(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】条件付きで活性化可能な核酸複合体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240705BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240705BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240705BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20240705BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240705BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240705BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240705BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240705BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/713
A61K31/7105
A61K47/69
A61K9/127
A61K9/16
A61K9/51
A61P25/00
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500649
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 US2022073426
(87)【国際公開番号】W WO2023283546
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524008890
【氏名又は名称】スウィッチ・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン、スー-ピン
(72)【発明者】
【氏名】ダフ、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】シェラー、リサ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA29
4C076AA65
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4C076EE30
4C076EE37
4C076EE39
4C076FF16
4C076FF35
4C076FF43
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
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4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA22
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4C086MA28
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4C086MA41
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZB26
(57)【要約】
この明細書は、条件付きで活性化可能な低分子干渉RNA(siRNA)複合体、成分、組成物、並びに関連する方法及びシステムを提供する。siRNA複合体は、核酸複合体のセンサー核酸鎖の配列によるインプット核酸鎖(例.標的細胞に特異的なバイオマーカー遺伝子のmRNA)への相補的結合時に活性化できる。活性化された核酸複合体は、コア核酸鎖及びパッセンジャー核酸鎖により形成される多くのRNAi二重鎖を放出でき、それにより標的RNAを特異的に阻害できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結した20~70のヌクレオシドを含む第1の核酸鎖;
前記第1の核酸鎖の中央領域に結合して第1の核酸二重鎖を形成する第2の核酸鎖;及び
前記第1の核酸鎖の5’領域及び3’領域に結合して第2の核酸二重鎖を形成する第3の核酸鎖、
を含む核酸複合体であって、
前記第3の核酸鎖はオーバーハングを有し、前記オーバーハングは、前記第1の核酸鎖に相補的ではなく、かつ、インプット核酸鎖と結合して前記第1の核酸鎖から前記第3の核酸鎖を解離でき、
前記第1の核酸鎖の前記中央領域は標的RNAに相補的な配列を含み、前記配列の長さは10~35ヌクレオシドである、
核酸複合体。
【請求項2】
前記標的RNAに相補的な配列の長さは10~21ヌクレオチドである、請求項1に記載の核酸複合体。
【請求項3】
前記第2の核酸鎖は、前記第1の核酸鎖の中央領域における連結した19~25のヌクレオチドに結合して、前記第1の核酸二重鎖を形成する、請求項1~2のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項4】
前記第1の核酸二重鎖はダイサー切断部位を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項5】
前記核酸複合体はダイサー切断部位を含まない、請求項1~4のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項6】
前記第1の核酸鎖の中央領域は、5’コネクターを介して前記第1の核酸鎖の5’領域と連結している、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項7】
前記第1の核酸鎖の中央領域は、3’コネクターを介して前記第1の核酸鎖の3’領域と連結している、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項8】
前記5’コネクター、前記3’コネクター又は両者は、C
3 3炭素リンカー、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド又はエキソヌクレアーゼ切断抵抗性部分又はその組合せを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項9】
前記修飾ヌクレオチドは2'-O-メチルヌクレオチド又は2'-F-ヌクレオチドである、請求項8に記載の核酸複合体。
【請求項10】
前記5’コネクターは、C
3 3炭素リンカー、2'-O-メチルヌクレオチド、2'-F-ヌクレオチド、一本鎖である場合にエキソヌクレアーゼによって切断されるホスホジエステル5’-3’結合を有するヌクレオチド若しくはこれらの組合せを含むか、又は、C
3 3炭素リンカー、2'-O-メチルヌクレオチド、2'-F-ヌクレオチド、一本鎖である場合にエキソヌクレアーゼによって切断されるホスホジエステル5’-3’結合を有するヌクレオチド若しくはこれらの組合せである、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項11】
前記3’コネクターはC
3 3炭素リンカーである、請求項10に記載の核酸複合体。
【請求項12】
前記3’コネクターは、C
3 3炭素リンカー、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、一本鎖である場合のエキソヌクレアーゼ切断抵抗性部分又はその組合せを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項13】
前記3’コネクターは、2'-O-メチルヌクレオチドを含む、又は、2'-O-メチルヌクレオチドであり、必要に応じて、前記2'-O-メチルヌクレオチドは、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン又は2'-O-メチルシチジンである、請求項12に記載の核酸複合体。
【請求項14】
前記第2の核酸鎖は、前記第1の核酸鎖の前記中央領域に完全に相補的であり、そのため、前記第1の核酸二重鎖の前記第2の核酸鎖の5’及び3’末端に平滑末端が形成される、請求項1~13のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項15】
前記第2の核酸鎖が、前記第1の核酸二重鎖の3’末端、又は5’末端又は両者にオーバーハングを有さない、請求項1~13のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項16】
前記第2の核酸鎖が、前記第1の核酸二重鎖に3’オーバーハング、5’オーバーハング又は両者を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項17】
前記第2の核酸鎖は3’オーバーハングを有し、前記3’オーバーハングの長さは1~5ヌクレオシドである、請求項16に記載の核酸複合体。
【請求項18】
前記第1の核酸鎖の前記中央領域の5’末端、前記第1の核酸鎖の前記中央領域の3’末端、又はその両者が、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項19】
前記第1の核酸鎖の前記中央領域の5’末端、及び前記第1の核酸鎖の前記中央領域の3’末端が、独立して、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項20】
前記第1の核酸鎖の前記中央領域が、前記中央領域の5’末端、3’末端又はその両者における2又は3ヌクレオシド間のヌクレオシド間結合を除き、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない、請求項1~17のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項21】
(1)前記第1の核酸鎖の前記中央領域、(2)前記第1の核酸鎖の前記5’領域、及び(3)前記第1の核酸鎖の前記3’領域のうちの1つ以上の領域のヌクレオシドの、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%が、化学修飾されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項22】
前記第1の核酸鎖、前記第2の核酸鎖及び前記第3の核酸鎖のうちの1つ以上の核酸鎖のヌクレオシドの、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%が、化学修飾されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項23】
前記核酸複合体のヌクレオシドの、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は全てが、化学修飾されている、請求項1~22のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項24】
前記化学修飾が、前記核酸複合体の、ヌクレアーゼ分解に抵抗するための修飾、融解温度(Tm)を上昇させるための修飾、又はその両者である、請求項20~23のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項25】
前記核酸複合体のヌクレオチドの、少なくとも90%、少なくとも95%又は全てが、非DNA及び非RNAヌクレオチドである、請求項1~24のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項26】
前記第2の核酸鎖のヌクレオシドの最大でも5%、最大でも10%又は最大でも15%が、LNAである、請求項1~25のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項27】
前記塩基の約10%~50%が、2’-4’架橋修飾を有する、請求項1~26のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項28】
前記塩基の約10%~50%が、ロックド核酸(LNA)又はその類似体である、請求項1~27のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項29】
塩基の約10%~50%が、2'-O-メチル修飾、2'-F修飾又は両者を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項30】
前記第1の核酸鎖のヌクレオシド間結合の5%未満、10%未満、25%未満、50%未満が、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である、請求項1~29のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項31】
前記第1の核酸鎖が、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない、請求項1~29のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項32】
(1)前記5’コネクターの3’に隣接する1~3のヌクレオチド、及び/又は(2)前記3’コネクターの5’に隣接する1若しくは2のヌクレオチド、及び/又は(3)前記3’コネクターの3’に隣接する1~3のヌクレオチドの間のヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である、請求項1~29のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項33】
前記インプット核酸鎖が、RNAである、請求項1~32のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項34】
前記標的RNAが、mRNA、miRNA、ノンコーディングRNA、ウイルスRNA転写物、細胞RNA転写物又はこの組合せである、請求項33に記載の核酸複合体。
【請求項35】
前記第2の核酸鎖の前記オーバーハングは前記インプット核酸鎖と結合してトーホールドを形成でき、それにより、前記第1の核酸鎖から前記第2の核酸鎖を解離する、請求項1~34のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項36】
前記第2の核酸鎖の前記オーバーハングの長さは5~20ヌクレオシドであり、必要に応じて9ヌクレオチドである、請求項1~35のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項37】
前記第3の核酸鎖の前記オーバーハングの全てのヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である、請求項1~36のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項38】
前記第3の核酸鎖の5’末端、3’末端又は両者が、末端部分を含み;必要に応じて、前記末端部分が、リガンド、フルオロフォア、エキソヌクレアーゼ、脂肪酸、Cy3、トリエチレングリコールと結合した逆方向dT又はこれらの組合せを含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の核酸複合体。
【請求項39】
標的RNAを調節する方法であって、
標的RNAを含む細胞を、請求項1~38のいずれか一項に記載の核酸複合体と接触させる工程を含み、インプット鎖が前記第3の核酸鎖の前記オーバーハングに結合して、前記第1の核酸鎖から前記第3の核酸鎖を解離し、前記標的RNAに相補的な配列を前記細胞内に放出し、それにより、前記標的RNAを調節する、方法。
【請求項40】
前記細胞を前記核酸複合体と接触させる工程を、in vitro、in vivo、ex vivo又はこれらの組合せで行う、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞を前記核酸複合体と接触させる工程が対象の体内で起こる、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞が疾患細胞で、必要に応じて、前記細胞が、がん細胞である、請求項39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞がニューロンである、請求項39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
疾患又は状態を治療する方法であって、必要とする対象に請求項1~38のいずれか一項に記載の核酸複合体を投与することを含み、前記インプット鎖が前記第3の核酸鎖のオーバーハングに結合して、前記第1の核酸鎖から前記第3の核酸鎖を解離し、前記標的RNAに相補的な配列を放出し、それにより、前記対象における前記標的RNAの活性又は前記標的RNAからのタンパク質発現を低下させて前記疾患又は状態を治療する、方法。
【請求項45】
前記疾患又は状態が、中枢神経系(CNS)疾患若しくは障害又はがんである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記標的RNAがmRNA又はmiRNAである、請求項39~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記核酸複合体を脂質媒介送達システムによって対象に投与し、必要に応じて、リポソーム、ナノ粒子又はミセルで投与する、請求項39~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記核酸複合体を、ナノ粒子、無機ナノ粒子、核酸脂質粒子、高分子ナノ粒子、リピドイドナノ粒子(LNP)、キトサン及びイヌリンナノ粒子、シクロデキストリンナノ粒子、カーボンナノチューブ、リポソーム、ミセル構造物、カプシド、ポリマー、ポリマーマトリックス、ヒドロゲル、デンドリマー、核酸ナノ構造物、エキソソーム、GalNAc結合メリチン様ペプチド又はこの組合せによって、対象に投与する、請求項39~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記核酸複合体を、必要とする対象に、皮下注入又は静脈内注入によって投与する、請求項39~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記核酸複合体を、必要とする対象に、濃度約0.1~10nMで投与し、必要に応じて約0.1~1.0nMで投与する、請求項39~49のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年7月6日に出願した米国仮特許出願第63/218,833号の利益を合衆国法典第35巻第119条(e)項に基づいて主張するものであり、前記仮出願の内容は、その全体があらゆる目的で参照によりこの明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表への言及
本願は、電子形式の配列表とともに出願している。配列表は、サイズ200キロバイトで、2022年7月3日に作成した75EN-329791-WOと題するファイルとして提供する。配列表の電子形式での情報は、その全体が参照によりこの明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
分野
本開示は、一般に、核酸の分野、例えば、条件付きで活性化可能な低分子干渉RNA複合体に関する。
【0004】
関連技術の説明
動力学的核酸ナノテクノロジー及び生体分子コンピューティングの分野の新たな発展にもかかわらず、核酸論理スイッチを使用してRNA転写物(例.mRNA及びmiRNA)を感知し、RNA干渉(RNAi)療法を特定の疾患関連細胞に限定できる標的化RNAi療法の開発には依然として課題がある。特に、薬効、感度及び安定性が改善され、設計が複雑ではなく、並びに必要な用量が少ない、標的化され、条件付きで活性化されるRNAi療法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
この明細書は、連結した20~70のヌクレオシドを含む第1の核酸鎖と;第1の核酸鎖の中央領域に結合して第1の核酸二重鎖を形成する第2の核酸鎖と;第1の核酸鎖の5’領域及び3’領域に結合して第2の核酸二重鎖を形成する第3の核酸鎖とを含む核酸複合体であって、第3の核酸鎖が、オーバーハングを有し、オーバーハングが、第1の核酸鎖に相補的でなく、インプット核酸鎖と結合して第1の核酸鎖から第3の核酸鎖を解離できる、核酸複合体を開示する。一部の態様では、第1の核酸鎖の中央領域は、標的RNAに相補的な配列を含み、配列の長さは10~35ヌクレオシドである。
【0006】
標的RNAに相補的な配列の長さは、例えば10~21ヌクレオチドの可能性がある。一部の態様では、第2の核酸鎖は、第1の核酸鎖の中央領域における連結した19~25のヌクレオチドに結合して第1の核酸二重鎖を形成する。一部の態様では、第1の核酸二重鎖、核酸複合体又は両者は、ダイサー切断部位を含まない。
【0007】
第1の核酸鎖の中央領域は、例えば、第1の核酸鎖の5’領域に5’コネクターを介して連結できる。第1の核酸鎖の中央領域は、例えば、第1の核酸鎖の3’領域に3’コネクターを介して連結できる。一部の態様では、5’コネクター、3’コネクター又は両者は、C3 3炭素リンカー、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、若しくはエキソヌクレアーゼ切断抵抗性部分、又はこれらの組合せを含む。一部の態様では、修飾ヌクレオチドは、2'-O-メチルヌクレオチド又は2'-F-ヌクレオチドである。一部の態様では、5’コネクターは、C3 3炭素リンカー、2'-O-メチルヌクレオチド、2'-F-ヌクレオチド、一本鎖形態であるときにエキソヌクレアーゼにより切断可能なホスホジエステル5’及び3’接続を有するヌクレオチド、若しくはこれらの組合せを含むか、又は前述のものである。3’コネクターは、例えばC3 3炭素リンカーの可能性がある。一部の態様では、3’コネクターは、C3 3炭素リンカー、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、一本鎖形態であるときエキソヌクレアーゼ切断抵抗性部分又はこれらの組合せを含む。一部の態様では、3’コネクターは、2'-O-メチルヌクレオチドを含むか、又はそれであり、2'-O-メチルヌクレオチドは、必要に応じて2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン又は2'-O-メチルシチジンである。
【0008】
一部の態様では、第2の核酸鎖は、第1の核酸鎖の中央領域に完全に相補的であり、そのため、第1の核酸二重鎖の第2の核酸鎖の5’及び3’末端に平滑末端が形成される。一部の態様では、第2の核酸鎖は、第1の核酸二重鎖の3’末端、5’末端又は両者にオーバーハングを有さない。一部の態様では、第2の核酸鎖は、第1の核酸二重鎖に3’オーバーハング、5’オーバーハング又は両者を有する。一部の態様では、第2の核酸鎖は、3’オーバーハングを有し、3’オーバーハングの長さは1~5ヌクレオシドである。一部の態様では、第1の核酸鎖の中央領域の5’末端、第1の核酸鎖の中央領域の3’末端、又はその両者は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。一部の態様では、第1の核酸鎖の中央領域の5’末端、及び第1の核酸鎖の中央領域の3’末端は、独立して、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。一部の態様では、第1の核酸鎖の中央領域は、中央領域の5’末端、3’末端又は両者における2又は3ヌクレオシド間のヌクレオシド間結合を除き、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。一部の態様では、(1)第1の核酸鎖の中央領域、(2)第1の核酸鎖の5’領域、及び(3)第1の核酸鎖の3’領域のうちの1つ以上の領域のヌクレオシドの、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%は、化学修飾されている。一部の態様では、第1の核酸鎖、第2の核酸鎖及び第3の核酸鎖のうちの1つ以上の核酸鎖のヌクレオシドの、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%は、化学修飾されている。一部の態様では、核酸複合体のヌクレオシドの、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は全ては、化学修飾されている。化学修飾は、例えば、核酸複合体の、ヌクレアーゼ分解に抵抗するための修飾、融解温度(Tm)を上昇させるための修飾、又はその両者の可能性がある。
【0009】
