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特表2024-525667酵母からタンパク質および糖類を単離するための方法
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  • 特表-酵母からタンパク質および糖類を単離するための方法 図1
  • 特表-酵母からタンパク質および糖類を単離するための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】酵母からタンパク質および糖類を単離するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20240705BHJP
   C12N 1/18 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
C12N1/00 K
C12N1/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501186
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2022069504
(87)【国際公開番号】W WO2023285480
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】21185098.7
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524011029
【氏名又は名称】イースタップ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】リーデル・ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ヴェアポーテン・ルディ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA72X
4B065AA80X
4B065BC01
4B065BD01
4B065BD10
4B065BD15
4B065BD18
4B065BD45
4B065CA22
4B065CA24
4B065CA60
(57)【要約】
以下のステップを含む、タンパク質および糖類を単離するために、酵母、特にビール酵母を溶解するための方法:
a)酵母懸濁液、特にビール酵母懸濁液を提供するステップ;
b)前記酵母懸濁液中の酵母を物理的に溶解するステップ;
c)ステップb)からの溶解酵母懸濁液を精密濾過するステップ;
d)ステップc)からの精密濾過の透過物を限外濾過するステップであって、限外濾過の保持物として、タンパク質を主固体成分として有する相が分離されるステップ;
e)ステップc)からの精密濾過の保持物を、塩基性条件下でプロテアーゼで処理し、および引き続き、マンナンを主固体成分として有する相を、特に濾過および/または遠心分離によって、分離するステップ;
f)ステップe)で保持された相を連続的に、最初に塩基性条件下、次いで酸性条件下で処理し、引き続き、グルカンを主固体成分として有する相を、特に濾過および/または遠心分離によって、分離するステップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
a)酵母懸濁液、特にビール酵母懸濁液を提供するステップ;
b)前記酵母懸濁液中の酵母を物理的に溶解するステップ;
c)ステップb)からの溶解酵母懸濁液を精密濾過するステップ;
d)ステップc)からの精密濾過の透過物を限外濾過するステップであって、限外濾過の保持物として、タンパク質を主固体成分として有する相が分離されるステップ;
e)ステップc)からの精密濾過の保持物を、塩基性条件下でプロテアーゼで処理し、および引き続き、マンナンを主固体成分として有する相を、特に濾過および/または遠心分離によって、分離するステップ;
f)ステップe)で保持された相を、最初に塩基性条件下、次いで酸性条件下で連続的に処理し、引き続き、グルカンを主固体成分として有する相を、特に濾過および/または遠心分離によって、分離するステップ、
を含む、タンパク質および糖類を単離するために、酵母、特にビール酵母を溶解するための方法。
【請求項2】
ステップa)において提供される酵母懸濁液が、酵母懸濁液の全重量を基準として、5~30重量%、特に7~20重量%の固形物の割合を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)において提供される酵母懸濁液が、0~15℃の温度、好ましくは2~12℃の温度、特に3~7℃または5℃の温度を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記の酵母懸濁液が、ステップb)の前に洗浄プロセスに付され、当該プロセスにおいて、酵母懸濁液の液相の少なくとも一部、特に酵母懸濁液の液相の少なくとも50重量%、殊に少なくとも60重量%が、さらに別の液体、特に水によって置き換えられる、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
ステップb)における物理的溶解が、ホモジナイザーまたは粉砕媒体ミル、特にボールミルにおいて行われる、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
ステップb)における物理的溶解が、パルス電界によって行われる、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
電界強度が、1~30kV/cm、特に5~24kV/cmであり、および/または比エネルギー入力が、1~180kJ/L、特に3~120kJ/Lである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップc)における精密濾過が、0.1~0.5μm、好ましくは0.1~0.2μm、特に0.1μmの孔径を有する濾材を使用して実施され、ならびにステップd)における限外濾過が、90nm未満の孔径および/または1~100kDa、殊に5~100kDa、好ましくは10~50kDa、特に15~25kDa、殊に20kDaの排除限界を有する濾材を使用して実施される、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
