(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】紙または板紙をベースにした包装用積層体
(51)【国際特許分類】
B65D 65/42 20060101AFI20240705BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240705BHJP
B32B 29/00 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
B65D65/42 A
B32B15/08 F
B32B29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501102
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 IB2022056289
(87)【国際公開番号】W WO2023285930
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ボンネルプ, クリス
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク, カイ
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー, フレドリック
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD02
3E086BA14
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4F100JD04
(57)【要約】
本発明は、紙または板紙の基層、無機コーティング層、PVOHコーティング層、および金属化膜層を含む、紙または板紙をベースにした包装用積層体であって、無機コーティング層が、基層とPVOHコーティング層との間に、かつ基層およびPVOHコーティング層に接触して配置され、金属化膜層が、PVOHコーティング層に積層され、包装用積層体が、相対湿度90%および38℃で、規格ASTM F-1927に準拠して測定される5cc/m2/日未満の酸素移動率(OTR)を有する、紙または板紙をベースにした包装用積層体に関する。本発明は、紙または板紙をベースにした包装用積層体を含む容器にさらに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙または板紙の基層、
無機コーティング層、
PVOHコーティング層、および
金属化膜層
を含む、紙または板紙をベースにした包装用積層体であって、
無機コーティング層が、基層とPVOHコーティング層との間に、かつ基層およびPVOHコーティング層に接触して配置され、
金属化膜層が、PVOHコーティング層に積層され、
包装用積層体が、相対湿度90%および38℃で、規格ASTM F-1927に準拠して測定される5cc/m
2/日未満の酸素移動率(OTR)を有する、
紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項2】
無機コーティング層が、無機コーティング層の全乾燥重量に基づいて、
粒子状無機物65~90wt%、および
結合剤10~35wt%
を含む、請求項1に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項3】
粒子状無機物が、カオリン、炭酸カルシウム、ベントナイト、タルク、およびそれらの組み合わせからなる群から、好ましくは、カオリンまたは炭酸カルシウムから、より好ましくはカオリンから選択される、請求項2に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項4】
無機コーティング層が、無機コーティング層の全粒子状無機物の乾燥重量で算出された、炭酸カルシウム80~100wt%および粘土0~20wt%を含む、請求項3に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項5】
炭酸カルシウムが、2μm未満の粒径を有する粒子を50~70wt%含む第1の炭酸カルシウムと、2μm未満の粒径を有する粒子を80~100wt%含む第2の炭酸カルシウムとの混合物を含む、請求項4に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項6】
結合剤が、ラテックス結合剤である、請求項1から5のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項7】
無機コーティング層の坪量が、4~25g/m
2の範囲、より好ましくは6~20g/m
2の範囲である、請求項1から6のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項8】
PVOHコーティング層が、PVOHコーティング層の全乾燥重量に基づいて、少なくとも70wt%のPVOHを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項9】
PVOHコーティング層の坪量が、1~20g/m
2の範囲、好ましくは2~15g/m
2の範囲、より好ましくは3~12g/m
2の範囲である、請求項1から8のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項10】
金属化膜層が、金属化ポリマー膜または金属化セルロースベース膜を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項11】
金属化膜層の95重量%よりも多くが、セルロースベースである、請求項1から10のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項12】
金属化膜層が、薄膜層上での金属または金属酸化物の気相堆積によって、好ましくは物理的気相堆積(PVD)または化学気相堆積(CVD)によって、形成された金属化層を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項13】
金属化層が、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、銅、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、金属、金属酸化物、またはセラミック酸化物、好ましくは酸化アルミニウムを含む、請求項12に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項14】
金属化層が、1~100nmの範囲、好ましくは10~100nmの範囲、より好ましくは20~50nmの範囲の層厚を有する、請求項12または13に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項15】