一部の態様では、核酸複合体のヌクレオチドの、少なくとも90%、少なくとも95%又は全ては、非DNA及び非RNAヌクレオチドである。一部の態様では、第2の核酸鎖のヌクレオシドの最大でも5%、最大でも10%又は最大でも15%は、LNAである。一部の態様では、塩基の約10%~50%は、2’-4’架橋修飾を有する。一部の態様では、塩基の約10%~50%は、ロックド核酸(LNA)又はその類似体である。一部の態様では、塩基の約10%~50%は、2'-O-メチル修飾、2'-F修飾又は両者を含む。一部の態様では、第1の核酸鎖のヌクレオシド間結合の5%未満、10%未満、25%未満、50%未満は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。一部の態様では、第1の核酸鎖は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。一部の態様では、(1)5’コネクターの3’に隣接する1~3のヌクレオチド、及び/又は(2)3’コネクターの5’に隣接する1若しくは2のヌクレオチド、及び/又は(3)3’コネクターの3’に隣接する1~3のヌクレオチド、の間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。
【0010】
インプット核酸鎖はRNAの可能性がある。一部の態様では、標的RNAは、細胞RNA転写物である。一部の態様では、標的RNAは、mRNA、miRNA、ノンコーディングRNA、ウイルスRNA転写物又はこれらの組合せである。
【0011】
一部の態様では、第2の核酸鎖のオーバーハングは、インプット核酸鎖に結合してトーホールドを形成でき、それにより第1の核酸鎖から第2の核酸鎖を解離する。一部の態様では、第2の核酸鎖のオーバーハングの長さは5~20ヌクレオシドであり、必要に応じて9ヌクレオチドである。一部の態様では、第3の核酸鎖のオーバーハングの全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。一部の態様では、第3の核酸鎖の5’末端、3’末端又は両者は、末端部分を含む。一部の態様では、末端部分は、リガンド、フルオロフォア、エキソヌクレアーゼ、脂肪酸、Cy3、トリエチレングリコールと結合した逆方向dT又はこれらの組合せを含む。
【0012】
この明細書は、標的RNAを調節する方法を提供し、前記方法は、標的RNAを含む細胞を、この明細書で開示するいずれか1つ以上の核酸複合体と接触させる工程を含み、インプット鎖が第3の核酸鎖のオーバーハングに結合して、第1の核酸鎖から第3の核酸鎖を解離し、標的RNAに相補的な配列を細胞内に放出し、それにより、標的RNAを調節する、方法を含む。
【0013】
細胞を核酸複合体と接触させる工程は、in vitro、in vivo、ex vivo又はこの組合せで実行できる。一部の態様では、細胞を核酸複合体と接触させる工程は、対象の体内で起こる。一部の態様では、細胞は疾患細胞であり、必要に応じて、細胞はがん細胞である。一部の態様では、細胞はニューロンである。
【0014】
この明細書は、疾患又は状態を治療する方法も提供し、前記方法は、必要とする対象に、この明細書で開示する核酸複合体のいずれか1つ以上を投与することを含み、インプット鎖が第3の核酸鎖のオーバーハングに結合して、第1の核酸鎖から第3の核酸鎖を解離し、標的RNAに相補的な配列を放出させ、それによって、対象における標的RNAの活性又は標的RNAからのタンパク質発現を低下させて疾患又は状態を治療する、方法も含む。一部の態様では、疾患又は状態は、中枢神経系(CNS)疾患若しくは障害又はがんである。一部の態様では、標的RNAは、mRNA又はmiRNAである。一部の態様では、核酸複合体を対象に脂質媒介送達システムによって投与し、必要に応じてリポソーム、ナノ粒子又はミセルによって投与する。一部の態様では、核酸複合体を対象にナノ粒子、無機ナノ粒子、核酸脂質粒子、高分子ナノ粒子、リピドイドナノ粒子(LNP)、キトサン及びイヌリンナノ粒子、シクロデキストリンナノ粒子、カーボンナノチューブ、リポソーム、ミセル構造物、カプシド、ポリマー、ポリマーマトリックス、ヒドロゲル、デンドリマー、核酸ナノ構造物、エキソソーム、GalNAc結合メリチン様ペプチド又はこの組合せによって投与する。一部の態様では、核酸複合体を、必要とする対象に、皮下注入によって投与する。一部の態様では、請求項1~40のいずれか一項に記載の核酸複合体を、必要とする対象に、静脈内注入によって投与する。一部の態様では、核酸複合体を、必要とする対象に、濃度約0.1~10nMで投与し、必要に応じて約0.1~1.0nMで投与する。
【0015】
本明細書に記載の主題の1つ以上の実施の詳細を、図面及び下記の説明で示す。他の特徴、側面及び利点は、説明、図面及び特許請求の範囲から明らかになる。この概要も、詳細な説明も、本発明の主題の範囲を規定又は限定することを目的としない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、限定するものではない代表的な2つの核酸複合体構築物(デザイン1及び2)の概要図である。
【
図2】
図2は、構成要素の鎖(センサー核酸鎖、コア核酸鎖及びパッセンジャー核酸鎖)と化学修飾のパターンを示した、限定するものではない代表的な核酸複合体の概要図である。
【
図3】
図3は、スクリーニングされる領域を黄色で強調した、限定するものではない代表的な核酸複合体構築物の概要図である。
【
図4A】
図4Aは、センサー鎖とRNAマーカーの塩基対合後の標的細胞における核酸複合体の活性化を示す模式図である。
【
図4B】
図4Bは、コア核酸鎖からのセンサー核酸鎖の解離及びコア核酸鎖オーバーハングの分解の後の、活性RNAi二重鎖の形成を示す模式図である。
【
図5A】
図5Aは、パッセンジャー鎖が共通するがコア鎖が異なる、限定するものではない代表的な2つの核酸複合体構築物の配列の図である。パッセンジャー鎖v3p1:配列番号2、コア鎖v3c1:C3スペーサーが接続した配列番号3~5。
【
図5B】
図5Bは、パッセンジャー鎖が共通するがコア鎖が異なる、限定するものではない代表的な2つの核酸複合体構築物の配列の図である。パッセンジャー鎖1:配列番号2、コア鎖v3c5:配列番号11。
【
図6】
図6は、2つの陽性対照構築物の配列の図である。HTTガイド1:配列番号21、HTT Pass1:配列番号22、HTTガイド2:配列番号23、HTT Pass2:配列番号24。
【
図7】
図7は、
図5に示す代表的なコア鎖(2つのC3リンカーを含むv3c1)と組み立てられて、
図8に示す標的タンパク質発現に使用する、パッセンジャー鎖が異なるさまざまなsiRNA複合体バリアント(V3P1、V3P2、V3P3、V3P4、V3P5、V3P6、V3P7、V3P8及びV3P9)を示す。
【
図8】
図8は、
図7に示すsiRNA複合体バリアントを使用した標的タンパク質発現のデータを示す。
【
図9】
図9は、
図5に示す代表的なコア鎖(C3リンカーを含まないv3c5)と組み立てる、パッセンジャー鎖が異なるさまざまなsiRNA複合体バリアント(V3P1、V3P2、V3P3、V3P4、V3P5、V3P6、V3P7、V3P8及びV3P9)を示す。
【
図10】
図10は、
図9に示すsiRNA複合体バリアントを使用した標的タンパク質発現のデータを示す。
【
図11A】
図11Aは、パッセンジャー鎖(パッセンジャー鎖1)及びセンサー鎖(Mir23センサー1)が共通し、コア鎖(
図13~14では、それぞれ、C1、C2、C3と呼ぶ、コア鎖v3c1、コア鎖v3c2及びコア鎖v3c3)が異なる、代表的な核酸複合体構築物の配列の図である。
図11Aに示す配列を表1に示す。
【
図11B】
図11Bは、パッセンジャー鎖(パッセンジャー鎖1)及びセンサー鎖(Mir23センサー1)が共通し、コア鎖(
図13~14では、それぞれ、C4、C5、C6と呼ぶ、コア鎖v3c4、コア鎖v3c5及びコア鎖v3c6)が異なる、代表的な核酸複合体構築物の配列の図である。
図11Bに示す配列を表1に示す。
【
図12】
図12は、さまざまな核酸複合体構築物の非変性ポリアクリルアミドゲル(PAGE)を示す。
【
図13】
図13は、パッセンジャー鎖v3p1が共通し、コア鎖(C1、C2、C3、C4、C5及びC6)が異なる二本鎖構築物のさまざまな濃度でのRNAi活性を示す。
【
図14】
図14は、パッセンジャー鎖v3p1及びセンサー鎖(Mir23センサー1)が共通し、コア鎖(C1、C2、C3、C4、C5及びC6)が異なる三本鎖構築物の3つの濃度でのRNAi活性を示す。
【
図15】
図15は、この明細書で開示する限定するものではない代表的な核酸複合体構築物(上:V3C3a)、及び部分的に修飾した核酸複合体(下:G1C1S1)の配列の図である。
図15に示す配列は、表2に示している。
【
図16】
図16は、
図15に示す部分的に修飾した二本鎖構築物(G1C1 siRNA)及び部分的に修飾した三本鎖構築物(G1C1S1)と比較した代表的な二本鎖核酸複合体構築物(V3C3a siRNA)及び三本鎖核酸複合体構築物(V3C3a及びV3C3b)の3つの異なる濃度でのRNAi活性を示す。
【発明の詳細な説明】
【0017】
図面を通して、参照番号は、参照要素間の対応を示すために再使用されることがある。図面は、明細書に記載した態様の例を説明するために提供されるものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0018】
以下の詳細な説明では、この出願の一部を形成する図面を参照する。図面では、別段の定めがない限り、同様の記号は、通常、同様の要素を示す。詳細な説明、図面及び特許請求の範囲に記載される説明的態様は、限定することを意図したものではない。明細書に提示する主題の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他の態様を利用してもよく、他の変更を加えてもよい。明細書で一般的に説明され、図で示されるこの開示の側面を、多種多様な構成で配置すること、置換すること、組み合わせること、分離すること及び設計することができ、それらの全てが、明細書で明確に企図されており、明細書での開示の一部とされることは、容易に理解される。
【0019】
明細書で言及する全ての特許、公開特許出願、他の刊行物及びGenBankからの配列、並びに他のデータベースは、関連技術に関してそれら全体が参照によりこの明細書に組み込まれる。
【0020】
RNA干渉(RNAi)は、ほとんどの真核生物において保存される固有の細胞機構であって、細胞運命の決定、分化、生存及びウイルス感染からの防御に欠かせない遺伝子の発現を調節するのに役立つ細胞機構である。研究者は、配列特異的遺伝子サイレンシングのために合成二本鎖RNAを設計することによりこの天然の機構を活用している。動力学的核酸ナノテクノロジー及び生体分子コンピューティングの分野の新たな発展も、プログラム可能なRNAi剤を設計するための概念的アプローチを提供する。しかし、RNAサイレンシングを特定の疾患関連細胞に限定し、正常組織に毒性副作用が及ばないようにするために、核酸論理スイッチを使用してRNA転写物(例.mRNA及びmiRNA)を感知できる標的化RNAi療法を開発する上での課題が残っている。重大な課題には、十分に抑制されないバックグラウンド薬物活性、活性化状態での弱い薬効、インプット及びアウトプット配列オーバーラップ、高い設計の複雑性、短い持続期間(24時間未満)、並びに高い要求濃度(10nM超)が含まれる。
【0021】
この明細書は、条件付きで活性化可能な低分子干渉RNA(siRNA)複合体、成分、組成物、並びに関連する方法及びシステムを提供する。条件付き活性化可能なsiRNA複合体は、siRNA複合体へのインプット核酸鎖(例.疾患関連細胞に特異的な疾患バイオマーカー遺伝子)の相補的結合により誘発されたときに不活性化状態から活性化状態へスイッチでき、それによって、siRNA複合体のRNA干渉活性を活性化して、特定の標的RNA(例.サイレンシングすべきRNA)を標的とすることができる。明細書に記載した核酸複合体は、低濃度での改善された効力、及びオフターゲット効果を低下できる改善された特異性によって、条件付きで活性化されるRNA干渉活性を介して特定の疾患関連細胞中の標的RNAをサイレンシングできる。
【0022】
この明細書は核酸複合体を開示する。核酸複合体は、第1の核酸鎖(例.コア核酸鎖)と、第1の核酸鎖の中央領域に結合して第1の核酸二重鎖(例.RNAi二重鎖)を形成する第2の核酸鎖(例.パッセンジャー核酸鎖)と、コア核酸鎖の5’領域及び3’領域に結合して第2の核酸二重鎖(例.センサー二重鎖)を形成する第3の核酸鎖(例.センサー核酸鎖)とを含む。センサー核酸鎖はオーバーハングを有し、オーバーハングは、第1の核酸鎖に相補的でなく、インプット核酸鎖と結合してコア核酸鎖からセンサー核酸鎖を解離できる。コア核酸鎖の中央領域は、標的RNAに相補的な配列を含む。配列の長さは10~35ヌクレオシドの可能性がある。第1の核酸鎖(例.コア核酸鎖)は、連結した20~70のヌクレオシドを含むことができる。
【0023】
この明細書は標的RNAを調節する方法も開示する。この方法は、標的RNAを含む細胞を、明細書に記載した核酸複合体と接触させる工程を含む。インプット核酸鎖を検知すると、インプット核酸鎖は、センサー核酸鎖のオーバーハングに結合でき、コア核酸鎖からセンサー核酸鎖を解離し、標的RNAに相補的な配列を細胞内に放出し、それにより、標的RNAを調節する。
【0024】
この明細書は、疾患又は状態を治療する方法も開示する。この方法は、明細書に記載した核酸複合体を、必要とする対象に投与することを含む。インプット核酸鎖を検知すると、インプット鎖は、センサー核酸鎖のオーバーハングに結合して、コア核酸鎖からセンサー核酸鎖の解離し、標的RNAに相補的な配列を放出し、それにより、対象における標的RNAの活性又は標的RNAからのタンパク質発現を低下させて疾患又は状態を治療する。
【0025】
定義
別段の定義がある場合を除き、この明細書で使用する技術及び学術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。例えば、Singletonら, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 1994); Sambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (Cold Spring Harbor, NY 1989)を参照されたい。この開示のために、以下の用語を定義する。
【0026】
本明細書では、「ヌクレオシド」は、リボース又はデオキシリボースに共有結合したプリン又はピリミジン塩基を有する分子を指す。代表的なヌクレオシドには、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン及びチミジンが含まれる。
【0027】
「ヌクレオチド」は、糖部分に1つ以上のリン酸基がエステル結合したヌクレオシドを指す。代表的なヌクレオチドには、ヌクレオシド一リン酸、二リン酸及び三リン酸が含まれる。
【0028】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸分子」は、この明細書では同じ意味で使用され、5’炭素原子と3’炭素原子がホスホジエステル結合しているヌクレオチドのポリマーを指す。
【0029】
「RNA」、「RNA分子」又は「リボ核酸分子」は、リボヌクレオチドのポリマーを指す。「DNA」、「DNA分子」又は「デオキシリボ核酸分子」は、デオキシリボヌクレオチドのポリマーを指す。DNA及びRNAは、自然に(例.それぞれ、DNA複製又はDNAの転写により)合成できる。RNAを転写後に修飾できる。DNA及びRNAは、化学的にも合成できる。DNA及びRNAは、一本鎖又は多鎖状(例えば、二本鎖状又は三本鎖状)の可能性がある。「mRNA」又は「メッセンジャーRNA」は、遺伝子のDNA鎖の1つに相補的な、一本鎖RNA分子である。「miRNA」又は「マイクロRNA」は、RNAサイレンシング及び遺伝子発現の転写後調節において機能する、低分子一本鎖ノンコーディングRNA分子である。
【0030】
「RNAアナログ」は、対応する未改変又は未修飾RNAと比較して少なくとも1つの改変又は修飾ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドを指す。ヌクレオチドは、対応する未改変又は未修飾RNAと同じ又は同様の性質又は機能、例えば、塩基対を形成する性質又は機能を保持できる。
【0031】
一本鎖ポリヌクレオチドは、5’末端及び3’末端を有する。一本鎖ポリヌクレオチドの「5’末端」及び「3’末端」は、一本鎖ポリヌクレオチドの末端残基を示し、それぞれの端の遊離基の性質に基づいて区別される。一本鎖ポリヌクレオチドの5’末端は、その末端(5’末端)のデオキシリボース又はリボースの5位が炭素である一本鎖ポリヌクレオチドの末端残基を示す。一本鎖ポリヌクレオチドの3’末端は、その末端(3’末端)のヌクレオチド又はヌクレオシドの3位の炭素がヒドロキシル基で終わる残基を示す。さまざまな場合に、5’末端及び3’末端は、化学的に又は生物学的に、例えば、当業者には理解されるような官能基又は他の化合物の付加により、修飾できる。
【0032】
本明細書では、「相補的結合」及び「相補的に結合する」は、2つの一本鎖が互いに塩基対合して、核酸二重鎖又は二本鎖核酸を形成することを意味する。「塩基対合する」は、本明細書では、ワトソン・クリック塩基対合則に従う、反対の相補ポリヌクレオチド鎖又は配列上の塩基対間の水素結合の形成を示す。例えば、標準ワトソン・クリックDNA塩基対合では、アデニン(A)はチミン(T)と塩基対を形成し、グアニン(G)はシトシン(C)と塩基対を形成する。RNA塩基対合の場合、アデニン(A)はウラシル(U)と塩基対を形成し、グアニン(G)はシトシン(C)と塩基対を形成する。2つの一本鎖間の、ある特定の割合のミスマッチは、安定した二本鎖の二重鎖を形成できるのであれば、許容される。一部の態様では、相補的に結合する2つの鎖のミスマッチの割合は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%若しくは50%、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、最大でもこれらの割合、若しくは最大でもおよそこれらの割合の可能性がある。
【0033】
本明細書では、「RNA干渉」又は「RNAi」は、RNAの選択的細胞内分解を指す。RNAiが細胞内で自然に生じ、外来RNA(例.ウイルスRNA)を除去できる。自然のRNAiは、分解機構を他の類似のRNA配列に方向付ける、遊離dsRNAから切断された断片によって進行する。あるいは、RNAiは、例えば標的遺伝子の発現をサイレンシングするために、人工的に開始できる。
【0034】
本明細書では、「低分子干渉RNA」及び「siRNA」は、siRNAが標的遺伝子と同じ細胞内で活性化されたとき、遺伝子又は標的遺伝子の発現を低下させること又は阻害することができる、RNA又はRNAアナログを指す。この明細書で使用するsiRNAは、天然に存在する核酸塩基及び/又は化学修飾された核酸塩基(RNAアナログ)を含むことができる。
【0035】
核酸複合体
この明細書は、核酸複合体のセンサー核酸鎖の配列とインプット核酸鎖(例.標的細胞(例.疾患関連細胞)に特異的な疾患バイオマーカー遺伝子のmRNA)との相補的結合時に活性化できる核酸複合体を提供する。活性化された核酸複合体は、コア核酸鎖とパッセンジャー核酸鎖で形成される多くのRNAi二重鎖を放出でき、標的RNAを特異的に阻害又はサイレンシングできる。標的RNAの配列は、インプット核酸鎖とは無関係の可能性がある。標的RNAは、インプット核酸鎖が由来する遺伝子とは異なる遺伝子に由来する可能性がある。標的RNAは、インプット核酸鎖が由来する遺伝子と同じ遺伝子に由来する可能性がある。
【0036】
図1に、限定するものではない代表的な2つの核酸複合体構築物の概要図を示す。一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体は、
図2の限定するものではない態様で示すように、コア核酸鎖(例.第1の核酸鎖)、パッセンジャー核酸鎖(例.第2の核酸鎖)及びセンサー核酸鎖(例.第3の核酸鎖)を含む。これら3つの鎖は、互いに塩基対合して、例えば、RNAi二重鎖(例.第1の核酸二重鎖)及びセンサー二重鎖(例.第2の核酸二重鎖)を形成できる。コア核酸鎖、パッセンジャー核酸鎖及びセンサー核酸鎖のうちの1つ以上が、修飾ヌクレオチドを含むRNAアナログの可能性がある。
【0037】
「核酸二重鎖」は、本明細書では、相補的結合によって互いに結合している2つの一本鎖ポリヌクレオチドを指す。核酸二重鎖は、2つの一本鎖ポリヌクレオチド間の塩基対の非共有結合により及び塩基スタッキング相互作用により、主として維持される、らせん構造、例えば、二本鎖RNA分子を形成できる。
【0038】
コア核酸鎖は、5’領域、3’領域、及び5’領域と3’領域の間の中央領域を含むことができる。コア核酸鎖の中央領域は、コア核酸鎖の5’領域及び/又は3’領域にコネクターを介して連結できる。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、コア核酸鎖の5’領域に5’コネクターを介して連結している。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、コア核酸鎖の3’領域に3’コネクターを介して連結している。コア核酸鎖の中央領域は、パッセンジャー核酸鎖と相補的に結合してRNAi二重鎖(例.第1の核酸二重鎖)を形成する。コア核酸鎖の配列全体が、パッセンジャー核酸鎖と相補的に結合するとは限らない。例えば、コア核酸鎖の5’領域及び3’領域は、パッセンジャー核酸鎖を相補的に結合しない。
【0039】
コア核酸鎖の中央領域は、標的核酸(例.サイレンシングすべきRNA)に相補的な配列を含むことができる。したがって、核酸複合体のコア核酸鎖は、ガイド鎖(アンチセンス鎖)としての役割を果たし、標的RNAと塩基対合するために使用される。したがって、パッセンジャー核酸鎖は、同じ標的核酸と相同の配列を更に含むことができる。
【0040】
核酸複合体が活性化(例.インプット核酸鎖と結合)されると、放出されたRNAi二重鎖は、標的核酸とコア核酸鎖の中央領域との結合により標的核酸と相補的に結合できる。一部の態様では、コア核酸鎖の標的RNAに相補的な配列の長さは約10~35ヌクレオシドの可能性がある。一部の態様では、コア核酸鎖は、連結した20~70のヌクレオシドを含む。
【0041】
センサー核酸鎖は、コア核酸鎖の5’領域及び3’領域と相補的に結合してセンサー二重鎖(例.第2の核酸二重鎖)を形成する。センサー核酸鎖は、コア核酸鎖の中央領域にも、パッセンジャー核酸鎖にも結合しない。
【0042】
センサー核酸鎖は、オーバーハングを含むことができる。「オーバーハング」は、本明細書では、二本鎖ポリヌクレオチド(例.二重鎖)の末端の1つにおける突出する不対ヌクレオチドの伸長を指す。オーバーハングは、ポリヌクレオチドのいずれかの鎖に存在する可能性があり、鎖の3’末端(3’オーバーハング)又は5’末端(5’オーバーハング)に含まれる可能性がある。オーバーハングは、センサー核酸鎖の3’末端に存在する可能性がある。センサー核酸鎖のオーバーハングは、コア核酸鎖のいずれの領域にも結合しない。
【0043】
センサー核酸鎖は、インプット核酸鎖(例.疾患関連細胞をはじめとする標的細胞に特異的な疾患バイオマーカー遺伝子のmRNA)に結合できる配列を含むことができる。活性化すると、センサー核酸鎖とインプット核酸鎖の結合がコア核酸鎖からセンサー核酸鎖を解離してその放出を引き起こすことができ、それにより、多くのRNAi二重鎖が放出され、RNAi二重鎖のRNA干渉活性のスイッチが入る。インプット核酸鎖が存在しないか、インプット核酸が検出できなければ、明細書に記載した核酸複合体は、不活性化状態(スイッチオフ状態)のままで、コア核酸鎖からのセンサー核酸鎖の解離は生じない。したがって、インプット核酸鎖は、核酸複合体(例.RNAi二重鎖)のRNA干渉活性を活性化(スイッチオン)するトリガーとしての役割を果たすことができる。
【0044】
明細書に記載した核酸複合体のRNAi二重鎖の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、RNAi二重鎖の長さは、10~35ヌクレオチドの可能性がある。例えば、RNAi二重鎖の長さは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35ヌクレオチド、これらの値のいずれか2つの範囲のヌクレオチドの可能性がある。一部の態様では、RNAi二重鎖の長さは、19~25ヌクレオチドの可能性がある。一部の態様では、RNAi二重鎖の長さは、17~22ヌクレオチドの可能性がある。一部の態様では、RNAi二重鎖の長さは、約21ヌクレオチドの可能性がある。
【0045】
明細書に記載した核酸複合体のセンサー二重鎖の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、センサー二重鎖の長さは、10~35ヌクレオチドの可能性がある。例えば、センサー二重鎖の長さは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35ヌクレオチド、これらの値のいずれか2つの範囲のヌクレオチドの可能性がある。
【0046】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体は、ダイサー切断部位を有さず、したがって、核酸複合体により媒介されるRNAi干渉は、ダイサー媒介切断を回避できる。