ステップc)における精密濾過および/またはステップd)における限外濾過がダイアフィルトレーションとして実施され、その際に、フィード側で好ましくは連続的に水が供給される、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
ステップd)において分離された、主固体成分としてタンパク質を主固体成分として有する相が、ステップd)の後に乾燥され、特に噴霧乾燥される、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
ステップe)において、プロテアーゼが、ステップc)からの精密濾過の保持物の固形分を基準として、0.0001~10重量%、特に0.001~5重量%、殊に0.01~1重量%または0.05~0.5重量%の割合で使用され、前記プロテアーゼが好ましくはスブチリシンであり、ステップe)における前記処理が、7.5~13、好ましくは8~11、特に8.5~10.5のpH値で、および/または40~80℃、好ましくは50~70℃、特に55~65℃の温度で行われる、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
ステップe)におけるプロテアーゼでの処理が、10分間~18時間、特に3~12時間続く、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
ステップf)において、前記の保持された相が、第1の期間、好ましくは1~5時間の第1の期間において、7.5~13、好ましくは8~11、特に8.5~10.5のpH値で、および40~95℃、好ましくは65~85℃、特に75~85℃の温度で処理され、次いで、第2の期間、好ましくは0.5~2時間の第2の期間において、2~6.5、好ましくは3~5、特に3.5~4.5のpH値で、および50~95℃、好ましくは80~95℃、特に80~90℃の温度で処理される、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
ステップf)において、第1の期間におけるpH値が、ステップe)における処理の間のpH値と一致し、ならびに、ステップf)において、第1の期間における温度が、第2の期間における温度よりも低く、および/または第1の期間が第2の期間よりも長い、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップe)におけるマンナンを主固体成分として有する相の分離および/またはステップf)におけるグルカンを主固体成分として有する相の分離が、濾過、特に組み合わされた精密濾過および限外濾過によって行われる、請求項1~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記精密濾過が、0.1~0.5μm、特に0.1~0.2μm、好ましくは0.1μmの孔径を有する濾材を使用して実施され、ならびに前記限外濾過が、90nm未満の孔径および/または1~100kDa、殊に5~100kDa、好ましくは10~50kDa、特に15~25kDa、殊に20kDaの排除限界を有する濾材を使用して実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップe)における精密濾過および/またはステップf)における限外濾過が、ダイアフィルトレーションとして実施される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
ステップe)において分離された、マンナンを主固体成分として有する相が、ステップe)の後に乾燥され、特に噴霧乾燥され、および/または、ステップf)によって分離された、グルカンを主固体成分として有する相が、ステップf)の後に乾燥され、特に噴霧乾燥される、請求項1~17のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質および糖類を単離するための、酵母、特にビール酵母を溶解するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酵母は、出芽または分裂によって増殖し、従来からずっと技術的に重要な単細胞真菌である。例えば、酵母は、ビール、ワイン、スピリッツ、食品および治療物質の製造に使用される。基本的に、種々のタイプの酵母が存在し、いわゆるパン酵母またはビール酵母(サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))が最も一般的に使用される酵母の1つである。従って、相当の量の、酵母含有、特にビール酵母含有副生成物が付随的に発生する。
【0003】
特に、酵母の細胞壁は、一連の技術的に有用な生体分子、例えばタンパク質、グルカン、マンナン、キチンおよび脂質を含有するので、酵母含有廃棄物は、これらの物質を得るために処理される。そこで酵母の細胞壁を、興味対象の物質を放出するために、部分的または完全に溶解させる。
【0004】
例えば、EP1990419A1(Tex-a-tec AG)(特許文献1)は、グルカン、タンパク質、マンナンおよび脂質を酵母から単離するための方法であって、酵母が連続するステップにおいて、上昇させた温度で超音波で処理される方法を記載している。
【0005】
EP2272876A1(Angel Yeast Co., Ltd.)(特許文献2)は、微生物、例えば酵母8440の細胞壁からグルカンおよびマンナンを抽出する方法を開示している。当該方法は、以下のステップを含む:a)アルカリ性プロテアーゼおよびマンナナーゼにより微生物の細胞を処理するステップ;b)ステップa)からの混合物を重質相および軽質相に分離するステップ;c)ステップb)から得られた重相を乾燥させてグルカン調製物を得るステップ;およびd)ステップb)から得られた軽相を乾燥させてマンナン調製物を得るステップ。前記グルカンおよびマンナン調製物は、治療用途が意図されている。
