(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】有機ジスルフィドブレンドで安定化された重合体組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240705BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20240705BHJP
C08K 5/36 20060101ALI20240705BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20240705BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20240705BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20240705BHJP
C08L 59/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/13
C08K5/36
C08L25/04
C08L23/00
C08L33/00
C08L59/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500666
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 US2022023787
(87)【国際公開番号】W WO2023282945
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・エフ・ブイトラゴ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AA011
4J002AB011
4J002AB021
4J002AB031
4J002AC001
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4J002EV046
4J002FD048
4J002FD066
4J002FD077
4J002GT00
(57)【要約】
8~18の炭素鎖長の不均質部位を有する有機ジスルフィドブレンドは、重合体組成物に有用な安定剤であり、熱、光及び酸素などの環境条件にさらされたときに重合体が劣化する傾向を、不均質有機ジスルフィドブレンドの配合によって改善できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の重合体と、構造R
1-S(S)-R
2(式中、R
1及びR
2はC
8~C
18有機基から独立して選択され、全てのR
1及びR
2が同じ炭素鎖長を有するわけではない。)を有する有機ジスルフィドから構成される有機ジスルフィドブレンド安定剤成分とを含む安定化重合体組成物。
【請求項2】
前記C
8~C
18有機基が、アルキル基、芳香族基及び複素環式基よりなる群から選択される、請求項1に記載の安定化重合体組成物。
【請求項3】
R
1及びR
2が、異なる炭素鎖長のC
8~C
18アルキル基から独立して選択される、請求項2に記載の安定化重合体組成物。
【請求項4】
前記有機ジスルフィドブレンド安定剤成分が、構造R
1-S(S)-R
2を有する有機ジスルフィドを少なくとも90重量%含む、請求項1に記載の安定化重合体組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の重合体が少なくとも1種の熱可塑性プラスチックを含む、請求項1に記載の安定化重合体組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の重合体が少なくとも1種のエラストマーを含む、請求項1に記載の安定化重合体組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の重合体が、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂及びポリオキシメチレン系樹脂よりなる群から選択される、請求項1に記載の安定化重合体組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の重合体が、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリプロピレン及びポリエチレンよりなる群から選択される、請求項1に記載の安定化重合体組成物。
【請求項9】
前記安定化重合体組成物が、前記有機ジスルフィドブレンド安定剤成分を0.001~5重量%含む、請求項1に記載の安定化重合体組成物。
【請求項10】
前記安定化重合体組成物が、有機ポリスルフィドブレンド安定剤成分以外の少なくとも1種の安定剤をさらに含む、請求項1に記載の安定化重合体組成物。
【請求項11】
有機ポリスルフィドブレンド安定剤成分以外の少なくとも1種の安定剤が、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤及びUV安定剤よりなる群から選択される、請求項10に記載の安定化重合体組成物。
【請求項12】
前記酸化防止剤がフェノール化合物である、請求項10に記載の安定化重合体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、有機ジスルフィドブレンドで安定化された重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