金属化膜層の坪量が、10~70g/m
2の範囲、より好ましくは10~50g/m
2の範囲である、請求項1から14のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項16】
金属化膜層が、接着剤結合層によってPVOHコーティング層に付着している、請求項1から15のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項17】
接着剤結合層が、ポリエチレンまたはエチレン変性PVOHを含む、請求項16に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項18】
紙または板紙の基層が、20~500g/m
2の範囲、好ましくは80~400g/m
2の範囲の基本重量を有する、請求項1から17のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項19】
紙または板紙の基層が、多層板紙である、請求項1から18のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項20】
紙または板紙の基層が、少なくとも5wt%の再生繊維、好ましくは少なくとも10wt%の再生繊維を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項21】
紙または板紙の基層上に配置された、第1の保護ポリマー層、好ましくはポリエチレン層をさらに含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項22】
金属化膜層上に配置された、第2の保護ポリマー層、好ましくはポリエチレン層をさらに含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項23】
相対湿度50%および23℃で、規格ASTM F-1927に準拠して測定される5cc/m
2/日未満、好ましくは3cc/m
2/日未満、より好ましくは2cc/m
2/日未満の酸素移動率(OTR)を有する、請求項1から22のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項24】
相対湿度90%および38℃で、規格ASTM F-1927に準拠して測定される3cc/m
2/日未満、好ましくは2cc/m
2/日未満の酸素移動率(OTR)を有する、請求項1から23のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項25】
相対湿度50%および23℃で、規格ASTM F1249に準拠して測定される5g/m
2/日未満、好ましくは0.5g/m
2/日未満の水蒸気移動度(WVTR)を有する、請求項1から24のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項26】
相対湿度90%および38℃で、規格ASTM F1249に準拠して測定される5g/m
2/日未満、好ましくは1g/m
2/日未満の水蒸気移動度(WVTR)を有する、請求項1から25のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項27】
PTS RH021/97に準拠した、30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満の不良率を有する、請求項1から20または請求項23もしくは24のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体。
【請求項28】
請求項1から27のいずれか一項に記載の紙または板紙をベースにした包装用積層体を含む容器。
【請求項29】
金属化膜層が容器の内側に面している、請求項28に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紙および板紙をベースにした包装材料に関する。より詳細には、本開示は、高い相対湿度(RH)で、低い、一貫した酸素透過率(OTR)を有する、紙および板紙をベースにした包装用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
板紙の機械特性をプラスチック膜のバリア特性および密封特性と組み合わせるために、プラスチックを用いた、紙および板紙のコーティングがしばしば用いられる。均一な、比較的少量の好適なプラスチック材料を備えた板紙は、多くの要求される用途に好適な板紙、例えば、液体包装用板紙を作製するのに必要とされる特性をもたらすことができる。液体包装用板紙において、ポリオレフィンコーティングは、頻繁に、液体バリア層、加熱密封層、および接着剤として使用される。しかし、繊維からポリマーを分離することが困難であるので、こうしたポリマー被覆厚紙のリサイクルは難しい。
【0003】
また、多くの場合において、コーティング層が厚くなければ、または様々なポリマーコーティング層の組み合わせが使用されなければ、ポリマー被覆板紙のガスバリア特性は、依然として不十分である。それゆえに、高いガスバリア特性および光バリア特性および高い剛性を確実なものにするために、ポリマー被覆板紙はしばしば、アルミニウム箔の1種または複数の層を備えられる。しかし、ポリマー層およびアルミニウム層の付加は、相当な費用を追加し、材料のリサイクルをより困難にする。また、その高いカーボンフットプリントゆえに、紙および板紙をベースにした包装材料におけるアルミニウム箔を置き換える要望がある。
【0004】
長期保存製品、例えば、牛乳およびジュースの無菌包装は、通常、多層板紙ベース基材、最外の加熱密封可能なポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、PE)層、ならびにポリオレフィンおよびアルミニウムの最内層を含む液体包装用板紙(LPB)から作製される。酸素バリア特性をもたらすために必要であるアルミニウム層は、通常、ポリエチレンの層の間に組み込まれて、以下の構造:PE/板紙/PE/アルミニウム/PEをもたらす。
【0005】
先行技術において、アルミニウム箔をより環境に優しい、および/またはよりリサイクルし易い解決策で置き換える試みが行われてきたが、これまで実際には成功していない。
【0006】
より最近には、脱フィブリル化(defibrillated)セルロースフィブリルが、例えば水中に分散され、その後再組織化され、共に再結合されて、優れたガスバリア特性を有する密な膜を形成する、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)膜およびコーティングが開発された。残念なことに、こうしたMFC膜のガスバリア特性は、高湿度で劣化する傾向がある。
【0007】