【0006】
WO2010/070207A1(Glykos Finland Oy)(特許文献3)は、糖類画分を含む免疫刺激剤組成物を製造するための方法であって、酵母細胞を加水分解し、可溶性画分を得るステップを含む方法を記載している。このようにして得られた糖類画分は、食品成分または飲料成分として加えることができ、または医薬品として使用することができる。
【0007】
しかしながら、酵母から技術的に利用可能な生体分子を単離するための従来から知られている方法は、特に大規模なアプローチにおいて、完全に納得のいくものではない。例えば、収率と労力との間の比(特にエネルギー-および時間の要件に関して)が、多くの方法において不十分であり、これは、経済的な生産を大きく妨げる。
【0008】
他の方法は、個々の成分(例えば、グルカンまたはマンナン)を選択的に得ることに向けられているが、その他の成分(例えば、タンパク質)は考慮されないままである。これは、酵母含有副生成物の最も完全な利用という観点において不利である。
【0009】
従って、上述の欠点を少なくとも部分的にまたは完全に克服する改善された解決策が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP1990419A1
【特許文献2】EP2272876A1
【特許文献3】WO2010/070207A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、酵母細胞、特にビール酵母細胞から生体分子を得るための改良された方法を提供することである。特に、可能な限り高い収率および純度と同時に、様々な異なる生体分子、特に好ましくはタンパク質、グルカンおよびマンナンを、単離できるべきである。前記方法はさらに、生体分子を大規模な工業的アプローチにおいて可能な限り効率的に得ることを可能にすべきである。ここで、前記方法は、できるだけ少ないエネルギー消費および時間消費で実施できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題の解決は、請求項1の特徴によって定義される。従って、本発明の本質は、以下のステップを含む、タンパク質および糖類を単離するために、酵母、特にビール酵母(Bierhefe)を溶解(Aufschliessen)するための方法である:
a)酵母懸濁液、特にビール酵母懸濁液を提供するステップ;
b)前記酵母懸濁液中の酵母を物理的に溶解するステップ;
c)ステップb)からの溶解酵母懸濁液を精密濾過するステップ;
d)ステップc)からの精密濾過の透過物を限外濾過するステップであって、限外濾過の保持物として、タンパク質を主固体成分として有する相が分離されるステップ;
e)ステップc)からの精密濾過の保持物を、塩基性条件下でプロテアーゼで処理し、および引き続き、マンナンを主固体成分として有する相を、特に濾過および/または遠心分離によって、分離するステップ;
f)ステップe)で保持された相を連続的に、最初に塩基性条件下、次いで酸性条件下で処理し、引き続き、主固体成分としてグルカンを有する相を、特に濾過および/または遠心分離によって、分離するステップ。
【0013】
驚くべきことに、本発明による物理的、化学的および生化学的処理ステップの組み合わせが、比較的低いエネルギー必要量および比較的短い必要時間で良好な収率を可能とすることが示された。これは、全ての生成物、すなわちタンパク質、グルカンおよびマンナンに当てはまり、これらの物質に関してそれぞれ約40%までの収率を、高い純度で達成することができる。
【0014】
さらに、前記方法は、大規模なアプローチに適している。1年あたり数万トンの酵母懸濁液、または1時間に数千キログラムの酵母懸濁液を、問題なく処理することができる。
【0015】
「グルカン」は、D-グルコース分子から構成され、グリコシド結合によって互いに連結されたオリゴ糖類または多糖類である。酵母細胞に存在するようなグルカンは、典型的には、β-グリコシド結合を有するβ-グルカンであり、特にβ-1,3-グルカンである。
【0016】
「マンナン」は、糖マンノースのポリマーである多糖類である。酵母に存在するマンナンは、典型的には、α(1-6)-結合骨格ならびに平均して約2個の糖単位長であるα(1-2)-およびα(1-3)-結合側鎖を有する。「精密濾過」は、孔径≧0.1μmを有する濾材、特に膜による濾過のためのプロセスを意味する。対照的に、限外濾過における孔径は0.1μm未満である。
【0017】
特に別段の記載がない限り、「固体成分」はそれぞれ、それぞれの成分の乾燥物質を指す。用語「主固体成分」は、重量で最も大きな割合を有する固体の成分を表す。
【0018】
ステップa)で提供される酵母懸濁液は、特に0~15℃、好ましくは2~12℃、特に3~7℃または3~5℃の温度で貯蔵されたおよび/または低温殺菌された酵母懸濁液である。これは、懸濁液に含まれる望ましくない副生成物が可能な限り少ないことを確実にする。
【0019】
しかしながら、原則的に、ステップa)で提供される酵母懸濁液は、別の温度、特に室温で貯蔵され、低温殺菌されていない酵母懸濁液であってもよい。
【0020】
酵母懸濁液は、特に、水系酵母懸濁液である。その際、水は、酵母懸濁液の連続液相として存在する。
【0021】
酵母懸濁液は、特に、ビール酵母懸濁液であり、これは好ましくは使用済みのビール酵母を含有する。そのようなビール酵母懸濁液は、例えば、ビール製造における副生成物として生じ、本発明による方法では直接使用することができる。
【0022】
酵母懸濁液は、酵母懸濁液の全重量を基準として、好ましくは、5~30重量%、特に7~20重量%の固形物の割合を有する。これが、本発明による方法に特に適していることが見出された。任意に、液体、特に水を用いて、酵母懸濁液の固形物の割合を所望の範囲に調整することができる。
