)は、150℃まで安定している。
【0179】
Lonnonら[Rhodium,palladium and platinum complexes of tris(pyridylalkyl)amine and tris(benzimidazolylmethyl)amine N4-tripodal ligands,Dalton Trans.,2006,3785-3797,DOI:10.1039/b602556k]は、トリス(2-ピリジルメチル)アミンを用いてRh、Pd、およびPtの結晶構造を調製した。
【0180】
Songら[Cadmium(II) complexes containing N0-substituted N,N-di(2-picolyl)amine:The formation of monomeric versus dimeric complexes is affected by the N’-substitution group on the amine moiety,J.Organometallic Chem.783(2015)55e63,doi.org/10.1016/j.jorganchem.2015.02.011]は、N-アルキルジピコリルアミン誘導体がCd2+との二量体錯体を形成する傾向にあることを示した。
【0181】
したがって、DPAおよびビス((1H-イミダゾール-2-イル-)メチル)アミンなどの複素環式キレート化剤を含む本開示のポリマー化合物が、金属の安定同位体に基づくマスサイトメトリー用途のために多くの異なる軟質金属をキレート化し、多数の新規質量チャンネルを開くために使用することができると考えられる。非限定的要約を、以下の表1に示す。
【0182】
【表1】
【0183】
いくらかの実施形態において、Mは、軟質金属である。例えば、Mは、Re、Pt、Pd、Nb、Tc、Hg、Ag、Au、Mo、Ru、Rh、Cd、W、Os、またはそれらの混合物から選択することができる。
【0184】
いくらかの実施形態において、Mは、非放射性である。本開示の化合物が放射線検出アッセイで使用され得ると考えられている。したがって、化合物が放射線検出アッセイで使用される場合、Mは、放射性であり得る。
【0185】
いくらかの実施形態において、Mは、同位体濃縮されている。例えば、Mは、同位体の天然に存在する混合物を含まない。
【0186】
別の態様において、本開示は、マスサイトメトリーでの使用のために本明細書で定義された式IIの化合物を含む。
【0187】
別の態様において、本開示は、複数のキレート基を含む線状または分岐ポリマーを含む元素タグを含み、少なくとも1つのキレート基は、軟質金属の軟質金属原子にキレート化され、軟質金属は、単一同位体である。
【0188】
いくらかの実施形態において、元素タグは、本開示の化合物である。
【0189】
別の態様において、本開示は、
軟質金属の単一同位体の複数の軟質金属原子を含む同位体組成物;および
2つの窒素含有5員または6員の複素環を含む複数のキレート基を含む線状または分岐ポリマーを含む元素タグ(各キレート基は、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を含むか、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を結合することができる)
を含むキットを含む。
【0190】
いくらかの実施形態において、キットは、放射性軟質金属をいずれも含まない。
【0191】
いくらかの実施形態において、同位体組成物は、同位体の天然混合物を含まない。
【0192】
元素タグが、生体分子を結合するように官能化され得ると考えられている。例えば、元素タグは、生体分子に共有結合され得る。
【0193】
いくらかの実施形態において、キットはさらに、生体分子を含む。
【0194】
例えば、生体分子は、オリゴヌクレオチドであり得る。例えば、生体分子は、抗体または他のアフィニティ試薬であり得る。
【0195】
いくらかの場合、各キレート基は、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を含む。
【0196】
いくらかの実施形態において、同位体組成物は、元素タグから別個に提供される軟質金属溶液であり、各キレート基は、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を結合することができる。
【0197】
いくらかの実施形態において、キットはさらに、追加の同位体組成物を含む。例えば、追加の同位体組成物は、同位体組成物の軟質金属の単一同位体とは異なる軟質金属の追加の単一同位体の複数の追加の軟質金属原子を含む。
【0198】
いくらかの実施形態において、キットはさらに、複数の追加のキレート基を含む追加の線状または分岐ポリマーを含む追加の元素タグを含む。
【0199】
いくらかの態様において、元素タグの線状または分岐ポリマーの各キレート基は、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を含み、追加の元素タグの追加の線状または分岐ポリマーの各追加のキレート基は、追加の同位体組成物の少なくとも1個の追加の軟質金属原子を含む。
【0200】
いくらかの実施形態において、各元素タグは、異なる抗体に共有結合している。
【0201】
一実施形態において、各キレート基は、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を結合することができ、各キレート基は、ジピコリルアミンまたはビス((1H-イミダゾール-2-イル)メチル)アミンから選択され、各イミダゾールは、場合によっては、C1~C6 COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、ポリエーテル、またはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の極性官能基で置換されている。
【0202】
いくらかの実施形態において、キットはさらに、元素タグの抗体への共有結合のための試薬を含む。
【0203】
いくらかの実施形態において、各元素タグは、独立して、本明細書に記載の式Iの化合物または本明細書に記載の式IIの化合物である。
【0204】
上記実施形態に記載のキットは、1つまたは複数の溶解度調節剤を(例えば、キレート基として同じペンダント基に)含む元素タグなど、本明細書に記載の任意の追加の態様を有する可能性がある。
【0205】
III.方法および使用
別の態様において、本開示は:
軟質金属の単一同位体の複数の軟質金属原子を含む同位体組成物を提供するステップ;
それぞれ独立して2つの窒素含有5員または6員の複素環を含む複数のキレート基(各キレート基は、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を結合することができる)を含む線状または分岐ポリマーを含む元素タグを提供するステップ;ならびに
同位体組成物の軟質金属原子を元素タグの1つまたは複数のキレート基に結合するステップ
を含む方法を含む。
【0206】
いくらかの実施形態において、軟質金属原子は、非放射性である。
【0207】
いくらかの実施形態において、同位体組成物は、同位体の天然混合物を含まない。
【0208】
いくらかの実施形態において、方法はさらに、追加の同位体組成物を提供するステップを含むことができ追加の同位体組成物は、同位体組成物の非放射性軟質金属の単一同位体とは異なる非放射性軟質金属の追加の単一同位体の複数の追加の軟質金属原子を含む。
【0209】
例えば、方法はさらに、複数のキレート基を含む追加の線状または分岐ポリマーを含む追加の元素タグを提供するステップを含む。
【0210】
いくらかの実施形態において、元素タグの線状または分岐ポリマーの各キレート基は、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を含み、追加の元素タグの追加の線状または分岐ポリマーの各追加のキレート基は、追加の等方性組成物の少なくとも1個の追加の軟質金属原子を含む。
【0211】
いくらかの実施形態において、方法はさらに:
生体分子を提供するステップ;および
生体分子を元素タグに共有結合するステップ
を含む。
【0212】
別の態様において、本開示は、生体試料中の検体の分析のための方法であって:
(i)元素タグ付きアフィニティ試薬を検体とインキュベートするステップであって、元素タグ付きアフィニティ試薬が、元素タグでタグ付けされたアフィニティ試薬を含み、元素タグが、それぞれ独立して2つの窒素含有5員もしくは6員の複素環を含む複数のキレート基を有する線状または分岐ポリマーを含み、元素タグがさらに、軟質金属の単一同位体の複数の軟質金属原子を含む、ステップ;
(ここで:
元素タグの各キレート基は、少なくとも1個の軟質金属原子を含むか、少なくとも1個の軟質金属原子を結合することができ、
アフィニティ試薬は、検体を特異的に結合する)
(ii)未結合の元素タグ付きアフィニティ試薬を、結合した元素タグ付きアフィニティ試薬から分離するステップ;ならびに
(iii)検体に結合しているアフィニティ試薬に結合した元素タグを、質量分析原子分光法により分析するステップ
を含む方法を含む。
【0213】
いくらかの実施形態において、軟質金属原子は、非放射性である。
【0214】
いくらかの実施形態において、軟質金属は、同位体の天然混合物を含まない。
【0215】
いくらかの実施形態において、元素タグ付きアフィニティ試薬を検体とインキュベートするステップは:
2つまたはそれ以上の差別的な元素タグ付きアフィニティ試薬を2つまたはそれ以上の検体とインキュベートするステップであって、元素タグ付きアフィニティ試薬が、2つまたはそれ以上の検体と特異的に結合して2つまたはそれ以上の差別的にタグ付けされた検体を生成するステップを含み、アフィニティ試薬に結合した元素タグを分析するステップが、2つまたはそれ以上の検体に結合した差別的な元素タグを質量分析原子分光法により分析するステップを含む。
【0216】
いくらかの場合、アフィニティ試薬はさらに、蛍光標識で標識される。
【0217】
いくらかの実施形態において、質量分析原子分光法は、ICP-MSである。一実施形態において、質量分析原子分光法は、質量分析計ベースのフローサイトメーターによるものである。
【0218】
いくらかの実施形態において、アフィニティ試薬は、抗体である。
【0219】
いくらかの実施形態において、アフィニティ試薬は、ビオチンを特異的に結合する。
【0220】
いくらかの実施形態において、アフィニティ試薬は、オリゴヌクレオチドである。
【0221】
いくらかの実施形態において、元素タグ付きアフィニティ試薬は、生体試料中の検体と結合するように構成され、生体試料は、細胞を含む。いくらかの実施形態において、元素タグ付きアフィニティ試薬は、生体試料中の検体と結合するように構成され、軟質金属は、生体試料中に天然には存在しない元素である。
【0222】
いくらかの実施形態において、軟質金属は、Re、Pt、Pd、Nb、Tc、Hg、Ag、Au、Mo、Ru、Rh、Cd、W、Os、またはそれらの混合物から選択される。
【0223】
いくらかの実施形態において、元素タグは、本明細書に記載の式Iの化合物、または本明細書に記載の式IIの化合物である。