したがって、許容できる液体バリア特性および酸素バリア特性を維持しながら、紙および板紙をベースにした包装材料における、プラスチック膜およびアルミニウム箔を置き換えるための、改善された解決策が依然として要求される。同時に、プラスチック膜およびアルミニウム箔を、使用された包装材料の再パルプ化およびリサイクルを容易にする代替物で置き換える必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本開示の目的は、包装材料、例えば液体包装用板紙において酸素バリア特性をもたらすために、バリア膜として一般に使用される、プラスチック膜およびアルミニウム箔の代替物を提供することである。
【0009】
本開示のさらなる目的は、より高い相対湿度およびより高温でさえも良好な酸素バリア特性をもたらす、紙または板紙をベースにした包装用積層体、例えば液体包装用板紙を提供することである。
【0010】
本開示のさらなる目的は、相対湿度90%および38℃で、規格ASTM F-1927に準拠して測定される5cc/m2/日未満の酸素移動率(OTR)を有する、紙または板紙をベースにした包装用積層体を提供することである。
【0011】
本開示のさらなる目的は、従来のプラスチック膜およびアルミニウム箔を使用した包装用積層体と比較して、厚紙の再パルプ化を容易にする、酸素バリア層を含む、紙または板紙をベースにした包装用積層体、例えば液体包装用板紙を提供することである。
【0012】
本開示のさらなる目的は、PTS RH021/97に準拠した、30%未満、好ましくは20%未満の不良率を有する、紙または板紙をベースにした包装用積層体を提供することである。
【0013】
上記の目的、および本開示に照らして、当業者によって認識される他の目的は、本開示の様々な態様によって実現される。
【0014】
本明細書において説明される第1の態様によれば、
紙または板紙の基層、
無機コーティング層、
PVOHコーティング層、および
金属化膜層
を含む、紙または板紙をベースにした包装用積層体であって、
無機コーティング層が、基層とPVOHコーティング層との間に、かつ基層およびPVOHコーティング層に接触して配置され、
金属化膜層が、PVOHコーティング層に積層され、
包装用積層体が、相対湿度90%および38℃で、規格ASTM F-1927に準拠して測定される5cc/m2/日未満の酸素移動率(OTR)を有する、紙または板紙をベースにした包装用積層体が提供される。
【0015】
紙は、一般に、書くこと、描くこと、もしくは印刷することについて、または包装材料として使用される、木材のパルプまたはセルロース繊維を含む、他の繊維状物質からの薄いシートで生産された材料を指す。
【0016】
板紙は、一般に、箱および他の種類の包装に使用される、セルロース繊維を含む、強く、厚い紙またはボール紙を指す。板紙は、最終用途の要件に応じて、漂白されてもよく、または漂白されなくてもよく、被覆されてもよく、または被覆されなくてもよく、多様な厚さで製造され得る。
【0017】
紙または板紙をベースにした包装用積層体は、主に、または完全に、紙または板紙から形成された包装材料である。それは、未処理繊維からのパルプを含むパルプ、例えば、機械パルプ、化学パルプ、および/または熱機械パルプから作製され得る。それはまた、損紙または再生紙からも作製され得る。紙または板紙に加えて、紙または板紙をベースにした包装用積層体は、包装用積層体の性能および/または外観を改善するように考案された、追加の層またはコーティングを含むことができる。
【0018】
紙または板紙をベースにした包装用積層体は、典型的には、外表面または印刷面として機能するための第1の最外表面、および包装容器の内表面として機能するための第2の最外表面を有する。金属化膜層を含む、紙または板紙の基層側は、包装容器の内表面として機能するためのものである。
【0019】
本発明の包装用積層体層は、優れた酸素バリア特性、水蒸気バリア特性、および液体バリア特性を共にもたらすことができる。とりわけ有用なものは、PVOH層および金属化膜層の組み合わせによって可能になる、高湿度および高温での、高い酸素バリア特性および高い水蒸気バリア特性の組み合わせである。本開示の文脈における用語、高湿度は、全般的に、80%を超える相対湿度(RH)を指す。本開示の文脈における用語、高温は、全般的に、23℃を超える温度を指す。より詳細には、本開示の文脈における用語、高温は、25~50℃の範囲の温度を指すことができる。高湿度および高温での、包装用積層体の酸素バリア特性および水蒸気バリア特性は、典型的には、代表的な相対湿度(RH)90%および温度38℃で測定される。
【0020】
本発明の包装用積層体は、相対湿度90%および38℃で、規格ASTM F-1927に準拠して測定される5cc/m2/日未満の酸素移動率(OTR)を有する。これにより、本発明の包装用積層体は、アルミニウム箔層を用いた従来の材料に対する、興味深い、実行可能な代替案となる。
【0021】
さらに、本発明の紙または板紙をベースにした包装用積層体は、アルミニウム箔層を用いた従来の材料に対する代替案を提供することができ、それらは、より容易に再パルプ化され、リサイクルされ得る。本発明の紙または板紙をベースにした包装用積層体は、基層とPVOHコーティング層との間に、かつ基層およびPVOHコーティング層に接触して配置された無機コーティング層を含む。本発明の無機コーティング層およびPVOHコーティング層の組み合わせにより、再パルプ化中に、基層から金属化膜層を有効に分解し得ることが明らかになった。加えて、無機コーティング層は、基層中へのPVOHの望ましくない移動を抑制し、水蒸気に対して、PVOHコーティングを保護することができる。一部の実施形態において、紙または板紙をベースにした包装用積層体は、PTS RH021/97に準拠した、30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満の不良率を有する。
【0022】
一部の実施形態において、無機コーティング層は、無機コーティング層の全乾燥重量に基づいて、
粒子状無機物50~95wt%、および
結合剤5~50wt%
を含む。
【0023】
一部の実施形態において、無機コーティング層は、結合剤10~35wt%を含む。
【0024】
一部の実施形態において、無機コーティング層は、無機コーティング層の全乾燥重量に基づいて、
結合剤10~35wt%、好ましくは10~20wt%、および
粒子状無機物90~65wt%、好ましくは90~80wt%
を含む。
【0025】
無機コーティング層における、高量の粒子状無機物は、再パルプ化中に、基層からの金属化膜層の取り外しを促進する。
【0026】
一部の実施形態において、粒子状無機物は、カオリン、炭酸カルシウム、ベントナイト、タルク、およびその組み合わせからなる群から、好ましくは、カオリンまたは炭酸カルシウムから、より好ましくはカオリンから選択される。
【0027】
