(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】脂肪由来細胞株の単離方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20240705BHJP
C12N 5/00 20060101ALI20240705BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20240705BHJP
A23J 1/04 20060101ALI20240705BHJP
A23L 33/115 20160101ALI20240705BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20240705BHJP
A61Q 90/00 20090101ALI20240705BHJP
【FI】
C12N5/0775
C12N5/00
C12N5/077
A23J1/04
A23L33/115
A61K8/98
A61Q90/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500671
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 SG2022050482
(87)【国際公開番号】W WO2023282855
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10202107584T
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,ジャン ミン ラモニー
(72)【発明者】
【氏名】ルウィン,キン オー アンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,イェ キ チェリル
(72)【発明者】
【氏名】杉井 重紀
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C083
【Fターム(参考)】
4B018LB06
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE05
4B018MD07
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4B065AA90X
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4B065CA50
4C083AA071
4C083CC01
4C083FF01
(57)【要約】
本技術は、動物から脂肪由来細胞株を単離する方法、動物から含脂肪細胞を単離する方法、及び単離されたその脂肪由来細胞株に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物から脂肪由来細胞株を単離する方法であって、
(a)動物から脂肪組織試料を得ること、
(b)(a)の前記脂肪組織試料から間質血管細胞を採取すること、
(c)血清の存在下で(b)の前記間質血管細胞を増殖させること、
(d)前記細胞の増殖に基づいて前記増殖した間質血管細胞のクローン選択を行うこと、及び
(e)(d)の前記選択の結果に基づいて1又は複数の脂肪由来細胞株を単離すること、を含む、方法。
【請求項2】
前記単離された細胞株が老化状態に入らないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(d)における前記増殖した間質血管細胞が約16~約30継代増殖し続ける場合、前記単離された脂肪由来細胞株は(e)において単離される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記間質血管細胞が、血清及びウシ胎児血清(FBS)の存在下で増殖する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記脂肪組織が、内臓脂肪組織、皮下脂肪組織、筋肉内脂肪組織、又は筋肉間脂肪組織である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
リノール酸-オレイン酸アルブミン(LAOA)、インスリン、血清、並びに所望により3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、デキサメタゾン、及びインドメタシンのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全てを含む、脂肪生成誘導組成物。
【請求項7】
塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)及びウシ胎児血清(FBS)をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
動物から含脂肪細胞を得る方法であって、
(a)前記動物の組織試料から脂肪由来細胞を単離すること、
(b)請求項6又は7に記載の脂肪生成誘導組成物の存在下で前記脂肪由来細胞を培養すること、及び
(c)(b)の前記細胞培養物から含脂肪細胞を得ること、を含む、方法。
【請求項9】
前記脂肪由来細胞が、ビタミン及びオメガ3脂肪酸の存在下でさらに培養される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)の前記脂肪由来細胞が、少なくとも約3日間、又は約6日間、又は約9日間培養される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
(b)において約3日間培養した後、前記血清、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、デキサメタゾン、及びインドメタシンが除去される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、バイオリアクター内で行われる、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記バイオリアクターがマイクロキャリアを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(a)が、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法に従って行われる、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法により得られる又は得ることが可能な脂肪由来細胞株であって、少なくとも16継代を経ても老化状態に入らないことを特徴とする、脂肪由来細胞株。
【請求項16】
前記細胞の倍加時間が約48時間未満である、請求項15に記載の細胞株。
【請求項17】
前記細胞が凍結保存されている、請求項15又は16に記載の細胞株。
【請求項18】
インビトロでの脂肪由来動物細胞の脂肪生成誘導用キットであって、
(a)請求項6又は7に記載の組成物、及び
(b)請求項15~17のいずれか一項に記載の脂肪由来細胞株又は請求項1~5のいずれか一項に記載の方法に従って得られる単離された脂肪由来細胞株、を含むキット。
【請求項19】
前記動物が家禽、家畜、又は魚類である、請求項1~5及び8~13のいずれか一項に記載の方法、請求項15~17のいずれか一項に記載の細胞株、又は請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記魚類が硬骨魚(硬骨魚綱)又は軟骨魚(軟骨魚綱)である、請求項19に記載の方法、細胞株、又はキット。
【請求項21】
前記魚類が下記群から選択される、請求項19に記載の方法、細胞株、又はキット:カイヤン(Pangasianodon hypophthalmus)、ニホンウナギ(Anguilla japonica)、ジェイドパーチ(Scortum barcoo)、及びバラマンディ(Lates calcarifer)。
【請求項22】
前記血清が、同一門の動物から得られる血清である、請求項1~5及び8~13のいずれか一項に記載の方法又は請求項18に記載のキット。
【請求項23】
前記血清が、同一種の動物から得られる血清である、請求項1~5及び8~13のいずれか一項に記載の方法又は請求項18に記載のキット。
【請求項24】
前記血清が、魚血清である、請求項1~5及び8~13のいずれか一項に記載の方法又は請求項18に記載のキット。
【請求項25】
請求項7~13のいずれか一項に記載の方法により製造される脂肪細胞。
【請求項26】
請求項15~17のいずれか一項に記載の細胞株又は請求項25に記載の脂肪細胞を含む食品。
【請求項27】
前記食品が養殖肉である、請求項26に記載の食品。
【請求項28】
請求項15~17のいずれか一項に記載の細胞株から得られる脂質組成物、又は請求項25に記載の脂肪細胞から単離された脂肪。
【請求項29】
前記組成物が液体又は固体である、請求項28に記載の脂質組成物。
【請求項30】
化粧品、食品添加物、又は栄養補助食品における、請求項28又は29に記載の脂質組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して細胞生物学の分野に関する。特に、本発明は、脂肪由来細胞株を単離し、さらなる使用のためにこれらの細胞株を培養する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界人口の増加により、食糧需要に大きな負担がかかっている。2050年までに100億人近くの人口を養うためには、5億7,000万超の農場からの現在の食料供給システムが陸域及び水域環境に強い圧力をかけている。特に、動物製品の環境への影響は野菜の影響をはるかに上回っており、世界の農地の80%超、食料生産による温室効果ガス排出量の56%超を占めている。
【0003】
細胞農業は、従来の家畜や植物の畜産及び収穫よりはむしろ、細胞培養技術に由来する農産物の製造を目的とした新興分野である。細胞農業は、環境負荷が少なく、食品の大規模生産において有望な可能性を有している。さらに、細胞農業には、動物の屠殺がないこと、病害防除が容易であること、生産プロセスにおける抗生物質及び汚染のない生産の可能性があることなどの利点がある。
【0004】
細胞ベースの肉は、培養肉(cultured meat)、クリーンミート(clean meat)、実験室で育てた肉(lab-grown meat)、又は養殖肉(cultivated meat)とも称され、動物の肉に似た食用の食品構造を作り出すために、細胞農業技術及び動物細胞株のバイオ製造技術を利用している。筋肉は肉製品の主な構成要素であるが、脂肪、特に筋肉内脂肪は肉のジューシーさ及び柔らかさに寄与し、したがって美味しさ及び満腹感を向上させる。米国農務省(USDA)によると、脂肪は効率的なエネルギー源としても機能し、炭水化物及びタンパク質のエネルギーが4.1kcal/gであるのに対し、食品では8.8kcal/gのエネルギーを提供する。
【0005】
研究及びマーケティングでの取り組みが急速に進歩し、様々なタンパク質の生産に関する細胞ベースの肉の開発が世間の注目を集めている。しかし、細胞ベースの肉製品の味、栄養価、及び食味を改善するために使用できる細胞ベースの脂肪を生産することはほとんど行われていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本開示は、(a)動物から脂肪組織試料を得ること、(b)(a)の前記脂肪組織試料から間質血管細胞を採取すること、(c)血清の存在下で(b)の前記間質血管細胞を増殖させること、(d)前記細胞の増殖に基づいて前記増殖した間質血管細胞のクローン選択を行うこと、及び(e)(d)の前記選択の結果に基づいて1又は複数の脂肪由来細胞株を単離すること、を含む、動物から脂肪由来細胞株を単離する方法に言及する。
【0007】
別の態様では、本開示は、リノール酸-オレイン酸アルブミン(LAOA)、インスリン、血清、並びに所望により3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、デキサメタゾン、及びインドメタシンのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全てを含む、脂肪生成誘導組成物に言及する。
【0008】
別の態様では、本開示は、動物から含脂肪細胞を得る方法であって、(a)前記動物の組織試料から脂肪由来細胞を単離すること、(b)本明細書に開示されるように脂肪生成
誘導組成物の存在下で前記脂肪由来細胞を培養すること、及び(c)(b)の細胞培養物から含脂肪細胞を得ること、を含む、方法に言及する。
【0009】
別の態様では、本開示は、少なくとも16継代を経ても老化状態に入らないことを特徴とする、本明細書に開示される方法によって得られる又は得ることが可能な脂肪由来細胞株に言及する。
【0010】
別の態様では、本開示は、(a)本明細書に開示される組成物、及び(b)本明細書に開示される脂肪由来細胞株又は本明細書に開示される方法に従って得られる単離された脂肪由来細胞株、を含む、インビトロでの脂肪由来動物細胞の脂肪生成誘導用キットに言及する。
【0011】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される方法によって生成される脂肪細胞に言及する。
【0012】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される細胞株又は本明細書に開示される脂肪細胞を含む食品に言及する。
【0013】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される細胞株から得られる脂質組成物又は本明細書に開示される脂肪細胞から単離された脂肪に言及する。
【0014】
別の態様では、本開示は、化粧品、食品添加物、又は栄養補助食品における本明細書に開示の脂質組成物の使用に言及する。
【0015】
本発明は、詳細な説明を参照し、非限定的な実施例及び添付の図面と併せて考慮することにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、培養肉生産の例示的な手順の概要を示した図である。動物から直接得られた組織を処理し、そこから安定した細胞株を生成する。続いて、前記細胞株を大規模に培養して、例えば、細胞の接着をサポートするマイクロキャリアを使用して大量に増殖させる。増殖後の大量の細胞は、筋細胞及び含脂肪細胞などの目的の細胞種に分化し、食用足場と結合されて培養肉が製造される。