【0023】
酵母懸濁液は、ステップa)において、特に0~15℃、好ましくは2~12℃、特に3~7℃または5℃の温度を有する。これにより、懸濁液の組成が、例えば活性な酵母細胞により、さらに変化しないこと、または望ましくない副生成物の形成が低減されることが確実となる。
【0024】
さらに好ましくは、ステップb)も、および任意にまたステップc)およびd)も、0~15℃、好ましくは2~12℃、特に3~7℃または5℃の温度で実施される。これにより、望ましくない副生成物の形成がさらに低減される。
【0025】
しかしながら、原則的に、ステップa)、b)、c)および/またはd)における酵母懸濁液は、別の温度、例えば室温を有していてもよい。
【0026】
有利な実施形態によれば、提供される酵母懸濁液は、ステップb)の前に洗浄プロセスに付され、当該プロセスにおいて、酵母懸濁液の液相の少なくとも一部、特に酵母懸濁液の液相の少なくとも50重量%、殊に少なくとも60重量%が、さらに別の液体または置換液体、特に水によって置き換えられる。洗浄プロセスは、好ましくは、遠心分離機またはドラムフィルター中で実施される。
【0027】
必要な場合には、洗浄プロセスにより、液体中に溶解した望ましくない成分の割合を減少させることができ、それによって、単離すべき物質の純度および質を改善することができる。しかしながら、洗浄プロセスは任意であり、省略することもできる。
【0028】
ステップb)における物理的溶解は、特に電界を用いて、ホモジナイザー、または粉砕媒体ミルにおいて、特にボールミルにおいて、行われる。
【0029】
ホモジナイザーは、特に高圧ホモジナイザーであり、特に1000バールを超える、殊に1200バールを超える圧力で運転される。
【0030】
粉砕媒体ミルでは、粉砕材料および自由に移動可能な粉砕媒体、特にボールを、処理チャンバー内で循環させる。その際に、粉砕媒体と処理チャンバーの壁と粉砕材料との間の衝突が起こる。そこで、粉砕材料の細化が、とりわけ破壊により起こる。
【0031】
単離すべきタンパク質が穏やかに、しかしそれにもかかわらず効果的に放出され得るので、粉砕媒体ミル、特にボールミルによる溶解が、今回特に有利であることが判明した。これは、特に、ビール酵母懸濁液に当てはまる。しかしながら、特別な用途のために、物理的溶解のための別の方法を使用することもできる。
【0032】
ステップb)における電界を用いた物理的溶解は、特に、パルス電界(英語ではPEFまたは「Pulsed Electric Fields」とも呼ばれる)を用いて行うことができる。この溶解技術自体は、別との関連では当業者に公知である。
【0033】
パルス電界により処理する場合、酵母懸濁液は、特に、2つの電極の間に配置され、パルス電界で処理される。パルス電界は、特に、高い電界強度および短い継続時間によって特徴付けられる。そこで、細胞膜における可逆的または不可逆的な細孔形成が起こり、それによって、細胞内成分が放出され得、および/または細胞外物質が細胞内に入り込むことができる。
【0034】
今回特に、以下のパラメーターが、酵母懸濁液中の酵母の溶解を制御するのに適していることが見出された:電界強度[kV/cm]、酵母懸濁液の投入温度[℃]および比エネルギー入力[kJ/L]。プロセスに必要なエネルギー(酵母懸濁液1リットル当たりのキロジュール)が、エネルギー入力として理解される。さらに、エネルギー入力は、パルスの周波数[Hz]を介して調整することができ、他方で当該周波数は、流量に応じて、および既知の装置で自動的に制御される。
【0035】
好ましくは、電界強度は、1~30kV/cm、特に5~24kV/cmである。
【0036】
比エネルギー入力は、好ましくは1~180kJ/L、特に3~120kJ/Lである。
【0037】
酵母懸濁液の投入温度は、とりわけ0~15℃、好ましくは2~12℃、特に3~7℃または5℃である。
【0038】
このようなパラメーターにより、酵母懸濁液中の酵母を効果的に溶解することができる。
【0039】
パルス電界を用いて物理的な細胞溶解を実施するための装置は、PEF Pilot Dual装置(Elea-Technology;ドイツ)のように、様々な供給業者から市販されている。
【0040】
好ましくは、パルス電界による処理に続いて、機械的後処理が行われる。従ってこれは、好ましくは、ステップb)とc)との間に行われる。
【0041】
機械的後処理は、特にミキサーによって、好ましくは高い剪断力を有するミキサーによって、実施することができる。ローター・ステーターミキサー、特にインラインローター・ステーターミキサーが特に適している。インラインローター・ステーターミキサでは、典型的には、一方の端部に入口を有し、他方の端部に出口を有するハウジング内に、ローター及びステーターが収容される。そこで、処理すべき酵母懸濁液を、連続流でミキサーに通すことができる。
【0042】
ミキサーを用いた機械的後処理の際の剪断速度は、特に、酵母細胞がさらに溶解されるように選択される。それによって、パルス電界の印加後に場合によってはまだ完全に放出されていない細胞内成分(タンパク質)を、放出することができる。高い剪断力により、既に開裂した酵母細胞がさらに「絞られ」、細胞内成分、特にタンパク質を、細胞から漏出させることができる。
【0043】
ステップc)における精密濾過は、好ましくは、0.1~0.5μm、好ましくは0.1~0.2μm、特に0.1μmの孔径を有する濾材を使用して実施される。これが、物理的溶解後に、固形分を基準として、透過物中における単離すべきタンパク質の相対的な富化、および同時に保持物中におけるバイオマス残渣、例えば細胞断片および脂肪の富化を達成するために、特に好ましいことが見出された。
【0044】
特に、ステップc)における精密濾過はダイアフィルトレーションとして実施され、フィード側(vorlagenseitig)で、好ましくは連続的に、置換液体、特に水が供給される。換言すると、ダイアフィルトレーションでは、好ましくは、透過物として排出される溶解した酵母懸濁液の液相が、フィード側で少なくとも部分的に、特に完全に、連続的に置換液体(特に水)によって置き換えられる。