一部の実施形態において、粒子状無機物は、無機コーティング層の全粒子状無機物の乾燥重量で算出された、炭酸カルシウム80~100wt%および粘土0~20wt%を含む。無機コーティング層における、低い形状係数を有する、高量の炭酸カルシウムの使用により、コーティング層における、より高い固形分およびより低量の結合剤を可能にし、その一方で、依然として、良好な被覆率を得ることができる。また、低量の結合剤により、金属化膜層の取り外しを促進することができる。好ましくは、炭酸カルシウムの形状係数は、10未満、好ましくは、0.1~10の間、または0.1~5の間である。本明細書において「形状係数」は、平均粒子直径の粒子厚さに対する比の平均値(重量)の測定値であり、電気伝導率法を使用して測定され得る。さらに、炭酸カルシウムは、粘土ほど反応性ではなく、酸環境においてより容易に炭酸カルシウムを溶解させ、それによって、リサイクル処理をさらに容易にする。
【0028】
使用された炭酸カルシウムは、好ましくは20m2/g未満、より好ましくは15m2/g未満、例えば3~20m2/gの間、または3~15m2/gの間の低表面積を好ましくは有する。粘土と比較して、こうした低表面積を有する顔料をリサイクルすることがより容易であり、特にリサイクルにおいて、化学物質をそれ程必要としない。本明細書において「表面積」は、BET等温線を使用して、吸着によって測定される(ISO9277:2010)。
【0029】
実施形態において、粒子状無機物において含有される炭酸カルシウムは、2μm未満の粒径を有する粒子を50~70重量パーセント含む第1の炭酸カルシウムと、2μm未満の粒径(partice size)を有する粒子を80~100重量パーセント含む第2の炭酸カルシウムとの混合物である。粒径は、Mastersizer2000を使用して測定され得る。好ましくは、第1の炭酸カルシウムは、1~2μmの間の、重量による中央粒径(d50)を有し、第2の炭酸カルシウムは、0.5~0.9μmの間の、重量による中央粒径(d50)を有する。好ましい一実施形態において、無機コーティング層は、無機コーティング層中の炭酸カルシウムの全乾燥重量で算出された、前記第1の炭酸カルシウム20~40wt%、好ましくは20~30wt%、および前記第2の炭酸カルシウム80~60wt%、好ましくは80~70wt%を含む。
【0030】
実施形態において、粒子状無機物は、無機コーティング層の全粒子状無機物の乾燥重量で算出された、炭酸カルシウム80~90wt%および粘土10~20wt%を含む。こうした粒子状無機物混合物は、高いバリア特性および優れたリサイクル性の両方をもたらすように最適化される。
【0031】
結合剤は、水分散性または水溶性の結合剤であってもよい。一部の実施形態において、水分散性結合剤は、ラテックス結合剤である。一部の実施形態において、水溶性結合剤は、デンプン、PVOH、セルロース誘導体、例えば、CMC、タンパク質、または海藻である。水溶性結合剤を使用する利点は、積層体が、さらにより容易にリサイクルされることである。
【0032】
一部の実施形態において、無機コーティング層の坪量は、4~25g/m2の範囲であり、より好ましくは6~20g/m2の範囲である。
【0033】
無機コーティング層は、好ましくは、少なくとも2つの異なるコーティング工程において施すことができ、工程の間で被覆膜を乾燥させる。
【0034】
無機コーティング層のISO 8791-4に準拠したPPS(パーカープリントサーフ)平滑度は、好ましくは5μm未満である。無機コーティング層のCobb-Unger値(30秒、bs)は、好ましくは20g/m2未満、好ましくは1~20g/m2の範囲、より好ましくは5~15g/m2の範囲であり、Cobb-Unger値は、油吸収の測定値であり、SCAN-P37:77(30秒)法によって測定される。
【0035】
本発明の包装用積層体は、ポリビニルアルコール(PVOH)コーティング層を含む。PVOHコーティング層は、無機コーティング層と金属化膜層との間に配置される。一部の実施形態において、PVOHコーティング層は、無機コーティング層と直接接触する。PVOHコーティング層は、金属化膜層がPVOHコーティング層に積層される前に、無機コーティング層に施され得る。
【0036】
PVOHコーティング層のPVOHは、所定の時間、冷水中に可溶型であるか、または100℃未満の温度まで加熱した後、水中に可溶型である。PVOHコーティング層の水溶解度は、再パルプ化中の、基層からの金属化膜層の分離を改善する。PVOHは、例えば、80~99モル%の範囲、好ましくは85~98モル%の範囲の加水分解度を有することができる。広角x線散乱によって測定される、PVOHの結晶化度は、好ましくは0.6未満、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.4未満である。
【0037】
一部の実施形態において、PVOHコーティング層は、PVOHコーティング層の全乾燥重量に基づいて、少なくとも50wt%のPVOH、好ましくは少なくとも70wt%のPVOHを含む。
【0038】
PVOHは、非変性PVOHまたは変性PVOHであってもよい。変性PVOHは、好ましくは、エチレン変性PVOHであってもよい。
【0039】
PVOHは、PVOHの単一の種類であってもよく、または例えば、加水分解度もしくは粘度の異なる、2種以上のPVOHの混合物を含むことができる。PVOHは、例えば、80~99モル%の範囲、好ましくは85~99モル%の範囲の加水分解度を有することができる。さらに、PVOHは、好ましくは、20℃の4%水溶液DIN53015/JIS K6726(添加剤なし、かつpH変化なしで、すなわち例えば、蒸留水中に分散させ、溶解させる場合に得られる)で5mPa×秒を超える粘度を有することができる。有用な製品の例は、例えば、クラレポバール4-98、ポバール6-98、ポバール10-98、ポバール20-98、ポバール30-98、もしくはポバール56-98、またはこれらの混合物である。部分加水分解グレード(less hydrolysed grade)から、ポバール4-88、ポバール6-88、ポバール8-88、ポバール18-88、ポバール22-88、または例えば、ポバール49-88が好ましい。あるいは、PVOHの完全加水分解グレード(98~99.9%)も使用され得る。PVOHは、好ましくは、0.9wt%未満、好ましくは0.7wt%未満、0.4wt%未満、または0.2wt%未満の灰分を有する。
【0040】
PVOHコーティング層におけるピンホールのリスクを最小化するために、PVOHコーティング層は、好ましくは、少なくとも2種の異なるコーティング工程において施すことができ、その工程の間で被覆膜を乾燥させる。一部の実施形態において、PVOHコーティング層は、多層化され、少なくとも1種の層は、低分子量PVOHを含有する。これは、その後の、再パルプ化中の、紙または板紙の基層から金属化膜層の取り外しをさらに容易にすることになる。
【0041】