【0047】
当業者には明らかであるように、ダイサーは、二本鎖RNA(dsRNA)分子を長さ約20~25ヌクレオチドのdsRNAの短い断片へと切断することによりRNAi経路を開始できる、RNAse IIIファミリーのエンドリボヌクレアーゼである。
【0048】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体は、それがダイサーによるプロセシングを回避できる点で、国際公開第2020/033938号で開示されている条件付きで活性化される低分子干渉RNA(Cond-siRNA)と区別される。Cond-siRNAは、RNAi活性のin vitro制御が以前に実証されている。しかし、Cond-siRNAは、RNAi活性化のために特定の部位でのダイサー切断を必要とする(例えば
図1のデザイン1を参照)。さらに、オフ状態RNAi活性の抑制は、ダイサー結合及び活性の立体障害により達成された。
【0049】
一部の態様では、この明細書で開示する核酸複合体には、ダイサー結合を抑止する構造的特徴がある。一部の態様では、RNAi二重鎖はダイサー基質を作り出さない。例えば、パッセンジャー核酸鎖とコア核酸鎖の中央領域で形成されるRNAi二重鎖は、3’及び/又は5’オーバーハングを有さず、代わりに、パッセンジャー核酸鎖をダイサー結合に好ましくないものにする可能性がある平滑末端を形成する。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖の長さは約17~22ヌクレオチド(例.21ヌクレオチド)であり、ダイサー切断を回避できるほど十分に短い。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、パッセンジャー核酸鎖の3’及び/又は5’末端側にG/Cリッチ塩基を有さない。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、ダイサー結合を回避するために末端部分に結合する。
【0050】
この明細書で開示する核酸複合体の一部の態様では、広範な又は完全な化学修飾が、in vivo効力、薬物活性の継続期間、及びバックグラウンドRNAi活性の抑制を改善するために、核酸複合体の1つ以上の鎖に導入される。化学修飾、例えば、2'-O-メチル塩基及びホスホロチオエート骨格がエンドヌクレアーゼ活性を阻害することは公知なので、ダイサー切断は、siRNAドメインとセンサードメインの完全な化学修飾により妨げられる。siRNAドメインの完全な化学修飾を可能にするために、元のCond-siRNAに対して修飾核酸複合体構築物上のコア及びパッセンジャー鎖の形状及び機能を変化させることが有利である。
【0051】
一部の態様では、核酸複合体のsiRNAドメインは、活性RNAi活性を有するためにダイサーによるエンドヌクレアーゼ切断を受ける必要がないように、この明細書で開示する修飾核酸複合体におけるsiRNAドメイン二重鎖は短縮されている。一部の態様では、修飾核酸複合体のsiRNAドメイン二重鎖は、Cond-siRNA構築物における23塩基対のsiRNAドメイン二重鎖と比較して、約21塩基対である。
【0052】
オフ状態でもセンサー鎖がRNAi活性を遮断できるようにするために、siRNAのガイド鎖(RNAiノックダウンの標的となるmRNAに対するアンチセンス鎖)をコア鎖に組み込み、mRNA標的と相同の鎖がパッセンジャー鎖となる。したがって、修飾核酸複合体は、siRNAドメイン上の5’オーバーハングがエキソヌクレアーゼ又はエンドヌクレアーゼ活性により除去されるまで、mRNA標的に対するRNAi活性を示すことはできない。核酸複合体がオフ状態の場合、センサー二重鎖はオーバーハングを分解から保護し、RNAi活性がオフであることを確実にする。センサー鎖が、RNAマーカーとの塩基対合により除去されると、siRNAドメインの5’及び3’オーバーハングが露出され、細胞のヌクレアーゼによる分解が可能になる。放出されたsiRNAのエキソヌクレアーゼによる分解を防ぐために、一部の態様では、コア鎖に、5’及び3’エキソヌクレアーゼをブロックするドメインが組み込まれる(例えば
図2を参照)。
【0053】
明細書に記載した核酸複合体を、例えば、Oligonucleotide Synthesis by Herdewijin, Piet (2005) and Modified oligonucleotides: Synthesis and Strategy for Users, by Verma and Eckstein, Annul Rev. Biochem. (1998): 67:99-134をはじめとする、当技術分野で周知のオリゴヌクレオチド合成のための標準的な方法を使用して合成でき、この文献の内容は全体が参照によりこの明細書に組み込まれる。当業者には明らかであるように、合成された核酸複合体に望ましい生理条件下でその二次構造を形成させることができる。形成される二次構造を、当技術分野で公知の標準的な方法、例えば、化学的マッピング、NMR又はコンピュータシミュレーションを使用して、試験できる。核酸複合体構築物は、試験結果に従い、所望の構築物が得られるまで、必要に応じて化学修飾又はミスマッチを導入又は除去することで、更に修飾できる。
【0054】
好適なソフトウェアを使用して、核酸構造の設計及び解析を支援できる。例えば、Nupackを使用して、二重鎖の形成をチェックし、二重鎖の熱力学的安定性をランク付けできる。オリゴヌクレオチド設計ツールを使用して、LNA修飾の配置を最適化できる。明細書に記載した核酸複合体における1つ以上の鎖のいずれかの領域を、明細書に記載したインプット核酸配列、標的核酸配列及び/又は化学修飾についてスクリーニングできる。例えば、
図3に、限定するものではない代表的な核酸複合体構築物の概要図を示し、LNA置換や明細書に記載した他のヌクレオチドアナログといった化学修飾についてスクリーニングされる末端塩基を黄色で強調している。
【0055】
RNA干渉(RNAi)
明細書では、核酸複合体のセンサー核酸鎖の配列に相補的な配列を有するインプット核酸(例.疾患関連細胞をはじめとする標的細胞に特異的な核酸配列)の検出に応答して、組み立てられた不活性化状態から活性化状態に変化し、特定の標的核酸に作用(例.分解又は阻害)できる、条件付きで活性化可能な核酸複合体を説明する。組み立てられた不活性化状態では、核酸複合体のセンサー核酸鎖がRNAi二重鎖の酵素プロセシングを阻害し、RNAi活性をスイッチオフ状態に保つ。核酸複合体のセンサー核酸鎖と相補的なインプット核酸鎖が存在する場合、インプット核酸鎖は、トーホールド媒介鎖置換によってコア核酸鎖からのセンサー核酸鎖の解離を誘導することで、核酸複合体を活性化できる。解離は、センサー核酸鎖の3’又は5’末端に形成されたトーホールド(例.センサー核酸鎖の3’末端に形成されたトーホールド)から、インプット核酸鎖とセンサー核酸鎖のオーバーハングとの相補的結合によって開始できる。
図4Aは、センサー鎖とRNAマーカーの塩基対合後の、標的細胞における核酸複合体の活性化を示す模式図である。センサー核酸鎖の除去後、コア核酸鎖の3’及び5’領域は、ヌクレアーゼ(例.エキソヌクレアーゼ)が分解できる3’及び5’オーバーハングとなる。この分解は、化学修飾ヌクレオチド及び/又はエキソヌクレアーゼ切断抵抗部分の存在に起因して、RNAi二重鎖の3’末端及び5’末端で停止し、その結果、活性RNAi二重鎖が、必要に応じて更なるエンドヌクレアーゼ処理と、RNA誘導サイレシング複合体(RISC)ロードに提供される。RISCは、siRNA又はmiRNAの1つの鎖を組み込み、相補的な標的核酸を認識する鋳型としてsiRNA又はmiRNAを使用する、多タンパク質複合体である。標的核酸が特定されると、RISCは、RNase(例.アルゴノート)を活性化し、標的核酸を切断により阻害する。一部の態様では、ダイサーは、RNAi二重鎖をRISCにローディングするために必要とされない。
図4Bは、コア核酸鎖からのセンサー核酸鎖の解離とコア核酸鎖オーバーハング分解後の、活性RNAi二重鎖の形成を示す模式図である。
【0056】
パッセンジャー核酸鎖はその後廃棄され、コア核酸鎖(コア核酸鎖の中央領域)は、RICSに組み込まれる。本明細書で開示する核酸複合体のコア核酸鎖は、ガイド鎖(アンチセンス鎖)としての役割を果たし、標的RNAと塩基対合するために使用される。パッセンジャー核酸鎖は、コア核酸鎖がRICSにロードされる前には保護鎖としての役割を果たす。RICSは、組み込まれたコア核酸鎖を、コア核酸鎖、特にコア核酸鎖の中央領域と相補な配列を有する標的RNAを認識する鋳型として使用する。標的RNAに結合すると、RICSの触媒成分であるアルゴノートが活性化され、結合した標的RNAを分解できる。標的RNAは分解される可能性があり、また、標的RNAの翻訳が阻害される可能性がある。
【0057】
明細書に記載した核酸複合体は、活性化によって、標的細胞中の標的核酸を阻害でき、標的細胞中の標的核酸の発現を低下又は喪失させる。標的細胞は、疾患又は障害に関連付けられる又は関係する細胞である。「関連付けられる」「関係する」は、この明細書では、疾患又は状態の発生が標的細胞の発生に付随して生じるような、細胞と疾患又は状態との関係を指し、この関係には、原因-結果関係及び徴候/症状-疾患関係が含まれるが、これらに限定されるものではない。この明細書で使用する標的細胞は、通常、インプット核酸を検出可能に発現する。
【0058】
一部の態様では、標的細胞における標的核酸の発現は、約、少なくとも、少なくとも約10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、阻害される。
【0059】
本明細書では、遺伝子発現の阻害は、標的細胞における標的遺伝子からのタンパク質及び/又はmRNA産物のレベルの非存在又は観察可能な減少を指す。阻害の程度は、実施例で示すように標的遺伝子の発現レベルの検査により評価できる。
【0060】
遺伝子発現、及び/又は標的遺伝子発現の阻害は、タンパク質産物が容易にアッセイされるレポーター又は薬物耐性遺伝子の使用により決定できる。代表的なレポーター遺伝子には、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アルカリホスファターゼ(AP)、βガラクトシダーゼ(LacZ)、βグルクロニダーゼ(GUS)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、ルシフェラーゼ(Luc)、ノパリンシンターゼ(NOS)、オクトピンシンターゼ(OCS)及びこれらの誘導体が含まれるが、それらには限定されない。アンピシリン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、リンコマイシン、メトトレキサート、ホスフィノトリシン、ピューロマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性を付与する複数の選択可能なマーカーが、利用可能である。遺伝子の発現量の定量によって、核酸複合体で処理されていない細胞又は陰性若しくは陽性対照で処理された細胞と比較して阻害の程度を決定することが可能になる。当業者には明らかであるように、さまざまな生化学技術、例えば、RNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、逆転写、マイクロアレイによる遺伝子発現モニタリング、抗体結合、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ(RIA)、他のイムノアッセイ及び蛍光活性化細胞解析(FACS)を利用できる。
【0061】
一部の態様では、この明細書で開示する核酸複合体は、スイッチング性能の改善及びオフターゲット効果の減少を示す。この明細書で開示する核酸複合体は、核酸複合体が不活性化状態(スイッチオフ状態)の場合に不要なRNAi活性を低下でき、インプット核酸鎖の検知によって核酸複合体が活性化された場合にRNAi活性を増強できる。
【0062】
一部の態様では、標的ではない細胞(例.インプット核酸鎖を有さない細胞)での標的核酸の発現は、およそ、最大でも若しくは最大でもおよそ、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、又は、これらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲が、阻害される。標的ではない細胞は、標的細胞以外の対象の細胞を含むことができる。
【0063】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体は、効力を増強し、低濃度でRNAi活性を惹起できる。非特異的な、オフターゲット効果及び毒性(例.望ましくない炎症誘発応答)を、低濃度の核酸複合体を使用することにより、最小限に抑えることがでる。
【0064】
この明細書で開示する核酸複合体の濃度は、態様によって変化することがある。一部の態様では、この明細書で開示する核酸複合体を、およそ、最大でも若しくは最大でもおよそ、0.001nM、0.01nM、0.02nM、0.03nM、0.04nM、0.05nM、0.06nM、0.07nM、0.08nM、0.09nM、0.1nM、0.2nM、0.3nM、0.4nM、0.5nM、0.6nM、0.7nM、0.8nM、0.9nM、1.0nM、1.5nM、2.0nM、2.5nM、3.0nM、3.5nM、4.0nM、4.5nM、5.0nM、5.5nM、6.0nM、6.5nM、7.0nM、7.5nM、8.0nM、8.5nM、9.0nM、9.5nM、10nM、11nM、12nM、13nM、14nM、15nM、16nM、17nM、18nM、19nM、20nM、30nM、40nM、50nM、又は、これらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の濃度で提供できる。例えば、この明細書で開示する核酸複合体は、約0.1~10nM、好ましくは約0.1~1nMの濃度で提供できる。一部の態様では、この明細書で開示する核酸複合体のトランスフェクション濃度は、約0.1nM以下である。
【0065】
明細書に記載した核酸複合体は、低濃度において、持続的で一貫した強力な阻害効果を可能にする。例えば、核酸複合体は、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも84時間、又は少なくとも96時間といった長期間、活性を維持できる。一部の態様では、核酸複合体は、活性を、30日以下、60日以下又は90日以下、維持できる。
【0066】
化学修飾
明細書に記載した核酸複合体に含まれている核酸鎖(コア核酸鎖、パッセンジャー核酸鎖及び/又はセンサー核酸鎖)は、非標準、修飾ヌクレオチド(ヌクレオチドアナログ)又は非標準、修飾ヌクレオシド(ヌクレオシドアナログ)を含む、非標準、修飾核酸鎖の可能性がある。「ヌクレオチドアナログ」又は「修飾ヌクレオチド」は、天然に存在しないリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを含む、1つ以上の修飾(例.化学修飾)を含む非標準ヌクレオチドを指す。「ヌクレオシドアナログ」又は「修飾ヌクレオシド」は、シチジン、ウリジン、アデノシン、グアノシン及びチミジン以外の天然に存在しないヌクレオシドを含む、1つ以上の修飾(例.化学修飾)を含む非標準ヌクレオシドを指す。修飾ヌクレオシドは、リン酸基のない修飾ヌクレオチドである。化学修飾は、1個以上の原子又は部分の、異なる原子又は異なる部分若しくは官能基(例.メチル基、ヒドロキシル基)による置換を含むことができる。
【0067】
ヌクレオチド/ヌクレオシドのある特定の化学的特性を改変するために、例えば、熱力学的安定性を高めるために、ヌクレアーゼ分解に対する抵抗性(例.エキソヌクレアーゼ抵抗性)を高めるために、並びに/又は、結合特異性を高めてオフターゲット効果を最小限に抑えるために、修飾が行われる。例えば、熱力学的安定性を融解温度Tmの測定に基づいて決定できる。高いTmは、熱力学的に安定な化学物質に関連している可能性がある。
【0068】
一部の態様では、修飾は、核酸複合体における核酸鎖のうちの1つ以上を、エキソヌクレアーゼ分解/切断に対して抵抗性にすることができる。「エキソヌクレアーゼ」は、本明細書では、ポリヌクレオチド鎖の末端(エキソ)から一度に1つずつヌクレオチドを切断することにより働くタイプの酵素を示す。3’又は5’末端でホスホジエステル結合を切断する加水分解反応が生じる。3’及び5’エキソヌクレアーゼは、高い効率及び速い動力学的速度で、細胞内のRNA及びDNA並びに細胞間の間質腔内及び血漿中のRNA及びDNAを分解できる。近縁種は、ポリヌクレオチド鎖の中間(エンド)のホスホジエステル結合を切断するエンドヌクレアーゼである。3’及び5’エキソヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼ複合体は、細胞内のRNA及びDNA並びに細胞間の間質腔内及び血漿中のRNA及びDNAを分解できる。「エキソリボヌクレアーゼ」は、本明細書では、RNA分子の5’末端又は3’末端のいずれかから末端ヌクレオチドを除去することによりRNAを分解する酵素である、エキソヌクレアーゼリボヌクレアーゼを指す。5’末端からヌクレオチドを除去する酵素は、5’-3’エキソリボヌクレアーゼと呼ばれ、3’末端からヌクレオチドを除去する酵素は、3’-5’エキソリボヌクレアーゼと呼ばれる。
【0069】
修飾は、リン酸修飾、リボース修飾(糖部分における)及び/又は塩基修飾を含むことができる。この明細書で使用する好ましい修飾ヌクレオチドには、糖修飾及び/又は骨格修飾リボヌクレオチドが含まれる。
【0070】
一部の態様では、修飾ヌクレオチドは、ヌクレオチドの糖部分の修飾を含むことができる。例えば、ヌクレオチドの2’-OH基を、H、OR、R、F、Cl、Br、I、SH、SR、NH2、NHR、NR2、COOR又はORから選択される基により置換でき、ここで、Rは、置換又は非置換C1~C6アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールなどである。一部の態様では、ヌクレオチド又はヌクレオシドの2’-OH基は、2’-O-メチル基で置換されており、修飾ヌクレオチド又はヌクレオシドは、2'-O-メチルヌクレオチド又は2'-O-メチルヌクレオシド(2'-OMe)である。2'-O-メチルヌクレオチド又は2'-O-メチルヌクレオシドは、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン又は2'-O-メチルシチジンの可能性がある。一部の態様では、ヌクレオチドの2'-OH基は、フッ素(F)により置換されており、修飾ヌクレオチド又はヌクレオシドは、2'-Fヌクレオチド又は2'-Fヌクレオシド(2'-デオキシ-2'-フルオロ又は2'-F)である。2'-Fヌクレオチド又は2'-Fヌクレオシドは、2'-F-アデノシン、2'-F-グアノシン、2'-F-ウリジン又は2'-F-シチジンの可能性がある。修飾は、他の修飾、例えば、ヌクレオシドアナログホスホロアミダイトも含むことができる。一部の態様では、グリコール核酸が使用できる。
【0071】
一部の態様では、修飾ヌクレオチドは、例えば、リン酸基の酸素のうちの1個以上を硫黄又はメチル基で置換することによる、ヌクレオチドのリン酸基の修飾を含むことができる。一部の態様では、ヌクレオチドのリン酸基の非架橋酸素のうちの1個以上は、硫黄で置換されている。
【0072】
一部の態様では、明細書に記載した核酸鎖は、ホスホジエステル結合ではない1つ以上の非標準ヌクレオシド間結合を含む。一部の態様では、明細書に記載した核酸鎖は、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。「ホスホロチオエート結合」(PS)は、本明細書では、非架橋酸素のうちの1個が硫黄で置換されている、ヌクレオチド間の結合を示す。一部の態様では、2つの非架橋酸素が硫黄で置換されていてもよい(PS2)。一部の態様では、非架橋酸素のうちの1個が、メチル基で置換されていてもよい。この明細書における「ホスホジエステル結合」は、リン酸が2つの糖を架橋している、DNA及びRNAにおける通常の糖リン酸骨格結合を示す。一部の態様では、コア核酸鎖、パッセンジャー核酸鎖及び/又はセンサー核酸鎖における1つ以上のホスホロチオエート結合の導入は、ヌクレアーゼ(例.エンドヌクレアーゼ及び/又はエキソヌクレアーゼ)に対する抵抗性の増大を修飾ヌクレオチドに賦与できる。
【0073】
一部の態様では、修飾ヌクレオチドは、ヌクレオチドの塩基部分の修飾又は置換を含むことができる。例えば、ウリジン及びシチジン残基は、プソイドウリジン、2-チオウリジン、N6-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、又はウリジン及びシチジン残基の他の塩基アナログで置換されていることがある。アデノシンは、アデノシンの、フーグスティーン面の修飾(例.7-トリアゾロ-8-アザ-7-デアザアデノシン)及び/又はワトソン-クリック面の修飾(例.N2-アルキル-2-アミノプリン)を含むことができる。アデノシンアナログの例には、フーグスティーン又はワトソン-クリック面局在N-エチルピペリジントリアゾール修飾アデノシンアナログ、N-エチルピペリジン7-EAAトリアゾール(例.7-EAA、7-エチニル-8-アザ-7-デアザアデノシン)、及び当業者が特定可能な他のアデノシンアナログも含まれる。シトシンは、当業者が特定可能ないずれの好適なシトシンアナログで置換されていてもよい。例えば、シトシンは、同等の塩基対合忠実度、熱安定性及び高度な蛍光を示す6’-フェニルピロロシトシン(PhpC)で、置換されていることがある。
【0074】
この明細書で開示する核酸複合体における1以上のヌクレオチドは、ユニバーサル塩基で置換されていることがある。「ユニバーサル塩基」は、天然ヌクレオチドのそれぞれと、ほとんどそれらの間の区別なしに塩基対を形成するヌクレオチドアナログを指す。ユニバーサル塩基の例には、当技術分野で公知の、C-フェニル、C-ナフチル及び他の芳香族誘導体、イノシン、アゾールカルボキサミド、並びにニトロアゾール誘導体、例えば、3-ニトロピロール、4-ニトロインドール、5-ニトロインドール及び6-ニトロインドールが含まれるが、これらには限定されない(例.Loakes, 2001, Nucleic Acids Research, 29, 2437-2447参照)。
【0075】
一部の態様では、この明細書で開示する塩基修飾は自然免疫による認識を低下でき、核酸複合体のヌクレアーゼに対する抵抗性を高くできる。この明細書で開示する核酸複合体において使用できる塩基修飾の例は、例えばHuら、Signal Transduction and targeted Therapy 5: 101 (2020)にも記載されており、その内容は全体が参照によりこの明細書に組み込まれる。
【0076】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体に含まれる核酸鎖(コア核酸鎖、パッセンジャー核酸鎖及び/又はセンサー核酸鎖)は、1つ以上のロックド核酸又はそのアナログを含むことができる。代表的なロックド核酸アナログには、例えば、それらの対応するロックドアナログホスホロアミダイト及び当業者には明らかな他の誘導体が含まれる。
【0077】
本明細書では、「ロックド核酸」(LNA)は、修飾RNAヌクレオチドを示す。LNAヌクレオチドのリボース部分は、2’炭素と4’炭素を接続する追加の架橋(2’-O,4’-Cメチレン架橋)で修飾されている。架橋は、リボースを3’エンド立体構造に「ロック」してリボフラノース環の柔軟性を制限し、構造を堅固な二環式構造に固定する。LNAヌクレオチドは、必要な場合いつでも、オリゴヌクレオチドのDNA又はRNA塩基と混合できる。この明細書で開示する核酸複合体へのLNAへの組込みは、熱安定性(例.融解温度)、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特異性、並びにアレル判別の精度を高めることができる。LNAオリゴヌクレオチドは、相補一本鎖RNAへの及び相補一本鎖又は二本鎖DNAへのハイブリダイゼーション親和性を示す。LNAについての追加情報は、例えば、www.sigmaaldrich.com/technical-documents/articles/biology/locked-nucleic-acids-faq.htmlに記載されている。一部の態様では、グリコール核酸が使用できる。
【0078】
明細書に記載した核酸複合体に含まれる核酸鎖(コア核酸鎖、パッセンジャー核酸鎖及び/又はセンサー核酸鎖)は、2’-4’架橋修飾を有する他の化学修飾ヌクレオチド又はヌクレオシドを含むことができる。2’-4’架橋修飾は、ヌクレオチドの2’及び4’炭素を接続する架橋の導入を指す。架橋は、(例えばLNAにおける)2’-O,4’-Cメチレン架橋の可能性がある。架橋は、(例えはエチレン架橋型核酸(ENA)中の)2’-O,4’-Cエチレン架橋又は当該技術分野において公知で特定可能な他の化学的結合の場合もある。
【0079】