【0224】
上記実施形態の方法は、1つまたは複数の溶解度調節剤を(例えば、キレート基として同じペンダント基に)含む元素タグなどの本明細書に記載の任意の追加の態様を有する可能性がある。
【0225】
本開示はまた、以下の実施形態を提供する:
【0226】
実施形態1. 式Iの化合物
【0227】
【化21】
【0228】
(式中、
Aは、ポリマー骨格であり、場合によっては、ポリマーは、線状ポリマー、分岐ポリマー、超分岐ポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合わせである;
各Bは、独立して、場合によっては、C1~C6 COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、ポリエーテル、もしくはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の極性官能基で置換された、窒素含有5員~7員の複素環である;ならびに
Lは、存在しないかリンカーである;
各Lは、独立して存在しないかリンカーである;
各Rは、独立して、溶解度調節剤、反応性官能基、生体分子、またはそれらの組み合わせから選択される第1の修飾基である;
Xは、エステル、エーテルおよびアミドから選択される官能基である;
各Lは、独立して存在しないかリンカーである;
各Rは、独立して、H、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C3~C8シクロアルキル、OH、C1~C10アルコキシ、C1~C10アルキルアミン、溶解度調節剤、反応性官能基、生体分子およびそれらの組み合わせである;
nは、0~7の整数である;
mは、0~4の整数である;
pは、0~3の整数である;ならびに
qは、0超の整数である)。
【0229】
実施形態2. 各Bが、独立して、窒素含有5員または6員のヘテロアリールであり、場合によっては、COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、ポリエーテル、またはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の極性官能基で置換されており、そして、場合によっては、1つまたは複数のBが、軟質金属に配位されている、および/または1つもしくは複数の生体分子にコンジュゲートしている、実施形態1の化合物。
【0230】
実施形態3. 各Bが、独立してピリジンまたはイミダゾールであり、場合によっては、COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、ポリエーテル、またはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の極性官能基で置換されており、そして、場合によっては、1つまたは複数のBが、軟質金属に配位されている、および/または1つもしくは複数の生体分子にコンジュゲートしている、実施形態1または2の化合物。
【0231】
実施形態4. 1つまたは複数のBが、軟質金属に配位されている、実施形態1から3のいずれか1つの化合物。
【0232】
実施形態5. RまたはRが、生体分子であり、場合によっては、生体分子が、抗体などのアフィニティ試薬である、実施形態1から4のいずれか1つの化合物。
【0233】
実施形態6. Xが、アミドである、実施形態1から5のいずれか1つの化合物。
【0234】
実施形態7. Xが、-C(O)NR-または-NRC(O)-であり、Rが、HまたはC1~C4アルキルである、実施形態6の化合物。
【0235】
実施形態8. Xが、-C(O)NR-であり、化合物が、式Ia
【0236】
【化22】
【0237】
の構造を有する、実施形態1から7のいずれか1つの化合物。
【0238】
実施形態9. Xが、-NRC(O)-であり、化合物が、式Ib
【0239】
【化23】
【0240】
の構造を有する、実施形態1から7のいずれか1つの化合物。
【0241】
実施形態10. Xが、-C(O)NR-であり、化合物が、式Ic
【0242】
【化24】
【0243】
(式中、各Rは、H、C1~C5アルキル、C2~C5アルケニル、C1~C6 COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、またはポリエーテルから独立して選択される)
の構造を有する、実施形態1から7のいずれか1つの化合物。
【0244】
実施形態11. 化合物が、式Idまたは式Ie
【0245】
【化25】
【0246】
の構造を有する、実施形態10の化合物。
【0247】
実施形態12. Xが、-NRC(O)-であり、化合物が、式If
【0248】
【化26】
【0249】
(式中、各Rは、H、C1~C5アルキル、C2~C5アルケニル、C1~C6 COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、またはポリエーテルから独立して選択される)
の構造を有する、実施形態1から7のいずれか1つの化合物。
【0250】
実施形態13. 化合物が、式Igまたは式Ih
【0251】
【化27】
【0252】
の構造を有する、実施形態12の化合物。
【0253】
実施形態14. 各Rが、H、-(CH1~3COOH、-(CH1~3O(CH1~2CH、-(CH2~4OH、-(CH2~5P(O)(OCHCH、または-CHCH(OMe)から独立して選択される、実施形態10から13のいずれか1つの化合物。
【0254】
実施形態15. nが、2、3、4、または5である、実施形態1から14のいずれか1つの化合物。
【0255】
実施形態16. mが、0、1、または2である、実施形態1から15のいずれか1つの化合物。
【0256】
実施形態17. pが、1または2である、実施形態1から16のいずれか1つの化合物。
【0257】
実施形態18. Aが、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリアミノ酸、ポリビニルアミン、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリエチレングリコール、多糖、デンドリマー、それらのコポリマー、またはそれらの組み合わせから選択される、実施形態1から17のいずれか1つの化合物。
【0258】
実施形態19. Aが、ポリアミノ酸である、実施形態18の化合物。
【0259】
実施形態20. ポリアミノ酸が、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリリジン、ポリ(2,4-ジメチルアミノ酪酸)(ポリDab)、ポリ(2,4-ジアミノピメリン酸)(ポリDap)、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせである、実施形態18または19の化合物。
【0260】
実施形態21. 各リンカーが、C3~C8アルキルアミン、C3~C8アルキレン、C3~C8シクロアルキル、C3~C8ヘテロシクロアルキル、5員または6員のアリールもしくはヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルアリール、C3~C8シクロアルキルヘテロアリール、C(O)、C(O)O、アミド、アミン、チオエーテル、マレイミド-チオールコンジュゲート、ポリエチレングリコール(PEG)、またはそれらの混合物を独立して含むか、それらから独立して選択され、場合によっては、アミン、アルキレン、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルキルアリール、およびシクロアルキルヘテロアリールのそれぞれが、独立して非置換であるか、C1~C6アルキル、C1~C6アルケニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8ヘテロシクロアルキル、アミド、エステル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルアリール、C3~C8シクロアルキルヘテロアリール、CN、またはそれらの混合物から選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、実施形態1から20のいずれか1つの化合物。
【0261】
実施形態22. 各Lが、C3~C8アルキレン、C3~C8アルキルアミン、エステル、アミン、アミド、チオエーテル、マレイミド-チオールコンジュゲート、PEG、またはそれらの混合物を独立して含むか、それらから独立して選択され、場合によっては、アルキレンおよびアルキルがそれぞれ、独立して非置換であるか、C1~C6アルキル、C1~C6アルケニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8ヘテロシクロアルキル、アミド、エステル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルアリール、C3~C8シクロアルキルヘテロアリール、CN、またはそれらの混合物から選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、実施形態1から21のいずれか1つの化合物。
【0262】
実施形態23. 各Lが、C3~C8アルキレン、C3~C8アルキルアミン、エステル、アミン、アミド、チオエーテル、マレイミド-チオールコンジュゲート、PEG、またはそれらの混合物を独立して含むか、それらから独立して選択され、場合によっては、アルキレンおよびアルキルがそれぞれ、独立して非置換であるか、C1~C6アルキル、C1~C6アルケニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8ヘテロシクロアルキル、アミド、エステル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルアリール、C3~C8シクロアルキルヘテロアリール、CN、またはそれらの混合物から選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、実施形態1から22のいずれか1つの化合物。
【0263】
実施形態24. Lが、存在しないかC3~C8アルキルアミンである、実施形態1から23のいずれか1つの化合物。
【0264】
実施形態25. 各Rの第1の修飾基の溶解度調節剤および第2の修飾基の溶解度調節剤が、それぞれ独立して、ポリエチレングリコール(PEG)、糖、オリゴ糖、またはポリ(カルボキシルベタイン)メタクリレートもしくはポリ(スルホベタイン)メタクリレート(PBSMA)などの双性イオンポリマーを含む、実施形態1から24のいずれか1つの化合物。
【0265】
実施形態26. 反応性官能基が、1つまたは複数の生体分子に結合するためのものである、実施形態1から25のいずれか1つの化合物。
【0266】
実施形態27. 各Rの第1の修飾基の反応性官能基および第2の修飾基の反応性官能基が、カルボン酸、マレイミド、チオール、アジド、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)、トランス-シクロオクテン(TCO)、テトラジン、フラン、またはアルデヒドからそれぞれ独立して選択される、実施形態1から26のいずれか1つの化合物。