【
図1B】
図1Bは、単離された魚類細胞から細胞ベースの肉を生産するための例示的なワークフローであり、養殖肉用含脂肪細胞の生産のための養殖肉の第一工程としての細胞株の生成を示した図である。
【
図1C】
図1Cは、生物学的、物理的、及び化学的特性並びに栄養学的事実に基づいて、脂肪細胞と脂肪分子とを比較した表を示した図である。
【
図2】
図2は、動物組織試料から生成された単離脂肪由来幹細胞を示す顕微鏡画像を示した図である。
図2Aに、本明細書に開示される方法を使用した細胞培養におけるカイヤン(Pangasianodon hypophthalmus)から単離された脂肪組織の増殖を示す。魚血清の存在は、新たに単離された脂肪由来細胞の生存に寄与するため、脂肪由来細胞の単離に必要となる。
図2Bに、本明細書に開示されるものと同様の手順を使用して、異なる動物、例えば、4種の魚類から、本明細書に開示される方法に従って首尾よく単離及び増殖された脂肪由来細胞の画像を示す。スケールバーは200μmを表す。
【
図3】
図3は、本明細書に開示される方法に基づくクローン選択の前後の脂肪由来細胞の形態を示す例示的な画像を示した図である。前記細胞は、クローン選択の前後で一貫して紡錘形を維持する。左パネルに4倍の倍率で細胞を示し(スケールバーは200μmを表す)、右パネルに10倍の倍率で細胞を示す(スケールバーは80μmを表す)。
【
図4】
図4は、様々な濃度の魚血清存在下での脂肪由来細胞の増殖速度を示した図である。本明細書に開示される方法に基づいて得られる単離された脂肪由来細胞は、血清存在下で培養する必要がある。細胞の増殖及び拡大をサポートするのに使用する血清の適切な量を決定するために、カイヤン細胞株を、20%FBS及び滴定濃度の魚血清を含む完全培地で増殖させた。細胞株の細胞増殖は、CellTiter-Blue(登録商標)Assayを使用して5日間測定した。データは各細胞株の最大蛍光強度のパーセンテージとして表され、4つの細胞株の平均±SEMとして示されている。アスタリスク(*)は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)とそれに続くテューキー事後検定(Tukey post-hoc test)を使用して、0%魚血清中で増殖させた細胞株と比較した場合のp<0.05を示す。
【
図5】
図5は、様々な動物の15%FBS及び0.1%血清の存在下での脂肪由来細胞の増殖速度を示した図である。本明細書に開示される方法に基づいて得られる単離された脂肪由来細胞を、パンガシウス(Pangasius)又はティラピア(Tilapia)の魚血清の存在下で培養した。魚血清が魚類細胞株の増殖を維持するのに有利であるかどうかを判断するために、
図5に、15%FBS及び0.1%の異なる動物血清を含む完全増殖培地中での4日間にわたる例示的な細胞株Ph9F-1xの増殖速度を示す。データは、3つの独立したウェルの平均±SEMとして示されている。アスタリスク(*)は、一元配置分散分析とそれに続くテューキー事後検定を使用したp<0.05を示す。
【
図6】
図6は、様々な濃度のFBS存在下での脂肪由来細胞の増殖速度を示した図である。本明細書に開示される方法に基づいて得られる単離された脂肪由来細胞は、FBS存在下で培養する必要がある。FBSの適切な量を決定するために、
図6Aに、カイヤンの脂肪由来細胞株を、0.1%魚血清及び滴定濃度のFBSを含む完全培地中で5日間かけて増殖させたことを示す。
図6Bは、滴定濃度のFBSを含む完全培地中で4日間増殖させたニホンウナギ(Anguilla japonica)脂肪由来細胞株を示した図である。細胞株の細胞増殖は、CellTiter-Blue(登録商標)Assayを使用して測定した。データは各細胞株の最大蛍光強度(FI)のパーセンテージとして表され、4つの細胞株の平均±SEMとして示されている。アスタリスク(*)は、一元配置分散分析とそれに続くテューキー事後検定を使用したp<0.05を示す。
【
図7】
図7は、経時的に得られたいくつかの脂肪組織由来細胞株の増殖を示した図である。例示的なカイヤン細胞株を、0.1%魚血清及び15%FBSを含む完全培地中で5日間かけて増殖させた。別の異なる種のニホンウナギ細胞株を、10%FBSを含む完全培地中で4日間かけて増殖させた。細胞株の増殖は、CellTiter-Blue(登録商標)Assayを使用して測定した。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。細胞株の増殖にはバリエーションがあり、細胞株はその増殖速度に応じて、それぞれ高速増殖細胞株と低速増殖細胞株とに分類される。
【
図8】
図8は、本発明で開示される単離された脂肪由来細胞株にマイコプラズマ汚染がないことを示した図である。細胞培養上清中のマイコプラズマの存在を、MycoALERT(商標)PLUSマイコプラズマ検出キットを使用して検出した。1.0未満の相対発光単位(RLU)は負とみなす。データは、2~4回の反復の平均として示されている。
【
図9】
図9は、単離された脂肪由来細胞株を培養するために通常利用可能な例示的な基本培地を示した図である。例示的なカイヤン脂肪由来細胞株は、リーヴォヴィッツ(Leibovitz)L15培地、MesenCult(商標)-ACF Plus培地、及びStemPro(商標)MSC SFM CTS培地と比較して、DMEM培地及びAdvanced(商標)DMEM培地で著しく速く増殖する。試験した細胞株は、0.1%魚血清を含む異なる培地で増殖させた。細胞株の細胞増殖は、CellTiter-Blue(登録商標)Assayを使用して5日間測定した。データは、4つの細胞株の平均±SEMとして示されている。アスタリスク(*)は、一元配置分散分析とそれに続くテューキー事後検定を使用したp<0.05を示す。
【
図10】
図10は、本明細書に開示される方法に従って単離された例示的な脂肪由来細胞株(カイヤン及びニホンウナギ)の平均集団倍加時間に対する経時的な細胞数を示した図である。高速増殖細胞株であるカイヤン由来のPh9F-1x及びニホンウナギ由来のAj1C-1xを72時間増殖させた。核はCyQUANT(商標)直接細胞増殖アッセイで染色し、24時間ごとに画像化した。2つの細胞株の倍加時間は、それぞれ約13.7時間及び約31.2時間と計算される。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。
【
図11】
図11は、21継代目、54継代目、及び113継代目など、高速増殖する魚脂肪由来細胞株Ph9F-1xの経時的な形態及び細胞数の増加を示した図である(スケールバーは200μmを表す)。本明細書に開示される単離された脂肪由来細胞株は、多数の継代後に増殖することができ、紡錘形の外観という同じ形態学的特徴を保持することができる。細胞は、継代前に約70%コンフルエントになるまで培養で増殖させた。CyQUANT(商標)直接細胞増殖アッセイで核を染色し、3日間、24時間ごとにイメージングすることにより、細胞数を測定した。データは、4つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。
【
図12】
図12は、DMEMの例示的な誘導培地及び100μMのリノール酸-オレイン酸アルブミン(LAOA)を含む脂肪生成誘導カクテルで処理した後、成熟脂肪細胞に分化する、例示的な高速増殖脂肪由来細胞株Ph9F-1xの脂肪生成誘導を示した図である。
図12Aに、Hoechst 33342で染色された細胞核及びAdipoRed(商標)で染色された中性脂質の画像を示す。画像は10倍の倍率で撮影されている。スケールバーは100μmを表す。
図12Bに、脂肪生成のパーセンテージ(中性脂質を発現する細胞の数によって決定される)を示す。
図12Cに、処理された細胞の総脂質蓄積(AdipoRed(商標)の総蛍光強度によって決定される)を示す。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。アスタリスク(*)は、一元配置分散分析とそれに続くテューキー事後検定を使用したp<0.05を示す。
【
図13】
図13は、脂肪生成誘導後に成熟脂肪細胞に分化する例示的なニホンウナギ細胞株及びジェイドパーチ(Scortum barcoo)細胞株の例示的な画像を示した図である。細胞株は、100μMのLAOAを含む脂肪生成誘導カクテルを含む例示的なDMEMで処理されている。細胞核はHoechst 33342で染色し、中性脂質はAdipoRed(商標)で染色した。画像は10倍の倍率で撮影されている。スケールバーは100μmを表す。
【
図14】
図14は、成熟脂肪細胞に分化する脂肪由来細胞株Ph9F-1xの別の例を示した図である。
図14Aに、FBS含有DMEMベースの脂肪生成誘導カクテル及びFBS不含Essential 6(商標)ベースの脂肪生成誘導カクテルを使用する例示的な脂肪生成プロトコルを示す概略図を示す。本明細書で使用される例示的なDMEMベースの脂肪生成誘導カクテルは、高グルコースDMEM、FBS、魚血清、抗生物質、インスリン、デキサメタゾン、IBMX、インドメタシン、及びLAOAを含む。本明細書で使用される例示的なEssential 6(商標)ベースの脂肪生成誘導カクテルは、Essential 6(商標)、魚血清、デキサメタゾン、IBMX、インドメタシン、及びLAOAを含む。
図14Bに、
図14Aに示される誘導培地を使用した誘導後の含脂肪細胞の例示的な画像を示す。細胞核はHoechst 33342で染色し、中性脂質はAdipoRed(商標)で染色した。画像は10倍の倍率で撮影されている。スケールバーは100μmを表す。
図14Cに、中性脂質を発現する細胞の数によって計算された脂肪生成のパーセンテージ及び総脂質蓄積(AdipoRed(商標)の総蛍光強度によって決定される)を示す。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。アスタリスク(*)は、スチューデント(Student)のt検定を使用したp<0.05を示す。
【
図15】
図15は、単離された脂肪由来細胞の脂肪生成誘導後の含脂肪細胞の収量及び含脂肪細胞における脂質蓄積レベルを示した図である。例示的な細胞株Ph9F-1xを、Essential 6(商標)培地、魚血清、脂肪生成誘導カクテル、及びLAOAを含む開示された例示的な誘導培地の1つで9日間かけて処理した。誘導期間中の異なる日に、細胞核はHoechst 33342で染色し、中性脂質はAdipoRed(商標)で染色した。画像は10倍の倍率で撮影されている。スケールバーは100μmを表す。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。アスタリスク(*)及びハッシュ(#)は、それぞれ、一元配置分散分析とそれに続くテューキー事後検定を使用して6日目及び9日目と比較した場合のp<0.05を示す。
【
図16】
図16は、脂肪生成誘導に使用される成分の様々な組み合わせを示した図である。Essential 6(商標)、魚血清、LAOA、IBMX、及びデキサメタゾンで6日間処理した後の魚脂肪由来細胞株では、最も高いレベルの脂質蓄積が観察された。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。アスタリスク(*)は、一元配置分散分析とそれに続くテューキー事後検定を使用した、IBMX、デキサメタゾン、インドメタシン、及びLAOAによる処理と比較した場合のp<0.05を示す。
【
図17】
図17は、例示的な脂肪由来細胞株において、異なる濃度のLAOAの処理により脂肪生成を受ける細胞のパーセンテージを示した図である。本明細書に開示される脂肪生成誘導カクテルは、LAOAを必要とする。脂肪生成誘導に適したLAOAの量を滴定するために、例示的な細胞株Ph9F-1xを、Essential 6(商標)培地、魚血清、IBMX、デキサメタゾン、及び異なる濃度のLAOAで6日間かけて処理した。細胞核はHoechst 33342で染色し、中性脂質はAdipoRed(商標)で染色した。画像は10倍の倍率で撮影されている。スケールバーは100μmを表す。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。アスタリスク(*)は、一元配置分散分析とそれに続くテューキー事後検定を使用したp<0.05を示す。
【
図18】
図18は、脂肪生成の異なる時点、例えば、脂肪生成の0日目~3日目、3日目~6日目、又は0日目~6日目におけるLAOAの添加を示し、どの期間でLAOAが脂肪生成誘導に必要であるかを検討した図である。例示的な細胞株Ph9F-1xを、Essential 6(商標)培地、魚血清、IBMX、及びデキサメタゾンの存在下で、6日間にわたって、(A)0日目~3日目、(B)3日目~6日目、又は(C)0日目~6日目に100μMのLAOAで処理した。細胞核はHoechst 33342で染色し、中性脂質はAdipoRed(商標)で染色した。画像は10倍の倍率で撮影されている。スケールバーは100μmを表す。
図18D及び
図18Eに、中性脂質を発現する細胞の数によって決定された脂肪生成のパーセンテージ及びAdipoRed(商標)の総蛍光強度によって決定された総脂質蓄積をそれぞれ示す。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。アスタリスク(*)は、一元配置分散分析とそれに続くテューキー事後検定を使用したp<0.05を示す。
【
図19】
図19は、LAOA、オレイン酸アルブミン(OAA)、又はリノール酸アルブミン(LAA)をそれぞれ使用した脂肪由来細胞株における脂肪生成率を示した図である。例示的な細胞株Ph9F-1xを、Essential 6(商標)培地、魚血清、IBMX、及びデキサメタゾンの存在下、100μMのLAOA、OAA、又はLAAで6日間かけて処理した。細胞核はHoechst 33342で染色し、中性脂質はAdipoRed(商標)で染色した。画像は10倍の倍率で撮影されている。スケールバーは100μmを表す。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。アスタリスク(*)は、一元配置分散分析とそれに続くテューキー事後検定を使用したp<0.05を示す。
【
図20】