PVOHコーティング層は、好ましくは、液体薄膜コーティング法によって、水溶液または分散体の形態で形成され、すなわち塗布で、基材に広がって薄く、均一な層になり、その後乾燥させる。PVOHコーティング層は、接触コーティング法または非接触コーティング法によって施され得る。有用なコーティング法の例には、それに限定されないが、ロッドコーティング、カーテンコーティング、膜圧コーティング(film press coating)、キャストコーティング、トランスファーコーティング、サイズプレスコーティング、フレキソ印刷コーティング、ゲートロールコーティング、ツインロールHSMコーティング、ブレードコーティング、例えばショート・ドウェル・タイムブレードコーティング、ジェットアプリケーターコーティング、噴霧コーティング、グラビアコーティング、または逆グラビアコーティングが挙げられる。
【0042】
一部の実施形態において、少なくとも1種のPVOHコーティング層は、発泡体の形態で施される。発泡コーティングは、非発泡コーティングと比較して、より高い固形分およびより少ない水含有量で薄膜を形成することが可能になるので有利である。発泡コーティングのより少ない水含有量もまた、基材の再湿潤の問題を軽減する。発泡体は、ポリマー発泡剤または非ポリマー発泡剤を使用して形成され得る。ポリマー発泡剤の例には、PVOH、疎水性変性デンプン、および疎水性変性エチルヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。
【0043】
PVOHコーティング層の基本重量は、全般的に、1~20g/m2の範囲であることができる。一部の実施形態において、PVOHコーティング層の坪量は、2~15g/m2の範囲、より好ましくは3~12g/m2の範囲である。
【0044】
一部の実施形態において、架橋結合剤は、無機コーティング層に、および/またはPVOHコーティング層に添加される。架橋結合剤は、無機コーティング - PVOHコーティング接触面の、耐水性および接着を改善することができる。好適な架橋結合剤には、それに限定されないが、グリオキサール、クエン酸、グルタルアルデヒドが挙げられる。架橋結合剤の濃度は、例えば、無機層またはPVOHの重量に基づいて、1~20wt%、好ましくは1~15wt%であることができる。無機コーティング層とPVOHコーティング層との間の接触面で架橋を増やすために、PVOHコーティング層を形成する前に、架橋結合剤溶液を無機コーティング層の上部に塗布することもできる。
【0045】
本発明の紙または板紙をベースにした包装用積層体は、PVOHコーティング層に積層された金属化膜層を含む。金属化膜層は、好ましくは、積層体の酸素バリア特性および/または水蒸気バリア特性をさらに改善する。
【0046】
金属化膜層は、基材膜、および前記基材膜の、少なくとも1つの表面に施された金属化層を含む。
【0047】
金属化膜層は、好ましくは、金属化ポリマー膜または金属化セルロースベース膜を含む。金属化ポリマー膜およびPVOHコーティング層の組み合わせは、積層体のバリア特性をさらに改善し、積層体の変換での亀裂からPVOHコーティング層および金属化層の両方を保護する。金属化セルロースベース膜は、積層体のバリア特性も改善することができ、積層体をよりリサイクル可能なものにする。
【0048】
本発明の基材膜は、その上に、1~500nmの範囲の厚さを有する、実質的に連続的な真空コーティング層の連続的な塗布に好適な、任意の基材膜であってもよい。基材膜は、好ましくは、真空コーティングが施され得る、滑らかな、密な、かつ比較的低い有孔性の表面を有する、薄膜またはシート形状の材料を含む。基材膜は、好ましくは、ピンホールをほぼ有さないか、またはピンホールを有するべきではない。薄膜またはシート形状の基材膜におけるピンホールの量は、例えば、規格EN13676:2001に準拠して求めることができる。基材膜は、好ましくは、10ピンホール/m2未満、好ましくは8ピンホール/m2未満、より好ましくは2ピンホール/m2未満を含む。1m2当たりのピンホールの量は、例えば、規格EN13676:2001に準拠した、例えば、光学検査によって測定され得る。基材膜は、好ましくは、規格ISO5636/5に準拠して測定される30000秒/100ml超、好ましくは40000秒/100ml超のガーリー・ヒル多孔度を有する。23℃および50%RHで求められた、基材膜のOTRは、>5cc/m2/日、例えば、>10cc/m2/日、または>20cc/m2/日であり得る。基材膜の厚さは、典型的には、10~100μmの範囲、好ましくは15~80μmの範囲、より好ましくは20~60μmの範囲である。基材膜の密度は、典型的には、>850kg/m3または>900kg/m3または>950kg/m3または>1000kg/m3、好ましくは1050~1250kg/m3の範囲である。
【0049】
基材膜は、材料の単一の層で構成することができるか、または同じ材料もしくは異なる材料の2種以上の層で構成された多層構造であってもよい。基材膜は、例えば、合成ポリマーまたはバイオベースポリマーから形成されたポリマー膜を含むことができるか、またはそれで構成され得る。あるいは、基材膜は、繊維ベース材料の密なシートを含むことができるか、またはそれで構成され得る。基材膜はまた、例えば、積層体もしくはポリマー被覆紙もしくは複合体の形態で、繊維ベース材料および合成ポリマーもしくはバイオベースポリマーの組み合わせを含むことができるか、またはそれで構成され得る。一部の実施形態において、基材膜は、繊維およびポリマーの混合物を含むか、またはそれで構成される。一部の実施形態において、基材膜は、繊維ベース材料の1種の層およびポリマーの1種の層を含む。例えば、基材膜は、繊維ベース層、例えば、ポリマー層、例えば、ポリビニルアルコール(PVOH)コーティングで被覆された、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)膜で構成することができ、平滑度を改善し、MFC膜表面の多孔度を減らす。
【0050】
一部の実施形態において、基材膜はポリマー膜である。ポリマー膜のポリマーは、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィン、PET、ポリイミド、フルオロポリマー、およびPEEKなどのポリエステルからなる群から選択され得る。
【0051】
好ましい一実施形態において、ポリマー膜のポリマーは、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)膜である。BOPP膜は、例えば、その高い耐湿性、光学的透明度、および高い引張強度ゆえに、食品包装用途における使用で好まれる。好ましくは、BOPP膜は、再生PPまたは再生可能資源に基づいたPPを少なくとも50%含む。
【0052】
包装用積層体、例えば液体包装用板紙において、バリア層であるアルミニウム箔およびポリオレフィン膜を、使用された包装用積層体の再パルプ化およびリサイクルを容易にする代替物と置き換えるための、改善された解決策が要求される。
【0053】