【0267】
実施形態28. 1つまたは複数の生体分子が、小分子、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、脂質、炭水化物、またはそれらの混合物からそれぞれ独立して選択される、実施形態1から27のいずれか1つの化合物。
【0268】
実施形態29. 1つまたは複数の生体分子が、それぞれ独立して、アフィニティ試薬であり、場合によっては、アフィニティ試薬が、抗体である、実施形態28の化合物。
【0269】
実施形態30. 化合物が、
【0270】

【化33】
【0271】
(式中、rは、約3~約200、約6~約30、または約10~約25であり、R、R、L、LおよびRは、それぞれ実施形態10から14のいずれか1つで定義される通りである)
から選択される、実施形態1の化合物。
【0272】
実施形態31. 化合物が、
【0273】
【化34】
【0274】
(式中、sは、約1~約50、約2~約40、約5~約30、約10~約30、約5~約35、または約20~約30であり、rは、約3~約200、約6~約30、または約10~約25であり、R、R、L、LおよびRは、それぞれ実施形態10から14のいずれか1つで定義される通りである)
から選択される、実施形態1の化合物。
【0275】
実施形態32. 化合物が、
【0276】
【化35】
【0277】
(式中、sは、約1~約50、約2~約40、約5~約30、約10~約30、約5~約35、または約20~約30であり、rは、約3~約200、約6~約30、または約10~約25であり、R、R、L、LおよびRは、それぞれ実施形態10から14のいずれか1つで定義される通りである)
から選択される、実施形態1の化合物。
【0278】
実施形態33. 化合物が、
【0279】
【化36】
【0280】
(式中、sは、約1~約50、約2~約40、約5~約30、約10~約30、約5~約35、または約20~約30であり、rは、約3~約200、約6~約30、または約10~約25であり、Rは、実施形態10から14のいずれか1つで定義される通りである)
から選択される、実施形態1の化合物。
【0281】
実施形態34. 実施形態1から33のいずれか1つで定義される通りの式Iの化合物であって、1個または複数個の金属Mにキレート化され、式II
【0282】
【化37】
【0283】
またはその誘導体もしくは塩の構造を有する、式Iの化合物。
【0284】
実施形態35. Mが、軟質金属である、実施形態34の化合物。
【0285】
実施形態36. Mが、Re、Pt、Pd、Nb、Tc、Hg、Ag、Au、Mo、Ru、Rh、Cd、W、Os、またはそれらの混合物から選択される、実施形態34または35の化合物。
【0286】
実施形態37. Mが、非放射性である、実施形態34から36のいずれか1つの化合物、または実施形態35から37のいずれか1つの組成物。
【0287】
実施形態38. Mが、同位体濃縮されている、実施形態34から37のいずれか1つの化合物、または実施形態35から38のいずれか1つの組成物。
【0288】
実施形態39. それぞれ独立して実施形態1から33のいずれか1つで定義される通りである1つもしくは複数の式Iの化合物、またはそれぞれ独立して実施形態34から38のいずれか1つで定義される通りである1つもしくは複数の式IIの化合物、および溶媒を含む、組成物。
【0289】
実施形態40. マスサイトメトリーにおける使用のための、実施形態1から33のいずれか1つで定義される通りである式Iの化合物または実施形態34から38のいずれか1つで定義される通りである式IIの化合物。
【0290】
実施形態41. 各キレート基が、軟質金属を結合することができ、軟質金属が、単一同位体であり、少なくとも1つのキレート基が、軟質金属の軟質金属原子にキレート化される複数のキレート基を含む線状または分岐ポリマーを含む、元素タグ。
【0291】
実施形態42. キットであって、
軟質金属の単一同位体の複数の軟質金属原子を含む同位体組成物;および
2つの窒素含有5員または6員の複素環を含む複数のキレート基を含む線状または分岐ポリマーを含む元素タグ(元素タグの各キレート基は、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を含むか、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を結合することができる)
を含み;
場合によっては、放射性軟質金属をいずれも含まない、
キット。
【0292】
実施形態43. 同位体組成物が、同位体の天然混合物を含まない、実施形態42のキット。
【0293】
実施形態44. 元素タグが、生体分子を結合するように官能化されている、実施形態42または43のキット。
【0294】
実施形態45. 元素タグが、生体分子に共有結合している、実施形態42または43のキット。
【0295】
実施形態46. さらに、生体分子を含む、実施形態42から44のいずれか1つのキット。
【0296】
実施形態47. 生体分子が、オリゴヌクレオチドである、実施形態43から46のいずれか1つのキット。
【0297】
実施形態48. 生体分子が、抗体である、実施形態43から46のいずれか1つのキット。
【0298】
実施形態49. 各キレート基が、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を含む、実施形態42から48のいずれか1つのキット。
【0299】
実施形態50. 同位体組成物が、元素タグから別個に提供される軟質金属溶液であり、各キレート基が、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を結合することができる、実施形態42から48のいずれか1つのキット。
【0300】
実施形態51. さらに、追加の同位体組成物を含み、追加の同位体組成物が、同位体組成物の軟質金属の単一同位体とは異なる軟質金属の追加の単一同位体の複数の追加の軟質金属原子を含む、実施形態42から50のいずれか1つのキット。
【0301】
実施形態52. さらに、複数の追加のキレート基を含む追加の線状または分岐ポリマーを含む追加の元素タグを含む、実施形態51のキット。
【0302】
実施形態53. 元素タグの線状または分岐ポリマーの各キレート基が、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を含み、追加の元素タグの追加の線状または分岐ポリマーの各追加のキレート基が、追加の同位体組成物の少なくとも1個の追加の軟質金属原子を含む、実施形態52のキット。
【0303】
実施形態54. 各元素タグが、異なる抗体に共有結合している、実施形態42から53のいずれか1つのキット。
【0304】
実施形態55. 各キレート基が、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を結合することができ、各キレート基が、ジピコリルアミンまたはビス((1H-イミダゾール-2-イル)メチル)アミンから選択され、各イミダゾールが、場合によっては、C1~C6 COOH、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルホスホネート、アルキルエーテル、ポリエーテル、またはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の極性官能基で置換されている、実施形態42から54のいずれか1つのキット。
【0305】
実施形態56. さらに、元素タグの抗体への共有結合のための試薬を含む、実施形態42から55のいずれか1つのキット。
【0306】
実施形態57. 各元素タグが、独立して、実施形態1から33のいずれか1つで定義される通りである式Iの化合物または実施形態34から38のいずれか1つで定義される通りである式IIの化合物である、実施形態42から56のいずれか1つのキット。
【0307】
実施形態58. 方法であって:
軟質金属の単一同位体の複数の軟質金属原子を含む同位体組成物を提供するステップ;
それぞれ独立して2つの窒素含有5員もしくは6員の複素環を含む複数のキレート基を含む線状または分岐ポリマーを含む元素タグ(各キレート基は、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を結合することができる)を提供するステップ;ならびに
同位体組成物の軟質金属原子を元素タグの1つまたは複数のキレート基に結合するステップ
を含み;
軟質金属原子が、非放射性である、方法。
【0308】
実施形態59. 同位体組成物が、同位体の天然混合物を含まない、実施形態58の方法。
【0309】
実施形態60. さらに、追加の同位体組成物を提供するステップを含み、追加の同位体組成物が、同位体組成物の非放射性軟質金属の単一同位体とは異なる非放射性軟質金属の追加の単一同位体の多数の追加の軟質金属原子を含む、実施形態59の方法。
【0310】
実施形態61. さらに、複数のキレート基を含む追加の線状または分岐ポリマーを含む追加の元素タグを提供するステップを含む、実施形態58から60のいずれか1つの方法。
【0311】
実施形態62. 元素タグの線状または分岐ポリマーの各キレート基が、同位体組成物の少なくとも1個の軟質金属原子を含み、追加の元素タグの追加の線状または分岐ポリマーの各追加のキレート基が、追加の等方性組成物の少なくとも1個の追加の軟質金属原子を含む、実施形態58から61のいずれか1つの方法。
【0312】
実施形態63. さらに:
生体分子を提供するステップ;および
生体分子を元素タグに共有結合するステップ
を含む、実施形態58から62のいずれか1つの方法。
【0313】
実施形態64. 生体試料中の検体の分析のための方法であって、
(i)元素タグ付きアフィニティ試薬を検体とインキュベートするステップであって、元素タグ付きアフィニティ試薬が、元素タグでタグ付けされたアフィニティ試薬を含み、元素タグが、それぞれ独立して2つの窒素含有5員もしくは6員の複素環を含む複数のキレート基を有する線状または分岐ポリマーを含み、元素タグがさらに、軟質金属の単一同位体の複数の軟質金属原子を含む、ステップ;
(ここで:
元素タグの各キレート基は、少なくとも1個の軟質金属原子を含むか、少なくとも1個の軟質金属原子を結合することができ、
軟質金属原子は、非放射性であり、そして
アフィニティ試薬は、検体を特異的に結合する)
(ii)未結合の元素タグ付きアフィニティ試薬を、結合した元素タグ付きアフィニティ試薬から分離するステップ;ならびに
(iii)検体に結合しているアフィニティ試薬に結合した元素タグを、質量分析原子分光法により分析するステップ
を含む、方法。
【0314】
実施形態65. 軟質金属が、同位体の天然混合物を含まない、実施形態64の方法。
【0315】
実施形態66. 元素タグ付きアフィニティ試薬を検体とインキュベートするステップが:
2つまたはそれ以上の差別的な元素タグ付きアフィニティ試薬を2つまたはそれ以上の検体とインキュベートするステップであって、元素タグ付きアフィニティ試薬が、2つまたはそれ以上の検体と特異的に結合して2つまたはそれ以上の差別的にタグ付けされた検体を生成するステップを含み、アフィニティ試薬に結合した元素タグを分析するステップが、2つまたはそれ以上の検体に結合した差別的な元素タグを質量分析原子分光法により分析するステップを含む、
実施形態64または65の方法。
【0316】
実施形態67. アフィニティ試薬がさらに、蛍光標識で標識される、実施形態64から66のいずれか1つの方法。
【0317】
実施形態68. 質量分析原子分光法が、ICP-MSである、実施形態64から67のいずれか1つの方法。
【0318】
実施形態69. 質量分析原子分光法が、質量分析計ベースのフローサイトメーターによるものである、実施形態64から67のいずれか1つの方法。
【0319】
実施形態70. アフィニティ試薬が、抗体である、実施形態64から69のいずれか1つの方法。
【0320】
実施形態71. アフィニティ試薬が、ビオチンを特異的に結合する、実施形態64から70のいずれか1つの方法。
【0321】
実施形態72. アフィニティ試薬が、オリゴヌクレオチドである、実施形態64から69のいずれか1つの方法。
【0322】
実施形態73. 元素タグ付きアフィニティ試薬が、生体試料中の検体に結合するように構成され、生体試料が、細胞を含む、実施形態64から72のいずれか1つの方法。
【0323】
実施形態74 軟質金属が、Re、Pt、Pd、Nb、Tc、Hg、Ag、Au、Mo、Ru、Rh、Cd、W、Os、またはそれらの混合物から選択される、実施形態64から73のいずれか1つの方法。
【0324】
実施形態75. 軟質金属が、生体試料中に天然には存在しない元素である、実施形態64から74のいずれか1つの方法。
【0325】
実施形態76. 元素タグが、実施形態1から33のいずれか1つで定義される通りである式Iの化合物、または実施形態34で定義される通りである式IIの化合物であるかそれを含む、実施形態54から75のいずれか1つの方法。
【0326】
上記開示は、一般に本開示を説明する。より完全な理解は、以下の特定の実施例を参照することにより得られ得る。これらの実施例は、単に例証の目的でのみ記載され、本出願の範囲を限定することを意図するものではない。状況が便宜を示唆または提供する可能性がある場合、形態における変更および等価物の置換が考えられる。特定の用語が、本明細書で使用されているが、そのような用語は、説明的な意味で意図されており、限定を目的とするものではない。
【0327】
実施例
本開示が、現在好ましい実施例と考えられているものを参照して説明されているが、本開示が、開示された実施例に限定されないことが理解されるべきである。それとは反対に、本開示は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる種々の修飾および等価の配置に及ぶことが意図される。
【0328】
実施例1
キレートポリマー化合物I-1の調製
ペンダント基がマスサイトメトリーに有用な質量チャンネルの数を増やすレニウムをキレート化することができるペンダント基に結合した、ジピコリルアミン(DPA)キレート化剤を有するポリマーを合成した。金属-キレート化剤ポリマーの合成および使用される材料を説明する。
【0329】
本開示の代表的なキレートポリマー化合物I-1を、スキーム2にしたがって調製した。代表的な活性化エステルポリマー2-1を、代表的なLys-DPAキレート化剤1-4と反応させた。その後、得られるポリマー2-2を、PEGおよびマレイミドを含む修飾基に結合させ、化合物I-1を得た。キレート化剤1-4を、スキーム1にしたがって合成した。本開示の他の化合物が、以下に記載されるように、適切な修飾がある、同様の方法、技術および原理を使用して生成され得ることが理解され得る。
【0330】
材料
トリエチルアミン(TEA、カタログ番号471283)、塩化アクリロイル(カタログ番号549797)、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸(DDMAT)、カタログ番号723010)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN、カタログ番号44109)、Nε-Boc-L-リジン(カタログ番号359661)、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(STAB、カタログ番号316393)、2-ピリジンカルボキシアルデヒド(カタログ番号P62003)、HCl(ジオキサン中で4M、カタログ番号345547)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩溶液(TCEP、カタログ番号646547)をシグマ・アルドリッチから得た。ペンタフルオロフェノールをマトリックス・サイエンティフィクから購入した(カタログ番号006058)。mPEG-NH(カタログ番号281204)をChemPepから得た。ビス-Mal-PEG(カタログ番号BP-22152)をブロードファームから得た。4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMTMM、カタログ番号D461245)をToronto Research Chemicalsから購入した。すべての有機溶媒(無水物)を商業的供給源から得、さらなる精製なしで使用した。
【0331】
リジンベースのレニウムキレート化剤の合成
スキーム1に示すように、(i)Boc保護リジン前駆体の直接還元的アルキル化20、(ii)塩酸(ジオキサン中のHCl)によるBoc脱保護、続いて(iii)NaOHを用いるアミン塩酸塩の遊離塩基への変換による3つのステップで、キレート化剤1-4を調製した。反応中間体および得られる生成物を、H-NMRにより特徴づけ、それらの構造を確認した(図6)。
【0332】
【化38】
【0333】
ジクロロエタン(45mL)中のNε-Boc-L-リジン1-1(2g)およびSTAB(4.5g)の混合物に、2-ピリジンカルボキシアルデヒド(1.85g、5mLのジクロロエタンに溶解)を0℃、窒素下で添加した。懸濁液を室温で約5時間撹拌し、均質な鮮黄色になった。反応混合物を脱イオン水(30mL)で分解し、ジクロロエタン(100mL)で希釈した。分離した有機相を、脱イオン水(30mL×4)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、回転式蒸発により濃縮して、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)保護リジンベースのキレート化剤1-2(2.5g)を得た。H NMR(600MHz,CDCl)δ8.53(ddd,J=5.1,1.8,0.9Hz,2H),7.65(td,J=7.7,1.8Hz,2H),7.32(dt,J=7.9,1.1Hz,2H),7.20(ddd,J=7.6,5.0,1.2Hz,2H),4.70(s,1H),4.10(d,J=3.8Hz,4H),3.47(dd,J=7.8,6.5Hz,1H),3.16~3.07(m,2H),2.04~1.92(m,1H),1.88~1.72(m,1H),1.52~1.45(m,4H),1.43(s,9H)。
【0334】
Boc基を除去するため、塩化水素溶液(ジオキサン中で4M、7mL)を、DCM(5mL)中の上記化合物1-2(1.5g)の溶液に、0℃で徐々に添加した。得られる溶液を24時間、室温で撹拌した。黄色沈澱物が、反応中に形成した。溶媒を棄て、沈澱物をメタノール(5mL)に溶解し、ジエチルエーテル(15mL)中で沈澱させた。沈澱物を遠心分離(2700×g、10分)により回収した。この溶解-沈澱サイクルを、もう一度繰り返した。最後に、沈澱物を真空オーブン中、室温(room temperate)で24時間乾燥させて、Boc脱保護リジンベースのDPAキレート化剤をアミン塩1-3(1.3g)として得た。H NMR(600MHz,DO)δ8.68(ddd,J=6.0,1.6,0.7Hz,2H),8.49(td,J=7.9,1.6Hz,2H),8.05(dt,J=8.0,1.0Hz,2H),7.92(ddd,J=7.5,5.9,1.3Hz,2H),4.42(q,J=16.5Hz,4H),3.57~3.51(m,1H),2.96(t,J=7.7Hz,2H),1.92(ddd,J=9.9,8.4,5.8Hz,1H),1.89~1.82(m,1H),1.69~1.61(m,2H),1.52~1.44(m,2H)。
【0335】
アミン塩を遊離塩基に変換するため、濃NaOH溶液(5M)を、アミン塩の溶液(0.5g、2mLの水に溶解した)に、約13のpHに到達するまで、0℃で徐々に添加した。その後、塩基性溶液を凍結乾燥し、淡茶色固体を得た。ジクロロメタン(5mL)を添加して、遊離塩基を溶解した。未溶解固体を、遠心分離(16000×g、10分)により除去した。上清を回収し、濃縮し、真空下、室温で24時間乾燥させて、最終のリジンベースのDPAキレート化剤を遊離塩基1-4(0.3g)として得た。H NMR(500MHz,DO)δ8.24(ddd,J=5.0,1.8,0.9Hz,2H),7.60(td,J=7.7,1.8Hz,2H),7.37(dt,J=7.9,1.2Hz,2H),7.14(ddd,J=7.6,5.0,1.2Hz,2H),3.95(d,J=14.6Hz,2H),3.79(d,J=14.6Hz,2H),3.21(dd,J=8.5,6.3Hz,1H),2.59(t,J=6.8Hz,2H),1.75~1.64(m,2H),1.45~1.26(m,4H)。
【0336】
アクリル酸ペンタフルオロフェニル(PFPA)モノマーの合成
活性化エステルポリマー2-1を調製するため、トリエチルアミン(18.3mL)をペンタフルオロフェノール(130mLのジクロロメタン中で20g)の溶液に、窒素下、0℃で徐々に添加し、続いて10.6mLの塩化アクリロイルを添加することにより、アクリル酸ペンタフルオロフェニル(PFPA)モノマーを、最初に合成した。反応混合物を、0℃で2時間、その後室温で一晩撹拌した。塩を濾過により除去した。溶液を回転式蒸発により濃縮し、その後、溶離液としてヘキサンを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィを使用して精製した。H NMR(500MHz,CDCl)δ6.71(dd,J=17.3,1.0Hz,1H),6.37(dd,J=17.3,10.6Hz,1H),6.17(dd,J=10.5,0.9Hz,1H)。19F NMR(564MHz,CDCl)δ-153.17~-153.27(m),-158.74(t,J=21.5Hz),-163.11(td,J=23.0,22.5,5.4Hz)。
【0337】
PFPAモノマーのRAFT重合