図20は、脂肪生成誘導の3日目及び/又は6日目における脂肪生成並びに脂質合成に関与する遺伝子の発現プロファイルの変化を要約した図である。例示的な細胞株Ph9F-1xを、Essential 6(商標)培地、魚血清、LAOA、IBMX、及びデキサメタゾンで6日間かけて処理した。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。アスタリスク(*)は、一元配置分散分析とそれに続くテューキー事後検定を使用したp<0.05を示す。
【
図21】
図21は、脂肪生成の異なる時点での脂肪生成誘導カクテルにおける血清の使用を説明した図である。本明細書に開示される方法に記載されるように、脂肪由来細胞は血清の存在下で培養される。導入期間全体にわたって血清が必要かどうかが検討される。魚由来の例示的な細胞株Ph9F-1xを、Essential 6(商標)培地、LAOA、IBMX、及びデキサメタゾンの存在下で、(A)魚血清なし、(B)魚血清あり(0日目~3日目)、又は(C)魚血清あり(0日目~6日目)で6日間かけて処理した。細胞核はHoechst 33342で染色し、中性脂質はAdipoRed(商標)で染色した。画像は10倍の倍率で撮影されている。スケールバーは100μmを表す。
図21Dに、中性脂質を発現する細胞の数によって決定される脂肪生成のパーセンテージを示す。
図21Eに、AdipoRed(商標)の総蛍光強度によって決定される、処理細胞における総脂質蓄積を示す。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。アスタリスク(*)は、一元配置分散分析とそれに続くテューキー事後検定を使用したp<0.05を示す。
【
図22】
図22は、脂肪由来細胞株の脂肪生成における様々なビタミンの添加の効果を示した図である。Ph9F-1xの例示的な細胞株を、Essential 6(商標)培地、魚血清、LAOA、IBMX、及びデキサメタゾンの存在下で、100μMの酢酸α-トコフェロール、D-パントテン酸、ビタミンD3、又はビオチンで6日間かけて処理した。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。
【
図23】
図23は、脂肪生成分化中の異なる時点における、別の例示的な脂肪由来細胞株Aj1C-1xにおける脂質強度のレベルを示した図である。ニホンウナギ細胞株をEssential 6(商標)培地、脂肪生成誘導カクテル、及びLAOAで5日間かけて処理した。中性脂質をAdipoRed(商標)で染色し、蛍光強度を毎日測定した。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。アスタリスク(*)及びハッシュ(#)は、一元配置分散分析とそれに続くテューキー事後検定を使用したp<0.05を示す。
【
図24】
図24は、脂肪生成誘導におけるLAOAの異なる濃度並びに別の例示的な細胞株であるニホンウナギ(Anguilla japonica)由来のAj1C-1xにおける脂肪生成の効率及び総脂質強度におけるそれらの効果を示した図である。細胞株をEssential 6(商標)培地、脂肪生成誘導カクテル、及びLAOAで3日間かけて処理した。細胞核はHoechst 33342で染色し、中性脂質はAdipoRed(商標)で染色した。画像は10倍の倍率で撮影されている。スケールバーは100μmを表す。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。アスタリスク(*)は、一元配置分散分析とそれに続くテューキー事後検定を使用したp<0.05を示す。
【
図25】
図25は、脂肪由来細胞株の脂肪生成の効率に対するDHA及び/又はEPAの添加の効果を説明した図である。例示的な細胞株Ph9F-1xを、脂肪生成の最終3日間、Essential 6(商標)培地、魚血清、及びLAOAの存在下で、異なる濃度の(A)DHA及び(B)EPA又は(C)50μMのDHAと50μMのEPAとの組み合わせで処理した。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。
【
図26】
図26は、DHA及びEPA含有脂肪生成誘導カクテルによる脂肪生成誘導の3日目及び6日目における、脂肪生成遺伝子、例えば、PPARγ及びC/EBPβの上方制御を示した図である。例示的な細胞株Ph9F-1xを、Essential 6(商標)培地、魚血清、LAOA、IBMX、デキサメタゾン、DHA、及びEPAで6日間かけて処理した。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。アスタリスク(*)は、スチューデントのt検定を使用したp<0.05を示す。
【
図27】
図27は、29及び104という高い継代数で脂肪生成能を保持する例示的な細胞株Ph9F-1xの画像を示した図である。29継代目及び104継代目のPh9F-1xを、Essential 6(商標)培地、脂肪生成誘導カクテル、及びLAOAで6日間かけて処理した。細胞核はHoechst 33342で染色し、中性脂質はAdipoRed(商標)で染色した。画像は10倍の倍率で撮影されている。スケールバーは100μmを表す。データは、3つの独立したウェルの平均±標準偏差として示されている。アスタリスク(*)は、一元配置分散分析とそれに続くテューキー事後検定を使用したp<0.05を示す。
【
図28】
図28は、3次元撹拌スピナーフラスコ内でCytodex(登録商標)1マイクロキャリアを使用して単離細胞株Ph9F-1xを培養する例を示した図である。例示的な細胞株Ph9F-1xは、マイクロキャリア内で接着、増殖、及び分化した。
図28Aは、Cytodex(登録商標)1上で3日間増殖させ、TrypLE(商標)Expressで30分間処理したPh9F-1x細胞の生存率及び細胞数を示した図である。細胞をトリパンブルーで染色し、LUNA(商標)自動セルカウンターを使用して計数した。
図28Bは、マイクロキャリアに付着した細胞核をHoechst 33342で染色し、Nikon A1R+si共焦点顕微鏡で撮像した画像を示した図である。
図28Cは、3次元培養系において6日間かけてEssential 6(商標)培地、脂肪生成誘導カクテル、及びLAOAで処理した培養細胞の脂肪生成を示した図である。細胞核はHoechst 33342で染色し、中性脂質はAdipoRed(商標)で染色した。画像はN-STORM/TIRF顕微鏡を使用して撮影されている。スケールバーは100μmを表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
通常、「脂肪」という用語が使用される場合、考察の文脈に応じて、「脂肪組織」又は「脂肪分子」のいずれかを指すものとして理解され得る。本明細書において使用される場合、「脂肪」という用語は、主に脂肪細胞からなる結合組織である「脂肪性(fatty)組織」又は「脂肪(adipose)組織」を指す。その組織は主に皮膚の下(皮下脂肪)に見られるが、筋肉内又は筋肉間の沈着物(筋肉間脂肪及び筋肉内脂肪)、内臓及びそれらの膜のひだ(腸間膜脂肪などの内臓脂肪)、並びに骨髄にも見られる。脂肪組織に蓄えられる脂肪は、食事の脂肪に由来するか、動物の体内で生成される。
【0018】
本明細書で使用する場合、「アディポサイト(adipocyte)」又は「リポサイト(lipocyte)」としても知られる用語「脂肪細胞」は、過剰なエネルギーをトリグリセリド液滴の形態で蓄える脂肪組織の特殊な細胞を指す。本明細書で使用する「トリグリセリド」という用語は、単一分子のグリセロール及び3分子の脂肪酸から構成されるエネルギー豊富な化合物を指す。トリグリセリドは動植物油脂の主成分として機能する。動物性トリグリセリドは重要なエネルギー源であり、脂肪組織、血流、及び心筋に存在する。
【0019】
本明細書で使用する「脂肪酸」という用語は、動物性若しくは植物性の脂肪、油、又はワックスに由来するか、エステル化された形態で含まれる脂肪族モノカルボン酸を指す。天然脂肪酸は通常4~28個の炭素の鎖(通常は分岐がなく偶数)を有し、飽和又は不飽和であってもよい。
【0020】
本明細書で使用される場合、「油」という用語は、室温で液体であるトリグリセリドを指す。脂肪と油との主な違いは、脂肪は室温で固体の形態をとる大量の飽和脂肪酸で構成されているのに対し、油は室温で液体の形態をとる主に不飽和脂肪酸で構成されていることである。短鎖脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸の割合が増加すると、油脂の融点が低下する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「間質血管画分」という用語は、脂肪組織から得られる不均一な画分を指す。これは、脂肪間質細胞、含脂肪細胞前駆細胞、線維芽細胞、免疫細胞
、上皮細胞、内皮細胞、並びに循環系及び神経系に関連する他の細胞種を含むいくつかの種類の細胞を含む。脂肪組織を破壊してこれらの細胞を抽出し、これらの細胞の採取を容易にする様々な技術がある。「間質血管細胞」という用語は、間質血管画分に含まれる異種細胞を総称する。
【0022】
本明細書で使用される場合、培養細胞の「増殖速度」という用語は、特定の期間内に細胞集団の数が増加する速度を広く指す。本明細書に記載されるように、例えば、細胞の増殖速度は、集団の数が2倍になるのにかかる時間である倍加時間によって定量化することができる。
【0023】
本明細書に開示されるように、「脂質」という用語は、非極性溶媒、例えば炭化水素に可溶な巨大生体分子を指す。脂質には、脂肪酸、ワックス、ステロール、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、及びKなど)、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、及びリン脂質が含まれる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「高速増殖(fast-growing)細胞株」という用語は、同じ種の全ての単離細胞株の増殖速度の中央値よりも高い増殖速度を有する細胞株を指す。本明細書で使用される場合、「低速増殖(slow-growing)細胞株」という用語は、同じ種の全ての単離細胞株の増殖速度の中央値よりも低い増殖速度を有する細胞株を指す。例えば、
図7に示すように、カイヤン及びニホンウナギから単離された、いくつかの細胞株は時間の経過とともに細胞数の急激な増加を示すが、他の細胞株はより平坦な増殖曲線を示す。
【0025】
本明細書で使用される「養殖肉」又は「培養肉」という用語は、タンパク質及び動物性脂肪の食物源として動物を捕獲又は飼育する必要がなく、インビトロで動物細胞を養殖又は培養することによって生産される動物肉(魚介類及び内臓肉を含む)を指す。養殖肉又は培養肉は、典型的には、食用又は生分解性足場上に播種された1又は複数の種類の培養細胞(例えば、筋肉細胞)と、添加剤、例えば、追加の栄養素又は香味料とを含む。
【0026】
本明細書で使用される場合、「食用足場」又は「生分解性足場」という用語は、培養肉製品又は養殖肉製品の製造に使用される三次元メッシュを指す。「食用足場」又は「生分解性足場」は、インビトロで細胞に構造的支持を提供するだけでなく、機械的及び生化学的合図(cue)も提供する。通常使用される足場成分としては、コラーゲン及びゼラチンなどが挙げられる。
【0027】
発明の詳細な説明
増加する人口に食糧を供給するという環境圧力の増大により、細胞培養技術から農産物、特に肉を生産することを目的とした新興分野である細胞農業による解決策が求められている。培養肉生産の全体的な手順を
図1Aに示す。典型的には、細胞を食用動物種の生検から単離し、指数関数的に増殖し、筋芽細胞及び含脂肪細胞などの成熟細胞型に分化する能力を有する幹細胞株/前駆細胞株を派生させる。大規模培養で細胞が増殖した後、幹細胞/前駆細胞が刺激されて、筋肉細胞などの成熟細胞型になる。これらの細胞は、食用足場及び他の食品グレードの材料と組み合わされて、最終的に消費される肉を構成し得る。
【0028】
肉製品の主な構成要素は筋肉であるが、脂肪は肉の美味しさ及び栄養価に貢献する。栄養素の観点では、脂肪はトリグリセリド、リン脂質、ステロール、及び遊離脂肪酸などの脂質分子を指すことが多い。対照的に、本開示で検討される肉の固体成分に言及する場合、脂肪は典型的には脂肪性(脂肪)細胞又は組織を意味する。食品成分に関する脂肪細胞(含脂肪細胞)と脂肪分子(脂質)との特性の違いを
図1Bにまとめる。食品関連種に由来する含脂肪細胞及びその幹細胞/前駆細胞は、動物の肉製品における脂質の主な部位で
ある。
【0029】
タンパク質を標的とした細胞ベースの肉の開発における研究及びマーケティングの取り組みは急速に進歩しているにもかかわらず、細胞ベースの脂肪を生産することについてはほとんど成し遂げられていない。大規模製造に充分な量の培養肉脂肪を得るには、安定して急速増殖する細胞株が必要である。しかしながら、これまでのところ、動物脂肪由来の細胞株の単離及び培養の進歩は限られている。本開示は、単離された脂肪由来細胞に関連する方法、単離された細胞株、及びその生成物を提供する。
【0030】
本明細書に開示されるように、動物から脂肪由来細胞株を単離する方法が記載される。一例では、本開示は、動物から脂肪組織試料を得ることを含む、動物から脂肪由来細胞株を単離する方法を記載する。本開示で得られる脂肪組織試料は、脂肪組織、内臓脂肪、皮下脂肪、骨髄脂肪、腸間膜脂肪、又は筋肉に含まれる筋肉内/筋間脂肪であり得るが、これらに限定されない。
【0031】
別の例では、本開示は、動物から脂肪組織試料を得ること、及び得られた前記脂肪組織試料から間質血管細胞を採取すること、を含む、動物から脂肪由来細胞株を単離する方法を記載する。当業者には理解されるように、組織試料から間質血管細胞を採取する方法は当技術分野で公知である。例えば、異種タイプの間質血管細胞を含む間質血管画分は、酵素消化によって組織試料から単離することができる。脂肪組織試料は、切断又はミンチ化することによって断片化し、コラゲナーゼIV型、又はコラゲナーゼIV型とディスパーゼIIとを組み合わせて消化することができる。あるいは、異種タイプの間質血管細胞を含む間質血管画分は、外植片培養によって組織試料から単離することができる。脂肪組織試料は、切断又はミンチ化することによって断片化し、間質血管細胞が組織試料の外に移動して増殖するまで培養することができる。
【0032】