明細書に記載した核酸複合体への、LNA、その類似体又は2’-4’架橋修飾を有する他の化学修飾ヌクレオチドの導入は、ハイブリダイゼーションの安定性を向上でき、ミスマッチ判別も向上できる。例えば、LNA、その類似体、又は2’-4’架橋修飾を有する他の化学修飾ヌクレオチドを有するセンサー核酸鎖を含む核酸複合体の、インプット核酸鎖のマッチとミスマッチとを(例えば、インプット核酸鎖とセンサー核酸鎖との相補的結合で)区別する感度は、向上できる。
【0080】
核酸複合体の核酸鎖のうちの1つ以上は、鎖の3’及び/又は5’末端と連結した化学的部分を含むことができる。末端部分は、1つ以上のいずれかの好適な末端リンカー又は修飾を含むことができる。例えば、末端部分は、オリゴヌクレオチドと別の分子又は特定の表面を連結させるリンカー(ビオチン、アミノ修飾剤、アルキン、チオール修飾剤、アジド、N-ヒドロキシスクシンイミド及びコレステロール)、色素(例.フルオロフォア又はダーククエンチャー)、フッ素修飾リボース、スペース(例.C3スペーサー、スペーサー9、スペーサー18、dスペーサー、トリエチレングリコールスペーサー、ヘキサエチレングリコールスペーサー)、クリックケミストリーに関与する部分及び化学修飾(例.アルキン及びアジド)、並びに、抗体、金又は他の金属ナノ粒子、高分子ナノ粒子、デンドリマーナノ粒子、低分子、単鎖又は分枝脂肪酸、ペプチド、タンパク質、アプタマー、並びに他の核酸鎖及び核酸ナノ構造のような、3’及び5’末端を他の化学的部分に結合させるために使用できるリンカー又は末端修飾を含むことができる。末端部分は、検出できる標識、又は一本鎖核酸をヌクレアーゼによる分解から保護するためのブロッカーとして役立つ可能性がある。センサー核酸鎖の末端に結合できる別のリンカー及び末端修飾は、www.idtdna.com/pages/products/custom-dna-rna/oligo-modifications及びwww.glenresearch.com/browse/labels-and-modifiersに記載されており、その内容は全体が参照によりこの明細書に組み込まれる。
【0081】
ヌクレオチド及び/又はヌクレオシドの更なる修飾、例えば、Huら(Signal Transduction and targeted Therapy 5: 101 (2020))に記載されている修飾を、明細書に記載した核酸複合体の1つ以上の鎖に導入することもでき、その内容は全体が参照によりこの明細書に組み込まれる。
【0082】
リボース修飾
核酸複合体の修飾ヌクレオシドの割合は、態様によって変化することがある。一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、85%、90%若しくは95%、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。例えば、明細書に記載した核酸複合体の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、核酸複合体のヌクレオチドの少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲が、修飾されている(例.非DNA及び非RNAである)。一部の態様では、全ての核酸複合体のヌクレオチドが修飾されている(例.非DNA及び非RNA)。
【0083】
核酸複合体の1つ以上の鎖の修飾ヌクレオシドの割合は、態様によって変化することがある。一部の態様では、明細書に記載したコア核酸鎖の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、85%、90%若しくは95%、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。例えば、明細書に記載したコア核酸鎖の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、全てのコア核酸鎖のヌクレオシドが化学修飾されている。
【0084】
明細書に記載したコア核酸鎖の中央領域内の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、85%、90%若しくは95%、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。例えば、明細書に記載したコア核酸鎖の中央領域内の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。
【0085】
明細書に記載したコア核酸鎖の5’領域内の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、85%、90%若しくは95%、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。例えば、明細書に記載したコア核酸鎖の5’領域内の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、コア核酸鎖の5’領域の全てのヌクレオシドが化学修飾されている。
【0086】
明細書に記載したコア核酸鎖の3’領域内の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、85%、90%若しくは95%、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。例えば、明細書に記載したコア核酸鎖の3’領域内の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、コア核酸鎖の3’領域の全てのヌクレオシドが化学修飾されている。
【0087】
明細書に記載したパッセンジャー核酸鎖の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、85%、90%若しくは95%、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。例えば、明細書に記載したパッセンジャー核酸鎖の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖の全てのヌクレオシドが化学修飾されている。
【0088】
明細書に記載したセンサー核酸鎖の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、85%、90%若しくは95%、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、明細書に記載したセンサー核酸鎖の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、センサー核酸鎖の全てのヌクレオシドが化学修飾されている。
【0089】
コア核酸鎖、パッセンジャー核酸鎖及びセンサー核酸鎖のうちの1つ以上における修飾ヌクレオシドは、2'-O-メチルヌクレオシド及び/又は2'-Fヌクレオシドを含むことができる。
【0090】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体内の2'-O-メチルヌクレオシド及び/又は2'-Fヌクレオシドの割合は、10%~50%の可能性があるか、又は、およそこの範囲、少なくともこの範囲、少なくともおよそこの範囲、最大でもこの範囲若しくは最大でもおよそこの範囲の可能性がある。例えば、明細書に記載した核酸複合体内の2'-O-メチルヌクレオシド及び/又は2'-Fヌクレオシドの割合は、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、若しくは、これらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、少なくともおよそこれらの割合、最大でもこれらの割合若しくは最大でもおよそこれらの割合の可能性がある。
【0091】
一部の態様では、明細書に記載したコア核酸鎖の2'-O-メチルヌクレオシド及び/又は2'-Fヌクレオシドの割合は、10%~50%の可能性があるか、又は、およそこの範囲、少なくともこの範囲、少なくともおよそこの範囲、最大でもこの範囲若しくは最大でもおよそこの範囲の可能性がある。例えば、明細書に記載したコア核酸鎖の2'-O-メチルヌクレオシド及び/又は2'-Fヌクレオシドの割合は、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、若しくは、これらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、少なくともおよそこれらの割合、最大でもこれらの割合若しくは最大でもおよそこれらの割合の可能性がある。
【0092】
一部の態様では、明細書に記載したパッセンジャー核酸鎖の2'-O-メチルヌクレオシド及び/又は2'-Fヌクレオシドの割合は、10%~50%の可能性があるか、又は、およそこの範囲、少なくともこの範囲、少なくともおよそこの範囲、最大でもこの範囲若しくは最大でもおよそこの範囲の可能性がある。例えば、明細書に記載したパッセンジャー核酸鎖の2'-O-メチルヌクレオシド及び/又は2'-Fヌクレオシドの割合は、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、若しくは、これらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、少なくともおよそこれらの割合、最大でもこれらの割合若しくは最大でもおよそこれらの割合の可能性がある。
【0093】
一部の態様では、明細書に記載したセンサー核酸鎖の2'-O-メチルヌクレオシド及び/又は2'-Fヌクレオシドの割合は、10%~50%の可能性があるか、又は、およそこの範囲、少なくともこの範囲、少なくともおよそこの範囲、最大でもこの範囲若しくは最大でもおよそこの範囲の可能性がある。例えば、明細書に記載したセンサー核酸鎖の2'-O-メチルヌクレオシド及び/又は2'-Fヌクレオシドの割合は、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、若しくは、これらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、少なくともおよそこれらの割合、最大でもこれらの割合若しくは最大でもおよそこれらの割合の可能性がある。
【0094】
リン酸修飾
明細書に記載した核酸複合体内のヌクレオチドのリン酸修飾の割合は、態様によって変化することがある。一部の態様では、リン酸修飾は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含むか、又はそれである。一部の態様では、コア核酸鎖のホスホロチオエートヌクレオシド間結合の割合は、5%未満、10%未満、25%未満、50%未満、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲である。例えば、コア核酸鎖のホスホロチオエートヌクレオシド間結合の割合は、およそ、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、又は、これらの割合未満若しくはおよそこれらの割合未満である。一部の態様では、コア核酸鎖は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合修飾を含まない。
【0095】
一部の態様では、コア核酸鎖のホスホジエステルヌクレオシド間結合の割合は、およそ、少なくとも又は少なくともおよそ、50%、80%若しくは95%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲である。例えば、コア核酸鎖のホスホジエステルヌクレオシド間結合の割合は、およそ、少なくとも又は少なくともおよそ、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲である。一部の態様では、コア核酸鎖の全てのヌクレオシド間結合が、ホスホジエステルヌクレオシド間結合である。
【0096】
一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域の5’末端は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1、2又は3のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域の3’末端は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1、2又は3のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域の5’末端、及びコア核酸鎖の中央領域の3’末端は、独立して、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1、2又は3のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、中央領域の5’末端、3’末端又は両者における2又は3ヌクレオシド間のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を除き、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。
【0097】
一部の態様では、コア核酸鎖の5’コネクターの3’に隣接する1~3のヌクレオチド(例.1、2又は3のヌクレオチド)間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。一部の態様では、コア核酸鎖の3’コネクターの5’に隣接する1又は2のヌクレオチド間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。一部の態様では、コア核酸鎖の3’コネクターの3’に隣接する1~3のヌクレオチド(例.1、2又は3のヌクレオチド)間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。一部の態様では、コア核酸鎖の3’領域は、コア核酸鎖の3’コネクターの3’に隣接する1~3ヌクレオチド(例.1、2又は3のヌクレオチド)間のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を除き、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。一部の態様では、コア核酸鎖の5’領域は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。
【0098】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。パッセンジャー核酸鎖のホスホロチオエートヌクレオシド間結合の割合は、5%未満、10%未満、25%未満、50%未満、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲である。例えば、パッセンジャー核酸鎖のホスホロチオエートヌクレオシド間結合の割合は、およそ、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、又は、これらの割合未満若しくはおよそこれらの割合未満である。
【0099】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖の5’末端は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1、2又は3のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖の3’末端は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1、2又は3のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、パッセンジャー核酸鎖の5’末端、3’末端又は両者における最後の2、3又は4ヌクレオシド間のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を除き、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、パッセンジャー核酸鎖の5’末端における最後の2~3ヌクレオシド間及び3’末端における最後の2~3ヌクレオシド間のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を除き、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。
【0100】
一部の態様では、センサー核酸鎖は、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。センサー核酸鎖のホスホロチオエートヌクレオシド間結合の割合は、5%未満、10%未満、25%未満、50%未満、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲の可能性がある。例えば、センサー核酸鎖のホスホロチオエートヌクレオシド間結合の割合は、及び、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、又はこれらの割合未満若しくはおよそこれらの割合未満である。
【0101】
一部の態様では、センサー核酸鎖の5’末端は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1、2又は3のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。一部の態様では、センサー核酸鎖の3’末端は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1~20のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。一部の態様では、センサー核酸鎖の5’末端、及びセンサー核酸鎖の3’末端は、独立して、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.5’末端に1、2若しくは3又は3’末端に1~20)を含む。一部の態様では、センサー核酸鎖は、パッセンジャー核酸鎖の5’末端、3’末端又は両者におけるホスホロチオエートヌクレオシド間結合を除き、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖の3’末端におけるホスホロチオエートヌクレオシド間結合は、パッセンジャー核酸鎖の一本鎖オーバーハング内にある。
【0102】
LNA、その類似体、及び2’-4’架橋修飾
核酸複合体のLNA又はその類似体の割合は、態様によって変化することがある。一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体のLNA又はその類似体の割合は、約10%~50%の可能性がある。例えば、明細書に記載した核酸複合体のLNA又はその類似体の割合は、およそ、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は最大でもこれらの割合若しくは最大でもおよそこれらの割合の可能性がある。
【0103】
核酸複合体の1つ以上の鎖のLNA又はその類似体の割合は、態様によって変化することがある。一部の態様では、明細書に記載したコア核酸鎖のLNA又はその類似体の割合は、5%、10%若しくは15%の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、最大でもこれらの割合若しくは最大でもおよそこれらの割合の可能性がある。例えば、明細書に記載したコア核酸鎖のLNA又はその類似体の割合は、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、最大でもこれらの割合若しくは最大でもおよそこれらの割合の可能性がある。
【0104】
一部の態様では、明細書に記載したパッセンジャー核酸鎖のLNA又はその類似体の割合は、5%、10%若しくは15%の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、最大でもこれらの割合若しくは最大でもおよそこれらの割合の可能性がある。例えば、明細書に記載したパッセンジャー核酸鎖のLNA又はその類似体の割合は、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、最大でもこれらの割合若しくは最大でもおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、5%を超える、10%を超える又は15%を超える、明細書に記載したパッセンジャー核酸鎖のLNA又はその類似体の割合は、核酸複合体のRNAi活性を減少させることができる(実施例1を参照)。
【0105】
一部の態様では、明細書に記載したセンサー核酸鎖のLNA又はその類似体の割合は、10%~50%の可能性があるか、又は、およそこの範囲、少なくともこの範囲、少なくともおよそこの範囲、最大でもこの範囲若しくは最大でもおよそこの範囲の可能性がある。例えば、明細書に記載したセンサー核酸鎖のLNA又はその類似体の割合は、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、若しくは、これらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、少なくともおよそこれらの割合、最大でもこれらの割合若しくは最大でもおよそこれらの割合の可能性がある。
【0106】
核酸複合体の2’-4’架橋修飾の割合は、態様によって変化することがある。一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体の2’-4’架橋修飾の割合は、約10%~50%の可能性がある。例えば、明細書に記載した核酸複合体の2’-4’架橋修飾の割合は、およぼ、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲の可能性があるか、又は、最大でもこれらの割合若しくは最大でもおよそこれらの割合の可能性がある。
【0107】
コア鎖
明細書に記載した核酸複合体のコア核酸鎖は、5’領域、3’領域、及び5’領域と3’領域の間の中央領域を含むことができる。5’領域、3’領域及び中央領域のそれぞれは互いに直接隣接でき、つまり、2つの隣接する領域の間にヌクレオチドがない。一部の態様では、5’領域の3’末端は、中央領域の5’末端から、1、2、3、4、5、8、9、10、11、12、13、14、15、20、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲のヌクレオチドで離れている可能性がある。一部の態様では、3’領域の5’末端は、中央領域の3’末端から、1、2、3、4、5、8、9、10、11、12、13、14、15、20、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲のヌクレオチドで離れている可能性がある。
【0108】
コア核酸鎖の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、コア核酸鎖は、連結した20~70のヌクレオシドを含む。例えば、コア核酸鎖は、連結した20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69又は70のヌクレオシドを含むことができる。
【0109】
コア核酸鎖の中央領域の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、連結した10~35のヌクレオシドを含む。例えば、コア核酸鎖の中央領域は、連結した10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34又は35のヌクレオシドを含むことができる。
【0110】
コア核酸鎖の3’領域及び5’領域は、同じ長さにすることも、異なる長さにすることもできる。コア核酸鎖の3’領域及び5’領域の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、コア核酸鎖の3’領域及び5’領域の長さは、連結した2~33のヌクレオシドを含む。例えば、コア核酸鎖の3’領域及び5’領域は、連結した2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32又は33のヌクレオシドを含むことができる。一部の態様では、3’領域及び5’領域それぞれは、センサー鎖と塩基対合してセンサー二重鎖を形成する連結した11のヌクレオチドを含む。
【0111】
コア核酸鎖の中央領域は、標的RNAに相補的な配列を含む。標的RNAに相補的な配列の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、標的RNAに相補的な配列の長さは10~21ヌクレオチドである。例えば、標的RNAに相補的な配列の長さは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は21ヌクレオチドである。一部の態様では、コア核酸鎖は、パッセンジャー鎖と塩基対合してsiRNA二重鎖を形成する、長さ21ヌクレオチドの中央領域を含む。
【0112】