活性化エステルポリマー2-1、ポリ(アクリル酸ペンタフルオロフェニル)(PPFPA)の合成は、可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合により達成された。21,22スターラーバーを備えたシュレンクフラスコ内で、1,4-ジオキサン(6.0mL)中、連鎖移動剤(CTA)として2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロパン酸(DDMAT、0.28mmol)および熱開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN、0.028mmol)を使用して、70℃で重合を実行した。溶液を3回の凍結-ポンプ-融解サイクルにより脱気し、その後、フラスコを密封し、予熱した油浴(70℃)に9時間入れた。重合後、溶液を冷水により室温まで冷却し、空気に曝露した。ポリマーを過剰の冷ヘキサン(30mL)中で沈澱させた。得られたポリマーを、クロロホルム(5mL)に溶解し、再度ヘキサン(30mL)中で沈澱させた。この溶解-沈澱プロセスを3回繰り返した。真空中、室温で一晩乾燥させた後、最終のポリマー、ポリ(PFPA)2-1を黄色粉末として得た。
【0338】
30:1:0.1のモノマー-対-CTA対開始剤のモル比([M]:[CTA]:[I])を選択し、得られたポリマー2-1の分子量を調整して9,400g/molの見かけの数平均分子量(M GPC)および約73%の変換率で得られる比較的狭い分子量分布(D=1.25)にした(図4)。
【0339】
H NMR分光法を使用して、ドデシル鎖末端(δ=0.88ppm)について、PPFPA骨格ピークの積分(δ=3.11ppm)をメチル単位のものと比較することにより、重合の度合い(DP)を決定した(図5S2)。対応するポリマー2-1のDPは、約20であった。ポリマー2-1の19F NMRスペクトルは、-153.2、-156.8、および-162.3ppmでポリマー骨格に沿ったペンタフルオロフェニル基に対応する2:1:2の積算比の3つのブロードピークを示した(図5)。
【0340】
リジンベースのレニウムキレート化剤を有するポリ(PFPA)のアミノリシス
次に、ポリマー2-1を、わずかに過剰のリジンベースのキレート化剤1-4を用いて(PFPA繰り返し単位に関して1.6当量)室温で処置し、ポリマー2-2を得た(スキーム2、ステップa)。上記スキーム1に示すように、キレート化剤1-4を3つのステップで調製した。アミノリシス反応を、19F NMR分光法によりモニターした。経時的に、骨格に沿ったPFPA単位に対応するブロードシグナルが消失し、一方で、放出されたペンタフルオロフェノールに対応するシャープなシグナルが出現した(図7)。一晩室温で撹拌した(13時間)後、100μLのエタノールアミンを反応混合物に添加し、反応混合物を3時間撹拌した。ポリマーをジエチルエーテル(50mL)中で沈澱させ、その後、HOに溶解した。スピンフィルタ(アミコン、ウルトラ-15、3kDa)を使用して過剰のキレート化剤を除去し、HOで2回、PBS緩衝液で3回、HOで3回洗浄した。凍結乾燥後、ポリマー2-2(ポリDPA)を淡茶色粉末として得た。
【0341】
【化39】
【0342】
精製後、ポリマー2-2のH NMRは、キレート化剤1-4の導入に対応する一連の共鳴を示し、一方で、19Fスペクトルは、シグナルを示さなかった(図8)。これらのNMR研究により、ポリマー骨格に沿ったほぼ定量的なキレート化剤1-4の組み込みを有するPFPA単位の完全な修飾が示唆される。さらに、メタノール中のポリマー2-2のUV-可視スペクトルは、ごくわずかな309nmでの吸光度を示し、アミノリシス中のトリチオカーボネート基の開裂を示唆した(図9)。しかし、キレート化剤の2-ピリジル基からの吸収に対応する、262nmに位置するシャープな吸光度ピークが観察された。
【0343】
1-4のカルボン酸(COOH)部分は、2つの目的を果たすことができる。第1に、カルボキシレートイオンが、金属担持ポリマーの水溶性を改善することが予想される。第2に、この金属-ポリマー錯体は、正味の正電荷を有することができる。各ペンダント基において正電荷を有するポリマーは、一般に負電荷の外膜を有する細胞と非特異的に相互作用することができる。カルボキシレートは、潜在的な対イオンを提供し、そのため、各ペンダント基は、双性イオン性である。レニウム担持ポリマー2-2が、水またはPBS緩衝液中で低溶解度を有することが分かった。水溶解度をさらに改善するため、スキーム2、ステップbに示すように、ポリマー2-2を短いメトキシポリエチレングリコール(mPEG-NH)で修飾した。ここでの目標は、ポリマーの水溶性を高めるだけでなく、正電荷の錯体を細胞との相互作用から保護するためにPEGコロナを提供することでもある。
【0344】
mPEG-NHを用いるポリマー2-2のPEG化
最初に、ポリマー2-2(50.3mg)を、PB緩衝液(4mL、0.2M、pH8.0)中、過剰の(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチル-モルホリニウムクロリド)(DMTMM、1mLのHO中で288mg、各カルボン酸基に対して約8モル当量)で処理した(スキーム2、ステップb)。反応混合物を室温で5分間撹拌し、カルボン酸官能基を活性化させた。これに続いて、過剰のmPEG-NH(各カルボン酸基に対して約7モル当量)を素早く添加し、反応溶液を一晩(15時間)、室温で撹拌した。続いて、本明細書ではポリマー2-3と呼ばれるポリマー2-2のPEG化バージョンを得た。スピンフィルタ(アミコン、ウルトラ-15、10kDa)を使用してポリマー2-3を精製し、HOで3回、PBS緩衝液で2回、HOで3回洗浄した。凍結乾燥後、最終のポリマー、ポリDPA-mPEG2-3を、淡茶色固体として得た。
【0345】
ポリマー2-3のH NMRスペクトルにより、mPEGのメトキシ基およびエチレングリコール繰り返し単位に対応する3.32ppmおよび3.59ppmでの新しいピークの出現で、PEG化が確認される(図10)。レニウム担持実験により、金属担持ポリマー2-3が水およびPBS緩衝液の両方に溶解性であることが確認された。
【0346】
マレイミド官能基のポリマー2-3への結合
マレイミド官能基を組み込むように、ポリマー2-3をさらに修飾した(スキーム2、ステップc)。第1に、前のステップで形成されている可能性があるジスルフィド結合はいずれも、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)で還元された。HO(1mL)中のポリマー2-3(10mg)の溶液に、TCEP(80μL、0.5M)を添加した。反応溶液中のTCEPの濃度は、約50mMであった。反応混合物を室温で1時間撹拌した。その後、スピンフィルタ(アミコン、ウルトラ-15、10kDa)を使用して、ポリマーを酢酸溶液(約5mM、pH3.5)で2回洗浄し、過剰のTCEPを除去した。
【0347】
その後、新たに還元されたチオール基を過剰のビスマレイミド(ビス-Mal-PEG)と反応させ、マレイミド官能化化合物I-1を与えた。このあとすぐ、濃縮ポリマー溶液(約300μL)を2ドラムのガラスバイアルに移し、0.5mLのPB緩衝液(0.2M、pH7.0)を添加し、続いてビス-Mal-PEG(120μLのDMF中で22mg)を添加した。反応溶液を室温で90分間撹拌した。その後、スピンフィルタ(アミコン、ウルトラ-15、10kDa)を使用して化合物I-1を精製し、HOで2回、PB緩衝液(0.2M、pH7.0)で1回、HOで3回洗浄した。洗浄後、濃縮ポリマー溶液を12000×gで10分間遠心分離し、未溶解固体を除去した。上清を取り出し、凍結乾燥して、最終ポリマー、ポリDPA-mPEG-Mal化合物I-1を淡茶色固体として得た。
【0348】
化合物I-1のH NMRスペクトルは、マレイミドに対応する6.89ppmの新たなピークの出現を示した(図1)。8.27ppmでのこのピークの積分の、キレート化剤プロトンの積分に対する比は、1:20であり、マレイミド官能基のポリマーへのほぼ定量的な組み込みを示唆する。
【0349】
化合物I-1へのレニウム担持
金属担持は、わずかに過剰のレニウム塩[NEt[Re(CO)Br24(3mg、各キレート化剤に対して1.2倍、0.5mLの無水MeOHに溶解)を有する2ドラムのガラスバイアル中、化合物I-1(2mLの無水MeOH中で2.1mg)をインキュベートすることにより達成された。反応混合物を37℃で2時間、撹拌なしでインキュベートした。インキュベーション後、溶液を、予めHO(12mL)が充填されたアミコンスピンフィルタ(ウルトラ-15、10kDa)に注いだ。ポリマーをHOで3回洗浄した。洗浄後、ポリマー溶液を凍結乾燥し、レニウム担持ポリマーを得た。
【0350】
図2(a)は、芳香族領域におけるRe担持化合物I-1(化合物II-1)のH NMRの部分を表す。非担持ポリマーと比較して、すべてのピリジルプロトンシグナルは、Re(I)の電子吸引性誘起効果のために低磁場にシフトした。重要なことに、マレイミド基は、これらの反応条件下で残存した(図11)。図2(b)に示すように、担持の成功は、フーリエ変換近赤外(FTIR)分光法によりさらに確認された。レニウム塩は、1848および1998cm-1で2つの強力なカルボニル吸収を示した。化合物I-1は、それぞれPEGにおけるアミド基のC=O伸縮およびエーテルC-O-C結合の振動に対応する1650および1095cm-1で吸収バンドを示した。25担持後、カルボニル基に対応する2つの新たな吸収バンドが、1908および2030cm-1で出現し、fac-[Re(CO)コアの存在を示唆した。レニウム担持ポリマーを長期保存のために凍結乾燥し、バイオコンジュゲーション反応の前に緩衝液に再溶解することができる(図12に示した凍結乾燥試料)。
【0351】
実施例2
Re担持ポリマー化合物II-1を一次抗体で標識し、マスサイトメトリー免疫測定法で使用した。
【0352】
Re担持ポリマーの抗体標識
マスサイトメトリー免疫測定法において代表的な元素タグ化合物II-1の性能を評価するため、標準Maxpar(商標)抗体標識プロトコルにしたがって、一次抗体、CD20を、ポリマータグで標識した。簡潔に言うと、抗体をTCEPにより部分還元し、スピンフィルタ内で洗浄し、その後、過剰のポリマーと混合し、混合物を37℃で1時間インキュベートした。抗体-ポリマーコンジュゲートを高速タンパク質液体クロマトグラフィにより精製し、過剰の非共役ポリマーを除去した(図13)。
【0353】
抗体価測定実験
その後、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)で抗体価測定実験を実行し、精製コンジュゲートの性能を評価した。これらの実験において、154Sm-CD45、160Gd-CD14、170Er-CD3および187/185Re-CD20を含む4-plex抗体パネル(フリューダイムMaxpar(商標)試薬)でヒトPBMCを染色した。187/185Re-CD20が147Sm-CD20で置き換えられた別の染色パネルを、陽性対照として使用した。187/185Re-CD20コンジュゲートを、0.1μg/mL、0.3μg/mL、0.5μg/mL、1μg/mLおよび2.5μg/mLの濃度で滴定した。図3に示すように、187/185Re-CD20は、PBMC中の残りの細胞サブセットからのCD20B細胞サブセットの明確な分離を可能にする。さらに、0.3μg/mLでの187/185Re-CD20(図3(b))または最適力価での147Sm-CD20(図3(f))のいずれかを使用することにより、PBMC内の主要な細胞サブセットの高度に同等の割合を達成した。これらの結果から、レニウムタグ付け抗体が、1細胞免疫表現型解析実験のための正確な定量を提供し、マスサイトメトリー免疫測定法のための市販試薬と組み合わせて使用することができることが示唆される。