重合体は、様々な種類の完成品の製造に有用な材料であるが、一般に、重合体の処理中に採用されるような高温や、比較的過酷な条件にさらされることを目的とした重合物品の通常の使用中に遭遇するような高温で劣化しやすい。さらに、多くの最終用途では、極端な環境ストレスにさらされなくても、重合物品が長い耐用年数にわたって機能的で魅力的な外観を保つことが重要である。重合体の分解によって、重合物品の外観と、物性及び機械的性質とに望ましくない変化が生じる可能性がある。そのため、劣化に対する耐性を高めるために様々な種類の安定剤が重合体に配合されることが一般的である。しかしながら、重合体の安定化は依然として実験に基づく技術であり、一般に、所定の添加剤が安定剤として有効であるのか有効でないのかを合理的な確実性をもって予測することは不可能である。さらに、ある種類の重合体を好適に安定化させる化合物であっても、他の種類の重合体に配合された場合には、同様の効果を示さないこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、代わりとなる重合体安定化技術の開発が強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
少なくとも1種の重合体から構成される重合体組成物は、それに有機ジスルフィドブレンド安定剤成分を取り入れることによって安定化される。得られる安定化重合体組成物は、安定剤を含まない重合体組成物と比較して、(特に高温での)劣化に対して改善された耐性を示す。重合体中に有機ジスルフィドブレンド安定剤が存在することで、処理加工又は風化による熱又は光などの典型的な分解応力に対する重合体の安定性が向上する。このような安定化効果は、処理加工中における一貫したメルトフローインデックス及び黄色度指数の低下によって例示できる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、実施例でさらに説明されるように、特定の実験結果のグラフ図である。
【
図2】
図2は、実施例でさらに説明されるように、特定の実験結果のグラフ図である。
【
図3】
図3は、実施例でさらに説明されるように、特定の実験結果のグラフ図である。
【
図4】
図4は、実施例でさらに説明されるように、特定の実験結果のグラフ図である。
【
図5】
図5は、実施例3で説明される、有機ジスルフィドブレンドを含む様々な熱安定剤パッケージで安定化されたエチレン-酢酸ビニル共重合体の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の特定の実施形態の詳細な説明
有機ジスルフィド
本発明の安定化重合体組成物は、少なくとも1種の重合体と有機ジスルフィドブレンド安定剤成分とから構成される。有機ジスルフィドブレンド安定剤は、フェノール系化合物であるペンタエリスリトールテトラキス(3-(5,ジ-t-クチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Irganox(登録商標)1010)及び3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート(Irganox(登録商標)1076)などの酸化防止剤と併用できる。このような有機ジスルフィドブレンドは、重合体の安定性、特に熱安定性(すなわち、加熱時の劣化に抵抗する能力)を改善するのに特に効果的であることが分かった。一般的に言えば、均質有機ジスルフィド(すなわち、一般式R-SS-Rに相当する化合物であり、ここで各R基又は実質的に全てのR基は同じ有機部分である)では、R基が変化した有機部分である類似の非均質有機ジスルフィド(R-SS-R)と同じレベルの重合体安定化が得られない。重合体組成物中の安定剤としての高級有機ポリスルフィド(例えば、オルガノペンタスルフィドR-SSSSS-R及びオルガノヘキサスルフィドR-SSSSSS-R)の使用は、重合体組成物が加熱されたときに当該高級有機ポリスルフィドの存在によって深刻な臭気の問題及び元素状硫黄の形成の問題が引き起こされるため、一般に好適ではないことが分かっている。しかしながら、高級有機ポリスルフィドを含めた少量の不純物は、本発明に対して有害な影響を及ぼすことがなければ存在していてもよい。
【0007】
これらの理由から、本発明の様々な有利な実施形態において、安定化重合体組成物中に存在する有機ジスルフィドブレンド安定剤成分は、有機ポリスルフィド及び有機ジスルフィドブレンド以外の他の材料(すなわち不純物)の総含有量が安定化重合体組成物中に存在する有機ポリスルフィドの総重量(すなわち、有機ジスルフィドブレンド+不純物)に基づいて、約10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることを特徴とする。不純物は、有機ポリスルフィド、第三級ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン、スルフィド、及び有機ジスルフィドブレンド安定剤成分の製造に由来する未反応材料を含む場合がある。
【0008】
本発明において、有機ジスルフィドは、2つの有機部分間に介在する少なくとも1つのジスルフィド結合(-SS-)を含む化合物であるものとし、ここで、有機部分は主として互いに異なる。すなわち、有機ジスルフィドのわずかな割合の有機部分は、本発明から逸脱することなく同一であってもよい。本発明の有機ジスルフィドブレンドは、8~18個の炭素原子、好ましくは9~15個の炭素原子を有する様々な有機部分で置換された有機ジスルフィドから構成される。例えば、有機ジスルフィドブレンド安定剤成分は、一般構造R1-SS-R2及びR3-SS-R4ならびにR1-SS-Q-SS-R2及びR3-SS-Q-SS-R4に対応する化合物を含むことができ、ここで、各R及びQは有機部分であり、R1、R2、R3及びR4は主として異なり、8~18、好ましくは9~15の炭素鎖長を有する。
【0009】