コア核酸鎖の中央領域は、パッセンジャー核酸鎖に相補的な配列を含む。パッセンジャー核酸鎖に相補的な配列の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖に相補的な配列の長さは19~25ヌクレオチドである。例えば、パッセンジャー核酸鎖に相補的な配列の長さは、19、20、21、22、23、24又は25ヌクレオチドである。
【0113】
一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、コア核酸鎖の5’領域及び3’領域にコネクターを介して連結している。例えば、コア核酸鎖の中央領域は、コア核酸鎖の5’領域に5’コネクターを介して連結している。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、コア核酸鎖の3’領域に3’コネクターを介して連結している。
【0114】
5’コネクター及び/又は3’コネクターは、3炭素リンカー(C3リンカー)、ヌクレオチド、明細書に記載した修飾ヌクレオチド、又はコア核酸鎖が一本鎖である場合(例.センサー核酸鎖のコア核酸鎖からの解離後)にエキソヌクレアーゼ切断に抵抗できる部分を含むことができる。例えば、5’コネクター及び/又は3’コネクターは、2'-F-アデノシン、2'-F-グアノシン、2'-F-ウリジン又は2'-F-シチジンといった2'-Fヌクレオチドを含むことができる。5’コネクター及び/又は3’コネクターは、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン又は2'-O-メチルシチジンといった2'-O-メチルヌクレオチドを含むことができる。5’コネクター及び/又は3’コネクターは、天然に存在するヌクレオチド、例えば、シチジン、ウリジン、アデノシン又はグアノシンを含むことができる。コア核酸鎖の5’コネクター及び/又は3’コネクターは、一本鎖形態であるときにエキソヌクレアーゼにより切断可能なホスホジエステル結合(ホスホジエステル5’及び3’接続)を含むことができる。コア核酸鎖の5’コネクター及び/又は3’コネクターは、一本鎖形態であるときにエキソヌクレアーゼ切断に抵抗できるいずれかの好適な部分を含むことができる。
【0115】
一部の態様では、5’コネクターは、C3 3炭素リンカー、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド(2'-O-メチルヌクレオチド、2'-F-ヌクレオチド)、一本鎖形態であるときにエキソヌクレアーゼにより切断可能なホスホジエステル5’及び3’接続を有するヌクレオチド、又はこれらの組合せを含むことができるか、又は前述のものである。一部の態様では、5’コネクターは、2'-O-メチルヌクレオチド、例えば、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン、又は2'-O-メチルシチジンを含むことができるか、又は前述のものである。
【0116】
一部の態様では、3’コネクターは、C3 3炭素リンカー、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、一本鎖形態であるときエキソヌクレアーゼ切断抵抗性部分、若しくはこれらの組合せを含むことができるか、又は前述のものである。一部の態様では、3’コネクターは、2'-O-メチルヌクレオチド、例えば、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン若しくは2'-O-メチルシチジンを含むことができるか、又は前述のものである。
【0117】
一部の態様では、3’コネクターは、2'-O-メチルヌクレオチド、例えば、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン若しくは2'-O-メチルシチジンを含むか、又はそれであり、5’コネクターは、2'-O-メチルヌクレオチド、例えば、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン若しくは2'-O-メチルシチジンを含むか、又はそれである。
【0118】
一部の態様では、コア核酸鎖の5’コネクターは、C3 3炭素リンカーを含まないか、C3 3炭素リンカーではない。一部の態様では、コア核酸鎖の3’コネクターは、C3 3炭素リンカーを含むか、C3 3炭素リンカーである。一部の態様では、C3 3炭素リンカーを5’コネクターとして有さないことが有利である。一部の態様では、C3 3炭素リンカーを3’コネクターとして有することが有利である。一部の態様では、コア核酸鎖の5’コネクターは、C3 3炭素リンカーを含まないか、C3 3炭素リンカーでなく、一方、コア核酸鎖の3’コネクターは、C3 3炭素リンカーを含むか、C3 3炭素リンカーである。
【0119】
一部の態様では、C3 3炭素リンカーを5’コネクターとして有さない核酸複合体は、高いRNA干渉活性を示す(実施例1~2を参照)。核酸複合体は、修飾ヌクレオチド又はヌクレオチドを5’コネクターとして有する可能性がある。核酸複合体は、5’コネクターを有さない可能性がある。核酸複合体は、C3 3炭素リンカー、修飾ヌクレオチド又はヌクレオチドを3’コネクターとして有する可能性がある。核酸複合体は、3’コネクターを有さない可能性がある。一部の態様では、C3 3炭素リンカーを5’コネクターとして有さないことによって、核酸複合体のRNA干渉活性が、C3 3炭素リンカーを5’コネクターとして有する核酸複合体の、少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲に、増加する。
【0120】
一部の態様では、C3 3炭素リンカーを3’コネクターとして有する核酸複合体は、より高いRNA干渉活性を示す(実施例1~2を参照)。核酸複合体は、修飾ヌクレオチド又はヌクレオチドを5’コネクターとして有する可能性がある。核酸複合体は、5’コネクターを有さない可能性がある。核酸複合体は、C3 3炭素リンカーを5’コネクターとして有さない。一部の態様では、C3 3炭素リンカーを3’コネクターとして有することによって、核酸複合体のRNA干渉活性が、修飾ヌクレオチド(例.2'-O-メチルヌクレオチド)を3’コネクターとして有する核酸複合体の少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲に、増加する。一部の態様では、C3 3炭素リンカーを3’コネクターとして有することによって、核酸複合体のRNA干渉活性が、3’コネクターを有さない核酸複合体の少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲に、増加する。
【0121】
一部の態様では、コア核酸鎖は、5’コネクター及び/又は3’コネクターを含まない。その代わりに、コア核酸鎖の中央領域は、標準的なホスホジエステル結合によって3’領域及び/又は5’領域と連結している。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、ホスホジエステル結合によってコア核酸鎖の5’領域と連結している。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、ホスホジエステル結合によってコア核酸鎖の3’領域と連結している。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、ホスホジエステル結合によってコア核酸鎖の3’領域と連結しており、さらに、コア核酸鎖の中央領域は、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン又は2'-O-メチルシチジンといった2'-O-メチルヌクレオチドによって、コア核酸鎖の5’領域と連結している。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、ホスホジエステル結合によってコア核酸鎖の5’領域と連結しており、さらに、コア核酸鎖の中央領域は、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン、又は2'-O-メチルシチジンといった2'-O-メチルヌクレオチドによって、コア核酸鎖の3’領域と連結している。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、ホスホジエステル結合によってコア核酸鎖の3’領域及び5’領域と連結している。
【0122】
代表的な態様では、化学修飾コア鎖は、センサー鎖と塩基対合してセンサー二重鎖を形成する、連結した11のヌクレオチドの3’領域及び連結した11のヌクレオチドの5’領域と、パッセンジャー鎖と塩基対合してsiRNA二重鎖を形成する、長さ21ヌクレオチドの中央領域とを含む可能性がある(例えば
図2を参照)。センサー二重鎖とsiRNA二重鎖を接続する5’リンカーは、ホスホジエステル骨格接続を有する2'-O-メチル修飾塩基からなることができ、3’リンカーはC3スペーサーの場合がある。コア鎖は、2つのホスホロチオエート骨格結合で接続された3つの化学修飾塩基からなる5’エキソヌクレアーゼブロックドメインと、3’リンカーとホスホロチオエート骨格結合で接続された3つの化学修飾塩基からなる3’エキソヌクレアーゼブロックドメインとを更に含むことができる。全てのコア鎖のヌクレオチドは、2-O-メチル化又は2'-F修飾で化学修飾されている。例えば、
図2に示すように、中央領域の5’末端から2、6、14及び16番目の塩基は2'-F修飾されており、コア鎖の残部は2'-O-メチル化されている。
【0123】
一部の態様では、5’コネクター及び/又は3’コネクターを有さないことによって、核酸複合体のRNA干渉活性が、C3 3炭素リンカーを5’コネクターとして有する核酸複合体の少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲に、増加する。
【0124】
パッセンジャー核酸鎖
明細書に記載した核酸複合体のパッセンジャー核酸鎖は、コア核酸鎖の中央領域と相補的に結合してRNAi二重鎖(例.第1の核酸二重鎖)を形成する。コア核酸鎖の中央領域は、標的核酸鎖に相補的であるので、核酸複合体のパッセンジャー核酸鎖は、標的核酸鎖と相同の配列を含むことができる。
【0125】
本明細書では、「相同(の)」又は「相同性」は、少なくとも2つの配列間の配列同一性を指す。2つの核酸又はポリペプチド配列についての用語「配列同一性」又は「同一性」は、指定比較ウィンドウにわたって最大に一致するようにアラインしたときに同じである2つの配列中のヌクレオチド塩基又は残基を指す。
【0126】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖と標的核酸又はその一部分との配列同一性は、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。核酸複合体のパッセンジャー核酸鎖は、標的核酸又はその一部分と実質的に同一、例えば、少なくとも80%、90%、又は100%同一、の配列を有する可能性がある。
【0127】
パッセンジャー核酸鎖の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、連結した10~35のヌクレオシドを含む。例えば、コア核酸鎖は、連結した10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34又は35のヌクレオシドを含むことができる。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、連結した17~21のヌクレオシドを含む。
【0128】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、RNAi二重鎖に3’オーバーハング、5’オーバーハング又は両者を有する。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は3’オーバーハングを有し、3’オーバーハングの長さは1~5ヌクレオシドである。
【0129】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖のオーバーハングは、インプット核酸鎖に結合してトーホールドを形成でき、それにより、トーホールド媒介鎖置換を開始し、コア核酸鎖からパッセンジャー核酸鎖を解離する。
【0130】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖のオーバーハングの長さは5~20ヌクレオシドである。例えば、パッセンジャー核酸鎖のオーバーハングの長さは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20ヌクレオシドの可能性がある。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖のオーバーハングの長さは9ヌクレオシドである。
【0131】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖のオーバーハングの1つ以上のヌクレオシド間結合は、オーバーハングを分解から保護できるホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖のオーバーハングの全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合の可能性がある。
【0132】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、RNAi二重鎖中に3’オーバーハング、5’オーバーハング又は両者を有さない。一部の態様では、オーバーハングのない平滑末端を有することにより、パッセンジャー核酸鎖をダイサー結合に好ましくないものとし、それによってダイサー媒介切断を回避できる。
【0133】
代表的な態様では、パッセンジャー核酸鎖は完全に化学修飾されており、コア鎖の中央領域と塩基対合してsiRNA複合体を形成する21のヌクレオチドを含む(例えば
図2を参照)。ヌクレアーゼ活性に対する抵抗性を提供するために、パッセンジャー鎖の5’及び3’末端の最初及び最後の2つの骨格結合は、ホスホロチオエートである。パッセンジャー鎖のRISCへの組込みに起因する意図しないRNAi活性を低下させるために、パッセンジャー鎖の5’末端から9、10及び11番目の塩基は、2'-F修飾されている。(例えば、
図4に示すパッセンジャー鎖の5’末端から2番目の塩基の)LNA修飾によってsiRNA二重鎖の熱力学的安定性を向上させることができ、RNAiスイッチングを向上させることができる。
【0134】
センサー核酸鎖
明細書に記載した核酸複合体のセンサー核酸鎖は、コア核酸鎖の5’領域及び3’領域と相補的に結合してセンサー二重鎖(例.第2の核酸二重鎖)を形成する領域を含む。コア核酸鎖の5’領域及び3’領域と相補的に結合する領域の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、コア核酸鎖の5’領域及び3’領域と相補的に結合する領域は、連結した10~35のヌクレオシドを含む。例えば、コア核酸鎖の5’領域及び3’領域と相補的に結合するセンサー核酸鎖内の領域は、連結した10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34又は35のヌクレオシドを含むことができる。
【0135】
センサー核酸鎖は、オーバーハングを含むことができる。オーバーハングは、センサー核酸鎖の3’末端、5’末端又は両者に存在する可能性がある。オーバーハングは、コア核酸鎖とは相補的ではなく、インプット核酸鎖に結合でき、それにより、トーホールド媒介鎖置換を開始し、コア核酸鎖からパッセンジャー核酸鎖を解離する。
【0136】
センサー核酸鎖のオーバーハングの長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、オーバーハングの長さは、連結した5~20のヌクレオチドの可能性がある。例えば、センサー核酸鎖のオーバーハングは、長さ5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20のヌクレオチドを含むことができる。一部の態様では、センサー核酸鎖のオーバーハングの長さは12ヌクレオチドである。
【0137】
センサー核酸鎖のオーバーハングは、塩基対合親和性を改善するために、一本鎖オーバーハングのヌクレアーゼ抵抗性を改善するために、及び鎖の誤ったエキソヌクレアーゼ誘導活性化を回避するための熱力学的安定性を改善するために導入される、ヌクレオチド修飾を含むことができる。代表的な修飾としては、2'-O-メチル修飾、2'-フルオロ修飾、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合、LNAの組み入れ、及び当業者が特定可能な同様のものが含まれるが、これらには限定されない。一部の態様では、センサー核酸鎖のオーバーハング内のヌクレオシド間結合の少なくとも50%は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。例えば、センサー核酸鎖のオーバーハング内のヌクレオシド間結合の少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はいずれか2つの間の数若しくは範囲は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。一部の態様では、センサー核酸鎖のオーバーハング内の全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。
【0138】
一部の態様では、センサー核酸鎖の5’末端及び/又は3’末端には、末端部分を含むことができる。明細書に記載した好適な末端部分が使用できる。一部の態様では、末端部分は、トリ若しくはヘキサエチレングリコールスペーサー、C3スペーサー、逆方向dT、アミンリンカー、リガンド(例.標的化リガンド)、フルオロフォア、エキソヌクレアーゼ、脂肪酸、Cy3、トリエチレングリコールと結合した逆方向dT、又はこれらの組合せを含むことができる。
【0139】
代表的な態様では、センサー鎖は、完全に化学修飾され31のヌクレオチドからなる(例えば
図2参照)。センサー鎖の5’末端から最初の22のヌクレオチドは、コア鎖の3’及び5’領域と完全に塩基対合してセンサー二重鎖を形成し、5’末端から最後の9のヌクレオチドは、一本鎖状であってセンサートーホールド(オーバーハング)を形成する。3’末端におけるセンサートーホールドは、ヌクレアーゼ活性を低下させるために、及び自己送達のためにタンパク質結合を増加させるために、隣接ヌクレオチド間にホスホロチオエート骨格結合を有する。ヌクレアーゼ活性を更に低下させるために、センサー鎖の5’末端から最初の2個の塩基も、ホスホロチオエート骨格結合で接続している。C16パルミチン酸のようなリガンドは、自己送達を改善するためにセンサー鎖と結合できる。リガンドは、センサー鎖のヌクレオチドと結合できる。センサー鎖の5’末端は、ヌクレアーゼ活性に対する抵抗性を改善するためにトリエチレングリコールスペーサーでも修飾できる。
【0140】
センサー核酸鎖の配列を、インプット核酸鎖又はその一部分を感知するように設計できる。例えば、インプットバイオマーカーの配列から、インプット鎖に対してアンチセンスである全ての可能性のあるセンサーセグメントのリストを生成できる。NCBI BLASTを使用して、標的動物のトランスクリプトームにおけるセンサー配列の独自性をランク付けできる。ヒトがん細胞系については、BLASTnアルゴリズムを使用して配列をヒト転写物及びゲノムコレクションに照らしてチェックできる。一部の態様では、既知又は予測RNA転写物に対する17塩基超の配列相補性及び完全オーバーハング相補性を有するセンサーセグメントは、排除されてもよい。センサー核酸鎖の設計の例は、例えば国際公開第2020/033938号に開示されており、その内容は参照によりこの明細書に組み込まれる。
【0141】
インプット核酸鎖
明細書に記載したインプット核酸鎖は、核酸複合体におけるセンサー核酸の配列への結合時に核酸複合体(例.RNAi二重鎖)のRNA干渉活性を活性化(スイッチオン)するためのトリガーとしての役割を果たす。
【0142】
インプット核酸鎖は、核酸複合体のセンサー核酸の配列に相補的な配列を含む。インプット核酸鎖とセンサー核酸鎖(例.オーバーハング)との相補的結合は、コア核酸鎖からセンサー核酸鎖を解離し、それにより、パッセンジャー核酸鎖とコア核酸鎖の中央領域で形成されるRNAi二重鎖のRNA干渉活性が活性化される。
【0143】
インプット核酸鎖は、一連の標的細胞(例.がん細胞)には比較的高い発現レベルで存在し、一連の標的ではない細胞(例.正常な細胞)には比較的低い発現レベルで存在する細胞RNA転写物の可能性がある。一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体は、標的細胞において活性化(スイッチオン)される。標的ではない細胞中にある間、核酸複合体は、不活性状態(スイッチオフ状態)のままである。
【0144】
標的細胞において、インプット核酸鎖は、標的ではない細胞におけるレベルの2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍若しくは100倍のレベル、又は、およそこれらのレベル、少なくともこれらのレベル若しくは少なくともおよそレベルで、発現できる。
【0145】
標的細胞において、インプット核酸鎖は、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000転写物のレベルで、又は、およそこれらのレベルで、少なくともこれらのレベルで若しくは少なくともおよそこれらのレベルで、発現できる。一部の態様では、標的ではない細胞において、インプット核酸鎖は、転写物50個未満、40個未満、30個未満、20個未満、又は10個未満のレベルで発現される。好ましくは、標的ではない細胞は、インプット核酸鎖の発現を検出できない。
【0146】
インプット核酸鎖は、mRNA、miRNA、長鎖ノンコーディングRNAのようなノンコーディングRNA、RNA断片、又はウイルスのRNA転写物を含むことができる。一部の態様では、インプット核酸鎖は、疾患の進行を引き起こし、RNAi療法の標的となる細胞において発現されるRNA転写物である。通常、標的ではない細胞は、標的RNAのサイレンシングが治療に有益でない副作用を引き起こす可能性がある一連の細胞である。インプットRNAが標的細胞で過剰発現している疾患又は状態を治療するために、核酸複合体は、センサー核酸鎖がインプットRNA配列に相補的な配列を含むように、設計できる。核酸複合体を投与すると、インプットRNAへのセンサー核酸鎖の結合により、標的細胞でセンサー二重鎖からRNAi二重鎖が解離し、疾患又は状態を標的とするRNAiが活性化する。
【0147】
一部の態様では、インプット核酸鎖はバイオマーカーを含む。「バイオマーカー」は、疾患若しくは障害の、疾患若しくは障害に対する感受性の、及び/又は治療薬若しくは他の介入に対する応答の指標である、核酸配列(DNA又はRNA)を指す。バイオマーカーは、遺伝子の発現、機能又は調節を反映できる。インプット核酸鎖は、当技術分野で公知のいずれかの疾患バイオマーカーを含むことができる。
【0148】
インプット核酸鎖は、細胞型mRNA又は細胞状態特異的mRNAを含む、mRNAの可能性がある。細胞型又は細胞状態特異的mRNAの例には、C3、GFAP、NPPA、CSF1R、SLC1A2、PLP1及びMBP mRNAが含まれるが、これらには限定されない。一部の態様では、インプット核酸鎖は、hsa-mir-23a-3p、hsa-mir-124-3p及びhsa-mir-29b-3pを含むがこれらに限定されない、マイクロRNA(miRNA)である。一部の態様では、インプット核酸鎖は、ノンコーディングRNA、例えば、MALAT1(転移関連肺腺癌転写物1:metastasis associated lung adenocarcinoma transcript 1)であり、これは、NEAT2(ノンコーディング核濃縮豊富転写物2:noncoding nuclear-enriched abundant transcript 2)としても公知である。
【0149】
標的RNA
コア核酸鎖の中央領域は、標的特異的RNA干渉を方向付けるために標的RNAに相補的な配列を含む。一部の態様では、標的RNAは、細胞RNA転写物である。標的RNAは、mRNA、miRNA、ノンコーディングRNA、ウイルスRNA転写物又はこれらの組合せの可能性がある。
【0150】
本明細書では、「標的RNA」は、その発現をRNA干渉によって選択的に阻害又はサイレンシングすべきRNAを指す。標的RNAは、その発現又は活性が疾患、障害又は状態に関連付けられるいずれかの細胞遺伝子又は遺伝子断片を含む標的遺伝子であることがある。標的RNAは、その発現又は活性が、疾患、障害又はある特定の状態に関連付けられる外来の若しくは外因性RNA又はRNA断片(例.ウイルスRNA転写物又はプロウイルス遺伝子)の可能性がある。
【0151】