【0045】
溶解した酵母懸濁液は、特に、フィード容器から循環される。濾材の後の流れを制御することによって、ダイアフィルトレーションにおける駆動力として作用する膜間圧力を調節することができる。
【0046】
ダイアフィルトレーションは、好ましくは、透過物の排出が置換溶媒の連続的な流れ(Nachfliessen)をもたらし、特にその結果、ダイアフィルトレーションの間の循環体積が一定のままであるように、閉鎖循環で行われる。
【0047】
具体的には、ステップc)における精密濾過は、好ましくは、ステップc)からの精密濾過の透過物中のタンパク質の割合が、透過物中の固体の全重量を基準として、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは50~80重量%、特に60~70重量%となるように実施される。
【0048】
ステップc)における精密濾過の透過物中の固形物全体の割合は、透過物の全重量を基準として、好ましくは1~10重量%、特に3~7重量%である。
【0049】
さらに好ましくは、ステップc)における精密濾過は、ステップc)からの精密濾過の保持物中のタンパク質の割合が、保持物中の固体の全重量を基準として、50重量%未満、好ましくは40重量%未満、特に35重量%未満となるように実施される。
【0050】
ステップc)における精密濾過の保持物中の固形物全体の割合は、保持物の全重量を基準として、好ましくは20~50重量%、特に25~30重量%である。
【0051】
さらなる可能な実施形態によれば、溶解させた酵母懸濁液は、精密濾過ステップc)の前に、酸化剤、特にオゾン(O)および/または過酸化水素(H)で処理される。これにより特に、望ましくない副生成物および/または味の変化をもたらす化学反応を防ぐことができる。しかしながら、酸化剤での処理は任意である。
【0052】
さらに、溶解した酵母懸濁液は、精密濾過ステップc)の前に酵素的に処理することができる。これにより、必要に応じて、プロセスの効率および収率を高めることができる。しかしながら、精密濾過ステップc)の前の酵素的処理は任意である。
【0053】
ステップd)における限外濾過は、好ましくは、90nm未満の孔径および/または1~100kDa、特に5~100kDa、好ましくは10~50kDa、特に15~25kDa、殊に20kDaの排除限界(公称分子量カットオフ)を有する濾材を用いて行われる。排除限界は、濾材、特に膜によって、90%が保持される分子の最小分子量として定義される。
【0054】
特に、ステップd)における限外濾過はダイアフィルトレーションとして実施され、フィード側で、好ましくは連続的に、置換液体、特に水が供給される。換言すると、ステップd)におけるダイアフィルトレーションでは、好ましくは、ダイアフィルトレーションにおいて透過物として排出されるステップc)からの精密濾過の透過物の液相が、フィード側で少なくとも部分的に、特に完全に、連続的に置換液体(特に水)によって置き換えられる。
【0055】
ステップd)においてフィード(Vorlage)を形成する、ステップc)からの精密濾過の透過物は、特に、フィード容器から循環される。濾材の後の流れを制御することによって、ステップd)におけるダイアフィルトレーションの駆動力として作用する膜間圧力を、再度調節することができる。
【0056】
ステップd)におけるダイアフィルトレーションは、好ましくは、透過物の排出が置換液体の連続的な流れをもたらし、特にその結果、ダイアフィルトレーションの間の循環体積が一定のままであるように、閉鎖循環で行われる。
【0057】
ステップd)における限外濾過およびダイアフィルトレーションによって、保持物中のタンパク質の相対的な固形物の割合を狙いを定めて増加させることができる。
【0058】
好ましくは、ステップd)における限外濾過は、ステップd)において分離された、タンパク質を主固体成分として有する相におけるタンパク質の割合が、固体の重量を基準として、少なくとも75重量%、特に少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%となるように実施される。
【0059】
ステップd)において分離された相中の固形物全体の割合は、ステップd)において分離された相の全重量を基準として、好ましくは0.5~7重量%、特に1~3重量%である。
【0060】
特に、ステップc)における精密濾過もステップd)における限外濾過も、ダイアフィルトレーションとして実施される。
【0061】
特に好ましくは、ステップd)において分離された、主固体成分としてタンパク質を有する相が、ステップd)の後に乾燥され、特に噴霧乾燥される。これによって、タンパク質を、高い純度を有する粉末状生成物として得ることができる。噴霧乾燥のために適した装置および方法自体は、当業者に公知である。
【0062】
特に好ましくは、噴霧乾燥前に、固形分、特にタンパク質含有率は、特に少なくとも50重量%、殊に少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%の固形分に濃縮される。濃縮は、特に、液相を部分的に蒸発させる蒸発器中で行われる。濃縮のために適した装置および方法自体は、当業者に公知である。
【0063】
ステップd)において分離された、タンパク質を主固体成分として有する相は、任意に、ステップd)の後に、酸化剤、特にオゾンおよび/または過酸化水素で処理することができ、ならびに/あるいは吸着剤材料、例えば活性炭と接触させることができる。これにより特に、タンパク質の生成物の質を改善することができる。例えば、望ましくない変色および/または香味が、化学的に分解および/または除去され得る。
【0064】
噴霧乾燥が行われる場合、酸化剤での処理および/または吸着剤材料との接触は、好ましくは噴霧乾燥の前に行われ、そしてそれらが行われる場合、濃縮の前に行われる。