【0354】
実施例3
DPAによりキレート化された1個または複数個のプラチナ原子を有するキレート化剤
ペンダント基(ペンダント基は、マスサイトメトリーに有用なプラチナをキレート化することができる)に結合したジピコリルアミン(DPA)キレート化剤を有するポリマーを合成した。使用されるプラチナおよび材料を有する代表的な金属-キレート化剤ポリマーの合成を説明する。
【0355】
材料
実施例1と同様にポリマー2-2を使用して、ポリマー3-2を調製した(スキーム3)。アジド-PEG-NH(カタログ番号76172)およびテトラクロロ白金酸カリウム(KPtCl、カタログ番号520853)をシグマ・アルドリッチから得た。
【0356】
アジド-PEG-NHを用いるポリマー2のPEG化
1H-NMRを使用して、得られたポリマー3-2を特徴づけた(図14)。FTIRはさらに、アジド基の組み込みの成功を確認する(図15)。エンドキャップされたポリマー3-1の溶液(2mLのPB緩衝液中で20mg、0.2M、pH8.0)に、DMTMM溶液(0.5mLのHO中で124mg、各COOHに対して約8倍)を添加した。溶液を室温で5分間撹拌し、COOH基を活性化させた。5分後、mPEG-NH(54mg、各COOHに対して3.5倍当量)およびアジド-PEG-NH(64mg、各COOHに対して3.5倍当量)を含むPEGの混合物を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。スピンフィルタ(アミコン、ウルトラ-5、10kDa)を使用して得られたポリマー3-2を精製し、HOで3回、PB緩衝液(0.2M、pH7.6)で2回、HOで3回洗浄した。その後、ポリマー溶液を一晩凍結乾燥し、最終生成物3-2を得た。
【0357】
【化40】
【0358】
ポリマー3-2へのプラチナ担持 ポリマー3-2に対するプラチナ担持を、スキーム4)にしたがって実行した。H-NMRを使用して、Ptのキレート化が成功したことを確認した(図16)。2ドラム(約7mL)のガラスバイアル中のポリマー3-2の溶液(5.5mLの無水MeOH中で5.8mg)に、KPtCl(200μL、DMSO中50mM、各キレート化剤に対して1.2倍当量)の溶液を添加した。バイアルをアルミニウム箔で包み、昼光への曝露を回避した。反応混合物を、油浴中、撹拌なしで2時間、45℃でインキュベートした。インキュベーション後、溶液を、予めHO(10mL)が充填されたアミコンスピンフィルタ(ウルトラ-15、10kDa)に注いだ。得られたポリマー4-1(化合物II-2)の溶液を、NaCl溶液(20mM)で3回、HOで1回洗浄した。洗浄後、ポリマー溶液を凍結乾燥し、Pt担持ポリマー4-1を得た。
【0359】
【化41】
【0360】
実施例4
Pt担持ポリマーを、一次抗体で標識し、マスサイトメトリー免疫測定法で使用した。
【0361】
Pt担持ポリマーの抗体標識
マスサイトメトリー免疫測定法においてポリマー元素タグ4-1/II-2の性能を評価するため、一次抗体、CD20を、ポリマー元素タグ4-1/II-2で標識した。CD20 Ab(160μg、1.6mg/mL)で修飾したジベンゾシクロオクチン(DBCO)の溶液に、Pt担持ポリマー4-1の溶液を添加した(50μLのHO中で0.27mg、Abに対して約13倍のモル過剰)。反応混合物を室温で2時間、その後、4℃で一晩ボルテックスした。スピンフィルタ(アミコン、ウルトラ-0.5、100kDa)を使用して、コンジュゲートをPBSで5回洗浄することにより精製した。
【0362】
抗体価測定実験
抗体価測定実験を以下に記載するように実行した。図17は、CD20-PolyPtがT細胞からのB細胞の分離において0.5μg/mLまたは1.0μg/mLのいずれかの力価で有効であったことを示す。
【0363】
異なるMaxpar(登録商標)MCP-AbコンジュゲートをnatPt-Abコンジュゲートと混合することにより、抗体染色カクテル(70μL)を調製した。natPt-CD20を用いる免疫測定法のために、4つの抗体染色カクテルを調製した。1つのカクテルには、Maxpar(登録商標)MCP-Abコンジュゲート(すなわち、154Sm-CD45、160Gd-CD14、170Er-CD3および147Sm-CD20)のみが含まれており、陽性対照として使用した。他の3つのカクテルは、Maxpar(登録商標)MCP-Abコンジュゲート(すなわち、154Sm-CD45、160Gd-CD14および170Er-CD3)およびnatPt-CD20コンジュゲートの両方で構成され、各カクテルにおけるnatPt-CD20コンジュゲートの濃度は、それぞれ0.5μg/mL、1.0μg/mLおよび2.5μg/mLの力価で異なっていた。
【0364】
染色プロセスのため、PBMC懸濁液(30μLのMaxpar(登録商標)細胞染色緩衝液中で約300万個の細胞、Fcブロックされた)を、抗体カクテル(70μL)に添加した。混合物を穏やかにボルテックスし、室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を細胞染色緩衝液で2回洗浄し、その後、1.6%ホルムアルデヒド/PBS溶液を用いて室温で10分間固定した。固定された細胞をペレット化し、細胞挿入溶液(Ir-インターカレーター、1mL、終濃度:125nM)を添加した。その後、細胞を4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、細胞を、細胞染色緩衝液で2回、Maxpar(登録商標)セルアクイジション溶液で2回洗浄した。ペレット化した細胞を、EQ(商標)四元素キャリブレーションビーズを含むセルアクイジション溶液(1mLあたり100万個の細胞)に懸濁し、マスサイトメトリー分析に供した。
【0365】
単核球によるCD20-PolyPtコンジュゲートの取り込みも観察された。
【0366】
実施例5
DPAによりキレート化された1個または複数個の水銀原子を有するキレート化剤
ペンダント基(ペンダント基は、マスサイトメトリーに有用な水銀をキレート化することができる)に結合したジピコリルアミン(DPA)キレート化剤を有するポリマーを合成した。代表的な水銀-キレート化剤ポリマーの合成および使用した材料を説明する。
【0367】
材料
PolyDPAポリマー(2-3)を実施例1で説明されたように調製した。酢酸水銀(カタログ番号176109)およびメタノール(カタログ番号322415)をシグマ・アルドリッチから購入した。
【0368】
ポリDPA(ポリマー2-3)へのHg担持
2ドラムのガラスバイアル内でポリマー2-3(2mLのメタノール中で2.5mgのポリマー)の溶液に、Hg塩(0.5mLのメタノール中で1.5mgのHg(OAc)、DPAキレート化剤に対して1.4倍過剰)の溶液を添加し、続いて穏やかに旋回させた。得られた溶液を、40℃で2時間、撹拌なしでインキュベートした(スキーム5)。インキュベーション後、溶液を、予め水(1.5mL)が充填されたスピンフィルタ(アミコンウルトラ4、10kDa)に注いだ。得られたポリマー5-1/II-3の溶液を、水(2700g、20分)で3回洗浄し、その後、一晩凍結乾燥して、最終生成物を得た。NMR測定のため、ポリマー5-1/II-3をDOに再溶解した。H-NMRを使用して、水銀のキレート化が成功したことを確認した(図18および図19)。
【0369】
【化42】
【0370】
実施例6
DPAによりキレート化された1個または複数個の銀原子を有するキレート化剤
ペンダント基(ペンダント基は、マスサイトメトリーに有用な銀をキレート化することができる)に結合したジピコリルアミン(DPA)キレート化剤を有するポリマーを合成した。代表的な銀-キレート化剤ポリマーの合成および使用した材料を説明する。
【0371】
材料
ポリマー2-3を、実施例1で説明されたように調製した。過塩素酸銀(カタログ番号226548)、およびメタノール(カタログ番号322415)を、シグマ・アルドリッチから購入した。
【0372】
ポリDPA(ポリマー2-3)へのAg担持
2ドラムのガラスバイアル中、ポリマー2-3(2mLのメタノール中で2.5mgのポリマー)の溶液に、Ag塩(0.5mLのメタノール中で1.0mgのAgClO、DPAキレート化剤に対して1.2倍過剰)の溶液を添加し、続いて穏やかに旋回させた。得られた溶液を、40℃で2時間、撹拌なしでインキュベートした(スキーム6)。インキュベーション後、溶液を、予め水(1.5mL)が充填されたスピンフィルタ(アミコンウルトラ4、10kDa)に注いだ。得られたポリマー6-1/II-4の溶液を水(2700g、20分)で3回洗浄し、その後、一晩凍結乾燥し、最終生成物を得た。NMR測定のため、ポリマー6-1/II-4をDOに再溶解した。H-NMRを使用して、銀のキレート化が成功したことを確認した(図18および図20)。
【0373】
【化43】
【0374】
機器類
H NMRおよび19F NMR実験を、アジレントDD2 500MHz分光分析装置またはアジレントDD2 600MHz分光分析装置で実行した。
【0375】
UV-可視測定を、アジレントCary 300 UV-可視分光光度計で実行した。
【0376】
FT-IR測定を、ATRアクセサリーを有するパーキンエルマーSpectrum Two(商標)赤外分光計で実行した。すべてのスペクトルを、1cm-1の解像度で、500~4000cm-1の範囲内で回収した。
【0377】
GPC測定を、Viscotek VE3580屈折率(RI)検出器を備えたウォーターズ515HPLCで実行した。2.5g/Lテトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)を含むテトラヒドロフラン(THF)を、溶離液として使用した(35℃、流量=0.6mL/分)。システムをPMMA標準でキャリブレートした。
【0378】
FPLC実験を、AKTA pure 25Lシステムで実行した。ポリマー-抗体コンジュゲートの精製のため、Superdex(商標)200 10/300GLカラムを使用した。
【0379】
マスサイトメトリー実験を、フリューダイムカナダ(マーカム、ON)のCyTOF(登録商標)Helios(商標)システムで実行した。データをFCS3.0ファイルフォーマットで取得し、FlowJoソフトウエアにより処理した。
【0380】
実施例7
溶解度調節剤としての双性イオン性のポリ(スルホベタインメタクリレート)PSBMAの調製
材料
4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸(CTA試薬)、2-(N-3-スルホプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレート(SBMA)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(ACVA)、2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)を、シグマ・アルドリッチから得た。