別の例では、本開示は、動物から脂肪組織試料を得ること、得られた前記脂肪組織試料から間質血管細胞を採取すること、及び血清の存在下で前記間質血管細胞を増殖させること、を含む、動物から脂肪由来細胞株を単離する方法を記載する。本明細書で使用される「血清」という用語は、凝固には関与しない血液の液体及び溶質成分を指す。これは、凝固因子(フィブリノーゲン及びプロトロンビンなど)を含まない血漿、又は全ての細胞及び凝固因子が除去された血液として定義される場合がある。血清は、当技術分野で公知の方法、例えば、血球から分離するための遠心分離によって得ることができる。血清の量は、0.1%~2%、0.2%~1.8%、0.4%~1.6%、0.6%~1.2%、又は0.8%~1%である。いくつかのさらなる例では、血清は魚血清である。同じ宿主からの血清(すなわち、ニワトリ細胞の場合はニワトリ血清)の使用は、脂肪細胞の単離には通常使用されない。これまでの研究のほとんどは、広く入手可能で手頃な価格であるため、ウシ血清のみを使用した。本発明者らは、自家血清又は同一門の動物由来の血清(すなわち、魚血清、鳥血清、ブタ血清)が間質血管画分(SVF)の単離において重要な役割を果たすことを見出した。いくつかの例では、間質血管細胞は、血清含有増殖培地の存在下で増殖される。いくつかの例では、間質血管細胞は、血清を含む完全増殖培地の存在下で増殖される。さらなる例では、血清含有完全増殖培地は基本培地を含む。基本培地は動物細胞培養に適した任意の培地であり得ることが当業者には理解され、イーグル最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、イスコフ(Iscove)基本DMEM(IMDM)、ロズウェルパーク記念研究所培地(RPMI)、199培地、109培地、ハム(Ham)F-10培地、ハム(Ham)F-12培地、マッコイ(McCoy)5A培地、リーヴォヴィッツ(Leibovitz)L-15培地、Advanced(商標)DMEM、MesenCult(商標)-ACF Plus培地、及びStemPro(商標)MSC SFM CTS培地が挙げられるが、これらに限定されない。この組成物が、細胞培養において通常使用される他のサプリメント、例えば、
アミノ酸、ビタミン、無機塩、グルコース、増殖因子、ホルモン、及び付着因子と組み合わせて使用できることは、当業者には理解される。また、本明細書で開示される培地は、細胞増殖に適切なpH及び浸透圧を維持することも理解される。当業者であれば、細胞培養の温度、湿度、及びガス雰囲気は細胞の種類によるものであり、規定どおりに最適化できることが容易に理解される。例えば、細胞は約20~37℃で約1~1.5時間培養される。
【0033】
いくつかの例では、間質血管細胞は酵素消化によって採取される。例えば、間質血管細胞は、コラゲナーゼ又はコラゲナーゼ及びディスパーゼによって単離することができる。一例では、間質血管細胞は、1%BSA及び50mg/mLグルコースを含むハンクス(Hank’s)緩衝塩溶液(HBSS)中の1mg/mL I型コラゲナーゼ(Worthington社)を使用して単離される。別の例では、間質血管細胞は、2.5mMの塩化カルシウムを含むHBSSに含まれる1mg/mLのIV型コラゲナーゼを使用して単離される。さらに別の例では、間質血管細胞は、2.5mM塩化カルシウムを含むHBSS中で0.5mg/mLのIV型コラゲナーゼ及び2.4mg/mLのディスパーゼIIを使用して単離される。他の例では、間質血管細胞は外植片培養によって採取される。例えば、間質血管細胞は、断片化された組織試料を増殖培地中で培養し、組織試料から移動する細胞を採取することによって単離することができる。さらなる例では、間質血管細胞は、組織試料の酵素消化又は外植片培養後の濾過によって採取される。いくつかの例では、間質血管細胞はナイロンフィルターで濾過される。
【0034】
いくつかの例では、採取された間質血管細胞は、ウシ胎児血清(FBS)の存在下で増殖される。FBSの濃度は、約1%~20%、約2%~15%、約10%~15%、約2%、約10%、又は約15%である。いくつかの例では、間質血管細胞は、血清の存在下で増殖される。いくつかの例では、間質血管細胞は、細胞が約70%コンフルエンスに達するまで増殖される。いくつかの例では、間質血管細胞は、1~30継代、6~12継代、8~11継代、又は9~10継代後まで増殖される。いくつかの例では、間質血管細胞は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の存在下で増殖される。いくつかの例では、間質血管細胞は、ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の存在下で増殖される。いくつかの例では、間質血管細胞は、魚類の塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の存在下で増殖される。いくつかの例では、間質血管細胞は、鳥類の塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の存在下で増殖される。さらなる例では、ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の濃度は、約5~100ng/mL、約10~80ng/mL、約20~60ng/mL、又は約30~40ng/mLである。
【0035】
別の例では、本開示は、動物から脂肪組織試料を得ること、得られた前記脂肪組織試料から間質血管細胞を採取すること、採取した前記間質血管細胞を増殖させること、各ウェルの増殖速度に基づいて前記増殖した間質血管細胞のクローン選択を行うこと、を含む、動物から脂肪由来細胞株を単離する方法を記載する。いくつかの例では、増殖した間質血管細胞は、コーティングされたマルチウェルプレートで選別される。マルチウェルプレートのコーティングは、プレートへの細胞の付着を容易にするためのものであることは、当業者には理解される。コーティングは、ポリアミノ酸(例えば、ポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、ポリ-オルニチン)、ゼラチン、コラーゲンI、コラーゲンIV、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、又はオステオポンチンであり得るが、これらに限定されない。さらに、マルチウェルプレートは、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、48ウェルプレート、又は96ウェルプレートであってもよいが、これらに限定されないことも当業者には理解される。さらなる例では、増殖した間質血管細胞を、約10細胞/ウェルの細胞密度でコーティングされたマルチウェルプレートに選別する。いくつかのさらなる例では、各ウェルに播種される細胞密度は、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、又は約15細胞/ウェ
ルであり得る。さらなる例では、マルチウェルプレート内の選別された細胞は、増殖培地の存在下で約10日間増殖される。いくつかの例では、選別された細胞は、完全増殖培地の存在下で増殖される。さらなる例では、完全増殖培地は基本培地を含む。基本培地は動物細胞培養に適した任意の培地であり得ることが当業者には理解され、イーグル最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、イスコフ(Iscove)基本DMEM(IMDM)、ロズウェルパーク記念研究所培地(RPMI)、199培地、109培地、ハム(Ham)F-10培地、ハム(Ham)F-12培地、マッコイ(McCoy)5A培地、リーヴォヴィッツ(Leibovitz)L-15培地、Advanced(商標)DMEM、MesenCult(商標)-ACF Plus培地、及びStemPro(商標)MSC SFM CTS培地が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、選別された細胞はウシ胎児血清(FBS)の存在下で増殖される。FBSの濃度は、約1%~20%、約2%~15%、約10%~15%、約2%、約10%、又は約15%であり得る。いくつかの例では、選別された細胞は血清の存在下で増殖される。さらに、血清の濃度は、約0.1%~2%、約0.2%~1.8%、約0.4%~1.6%、約0.6%~1.2%、又は約0.8%~1%であることが当業者には理解される。いくつかの例では、血清は同一門の動物から得られる。いくつかの例では、血清は同一種から得られる。いくつかのさらなる例では、血清は魚血清である。いくつかの他の例では、血清は鳥血清又はブタ血清である。いくつかの例では、マルチウェルプレート内の選別された細胞は、増殖培地の存在下で約15日間増殖され、約70%コンフルエンスに達した細胞は、継代によりさらに増殖される。技術常識及び当業者によって理解されるように、培養物中の細胞の増殖が約60%コンフルエンス、約65%コンフルエンス、約70%コンフルエンス、約75%コンフルエンス、約80%コンフルエンス、又は約85%コンフルエンスに達した時点で、培養細胞は再度継代可能である。例えば、以下の表1に示すように、約15日後、1120個のウェルのうち41個が少なくとも70%コンフルエンスに達した。
【0036】
【0037】
別の例では、本開示は、動物から脂肪組織試料を得ること、得られた前記脂肪組織試料から間質血管細胞を採取すること、血清の存在下で前記間質血管細胞を増殖させること、各ウェルの増殖に基づいて前記増殖した間質血管細胞のクローン選択を行うこと、及び前
記選択の結果に基づいて1又は複数の脂肪由来細胞株を単離すること、を含む、動物から脂肪由来細胞株を単離する方法を記載する。いくつかの例では、単離された細胞株は老化状態に入らない。いくつかの例では、増殖中の16継代目、17継代目、18継代目、19継代目、20継代目、21継代目、22継代目、23継代目、24継代目、25継代目、26継代目、27継代目、28継代目、29継代目、又は30継代目以前に、単離された細胞株は老化状態に入らない。いくつかの例では、増殖中に16継代目、17継代目、18継代目、19継代目、20継代目、21継代目、22継代目、23継代目、24継代目、25継代目、26継代目、27継代目、28継代目、29継代目、又は30継代目に達した場合、1又は複数の脂肪由来細胞株が単離される。いくつかの例では、1又は複数の単離された脂肪由来細胞株は、約20継代培養後に老化状態に入らない。いくつかの例では、1又は複数の単離された脂肪由来細胞株は、約16~30継代培養後に老化状態に入らない。1又は複数のウェルから単離された脂肪由来細胞は、安定な細胞株とみなされる。
図3に記載されているように、顕微鏡画像は、例示的な動物種であるカイヤン及びニホンウナギのクローン選択前後の脂肪由来細胞の形態を示している。マルチウェルプレート内の細胞は、クローン選択の前後で一貫した紡錘形形態を示した。
【0038】
いくつかの例では、単離された1又は複数複数の脂肪由来細胞株は、血清の存在下で増殖培地の存在下で培養される。血清の濃度は、約0.1%~2%、約0.2%~1.8%、約0.4%~1.6%、約0.6%~1.2%、又は約0.8%~1%であり得ることが当業者には理解される。
図2A及び
図4に示すように、例えば、単離された細胞株は、様々な濃度、例えば、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約1%、約1.5%、及び約2%の血清の存在下で増殖を示す。いくつかのさらなる例では、血清は魚血清である。いくつかの例では、単離された細胞株は、血清含有完全増殖培地の存在下で培養される。さらなる例では、完全増殖培地は基本培地を含む。基本培地は動物細胞培養に適した任意の培地であり得ることが当業者には理解され、イーグル最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、イスコフ(Iscove)基本DMEM(IMDM)、ロズウェルパーク記念研究所培地(RPMI)、199培地、109培地、ハム(Ham)F-10培地、ハム(Ham)F-12培地、マッコイ(McCoy)5A培地、リーヴォヴィッツ(Leibovitz)L-15培地、Advanced(商標)DMEM、MesenCult(商標)-ACF Plus培地、及びStemPro(商標)MSC SFM CTS培地が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、単離された細胞株はウシ胎児血清(FBS)の存在下で培養される。FBSの濃度は、約1%~20%、約2%~15%、約10%~15%、約2%、約10%、又は約15%であり得ることが当業者には理解される。例えば、
図6に示すように、単離された細胞は、様々な濃度のFBSの存在下で培養される。他の例では、単離された1又は複数の脂肪由来細胞株は凍結保存される。
【0039】
いくつかの例では、本開示は、(a)動物から脂肪組織試料を得ること、(b)(a)の前記脂肪組織試料から間質血管細胞を採取すること、(c)血清の存在下で(b)の前記間質血管細胞を増殖させること、(d)各ウェルの増殖速度に基づいて前記増殖した間質血管細胞のクローン選択を行うこと、及び(e)(d)の前記選択の結果に基づいて1又は複数の脂肪由来細胞株を単離すること、を含む、動物から脂肪由来細胞株を単離する方法を記載する。いくつかの例では、前記組織試料は動物から得られる。さらなる例では、前記動物は家禽、家畜、又は魚類である。例えば、前記動物は、雛鳥、アヒル、ガチョウ、七面鳥、ハト、又はウズラである。いくつかの例では、前記動物はウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタである。他の例では、前記動物には硬骨魚(硬骨魚綱)又は軟骨魚(軟骨魚綱)が含まれるが、これらに限定されない。別の例では、前記動物は、カイヤン、ニホンウナギ、ジェイドパーチ、及びバラマンディである。
【0040】
本明細書に開示されるように、脂肪生成誘導組成物が記載される。一例では、本開示は