【0065】
酸化剤での処理は、特に好ましくは、膜接触器(Membrankontaktor)を用いて実施される。膜接触器では、物質交換中の流体は、多孔質膜によって互いに隔てて通される。今回の場合、流体は、ステップd)において分離された、タンパク質を主固体成分として有する相と、酸化剤である。酸化剤は、膜接触器において、膜を通り抜けて、ステップd)で分離された、タンパク質を主固体成分として有する相に、到達する。膜接触器の使用が、他の接触器と比較して特に有利かつ効率的であることが今回見出された。これは特に、膜接触器における圧力喪失およびエネルギー必要量は比較的低いが、酸化剤は依然としてその効果を非常に効果的に発揮することができるためである。
【0066】
ステップe)では、プロテアーゼが使用される。プロテアーゼは、タンパク質を加水分解的に分解することができる酵素である。プロテアーゼは、タンパク質分解酵素とも呼ばれる。
【0067】
好ましくは、ステップe)において、プロテアーゼは、ステップc)からの精密濾過の保持物の固形分を基準として、0.0001~10重量%、特に0.001~5重量%、特に0.01~1重量%または0.05~0.5重量%の割合で使用される。
【0068】
プロテアーゼは、好ましくはアルカリ性プロテアーゼ、特にセリンプロテアーゼ、特に好ましくはスブチリシンである。
【0069】
セリンプロテアーゼは、活性中心にアミノ酸セリンを有するプロテアーゼのサブファミリーである。
【0070】
スブチリシン型のプロテアーゼ(スブチラーゼ、スブチロペプチダーゼ、EC 3.4.21.62)は、触媒活性アミノ酸に基づいてセリンプロテアーゼとして分類される。それらは、天然には、微生物、特にバチルス(Bacillus)種から生成され、分泌される。それらは非特異的エンドペプチダーゼとして作用し、すなわち、それらは、ペプチドまたはタンパク質の内部にある任意の酸アミド結合を加水分解する。それらのpH最適条件は、多くの場合、明らかにアルカリ性の範囲にある。
【0071】
プロテアーゼ、特に言及した特定のプロテアーゼは、本発明の方法において極めて有利であることが見出された。特に、プロテアーゼによって選択的にマンナンを放出させることができ、マンナンは、マンナンを主固体成分として有する液相の形態で分離することができる。
【0072】
特に、当該方法は、マンナナーゼの添加なしで、またはマンナナーゼの非存在下で実施される。マンナナーゼは、マンナンを分解する酵素である。
【0073】
ステップe)における処理は、好ましくは、7.5~13、好ましくは8~11、特に8.5~10.5のpH値で、および/または40~80℃、好ましくは50~70℃、特に55~65℃の温度で行われる。pH値は、好ましくは、使用されるプロテアーゼに合わせて調整される。
【0074】
特に、ステップe)において、pH値は、塩基、好ましくは4.75未満、特に1未満のpK値を有する塩基を添加することによって調節される。pK値は、負の、塩基定数Kの10を底とする対数を表す。特に好ましくは、それは無機塩基、特にNaOHである。このような塩基が特に適していることが見出された。
【0075】
塩基は、好ましくは、希釈形態で(例えば水中で30~60重量%の割合で)使用される。
【0076】
ステップe)における処理は、特に10分~18時間、特に3~12時間続く。これにより、収率を最適化することができる。
【0077】
さらなる実施形態では、ステップe)では、少量の液体を有するペースト状画分を処理することができる。これにより、それぞれ酵母懸濁液の組成および反応手順に応じて、酵素ステップを収率に関して最適化することができる。
【0078】
ステップf)において、保持された相は、好ましくは、第1の期間で、好ましくは1~5時間、7.5~13、好ましくは8~11、特に8.5~10.5のpH値で、および/または40~95℃、好ましくは65~85℃、特に75~85℃の温度で処理される。引き続き、保持された相は、好ましくは、第2の期間で、好ましくは0.5~2時間、2~6.5、好ましくは3~5、特に3.5~4.5のpH値で、および/または50~95℃、好ましくは80~95℃、特に80~90℃の温度で処理される。
【0079】
ステップf)において言及される「ステップe)で保持された相」は、特に、ステップe)でマンナンを主固体成分として有する相の分離後に保持される相として理解される。従って特に、「ステップe)で保持された相」は、ステップc)からの保持物に対応し、そこから、マンナンを主固体成分として有する相が分離された。
【0080】
マンナンを主固体成分として有する相の分離がステップe)において、例えば濾過によって行われる場合、ステップf)において参照される「ステップe)で保持された相」は、特に、ステップe)からの保持物である。この場合、ステップe)ではマンナンを主固体成分として有する相が透過物を形成し、これが分離される。
【0081】
特に好ましくは、ステップf)において、第1の期間におけるpH値は、ステップe)における処理中のpH値に対応するように選択される。
【0082】
さらに好ましくは、ステップf)において、第1の期間における温度は、ステップe)における処理中の温度よりも高い。
【0083】
好ましくは、ステップf)において、第1の期間における温度は、第2の期間における温度よりも低く、および/または、第1の期間は第2の期間よりも長い。
【0084】
ステップf)において、必要に応じて、pH値は、塩基、好ましくはNaOHを添加することによって、および/または酸、好ましくはHSOを添加することによって調節される。
【0085】
ここで、塩基は、好ましくは、ステップe)で上述したような塩基である。特に好ましくは、ステップf)における塩基は、ステップe)における塩基と同一の塩基である。
【0086】
酸は、特に、4.75未満、特に1未満のpK値を有する酸である。pK値は、負の、酸定数Kの10を底とする対数を表す。特に好ましくは、それは鉱酸、特にHSOである。
【0087】