一部の態様では、標的RNAは、がん遺伝子、サイトカイニン遺伝子、イディオタイプタンパク質遺伝子(Idタンパク質遺伝子)、プリオン遺伝子、血管新生を誘導するタンパク質を発現する遺伝子、接着分子、細胞表面受容体、転移及び/若しくは浸潤過程に関与するタンパク質の遺伝子、プロテイナーゼの遺伝子、アポトーシス及び細胞周期を調節するタンパク質の遺伝子、EGF受容体を発現する遺伝子、多剤耐性1遺伝子(MDR1)、ヒトパピローマウイルス、C型肝炎ウイルス若しくはヒト免疫不全ウイルスの遺伝子、心肥大に関与する遺伝子、又はその断片を含むことができる。
【0152】
標的RNAは、アポトーシスに関与するタンパク質をコードする遺伝子を含むことができる。代表的な標的RNA遺伝子には、bcl-2、p53、カスパーゼ、細胞傷害性サイトカイン、例えば、TNF-α又はFasリガンド、及びアポトーシスを媒介できる当技術分野で公知の多数の他の遺伝子が含まれるが、これらには限定されない。標的RNAは、細胞増殖に関与する遺伝子を含むことができる。代表的な標的RNA遺伝子には、がん遺伝子(例.ABLI、BCLI、BCL2、BCL6、CBFA2、CBL、CSFIR、ERBA、ERBB、EBRB2、ETSI、ETSI、ETV6、FGR、FOS、FYN、HCR、HRAS、JUN、KRAS、LCK、LYN、MDM2、MLL、MYB、MYC、MYCLI、MYCN、NRAS、PIM I、PML、RET、SRC、TALI、TCL3及びYESをコードする遺伝子)、並びに腫瘍抑制タンパク質をコードする遺伝子(例.APC、BRCA1、BRCA2、MADH4、MCC、NF I、NF2、RB I、TP53及びWTI)が含まれるが、これらには限定されない。標的RNAは、ヒト主要組織適合遺伝子複合体(MHC)遺伝子又はその断片を含むことができる。代表的なMHC遺伝子には、MHCクラスI遺伝子、例えば、クラスI cc鎖遺伝子についてのHLA-A、HLA-B若しくはHLA-C小領域における遺伝子、又はβ2-ミクログロブリン並びにMHCクラスII遺伝子、例えば、クラスII α鎖及びβ鎖遺伝子のDP、DQ及びDR小領域の遺伝子のいずれか(即ち、DPα、DPβ、DQα、DQβ、DRα及びDRβ)が含まれる。
【0153】
一部の態様では、標的RNAは、病原体関連タンパク質をコードする遺伝子を含むことができる。病原体関連タンパク質には、宿主の免疫抑制、病原体の複製、病原体の伝播又は感染の維持に関与するウイルスタンパク質、あるいは宿主への病原体の侵入、病原体若しくは宿主による薬物代謝、病原体のゲノムの複製若しくは組込み、宿主における感染の確立若しくは拡大又は次世代の病原体の集合を助長する宿主タンパク質が含まれるが、これらには限定されない。一部の態様では、病原体は、ウイルス(例えば、ヘルペスウイルス(例.単純ヘルペス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス(CMV))、C型肝炎、HIV、JCウイルス)、細菌又は酵母の可能性がある。
【0154】
標的RNAは、中枢神経系(CNS)の疾患又は状態に関連付けられる遺伝子を含む。CNS疾患又は状態に関連付けられる代表的な遺伝子には、APP、MAPT、SOD1、BACE1、CASP3、TGM2、NFE2L3、TARDBP、ADRB1、CAMK2A、CBLN1、CDK5R1、GABRA1、MAPK10、NOS1、NPTX2、NRGN、NTS、PDCD2、PDE4D、PENK、SYT1、TTR、FUS、LRDD、CYBA、ATF3、ATF6、CASP2、CASP1、CASP7、CASP8、CASP9、HRK、C1QBP、BNIP3、MAPK8、MAPK14、Rac1、GSK3B、P2RX7、TRPM2、PARG、CD38、STEAP4、BMP2、GJA1、TYROBP、CTGF、ANXA2、RHOA、DUOX1、RTP801、RTP801L、NOX4、NOX1、NOX2(gp91pho、CYBB)、NOX5、DUOX2、NOXO1、NOXO2(p47phox、NCF1)、NOXA1、NOXA2(p67phox、NCF2)、p53(TP53)、HTRA2、KEAP1、SHC1、ZNHIT1、LGALS3、HI95、SOX9、ASPP1、ASPP2、CTSD、CAPNS1、FAS及びFASLG、NOGO及びNOGO-R;TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、IL1bR、MYD88、TICAM、TIRAP、並びにHSP47が含まれるが、これらには限定されない。
【0155】
医薬組成物及び投与の方法
組成物
この明細書は、明細書に記載した核酸複合体を1つ以上の相溶性の薬学的に許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物も提供する。
【0156】
明細書に記載した核酸複合体は、構築物の十分な部分が細胞に侵入して遺伝子サイレンシングを誘導することを可能にする手段によって、適切に製剤化し、細胞に導入できる。
【0157】
核酸複合体を、送達中の取り込み、分配及び/又は吸収を補助するための、他の分子、分子構造、化合物若しくは薬剤の混合物、又は他の製剤と混合すること、それによって封入すること、それと結合させること、又はそれに付随させることができる。
【0158】
「薬学的に許容される」は、正当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題や合併症がなく、妥当なベネフィット-リスク比に見合った、人間及び動物の組織と接触して使用することに適している、薬剤、材料、組成物及び/又は剤形を指すためにこの明細書で用いられる。
【0159】
「薬学的に許容される担体」は、本明細書では、体の1つの器官又は部分から体の別の器官又は部分に対象化学物質を運ぶこと又は輸送することに関与する、薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクル、例えば、液体若しくは固体フィラー、希釈剤、賦形剤、溶媒又は封入材料を意味する。それぞれの担体は、製剤の他の構成成分と相溶性である及び対象にとって有害でないという意味で、「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として役立つ可能性がある材料の一部の例には、(1)糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えば、トウモロコシデンプン及びバレイショデンプン;(3)セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;(4)トラガカント粉末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、カカオ脂及び坐薬用ワックス;(9)油、例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;並びに(21)医薬製剤に利用される他の非毒性相溶性物質が含まれる。
【0160】
一部の態様では、薬学的に許容される担体は、薬学的に許容される塩を含む。本明細書では、「薬学的に許容される塩」は、明細書に記載した組成物の成分のうちの1つの酸形態のものの塩を含む。これらは、アミンの有機又は無機酸塩を含む。好ましい酸塩は、塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩及びリン酸塩である。他の好適な薬学的に許容される塩は、当業者に周知であり、さまざまな無機及び有機酸の塩基性塩を含む。
【0161】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体とともに使用される薬学的に許容される塩としては、(1)カチオン、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ポリアミン、例えばスペルミン及びスペルミジン、とで形成される塩;(2)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等、とで形成される酸付加塩;(3)有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸等、とで形成される塩;並びに(4)元素アニオン、例えば、塩素、臭素及びヨウ素、から形成される塩を含むが、これらに限定されない。
【0162】
送達ベシクル
さまざまな送達システム、例えば、数ある中でも特に、抗体複合体、ミセル、天然多糖、ペプチド、合成カチオン性ポリマー、微粒子、脂質ベースのナノベクターを、明細書に記載した核酸複合体を送達するために利用できる。
【0163】
明細書に記載した核酸複合体の送達に使用される送達システム及び関連賦形剤は、態様によって変化することがある。送達システムは、利用される投与方法、製剤のタイプ、標的部位、及び治療すべき疾患又は障害のタイプに基づいて、組織透過性、細胞取り込みを助長するように、並びに血管外遊出及びエンドソーム脱出を防止するように選択できる。
【0164】
一部の態様では、核酸複合体を1つ以上のポリマーとともに製剤化して、核酸複合体と多次元ポリマーネットワークとを含有する超分子複合体を形成できる。ポリマーは、直鎖状であることもあり、又は分枝していることもある。超分子複合体は、いずれかの好適な形態をとることができ、好ましくは粒子の形態である。
【0165】
核酸複合体を脂質媒介送達システムによって送達できる。一部の態様では、核酸複合体をリポソームによって封入すること又はリポソームに付随させることができる。例えば、核酸複合体をポリカチオン縮合剤で縮合させ、低イオン強度水性媒体に懸濁させ、カチオン性リポソームをカチオン性小胞形成性脂質から形成できる。
【0166】
本明細書では、「リポソーム」は、1つ以上の脂質二重層で通常は形成されている外側の脂質シェルを有し、それによって水性内部が封入されている、脂質小胞を指す。一部の態様では、リポソームは、約20~80モルパーセントがカチオン性小胞形成性脂質で構成されており、残部が中性小胞形成性脂質及び/又は他の成分である、カチオン性リポソームである。本明細書では、「小胞形成性脂質」は、疎水性及び極性頭部基部分を有し、それによって水中で自発的に二層小胞になることができる、いずれかの両親媒性脂質(例.リン脂質)を指す。好ましい小胞形成性脂質は、通常は長さが約14~22の炭素原子で不飽和度がさまざまなアシル鎖を有する、リン脂質のようなジアシル鎖脂質である。
【0167】
カチオン性小胞形成性脂質は、極性頭部基が、使用可能なpH(例.pH4~9)で正味正電荷を有する小胞形成性脂質である。その例には、リン脂質(例.ホスファチジルエタノールアミン)、糖脂質(例.カチオン性極性頭部基を有する、セレブロシド及びガングリオシド)、コレステロールアミン及び関連カチオン性ステロール(例.1,2-ジオレイルオキシ-3-(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)、N-[1-(2,3-ジテトラデシルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、3β[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Choi)及びジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB))が含まれる。
【0168】
中性小胞形成性脂質は、正味電荷を有さない、又は極性頭部基に負電荷を有する脂質のわずかな割合を含む、小胞形成性脂質である。小胞形成性脂質の例には、リン脂質、例えば、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)及びスフィンゴミエリン(SM)、並びにコレステロール、コレステロール誘導体及び他の非荷電ステロールが含まれる。
【0169】
一部の態様では、この明細書で使用する送達システムは、ナノ粒子(NP)、無機ナノ粒子(例.シリカNP、金NP、Qドット、超常磁性酸化鉄NP、常磁性ランタニドイオン)及び他のナノ材料、核酸脂質粒子、高分子ナノ粒子、リピドイドナノ粒子(LNP)、キトサン及びイヌリンナノ粒子、シクロデキストリンナノ粒子、カーボンナノチューブ、リポソーム、ミセル構造物、カプシド、ポリマー(例.ポリエチレンイミン、アニオン性ポリマー)、ポリマーマトリックス、ヒドロゲル、デンドリマー(例.ポリプロピレンイミン(PPI)及びポリアミドアミン(PAMAM))、核酸ナノ構造物、エキソソーム及びGalNAc結合メリチン様ペプチド(NAG-MLP)を含むが、これらに限定されない。一部の態様では、緩衝溶液、例えばリン酸緩衝食塩溶液中で、核酸複合体を製剤化できる。
【0170】
一部の実験では、明細書に記載した核酸複合体は、リピドイドナノ粒子(LNP)によって送達される。LNPは、イオン化可能なLNP、カチオン性LNP及び/又は中性LNPを含むことができる。イオン化可能なLNPは、循環している間はほぼ非荷電であるが、低pH環境で、例えばエンドソーム及びリソソーム内で、プロトン化される。カチオン性LNPは、血流中及びエンドソーム又はリソソーム内で恒常的な正電荷を示す。中性LNPは、循環している間、及びエンドソーム又はリソソーム内で、中性、非荷電である。
【0171】
明細書に記載した核酸複合体は、裸で提供でき、又はリガンドと複合化できる。裸のsiRNAは、共有結合又は非共有結合のいずれかによりsiRNAに付随している送達システムを含有しない、システムを指す。裸の形態で送達する場合、裸のsiRNAを、標的部位に、例えば比較的閉じておりヌクレアーゼをほとんど含有しない特定の器官(例.眼)に、局所注入できる。
【0172】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体をリガンドと結合(例.融合又は複合化)させてリガンド-siRNAコンジュゲートを形成でき、このコンジュゲートは、細胞又は組織の表面受容体とリガンドとの特異的認識と相互作用によって、siRNAを所望の組織及び細胞に輸送できる。一般的な標的化リガンドには、炭水化物、アプタマー、抗体又は抗体断片、ペプチド(例.細胞膜透過性ペプチド、エンドソーム溶解性ペプチド)及び低分子(例.N-アセチルガラクトサミン(GalNAc))、並びに当業者には明らかであるような他のものが含まれる。
【0173】
核酸複合体はアプタマーと結合できる。「アプタマー」は、この明細書では、特定の標的に高い親和性及び特異性で結合する、オリゴヌクレオチド又はペプチド分子を指す。特に、核酸アプタマーは、例えば、in vitro選択の反復ラウンド、即ちSELEX法によってさまざまな分子標的、例えば、低分子、タンパク質、核酸並びに更には細胞、組織及び生物に結合するように操作された、核酸種を含むことができる。ペプチドアプタマーは、細胞内のタンパク質に特異的に結合し、タンパク質間相互作用に干渉するように設計される、ペプチドである。特に、ペプチドアプタマーは、例えば、酵母ツーハイブリッド(Y2H)システムから導出される選択戦略に従って得ることができる。アプタマーは、抗体のものに匹敵する分子認識特性を提供するので、バイオテクノロジー及び治療への応用に有用である。
【0174】
一部の態様では、核酸複合体は低分子と結合する。「低分子」は、本明細書では、合成又は生体起源のものである有機化合物であって、モノマー及び/又は一次代謝産物を含むことがあるがポリマーではない有機化合物を示す。一部の態様では、低分子は、タンパク質でも核酸でもない分子であって、内因性である生物学的役割(例.標的の阻害若しくは活性化)若しくは外因性である生物学的役割(例.細胞シグナル伝達)を果たす分子、分子生物学においてツールとして使用される分子、又は医学において薬物として好適である分子を含むことができる。低分子は、天然生体分子とは無関係の場合もある。通常は、低分子は、1kg/mol未満のモル質量を有する。代表的な低分子には、二次代謝産物(例.アクチノマイシン-D)、ある特定の抗ウイルス薬(例えば、アマンタジン及びリマンタジン)、催奇形物質及び発がん性物質(例えば、13-酢酸12-ミリスチン酸ホルボール)、天然物(例えば、ペニシリン、モルフィン及びパクリタキセル)、及び当業者により特定可能な更なる分子が含まれる。一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体はGalNAcと結合する。
【0175】
特定の細胞型への核酸複合体の標的化における使用に好適なリガンドの例には、上皮がん及び骨髄幹細胞の葉酸受容体に結合できるフォレート、さまざまな細胞のビタミン受容体に結合できる水溶性ビタミン類、CD4+リンパ球のCD4に結合できるリン酸ピリドキサール、肝臓肝細胞及び血管内皮細胞のLDLに結合できるアポリポタンパク質、インスリン受容体に結合できるインスリン、内皮細胞のトランスフェリン受容体に結合できるトランスフェリン、肝臓肝細胞のアシアロ糖タンパク質受容体に結合できるガラクトース、活性化内皮細胞のE、Pセレクチンに結合できるシアリル-ルイスX、好中球及び白血球のLセレクチンに結合できるMac-1、腫瘍上皮細胞のFlk-1、2に結合できるVEGF、腫瘍上皮細胞のFGF受容体に結合できる塩基性FGF、上皮細胞のEFG受容体に結合できるEFG、血管内皮細胞のa4b1インテグリンに結合できるVCAM-1、血管内皮細胞のaLb2インテグリンに結合できるICAM-1、血管内皮細胞及び活性化血小板のavb3インテグリンに結合できるPECAM-1/CD31、アテローム性動脈硬化プラークにおける内皮細胞及び平滑筋細胞のavb1インテグリン及びavb5インテグリンに結合できるオステオポンチン、腫瘍内皮細胞及び血管平滑筋細胞のavb3インテグリンに結合できるRGD配列、又はCD4+リンパ球のCD4に結合できるHIV GP 120/41若しくはGP120、並びに当業者に特定可能な他のものが含まれるが、これらには限定されない。
【0176】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体の送達は、標的細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれより多くが核酸複合体を取り込むような送達である。一部の態様では、約0.1~10nM核酸複合体が、標的細胞に送達される。
【0177】
製剤
いずれかの好適な医薬製剤を利用できる。一部の態様では、本開示の医薬組成物を、下記に適しているものを含めて、固体又は液体形態での投与のために特別に製剤化してもよい:(1)経口投与、例えば、液剤(水溶液若しくは非水溶液又は水性若しくは非水性懸濁液)錠剤、ボーラス、粉末、顆粒、ペースト;(2)非経口投与、例えば、皮下、皮内若しくは静脈内注入により、例えば、無菌溶液若しくは懸濁液として:(3)局所的適用、例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏若しくはスプレー剤として;(4)膣内に若しくは直腸内に、例えば、ペッサリー、クリーム若しくはフォームとして;又は(5)エアロゾル、例えば、ヒドロゲル組成物を含有する水性エアロゾル、リポソーム調製物若しくは固体粒子として。医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体を含むことができる。
【0178】
本開示の方法において有用な製剤は、経口、鼻腔、局所的(頬側及び舌下を含む)、直腸内、膣内、エアロゾル及び/又は非経口投与に好適なものを含む。製剤を単位剤形で提供してもよく、薬学技術分野において周知のいずれの方法で調製してもよい。担体材料と組み合わせて単一剤形を生成できる有効成分の量は、治療する宿主、特定の投与方法に依存して変化する。担体材料と組み合わせて単一剤形を生成できる有効成分の量は、一般に、治療効果を生じさせるRNAi構築物の量である。一般に、この量は、有効成分の約1%~約99%、好ましくは約5%~約70%、最も好ましくは約10%~約30%である。
【0179】
経口投与に好適な製剤は、各々が所定量の呼吸脱共役剤を有効成分として含有する、カプセル、カシェー、丸剤、錠剤、トローチ(着香基材、通常はスクロース及びアラビアゴム若しくはトラガントを使用する)、粉末、顆粒の形態、又は水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液としての形態、又は水中油型若しくは油中水型液体エマルジョンとしての形態、又はエリキシル若しくはシロップとしての形態、又はトローチ剤(不活性基剤、例えば、ゼラチン及びグリセリン、若しくはスクロース及びアラビアゴムを使用する)としての形態、並びに/又はマウスウォッシュ等としての形態であってもよい。核酸複合体組成物をまた、ボーラス、舐剤又はペーストとして投与してもよい。
【0180】
経口投与のための固体剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒等)の場合、有効成分は、1つ以上の薬学的に許容される担体、例えば、クエン酸ナトリウム若しくはリン酸水素カルシウム、並びに/又は次のもののうちのいずれかと混合される:(1)フィラー若しくは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及び/若しくはケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/若しくはアラビアゴムなど、(3)保湿剤、例えば、グリセリン;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、バレイショ若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えば、パラフィン;(6)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物;(7)湿潤剤、例えば、アセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセリンなど;(8)吸収剤、例えば、カオリン及びベントナイト粘土;(9)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びこれらの混合物;並びに(10)着色剤。カプセル、錠剤及び丸剤の場合、医薬組成物は、緩衝剤も、含んでいてもよい。同様のタイプの固体組成物をまた、賦形剤、例えばラクトース又は乳糖、並びに高分子量ポリエチレングリコール等を使用する、ゼラチン製軟及び硬カプセル中のフィラーとして利用してもよい。
【0181】
錠剤は、必要に応じて1以上の補助構成成分とともに、圧縮又は成形によって製造してもよい。圧縮錠剤を、結合剤(例えば、ゼラチン若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存薬、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム若しくは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤を使用して調製してもよい。成形錠剤を、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状ペプチド又はペプチドミメティックの混合物を好適な機械で成形することにより作製してもよい。
【0182】
特定の対象、組成物及び投与方法で所望の治療応答を達成するのに有効であり、対象に対して毒性がない有効成分の量を得るために、本開示の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量を本発明の方法で決定してもよい。
【0183】
錠剤、並びに、糖衣錠、カプセル、丸剤及び顆粒のような他の固体剤形には、必要応じて、割線を入れてもよく、腸溶コーティング及び医薬品製剤の技術分野で周知の他のコーティングのようなコーティング及びシェルを施してもよい。また、製剤中の有効成分を徐放又は制御放出するために、例えば、所望の放出プロファイルをもたらすためのさまざまな割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソーム及び/又はマイクロスフェアを使用して、製剤化してもよい。それらを、例えば、細菌保留フィルターによる濾過により、又は使用直前に滅菌水若しくは他の無菌の注入可能な媒体に溶解できる無菌固体組成物に滅菌剤を配合することで、滅菌してもよい。これらの組成物には、必要に応じて、乳白剤も含めてもよく、また、有効成分を消化管の特定の部分でのみで、又はその部分で優先的に、場合によっては徐々に、放出する組成物であってもよい。使用できる包埋組成物の例には、高分子物質及びワックスが含まれる。有効成分は、必要に応じて上記賦形剤の1つ以上と共に、マイクロカプセル化することができる。
【0184】
経口投与のための液体剤形は、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルを含む。有効成分に加えて、液体剤形は、当技術分野において一般に使用されている不活性希釈剤、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実、ラッカセイ、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ヒマシ及びゴマ油)、グリセリン、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物などを含有してもよい。
【0185】
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化及び懸濁化剤、甘味、着香、着色、芳香及び/又は保存剤も含む可能性がある。