、リノール酸-オレイン酸アルブミン(LAOA)、インスリン、及び血清を含む脂肪生成誘導組成物を記載する。一例では、本開示は、リノール酸-オレイン酸アルブミン(LAOA)、インスリン、血清、並びに3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、デキサメタゾン、及びインドメタシンのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全てを含む、脂肪生成誘導組成物を記載する。したがって、いくつかの例では、脂肪生成誘導組成物は、リノール酸-オレイン酸アルブミン(LAOA)、インスリン、血清、及び3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)を含む。いくつかの例では、脂肪生成誘導組成物は、リノール酸-オレイン酸アルブミン(LAOA)、インスリン、血清、及びデキサメタゾンを含む。いくつかの例では、脂肪生成誘導組成物は、リノール酸-オレイン酸アルブミン(LAOA)、インスリン、血清、及びインドメタシンを含む。当業者に理解されるように、本明細書で使用されるLAOAという用語は、リノール酸とオレイン酸との混合物、及びアルブミンを指す。いくつかの例では、脂肪生成誘導組成物は、少なくとも10μM、又は少なくとも20μM、又は少なくとも30μM、又は少なくとも40μM、又は少なくとも50μMの濃度のLAOAを含む。いくつかの例では、脂肪生成誘導組成物は、約50~100μM、約100~150μM、又は約150~200μMの濃度のLAOAを含む。例えば、
図17及び
図24に示すように、LAOAの濃度は、約50μM、又は約100μM、又は約150μM、又は約200μM、好ましくは約100μMの濃度であり得る。
【0041】
いくつかの例では、脂肪生成誘導組成物は、リノール酸-オレイン酸アルブミン(LAOA)、インスリン、血清、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、及びデキサメタゾンを含む。いくつかの例では、脂肪生成誘導組成物は、リノール酸-オレイン酸アルブミン(LAOA)、インスリン、血清、デキサメタゾン、及びインドメタシンを含む。いくつかの例では、脂肪生成誘導組成物は、リノール酸-オレイン酸アルブミン(LAOA)、インスリン、血清、インドメタシン、及び3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)を含む。いくつかのさらなる例では、脂肪生成誘導組成物は、リノール酸-オレイン酸アルブミン(LAOA)、インスリン、血清、インドメタシン、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、及びデキサメタゾンを含む。例えば、
図16に示すように、本明細書で開示される脂肪生成誘導組成物は、単離された例示的な脂肪由来細胞株の脂肪生成誘導を支持する。いくつかの例では、血清は魚血清である。
【0042】
いくつかの例では、本開示は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)及びウシ胎児血清(FBS)をさらに含む、本明細書で開示される脂肪生成誘導組成物について記載する。いくつかの例では、本開示は、ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)及びウシ胎児血清(FBS)をさらに含む、本明細書で開示される脂肪生成誘導組成物について記載する。いくつかの例では、本開示は、魚類塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)及びウシ胎児血清(FBS)をさらに含む、本明細書で開示される脂肪生成誘導組成物について記載する。いくつかの例では、本開示は、鳥類塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)及びウシ胎児血清(FBS)をさらに含む、本明細書で開示される脂肪生成誘導組成物について記載する。さらなる例では、ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は、約5~100ng/mL、約10~80ng/mL、約20~60ng/mL、又は約30~40ng/mLであり得る。さらなる例では、FBSの濃度は、約1%~20%、約2%~15%、約10%~15%、約2%、約10%、又は約15%であり得る。いくつかの例では、脂肪生成誘導組成物は、基本培地と組み合わせて使用することができる。基本培地は動物細胞培養に適した任意の培地であり得ることが当業者には理解され、イーグル最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、イスコフ(Iscove)基本DMEM(IMDM)、ロズウェルパーク記念研究所培地(RPMI)、199培地、109培地、ハム(Ham)F-10培地、ハム(Ham)F-12培地、マッコイ(McCoy)5A培地、リーヴォヴィッツ(Leibovitz)L-15培地、Advanced(商標)DMEM、MesenCult(商標)-ACF Plus培地
、及びStemPro(商標)MSC SFM CTS培地が挙げられるが、これらに限定されない。この組成物が、細胞培養において通常使用される他のサプリメント、例えば、アミノ酸、ビタミン、無機塩、グルコース、増殖因子、ホルモン、及び付着因子と組み合わせて使用できることは、当業者には理解される。また、本明細書で開示される脂肪生成誘導組成物は、細胞増殖に適切なpH及び浸透圧を維持することも理解される。当業者であれば、細胞培養の温度、湿度、及びガス雰囲気は細胞の種類によるものであり、規定どおりに最適化できることが容易に理解される。
【0043】
本明細書に開示されるように、動物から含脂肪細胞を得る方法が記載される。一例では、本開示は、動物から含脂肪細胞を得る方法であって、前記動物の組織試料から脂肪由来細胞を単離することを含む、方法を記載する。例えば、前記組織試料は脂肪組織であり得る。いくつかの例では、本開示で得られる脂肪組織試料は、脂肪組織、内臓脂肪、皮下脂肪、骨髄脂肪、腸間膜脂肪、又は筋肉に含まれる筋肉内/筋間脂肪であり得るが、これらに限定されない。組織試料から脂肪由来細胞を単離する方法は、例えば、先に開示した方法であり得る。当業者であれば、他の方法を使用して得られる単離された脂肪由来細胞が、本明細書に開示される動物から含脂肪細胞を得る方法に適用可能であることを理解することができるであろう。いくつかの例では、前記組織試料は動物から得られる。さらなる例では、前記動物は家禽、家畜、又は魚類である。例えば、前記動物は、雛鳥、アヒル、ガチョウ、七面鳥、ハト、又はウズラである。いくつかの例では、前記動物はウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタである。他の例では、前記動物には硬骨魚(硬骨魚綱)又は軟骨魚(軟骨魚綱)が含まれるが、これらに限定されない。別の例では、前記動物は、カイヤン、ニホンウナギ、ジェイドパーチ、及びバラマンディである。
【0044】
いくつかの例では、本開示は、動物から含脂肪細胞を得る方法であって、前記動物の組織試料から脂肪由来細胞を単離すること、及び本明細書に開示されるように脂肪生成誘導組成物の存在下で前記脂肪由来細胞を培養すること、を含む、方法を記載する。いくつかの例では、前記脂肪由来細胞は、任意の1又は複数のビタミン又はオメガ3脂肪酸のさらなる存在下で培養される。例えば、
図22及び
図25は、ビタミンD3、ビタミンC、又はオメガ3脂肪酸(例えば、DHA、EPAを含む)の添加が脂肪生成誘導効率に悪影響を及ぼさないことを示している。さらなる例では、脂肪由来細胞は、本明細書に開示される脂肪生成誘導組成物の存在下で、少なくとも約3日間、または約6日間、又は約9日間培養される。いくつかの例では、脂肪生成誘導は少なくとも約6日である。たとえば、
図15に示すように、脂肪生成を起こしている細胞の割合は、3日目から約80%になる。いくつかの例では、前記脂肪由来細胞は、本明細書に開示される脂肪生成誘導組成物の存在下で培養され、血清、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、デキサメタゾン、及びインドメタシンは、約3日間、約4日間間、約5日間、約6日間の培養後に任意選択で除去され得る。
【0045】
いくつかの例では、本開示は、動物から含脂肪細胞を得る方法であって、前記動物の組織試料から脂肪由来細胞を単離すること、本明細書に開示されるように脂肪生成誘導組成物の存在下で前記脂肪由来細胞を培養すること、及び細胞培養物から含脂肪細胞を得ること、を含む、方法を記載する。いくつかの例では、本明細書に開示される動物から含脂肪細胞を得る方法は、大規模細胞培養で行われる。いくつかの例では、本明細書に開示される動物から含脂肪細胞を得る方法は、バイオリアクター内で行われる。いくつかの例では、前記バイオリアクターは懸濁培養系を含む。いくつかの例では、前記懸濁培養系はマイクロキャリアである。例えば、
図28に示すように、前記含脂肪細胞は、培養細胞の接着のためのマイクロキャリアを含むバイオリアクターを使用して得られる。
【0046】
いくつかの例では、本開示は、動物から含脂肪細胞を取得する方法であって、前記動物の組織試料から脂肪由来細胞を単離すること、本明細書に開示されるように脂肪生成誘導
組成物の存在下で前記脂肪由来細胞を培養すること、及び細胞培養物から含脂肪細胞を得ること、を含む、方法を記載する。いくつかの例では、前記動物の組織試料から脂肪由来細胞を単離する工程は、本明細書に開示される方法に基づく。
【0047】
本明細書に開示されるように、脂肪由来細胞株が記載される。一例では、本開示は、本明細書に開示される方法によって得られる又は得ることが可能な脂肪由来細胞株に関する。いくつかの例では、本開示は、(a)動物から脂肪組織試料を得ること、(b)(a)の前記脂肪組織試料から間質血管細胞を採取すること、(c)(b)の前記間質血管細胞を増殖させること、(d)各ウェルの増殖速度に基づいて前記増殖した間質血管細胞のクローン選択を行うこと、及び(e)(d)の前記選択の結果に基づいて1又は複数の脂肪由来細胞株を単離すること、を含む、動物から脂肪由来細胞株を単離する方法によって得られる又は得ることが可能な脂肪由来細胞株に言及する。別の例では、本開示は、少なくとも21継代を経ても老化状態に入らないことを特徴とする、本明細書に開示される方法によって得られる又は得ることが可能な脂肪由来細胞株に言及する。例示的な脂肪由来細胞株を用いて
図11に示すように、この細胞株は21継代を超えてさらに100継代を超えるまで細胞培養物中で安定して増殖する。いくつかの例では、前記細胞株は、少なくとも16継代、少なくとも21継代、少なくとも30継代、少なくとも50継代、少なくとも80継代、又は少なくとも100継代後に老化状態に入らないことを特徴とする。また、
図27には、例えば、少なくとも29継代、又は少なくとも104継代を受けた細胞について、例示的な細胞株が、本明細書に開示される方法を使用して脂肪生成誘導を受ける能力を依然として示すことも示されている。
【0048】
いくつかの例では、脂肪由来細胞株は、Ph9F-1x(寄託受託番号:CBA20220039)又はAj1C-1xであり得る。本明細書に開示される例示的な細胞株Ph9F-1xは、シンガポール科学技術研究庁(Agency for Science,
Technology and Research (A*STAR))の組織下の研究所の1つである分子細胞生物学研究所(Institute of Molecular and Cell Biology (IMCB))所属の発明者の一人であるLamony Chewによる寄託受託番号CBA20220039として、ブダペスト条約に基づいて2022年6月16日にCellBank Australiaに寄託されている。前記寄託細胞株は、2022年6月20日にCellBank Australiaによって生存可能であることが試験されている。
【0049】
本明細書に開示されるように、細胞株Ph9F-1x(寄託受託番号:CBA20220039)が記載される。いくつかの例では、前記細胞株は脂肪由来細胞株である。いくつかの例では、細胞株Ph9F-1xは、少なくとも16継代、少なくとも21継代、少なくとも30継代、少なくとも50継代、少なくとも80継代、又は少なくとも100継代後に老化状態に入らないことを特徴とする。いくつかの例では、前記細胞株は、本明細書に開示される脂肪由来細胞株を単離する方法によって得ることができる又は得ることが可能である。いくつかの例では、前記細胞株は、本明細書に開示される脂肪生成誘導組成物を用いて脂肪生成を誘導するために使用され得る。いくつかのさらなる例では、前記細胞株は、本明細書に開示されるように脂肪生成誘導組成物の存在下で前記脂肪由来細胞を培養する工程(b)から始まる本明細書に開示される方法に基づいて、動物から含脂肪細胞を得るために使用することができる。
【0050】
本明細書に開示されるように、細胞株Aj1C-1xが記載される。いくつかの例では、前記細胞株は脂肪由来細胞株である。いくつかの例では、細胞株Aj1C-1xは、少なくとも16継代、少なくとも21継代、少なくとも30継代、少なくとも50継代、少なくとも80継代、又は少なくとも100継代後に老化状態に入らないことを特徴とする。いくつかの例では、前記細胞株は、本明細書に開示される脂肪由来細胞株を単離する方
法によって得ることができる又は得ることが可能である。いくつかの例では、前記細胞株は、本明細書に開示される脂肪生成誘導組成物を用いて脂肪生成を誘導するために使用され得る。いくつかのさらなる例では、前記細胞株は、本明細書に開示されるように脂肪生成誘導組成物の存在下で前記脂肪由来細胞を培養する工程(b)から始まる本明細書に開示される方法に基づいて、動物から含脂肪細胞を得るために使用することができる。
【0051】
いくつかの例では、本明細書に開示される脂肪由来細胞株は、無制限の空間及び栄養素によって指数関数的に増殖する。いくつかの例では、本明細書に開示される脂肪由来細胞株は、最初の72時間以内に指数関数的に増殖する。いくつかの例では、倍加時間は約48時間未満である。いくつかの例では、倍加時間は約10~48時間である。さらなる例では、本明細書に開示される脂肪由来細胞株は、約12~48時間の倍加時間を有する。実施例8は、例えば、例示的な細胞株がそれぞれ約13.7時間及び約31.2時間であると測定された倍加時間を有することを実証している。
【0052】