酸は、好ましくは、希釈形態で(例えば水中で30~60重量%の割合で)使用される。
【0088】
これらの前述の手段(特に組み合わせにおいて)が、プロセスの効率の点で特に有利であることが見出された。
【0089】
ステップe)における主固体成分としてマンナンを有する相の分離は、好ましくは、濾過、特に組み合わされた精密濾過と限外濾過によって行われる。同様に、ステップf)における主固体成分としてグルカンを有する相の分離は、好ましくは、濾過、特に組み合わされた精密濾過と限外濾過によって行われる。
【0090】
ステップe)でのマンナンを有する相の分離後に保持された相は、ステップf)において特に「保持された相」としてさらに処理される。
【0091】
ここで精密濾過は、それぞれ、好ましくは、0.1~0.5μm、特に0.1~0.2μm、好ましくは0.1μmの孔径を有する濾材を使用して実施される。限外濾過は、好ましくは、それぞれ、90nm未満の孔径および/または1~100kDa、特に5~100kDa、好ましくは10~50kDa、特に15~25kDa、殊に20kDaの排除限界(公称分子量カットオフ)を有する濾材を用いて実施される。
【0092】
ステップe)における精密濾過および/またはステップf)における限外濾過は、好ましくはダイアフィルトレーションとして、特にステップc)およびd)において記載されたのと同じ方法で、実施される。
【0093】
ここで、ステップe)において、特に、マンナンを主固体成分として有する相を精密濾過の透過物の形態で排出し、限外濾過に供給し、限外濾過の保持物におけるマンナンの相対的な割合を増加させる。
【0094】
ステップf)において、特に、グルカンを主固体成分として有する相を精密濾過の透過物の形態で排出し、限外濾過に供給し、限外濾過の保持物におけるグルカンの相対的な割合を増加させる。
【0095】
ステップe)および/またはf)におけるダイアフィルトレーションでは、液体が、特にステップe)および/またはf)が行われる反応容器から循環され、フィード側で好ましくは連続的に置換液体が供給される。
【0096】
さらなる有利な実施形態によれば、ステップe)および/またはf)における分離は、ドラムフィルターおよび/または遠心分離機によって行われる。これは特に、ステップf)における。
【0097】
従って、特定の実施形態において、ステップe)における分離は、上述のように、組み合わされた精密濾過および限外濾過によって実施され、ステップf)における分離は、ドラムフィルターおよび/または遠心分離機によって、特に遠心分離機によって実施される。
【0098】
好ましくは、ステップe)において分離された、主固体成分としてマンナンを有する相は、ステップe)の後に乾燥され、特に噴霧乾燥され、および/または、ステップf)において分離された、主固体成分としてグルカンを有する相は、ステップf)の後に乾燥され、特に噴霧乾燥される。これによって、マンナンもグルカンも、高い純度を有する粉末状生成物として得ることができる。
【0099】
好ましくは、噴霧乾燥の前に、固形分、特にマンナンおよび/またはグルカンの含有率が、特に蒸発器を使用して、濃縮される。
【0100】
ステップe)において分離された、マンナンを主固体成分として有する相は、任意に、ステップe)の後に、酸化剤、特にオゾンおよび/または過酸化水素で処理することができ、ならびに/あるいは吸着剤材料、例えば活性炭と接触させることができる。
【0101】
同様に、ステップf)において分離された、グルカンを主固体成分として有する相は、任意に、ステップf)の後に、酸化剤、特にオゾンおよび/または過酸化水素で処理することができ、ならびに/あるいは吸着剤材料、例えば活性炭と接触させることができる。
【0102】
それにより、タンパク質分離の場合と同様に、マンナンおよび/またはグルカンの生成物の質を改善することができる。
【0103】
ステップe)および/またはf)の後に噴霧乾燥が行われる場合、酸化剤での処理および/または吸着剤材料との接触は、好ましくは噴霧乾燥の前に行われ、そしてそれが行われる限り、濃縮の前に行われる。
【0104】
酸化剤での処理は、特に好ましくは、膜接触器を用いて実施される。これに関する利点は、タンパク質流との関連で上述されている。
【0105】
以下の詳細な説明および特許請求の範囲の全体から、本発明のさらなる有利な実施形態および特徴の組み合わせが明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
実施例の説明のために使用される図1および図2は、タンパク質(P)、マンナン(M)およびグルカン(G)を単離する目的に関する、ビール酵母の溶解のための本発明による方法のプロセスフロー図を示す。
【0107】
基本的に、各図中、同一の部分には同一の符号が付されている。
【0108】
発明を実施するための方法
図1および図2は、タンパク質(P)、マンナン(M)およびグルカン(G)を単離する目的に関する、ビール酵母の溶解のための本発明による方法のプロセスフロー図を示す。
【0109】
第1のステップ100において、冷却された水系ビール酵母懸濁液BS(温度=5℃;固体濃度=15重量%)が、次のステップ101で貯蔵タンク2に5℃で一時的に貯蔵されるために、タンクトラック1で供給される。
【0110】
さらに、ビール酵母懸濁液BSは、遠心分離機3内で洗浄プロセス102に付される。そこで、ビール酵母懸濁液BSの液相が水Wによって置き換えられ、フィードタンク4に供給される。
【0111】
次いで、フィードタンク4から、洗浄されたビール酵母懸濁液がボールミル5に導かれ、ここで、懸濁液中のビール酵母細胞が、後続のプロセスステップ103において物理的に溶解される。溶解したビール酵母懸濁液が、引き続き、精密濾過ステップ104に付される。精密濾過は、0.1μmの孔径を有する濾材を用いたダイアフィルトレーションとして実施される。そこで、溶解したビール酵母懸濁液は、フィード容器6から、ポンプ7を用いて、精密濾過器8を介して循環され、フィード側で連続的に水Wが置換液体として供給される。膜間圧力(これは透過物の流出によって制御できる)は、約1.5barである。精密濾過の透過物p1中のタンパク質の割合は、透過物p1中の固体の全重量を基準として、例えば、60~70重量%である。