【0186】
懸濁液は、有効成分に加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物などを含有してもよい。
【0187】
直腸内又は膣内投与のための製剤を坐薬として提供してもよく、この坐薬は、1つ以上の呼吸脱共役剤と、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコール、坐薬用ワックス又はサリチル酸塩を含む1つ以上の適切な非刺激性の賦形剤又は担体とを混合することにより調製してもよく、室温で固体であるが体温では液体であり、それ故、直腸又は膣腔内で融解し、有効成分を放出する。
【0188】
膣内投与に好適である製剤は、担体、例えば、当技術分野において適切であることが公知である担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤も含む。
【0189】
ヒドロゲル組成物の局所的又は経皮投与のための剤形は、粉末、スプレー剤、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤を含む。有効成分を、無菌条件下で薬学的に許容される担体と、及び必要とされることがあるいずれかの保存薬、緩衝剤又は噴射剤と、混合してもよい。
【0190】
軟膏、ペースト、クリーム及びゲルは、呼吸脱共役剤に加えて、賦形剤、例えば、動物性及び植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク並びに酸化亜鉛、又はこれらの混合物を含有してもよい。
【0191】
眼科用製剤、眼軟膏、粉末、溶液(例.点眼剤)等も、この開示の範囲内と考えられる。
【0192】
本発明の医薬組成物に利用してもよい適切な水性及び非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)及びこれらの適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、並びに注入可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルが含まれる。適正な流動性は、例えば、コーティング剤、例えばレシチンの使用により、分散液の場合は必要粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により、維持できる。
【0193】
これらの組成物はまた、アジュバント、例えば、保存薬、湿潤剤、乳化剤及び分散剤を含有してもよい。微生物の作用の防止を、さまざまな抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等によって確実にしてもよい。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム等を組成物に含めることが望ましいこともある。加えて、注入可能な医薬品形態の持続的吸収を、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによってもたらしてもよい。
【0194】
明細書に記載した医薬組成物は、核酸複合体の治療有効量を含む。
【0195】
「治療有効量」は、本明細書では、所望の治療効果、例えばがん治療、を妥当なベネフィット-リスク比で生じさせるのに有効である、この明細書で開示する核酸複合体の量を意味する。治療有効量は、当業者には理解されるように、構築物の構造、利用される投与経路、標的部位、及び治療すべき特定の疾患又は障害によっても異なる。例えば、投与された臨床治療が、疾患又は障害に関連する測定可能なパラメーターの少なくとも20%低下があったときに有効と見なされる場合、その疾患又は障害の治療のための構築物の治療有効量は、その測定可能なパラメーターの少なくとも20%低下を達成するために必要な量である。
【0196】
一部の態様では、明細書に記載した医薬組成物は、治療を受けることになる対象(例.動物又はヒト)における標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な好適な投与量で核酸複合体を含む。一部の態様では、核酸複合体の好適な投与量は、1日に対象の体重1kg当たり0.001~0.25mg、0.01~20μg、0.01~10μg、0.10~5μg又は0.1~2.5μgである。核酸複合体を含む医薬組成物を、1日1回、1日2回、1日3回、又は必要に応じて若しくは医師による処方に応じて、投与できる。明細書に記載した医薬組成物を、一日を通して適切な間隔で投与される2、3、4、5、6以上の分割用量を含む投薬単位で、提供することもできる。投薬単位を、制御された様式で数日にわたって持続的に放出できる単一用量(例.持続又は制御放出製剤を使用する)用に配合することもできる。
【0197】
当業者には明らかであるように、明細書に記載した医薬組成物の好適な投薬単位は、細胞培養アッセイから得られるデータから推定でき、さらに、動物実験で得られるデータから決定できる。例えば、明細書に記載した医薬組成物の毒性及び治療効果を、例えば、LD50(集団の50%にとって致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療に有効な用量)を決定するための、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順により、決定できる。毒性効果と治療効果との用量比が治療指数であり、それを比LD50/ED50として表すことができる。治療指数が大きい組成物が好ましい。毒性を最小限に抑えるために、例えば、標的としない細胞の潜在的な損傷を最小限に抑えるために、及び副作用を低下させるために、特定の送達システムと組み合わせた組成物の好適な投与量を選択できる。
【0198】
投与
当業者には明らかであるように、明細書に記載した核酸複合体及びその組成物を、いずれかの好適な投与経路を使用して対象に投与できる。核酸複合体及びその組成物を標的部位に局所投与すること又は全身投与することができる。
【0199】
「局所投与」又は「局所的投与」は、本明細書では、組成物を個体と接触させた結果、体内での組成物の位置が局所(イメージングが望まれる特定の組織、器官又は他の体の部分に限られる)となる投与経路を示す。代表的な局所投与経路には、針による特定の組織への注入、消化管への強制投与及びヒドロゲル組成物を含有する溶液の皮膚表面への塗布が含まれる。
【0200】
「全身投与」は、本明細書では、核酸複合体組成物を個体と接触させた結果、体内での組成物の位置が全身的(即ち、イメージングが望まれる特定の組織、器官又は他の体の部分に限定されない)となる投与経路を示す。全身投与は、経腸及び非経口投与を含む。経腸投与は、物質が消化管経由で投与される全身投与経路であり、経口投与、胃栄養チューブによる投与、十二指腸栄養チューブによる投与、胃瘻造設術、経腸栄養法及び直腸内投与を含むが、これらには限定されない。非経口投与は、物質が消化管以外の経路により投与される全身投与経路であり、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与及び膀胱内注入を含むが、これらには限定されない。
【0201】
一部の態様では、投与方法は、エアロゾル送達、経鼻送達、経膣送達、直腸送達、頬側送達、眼内送達、局所送達、局所的送達、大槽内送達、腹腔内送達、経口送達、筋肉内注入、静脈内(IV)注入、皮下(SC)注入、結節内注入、腫瘍内注入、腹腔内注入及び/若しくは皮内注入又はこれらの組合せを含むことができる。投与は、部位特異的注入(例.眼内又は脳脊髄液中)の場合もある。
【0202】
一部の態様では、投与は、ex vivo形質導入、細胞注入、皮下注入、静脈内注入、髄腔内送達、脳室内注入、皮内注入、硝子体内送達、腫瘍内送達又は局所的適用(例.局所的点眼)の可能性がある。
【0203】
投与方法は、標的部位、標的となる細胞/組織の型、及び構築物が製剤化される方法に依存する。一部の態様では、脂質製剤を動物に、例えば、静脈内、筋肉内若しくは腹腔内注入により、経口的に、吸入により、又は当技術分野で公知の他の方法で投与できる。
【0204】
一部の態様では、投与は、表皮及び真皮の下の脂肪組織へのSC注入の可能性がある。一部の態様では、SC投与は、明細書に記載したリガンド結合核酸複合体と関連している可能性がある。一部の態様では、SC投与は、薬物の血流への放出速度を遅くして、リンパ系に侵入させる可能性があり、取り込みを媒介する細胞受容体のリサイクルに多くの時間を与える。一部の態様では、SC投与は、迅速かつ容易に投与できる可能性があり、治療の負担が軽減される。
【0205】
IV投与は、例えば、ナノ粒子及び脂質ナノ粒子を用いて製剤化した明細書に記載の核酸複合体に関連している可能性がある。一部の態様では、IV投与は、肝臓での初回通過代謝を回避でき、血流を介して標的組織への迅速な進入をもたらす。
【0206】
標的部位
明細書に記載した組成物は、好適な標的部位に投与できる。標的部位は、in vitro、in vivo、又はex vivoの可能性がある。代表的な標的部位には、初代哺乳動物、細胞、不死化細胞系、腫瘍細胞、幹細胞等を含む、in vitro培養で増殖させた細胞を含むことができる。別の代表的な標的部位には、ex vivo培養での細胞、組織及び器官、個体の体内のin vivoでの細胞、組織、器官又は器官系、例えば、肺、脳、腎臓、肝臓、心臓、中枢神経系、末梢神経系、消化器系、循環系、免疫系、骨格系、感覚系、並びに、当業者が特定可能な追加の環境が含まれる。
【0207】
標的部位は、疾患若しくは障害の部位を含むことでき、又は疾患若しくは障害の部位に近接している可能性がある。疾患又は障害の1つ以上の部位の位置を予め決定できる。疾患又は障害の1つ以上の部位の位置を、この方法中に(例えば.超音波又はMRIといったイメージングに基づく方法により)決定できる。標的部位は、組織、例えば、副腎組織、虫垂組織、膀胱組織、骨、腸管組織、脳組織、乳房組織、気管支、冠状組織、耳組織、食道組織、眼組織、胆嚢組織、生殖器組織、心臓組織、視床下部組織、腎臓組織、大腸組織、腸組織、咽頭組織、肝臓組織、肺組織、リンパ節、口腔組織、鼻組織、膵臓組織、副甲状腺組織、下垂体組織、前立腺組織、直腸組織、唾液腺組織、骨格筋組織、皮膚組織、小腸組織、脊髄、脾臓組織、胃組織、胸腺組織、気管組織、甲状腺組織、尿管組織、尿道組織、軟部及び結合組織、腹膜組織、血管組織並びに/又は脂肪組織などを含むことができる。組織は炎症組織の可能性がある。組織は、(i)グレードI、グレードII、グレードIII若しくはグレードIVのがん組織;(ii)転移性がん組織;(III)混合グレードがん組織;(iv)サブグレードがん組織;(v)健康な若しくは正常な組織;及び/又は(vi)がん又は異常組織を含むことができる。一部の態様では、核酸複合体及びその組成物は、投与時にがん組織の血管系に蓄積する。一部の態様では、標的部位は固形腫瘍を含むことができる。
【0208】
核酸複合体又はその組成物を投与できる標的部位は、利用する投与方法及び治療すべき疾患又は障害のタイプに応じた態様によって変化することがある。一部の態様では、標的部位は、眼組織、呼吸器系、筋肉、肝臓、中枢神経系、固形腫瘍、造血系、皮膚、眼、胎盤、骨、又は当業者には明らかであるような個体における他の標的部位に関係できる。
【0209】
イメージングについての用語「個体」、「対象」又は「患者」は、本明細書では、動物、特に高等動物、特に脊椎動物、例えば、哺乳動物、更に特に人間を含む。
【0210】
一部の態様では、対象の標的部位における核酸複合体の濃度の、標的部位外(例.対象の血流、血清又は血漿中)の核酸複合体濃度に対する比は、変化することがある。一部の態様では、対象の標的部位における核酸複合体の濃度の、標的部位外(例.対象の血流、血清又は血漿中)の核酸複合体濃度に対する比は、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.5:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、21:1、22:1、23:1、24:1、25:1、26:1、27:1、28:1、29:1、30:1、31:1、32:1、33:1、34:1、35:1、36:1、37:1、38:1、39:1、40:1、41:1、42:1、43:1、44:1、45:1、46:1、47:1、48:1、49:1、50:1、51:1、52:1、53:1、54:1、55:1、56:1、57:1、58:1、59:1、60:1、61:1、62:1、63:1、64:1、65:1、66:1、67:1、68:1、69:1、70:1、71:1、72:1、73:1、74:1、75:1、76:1、77:1、78:1、79:1、80:1、81:1、82:1、83:1、84:1、85:1、86:1、87:1、88:1、89:1、90:1、91:1、92:1、93:1、94:1、95:1、96:1、97:1、98:1、99:1、100:1、200:1、300:1、400:1、500:1、600:1、700:1、800:1、900:1、1000:1、2000:1、3000:1、4000:1、5000:1、6000:1、7000:1、8000:1、9000:1、10000:1、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲の可能性があるか、又は、およそこれらの比、少なくともこれらの比、少なくともおよそこれらの比、最大でもこれらの比若しくは最大でもおよそこれらの比の可能性がある。
【0211】
標的部位は、標的細胞を含むことができる。標的細胞は、腫瘍細胞(例.固形腫瘍細胞)の可能性がある。一部の態様では、対象の標的部位への明細書に記載した核酸複合体及び/又は組成物の投与によって、標的細胞の少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲が、死滅する結果となる。核酸複合体及び/又は組成物の投与後の標的細胞死対非標的細胞死の比は、少なくとも約2:1の可能性がある。一部の態様では、核酸複合体及び/又は組成物の投与後の標的細胞死対非標的細胞死の比は、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.5:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、21:1、22:1、23:1、24:1、25:1、26:1、27:1、28:1、29:1、30:1、31:1、32:1、33:1、34:1、35:1、36:1、37:1、38:1、39:1、40:1、41:1、42:1、43:1、44:1、45:1、46:1、47:1、48:1、49:1、50:1、51:1、52:1、53:1、54:1、55:1、56:1、57:1、58:1、59:1、60:1、61:1、62:1、63:1、64:1、65:1、66:1、67:1、68:1、69:1、70:1、71:1、72:1、73:1、74:1、75:1、76:1、77:1、78:1、79:1、80:1、81:1、82:1、83:1、84:1、85:1、86:1、87:1、88:1、89:1、90:1、91:1、92:1、93:1、94:1、95:1、96:1、97:1、98:1、99:1、100:1、200:1、300:1、400:1、500:1、600:1、700:1、800:1、900:1、1000:1、2000:1、3000:1、4000:1、5000:1、6000:1、7000:1、8000:1、9000:1、10000:1、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲の可能性があるか、又は、およそこれらの比、少なくともこれらの比、少なくともおよそこれらの比、最大でもこれらの比若しくは最大でもおよそこれらの比の可能性がある。
【0212】
標的RNAをモジュレートする方法
この明細書は、明細書に記載した核酸複合体又はその組成物を使用して標的RNAを調節する方法も提供する。この方法は、標的RNAを含む細胞を、明細書に記載した核酸複合体と接触させる工程を含むことができる。インプット核酸鎖を検知すると、インプット鎖は、センサー核酸鎖のオーバーハングに結合でき、コア核酸鎖からセンサー核酸鎖を解離し、標的RNAに相補的な配列を細胞内に放出し、それにより、標的RNAを調節する。
【0213】
細胞を核酸複合体と接触させる工程は、in vitro、in vivo又はex vivoの細胞で実行できる。例えば、細胞は、初代哺乳動物細胞、不死化細胞系、腫瘍細胞、幹細胞等を含む、in vitro培養で増殖させた細胞の可能性がある。細胞は、ex vivo培養での細胞、組織及び器官、個体の体内のin vivoでの細胞、組織、器官又は器官系、例えば、肺、脳、腎臓、肝臓、心臓、中枢神経系、末梢神経系、消化器系、循環系、免疫系、骨格系、感覚系、並びに、当業者が特定可能な追加の環境、を含むことができる。細胞は、疾患細胞又は障害を受けた細胞の可能性がある。細胞は、がん細胞の可能性がある。細胞を核酸複合体と接触させる工程は、in vitro、ex vivo又はin vivo、例えば対象の体内で起こすこともできる。
【0214】
疾患又は障害を治療する方法
明細書に記載した核酸複合体又はその組成物を使用して疾患又は状態を治療する方法も、この明細書で提供する。この方法は、明細書に記載した核酸複合体を、必要とする対象に投与することを含むことができる。インプット核酸鎖を検知すると、インプット核酸鎖は、センサー核酸鎖のオーバーハングに結合でき、コア核酸鎖からセンサー核酸鎖を解離して、標的RNAに相補的な配列を放出し、それにより、対象における標的RNAの活性又は標的RNAからのタンパク質発現を低下させて疾患又は状態を治療する。
【0215】
「状態」は、本明細書では、個体の完全な肉体的、精神的及び社会的に健康な様相を伴う標準的な身体状況に適合しない、個体の(全体として又はその部分の1つ以上として)体の身体状況を示す。明細書に記載した状態は、障害及び疾患を含むが、これらに限定されず、「障害」は、体又はその一部分についての機能的異常を伴う生存個体の状態を示し、「疾患」は、体又はその一部分についての正常機能を害する、並びに特徴的な徴候及び症状が通常は現れる、生存個体の状態を示す。
【0216】
本明細書では、「治療」、「治療する」は、患者に現れる疾患、障害又は生理的状態に応じて行われる介入を指す。治療の目的は、症状の緩和又は予防、疾患、障害又は状態の進行又は悪化の緩徐化又は停止、及び、疾患、障害又は状態の寛解のうちの1つ以上を含んでいてもよいが、これらに限定されるものではない。「治療する」及び「治療」は、例えば、治療学的治療、予防学的治療、及び対象が障害を発症するリスク又は他のリスク因子を軽減する適用を含む。治療は、障害の完全治癒を必要とせず、症状又は潜在的リスク因子を軽減させる態様を包含する。一部の態様では、「治療」は、治療学的治療と予防学的対策又は予防対策の両者を指す。治療を必要とする者は、疾患又は障害又は望ましくない生理的状態に既に罹患している者はもちろん、疾患又は障害又は望ましくない生理的状態を予防すべき者も含む。本明細書では、「予防」は、後に症状が発現する個体の負担を軽減する活動を指す。これは、一次、二次及び/又は三次予防レベルで行われることがあり、a)一次予防は、症状/障害/状態の発症を回避し;b)二次予防は、状態/障害/症状の初期段階の治療を目的とし、したがって、状態/障害/症状の進行及び症状の出現を予防するための介入の機会を増加させるものであり;c)三次予防は、例えば、機能を回復させること及び/又はいずれかの状態/障害/症状若しくは関連する合併症を軽減することにより、既存の状態/障害/症状の悪影響を低減させる。「予防する」は、発症の可能性の100%消失を必要としない。むしろ、この用語は、発症する可能性が化合物の存在又は方法により低下したことを示す。
【0217】
さまざまな疾患及び障害が、この明細書で提供する核酸複合体組成物で治療できる。この明細書で開示する疾患及び障害は、、リンパ腫を伴うHIV感染症、血友病A、血友病B、高コレステロール血症、アテローム動脈硬化性心血管疾患、腎機能障害、慢性B型肝炎、急性間質性ポルフィリン症、非典型溶血性尿毒症症候群、原発性高シュウ酸尿症、遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシス(hATTR)、α1-アンチトリプシン欠損症、肝臓疾患、B型肝炎、鎌状赤血球症、原発性高シュウ酸尿症、ユーイング肉腫、進行婦人科がん、ステージIII/IV卵巣がん、膵臓がん、進行固形腫瘍、肝細胞がん/肝臓がん、リンパ腫及び白血病、心疾患、心不全、ケロイド、肥厚性瘢痕(hypertrophic cicatrix)、再発性又は治療抵抗性B細胞リンパ腫、肥厚性瘢痕(hypertrophic scar)、加齢性黄斑変性、網膜瘢痕化、噴門部手術、心肥大、非動脈炎性前部虚血性視神経症、アルポート症候群、HIV感染症/AIDS、膵管腺がん/膵臓がん、ドライアイ疾患、並びにさまざまな固形腫瘍を含むが、これらに限定されない。
【0218】
一部の態様では、疾患又は状態は、がんの可能性がある。がんは、固形腫瘍、液性腫瘍又はこれらの組合せの可能性がある。明細書に記載した核酸複合体又はその組成物を、腫瘍を含む細胞、組織及び/又は器官に、好適な投与経路で投与できる。例えば、核酸複合体又はその組成物を、腫瘍を含む細胞、組織及び/又は器官に、皮下注入又は腫瘍内送達によって投与できる。
【0219】
がんは、結腸がん、直腸がん、腎細胞がん、肝臓がん、非小細胞肺がん、小腸がん、食道がん、黒色腫、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚又は眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部がん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰部がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、小児固形腫瘍、膀胱がん、腎臓又は尿管がん、腎盂がん、中枢神経系(CNS)新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、環境誘発性がん、前記がんの組合せ、並びに前記がんの転移性病変からなる群から選択できる。
【0220】
がんは、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、B細胞急性リンパ性白血病(B-ALL)、T細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、小細胞型又は大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成及び骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞新生物、ワルデンストレームマクログロブリン血症、又は前白血病のうちの1つ以上から選択される血液がんの可能性がある。
【0221】