いくつかの例では、本明細書に開示される脂肪由来細胞株は、本明細書に開示される増殖培地中で培養される又は凍結保存される。いくつかの例では、本明細書に開示される脂肪由来細胞株は、マイコプラズマ汚染を含まない。いくつかの例では、脂肪由来細胞株は動物から得られる又は動物から得ることが可能である。さらなる例では、前記動物は家禽、家畜、又は魚類である。例えば、前記動物は、雛鳥、アヒル、ガチョウ、七面鳥、ハト、又はウズラであり得る。いくつかの例では、前記動物はウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタであり得る。他の例では、前記動物は硬骨魚(硬骨魚綱)又は軟骨魚(軟骨魚綱)であり得るが、これらに限定されない。別の例では、前記動物は、カイヤン、ニホンウナギ、ジェイドパーチ、及びバラマンディであり得る。
【0053】
本明細書に開示されるように、インビトロでの脂肪由来動物細胞の脂肪生成誘導のためのキットが記載される。一例では、インビトロでの脂肪由来動物細胞の脂肪生成誘導のためのキットは、本明細書に開示される脂肪生成誘導組成物及び本明細書に開示される脂肪由来細胞株を含む。別の例では、本明細書に開示される脂肪生成誘導組成物と、本明細書に開示される方法に従って得られる単離された脂肪由来細胞株とを含む、インビトロでの脂肪由来動物細胞の脂肪生成誘導のためのキットである。
【0054】
本明細書に開示されるように、本明細書に開示される方法によって生成される脂肪細胞が記載される。いくつかの例では、前記脂肪細胞は含脂肪細胞である。
【0055】
本明細書に開示されるように、本明細書に開示される細胞株を含む食品が記載される。一例では、食品は、本明細書に開示される脂肪細胞を含む。いくつかの例では、食品は肉を含む。いくつかの例では、食品は養殖肉である。本明細書に開示される細胞株又は本明細書に開示される脂肪細胞を含む食品が、他の細胞型、例えば、成熟筋細胞及び食用の食品グレード材料の三次元足場と組み合わせることによって製造されることは、当業者によって理解される。いくつかの例では、食品は魚肉を含む。
【0056】
本明細書に開示されるように、脂質組成物が記載される。一例では、前記脂質組成物は、本明細書に開示される脂肪由来細胞株から得られる。別の例では、前記脂質組成物は、本明細書に開示されるように脂肪細胞から得られる。いくつかの例では、前記脂質組成物は、室温下で液体形態又は固体形態である。いくつかの例では、前記脂質組成物は魚油である。
【0057】
本明細書に開示されるように、本明細書に開示される脂質組成物の使用が記載される。いくつかの例では、前記脂質は使用前に工業的処理を受ける。いくつかの例では、前記脂質は化粧品の製造に使用される。いくつかの例では、前記脂質は栄養補助食品として使用
される。いくつかの例では、前記脂質は食品添加物として使用される。
【0058】
本明細書に例示的に記載された開示は、本明細書に具体的に開示されていないいかなる要素(単数又は複数)、限定(単数又は複数)も存在しない場合でも、適切に実施することができる。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などの用語は、制限なく拡大的に解釈されるものとする。さらに、本明細書で使用される用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語及び表現の使用において、図示及び説明された特徴又はその一部と同等のものを除外する意図はないが、本発明の特許請求の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態及び所望の特徴によって具体的に開示されたが、本明細書に開示された本明細書で具体化される発明の修正及び変形が当業者によって可能であり、そのような修正および変形は、本発明の範囲内にあるものとみなされることを理解されたい。
【0059】
本開示は、本明細書において広範かつ概説的に説明された。概説的な開示の範囲内に含まれるより狭い種及び下位の概説的なグループ分けのそれぞれも、本発明の一部を形成する。これには、削除された内容が本明細書に具体的に記載されているかどうかに関係なく、本発明の主題を属から削除する但し書き又は否定的な限定を伴う発明の概説が含まれる。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲及び非限定的な例の範囲内にある。さらに、本発明の特徴又は態様がマーカッシュ群に関して説明される場合、当業者は、本発明がマーカッシュ群の任意の個々のメンバー又はメンバーのサブグループに関しても説明されることを認識するであろう。
【実施例】
【0060】
実験セクション
動物
0.7~1.0kgのパンガシウス(Patin fish)であるカイヤン(Pangasianodon hypophthalmus)を、地元の養殖業者のKhaiseng Trading & Fish Farm Pte. Ltd.(シンガポール)から取得した。0.1~0.2kgのニホンウナギ(Anguilla japonica)を、Man Man Japanese Unagi Restaurant(シンガポール)から取得した。0.7~1.0kgのバラマンディ(Lates calcarifer)及びオーストラリアジェイドパーチ(Scortum barcoo)を、別の地元の養殖業者のApollo Marine Seafood(シンガポール)から取得した。前記魚をメタンスルホン酸トリカイン溶液に浸漬して屠殺し、続いて頭部を切り落とした。安楽死後、幹細胞を単離するために約0.6~1.5gの腸間膜脂肪を切除した。場合によっては、筋肉内脂肪又は筋肉間脂肪を含む筋肉を細胞単離に使用した。さらに、背部静脈穿刺により約10mLの血液を採取し、4℃で18時間保存した。2,000×gで15分間遠心分離した後、血清を収集した。血清を56℃で30分間熱処理し、さらなる処理まで-30℃で保存した。生きた動物の取り扱いを伴うすべての手順は、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)の施設内動物管理使用委員会(IACUC)の承認に従って実施した(IACUC番号201570)。
【0061】
増殖培地
特に明記しない限り、全ての細胞培養試薬及び化学薬品はThermo Fisher
Scientific社(米国)から購入した。完全増殖培地は高グルコースDMEM、20%熱不活化FBS、2%熱不活化魚血清、300U/mLのペニシリン、300μg/mLのストレプトマイシン、及び5ng/mLのbFGFを含む。Advanced(商標)DMEMには、2%熱不活化FBS、0.1%熱処理魚血清、5ng/mLのbFGF、及び2mMのL-グルタミンを添加した。リーヴォヴィッツ(Leibovit
z)L-15培地には、15%熱不活化FBS、0.1%熱処理魚血清、及び5ng/mLのbFGFを添加した。MesenCult(商標)-ACF Plus培地(Stemcell Technologies社)及びStemPro(商標)MSC SFM
CTS培地には、0.1%熱処理魚血清及び2mMのL-グルタミンを添加した。
【0062】
魚脂肪由来細胞の単離
間質血管画分を、酵素消化によって切除した腸間膜脂肪から単離した。簡潔には、脂肪組織又は筋肉組織を等量(脂肪重量1グラムあたり1マイクロリットル)のハンクス(Hank’s)平衡塩類溶液(HBSS)に浸し、滅菌ハサミを使用してミンチ化した。ミンチ化した脂肪組織を、1mg/mLのIV型コラゲナーゼ(Worthington Biochemical Corporation社、米国ニュージャージー州)及び5mMの塩化カルシウムを含む等量(脂肪重量1g当たり1mL)のHBSS中で37℃で1時間消化した。あるいは、ミンチ化した脂肪組織を、0.5mg/mLのIV型コラゲナーゼ、2.4mg/mLのディスパーゼII、及び2.5mMの塩化カルシウムを含む等量(脂肪重量1グラム当たり1マイクロリットル)のHBSS中で37℃で1時間消化した。消化した脂肪組織試料を100μmナイロンフィルターに通し、400×gで5分間遠心分離した。細胞ペレットを塩化アンモニウム-塩化カリウム(ACK)溶解緩衝液に2分間再懸濁し、40μmナイロンフィルターに通した。細胞を完全増殖培地に再懸濁し、ゼラチンコートした(Stemcell Technologies社)6ウェルプレート上において28℃で5%CO2含有加湿雰囲気中で増殖させた。細胞培養培地を2日ごとに交換し、70%コンフルエントに達した時点で細胞を0.05%トリプシン-エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はTrypLE(商標)Expressと共に28℃で2分間インキュベートすることによって継代した。
【0063】
あるいは、脂肪由来細胞は、外植片培養によって切除された腸間膜脂肪から単離した。脂肪組織を直径約4~5mmの小片にミンチ化し、上記のように完全増殖培地に再懸濁した。細胞が組織から移動し、30%~40%コンフルエントに達するまで、細胞培養培地を7日ごとに交換した。その後、70%コンフルエントになるまで細胞培養培地を2日ごとに交換した。
【0064】
細胞株の樹立
細胞を9継代目まで増殖させ、BD FACSAria(商標)IIセルソーター(BD Biosciences社、米国)を使用して10細胞/ウェルの細胞密度でゼラチンコート96ウェル平底黒色プレートに選別した。前記細胞を完全増殖培地で増殖させ、5%CO2含有加湿雰囲気中、28℃でインキュベートした。10日後、少なくとも70%コンフルエントのウェルを増殖させた。20継代目に達した細胞を細胞株とみなし、バンバンカー(BAMBANKER)(登録商標)凍結培地を使用して液体窒素中で凍結保存した。
【0065】
細胞増殖の測定
細胞を、滴定濃度のFBS又は魚血清を含む増殖培地の1mL当たり50,000細胞の細胞密度で再懸濁した。前記細胞をゼラチンコートした96ウェル平底黒色プレートに播種し、5%CO2含有加湿雰囲気中、28℃でインキュベートした。製造元の指示に従い、CellTiter-Blue(登録商標)Assay(Promega社、米国)を使用して、前記細胞の細胞増殖を5日間評価した。簡潔には、毎日、CellTiter-Blue(登録商標)試薬を細胞に添加し、28℃でインキュベートした。2時間後、Tecan Infinite M200 Proを使用して560/590の励起/発光波長で蛍光強度を測定した。
【0066】
マイコプラズマ汚染の検出
細胞をT75フラスコ内で2日間、70%コンフルエンスになるまで増殖させた。細胞培養上清を収集し、製造元の指示に従ってMycoAlert(商標)PLUSマイコプラズマ検出キット(Lonza社)を使用してマイコプラズマの存在を検出した。Tecan Infinite M1000プレートリーダーを使用して発光を測定した。
【0067】
細胞集団の倍加時間の測定
細胞を完全増殖培地に再懸濁し、ゼラチンコートした96ウェル平底黒色プレートにウェル当たり1000又は1500細胞の細胞密度で加えた。細胞を、5%CO2含有加湿雰囲気中、28℃で3日間インキュベートした。毎日、細胞核を製造元の指示に従ってCyQUANT(商標)細胞増殖アッセイで染色した。28℃で1時間インキュベートした後、シンガポールのバイオポリス(Biopolis)にあるSBIC-ニコンイメージングセンター(SBIC-Nikon Imaging Centre)のN-STORM/TIRF顕微鏡を使用して細胞を画像化し、NIS-Elementソフトウェア(株式会社ニコン、東京、日本)を使用して細胞数を測定した。
【0068】
魚類脂肪由来細胞株の脂肪生成
脂肪由来細胞の脂肪生成が誘導された。細胞を完全増殖培地1mL当たり100,000細胞の細胞密度で再懸濁し、ゼラチンコートした96ウェル平底黒色プレートに100μL/ウェルで播種した。細胞を、5%CO2含有加湿雰囲気中、28℃でインキュベートした。2日後、前記細胞をHBSSで3回洗浄し、高グルコースダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、15%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)、0.1%熱不活化魚血清、300U/mLのペニシリン、300μg/mLのストレプトマイシン、並びに500μMの3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX、Sigma-Aldrich社)、1μMのデキサメタゾン、167nMのインスリン、及び100μMのインドメタシン(Sigma-Aldrich社)を含む脂肪生成誘導カクテル1で細胞を誘導することによって脂肪生成を開始した。脂肪生成誘導の3日後及び6日後、細胞をDMEM、15%FBS、0.1%魚血清、300U/mLのペニシリン、300μg/mLのストレプトマイシン、及び167nMのインスリンを含む脂肪生成誘導カクテル2で誘導した。リノール酸-オレイン酸アルブミン(LAOA、Sigma-Aldrich社)、ドコサヘキサエン酸(DHA、Cayman Chemical社)、エイコサペンタエン酸(EPA、Cayman Chemical社)、オレイン酸アルブミン(OAA、Sigma Aldrich社)、及びリノール酸アルブミン(LAA、Sigma Aldrich社)を必要に応じて脂肪生成誘導カクテルに追加してもよい。脂肪生成誘導の9日後、製造元の指示に従って、細胞をAdipoRed(商標)アッセイ試薬(Lonza社、米国)で染色し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、Hoechst 33342で対比染色した。N-STORM/TIRF顕微鏡を使用して細胞を画像化し、NIS-Elementソフトウェアを使用して分析した。
【0069】
遺伝子発現解析
RNeasy(登録商標)Plus Mini Kit(Qiagen社)を使用して全RNAを抽出し、SuperScript(商標)IV First-Strand Synthesis System(Thermo Fisher Scientific社)を使用してcDNAに逆転写した。CFX96リアルタイムPCR検出系で、SsoAdvanced(商標)Universal SYBR(登録商標)Green Supermix(Bio-rad社)を使用して、脂肪生成分化に関与する様々な遺伝子(PPAR-γ、C/EBPα、C/EBPβ、FAS、HSLα、HSLβ、LPL)の発現を調べた。相対的な遺伝子発現をβ-アクチンに対して正規化し、2-ΔΔCT法を使用して計算した。プライマーは、NCBIデータベース上のカイヤンの予測配列に基づいて、Primer3バージョン4.1.0を使用して設計した。
【0070】
オメガ3脂肪酸の測定