基材膜は、好ましくはバイオベースであり、より好ましくはセルロースベースである。バイオベースまたはセルロースベースは、基材膜の50重量%よりも多くが、天然のもの、または好ましくはセルロース起源のものであることを意味する。セルロースベース基材膜を使用することは、積層体が、単一の材料としてリサイクルされ得るので、紙積層体または板紙積層体における使用のためのバリア膜としてとりわけ有用である。
【0054】
金属化膜層は、有利なことに、バイオベース材料から、好ましくは、セルロースベース材料からほぼ完全に生産することができ、それによって、使用された紙および板紙をベースにした包装用積層体の再パルプ化およびリサイクルを容易にする。セルロース材料95重量%以上を含有する、こうした包装材料は、残りの5%が包装材料のリサイクルに影響を及ぼさない他の材料であり、時にモノマテリアルと称される。したがって、一部の実施形態において、金属化膜層の95重量%よりも多くは、セルロースベースである。
【0055】
一部の実施形態において、基材膜は、化学パルプまたは機械パルプまたはその混合物から形成された高密度紙、例えば、スーパー仕上げ紙または片艶仕上げ紙を含む。
【0056】
一部の実施形態において、基材膜は、化学パルプまたは機械パルプまたはその混合物から形成された高密度紙、例えば、スーパー仕上げ紙を含み、続いて、MFC膜またはMFC層で被覆されるか、または積層されて、その上に、1~500nmの範囲の厚さを有する、実質的に連続的な真空コーティング層の連続的な塗布に好適な表面をもたらす。
【0057】
一部の実施形態において、基材膜は、再生されたセルロース膜、例えば、セロファンを含む。
【0058】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、紙および板紙の包装材料のバリア膜において使用するための興味深い成分として特定された。一部の実施形態において、基材膜は、MFC膜で構成されるか、またはMFC膜を含む。言い換えれば、基材は、MFC膜で完全に作製することができるか、または複数の層のうちの1つとしてMFC膜を含むことができる。
【0059】
本出願の文脈におけるミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、20nm~1000nmの幅または径を有する、セルロースの粒子、繊維、またはフィブリルを意味するものである。
【0060】
MFCを作製するための様々な方法、例えば、単回もしくは複数回の叩解、予備加水分解、続いて、フィブリルの叩解または高せん断解繊または遊離が存在する。MFC生産をエネルギー効率良く、持続可能にするために、通常、1つまたは複数の前処理工程が必要である。したがって、MFCを製造するときに使用されたパルプのセルロース繊維は、そのままであってもよく、または例えば、ヘミセルロースもしくはリグニンの量を減らすために、酵素的に、もしくは化学的に前処理され得る。セルロース繊維は、フィブリル化前に化学的に変性されてもよく、セルロース分子は、元のセルロースにおいて見出されるよりも、他の(またはより多くの)官能基を含有する。こうした基には、とりわけ、カルボキシメチル(CM)基、アルデヒド基、および/またはカルボキシル基(N-オキシル媒介酸化によって得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、または第四級アンモニウム(カチオン性セルロース)が挙げられる。前述された方法のうちの1つにおいて、変性されるか、または酸化された後、繊維はMFCにより容易に解繊される。
【0061】
MFCは、木質セルロース繊維から、硬材繊維または軟材繊維の両方から製造され得る。MFCはまた、微生物源、麦わらパルプ、竹、バガスなどの農業繊維、または他の非木質繊維源から作製され得る。MFCは、未処理繊維からのパルプ、例えば、機械パルプ、化学パルプ、および/または熱機械パルプを含むパルプから作製され得る。MFCはまた、損紙または再生紙からも作製され得る。
【0062】
繊維質または多孔質の基材膜、例えばMFC膜は、好ましくは、表面処理と組み合わされて、平滑度を改善し、基材表面の多孔度を減らし、表面を金属化により好適なものにすることができる。可能な表面処理には、それに限定されないが、表面に平滑化プレコートを備えること、または例えば、カレンダー加工による機械的平滑化が挙げられる。
【0063】
表面処理は、例えば、プレコートまたはプライマーの層を繊維質または多孔質の基材層に施す工程を含むことができる。プレコート層は、好ましくは、凹凸を平にし、繊維質または多孔質の基材膜に存在する孔およびピンホールを埋めるように作用する。表面処理はまた、接着を改善するために、基材表面にコロナ処理またはプラズマ処理を施す工程を含むことができる。
【0064】
カレンダー加工は、1つまたは複数の工程またはニップの、ハードニップカレンダー加工またはソフトニップカレンダー加工を含めることができる。機械的平滑化はまた、カレンダー加工前またはカレンダー加工後に実施されるプレコート処理工程とも組み合わされ得る。
【0065】
したがって、一部の実施形態において、金属化膜層は、基材膜と真空コーティング層との間に配置されたプレコート層をさらに含む。
【0066】
一部の実施形態において、プレコート層は、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、多糖類、および変性多糖類、またはその組み合わせからなる群から選択される水溶性ポリマー、好ましくは、ポリビニルアルコールを含む。
【0067】
PVOHは、単一の種類のPVOHであってもよく、または例えば、加水分解度または粘度において異なる、2種以上のPVOHの混合物を含むことができる。PVOHは、例えば、80~99モル%の範囲、好ましくは85~99モル%の範囲の加水分解度を有することができる。さらに、PVOHは、好ましくは、20℃の4%水溶液DIN53015/JIS K6726(添加剤なし、かつpH変化なしで、すなわち例えば、蒸留水中に分散させ、溶解させる場合に得られる)で5mPa×秒を超える粘度を有することができる。有用な製品の例は、例えば、クラレポバール4-98、ポバール6-98、ポバール10-98、ポバール20-98、ポバール30-98、もしくはポバール56-98、またはこれらの混合物である。部分的加水分解グレードから、ポバール4-88、ポバール6-88、ポバール8-88、ポバール18-88、ポバール22-88、または例えば、ポバール49-88が好ましい。
【0068】
変性多糖類は、例えば、変性セルロース、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、または変性デンプン、例えばヒドロキシアルキル化デンプン、シアノエチル化デンプン、カチオン性もしくはアニオン性のデンプン、またはデンプンエーテルもしくはデンプンエステルであってもよい。一部の好ましい変性デンプンには、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシエチル化デンプン、ジアルデヒドデンプン、およびカルボキシメチル化デンプンが挙げられる。