有機ジスルフィドブレンド成分中に存在する8~18、好ましくは9~15の炭素鎖長を有する有機部分の構造及び同一性は、有機ジスルフィドブレンド安定剤成分とそれが配合される重合体マトリックスとの相溶性を改善又は改変するのに必要とされ得るように変更及び選択される。理論に拘束されることを望むものではないが、有機部分は、重合体組成物中の有機ジスルフィドブレンド安定剤成分の分散及び/又は可溶化を補助することができると考えられる。したがって、有機部分は、安定化される重合体に応じて選択できる。
【0010】
好適な有機部分としては、例えば、アルキル基、アリール基、及び/又はアラルキル基が挙げられ、後にさらに詳細に説明するように、それらの置換及びヘテロ原子含有変形体を含む。
【0011】
本発明の一態様では、有機ジスルフィドブレンドは次の一般式(I)に相当する:
R1-S-S-R2 (I)
式中、R1、及びR2は、8~18個の炭素原子、好ましくは9~15個の炭素原子を有する有機部分であり、これらは主に互いに異なる。各R基は、脂環式、芳香族及び複素芳香族環構造を含めた1個以上の環構造を含んでいてもよい。本発明の有機ジスルフィドブレンド成分は不均質であり、不均質とは、R1及びR2が実質的に全て同じ炭素鎖長である均質有機ジスルフィドとは対照的に、R1及びR2が主として全て同じ炭素鎖長ではないことを意味する。
【0012】
8個~18個の炭素原子、好ましくは9個~15個の炭素原子を含有する有機部分を含む各R基は、1個以上の水素原子及び/又は1個以上のヘテロ原子も含んでいてもよい。一方又は両方のR基中に存在していてよいヘテロ原子は、例えば、N、O、S、Se、P、ハロゲン化物又はそれらの組合わせとすることができる。式(I)中のR基については、以下でさらに詳細に説明する。式(I)において、R部分のそれぞれは、例えば、少なくとも1個の置換基を有していてよい脂肪族炭化水素基、少なくとも1個の置換基を有していてよい脂環式炭化水素基、少なくとも1個の置換基を有していてよい芳香族炭化水素基、少なくとも1個の置換基を有していてよい複素環式基、又はオキシアルキレン含有基を表すことができる。用語「脂肪族炭化水素基」には、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基が包含される。
【0013】
「アルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、ノニル基、i-ノニル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、及びステアリル基が挙げられる。例えば、C6~C25又はC8~C16アルキル基を使用することができる。「アルケニル基」としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ペンタデセニル基、エイコセニル基、及びトリコセニル基が挙げられる。例えば、C6~C25アルケニル基を使用することができる。
【0014】
「アルキニル基」としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、2-メチル-2-プロピニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-メチル-2-ブチニル基、2-メチル-2-ブチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、1-ヘプチニル基、1-オクチニル基、1-デシニル基、1-ペンタデシニル基、1-エイコシニル基、及び1-トリコシニル基が挙げられる。例えばC6~C25アルキニル基を使用することができる。用語「脂環式炭化水素基」とは、単環式又は多環式のアルキル基、アルケニル基等をいい、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ビシクロオクチル基、ビシクロヘプチル基、ノルボルミル基、アダマンチル基、2-シクロプロペニル基、2-シクロペンテニル基、及び4-シクロヘキセニル基が挙げられる。例えば、C3~C8シクロアルキル基を使用することができる。
【0015】
用語「芳香族炭化水素基」とは、単環式又は多環式のアリール基を意味する。ここで、多環式アリール基の場合、用語「芳香族炭化水素基」には、完全不飽和基のみならず、部分飽和基も包含される。例えば、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、及びテトラリニル基が挙げられる。例えば、C6~C10アリール基を使用することができる。
【0016】
用語「複素環式基」とは、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を1~4個有する5~7員の芳香族複素環、飽和複素環若しくは不飽和複素環、又はこれらの複素環のいずれかが別の炭素環式環(例えばベンゼン)又は複素環式環と縮合した縮合複素環を意味する。