オメガ3脂肪酸は、シンガポールのデューク国立大学(Duke-National University of Singapore(NUS))のメタボロミクス施設(Metabolomics Facility)の記載に従ってわずかに変更を加えて抽出及び測定した。細胞を冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、冷0.1%ギ酸中で掻爬した。次いで、前記細胞を4℃で30分間ボルテックスで混合した。細胞抽出物のタンパク質濃度は、Pierce(商標)還元剤対応マイクロプレートBCAタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher Scientific社、米国)を製造元の指示に従って使用して測定した。細胞抽出物を等量のアセトニトリルと混合し、質量分析のためにデューク国立大学のメタボロミクス施設に送付した。
【0071】
スピナーフラスコ内のCytodex(登録商標)1マイクロキャリア上の魚類細胞株の増殖及び脂肪生成
細胞株は、製造業者の指示に従い、Cytodex(登録商標)1マイクロキャリア(Cytiva Life Sciences社、米国)上で増殖させた。簡潔には、6.67×106細胞、0.2グラムのマイクロキャリア、及び40mLの完全増殖培地を、125mLスピナーフラスコ中で混合し、20回転/分(rpm)で撹拌した。2時間後、撹拌速度を40rpmに増加した。24時間後、30mLの完全増殖培地をフラスコに加えた。増殖培地を補充するために、細胞-マイクロキャリア凝集体を2分間静置し、使用済み培地の50%を2日ごとに新しい培地と交換した。細胞株の脂肪生成分化を誘導するために、細胞-マイクロキャリア凝集体を魚血清、脂肪生成誘導カクテル、及びLAOAを含むEssential 6(商標)培地で6日間処理した。
【0072】
細胞数を測定するために、細胞-マイクロキャリア凝集体を70mLのPBSで3回洗浄し、70mLのTryple(商標)Expressで処理し、28℃で150rpmで撹拌した。70μmセルストレーナー(SPL Life Sciences社、韓国)を使用して細胞及びマイクロキャリアを分離し、トリパンブルー染色(Thermo Fisher Scientific社、米国)で計数した。マイクロキャリアへの細胞の接着を視覚化するために、細胞をメーカーの指示に従ってHoechst 33342で染色し、バイオポリスのSBIC-ニコンイメージングセンターにあるNikon A1R+si共焦点顕微鏡を使用して画像化した。
【0073】
統計分析
特に明記しない限り、全てのデータは平均値±SEMとして表示される。各変数の有意差(P<0.05)は、まず一元配置分散分析(ANOVA)、続いてテューキー事後検定を使用して決定した。全ての分析は、GraphPad Prism(グラフパッドプリズム)5.03(GraphPad Software社、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して実施した。
【0074】
実施例1
脂肪由来初代細胞の単離
カイヤンの脂肪組織をコラゲナーゼIV型で消化し、2%魚血清の非存在下又は存在下において完全DMEM中で増殖させた。結果は、カイヤン脂肪由来細胞の単離及び増殖に成功したことを示している。バラマンディ、ニホンウナギ、及びオーストラリアジェイドパーチからの脂肪由来細胞も、同じ方法を使用して単離し、正常に増殖させた(
図2B)。魚血清が存在しない場合と比較して、増殖培地に魚血清が存在した場合、培養3日後及び6日後に新たに単離された細胞の細胞密度が高くなった(
図2A)。結果は、魚血清が新たに単離されたカイヤン脂肪由来細胞の生存に寄与していることを示唆している。
【0075】
実施例2
クローン選択
脂肪由来初代細胞は不均一な細胞集団からなるため、カイヤンの細胞を10継代増殖させ、2%魚血清を含むDMEMを含む96ウェルプレートにウェル当たり10細胞ずつに分割した。15日後、1120ウェルのうち41ウェルが少なくとも70%コンフルエンスに達した(表1)。これらのウェル内の細胞は、クローン選択の前後で同じ紡錘形の形態を示した(
図3)。これらの細胞を、今後の実験のために増殖及び凍結保存した。20継代よりも多く増殖できた細胞を魚脂肪由来細胞株とみなした。
【0076】
ニホンウナギの細胞を、2%魚血清含有DMEM中で6継代増殖させた。次いで、細胞を、2%魚血清含有又は非含有DMEMを含む96ウェルプレートにウェル当たり1細胞ずつに分割した。13日後、2%魚血清を含むDMEMの192ウェル中8ウェルが少なくとも70%コンフルエンスに達し、魚血清を含まないDMEMの192ウェル中6ウェルが少なくとも70%コンフルエンスに達した(表1)。これらのウェル内の細胞も、クローン選択の前後で同じ紡錘形の形態を示した(
図3)。これらの細胞を、今後の実験のために増殖及び凍結保存した。
【0077】
実施例3
低濃度の血清における脂肪由来細胞の増殖
血清の入手可能性及びコストが、脂肪由来細胞又は細胞株の増殖の限界となるため、カイヤン細胞株を、魚類細胞株の増殖を支持できる魚血清の最小濃度を決定するために、魚血清の滴定濃度で増殖させた。魚血清の非存在下(0%)と比較して、少なくとも0.1%の魚血清の存在下で増殖させたカイヤン細胞株は、4日後及び5日後に有意に高い蛍光強度を示した(
図4)。結果は、増殖培地中に少なくとも0.1%の魚血清が存在すると、魚類細胞株の増殖が促進されることを示している。0.1~2%の魚血清の存在下で増殖させた魚類細胞株の増殖には有意差はなかった。したがって、データは、カイヤン細胞株の増殖を支持するには0.1%の魚血清が必要であることを示唆している。
【0078】
実施例4
自己血清の存在下での脂肪由来細胞の増殖
例示的な細胞株Ph9F-1xは、マス魚、チョウザメ魚、ウマ、及びウシの血清と比較して、パンガシウス及びティラピアの魚血清の存在下で増殖される。脂肪由来細胞の増殖速度を比較する。例示的な細胞株Ph9F-1xは、マス魚、チョウザメ魚、ウマ、及びウシの血清と比較して、パンガシウス及びティラピア魚血清の存在下でより速い速度で増殖することが示されている。これは、自己血清又は同門の動物由来の血清は、細胞の単離又は維持中の細胞増殖に役割を果たすことを意味している。
【0079】
実施例5
脂肪由来細胞の増殖にはFBSを要すること
次に、魚類細胞株の増殖を支持するFBSの濃度を検討した。カイヤン細胞株及びニホンウナギ細胞株は、FBSの非存在下では増殖しなかった(
図5)。対照的に、カイヤン細胞株及びニホンウナギ細胞株は、FBSの存在下で増殖した。これは、魚類細胞株の増殖を支持するにはFBSが必要であることを示している。
【0080】
カイヤン細胞株は、5日後、FBSの非存在下で増殖した細胞株(10.2±10.1%)と比較して、15%FBSの存在下で有意に高い増殖率(91.5±4.9%)を示した(
図5A)。他の濃度のFBSの存在下で増殖させた細胞株の増殖速度に有意差はなかった。
【0081】
ニホンウナギ細胞株は、4日後、20%FBS(63.1±2.8%)及び5%FBS(68.3±23.2%)で増殖させた細胞株と比較して、10%FBS(100%)の
存在下で有意に高い増殖率を示した(
図5B)。15%FBSの存在下で増殖させた細胞株と比較して、10%FBSの存在下で増殖させた細胞株の増殖に有意差はなかった。
【0082】
実施例6
高速増殖細胞株及び低速増殖細胞株の同定
細胞増殖速度は、養殖肉の生産における最も重要な要素の1つである。様々な魚脂肪由来細胞株の増殖速度を特徴付けるために、8つのカイヤン細胞株の増殖速度を5日間にわたって調べた。増殖アッセイにより、Ph9F-1x(白四角で示す)は他の細胞株と比較してより速く増殖することが明らかになった(
図6)。
【0083】
5つのニホンウナギ細胞株の増殖速度も4日間にわたって調べた。増殖アッセイにより、Aj1C-1x(白四角で示す)は他の細胞株と比較してより速く増殖することが明らかになった(
図6)。Ph9F-1x及びAj1C-1xの両方を脂肪生成研究のために選択した。
【0084】
実施例7
細胞株におけるマイコプラズマ汚染の検出
マイコプラズマ感染は細胞培養中によく起こる問題であり、細胞株の増殖速度を低下させることが知られている。単離された脂肪由来細胞株でマイコプラズマ汚染が発生していないことを確認するため、高速増殖する魚類細胞株のPh9F-1x及びAj1C-1x、並びにその他の低速増殖するクローンの培養上清で、マイコプラズマの存在を検査した。マイコプラズマアッセイにより、9個の細胞培養上清の相対発光単位が1.0未満であることが明らかになり、単離された脂肪由来細胞株がマイコプラズマに感染していないことが示された。さらに、2つの単離された細胞株であるPh9F-1x及びAj1C-1xと他のクローンとの間の増殖速度の違いは、マイコプラズマ汚染によるものではなかった。
【0085】
実施例8
細胞増殖に適合する増殖培地の特定
DMEMとは別に、多くの研究では、ヒト脂肪由来幹細胞の増殖を支持するために、MesenCult(商標)-ACF Plus培地及びStemPro(商標)MSC SFM CTS培地を使用し、培養細胞の増殖を支持するために、リーヴォヴィッツ(Leibovitz)L15増殖培地を使用している。単離された脂肪由来細胞株の増殖を支持可能な最も適切な増殖培地を決定するために、カイヤン細胞株を様々な増殖培地で増殖させた。細胞増殖アッセイにより、DMEM及びAdvanced(商標)DMEMで増殖させたカイヤン脂肪由来細胞株は、リーヴォヴィッツ(Leibovitz)L15培地、MesenCult(商標)-ACF Plus培地、及びStemPro(商標)MSC SFM CTS培地と比較して、著しく高い増殖速度を示すことが明らかになった。DMEMとAdvanced(商標)DMEMとで増殖させた魚類細胞株の増殖には有意差はなかった。下流実験(downstream experiment)はDMEMを使用して実施した。
【0086】
実施例9
細胞集団の倍加時間の推定
集団倍加時間が短いことは、製品の拡張性と費用対効果を決定するため、細胞ベースの肉の重要な特徴である。単離された細胞株の増殖速度を測定するために、高速増殖するカイヤン細胞株のPh9F-1x及びニホンウナギ細胞株Aj1C-1xをそれぞれウェルあたり1000細胞及び1500細胞で播種し、核の数を24時間ごとに測定した。Ph9F-1x及びAj1C-1xは72時間にわたって指数関数的に増殖し、平均集団倍加時間はそれぞれ13.7時間及び31.2時間であることが示された。他の細胞株のおお
よその倍加時間は48時間未満であるが、ほとんどの細胞株は10~48時間の範囲であった。
【0087】
実施例10
継代初期及び継代後期における細胞株の細胞形態
初代細胞は通常、増殖速度の低下並びに紡錘形から拡大された、平坦な、及び不規則な形状への細胞形態の変化によって示されるように、10~15継代後に老化状態に入る。可能な継代数及び細胞分裂の回数は、細胞ベースの肉の拡張性又は大規模生産を制限するため、細胞ベースの肉では潜在的な懸念事項となる。したがって、Ph9F-1xを完全培地で増殖させ、80%コンフルエンスに達した時点で1:5の比率で継代培養した。この細胞株は、約226の集団倍加レベルに相当する113継代を超えて増殖することができた。明視野画像により、Ph9F-1xが異なる継代にわたって紡錘形の形態を保持していることも明らかになった。さらなる細胞増殖アッセイにより、107継代目のPh9F-1xの増殖速度が31継代目のPh9F-1xよりも速いことが明らかになった。これらのデータは、Ph9F-1xが老化状態に入らず、細胞ベースの肉の大規模生産に使用できる可能性があることを示唆している。
【0088】
実施例11
脂肪生成誘導培地及びリノール酸-オレイン酸アルブミン(LAOA)を使用した脂肪生成の誘導
脂肪由来細胞株の最も重要な特徴は、制御された方法で成熟脂肪細胞に分化する能力である。IBMX、デキサメタゾン、インスリン、及びインドメタシンを含む脂肪生成誘導カクテルは、ヒト又はマウスの脂肪由来幹細胞を成熟脂肪細胞に分化させるために通常使用される。ここでは、Ph9F-1xを脂肪生成誘導カクテル1で3日間処理し、続いて脂肪生成誘導カクテル2で6日間処理した。染色結果により、脂肪生成誘導カクテルは、非刺激細胞と比較して、脂質を発現する細胞の数(
図12A及び
図12B)及び総脂質強度(
図12A及び
図12C)を有意に増加させなかったことが明らかになった。
【0089】
脂肪生成を増強するために、魚脂肪由来細胞株を、100μMのリノール酸-オレイン酸アルブミン(LAOA)を含む脂肪生成誘導カクテルで処理した。染色結果により、脂質を発現する細胞の数及び相対的な脂質蓄積が、LAOAを含まない脂肪生成誘導カクテル及び非刺激対照と比較して、LAOAを含む脂肪生成誘導カクテルでの処理後に有意に高かったことが明らかになった(
図12)。
【0090】
実施例12
他の単離細胞株の脂肪生成分化
概念実証として、ニホンウナギ及びジェイドパーチからの細胞株も、前述のように、LAOAを含む脂肪生成誘導カクテルで9日間処理した。染色の結果は、脂質蓄積の増加によって示されるように、ニホンウナギ細胞株及びジェイドパーチ細胞株の両方が成熟脂肪細胞に分化したことを明らかにした(
図13)。
【0091】
実施例13
FBS不含培地での単離された細胞株の培養
細胞ベースの肉にFBSを使用すると、持続可能性、費用対効果、ロット間のばらつき、及び動物虐待に関する懸念が生じる。FBS不含培地(例えば、Essential 6(商標)培地)は、幹細胞の増殖又は分化を支持する、フィーダーフリー(feeder-free)、ゼノフリー(xeno-free)、及び無血清培地である。ここで、
図24Aに示すように、FBS含有DMEM培地及びFBS不含必須基礎培地におけるPh9F-1xの脂肪生成能を比較した。これまで、DMEMが例示的な基礎培地として使用されていたが、これには脂肪生成を誘導するために脂肪生成誘導カクテル及びLAOA
が必要となる。この脂肪生成誘導カクテルには167nMのインスリンが含まれている。但し、Essential 6(商標)基礎培地は既に3.34μMのインスリンを含んでいる。したがって、脂肪生成中にインスリンをEssential 6(商標)基礎培地に添加しなかった。
【0092】
染色結果は、P=0.0675の境界線有意性ではあるが、Essential 6(商標)ベースの脂肪生成誘導培地が、DMEMベースの脂肪生成誘導培地と比較して、脂質を発現する細胞の数を増加させることを示した(
図14B及び
図14C)。最も重要なことは、Essential 6(商標)ベースの脂肪生成誘導培地は、DMEMベースの脂肪生成誘導培地と比較して総脂質強度を大幅に増強したことである。したがって、本発明者らは、単離された脂肪由来細胞株が、FBS不含脂肪生成誘導培地中で成熟脂肪細胞に分化できることを実証した。