【0069】
一部の実施形態において、プレコート層の基本重量は、0.1~12g/m2の範囲、好ましくは0.5~8g/m2の範囲、より好ましくは1~6g/m2の範囲である。
【0070】
プレコート層におけるピンホールのリスクを最小化するために、プレコート層は、好ましくは、少なくとも2種の異なるコーティング工程において施すことができ、その工程の間で被覆膜を乾燥させる。
【0071】
プレコート層は、接触コーティング法または非接触コーティング法によって施され得る。MFC層への塗布について、非接触コーティング法は、典型的には、コーティング中の基材への損傷のリスクを最小化するために好まれる。有用なコーティング法の例には、それに限定されないが、ロッドコーティング、カーテンコーティング、膜圧コーティング、キャストコーティング、トランスファーコーティング、サイズプレスコーティング、フレキソ印刷コーティング、ゲートロールコーティング、ツインロールHSMコーティング、ブレードコーティング、例えば、ショート・ドウェル・タイムブレードコーティング、ジェットアプリケーターコーティング、噴霧コーティング、グラビアコーティング、または逆グラビアコーティングが挙げられる。一部の実施形態において、コーティングは、発泡体の形態で施される。発泡コーティングは、非発泡コーティングと比較して、より高い固形分およびより少ない水含有量で薄膜を形成することが可能になるので有利である。発泡コーティングのより少ない水含有量もまた、MFC層の再湿潤の問題を軽減する。
【0072】
金属化は、金属または金属酸化物の層を固体表面に原子1個ずつ、または分子1個ずつ気相堆積させるために使用される方法の分類を指す。同じ材料または異なる材料の多数の層が組み合わされ得る。方法は、蒸気源に基づいてさらに明記され得る;物理的気相堆積(PVD)は、液体源または固体源を使用し、化学気相堆積(CVD)は化学気相を使用する。
【0073】
一部の実施形態において、金属化層は、基材膜での金属または金属酸化物の気相堆積によって、好ましくは物理的気相堆積(PVD)または化学気相堆積(CVD)によって形成される。
【0074】
一部の実施形態において、基材膜の表面の1つだけが金属化される。一部の実施形態において、基材膜の両方の表面が金属化される。
【0075】
一部の実施形態において、金属化層は、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、銅、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、およびその組み合わせからなる群から選択される、金属、金属酸化物、またはセラミック酸化物、好ましくは酸化アルミニウムを含む。AlOxコーティングとしても公知である酸化アルミニウム真空コーティングは、アルミニウム金属コーティングと同様のバリア特性をもたらし得るが、薄いAlOxコーティングが可視光に透明であるという、追加の利点を有する。
【0076】
本発明の金属化層は、1~500nmの範囲の厚さを有することができる。一部の実施形態において、金属化層は、1~100nmの範囲、好ましくは10~100nmの範囲、より好ましくは20~50nmの範囲の層厚を有する。一部の実施形態において、金属化層は、50~250mg/m2の範囲、好ましくは75~150mg/m2の範囲の基本重量を有する。
【0077】
そのバリア特性、特に水蒸気バリア特性のためにしばしば使用される、金属化コーティングの好ましい一種類は、アルミニウム金属の物理的気相堆積(PVD)コーティングである。アルミニウム金属で実質的に構成される、こうしたコーティングは、典型的には、10~50nmの厚さを有することができる。金属化層の厚さは、包装用の従来の厚さ、すなわち6.3μmのアルミニウム箔に典型的に存在するアルミニウム金属材料の1%未満に相当する。
【0078】
金属化膜層の坪量は、使用される基材膜に応じて決まることになる。金属化膜層の坪量は、典型的には、1~100g/m2の範囲である。一部の実施形態において、金属化膜層の坪量は、10~70g/m2の範囲、より好ましくは10~70g/m2の範囲である。金属化ポリマー膜について、坪量は、典型的には、範囲の下端、例えば10~30g/m2の範囲であり得、その一方で、金属化セルロースベース膜について、坪量は、より高く、例えば、20~100g/m2の範囲であり得る。
【0079】
金属化膜層は、PVOHコーティング層に積層される。金属化膜層は、任意の好適な、接着の手段を使用して、PVOH層に積層されてもよい。
【0080】
一部の実施形態において、金属化膜層は、接着剤であるPVOH層のPVOHを使用して、PVOHコーティング層に積層される。
【0081】
一部の実施形態において、金属化膜層は、PVOHコーティング層と金属化膜層との間に配置された接着剤結合層によってPVOHコーティング層に付着している。接着剤結合層は、PVOHコーティング層と金属化膜層との間の積層接着をもたらすための、または改善するための、任意の好適な接着剤を含むことができる。結合層は、例えば、押出成形ポリオレフィン接着剤、好ましくはポリエチレン、または分散体接着剤、好ましくはラテックスもしくはポリオレフィン分散体であってもよい。一部の実施形態において、結合層は、エチレン酢酸ビニル(EVA)またはポリマーアクリレート、例えば、エチレンブチルアクリレートを含むことができる。接着剤結合層の被覆重量は、典型的には、0.5~15g/m2の範囲、好ましくは1~12g/m2の範囲であってもよい。
【0082】
一部の実施形態において、接着剤結合層は、ポリエチレンまたはエチレン変性PVOHを含む。
【0083】
一部の実施形態において、紙または板紙の基層は、20~500g/m2の範囲、好ましくは80~400g/m2の範囲の基本重量を有する。
【0084】
一部の実施形態において、紙または板紙の基層は、多層板紙である。
【0085】
本発明の紙または板紙をベースにした包装用積層体の構造は、バリア構造が、鉱油ベース化合物の移動を妨げるので、紙または板紙の基層における、より多量の再生繊維の使用を可能にする。したがって、一部の実施形態において、紙または板紙の基層は、少なくとも5wt%の再生繊維、好ましくは少なくとも10wt%の再生繊維を含む。
【0086】
紙または板紙をベースにした包装用積層体は、最外保護ポリマー層を、一方側に、または両側にさらに備えることができる。
【0087】
一部の実施形態において、紙または板紙をベースにした包装用積層体は、紙または板紙の基層上に配置された、第1の保護ポリマー層、好ましくはポリエチレン層をさらに含む。
【0088】
一部の実施形態において、紙または板紙をベースにした包装用積層体は、金属化膜層上に配置された、第2の保護ポリマー層、好ましくはポリエチレン層をさらに含む。
【0089】