【0381】
実験の詳細
10mLシュレンクフラスコで、CTA(14.51mg、5.19×10-2mmol、1.0当量)、SBMA(501mg、1.78mmol、35当量)、およびACVA(1.692mg、5.13×10-3mmol、0.1当量)をTFE(2.63mL)に溶解した。重合溶液を、3回の凍結-ポンプ-融解サイクルに供した。重合溶液を、予熱した油浴中、70℃で8時間加熱した。シュレンクフラスコを液体窒素に投入することを介して溶液を凍結することにより重合をクエンチした。重合溶液を融解した後、4℃で一晩保存した。粗重合溶液のアリコートのH-NMR解析により、モノマー変換が約70%であったことが示された。過剰の溶媒を、真空中、ロータリーエバポレータを使用して蒸発させた。粗ポリマー混合物を、TFE(約1mL)に再溶解し、メタノール(約13mL)中で沈澱させ、2700rcfで5分間遠心分離した:このプロセスを3回繰り返した。その後、得られたポリマーを真空で一晩乾燥させ、所望のポリマーを得た。固体生成物は、ピンク色と白色の固体とが明確に分離されていた。
【0382】
【化44】
【0383】
ポリマー7-1などのPSBMAは、場合によっては、例えばスキーム8に示すように、ジアミンリンカーを介して、化合物2-2などのポリマーキレート化剤に結合することができる。例えば、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチル-モルホリニウムクロリド(DMTMM)または他の同様の化学物質をカップリング剤として使用することができる。
【0384】
【化45】
【0385】
実施例8 イミダゾールベースのキレートポリマーの調製
イミダゾールベースのキレート化剤が、DPAベースのキレート化剤の調製において実施例1で使用されたものと類似の方法を使用して調製され得ることが理解され得る。代表的な合成を、スキーム9に示す。リジン-イミダゾールキレート化剤の他の例には、Maresca et al.,Bioconjugate Chem.,2010,21,1032-1042(その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている)に記載のものが含まれている。
【0386】
【化46】
【0387】
Nε保護リジン9-1は、還元的アミノ化によりα-アミノ基で2つのイミダゾール基により官能化され得、リジン-イミダゾールキレート化剤9-4に達するまで脱保護され得る。得られると、スキーム2のものと同様の手順により、リジン-イミダゾールキレート化剤を、ポリマー足場に組み込むことができる。代表的な方法を、スキーム10に示す。
【0388】
【化47】
【0389】
活性化エステルポリマー10-1を、化合物9-4などのリジン-イミダゾールキレート化剤に結合させて、キレートポリマー10-2/化合物I-7を得ることができる。場合によっては、溶解度調節剤(例えばPEG)などの修飾基では、ポリマー10-3/化合物I-8が得られる。さらに、反応性官能基(例えばマレイミド)を、ポリマー10-3に結合させて、ポリマー10-4/化合物I-9を得ることができる。
【0390】
実施例9 双性イオン性溶解度調節剤を用いるDPAキレート化剤含有ポリマーの調製
2つの代表的な双性イオン性のスルホベタイン溶解度調節剤を調製し、化合物12-1などのDPAキレート化剤含有ポリマーに結合させた。
【0391】
3-((3-アミノプロピル)-ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート11-4を、スキーム11に示すように、以前報告された合成手順に基づいて調製した。(26)
【0392】
【化48】
【0393】
化合物11-2:
ジ-tert-ブチルジカーボネート(15.6g、71.5mmol)を、50mLの1,4-ジオキサン中の3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルアミン(4.9g、6mL、47.7mmol)の溶液に添加した。溶液を0℃で2時間撹拌し、さらに一晩、室温で18時間撹拌した。18時間後、溶媒を真空で除去し、50mLのMilliQ水を粗生成物に添加した。生成物を酢酸エチル(30mL)で3回抽出した。酢酸エチルを乾燥させて、化合物11-2として、淡黄色の透明な油を与えた。さらなる精製なしで、生成物を以下の合成ステップで使用した。
【0394】
化合物11-3:
化合物11-2(1当量、2.5g、0.012mol)を15mLの無水DMFに溶解した。1,3-プロパンスルトン(1.4当量、2.113g、0.017mol)を、化合物11-2の溶液に添加し、室温で3日間撹拌した。淡黄色の粘性油が残るまで、粗生成物を真空で乾燥させて、DMFを除去した。粘性油をジエチルエーテル(30mL)で洗浄し、続いて酢酸エチル(30mL)で別に洗浄して残りの1,3-プロパンスルトンを除去した。油を凍結乾燥し、化合物11-3として白色固体を与えた。
【0395】
化合物11-4:
化合物11-3(4g、0.012mol)を、50mLのDCMに溶解し、0℃まで冷却すると、わずかに濁り、わずかに白色の溶液となった。0℃まで冷却後、ジオキサン(5mL)中の4M HClを溶液に添加し、1時間撹拌したままにした。1時間後、溶液は透明になり、固体の白色塊状沈澱物が形成した。溶媒を真空で除去し、乾固させ、DCM/イソプロパノール/MeOH(10:5:1v/v比)で沈澱させた。沈澱生成物は、ベタついた白色塊であり、それを凍結乾燥した。最終生成物、化合物11-4を白色固体として得、真空密封袋に入れて冷凍庫で保存した。化合物11-4のH NMRスペクトルを図22に示す。
【0396】
化合物12-2/I-11
スキーム12に示すように、その後、スルホベタイン11-4をDPA含有ポリマーキレート化剤12-1に結合させ、化合物12-2/ポリマーI-11を得た。
【0397】
【化49】
【0398】
DPAキレート化剤含有ポリマー12-1を、0.4mLの0.2M pH8リン酸ナトリウム緩衝液に溶解した。DMTMM(28.8mg、0.104mmol、ペンダント基1つにつき7.3当量)を、0.1mLのMilliQ水に溶解し、ポリマー溶液に添加して、5分間事前反応させた。5分後、スルホベタイン11-4(14.58mg、0.065mmol、ペンダント基1つにつき5当量)を、DPAキレート化剤含有ポリマー12-1溶液に添加し、反応混合物を一晩、室温で20時間撹拌した。20時間後、3k MWCOアミコンウルトラ4mLスピンフィルタを使用して反応混合物を精製し、MilliQ水で5回洗浄した。保持液を取り出し、凍結乾燥して、生成物、12-2を与えた。化合物12-2/I-11の1H NMRスペクトルを、図23に示す。
【0399】
化合物I-12
PBSMA7-1を、実施例7のスキーム7に示すように調製した。その後、スキーム13に示すように、エチレンジアミンリンカーを7-1に結合させ、得られた化合物13-1を、DPAキレート化剤含有ポリマー12-1に結合させて、ポリマーI-12を生成した。化合物I-12の1H NMRスペクトルを、図24に示す。
【0400】
【化50】
【0401】
DPA-キレート化剤含有ポリマー、化合物12-1(Dp=20、M=6000g/mol、0.0005mmol、3mg)を、0.1mLの0.2M、pH8リン酸ナトリウム緩衝液に溶解した。0.1mLのMilliQ水中のDMTMM(ペンダント基1つにつき7.3当量、20.20mg、0.073mmol)溶液を、DPA-キレート化剤含有ポリマー溶液に添加し、10分間事前反応させた。その後、化合物13-1(M=5600g/mol、112mg、0.02mmol、ペンダントアミン1つにつき2当量)を、事前反応させたDPA-キレート化剤含有ポリマー、化合物12-1溶液に添加し、一晩、室温で約20時間撹拌したままにした。MilliQ水で2回、20mM NaCl溶液で2回、再度MilliQ水で3回のアミコンウルトラ-4mL 10kDa MWCO、スピンフィルタを使用して粗生成物を精製し、凍結乾燥してポリマー、化合物13-2/I-12を生成した。
【0402】
代わりに、スキーム13aにしたがって、化合物13-1を調製することができる。
【0403】
【化51】
【0404】
4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸13a-1(500mg、1.79mmol、1当量)、EDC(555.8mg、3.58mmol、2当量)、およびNHS(412mg、3.58mmol、2当量)を、最小限の量のアセトニトリルに溶解し、15分間ボルテックスした。次に、N-Boc-エチレンジアミン13a-2(430mg、2.685mmol、1.5当量)を添加し、一晩撹拌した。24時間後、圧縮空気で反応を乾燥させ、その後、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィで精製した。溶媒系は、100%DCMから1:1 DCM/EtOAcのグラジェント溶離であった。精製された生成物を真空で乾燥させて、所望の生成物、N-boc CTA13a-3として、赤ピンクの固体を与えた。
【0405】
N-boc CTA13a-3(45mg、0.1067mmol)、SBMAモノマー13a-5(1.4g、2.252mmol)、および4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)開始剤13a-4(3.038mg、0.0108mmol)を、4mLの2,2,2-トリフルオロエタノールに溶解し、溶液を窒素ガスで20分間通気した。溶液を窒素ガスで20分間通気した後、反応を70℃で6時間撹拌した。6時間後、反応を空気に曝露し、粗生成物の少量のアリコートをH NMR用に採取し、トリフルオロ酢酸(1.7mL)を残りの粗生成物に添加し、一晩室温で撹拌してBoc基を加水分解した。21時間後、試料を7:3ジエチルエーテル/メタノールで沈澱させ、2.7k rcfで15分間遠心分離して沈降させてペレット化した。上清を棄てた。ペレットを2,2,2-トリフルオロエタノールで一度再溶解し、7:3ジエチルエーテル/メタノールで再沈澱させ、同じ条件下で再度遠心分離した。このプロセスを2回繰り返した。試料を真空で乾燥させて、化合物13-1を与えた。
【0406】
実施例10 種々の溶解度調節剤を用いる金属-キレート化DPAキレート化剤含有ポリマーの調製
3つのDPAキレート化剤含有ポリマー(スキーム14)を、実施例3および9に記載の方法に基づいて調製した。各ポリマーを、それぞれKPtClまたはHgClを使用してプラチナまたは水銀で金属化した。プラチナ金属化を、メタノール中、45℃で2時間実行した。水銀金属化を、メタノール中、室温で1時間実行した。金属化の成功は、ピリジルプロトンの化学シフトにおける変化によってプロトンNMRにより評価された。化合物14-2/II-7および14-3/II-8のNMRスペクトルを、図21に示す。
【0407】
【化52】
【0408】