【0112】
精密濾過ステップ104の透過物p1は、次いで、限外濾過ステップ105に付される。限外濾過は、20kDaの排除限界(公称分子量カットオフ)を有する濾材を用いたダイアフィルトレーションとして実施される。そこで、透過物p1は、さらに別のフィード容器9から、ポンプ10を用いて、限外濾過器11を介して循環され、フィード側で連続的に水Wが置換液体として供給される。膜間圧力(これは透過物の流出によって制御できる)は、約2barである。限外濾過ステップ105により、保持物r2中のタンパク質の相対的な固形物の割合が増加され、その結果、タンパク質の固形物の割合は、留まった保持物r2中の全固形分を基準として、約90重量%である。
【0113】
限外濾過ステップ105の透過物p2は、廃水として排出される(これは必要に応じて再処理することができる)。
【0114】
タンパク質を主固体成分として有する、限外濾過ステップ105の保持物r2は、乾燥プロセス106に付され、当該保持物r2は、蒸発器12を通過した後、噴霧乾燥装置13に供給される。そこから、粉末形態の生成物Pとしてタンパク質がもたらされる。
【0115】
全プロセスにわたるタンパク質の収率は、ビール酵母懸濁液BS中の利用可能なタンパク質の含有率を基準として、約38重量%である。
【0116】
図2に示されるように、精密濾過プロセス104の保持物r1は、順次、酵素的および化学的にさらに処理される。図2は、アスタリスク(*)で印を付けられた箇所で、図1のアスタリスクで印を付けられた箇所に続く。
【0117】
タンパク質分解消化ステップ107において、保持物r1は、反応器14において、例えば8時間、0.2重量%(保持物r1の固形分を基準とする)のスブチリシンの形態のプロテアーゼEで処理される。処理は、約9.5のpH値で行われ、ここでpH値は、NaOHの45%水溶液の形態の塩基Bを添加することによって調節され、プロテアーゼでの処理の間、一定に保たれる。
【0118】
タンパク質分解消化により、選択的にマンナンが放出され、これは引き続き、精密濾過および下流の限外濾過によって、マンナンを主固体成分として有する水相の形態で分離される。精密濾過も限外濾過も、ダイアフィルトレーションとして実施される。精密濾過の間、濾過される液体は、ポンプ15を用いて、反応器14から精密濾過フィルター16(孔径:0.1μm)を介して循環され、フィード側で連続的に置換液体が供給される。引き続き、精密濾過の透過物が、限外濾過段階のフィード容器17に供給され、そこから、液体が、ポンプ18を用いて限外濾過器19(排除限界:20kDa)を介して循環される。限外濾過により、限外濾過段階の保持物におけるマンナンの相対的な固形物の割合が増加され、その結果、マンナンの固形物の割合は、留まった保持物中の全固形分を基準として、約65重量%である。限外濾過段階の透過物は、廃水として排出される(これは必要に応じて再処理することができる)。
【0119】
マンナンを主固体成分として有する、限外濾過段階の保持物は、乾燥プロセス110に付され、当該保持物は、蒸発器20を通過した後、噴霧乾燥装置21に供給される。そこから、粉末形態の生成物Mとしてマンナンがもたらされる。
【0120】
全プロセスにわたるマンナンの収率は、ビール酵母懸濁液BS中の利用可能なマンナンの含有率を基準として、約39重量%である。
【0121】
次いで、反応器14中に保持された相が、約80℃の温度に加熱され、約3時間の第1の期間において、9.5のpH値での塩基性抽出108に付される。pH値は、希NaOHの制御された添加によって一定に保たれる。
【0122】
引き続き、温度を再び約85℃に上昇させ、pH値を、水中の50%HSOを添加することによって4の値に低下させる。次いで、反応器中に保持された相を、1時間の期間において、酸抽出109に付す。
【0123】
塩基性および酸性抽出が行われた後、マンナンと同様に、グルカンを主成分として有する液相が、2つのフィルター段階(精密濾過器16および限外濾過器18)を介してダイアフィルトレーションによって分離される。これにより、ダイアフィルトレーション段階の保持物中の全固形分を基準として、約72重量%のグルカンの固形物の割合が達成される。
【0124】
グルカンを主固体成分として有する、限外濾過段階の保持物が、同様に、乾燥プロセス110に付され、当該保持物は、蒸発器20を通過した後、噴霧乾燥装置21に供給される。そこから、粉末形態の生成物Gとしてグルカンがもたらされる。
【0125】
全プロセスにわたるグルカンの収率は、ビール酵母懸濁液BS中の利用可能なグルカンの含有率を基準として、約42重量%である。
【0126】
しかしながら、本発明は、示された実施例に限定されない。従って、これは、本発明の枠内において任意に変更することができる。
【0127】
例えば、ビール酵母懸濁液の代わりに例えば別の酵母懸濁液を使用することもできる。同様に、不可避でないプロセスステップ、例えば洗浄プロセス102は、省略することができる。さらに、細胞溶解は、ボールミル5を使用する代わりにパルス電界によって実施することができる。とりわけ、記載されたフィルター段階(精密濾過器16および限外濾過器18)を使用する代わりに、ドラムフィルターまたは遠心分離機を使用して、マンナンおよび/またはグルカンを分離することも可能である。
【0128】
さらに、蒸発器12の前および/または蒸発器20の前に、任意に、膜接触器MKまたはMK’を設けることができる。これによって、対応する相を、噴霧乾燥前に、酸化剤、例えばオゾンおよび/または過酸化水素で処理することができる。
【0129】
要約すると、タンパク質および糖類を単離するために、酵母、特にビール酵母を溶解するための新規で特に有利な方法であって、大規模なアプローチに特に適した方法が提供されたことが示される。
図1
図2
【国際調査報告】