保護ポリマー層は、勿論、再パルプ化性に干渉することがあるが、一部の用途において、依然として要求され得るか、または望まれ得る。追加のポリマー層は、例えば、押出成形コーティング、薄膜積層、または分散コーティングによって施されてもよい。
【0090】
保護ポリマー層は、全般的に、紙または板紙をベースにした包装用積層体において一般的に使用される熱可塑性ポリマー、または特に、液体包装用板紙において使用されるポリマーのいずれも含むことができる。例には、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、デンプン、およびセルロースが挙げられる。ポリエチレン、とりわけ低密度ポリエチレン(LDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)は、液体包装用板紙において使用される、最も一般的な、かつ汎用性のポリマーである。
【0091】
熱可塑性ポリマーは、押出成形コーティング技術によって都合よく加工処理されて、良好な液体バリア特性を有する、極めて薄い、均一な薄膜を形成することができるので有用である。一部の実施形態において、追加のポリマー層は、ポリプロピレンまたはポリエチレンを含む。好ましい実施形態において、保護ポリマー層は、ポリエチレン、より好ましくは、LDPEまたはHDPEを含む。
【0092】
一部の実施形態において、保護ポリマー層は、バリア膜の表面上へのポリマーの押出成形コーティングによって形成される。押出成形コーティングは、溶融プラスチック材料を基材に塗布して、極めて薄い、滑らかな、均一な層を形成する方法である。コーティングは、押出成形プラスチックそれ自体によって形成され得るか、または溶融プラスチックが、接着剤として使用されて、基材上に固体プラスチック膜を積層することができる。押出成形コーティングにおいて使用される、一般的なプラスチック樹脂には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0093】
保護ポリマー層のそれぞれの基本重量は、好ましくは50g/m2未満である。連続的な、実質的に欠陥のない薄膜を実現するために、典型的には、少なくとも8g/m2、好ましくは少なくとも12g/m2の保護ポリマー層の基本重量が要求される。一部の実施形態において、保護ポリマー層の基本重量は、8~50g/m2の範囲、好ましくは12~50g/m2の範囲である。
【0094】
金属化膜層およびポリビニルアルコール(PVOH)層の組み合わせは、優れたガスバリア特性および水蒸気バリア特性を有する、紙および板紙包装用積層体をもたらすことが明らかになった。
【0095】
一部の実施形態において、紙または板紙をベースにした包装用積層体は、相対湿度50%および23℃で、規格ASTM F-1927に準拠して測定される5cc/m2/日未満、好ましくは3cc/m2/日未満、より好ましくは2cc/m2/日未満の酸素移動率(OTR)を有する。
【0096】
一部の実施形態において、紙または板紙をベースにした包装用積層体は、相対湿度90%および38℃で、規格ASTM F-1927に準拠して測定される3cc/m2/日未満、好ましくは2cc/m2/日未満の酸素移動率(OTR)を有する。
【0097】
一部の実施形態において、紙または板紙をベースにした包装用積層体は、相対湿度50%および23℃で、規格ASTM F1249に準拠して測定される5g/m2/日未満、好ましくは0.5g/m2/日未満の水蒸気移動度(WVTR)を有する。
【0098】
一部の実施形態において、紙または板紙をベースにした包装用積層体は、相対湿度90%および38℃で、規格ASTM F1249に準拠して測定される5g/m2/日未満、好ましくは1g/m2/日未満の水蒸気移動度(WVTR)を有する。
【0099】
包装用積層体、例えば液体包装用板紙において、バリア層であるアルミニウム箔およびポリオレフィン膜を、使用された包装用積層体の再パルプ化およびリサイクルを容易にする代替物と置き換えるための、改善された解決策が要求される。無機コーティング層および本開示によるPVOHコーティング層の組み合わせは、使用された包装用積層体の再パルプ化およびリサイクルを容易にすることが明らかになった。
【0100】
一部の実施形態において、紙または板紙をベースにした包装用積層体は、PTS RH021/97に準拠した、30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満の不良率を有する。
【0101】
本明細書において説明される第2の態様によれば、第1の態様による、紙または板紙をベースにした包装用積層体を含む、容器、特に液体包装容器が提供される。
【0102】
一部の実施形態において、金属化膜層は、容器の内側に面する。
【0103】
一般に、製品、ポリマー、材料、層、および方法は、様々な成分または様々な工程を「含むこと」に関して記載されているが、製品、ポリマー、材料、層、および方法はまた、様々な成分および様々な工程「で本質的に構成され」てもよく、または様々な成分および様々な工程「で構成され」てもよい。
【0104】
本発明は、様々な例示的な実施形態に関して記載されてきたが、当業者によって、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、均等物を本発明の要素と置き換えることができると理解されるであろう。加えて、本発明の本質的な範囲を逸脱することなく、特定の状況または特定の材料を本発明の教示に適応させるように、多くの改変を行うことができる。それゆえに、本発明は、本発明を実行するために考えられる最良の様式として開示された、特定の実施形態に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲に記載の範囲内にある、全ての実施形態を含めることになると意図される。
【実施例】
【0105】
4種の試料を、以下のように作製した:
ベース厚紙:
漂白硫酸塩パルプの第1の表面層、無漂白硫酸塩パルプの第2の表面層、無漂白硫酸塩パルプおよび無漂白CTMPの中間層を有する3層厚紙、195~281g/m
2
無機コーティング:
ベース厚紙は、以下の表1に従った無機コーティングを用いて、第1の表面層上に、全被覆重量約22g/m
2で二重被覆(プレコート+トップコート)した。
【0106】
次に、無機被覆ベース厚紙を、PVOH分散コーティング層で、被覆重量5g/m2まで被覆した。
【0107】
18μmの金属化BOPP膜(坪量約16g/m2)を、結合層としてLDPEを用いた押出成形積層によって、PVOHコーティング層上に積層した。
【0108】
最後に、LLDPE層を、金属化BOPP上に押出成形被覆した。
【0109】
酸素透過率(OTR)および水蒸気透過度(WVTR)を試料について測定した(表2参照)。表2において明らかであるように、OTRおよびWVTRの両方は、高温および高湿度でも、極めて低かった。
【国際調査報告】