【0093】
実施例14
Ph9F-1xの脂肪生成誘導期間における滴定
費用対効果の高い方法で高い割合の成熟脂肪細胞及び高レベルの脂質蓄積を得るために、Ph9F-1x及びAj1C-1xを、Essential 6(商標)培地、脂肪生成誘導カクテル、及びLAOAを使用した脂肪生成誘導の様々な時点でAdipoRed(商標)試薬で染色した。染色の結果、脂肪生成誘導の3日目から9日目までの成熟脂肪細胞の割合に有意差がないことが明らかになった。興味深いことに、6日目及び9日目の成熟脂肪細胞の総脂質含有量は、0日目、3日目、4日目、及び5日目と比較して有意に高かった。さらに、6日目及び9日目の成熟脂肪細胞の総脂質含有量には有意差はなかった。
【0094】
実施例15
脂肪生成における脂肪生成誘導カクテルの成分分析
Essential 6(商標)基礎培地には、単離された脂肪由来細胞株で脂肪生成を誘導するために、LAOA及び脂肪生成誘導カクテルを添加した。脂肪生成誘導カクテルは、Essential 6(商標)に既に含まれているインスリン、IBMX、デキサメタゾン、及びインドメタシンからなる。脂肪生成誘導カクテルの各成分の効率を調べるために、Ph9F-1xをEssential 6(商標)培地、魚血清、LAOA、並びにデキサメタゾン、IBMX、及びインドメタシンの様々な組み合わせで処理した。染色結果から、IBMX、デキサメタゾン、及びインドメタシンの様々な組み合わせで処理した後の成熟脂肪細胞の割合に有意差がないことが明らかになった。また、IBMX及びデキサメタゾンによる処理では、IBMX、デキサメタゾン、及びインドメタシンによる処理と比較して、成熟脂肪細胞の総脂質含有量が有意に高くなることが明らかになった。
【0095】
実施例16
脂肪生成中のLAOAの有効濃度の特定
LAOAは脂肪由来細胞株の脂肪生成誘導中に最も重要な成分の1つであるが、脂肪生成誘導培地の中で最も高価な成分である。費用効果が高く効率的な脂肪生成誘導培地を開発するために、Ph9F-1xを様々な濃度のLAOAで処理した。AdipoRed(商標)染色により、50μM及び100μMのLAOAは、LAOAの非存在下と比較して、成熟脂肪細胞の割合及びその総脂質含有量を有意に増強したことが明らかになった。対照的に、より高濃度のLAOA(150μM及び200μM)では、成熟脂肪細胞の割合及びその総脂質含有量は増加しなかった。100μMのLAOAは、50μMのLAOAと比較して、成熟脂肪細胞の割合及びその総脂質含有量を増強するとみられる。
【0096】
実施例17
脂肪生成誘導中のLAOA添加のタイミングの特定
これまでのところ、脂肪生成を誘導するために、単離された脂肪由来細胞株をEssential 6(商標)、魚血清、IBMX、デキサメタゾン、及びLAOAで3日間処理し、続いてEssential 6(商標)、魚血清、及びLAOAでさらに3日間処理した。細胞ベースの脂肪の生成コストを削減するために、Ph9F-1xを、脂肪生成の0日目~3日目(
図18A)、3日目~6日目(
図18B)、又は0日目~6日目(
図18C)の間LAOAで処理した。AdipoRed(商標)染色により、0日目から6日目までのLAOAの添加により、LAOAを0日目~3日目又は3日目~6日目のみにおいて添加した場合と比較して、6日目終了時点で成熟脂肪細胞の割合(
図17D)及びその総脂質含有量(
図18E)が有意に増加したことが明らかになった。したがって、高レベルの脂質蓄積を有する成熟脂肪細胞を高い割合で得るには、魚脂肪由来細胞株の脂肪生成誘導全体を通じてLAOAを添加する必要がある。
【0097】
実施例18
脂肪生成中のLAOAの成分分析
LAOAは、リノール酸(LAA)及びオレイン酸(OAA)が結合したウシ血清アルブミン(BSA)の混合物である。魚脂肪由来細胞株の脂肪生成促進におけるLAOA、OAA、及びLAAの有効性をそれぞれ比較した。AdipoRed(商標)染色により、LAOA及びOAAがLAAと比較して成熟脂肪細胞の割合を有意に増強したことが明らかになった。さらに、LAOAは、OAA及びLAAと比較して、含脂肪細胞の総脂質含有量を有意に増加させた。
【0098】
実施例19
魚脂肪由来細胞株における脂肪生成中のトランスクリプトーム解析
AdipoRed(商標)染色とは別に、単離された脂肪由来細胞株が脂肪生成誘導において成熟脂肪細胞に分化することを強化するために、脂肪生成及び脂質合成に関与する様々な遺伝子の発現も調べた。PPARγは脂肪生成のマスター調節因子として知られており、PPARγの発現は脂肪生成の異なる日数にわたって有意に増強されることが示された。初期脂肪生成転写因子であるC/EBPβ及びC/EBPδは、脂肪生成の初期段階で発現され、脂肪生成の後期段階で減少することが知られている。PPARγ、C/EBPβ、及びC/EBPδの発現は、脂肪生成の後期段階でのC/EBPαの発現を促進する。C/EBPβの発現は、脂肪生成の3日目に有意に増強され、6日目に減少することが示された。逆に、C/EBPδの発現は検出限界未満であった。C/EBPαの発現は、脂肪生成の6日目に有意に増強されることも示された。
【0099】
さらに、脂肪由来細胞株の脂肪生成中の様々な脂質合成遺伝子の発現も調べた。HSLα及びLPLの発現は、脂肪生成の3日目及び6日目に有意に増強されることが示された。HSLβの発現は脂肪生成の6日目に著しく増強され、FASの発現は脂肪生成の3日目に有意に増強された。
【0100】
まとめると、単離された脂肪由来細胞株は、細胞内脂質の蓄積、脂肪生成転写因子の発現、及び脂質合成遺伝子の発現によって示されるように、脂肪生成誘導により脂肪生成を受けることが示された。
【0101】
実施例20
脂肪生成中の血清の除去
魚血清が存在しない場合、魚脂肪由来細胞株の細胞増殖が大幅に減少するため、血清は増殖培地の重要な成分である(
図5)。血清の使用は持続可能ではなく、細胞ベースの脂肪の大規模生産を制限する可能性があるため、0日目又は3日目の魚血清の除去が魚脂肪由来細胞株の脂肪生成レベルに影響を与えるかどうかを検討した。染色結果は、0日目に
魚血清を除去すると、0日目~3日目(
図21B)及び0日目~6日目(
図21C)で魚血清が存在した場合に比べて細胞数が著しく減少することを示した(
図21A)。AdipoRed(商標)染色では、魚血清の存在に関係なく、成熟脂肪細胞のパーセンテージに差異は示されなかったが(
図21D)、脂肪生成中の魚血清の非存在(0日目の除去)により、魚血清が存在した場合と比較して総脂質含有量が有意に低下した(
図21E)。興味深いことに、3日目に魚血清を除去しても、脂肪生成全体を通して魚血清が存在した場合(0日目~6日目)と比較して、成熟脂肪細胞の割合と総脂質含有量に有意差は生じない。したがって、データは、細胞ベースの脂肪の生成に影響を与えることなく、脂肪生成の最終3日間に血清を除去できることを示唆している。
【0102】
実施例21
脂肪生成中のビタミンの添加
ビタミンC及びビタミンDは脂肪生成を調節することが報告されている。ビタミンCは、Essential 6(商標)培地などの一部の細胞培養培地に既に存在している。したがって、脂肪生成における他のビタミンの役割も検討した。AdipoRed(商標)染色の結果から、100μMの酢酸α-トコフェロール、D-パントテン酸、ビタミンD3、又はビオチンは、6日後に成熟脂肪細胞の割合及びその総脂質含有量を有意に増加させないことが明らかになった。興味深いことに、ビタミンD3(強度:3.5×109)は、境界線統計的有意性で成熟脂肪細胞(強度:1.9×109)の総脂質含有量を増加させた。
【0103】
実施例22
ニホンウナギ細胞株の脂肪生成期間の特定
カイヤン細胞株の脂肪生成条件を最適化した後、ニホンウナギ細胞株であるAj1C-1xの最適な脂肪生成条件も決定する。まず、5日間の脂肪生成中のAj1C-1xにおける脂質蓄積レベルを比較することにより、脂肪生成誘導の適切な期間を検討した。データは、AdipoRed(商標)の蛍光強度が他の日と比較して3 日目に有意に高かったことを明らかにした(
図23)。したがって、成熟したAj1C-1x含脂肪細胞において最高レベルの脂質強度を得るには、3日間が脂肪生成誘導の効果的な期間であると考えられる。
【0104】
実施例23
ニホンウナギ細胞株の脂肪生成期間におけるLAOAの有効濃度の同定
他の実施例で以前に実証したように、LAOAはカイヤン細胞株における脂肪生成の重要な決定因子の1つである。別の例では、Aj1C-1x細胞株も異なる濃度のLAOAで処理した。AdipoRed(商標)染色により、100μMのLAOAが、0μM及び50μMのLAOAと比較して、成熟脂肪細胞の割合及びその総脂質含有量を有意に増強したことが明らかになった(
図24)。さらに、100、150、200、及び500μMのLAOAの間では、成熟脂肪細胞の割合及びその総脂質含有量に有意差はない。
【0105】
実施例24
脂肪生成中のオメガ3脂肪酸の添加
ドコサヘキサエン酸(DHA)及びエイコサペンタエン酸(EPA)などのオメガ3脂肪酸は、心血管疾患のリスクを軽減することが知られているため、栄養や養殖肉において重要な役割を果たしている。DHA及びEPAは、脂肪生成及び褐変の様々な段階に影響を与えることが報告されている。したがって、Ph9F-1xの脂肪生成中のDHA及びEPAの役割を、脂肪生成の最終3日間に異なる濃度のDHA及びEPAを添加することによって検討した。AdipoRed(商標)染色の結果は、DHA(
図25A)又はEPA(
図25B)が成熟脂肪細胞の割合及びその総脂質含有量に有意な影響を及ぼさないことを示した。染色結果から、100μMのDHAが脂肪生成後の核数を有意に減少させ
ることも明らかになった(
図25A)。
【0106】
脂肪生成中のDHA及びEPAの併用効果を調べるために、50μMのDHA及び50μMのEPAを脂肪生成の最終3日間に添加した。AdipoRed(商標)染色の結果は、50μMのDHA及び50μMのEPAの組み合わせが、成熟脂肪細胞の割合及びその総脂質含有量に有意な影響を及ぼさなかったことを明らかにした(
図25C)。さらに、総核数には影響しなかった。したがって、50μMのDHA及び50μMのEPAを脂肪生成の最終3日間に脂肪生成誘導カクテルに添加して、Ph9F-1x成熟脂肪細胞におけるオメガ3脂肪酸のレベルを高めることができた。
【0107】
実施例25
DHA及びEPAの存在下での脂肪生成中のトランスクリプトーム解析
脂肪生成のマスター調節因子であるPPARγ及び初期脂肪生成転写因子C/EBPβの遺伝子発現も、脂肪生成誘導カクテルを使用したPh9F-1xの分化後に検討した。遺伝子発現解析により、PPARγ及びC/EBPβの両方の発現が脂肪生成の3日目及び6日目に有意に増強されることが明らかになった。
【0108】
まとめると、細胞内脂質の蓄積及び脂肪生成遺伝子の発現によって示されるように、Ph9F-1xは脂肪生成誘導カクテルを使用して成熟脂肪細胞に分化することが示された。
【0109】
実施例26
高い継代数におけるPh9F-1xの脂肪生成能
単離された脂肪由来細胞株、例えば、Ph9F-1xは、前述のように100継代以上増殖できる。高い継代数におけるPh9F-1xの脂肪生成の可能性を確認するために、29継代目及び104継代目でのPh9F-1xの脂肪生成及び脂質蓄積の割合を比較した。AdipoRed(商標)染色により、104継代目のPh9F-1xが、刺激なしと比較して、脂肪生成誘導培地での刺激後に脂肪生成及び脂質蓄積の割合を有意に増強したことが明らかになった(
図27)。さらに、29継代目及び104継代目で刺激されたPh9F-1x間では、脂肪生成及び脂質蓄積の割合に有意差はない。データは、本発明者らの魚類細胞株Ph9F-1xが高い継代数でも脂肪生成能を保持していることを示している。
【0110】
実施例27
成熟Ph9F-1x含脂肪細胞におけるDHA及びEPAの測定
DHA及びEPAなどのオメガ3脂肪酸は、心血管疾患のリスクを軽減することが広く知られているため、健康的な食事と養殖肉の重要な成分に不可欠である。Ph9F-1x成熟脂肪細胞におけるオメガ3脂肪酸の濃度を測定した。質量分析データにより、Ph9F-1x成熟脂肪細胞には20gのタンパク質ごとに3.86gのDHA及び0.158gのEPAが含まれていることが明らかになった。米国農務省(USDA)が発表したデータと比較すると、Ph9F-1x成熟脂肪細胞中のDHA及びEPAの総濃度は、天然のアトランティックサーモン及びクロマグロなどの他の高級魚よりも高かった。したがって、本明細書に開示される成熟脂肪細胞は、養殖肉の原料として高い栄養価を有する。
【0111】
【0112】
実施例28
Cytodex(登録商標)1マイクロキャリア上のPh9F-1xの増殖及び脂肪生成分化
マイクロキャリアは、コスト及び物理的設置面積の要件を削減しながら、細胞培養の拡張性を大幅に高めることができるため、足場依存性細胞株の大規模培養を支持するために広く使用されている。ここでは、動物成分を含まず、持続可能な方法で生産できるため、単離された細胞株の増殖と分化のためにCytodex(登録商標)1を選択した。Ph9F-1xをスピナーフラスコ内のCytodex(登録商標)1上で3日間増殖させ、TrypLE(商標)Expressで30分間処理した。トリパンブルー染色により、30分後でも細胞の80%超が生存しており、細胞の生存率が処理の影響を受けていないことが明らかになった。データはまた、18分間の処理で5.16×10
7個の細胞という最も高い細胞収量を生じ(
図28A)、初期細胞播種密度よりも7.7倍高かったことも明らかにした。核染色は、Ph9F-1xがCytodex(登録商標)1に接着していることも示した(
図28B)。まとめると、単離された魚類細胞株は、3次元スピナーフラスコ内のCytodex(登録商標)1マイクロキャリア上に接着して増殖できるため、大規模培養に使用できることが示されている。
【0113】
単離された細胞株を、Cytodex(登録商標)1マイクロキャリア上での脂肪生成の可能性についてさらに検討した。AdipoRed(商標)染色の結果は、刺激されたPh9F-1x細胞がAdipoRed(商標)によって染色されたのに対し、刺激されていない細胞はAdipoRed(商標)によって染色されなかったことを示している。データは、Ph9F-1xが3次元スピナーフラスコ内のCytodex(登録商標)1マイクロキャリア上で分化できることを示している。
【国際調査報告】