例えば、フラン-2-イル基、フラン-3-イル基、チオフェン-2-イル基、チオフェン-3-イル基、ピロール-1-イル基、ピロール-2-イル基、ピリジン-2-イル基、ピリジン-3-イル基、ピリジン-4-イル基、ピラジン-2-イル基、ピラジン-3-イル基、ピリミジン-2-イル基、ピリミジン-4-イル基、ピリダジン-3-イル基、ピリダジン-4-イル基、1,3-ベンゾジオキソール-4-イル基、1,3-ベンゾジオキソール-5-イル基、1,4-ベンゾジオキサン-5-イル基、1,4-ベンゾジオキサン-6-イル基、3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-6-イル基、3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イル基、2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル基、2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-イル基、2,3-ジヒドロベンゾフラン-6-イル基、2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル基、ベンゾフラン-2-イル基、ベンゾフラン-3-イル基、ベンゾチオフェン-2-イル基、ベンゾチオフェン-3-イル基、キノキサリン-2-イル基、キノキサリン-5-イル基、インドール-1-イル基、インドール-2-イル基、イソインドール-1-イル基、イソインドール-2-イル基、イソベンゾフラン-1-イル基、イソベンゾフラン-4-イル基、クロメン-2-イル基、クロメン-3-イル基、イミダゾール-1-イル基、イミダゾール-2-イル基、イミダゾール-4-イル基、ピラゾール-1-イル基、ピラゾール-3-イル基、チアゾール-2-イル基、チアゾール-4-イル基、オキサゾール-2-イル基、オキサゾール-4-イル基、イソオキサゾール-3-イル基、イソオキサゾール-4-イル基、ピロリジン-2-イル基、ピロリジン-3-イル基、ベンゾイミダゾール-1-イル基、ベンゾイミダゾール-2-イル基、ベンゾチアゾール-2-イル基、ベンゾチアゾール-4-イル基、ベンゾオキサゾール-2-イル基、ベンゾオキサゾール-4-イル基、キノリン-2-イル基、キノリン-3-イル基、イソキノリン-1-イル基、イソキノリン-3-イル基、1,3,4-チアジアゾール-2-イル基、1,2,3-トリアゾール-1-イル基、1,2,3-トリアゾール-4-イル基、テトラゾール-1-イル基、テトラゾール-2-イル基、インドリン-4-イル基、インドリン-5-イル基、モルホリン-4-イル基、ピペラジン-2-イル基、ピペリジン-2-イル基、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-5-イル基、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル基、及び1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル基が挙げられる。一実施形態では、Rは1,3,4-チアジアゾール基である。
【0017】
用語「エーテル含有基」とは、例えばオキシアルキレン含有基などの、1つ以上のエーテル結合を含む有機部分を意味する。オキシアルキレン含有基は、一般構造-O-(CH2)o-を有する少なくとも1つの部分を含む基であってよく、ここで、oは少なくとも1の整数(例えば、1、2、3、4など)であり、CH2部分の水素原子の1個以上は、アルキル基(例えば、メチル又はエチル)、アリール基又は複素環式部分などの置換基で置換されていてよい。
【0018】
本発明で利用できる有機ジスルフィドブレンドの特に有利な例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
ジアルキルジスルフィド、特に有機ジスルフィド、特に、上記の構造に相当する構造R1-S-S-R2を有するもの(式中、R1及びR2は独立してC8~C18アルキル基から選択され、R1及びR2は主として異なる)。好ましいジアルキルジスルフィドは、式R8-SS-R9のものであり、ここで、R8及びR9は主として異なり、主として非直鎖C6~C15脂肪族部分である。
【0020】
次式の芳香族ジスルフィド:
【化1】
式中、R
4は主としてt-ブチル又はt-アミルであり、R
5はヒドロキシ(-OH)であり、芳香環は1つ以上の位置において水素以外の置換基(例えば、ハロゲン、アルキル、アルコキシ)で置換されていてよく、このような芳香族ジスルフィドの組み合わせも含む。本発明の一実施形態では、芳香環はいずれも、R
5(ヒドロキシ)基に対してオルト位では水素以外の置換基で置換されていない。アーケマグループが販売する製品であるVultac(登録商標)2及びVultac(登録商標)3は、このような適切な芳香族ジスルフィドの例である(Vultac(登録商標)2:r=1、R
4=t-アミル、Vultac(登録商標)3:r=3~5、各R
4=t-アミル)。
【0021】
本発明において有用な有機ジスルフィドは当該技術分野において周知であり、任意の適切な方法によって製造できる。適切な有機ジスルフィドは、アーケマグループなどの商業的供給源からも入手可能である。
【0022】
重合体
本発明で使用される重合体は、当該技術分野において知られている任意の種類の重合体であってよく、例えば、熱可塑性重合体、熱硬化性重合体、エラストマー、熱可塑性エラストマー、非架橋重合体、又は架橋重合体であってもよい。また、2種類以上の重合体の混合物、ブレンド又はアロイも使用できる。
【0023】
本発明は、ポリオレフィン(ポリオレフィン樹脂とも呼ばれ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン)、アクリル系樹脂(ポリアクリレートとも呼ばれ、例えば、ポリメタクリル酸メチル)及びポリアセタール(例えば、ポリオキシメチレン樹脂)などの熱可塑性プラスチックの安定化に特に有用である。
【0024】
一般に、本発明に従って安定化できる重合体としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
A.モノオレフィン及びジオレフィンの重合体、例えばポリエチレン(架橋されていてよい)、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン-1、ポリメチル-ペンテン-1、ポリイソプレン又はポリブタジエン、ならびにシクロオレフィンの重合体、例えばシクロペンテン又はノルボルネンの重合体。