この明細書で開示する核酸複合体及び組成物を使用して予防及び/又は治療できるがんの限定するものではない例には、以下のものが含まれる:腎がん;腎臓がん;多形性神経膠芽種;転移性乳がん;乳がん;乳房肉腫;神経線維腫;神経線維腫症;小児腫瘍;神経芽細胞腫;悪性黒色腫;表皮がん;白血病、例えば、これらに限定されないが、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、例えば、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤白血病、白血病及び骨髄異形成症候群、慢性白血病、例えば、これらに限定されないが、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、ヘアリー細胞白血病;真性赤血球増加症;リンパ腫、例えば、これらに限定されないが、ホジキン病、非ホジキン病;多発性骨髄腫、例えば、これらに限定されないが、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌型骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞白血病、孤立性形質細胞腫及び髄外性形質細胞腫;ワルデンストレームマクログロブリン血症;意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症;良性単クローン性免疫グロブリン血症;重鎖病;骨がん及び結合組織肉腫、例えば、これらに限定されないが、骨肉腫、骨髄腫骨疾患、多発性骨髄腫、真珠腫誘発性骨肉腫、骨パジェット病、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨線維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫(angiosarcoma)(血管肉腫(hemangiosarcoma))、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫及び滑膜肉腫;脳腫瘍、例えば、これらに限定されないが、神経膠腫、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、乏突起神経膠腫、非グリア腫瘍、聴神経腫瘍、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽腫及び原発性脳リンパ腫;これらに限定されないが、腺がん、小葉(小細胞)がん、乳管がん、髄様乳がん、粘液性乳がん、乳腺管状がん、乳頭状乳がん、パジェット病(若年性パジェット病を含む)及び症性乳がんを含む、乳がん;副腎がん、例えば、これらに限定されないが、褐色細胞腫及び副腎皮質がん;甲状腺がん、例えば、これらに限定されないが、乳頭状又は濾胞性甲状腺がん、甲状腺髄様がん及び組織非形成性甲状腺がん;膵臓がん、例えば、これらに限定されないが、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、VIP産生腫瘍、ソマトスタチン分泌腫瘍及びカルチノイド又は島細胞腫;下垂体がん、例えば、これらに限定されないが、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、先端巨大症及び尿崩症;眼がん、例えば、これらに限定されないが、眼黒色腫、例えば、虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫及び毛様体黒色腫、並びに網膜芽細胞腫;膣がん、例えば、扁平上皮がん、腺がん及び黒色腫;外陰がん、例えば、扁平上皮がん、黒色腫、腺がん、基底細胞がん、肉腫及びパジェット病;子宮頸がん、例えば、これらに限定されないが、扁平上皮がん及び腺がん;子宮がん、例えば、これらに限定されないが、子宮頸がん及び子宮肉腫;卵巣がん、例えば、これらに限定されないが、卵巣上皮がん、境界腫瘍、胚細胞腫瘍及び間質腫瘍;子宮頸がん;食道がん、例えば、これらに限定されないが、扁平上皮がん、腺がん、腺様嚢胞がん、粘液性類表皮がん、腺扁平上皮がん、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、いぼ状がん及び燕麦細胞(小細胞)がん;胃がん、例えば、これらに限定されないが、腺がん、菌状発育性(ポリープ状)、潰瘍性、表在拡大型、散在拡大型、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫及びがん肉腫;結腸がん;大腸がん、KRAS変異型大腸がん;結腸がん;直腸がん;肝臓がん、例えば、これらに限定されないが、肝細胞がん及び肝芽腫、胆嚢がん、例えば、腺がん;胆管細胞がん、例えば、これらに限定されないが、乳頭状、結節状及びびまん性のもの;肺がん、例えば、KRAS変異型非小細胞肺がん、非小細胞肺がん、扁平上皮がん(類表皮がん)、腺がん、大細胞がん及び小細胞肺がん;肺がん;精巣がん、例えば、これらに限定されないが、胚腫瘍、セミノーマ、未分化、古典的(典型的)、精母細胞性、非セミノーマ、胎児性がん、テラトーマがん、絨毛がん(卵黄嚢腫瘍)、前立腺がん、例えば、これらに限定されないが、アンドロゲン非依存性前立腺がん、アンドロゲン依存性前立腺がん、腺がん、平滑筋肉腫及び横紋筋肉腫;陰茎がん(penal cancers);口腔がん、例えば、これに限定されないが、扁平上皮がん;基底がん;唾液腺がん、例えば、これらに限定されないが、腺がん、粘液性類表皮がん及び腺様嚢胞がん;咽頭がん、例えば、これらに限定されないが、扁平上皮がん及びいぼ状のもの;皮膚がん、例えば、これらに限定されないが、基底細胞がん、扁平上皮がん及び黒色腫、表在拡大型黒色腫、結節性黒色腫、悪性黒子由来黒色腫、末端性黒子性黒色腫;腎臓がん、例えば、これらに限定されないが、腎細胞がん、腺がん、副腎腫、線維肉腫、(腎盂及び/又は尿管)移行上皮がん;腎がん;ウィルムス腫瘍;並びに膀胱がん、例えば、これらに限定されないが、移行上皮がん、扁平上皮がん、腺がん、がん肉腫。一部の態様では、がんは、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽細胞腫、上皮がん、嚢胞腺がん、気管支原性がん、汗腺がん、皮脂腺がん、乳頭がん又は乳頭状腺がんである。
【0222】
一部の態様では、疾患又は障害は、中枢神経系(CNS)疾患又は状態の可能性がある。明細書に記載した核酸複合体又はその組成物を、CNSの細胞、組織及び/又は器官に、いずれかの好適な投与経路を使用して投与できる。例えば、核酸複合体又はその組成物を対象のCNSの細胞、組織及び/又は器官に、髄腔内注入、脳室内注入又は脳内注入によって投与して脳血液関門を通過させることができる。一部の態様では、CNSの細胞、組織及び/又は器官は、損傷又は炎症細胞、組織又は器官を含む。一部の態様では、CNSの細胞、組織及び/又は器官は、脳、白質、灰白質、脳幹、小脳、間脳、大脳、脊髄、脳神経、前述のもののいずれかについての細胞、前述のもののいずれかについての組織、又はこれらの組合せを含む。
【0223】
一部の態様では、CNS疾患は、運動障害、記憶障害、嗜癖、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、自閉症、双極性障害、うつ状態、脳炎、癲癇/発作、片頭痛、多発性硬化症、神経変性障害、精神疾患、神経炎症性疾患、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、トゥレット症候群、ジストニア又はこれらの組合せである。一部の態様では、疾患は、神経炎症性疾患である。例えば、神経炎症性疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症又はこれらの組合せである。
【0224】
キット
この明細書は、1つ以上の明細書に記載した組成物を好適な包装材料の中に、例えば、容器、パック又はディスペンサーの中に含むキットであって、使用説明書、臨床研究の考察、副作用の一覧表等の文書を更に含んでいてもよい、キットも提供する。そのようなキットは、組成物の活性及び/若しくは利点を示す若しくは確証する、並びに/又は投薬、投与、副作用、薬物の相互作用、若しくは医療提供者にとって有用な他の情報を説明する、情報、例えば、参考文献、添付文書、臨床試験結果、並びに/又はこれらの概要等も含むことができる。そのような情報は、さまざまな研究、例えば、in vivoモデルを含む実験動物を使用する研究及びヒト臨床試験に基づく研究、の結果に基づく可能性がある。キットは、1つ以上明細書に記載した単位用量を含むことができる。組成物は、キット・オブ・パーツの形態の可能性がある。キット・オブ・パーツの場合、この明細書で開示する組成物の1つ以上の成分は、互いに独立して提供され(例.構築物、賦形剤及び/又は希釈剤は、別々の組成物として提供され)、その後、組成物を生成するために(例えば使用者により)用いられる。
【実施例】
【0225】
これまでに検討した態様のいくつかの側面を以下の実施例で更に詳しく開示するが、これらの例は、如何なる点においてもこの開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0226】
実施例1 C3リンカーが存在する又は存在しない場合のRNAi活性
この実施例は、C3リンカーを5’及び3’コネクターとして有する又は有さないさまざまなsiRNAドメインバリアントのRNAi活性を示す。
【0227】
新たな構築物のパッセンジャー鎖とコア鎖を組み立てて、新たな構築物のsiRNAドメインを形成する。これらのsiRNAドメインのさまざまなバリアントのRNAi活性を試験する。
【0228】
構築物を試験するために、パッセンジャー鎖とコア鎖を1×リン酸緩衝食塩水中で熱アニーリングすることで、CASi siRNAセグメントを組み立てた。デュアルルシフェラーゼアッセイにより、CASi siRNAセグメントのRNAi活性を測定した。リポフェクタミン2000を使用して、CASi siRNAセグメントを、ハンチンチン遺伝子siRNA標的配列を有するデュアルルシフェラーゼベクターとともに、HCT116細胞にコトランスフェクトした。48時間後、細胞を溶解し、対照として使用したホタルルシフェラーゼと標的配列を有するウミシイタケルシフェラーゼの発光値とを比較することで、標的遺伝子のノックダウンをアッセイした。CASi siRNAの組立て、細胞トランスフェクション及びデュアルルシフェラーゼアッセイの方法と手順は、例えば国際公開第2020/033938号に記載されており、その内容は参照により全体がこの明細書に組み込まれる。
【0229】
図5A及び
図5Bに、RNAi活性をこの実施例で決定する2つの代表的核酸複合体構築物の配列を示す。上の核酸複合体構築物は、パッセンジャー鎖v3p1と塩基対合しているコア鎖v3c1を含み、C3リンカーを5’及び3’コネクターとして使用する。下の核酸複合体構築物は、同じパッセンジャー鎖と塩基対合しているコア鎖v3c5を含み、この場合はC3リンカーを5’及び3’コネクターとして使用しない。代わりに、v3c5コア鎖は3’mUコネクターを有し、5’末端にはコネクターがない。
【0230】
図6に、この実施例で説明するアッセイで用いる2つの陽性対照核酸複合体構築物(パッセンジャー鎖は、ハンチンチン遺伝子(HTT)を標的とするsiRNAを含む)の配列を示す。
【0231】
図7は、
図5に示すv3c1コア鎖と組み立て、この実施例で試験する、パッセンジャー鎖が異なるさまざまなsiRNAバリアント(V3P1、V3P2、V3P3、V3P4、V3P5、V3P6、V3P7、V3P8及びV3P9)を示す。v3c1コア鎖は、C3リンカーを5’及び3’コネクターとして有する。標的タンパク質発現を、3つの濃度:10nM、1nM及び0.1nMのsiRNAバリアントを用いて試験した。
図8に、
図7に示すsiRNAバリアントについての標的タンパク質の発現データを示す。標的タンパク質の少ない発現により、高いRNAi活性が示唆される。
【0232】
図9は、
図5に示すv3c5コア鎖と組み立て、この実施例で試験する、パッセンジャー鎖が異なるさまざまなsiRNAバリアント(V3P1、V3P2、V3P3、V3P4、V3P5、V3P6、V3P7、V3P8及びV3P9)を示す。v3c5コア鎖は、C3リンカーを5’及び3’コネクターとして有さない。代わりに、v3c5コア鎖は、3’mUコネクターを有し、5’末端にコネクターを有さない。標的タンパク質発現を、3つの濃度:10nM、1.0nM及び0.1nMのsiRNAバリアントを用いて試験した。
図10に、
図9に示すsiRNAバリアントについての標的タンパク質発現データを示す。
図7~8と同様に、標的タンパク質の少ない発現により、高いRNAi活性が示唆される。
【0233】
これらのデータは、5’コネクターとしてのC3リンカーが、siRNAドメインのRNAi活性を阻害することを示す。さまざまなパッセンジャーバリアント(V3P1、V3P2、V3P3、V3P4、V3P5、V3P6、V3P7、V3P8及びV3P9)間の標的タンパク質発現データの比較は、LNA(例.HTT V3P8)によるパッセンジャー鎖の広範な修飾がRNAi活性を減少できることを示す。
【0234】
実施例2 さまざまな5’及び3’コネクターによるRNAi活性
この実施例では、コア鎖の異なるバージョンを、同じセンサー(Mir23センサー1)及びパッセンジャー鎖(パッセンジャー鎖1)を用いて試験して、RNAi活性に対する異なる5’及び3’コネクターの効果を調査した。RNAi活性を二本鎖構築物と三本鎖構築物間でも評価した。
【0235】
二本鎖構築物は、活性siRNAドメインを形成する、コア鎖と塩基対合したパッセンジャー鎖からなる。三本鎖構築物は、3つ全ての鎖:パッセンジャー鎖、コア鎖及びセンサー鎖からなる。
【0236】
パッセンジャー鎖とコア鎖を、又はパッセンジャー鎖とコア鎖とセンサー鎖を、1×リン酸緩衝食塩水中で熱アニーリングすることにより、CASi siRNAセグメント(二本鎖構築物)及び三本鎖構築物を組み立てた。
【0237】
リポフェクタミン2000を使用して、ハンチンチン遺伝子siRNA標的配列を有するデュアルルシフェラーゼベクターによって、異なる濃度(例.0.1nM、1.0nM及び10nM)でCASi siRNAセグメント又は三本鎖構築物をHCT116細胞にコトランスフェクトした。48時間後、細胞を溶解し、対照として使用したホタルルシフェラーゼと標的配列を有するウミシイタケルシフェラーゼの発光値と比較することにより、標的遺伝子のノックダウンについてアッセイした。CASi siRNAの組立て、細胞トランスフェクション及びデュアルルシフェラーゼアッセイについての方法及び手順の例は、例えば、国際出願WO 2020/033938に記載されている。
【0238】
図11A及び11Bに、この明細書で開示するさまざまな核酸複合体であって、それぞれが、同じパッセンジャー鎖(パッセンジャー鎖1)及びセンサー鎖(Mir23センサー1)、異なるコア鎖(コア鎖v3c1、コア鎖v3c2、コア鎖v3c3、コア鎖v3c4、コア鎖v3c5及びコア鎖v3c6)を有し、特に、コア鎖に異なる5’及び3’コネクターを有する、核酸複合体の配列を示す。例えば、CASi 1は、5’C3コネクターと3’C3コネクターの両者を有する。CASi 2は、5’C3コネクターと、3’リンカーとしての2-O-メチル化Uとを有する。CASi 3は、5’リンカーとしての2-O-メチル化Aと、3’C3コネクターとを有する。CASi 4は、5’リンカーとしての2-O-メチル化Aと、3’リンカーとしての2-O-メチル化Uとを有する。CASi 5は、5’リンカーとしてのホスホジエステル骨格結合と、3’リンカーとしての2-O-メチル化Uとを有する。CASi 6は、5’リンカーとしてのホスホジエステル骨格結合と、3’リンカーとしてのホスホロチオエート結合とを有する。
【0239】
【0240】
【0241】
図12は、全ての複合体が所望どおりに組み立てられていることを示す、さまざまな核酸複合体構築物の非変性ポリアクリルアミドゲル(PAGE)である。レーンは、以下のとおり(左から右へ):P1C1;P1C1S2;P1C2;P1C2S2;P1C3;P1C3S2;P1C4;P1C4S2;P1C5;P1C5S2;P1C6;P1C6S2;G1RC1;G1RC1S2。P1はパッセンジャー鎖1を示す。
【0242】
図13は、同じパッセンジャー鎖v3p1と異なるコア鎖(C1、C2、C3、C4、C5及びC6)とをそれぞれが有する二本鎖構築物のさまざまな濃度でのRNAi活性を示す。パッセンジャー鎖及びコア鎖の配列は、
図11A及び11Bに示した。
【0243】
図14は、
図13の二本鎖構築物(siRNA 1:C1;siRNA 2:C2;siRNA 3:C3;siRNA 4:C4;siRNA 5:C5;siRNA 6:C6)と比較した、同じパッセンジャー鎖v3p1と同じセンサー鎖(Mir23センサー1)と異なるコア鎖(C1、C2、C3、C4、C5及びC6)とをそれぞれが有する三本鎖構築物(CASi 1、CASi 2、CASi 3、CASi 4、CASi 5及びCASi 6)の、3つの異なる濃度でのRNAi活性を示す。パッセンジャー鎖、センサー鎖及びコア鎖の配列は、
図11A及び11B並びに表1に示した。
【0244】
これらのデータは、5’mAコネクター及び3’C3(3炭素リンカー)コネクターを有する、二本鎖及び三本鎖構築物を含む構築物(例.CASi 3構築物及びsiRNA 3二重鎖)が、最高のRNAi活性を有することを示す。siRNA 3二重鎖とCASi 3構築物間の異なるRNAi活性は、CASiの良好なRNAi活性スイッチングも示唆している。5’C3コネクターを有さない、二本鎖及び三本鎖構築物を含む構築物(例えば、C3、C4、C5、C6)は、5’C3コネクターを有する構築物(C1及びC2)より高いRNAi活性を有する。5’コネクターを有さない構築物(C5及びC6)は、5’コネクター(例えば、mA)を有するがC3リンカーを有さない構築物(C3及びC4)より低いRNAi活性を有する。同じコア鎖の場合、三本鎖構築物は、二本鎖構築物より低いRNAi活性を有すると一般に予想される。
【0245】
実施例3
さまざまなRNA複合体設計のRNAi活性
この実施例では、実験により、
図1に示すデザイン1のRNAiスイッチング及びRNAi活性を、この明細書で開示するRNA複合体設計(例.
図1に示すデザイン2)と比較した。V3C3a及びV3C3bは、デザイン2の形態の構築物である。G1C1S1は、デザイン1の形態の構築物である。
【0246】
パッセンジャー鎖とコア鎖を、又はパッセンジャー鎖とコア鎖とセンサー鎖を、1×リン酸緩衝食塩水中で熱アニーリングすることにより、CASi siRNAセグメント(二本鎖構築物)及び三本鎖構築物を組み立てた。リポフェクタミン2000を使用して、CASi siRNAセグメント(二本鎖構築物)及び三本鎖構築物をHCT116細胞にコトランスフェクトした。HCT116細胞は、CASiセンサーを活性化する可能性があるRNAバイオマーカー(例.心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)をコードするNPPA遺伝子配列)(
図16ではAct)又はCASiセンサーを活性化しない対照核酸鎖(
図16ではNeg)を、Pol IIIプロモーターで駆動される短鎖RNA転写物を使用して発現できる。HCT116細胞は、PPP3CA(カルシニューリン)遺伝子siRNA標的配列を有するデュアルルシフェラーゼベクターも有する。カルシニューリンは、カルシウム及びカルモジュリン依存性セリン/トレオニンプロテインホスファターゼであり、心肥大の重要な駆動因子として特定されている。ANPは心肥大の診断マーカーとして使用されている。したがって、三本鎖CASi siRNA構築物のセンサー鎖を、ANP mRNAを検出するように設計し、さらに、siRNAドメイン(例.パッセンジャー鎖)を、カルシニューリンを阻害するように設計する。
【0247】
72時間後、細胞を溶解し、ホタルルシフェラーゼとウミシイタケルシフェラーゼ(標的配列を有する)の発光値を比較することで標的遺伝子(カルシニューリン)のノックダウンについてアッセイした。
【0248】
図15に、
図1に示すデザイン2の形態のコア鎖V3C3aを含む核酸複合体(T2 CASi構築物)及び
図1に示すデザイン1の形態の核酸複合体(Cond-siRNA構築物)(下:G1C1S1)の配列を示す。T2 CASi及びCond-siRNA鎖の配列を表2に示す。
【0249】
【0250】
図16は、元の二本鎖(G1C1 siRNA)及び三本鎖構築物(G1C1S1)と比較した修飾二本鎖構築物(V3C3a siRNA)及び三本鎖構築物(V3C3a及びV3C3b)の3つの異なる濃度でのRNAi活性を示す。
【0251】
これらのデータは、修飾CASi構築物が、RNAバイオマーカーの非存在下(Neg)ではより低いRNAi活性、及びRNAiバイオマーカーの存在下(Act)ではより高いRNAi活性を示すことを示し、したがって、修飾CASi構築物のRNAi活性が、RNAバイオマーカーが存在しない場合にはスイッチオフされることを示す。修飾構築物(T2 CASi:V3C3a及びV3C3b)のRNAi活性も、元の設計(Cond-siRNA構築物G1C1S1)と比較して有意に改善された。修飾CASi siRNAセグメント(二本鎖構築物、例.V3C3a siRNA)も、元の二本鎖設計(G1C1 siRNA)と比較して有意に改善されたRNAi活性を示す。
【0252】
用語法
上述の態様の少なくとも一部では、ある態様で使用する1つ以上の要素を別の態様で相互交換可能に使用することが、そのような置換が技術的に実行できない場合を除き、できる。さまざまな他の省略、追加及び修飾を、請求項記載の主題の範囲から逸脱せずに上記の方法及び構造に加えてもよいことは、当業者には理解される。全てのそのような修飾及び変更は、特許請求の範囲によって規定される主題の範囲に含まれるように意図されている。
【0253】
ここでの実質的に如何なる複数形及び/又は単数形の用語の使用に関しても、当業者は、文脈及び/又は用途に適切であるように、複数形を単数形に及び/又は単数形を複数形に言い換えることができる。明確にするために、さまざまな単数形/複数形の置き換えを明示的に示すことがある。本明細書及び特許請求の範囲では、単数形「1つの(a、an)」及び「その(the)」は、明らかに別段の定めがある場合を除き、複数の言及対象を含む。ここでの「又は」へのいずれの言及も、別段の説明がある場合を除き、「及び/又は」を包含するように意図されている。
【0254】
一般に、明細書において、特に、特許請求の範囲で使用する用語は、「限定するものではない」という用語として一般に意図されていることは、当業者には理解される(例.「含むこと」は、「含むが、それらに限定されないこと」と解釈すべきであり、「有すること」は、「少なくとも有すること」と解釈すべきであり、「~を含む」は、「~を含むが、それらに限定されない」と解釈すべきである、など)。導入される請求項の記載の特定の数が意図されている場合、そのような意図は、請求項に明示的に記載されることになり、そのような記載がない場合にはそのような意図は存在しないことは、当業者には更に理解される。例えば、理解の補助として、特許請求の範囲は、請求項の記載を導入するための導入語句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の利用を含むことがある。しかし、そのような語句の使用を、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の導入によって、そのような導入される請求項の記載を含むいずれかの特定の請求項が、1つだけのそのような請求項の記載を含む態様に、たとえ同請求項が、導入語句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」及び不定冠詞、例えば、「a」又は「an」を含む(例.「a」及び/又は「an」は、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈すべきである)ときであっても、限定されることを含意すると、解釈すべきでなく;同じことが、請求項の記載を導入するために使用される定冠詞の使用にも言える。加えて、導入される請求項の記載の特定の数が明示的に記載されている場合であっても、そのような記載を、少なくとも記載されている数を意味すると解釈すべきであることは(例.他の修飾語のない「2つの記載」という裸の記載は、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)当業者には理解される。さらに、「A、B及びCなどのうちの少なくとも1つ」に類似した慣例が使用される場合、一般に、このような構成は、当業者には慣例(例.「A、B及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、これらに限定されないが、単独でA、単独でB、単独でC、一緒にAとB、一緒にAとC、一緒にBとC、及び/又は一緒にAとBとC、などを有するシステムを含む)が理解されるという意味で意図されたものである。「A、B又はCなどのうちの少なくとも1つ」に類似した慣例が使用される場合、一般に、このような構成は、当業者には慣例(例.「A、B又はCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、これらに限定されないが、単独でA、単独でB、単独でC、一緒にAとB、一緒にAとC、一緒にBとC、及び/又は一緒にAとBとC、などを有するシステムを含むことになる)が理解されるという意味で意図されたものである。2つ以上の代替用語を示す事実上如何なる離接語及び/又は語句も、本明細書中、特許請求の範囲中又は図面中を問わず、用語のうちの1つ、用語のいずれか又は両者の用語を含む可能性を企図すると解するべきであることは、当業者には更に理解される。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと解されることになる。
【0255】
加えて、本開示の特徴又は側面が、マーカッシュ群によって記載されている場合、それにより、本開示が、マーカッシュ群のいずれかの個々の要素、又は要素のサブグループに関しても記載されていることは、当業者には理解される。
【0256】
当業者には理解されるように、いずれかの及びあらゆる目的で、例えば、明細書を提供する観点で、この明細書で開示されるあらゆる範囲は、それらのいずれかの及びあらゆる可能な部分的範囲及び部分的範囲の組合せも包含する。いずれの収載される範囲も、同範囲が少なくとも二等分、三等分、四等分、五等分、十等分などに分けられることを十分に記載しており、可能にすると、容易に認識できる。限定するものではない例として、ここで論じられるそれぞれの範囲を下3分の1、中3分の1及び上3分の1などに容易に分けることができる。同じく当業者には理解されるように、あらゆる言葉、例えば、「以下」、「少なくとも」、「より多くの」、「未満の」等の言葉は、記載されている数を含み、上で論じたように部分的範囲に後に分けることができる範囲を指す。最後に、当業者には理解されるように、範囲は、それぞれの個々の要素を含む。したがって、例えば、1~3個の物品を有する群は、1、2又は3個の物品を有する群を指す。同様に、1~5個の物品を有する群は、1、2、3、4又は5個の物品を有する群を指す、等々。
【0257】
さまざまな側面及び態様をここで開示したが、他の側面及び態様は、当業者には明らかである。ここで開示するさまざまな側面及び態様は、説明を目的としたものであり、限定することを意図したものではなく、真の範囲及び趣旨は、特許請求の範囲によって示される。
【配列表】
【国際調査報告】