DPA-キレート化剤含有ポリマー12-1(Dp=20、M=6000g/mol、0.0005mmol、3mg)を、0.1mLの0.2M、pH8リン酸ナトリウム緩衝液に溶解した。0.1mLのMilliQ水中のDMTMM(ペンダント基1つにつき7.3当量、20.20mg、0.073mmol)溶液を、DPA-キレート化剤含有ポリマー溶液に添加し、10分間事前反応させた。その後、ポリ(SBMA)13-1(M=5600g/mol、112mg、0.02mmol、ペンダントアミン1つにつき2当量)を、事前反応させたDPA-キレート化剤含有ポリマー、化合物12-1溶液に添加し、一晩、室温で約20時間撹拌したままにした。MilliQ水で2回、20mM NaCl溶液で2回、再度MilliQ水で3回のアミコンウルトラ-4mL 10kDa MWCO、スピンフィルタを使用して粗生成物を精製し、凍結乾燥してポリマー、化合物13-2/I-12を生成した。
【0409】
【化53】
【0410】
化合物13-2/I-12(11.6mgを、メタノール/2,2,2-トリフルオロエタノール(1:1の体積比)に溶解した)。HgClの溶液(2mg/mL、7mM、360mL)を化合物13-2/I-12溶液に添加し、室温で撹拌した。赤色沈澱物が、10分以内に形成し、反応を室温で1時間、撹拌したままにした。10k rcfで10分間の遠心分離で赤色沈澱物をペレット化した。上清を棄て、ペレットをさらにMeOHで2回洗浄した。赤色ペレットを凍結乾燥して、化合物14-6/II-11を与えた。(27から採用された方法論)
【0411】
化合物13-2/I-12(20mgを水性MeOH(1:1の体積比)に溶解した)。KPtClの溶液(50mM、360mL)を化合物13-2/I-12に添加し、その後、45℃で2時間加熱すると、黄色溶液となった。黄色溶液をMilliQ水で2回、20mM NaCl溶液で3回と、MilliQ水で1回の洗浄のアミコンウルトラ-15mL 10k MWCOスピンフィルタでスピン濾過した。その後、試料を凍結乾燥して、化合物14-7/II-12を与えた。
【0412】
金属化反応も、溶媒系として2,2,2-トリフルオロエタノールおよびMeOH/2,2,2-トリフルオロエタノールで行うことができる。
【0413】
実施例11 双性イオン性溶解度調節剤を用いるレニウム含有抗体コンジュゲートポリマーのマスサイトメトリーテスト
双性イオン性溶解度調節剤を含む本開示のレニウム-キレート化ポリマーを、抗体にコンジュゲートし、マスサイトメトリーを使用して非特異的結合について評価した。
【0414】
抗体コンジュゲーション
マスサイトメトリー免疫測定法における双性イオン性溶解度調節剤を有するレニウムタグ付きポリマーの性能を評価するため、改定されたMaxpar(商標)抗体標識プロトコルにしたがって、2つの一次抗体、CD20およびCD8aをポリマータグで標識した。簡潔に言うと、抗体をTCEPにより部分的に還元し、スピンフィルタ(30kDa)で洗浄し、その後、過剰(20倍)のDBCO-PEG4-マレイミドと混合した。混合物を37℃で30分間インキュベートした。スピンフィルタ(30kDa)を使用してDBCO修飾Abを精製し、その後、所望のポリマー質量タグと混合した。混合物を37℃で90分間インキュベートした。過剰のポリマーを、スピンフィルタ(100kDa)により除去した。
【0415】
マスサイトメトリー滴定実験
その後、抗体価測定実験を、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)で実行し、コンジュゲートの性能を評価した。これらの実験において、145Nd-CD4、146Nd-CD8a、165Ho-CD16、154Sm-CD45、160Gd-CD14、170Er-CD3および147Sm-CD20を含む7-plex抗体パネル(フリューダイムMaxpar(商標)試薬)でヒトPBMCを染色した。レニウムコンジュゲートの滴定のため、147Sm-CD20および146Nd-CD8aが187/185Re-CD20および187/185Re-CD8aで置き換えられた別個の染色パネルを使用した。187/185Re-CD20/CD8aコンジュゲートを、0.25μg/mL、0.5μg/mL、1μg/mLおよび2.0μg/mLの濃度で滴定した。図25に示すように、187/185Re-CD20は、PBMC中の残りの細胞サブセットからのCD20B細胞サブセットの明確な分離を可能にする。同様に、187/185Re-CD8aもまた、すべての力価でPBMC中の残りの細胞サブセットからのCD8+T細胞サブセットの明確な分離を可能にする(図26)。重要なことには、図27および図28に示すように、コンジュゲートは両方とも、他の細胞集団への最小の非特異的結合を示した。レニウムタグ付きCD20コンジュゲートは、非T/B細胞への最小の非特異的結合を示した。(図27)レニウムタグ付きCD8aコンジュゲートは、B細胞への最小の非特異的結合を示した。(図28
【0416】
PEG修飾Re含有ポリマーとの比較
双性イオン性溶解度調節剤の非特異的結合特性を、他の溶解度調節剤と比較して評価するため、PEG修飾ポリマーを合成し、実施例1に記載の方法に基づいてRe金属にキレート化した。マスサイトメトリー実験のため、両ポリマーを、種々の濃度(1ug/mL、2ug/mLおよび5ug/mL)で抗体染色カクテルと混合し、得られた抗体カクテルを使用して、上記の通常の染色プロトコルにしたがってPBMCを染色した。このPEG修飾ポリマーが、PBMC中の主要な細胞サブセットへの非特異的結合を1ug/mLで示したことが観察された。(図29を参照されたい)
【0417】
PEG溶解度調節剤で修飾された本開示のポリマーは、双性イオン性溶解度調節剤で修飾されたポリマーと比較して、より高いPBMCへの非特異的結合を示した。(図29を参照されたい)双性イオン性溶解度調節剤で修飾されたポリマーは、PBMCの主要なサブセットへの最小の非特異的結合を5ug/mLで示した。双性イオン修飾レニウムポリマーは、PEG修飾レニウムポリマーよりもかなり低いPBMCへの非特異的結合を示した。
【0418】
実施例12 H-Dapジピコリルアミンキレート化剤の調製
H-Dapジピコリルアミンベースのキレート化剤を、スキーム16に示すように調製した。
【0419】
【化54】
【0420】
H-Dap(Boc)-OMeHCl16-1(0.5g、1.86mmol、1当量)を約30mLの無水アセトニトリルに溶解し、30分間撹拌しながらN(g)で通気した。次に、2-ピコリルクロリド塩酸塩(2.2当量、671.21mg、4.092mmol)、KCO(3.2当量、5.95mmol、822.6mg)を連続的に添加し、反応を室温で2時間撹拌した。2時間撹拌した後、ヨウ化カリウム(1当量、679.27mg、4.092mmol)を添加し、反応を加熱して還流(約85℃)で撹拌した。その後、反応を一晩(約18時間)反応させたままにした。試料を真空で乾燥させてアセトニトリルを除去した。乾燥した粗生成物をDCMに再溶解させた。DCM有機相を3×100mLの水で洗浄した。有機相を回収して真空で乾燥し、褐色固体として生成物、H-Dap Boc-OMeジピコリルアミン16-2を与えた。
【0421】
H-Dap Boc-OMeジピコリルアミン16-2(185mg)をMilliQ水および濃HClの1:1混合物(約6M HClにする)40mLに溶解した。その後、試料を110℃で一晩還流した(反応開始時間:11:40am)。24時間後、反応混合物を真空で乾燥させた。試料を約20mLのMilliQ水に再溶解し、1M NaOHで塩基性にして酸を中和した(pH試験紙で調べた)。試料を一晩凍結乾燥し、その後、DCMで再溶解した。その後、DCM相を2.7k rcfで15分間遠心分離し、中和由来のあらゆる塩を除去した。生成物16-3を乾燥させ、暗褐色固体として回収した。化合物16-3の1H NMRスペクトルを、図30に示す。
【0422】
本明細書で説明されるように、本開示のポリマーの調製にキレート化剤16-3を使用した。
【0423】
実施例13 リガンド交換を通じた調節剤の金属含有ポリマーへの付加
溶解度調節剤などの調節剤は、グルタチオンなどの小分子とのリガンド交換により、金属中心を介して金属含有ポリマーに導入されている。(スキーム17および18)
【0424】
【化55】
【0425】
【化56】
【0426】
水銀含有ポリマーまたはプラチナ含有ポリマー(250uL中に3mg)を含む溶液に、グルタチオン溶液(325mM、50uL)を添加し、反応を室温で15分間穏やかにボルテックスした。その後、2.7k rcfでMilliQ水を用いて8回、アミコン、ウルトラ-0.5、3kDaで試料をスピン濾過した。試料を凍結乾燥し、ポリマーを与えた。
【0427】
本明細書に記載のリガンド交換反応のために1つまたは複数のチオール官能基を含む小分子チオールの他の例には、システイン、チオグリコール酸、メルカプトコハク酸、チオグリコール酸メチル、ジメルカプロール、ジメルカプトコハク酸、2,3-ジメルカプト-1-プロパンスルホネートが含まれるがこれらに限定されない。
【0428】
グルタチオンリガンドを含むポリマーは、ハロゲン化物リガンドを有する元のポリマーと比較して、より可溶性であったことが観察された。例えば、Hgポリマーについては、MilliQ水中で未溶解の種が観察された。これらの沈澱物を、0.2umナイロンシリンジフィルタを使用して濾取した。グルタチオンの添加により、沈澱物を再溶解することができ、その後、アミコン、ウルトラ-0.5、3kDaスピンフィルタを使用して、それらをスピン濾過により精製した。H NMRは、(水に)再溶解した種が、DPA-スルホベタイン修飾ポリマーであったことを示した。したがって、金属中心で溶解度調節剤を導入するためのリガンド交換は、溶解度を高めることができた。
【0429】
いくつかの本開示のグルタチオン修飾Pt含有ポリマーを調製し、溶解度調節剤としてグルタチオンリガンドがないそれらの対応物と比較した:
【0430】
【表2】
【0431】
ポリマーを抗体にコンジュゲートし、実施例11に記載のものに基づいてマスサイトメトリー法を使用して非特異的結合について評価した。結果を図31に示す。マスサイトメトリー結果で示されるように、グルタチオン修飾ポリマーは、テストされたポリマーすべてについてより小さい非特異的結合を示した。
【0432】
本出願は、実施例を参照して説明している一方で、特許請求の範囲は、実施例に記載される実施形態により限定されるべきではないが、全体として、本明細書と一致している最も広い解釈を与えるべきであると理解されるべきである。
【0433】
すべての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許、または特許出願のそれぞれが、その全体が参照により組み込まれることが具体的で個別に示されたのと同じ範囲で、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれている。本出願の用語が、参照により本明細書に組み込まれる文書内で異なって定義されていることが判明した場合、本明細書で提供された定義は、その用語についての定義として機能する。
【0434】
本明細書で言及された文献の引用
【表3】

図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図3(d)】
図3(e)】
図3(f)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【国際調査報告】