【0026】
B.A.で挙げた重合体の混合物、例えばポリプロピレンとポリイソブチレンとの混合物。
【0027】
C.モノオレフィン及びジオレフィンとの共重合体又はこれらと他のビニル単量体との共重合体、例えば、エチレン/プロピレン、プロピレン/ブテン-1、プロピレン/イソブチレン、エチレン/ブテン-1、プロピレン/ブタジエン、イソブチレン/イソプレン、エチレン/アクリル酸アルキル、エチレン/メタクリル酸アルキル、エチレン/酢酸ビニル又はエチレン/アクリル酸共重合体及びそれらの塩(アイオノマー)、ならびにエチレンとプロピレン及びジエン、例えばヘキサジエン、ジシクロペンタジエン又はエチリデンノルボルネンとの三元共重合体。
【0028】
D.ポリスチレン、ポリ-(p-メチルスチレン)。
【0029】
E.エチレン-酢酸ビニル共重合体。
【0030】
F.スチレン又はメチルスチレンとジエン又はアクリル誘導体との共重合体、例えばスチレン/ブタジエン、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/メタクリル酸エチル、スチレン/ブタジエン/アクリル酸エチル、スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸メチルなど;スチレン共重合体と他の重合体、例えばポリアクリレート、ジエン重合体又はエチレン/プロピレン/ジエン三元共重合体などからの衝撃強さの高い混合物;及びスチレンのブロック重合体、例えばスチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレン、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン又はスチレン/エチレン/プロピレン/スチレンなど。
【0031】
G.スチレンのグラフト共重合体、例えば、ポリブタジエン上のスチレン、ポリブタジエン上のスチレン及びアクリロニトリル、ポリブタジエン上のスチレン及びアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキル、エチレン/プロピレン/ジエン三元共重合体上のスチレン及びアクリロニトリル、ポリアクリレート又はポリメタクリレート上のスチレン及びアクリロニトリル、アクリレート/ブタジエン共重合体上のスチレン及びアクリロニトリルなど、ならびにそれらのE.で列挙した共重合体との混合物、例えばABS重合体、MBS重合体、ASA重合体又はAES重合体として知られる共重合体混合物。
【0032】
H.塩素重合体及びフッ素重合体を含むハロゲン含有重合体、例えばポリクロロプレン、塩素化ゴム、塩素化又はスルホ塩素化ポリエチレン、エピクロロヒドリン単独重合体及び共重合体、ハロゲン含有ビニル化合物からの重合体、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ならびにそれらの共重合体など、例えば塩化ビニル/塩化ビニリデン、塩化ビニル/酢酸ビニル、塩化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体、又はフッ化ビニル/ビニルエーテル共重合体。
【0033】
I.α,β-不飽和酸及びその誘導体(例えば、α,β-不飽和酸のエステル)から誘導される重合体、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリルなど。
【0034】
J.H.で挙げた単量体同士の共重合体又は他の不飽和単量体との共重合体、例えば、アクリロニトリル/ブタジエン、アクリロニトリル/アクリル酸アルキル、アクリロニトリル/アクリル酸アルコキシアルキル若しくはアクリロニトリル/ハロゲン化ビニル共重合体又はアクリロニトリル/メタクリル酸アルキル/ブタジエン三元共重合体。
【0035】
K.不飽和アルコール及びアミン、又はそれらのアシル誘導体若しくはアセタールから誘導される重合体、例えばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、ポリ安息香酸ビニル、ポリマレイン酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリフタル酸アリル又はポリアリルメラミン。
【0036】
L.ポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド又はそれらとビスグリシジルエーテルとの共重合体などの、環状エーテルの単独重合体及び共重合体。
【0037】
M.ポリオキシメチレン、及びエチレンオキシドを共単量体として含むポリオキシメチレンなどのポリアセタール。
【0038】
N.ポリフェニレンオキシド及びポリフェニレンスルフィド、ならびにポリフェニレンオキシドとポリスチレンとの混合物。
【0039】
O.一方に末端ヒドロキシル基、他方に脂肪族又は芳香族ポリイソシアネートを有するポリエーテル、ポリエステル又はポリブタジエンから誘導されるポリウレタン、ならびにその前駆体(ポリイソシアネート、ポリオール又はプレポリマー)。
【0040】
P.ジアミン及びジカルボン酸、及び/又はアミノカルボン酸又はそれに対応するラクタムから誘導されるポリアミド及びコポリアミド、例えば、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド6/6、ポリアミド6/10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリ-2,4,4-トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド又はポリ-m-フェニレンイソフタルアミドなど、ならびにこれらとポリエーテル、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコールなどとの共重合体。
【0041】
Q.ポリ尿素、ポリイミド、ポリアミドイミド。
【0042】
R.ジカルボン酸及びジオールから誘導されるポリエステル及び/又はヒドロキシカルボン酸又はそれに対応するラクトンから誘導されるポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ-1,4-ジメチロール-シクロヘキサンテレフタレート、ポリ-[2,2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン]テレフタレート及びポリヒドロキシベンゾエート、ならびにヒドロキシ末端基を有するポリエーテルから誘導されるブロック-コポリエーテル-エステルなど。
【0043】
R.ポリカーボネート。
【0044】
S.ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルケトン。
【0045】
T.一方ではアルデヒドから、他方ではフェノール、尿素及びメラミンから誘導される架橋重合体、例えばフェノール/ホルムアルデヒド樹脂、尿素/ホルムアルデヒド樹脂及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂など。
【0046】
U.乾燥性及び非乾燥性アルキド樹脂。
【0047】
V.飽和及び不飽和ジカルボン酸と、架橋剤としての多価アルコール及びビニル化合物とのコポリエステルから誘導される不飽和ポリエステル樹脂、及びその低引火性ハロゲン含有変性物。
【0048】
W.エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート又はシリコーンアクリレートなどの、置換アクリルエステルから誘導される熱硬化性アクリル樹脂。
【0049】
X.架橋剤としてメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート又はエポキシド樹脂と混合されたアルキド樹脂、ポリエステル樹脂又はアクリレート樹脂。
【0050】
Y.ポリエポキシド、例えばビスグリシジルエーテル又は脂環式ジエポキシドから誘導される架橋エポキシド樹脂。
【0051】
Z.天然重合体、例えばセルロース、ゴム、ゼラチン、及び重合体均質的な方法で化学的に変性されたそれらの誘導体、例えば酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース及び酪酸セルロース、又はメチルセルロースなどのセルロースエーテルなど。
【0052】
AA.上記重合体の混合物、例えば、PP/EPDM、ポリアミド6/EPDM又はABS、PVC/EVA、PVC/ABS、PVC/MBS、PC/ABS、PBTP/ABS。
【0053】
BB.ポリシロキサン。
【0054】
CC.エチレン性不飽和単量体及び/又はオリゴマーを含む放射線硬化性組成物から製造される重合体。
【0055】
一般に、本発明の有機ジスルフィドブレンドは、安定化組成物の約0.001~約5重量%を占める総量で使用できるが、これは、特定の重合体、配合、安定剤及び用途によって変動する。有利な範囲は、有機ジスルフィドブレンドの総重量に対して約0.001~約0.05重量%である。
【0056】
本発明の有機ジスルフィドブレンド安定剤成分は、それから成形品を製造する前の任意の都合のよい段階で、従来の技術によって重合体に容易に配合できる。例えば、有機ジスルフィドブレンド安定剤成分は、液体状態で重合体と混合してもよく(例えば、押出法又はコンパウンド法を使用して)、あるいは有機ジスルフィドブレンド安定剤成分の懸濁液又はエマルジョンを重合体の溶液、懸濁液又はエマルジョンと混合してもよい。本発明の有機ジスルフィドブレンド安定剤成分は、カプセル化された有機ジスルフィドブレンド安定剤成分又は多孔質基材上に吸着された有機ジスルフィドブレンド安定剤成分といった乾燥粉末として、重合体中に容易に配合できる。
【0057】
一般に、有機ジスルフィドブレンド安定剤成分は、前記材料の重合前、重合中若しくは重合後又は架橋後に重合体材料に添加できる。有機ジスルフィドブレンド安定剤成分は、純粋な形態で安定化されるべき重合体に配合でき、ワックス、オイル若しくは重合体に封入でき、又は多孔質基材に吸着できる。有機ジスルフィドブレンド安定剤成分は、無充填樹脂、後処理された回収スクラップ、又は消費者使用後商品から再生又はリサイクルされた重合体に混合できる。有機ジスルフィドブレンド安定剤成分が複数の化合物から構成される場合には、これらの化合物は別々に、又は予め混合されたブレンドとして重合体と混合できる。
【0058】
他の成分及び添加剤
本発明の安定化重合体組成物は、任意に、以下のような1種以上の様々な従来の重合体添加剤も含有することができる:
【0059】
1.ヒンダードアルキル化モノフェノールを含むアルキル化モノフェノール;アルキル化ヒドロキノン;ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル;アルキリデンビスフェノール、ベンジル化合物;アシルアミノフェノール;β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価又は多価アルコールとのエステル;β-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸と一価又は多価アルコールとのエステル;及びβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミドなどの酸化防止剤。
【0060】
2.2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール;2-ヒドロキシベンゾフェノン;置換されていてよい安息香酸のエステル;アクリレート;ニッケル化合物;立体障害アミン;シュウ酸ジアミド;及びヒドロキシフェニル-s-トリアジンなどの紫外線吸収剤及び光安定剤。
【0061】
3.金属不活性化剤。
【0062】
4.ホスフィット及びホスホナイト。
【0063】
5.過酸化物を破壊する化合物。
【0064】
6.塩基性共安定剤、例えば、メラミン、ポリビニルピロリドン、ジシアンジアミド、トリアリルシアヌレート、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、アミン、ポリアミド、ポリウレタン、高級脂肪酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えばステアリン酸Ca、ステアリン酸Zn、ステアリン酸Mg、リシノール酸Na及びパルミチン酸K、ピロカテコール酸アンチモン又はピロカテコール酸亜鉛。
【0065】
7.核剤、例えば、4-t-ブチル安息香酸、アジピン酸、又はジフェニル酢酸。
【0066】
8.充填剤及び補強剤、例えば、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、ガラス繊維、アスベスト、タルク、カオリン、マイカ、硫酸バリウム、金属酸化物及び金属水酸化物、カーボンブラック、及びグラファイト。
【0067】
9.他の添加剤、例えば、可塑剤、潤滑剤、乳化剤、顔料、蛍光増白剤、防炎剤、難燃剤、帯電防止剤、及び発泡剤。
【0068】
本発明の安定化重合体組成物は、成形、流延、押出、焼結などの技術を用いた、容器、車両部品、電子部品、建築部品、家電部品、複合材料、コーティング、パイプ、フィルム、シートなどの物品の製造など、重合体組成物が従来から採用されている用途のいずれにも有用である。
【0069】
本発明の様々な例示的側面は、以下のように要約できる。
【0070】
態様1:
少なくとも1種の重合体と、構造R1-S(S)-R2(式中、R1及びR2はC8~C18有機基から独立して選択され、全てのR1及びR2が同じ炭素鎖長を有するわけではない。)を有する有機ジスルフィドから構成される有機ジスルフィドブレンド安定剤成分とを含む安定化重合体組成物。
【0071】
態様2:
前記C9~C14有機基が、アルキル基、芳香族基及び複素環式基よりなる群から選択される、態様1に記載の安定化重合体組成物。
【0072】
態様3:
R1及びR2が、異なる炭素鎖長のC8~C18アルキル基から独立して選択される、態様2に記載の安定化重合体組成物。
【0073】
態様4:
前記有機ジスルフィドブレンド安定剤成分が、構造R1-S(S)-R2を有する有機ジスルフィドを少なくとも90重量%含む、態様1~3のいずれかに記載の安定化重合体組成物。
【0074】
態様5:
前記少なくとも1種の重合体が少なくとも1種の熱可塑性プラスチックを含む、態様1~4のいずれかに記載の安定化重合体組成物。
【0075】
態様6:
前記少なくとも1種の重合体が少なくとも1種のエラストマーを含む、態様1~5のいずれかに記載の安定化重合体組成物。
【0076】
態様7:
前記少なくとも1種の重合体が、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂及びポリオキシメチレン系樹脂よりなる群から選択される、態様1~5のいずれかに記載の安定化重合体組成物。
【0077】
態様8:
前記少なくとも1種の重合体が、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリプロピレン及びポリエチレンよりなる群から選択される、態様1~5のいずれかに記載の安定化重合体組成物。
【0078】
態様9:
前記安定化重合体組成物が、前記有機ジスルフィドブレンド安定剤成分を0.001~5重量%含む、態様1~8のいずれかに記載の安定化重合体組成物。
【0079】
態様10:
前記安定化重合体組成物が、有機ジスルフィドブレンド安定剤成分以外の少なくとも1種の安定剤をさらに含む、態様1~9のいずれかに記載の安定化重合体組成物。
【0080】
態様11:
有機ポリスルフィドブレンド安定剤成分以外の少なくとも1種の安定剤が、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤及びUV安定剤よりなる群から選択される、態様10に記載の安定化重合体組成物。
【0081】
態様12:
前記酸化防止剤がフェノール化合物である、態様10に記載の安定化重合体組成物。
【0082】
本明細書において、明確かつ簡潔な明細書を書くことができるように実施形態を記載してきたが、実施形態は、本発明から逸脱することなく、様々に組み合わされ、又は分離され得ることが意図され、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載された好ましい特徴は、全て、本明細書に記載された本発明の全ての態様に適用可能であることが分かるであろう。
【0083】
いくつかの実施形態において、本発明は、組成物又はプロセスの基本的かつ新規な特性に重大な影響を与えない任意の構成要素又はプロセス工程を除外するものと解釈できる。さらに、いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書で規定されない任意の構成要素又はプロセス工程を除外するものと解釈できる。
【0084】
本発明を、特定の実施形態を参照して本明細書に例示しかつ説明してきたが、本発明は、示された詳細な説明に限定されるものではない。むしろ、特許請求の範囲及び均等の範囲内で、本発明から逸脱することなく、詳細な説明において様々な変更を加えることができる。
【実施例】
【0085】
実施例1~2
方法
熱安定性試験用の重合体及び添加剤のサンプルを、スクリュー速度30Hzの単軸混合押出器に2回通すことによって、188℃でコンパウンド(混合)して調製した。重合体に、特定のジスルフィド添加剤を様々なレベルでコンパウンドした。処理加工試験は、18.6Hzのスクリュー速度で、各重合体及び添加剤組成物を230℃で5回押出すことからなるものであった。処理加工中の各安定化パッケージの性能を、メルトフローインデックス(MFI、ASTM D1238に準拠して230℃でかつ2.16ポンド下で測定)及び黄色度指数(YI、ASTM E313に準拠)の測定によって評価した。
【0086】
10種類の安定剤配合物を押出成形による処理加工によって未安定化ポリプロピレン単独重合体で評価した。10種類の配合物は表1の配合物に相当する。
【0087】
【0088】
表1において、AO1010はフェノール系一次酸化防止剤Irganox(登録商標)1010(BASF社から入手可能なペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-クチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート))である。ステアリン酸Caは、残留触媒捕捉剤のステアリン酸カルシウムである。ジスルフィドは、ジ-t-ドデシルジスルフィド(DtDDS)である、9~15個の炭素原子のR部分を有するジスルフィドブレンド;ジ-n-ドデシルジスルフィド(DnDDS)である、12個の炭素原子のR部分を有する均質ポリジスルフィド;及びジ-n-オクタデシルジスルフィド(DnODS)である、18個の炭素原子のR部分を有する均質ポリジスルフィドである。このデータは、ポリジスルフィドブレンドDtDDが、均質ポリジスルフィドに対してメルトフローインデックスと黄色度指数が低下したことを示す。
【0089】
図1は、DtDDS、DnDDS及びDnODSについて、230℃で5回押出成形した後のメルトフローインデックス(MFI)を示す。DtDDS有機ジスルフィドブレンドは、均質有機ジスルフィドであるDnDDS及びDnODSよりもメルトフローインデックスを低下させる点で優れた性能を示した。DtDDS有機ジスルフィドブレンドは、さらに少ない添加量で、さらに低いメルトフローインデックスを示した。
【0090】
図2は、DtDDS、DnDDS及びDnODSについて、230℃で5回押出成形した後の黄色度指数(YI)を示す。DtDDS有機ジスルフィドブレンドは、均質有機ジスルフィドであるDnDDS及びDnODSよりも黄色度指数を低下させる点で優れた性能を示した。DtDDS有機ジスルフィドブレンドは、さらに少ない添加量で、さらに低い黄色度指数を示した。
【0091】
また、本発明に係る有機ジスルフィドブレンドを、次のものを含む現在市販されている重合体安定剤パッケージと比較して評価した:1,000ppmのAO1010(フェノール系一次酸化防止剤Irganox(登録商標)1010(BASF社から入手可能なペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-クチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート));500ppmのステアリン酸Ca;1,000ppmのIrgafos(登録商標)168(BASF社から入手可能なホスフィットプロセス安定剤トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフィット);及び1,000ppmのDSTDP(長期高温酸化防止剤ジステアリルチオジプロピオネート)。
【0092】
図3は、DtDDS及び市販の安定剤パッケージについて、230℃で5回押出成形した後のメルトフローインデックス(MFI)を示す。
【0093】
図4は、DtDDS及び市販の安定剤パッケージについて、230℃で5回押出成形した後の黄色度指数(YI)を示す。
【0094】
図から、本発明に係る不均質有機ジスルフィドブレンドは、対応する均質有機ジスルフィド及び市販の重合体安定剤パッケージよりも低いメルトフローインデックス及び黄色度指数を与えることが分かる。
【0095】
例3
方法
28%の酢酸ビニルを含有し、3g/10分(190℃で2.16ポンド)のメルトフローインデックスを特徴とする商用等級のEVA(エチレン-酢酸ビニル)共重合体を、表2に示す酸化防止剤と共に、スクリュー回転数50rpmの二軸混合器内において140℃でコンパウンドした。老化実験を160℃の空気対流式オーブン内で7日間実施した。
【0096】
【0097】
表2において、AO1010はフェノール系一次酸化防止剤のIrganox(登録商標)1010(BASF社から入手可能なペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-クチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート))である。AO1076は、オクタデシル3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメートである。ジスルフィドは、ジ-t-ドデシルジスルフィド(DtDDS)であり、9~15個の炭素原子のR部分を有するポリジスルフィドブレンドである。
【0098】
上記データは、ジスルフィドブレンドDtDDSを含有する配合物4及び5が、泡立ち及び変色が存在しないことから明らかなように、酸化に対する保護が向上したことを示す。配合物4(総添加量500ppm)のように低添加量のDtDDSは、配合物3(総添加量600ppm)のように高添加量の市販代替物の性能を上回ることができる。
図5の写真は、経時安定性への影響を示す。
【国際調査報告】